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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20230517BHJP
   C07K 14/725 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230517BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20230517BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K14/725 ZNA
C07K16/28
C07K19/00
C07K14/705
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
A61P35/00
A61K35/17
A61K35/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561019
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-11-22
(86)【国際出願番号】 GB2021050866
(87)【国際公開番号】W WO2021205176
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】2005331.0
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】2017358.9
(32)【優先日】2020-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517215973
【氏名又は名称】オートラス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マッケンジー カラム
(72)【発明者】
【氏名】コルドバ ショーン
(72)【発明者】
【氏名】プーレ マーティン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB65
4C087CA04
4C087ZB26
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)と、(b)(i)Fasエクトドメイン及びTNFRエンドドメインであって、該TNFRエンドドメインがデコイ受容体2(DcR2)、GITR、CD30、XEDAR、CD40、CD27、BCMA若しくはFn14エンドドメインのシグナル伝達部分を含む、TNFRエンドドメイン、又は(ii)膜結合型デコイ受容体3(DcR3)を含むFasL結合受容体(FLBR)とを含む細胞に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)と、
(b)
(i)Fasエクトドメイン及びTNFRエンドドメインであって、該TNFRエンドドメインがデコイ受容体2(DcR2)、GITR、CD30、XEDAR、CD40、CD27、BCMA若しくはFn14エンドドメインのシグナル伝達部分を含む、TNFRエンドドメイン、又は、
(ii)膜結合型デコイ受容体3(DcR3)、
を含むFasL結合受容体(FLBR)と、
を含む細胞。
【請求項2】
前記FLBRがFasエクトドメインとTNFRエンドドメインとを含み、一般構造:
Fasエクソ-TM-TNFRエンド
(式中、
Fasエクソは前記Fasエクトドメインであり、
TMは膜貫通ドメインであり、
TNFRエンドは前記TNFRエンドドメインである)を有する、請求項1に記載の細胞。
【請求項3】
前記FLBRがFasエクトドメイン及びCD40エンドドメインを含む、請求項1又は2に記載の細胞。
【請求項4】
前記CD40エンドドメインが配列番号4に示される配列を含む、請求項3に記載の細胞。
【請求項5】
FLBRが膜結合型DcR3を含み、一般構造:
DcR3-スペーサー-TM-エンド
(式中、
DcR3はDcR3の前記FasL結合ドメインを含み、
スペーサーは、膜貫通ドメインにDcR3を連結するスペーサー配列であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
エンドは任意選択の細胞内配列である)を有する、請求項1に記載の細胞。
【請求項6】
膜結合型DcR3が、C末端ヘパリン結合ドメイン(HBD)で突然変異を含む、請求項5に記載の細胞。
【請求項7】
前記膜結合型DcR3が、配列番号9として示される配列に関して、突然変異K256A、R258A及びR259Aを含む、請求項6に記載の細胞。
【請求項8】
前記スペーサーがCD8ストークを含む、請求項5~7のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項9】
前記細胞内配列が極性アンカー及び/又は剛性リンカーを含む、請求項5~8のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項10】
前記FLBRが、Fas-DcR2(配列番号35)、Fas-GITR(配列番号36)、Fas-CD30(配列番号37)、Fas-XEDAR(配列番号38)、Fas-CD27(配列番号39)、Fas-BCMA(配列番号40)、Fas-CD40(配列番号41)、Fas-Fn14(配列番号42)、Fas-DcR3-CD8STK(配列番号43)及び突然変異体DcR3-CD8STK(配列番号44)又は配列番号35~44のいずれかに対して少なくとも80%の配列同一性を持つ変異体より選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の細胞。
【請求項11】
Fasエクトドメイン及びTNFRエンドドメインを含むFasL結合受容体(FLBR)であって、前記TNFRエンドドメインが、前記デコイ受容体2(DcR2)、GITR、CD30、XEDAR、CD40、CD27、BCMA又はFn14エンドドメインの前記シグナル伝達部分を含む、FasL結合受容体(FLBR)。
【請求項12】
Fasエクトドメイン及びCD40エンドドメインを含む、請求項11に記載のFasL結合受容体(FLBR)。
【請求項13】
請求項11又は12に記載のFLBRをコードする核酸配列。
【請求項14】
(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする第1の核酸配列と、
(b)請求項1~12のいずれか一項に定義されるようなFasL結合受容体(FLBR)をコードする第2の核酸配列と、
を含む、核酸構築物。
【請求項15】
前記第1の核酸配列及び前記第2の核酸配列が、共発現部位によって分離される、請求項14に記載の核酸構築物。
【請求項16】
(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする第1の核酸配列と、
(b)請求項1~12のいずれか一項に定義されるようなFasL結合受容体(FLBR)をコードする第2の核酸配列と、
を含む、核酸配列のキット。
【請求項17】
請求項13に記載の核酸配列又は請求項14~16のいずれか一項に記載の核酸構築物を含む、ベクター。
【請求項18】
(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、
(b)請求項1~12のいずれか一項に定義されるようなFasL結合受容体(FLBR)をコードする核酸配列を含む第2のベクターと、
を含む、ベクターのキット。
【請求項19】
請求項1~10のいずれか一項に記載の細胞を複数含む、医薬組成物。
【請求項20】
疾患を治療する及び/又は防止する際に使用する請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
疾患を治療する及び/又は防止する方法であって、その必要がある被験体に請求項19に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法。
【請求項22】
(i)細胞含有試料の単離工程と、
(ii)請求項13に記載の核酸配列、請求項14若しくは15に記載の核酸構築物、請求項16に記載の核酸配列のキット、請求項17に記載のベクター、又は請求項18に記載のベクターのキットでの前記細胞の形質導入又はトランスフェクション工程と、
(iii)(ii)由来の前記細胞の被験体への投与工程と、
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記細胞が自己である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が同種である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
疾患の治療及び/又は防止のための薬剤製造における、請求項19に記載の医薬組成物の使用。
【請求項26】
前記疾患が癌である、請求項20に記載の使用のための医薬組成物、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法、又は請求項25に記載の使用。
【請求項27】
請求項1~10のいずれか一項に記載の細胞を作製する方法であって、請求項13に記載の核酸配列、請求項14若しくは15に記載の核酸構築物、請求項16に記載の核酸配列のキット、請求項17に記載のベクター、又は請求項18に記載のベクターのキットを、ex vivoで前記細胞内に導入する工程を含む、方法。
【請求項28】
前記細胞が被験体から単離された試料に由来する、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)及びFasリガンド(FasL)結合受容体を発現する、操作細胞に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍微小環境(TME)は、腫瘍細胞に、生存、増殖及び免疫耐性に必須のシグナルを提供する。TMEは免疫抑制性であり、癌免疫療法、例えばCAR T細胞療法において、免疫細胞の持続及び生存を阻害し得る。TMEによって使用される免疫抑制機構には、例えば、免疫チェックポイントシグナル、例えばPDL-1及び/又はCTLA-4の上方制御、並びにサイトカイン、例えばIL-6及び/又はTGF-βの分泌が含まれる。
【0003】
近年の証拠によって、免疫抑制TMEはまた、デスリガンド、例えばFasリガンド(FasL)も上方制御することが示唆される。FasLは、Fasの細胞死受容体を発現する免疫細胞、例えば腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のアポトーシスを誘導する。
【0004】
TMEがデスリガンドを上方制御することに加えて、CAR-T細胞自体が、CAR構築物の活性化及び形質導入に際して、細胞死受容体及びそのリガンドを上方制御し、活性化誘導細胞死(AICD:activation-induced death)を誘発し、TMEにおけるCAR-T細胞持続の問題を更に悪化させることもまた示されてきている。さらに、FasLは、活性化T細胞によって発現されるだけではなく、活性化T細胞によって産生されるIFNγへの曝露によっても上方制御される。
【0005】
特に、2つの共刺激エンドドメインを有する第3世代CARは、FasL発現増加の結果として、AICDに特に感受性であるようである(非特許文献1、非特許文献2)。
【0006】
科学者らは、抗体技術でFas/FasL相互作用をブロッキングすることを試みてきたが、in vivoデータは、2日~3日ごとにかなりの量の抗体が必要であり、実際にかなりの副作用が生じることを示した(非特許文献3)。
【0007】
さらに、FasLはT細胞が殺細胞を行使するための重要な武器であるため、抗体でFasLをブロッキングすると、CAR T細胞の殺細胞効果を妨害し得る(非特許文献4)。
【0008】
したがって、CAR T細胞に対する細胞死受容体刺激を抑制してこの免疫チェックポイントを軽減し、TMEにおいて操作細胞が持続し生存する有効性を改善する別のアプローチが必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Xu et al., 2017, Hum Vaccin Immunother. 13(7):1548-1555
【非特許文献2】Benmebarek et al., 2019, In J Mol Sci.20(6): 1283
【非特許文献3】Ma et al., 2016, PLoS Pathog.12(5): e1005642
【非特許文献4】Gargett et al., 2016, Mol Ther.24:1135-49
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、FasLに競合的に結合し、Fas-FasL経路を中和する受容体を発現する細胞が、Fas誘導性アポトーシスを減少させ得るか又は防止し得ることを決定した。こうした受容体とCAR又はトランスジェニックTCRとを共発現すると、腫瘍血管系内へのCAR/TCR発現細胞の浸潤及びTME内でのその持続が改善される。
【0011】
本発明者らは、Fas-FasL経路の中和を達成する2つの代替アプローチを提唱し、これらはどちらもFasLに競合的に結合して、FasLが三量体化を誘発し、それぞれのデスドメインのホモ型相互作用を通じてFas関連デスドメイン(FADD)と称されるタンパク質を補充する能力をブロッキングする。
【0012】
第1のアプローチは、Fas受容体の細胞外ドメインを、腫瘍壊死因子受容体(TNFR)細胞内シグナル伝達ドメインに融合させることを含む。第2のアプローチは、FasLに結合する膜結合型デコイ受容体3(DcR3)を発現させることを含む。
【0013】
したがって、第1の態様において、本発明は、(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)と、(b)(i)Fasエクトドメイン及びTNFRエンドドメインであって、該TNFRエンドドメインがデコイ受容体2(DcR2)、GITR、CD30、XEDAR、CD40、CD27、BCMA若しくはFn14エンドドメインのシグナル伝達部分を含む、TNFRエンドドメイン、又は(ii)膜結合型デコイ受容体3(DcR3)を含むFasL結合受容体(FLBR)とを含む細胞を提供する。
【0014】
Fas受容体のエンドドメインとは異なり、本発明のTNFRエンドドメインは、ホモ型相互作用を通じて、Fas関連デスドメイン(FADD)上のデスドメインに結合することはできず、したがって、細胞死誘導性シグナル伝達複合体(DISC)の集合は阻害され、最終的にアポトーシスに向かうFas-FasL経路が阻害される。同様に、膜結合型DcR3は、内因性Fas受容体のFasLへの結合を打ち負かし(out-competes)、Fas-FasL経路を中和する。
【0015】
上に記載の第1のアプローチにおいて、本発明のFLBRは、一般構造:
Fasエクソ-TM-TNFRエンド
(式中、
FasエクソはFasエクトドメインであり、
TMは膜貫通ドメインであり、
TNFRエンドはTNFRエンドドメインである)を有し得る。
【0016】
特に、FLBRはFasエクトドメイン及びCD40エンドドメインを含み得る。CD40エンドドメインは配列番号4に示される配列を含み得る。
【0017】
本発明のFLBRは、Fas膜貫通ドメインを含み得る。あるいは、FLBRの膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメイン、CD8a膜貫通ドメイン、DcR2膜貫通ドメイン、TYRP-1膜貫通ドメイン又はEGFR膜貫通ドメインを含み得る。
【0018】
上に記載の第2のアプローチにおいて、FLBRは、一般構造:
DcR3-スペーサー-TM-エンド
(式中、
DcR3はDcR3のFasL結合ドメインを含み、
スペーサーは、膜貫通ドメインにDcR3を連結するスペーサー配列であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
エンドは任意選択の細胞内配列である)を有し得る。
【0019】
膜結合型DcR3は、CD8膜貫通ストーク(stalk)を通じて膜に係留され得る。あるいは、膜結合型DcR3は、そうでなければ可溶性であるデコイ受容体を形質膜に係留可能な任意の配列を通じて膜に係留され得る。
【0020】
膜結合型DcR3は、C末端ヘパリン結合ドメイン(HBD)の突然変異を含み得る。これは、HBDが、架橋を通じて樹状細胞におけるアポトーシスを誘導可能であるヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合するためである。より具体的には、膜結合型DcR3のHBD C末端部分は、以下に配列番号9として示される配列に関して、K256位、R258位及びR259位の1つ以上で突然変異を含み得る。これらの、そうでなければ塩基性であるアミノ酸をアラニン残基に突然変異させると、HSPGへの結合が無効にされる。
【0021】
FLBRは、Fas-DcR2(配列番号35)、Fas-GITR(配列番号36)、Fas-CD30(配列番号37)、Fas-XEDAR(配列番号38)、Fas-CD27(配列番号39)、Fas-BCMA(配列番号40)、Fas-CD40(配列番号41)、Fas-Fn14(配列番号42)、DcR3-CD8STK(配列番号43)及びDcR3突然変異-CD8STK(配列番号44)又は配列番号35~44のいずれかに少なくとも80%の配列同一性を持つ変異体より選択される配列を含み得る。FLBRはまた、2つ以上のTNFRエンドドメインを含み得る。例えば、FLBRの配列は、Fas-GITR-GITR、Fas-GITR-CD30、Fas-GITR-XEDAR又はFas-GITR-DcR2であり得る。あるいは、FLBRは、例えばDcR3-41BB、DcR3-OX40、DcR3-XEDAR、DcR3-GITR、DcR3-CD40、DcR3-CD27、DcR3-BCMA又はDcR3-Fn14であり得る。
【0022】
第2の態様において、本発明は、Fasエクトドメイン及びTNFRエンドドメインを含むFasL結合受容体(FLBR)であって、該TNFRエンドドメインが、デコイ受容体2(DcR2)、GITR、CD30、XEDAR、CD40、CD27、BCMA又はFn14エンドドメインのシグナル伝達部分を含む、FasL結合受容体(FLBR)を提供する。特に、TNFRエンドドメインは、CD40エンドドメインであり得る。
【0023】
第3の態様において、本発明は、本発明のFLBRをコードする核酸配列を提供する。
【0024】
第4の態様において、本発明は、(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする第1の核酸配列と、(b)上に定義されるようなFasL結合受容体(FLBR)をコードする第2の核酸配列とを含む、核酸構築物を提供する。
【0025】
第1の核酸配列及び第2の核酸配列は、共発現部位、例えば自己切断ペプチドをコードする配列によって分離され得る。
【0026】
第5の態様において、本発明は、(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする第1の核酸配列と、(b)上に定義されるようなFasL結合受容体(FLBR)をコードする第2の核酸配列とを含む、核酸配列のキットを提供する。
【0027】
第6の態様において、本発明は、本発明の第3の態様に記載の核酸配列又は本発明の第4の態様に記載の核酸構築物を含む、ベクターを提供する。
【0028】
第7の態様において、本発明は、(a)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列を含む第1のベクターと、(b)上に定義されるようなFasL結合受容体(FLBR)をコードする核酸配列を含む第2のベクターとを含む、ベクターのキットを提供する。
【0029】
第8の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載の細胞を複数含む、医薬組成物を提供する。
【0030】
第9の態様において、本発明は、疾患を治療する及び/又は防止する際に使用する本発明の第8の態様に記載の医薬組成物を提供する。
【0031】
第10の態様において、本発明は、疾患を治療する及び/又は防止する方法であって、その必要がある被験体に本発明の第8の態様に記載の医薬組成物を投与する工程を含む、方法を提供する。
【0032】
上記方法は、(i)細胞含有試料の単離工程と、(ii)本発明の第3の態様に記載の核酸配列、本発明の第4の態様に記載の核酸構築物、本発明の第5の態様に記載の核酸配列のキット、本発明の第6の態様に記載のベクター、又は本発明の第7の態様に記載のベクターのキットでの細胞の形質導入又はトランスフェクション工程と、(iii)(ii)由来の細胞の被験体への投与工程とを含み得る。
【0033】
細胞は自己又は同種であり得る。
【0034】
第11の態様において、本発明は、疾患の治療及び/又は防止のための薬剤製造における、本発明の第8の態様に記載の医薬組成物の使用を提供する。
【0035】
疾患は癌であり得る。
【0036】
第12の態様において、本発明は、本発明の第1の態様に記載の細胞を作製する方法であって、本発明の第3の態様に記載の核酸配列、本発明の第4の態様に記載の核酸構築物、本発明の第5の態様に記載の核酸配列のキット、本発明の第6の態様に記載のベクター、又は本発明の第7の態様に記載のベクターのキットを、in vitroで細胞内に導入する工程を含む、方法を提供する。
【0037】
細胞は、被験体から単離された試料に由来し得る。
【0038】
驚くべきことに、本発明者らは、細胞による本発明のFasL結合受容体(FLBR)の発現が、単に切除Fas細胞内デスドメインを含むFas受容体を発現している細胞よりも、その細胞にFasL仲介アポトーシスに対するより高い耐性を与えることを見出した。本発明者らは、この知見を利用して、TME内で誘導されるFasLにより有効な耐性を持つCAR発現細胞及びTCR発現細胞を生成し、こうしてより優れた免疫療法を提供することを提唱する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】(a)古典的CARを例示する模式図である。(b)~(d):異なる世代及びCARエンドドメインの順列。(b)最初の設計は、FcεR1-γ又はCD3ζエンドドメインを通じて、ITAMシグナルのみを伝達したが、より後の設計は、更なる(c)1つ又は(d)2つの共刺激シグナルを同じ複合エンドドメイン中で伝達した。
図2】野生型Fas-FasL誘導性アポトーシス(a)、並びにFas-L結合受容体(FLBR)であるFas-DcR2(b)、Fas-TNFR(c)、膜結合型DcR3(d)及びDcR3構造(e)を例示する模式図である。
図3】TNFスーパーファミリーの概要を示す図である。Fas及びTRAIL受容体分子はどちらも、アダプター分子としてFADDを使用し、TNFR1及びD3はアダプター分子としてTRADDを使用する。
図4】腫瘍微小環境(TME)におけるFas-FasL相互作用の模式図である。FasLは、T細胞/CAR-T細胞及び活性化誘導性細胞死(AICD)を導く過剰活性化(overactivated)T細胞(a)、MDSC(b)、Treg(c)、腫瘍内皮細胞(d)、癌細胞(e)及び癌が分泌するエキソソーム(f)によって発現される。
図5】T細胞共培養アッセイの模式図である。
図6】Fmc63(抗CD19 CAR)形質導入PBMCの細胞数に対して、FasL結合構築物と共発現されたCARを比較する、総細胞生存数のフローサイトメトリーデータである。FasL結合受容体(FLBR)構築物であるFas-DcR2、Fas-GITR及びFas-CD30及びDcR3-CD8stkは、他の構築物よりも優れた細胞死レスキューを示す。
図7】FasL結合構築物DcR3及びDcR3-CD8stkと共発現されるCARの総細胞生存数を比較するフローサイトメトリーデータである。膜結合型DcR3-CD8stkは、可溶性DcR3よりも優れた細胞生存を示した。
図8】形質導入RQR8陽性細胞の生存を比較するフローサイトメトリーデータである。FasL結合受容体(FLBR)構築物であるFas-DcR2、Fas-GITR及びFas-CD30は、他の構築物よりも優れた細胞死レスキューを示す。点線は、Fmc63、FasΔDD及びFasLを共発現するよう形質導入されたPBMCの平均生存を示す。
図9】Fmc63に対する、FasL結合構築物と共発現されたCARを比較する、細胞死を誘導するため固定組換え可溶性Fasリガンドを使用した総細胞生存数のフローサイトメトリーデータである。FasL結合受容体(FLBR)構築物であるFas-DcR2及びFas-GITRは、他の構築物よりも優れた細胞死レスキューを示す。
図10】Fmc63に対する、FasL結合構築物と共発現されたCARを比較する、細胞死を誘導するため固定組換え可溶性Fasリガンドを使用した形質導入RQR8陽性細胞生存のフローサイトメトリーデータである。
図11】絶対RQR8陽性細胞の生存数を比較する、細胞死を誘導するため固定可溶性組換えFasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。FasL結合受容体構築物であるFas-XEDARは、5日間の時間経過に渡って恒常的に増殖し、FasL誘導性細胞死をレスキューする。
図12】第5日と第0日との間の絶対RQR8陽性細胞数の増殖倍相違を比較する、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。FasL結合受容体構築物であるFas-XEDARは、切除Fas細胞内デスドメイン構築物よりも、はるかにより高い増殖倍相違を示す。
図13】形質導入RQR8陽性細胞パーセントを比較する、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。FasL結合受容体(FLBR)構築物であるFas-XEDARは、第0日及び第5日の切除Fas細胞内デスドメインよりも、より高いRQR8陽性細胞濃縮を示す。
図14】形質導入RQR8陽性細胞の生存を比較する、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。FasL結合受容体(FLBR)構築物であるFas-XEDARは、「FasL+抗Fmc63」条件下で明らかであるように、FasL仲介細胞死からの保護を示す。
図15】FasL結合受容体(FLBR)構築物であるFas-XEDARが、切除Fas細胞内デスドメインよりも、有意により高い基底インターフェロンγを分泌することを示す、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。
図16】FasL結合受容体(FLBR)構築物であるFas-XEDARが、切除Fas細胞内デスドメインよりも、有意により高い誘導性IL-2を分泌することを示す、フローサイトメトリーデータである。
図17】形質導入RQR8陽性細胞の生存及び絶対細胞数を比較する、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。驚くべきことに、FLBR構築物であるFas-CD27、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14で形質導入されたPBMCは、FasΔDD及びFas-41BBと比較して、より高い絶対RQR8陽性細胞数を有する。
図18】PBS処理ウェル上でインキュベーションされた形質導入PBMCに対して、形質導入RQR8陽性細胞の絶対細胞数を比較する、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。FLBR構築物であるFas-CD27、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14で形質導入されたPBMCは、FasΔDDと比較して、固定FasLとインキュベーションされた際、優れた増殖を有する。
図19】形質導入RQR8陽性細胞の増殖倍相違を比較する、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータ(第0日の絶対細胞数に対する第5日の絶対細胞数)である。FLBR構築物であるFas-CD27、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14で形質導入されたPBMCは、FasΔDD及びFas-41BBと比較して、固定FasLとインキュベーションされた際、優れた増殖を有する。FLBR構築物であるFas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14はまた、恒常的な増殖も誘導する(PBS条件と比較)。
図20】FLBR構築物であるFas-CD27、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14が、Fasリガンドとインキュベーションされた際、FasΔDDよりも、有意により高いインターフェロンγを分泌することを示す、細胞死を誘導するため固定可溶性Fasリガンドを使用したフローサイトメトリーデータである。FLBR構築物であるFas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14はまた、基底インターフェロンγ分泌も誘導する(PBS条件と比較)。
図21】抗原との反復遭遇後、GD2ターゲティングCARと共発現されたFas-XEDAR、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14は、細胞傷害能を増加させることを示す図である。GD2ターゲティングCAR T細胞を、1:1のエフェクター対ターゲット比で、SupT1 GD2ターゲットと共培養した。3日又は4日ごとに、CAR T細胞を0.5×10個のSupT1 GD2細胞/ウェルで再刺激した。新たな再刺激のそれぞれの前に、FACSによって、ターゲット細胞の殺細胞を定量化した。Sytox Blueの排除、並びにCD2及びCD3発現の非存在によって、残った生存ターゲット細胞を定義する一方、CD2及びCD3の発現によってT細胞を定義した。線は3つの別個のPBMCドナーの中央値を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
Fas-FasL経路
Fas受容体(CD95、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、Uniprot番号P25445)は、相対分子量約45000の1型膜貫通糖タンパク質受容体であり、リンパ球及び肝細胞を含む多様な細胞の表面上に位置する。Fas受容体は、アポトーシスを導くシグナル伝達経路を誘発し、Fasの発現は、リンパ球の活性化によって、並びにIFNγ及びTNF等のサイトカインによって増加され得る。FasとそのリガンドFasL(FasL/CD95L、Uniprot番号P48023)との相互作用は、プログラム細胞死を通じて仲介される多くの生理学的及び病理学的プロセスを制御する。
【0041】
Fas及びFasLはどちらも、TNF-Rスーパーファミリーのメンバーであり、1つ~5つの細胞外システインリッチドメイン(CRD)と、その細胞質テール中に、長さ80残基~100残基のモチーフで構成されるデスドメイン(DD)を含む。
【0042】
FasLへのFasの結合は、受容体三量体化、及びそのデスドメイン(DD)のホモ型相互作用を通じたFas関連デスドメイン(FADD)と称されるタンパク質の補充を誘発する。次に、FADDは次いで、プロカスパーゼ8を活性化受容体に補充し、生じた細胞死誘導性シグナル伝達複合体(DISC)は、カスパーゼ8タンパク質分解的活性化を行い、これが、アポトーシスを仲介するカスパーゼ(アスパラギン酸特異的システインプロテアーゼ)の続くカスケードを開始する(図2a及び図3)。
【0043】
FasLは、TME内の多くの細胞によって過剰発現されるため、重要な免疫チェックポイントである(図4)。FasLは、多くの癌自体、例えば黒色腫、肺癌、肝細胞癌、食道癌及び結腸癌によって発現されることが報告されてきている。
【0044】
さらに、血管を裏打ちし、血流及び栄養素の流れ、並びに白血球の輸送を管理する腫瘍内皮細胞がFasLを発現する一方、正常血管系は発現しないことが示されてきている。
【0045】
さらに、FasLは、骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)によって発現される。MDSCは、癌、慢性炎症、自己免疫及び感染性疾患中に拡大し、免疫反応を弱め、それによって腫瘍増殖を促進する細胞の不均一な集団である。最後に、FasLはまた、癌関連線維芽細胞(CAF)及びCD4+CD25+制御性T細胞によって発現されることも報告されている。
【0046】
FasLはまた、T細胞によって発現され、CAR-Tにおいて更に上方制御されることが示されてきており、これは、CAR T細胞が、兄弟殺し(fratricide)に感受性であることを意味する。最後に、FasLは、活性化T細胞によって発現されるだけでなく、活性化T細胞によって産生されるIFNγへの曝露によっても上方制御される。
【0047】
T細胞ホメオスタシスの機構として、常に活性化されているT細胞は、活性化誘導性細胞死(AICD)と称される機構を通じて死に、Fas-FasL経路は、この原因として特徴づけられてきている。細胞溶解活性及びサイトカイン産生が改善されているにもかかわらず、第3世代CAR-T細胞は、FasL発現が増加した結果として、AICDにより感受性である。
【0048】
したがって、Fas-FasL経路を通じて誘発されるアポトーシスを回避すると、浸潤(腫瘍血管系を通じたもの)及びTME内での持続の両方の意味で、養子移入された細胞に、有意な利点が提供される。
【0049】
FasL結合受容体(FLBR)
本発明は、Fasエクトドメイン及び腫瘍壊死因子受容体(TNFR)エンドドメインを含む、FasL結合受容体(FLBR)に関する。FLBRは、一般構造:
Fasエクソ-TM-TNFRエンド
(式中、
FasエクソはFasの細胞外ドメインであり、
TMは膜貫通ドメインであり、
TNFRエンドはTNF受容体のエンドドメインである)を有し得る。
【0050】
Fasエクトドメイン
ヒトFasの配列は、Uniprot(寄託番号P25445)から入手可能であり、配列番号49として以下に示される。この配列において、残基26~173は細胞外ドメインを形成し(配列番号50)、残基174~190は膜貫通ドメインを形成し(配列番号20)、残基191~335は細胞質ドメインを形成する(配列番号51)。配列番号51において、実施例に記載される切除Fas(FasΔDD)で欠失される配列部分を下線で示す。
【0051】
配列番号49(ヒトFas)
MLGIWTLLPLVLTSVARLSSKSVNAQVTDINSKGLELRKTVTTVETQNLEGLHHDGQFCHKPCPPGERKARDCTVNGDEPDCVPCQEGKEYTDKAHFSSKCRRCRLCDEGHGLEVEINCTRTQNTKCRCKPNFFCNSTVCEHCDPCTKCEHGIIKECTLTSNTKCKEEGSRSNLGWLCLLLLPIPLIVWVKRKEVQKTCRKHRKENQGSHESPTLNPETVAINLSDVDLSKYITTIAGVMTLSQVKGFVRKNGVNEAKIDEIKNDNVQDTAEQKVQLLRNWHQLHGKKEAYDTLIKDLKKANLCTLAEKIQTIILKDITSDSENSNFRNEIQSLV
【0052】
配列番号50(Fas細胞外ドメイン)
QVTDINSKGLELRKTVTTVETQNLEGLHHDGQFCHKPCPPGERKARDCTVNGDEPDCVPCQEGKEYTDKAHFSSKCRRCRLCDEGHGLEVEINCTRTQNTKCRCKPNFFCNSTVCEHCDPCTKCEHGIIKECTLTSNTKCKEEGSRSN
【0053】
配列番号51(Fas細胞質ドメイン)
【0054】
本発明のFLBRは、配列番号50として示されるFas細胞外ドメイン、又は生じるFLBR分子がFasLへの結合に関して内因性Fasと競合し、FADDに結合する能力がないか若しくはその能力が減少しているという条件で、配列番号50に少なくとも80%、90%、95%若しくは99%同一であるその変異体を含み得る。
【0055】
2つのポリペプチド配列間の同一性パーセントは、http://blast.ncbi.nlm.nih.govで自由に入手可能であるBLAST等のプログラムによって容易に決定され得る。適切には、同一性パーセントは、参照及び/又はクエリー配列の全体に渡って決定される。
【0056】
FLBR膜貫通ドメイン
FLBRは、膜を渡る膜貫通ドメインを含む。膜貫通ドメインは、膜中で熱力学的に安定である、例えば二量体化しない、任意のタンパク質構造であり得る。これは、典型的には、いくつかの疎水性残基で構成されるαらせんである。任意の膜貫通タンパク質の膜貫通ドメインが、膜貫通部分を供給するために使用され得る。タンパク質の膜貫通ドメインの存在及びスパンは、TMHMMアルゴリズム(http://www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM-2.0/)を使用して、当業者によって決定され得る。さらに、タンパク質の膜貫通ドメインが比較的単純な構造である、すなわち膜を渡るために十分な長さの疎水性αらせんを形成すると予測されるポリペプチド配列であるならば、人工的に設計されたTMドメインもまた使用可能である(米国特許第7052906号は膜貫通構成要素を記載する)。
【0057】
膜貫通ドメインは疎水性αらせんを含み得る。膜貫通ドメインはFasに由来し得る。膜貫通ドメインは、配列番号20として示される配列又は少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含み得る。
【0058】
配列番号20(Fas膜貫通ドメイン)
LGWLCLLLLPIPLIVWV
【0059】
変異体は、変異体配列が膜を横断する能力を保持するという条件で、配列番号20と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有し得る。
【0060】
膜貫通ドメインは、TNFR、例えば本明細書に記載されるようなTNFR由来の膜貫通ドメインに基づき得る。適切には、膜貫通ドメインは、FLBR中に存在するエンドドメインと同じTNFRに基づき得る。
【0061】
適切には、膜貫通ドメインは、配列番号20~34のいずれか1つ、又は少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含み得る。変異体は、変異体配列が膜を横断する能力を保持するという条件で、配列番号21~34と少なくとも90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有し得る。
【0062】
配列番号21(DcR2膜貫通ドメイン)
YLIIIVVLVIILAVVVVGFSC
【0063】
配列番号22(GITR膜貫通ドメイン)
LGWLTVVLLAVAACVLLLTSA
【0064】
配列番号23(CD30膜貫通ドメイン)
PVLFWVILVLVVVVGSSAFLL
【0065】
配列番号24(CD8膜貫通ドメイン)
APTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD
【0066】
配列番号25(CD28膜貫通ドメイン)
FLFVLLGVGSMGVAAIVWGAW
【0067】
配列番号26(4-1BB膜貫通ドメイン)
IISFFLALTSTALLFLLFFLTLRFSVV
【0068】
配列番号27(DR3膜貫通ドメイン)
MFWVQVLLAGLVVPLLLGATL
【0069】
配列番号28(OX40膜貫通ドメイン)
VAAILGLGLVLGLLGPLAILL
【0070】
配列番号29(CD70膜貫通ドメイン)
VLRAALVPLVAGLVICLVVCI
【0071】
配列番号30(CD40膜貫通ドメイン)
ALVVIPIIFGILFAILLVLVFI
【0072】
配列番号31(XEDAR膜貫通ドメイン)
LVALVSSLLVVF TLAFLGLFF
【0073】
配列番号32(Fn14膜貫通ドメイン)
ILGGALSLTFVLGLLSGFLVW
【0074】
配列番号33(BCMA膜貫通ドメイン)
ILWTCLGLSLIISLAVFVLMFLL
【0075】
配列番号34(CD27膜貫通ドメイン)
ILVIFSGMFLVFTLAGALFLH
【0076】
TNFRエンドドメイン
TNFスーパーファミリーの細胞質ドメイン中の構造モチーフは、そのシグナル伝達特性に基づいて、デスドメイン(DD)を含むものと、TNFR関連因子(TRAF)と会合する他方のものとの2つの群に分類される。膜アンカードメインを欠き、タンパク質分解的に表面から切断されるか、又は糖脂質連結を通じてアンカリングされ、「デコイ受容体」と称される、第3の群がある。
【0077】
TNFRのリストを表1に提供する。
【0078】
【表1】
【0079】
本発明のFLBRは、TNFRのエンドドメイン又はそのシグナル伝達部分を含み得る。TNFRは、GITR、DcR2、CD30、XEDAR、CD40、CD27、BCMA又はFn14からなる群より選択され得る。
【0080】
グルココルチコイド誘導性TNF受容体(GITR)
FLBRは、GITR(Uniprot番号Q9Y5U5)のエンドドメインを含み得る。GITRは、T細胞上に恒常的に発現される細胞表面受容体であり、その表面発現は、CD3/28刺激に際して増加する。GITRは共刺激受容体であり、その活性化はTRAF2/5補充を通じて、NFκB及びMAPキナーゼシグナル伝達を導き、CD25の上方制御、並びにIL-2及びIFNγの分泌を生じる。
【0081】
GITRエンドドメインを配列番号1に示す。FLBRは、配列番号1、又は配列番号1に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、GITR仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0082】
配列番号1(GITRエンドドメイン)
QLGLHIWQLRSQCMWPRETQLLLEVPPSTEDARSCQFPEEERGERSAEEKGRLGDLWV
【0083】
CD30エンドドメイン
FLBRは、CD30(Uniprot番号P28908)のエンドドメインを含み得る。CD30は、TNFRSF8としても知られ、TNFRファミリーの細胞膜タンパク質であり、腫瘍マーカーである。この受容体は、活性化T細胞及びB細胞によって発現される。TRAF2及びTRAF5は、この受容体と相互作用し、NFκBの活性化を導くシグナル伝達を仲介し得る。この受容体はアポトーシスの正の制御因子であり、また、自己反応性CD8エフェクターT細胞の増殖潜在能力を限定し、自己免疫に対して身体を保護することも示されてきている。別個のアイソフォームをコードする、この遺伝子の2つの選択的スプライシング転写物変異体が報告されてきている。
【0084】
CD30エンドドメインを配列番号2に示す。FLBRは、配列番号2、又は配列番号2に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、CD30仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0085】
配列番号2(CD30エンドドメイン)
HRRACRKRIRQKLHLCYPVQTSQPKLELVDSRPRRSSTQLRSGASVTEPVAEERGLMSQPLMETCHSVGAAYLESLPLQDASPAGGPSSPRDLPEPRVSTEHTNNKIEKIYIMKADTVIVGTVKAELPEGRGLAGPAEPELEEELEADHTPHYPEQETEPPLGSCSDVMLSVEEEGKEDPLPTAASGK
【0086】
XEDARエンドドメイン
FLBRは、XEDAR(Uniprot番号QPHAV5)のエンドドメインを含み得る。XEDARは、TNFRSF27又はEDA2R(エクトジスプラシンA2受容体)としても知られ、TNFR(腫瘍壊死因子受容体)スーパーファミリーのIII型膜貫通タンパク質であり、3つのシステインリッチリピート及び単一の膜貫通ドメインを含むが、N末端シグナルペプチドを欠く。このタンパク質は、NFκB及びJNK経路の活性化を仲介する。活性化は、TRAF3及びTRAF6への結合によって仲介されるはずである。
【0087】
XEDARエンドドメインを配列番号3に示す。FLBRは、配列番号3、又は配列番号3に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、XEDAR仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0088】
配列番号3(XEDARエンドドメイン)
TSNTKCKEEGSRSNLGWLCLLLLPIPLIVWVLYCKQFFNRHCQRGGLLQFEADKTAKEESLFPVPPSKETSAESQVSENIFQTQPLNPILEDDCSSTSGFPTQESFTMASCTSESHSHWVHSPIECTELDLQKFSSSASYTGAETLGGNTVESTGDRLELNVPFEVPSP
【0089】
CD40エンドドメイン
FLBRは、CD40(Uniprot番号P25942)のエンドドメインを含み得る。CD40(表面抗原分類40)又はTNFRSF5(腫瘍壊死因子スーパーファミリーメンバー5)は、抗原提示細胞上に見られる共刺激タンパク質であり、その活性化に必要である。この受容体は、T細胞依存性免疫グロブリンクラススイッチ、メモリーB細胞発展、及び胚中心形成を含む、広く多様な免疫及び炎症反応を仲介する際に必須であることが見出されてきている。CD40は、マクロファージ及びB細胞においてERKを活性化する、TRAF6及びMAP3K8仲介シグナルを伝達し、免疫グロブリン分泌の誘導を導く。
【0090】
CD40エンドドメインを配列番号4に示す。FLBRは、配列番号4、又は配列番号4に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、CD40仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0091】
配列番号4(CD40エンドドメイン)
KKVAKKPTNKAPHPKQEPQEINFPDDLPGSNTAAPVQETLHGCQPVTQEDGKESRISVQERQ
【0092】
CD27エンドドメイン
FLBRは、CD27(Uniprot番号QPHAV5)のエンドドメインを含み得る。CD27は、TNFRSF7(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー7)又はT細胞活性化抗原CD27としても知られ、T細胞免疫の生成及び長期維持に必要な膜貫通タンパク質である。CD27は、リガンドCD70に結合し、B細胞活性化及び免疫グロブリン合成の制御に重要な役割を果たす。この受容体は、NFκB及びMAPK8/JNKの活性化を導くシグナルを伝達する。アダプタータンパク質TRAF2及びTRAF5は、この受容体のシグナル伝達プロセスを仲介することが示されてきている。アポトーシス促進性タンパク質であるCD27結合タンパク質(SIVA)は、この受容体に結合することができ、この受容体によって誘導されるアポトーシスにおいて、重要な役割を果たすと考えられる。
【0093】
CD27エンドドメインを配列番号5に示す。FLBRは、配列番号5、又は配列番号5に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、GITR仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0094】
配列番号5(CD27エンドドメイン)
QRRKYRSNKGESPVEPAEPCHYSCPREEEGSTIPIQEDYRKPEPACSP
【0095】
BCMAエンドドメイン
FLBRは、BCMA(Uniprot番号QO2223)由来のエンドドメインを含み得る。BCMA(B細胞成熟抗原)はTNFRSF17(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー17)としても知られ、ヒトにおいてはTNFRSF17遺伝子によってコードされるタンパク質である。TNFRSF17は、TNF受容体スーパーファミリーの細胞表面受容体であり、B細胞活性化因子(BAFF/TNFSF13B)及びA増殖誘導リガンド(APRIL/TNFSF13)を認識する。この受容体は、B細胞生存を促進し、体液性免疫の制御において役割を果たす。この受容体はまた、NFκB及びJNKも活性化する。
【0096】
BCMAエンドドメインを配列番号6に示す。FLBRは、配列番号6、又は配列番号6に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、GITR仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0097】
配列番号6(BCMAエンドドメイン)
RKINSEPLKDEFKNTGSGLLGMANIDLEKSRTGDEIILPRGLEYTVEECTCEDCIKSKPKVDSDHCFPLPAMEEGATILVTTKTNDYCKSLPAALSATEIEKSISAR
【0098】
Fn14エンドドメイン
FLBRは、Fn14(Uniprot番号Q9NP84)のエンドドメインを含み得る。Fn14は、TNFRSF12Aとしても知られ、TNFSF12/TWEAKの受容体であり、或る細胞タイプではアポトーシスの弱い誘導因子である。Fn14はまた、血管形成及び内皮細胞増殖も促進し、マトリックスタンパク質への細胞接着を調節し得る。
【0099】
Fn14エンドドメインを配列番号7に示す。FLBRは、配列番号7、又は配列番号7に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、Fn14仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0100】
配列番号7(Fn14エンドドメイン)
RRCRRREKFTTPIEETGGEGCPAVALIQ
【0101】
DcR2(デコイ受容体2)
FLBRは、DcR2(Uniprot番号Q9UBN6)のエンドドメインの一部を含み得る。DcR2は、TRAIL4又はTNFRSF10D(腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリー10D)としても知られ、細胞傷害性リガンドTRAILの細胞表面受容体である。
【0102】
本発明のFLBRは、機能性デスドメインを欠く、DcR2の細胞内ドメインを含み得る。例えば、DcR2エンドドメインは、FADDに結合不能である切除デスドメインを含み得る。Fasの細胞外結合ドメインを、非機能性デスドメインを有するDcR2の細胞内ドメインと融合させると、FasLへの結合に関してFasと競合するが、FADDに結合不能であり、FasL誘導性アポトーシス経路を阻害する、FLBRが生じる。
【0103】
DcR2細胞内ドメインは、NF-κBシグナル伝達を誘導し、生存促進機能及び抗アポトーシス機能を提供し、これは癌に利用される特徴である。したがって、本発明のFLBRにおいて、FasエクトドメインとDcR2エンドドメインとを組み合わせることは、FasLによって誘導されるアポトーシス促進性シグナルを打ち消し、NFκBを通じて、アポトーシス促進性シグナルを生存促進性結果に変換する点で、有益である。
【0104】
切除デスドメインを含むDcR2エンドドメインを配列番号8に示す。FLBRは、配列番号8、又は配列番号8に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有し、DcR2仲介シグナル伝達を誘導する能力を保持する、その変異体を含み得る。
【0105】
配列番号8(DcR2エンドドメイン)
RKKFISYLKGICSGGGGGPERVHRVLFRRRSCPSRVPGAEDNARNETLSNRYLQPTQVSEQEIQGQELAELTGVTVESPEEPQRLLEQAEAEGCQRRRLLVPVNDADSADISTLLDASATLEEGHAKETIQDQLVGSEKLFYEEDEAGSATSCL
【0106】
本発明のFLBRは、2つ以上のTNFRエンドドメインを含み得る。例えば、FLBRのFasエクトドメイン及びTNFRエンドドメインを、表1に列挙されるTNFRエンドドメインのいずれか1つより選択される更なるTNFRエンドドメインのシグナル伝達部分に融合させてもよい。FLBR構築物は、例えば、Fas受容体エクトドメイン及び2つのTNFRエンドドメインを含み得る(例えばFas-CD30-41BB又はFas-CD30-OX40)。
【0107】
以下は、シグナルペプチド(通常のテキスト)、Fasエクトドメイン(太字)、膜貫通ドメイン(斜字)及びTNFRエンドドメイン(下線)を含む完全FLBR配列のリストである。FLBRは、これらの全配列の1つ又は一部を含み得る。例えば、FLBRは、Fasエクトドメイン及びTNFRの組み合わせを含み得るが、異なるシグナルペプチド及び/又は膜貫通ドメインを伴い得る。
【0108】
配列番号35(ヒトFas-Dcr2)
【0109】
配列番号36(ヒトFas-GITR)
【0110】
配列番号37(ヒトFas-CD30)
【0111】
配列番号38(ヒトFas-XEDAR)
【0112】
配列番号39(ヒトFas-CD27)
【0113】
配列番号40(ヒトFas-BCMA)
【0114】
配列番号41(ヒトFas-CD40)
【0115】
配列番号42(ヒトFas-Fn14)
【0116】
本発明のFLBRは、配列番号35~42のいずれか1つ又は少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含み得る。変異体は、細胞によって発現された際、変異体配列が、FasL誘導性アポトーシスを阻害する能力を保持するという条件で、配列番号35~42と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有し得る。
【0117】
膜結合型DcR3
DcR3(デコイ受容体3、TNFRSF6B、Uniprot番号O95407)は、選択的スプライシングを経てTNFRスーパーファミリーの可溶性メンバーを生じる、I型膜貫通糖タンパク質である。この可溶性受容体は、FasLに結合し、その生物学的機能を中和して、こうしてFasL誘導性アポトーシスを阻害する。DcR3はまた、リガンドTL1A及びLIGHTに結合し、これらもまた、それぞれ、受容体DR3及びHVEMを通じて、アポトーシス誘導に関連する。
【0118】
TMEにおけるFasL誘導性CAR-T細胞アポトーシスを克服するため、本発明のFLBRは、FasLに結合することによって、Fasと競合するであろう、DcR3のFasL結合部分を含み得る。しかし、DcR3は可溶性タンパク質であるため、CAR-TによるDcR3の分泌は、宿主T細胞に対する交絡効果を有し得る(FasL発現宿主T細胞反応を中和する)。
【0119】
DcR3と宿主T細胞上に存在するFasLとの細胞-細胞接触を減少させるため、本発明のDcR3は膜結合型DcR3である。膜結合型DcR3は、一般構造:
DcR3-スペーサー-TM-エンド
(式中、
DcR3はDcR3のFasL結合ドメインを含み、
スペーサーは、膜貫通ドメインにDcR3を連結するスペーサー配列であり、
TMは膜貫通ドメインであり、
エンドは任意選択の細胞内配列である)を有し得る。
【0120】
FLBRは、配列番号9、又はFasLに結合する能力を保持する、配列番号9に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するその変異体を有するDcr3ドメインを含み得る。
【0121】
配列番号9(DcR3)
VAETPTYPWRDAETGERLVCAQCPPGTFVQRPCRRDSPTTCGPCPPRHYTQFWNYLERCRYCNVLCGEREEEARACHATHNRACRCRTGFFAHAGFCLEHASCPPGAGVIAPGTPSQNTQCQPCPPGTFSASSSSSEQCQPHRNCTALGLALNVPGSSSHDTLCTSCTGFPLSTRVPGAEECERAVIDFVAFQDISIKRLQRLLQALEAPEGWGPTPRAGRAALQLKLRRRLTELLGAQDGALLVRLLQALRVARMPGLERSVRERFLPVH
【0122】
DcR3の構造は、FasLに結合する4つのN末端システインリッチドメイン(CRD)、及びヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合するC末端ヘパラン結合ドメイン(HBD)を含む(図2e)。DcR3のHBDがHSPGの架橋を通じて樹状細胞においてアポトーシスを誘導するが、FasL結合CRDは誘導しないことが示されてきている(You et al., 2008, Blood 111, 1480-1488)。
【0123】
DcR3のHBDは、3つの塩基性アミノ酸(K256、R258及びR259)を含む結合モチーフを通じて、HSPGに結合する。本発明のFLBRは、残基K256、R258及びR259の1つ以上に突然変異を含む、DcR3の突然変異体型を含み得る。突然変異(複数の場合もある)は、HSPGへの結合を減少させ得るか又は無効にし得る。その突然変異又は各突然変異は、置換突然変異であり得る。その突然変異又は各突然変異は、アラニンでのアミノ酸の置換を含み得る。FLBRは、太字で示されるような、K256位、R258位及びR259位の各々でアラニン突然変異を含む、配列番号10として示される配列を含み得る。
【0124】
配列番号10(突然変異体DcR3)
【0125】
スペーサー
スペーサー配列は、DcR3ドメインを細胞膜から物理的に遠ざけ、及び/又は或る程度の柔軟性を提供する、任意の配列であり得る。CARにおいて一般的に使用されるスペーサー配列は、本発明の膜結合型DcR3 FLBRで使用され得る。例示する目的のみのため、適切な配列のリストを表2に提供する。
【0126】
【表2】
【0127】
膜結合型DcR3は、配列番号11~17として示されるスペーサー、又は配列番号11~17に少なくとも80%、85%、90%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するその変異体の任意の1つを含み得る。
【0128】
FLBRは、スペーサーにDcR3を連結するアミノ酸の短いストレッチを含み得る。リンカーは、例えば、2つ~10個の間又は3つ~5つの間のアミノ酸を含み得る。リンカーは「標準」SDPリンカー配列であり得る。
【0129】
本明細書に記載のFLBRは、図2d及び図5bに示されるような、CD8膜貫通ストーク(CD8stk)を通じて、形質膜に結合している修飾DcR3を含み得る。
【0130】
膜結合型DcR3 TMドメイン
膜結合型DcR3はまた、膜貫通ドメインも含む。上に説明されるように、膜貫通ドメインは、膜において熱力学的に安定である任意のタンパク質構造であり得て、典型的には、いくつかの疎水性残基を含むαらせんである。膜貫通ドメインは、任意の膜貫通タンパク質に由来し得る。スペーサーが膜貫通タンパク質、例えばCD8又はCD28に由来する場合、TMドメインは、好適には、同じタンパク質に由来し得る。
【0131】
CD28及びCD8αの配列は、それぞれ、配列番号52及び53として以下に示される。
【0132】
配列番号52(CD28 TMドメイン)
FWVLVVVGGVLACYSLLVTVAFIIFWV
【0133】
配列番号53(CD8 TMドメイン)
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVIT
【0134】
膜貫通ドメインは、配列番号52若しくは53として示される配列、又は膜を渡る能力を保持する、少なくとも90%、95%若しくは99%の配列同一性を有するその変異体を含み得る。
【0135】
膜結合型DcR3エンドドメイン
膜結合型DcR3変異体を含むFLBRは、形質膜にごく近接する極性領域(polar region)を提供する細胞内極性アンカーを含み得る。極性アンカー配列を以下に配列番号18として示す。
【0136】
あるいは又はさらに、FLBRは細胞内剛性リンカーを含み得る。この配列は、一般的に使用されるグリシンセリンリンカーよりも柔軟性でなく、組換えタンパク質配列のC末端で好適である。剛性リンカー配列を以下に配列番号19として示す。
【0137】
配列番号18(極性アンカー)
RKKR
【0138】
配列番号19(切除を含む剛性リンカー)
LEAEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKALEAEAAAKEAAAKEAAAKEAAAKALE
【0139】
本発明のFLBRの膜結合型DcR3特徴はまた、極性アンカー/剛性リンカーに加えて又はその代わりに、TNFRエンドドメインも含み得る。TNFRエンドドメインは、表1に列挙するTNFRのいずれか1つより選択され得る。TNFRエンドドメインは、配列番号1~8として示される配列の1つを含み得る。
【0140】
以下は、膜結合型DcR3に基づく2つの完全FLBR配列である。この配列には、シグナルペプチド(通常のテキスト)、DcR3(太字)、標準リンカー(太字かつ下線)、スペーサー(斜字)、膜貫通ドメイン(下線)、極性アンカー(二重下線)及び剛性リンカー(太字かつ斜字)が含まれる。FLBRは、これらの全配列の1つ又はその一部を含み得る。例えばFLBRは、DcR3及び極性アンカー/剛性アンカーを含み得るが、異なるシグナルペプチド、スペーサー及び/又は膜貫通ドメインを伴い得る。
【0141】
配列番号43(ヒトDcR3-CD8ストーク/TM/剛性リンカー)
【0142】
配列番号44(ヒト突然変異体DcR3-CD8ストーク/TM/剛性リンカー)
【0143】
本発明のFLBRは、配列番号43若しくは44、又は少なくとも80%の配列同一性を有するその変異体を含み得る。変異体は、細胞によって発現された際、変異体配列が、FasL誘導性アポトーシスを阻害する能力を保持するという条件で、配列番号43又は44と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%又は99%の配列同一性を有し得る。
【0144】
核酸配列
本発明は、
(i)Fasエクトドメイン及びTNFRエンドドメインであって、該TNFRエンドドメインがデコイ受容体2(DcR2)、GITR、CD30、XEDAR、CD40、CD27、BCMA若しくはFn14エンドドメインのシグナル伝達部分を含む、TNFRエンドドメイン、又は、
(ii)膜結合型デコイ受容体3(DcR3)、
を含むFasL結合受容体(FLBR)をコードする核酸配列を提供する。
【0145】
核酸配列は、TNFRを発現するポリヌクレオチドが細胞の内因性ゲノムの一部ではないという意味で、「外因性ポリヌクレオチド」である。例えば、外因性ポリヌクレオチドは、操作核酸構築物又はベクターの一部であり得る。
【0146】
本明細書で使用される際、用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、及び「核酸」は、互いに同義であると意図される。
【0147】
多くの異なるポリヌクレオチド及び核酸が、遺伝暗号の縮重の結果として同じポリペプチドをコードし得ることは、当業者によって理解されるであろう。さらに、当業者は、ルーチンの技術を使用して、本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド配列に影響を及ぼさないヌクレオチド置換を作製して、その中でポリペプチドを発現しようとする任意の特定の宿主生物のコドン使用頻度を反映し得る。
【0148】
本発明に記載の核酸は、DNA又はRNAを含み得る。これらは、一本鎖又は二本鎖であり得る。これらはまた、その中に合成又は修飾ヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであり得る。オリゴヌクレオチドに対する多くの異なるタイプの修飾が当該技術分野に知られる。これらには、メチルホスホネート及びホスホロチオエート主鎖、分子の3’端及び/又は5’端へのアクリジン鎖又はポリリジン鎖の付加が含まれる。本明細書に記載されるような使用の目的のため、ポリヌクレオチドは、当該技術分野で利用可能な任意の方法によって修飾され得ることが理解されるものとする。こうした修飾は、関心対象のポリヌクレオチドのin vivo活性又は寿命を増進するために行われ得る。
【0149】
ヌクレオチド配列と関連する用語「変異体」、「相同体」又は「誘導体」には、配列からの又は配列への1つ(以上)の核酸の任意の置換、変異、修飾、置換、欠失又は付加が含まれる。
【0150】
核酸構築物
1つの態様において、本発明は、(i)i)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする第1の核酸配列と、(ii)上に定義されるような第2の核酸配列とを含む、核酸構築物を提供する。
【0151】
核酸構築物は、一般構造:
CAR/TCR-共発現-FLBR、又は、
FLBR-共発現-CAR/TCR
(式中、
CAR/TCRは、CAR又はTCRをコードする核酸配列であり、
共発現は、別個のポリペプチドとして、CAR/TCR及びFLBRの共発現を可能にする核酸配列であり、
FLBRは、本明細書に記載されるようなFasL結合受容体をコードする核酸配列である)を有し得る。
【0152】
上記構造において、「共発現」は、2つのポリペプチドを別個の実体として共発現することを可能にする核酸配列である。これは、核酸構築物が、切断部位(複数の場合もある)によって連結される、両方のポリペプチドを産生するように、切断部位をコードする配列であり得る。ポリペプチドが産生された際、いかなる外部切断活性の必要性もなしに、直ちに個々のペプチドに切断されるように、切断部位は、自己切断性であり得る。
【0153】
切断部位は、2つのポリペプチドが分離されることを可能にする任意の配列であり得る。
【0154】
用語「切断」は、便宜上、本明細書において使用されるが、切断部位は、古典的切断以外の機構によって、ペプチドの個々の実体への分離を引き起こし得る。例えば口蹄疫ウイルス(FMDV)2A自己切断ペプチド(以下を参照されたい)に関しては、「切断」活性の主要因となる多様なモデル:宿主細胞プロテイナーゼによるタンパク質分解、自己タンパク質分解又は翻訳効果が提唱されてきている(Donnelly et al (2001) J. Gen. Virol. 82:1027-1041)。タンパク質をコードする核酸配列間に切断部位が配置された際に、タンパク質が別個の実体として発現されるようにする限り、こうした「切断」の正確な機構は、本発明の目的のためには重要ではない。
【0155】
切断部位は、例えばフューリン切断部位、タバコエッチウイルス(TEV)切断部位であり得るか、又は自己切断ペプチドをコードし得る。
【0156】
「自己切断ペプチド」は、タンパク質及び自己切断ペプチドを含むポリペプチドが産生されたならば、いかなる外部の切断活性の必要性も伴わずに、はっきり区別できる別個の第1のポリペプチドと第2のポリペプチドとに直ちに「切断される」か又は分離されるように機能するペプチドを指す。
【0157】
自己切断ペプチドは、アフトウイルス又はカルジオウイルス由来の2A自己切断ペプチドであり得る。アフトウイルス及びカルジオウイルスの一次2A/2B切断は、それ自体のC末端での2A「切断」によって仲介される。アフトウイルス、例えば口蹄疫ウイルス(FMDV)及びウマ鼻炎Aウイルスにおいては、2A領域は約18アミノ酸の短いセクションであり、タンパク質2BのN末端残基(保存されたプロリン残基)と共に、それ自体のC末端での「切断」を仲介可能な自律要素に相当する(上述のようなDonelly et al (2001))。
【0158】
「2A様」配列は、アフトウイルス又はカルジオウイルス以外のピコルナウイルス、「ピコルナウイルス様」昆虫ウイルス、C型ロタウイルス、並びにトリパノソーマ属(Trypanosoma)種内の反復配列及び細菌配列において見出されてきている(上述のようなDonnelly et al (2001))。
【0159】
切断部位は、配列番号54に示される2A様配列(RAEGRGSLLTCGDVEENPGP)を含み得る。
【0160】
本発明は更に、(i)i)キメラ抗原受容体(CAR)又はトランスジェニックT細胞受容体(TCR)をコードする第1の核酸配列と、(ii)本明細書に定義されるようなFasL結合受容体(FLBR)を発現可能な外因性ポリヌクレオチドである第2の核酸配列を含むキットを提供する。
【0161】
キメラ抗原受容体(CAR)
図1に模式的に示される古典的CARは、細胞外抗原認識ドメイン(バインダー)を細胞内シグナル伝達ドメイン(エンドドメイン)に連結するキメラI型膜貫通タンパク質である。バインダーは、典型的には、モノクローナル抗体(mAb)に由来する一本鎖可変断片(scFv)であるが、抗体様抗原結合部位を含む他の形式、又はターゲット抗原のリガンドに基づき得る。バインダーを膜から分離し、その適切な配向を可能にするため、スペーサードメインが必要な場合がある。使用される一般的なスペーサードメインは、IgG1のFcである。抗原に応じて、よりコンパクトなスペーサー、例えばCD8α由来のストーク及び更にはIgG1ヒンジのみでも十分であり得る。膜貫通ドメインは、タンパク質を細胞膜中にアンカリングし、スペーサーをエンドドメインに連結する。
【0162】
初期のCAR設計は、FcεR1のγ鎖又はCD3ζいずれかの細胞内部分由来のエンドドメインを有した。その結果、これらの第1世代受容体は、免疫学的シグナル1を伝達し、同族(cognate)ターゲット細胞のT細胞殺細胞を誘発するために十分であったが、T細胞が増殖し生存するように完全に活性化することには失敗した。この限界を克服するため、複合エンドドメインが構築されている。T細胞共刺激分子の細胞内部分をCD3ζのものに融合させると、抗原認識後に活性化シグナル及び共刺激シグナルを同時に伝達し得る第2世代受容体が生じる。最も一般的に使用される共刺激ドメインは、CD28のものである。これは、最も強力な共刺激シグナル、すなわち、T細胞増殖を誘発する免疫学的シグナル2を供給する。いくつかの受容体もまた、記載されてきており、これにはTNF受容体ファミリーエンドドメイン、例えば生存シグナルを伝達し、緊密に関連するOX40及び4-1BBが含まれる。更により強力な第3世代CARが現在記載されており、これらは、活性化、増殖及び生存シグナルを伝達可能なエンドドメインを有する。
【0163】
CARコード核酸は、例えば、レトロウイルスベクターを使用して、T細胞にトランスファーされ得る。この方式では、養子細胞移入のため、多数の抗原特異的T細胞を生成可能である。CARがターゲット抗原に結合すると、これは、ターゲット抗原がその上で発現されているT細胞に活性化シグナルの伝達を生じる。したがって、CARは、ターゲティングされる抗原を発現している細胞に対して、T細胞の特異性及び細胞傷害性を向ける。
【0164】
抗原結合ドメイン
抗原結合ドメインは、抗原を認識する古典的CARの一部である。
【0165】
抗体の抗原結合部位、抗体模倣体、及びT細胞受容体に基づくものを含む、多くの抗原結合部位が当該技術分野に知られる。例えば、抗原結合ドメインは、モノクローナル抗体に由来する一本鎖可変断片(scFv)、ターゲット抗原の天然リガンド、ターゲットに十分なアフィニティを持つペプチド、ラクダ類(camelid)等の単一ドメインバインダー、Darpinとしての人工的単一バインダー、又はT細胞受容体由来の一本鎖を含み得る。
【0166】
多様な腫瘍関連抗原(TAA)が知られ、このうちいくつかを以下の表3に示す。本発明で使用される抗原結合ドメインは、この表に示されるようなTAAに結合可能なドメインであり得る。
【0167】
【表3】
【0168】
膜貫通ドメイン
膜貫通ドメインは、膜を渡る古典的CARの配列である。このドメインは、疎水性αらせんを含み得る。膜貫通ドメインは、上に説明されるように、任意の膜貫通タンパク質に由来し得るか、又は合成であり得る。CARのTMドメインは、CD28に由来し得て、これは優れた受容体安定性を与える。あるいは、膜貫通ドメインは、メラノソームタンパク質Tryp-1に由来し得る。
【0169】
シグナルペプチド
CARは、細胞、例えばT細胞において発現された際、新生タンパク質が小胞体へと導かれ、続いて細胞表面へと導かれ、そこで発現されるようなシグナルペプチドを含み得る。
【0170】
シグナルペプチドのコアは、単一αらせんを形成する傾向を有する疎水性アミノ酸の長いストレッチを含み得る。シグナルペプチドは、アミノ酸の短い正荷電ストレッチで始まることができ、このストレッチは、転位置の間、ポリペプチドの適切なトポロジーの強制を補助する。シグナルペプチド端には、典型的には、シグナルペプチダーゼによって認識され切断されるアミノ酸ストレッチがある。シグナルペプチダーゼは、転位置中、又は転位置の完了後に切断して、遊離シグナルペプチド及び成熟タンパク質を生じ得る。次いで、遊離シグナルペプチドは、特定のプロテアーゼによって消化される。
【0171】
スペーサードメイン
CARは、抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとを連結するスペーサー配列を含み得る。柔軟なスペーサーは、抗原結合ドメインを異なる向きに配向して結合を容易にすることを可能にする。
【0172】
スペーサー配列は、例えば、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ、又はヒトCD8ストーク若しくはマウスCD8ストークを含み得る。あるいは、スペーサーは、IgG1 Fc領域、IgG1ヒンジ又はCD8ストークと類似の長さ及び/又はドメインスペーシング特性を有する別のリンカー配列を含み得る。ヒトIgG1スペーサーは、Fc結合モチーフを除去するように改変され得る。CARは、表2に列挙されるスペーサーの1つを含み得る。
【0173】
細胞内シグナル伝達ドメイン
細胞内シグナル伝達ドメインは、古典的CARのシグナル伝達部分である。細胞内シグナル伝達ドメインは、T細胞シグナル伝達ドメインであり得るか、又はこうしたドメインを含み得る。
【0174】
細胞内シグナル伝達ドメインは、1つ以上の免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含み得る。ITAMは4アミノ酸の保存配列であり、免疫系の或る特定の細胞表面タンパク質の細胞質テール中で2回反復される。このモチーフは、任意の2つの他のアミノ酸によってロイシン又はイソロイシンから分離されて、特徴YxxL/Iを生じる、チロシンを含む。これらの特徴の2つは、典型的には、分子テール中で、6つ~8つの間のアミノ酸によって分離される(YxxL/Ix(6~8)YxxL/I)。
【0175】
ITAMは、免疫細胞におけるシグナル伝達に重要である。したがって、これらは、重要な細胞シグナル伝達分子、例えばT細胞受容体複合体のCD3及びζ鎖、B細胞受容体複合体のCD79α及びβ鎖、並びに或る特定のFc受容体のテール中に見られる。これらのモチーフ内のチロシン残基は、受容体分子とそのリガンドとの相互作用後にリン酸化されて、細胞のシグナル伝達経路に関与する他のタンパク質のドッキング部位を形成する。
【0176】
最も一般的に使用されるシグナル伝達ドメイン構成要素は、3つのITAMを含むCD3-ζエンドドメインのものである。これは、抗原が結合した後、T細胞に活性化シグナルを伝達する。CD3-ζは、完全に適格な活性化シグナルは提供しない可能性があり、更なる共刺激シグナル伝達が必要とされる場合がある。2つの主なタイプの共刺激シグナル:Igファミリーに属するもの(CD28、ICOS)及びTNFファミリーに属するもの(OX40、41BB、CD27、GITR等、表1を参照されたい)がある。例えば、キメラCD28及びOX40をCD3-ζと共に使用して、増殖/生存シグナルを伝達してもよく、又は3つ全てを共に使用してもよい(図1Bに例示される)。
【0177】
エンドドメインは、配列番号45~48として示される配列、又は、変異体配列が細胞に活性化シグナルを伝達する能力を保持するという条件で、少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、若しくは99%の配列同一性を有するその変異体を含み得る。
【0178】
配列番号45(CD3-ζエンドドメイン)
RVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0179】
配列番号46(4-1BB及びCD3-ζエンドドメイン)
MGNSCYNIVATLLLVLNFERTRSLQDPCSNCPAGTFCDNNRNQICSPCPPNSFSSAGGQRTCDICRQCKGVFRTRKECSSTSNAECDCTPGFHCLGAGCSMCEQDCKQGQELTKKGCKDCCFGTFNDQKRGICRPWTNCSLDGKSVLVNGTKERDVVCGPSPADLSPGASSVTPPAPAREPGHSPQIISFFLALTSTALLFLLFFLTLRFSVVKRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCELRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPQRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0180】
配列番号47(CD28及びCD3-ζエンドドメイン)
SKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0181】
配列番号48(CD28、OX40及びCD3-ζエンドドメイン)
SKRSRLLHSDYMNMTPRRPGPTRKHYQPYAPPRDFAAYRSRDQRLPPDAHKPPGGGSFRTPIQEEQADAHSTLAKIRVKFSRSADAPAYQQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR
【0182】
トランスジェニックT細胞受容体(TCR)
T細胞受容体(TCR)は、主要組織適合複合体(MHC)分子に結合したペプチドとしての抗原の断片の認識に関与する、T細胞表面上に見られる分子である。
【0183】
TCRは、2つの異なるタンパク質鎖で構成されるヘテロ二量体である。ヒトにおいて、T細胞の95%では、TCRはα鎖及びβ鎖(それぞれ、TRA及びTRBにコードされる)からなる一方、T細胞の5%では、TCRはγ鎖及びδ鎖(γ/δ、それぞれ、TRG及びTRDにコードされる)からなる。
【0184】
TCRが抗原性ペプチド及びMHC(ペプチド/MHC)と会合すると、Tリンパ球はシグナル伝達を通じて活性化される。
【0185】
慣用的な抗体が向けられるターゲット抗原とは対照的に、TCRによって認識される抗原は、プロセシングされ、ペプチド/MHC複合体として細胞表面に送達される、潜在的な細胞内タンパク質の全てを含み得る。
【0186】
ベクターを使用して、TRA及びTRB遺伝子又はTRG及びTRD遺伝子を細胞内に人工的に導入することによって、異種(すなわち非天然)TCR分子を発現するよう細胞を操作することが可能である。例えば、TCRを操作するための遺伝子を、自己T細胞内に再導入して、T細胞養子療法のため、患者に戻し入れてもよい。こうした「異種」TCRもまた、本明細書において、「トランスジェニックTCR」と称され得る。
【0187】
本発明は、本明細書に定義されるようなトランスジェニックTCR及びFLBRを共発現する細胞に関する。
【0188】
ベクター
本発明はまた、本発明に記載のFLBRをコードする1つ以上の核酸配列を含む、ベクター、又はベクターのキットも提供する。こうしたベクターを使用して、こうしたベクターが本明細書に定義されるようなCAR/TCR及びFLBRを発現するように、宿主細胞内に核酸配列を導入してもよい。
【0189】
ベクターは例えば、プラスミド若しくはウイルスベクター、例えばレトロウイルスベクター若しくはレンチウイルスベクター、又はトランスポゾンに基づくベクター若しくは合成mRNAであり得る。
【0190】
ベクターは、細胞、例えばT細胞又はNK細胞をトランスフェクション又は形質導入可能であり得る。
【0191】
細胞
本発明は、本明細書に定義されるようなCAR/TCR及びFLBRを共発現する細胞を提供する。
【0192】
細胞は本発明の核酸又はベクターを含み得る。
【0193】
細胞は、細胞溶解性免疫細胞、例えばT細胞又はNK細胞であり得る。
【0194】
T細胞又はTリンパ球は、細胞仲介性免疫で中心的な役割を果たすリンパ球タイプである。これらは、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在によって、他のリンパ球、例えばB細胞及びナチュラルキラー細胞(NK細胞)と区別され得る。以下に要約されるように、多様なタイプのT細胞がある。
【0195】
ヘルパーTヘルパー細胞(TH細胞)は、B細胞の形質細胞及びメモリーB細胞への成熟、並びに細胞傷害性T細胞及びマクロファージの活性化を含む、免疫学的プロセスにおいて、他の白血球を補助する。TH細胞は、その表面上にCD4を発現する。TH細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上のMHCクラスII分子によって、ペプチド抗原と共に提示された際に活性化される。これらの細胞は、異なるサイトカインを分泌して、異なるタイプの免疫反応を促す、TH1、TH2、TH3、TH17、Th9、又はTFHを含む、いくつかのサブタイプの1つに分化し得る。
【0196】
細胞溶解性T細胞(TC細胞、又はCTL)は、ウイルス感染した細胞及び腫瘍細胞を破壊し、また、移植拒絶にも関与する。CTLはその表面にCD8を発現する。これらの細胞は、全ての有核細胞表面上に存在するMHCクラスIと会合する抗原に結合することによって、そのターゲットを認識する。制御性T細胞によって分泌されるIL-10、アデノシン及び他の分子を通じて、CD8+細胞はアネルギー状態に不活性化することができ、これが実験自己免疫脳脊髄炎等の自己免疫疾患を防止する。
【0197】
メモリーT細胞は、感染が解消した後、長期間持続する抗原特異的T細胞サブセットである。これらは、同族抗原に再曝露されると、迅速に多数のエフェクターT細胞に拡大し、こうして過去の感染に対する「記憶」を免疫系に提供する。メモリーT細胞は、3つのサブタイプ:セントラルメモリーT細胞(TCM細胞)及び2つのタイプのエフェクターメモリーT細胞(TEM細胞及びTEMRA細胞)を含む。メモリー細胞は、CD4+又はCD8+のいずれかであり得る。メモリーT細胞は、典型的には、細胞表面タンパク質CD45ROを発現する。
【0198】
制御性T細胞(Treg細胞)は、以前、サプレッサーT細胞として知られており、免疫寛容の維持に決定的である。その主要な役割は、免疫反応の終了に向かってT細胞仲介性免疫を停止すること、及び胸腺において負の選択プロセスを回避した自己反応性T細胞を抑制することである。
【0199】
CD4+ Treg細胞の2つの主要なクラスである天然存在Treg細胞及び適応Treg細胞が記載されてきている。
【0200】
天然存在Treg細胞(CD4+CD25+FoxP3+ Treg細胞としてもまた知られる)は、胸腺中で生じ、TSLPで活性化されている骨髄(CD11c+)及び形質細胞様(CD123+)樹状細胞の両方と、発生中のT細胞との間の相互作用に関連付けられてきている。天然存在Treg細胞は、FoxP3と称される細胞内分子の存在によって、他のT細胞とは区別され得る。FOXP3遺伝子の突然変異は、制御性T細胞発生を防止して、致死性自己免疫疾患IPEXを引き起こし得る。
【0201】
適応Treg細胞(Tr1細胞又はTh3細胞としても知られる)は、正常免疫反応中に生じ得る。
【0202】
細胞は、ナチュラルキラー細胞(又はNK細胞)であり得る。NK細胞は、自然免疫系の一部を形成する。NK細胞は、MHC独立方式で、ウイルス感染細胞からの自然シグナル(innate signals)に対する迅速な反応を提供する。
【0203】
NK細胞(自然リンパ球群に属する)は、大型顆粒リンパ球(LGL)と定義され、Bリンパ球及びTリンパ球を生成する共通のリンパ球前駆体から分化する、第3の種類の細胞を構成する。NK細胞は、骨髄、リンパ節、脾臓、扁桃腺及び胸腺中で分化し、成熟し、次いで、循環内に進入することが知られる。
【0204】
本発明の細胞は、上述の細胞タイプのいずれであってもよい。
【0205】
本発明に記載の細胞は、患者自身の末梢血から(第1パーティ)、又はドナー末梢血からの造血幹細胞移植の設定において(第2パーティ)、又は無関係のドナー由来の末梢血から(第3パーティ)のいずれかで、ex vivoで生成され得る。
【0206】
あるいは、細胞は、誘導性前駆細胞又は胚性前駆細胞から、例えばT細胞又はNK細胞へのex vivo分化から得られ得る。あるいは、溶解機能を保持し、療法剤として作用し得る不死化T細胞株を使用してもよい。
【0207】
これら全ての実施形態において、ウイルスベクターでの形質導入、DNA又はRNAでのトランスフェクションを含む、多くの手段の1つによって、キメラポリペプチドをコードするDNA又はRNAを導入することによって、キメラポリペプチド発現細胞が生成される。
【0208】
本発明の細胞は、被験体由来のex vivo細胞であり得る。細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)試料に由来し得る。細胞は、本発明の第1の態様によるキメラポリペプチドを提供する分子をコードする核酸で形質導入される前に、例えば抗CD3モノクローナル抗体での処理によって、活性化及び/又は拡大され得る。
【0209】
本発明の細胞は、
(i)被験体又は上に列挙する他の供給源からの細胞含有試料の単離と、
(ii)本明細書に定義されるようなCAR/TCR及びFLBRをコードする1つ以上の核酸配列での細胞の形質導入又はトランスフェクションと、
によって作製され得る。
【0210】
細胞は、次いで、精製することができ、例えば、CAR/TCRの抗原結合ドメインの発現又はFasエクトドメインの発現に基づいて選択され得る。
【0211】
医薬組成物
本発明はまた、本発明の単数又は複数の細胞を含む医薬組成物にも関する。特に、本発明は、本発明による細胞を含有する医薬組成物に関する。
【0212】
医薬組成物は、医薬的に許容され得るキャリアー、希釈剤又は賦形剤を更に含み得る。医薬組成物は、任意選択で、1つ以上の更なる医薬的に活性であるポリペプチド及び/又は化合物を含み得る。こうした製剤は、例えば、静脈内注入に適した形態であり得る。
【0213】
治療法
本発明は、本発明の細胞を(例えば上述のような医薬組成物中で)被験体に投与する工程を含む、疾患を治療及び/又は防止する方法を提供する。
【0214】
適切には、疾患を治療及び/又は防止する本発明の方法は、本発明の細胞を(例えば上述のような医薬組成物中で)被験体に投与することを含み得る。
【0215】
疾患を治療する方法は、本発明の細胞の療法的使用に関する。これに関して、疾患と関連する少なくとも1つの症状を弱めるか、減少させるか又は改善するため、及び/又は疾患の進行を減速させるか、減少させるか又は遮断するため、存在する疾患又は病態を有する被験体に、細胞を投与し得る。
【0216】
疾患を防止する方法は、本発明の細胞の予防的使用に関する。これに関して、疾患にまだ罹患していない被験体及び/又は疾患のいかなる症状も示していない被験体に細胞を投与して、疾患の原因を防止するか若しくは損ない、又は疾患と関連する少なくとも1つの症状の発展を減少させるか若しくは防止してもよい。被験体は、疾患の素因を有するか、又は疾患を発展させるリスクがあると考えられてもよい。
【0217】
方法は、
(i)細胞含有試料を単離する工程と、
(ii)こうした細胞を、本発明によって提供される核酸配列又はベクターで形質導入又はトランスフェクションする工程と、
(iii)(ii)由来の細胞を被験体に投与する工程と、
を含み得る。
【0218】
本発明は、疾患を治療及び/又は防止する際に使用する本発明の細胞を提供する。
【0219】
本発明はまた、疾患の治療及び/又は防止のための薬剤の製造における細胞の使用にも関する。
【0220】
本発明の方法によって治療及び/又は防止される疾患は、癌であり得る。
【0221】
癌は、例えば膀胱癌、乳癌、結腸癌、子宮内膜癌、腎臓癌(腎細胞)、白血病、肺癌、黒色腫、非ホジキンリンパ腫、膵臓癌、前立腺癌及び甲状腺癌であり得る。
【0222】
疾患は、多発性骨髄腫(MM)、B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、神経芽細胞腫、T細胞急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)又はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)であり得る。
【0223】
本発明の細胞、特にCAR細胞は、ターゲット細胞、例えば癌細胞を殺すことが可能であり得る。ターゲット細胞は、TAAの発現、例えば上記表3に提供されるTAAの発現によって認識可能であり得る。癌は、表3に列挙される癌であり得る。
【0224】
細胞を作製する方法
本発明のCAR又はトランスジェニックTCR発現細胞は、CAR又はTCR及びFasL結合受容体(FLBR)をコードするDNA又はRNAを、ウイルスベクターでの形質導入、DNA又はRNAでのトランスフェクションを含む多くの手段の1つによって導入することにより、生成され得る。
【0225】
本発明の細胞は、
(i)被験体又は上に列挙する他の供給源の1つからの細胞含有試料の単離と、
(ii)上に定義されるような1つ以上の核酸配列又は核酸構築物での、in vitro又はex vivoでの細胞の形質導入又はトランスフェクションと、
によって作製され得る。
【0226】
細胞は、次いで、精製することができ、例えば、抗原結合ポリペプチドの抗原結合ドメインの発現に基づいて選択され得る。
【0227】
本開示は、本明細書に開示される例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書に記載されるものと類似又は同等のあらゆる方法及び材料を、本開示の実施形態の実施又は試験において使用することができる。数値範囲には、範囲を画定する数値が含まれる。別に示されない限り、それぞれ、いかなる核酸配列も左から右に5’から3’配向で記載され、アミノ酸配列は、左から右へアミノからカルボキシ配向で記載される。
【0228】
或る範囲の値が与えられる場合、文脈において他に明示されない限り、その範囲の上限と下限との間に存在する、下限の単位の10分の1までの各介在値も具体的に開示されるものと理解すべきである。指定された範囲内の任意の指定された値又は介在値と、その指定された範囲内の任意の他の指定された値又は介在値との間のより小さい範囲がいずれも、本開示に包含される。これらのより小さな範囲の上限及び下限は、独立して、その範囲内に含まれる場合があり又は除外される場合があり、そのより小さな範囲内にいずれかの境界が含まれる、いずれの境界も含まれない、又は両方の境界が含まれる各範囲もまた、指定された範囲内の任意の具体的に除外された境界に従って、本開示内に含まれる。指定された範囲が境界の一方又は両方を含む場合に、それらの含まれる境界のいずれか又は両方を除外する範囲もまた本開示内に含まれる。
【0229】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合に、単数形(singular forms "a", "an", and "the")は、文脈上特に明記されていない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。
【0230】
本明細書において使用される「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」という用語は、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、非排他的又はオープンエンド形式であり、追加の列挙されていない成員、要素、又は方法工程を除外するものではない。「含む(comprising)」、「含む(comprises)」、及び「から構成される(comprised of)」という用語には、「のみからなる(consisting of)」という用語も含まれる。
【0231】
本明細書において論じられる出版物は、本出願の出願日前のそれらの開示についてのみ示される。本明細書おいては、そのような出版物が本明細書に添付の特許請求の範囲に対する従来技術をなすことを認めるものと解釈されるべきものは何もない。
【0232】
次に、本発明を実施例によって更に説明するが、実施例は、本発明の実施において当業者を支援するのに用いられるという意図があり、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0233】
実施例1-FasLに結合する構築物のin vitro試験
表4に列挙される構築物を発現する細胞パネルを生成した。全ての細胞は、第2世代抗CD19 CAR(Fmc63)を発現した。2つのバージョンの細胞パネルを生成し、一方では、構築物はFasリガンドをコードする遺伝子を含み、したがって、細胞はFasLを共発現し(図6図8中の+FasL)、一方では、構築物はFasリガンドをコードする遺伝子を含まなかった(図6図8中の-FasL)。細胞を培養し、FasL誘導性細胞死に抵抗する能力に関して試験した。
【0234】
【表4】
【0235】
より詳細には、新鮮に単離された初代ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を抗CD3及び抗CD28抗体(0.5μg/ml)で24時間活性化した。次いで、IL-2(100IU/ml)をPBMCに更に24時間添加した。活性化されたPBMCのうち、300000個に、24ウェルプレート中、関心対象の遺伝子(複数の場合もある)を含有する未精製レトロウイルス上清で形質導入した。
【0236】
PBMCを1000gで40分間回転させ、その時点で、細胞をインキュベーターに移し、3日間培養した。次いで、細胞をピペッティングすることによって再懸濁し、100μlを96ウェルプレートに移した。生存PBMC数を計数することによって、フローサイトメーター上で、細胞生存を分析した。
【0237】
Fmc63単独で発現するよう操作されたPBMCに対して、絶対細胞数を正規化した。
【0238】
構築物番号1~8の結果を図6に示す。Fas-DcR2、Fas-GITR、Fas-CD30又は膜結合型DcR3と共にCARを発現する細胞は、Fas-41BB、FasOX40又はFasΔDDとCARを共発現する細胞よりも、細胞死に抵抗する際、はるかにより優れていることが明らかにわかる。
【0239】
同様に、図7は、可溶性DcR3を発現している同等の細胞よりも、本発明の膜結合型DcR3を発現している細胞に関して、細胞生存が増加することを示す(構築物8及び9を比較)。
【0240】
上記方法論を構築物1~7に関して反復したが、この場合は、構築物はまた、国際公開第2013/153391号に記載される短い自殺遺伝子RQR8も発現した。RQR8は、形質導入細胞のマーカーとして使用された(RQR8陽性細胞)。FLBRであるFas-DcR2、Fas-CD30又はFas-GITRの1つを発現している細胞は、Fas-ΔDD、Fas-OX40又はFas-41BBを発現している細胞よりもより高い形質導入細胞数を有することが見出された。
【0241】
実施例2-固定Fasリガンドを用いたFasL結合受容体(FLBR)のin vitro試験
FasLを発現するよう形質導入されていない、実施例1に記載される細胞パネルを、固定可溶性Fasリガンドを使用したFasL誘導性細胞死に抵抗する能力に関して試験した。PBMCに、上記表4中の構築物2、3、5及び6、すなわちCAR+FasΔDD、Fas-DcR2、Fas-GITR及びFas-OX40を発現するレトロウイルスベクターで形質導入した。
【0242】
可溶性Fasリガンド(2.5μg)を96ウェルプレート上に4℃で一晩固定した。Fasリガンド固定プレートをPBSで4回洗浄した。50000の形質導入PBMCを、固定Fasリガンドを含むウェルに添加し、インキュベーター中で5日間培養した。細胞を遠心分離によって回転させ、CD3及びCD34に関して染色し、フローサイトメトリーによって細胞を分析した。CountBright(商標)絶対計数ビーズ(Thermo Fisher)を使用して、生存PBMCの絶対数を決定した。Fasリガンドの非存在下でFmc63のみを形質導入されたPBMCに対して、絶対細胞数を正規化した。
【0243】
結果を図9及び図10に示す。Fas-OX40又はdnFasを発現している細胞に関して見られるよりも、固定FasLと共に培養された、Fas-DcR2及びFas-GITRを発現している細胞に関して、細胞数の増加が見られた。
【0244】
実施例3-固定Fasリガンドを用いたFasL結合受容体(FLBR)のin vitro試験
表5に列挙する構築物を発現する細胞パネルを生成した。全ての細胞は抗CD19 CAR(Fmc63)を発現した。固定可溶性Fasリガンドを使用して、FasL誘導性細胞死に抵抗する能力に関して細胞を試験した。次いで、抗Fmc63抗イディオタイプ抗体の存在下又は非存在下で細胞を試験した。
【0245】
【表5】
【0246】
実施例1に記載されるような構築物を発現するレトロウイルスベクターでPBMCに形質導入した。
【0247】
可溶性Fasリガンド(2.5μg)を、96ウェルプレート上に、単独で又は1μg抗Fmc63 Abと組み合わせてのいずれかで、4℃で一晩固定した。別個のウェルに対照としてPBSを添加した。Fasリガンド/抗Fmc63 Ab固定プレートをPBSで4回洗浄した。形質導入PBMC(50000個)をウェルに添加し、インキュベーター中で5日間培養した。
【0248】
96ウェルプレート内に細胞を植え付けた時点(第0日)で、細胞を遠心分離によって回転させ、CD3及びCD34に関して染色し(RQR8及びしたがって形質導入細胞を検出するため)、フローサイトメトリーによって細胞を分析して、RQR8を発現している細胞の割合を決定した。CountBright(商標)絶対計数ビーズを使用して、PBMCの絶対数を決定した。
【0249】
インキュベーション第5日、細胞を遠心分離によって回転させ、100μlの上清をサイトカイン分析のために除去し、細胞をCD3及びCD34に関して染色し、次いで、フローサイトメトリーによって細胞を分析して、RQR8を発現している細胞の割合を決定した。CountBright(商標)絶対計数ビーズを使用して、生存PBMCの絶対数を決定した。インキュベーション第5日の絶対細胞数を、第0日分析に対して比較して、増殖倍相違を測定した。絶対細胞数を、PBS処理ウェル上で培養されたPBMCに対して正規化した。
【0250】
結果を図11図16に示す。
【0251】
Fas-XEDARの発現は、CAR刺激の非存在下でPBMCの恒常的な増殖を誘導し、FasL誘導性細胞死を防止可能である(図11及び図12)。
【0252】
Fmc63-CD3z形質導入細胞は、FasL仲介性細胞死に感受性である。これは、形質導入細胞を、FasL、抗fmc63イディオタイプAbと同時インキュベーションした際に特に明らかである(図13、青い円)。図13及び図14に示されるように、Fas-XEDARを発現している細胞は、ドミナントネガティブFas(すなわち切除デスドメインを含むFas(FasΔDD))を発現している細胞よりも、FasLによって誘導される死により優れた耐性を示す。Fas-XEDARを発現するベクターで形質導入された細胞集団は、形質導入細胞に関して、経時的に濃縮された(図13)。
【0253】
固定Fasリガンド単独又はFasリガンド/抗Fmc63のいずれかを含むプレート上で、形質導入PBMCを5日間インキュベーションした後、細胞を回転させ、100μl上清をサイトカイン分析のために取り出した。製造者の指示に従って、ELISA MAX(商標) Deluxe SetヒトIFN-γ(BioLegend)及びELISA MAX(商標) Deluxe SetヒトIL-2(BioLegend)を使用して、上清のサイトカイン濃度を測定した。
【0254】
Fas-XEDARを発現している細胞は、切除Fas(FasΔDD)を発現している細胞よりも、IL2及びインターフェロンγの有意により高い放出を示した(図15及び図16)。IFNγの増加は、固定Fasリガンドインキュベーションの非存在下であっても観察された(図15)。
【0255】
実施例4-固定Fasリガンドを用いたTNFR FasL結合受容体(FLBR)の更なるin vitroスクリーニング
表6に列挙する構築物を発現する細胞パネルを生成した。全ての細胞は抗CD19 CAR(Fmc63-CD3z)を発現した。固定可溶性Fasリガンドを使用して、FasL誘導性細胞死に抵抗する能力に関して細胞を試験した。
【0256】
【表6】
【0257】
固定可溶性Fasリガンドを使用して細胞死を誘導し、実施例2に記載される方法論を反復した。結果を図17図20に示す。
【0258】
Fas-TNFRキメラの発現は、FasL誘導性細胞死を防止し、また、FasL会合に際してPBMCの増殖を誘導することが示された。特に、Fas-CD27、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14を発現している細胞は、最高の平均細胞数を示した(図17)。図18は、FasLの非存在下での形質導入PBMC培養に対して、固定FasLの存在下で培養された形質導入PBMCの絶対細胞数を示し、スクリーニングされたFas-TNFRの各々の発現が増殖を誘導したことが確認される。第0日分析と比較した増殖倍相違(図19)は、Fas-CD27、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14の発現が、Fas-41BB及びFasΔDDの発現よりも、形質導入PBMCのより多い増殖を誘導することを示した。
【0259】
Fasリガンドと形質導入PBMCの5日間のインキュベーション後、細胞を回転させ、100μl上清をサイトカイン分析のために取り出した。製造者の指示に従って、ELISA MAX(商標) Deluxe SetヒトIFN-γ(BioLegend)を使用して、上清のサイトカイン濃度を測定した。図20に示されるように、Fas-CD40を発現している細胞は、FasΔDDを発現している細胞よりも、インターフェロンγの有意により高い放出を示した。IFNγ放出の増加は、固定FasLへの曝露の非存在下であっても、Fas-CD40 FLBRを発現している細胞に関して観察された。FLBRであるFas-CD27、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14を発現している細胞もまた、FasΔDD構築物のものと比較した際、固定Fasリガンドとインキュベーションされた際に、より高いインターフェロンγ放出(pg/ml)を示した。
【0260】
実施例5-再刺激アッセイにおける、抗GD2 CAR及びTNFR FasL結合受容体(FLBR)を共発現する細胞の細胞傷害能の試験
CARの背景において、Fas-TNFRキメラの細胞傷害性の利点を評価するため、形質導入PBMCを再刺激の連続ラウンドに供した(図21)。GD2ターゲティングCARをそれ自体で、又は2A自己切断ペプチドを通じて切除Fas(FasΔDD)、Fas-41BB、Fas-XEDAR、Fas-CD40、Fas-CD27、Fas-BCMA若しくはFas-Fn14のいずれかと共発現されてのいずれかで発現するように、PBMCに形質導入した。非形質導入(NT)及び形質導入PBMCを、GD2を発現しているSupT1ターゲット細胞と、1:1のエフェクター対ターゲット比で共培養し、4日間培養し、その時点で、残りの生存ターゲット細胞の割合を定量化した。3日又は4日ごとに、CAR-T細胞を0.5×10個のSupT1 GD2細胞/ウェルで再刺激した。Fas-XEDAR、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14を共発現しているGD2 CAR-T細胞(図21E図21F図21H及び図21I)は、in vitro連続共培養殺細胞アッセイ中、GD2陽性SupT1腫瘍細胞との反復遭遇後に、細胞傷害性及び拡大を維持するそれらの能力を測定した際、対照GD2 CAR-T細胞並びにFasΔDD、Fas-41BB及びFas-CD27を共発現しているGD2 CAR-T細胞(図21B図21C図21D及び図21G)よりも有意に優れた性能を示した。対照GD2 CAR-T細胞及びFasΔDD、Fas-41BB又はFas-CD27を共発現しているGD2 CAR-T細胞はどちらも、5回目の再刺激までに、ターゲットを一掃することに失敗し始め、拡大してGD2陽性腫瘍細胞を排除する能力を失った。対照的に、Fas-XEDAR、Fas-CD40、Fas-BCMA及びFas-Fn14を共発現しているGD2 CAR-T細胞は、はるかにより長く抗原刺激に反応し続け、その結果、ターゲット細胞の一掃に優れていた。
【0261】
細胞培養及び試薬
実験で使用された全ての細胞株及び初代T細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、Biosera)及び1% L-グルタミン(GlutaMAX、Gibco)を補充されたRPMI 1640培地(Lonza)中で培養された。SupT1細胞は、ATCCより購入された。T細胞は、National Health Service Blood and Transplant(NHSBT、英国コリンデール)より得られたPBMCより生成された。形質導入T細胞は、上述のものと同じ培地中で、100U/mLのインターロイキン-2(IL-2)を添加して培養された。CountBright(商標)絶対計数ビーズ(Thermo Fisher)を使用して、生存PBMCの絶対数を決定した。製造者の指示に従って、ELISA MAX(商標) Deluxe SetヒトIFN-γ(BioLegend、430104)及びELISA MAX(商標) Deluxe SetヒトIL-2(BioLegend、431804)を使用して、サイトカイン濃度を測定した。
【0262】
形質導入
gag-polをコードするプラスミド(pEQ-Pam3-E36)、RD114エンベロープをコードするプラスミド(RDF37)、及び所望のレトロウイルストランスファーベクタープラスミドと共に、GeneJuice(Millipore)を使用して、293T細胞の一過性トランスフェクションによって、レトロウイルスを産生した。以前に記載されるように、Retronectin(Takara)を使用して形質導入を行った。QBEND/10 mAbを使用して実行される、RQR8染色の発現に基づいて、フローサイトメトリーによって、異なる構築物に関する形質導入効率を評価した。MACSQuant Analyzer 10(Miltenyi)を使用してフローサイトメトリー分析を行った。BD FACSを使用して、フローソーティングを行った。
【0263】
上記の明細書において挙げられる全ての出版物は、引用することにより本明細書の一部をなす。本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、本発明の記載された方法及びシステムに様々な変更及び変動を加えられることは、当業者には明らかであろう。本発明を、特定の好ましい実施形態に関連して記載してきたが、特許請求の範囲に記載される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際、分子生物学又は関連分野における当業者に明らかである本発明の実施について記載された様式の様々な変更は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図される。
図1
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図20
図21
【配列表】
2023521330000001.app
【国際調査報告】