(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】低分子量アミン表面官能化に基づく収着剤セルロース材料
(51)【国際特許分類】
B01J 20/26 20060101AFI20230517BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20230517BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20230517BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20230517BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20230517BHJP
C07C 211/09 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B01J20/26 G
B01J20/34 G
B01J20/30
C02F1/28 L
C08L1/00
C07C211/09
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562754
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-11-30
(86)【国際出願番号】 GB2021050936
(87)【国際公開番号】W WO2021209774
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520373110
【氏名又は名称】プラフィニティ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Puraffinity Ltd.
【住所又は居所原語表記】Translation & Innovation Hub Building, 80 Wood Lane, London W12 0BZ United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボルターズドーフ,タマラ
(72)【発明者】
【氏名】ロッキー,リバティー ジャカスタ
【テーマコード(参考)】
4D624
4G066
4H006
4J002
【Fターム(参考)】
4D624AA01
4D624AA04
4D624AB11
4D624BA16
4D624BA19
4D624BB01
4D624BB02
4D624BC01
4G066AB09B
4G066AB10B
4G066AB13B
4G066AC02C
4G066AC27B
4G066AC33B
4G066AE04B
4G066BA03
4G066BA09
4G066BA16
4G066BA20
4G066CA32
4G066CA33
4G066DA07
4G066DA08
4G066FA03
4G066FA21
4G066FA33
4G066GA11
4H006AA03
4H006AB81
4J002AB011
4J002GD02
4J002GD05
(57)【要約】
標的物質を流体流から除去するための組成物であって、セルロースと、分子量が500未満である直鎖又は分岐鎖ポリアミンを含む収着剤分子と、を含む、組成物、が提供される。ポリアミンは、支持材料に共有結合し、収着剤分子は、共有結合した疎水性基をさらに含む。標的物質を流体流から除去するためのプロセスであって、流体流をそのような組成物と接触させることを含む、プロセス、及びそのような組成物を作製する方法も、提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的物質を流体流から除去するための組成物であって、
セルロースを含む支持材料と、
500未満の分子量を有する直鎖又は分岐鎖ポリアミンを含む収着剤分子と、を含み、
前記ポリアミンが、前記支持材料に共有結合し、
前記収着剤分子が、共有結合した疎水性基をさらに含む、組成物。
【請求項2】
前記支持材料が、再生セルロース、リグノセルロース、バクテリアセルロース、セルロースパルプ、微結晶性又はナノ結晶性セルロース、セルロース繊維、フィブリル化セルロース、及び他のセルロース誘導体からなる群のうちの1つ以上から選択される材料から構成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記支持材料が、セルロース又はリグノセルロースの粉末又はパルプを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記セルロース又はリグノセルロースの粉末又はパルプが、膜又は膜様フィルターに組み込まれている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記支持材料が、アセチル化セルロースを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記支持材料が、多孔質、固体、及び粒子状であり、好適には、前記粒子の平均直径サイズが、約0.01mm超、約1mm未満である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリアミンは、分子量が300未満、任意選択で200未満である直鎖又は分岐鎖ポリアミンから選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリアミンが、式Iの化合物から選択され、
【化1】
式中、R
1及びR
2が、H、-CH
3、又は直鎖若しくは分岐鎖C
2-C
6アルキルモノ若しくはジアミンから選択され、R
1及びR
2が、両方とも、Hでも-CH
3でもなく、
R
3が、
直鎖又は分岐鎖C
2-C
6アルキルモノアミン又はジアミン、
式IIの直鎖ジアルキルアミンであって、
【化2】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIの直鎖ジアルキルアミン、
式IIIの直鎖アルキルアミンであって、
【化3】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIIの直鎖アルキルアミン、
式IVの分岐鎖ジアルキルアミンであって、
【化4】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IVの分岐鎖ジアルキルアミン、から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリアミンが、以下の化合物
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
及び
【化12】
のうちの1つ以上から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記ポリアミンが、以下の化合物
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
及び
【化17】
のうちの1つ以上から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記疎水性基が、C
2-C
22の分岐鎖、直鎖、飽和若しくは不飽和、又は環状のアルキル、ポリエーテル、及びアリールから選択される基を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記C
2-C
22アルキル基が、ブチル、ヘキシル、オクチル、イソブチル、イソヘキシル、イソオクチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、及びシクロオクチルからなる群から選択される、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記アリール基が、フェノール、又はフェニル基から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記疎水性基が、ポリ又はパーフルオロアルキル基、好適にはC
8パーフルオロオクタン又はC
8ポリフッ素化6:2フルオロテロマーを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
収着剤分子が、複数の疎水性基を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記ポリアミンが、アミド結合、尿素結合、チオ尿素結合、イソチオウロニウム結合、グアニジニウム結合、及び四級化(メンシュトキン)反応からなる群から選択される結合を介して、前記疎水性基と結合している、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
標的物質を流体流から除去するためのプロセスであって、前記流体流を請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物と接触させることを含み、前記標的物質が、1つ以上のポリ及びパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を含む、プロセス。
【請求項18】
前記流体が、水、任意選択で汚染された水を含む、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記PFASが、パーフルオロブタンスルホネート(PFBS)、パーフルオロブタン酸(PFBA)、パーフルオロペンタン酸(PFPeA)、パーフルオロヘキサンスルホネート(PFHS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、及びパーフルオロデカン酸(PFDA)、6:2フルオロテロマースルホン酸(6:2 FTSA)、及びヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(HFPO-DA)からなる群から選択される1つ以上を含む、パーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物から選択される、請求項17又は18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記プロセスが、汚染物質を前記流体流から除去した後に、前記組成物を再生することをさらに含む、請求項17~19のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項21】
前記組成物を再生することが、1つ以上の液体洗浄剤を前記組成物に適用することを含み、前記液体洗浄剤が、塩水溶液、塩基性洗浄剤(前記塩基が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される)、及び任意選択でアルコール又はケトンから選択される極性有機溶媒からなる群のうちの1つ以上を含む、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
汚染物質を流体流から除去するための組成物を製造する方法であって、
a.セルロースを含む支持材料を提供することと、
b.前記支持材料を、分子量が500未満である直鎖又は分岐鎖ポリアミンを含む汚染物質収着剤分子に結合させることであって、前記収着剤分子が、共有結合した疎水性基をさらに含む、結合させることと、を含む、方法。
【請求項23】
前記収着剤分子が、共有結合した疎水性基を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記支持材料が、リグノセルロース、バクテリアセルロース、微結晶性セルロース、ミクロフィブリル化セルロース、及びセルロース誘導体からなる群のうちの1つ以上から選択される材料から構成されている、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記汚染物質収着剤分子に結合する前に、前記支持材料が、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アシル、好適には、臭化アルキル、臭化ブロモアセチル、又はブロモスクシンイミドとの反応によって活性化される、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記汚染物質収着剤分子に結合する前に、前記支持材料が、無水酢酸と反応する、請求項22~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリアミンが、式Iの化合物から選択され、
【化18】
式中、R
1及びR
2が、H、-CH
3、又は直鎖若しくは分岐鎖C
2-C
6アルキルモノ若しくはジアミンから選択され、
R
3が、
直鎖又は分岐鎖C
2-C
6アルキルモノアミン又はジアミン、
式IIの直鎖ジアルキルアミンであって、
【化19】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIの直鎖ジアルキルアミン、
式IIIの直鎖アルキルアミンであって、
【化20】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIIの直鎖アルキルアミン、
式IVの分岐鎖ジアルキルアミンであって、
【化21】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IVの分岐鎖ジアルキルアミン、から選択される、請求項22~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
分子量が500未満である直鎖又は分岐鎖ポリアミンと、収着剤基として少なくとも1つの共有結合した疎水性基とを含む分子の、セルロース支持材料を官能化するための方法における、使用。
【請求項29】
前記官能化セルロース支持材料は、標的物質を流体流から除去することが可能であり、前記標的物質の除去後に再生することも可能である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記標的物質がPFASを含む、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記ポリアミンが、式Iの化合物から選択され、
【化22】
式中、R
1及びR
2が、H、-CH
3、又は直鎖若しくは分岐鎖C
2-C
6アルキルモノ若しくはジアミンから選択され、
R
3が、
直鎖又は分岐鎖C
2-C
6アルキルモノアミン又はジアミン、
式IIの直鎖ジアルキルアミンであって、
【化23】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIの直鎖ジアルキルアミン、
式IIIの直鎖アルキルアミンであって、
【化24】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIIの直鎖アルキルアミン、
式IVの分岐鎖ジアルキルアミンであって、
【化25】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IVの分岐鎖ジアルキルアミン、から選択される、請求項28~30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記疎水性基が、C
2-C
22の分岐鎖、直鎖、飽和若しくは不飽和、又は環状のアルキル、ポリエーテル、及びアリールから選択される基を含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記C
2-C
22アルキル基が、ブチル、ヘキシル、オクチル、イソブチル、イソヘキシル、イソオクチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、及びシクロオクチルからなる群から選択される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記アリール基が、フェノール、又はフェニル基から選択される、請求項32に記載の使用。
【請求項35】
前記疎水性基が、ポリ又はパーフルオロアルキル基、好適にはC
8パーフルオロオクタン又はC
8ポリフッ素化6:2フルオロテロマーを含む、請求項29~31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記収着剤分子が複数の疎水性基を含む、請求項29~35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記ポリアミンが、アミド結合、尿素結合、チオ尿素結合、イソチオウロニウム結合、グアニジニウム結合、及び四級化(メンシュトキン)反応からなる群から選択される結合を介して、前記疎水性基と結合している、請求項29~36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記セルロース支持材料が、再生セルロース、リグノセルロース、バクテリアセルロース、セルロースパルプ、微結晶性又はナノ結晶性セルロース、セルロース繊維、フィブリル化セルロース、及び他のセルロース誘導体からなる群のうちの1つ以上から選択される材料から構成されている、請求項29~37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記セルロース支持材料が、セルロース又はリグノセルロースの粉末又はパルプを含む、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
前記セルロース又はリグノセルロースの粉末又はパルプが、膜又は膜様フィルターに組み込まれている、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記セルロース支持材料がアセチル化セルロースを含む、請求項29~40のいずれか一項に記載の使用。
【請求項42】
前記セルロース支持材料が、多孔質、固体、及び粒子状であり、好適には、前記粒子の平均直径サイズが、約0.01mm超、約1mm未満である、請求項29~41のいずれか一項に記載の使用。
【請求項43】
標的物質を汚染された水源から吸着するためのフィルターであって、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を含む、フィルター。
【請求項44】
前記標的物質が1つ以上のPFASを含む、請求項43に記載のフィルター。
【請求項45】
前記フィルターが、1つ以上の液体洗浄剤を前記フィルターに適用することによって再生されてもよく、前記液体洗浄剤が、塩水溶液、塩基性洗浄剤(前記塩基が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、重炭酸ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される)、任意選択でアルコール又はケトンから選択される極性有機溶媒を含む、請求項43又は44に記載のフィルター。
【請求項46】
前記フィルターが、フィルターカートリッジの形態である、請求項42~45のいずれか一項に記載のフィルター。
【請求項47】
前記フィルターが、少なくとも1つのフィルター膜を含む、請求項42~46のいずれか一項に記載のフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミンに基づく化学的に変性された濾過材料を使用して、標的物質を液体などの流体から除去すること、及びそのような材料を生成するための方法に関する。本発明はさらに、水処理、収着剤媒体、アミン表面官能化、セルロースの化学的変性、アニオン結合、疎水性相互作用、パーフルオロアルキル及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)、水汚染物質、並びにフィルターのための材料に関する。
【背景技術】
【0002】
水などの主要な流体溶媒の汚染された供給物の改善及び再利用に対するニーズが継続して存在する。単にそれらを廃棄するのではなく、既存のリソースを再使用及び補充することが必要である。世界的な環境保護規制も、工業活動からの汚染の危険にさらされている水の供給が、ますます厳しくなっている純度基準を満たすことを求めている。
【0003】
工業及び農業プロセスで使用される重要な流体としては、水だけでなく、溶媒、燃料、潤滑剤、及び作動流体が挙げられる。これらの液体はすべて、意図的であれ偶然であれ、工業プロセスでの通常の使用をとおして、又は廃棄物への曝露を介して、化学的汚染に曝露され得る。一例として、工業国では、典型的に、すべての水の消費量の最大3分の2が工業のニーズに起因し得る。
【0004】
水質は、典型的には、水試料の物理的及び化学的特性を、国際的に合意された水質基準と比較することによって決定される。例えば、現在の飲料水の品質ガイドライン及び基準は、人間の消費のための清潔で安全な水の提供を可能にし、それによって人間の健康を保護するように設計されている。これらの基準は、人間又は水生生物のいずれかに対する毒性の科学的に評価された許容レベルに好適に基づいている。しかしながら、水質の低下は、人口が80億に近づき、それに対応する工業及び農業活動が拡大し、気候変動が歴史的な水文学的サイクルに大きな変化をもたらす可能性があるため、世界的に懸念される問題となっている。持続可能な将来的成長を支援するために、消費される水の各単位からより多く得る、より良好な方法を開発することが、これまで以上に不可欠である。
【0005】
不適切に廃棄されている工業プラント及び化学プロセス施設からの廃水、農業地域で使用される肥料及び農薬を含有する表面流出、並びに消火用フォームで使用される洗浄洗剤及び難燃剤を含む、環境に有害な環境汚染物質の様々な発生源が存在する。多くの工業化学汚染物質は、分解する前に何十年も自然に残留することがあり、非常に低い濃度であっても、植物、動物、及び人間に大きな害を及ぼす可能性がある。生態系への影響も深刻であり、持続的な環境汚染物質は、多くの場合、食物連鎖の上位にある生物の体内に濃縮される。
【0006】
持続的な環境汚染物質の1つの特定の種類には、ポリ及びパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)などのハロゲン化有機化合物が含まれる。PFASは、化学的に不活性であるとされる有機フッ素化合物である。それらは環境に残留し、それらの使用は、多くの国で国連気候変動枠組条約「Kyoto Protocol」及びREACHによって規制されている。パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)及びその誘導体は、Stockholm Conventionに含まれており、Persistent Organic Pollutant(POP)規制の下、EU内で制限されている。PFOS及びパーフルオロオクタン酸(PFOA)は、界面活性剤、並びに消火用フォーム及び金属メッキプロセスの難燃剤として広く使用されている有毒なPFAS化合物である。PFOS及びPFOAはどちらも、非常に長期間にわたって環境に残留し、世界の淡水供給のほとんどにおいて汚染物質として認識されている。
【0007】
PFOS及びPFOAなどのPFAS化合物の顆粒状活性炭への吸着は、それらを汚染水から除去するための現在推奨される解決策を表す。しかしながら、このプロセスは遅く、非効率的である。特に、帯電した短鎖のPFAS環境汚染物質は、活性炭の床を迅速に「突破」する。つまり、大量の活性炭が必要であり、PFASで飽和すると頻繁に交換する必要がある。現在、吸着されたPFASは、「その場」での再生のために活性炭から効率的に洗い流すことはできない。加えて、世界的に製造されている活性炭の相当な割合は、かなりの量の二酸化炭素を放出する物理的プロセスを介して活性化される瀝青炭などの化石燃料に由来している。よって、活性炭によって示される汚染された水からPFASを除去する問題に対する解決策は、高価であり、持続可能でなく、使い捨てのものである。イオン交換アプローチも一般的に使用されるが、そのような方法は、フットプリントが大きく、ここでも、突破に起因して信頼性が問題である。運用寿命及び費用対効果も問題である。
【0008】
PFAS汚染物質を水から除去する以前の努力には、例えば、疎水性基と組み合わせた、ポリエチレンイミン(PEI、典型的には25kDa)などの高分子量ポリアミンで官能化したセルロース材料の使用が含まれる(WO2017/203281を参照)。
【0009】
低濃度(1ppm未満)の標的物質、特に排水などの流体流からの又はより幅広い環境内でのPFASなどの環境汚染物質の除去を可能にする経済的で再利用可能な組成物及びプロセスを提供する必要がある。本発明は、工業活動が水域環境に与える影響を低減することを含む現在の課題を克服すること、及びこれらの目的を満たすことを目指す。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、特に、流体流からの標的化合物除去の改善に向けて固体基材を最適化し微調整するための固体基材の新規の官能化に関する、本発明の技術のさらなる驚くべき発展を提供する。特定の実施形態では、性能差は、短鎖PFASの吸着において特に顕著であり、本明細書で示される表面官能化が、水などの流体中の短鎖PFAS汚染の改善に広く適用可能であり得ることを示す。
【0011】
本発明の第1の態様は、標的物質を流体流から除去するための組成物であって、
セルロースを含む支持材料と、
分子量が500未満である直鎖又は分岐鎖ポリアミンを含む収着剤分子と、を含み、
ポリアミンが支持材料に共有結合し、
収着剤分子が、少なくとも1つの共有結合した疎水性基をさらに含む、組成物、を提供する。
【0012】
支持材料は、典型的には、多孔質、固体、及び/又は粒子状の支持材料であり得る。好適には、支持材料は、セルロースを含み、再生セルロース、リグノセルロース、バクテリアセルロース、セルロースパルプ、微結晶性又はナノ結晶性セルロース、セルロース繊維、フィブリル化セルロース、及び他のセルロース誘導体からなる群のうちの1つ以上から選択される材料から構成されている。任意選択で、支持材料は、セルロース又はリグノセルロースの粉末又はパルプなどの粉末又はパルプであり得る。粒子形状の場合、支持材料は、例えば、複数の顆粒、フレーク、ビーズ、ペレット、及びパスティルからなる群のうちの1つ以上を含み得る。支持材料は、アセチル化セルロースを含んでもよい。
【0013】
支持材料が、多孔質、固体、及び粒子状である実施形態では、支持材料は、好適には、平均直径サイズが約0.01mm超、約1mm未満である粒子から構成される。
【0014】
本発明の実施形態では、ポリアミンは、分子量が300未満、任意選択で200未満であるアルキルポリアミンから選択される。
【0015】
本発明の特定の実施形態では、ポリアミンは、式Iの化合物から選択され、
【化1】
式中、R
1及びR
2は、H、-CH
3、又は直鎖若しくは分岐鎖C
2-C
6アルキルモノ若しくはジアミンから選択され、
R
3は、
直鎖又は分岐鎖C
2-C
6アルキルモノアミン又はジアミン、
式IIの直鎖ジアルキルアミンであって、
【化2】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIの直鎖ジアルキルアミン、
式IIIの直鎖アルキルアミンであって、
【化3】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IIIの直鎖アルキルアミン、
式IVの分岐鎖トリアルキルアミンであって、
【化4】
式中、nが、2~6の任意の整数であってもよい、式IVの分岐鎖トリアルキルアミン、
から選択される。
【0016】
本発明の特定の実施形態では、ポリアミンは、以下の化合物
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
及び
【化12】
のうちの1つ以上から選択される。
【0017】
本発明のさらなる実施形態では、ポリアミンは、以下の化合物
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
及び
【化17】
のうちの1つ以上から選択される。
【0018】
特定の実施形態では、ポリアミンは、コア(すなわち、ポリアミンコア)を提供し、ポリアミンコアは、少なくとも1つの疎水性基に共有結合している。
【0019】
好適には、疎水性基は、C2-C22の分岐鎖、直鎖、若しくは環状、飽和若しくは不飽和アルキル、又はアリールから選択される基を含む。典型的には、この基は、C2-C22の分岐鎖、直鎖、若しくは環状のアルキル、又はアリールから選択される。任意選択で、C2-C22の分岐鎖又は直鎖アルキル基は、ブチル、ヘキシル、又はオクチル基から選択される。好適には、C2-C22直鎖アルキル基は、イソブチル、イソヘキシル、又はイソオクチル基から選択されるC4-C8の分岐鎖又は直鎖アルキルである。本発明の特定の実施形態では、C2-C22アルキル基は、シクロヘキシル、シクロへプチル、又はシクロオクチル基から選択されるシクロアルキルである。さらなる実施形態では、アリール基は、フェノール、ベンゼン、又はベンジルからなる群から選択される。さらなる実施形態では、疎水性基は、C2-C22ポリ又はパーフルオロ化基、好適には、C8パーフルオロオクタン又はC8ポリフルオロ化、6:2フルオロテロマーである。任意選択で、収着剤分子は、複数の疎水性基を含む。
【0020】
本発明の特定の実施形態によれば、ポリアミンコア基は、アミド結合を介して疎水性基と結合している。あるいは、ポリアミン及び疎水性基は、尿素結合、チオ尿素結合、イソチオウロニウム結合、グアニジニウム結合を介して、又は直接、アルキル化反応、若しくは四級化(メンシュトキン)反応を介して、結合していてもよい。
【0021】
本発明の第2の態様は、標的物質を流体流から除去するためのプロセスであって、流体流を、本明細書に記載される組成物を含む組成物と接触させることを含む。標的物質は、1つ以上のポリ及びパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を含んでもよい。
【0022】
典型的には、流体は、液体であり、任意選択で、液体は、水、有機溶媒、液体化石燃料、液体潤滑剤、及び作動流体から選択される。本発明の実施形態では、液体は、汚染水である。
【0023】
本発明の特定の実施形態では、標的物質は汚染物質である。汚染物質は、1つ以上のポリ及びパーフルオロ化アルキル物質(PFAS)を含んでもよく、これは、任意選択で、パーフルオロブタンスルホネート(PFBS)、パーフルオロブタン酸(PFBA)、パーフルオロペンタン酸(PFPeA)、パーフルオロヘキサンスルホネート(PFHS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、及びパーフルオロデカン酸(PFDA)、6:2フルオロテロマースルホン酸(6:2 FTSA)、及びヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(HFPO-DA)からなる群から選択される1つ以上を含む、パーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物から選択される。あるいは、汚染物質は、有機化合物、任意選択で、医薬品分子又は農薬分子を含んでもよい。
【0024】
特定の実施形態では、支持材料は、床又は充填カラムからも構成され得るフィルター内に配置され、流体流が、フィルター、床、又は充填カラムを通って又はそれを横切って通過する。
【0025】
本発明のさらなる実施形態によれば、プロセスは、標的物質を流体流から除去した後に、組成物を再生することをさらに含む。好適には、組成物を再生する工程は、水性洗浄剤を、収着剤材料又は一連の洗浄剤に適用することを含む。任意選択で、支持材料の再生は、塩洗浄剤、又は酸性洗浄剤若しくは塩基性洗浄を、組成物に適用することを含む。洗浄液は、9を超えるpH、あるいは5未満のpHを有する液体を含み得る。いくつかの実施形態では、支持材料の再生は、塩水溶液、塩基性洗浄剤(塩基が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムから選択される)、及び任意選択でアルコール又はケトンから選択される極性有機溶媒からなる群のうちの1つ以上を含む液体洗浄剤を含む。
【0026】
本発明の第3の態様は、汚染物質を流体流から除去するための組成物を製造する方法であって、
a.支持材料を提供することと、
b.支持材料を、分子量が500未満である直鎖又は分岐鎖ポリアミンを含む汚染物質収着剤分子に結合させることと、を含む、方法を提供する。
【0027】
本発明の第4の態様は、分子量が500未満である直鎖又は分岐鎖ポリアミンと、収着剤基として少なくとも1つの共有結合した疎水性基とを含む分子の、セルロース支持材料を官能化するための方法における、使用を提供する。
【0028】
本発明の第5の態様は、標的物質を汚染された水源から吸着するためのフィルターであって、本明細書に記載される組成物を含む、フィルターを提供する。
【0029】
本開示の範囲内で、先行する段落、特許請求の範囲、並びに/又は以下の説明及び図面、特にそれらの個々の特徴に示される、様々な態様、実施形態、実施例、並びに代替案は、独立して、又は任意の組み合わせで解釈され得ることが明示的に意図される。つまり、すべての実施形態及び/又はいずれの実施形態の特徴も、そのような特徴が両立しない場合を除き、任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1A】TREN、TRENオクタ、TREN尿素、及びTREN尿素オクタとそれぞれ標識した本発明の実施形態の化合物3、4、5、及び6の正規化したFT-IRスペクトルを示す。
【
図1B-1E】それぞれ、
図1Aの化合物3、4、5、及び6の正規化したFT-IRスペクトルを別個の図で示す。
【
図2A-2B】それぞれ、非官能化セルロース、及び官能化セルロースの化合物4(TRENオクタ)の固体交差分極マジック角回転炭素-13核磁気共鳴(CP/MAS
13C-NMR)スペクトルを示す。挿入図は、関連化合物の分子構造及び炭素割当である。
【
図3】液体クロマトグラフィー-質量分析(LCMS)方法を使用したバッチ試験で評価した、
図1で言及した収着剤材料のPFAS吸着データのグラフを示す。表されるデータは、硬質合成水条件(CaCO
3として250ppm)での3つぞろいの試料を用いた1回の実行に由来し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図4】25kDaのPEIでコーティングした後、オクタノイル塩化物と反応させた比較繊維収着剤材料のPFAS吸着データを、LCMS方法を使用するバッチ試験で評価したもののグラフを示す。表されるデータは、硬質合成水条件(CaCO
3として250ppm)での3つぞろいの試料を用いた1回の実行に由来し、エラーバーは標準偏差を表す。
【
図5A】LCMS方法を使用して評価した化合物4のPFAS吸着データを示す。
【
図5B】
図5Aに示す吸着プロセス後の再生ステップに続いて再生流体中に見出される吸着されたPFASの図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
別段の指示のない限り、本発明の実施は、化学、材料科学、及びプロセス工学の従来技術を用いるものであり、これらは当業者の能力の範囲内である。
【0032】
本発明を説明する前に、本発明の理解を助ける多くの定義が提供される。本明細書で引用されるすべての参考文献は、参照によりその全体が組み込まれる。別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0033】
本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、記載される要素のいずれかが必ず含まれ、他の要素も同様に任意選択的に含まれ得ることを意味する。「~から本質的になる」は、記載される要素が必ず含まれ、列挙される要素の基本的及び新規の特性に実質的に影響を及ぼす要素が除外され、他の要素が任意選択的に含まれ得ることを意味する。「~からなる」は、列挙されるもの以外のすべての要素が除外されることを意味する。これらの用語の各々によって定義される実施形態は、本発明の範囲内である。
【0034】
「標的」又は「標的物質」という用語は、本明細書では、流体から除去又は単離することが望ましい物質又は化合物を指す。標的物質は、流体に溶解(すなわち、溶質)、懸濁、乳化、分散され得るか、さもなければ運ばれ得る、したがって、流体に可溶、部分的に可溶、又は不溶であってよい。以下で論じられるように、標的物質は、標的流体から除去、場合によっては回収することが望まれる汚染物質及び/又は有価物質を含み得る。
【0035】
本明細書で企図される標的物質は、「汚染物質(contaminants)」又は「汚染物質(contaminant substances)」を含み得る。本発明の文脈において、「汚染物質」は、人間若しくは動物の健康、又は環境に有害であり得る物質を包含することが意図されている。その結果、それに応じて派生語が定義される、例えば、汚染流体は、汚染物質を含む流体である。典型的には、汚染物質は、1つ以上のパーフルオロ及びポリフルオロアルキル物質(PFAS)、典型的には、1つ以上のパーフルオロカーボンを含み、任意選択で、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロブタンスルホネート(PFBS)、パーフルオロヘキサンスルホネート(PFHS)、パーフルオロヘキサン酸(PFHA)、パーフルオロオクタンスルホネート(PFOS)、パーフルオロノナン酸(PFNA)、パーフルオロデカン酸(PFDA)、6:2フルオロテロマースルホン酸(6:2 FTSA)、及びヘキサフルオロプロピレンオキシドダイマー酸(GEN-Xとしても知られるHFPO-DA、化学名2,3,3,3-テトラフルオロ-2-(ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸)からなる群から選択される1つ以上を含む、パーフルオロ化アニオン性界面活性剤化合物から選択される。いくつかの実施形態では、汚染物質は、有機化合物、任意選択で、ジクロフェナク、エリスロマイシン、エストロゲン、オキサジアゾン、及びチアメトキサムからなる群から選択される1つ以上を含む、医薬品分子又は農薬分子を含む。汚染物質は、いくつかの実施形態では、銅、鉄、鉛、水銀、クロム酸塩、又はヒ酸塩から任意選択で選択される金属又は半金属イオンであり得る。
【0036】
標的物質は、有価物質であり得る。希少元素又は分子を含有する場合、製造が困難である複雑な分子である場合、又は任意の他の方法で流体から回収したいほど経済的に価値がある場合、その物質は価値があり得る。製造、精製、採鉱、純化、又は回収プロセスの結果として、有価物質が流体中に存在する場合がある。場合によっては、例えば、人間若しくは動物の健康、又は環境に有害である場合、有価物質自体が汚染物質である可能性もある。有価物質は、好適には、貴金属、希土類金属、卑金属、又は白金族金属、又はこれらの塩であり得る。貴金属としては、金及び銀を挙げることができる。白金族金属としては、特に白金及びパラジウムを挙げることができる。有価物質は、いくつかの実施形態では、薬剤又はファインケミカルなどの小分子であり得る。
【0037】
「流体流」又は「流体」という用語は、標的物質が、溶解、懸濁、乳化、分散されるか、さもなければの運ばれる流動性物質を指す。流体は、例えば、液体又は気体であり得る。好適には、流体は、液体であり、任意選択で、液体は、水、有機溶媒、液体化石燃料、液体潤滑剤、イオン液体、作動流体、及びこれらの混合物から選択される。
【0038】
「セルロース」という用語は、β(1→4)グリコシド結合と結合したグルコースモノマーから構成される直鎖多糖類である生物学的ポリマーを指す。セルロースはまた、ヘミセルロース、グルコース及び他の単糖類から構成される多糖類をさらに含み、分岐しており、セルロースに見られるよりも短い鎖を有する材料を指す場合がある。セルロースは、結晶性領域から形成されても、非晶質領域から形成されてもよい。セルロースの非晶質原線維は、ナノセルロースとも称されるナノ結晶形態に加水分解され得る。
【0039】
リグノセルロース、又はリグノセルロース系バイオマスとは、セルロース及びリグニンを含む生物学的材料を指し、ヘミセルロース及びペクチンも含み得る。リグノセルロースは、植物のバイオマスの多くを構成しているため、その高い利用可能性と分解に対する耐性で知られている。この耐性は、リグニン分子が、エステル結合及びエーテル結合を通してセルロース鎖とヘミセルロース鎖との間に架橋を創出した結果である。リグノセルロースは、目的のために収穫される任意の陸生植物、又は農業、林業、建設、紙パルプ生成、及びバイオ燃料生成などの供給源から生成される工業関連の供給原料若しくは廃棄物バイオマスを含む、多くの供給源から得ることができる。典型的には、リグノセルロースは、小さな種子、さや、殻、及び茎葉(穀物の収穫後に廃棄された葉及び茎)などの農業廃棄物から得られる。特に、リグノセルロースは、ナッツの殻、又は果実の小さな種子、核、種子、又は膜孔に由来し得る。リグノセルロースは乾燥され、次いで粉砕され、所定の粒子サイズにふるい分けられる。また、天然セルロースを可溶化し、再生して、繊維又はフィルム、いわゆる再生セルロースを形成してもよい。本明細書に記載の収着剤材料の生成のための基材として利用され得る再生セルロース製品の例には、一例として、Rayon(登録商標)、Lyocell(登録商標)/Tencel(登録商標)、ビスコース繊維、及びForticell(登録商標)が挙げられる。
【0040】
本明細書で使用される場合、「バクテリアセルロース」、「微生物セルロース」、「バクテリア産生セルロース」、及び「バクテリア産生ナノセルロース」という用語は同義であり、Gluconacetobacter属の種などの細菌又は微生物によって産生されるセルロースを指し、高い引張強度、高い引張剛性、高い化学的純度、生体適合性、及び高い水対セルロース比を特徴とする。好適には、そのようなバクテリアセルロースは、リグニンなどの植物由来のセルロースに典型的に存在する関連分子を実質的に含まない。
【0041】
「ミクロフィブリル化セルロース」とは、酵素的又は化学的前処理を伴う又は伴わない機械的処理によって処理されたセルロースを指す。材料は、長さが数マイクロメートルの長く細い繊維からなる。「微結晶性セルロース」とは、物理的、化学的、又は酵素的手段を介して、セルロースの非晶質領域を分解して、結晶ドメインを残すことによって生成される高純度部分解重合セルロースを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「変性セルロース」又は「変性リグノセルロース」という用語における「変性」という用語は、化学化合物の付加によって変性されたセルロース又はリグノセルロースを指す。これらの化合物は、共有結合、イオン結合、静電結合、又は親和性相互作用によって、セルロース又はリグノセルロースに結合し得る。変性は、セルロース又はリグノセルロースに結合した化学化合物が、その後、別の化合物との反応によってそれ自体が変性される場合などを含み得る。特に、セルロースは、標的物質収着剤分子の付加によって、変性され得ることが想定される。変性の他の可能性としては、ポリアミン基、典型的にはポリエチレンイミンの付加が挙げられる。ポリアミン基は、直鎖又は分岐であってよく、好適には分岐ポリエチレンイミンである。ポリアミン基自体は、炭化水素基などのさらなる化学基の付加によってさらに変性され得る。
【0043】
「シリカ」という用語は、式SiO2を有する二酸化ケイ素から構成されている材料を指す。これらは水和されていてもされていなくてもよく、「シリカゲル」と称される顆粒状の多孔質形態であり得る。あるいは、シリカ系材料は、ケイ酸ナトリウムなどのケイ酸塩鉱物であり得る。
【0044】
本明細書で定義される場合、「収着剤材料」という用語は、収着剤官能基をさらに含む支持材料又は基材材料を含む材料を指す。収着剤材料は、PFASであり得る汚染物質などの標的物質を含む流体流と接触するのに好適であり、それによって標的物質が、収着剤材料上に吸着、収着剤材料内に吸着、さもなければ収着剤材料によって取り込まれる。好適には、収着剤材料は、フィルター/浄化器及び/又は床若しくは充填カラム(例えば、複数の積み重ねたフィルター)内に配置され、流体流は、フィルター、床、又は充填カラムを通って又はそれを横切って通過する。収着剤材料は、顆粒状活性炭又はイオン交換樹脂などの別の吸着材料と組み合わされた混合床内に配置され得る。一実施形態では、収着剤材料は、フィルターカートリッジなどの準備された構成要素内に含まれるので、使用済み収着剤材料は好都合に収容され得、同様に、必要に応じて、新鮮な又は再生された収着剤材料と交換又は補充され得る。あるいは、収着剤材料は、分散液として流体に添加されてもよい。収着材料は、粒子状、言い換えると顆粒、フレーク、ビーズ、ペレット、又はパスティルの形態であり得る。収着剤材料は、粉末又はパルプ、特にセルロース、ミクロフィブリル化セルロース、微結晶性若しくはナノ結晶性セルロース、又はリグノセルロースの粉末又はパルプであってもよく、これらは、より高いアクセス可能な表面積を有益に提供し得る。収着剤材料は、膜、又は膜様フィルターに組み込まれてもよい。膜は、本明細書に直接記載されるように官能化することもできる。特に、パルプを使用して、膜又は膜様生成物を作製することができ、これらを使用して、フィルターを作製することができる。この種のフィルターの有益性は、特定の厚さ及び大きな表面積で作製することができると同時に、流体流路に適切に取り付けられた場合、流体が通過することも確実にすることである。さらに、フィルターにより、本発明の機能性を粒子(サイズ排除)除去能力と組み合わせることができるようになる。典型的には、収着剤材料は、粒子状又は顆粒状形態であり、好適には、粒子又は顆粒の平均直径サイズ(粒子の最大直径によって測定される)は、約0.01mm超、好適には、約0.1mm超、典型的には、約1mm未満、任意選択で、約500μm未満である。
【0045】
本明細書で使用される場合、「収着」、「収着する」、「収着剤」という用語、及び派生語は、該標的物質と前述の変性された支持材料との会合による汚染物質などの標的物質の流体流からの除去を指す。材料による収着は、例えば、材料の表面への吸着など、任意の手段によって生じさせることができ、これは、静電引力、疎水性相互作用、共有結合の形成、結紮、キレート化、ファンデルワールス力、水素結合、又はその他を含む、標的物質と支持材料との間の化学的相互作用の創出によるものであってもよい。「収着」とは、物質への標的物質の吸収も指す。標的物質は、物質内の分子間空間、細孔、又は他の空隙内に物理的に閉じ込められる可能性がある。特に、収着は、標的物質分子と、収着剤材料が変性された収着剤分子との間の化学的相互作用の形成によって生じる吸着であり得る。そのような化学的相互作用は、収着剤材料内への、かつ流体流外への標的物質の隔離をもたらす。本明細書での「吸着」という用語又はその派生語の使用は、理論的な制限に拘束されることを意図するものではなく、特に指定がない限り、上記で定義された他の手段による収着を含むことを意図する。
【0046】
本発明の一実施形態では、標的物質及び/又は汚染物質の流体流からの除去のための組成物が提供される。組成物は、標的物質収着剤分子に共有結合した支持材料を含む収着剤材料を含む。支持材料は、高い表面積対体積の比を有し、したがって、標的物質の収着剤として機能し得る分子に効率的な支援を提供する。顆粒状収着剤粒子は、標準的な充填床での廃水処理用の収着剤媒体として配置されるように設計されている。顆粒は、ある程度の多孔性を有しているが、硬く、耐久性があり、分解に対して耐性がある。
【0047】
収着剤材料がセルロースを含む場合、粒子は、茎葉、小さな種子、バガス、コイア、及び殻などの農業廃棄物から生成され、破砕及びふるい分けによって顆粒状粒子に加工され得る。以下で論じられるように、標的物質収着剤分子を用いて化学変性した後に、この方法で配置される他の媒体(顆粒状活性炭又はイオン交換樹脂)と同様に、収着剤顆粒は、標準の充填濾過ベッド又はカラムに配置され得る。それらは、標的物質を含む廃水などの流体流と接触するように位置付けられ得る。流体流は、重力供給、又はポンプ、真空引き、又はさもなければ任意の好適な手段によって流体流を推進することによる実施など、正圧又は負圧によって、顆粒の上又は中を流動し得る。顆粒状収着剤材料による標的物質の収着が起こり、したがって、水が流動して標的物質を除去する間、標的物質はその場に留まる。濾過ベッド又はカラムは、流量を低減させる有機物質又は石灰のスケールなどの閉塞の蓄積を取り除くために、時々バックフラッシュされ得る。
【0048】
支持材料はまた、シリカ、シリカゲル、及びシリカ誘導体からなる群のうちの1つ以上から選択され得る。
【0049】
本発明の一態様によれば、収着剤分子は、収着剤分子の構造的コアとして機能するポリアミン基を含む。ポリアミンは、2つを超えるアミノ基を含む化合物である。典型的には、収着剤分子は、分子量が典型的には500ダルトン(Da)未満であるポリアミンを含む。本発明の特定の実施形態では、ポリアミンコアは、分子量が、450未満、400未満、350未満、300未満、250未満、及び任意選択で200Da未満である分子から構成される。これらのポリマーは、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。「デンドリマー」と称されることがある、高度に分岐したポリアミンポリマーは、各ポリマー分子上に複数の一級アミノ基を含む。本発明の収着剤分子で典型的に利用されるポリアミンは、少なくとも1つの末端アミンを含む。
【0050】
好適には、本発明の実施形態では、ポリアミンコアは、以下の式Iの化合物から選択される、500未満の低分子量ポリアミンから構成され、
【化18】
式中、R
1及びR
2は、H、-CH
3、又は直鎖若しくは分岐鎖C
2-C
6アルキルモノ若しくはジアミンから選択され、
R
3は、
直鎖又は分岐鎖C
2-C
6アルキルモノアミン又はジアミン、
式IIの直鎖ジアルキルアミンであって、
【化19】
式中、nが、同じであっても異なっていてもよく、2~6の任意の整数であってもよい、式IIの直鎖ジアルキルアミン、
式IIIの直鎖アルキルアミンであって、
【化20】
式中、nが、同じであっても異なっていてもよく、2~6の任意の整数であってもよい、式IIIの直鎖アルキルアミン、
式IVの分岐鎖ジアルキルアミンであって、
【化21】
式中、nが、同じであっても異なっていてもよく、2~6の任意の整数であってもよい、式IVの分岐鎖ジアルキルアミン、
から選択される。
【0051】
本発明の特定の実施形態では、R1及びR2は、両方ともHでないか、又は両方とも-CH3である。
【0052】
本発明の実施形態では、収着剤分子は、以下の好適な化合物のうちの1つ以上から選択される低分子量ポリアミンを含む:
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
及び
【化29】
【0053】
本発明の代替的な実施形態では、低分子量ポリアミンは、ジエチレントリアミン及び/又はビス(3-アミノプロピル)アミンの反復サブユニットから構成される直鎖ポリアミンから選択されてもよい。具体的な実施形態には、
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
及び
【化34】
が含まれてもよい。
【0054】
本発明の一実施形態では、ポリアミンコアは、TRENを含む。
【0055】
水処理では、固体支持材料に結合した非常に高い分子量のポリアミンが、重金属及び染料の除去に効果的であることが示されている(例えば、CN103041780Bを参照されたい)。しかしながら、低分子量ポリアミンを含む収着剤材料がアニオン性界面活性剤を水から除去する効果は驚くべきものである。特に、本発明の実施形態による低分子量ポリアミンで変性された収着剤繊維は、規制限界までPFASを排水から除去することができる。加えて、活性炭及び樹脂の場合とは異なり、収着剤材料は、次いで、溶媒洗浄剤で再生されて、環境汚染物質を回収し、収着剤材料を再使用し得る。
【0056】
標的物質収着剤分子の添加前に、支持基材を活性化(又は「調整」)することが必要であるか又は望ましい場合がある。この活性化は、セルロース又はシリカ表面への官能基の付加を含む。後続の反応では、次いで、標的物質収着剤分子は、活性化中に付加された官能基との結合を形成し、支持材料に結合する。共有結合は、エステル、エーテル、カルバメート、又はチオカルバメート結合を介していてもよい。いくつかの実施形態では、セルロース支持体は、ハロゲン化アルキル又はハロゲン化アシル、例えば、臭化アルキル、臭化ブロモアセチル、又はブロモスクシンイミドとの反応によって活性化される。異なる鎖長の化学的に関連する基(メチル、プロピル、ブチル、ペンチルなど)も、この活性化での使用が検討されている。他の実施形態では、セルロースは、カルボニルジイミダゾール、又はグルタルアルデヒド若しくはエピクロロヒドリンなどの架橋剤との反応によって活性化される。これらの活性化官能基は、セルロースが最終的に変性される標的物質結合分子に可能な化学結合点を提供する。これらの結合点により、支持体と標的物質結合分子との間に存在する短いリンカーが生じ得る。このリンカーは、例えば、上述のハロゲン化アシルハライド(-C(=O)-C-)を用いるアシル化によって残されたものであってもよい。これらの「結合点」のすべてが必ずしも収着剤分子の結合に使用されるとは限らないが、本明細書に記載される官能基の添加は、支持材料上に既存の官能基を保護するため、及び/又は以下にさらに詳細に記載されるさらなる特徴を付与するためにも有用であり得る。
【0057】
同様に、支持材料は、例えば、セルロース系アルコール基を保護するため、架橋などの副反応の防止と、さらなる変性のための材料の溶解度の向上との両方のために、類似の反応によって変性させることができる。いくつかの実施形態では、したがって、支持材料は、例えば、エステル、エーテル、カルバメート、又はチオカルバメート基によって、部分的に保護されている。例えば、支持材料は、無水酢酸、塩化トリメチルシリル、塩化トリイソプロピルシリル、塩化ベンゾイルなどの1つ以上の化合物と反応させてから、収着剤分子に結合させることができる。したがって、支持材料は、アシル化又はアセチル化セルロースを含み得る。
【0058】
別の実施形態では、顆粒状で多孔質のシリカゲル基材を、(3-クロロプロピル)トリクロロシランを用いる反応によって活性化させる。これにより、後続のステップで選択した低分子量ポリアミンへの共有結合の形成のための化学結合点が提供される。この実施形態では、シリカ表面はまず水和され、次いで、(3-クロロプロピル)トリメトキシシランとの反応によって活性化される。生成物を乾燥させた後、ポリアミンを、活性化された基材に共有結合させる。
【0059】
本発明によれば、収着剤分子は、ポリアミンコアとも称されるポリアミン基を含み、これは、好適には短鎖疎水性基であるさらなる化学基の付加によって、それ自体が変性される。一実施形態では、このさらなる化学基は、アルキル若しくはアリールカルボン酸、又は酸ハロゲン化物若しくは無水物と、ポリアミン基のアミン基との反応により付加されて、ポリアミンと疎水性基との間にアミド結合を形成する。任意選択で、この反応は、疎水性基とポリアミン分子内に含まれる末端一級アミン基との間のものである。反応はまた、ポリアミンコア内に含まれる二級アミンでも生じ得る。本発明の実施形態では、複数の疎水性基が、ポリアミン分子内の複数のアミン基と反応する。いくつかの実施形態では、ポリアミン分子内に存在する実質的にすべての末端一級アミン基が、疎水性基と反応する。
【0060】
本発明の実施形態では、短鎖疎水性基は、C2~C22の分岐鎖、直鎖、若しくは環状、飽和若しくは不飽和のアルキル、又はアリールから選択される。典型的には、この基は、C2~C22の分岐鎖、直鎖、若しくは環状のアルキル、又はアリールから選択される。任意選択で、C2~C22の分岐鎖又は直鎖アルキル基は、C2~C12アルキル基、好適には、ブチル、ヘキシル、又はオクチル基から選択される。特定の実施形態では、C2~C22直鎖アルキル基は、イソブチル、イソヘキシル、又はイソオクチル基から選択されるC4~C8の分岐鎖又は直鎖アルキルである。本発明の特定の実施形態では、C2~C22アルキル基は、シクロヘキシル、シクロへプチル、又はシクロオクチル基から選択されるシクロアルキルである。さらなる実施形態では、アリール基は、フェノール、ベンゼン、又はベンジルからなる群から選択される。さらなる実施形態では、疎水性基は、C2~C22ポリ又はパーフルオロ化基、好適には、C8パーフルオロオクタン又はC8ポリフルオロ化、6:2フルオロテロマーである。任意選択で、収着剤分子は、同じであっても異なっていてもよい複数の疎水性基を含む。
【0061】
置換された粒子状固体支持生成物(例えば、置換されたセルロース、リグノセルロース、又はシリカ)は、例えば、アシル化剤、好適には、アシル又はアリール酸ハロゲン化物とさらに反応する。本発明の一実施形態では、ヘキサノイル又はオクタノイル塩化物は、固体支持体に結合したコアポリアミン基内の一級アミンのアシル置換に使用される。ヘキサノイル又はオクタノイル塩化物をジクロロメタン(DMF)に溶解させ、反応を、周囲温度付近で、塩基及び触媒であるジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で実施する。このようにして、疎水性気は、アミド結合を介してポリアミンコアと結合する。
【0062】
本発明の代替の実施形態では、アシル化剤は、以下の式の化合物を含んでもよいことが理解されるであろう。
【化35】
式中、
R
4は、C
2-C
22の分岐、直鎖、若しくは環状アルキル、又はアリール基であり、
R
5は、ハロゲン化物である。
【0063】
典型的には、R4は、C2-C22、好適にはC2-C12、又は任意選択でC4-C8の直鎖飽和又は不飽和アルキル基から選択され、最も好適には、ブチル、ヘキシル、又はオクチル基から選択される。任意選択で、R4は、イソプロピル、イソブチル、又はイソヘキシル基から選択される。R4は、シクロブチル又はシクロヘキシル基から選択されるシクロアルキルを含んでもよい。R4がアリールである場合、典型的には、アリールは、フェノール又はベンジル基から選択される。
【0064】
R5は、典型的には、塩化物又は臭化物から選択される。
【0065】
得られた収着剤分子は、収着剤材料の特定の要件に合わせて調整され得る収着性の独特の特性を有する。したがって、収着剤分子の化学的性質を変性することによって、収着剤材料が、流体流内の特定の物質及び/又は汚染物質を標的とするように容易に最適化され得ることは、本発明の有益性である。
【0066】
廃水処理の主要な標的は、PFOA、PFOS、PFHA、PFHS、PFBA、PFBS、6:2 FTSA、及びHFPO-DAなどのポリ又はパーフルオロ化界面活性剤である。
【0067】
他の標的物質、汚染物質、若しくは有価物質(例えば、採鉱、純化、又は製造プロセスからの廃水中に存在する貴金属又は希土類金属を含む)を除去するための廃水処理、又は有機溶媒及び油などの他の流体の処理、又は液体生成物流からの不純物の除去が可能であることも想定されている。加えて、本発明による収着剤材料は、標的物質を気体から除去する収着剤として使用され得る。
【0068】
この方法で有機環境汚染物質用に配置される他の収着剤とは異なり、本収着剤材料は、溶媒洗浄ステップを用いて、その場で効果的に再生することができる。溶媒洗浄剤は、塩洗浄剤、酸性洗浄剤、塩基性洗浄剤、又は塩洗浄剤及び酸性洗浄剤などの組み合わせを含み得る。再生溶液は、さらに、又は代替的に、アセトンなどの非水性極性溶媒を含んでもよく、又はエタノール、メタノール、若しくはイソプロパノールなどのアルコールを使用してもよい。好適には、水性洗浄剤を使用する場合、洗浄剤は、9を超えるpH、又は代替的に、5未満のpHを有する液体を含み得る。任意選択で、洗浄剤溶液は、水酸化アンモニウム水溶液、塩化アンモニウム水溶液、硫酸アンモニウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、重炭酸ナトリウム水溶液、又は水酸化ナトリウム水溶液を含む。いくつかの実施形態では、洗浄液は、8を超えるpH、好適には、9を超える、又は10を超えるpHを有する。酸洗浄剤が使用される場合、酸は、好適には、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸を含む無機酸、あるいは酢酸、ヘキサン酸、エタン二酸、又はクエン酸から好適に選択される有機酸から好適に選択される。塩は、塩化物、硫酸塩、又はリン酸塩対イオンを有するナトリウム、カリウム、又はマグネシウム塩から好適に選択される。いくつかの実施形態では、洗浄液は、5未満、好適には、4未満、3未満、又は2未満のpHを有する。再生の可能性は、それによりリサイクル、回収、又は安全な廃棄のための標的物質の除去が可能になるとともに、収着剤材料の再使用が可能になるという点で、特に有益である。このようにして、標的物質を除去するために提案された方法により、さらにコストが削減され、使用済み収着材材料の形態で廃棄物が生成されるようになる。
【0069】
再生プロセスは、好適には、収着剤材料を流体流から除去することと、それを上記の洗浄溶媒と接触させることと、を含む。代替的な実施形態では、再生プロセスには、再生を実現するために一定期間、流体流を溶媒洗浄剤で置き換えることが伴う。
【0070】
理論に拘束されることを望むものではないが、本明細書に記載される組成物への標的物質の吸着は、主に低分子量ポリアミンコアとの静電的相互作用などの非共有的相互作用と、共有結合した疎水性基との疎水性-疎水性相互作用との組み合わせの結果と思われる。再生溶媒洗浄ステップでは、洗浄剤中のアニオンなどの極性基との相互作用が、アニオン性標的物質との静電的相互作用の代わりになり、洗浄剤中に標的物質を放出する。pHを上げたり下げたりすると、ポリアミンコアのプロトン化状態が変化し、吸着された標的化合物との静電的結合相互作用がさらに低減し得る。アンモニウムなどの他のイオンの存在により、吸着された標的化合物の溶解度が向上し、再生溶媒洗浄ステップにおけるそれらの除去がさらに増加し得る。
【0071】
本系の別の顕著な有益性は、その低コスト及び生成の容易さである。比較的低コストの低分子量ポリアミン及び非常に低コストの支持材料(例えば、リグノセルロース又はシリカ)を用いる、顆粒又はパルプなどの他の形態の収着剤材料の生成によって、大規模(バッチ当たり約1000kg)で費用効果の高い材料の生成が可能になり、大量の廃水用途(メガリットル/日の流量)への展開を可能にする。加えて、収着剤基材と標的物質収着剤分子との結合に関連する反応は、大規模で、経済的に、多くの場合に比較的低い温度(例えば、100℃未満)及び大気圧で実施され得る。
【0072】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに例示される。
【実施例】
【0073】
実施例1-製造、特性評価、及び吸着性能
一般材料
溶媒及び試薬は、VWR又はSigma Aldrichから入手し、さらに精製することなく使用した。セルロースTencel繊維は、Lenzing Fibres Grimsbyから入手した。
【0074】
合成法
収着剤材料化合物3、4、5、及び6のための合成経路をスキーム1に示す(下記参照)。
【0075】
セルロースの臭素化のための方法は、文献プロトコル「S.C.Fox and K.J.Edgar,Biomacromolecules,2012,13,992-1001」から採用した。
【0076】
セルロース繊維(10.00g、61.6mmolの無水グルコース単位(AGU))を乾燥ジメチルアセトアミド(300mL)に溶解させ、窒素下で160℃に1時間加熱し、次いで90℃に冷却した後、LiBr(60.00g)を添加した。反応混合物をさらに2時間攪拌し、次いで室温に冷却し、窒素下で一晩保持した。
【0077】
トリフェニルホスフィン(48.38g、AGU当たり3等量)を乾燥ジメチルアセトアミド(100mL)に溶解させ、反応混合物に窒素下室温で滴加した。次に、N-ブロモスクシンイミド(32.93g、AGU当たり3等量)を乾燥ジメチルアセトアミド(80mL)に溶解させ、反応混合物に30分かけて添加した。試薬を添加したら、反応物を70℃で1時間加熱し、その後、無水酢酸(50mL、529mmol)を滴加した。反応物を一晩加熱し、冷却し、次いで水/エタノール混合物(1:1v/v、6L)中で沈殿させた。生成物を水及びエタノール中で濾過し、次いでアセトンに2回再溶解させ、エタノールで沈殿させ、濾過し、真空オーブン中40℃で一晩乾燥させた。
【0078】
化合物2(3.00g、9.7mmolのAGU)をジメチルホルムアミド(20mL)の攪拌溶液に添加し、40℃で加熱した。トリス(2-アミノエチル)アミン(1.42g、9.7mmol)を溶液に添加した。14時間後、反応物を水/エタノール(1:1v/v、100mL)中で沈殿させ、水で数回洗浄し、真空オーブン中40℃で一晩乾燥させた。
【0079】
化合物3(2.50g、6.7mmolのAGU)及び尿素(0.40g、6.7mmol)をジメチルホルムアミド(7mL)に溶解させ、100℃で加熱した。20時間後、生成物を、水/エタノール混合物(1:1v/v、100mL)への緩徐な添加によって単離し、濾過し、真空オーブン中40℃で一晩乾燥させた。
【0080】
別途、化合物3(1.00g、2.7mmolのAGU)をジメチルホルムアミド(7mL)に70℃で溶解させた。攪拌反応混合物に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.1mL)及び塩化オクタノイル(0.46mL、5.4mmol)を添加した。3時間後、反応物を、水/エタノールの混合物(1:1v/v、100mL)に緩徐に添加し、沈殿物を洗浄し、濾過し、真空オーブン中40℃で一晩乾燥させた。
【0081】
化合物5(0.50g、2.4mmolのAGU)を、ジメチルホルムアミド(5mL)に40℃で溶解させた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.05mL)及び塩化オクタノイル(0.21mL、1.2mmol)を添加し、反応物を6時間攪拌した。続いて、混合物を、水/エタノールの溶液(1:1v/v、50mL)に緩徐に添加し、濾過し、洗浄し、真空オーブン中40℃で一晩乾燥させた。
【0082】
分析法
すべての材料を、Agilent Technologies Cary 630 FTIR機器上、透過又は吸光度モードでFT-IR分光法を使用して特性評価した。溶解性が許容される場合、材料を、Bruker AV-400機器を使用して、室温で、1H-NMR分光法及び13C-NMR分光法によって分析した。
【0083】
バッチ試験のために、材料(10mg)を、PFAS(水10mL当たり各々400ppbのPFOA、PFOS、PFHA、PFBS、及びPFPeA)を3回に分けてスパイクした合成硬水(CaCO3として250ppm、10mL)に分散させ、2時間かき混ぜた。得られた溶液の試料を、プロセス対照に加えて2時間の時点で採取し、LC/MSクロマトグラフィーによって分析した。吸着したPFAS種の量を、プロセス対照標準ラインに対する線形適合を使用して定量化し、ブランク及び水マトリックスブランクを陰性対照として含めた。
【0084】
結果
PFAS種を水から除去するために設計した材料を、反応スキーム1に概説するように調製した(以下参照)。
【化36】
官能化セルロース繊維材料の調製。試薬:i)a.DMAc、LiBr、b.NBS、PPh3、c.酢酸、文献プロトコル[1]に従う、ii)TREN、DMF、iii)及びv)塩化オクタノイル、DIPEA、DMF、n=0~3、iv)尿素、DMF
【0085】
簡潔に述べると、セルロースを、C6位置に対して選択的である臭素化手順を使用して官能化した。ハロゲン化アルキルを組み込むことにより、その後のアミンとの置換反応のための脱離基が形成される。架橋などの副反応の防止と、さらなる変性のための材料の溶解度の向上との両方のために、残りのセルロース系アルコール基を、無水酢酸を使用して保護した。次に、化合物2を低分子量ポリアミンコア、この場合はトリス(2-アミノエチル)アミン、又は「TREN」と反応させて、アミノ化セルロース(化合物3)を形成した。精製及び洗浄手順の後、化合物3を塩化オクタノイルで処理して化合物4を形成するか、又は尿素と反応させて化合物5を得て、これを沈殿させ、洗浄し、再度塩化オクタノイルで処理して、化合物6を得た。
【0086】
最終生成物を、FT-IR分光法によって特性評価した(
図1A~1E参照)。相対的官能基量を定量化し、これを性能に関連付けるために、(すべての変性にわたって存在する)1155cm
-1の周りの周知のセルロース系C-O-Cシグナルを参照として使用した。目的のシグナルと参照シグナルとの比を使用して、相対的官能基量の変化を近似した。より具体的には、スペクトルが透過モードにあるため、正規化したスペクトルからの(B-I(νFG))/(B-I(νCOC))の比を評価し、Bを4000cm
-1での基底値として定義し、Iを所与のピークでの強度として定義した。
【0087】
図1A~Eに示す正規化したIRスペクトルはすべて、TRENの代表的なIRシグナルを含むが、より具体的に、NH信号が水と重なり得るため、1385~1365cm
-1の周りのTRENのCH曲げ振動に焦点を当てた。化合物4(TRENオクタ)及び6(TREN尿素オクタ)はいずれも、化合物3(TREN)又は5(TREN尿素)には存在しない、疎水性アシル鎖を示す1739cm
-1でのカルボニルシグナルを含む。
【0088】
さらなる特性評価データ、具体的には、非官能化セルロース、及び官能化セルロースの化合物4(TRENオクタ)のCP/MAS
13C-NMRスペクトルを
図2A及び2Bに示す。非官能化セルロースのスペクトルは、セルロース骨格の典型的な構造を示す。官能化されると、セルロース骨格構造内のいくつかのシフトが明らかになる。加えて、170ppmでのシグナルを、アセチル基及びアミド結合の両方からのC=O炭素に割り当てた。21ppmでの広域シグナルを、疎水性鎖からのアルキル炭素に割り当てた。26~41ppmの領域は、アミンに隣接する炭化水素鎖及び炭素と関連付けられる。
【0089】
収着剤材料が硬水条件下で(250ppmのCaCO
3として)PFASを吸着する能力を評価するために、各化合物を3回に分けてバッチ試験に供した。結果を
図3に示す。比較のため、
図4は、25kDaのPEIアミン及び塩化オクタノイルのより大きなポリアミンコアを有する収着剤分子で処理した同じ塩基繊維の吸着性能結果を示す。
【0090】
データは、本明細書に記載の方法及び収着剤組成物によって達成される吸着性能の改善された範囲を例解する。驚くべきことに、特に改善された吸着性能が、短鎖PFASについて見られた。加えて、化合物3、4、5、及び6間の性能の変化は、予想よりもわずかであり、主に短鎖種において顕著であるように見受けられる。
【0091】
実施例2-再生
収着剤材料が再生される能力を評価するために、上記の実施例1に記載したように、セルロース繊維を調製し、官能化して、化合物4(TRENオクタ)を調製した。
【0092】
図5Aは、LCMS方法を使用して、バッチ試験で評価した化合物4(10mgの化合物4、10mLの脱イオン水、及びそれぞれ4ppmのPFPeA、PFHA、PFHS、PFOA、PFOS)のPFAS吸着データを示す。材料を、脱イオン水及びPFHSの使用を除いて上記実施例1に記載したように、試験に供した。示されるデータは、1回の吸着性能評価に由来し、試料は3つである。エラーバーは標準偏差を表す。
【0093】
材料をバッチ試験流体から分離させ、70%エタノール、1%塩化アンモニウム、及び残余分(30%)の飽和重炭酸ナトリウム溶液の再生溶液に浸漬し、振盪した。
図5Bは、24時間後に再生流体中に見出される材料によって元々吸着されたPFASの量である、達成された収着剤材料の再生の量の図を示す(明らかに100%を超えるように見える値は実験的誤差に起因する可能性が高い)。これらのデータは、本発明による組成物及び方法により、様々な異なるPFASについて、ほぼ完全な再生が達成され得、これにより、吸着された化学物質の高レベルの回収及び/又は調製された収着剤材料の効果的な再利用が可能になることを示す。
【0094】
本発明の特定の実施形態を本明細書で詳細に開示してきたが、これは例として、及び例示の目的でのみ行われている。前述の実施形態は、後続する添付の特許請求の範囲に関して限定的であることを意図するものではない。発明者らは、特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明に様々な置換、変更、及び修正を行うことができることを企図する。
【国際調査報告】