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特表2023-521307高強度コラーゲン組成物および使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】高強度コラーゲン組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/24 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
A61L27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559920
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-11-18
(86)【国際出願番号】 US2021024893
(87)【国際公開番号】W WO2021202533
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/002,644
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519278619
【氏名又は名称】ジェニフィス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ボイティク-ハービン,シェリー エル
(72)【発明者】
【氏名】プルス,セオドア ジェイ
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081AB17
4C081BA12
4C081BB08
4C081CC05
4C081CD121
4C081DA02
4C081DA03
(57)【要約】
本発明は、約0.005mm~約3mmの厚さおよび高強度(例えば、約0.5MPa~約200MPaの高弾性率)を有する人工コラーゲンスキャフォールドに関する。この人工コラーゲンスキャフォールドは、非崩壊性および/または非拡大性でありうる。本開示はまた、これらのコラーゲンスキャフォールドを使用する方法にも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非崩壊性および/または非拡大性の人工コラーゲンスキャフォールドであって、約0.005mm~約3mmの厚さ、および約0.5MPa~約200MPaの弾性率を有する、人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項2】
凍結乾燥および再水和される場合に崩壊しない、請求項1に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項3】
約0.01mm~約2.0mmの厚さを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項4】
約0.01mm~約1.0mmの厚さを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項5】
約0.01mm~約0.25mmの厚さを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項6】
約0.1mm~約1.0mmの厚さを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項7】
約0.5mm~約1.0mmの厚さを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項8】
約0.15mm~約0.25mmの厚さを有する、請求項1から2のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項9】
約18MPa~約200MPaの弾性率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項10】
約20MPa~約180MPaの弾性率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項11】
約40MPa~約120MPaの弾性率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項12】
約60MPa~約100MPaの弾性率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項13】
約80MPa~約180MPaの弾性率を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項14】
約0.5MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項15】
約1MPa~約25MPaの極限引張強さを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項16】
約0.2MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項17】
約5MPa~約15MPaの極限引張強さを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項18】
約2MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項19】
約5%~約70%の破壊歪みを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項20】
約10%~約40%の破壊歪みを有する、請求項1から18のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項21】
約2N~約8Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項22】
約0.2N~約2Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項23】
約0.1N~約4Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、請求項1から20のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項24】
人工コラーゲンスキャフォールドが組成物中にあり、組成物が、流体をさらに含む、請求項1から23のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項25】
存在する流体のパーセンテージが、約5%~約99%である、請求項24に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項26】
組成物が、組成物を凍結乾燥すること、組成物を真空プレスすること、もしくは脱水熱処理、またはこれらの組合せによって乾燥される、請求項24または25のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項27】
コラーゲンがI型コラーゲンである、請求項1から26のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項28】
コラーゲンが精製されたI型コラーゲンである、請求項1から27のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項29】
医療用移植組織である、請求項1から28のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項30】
人工コラーゲンスキャフォールドが医療用移植組織であり、医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の組織の再生、回復または置換のために使用される、請求項1から29のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項31】
心膜、心臓弁、皮膚、血管、気道組織、体壁および腫瘍除去後に再構築された組織から選択される組織の再生または置換または回復のための医療用移植組織である、請求項30に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項32】
最終滅菌されるか、または無菌で調製される、請求項1から31のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項33】
グルタルアルデヒドによる処理、ガンマ線照射、電子線照射またはエチレンオキシド処理から選択されるプロセスによって最終滅菌される、請求項32に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項34】
コラーゲンが、オリゴマーコラーゲン、モノマーコラーゲン、テロコラーゲンもしくはアテロコラーゲン、またはこれらの組合せを含む、請求項1から33のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項35】
所定の形状に圧縮された、請求項1から34のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項36】
形状が球である、請求項35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項37】
形状が管である、請求項35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項38】
形状がシートである、請求項35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項39】
圧縮が拘束圧縮である、請求項35から38のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項40】
コラーゲン濃度が、約50~約1000mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項41】
コラーゲン濃度が、約50~約900mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項42】
コラーゲン濃度が、約50~約800mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項43】
コラーゲン濃度が、約50~約700mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項44】
コラーゲン濃度が、約50~約600mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項45】
コラーゲン濃度が、約50~約500mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項46】
コラーゲン濃度が、約50~約400mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項47】
コラーゲン濃度が、約50~約300mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項48】
コラーゲン濃度が、約50~約200mg/cmである、請求項1から39のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項49】
患者に移植された場合、炎症または異物反応を誘発しない、請求項1から48のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項50】
コラーゲンが、ブタコラーゲン、ヒトコラーゲンおよびウシコラーゲンから選択される、請求項1から49のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項51】
コラーゲンが合成コラーゲンである、請求項1から49のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項52】
コラーゲンが未変性コラーゲンである、請求項1から50のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項53】
コラーゲンが組換えコラーゲンである、請求項1から49のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項54】
細胞をさらに含む、請求項1から53のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項55】
細胞が幹細胞である、請求項54に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【請求項56】
患者を処置して、損傷したまたは機能不全の組織を置換する、回復させるまたは再生する方法であって、請求項1から55のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールドを含む医療用移植組織を患者に移植することを含む、方法。
【請求項57】
医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の心膜の再生、回復または置換のためである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の心臓弁の再生、回復または置換のためである、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の皮膚の再生、回復または置換のためである、請求項56に記載の方法。
【請求項60】
弁組織が、大動脈弁組織または肺動脈弁組織である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
人工コラーゲンスキャフォールドが、外因性架橋されている、請求項1から55のいずれか一項に記載の人工コラーゲンスキャフォールド、または請求項56から60のいずれか一項に記載の方法。
【請求項62】
人工コラーゲンスキャフォールドが、グルタルアルデヒドと架橋している、請求項61に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2020年3月31日に出願された米国仮特許出願第63/002,644号への優先権を主張し、その全開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、約0.005mm~約3mmの厚さおよび高強度[例えば、約0.5MPa~約200MPaの高弾性率(elastic modulus)]を有する人工コラーゲンスキャフォールドに関する。人工コラーゲンスキャフォールドは、非崩壊性(non-collapsible)および/または非拡大性(non-expandable)でありうる。本開示はまた、これらのコラーゲンスキャフォールドを使用する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
患者において損傷したまたは機能不全の組織を置換する、回復させるまたは再生する能力は、医学における大きな課題を示す。すべての組織および臓器の重要な成分は、細胞外マトリックス(ECM)であり、これは、その中で生細胞が分布および組織される非生体物質を示す。ECMは、組織の機械的特性を決定するだけでなく、細胞も三次元で支持する物理的スキャフォールドを提供する。さらに、ECMは、必須の生化学的および生体力学的シグナル伝達を通して細胞に通知する細胞挙動の重要なレギュレーターとして役立つ。ECMの全体的な組織構造および機能の重要性を考慮して、組織工学および再生医療の努力は、改善された組織修復、回復および再生の転帰のためのECMスキャフォールドを再建する材料の開発に焦点を当てている。
【0004】
コラーゲンは、ECMおよび身体の最も豊富なタンパク質であり、組織の構造的および機械的特性の主な決定要因として役立つ。身体内において、コラーゲンは、3つのポリペプチド鎖からなる単一分子として細胞によって生成される。トロポコラーゲンとしても公知の個々のコラーゲン分子は、両方の端部をよりランダムに組織されたテロペプチドでキャップされた中心三重らせんドメインを有する。インビボ(in vivo)において個々のコラーゲン分子(モノマー)は、階層的自己アセンブリーを受けて高分子材料(例えば、ECMの不溶性線維状マトリックス)を形成するため、コラーゲンは、タンパク質であるだけでなくポリマーでもある。インビボにおける合成およびアセンブリー中、これらの高分子コラーゲン材料は、中性分子間および分子内架橋の形成によってさらに安定化され、これらは、機械的強度を付与し、コラーゲンターンオーバー(すなわち、コラーゲン分解および合成の間のバランス)を制御するのに役立つ。ECMの構造および細胞シグナル伝達要素としてのその二重の役割のために、コラーゲンは、研究および臨床現場の両方において好ましい生体材料である。身体におけるその高い利用可能性、組織および種にわたる保存、タンパク質分解酵素による副生成物への予測分解性(例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ)、ならびに高い生体適合性によっても、コラーゲンは、組織工学および再生医療用途に理想的に適している。
【0005】
今日まで、当技術分野で公知の人工コラーゲンスキャフォールドは、典型的には、テロコラーゲンおよびアテロコラーゲンとして公知のコラーゲンモノマーから作られてきた。テロコラーゲンは、全長トロポコラーゲン分子を示し、これは、通常、酸抽出を介して組織から単離される。アテロコラーンは、天然トロポコラーゲン分子の改変例を示し、テロペプチド末端は、タンパク質単離および精製プロセス中に酵素により切断されている。コラーゲン材料の調製に関するこれらのコラーゲンモノマーの欠点は、十分に確立されており、ロット間での純度および重合能の大幅なばらつき、長い重合時間(多くの場合、30分を超える)、形成された高分子材料の不十分な安定性および機械的完全性、ならびに形成された高分子材料のインビトロ(in vitro)およびインビボにおける迅速なタンパク質分解である。テロコラーゲンおよびアテロコラーゲンから形成されたコラーゲン材料の不安定性は、材料の剛性(弾性率)および強度、ならびにタンパク質分解への抵抗を改善するための追加の材料処理戦略への必要性につながっている。これらの材料処理戦略は、物理的および化学的手段または他の材料との共重合を介した外因性の架橋を主に使用する。そのような戦略は、様々に成功裡にコラーゲン材料の機械的特性および安定性を改善してきたが、それらは、コラーゲンに固有の生物学的シグナル伝達能に対して有害な効果を有し、炎症および異物反応を含む有害な組織応答をもたらすことが公知である。さらに、テロコラーゲンおよびアテロコラーゲンから調製される材料の達成可能な密度は限られており、インビボにおいて結合組織で見られるコラーゲン密度(濃度)よりもはるかに低い。スキャフォールド剛性およびコラーゲン密度を含むコラーゲン材料の物理的特徴は、組織の修復(repair)および再生中に起こる増殖、遊走および分化プロセスを含む基礎的な細胞挙動に直接影響することが示されているため、この観察は極めて重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、有害な外因性の処理または架橋戦略を使用することなく作製され、組織工学および再生医療の分野に利点をもたらす、天然のコラーゲンスキャフォールドのインビボにおける構造および機能性に近づく高強度コラーゲンスキャフォールドへの必要性が存在する。驚くべきことに、本発明者らは、約0.005mm~約3mmの厚さおよび高強度(例えば、約0.5MPa~約200MPaの高弾性率)を有する人工コラーゲンスキャフォールドを開発した。一態様では、これらのコラーゲンスキャフォールドは、非崩壊性および/または非拡大性であってもよく、強度が、心膜、羊膜および心臓弁などのインビボにおいて見られる高強度組織に類似している。さらに、高強度特性は、組織置換および再構築(reconstruction)手順に臨床使用した場合、材料の取扱いおよび適用を容易にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の人工コラーゲンスキャフォールドは、当技術分野で公知のものと比較して、いくつかの利点を提供する。第1に、本開示の人工コラーゲンスキャフォールドは、当技術分野のものと比較して改善された機械的特性を持つ。特に、本開示の人工コラーゲンスキャフォールドは、壊れにくく、天然のコラーゲンバイオシグナル伝達およびインビボにおける組織応答に有害であることが公知の外因性の架橋および処理戦略を用いることなく改善された機械的特性(例えば、約0.5MPa~約200MPaの高弾性率)を有する。さらに、本開示の人工コラーゲンスキャフォールドは、分解に対する改善された抵抗、緩徐ターンオーバーを有し、本開示の人工コラーゲンスキャフォールドは、炎症または異物反応を誘発しない。
【0008】
一実施形態では、非崩壊性および/または非拡大性の人工コラーゲンスキャフォールドが提供される。コラーゲンスキャフォールドは、約0.005mm~約3mmの厚さおよび約0.5MPa~約200MPaの弾性率を有する。
【0009】
別の実施形態では、患者を処置して、損傷したまたは機能不全の組織を再生する、回復させるまたは置換する方法が提供される。方法は、本明細書に記載される人工コラーゲンスキャフォールドのいずれかを含む医療用移植組織を患者に移植することを含む。
【0010】
さらなる実施形態はまた、以下に列挙される項目によっても記載される。以下の実施形態のいずれかを本出願の背景および概要の節、例示的な実施形態の詳細な説明の節、実施例の節、または特許請求の範囲に記載される任意の適用可能な実施形態と組み合わせたものもまた、企図される。
【0011】
1.非崩壊性および/または非拡大性の人工コラーゲンスキャフォールドであって、約0.005mm~約3mmの厚さ、および約0.5MPa~約200MPaの弾性率を有する、人工コラーゲンスキャフォールド。
【0012】
2.コラーゲンスキャフォールドが凍結乾燥および再水和される場合に崩壊しない、項目1に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0013】
3.約0.01mm~約2.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0014】
4.約0.01mm~約1.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0015】
5.約0.01mm~約0.25mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0016】
6.約0.1mm~約1.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0017】
7.約0.5mm~約1.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0018】
8.約0.15mm~約0.25mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0019】
9.約18MPa~約200MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0020】
10.約20MPa~約180MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0021】
11.約40MPa~約120MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0022】
12.約60MPa~約100MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0023】
13.約80MPa~約180MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0024】
14.約0.5MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0025】
15.約1MPa~約25MPaの極限引張強さを有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0026】
16.約0.2MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、項目1から15のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0027】
17.約5MPa~約15MPaの極限引張強さを有する、項目1から15のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0028】
18.約2MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、項目1から15のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0029】
19.約5%~約70%の破壊歪みを有する、項目1から18のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0030】
20.約10%~約40%の破壊歪みを有する、項目1から18のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0031】
21.約2N~約8Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、項目1から20のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0032】
22.約0.2N~約2Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、項目1から20のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0033】
23.約0.1N~約4Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、項目1から20のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0034】
24.人工コラーゲンスキャフォールドが組成物中にあり、組成物が、流体をさらに含む、項目1から23のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0035】
25.存在する流体のパーセンテージが、約5%~約99%である、項目24に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0036】
26.組成物が、組成物を凍結乾燥すること、組成物を真空プレスすること、もしくは脱水熱処理、またはこれらの組合せによって乾燥する(dry)、項目24または25のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0037】
27.コラーゲンがI型コラーゲンである、項目1から26のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0038】
28.コラーゲンが精製されたI型コラーゲンである、項目1から27のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0039】
29.医療用移植組織である、項目1から28のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0040】
30.人工コラーゲンスキャフォールドが医療用移植組織であり、医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の組織の再生、回復または置換のために使用される、項目1から29のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0041】
31.心膜、心臓弁、皮膚、血管、気道組織、体壁および腫瘍除去後に再構築された組織から選択される組織の再生または置換または回復のための医療用移植組織である、項目30に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0042】
32.最終滅菌されるか、または無菌で調製される、項目1から31のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0043】
33.グルタルアルデヒドによる処理、ガンマ線照射、電子線照射またはエチレンオキシド処理から選択されるプロセスによって最終滅菌される、項目32に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0044】
34.コラーゲンが、オリゴマーコラーゲン、モノマーコラーゲン、テロコラーゲンもしくはアテロコラーゲン、またはこれらの組合せを含む、項目1から33のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0045】
35.所定の形状に圧縮された、項目1から34のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0046】
36.形状が球である、項目35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0047】
37.形状が管である、項目35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0048】
38.形状がシートである、項目35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0049】
39.圧縮が拘束圧縮である、項目35から38のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0050】
40.コラーゲン濃度が、約50~約1000mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0051】
41.コラーゲン濃度が、約50~約900mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0052】
42.コラーゲン濃度が、約50~約800mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0053】
43.コラーゲン濃度が、約50~約700mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0054】
44.コラーゲン濃度が、約50~約600mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0055】
45.コラーゲン濃度が、約50~約500mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0056】
46.コラーゲン濃度が、約50~約400mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0057】
47.コラーゲン濃度が、約50~約300mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0058】
48.コラーゲン濃度が、約50~約200mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0059】
49.患者に移植された場合、炎症または異物反応を誘発しない、項目1から48のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0060】
50.コラーゲンが、ブタコラーゲン、ヒトコラーゲンおよびウシコラーゲンから選択される、項目1から49のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0061】
51.コラーゲンが合成コラーゲンである、項目1から49のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0062】
52.コラーゲンが未変性(native)コラーゲンである、項目1から50のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0063】
53.コラーゲンが組換えコラーゲンである、項目1から49のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0064】
54.細胞をさらに含む、項目1から53のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0065】
55.細胞が幹細胞である、項目54に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0066】
56.患者を処置して、損傷したまたは機能不全の組織を再生する、回復させるまたは置換する方法であって、項目1から55のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールドを含む医療用移植組織を患者に移植することを含む、方法。
【0067】
57.医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の心膜の再生、回復または置換のためである、項目56に記載の方法。
【0068】
58.医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の心臓弁の再生、回復または置換のためである、項目56に記載の方法。
【0069】
59.医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の皮膚の再生、回復または置換のためである、項目56に記載の方法。
【0070】
60.弁組織が、大動脈弁組織または肺動脈弁組織である、項目59に記載の方法。
【0071】
61.人工コラーゲンスキャフォールドが、外因性架橋されている、項目1から55のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールドまたは項目56から60のいずれか1つに記載の方法。
【0072】
62.人工コラーゲンスキャフォールドが、グルタルアルデヒドと架橋している、項目61に記載の人工コラーゲンスキャフォールドまたは方法。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1Aは、チャンバー圧縮装置および関連する高密度化/脱水プロセスを示す。円筒形チャンバーは、Delrinから作製され、底部に中実球形シートが取り付けられていた。シリンダーは液体コラーゲンで満たされており、これは、37℃で重合されて、間質液に取り囲まれた線維状コラーゲンの相互接続したネットワークで構成される低密度コラーゲンマトリックスの複合体を形成する。図1Bは、中実底面(Solid Bottom Surface)を取り外し、多孔質底面で固定された多孔質ポリエチレンフォームの薄い球形シートと置き換えることができることを示す。次いで、多孔質ポリエチレンフォームの薄い球形シートは、コラーゲンスキャフォールド(Collagen Scaffold)の上面に置くことができる。図中、「Porous Platens」は「多孔質プラテン」と、「Bottom Surface With Holes」は「穴を有する底面」、と訳す。図1Cは、圧縮荷重を、上側ポリエチレンフォームに灰色の矢印の方向に加え、コラーゲンスキャフォールドから上側および下側面の両方を介して(白色の矢印)流体を排出させて、水和した高密度化コラーゲンスキャフォールド(Densified Collagen Scaffold)を作出できることを示す。
図2図2Aは、複合体コラーゲンスキャフォールドがステンレス鋼メッシュ(Stainless Steel Mesh)のディスクの上部のシリンジシステムにおいて重合される、シリンジ圧縮装置および関連する高密度化/脱水プロセスを示す。重合後、一片のWhatmanろ紙(Whatman Filter Paper)および改変したプランジャーをシリンジの内部に置いて、スキャフォールドを圧縮する。図2Bは、プランジャーを灰色の矢印の方向に圧縮して、コラーゲンスキャフォールド(collagen scaffold)から両方向(白色の矢印)に流体を排出させて、高密度化コラーゲンスキャフォールド(Densified Collagen Scaffold)を作出することを示す。
図3】左側(図3A)は、配合物3を使用して圧縮脱水によって調製した代表的なプロトタイプコラーゲンスキャフォールド(直径6.3cm)の写真を示す。右側(図3B)は、配合物4を使用して圧縮脱水によって調製した代表的なプロトタイプコラーゲンスキャフォールド(直径6.3cm)の写真を示す。
図4A図4Aは、コラーゲンスキャフォールドの弾性率を示す。図中、「Collagen Content」は「コラーゲン含有量」と、「Elastic Modulus」は「弾性率」、と訳す。
図4B図4Bは、コラーゲンスキャフォールドのUTSを示す。図中、「Collagen Content」は「コラーゲン含有量」と訳す。
図4C図4Cは、コラーゲン含有量の関数としての破壊歪みを示す。図中、「Collagen Content」は「コラーゲン含有量」と、「Failure Strain」は「破壊歪み」、と訳す。
図5図5は、500mgの総コラーゲン含有量で調製し、真空プレス、続いて90℃での脱水熱(DHT)により処理したプロトタイプコラーゲンスキャフォールド(直径6.3cm)の画像を示す。コラーゲンスキャフォールドは、リン酸緩衝生理食塩水中で再水和させた。
図6図6は、グルタルアルデヒド(GTA)処理の非存在および存在下での配合物(Formula)3および4のコラーゲンスキャフォールド、ならびにグルタルアルデヒド処理心膜(PC GTA)を含む、ラットにおける皮下移植前の材料の写真を示す。
図7図7は、グルタルアルデヒド(GTA)処理の非存在および存在下での配合物(Formula)3および4のコラーゲンスキャフォールド、ならびにグルタルアルデヒド処理心膜(PC GTA)を含む、ラットにおける皮下移植60日後の材料外植片の写真を示す。
図8】上側(図8A)および下側(8B)は、ラットにおける皮下移植60日後の材料外植片の肉眼観察を介して決定した通りの組織反応(Tissue Reaction)および組織統合についての半定量的スコア(平均±SD;n=10)の概要を示す。図8Aは、3.5mg/mlオリゴマーコラーゲンから調製した非圧縮試料(厚さ14mm)についての結果を示し、図8Bは、6mm/分での圧縮後に得られたコラーゲンシート(厚さ2mmおよびおよそ24.5mg/ml)についての結果を示す。図中、「Tissue Reaction Score」は「組織反応スコア」と、「Formula」は「配合物」と、「Material Implant」は「材料移植」、および「Tissue Integration Score」は「組織統合スコア」と、訳す。
図9図9は、皮膚外植片ならびにグルタルアルデヒド(GTA)処理の非存在および存在下での関連するコラーゲンスキャフォールド(配合物(Formula)3)の組織学的断面(ヘマトキシリンエオシン染色)の低(上側)および高(下側)倍率画像を示す。
図10図10は、皮膚外植片ならびにグルタルアルデヒド(GTA)処理の非存在および存在下での関連するコラーゲンスキャフォールド(配合物(Formula)4)の組織学的断面(ヘマトキシリンエオシン染色)の低(上側)および高(下側)倍率画像を示す。
図11図11は、皮膚外植片および関連するグルタルアルデヒド処理心膜(PC GTA)の組織学的断面(ヘマトキシリンエオシン染色)の低(上側)および高(下側)倍率画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本明細書に記載される材料および医療用移植組織は、水和形態または水和することができる乾燥した(desiccated)(乾燥)形態で調製されうる人工コラーゲンスキャフォールドを含む。いずれも、損傷したまたは機能不全の組織、例えば、心膜、皮膚、気道組織、体壁および腫瘍除去後の組織再構築などの外科的修復、再生、回復または再構築のため、ならびに高度な再生組織置換物(例えば、心臓弁、例えば、大動脈弁および肺動脈弁、ならびに血管移植組織)の製造のために使用できる。本明細書に記載されるコラーゲンスキャフォールドは、移植後インビボにおいて存続し、炎症または異物反応を誘発することなく組織を継続的に回復させ、それらの物理的完全性を維持し、宿主組織の統合、細胞化および部位に応じた組織再生を誘発する。種々の実施形態では、本明細書に記載されるコラーゲンスキャフォールドは、種々の天然に存在する高強度組織および従来のコラーゲンベースの材料と同様の物理的および機械的特性を有する、高強度の薄いシート様材料または種々の形状の高強度の薄い材料フォーマットを含む。
【0075】
「回復させる」、「再生する」、「置換する」および「修復する」という用語は、組織を参照して使用される場合、それぞれ、以前に組織の空隙または欠陥によって特徴付けられた患者の領域における組織存在の再設(reestablishment)およびこの同じ領域における組織の再成長を指す。一部の実施形態では、回復および/または再生および/または修復された組織は、置換されている元々の組織の外見、構造および機能のうちの1つまたは複数を反映しうる。
【0076】
一態様では、本明細書に記載される発明は、約0.005mm~約3mmの厚さおよび高強度(例えば、約0.5MPa~約200MPaの高弾性率)を有する人工コラーゲンスキャフォールドに関する。一実施形態では、人工コラーゲンスキャフォールドは、非崩壊性および/または非拡大性でありうる。別の態様では、これらのコラーゲンスキャフォールドを使用する方法が提供される。
【0077】
種々の態様では、人工コラーゲンスキャフォールドは、約0.005mm~約3mm、約0.01mm~約2.0mm、約0.01mm~約1.0mm、約0.01mm~約0.25mm、約0.1mm~約1.0mm、約0.5mm~約1.0mm、または約0.15mm~約0.25mmの厚さを有しうる。他の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドは、約18MPa~約200MPa、約20MPa~約180MPa、約40MPa~約120MPa、約60MPa~約100MPa、または約80MPa~約180MPaの弾性率を有しうる。他の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドは、約0.5MPa~約20MPa、約1MPa~約25MPa、約0.2MPa~約20MPa、約5MPa~約15MPa、または約2MPa~約20MPaの極限引張強さを有しうる。他の例示的な実施形態では、人工コラーゲンスキャフォールドは、約5%~約70%、または約10%~約40%の破壊歪みを有しうる。他の態様では、人工コラーゲンスキャフォールドは、約2N~約8N、約0.2N~約2N、または約0.1N~約4Nの縫合糸保持ピーク荷重を有しうる。
【0078】
別の実施形態では、非崩壊性および/または非拡大性人工コラーゲンスキャフォールドが提供される。コラーゲンスキャフォールドは、約0.005mm~約3mmの厚さおよび約0.5MPa~約200MPaの弾性率を有する。本明細書で使用される場合、「非崩壊性」という用語は、コラーゲンスキャフォールドが、脱水状態から水和状態に遷移した場合に、厚さおよび他の幾何学的特性を維持することを意味する。本明細書で使用される場合、「非拡大性」という用語は、材料が、凍結乾燥または再水和される場合に、拡大または膨張しないことを意味する。したがって、例示的な一実施形態では、本明細書に記載されるコラーゲンスキャフォールドは、コラーゲンスキャフォールドが凍結乾燥され、再水和される場合に崩壊しない。一態様では、コラーゲンスキャフォールドは、その高弾性率に起因して非崩壊性および/または非拡大性であり、これは、一部には、親水(保水)特性と共にコラーゲンスキャフォールドのフィブリル密度によって決定される。
【0079】
さらに別の実施形態では、患者を処置して、損傷したまたは機能不全の組織を再生する、回復させるまたは置換する方法が提供される。方法は、本明細書に記載される人工コラーゲンスキャフォールドのいずれかを含む医療用移植組織を患者に移植することを含む。本明細書で使用される場合、「医療用移植組織」は、患者に投与される、本明細書に記載されるコラーゲン材料のいずれかを意味する。
【0080】
さらなる実施形態はまた、以下に列挙される項目によっても記載される。本明細書に記載される実施形態のすべてについて、実施形態の任意の適用可能な組合せが企図される。下記の実施形態の任意の適用可能な組合せは、本発明に従うと考えられる。下記の実施形態の、本特許出願の背景および概要の節、例示的な実施形態の詳細な説明の節、実施例の節、または特許請求の範囲に記載される実施形態との任意の組合せは、本発明の一部であると考えられる。
【0081】
1.非崩壊性および/または非拡大性の人工コラーゲンスキャフォールドであって、約0.005mm~約3mmの厚さ、および約0.5MPa~約200MPaの弾性率を有する、人工コラーゲンスキャフォールド。
【0082】
2.コラーゲンスキャフォールドが凍結乾燥および再水和される場合に崩壊しない、項目1に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0083】
3.約0.01mm~約2.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0084】
4.約0.01mm~約1.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0085】
5.約0.01mm~約0.25mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0086】
6.約0.1mm~約1.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0087】
7.約0.5mm~約1.0mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0088】
8.約0.15mm~約0.25mmの厚さを有する、項目1から2のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0089】
9.約18MPa~約200MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0090】
10.約20MPa~約180MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0091】
11.約40MPa~約120MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0092】
12.約60MPa~約100MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0093】
13.約80MPa~約180MPaの弾性率を有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0094】
14.約0.5MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0095】
15.約1MPa~約25MPaの極限引張強さを有する、項目1から8のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0096】
16.約0.2MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、項目1から15のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0097】
17.約5MPa~約15MPaの極限引張強さを有する、項目1から15のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0098】
18.約2MPa~約20MPaの極限引張強さを有する、項目1から15のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0099】
19.約5%~約70%の破壊歪みを有する、項目1から18のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0100】
20.約10%~約40%の破壊歪みを有する、項目1から18のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0101】
21.約2N~約8Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、項目1から20のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0102】
22.約0.2N~約2Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、項目1から20のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0103】
23.約0.1N~約4Nの縫合糸保持ピーク荷重を有する、項目1から20のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0104】
24.人工コラーゲンスキャフォールドが組成物中にあり、組成物が、流体をさらに含む、項目1から23のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0105】
25.存在する流体のパーセンテージが、約5%~約99%である、項目24に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0106】
26.組成物が、組成物を凍結乾燥すること、組成物を真空プレスすること、もしくは脱水熱処理、またはこれらの組合せによって乾燥される、項目24または25のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0107】
27.コラーゲンがI型コラーゲンである、項目1から26のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0108】
28.コラーゲンが精製されたI型コラーゲンである、項目1から27のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0109】
29.医療用移植組織である、項目1から28のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0110】
30.人工コラーゲンスキャフォールドが医療用移植組織であり、医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の組織の再生、回復または置換のために使用される、項目1から29のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0111】
31.心膜、心臓弁、皮膚、血管、気道組織、体壁および腫瘍除去後に再構築された組織から選択される組織の再生または置換または回復のための医療用移植組織である、項目30に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0112】
32.最終滅菌されるか、または無菌で調製される、項目1から31のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0113】
33.グルタルアルデヒドによる処理、ガンマ線照射、電子線照射またはエチレンオキシド処理から選択されるプロセスによって最終滅菌される、項目32に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0114】
34.コラーゲンが、オリゴマーコラーゲン、モノマーコラーゲン、テロコラーゲンもしくはアテロコラーゲン、またはこれらの組合せを含む、項目1から33のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0115】
35.所定の形状に圧縮された、項目1から34のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0116】
36.形状が球である、項目35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0117】
37.形状が管である、項目35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0118】
38.形状がシートである、項目35に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0119】
39.圧縮が拘束圧縮である、項目35から38のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0120】
40.コラーゲン濃度が、約50~約1000/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0121】
41.コラーゲン濃度が、約50~約900mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0122】
42.コラーゲン濃度が、約50~約800mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0123】
43.コラーゲン濃度が、約50~約700mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0124】
44.コラーゲン濃度が、約50~約600mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0125】
45.コラーゲン濃度が、約50~約500mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0126】
46.コラーゲン濃度が、約50~約400mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0127】
47.コラーゲン濃度が、約50~約300mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0128】
48.コラーゲン濃度が、約50~約200mg/cmである、項目1から39のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0129】
49.患者に移植された場合、炎症または異物反応を誘発しない、項目1から48のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0130】
50.コラーゲンが、ブタコラーゲン、ヒトコラーゲンおよびウシコラーゲンから選択される、項目1から49のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0131】
51.コラーゲンが合成コラーゲンである、項目1から49のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0132】
52.コラーゲンが未変性コラーゲンである、項目1から50のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0133】
53.コラーゲンが組換えコラーゲンである、項目1から49のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0134】
54.細胞をさらに含む、項目1から53のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0135】
55.細胞が幹細胞である、項目54に記載の人工コラーゲンスキャフォールド。
【0136】
56.患者を処置して、損傷したまたは機能不全の組織を再生する、回復させるまたは置換する方法であって、項目1から55のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールドを含む医療用移植組織を患者に移植することを含む、方法。
【0137】
57.医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の心膜の再生、回復または置換のためである、項目56に記載の方法。
【0138】
58.医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の心臓弁の再生、回復または置換のためである、項目56に記載の方法。
【0139】
59.医療用移植組織が、損傷したまたは機能不全の皮膚の再生、回復または置換のためである、項目56に記載の方法。
【0140】
60.弁組織が、大動脈弁組織または肺動脈弁組織である、項目59に記載の方法。
【0141】
61.人工コラーゲンスキャフォールドが、外因性架橋されている、項目1から55のいずれか1つに記載の人工コラーゲンスキャフォールドまたは項目56から60のいずれか1つに記載の方法。
【0142】
62.人工コラーゲンスキャフォールドが、グルタルアルデヒドと架橋している、項目61に記載の人工コラーゲンスキャフォールドまたは方法。
【0143】
本明細書に記載される場合、「人工コラーゲンスキャフォールド」または「コラーゲンスキャフォールド」は、エクスビボで、または患者の身体への移植時に合成されて、コラーゲンフィブリル含有スキャフォールドまたは他のコラーゲン構造もしくは材料を形成することができるコラーゲン組成物を指してもよい。一実施形態では、重合は、制御条件下で起こりえ、制御条件は、これらに限定されないが、pH、リン酸濃度、温度、緩衝液組成、イオン強度、ならびに細胞外マトリックス成分(例えば、コラーゲン分子、および非コラーゲンECM成分が含まれる場合、非コラーゲン分子)の組成および濃度を含む。「人工コラーゲンスキャフォールド」は、非天然コラーゲンスキャフォールドであるか、または別の非天然コラーゲン構造もしくは材料である。
【0144】
一実施形態では、本開示の人工コラーゲンスキャフォールドは、圧縮技術を使用して作製される。本明細書で使用される場合、「圧縮された」という用語は、コラーゲンスキャフォールド組成物に力が加えられた場合のサイズの低減または密度の増加を指す。例えば、圧縮は、例えばこれらに限定されないが、拘束圧縮、可変圧縮、物理圧縮、遠心、超遠心、蒸発または吸引などの力を加える種々の方法を通して実現できる。
【0145】
一実施形態では、圧縮は可変圧縮である。本明細書で使用される場合、「可変圧縮」という語句は、非線形的で力を加えることによるコラーゲンの圧縮を指す。
【0146】
さらに別の実施形態では、圧縮は物理圧縮である。本明細書で使用される場合、「物理圧縮」という語句は、物理的手段によって力を加えることによるコラーゲンの圧縮を指す。圧縮が物理圧縮である実施形態について、物理圧縮は、調節可能な型およびプラテンを含むチャンバーで実施されうる(例えば、図1を参照されたい)。典型的には、コラーゲンは、型に挿入され、次いで、圧縮に供されうる。
【0147】
さらに、種々の実施形態では、物理圧縮は、型内での多孔質プラテンの配置に依存して変動しうる。例えば、型は、多孔質ポリエチレンが、プラテンの一部としておよび/または試料型の壁もしくは底部に沿って配置されるように調節可能でありうる。一部の実施形態では、圧縮は、少なくとも一方向からの物理力である。他の実施形態では、圧縮は、2つ以上の方向からの物理力である。さらに他の実施形態では、圧縮は、3つ以上の方向からの物理力である。一部の実施形態では、圧縮は、4つ以上の方向からの物理力である。
【0148】
他の実施形態では、圧縮は遠心である。他の実施形態では、圧縮は超遠心である。さらに他の実施形態では、圧縮は蒸発である。一部の実施形態では、圧縮は吸引である。ある特定の実施形態では、吸引は真空吸引である。
【0149】
本開示の一部の実施形態では、コラーゲンは組織から可溶化される。例えば、コラーゲンは、例えば、各々その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第11/435,635号(公開番号2007-0269476 A1として2007年11月22日に公開)および第11/903,326号(公開番号2008-0268052として2008年10月30日に公開)に記載される通り、酸可溶化コラーゲン、ならびに制御されたアセンブリー動力学(例えば、重合半減期)の範囲の三次元コラーゲンスキャフォールド、分子組成、およびフィブリル微細構造-機械的特性を得るように制御される所定の重合条件を利用することによって調製できる。他の実施形態では、コラーゲンは、重合性コラーゲンである。さらに別の実施形態では、コラーゲンはI型コラーゲンである。さらに別の実施形態では、コラーゲンは精製されたI型コラーゲンである。
【0150】
一部の実施形態では、人工コラーゲンスキャフォールドは医療用移植組織である。他の実施形態では、人工コラーゲンスキャフォールドは、再生組織置換を製作するために使用できる。他の実施形態では、人工コラーゲンスキャフォールドは、インビトロにおいて使用されてもよい。例えば、本開示の人工コラーゲンスキャフォールドのインビトロにおける使用は、細胞組織培養、創薬および薬物毒性試験などの研究目的に利用されてもよい。
【0151】
一部の実施形態では、コラーゲンは非天然コラーゲンである。本明細書で使用される場合、「非天然コラーゲン」という語句は、供給源組織から取り出されたコラーゲンを指す。一実施形態では、供給源組織から取り出された非天然コラーゲンは、未変性コラーゲンでありうる。一態様では、非天然コラーゲンは、組織供給源から可溶化されてもよい。他の実施形態では、コラーゲンは合成コラーゲンである。さらに他の実施形態では、コラーゲンは組換えコラーゲンである。
【0152】
一態様では、非天然コラーゲンまたはコラーゲン成分は、本明細書に記載されるコラーゲンスキャフォールドを構築するために使用でき、例えば、ブタの皮膚、ヒトの皮膚またはウシの皮膚を含むいくつかの供給源から得ることができる。コラーゲンまたはコラーゲン成分を単離して本明細書に記載されるコラーゲンスキャフォールドを作製するためのコラーゲン含有供給源材料として有用な好適な組織は、温血脊椎動物の粘膜下組織または任意の他の細胞外マトリックス含有組織である。粘膜下組織を調製する好適な方法は、各々参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,902,508号、第5,281,422号および第5,275,826号に記載されている。別の実施形態では、粘膜下組織以外の細胞外マトリックス材料含有組織を使用して、本明細書に記載される方法に従うコラーゲンおよびスキャフォールドを得てもよい。精製されたコラーゲンまたは部分的に精製された細胞外マトリックス成分を得るのに使用するための他の細胞外マトリックス材料由来組織を調製する方法は、当業者に公知である。例えば、各々参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,163,955号(心膜組織);第5,554,389号(膀胱粘膜下組織);第6,099,567号(胃粘膜下組織);第6,576,265号(細胞外マトリックス組織全般);第6,793,939号(肝基底膜組織);および米国特許出願公開第US-2005-0019419-A1号(肝基底膜組織);および国際公開第WO2001/45765号(細胞外マトリックス組織全般)を参照されたい。種々の他の実施形態では、コラーゲン含有供給原材料は、胎盤組織、卵巣組織、子宮組織、動物の尾の組織および皮膚組織からなる群から選択できる。一部の実施形態では、コラーゲンは、ブタコラーゲン、ウシコラーゲンおよびヒトコラーゲンからなる群から選択される。任意の好適な細胞外マトリックス含有組織は、精製されたコラーゲンを単離する、または部分的に精製された細胞外マトリックス成分を単離するためのコラーゲン含有供給源材料として使用できる。
【0153】
精製されたコラーゲンまたは部分的に精製された細胞外マトリックス成分の供給源として粘膜下組織を調製するための例示的な調製方法は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,902,508号に記載されている。一実施形態では、例えば、他の種を除外しないが、好ましくは、ブタ、ヒツジまたはウシ種から収穫した脊椎動物腸の部分を、縦方向の拭取り動作を使用する削磨に供して、細胞を除去するか、または細胞除去を、低張もしくは高張溶解によって実現する。一実施形態では、粘膜下組織は、低張条件下、例えば、低張条件下の水または生理食塩水を用いてすすがれ、殺菌されてもよい。別の例示的な実施形態では、そのような組成物は、粘膜の管腔部分および外筋肉層を機械的に除去すること、ならびに/または常在細胞を低張もしくは高張洗浄液、例えば、水もしくは生理食塩水で溶解することによって調製できる。これらの実施形態では、粘膜下組織は、精製されたコラーゲンまたは部分的に精製された細胞外マトリックス成分の単離前に、水和または脱水状態で保存されうる。種々の態様では、粘膜下組織は、温血脊椎動物の筋層および粘膜の少なくとも管腔部分の両方から剥離された粘膜下層を含む任意の剥離実施形態を含みうる。
【0154】
一部の実施形態では、コラーゲンはオリゴマーコラーゲンである。従来のモノマーコラーゲン調製、すなわち、テロコラーゲンおよびアテロコラーゲンとは異なり、オリゴマーは、天然に存在する分子間架橋によって一緒に保持されたインタクトなカルボキシおよびアミノ末端テロペプチドを有する全長三重らせんコラーゲン分子(すなわち、トロポコラーゲン)の小さな凝集体を示しうる。カルボキシおよびアミノ末端テロペプチド領域、ならびに関連する分子間架橋を含むこれらの分子特徴の保持により、この生体ポリマーおよびコラーゲン材料がもたらされ、それは、望ましいが一般的ではない特性を有して形成する。より詳細には、オリゴマーは、そのフィブリル形成(自己アセンブリー)能を保持し、これは、線維状コラーゲンタンパク質に固有である。オリゴマーコラーゲンの存在は、アセンブリー率を増加させることによって、および異なるフィブリル微細構造および増加した機械的完全性(例えば、剛性)を有するコラーゲン組成物を生じることによって自己アセンブリー潜在力を高めうる。一部の実施形態では、コラーゲンはオリゴマーコラーゲンを含む。他の実施形態では、コラーゲンはオリゴマーコラーゲンから本質的になる。さらに他の実施形態では、コラーゲンはオリゴマーコラーゲンからなる。
【0155】
一部の実施形態では、コラーゲンはモノマーコラーゲンである。一部の実施形態では、コラーゲンはアテロコラーゲンである。本明細書で使用される場合「アテロコラーゲン」という用語は、インビトロにおいてペプシンまたは別の好適なプロテアーゼもしくは薬剤で処理され、分子間架橋部位を含有するテロペプチド領域を排除するもしくは実質的に減少させるコラーゲンを指す。他の実施形態では、モノマーコラーゲンはテロコラーゲンである。本明細書で使用される場合、「テロコラーゲン」という用語は、そのテロペプチド末端を保持する酸可溶化コラーゲンを指す。
【0156】
ある特定の実施形態では、コラーゲンは、オリゴマーコラーゲンおよびアテロコラーゲンを含む。他の実施形態では、コラーゲンは、オリゴマーコラーゲン、モノマーコラーゲンおよびアテロコラーゲンを含む。オリゴマーコラーゲン、モノマーコラーゲンおよび/またはアテロコラーゲンの量は、剛性、強度、流体および物質移行、タンパク質分解または人工コラーゲンスキャフォールドの適合性を有利に最大にするように、コラーゲンスキャフォールド組成物中に配合されてもよい。
【0157】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、人工コラーゲンスキャフォールドは、所定のパーセンテージのコラーゲンオリゴマーを有しうる。種々の実施形態では、所定のパーセンテージのコラーゲンオリゴマーは、約0.5%~約100%、約30%~約100%、約40%~約100%、約50%~約100%、約60%~約100%、約70%~約100%、約80%~約100%、約90%~約100%、約95%~約100%または約100%でありうる。さらに別の実施形態では、コラーゲンオリゴマーは、コラーゲンオリゴマーが豊富なコラーゲン含有供給源材料(例えば、ブタの皮膚)から得られる。
【0158】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、人工コラーゲンスキャフォールドは、平均ポリマー分子量(AMW)によって定量化されるオリゴマー含有量を有しうる。本明細書に記載される通り、AMWの調整は、コラーゲンスキャフォールドの重合動力学、フィブリル微細構造、分子特性およびフィブリル構造、例えば、フィブリル間分枝、孔径および機械的完全性(例えば、スキャフォールド剛性)に影響しうる。別の実施形態では、平均ポリマー分子量によって定量化された精製されたコラーゲンのオリゴマー含有量は、スキャフォールド剛性と正に相関する。
【0159】
一部の実施形態では、コラーゲンは熱可逆性コラーゲンである。本明細書で使用される場合、「熱可逆性コラーゲン」は、4℃~37℃の間の温度調整または可逆的なマトリックス-溶液遷移を引き起こす任意の他の温度間の温度調整に応答して、溶液およびマトリックス相の間を可逆的に遷移しうるコラーゲンを意味する。
【0160】
一部の実施形態では、コラーゲンは還元コラーゲンである。本明細書で使用される場合、「還元コラーゲン」は、反応性アルデヒドを排除または実質的に減少させるために、インビトロにおいて還元されるコラーゲンを意味する。例えば、コラーゲンは、コラーゲンを還元剤(例えば、水素化ホウ素ナトリウム)で処理することによって、インビトロにおいて還元されてもよい。
【0161】
一部の実施形態では、コラーゲンはオリゴマー260コラーゲンである。本明細書で使用される場合、「オリゴマー260コラーゲン」は、オリゴマーの単離をもたらす手順によって(例えば、ブタの皮膚から)作製されたコラーゲン調製物であり、コラーゲン調製物は、分子量260において顕著なバンドを有し、バンドは、対応するモノマー調製物においては顕著でないかまたは不足している。バンドの存在は、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって決定できる。オリゴマー260コラーゲンは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第13/192,276号(公開番号2012-0027732 A1として2012年2月2日に公開)にさらに記載される。
【0162】
他の例示的な実施形態では、本明細書に記載される人工コラーゲンスキャフォールドは、例えば、架橋剤、例えば、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、アルデヒド、リジルオキシダーゼ(lysl-oxidase)、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジドおよびマレイミドなど、またはこれらの組合せを使用して架橋されてもよい。一態様では、架橋剤は、人工コラーゲンスキャフォールドにおけるコラーゲンの重合前、重合中または重合後に添加されうる。
【0163】
本開示の種々の人工コラーゲンスキャフォールドの実施形態中に存在するコラーゲンの濃度は、様々でありうる。一部の実施形態では、コラーゲンは、約50~約1000mg/cm、約50~約900mg/cm、約50~約800mg/cm、約50~約700mg/cm、約50~約600mg/cm、約50~約500mg/cm、約50~約400mg/cm、約50~約300mg/cm、約50~約200mg/cm、約100~約1000mg/cm、約100~約900mg/cm、約100~約800mg/cm、約100~約700mg/cm、約100~約600mg/cm、約100~約500mg/cm、約100~約400mg/cm、約100~約300mg/cm、約100~約200mg/cm、約200~約1000mg/cm、約200~約900mg/cm、約200~約800mg/cm、約200~約700mg/cm、約200~約600mg/cm、約200~約500mg/cm、約200~約400mg/cm、約200~約300mg/cm、約300~約1000mg/cm、約300~約900mg/cm、約300~約800mg/cm、約300~約700mg/cm、約300~約600mg/cm、約300~約500mg/cm、約300~約400mg/cm、約400~約1000mg/cm、約400~約900mg/cm、約400~約800mg/cm、約400~約700mg/cm、約400~約600mg/cm、約400~約500mg/cm、約500~約1000mg/cm、約500~約900mg/cm、約500~約800mg/cm、約500~約700mg/cm、約500~約600mg/cm、約50~約2000mg/cm、または約50~約1500mg/cmの濃度で人工コラーゲンスキャフォールド中に存在する。
【0164】
他の実施形態では、コラーゲンは、コラーゲンを重合させてコラーゲンスキャフォールドを作製するのに使用される出発組成物中に、約1mg/ml~約50mg/ml、約1mg/ml~約40mg/ml、約1mg/ml~約30mg/ml、約1mg/ml~約20mg/ml、約1mg/ml~約15mg/ml、約1mg/ml~約12mg/ml、約1mg/ml~約10mg/ml、約1mg/ml~約9mg/ml、約1mg/ml~約8mg/ml、約1mg/ml~約7mg/ml、約1mg/ml~約6mg/ml、約1mg/ml~約5mg/ml、約1mg/ml~約4mg/ml、または約1mg/ml~約3mg/mlで存在しうる。
【0165】
一部の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドはポリマーをさらに含む。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、個々の化学部分からなる分子を指し、これは同じであっても異なっていてもよいが、好ましくは同じであり、一緒に結合している。本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、末端同士が結合して直鎖状分子を形成する個々の化学部分、ならびに分枝(例えば、「マルチアーム」または「星形状」)構造の形態で一緒に結合した個々の化学部分を指す。他の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドはコポリマーをさらに含む。本明細書で使用される場合、「コポリマー」という用語は、2種のモノマー種の共重合によって得られうるコポリマー、3種のモノマー種から得られうるもの(「三元重合体」)、4種のモノマー種から得られうるもの(「四元重合体」)などを含む2種以上のモノマー種に由来するポリマーを指す。
【0166】
本開示の種々の実施形態では、本明細書に記載される通りのコラーゲンスキャフォールドは、特定の物理特性を得るための制御条件下で重合されうる。例えば、コラーゲンスキャフォールドは、所望のコラーゲンフィブリル密度、孔径(フィブリル-フィブリル分枝)、弾性率、引張歪み、引張応力、線形弾性率(modulus)、圧縮弾性率、極限引張強さ、破壊歪み、縫合糸保持ピーク荷重、損失弾性率、フィブリル面積分率、フィブリル体積分率、コラーゲン濃度、細胞播種密度、せん断貯蔵弾性率[G’または弾性(固体様)挙動]、および位相角デルタ[δまたは流体(粘性)から固体(弾性)様挙動の測定;δは、フック固体についての0およびニュートン流体についての90に等しい]を有してもよい。
【0167】
本明細書で使用される場合、「弾性率」は、弾性率または線形弾性率(従来の機械的試験プロトコルを使用して得られた応力-歪み曲線の線形領域の傾斜によって定義される;すなわち、剛性)、圧縮弾性率、損失弾性率またはせん断貯蔵弾性率(例えば、貯蔵弾性率)でありうる。これらの用語は、当業者に周知である。
【0168】
本明細書で使用される場合、「フィブリル体積分率」(すなわち、フィブリル密度)は、三次元におけるフィブリルが占める総面積のパーセント面積として定義される。
【0169】
本明細書で使用される場合、引張または圧縮応力「σ」は、単位面積当たりに生じる力であり、式:
【0170】
【数1】
(式中、σ=応力、P=力、およびA=断面積)
によって表される。
【0171】
力(P)は、材料の断面に垂直な[すなわち、直角な]応力を生じる(例えば、応力が材料を長くする傾向がある場合、引張応力と呼ばれ、応力が材料を短くする傾向がある場合、圧縮応力と呼ばれる)。
【0172】
本明細書で使用される場合、「歪み」は、機械的応力の結果としての材料への変形である機械的歪みを指す。歪みは、変位を基準長さで割った比として通常定義される。本明細書で使用される場合、「引張歪み」は、張力に供される材料の伸長である。
【0173】
本明細書に記載される任意の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドのフィブリル体積分率は、約1%~約60%でありうる。種々の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドは、特定の特徴、例えば、約2%~約90%、約2%~約80%、約2%~約70%、約2%~約60%、約2%~約50%、約2%~約40%、約5%~約60%、約15%~約60%、約2%~約30%、約5%~約30%、約15%~約30%、約20%~約30%、約5%~約90%、約15%~約90%、約2%~約80%、約5%~約80%、約15%~約80%、または約20%~約80%のフィブリル体積分率(すなわち、密度)を有するフィブリルを含有しうる。
【0174】
本明細書に記載される例示的な実施形態のいずれかでは、コラーゲンスキャフォールドは、これらに限定されないが、約18MPa~約200MPa、約20MPa~約200MPa、約20MPa~約180MPa、約20MPa~約170MPa、約20MPa~約160MPa、約20MPa~約150MPa、約20MPa~約140MPa、約20MPa~約130MPa、約20MPa~約120MPa、約20MPa~約110MPa、約20MPa~約100MPa、約20MPa~約90MPa、約20MPa~約80MPa、約20MPa~約70MPa、約20MPa~約60MPa、約20MPa~約50MPa、約20MPa~約40MPa、約20MPa~約30MPa、または約20MPa~約25MPaの弾性率(例えば、圧縮弾性率、損失弾性率、弾性率または貯蔵弾性率)を含む特定の特徴を有するフィブリルを含有しうる。他の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドは、約0.5MPa~約200MPa、約0.5MPa~約190MPa、約0.5MPa~約180MPa、約0.5MPa~約170MPa、約0.5MPa~約160MPa、約0.5MPa~約150MPa、約0.5MPa~約140MPa、約0.5MPa~約130MPa、約0.5MPa~約120MPa、約0.5MPa~約110MPa、約0.5MPa~約105MPa、約0.5MPa~約100MPa、約0.5MPa~約90MPa、約0.5MPa~約80MPa、約0.5MPa~約70MPa、約0.5MPa~約60MPa、約0.5MPa~約50MPa、約0.5MPa~約40MPa、約0.5MPa~約30MPa、約0.5MPa~約20MPa、約0.5MPa~約10MPa、約0.5MPa~約5MPa、約0.5MPa~約1MPaの弾性率を有しうる。
【0175】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、コラーゲン組成物は、これらに限定されないが、約0°~約12°、約0°~約5°、約1°~約5°、約4°~約12°、約5°~約7°、約8°~約10°、および約5°~約10°の位相角デルタ(δ)を含む特定の特徴を有するフィブリルを含有しうる。
【0176】
種々の態様では、人工コラーゲンスキャフォールドは、約0.005~約3mm、約0.005~約2mm、約0.005~約1mm、約0.005~約0.5mm、約0.01mm~約3.0mm、約0.01mm~約2.0mm、約0.01mm~約1.0mm、約0.01mm~約0.5mm、約0.01mm~約0.25mm、約0.1mm~約1.0mm、約0.5mm~約1.0mm、約0.15mm~約0.25mm、約0.02mm~約0.2mm、約0.02mm~約0.15mm、または約0.02mm~約0.1mmの厚さを有しうる。
【0177】
他の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドは、約0.5MPa~約20MPa、約1MPa~約25MPa、約0.2MPa~約20MPa、約5MPa~約15MPa、約2MPa~約20MPa、約1MPa~約20、約1MPa~約15MPa、約1MPa~約10MPa、約1MPa~約5MPa、約1MPa~約4MPa、約1MPa~約3MPa、約1MPa~約2MPa、約0.5MPa~約25MPa、約0.5MPa~約20、約0.5MPa~約15MPa、約0.5MPa~約10MPa、約0.5MPa~約5MPa、約0.5MPa~約4MPa、約0.5MPa~約3MPa、約0.5MPa~約2MPa、または約0.5MPa~約1MPaの極限引張強さを有しうる。
【0178】
他の例示的な実施形態では、人工コラーゲンスキャフォールドは、約5%~約70%、約5%~約60%、約5%~約50%、約5%~約40%、約5%~約30%、約5%~約20%、約5%~約10%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、または約10%~約20%の破壊歪みを有しうる。
【0179】
他の態様では、人工コラーゲンスキャフォールドは、約2N~約8N、約0.2N~約2N、または約0.1N~約4N、約2N~約7N、約2N~約6N、約2N~約5N、約2N~約4N、約2N~約3N、約0.1N~約8N、約0.1N~約7N、約0.1N~約6N、約0.1N~約5N、約0.1N~約4N、約0.1N~約3N、約0.1N~約2N、約0.1N~約1N、約0.2N~約8N、約0.2N~約7N、約0.2N~約6N、約0.2N~約5N、約0.2N~約4N、約0.2N~約3N、約0.2N~約2N、約0.2N~約1N、または約0.2N~約0.5Nの縫合糸保持ピーク荷重を有しうる。
【0180】
本明細書に記載される実施形態のすべてでは、「約 ~」「~約」は、範囲の両端で参照される数を含む。例えば、「約20%~約80%」は、20%および80%を含み、「約20MPa~約200MPa」は、20および200MPaを含むなど。本明細書で使用される場合、例えば、整数、分率およびパーセンテージを含む数値を参照する「約」は、一般に、当業者が列挙された値と等価である(例えば、同じ機能または結果を有する)と考えるであろう数値の範囲(例えば、述べられた値の+/-5%~10%)を指す。
【0181】
本明細書に記載される例示的な実施形態のいずれかでは、コラーゲンスキャフォールドの定性的および定量的微細構造特徴は、クライオステージ走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、共焦点顕微鏡また第二高調波発生多光子顕微鏡などによって決定できる。別の実施形態では、引張、圧縮および粘弾特性は、流動測定または引張試験によって決定できる。これらの方法はすべて当技術分野で公知であるか、または米国特許出願第11/435,635号(公開番号2007-0269476 A1として2007年11月22日に公開)、米国特許出願第11/914,606号(公開番号2009-0011021 A1として2009年1月8日に公開)、米国特許出願第12/300,951号(公開番号2009-0175922 A1として2009年7月9日に公開)、米国特許出願第13/192,276号(公開番号2012-0027732 A1として2012年2月2日に公開)、米国特許出願第13/383,796号(公開番号2012-0115222 A1として2012年5月10日公開)にさらに記載されているか、または参照により本明細書に組み込まれる、Roeder et al., J. Biomech. Eng., vol. 124, pp. 214-222 (2002);Pizzo et al., J. Appl. Physiol., vol. 98, pp. 1-13 (2004);Fulzele et al., Eur. J. Pharm. Sci., vol. 20, pp. 53-61 (2003);Griffey et al., J. Biomed. Mater. Res., vol. 58, pp. 10-15 (2001);Hunt et al., Am. J. Surg., vol. 114, pp. 302-307 (1967);およびSchilling et al., Surgery, vol. 46, pp. 702-710 (1959)に記載されている。
【0182】
種々の実施形態では、コラーゲンスキャフォールド組成物は細胞をさらに含む。当業者の知識内での任意の細胞型を、本開示のコラーゲンスキャフォールド組成物と共に使用できる。一部の実施形態では、細胞は幹細胞である。本明細書で使用される場合、「幹細胞」は、自己複製または自己再生が可能であり、種々の分化細胞型(すなわち、分化能)に発達できる、胚、胎児または成人由来の未分化細胞を指す。本明細書で使用される場合、この用語は、さらに指定されない限り、寡能性細胞(少数の細胞型、例えば、リンパまたは骨髄系に分化できる細胞)、および単能性細胞(1つの細胞型のみに分化できる細胞)を包含する。一部の実施形態では、造血幹細胞は、当業者に周知の方法によって、例えば、骨髄、循環血または臍帯血から単離されてもよい。細胞マーカーは、造血幹細胞を選択および精製するために使用できる。例えば、好適なマーカーは、Lin-、Sca1+およびc-Kit+マウス、またはLin-、CD34+およびc-Kit+ヒト造血幹細胞マーカーである。一実施形態では、細胞マーカーは、本明細書に記載される組成物および方法における使用のための所望の細胞型を選択および精製するために、単独でまたは組み合わせて使用してもよい。一態様では、コラーゲンスキャフォールド組成物は、処置される患者から単離された自家細胞を播種されうる。代替的な実施形態では、細胞は、性質が異種または同種であってもよい。
【0183】
本明細書に記載される実施形態のいずれかでは、細胞は、コラーゲンスキャフォールド組成物に、約1×10~約1×10個の細胞/mlの細胞密度、または約1×10~約2×10個の細胞/mlの密度で播種される。一実施形態では、細胞は、5×10個の細胞/ml未満の密度で播種される。別の実施形態では、細胞は、1×10個の細胞/ml未満の密度で播種される。別の実施形態では、細胞は、約1×10~約5×10、約0.3×10~約60×10個の細胞/ml、および約0.5×10~約50×10個の細胞/mlの範囲から選択される密度で播種される。細胞は、本明細書に記載される方法、または細胞培養の当業者に周知の方法に従って、維持、増殖または分化される。
【0184】
本明細書に記載される種々の実施形態のいずれかでは、本発明の人工コラーゲンスキャフォールド組成物は、重合前、重合中または重合後、造血幹細胞培養、またはラミニンおよびフィブロネクチン、ヒアルロン酸、または血小板由来成長因子もしくはトランスフォーミング増殖因子ベータなどの成長因子、およびデキサメタゾンなどのグルココルチコイドなどの他の細胞型の培養を促進するミネラル、アミノ酸、糖、ペプチド、タンパク質、ビタミン(例えば、アスコルビン酸)または糖タンパク質を含む栄養物と組み合わせられうる。他の例示的な実施形態では、グリセロール、グルコースまたはポリヒドロキシル化化合物などの原線維形成阻害剤は、重合前または重合中に添加されうる。一実施形態によると、細胞は、コラーゲンの重合前の最後の工程としてまたは重合後に、コラーゲンスキャフォールドおよび他の細胞外マトリックス成分に添加されうる。他の例示的な実施形態では、例えば、カルボジイミド、アルデヒド、リジルオキシダーゼ、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、イミドエステル、ヒドラジドおよびマレイミドなどの架橋剤が、コラーゲン重合前、コラーゲン重合中またはコラーゲン重合後に添加されうる。さらに別の実施形態では、人工コラーゲンスキャフォールド組成物は、緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、塩酸(例えば、0.01N)およびグルコースなどの成分を含みうる。一態様では、グルコースは、細胞が含まれる場合に添加されうる。別の実施形態では、天然コラーゲンマトリックス中に通常存在するECMの非コラーゲン成分は、存在しない。
【0185】
ある特定の実施形態では、コラーゲンスキャフォールド組成物は、流体をさらに含む。一部の流体は、圧縮に応じてコラーゲンスキャフォールド組成物から除去されるが、ある量の流体が、圧縮されたコラーゲンスキャフォールド組成物中に保持される。一部の実施形態では、存在する流体のパーセンテージは、約25%~約99%、約5%~約99%、約5%~約95%、約5%~約90%、約5%~約80%、約5%~約70%、約5%~約60%、約5%~約50%、約5%~約40%、または約5%~約30%、約10%~約99%、約10%~約90%、約10%~約80%、約10%~約70%、約10%~約60%、約10%~約50%、約10%~約40%、約10%~約30%、または約10%~約20%である。一部の実施形態では、存在する流体のパーセンテージは、約20%~約99%、約30%~約99%、約40%~約99%、約45%~約99%、約50%~約99%、約60%~約99%、約70%~約99%、または約80%~約99%である。一部の実施形態では、存在する流体のパーセンテージは、約50%~約80%である。一部の実施形態では、存在する流体のパーセンテージは、約60%~約70%である。
【0186】
種々の実施形態では、コラーゲンスキャフォールド組成物は凍結乾燥される。本明細書で使用される場合、「凍結乾燥される」という用語は、典型的には、真空下でフリーズドライすることによって、組成物から水を除去することに関する。しかしながら、乾燥は、当業者に公知の任意の方法によって実施でき、方法は、真空下でのフリーズドライに限定されない。典型的には、凍結乾燥されたコラーゲンスキャフォールド組成物は、乾固まで凍結乾燥され、一実施形態では、凍結乾燥されたコラーゲンスキャフォールド組成物の水分含有量は、検出可能レベル未満である。別の実施形態では、コラーゲンスキャフォールドは、組成物を凍結乾燥すること、組成物を真空プレスすること、もしくは脱水熱処理、またはこれらの組合せによって乾燥されうる。
【0187】
本明細書で提供される別の実施形態では、患者を処置して、損傷したまたは機能不全の組織を再生する、回復させるまたは置換する方法が提供される。方法は、本明細書に記載される人工コラーゲンスキャフォールドのいずれかを含む医療用移植組織を患者に移植することを含む。種々の実施形態では、医療用移植組織は、心膜、心臓弁(heart value)、皮膚、血管、気道組織、体壁および腫瘍除去組織後に再構築された組織から選択される組織の再生または置換または回復のためでありうる。別の実施形態では、弁組織は、大動脈または肺動脈弁組織でありうる。一実施形態では、医療用移植組織(すなわち、コラーゲンスキャフォールド)は、患者に移植された場合、炎症または異物反応を誘発しない。
【0188】
一態様では、人工コラーゲンスキャフォールドは、患者への移植前に、最終滅菌されるか、または無菌で調製される。種々の実施形態では、最終滅菌方法は、グルタルアルデヒドによる処理、ガンマ線照射、電子線照射、過酢酸滅菌、酸性pHでのホルムアルデヒドタンニング、プロピレンオキシド、エチレンオキシド処理またはガスプラズマ滅菌から選択されるプロセスでありうる。コラーゲンの構造に有害に影響しない滅菌技術を使用できる。
【0189】
本明細書で提供される別の実施形態では、圧縮、例えば、拘束圧縮によって、人工コラーゲンスキャフォールドを製造する方法が提供される。本明細書に記載される人工コラーゲンスキャフォールドの実施形態のいずれかが、製造する方法によって生成されうる。一部の実施形態では、製造する方法は、コラーゲンスキャフォールド組成物を所定の形状に圧縮する前に、コラーゲンを重合させる工程を含む。ある特定の実施形態では、製造する方法は、コラーゲンスキャフォールド組成物を所定の形状に圧縮する前に、コラーゲンスキャフォールドの物理特性を調節する工程を含む。本明細書で使用される場合、「調節すること」という用語は、所望の物理特性を得るための制御条件下でのコラーゲンスキャフォールドの改変を指す。例えば、圧縮前に、コラーゲンスキャフォールドは、所望の値または量の以下の物理特性:フィブリル密度、孔径(フィブリル-フィブリル分枝)、弾性率、厚さ、引張歪み、引張応力、線形弾性率、極限引張応力、破壊歪み、縫合糸保持ピーク荷重、圧縮弾性率、損失弾性率、フィブリル面積分率、フィブリル体積分率、コラーゲン濃度、細胞播種密度、せん断貯蔵弾性率[G’または弾性(固体様)挙動]、および位相角デルタ[δまたは流体(粘性)から固体(弾性)様挙動の測定;δは、フック固体についての0およびニュートン流体についての90に等しい]のうちの1つまたは複数をもたらすように制御条件下で改変される。
【0190】
コラーゲンスキャフォールド組成物を圧縮する前に物理特性を調節する結果として、高レベルのフィブリル間会合が、圧縮前のコラーゲンスキャフォールドに誘発されうる。この工程により、最終コラーゲンスキャフォールドを作出する前に重要な機械的特性を制御することが可能になり、制御された機械的特性は、最終コラーゲンスキャフォールドの圧縮後に保持される。したがって、コラーゲンスキャフォールドの設計特徴は、所望の細胞機序をコラーゲンスキャフォールドに予測的に誘発する目的のために最適化できる。
【0191】
本明細書に記載されるコラーゲンスキャフォールドは、いくつかの異なる所定の形状に圧縮できる。一部の実施形態では、所定の形状は管である。他の実施形態では、所定の形状はシートである。さらに他の実施形態では、所定の形状は球である。一部の実施形態では、所定の形状はスラブである。他の実施形態では、所定の形状は円柱である。さらに他の実施形態では、所定の形状は円錐である。
【0192】
別の実施形態では、本明細書に記載される方法、使用、ならびにコラーゲンスキャフォールドおよびコラーゲンスキャフォールド組成物は、以下の実施例を含む。実施例は、本明細書に記載される発明の種々の実施形態の追加の特徴をさらに例示する。しかしながら、実施例は例示であり、本明細書に記載される発明の他の実施形態を限定するとは解釈されないことを理解されたい。さらに、実施例の他の変形例が、本明細書に記載される発明の種々の実施形態に含まれることを認識されたい。
【実施例
【0193】
[実施例1]
圧縮脱水による水和されたコラーゲンスキャフォールドの形成
チャンバー圧縮システム:
I型オリゴマーコラーゲンをブタの真皮から単離し、精製した。米国内に位置する、伝染病または接触伝染病がないことが証明された閉鎖群の市場体重の去勢ブタから獣皮を得た。酸可溶化コラーゲンオリゴマーを、滅菌ろ過し、純度、分子組成および重合パラメーターに基づいて品質制御した。高密度化コラーゲンスキャフォールドを、Delrinから製作した円筒形チャンバーを使用し、特別仕様の拘束圧縮手順を使用して無菌で作出した(図1)。これらのチャンバーの底面は、以下の2つの形状に合うように取外し可能であった:1)重合前および重合中に液体コラーゲンを含有するための中実底面(図1A)、ならびに2)圧縮中に底部からの制御された流体除去を促進する穴を有する多孔質底面(図1BおよびC)。コラーゲンスキャフォールドを作出するために、特定濃度および容量で液体コラーゲンを中和し、滅菌円筒形チャンバー(直径6.3cmまたは3.4cmのいずれか)に添加した(図1A)。これらのチャンバーを密封し、37℃でインキュベートして、コラーゲン重合を誘発し、間質液に取り囲まれた線維状コラーゲンのネットワークを含む複合体コラーゲンスキャフォールドの形成をもたらした。コラーゲン重合後、滅菌多孔質ポリエチレンフォームを複合体コラーゲンスキャフォールドの上面および底面に置き、チャンバーの中実底面を多孔質底面に交換した(図1B)。次いで、コラーゲンを毎秒0.05%の歪み速度で所望の厚さに圧縮し、上側面および下側面の両方から流体除去が起こった(図1C)。圧縮後、水和したコラーゲンスキャフォールドを、チャンバーから無菌で取り出し、試験前に、密封した機密滅菌容器に保存した。
【0194】
シリンジ圧縮システム:
圧縮脱水中の二方向流体除去も、改変したシリンジシステムを使用して実現できた(図2)。シリンジ(6cc Covidien Monoject、直径1.2cm)を、プランジャーを取り外し、ステンレス鋼メッシュのディスク(1”×1”当たり100×100個の開口、開口0.006”;McMaster-Carr、Douglasville、GA)をシリンジ内部の先端の直前に置くことによって改変した。シリンジのゴムプランジャーを、中心領域を切り抜き、作出した穴にステンレス鋼メッシュの別のディスクを取り付けることによって改変した。流体流を促進し、プランジャーをシリンジに挿入するときに生じる気圧を防止するために、ゴムプランジャーの端部にノッチも作出した。シリンジの先端にキャップをした後、中和コラーゲン溶液をステンレス鋼メッシュの上部でシリンジの本体に添加した(粘性コラーゲン溶液およびメッシュの小さいグリッドの間の表面張力により、流体はメッシュを通って流れることができなかった)。シリンジを密封し、37℃でインキュベートして、コラーゲンを重合させるようにした。重合後、改変したプランジャーを一片のWhatmanろ紙と共にシリンジの内部に置いて、ステンレス鋼メッシュおよび複合体コラーゲンスキャフォールドの間に緩衝材を提供した(圧縮中、スキャフォールド上にメッシュグリップの跡がつかないようにするため)。次いで、毎秒0.05%の歪み速度で所望の厚さに圧縮するためにシリンジをシリンジポンプ(モデルNE-1600、New Era Pump Systems、Farmingdale、NY)に載せた。
【0195】
[実施例2]
コラーゲンスキャフォールド厚さの定量化
コラーゲンスキャフォールド厚さおよび均一性を、Mitutoyo 547-526S高精度厚さ測定器(Aurora、IL;+/-5μm精度)を用いて決定した。中心および端部領域を含む少なくとも5回の測定(n≧5)を材料シートに沿って行い、関連する平均および標準偏差を決定した。
[実施例3]
【0196】
一軸引張試験
一軸引張試験を、それぞれ4mmおよび3mmのゲージ長および幅のドッグボーン形状の材料試料に対して周囲空気中で実施した(n≧3)。設定から完了までの機械試験の平均持続時間は、10秒未満であり、試料の脱水は観察されなかった。すべての試料を、32Hzのサンプリング率で25N荷重計に適合させたサーボ電気材料試験システム(TestResources、Shakopee、MN)を使用して、毎秒40%の歪み速度(1.6mm/分)で、破壊まで一軸張力で試験した。弾性率(ET)を、応力歪み曲線の線形領域から計算した。極限応力(σU)は試料が受けたピーク応力を表し、破壊歪み(εf)は、材料が完全破壊(total failure)を受けた歪みであった。
【0197】
[実施例3]
縫合糸保持試験
縫合糸保持試験を、2×1cmの矩形試料に対して周囲空気中で実施した。縫合糸をこれらの試料に高い再現性で置くために、縫合ガイドを使用して、2mmの縫合間隔(bite distance)で試料の長軸中心に沿って縫合糸を置いた。試料に単一の縫合糸(5-0Nylon、モノフィラメント)を通した後、試料の端部から2.5cmに縫合糸を2回の二重こま結び(double square-knots)によって留めるのを補助するためにガイドを使用した。縫合糸をその位置で結んだ後、縫合糸を機器のトップグリップに保持されたフックに巻きつけ、試料の底端部をボトムグリップに固定することによって、試料を引張試験機(引張試験に使用したものと同じ)に置いた。縫合糸を10mm/分の速度で破壊まで引き、単位ニュートン(N)の最大荷重を縫合糸保持強度として記録した。
【0198】
[実施例4]
水和したコラーゲンスキャフォールド
特別仕様のチャンバー圧縮システムを用いて調製したプロトタイプの水和したコラーゲンスキャフォールドの代表的な画像を図3に示す。表1は、種々のスキャフォールド配合物および関連する特性の概要を提供する。
【0199】
表1.圧縮脱水によって調製した種々のコラーゲンスキャフォールドの特性の概要
【表1】
【0200】
[実施例5]
コラーゲン濃度およびコラーゲンスキャフォールド設計の間の関係
特別仕様のコラーゲンスキャフォールド設計についての予測的関係を特定するために、スキャフォールドを、チャンバーまたはシリンジ圧縮脱水法のいずれかを使用して、広範囲のコラーゲン濃度(約100mg/mL~700mg/mL)にわたって製作した。弾性率、極限引張強さ(UTS)および破壊歪みを含むスキャフォールドの機械的特性を測定し、コラーゲン含有量の関数としてプロットした(図4)。
【0201】
[実施例6]
圧縮脱水によって作製したコラーゲンスキャフォールド
乾燥コラーゲンスキャフォールドを作出するために、水和した高密度化スキャフォールドを、凍結乾燥または真空プレスを使用して、脱水し乾固させた。凍結乾燥または真空プレスの前に、すべてのスキャフォールドを、水中で十分にすすいだ。凍結乾燥のために、コラーゲンスキャフォールドを、カーリングを防止するために端部をグリップしてフレームに固定した。次いで、スキャフォールドを、液体窒素によって瞬間冷凍し、終夜、凍結乾燥した。真空プレスのために、スキャフォールドを多孔質ポリエチレンフォームの2つのシートの間に置き、乾燥するまで真空下で圧縮した。一部の場合では、乾燥材料を、材料を真空下で加熱して水分子をさらに除去し、分子間架橋を作出するプロセスである脱水熱(DHT)処理にさらに供した。DHT処理のために、乾燥スキャフォールドを、特定の真空レベルおよび温度で24時間、真空オーブン中に置いた。真空を50mTorrに設定し、温度を60、90または120℃に設定した。図5は、リン酸緩衝生理食塩水中における再水和後の乾燥コラーゲンスキャフォールドの例を示す。表2は、圧縮脱水および乾燥によって調製した種々のコラーゲンスキャフォールド配合物の特性をまとめる。一般に、DHTによる処理により、スキャフォールドの機械的完全性(すなわち、弾性率、UTS)、およびスキャフォールドが再水和後に形状(すなわち、厚さ)を維持する能力が改善した。これは、とりわけ、高い総コラーゲン含有量(>500mg;>500mg/mL)を有するスキャフォールドについて顕著であった。
【0202】
表2.圧縮脱水後、凍結乾燥または真空プレスを介した乾燥によって調製した種々のコラーゲンスキャフォールドの特性の概要。真空プレスおよび凍結乾燥によって調製した乾燥スキャフォールドについての厚さ値は、それぞれ377±25μmおよび604±33μmであった。
【表2】
【0203】
[実施例7]
ラットにおけるコラーゲンスキャフォールドの生体適合性および皮下移植後の組織応答の評価
材料の生体適合性および組織応答の前臨床評価:
材料の生体適合性および組織応答を、確立されたラットの皮下移植モデルを使用して評価した。この研究は、成体雄性Sprague Dawley(Envigo、Indianapolis、Indiana)ラットを含み、すべての材料を、10回の反復で評価した。すべての動物を標準条件(例えば、25℃の温度、12時間の明/暗サイクル)下で収容し、標準のラット固形ペレット食餌および水を自由に与えた。手順の時点で、動物は272g~308gの間の体重であった。麻酔の導入後、動物の背を剃毛し、手術用スクラブで臀部から肩までよく洗い、乾燥させるようにした。長さおよそ2cmの4つの横方向への切開を、背中の両側で正中面に平行に行った。筋膜を無造作に切って、切開に対して真横に小さなポケットを形成した。試験片(円形、直径8mm)を、皮幹筋(cutaneous truncai muscle)の真下に皮下移植し、切開部位を非吸収性の縫合糸で閉じた。縫合糸を、手術の10~14日後に除去した。すべての動物を、最少で週に3回観察し、毎週計量して、それらの生理学的状態および精神状態の両方について評価した。60±2日後、動物を安楽死させ、剃毛した後、それらの背側を撮影した。次いで、背中の皮下組織を露出させ、撮影し、レントゲン撮影した。次いで、各移植部位および関連する正常組織を収集し、撮影した後、フォローアップの組織病理分析およびカルシウム分析のために半分に分けた。外植片組織を10%中性緩衝ホルマリン中に固定し、パラフィンに包埋し、切片にし、ヘマトキシリンおよびエオシンおよびvon Kossaにより染色した。すべての移植部位および関連する材料の盲検での肉眼検査を、外科的解剖/露出直後、および組織病理学分析のための調製後に行った。試験片を、下記にまとめる組織反応および組織統合のレベルに基づいて等級付けした。外植片の組織病理学分析は、盲検の病理医によって実施した。
【0204】
組織反応(外科的解剖/露出直後に評価)
0=なし
1=ごくわずか
2=軽微
3=中程度
4=広範
【0205】
組織統合(カルシウム分析のための試料調製中に評価)
0=なし
1=ごくわずか
2=軽微
3=中程度
4=広範
【0206】
結果:
グルタルアルデヒド処理なしまたはありで調製したコラーゲンスキャフォールド、特に配合物3および4(実施例1、表1に元々記載される通り)の生体適合性および組織応答を、参照材料として役立つグルタルアルデヒド処理心膜を用いて、確立された60日ラットの皮下移植モデルにおいて評価した。各群について移植前の代表的な材料の写真を図6に示し、表3は、材料および機械的特性の概要を提供する。コラーゲンスキャフォールドのグルタルアルデヒド処理は、i)弾性率およびUTSの増加、ii)縫合糸保持のわずかな増加、ならびにiii)破壊歪みの減少をもたらした。配合物3および4のコラーゲンスキャフォールドは、白色に見えたが、グルタルアルデヒドによって処理した材料は種々の濃淡の褐色であった。移植60±2日後の、関連する移植材料を含む皮膚外植片の代表的な画像を図7に提示する。組織反応(すなわち、移植に関連する線維組織)および組織統合(すなわち、材料移植および周辺の宿主組織の間の接着)の程度の差を肉眼で観察し、等級付けした結果を図8にまとめる。一般に、未処理の配合物3および4を除くすべての材料は、顕著な線維組織過成長と共に様々なレベルの異物反応を示した。組織病理学分析は、配合物3および4のスキャフォールドが、非変性コラーゲンと同様の線形に配向された線維を有する均質材料に見えることを明らかにした。これらの材料について、炎症のパターンは、総じて軽度であり、線維化応答は、一般に、軽微であり、移植組織から周辺組織へのなだらかな遷移を有した(図9および10)。グルタルアルデヒド処理したコラーゲンスキャフォールドへの炎症応答もまた軽度であった(図9および10);しかしながら、中等度の成熟線維化応答が、典型的には、移植組織の周りで観察された。他の公開された研究と一致して、グルタルアルデヒド処理した心膜は、線形配向線維を有する粗線維質材料に見え、周辺と一致して中等度の炎症応答があった(図11)。リンパ球および他の炎症細胞は、多くの場合、フィブリル間での浸潤が観察され、中等度の線維化応答が常に存在した。いずれの材料にも関連する検出可能な石灰化は存在しなかった。
【0207】
表3.確立されたラット皮下移植モデルにおける生体適合性および組織応答について評価したコラーゲンスキャフォールドおよび参照材料の特性の概要
【表3】
【0208】
コラーゲン重合
重合のための人工コラーゲンスキャフォールドの組成は、0.01N塩酸中にI型オリゴマーコラーゲンを含んでもよく、これは、下記に提示される10×緩衝液と10:1比で混合することによって中和されている。グルコースは、細胞が含まれる場合に含まれうる。希酸中のコラーゲン溶液の、この10×緩衝液との組合せは、フィブリル形成反応を誘発する。この組成物は、本明細書に記載される通り、チャンバー圧縮システムに添加でき、37℃でインキュベートして、コラーゲン重合が誘発されうる。
【0209】
(10×リン酸緩衝生理食塩水)
1.37M NaCl
0.027M KCl
0.081M NaHPO
0.015M KHPO
0.1N NaOH
55.5mMグルコース
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】