(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】ペラミビル乾燥粉末吸入剤及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/196 20060101AFI20230517BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230517BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20230517BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20230517BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230517BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20230517BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A61K31/196
A61K9/72
A61K9/14
A61K9/12
A61K9/48
A61K9/50
A61P31/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561678
(86)(22)【出願日】2021-03-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-06
(86)【国際出願番号】 CN2021080768
(87)【国際公開番号】W WO2021203914
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】202010279686.8
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522395071
【氏名又は名称】广州南▲シィン▼▲ィアォ▼▲イエ▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU NUCIEN PHARMACEUTICAL CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No. 196, Kaiyuan Avenue, Huangpu District Guangzhou,Guangdong 510530, China
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】▲ミィアォ▼ ▲ドォン▼
(72)【発明者】
【氏名】胡 双▲フゥア▼
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA24
4C076AA29
4C076AA53
4C076AA61
4C076AA93
4C076BB27
4C076CC35
4C076FF68
4C076GG03
4C206AA01
4C206AA02
4C206HA31
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA63
4C206MA76
4C206NA05
4C206NA10
4C206ZB33
(57)【要約】
本発明は、ペラミビルまたはその許容可能な塩またはその水和物で調製され、単回投与製剤が5~30mgであり、前記乾燥粉末の粒子サイズD10が1.3~2.2μmで、D50が3~6μmで、D90が6~13μmである、ペラミビル乾燥粉末吸入剤に関する。マウスの肺におけるA型インフルエンザウイルスの力価を効果的に低下させることができ、顕著な抗ウイルス効果があり、生存期間を大幅に延長し、死亡率を低下させることができ、薬効はペラミビル塩化ナトリウム注射剤及びリン酸オセルタミビルよりも優れている。明確な肺標的効果を有し、薬物の有効性と安全性を大幅に向上させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペラミビル乾燥粉末吸入剤であって、
前記乾燥粉末吸入剤は、ペラミビルまたはその許容可能な塩またはその水和物で調製され、単回投与製剤の乾燥粉末投与量が5~30mgであり、前記乾燥粉末の粒子サイズ分布は、D10が1.3~3μmで、D50が3~6μmで、D90が6~13μmであることを特徴とする、ペラミビル乾燥粉末吸入剤。
【請求項2】
前記乾燥粉末の安息角が33~37度、好ましくは34度、35度、36度であり、かさ密度が0.23~0.28g/cm
3、好ましくは0.24g/cm
3、0.25g/cm
3、0.26g/cm
3、0.27g/cm
3であり、タップ密度が0.39-0.44g/cm
3、好ましくは0.40g/cm
3、0.41g/cm
3、0.42g/cm
3、0.43g/cm
3であることを特徴とする、請求項1に記載のペラミビル乾燥粉末吸入剤。
【請求項3】
前記乾燥粉末のCarr流動指数が58~65、好ましくは59、60、61、62であることを特徴とする、上記のいずれか1項に記載のペラミビル乾燥粉末吸入剤。
【請求項4】
前記乾燥粉末において、4.46μm未満の薬物微粒子の割合(FPF)は、30%を超え45%の未満、好ましくは32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、40%、41%、より好ましくは34~38%であることを特徴とする、上記のいずれか1項に記載のペラミビル乾燥粉末吸入剤。
【請求項5】
前記乾燥粉末の空気力学の粒子サイズは2.5μmを超え3.6μmの未満、好ましくは2.8~3.5μm、または2.6~3.1μm、または2.9~3.4μm、より好ましくは3.0~3.2μm、または3.1~3.3μmであることを特徴とする、上記のいずれか1項に記載のペラミビル乾燥粉末吸入剤。
【請求項6】
前記乾燥粉末の粒子サイズは、D10が1.3~2.0μmであり、好ましくは、D10が1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.1μmであり、好ましくは、D50が3.5μm、4.5μm、5μm、5.5μmであり、好ましくは、D90が6.2μm、6.5μm、7μm、7.5μm、7.8μm、8.0μm、8.4μm、9.0μm、10μm、11μm、12μmであることを特徴とする、上記のいずれか1項に記載のペラミビル乾燥粉末吸入剤。
【請求項7】
乾燥粉末吸入剤は、ペラミビル三水化物から製造されることを特徴とする、上記のいずれか1項に記載のペラミビル乾燥粉末吸入剤。
【請求項8】
ペラミビル乾燥粉末吸入製剤であって、
請求項1~6のいずれか1項に記載の乾燥粉末から製造されるカプセル剤型、小胞剤型及びリポジトリ剤型は、単位製剤の剤型当たりの乾燥粉末の薬物負荷量が5~30mg、好ましくは20mgであることを特徴とする、ペラミビル乾燥粉末吸入製剤。
【請求項9】
ペラミビル乾燥粉末吸入剤の調製方法であって、
ペラミビル三水化物を気流で粉砕し、供給圧力が0.4~0.5MPa、粉砕圧力が0.4~0.6MPaの条件で粉砕することによって、乾燥粉末を得ることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のペラミビル乾燥粉末吸入剤の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、医学技術分野に関し、具体的に、ペラミビル乾燥粉末吸入剤及びその調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ペラミビルは、化学名が(-)-(1S、2S、3R、4R)-2-ヒドロキシ-3-[(1S)-1-アセトアミド-2-エチル]ブチル-4-グアニジノシクロペンタン-1-カルボン酸で、シクロペンタン誘導体のインフルエンザウイルスノイラミニダーゼ(NA)阻害剤である。
【0003】
ペラミビルは、経口摂取が少ないため、主に注射剤などの非経口製剤として製造されている。ペラミビルは、患者の呼吸器組織にとどまることによって抗インフルエンザ効果を発揮し、したがって、ペラミビルを吸入剤にすることで、非経口経路で呼吸器組織の病変に直接到達し、体内の他の組織への潜在的な有害反応を減らす。吸入剤は、乾燥粉末吸入剤、噴霧剤、溶液吸入剤などを含む様々な剤型が存在する。出願人はCN109771398Bで、ペラミビル溶液吸入剤を保護しており、この特許では、子供や高齢者、呼吸機能が低下している患者などの自発呼吸困難のある患者にとって、乾燥粉末吸入製剤の使用は十分な量の薬物を吸入しにくい場合があるが、溶液型の吸入剤は、このような患者への応用がより便利であると指摘している。しかし、研究過程で、溶液型の製剤はより多くの安定性の問題を解決する必要があり、乾燥粉末吸入剤は薬物処方の安定性がより良く、携帯に便利であり、投与量の範囲が広いことが判明された。したがって、本発明は、ペラミビルの固形吸入製剤の開発に焦点を当てている。
【0004】
ペラミビルは、鳥インフルエンザの予防と治療に優れた効果を有し、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、公衆衛生システムに前例のない挑戦を提出している。直接的で迅速かつ効率的な薬物の選択肢は多くないが、ウイルスの進化、人間と動物の間の境界の曖昧さ、高度な都市化、より頻繁な対人関係、発達した交通網、および農業の集約化により、ウイルスの流行は将来的により頻繁になり、より挑戦的になる。鳥インフルエンザはその1つであり、したがって、本発明者は、鳥インフルエンザが公衆衛生システムに衝撃を与えるのを防ぐために、より効率的で効果的な解決策を提供する固形吸入製剤の開発に焦点を当てた。
【0005】
繆旭は、粒子の噴霧化及び分散性能に影響を与える作用力には、主に内部凝集力と接着力が含まれており、これらの作用力は、粉末の固有性質(表面エネルギー、化学基)、粒子特性(粒子サイズの分布、形態、粗さ、空隙率)、及び環境条件(機械過程、温度、相対湿度)などの様々な要因に依存すると報告した。肺送達用製剤の発展を制限してきた主な問題は、肺に入る前の薬物の損失である。肺への薬物送達の良好な臨床治療効果に達するために、(1)薬物粉末の調製、(2)担体を添加するかどうか、(3)粉末の噴霧化及び吸入装置による肺への送達などの点を考慮する必要がある。これらの因子はすべて、肺への薬物粒子の沈着及び治療効果に影響を与える可能性がある。
【0006】
王暁波は、乾燥粉末吸入剤は通常、無担体、薬物-担体、薬物-賦形剤、薬物-担体-賦形剤の4つのタイプに分類できるが、粒子のサイズ、形態、密度がすべて重要な影響要因であり、粒子の形態は球状、針状、多角形、分岐状、繊維状及びシート状など常に変化することを報告した。粒子の形態が不規則または球状からはるかに離れている場合、空気力学的挙動に大きな影響を与え、一般的に、球状のエアロゾル粒子の方が優れていると考えられている。粒子密度も乾燥粉末吸入剤の肺部への沈着性能に影響を与える重要な要因である。また、粉末の良好な分散性は、吸入可能な薬物粒子への粉末の「噴霧化」を助長し、吸入用量の精度を向上させる。粉末の流動性と分散性に影響を与える主な原因は次の通りである。1、ファンデルワールス力:粒子サイズ、表面粗さ、幾何学形態及び粒子の変形などは、ファンデルワールス力に大きな影響を与える可能性がある。2、静電気力:乾燥粉末吸入剤の製造過程において、粒子間の摩擦によって発生する静電気は、その流動性、分散性、接着性などの粉体学的性質に影響を与え、それによってその調製、生産及び使用に影響を与える。3、毛細管力:粒子の吸湿性のために、その表面に水分が吸着され表面張力及び毛細管引力が発生し、粒子のサイズ及び結晶形態に影響を与え、粉末が凝集し、その分散性を破壊する。4、不規則な形態の粒子間のせん断力。5、粒子の間で相対的に運動する時に発生する摩擦力。
【0007】
担体の添加は、粉末の流動性を改善し、薬物の肺への沈着性能を高める利点がある。単回投与量の投与体積を増加すると、小用量の薬物を正確に分注できるため、吸入薬物の送達量の再現性が向上する。しかし、担体の添加により、薬物含有の細かい粉末と担体の表面吸着が強すぎて、吸入後に薬物が担体から分離できず、共に中咽頭に沈着する。その結果、気道に入る薬物の有効線量が減少し、肺への沈着性能が低下する。
【0008】
また、薬物粉末に別の賦形剤である、より細かい粉末のロイシン及びリン脂質などを添加することによって、乾燥粉末吸入剤の流動性を大幅に向上させることができる。ただし、より細かい粉末を添加しても粉末の流動性を明らかに改善できない場合があり、薬物粉末及びより細かい粉末のタイプ、粒子サイズ、表面粗さ、粒子の変形、ガス吸着などがすべて、粒子間の相互作用に影響を与える可能性がある。
【0009】
田沛は、薬物乾燥粉末の噴霧化は、担体の種類、粒子サイズ、形態及び表面電荷だけでなく、担体の表面粗さと結晶度などの複数要因の影響を受けるプロセスであると報告した。
【0010】
李志万は、粒子の間及び粒子とデバイスの壁との間の摩擦帯電が、粉末エアロゾルの一般的な現象であると報告した。静電気現象は複雑で、研究と制御が困難である。これは、吸入された乾燥粉末によってもたらす電荷が、粉末の物理化学的性質、吸入装置の設計及び環境要因に関連しており、また、多くの要因の組合わせの結果であるためである。したがって、粉末の物理化学的性質の微小な変化や方法論の変化は、吸入された乾燥粉末の静電挙動に深刻な影響を与える。
【0011】
朱万輝は、流動性や分散性などのマクロ特性は、粒子間の凝集力(薬物/薬物)と接着力(薬物/担体)の相対的な強度に依存することを報告した。粒子間の作用力は、保管中及び使用中に製剤の安定性を維持するのに十分に大きくなければならず、さらに吸入前または吸入中に薬物の解凝集を可能にすることができる。薬物、担体及び賦形剤の材料性質、環境及び処理条件によって、様々な粒子間の作用力(主にファンデルワールス力、毛細管力、静電気作用力及び表面粗さによる機械架橋など)の相対的な大きさを決定する。調製過程では、保管及び処理過程における混合安定性と吸入分散過程のバランスを取らなければならず、これは粒子間の作用力の制御が必要である。これらのプロセスに関連する変数は、互いに異なる方法で影響を与える可能性があり、変数の1つを変更することによって、他の変数の影響の結果を逆転させる可能性がある。これにより、個々の変数の影響に関する幾つかの文献で反対の結論に達する現象が発生する。
【0012】
現在、薬物用の乾燥粉末吸入剤には粒子の性能を改善するために、担体及び/または賦形剤を添加するのが一般的であるが、乾燥粉末吸入剤の吸入効果は様々な要因によって組合せの影響を受け、様々な要因が互いに影響し合い、1つの要因が変化すると、他の要因変数の影響結果が逆転するため、薬学臨床的に使用可能な乾燥粉末吸入剤の開発は、依然として様々な技術的挑戦に直面している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、従来技術の欠陥を克服し、ペラミビル吸入剤の新しい製剤形態、すなわち固体の乾燥粉末吸入製剤を提供することである。この乾燥粉末吸入剤は、担体及び賦形剤を必要とせず、肺に吸収可能な適した分布が均一な粒子サイズ範囲、形態、粉体流動性を有し、凝集しにくく、1回の投与量を効果的に向上させることができ、適切な薬学的安定性を有する。一方、本発明は、気流でペラミビルの三水和物を粉砕し、薬物の肺への送達を効果的に実現できる特定の粒子サイズ、形態などの細かい粉末を得る、より効果的な乾燥粉末の調製方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、この技術的課題を解決するために、次の技術解決策を採用する。
ペラミビル乾燥粉末吸入剤であって、前記乾燥粉末吸入剤は、ペラミビルまたはその許容可能な塩またはその水和物で調製され、うち、単回投与製剤が5~30mgであり、前記乾燥粉末の粒子サイズ分布は、D10が1.3~3μmで、D50が3~6μmで、D90が6~13μmである。
【0015】
前記乾燥粉末は、安息角が33~37度、好ましくは34度、35度、36度であり、かさ密度が0.23~0.28g/cm3、好ましくは0.24g/cm3、0.25g/cm3、0.26g/cm3、0.27g/cm3であり、タップ密度が0.39~0.44g/cm3、好ましくは0.40g/cm3、0.41g/cm3、0.42g/cm3、0.43g/cm3である。
【0016】
前記乾燥粉末のCarr流動指数は58~65、好ましくは59、60、61、62である。
【0017】
前記乾燥粉末において、4.46μm未満の薬物微粒子(FPF)の割合は30%を超え45%の未満、好ましくは32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、40%、41%、より好ましくは34~38%である。
【0018】
前記乾燥粉末の空気力学の粒子サイズは2.5μmを超え3.6μmの未満、好ましくは2.8~3.5μm、または2.6~3.1μm、または2.9~3.4μm、より好ましくは3.0~3.2μm、または3.1~3.3μmである。
【0019】
前記乾燥粉末粒子サイズの分布は、D10が1.3~2.5μmであり、好ましくは、D10が1.4μm、1.5μm、1.6μm、1.7μm、1.8μm、1.9μm、2.1μm、2.2μm、2.3μm、2.4μmであり、好ましくは、D50が3.5μm、4.5μm、5μm、5.5μmであり、好ましくは、D90が6.2μm、6.5μm、7μm、7.5μm、7.8μm、8.0μm、8.4μm、9.0μm、10μm、11μm、12μmである。
【0020】
前記乾燥粉末吸入剤は、ペラミビルの三水化物から調製される。
【0021】
本発明はまた、上記の乾燥粉末からカプセル剤型、小胞剤型及びリポジトリ剤型に製造され、単位製剤の剤型当たりの乾燥粉末の薬物負荷量が5~30mg、好ましくは20mgである、ペラミビル乾燥粉末吸入製剤を提供する。
【0022】
好ましいカプセルは、上記の乾燥粉末をヒプロメロースカプセルシェルに添加することによって調製され、各カプセル中の乾燥粉末が10~30mg、好ましくは20mgである。
【0023】
本発明のペラミビル吸入製剤は、担体及び/または賦形剤をさらに含有するか、担体及び/または賦形剤を含有しない。より好ましくは、担体及び/または賦形剤を含有しない。
【0024】
上記担体及び/または賦形剤は、ラクトース、マンニトール、ロイシン及びリン脂質の1つまたは複数から選択される。本発明はまた、ペラミビルの三水化物を気流で、供給速度が120~140Vで、供給圧力が0.4~0.55MPa、好ましくは0.42MPa、0.45MPa、0.48MPa、0.5MPa、0.52MPa、0.55MPaで、粉砕圧力が0.4~0.6MPa、好ましくは0.42MPa、0.45MPa、0.5MPa、0.52MPa、0.55MPa、0.58MPaの条件で粉砕して乾燥粉末を得る、ペラミビル乾燥粉末吸入剤の調製方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、上記調製して得られた乾燥粉末、及び適切な賦形剤を添加してヒプロメロースカプセルに充填して調製し、上記乾燥粉末及び適切な賦形剤を均一に混合するか、適切な方法で処理して混合された細かい粉末を得、各粒のカプセルに混合された細かい粉末を10~30mg、好ましくは20mgが含有されるように添加して製造する、他のペラミビル乾燥粉末吸入薬物の調製方法を提供する。
【0026】
本発明はまた、ペラミビルまたはその許容可能な塩またはその水和物、及びマンニトールから製造され、薬物の有効成分とマンニトールの質量比が1:(1-5)、好ましくは1:1、1:2である、ペラミビル乾燥粉末吸入剤を提供する。好ましくは、ペラミビルまたはその許容可能な塩またはその水和物の噴霧乾燥粉末、及びマンニトールを混合して製造される。その乾燥粉末剤のρかさ密度は、0.13~0.35g/cm3、好ましくは0.14g/cm3、0.18g/cm3、0.20g/cm3、0.23g/cm3、0.25g/cm3、0.28g/cm3、0.3g/cm3である。ρタップ密度は0.13~0.36g/cm3、好ましくは0.14g/cm3、0.18g/cm3、0.20g/cm3、0.23g/cm3、0.25g/cm3、0.28g/cm3、0.3g/cm3、0.33g/cm3である。中央粒子サイズDgは、3.4~9μm、好ましくは3.5μm、3.6μm、3.8μm、4.0μm、4.4μm、4.6μm、4.8μm、5.0μm、5.2μm、5.5μm、6.0μm、6.5μm、7.0μm、7.4μm、7.8μm、8.0μm、8.5μm、9.0μmである。空気力学的粒子サイズDaは1.8~6μm、好ましくは2.0μm、2.2μm、2.4μm、2.6μm、2.8μm、3.0μm、3.2μm、3.4μm、3.6μm、3.8μm、4.0μm、4.4μm、4.8μm、5.2μm、5.4μm、5.6μm、5.8μmである。安息角は29~35度、好ましくは30度、31度、32度、33度、34度である。
【0027】
本発明はまた、ペラミビルまたはその許容可能な塩またはその水和物、及びマンニトールから製造され、薬物の有効成分とラクトースの質量比が1:(1-4)、好ましくは1:1、1:2である、ペラミビル乾燥粉末吸入剤を提供する。好ましくは、ペラミビルまたはその許容可能な塩またはその水和物の気流粉砕された粉末を、ラクトースと混合して製造される。前記ラクトースは、インハラック120(Inhalac)またはインハラック400、より好ましくはインハラック120から選択される。その乾燥粉末剤のρかさ密度は、0.3~0.5g/cm3、好ましくは0.32g/cm3、0.36g/cm3、0.4g/cm3、0.45g/cm3、0.5g/cm3である。ρタップ密度は、0.5~0.7g/cm3、好ましくは0.55g/cm3、0.56g/cm3、0.58g/cm3、0.6g/cm3、0.62g/cm3、0.64g/cm3、0.66g/cm3、0.68g/cm3である。空気力学的粒子サイズDaは、5.5~6.5μm、好ましくは5.2μm、5.4μm、5.6μm、5.8μm、6.0μm、6.2μmである。安息角は、34~40度、好ましくは34.5度、35度、35.5度、36度、37度、38度である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の有益な効果は、次のとおりである。
1、本発明のペラミビル乾燥粉末吸入剤は、調製方法が簡便で薬物の有効性を保証すると共に、薬物の安全性を確保する。
2、本発明のペラミビル乾燥粉末吸入剤は、適切な粒子サイズ範囲、形態及び粉体の流動性を有し、凝集して群れになりにくく、単回投与量を効果的に減らすことができ、適切な薬学的安定性を有する。
3、本発明のペラミビル乾燥粉末吸入剤は、気流でペラミビルの三水和物を粉砕することによって、特定の粒子サイズ、形態などの細かい粉末を得、薬物の肺部への送達を効果的に実現することができる。
4、本発明のペラミビル乾燥粉末吸入剤は、マウスの肺におけるA型インフルエンザウイルスの力価を効果的に低下することができ、著しい抗ウイルス効果を有し、生存時間を大幅に延長し、死亡率を低下させることができ、その薬効は、ペラミビル塩化ナトリウム注射剤及びリン酸オセルタミビルよりも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、具体的な実施例を参照して以下でさらに説明される。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ使用され、本発明の範囲を限定するのではないことを理解されたい。以下の実施例に具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、従来の条件に従うか、製造業者によって提案された条件に従う。
【0030】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての専門用語と科学用語は、当業者によってよく知られている意味と同じで意味を有する。また、記載されている内容と類似または均等なすべての方法及び材料を、本発明の方法で使用することができる。本明細書に記載される好ましい実施方法及び材料は、例示のみを目的として使用される。
【0031】
本発明に関する測定方法は、以下のとおりである。
1.安息角の測定:固定漏斗法を使用して、薬物粉末を一定の速度で漏斗から流れ出し、粉体堆積の直径(D)及び高さ(h)を測定し、r=D/2で、計算式はtanα=h/rである。
【0032】
2.かさ密度及びタップ密度の測定:薬物粉末をメスシリンダーへ均一に移し、メスシリンダー内の薬物粉末を100回タップし、タップする前と後の薬物の重量と体積を記録する。
【0033】
3.粉体粒子サイズの測定:薬物粉末を取り、レーザー粒度分析装置でその粉体の粒子サイズを測定する。
【0034】
Dg及び空気力学的粒子サイズDa:中央粒子サイズ(Dg)を測定し、空気力学的直径(Da、MMAD)の計算式は
である。
【0035】
実施例1
1、ペラミビル噴霧乾燥粉末の処方は、次のとおりである。
【0036】
【0037】
プロセス条件:噴霧乾燥プロセスのパラメータは、入口空気の温度が200℃で、出口空気の温度が100℃で、速度が400ml/時間である。得られた粉末を180メッシュのふるいに掛ける。実験結果は以下のとおりである。
【0038】
【0039】
実験結果は、リン脂質及びアミノ酸を加えて最適化した後、処方の噴霧乾燥粉末の密度と粒子サイズはすべて低下するが、流動性が悪化すたことを示している。
【0040】
2、噴霧乾燥粉末とマンニトールとを乾燥粉末に混合し、上記組成1のペラミビル噴霧乾燥粉末とマンニトールとの比率(w/w)を1:1、1:2、1:5で十分に混合する。実験結果は以下のとおりである。
【0041】
【0042】
実験結果は、マンニトールと混合した後、粒子サイズ及び密度が明らかに増加したが、流動性が改善されたことを示している。
【0043】
3、噴霧乾燥粉末とラクトースとを乾燥粉末に混合し、上記組成1のペラミビルの噴霧乾燥粉末とラクトースとを(1:1、w/w)混合する。
【0044】
【0045】
実験結果は、乾燥して得られた粉末をラクトースと(1:1、w/w)混合した後、密度及び粒子サイズが増加し、流動性が劣化することを示している。
【0046】
同時に、噴霧乾燥された後に、粉末間の静電気吸着力が増加し、凝集しやすいため、噴霧乾燥によって製造されたペラミビル乾燥粉末は、乾燥粉末の吸入医薬品に適しておらず、ラクトースを加えて混合した後もこの現象が依然として存在し、改善されていないことが実験で判明された。
【0047】
実施例2
1、処方1:ペラミビルの細かい乾燥粉末は、ペラミビルの原料薬を気流で、供給速度が130Vで、供給圧力が0.45MPaで、粉砕圧力が0.45MPaの条件で粉砕し、乾燥粉末を調製する。
【0048】
2、処方2:上記で製造して得られた乾燥粉末とラクトースインハラック120とを質量比1:1で混合して混合粉末を製造する。
【0049】
3、処方3:上記で製造して得られた乾燥粉末とラクトースインハラック400とを質量比1:1で混合して混合粉末を製造する。
【0050】
肺沈着率の試験
上記処方1~3の粉末をカプセルに20mgずつ入れる。NGI器機を覆い、スロートを取り付け、パラフィルムで密閉する。まずポンプをオンにした後、流量計をオンにし、TPK器機の電源を入れ、流量計をスロートに接続させ、空のカプセルを筆記試験装置で取り付けて孔を開け、流量計に接続して流速を測定する。DPI吸入薬物粒度分配器の装置条件をFlow(流速)=60、P3=14.4、P2=66.8に設置し、サンプル注入のカプセル数は20粒、サンプル注入時間は7秒に設定する。次に、アダプタをスロートに取り付ける。次に、上記の薬物を含有するカプセルを薬物粒度分配器の吸入装置に接続し、吸入ボタンをクリックし、操作を20回繰り返す。20粒のカプセルの吸入操作が完了した後、スロート、1級、2級、3級、4級を、それぞれ10mlの脱イオン水で収集皿に吸入された薬物粉末を2回繰り返して洗浄する。洗浄した水を50mlのメスフラスコに移し、吸入装置とスロート装置を超純水で同時に洗浄し、それぞれメスフラスコに収集する。25mlのメスフラスコを使用して、装置の6級、7級及び8級をそれぞれ10mlの脱イオン水で収集皿に吸入された薬物粉末を2回繰り返して洗浄する。洗浄した水をメスフラスコに移す。様々な処方の薬物微粒子の割合FPF(<4.46μm)を測定し、結果は以下のとおりである。
【0051】
【0052】
【0053】
FPF値から見ると、処方1と処方2は類似しているが、処方3は減少が多く、処方3は薬局方規定の10%に近い。痛み止め処方の3粒は主に咽喉に滞留しており、これは、細かすぎるラクトース粒子は静電気を発生しやすいために滞留している可能性がある。処方3は、ペラミビル乾燥粉末の処方としては適切でないことがわかる。
【0054】
安定性実験
上記処方1~2のカプセルを60℃の条件で、それぞれ0日、5日及び10日間放置し、混合物の外観の変化を観察し、以下の指標を検出する。
【0055】
(1)投与量の均一性
処方1~2のカプセルを取り、各カプセルのサンプル注入量は20mgであり、送達量を均一にする装置に接続させ、ポンプをオンにし、流量計を収集管に接続させ、収集管の一端にろ紙を放置し、他端を流量計に接続する。DUSA管を流量計に接続させ、空のカプセルを筆記試験装置で取り付けて孔を開け、流速を測定する。TPK器機の電源を入れ、TPK器機のset upボタンを押して設定し、「OK」を押してから「set P1」を押して流速を60L/分に調整する。Flow(Q)が表示されるまで「set flow」を押し、次に「Yes」を押してから再び「Yes」を押し、画面の数値を記録し、流量計を取り外す。送達量の均一性パラメータ条件は、Flow(流速)=60、P3=14.4、P2=66.8である。薬物を含有するカプセルを蘇州万通の吸入装置に放置し、吸入ボタンを毎回1粒になるようにクリックする。ろ紙と収集管内の薬物を超純水で50mlのビーカーに洗い流し、ビーカーを3回すすぎ、収集液を50mlのメスフラスコに移し、超純水で定容する。収集液10部を収集し、高効率液相検査を行う。各収集液中の薬物の含有量を測定する。
【0056】
(2)薬物微粒子の割合(FPF<4.46μm)は、NGIを用いて薬物微粒子の割合を検出する。
【0057】
【0058】
各処方及び異なる影響因子の条件下での投与量、サンプル(20mg/カプセル)は、手動で正確に定量してカプセルに充填したため、投与量はいずれも薬局方の規定基準(平均値はいずれも75%~125%の間)に符合し、高温は投与量の均一性に対してあまり影響しない。
【0059】
薬物微粒子の割合(FPF<4.46μm)の結果は、高温が処方1のFPFに対してあまり影響しないが、処方2のFPFに対して比較的に大きな影響を与えることを示している。したがって、賦形剤及び担体が添加されていないペラミビル乾燥粉末は、賦形剤及び担体が添加されたペラミビル乾燥粉末よりも優れた粉体性能を有する。
【0060】
実施例3
ペラミビルの三水和物原料1.3kgをジェットミルで粉砕し、供給速度が130Vで、供給圧力が0.45MPaで、粉砕圧力が0.40MPaの条件で粉砕し乾燥粉末を得た後、乾燥粉末を20mgずつヒプロメロースカプセルに充填する。うち、乾燥粉末は、粒子サイズD10が1.934μmで、D50が4.415μmで、D90が8.858μmである。安息角が34.8度で、かさ密度が0.25g/cm3で、タップ密度が0.41g/cm3で、Carr流動指数が59.0である。
【0061】
実施例4
ペラミビルの三水和物原料1.3kgをジェットミルで粉砕し、供給速度が125Vで、供給圧力が0.50MPaで、粉砕圧力が0.45MPaの条件で粉砕し乾燥粉末を得た後、乾燥粉末を20mgずつヒプロメロースカプセルに充填する。うち、乾燥粉末は、粒子サイズD10が1.447μmで、D50が3.269μmで、D90が6.988μmである。安息角が35.3度で、かさ密度が0.26g/cm3で、タップ密度が0.43g/cm3で、Carr流動指数が60.0である。
【0062】
実施例5
ペラミビルの三水和物原料1.3kgをジェットミルで粉砕し、供給速度が135Vで、供給圧力が0.42MPaで、粉砕圧力が0.40MPaの条件で粉砕し乾燥粉末を得た後、乾燥粉末を20mgずつヒプロメロースカプセルに充填する。うち、乾燥粉末は、粒子サイズD10が2.034μmで、D50が5.716μmで、D90が12.67μmである。安息角が34.1度で、かさ密度が0.23g/cm3で、タップ密度が0.39g/cm3で、Carr流動指数が61.0である。
【0063】
実施例6
ペラミビルの三水和物原料1.3kgをジェットミルで粉砕し、供給速度が140Vで、供給圧力が0.40MPaで、粉砕圧力が0.35MPaの条件で粉砕し乾燥粉末を得た後、乾燥粉末を15mgずつヒプロメロースカプセルに充填する。うち、乾燥粉末は、粒子サイズD10が2.89μmで、D50が7.78μmで、D90が16.39μmである。安息角が33.7度で、かさ密度が0.24g/cm3で、タップ密度が0.41g/cm3で、Carr流動指数が65.0である。
【0064】
実施例7
ペラミビルの三水和物原料1.3kgをジェットミルで粉砕し、供給速度が120Vで、供給圧力が0.60MPaで、粉砕圧力が0.40MPaの条件で粉砕し乾燥粉末を得た後、乾燥粉末を15mgずつヒプロメロースカプセルに充填する。うち、乾燥粉末は、粒子サイズD10が1.332μmで、D50が3.015μmで、D90が5.658μmである。安息角が38.4度で、かさ密度が0.28g/cm3で、タップ密度が0.47g/cm3で、Carr流動指数が66.0である。
【0065】
実施例1
吸入噴霧剤のNGI送達実験
1.サンプルの準備
実施例1の乾燥粉末をNGI送達し、サンプルの体外沈着率をテストする。サンプルは、単回投与量カプセルに充填され、3回テストされ、毎回10粒のカプセルを送達する。
【0066】
2.サンプルのNGI検出結果
サンプルは、NGI送達でテストし、NGIの各受けカップ/トレイ内のサンプルトレイをそれぞれ洗浄し、メスフラスコで定容し、HPLC含有量検出法で含有量を検出する。
【0067】
【0068】
実施例2
異なる粒子サイズの体外沈着率の比較実験
実施例3~6のサンプルは、NGI体外沈着率についてテストされ、実験結果は以下のとおりである。
【0069】
【0070】
サンプルの粒子サイズD90が12.67μmを超える場合、その体外沈着率は薬局方の要件(薬局方の要件は、微粒子のレベル用量が10%以上である)を満たすことが困難である。実施例4では、優れた体外沈着率を有する。
【0071】
実施例3
安定性実験
実施例3のサンプルは、それぞれ第0日目、第5日目、第10日目、30日目に高温(60度)の条件でサンプリングし、そのNGIの体外沈着率を調べる。
【0072】
【0073】
実験の結果、本発明の乾燥粉末吸入剤は、高温での安定性に優れている。
【0074】
実施例4
A型A/PR/8/34インフルエンザウィルスに感染されたマウスの体内に対する、ペラミビル粉霧剤を噴霧化投与の保護効果
SPF級Balb/cのマウス80匹は、雄と雌が各半分で、体重が16.9~22.6gで、性別と体重に従って無作為にそれぞれ、正常対照組、ウィルスモデル組、リン酸オセルタミビルカプセル組(タミフル)(10mg/kg)、ペラミビル静脈注射組(10mg/kg)、ペラミビル粉霧剤(実施例3)I~IV組(0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.9mg/kg、2.7mg/kg)の8つの組に分け、各組には10匹の動物がいる。各組のマウスは、エチルエーテルで軽く麻酔し、A型A/PR/8/34インフルエンザウィルス液(インフルエンザウィルス原液を4℃に予冷したブランク培地で5LD50濃度に希釈)を60μL/匹で鼻から滴下し、正常対照組は、等量のブランク培地を鼻から滴下する。連日投与する前に、ペラミビル静脈注射剤は、0.9%の塩化ナトリウム注射剤で1.0mg/mLの薬液に調製し、リン酸オセルタミビルカプセルは、純水で0.5mg/mLの薬液に調製する。各組のマウスは、点鼻でウイルスに感染させてモデリングした2時間後に投与され、うち、ペラミビル粉霧剤の各組の動物には、対応する用量のペラミビル粉霧剤を投与され、ペラミビル静脈注射組には、10mL/kgのペラミビル薬液を静脈注射することによって投与され、リン酸オセルタミビルのカプセル組には、20mL/kgのリン酸オセルタミビルの薬液を強制経口投与され、正常対照組とモデル対照組には、気管から同量の空気を注入し、毎日1回、連続5日投与され、点鼻でモデリングした翌日をウィルス感染後の第1日(D1)とする。
【0075】
感染モデリングの当日から15日間連続観察し、各組の動物の体重、死亡時間及び死亡数を記録し、投与期間の体重変化を比較し、死亡率=死亡動物数/総動物数*100%、平均生存時間=動物の総生存日数/動物数を計算する。
【0076】
【0077】
表11に示すように、実験期間中、正常対照組はウィルスに感染せず、動物は死亡しなかった。ウィルス対照組では合計10/10匹のマウスが死亡し、死亡率が100%に達し、正常対照組より顕著な統計学的差異があった(P≦0.01)。ウィルス対照組と比較して、リン酸オセルタミビル組、ペラミビル静脈注射組、ペラミビル粉霧剤II~IV組の動物の死亡率はいずれも大幅に減少した(P≦0.05またはP≦0.01)。ただし、ペラミビル粉霧剤I組とウィルス対照組を比較すると、統計学的意味がなかった(P>0.05)。正常対照組と比較して、ウィルス対照組のマウスの平均生存日数は6.2日であり、平均生存時間が大幅に短縮された(P≦0.01)。ウィルス対照組と比較して、ペラミビル粉霧剤I及びII組の平均生存時間は、ある程度延長されたが、統計学的な差異がなかった(P>0.05)。リン酸オセルタミビル組、ペラミビル静脈注射組、ペラミビルの粉霧剤III~IV組は、平均生存時間がウィルス対照組よりすべて明らかに延長した(P≦0.05またはP≦0.01)。
【0078】
上記結果の分析によると、ウイルス感染の2時間後に投与されたペラミビルの吸入粉霧剤は、生存期間を大幅に延長し、死亡率を低下させ、体内で明らかな保護効果を有し、また、明らかな用量効果関係があり、同時に、0.9mg/kgのペラミビルの吸入粉霧剤の薬効果が、ペラミビル塩化ナトリウム注射剤(10mg/kg)及びリン酸オセルタミビルカプセル(10mg/kg)よりも優れている。
【0079】
実施例5
A型A/PR/8/34インフルエンザウィルスに感染されたマウスの肺組織のウイルス力価に対する、ペラミビル粉霧剤の噴霧化投与の影響
SPF級Balb/cのマウス84匹は、雄と雌が各半分であり、体重が21.2~2266gで、性別と体重に従って無作為にそれぞれ、正常対照組、ウィルスモデル組、リン酸オセルタミビルカプセル組(タミフル)(10mg/kg)、ペラミビル静脈注射組(10mg/kg)、ペラミビル粉霧剤(実施例3)I~III組(0.1mg/kg、0.3mg/kg、0.9mg/kg)に7つの組に分け、各組には12匹の動物がいる(うち、組内のF04~F06、M04~M06は24時間の赤血球凝集力価の測定に使用され、F01~F03、M01~M03は48時間の赤血球凝集力価の測定に使用された)。各組のマウスは、エチルエーテルで軽く麻酔し、A型A/PR/8/34インフルエンザウィルス液(インフルエンザウィルス原液を4℃に予冷したブランク培地で5LD50濃度に希釈)を60μL/匹で鼻から滴下し、正常対照組は、等量のブランク培地を鼻から滴下する。連日投与する前に、ペラミビル静脈注射剤は0.9%の塩化ナトリウム注射剤で1.0mg/mLの薬液に調製し、リン酸オセルタミビルカプセルは、純水で0.5mg/mLの薬液に調製する。各組のマウスは、いずれも点鼻でウイルスに感染させてモデリングした2時間後に投与され、うち、ペラミビル粉霧剤の各組の動物には、対応する量のペラミビル粉霧剤を投与し、ペラミビル静脈注射組には、ペラミビル薬液を10mL/kgで静脈注射することによって投与し、リン酸オセルタミビルカプセル組には、20mL/kgのリン酸オセルタミビルの薬液を強制経口投与し、正常対照組とモデル対照組には、気管から同量の空気を注入し、毎日1回、連続2日投与する。
【0080】
投与24時間後及び48時間後に、それぞれ各組から6匹の動物を無作為に選択し、雄と雌の半分ずつを頸椎脱臼により安楽死させ、解剖して肺臓を取出した後、ホモジナイザーに入れる。肺質量(g):0.9%の塩化ナトリウム注射剤(mL)=1:9に従って、0.9%の塩化ナトリウム注射剤を加え、研磨してホモジナイズし、マウス肺懸濁液を製造し、4℃環境で2500rpmで20分間遠心分離し、上清液を取って使用を待つ。第1列を除いて、血球凝集プレートのウェルに50μLのPBSを添加し、第1列の各ウェルに100μLの測定待ちの上清液を添加し、第11列まで順次に倍の割合で希釈する。次に、0.5%の鶏赤血球をそれぞれ50μLを加え、40分間放置し、赤血球凝集プレートを傾け、赤血球が涙滴状に流れるかどうかを観察し、鶏赤血球が完全に凝集する最大希釈倍数の対数で赤血球凝集力価を表す。うち、赤血球凝集力価が大きいほど、マウス肺懸濁液中のウイルス力価が高いことを表す。
【0081】
【0082】
表12に示すように、正常対照組のマウスはウィルスに感染せず、血球凝集力価は0である。正常対照組と比較して、ウイルス対照組の肺臓血球凝集力価は感染後24時間と48時間で顕著に増加した(P≦0.01)。ウイルス対照組と比較して、リン酸オセルタミビルカプセル組、ペラミビル静脈内注射組、ペラミビル吸入I~III組の肺臓血球凝集力価は、感染後24時間、48時間でいずれも顕著に低下した(P≦0.01)。ペラミビル吸入粉霧剤は、ウイルス感染2時間後にマウスの肺のA型インフルエンザウイルスの力価を効果的に低下できることが示唆されており、これは顕著な抗ウイルス効果があり、明らかな用量効果関係があることを示している。同時に、0.9mg/kgのペラミビル吸入粉霧剤の薬効作用は、ペラミビル塩化ナトリウム注射剤(10mg/kg)及びリン酸オセルタミビルカプセル(10mg/kg)よりも優れている。
【0083】
以上の説明は、本発明の実質的な技術的内容の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の好ましい実施例にすぎない。本発明の実質的な技術的内容は、出願の特許請求の範囲内で広く定義され、他者によって完成された技術的実体または方法は、出願の特許請求の範囲で定義されたものとまったく同じである場合、または同等の変更である場合、該特許請求の範囲内に含まれるもとのみなされる。
【国際調査報告】