(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】強制機械振動補助を伴う高速スピンドル
(51)【国際特許分類】
B23B 19/02 20060101AFI20230517BHJP
B23B 37/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B23B19/02 A
B23B37/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561454
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2021058763
(87)【国際公開番号】W WO2021204709
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512129077
【氏名又は名称】ミティス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァイン・ラポルテ
【テーマコード(参考)】
3C036
3C045
【Fターム(参考)】
3C036AA15
3C045FD03
(57)【要約】
工作機械用のスピンドル(1)が開示され、スピンドル(1)は、ハウジング(10)と、ハウジングに対して軸方向に運動する可能性を有してハウジングの内部に回転可能に取り付けられた、切削工具を駆動するためのシャフト(20)と、ハウジングに対して固定された軸受リング(202)とシャフトと共に運動可能な軸受リング(201)との間に軸方向に介在する単一のボール(200)であって、これらの転がりリングのうちの1つは、シャフトの回転軸に対して垂直ではない傾斜軸受面(231)を画定し、その結果、ボールの回転がシャフトの軸方向揺動を生成する、単一のボール(200)とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械用の高速スピンドル(1)であって、
ハウジング(10)と、
前記ハウジングに対して軸方向に移動することができるように前記ハウジングの内部に回転可能に取り付けられた切削工具を駆動するためのシャフト(20)と、
前記ハウジングに対して固定された転がり軸受リング(202)と前記シャフトと共に移動可能な転がり軸受リング(201)との間に軸方向に介在する単一のボール(200)であって、前記転がり軸受リングのうちの1つは、前記ボールの回転が前記シャフトの軸方向揺動をもたらすように、前記シャフトの前記回転の軸に対して垂直ではない傾斜転がり軸受面(231)を画定し、前記スピンドルは、10000rpmを超える前記シャフトの回転速度で動作することができる、単一のボール(200)と
を有する、スピンドル(1)。
【請求項2】
前記ボール(200)が、前記シャフト(20)に形成された環状溝(29)に部分的に嵌合される、請求項1に記載のスピンドル。
【請求項3】
固定された前記転がり軸受リング(202)が、前記傾斜転がり軸受面(231)を画定するものである、請求項1または2に記載のスピンドル。
【請求項4】
前記傾斜転がり軸受面(231)が平面である、請求項1から3のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項5】
前記ボール(200)がセラミック製である、請求項1から4のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項6】
前記ボール(200)が、前記スピンドル(1)の後部に位置する、請求項1から5のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項7】
前記スピンドルの前部および後部にそれぞれ2つの玉軸受の2つのセット(30,40)を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項8】
前記シャフトの後部への軸方向予荷重が、少なくとも1つの板バネ(170)によって保証される、請求項1から7のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項9】
前記転がり軸受が、環状の全体形状のストリップ(110)によって保持され、前記ストリップ(110)は、当該ストリップの外周に、前記ハウジングに対して固定された固定タブ(111)と、前記固定タブ間にある前記転がり軸受を保持するためのタブ(113)を有し、前記固定タブ(111)と前記転がり軸受を保持するための前記ストリップのうち前記タブ(113)との間に延在する部分(112)、好ましくは前記ストリップ(110)のスタックの可撓性は、前記シャフトの前記軸方向揺動中に前記転がり軸受が軸方向に移動することを可能にする、請求項1から8のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項10】
前記転がり軸受が、前記ストリップを通過するピン(130)によって前記ストリップに対して回転することが防止される軸受(50;51)に取り付けられ、
前記軸受は、当該軸受の端縁に突起を形成するセクタ(143)を有し、前記セクタに対して、前記ストリップは、前記転がり軸受を保持するために前記タブ(113)の領域に載置され、前記ストリップ(110)は、前記保持タブ(113)を介して前記転がり軸受の外側リング(34,44)と接触する、請求項9に記載のスピンドル。
【請求項11】
前記スピンドルが、前記ストリップを前記転がり軸受の外側リングに押し付けるための板バネ(170)を有する、請求項9または10に記載のスピンドル。
【請求項12】
前記スピンドルが、前記ハウジングに対して固定された主管状スペーサ(93)と、前記主スペーサ(93)の両側に配置された固定位置決リング(92,94)とを有し、前記ストリップ(110)は、前記主スペーサ(93)と前記位置決リング(92,94)との間に把持された前記固定タブ(111)を有する、請求項9から11のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項13】
前記スピンドルが、前記軸受(50,51)の両側にエンドリング(121,122)を有し、前記エンドリング内にピン(130)が嵌合され、板バネ(170)は前記エンドリングの一端を押圧し、他端が前記ストリップを保持するための前記タブ(113)に当接する、請求項9から12のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項14】
前記転がり軸受(31)および(41)が、アンギュラコンタクト転がり軸受である、請求項9から13のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項15】
前記スピンドルが、前記ボール(200)の遠心力に反応するために、前記シャフトと同軸の周辺転がり軸受リング(203)を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項16】
比率d
ball/d
pathが、1/4~1/2であり、d
ballは前記ボールの直径を表し、d
pathは前記ボールと前記傾斜転がり軸受面との接触点の直径を表す、請求項1から15のいずれか一項に記載のスピンドル。
【請求項17】
機械加工方法、特に穿孔方法であって、請求項1から16のいずれか一項に記載のスピンドルの前記シャフトが、少なくとも10000rpm、より良好にはさらに15000から30000rpmの回転速度で駆動される、方法。
【請求項18】
機械加工方法、特に穿孔方法であって、請求項1から16のいずれか一項に記載のスピンドルの前記シャフトの振動周波数が、任意選択で請求項17と組み合わせて、回転当たり0.4から0.6の軸方向揺動であり、特に約0.5の軸方向揺動である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強制機械振動(vibration)補助を伴う高速スピンドルに関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、切削工具が回転している間に軸方向揺動(oscillation)を受ける振動穿孔のための多くの解決策を開発した。
【0003】
これらの揺動は、切屑を分解し、穿孔性能を改善することを可能にする。
【0004】
工具の軸方向運動をもたらすために、多くの既存の解決策は転がり軸受の使用に基づいており、転がり軸受の1以上の軌道は起伏のある表面を有する。
【0005】
特許文献1および特許文献2は、振動機械加工装置の例を記載している。
【0006】
転がり軸受は、典型的には、回転中に回転ケージによって互いに対して所定の角度位置に保持されるボールから構成される。
【0007】
既知の解決策では、軸方向揺動の周波数は、回転速度と、転がり軸受が回転する間に転がり軸受が受ける起伏の数とに依存する。
【0008】
工具の回転速度は、その切削速度およびその直径に依存する。したがって、穿孔される孔の直径が小さくなるほど、同等の切削速度を維持するために回転速度を増加させる必要がある。しかしながら、軸方向揺動の周波数は、特に可動部品の慣性のために、過度の機械的負荷を発生させることなく、約300Hzである閾値を超えることはできない。したがって、既知の振動穿孔スピンドルの回転速度は、回転運動の軸方向振動運動への機械的変換に基づいて、一般に10000rpmに制限される。
【0009】
いくつかの用途では、生産性の理由から、多数の小径孔を非常に迅速に製造する必要がある。したがって、従来の非振動穿孔では、小径ドリルビットを、それらの切削速度に準拠するために、10000rpmをはるかに超える回転速度、例えば約20000rpmで駆動することが一般的である。いくつかの材料では、従来の穿孔では、これらの回転速度で切削中に生成された切屑は、長さが短く、容易に排出される。
【0010】
しかしながら、他の材料は、従来の穿孔中により長い切屑を生成し、これらは、切屑除去サイクルを伴わずに容易に排出されることができない。したがって、従来の穿孔で機械加工することができる材料の選択は、生産性を失うことなく制限されたままであり、これは特定の用途における欠点であることが証明されている。
【0011】
揺動周波数の選択がシャフトの回転速度から切り離される純粋に機械的な振動穿孔解決策が存在するが、これらは電気機械的または圧電素子の使用に基づいており、これらの解決策は純粋に機械的な解決策よりもはるかに高価で複雑であり、それらの実施は、機械的に可能であれば、特に振動穿孔解決策の実施中に既存の工作機械のプールに加えられる変更を最小限に抑えることが望まれる場合に、多くの用途において経済的に実行不可能なままである。
【0012】
特許文献3は、第1のリングと第2のリングとの間を転動する単一のボールを有する「スラスト玉軸受」タイプの転がり軸受を組み込んだ揺動ユニットを備える穿孔工具を提示している。そのような転がり軸受は、ボールの遠心分離のために高回転速度で動作するようには設計されていない。較正バネは、転がり軸受を圧縮下に保つ前進運動を生成する。
【0013】
特許文献4は、「スラスト玉軸受」タイプの転がり軸受を有する揺動穿孔工具を記載している。揺動運動は、その配置およびボールに課される段差を考慮すると、著しい不連続性を示す揺動運動をもたらすスプリットリングによって達成される。したがって、そのような装置は、機械的摩耗およびもたらされる振動のために、高い回転速度で動作することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許第2790860号明細書
【特許文献2】欧州特許第2501518号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102005002460号明細書
【特許文献4】米国特許第3088342号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本出願人が認識している限り、形成される切屑の長さを減少させるのに適した周波数で切削工具を軸方向揺動させながら高回転速度で回転させることができるコンパクトなスピンドルから利益を得るために、まだ満たされていない必要性が依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、この必要性を満たすことを目的とし、工作機械用のスピンドルによってこの目的を達成し、このスピンドルは、
ハウジングと、
ハウジングに対して軸方向に移動することができるようにハウジングの内部に回転可能に取り付けられた切削工具を駆動するためのシャフトと、
ハウジングに対して固定された転がり軸受リングと、シャフトと共に移動可能な転がり軸受リングとの間に軸方向に介在する単一のボールであって、これらのリングのうちの1つは、ボールの回転がシャフトの軸方向揺動をもたらすように、シャフトの回転軸に対して垂直ではない傾斜転がり軸受面を画定する、単一のボールと
を有する。
【0017】
シャフトの軸方向揺動運動をもたらすための単一のボールの本発明における使用は、10000rpmを超える回転速度を含む、移動される部品の慣性に適合する値に軸方向揺動周波数を維持することを可能にする。さらに、ボールと共に回転するケージがないため、転がり軸受の高回転速度での加熱が低減される。本発明は、必要に応じて、工作機械を変更することなく従来のスピンドルを交換することができるコンパクトな振動穿孔スピンドルを作成することを可能にする。
【0018】
好ましくは、ボールは、シャフトに形成された環状溝に部分的に嵌合される。これにより、その重心の軸からの距離、したがってその回転に関連する不均衡、およびボールによってシャフトに及ぼされる曲げモーメントを低減することが可能になる。
【0019】
好ましくは、固定された転がり軸受リングは、傾斜転がり軸受面を画定するものである。傾斜転がり軸受面は、有利には平面であり、高精度かつ良好な表面状態で非常に容易に作成することを可能にし、これはボールと転がり軸受リングとの間の摩擦を最小限に抑えるのに有利である。
【0020】
このような傾斜転がり軸受面には段差がない。段差の欠如は、振動および機械的摩耗の発生を制限する。
【0021】
有利には、軸方向切削荷重は、ハウジングに対して固定された転がり軸受リングで少なくとも部分的に反応する。
【0022】
好ましくは、ボールはセラミック製であり、強度/密度比を最適化することを可能にする。
【0023】
ボールはスピンドルの後部に位置することが好ましい。これは、工具におけるシャフトの案内の品質に対する曲げモーメントの影響を制限する。
【0024】
スピンドルは、好ましくは、スピンドルの前部および後部にそれぞれ2セットの玉軸受を有する。これらの転がり軸受は、好ましくは、アンギュラコンタクトおよびフランジ付き転がり軸受である。ボールは、後部セットの後ろに配置されることが好ましい。
【0025】
転がり軸受は、好ましくは、方向付けられた変形と環状の全体形状を有する弾性ストリップによって軸方向に移動することができるように中心に保たれる。ストリップは、好ましくは、その外周に、ハウジングに対して固定された固定タブを有し、かつこれらの固定タブの間に、転がり軸受を保持するためのタブを有し、固定タブと転がり軸受を保持するためのタブとの間に延在するストリップの部分の可撓性は、シャフトの軸方向揺動中に転がり軸受が軸方向に移動することを可能にする。ストリップの使用は、シャフトが軸方向に揺動することができるために必要な軸方向運動を可能にしながら、半径方向の剛性を確保するという問題に対する洗練された解決策を提供する。ストリップは、半径方向に高い剛性を有するが、それらの薄い厚さは、転がり軸受の軸方向運動に追従するためにそれらが曲がることを可能にする。ストリップは、軸方向の可撓性を維持しながら、半径方向の剛性を高めるために重ね合わされてもよい。
【0026】
転がり軸受は、好ましくはストリップを通過するピンによってストリップに対して回転方向に割り出される軸受に取り付けられてもよく、軸受は、その端縁に突起を形成するセクタを有し、このセクタにストリップが当接し、ストリップは保持タブを介して転がり軸受の外側リングと接触する。これらのセクタは、シャフトの軸方向揺動中にハウジングに対する転がり軸受の軸方向運動を可能にするために、固定化領域間に延在するストリップの部分が曲がることを可能にするために、固定化領域間の軸方向クリアランスを維持しながら、軸受に対してストリップの保持タブを固定化することを可能にする。
【0027】
ストリップを転がり軸受の外側リングに押し付けるために、板バネが存在してもよい。これらの板バネは、以下で説明するように、必要に応じてシャフトに軸方向予荷重を加えるための弾性部材として機能するものを除いて省略されてもよい。
【0028】
スピンドルは、ボールの回転中にシャフトを後部に戻す弾性復帰部材を有する。後部へのシャフトのこの軸方向予荷重は、有利には、少なくとも1つの板バネによってもたらされる。したがって、スピンドルは、後部に向かって戻り力を及ぼす少なくとも1つの板バネ、または単一の板バネを有してもよい。この板バネは、スピンドルの前部または後部に位置してもよい。板バネを後部に配置することにより、かなりのロータ長さに沿った圧縮力の導入を回避することが可能になる。このような弾性部材の後部への戻り力は、非ゼロ切削力の間に最大であることが有利であり、切削力が0より大きいときに緩和される。
【0029】
ハウジングに対するストリップの軸方向固定化は、様々な方法で行われてもよいが、非常に好ましくは、ストリップは、一連のスペーサを用いて固定タブに保持される。したがって、スピンドルは、ハウジングに対して固定された主管状スペーサと、主スペーサの両側に配置された固定位置決リングとを有し、ストリップは、主スペーサと位置決リングとの間に把持された固定タブを有することが好ましい。
【0030】
スピンドルは、軸受の両側に軸受エンドリングを有することが好ましく、そのエンドリング中に上述のピンが嵌合され、1以上の板バネは、これらのエンドリングの一端を押圧し、他端は、ハウジングに対して固定された表面を支持する。
【0031】
ハウジングは、好ましくは、傾斜転がり軸受面を画定する転がり軸受リングが当接するエンドピースによって後部で閉じられる。
【0032】
好ましくは、スピンドルは、ボールの遠心力に反応するために、シャフトと同軸の周辺転がり軸受リングを有する。遠心力に反応することは、10000rpmを超える回転速度で孔を穿孔するのに特に有利である。
【0033】
比率dball/dpathは、好ましくは1/4~1/2であり、ここで、dballはボールの直径を表し、dpathはボールと傾斜転がり軸受面との接触点の直径を表す。
【0034】
本発明のさらなる主題は、機械加工方法、特に穿孔方法であり、本発明によるスピンドルのシャフトが少なくとも10000rpm、例えば15000から30000rpmの間、特に約15000から20000rpmの回転速度で駆動される。
【0035】
本発明のさらなる主題は、機械加工方法、特に穿孔方法であり、本発明によるスピンドルのシャフトは、回転当たり0.4から0.6の軸方向揺動、特に約0.5の軸方向揺動の振動周波数で軸方向に揺動する。
【0036】
スピンドルは、従来の方法で、シャフトの回転中に前進運動を受けてもよい。
【0037】
本発明は、その非限定的な実施例の以下の説明を読むこと、および添付の図面を検討することにより、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明によるスピンドルの一例の概略斜視図である。
【
図3】スピンドルの後部をより詳細に示す図である。
【
図4】スピンドルの前部をより詳細に示す図である。
【
図8】軸方向断面において傾斜転がり軸受面を有するリングを示す図である。
【
図9】スピンドルの変形実施形態を縦断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
特に
図1~
図4に示す本発明によるスピンドル1は、長手方向軸Xを中心とする回転の円筒の全体形状を有する、好ましくは金属製のハウジング10を有する。
【0040】
ケーシング10は、それ自体既知の工作機械の案内および前進機構(図示せず)に取り付けられている。ハウジングに固定された支持体11は、前記機構が、穿孔を生成するのに必要な距離だけスピンドル1を軸方向に移動させることを可能にする。
【0041】
スピンドル1は、ドリルビット(図示せず)などの工具を前部で支持するように意図され、それを回転駆動するためのプーリ21に後部で結合されるシャフト20を有する。ドリルビットは、例えば2.5mm以下の直径を有する。
【0042】
シャフト20の回転速度は、例えば、毎分10000~20000回転である。
【0043】
本発明は、特定の工具、または穿孔の形成に限定されない。特に、フライス加工作業、座ぐり加工作業などの機械加工作業を実行することが有用であることが判明し得る。
【0044】
シャフト20は、前部転がり軸受のセット30および後部転がり軸受のセット40によってハウジング10に対して軸Xを中心に回転するように案内される。
【0045】
前部転がり軸受のセット30は、シャフト20と接触する内側リング32と、ボール33と、外側リング34と、フランジ35とをそれぞれ有する、接触角が例えば15°である2つのアンギュラコンタクト玉軸受31を有する。転がり軸受31は、互いに支え合い、前部軸受50に嵌め込まれている。
【0046】
後部転がり軸受のセット40は、同様の方法で、シャフト20と接触する内側リング42と、ボール43と、外側リング44と、フランジ45とをそれぞれ有する接触角が例えば15°である2つのアンギュラコンタクト転がり軸受41を用いて具現化される。転がり軸受41は、互いに支え合い、後部軸受51に嵌め込まれている。
【0047】
最後部の転がり軸受の内側リング42は、特に
図3に見られるように、シャフト20の肩部23に軸方向に当接するようになる。
【0048】
管状内部スペーサ24は、前部転がり軸受のセット30と後部転がり軸受のセット40との間でシャフト20に取り付けられ、その端部で対応する転がり軸受の内側リング32および42に当接するようになる。
【0049】
前部のシャフト20にはブロッキングリング70が固定されており、転がり軸受31の内側リング32、内部スペーサ24および転がり軸受41の内側リング42を固定化し、これによりシャフトに軸方向予荷重を与える。
【0050】
リング70は、必要に応じて真円度のズレを修正することを可能にする3つの円錐点止めネジ71を用いて図示の例ではシャフトに固定される。
【0051】
Oリングシール72は、シャフト20の溝73内に収容され、ブロッキングリング70を押圧する。
【0052】
ハウジング10は、
図2に示すように、例えばナット96を用いてハウジング10上に様々な方法で保持することができる、前部ナット90によって前部が閉じられ、その中に螺合され、後部閉鎖部95によって後部が閉じられる。
【0053】
前部ナット90は、前方に向けられたカラー190を有し、これは、ブロッキングリング70の後方に向けられたカラー191と共にシケイン192を形成する。
【0054】
内側リング195は、後部でシャフト20に取り付けられ、前方に向けられたカラー196を有し、これは、閉鎖部95のカラー197と共にシケイン198を形成する。
【0055】
シケイン192および198は、対向する回転部品と固定部品との間の摩擦なしに回転および並進運動を可能にするクリアランスを提供しながら、スピンドル1の前部および後部において非接触シーリングシステムを形成する。
【0056】
Oリングシール199は、シャフト20の溝27に収容され、内側リング195の対向面を押圧する。
【0057】
一連のスペーサは、ハウジング10内にその内面に接触して配置され、前部ナット90と後部閉鎖部95との間で、すなわち前部から後部にかけて、前部スペーサ91を形成するリング、前部軸受スペーサ92を形成するリング、主管状スペーサ93、および後部軸受スペーサ94を形成するリングに固定化される。
【0058】
弾性ストリップ110の4つのスタック100、101、102および103は、スペーサ91、92間、スペーサ92、93間、スペーサ93、94間、およびスペーサ94、95間にそれぞれ軸方向に介在する。
【0059】
各スタック100、101、102または103は、問題の例では、少なくとも2つのストリップ110、例えば5つを有し、そのうちの1つが
図5に単独で示されている。
【0060】
各ストリップ110は、環状の全体形状を有し、その周囲に規則的に分布する固定タブ111を有し、そのうちの3つは、問題の例では、外側に向かって半径方向に向けられ、それらの半径方向外縁部をハウジング10の内面に当接させる。固定タブ111の高さは、軸受スペーサ92および94の厚さよりもわずかに大きい。
【0061】
固定タブ111を接続する円弧部分112は、その長さの途中で、半径方向内側に向けられた他のタブ113を支持する。これらのタブ113は各々、一方の端部でタブ113の半径方向内側自由縁上に、反対側の端部で円弧部分112に形成された円形孔115内に開口する半径方向スロット114を有する。
【0062】
前部軸受50は、2つの軸受エンドリング121、122間に配置される。ピン130は、リング121および122を前部軸受50に対して所定の角度方向に保つために、これらのエンドリング121および122ならびに前部軸受50に対応する穿孔140および141に嵌め込まれる。
【0063】
これらのピン130は、孔115によってストリップ110を通過する。スロット114は、ピン130の嵌合をより容易にする。したがって、スタック100および101は、軸受50ならびにエンドリング121および122に対して所定の位置に角度を付けて保持される。
【0064】
軸受50ならびにリング121および122は、
図6および
図7に見られるように、それらの対向面上に突出セクタ143を有し、その角度範囲はタブ113の角度範囲に実質的に対応し、タブ113を互いに囲む。
【0065】
後部軸受51は、軸受エンドリング120、121間に同様に配置され、ピン130は、前部軸受50の場合と同様に、それらの間に配置されたストリップ110を角度的に固定化する。
【0066】
ストリップ110のタブ113は、転がり軸受31および41の外側リング32および42と軸方向に接触する。
【0067】
このアセンブリは、以下で詳細に説明するように、ストリップ110の半径方向の剛性の結果として転がり軸受のセット30および40を中心に保ちながら、転がり軸受のセット30および40の軸方向の運動の一定の自由度を可能にする。
【0068】
主スペーサ93の両端には、対応するエンドリング121または122を囲む端部172からセットバックされた肩部171が形成されている。
【0069】
板バネ170が、各端部172の内側に取り付けられ、肩部171およびこのエンドリング121または122に対して軸方向に介在する。
【0070】
前部において、2つの重ね合わされた板バネ170が、ブロッキングリング70の周りに取り付けられ、
図2に見られるように、前部ナット90とエンドリング121との間に軸方向に介在する。
【0071】
閉鎖部95には、肩部176と、隣接するエンドリング122の周りに延びる肩部176の前の端部177とが形成されている。
【0072】
板バネ170が、端部177の内側に取り付けられ、閉鎖部95と隣接するエンドリング122との間に軸方向に介在する。
【0073】
板バネ170は、転がり軸受の外側リングに当接するタブ113によって、エンドリング121および122を介して前後の転がり軸受の周りの弾性ストリップを把持する。
【0074】
ナット90と隣接するエンドリング121との間の前部に追加の板バネ170が存在することにより、ボール200をリング201および202に押し付けるために、シャフト20の後部への恒久的な弾性荷重が生じる。
【0075】
本発明によれば、スピンドル1は、回転中にシャフト20の軸方向揺動を発生させるための機構を有する。
【0076】
この機構は、シャフト20に取り付けられてシャフトと共に回転する回転転がり軸受リング201と閉鎖部95によって支持される固定された転がり軸受リング202との間を転動する単一のボール200を有する。
【0077】
周辺転がり軸受リング203は、肩部176の後に閉鎖部95に挿入され、ボール200が回転する間にボール200が辿る経路の周りに延びる。この周辺リング203は、ボール200の回転中に遠心力に反応することを可能にする。
【0078】
回転リング201は、環状溝29に隣接するシャフト20の肩部28に対して保持され、その凹面はボール200が辿る経路に実質的に一致する。
【0079】
転がり軸受リング202は、
図8に見られるように、平面でありかつその軸に対して垂直である後面230と、平面でありかつ斜めに延在する前面231とを有し、この面の法線は転がり軸受リング202の軸に対して数度、例えば問題の例では約0.3°の角度gを成す。gの式は、g=Arctan(amplitude/d
path)であり、「amplitude」は振動揺動の総ピーク/トラフ変動に対応し、d
pathは接触点の経路の直径である。
【0080】
見て分かるように、転がり軸受面231には段差がない。
【0081】
したがって、軸Xを中心としたその回転中、ボール200は、前面231の傾斜によって引き起こされる周期的かつ正弦の軸方向運動を実行する。ボール200は、その高速回転中、固定された転がり軸受リング202、回転転がり軸受リング201、および周辺転がり軸受リング203とのみ接触している。単一のボールを使用するため、ボールの転動はシャフトに曲げ応力を誘発するが、これはボール200とスピンドル軸20との間の距離が比較的小さいために制御され、許容可能な振幅を有するままである。
【0082】
転がり軸受面231に起伏がなく、むしろ平坦な表面であるという事実は、転がり軸受面を非常に良好な表面状態で非常に容易に製造することを可能にする。
【0083】
好ましくは、ボール200はセラミック製である。その直径は、好ましくは5mm以上であり、接点におけるヘルツ圧力を低減することを可能にする。その直径は、例えば6mmである。
【0084】
スピンドル1を取り付けるために、すべての内部構成要素をシャフト20上に配置することができ、アセンブリをハウジング10の前端部を介して挿入することができ、閉鎖部95は既に所定の位置にあり、次いで前部ネジ90を固定することができる。
【0085】
スピンドル1は次のように動作する。
【0086】
シャフト20は、プーリ21によって、例えばベルトによって回転駆動される。
【0087】
ボール200は、転がり軸受リング201、202間を転動し、その際に、前部に追加の板バネ170が存在することに関連する予圧に逆らってシャフト20を前方に移動させる。
【0088】
シャフト20の運動は、ストリップ110の存在のために可能であり、その円弧部分112は、セクタ143の存在によってそれらの隣に提供されるクリアランスのために曲がることができる。この曲げにより、前部軸受50および後部軸受51は、ボール200の運動によってもたらされる揺動に追従するように軸方向に運動することが可能になる。
【0089】
したがって、シャフト20の軸方向揺動が得られ、その周波数は、シャフト20の回転速度と、3つの接触点を有するこの転がり軸受に適用されるWillis式との両方によって与えられる。
【0090】
揺動運動中のシャフト20の軸方向移動は、例えば0.02mmから0.15mmの間である。スピンドルのシャフトは、回転当たり0.4から0.6、例えば約0.5の揺動の振動周波数で揺動する。
【0091】
ボール200が部分的に内接する溝29がシャフト20に存在すると、軸Xからの距離200、したがって単一のボール200の使用に関連する不均衡の現象が減少する。さらに、ボール200が移動する距離および結果として生じる摩耗が低減される。最後に、単一のボールによる非対称荷重によって引き起こされる曲げモーメントが低減される。
【0092】
もちろん、本発明は、今説明した例に限定されない。
【0093】
例えば、
図9に示すように、ハウジング10を後部で異なるように閉じることが可能である。この図では、後部閉鎖部95は、ハウジング10の対応する溝に取り付けられた弾性リング300によってハウジング内に保持され、それによってハウジングの軸方向および半径方向の空間要件を低減することが明らかである。
【0094】
シャフトに軸方向予荷重を提供するために使用されるものとは別に、板バネを廃止することが可能である。シャフトに軸方向予荷重を提供するために使用される板バネは、後部に、すなわち、
図2において板バネ170が軸受51の内側で半径方向に転がり軸受41に隣接する後部肩部171とリング121との間に配置される位置に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 スピンドル、10 ハウジング、11 支持体、20 シャフト、スピンドル軸、21 プーリ、23 肩部、24 内部スペーサ、28 肩部、29 溝、30 前部転がり軸受のセット、31 転がり軸受,玉軸受、32 内側リング、33 ボール、34 外側リング、35 フランジ、40 後部転がり軸受のセット、41 転がり軸受、42 内側リング、43 ボール、44 外側リング、45 フランジ、50 前部軸受、51 後部軸受、70 ブロッキングリング、71 止めネジ、72 Oリングシール、73 溝、90 ナット、91 スペーサ、92 スペーサ,位置決リング、93 主スペーサ、94 スペーサ,位置決リング、95 閉鎖部、96 ナット、100 スタック、101 スタック、102 スタック、103 スタック、110 ストリップ、111 固定タブ、112 円弧部分、113 タブ、114 スロット、115 孔、121 エンドリング、122 エンドリング、130 ピン、140 穿孔、141 穿孔、143 セクタ、170 板バネ、171 肩部、172 端部、176 肩部、177 端部、190 カラー、191 カラー、192 シケイン、195 内側リング、196 カラー、197 カラー、198 シケイン、199 Oリングシール、200 ボール、201 転がり軸受リング、202 転がり軸受リング、203 転がり軸受リング、230 後面、231 前面、300 弾性リング
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械用の高速スピンドル(1)であって、
ハウジング(10)と、
前記ハウジングに対して軸方向に移動することができるように前記ハウジングの内部に回転可能に取り付けられた切削工具を駆動するためのシャフト(20)と、
前記ハウジングに対して固定された転がり軸受リング(202)と前記シャフトと共に移動可能な転がり軸受リング(201)との間に軸方向に介在する単一のボール(200)であって、前記転がり軸受リングのうちの1つは、前記ボールの回転が前記シャフトの軸方向揺動をもたらすように、前記シャフトの前記回転の軸に対して垂直ではない傾斜転がり軸受面(231)を画定し、前記スピンドルは、10000rpmを超える前記シャフトの回転速度で動作することができる、単一のボール(200)と
を有する、スピンドル(1)。
【請求項2】
前記ボール(200)が、前記シャフト(20)に形成された環状溝(29)に部分的に嵌合される、請求項1に記載のスピンドル。
【請求項3】
固定された前記転がり軸受リング(202)が、前記傾斜転がり軸受面(231)を画定するものである、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項4】
前記傾斜転がり軸受面(231)が平面である、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項5】
前記ボール(200)がセラミック製である、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項6】
前記ボール(200)が、前記スピンドル(1)の後部に位置する、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項7】
前記スピンドルの前部および後部にそれぞれ2つの玉軸受の2つのセット(30,40)を有する、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項8】
前記シャフトの後部への軸方向予荷重が、少なくとも1つの板バネ(170)によって保証される、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項9】
前記転がり軸受が、環状の全体形状のストリップ(110)によって保持され、前記ストリップ(110)は、当該ストリップの外周に、前記ハウジングに対して固定された固定タブ(111)と、前記固定タブ間にある前記転がり軸受を保持するためのタブ(113)を有し、前記固定タブ(111)と前記転がり軸受を保持するための前記ストリップのうち前記タブ(113)との間に延在する部分(112)の可撓性は、前記シャフトの前記軸方向揺動中に前記転がり軸受が軸方向に移動することを可能に
し、
前記転がり軸受は、前記ストリップを通過するピン(130)によって前記ストリップに対して回転することが防止される軸受(50;51)に取り付けられ、前記軸受は、当該軸受の端縁に突起を形成するセクタ(143)を有し、前記セクタに対して、前記ストリップは、前記転がり軸受を保持するために前記タブ(113)の領域に載置され、前記ストリップ(110)は、前記保持タブ(113)を介して前記転がり軸受の外側リング(34,44)と接触し、
前記スピンドルが、前記ストリップを前記転がり軸受の前記外側リングに押し付けるための板バネ(170)を有し、
前記スピンドルは、前記ハウジングに対して固定された主管状スペーサ(93)と、前記主スペーサ(93)の両側に配置された固定位置決リング(92,94)とを有し、前記ストリップ(110)は、前記主スペーサ(93)と前記位置決リング(92,94)との間に把持された前記固定タブ(111)を有する、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項10】
前記スピンドルが、前記軸受(50,51)の両側にエンドリング(121,122)を有し、前記エンドリング内に前記ピン(130)が嵌合され、前記板バネ(170)は前記エンドリングの一端を押圧し、他端が前記ストリップを保持するための前記タブ(113)に当接する、
請求項9に記載のスピンドル。
【請求項11】
前記転がり軸受(31)および(41)が、アンギュラコンタクト転がり軸受である、
請求項9に記載のスピンドル。
【請求項12】
前記スピンドルが、前記ボール(200)の遠心力に反応するために、前記シャフトと同軸の周辺転がり軸受リング(203)を有する、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項13】
比率d
ball/d
pathが、1/4~1/2であり、d
ballは前記ボールの直径を表し、d
pathは前記ボールと前記傾斜転がり軸受面との接触点の直径を表す、
請求項1に記載のスピンドル。
【請求項14】
請求項1に記載のスピンドルの前記シャフトが、少なくとも10000rp
mの回転速度で駆動される、
機械加工方法。
【請求項15】
請求項1に記載のスピンドルの前記シャフトの振動周波数が
、回転当たり0.4から0.6の軸方向揺動であ
る、機械加工方法。
【国際調査報告】