(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】防水通気性フィルムのための重合体組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20230517BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230517BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
C08L77/00
C08L23/08
C08K3/22
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561043
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 FR2021050606
(87)【国際公開番号】W WO2021205117
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】コケト, クリオ
(72)【発明者】
【氏名】カルーエ, セバスティアン
(72)【発明者】
【氏名】カルティエ, ローラン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB042
4J002BB072
4J002CL091
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
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4J002DM006
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4J002GA00
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4J002GG02
4J002GK01
4J002GL00
4J002GN00
(57)【要約】
本発明は、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する、組成物の重量に対して75~98重量%の少なくとも1種の共重合体A;エチレン由来、アルキル(メタ)アクリレート由来および少なくとも1つの酸、無水物またはエポキシド官能基を含む共単量体に由来する単位を含む、組成物の重量に対して2~15重量%の少なくとも1種の共重合体B;ならびに組成物の重量に対して0~10重量%の少なくとも1種の添加剤からなる組成物に関する。共重合体Aのポリエーテルブロックは、ポリエチレングリコールブロックを含む。本発明はさらに、フィルムを製造するための方法、および前記フィルムに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する、組成物の重量に対して75重量%~98重量%の少なくとも1種の共重合体A;
- エチレン由来、アルキル(メタ)アクリレート由来および少なくとも1つの酸、無水物またはエポキシド官能基を含む共単量体由来の単位を含む、組成物の重量に対して2重量%~15重量%の少なくとも1種の共重合体B;ならびに
- 組成物の重量に対して0重量%~10重量%の少なくとも1種の添加剤
からなる組成物であって、
共重合体Aのポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコールブロックを含む、
組成物。
【請求項2】
共重合体Aのポリアミドブロックが、ポリアミド11、またはポリアミド12、またはポリアミド6、またはポリアミド10.10、またはポリアミド10.12、またはポリアミド6.10、およびまたこれらの組合せのブロックである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
アルキル(メタ)アクリレートが、1~24個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含むアルキル基を含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
アルキル(メタ)アクリレートが、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびブチル(メタ)アクリレート、ならびにまたこれらの組合せから選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
共重合体B中のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位のモル含有量が、5%~35%である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
共重合体B中の、少なくとも1つの酸、無水物またはエポキシド官能基を含む共単量体のモル含有量が、0.1%~15%である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの酸、無水物またはエポキシド官能基を含む共単量体が、不飽和カルボン酸無水物から選択され、好ましくは無水マレイン酸である、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの酸、無水物、またはエポキシド官能基を含む共単量体が、不飽和エポキシド官能基を有し、好ましくはグリシジルメタクリレートである、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
共重合体Bが、酢酸ビニルに由来する単位を含まない、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
添加剤が、二酸化チタンなどの不活性染料、充填剤、界面活性剤、架橋剤、成核剤、反応性化合物、無機または有機難燃剤、紫外線吸収剤(UV)または赤外線(IR)吸収剤、UVまたはIR蛍光剤、およびまたこれらの組合せから選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
フィルムを製造するための方法であって、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物の押出を含む、方法。
【請求項12】
押出が、100~300℃の温度で実施される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
押出が、押出コーティングまたは押出キャストである、請求項11または12に記載の方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれか一項に記載の方法によって得られるフィルム。
【請求項15】
医療、衛生、旅行かばん類、製造、衣服、家庭用もしくは住宅用の機器、家具、カーペット、自動車、工業、特に工業用濾過、農業および/または建築事業における、請求項14に記載のフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体組成物、また前記組成物を使用して得られる防水通気性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体の水に対して不透過性であり、水蒸気に対して透過性であるフィルムは、織物、建築、農業、包装などのさまざまな分野で使用される。これらのフィルムは、例えば、物品を覆う包装として、または物品の表面に接着するコーティングとして使用され得る。
【0003】
一般に、通気性フィルムは、均一な外観、耐風性、水蒸気に対する高透過率、一定の弾性、同様にさまざまな基体に接着する能力などの特定の要件を満たさなければならない。加えて、これらのフィルムは、フィルムに変形を生じることなく、特に押出による製造中に容易に加工可能でなければならない。不十分な加工可能性は、穴または不規則な端部などのフィルムに関する欠点に反映される。
【0004】
そのようなフィルムを形成するために、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含み含有する組成物を使用することが公知の慣例である。しかしながら、水蒸気に対する高透過率にもかかわらず、形成されたフィルムは伸縮性に乏しく、押出による、特に押出コーティングによる製造中に問題が生じる。
【0005】
その上、三元重合体組成物、特にエチレン性、アクリル性およびブチレン性の単量体に由来する三元重合体の使用により、押出によって容易に加工可能であり得るフィルムを得ることが可能になる。しかしながら、これらのフィルムは非常に低い通気可能性を有する。
【0006】
US2004/0029467は、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート共重合体(a1)、任意選択で中和されたエチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(a2)、エチレン/ビニル単量体の共重合体(a3)、混合物(a1)/(a2)、混合物(a1)/(a3)、混合物(a2)/(a3)および混合物(a1)/(a2)/(a3)を含む群から選択される少なくとも1種の重合体(a)、ならびに/または少なくとも1種の官能基化ポリエチレン(b);ならびにコポリアミドブロックまたはポリエステルブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1種の共重合体(c)を含む通気性フィルムに関する。
【0007】
US5614588は、30重量%~60重量%のポリアミド-12、ポリアミド-11および/またはポリアミド-12,12ブロックならびに70重量%~40重量%のポリエチレングリコールブロックからなるポリエーテルブロックアミド、65重量%~85重量%のポリアミド-12、ポリアミド-11および/またはポリアミド-12,12ブロックならびに35重量%~15重量%のポリエチレングリコールブロックからなるポリエーテルブロックアミド、ならびに75重量%~95重量%のエチレン、5重量%~25重量%の酢酸ビニルおよび0.1重量%~2重量%の無水マレイン酸からなるポリ(エチレン-co-酢酸ビニル-g-無水マレイン酸)重合体を含む重合体ブレンドに関する。前記文献の組成物は、水蒸気に対して透過性のフィルムを製造するために使用される。
【0008】
US5506024は、ポリエーテルエステルアミドをベースとする、好ましくはポリエーテルブロックアミドをベースとする熱可塑性エラストマーから製造される、水蒸気に対して透過性のフィルムに関する。
【0009】
US5800928は、ポリエーテルブロックを含む少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、ならびにエチレンおよび少なくとも1種のアルキル(メタ)アクリレートを含む少なくとも1種の共重合体を含む、水蒸気に対して透過性のフィルムに関する。
【0010】
水蒸気に対する良好な透過率と、製造中の良好な加工可能性の両方を有するフィルムの製造を可能にする組成物を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、第一に、
- ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する、組成物の重量に対して75重量%~98重量%の少なくとも1種の共重合体A;
- エチレン由来、アルキル(メタ)アクリレート由来および少なくとも1つの酸、無水物またはエポキシド官能基を含む共単量体に由来する単位を含む、組成物の重量に対して2重量%~15重量%の少なくとも1種の共重合体B;ならびに
- 組成物の重量に対して0~10重量%の少なくとも1種の添加剤
からなる組成物であって、
共重合体Aのポリエーテルブロックが、ポリエチレングリコールブロックを含む、
組成物に関する。
【0012】
特定の実施形態によれば、共重合体Aのポリアミドブロックは、ポリアミド11、またはポリアミド12、またはポリアミド6、またはポリアミド10.10、またはポリアミド10.12、またはポリアミド6.10、およびまたこれらの組合せのブロックである。
【0013】
特定の実施形態によれば、アルキル(メタ)アクリレートは、1~24個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含むアルキル基を含む。
【0014】
特定の実施形態によれば、アルキル(メタ)アクリレートは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、およびブチル(メタ)アクリレートならびにまたこれらの組合せから選択される。
【0015】
特定の実施形態によれば、共重合体B中のアルキル(メタ)アクリレートに由来する単位のモル含有量は5%~35%である。
【0016】
特定の実施形態によれば、共重合体B中の、少なくとも1つの酸、無水物またはエポキシド官能基を含む共単量体のモル含有量は、0.1%~15%である。
【0017】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つの酸、無水物またはエポキシド官能基を含む共単量体は、不飽和カルボン酸無水物から選択され、好ましくは無水マレイン酸である。
【0018】
特定の実施形態によれば、少なくとも1つの酸、無水物、またはエポキシド官能基を含む共単量体は、不飽和エポキシド官能基を有し、好ましくはグリシジルメタクリレートである。
【0019】
特定の実施形態によれば、共重合体Bは、酢酸ビニルに由来する単位を含まない。
【0020】
特定の実施形態によれば、添加剤は、二酸化チタンなどの不活性染料、充填剤、界面活性剤、架橋剤、成核剤、反応性化合物、無機または有機難燃剤、紫外線(UV)吸収剤または赤外線(IR)吸収剤、UVまたはIRの蛍光剤、およびまたこれらの組合せから選択される。
【0021】
本発明はまた、上述の組成物を使用したフィルムを製造するための方法にも関する。
【0022】
本発明によるフィルムは、本発明による前記共重合体Aおよび共重合体B、ならびに任意選択で1種または複数の添加剤を含有する密接または均一な混合物を得ることを可能にする任意の方法、例えば溶融混合、押出、圧縮もしくは他にロールミルなどによって調製され得る。
【0023】
一実施形態によれば、顆粒形態の共重合体Aおよび共重合体Bを乾式ブレンドする工程が適用される(「乾式ブレンド」)。
【0024】
押出機、2軸スクリュー押出機、特に自浄式ギア装備同方向回転2軸スクリュー押出機、ならびに混練機、例えばBussコニーダーまたは内部ミキサーなどの熱可塑性樹脂産業の通例の混合および混練装置が有利に使用される。
【0025】
優先的な実施形態によれば、フィルムを製造するための方法は押出方法である。特定の実施形態によれば、押出は、100~300℃、好ましくは150~250℃の温度で実施される。
【0026】
本方法は、一般に組成物を延伸する工程を含む。延伸工程は、押出吹込成形により実施され得る。
【0027】
一実施形態によれば、延伸工程は押出コーティングにより実施される。
【0028】
一実施形態によれば、延伸工程はフラット押出により実施される。
【0029】
本発明はまた、上述の方法によって得られるフィルムにも関する。
【0030】
本発明により、先行技術の欠陥を克服することが可能となる。より詳細には、本発明は、水蒸気に対する良好な透過率と、製造中の良好な加工可能性の両方を有するフィルムの製造を可能にする組成物を提供する。
【0031】
これは、ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1種の共重合体A、ならびに少なくとも3種の共単量体:第1のエチレン共単量体、第2のアルキル(メタ)アクリレート共単量体、および酸、無水物、またはエポキシド基の形態の少なくとも1つの反応性官能基を含む第3の共単量体に由来する単位を含む少なくとも1種の共重合体B;ならびに任意選択で1種または複数の添加剤からなる組成物により達成される。より詳細には、75重量%~98重量%の共重合体A、2重量%~15重量%の共重合体Bおよび0~10%の少なくとも1種の添加剤からなるこの組成物は、特に押出により、詳細には熱押出によって、水蒸気に対する良好な透過率および非常に良好な加工可能性を有するフィルムを得ることを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、ここで、以下の記載において非限定的な手法でより詳細に記載される。
【0033】
組成物
本発明による組成物は、
- ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する少なくとも1種の共重合体A;
- 少なくとも3種の共単量体:第1のエチレン共単量体、第2のアルキル(メタ)アクリレート共単量体、および酸、無水物、またはエポキシド基の形態の少なくとも1つの反応性官能基を含む第3の共単量体に由来する単位を含む少なくとも1種の共重合体B;ならびに
- 任意選択で少なくとも1種の添加剤
からなる。
【0034】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する共重合体A(「PEBA」と略称される)に関して、これらは反応性末端を有するポリアミドブロックと、反応性末端を有するポリエーテルブロックとの重縮合から得られ、特に、
1)ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジカルボキシル鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック;
2)ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックと、ジアミン鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロック、これは例えばポリエーテルジオールとして公知のα,ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノエチル化および水素化により得られる;
3)ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックと、ポリエーテルジオール、この特殊な場合では、得られる生成物はポリエーテルエステルアミドである
などである。
【0035】
ジカルボキシル鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば鎖制限ジカルボン酸の存在下で、ポリアミド前駆体の縮合から生じる。ジアミン鎖末端を有するポリアミドブロックは、例えば鎖制限ジアミンの存在下で、ポリアミド前駆体の縮合から生じる。
【0036】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを有する重合体はまた、ランダムに分布された単位を含み得る。
【0037】
3種類のポリアミドブロックが有利に使用され得る。
【0038】
第1の種類によれば、ポリアミドブロックは、ジカルボン酸、詳細には4~20個の炭素原子を含有するもの、好ましくは6~18個の炭素原子を含有するものと、脂肪族または芳香族のジアミン、詳細には2~20個の炭素原子を含有するもの、好ましくは6~14個の炭素原子を含有するものとの縮合から生じる。
【0039】
ジカルボン酸の例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸、またダイマー化脂肪酸を挙げることができる。
【0040】
ジアミンの例として、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,10-デカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2-2-ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、ならびにパラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)の異性体、およびイソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)、およびピペラジン(Pip)を挙げることができる。
【0041】
有利には、PA 4.12、PA 4.14、PA 4.18、PA 6.10、PA 6.12、PA 6.14、PA 6.18、PA 9.12、PA 10.10、PA 10.12、PA 10.14およびPA 10.18ブロックが使用される。PA X.Yという表記において、従来通りに、Xはジアミン残基に由来する炭素原子の数を表し、Yは二酸残基由来の炭素原子の数を表す。
【0042】
第2の種類によれば、ポリアミドブロックは、4~12個の炭素原子を含有するジカルボン酸またはジアミンの存在下で、1種または複数のα,ω-アミノカルボン酸、および/または6~12個の炭素原子を含有する1つまたは複数のラクタムの縮合から得られる。ラクタムの例として、カプロラクタム、オエナントラクタムおよびラウリルラクタムを挙げることができる。α,ω-アミノカルボン酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸を挙げることができる。
【0043】
有利には、第2の種類のポリアミドブロックは、ポリアミド11、ポリアミド12またはポリアミド6から作製される。PA Xという表記において、Xはアミノ酸残基に由来する炭素原子の数を表す。
【0044】
第3の種類によれば、ポリアミドブロックは、少なくとも1つのα,ω-アミノカルボン酸(またはラクタム)、少なくとも1つのジアミンおよび少なくとも1つのジカルボン酸の縮合から得られる。
【0045】
この場合、ポリアミドPAブロックは、以下の重縮合により調製される:
- X個の炭素原子を含有する直鎖脂肪族または芳香族のジアミン(複数可);
- Y個の炭素原子を含有するジカルボン酸(複数可);ならびに
- Z個の炭素原子を含有するラクタムおよびα,ω-アミノカルボン酸、ならびに(X1、Y1)が(X、Y)とは異なる、X1個の炭素原子を含有する少なくとも1種のジアミンとY1個の炭素原子を含有する少なくとも1種のジカルボン酸との等モルの混合物から選択される共単量体(複数可){Z}、
- 前記共単量体(複数可){Z}は、ポリアミド-前駆体の単量体の総量に対して、50%まで、好ましくは20%まで、さらにより有利には10%までの範囲の重量割合で導入され;
- ジカルボン酸から選択される連鎖制限剤(chain limiter)の存在下で;有利には、Y個の炭素原子を含有するジカルボン酸が連鎖制限剤として使用され、これはジアミン(複数可)の化学量論に対して過剰に導入される。
【0046】
この第3の種類の変形によれば、ポリアミドブロックは、任意選択で連鎖制限剤の存在下で、少なくとも2種のα,ω-アミノカルボン酸もしくは6~12個の炭素原子を含有する少なくとも2種のラクタム、または同数の炭素原子を持たない1つのラクタムと1つのアミノカルボン酸との縮合から得られる。脂肪族α,ω-アミノカルボン酸の例として、アミノカプロン酸、7-アミノヘプタン酸、11-アミノウンデカン酸および12-アミノドデカン酸を挙げることができる。ラクタムの例として、カプロラクタム、オエナントラクタムおよびラウリルラクタムを挙げることができる。脂肪族ジアミンの例として、ヘキサメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミンおよびトリメチルヘキサメチレンジアミンを挙げることができる。脂環式二酸の例として、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸を挙げることができる。脂肪族二酸の例として、ブタン二酸、アジピン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー化脂肪酸(これらのダイマー化脂肪酸は、好ましくは少なくとも98%のダイマー含有量を有し;好ましくは水素化されており;商品名PripolでUnichema社から、または商品名EmpolでHenkel社から販売されている)およびα,ω-二酸ポリオキシアルキレンを挙げることができる。芳香族二酸の例として、テレフタル酸(T)およびイソフタル酸(I)を挙げることができる。脂環式ジアミンの例として、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン(BACM)、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン(BMACM)および2-2-ビス-(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)プロパン(BMACP)、ならびにパラ-アミノジシクロヘキシルメタン(PACM)の異性体を挙げることができる。一般的に使用される他のジアミンは、イソホロンジアミン(IPDA)、2,6-ビス(アミノメチル)ノルボルナン(BAMN)およびピペラジンであり得る。
【0047】
第3の種類のポリアミドブロックの例として、以下を挙げることができる:
- PA 6.6/6、式中、6.6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミン単位を表し、6はカプロラクタムの縮合から得られる単位を表し;
- PA 6.6/6.10/11/12、式中、6.6はアジピン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し;6.10はセバシン酸と縮合したヘキサメチレンジアミンを表し;11はアミノウンデカン酸の縮合から得られる単位を表し;および12はラウリルラクタムの縮合から得られる単位を表す。
【0048】
PA X/Y、PA X/Y/Zなどの表記はコポリアミドに関し、式中、X、Y、Zなどは上述のホモポリアミド単位を表す。
【0049】
有利には、本発明の組成物に使用される共重合体(複数可)の前記少なくとも1種のポリアミドブロックは、以下のポリアミド単量体の少なくとも1種:6、11、12、5.4、5.9、5.10、5.12、5.13、5.14、5.16、5.18、5.36、6.4、6.9、6.10、6.12、6.13、6.14、6.16、6.18、6.36、10.4、10.9、10.10、10.12、10.13、10.14、10.16、10.18、10.36、10.T、12.4、12.9、12.10、12.12、12.13、12.14、12.16、12.18、12.36、12.Tおよびこれらの混合物または共重合体を含み;好ましくは以下のポリアミド単量体:6、11、12、6.10、10.10、10.12、およびこれらの混合物または共重合体から選択される。
【0050】
好ましくは、ポリアミドブロックは、ポリアミドブロックの総重量に対して、少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは100重量%のPA6、PA 11またはPA 12を含む。
【0051】
ポリエーテルブロックは、ポリアミドおよびポリエーテルブロックを有する共重合体の50重量%~80重量%となってもよい。
【0052】
ポリエーテルブロックは、特に、PEG(ポリエチレングリコール)に由来するブロック、すなわちエチレンオキシド単位から形成されるブロック、および/またはPPG(プロピレングリコール)に由来するブロック、すなわちプロピレンオキシド単位から形成されるブロック、および/またはPO3G(ポリトリメチレングリコール)に由来するブロック、すなわちポリトリメチレングリコールエーテル単位から形成されるブロックであり得る。ポリエーテルブロックはまた、PTMGに由来するブロック、すなわちテトラメチレングリコール単位から形成されるブロックを含み得て、ポリテトラヒドロフランとも呼ばれる。PEBA共重合体は、その鎖中にいくつかの種類のポリエーテルを含み得て、コポリエーテルは、ブロックまたは統計学的な形態の場合もある。
【0053】
本発明の文脈では、PEBA共重合体は、任意選択でPPGブロック、PO3Gブロック、および/またはPTMGブロックと組み合わせたPEGブロックを含む。
【0054】
したがって、特定の実施形態によれば、PEBA共重合体はPEGブロックを含む。これらのブロックは、PEBA共重合体中に、共重合体の重量に対して40重量%~80重量%、好ましくは40重量%~75重量%、さらにより好ましくは40重量%~60重量%の含有量で存在し得る。例えば、この含有量は、共重合体の重量に対して40重量%~45重量%;または45重量%~50重量%;または50重量%~55重量%;または55重量%~60重量%;または60重量%~65重量%;または65重量%~70重量%;または70重量%~75重量%;または75重量%~80重量%であってもよい。
【0055】
好ましくは、ポリエーテルブロックは、ポリエーテルブロックの総重量に対して少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、好ましくは100重量%のPEGブロックを含む。
【0056】
一実施形態によれば、組成物のPEBA共重合体はまた、PTMG、PPG、PO3G、およびこれらの混合物から選択される、PEG以外の少なくとも1種のポリエーテルを含んでもよい。
【0057】
ビスフェノール類、例えばビスフェノールAのオキシエチル化により得られるブロックもまた使用されてもよい。後者の生成物は、特許EP613919に記載されている。
【0058】
ポリエーテルブロックはまた、エトキシル化一級アミンからなる場合もある。エトキシル化一級アミンの例として、式:
[式中、mおよびnは1~20の間であり、xは8~18の間である]
の生成物を挙げることができる。これらの製品は、商品名Noramox(登録商標)でArkema社から、および商品名Genamin(登録商標)でClariant社から市販されている。
【0059】
可撓性ポリエーテルブロックは、NH2鎖末端を有するポリオキシアルキレンブロックを含み得て、そのようなブロックは、α,ω-ジヒドロキシル化脂肪族ポリオキシアルキレンブロックのシアノアセチル化により得ることができ、ポリエーテルジオールと呼ばれる。より詳細には、Jeffamine製品(例えばJeffamine(登録商標)D400、D2000、ED 2003、XTJ 542、これらはHuntsman社から市販されている製品であり、また特許JP2004346274、JP2004352794およびEP1482011に記載されている)が使用されてもよい。
【0060】
ポリエーテルジオールブロックは、未修飾型でカルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと共重縮合されるか、またはアミノ化されてポリエーテルジアミンに変換され、カルボキシル末端基を有するポリアミドブロックと縮合されるかのいずれかで使用される。PAブロックとPEブロックの間にエステル結合を含有するPEBA共重合体の2工程調製のための一般的方法は公知であり、例えば仏国特許FR2846332に記載されている。PAブロックとPEブロックの間にアミド結合を含有する本発明のPEBA共重合体の調製のための一般的方法は公知であり、例えば欧州特許EP1482011に記載されている。ポリエーテルブロックはまた、ポリアミド前駆体および鎖制限の二酸と混合され、ランダムに分布された単位を有するポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックを含有する重合体を調製し得る(1工程プロセス)。
【0061】
言うまでもなく、本発明の本記載におけるPEBAという名称は、Arkemaにより販売されているPebax(登録商標)製品、Evonik(登録商標)により販売されているVestamid(登録商標)製品およびEMSにより販売されているGrilamid(登録商標)製品だけでなく、Sanyoにより販売されているPelestat(登録商標)型PEBA製品または他の供給元からの任意の他のPEBAにも関連する。
【0062】
有利には、PEBA共重合体は、PA 6として、PA 11として、PA 12、PA 6.10、PA 6.12として、PA 6.6/6として、PA 10.10として、および/またはPA 6.14、好ましくはPA 11および/またはPA 12ブロックとしてのポリアミドブロック;ならびにPEGとしてのポリエーテルブロックを含有し得る。
【0063】
本発明の文脈において特に好ましいPEBA共重合体は、
- PA 11およびPEG由来のもの;
- PA 12およびPEG由来のもの;
- PA 6.10およびPEG由来のもの;
- PA 10.10およびPEG由来のもの;
- PA 10.12およびPEG由来のもの;
- PA 6.12およびPEG由来のもの;
- PA 6およびPEG由来のもの
の中からのブロックを含む共重合体である。
【0064】
上述のブロック共重合体が、一般に少なくとも1種のポリアミドブロックおよび少なくとも1種のポリエーテルブロックを含む場合、本発明はまた、本記載で説明されるものから選択される2種、3種、4種(またはさらに多く)の異なるブロックを含む全ての共重合体を包含するが、ただし、これらのブロックは、少なくともポリアミドおよびポリエーテルブロックを含む。
【0065】
有利には、本発明による共重合体アロイは、3つの異なる種類のブロックを含むブロック分割された共重合体(本発明の本記載で「トリブロック」と呼ばれる)を含み、これは上述のいくつかのブロックの縮合から得られる。前記トリブロックは、好ましくはコポリエーテルエステルアミド、コポリエーテルアミドウレタンから選択され、
トリブロックの総質量に対して、
- ポリアミドブロックの質量百分率は10%超であり、
- PEGブロックの質量百分率は50%超である。
【0066】
PEBA共重合体中のポリアミドブロックの数平均モル質量は、好ましくは400~20000g/mol、より優先的には500~10000g/mol、さらにより優先的には200~2000g/molである。特定の実施形態では、PEBA共重合体中のポリアミドブロックの数平均モル質量は、400~1000g/mol、または1000~1500g/mol、または1500~2000g/mol、または2000~2500g/mol、または2500~3000g/mol、または3000~3500g/mol、または3500~4000g/mol、または4000~5000g/mol、または5000~6000g/mol、または6000~7000g/mol、または7000~8000g/mol、または8000~9000g/mol、または9000~10000g/mol、または10000~11000g/mol、または11000~12000g/mol、または12000~13000g/mol、または13000~14000g/mol、または14000~15000g/mol、または15000~16000g/mol、または16000~17000g/mol、または17000~18000g/mol、または18000~19000g/mol、または19000~20000g/molである。
【0067】
ポリエーテルブロックの数平均モル質量は、好ましくは100~6000g/mol、より優先的には200~3000g/molである。特定の実施形態では、ポリエーテルブロックの数平均モル質量は、100~200g/mol、または200~500g/mol、または500~800g/mol、または800~1000g/mol、または1000~1500g/mol、または1500~2000g/mol、または2000~2500g/mol、または2500~3000g/mol、または3000~3500g/mol、または3500~4000g/mol、または4000~4500g/mol、または4500~5000g/mol、または5000~5500g/mol、または5500~6000g/molである。
【0068】
数平均モル質量は、連鎖制限剤の含有量により設定される。数平均モル質量は、式:
Mn=n単量体×MW反復単位/n連鎖制限剤+MW連鎖制限剤
に基づいて算出され得る。
【0069】
この式において、n単量体は単量体のモル数を表し、n連鎖制限剤は過剰の制限剤(例えば二酸)のモル数を表し、MW反復単位は反復単位のモル質量を表し、MW連鎖制限剤は過剰の制限剤(例えば二酸)のモル質量を表す。
【0070】
ポリアミドブロックおよびポリエーテルブロックの数平均モル質量は、ブロックの共重合の前にゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定され得る。
【0071】
PEBA共重合体の、ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの質量比は、特に0.1~20であり得る。この質量比は、ポリアミドブロックの数平均モル質量を、ポリエーテルブロックの数平均モル質量で除算することにより算出され得る。
【0072】
したがって、PEBA共重合体の、ポリエーテルブロックに対するポリアミドブロックの質量比は、0.1~0.2;または0.2~0.3;または0.3~0.4;または0.4~0.5;または0.5~1;または1~2;または2~3;または3~4;または4~5;または5~7;または7~10;または10~13;または13~16;または16~19;または19~20であり得る。
【0073】
2~19、より詳細には4~10の範囲が特に好ましい。
【0074】
PEBA共重合体は、組成物の重量に対して、75重量%~98重量%、好ましくは75重量%~95重量%の範囲の含有量で組成物中に存在する。例えば、PEBA共重合体は、組成物の重量に対して、75重量%~78重量%;または78重量%~80重量%;または80重量%~82重量%;または82重量%~84重量%;または84重量%~86重量%;または86重量%~88重量%;または88重量%~90重量%;または90重量%~92重量%;または92重量%~94重量%;または94重量%~96重量%;または96重量%~98重量%の含有量で組成物中に存在し得る。
【0075】
少なくとも3種の共単量体に由来する単位を含む共重合体Bに関して、これは組成物の重量に対して、2重量%~15重量%、好ましくは5重量%~15重量%の含有量で存在する。例えば、この共重合体Bは、組成物の重量に対して、2重量%~3重量%;または3重量%~4重量%;または4重量%~5重量%;または5重量%~6重量%;または6重量%~7重量%;または7重量%~8重量%;または8重量%~9重量%;または9重量%~10重量%;または10重量%~11重量%;または11重量%~12重量%;または12重量%~13重量%;または13重量%~14重量%;または14重量%~15重量%の含有量で組成物中に存在し得る。
【0076】
この共重合体Bが製造される第1の共単量体は、エチレンである。エチレンに由来する単位は、共重合体B中で、50%~94.9%、好ましくは58%~79%のモル含有量を有し得る。このモル含有量は、特に50%~55%;または55%~60%;または60%~65%;または65%~70%;または70%~75%;または75%~80%;または80%~85%;または85%~90%;または90%~94.9%であり得る。
【0077】
この共重合体Bが製造される第2の共単量体は、アルキル(メタ)アクリレートである。用語「アルキル(メタ)アクリレート」は、アルキルアクリレートおよびアルキルメタクリレートを指す。好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、1~24個の炭素原子、好ましくは1~5個の炭素原子を含む。例えば、アルキル(メタ)アクリレートのアルキル基は、1~2個;または2~4個;または4~6個;または6~8個;または8~10個;または10~12個;または12~14個;または14~16個;または16~18個;または18~20個;または20~22個;または22~24個の炭素原子を含み得る。
【0078】
特定の好ましい実施形態によれば、第2の共単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、およびまたこれらの組合せから選択される。好ましくは、第2の共単量体は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびブチル(メタ)アクリレートから選択される。
【0079】
ある特定の実施形態によれば、共重合体Bを製造するために、1種のみの第2のアルキル(メタ)アクリレート共単量体が使用される。
【0080】
他の実施形態によれば、共重合体Bは、2種以上の第2のアルキル(メタ)アクリレート共単量体、例えば2種または3種の第2の共単量体から製造され得る。例えば、共重合体Bは、エチル(メタ)アクリレートおよび/またはメチル(メタ)アクリレートおよび/またはブチル(メタ)アクリレートから製造され得る。
【0081】
第2の共単量体(複数可)に由来する単位は、共重合体B中で、5%~35%、好ましくは20%~30%のモル含有量を有し得る。このモル含有量は、特に5%~10%;または10%~15%;または15%~20%;または20%~25%;または25%~30%;または30%~35%であり得る。
【0082】
第3の共単量体は、酸、無水物またはエポキシド基の形態の少なくとも1つの反応性官能基を含む。
【0083】
特定の実施形態によれば、第3の共単量体は、不飽和カルボン酸またはそのカルボン酸無水物誘導体、好ましくは不飽和ジカルボン酸またはそのジカルボン酸無水物誘導体から選択される。
【0084】
不飽和ジカルボン酸無水物の例は、特に無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、およびテトラヒドロフタル酸無水物である。好ましくは、無水マレイン酸が使用される。
【0085】
(メタ)アクリル酸などの不飽和のモノカルボン酸またはジカルボン酸単量体もまた使用されてもよい。
【0086】
あるいは、第3の共単量体は、不飽和エポキシド型官能基を含んでもよい。
【0087】
注目すべき例には、
- アリルグリシジルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、グリシジルマレエートおよびイタコネート、グリシジルメタクリレート(GMA)およびアクリレートなどの脂肪族グリシジルエステルおよびエーテル;ならびに
- グリシジル2-シクロヘキサ-1-エンエーテル、ジグリシジル4,5-シクロヘキセンカルボキシレート、グリシジル4-シクロヘキセンカルボキシレート、グリシジル5-ノルボルネン-2-メチル-2-カルボキシレートおよびジグリシジルエンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-5-エン-2,3-ジカルボキシレートなどの脂環式グリシジルエステルおよびエーテル、
が含まれる。
【0088】
第3の共単量体に由来する単位は、共重合体B中に、0.1%~15%、好ましくは1%~12%のモル含有量で存在し得る。このモル含有量は、特に0.1%~1%;または1%~3%;または3%~5%;または5%~7%;または7%~9%;または9%~11%;または11%~13%;または13%~15%であり得る。
【0089】
特定の実施形態によれば、共重合体Bを製造するために、1種のみの第3のアルキル(メタ)アクリレート共単量体が使用される。
【0090】
他の実施形態によれば、共重合体Bは、2つ以上の第3の共単量体、例えば2種または3種の第3の共単量体に由来する単位を含み得る。例えば、本発明による組成物は、無水マレイン酸およびグリシジルメタクリレートからの単位を含み得る。
【0091】
そのような場合、第3の共単量体に由来する単位の含有量は、さまざまな第3の共単量体の総量に対して与えられる。
【0092】
好ましくは、共重合体Bは、上述の第1、第2および第3の共単量体以外の共単量体に由来する単位を含まない。
【0093】
好ましくは、共重合体Bは三元重合体であり、すなわち、3種の共単量体のみに由来する単位を含む。
【0094】
好ましい共重合体Bの例は、エチレン、メチルアクリレートおよび無水マレイン酸に由来する三元重合体;エチレン、エチルアクリレートおよび無水マレイン酸に由来する三元重合体;エチレン、ブチルアクリレートおよび無水マレイン酸に由来する三元重合体;エチレン、メチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートに由来する三元重合体;エチレン、エチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートに由来する三元重合体;エチレン、ブチルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートに由来する三元重合体である。
【0095】
共重合体Bは、好ましくはさまざまな共単量体、特に高圧ラジカル型の共重合により製造される。例えば、第2および第3の共単量体は、エチレンを用いて直接、特に高圧ラジカル重合により共重合され得る。
【0096】
特定の好ましい実施形態によれば、本発明による組成物、より詳細には共重合体Bは、酢酸ビニルに由来する単位を含まない。その理由は、前記単量体が有毒性を有し得ることである。その上、酢酸ビニルは熱押出に好適ではなく、この単量体に由来する単位を含む組成物からフィルムを形成することは、困難または不可能でさえあり得る。
【0097】
添加剤に関しては、任意選択で、0~10%好ましくは0~5%の重量含有量で存在する。例えば、1種または複数の添加剤は、0~0.5%;または0.5%~1%;または1%~2%;または2%~3%;または3%~4%;または4%~5%;または5%~6%;または6%~7%;または7%~8%;または8%~9%;または9%~10%の重量含有量で存在し得る。
【0098】
これらの添加剤には、例えば、二酸化チタンなどの不活性染料、充填剤、界面活性剤、架橋剤、成核剤、反応性化合物、無機または有機難燃剤、紫外線(UV)吸収剤または赤外線(IR)吸収剤、およびUVまたはIR蛍光剤が含まれ得る。典型的な充填剤には、タルク、炭酸カルシウム、粘土、シリカ、マイカ、ケイ灰石、長石、ケイ酸アルミニウム、アルミナ、アルミナ水和物、ガラスミクロスフェア、セラミックミクロスフェア、熱可塑性樹脂ミクロスフェア、バライト、および木粉が含まれる。
【0099】
これらの添加剤により、組成物の1つまたは複数の物理的特性を修正することが可能となる。
【0100】
フィルム
本発明はまた、上述の組成物を使用して得られるフィルムにも関する。
【0101】
このフィルムは、好ましくは押出により製造され得る。好ましくは、押出は、100~300℃、好ましくは150~300℃、例えば180~280℃の範囲の温度の熱で実施される。
【0102】
特定の実施形態によれば、フィルムは、本発明による組成物を基体上へ押出コーティングすることにより製造される。この場合、押出温度は、例えば250~300℃であり得る。基体は、アルミニウム、紙、板、セロハン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ポリビニリデン(PVDC)またはポリアクリロニトリル(PAN)樹脂をベースとするフィルム、これらのフィルムは任意選択で配向され、任意選択で金属化され、任意選択で物理的または化学的な手段により処理されており、および無機バリア薄層でコーティングされたポリエステルなどのフィルム(PET SiOxまたはAlOx)、および織布または不織布から選択され得る。フィルムが織布または不織布でない場合は、好ましくは穿孔され、特にミクロ穿孔される。
【0103】
他の実施形態によれば、フィルムは、本発明による組成物のフラットフィルム押出(「押出キャスト」)により製造され得る。この場合、押出温度は、例えば180~230℃であり得る。
【0104】
本発明によるフィルムは、防水通気性フィルムである。用語「防水通気性」とは、水蒸気に対して透過性であり、液体の水に対して不透過性であることを意味する。
【0105】
本発明によるフィルムは、2~100μm、好ましくは2~50μm、またはより好ましくは10~50μmの厚さを有し得る。
【0106】
一実施形態によれば、防水通気性フィルムは、50mm以下、好ましくは40mm、30mm、または25mm以下、好ましくは5~25mmの間の厚さを有する。
【0107】
上述の厚さにより、水蒸気に対する透過率に関して良好な特性がもたらされる。
【0108】
好ましくは、本発明によるフィルムは、24時間当たり、23℃、50%の相対湿度で、30μmのフィルム厚さに対して、少なくとも700g/m2の水蒸気に対する透過率(MVTR、「水蒸気透過度」の意)を有する。より好ましくは、フィルムの水蒸気に対する透過率MVTRは、23℃、50%の相対湿度で、30μmのフィルム厚さに対して、少なくとも800g/m2/24時である。詳細には、MVTR膜透過率は、23℃、50%の相対湿度で、30μmのフィルム厚さに対して、700~800g/m2/24時、または800~900g/m2/24時、または900~1000g/m2/24時、または1000~1200g/m2/24時、または1200~1500g/m2/24時、または1500~2000g/m2/24時、または2000~2500g/m2/24時、または2500~3000g/m2/24時、または3000~3500g/m2/24時、または3500~4000g/m2/24時、または4000~4500g/m2/24時、または4500~5000g/m2/24時の範囲であり得る。フィルムの水蒸気に対する透過率(MVTR)は、23℃、50%の相対湿度で、30μmのフィルム厚さに対して、標準ASTM E96 Bに準拠して測定され得る。
【0109】
本発明はまた、医療、衛生、旅行かばん類、製造、衣服、家庭用もしくは住宅用の機器、家具、カーペット、自動車、工業、特に工業用濾過、農業および/または建築事業における、本発明に記載のフィルムの使用にも関する。
【0110】
本発明はまた、少なくとも1種の材料および本発明による少なくとも1つの防水通気性フィルムを含む積層品(以下では、積層体)であって、材料が、例えば、織物、建材、包装材またはコーティングから選択され得る、積層品に関する。
【0111】
特別な実施形態によれば、材料は織物材料であり、前記フィルムは、織物材料の少なくとも1つの表面に、0.5~50N、好ましくは0.5~10Nの範囲内である剥離力で接着している。
【0112】
有利には、本発明によるフィルムは、特に、任意の公知のプロセスによって、好ましくはフィルムと織物の間に接着剤を使用することなく織物材料に適用される。
【0113】
挙げられ得る例には、組成物のフィルムの織物上への押出コーティング、またはフィルムが織物繊維に浸透し捕捉するのに十分な温度における、織物上もしくは2つの織物間へのフィルムの熱間プレス(熱積層化または積層化結合)が含まれる。
【0114】
代替の実施形態、または先行する実施形態(複数可)と組み合わせた実施形態によれば、接着シール、好ましくは水性接着シール、すなわち接着シール組成物に5重量%未満の溶媒を含むものを使用する結合を挙げることもできる。
【0115】
好ましくは、フィルムは、5~50mm、好ましくは約5~10mmの間の厚さを有する。有利には、押出コーティング用途では、10~50g/m2の熱可塑性樹脂フィルムが織物に適用される。
【0116】
本発明の本記載では、以下の定義が適用される:
- 用語「織物材料」または「織物」とは、繊維または微細繊維から作製された任意の材料、また少なくとも300の長さ/厚さ比により特徴付けられる多孔質膜を形成する紙およびボール紙を含む任意の材料も意味し、
- 用語「繊維」とは、少なくとも300の長さ/厚さ比により特徴付けられる任意の合成または天然の材料を意味し、
- 用語「微細繊維」とは、非常に長い任意の繊維を意味する。
【0117】
織物の中には、特に、繊維ラップ(ドレッシング、フィルタ、フェルト)、粗糸(ドレッシング)、糸条(縫う、編むまたは織るためのもの)、編地(直線状、円形、体の形に合うように編んだもの)、織地(伝統的、ジャカード、多重、両面、多軸、2.5D、3D)、および多くの他のものがある。
【0118】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記少なくとも1種の織物材料は、多孔質膜、織布または不織布の織物の形態である。
【0119】
有利には、前記少なくとも1種の織物材料は、合成繊維、特にバイオベースの原材料から得られた合成繊維、天然繊維、天然原材料から製造された人工繊維、鉱物繊維および/または金属繊維を含む。
【0120】
有利には、前記織物は、ポリアミド繊維、特にポリアミド11などの、バイオベースの原材料から得られた合成繊維を含む。有利には、前記織物はまた、綿、羊毛および/または絹などの天然繊維、天然原材料から製造された人工繊維、ならびに炭素、ガラス、シリカおよび/またはマグネシウムの繊維などの鉱物繊維も含む。
【0121】
織物は、特に、織布、編物、不織布またはカーペット表面などの織地または織物表面から選択される。これらの物品は、例えば、カーペット、ラグ、室内装飾用品、表面被覆、ソファー、カーテン、寝具類、マットレスおよび枕、衣類および医療用織物の材料であり得る。
【0122】
本発明による織物は、有利には、フェルト、フィルタ、フィルム、ガーゼ、布、ドレッシング、層、織地、編地、衣服物品、衣類、寝具物品、家具物品、カーテン、乗客コンパートメント被覆、機能性技術的な織物、ジオテキスタイルおよび/またはアグロテキスタイルから構成される。
【実施例】
【0123】
以下の実施例は、本発明を制限することなく例示するものである。
【0124】
フィルムの水蒸気に対する透過率および安定度限界(加工可能性)を評価するために、異なる組成物(A~G)から、以下の2つの方法でフィルムを調製した。
【0125】
水蒸気に対する透過率の評価のために、
さまざまな組成物(A~G)から、フラットフィルム押出方法(「押出キャスト」)によって、以下のパラメーターを有する押出機を使用して、フィルムを調製した:
- スクリュー直径:30mm;
- L/D比:25
- プロファイル:スクリュー-バリア;
- 金型:T字型 250μm幅および300μm エアギャップ。
【0126】
押出温度は180℃~230℃の間であり、共重合体のグレードに基づいて適応させた。
【0127】
水蒸気に対する透過率MVTRを、23℃、50%の相対湿度で、標準ASTM E96Bに準拠して測定した。
【0128】
得られたフィルムは、50μmの厚さを有する。
【0129】
加工可能性の評価のために、
さまざまな組成物(A~G)から、アルミニウム(37μm)/重合体支持体に対する押出コーティングにより、以下のパラメーターを有するCollin押出コーティングラインを使用して、フィルムを調製した:
- エアギャップ:70mm;
- スクリュー速度:80rpm
- 金型ギャップ:300μm。
【0130】
押出温度は280℃であった。
【0131】
フィルムは、50μmの初期厚さを有する(これは、ライン速度が増加するに伴い減少する)。
【0132】
したがって、フィルムの安定度限界を評価するために、ライン速度を、5m/分から不安定性が観察されるまで、徐々に増加させた。この不安定性は、フィルムの破損、フィルム上に形成される1つもしくは複数の穴、またはフィルム幅の不安定性であり得る。結果を確認するために、これらの観察を3回行い、平均値を得た。
【0133】
フィルム安定性限界は、不安定性が現れる速度および不安定性が現れるより上の速度に対応する。
【0134】
両方の場合に、
使用した三元重合体(少なくとも3種の共単量体に由来する単位を含む重合体)は以下の通りである:
【0135】
【0136】
【0137】
組成物A~Cは本発明によるものであり、組成物D~Iは比較例に対応する(組成物Dは本発明による共重合体Bを含むが、特許請求したものより高含有量を有し、組成物GはPEBA共重合体のみを含む)。
【0138】
組成物(A~I)を用いて得られたフィルム(A~I)の、水蒸気に対する透過率、また安定性限界の結果を以下に示す:
【0139】
本発明によるフィルム(A~C)が、水蒸気に対する高い透過率および良好な加工可能性(フィルムの安定性限界)の両方を有することが観察される。
【国際調査報告】