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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】腸酸素化治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 33/40 20060101AFI20230517BHJP
   A61K 31/17 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/44 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 33/32 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 33/18 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 33/26 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 33/38 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 33/24 20190101ALI20230517BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 38/42 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 33/06 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20230517BHJP
   C12N 9/08 20060101ALN20230517BHJP
【FI】
A61K33/40
A61K31/17
A61K38/44
A61P43/00 123
A61P31/04
A61P1/04
A61P1/14
A61K33/32
A61K33/18
A61K33/26
A61K33/38
A61K33/24
A61K33/00
A61K38/42
A61K33/06
A61P43/00 121
C12N1/20 Z
C12N9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560318
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-21
(86)【国際出願番号】 US2021025217
(87)【国際公開番号】W WO2021202767
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/005,121
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522387711
【氏名又は名称】ループオキシー・セラピューティクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】LPOXY THERAPEUTICS, INC
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】サットン,ラリー ディ
【テーマコード(参考)】
4B050
4B065
4C084
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4B050CC07
4B050KK02
4B050LL01
4B065AA01X
4B065AC20
4C084AA02
4C084BA44
4C084DC23
4C084DC50
4C084MA02
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084NA15
4C084ZA731
4C084ZB351
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086HA02
4C086HA04
4C086HA08
4C086HA09
4C086HA11
4C086HA16
4C086HA21
4C086HA22
4C086HA23
4C086HA24
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA10
4C086NA13
4C086NA14
4C086NA15
4C086ZA73
4C086ZB35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA27
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA14
4C206NA15
4C206ZA73
4C206ZB35
4C206ZC75
(57)【要約】
酸素化を利用して、嫌気性微生物によって引き起こされた感染症を防止および/または処置する作用物質、キットおよび方法が提供される。いくつかの実施形態による作用物質、キットおよび方法は、腸管腔において酸素化を利用して、嫌気性菌によって引き起こされた感染症を防止および/または処置する。作用物質、キットおよび方法を利用して、腸酸素化治療によって腸管腔の嫌気性菌感染症を防止および/または処置できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸管嫌気性菌感染症を処置するための固体形態の経口製剤であって、
作用物質および触媒を含み、
該作用物質が、過炭酸ナトリウムまたは過酸化カルバミドを含み、
該触媒が、カタラーゼを含み、
該カタラーゼが、該作用物質の酸素への変換速度を制御し、
対象に該作用物質を経口投与した場合、前記酸素を対象の腸管に供給して、腸管において嫌気性菌感染症を引き起こす嫌気性菌の集団の増殖を阻害し、その毒性を低減するのに十分な好気性環境を腸管において作り出し、
該経口製剤が、固体形態である、
経口製剤。
【請求項2】
固体形態が、丸剤またはカプセル剤であり、
嫌気性菌の集団が、クロストリディオイデス・ディフィシルを含み、
カタラーゼが、膜を通したカタラーゼの拡散を制御する多孔質膜にカプセル化されており、
作用物質が、500~1500mgの範囲で提供され、
カタラーゼが、10~100ベーカー単位の範囲で提供される、
請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
対象に作用物質が投与された場合、作用物質が、24時間以上にわたって、腸管の少なくとも一部に2~5%酸素を供給する、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
作用物質が、6時間以上にわたって、腸管の少なくとも一部に5~10%酸素を供給する、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
カタラーゼが、材料内に含有され、
該材料が、少なくとも大部分のカタラーゼが材料から拡散するのを防止し、
該材料が、少なくとも1種の腸消化酵素が材料中に拡散するのを防止する、
請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
材料が、材料を通した水、電解質および/または酸素の拡散をさらに可能にする、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
嫌気性菌の集団が、クロストリディオイデス・ディフィシルを含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
嫌気性菌が、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクム、クロストリジウム・バラティ、コレラ菌、大腸菌およびサルモネラ・エンテリティディスのうちの1種または複数からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
作用物質が、250~2000mgの範囲で提供される、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
カタラーゼが、10~150ベーカー単位の範囲で提供される、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
嫌気性菌によって引き起こされた腸管嫌気性菌感染症を処置するための製剤であって、対象に投与された場合、腸管に酸素を送達するか、またはそこで酸素の供給源として作用する少なくとも1種の作用物質を含み、酸素が、嫌気性菌の増殖を阻害するおよび毒性を低減することによって、腸管において、嫌気性菌感染症を処置するのに十分な好気性環境を作り出すことが可能である、製剤。
【請求項12】
作用物質の酸素への変換速度を制御する触媒をさらに含み、前記触媒が、ヨウ化物、カタラーゼ、二酸化マンガン、鉄(III)、銀、ジクロメート、またはそれらの組合せのうちの1種または複数からなる群から選択される、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
作用物質が、過炭酸ナトリウムまたは過酸化カルバミドを含む、請求項11の記載の製剤。
【請求項14】
作用物質が、酸素結合生体分子、酸素カクテル、酸素ガス泡のミクロエマルジョン、酸素ガスフォームのミクロエマルジョンまたは酸素パーフルオロカーボン溶液を含む、請求項11に記載の製剤。
【請求項15】
作用物質が、レグヘモグロビン、ヘモグロビンおよびミオグロビンのうちの1種または複数からなる群から選択される、請求項11に記載の製剤。
【請求項16】
作用物質が、酸素プロドラッグおよび酸素発生化合物のうちの1種または複数からなる群から選択される、請求項11に記載の製剤。
【請求項17】
作用物質が、酸素発生金属過酸化物塩および過酸化水素複合体のうちの1種または複数からなる群から選択される、請求項11に記載の製剤。
【請求項18】
作用物質が、過酸化カルバミド、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウムおよびエンドペルオキシドのうちの1種または複数からなる群から選択される、請求項11に記載の製剤。
【請求項19】
作用物質が、250~2000mgの範囲で提供される、請求項11に記載の製剤。
【請求項20】
カタラーゼが、10~150ベーカー単位の範囲で提供される、請求項11に記載の製剤。
【請求項21】
腸管嫌気性菌感染症を処置するための固体形態の経口製剤であって、500~1500mgの範囲の過炭酸ナトリウムまたは過酸化カルバミドのうちの少なくとも1種を含む作用物質を含み、対象に経口投与された場合、該作用物質が、対象の腸管に酸素を供給して、腸管において、嫌気性菌の集団の増殖を阻害し、毒性を低減して、腸管嫌気性菌感染症を処置するのに十分な好気性環境を作り出す、経口製剤。
【請求項22】
炎症性腸疾患症状の処置のための請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤の使用。
【請求項23】
腸管嫌気性感染症を処置するためのキットであって、請求項1から21のいずれか一項に記載の製剤の複数回用量および投与のための説明書を含む、キット。
【請求項24】
腸管の少なくとも1種の嫌気性感染症を処置する方法であって、
腸管に作用物質を送達すること、
腸管に触媒を送達すること、
を含み、
該触媒が、該作用物質の酸素への変換速度を制御し、
前記送達された酸素により腸管の少なくとも一部において好気性環境を作り出すことによって、腸管において感染症を引き起こした嫌気性菌の集団の増殖を阻害する、方法。
【請求項25】
作用物質および触媒が、固体形態の経口製剤において組み合わせられる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも大部分の触媒が、材料から拡散するのを防止する材料によってコーティングされ、該材料が、腸管に位置する少なくとも1種の消化酵素が材料中に拡散するのを防止する、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
嫌気性菌が、クロストリディオイデス・ディフィシルを含む、請求項24から26に記載の方法。
【請求項28】
嫌気性菌が、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクム、クロストリジウム・バラティ、コレラ菌、大腸菌およびサルモネラ・エンテリティディスのうちの1種または複数からなる群から選択される、請求項24から26に記載の方法。
【請求項29】
製剤が、(a)続いて起こる嫌気性腸管感染症の重症度もしくは数を低減するため、または(b)予防として嫌気性腸管感染症を防止するために使用される、前記請求項のいずれか一項に記載の製剤、キットまたは方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2020年4月3日に出願された米国特許出願第63/005,121号への優先権を主張し、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本開示は、いくつかの実施形態では、嫌気性感染症を防止および/または処置するための酸素化治療に関する。具体的には、特定の実施形態は、腸[腸管(intestinal)]嫌気性感染症を防止および処置するための腸酸素化治療(enteric aerobization therapy)に関するが、他の組織部位も処置されうる。
【発明の概要】
【0003】
いくつかの実施形態では、嫌気性菌感染症の防止および/または処置のための製剤が提供される。作用部位は、腸管または他の組織でありうる。一実施形態では、製剤は、患者の標的部位(例えば、消化管、例えば腸管)において酸素を送達するおよび/またはそこである量の酸素の供給源として作用する作用物質を含むかまたはから本質的になり、この量の酸素は、標的部位において好気性環境を作り出す、および/または標的部位の嫌気性腸環境を、嫌気性菌感染症の増殖を阻害する、毒性を低減するもしくはその両方に十分な好気性環境に変換することが可能である。1、2種またはそれ以上の作用物質を、順次または同時に使用してもよい。製剤は、経口送達に適合されうる。経口製剤は、いくつかの実施形態では、固体形態(丸剤、例えば、錠剤およびカプレット剤、カプセル剤など)である。丸剤は、丸、長円、楕円、ディスク形状または投与(例えば、経口)に好適な他の形状であってもよい。カプセルは、ゲル、固体および/または液体成分を含みうる。一実施形態では、固体製剤は、酸素送達に特に効率的である。
【0004】
作用物質、例えば、有効医薬成分(API)は、酸素担体分子および/または酸素含有混合物を含むかまたはから本質的になっていてもよい。酸素担体分子および/または酸素含有混合物としては、例えば、酸素結合生体分子、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたはパーフルオロカーボン(例えば、酸素パーフルオロカーボン溶液)が挙げられる。作用物質は、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物を含むかまたはから本質的になってもよい。酸素プロドラッグまたは酸素発生剤としては、例えば、酸素発生金属過酸化物塩、過酸化水素複合体(例えば、過酸化水素付加物または過酸化物含有有機分子を含む)が挙げられる。
【0005】
本明細書に記載される製剤は、いくつかの実施形態では、少なくとも、(i)24時間以上にわたって2~5%酸素(気相)、または(ii)6時間以上にわたって5~10%酸素(気相)の酸素濃度および/または酸素の量を提供する。一実施形態では、酸素は、1~24時間、またはそれよりも長く標的部位において少なくとも20%増加する。製剤は、毎日または1週間に数回投与することによって予防的に使用されてもよい。IBDなどの状態は、IBD症状を悪化させる嫌気性微生物の増殖を処置(または防止)することによって、本明細書に記載される製剤によって大幅に改善されうる。
【0006】
いくつかの実施形態では、触媒も提供される。いくつかの実施形態では、触媒がカプセル化されるかまたはその他の拡散を制御もしくは調節するため手段内に含有された製剤が提供される。APIもまた、カプセル化されるかまたはその他の拡散を制御もしくは調節するための手段内に含有されうる。そのような手段としては、例えば、材料または材料の層、例えば、膜、コーティングまたは他の材料が挙げられる。一実施形態では、材料は、水に対して透過性であるが、1種または複数の溶質に対して不透過性である。例えば、材料は、水に対して透過性であるが、分子量>250、500、1000、1500ダルトンまたはそれよりも高い溶質に対して不透過性である。一実施形態では、触媒(例えば、カタラーゼ)またはAPIのいずれかは、カプセル化またはコーティングされる。別の実施形態では、その両方が、カプセル化またはコーティングされる(例えば、個々に)。
【0007】
一実施形態では、拡散を制御または調節するための手段は(例えば、本明細書に記載される材料)は、(i)材料を通して水、電解質、特定の溶質および/または酸素の拡散を可能にする、(ii)すべて、実質的にすべてまたは大部分のカタラーゼ(または他の作用物質)が材料から拡散するのを防止する、ならびに(iii)すべて、実質的にすべてまたは大部分の消化酵素が材料中に拡散するのを防止する。一部の実施形態では、作用物質は、酸素担体分子および/または酸素含有混合物を含むかまたはから本質的になる。一実施形態では、そのような触媒(例えば、カタラーゼ)または他の作用物質(例えば、API)は、透析または浸透膜でコーティングされたカプセル剤または錠剤内に配合される。一実施形態では、膜の孔径は、水、電解質、特定の溶質および酸素のような小分子が膜を通して拡散するのを可能にするのに十分なサイズであるが、カタラーゼがカプセル剤または錠剤から拡散するのを防止し、また消化酵素がカプセル剤または錠剤中に拡散するのを防止するのに十分小さい。一実施形態では、孔径は、1ナノメートル~100マイクロメートル(例えば、10~250ナノメートル、100~500ナノメートル、500~1000ナノメートル、1~100マイクロメート、およびそれらの重複する範囲)、または1キロダルトン~100キロダルトン(例えば、1~10kD、10~50kD、50~100kD、およびそれらの重複する範囲)の範囲である。一実施形態では、約1000ダルトン未満(例えば、10~100ダルトン、100~500ダルトン、250~750ダルトン、500~1000ダルトン、およびそれらの重複する範囲)が使用される。コーティング、膜または他の材料の層が使用されてもよく、例えば、機能孔径は、層化に起因して実孔径よりも小さい。一部の実施形態では、材料は、ポリマー(例えば、セルロース化合物)を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの感染症(例えば、腸管嫌気性菌感染症)の防止、処置またはその両方のための製剤であって、対象に投与された場合、標的部位(例えば、消化管、例えば腸管)に酸素を送達するおよび/またはそこである量の酸素の供給源として作用する少なくとも1種の作用物質を含み、この量の酸素は、標的部位において好気性環境を作り出す、および/または標的部位の嫌気性腸環境を、嫌気性菌感染症の増殖を阻害する、毒性を低減するもしくはその両方に十分な好気性環境に変換することが可能である、製剤が提供される。作用物質は、酸素担体分子および/または酸素含有混合物を含むかまたはから本質的になってもよい。酸素担体分子および/または酸素含有混合物は、酸素結合生体分子、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたは酸素パーフルオロカーボン溶液を含むかまたはから本質的になっていてもよい。酸素結合生体分子は、のレグヘモグロビン、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビンのうちの1、2種またはすべてを含むかまたはから本質的になってもよい。一部の実施形態では、製剤は、本明細書に記載される作用物質の限局化を促進、安定性を増加および/または分解を低減する1種または複数の追加の成分をさらに含む。製剤は、GRASと記載されうる。
【0009】
いくつかの実施形態では、作用物質は、酸素プロドラッグもしくは酸素発生化合物、またはその両方を含むかまたはから本質的になる。酸素プロドラッグまたは酸素発生剤は、酸素発生金属過酸化物塩または過酸化水素複合体を含むかまたはから本質的になってもよい。酸素発生金属過酸化物塩または過酸化水素複合体は、過酸化カルバミド、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウムしくはエンドペルオキシド、またはそれらの組合せを含むかまたはから本質的になってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、製剤は、API(例えば、過酸化物含有プロドラッグ)の酸素への変換速度を制御する触媒を含むかまたはから本質的になる。触媒は、ヨウ化物、カタラーゼ、二酸化マンガン、鉄(III)、銀もしくはジクロメート、またはそれらの組合せを含むかまたはから本質的になってもよい。任意選択の触媒は、APIと同じ製剤において、または別々に投与されてもよい。いくつかの実施形態では、製剤は、用量当たり約100~3000mg(例えば、100~500mg、250~2000mg、500~1000mg、500~1500mg、750~1000mg、800~1200mg、1000~2000mg、およびそれらの重複する範囲)のAPIを、約5~1000ベーカー単位(Baker unit)(例えば、5~25ベーカー単位、10~100ベーカー単位、10~150ベーカー単位、25~50ベーカー単位、50~150ベーカー単位、150~300ベーカー単位、300~500ベーカー単位、250~750ベーカー単位、500~1000ベーカー単位、およびそれらの重複する範囲)の任意選択の触媒と共に含む。製剤は、1日1回、1日2~6回、または必要に応じて提供されてもよい。一実施形態では、APIは、過炭酸ナトリウムおよび過酸化カルバミドのうちの少なくとも1種を含み、触媒は、カタラーゼを含む。API対触媒の比(例えば、重量による)は、一部の実施形態では、約1:1、1:2、1:3、1:4、4:1、3:1または2:1である。一実施形態では、API:触媒比は、5:1~30:1(例えば、5/10/15/20/25/30:1)である。製剤はまた、不活性成分、例えば、アカシアゴム、米粉、セルロース、ステアレート(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、ゼラチン、カーボネート(例えば、炭酸カルシウム)、ならびに他の種々の結合剤、賦形剤、安定化剤およびpHバランサーのうちの1種または複数を含んでもよい。製剤は、丸剤、例えば、錠剤およびカプレット剤、カプセル剤など、ならびに同様のものとして提供されてもよい。用量(例えば、経口用量、重量による)中の不活性成分のパーセンテージは、約25~75%である。経口製剤または栄養補助剤(supplement)は、嚥下性のためにより小さいサイズの丸剤(および同様のもの)に分割されてもよい[例えば、用量または1回分の量(serving size)は、部分的または全体的に固体形態であってもよい2、3つまたはそれよりも多いより小さい丸剤、例えば、錠剤およびカプレット剤、カプセル剤などでありうる]。製剤は、一部の実施形態では、経口送達のための固体形態、例えば、錠剤、カプレット剤、カプセル剤などであり、これは、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよい。あるいは、ゲルおよび液体経口製剤が使用されてもよい。非経口経路を介した投与も、一部の実施形態において提供される。
【0011】
本明細書においてまた、少なくとも1種の嫌気性感染症(例えば、腸管または他の領域の)の防止、処置またはその両方のためのキットであって、本明細書に記載される製剤および使用説明書を含む、キットも提供される。
【0012】
標的部位の少なくとも1種の感染症(腸などの消化管の嫌気性感染症)の防止、処置またはその両方の方法が、いくつかの実施形態において提供される。一実施形態では、方法は、本明細書に記載される製剤の治療有効量を、それを必要とする対象(例えば、患者)に投与(例えば、経口)することと、ある量の酸素を腸管(または身体の他の部位)に送達することとを含むかまたはから本質的になり、前記量の酸素は、(i)標的部位において好気性環境を作り出す、および/または(ii)標的部位の嫌気性腸環境を、嫌気性菌感染症の増殖を阻害する、毒性を低減するもしくはその両方を行うことが可能な好気性環境に変換するのに十分な量で提供される。投与方法は、数時間、数日間、数週間、数か月間またはそれよりも長く提供されてもよい。対象は、製剤を、毎日1~6回、少なくとも3、7、10または14日間、経口摂取するように指導されうる。対象は、製剤を、予防として1日1~3回、数週間、数か月間またはそれよりも長く、経口摂取するように指導されうる。経口送達のための固体製剤、例えば丸剤およびカプセル剤が、いくつかの実施形態において提供される。
【0013】
腸管(または身体の他の部位)の嫌気性感染症は、クロストリディオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile)感染症および/または食物性感染症によって引き起こされうる。食物性感染症は、クロストリジウム・パーフリンジェンス(Clostridium perfringens)、クロストリジウム・ボツリヌム(Clostridium botulinum)、クロストリジウム・ブチリクム(Clostridium butyricum)およびクロストリジウム・バラティ(Clostridium baratii)によって引き起こされたボツリヌス中毒、コレラ菌(Vibrio cholera)によって引き起こされたコレラ、下痢原性大腸菌(Escherichia coli)感染症、ならびにサルモネラ・エンテリティディス(Salmonella enteritidis)のうちの1種または複数からなる群から選択される細菌によって引き起こされうる。
【0014】
本明細書に記載される製剤、キットおよび方法は、炎症性腸疾患(IBD)の処置および/またはIBDの悪化に対する予防のために使用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、酸素プロドラッグからの触媒による酵素放出を介した酸素の送達のための製剤の非限定的な一実施形態の図形表現である。
図2図2は、腸溶コーティングが溶解した後の標的部位(例えば、腸管)におけるカプセル剤または錠剤を示す、図1の実施形態の図形表現である。
図3図3は、制御放出コーティングが溶解し始め、酸素および水に効率的に変換される過酸化水素を放出するカプセル剤または錠剤を示す、図1の実施形態の図形表現である。
図4図4は、クロストリディオイデス・ディフィシル感染症のマウスモデルの研究設計の非限定的な一実施形態を示す。
図5図5は、図4に示される実験プロトコルの結果を示し、3つの処置群:対称処置(ビヒクル)、抗生物質であるバンコマイシン(Vanc)、および腸酸素化治療(EAT)の生存パーセントを示す。
図6図6は、臨床観察尺度の非限定的な一実施形態を示す。
図7図7は、図4に示される実験プロトコルの結果を示し、各群[EAT、ビヒクル(窒素)、バンコマイシン]における、接種後1週目(0~7日目)および接種後2週目(8~14日目)の間に、図6に示される観察尺度に従う少なくとも1つの臨床観察を示した動物数を示す。
図8図8は、図4に示される実験プロトコルの結果を示し、3つの処置群:対照(窒素)、バンコマイシン(Vanc)およびEAT(酸素)の各々についての日毎基準での少なくとも1つの臨床所見を有する動物数を示す。
図9図9は、図4に示される実験プロトコルの結果を示し、3つの処置群:対照(窒素)、バンコマイシン(Vanc)およびEAT(酸素)の各々についての合計臨床スコアを示す。
図10図10は、図4に示される実験プロトコルの結果を示し、3つの処置群:対照(窒素)、バンコマイシン(Vanc)およびEAT(LPOXY)の各々についての日毎の体重変化の記録を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示のいくつかの実施形態は、嫌気性感染症を処置し、既存の治療の特定の不利益を克服する優れた解決法を提供する。
【0017】
腸管腔は、主に嫌気性環境である。その酸素含有量は、食物摂取中に飲み込まれる空気はどれくらいか、その空気のうち腸に輸送されるのは、おくびとしての排出、腸内好気性菌および通性嫌気性菌による酸素消費、ならびに潜在的に腸絨毛を介した最小限の吸収に対してどれくらいかの関数であり、複雑で可変である。しかしながら、腸内嫌気性菌は低酸素分圧の短時間の噴出に耐えることを強いられることがあるものの、腸管腔は、主に、それらの増殖に最適な嫌気性環境である。
【0018】
この嫌気性環境は、毒性の嫌気性病原体の増殖を支持するだけでなく、種々の他の方法を介してそれらの毒性を強化しうる。これらの病原体が抗生物質耐性に進化することに加えて、一部の抗生物質の機能は、嫌気性条件下では損なわれる。低酸素は、腸管の炎症を誘発すると考えられる。嫌気性条件は毒性因子の病原体発現を誘発し、侵襲性の感染症への障壁として作用する宿主上皮細胞の間のタイトジャンクションを損傷する。嫌気性菌は、宿主の防衛機構を減少させうる。
【0019】
本明細書で開示される場合、腸腔(bowel lumen)の酸素化は、嫌気性感染症および遠位の腸の低酸素状態によって悪化した非感染性病気を防止および処置するために使用できる。
【0020】
本開示の一部の実施形態は、作用物質、キット、ならびに酸素化を利用して嫌気性微生物によって引き起こされた腸管における感染症を防止および/または処置する方法に関する。本開示の一部の実施形態は、組成物、キット、ならびに腸管腔を酸素化して、嫌気性菌によって引き起こされた感染症を防止および/または処置するために利用できる方法に関する。一部の実施形態では、本開示は、組成物、キット、ならびに腸の酸素化治療(EAT)によって、腸管腔の嫌気性菌感染症を防止および/または処置するために利用できる方法に関する。
【0021】
本開示のいくつかの実施形態は、既存の酸素療法の1つまたは複数の懸念を克服する。例えば、高圧酸素療法は、感染症、例えば、ガス壊疽の処置において、静菌および殺菌効果の両方を実証し、ある程度の利益が実証されている。ヘモグロビンは常圧で十分飽和するため、高圧酸素療法の一次機序は、高い酸素分圧による血漿中の溶存酸素の増加を介して、酸素送達を促進することである。開放創に対してはある程度の直接効果が存在しうるが、高圧酸素の投与は、主に、呼吸器系を介する。高圧酸素は腸内細菌の増殖に影響し、とりわけ、マウスにおいて偏性嫌気性菌の増殖を減少させることが研究によって実証されているものの、高圧酸素療法は、偏性嫌気性病原体によって引き起こされた腸管感染症に関する治療としては使用されない。腸感染症に対する効力を欠くことの他、高圧酸素療法は、他の低酸素腸疾患の処置に関して制限を有する。高圧酸素療法には高価な専用機器が必要であるため、先進諸国においてさえ、多数の患者が容易に利用可能なものではない。高圧酸素療法は、安全および毒性用量の間のマージンが狭い薬物である酸素の治療指数を減少させる。また、高圧酸素療法は、管腔内酸素濃度を急速には変化させない。一部の実施形態では、これらの問題のいくつかは、本明細書に記載される作用物質を、高圧酸素と一緒にまたはその代わりに使用することによって軽減される。
【0022】
腸酸素化治療
本開示のいくつかの実施形態では、腸酸素化治療(EAT)により、所望の位置に酸素を送達するおよび/またはそこで酸素の供給源として作用する1種または複数の作用物質(例えば、化合物など)が提供される。本明細書で使用される場合、作用物質および化合物という用語は、交換可能に使用されてもよい。一部の実施形態では、1種または複数の作用物質は、腸管の位置または消化管の他の組織部位または身体の他所に酸素を送達するおよび/またはそこで酸素の供給源として作用する。一部の実施形態では、1種または複数の作用物質は、制御方式で腸管の位置に酸素を送達するおよび/またはそこで酸素の供給源として作用して、嫌気性腸環境を、一貫しておよび/または実質的に好気性環境に変換する。これは、少なくとも2つの技術的方法を介して達成できる。一部の実施形態では、EATは、酸素担体分子および酸素含有混合物を介して達成される。一部の実施形態では、EATは、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物を介して達成される。一部の実施形態では、EATは、酸素担体分子および酸素含有混合物および酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物の組合せを介して達成される。一部の実施形態では、腸管の位置は、腸管の内腔、内壁またはその両方でありうる。一部の実施形態では、腸管は、小腸、大腸またはその両方でありうる。一部の実施形態では、腸管の位置は、上部消化管、下部消化管またはその両方でありうる。一実施形態では、消化管(GI)系の複数の位置が処置される。
【0023】
一部の実施形態では、嫌気性腸環境の好気性環境への変換は、腸内ガス組成物の測定を含む種々の方法によって測定される。一部の実施形態では、酸素濃度は、腸環境において約20%以上および/または治療利益をもたらすのに十分好気性に増加する。一部の実施形態では、少なくとも3%酸素(気相)が24時間以上にわたって実現される。いくつかの実施形態では、少なくとも3~5%、5~10%、10~25%酸素が、少なくとも12、18、24または48時間にわたって実現される。
【0024】
一部の実施形態では、標的部位(例えば、腸管)の嫌気性腸環境の好気性環境への変換は、嫌気性菌感染症の増殖を阻害するか、毒性を低減するか、またはその両方に十分である。
【0025】
一部の実施形態では、増殖の阻害および/または毒性の低減は、グルタミン酸デヒドロゲナーゼアッセイ(Cディフィシル増殖と相関する)、増殖培養、毒性アッセイ、ELISAまたは他の試験を使用して測定される。
【0026】
一部の実施形態では、標的部位(例えば、腸管)の嫌気性腸環境の好気性環境への変換の結果、増殖が閾値以下に阻害される。一部の実施形態では、標的部位(例えば、腸管)の嫌気性腸環境の好気性環境への変換の結果、毒性が閾値以下に低減される。閾値は、対象の症状の減少の関数であり、それによって確認されうる。閾値は、微生物の増殖および活性の定量的および定性的評価によって評価されうる。
【0027】
一部の実施形態では、EATは、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する1種または複数の作用物質、例えば、これらに限定されないが、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンおよびパーフルオロカーボン(例えば、パーフルオロカーボン酸素溶液)を含む酸素担体分子および酸素含有混合物を使用して達成される。
【0028】
一部の実施形態では、EATは、これらに限定されないが、過酸化水素、過酸化カルバミド、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウムおよびエンドペルオキシドを含む酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物を介して達成される。
【0029】
一部の実施形態では、本明細書において、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する1種または複数の作用物質の組合せが提供される。一部の実施形態では、組合せは、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用し、これらに限定されないが、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンおよびパーフルオロカーボンを含む酸素担体分子および酸素含有混合物からなる群から選択される1種または複数の作用物質を含む。
【0030】
一部の実施形態では、組合せは、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する1種または複数の他の作用物質を増強する、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する1種または複数の作用物質を含む。増強は、付加的または相乗的でありうる。一部の実施形態では、相乗効果はまた、本明細書に記載される作用物質および1種または複数の他の種類の抗菌薬(例えば、抗生物質)を使用することによって、実現されうる。
【0031】
一部の実施形態では、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する1種または複数の作用物質の組合せへの相乗的または持続応答が観察される。一部の実施形態では、「併用療法」は、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する各作用物質が異なる時間に投与される順次方式での、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する1種または複数の作用物質の投与、ならびに酸素を送達するおよび/もしくは酸素の供給源として作用するこれらの作用物質または酸素を送達するおよび/もしくは酸素の供給源として作用する少なくとも2種の作用物質の同時または実質的に同時方式での投与を包含することが意図される。同時投与は、例えば、対象に、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する各作用物質の固定比を有する単回剤形、例えば、溶液、丸剤(例えば、錠剤またはカプレット剤)もしくはカプセル剤、または複数の、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する各作用物質についての単回剤形を投与することによって達成できる。酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する各化合物/作用物質の順次または実質的に同時投与は、これらに限定されないが、経口経路、静脈内経路、筋肉内経路および粘膜組織を通した直接吸収を含む任意の適切な経路によって行うかまたは達成できる。1、2、3種またはそれよりも多い本明細書に記載される作用物質を含むかかる本質的になる製剤および組成物はまた、一部の実施形態では、賦形剤、局所送達のためのコーティング、持続放出(time release)成分、安定化剤、および本開示に記載される作用物質の効果を促進する(例えば、限局化を強化する、安定性を増加する、分解を低減するなど)他の生物学的に活性または不活性な成分も含む。一実施形態では、製剤は、1種または複数の活性剤および1種または複数の不活性剤を含むかまたはから本質的になる。
【0032】
一部の実施形態では、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する1種または複数の作用物質の混合物はまた、単純な混合物として、または好適な配合医薬組成物中で患者に投与できる。一部の実施形態では、併用療法は、その各々が別々に配合および投与される、酸素を送達するおよび/もしくは酸素の供給源として作用する2種以上の作用物質を投与することによって、または単一製剤中の、酸素を送達するおよび/もしくは酸素の供給源として作用する2種以上の作用物質を投与することによって、実現できる。他の組合せもまた、併用療法に包含される。例えば、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する2種の作用物質を、一緒に配合し、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する第3の化合物/作用物質を含有する別個の製剤と一緒に投与することができる。併用療法において酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する2種以上の作用物質は同時に投与できるが、必ずしもそうである必要はない。例えば、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する第1の作用物質(または酸素を送達するおよび/もしくは酸素の供給源として作用する作用物質の組合せ)の投与は、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する第2の作用物質(または酸素を送達するおよび/もしくは酸素の供給源として作用する作用物質の組合せ)の投与に数分、数時間、数日または数週間先行できる。したがって酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する2種以上の作用物質は、互いに数分以内、または互いに1、2、3、6、9、12、15、18もしくは24時間以内、または互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14日以内、または互いに2、3、4、5、6、7、8、9もしくは10週間以内に投与できる。一部の場合には、さらにより長い間隔が可能である。多くの場合、併用療法で使用される、酸素を送達するおよび/または酸素の供給源として作用する2、3、4種またはそれよりも多くの作用物質が、患者の体内に同時に存在することが望ましいが、他の場合には必ずしもそうである必要はない。一実施形態では、本明細書に記載される作用物質は、特定の脆弱な患者集団に長期間にわたって提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される作用物質による処置後の組織(腸管組織を含む)の酸素濃度は、処置前と比較して少なくとも25%、50%、75%、2×、3~5×、10×またはそれよりも高い。いくつかの実施形態では、嫌気性微生物の増殖および/または活性は、処置後数時間または数日以内に少なくとも50%減少する。GI管の処置が本明細書に記載されるが、酸素化を必要とする他の組織もまた、一部の実施形態に従って処置されうる。
【0033】
いくつかの実施形態では、製剤は、用量当たり100~3000mg(例えば、100~500mg、500~1000mg、750~1000mg、800~1200mg、1000~2000mg、およびそれらの重複する範囲)のAPIを、5~1000ベーカー単位(例えば、5~25ベーカー単位、10~100ベーカー単位、25~50ベーカー単位、50~150ベーカー単位、150~300ベーカー単位、300~750ベーカー単位、500~1000ベーカー単位、およびそれらの重複する範囲)の任意選択の触媒と共に含む。製剤は、1日1回、1日2~6回、または必要に応じて提供されてもよい。一部の実施形態では、触媒(例えば、カタラーゼ)は、100~2000mgの範囲(例えば、100~500mg、500~1000mg、500~1500mg、1000~2000mg、およびそれらの重複する範囲)で提供される。一部の実施形態では、触媒(例えば、カタラーゼ)は、2500~10000IUの範囲(例えば、2500~5000IU、5000~7500IU、7500~10000IU、およびそれらの重複する範囲)で提供される。API対触媒の比(例えば、重量による)は、一部の実施形態では、1:1、1:2、1:3、1:4、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、または2:1である。製剤はまた、不活性成分、例えば、アカシアゴム、米粉、セルロース、ステアレート(例えば、ステアリン酸マグネシウム)、ゼラチン、カーボネート(例えば、炭酸カルシウム)、ならびに他の結合剤、安定化剤、賦形剤およびpHバランサーのうちの1種または複数を含んでもよい。製剤(例えば、栄養補助剤)は、錠剤、カプセル剤、カプレット剤および同様のものとして固体形態で提供されてもよく、それらは、嚥下を容易にするために2~4つのより小さいサブ用量に分割されてもよい。一実施形態では、APIは、過炭酸ナトリウムおよび過酸化カルバミドのうちの少なくとも1種を含み、触媒は、カタラーゼを含む。
【0034】
一部の実施形態では、EATは、消化管微生物叢、腸内細菌叢または腸内フローラの増殖を制御するために使用される。一部の実施形態では、EATは、これらに限定されないが、クロストリディオイデス・ディフィシル感染症、クロストリジウム・パーフリンジェンスによって引き起こされた食物性感染症(例えば、食中毒)、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクムおよびクロストリジウム・バラティによって引き起こされたボツリヌス中毒、コレラ菌によって引き起こされたコレラ、下痢原性大腸菌感染症、サルモネラ・エンテリティディス、炎症性腸疾患、ならびに消化管に関連する他の感染症を含む嫌気性感染症および/または消化管に関連した疾患を防止および/または処置するために使用される。
【0035】
一部の実施形態では、EATは、腸の区画の嫌気性区画における感染症を防止および/または処置するために使用される。一部の実施形態では、EATは、身体の任意の嫌気性区画における感染症を防止および/または処置するために使用されうる。
【0036】
一部の実施形態では、EATは、ヒトの感染症を防止および/または処置するために使用される。一部の実施形態では、EATは、非ヒト霊長類の感染症を防止および/または処置するために使用される。一部の実施形態では、EATは、これらに限定されないが、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、家禽、鳥、飼育動物、ペット、実験動物および/または商業的に重要な動物、ならびに同様のものを含む他の動物の感染症を防止および/または処置するために使用される。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書に記載される製剤のいずれかが、1種または複数の延長放出および送達、遅延放出および送達、持続放出および送達、ならびに/または制御放出および送達製剤に配合されうる。経口製剤は、いくつかの実施形態では、固体形態(丸剤、例えば、錠剤およびカプレット剤などを含む)で提供される。丸剤は、丸、長円、楕円、ディスク形状または投与に好適な他の形状であってもよく、部分的または完全にコーティングされていても、コーティングされていなくてもよい。カプセル剤は、ゲル、固体および/または液体成分を含有しうる。一実施形態では、固体製剤は、酸素送達において特に効率的である。
【0038】
一部の実施形態では、本明細書に記載される製剤のいずれかは、1種または複数のナノ粒子製剤に配合されうる。一部の実施形態では、ナノ粒子は、1つまたは複数のナノ球体、ナノシリンダー、ナノプレート、ナノシェル、ナノロッド、ナノライス、ナノファイバー、ナノワイヤ、ナノピラミッド、ナノプリズム、ナノスター、ナノクレセント、ナノリングおよびナノアンテナでありうる。一部の実施形態では、ナノ粒子の寸法は、約1nm~約100nmの範囲でありうる。一部の実施形態では、ナノ粒子の寸法は、約100nm~約250nmの範囲でありうる。一部の実施形態では、ナノ粒子の寸法は、約20nm~約1000nmの範囲でありうる。一部の実施形態では、ナノ粒子の寸法は、約4nm~約6250nmの範囲でありうる。一部の実施形態では、ナノ粒子の寸法は、約1、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、750、1000nm、または前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の値である。一部の実施形態では、ナノ粒子内に組み込まれうる製剤の量は、ナノ粒子のサイズに依存する。したがって、ナノ粒子のサイズが大きいほど、ナノ粒子内に組み込まれうる製剤の量は多くなる。
【0039】
本明細書に記載される製剤のいずれかの投与経路は、状況に基づいて当業者によって決定されうる。いくつかの非限定的な投与経路としては、非経口、皮下、関節間(intrarticular)、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、腔内、脳内、小脳内(intracelebellar)、脳室内、結腸内、子宮頸部内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、関節滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、病巣内、ボーラス、経腟、直腸、頬側、舌下、鼻腔内または経皮を含む可能性がある。
【0040】
腸酸素化治療(EAT)の治療的使用
一部の実施形態では、EATの1種または複数の治療的使用が、本明細書に記載される組成物、キットおよび方法のいずれかに基づいて、本明細書に記載される。一部の実施形態では、EATの2つ以上の治療的使用を、本明細書に記載される組合せにおいて使用できる。一部の実施形態では、1種または複数の機序を介して酸素を送達するために使用される1種または複数の製剤が、記載される。本明細書に記載される製剤のいずれかに基づいて適用されうるEATの治療的使用のいずれかは、本明細書に記載される機序のいずれかを介して酸素を送達するために使用されうる。
【0041】
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症(CDI)
クロストリディオイデス・ディフィシル[以前はクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)]は、内生胞子形成絶対嫌気性病原体である。C.ディフィシルは、抗生物質関連下痢、偽膜性大腸炎、中毒性巨大結腸、敗血症および死亡を引き起こす院内感染の主原因である。症例は年間推定450,000例であり、そのうち半分は市中感染であり、重症入院患者の半分は年間でほぼ13,000例の死亡に至り、数十億ドルを超える医療費がかかる。
【0042】
患者は、身体内の健康なミクロビオーム(例えば、腸管の正常なミクロビオーム)を壊す広域スペクトル抗生物質により処置されている場合、CDIに罹患しやすくなる。CDIに罹患しやすくなる一般に使用される抗生物質としては、クリンダマイシン、フルオロキノロンおよびセファロスポリンが挙げられるが、CDIは、任意の抗生物質による処置の合併症として現れうる。CDIは、CDIが成功裡に処置された場合でさえ、再発することが多いため、根絶するのが困難でありうる。3種の抗生物質(メトロニダゾール、バンコマイシンおよびフィダキソマイシン)のみが、CDIを処置するために一般に使用されており、処置の成功率は比較的低い。高疾病率、死亡率、経済的負担および効果が不十分な処置選択肢のこの組合せにより、より良好な治療に対する差し迫った需要が生じている。
【0043】
多くの興味深い戦略が新規なCDI治療の探索において用いられているものの、これらの戦略は、感染症に対する処置および/または予防のための伝統的な治療戦略に分類できる:1)C.ディフィシルを直接または間接的に標的とする、例えば、毒素を標的とする、内生胞子植生を阻害する小分子;2)C.ディフィシルまたはその病因毒素を標的とする受動的または能動的な免疫療法;3)ミクロビオームのバランスを修復することを目的とする細菌学。特許審査は、1)抗C.ディフィシル小分子;2)受動的および能動的免疫療法/ワクチン接種;3)細菌学;ならびに4)特別食/栄養物;5)遺伝学/分子生物学;6)ファージセラピー;および7)抗毒性治療を含む類似の戦略を示している。
【0044】
EATは、CDIを防止および/または処置する良性で効率的な方法を提示する。有効医薬成分(API)は、常圧条件下で非常に高い治療指数を有する安全な分子である酸素である。好気性条件は、C.ディフィシルを生存のためのその代謝休止状態の胞子の状態にするC.ディフィシルの植物状態に毒性である。C.ディフィシル内生胞子は、疾患を引き起こさず、正常な大腸フローラと競合せず、大腸フローラのその相乗的な防御機能を可能にする。
【0045】
重要なこととして、C.ディフィシルが酸素への抵抗を持つようになる選択圧は存在しない。これは、C.ディフィシルが既に抵抗があるためであり、C.ディフィシルは内生胞子を形成して酸素に曝されても生存する。内生胞子形成クロストリジウムは、大酸化イベントとほぼ同時に細菌の進化系統樹から分岐した。2.3億年間、クロストリジウムは非病因内生胞子を形成することによって毒性の好気性生物圏を生存してきたため、クロストリジウムが代替の抵抗機序を進化させる可能性はほとんどない。したがって、いくつかの実施形態は、抵抗への選択傾向がないまたは低下した安全で効果的な治療を提供する。
【0046】
食物性感染症(食中毒)
CDCによると、食物性感染症は、年間4800万例の感染症、128,000例の入院および3000例の死亡を引き起こす。これらの感染症の多くは、腸管の嫌気性状態が毒性を強化する病原体によって引き起こされる。いくつかの非限定例は、下記に列挙される。
【0047】
クロストリジウム・パーフリンジェンス
クロストリジウム・パーフリンジェンスは、米国において年間推定100万例の食中毒を引き起こす内生胞子形成グラム陽性病原体である。
【0048】
疾患は、一般に自己限定的である一方、一部の実施形態では、EATは、回復を加速し、入院および死亡を防止する安全で効果的な非抗生物質手段として使用できる。
【0049】
一部の実施形態では、EATの治療的使用のいずれかは、回復を加速し、入院および死亡を防止する安全で効果的な非抗生物質手段として、本明細書に記載される機序のいずれかを介して、酸素を送達するために使用される本明細書に記載される製剤のいずれかに基づいて適用されうる。
【0050】
ボツリヌス中毒
クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクムおよびクロストリジウム・バラティは、ボツリヌス中毒を引き起こす原因物質である。これらの生物は、公知の最も致死的な毒素のうちの1種である神経毒を産生する。入院および抗毒素による処置が治療の主軸である一方、時として抗生物質が、毒素産生感染症を取り除くために投与される。しかしながら、細菌は、抗生物質への抵抗を急速に持つようになる。
【0051】
一部の実施形態では、EATは、抗生物質に対する置換および/または補助として使用されうる。一実施形態では、EATおよび抗生物質は、相乗的に働く。非限定例としては、EATは、必要な抗生物質の時間用量を減少させることがあり、これは次いで、特定の抗生物質の望ましくない副作用を低減しうる。
【0052】
一部の実施形態では、EATの治療的使用のいずれかは、抗生物質に対する置換および/または補助として、本明細書に記載される機序のいずれかを介して、酸素を送達するために使用される本明細書に記載される製剤のいずれかに基づいて適用されうる。
【0053】
コレラ
コレラは、食物経由の、通性嫌気性病原体であるコレラ菌(Vibrio cholerae)によって引き起こされる。米国においてこの疾患は稀である一方、衛生システムが不十分な発展途上国においてははるかに大きな問題である。再水和が治療の主軸であり、重度の場合には、非経口再水和が必要な場合があり、これは、医療へのアクセスが限られている発展途上諸国における多くの生体には難しいことである。コレラ菌は、酸素に耐える一方、嫌気性条件はその病原性を悪化させる。
【0054】
一部の実施形態では、EATは、抗生物質治療の効力の開始を最大にし、疾患の重症度を低下させるための入手可能な補助剤として役立ちうる。
【0055】
一部の実施形態では、本明細書に記載される製剤のいずれかに基づいて適用されうるEATの治療的使用のいずれかは、本明細書に記載される機序のいずれかを介して酸素を送達するために使用されて、抗生物質治療の効力の発現を最大にし、疾患の重症度を低下させるための入手可能な補助剤として役立てることができる。
【0056】
下痢原性大腸菌
コレラ菌のような大腸菌は、重度の食物性感染症を引き起こすものを含む多くの病原株を有する通性嫌気性菌である。
【0057】
腸感染症を引き起こす株の非限定例としては、志賀毒素産生大腸菌(STEC)[別名ベロサイトトキシン産生大腸菌(VTEC)または腸管出血性大腸菌(EHEC)]、腸内毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)、腸管凝集性大腸菌(EAEC)、腸管侵入性大腸菌(EIEC)、およびびまん付着性大腸菌(DAEC)が挙げられる。
【0058】
これらの生物によって引き起こされる腸感染症は、嫌気性菌が毒性を悪化させると考えられるため、EATから利益を受けうる。
【0059】
一部の実施形態では、EATの治療的使用のいずれかは、本明細書に記載される製剤のいずれかに基づいて適用されうる。いくつかの実施形態は、本明細書に記載される機序のいずれかを介して酸素を送達して通性嫌気性株の毒性を低くするおよび/または無毒性にするために使用されうる。
【0060】
サルモネラ
サルモネラ属は、嫌気性条件においてより毒性であり、EATから利益を受けうる病因通性嫌気性生物である。米国において、サルモネラ・エンテリティディスは、年間135万例の感染症を引き起こし、26,500例の入院および420例の死亡をもたらす罹患率と死亡率の重大な原因となる。サルモネラ・チフィ(Salmonella Typhi)およびサルモネラ・パラチフィ(Salmonella paratyphi)は、世界中で毎年最大2100万人が感染する腸チフスの原因物質である。
【0061】
一部の実施形態では、本明細書に記載される製剤のいずれかに基づいて適用されうるEATの治療的使用のいずれかは、本明細書に記載される機序のいずれかを介して酸素を送達して、これらの通性嫌気性株の毒性を低くするおよび/または無毒性にするために使用されうる。
【0062】
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎は、消化管の慢性炎症の疾患である。米国において、約160万人がIBDを罹患している。原因は未知であるが、これらの疾患は、病因学において伝染性ではないと考えられる。しかしながら、腸管の低酸素症がこれらの疾患の病原に寄与しうることを多くの証拠が支持している。
【0063】
したがって、一部の実施形態では、IBD(例えば、1つまたは複数の症状または再発)は、EATによって防止および/または処置されうる。一部の実施形態では、本明細書に記載される製剤のいずれかに基づいて適用されうるEATの治療的使用のいずれかは、本明細書に記載される機序のいずれかを介して酸素を送達して、IBDを防止および/または処置するために使用されうる。
【0064】
酸素担体
酸素結合生体分子
ヘモグロビンおよびミオグロビンは、公知の2種の最も有力な酸素運搬生体分子である。ミオグロビンは、赤肉の主構成成分の成分であり、肉から生化学的に単離されうる。動物ヘモグロビンは、生化学単離のために動物加工工場からより容易に入手可能である。生成の別の経路は、クローニングおよび発現生体工学を介して実現できた。
【0065】
ミオグロビンおよびヘモグロビンは、溶液中で酸素とよく結合する。一部の実施形態では、ミオグロビンおよび/またはヘモグロビンの製剤は、溶液の形態で患者に投与される。他のヘムタンパク質もまた、一部の実施形態において提供される。一実施形態では、レグヘモグロビンが使用される。一部の実施形態では(例えば、レグヘモグロビンを使用する)、飲料および栄養補助剤は、追加の着香料を添加される。
【0066】
一部の実施形態では、製剤は、胃酸による変性を最小にするおよび/または回避する溶液として提供される。一部の実施形態では、製剤は、所望の用量がその標的(例えば、腸管標的)に達する前の尚早な酸素の非制御放出を最小にするおよび/または回避する溶液として提供される。1、2種またはそれ以上の多くのヘムタンパク質を使用してもよい。
【0067】
一部の実施形態では、凍結乾燥製剤が提供される。一部の実施形態では、ヘムタンパク質は凍結乾燥されて、ヘムタンパク質を、例えば、経口投与された場合に胃酸から保護する製剤中に配合され、カプセル化される。一部の実施形態では、ヘムタンパク質は、費用対効果高く、凍結乾燥中に真空で酸素の損失を回避する方式で凍結乾燥される。1、2種またはそれ以上のヘムタンパク質を使用してもよい。
【0068】
ヘモグロビンおよびミオグロビンは、非常に強く酸素と結合し、ヘモグロビンは、生理学的pHにおいて酸素の良好な放出のためにミリモル濃度で必要とされる2,3-ビスホスホグリセレート(2,3DPG)の非存在下において特にそうである。一部の実施形態では、ヘモグロビン(または他のヘムタンパク質)は、2,3DPBと共に配合される。一部の実施形態では、ヘムタンパク質(例えば、ミオグロビンおよび/またはヘモグロビン)が消化されるにつれて、酸素が放出される。
【0069】
一部の実施形態では、1種または複数のヘムタンパク質は、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、1種または複数の製剤は、ヘモグロビン、ミオグロビン、レグヘモグロビンまたは他のヘムタンパク質を介して酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、1種または複数の製剤は、1、2種またはそれ以上のヘムタンパク質および少なくとも1種の消化酵素、例えば、プロテアーゼ(例えば、トリプシン、キモトリプシン、カルボキシペプチダーゼなど)の組合せを介して酸素を送達するために使用される。そのような酵素は、一実施形態によると、酸素の放出を加速するか、またはその逆に制御する。
【0070】
製剤の一部の実施形態では、ヘムタンパク質は、合併症入院患者における消化管出血の誤った兆候および/また消化管の出血の評価の妨げにならないように、排泄物中のヘムタンパク質の消化生成物が発生しないようにして配合される。
【0071】
製剤の一部の実施形態では、ヘムタンパク質は、それらが、標的部位(例えば、腸管)への送達に利用可能な強化された酸素結合能を有するように配合される。製剤の一部の実施形態では、ヘムタンパク質の強化された結合能は、治療用量の酸素、例えば、ヘムタンパク質1グラム乾燥重量当たりおよそ0.25mL~50mLの気体酸素を送達するために小用量を使用することを可能にする。製剤の一部の実施形態では、ヘムタンパク質1グラム乾燥重量当たり約0.25~2、2~5、5~10、10~25もしくは25~50mL、または前述の値のうちの任意の2つによって定義される範囲内の値の気体酸素が送達される。
【0072】
酸素カクテル
酸素カクテルは、経口投与される酸素ガス泡(フォーム)のマイクロエマルジョンである。一部の実施形態では、酸素ガス泡(フォーム)のマイクロエマルジョンを含む組成物は、EATのために使用される。
【0073】
一部の実施形態では、酸素カクテルは、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。製剤の一部の実施形態では、酸素カクテルは、おくびを介した酸素の損失を低減および/または回避するように配合される。製剤の一部の実施形態では、酸素カクテルは、それらが、包装および/または質量分布について安定ではなく、したがって、製剤を投与する人が組み合わせて酸素カクテルを形成できる別個の成分として配合または包装されるように配合される。
【0074】
パーフルオロカーボン
麻酔薬として作用しない程度の大きさのパーフルオロカーボン(PFC)は、血漿を介した酸素送達を強化することが試験された。これらの化合物は、一部の実施形態では、PFC 100mL当たり30~40mLの気体酸素の推定容量で酸素を十分溶解する。いくつかのPFC製剤は、酸素担体としてFDAおよびEMEAに認可されている。1種のPFCは、造影剤またはイメージング剤(例えば、腸管の放射線造影剤)として使用するためにFDA認可されている。これらの化合物は、製造が比較的安価であり、非常に安全であるが、それらは、一部の排泄物の漏れの原因であるという欠点を有する。これらの化合物は、経口投与のための気密パウチに配合および包装されうる。
【0075】
一部の実施形態では、パーフルオロカーボンは、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、製剤はパーフルオロカーボンを含む。一部の実施形態では、パーフルオロカーボンを含む製剤は、PFC 100mL当たり約30mL~約40mLの気体酸素の酸素容量を有する。一部の実施形態では、およそ0.25mL~50mLの気体酸素が送達される。一部の実施形態では、パーフルオロカーボンを含む製剤は、低酸素の胃におけるおくびおよびガス抜きに起因した酸素の損失が低減および/または回避され、したがって、標的部位(例えば、腸管)への酸素の制御送達をもたらすように配合される。
【0076】
酸素プロドラッグ
プロドラッグは、薬物をそれらの標的に送達する周知の戦略である。酸素発生金属過酸化物塩および過酸化水素複合体は、食品、バイオレメディエーション、美容および製薬業において周知である。しかしながら、本出願人は、本明細書で開示される目的のために効果的に酸素を送達する(例えば、経腸により)ための本明細書に記載される製剤および送達の方法を認識していない。
【0077】
一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、固体状態である。一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、液体状態である。一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、半固体状態である。一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、公知の技術を使用して、配合およびカプセル化され、胃酸によって影響を受けずに標的部位(例えば、腸管腔)において酸素を放出する。
【0078】
一部の実施形態では、本明細書に記載される作用物質(例えば、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体)は、抗生物質と共配合される。一実施形態では、共配合の代わりにまたはそれに加えて、そのような抗生物質は、本明細書に記載される作用物質の前、後または同時に投与するように指示される。抗生物質の非限定例としては、ペニシリン、例えば、フェノキシメチルペニシリン、フルクロキサシリンおよびアモキシシリン、セファロスポリン、例えば、セファクロル、セファドロキシルおよびセファレキシン、テトラサイクリン、例えば、テトラサイクリン、ドキシサイクリンおよびリメサイクリン、アミノグリコシド、例えば、ゲンタマイシンおよびトブラマイシン、マクロライド、例えば、エリスロマイシン、アジスロマイシンおよびクラリスロマイシン、クリンダマイシン、スルホンアミドおよびトリメトプリム、例えば、コトリモキサゾール、メトロニダゾールおよびチニダゾール、キノロン、例えば、シプロフロキサシン、レボフロキサシンおよびノルフロキサシン、ならびにニトロフラントインが挙げられる。
【0079】
一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、抗生物質、駆虫剤、抗真菌薬、抗マラリア薬、抗原虫薬、抗ウイルス薬、プレバイオティクスおよびプロバイオティクスのうちの1種または複数と共配合される。一実施形態では、共配合の代わりにまたはそれに加えて、そのような抗生物質は、本明細書に記載される作用物質の前、後または同時に投与するように指示される。
【0080】
例えば、クリンダマイシンは、市中感染MRSAによって引き起こされた一部の感染症を処置すること、およびマラリアを処置するためのキニーネと組み合わせることに有用なWHOの必須医薬品リストの広域スペクトル抗生物質である。致死的な大腸炎を含むC.ディフィシル関連の下痢が、任意の抗生物質による処置から生じうるが、クリンダマイシン投与は、CDIの発症とより強く関連し、FDAの枠囲み警告を有する。
【0081】
プロドラッグを含有する過酸化物の酸素への変換速度は、触媒の使用を介して制御できる。これらに限定されないが、ヨウ化物、カタラーゼ、二酸化マンガン、鉄(III)、銀、ジクロメートを含むこの反応(式1)のための多くの触媒が公知である。
【0082】
【化1】
【0083】
一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、酸素への強化された変換速度を実現するおよび/または酸素への持続した変換速度を実現するために1種または複数の触媒と共配合されうる。
【0084】
これらの反応およびそれらの酸素の放出の速度は、公知の最新技術で変更された(例えば、延長化された、または持続化された)放出方法を介して溶解度を制御することによって、さらに調節されうる。一部の実施形態では、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体は、酸素の延長放出および送達、持続放出および送達、ならびに/または制御放出および送達を可能にする1種または複数の成分と共配合され、例えば、酸素発生金属過酸化物塩および/または過酸化水素複合体はナノ粒子製剤中に配合される。
【0085】
酸素放出速度を制御することの他、触媒変換は、酸素への完全変化を確実にすることによって、全身の反応性酸素種(ROS)である過酸化水素の吸収を軽減する。したがって、いくつかの実施形態では、触媒が提供される。
【0086】
WHOの必須医薬品リストに挙げられるヨウ化カリウムは、窓口で入手可能であり、多くの様々な用途、例えば、成人で1日4回、最大600mgで投薬される去痰薬に使用される。ヨウ化カリウムはまた、偶発的な核曝露の際の甲状腺ブロック、グレーブス病における甲状腺の保護として、および皮膚/リンパスポロトリコーシスを処置するために使用される。ヨウ化物は、安全な薬物であり、腸のナトリウムヨウ素共輸送体を介して全身に吸収される。一部の実施形態では、ヨウ化物が、過酸化物含有プロドラッグの酸素への変換速度を制御するために使用される。一部の実施形態では、過酸化物の酸素への変換が完了する前のヨウ化物の吸収は、酸素の延長放出および送達、持続放出および送達、ならびに/または制御放出および送達のためにヨウ化物を配合することによって、例えば、溶解性を制御するおよび/または拡散を妨げるヒドロゲル中へのカプセル化によって、軽減される。一部の実施形態では、ヨウ化物は、酸素の延長放出および送達、持続放出および送達、ならびに/または制御放出および送達を可能にする1種または複数の成分と共配合でき、例えば、ヨウ化物がナノ粒子製剤中に配合される。
【0087】
カタラーゼは、設備の清浄後に過酸化水素を除去する、およびチーズを製造する前の乳から過酸化水素を除去するために、食品産業のために生産され、食品産業によって使用される天然酵素である。カタラーゼはまた、コンタクトレンズの清浄および消毒後に過酸化水素を除去するためにも使用される。この酵素は、高度に効率的であり、拡散速度律速である。
【0088】
一部の実施形態では、カタラーゼまたは他の触媒が、過酸化物含有プロドラッグの酸素への変換速度を制御するために使用される。一部の実施形態では、過酸化物の酸素への変換が完了する前のカタラーゼの分解は、酸素の延長放出および送達、持続放出および送達、ならびに/または制御放出および送達のためにカタラーゼを配合することによって、例えば、分解を制御するおよび/もしくは分解を妨げるヒドロゲル中へのカプセル化によって、またはカタラーゼをナノ粒子製剤中に配合することによって、軽減される。
【0089】
一部の実施形態では、過酸化物の酸素への分解が完了する前の触媒(例えば、カタラーゼ)の分解は、触媒(例えば、カタラーゼ)を、透析または浸透膜でコーティングされたカプセル剤または錠剤内に配合することによって、軽減される。この透析膜の孔径は、水、電解質、特定の溶質および酸素のような小分子が膜を通して大幅に拡散するのを可能にするのに十分なサイズであるが、カタラーゼがカプセル剤または錠剤から拡散するのを防止する一方、また消化酵素がカプセル剤または錠剤中に拡散するのを防止するのに十分小さいものである。一部の実施形態では、カタラーゼは、水、電解質、溶質および酸素が拡散することは可能であるが、大部分のカタラーゼが拡散することを防止する(一方また、消化酵素が拡散するのを防止する)膜または他のコーティング内に供給される。膜またはコーティングは、単一層または複数の層に供給されてもよく、様々な置換度の官能化酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロースのうちの1、2、3種またはそれよりも多くから作製されていてもよい。他のポリマーとしては、これらに限定されないが、セルロースアセテートアセトアセテート、クロロ酢酸セルロース、セルロースアセテートフロエートおよびジメトキシエチルセルロースアセテートが挙げられる。触媒、APIまたはその両方は、拡散を制御または調節するための手段内にカプセル化、コーティングまたは他の方法で配合されてもよい。
【0090】
二酸化マンガンは、酸素触媒に不溶性の異種過酸化物である。二酸化マンガンは、低毒性を有し、触媒濃度で安全でありうる。この触媒は消化されず、不十分なバイオアベイラビリティを有するため、魅力的な製剤候補である。触媒に加えて、二酸化マンガンは、酸素生成に対して他の有益な効果を有しうる。
【0091】
一部の実施形態では、二酸化マンガンが、過酸化物含有プロドラッグの酸素への変換速度を制御するために使用される。一部の実施形態では、二酸化マンガンは、結晶構造の混合物で提供される。一部の実施形態では、二酸化マンガン結晶構造の混合物のうちの1種または複数は、過酸化物から酸素への反応を触媒する。一部の実施形態では、二酸化マンガンの混合物は、過酸化物から酸素への反応を最も効率的に触媒する結晶構造が豊富である。
【0092】
別の異種触媒は、金属銀であり、これは、粉末形態で市販されている。銀(0)は、短時間で低濃度における低毒性を有する。
【0093】
一部の実施形態では、金属銀が、過酸化物含有プロドラッグの酸素への変換速度を制御するために使用される。製剤の一部の実施形態では、金属銀は、過酸化物から酸素への変換の触媒を実現する触媒量で配合される。
【0094】
第二鉄も同様に過酸化水素の酸素への変換を触媒する。第一鉄は、過酸化水素によって触媒活性第二鉄に酸化されるため、いずれの酸化状態も製剤に使用されうる。
【0095】
一部の実施形態では、第二鉄または第一鉄が、過酸化物含有プロドラッグの酸素への変換速度を制御するために使用される。一部の実施形態では、第二鉄イオン、第一鉄イオンまたはその両方を含む製剤は、ヒドロキシルラジカルおよび他の反応性酸素種の一過性の形成を最小にするおよび/または回避するように配合される。
【0096】
過酸化水素
1.過酸化カルバミド
過酸化カルバミド[別名、アルチゾン(artizone)、尿素過酸化水素、過酸化水素尿素、UHP、ハイパーオール(Hyperol)、ペルカルバミド]は、結晶性の白色固体過酸化水素-尿素複合体(CH)であり、耳垢除去、口腔創傷消毒剤および歯の漂白を含む局所適用のために、処方箋なしに入手可能である。過酸化カルバミドは、安価であり、容易に大量に入手可能である。このプロドラッグは、弱塩基、尿素および弱酸の過酸化水素で構成されるため、一部の実施形態では製剤は、追加の緩衝液を含まず、代わりに、腸液の固有の緩衝能に依拠する。一部の実施形態では、緩衝液が使用される。尿素は、皮膚科医薬品においては局所的に使用され、ピロリ菌(H.pylori)に関する尿素呼気試験においては経口投与される。
【0097】
尿素は、最大7mmol/Lの正常濃度でヒト血液において見出される天然生成物であり、FDAによって、低ナトリウム血症の処置のために最大60g/日の量で投与される医薬食品用途として分類される。どのような特定の理論に限定されることもなく、変換収量は、標準温度および圧力(STP)において過酸化カルバミド1グラム当たり119mL気体酸素である。
【0098】
一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素は、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、約10~100mmol/Lの血中尿素濃度を送達する。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、標準温度および圧力(STP)において、過酸化カルバミド1グラム当たり約120mLの気体酸素を供給する。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、約0.35mmol/L~約3.5mmol/Lの血中尿素濃度を送達する。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、約3.5mmol/L~約100mmol/Lの血中尿素濃度を送達する。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、約0.35mmol/L~約100mmol/Lの血中尿素濃度を送達する。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、STPにおいて、過酸化カルバミド1グラム当たり約12mL~約60mLの気体酸素を供給する。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、STPにおいて、過酸化カルバミド1グラム当たり約60mL~約120の気体酸素を供給する。一部の実施形態では、過酸化カルバミド/尿素を含む製剤は、STPにおいて、過酸化カルバミド1グラム当たり約12mL~約120の気体酸素を供給する。一部の実施形態では、尿素は、1日当たり1~25グラム(例えば、1~3、3~5、5~10グラム)の用量で提供され、1日に1回または1日に複数回提供されてもよい。
【0099】
2.過酸化カルシウム
過酸化カルシウム(CaO)は、食品産業において、小麦粉漂白剤、生地改善剤および播種前のコメ種子の処置として使用される結晶性固体である。過酸化カルシウムはまた、水産養殖の環境バイオレメディエーションにおいて酸素化剤としても使用され、生体工学における使用のために研究されている。水と接触すると、過酸化カルシウムは、酸素、水および過酸化水素に分解する。生成物の比および反応速度は、pHに大きく依存する。
【0100】
過酸化カルシウムは安価であり、工業規模で製造され、容易に入手可能である。過酸化カルシウム調製物は、典型的には、25%水酸化カルシウムを含有する。
【0101】
一部の実施形態では、過酸化カルシウム調製物を含む製剤は、最適な治療値のためおよび/またはミルクアルカリ症候群(高カルシウム血症代謝性アルカローシス)の発症の可能性を回避するために緩衝塩を配合される。一実施形態では、他の添加剤が、夾雑物としての水酸化カルシウムを減少させるために含まれてもよい。
【0102】
どのような特定の理論に限定されることもなく、1グラムの75%過酸化カルシウムは、STPにおいて117mLの気体酸素を送達できる。
【0103】
水酸化カルシウムは、これらに限定されないが、漬物製造(pickling)、ベーキング、ピータン(Chinese preserved eggs)、ホミニー(hominy)製造を含む多くの食品調製プロセスにおいて使用される。カルシウムは、WHOの必須医薬品リストに含まれる。
【0104】
一部の実施形態では、過酸化カルシウム調製物は、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、過酸化カルシウム調製物を含む製剤は、STPにおいて、75%過酸化カルシウム1グラム当たり約120mLの気体酸素を送達する。一部の実施形態では、過酸化カルシウム調製物を含む製剤は、STPにおいて、75%過酸化カルシウム1グラム当たり約12mL~約60mLの気体酸素を送達する。一部の実施形態では、過酸化カルシウム調製物を含む製剤は、STPにおいて、75%過酸化カルシウム1グラム当たり約60mL~約120mLの気体酸素を送達する。一部の実施形態では、過酸化カルシウム調製物を含む製剤は、STPにおいて、75%過酸化カルシウム1グラム当たり約12mL~約120mLの気体酸素を送達する。
【0105】
3.過酸化マグネシウム
過酸化マグネシウム(MgO)は、化学特性が過酸化カルシウムと類似している。過酸化マグネシウムは、バイオレメディエーション用途において酸素発生剤として使用される。カルシウムと同様、マグネシウムは、正常なヒトの健康に必須の天然イオンである。
【0106】
どのような特定の理論に限定されることもなく、1グラムの99%純過酸化マグネシウムは、STPにおいて199mLの気体酸素を送達することが可能である。
【0107】
一部の実施形態では、過酸化マグネシウムは、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、過酸化マグネシウムを含む製剤は、STPにおいて、99%純MgO 1グラム当たり約40mL~約1000mLの過酸化物を送達する。一部の実施形態では、過酸化マグネシウムを含む製剤は、STPにおいて、99%純MgO 1グラム当たり約40mL~約150mLの過酸化物を送達する。一部の実施形態では、過酸化マグネシウムを含む製剤は、STPにおいて、99%純MgO 1グラム当たり約150mL~約750mLの過酸化物を送達する。一部の実施形態では、過酸化マグネシウムを含む製剤は、STPにおいて、99%純MgO 1グラム当たり約650mL~約1050mLの過酸化物を送達する。
【0108】
4.過炭酸ナトリウム
どのような特定の理論に限定されることもなく、1グラムの固体過炭酸ナトリウム(NaCO・1.5H)は、STPにおいて107mLの酸素ガスを送達できる。固体過炭酸ナトリウムは、安価であり、工業規模で製造される。固体過炭酸ナトリウムは、洗濯および食器洗浄洗剤、防臭剤、防腐剤、ならびに浄水(例えば、家庭用)において使用される。いくつかの実施形態によると、過炭酸カリウムは、投薬によるナトリウム負荷を回避するべき場合に製造され、使用される。例えば、一実施形態では、過炭酸ナトリウム合成における炭酸ナトリウムを炭酸カリウムに置き換えると、過炭酸カリウムが作製される(低ナトリウムの選択肢が望ましい場合)。重炭酸塩は、ヒトの血流中の主な緩衝系であり、炭酸成分は、過剰分は二酸化炭素として肺から吐き出されるため、実に安全である。
【0109】
一部の実施形態では、過炭酸ナトリウムは、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。一部の実施形態では、製剤は、STPにおいて、固体NaCO・1.5H 1グラム当たり約10mL~約1000mLの酸素ガスを送達する。一部の実施形態では、NaCO・1.5Hを含む製剤は、STPにおいて、固体NaCO・1.5H 1グラム当たり約50mL~約200mLの酸素ガスを送達する。一部の実施形態では、NaCO・1.5Hを含む製剤は、STPにおいて、固体NaCO・1.5H 1グラム当たり約150mL~約600mLの酸素ガスを送達する。一部の実施形態では、NaCO・1.5Hを含む製剤は、STPにおいて、固体NaCO・1.5H 1グラム当たり約550mL~約1050mLの酸素ガスを送達する。
【0110】
エンドペルオキシド
エンドペルオキシドは、逆Diels-Alder反応を介して酸素を放出するビシクロ有機過酸化化合物である。
【0111】
合成経路は公知であるが、本明細書で言及される固体過酸化水素付加物よりも高価になることが避けられない。別の潜在的な欠点は、酸素放出の結果、全身に吸収され、毒性効果を生じうる芳香族化合物が生成されることである。一部の実施形態では、芳香族化合物の生成は、エンドペルオキシドを非生体利用可能なポリマー上に組み込むことによって軽減される。
【0112】
一部の実施形態では、エンドペルオキシドは、本明細書に記載されるEATの治療的使用のいずれかに関する、製剤のいずれかにおいて酸素を送達するために使用される。
【0113】
酸素投与の量およびタイミング
一部の実施形態では、EATは、標的部位、例えば、腸管または少なくともその一部に酸素を供給する。一部の実施形態では、少なくとも3%酸素(気相)が24時間以上にわたって実現される。いくつかの実施形態では、少なくとも3~5%、5~10%、10~25%酸素が、少なくとも12、18、24または48時間にわたって実現される。一実施形態では、酸素濃度は、少なくとも12時間にわたって20%以上(処置前のレベルと比較して)増加する。別の実施形態では、酸素濃度は、少なくとも6時間にわたって50%以上(処置前のレベルと比較して)増加する。予防的に、1~5%酸素(気相)が、数日間、数週間、数ケ月間またはそれよりも長く実現される。一部の実施形態では、所望の酸素レベルは、EAT化合物または本明細書で開示される作用物質の反復または連続投与によって、例えば、1日に1、2、3、4回もしくはそれよりも多い(単回もしくは複数回用量、または投与毎の1回分の量で)、および/または1、2、3、4、5、6、7日もしくはそれよりも多い日数または週にわたる投与によって実現される。一実施形態では、APIおよび/または触媒は、一般に、用量毎に各250~1500mgの用量で提供され、1日当たり複数回用量が提供されてもよい。一実施形態では、APIおよび/または触媒は、GI管の一部において12時間以上にわたって少なくとも3%酸素、望ましくない(例えば、嫌気性)微生物の毒性の低減、望ましくない(例えば、嫌気性)微生物の増殖の低減、および/またはGI管の少なくとも一部における嫌気性環境の好気性環境への変換のうちの1つまたは複数を実質的に実現する量で提供される。
【0114】
いくつかの実施形態では、カタラーゼまたは本明細書で特定される他の作用物質が材料(例えば、膜、コーティングもしくは他の材料)内にカプセル化され、または他の方法で含有される製剤が提供される。そのような材料は、一実施形態では、(i)水、電解質、特定の溶質および/または酸素の材料を通した拡散を可能にし、(ii)すべて、実質的にすべてまたは大部分(例えば、少なくとも50、60、70、80、90、95%)のカタラーゼ(または他の作用物質)が材料から拡散するのを防止し、ならびに(iii)すべて、実質的にすべてまたは大部分(例えば、少なくとも50、60、70、80、90、95%)の消化酵素が材料中に拡散することを防止する。一部の実施形態では、作用物質は、酸素担体分子および/または酸素含有混合物を含むかまたはから本質的になる。一実施形態では、材料は、拡散を制御する孔を含む。触媒、APIまたはその両方は、拡散を制御または調節するための手段内にカプセル化、コーティングまたは他の方法で配合されてもよい。
【実施例
【0115】
以下は、本明細書におけるいくつかの実施形態およびまた企図される当技術分野の範囲内の他の変形例による非限定例である。下記実施例のいずれかにおいて、好気性環境は、一部の実施形態に従って、6、12、18もしくは24時間、またはそれよりも長く維持されうる。
[実施例1]
【0116】
酸素担体
(例えば、GI管、例えば腸管の)嫌気性菌感染症に罹患している患者が特定される。感染症は、例えば、症状、徴候、臨床状況、生化学臨床アッセイおよび/または病原体の特定によって診断されうる。嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。患者は、酸素担体分子、例えば、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)および/または酸素含有混合物(例えば、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたはパーフルオロカーボン(例えば、パーフルオロカーボン酸素溶液)である少なくとも1種の化合物/作用物質を含む組成物を投与される。いくつかの実施形態では、1種または複数のパーフルオロカーボンが使用される。酸素担体分子を、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物と組み合わせて投与してもよい。化合物/作用物質は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、嫌気性菌感染症の量、増殖速度および/または毒性を阻害し、患者の状態を改善する好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。組成物の投与後、嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。組成物の投与は、嫌気性菌の増殖および/または毒性レベルが、所定の閾値未満に減少するおよび/または望ましくない症状が鎮まるまで繰り返されうる。
[実施例2]
【0117】
酸素プロドラッグ
(例えば、GI管、例えば腸管の)嫌気性菌感染症を罹患している患者が特定される。感染症は、例えば、症状、徴候、臨床状況(例えば、生化学臨床アッセイ)および/または病原体の特定によって診断されてもよい。嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。患者は、酸素プロドラッグまたは酸素発生剤(例えば、酸素発生金属過酸化物塩または過酸化水素複合体、例えば、過酸化カルバミド、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウムまたはエンドペルオキシド)である少なくとも1種の化合物/作用物質を含む組成物を投与される。酸素プロドラッグまたは酸素発生剤を、酸素担体分子と組み合わせて投与してもよい。作用物質は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、嫌気性菌感染症の量、増殖速度および/または毒性を阻害し、患者の状態を改善する好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。組成物の投与後、嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。組成物の投与は、嫌気性菌の増殖および/または毒性レベルが、所定の閾値未満に減少するおよび/または望ましくない症状が鎮まるまで繰り返されうる。
[実施例3]
【0118】
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症&酸素担体
(例えば、GI管、例えば腸管の)クロストリディオイデス・ディフィシル感染症を罹患している患者が特定される。感染症は、例えば、症状、徴候、臨床状況(例えば、生化学臨床アッセイ)および/または病原体の特定によって診断されてもよい。嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。患者は、酸素担体分子、例えば、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)および/または酸素含有混合物(例えば、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたはパーフルオロカーボン)である少なくとも1種の化合物/作用物質を含む組成物を投与される。酸素担体分子を、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物と組み合わせて投与してもよい。作用物質(例えば、化合物)は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、クロストリディオイデス・ディフィシルの量、増殖速度および/または毒性を阻害し、患者の状態を改善する好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。組成物の投与後、クロストリディオイデス・ディフィシル細菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。組成物の投与は、クロストリディオイデス・ディフィシル細菌の増殖および/または毒性レベルが、所定の閾値未満に減少するおよび/または望ましくない症状が鎮まるまで繰り返されうる。
[実施例4]
【0119】
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症および酸素プロドラッグ
(例えば、GI管、例えば腸管の)クロストリディオイデス・ディフィシル感染症を罹患している患者が特定される。感染症は、例えば、症状、徴候、臨床状況(例えば、生化学臨床アッセイ)および/または病原体の特定によって診断されてもよい。嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。患者は、酸素プロドラッグまたは酸素発生剤(例えば、酸素発生金属過酸化物塩または過酸化水素複合体、例えば、過酸化カルバミド、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過炭酸ナトリウムまたはエンドペルオキシド)である少なくとも1種の作用物質を含む組成物を投与される。酸素プロドラッグまたは酸素発生剤を、酸素担体分子と組み合わせて投与してもよい。作用物質は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、クロストリディオイデス・ディフィシルの量、増殖速度および/または毒性を阻害し、患者の状態を改善する好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。組成物の投与後、クロストリディオイデス・ディフィシル細菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。組成物の投与は、クロストリディオイデス・ディフィシル細菌の増殖および/または毒性レベルが、所定の閾値未満に減少するおよび/または望ましくない症状が鎮まるまで繰り返されうる。
[実施例5]
【0120】
食中毒および酸素担体
嫌気性菌(例えば、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクムおよびクロストリジウム・バラティによって引き起こされたボツリヌス中毒、コレラ菌によって引き起こされたコレラ、下痢原性大腸菌感染症、ならびにサルモネラ・エンテリティディス)によって引き起こされた食物性感染症(例えば、GI管、例えば腸管の)に起因する食中毒を罹患した患者が特定される。感染症は、例えば、症状、徴候、臨床状況(例えば、生化学臨床アッセイ)および/または病原体の特定によって診断されてもよい。嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。患者は、酸素担体分子、例えば、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)および/または酸素含有混合物(例えば、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたはパーフルオロカーボン)である少なくとも1種の作用物質を含む組成物を投与される。酸素担体分子を、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物と組み合わせて投与してもよい。作用物質は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、嫌気性菌の食物性感染症の量、増殖速度および/または毒性を阻害し、患者の状態を改善する好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。組成物の投与後、食物性嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。組成物の投与は、食物性嫌気性菌の増殖および/または毒性レベルが、所定の閾値未満に減少するおよび/または望ましくない症状が鎮まるまで繰り返されうる。
[実施例6]
【0121】
食中毒および酸素プロドラッグ
嫌気性菌(例えば、クロストリジウム・パーフリンジェンス、クロストリジウム・ボツリヌム、クロストリジウム・ブチリクムおよびクロストリジウム・バラティによって引き起こされるボツリヌス中毒、コレラ菌によって引き起こされるコレラ、下痢原性大腸菌感染症、ならびにサルモネラ・エンテリティディス)によって引き起こされる(例えば、GI管、例えば腸管の)食物性感染症に起因する食中毒を罹患した患者が特定される。感染症は、例えば、症状、徴候、臨床状況(例えば、生化学臨床アッセイ)および/または病原体の特定によって診断されてもよい。嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。患者は、酸素担体分子、例えば、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)および/または酸素含有混合物(例えば、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたはパーフルオロカーボン)である少なくとも1種の作用物質を含む組成物を投与される。酸素担体分子を、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物と組み合わせて投与してもよい。作用物質は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、嫌気性菌の食物性感染症の量、増殖速度および/または毒性を阻害し、患者の状態を改善する好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。組成物の投与後、食物性嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。組成物の投与は、食物性嫌気性菌の増殖および/または毒性レベルが、所定の閾値未満に減少するおよび/または望ましくない症状が鎮まるまで繰り返されうる。
[実施例7]
【0122】
炎症性腸疾患(IBD)および酸素担体
IBDを罹患している患者は、当業者によって特定される、例えば、診断される。患者は、酸素担体分子、例えば、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)および/または酸素含有混合物(例えば、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたはパーフルオロカーボン)である少なくとも1種の作用物質を含む組成物を投与される。酸素担体分子を、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物と組み合わせて投与してもよい。作用物質は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、炎症プロセスを緩和し、患者の状態の改善、例えば、再発を含むIBD症状および徴候の解決または改善をもたらす好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。毎日投与は、悪化を防止するために使用されうる。
[実施例8]
【0123】
炎症性腸疾患(IBD)および酸素プロドラッグ
IBDを罹患している患者は、当業者によって特定される、例えば、診断される。IBD患者は、状態を悪化させる(例えば、腸管の)嫌気性菌感染症を有しうる。嫌気性菌の量、増殖速度および/または毒性レベルを決定してもよい。患者は、酸素担体分子、例えば、酸素結合生体分子(例えば、ヘモグロビンおよび/またはミオグロビン)および/または酸素含有混合物(例えば、酸素カクテル、酸素ガス泡のマイクロエマルジョン、酸素ガスフォームのマイクロエマルジョンまたはパーフルオロカーボン)である少なくとも1種の作用物質を含む組成物を投与される。酸素担体分子を、酸素プロドラッグまたは酸素発生化合物と組み合わせて投与してもよい。作用物質は、患者の標的部位(例えば、腸管の内腔)において、炎症プロセスを緩和し、患者の状態の改善、例えば、IBD症状および徴候の解決または改善をもたらす好気性環境を作り出すことが可能な量で投与される。毎日投与は、悪化を防止するために使用されうる。
[実施例9]
【0124】
一定触媒濃度製剤
図1は、酸素プロドラッグからの酵素の触媒的放出を介した酸素の送達のための製剤の例を図形的に示す。図1において、太い実線は、カプセル剤または錠剤の内容物が入った腸溶コーティング浸透膜を示す。酸素プロドラッグは、APIによって示され、これは、制御放出コーティング(APIの周りの細い線)に入っている。制御放出コーティングは、APIがカタラーゼ触媒粉末と接触するのを防止することによって保存寿命を延長するためにさらに役立つ。腸溶コーティングは、カプセル剤または錠剤が腸管などの標的部位に達する前に水がカプセル剤または錠剤中に浸透することを防止する。
【0125】
図2は、一実施形態において、腸溶コーティングが溶解して、カプセル剤または錠剤の内容物が入った、ぼやけた線で示される曝露された浸透膜が残された後の、標的部位(例えば、腸管)におけるカプセル剤または錠剤を示す。浸透膜の孔径は、浸透圧に従って水が膜を通過するのに十分大きく、カタラーゼ触媒を溶解しおよび活性化する。カタラーゼは、一実施形態では、孔径が小さすぎるために浸透膜を通って拡散することができず、一定濃度のカタラーゼが維持される(例えば、カプセル剤、カプレット剤、錠剤および同様のものの内部で)。カタラーゼは、消化酵素がカプセル剤または錠剤の内部に拡散するには孔径が小さすぎるため、消化酵素によって消化されない。図2において、制御放出コーティングは、APIを取り囲む無傷の線によって示されるように、まだ溶解し始めていない。
【0126】
図3は、一実施形態において、制御放出コーティングが溶解し始め、過酸化水素を放出し、過酸化水素が、カタラーゼ酵素によって式1に従って酸素および水に効率的に変換されるカプセル剤または錠剤を示す。このように発生した酸素は、浸透膜を通って拡散し、腸管腔を有酸素化する。いくつかの実施形態では、他の組織部位が処置されてもよい。
[実施例10]
【0127】
腸酸素化の動物モデルでの効力
クロストリディオイデス・ディフィシル感染症の2種のモデルが、新しい処置の評価において一般に使用されている。ハムスターは、高致死率をもたらす重度の感染症によるCDIで死亡する。一部の専門家は、挙動がよりヒトに近いためにマウスモデルを好む。マウスCDIは、致死率がより低く、それほど重度ではなく、ヒトに類似して抗生物質対照群において再発感染症を有する。マウスCDIモデルはよりヒトに近い特徴があるため、腸酸素化を評価するためにマウスCDIモデルを選択した。
【0128】
腸酸素化治療の投与は、マウスモデルにおいていくつ課題を示した。げっ歯類における実験化合物の投与は、通常、試験品の溶液を使用して胃管強制投与を介して実施される。しかしながら、投与前に混合物を溶解すると、腸管に入る前に酸素発泡の尚早な損失をもたらす可能性があるため、これは腸酸素化治療により達成できなかった。さらに、げっ歯類が腸溶コーティングカプセル剤または錠剤を胃から腸管に高い信頼性で通過させるかどうかは不確かである。また、げっ歯類におけるpHの勾配は、ヒトにおけるよりも浅く、腸溶コーティングは高い信頼性で働かない可能性があることを示唆する。最後に、げっ歯類への投与に必要な小さいカプセル剤または錠剤サイズは、投薬量を厳しく制限する。十二指腸にカニューレしたマウスを、酸素の直接注入を介したモデルの腸道の直接酸素化に使用した。
【0129】
外部化し、アクセスボタンポートを取付けた十二指腸カテーテルを取付けた30匹のC57BL/6雌性マウス(18~22g)を、Charles River Laboratoriesから購入し、12時間の光サイクルで温度および湿度を制御した部屋に一匹ずつ収容した。マウスを、10匹ずつ3群に分けた。これらの実験プロトコルにおいて使用したすべての手順は、動物福祉法、実験動物の管理と使用に関する手引き、および実験動物福祉局に遵守した。
【0130】
マウスを、連続8日間、抗生物質カクテルをマウスの飲用水に混ぜることで事前処置した。この抗生物質カクテルは、1%グルコース、500mcg/mLのカナマイシン、44mcg/mLのゲンタマイシン、1ミリリットル当たり1062.5単位のコリスチン、269mcg/mLのメトロニダゾール、156mcg/mLのシプロフロキサシン、100mcg/mLのアンピシリン、および56mcg/mLのバンコマイシンで構成された。抗生物質カクテルおよび飲用水は、2~3日毎に交換した。感染の5日前に、抗生物質水を除去し、通常の飲用水を動物に与えた。感染の3日前に、1キログラム当たり10mLの容量の経口投与を介して、動物に1キログラム当たり10mgのクリンダマイシンの単回投与を与えた。他の抗生物質および抗菌剤を、本発明のいくつかの実施形態に従って使用してもよい。GI管または他所の他の組織部位が処置されうる。
【0131】
研究0日目、マウスに、経口強制投与を介して、5×10CFU クロストリディオイデス・ディフィシル ATCC 43255の細菌懸濁液を接種した。接種8時間後、ビヒクル、抗生物質対照、および試験品の投与を以下の通りに開始した。ビヒクル、別名感染対照群の10匹のマウスは、毎時80μLの100%純粋な窒素ガスを、十二指腸カテーテルを介して与えた。感染対照群の10匹のマウスは、50mg/kgのバンコマイシンを、1日に1回、経口強制投与を介して与えた。実験群の10匹のマウスは、毎時80μLの100%酸素試験品を、十二指腸カテーテルを介して与えた。投与は、研究0日目から研究4日目まで、合計5日間継続した。マウスは、接種後14日間追跡し、毎日体重および臨床観察について記録した。重度に死に瀕していると思われる動物を、安楽死させた。研究の終了時、すべての動物を人道的に安楽死させた。
【0132】
一実施形態による実験プロトコルを、図4に示す。
【0133】
生存結果
感染(別名、ビヒクル、プラセボ、窒素)対照群は、30%の致死率(70%生存)を被った。EAT(別名、酸素、試験、実験)群および抗生物質(別名、バンコマイシン)対照群は、100%生存(致死率0)となった。これらの結果を図5に示す。
【0134】
臨床治癒結果
群致死率を反映して、感染対照群の70%のみがCDIから回復した。図7は、接種後1週目および接種後2週目に分割される図6の表に従う少なくとも1つの臨床観察を示した各群の動物数を示す。これらの結果はまた、図8においても見られ、日毎基準での少なくとも1つの臨床治験を有する動物数を示す。
【0135】
抗生物質対照群におけるバンコマイシンの明らかに迅速な発現が図7および8においても見られる。しかしながら、この強力な早期効力は、高い臨床治癒には繋がらなかった。抗生物質対照群の70パーセントの動物は、接種および処置後2週目に感染症の徴候を示した。そのような再発はまた、CDIについて抗生物質で処置されたヒトにおいても見られる。
【0136】
図7は、EATが、感染対照群と比較して病気の動物がより少なく、防御効果を有したことを示すが、抗生物質対照群ほど早期には防御しなかった。以下の節で分かる通り、EAT群の病気の動物は、感染対照群の病気の動物ほど重度ではなかった。図8において、EAT群の動物は急速に回復したことが分かる。最も重要なことには、これらの図は、EAT群において再発感染症がない、すなわち、100%の治癒率であることを示す。
【0137】
臨床重症度結果
図9のデータは、EATにより処置した動物が、感染対照群と比較して病気は軽度であり、急速に回復し、感染および抗生物質対照群と比較して100%の治癒率を有することを確証する。図10に示される日毎の体重変化の記録は、これらの観察を確証する。先行するプロットにおいて臨床所見がないため、図10における5日目~9日目の間の小さな体重の下降は、再発を示さない。これらの実験において見られるEATの作用のより遅い発現は、酸化条件がクロストリディオイデス・ディフィシルに好ましくなく、この生物が、24~36時間の短時間であればより高い酸素圧に耐えることができるためであると予想される。この生物はまた、より高い酸素圧で生存することができるが、増えることはない。
【0138】
耐容性
上記の条件を使用した別個の実験において、100%酸素ガスのボーラス注射の耐容性を試験した。試験した最大ボーラスである6時間毎に200マイクロリットル(ボーラス当たり8mL/kg;32mL/kg/日)まで、有害効果は観察されなかった。これらの効力実験において、窒素または酸素ガス注入に起因した有害効果は観察されなかった(3.2mL/kg/時;76.8mL/kg/日)。実際、症状のない窒素群の1匹の動物、および酸素群の3匹の動物は、注入ラインを噛みちぎるほど十分な元気があり、注入ラインを交換する必要があった。
【0139】
結果のまとめ
これらの結果は、動物の腸管の酸素化は、十分耐容され、クロストリジウム・ディフィシルに有害な環境を生成することを実証する。腸酸素化治療は、マウスCDIモデルにおいて、疾患の重症度を低減し、回復を加速し、100%治癒率をもたらす。バンコマイシン抗生物質対照は、作用の発現がより迅速であるが、たった30%治癒率しかもたらさず、70%の動物は、処置が完了した後に再発の臨床兆候を示した。他の実施形態によると、クロストリジウム・ディフィシル以外、またはそれに加えて望ましくない生物についての有害な環境が作り出される。
【0140】
特定の実施形態および実施例が本明細書に記載されているが、本開示において示され、記載される実施形態の態様は、様々に組み合わせられおよび/または変更されて、なおさらなる実施形態を形成することができる。本明細書で使用される節の見出しは、単に、読みやすさを高めるために設けられ、特定の節で開示される実施形態の範囲を、その節で開示される特徴または要素に限定することを意図しない。さらに、特徴は、ある特定の組合せにおいて作用すると記載されることがあるが、特許請求される組合せからの1つまたは複数の特徴は、いくつかの場合には、組合せから削除されることがあり、組合せは、部分組合せまたは部分組合せの変形として特許請求されうる。本開示の目的で、特定の態様、利点および新規の特徴が本明細書に記載される。必ずしもそのような利点のすべてが任意の特定の実施形態に従って実現されうるとは限らない。したがって、例えば、本開示は、本明細書で教示または示唆されうる通りの他の利点を必ずしも実現することなく、本明細書で教示される通りの1つの利点または利点の群を実現する方式で具体化または実施されてもよい。本明細書で開示される方法は、列挙された順に実施される必要はない。本明細書で開示される方法は、専門家によって行われる特定の動作を含むが、それらはまた、明らかにまたは暗に、それらの動作の任意の第三者による指示を含む。さらに、本明細書に記載される方法は、列挙された工程を実施するのに好適な任意の作用物質を使用して、実施されうる。本開示の種々の実施形態は、範囲の形式で提示されている。範囲の形式での記載は、単に、便利および簡潔さのためであり、本発明の範囲に対する融通の利かない不当な制限として解釈されるべきではない。本明細書で示される範囲は、ありとあらゆる重複、部分範囲およびそれらの組合せ、ならびにその範囲内の個々の数値を包含する。「まで」、「少なくとも」、「超」、「未満」、「間」および同様のものなどの語は、列挙された数を含む。「約」または「およそ」などの用語が先行する数は、列挙された数を含む。例えば、「およそまたは約30~50%」は、30%および50%を含む。「概して」および「実質的に」という用語は、本明細書で使用される場合、なお所望の機能を実施するか、または所望の結果を実現する、述べられた量に近い量を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】