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特表2023-521380多能性幹細胞由来の血管平滑筋細胞を製造する方法、使用およびそれに関連する組成物
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  • 特表-多能性幹細胞由来の血管平滑筋細胞を製造する方法、使用およびそれに関連する組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】多能性幹細胞由来の血管平滑筋細胞を製造する方法、使用およびそれに関連する組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230517BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/01 20060101ALN20230517BHJP
【FI】
C12N5/10
C12N1/00 G ZNA
C12N15/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561523
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-24
(86)【国際出願番号】 US2021026659
(87)【国際公開番号】W WO2021207655
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/007,698
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】504391260
【氏名又は名称】エモリー ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヨンソプ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ギョンヒ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065BA01
4B065BB05
4B065BB12
4B065BB13
4B065BB19
4B065BB23
4B065BB25
4B065BB32
4B065BB34
4B065BC03
4B065BC07
4B065BC46
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、前駆体幹細胞から血管平滑筋様細胞を製造する方法に関する。特定の態様において、血管平滑筋様細胞は、血管作動薬に応答して収縮することができる。特定の態様において、該方法は、多能性幹細胞を中胚葉分化誘導増殖培地と接触させ、次いでコラーゲンの存在下で血清不含有血管平滑筋細胞増殖培地中で細胞を複製させ、カドヘリン-2を発現する複製された細胞を精製することを含む。特定の態様において、精製された細胞は、心血管疾患または病状を処置または予防するために用いられる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管平滑筋様細胞の製造方法であって、
a) 多能性幹細胞を、該多能性幹細胞が誘導された中胚葉様細胞を形成するような条件下で、中胚葉分化誘導増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、中胚葉分化誘導増殖培地が、
1)rho-関連タンパク質キナーゼ阻害剤、
2)グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3阻害剤、および
3)塩基性線維芽細胞増殖因子
を含む、工程;
b) 誘導された中胚葉様細胞を、該中胚葉様細胞が誘導された血管平滑筋様細胞を形成するような条件下で、第1の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、第1の血管平滑筋細胞増殖培地が、
1)トランスフォーミング増殖因子-β、
2)上皮細胞増殖因子、および
3)血小板由来増殖因子
を含む、工程;
c) 誘導された血管平滑筋様細胞を、該誘導された血管平滑筋様細胞が互いに剥離するような条件下で、プロテアーゼまたはコラゲナーゼと接触させて、剥離された誘導された血管平滑筋様細胞を得る工程;
d) 剥離された誘導された血管平滑筋様細胞を、コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上暴露して複製し、複製された血管平滑筋様細胞を提供する工程;
e) 複製された血管平滑筋様細胞を、複製された血管平滑筋様細胞が誘導された血管平滑筋様細胞の第2のバッチを形成するような条件下で、第2の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、第2の血管平滑筋細胞増殖培地が、
1)トランスフォーミング増殖因子-β、
2)上皮細胞増殖因子、および
3)血小板由来増殖因子
を含む、工程;ならびに、
f) カドヘリン-2を発現する細胞を選択することにより、誘導された血管平滑筋様細胞の第2バッチを精製し、精製されたカドヘリン-2を発現する誘導された血管平滑筋様細胞を提供する工程
を含む、製造方法。
【請求項2】
第2の血管平滑筋細胞増殖培地中のトランスフォーミング増殖因子-βの濃度が、第1の血管平滑筋細胞増殖培地中のトランスフォーミング増殖因子-βの濃度と比べて増加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2の血管平滑筋細胞増殖培地中の血小板由来増殖因子の濃度が、第1の血管平滑筋細胞増殖培地中の血小板由来増殖因子の濃度と比べて低減される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤が、トランス-4-[(1R)-1-アミノエチル]-N-4-ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(Y-27632)またはその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3阻害剤が、6-[[2-[[4-(2、4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジン-カルボニトリル(CHIR-99021)またはその塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
多能性幹細胞が、胚性幹(ES)細胞または人工多能性幹(iPS)細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
多能性幹細胞を中胚葉誘導増殖培地と1日以上接触させる期間が、4日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
多能性幹細胞を中胚葉誘導増殖培地と1日以上接触させる期間が、5日以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
誘導された中胚葉様細胞と第1の血管平滑筋細胞増殖培地とを1日以上接触させる期間が、20日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
誘導された中胚葉様細胞と第1の血管平滑筋細胞増殖培地とを1日以上接触させる期間が、21日以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上接触させることにより剥離された誘導された血管平滑筋様細胞を複製する期間が、15日間である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地への1日以上の曝露による剥離誘導された血管平滑筋様細胞の複製期間が、16日間以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
複製された血管平滑筋様細胞と第2の血管平滑筋細胞増殖培地とを1日以上接触させる期間が、25日以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
複製された血管平滑筋様細胞と第2の血管平滑筋細胞増殖培地とを1日以上接触させる期間が、26日以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
精製されたカドヘリン-2発現誘導された血管平滑筋様細胞を、コラーゲンおよび第2の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上接触させて複製する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
多能性幹細胞を、血管スムーセリンおよび血管平滑筋ミオシン重鎖を発現する細胞に形質転換させて、血管平滑筋様細胞を提供するカドヘリン-2発現細胞を精製することを含む、方法または血管平滑筋様細胞の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法によって製造された細胞を含む、組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の方法により製造された細胞の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、心血管疾患または病状を処置または予防する方法。
【請求項19】
多能性細胞が、対象に由来する人工多能性細胞である、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月9日出願の米国仮特許出願第63/007,698号に基づく優先権の利益を主張する。この出願の全体は、あらゆる目的のために引用により本明細書中に包含される。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
この発明は、米国国立衛生研究所のHL127759およびDK108245の政府支援を受けて行われた。連邦政府は、本発明につき一定の利益を有する。
【0003】
オフィス電子ファイルシステム(EFS-WEB)によりテキストファイルで提出された資料の引用挿入
本出願に関連する配列表は、紙媒体に代えてテキスト形式で提供され、これを引用することにより本明細書に組み込まれる。配列表を含むテキストファイルの名称は、19072PCT_ST25.txtである。テキストファイルは10KBであり、2021年4月8日に作成され、EFS-Webを介して電子的に提出されている。
【背景技術】
【0004】
背景
心筋梗塞(MI)および末梢動脈疾患(PAD)などの心血管虚血性症状の後に血管の機能不全が起こることが多い。これらの疾患は、多くの場合、アテローム性動脈硬化による血管の閉塞を起こし、血液循環不全を起こし、最終的に組織が壊死する。そのため、血管機能障害の結果を管理するための改善された方法を見出す必要がある。
【0005】
血管中には、内皮細胞に加えて血管平滑筋細胞(VSMC)が存在する。VSMCは、スムーセリン(SMTN;smoothelin)および平滑筋ミオシン重鎖の発現を特徴とする収縮性(分化型)表現型に存在する。血管平滑筋細胞(VSMC)の収縮能の低下および上皮性表現型の獲得は、血管炎、プラーク形成、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺高血圧などの増殖性血管病変に関与している。しかしながら、血清の存在下で単離・培養されると、VSMCは合成表現型と呼ばれる低分化状態に変化し、増殖性を示すようになる。したがって、VSMCを生成して維持し、収縮性表現型を維持するための改善された方法を見出す必要がある。
【0006】
Cheungらは、ヒト血管平滑筋のサブタイプを作成することを報告した(Nat Biotechnol. 2012, 30(2): 165-173)。Patschらは、ヒト多能性幹細胞から血管内皮細胞および平滑筋細胞を作成したことを報告した(Nat Cell Biol 2015, 17:994-1003)。
【0007】
本明細書で引用した文献は、先行技術と認めるものではない。
【発明の概要】
【0008】
概要
本開示は、前駆幹細胞から血管平滑筋様細胞を製造する方法に関する。特定の態様において、血管平滑筋様細胞は血管作動薬(vasoactive agent)に応答する。特定の態様において、この方法は、多能性幹細胞を中胚葉分化誘導増殖培地(mesoderm induction growth medium)と接触させ、その後、その細胞をコラーゲン存在下の血清不含有血管平滑筋細胞増殖培地中で複製することを含み、カドヘリン-2を発現する複製細胞を精製する。特定の態様において、精製細胞は、心血管疾患または状態を処置または予防するために用いられる。
【0009】
特定の態様において、本発明は、多能性幹細胞をスムーセリンおよび平滑筋ミオシン重鎖を発現する細胞に形質転換し、カドヘリン-2を発現する細胞を精製して、収縮性表現型のカドヘリン-2を発現する血管平滑筋様細胞の精製組成物を提供することを含む収縮表現型の血管平滑筋様細胞を製造する方法に関する。特定の態様において、本方法は、カドヘリン-2を発現する血管平滑筋様細胞を複製することをさらに含む。
【0010】
特定の態様において、本発明は、a)多能性幹細胞を、該多能性幹細胞が誘導された中胚葉様細胞を形成するような条件下で、中胚葉分化誘導増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、該中胚葉分化誘導増殖培地が、1)rho-関連タンパク質キナーゼ阻害剤、2)グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3阻害剤、および3)塩基性線維芽細胞増殖因子、を含む、工程;b)誘導された中胚葉様細胞を、該中胚葉様細胞が誘導された血管平滑筋様細胞を形成するような条件下で、第1の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、第1の血管平滑筋細胞増殖培地が、1)トランスフォーミング増殖因子-β、2)上皮細胞増殖因子、および3)血小板由来増殖因子、を含む、工程;c)誘導された血管平滑筋様細胞を、該誘導された血管平滑筋様細胞が互いに剥離するような条件下で、プロテアーゼまたはコラゲナーゼと接触させて、剥離された誘導された血管平滑筋様細胞を得る工程;d)剥離された誘導された血管平滑筋様細胞を、コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上暴露して複製し、複製された血管平滑筋様細胞を提供する工程;e)複製された血管平滑筋様細胞を、複製された血管平滑筋様細胞が誘導された血管平滑筋様細胞の第2のバッチを形成するような条件下で、第2の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、第2の血管平滑筋細胞増殖培地が、1)トランスフォーミング増殖因子-β、2)上皮細胞増殖因子、および3)血小板由来増殖因子、を含む、工程;ならびに、f)カドヘリン-2を発現する細胞を選択することにより、誘導された血管平滑筋様細胞の第2バッチを精製し、精製されたカドヘリン-2を発現する誘導された血管平滑筋様細胞を提供する工程、を含む、無血清培養法による血管平滑筋様細胞の製造方法に関する。
【0011】
特定の態様において、第2の血管平滑筋細胞増殖培地中のトランスフォーミング増殖因子-βの濃度は、第1の血管平滑筋細胞増殖培地中のトランスフォーミング増殖因子-βの濃度と比べて増加される。
【0012】
特定の態様において、第2の血管平滑筋細胞増殖培地中の血小板由来増殖因子の濃度は、第1の血管平滑筋細胞増殖培地中の血小板由来増殖因子の濃度と比べて低減される。
【0013】
特定の態様において、rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤は、トランス-4-[(1R)-1-アミノエチル]-N-4-ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(Y-27632)またはその塩である。
【0014】
特定の態様において、グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3阻害剤は、6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR-99021)またはその塩である。
【0015】
特定の態様において、前記多能性幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0016】
特定の態様において、多能性幹細胞を中胚葉分化誘導増殖培地と1日以上接触させることは、4日間接触させることを含む。
【0017】
特定の態様において、該多能性幹細胞を中胚葉分化誘導増殖培地と1日以上接触させることは、5日以下接触させることを含む。
【0018】
特定の態様において、該誘導された中胚葉様細胞を第1の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、20日間接触させることを含む。
【0019】
特定の態様において、誘導された中胚葉様細胞を第1の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、21日以下の期間である。
【0020】
特定の態様において、コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地への1日以上の曝露により剥離された誘導された血管平滑筋様細胞を複製することは、15日間複製することを含む。
【0021】
特定の態様において、コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地への曝露による剥離された誘導された血管平滑筋様細胞の1日以上の複製は、16日以下の期間である。
【0022】
特定の態様において、複製された血管平滑筋様細胞を第2の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、25日間以上接触させることを含む。
【0023】
特定の態様において、複製された血管平滑筋様細胞を第2の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、26日以下の期間である。
【0024】
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、精製されたカドヘリン-2発現誘導された血管平滑筋様細胞を、コラーゲンおよび第2の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上暴露することによって複製させる工程をさらに含む。
【0025】
特定の態様において、前記カドヘリン-2を発現する細胞を選択することは、細胞を抗カドヘリン-2抗体と接触させ、蛍光抗体でマーキングし、蛍光活性化セルソーティングにより細胞を選択することおよび蛍光活性化セルソーティングにより細胞を選択することを含む。
【0026】
特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって作製された細胞を含む組成物および増殖培地に関する。
【0027】
特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって作製された細胞の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、心血管疾患または病状を治療または予防する方法に関する。特定の態様において、多能性幹細胞は、対象由来の誘導された人工多能性幹細胞である。特定の態様において、対象は、心筋梗塞、血管炎症、プラーク形成、アテローム性動脈硬化症、再狭窄および肺高血圧症と診断される。
【0028】
特定の態様において、血管平滑筋様細胞は、カルバコール、エンドセリン-1(ET-1)またはKClなどの血管作動薬に応答して収縮する。
【0029】
特定の態様において、血管平滑筋様細胞は、内皮細胞または内皮様細胞と混合されるか、まあはそれと組み合わせて投与され、その結果、内皮細胞または内皮様細胞単独の投与と比較して改善された血流回復がもたらされる。
【0030】
特定の態様において、血管平滑筋様細胞は、毛細管様管を形成する内皮細胞または内皮様細胞と混合されるか、またはこれらと組み合わせて投与される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、hiPSCからのVSMCの作製方法を示す。
図2図2は、hiPSC-VSMCの分化過程における遺伝子発現パターンに関するデータを示す。
図3図3は、hiPSC-VSMCの遺伝子発現パターンをhAoSMCと比較した結果を示す。
図4図4は、57日目のCDH2陽性hiPSC-VSMCにおける多能性関連遺伝子の発現が減少していることを示すデータを示す。
図5図5は、63日目の、VSMC特異的マーカーに陽性のhiPSC-VSMCのパーセンテージを示す。
図6図6Aは、hiPSC-VSMCの細胞内カルシウム流量の増加を示すデータを示す。図6Bは、hiPSC-VSMCの収縮性の増加を示すデータを示す。
図7図7は、HUVECを用いたhiPSC-VSMCのチューブ形成の定量化を示す。
図8図8は、hiPSC-VSMCにおけるMMP2およびMMP9遺伝子の発現に関するデータを示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、記載された特定の態様に限定されず、例えば、当然ながら、改変し得ることを理解されるべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で用いる用語は、特定の態様を説明する目的のためだけであり、限定することを意図していないことを理解されたい。
【0033】
他にこれと異なる定義がされない限り、本明細書で用いる全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または同等の何れかの方法および材料も、本発明の実施または試験に用いられ得るが、好ましい方法および材料について、ここに記載する。
【0034】
本明細書で引用された全ての刊行物および特許は、個々の刊行物または特許が引用により包含されることが具体的かつ個別に示されているかのように、引用により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用された関連する方法および/または材料を開示及および記載するために、引用により本明細書に包含される。何れかの刊行物の引用は、出願日前のその開示のためであり、本開示が先行開示によりかかる刊行物に先行する権利を有しないことを認めるものとして解釈されるべきではない。さらに、提供された公開の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の公開の日付と異なる可能性がある。
【0035】
本明細書を読めば当業者には明らかなように、本明細書に説明および図示された個々の態様の各々は、本発明の範囲または精神から逸脱することなく他のいくつかの態様のいずれかの特徴から容易に分離またはそれと組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有している。何れかの記載された方法は、記載された事象の順序で、または論理的に可能な何れかの他の順序で実施することができる。
【0036】
本発明の態様は、特記しない限り、当業者の技術範囲内にある医学、有機化学、生化学、分子生物学、薬理学などの技術を採用し得る。このような技術は、文献において十分に説明されている。
【0037】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いるとき、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかに別の指示がない限り、複数形の語を含むことが特記される。
【0038】
“対象”とは、何れかの動物を意味するが、好ましくは、例えばヒト、サル、マウスまたはウサギなどの哺乳動物である。
【0039】
本明細書で用いる用語“処置する”および“処置”とは、対象(例えば、患者)が治癒され、疾患が根絶される場合に限定されない。むしろ、本発明の態様は、単に症状を軽減する、および/または疾患の進行を遅延させる処置も企図する。
【0040】
用語“平滑筋α-アクチン”および“大動脈平滑筋アクチン”とは、第10番染色体上のACTA2の遺伝子産物を意味する。ホモサピエンス(ヒト)アクチンα2,平滑筋(ACTA2)転写変異体1,mRNAは、NCBI参照配列NM_001141945.2である。
【0041】
用語“平滑筋ミオシン重鎖”および“SMHC”とは、ホモサピエンス(ヒト)第16番染色体上のMYH11の遺伝子産物を意味する。ヒトミオシン重鎖11(MYH11),転写変異体SM2B,mRNAは、NCBI参照配列NM_001040113.2である。
【0042】
用語“トランスジェリン”および“SM22-α”とは、ヒト第11番染色体上のTAGLNの遺伝子産物を意味する。ヒトトランスジェリン(TAGLN),転写変異体2,mRNAは、NCBI参照配列NM_003186.5である。
【0043】
用語“カルポニン1”および“CNN1”とは、ホモサピエンス(ヒト)第19番染色体上のCNN1の遺伝子産物を意味する。ヒトカルポニン1(CNN1),転写変異体1,mRNAは、NCBI参照配列NM_001299.6である。
【0044】
用語“カルデスモン1”および“CALD1”とは、ホモサピエンス(ヒト)第7番染色体上のCALD1の遺伝子産物を意味する。ヒトカルデスモン1(CALD1),転写変異体2,mRNAは、NCBI参照配列NM_004342.7である。
【0045】
用語“スムーセリン”および“SMTN”とは、ホモサピエンス(ヒト)第22番染色体上のSMTNの遺伝子産物を意味する。ヒトスムーセリン(SMTN),転写変異体4,mRNAは、NCBI参照配列NM_001207017.1である。
【0046】
グリコーゲン合成酵素キナーゼ3(GSK-3)はセリン/スレオニンキナーゼである。GSK-3は、基質のセリン残基またはスレオニン残基のいずれかにリン酸基を転移する。GSK-3のリン酸化は、代謝(グルコース調節)、細胞シグナル伝達、細胞輸送、アポトーシス、増殖などの生物学的過程を調節する。“GSK-3阻害剤”は、基質のリン酸化を妨害する分子を意味する。特定の態様において、本明細書で企図されるGSK-3阻害剤は、以下から選択される:6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR99021);N-6-[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(1H-イミダゾール-1-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]-3-ニトロ-2,6-ピリジンジアミン(CHIR-98014);3-(1,3-ジヒドロ-3-オキソ-2H-インドール-2-イリデン)-1,3-ジヒドロ-2H-インドール-2-オン(インジルビン);(2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(BIO);(2’Z,3’E)-6-ブロモインジルビン-3’-アセトキシム(BIO-アセトキシム);3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(SB216763);3-[6-(3-アミノフェニル)-7H-ピロロ[2,3-d]ピリミジン-4-イルオキシ]フェノール(TWS119);4-ベンジル-2-(ナフタレン-1-イル)-[1,2,4]チアジアゾリジン-3,5-ジオン(チデグルシブ);3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(SB415286);3-アミノ-6-[4-[(4-メチル-1-ピペラジニル)スルホニル]フェニル]-N-3-ピリジニル-2-ピラジンカルボキサミド(AZD2858);2-ヒドロキシ-3-[5-[(モルホリン-4-イル)メチル]ピリジン-2-イル]-1H-インドール-5-カルボニトリル(AZD1080);N-(4-メトキシベンジル)-N’-(5-ニトロ-1,3-チアゾール-2-イル)ウレア(AR-A014418);3-[9-フルオロ-1,2,3,4-テトラヒドロ-2-(1-ピペリジニルカルボニル)ピロロ[3,2,1-jk][1,4]ベンゾジアゼピン-7-イル]-4-イミダゾ[1,2-a]ピリジン-3-イル-1h-ピロール-2,5-ジオン(LY2090314);および、3-(4-フルオロフェニルエチルアミノ)-1-メチル-4-(2-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン(IM-12)またはそれらの塩。
【0047】
Rho関連タンパク質キナーゼ(ROCK)は、セリン-スレオニンキナーゼの一種で、血管収縮および血管リモデリングに介在するなど、細胞内の現象に関与している。ROCKは、低分子量GTPaseであるRhoの下流に位置するエフェクタータンパク質である。“ROCK阻害剤”は、基質のリン酸化を妨害する分子を意味する。特定の態様において、本明細書で企図されるROCK阻害剤は、ファスジル;リパスジル;ネタルスジル;N-[(3-ヒドロキシフェニル)メチル]-N’-[4-(4-ピリジニル)-2-チアゾリル]ウレア(RKI-1447);トランス-4-[(1R)-1-アミノエチル]-N-4-ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(Y-27632);4-[4-(トリフルオロメチル)フェニル]-N-(6-フルオロ-1H-インダゾール-5-イル)-2-メチル-6-オキソ-1,4,5,6-テトラヒドロ-3-ピリジンカルボキサミド(GSK-429286);および、4-(1-アミノエチル)-N-(1H-ピロロ(2,3-b)ピリジン-4-イル)シクロヘキサンカルボキサミド(Y-30141)またはそれらの塩を選択する。
【0048】
用語“トランスフォーミング増殖因子β”、“TGF-β”、“TGF-ベータ”とは、様々な種類の細胞によって分泌され、正常な上皮細胞における恒常性を調節するサイトカインを意味する。TGF-βには3種類のアイソフォームが存在する。TGF-βアイソフォーム1が最も顕著である。ヒト組換えTGF-βは、以下の配列を有する112aaの各サブユニットが1つのジスルフィド結合で連結された25.0kDaのタンパク質として市販されている:
ALDTNYCFSSTEKNCCVRQLYIDFRKDLGWKWIHEPKGYHANFCLGPCPYIWSLDTQYSKVLALYNQHNPGASAAPCCVPQALEPLPIVYYVGRKPKVEQLSNMIVRSCKCS(配列番号1)。
【0049】
用語“塩基性線維芽細胞増殖因子”または“bFGF”とは、FGF受容体(FGFR)ファミリーのメンバーと結合するβ-トレフォイル(trefoil)構造を有するタンパク質を意味する。ヒト組換えbFGFは、以下の配列を有する154アミノ酸のタンパク質の形態で市販されている:
AAGSITTLPALPEDGGSGAFPPGHFKDPKRLYCKNGGFFLRIHPDGRVDGVREKSDPHIKLQLQAEERGVVSIKGVCANRYLAMKEDGRLLASKCVTDECFFFERLESNNYNTYRSRKYTSWYVALKRTGQYKLGSKTGPGQKAILFLPMSAKS(配列番号2)。
【0050】
用語、“上皮細胞増殖因子”および“EGF”は、約6kDaであるタンパク質を意味する。ヒトEGF遺伝子は、上皮細胞および他の細胞の分裂を刺激するために機能するペプチドを生成するためにタンパク質分解的に処理されるプレプロタンパク質をコードしている。ヒト組換えEGFは、以下の配列を有する54アミノ酸のタンパク質の形態で市販されている:
MNSDSECPLSHDGYCLHDGVCMYIEALDKYACNCVVGYIGERCQYRDLKWWELR(配列番号3)。
【0051】
血小板由来増殖因子(PDGF)は、PDGF-A鎖およびPDGF-B鎖と呼ばれる2本のポリペプチド鎖からなるジスルフィド結合の二量体である。3種の天然PDGFは、PDGF-AA、PDGF-BBおよびPDGF-ABである。ヒトの組換えPDGF-BBは、以下の配列を有する2本のβ鎖(総アミノ酸数218)の24.3kDaのジスルフィド結合したホモ二量体として市販されている:
SLGSLTIAEPAMIAECKTRTEVFEISRRLIDRTNANFLVWPPCVEVQRCSGCCNNRNVQCRPTQVQLRPVQVRKIEIVRKKPIFKKATVTLEDHLACKCETVAAARPVT(配列番号4)。
【0052】
カドヘリン-2(CDH2)は、N-カドヘリンとしても知られ、CD325は、カルシウム依存性細胞接着分子ファミリーに属する膜貫通型の親水性糖タンパク質である。ヒト組換えCDH2は、以下の配列を有するポリペプチド鎖として市販されている:
DWVIPPINLPENSRGPFPQELVRIRSDRDKNLSLRYSVTGPGADQPPTGIFIINPISGQLSVTKPLDREQIARFHLRAHAVDINGNQVENPIDIVINVIDMNDNRPEFLHQVWNGTVPEGSKPGTYVMTVTAIDADDPNALNGMLRYRIVSQAPSTPSPNMFTINNETGDIITVAAGLDREKVQQYTLIIQATDMEGNPTYGLSNTATAVITVTDVNDNPPEFTAMTFYGEVPENRVDIIVANLTVTDKDQPHTPAWNAVYRISGGDPTGRFAIQTDPNSNDGLVTVVKPIDFETNRMFVLTVAAENQVPLAKGIQHPPQSTATVSVTVIDVNENPYFAPNPKIIRQEEGLHAGTMLTTFTAQDPDRYMQQNIRYTKLSDPANWLKIDPVNGQITTIAVLDRESPNVKNNIYNATFLASDNGIPPMSGTGTLQIYLLDINDNAPQVLPQEAETCETPDPNSINITALDYDIDPNAGPFAFDLPLSPVTIKRNWTITRLNGDFAQLNLKIKFLEAGIYEVPIIITDSGNPPKSNISILRVKVCQCDSNGDCTDVDRIVGAGLGTGA(配列番号5)。
【0053】
本明細書で用いる用語“同種異系(allogeneic)”とは、同一人物に由来しないため遺伝的に異種である細胞を意味する。同一人物に由来する細胞は、“同種系(syngeneic)”と呼ばれる。
【0054】
胚性幹細胞(ESC)は、受精後5~7日で発生する哺乳動物の胚盤胞の内部細胞塊に由来する。ESCは、定められた条件下では無限に未分化な状態を保ち、インビトロで培養するといわゆる胚体に分化する。多能性を有しているため、全種類の細胞に分化することができる。造血幹細胞、神経幹細胞、間葉系幹細胞などの成体幹細胞(体細胞)は、2以上の細胞タイプになる能力を有するが、何れの細胞タイプにもなる能力は有していない。
【0055】
人工多能性幹細胞(iPSC)は、分化した細胞を再プログラムして多能性の段階に戻した細胞である。再プログラムされた完全分化細胞は、ESC多能性の維持に関与する遺伝子、例えば、Oct3/4、Sox2、c-Myc、Klf4およびこれらの組合せを用いて達成され得る。用語“人工多能性幹細胞”とは、体細胞または成体幹細胞から胚性幹細胞(ESC)様の多能性状態へと初期化された細胞を意味する。Takahashiらの、“Induction of pluripotent stem cells from mouse embryonic and adult fibroblast cultures by defined factors”, Cell, 2006, 126(4):663-67を参照のこと。Parkらは、定義された因子によるヒト体細胞の多能性への再プログラミングを報告している(Nature, 2008, 451(7175):141-146)。したがって、細胞内でiPSCを作成することは、一般的には、OCT4、SOX2、KLF4およびc-MYCの異所(in trans)発現によって達成することができる。コロニーが出現し、形態学的にESCに類似している。あるいは、ある種の多能性幹細胞は、4つの転写物の全てを必要としない可能性もある。例えば、臍帯血CD133+細胞はiPS細胞を生成するためにOCT4およびSOX2のみを必要とする。iPSCの生成におけるさらなるガイダンスについては、Gonzalezらの、“Methods of making induced pluripotent stem cells: reprogramming a la carte”, Nature Reviews Genetics 2011 12:231-242を参照のこと。
【0056】
人工多能性幹細胞は、一般的には、アルカリホスファターゼ、Oct 4、Sox2、Nanogおよび/または他の多能性促進因子を発現している。人工多能性幹細胞は、胚細胞と完全に同一であることは意図していない。また、人工多能性幹細胞は、必ずしもあらゆる種類の細胞に分化できるわけではない。TRA-1-60、TRA-1-8またはそれらの組合せは、ヒトiPSCを同定するために用いられ得る。
【0057】
特定の態様において、本発明は、人工多能性幹細胞が成体幹細胞または間葉系幹細胞に由来することを企図する。これらの用語は、細胞集団の培養された(自己再生された)子孫を含む。用語“間葉系ストローマ細胞”または“間葉系幹細胞”とは、骨髄、脂肪組織、臍帯のワルトンジェリー(Wharton’s jelly)、臍帯血管周囲細胞、臍帯血、羊水、胎盤、皮膚、歯髄、母乳および滑膜に由来する可能性のある中胚葉由来の細胞へのインビトロでの分化が可能な、塑性接着の性質を有する線維芽細胞または線維芽細胞様非造血細胞の部分集団、例えば脂肪細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、骨格筋細胞または内臓間質細胞などの中胚葉由来のいくつかの細胞に分化することができるクローン形成能を有する線維芽細胞または線維芽細胞様細胞を意味する。
【0058】
特定の態様において、本発明は、人工多能性幹細胞がヒト脂肪幹細胞に由来することを企図する。Sunらの、Proc Natl Acad Sci U S A., 2009, 106(37):15720-15725は、人工多能性幹(iPS)細胞が、患者から新鮮に分離した成体ヒト脂肪幹細胞(hASC)から作製され得ることを報告する。
【0059】
特定の態様において、本発明は、人工多能性幹細胞が骨髄由来間葉系間質細胞由来であることを企図する。骨髄由来間葉系ストローマ細胞は、一般的には、骨髄穿刺(bone marrow aspirate)からコンフルエンスまでエクスビボで増殖される。ある種の間葉系ストローマ/幹細胞(MSC)は、コアマーカーおよび性質の類似したセットを共有している。特定の間葉系ストローマ/幹細胞(MSC)は、CD105、CD73およびCD90が陽性で、CD45、CD34、CD14またはCD11b、CD79αまたはCD19、およびHLA-DR表面マーカーが陰性であり、プラスチックに接着する能力を有すると定義され得る。Dominiciらの、“Minimal criteria for defining multipotent mesenchymal stromal cells”、The International Society for Cellular Therapy position statement, Cytotherapy, 2006, 8(4):315-317を参照のこと。
【0060】
本明細書で用いる用語“増殖培地”とは、タンパク質生合成を通じて細胞の維持および増殖を促進する成分、例えばビタミン、アミノ酸、無機塩、緩衝液および栄養(fuel)、例えば酢酸、コハク酸、糖類および/または何れかのヌクレオチドを含む組成物を意味する。さらに、増殖培地は、pH表示としてフェノールレッドを含んでもよい。増殖培地中の成分は、血液血清に由来してもよいし、増殖培地は無血清であってもよい。増殖培地は、要すれば、アルブミン、脂質、インスリンおよび/または亜鉛、トランスフェリンまたは鉄、セレン、アスコルビン酸、ならびにグルタチオン、2-メルカプトエタノールまたは1-チオグリセロールなどの抗酸化剤を添加してもよい。増殖培地において企図される他の成分には、メタバナジン酸アンモニウム、硫酸銅、塩化マンガン、エタノールアミンおよびピルビン酸ナトリウムが含まれる。増殖培地中の他の企図された成分には、アスコルビン酸、L-アラニン、硫酸亜鉛、ヒトトランスフェリン、アルブミンおよびインスリンが含まれる。
【0061】
最小必須培地(MEM)は、塩化カルシウム、塩化カリウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、リン酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウム、必須アミノ酸、およびビタミン:チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ニコチンアミド(ビタミンB3)、パントテン酸(ビタミンB5)、ピリドキシン(ビタミンB6)、葉酸(ビタミンM)、コリンおよびイノシトール(もともとビタミンB8として知られている)を含む増殖培地を意味する技術用語である。様々な増殖培地が当技術分野で知られている。
【0062】
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)は、以下の表1に示すように、ビタミン、アミノ酸およびグルコースの量を増やし、グリシン、セリンおよび硝酸第二鉄などの成分をさらに含む増殖培地である。
【0063】
【表1】
【0064】
HamのF-12培地は、アミノ酸、ビタミン、その他の微量元素を高濃度に含んでいる。プトレシンおよびリノール酸が製剤に配合される。下記表2参照。
【0065】
【表2】
【0066】
特定の態様において、本発明は、DMEMおよびHamのF-12の混合物であるDMEM/F-12培地を用いる本明細書に記載の増殖培地を企図する。特定の態様において、増殖培地は、抗菌剤または抗菌剤の組合せ、例えば、抗生物質ペニシリン、ストレプトマイシンおよび抗真菌剤アンフォテリシンBを含む抗真菌剤を含んでいてもよい。
【0067】
ヒト胚性幹細胞および人工多能性幹細胞は、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)の存在下で培養することができ、例えば、線維芽細胞フィーダー層上または100ng/mL以上のbFGFを添加した無調整培地(UM)中などで培養することができる。DMEM/F12ベースにヒト血清アルブミン、ビタミン、抗酸化剤、微量ミネラル、特異的脂質およびクローン化増殖因子などを添加した増殖培地(TeSR1(商標))が指定されている。TeSR培地は、52成分を含むDMEM/F12ベースに、18成分を加えたものである。Ludwig et al., Derivation of human embryonic stem cells in defined conditions, Nature Biotechnology volume 24, pages185-187 (2006)の補足資料で報告されている、TeSR1(商標)の各成分のリストと関連濃度は以下のとおりである。
【0068】
無機塩類
塩化カルシウム(無水)
HEPES
塩化リチウム(LiCl)
塩化マグネシウム(無水)
硫酸マグネシウム(MgSO4)
塩化カリウム(KCl)
炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)
塩化ナトリウム(NaCl)
リン酸ナトリウム(無水) リン酸ナトリウム(一塩基)(NaH2PO4-H20)

微量ミネラル
硝酸第二鉄(Fe(NO3)3-9H2O)
硫酸第二鉄(FeSO4・7H2O)
硫酸銅(CuSO4・5H2O)
硫酸亜鉛(ZnSO4・7H2O)
メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)
硫酸マンガン一水和物(MnSO4・H2O)
硫酸ニッケル六水和物(NiSO4・6H2O)
セレン
メタケイ酸ナトリウム Na2SiO3 9H2O
SnCl2
モリブデン酸アンモニウム塩(Molybdic acid, ammonium salt)
CdCl2
CrCl3
AgNO3
AlCl3 6H2O
Ba (C2H3O2)2
CoCl2 6H2O
GeO2
KBr
KI
NaF
RbCl
ZrOCl2 8H2O
エネルギー基質
D-グルコース
ピルビン酸ナトリウム
脂質
リノール酸
リノレン酸
リポ酸
アラキドン酸
コレステロール
DL-α-トコフェロール酢酸エステル
ミリスチン酸
オレイン酸
パルミチン酸
パルミトレイン酸
ステアリン酸

アミノ酸
L-アラニン
L-アルギニン塩酸塩
L-アスパラギン-H2O
L-アスパラギン酸
L-システイン-HCl-H2O
L-シスチン塩酸塩
L-グルタミン酸
L-グルタミン
グリシン
L-ヒスチジン-HCl-H2O
L-イソロイシン
L-ロイシン
L-リジン塩酸塩
L-メチオニン
L-フェニルアラニン
L-プロリン
L-セリン
L-スレオニン
L-トリプトファン
L-チロシン2Na 2H2O
L-バリン
ビタミン類
アスコルビン酸
ビオチン
B12
塩化コリン
パントテン酸D-カルシウム
葉酸
i-イノシトール
ナイアシンアミド
ピリドキシン塩酸塩
リボフラビン
チアミン塩酸塩

成長因子およびその他のタンパク質
GABA
ピペコール酸
bFGF
TGFβ1
ヒトインスリン
ヒト型ホロトランスフェリン
ヒト血清アルブミン グルタチオン(還元型)
その他の成分
ヒポキサンチンNa
フェノールレッド
プトレシン-2HCl
チミジン
2-メルカプトエタノール
プルロニックF-68
トゥイーン80
【0069】
動物由来タンパク質(ウシ血清アルブミン(BSA)およびマトリゲル(商標))およびクローニングされたゼブラフィッシュ塩基性線維芽細胞増殖因子(zbFGF)の使用を含む培地(mTeSR1)の改変は、Ludwigらの“Feeder-independent culture of human embryonic stem cells”、Nature Methods、第3巻、637-646頁(2006)に記載されている。マトリゲル(商標)マトリックスは、細胞外マトリックスタンパク質中に富む腫瘍であるEngelbreth-Holm-Swarm(EHS)マウス肉腫から抽出した可溶化基底膜調製物である。マトリゲル(商標)は、ラミニン(主成分)、コラーゲンIV、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、エンタクチン/ニドーゲン、およびTGF-β1、上皮細胞増殖因子、インシュリン様増殖因子、線維芽細胞増殖因子、組織プラスミノーゲン活性化因子などの多くの増殖因子を含む部分的に規定された細胞外マトリックス(ECM)抽出物である。Braamらの報告によると、マトリゲル(商標)または天然および組換えビトロネクチンが、3つの独立したヒト胚性幹細胞株において持続的な自己再生および多能性を維持するのに効果的であった(Stem Cells, 2008, 26(9): 2257-65)。
【0070】
Chenらは、E8ベースの培地を用いて、iPS細胞の誘導および培養に規定された条件を用いることができると報告している(Nat Methods, 2011, 8(5): 424-429)。ヒトES細胞およびiPS細胞は、NaHCOでpH調整したDMEM/F12中、インスリン、セレニウム、トランスフェリン、L-アスコルビン酸、bFGFおよびTGF-β(またはNODAL)を含む培地中で増殖させることができる。NODAL(100ng/ml)またはTGF-β1(2ng/ml)の添加により、NANOG発現レベルが増加し、ヒトES細胞およびiPS細胞の両方で一貫した長期培養安定性がもたらされた。ROCK阻害剤(HA100またはY27632)またはブレビスタチンのいずれかを含むことにより、初期生存率が向上し、クローニングが補助され、トランスフェリンの添加および低酸素条件での培養によりさらに改善された。ラミニン、ビトロネクチンおよびフィブロネクチンなど複数のマトリックスタンパク質が、ヒトES細胞の増殖を支えている。
【0071】
用語“蛍光活性化セルソーティング”または“FACS”は、各細胞の蛍光特性に基づいて、細胞の混合物を3以上の領域に、通常は一度に1つの細胞を選別する方法を意味する。一般的には、電荷を適用し、静電場を通して移動させることで分離させる。細胞表面マーカーに対するエピトープを有する蛍光抗体を細胞に混ぜて、細胞をマークすることもできる。通常、FACSでは、振動機構(vibrating mechanism)により、細胞の流れが個々の液滴に分かれる。液滴形成の直前に、液中の細胞は、細胞の蛍光を測定するための領域を通過する。液滴に分かれる地点に電荷付与機構が設けられる。蛍光強度測定に基づき、液滴が流れから分れる際に、それぞれの電荷が負荷される。帯電した液滴は、静電式偏向システムを通って移動し、液滴をその相対的な電荷に基づく領域に分流させる。あるシステムでは、電荷は流れに直接印加され、分離する液滴は流れと同じ符号の電荷を保持する。他のシステムでは、電荷が流路に供給され、液滴に反対の電荷が誘導される。
【0072】
本明細書に記載のタンパク質の変異体は、当業者によって容易に製造することができる。コンピュータモデリングを用いて、構造的な類似性を有する機能的変異体を予測することができる。固有の活性を確認する試験は、文献または本明細書に記載の方法を用いて行うことができる。当業者であれば、望ましい特性を有すると予想される多数の有効な変異体を製造できることを理解し得る。遺伝子は既知であり、メンバーはある種から別の種への有意な相同性を共有する。配列は、ヒトおよびマウスの配列間の差異に示されるように同一ではない。あるものは保存された置換である。あるものは保存された置換ではない。機能的変異体を作成するために、当業者は盲目に無作為な組合せを試すのではなく、コンピュータプログラムを利用して安定した置換を行い得る。当業者であれば、ある種の保存された置換が望ましいということを知り得る。加えて、当業者は、通常、進化的に保存された位置を変更することはない。Saldanoらの、“Evolutionary Conserved Positions Define Protein Conformational Diversity” PLoS Comput Biol., 2016、12(3):e1004775を参照のこと。
【0073】
生物学的活性をなくすことなく、何れのアミノ酸残基およびどの程度のアミノ酸残基を置換、挿入または削除してもよいかを決定する際の指針は、当技術分野で周知の一般に利用可能なデータベース、例えば、RaptorX、ESyPred3D、HHpred、HyperChem用ホモロジーモデル化プロフェッショナル、DNAStar、SPARKS-X、EVfold、PhyreおよびPhyre2ソフトと組み合わせたコンピュータプログラムを用いて見出し得る。タンパク質モデリング、予測および解析のためのPhyre2ウェブポータルを報告するKelleyらの、Nat Protoc., 2015, 10(6):845-858 を参照のこと。また、Marksらの、Protein structure from sequence variation, Nat Biotechnol, 2012, 30(11):1072-1080; Mackenzieらの、Curr Opin Struct Biol, 2017, 44:161-167; Mackenzieらの、Proc Natl Acad Sci U S A., 2016, 113(47), E7438-E7447 およびWeiらの、Int. J. Mol. Sci., 2016, 17(12), 2118に記載されている。
【0074】
特定の態様において、本発明は、50%、60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上の同一性を有する本明細書に記載のポリペプチド配列の変異体を用いることを企図する。“配列同一性”とは、3以上の核酸またはタンパク質間の関連性の尺度を意味し、それは一般的には、全比較長を基準としたパーセンテージとして示される。同一性の計算では、それぞれの大きな配列の中で同一であり、かつ同じ相対的位置にあるアミノ酸残基を考慮する。同一性の計算は、デフォルトのパラメータを用いて、“GAP”(Genetics Computer Group、Madison、Wis)および“ALIGN”(DNAStar、Madison、Wis)などのコンピュータプログラム内に含まれるアルゴリズムによって実行され得る。特定の態様において、配列“同一性”とは、アラインメントの2つの配列間の配列アラインメントにおける正確に一致する残基の数(パーセントで表される)を意味する。特定の態様において、アライメントのパーセント同一性は、最短配列または内部ギャップが等価位置として計数されるオーバーハングを除く等価位置の数で割った同一位置の数を用いて計算されてもよい。例えば、ポリペプチドGGGGGG(配列番号6)およびGGGGT(配列番号7)は、5個のうち4個または80%の配列同一性を有する。例えば、ポリペプチドGGGPPP(配列番号8)およびGGGAPPP(配列番号9)は、7個のうち6個または85%の配列同一性を有する。
【0075】
特定の態様において、何れかの企図されるパーセントの配列同一性に関して、配列が同じパーセントまたはそれ以上の配列類似性を有し得ることも企図される。パーセントの“類似性”は、アラインメントの2つの配列間のアミノ酸の類似性、例えば疎水性、水素結合電位、静電荷の程度を定量化するために用いられる。この方法は、あるアミノ酸が一致するために同一である必要がないことを除いて、同一性を決定することと類似している。特定の態様において、配列類似性は、デフォルトのパラメータを用いて、周知のコンピュータプログラムを用いて計算されてもよい。一般的には、アミノ酸は、例えば、以下のアミノ酸群に従って、類似の特性を有する群の中にあるとき、一致するものとして分類される:芳香族性-F Y W;疎水性-A V I L;荷電正-R K H;荷電負-D E;極性-S T N Q。
【0076】
ヒト多能性幹細胞からの平滑筋細胞の作製
心筋梗塞(MI)および末梢動脈疾患(PAD)などの心血管虚血状態では、循環機能不全が見られる。これらの疾患では、しばしば動脈硬化による血管の閉塞が起こり、血液循環が悪くなり、最終的には組織が壊死する。このような虚血状態を改善し、生活の質を向上させるために、患部により機能的な血管を導入することができる。
【0077】
血管平滑筋細胞(VSMC)は、血管およびリンパ管の両方の血管系の重要な構成要素である。圧力の高い動脈は多層のVSMCで覆われているのに対し、静脈は一般的に、点状にVSMCで覆われている。リンパ管は、VSMCで僅かしか覆われていない。VSMCは、新生血管の成熟および安定化に寄与し、機能的な血管をもたらす。
【0078】
皮膚または血液の細胞に由来する人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、増殖能および様々な体細胞に分化する能力を備えている。したがって、化学的に定義された条件下でヒトiPSCから分化させた細胞(hiPSC)は、様々な臨床応用のための優れた供給源となる。しかしながら、ヒト胚性幹細胞(hESC)およびhiPSCを含むヒト多能性幹細胞(hPSC)から、化学的に定義された、臨床的に適合するVSMCの分化条件が必要である。さらに、VSMCに特異的な表面マーカーが存在しないため、hiPSCおよびhESC由来のVSMCの選択および精製は依然として困難である。
【0079】
ヒトiPSCは、GSK3阻害後、特定の増殖因子であるTGF-β1およびPDGF-BBに暴露した後、VSMCに分化させた。hiPSC由来のVSMCは、TAGLN、CNN1、ACTA2、CALD1、SMTNおよびMYH11などのVSMC特異的遺伝子およびタンパク質を発現している。
【0080】
VSMCが機能的であるためには、収縮性の表現型を示す必要がある。収縮性VSMCから合成VSMCへの表現型スイッチは、脈管構造に病的な変化をもたらす。G-アクチンの重合によるF-アクチン形成は、成熟した収縮性VSMCを示す。血清反応因子(SRF)の補因子であるミオカルディン関連転写因子A(MRTFA)は、細胞質および核の間を移動し、この移動は細胞質内のG-アクチンとの結合に依存している。G-アクチンが重合したF-アクチンが形成されると、MRTFAはG-アクチンから遊離し、核に移動してSRFを活性化させる。
【0081】
マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)は、組織、特に脈管構造のリモデリングに重要な役割を担っている。MMPは細胞外マトリックス(ECM)を分解する。ECMに加え、MMPはペプチド増殖因子およびチロシンキナーゼ受容体、細胞接着分子、サイトカインおよびケモカインも分解する。MMP2およびMMP9は、TGFβ、TGFβ遅延関連タンパク質(TGFβのプロドメインである)、および潜在性TGFβ結合タンパク質からなる不活性な細胞外複合体からTGFβを遊離させる。MMP2-およびMMP9の介在するTGFβの活性化は、血管形成につながる。
【0082】
SMCの主要なカドヘリンであるカドヘリン2(CDH2)は、ラット血管系で発現し同定されている。CDH2の上方制御は、ヒト間葉系幹細胞(hMSC)からSMCが分化する際に起こる。CDH2は、周皮細胞との相互作用による内皮萌芽の成熟および新生血管の形成に重要である。膜貫通型CDH2へのβ-カテニンの動員はアクチン重合によって制御され、この過程はSMCの収縮に重要である。MMP9およびMMP12によるCDH2の細胞外ドメインの切断は、VSMCにおけるβ-カテニンシグナル伝達およびサイクリンD1の発現を誘発し、VSMCの増殖を増加させる。
【0083】
VSMCは、化学的に定義された条件下でhiPSCから生成された。hiPSCは、動物フィーダー細胞を含まない状態でコラーゲンコートしたディッシュ上に播種した。中胚葉の誘導にはGSK阻害剤CHIR-99021およびbFGFのみを用い、hiPSCからのVSMCの分化にはTGF-β1、PDGF-BBおよびEGFの3つの増殖因子のみを用いた。VSMCを効率的に作製するために、Accutase(商標)による剥離および濾過を行った後、10日目に再播種を行った。Accutase(商標)は、タンパク質分解酵素およびコラーゲン分解酵素の混合物およびNa4EDTAからなり、細胞表面の膜貫通型タンパク質の細胞外ドメインを切断することなく、緩やかな剥離剤として用いられる。
【0084】
さらに、TGF-β1およびPDGF-BBの濃度を変え、EGFの濃度を同じにした2種のVSMC分化用培地を用いた。25日目からTGF-β1濃度を高め(2.5ng/mlから5.0ng/ml)、PDGF-BB濃度を下げた(5.0ng/mlから2.5ng/ml)VSMC-分化培地II中で収縮性VSMCが生成されることが確認された。さらに、CDH2がhiPSC-VSMCの表面にある選択マーカーであることが見出された。CDH2を選択表面マーカーとして分化したhiPSC-VSMCを選択することで、hiPSCから収縮性VSMCが効率よく分化・濃縮される。これらの収縮性hiPSC-VSMCは、化学的に定義されたシンプルな条件下、動物産物を含まない条件で作製され、脈管構造のリモデリングおよび再生における治療の可能性を示す。
【0085】
使用方法
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、多能性幹細胞を中胚葉誘導成長培地に接触させ、次いでコラーゲンの存在下で無血清血管平滑筋細胞増殖培地中で該細胞を複製し、カドヘリン2を発現する複製された細胞を精製することを含む。特定の態様において、精製された細胞は、心血管疾患または病状を処置または予防するために使用される。
【0086】
特定の態様において、本発明は、多能性幹細胞を、スムーセリンおよび平滑筋ミオシン重鎖を発現する細胞に形質転換させ、カドヘリン2を発現する細胞を精製して、収縮性表現型のカドヘリン2を発現する血管平滑筋様細胞の精製組成物を提供することを含む、収縮表現型の血管平滑筋様細胞を製造する方法に関する。特定の態様において、本方法は、カドヘリン-2を発現する血管平滑筋様細胞を複製することをさらに含む。
【0087】
特定の態様において、本発明は、血管平滑筋様細胞の血清不含有製造方法であって、
a) 多能性幹細胞を、該多能性幹細胞が誘導された中胚葉様細胞を形成するような条件下で、中胚葉分化誘導増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、中胚葉分化誘導増殖培地が、1)rho-関連タンパク質キナーゼ阻害剤、2)グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3阻害剤、および3)塩基性線維芽細胞増殖因子、を含む、工程;b) 誘導された中胚葉様細胞を、該中胚葉様細胞が誘導された血管平滑筋様細胞を形成するような条件下で、第1の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させる工程であって、ここで、第1の血管平滑筋細胞増殖培地が、1)トランスフォーミング増殖因子-β、2)上皮細胞増殖因子、および3)血小板由来増殖因子を含む、工程;c) 誘導された血管平滑筋様細胞を、誘導された血管平滑筋様細胞が得られるような条件下で、プロテアーゼおよび/またはコラゲナーゼと接触させる工程;d) 剥離された誘導された血管平滑筋様細胞を、コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上暴露することにより複製し、複製された血管平滑筋様細胞を提供する工程;e) 複製された血管平滑筋様細胞を、複製された血管平滑筋様細胞が誘導された血管平滑筋様細胞の第2のバッチを形成するような条件下で、第2の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上接触させ、ここで第2の血管平滑筋細胞増殖培地が、1)トランスフォーミング増殖因子-β、2)上皮細胞増殖因子、および3)血小板由来増殖因子を含む工程、;およびf) カドヘリン-2を発現する細胞を選択することにより、誘導された血管平滑筋様細胞の第2バッチを精製し、精製されたカドヘリン-2を発現する誘導された血管平滑筋様細胞を提供する工程
を含む、製造方法に関する。
【0088】
特定の態様において、第2の血管平滑筋細胞増殖培地中のトランスフォーミング増殖因子-βの濃度は、第1の血管平滑筋細胞増殖培地中のトランスフォーミング増殖因子-βの濃度と比べて増加している。
【0089】
特定の態様において、第2の血管平滑筋細胞増殖培地中の血小板由来増殖因子の濃度は、第1の血管平滑筋細胞増殖培地中の血小板由来増殖因子の濃度と比較して減少している。
【0090】
特定の態様において、rho関連タンパク質キナーゼ阻害剤は、トランス-4-[(1R)-1-アミノエチル]-N-4-ピリジニルシクロヘキサンカルボキサミド(Y-27632)またはその塩である。
【0091】
特定の態様において、グリコーゲン合成酵素キナーゼ-3阻害剤は、6-[[2-[[4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(5-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)-2-ピリミジニル]アミノ]エチル]アミノ]-3-ピリジンカルボニトリル(CHIR-99021またはその塩である。
【0092】
特定の態様において、前記多能性幹細胞は、胚性幹(ES)細胞または人工多能性幹(iPS)細胞である。
【0093】
特定の態様において、多能性幹細胞を中胚葉分化誘導増殖培地と1日以上接触させることは、4日間接触させることを含む。
【0094】
特定の態様において、多能性幹細胞を中胚葉分化誘導増殖培地と1日以上接触させることは、5日以下の期間である。
【0095】
特定の態様において、誘導された中胚葉様細胞を第1の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、20日間接触させることを含む。
【0096】
特定の態様において、誘導された中胚葉様細胞を第1の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、21日以下の期間である。
【0097】
特定の態様において、コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地への1日以上の曝露により剥離した誘導された血管平滑筋様細胞を複製することは、15日間複製することを含む。
【0098】
特定の態様において、コラーゲンおよび第1の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上曝露することによって剥離した誘導された血管平滑筋様細胞を複製することは、16日以下の期間である。
【0099】
特定の態様において、複製された血管平滑筋様細胞を第2の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、25日間以上接触させることを含む。
【0100】
特定の態様において、複製された血管平滑筋様細胞を第2の血管平滑筋細胞増殖培地と1日以上接触させることは、26日以下の期間である。
【0101】
特定の態様において、本明細書に記載の方法は、精製されたカドヘリン-2(CDH2)を発現する誘導された血管平滑筋様細胞を、コラーゲンおよび第2の血管平滑筋細胞増殖培地に1日以上接触させて複製する工程をさらに含む。
【0102】
特定の態様において、前記カドヘリン-2(CDH2)を発現する細胞を選択することは、細胞を抗カドヘリン-2抗体と接触させ、カドヘリン-2(CDH2)を発現する細胞表面に蛍光と結合した抗体をマーキングし、蛍光活性化セルソーティングにより細胞を選択することを含む。
【0103】
特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって作製された細胞を含む組成物および増殖培地に関する。
【0104】
特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の方法によって作製された細胞の有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、心血管疾患または病状を治療または予防する方法に関する。特定の態様において、多能性幹細胞は、対象から誘導された人工多能性幹細胞である
【0105】
特定の態様において、対象は、損傷して狭くなった動脈、動脈瘤、狭心症、不整脈、左心肥大、一過性虚血発作、脳卒中、認知症、腎瘢痕、腎不全、心筋梗塞、血管炎症、プラーク形成、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、肺高血圧、眼球高血圧、網膜症、脈絡膜症、視神経症、緑内障、および失明と診断されるか、またはそのリスクがある。
【0106】
特定の態様において、血管平滑筋様細胞は、カルバコールまたはKClなどの血管作動薬に応答して収縮する。
【0107】
特定の態様において、血管平滑筋様細胞は、内皮細胞または内皮様細胞と混合されるかまたはこれと組み合わせて投与され、その結果、内皮細胞または内皮様細胞のみの投与と比較して、改善された血流回復をもたらす。
【0108】
特定の態様において、血管平滑筋様細胞は、毛細管様管を形成する内皮細胞または内皮様細胞と混合されるか、またはこれと組み合わせて投与される。
【0109】
特定の態様において、本発明は、ヒト人工多能性幹細胞から生成された血管平滑筋細胞を単離するためのバイオマーカーとしてCDH2を用いることに関する。特定の態様において、本発明は、CDH2に対する特異的結合剤(例えば、CDH2抗体)がCDH2と結合するような条件下で、平滑筋細胞を含むと疑われる細胞のサンプルとCDH2に対する特異的結合剤とを混合し、特異的結合を測定および/または検出することを企図する。
【0110】
特定の態様において、本発明は、虚血状態を処置するための人工血管に関する。特定の態様において、本明細書に記載の内皮細胞および血管平滑筋様細胞の混合物のチューブは、インビトロで製造され、その後、それを必要とする対象に移植される。特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の血管平滑筋様細胞を、要すれば内皮細胞と組み合わせてインビボで投与し、それによって細胞が循環して虚血性傷害の場所で有効であることを企図する。特定の態様において、本発明は、本明細書に記載の血管平滑筋様細胞を、要すれば内皮細胞と組み合わせて、虚血性傷害の部位に局所的に、例えば静脈、動脈、心臓または心臓周辺もしくは近傍への直接注入により投与することを企図している。
【0111】
特定の態様において、本発明は、虚血領域に直接適用されるhiPSC-VSMCを用いる方法に関する。VSMCは、隣接する新生血管に局在し、血管形成を安定化させることが企図される。血管形成の安定化におけるVSMCの役割に加え、PDGF-BBおよびTGF-β1などの間接的な血管新生サイトカインと共にインキュベートすることにより、VEGFおよびbFGFなどの直接的な血管新生因子を発現させる。低酸素状態において、VSMCはVEGFを発現する。MMPの発現および分泌は、血管新生リモデリングにおける他の有益な因子である。
【0112】
特定の態様において、本発明は、エクスビボでの血管の生成および対象への移植の方法に関する。特定の態様において、血管は、本明細書に記載の血管平滑筋様細胞、要すれば内皮細胞と組み合わせて、チューブまたはシートの形態で培養すること、あるいはシートをシリンダー様構造に変形させることによって生成される。特定の態様において、本発明は、シートを採取し、虚血性脈管構造に局所的に適用することを企図する。
【0113】
特定の態様において、インビボ脈管構造、例えば、静脈または動脈を抽出し、該脈管構造を本明細書に記載の血管平滑筋様細胞、要すれば露出した脈管構造を提供する内皮細胞と組み合わせて接触させ、次いで露出した脈管構造を対象に移植することが企図されている。
【0114】
特定の態様において、本発明は、本明細書に記載される血管平滑筋様細胞を用いた薬物スクリーニングの方法に関する。特定の態様において、本明細書に記載の血管平滑筋様細胞、要すれば内皮細胞と組み合わせて、および試験薬と接触させる。特定の態様において、本明細書に記載の血管平滑筋様細胞は、血管欠陥および/または望ましくない心血管系の状態のリスクを有する対象を示す遺伝子プロファイルを有する人工多能性幹細胞から誘導される。また、試験薬については、それが、例えば対照薬と比較して、表現型の変化を誘発するかどうかを観察する。例えば、本明細書に記載の血管平滑筋様細胞を用いて、試験薬の存在下での収縮力の増加または減少を判断することができる。
【0115】
大動脈弁上狭窄症(SVAS)に関連する先天性心疾患、ウィリアムズ-ベーレン症候群(WBS)、ハッチソン-ギルフォードプロジェリア(HGP)症候群、およびマルファン症候群を含む患者の疾患に関連するVSMCにゲノム変異が影響を及ぼす疾患モデルが存在する。したがって、本明細書に記載の血管平滑筋様細胞は、これらの疾患または症状の1以上を有する対象由来の人工多能性幹細胞から製造可能である。その後、これらの病状の1つに関連する対象に由来する本明細書に記載の方法によって作製された血管平滑筋様細胞を、治療剤を同定するための薬剤スクリーニングライブラリーに用いることができる。Granataらの、“An iPSC-derived vascular model of Marfan syndrome identifies key mediators of smooth muscle cell death”, Nat Genet., 49, 97-109(2017)参照。
【実施例
【0116】
hiPSC-VSMCの製造プロセス
ヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)を、5% Matrigel(商標)(Corning, カタログ番号354234)上で、mTeSR(商標)(STEMCELL Technologies, カタログ番号85850)中、37℃、5% COにて培養した。VSMCの分化には、中胚葉誘導培地、VSMC-分化培地I、およびVSMC-分化培地IIの3種の培地を用いた。これらの培地は、20% Knockout(商標) 血清置換(KO-SR, Invitrogen, カタログ番号10828-028)を含む基本培地に低分子および増殖因子を含む。基本培地DMEM/F12 (Invitrogen, カタログ番号11330057)に、抗菌剤(Gibco, カタログ番号15240-112)、MEM NEAA(Gibco, カタログ番号11140076)およびGlutaMax(商標) (Gibco, カタログ番号35050079)を添加した。Dispase(Gibco, カタログ番号17105-041)を用いて分散させた後に、0.01% コラーゲン(STEMCELL Technologies, カタログ番号4902)被覆プレート上にhipSCを播種した。
【0117】
0日目に、Y-27632(STEMCELL Technologies, カタログ番号72304)、3μM CHIR-99021 (GSK阻害剤)(Selleckchem, カタログ番号S1263)およびbFGF(4ng/ml)を含む20% Knockout(商標) 血清置換を含む基本培地中でhiPSCを培養して、中胚葉系を誘導した。ROCK阻害剤Y-27632は0日目にのみ用いた。中胚葉誘導培地は1日毎に入れ替えた。(図1参照)。
【0118】
4日目に、中胚葉誘導培地を、TGF-β1 (2.5ng/ml, PeproTech, カタログ番号100-21C)、PDGF-BB(5ng/ml, PeproTech, カタログ番号100-14B)、EGF(20ng/ml, R&D System, カタログ番号236-EG-200)および20% Knockout(商標) 血清置換を含むVSMC-分化培地Iに置き換えた。
【0119】
10日目に、細胞をアキュターゼ(eBioscience, カタログ番号00-4555-56)で剥離後、セルストレーナー(70μm ナイロン製メッシュ, Fisher Scientific, カタログ番号22363548)でろ過して、コラーゲン被覆プレート上に細胞を再添加した。VSMC-分化培地Iは、毎日入れ替えた。
【0120】
25日目からは、TGF-β1(5ng/ml)、PDGF-BB(2.5ng/ml)、EGF(20ng/ml)、20% Knockout(商標) 血清置換を含むVSMC-分化培地II中で培養した。
【0121】
50日目に、PE標識抗CDH2抗体(eBioscience, カタログ番号12-3259-42)で細胞を4℃にて標識した後、CDH2発現細胞をFACSで分別した。分別後、CDH2陽性細胞をVSMC-分化培地II中でコラーゲン被覆プレート上でさらに培養した。VSMC-分化培地IIは毎日入れ替えた。細胞がコンフルエントになった時点で、3-4日毎に細胞を継代した。
【0122】
細胞変化の評価
増殖因子を用いたVMSCの収縮表現型の維持が報告されている。ヒトESCおよびiPSC由来のVSMCの分化は単純ではない。ESCおよびiPSCを含むヒトPSCからVSMCを作製した。ヒトPSCは、フィーダー細胞を含まない状態で維持された。VSMCは、動物血清を添加しない、化学的に定義された条件下で分化させた。さらに、CDH2陽性の選択により、収縮性VSMCを濃縮した。
【0123】
Cheungら(Nature Protocols, 2014)は、PDGF-BB(10ng/ml)およびTGF-β1(2ng/ml)で分化させたVSMCの約80%が、CNN1およびMYH11二重陽性であることを報告している。しかしながら、ACTA2、CNN1およびTAGLNが初期SMCマーカーであるにもかかわらず、CNN1およびTAGLNが陽性となる細胞は少ない。Patschら(Nature Cell Biology, 2015)は、VSMCを分化させ、ACTA2(48%)、ミオシン IIB(96.99%)、TAGLN(100%)陽性細胞を計数したと報告している。ミオシン IIB(MYH10)は、VSMCマーカーではない。多くの細胞がCD140b陽性であった。線維芽細胞もCD140bを発現している。
【0124】
ACTA2、CNN1、TAGLNは初期平滑筋細胞マーカーである。TAGLN、CNN1、ACTA2、SMTN、CALD1およびMYH11などのVSMC特異的遺伝子のmRNA発現量は、22日目に有意に増加した(図2)。しかしながら、このhiPSC-VSMCのVSMC特異的遺伝子のmRNA発現量は、ACTA2およびSMTNを除いて、ヒト大動脈平滑筋細胞(hAoSMC)と同等かまたはそれ以上であった(図3)。
【0125】
OCT4、SOX2、NANOGおよびKLF4などの多能性関連遺伝子の発現は、CDH2陰性画分で有意に高かったが、cMYCの発現レベルは、CDH2陰性および陽性で同程度であった(図4)。49日目にhiPSC-VSMCにおけるF-アクチンの形成およびMRTFAの発現が免疫蛍光顕微鏡で観察された。さらに、MRTFAが核に局在していることから、収縮性遺伝子の発現が促進されていることが分かる。CDH2陽性hiPSC-VSMCでは、58日目にACTA2、CNN1、SMTNおよびMYH11などの収縮性VSMCタンパク質の発現が観察される。BD LSRIIによる細胞内染色後のフローサイトメトリー解析により、63日目のhiPSC-VSMCにおけるCNN1(95.23±2.15)、SMTN(95.37±1.96)およびMYH11(87.87±0.94)の発現が確認された(図5)。SMTNのロングアイソフォーム(Long isoform)(SMTN-B)は、血管平滑筋細胞の後期発現マーカーである。初代細胞で検出するのは困難である。初代細胞を培養すると、SMTNの発現は劇的に減少した。しかしながら、ヒトPSC由来のVSMC(hPSC-VSMC)は、SMTNを発現している。分化したhPSC-VSMCでは、SMTNのロングアイソフォーム(SMTN-B)の発現レベルが確認された。
【0126】
カルバコールによるFluo4蛍光の劇的な増加は、hiPSC-VSMCにおける細胞内カルシウム流量の増加を示す(図6A)。さらに、カルバコールおよびKClで処理したhiPSC-VSMCでは、有意に収縮力が増加したことが観察された。また、カルバコールおよび塩化カリウムで処理した細胞間でも有意差が観察された(図6B)。
【0127】
血管形成におけるhiPSC-VSMCの治療的有用性
VEGFA(10ng/ml)を含むVSMC分化培地I中で、増殖因子を減らして、染色した細胞をマトリゲル(商標)上でインキュベートした。HUVECをDiI(赤)で予め染色し、hAoSMCおよびhiPSC-VSMCをDiO(緑)で予め染色した。分裂点を、1群あたり5種の画像から定量化した。hiPSC-VSMCをHUVECと共培養したとき、有意な分裂点を有するチューブ形成が観察された。また、hiPSC-VSMCおよびhAoSMCをHUVECと共培養したとき、分裂点に有意差は認められなかった(図7)。
【0128】
MMPは、脈管構造のリモデリングに重要な役割を果たす。MMP2およびMMP9の発現レベルを測定したところ、hiPSC-VSMCはhAoSMCと同程度のMMP2およびMMP9のmRNAを発現していた(図8)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
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【国際調査報告】