(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】外科用糸に張力をかけるための装置および骨締結キット
(51)【国際特許分類】
A61B 17/88 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
A61B17/88
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562740
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2021053061
(87)【国際公開番号】W WO2021209909
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】102020000007894
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドーニ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ロッシ,エルメーテ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL37
(57)【要約】
外科用糸に張力をかけるための装置(1)であって、患者の骨(B)の周りに巻かれた外科用糸(100)の結び目(101)と接触して配置されるように構成された先端部分(11)を有する細長い本体(10)と、細長い本体(10)と操作部材(20)とを相互に離間または接近させるように構成されたねじおよびナット機構(30)によって細長い本体(10)に接続された操作部材(20)と、を備え、操作部材(20)は、骨(B)の周りに巻かれ結び付けられた外科用糸(100)の両端(102)を結合するためのそれぞれの結合部分(21)を有する。外科用糸(100)の両端(102)は、装置(1)の使用構成においてそれぞれの結合部分(21)に可逆的に拘束可能である。細長い本体(10)および操作部材(20)は、骨(B)の周りの外科用糸(100)を締め付けるように外科用糸(100)の両端(102)に張力をかけるために移動軸(X)に沿って相互に離間可能である。先端部分(11)は、装置(1)の使用構成において結び目(101)を少なくとも部分的に受け入れるように成形された溝(12)を有する。溝(12)は、移動軸(X)に対して垂直に延在しており、細長い本体(10)の側壁(13)の両側においてそれぞれの湾曲部分(14)で開いており、それぞれの湾曲部分(14)に沿って外科用糸(100)の両端(102)をそれぞれの結合部分(21)に向かって戻すことができ、その結果、外科用糸(100)の両端(102)は、溝(12)内の湾曲部分(14)間の第1の区間にわたって骨(B)に対して接線方向に配置され、それぞれの湾曲部分(14)とそれぞれの結合部分(21)との間で、第1の区間よりも長いそれぞれの第2の区間に沿って骨(B)に対して横方向に配置され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科用糸に張力をかけるための装置(1)であって、
長手方向軸(Y)に沿って延在する細長い本体(10)であって、患者の骨(B)の周りに巻かれた外科用糸(100)の結び目(101)と接触して配置されるように構成された先端部分(11)を有する細長い本体(10)と、
前記細長い本体(10)に接続された操作部材(20)であって、前記患者の体外に配置されるように構成され且つ前記骨(B)の周りに巻かれ結び付けられた前記外科用糸(100)の両端(102)を結合するためのそれぞれの結合部分(21)を有し、前記外科用糸(100)の前記両端(102)は、前記装置(1)の使用構成において前記それぞれの結合部分(21)に可逆的に拘束可能である、操作部材(20)と、を備え、
前記細長い本体(10)は、前記細長い本体(10)と前記操作部材(20)とを相互に離間または接近させるように構成されたねじおよびナット機構(30)によって前記操作部材(20)に接続されており、
前記細長い本体(10)および前記操作部材(20)は、前記骨(B)の周りの前記外科用糸(100)を締め付けるべく前記外科用糸(100)の前記両端(102)に張力をかけるために前記長手方向軸(Y)と一致する移動軸(X)に沿って相互に離間可能であり、
前記先端部分(11)は、前記装置(1)の前記使用構成において前記結び目(101)を少なくとも部分的に受け入れるように成形された溝(12)を有し、
前記溝(12)は、前記移動軸(X)に対して垂直に延在しており、前記細長い本体(10)の側壁(13)の両側においてそれぞれの湾曲部分(14)で開いており、前記それぞれの湾曲部分(14)に沿って前記外科用糸(100)の前記両端(102)を前記それぞれの結合部分(21)に向かって戻すことができ、
その結果、前記外科用糸(100)の前記両端(102)は、前記溝(12)内の前記それぞれの湾曲部分(14)間の第1の区間にわたって前記骨(B)に対して接線方向に配置され、前記それぞれの湾曲部分(14)と前記それぞれの結合部分(21)との間で、前記第1の区間よりも長いそれぞれの第2の区間に沿って前記骨(B)に対して横方向に配置され得る、装置(1)。
【請求項2】
前記操作部材(20)は、
前記ねじおよびナット機構(30)を締めるまたは緩めるための、前記移動軸(X)周りに回転可能なノブ(22)と、
前記2つの結合部分(21)が設けられたスリーブ(23)と、を備え、
前記ノブ(22)は、前記スリーブ(23)に回転可能に接続されている、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記細長い本体(10)および前記スリーブ(23)は、前記移動軸(X)に沿って相互に平行移動可能であり、前記移動軸(X)周りに回転可能に固定されている、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記細長い本体(10)は、前記先端部分(11)が設けられたヘッド要素(15)と、前記長手方向軸(Y)に沿って延び且つ前記ヘッド要素(15)と前記操作部材(20)との間に動作可能に配置されたステム(16)とを備える、請求項1から3のいずれか一項または複数に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記ステム(16)は、前記操作部材(20)の凹部(24a)に挿入された第1の端部(16a)と、前記先端部分(11)とは軸方向反対側にある、前記ヘッド要素(15)の凹部(15b)に挿入された、前記第1の端部(16a)の反対側にある第2の端部(16b)とを有する、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記ねじおよびナット機構(30)は、前記ステム(16)の前記第1の端部(16a)に固定されたナット(31)と、前記移動軸(X)に沿って配置され且つ前記操作部材(20)の前記凹部(24a)内に配置されたねじ(32)とを備え、前記ねじ(32)は、前記ナット(31)に可逆的にねじ込み可能であり、前記操作部材(20)および前記細長い本体(10)を相互に離間または接近させるように前記ステム(16)の並進を可能にする、請求項5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記ノブ(22)は雌ねじ部分(22a)を有し、前記ステム(16)の前記第1の端部(16a)は、前記雌ねじ部分(22a)の内側に可逆的にねじ込まれるようにねじが切られており、前記操作部材(20)と前記細長い本体(10)との前記相互の離間または接近を得るように前記ステム(16)の並進を可能にし、前記第1の端部(16a)および前記雌ねじ部分(22a)はそれぞれ、前記ねじおよびナット機構(30)を規定する、請求項2に従属する場合の請求項5に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記ステム(16)のフランジ(16c)と前記ヘッド要素(15)の外縁によって画定される肩部(15c)との間に動作可能に配置されたばね(2)を備え、前記ばね(2)は、前記ヘッド要素(15)の前記凹部(15b)内で前記先端部分(11)に向かう前記ステム(16)の前進に対抗するように構成されている、請求項6または7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記ばね(2)は前記スリーブ(23)の内側に配置される、請求項7および8に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記操作部材(20)は、検査アイレット(26)であって、それを通じて前記ステム(16)が見える検査アイレット(26)を含み、前記ステム(16)は、前記ねじおよびナット機構(30)の作動時に前記検査アイレット(26)内で移動可能であるピン(27)を備え、前記検査アイレット(26)は、前記ステム(16)の前進を表す視覚要素(28)に関連付けられている、請求項6または7に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記装置(1)の使用構成において前記糸(100)が受ける張力値を検出および表示するためのシステム(3)を備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記ヘッド要素(15)は、窓(15a)であって、それを通じて前記ヘッド要素(15)の前記凹部(15b)に挿入された前記ステム(16)の一部が見える窓(15a)を有し、前記検出および表示システム(3)は、前記ステム(16)および前記窓(15a)に設けられたインジケータ(3a、3b)であって、前記ばね(2)の張力値および/または前記ヘッド要素(15)の前記凹部(15b)への前記ステム(16)の挿入深さ値を表すインジケータ(3a、3b)を備える、請求項8および11に記載の装置。
【請求項13】
前記側壁(13)は2つのスロット(17)を有し、各スロット(17)は、前記溝(12)および前記2つのスロット(17)が前記細長い本体(10)の単一の「U」字形の溝を画定するように、それぞれの結合部分(21)に向けられたそれぞれの展開方向に沿ってそれぞれの湾曲部分(14)から発する、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記2つのスロット(17)の前記展開方向は、前記移動軸(X)に平行である、請求項13に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記結合部分(21)は、前記外科用糸(102)の前記両端(102)を保持するために、それぞれの平行な回転軸(R)周りに回転可能な2つのジョー(50)を備え、前記2つのジョー(50)は、挿入時に前記両端(102)を受け入れるように適合された可変厚さのスロート(52)を画定するために、互いに向かい合う、直径が増すそれぞれの周辺部分(51)を有する。請求項1から14のいずれか1項に記載の装置(1)。
【請求項16】
前記結合部分(21)は、2つのねじりばねをさらに備え、前記2つのねじりばねは、それぞれのジョー(50)に関連付けられ且つ前記スロート(52)の厚さの増加を引き起こす前記2つのジョー(50)の不調和な回転に漸進的に対抗するように構成されている、請求項15に記載の装置(1)。
【請求項17】
各周辺部分(51)は、前記スロート(52)を画定する第1の部分(53)であって、好ましくは歯付き外形を有する第1の部分(53)と、一連の保持窪み(55)であって、好ましくは一定の厚さの一連の保持窪み(55)を有する第2の部分(54)であって、前記2つのジョー(50)の前記回転軸(R)に対して横方向に設けられた第2の部分(54)とを有し、前記一連の保持窪み(55)の間に、前記糸(100)の前記両端(102)の開いた戻りおよび位置決め凹部(56)が配置されている、請求項15または16に記載の装置(1)。
【請求項18】
前記結合部分(21)は、前記移動方向に対して横方向に設けられた貫通固定スロット(41)、好ましくは可変厚さの貫通固定スロット(41)を有する2つのビット状要素(40)を備える、請求項1から17のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項19】
前記先端部分(11)は、前記溝(12)に対して横方向に、好ましくは垂直に延在し且つ前記溝(12)との交点において少なくとも部分的に前記結び目(101)を受け入れるように成形された第二の溝(18)を有し、
前記第二の溝(18)は、前記移動軸(X)に対して垂直に延在しており、前記細長い本体(10)の前記側壁(13)の両側において前記骨(B)の周りに巻かれた前記糸の部分(103)の通過のための2つの開口部(19)で開いている、請求項1から18のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項20】
骨締結キットであって、
結び目(101)を得るために患者の骨(B)の周りに巻き付けられるように構成された生体適合性生地で作られた外科用糸(100)と、
請求項1から19のいずれか一項に記載の、前記外科用糸(100)に張力をかけるための装置(1)と、を備え、
前記先端部分(11)の前記溝(12)は、前記装置(1)の使用構成において前記結び目(101)と接触して配置されるように構成されている、骨締結キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科用糸に張力をかけるための装置およびそのような装置を備える骨締結キットに関する。
【0002】
特に、本発明は、骨折した骨の締結のための手術法を実行するために整形外科の分野で使用できる、外科用糸に張力をかけるための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
締結は基本的に、患者の骨折した骨の2つ以上の部分を一緒に保持してそれらの分離を防ぐために当該部分に外科用糸(またはケーブル)を巻き付けることからなる。
【0004】
今日までの最も一般的な外科技術には、手術対象の骨において患者を切開した後、骨折した骨を一周するようにステンレス鋼製の外科用糸を骨折した骨の周りに通すことを可能にする、締結のためのパッサー(Passer)器具(または単に「パッサー」と呼ばれる)の使用が含まれる。
【0005】
パッサーはその後に取り外され、糸の両端を、当該糸の両端にまず張力をかけて次にねじる機能を持つ特殊な手術器具の対向するアームに固定できる。
【0006】
外科医は、前述の器具を創傷に挿入し、それを骨に当てて配置して、糸の両端を器具のそれぞれのアームに固定する。その時点で、適切な張力手段を手動で作動させることにより、外科医は、糸の両端が所与の張力による張力を受けるまで、糸の両端を引っ張る。
【0007】
糸の両端が適切に張力を受けているので、外科医は骨に垂直な軸周りに器具を回転でき骨において糸をねじり、糸を骨に固定して、いわゆる締結を生成する。
【0008】
実際には、器具を数回回転させた後、骨の周りに巻かれた糸は骨の周りに締め付けられたままになるので、糸に張力をかける必要がなくなり、そのため、この時点で器具を抜き取って糸の余分な部分を切断することが可能である。
【0009】
切断するステップは余分な糸の大部分を取り除くことを可能にするが、得られた締結が機能しなくなるときに糸が解けないように、患者の体に適切なサイズのねじれた糸の「スナッグ(snag)」(つまり、鋭い突起)を残す必要がある。
【0010】
実際には、結び目を作ることによって金属製の外科用糸を安定して結び付けることは(金属の表面平滑性が高いために)難しいので、ねじりを続行する必要があり、その結果、患者の体内に締め付けスナッグを残す必要がある。
【0011】
しかしながら、出願人は、骨から突き出たこの金属のスナッグが、周囲の軟組織に痛み、損傷および裂傷を引き起こし得ることに気付いた。
【0012】
出願人は、金属の代わりに、より柔らかい材料で作られた糸の使用が、スナッグの存在に関連するそのような欠点を克服し得ることを発見した。
【0013】
しかしながら、より柔らかい糸では、骨の周りにねじることはできず、その結果、より柔らかい糸は、安定した締結のために所定の位置に留まることができないが、結び目を作って結ばれる必要がある。
【0014】
しかしながら、締結の結び目を生成するには、外科医が糸の両端を引っ張って骨折した骨の周りの輪を締めることを可能にするために、より大きな創傷を必要とすることになる(または、創傷を広げる必要があり、患者にとって明らかな悪影響を伴う)。実際、骨に対して結び目を締めるために糸の効果的な張力を得るには、糸の両端を反対且つ平行な方向に引っ張らなければならず、そのためには骨の周りにかなりの操作スペースが必要になるだろう。
【0015】
可能な限り非侵襲的に手術を行うことを可能にするように、患者に形成される創傷は基本的に最小限である。さらに、骨は軟組織に囲まれているので、それによって、操作スペースが非常に限られている。したがって、この技術による効果的な糸の張力は、望ましくないし、容易に実行もできない。
【発明の概要】
【0016】
これに関連して、本発明の根底にある技術的課題は、上述の従来技術の欠点の1つまたは複数を克服する、外科用糸に張力をかけるための装置および骨締結キットを提案することである。
【0017】
特に、本発明の目的は、サイズが小さく且つ患者の骨の周りに巻かれた外科用糸に実用的且つ効果的な態様で可能な限り最小のスペースで張力をかけることを可能にする、外科用糸に張力をかけるための装置を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、患者の健康(特に、骨を取り囲む軟組織の完全性)を保護する、信頼性が高く侵襲性が最小限の締結を得ることを可能にする骨締結キットを提案することである。
【0019】
技術的課題および指定された目的は、添付の特許請求の範囲の1つまたは複数の請求項に記載された技術的特徴を含む、外科用糸に張力をかけるための装置によって実質的に達成される。
【0020】
特に、本発明は、細長い本体および操作部材を備える、外科用糸に張力をかけるための装置を提供する。
【0021】
細長い本体は、長手方向軸に沿って延び、患者の骨の周りに巻かれた外科用糸の結び目と接触して配置されるように適合された先端部分を有する。
【0022】
操作部材は、細長い本体に接続され且つ患者の体外に配置されるように適合されている。
【0023】
特に、細長い本体は、細長い本体と操作部材とを相互に離間させるまたは接近させるように構成されたねじおよびナット機構によって操作部材に接続されている。
【0024】
細長い本体は、骨の周りに巻かれて結ばれた外科用糸の両端を結合するように構成されたそれぞれの結合部分を有する。
【0025】
外科用糸の両端は、装置の使用構成においてそれぞれの結合部分に可逆的に拘束され得る。
【0026】
細長い本体および操作部材は、外科用糸を骨の周りに締め付けるために外科用糸の両端に張力をかけるべく、細長い本体の長手方向軸と一致する移動軸に沿って相互に離間可能である。
【0027】
言い換えれば、細長い本体を操作部材から離すことによって、糸の両端が引っ張られ、それにより結び目を締める。
【0028】
有利なことに、先端部分は、装置の使用構成において結び目を少なくとも部分的に受け入れるような形状の溝を有する。
【0029】
溝は、移動方向に垂直に延在しており、細長い本体の側壁の両側においてそれぞれの湾曲部分で開いており、それぞれの湾曲部分に沿って外科用糸の両端を結合部分に向かって戻すことができる。
【0030】
言い換えれば、溝は、装置の使用構成において骨に面するように適合された先端部分の貫通窪みを画定する。
【0031】
有利なことに、したがって、外科用糸の両端は、溝の内側の湾曲部分の間で第1の区間にわたって骨に対して接線方向に、それぞれの湾曲部分とそれぞれの結合部分との間で、第1の区間よりも長いそれぞれの第2の区間に沿って前記骨に対して横方向に、配置され得る。
【0032】
したがって、本発明の装置によって、糸の両端を(骨表面に対して横方向の)第2の区間に沿って引っ張ることによって、骨の周りの溝に配置された結び目を効果的に締めることが可能である。これは、(第2の区間に接続された)第1の区間内で、糸の両端が反対且つ平行な方向に沿って引っ張られるからである。
【0033】
したがって、小さなサイズの第1の区間で引っ張られた糸の両端によって結び目に加えられる牽引力は、加えられた力の好ましい分配のために、非常に効果的である。そのような牽引力は、少さな体積で有利に動作するように、第2の区間において戻される。
【0034】
したがって、骨に接する第1の区間の存在は、可能な限り最小のスペースで第2の区間に伝達される糸の効率的な張力を可能にする。
【0035】
言い換えれば、本発明の装置により、可能な限り最小のスペースで(大きな寸法の区間に沿って)垂直の牽引力を加えながら、外科用糸を水平に(小さな区間で)引っ張ることが可能である。
【0036】
先端部分の溝の存在は、結び目を効果的に締めることを可能にする。
【0037】
さらに、本発明の装置によって、手術対象の骨の周りに外科用糸を巻き付けることによって得られる結び目から始まる締結を実行することが可能である。
【0038】
実際、糸をねじる代わりに、結び目に作用することによって、ほどけるリスクを減らし且つ手術中および手術後に周囲の軟組織を引き裂くのを防ぐことができる柔らかい材料で作られた糸を使用することを可能にすることで、締結をより効果的にすることが可能である。
【0039】
本発明のさらなる態様によれば、結び目を得るために患者の骨の周りに巻き付けられるように構成された生体適合性生地で作られた外科用糸と、本発明による外科用糸に張力をかけるための装置とを備える骨締結キットも提供される。
【0040】
有利なことに、先端部分の溝は、装置の使用構成において結び目と接触して配置されるように構成される。
【0041】
生体適合性生地の糸は柔らかい糸であり、骨および周囲の組織を傷つけない可能性など、多くの利点を有する。
【0042】
したがって、生体適合性生地で作られた外科用糸および本発明による張力装置を使用することにより、ねじられた糸よりもはるかに信頼性の高い結び目を使用して骨の効果的な締結を達成することが可能である。
【0043】
結び目が骨の周りで締められると、単純な外科用の鋏を使用して両端から余分な糸を取り除き、目に見える小さな結び目だけを残すことが可能であり、この小さな結び目は生地でできているので、周囲の組織の損傷および裂傷を防ぐ。
【0044】
外科用の鋏はまた、外科用の鉗子よりもかさばらず、はるかに操作しやすく、したがって、余分な糸を切断して取り除く作業は、本発明によって実用的且つ効率的である。
【0045】
したがって、結び目の存在は、かさばり且つ危険な「スナッグ」を必要としない、安全で且つより安定した締結を可能にする。
【0046】
本発明のキットは、最小限の侵襲的態様で操作することを可能にし、効率的な締結を達成する。
【0047】
参照により本明細書に組み込まれる従属請求項は、本発明の種々の実施形態に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0048】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図に示されるように、外科用糸に張力をかけるための装置および骨締結キットの好ましいが排他的ではない実施形態の以下の例示的であり、したがって非限定的な説明からより明らかになるであろう。
【
図1】本発明による外科用糸に張力をかけるための装置の概略斜視図である。
【
図2】装置の第1の使用構成中の
図1の装置の部分分解概略斜視図である。
【
図3】装置の第2の使用構成中の
図1の装置の部分分解概略斜視図である。
【
図5】
図1の装置の第1の代替実施形態の概略斜視図である。
【
図6】非動作構成中の
図5の装置の概略断面図である。
【
図7】第1の動作構成中の
図5の装置の概略断面図である。
【
図7A】第1の動作構成中の
図5の装置の詳細な概略側面図である。
【
図8】第2の動作構成中の
図5の装置の概略断面図である。
【
図8A】第2の動作構成中の
図5の装置の詳細な概略側面図である。
【
図10】
図1の装置の第2の代替実施形態の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
添付の図面を参照すると、参照番号1は全体として外科用糸に張力をかけるための装置を示し、以下では当該装置は単に装置1と記される。
【0050】
装置1は、細長い本体10および操作部材20を備える。
【0051】
細長い本体10は、長手方向軸Yに沿って延在しており、患者の骨B、例えば(
図4に概略的に示されている)損傷した骨Bの周りに巻かれた外科用糸100の結び目101と接触して配置されるように構成された先端部分11を有する。
【0052】
好ましくは、結び目101は骨Bと接触して得られる、すなわち、結び目101が骨Bの表面と接触して配置されるように糸100が結ばれる。
【0053】
操作部材20は、細長い本体10に接続されており、装置1を使用するときに患者の体外(すなわち、創傷の外)に配置されるように構成されており、骨Bの周りに巻き付けられて結ばれた外科用糸100の両端102を結合するためのそれぞれの結合部分21を有する。
【0054】
外科用糸100の両端102は、装置1の使用構成において、それぞれの結合部分21に可逆的に拘束され得る。
【0055】
特に、細長い本体10および操作部材20は、骨Bの周りに外科用糸100を締め付けるべく外科用糸100の両端102に張力をかけるために、長手方向軸Yと一致する移動軸Xに沿って相互に離間可能である。
【0056】
言い換えれば、装置1の使用構成において、細長い本体10(その先端部分11が結び目101と接触して配置される)と(糸100の両端102がそれぞれの結合部分21に結び付けられる)操作部材とを移動軸Xに沿って離すことによって、両端102に張力をかけて、結び目101を骨Bに接近させ、結果として結び目101を締めることが可能である。
【0057】
有利なことに、先端部分11は、装置1の使用構成において結び目101を少なくとも部分的に受け入れるように成形された溝12を有する。
【0058】
溝12は、展開方向12’に沿って移動軸Xに垂直に延びており、細長い本体10の側壁13の両側においてそれぞれの湾曲部分14で開いており、それぞれの湾曲部分14に沿って外科用糸100の両端102を結合部分21に向かって戻すことができる。
【0059】
それにより、外科用糸100の両端102は、溝12の内側の湾曲部分14の間の第1の区間(
図4で明確に見える)にわたって骨Bに対して接線方向に配置され、それぞれの湾曲部分14とそれぞれの結合部分21との間で、第1の区間よりも長いそれぞれの第2の部分に沿って骨Bに対して横方向に配置され得る。
【0060】
本発明によれば、細長い本体10は、細長い本体10および操作部材20を相互に離間または接近させるように構成されたねじおよびナット機構30によって操作部材20に接続されている。
【0061】
有利なことに、ねじおよびナット機構30の使用により、2つの要素間の相互距離を正確に調整して、以下の説明で明らかになるように、糸100の両端102の漸進的な張力を得ることが可能になる。
【0062】
好ましくは、操作部材20は、ねじおよびナット機構30を回して締めるまたは緩めるように移動軸X周りに回転可能であるノブ22と、2つの結合部分21が設けられたスリーブ23とを備える。
【0063】
特に、
図1から3に示される実施形態を参照すると、2つの結合部分21は、溝12の展開方向12’に平行な方向に対してスリーブ23の両側に得られる。
【0064】
有利なことに、ノブ22はスリーブ23に回転可能に接続されている。
【0065】
さらにより好ましくは、細長い本体10およびスリーブ23は、移動軸Xに沿って相互に平行移動可能であり、移動軸X周りに回転可能に固定される。
【0066】
言い換えれば、細長い本体10およびスリーブ23は、移動軸Xに沿って相互に離間および接近可能であるが、それらは互いに回転できず、したがって、結合部分21は、操作部材20のノブ22の回転に対して固定される。
【0067】
好ましくは、細長い本体10は、先端部分11が設けられたヘッド要素15と、長手方向軸Yに沿って延在し且つヘッド要素15と操作部材16との間に動作可能に配置されたステム16とを備える。
【0068】
言い換えれば、ヘッド要素15およびノブ22は、装置1の移動軸Xに沿って反対側に配置される。
【0069】
好ましくは、ステム16は、操作部材20の凹部24a内に挿入された第1の端部16aと、前記先端部分11と軸方向反対側にある、ヘッド要素15の凹部15bに挿入された、第1の端部16aの反対側にある第2の端部16bとを有する。
【0070】
言い換えれば、ヘッド要素15は、長手方向軸Yに沿って延在する凹部15bであって、先端部分11に対してヘッド要素15の軸方向反対側で開いている凹部15bを有する。同様に、スリーブ23は、移動軸Xと一致する方向に沿って延在する凹部24aであって、ノブ22に対してスリーブ23の軸方向反対側で開いている凹部24aを有する。
【0071】
したがって、有利なことに、ステム16は、細長い本体10と操作部材20との間の相互の離間を得るために、それぞれの凹部24a、15bの間で移動可能である。
【0072】
さらに、好ましくは、
図1から3に示される実施形態を参照すると、ねじおよびナット機構30は、ステム16の第1の端部16aに固定されたナット31と、移動軸Xに沿って配置され且つ操作部材20の凹部24a内に固定されたねじ32とを備える。
【0073】
特に、ねじ32は、ナット31に可逆的にねじ込み可能であり、操作部材20と細長い本体10との相互の離間または接近を得るために、ステム16の並進を可能にする。
【0074】
さらに、スリーブ23は、好ましくは、凹部24a内に配置されただぼ25によってノブ22に結合される。
【0075】
好ましくは、装置1は、前記ステム16のフランジ16cと前記ヘッド要素15の外縁によって画定される肩部15cとの間に動作可能に配置されたばね2を備える。
【0076】
ばね2は、有利なことに、ヘッド要素15の凹部15b内において先端部分11に向かうステム16の前進に対抗するように構成される。
【0077】
言い換えれば、ばね2は、細長い本体10と操作部材20との間の相互の離間、特に、
図1から3を参照して、ねじ32からナット31を緩めることに対抗するように構成される。
【0078】
さらに、装置1は、好ましくは、装置1の使用構成において糸100が受ける張力値を検出および表示するためのシステム3を備える。したがって、有利なことに、システム3によって、外科医は、糸100に加えられた張力が適切であるかどうかをリアルタイムに監視できる。
【0079】
さらにより好ましくは、ヘッド要素15は窓15aを有し、当該窓15aを通してヘッド要素15の凹部15bに挿入されたステム16の一部が見える。検出および表示システム3は、ステム16に設けられたインジケータ3a(
図1の実施形態ではノッチ、または
図5および10の実施形態ではピン)および窓15aに設けられたインジケータ3b(例えば、
図5および10の実施形態において加えられる力のニュートンで表される張力の表示を持つ目盛り付きスケール、または
図1の実施形態における一連のノッチ)をさらに備える。インジケータ3a、3bは、それぞれ、ばね2の張力値および/またはヘッド要素15の凹部15b内のステム16の挿入深さ値を表す。
【0080】
したがって、有利なことに、外科医は、インジケータ3a、3bによって検出された値を所定の基準値と比較するために、糸100の張力値の迅速なフィードバックを得ることができる。
【0081】
例えば、外科医が装置1で達成できる最適な糸張力は400Nである。
【0082】
さらに、本発明によれば、細長い本体10の側壁13は、好ましくは2つのスロット17を有し、各スロット17は、溝12と2つのスロット17が細長い本体10の単一の「U」字形の溝を画定するように、それぞれの結合部分21に向けられたそれぞれの展開方向に沿ってそれぞれの湾曲部分14から発する。
【0083】
有利なことに、2つのスロット17は、それぞれの結合部分21に向けられた糸の両端102に対するハウジングガイドを得ることを可能にするので、装置1の使用構成において、それらは先端部分11から滑り落ちない。
【0084】
好ましくは、
図1の実施形態を参照すると、2つのスロット17の展開方向は、移動軸Xに平行である。
【0085】
好ましくは、湾曲部分14は、あらゆる縁部において局部的な張力が発生するのを避けるために、溝12と2つのスロット17との間に丸みを帯びた接続縁部を画定する。
【0086】
好ましくは、先端部分11は第二の溝18をさらに有し、第二の溝18は、その展開方向18’に沿った溝12に対して横方向、好ましくは垂直に延びる。
【0087】
第二の溝18は、有利なことに、結び目101を少なくとも部分的に、添付の図面では見えない溝12との交点で受け入れるように形作られる。
【0088】
有利なことに、さらに、第二の溝18は、細長い本体10の側壁13の両側において骨Bの周りに巻かれた糸100の部分103の通過のための2つの開口部19で開いており、移動軸Xに対して垂直に延在する。
【0089】
好ましくは、2つの開口部19は、2つの溝12、18の間の交点に関して、湾曲部分14に対して角度的に90°離間している。
【0090】
言い換えれば、第二の溝18はまた、結び目101を少なくとも部分的に受け入れ且つ骨Bの周りに巻かれた糸100の部分103を収容するように適合されているので、糸100の両端102は前記部分103に対して垂直に前記溝102の内側に配置される。
【0091】
図5および10は、ねじおよびナット機構30が
図1の装置のものとは異なって設けられた、本発明の2つの代替実施形態を参照する。好ましくは、実際には、
図6、7および8に明確に示されているように、ノブ22は雌ねじ部分22aを有し、ステム16の第1の端部16aには、操作部材20と細長い本体10との相互の離間または接近を得るためにステム16の並進が可能になるように、雌ねじ部分22aの内側に可逆的にねじ込まれるようにねじが切られている。
【0092】
有利なことに、第1のねじ付き端部16aおよび雌ねじ部分22aは、ねじおよびナット機構30を規定し、当該機構30においては、特に第1のねじ付き端部16aが「ねじ」として機能し、雌ねじ部分22aは「ナット」として機能する。
【0093】
言い換えれば、ノブ22を緩めることによって、ステム16の第1の端部16aは、操作部材20の凹部24aからの引き抜きの際に動かされ、特にこの場合、凹部24aはノブ22内に得られる。
【0094】
好ましくは、ノブ22は、2つの引き抜き防止ブロック23aでスリーブ23に回転可能に接続される。
【0095】
ばね2は、好ましくはスリーブ23の内側に配置される。有利なことに、患者の骨に対する手術中に周囲の組織との偶発的な接触および挟み込みを防止することが可能である。
【0096】
さらに好ましくは、操作部材20、さらに好ましくはスリーブ23は検査アイレット26を含み、当該検査アイレット26を通してステム16が見え、ステム16は、ねじおよびナット機構30の作動時に検査アイレット26内で移動可能なピン27を備える。特に、検査アイレット26は、ステム16の前進を表す視覚要素28に関連付けられる。
【0097】
したがって、有利なことに、ピン27によって、外科医はステム16がどれだけ動いているかを見ることができる。
【0098】
図5、6、7、7A、8、8Aに示される第1の代替実施形態を参照すると、好ましくは、結合部分21は、外科用糸の両端102を保持するために、2つのジョー50であって、それぞれの平行な回転軸R周りに回転可能な2つのジョー50を備える。
【0099】
図9、9Aおよび9Bに明確に見られるように、特に2つのジョー50は、挿入時に両端102を受け入れるように適合された可変厚さのスロート52を画定するために、互いに向かい合う、直径が増すそれぞれの周辺部分51を有する。
【0100】
結合部分21は、図示されていない2つのねじりばねをさらに備え、2つのねじりばねは、それぞれのジョー50に関連付けられ且つスロート52の厚さの増加を引き起こす2つのジョー50の不調和な回転に漸進的に対抗するように構成されている。
【0101】
したがって、有利なことに、スロート52の厚さが増して糸100の両端の挿入を可能にするように、ねじりばねの力に逆らって2つのジョー50を強制的に「開く」ことによって、すなわち、
図9の矢印F1によって示される方向に回転させることによって、糸100の両端102をスロート52の内側に並べて挿入できる。2つの両端102をジョー50の間に挿入することによる牽引の終了時に、2つの周辺部分51は、ねじりばねの戻り力の下で矢印F1に対して反対方向に回転して、ジョー50を「閉じる」、すなわち、2つの両端102が押しつぶされたままで且つ周辺部分51に閉じ込められたままになるまでスロート52の厚さを減少させることになる。
【0102】
言い換えれば、ジョー50はカムのような形状であり、結合部分21は実質的にカムクリート機構を規定する。
【0103】
有利なことに、このように規定されたカムクリート機構は、糸100がジョー50から挿入方向とは反対方向に滑り落ちるのを防止し、両端102に張力をかけるためのケーブルの優れた結合および保持要素を保証する。
【0104】
このように形成された結合部分21は、糸100に張力をかけるための実用的且つ効率的なツールとして構成される。
【0105】
図9、9Aおよび9Bを特に参照すると、好ましくは、各周辺部分51は、スロート52を規定する第1の部分53と、ジョー50の回転軸Rに対して横方向に設けられた一連の保持窪み55、好ましくは一定の厚さの一連の保持窪み55を有する第2の部分54とを有し、一連の保持窪み55の間に、糸100の両端102の開いた戻りおよび位置決め凹部56が介在している。
【0106】
好ましくは、第1の部分53は、糸100の保持能力を向上させるために、歯付き外形を有する。
【0107】
有利なことに、外科医が特定の牽引力を加えると、両端102を所定の方向に向けるように、それぞれの保持窪み55を通過して、開いた戻りおよび位置決め凹部56内に順番に両端102を挿入できる。
【0108】
好ましくは、保持窪み55の厚さは、糸100の直径未満または当該直径に等しい。
【0109】
有利なことに、外科医は、細長い本体10の先端部分11を結び目101に対して配置した後、スロート52内への両端102の挿入を進めることができる(
図5)。
【0110】
図5および
図6は、装置1の動作構成を示しており、当該動作構成では、結び目101を越えた糸100がたるんでおり、したがって、両端102は張力を受けずにたるんでおり、ばね2は静止しており、ノブ22は、第1の端部16aに完全にねじ込まれている。この構成では、ピン27は検査アイレット26の始点に配置され、ピン3aは窓15aの始点に、すなわち「0」を示すインジケータ3bに配置される。
【0111】
言い換えれば、ステム16はまだ動いておらず、検出および表示システムによって検出された張力は0に等しい(すなわち、両端102には張力がかかっていない)。
【0112】
ノブ22を緩めると、(
図7に示すように)例えばノブ22を2回転させると、第1の端部16aがノブ22のねじ部分22aから緩められ、ばね2の圧縮およびスリーブ23からのヘッド要素15の漸進的な取り出しを引き起こし、これにより、糸100の両端102が漸進的に引っ張られることが可能になる(したがって、この状況では両端102は、もはやたるんでいない)。ステム16の前進と同時に、ピン27が検査アイレット26の内側に前進し、第1の凹部24aからのステム16の取り出しの程度を外科医に示す。特に、
図7Aを参照すると、ピン3aが窓15aの始点、すなわち「0」を示すインジケータ3bに配置された構成が示されている。
【0113】
言い換えれば、ステム16は離れるように移動されたが、検出および表示システムによって検出された張力は依然として0に等しい(すなわち、両端102には張力がかかっていない)。これは、両端102はもはや弛んではいないが、まだ張力を受けていないからである。
【0114】
有利なことに、視覚要素28は、ピン27の限界位置を外科医に示すノッチの形態であり得、ピン27がそのようなノッチを通過した場合にピン3aが「0」を示すインジケータ3bからまだ移動していない場合に、ピン27の限界位置を超えて、装置1の適切なサイジングに従って、糸100の所定の目標張力値(例えば、400N)を達成することは、もはや不可能になる。
【0115】
言い換えれば、両端102がジョー50内で正しく結合されておらず「予め張力がかけられていない」(すなわち、緩みすぎている)場合、ノブ22全体を緩めても目標値を達成することはできない。しかしながら、ピン27および視覚要素28の存在のおかげで、このシナリオは、ノブ22を緩めることを続ける前に、ジョー50に糸100をさらに挿入する操作によって容易に克服できる。
【0116】
外科医が、
図7および7Aに示される構成から、さらにノブ22を緩める場合、ばね2はさらに圧縮され、ステム16は、ノブ22からの引き抜きの際にさらに前進し、ステムの第2の端部16bがヘッド要素15の凹部15b内を前進し、両端102の漸進的な張力を引き起こす。
【0117】
この構成では、ピン27は検査アイレット26内をさらに前進し、ピン3aは窓15a内を前進し(
図8A)、外科医に、得られた両端102の張力値を示す。
【0118】
図10に示される装置1の第2の代替実施形態を参照すると、好ましくは、結合部分21は、移動方向Xに対して横方向に設けられた貫通固定スロット41、好ましくは可変厚さの貫通固定スロット41を有する2つのビット状要素40を備える。
【0119】
有利なことに、両端102は、2つのビット状要素40の周りに少なくとも1回巻き付けられ、続いて干渉によって糸100の保持を得る深さに達するまで、貫通固定スロット41の内側に挿入される。
【0120】
本発明のさらなる態様によれば、骨Bの締結のためのキットがさらに提供され、当該キットは、結び目101を得るために骨Bの周りに巻き付けられるように構成された、場合によっては生体吸収性である、生体適合性生地の外科用糸100と、前述のように前記外科用糸100に張力をかけるための装置1であって、当該装置1の使用構成において溝12が結び目101と接触して配置される装置1と、を備える。
【0121】
したがって、動作可能なように、本発明によって提供されるキットを使用して骨Bの締結を行うことを意図する外科医は、最初に、骨折した骨Bの周りに糸100を巻き付け、結び目101を得る。
【0122】
次に、外科医は、結び目101が溝12の内側に少なくとも部分的に挿入されるように、細長い本体10の先端部分11を結び目101に対して配置する。好ましくは、骨Bの周りに巻かれた糸100の部分103は、第二の溝18内に部分的に配置される。
【0123】
糸100の両端102は、好ましくは2つのスロット17を通過して、結合部分21に結び付けられる。
【0124】
この時点で、外科医は、結び目101を締めるために両端を引っ張ることによって結び目を締めるべく、操作部材20から細長い本体10を相互に離間できる。言い換えれば、結び目101の狭まりが得られる、すなわち、骨Bの周りで締め付けられる糸100の部分103の減少が得られる。
【0125】
好ましくは、このような操作は、ナット31をねじ32から緩めるように(
図1の実施形態の場合)、またはステム16の第1のねじ付き端部16aから雌ねじ部分22aを緩めるように(
図5および10の実施形態の場合)、ノブ22を回すことによって行われ、操作部材20の凹部24aからのステム16の部分的な抽出と、細長い本体10のヘッド要素15の凹部15bの内側でのステム16の対応する前進とを引き起こす。
【0126】
有利なことに、結び目101は、不可逆的に緩められるように得られるので、それを締めることしかできない。
【0127】
骨Bの周りに糸100を十分に締めた後、好ましくは検出および指示システム3のサポートにより、装置1を患者の体から取り出すことが可能である。
【0128】
このような操作は、好ましくは、細長い本体10を操作部材20に近づけて両端102の張力を解放し、続いて両端102を結合部分21から解放することによって得ることができる。
【0129】
最後に、外科医は、患者の体から装置1を取り出し、骨Bの周りに巻かれた部分103に対して反対側で、結び目101で糸100の両端102を切断することを進めることができる。
【0130】
本発明は、提案された目的を達成し、従来技術で嘆かれた欠点を克服し、外科用糸に張力をかけるための装置、および手術条件を改善し且つ効果的な締結手術を得ることを可能にする、そのような装置を含む骨締結キットをユーザに提供する。
【国際調査報告】