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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】繊維機械の巻取り装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/20 20060101AFI20230517BHJP
   B65H 54/02 20060101ALI20230517BHJP
   D01D 7/00 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
B65H54/20
B65H54/02 C
D01D7/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562895
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2021059320
(87)【国際公開番号】W WO2021209342
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】202010299145.1
(32)【優先日】2020-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】307031976
【氏名又は名称】エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D-42897 Remscheid, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャオビン ワン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ミュンスターマン
【テーマコード(参考)】
3F056
4L045
【Fターム(参考)】
3F056AA05
3F056AB02
3F056AB06
3F056AC08
4L045BA03
4L045DC01
4L045DC11
4L045DC14
(57)【要約】
本発明は、繊維機械の巻取り装置であって、可能な限り均一なパラメータのボビンを製造するために、少なくとも1つの巻取り群を有しており、前記巻取り群は、複数の巻取り位置(2.1~2.16)を含み、巻取り位置(2.1~2.16)の各々には、それぞれ駆動ロール(5)と糸進入要素(9)とが設けられており、巻取り位置(2.1~2.16)は、鉛直方向に積み重なる少なくとも3つの層の形態で配置されていて、左右横方向に位置しており、巻取り群の低い方の側には、巻取り位置(2.1~2.16)の糸進入要素(9)に糸を案内するために水平方向にかつ横方向に配置された複数の案内要素(10.1~10.16)が設けられており、案内要素(10.1~10.16)は、複数の案内要素群に分割されており、各々の前記案内要素群における案内要素(10.1~10.4)の数は、1つの鉛直ラインにおける巻取り位置(2.1~2.4)の数に等しく、巻取り位置(2.1~2.4)の1つの鉛直ラインにおいて、前記案内要素群の案内要素(10.1~10.4)の接続ライン上に投影された、前記鉛直ラインにおける各々の前記巻取り位置(2.1~2.4)の糸進入要素(9.1~9.4)の投影点が、前記案内要素群の一番左側の案内要素(10.1)と一番右側の案内要素(10.4)との間に全て分散して分配されているかまたは一部重なり合って分配されている、巻取り装置を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維機械の巻取り装置であって、少なくとも1つの巻取り群を有しており、前記巻取り群は複数の巻取り位置を含み、前記巻取り位置の各々には、それぞれ駆動ロールと糸進入要素とが設けられており、前記糸進入要素は、前記駆動ロールの上流側に配置されていて、前記駆動ロールの中央区分に対応するように位置決めされており、前記巻取り位置は、鉛直方向に積み重なる少なくとも3つの層の形態で配置されていて、左右横方向に位置しており、前記巻取り群の低い方の側には、前記巻取り位置の前記糸進入要素に糸を案内するために水平方向にかつ横方向に配置された複数の案内要素が設けられており、前記案内要素は、複数の案内要素群に分割されており、各々の前記案内要素群における案内要素の数は、1つの鉛直ラインにおける巻取り位置の数に等しい、巻取り装置において、
前記巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、前記案内要素群の前記案内要素の接続ライン上に投影された、前記鉛直ラインにおける各々の前記巻取り位置の前記糸進入要素の投影点が、前記案内要素群の一番左側の案内要素と一番右側の案内要素との間に全て分散して分配されているかまたは一部重なり合って分配されていることを特徴とする、巻取り装置。
【請求項2】
前記巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、前記巻取り位置は、互いに重なり合って右側または左側にオフセットされて配置されていることを特徴とする、請求項1記載の巻取り装置。
【請求項3】
複数の前記巻取り群の前記巻取り位置は、フレーム内に配置されており、前記巻取り位置の水平な前記層は、それぞれフレーム右端またはフレーム左端にオフセットされて積層されていることを特徴とする、請求項1または2記載の巻取り装置。
【請求項4】
前記巻取り位置は、鉛直な4つの層で積層されるように配置されており、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、互いに整列した上側の層の巻取り位置と、下側の層の巻取り位置よりも高い第2の層の巻取り位置とが、互いに整列した前記下側の層の巻取り位置と、前記上側の層の巻取り位置よりも僅かに低い第3の層の巻取り位置とに対してオフセットされて配置されており、1つの前記案内要素群において、左側の2つの前記案内要素は、それぞれ前記糸を、衝突しないように左側にオフセットされて配置された2つの前記巻取り位置の前記糸進入要素に案内し、右側の2つの前記案内要素は、それぞれ前記糸を、衝突しないように右側にオフセットされて配置された2つの前記巻取り位置の前記糸進入要素に案内することを特徴とする、請求項3記載の巻取り装置。
【請求項5】
前記巻取り位置は、前記糸を前記巻取り位置の前記駆動ロールの軸線方向に沿って案内するトラバースガイド装置を含み、前記糸進入要素と前記駆動ロールとの間での糸の運動の軌跡により覆われる領域が二等辺三角形であることを特徴とする、請求項1記載の巻取り装置。
【請求項6】
巻取り位置の1つの鉛直ラインに対応する1つの前記案内要素群のうちの前記案内要素は、互いに等間隔に離間していることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の巻取り装置。
【請求項7】
前記一番左側の案内要素および一番右側の案内要素は、それぞれ前記糸を前記上側の層の巻取り位置の前記糸進入要素および前記第3の層の巻取り位置の前記糸進入要素に案内することを特徴とする、請求項4記載の巻取り装置。
【請求項8】
巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、前記糸を前記案内要素群から前記糸進入要素に案内するための糸変向角が10°未満であることを特徴とする、請求項7記載の巻取り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明が関する技術分野は、複数の糸から巻成体を巻成するための繊維機械の巻取り装置である。
【背景技術】
【0002】
本発明に関連した先行技術の1つである中国特許第101634065号明細書には、一種類の巻取り装置が記載されている。巻取り装置の詳細な構造は先行技術によって開示されており、左右水平に配置されていると同時に鉛直方向に積層された巻取り位置を有している。各々の巻取り位置は、糸が巻き付けられる巻取り管を駆動するための駆動ロールと、糸を巻取り位置に案内するための糸進入要素とを備えている。図示されていない一列の案内要素が、下側の層の巻取り位置の下方に位置決めされている。案内要素は、第3のデリバリローラの位置に対応して水平に配置されている。
【0003】
1つの鉛直ラインの巻取り位置は、互いに整列している。水平に配置された案内要素は、互いに等しい間隔を有している。
【0004】
したがって、糸は、低い方の位置の案内要素から高い方の位置の糸進入要素に案内されるため、糸が、鉛直方向を基準として形成された変向角を伴って変向されることは不可避である。変向角は、ボビンの形成に影響を与える重要な要因である。それぞれ異なる変向角の結果、糸が糸ガイドを通過している際に糸に加えられる摩擦力も糸張力も異なってしまう。糸同士の間の変向角のばらつきによって、ボビンが形成された後の巻成体パラメータが間接的に異なってしまう。
【0005】
それにもかかわらず、糸巻成体に対する期待は、各々の巻取り位置の糸巻成体が可能な限り均一な巻成体パラメータを有していることである。特に、1つの鉛直ラインが比較的多くの数の巻取り位置、例えば4つまたは5つの巻取り位置を有しているときに、不均一さがより明らかとなる。既存の構成の巻取り装置は、このような期待に応えることができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した要求を満たすために、本発明は、以下の技術的なスキームを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の技術的なスキームによれば、繊維機械の巻取り装置は少なくとも1つの巻取り群を有しており、前記巻取り群は複数の巻取り位置を含み、これらの巻取り位置の各々には、それぞれ駆動ロールと糸進入要素とが設けられており、糸進入要素は、駆動ロールの上流側に配置されていて、駆動ロールの中央区分に対応するように位置決めされており、巻取り位置は、鉛直方向に積み重なる少なくとも3つの層の形態で配置されていて、左右横方向に位置しており、巻取り群の低い方の側には、巻取り位置の糸進入要素に糸を案内するために水平方向にかつ横方向に配置された複数の案内要素が設けられており、案内要素は、複数の案内要素群に分割されており、各々の前記案内要素群における案内要素の数は、1つの鉛直ラインにおける巻取り位置の数に等しく、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、前記案内要素群の案内要素の接続ライン上に投影された、前記鉛直ラインにおける各々の前記巻取り位置の糸進入要素の投影点が、前記案内要素群の一番左側の案内要素と一番右側の案内要素との間に全て分散して分配されているかまたは一部重なり合って分配されている。
【0008】
先行技術における技術的なスキームと異なり、1つの鉛直ラインの全ての巻取り位置が整列して配置されているわけではない。互いに隣り合った巻取り位置は、互い違いに配置されている。互い違いの形態は2つの可能性を含んでいる。一方の可能性は、1つの鉛直ラインの全ての巻取り位置が互い違いに配置されていることである。他方の可能性は、1つの鉛直ラインの一部の巻取り位置が互い違いに配置されており、1つの鉛直ラインの一部の巻取り位置が整列して配置されていることである。提案された互い違いの配置によって、接続ライン上への少なくとも一部の糸進入要素の投影点から相応の案内要素までの間隔を減らすことが可能となる。したがって、案内要素から糸進入要素に進行するときの糸の変向角が相応に減少する。技術的なスキームがもたらす技術的な効果は、少なくとも一部の糸がその変向角を減少させるのに対して、全ての糸の変向角を可能な限り均一にすることができ、これによって、全ての巻取り位置のボビン巻成体が可能な限り均一なパラメータを有することができることにある。
【0009】
スペース利用を最適化するための技術的なスキームとして、本発明の第2の技術的なスキームは、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、巻取り位置が、互いに重なり合って右側または左側にオフセットされて配置されていることを記載している。
【0010】
スペース利用を最適化するための技術的なスキームとして、本発明の第2の技術的なスキームは、複数の巻取り群の巻取り位置が、フレーム内に配置されており、巻取り位置の水平な層が、それぞれフレーム右端またはフレーム左端にオフセットされて積層されていることを記載している。
【0011】
巻取り装置が4つの積み重なる層を有している場合、本発明の第4の技術的なスキームとして、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、互いに整列した上側の層の巻取り位置と、下側の層の巻取り位置よりも高い第2の層の巻取り位置とが、互いに整列した下側の層の巻取り位置と、上側の層の巻取り位置よりも僅かに低い第3の層の巻取り位置とに対してオフセットされて配置されており、1つの前記案内要素群において、左側の2つの案内要素は、それぞれ糸を、衝突しないように左側にオフセットされて配置された2つの巻取り位置の糸進入要素に案内し、右側の2つの案内要素、それぞれ糸を、衝突しないように右側にオフセットされて配置された2つの巻取り位置の糸進入要素に案内する。このような配置形態によって、製造コストと変向角の均一性との間に最適なバランスを見出すことが可能となる。
【0012】
本発明の第5の技術的なスキームとして、巻取り位置は、糸を巻取り位置の駆動ロールの軸線方向に沿って案内するトラバースガイド装置を含み、糸進入要素と駆動ロールとの間での糸の運動の軌跡により覆われる領域が二等辺三角形である。糸は、糸進入要素を通過した後、駆動ロールの軸線方向に沿って往復運動するように駆動される。
【0013】
本発明の第6の技術的なスキームとして、巻取り位置の1つの鉛直ラインに対応する1つの案内要素群のうちの案内要素は、互いに等間隔に離間している。
【0014】
案内要素と糸進入要素との間の対応関係をさらに最適化するために、本発明の第7の技術的なスキームとして、一番左側の案内要素および一番右側の案内要素は、それぞれ糸を上側の層の巻取り位置の糸進入要素および第3の層の巻取り位置の糸進入要素に案内する。
【0015】
ボビン形成に対する変向角の影響を可能な限り減じるためには、変向角が特定の値を下回るように制御されなければならない。本発明の第8の技術的なスキームとして、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、糸を案内要素群から糸進入要素に案内するための糸変向角は、10°未満である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】1つの前記巻取り位置の概略的な平面図である。
図2】本発明による1つの巻取り群を有する巻取り装置の構造概略図である。
図3】先行技術による案内要素を接続する接続ライン上への糸進入要素の1つの鉛直ラインの投影点の位置関係を概略的に示す図である。
図4図2に示した実施形態による案内要素を接続する接続ライン上への糸進入要素の1つの鉛直ラインの投影点の位置関係を概略的に示す図である。
図5】本発明による1つの巻取り群を有する巻取り装置の別の実施形態の構造概略図である。
図6図5に示した実施形態による案内要素を接続する接続ライン上への糸進入要素の1つの鉛直ラインの投影点の位置関係を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
繊維機械の巻取り装置は、1つの巻取り群によって単独で形成された装置または複数の巻取り群を相並べて配置することによって一緒に形成された装置である。さらに、各々の前記巻取り群は、複数の糸から巻成体を巻成する複数の巻取り位置から、整然と組み合わされた形態で形成されている。糸は、巻取り装置への進入に先行して、相応のプロセス処理位置を介して必要な糸処理、つまり、加熱、冷却、延伸等を受けなければならない。種々異なる機械タイプに応じて、プロセス処理位置を配置する形態はそれぞれ異なっている。
【0018】
巻取り位置の構成は、図1に例示してある。この図1には、巻取り位置の平面図が概略的に示してある。平面図の影響として、ボビン4の下側にある駆動ロール5は点線で示してある。ボビン4は、駆動ロール5に対して平行であるように、この駆動ロール5に押し付けられる。ボビン4は、旋回アーム3によって駆動ロール5に対して接近可能であるかまたは離反可能である。
【0019】
巻取り位置は、糸8を巻取り位置に案内するための糸進入要素9も含んでいる。この糸進入要素9は、駆動ロール5の中央区分に対応するように取り付けられている。糸進入要素9を通過した後、糸8はトラバース糸ガイド6に到達し、次いで、ボビン4に最終的に巻き付けられる。トラバース糸ガイド6は、図1に存在していないトラバース機構によって駆動ロール5の軸線方向に沿って往復運動するように駆動される。固定の糸進入要素9と可動のトラバース糸ガイド6とにより一緒に生じる制限によって、両者の間の糸8の運動軌跡によって覆われる領域は二等辺三角形7となる。
【0020】
1つの前記巻取り群の構成の説明を続ける。図2は、1つの巻取り群を有する巻取り装置の構造概略図である。図1の透視図を鉛直透視図として規定している場合、図2の透視図は水平透視図である。巻取り群は、16箇所の巻取り位置2.1~2.16を含んでいる。これらの巻取り位置は、鉛直方向において4つの層で積層されている。各々の層は、等間隔に離間した互いに隣り合った4つの巻取り位置を有している。各々の前記巻取り位置は、図1に示した構造と同じ構造を有している。念のために付言しておくと、巻取り位置の数および層の数は例示的な目的のためのものでしかなく、巻取り位置の数は12箇所であってもよいし、積み重ねる層の数は3つであってもよい。
【0021】
巻取り位置2.1~2.16はフレーム1の内部に収容されている。巻取り群は、水平方向に配置された4つの案内要素群を有している。各々の群は4つの案内要素を有している。これによって、前記案内要素10.1~10.16は合計16個となる。この場合、数は例示的な目的のためのものでしかなく、各々の前記案内要素群の範囲内の互いに隣り合った前記案内要素の間の間隔は等しい。この実施形態において、1つの案内要素群における案内要素の数を4つと決めた理由は、1つの鉛直ラインの範囲内で案内要素群の案内要素と糸進入要素との間に形成しなければならない1対1の対応関係にある。一例として、糸は、4つの案内要素10.1~10.4のうちの1つから4つの糸進入要素9.1~9.4のうちの1つに案内される。糸の案内は、糸同士の間に衝突がないことを確保すべきであるという1つの基本的な原理に従わなければならない。
【0022】
1つの糸は、巻取り装置よりも上流側でのプロセス処理位置によって処理された後、案内要素10.1~10.4のうちの1つに進入し、次いで、糸進入要素9.1~9.4のうちの1つに上向きに案内される。糸巻成ステップは最終的な段階であり、この段階でボビンが形成される。
【0023】
本発明の際立った特徴をより良好に詳述するために、1つの鉛直ラインの巻取り位置2.1,2.5,2.9,2.13を一例とすることによって説明を行う。4つの層を上から下に向かう順序でそれぞれ上側の層、第3の層、第2の層および下側の層と規定する。4つの巻取り位置2.1,2.5,2.9,2.13は、鉛直方向を基準としてジグザグ状に整然と配置されている。詳細には、互いに隣り合った上側の層の巻取り位置2.1と第3の層の巻取り位置2.5とは、左右の方向で互いにオフセットを伴っている。互いに隣り合った第3の層の巻取り位置2.5と第2の層の巻取り位置2.9とは、左右の方向で互いにオフセットを伴っている。互いに隣り合った第2の層の巻取り位置2.9と下側の層の巻取り位置2.13とは、左右の方向で互いにオフセットを伴っている。加えて、上側の層の巻取り位置2.1が、第2の層の巻取り位置2.9に整列しており、第3の層の巻取り位置2.5が、下側の層の巻取り位置2.13に整列している。したがって、1つの鉛直ライン内の互いに隣り合った巻取り位置の各々のオフセット値は等しい。このことは、設計、製造および取付け段階にとって有利である。
【0024】
上述したことに加えて、1つの層の範囲内のそれぞれ隣り合った巻取り位置の間のスピンドル間隔が等しいのに対して、それぞれ異なる層におけるスピンドル間隔も等しい。巻取り位置2.1~2.16を収容するフレーム1において、上側の層における全ての巻取り位置2.1,2.2,2.3,2.4は、フレーム1左端に向かってオフセットされており、第3の層における全ての巻取り位置2.5,2.6,2.7,2.8は、フレーム1右端に向かってオフセットされており、第2の層における全ての巻取り位置2.9,2.10,2.11,2.12は、左側のフレーム1に向かってオフセットされており、下側の層における全ての巻取り位置2.13,2.14,2.15,2.16は、フレーム1右端に向かってオフセットされている。同じく、互いに隣り合った層の間の各々のオフセット値も等しい。
【0025】
1つの糸は、1つの前記案内要素から、この案内要素に対して対応関係を有する1つの前記糸進入要素に案内されなければならない。対応関係は、以下の手段によって設定されている。例示的な例として、巻取り位置2.1,2.5,2.9,2.13の1つの鉛直ラインを考えることによって、案内要素10.1,10.2,10.3,10.4を有する案内要素群において、左側に設けられた案内要素10.1,10.2が、それぞれ1つの糸を、巻取り位置の前記1つの鉛直ラインの範囲内で左方向にオフセットされて配置された巻取り位置2.1,2.9の糸進入要素9.1,9.3に案内する。右側に設けられた案内要素10.3,10.4は、それぞれ1つの糸を、巻取り位置の前記1つの鉛直ラインの範囲内で右方向にオフセットされて配置された巻取り位置2.5,2.13の糸進入要素9.2,9.4に案内する。特に、案内要素群の範囲内の2つの端部に設けられた案内要素10.1,10.4は、それぞれ1つの糸を、上側の層の巻取り位置2.1の糸進入要素9.1と、第3の層の巻取り位置2.5の糸進入要素9.2とに案内する。このような糸経路を設計するための理由を図3および図4を参照することによって以下の内容で詳述する。
【0026】
図3には、先行技術による案内要素を接続する接続ライン上への糸進入要素の1つの鉛直ラインの投影点の位置関係が概略的に示してある。図4には、図2に示した実施形態による案内要素を接続する接続ライン上への糸進入要素の1つの鉛直ラインの投影点の位置関係が概略的に示してある。糸は、案内要素10.1から相応の糸進入要素9.1に案内された結果として、鉛直ラインに対して形成される角度として図3に示した変向角Aで変向される。この変向角Aは、最終的にボビンの形成に影響を与える、糸ガイドを通過する際に糸に加えられる摩擦力と糸張力とに影響を与える要因である。可能な限り均一なボビンを製造するために、糸ごとの摩擦力および糸張力の差を可能な限り減らすことが所望されている。このような目的を達成するために、さらに、変向角Aの値を減らして、糸ごとの変向角Aの差が可能な限り小さくなることを可能にすることが所望されている。
【0027】
図3から理解できるように、先行技術によれば、1つの鉛直ライン内の案内要素9.1,9.2,9.3,9.4は互いに整列している。参照符号11は、全ての前記案内要素を通る接続ラインである。この接続ライン11上の参照符号10.1’,10.2’,10.3’,10.4’は、それぞれ接続ライン11上の案内要素10.1,10.2,10.3,10.4の位置を示している。接続ライン11上の整列した糸進入要素9.1,9.2,9.3,9.4の投影点は、参照符号9’として重なり合っている。したがって、変向角Aの値は、参照符号10.1’から参照符号9’までの距離と、参照符号9’から糸進入要素9.1までの距離とによって決定される。参照符号9’と参照符号10.2’との間の距離はaとして示してあり、参照符号9’と10.3’との間の距離はbとして示してあり、参照符号9’と10.4’との間の距離はcとして示してあり、参照符号9’と10.1’との間の距離はdとして示してある。認めることができるように、a,b,c,dの差は比較的大きい。
【0028】
図4は、図3との直接的な比較に当てはまる。図4には、図2に示した実施形態における投影点同士の間の位置関係が示してある。図4によれば、上側の層の糸進入要素9.1は、第2の層の糸進入要素9.3に整列しており、両方とも、参照符号12として示した重なり合った投影点で接続ライン11上に投影されている。第3の層の糸進入要素9.2は、下側の層の糸進入要素9.4に整列しており、両方とも、参照符号13として示した重なり合った投影点で接続ライン11上に投影されている。上側の層の糸進入要素9.1は、第3の層の糸進入要素9.2に対して左右にオフセットされて配置されている。第2の層の糸進入要素9.3は、下側の層の糸進入要素9.4に対して左右にオフセットされて配置されている。参照符号12と参照符号10.2’との間の距離はeとして示してあり、参照符号13と参照符号10.3’との間の距離はfとして示してあり、参照符号13と参照符号10.4’との間の距離はgとして示してあり、参照符号12と参照符号10.1’との間の距離はhとして示してある。
【0029】
図3および図4に示した各々の実施形態では、各々の案内要素9.1,9.2,9.3,9.4から接続ライン上への相応の投影点までの距離は不変のままである。したがって、案内要素から接続ライン上への相応の糸進入要素の投影点までの距離が短いほど、変向角Aは小さくなる。
【0030】
先行技術の特徴を示した図3と、本発明の特徴を示した図4とを比較した後、本発明における巻取り装置の構成は、a,b,c,dの値の差と比較して、e,f,g,hの値の差を小さくすることができることが分かる。さらに、参照符号hの値が、参照符号dと比較して小さくなっており、参照符号eの値が、参照符号cと比較して小さくなっている。結果として生じる技術的な効果は、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、各々の糸の変向角が可能な限り均一であり、最初に比較的大きな変向角が、より小さな変向角に減少していることである。
【0031】
図5は、本発明による1つの巻取り群を有する巻取り装置の別の実施形態の構造概略図である。図4の実施形態と図5の実施形態との間の違いは、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおける4つの前記糸進入要素9.1~9.4が、整列することなくジグザグに配置されており、したがって、重なり合った投影点が接続ライン11上に存在しないということである。
【0032】
図6には、図5に示した実施形態による案内要素を接続する接続ライン上への糸進入要素の1つの鉛直ラインの投影点の位置関係が概略的に示してある。接続ライン11上への糸進入要素9.1の投影点は、参照符号9.1’として示してあり、接続ライン11上への糸進入要素9.2の投影点は、参照符号9.2’として示してあり、接続ライン11上への糸進入要素9.3の投影点は、参照符号9.3’として示してあり、接続ライン11上への糸進入要素9.4の投影点は、参照符号9.4’として示してある。参照符号9.3’と参照符号10.2’との間の距離はiとして示してあり、参照符号9.4’と参照符号10.3’との間の距離はjとして示してあり、参照符号9.2’と参照符号10.4’との間の距離はkとして示してあり、参照符号9.1’と参照符号10.1’との間の距離はlとして示してある。図4に示した実施形態と比較することによって、i,j,k,lの値の差は、e,f,g,hの値の差に対してさらに減少している。したがって、糸ごとの変向角Aの値の差がさらに減少している。
【0033】
本発明の際立った特徴は、それぞれ図2図4および図5図6に示してある。図2および図4に示した実施形態は、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、前記案内要素群の案内要素の接続ライン上に投影された、1つの鉛直ラインにおける各々の前記巻取り位置の糸進入要素の投影点が、前記案内要素群の一番左側の案内要素と一番右側の案内要素との間に一部重なり合って分配されていることを例示している。図5および図6に示した実施形態は、巻取り位置の1つの鉛直ラインにおいて、前記案内要素群の案内要素の接続ライン上に投影された、1つの鉛直ラインにおける各々の前記巻取り位置の糸進入要素の投影点が、前記案内要素群の一番左側の案内要素と一番右側の案内要素との間に全て分散して分配されていることを例示している。達成されていることは、形成された全てのボビンが、より均一なパラメータを有しているということである。
【0034】
巻取り群の数は、例示的な目的のために選択されているにすぎない。これは、異なる繊維機械の仕様に応じて10群または12群であってもよい。変向角がボビン形成に与える影響を可能な限り軽減するためには、変向角が、特定の値未満、好ましくは10°未満に制御されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】