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特表2023-521409インビボ遺伝子治療のための前処理レジメン
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】インビボ遺伝子治療のための前処理レジメン
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/761 20150101AFI20230517BHJP
   A61K 38/20 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/439 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20230517BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 14/715 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20230517BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20230517BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A61K35/761
A61K38/20
A61K39/395 U
A61K31/573
A61K31/439
A61K48/00
A61K35/28
A61P7/00
A61P7/06
A61P37/06
A61P43/00 105
A61P43/00 121
C12N15/86 Z ZNA
C12N15/861 Z
C12N7/01
C07K14/715
C07K16/28
C07K19/00
C07K16/24
C12N15/62 Z
C12N15/13
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562075
(86)(22)【出願日】2021-04-12
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021026873
(87)【国際公開番号】W WO2021211450
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/009,218
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/121,777
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522176001
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
【住所又は居所原語表記】4545 Roosevelt Way NE, Suite 400, Seattle, Washington 98105 US
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】リーバー, アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】キエム, ハンス-ピーター
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA95X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA44
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA13
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA22
4C084BA23
4C084CA53
4C084DA13
4C084DA59
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZA511
4C084ZA551
4C084ZB082
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZC751
4C085AA14
4C085BB18
4C085DD62
4C085EE01
4C085GG02
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086DA10
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB08
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB44
4C087BC83
4C087CA12
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087ZA51
4C087ZA55
4C087ZB21
4C087ZC75
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA51
4H045DA76
4H045EA24
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、とりわけ、インビボ遺伝子治療のための免疫抑制レジメン、及びその使用を提供する。本開示のさまざまな実施形態において、インビボ遺伝子治療は、対象の幹細胞への少なくとも1つの外来性コード核酸配列の送達を含む。インビボ遺伝子治療の成功は、免疫毒性によって阻害または低減され得る。本開示は、インビボ遺伝子治療、例えば、対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの投与を含むインビボ遺伝子治療の免疫毒性を低減させる免疫抑制レジメンをとりわけ含む、組成物及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物対象におけるインビボ遺伝子治療の方法であって、
(i)炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを前記対象に投与すること、及び
(ii)ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量を前記対象に投与すること
を含む、方法。
【請求項2】
哺乳動物対象から幹細胞を取り出すことなく、前記対象の幹細胞を形質導入する方法であって、炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを投与された対象にウイルス遺伝子治療ベクターを送達することを含む、方法。
【請求項3】
前記炎症性シグナル阻害剤が、インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤であり、必要に応じて、前記IL-1シグナル阻害剤が、IL-1受容体(IL-1R)アンタゴニストである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記IL-1Rアンタゴニストが、アナキンラである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記免疫抑制レジメンが、インターロイキン6(IL-6)受容体アンタゴニストをさらに含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記IL-6受容体アンタゴニストが、トシリズマブである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫抑制レジメンが、コルチコステロイドをさらに含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫抑制レジメンが、カルシニューリン阻害剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫抑制レジメンが、TNF-αシグナル阻害剤をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記TNF-αシグナル阻害剤が、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、及びゴリムマブからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記免疫抑制レジメンが、JAKシグナル阻害剤をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記JAKシグナル阻害剤が、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、及びフィルゴチニブからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、
(i)前記ベクターの第1の用量の投与の前の日に、
(ii)IL-1受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、前記ベクターの第1の用量の投与の日に、前記ベクターの前記第1の用量の投与の1~3時間前に、
(iii)IL-1受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、前記ベクターの前記1つまたは複数の後続用量の投与の1~3時間前に、
(iv)前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または
(v)前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、
IL-1受容体アンタゴニストを前記対象に投与することを含み、
必要に応じて、前記IL-1受容体アンタゴニストが、アナキンラである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりIL-1受容体アンタゴニストの単一用量または1日あたりIL-1受容体アンタゴニストの複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記IL-1受容体アンタゴニストが、アナキンラである、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、0.01~20mg/kg/日のアナキンラを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内または皮下である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、10~200mg/日のアナキンラを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内または皮下である、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、
(i)前記ベクターの第1の用量の投与の前の日に、
(ii)IL-6受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、前記ベクターの第1の用量の投与の日に、前記ベクターの前記第1の用量の投与前の1時間以内に、
(iii)IL-6受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、前記ベクターの前記1つまたは複数の後続用量の投与前の1時間以内に、
(iv)前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または
(v)前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、
IL-6受容体アンタゴニストを前記対象に投与することを含み、
必要に応じて、前記IL-6受容体アンタゴニストが、トシリズマブである、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりIL-6受容体アンタゴニストの単一用量または1日あたりIL-6受容体アンタゴニストの複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記IL-6受容体アンタゴニストが、トシリズマブである、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1~15mg/kg/日のトシリズマブまたは5~200mg/日のトシリズマブを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内である、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、
(i)前記ベクターの第1の用量の投与の前の日に、
(ii)前記ベクターの第1の用量の投与の日に、
(iii)前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、
(iv)前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または
(v)前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、
コルチコステロイドを前記対象に投与することを含み、
必要に応じて、前記コルチコステロイドが、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、またはベタメタゾンである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりコルチコステロイドの単一用量または1日あたりコルチコステロイドの複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンである、請求項11~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、0.1~10mg/kg/日のデキサメタゾンを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内、経口、または筋肉内である、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、
(i)前記ベクターの第1の用量の投与前の4日間の毎日に、
(ii)前記ベクターの第1の用量の投与の日に、
(iii)前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、及び/または
(iv)前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または
(v)前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、
カルシニューリン阻害剤を前記対象に投与することを含み、
必要に応じて、前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりカルシニューリン阻害剤の単一用量または1日あたりカルシニューリン阻害剤の複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスである、請求項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記免疫抑制レジメンの前記投与が、0.001~0.1mg/kg/日のタクロリムスを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、皮下である、請求項25または26に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、1つまたは複数の免疫抑制剤を含まない対照と比較して、(i)IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、もしくはIL-6のうちの1つまたは複数の量の有意な増加を引き起こさないか、または(ii)IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、もしくはIL-6のうちの1つまたは複数の量の有意に小さい増加を引き起こし、必要に応じて、前記対照が、(a)前記炎症性シグナル阻害剤、(b)前記IL-6受容体アンタゴニスト、(c)前記コルチコステロイド、及び(d)前記カルシニューリン阻害剤から選択される1つまたは複数の免疫抑制剤を含まず、必要に応じて、前記量が、ELISAまたはサイトカインビーズアレイによって測定される、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
幹細胞動員レジメンを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記ベクターが、選択可能マーカーをコードする核酸配列を含み、必要に応じて、前記選択可能マーカーが、MGMTP140Kである、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が、選択剤を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記選択可能マーカーが、MGMTP140Kであり、前記選択剤が、OBG/BCNUである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記選択剤が、1つまたは複数の用量において前記対象に投与され、必要に応じて、前記選択剤の第1の用量が、前記対象への前記ベクターの第1の用量の投与の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、及び/または約10週間後に、前記対象に投与される、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記ベクターが、注射によって前記対象に投与され、必要に応じて、前記注射が、静脈内または皮下である、請求項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記ベクターの少なくとも第1の用量が、1キログラムあたり少なくとも1E10個、少なくとも1E11個、または少なくとも1E12個のウイルス粒子(vp/kg)を含む、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記ベクターが、少なくとも1E10vp/kg、少なくとも1E11vp/kg、少なくとも1E12vp/kg、少なくとも2E12vp/kg、または少なくとも3E12vp/kgの総投薬量で投与される、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アルファウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ニューカッスル病ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、またはピコルナウイルスベクターである、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記ベクターが、アデノウイルスベクターである、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
前記ベクターが、B群アデノウイルスベクターである、請求項1~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記ベクターが、Ad5/35またはAd35アデノウイルスベクターであるか、またはこれに由来し、必要に応じて、前記ベクターが、Ad35++またはAd5/35++アデノウイルスベクターである、請求項1~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記ベクターが、複製能力がないベクターであり、必要に応じて、前記複製能力がないベクターが、ヘルパー依存型アデノウイルスベクターである、請求項1~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
ウイルス遺伝子治療ベクターが、治療ペイロードを含む核酸を含み、前記方法が、標的細胞ゲノムへの前記治療ペイロードの組み込みを容易にする薬剤をコードするサポートベクターを前記対象に投与することをさらに含む、請求項1~40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記サポートベクターが、前記ウイルス遺伝子治療ベクターと共に前記対象に投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記サポートベクターが、1キログラムあたり1E9~1E14個のウイルス粒子(vp/kg)の総投薬量で投与される、請求項41または42に記載の方法。
【請求項44】
前記ウイルス遺伝子治療ベクターが、治療ペイロードを含む核酸を含み、前記方法が、幹細胞への前記治療ペイロードの送達を引き起こし、必要に応じて、前記治療ペイロードの送達が、前記幹細胞のゲノムへの前記治療ペイロードの組み込みを含む、請求項1~43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記ウイルス遺伝子治療ベクターが、タンパク質コード治療ペイロードを含む核酸を含み、前記対象への前記ベクターの投与後に、前記対象のPBMCの少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%が、前記タンパク質を発現する、請求項1~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
前記対象が、ヒト対象である、請求項1~45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記ヒト対象が、鎌状赤血球貧血、サラセミア、中間型サラセミア、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症、第XII因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、ベルナール・スーリエ症候群、灰色血小板症候群を罹患している、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが、前記ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、前記対象または前記対象由来の試料における免疫毒性バイオマーカーの測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度、及び/または用量の総数が増加され、前記測定されたレベルが、免疫毒性を指し示す場合、前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが増加される、請求項1~47のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記免疫毒性バイオマーカーが、IL-Ιβ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-30、IL-36、IL-1Ra、IL-2R、IFN-a、IFN-b、IFN-γ、MIP-Ia、ΜΙΡ-Ιβ、MCP-1、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、G-CSF、CXCL9、CXCL10、VEGF、RANTES、EGF、HGF、FGF-β、CD40、CD40L、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、フェリチン、Dダイマー、リンパ球の総集団、リンパ球の亜集団、対象温度、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが、前記ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、前記対象または前記対象由来の試料における前記ウイルス遺伝子治療ベクターに対する抗体の前記測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度、及び/または用量の総数が増加され、前記測定されたレベルが、免疫毒性を指し示す場合、前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが増加され、必要に応じて、前記測定されたレベルが、抗体価であり、必要に応じて、前記抗体が、中和抗体である、請求項1~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記免疫抑制レジメンの前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが、
(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤であって、必要に応じてアナキンラである前記IL-1シグナル阻害剤、
(ii)IL-6シグナル阻害剤であって、必要に応じてトシリズマブである前記IL-6シグナル阻害剤、
(iii)コルチコステロイドであって、必要に応じてデキサメタゾンである前記コルチコステロイド、及び
(iv)カルシニューリン阻害剤であって、必要に応じてタクロリムスである前記カルシニューリン阻害剤
のうちの1つまたは複数の投薬レジメンを含む、請求項48~50のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月4日出願の米国仮出願第63/121,777号;及び2020年4月13日出願の米国仮出願第63/009,218号のより早い出願日に基づく優先権及びその利益を主張している。これらの先行出願のそれぞれは、その全体が参考として援用される。
【0002】
政府による支援
本発明は、国立衛生研究所によって付与されたHL136135、HL128288、及びHL130040の下で政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
多くの既存遺伝子治療は、エクスビボで操作された細胞を経由して、目的の核酸配列を対象に送達する。ある特定のそのような方法は、エクスビボで操作された細胞を単離し、修飾し、増やし、単離するための精巧な施設の必要性を含む、エクスビボで操作された細胞に基づく治療のコスト及び技術的な複雑さを限定することなく含む、さまざまな弱点を有する。エクスビボで操作された細胞に基づくある特定の治療の追加的な課題は、レシピエントにおける生着を達成することの困難を含む。一例を挙げると、操作された細胞の生着を容易にするために高用量化学療法を含むエクスビボ治療は、異常ヘモグロビン症の処置に特に不適である。少なくともこれらの理由から、インビボ遺伝子治療の安全性及び/または有効性を増強する、インビボ遺伝子治療の戦略及びプロトコールの必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
要旨
本開示は、とりわけ、インビボ遺伝子治療のための免疫抑制レジメン、及びその使用を提供する。本明細書に開示されている通り、インビボ遺伝子治療は、少なくとも1つの外来性コード核酸配列が、対象から細胞を取り出すことなく対象の細胞に送達される、治療を含む。本開示のさまざまな実施形態では、インビボ遺伝子治療は、対象の幹細胞への少なくとも1つの外来性コード核酸配列の送達を含む。本開示のさまざまな実施形態では、インビボ遺伝子治療は、外来性コード核酸配列をコードする核酸配列を含むウイルスベクターを対象に投与することを含む。インビボ遺伝子治療の成功は、免疫毒性によって、すなわち、対象における免疫応答の、ウイルス遺伝子治療ベクターを含む治療剤またはレジメンなどの治療剤またはレジメンによる誘導によって阻害または低減され得、これは対象の処置及び/または福祉にとって逆効果である。場合によっては、免疫毒性は、炎症応答及び/またはサイトカイン応答を含む。本開示は、とりわけ、インビボ遺伝子治療、例えば、対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの投与を含むインビボ遺伝子治療の免疫毒性を低減させる免疫抑制レジメンを含む、組成物及び方法を提供する。
【0005】
特定の実施形態は、哺乳動物対象から幹細胞を取り出すことなく、対象の幹細胞を形質導入する方法であって、炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを投与された対象にウイルス遺伝子治療ベクターを送達することを含む、方法を含む。
【0006】
特定の実施形態は、哺乳動物対象におけるインビボ遺伝子治療の方法であって、(i)炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを対象に投与すること、及び(ii)ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量を対象に投与することを含む方法を含む。
【0007】
態様の中でもとりわけ、アナキンラ(Kineret(登録商標))及びトシリズマブ(Actemra(登録商標))とデキサメタゾンの組合せが、HDAd5/35++に対する自然免疫応答を十分に鈍らせることができたという最初の実証が本明細書に提供される。このことは、このようなベクターに対する自然応答の駆動における、IL-1及びIL-6の役割を考証する。
【0008】
少なくとも1つの態様では、本開示は、哺乳動物対象におけるインビボ遺伝子治療の方法であって、(i)炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを対象に投与すること、及び(ii)ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0009】
少なくとも1つの態様では、本開示は、哺乳動物対象から幹細胞を取り出すことなく、対象の幹細胞を形質導入する方法であって、炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを投与された対象にウイルス遺伝子治療ベクターを送達することを含む方法を提供する。
【0010】
種々の実施形態では、炎症性シグナル阻害剤は、インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤であり、必要に応じて、IL-1シグナル阻害剤は、IL-1受容体(IL-1R)アンタゴニストである。
【0011】
種々の実施形態では、IL-1Rアンタゴニストは、アナキンラである。
【0012】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンは、インターロイキン6(IL-6)受容体アンタゴニストをさらに含む。
【0013】
種々の実施形態では、IL-6受容体アンタゴニストは、トシリズマブである。
【0014】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンは、コルチコステロイドをさらに含む。
【0015】
種々の実施形態では、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。
【0016】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンは、カルシニューリン阻害剤をさらに含む。
【0017】
種々の実施形態では、カルシニューリン阻害剤は、タクロリムスである。
【0018】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンは、TNF-αシグナル阻害剤をさらに含む。
【0019】
種々の実施形態では、TNF-αシグナル阻害剤は、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、及びゴリムマブを含む群から選択される。
【0020】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンは、JAKシグナル阻害剤をさらに含む。
【0021】
種々の実施形態では、JAKシグナル阻害剤は、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、及びフィルゴチニブを含む群から選択される。
【0022】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、(i)ベクターの第1の用量の投与の前の日に、(ii)IL-1受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、ベクターの第1の用量の投与の日に、ベクターの第1の用量の投与の1~3時間前に、(iii)IL-1受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の1~3時間前に、(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、IL-1受容体アンタゴニストを対象に投与することを含み、必要に応じて、IL-1受容体アンタゴニストは、アナキンラである。
【0023】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、1日あたりIL-1受容体アンタゴニストの単一用量または1日あたりIL-1受容体アンタゴニストの複数用量を対象に投与することを含み、必要に応じて、IL-1受容体アンタゴニストは、アナキンラである。
【0024】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、0.01~20mg/kg/日のアナキンラを対象に投与することを含み、必要に応じて、投与は、静脈内または皮下である。
【0025】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、10~200mg/日のアナキンラを対象に投与することを含み、必要に応じて、投与は、静脈内または皮下である。
【0026】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、(i)ベクターの第1の用量の投与の前の日に、(ii)IL-6受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、ベクターの第1の用量の投与の日に、ベクターの第1の用量の投与前の1時間以内に、(iii)IL-6受容体アンタゴニストの少なくとも1用量を必要に応じて含む、ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与前の1時間以内に、(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、IL-6受容体アンタゴニストを対象に投与することを含み、必要に応じて、IL-6受容体アンタゴニストは、トシリズマブである。
【0027】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、1日あたりIL-6受容体アンタゴニストの単一用量または1日あたりIL-6受容体アンタゴニストの複数用量を対象に投与することを含み、必要に応じて、IL-6受容体アンタゴニストは、トシリズマブである。
【0028】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、1~15mg/kg/日のトシリズマブまたは5~200mg/日のトシリズマブを対象に投与することを含み、必要に応じて、投与は、静脈内である。
【0029】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、(i)ベクターの第1の用量の投与の前の日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、コルチコステロイドを対象に投与することを含み、必要に応じて、コルチコステロイドは、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、パラメタゾン、またはベタメタゾンである。
【0030】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、1日あたりコルチコステロイドの単一用量または1日あたりコルチコステロイドの複数用量を対象に投与することを含み、必要に応じて、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。
【0031】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、0.1~10mg/kg/日のデキサメタゾンを対象に投与することを含み、必要に応じて、投与は、静脈内、経口、または筋肉内である。
【0032】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、(i)ベクターの第1の用量の投与前の4日間の毎日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、及び/または(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、カルシニューリン阻害剤を対象に投与することを含み、必要に応じて、カルシニューリン阻害剤は、タクロリムスである。
【0033】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、1日あたりカルシニューリン阻害剤の単一用量または1日あたりカルシニューリン阻害剤の複数用量を対象に投与することを含み、必要に応じて、カルシニューリン阻害剤は、タクロリムスである。
【0034】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの投与は、0.001~0.1mg/kg/日のタクロリムスを対象に投与することを含み、必要に応じて、投与は、皮下である。
【0035】
種々の実施形態では、方法は、1つまたは複数の免疫抑制剤を含まない対照と比較して、(i)IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、もしくはIL-6のうちの1つまたは複数の量の有意な増加を引き起こさないか、または(ii)IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、もしくはIL-6のうちの1つまたは複数の量の有意に小さい増加を引き起こし、必要に応じて、対照は、(a)炎症性シグナル阻害剤、(b)IL-6受容体アンタゴニスト、(c)コルチコステロイド、及び(d)カルシニューリン阻害剤から選択される1つまたは複数の免疫抑制剤を含まず、必要に応じて、量は、ELISAまたはサイトカインビーズアレイによって測定される。
【0036】
種々の実施形態では、方法は、幹細胞動員レジメンを対象に投与することをさらに含む。
【0037】
種々の実施形態では、ベクターは、選択可能マーカーをコードする核酸配列を含み、必要に応じて、選択可能マーカーは、MGMTP140Kである。
【0038】
種々の実施形態では、方法は、選択剤を対象に投与することを含み、必要に応じて、選択可能マーカーは、MGMTP140Kであり、選択剤は、OBG/BCNUである。
【0039】
種々の実施形態では、選択剤は、1つまたは複数の用量において対象に投与され、必要に応じて、選択剤の第1の用量は、対象へのベクターの第1の用量の投与の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、及び/または約10週間後に、対象に投与される。
【0040】
種々の実施形態では、ベクターは、注射によって対象に投与され、必要に応じて、注射は、静脈内または皮下である。
【0041】
種々の実施形態では、ベクターの少なくとも第1の用量は、1キログラムあたり少なくとも1E10個、少なくとも1E11個、または少なくとも1E12個のウイルス粒子(vp/kg)を含む。
【0042】
種々の実施形態では、ベクターは、少なくとも1E10vp/kg、少なくとも1E11vp/kg、少なくとも1E12vp/kg、少なくとも2E12vp/kg、または少なくとも3E12vp/kgの総投薬量で投与される。
【0043】
種々の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アルファウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ニューカッスル病ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、またはピコルナウイルスベクターである。
【0044】
種々の実施形態では、ベクターは、アデノウイルスベクターである。
【0045】
種々の実施形態では、ベクターは、B群アデノウイルスベクターである。
【0046】
種々の実施形態では、ベクターは、Ad5/35またはAd35アデノウイルスベクターであるか、またはこれに由来し、必要に応じて、ベクターは、Ad35++またはAd5/35++アデノウイルスベクターである。
【0047】
種々の実施形態では、ベクターは、複製能力がないベクターであり、必要に応じて、複製能力がないベクターは、ヘルパー依存型アデノウイルスベクターである。
【0048】
種々の実施形態では、ウイルス遺伝子治療ベクターは、治療ペイロードを含む核酸を含み、方法は、標的細胞ゲノムへの治療ペイロードの組み込みを容易にする薬剤をコードするサポートベクターを対象に投与することをさらに含む。
【0049】
種々の実施形態では、サポートベクターは、ウイルス遺伝子治療ベクターと共に対象に投与される。
【0050】
種々の実施形態では、サポートベクターは、1キログラムあたり1E9~1E14個のウイルス粒子(vp/kg)の総投薬量で投与される。
【0051】
種々の実施形態では、ウイルス遺伝子治療ベクターは、治療ペイロードを含む核酸を含み、方法は、幹細胞への治療ペイロードの送達を引き起こし、必要に応じて、治療ペイロードの送達は、幹細胞のゲノムへの治療ペイロードの組み込みを含む。
【0052】
種々の実施形態では、ウイルス遺伝子治療ベクターは、タンパク質コード治療ペイロードを含む核酸を含み、対象へのベクターの投与後に、対象のPBMCの少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%は、タンパク質を発現する。
【0053】
種々の実施形態では、対象は、ヒト対象である。
【0054】
種々の実施形態では、ヒト対象は、鎌状赤血球貧血、サラセミア、中間型サラセミア、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症、第XII因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、ベルナール・スーリエ症候群、灰色血小板症候群を罹患している。
【0055】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンは、ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、対象または対象由来の試料における免疫毒性バイオマーカーの測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度、及び/または用量の総数が増加され、測定されたレベルが、免疫毒性を指し示す場合、1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンが増加される。
【0056】
種々の実施形態では、免疫毒性バイオマーカーは、IL-Ιβ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-30、IL-36、IL-1Ra、IL-2R、IFN-a、IFN-b、IFN-γ、MIP-Ia、ΜΙΡ-Ιβ、MCP-1、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、G-CSF、CXCL9、CXCL10、VEGF、RANTES、EGF、HGF、FGF-β、CD40、CD40L、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、フェリチン、Dダイマー、リンパ球の総集団、リンパ球の亜集団、対象温度、及びこれらの組合せを含む群から選択される。
【0057】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンは、ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、対象または対象由来の試料におけるウイルス遺伝子治療ベクターに対する抗体の測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度、及び/または用量の総数が増加され、測定されたレベルが、免疫毒性を指し示す場合、1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンが増加され、必要に応じて、測定されたレベルが、抗体価であり、必要に応じて、抗体が、中和抗体である。
【0058】
種々の実施形態では、免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンは、(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤であって、必要に応じてアナキンラであるIL-1シグナル阻害剤、(ii)IL-6シグナル阻害剤であって、必要に応じてトシリズマブであるIL-6シグナル阻害剤、(iii)コルチコステロイドであって、必要に応じてデキサメタゾンであるコルチコステロイド、及び(iv)カルシニューリン阻害剤であって、必要に応じてタクロリムスであるカルシニューリン阻害剤のうちの1つまたは複数の投薬レジメンを含む。
【0059】
定義
約:本明細書で使用される「約」という用語は、値に関して使用される場合、言及される値に照らして同様である値を指す。一般に、当業者なら、文脈を加味して、その文脈中の「約」によって包含される適切な変動度を理解するであろう。例えば、いくつかの実施形態では、「約」という用語は、言及される値の25%以内、20%以内、19%以内、18%以内、17%以内、16%以内、15%以内、14%以内、13%以内、12%以内、11%以内、10%以内、9%以内、8%以内、7%以内、6%以内、5%以内、4%以内、3%以内、2%以内、1%以内、またはそれ未満に収まる値の変動範囲を包含し得る。
【0060】
投与:本明細書で使用される「投与」という用語は、典型的には、組成物である薬剤または組成物に含められる薬剤の送達を達成するために組成物を対象または系に投与することを指す。
【0061】
親和性:本明細書で使用される「親和性」は、特定の結合薬剤(例えば、ウイルスベクター)及び/またはその結合部分と結合標的(例えば、細胞)との間で生じる非共有結合性相互作用の総和の強度を指す。別段の指定がない限り、本明細書で使用される「結合親和性」は、結合薬剤とその結合標的との間の1:1の相互作用(例えば、ウイルスベクターとウイルスベクターの標的細胞との間の1:1の相互作用)を指す。親和性の変化は、参照との比較(例えば、参照に対する増加もしくは減少)によって説明され得るか、または数値的に説明され得ることを当業者なら理解するであろう。親和性は、平衡解離定数(K)及び/または平衡結合定数(K)を含めて、当該技術分野で知られる多くの方法で測定及び/または表現され得る。Kは、koff/konの商であり、Kは、kon/koffの商であり、ここで、konは、結合速度定数(例えば、ウイルスベクターと標的細胞との結合速度定数)を指し、koffは、解離速度定数(例えば、標的細胞からのウイルスベクターの解離速度定数)を指す。kon及びkoffは、当業者に知られる手法によって決定され得る。
【0062】
薬剤:本明細書で使用される「薬剤」という用語は、任意の化学物質を指し得、こうした化学物質には、限定されないが、原子、分子、化合物、アミノ酸、ポリペプチド、ヌクレオチド、核酸、タンパク質、タンパク質複合体、液体、溶液、糖、多糖、脂質、またはそれらの組み合わせもしくは複合体、のうちの1つ以上のいずれも含まれる。
【0063】
抗体:本明細書で使用される「抗体」という用語は、特定の標的抗原への特異的結合を付与するのに十分な標準免疫グロブリン配列エレメントを含むポリペプチドを指す。当該技術分野で公知の通り、天然において産生されるインタクトな抗体は、互いと結び付いて、「Y字形」構造と一般的に称されるものになる、2つの同一重鎖ポリペプチド(それぞれ約50kD)及び2つの同一軽鎖ポリペプチド(それぞれ約25kD)で構成されている150kD四量体薬剤である。各重鎖は、少なくとも4つのドメイン(それぞれ約110アミノ酸長) - アミノ末端可変(VH)ドメイン(Y構造の先端に位置する)と、それに続く3つの定常ドメイン:CH1、CH2、及びカルボキシ末端CH3(Yの幹部分の基部に位置する)で構成されている。「スイッチ」として公知の短い領域は、重鎖可変及び定常領域を接続する。「ヒンジ」は、CH2、及びCH3ドメインを抗体の残部に接続する。このヒンジ領域における2つのジスルフィド結合は、インタクトな抗体において2つの重鎖ポリペプチドを互いに接続する。各軽鎖は、別の「スイッチ」によって互いに分離された、2つのドメイン - アミノ末端可変(VL)ドメインと、それに続くカルボキシ末端定常(CL)ドメインで構成されている。インタクトな抗体四量体は、2つの重鎖-軽鎖二量体で構成されており、この構成において、重鎖及び軽鎖が、単一のジスルフィド結合によって互いに連結され、2つの他のジスルフィド結合が、重鎖ヒンジ領域を互いに接続することにより、二量体は互いに接続され、四量体が形成される。天然に産生された抗体はまた、典型的にはCH2ドメインにおいて、グリコシル化されている。天然抗体における各ドメインは、圧縮逆平行ベータバレルで互いに充填された2つのベータシート(例えば、3鎖シート、4鎖シート、または5鎖シート)から形成される「免疫グロブリンフォールド」によって特徴付けられる構造を有する。各可変ドメインは、「相補性決定領域」として公知の3つの高頻度可変ループ(CDR1、CDR2、及びCDR3)及び4つの若干不変の「フレームワーク」領域(FR1、FR2、FR3、及びFR4)を含有する。天然抗体がフォールドすると、FR領域が、ドメインに構造的フレームワークを提供するベータシートを形成し、重鎖及び軽鎖の両方に由来するCDRループ領域が、三次元空間で一緒になることにより、Y構造の先端に位置する単一の高頻度可変抗原結合部位を創出する。天然に存在する抗体のFc領域は、補体系のエレメントに、また、例えば、細胞傷害性を媒介するエフェクター細胞を含むエフェクター細胞上の受容体にも結合する。当該技術分野で公知の通り、Fc受容体に対するFc領域の親和性及び/または他の結合特質は、グリコシル化または他の修飾を介して調節することができる。いくつかの実施形態では、本発明に従って産生された及び/または利用される抗体は、そのようなグリコシル化が修飾または操作されたFcドメインを含むグリコシル化Fcドメインを含む。本発明の目的のため、ある特定の実施形態では、天然抗体において見出される十分な免疫グロブリンドメイン配列を含む、いかなるポリペプチドまたはポリペプチドの複合体も、そのようなポリペプチドが天然に産生された(例えば、抗原に対して反応する生物によって生成された)か、あるいは組換え操作、化学合成または他の人工の系もしくは方法論によって産生されたかにかかわらず、「抗体」と称することができる及び/または「抗体」として使用することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナルである;いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナルである。いくつかの実施形態では、抗体は、マウス、ウサギ、霊長類、またはヒト抗体に特徴的な定常領域配列を有する。いくつかの実施形態では、抗体配列エレメントは、当該技術分野で公知の通り、ヒト化、霊長類化(primatized)、キメラなどである。さらに、用語「抗体」は、本明細書で使用される場合、適切な実施形態では(他に記述がなければまたは文脈から明らかでなければ)、代替的な提示で抗体の構造的及び機能的特色を利用するための、当該技術分野で公知のまたは開発された構築物またはフォーマットのいずれかを指すことができる。例えば、いくつかの実施形態では、本発明に従って利用される抗体は、インタクトなIgA、IgG、IgE、またはIgM抗体;二特異性または多特異性抗体(例えば、Zybodies(登録商標)など);Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、Fd’断片、Fd断片、及び単離されたCDRまたはそのセットなどの抗体断片;単鎖Fv;ポリペプチド-Fc融合体;単一ドメイン抗体(例えば、IgNARまたはその断片などのサメ単一ドメイン抗体);ラクダ(cameloid)抗体;マスク抗体(例えば、Probodies(登録商標));小モジュラー免疫薬(Small Modular ImmunoPharmaceutical)(「SMIPs(商標)」);単鎖またはタンデムダイアボディ(diabody)(TandAb(登録商標));VHH;Anticalins(登録商標);Nanobodies(登録商標)ミニボディ(minibody);BiTE(登録商標);アンキリンリピートタンパク質またはDARPINs(登録商標);Avimers(登録商標);DARTs;TCR様抗体;Adnectins(登録商標);Affilins(登録商標);Trans-bodies(登録商標);Affibodies(登録商標);TrimerX(登録商標);MicroProteins;Fynomers(登録商標);Centyrins(登録商標);ならびにKALBITOR(登録商標)から選択されるフォーマットである。いくつかの実施形態では、抗体は、天然に産生された場合であればあるはずの、共有結合による修飾(例えば、グリカンの結合)を欠如する場合がある。いくつかの実施形態では、抗体は、共有結合による修飾(例えば、グリカン、治療剤、融合ポリペプチド、またはポリエチレングリコールなどの他のペンダント基の結合)を含有することができる。
【0064】
抗体断片:本明細書で使用される「抗体断片」は、本明細書に記載されている抗体または抗体薬剤の部分を指し、典型的には、抗原結合性部分またはその可変領域を含む部分を指す。抗体断片は、いずれかの手段によって産生することができる。例えば、いくつかの実施形態では、抗体断片は、インタクトな抗体または抗体薬剤の断片化によって酵素によりまたは化学的に産生することができる。あるいは、いくつかの実施形態では、抗体断片は、組換えにより産生することができる(すなわち、操作された核酸配列の発現によって)。いくつかの実施形態では、抗体断片は、全体的にまたは部分的に合成により産生することができる。いくつかの実施形態では、抗体断片(特に、抗原結合性抗体断片)は、少なくとも約50、少なくとも約60、少なくとも約70、少なくとも約80、少なくとも約90、少なくとも約100、少なくとも約110、少なくとも約120、少なくとも約130、少なくとも約140、少なくとも約150、少なくとも約160、少なくとも約170、少なくとも約180、少なくとも約190アミノ酸の長さ、またはそれよりも多いアミノ酸の長さ、いくつかの実施形態では、少なくとも約200アミノ酸の長さを有することができる。
【0065】
~と関連した/結び付いた(Associated with):2つの事象または実体が、互いと「関連」しているとは、当該用語が本明細書で使用される場合、一方の存在、レベル及び/または形態が、他方のそれと相関する場合である。例えば、特定の実体(例えば、ポリペプチド、遺伝的シグネチャー、代謝物、微生物など)は、その存在、レベル及び/または形態が、疾患、障害または状態の発生率及び/またはそれに対する感受性と相関する場合(例えば、関連性がある集団にわたり)、特定の疾患、障害または状態と関連すると考えられる。いくつかの実施形態では、2つまたはそれよりも多い実体は、互いと物理的に近接した状態になる及び/またはその状態を維持するように直接的にまたは間接的に相互作用する場合、互いと物理的に「結び付いている」。いくつかの実施形態では、互いと物理的に結び付いた2つまたはそれよりも多い実体は、互いに共有結合により連結している;いくつかの実施形態では、互いと物理的に結び付いた2つまたはそれよりも多い実体は、互いに共有結合により連結していないが、例えば、水素結合、ファンデルワールス相互作用、疎水性相互作用、磁性及びこれらの組合せを用いて、非共有結合により結び付いている。
【0066】
間またはから:本明細書で使用される「間」という用語は、文脈内容が、示される上限と下限との間に入るものであるか、または第1の境界と第2の境界との間(境界を含む)に入るものであることを指す。同様に、「から」という用語は、値の範囲の文脈で使用される場合、そうした範囲が含む文脈内容が、示される上限と下限との間に入るものであるか、または第1の境界と第2の境界との間(境界を含む)に入るものであることを示す。
【0067】
結合:本明細書で使用される「結合」という用語は、2つ以上の薬剤の間での非共有結合性の結び付きを指す。「直接的な」結合は、薬剤間の物理的接触を伴い、間接的な結合は、1つ以上の中間薬剤との物理的接触によって生じる物理的相互作用を伴う。2つ以上の薬剤の間での結合は、さまざまな状況のいずれかにおいて生じ、及び/または評価され得るものであり、こうした状況には、相互作用薬剤が単離状態で試験される場合、あるいは相互作用薬剤が、より複雑な系の状況(例えば、担体薬剤と共有結合もしくはその他の結合で結び付いており、及び/または生物学的系中もしくは細胞中に存在する状況)で試験される場合が含まれる。
【0068】
バイオマーカー:本明細書で使用される「バイオマーカー」という用語は、当該技術分野におけるその使用と一貫して、その存在、レベルまたは形態が、目的の特定の生物学的事象または状態と相関することにより、当該事象または状態の「マーカー」であると考えられる、実体、状態または活性を指す。バイオマーカーのほんの数例を挙げると、いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、特定の疾患、障害もしくは状態のマーカーであるか、もしくはこれを含み得る、または特定の疾患、障害もしくは状態が、例えば、対象において発症、発生もしくは再発し得る定性的もしくは定量的確率のマーカーであり得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、特定の治療成績、またはその定性的もしくは定量的確率のマーカーであるか、またはこれを含み得る。したがって、さまざまな実施形態において、バイオマーカーは、目的の関連性がある生物学的事象または状態を予測、予後及び/または診断することができる。バイオマーカーは、いずれかの化学的クラスの実体であり得る。例えば、いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、核酸、ポリペプチド、脂質、炭水化物、小分子、無機薬剤(例えば、金属またはイオン)またはこれらの組合せであるか、またはこれを含み得る。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、細胞表面マーカーである。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、細胞内にある。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、細胞の外側に見出される(例えば、細胞の外側に、例えば、血液、尿、涙、唾液、脳脊髄液、及び同様のものなどの体液中に分泌されるまたは他の仕方で生成されるもしくは存在する)。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、遺伝子によってコードされる産物の発現または生物学的経路を介したシグナル伝達などの活性である。当業者であれば、バイオマーカーが個々に、目的の特定の生物学的事象もしくは状態に決定的であり得ること、または目的の特定の生物学的事象もしくは状態の統計的確率の決定を表すもしくはこれに寄与し得ることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、バイオマーカーは、目的の生物学的事象または状態の特定の状況の高い確率を反映するという点において、高度に特異的である。場合によっては、特異度増加が、感度を犠牲にして得られ得るように、または感度増加が、特異度を犠牲にして得られ得るように、特異度と感度との間には反比例関係がある。当業者であれば、有用なバイオマーカーが、100%特異度及び/または100%精度を有する必要はなく、これらの均衡または他の考慮を反映することができることを理解するであろう。当業者であれば、マーカーが、目的の特定の生物学的事象または状態に関係して、その特異度及び/または感度において異なっていてよいことを理解するであろう。場合によっては、バイオマーカーは、「マーカー」と称することができる。
【0069】
同等の:本明細書で使用される「同等の」という用語は、当業者が、観察された差または類似性に基づき結論を合理的に引き出すことができることを理解するような、互いに同一でなくてよいが、その間の比較を可能にするほど十分に類似している、2つまたはそれより多くの状態、環境、薬剤、実体、集団などのセット内のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、状態、環境、薬剤、実体、集団などの同等のセットは典型的に、複数の実質的に同一の特色、及びゼロ、1、または複数の異なる特色によって特徴付けられる。当業者は、文脈において、セットのメンバーが同等であるために、いかなる程度の同一性が要求されるか理解するであろう。例えば、当業者であれば、観察された差が、全体的にまたは部分的に、その非同一の特色に起因し得るという合理的な結論を保証するために、十分な数及び種類の実質的に同一の特色によって特徴付けられた場合に、状態、環境、薬剤、実体、集団などのセットのメンバーが、互いに同等であることを理解するであろう。
【0070】
発現または活性の制御:本明細書で使用されるように、少なくとも1組の条件の下で第1のエレメント(例えば、タンパク質(転写因子など)または核酸配列(プロモーターなど))の状況(例えば、存在、不在、立体構造、化学的修飾、相互作用、または他の活性)に第2のエレメント(例えば、タンパク質、または薬剤(タンパク質など)をコードする核酸)の発現または活性が完全または部分的に依存するのであれば、第1のエレメントは、第2のエレメントの発現または活性を「制御」または「促進」する。発現または活性の制御は、例えば、少なくとも1組の条件の下で、第1のエレメントの状況が変化する結果、参照対照と比較して第2のエレメントの発現または活性が少なくとも10%(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、100%、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍、少なくとも100倍)変化し得るという点において、発現または活性の実質的な制御であり得る。
【0071】
に対応する:本明細書で使用される「に対応する」という用語は、適切な参照化合物または参照組成物との比較を通じて化合物中または組成物中の構造エレメントの位置/同一性を指定するために使用され得る。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー中の単量体残基(例えば、ポリペプチド中のアミノ酸残基またはポリヌクレオチド中の核酸残基)は、適切な参照ポリマー中の残基「に対応する」と特定され得る。例えば、提供されるポリペプチド配列またはポリヌクレオチド配列の中の残基は、関連参照配列のスキームに従って指定(例えば、番号付けまたは標識化)されることが多い(仮に、例えば、そのような指定が、提供される配列の文献上の番号付けを反映しないものだとしてもそうされることが多い)ことを当業者なら理解するであろう。例として、参照配列が位置100~110に特定のアミノ酸モチーフを含み、第2の関連配列が位置110~120に同じモチーフを含む場合、第2の関連配列のモチーフ位置は、参照配列の位置100~110「に対応する」と言われ得る。対応位置は容易に特定することができ(例えば、配列のアライメントをとることによって特定される)、そのようなアライメントは、さまざまな既知のツール、方針、及び/またはアルゴリズムのいずれかによって一般に達成されることを当業者なら理解するであろう。こうしたツール、方針、及び/またはアルゴリズムには、限定されないが、ソフトウェアプログラム(例えば、BLAST、CS-BLAST、CUDASW++、DIAMOND、FASTA、GGSEARCH/GLSEARCH、Genoogle、HMMER、HHpred/HHsearch、IDF、Infernal、KLAST、USEARCH、parasail、PSI-BLAST、PSI-Search、ScalaBLAST、Sequilab、SAM、SSEARCH、SWAPHI、SWAPHI-LS、SWIMM、またはSWIPEなど)が含まれる。
【0072】
剤形または単位剤形:当業者であれば、「剤形」という用語を使用して、対象への投与のための活性薬剤(例えば、治療または診断剤)の物理的に別々の単位を指すことができることを理解するであろう。典型的には、そのような単位はそれぞれ、所定量の活性薬剤を含有する。いくつかの実施形態では、そのような量は、関連性がある集団に投与されたときに所望のまたは有益な成績と相関すると決定されている投薬レジメンに従った(すなわち、治療的投薬レジメンによる)投与に適切な単位投薬量(またはその全部分)である。当業者であれば、特定の対象に投与される治療組成物または薬剤の総量または自由な(free)量が、1人または複数の担当医によって決定され、複数剤形の投与が関与し得ることを理解する。
【0073】
投薬レジメン:本明細書で使用される「投薬レジメン」という用語は、1つ以上の同じまたは異なる単位用量のセットを対象に投与することを指し得、こうした投与は、典型的には、各投与がその他の投与と期間によって分離された複数の単位用量の投与を含む。さまざまな実施形態において、投薬レジメンの単位用量の1つ以上またはすべてが同じであり得るか、あるいは異なり得る(例えば、経時的に増やされるか、経時的に減らされるか、あるいは対象及び/または医師の決定に従って調整され得る)。さまざまな実施形態において、各用量の間の期間の1つ以上またはすべてが同じであり得るか、あるいは異なり得る(例えば、経時的に長期化されるか、経時的に短期化されるか、あるいは対象及び/または医師の決定に従って調整され得る)。いくつかの実施形態では、所与の治療剤は推奨投薬レジメンを有し、こうした推奨投薬レジメンは、1つ以上の用量を含み得る。典型的には、市販薬物には当業者に知られる推奨投薬レジメンが少なくとも1つは存在する。いくつかの実施形態では、投薬レジメンは、関連集団にわたって投与された場合、所望の転帰または有益な転帰と相関する(すなわち、治療的投薬レジメンである)。
【0074】
下流及び上流:本明細書で使用される「下流」という用語は、第1のDNA領域及び第2のDNA領域を含む核酸の3’末端に、第2のDNA領域と比較して第1のDNA領域の方が近いことを意味する。本明細書で使用される「上流」という用語は、第1のDNA領域及び第2のDNA領域を含む核酸の5’末端に、第2のDNA領域と比較して第1のDNA領域の方が近いことを意味する。
【0075】
操作された:本明細書で使用される「操作された」という用語は、人工的に処理されているという側面を指す。例えば、2つ以上の配列が、天然ではその順序で一緒に連結されないものであり、人工的に処理されることで、操作されるポリヌクレオチドにおいて互いに連結される場合、そのポリヌクレオチドは、「操作された」と見なされる。「操作された」核酸配列または「操作された」アミノ酸配列は、組換え核酸配列または組換えアミノ酸配列であり得ることを当業者なら理解するであろう。いくつかの実施形態では、第1の配列とは作動可能に連結された状態で天然に見られるが、第2の配列とは作動可能に連結された状態で天然に見られないコード配列及び/または制御配列を、操作されたポリヌクレオチドは含み、このコード配列及び/または制御配列は、この操作されたポリヌクレオチド中にありかつ人工的に第2の配列と作動可能に連結された状態で存在する。いくつかの実施形態では、細胞または生物は、その遺伝情報が変化するように処理されている場合(例えば、それまでは存在しなかった新たな遺伝物質が導入されている場合(この導入は、例えば、形質転換、交配、体細胞交雑、トランスフェクション、形質導入、もしくは他の機構によって行われる)、または既に存在した遺伝物質が改変もしくは除去されている場合(この改変もしくは除去は、例えば、置換、欠失、もしくは交配によって行われる))、「操作された」と見なされる。一般的に行われることであり、当業者なら理解していることであるが、操作されたポリヌクレオチドまたは細胞の子孫またはコピー(完全なものまたは不完全なもの)は、直接的な処理が前の実体に対して行われたものであったとしても、典型的には、依然として「操作された」と称される。
【0076】
添加物:本明細書で使用される「添加物」は、医薬組成物に含められ得る非治療剤を指し、こうした非治療剤を医薬組成物に含めることで、例えば、所望の一貫性または安定化効果が得られるか、またはその一助となる。いくつかの実施形態では、適切な医薬品添加物には、例えば、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、脂肪粉乳、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、または同様のものが含まれ得る。
【0077】
発現:本明細書で使用される「発現」は、コードされる薬剤(ポリペプチドなど)がその核酸配列から生じる1つ以上の生物学的プロセスを個々及び/または累積的に指す。発現は、具合的には、転写及び翻訳の一方または両方を含む。
【0078】
遺伝子または導入遺伝子:本明細書で使用される「遺伝子」という用語は、コード配列(すなわち、発現産物(RNA産物及び/またはポリペプチド産物など)をコードするDNA配列)であるDNA配列を指すか、またはコード配列を含むDNA配列を指し、こうしたコード配列は、任意選択で、こうしたコード配列の発現を制御する制御配列のいくつかまたはすべてと一緒になったものである。いくつかの実施形態では、遺伝子は、非コード配列(限定されないが、イントロンなど)を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子は、コード配列(例えば、エクソン配列)及び非コード配列(例えば、イントロン配列)の両方を含み得る。いくつかの実施形態では、遺伝子は、プロモーターである制御配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子は、(i)参照環境(起源ゲノムなど)中でコード配列の所定ヌクレオチド数分上流に伸びているDNAヌクレオチド、及び(ii)参照環境(起源ゲノムなど)中でコード配列の所定ヌクレオチド数分下流に伸びているDNAヌクレオチド、の一方または両方を含む。さまざまな実施形態において、所定ヌクレオチド数は、500bp、1kb、2kb、3kb、4kb、5kb、10kb、20kb、30kb、40kb、50kb、75kb、または100kbであり得る。本明細書で使用される「導入遺伝子」は、参照環境中に存在するか、または操作によって参照環境に配置されるが、参照環境に内在するものではないか、または参照環境に元から存在するものではない遺伝子を指す。
【0079】
遺伝子産物または発現産物:本明細書で使用される「遺伝子産物」または「発現産物」という用語は、一般に、遺伝子から転写されるRNA(プロセシング前及び/またはプロセシング後)を指すか、あるいは遺伝子から転写されるRNAによってコードされるポリペプチド(修飾前及び/または修飾後)を指す。
【0080】
宿主細胞/標的細胞:本明細書で使用される「宿主細胞」は、外来性核酸(組換えまたはその他のもの)(導入遺伝子など)が導入されている細胞を指す。「宿主細胞」は、外来性核酸が最初に導入された細胞及び/またはその完全もしくは不完全な子孫もしくはコピーであり得ることを当業者なら理解するであろう。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、1つ以上のウイルス遺伝子または導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、所期の宿主細胞または潜在的な宿主細胞は、「標的細胞」と称され得る。
【0081】
同一性:本明細書で使用される「同一性」という用語は、ポリマー分子間(例えば、核酸分子間(例えば、DNA分子間及び/またはRNA分子間)及び/またはポリペプチド分子間)の全体的な関連性を指す。当該技術分野では、提供される2つの配列の間での同一性パーセントを計算するための方法が知られている。2つの核酸配列またはポリペプチド配列の同一性パーセントの計算は、例えば、最適な比較を目的として2つの配列(または一方もしくは両方の配列の相補配列)のアライメントをとることによって実施され得る(例えば、アライメントが最適化するように第1の配列及び第2の配列の一方または両方にギャップが導入される可能性があり、非同一配列は比較目的では無視され得る)。その後、対応位置でヌクレオチドまたはアミノ酸の比較が行われる。第1の配列中のある位置が第2の配列中の対応位置のものと同じ残基(例えば、ヌクレオチドまたはアミノ酸)によって占有されている場合、これらの分子は当該位置で同一である。2つの配列の間の同一性パーセントは、それらの配列によって共有される同一位置の数の関数であり、任意選択で、ギャップの数及び各ギャップの長さを考慮して、こうしたギャップは、2つの配列の間のアライメントが最適化するように導入される必要があり得る。2つの配列の間の配列比較及び同一性パーセントの決定は、計算アルゴリズム(BLAST(基本的局所アライメント検索ツール)など)を使用して達成され得る。
【0082】
改善する、増加させる、阻害する、および低減する:本明細書で使用される「改善する」、「増加させる」、「阻害する」、及び「低減する」という用語、ならびにその文法的同等形態は、参照との定性的または定量的な差異を生じさせることを示す。
【0083】
阻害性薬剤:本明細書で使用される「阻害性薬剤」という用語は、その存在、レベルまたは程度が、標的の減少したレベル、発現または活性と相関する、実体、状態または事象を指す。いくつかの実施形態では、阻害性薬剤は、直接的に(この場合、これは、例えば、標的に結合することにより、その標的において直接的にその影響を発揮する)作用することができる;いくつかの実施形態では、阻害性薬剤は、間接的に(この場合、これは、標的のレベル及び/または活性が低減されるように、標的の制御因子と相互作用することにより、及び/またはそれを他の仕方で変更することにより、その影響を発揮する)作用することができる。いくつかの実施形態では、阻害性薬剤は、その存在またはレベルが、特定の参照レベルまたは活性(例えば、公知阻害性薬剤の存在または問題になっている阻害性薬剤の非存在など、適切な参照条件下で観察されるもの)と比べて低減された標的レベルまたは活性と相関する薬剤である。
【0084】
単離された:本明細書で使用される「単離された」は、物質及び/または実体が、(a)それが最初に生じたとき(天然及び/または実験的状況でのことであるかは無関係である)にはそれに付随していた成分の少なくともいくつかから分離されており、及び/または(b)人工的に設計、生成、調製、及び/または製造されたものであることを指す。単離された物質及び/または実体は、それに最初に付随したその他の成分の約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超が分離されたものであり得る。いくつかの実施形態では、単離された薬物の純度は約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、約99%、または約99%超である。本明細書で使用されるように、物質は、それが他の成分を実質的に含まないのであれば、「純粋」である。いくつかの実施形態では、当業者なら理解するであろうが、物質は、ある特定の他の成分(例えば、1つ以上の担体または添加物(例えば、緩衝剤、溶媒、水など)など)と組み合わさった後でも依然として「単離された」と見なされるか、または「純粋」であるとさえ見なされ得る。そのような実施形態では、物質の単離パーセントまたは純度は、そのような担体または添加物を含めずに計算される。一例を挙げるにすぎないが、いくつかの実施形態では、天然に生じる生物学的ポリマー(ポリペプチドまたはポリヌクレオチドなど)は、(i)その起源または由来元の理由で、天然におけるその天然状態ではそれに付随する成分のいくつかまたはすべてがそれに伴わない場合、(ii)天然においてそれを産生する種と同じ種の他のポリペプチドまたは核酸をそれが実質的に含まない場合、(iii)天然においてそれを産生する種のものではない細胞もしくは他の発現系によってそれが発現するか、または当該細胞もしくは他の発現系に由来する成分がその他の様式でそれに付随する場合、「単離された」と見なされる。したがって、例えば、いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、化学的に合成されたものであるか、またはそれを天然に産生するものとは異なる細胞系において合成されたものである場合、「単離された」ポリペプチドであると見なされる。代替的または付加的に、いくつかの実施形態では、1つ以上の精製手法に供されているポリペプチドは、(i)天然ではそれに付随し、及び/または(ii)それが最初に産生されたときにそれに付随した他の成分からそれが分離されている限りにおいては、「単離された」ポリペプチドであると見なされ得る。
【0085】
作動可能に連結された:本明細書で使用される「作動可能に連結された(operably linked)」は、少なくとも第1のエレメントと第2のエレメントとが結び付いており、その結果、これらの構成エレメントが、それらの所期の様式でそれらが機能することが可能になる関係性にあることを指す。例えば、核酸制御配列によって核酸コード配列の発現制御が可能になる様式で当該制御配列と当該コード配列とが結び付いている場合、当該制御配列は、当該コード配列と「作動可能に連結されている」。いくつかの実施形態では、「作動可能に連結された」制御配列は、(例えば、単一の核酸において)コード配列と直接的または間接的に共有結合で結び付いている。いくつかの実施形態では、制御配列は、トランスでコード配列の発現を制御し、コード配列の核酸と同じ核酸の中に制御配列が含まれることが機能可能な連結の要件ではない。
【0086】
医薬的に許容可能な:本明細書で使用される「医薬的に許容可能な」という用語は、本明細書に開示の組成物の製剤の構成成分(複数可)の1つ以上またはすべてに適用される場合、各構成成分が組成物のその他の成分と適合し、そのレシピエントに無害でなくてはならないことを意味する。
【0087】
医薬的に許容可能な担体:本明細書で使用される「医薬的に許容可能な担体」という用語は、薬剤(例えば、医薬物質)の製剤化を促進するか、薬剤のバイオアベイラビリティを改変するか、または対象の1つの臓器もしくは一部分から別の臓器もしくは一部分への薬剤の輸送を促進する医薬的に許容可能な物質、組成物、または媒体(液体または固体の増量剤、希釈剤、添加物、または溶媒封入物質など)を指す。医薬的に許容可能な担体として働き得る物質のいくつかの例としては、糖(ラクトース、グルコース、及びスクロースなど)、デンプン(コーンスターチ及びジャガイモデンプンなど)、セルロース及びその誘導体(カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなど)、粉末トラガカント、麦芽、ゼラチン、タルク、添加物(ココアバター及び坐剤ワックスなど)、油(ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油など)、グリコール(プロピレングリコールなど)、ポリオール(グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなど)、エステル(オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなど)、寒天、緩衝剤(水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなど)、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張生理食塩水、リンゲル液、エチルアルコール、pH緩衝液、ポリエステル、ポリカーボネート、及び/またはポリ酸無水物、ならびに医薬製剤において用いられる他の無毒な適合物質が挙げられる。
【0088】
医薬組成物:本明細書で使用される「医薬組成物」という用語は、活性薬剤が1つ以上の医薬的に許容可能な担体と一緒に製剤化された組成物を指す。
【0089】
ポリペプチド:本明細書で使用される「ポリペプチド」は、いずれかのアミノ酸ポリマー鎖を指す。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然に生じるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然に生じないアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、人工的な作用を介して設計及び/または産生されたという点において操作されたアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、またはその両方を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、天然アミノ酸のみ、または非天然アミノ酸のみを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、D-アミノ酸、L-アミノ酸、またはその両方を含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、L-アミノ酸のみを含むことができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、1つまたは複数のペンダント基または他の修飾、例えば、1つまたは複数のアミノ酸側鎖を、例えば、ポリペプチドのN末端、ポリペプチドのC末端、非末端アミノ酸またはそれらのいずれかの組合せに含むことができる。いくつかの実施形態では、そのようなペンダント基または修飾は、アセチル化、アミド化、脂質化、メチル化、リン酸化、グリコシル化、糖化、硫酸化、マンノシル化、ニトロシル化、アシル化、パルミトイル化、プレニル化、ペグ化などを、これらの組合せを含めて含む群から選択することができる。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、環状であってもよく、及び/または環状部分を含んでいてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、用語「ポリペプチド」は、参照ポリペプチド、活性または構造の名称に付け加えて、関連性がある活性または構造を共有するポリペプチドのクラスを指し示すことができる。そのようなクラスについて、本明細書は、そのアミノ酸配列及び/または機能が公知であるクラス内の例示的なポリペプチドを提供し、及び/または当業者であれば、それに気づくであろう。いくつかの実施形態では、ポリペプチドクラスまたはファミリーのメンバーは、当該クラスの参照ポリペプチドと有意な配列相同性もしくは同一性を示し、それと共通配列モチーフ(例えば、特徴的な配列エレメント)を共有し、及び/またはそれと共通活性(いくつかの実施形態では、同等のレベルでまたは指定の範囲内で)を共有する。例えば、いくつかの実施形態では、メンバーポリペプチドは、少なくとも約30~40%であり、多くの場合、約50%超、60%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれを超える%、参照ポリペプチドとの配列相同性もしくは同一性の全体的な程度を示し、及び/または多くの場合、90%超のまたはさらには95%、96%、97%、98%、もしくは99%の、非常に高い配列同一性を示す少なくとも1つの領域(例えば、いくつかの実施形態では、特徴的な配列エレメントであるか、またはこれを含み得る、保存領域)を含む。そのような保存領域は通常、少なくとも3~4個の、いくつかの実例では、最大20個、またはそれよりも多い数のアミノ酸を包含する;いくつかの実施形態では、保存領域は、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、少なくとも11個、少なくとも12個、少なくとも13個、少なくとも14個、少なくとも15個、またはそれよりも多い数の連続したアミノ酸の少なくとも1つのストレッチを包含する。いくつかの実施形態では、関連性があるポリペプチドは、親ポリペプチドの断片を含むことができる。いくつかの実施形態では、有用なポリペプチドは、複数の断片を含むことができ、これら断片のそれぞれは、目的のポリペプチドがその親ポリペプチドの派生物となるように、同じ親ポリペプチドにおいて、互いと比べて、目的のポリペプチドにおいて見出される配置とは異なる空間的配置で見出される(例えば、親において直接的に連結された断片は、目的のポリペプチドにおいて空間的に分離され得る、もしくはその逆もまた同じであり、及び/または断片は、目的のポリペプチドにおいて、親とは異なる順序で存在し得る)。
【0091】
予防するまたは予防:「予防する」及び「予防」という用語は、疾患、障害または状態の発生に関連して本明細書で使用される場合、疾患、障害もしくは状態を発症するリスクの低減;疾患、障害もしくは状態の開始の遅延;疾患、障害もしくは状態の1つまたは複数の特徴もしくは症状の開始の遅延;ならびに/または疾患、障害もしくは状態の1つまたは複数の特徴もしくは症状の頻度及び/もしくは重症度の低減を指す。予防は、特定の対象における予防、または対象の集団における統計的影響を指すことができる。疾患、障害または状態の開始が、予め定義された期間または当業者によって理解される期間にわたり遅延された場合、予防が発生したと考えることができる。
【0092】
プロモーター:本明細書で使用される「プロモーター」または「プロモーター配列」は、コード配列の転写の開始及び/または処理能力に直接的または間接的に(例えば、プロモーターに結合するタンパク質または物質を介して)関与するDNA制御領域であり得る。プロモーターは、1つ以上の転写因子及び/または制御部分が当該プロモーターと結合するとコード配列の転写を適切な条件の下で開始し得る。コード配列の転写の開始に関与するプロモーターは、コード配列と「作動可能に連結された」ものであり得る。ある特定の場合、プロモーターは、DNA制御領域(このDNA制御領域は、(その3’末端に位置する)転写開始部位から上流(5’方向)位置へと伸びており、その結果、そのように呼ばれる配列は、転写事象の開始に必要な最小数の塩基もしくはエレメントの一方もしくは両方を含む)であるか、または当該DNA制御領域を含み得る。プロモーターは、発現制御配列(エンハンサー配列及びリプレッサー配列など)であるか、発現制御配列(エンハンサー配列及びリプレッサー配列など)を含むか、または発現制御配列(エンハンサー配列及びリプレッサー配列など)と機能可能なように結び付けられるか、もしくは作動可能に連結され得る。
【0093】
参照:本明細書で使用される「参照」は、比較の実施対象である基準または対照を指す。例えば、いくつかの実施形態では、薬剤、試料、配列、対象、動物、もしくは個体、またはその集団、あるいはその尺度または特徴的代表は、参照である薬剤、試料、配列、対象、動物、もしくは個体、またはその集団、あるいはその尺度または特徴的代表と比較される。いくつかの実施形態では、参照は、測定値である。いくつかの実施形態では、参照は、確立基準または予測値である。いくつかの実施形態では、参照は、歴史的参照である。参照は、定量的または定性的であり得る。典型的には、当業者なら理解するであろうが、参照及びその比較対象値は、同等の条件の下での尺度となる。信頼性及び/または比較の正当化に十分な類似性が存在する場合を当業者なら理解するであろう。いくつかの実施形態では、適切な参照は、薬剤、試料、配列、対象、動物、もしくは個体、またはその集団((例えば、1つ以上の特定の変数(例えば、薬剤または条件の存在有無)を評価する目的について)当業者が同等であると認識するであろう条件の下にあるもの)、あるいはその尺度または特徴的代表であり得る。
【0094】
制御配列:核酸コード配列の発現の文脈において本明細書で使用される制御配列は、コード配列の発現を制御する核酸配列である。いくつかの実施形態では、制御配列は、遺伝子発現の1つ以上の側面(例えば、細胞型特異的発現、系譜特異的発現、誘導性発現など)を制御するか、またはそれに影響を与え得る。
【0095】
試料:本明細書で使用される「試料」という用語は典型的に、本明細書に記載されている通り、目的の生物学的供給源(例えば、組織または生物または細胞培養物)から得られるまたはこれに由来する試料を指す。いくつかの実施形態では、生物学的供給源は、動物またはヒトなどの生物であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、生物学的組織または液であるか、またはこれを含む。いくつかの実施形態では、試料は、細胞、組織または体液であるか、またはこれを含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、血液、血液細胞、無細胞DNA、浮遊性核酸、腹水、生検試料、外科的検体、細胞含有体液、痰、唾液、糞便、尿、脳脊髄液、腹膜水、胸水、リンパ液、婦人科系の液(gynecological fluid)、分泌物、排泄物、皮膚スワブ、腟スワブ、口腔スワブ、鼻スワブ、管洗浄液もしくは気管支肺胞上皮洗浄液などの洗液もしくは洗浄液、吸引液、擦過物、または骨髄であるか、またはこれを含み得る。いくつかの実施形態では、試料は、単一の対象または複数の対象から得られる細胞であるか、またはこれを含む。試料は、生物学的供給源から直接的に得られる「一次試料」であるか、または「加工された試料」(例えば、mRNA、DNAもしくはタンパク質の例えば、単離などのプロセスによって、一次試料の化学構造を修飾するプロセスによって、及び/または一次試料の1つまたは複数の構成成分もしくは特性を表す新たなもしくは異なる組成物を産生するプロセスによって、例えば、一次試料から調製された試料)であり得る。
【0096】
対象:本明細書で使用される「対象」という用語は、生物、典型的には哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、またはマウス)を指す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態を患っている。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態に易罹患性である。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の症状または特徴を1つ以上示す。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態を患っていない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態の症状または特徴をいずれも示さない。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、もしくは状態への易罹患性またはそのリスクに特徴的な特徴を1つ以上有する。いくつかの実施形態では、対象は、疾患、障害、または状態について検査されており、及び/または治療が施されている対象である。場合によっては、ヒト対象は、「患者」または「個体」と互換的に称され得る。
【0097】
治療剤:本明細書で使用される「治療剤」という用語は、対象に投与されると所望の薬理学的作用を誘発する任意の薬剤を指す。いくつかの実施形態では、薬剤は、適切な集団にわたって統計的に有意な作用を示す場合、治療剤と見なされる。いくつかの実施形態では、適切な集団は、モデル生物集団またはヒト集団であり得る。いくつかの実施形態では、適切な集団は、さまざまな基準(ある特定の年齢層、性別、遺伝的背景、持病など)によって定義され得る。いくつかの実施形態では、治療剤は、疾患、障害、または状態の治療に使用され得る物質である。いくつかの実施形態では、治療剤は、ヒトへの投与を目的として市販され得る前に政府機関によって承認されているまたは承認される必要がある薬剤である。いくつかの実施形態では、治療剤は、ヒトに投与する上で医学的な処方が必要な薬剤である。
【0098】
治療的に有効な量:本明細書で使用される「治療的に有効な量」は、その投与目的である所望の作用が得られる量を指す。いくつかの実施形態では、この用語は、疾患、障害、及び/または状態の罹患集団または易罹患性集団に対して治療的投薬レジメンに従って投与された場合に疾患、障害、及び/または状態を治療する上で十分な量を指す。いくつかの実施形態では、治療的に有効な量は、疾患、障害、及び/または状態の症状の1つ以上の発症率及び/または重症度を低減し、及び/またはその発症を遅延させる量である。「治療的に有効な量」が、あらゆる特定の処置された個体において成功裏の治療を必ずしも達成するものではないことを当業者なら理解するであろう。むしろ、治療的に有効な量は、そのような治療を必要とする患者に投与されると顕著な数の対象において特定の所望の薬理学的応答が得られる量であり得る。いくつかの実施形態では、治療的に有効な量に対する言及は、1つ以上の特定の組織(例えば、疾患、障害、もしくは状態の患部組織)または体液(例えば、血液、唾液、血清、汗、涙、尿など)において測定される量に対する言及であり得る。いくつかの実施形態では、特定の薬剤または治療の治療的に有効な量は、単回用量において製剤化及び/または投与され得ることを当業者なら理解するであろう。いくつかの実施形態では、治療的に有効な薬剤は、(例えば、投薬レジメンの一部として)複数回用量において製剤化及び/または投与され得る。
【0099】
治療:本明細書で使用される「治療/処置(treatment)」(「治療する(treat)」または「治療すること(treating)」とも称される)という用語は、特定の疾患、障害、及び/または状態の1つ以上の症状、特徴、及び/または原因の軽減、軽快、緩和、抑制、発症遅延、重症度低減、及び/または発症率低減を部分的または完全に生じさせる治療を施すこと、あるいはいずれかのそのような結果を達成することを目的として施される治療を施すこと、を指す。いくつかの実施形態では、そのような治療は、関連する疾患、障害、及び/または状態の徴候を示さない対象に対するものであり、及び/または疾患、障害、または状態の初期徴候のみを示す対象に対するものであり得る。代替的または付加的に、そのような治療は、関連する疾患、障害、及び/または状態の確立された徴候を1つ以上示す対象に対するものであり得る。いくつかの実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、及び/または状態を患っていると診断された対象に対するものであり得る。いくつかの実施形態では、治療は、関連する疾患、障害、または状態の発症リスクの上昇と統計的に相関する1つ以上の易罹患性因子を有することが判明している対象に対するものであり得る。
【0100】
単位用量:本明細書で使用される「単位用量」という用語は、医薬組成物の単回用量及び/または物理的に個別の単位として投与される量を指す。多くの実施形態では、単位用量は、所定量の活性薬剤を含む。いくつかの実施形態では、単位用量は、全単回用量の薬剤を含む。いくつかの実施形態では、総単回用量を達成するために複数の単位用量が投与される。いくつかの実施形態では、所期の効果を達成するためには、複数の単位用量の投与が必要であるか、または必要であると予想される。単位用量は、例えば、1つ以上の治療剤を所定量で含む一定体積の液体(例えば、許容可能な担体)、1つ以上の治療剤を所定量で含む固体形態、1つ以上の治療剤を所定量で含む持続放出製剤または薬物送達デバイスなどであり得る。単位用量が存在し得る製剤には、治療剤(複数可)に加えてさまざまな成分が任意に含められることが理解されよう。例えば、許容可能な担体(例えば、医薬的に許容可能な担体)、希釈剤、安定化剤、緩衝剤、保存剤などが含められ得る。多くの実施形態では、特定の治療剤の適切な日々の総用量は、一部または複数の単位用量を含み得、例えば、健全な医学的判断の範囲内で主治医によって決定され得ることを当業者なら理解するであろう。いくつかの実施形態では、任意の特定の対象または生物に対する特定の有効用量レベルは、さまざまな要因に依存し得、こうした要因には、治療される障害及び障害の重症度、用いられる特定の治療剤(複数可)の活性、用いられる特定の組成物、対象の年齢、体重、総体的な健康、性別、及び食事、用いられる特定の治療剤(複数可)の投与時間及び排泄速度、治療期間、用いられる特定の治療剤(複数可)と併用または同時使用される薬物及び/または追加の治療、ならびに医学分野でよく知られる同様の要因が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
図1図1は、ヘルパー依存型アデノウイルス(HDAd)サポートベクターの例(上)及びHDAdウイルス遺伝子治療ベクターの例(下)の模式図である。サポートベクターは、アデノウイルス逆方向末端反復配列(ITR)の間に位置する、(i)EF1αプロモーターと作動可能に連結されたFlpeリコンビナーゼ及び(ii)PGKプロモーターと作動可能に連結されたトランスポゼース(SB100x)をコードする。スタッファーは、アデノウイルスによって効率的にパッケージングされるサイズのウイルスベクターゲノムを生成するために、サポートベクターにも含まれる。ウイルス遺伝子治療ベクターは、β-グロビンプロモーターとβ-グロビン遺伝子座制御領域(LCR)の両方と作動可能に連結され、かつ3’UTR及びニワトリ高感受性部位4(cHS4;ニワトリβ様グロビン遺伝子クラスター)制御領域と機能可能なようにさらに連結された治療用タンパク質(rh γ-グロビン)をコードする核酸配列を含む治療用ペイロードを含む。ウイルス遺伝子治療ベクターは、PGKプロモーター及びポリA配列(PA)と作動可能に連結されたMGMTP140K選択可能マーカーをコードする核酸配列をさらに(必要に応じて)含む。治療用ペイロードは、転位のためのSB100x標的である逆方向反復配列(IR)と隣接し、それによって、治療用ペイロードは、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。IRは、Flpeに曝露された際に、隣接した核酸を環状化するfrt部位と順番に隣接し、治療用ペイロードの転位を促進する。ウイルス遺伝子治療ベクターは、アデノウイルスITRをさらに含む。
【0102】
図2図2は、本開示の免疫抑制レジメンと組み合わせて使用されるウイルス遺伝子治療ベクターを含むウイルス遺伝子治療方法の例の模式図である。この模式図では、日数は、ウイルスベクターが対象に投与される最終日に関して特定される。
【0103】
図3図3は、OBG/BCNUでの選択により、組み込まれた選択可能マーカーを発現する及び/または有する細胞を選択するように、MGMTP140K選択可能マーカーを含むウイルス遺伝子治療ベクターを含むウイルス遺伝子治療のための選択レジメンの例の模式図である。
【0104】
図4図4は、幹細胞動員レジメンの例の模式図である。この模式図では、日数は、ウイルスベクターが対象に投与される最終日に関して特定される。
【0105】
図5図5は、免疫抑制レジメン、選択レジメン、及び幹細胞動員レジメンと組み合わせてウイルス遺伝子治療ベクターを含むウイルス遺伝子治療方法の例の模式図である。
【0106】
図6図6は、ヘルパー依存型アデノウイルス(HDAd)サポートベクターの例(上)及びHDAdウイルス遺伝子治療ベクターの例(下)の模式図である。サポートベクターは、アデノウイルス逆方向末端反復配列(ITR)の間に位置する、(i)EF1αプロモーターと作動可能に連結されたFlpeリコンビナーゼ及び(ii)PGKプロモーターと作動可能に連結されたトランスポゼース(SB100x)をコードする。スタッファーは、アデノウイルスによって効率的にパッケージングされるサイズのウイルスベクターゲノムを生成するために、サポートベクターにも含まれる。ウイルス遺伝子治療ベクターは、β-グロビンプロモーターとβ-グロビン遺伝子座制御領域(LCR)の両方と作動可能に連結され、かつ3’UTR及びニワトリ高感受性部位4(cHS4;ニワトリβ様グロビン遺伝子クラスター)制御領域と機能可能なようにさらに連結された治療用タンパク質(rh γ-グロビン)をコードする核酸配列を含む治療用ペイロードを含む。ウイルス遺伝子治療ベクターは、EF1αプロモーターと作動可能に連結されたMGMTP140K選択可能マーカーをコードする核酸配列をさらに(必要に応じて)含む。治療用ペイロードは、転位のためのSB100x標的である逆方向反復配列(IR)と隣接し、それによって、治療用ペイロードは、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。IRは、Flpeに曝露された際に、隣接した核酸を環状化するfrt部位と順番に隣接し、治療用ペイロードの転位を促進する。ウイルス遺伝子治療ベクターは、プロモーター及び塩基編集CRISPR系をコードする核酸配列と共に別々のカセットをさらに含む。ウイルス遺伝子治療ベクターは、アデノウイルスITRをさらに含む。
【0107】
図7A-B】図7A-7D。インビボでのHSC遺伝子治療。図7Aは、インビボ形質導入により、代表的な実施形態では、HSC収集及びエクスビボ操作が回避され;骨髄破壊的前処理、移植前処理、または移植が必要とされず;低コストなベクター製造を提供することを示す。図7Bは、26週の研究を通じて示される時点で6匹の動物におけるPMBC中のGFP+細胞のパーセンテージを示すグラフであり;赤色の矢印は、OBG/BCNU投与を示す(図7Dに示されている投薬スケジュール)。図7Cは、HDAd-mgmt/GFP/HDAd-SBベクター系の例を示し;mgmtP140Kは、遺伝子改変細胞が薬物耐性を有し、選択的に増殖するための機構を与える。図7Dは、インビボでのHSC遺伝子治療と関連して使用するための代表的投薬スケジュールである。AMD3100=プレリキサホル。
図7C-D】図7A-7D。インビボでのHSC遺伝子治療。図7Aは、インビボ形質導入により、代表的な実施形態では、HSC収集及びエクスビボ操作が回避され;骨髄破壊的前処理、移植前処理、または移植が必要とされず;低コストなベクター製造を提供することを示す。図7Bは、26週の研究を通じて示される時点で6匹の動物におけるPMBC中のGFP+細胞のパーセンテージを示すグラフであり;赤色の矢印は、OBG/BCNU投与を示す(図7Dに示されている投薬スケジュール)。図7Cは、HDAd-mgmt/GFP/HDAd-SBベクター系の例を示し;mgmtP140Kは、遺伝子改変細胞が薬物耐性を有し、選択的に増殖するための機構を与える。図7Dは、インビボでのHSC遺伝子治療と関連して使用するための代表的投薬スケジュールである。AMD3100=プレリキサホル。
【0108】
図8A図8A~8D。図8Aは、ベクターの例の模式図である。(図8B)NHP#1のためのベクター設計:HDAd5/35++組合せ。CD46tg及びTownesモデル:相加的HbF発現(>20%)における検証。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、CRISPR/Cas9を使用して、hu-γ-グロビン及び MGMTP140Kをコードするトランスポゾンの組み込みのためのBCL11aE 及びHBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びSB100xを標的とする。(図8C)NHP#2のためのベクター設計:示されたドナーベクターは、(i)γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーを含むペイロードをAAVS1遺伝子座に標的として挿入するためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びBCL11aEを標的とするためのCRISPR/Cas9を含む。(図8D)NHP#3のためのベクター設計:HDAd-rh-組合せ。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、(i)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位を標的とするためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)rh-γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーをコードするペイロードを組み込むためのSB100xを含む。示されたドナーベクターは、mgmtP140k、LCR β-グロビンプロモーター促進性に外来性γ-グロビンを発現させる形質導入細胞のインビボでの選択、及びγ-グロビンプロモーターのリプレッサー結合領域をCRISPR/Cas9介在性に破壊することによる内在性γ-グロビンの再活性化を許容する。
図8B図8A~8D。図8Aは、ベクターの例の模式図である。(図8B)NHP#1のためのベクター設計:HDAd5/35++組合せ。CD46tg及びTownesモデル:相加的HbF発現(>20%)における検証。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、CRISPR/Cas9を使用して、hu-γ-グロビン及び MGMTP140Kをコードするトランスポゾンの組み込みのためのBCL11aE 及びHBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びSB100xを標的とする。(図8C)NHP#2のためのベクター設計:示されたドナーベクターは、(i)γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーを含むペイロードをAAVS1遺伝子座に標的として挿入するためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びBCL11aEを標的とするためのCRISPR/Cas9を含む。(図8D)NHP#3のためのベクター設計:HDAd-rh-組合せ。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、(i)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位を標的とするためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)rh-γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーをコードするペイロードを組み込むためのSB100xを含む。示されたドナーベクターは、mgmtP140k、LCR β-グロビンプロモーター促進性に外来性γ-グロビンを発現させる形質導入細胞のインビボでの選択、及びγ-グロビンプロモーターのリプレッサー結合領域をCRISPR/Cas9介在性に破壊することによる内在性γ-グロビンの再活性化を許容する。
図8C図8A~8D。図8Aは、ベクターの例の模式図である。(図8B)NHP#1のためのベクター設計:HDAd5/35++組合せ。CD46tg及びTownesモデル:相加的HbF発現(>20%)における検証。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、CRISPR/Cas9を使用して、hu-γ-グロビン及び MGMTP140Kをコードするトランスポゾンの組み込みのためのBCL11aE 及びHBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びSB100xを標的とする。(図8C)NHP#2のためのベクター設計:示されたドナーベクターは、(i)γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーを含むペイロードをAAVS1遺伝子座に標的として挿入するためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びBCL11aEを標的とするためのCRISPR/Cas9を含む。(図8D)NHP#3のためのベクター設計:HDAd-rh-組合せ。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、(i)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位を標的とするためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)rh-γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーをコードするペイロードを組み込むためのSB100xを含む。示されたドナーベクターは、mgmtP140k、LCR β-グロビンプロモーター促進性に外来性γ-グロビンを発現させる形質導入細胞のインビボでの選択、及びγ-グロビンプロモーターのリプレッサー結合領域をCRISPR/Cas9介在性に破壊することによる内在性γ-グロビンの再活性化を許容する。
図8D図8A~8D。図8Aは、ベクターの例の模式図である。(図8B)NHP#1のためのベクター設計:HDAd5/35++組合せ。CD46tg及びTownesモデル:相加的HbF発現(>20%)における検証。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、CRISPR/Cas9を使用して、hu-γ-グロビン及び MGMTP140Kをコードするトランスポゾンの組み込みのためのBCL11aE 及びHBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びSB100xを標的とする。(図8C)NHP#2のためのベクター設計:示されたドナーベクターは、(i)γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーを含むペイロードをAAVS1遺伝子座に標的として挿入するためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位及びBCL11aEを標的とするためのCRISPR/Cas9を含む。(図8D)NHP#3のためのベクター設計:HDAd-rh-組合せ。示されたAd5/35「組合せ」ドナーベクターは、(i)HBG1/2 BCL11aリプレッサータンパク質結合部位を標的とするためのCRISPR/Cas9;ならびに(ii)rh-γ-グロビン及びMGMTP140K選択可能マーカーをコードするペイロードを組み込むためのSB100xを含む。示されたドナーベクターは、mgmtP140k、LCR β-グロビンプロモーター促進性に外来性γ-グロビンを発現させる形質導入細胞のインビボでの選択、及びγ-グロビンプロモーターのリプレッサー結合領域をCRISPR/Cas9介在性に破壊することによる内在性γ-グロビンの再活性化を許容する。
【0109】
図9A-B】図9A~9D。HDAd5/35++ベクターは、HSCを選択的に形質導入する(CD46を介して)。
図9C-D】図9A~9D。HDAd5/35++ベクターは、HSCを選択的に形質導入する(CD46を介して)。
【0110】
図10A図10A~10D。G-CSF/AMD3100によるアカゲザルにおける効率的なHSC動員。動員処理したアカゲザルへのHDAd注射。(図10A)GCSF、AMD3100及びHDAdの注射のタイミング。図10B~10D 末梢血中の未分化(CD34+/CD45RA-/CD90+)HSCの数。HDAdを動員の2回のピークで注射した。(図10B)NHP#1におけるベクター投薬は保存的であった(0.5~1.65×1012 vp/kg)。(図10C)NHP#2のためのHDAd用量は、いずれも1.6×1012 vp/kgであった。(図10D)NHP#3におけるHDAdの用量は、HDAdの2回目の用量が低減したことを示すが、この低減は、後に誤りであることが判明した好中球数に基づくものであった。
図10B図10A~10D。G-CSF/AMD3100によるアカゲザルにおける効率的なHSC動員。動員処理したアカゲザルへのHDAd注射。(図10A)GCSF、AMD3100及びHDAdの注射のタイミング。図10B~10D 末梢血中の未分化(CD34+/CD45RA-/CD90+)HSCの数。HDAdを動員の2回のピークで注射した。(図10B)NHP#1におけるベクター投薬は保存的であった(0.5~1.65×1012 vp/kg)。(図10C)NHP#2のためのHDAd用量は、いずれも1.6×1012 vp/kgであった。(図10D)NHP#3におけるHDAdの用量は、HDAdの2回目の用量が低減したことを示すが、この低減は、後に誤りであることが判明した好中球数に基づくものであった。
図10C-D】図10A~10D。G-CSF/AMD3100によるアカゲザルにおける効率的なHSC動員。動員処理したアカゲザルへのHDAd注射。(図10A)GCSF、AMD3100及びHDAdの注射のタイミング。図10B~10D 末梢血中の未分化(CD34+/CD45RA-/CD90+)HSCの数。HDAdを動員の2回のピークで注射した。(図10B)NHP#1におけるベクター投薬は保存的であった(0.5~1.65×1012 vp/kg)。(図10C)NHP#2のためのHDAd用量は、いずれも1.6×1012 vp/kgであった。(図10D)NHP#3におけるHDAdの用量は、HDAdの2回目の用量が低減したことを示すが、この低減は、後に誤りであることが判明した好中球数に基づくものであった。
【0111】
図11A図11A~11C。図11Aは、アデノウイルスベクターの静脈内注射及び薬理学的介入後の自然免疫応答を示す。図11Bは、投薬スケジュールであり;図11Cは、マウスにおけるデキサメタゾン処理がサイトカイン応答を鈍化させることを示すグラフである。
図11B-C】図11A~11C。図11Aは、アデノウイルスベクターの静脈内注射及び薬理学的介入後の自然免疫応答を示す。図11Bは、投薬スケジュールであり;図11Cは、マウスにおけるデキサメタゾン処理がサイトカイン応答を鈍化させることを示すグラフである。
【0112】
図12A-B】図12A-12E。サイトカイン予防:サイトメトリックビーズアレイを使用して、アカゲザルの血清中サイトカインレベルを測定した。IL-6(図12A~12C)及びTNFα(図12D、12E)のみが検出可能であった。トシリズマブ(抗IL6R)及びアナキンラ(IL1R-アンタゴニスト)の追加は、血清中IL-6及びTNFαをさらに低下させる。(図12A~12C)血清中IL-6。(図12D、12E)血清中TNFα。TNFαはNHP#2において検出不能であった(+Toci、+アナキンラ)。
図12C図12A-12E。サイトカイン予防:サイトメトリックビーズアレイを使用して、アカゲザルの血清中サイトカインレベルを測定した。IL-6(図12A~12C)及びTNFα(図12D、12E)のみが検出可能であった。トシリズマブ(抗IL6R)及びアナキンラ(IL1R-アンタゴニスト)の追加は、血清中IL-6及びTNFαをさらに低下させる。(図12A~12C)血清中IL-6。(図12D、12E)血清中TNFα。TNFαはNHP#2において検出不能であった(+Toci、+アナキンラ)。
図12D-E】図12A-12E。サイトカイン予防:サイトメトリックビーズアレイを使用して、アカゲザルの血清中サイトカインレベルを測定した。IL-6(図12A~12C)及びTNFα(図12D、12E)のみが検出可能であった。トシリズマブ(抗IL6R)及びアナキンラ(IL1R-アンタゴニスト)の追加は、血清中IL-6及びTNFαをさらに低下させる。(図12A~12C)血清中IL-6。(図12D、12E)血清中TNFα。TNFαはNHP#2において検出不能であった(+Toci、+アナキンラ)。
【0113】
図13A-B】図13A~13D。(図13A、13B)マウスまたは(図13C、13D)アカゲザルにおいて、HDAd5/35++の静脈内注射後に肝毒性は存在しない。マウスではHDAd5/35++による肝臓の形質導入はほとんどまたは全く示されず、マウス及びNHPでは肝臓の酵素であるAST及びALTの血清中レベルの上昇は示されない。これは、重要な毒性読み取りデータであり、HDAd5/35++が肝毒性をほとんど有さないことを示す。HDAd5/35++では、Ad35の短いファイバーシャフトが第X因子がヘキソンに結合するのを妨げるため、肝細胞形質導入が妨げられる。
図13C-D】図13A~13D。(図13A、13B)マウスまたは(図13C、13D)アカゲザルにおいて、HDAd5/35++の静脈内注射後に肝毒性は存在しない。マウスではHDAd5/35++による肝臓の形質導入はほとんどまたは全く示されず、マウス及びNHPでは肝臓の酵素であるAST及びALTの血清中レベルの上昇は示されない。これは、重要な毒性読み取りデータであり、HDAd5/35++が肝毒性をほとんど有さないことを示す。HDAd5/35++では、Ad35の短いファイバーシャフトが第X因子がヘキソンに結合するのを妨げるため、肝細胞形質導入が妨げられる。
【0114】
図14A図14A~14C。未分化HSC(CFU)の5%が、インビボでの選択の前に安定して形質導入された(NHP#3)。図14Aは、CFUアッセイのためのプロトコールの概略である。未分化HSCをHDAd5/35++によって形質導入すると(初期のすべてのエピソーム)、4週目の選択の直前には未分化HSCの5%が形質導入され(安定な組み込み)、アカゲザル(NHP#3)における1回目のOBG及びBCNUによる処置後8週目には10%まで増加する。
図14B-C】図14A~14C。未分化HSC(CFU)の5%が、インビボでの選択の前に安定して形質導入された(NHP#3)。図14Aは、CFUアッセイのためのプロトコールの概略である。未分化HSCをHDAd5/35++によって形質導入すると(初期のすべてのエピソーム)、4週目の選択の直前には未分化HSCの5%が形質導入され(安定な組み込み)、アカゲザル(NHP#3)における1回目のOBG及びBCNUによる処置後8週目には10%まで増加する。
【0115】
図15A図15A~15C。インビボでの選択後:末梢赤血球における90%のγ-グロビンマーキング(NHP#1)。(図15A、15B)末梢RBCのγ-グロビン(アカゲザル+ヒト)(図15A)及び骨髄穿刺液(BMA)における赤血球前駆細胞(図15B)に関するフローサイトメトリー。下向きの矢印はOBG/BCNU処理を示す。図15Cは、3回のOBG及びBCNU(NHP#1)後のヒトガンマグロビンによるアカゲザルRBCの100%マーキングを示す。これらの結果は、選択プロトコールが有効であることを実証している。
図15B図15A~15C。インビボでの選択後:末梢赤血球における90%のγ-グロビンマーキング(NHP#1)。(図15A、15B)末梢RBCのγ-グロビン(アカゲザル+ヒト)(図15A)及び骨髄穿刺液(BMA)における赤血球前駆細胞(図15B)に関するフローサイトメトリー。下向きの矢印はOBG/BCNU処理を示す。図15Cは、3回のOBG及びBCNU(NHP#1)後のヒトガンマグロビンによるアカゲザルRBCの100%マーキングを示す。これらの結果は、選択プロトコールが有効であることを実証している。
図15C図15A~15C。インビボでの選択後:末梢赤血球における90%のγ-グロビンマーキング(NHP#1)。(図15A、15B)末梢RBCのγ-グロビン(アカゲザル+ヒト)(図15A)及び骨髄穿刺液(BMA)における赤血球前駆細胞(図15B)に関するフローサイトメトリー。下向きの矢印はOBG/BCNU処理を示す。図15Cは、3回のOBG及びBCNU(NHP#1)後のヒトガンマグロビンによるアカゲザルRBCの100%マーキングを示す。これらの結果は、選択プロトコールが有効であることを実証している。
【0116】
図16A-B】図16A-16I。HDAd5/35++ベクター及び導入遺伝子産物に対する抗体応答。NHP#1(図16A)及びNHP#3(図16B)に関するHDAd5/35++に対する血清抗体。ゲノム編集酵素(図16G SB100x;図16H Flpe;図16I Cas9)及びGFP+(図16C)に対するのと同様に、これらの酵素に対する血清抗体(図16D 抗Flpe抗体;図16E 抗SB100x抗体;及び図16F 抗Cas9血清抗体)のmRNAレベル(NHP#1)。発現と免疫応答キネティクスの両方は、NHP#3(非掲載)と同様であった。これらのデータは、導入遺伝子によってコードされるウイルス遺伝子治療カプシド及び外来性GFPリポーターに対する典型的な周知の抗体応答を示す。対照的に、この系において安全性及び長期間の導入遺伝子発現をさらにサポートするFlpe、SB、またはCas9に対する抗体応答はほとんどまたは全く見られなかった。
図16C-D】図16A-16I。HDAd5/35++ベクター及び導入遺伝子産物に対する抗体応答。NHP#1(図16A)及びNHP#3(図16B)に関するHDAd5/35++に対する血清抗体。ゲノム編集酵素(図16G SB100x;図16H Flpe;図16I Cas9)及びGFP+(図16C)に対するのと同様に、これらの酵素に対する血清抗体(図16D 抗Flpe抗体;図16E 抗SB100x抗体;及び図16F 抗Cas9血清抗体)のmRNAレベル(NHP#1)。発現と免疫応答キネティクスの両方は、NHP#3(非掲載)と同様であった。これらのデータは、導入遺伝子によってコードされるウイルス遺伝子治療カプシド及び外来性GFPリポーターに対する典型的な周知の抗体応答を示す。対照的に、この系において安全性及び長期間の導入遺伝子発現をさらにサポートするFlpe、SB、またはCas9に対する抗体応答はほとんどまたは全く見られなかった。
図16E-F】図16A-16I。HDAd5/35++ベクター及び導入遺伝子産物に対する抗体応答。NHP#1(図16A)及びNHP#3(図16B)に関するHDAd5/35++に対する血清抗体。ゲノム編集酵素(図16G SB100x;図16H Flpe;図16I Cas9)及びGFP+(図16C)に対するのと同様に、これらの酵素に対する血清抗体(図16D 抗Flpe抗体;図16E 抗SB100x抗体;及び図16F 抗Cas9血清抗体)のmRNAレベル(NHP#1)。発現と免疫応答キネティクスの両方は、NHP#3(非掲載)と同様であった。これらのデータは、導入遺伝子によってコードされるウイルス遺伝子治療カプシド及び外来性GFPリポーターに対する典型的な周知の抗体応答を示す。対照的に、この系において安全性及び長期間の導入遺伝子発現をさらにサポートするFlpe、SB、またはCas9に対する抗体応答はほとんどまたは全く見られなかった。
図16G-H】図16A-16I。HDAd5/35++ベクター及び導入遺伝子産物に対する抗体応答。NHP#1(図16A)及びNHP#3(図16B)に関するHDAd5/35++に対する血清抗体。ゲノム編集酵素(図16G SB100x;図16H Flpe;図16I Cas9)及びGFP+(図16C)に対するのと同様に、これらの酵素に対する血清抗体(図16D 抗Flpe抗体;図16E 抗SB100x抗体;及び図16F 抗Cas9血清抗体)のmRNAレベル(NHP#1)。発現と免疫応答キネティクスの両方は、NHP#3(非掲載)と同様であった。これらのデータは、導入遺伝子によってコードされるウイルス遺伝子治療カプシド及び外来性GFPリポーターに対する典型的な周知の抗体応答を示す。対照的に、この系において安全性及び長期間の導入遺伝子発現をさらにサポートするFlpe、SB、またはCas9に対する抗体応答はほとんどまたは全く見られなかった。
図16I図16A-16I。HDAd5/35++ベクター及び導入遺伝子産物に対する抗体応答。NHP#1(図16A)及びNHP#3(図16B)に関するHDAd5/35++に対する血清抗体。ゲノム編集酵素(図16G SB100x;図16H Flpe;図16I Cas9)及びGFP+(図16C)に対するのと同様に、これらの酵素に対する血清抗体(図16D 抗Flpe抗体;図16E 抗SB100x抗体;及び図16F 抗Cas9血清抗体)のmRNAレベル(NHP#1)。発現と免疫応答キネティクスの両方は、NHP#3(非掲載)と同様であった。これらのデータは、導入遺伝子によってコードされるウイルス遺伝子治療カプシド及び外来性GFPリポーターに対する典型的な周知の抗体応答を示す。対照的に、この系において安全性及び長期間の導入遺伝子発現をさらにサポートするFlpe、SB、またはCas9に対する抗体応答はほとんどまたは全く見られなかった。
【0117】
図17A図17A-17F。導入遺伝子産物に対する免疫応答によって、形質導入細胞(NHP#3)が失われる。γ-グロビン発現をフローサイトメトリーによって分析した。(図17A)RBC。(図17B)骨髄穿刺液。(図17C)代表的なプロットを示す。矢印はOBG/BCNU処理を示す。(図17E、17F)より高レベルの導入遺伝子発現がNHP#3に存在した。これらのデータは、アカゲザルモデルにおいて、PBMCにおいてヒトMGMTp140Kの発現が失われたことと関連して、ヒトガンマグロビンを発現するアカゲザルRBCが失われたことを示し、これは、ヒトMGMTP140Kに対する抗体応答に起因すると考えられる。これは、おそらく、NHP#1と比較してNHP#3において、ガンマグロビン及びMGMTが高レベルで発現することに起因する。ガンマグロビン及びMGMTの発現の喪失は、NHP#1において見られなかった。
図17B-C】図17A-17F。導入遺伝子産物に対する免疫応答によって、形質導入細胞(NHP#3)が失われる。γ-グロビン発現をフローサイトメトリーによって分析した。(図17A)RBC。(図17B)骨髄穿刺液。(図17C)代表的なプロットを示す。矢印はOBG/BCNU処理を示す。(図17E、17F)より高レベルの導入遺伝子発現がNHP#3に存在した。これらのデータは、アカゲザルモデルにおいて、PBMCにおいてヒトMGMTp140Kの発現が失われたことと関連して、ヒトガンマグロビンを発現するアカゲザルRBCが失われたことを示し、これは、ヒトMGMTP140Kに対する抗体応答に起因すると考えられる。これは、おそらく、NHP#1と比較してNHP#3において、ガンマグロビン及びMGMTが高レベルで発現することに起因する。ガンマグロビン及びMGMTの発現の喪失は、NHP#1において見られなかった。
図17D図17A-17F。導入遺伝子産物に対する免疫応答によって、形質導入細胞(NHP#3)が失われる。γ-グロビン発現をフローサイトメトリーによって分析した。(図17A)RBC。(図17B)骨髄穿刺液。(図17C)代表的なプロットを示す。矢印はOBG/BCNU処理を示す。(図17E、17F)より高レベルの導入遺伝子発現がNHP#3に存在した。これらのデータは、アカゲザルモデルにおいて、PBMCにおいてヒトMGMTp140Kの発現が失われたことと関連して、ヒトガンマグロビンを発現するアカゲザルRBCが失われたことを示し、これは、ヒトMGMTP140Kに対する抗体応答に起因すると考えられる。これは、おそらく、NHP#1と比較してNHP#3において、ガンマグロビン及びMGMTが高レベルで発現することに起因する。ガンマグロビン及びMGMTの発現の喪失は、NHP#1において見られなかった。
図17E-F】図17A-17F。導入遺伝子産物に対する免疫応答によって、形質導入細胞(NHP#3)が失われる。γ-グロビン発現をフローサイトメトリーによって分析した。(図17A)RBC。(図17B)骨髄穿刺液。(図17C)代表的なプロットを示す。矢印はOBG/BCNU処理を示す。(図17E、17F)より高レベルの導入遺伝子発現がNHP#3に存在した。これらのデータは、アカゲザルモデルにおいて、PBMCにおいてヒトMGMTp140Kの発現が失われたことと関連して、ヒトガンマグロビンを発現するアカゲザルRBCが失われたことを示し、これは、ヒトMGMTP140Kに対する抗体応答に起因すると考えられる。これは、おそらく、NHP#1と比較してNHP#3において、ガンマグロビン及びMGMTが高レベルで発現することに起因する。ガンマグロビン及びMGMTの発現の喪失は、NHP#1において見られなかった。
【0118】
図18A図18A-18C。NHP#3(図18A)及びNHP#1(図18B)における組換えヒトMGMTタンパク質に対する血清抗体(IgG及びIgM)の力価。(図18C)次のベクター:アカゲザルγ-グロビン及びmgmtP140K。NHP#1では、研究を通じて、免疫抑制剤に対する連続曝露によって、抗MGMT応答が鈍化した。タクロリムスを停止した場合に、NHP#3において抗MGMT抗体が増加した。
図18B図18A-18C。NHP#3(図18A)及びNHP#1(図18B)における組換えヒトMGMTタンパク質に対する血清抗体(IgG及びIgM)の力価。(図18C)次のベクター:アカゲザルγ-グロビン及びmgmtP140K。NHP#1では、研究を通じて、免疫抑制剤に対する連続曝露によって、抗MGMT応答が鈍化した。タクロリムスを停止した場合に、NHP#3において抗MGMT抗体が増加した。
図18C図18A-18C。NHP#3(図18A)及びNHP#1(図18B)における組換えヒトMGMTタンパク質に対する血清抗体(IgG及びIgM)の力価。(図18C)次のベクター:アカゲザルγ-グロビン及びmgmtP140K。NHP#1では、研究を通じて、免疫抑制剤に対する連続曝露によって、抗MGMT応答が鈍化した。タクロリムスを停止した場合に、NHP#3において抗MGMT抗体が増加した。
【0119】
図19A-C】血液からのベクタークリアランス。血清試料中のベクターゲノムをqPCRによって測定した。
【0120】
図20A図20A-20B。重量及び血液学的データ。血液データでは、正常範囲は、透明な灰色で示される。
図20B図20A-20B。重量及び血液学的データ。血液データでは、正常範囲は、透明な灰色で示される。
【0121】
図21A-C】骨髄細胞組成。(図21A、21B):系譜+細胞(CD20、CD3、CD14)及びHSC(CD34)におけるパーセンテージ。CD34細胞(NHP#3)は、図21Cに別に示されている。
【0122】
図22】細胞当たりのベクターコピー数(ヒトmgmtP140Kプライマーを用いるqPCRによって測定した)。最後のHDAd注射後3日目に、組織を収集した。胆嚢、空腸、肺、及び肝臓は、多量の血液を含有した。
【0123】
図23A-C】NHP#1(図23A)、NHP#2(図23B)、及びNHP#3(図23C)における、PBMC中のベクターコピー数。
【0124】
図24A-D】CD34+細胞の選択的形質導入。HDAd注射後3日目及び8日目の全骨髄単核細胞(MNC)及び骨髄CD34+細胞からのVCN/細胞が示されている。右のパネルは、mgmtP140K mRNAレベルを示す。(mgmt遺伝子は、遍在性に活性なEF1αプロモーターの制御下にある)。
【0125】
図25】ベクター陽性前駆細胞コロニーのパーセンテージ。CD34+細胞を前駆細胞コロニーアッセイのために播種した。播種の12日後に、約100の単一コロニーを収集し、mgmtP140K特異的プライマーを使用するqPCRによってゲノムDNAを分析した。
【0126】
図26A図26A-26C。ヒトγ-グロビン及びmgmtP140K導入遺伝子の発現。(図26A)HPLCによって測定したヒトγ-グロビンレベル。HPLCは、アカゲザルγ-グロビン鎖とヒトγ-グロビン鎖の間を識別することができる。(図26B)代表的なHPLC。(図26C)qRT-PCRによって測定したヒトmgmtP140K mRNA発現。同様のキネティクスに留意されたい。
図26B図26A-26C。ヒトγ-グロビン及びmgmtP140K導入遺伝子の発現。(図26A)HPLCによって測定したヒトγ-グロビンレベル。HPLCは、アカゲザルγ-グロビン鎖とヒトγ-グロビン鎖の間を識別することができる。(図26B)代表的なHPLC。(図26C)qRT-PCRによって測定したヒトmgmtP140K mRNA発現。同様のキネティクスに留意されたい。
図26C図26A-26C。ヒトγ-グロビン及びmgmtP140K導入遺伝子の発現。(図26A)HPLCによって測定したヒトγ-グロビンレベル。HPLCは、アカゲザルγ-グロビン鎖とヒトγ-グロビン鎖の間を識別することができる。(図26B)代表的なHPLC。(図26C)qRT-PCRによって測定したヒトmgmtP140K mRNA発現。同様のキネティクスに留意されたい。
【0127】
図27】アカゲザルγ-グロビンの発現及び標的部位のCRISPR切断。
【0128】
図28A図28A-28C。アカゲザル赤血球に存在するCD46によるHDAd5/35++の潜在的隔絶。(図28A)フローサイトメトリーの結果は、CD46tgマウス及びアカゲザルが、Ad35ベースのベクターの形質導入を評価するために適切なモデルであることをサポートする。(図28B)この仮説を検証するために、Ad5/35++ GFPベクターならびに異なる動物種及びモデルからの全血の追加により、インビトロ形質導入研究を実施した。簡潔に記載すると、ヒト、アカゲザル、CD46tgマウス及びC57Bl/6マウスから、EDTA中に全血を採取した。その後に、EDTA全血をPBSで洗浄し、ペレット化させ、細胞培養培地(ダルベッコの改変イーグル培地[DMEM]/ウシ胎仔血清[FCS])中に再懸濁させた。全血をHEK293細胞に添加し、以下のMOI:0、10、100、250、500及び1000で、Ad5/35++ GFPベクターにより細胞を形質導入した。1時間後に、293細胞をPBSで洗浄し、新しい培地を添加した。ベクターの形質導入効率を、24時間の時点でフローサイトメトリーによってGFP陽性細胞について分析した。(図28C)NHP#2及びNHP#3におけるHDAd5/35++のIV注射後の血清中の可溶性/排出CD46レベル。
図28B-C】図28A-28C。アカゲザル赤血球に存在するCD46によるHDAd5/35++の潜在的隔絶。(図28A)フローサイトメトリーの結果は、CD46tgマウス及びアカゲザルが、Ad35ベースのベクターの形質導入を評価するために適切なモデルであることをサポートする。(図28B)この仮説を検証するために、Ad5/35++ GFPベクターならびに異なる動物種及びモデルからの全血の追加により、インビトロ形質導入研究を実施した。簡潔に記載すると、ヒト、アカゲザル、CD46tgマウス及びC57Bl/6マウスから、EDTA中に全血を採取した。その後に、EDTA全血をPBSで洗浄し、ペレット化させ、細胞培養培地(ダルベッコの改変イーグル培地[DMEM]/ウシ胎仔血清[FCS])中に再懸濁させた。全血をHEK293細胞に添加し、以下のMOI:0、10、100、250、500及び1000で、Ad5/35++ GFPベクターにより細胞を形質導入した。1時間後に、293細胞をPBSで洗浄し、新しい培地を添加した。ベクターの形質導入効率を、24時間の時点でフローサイトメトリーによってGFP陽性細胞について分析した。(図28C)NHP#2及びNHP#3におけるHDAd5/35++のIV注射後の血清中の可溶性/排出CD46レベル。
【0129】
図29】サイトメトリックビーズアレイを使用して、アカゲザルの血清中サイトカインレベルを測定した。血清中IL-6(pg/mL)レベルをNHP#4について示す。相対的な日付、及び時間をX軸に沿って示す。矢印は、アデノウイルスベクターの投与を示す。
【0130】
図30】サイトメトリックビーズアレイを使用して、アカゲザルの血清中サイトカインレベルを測定した。TNFα(pg/mL)レベルをNHP#4について示す。相対的な日付、及び時間をX軸に沿って示す。矢印は、アデノウイルスベクターの投与を示す。
【0131】
図31】サイトメトリックビーズアレイを使用して、アカゲザルの血清中サイトカインレベルを測定した。血清中IL-6(pg/mL)レベルをNHP#5について示す。相対的な日付、及び時間をX軸に沿って示す。矢印は、アデノウイルスベクターの投与を示す。
【0132】
図32】サイトメトリックビーズアレイを使用して、アカゲザルの血清中サイトカインレベルを測定した。TNFα(pg/mL)レベルをNHP#5について示す。相対的な日付、及び時間をX軸に沿って示す。矢印は、アデノウイルスベクターの投与を示す。
【発明を実施するための形態】
【0133】
詳細な説明
インビボ治療の課題。ウイルス遺伝子治療は、哺乳動物において逆効果の免疫応答を誘導する場合がある。例えば、ウイルスベクターは、病原体関連分子パターンの検出を含む多くの経路のいずれかを介して、自然免疫応答を引き起こすことができる。ウイルスベクターを検出する自然免疫センサーは、細胞の細胞質、エンドソームまたは表面において見出すことができ、カプシド、エンベロープ、ウイルスDNAまたはウイルスRNAなどのウイルス特色を認識する。典型的な自然免疫応答は、対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの投与の1時間以内に誘導されるサイトカイン応答を含む。抗ウイルスサイトカインは、形質細胞様樹状細胞(DC)、通常型DC、マクロファージ及びB細胞を限定することなく含む、抗原提示細胞(APC)などの細胞によって産生することができる。自然免疫応答は、エフェクターリンパ球を動員し、遺伝子治療ベクターによる標的細胞の形質導入を阻害し、逆効果の適応免疫系活性を容易にする、炎症促進性効果を含むことができる。
【0134】
外来性コード核酸配列の発現が、対象において非ネイティブ抗原である、または他の理由から適応免疫系によって異物として認識される抗原である産物を産生する場合、適応免疫は、問題になることが判明する場合もある。そのような場合には、適応免疫系は、外来性コード核酸配列を発現する対象細胞の破壊を媒介することができる。
【0135】
一部のアデノウイルスベクターは、自然免疫応答及び適応免疫応答の両方を誘導することが示されている。アデノウイルスベクターは、補体活性化を含むさまざまな経路を介して自然免疫応答を誘導することができる。アデノウイルスベクターは、例えば、アデノウイルス遺伝子治療ベクターの投与の1時間以内に、炎症促進性サイトカインの産生を急速に誘導することができる。ある特定の共通アデノウイルスについて、多くのヒトが、アデノウイルス遺伝子治療ベクターの投与に先立ち、既存の中和抗体を有する。
【0136】
本開示は、とりわけ、ウイルスベクターの投与及び/またはウイルス遺伝子治療ベクターを使用した遺伝子治療、例えば、インビボ遺伝子治療に起因する免疫毒性を低減させる免疫抑制レジメンを提供する。本開示は、とりわけ、炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンであって、必要に応じて、炎症性シグナルが、IL-1受容体(IL-1R)シグナル阻害剤などのインターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤である、免疫抑制レジメンを提供する。
【0137】
免疫抑制剤。本開示は、ウイルス遺伝子治療ベクターを投与することを含む遺伝子治療、例えば、インビボ遺伝子治療の免疫毒性を低減させる免疫抑制レジメンを含む。本開示の免疫抑制レジメンは、炎症性シグナル阻害剤を含む1つまたは複数の免疫抑制剤を含むことができる。本開示の免疫抑制レジメンは、次のうちの1つまたは複数のいずれかを含む1つまたは複数の免疫抑制剤を含むことができる:
(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤などの炎症性シグナル阻害剤;
(ii)IL-6シグナル阻害剤;
(iii)コルチコステロイド;
(iv)カルシニューリン阻害剤;
(v)TNF-αシグナル阻害剤;
(vi)JAKシグナル阻害剤;及び
(vii)T細胞活性化における共刺激シグナル伝達の阻害剤。
【0138】
本開示のある特定の免疫抑制レジメンは、次のうちの1つまたは複数のいずれかを含む1つまたは複数の免疫抑制剤を含むことができる:
(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤;
(ii)IL-6シグナル阻害剤;
(iii)コルチコステロイド;
(iv)カルシニューリン阻害剤、及び
(vii)T細胞活性化における共刺激シグナル伝達の阻害剤。
【0139】
さまざまな実施形態において、遺伝子治療、例えば、インビボ遺伝子治療の免疫毒性を低減させる免疫抑制レジメンは、次のものから選択される1つまたは複数のウイルスベクター剤を含むウイルス遺伝子治療レジメンと併せて対象に投与される:
(i)ウイルス遺伝子治療ベクター;及び
(ii)サポートベクター。
【0140】
さまざまな実施形態において、免疫抑制剤のいずれかは、単一用量または複数用量で対象に投与することができる。さまざまな実施形態において、免疫抑制剤のいずれかは、1日でまたは数日で対象に投与することができる。さまざまな実施形態において、免疫抑制剤のいずれかは、単一用量または複数の別々の用量で対象に投与される1日用量で投与することができる。さまざまな実施形態において、免疫抑制剤のいずれかの用量は、用量全体及び/または1日用量全体を含む単一単位用量で、または用量全体及び/または1日用量全体を合わせて提供する複数の単位用量で投与することができる。
【0141】
さまざまな実施形態において、剤形は、免疫抑制剤である1つまたは複数の薬剤のそれぞれの量を含むことができる。さまざまな実施形態において、剤形は、同じ免疫抑制剤クラスまたは複数の免疫抑制剤クラスのものである免疫抑制剤である2つまたはそれよりも多い薬剤のそれぞれの量を含むことができる。さまざまな実施形態において、剤形は、第1の免疫抑制剤クラスの少なくとも1つの免疫抑制剤、及び第1の免疫抑制剤クラスとは異なる免疫抑制剤クラスである第2の免疫抑制剤クラスの少なくとも1つの免疫抑制剤を含むことができる。
【0142】
炎症性シグナル阻害剤。例えば、ウイルス遺伝子治療ベクターなどの外来性薬剤の対象への投与後の炎症応答に寄与し得る、多種多様なシグナルが同定されている。炎症性シグナルを伝達する経路は典型的に、少なくとも一部には、炎症促進性シグナル伝達剤と、炎症促進性シグナル伝達剤がリガンドとして作用する炎症促進性シグナル伝達受容体とを含む。さまざまな場合において、炎症促進性シグナル伝達受容体及び炎症促進性シグナル伝達受容体の結合は、免疫学的応答及び/または炎症応答を媒介する。
【0143】
炎症促進性シグナル伝達剤の例としては、サイトカインIL-1β、IL-1α、IL-6、TNF-α、TGF-β、IFN-γ、IL-8(CXCL8とも当該技術分野で称される)、IL-12、GM-CSF、IL-15、及びCCL2が挙げられる。
【0144】
炎症促進性シグナル伝達受容体(及びそのリガンド)の例としては、IL-1R(IL-1β、IL-1α)、IL-3R、IL-4Ra、IL-5R、IL-6Rα(IL-6)、IL-36R、TNFR1(TNF-α)、TGFβR1/TGFβR2(TGF-β)、IFNGR(IFN-γ)、インターフェロン-α/β受容体、IL-8R(CXCR1及びCXCR2型とも称される、IL-8RA及びIL-8RB型を含む)(IL-8/CXCL8)、IL-12R(IL-12)、GM-CSFR(GM-CSF)、IL-15R(IL-15)、CCR2(CCL2)、及びCCR4(CCL2)が挙げられる。
【0145】
さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達剤が炎症促進性シグナル伝達受容体に結合することができないように、炎症促進性シグナル伝達剤に結合するかまたはこれを修飾する薬剤であり得る。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達剤が、例えば、遮断剤を限定することなく含む阻害剤に曝露されていない参照炎症促進性シグナル伝達剤と比較して、低減された親和性、アビディティーまたは頻度で炎症促進性シグナル伝達受容体に結合するように、炎症促進性シグナル伝達剤に結合するかまたはこれを修飾する薬剤であり得る。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達剤が、例えば、阻害剤に曝露されていない参照炎症促進性シグナル伝達剤と比較して、減少された半減期を有するように、炎症促進性シグナル伝達剤に結合するかまたはこれを修飾する薬剤であり得る。さまざまな実施形態において、炎症促進性シグナル伝達剤の阻害剤である薬剤は、炎症促進性シグナル伝達剤のアンタゴニストと称することができる。したがって、例えば、受容体の阻害剤は、受容体アンタゴニストと称することができる(例えば、アナキンラは、例示的なIL-1受容体アンタゴニストである)。
【0146】
さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達受容体が炎症促進性シグナル伝達剤に結合することができないように、炎症促進性シグナル伝達受容体に結合するかまたはこれを修飾する薬剤であり得る。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達受容体が、例えば、遮断剤を限定することなく含む阻害剤に曝露されていない参照炎症促進性シグナル伝達受容体と比較して、低減された親和性、アビディティーまたは頻度で炎症促進性シグナル伝達剤に結合するように、炎症促進性シグナル伝達受容体に結合するかまたはこれを修飾する薬剤であり得る。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達受容体が、例えば、阻害剤に曝露されていない参照炎症促進性シグナル伝達受容体と比較して、減少された半減期を有するように、炎症促進性シグナル伝達受容体に結合するかまたはこれを修飾する薬剤であり得る。さまざまな実施形態において、炎症促進性シグナル伝達受容体の阻害剤である薬剤は、炎症促進性シグナル伝達受容体のアンタゴニストと称することができる。
【0147】
さまざまな実施形態において、炎症促進性シグナル伝達受容体のリン酸化が、炎症を引き起こすか、または炎症と正に関連する場合、対象への炎症性シグナル阻害剤の送達は、炎症性シグナル阻害剤に曝露されない参照と比較して、対象における炎症促進性シグナル伝達受容体のリン酸化低減を引き起こす。さまざまな実施形態において、炎症促進性シグナル伝達受容体の脱リン酸化が、炎症を引き起こすか、または炎症と正に関連する場合、対象への炎症性シグナル阻害剤の送達は、炎症性シグナル阻害剤に曝露されない参照と比較して、対象における炎症促進性シグナル伝達受容体の脱リン酸化低減を引き起こす。
【0148】
さまざまな実施形態において、対象への炎症性シグナル阻害剤の送達は、炎症性シグナル阻害剤に曝露されない参照と比較して、炎症低減を引き起こす。さまざまな実施形態において、対象への炎症性シグナル阻害剤の送達は、炎症性シグナル阻害剤に曝露されない参照と比較して、炎症を指し示すバイオマーカーの低減を引き起こす。さまざまな実施形態において、炎症を指し示すバイオマーカーは、免疫活性化を指し示すサイトカイン、ならびに/またはIL-Ιβ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-30、IL-36、IL-1Ra、IL-2R、IFN-a、IFN-b、IFN-γ、MIP-Ia、ΜΙΡ-Ιβ、MCP-1、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、G-CSF、CXCL9、CXCL10、VEGF、RANTES、EGF、HGF、FGF-β、CD40、及びCD40Lのうちの1つまたは複数のいずれかであり得る。他の例示的なバイオマーカーは、インビボ遺伝子治療レジメン(regiment)において対象に投与されたベクターに対する中和抗体などの、対象に投与された薬剤に対する抗体の濃度または量の尺度を含むことができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、炎症性シグナル阻害剤は、タンパク質、例えば、炎症促進性シグナル伝達剤または炎症促進性シグナル伝達受容体に結合するタンパク質であり得る。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、抗体、例えば、炎症促進性シグナル伝達剤または炎症促進性シグナル伝達受容体に結合する抗体または抗体断片であり得る。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達剤または炎症促進性シグナル伝達受容体の小分子阻害剤など、タンパク質性でない分子であり得る。
【0150】
炎症性シグナル阻害剤のいくつかの非限定的な例を提供するために、さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、抗IL-8/CDCL8抗体または抗CCL2抗体であり得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、炎症性シグナル阻害剤は、イノシン5’一リン酸デヒドロゲナーゼの阻害剤、例えば、ミコフェノール酸(MPA)である。MPAを対象に送達する例示的な炎症性シグナル阻害剤は、MPAのプロドラッグであるミコフェノール酸モフェチル(MMF)である。
【0152】
当業者であれば、炎症性シグナル阻害剤が、他に特に指定のない限り、本開示において提供される1つまたは複数の他のクラスの薬剤を含むことができることを理解するであろう。当業者であれば、本明細書で使用される場合、炎症性シグナル伝達の低減が、炎症の低減または処置、例えば、対象における炎症の臨床的に関連性がある低減または処置を含み、これを包含し、これを暗示し、及び/またはこれと互換的であることが理解されることを認めるであろう。
【0153】
対象における炎症を測定する方法は、当業者にとって公知である。例えば、さまざまなバイオマーカーを使用して、試料、対象もしくは状態における炎症または試料間、対象間もしくは状態間の炎症を定量的に測定する、定性的に測定する、定量的に比較する、または定性的に比較することができる。例示的なバイオマーカーは、C反応性タンパク質(hs-CRP)、IL-1β、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-30、IL-36、IL-1Ra、IL-2R、IFN-a、IFN-b、IFN-γ、MIP-Ia、ΜΙΡ-Ιβ、MCP-1、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、G-CSF、CXCL9、CXCL10、VEGF、RANTES、EGF、HGF、FGF-β、CD40、及びCD40Lのうちの1つまたは複数のいずれかを限定することなく含む。他の例示的なバイオマーカーは、インビボ遺伝子治療レジメン(regiment)において対象に投与されたベクターに対する中和抗体などの、対象に投与された薬剤に対する抗体の濃度または量の尺度を含むことができる。
【0154】
IL-1シグナル阻害剤。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達剤IL-1β及び/もしくはIL-1αまたは炎症促進性シグナル伝達受容体IL-1Rの阻害剤である薬剤であり得、この場合、そのような炎症性シグナル阻害剤は累積的に、IL-1シグナル阻害剤と称することができる。さまざまな実施形態において、IL-1シグナル阻害剤は、IL-1RによるIL-1β及び/またはIL-1αの結合を競合的に阻害する薬剤であり得る。例えば、カナキヌマブ(ACZ885)は、IL-1RによるIL-1βの結合を阻害し、したがって、炎症性シグナル伝達を低減させる、ヒト抗IL-1βモノクローナル抗体である。
【0155】
炎症性シグナル阻害剤の別の例は、IL-1シグナル阻害剤リロナセプトである。リロナセプトは、(i)ヒトIL-1受容体(IL-1R1)の細胞外部分、及び(ii)IL-1受容体アクセサリータンパク質(IL-1RAcP)のリガンド結合ドメインを含む可溶性薬剤であり、このリガンド結合ドメインは、ヒトIgG1のFc領域に連結されている。リロナセプトは、デコイ受容体として作用することができ、及び/またはIL-1活性化をアンタゴナイズすることができる。
【0156】
炎症性シグナル阻害剤の別の例は、IL-1β及び/またはIL-1αに結合するが、炎症促進性シグナルを伝達しないように操作された、IL-1受容体(IL-1R)薬剤であるIL-1シグナル阻害剤である。IL-1β及び/またはIL-1αに結合するが、炎症促進性シグナルを伝達しない、操作されたIL-1R薬剤は、IL-1Rアンタゴニストと称することができる。炎症性シグナル阻害剤の別の例は、IL-1Rに結合し、IL-1β及び/またはIL-1αによるIL-1Rの結合を遮断するが、炎症促進性シグナルを伝達しないように操作された、IL-1Ra薬剤であるIL-1シグナル阻害剤である。アナキンラは、IL-1Rに競合的に結合することにより、ヒトにおけるIL-1β及び/またはIL-1αによるIL-1Rを介したシグナル伝達を阻害する、操作されたヒトIL-1受容体アンタゴニスト(IL-1Ra)薬剤である。アナキンラは、配列番号1に示す通り、典型的なヒトIL-1Raアミノ酸配列に類似しているが、少なくとも、そのアミノ末端にメチオニン残基を含むという点において典型的なヒトIL-1Raアミノ酸配列とは異なる、アミノ酸配列を有する。加えて、アナキンラは、配列番号1をコードする核酸配列の発現によってE.coliから典型的に産生される組換えタンパク質であり、グリコシル化されていない。
【0157】
配列番号1(153aa;アナキンラ)
MRPSGRKSSKMQAFRIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEKIDVVPIEPHALFLGIHGGKMCLSCVKSGDETRLQLEAVNITDLSENRKQDKRFAFIRSDSGPTTSFESAACPGWFLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFYFQEDE
【0158】
さまざまな実施形態において、本開示の炎症性シグナル阻害剤は、配列番号1との配列同一性%が少なくとも80%、例えば、配列番号1との同一性%が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である分子である。さまざまな実施形態において、本開示の炎症性シグナル阻害剤は、配列番号1のアミノ酸2~153との配列同一性%が少なくとも80%、例えば、配列番号1のアミノ酸2~153との同一性%が少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%である分子である。さまざまな実施形態において、配列番号1との配列同一性%が少なくとも80%である炎症性シグナル阻害剤は、アミノ末端メチオニン残基を含む。
【0159】
IL-6シグナル阻害剤。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、炎症促進性シグナル伝達剤IL-6または炎症促進性シグナル伝達受容体IL-6Rの阻害剤である薬剤であり得、この場合、そのような炎症性シグナル阻害剤は累積的に、IL-6シグナル阻害剤と称することができる。さまざまな実施形態において、IL-6シグナル阻害剤は、IL-6RによるIL-6の結合を競合的に阻害する薬剤であり得る。例示的なIL-6シグナル阻害剤は、バゼドキシフェン、ラロキシフェン、サリルマブ、及びトシリズマブを含む。
【0160】
バゼドキシフェンは、シグナル伝達能力があるIL-6受容体複合体の形成に干渉することが理解される、IL-6シグナル伝達の小分子阻害剤である。IL-6及びIL-6Rαは、バイナリ複合体を形成し、これは、GP130とさらに複合体形成し、2個のそのような三元複合体のヘテロ二量体化は、炎症促進性シグナルを含むシグナルを伝達することができる。バゼドキシフェンは、IL-6/GP130相互作用の阻害剤であり、したがって、IL-6シグナルの伝達を阻害することができる。
【0161】
ラロキシフェンは、シグナル伝達能力があるIL-6受容体複合体の形成に干渉することが理解される、IL-6シグナル伝達の小分子阻害剤である。ラロキシフェンは、IL-6/GP130相互作用の阻害剤であり、したがって、IL-6シグナルの伝達を阻害することができる。
【0162】
サリルマブは、IL-6受容体に結合しこれを遮断することによりインターロイキン-6(IL-6)経路を阻害する、完全ヒトモノクローナル抗体である。サリルマブは、IL-6受容体(可溶型及び膜結合型の両方;sIL-6R及びmIL-6R)に結合し、これにより、IL-6介在性シグナルの伝達を阻害する。
【0163】
トシリズマブは、IL-6Rの80kD構成成分に対し高い親和性でIL-6受容体に結合するヒト化IgG1モノクローナル抗体である。この結合はその後、膜結合gp130とIL-6/IL-6R複合体の二量体化を阻害し、シグナル伝達を防止する。これにより、トシリズマブは、IL-6介在性シグナルの伝達を阻害する。
【0164】
コルチコステロイド。1つまたは複数のコルチコステロイドが、本開示の免疫抑制レジメンに含まれてもよい。コルチコステロイドは、ホルモンコルチゾールとの構造的類似性を有する抗炎症剤である。コルチゾン及びヒドロコルチゾンは、ヒト副腎皮質によって天然に産生されるコルチコステロイド薬剤、またはその合成により産生されるアナログを指すことができる。コルチコステロイドの例としては、ベタメタゾン(bethamethasone)、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、パラメタゾン、デキサメタゾン、エタメタソネブ(ethamethasoneb)、フルドロコルチゾン、及びブデソニドも挙げられる。当業者であれば、これらがコルチコステロイドの代表例であり、コルチコステロイドの多くの例が、当該技術分野で周知であることを理解するであろう。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、グルココルチコイドである。いくつかの実施形態では、コルチコステロイドは、ミネラルコルチコイドである。ある特定の実施形態では、コルチコステロイドは、デキサメタゾンである。
【0165】
カルシニューリン阻害剤。ホスファターゼカルシニューリンの阻害剤は、例えば、リンパ球増殖を減少させることにより、免疫毒性を抑制することができる。例示的なカルシニューリン阻害剤は、タクロリムス及びシクロスポリン(cyclosporine)(あるいは、ciclosporinまたはcyclosporinと綴る)である。カルシニューリン阻害剤は、同種移植片拒絶を処置または低減させるために、臓器移植において免疫抑制性薬剤として使用されている。シクロスポリンは、環状ウンデカペプチド(endecapeptide)であり、一方、タクロリムスは、大環状ラクトンである。
【0166】
TNF-αシグナル阻害剤。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、腫瘍壊死因子(TNF)-αのアンタゴニストであり、及び/またはTNF-αシグナル伝達の阻害剤である薬剤であり得る。TNFは、炎症及び免疫応答に関与することができ、TNF受容体1(TNFR1)またはTNF受容体2(TNFR2)に結合することができる。その受容体のうちの少なくともいくつかに結合すると、TNFは、多数の炎症性サイトカインの産生を増加させることができる、NFkB及びMAPK経路を含む経路を誘発することができる。ある特定のTNF-αシグナル阻害剤は、サイトカインTNFに直接的に結合し、TNF受容体とのTNFの相互作用を阻害する。
【0167】
TNF-αシグナル阻害剤は、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、及びゴリムマブを含む。エタネルセプトは、2個のTNFR2受容体細胞外ドメイン及びヒトIgG1のFc断片の融合タンパク質である。エタネルセプトは、TNFRへのTNF-α及び/またはTNF-βの結合を阻害することができる。インフリキシマブは、可溶型及び膜貫通型のTNF-αに結合し、TNFRへのTNF-αの結合を阻害するキメラモノクローナル抗体である。アダリムマブ及びゴリムマブは、TNF-αに対する完全ヒトモノクローナル抗体であり、インフリキシマブと同様に、TNF-αに結合し、及び/またはTNFRへのTNF-αの結合を阻害する。セルトリズマブは、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされたヒト化Fab断片である。
【0168】
JAKシグナル阻害剤。さまざまな実施形態において、炎症性シグナル阻害剤は、ヤヌスキナーゼ(JAK)のアンタゴニストであり、及び/またはJAKシグナル伝達の阻害剤である薬剤であり得る。JAK1、JAK2、JAK3、及びTYK2を含むJAKは、炎症性機能を含むサイトカイン機能に関連する細胞質チロシンキナーゼである。JAKは、例えば、シグナル伝達因子及び転写活性化因子(STAT)などの分子の自己リン酸化及び/またはトランスリン酸化により、シグナルの伝達を媒介する。
【0169】
1つまたは複数のJAKのシグナル伝達を阻害する20種を超える阻害剤が、当該技術分野で公知である。すべてのJAK阻害剤が、JAKの同じサブセットをアンタゴナイズするとは限らない。例えば、限定することなく、本開示のいくつかのJAKシグナル阻害剤は、JAK1/2シグナル阻害剤である。例示的なJAK阻害剤は、バリシチニブ(JAK1及びJAK2を阻害する)、トファシチニブ(JAK3、JAK1、及びより少ない程度だがJAK2を阻害する)、ルキソリチニブ(JAK1及びJAK2を阻害する)、及びフィルゴチニブ(JAK1を阻害する)を含む。追加的なJAKシグナル阻害剤(例えば、JAK1/2シグナル阻害剤)は、当該技術分野で公知である。少なくともいくつかのさらなるJAKシグナル阻害剤は、JAK阻害剤に関して参照により本明細書に組み込まれる、Fragoulis (2019 Rheumatology 58(Suppl 1): i43-i54)に提供されている。
【0170】
T細胞活性化における共刺激シグナル伝達の阻害剤。さまざまな実施形態において、T細胞活性化における共刺激シグナル伝達の阻害剤は、アバタセプトである。アバタセプトは、ヒト細胞傷害性Tリンパ球抗原4の細胞外ドメイン、及びヒトIgG1のFcドメインの断片を含む組換え融合タンパク質である。アバタセプトは、少なくとも一部には、CD80/CD86への結合についてCD28と競合することにより作用し、完全なT細胞活性化に要求される第2の共刺激シグナルを調節する。アバタセプトは、少なくとも一部には、T細胞活性化のためのCD80/CD86-CD28共刺激シグナルを防止することにより作用する。
ウイルスベクター剤
【0171】
ウイルス遺伝子治療ベクター。本開示のウイルス遺伝子治療ベクターは、ウイルスベクターゲノムを含むビリオンを含み、このウイルスベクターゲノムは、外来性コード核酸配列を含むことができ、必要に応じて、外来性コード核酸配列は、治療ペイロード中に存在する。対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの投与は、ウイルス遺伝子治療ベクターのウイルスベクターゲノムを、対象に、例えば、対象の1つまたは複数の細胞に送達することができる。さまざまな実施形態において、ウイルスベクターゲノムまたはその治療ペイロードは、対象の1つまたは複数の細胞において発現され、及び/または対象の1つまたは複数の細胞のゲノム中に取り込まれる、外来性コード核酸配列を含む。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列は、対象の疾患、障害または状態の処置を含む、対象における所望の治療効果を達成することができるタンパク質などのタンパク質をコードする。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列は、対象の疾患、障害または状態の処置を含む、対象における所望の治療効果を達成することができる低分子干渉RNAなどの低分子干渉RNAをコードし、必要に応じて、治療効果は、タンパク質の発現の阻害によって媒介される。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列は、対象の疾患、障害または状態の処置を含む、対象における所望の治療効果を達成することができるmiRNAなどのmiRNAをコードし、必要に応じて、治療効果は、タンパク質の発現の阻害によって媒介される。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列は、対象の疾患、障害または状態の処置を含む、対象における所望の治療効果を達成することができる長鎖非コードRNAなどの長鎖非コードRNAをコードし、必要に応じて、治療効果は、発現制御クロマチン効果によって媒介される。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列は、対象の疾患、障害または状態の処置を含む、対象における所望の治療効果を達成することができるシングルガイドRNA(sgRNA)などのsgRNAをコードし、必要に応じて、治療効果は、少なくとも一部には、エンドヌクレアーゼ活性、例えば、CRISPR/Cas9の活性によって媒介される。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列は、対象の疾患、障害または状態の処置を含む、対象における所望の治療効果を達成することができるエンハンサーRNAなどのエンハンサーRNAをコードし、必要に応じて、治療効果は、遺伝子の発現増加によって媒介される。
【0172】
さまざまな実施形態において、ウイルスベクターゲノム及び/または治療ペイロードは、プロモーターまたは他の制御領域を含み、プロモーターまたは他の制御領域は、外来性コード核酸配列と作動可能に連結されている。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列は、対象の疾患、障害または状態の処置を含む、対象における所望の治療効果を達成することができる、Casタンパク質(例えば、Cas9、Cas12aもしくはCas14タンパク質を含むII型もしくはV型Casタンパク質、またはCas13などのVI型Casタンパク質)及びガイドRNA分子などのCRISPR系をコードする。さまざまな実施形態において、ウイルスベクターゲノム及び/または治療ペイロードは、1つまたは複数のプロモーターまたは他の制御領域を含み、プロモーター(複数可)または他の制御領域(複数可)は、外来性コード核酸配列と作動可能に連結されている。
【0173】
さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列またはこれを含む治療ペイロードは、例えば、造血幹細胞における、β-グロビン及び/もしくはγ-グロビンまたはそれらの機能的置換えの発現増加を引き起こす薬剤をコードすることができる。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列またはこれを含む治療ペイロードは、造血幹細胞における第VIII因子またはその機能的置換え(例えば、ET3)の発現増加を引き起こす薬剤をコードすることができる。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列またはこれを含む治療ペイロードは、遺伝子編集、例えば、所望の遺伝的病変補正を達成することができる、Casタンパク質(例えば、Cas9またはCas12aタンパク質を含むII型またはV型Casタンパク質)及びガイドRNA分子などのCRISPR系によって、鎌状赤血球貧血を引き起こす遺伝的病変の補正を引き起こす薬剤をコードすることができる。ウイルス遺伝子治療ベクターの例示的な適用は、例えば、特に、ウイルス遺伝子治療ベクター及びウイルス遺伝子治療の適用に関して、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2019年7月2日出願の米国仮特許出願第62/869,907号にさらに開示されている。
【0174】
下記の参考文献は、機能的グロビンアミノ酸配列、核酸配列、及び提供される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列の特定の例示的な配列を提供する。参考文献1~4は、α型グロビン配列に関し、参考文献4~12は、β型グロビン配列に関する(β及びγグロビン配列を含む):(1)GenBank受入番号Z84721(1997年3月19日);(2)GenBank受入番号NM_000517(2000年10月31日);(3)Hardison et al., J. Mol. Biol. 222(2):233-249, 1991;(4)A Syllabus of Human Hemoglobin Variants (1996)(Titus et al.による)(The Sickle Cell Anemia Foundation in Augusta, GAによって公開)(globin.cse.psu.eduでオンライン入手可);(5)GenBank受入番号J00179(1993年8月26日);(6)Tagle et al., Genomics 13(3):741-760, 1992;(7)Grovsfeld et al., Cell 51(6):975-985, 1987;(8)Li et al., Blood 93(7):2208-2216, 1999;(9)Gorman et al., J. Biol. Chem .275(46):35914-35919, 2000;(10)Slightom et al., Cell 21(3):627-638, 1980;(11)Fritsch et al., Cell 19(4): 959-972, 1980;(12)Marotta et al., J. Biol. Chem. 252(14):5040-5053, 1977。グロビンをコードする遺伝子のコード領域及び非コード領域の追加の情報については、例えば、Marotta et al.,Prog.Nucleic Acid Res.Mol.Biol.19,165-175,1976、Lawn et al.,Cell 21(3),647-651,1980、及びSadelain et al.,PNAS.92:6728-6732,1995を参照のこと。ヘモグロビンβサブユニットのアミノ酸配列の例は、例えば、NCBI受入番号P68871にて提供されている。β-グロビンのアミノ酸配列の例は、例えば、NCBI受入番号NP_000509にて提供されている。本開示は、本明細書に提供されるグロビンタンパク質のアミノ酸配列とのアミノ酸同一性%が少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、または少なくとも100%であるバリアントを含む、本明細書に提供されるグロビンタンパク質のバリアントを含む。
【0175】
さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列またはこれを含む治療ペイロードは、γC、JAK3、IL7RA、RAG1、RAG2、DCLRE1C、PRKDC、LIG4、NHEJ1、CD3D、CD3E、CD3Z、CD3G、PTPRC、ZAP70、LCK、AK2、ADA、PNP、WHN、CHD7、ORAI1、STIM1、CORO1A、CIITA、RFXANK、RFX5、RFXAP、RMRP、DKC1、TERT、TINF2、DCLRE1B、及びSLC46A1;FancA、FancB、FancC、FancD1(BRCA2)、FancD2、FancE、FancF、FancG、FancI、FancJ(BRIP1)、FancL、FancM、FancN(PALB2)、FancO(RAD51C)、FancP(SLX4)、FancQ(ERCC4)、FancR(RAD51)、FancS(BRCA1)、FancT(UBE2T)、FancU(XRCC2)、FancV(MAD2L2)、及びFancW(RFWD3)を含むFANCファミリー遺伝子;可溶性CD40;CTLA;Fas L;CD4、CD5、CD7、CD52などに対する抗体;IL1、IL2、IL6に対する抗体;自己反応性T細胞上に特異的に存在するTCRに対する抗体;IL4;IL10;IL12;IL13;IL1Ra、sIL1RI、sIL1RII;sTNFRI;sTNFRII;TNFに対する抗体;P53、PTPN22、及びDRB1*1501/DQB1*0602;グロビンファミリー遺伝子;WAS;phox;ジストロフィン;ピルビン酸キナーゼ;CLN3;ABCD1;アリールスルファターゼA;SFTPB;SFTPC;NLX2.1;ABCA3;GATA1;リボソームタンパク質遺伝子;TERT;TERC;DKC1;TINF2;CFTR;LRRK2;PARK2;PARK7;PINK1;SNCA;PSEN1;PSEN2;APP;SOD1;TDP43;FUS;ユビキリン(ubiquilin)2;ならびにC9ORF72から選択されるタンパク質をコードすることができる。
【0176】
さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列に作動可能に連結したプロモーター及び/または他の制御領域(複数可)を含む治療ペイロード、ならびにウイルス遺伝子治療は、外来性コード核酸配列が染色体外で発現されるように、患者に治療ペイロードを送達する。さまざまな実施形態において、外来性コード核酸配列に作動可能に連結したプロモーター及び/または他の制御領域(複数可)を含む治療ペイロード、ならびにウイルス遺伝子治療は、治療ペイロードが標的細胞のゲノム中に組み込まれるように、患者に治療ペイロードを送達する。
【0177】
ヒトウイルス遺伝子治療を含むウイルス遺伝子治療のためのさまざまなベクターは、当該技術分野で公知である。例示的なベクターは、アデノウイルス(Ad)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV、HSV1)、レトロウイルス(例えば、MLV、MMSV、MSCV)、レンチウイルス(例えば、HIV-1、HIV-2)、アルファウイルス(例えば、SFV、SIN、VEE、M1)、フラビウイルス(例えば、クンジン、ウエストナイル、デングウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病、VSV)、麻疹ウイルス(例えば、MV-Edm)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、及びピコルナウイルス(例えば、コクサッキーウイルス)を含む。
【0178】
アデノウイルス遺伝子治療ベクターは、当該技術分野で公知のさまざまな血清型のいずれかのものであり得る。アデノウイルス遺伝子治療ベクターの例としては、CD46を標的とするアデノウイルスベクターが挙げられる。アデノウイルス遺伝子治療ベクターの例としては、Ad5及びAd35が挙げられる。アデノウイルス遺伝子治療ベクターは、Ad5/35などの偽型アデノウイルスベクターであってもよい。アデノウイルス遺伝子治療ベクターは、CD46への結合が増強されたベクター、例えば、Ad35++またはAd5/35++アデノウイルスベクターであり得る。アデノウイルス遺伝子治療ベクターの例としては、アデノウイルス遺伝子治療ベクターに関して参照により本明細書に組み込まれる、2019年7月2日出願の米国出願第62/869,907号、及び2020年7月2日出願の国際出願番号PCT/US2020/040756号にさらに開示されている。
【0179】
AAV遺伝子治療ベクターは、当該技術分野で公知のさまざまな血清型のいずれかのものであり得る。場合によっては、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、及びAAV9から選択される。ある特定の場合では、ベクターが、ヒト細胞に感染することができる偽型ベクター、例えば、AAV2/1、AAV2/2、AAV2/5、AAV2/6、AAV2/7、AAV2/8、及びAAV2/9から選択される偽型ベクターであるという点において、AAV遺伝子治療ベクターは、偽型AAVベクターであってもよい。
【0180】
さまざまな実施形態において、ウイルス遺伝子治療ベクターは、ヘルパー依存型(HD)ウイルス遺伝子治療ベクターである。当該技術分野で周知の通り、天然ウイルスのゲノムに基づく遺伝子治療に適したウイルスベクターを操作する手段の1つは、複製欠損ウイルスを産生することである。複製欠損ウイルスは、対象に感染することができるが、その毒性は、自身が複製できないことによって限定され、対象における使用に特に適したものとなる。ウイルスベクターが対象に投与される場合、ウイルスベクター複製は望ましくない可能性があるが、複製は、治療的に有用な量のウイルスベクターの生成に要求されることがある。解決策の1つは、HDウイルス遺伝子治療ベクターまたはウイルスベクター治療のレシピエントのゲノムによってコードされないある特定のタンパク質の存在下でしか複製することができない、HDウイルス遺伝子治療ベクターの使用である。その代わりに、HDウイルス遺伝子治療ベクターの複製に要求される追加的なタンパク質は、ヘルパーウイルス、プラスミド、または他のヘルパー核酸からの発現によって提供される。パッケージングの方向付けの原因となるウイルスゲノムの領域(複数可)は、パッケージング配列もしくはシグナル(ψ)またはカプシド形成配列(E)と称することができる。ヘルパーゲノム、プラスミド、または他のヘルパー核酸は、パッケージングシグナルを含まないため、または条件的なパッケージングシグナルを含むため、ヘルパーは、ビリオン内にパッケージングされない。しかし、機能的なパッケージングシグナルを含むHDウイルスベクターゲノムは、HDウイルス遺伝子治療ベクター内にパッケージングされる。したがって、ヘルパーを使用して、追加的なタンパク質は、第1の文脈における(例えば、インビトロでの、例えば、細胞培養における)HDウイルス遺伝子治療ベクターの産生のために提供することができるが、HDウイルス遺伝子治療ベクター産物が対象に投与される場合には提供されない。
【0181】
ヘルパー依存型アデノウイルス(HDAd)ベクターは、HDウイルス遺伝子治療ベクターの例である。いくつかのHDAdベクター系では、1つのウイルスゲノム(ヘルパー)が複製に必要なタンパク質をすべてコードするが、パッケージング配列が条件的不完全化するものであり、これによって自体がビリオンにパッケージングされる可能性が低減されている。第2のウイルスゲノムは、ウイルス逆位末端反復配列(ITR)、治療ペイロード、及び正常パッケージング配列のみを含み、この正常パッケージング配列によって、この第2のウイルスゲノムをHDAdウイルスベクターへと選択的にパッケージングし、産生細胞から単離することが可能になる。HDAdウイルスベクターは、物理的手段によってヘルパーベクターからさらに精製され得る。一般に、HDAdウイルスベクター及びHDAdウイルスベクター製剤にはヘルパーベクター及び/またはヘルパーゲノムがいくらか混入し得るが、こうした混入は許容され得る。
【0182】
いくつかのHDAdベクター系では、ヘルパーゲノムにおいてCre/loxP系が利用される。ある特定のそのようなHDAdベクター系では、HDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムは、ベクターゲノム複製に必要なアデノウイルスITRと、カプシドへのベクターゲノムのカプシド形成に必要なパッケージング配列であるψと、を含む500bpの非コードアデノウイルスDNAを含む。HDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムは、その全長が約27.7kb~約37kbである場合に最も効率的にパッケージングされ得ることも観察されており、この全長は、例えば、治療ペイロード及び/または「スタッファー」配列から構成され得る。HDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムは、Creリコンビナーゼを発現する293細胞などの細胞に送達することができ、この場合、必要に応じて、HDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムは、細菌プラスミド形態などの非ウイルスベクター形態で細胞に送達される(例えば、HDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムは、細菌プラスミド(pHDAd)として構築され、制限酵素消化によって遊離される)。同じ細胞を、loxP部位によって隣接されたパッケージング配列を有するE1欠失型アデノウイルスベクターを含むことができるヘルパーゲノムで形質導入することができ、これにより、Creリコンビナーゼを発現する293細胞の感染後に、パッケージング配列が、loxP部位間でのCre介在性の部位特異的組換えによってヘルパーゲノムから切除される。したがって、HDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムを、Creを発現し、loxP部位によって隣接されたパッケージングシグナル(ψ)を有するヘルパーゲノムまたはベクターで形質導入またはトランスフェクトされた293細胞にトランスフェクトすることができ、その結果、ψのCre介在性の切除によってヘルパーウイルスゲノムは被パッケージング能力を有さなくなるが、依然として、HDAdの増殖に必要なトランス作用性因子のすべてを提供することができる。パッケージング配列の切除後に、ヘルパーゲノムは被パッケージング能力を有さないが、依然としてDNA複製を受けることができるため、HDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムの複製及びカプシド形成をトランスで補完する(trans-complement)ことができる。いくつかの実施形態では、293細胞内に存在するヘルパーゲノムとHDAdウイルス遺伝子治療ベクターゲノムとの間の相同組換えの結果として、複製能力があるAd(RCA;E1)の生成を防止するために、「スタッファー」配列をE3領域に挿入して、いかなるE1組換え体も、パッケージングされるには大きすぎるものにすることができる。FLP(例えば、FLPe)/frt部位特異的組換えを使用することで、類似のHDAd産生系が開発されており、それによると、ヘルパーゲノムのパッケージングシグナルに隣接するfrt部位間のFLP介在性の組換えが生じることで、FLP(例えば、FLPe)を発現する293細胞におけるヘルパーゲノムのカプシド形成に対する選択が生じる。ヘルパーベクターに対して選択するための代替戦略が開発されている。
【0183】
ウイルス遺伝子治療選択可能マーカー。さまざまな実施形態において、ウイルス遺伝子治療ベクターは、例えば、治療ペイロードに選択可能マーカーを含むウイルス遺伝子治療ベクターゲノムを含む。ウイルス遺伝子治療と組み合わせた選択可能マーカーの使用によって、ウイルス遺伝子治療ベクターで形質導入されており、及び/または遺伝子治療ベクターのゲノムによってコードされる少なくとも1つの選択可能マーカーを発現し、及び/または遺伝子治療ベクターのゲノムの治療ペイロードが宿主細胞のゲノムに組み込まれている、宿主細胞の選択が可能となり、この場合、治療ペイロードは、選択可能マーカーをコードする核酸を含む。
【0184】
さまざまな実施形態において、ウイルス遺伝子治療ベクターゲノムは、対象におけるインビボ選択に適した選択可能マーカーを含む。選択は、対象における宿主細胞の集団を、例えば、標的細胞集団の少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%まで増加させることができる。インビボ選択可能マーカーとしての薬物耐性遺伝子を含むことは、グラフトにおける改変されていない細胞に対し毒性がある薬物への曝露後の、遺伝子改変されたHSCの生着を増加させることができる。そのようなインビボ選択可能マーカーは、多剤耐性(MDR-1)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、及びO-メチルグアニン-DNAメチルトランスフェラーゼ(MGMT)の遺伝子を含む。単なる一例を挙げると、MGMTP140K選択可能マーカーを含むウイルス遺伝子治療ベクターによるウイルスベクター遺伝子治療は、O-ベンジルグアニン(OBG)及び1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ尿素(BCNU)(OBG/BCNU)、またはテモゾロミド(tremozolomide)の投与後に、マークされた宿主細胞の増加を実証する。
【0185】
さまざまな実施形態において、MGMTP140K選択可能マーカーを含むウイルス遺伝子治療ベクターと組み合わせたOBGなどの選択剤は、例えば、ウイルス遺伝子治療ベクターの対象への投与後に、対象に投与することができる。さまざまな実施形態において、選択剤は、対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの投与から、例えば、対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの第1の用量の投与から、または対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの最後の用量の投与から、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、または約15週間後のうちの1つまたは複数のいずれかに、対象に投与することができる。
【0186】
さまざまな実施形態において、造血幹細胞などの標的細胞集団のマーク(形質導入)が、10%未満、20%未満、30%未満、40%未満、50%未満、60%未満、70%未満、75%未満、80%未満、85%未満、90%未満、95%未満、または100%未満である場合、選択剤が対象に投与される。さまざまな実施形態において、造血幹細胞などの標的細胞集団のマークが、10%超、20%超、30%超、40%超、50%超、60%超、70%超、75%超、80%超、85%超、90%超、95%超、または100%超の場合、選択剤は対象に投与されず、及び/または選択剤の投与は中断される。さまざまな実施形態において、マークされた造血幹細胞のパーセンテージの数字は、骨髄吸引液におけるマークされたCD34細胞の分率に対して決定される。
【0187】
少なくとも、上述または本明細書の他の箇所に示すウイルス遺伝子治療ベクターの型のいずれかの対象への投与を含む、対象へのウイルス遺伝子治療ベクターの投与は、免疫毒性を引き起こすことができるため、当業者であれば、本明細書に開示されている免疫抑制レジメンが、対象に投与されるウイルス遺伝子治療ベクターの型に関係なく、一般にインビボ遺伝子治療の方法における使用に適用可能であることを認めるであろう。
【0188】
サポートベクター。ウイルス遺伝子治療ベクターは、宿主細胞ゲノムへの組み込みにトランスポゼースを必要とせず、単一のウイルスベクターゲノムに、標的細胞における外来性コード核酸配列の組み込み及び/もしくは発現に対する所望の、必要な及び/もしくは十分なすべての配列を含むベクターであり得る(「自給自足型(self-sufficient)ウイルス遺伝子治療ベクター」)、または単一のウイルスベクターゲノムに、標的細胞における外来性コード核酸配列の組み込み及び/もしくは発現に対する所望の、必要な及び/または十分なすべての配列を含まないベクターであり得る(「サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター」)。さまざまな場合では、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターは、標的細胞におけるサポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターのウイルスベクターゲノムの外来性コード核酸配列の組み込み及び/または発現を容易にする薬剤をコード及び/または発現するサポートベクターと組み合わせて、対象に投与される。
【0189】
いくつかの実施形態では、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターは、標的細胞ゲノムへのウイルスベクターゲノムの外来性コード核酸配列の組み込みに必要な少なくとも1つの薬剤を含まないウイルスベクターゲノムを有するウイルス遺伝子治療ベクターである。非限定的な一例を挙げると、いくつかの実施形態では、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターのウイルスベクターゲノムは、治療ペイロードを含み、対応するトランスポゼースの存在が、宿主細胞ゲノムへの治療ペイロードの組み込みを媒介することができるように、外来性コード核酸コード配列を含む核酸は、トランスポゼース逆方向反復配列によって隣接される。しかし、ある特定のそのような実施形態では、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターのウイルスベクターゲノムは、トランスポゼースをコードせず、トランスポゼース(transpose)は、宿主細胞において操作を行わなければまたは天然には存在しない。ある特定のそのような実施形態では、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターと組み合わせて対象に投与されるサポートベクターは、宿主細胞ゲノムへの治療ペイロードの組み込みを引き起こすことができる対応するトランスポゼースをコードするウイルスベクターゲノムを含むことができる。
【0190】
ある特定の特異的な実施形態では、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターゲノムは、治療ペイロードをトランスポゾンにする、sleeping beauty(SB)トランスポゼース逆方向反復配列により隣接された治療ペイロードを含み、サポートベクターは、宿主ゲノムへの治療ペイロードの組み込みを引き起こすSBトランスポゼースをコード及び発現する。さまざまな実施形態において、SBトランスポゼース逆方向反復配列を含む治療ペイロードトランスポゾンは、組換え部位により隣接され、この組換え部位は、リコンビナーゼに曝露されると、治療ペイロードトランスポゾンを含む核酸の環状化を引き起こし、この環状化は、SBトランスポゼースが宿主細胞ゲノムへの治療ペイロードの組み込みを媒介することができる効率を増加させる。さまざまな実施形態において、SBトランスポゼースは、SB10、SB11、SB100、またはSB100xである。
【0191】
例えば、別々のベクターにおいてコードされる薬剤の独立した用量設定が望まれる場合、またはベクター容量限界が、単一のベクターゲノムにおけるあらゆる所望の薬剤をコードする核酸配列を含むことを阻害する場合、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターを含むウイルスベクター遺伝子治療が有用であり得る。サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターを含むウイルスベクター遺伝子治療を施すことは、例えば、ある期間にわたる(例えば、単一の投与、時間、日または処置レジメンにおける)総用量として、単一のベクター種のみを利用するウイルスベクター遺伝子治療よりも高い投薬量の、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターが必要となり得る。当業者によって理解される通り、より高い用量(例えば、単位用量または総用量)のウイルスベクターは、より低い用量(例えば、単位用量または総用量)のウイルスベクター(例えば、同じベクター(単数または複数)の)の投与を含む参照と比較して、対象(複数可)に投与されたときに、より急速な、より重篤な、及び/またはより持続した免疫毒性応答の誘導をもたらすことができる。したがって、ウイルスベクター遺伝子治療による使用のための免疫抑制レジメンの一般的な必要性に加えて、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターを含むウイルスベクター遺伝子治療における使用のための免疫抑制レジメンの特別な必要性がある。
【0192】
サポートベクターは、上に示すもの、例えば、アデノウイルス(Ad)、アデノ随伴ウイルス(AAV)、単純ヘルペスウイルス(例えば、HSV、HSV1)、レトロウイルス(例えば、MLV、MMSV、MSCV)、レンチウイルス(例えば、HIV-1、HIV-2)、アルファウイルス(例えば、SFV、SIN、VEE、M1)、フラビウイルス(例えば、クンジン、ウエストナイル、デングウイルス)、ラブドウイルス(例えば、狂犬病、VSV)、麻疹ウイルス(例えば、MV-Edm)、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、ポックスウイルス、またはピコルナウイルス(例えば、コクサッキーウイルス)を限定することなく含む、いずれかの型のウイルスベクターであり得る。したがって、サポートベクターは、例えば、Ad5、Ad35、Ad5/35、Ad35++、またはAd5/35++ベクターを限定することなく含む、当該技術分野で公知のさまざまな血清型及び偽型のいずれかのAAV遺伝子治療ベクターまたはアデノウイルス遺伝子治療ベクターであり得る。
【0193】
さまざまな実施形態において、ウイルスベクター遺伝子治療は、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターを含み、この場合、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターは、同じウイルス型、クラス、血清型、または偽型のものである。さまざまな実施形態において、ウイルスベクター遺伝子治療は、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターを含み、この場合、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターは、2種の異なるウイルス型、クラス、血清型、または偽型のものである。少なくとも上述及び本明細書の他の箇所に示す理由のため、当業者であれば、本明細書に開示されている免疫抑制レジメンが、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターのウイルス型、クラス、血清型、または偽型に関係なく、同じであるか異なっているかにかかわらず、一般にサポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターを含むインビボ遺伝子治療の方法における使用に適用可能であることを理解するであろう。
【0194】
インビボ遺伝子治療レジメン。本開示のさまざまな実施形態では、インビボ遺伝子治療は、少なくとも1つの免疫抑制レジメンと組み合わせて少なくとも1つのウイルス遺伝子治療ベクターを対象に投与することを含む。複数のベクター種を含むインビボ遺伝子治療(サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターである第1のベクターと、サポートベクターである第2のベクターとを組み合わせて行うものなど)では、第1のベクター及び第2のベクターは、単一の製剤もしくは剤形において投与されるか、または2つの別々の製剤もしくは剤形において投与され得る。さまざまな実施形態において、第1のベクター及び第2のベクターは、同じ時刻または異なる時刻(例えば、同じ1時間の間または重複しない1時間の間)に投与され得る。さまざまな実施形態において、第1のベクター及び第2のベクターは、(例えば、同じ日または異なる日に)同じ時刻または異なる時刻に投与され得る。さまざまな実施形態において、第1のベクター及び第2のベクターは、同じ用量または異なる用量で投与することができ、例えば、この用量は、ウイルス粒子の総数または対象のキログラム当たりのウイルス粒子数として測定される。さまざまな実施形態において、第1のベクター及び第2のベクターは、予め定義された比で投与され得る。さまざまな実施形態において、この比は、2:1~1:2の範囲内のもの(例えば、1:1)である。
【0195】
さまざまな実施形態において、ベクターは、1日に単一の総用量で対象に投与される。さまざまな実施形態において、ベクターは、総用量を一緒に構成する2つ、3つ、4つ、またはそれを超える数の単位用量で投与される。さまざまな実施形態において、1日、2日、3日、4日、またはそれを超える連続日数の各日に、1日につき1単位用量のベクターが対象に投与される。さまざまな実施形態において、1日、2日、3日、4日、またはそれを超える連続日数の各日に、1日につき2単位用量のベクターが対象に投与される。したがって、さまざまな実施形態において、1日用量は、1日を通じて対象に投与されるベクターの用量を指し得る。さまざまな実施形態において、日という用語は、24時間(最初のカレンダー日付の午前0時から次のカレンダー日付の午前0時までの24時間など)を指す。
【0196】
さまざまな実施形態において、ベクター(ウイルス遺伝子治療ベクターまたはサポートベクターなど)の単位用量、1日用量、もしくは総用量、またはウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターの総統合用量は、キログラム当たりのウイルス粒子数(vp/kg)で、少なくとも1E8、少なくとも5E8、少なくとも1E9、少なくとも5E9、少なくとも1E10、少なくとも5E10、少なくとも1E11、少なくとも5E11、少なくとも1E12、少なくとも5E12、少なくとも1E13、少なくとも5E13、少なくとも1E14、または少なくとも1E15であり得る。さまざまな実施形態において、ベクター(ウイルス遺伝子治療ベクターまたはサポートベクターなど)の単位用量、1日用量、もしくは総用量、またはウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターの総統合用量は、1E8、5E8、1E9、5E9、1E10、5E10、1E11、5E11、1E12、5E12、1E13、5E13、1E14、または1E15から選択される下限(vp/kg)及び1E8、5E8、1E9、5E9、1E10、5E10、1E11、5E11、1E12、5E12、1E13、5E13、1E14、または1E15から選択される上限(vp/kg)を有する範囲に入るものであり得る。
【0197】
さまざまな実施形態において、ウイルス遺伝子治療ベクターは、少なくとも1E10vp/kg、少なくとも5E10vp/kg、少なくとも1E11vp/kg、少なくとも5E11vp/kg、少なくとも1E12vp/kg、少なくとも5E12vp/kg、少なくとも1E13vp/kg、少なくとも5E13vp/kg、少なくとも1E14vp/kg、または少なくとも1E15vp/kgの単位用量、1日用量、または総用量で投与され、サポートベクターは、少なくとも1E8vp/kg、少なくとも5E8vp/kg、少なくとも1E9vp/kg、少なくとも5E9vp/kg、少なくとも1E10vp/kg、少なくとも5E10vp/kg、少なくとも1E11vp/kg、及び少なくとも5E11vp/kgの単位用量、1日用量、または総用量で投与され、必要に応じて、ウイルス遺伝子治療ベクターの単位用量、1日用量、もしくは総用量は、1E10、5E10、1E11、5E11、1E12、及び5E12から選択される下限(vp/kg)ならびに1E11、5E11、1E12、5E12、1E13、5E13、1E14、及び1E15から選択される上限(vp/kg)を有する範囲に入り、ならびに/またはサポートベクターの単位用量、1日用量、もしくは総用量は、1E8、5E8、1E9、5E9、1E10、及び5E10から選択される下限(vp/kg)ならびに1E9、5E9、1E10、5E10、1E11、及び5E11から選択される上限(vp/kg)を有する範囲に入る。
【0198】
さまざまな実施形態において、サポートベクターは、少なくとも1E10vp/kg、少なくとも5E10vp/kg、少なくとも1E11vp/kg、少なくとも5E11vp/kg、少なくとも1E12vp/kg、少なくとも5E12vp/kg、少なくとも1E13vp/kg、少なくとも5E13vp/kg、少なくとも1E14vp/kg、または少なくとも1E15vp/kgの単位用量、1日用量、または総用量で投与され、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターは、少なくとも1E8vp/kg、少なくとも5E8vp/kg、少なくとも1E9vp/kg、少なくとも5E9vp/kg、少なくとも1E10vp/kg、少なくとも5E10vp/kg、少なくとも1E11vp/kg、及び少なくとも5E11vp/kgの単位用量、1日用量、または総用量で投与され、必要に応じて、サポートベクターの単位用量、1日用量、もしくは総用量は、1E10、5E10、1E11、5E11、1E12及び5E12から選択される下限(vp/kg)ならびに1E11、5E11、1E12、5E12、1E13、5E13、1E14、及び1E15から選択される上限(vp/kg)を有する範囲に入り、ならびに/またはサポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクターの単位用量、1日用量、もしくは総用量は、1E8、5E8、1E9、5E9、1E10及び5E10から選択される下限(vp/kg)ならびに1E9、5E9、1E10、5E10、1E11、及び5E11から選択される上限(vp/kg)を有する範囲に入る。さまざまな実施形態において、サポートを受けるウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターは、予め定義された比で投与される。さまざまな実施形態において、この比は、2:1~1:2の範囲内のもの、例えば、1:1である。
【0199】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンが対象に施され、この対象には、少なくとも1つのウイルス遺伝子治療ベクターの投与も行われ、この免疫抑制レジメンは、少なくとも1つの免疫抑制剤を対象に投与することを含み、この投与の実施日は、(i)ウイルス遺伝子治療ベクターの第1の用量が対象に投与される前の1日もしくは複数日;(ii)ウイルス遺伝子治療ベクターの第1の用量の投与と同じ日;(iii)ウイルス遺伝子治療ベクターの第2の用量もしくは他の後続用量の1つまたは複数が投与される日と同じ日;及び/または(iv)ウイルス遺伝子治療ベクターの第1の用量の対象への投与と、ウイルス遺伝子治療ベクターの第2の用量もしくは他の後続用量の1つまたは複数のいずれかもしくはそうした用量のすべての投与と、の間に介在する日の1日もしくは複数日のいずれかもしくはそうした介在日のすべて、である。
【0200】
ウイルスベクター遺伝子治療と併せて対象に投与される免疫抑制レジメンは、炎症性シグナル阻害剤であるいずれかの薬剤を含む免疫抑制レジメンを含むことができる。ウイルスベクター遺伝子治療と併せて対象に投与される免疫抑制レジメンは、(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤などの炎症性シグナル阻害剤;(ii)IL-6シグナル阻害剤;(iii)コルチコステロイド;(iv)カルシニューリン阻害剤;(v)TNF-αシグナル阻害剤;及び(vi)JAKシグナル阻害剤のうちの1種、2種、3種、4種、5種、または6種のいずれかから選択される免疫抑制剤を含むことができ;これらのうちのいずれかまたはすべては、存在する場合、別個の免疫抑制剤レジメンに従って投与することができる。ある特定の実施形態では、ウイルスベクター遺伝子治療と併せて対象に投与される免疫抑制レジメンは、(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤;(ii)IL-6シグナル阻害剤;(iii)コルチコステロイド;及び(iv)カルシニューリン阻害剤のうちの1種、2種、3種、または4種のいずれかから選択される免疫抑制剤を含むことができ;これらのうちのいずれかまたはすべては、存在する場合、別個の免疫抑制剤レジメンに従って投与することができる。
【0201】
異なる免疫抑制剤クラスの第1の免疫抑制剤及び少なくとも第2の免疫抑制剤など、複数の免疫抑制剤を含む免疫抑制レジメンを含むインビボ遺伝子治療において、各免疫抑制剤は、1つまたは複数の他の免疫抑制剤と共に単一の製剤もしくは剤形において、または複数の別々の製剤もしくは剤形において投与することができる。さまざまな実施形態において、各免疫抑制剤は、1つまたは複数の他の免疫抑制剤と同じ時刻に、または異なる時刻に、例えば、同じ1時間の間または重複しない1時間の間に投与することができる。さまざまな実施形態において、各免疫抑制剤は、1つまたは複数の他の免疫抑制剤と同じ時刻または異なる時刻に、例えば、同じ日または異なる日に投与することができる。
【0202】
さまざまな実施形態において、免疫抑制剤は、1日に単一の総用量で対象に投与される。さまざまな実施形態において、免疫抑制剤は、総用量を一緒に構成する2つ、3つ、4つ、またはそれを超える数の単位用量で投与される。さまざまな実施形態において、1日、2日、3日、4日、またはそれを超える連続日数の各日に、1日につき1単位用量の免疫抑制剤が対象に投与される。さまざまな実施形態において、1日、2日、3日、4日、またはそれを超える連続日数の各日に、1日につき2単位用量の免疫抑制剤が対象に投与される。したがって、さまざまな実施形態において、1日用量は、1日を通じて対象に投与される免疫抑制剤の用量を指し得る。
【0203】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンは、IL-1受容体アンタゴニスト、例えば、アナキンラなどのインターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤を含む。さまざまな実施形態において、IL-1受容体アンタゴニスト、例えば、アナキンラなどのインターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤は、(i)ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1、2、もしくはそれよりも多い日数の毎日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、IL-1受容体アンタゴニスト、例えば、アナキンラなどのインターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤は、(i)ベクターの第1の用量の投与の日に、及び(ii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、IL-1シグナル阻害剤、例えば、アナキンラは、これらの日のそれぞれに2回、例えば、午前に1回と午後に1回、対象に投与される。
【0204】
さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤は、ベクターの1つまたは複数の用量の1~10時間前に(例えば、ベクターの投与の約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10時間前に、例えば、ベクターの1つまたは複数の用量の約1~10、1~9、1~8、1~7、1~6、1~5、1~4、1~3、1~2、0~1、3~10、3~9、3~8、3~7、3~6、3~5、3~4、または0~3時間前に)投与される。ある特定の実施形態では、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤の用量は、ベクターの第1の用量の投与の1~3時間前に投与される。ある特定の実施形態では、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤の用量は、ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の1~3時間前に投与される。
【0205】
さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤は、ベクターの1つまたは複数の用量の投与前の約1時間以内に(例えば、ベクターの1つまたは複数の用量の投与前約60、45、30、25、20、15、10、5、4、3、2、または1分以内に)投与される。さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤は、静脈内に投与される。さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤は、皮下に投与される。さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤は、ベクターの第1の用量の投与の約1~10(例えば、約1~3)時間前に、皮下に投与される。さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1シグナル阻害剤は、ベクターの1つまたは複数の用量の投与前約1時間以内に(例えば、ベクターの1つまたは複数の用量の投与前約60、45、30、25、20、15、10、5、4、3、2、または1分以内に)、静脈内に投与される。
【0206】
さまざまな実施形態において、IL-1シグナル阻害剤は、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストであり、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの1日用量は、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、もしくは20mg/kg/日であるか、または少なくともその値である。ある特定の実施形態では、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの用量は、0.01~20、0.01~10、または001~5mg/kg/日である。ある特定の実施形態では、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの用量は、1~2、1~4、1~6、1~8、または1~10mg/kg/日である。さまざまな実施形態において、IL-1シグナル阻害剤は、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストであり、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの1日用量は、1~8mg/kg/日である。ある特定の実施形態では、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの用量は、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、125、150、175、もしくは200mg/日であるか、または少なくともその値である。ある特定の実施形態では、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの用量は、10~200、20~200、30~175、40~175、50~150、60~150、80~125、90~125、または100mg/日である。さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの1日用量は、下限が10、20、30、40、50、60、70、80、90、または100mg/日及び上限が100、125、150、175、または20mg/日である範囲を有する。さまざまな実施形態において、アナキンラまたは別のIL-1Rアンタゴニストの1日用量は、100mg/日である。さまざまな実施形態において、1日用量は、1日用量の半分をそれぞれ、2回の個別投与で、例えば、午前中に1回と午後に1回、対象に投与される。
【0207】
アナキンラ以外の他のIL-1シグナル阻害剤は、例えば、ADC-1001(Alligator Bioscience)、FX-201(Flexion Therapeutics)、GQ-303(Genequine Biotherapeutics GmbH)、HL-2351(Handok, Inc.)、MBIL-1RA(ProteoThera, Inc.)、及びヒト免疫グロビンGまたはGlobulin S(GC Pharma)を含む。
【0208】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンは、IL-6シグナル阻害剤、例えば、トシリズマブを含む。さまざまな実施形態において、IL-6シグナル阻害剤、例えば、トシリズマブは、(i)ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1、2、もしくはそれよりも多い日数の毎日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、IL-6シグナル阻害剤、例えば、トシリズマブは、(i)ベクターの第1の用量の投与の日に、及び(ii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、IL-6シグナル阻害剤、例えば、トシリズマブは、これらの日の毎日に2回、例えば、午前中に1回と午後に1回、対象に投与される。さまざまな実施形態において、トシリズマブまたは別のIL-6シグナル阻害剤は、ベクターの1つまたは複数の用量の投与前約1時間以内に(例えば、ベクターの1つまたは複数の用量の投与前約60、45、30、25、20、15、10、5、4、3、2、または1分以内に)投与される。
【0209】
さまざまな実施形態において、IL-6シグナル阻害剤はトシリズマブであり、トシリズマブの1日用量は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、もしくは200mg/日であるか、または少なくともその値である。さまざまな実施形態において、トシリズマブの1日用量は、下限が1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mg/日及び上限が15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、または200mg/日である範囲を有する。さまざまな実施形態において、IL-6シグナル阻害剤はトシリズマブであり、トシリズマブの1日用量は、0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、もしくは50mg/kg/日であるか、または少なくともその値である。さまざまな実施形態において、トシリズマブの1日用量は、下限が0.1、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20mg/kg/日及び上限が15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50mg/kg/日である範囲を有する。さまざまな実施形態において、トシリズマブの1日用量は、1~15、1~12、1~10、1~5、5~10、5~12、または5~15mg/kg/日の範囲を有する。さまざまな実施形態において、トシリズマブの用量、例えば、1日用量または1週間用量は、162mgである。さまざまな実施形態において、1日用量は、1日用量の半分をそれぞれ、2回の個別投与で、例えば、午前中に1回と午後に1回、対象に投与される。
【0210】
トシリズマブ以外の他のIL-6シグナル阻害剤には、BCD-089(Biocad)、HS-628(Zhejiang Hisun Pharm)、及びAPX-007(Apexigen)が含まれる。
【0211】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンには、コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾンが含まれる。さまざまな実施形態において、コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾンは、(i)ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1、2、もしくはそれよりも多い日数の毎日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾンは、(i)ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、及び(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾンは、これらの日数の最初に1回、例えば、午後に及び他の日の毎日に2回、例えば、午前中に1回及び午後に1回、対象に投与される。
【0212】
さまざまな実施形態において、コルチコステロイドはデキサメタゾンであり、デキサメタゾンの1日用量は、0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、7.5、10.0、12.5、もしくは15mg/kg/日であるか、または少なくともその値である。さまざまな実施形態において、デキサメタゾンの1日用量は、下限が0.01、0.05、0.1、0.5、1、1.5、2、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、または5.0mg/kg/日及び上限が5.0、7.5、10.0、12.5、または15mg/kg/日である範囲を有する。さまざまな実施形態において、1日用量は、1日用量の半分をそれぞれ、2回の個別投与で、例えば、午前中に1回と午後に1回、対象に投与される。
【0213】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンには、カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムスが含まれる。さまざまな実施形態において、カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムスは、(i)ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、(iv)ベクターの第1の用量の投与の日とベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または(v)ベクターの最後の用量の投与の日の後の1、2、もしくはそれよりも多い日数の毎日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムスは、ベクターの第1の用量の投与の4日前に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、(iv)ベクターの最後の用量の投与後の2日間の毎日に、及び必要に応じて、(v)1、2、またはそれよりも多い追加の日数の毎日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムスは、これらの日の毎日に2回、例えば、午前中に1回と午後に1回、対象に投与される。
【0214】
さまざまな実施形態において、カルシニューリン阻害剤はタクロリムスであり、タクロリムスの1日用量は、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5mg/kg/日であるか、または少なくともその値である。さまざまな実施形態において、タクロリムスの1日用量は、下限が、0.001、0.005、0.01、0.02、0.03、0.04、または0.05mg/kg/日及び上限が0.02、0.03、0.04、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、または0.5mg/kg/日である範囲を有する。さまざまな実施形態において、1日用量は、1日用量の半分をそれぞれ、2回の個別投与で、例えば、午前中に1回と午後に1回、対象に投与される。
【0215】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンは、本明細書に開示されるように、(i)IL-1受容体アンタゴニストなどのインターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤、(ii)IL-6シグナル阻害剤、(iii)コルチコステロイド、及び(iv)カルシニューリン阻害剤のそれぞれを含む。さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンは、本明細書に開示されるように、(i)アナキンラ、(ii)トシリズマブ、(iii)デキサメタゾン、及び(iv)タクロリムスのそれぞれを含む。
【0216】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメン、またはその免疫抑制剤の投与は、免疫毒性バイオマーカーの測定されたレベルに基づき、マーカーレベルが、参照(同じ対象からの初期試料におけるバイオマーカーの測定されたレベルなど)に対して免疫毒性及び/または免疫毒性の増加を指し示す場合、免疫抑制剤、または免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の用量の量及び/または頻度は増加され(例えば、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度、及び/または用量の総数の増加)、マーカーレベルが、参照(同じ対象からの初期試料におけるバイオマーカーの測定されたレベルなど)に対して免疫毒性の不在及び/または免疫毒性の低下を指し示す場合、量及び/または頻度は減少される。免疫毒性バイオマーカーは、IL-Ιβ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-30、IL-36、IL-1Ra、IL-2R、IFN-a、IFN-b、IFN-γ、MIP-Ia、ΜΙΡ-Ιβ、MCP-1、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、G-CSF、CXCL9、CXCL10、VEGF、RANTES、EGF、HGF、FGF-β、CD40、CD40L、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、フェリチン、Dダイマー、リンパ球の総集団、リンパ球の亜集団、対象温度、及びこれらの組合せのレベルの1つまたは複数のいずれかを含み得る。バイオマーカーは、ウイルス遺伝子治療ベクター及び/または免疫抑制剤の1つまたは複数の用量の投与前、投与中、または投与後に測定され得る。
【0217】
ある特定の実施形態では、免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンは、ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、対象または対象由来の試料における免疫毒性バイオマーカーの測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度及び/または用量の総数が増加され、測定されたレベルが、有意な、高い、もしくは増加した免疫毒性(例えば、参照と比較した場合)を指し示す場合、1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンが増加される、及び/または測定されたレベルが、低い、無い、または低下した免疫毒性(例えば、参照と比較した場合)を指し示す場合、減少される。いくつかの実施形態では、免疫毒性バイオマーカーは、IL-Ιβ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-30、IL-36、IL-1Ra、IL-2R、IFN-a、IFN-b、IFN-γ、MIP-Ia、ΜΙΡ-Ιβ、MCP-1、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、G-CSF、CXCL9、CXCL10、VEGF、RANTES、EGF、HGF、FGF-β、CD40、CD40L、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、フェリチン、Dダイマー、リンパ球の総集団、リンパ球の亜集団、対象温度、及びこれらの組合せから選択される。
【0218】
ある特定の実施形態では、免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンは、ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、対象または対象由来の試料におけるウイルス遺伝子治療ベクターに対する抗体の測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度及び/または用量の総数が増加され、測定されたレベルが、有意な、高い、もしくは増加した免疫毒性(例えば、参照と比較した場合)を指し示す場合、1つまたは複数の免疫抑制剤の投薬レジメンが増加される、及び/または測定されたレベルが、低い、無い、もしくは低下した免疫毒性(例えば、参照と比較した場合)を指し示す場合、減少され、必要に応じて、測定されたレベルが、抗体価であり、必要に応じて、抗体が、中和抗体である。抗体レベル(例えば、抗体力価)を測定する手段は当該技術分野で知られており、限定されないが、酵素結合免疫測定法(ELISA)を含む。
【0219】
さまざまな実施形態において、本開示のインビボ遺伝子治療レジメンは、幹細胞動員レジメンをさらに含み、幹細胞動員レジメンは、対象に、治療的に利用不可能な幹細胞を治療的に利用可能にする1つまたは複数の薬剤を投与することを含む。例えば、対象に幹細胞動員治療を投与することによって、造血幹細胞の循環が増加し、及び/または骨髄において隔絶された造血幹細胞が動員され、骨髄をコンパートメント中に排出し、これらは、ウイルス遺伝子治療ベクターによるインビボ形質導入に利用可能である。造血幹細胞は、CD46に結合するアデノウイルス遺伝子治療ベクターなどの造血幹細胞に結合する、例えば、ウイルス遺伝子治療ベクターの、標的細胞であり得る。幹細胞動員剤の例には、限定されないが、幹細胞因子(SCF)、小分子VLA-4阻害剤BIO5192、BOP(N-(ベンゼンスルホニル)-L-プロリル-L-O-(1-ピロリジニルカルボニル)チロシン)、ヘパリン、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、及びプレリキサホル/AMD3100が含まれる。
【0220】
さまざまな実施形態において、幹細胞動員レジメンは、G-CSF及びプレリキサホル/AMD3100の投与を含む。さまざまな実施形態において、G-CSFは、(i)ベクターの第1の用量の投与に先立つ4日間の毎日に、(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、及び(iii)ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、プレリキサホル/AMD3100は、(i)ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、及び(ii)ベクターの第1の用量の投与の日に、対象に投与される。さまざまな実施形態において、G-CSFは、10、20、30、40、50、75、100、150、もしくは200ug/kgであるか、または少なくともその値である用量で、1日に1回投与される。さまざまな実施形態において、G-CSFの1日用量は、下限が10、20、30、40、50、または75ug/kg/日及び上限が100、150、または200ug/kg/日である範囲を有する。さまざまな実施形態において、プレリキサホル/AMD3100は、1、2、3、4、5、7.5、10、15、もしくは20mg/kgであるか、または少なくともその値である用量で、1日に1回投与される。さまざまな実施形態において、G-CSFの1日用量は、下限が、1、2、3、4、5、または7.5mg/kg/日及び上限が10、15、または20mg/kg/日である範囲を有する。
【0221】
さまざまな実施形態。本開示のさまざまな実施形態において、インビボ遺伝子治療は、本開示の少なくとも1つのウイルス遺伝子治療ベクター、例えば、アデノウイルス遺伝子治療ベクター(例えば、Ad5、Ad35、Ad5/35、Ad35++及びAd5/35++などのCD46に結合する、本明細書に記載されるアデノウイルスサポートベクターと組み合わせたサポートを受けるアデノウイルス遺伝子治療ベクターなど(これらのヘルパー依存型バージョンを含む)で、例えば、2つのベクターが、2日の連続日数、例えば、これらの日数のそれぞれの午前中に、1:1の比で一緒に投与されるもの)の、以下のものと組み合わせた対象への投与を含む:(a)(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤などの炎症性シグナル阻害剤、例えば、アナキンラ(例えば、ベクターの第1の用量の投与の日に、及びベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、例えば、これらの日数のそれぞれに2回、例えば、午前中に1回及び午後に1回であって、投与される1日用量は本明細書に記載された通りである);(ii)IL-6シグナル阻害剤、例えば、トシリズマブ(例えば、ベクターの第1の用量の投与の日に、及びベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、例えば、これらの日数のそれぞれに2回、例えば、午前中に1回及び午後に1回であって、投与される1日用量は本明細書に記載された通りである);(iii)コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾン(例えば、ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、ベクターの第1の用量の投与の日に、及びベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、例えば、これらの日数の最初に1回、例えば、午後に及び他の日数のそれぞれに2回、例えば、午前中に1回及び午後に1回であって、投与される1日用量は本明細書に記載された通りである)、及び(iv)カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムス(例えば、ベクターの第1の用量の投与に先立つ4日間に、ベクターの第1の用量の投与の日に、ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、ベクターの最後の用量の投与の後の2日間の毎日に、及び必要に応じて、1、2、またはそれよりも多い追加の日数の毎日にであって、例えば、これは、これらの日数のそれぞれに2回、例えば、午前中に1回及び午後に1回対象に投与され、投与される1日用量は本明細書に記載された通りである)を含む免疫抑制レジメン、(b)造血幹細胞の循環を増加させる、及び/または骨髄において隔絶された造血幹細胞を動員して、骨髄をコンパートメント中に排出する(これらは、ベクターによるインビボ形質導入に利用可能である)レジメンなどの幹細胞動員レジメン、例えば、(i)G-CSFが、ベクターの第1の用量の投与に先立つ4日間の毎日に、ベクターの第1の用量の投与の日に、及びベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、対象に投与され、例えば、G-CSFが、午前中になどのこれらの日数の毎日に1回投与され、投与される1日用量が本明細書に記載された通りである、ならびに(ii)プレリキサホル/AMD3100が、ベクターの第1の用量の投与に先立つ日に、及びベクターの第1の用量の投与の日に、対象に投与され、例えば、プレリキサホル/AMD3100が、午後になどのこれらの日数の毎日に1回(またはベクターの第1及び第2の用量の9~11時間前に)投与され、投与される1日用量が本明細書に記載された通りである、レジメンなどの、G-CSF及びプレリキサホル/AMD3100を含む幹細胞動員レジメン、ならびに(c)ベクターによってインビボで形質導入された造血幹細胞を選択するレジメンなどの選択レジメン、例えば、O-ベンジルグアニン(OBG)及び1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ-ウレア(BCNU)(OBG/BCNU)を含む選択レジメン、例えば、OBG/BCNUが、ベクターの第1の用量の投与の日の後の4週目、6週目(必要に応じて)、及び8週目(必要に応じて)に(必要に応じて、形質導入細胞に関するさらなる選択が必要とされる場合は、その後に、追加の2週間間隔で)投与されるレジメン。
【0222】
製剤及び投与。ベクターは、細胞または動物(例えば、ヒト)に投与する上で医薬的に許容可能となるように製剤化され得る。ベクターは、インビボで投与され得る。さまざまな場合において、ベクターは、医薬的に許容可能な担体または添加物を含むように製剤化され得る。医薬的に許容可能な担体の例としては、限定されないが、いずれか及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、ならびに生理学的に適合性の同様のものが挙げられる。本発明の組成物は、医薬的に許容可能な塩(例えば、酸付加塩または塩基付加塩)を含み得る。
【0223】
さまざまな実施形態において、本明細書に記載の免疫抑制剤を含む医薬組成物(例えば、注射用滅菌製剤)は、媒体として注射用蒸留水を使用する通常の薬務に従って製剤化され得る。例えば、生理食塩水、またはグルコース及び他の添加物質(D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、及び塩化ナトリウムなど)を含む等張溶液を注射用水溶液として使用することができ、任意選択で、適切な可溶化剤(例えば、アルコール(エタノール及び多価アルコール(プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)など)ならびに非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80(商標)、HCO-50、及び同様のものなど))と組み合わせて使用することができる。
【0224】
本明細書に開示されるように、組成物は当該技術分野で知られる任意の形態で存在し得る。そのような形態には、例えば、液体剤形、半固体剤形、及び固体剤形(溶液(例えば、注射用溶液及び注入用溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム、ならびに坐剤など)が含まれる。
【0225】
いずれかの具体的な形態の選択または使用は、部分的には、所期の投与様式及び治療用途に依存し得る。例えば、全身送達または局所送達が意図される組成物を含む組成物は、注射用溶液または注入用溶液の形態であり得る。したがって、ベクターは、非経口様式による投与(例えば、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、または筋肉内注射)向けに製剤化され得る。本明細書で使用される非経口投与は、腸内投与及び局所投与以外の投与様式(通常は注射によるもの)を指し、非経口投与には、限定されないが、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内、及び胸骨内(intrasternal)への注射及び注入が含まれる。非経口投与経路は、例えば、注射、経鼻投与、経肺動脈投与、または経皮投与による投与であり得る。投与は、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射による全身性または局所性のものであり得る。
【0226】
さまざまな実施形態において、本発明のベクターは、溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、または高濃度での安定保管に適した他の秩序構造として製剤化され得る。滅菌注射用溶液は、本明細書に記載の組成物を必要量で(必要に応じて、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に)適切な溶媒に含めた後にろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、基礎分散媒体及び上に列挙したものから選択される他の必要成分を含む滅菌媒体に本明細書に記載の組成物を含めることによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法には、本明細書に記載の組成物+任意の所望の追加成分(以下を参照のこと)をその事前滅菌ろ過溶液から粉末にする真空乾燥及びフリーズドライが含まれる。溶液の適切な流動性は、例えば、コーティング剤(レシチンなど)を使用すること、分散液の場合は必要粒度を維持すること、及び界面活性剤を使用すること、によって維持され得る。注射用組成物の吸収の持続化は、吸収を遅延させる試薬(例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチン)を組成物に含めることによって達成され得る。
【0227】
ベクターは、水または別の医薬的に許容可能な液体における滅菌溶液または滅菌懸濁液を含む注射用製剤の形態で非経口的に投与され得る。例えば、ベクターは、医薬的に許容可能な媒介物または媒体(滅菌水及び生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定化剤、香味付け用添加物、希釈剤、媒介物、保存剤、結合剤など)と治療用分子とを適切に組み合わせた後、一般的に認められた薬務に必要な単位剤形において混合することによって製剤化され得る。ベクターは、指定の範囲に入る適切な用量となる量で医薬調製物に含められる。油性液体の例としては、限定されないが、ゴマ油及び大豆油が挙げられ、油性液体は、可溶化剤としての安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと混合され得る。含められ得る他の物品は緩衝剤であり、こうした緩衝剤は、リン酸緩衝剤または酢酸ナトリウム緩衝剤、無痛化剤(プロカイン塩酸塩など)、安定化剤(ベンジルアルコールまたはフェノールなど)、及び抗酸化剤などである。製剤化された注射用物は、適切なアンプル中に包装され得る。
【0228】
さまざまな実施形態において、皮下投与は、デバイスによって達成することができ、こうしたデバイスは、シリンジ、充填済みシリンジ、自己注射器(例えば、使い捨てまたは再利用が可能なもの)、ペン型注射器、パッチ注射器、ウェアラブル注射器、皮下注入セットを備えた携帯型シリンジ注入ポンプ、または他の皮下注射用デバイスなどである。
【0229】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のベクターは、局所投与によって対象に治療的に送達され得る。本明細書で使用される「局所投与」または「局所送達」は、ベクターがその所期の標的組織または標的部位へと血管系を介して輸送されることに依存しない送達を指し得る。例えば、ベクターは、組成物もしくは薬剤を注射もしくは埋め込むことによって送達されるか、または組成物もしくは薬剤を含むデバイスを注射もしくは埋め込むことによって送達され得る。ある特定の実施形態では、組成物もしくは薬剤またはその1つ以上の構成成分は、標的組織または標的部位の近傍への局所投与後に、投与部位ではない所期の標的組織または標的部位へと拡散し得る。
【0230】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は単位剤形中に存在し、この単位剤形は自己投与に適したものであり得る。そのような単位剤形は、容器に含めて提供することができ、この容器は、典型的には、例えば、バイアル、カートリッジ、充填済みシリンジ、または使い捨てペンである。doser(米国特許第6,302,855号に記載のdoserデバイスなど)も(例えば、本明細書に記載の注射系と共に)使用され得る。
【0231】
注射に適した医薬形態のベクター製剤は、滅菌水溶液または滅菌分散液を含み得る。製剤は、滅菌されたものであり得、シリンジの内外で適切に流動することが可能な流体でなくてはならない。製剤は、製造及び保存の条件の下でも安定であり得る。担体は、溶媒または分散媒体であり得、こうした溶媒または分散媒体は、例えば、水及び生理食塩水または緩衝水溶液を含む。製剤中では、好ましくは、等張剤(例えば、糖または塩化ナトリウム)が使用され得る。
【0232】
さらに、当業者なら追加の送達方法も企図し得るであろう。こうした送達方法は、電気穿孔法によるもの、ソノフォレーシス法によるもの、骨内注入法によるもの、または遺伝子銃を使用することによるものであり得る。ベクターは、マイクロチップ、ナノチップ、またはナノ粒子にも埋め込まれ得る。
【0233】
本明細書に記載のベクターの適切な用量は、さまざまな要因に依存し得、こうした要因には、例えば、治療すべき対象の年齢、性別、及び体重、治療すべき状態または疾患、ならびに使用される特定のベクターが含まれる。対象に投与される用量に影響する他の要因には、例えば、状態または疾患の型または重症度が含まれる。他の要因には、例えば、対象が同時に罹患しているまたは以前に罹患していた他の医学的障害、対象の総体的な健康、対象の遺伝的素因、食事、投与時間、排泄速度、薬物併用、及び対象に施される他の追加の治療が含まれ得る。ベクターの適切な投与手段は、治療すべき状態または疾患及び対象の年齢及び状態に基づいて選択され得る。投与用量及び投与方法は、患者の体重、年齢、状態、及び同様のものによって異なり得、当業者によって必要に応じて適切に選択され得る。任意の特定の対象に対する具体的な用量及び治療レジメンは、医師の判断に基づいて調節され得る。
【0234】
ベクター溶液は、本明細書に記載の組成物を治療的に有効な量で含み得る。そのような有効量は、投与される組成物の作用、または複数の薬剤が使用される場合は組成物と1つ以上の追加の活性薬剤との複合作用に部分的には基づいて当業者によって容易に決定され得る。治療的に有効な量は、組成物の毒性作用または有害作用のいずれにも、治療的に有益な作用が勝る量であり得る。
【0235】
本開示の免疫抑制剤は、本明細書において提供されるさまざまな形態のいずれか、または当該技術分野で知られるその他の形態で、個々にまたは一緒に製剤化され得る。さまざまな実施形態において、本明細書に記載の免疫抑制剤は、医薬組成物において製剤化され得る。医薬組成物は、当業者に知られている方法によって製剤化することができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th edition, ed. Alfonso R. Gennaro, Mack Publishing Company, Easton, Pa. (1985)に記載される)。
【0236】
さまざまな場合において、ベクターは、医薬的に許容可能な担体または添加物を含むように製剤化され得る。医薬的に許容可能な担体の例としては、限定されないが、いずれか及びすべての溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤、ならびに生理学的に適合性の同様のものが挙げられる。本発明の組成物は、医薬的に許容可能な塩(例えば、酸付加塩または塩基付加塩)を含み得る。
【0237】
さまざまな実施形態において、本明細書に記載の免疫抑制剤を含む医薬組成物(例えば、注射用滅菌製剤)は、媒体として注射用蒸留水を使用する通常の薬務に従って製剤化され得る。例えば、生理食塩水、またはグルコース及び他の添加物質(D-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、及び塩化ナトリウムなど)を含む等張溶液を注射用水溶液として使用することができ、任意選択で、適切な可溶化剤(例えば、アルコール(エタノール及び多価アルコール(プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなど)など)ならびに非イオン性界面活性剤(ポリソルベート80(商標)、HCO-50、及び同様のものなど))と組み合わせて使用することができる。
【0238】
本明細書に開示のように、免疫抑制剤医薬組成物は、当該技術分野で知られる任意の形態であり得る。そのような形態には、例えば、液体剤形、半固体剤形、及び固体剤形(溶液(例えば、注射用溶液及び注入用溶液)、分散液または懸濁液、錠剤、丸剤、粉末、リポソーム、ならびに坐剤など)が含まれる。いずれかの具体的な形態の選択または使用は、部分的には、所期の投与様式及び治療用途に依存し得る。例えば、全身送達または局所送達が意図される組成物を含む組成物は、注射用溶液または注入用溶液の形態であり得る。したがって、組成物は、非経口様式による投与(例えば、静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射、または筋肉内注射)向けに製剤化され得る。本明細書で使用される非経口投与は、腸内投与及び局所投与以外の投与様式(通常は注射によるもの)を指し、非経口投与には、限定されないが、静脈内、鼻腔内、眼内、肺、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、関節包内、眼窩内、心臓内、皮内、肺内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、髄腔内、硬膜外、脳内、頭蓋内、頸動脈内、及び胸骨内(intrasternal)への注射及び注入が含まれる。投与経路は、非経口であり得、例えば、注射、経鼻投与、経肺動脈投与、または経皮投与による投与であり得る。投与は、静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射による全身性または局所性のものであり得る。
【0239】
さまざまな実施形態において、本発明の免疫抑制剤医薬組成物は、溶液、マイクロエマルション、分散液、リポソーム、または高濃度での安定保管に適した他の秩序構造として製剤化され得る。滅菌注射用溶液は、本明細書に記載の組成物を必要量で(必要に応じて、上に列挙した成分の1つまたは組み合わせと共に)適切な溶媒に含めた後にろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、基礎分散媒体及び上に列挙したものから選択される他の必要成分を含む滅菌媒体に本明細書に記載の組成物を含めることによって調製される。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法には、本明細書に記載の組成物+任意の所望の追加成分(以下を参照のこと)をその事前滅菌ろ過溶液から粉末にする真空乾燥及びフリーズドライが含まれる。溶液の適切な流動性は、例えば、コーティング剤(レシチンなど)を使用すること、分散液の場合は必要粒度を維持すること、及び界面活性剤を使用すること、によって維持され得る。注射用組成物の吸収の持続化は、吸収を遅延させる試薬(例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチン)を組成物に含めることによって達成され得る。
【0240】
医薬組成物は、水または別の医薬的に許容可能な液体における滅菌溶液または滅菌懸濁液を含む注射用製剤の形態で非経口的に投与され得る。例えば、医薬組成物は、医薬的に許容可能な媒介物または媒体(滅菌水及び生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定化剤、香味付け用添加物、希釈剤、媒介物、保存剤、結合剤など)と免疫抑制剤とを適切に組み合わせた後、一般的に認められた薬務に必要な単位剤形において混合することによって製剤化され得る。免疫抑制剤は、指定の範囲に入る適切な用量となる量で医薬調製物に含められる。油性液体の例としては、限定されないが、ゴマ油及び大豆油が挙げられ、油性液体は、可溶化剤としての安息香酸ベンジルまたはベンジルアルコールと混合され得る。含められ得る他の物品は緩衝剤であり、こうした緩衝剤は、リン酸緩衝剤または酢酸ナトリウム緩衝剤、無痛化剤(プロカイン塩酸塩など)、安定化剤(ベンジルアルコールまたはフェノールなど)、及び抗酸化剤などである。製剤化された注射用物は、適切なアンプル中に包装され得る。
【0241】
本明細書に記載されている1つまたは複数の免疫抑制剤を含む組成物は、イムノリポソーム組成物において製剤化され得る。このような製剤は、当該技術分野で知られる方法によって調製することができる。増強された循環時間を有するリポソームが、例えば、米国特許第5,013,556号に開示されている。
【0242】
ある特定の実施形態では、組成物は、埋め込み及びマイクロカプセル化された送達系を含む、制御放出製剤などの、迅速放出に対する免疫抑制剤を保護することになる担体と共に製剤化され得る。生分解性の生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸が使用され得る。このような製剤の調製のための多くの方法は当該技術分野で知られている。例えば、J. R. Robinson (1978) "Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems," Marcel Dekker, Inc., New Yorkを参照のこと。
【0243】
さまざまな実施形態において、皮下投与は、デバイスによって達成することができ、こうしたデバイスは、シリンジ、充填済みシリンジ、自己注射器(例えば、使い捨てまたは再利用が可能なもの)、ペン型注射器、パッチ注射器、ウェアラブル注射器、皮下注入セットを備えた携帯型シリンジ注入ポンプ、または皮下注射のために免疫抑制剤と組み合わせるための他のデバイスなどである。
【0244】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組成物は、局所投与によって対象に治療的に送達され得る。本明細書で使用される「局所投与」または「局所送達」は、組成物または薬剤がその所期の標的組織または標的部位へと血管系を介して輸送されることに依存しない送達を指し得る。例えば、組成物は、組成物もしくは薬剤を注射もしくは埋め込むことによって送達され得るか、または組成物もしくは薬剤を含むデバイスを注射もしくは埋め込むことによって送達され得る。ある特定の実施形態では、組成物もしくは薬剤またはその1つ以上の構成成分は、標的組織または標的部位の近傍への局所投与後に、投与部位ではない所期の標的組織または標的部位へと拡散し得る。
【0245】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は単位剤形中に存在し、この単位剤形は自己投与に適したものであり得る。そのような単位剤形は、容器に含めて提供することができ、この容器は、典型的には、例えば、バイアル、カートリッジ、充填済みシリンジ、または使い捨てペンである。doser(米国特許第6,302,855号に記載のdoserデバイスなど)も(例えば、本明細書に記載の注射系と共に)使用され得る。
【0246】
水剤は、本明細書に記載の組成物の治療的に有効な量を含み得る。このような有効な量は、投与される組成物の作用、または複数の薬剤が使用される場合は組成物と1つまたは複数の追加の活性薬剤との複合作用に部分的には基づいて当業者によって容易に決定され得る。本明細書に記載の組成物の治療的に有効な量はまた、個体において所望の応答、例えば、少なくとも1つの状態パラメーターの軽快、例えば、補体介在性障害の少なくとも1つの症状の軽快を誘発する、疾患状態、個体の年齢、性別、及び体重、ならびに組成物(及び1つまたは複数の追加の活性薬剤)の能力などの要因に従って異なり得る。例えば、本明細書に記載の組成物の治療的に有効な量は、当該技術分野で知られるかまたは本明細書に記載の特定の障害、及び/または特定の障害の症状のいずれか1つを阻害(その重症度の減弱化またはその発生の排除)及び/または予防することができる。治療的に有効な量は、組成物の毒性作用または有害作用のいずれにも、治療的に有益な作用が勝る量である。
【0247】
本明細書に記載の免疫抑制剤組成物の、対象における障害を処置または予防できる適切な用量は、さまざまな要因に依存し得、こうした要因には、例えば、治療すべき対象の年齢、性別、及び体重、ならびに使用される特定の阻害剤化合物が含まれる。対象に投与される用量に影響する他の要因には、例えば、障害の型または重症度が含まれる。他の要因には、例えば、対象が同時に罹患しているまたは以前に罹患していた他の医学的障害、対象の総体的な健康、対象の遺伝的素因、食事、投与時間、排泄速度、薬物併用、及び対象に施される任意の他の追加の治療薬が含まれ得る。任意の特定の対象に対する特定の用量及び処置レジメンは、治療する医師の判断に基づいて調整されてもよいことも理解されるべきである。
【0248】
さまざまな実施形態において、免疫抑制レジメンは、本明細書に開示されるように、(i)IL-1受容体アンタゴニストなどのインターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤、(ii)IL-6シグナル阻害剤、(iii)コルチコステロイド、及び(iv)カルシニューリン阻害剤のいずれかまたはすべてを含み、それぞれは、投与のために独立して製剤化されてもよい、及び/または注射、例えば、静脈内または皮下への注射によって投与されてもよい。さまざまな実施形態において、本明細書に開示されるように、免疫抑制レジメンは、(i)アナキンラ、(ii)トシリズマブ、(iii)デキサメタゾン、及び(iv)タクロリムスのいずれかまたはすべてを含み、それぞれは、投与のために独立して製剤化されてもよい、及び/または注射、例えば、静脈内または皮下への注射によって投与されてもよい。誤解を避けるために記載すると、免疫抑制レジメンにおける本明細書において提供される複数の免疫抑制剤のいずれかの組合せについて、免疫抑制剤のぞれぞれは、投与のためにそれぞれ独立して製剤化されてもよい、及び/または注射、例えば、静脈内または皮下への注射によって投与されてもよい。
【0249】
免疫抑制レジメンの適用。当業者に認識されるように、遺伝子治療は、多くの使用に関するプラットホームであり、遺伝子治療のプラットホームは、遺伝子治療の技術分野における一般的な適用性と多くの個体適用に対する特異的適用性の両方を有することも理解されなければならない。限定されないが、法外なコスト及び技術的複雑性を含む遺伝子治療の方法において使用するための幹細胞を操作するエクスビボ方法の不利益によって、本明細書に記載されるインビボ遺伝子治療の改善された方法は、遺伝子治療の技術分野において、広範な変化する可能性のある価値を有する。遺伝子治療の技術分野に対する本開示の方法の既に明らかな一般的な適用性にもかかわらず、いくつかの特異的適用の例が本明細書に記載される。
【0250】
ある特定の適用の例では、免疫抑制レジメンは、造血幹細胞を形質導入するウイルス遺伝子治療ベクターと組み合わせて、必要に応じて、造血幹細胞を骨髄から動員する幹細胞動員レジメンとさらに組み合わせて、使用され得る。造血幹細胞は、例えば、アデノウイルス遺伝子治療ベクター、例えば、CD46を標的とするアデノウイルス遺伝子治療ベクターによって形質導入され得る。さまざまな実施形態において、造血幹細胞の形質導入は、さまざまな特定の疾患、例えば、鎌状赤血球貧血、サラセミア、中間型サラセミア、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症、第XII因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、ベルナール・スーリエ症候群、または灰色血小板症候群を処置するための手段として使用することができる。例えば、CD46を標的とするアデノウイルスベクターは、造血幹細胞に対してβ-グロビン及び/またはγ-グロビンを発現する、及び/またはその発現を増加させる治療用ペイロードを送達することによって、サラセミアまたは中間型サラセミアを処置するために使用することができる。別の例では、CD46を標的とするアデノウイルスベクターは、造血幹細胞において第VIII因子または第IX因子を発現させる、及び/またはその発現を増加させる治療用ペイロードを送達することによって、血友病(例えば、血友病Aまたは血友病B)を処置するために使用することができる。別の例では、CD46を標的とするアデノウイルスベクターは、遺伝子編集によって、鎌状赤血球貧血を引き起こす遺伝病変の修正のために治療用ペイロードを送達することによって、鎌状赤血球貧血を処置するために使用することができる。ウイルス遺伝子治療ベクターの適用の例は、例えば、2019年7月2日に出願された米国仮特許出願第62/869,907号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれる)に、ならびに特にウイルス遺伝子治療ベクター及びウイルス遺伝子治療の適用に関して、さらに開示されている。
【0251】
本開示は、本開示のウイルス遺伝子治療ベクター及び免疫抑制レジメンを含むウイルス遺伝子治療が、例えば、免疫抑制レジメンまたはその薬剤を含まない参照と比較して、ウイルス遺伝子治療を受ける対象において引き起こされる免疫毒性及び/または炎症を低下させるという理解を包含する。本開示のウイルス遺伝子治療ベクター及び免疫抑制レジメンを含むウイルス遺伝子治療によって引き起こされる低減された免疫毒性及び/または炎症が、例えば、免疫抑制レジメンまたはその薬剤を含まない参照と比較して、免疫毒性及び/または炎症の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルの低下を含むという理解も本開示に含まれる。炎症のバイオマーカーには、限定されないが、IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、及びIL-6が含まれる。よって、本開示は、IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、及びIL-6のうちの1つまたは複数のいずれかが、ウイルス遺伝子治療ベクターを含むが、免疫抑制レジメンまたはその薬剤を含まないウイルス遺伝子治療を受けている対象などの参照と比較して、本開示のウイルス遺伝子治療ベクター及び免疫抑制レジメンを含むウイルス遺伝子治療を受けている対象において、低下(例えば、有意に低下、例えば、0.05未満のp値によって)され得ることを包含する。さまざまな実施形態において、IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、及びIL-6のうちの1つまたは複数のいずれかのレベルの定性的または定量的な変化、レベルの変化の割合、またはレベルの変動性は、例えば、ELISAまたはサイトカインビーズアレイを含む当該技術分野で知られる方法によって決定される。
【0252】
キット。さまざまな実施形態において、本開示は、本開示の方法に従ってインビボ遺伝子治療方法を実施するためのキットも提供する。例えば、キットは、(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤などの炎症性シグナル阻害剤、例えば、アナキンラ、(ii)IL-6シグナル阻害剤、例えば、トシリズマブ、(iii)コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾン、(iv)カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムス、(v)TNF-αシグナル阻害剤、及び(vi)JAKシグナル阻害剤の1、2、3、4、5、または6つのいずれかから選択される免疫抑制剤(それらのいずれかまたはすべてが、存在する場合、本明細書に記載される1日用量または他の用量、または半日用量に対応する単位剤形で提供され得る)を含む容器(必要に応じて、例えば、インビボ遺伝子治療において使用するための書面の使用説明書を含む)を含んでもよい。ある特定の例では、キットは、(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤、例えば、アナキンラ、(ii)IL-6シグナル阻害剤、例えば、トシリズマブ、(iii)コルチコステロイド、例えば、デキサメタゾン、及び(iv)カルシニューリン阻害剤、例えば、タクロリムスのうちの1、2、3、または4つのいずれかから選択される免疫抑制剤(それらのいずれかまたはすべてが、存在する場合、本明細書に記載される1日用量または他の用量、または半日用量に対応する単位剤形で提供され得る)を含む容器(必要に応じて、例えば、インビボ遺伝子治療において使用するための書面の使用説明書を含む)を含んでもよい。さまざまな実施形態において、キットは、造血幹細胞の循環を増加させる、及び/または骨髄において隔絶された造血幹細胞を動員して骨髄をコンパートメント中に排出する(これらは、ベクターによるインビボ形質導入に利用可能である)幹細胞動員剤、例えば、G-CSF及びプレリキサホル/AMD3100(それらのいずれかまたはすべてが、存在する場合、本明細書に記載される1日用量または他の用量に対応する単位剤形で提供され得る)を含む容器も含んでもよい。さまざまな実施形態において、キットは、ベクターによってインビボで形質導入された造血幹細胞を選択するものなどの選択剤、例えば、O6-ベンジルグアニン(OBG)及び1,3-ビス(2-クロロエチル)-1-ニトロソ-ウレア (BCNU)(OBG/BCNU)(それらのいずれかまたはすべてが、存在する場合、本明細書に記載される1日用量または他の用量に対応する単位剤形で提供され得る)を含む容器も含んでもよい。
【0253】
実施形態例:
実施形態1. 哺乳動物対象におけるインビボ遺伝子治療の方法であって、炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを前記対象に投与すること、及びウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量を前記対象に投与することを含む、方法。
実施形態2. 哺乳動物対象から幹細胞を取り出すことなく、前記対象の幹細胞を形質導入する方法であって、炎症性シグナル阻害剤を含む免疫抑制レジメンを投与された対象にウイルス遺伝子治療ベクターを送達することを含む、方法。
実施形態3. 前記炎症性シグナル阻害剤が、インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤を含み、必要に応じて、前記IL-1シグナル阻害剤が、IL-1受容体(IL-1R)アンタゴニストを含み、実施形態1または2に記載の方法。
実施形態4. 前記IL-1Rアンタゴニストが、アナキンラを含む、実施形態3に記載の方法。
実施形態5. 前記免疫抑制レジメンが、インターロイキン6(IL-6)受容体アンタゴニストをさらに含む、実施形態1~4のいずれか1つに記載の方法。
実施形態6. 前記IL-6受容体アンタゴニストが、トシリズマブを含む、実施形態5に記載の方法。
実施形態7. 前記免疫抑制レジメンが、コルチコステロイドをさらに含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
実施形態8. 前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンを含む、実施形態7に記載の方法。
実施形態9. 前記免疫抑制レジメンが、カルシニューリン阻害剤をさらに含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の方法。
実施形態10. 前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスを含む、実施形態9に記載の方法。
実施形態11. 前記免疫抑制レジメンが、TNF-αシグナル阻害剤をさらに含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の方法。
実施形態12. 前記TNF-αシグナル阻害剤が、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴル、及び/又はゴリムマブを含む、実施形態11に記載の方法。
実施形態13. 前記免疫抑制レジメンが、JAKシグナル阻害剤をさらに含む、実施形態1~12のいずれか1つに記載の方法。
実施形態14. 前記JAKシグナル阻害剤が、バリシチニブ、トファシチニブ、ルキソリチニブ、及び/又はフィルゴチニブを含む、実施形態13に記載の方法。
実施形態15. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、前記ベクターの第1の用量の投与の前の日に;前記ベクターの第1の用量の投与の日に;前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に;前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に;及び/または前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、IL-1受容体アンタゴニストを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記IL-1受容体アンタゴニストが、アナキンラを含む、実施形態1~14のいずれか1つに記載の方法。
実施形態16. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりIL-1受容体アンタゴニストの単一用量または1日あたりIL-1受容体アンタゴニストの複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記IL-1受容体アンタゴニストが、アナキンラを含む、実施形態1~15のいずれか1つに記載の方法。
実施形態17. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、0.01~20mg/kg/日のアナキンラを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内投与を含む、実施形態15または16に記載の方法。
実施形態18. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、10~200mg/日のアナキンラを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内投与を含む、実施形態15または16に記載の方法。
実施形態19. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、前記ベクターの第1の用量の投与の前の日に;前記ベクターの第1の用量の投与の日に;前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に;前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、IL-6受容体アンタゴニストを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記IL-6受容体アンタゴニストが、トシリズマブを含む、実施形態1~18のいずれか1つに記載の方法。
実施形態20. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりIL-6受容体アンタゴニストの単一用量または1日あたりIL-6受容体アンタゴニストの複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記IL-6受容体アンタゴニストが、トシリズマブを含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の方法。
実施形態21. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1~15mg/kg/日のトシリズマブ、1~12mg/kg/日のトシリズマブ、1~10mg/kg/日のトシリズマブまたは5~200mg/日のトシリズマブを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内投与を含む、実施形態19または20に記載の方法。
実施形態22. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、前記ベクターの第1の用量の投与の前の日に;前記ベクターの第1の用量の投与の日に;前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に;前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、コルチコステロイドを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンを含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の方法。
実施形態23. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりコルチコステロイドの単一用量または1日あたりコルチコステロイドの複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記コルチコステロイドが、デキサメタゾンを含む、実施形態1~22のいずれか1つに記載の方法。
実施形態24. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、0.1~10mg/kg/日のデキサメタゾンを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、静脈内投与を含む、実施形態22または23に記載の方法。
実施形態25. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、前記ベクターの第1の用量の投与前の4日間の毎日に;前記ベクターの第1の用量の投与の日に;前記ベクターの1つまたは複数の後続用量の投与の日に、及び/または前記ベクターの第1の用量の投与の日と前記ベクターの最後の用量の投与の日との間の毎日に、及び/または前記ベクターの最後の用量の投与の日の後の1日、2日もしくはそれよりも多い日数の毎日に、カルシニューリン阻害剤を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスを含む、実施形態1~24のいずれか1つに記載の方法。
実施形態26. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、1日あたりカルシニューリン阻害剤の単一用量または1日あたりカルシニューリン阻害剤の複数用量を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記カルシニューリン阻害剤が、タクロリムスを含む、実施形態1~25のいずれか1つに記載の方法。
実施形態27. 前記免疫抑制レジメンの前記投与が、0.001~0.1mg/kg/日のタクロリムスを前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記投与が、皮下投与を含む、実施形態25または26に記載の方法。
実施形態28. 前記方法が、1つまたは複数の免疫抑制剤を含まない対照と比較して、(i)IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、もしくはIL-6のうちの1つまたは複数の量の有意な増加を引き起こさないか、または(ii)IFN-g、TNF、IL-2、IL-4、IL-5、もしくはIL-6のうちの1つまたは複数の量の有意に小さい増加を引き起こし、必要に応じて、前記対照が、(a)前記炎症性シグナル阻害剤、(b)前記IL-6受容体アンタゴニスト、(c)前記コルチコステロイド、及び(d)前記カルシニューリン阻害剤から選択される1つまたは複数の免疫抑制剤を含まず、必要に応じて、前記量が、ELISA及び/またはサイトカインビーズアレイによって測定される、実施形態1~27のいずれか1つに記載の方法。
実施形態29. 幹細胞動員レジメンを前記対象に投与することをさらに含む、実施形態1~28のいずれか1つに記載の方法。
実施形態30. 前記ベクターが、選択可能マーカーをコードする核酸配列を含み、必要に応じて、前記選択可能マーカーが、MGMTP140Kを含む、実施形態1~29のいずれか1つに記載の方法。
実施形態31. 前記方法が、選択剤を前記対象に投与することを含み、必要に応じて、前記選択可能マーカーが、MGMTP140Kであり、前記選択剤が、OBG/BCNUを含む、実施形態30に記載の方法。
実施形態32. 前記選択剤が、1つまたは複数の用量において前記対象に投与され、必要に応じて、前記選択剤の第1の用量が、前記対象への前記ベクターの第1の用量の投与の約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約5週間、約6週間、約7週間、約8週間、約9週間、及び/または約10週間後に、前記対象に投与される、実施形態30または31に記載の方法。
実施形態33. 前記ベクターが、注射によって前記対象に投与され、必要に応じて、前記注射が、静脈内または皮下投与を含む、実施形態1~32のいずれか1つに記載の方法。
実施形態34. 前記ベクターの少なくとも第1の用量が、1キログラムあたり少なくとも1E10個、少なくとも1E11個、または少なくとも1E12個のウイルス粒子(vp/kg)を含む、実施形態1~33のいずれか1つに記載の方法。
実施形態35. 前記ベクターが、少なくとも1E10vp/kg、少なくとも1E11vp/kg、少なくとも1E12vp/kg、少なくとも2E12vp/kg、または少なくとも3E12vp/kgの総投薬量で投与される、実施形態1~34のいずれか1つに記載の方法。
実施形態36. 前記ベクターが、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、単純ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アルファウイルスベクター、フラビウイルスベクター、ラブドウイルスベクター、麻疹ウイルスベクター、ニューカッスル病ウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、またはピコルナウイルスベクターを含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態37. 前記ベクターが、アデノウイルスベクターを含む、実施形態1~35のいずれか1つに記載の方法。
実施形態38. 前記ベクターが、B群アデノウイルスベクターを含む、実施形態1~37のいずれか1つに記載の方法。
実施形態39. 前記ベクターが、Ad5/35またはAd35アデノウイルスベクターを含むか、またはこれに由来し、必要に応じて、前記ベクターが、Ad35++またはAd5/35++アデノウイルスベクターを含む、実施形態1~38のいずれか1つに記載の方法。
実施形態40. 前記ベクターが、複製能力がないベクターを含み、必要に応じて、前記複製能力がないベクターが、ヘルパー依存型アデノウイルスベクターを含む、実施形態1~39のいずれか1つに記載の方法。
実施形態41. ウイルス遺伝子治療ベクターが、治療ペイロードを含む核酸を含み、前記方法が、標的細胞ゲノムへの前記治療ペイロードの組み込みを容易にする薬剤をコードするサポートベクターを前記対象に投与することをさらに含む、実施形態1~40のいずれか1つに記載の方法。
実施形態42. 前記サポートベクターが、前記ウイルス遺伝子治療ベクターと共に前記対象に投与される、実施形態41に記載の方法。
実施形態43. 前記サポートベクターが、1キログラムあたり1E9~1E14個のウイルス粒子(vp/kg)の総投薬量で投与される、実施形態41または42に記載の方法。
実施形態44. 前記ウイルス遺伝子治療ベクターが、治療ペイロードを含む核酸を含み、前記方法が、幹細胞への前記治療ペイロードの送達を引き起こし、必要に応じて、前記治療ペイロードの送達が、前記幹細胞のゲノムへの前記治療ペイロードの組み込みを含む、実施形態1~43のいずれか1つに記載の方法。
実施形態45. 前記ウイルス遺伝子治療ベクターが、タンパク質コード治療ペイロードを含む核酸を含み、前記対象への前記ベクターの投与後に、前記対象のPBMCの少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%が、前記タンパク質を発現する、実施形態1~44のいずれか1つに記載の方法。
実施形態46. 前記対象が、ヒト対象である、実施形態1~45のいずれか1つに記載の方法。
実施形態47. 前記ヒト対象が、鎌状赤血球貧血、サラセミア、中間型サラセミア、血友病A、血友病B、フォン・ヴィレブランド病、第V因子欠乏症、第VII因子欠乏症、第X因子欠乏症、第XI因子欠乏症、第XII因子欠乏症、第XIII因子欠乏症、ベルナール・スーリエ症候群、灰色血小板症候群を罹患している、実施形態46に記載の方法。
実施形態48. 前記免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが、前記ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、前記対象または前記対象由来の試料における免疫毒性バイオマーカーの測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度、及び/または用量の総数が増加され、前記測定されたレベルが、免疫毒性を指し示す場合、前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが増加される、実施形態1~47のいずれか1つに記載の方法。
実施形態49. 前記免疫毒性バイオマーカーが、IL-Ιβ、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-17、IL-23、IL-27、IL-30、IL-36、IL-1Ra、IL-2R、IFN-a、IFN-b、IFN-γ、MIP-Ia、ΜΙΡ-Ιβ、MCP-1、TNF-α、TNF-β、GM-CSF、G-CSF、CXCL9、CXCL10、VEGF、RANTES、EGF、HGF、FGF-β、CD40、CD40L、C反応性タンパク質、プロカルシトニン、フェリチン、Dダイマー、リンパ球の総集団、リンパ球の亜集団、対象温度、及び/又はこれらの組合せを含む、実施形態48に記載の方法。
実施形態50. 前記免疫抑制レジメンの1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが、前記ウイルス遺伝子治療ベクターの少なくとも1用量の投与後に、前記対象または前記対象由来の試料における前記ウイルス遺伝子治療ベクターに対する抗体の前記測定されたレベルに基づき、単位用量、1日用量、総用量、用量の頻度、及び/または用量の総数が増加され、前記測定されたレベルが、免疫毒性を指し示す場合、前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが増加され、必要に応じて、前記測定されたレベルが、抗体価であり、必要に応じて、前記抗体が、中和抗体である、実施形態1~49のいずれか1つに記載の方法。
実施形態51. 前記免疫抑制レジメンの前記1つまたは複数の免疫抑制剤の前記投薬レジメンが、(i)インターロイキン-1(IL-1)シグナル阻害剤(必要に応じて、前記IL-1シグナル阻害剤はアナキンラを含む)、(ii)IL-6シグナル阻害剤(必要に応じて、前記IL-6シグナル阻害剤はトシリズマブである)、(iii)コルチコステロイド(必要に応じて、前記コルチコステロイドはデキサメタゾンを含む)、及び(iv)カルシニューリン阻害剤(必要に応じて、前記カルシニューリン阻害剤がタクロリムスを含む)のうちの1つまたは複数の投薬レジメンを含む、実施形態48~50のいずれか1つに記載の方法。
【実施例
【0254】
(実施例1)
ウイルスベクター、サポートベクター、及び免疫抑制レジメンを含むインビボ遺伝子治療のためのスキーム例。
【0255】
本実施例は、ウイルス遺伝子治療ベクター及びサポートベクターを含むインビボ遺伝子治療のためのプロトコールを提供する。図1に示されるように、HDAdサポートベクターは、アデノウイルス逆方向末端反復配列(ITR)の間に位置する、(i)EF1αプロモーターと作動可能に連結されたFlpeリコンビナーゼ及び(ii)PGKプロモーターと作動可能に連結されたトランスポゼース(SB100x)をコードする。スタッファーは、アデノウイルスによって効率的にパッケージングされるサイズのウイルスベクターゲノムを生成するために、サポートベクターにも含まれる。HDAdウイルス遺伝子治療ベクターは、β-グロビンプロモーターとβ-グロビン遺伝子座制御領域(LCR)の両方と作動可能に連結され、かつ3’UTR及びニワトリ高感受性部位4(cHS4;ニワトリβ様グロビン遺伝子クラスター)制御領域と機能可能なようにさらに連結された治療用タンパク質(rh γ-グロビン)をコードする核酸配列を含む治療用ペイロードを含む。ウイルス遺伝子治療ベクターは、PGKプロモーターと作動可能に連結されたMGMTP140K選択可能マーカーをコードする核酸配列をさらに(必要に応じて)含む。治療用ペイロードは、転位のためのSB100x標的である逆方向反復配列(IR)と隣接し、それによって、治療用ペイロードは、宿主細胞ゲノムに組み込まれ得る。IRは、Flpeに曝露された際に、隣接した核酸を環状化するfrt部位と順番に隣接し、治療用ペイロードの転位を促進する。ウイルス遺伝子治療ベクターは、アデノウイルスITRをさらに含む。
【0256】
図2に示されるように、アデノウイルス遺伝子治療ベクターとサポートベクターが混合されて(1:1の比で)、対象に投与するための単一製剤となる。対象は、2日の連続日数のそれぞれにHDAd組合せ製剤の2つの用量を受ける。第1の用量は、20分を通じて対象に投与される5E10vp/kgの用量である。同じ日に後で投与される第2の用量は、30分を通じて対象に投与される1.6E12vp/kgの用量である。したがって、組み合わせた2つのベクター(1:1の比で)の1日用量の合計は、1.65E12vp/kgである。すべての用量を静脈内に投与し、続いて、生理食塩水ボーラスを静脈内投与する。図2に示されるウイルス遺伝子治療ベクターレジメンは、以下の表1にさらに記載される。
【0257】
免疫抑制レジメンは、HDAd投与のタイミングに基づいて投与される。図2に示される免疫抑制レジメンは、アナキンラ、トシリズマブ、タクロリムス、及びデキサメタゾンを含む。図2に示される免疫抑制レジメンは、表1にさらに記載される。
【表1】
【0258】
(実施例2)
ウイルスベクター、サポートベクター、免疫抑制レジメン、及び選択剤を含むインビボ遺伝子治療のためのスキーム例。
【0259】
本実施例を、実施例1に示されるプロトコールに加える。本実施例は、HDAdウイルス遺伝子治療ベクターが、図1に示されている及び実施例1に選択的に示されているMGMTP140K選択可能マーカーを肯定的に含む。したがって、本実施例は、図3に示されるように、選択剤であるOBG/BCNUを含む選択レジメンをさらに提供する。図3に示される選択レジメンは、表2にさらに記載される。
【表2】
【0260】
(実施例3)
ウイルスベクター、サポートベクター、免疫抑制レジメン、選択剤、及び幹細胞動員レジメンを含むインビボ遺伝子治療のためのスキーム例。
【0261】
本実施例を実施例1に示されるプロトコール及び/または実施例2に示されるプロトコールに加える。本実施例は、典型的には骨髄中に存在する、造血幹細胞を含む幹細胞の形質導入を改善するために、対象に投与され得る幹細胞動員レジメンを提供する。図4に示されるように、幹細胞動員レジメンの例は、G-CSF及びAMD3100を含む。図4に示される選択レジメンは、表3にさらに記載される。
【表3】
【0262】
(実施例4)
ウイルスベクター、サポートベクター、免疫抑制レジメン、選択剤、及び幹細胞動員レジメンを含むインビボ遺伝子治療のためのスキーム例。
【0263】
本実施例は、図5に示される、及び以下に記載される代替のスキームについて記載する。
【0264】
遺伝子導入ベクター。遺伝子導入ベクターである、HDAdの組合せ(HDAd-統合)が使用されることになる:このベクターは、下記の導入遺伝子を含み、これらの導入遺伝子は、SB100xトランスポゼース介在性に無作為にゲノムに組み込まれる:i)赤血球における発現を効率化するための小型LCRの制御下にあるアカゲザルγ-グロビン遺伝子、ii)遍在性に活性なEF1aプロモーターの制御下にあり、OBG/BCNUで形質導入した細胞のインビボでの選択を行うためのアカゲザルMGMTP140K、iii)遍在性に活性なEF1aプロモーターの制御下にあり、末梢血T細胞の形質導入試験及びベクターの生体内分布試験の分析を行うためのGFP。このベクターは、HBGプロモーター中のBCL11aリプレッサータンパク質結合部位を不活化することによって内在性γ-グロビンを再活性化すると共に、同時に赤血球bcl11aエンハンサーを不活化する(これによって赤血球細胞におけるBCL11aリプレッサータンパク質の発現が低減される)ためのアデニン塩基エディターをさらに含むことになる。さらに、Flpリコンビナーゼ介在性にトランスポゾンが切除されると塩基エディター発現カセットが除去されることになり、その結果、iCas-BEの発現が一過性のものにとどまる。最後に、SB100xトランスポゼース及びFlpリコンビナーゼを含むベクターが組み込まれることはなく、このベクターは、HSC細胞が増殖する間に消失することになる(図6)。
【0265】
処理プロトコール:
HSC動員プロトコール及びOBG/BCNUインビボ選択プロトコールを使用して3匹のMacaca mulattaを用いて6ヶ月の試験を実施することになる(図5)。プロトコールは、1匹の動物の試験から開始されることになる。8週目(最後のインビボ選択サイクルの終了時点)までに重篤な合併症が生じない場合は残りの2匹の動物において試験が繰り返されることになる。
【0266】
動員:
午前中にGCSF及びSCF(各50μg/kg)が5日間皮下投与されることになる。最後の2日間はGCSF/SCFおよびAMD3100(5mg/kg)が、午後に皮下投与されることになる。
【0267】
前処理:
HDAd5/35++注射の16時間前にデキサメタゾンが4mg/kgで静脈内投与されることになる。HDAd5/35++注射の30分前にメチルプレドニゾロン(20mg/kg)及びデキサメタゾン(4mg/kg)が静脈内投与され、同時に、アナキンラ(100mg)が皮下投与されることになる。
【0268】
HDAd注射:
HDAdが2回静脈内注射されることになる:(a)-1日目に低用量(3E11vp/kgを含む20mLのリン酸緩衝生理食塩水を2mL/分で注射)が投与され、(b)0日目に2つの完全用量(1E12vp/kgを含む20mLのリン酸緩衝生理食塩水を2mL/分で注射)が30分の間隔を空けて投与されることになる。
【0269】
一過性の免疫抑制:
1日目から免疫抑制が開始され、OBG/BCNUの第1の用量の投与(4週目)まで続き、必要に応じて、OBG/BCNUの最後の用量の投与から2週間後まで継続されることになる。この免疫抑制は、0.2mg/kg/日のラパマイシン、30mg/kg/日のミコフェノール酸モフェチル、及び0.25mg/kg/日のタクロリムスを含むことになり、これらはすべて、食物を介して経口的に1日1回与えられる。
【0270】
BG/BCNUを用いるインビボでの選択:
BG:120mg/mのOBGを含む200mLの生理食塩水が少なくとも30分間にわたって動物に静脈内注入されることになる。OBGの注入開始から60分後にBCNUが投与されることになる。次に、BCNUの投与から6~8時間後に別の用量のOBGを含む200mLの生理食塩水が少なくとも30分間にわたって動物に静脈内投与されることになる。この処理の1回目は、HDAd注射から4週間後に行われることになり、γ-グロビンマーキング及び血液学的分析に応じて、2週間の間隔を空けて2回目の処理及び3回目の処理(任意選択)が行われることになる。
【0271】
収集データ:
図5に示されるように血液試料が収集されることになる。1日に1回の物理的観察及び1週間に1回の体重測定が実施されることになる。
【0272】
血液試料:
2時間時点の血液試料及び6時間時点の血液試料については、下記のアッセイが実施されることになる:CD34+細胞におけるGFP+細胞のパーセント、及びCD38-/Cd45RA,CD90+細胞におけるGFP+細胞のパーセントが定量化されることになり、コロニー形成単位アッセイを使用してGFP+コロニーのパーセント、SDF1-aへの遊走、ならびにCXCR4及び/またはVLA-4の発現パーセントが評価されることになる。他のすべての試料について、血液細胞数、化学、c反応性タンパク質、及び炎症促進性サイトカインが測定されることになる。γ-グロビン発現はフローサイトメトリー(赤血球/非赤血球細胞)によって測定されることになり、γ-グロビンの再活性化レベル及びγ-グロビンの付加レベルはHPLC及びqRT-PCRを使用して測定され、それらのレベルが比較されることになる。サイトスピン調製物を使用してγ-グロビンの免疫蛍光が評価されることになる。ベクターコピー数ならびにCas9、SB100x、及びFlpeのmRNAレベルが測定されることになる。白血球(CD4、CD8、CD25、CD45RO、CD45RA、CCR-7、CD62L、FOXP3、インテグリンαeβ7)におけるGFP発現が測定されることになる。
【0273】
骨髄試料:
4日目に骨髄試料が収集されることになり、その後は1ヶ月に1回収集される(図5を参照のこと)。フローサイトメトリーによって骨髄試料の系譜組成が評価されることになる。CD34+細胞中のベクターコピー数も測定されることになる。Ter119+/Ter119-マーカーを用いて選別することによってフローサイトメトリーを使用してγ-グロビンが評価されることになる。HPLC及びqRT-PCRを使用してγ-グロビンの再活性化レベル及びγ-グロビンの付加レベルが測定され、これらのレベルが比較されることになる。こうした分析に加えて、剖検時にCD34+細胞に対する全ゲノムシークエンシングが実施されてSB100×介在性の組み込み及び塩基エディターによるオフターゲット効果が同定されることになる。CD34+細胞に対してはRNAシークエンシングも実施されて処理前と処理後との間でmRNAプロファイル及びmiRNAプロファイルが比較されることになる。
【0274】
剖検から得られる組織(生殖系列組織及び精液を含む):
所定の組織学的分析が実施されることになり、主要組織群に対してベクターコピー数の測定が行われることになる。組織切片でのγ-グロビン及びGFP免疫蛍光の評価が行われることになる。
【0275】
得られる結果:
この実験によってインビボでのHSCの形質導入後に非ヒト霊長類においてSB100x介在性の遺伝子付加及びBE介在性の内在性γ-グロビンの再活性化の両方が有効であるかが検証されることになる。SCA患者が治癒することになる赤血球中γ-グロビン発現レベル(すなわち、成体型アカゲザルグロビンに対するγ-グロビンのレベルが20%超であるγ-グロビンRBCが80%超存在する)がベクターによって達成されることが実証されることになる。長期的な血液学的副作用が存在せず、望ましくないゲノム再編及びHSCのトランスクリプトーム変化が生じないことも実証されることになる。最後に、HDAd5/35++ベクターの静脈内注射によってメモリーT細胞が形質導入されることが実証されることになる。
【0276】
(実施例5)
異常ヘモグロビン症のためのインビボHSC遺伝子治療:ウイルスベクター、サポートベクター、免疫抑制レジメン、選択剤、及び幹細胞動員レジメンを含むアカゲザルにおけるインビボ遺伝子治療。
【0277】
異常ヘモグロビン症に関する多くの遺伝子治療またはゲノム編集の研究には、造血幹細胞の収集/選択及び遺伝子改変を実施するために高度に洗練された医療施設が必要とされる。加えて、患者は、遺伝子改変細胞の生着を促進するために大量化学療法を受ける。よって、ある特定の遺伝子治療プロトコールは、異常ヘモグロビン症を患っている多くの患者に利用不可能である。この実施例の材料のいくつかは、Li et al. (Blood, 136(Supp. 1): 46-47, 2020; doi.org/10.1182/blood-2020-141468)として公開された。
【0278】
本実施例は、インビボでの造血幹細胞(HSC)遺伝子治療を含み、これらの制限を克服する可能性のある高度にポータブルかつスケーラブルな遺伝子治療アプローチを含む。本発明のインビボでのHSC遺伝子治療アプローチでは、HSCは、骨髄から動員され、これらが末梢血中で多数循環する間に、静脈内注射されたHSC指向型のヘルパー依存型アデノウイルスHDAd5/35++遺伝子治療ベクター系により形質導入される(図7Aの模式図を参照のこと)。形質導入された細胞は骨髄に戻り、そこで長期的に存続する(図7Bにおける例示を参照のこと)。遺伝子治療ベクターによってコードされる治療用ペイロードの組み込みは、Sleeping Beautyトランスポゼース(SB100x)によって無作為なパターンで、またはセーフゲノムハーバー部位への相同組換え修復によって、達成され得る。本実施例では、インビボ選択系の選択可能マーカー(低用量のOBG/BCNUによる選択に関するmgmtP140K選択可能マーカー)を含むペイロードを含むベクターを用いて、末梢血液細胞において80~100%のマーキングレベルを達成する。HDAd5/35++ベクターの安全性及び効率性は、中間型サラセミア、鎌状赤血球貧血、及び血友病Aに関するマウスモデルにおいて実証され、表現型の修正が達成された。アデノウイルスベクターの投与が自然免疫応答を誘導することが観察されている(例えば、本開示のある特定の免疫抑制剤をさらに示す図11Aの模式図を参照のこと)。マウスにおける観察によって、免疫抑制レジメンの投与がアデノウイルスベクター投与に対する免疫応答を鈍化させ得る可能性をサポートする(図11B及び11C)。
【0279】
本実施例は、新たな免疫抑制レジメン(デキサメタゾン、IL-6受容体アンタゴニスト、IL-1受容体アンタゴニスト、生理食塩水ボーラスIV)が静脈内HDAd5/35++ベクター投与に関連する副作用を和らげることができたことを示す。3頭のアカゲザルにおけるデータが示される。G-CSF/AMD3100による処置が血液循環中への効率的なHSC動員をもたらしたこと、及びHDAd5/35++ベクター系(2つの用量で合計1~3×1012vp/kg)の後続の静脈内注射の忍容性が良好であったことが示される。OBGとある特定の自己移植プロトコールにおいて使用した用量よりも最大100分の1低い用量である低用量(10~20mg/m)のBCNUによるインビボ選択の後に、末梢赤血球のガンマ-グロビンマーキングは90%まで上昇し、試験期間中安定であった(図15Aを参照のこと)。赤血球中のガンマ-グロビンレベルは、成体のアルファ1-グロビンの18%であった(HPLCによる)。3日目の骨髄の分析は、30%の形質導入HSCを示した。ベクターDNA生体分布試験は、ほとんどの組織(精巣及びCNSを含む)の非常に低い形質導入か、または形質導入の不在を実証した。骨髄の分析は、効率的で、選択的なHSCの形質導入及び形質導入されたCD34+/CD90+細胞の骨髄へのリホーミングを示した。4週目に、前駆細胞コロニー形成細胞の約5%が、組み込まれたベクターによる安定した形質導入を実証し、この頻度はインビボ選択開始後に増加した。PBMCにおけるヒトmgmtP140K mRNA発現のレベルは、インビボ選択後にも増加した。
【0280】
結果の概要
【0281】
新たな、最適化された免疫抑制レジメンを使用すると、アデノウイルスベクター(HDAd5/35++が例として挙げられる)の静脈内投与は検出されたサイトカインの有意な活性化がなく忍容性が非常に良好であった。図12A~12Cに示されるように、IL-6シグナル阻害剤(トシリズマブ)及びコルチコステロイド(デキサメタゾン)を含む免疫抑制レジメンで処置したNHPは、アデノウイルスベクター投与の際に強固な免疫応答(血清中IL-6によって測定される)を経験し、IL-6シグナル阻害剤(トシリズマブ)、IL-1シグナル阻害剤(アナキンラ)、及びコルチコステロイド(デキサメタゾン)を含む免疫抑制レジメンを受けているNHPは、同じ測定によって検出可能な免疫応答をほとんど実証しない。さらに、アナキンラのトシリズマブ及びデキサメタゾンとの組合せ(トシリズマブ及びデキサメタゾン単独ではない)は、血清中TNFαによって測定したアデノウイルスベクター投与に対する免疫応答を抑制した(図12D及び12E)。こうした結果が一緒になることで、アナキンラ及びアナキンラを含むレジメンによるアデノウイルスベクター投与に対する免疫応答の予期しない強固な調節が実証される。HSCの効率的な形質導入、低用量のOBG/BCNUによる形質導入された前駆細胞の効率的なインビボ選択が実証された。本発明者らの知る限りでは、本実施例は、インビボHSC遺伝子治療が、高用量化学療法による前処理を必要とせず、かつ高度に特殊化された医療施設を必要とせずに、ヒトにおいて実行可能であるという最初の実証である。このアプローチによって、遺伝子治療及びゲノム編集の技術分野のための大きな進歩がもたらされ、限定された医療資源しかない場所に患者を到達させるのに必要なポータビリティ及びアクセシビリティを可能にする。
【0282】
方法の概要
【0283】
使用されるベクター:HDAd5/35++
【0284】
ベクターペイロード:投与されたベクターは、HDAd5/35++ドナーベクターとHDAd5/35++サポートベクターとの1:1混合物を含んだ、すなわち、ここで、ドナーベクターは、トランスポゾン及びサポートベクターによってコードされるトランスポゾン組み込み機構を含んだ(図7C及び8A~8Dにおけるドナーベクター及びサポートベクターの例示を参照のこと)。本明細書において提供される特定の例では、サポートベクターはSB100xトランスポゼース及びFlpeリコンビナーゼをコードし、ドナーベクターはSB認識のためのIRを両側に有するトランスポゾン及びFlpeリコンビナーゼ認識のためのFRT部位をコードした。本明細書において提供されるある特定の例では、トランスポゾンは、β-グロビンプロモーター/LCRと作動可能に連結されたヒトガンマグロビンcDNA、及びPGKプロモーターと作動可能に連結されたGFP/MGMTp140Kカセットを含んだ(図7Dの選択プロトコール例の模式図を参照のこと)。ある特定の例では、ドナーベクターペイロードは、トランスポゾンの外側に、それぞれがU6プロモーターの制御下にある、赤血球bcl11aエンハンサーを標的とするガイド配列及びHBGプロモーター内のBCL11A結合部位をコードするアカゲザルガンマグロビン再活性化CRISPR/Cas9カセット、ならびにEF1αプロモーターの制御下にあるspCas9 cDNAをさらに含んだ。ある特定の例では、ガンマグロビン再活性化カセットが、3’ IR(SB認識に関する)及びfrt部位(Flp介在性の組換え)の外側に挿入され、再活性化カセットの一過性発現を可能にする。HDAd5/35++ベクターは、HSCを選択的に形質導入する(図9A~9Dのデータ例を参照のこと)。
【0285】
HDAd5/35++ベクターを24時間空けて2回の注入(それぞれ40分かけて)で投与した。最初の注入(-1日目)は、0.5~1.65E12vp/kgの間であり;2回目のHDAd5/35++注入(0日目)は、0.5~1.6E12vp/kgの間であった。
【0286】
動員レジメン:-5日目に開始し、0日目まで継続して(6日間の処理)、各動物は、50μg/kgの用量でG-CSFのSQ注射を受けた。AMD3100(5.0mg/kg)はSQで2回受け、1回目の注射は-2日目(10PM)であり、2回目の注射は-1日目(10PM)であった(図10A)。動員は、3つのNHPのすべてで有効であった(図10B、10C、及び10D)。
【0287】
免疫抑制レジメン:-2日目に開始し、0日目まで継続して、動物はデキサメタゾン(5.0mg/kg)のIV用量を受けた。これに、-1日目に開始して2日目まで継続して8.0mg/kgの用量でIVで与えたActemra(登録商標)(トシリズマブ)単独(NHP#1)、または-1日目から開始して2日目まで継続してアナキンラと共にActemra(登録商標)(IV 50mg/動物、NHP#2及びNHP#3)のいずれかを補充した。
【0288】
【表4】
【0289】
選択レジメン:28日目と57日目に、それぞれの動物は、30分にわたって与えられるBCNU(20mg/m)及びOBG(120mg/m)のIV注射を受けた。
【0290】
HDAd5/35++ベクター及びNHP研究の概観:
【0291】
3頭の雄性のアカゲザルを、使用したHDAd5/35++ベクターあたりN=1を用いるこれらの研究において治療した。NHP#1は、2つのペイロードモジュール:i)EF1αプロモーターと作動可能に連結されたMGMTP140K選択マーカーと一緒に、小型β-グロビン LCRと作動可能に連結されたヒトγ-グロビン遺伝子を宿主細胞ゲノムに無作為に組み込むためのトランスポゾンモジュール、及びii)内在性アカゲザルγ-グロビン発現のCRISPR/Cas9に介在される再活性化のためのCRISPR/Cas9モジュールを含有するドナーベクターを受けた(図8B)。この組合せドナーベクターを、活性の増強されたSleeping Beautyトランスポゼース(SB100x)(HDAd-SB)を発現するサポートベクター(その活性は、トランスポゾンを宿主細胞ゲノムに組み込むことによってγ-グロビン遺伝子の付加を介在し、CRISPR/Cas9モジュールの破壊を誘発し、それによって、CRISPR/Cas9系の発現及び活性の持続期間を限定する)と同時に注射した(図8B)。γ-グロビンカセットをセーフゲノムハーバーであるAAVS1遺伝子座に標的化して組み込むためのHDAd5/35++ドナーベクターを、NHP#2に注射した(図8C)。NHP#3に注射したベクターは、NHP#1ベクターに類似したが、ヒトγ-グロビンの代わりにアカゲザルγ-グロビンをコードし、NHPの導入遺伝子産物に対する免疫応答を最小限にした(図8D)。
【0292】
3頭の動物のいずれも、登録の時点で検出可能な抗ベクター抗体を有さなかった。予期せずに、NHP#1は、隔離中に抗体を獲得した(力価1:680)。NHP#1及び#3を6ヶ月間モニターした。NHP#2は、タクロリムスの過剰用量(胃カテーテルを介して5日間にわたり与えた)により、HDAd注射後3日目に安楽死させなければならなかった。これにもかかわらず、関連データのセットをこの動物から収集することができた。インビボHSC選択では、NHP#1は、30mg/kgのOBGと、10、20、及び30mg/kgのBCNUとを、それぞれ、4、6、及び8週目に受けた。NHP#3を30mg/kgのOBGと10、20、及び20mg/kgのBCNUとで、4、8、及び13週目に処置した。
【0293】
HSC動員。G-CSFを4回注射し(SC、AM)、それに続いてAMD3100(SC PM)をHDAd注射の11時間前に与えることによって、HSCを動員させた。このタイミングで、ヒトでは、動員されたHSCのピークがAMD3100投与の11時間後であると考えられた。以下に概説するように、ヒトとは異なり、NHPは、赤血球細胞でCD46(HDAd5/35++ベクターに対する標的受容体)を発現する。これは、注射したHDAd5/35++粒子の隔絶のリスクを有する。これに対処するために、動員レジメンを修正し、HDAd5/35++の2回目の注射を与えた(図10A~10D)。
【0294】
免疫抑制:アデノウイルスベクターへの曝露から得られる自然免疫活性化のホールマークは、炎症促進性サイトカインの上昇である。特に、IL-1及びIL-6シグナル伝達は、アデノウイルスベクターの全身投与による有害作用を介在するのにきわめて重要であると考えられる(Shayakhmetov et al., J Immunol. 174(11): 7310-7319, 2005;Koizumi et al., J Immunol. 178(3): 1767-1773, 2007;Benihoud et al., J Gene Med. 2(3): 194-203, 2000)。ヒト導入遺伝子産物(MGMTP140K及びγ-グロビン)に対する自然(サイトカイン)応答及び適応免疫応答を最小限にするレジメンは、研究中に進化した(表5)。デキサメタゾン(2mg/kg)及びトシリズマブ(8mg/kg)を含む予防的免疫抑制レジメンをNHP#1に投与した。このレジメンは、ベクター投与の6時間後にピークに達したIL-6及びTNF-aの放出を完全に抑制するのに十分ではなかった(図12A~12E)。血清中サイトカインは、24時間までにベースラインに戻った。新たな免疫抑制レジメン(デキサメタゾン、IL-6Rアンタゴニスト、IL-1bRアンタゴニスト、生理食塩水ボーラス IV)は、HDAd5/35++ベクターの静脈内投与に関連するすべての副作用を和らげた。IV液体ボーラスを含むことにより、低血圧とそれに続く吐き気が防止された。
【0295】
【表5】
【0296】
注目すべきことに、GCSF/AMD3100動員は、3頭の動物すべてにおいて、0日目から4日目に好中球数の重大な増加をもたらした(図20も参照のこと)。好中球は、老化の間に放出され得る炎症促進性サイトカインを含有する。NHP#3に投与した免疫抑制レジメンは、1日目と2日目にもアナキンラ/トシリズマブを含むことによって、これを中和することを目的とした。
【0297】
適応免疫応答を抑制するために、NHP#1は、タクロリムス/シロリムス/MMFを毎日受けた。長期間にわたって与えられると、このレジメンは、胃腸管及び腎臓毒性をもたらした。NHP#3では、したがって、これが骨髄破壊/前処理済アカゲザルにおいて十分であったため、タクロリムス(SC)のみを投与することを決定した。しかし、本研究は、この研究における動物は十分に免疫応答性であるため、タクロリムス単独では、抗ヒトMGMTP140K抗体(及びT細胞応答)の発生を防止できなかったという観察も含んだ(図21A、21Bも参照のこと)。MMF及びCTLA4-Ig(アバタセプト;Orencia(登録商標))による追加の処置によって、NHP#3の免疫抑制を高める試みは、部分的にのみ効果的であった。胃カテーテルを介して与えられた免疫抑制薬物は、重篤な副作用を引き起こし得る。
【0298】
ベクター血清クリアランス:1.6×1012vp/細胞のIV注射後の血液からのベクターのクリアランスは、2~3時間の半減期を有するNHP#2及びNHP#3に対して同様のキネティクスを示した(図19A~19C)。ベクターは、注射の9~10時間後には、もはや検出可能ではなかった。NHP#1では、ベクターゲノムは、注射の24時間後も依然として検出可能であった。注目すべきことに、NHP#1は、隔離中に抗HDAd5/35++ IgG抗体を獲得し、これにより、免疫複合体の形成と、影響を受けたベクタークリアランスがもたらされる場合があった。全体として、HDAd5/35++のクリアランスは、例えば、Ad5ベクターのクリアランスよりもはるかにゆっくりであるようであった(Seshidhar et al., Virology. 311(2): 384-393, 2003)。
【0299】
身体の健康及び血液学:積極的な免疫抑制(タクロリムス+シロリムス+MMF)及びインビボ選択(最後のBCNU用量:30mg/kg)によってNHP#1において有害な副作用が観察されたが、NHP#3の安全性プロファイルはプロトコール調整(タクロリムスのみ、BCNUの最大用量:20mg/kg)後に優れていた(図20A~20B)。臨床兆候も、異常な体重減少も、異常な血液細胞数も、異常な血液化学も観察されなかった。注目すべきことに、Ad5ベクターを注射した動物について期待されるものとは全く対照的に、肝臓トランスアミナーゼは上昇しなかった(Seshidhar et al., Virology. 311(2): 384-393, 2003)(図13A~13Dを参照のこと)。(HDAd5/35++ベクターは、肝細胞取込みを回避するよう設計された。)さらに、骨髄における系譜-陽性細胞及びCD34+細胞の分析は、使用したOBG/BCNUの用量が、NHP#3の骨髄及びHSCに影響を与えないことを実証した(図21A~21C)。
【0300】
編集酵素の発現及び抗体応答:HDAd-SBベクターのエピソームの性質及びCas9自己破壊機構のために(図8Aを参照のこと)、ゲノム編集酵素(SB100x、Flpe、及びCas9)の発現は、対応するmRNAに対するqRT-PCRによって示されるように3週目までに失われた(図16G~16I)。結果として、Flpe、SB100x、及びCas9 mRNAは検出可能であったにもかかわらず、コードされたFlpe、SB100x、及びCas9産物に対しては、有意なIgM及びIgG抗体の応答は観察されなかったが、GFPに対する応答は検出された(例えば、NHP#1からのデータに関する図16C~16Iを参照のこと)。しかし、期待されたように、HDAd5/35++の静脈内注射は、HDAdウイルスカプシドタンパク質に対して指向化されたIgM及びIgG応答を誘発した(例えば、図16Aにおいて提供されたNHP#1のデータ、図16Bにおいて提供されたNHP#3のデータを参照のこと)。これらの応答は、経時的に低下した。注目すべきことに、HDAd注射の時点で、NHP#1は、1:680の抗HDAd力価を有しており、これは、4週間の隔絶中にAdに曝露されたことに起因する可能性が最も高い。
【0301】
3日目のベクターの生体分布:動物#2(タクロリムスの偶発的な過剰用量のために3日目に安楽死させた)からの血清及び組織の試料は、新たな免疫抑制レジメン(デキサメタゾン、IL-6R、IL-1bRアンタゴニスト、生理食塩水ボーラスIV)がHDAd5/35++ベクター投与に関連するすべての副作用を和らげることを示した。ベクターDNA生体分布研究は、ほとんどの組織(精巣及びCNSを含む)の非常に低い形質導入または形質導入の不在を実証した(図22)。肺、肝臓、及び脾臓におけるベクターシグナルは、残留血液細胞に由来した(動物が組織収集前に5リットルのPBSにより灌流された場合であっても)。24週目の骨髄試料をRNA-seqに対して使用して、トランスクリプトームへの遺伝子付加/編集の副作用の可能性を評価した(研究開始前に収集した骨髄試料と比較して)(エクセルファイルを参照のこと)。有意な異常は見られなかった。
【0302】
PBMCの形質導入:PBMCにおけるベクターコピー数(VCN)をHDAd注射後のさまざまな時点で測定した(図23A~23C)。データは、PBMCの初期形質導入を示す。しかし、ベクターシグナルは2週目までに喪失し、これは、分化した血液細胞の自然なターンオーバー及び/またはエピソームベクターのDNA分解に起因する可能性が最も高い。
【0303】
HSCの選択的形質導入:HDAd注射後3日目及び8日目の全骨髄単核細胞(MNC)及び骨髄CD34+細胞の分析により、ベクター陽性細胞が示された。細胞当たりのベクターコピー数(VCN)は、注射したウイルス用量に依存した。重要なことに、データは、動員されたCD34+細胞が選択的に形質導入され、次いで、骨髄に戻ることを示した(図24A~24D)。これらの初期の時点で検出されたベクターシグナルは、エピソームベクターのDNAを起源とする可能性が最も高い。
【0304】
安定したHSC形質導入:導入遺伝子の組み込みを測定するために、骨髄細胞を播種して、CFUアッセイに供した。コロニー形成/細胞増殖中に、エピソームベクターのほとんどが喪失する(例えば、図14Aによって収集し、図14B及び14Cにおいて示されるNHP#3からのデータを参照のこと)。VCNが1の単一コロニーからのDNA分析は、5~10%の組み込み頻度を示唆した(図25A及び25Bを参照のこと)。この頻度は、インビボ選択によって有意に増加しなかった。後者は、未分化のHSC/CFUのレベルではなく、前駆細胞のレベルで生じると考えられる。
【0305】
NHP#1からのデータ
【0306】
NHP#1は、既存の抗HDAd5/35++血清抗体を有し、-1日目に0.5×1012vp/kgのHDAd及び0日目に1.2×1012vp/kgを受けた。このために、初期のCD34+細胞の形質導入は、他の2つの動物におけるよりも効率が低かった(図24A~24D、25A、及び25Bを参照のこと)。それにもかかわらず、γ-グロビンは、2週目より後に末梢赤血球の20%でフローサイトメトリーにより検出可能となった(図15A~15C)。OBG/BCNUによるインビボ選択によって、γ-グロビンマーキングが一時的に低下し、これは、赤血球前駆細胞への細胞毒性効果による可能性が最も高い。しかし、3回目のサイクルのOBG/BCNU処理の後には、γ-グロビン陽性RBCのパーセンテージが90%まで上昇し、18週目付近で一過的に低下した以外は、実験の終わりまで安定なままであった。同様のパターンは骨髄の赤血球前駆細胞においても見られた。RBC溶解液のHPLC分析によって、本発明者らは、アカゲザルの内在性γ-グロビンを添加したヒトγ-グロビンと識別することが可能になった。γ-グロビンレベルは、それらが結合してHbFを形成するα1グロビン鎖に対して表した。ヒトγ-グロビン鎖は、インビボ選択の完了後にHPLCによって検出可能となり、1%のα1グロビンで22週目まで比較的安定なままであった(図26A、26B)。ヒトγ-グロビンに即して、他の導入遺伝子の発現キネティクスは、ヒトmgmtP140Kである。インビボ選択によって、mgmtP140K mRNAのレベルは2桁まで増加し、GAPDH mRNA発現と同等のレベルに達した(細胞当たり2000のmRNAコピー)。これは、OBG/BCNU処理に対する抵抗性を付与し得る強固なレベルである。検出可能なmgmtP140K mRNAは、15週目に、GAPDH mRNAの10%まで低下した。15週目以降、これは安定したままであった(図26C)。インビボ選択は、アカゲザルのγ-グロビンの増加ももたらし、これは、16週目に始まり、6%のα1グロビンで15週目にピークに達した(図27A)。後続の下降は、有害なゲノム再配列によるCRISPRにより編集された細胞の喪失によるものであり得る。これは、T7E1ミスマッチPCRデータによって部分的にサポートされ、14週目のHBG1/2プロモーター標的部位において2.5%のインデルを示したが、21週目には検出不能な切断を示した(図27B)。ヒト及びアカゲザルのmRNAの発現は、対応するタンパク質レベルの発現を反映した。全体として、ヒトのγ-グロビン及びmgmtP140Kの発現データは、形質導入された前駆細胞/末梢血液細胞のインビボ選択/拡大を可能にするレベルでのベクターの組み込みを示す。15週目以降はアカゲザルのγ-グロビンの発現は低下し、フローサイトメトリーにより15週目以降にRBCで検出された高いγ-グロビンマーキング(図25A)は、ヒトのγ-グロビン形態の発現に基づく可能性が最も高い。計画された剖検の時点で、NHP#1のゲノム及びトランスクリプトーム分析において異常は見られなかった。
【0307】
NHP#3からの有効性データ
【0308】
この動物は、NHP#1よりも10分の1低い、1:66の予備注射による抗HDAd抗体の力価を有した。2.1×1012vp/kgで注射したウイルス用量は、NHP#1よりも20%高い。NHP#3は、15週目までSCでタクロリムスを受けた。18週目に、タクロリムス/MMF/アバタセプトにより免疫抑制を再開した。
【0309】
初期CD34+形質導入(d3及び8)及び安定して形質導入されたCFUのパーセンテージは、NHP#1におけるよりも少なくとも2倍高かった(図24A~24D、25A、及び25B)。NHP#3において使用したベクターは、アカゲザルのγ-グロビン遺伝子を含有し、治療用タンパク質に対する免疫応答を低下させた。予期せぬことに、アカゲザルのγ-グロビンは、それをヒト-β-グロビン LCRと組み合わせた場合に、ヒトγ-グロビン遺伝子よりも低い効率でしか発現しなかった。したがって、RBCのγ-グロビンマーキング及び発現レベルは、インビボアプローチの可能性を過小評価するものである。3回目のサイクルのインビボ選択後に増加し始めたγ-グロビン-陽性RBCのパーセンテージは、18週目には45%に達したが、マーキングは21週目までに7%まで低下し、研究の終わり(28週目)まで比較的安定したままであった(図17A)。この下降は、骨髄単核細胞においてはあまり顕著ではなかった(図17B、17C)。NHP#1と同様に、フローサイトメトリーによって測定したγ-グロビンの大多数は、添加したアカゲザルのγ-グロビン遺伝子を起源とした。CRISPRにより編集された細胞は喪失したようであった(図27B)。
【0310】
PBMCにおけるヒトのmgmtP140K mRNA発現レベルも、1回目のインビボ選択の後に増加したが、しかし、2回目と3回目のサイクルの後の増加は鈍化した。mgmtP140K発現は、タクロリムス+MMF+アバタセプトによる免疫抑制の再開後にすぐに回復した(図17D)。これは、末梢における、及び程度はより低いが骨髄における、導入遺伝子発現細胞を排除することが可能な抗ヒトMGMTP140K免疫応答、特にT細胞応答の役割を示す。ヒトMGMTに対する血清中IgG抗体は、この仮説をサポートする(図18A及び18B)。しかしながら、全体として、NHP#1におけるよりも、NHP#3において、より高い導入遺伝子の発現レベルが観察された(図17E及び17F)。mgmtP140K mRNAと抗体のデータをまとめると、mgmtP140Kレベルが増加する場合は常に(例えば、OBG/BCNUの後)、タクロリムスによって完全に制御することができない免疫刺激がより多く存在すると推測され得る。タクロリムスが2週間中断されると(15週目~17週目)、抗MGMT抗体レベルは増加し、MMFとCTLA4-Ig(アバタセプト)による追加処置のみが免疫応答を部分的に中和する。注目すべきことに、三重の免疫抑制処置が、γ-グロビンとmgmtP140K発現のさらなる下降を停止させた(22週目~28週目)。図18A及び18Bは、NHP#1におけるより積極的な免疫抑制レジメン(タクロリムス/シロリムス/MMF)が、抗MGMT免疫応答を和らげることができることも示す。
【0311】
この研究の将来的なNHPでの実施形態は、i)ヒトmgmtP140K遺伝子のこの変異体のアカゲザルバージョンによる置換え(例えば、図18Cを参照のこと)、及びii)-1、7、14日目に、及びその後は毎月、アバタセプトを投与し、外来導入遺伝子産物に対するいくらかのレベルの忍容性を誘発すること、のうちの1つまたは複数を含み得る。重要なことに、ヒトの導入遺伝子産物に対する免疫応答は、ヒトにおける問題であるべきではない。
【0312】
アカゲザル赤血球のCD46。ヒトにおけるのとは異なり、アカゲザル赤血球は、それらの表面にCD46を有する(図28A)。CD46に対する、HAd5/35++を含むリガンドの結合は、CD46の細胞外ドメインの脱落をもたらす(Sakurai et al., Gene Ther. 14(11): 912-919, 2007)。血液中の赤血球がきわめて多いことを考慮すると、NHPにおける赤血球は、IV注射したHDAd5/35++ベクター粒子の非特異的隔絶/喪失に関する主要なシンクを創出する。これは、「ベクター用量-応答」研究を困難にもする。アカゲザルの赤血球がインビトロでHDAd5/35++注射をブロックし得ることをサポートするデータを図28Bに示す。一方、Zafar et al.(Cancer Gene Therapy, 2020, doi.org/10.1038/s4147-020-00226-z)による最近のデータは、赤血球へのAd結合は可逆性であることを示す。HDAdゲノムの血清クリアランスが緩慢(二相)であること(図19A~19C)、及びHDAd注射後の血清中のsCD46濃度の変化(図28C)は、この観察が正しいことを示し得る。それにもかかわらず、赤血球のCD46を飽和させるために、高用量のベクターを2サイクルで注射した。急性応答を制御することができるため、これに即することになる。
【0313】
まとめると、この実施例は、とりわけ、IL-1シグナル阻害剤(例えば、アナキンラ)が、アデノウイルスベクター投与に対するインビボ免疫応答を抑制するのに強力な薬剤であること、IL-6シグナル阻害剤(例えば、トシリズマブ)及び/またはコルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン)などの他の薬剤と組み合わせて使用され得ること、及びアデノウイルスベクターの例(HDAd5/35++)に対する自然免疫応答を完全に鈍化させ得ることを実証する。これは、これらのベクターに対する自然応答を駆動する際のIL-1及び/またはIL-6の役割を文書化するものである。この実施例は以下についてさらに実証する:HDAd5/35++によるインビボでのHSC形質導入は、適応免疫抑制を有する動員されたNHPにおいて安全になされ得る;CFUの5%が安定して形質導入される(インビボ選択の前に);末梢血液細胞における導入遺伝子のマーキング/発現がインビボ選択によって増加され得る;完全にインタクトな免疫系に関して、CRISPR/Cs9により編集された細胞は経時的に喪失され得る。
【0314】
(実施例6)
異常ヘモグロビン症のためのインビボHSC遺伝子治療:ウイルスベクター、サポートベクター、免疫抑制レジメン、選択剤、及び幹細胞動員レジメンを含むアカゲザルにおけるインビボ遺伝子治療。
【0315】
本実施例は、トシリズマブ、アナキンラ、及びデキサメタゾンを含む免疫抑制レジメンの使用をさらに例示する。試薬及び実験設計は、ここで別段に注記した以外は実施例5と同様であった。トシリズマブはIL-6受容体アンタゴニストの例であり、アナキンラはIL-1受容体アンタゴニストの例であり、デキサメタゾンはコルチコステロイドの例である。本開示は、IL-6受容体アンタゴニスト(例えば、トシリズマブ)とIL-1受容体アンタゴニスト(例えば、アナキンラ)の組合せ、必要に応じてさらに、コルチコステロイド(例えば、デキサメタゾン)との組合せが、予期せぬことに、サイトカインレベル(特にIL-6及び/またはTNF)の増加の抑制のための強力な組合せであり、そうでなければ、例えば、インビボ遺伝子治療のために哺乳動物に対するウイルスベクター(例えば、アデノウイルスベクター)の投与から生じるという認識を含む。本開示の非ヒト霊長類に、トシリズマブ、アナキンラ、及びデキサメタゾンを投与した。追加の薬剤がNHPに投与された程度に、当業者は、このような追加の薬剤は、ウイルスベクターの哺乳動物への投与と併せて、サイトカインレベルの有益な抑制に必要ではないことを認識するであろう。例えば、タクロリムスは、適応免疫応答を抑制するために投与される。
【0316】
ウイルスベクターを哺乳動物対象に全身投与する(例えば、アデノウイルスベクターの投与)ことに関する主要なリスクは、自然免疫系の活性化である。急性自然免疫応答は、ベクター送達の直後に起こり(すなわち、数分から数時間)、用量依存的である。例えば、血清中IL-6の上昇は、アデノウイルスベクターの全身投与の1時間後に生じ、投与後3~6時間の間にピークレベルに達する可能性がある。この自然免疫応答は、急性毒性を構成するかまたはそれをもたらす可能性があり、サイトカインレベルの上昇は、死をもたらし得るサイトカインストームを含み得る。
【0317】
この実施例は、アナキンラ、トシリズマブ、及びデキサメタゾンが自然免疫活性化を減弱化させ、Ad5/35++の静脈内投与によってもたらされるサイトカイン放出を実質的に低減するという発見を含む。NHP#4及びNHP#5に、トシリズマブ、アナキンラ、及びデキサメタゾンを含む免疫抑制レジメンを投与した(表6を参照のこと)。HDAd投薬の30分前にアナキンラを投与した。血清中アナキンラ濃度がピークに達する時間は、利用可能な情報から推定すると、皮下投与後2.5~4.5時間の間である。NHP#4及びNHP#5において測定したIL-6レベルは、投与された薬剤によるIL-6レベルの抑制を確認するものである(図29及び31)。NHP#4及びNHP#5において測定したTNFレベルは、投与された薬剤によるTNFレベルの抑制を確認するものである(図30及び32)。よって、本実施例は、アナキンラ、トシリズマブ、及びデキサメタゾンの投与が、IL-6及び/またはTNFレベルで測定した場合、自然免疫応答の抑制に対して有効であることを確認するものである。
【表6】
【0318】
他の実施形態。いくつかの実施形態が記載されたが、基本的開示及び実施例が、本明細書に記載の組成物及び方法を利用するか、またはそれによって包含される他の実施形態を提供し得ることは明らかである。したがって、範囲は、例として代表された特定の実施形態によるよりも、本開示及び添付の特許請求の範囲から理解され得るものによって定義されるべきであることが認識されるであろう。本明細書において引用されたすべての参照文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
配列の概要
【0319】
本明細書に記載の核酸配列及び/またはアミノ酸配列は、37 C.F.R. §1.822に定義されるように、標準的な略語を使用して示される。4KBのファイルサイズを有する、2021年4月9日、またはその付近で作成された「F053-0131PCT_SeqList.txt(Sequence Listing.txt)」というタイトルのコンピューター可読テキストファイルは、本出願に関する配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0320】
添付の配列表において、配列番号1は、以下のようにアナキンラのアミノ酸配列である:
MRPSGRKSSKMQAFRIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEKIDVVPIEPHALFLGIHGGKMCLSCVKSGDETRLQLEAVNITDLSENRKQDKRFAFIRSDSGPTTSFESAACPGWFLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFYFQEDE
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A-B】
図7C-D】
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A-B】
図9C-D】
図10A
図10B
図10C-D】
図11A
図11B-C】
図12A-B】
図12C
図12D-E】
図13A-B】
図13C-D】
図14A
図14B-C】
図15A
図15B
図15C
図16A-B】
図16C-D】
図16E-F】
図16G-H】
図16I
図17A
図17B-C】
図17D
図17E-F】
図18A
図18B
図18C
図19A-C】
図20A
図20B
図21A-C】
図22
図23A-C】
図24A-D】
図25
図26A
図26B
図26C
図27
図28A
図28B-C】
図29
図30
図31
図32
【配列表】
2023521409000001.app
【国際調査報告】