(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】急性腎障害の予測および早期診断
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20230517BHJP
C07K 17/00 20060101ALN20230517BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20230517BHJP
C07K 16/24 20060101ALN20230517BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20230517BHJP
C07K 16/38 20060101ALN20230517BHJP
C07K 16/22 20060101ALN20230517BHJP
C12N 15/115 20100101ALN20230517BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/53 P
C07K17/00 ZNA
C07K16/28
C07K16/24
C07K16/40
C07K16/38
C07K16/22
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561049
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2021059115
(87)【国際公開番号】W WO2021204910
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522392645
【氏名又は名称】サイオミクス ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100227008
【氏名又は名称】大賀 沙央里
(72)【発明者】
【氏名】グリースベック,アンネ
(72)【発明者】
【氏名】ローウィ,カミーユ
(72)【発明者】
【氏名】スクウィルブリース,フロリアン
(72)【発明者】
【氏名】クライン,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】シュローダー,クリストフ
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045AA40
4H045BA60
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、急性腎障害(AKI)の予測および早期診断に関する。方法は、AKIを発症する患者のリスク、または早期のAKIの存在と相関するバイオマーカーを提供する。本発明はまた、AKIの発生のリスクを予測するため、およびAKIを診断するためのデバイスおよびキットも提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.前記対象から得られた試料において、-0.7未満のlogFCを有するバイオマーカーであって、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、
b.前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記少なくとも1つのバイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含み、
前記対照量が、AKIを発症するリスクがない、および/またはAKIを有していない対象などの、健康な対象における各バイオマーカーの量である、方法。
【請求項2】
前記対照量と比較した前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の減少が、前記対象がAKIを有するか、またはAKIを発症するリスクがあることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象がAKIを発症するリスクがある、および/またはAKIを有するかどうかを予測するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料において、少なくとも活性化T細胞の核因子およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料において、少なくともインターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料において、少なくとも活性化T細胞の核因子およびインターフェロンアルファ-1/13、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料において、活性化T細胞の核因子およびヒアルロン酸媒介性運動性受容体、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が尿、血液、血漿または血清試料である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、薬物の投与、薬物の投与の回避、造影媒体の注入または外科的介入などの、計画された医学的介入の前に採取されたものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1、2、3つ以上のさらなるバイオマーカーが前記試料において決定され、さらなるバイオマーカーが、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または予測バイオマーカーと診断バイオマーカーの組合せのうちの1つ以上から選択され、
- 前記タンパク質バイオマーカーが、CD9抗原、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、インターフェロンアルファ-1/13、バシギン、C-Cモチーフ、ケモカイン7、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、カスパーゼ-9、トランスフォーミング増殖因子-ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチン、II型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、CTPシンターゼ1、CD139、Max二量体化タンパク質4、膜貫通タンパク質54、アクチン、細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質、Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、インターロイキン-8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1(配列番号1~304ならびにCD15、CD139)、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記男性患者バイオマーカーが、CD15、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、ラミン-B1、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、Dickkopf関連タンパク質2、Krueppel様因子8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、および腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記予測バイオマーカーが、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、バシギン、C-Cモチーフケモカイン7、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、P-セレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、アクチン細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、インターロイキン-8、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質、LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子細胞質4、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニット、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメイン、クラス2、転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ニューロトロフィン-4、インターロイキン-18結合タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記診断バイオマーカーが、サイトカイン受容体様因子2、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、インターフェロンアルファ-1/13、カスパーゼ-9、インターロイキン-18、インターロイキン-7、CTPシンターゼ1、C-Cモチーフケモカイン7、CD139、エオタキシン、Max二量体化タンパク質4、インターロイキン-15、RNA結合タンパク質3、膜貫通タンパク質54、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、増殖停止特異的タンパク質6、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、カスパーゼ-8、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、およびE3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィンおよび軟骨オリゴマー基質タンパク質、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカーが、サイトカイン受容体様因子2、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン7、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、インターロイキン-18、インターロイキン-7、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、およびRNA結合タンパク質3ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオマーカーの前記断片、アイソフォームおよび/またはバリアントが、配列の全長にわたって前記バイオマーカーとの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定が、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)または抗体アレイ、特に、平面抗体マイクロアレイまたはビーズに基づく抗体マイクロアレイなどのイムノアッセイデバイスを使用することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のためのデバイスであって、
- 少なくとも1つのバイオマーカーまたはそのバリアントもしくは断片のための検出剤を含み、前記検出剤が、試料における前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定を可能にする、前記対象の前記試料のための分析ユニット、および
- データ処理ユニットとデータベースとを含む評価ユニットであって、前記データベースが、保存された対照を含み、前記データ処理ユニットが、前記分析ユニットによって決定された前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記保存された対照との比較を実行することによって、前記予測を確立することができる、評価ユニット
を含み、
- 前記バイオマーカーが、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチンならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、デバイス。
【請求項14】
少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するための検出剤、およびAKIの予測または早期診断を確立するための評価説明書を含み、前記バイオマーカーが、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチンならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、キット。
【請求項15】
前記検出剤が、抗体およびアプタマーからなる群から選択される、請求項14に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、臓器不全の予測および早期診断の分野に関する。一態様では、本発明は、早い時点で急性腎障害(AKI)のリスクを予測する、および/またはAKIを診断するための方法に関する。
【0002】
本発明は、表1に示されるバイオマーカーから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、前記少なくとも1つのバイオマーカーの量を、前記少なくとも1つのバイオマーカーに関する対照量と比較するステップとを含み、それによって、AKIの発生のリスクが予測される、および/またはAKIが適時に診断される。本発明者らは、異なるセットのバイオマーカーを同定した。
【0003】
一態様では、本発明は、医学的介入時に早い時点でAKIのリスクを予測する、および/またはAKIを診断するための方法に関する。より好ましくは、本発明は、外科的介入時に早い時点でAKIのリスクを予測する、および/またはAKIを診断するための方法に関する。より好ましくは、本発明は、固形臓器移植(sTx)時および/または心臓手術時に早い時点でAKIのリスクを予測する、および/またはAKIを診断するための方法に関する。より好ましくは、本発明は、肺移植(LuTx)時、腎臓移植時、心臓弁修復もしくは置換時、冠動脈バイパスグラフト(CABG)時、経心筋レーザー血行再建術時および/または心臓移植時に早い時点でAKIのリスクを予測する、および/またはAKIを診断するための方法に関する。
【0004】
本発明はまた、患者の転帰を改善するための療法計画の変化について対象を階層化するための方法も企図する。方法は、腎臓機能を安定化するための追加の薬剤に関する階層化を含んでもよい。ある実施形態では、本発明は、特定の人へのその適用性を決定するための、治療薬に対するコンパニオン診断として有用な診断検査(コンパニオン診断検査)を企図してもよい。さらに、本明細書に開示される方法を実行するための診断デバイスおよびキットが包含される。
【背景技術】
【0005】
腎臓/AKI
腎臓は、体内からの水および溶質の排出を担う。その機能としては、酸-塩基平衡の維持、電解質濃度の調節、血液量の制御、および血圧の調節が挙げられる。そのため、障害および/または疾患による腎臓機能の喪失は、大きな罹患率および死亡率をもたらす。腎疾患および/障害は、急性および/または慢性であり得る。急性腎障害(AKI)は、濾過能力の喪失と共に腎機能の急激な(典型的には、約48時間から1週間以内に検出される)低下である。これは、通常は、腎臓によって排出される窒素および非窒素老廃物の保持をもたらし、酸-塩基不均衡および電解質不均衡をもたらす。これは次いで、尿排出量の変化、水分過剰ならびに血清腎滞留パラメーターであるクレアチニンおよび尿素などの非窒素および窒素代謝老廃物の増加をもたらす。AKIに伴う症状は、非常に多様であり、尿産生の減少、悪心および嘔吐、高血圧、腹痛および胸部痛、浮腫、息切れ、精神錯乱、発作または昏睡、精神錯乱または疲労を含み得る。しかしながら、AKIは、特に、早期では、症状がないこともある。AKIは、ICD-10(2019)による診断コードN17.0、N17.1、N17.2、N17.8およびN17.9を含む。
【0006】
病因群
臨床的には、AKIは、3つの病因群に分類することができる:
腎前性 - 大出血、低血圧および虚血再かん流障害に起因する重症の腎血流量の低下に対する適応反応、
腎性または内因性 - 腎臓の細胞障害性、虚血性もしくは炎症性障害に対する反応、または構造的および機能的損傷を伴う、腎臓に影響する自己免疫疾患(すなわち、糸球体腎炎、間質性腎炎その他)、ならびに
腎後性 - 尿路の機械的閉塞(すなわち、前立腺肥大、閉塞性尿路疾患、結石)の結果。
【0007】
腎前性AKIは、出血などの状態の結果生じる血液量減少;鬱血性心不全の結果生じる心拍出量の低下;敗血症または血管収縮剤に由来する腎臓血管収縮などの状態の結果生じる血管抵抗性の低下の結果であり得る。腎前性AKIは、正しく処置しない場合、内因性AKIをもたらすことが多い。
【0008】
AKIの腎病因は、非常に多様であり、腎臓の4つ全ての構造に影響することがあり、これは、損傷が管性、糸球体性、間質性または血管性であり得ることを意味する。AKIの腎病因の主因は、例えば、手術の結果としての虚血;例えば、放射線造影媒体またはある特定の型の抗生物質から生じる腎臓毒性;急性糸球体腎炎;急性間質性腎炎または例えば、悪性高血圧に起因する腎臓の血管障害である。
【0009】
腎後性AKIの原因は、例えば、前立腺がんまたは婦人科がん、線維症または尿管弁疾患または腎臓結石に起因し得る、尿流の閉塞を特徴とする。
【0010】
AKIの有病率
西半球では、AKIは、主に院内で起こる疾患になっており、それは重病患者における、および大手術後の、非常に一般的な臨床状態である。実際、AKIは、入院患者の5~7%において生じる(Basile et al., 2012)。さらに、AKIの発症率は、全ての救急ケア入院について5~7.5%であり、集中治療室(ICU)の全患者の最大で52.6%を占める(Fuhrman et al., 2018)。外科的介入は、AKIの主要な危険因子であり、50%の患者が、周術期の病院滞在中にAKIに直面する(Hobson et al., 2016)。固形臓器tx(tx=移植)後、周術期における発生率は、25%(腎臓tx後)から65%(肝臓tx後)までの間である(Kalisvaart et al., 2018)。肺tx(LuTx)後、AKIの発生率は、50~65%である(Wehbe et al., 2013;Wehbe et al., 2012)。さらに、造血細胞移植時のAKIの発生率は、最大で70%である(Kogon & Hingorani, 2010)。男性におけるAKIの発生率は、女性におけるそれの1.6倍高い(Brown et al., 2016)。AKIはまた、患者の罹患率および病院滞在の長さも増加させる。さらに、慢性腎臓病(CKD)などのAKIの長期的結果は、透析、腎代替療法(RRT)または腎臓移植の必要性をもたらし得る。したがって、AKIは、大きな医療費と関連する。
【0011】
AKIの分類
AKIを定義し、検出するための初めての分類システムは、2002年に出現し、2004年にRIFLE(リスク、障害、不全、腎臓機能の喪失、およびESKD-末期腎臓病)分類として公開された(Bellomo et al., 2004)。RIFLE分類は、3つの臨床パラメーター(SCreat:血清クレアチニンまたはGFR:糸球体濾過率およびUO:尿排出量)に基づくものであり、以下の通り、3つの重症度クラス(リスク、障害および不全)および2つの転帰クラス(腎臓機能の喪失および末期腎臓病、ESKD)を定義する:
「リスク」:6時間でSCreatの1.5倍の上昇またはGFRの25%を超える減少および0.5ml/kg/h未満のUO;
「障害」:12時間でSCreatの2.0倍の上昇またはGFRの50%を超える減少および0.5ml/kg/h未満のUO;
「不全」:24時間でSCreatの3.0倍の上昇または4mg/dl以上のSCreatおよびGFRの75%を超える減少および0.3ml/kg/h未満のUOまたは少なくとも12時間にわたる無尿;
「喪失」:4週間を超える腎代替療法の持続的必要性;
「ESKD」:3ヶ月を超える透析の必要性。
【0012】
例として、6時間で0.5ml/kg/hを超えるUOおよびSCreatの2倍の上昇を示す患者は、障害クラスに分類されるであろう。RIFLE分類は、軽症クラス(リスクおよび障害)に対する高い感度および低い特異度をもたらす、すなわち、腎不全を有しない患者が、リスククラスに誤って含まれるであろう。反対に、末期腎臓病クラスは、高い特異度および低い感度を有する。したがって、それは一部の患者を見落とすであろう。
【0013】
RIFLE分類は、様々な臨床設定におけるAKIの診断および予後診断の観点では大いに正当化されてきたが(Lopes & Jorge, 2013)、それはいくつかの重要な制限を有する。これらの制限は、ベースラインSCreat値の要件、尿排出量測定の限定された精度および糖尿病などの尿排出量測定におけるいくつかの交絡因子の役割、利尿剤の使用または水分補給状態である。
【0014】
AKI患者の転帰をさらに改善する試みにおいて、AKI Networkは、2007年に新しい分類を提唱した(Mehta et al., 2007)。この分類では、2つの転帰クラスを除去し、リスク、障害および不全クラスを、カテゴリーAKIN1、AKIN2およびAKIN3によって置き換えた。さらに、RIFLE分類と比較して一部の改変を加えた:AKIを診断する前に、十分な水分補給状態が達成されるものとし、尿路閉塞は除外されるものとする。AKIN1クラスは、それがベースラインから1.5倍に達しない場合であっても、0.3mg/dlより多い、またはそれに等しいSCreatの上昇を含むため、RISKクラスと比較して広がっている。さらに、臨床パラメーターとしてのGFRの使用は、これが分類システムに対して追加の複雑性を付加するため、廃棄された。
【0015】
Mehta et al., 2007によって提唱されたAKIに関するAKIN分類
【0016】
【0017】
本発明は、患者を2つの群:AKINステージ1、2および3に対応するAKI;ならびにAKIN分類によるAKIの兆候を示さない患者に対応する、対照に分類するためのAKIN分類システムに依拠する。
【0018】
AKIN分類システムの主な欠点の1つは、臨床パラメーターの上昇(SCreat)または低下(UO)が48h以内に起こる場合にのみAKIを診断することができるという事実である。したがって、より長い期間の中で発症するAKIを有する患者は、この分類システムによって見落とされることがある。AKIN分類は、RIFLE分類のわずかに改変されたバージョンであり、その制限の一部は、RIFLE分類のものと非常に類似している。両分類システムの主な一般的制限は、患者のステージングに使用される臨床パラメーターが、性別、年齢またはボリュームステータスなどの様々な交絡態様によって影響され、限定された信頼性をもたらすという事実である。さらに、これらの分類システムは、AKIの早期検出を可能にせず、今日、手術またはICU入院前にAKIの個々のリスクの予測を可能にする利用可能なアッセイは存在しない。
【0019】
AKIの分野におけるバイオマーカー
今までのところ、AKIの個々のリスクを評価するために記載されているバイオマーカーはほんのわずかである。AKIの診断に関して言えば、現在のAKI診断法は、主に血清クレアチニン上昇および糸球体濾過率または尿排出量の減少のモニタリングに基づく。これらのパラメーターは、性別、年齢、およびボリュームステータスによって影響され、したがって、それらは早期検出にとっては不十分である。
【0020】
現在、AKIの予測および診断のための議論されているバイオマーカーは、NGAL、Kim-1、IL18、L-FABP、AGTならびにTIMP-2およびIGFBP7であり、後者は両方とも、米国食品医薬品局(FDA)に認可されたNephroCheck(登録商標)(Astute Medical,Inc.)検査によって評価される。NephroCheck(登録商標)は、信頼性が限られており(感度76%、偽陽性率約50%)、他のバイオマーカーは、一過性にのみ(NGAL)、または後期段階で脱調節される(KIM1)という欠点を有する。
【0021】
かくして、AKIの予測および早期診断のためのより信頼性の高いバイオマーカーが依然として強く必要とされる。さらに、AKIを有する対象の診断およびさらなる個別化医療は、患者の転帰の改善および医療制度の費用効果にとって有益であろう。
【0022】
遺伝子発現の最終生成物または作用生成物としてのタンパク質は、細胞のあらゆる活動において極めて重要な役割を果たす。血漿、尿および組織抽出物などの多くの体液を介して容易に入手可能なタンパク質は、臨床分析のための即時の選択肢を提供する。プロテオミック技術は、様々な適応症における臨床的に関連するバイオマーカーの探索にとって重要である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、AKIを予測する方法および早期のAKIを診断する方法である。
【0024】
方法
本発明の方法は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクの予測またはAKIの早期診断にとって好適であり、対象から得られる試料において、少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定すること、およびバイオマーカーの量と、バイオマーカーに関する対照量とを比較することを含む。好ましくは、本発明のバイオマーカーは、ヒトタンパク質およびヒト炭水化物を含む、ヒト起源のものである。
【0025】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、
CD9抗原、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、インターフェロンアルファ-1/13、バシギン、C-Cモチーフ、ケモカイン7、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、カスパーゼ-9、トランスフォーミング増殖因子-ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、CTPシンターゼ1、CD139、Max二量体化タンパク質4、膜貫通タンパク質54、アクチン細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質、Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、インターロイキン-8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアント(この一覧は配列番号1~304ならびにCD15およびCD139に対応する)
からなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと;
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含む方法に関する。
【0026】
本発明者らは、92種のバイオマーカーを同定した(表1に示される)。それぞれ、そのうちの79種は、AKIの発生のリスクを予測するのに特に有用であることが証明され(表2に示される)、そのうちの26種は、AKIの早期診断にとって特に有用であることを証明した(表3に示される)。12種のバイオマーカーは、AKIの発生のリスクの予測と、AKIの早期診断との両方にとって特に有用であることを証明した(表4に示される)。35種のバイオマーカーは、AKIとの関連においてより高い存在量を示し(表5に示される)、68種のバイオマーカーは、AKIとの関連においてより低い存在量を示した(表6に示される)。
【0027】
ある実施形態では、方法は、AKIを有するか、またはAKIを発症するリスクがある対象において下方調節されるバイオマーカーの量を決定することを含む。ある実施形態では、バイオマーカーは、-0.7未満のlogFCを有する。ある実施形態では、方法は、AKIを有するか、またはAKIを発症するリスクがある対象において上方調節されるバイオマーカーの量を決定することを含む。ある実施形態では、バイオマーカーは、少なくとも0.7のlogFCを有する。
【0028】
「logFC」は、底を2として算出される対数倍率変化と定義され、AKI患者と、AKIを有しない患者との間のタンパク質存在量/量の差異を表す。実施例のセクションに開示されるものなどの、本明細書に開示される抗体マイクロアレイを使用して、量を決定することができる。logFC=1とは、AKI患者が、AKIを有しない患者と比較して、平均で21=2倍高い存在量のバイオマーカーを有することを意味する。logFc=-1は、AKIを有しない患者と比較してAKI患者におけるバイオマーカーの存在量が2-1=1/2であることを表す。
【0029】
本明細書に開示される方法は全て、バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量との比較に基づいて、AKIを発症する対象のリスクを予測するステップを含んでもよい。AKIを有する対象において上方調節されるバイオマーカーについては、対照量と比較したバイオマーカーの量の増加は、対象がAKIを有することを示し得る。AKIを発症するリスクがある対象において上方調節されるバイオマーカーについては、対照量と比較したバイオマーカーの量の増加は、対象がAKIを発症するリスクがあることを示し得る。AKIを有する対象において下方調節されるバイオマーカーについては、対照量と比較したバイオマーカーの量の減少は、対象がAKIを有することを示し得る。AKIを発症するリスクがある対象において下方調節されるバイオマーカーについては、対照量と比較したバイオマーカーの量の減少は、対象がAKIを発症するリスクがあることを示し得る。
【0030】
試料中のバイオマーカーの量の決定は、バイオマーカー検出を含んでもよい。バイオマーカー検出は、バイオマーカーを結合剤に結合させることを含んでもよい。結合剤は、各バイオマーカーに特異的に結合するタンパク質から選択することができる。そのようなタンパク質の例としては、抗体が挙げられる。別の例は、バイオマーカーが受容体に対するリガンドである場合の受容体である。結合剤を、基質上に固定することができる。例えば、本発明のバイオマーカーの多くを、固定された抗体を使用して検出することができる。
【0031】
本明細書に記載のバイオマーカーの一部は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンドである。これらのマーカーについて、固定されたFc-腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B-融合タンパク質を、抗体の使用に対する代替手段としてこの受容体のリガンドを捕捉するために使用することができる。リガンドは、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファ(配列番号251~252)を含む。そのようなリガンドの例としては、表1内のマーカー番号5、表2内のマーカー番号4、および/または表6内のマーカー番号5が挙げられる。全てのこれらのバイオマーカーの有用性に関する証拠は、実施例のセクションに与えられる。一般に、これらのバイオマーカーは全て、AKIの予測および診断にとって有用である。
【0032】
ある実施形態では、方法は、AKIとの関連において上方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定することを含む。この実施形態では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、
インターフェロンアルファ-1/13、細胞腫瘍抗原p53、カスパーゼ-9、インターロイキン7、インターロイキン-18、血清アミロイドP成分、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、ケラチンII型細胞骨格8、エオタキシン、Max二量体化タンパク質4、インターロイキン-15、CTPシンターゼ1、サイトカイン受容体様因子2、RNA結合タンパク質3、膜貫通タンパク質54、C-Cモチーフケモカイン7、ホメオボックスタンパク質Hox-C11、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、高移動度群タンパク質B2、細胞間接着分子1、補体崩壊促進因子、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、カスパーゼ-8、増殖停止特異的タンパク質6、間質コラゲナーゼ、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、亜鉛フィンガータンパク質593、エンドセリン-1受容体、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、POUドメインクラス2転写因子1、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、ガレクチン-4、主要プリオンタンパク質、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィンおよび軟骨オリゴマー基質タンパク質、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアント
からなる群から選択されるAKIとの関連において上方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含む方法に関する。
【0033】
これらのバイオマーカーは、AKIとの関連においてより高い存在量を示した。列挙された上方調節されるバイオマーカーは、それぞれ、配列番号13、69~77、80~83、27~29、25~26、122、127~128、102~103、61、131、98~99、129~130、65~67、121、132~134、18、145、153、184、144、146、137~143、190、191~193、52~60、93~97、112、223~224、233、218~222、198~212、225、234~235、241~246、249~250、30、152、253~255、259~265、271~276、および282~294に対応する。
【0034】
本明細書で使用される場合、「AKIとの関連において」上方調節または下方調節されるバイオマーカーは、AKIを発症するリスクがある、または(例えば、早期)AKIを有する対象において、バイオマーカーがそれぞれ上方または下方調節されることを意味する。
【0035】
ある実施形態では、方法は、AKIとの関連において下方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定することを含む。この実施形態では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、
プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2、C-Cモチーフケモカイン7、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、主要プリオンタンパク質、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、インターロイキン-7、バシギン、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、ラミン-B1、単球分化抗原CD14、エオタキシン、カスパーゼ-8、C-Cモチーフケモカイン3、脳由来神経栄養因子、C-Cモチーフケモカイン5、サイトカイン受容体様因子2、白血球表面抗原CD47、ロイコシアリン、間質コラゲナーゼ、メラノフィリン、ミエロブラスチン、Dickkopf関連タンパク質3、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導性タンパク質ig-h3、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、増殖停止特異的タンパク質6、RNA結合タンパク質3、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、インターロイキン-15、テトラスパニン-16、マトリライシン、インターフェロンアルファ-1/13、CD139、活性化T細胞の核因子、L-セレクチン、アクチン細胞質1、Krueppel様因子8、インターロイキン-12サブユニットアルファ、インターロイキン-8、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、カスパーゼ-3、ガレクチン-4、ムチン-5B、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、CUEドメイン含有タンパク質2、シトクロムP450 1B1、ソマトスタチン受容体4型、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ニューロトロフィン-4、インターロイキン-18結合タンパク質、ハプトグロビン、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアント
からなる群から選択される、AKIとの関連において下方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含む方法に関する。
【0036】
これらのバイオマーカーは、AKIにおいてより低い存在量を示した。列挙された下方調節されるバイオマーカーは、それぞれ、配列番号1、2~4、6~12、5、19、20、18、43~46、31~38、30、39~40、27~29、14~17、21~24、25~26、41~42、78~79、68、64、61、52~60、62、47~51、63、65~67、85~88、104、112、107~111、120、92、105~106、84、100~101、114~119、93~97、121、89~91、98、123~126、113、13、160~183、154~155、135、148~151、147、194、156~158、136、152、159、185、186、188~189、195~197、226~231、232、214~217、213、236、247、237、238~240、248、251~252、256~258、266~270、277~281、および295~304、ならびにCD15およびCD139に対応する。
【0037】
以下の方法は、好ましい方法である。好ましい方法において使用されるバイオマーカーのセットは、AKIの発生のリスクの予測および/またはAKIの早期診断にとって特に有用であることが示されている。以下の推移においては、ステップa.のみが示される。好ましくは、方法は、ステップa.の後に、以下のステップも含む:
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップ。
【0038】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD15およびインターフェロンアルファ-1/13、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、6の優れた品質スコアを示している。
【0039】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、活性化T細胞の核因子、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、ハプトグロビン、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、6の優れた品質スコアを示している。
【0040】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2およびヒアルロン酸媒介性運動性受容体、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5の優れた品質スコアを示している。
【0041】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体様因子2およびラミン-B1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、4の非常に高い品質スコアを示している。
【0042】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、主要プリオンタンパク質、インターロイキン-18結合タンパク質、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、4の非常に高い品質スコアを示している。
【0043】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分およびテトラスパニン-16、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3の高い品質スコアを示している。
【0044】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD99抗原、CD99R抗原、インターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3の高い品質スコアを示している。
【0045】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、Dickkopf関連タンパク質2およびインターフェロンアルファ-1/13、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0046】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、ニューロトロフィン-4および補体因子D、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0047】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、Dickkopf関連タンパク質2、サイトカイン受容体様因子2および血清アミロイドP成分、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の非常に高い乃至優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0048】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15およびヒアルロン酸媒介性運動性受容体、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる膜型バイオマーカーでもある。
【0049】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、補体因子Dおよびインスリン様増殖因子結合タンパク質1ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~7の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる膜型バイオマーカーでもある。
【0050】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、ミエロブラスチンおよびテトラスパニン-16、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の非常に高い乃至優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる膜型バイオマーカーでもある。
【0051】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD99抗原、およびCD99R抗原、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の非常に高い乃至優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる膜型バイオマーカーでもある。
【0052】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、メラノフィリン、ミエロブラスチン、血清アミロイドP成分、Krueppel様因子8、活性化T細胞の核因子、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、プレラミン-A/C、シトクロムP450 1B1、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質およびPOUドメイン、クラス2、転写因子1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、異なる腎臓発現を示している。異なる腎臓発現は、本発明者らによって観察される腎臓基礎構造内の比存在量を指す。これは、マーカーの比腎機能を示し、それらを腎障害に関するバイオマーカーとして特に好適なものにする。
【0053】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15およびミエロブラスチン、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。それらはまた、異なる腎臓発現を示している。異なる腎臓発現は、本発明者らによって観察される腎臓基礎構造内の比存在量を指す。これは、マーカーの比腎機能を示し、それらを腎障害に関するバイオマーカーとして特に好適なものにする。さらに、これらの3つのタンパク質は、白血球によって発現される;より具体的には、それらは、細胞膜上または多形核白血球顆粒中に位置する。AKI中の腎臓損傷に対する免疫応答は、腎機能の長期的欠如および腎障害の進行に対する重要な寄与因子であるため、白血球は急性腎障害の病因に関与することが知られているので、これは特に重要である(Kinsey & Okusa, 2012)。
【0054】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。
【0055】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD15、ラミン-B1、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、Dickkopf関連タンパク質2、Krueppel様因子8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型および主要壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、男性患者において示差的に豊富なものとして検出されたが、男性患者におけるAKIの予測および/または診断にとって特に有用である。
【0056】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD15、ラミン-B1およびMAP/微小管親和性調節キナーゼ4、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。それらはまた、男性患者において示差的に豊富なものとして検出されたが、男性患者におけるAKIの予測および/または診断にとって特に有用である。
【0057】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、テトラスパニン-16、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、テトラスパニンファミリーの内在性膜タンパク質に属する。それらは様々なタンパク質および他のテトラスパニンと相互作用し、眼、腎臓および免疫系を含むいくつかの臓器の正常な発達および機能にとって必要である(Charrin et al., 2014)。
【0058】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、血清アミロイドP成分、L-セレクチンおよびガレクチン-4、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、レクチンファミリーに属する。レクチンは、特異的炭水化物結合タンパク質であり、その主な機能の1つは、細胞間接触を容易にすることである。例えば、セレクチンは、血管壁での白血球の接着およびシグナル伝達に関与し、これは、炎症および免疫応答の間の重要なステップである(McEver, 2015)。
【0059】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、微小管結合タンパク質に属する。腎臓尿細管上皮細胞では、微小管細胞骨格が、細胞極性の維持において重要な役割を果たし、それによって、腎機能に影響する(Drubin & Nelson, 1996)。
【0060】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性を示している。セリン/トレオニンキナーゼは、腎尿細管輸送の調節を含む様々なシグナル伝達経路における重要なメディエーターである(Satoh et al., 2015)。
【0061】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、タンパク質チロシンホスファターゼ活性を示している。タンパク質チロシンリン酸化および脱リン酸化シグナル伝達は、有足細胞の機能および修復において重要である(Nezvitsky et al., 2014;Hsu et al., 2017)。
【0062】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CTPシンターゼ1およびCADタンパク質、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、ピリミジン生合成に関与する。ピリミジンは、DNA修復、遺伝子転写、タンパク質合成、および細胞代謝のための基礎である。
【0063】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、インターフェロンアルファ-1/13およびサイトカイン受容体様因子2、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、Jak-STATシグナル伝達経路のタンパク質である。Janusキナーゼ/シグナル伝達因子および転写アクチベーター(JAK/STAT)経路、特に、STAT1およびSTAT3は、腎線維症および糖尿病性ネフロパシーなどの腎臓病の腎細胞および非腎細胞において活性化されることが示された(Chuang & He, 2010;Pang et al., 2010)。
【0064】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16、およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。
【0065】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、活性化T細胞の核因子、CD99R抗原、ガレクチン4、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、ハプトグロビン、ウテログロビンならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、AKIを発症するリスクの上昇または早期のAKIの診断と関連する、少なくとも0.5、好ましくは、少なくとも1.0の、対象の予測状態と診断状態との間の大きな絶対デルタlogFCを示す。
【0066】
診断方法の実施形態では、本明細書に列挙されるバイオマーカーに加えて、さらなるバイオマーカーが試料中で決定される。さらなるバイオマーカーは、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカーから選択される1、2、3つ以上のバイオマーカーであってもよい。
【0067】
予測方法
以下の方法は、好ましい予測方法、すなわち、対象がAKIを発症するリスクを決定するために使用される方法である。好ましい方法において使用されるバイオマーカーのセットは、AKIの発生のリスクの予測にとって特に有用であることが示されている。以下の推移においては、ステップa.のみが示される。好ましくは、方法は、ステップa.の後に、以下のステップも含む:
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップ。
【0068】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、差し迫ったAKIとの関連において上方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含み、上方調節される予測バイオマーカーが、
細胞腫瘍抗原p53、血清アミロイドP成分、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、ケラチンII型細胞骨格8、ホメオボックスタンパク質Hox-C11、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、高移動度群タンパク質B2、細胞間接着分子1、補体崩壊促進因子、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、亜鉛フィンガータンパク質593、エンドセリン-1受容体、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、POUドメインクラス2転写因子1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアント
からなる群から選択される、方法に関する。
【0069】
列挙された上方調節される予測バイオマーカーは、AKIの発生のリスクの予測にとって特に有用であることを証明した。これらのバイオマーカーは、それぞれ、配列番号69~77、122、127~128、102~103、145、153、184、144、146、137~143、223~224、233、218~222、198~212、225、および241~246に対応する。
【0070】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、差し迫ったAKIとの関連において下方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含み、下方調節される予測バイオマーカーが、
CD15、CD99抗原、CD99R抗原、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2、C-Cモチーフケモカイン7、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、主要プリオンタンパク質、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、インターロイキン-7、バシギン、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、ラミン-B1、単球分化抗原CD14、エオタキシン、カスパーゼ-8、C-Cモチーフケモカイン3、脳由来神経栄養因子、C-Cモチーフケモカイン5、サイトカイン受容体様因子2、白血球表面抗原CD47、ロイコシアリン、間質コラゲナーゼ、メラノフィリン、ミエロブラスチン、Dickkopf関連タンパク質3、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導性、タンパク質ig-h3、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、増殖停止特異的タンパク質6、RNA結合タンパク質3、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、インターロイキン-15、テトラスパニン-16、マトリライシン、インターフェロンアルファ-1/13、活性化T細胞の核因子、L-セレクチン、アクチン細胞質1、Krueppel様因子8、インターロイキン-12サブユニットアルファ、インターロイキン-8、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、カスパーゼ-3、ガレクチン-4、ムチン-5B、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、CUEドメイン含有タンパク質2、ソマトスタチン受容体4型、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ニューロトロフィン-4、インターロイキン-18結合タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアント
からなる群から選択される、方法に関する。
【0071】
列挙された下方調節される予測バイオマーカーは、AKIの発生のリスクの予測にとって特に有用であることを証明した。これらのバイオマーカーは、それぞれ、配列番号2~4、6~12、5、19、20、18、43~46、31~38、30、39~40、27~29、14~17、21~24、25~26、41~42、78~79、68、64、61、52~60、62、47~51、63、65~67、85~88、104、112、107~111、120、92、105~106、84、100~101、114~119、93~97、121、89~91、98、123~126、113、13、160~183、154~155、135、148~151、147、194、156~158、136、152、159、185、195~197、226~231、232、214~217、213、247、237、238~240、248、251~252、256~258、266~270、277~281、および295~304、ならびにCD15に対応する。
【0072】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD15およびインターフェロンアルファ-1/13、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、6の優れた品質スコアを示している。
【0073】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、活性化T細胞の核因子およびインターフェロンアルファ-1/13、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。
【0074】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5の優れた品質スコアを示している。
【0075】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、インターフェロンアルファ-1/13およびニューロトロフィン-4、それらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5の優れた品質スコアを示している。ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体様因子2およびラミン-B1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、4の非常に高い品質スコアを示している。
【0076】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、インターロイキン-18結合タンパク質、それらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、4の非常に高い品質スコアを示している。ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られが試料において、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分およびテトラスパニン-16、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3の高い品質スコアを示している。
【0077】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD99抗原、CD99R抗原、CUEドメイン含有タンパク質2、インターロイキン-16、インターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3の高い品質スコアを示している。
【0078】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、Dickkopf関連タンパク質2およびインターフェロンアルファ-1/13、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0079】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、ニューロトロフィン-4およびインターフェロンアルファ-1/13、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0080】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、Dickkopf関連タンパク質2、サイトカイン受容体様因子2、および血清アミロイドP成分、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0081】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる膜型バイオマーカーでもある。
【0082】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、ミエロブラスチン、テトラスパニン-16、CD99抗原、およびCD99R抗原、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる膜型バイオマーカーでもある。
【0083】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、メラノフィリン、ミエロブラスチン、Krueppel様因子8、活性化T細胞の核因子、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、プレラミン-A/C、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、異なる腎臓発現を示している。異なる腎臓発現は、本発明者らによって観察される腎臓基礎構造内の比存在量を指す。これは、マーカーの比腎機能を示し、それらを腎障害に関するバイオマーカーとして特に好適なものにする。
【0084】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、CD15、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。それらはまた、異なる腎臓発現を示している。異なる腎臓発現は、本発明者らによって観察される腎臓基礎構造内の比存在量を指す。これは、マーカーの比腎機能を示し、それらを腎障害に関するバイオマーカーとして特に好適なものにする。
【0085】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD15、ラミン-B1、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、Dickkopf関連タンパク質2、Krueppel様因子8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、プレラミン-A/C、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、CUEドメイン含有タンパク質2、ソマトスタチン受容体4型、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、POUドメインクラス2転写因子1、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、男性患者において示差的に豊富なものとして検出されたが、男性患者におけるAKIの予測にとって特に有用である。
【0086】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD15、ラミン-B1、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。それらはまた、男性患者において示差的に豊富なものとして検出されたが、男性患者におけるAKIの予測にとって特に有用である。
【0087】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CD9抗原、テトラスパニン-16、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、テトラスパニンファミリーの内在性膜タンパク質に属する。それらは様々なタンパク質および他のテトラスパニンと相互作用し、眼、および免疫系を含むいくつかの臓器の正常な発達および機能にとって必要である(Charrin et al., 2014)。
【0088】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、血清アミロイドP成分、L-セレクチンおよびガレクチン-4、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、レクチンファミリーに属する。レクチンは、特異的炭水化物結合タンパク質であり、その主な機能の1つは、細胞間接触を容易にすることである。例えば、セレクチンは、血管壁での白血球の接着およびシグナル伝達に関与し、これは、炎症および免疫応答の間の重要なステップである(McEver, 2015)。
【0089】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、微小管結合タンパク質に属する。腎臓尿細管上皮細胞では、微小管細胞骨格が、細胞極性の維持において重要な役割を果たし、それによって、腎機能に影響する(Drubin & Nelson, 1996)。
【0090】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性を示している。セリン/トレオニンキナーゼは、腎尿細管輸送の調節を含む様々なシグナル伝達経路における重要なメディエーターである(Satoh et al., 2015)。
【0091】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CADタンパク質、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントの群から選択される1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、ピリミジン生合成に関与する。ピリミジンは、DNA修復、遺伝子転写、タンパク質合成、および細胞代謝のための基礎である。
【0092】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、インターフェロンアルファ-1/13、サイトカイン受容体様因子2、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの予測バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、Jak-STATシグナル伝達経路のタンパク質である。Janusキナーゼ/シグナル伝達因子および転写アクチベーター(JAK/STAT)経路は、障害に対する腎臓の応答およびいくつかの腎疾患の進行にとって重要である(Chuang & He, 2010;Pang et al., 2010)。
【0093】
予測方法の実施形態では、本明細書に列挙されるバイオマーカーに加えて、さらなるバイオマーカーが試料において決定される。さらなるバイオマーカーは、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または予測バイオマーカーと診断バイオマーカーから選択される1、2、3つ以上のバイオマーカーであってもよい。
【0094】
診断方法
以下の方法は、好ましい診断方法であり、これらの方法は、対象が(早期)AKIを有するかどうかを決定するために使用される。好ましい方法において使用されるバイオマーカーのセットは、AKIの早期診断にとって特に有用であることが示されている。以下の推移においては、ステップa.のみが示される。好ましくは、方法は、ステップa.の後に、以下のステップも含む:
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップ。
【0095】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)を診断するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、存在する早期AKIとの関連において上方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含み、上方調節される診断バイオマーカーが、
インターフェロンアルファ-1/13、カスパーゼ-9、インターロイキン-7、インターロイキン-18、エオタキシン、Max二量体化タンパク質4、インターロイキン-15、CTPシンターゼ1、サイトカイン受容体様因子2、RNA結合タンパク質3、膜貫通タンパク質54、C-Cモチーフケモカイン7、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、カスパーゼ-8、増殖停止特異的タンパク質6、間質コラゲナーゼ、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、ガレクチン-4、主要プリオンタンパク質、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィンおよび軟骨オリゴマー基質タンパク質、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアント
からなる群から選択される方法に関する。
【0096】
列挙された上方調節される診断バイオマーカーは、AKIの早期診断にとって特に有用であることを証明した。これらのバイオマーカーは、配列番号(それぞれ、13、80~83、27~29、25~26、61、131、98~99、129~130、65~67、121、132~134、18、190、191~193、52~60、93~97、112、234~235、および249~250、253~255、259~265、266~270、271~294)に対応する。
【0097】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)を診断するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、存在する早期AKIとの関連において下方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含み、下方調節される診断バイオマーカーが、
プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD139、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、Krueppel様因子8、およびシトクロムP450 1B1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアント
からなる群から選択される方法に関する。
【0098】
列挙された下方調節される診断バイオマーカーは、AKIの早期診断にとって特に有用であることを証明した。これらのバイオマーカーは、それぞれ、配列番号1、148~151、186、188~189、および236、ならびにCD139に対応する。
【0099】
ある態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)を診断するための方法であって、
a.対象から得られた試料において、存在する早期AKIとの関連において下方調節される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップ
を含み、下方調節される診断バイオマーカーが、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、インターロイキン-18結合タンパク質およびハプトグロビンならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される方法に関する。
【0100】
列挙された下方調節される診断バイオマーカーは、AKIの早期診断にとって特に有用であることを証明した。これらのバイオマーカーは、それぞれ、配列番号253~255、259~262、266~270、277~281、ならびにCD139に対応する。
【0101】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、インターフェロンアルファ-1/13、そのアイソフォーム、断片および/またはバリアントの群から選択される1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、6の優れた品質スコアを示している。
【0102】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1およびハプトグロビン、それらのアイソフォーム、断片および/またはバリアントの群から選択される1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、6以上の優れた品質スコアを示している。
【0103】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体様因子2、そのアイソフォーム、断片および/またはバリアントの群から選択される1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、4の非常に高い品質スコアを示している。
【0104】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、インターフェロンアルファ-1/13、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、それらのアイソフォーム、断片および/またはバリアントの群から選択される1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、4または5の非常に高い品質スコアを示している。ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、RNA結合タンパク質3、そのアイソフォーム、断片および/またはバリアントの群から選択される1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、3の高い品質スコアを示している。
【0105】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、インターフェロンアルファ-1/13、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0106】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体様因子2、ならびにそのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、5~6の高い乃至優れた品質スコアを示している。それらは、尿、血液、血漿または血清中での検出のための特に好適な候補となる分泌型バイオマーカーでもある。
【0107】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体様因子2、Krueppel様因子8、シトクロムP450 1B1、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、異なる腎臓発現を示している。異なる腎臓発現は、本発明者らによって観察される腎臓基礎構造内の比存在量を指す。これは、マーカーの比腎機能を示し、それらを腎障害に関するバイオマーカーとして特に好適なものにする。
【0108】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、Krueppel様因子8およびガレクチン-4、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、男性患者において示差的に豊富なものとして検出されたが、男性患者におけるAKIの診断にとって特に有用である。
【0109】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ならびにその組合せおよびその断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、微小管結合タンパク質に属する。腎臓尿細管上皮細胞では、微小管細胞骨格が、細胞極性の維持において重要な役割を果たし、それによって、腎機能に影響する(Drubin & Nelson, 1996)。
【0110】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、ならびにその断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、タンパク質セリン/トレオニンキナーゼ活性を示している。セリン/トレオニンキナーゼは、腎尿細管輸送の調節を含む様々なシグナル伝達経路における重要なメディエーターである(Satoh et al., 2015)。
【0111】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、タンパク質チロシンホスファターゼ活性を示している。タンパク質チロシンリン酸化および脱リン酸化シグナル伝達は、有足細胞の機能および修復において重要である(Nezvitsky et al., 2014;Hsu et al., 2017)。
【0112】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、CTPシンターゼ1、ならびにその断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、ピリミジン生合成に関与する。ピリミジンは、DNA修復、遺伝子転写、タンパク質合成、および細胞代謝のための基礎である。
【0113】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、インターフェロンアルファ-1/13、サイトカイン受容体様因子2、ならびにそれらの組合せおよびそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つの診断バイオマーカーの量を決定するステップ
を含む方法に関する。これらのバイオマーカーは、Jak-STATシグナル伝達経路のタンパク質である。Janusキナーゼ/シグナル伝達因子および転写アクチベーター(JAK/STAT)経路は、障害に対する腎臓の応答およびいくつかの腎疾患の進行にとって重要である(Chuang & He, 2010;Pang et al., 2010)。
【0114】
診断方法の実施形態では、本明細書に列挙されるバイオマーカーに加えて、さらなるバイオマーカーが試料において決定される。さらなるバイオマーカーは、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカーから選択される1、2、3つ以上のバイオマーカーであってもよい。
【0115】
好ましいバイオマーカー群
本明細書で使用されるバイオマーカーは、配列番号1~304に記載のポリペプチドまたはそのようなポリペプチドの断片もしくはバリアントを含み、AKIの発生のリスクまたはAKIの発生と関連する。「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書では互換的に使用される。表中、全てのタンパク質バイオマーカーは、Uniprot登録名、Uniprot受託番号ならびにUniprotデータベースによって提供されるようなそれぞれの遺伝子名および公式のタンパク質名によって一意的に記載される。タンパク質に関するより多くの情報については、UniProt Database、特に、2019年2月13日のUniProtリリース2019_02を参照されたい。また、UniProt Consortium(2017)も参照されたい。本発明の全てのタンパク質バイオマーカーの配列は、配列番号1~304の下で配列表に列挙される。
【0116】
本明細書に開示されるバイオマーカーのバリアントおよび/またはアイソフォームは、例えば、保存的アミノ酸置換の存在のため、そのアミノ酸配列において異なるポリペプチドを含む。好ましくは、そのようなバリアントおよび/またはアイソフォームは、配列表に与えられる上記の特定のポリペプチドのアミノ酸配列と配列領域全体にわたって少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を有する。バリアントは、対立遺伝子バリアント、スプライスバリアントまたは任意の他の種特異的ホモログ、パラログ、もしくはオルソログであってもよい。好ましくは、パーセント同一性を、NeedlemanおよびWunschまたはSmithおよびWatermanのアルゴリズムによって決定することができる。配列アラインメントを実行するためのプログラムおよびアルゴリズムは、当業者には周知である。配列アラインメントを実行するために、GCGソフトウェアパケット(Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, Wisconsin, USA 53711, Version 1991)の一部である、PileUpプログラム(Feng & Doolittle, 1987;Higgins & Sharp, 1989)またはGapおよびBestFitプログラム(Needleman & Wunsch, 1970;Smith & Waterman, 1981)を使用することができる。上記においてパーセント(%)で記載された配列同一性値は、以下の設定:ギャップウェイト:50、レングスウェイト:3、アベレージマッチ:10.000、およびアベレージミスマッチ:0.000(別途特定しない限り、配列アラインメントの標準設定として常に使用されるものとする)で、配列領域全体にわたってGAPプログラムを使用して決定することができる。ある実施形態では、バイオマーカーのバリアントは、各バイオマーカーの任意のアイソフォームを含む。
【0117】
本発明のバイオマーカーは、タンパク質バイオマーカーおよび非タンパク質バイオマーカーを含む。かくして、本発明の92種のバイオマーカーの全てがタンパク質であるわけではない。本発明はまた、非タンパク質バイオマーカー、すなわち、CD15およびCD139も含む。
【0118】
ある態様では、本発明は、対象におけるAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または予測バイオマーカーと診断バイオマーカーの組合せ、ならびにそれらの組合せおよびそれらの断片およびバリアントの量を決定するステップと、
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含む方法に関する。
【0119】
本発明の「タンパク質バイオマーカー」は、CD9抗原、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、インターフェロンアルファ-1/13、バシギン、C-Cモチーフ、ケモカイン7、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、カスパーゼ-9、トランスフォーミング増殖因子-ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、CTPシンターゼ1、Max二量体化タンパク質4、膜貫通タンパク質54、アクチン、細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質、Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、インターロイキン-8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらのアイソフォームである。
【0120】
本発明の「男性患者バイオマーカー」は、CD15、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、ラミン-B1、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、Dickkopf関連タンパク質2、Krueppel様因子8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、CD99R抗原およびガレクチン-4ならびにそれらのアイソフォームである。男性患者バイオマーカーは、男性対象における、それぞれ、AKIの発生のリスクの予測およびAKIの早期診断にとって特に有用である。かくして、本発明の実施形態では、方法は、男性対象に由来する試料において、配列番号68、105、106、20、148、149、150、151、152、195、196、197、213、214、215、216、217、225、226、227、228、229、230、231、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、ならびにCD15、またはそれらの断片もしくはバリアントから選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記少なくとも1つのバイオマーカーの対照量とを比較するステップとを含む。対照量は、好ましくは、男性対象において決定されるべきである。
【0121】
本発明の「女性患者バイオマーカー」は、主要プリオンタンパク質(配列番号30)である。女性患者バイオマーカーは、女性対象における、それぞれ、AKIの発生のリスクの予測およびAKIの早期診断にとって特に有用である。かくして、本発明のある実施形態では、方法は、女性対象に由来する試料において、配列番号30またはその断片もしくはバリアントであるバイオマーカーの量を決定するステップと、前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記少なくとも1つのバイオマーカーの対照量とを比較するステップとを含む。対照量は、好ましくは、女性対象において決定されるべきである。
【0122】
本発明の「予測バイオマーカー」は、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、バシギン、C-Cモチーフケモカイン7、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、P-セレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、アクチン細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、インターロイキン-8、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質、LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子細胞質4、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニット、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメイン、クラス2、転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3ならびにそれらのアイソフォーム、ニューロトロフィン-4、インターロイキン-18結合タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1(配列番号2~79、84~97、98~128、135~185、194~233、237~248、251~252、256~258、266~270、295~304ならびにCD15に対応する)である。これらのバイオマーカーは、対象におけるAKIの予測にとって特に有用であることが見出された。試料は、計画された外科的介入の前に採取してもよい。さらにより好ましくは、予測バイオマーカーは、CD9抗原、CD15、ミエロブラスチン、またはそれらの断片もしくはバリアントからなる群から選択される。より好ましくは、バイオマーカーは、配列番号19の配列を有するCD9抗原である。
【0123】
本発明の「診断バイオマーカー」は、サイトカイン受容体様因子2、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、インターフェロンアルファ-1/13、カスパーゼ-9、インターロイキン-18、インターロイキン-7、CTPシンターゼ1、C-Cモチーフケモカイン7、CD139、エオタキシン、Max二量体化タンパク質4、インターロイキン-15、RNA結合タンパク質3、膜貫通タンパク質54、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、増殖停止特異的タンパク質6、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、カスパーゼ-8、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、ガレクチン-4、主要プリオンタンパク質、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィンおよび軟骨オリゴマー基質タンパク質ならびにそれらのアイソフォーム(配列番号1、13、30、80~83、25~29、129、130、18、61~67、131、98、99、121、132~134、148~15、112、152、186~189、93~97、190、52~60、191~193、234~250、253~255、259~265、266~270、271~294、ならびにCD139に対応する)である。これらのバイオマーカーは、対象におけるAKIの早期診断にとって特に有用であることが見出された。試料は、外科的介入後、24時間、36時間または48時間以内に採取してもよい。
【0124】
本発明の「組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカー」は、サイトカイン受容体様因子2、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン7、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、インターロイキン-18、インターロイキン-7、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、およびRNA結合タンパク質3、インターロイキン-18結合タンパク質、ならびにそれらのアイソフォーム(配列番号52~61、18、65~67、93~97、13、98、99、25~29、148~151、112、121、267~269に対応する)である。これらのバイオマーカーは、対象におけるAKIの発生のリスクの予測と、AKIの早期診断との両方にとって特に有用であることが見出された。
【0125】
さらに、本発明の文脈では、例えば、AKIの発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための、1より多いバイオマーカーの量を決定することが特に想定される。例えば、AKIの発生のリスクを予測する時、またはAKIを適時に診断する時に、より高い特異度および感度を可能にするため、バイオマーカーの組み合わせた決定が有利である。
【0126】
以下のバイオマーカーの組合せが、本発明の方法、キット、デバイス、および使用に従って特に好ましい。したがって、好ましい実施形態では、本発明は、対象から得られた試料において、
A)CD9およびCD15、
B)CD9抗原、CD15およびミエロブラスチン
C)CD9抗原、CD15およびDickkopf関連タンパク質2、
D)CD15およびDickkopf関連タンパク質2、
E)CD15および間質コラゲナーゼ、
F)CD15およびサイトカイン受容体様因子2、
G)CD15、Dickkopf関連タンパク質2およびCD99抗原(あるいは、CD99R抗原)、
H)CD15、Dickkopf関連タンパク質2およびDickkopf関連タンパク質3、
I)サイトカイン受容体様因子2およびDickkopf関連タンパク質2、
J)Dickkopf関連タンパク質2および間質コラゲナーゼ、
K)CD15、Dickkopf関連タンパク質2およびサイトカイン受容体様因子2、または
L)CD99抗原、CD15、ミエロブラスチン、Dickkopf関連タンパク質2およびサイトカイン受容体様因子2、
M)活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、
N)活性化T細胞の核因子およびインターフェロンアルファ-1/13、
O)インターフェロンアルファ-1/13、CD99R抗原、ミエロブラスチンおよび活性化T細胞の核因子、
P)ミエロブラスチンおよび活性化T細胞の核因子、
Q)補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質およびWAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2
の少なくとも量(必要に応じて、それらの断片、バリアントおよび/またはアイソフォームを含む)を決定するステップを含む。
【0127】
上記マーカーの組合せは、方法の感度および特異度を増加させるであろう。
【0128】
ある実施形態では、上のA)~Q)の下で与えられた組合せに加えて、さらなるバイオマーカーが試料において決定される。さらなるバイオマーカーは、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカーから選択される1つまたは複数のバイオマーカーであってもよい。
【0129】
方法ステップ
本発明の方法は、前記ステップ:
a.対象から得られた試料において、本発明の少なくとも1つのバイオマーカー、ならびにそれらの組合せおよびそれらの断片、アイソフォームおよびバリアントの量を決定するステップと、
b.バイオマーカーの量と、バイオマーカーの対照量とを比較するステップと
から本質的になっていてもよい。
【0130】
方法は、さらなるステップを含んでもよい。好ましい実施形態では、方法は、ex vivoで実行される、すなわち、ヒトまたは動物の身体上で実施されない。方法は、自動化によって支援することができる。
【0131】
本発明の方法によれば、対象において、AKIの発生のリスクが予測されるか、またはAKIが早期に診断される。好ましくは、医学的介入の文脈でAKIが予測または診断され、これは、方法が周術期の設定で実行されることを意味する。外科的介入の場合、「周術期の設定」は、病院またはICUでの対象の入院と、手術時の対象の完全な再生、例えば、病院からの対象の解放との間の期間である。本発明の方法を使用して、AKIが、医学的介入後、1日、2日、3日、4日、5日、6日、1週間、10日もしくは2週間以内、または任意の断続的な時間範囲内に生じるかどうかを予測することができる。
【0132】
用語「医学的介入」は、「外科的介入」および他の介入を含む。他の介入は、造影剤または腎臓安定化剤などの薬物の投与を含んでもよい。他の介入はまた、腎毒性物質などの薬物の投与を回避することを含んでもよい。
【0133】
定義
本明細書で使用される用語「固形臓器」とは、堅い組織稠度を有し、中空でも液体でもない、身体の内臓を指す。心臓、腎臓、肝臓、肺、卵巣、脾臓および膵臓は、定義によれば固形臓器である。
【0134】
本明細書で使用される用語「固形臓器移植」とは、失われているか、または損傷を受けた臓器を置き換えるために、固形臓器を対象の身体から取り出し、レシピエント対象の体内に入れる間の、外科的介入を指す。
【0135】
本明細書で使用される用語「造血細胞」とは、血液細胞を指す。造血細胞は、造血幹細胞、前駆細胞および異なる血液細胞型を包含する。
【0136】
本明細書で使用される用語「造血細胞移植」とは、通常は骨髄、末梢血または臍帯血に由来する造血細胞を移植する間の外科的介入を指す。
【0137】
「AKIの発生のリスクの予測」は、AKIが医学的介入後の期間内に対象において生じるであろうことに従って、医学的介入の前に確率を評価することを含んでもよい。より好ましくは、医学的介入の完了後、最大で2週間以内のAKIの発生のリスク/確率が予測される(「予測ウィンドウ」)。好ましい実施形態では、予測ウィンドウは、少なくとも1日、少なくとも2日、少なくとも3日、少なくとも4日、少なくとも5日、少なくとも6日、少なくとも1週、少なくとも10日、もしくは少なくとも2週、または任意の断続的な時間範囲の間隔である。本発明の特に好ましい実施形態では、予測ウィンドウは、好ましくは、最大で10日、またはより好ましくは、最大で4週の間隔である。予測ウィンドウは、医学的介入の完了後、約2年まで、またはさらなる医学的介入までの範囲であってもよい。好ましくは、前記予測ウィンドウは、医学的介入の完了から計算される。
【0138】
本明細書で使用される用語「医学的介入の完了」とは、医学的介入が終了した時点、例えば、病院からの対象の解放の時点を指す。医学的介入は、対象の医学的処置が病院からの開放の時間を超えて必要とされる場合には、病院からの対象の解放と共に終わらない。あるいは、前記予測ウィンドウは、試験しようとする試料が得られた時点から計算される。
【0139】
当業者であれば理解できるように、そのような予測は、100%の対象について正確でなくてもよい。しかしながら、この用語は、適切かつ正確な様式で対象の統計的に有意な部分について予測を行うことができることが必要である。当業者であれば、ある部分が統計的に有意であるかどうかを、様々な周知の統計評価手段、例えば、信頼区間の決定、p値の決定、Studentのt検定、Mann-Whitney検定などを使用して決定することができる。詳細は、Dowdy and Wearden, Statistics for Research, John Wiley & Sons, New York 1983に見出される。好ましい信頼区間は、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%である。p値は、好ましくは、0.1未満、0.05未満、0.01未満、0.005未満、または0.0001未満である。好ましくは、本発明によって想定される確率は、リスクの増大、正常なリスクまたはリスクの低下の予測が、所与のコホートまたは集団の対象の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%について正確であろうことを可能にする。この用語は、好ましくは、対象の集団におけるAKIの発生の平均リスクと比較して、対象のリスクが上昇しているか、または低下しているかどうかを予測することに関する。
【0140】
本明細書で使用される場合、AKIの発生のリスクの予測は、本発明の方法によって分析される対象を、AKIの発生のリスクがある対象の群、またはAKIの発生のリスクがない対象の群のどちらかに割り当てることを含んでもよい。本発明に従って言及されるAKIの発生のリスクは、AKIの発生のリスクが上昇している(予測ウィンドウ内で)ことを意味する。特に、前記リスクは、医学的介入を受けている対象のコホートにおける平均リスクと比較して上昇していてもよい。AKIの発生のリスクが低下している場合(予測ウィンドウ内で)、対象は、AKIの発生のリスクがないと見なされる。特に、前記リスクは、医学的介入を受けている対象のコホートにおける平均リスクと比較して低下していてもよい。AKIの発生のリスクがある対象は、特に、4週の予測ウィンドウ内で、90%以上、または75%以上のAKIの発生のリスクを有してもよい。AKIの発生のリスクがない対象は、特に、4週の予測ウィンドウ内で、50%未満、または10%未満のAKIの発生のリスクを有してもよい。
【0141】
ある実施形態では、「AKIの発生のリスクの予測」は、対象に由来する試料中の少なくとも1つの上方調節されるバイオマーカーの量と、対照量とを比較することを含み、対照量が試料中のものを超えている場合、対象はAKIを発症するリスクがあると見なされる。ある実施形態では、「AKIの発生のリスクの予測」は、対象に由来する試料中の少なくとも1つの下方調節されるバイオマーカーの量と、対照量とを比較することを含み、試料中の量が対照量未満である場合、対象はAKIを発症するリスクがあると見なされる。
【0142】
本明細書で使用される用語「早期診断」とは、介入後のAKIの適時の診断を指す。より好ましくは、AKIは、介入後、24h以内に診断されるべきである。
【0143】
本明細書で使用される用語「対象」は、動物、好ましくは、哺乳動物、より好ましくは、ヒトに関する。ある実施形態では、対象は、男性対象である。試験される対象は、医学的介入を受けてもよい、または受けたことがあってもよい。好ましくは、方法は、外科的介入を受けることが分かっている対象に適用される。ある実施形態では、対象は、将来、外科的介入を受けるであろう、または試料が採取される時点で外科的介入を受けている。例えば、対象は、試料が得られる48h、24h以下前に医学的介入を受けていてもよい。別の実施形態では、試料は、例えば、48、または24時間以内に、医学的介入を受けるであろう対象から採取される。
【0144】
好ましい方法
本発明による方法では、上記のバイオマーカー群の、好ましくは、配列番号1~304に示されるタンパク質、またはその断片もしくはバリアントの少なくとも1つのバイオマーカーが決定される。しかしながら、より好ましくは、バイオマーカー群は、評価の特異度および/または感度を強化するために決定されるであろう。そのような群は、好ましくは、少なくとも2種、少なくとも3種、少なくとも4種、少なくとも5種、少なくとも6種、少なくとも7種、少なくとも8種、少なくとも9種、少なくとも10種または最大で全部の前記バイオマーカーを含む。本明細書に記載される特定のバイオマーカーに加えて、好ましくは、他のバイオマーカーを、本発明の方法において同様に決定することができる。
【0145】
本発明の方法の好ましい実施形態では、前記少なくとも1つのバイオマーカーは、配列番号1~304のバイオマーカー群ならびにCD15およびCD139、またはそれらの断片もしくはバリアントから選択される。
【0146】
本発明の方法の好ましい実施形態では、前記少なくとも1つのバイオマーカーは、配列番号68、105、106、20、148、149、150、151、195、196、197、213、214、215、216、217、225、226、227、228、229、230、231、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248に列挙されるバイオマーカー群ならびにCD15、またはそれらの断片もしくはバリアントから選択される。対照と比較した、男性試験対象の試料中でのそのようなバイオマーカーの変化は、AKIの発生のリスクを示す。
【0147】
本発明の方法の好ましい実施形態では、前記少なくとも1つのバイオマーカーは、配列番号68、105、106、20、148、149、150、151、195、196、197、213、214、215、216、217、225、226、227、228、229、230、231、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248に列挙されるバイオマーカー群ならびにCD15、またはそれらの断片もしくはバリアントから選択される。対照と比較した、男性試験対象の試料中でのそのようなバイオマーカーの変化は、早い時点でのAKIの発生を示す。
【0148】
本明細書で使用される用語「医学的介入」とは、医学的障害を潜在的に有する対象の状態を分析または改善するために取られる医学的活動を指す。本発明の文脈では、介入は、薬物の投与、薬物の回避、造影媒体の注入または外科的介入であってもよい。
【0149】
本明細書で使用される用語「療法計画の変化」とは、AKIの予後診断または診断に応答した患者のケアの適合化を指す。患者のケアの適合化は、腎臓透析、腎毒性化合物の回避、腎臓安定化薬の投与、同種輸血の回避、手術戦略の最適化、より早い介入をもたらす患者の厳密な観察にあってもよい。
【0150】
試料は、体液試料、分離された細胞の試料、または組織もしくは臓器に由来する試料であってもよい。体液試料は、周知の技術によって取得することができ、好ましくは、尿の試料またはより好ましくは、血液、血漿、もしくは血清の試料を含む。組織または臓器試料を、任意の組織から取得することができる。遠心分離または細胞選別などの技術を分離することによって、分離された細胞を、体液または組織もしくは臓器から取得することができる。好ましくは、細胞試料、組織試料または臓器試料は、本明細書に記載のバイオマーカーを発現する、または産生する細胞、組織または臓器から取得される。
【0151】
本発明にとって、試料は、患者から得られる血漿または血清であることが特に好ましい。より好ましくは、前記試料は、AKIのリスクを予測するためには外科的介入の前に、またはAKIの早期診断のためには医学的介入後最大で48h、もしくは最大で24hに得られる血漿である。
【0152】
本明細書で使用される用語「血液製剤」とは、ヒト血液から調製される任意の治療物質を指す。これは、血液成分および血漿誘導体を含む。本発明のために、赤血球および新鮮な凍結された血漿を、分析のために考慮した。
【0153】
試料の分析
ある実施形態では、対象が医学的介入を受けてもよいかどうか、および/またはAKIのリスクを低下させるための介入の前もしくは間に、ある特定の手段を取らなければならないかどうかを、医学的介入の前に決定するために、予測方法が使用される。その目的のために、試料を、計画された医学的介入の最大で6ヶ月前に採取することができる。
【0154】
本発明の方法の文脈で分析される試料を、医学的介入の前もしくは後に、特に、本明細書に記載の外科的介入の前もしくは後に得ることができる。医学的介入の前に得られる試料は、好ましくは、介入の直前に得られる。また、医学的介入前の6ヶ月以内、3ヶ月以内、6週以内、2週以内、もしくは1週以内に、または医学的介入前の2h、6h、12h、24h、36h、48h以内、7日以内などの、医学的介入前の任意の時点で試料を得ることも企図される。医学的介入後に得られる試料は、好ましくは、医学的介入の完了後、2h、6h、12h、24h、36h、48h以内または7日以内に得ることができる。
【0155】
本明細書に記載されるバイオマーカーの量の決定は、好ましくは、半定量的または定量的に量または濃度を測定することに関する。測定を、直接的または間接的に行うことができる。直接測定は、バイオマーカー自体から得られるシグナルに基づくバイオマーカーの量または濃度および試料中に存在するポリペプチドの分子数と直接的または間接的に相関する強度を測定することに関する。本明細書では強度シグナルと称されることもある、そのようなシグナルを、例えば、ポリペプチドの特定の物理的または化学的特性の強度値を測定することによって取得することができる。間接測定は、二次成分(すなわち、バイオマーカー自体ではない成分)または生物学的読出しシステム、例えば、測定可能な細胞応答、リガンド、標識、もしくは酵素反応生成物から得られるシグナルの測定を含む。
【0156】
本発明によれば、バイオマーカーの量の決定を、試料中のバイオマーカーの量を決定するための異なる手段によって達成することができる。前記手段は、様々なサンドイッチ、競合、または他のアッセイ形式で標識された分子を使用することができるイムノアッセイデバイスおよび方法を含む。好ましくは、イムノアッセイデバイスは、抗体アレイ、特に、平面抗体マイクロアレイまたはビーズに基づく抗体マイクロアレイである。また、好ましくは、ストライプテストである。前記アッセイは、バイオマーカー、例えば、ポリペプチドバイオマーカーの存在または非存在を示すシグナルを生じるであろう。
【0157】
さらに、好ましくは、シグナル強度を、試料中に存在するバイオマーカーの量に対して直接的または間接的に相関させることができる(例えば、比例、または反比例)。さらに好適な方法は、その正確な分子質量またはNMRスペクトルなどのバイオマーカーに特異的な物理的または化学的特性を測定することを含む。前記方法は、好ましくは、バイオセンサー、イムノアッセイとカップリングした光学デバイス、バイオチップ、質量分析装置、NMR分析装置、またはクロマトグラフィーデバイスなどの分析デバイスを含む。さらに、方法は、マイクロプレートELISAベースの方法、完全自動化またはロボットイムノアッセイ、CBA(酵素的コバルト結合アッセイ)、またはラテックス凝集アッセイを含む。バイオマーカーの量の決定を、臨床検査室で実施することができるか、またはそれはポイントオブケア検査からなっていてもよい。
【0158】
また好ましくは、バイオマーカーの量の決定は、試料中のバイオマーカーから得られる特異的強度シグナルを測定するステップを含んでもよい。上記のように、そのようなシグナルは、バイオマーカーに特異的な質量スペクトルまたはNMRスペクトルにおいて観察されるバイオマーカーに特異的な質量対電荷(m/z)変数で観察されるシグナル強度であってもよい。
【0159】
バイオマーカーの量の決定は、好ましくは、
aa)バイオマーカーと特定のリガンドとを接触させるステップ、
ab)必要に応じて、結合していないリガンドを除去するステップ、および
ac)結合したリガンドの量を測定するステップ
を含んでもよい。
【0160】
結合したリガンドは、強度シグナルを生成するであろう。結合は、共有結合と非共有結合との両方を含む。リガンドは、本明細書に記載のバイオマーカーに結合する、任意の化合物、例えば、ペプチド、ポリペプチド、核酸、または低分子であってもよい。好ましいリガンドとしては、バイオマーカーのための受容体または結合パートナーおよびペプチドのための結合ドメインを含むその断片、ならびにアプタマー、例えば、核酸またはペプチドアプタマーなどの、抗体、核酸、ペプチドまたはポリペプチドが挙げられる。そのようなリガンドを調製するための方法は、当業界で周知である。例えば、好適な抗体またはアプタマーの同定および生産も、商業的供給業者によって提供されている。当業者であれば、より高い親和性または特異性を有するそのようなリガンドの誘導体を開発するための方法に精通している。例えば、ランダム突然変異を、核酸、ペプチドまたはポリペプチド中に導入することができる。次いで、これらの誘導体を、当業界で公知のスクリーニング手順、例えば、ファージディスプレイに従って結合について試験することができる。本明細書に記載の抗体は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体との両方、ならびに、抗原またはハプテンに結合することができるFv、Fab、scFvおよびF(ab)2断片などのその断片を含む。本発明はまた、単鎖抗体および所望の抗原特異性を示す非ヒトドナー抗体のアミノ酸配列が、ヒトアクセプター抗体の配列と組み合わされたヒト化ハイブリッド抗体も含む。あるいは、ウサギFcとのキメラマウス抗体を使用することができる。ドナー配列は通常、ドナーの少なくとも抗原結合アミノ酸残基を含むであろうが、同様にドナー抗体の他の構造的および/または機能的に関連するアミノ酸残基を含んでもよい。そのようなハイブリッドを、当業界で周知のいくつかの方法によって調製することができる。好ましくは、リガンドまたは薬剤は、バイオマーカーに特異的に結合する。
【0161】
本発明による「特異的結合」は、リガンドまたは薬剤が、分析しようとする試料中に存在する別のバイオマーカー、ポリペプチドまたは物質に実質的に結合する(「交差反応する」)べきではないことを意味する。好ましくは、特異的に結合するバイオマーカーは、任意の他の物質、試料中のバイオマーカーまたはポリペプチドよりも少なくとも3倍高い、より好ましくは、少なくとも10倍高い、さらにより好ましくは、少なくとも50倍高い親和性で結合するべきである。非特異的結合は、例えば、ウェスタンブロット上でのそのサイズに従って、または試料中でのその相対的に高い存在量によって、それを明白に区別し、測定することができる場合、許容し得る。
【0162】
リガンドの結合を、当業界で公知の任意の方法によって測定することができる。好ましくは、前記方法は、半定量的または定量的である。好適な方法は、以下に記載される。第1に、リガンドの結合を、例えば、質量分析、NMRまたは表面プラズモン共鳴によって直接的に測定することができる。第2に、リガンドが目的のバイオマーカーの酵素活性の基質としても働く場合、酵素反応生成物を測定することができる(例えば、プロテアーゼの量を、例えば、ウェスタンブロット上で切断された基質の量を測定することによって測定することができる)。あるいは、リガンドは、酵素特性自体を示してもよく、それぞれ、バイオマーカーが結合した「リガンド/バイオマーカー」複合体またはリガンドを、強度シグナルの生成による検出を可能にする好適な基質と接触させることができる。
【0163】
酵素反応生成物の測定のために、好ましくは、基質の量は飽和している。また、基質を、反応前に検出可能な標識で標識することもできる。好ましくは、基質を、十分な期間にわたって基質と接触させる。十分な期間とは、検出可能な、好ましくは、測定可能な量の生成物が産生されるのに必要な時間を指す。生成物の量を測定する代わりに、所与の(例えば、検出可能な)量の生成物の出現にとって必要な時間を測定することができる。第3に、リガンドを、リガンドの検出および測定を可能にする標識に共有的または非共有的にカップリングさせることができる。
【0164】
標識化を、直接的または間接的方法によって行うことができる。直接標識化は、リガンドへの標識の直接的(共有的または非共有的)なカップリングを含む。間接標識化は、第1のリガンドへの第2のリガンドの結合(共有的または非共有的)を含む。第2のリガンドは、第1のリガンドに特異的に結合するべきである。前記第2のリガンドは、好適な標識とカップリングさせることができる、および/または第2のリガンドに結合する第3のリガンドの標的(受容体)であってもよい。第2、第3またはさらにより高次のリガンドの使用は、シグナルを増大させるために使用されることが多い。好適な第2の、およびより高次のリガンドは、抗体、二次抗体、および周知のストレプトアビジン-ビオチンシステム(Vector Laboratories,Inc.)を含んでもよい。
【0165】
リガンドまたは基質を、1つまたは複数のタグで「タグ付け」することもできる。次いで、そのようなタグは、より高次のリガンドのための標的であってもよい。好適なタグとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン、His-Tag、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、FLAG、GFP、mycタグ、インフルエンザAウイルスヘマグルチニン(HA)、マルトース結合タンパク質などが挙げられる。ペプチドまたはポリペプチドの場合、タグは、好ましくは、N末端および/またはC末端にある。好適な標識は、適切な検出方法によって検出可能な任意の標識である。典型的な標識としては、金粒子、ラテックスビーズ、アクリダンエステル、ルミノール、ルテニウム、酵素活性標識、放射性標識、磁気標識(例えば、常磁性および超常磁性標識を含む「磁気ビーズ」)、および蛍光標識が挙げられる。酵素活性標識としては、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、およびそれらの誘導体が挙げられる。検出のための好適な基質としては、ジ-アミノ-ベンジジン(DAB)、3,3’-5,5’-テトラメチルベンジジン、NBT-BCIP(4-ニトロブルーテトラゾリウムクロリドおよび5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-ホスフェート、Roche Diagnosticsから既製のストック溶液として入手可能)、CDP-Star(商標)(Amersham Biosciences)、ECF(商標)(Amersham Biosciences)が挙げられる。好適な酵素-基質の組合せは、当業界で公知の方法に従って測定することができる(例えば、感光フィルムまたは好適なカメラシステムを使用する)、着色反応生成物、蛍光または化学発光をもたらすことができる。酵素反応の測定に関して、上で与えられた基準が同様に適用される。
【0166】
好適な蛍光標識としては、蛍光タンパク質(GFPおよびその誘導体など)、Cy3、Cy5、またはscioDye1、scioDye2、scioDye3、scioDye4(Sciomics、Germany)またはテキサスレッド、フルオレセイン、およびAlexa色素(例えば、Alexa 568)が挙げられる。さらなる蛍光標識は、例えば、Molecular Probes(Oregon)またはDyomics(Germany)から入手可能である。さらに、蛍光標識としての量子ドットの使用が企図される。好適な放射性標識としては、<35>S、<125>I、<32>P、<33>Pなどが挙げられる。放射性標識を、任意の公知かつ適切な方法、例えば、感光フィルムまたは蛍光体イメージャーによって検出することができる。好適な測定方法としては、沈降(特に、免疫沈降)、電気化学発光(電気生成化学発光)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)、サンドイッチ酵素免疫試験、電気化学発光サンドイッチイムノアッセイ(ECLIA)、解離強化ランタニドフルオロイムノアッセイ(DELFIA)、シンチレーション近接アッセイ(SPA)、FRETベース近接アッセイ(Pulli et al., 2005)またはライゲーション近接アッセイ(Fredriksson et al., 2002)、濁度測定、比濁法、ラテックス強化濁度測定もしくは比濁法、または固相免疫試験が挙げられる。ゲル電気泳動、2Dゲル電気泳動、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、ウェスタンブロッティング、および質量分析などのさらなる方法を、単独で、または上記の標識化または他の検出方法と組み合わせて使用することができる。
【0167】
また好ましくは、バイオマーカーの量を、以下のように決定することもできる:
a1)上で特定されたバイオマーカーのためのリガンドを含む固相支持体と、バイオマーカーを含む試料とを接触させるステップ、
a2)必要に応じて、結合していないバイオマーカーを除去するステップ、および
a3)支持体に結合しているバイオマーカーの量を測定するステップ。
【0168】
好ましくは、核酸、ペプチド、ポリペプチド、抗体およびアプタマーからなる群から選択されるリガンドは、好ましくは、固定された形態で固相支持体上に存在する。
【0169】
固相支持体を製造するための材料は、当業界で周知であり、特に、商業的に入手可能なカラム材料、ポリスチレンビーズ、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、コロイド金属粒子、ガラスおよび/またはシリコンチップおよび表面、ニトロセルロース片、膜、シート、デュラサイト(duracyte)、反応トレーのウェルおよび壁、プラスチックチューブ、またはそれらの組合せが挙げられる。
【0170】
リガンドまたは薬剤を、多くの異なる担体に結合させることができる。周知の担体の例としては、ガラス、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、デキストラン、ナイロン、アミロース、天然および改変セルロース、ポリアクリルアミド、アガロース、ならびにマグネタイトが挙げられる。担体の性質は、本発明の目的に関して可溶性または不溶性であってよい。
【0171】
前記リガンドを固定/固定化するための好適な方法としては、限定されるものではないが、イオン性、疎水性、共有相互作用などが挙げられる。また、本発明によるアレイとして「懸濁アレイ」を使用することも企図される(Nolan & Sklar, 2002)。そのような懸濁アレイでは、担体、例えば、マイクロビーズまたはミクロスフェアは、懸濁液中に存在する。アレイは、異なるリガンドを担持する、おそらく標識された、異なるマイクロビーズまたはミクロスフェアからなる。例えば、固相化学および光不安定性保護基に基づいて、そのようなアレイを生産する方法は、あたかも本明細書に完全に記載されたかのように参照により組み込まれる、米国特許第5,744,305号に開示されている。
【0172】
本明細書で使用される用語「量」は、バイオマーカーの絶対量、前記バイオマーカーの相対量または相対濃度ならびにそれと相関する、またはそれから誘導することができる任意の値またはパラメーターを包含する。そのような値またはパラメーターは、直接測定によって前記バイオマーカーから得られる全ての特異的な物理的または化学的特性に由来する強度シグナル値、例えば、質量スペクトルまたはNMRスペクトルまたは表面プラズモン共鳴スペクトルにおける強度値を含む。さらに、本明細書の他の箇所で特定される間接測定によって得られる全ての値またはパラメーター、例えば、ペプチドに応答した生物学的読出しシステムから決定される応答レベルまたは特異的に結合したリガンドから得られる強度シグナルが包含される。上記の量またはパラメーターと相関する値を、あらゆる標準的な数学操作によって得ることもできることが理解されるべきである。
【0173】
本明細書で使用される用語「比較すること」は、分析しようとする試料中に含まれるバイオマーカーの量と、本明細書の他の箇所で特定される好適な対照供給源の量とを比較することを包含する。本明細書で使用される場合、「比較すること」は、対応するパラメーターまたは値の比較を指すことが理解されるべきであり、例えば、絶対量は絶対対照量と比較されるが、濃度は対照濃度と比較されるか、または試験試料から得られる強度シグナルは、対照試料の同じ型の強度シグナルと比較される。好ましくは、対照量は、健康な対象におけるバイオマーカーの量、例えば、10以上、30以上、50以上、または100以上の健康な対象の群における各バイオマーカーの平均量である。
【0174】
本発明の方法の比較を、手動で、またはコンピューターを援用して実行することができる。コンピューターを援用した比較のために、決定される量の値を、コンピュータープログラムによってデータベース中に保存されている、好適な対照に対応する値と比較することができる。コンピュータープログラムは、比較の結果をさらに評価する、すなわち、好適な出力形式で所望の評価を自動的に提供することができる。ステップa)において決定された量と、対照量との比較に基づいて、医学的介入後に対象においてAKIの発生のリスクを予測する、および/またはAKIを診断することができる。
【0175】
本明細書で使用される用語「対照」とは、対象がAKIの発生のリスクがあるかどうかを予測する、または早い時点でAKIを診断するのを可能にするバイオマーカーの量を指す。したがって、対照は、
(i)AKIの発生のリスクがあることが分かっているか、もしくはAKIと診断された対象(もしくは前記対象群)または
(ii)AKIの発生のリスクがないことが分かっているか、もしくはAKIと診断されていない対象(もしくは前記対象群)
に由来してもよい。好ましくは、前記対照は、上記の健康な対象の試料に由来する。
【0176】
より好ましくは、対照と比較した、配列番号2~79、84~97、98~128、135~185、194~233、237~248、251~252に記載のバイオマーカーならびにCD15(表2)から選択される前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の変化は、対象がAKIの発生のリスクがあるか、またはリスクがないことを示すが、対照と比較した、配列番号1、13、80~83、25~29、129、130、18、61~67、131、98、99、121、132~134、148~15、112、186~189、93~97、190、52~60、191~193、234~250に記載のバイオマーカーならびにCD139(表3)から選択される前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の変化は、対象が早い時点でAKIを有するか、またはAKIを有しないことを示す。
【0177】
好ましくは、本明細書に記載の変化は、統計的に有意である。
【0178】
本発明の方法の文脈では、1より多いバイオマーカーの量を決定することができる。勿論、決定された量を、様々な対照量、すなわち、試験した個々のバイオマーカーに関する対照量と比較することができる。
【0179】
さらに、対照は、好ましくは、閾値量または閾値を定義する。好適な対照量または閾値量を、試験試料と一緒に、すなわち、同時に、またはその後に分析しようとする対照試料から本発明の方法によって決定することができる。閾値として働く好ましい対照量は、正常上限(ULN)、すなわち、対象(例えば、臨床試験に登録される患者)の集団において見出される生理学的量の上限に由来してもよい。所与の対象集団に関するULNを、周知の技術によって決定することができる。好適な技術は、本発明の方法において決定されるバイオマーカー量に関する集団の中央値を決定することであってよい。識別閾値の完全な範囲について感度に対して1-特異度をプロットすることによって2つの分布間の重複を描写するROCプロットによって、好適な閾値量を同定することもできる。y軸上は、感度、または(真陽性の試験結果の数)/(真陽性の数+偽陰性の試験結果の数)として定義される真陽性率である。これも、所与の疾患の存在下で陽性と称された。それは、罹患した下位群からのみ算出される。x軸上は、(偽陽性の結果の数)/(真陰性の結果の数+偽陽性の結果の数)として定義される、偽陽性率、または1-特異度である。それは、特異度の指標であり、完全に罹患していない下位群から算出される。真陽性率および偽陽性率は、2つの異なる下位群に由来する試験結果を使用することによって、完全に個別に算出されるため、ROCプロットは、試料中の疾患の有病率とは無関係である。ROCプロット上のそれぞれの点は、特定の識別閾値に対応する感度/1-特異度の対を表す。完全な識別(結果の2つの分布において重複がない)を示す試験は、左上の角を通過するROCプロットを有し、ここで、真陽性率は、1.0、または100%(完全感度)であり、偽陽性率は、0(完全特異度)である。識別を示さない試験(2つの群に関する結果の同一の分布)に関する理論的プロットは、左下の角から右上の角に向かう45度の対角線である。多くのプロットは、これらの2つの極値の間にある。
【0180】
診断
さらに好ましいのは、以下の診断アルゴリズムである:
i)少なくとも1つのバイオマーカーが、表5に示されるバイオマーカーから選択される場合、および対照量が、AKIの発生のリスクがあることが分かっているか、もしくはAKIと診断された対象に由来する場合、対照量と比較した少なくとも1つのバイオマーカーの本質的に同一の量もしくは増加した量は、対象がAKIの発生のリスクがあるか、もしくはAKIと診断されることを示す、ならびに/または少なくとも1つのバイオマーカーが表5に示されるバイオマーカーから選択される場合、および対照量が、AKIの発生のリスクがないことが分かっているか、もしくはAKIの発生がないと診断された対象に由来する場合、対照量と比較した少なくとも1つのバイオマーカーの本質的に同一の量もしくは減少した量は、対象がAKIの発生のリスクがないか、もしくはAKIの発生がないと診断されることを示す。
ii)少なくとも1つのバイオマーカーが、表6に示されるバイオマーカーから選択される場合、および対照量が、AKIの発生のリスクがあることが分かっているか、もしくはAKIと診断された対象に由来する場合、対照量と比較した少なくとも1つのバイオマーカーの本質的に同一の量もしくは減少した量は、対象がAKIの発生のリスクがあるか、もしくはAKIと診断されることを示す、ならびに/または少なくとも1つのバイオマーカーが表6に示されるバイオマーカーから選択される場合、および対照量が、AKIの発生のリスクがないことが分かっているか、もしくはAKIの発生がないと診断された対象に由来する場合、対照量と比較した少なくとも1つのバイオマーカーの本質的に同一の量もしくは増加した量は、対象がAKIの発生のリスクがないか、もしくはAKIの発生がないと診断されることを示す。
【0181】
有利には、配列番号1~304に記載のバイオマーカーならびにCD15およびCD139が、医学的介入を受けている対象におけるAKIの発生を予測するため、および/またはAKIの早期診断のための信頼できるマーカーであることが、本発明の基礎となる研究において見出された。前記予測および早期診断は、AKIは、特に、周術期の設定において、高い発生率を有するため、非常に重要である。AKIは、生涯にわたるモニタリングおよび処置を必要とし、高い医療費をもたらす、慢性腎臓病(CKD)などの結果と共に、高い患者死亡率および罹患率と関連する。上記の方法の基礎となる知見はまた、療法計画の変更を要する対象を同定することができるため、AKIの臨床管理の改善を可能にする。
【0182】
療法の変更
AKI発生のリスクがある対象またはAKIについて早い時点で診断される対象は、AKI発生のリスクがない対象と比較して、療法計画の変更を必要としてもよいことが理解されるべきである。
【0183】
したがって、上記の方法は、好ましくは、療法計画の変更のステップをさらに含む。療法計画の変更は、上で考察された通り、腎臓透析、腎毒性薬物の回避、腎臓安定化薬の投与、AKIを防止する薬物の投与、AKIの効果を軽減する、または逆転させる薬物またはAKIのCKDへのさらなる発達を防止する薬物、貧血の回避、外科的介入の戦略の最適化、より早期の介入をもたらす可能性がある患者の厳密な観察を含む。
【0184】
定義
本明細書で使用される用語「透析」とは、対象が、15%未満の腎臓機能に対応する末期腎不全を発症する場合に必要とされる手順を指す。腎不全は、AKIにおけるように急性であるか、またはCKDにおけるようにゆっくりと悪化する腎機能の結果であり得る。透析は、半透過膜をわたる溶質の浸透および流体の限外濾過の原理に依拠する。透析の主な目的は、対象の血液から過剰の水、溶質および毒素を除去し、それによって、健康な腎臓の機能を一部置き換えることである。AKIが医学的介入の24h以内に診断される場合、早い時点で透析を実施することができる。
【0185】
本明細書で使用される語句「腎毒性薬物の回避」とは、対象がAKIのリスクがあるか、またはAKIが既に診断されている場合に腎機能を損傷する物質を回避することを指す。これらの物質は、化学物質または薬剤であってもよく、例えば、鎮痛剤、抗生物質、免疫抑制薬および造影媒体、特に、放射線造影媒体を包含する。
【0186】
本明細書で使用される語句「貧血の回避」とは、血液中の赤血球(RBC)もしくはヘモグロビンの総量の減少、または酸素を運搬する血液の能力の低下を回避することを指す。
【0187】
本明細書で使用される語句「腎臓安定化薬の投与」とは、対象がAKIのリスクがある場合、またはAKIが既に診断されている場合の、腎臓の生理学的機能を支援する推定薬物の投与を指す。
【0188】
本明細書で使用される語句「AKIを防止する薬物の投与」とは、対象がAKIのリスクがある場合の、AKIの開始を防止する推定薬物の投与を指す。
【0189】
本明細書で使用される語句「AKIの効果を軽減する、または逆転させる薬物」とは、AKIに関連する症状および疾患の重症度を低減させる推定薬物の投与を指す。
【0190】
本明細書で使用される語句「AKIのCKDへのさらなる発達を防止する薬物」とは、AKIの慢性疾患CKDへの発達を防止する推定薬物の投与を指す。
【0191】
本明細書で使用される語句「外科的介入の戦略の最適化」とは、外科的介入の全体的な持続期間を短縮し、それによって、患者が人工心肺装置に依拠する時間を短縮するための外科的方法の使用を指す。人工心肺装置は、外科的介入の間に心臓および肺の機能を引き受けるための、ポンプ、酸素供給器および熱交換器から構成される機械的デバイスである。
【0192】
本明細書で使用される語句「より早期の介入をもたらす可能性がある患者の厳密な観察」とは、対象がAKIのリスクがある場合に、監視間隔を減少させることを指す。
【0193】
本明細書の上で与えられた定義および説明は、本明細書の以下に記載される実施形態にも変更すべきところは変更して適用される(別途記述される場合を除く)。
【0194】
療法の変更(詳細)
ある実施形態では、方法が、対象がAKIに罹患しているか、またはAKIが生じる高いリスクを有することを示す場合、方法は、対象の療法計画を変更するステップを含んでもよい。療法計画の変更は、そのような対象にとって少なくとも有益であることが理解されるであろう。上で考察された通り、本発明の方法は、AKIのリスクがある対象を同定することを既に可能にしている。したがって、そのような対象は、その臨床症状に基づいて明確に同定可能でなくてもよい。
【0195】
一実施形態では、療法計画の変更は、AKIに罹患している、またはAKIが生じる高いリスクを有する対象を、好ましくは、D-グルコースおよびL-カルニチンの組合せを用いて、さらに好ましくは、約1.5%(重量/体積)のD-グルコースおよび/または約0.1%(重量/体積)のL-カルニチンを用いて実行される腹膜透析による療法にかけることを含んでもよい。
【0196】
必要に応じた療法計画の変更は、本明細書の上に記載されている。
【0197】
好ましくは、対照は、療法計画の変化が必要であることが分かっている対象もしくは対象群、または療法計画の変更が必要でないことが分かっている対象もしくは対象群に由来する。
【0198】
好ましくは、試験される試料は、医学的介入後に得られたものである。より好ましくは、試料は、医学的介入後、特に、外科的介入後に得られたものである。より好ましくは、試料は、外科的介入後、特に、固形臓器移植、心臓手術、または人工膝もしくは股関節置換術後に得られたものである。より好ましくは、試料は、固形臓器移植後、特に、肺移植、肝臓移植、心臓移植または腎臓移植後に得られたものである。さらにより好ましくは、試料は、肺移植後、特に、男性対象における肺移植後に得られたものである。
【0199】
AKIを予測するため、またはAKIの早期診断のためのデバイス
本発明はまた、対象の試料中で、AKIの発生を予測するため、またはAKIの早期診断のためのデバイスであって、
- 本発明の少なくとも1つのバイオマーカー、またはそのバリアントもしくは断片のための検出剤を含み、前記検出剤が、試料中の前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定を可能にする、対象の前記試料のための分析ユニット、および
- データ処理ユニットとデータベースとを含む評価ユニットであって、前記データベースが、保存された対照を含み、前記データ処理ユニットが、分析ユニットによって決定された少なくとも1つのバイオマーカーの量と、保存された対照との比較を実行することによって、予測を確立することができる、評価ユニット
を含むデバイスにも関する。
【0200】
バイオマーカーを、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカー、ならびにそれらの組合せおよびそれらの断片およびバリアントなどの、本明細書に開示される任意のバイオマーカー群から選択することができる。
【0201】
バイオマーカーを、CD9抗原、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、インターフェロンアルファ-1/13、バシギン、C-Cモチーフ、ケモカイン7、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、カスパーゼ-9、トランスフォーミング増殖因子-ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、CTPシンターゼ1、CD139、Max二量体化タンパク質4、膜貫通タンパク質54、アクチン細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質、Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、インターロイキン-8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1(配列番号1~304ならびにCD15およびCD139)、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択することができる。
【0202】
バイオマーカーCD99Rは、骨髄細胞、NK細胞およびTリンパ球上で発現されるCD99分子のサブセットに限定されるエピトープと反応する抗体MEM-131によって認識される。
【0203】
本明細書で使用される用語「デバイス」は、診断を可能にするために、互いに作動可能に連結された、少なくとも上記の分析ユニットと、評価ユニットとを含む手段のシステムに関する。本発明のデバイスのために使用される好ましい検出剤は、本発明の方法と関連して上で開示されている。好ましくは、検出剤は、抗体またはアプタマーである。動作する様式でデバイスのユニットを連結する方法は、デバイス中に含まれるユニットの種類に依存するであろう。例えば、バイオマーカーの量を自動的に決定するためのユニットが適用される場合、前記の自動的に動作するユニットによって得られたデータを、例えば、コンピュータープログラムによって処理して、所望の結果を得ることができる。好ましくは、ユニットは、そのような場合、単一のデバイスによって含まれる。コンピューターユニットは、好ましくは、保存された対照を含むデータベースならびにバイオマーカーの決定された量と、データベースの保存された対照との比較を実行するためのコンピューターに実装されたアルゴリズムを含む。本明細書で使用される場合、「コンピューターに実装された」とは、コンピューターユニットに明白に含まれるコンピューター可読プログラムコードを指す。結果は、医師による解釈を必要とする生データの出力として与えることができる。好ましくは、しかしながら、デバイスの出力は、処理された、すなわち、評価された生データであり、その解釈には医師を必要としない。
【0204】
本発明の好ましいデバイスにおいては、検出剤、好ましくは、抗体は、アレイ形式で固相支持体上に固定化される。本発明によるデバイスは、1より多いバイオマーカーの量を同時に決定することができることが理解されるであろう。この目的のために、検出剤を、固相支持体上に固定化し、アレイ形式で、例えば、いわゆる「マイクロアレイ」で配置することができる。
【0205】
キット
本発明はまた、本発明の少なくとも1つのバイオマーカー、またはそのバリアントもしくは断片の量を決定するための検出剤、およびAKIの予測または早期診断を確立するための評価説明書を含むキットにも関する。
【0206】
バイオマーカーを、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカー、ならびにそれらの組合せおよびそれらの断片およびバリアントなどの、本明細書に開示される任意のバイオマーカー群から選択することができる。
【0207】
ある実施形態では、バイオマーカーは、CD9抗原、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、インターフェロンアルファ-1/13、バシギン、C-Cモチーフ、ケモカイン7、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、カスパーゼ-9、トランスフォーミング増殖因子-ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、CTPシンターゼ1、CD139、Max二量体化タンパク質4、膜貫通タンパク質54、アクチン細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質、Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、インターロイキン-8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1(配列番号1~304ならびにCD15、CD139)、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される。
【0208】
本明細書で使用される用語「キット」とは、試料中のバイオマーカー量を決定するために即時使用様式で提供される上記薬剤の収集物および使用説明書を指す。薬剤および使用説明書は、好ましくは、単一の容器中で提供される。好ましくは、キットはまた、バイオマーカーの量の決定を実行するのに必要であるさらなる成分も含む。そのような成分は、バイオマーカーまたは較正標準の検出にとって必要とされる補助薬剤であってもよい。さらに、キットは、好ましくは、1より多いバイオマーカーの検出のための薬剤を含んでもよい。
【0209】
一実施形態では、キットは、ベータ-カソモルフィン、アルファカルシトニン遺伝子関連ペプチド(アルファCGRP)、ベータカルシトニン遺伝子関連ペプチド(ベータCGRP)ランパリズマブ、組換えヒトC1エステラーゼインヒビター、ルコネスト、スラミン、骨形成タンパク質-7アゴニスト(例えば、THR-184)、α-メラニン細胞刺激ホルモンアナログ(例えば、ABT-719)、肝細胞増殖因子(HGF)模倣物質(例えば、ANG-3777)、デフェロキサミン、および/またはそれらの任意の組合せからなる群から選択される化合物を含む医薬組成物をさらに含んでもよい。あるいは、またはさらに、化合物は、QPI-1002(テプラシラン、I5NP)および/またはASP1128(選択的ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体デルタモジュレーター)であってもよい。
【0210】
一実施形態では、そのようなキットを、セラノスティクス(theranostic)概念(すなわち、個別化医療の形態)で使用してもよい。そのため、対象は、最初にバイオマーカーに関して分析され、次いで、投薬量および処置概念が、それに応じて、好ましくは、上記の化合物および/または医薬組成物の1つと適合化される。
【0211】
本発明のバイオマーカーを好ましく選択することができる複数の群が上に記載されている。これらの群は、特に、本発明の方法に関して記載されている。しかしながら、これらの群は本発明の方法についてだけでなく、本発明のキット、デバイス、および使用についても関連することが理解されるべきである。
【0212】
上記のキットまたは組成物によって含まれる、検出剤、好ましくは、抗体またはその断片は、アレイ形式で固相支持体上に固定化されることが特に想定される。特に、検出剤を、固相支持体上に固定化し、アレイ形式で、例えば、いわゆる「マイクロアレイ」で配置することができる。したがって、本発明はまた、上記検出剤を含むマイクロアレイも想定した。
【0213】
好ましくは、キット、組成物およびマイクロアレイは、対象の試料中で、AKIの発生のリスクを予測するため、およびAKIを診断するために使用される。
【0214】
本明細書で引用される全ての参考文献は、それらの開示内容全体および本明細書で具体的に言及された開示内容に関して、参照により本明細書に組み込まれる。
【0215】
実施形態
以下は、本発明の範囲内にある実施形態の一覧である。
【0216】
本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、-0.7未満のlogFCを有し、CD15、CD9抗原およびミエロブラスチン、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、
b.前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記少なくとも1つのバイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含み、
対照量が、AKIを発症するリスクがない、および/またはAKIを有していない対象などの、健康な対象における各バイオマーカーの量である方法を含む。
【0217】
さらなる態様では、本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.対象から得られた試料において、-0.7未満のlogFCを有し、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、
b.前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記少なくとも1つのバイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含み、
対照量が、AKIを発症するリスクがない、および/またはAKIを有していない対象などの、健康な対象における各バイオマーカーの量である方法を含む。方法は、対照量と比較した少なくとも1つのバイオマーカーの量の減少が、対象がAKIを有するか、またはAKIを発症するリスクがあることを示す実施形態を含む。
【0218】
方法は、対象がAKIを発症するリスクがある、および/またはAKIを有するかどうかを予測するステップを含む実施形態を含む。
【0219】
方法は、試料において、少なくともCD15およびDickkopf関連タンパク質2、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0220】
方法は、試料において、少なくともCD9抗原およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0221】
方法は、試料において、少なくともDickkopf関連タンパク質2およびインターフェロンアルファ-1/13、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0222】
方法は、試料において、Dickkopf関連タンパク質2およびヒアルロン酸媒介性運動性受容体、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0223】
方法は、試料において、少なくとも活性化T細胞の核因子およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0224】
方法は、試料において、少なくともインターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0225】
方法は、試料において、少なくとも活性化T細胞の核因子およびインターフェロンアルファ-1/13、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0226】
方法は、試料において、活性化T細胞の核因子およびヒアルロン酸媒介性運動性受容体、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む実施形態を含む。
【0227】
方法は、試料が尿、血液、血漿または血清試料である実施形態を含む。
【0228】
方法は、試料が、薬物の投与、薬物の投与の回避、造影媒体の注入または外科的介入などの、計画された医学的介入の前に採取されたものである実施形態を含む。
【0229】
方法は、1、2、3つ以上のさらなるバイオマーカーが試料において決定され、さらなるバイオマーカーが、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または予測バイオマーカーと診断バイオマーカーの組合せのうちの1つ以上から選択される実施形態を含む。
【0230】
方法は、バイオマーカーの断片、アイソフォームおよび/またはバリアントが、配列の全長にわたってバイオマーカーとの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する実施形態を含む。
【0231】
方法は、前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定が、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)または抗体アレイ、特に、平面抗体マイクロアレイまたはビーズに基づく抗体マイクロアレイなどのイムノアッセイデバイスを使用することを含む実施形態を含む。
【0232】
本発明は、対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のためのデバイスであって、
- 少なくとも1つのバイオマーカー、またはそのバリアントもしくは断片のための検出剤を含み、前記検出剤が、試料中の前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定を可能にする、対象の前記試料のための分析ユニット、および
- データ処理ユニットとデータベースとを含む評価ユニットであって、前記データベースが、保存された対照を含み、前記データ処理ユニットが、分析ユニットによって決定された少なくとも1つのバイオマーカーの量と、保存された対照との比較を実行することによって、予測を確立することができる、評価ユニット
を含み、
- バイオマーカーが、CD15、CD9抗原およびミエロブラスチンの一実施形態、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチンの別の実施形態、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、デバイスを含む。
【0233】
本発明は、少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するための検出剤、およびAKIの予測または早期診断を確立するための評価説明書を含み、バイオマーカーが、CD15、CD9抗原およびミエロブラスチンならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、キットを含む。
【0234】
本発明は、検出剤が抗体およびアプタマーからなる群から選択されるキットを含む。
【実施例】
【0235】
方法
本発明の基礎となる研究では、LuTx(肺移植)の前後の対象に由来する血漿試料を、930の異なる潜在的なバイオマーカーに対する1130の抗体を含む抗体マイクロアレイを使用して分析した。AKIN分類を使用してAKIが診断された対象と、AKIN分類を使用してAKIが診断されなかった対象との間に差異が存在するかどうかを評価した。統計的に有意であると判明した対象間のマーカー量の差異は、以下の表1のものである。これらのマーカーを、AKIの発生のリスクを予測するため、およびAKIの早期診断のためのバイオマーカーとして使用することができる。
【0236】
AKI発生のリスクが増大した、および増大していない患者ならびにAKIを有する、および有しない患者において存在量の差異を示すバイオマーカーを同定するために、複合抗体マイクロアレイを使用する試験を実施した。この試験では、試料のタンパク質画分を、蛍光色素によって直接標識した。試験に含まれる全ての試料をプールすることによって対照を確立し、第2の蛍光色素で標識した。インキュベーションのために、それぞれの試料を、対照試料と混合し、競合的二色手法において抗体マイクロアレイ上でインキュベートした。
【0237】
この試験において適用された抗体マイクロアレイは、900の異なるタンパク質を指向する1130の抗体を含んでいた。全ての抗体を、少なくとも2回反復で固定化した。試験は、AKIを有する、または有しない合計135の試料を含んでいた。試料を、AKIなし(AKIN0)またはAKI(AKIN1、2、3)として分類した。
【0238】
BCAアッセイによる血漿試料からの濃度測定後、試料を、scioDye-1(Sciomics、Germany)で1時間、調整されたタンパク質濃度で標識した。さらに、試料をプールした後、scioDye-2(Sciomics、Germany)で標識することによって、共通の対照を調製した。1時間後、ヒドロキシルアミンの添加によって反応を停止させた。30min後、過剰の色素を除去し、緩衝剤をPBSに交換した。全ての標識されたタンパク質試料を、すぐに使用した。
【0239】
全ての試料を、scioDiscover抗体アレイ(Sciomics、Heidelberg、Germany)上でインキュベートした。アレイを、scioBlock(Sciomics、Germany)でブロックし、その後、試料を、二色手法を使用して競合的にインキュベートした。3時間インキュベートした後、1xPBSTTでスライドを十分に洗浄し、0.1xPBSならびに水でリンスし、続いて、窒素で乾燥させた。
【0240】
同一の機器レーザー出力およびPMTを使用して、Powerscanner(Tecan、Austria)上で、スライドの走査を行った。GenePix Pro 6.0(Molecular Devices、Union City、USA)を用いて、スポットのセグメント化を実施した。平均シグナル強度およびバックグラウンド強度中央値をアップロードした後、R-BioconductorのLIMMAパッケージを使用して、得られたデータを分析した。正規化のために、不変Lowess正規化を適用した。示差分析のために、線形モデルを、moderated statisticsに基づく両側t検定またはF検定において得られるLIMMAと適合させた。BenjaminiおよびHochbergによる偽発見率を制御することによって、全ての提示されたp値を多重検定のために調整した。タンパク質を、|logFC|>0.3および調整されたp値<0.05について示差的と定義した。
【0241】
LIMMA分析を使用して、92のタンパク質を、上で定義された通り、示差的なものとしてAKIと非AKI試料との間の示差的存在量を用いて同定した。上記の試験の結果を、以下の表にまとめる。表において、2つの試料群におけるタンパク質存在量の差異は、底を2として算出された対数倍率変化(logFC)によって与えられる。有意性のレベルは、上記の多重検定について調整されたp値によって示される。
【0242】
マーカーの品質を評価するために、以下のように、logFC値、調整されたp値ならびにstripchart(存在量の差異および識別力の分布のグラフ表示)を考慮に入れてそれぞれのマーカーについて品質スコア(QS)を算出した:
QS=QS[logFC]+QS[調整されたp値]+QS[stripchart]。
【0243】
QS[logFC]は、|logFC|>1.0については「3」と定義される。
【0244】
QS[logFC]は、|logFC|>0.7については「2」と定義される。
【0245】
QS[logFC]は、|logFC|>0.5については「1」と定義される。
【0246】
QS[調整されたp値]は、調整されたp値<0.0001については「3」と定義される。
【0247】
QS[調整されたp値]は、調整されたp値<0.001については「2」と定義される。
【0248】
QS[調整されたp値]は、調整されたp値<0.01については「1」と定義される。
【0249】
QS[stripchart]定義については、stripchartの識別力を、専門科学者による評価後に、0.5~2.0の範囲内で「excellent」=2.0、「very good」=1.0、「good」=0.5と分類した。
【0250】
QS[stripchart]は、識別力=excellentまたはvery goodについて「1」と定義される。
【0251】
7の最大品質スコアを、1つのマーカーによって達成することができる。
【0252】
5を超える品質スコアは、「excellent」と定義され、
4の品質スコアは、「very high」と定義され、
3の品質スコアは、「high」と定義される。
【0253】
「logFC」は、底を2として算出される対数倍率変化と定義され、AKI患者と、AKIを有しない患者との間のタンパク質存在量の差異を表す。予測方法の場合、「AKI患者」とは、AKIを発症した対象を指す。logFC=1とは、AKI患者が、AKIを有しない患者と比較して、平均で21=2倍高いシグナルを有することを意味する。logFc=-1は、AKIを有しない患者と比較してAKI患者におけるシグナルが2-1=1/2であることを表す。
【0254】
「調整されたp値」は、多重検定のために調整されたp値であり、有意性のレベルを示す。
【0255】
「stripchart」は、示差的存在量分布ならびに識別力のグラフ表示である。
【0256】
結果
以下の表は、本発明者らによって同定されたバイオマーカーを同定するものである。
【0257】
本発明は、表1に示される92のバイオマーカーを含む。表1は、予測バイオマーカーと診断バイオマーカーとの両方を含む。
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
【0265】
【0266】
【0267】
【0268】
【0269】
【0270】
【0271】
【0272】
腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B(表1中のマーカー番号5、表2中のマーカー番号4、表6中のマーカー番号5)のリガンドを除いて、本発明のバイオマーカーを、固定化された抗体に結合させることによって同定した。ここで、固定化されたFc-腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1B融合タンパク質を、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含むこの受容体のリガンドを捕捉するために使用した。
【0273】
「Qualスコア」は、logFC値、調整されたp値ならびにstripchart(示差的存在量分布ならびに識別力のグラフ表示)を考慮に入れる品質スコアを示す。
【0274】
logFC値および調整されたp値は、同様に表1に示される。正のlogFC値は、各バイオマーカーが、AKIを有しない患者と比較して、AKI患者において上方調節されていることを示す。負のlogFC値は、各バイオマーカーが、AKIを有しない患者と比較して、AKI患者において下方調節されていることを示す。
【0275】
適用可能な場合、Uniprot登録名およびUniprot受託番号が示される。本発明のバイオマーカーは、全てではないがタンパク質であり、全てではないバイオマーカーがUniProt登録を有する。
【0276】
表1、表5および表6は、組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカーを含み、表4は、予測ならびに診断として同定されたバイオマーカーを含む。これらの表内で、予測アッセイにおいて同定されるバイオマーカーは、「pre」によって示され、診断アッセイにおいて同定されるバイオマーカーは、「diag」によって示される。
【0277】
表2は、本発明の78の予測バイオマーカーを示す。
【0278】
【0279】
【0280】
【0281】
【0282】
【0283】
【0284】
【0285】
【0286】
【0287】
【0288】
【0289】
表3は、本発明の26の診断バイオマーカーを示す。
【0290】
【0291】
【0292】
【0293】
12のバイオマーカーは、予測バイオマーカーと診断バイオマーカーとの両方であることが見出された。予測バイオマーカーと診断バイオマーカーとの両方である12のバイオマーカーは、表4に示される。
【0294】
【0295】
【0296】
AKI患者においてより高い存在量を示す35のバイオマーカーは、表5に示される。
【0297】
【0298】
【0299】
AKI患者においてより低い存在量を示す68のバイオマーカーは、表6に示される。
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
さらなる試験では、AKIを有する、または有しない597の試料(手術前の230;手術後の368)を含む別のより大きい試料コホートを、新しい抗体マイクロアレイ放出によって分析した。試料調製、インキュベーションおよび生データ獲得を、上記の方法のセクションに記載されたように実施した。示差分析のために、線形モデルを、moderated statisticsに基づく両側t検定またはF検定において得られるロバストM推定によりLIMMAと適合させた。タンパク質を、|logFC|>0.25および調整されたp値<0.001について示差的と定義した。
【0305】
有意に下方調節または上方調節されたバイオマーカーを、表7に描写する。
【0306】
【0307】
大規模試験の間に、AKIを有する患者において有意により高い、またはより低い存在量を示すいくつかのさらなるバイオマーカーも同定された。そのようなマーカーは、表8に描写される。
【0308】
【0309】
【0310】
【0311】
一部の場合、予測状態から診断状態へのlogFCの変化(すなわち、デルタlogFC)は、特殊な目的の意味のあるバイオマーカーを示す。そのようなマーカーは、表9に描写される。
【0312】
【0313】
臨床例
AKIは、重病患者における、および大手術後の主要な合併症である。特に、心臓手術では、患者は通常、高齢者であり、高血圧および糖尿病などの既存の状態を有することが多い。両方とも、腎不全の危険因子である。これらの患者は特に、急性腎障害(AKI)を発症するリスクがあり、その頻度は最大で40%である。多くの場合、腎機能の低下は、遅れて認識される。
【0314】
毎日の臨床業務の具体例は、基礎疾患として長期の高血圧を伴う僧帽弁および三尖弁の不全に罹患する72歳の女性患者である。手術前に、患者の腎機能は45%低下しており、手術は人工心肺装置を使用して実施しなければならず、血液製剤の投与が必要であった。手術後、患者は、約5Lの血管内液体投与によって血液量が過剰であった。これは、一般的な臨床パラメーターとしてのクレアチニンの増加が認識されず、かくして、AKIの早期診断を極めて困難なものにしたことを意味する。予測テスト、例えば、5~10種のマーカーのバイオマーカー組合せを含有する免疫ベースのポイントオブケアデバイスを使用して手術前に患者の血漿を分析することによって、リスクプロファイルを前もって決定し、弁置換術のための代替的な手順を議論して、AKI発症を防止することができる。さらに、血液製剤投与の場合、腎臓を損傷するヘモグロビン分解産物として少量の遊離ヘムを示す短期間保存された赤血球濃厚液が示されるかどうかを考慮することができる。手術後、この患者において腎臓パラメーターとしてのクレアチニンを再評価し、AKIを診断するための脱水に7日間かかった。OP後、6~24時間の時間枠で手術の直後、診断バイオマーカー組合せを使用して、AKIの開始および重症度を、早い段階で検出し、薬剤を腎臓の状況に対して調整することができる。当業者であれば、腎臓安定化薬物を考慮する、および/または抗生物質のような腎毒性物質の投薬量を回避もしくは調整することによって、患者の転帰を改善し、慢性腎臓病のような二次的状態を防止することができる。
【0315】
参考文献
【0316】
【0317】
【0318】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-12-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.前記対象から得られた試料において、-0.7未満のlogFCを有するバイオマーカーであって、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、
b.前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記少なくとも1つのバイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含み、
前記対照量が、AKIを発症するリスクがない、および/またはAKIを有していない対象などの、健康な対象における各バイオマーカーの量である、方法。
【請求項2】
前記対照量と比較した前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の減少が、前記対象がAKIを有するか、またはAKIを発症するリスクがあることを示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記対象がAKIを発症するリスクがある、および/またはAKIを有するかどうかを予測するステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化T細胞の核因子
は、活性化T細胞の核因子細胞質4または
そのアイソフォーム、断片もしくはバリアント
である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記試料において、少なくともインターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記試料において、少なくとも活性化T細胞の核因子およびインターフェロンアルファ-1/13、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料において、活性化T細胞の核因子およびヒアルロン酸媒介性運動性受容体、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料が尿、血液、血漿または血清試料である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記試料が、薬物の投与、薬物の投与の回避、造影媒体の注入または外科的介入などの、計画された医学的介入の前に採取されたものである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
1、2、3つ以上のさらなるバイオマーカーが前記試料において決定され、さらなるバイオマーカーが、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または予測バイオマーカーと診断バイオマーカーの組合せのうちの1つ以上から選択され、
- 前記タンパク質バイオマーカーが、CD9抗原、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、インターフェロンアルファ-1/13、バシギン、C-Cモチーフ、ケモカイン7、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、カスパーゼ-9、トランスフォーミング増殖因子-ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチン、II型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、CTPシンターゼ1、CD139、Max二量体化タンパク質4、膜貫通タンパク質54、アクチン、細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質、Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、インターロイキン-8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1(配列番号1~304ならびにCD15、CD139)、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記男性患者バイオマーカーが、CD15、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、ラミン-B1、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、Dickkopf関連タンパク質2、Krueppel様因子8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、および腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記予測バイオマーカーが、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、バシギン、C-Cモチーフケモカイン7、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、P-セレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、アクチン細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、インターロイキン-8、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質、LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子細胞質4、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニット、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメイン、クラス2、転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ニューロトロフィン-4、インターロイキン-18結合タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記診断バイオマーカーが、サイトカイン受容体様因子2、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、インターフェロンアルファ-1/13、カスパーゼ-9、インターロイキン-18、インターロイキン-7、CTPシンターゼ1、C-Cモチーフケモカイン7、CD139、エオタキシン、Max二量体化タンパク質4、インターロイキン-15、RNA結合タンパク質3、膜貫通タンパク質54、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、増殖停止特異的タンパク質6、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、カスパーゼ-8、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、およびE3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィンおよび軟骨オリゴマー基質タンパク質、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカーが、サイトカイン受容体様因子2、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン7、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、インターロイキン-18、インターロイキン-7、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、およびRNA結合タンパク質3ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バイオマーカーの前記断片、アイソフォームおよび/またはバリアントが、配列の全長にわたって前記バイオマーカーとの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定が、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)または抗体アレイ、特に、平面抗体マイクロアレイまたはビーズに基づく抗体マイクロアレイなどのイムノアッセイデバイスを使用することを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のためのデバイスであって、
- 少なくとも1つのバイオマーカーまたはそのバリアントもしくは断片のための検出剤を含み、前記検出剤が、試料における前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定を可能にする、前記対象の前記試料のための分析ユニット、および
- データ処理ユニットとデータベースとを含む評価ユニットであって、前記データベースが、保存された対照を含み、前記データ処理ユニットが、前記分析ユニットによって決定された前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記保存された対照との比較を実行することによって、前記予測を確立することができる、評価ユニット
を含み、
- 前記バイオマーカーが、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチンならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、デバイス。
【請求項14】
少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するための検出剤、およびAKIの予測または早期診断を確立するための評価説明書を含み、前記バイオマーカーが、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチンならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、キット。
【請求項15】
前記検出剤が、抗体およびアプタマーからなる群から選択される、請求項14に記載のキット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0314
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0314】
毎日の臨床業務の具体例は、基礎疾患として長期の高血圧を伴う僧帽弁および三尖弁の不全に罹患する72歳の女性患者である。手術前に、患者の腎機能は45%低下しており、手術は人工心肺装置を使用して実施しなければならず、血液製剤の投与が必要であった。手術後、患者は、約5Lの血管内液体投与によって血液量が過剰であった。これは、一般的な臨床パラメーターとしてのクレアチニンの増加が認識されず、かくして、AKIの早期診断を極めて困難なものにしたことを意味する。予測テスト、例えば、5~10種のマーカーのバイオマーカー組合せを含有する免疫ベースのポイントオブケアデバイスを使用して手術前に患者の血漿を分析することによって、リスクプロファイルを前もって決定し、弁置換術のための代替的な手順を議論して、AKI発症を防止することができる。さらに、血液製剤投与の場合、腎臓を損傷するヘモグロビン分解産物として少量の遊離ヘムを示す短期間保存された赤血球濃厚液が示されるかどうかを考慮することができる。手術後、この患者において腎臓パラメーターとしてのクレアチニンを再評価し、AKIを診断するための脱水に7日間かかった。OP後、6~24時間の時間枠で手術の直後、診断バイオマーカー組合せを使用して、AKIの開始および重症度を、早い段階で検出し、薬剤を腎臓の状況に対して調整することができる。当業者であれば、腎臓安定化薬物を考慮する、および/または抗生物質のような腎毒性物質の投薬量を回避もしくは調整することによって、患者の転帰を改善し、慢性腎臓病のような二次的状態を防止することができる。
以下に、本願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のための方法であって、
a.前記対象から得られた試料において、-0.7未満のlogFCを有するバイオマーカーであって、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するステップと、
b.前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記少なくとも1つのバイオマーカーの対照量とを比較するステップと
を含み、
前記対照量が、AKIを発症するリスクがない、および/またはAKIを有していない対象などの、健康な対象における各バイオマーカーの量である、方法。
[2] 前記対照量と比較した前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の減少が、前記対象がAKIを有するか、またはAKIを発症するリスクがあることを示す、[1]に記載の方法。
[3] 前記対象がAKIを発症するリスクがある、および/またはAKIを有するかどうかを予測するステップを含む、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記試料において、少なくとも活性化T細胞の核因子およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、[1]から[3]のいずれかに記載の方法。
[5] 前記試料において、少なくともインターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチン、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、[1]から[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記試料において、少なくとも活性化T細胞の核因子およびインターフェロンアルファ-1/13、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、[1]から[5]のいずれかに記載の方法。
[7] 前記試料において、活性化T細胞の核因子およびヒアルロン酸媒介性運動性受容体、またはそれらのアイソフォーム、断片もしくはバリアントの量を決定するステップを含む、[1]から[6]のいずれかに記載の方法。
[8] 前記試料が尿、血液、血漿または血清試料である、[1]から[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記試料が、薬物の投与、薬物の投与の回避、造影媒体の注入または外科的介入などの、計画された医学的介入の前に採取されたものである、[1]から[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 1、2、3つ以上のさらなるバイオマーカーが前記試料において決定され、さらなるバイオマーカーが、タンパク質バイオマーカー、男性患者バイオマーカー、予測バイオマーカー、診断バイオマーカー、または予測バイオマーカーと診断バイオマーカーの組合せのうちの1つ以上から選択され、
- 前記タンパク質バイオマーカーが、CD9抗原、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、インターフェロンアルファ-1/13、バシギン、C-Cモチーフ、ケモカイン7、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、Pセレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、カスパーゼ-9、トランスフォーミング増殖因子-ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチン、II型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、CTPシンターゼ1、CD139、Max二量体化タンパク質4、膜貫通タンパク質54、アクチン、細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質、Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、インターロイキン-8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニットB、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、E3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、ニューロトロフィン-4、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、インターロイキン-18結合タンパク質、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィン、軟骨オリゴマー基質タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1(配列番号1~304ならびにCD15、CD139)、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記男性患者バイオマーカーが、CD15、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、ラミン-B1、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、Dickkopf関連タンパク質2、Krueppel様因子8、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子2、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメインクラス2転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、および腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記予測バイオマーカーが、CD15、CD99抗原、CD99R抗原、高親和性免疫グロブリンイプシロン受容体サブユニットアルファ、腫瘍壊死因子およびリンホトキシン-アルファを含む腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー1Bのリガンド、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーメンバー6、バシギン、C-Cモチーフケモカイン7、CD9抗原、Dickkopf関連タンパク質2、ヒアルロン酸媒介性運動性受容体、インターロイキン-18、インターロイキン-7、主要プリオンタンパク質、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼC、P-セレクチン糖タンパク質リガンド1、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー14、DNAトポイソメラーゼ2-アルファ、脳由来神経栄養因子、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン3、C-Cモチーフケモカイン5、単球分化抗原CD14、サイトカイン受容体様因子2、ラミン-B1、細胞腫瘍抗原p53、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼPAK1、トランスフォーミング増殖因子ベータ誘導性タンパク質ig-h3、白血球表面抗原CD47、T細胞表面糖タンパク質CD8アルファ鎖、Dickkopf関連タンパク質3、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、サイトカイン受容体共通サブユニットベータ、ケラチンII型細胞骨格8、ロイコシアリン、MAP/微小管親和性調節キナーゼ4、メラノフィリン、間質コラゲナーゼ、マトリライシン、プロスタグランジンG/Hシンターゼ1、ミエロブラスチン、RNA結合タンパク質3、血清アミロイドP成分、テトラスパニン-16、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベーター、アクチン細胞質1、カスパーゼ-3、補体崩壊促進因子、高移動度群タンパク質B2、ホメオボックスタンパク質Hox-C11、細胞間接着分子1、インターロイキン-12サブユニットアルファ、インターロイキン-8、Krueppel様因子8、ガレクチン-4、調節因子複合体タンパク質、LAMTOR1、L-セレクチン、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ3、ムチン-5B、活性化T細胞の核因子細胞質4、トランスフォーミング増殖因子ベータ-1プロタンパク質、セリン/トレオニンタンパク質キナーゼVRK1、Rhoグアニンヌクレオチド交換因子、CASP8およびFADD様アポトーシス調節因子、CUEドメイン含有タンパク質2、細胞死関連タンパク質キナーゼ1、エンドセリン-1受容体、真核生物翻訳開始因子3サブユニット、DNA結合タンパク質インヒビターID-2、プレラミン-A/C、CADタンパク質、亜鉛フィンガータンパク質593、アンギオテンシノゲン、大腸腺腫様ポリポーシスタンパク質、POUドメイン、クラス2、転写因子1、ソマトスタチン受容体4型、腫瘍壊死因子アルファ誘導性タンパク質3、ニューロトロフィン-4、インターロイキン-18結合タンパク質、インターロイキン-16およびインターアルファトリプシンインヒビター重鎖H1、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記診断バイオマーカーが、サイトカイン受容体様因子2、プロスタグランジンG/Hシンターゼ2、インターフェロンアルファ-1/13、カスパーゼ-9、インターロイキン-18、インターロイキン-7、CTPシンターゼ1、C-Cモチーフケモカイン7、CD139、エオタキシン、Max二量体化タンパク質4、インターロイキン-15、RNA結合タンパク質3、膜貫通タンパク質54、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、サイクリン依存性キナーゼインヒビター3、組織因子経路インヒビター2、増殖停止特異的タンパク質6、微小管関連タンパク質1A/1B軽鎖3B、カスパーゼ-8、ホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸3-ホスファターゼおよび二重特異性タンパク質ホスファターゼPTEN、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ12、シトクロムP450 1B1、およびE3ユビキチンタンパク質リガーゼTRIM22、補体因子D、インスリン様増殖因子結合タンパク質1、シスタチン-B、WAP4ジスルフィドコアドメインタンパク質2、ハプトグロビン、ウテログロビン、キチナーゼ-3様タンパク質1、エラフィンおよび軟骨オリゴマー基質タンパク質、ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択され;
- 前記組み合わされた予測バイオマーカーと診断バイオマーカーが、サイトカイン受容体様因子2、カスパーゼ-8、エオタキシン、C-Cモチーフケモカイン7、増殖停止特異的タンパク質6、インターフェロンアルファ-1/13、インターロイキン-15、インターロイキン-18、インターロイキン-7、Krueppel様因子8、間質コラゲナーゼ、およびRNA結合タンパク質3ならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントのうちの1つ以上から選択される、[1]から[9]のいずれかに記載の方法。
[11] 前記バイオマーカーの前記断片、アイソフォームおよび/またはバリアントが、配列の全長にわたって前記バイオマーカーとの少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する、[1]から[10]のいずれかに記載の方法。
[12] 前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定が、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)または抗体アレイ、特に、平面抗体マイクロアレイまたはビーズに基づく抗体マイクロアレイなどのイムノアッセイデバイスを使用することを含む、[1]から[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 対象における急性腎障害(AKI)の発生のリスクを予測するため、またはAKIの早期診断のためのデバイスであって、
- 少なくとも1つのバイオマーカーまたはそのバリアントもしくは断片のための検出剤を含み、前記検出剤が、試料における前記少なくとも1つのバイオマーカーの量の決定を可能にする、前記対象の前記試料のための分析ユニット、および
- データ処理ユニットとデータベースとを含む評価ユニットであって、前記データベースが、保存された対照を含み、前記データ処理ユニットが、前記分析ユニットによって決定された前記少なくとも1つのバイオマーカーの量と、前記保存された対照との比較を実行することによって、前記予測を確立することができる、評価ユニット
を含み、
- 前記バイオマーカーが、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチンならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、デバイス。
[14] 少なくとも1つのバイオマーカーの量を決定するための検出剤、およびAKIの予測または早期診断を確立するための評価説明書を含み、前記バイオマーカーが、活性化T細胞の核因子、インターフェロンアルファ-1/13およびミエロブラスチンならびにそれらのアイソフォーム、断片およびバリアントからなる群から選択される少なくとも1つである、キット。
[15] 前記検出剤が、抗体およびアプタマーからなる群から選択される、[14]に記載のキット。
【国際調査報告】