IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーアイエー セパレーションズ ディー.オー.オー.の特許一覧

<>
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図1
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図2
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図3
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図4
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図5
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図6
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図7
  • 特表-一本鎖RNAの精製方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】一本鎖RNAの精製方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/10 20060101AFI20230517BHJP
【FI】
C12N15/10 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563099
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 EP2021059906
(87)【国際公開番号】W WO2021209597
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】20170191.9
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521262714
【氏名又は名称】ザルトリウス ビーアイエー セパレーションズ ディー.オー.オー.
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペルシッチ、スペラ
(72)【発明者】
【氏名】チェルニゴイ、ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ドレンツ、ダルコ
(72)【発明者】
【氏名】ギャニオン、ピーター スタンリー
(57)【要約】
一本鎖RNAを含有する試料を、少なくとも主に前記一本鎖RNAを結合させるのに十分な条件下で、その表面上に第一級アミノ基及び第二級アミノ基の両方を主に担持する又は第一級アミノ基及び第二級アミノ基のみを担持する固相に適用するステップ、
二本鎖RNAを脱着するために必要とされるよりも高い濃度の可溶性ピロリン酸アニオンを含む溶出緩衝液を用いて、前記固相の表面上に吸着された前記一本鎖RNAを前記固相表面(solid surface)から溶出するステップ、
を含む、一本鎖RNA精製の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一本鎖RNAを含有する試料を、少なくとも主に前記一本鎖RNAを結合させるのに十分な条件下で、その表面上に第一級アミノ基及び第二級アミノ基の両方を主に担持する又は第一級アミノ基及び第二級アミノ基のみを担持する固相に適用するステップ、
ピロリン酸(pyrophosphate)濃度が1mM~1000mMである溶出緩衝液を用いて、前記固相の表面上に吸着された前記一本鎖RNAを固相表面(solid surface)から溶出するステップ、
を含む、一本鎖RNA精製の方法。
【請求項2】
前記試料を適用した後でありかつ前記一本鎖RNAを溶出するより前に、前記溶出緩衝液のイオン強度に比べてより高いイオン強度でピロリン酸塩ではないを含有する洗浄緩衝液を用いて前記固相を洗浄するステップが少なくとも1つ提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一級アミノ基対第二級アミノ基のモル比が、1/10~10/1、又は2/10~10/2、又は3/10~10/3、又は4/10~10/4、又は5/10~10/5の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記固相の表面に吸着された二本鎖RNAの前記固相表面からの脱着が、一本鎖RNAを溶出するために必要とされるよりも低い濃度のピロリン酸アニオンを有する緩衝液によって達成される、請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記固相からの一本鎖RNAの溶出が1mM~500mM、又は1mM~200mMの範囲、又は好ましくは1mM~100mMの範囲のピロリン酸(pyrophosphate)濃度で起こる、請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ピロリン酸(pyrophosphate)が、より低い値からより高い濃度への勾配として緩衝液中で適用される、請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記試料中にキレート剤が存在する、請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記試料の接触前に、前記固相の表面の環境中にキレート剤が存在する、請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記キレート剤がエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、トリス(2-アミノエチル)アミン、リン酸、クエン酸、及びそれらの組み合わせからなる群より独立して選択される、請求項7又は請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記洗浄緩衝液のイオン強度が、0.5M~12M、又は1M~12M、又は2M~12M、又は4M~12M、又は6M~12Mの範囲である、請求項2~請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記洗浄緩衝液がカオトロピック塩、特にグアニジニウム塩、チオシアネート、過塩素酸塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるカオトロピック塩を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
所望される一本鎖RNAが1000塩基~25,000塩基の範囲のサイズのものである、請求項1~請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
一本鎖RNA精製のための、その表面上に第一級アミノ基及び第二級アミノ基の両方を主に担持する又は第一級アミノ基及び第二級アミノ基のみを担持する固相の使用。
【請求項14】
一本鎖RNAと二本鎖RNAとの両方を含有する混合物中の一本鎖RNAから二本鎖RNAを分離するための、請求項13に記載の使用、ここで分離には可溶性ピロリン酸アニオンを使用する。
【請求項15】
一本鎖RNAを含有する試料を、5.5~8.5の範囲のpHで、その表面上に第一級アミノ基及び第二級アミノ基の両方を主に担持する又は第一級アミノ基及び第二級アミノ基のみを担持する固相に適用するステップ、
10mM~150mMの範囲のピロリン酸濃度を有する溶出緩衝液の上昇勾配を用いて、前記固相の表面上に吸着された前記一本鎖RNAを固相表面から溶出するステップ、
を含む、一本鎖RNA精製の方法。
【請求項16】
前記試料よりも高いpHを有する溶出緩衝液を使用することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記試料を適用した後かつ前記一本鎖RNAの溶出の前に、前記溶出緩衝液のイオン強度に比べてより高いイオン強度でピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩を含有する洗浄緩衝液により前記固相を洗浄するステップが少なくとも1つ提供される、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二本鎖mRNAと一本鎖mRNAとの混合物から二本鎖RNAを除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療用途のためのメッセンジャーRNA(mRNA)の合成は、所望の一本鎖(ss)RNAに加えて、二本鎖(ds)RNAの望ましくない亜集団を含有する調製物を生じる。これらのdsRNA種は、塩基鎖内の相補配列の鎖内相互作用によって合成後物(post-synthesis)を形成する。dsRNA配列の形成はまた、隣接するssRNA分子間における相補的配列との対合によっても起こり得、それによって、鎖内ds配列も含み得る非特異的鎖間二量体及びより高次の多量体を作出する。二本鎖RNAは、対象に注射されると、望ましくない潜在的に致死的な免疫応答を誘発するため、これを除去することは精製の格別な目標となる。
【0003】
メッセンジャーRNA調製物はまた、mRNAを合成するために使用されるプラスミド鋳型からの残存DNAを含有する。ヌクレアーゼ酵素は一般に、DNAレベルを低下させるために転写後に添加されるが、それらは依然として様々なサイズの断片を残す。メッセンジャーRNA調製物はさらに、臨床対象が治療に対する免疫応答を開始する可能性を低減するために除去されなければならないタンパク質を含有する。これらのタンパク質には、RNAポリメラーゼ、及び転写後にDNAプラスミド鋳型を分解するためのヌクレアーゼなどの酵素が含まれる。酵素調製物はさらにそれ自体が、RNA、DNA、DNA圧縮タンパク質、細胞培養及び宿主細胞タンパク質、酵素断片、酵素凝集体、並びにこれらの様々な種間の安定会合(複合体)を含む、それら自体の調製中に除去されない混入物質(contaminant)を提供する。
【0004】
mRNA調製物からのdsRNAの含有量を減少させる方法は公知である。dsRNA混入のレベルは、セルロースベースのクロマトグラフィー媒体[1~3]を用いたアフィニティークロマトグラフィーによって低減することができる。吸着のメカニズムは定かではないが、dsRNAはある条件下で結合し、一方、ssRNAは通過する。この方法は実験室規模では有効であるが、容量が低いため負担がかかる。低容量は、製造スケールでは、製造設備の生産性を低下させる、大量の緩衝液、大量の製造領域、及び延長されたプロセス時間を必要とする、大きいカラムに関連する。この方法はまた、処理されたssRNAの希釈を引き起こし、これは、後続の精製工程に負担がかかる生成物体積の増加に関連する。
【0005】
あるいは、dsRNAのレベルは、スチレン-ジビニル-ベンゼン(SDVB)固相を使用するイオン対逆相クロマトグラフィー(RPC)によって減少させることができる[4-7]。RPCは、有毒な可燃性有機溶剤を使用するので、火災や爆発のリスクを軽減するために、工業規模では極めて高価な特殊機器を必要とする。RPCはまた、作業環境における有機溶剤毒性及び有害廃棄物処理問題に関連した安全の問題についてさらなる負担を課す。溶剤の問題に加えて、RPC分離は、最良の結果を得るために高温を必要とするというさらなる負担をしばしば課す。
【0006】
アニオン交換クロマトグラフィーは、低分子mRNA(1000塩基未満)の精製で有用性を示している[8]。今日までに評価されているアニオン交換媒体としては、第四級アミン(QA)アニオン交換体に言及する、いわゆる強アニオン交換体が挙げられる。いわゆる弱アニオン交換体、特に第三級アミン配位子を用いるジエチルアミノエチル(DEAE)アニオン交換体も評価されている。
【0007】
DNA及びタンパク質混入物質を大きなmRNA(1000~10000塩基)から除去することにおいてはアニオン交換クロマトグラフィーの示す有用性は限られており、上昇した動作温度においてのみである[9]。65℃まで昇温すると、塩化ナトリウム勾配中で大きなmRNAを溶出することができる。しかしながら、高温操作は、緩衝液、試料、及びカラムがすべて、プロセスの全期間にわたって、事前に平衡化され、特定の操作温度に正確に維持されなければならず、潜在的に数年間、製品の製造寿命の間、すべてのバッチにわたって再現可能に維持されなければならないので、複合的な物流負荷を課す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ssRNAとの混合調製物からdsRNAを除去するための新規な方法が開発されており、これは公知の方法を超える改善をあらわす。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、一本鎖RNA精製の方法が提供され、前記方法は、
一本鎖RNAを含有する試料を、少なくとも主に前記一本鎖RNAを結合させるのに十分な条件下で、その表面上に第一級アミノ基及び第二級アミノ基の両方を主に担持する又は第一級アミノ基及び第二級アミノ基のみを担持する固相に適用するステップ、
二本鎖RNAを脱着するために必要とされるよりも高い濃度の可溶性ピロリン酸アニオンを含む溶出緩衝液を用いて、前記固相の表面上に吸着された前記一本鎖RNAを固相表面(solid surface)から溶出するステップ、
を含む。
【0010】
本発明の方法のある実施形態では、前記試料を適用した後かつ前記一本鎖RNAの溶出の前に、溶出緩衝液のイオン強度に比べてより高いイオン強度を有する洗浄緩衝液により周囲温度で前記固相を洗浄するステップが少なくとも1つ、提供され得る。
【0011】
本発明の方法のさらなる実施形態において、第一級アミノ基対第二級アミノ基のモル比は、1/10~10/1、又は2/10~10/2、又は3/10~10/3、又は4/10~10/4、又は5/10~10/5の範囲であり得る。
【0012】
本発明の方法のさらなる実施形態において、前記固相の表面に吸着された二本鎖RNAの前記固相表面からの脱着は、一本鎖RNAを溶出するために必要とされるよりも低い濃度のピロリン酸アニオンを有する緩衝液によって達成される。
【0013】
本発明の方法の別の実施形態では、前記固相からの一本鎖RNAの溶出が1mM~1000mM、又は1mM~500mM、又は1mM~200mMの範囲、又は好ましくは1mM~100mMの範囲のピロリン酸(pyrophosphate)濃度で起こり得る。
【0014】
特に、前記ピロリン酸(pyrophosphate)は、より低い値からより高い濃度への勾配として緩衝液中で適用され得る。
【0015】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、本質的に水性の混合物中に、キレート剤が存在しうる。
【0016】
本発明の方法のさらに別の実施形態では、前記水性混合物の接触前に、前記固相の表面の環境中にキレート剤が存在する。典型的には、キレート剤はエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸、エチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-四酢酸(EGTA)、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)、リン酸、クエン酸、及びそれらの組み合わせからなる群より独立して選択することができる。
【0017】
本発明の方法の別の実施形態において、前記洗浄緩衝液のイオン強度は、0.5M~12M、又は1M~12M、又は2M~12M、又は4M~12M、又は6M~12Mの範囲であり得る。
【0018】
本発明の方法のさらなる実施形態では、前記洗浄緩衝液がカオトロピック塩、特にグアニジニウム塩、チオシアネート、過塩素酸塩及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるカオトロピック塩を含む。
【0019】
典型的には、所望される一本鎖RNAは1000塩基~25,000塩基の範囲のサイズのものである。
【0020】
本発明の主題は、一本鎖RNA精製のため、特に、一本鎖RNAと二本鎖RNAとの両方を含有する混合物中の一本鎖RNAから二本鎖RNAを分離するための、その表面上に第一級アミノ基及び第二級アミノ基の両方を主に担持する又は第一級アミノ基及び第二級アミノ基のみを担持する固相の使用であって、分離に可溶性ピロリン酸アニオンを使用するものである。
【0021】
本発明の方法は全てのRNA調製物に関連するが、特に、大型及び非常に大型(例えば1,000~25,000塩基のサイズ範囲など)のRNAに関連する。この方法は、ピロリン酸アニオンの上昇勾配によって、第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相からのssRNAの溶出を可能にする。この方法は、有機溶媒又はカオトロピック剤の使用を必要とせずに、周囲温度で機能する。より具体的には、dsRNAがより低濃度のピロリン酸アニオンにおいてより早く溶出し、ssRNAはより高濃度のピロリン酸アニオンにおいてより遅く溶出する。ピロリン酸アニオンは、ピロリン酸四ナトリウム、又はピロリン酸四カリウムのような塩、又は異なるカチオンを有するピロリン酸アニオンから形成される塩、又は異なるカチオンとピロリン酸アニオンとを含む複数種類の塩の混合物の形で適用されてもよい。
【0022】
この方法の驚くべき性質は、それが先行技術の教示に反するものであるという事実によって強調される。本技術分野の既公開物では、周囲温度で正に荷電した固相(アニオン交換体)から塩勾配を用いて大型ssRNAを溶出することが不可能であると教示されている。本発明の驚くべき性質は、任意の所与の転写混合物中のssRNA及びdsRNAが組成的に同一であり、それが類似の挙動の期待を生み出すという事実によってさらに強調される。
【0023】
第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相を使用してdsRNAからdsRNAを分離するピロリン酸アニオンの予想外の能力は、塩化物(1-)のような一価イオンを含む塩と比較して、ピロリン酸(4-)がより高い静電(電荷)価を有することを反映するものと推測されるかもしれない。一価塩化物塩は、中性pH及び周囲温度では既知の強アニオン交換体又は弱アニオン交換体からssRNAを溶出することができない。また、硫酸塩又はリン酸塩などの中性pHでは、二価のアニオン(2-)塩は溶出できない。弱アルカリ性pHでは、クエン酸塩のような三価のアニオン(3-)塩は溶出できない。カオトロピック塩はいずれの電荷状態でも溶出できない。しかしながら、ピロリン酸(pyrophosphate)がそのより高い電荷価のために作用するという推測は、四価(4-)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)が中性pHで溶出を達成できないということによって、誤りであると証明される。実験データでは、ピロリン酸アニオンがQAなどの強アニオン交換体又はDEAEなどの弱アニオン交換体からssRNAを溶出することができないことがさらに示される。この化合物については、ピロリン酸アニオンが第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相上で、ssRNAからdsRNAの分離をどのように達成するかについての理解が欠けている。したがって、ピロリン酸アニオンがssRNAからdsRNAの分離を達成する特定の機構又は複数機構、ピロリン酸が大きなRNAをどのように溶出するか、又は第一級及び第二級アミノ基の混合物を担持する固相上でのみそれが溶出する理由に関しては、理論は見いだされていない。
【0024】
本発明によって調製されるssRNAの品質を高めるためにキレート剤を使用することが推奨される。これは、それ自体がキレート剤である緩衝剤、例えばとりわけリン酸塩及びクエン酸塩を使用することによって、又はキレート剤、例えばとりわけEDTA及びEGTAを添加することによって、達成され得る。
【0025】
本発明の別の予想外の特徴は、ピロリン酸アニオンの勾配を増加させることによってssRNAから残留微量レベルのdsRNAを分離する前に、高濃度のピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩を導入することによって、コンタミdsRNAの大部分を本発明の固相から除去することができることである。このようなdsRNAの高度な低減を行うための好ましい塩としては、特に、RNAの溶解性を維持する傾向があるカオトロピック塩が挙げられる。目的の生成物を溶出する前に混入物質の負荷を低減する技術は知られているが、目的の生成物を溶出するのに必要な塩の濃度よりも低い塩濃度に限られている。溶出前洗浄を使用する本バージョンはそれが、ssRNAからdsRNAを分離するために使用されるピロリン酸(pyrophosphate)の濃度よりもはるかに高い濃度でピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩を適用することによって機能するので、特異である。例えば、dsRNA及びssRNAが、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配(典型的には100mMピロリン酸(pyrophosphate)以下で終わる)で互いから分離される場合、カオトロピック塩での事前洗浄は、6Mまでのグアニジン-HCl、又は12Mグアニジンチオシアネートで実施され得る。
【0026】
csRNAをピロリン酸アニオンで溶出する前にdsRNAの大部分を単に退かせるだけでなく、高濃度のカオトロピック塩での洗浄を進めることは、さもなければ安定であるssRNAと混入物質との複合体を解離する独特の機会を提供する。これは、本分野において認識され始めたばかりの課題に対する解決策を提供する。核酸は、混入物質との安定な複合体中に存在することがしばしばある。これらの複合体のいくつかは、純粋な核酸と同じ又はほぼ同じ条件下で溶出する。したがって、これらの複合体は、混入物質が独立している場合の特性ではその可能性が排除されているはずであるにもかかわらず、純粋なssRNA溶出画分であるべきものに該混入物質を持ち込む、トロイの木馬である。高濃度のカオトロピック洗浄液を用いた洗浄は、その混入経路を止める可能性を提供する。カオトロピック塩によるさらなる洗浄の錯体解離性は、キレート剤の存在によって増強することができる。
【0027】
高濃度のピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩中の第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を担持する固相にコンタミdsRNAが結合できないことは、アフィニティークロマトグラフィーとして当技術分野で知られている技術に匹敵するワークフローの簡素化をも可能にする。アフィニティークロマトグラフィーは、抗体などの生体特異的リガンドを固相に共有結合させる技術である。抗体の標的を含んでいる混入された試料が固相に適用されると、標的分子のみが捕捉され、一方、混入物質はカラムを通って流れることによって除去される。微量レベルの非結合混入物質を洗い流すためにカラムを洗浄した後、標的分子は、単一の高度に精製された画分中に溶出される。本発明の固相は、正確にこの結果を達成する。dsRNAによって混入された試料は、中性pHで高塩中にロードされる。dsRNAの大部分はカラム中を流れて通過し、それによって除去される。高度に精製されたssRNAは、ピロリン酸(pyrophosphate)での溶出によって濃縮画分中に溶出される。
【0028】
このワークフローの単純化は、本発明の基本的な構成において使用されるものと同じ原理を使用する、わずかにプロセスを変形させたものであり、その原理がdsRNAが高濃度の塩の存在下で第一級アミノ固相によって結合されないことであることは、本技術分野の経験者によって認識されるであろう。
【0029】
本発明の最終的な驚くべき特徴は、RNAとは組成が異なる混入物質の溶出挙動が、dsRNAと同様に溶出するが、ssRNAの溶出とは異なる、ということである。そのような混入物質には、タンパク質及びDNAが含まれ、その両方がpH勾配においてssRNAよりも低い濃度のピロリン酸(pyrophosphate)で溶出する。それらの大部分はまた、ピロリン酸アニオンの上昇勾配によってssRNAからそれらの微量残基を分離する前に固相に適用される塩によっても除去される。
【0030】
発明に係る一般的記載
本発明は、一般的な態様においては、二本鎖メッセンジャーRNA(dsRNA)と一本鎖メッセンジャーRNA(ssRNA)との混合物を含有する調製物からdsRNAを除去するための固相抽出方法である。
【0031】
具体的な態様では、本発明は、第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相からのmRNAの溶出に関するものであり、dsRNAがssRNAよりも低濃度のピロリン酸アニオンで溶出するという理由により、dsRNAはssRNAから分離される。
【0032】
より具体的な態様では、本発明は1mM~1000mM、又は1mM~500mM、又は1mM~250mM、又は1mM~200mM、又は1mM~100mM、又は5mM~100mM、又は10mM~100mM、又は20mM、又はより高い範囲、又はより低い範囲、又は中間範囲の濃度範囲にわたるピロリン酸アニオンによるdsRNA及びssRNAの分離に関する。特定のssRNAを溶出するのに必要な量はそのサイズに依存し、より小さいssRNA分子は、より大きいssRNA分子よりも低いピロリン酸濃度で溶出することから、ピロリン酸アニオンの範囲が特定される。
【0033】
別の具体的な態様では、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配を用いての第一級アミノ基及び第二級アミノ基の混合物を担持する固相からの結合ssRNAの溶出は、pH 3.0未満からpH 11.0超、又はpH5.0からpH11.0、又はpH6.0からpH11.0、又はpH6.5からpH10.5、又はpH7.0からpH10、又はpH7.5からpH9.5、又はpH8.0からpH9.0、又はより高い、より低い、又は中間の範囲で行われ得、好ましくはpH5.5からpH8.5の範囲、特にpH6.5からpH7.5の範囲で行われ得る。範囲が特定されるのは、pHがピロリン酸(pyrophosphate)と相乗的に作用するものであり、pHを増加させることによって、特定のサイズのssRNAを溶出するのに必要なピロリン酸(pyrophosphate)の量を減少させることができるためである。
【0034】
いくつかの実施形態では、pH及びピロリン酸(pyrophosphate)濃度を同時に変化させることができる。かかる実施形態のいくつかでは、ピロリン酸(pyrophosphate)及びpHを並行して増加させることができる。他のかかる実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)及びpHが逆平行様式で増加させることができる。他のかかる実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)濃度を増加させながら、pHを一定に保つことができる。他のかかる実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)濃度を一定に保ちながら、pHを上昇させることができる。
【0035】
別の具体的な態様では、溶出中にピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩をピロリン酸(pyrophosphate)と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩が10mM~2000mM、又は50mM~1000mM、又は100mM~500mM、又はより高い、より低い、又は中間の範囲、好ましくは100mM~1000mMの範囲の濃度の塩化物塩であり得る。他の実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩が飽和までの濃度で、硫酸塩、リン酸塩、又はカオトロピック塩、例えばグアニジン-HCl、又はグアニジンチオシアネート、又はキレート塩であってもよい。
【0036】
別の態様では、本発明は、第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相に結合したssRNAを、ピロリン酸アニオンで溶出する前に、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩で洗浄する方法に関する。ある実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩の種が好ましくは塩のカオトロピック種、例えば、100mM~飽和、又は500mM~飽和、又は1M~飽和、又は2M~飽和、又は4M~飽和、又は6M~飽和、又はより高い、より低い、又は中間の範囲の濃度の、塩、例えば、グアニジン塩酸塩、又はチオシアン酸カリウム、又はグアニジンチオシアネートである。
【0037】
別の態様では、本発明は、第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相に結合したssRNAを、ピロリン酸(pyrophosphate)で溶出する前に、キレート剤で、所望により前溶出塩洗浄と併せて、洗浄する方法に関する。ある実施形態では、キレート剤は、完全飽和までを含む任意の濃度の、任意の種類又は複数種類の混合物でありうる。このような実施形態の一つでは、キレート剤は2mM~200mM、又は5mM~100mM、又は10mM~50mM、又は20mM~25mM、又はより低い、又は中間の範囲、又は最大完全飽和までのより高い範囲の濃度のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)であり得る。密接に関連する実施態様において、キレート剤はエチレングリコールビス(2-アミノエチルエーテル)-N,N’、N’ -四酢酸(EGTA)の塩、又はトリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)、リン酸、クエン酸、又は別のキレート剤の塩であってもよく、又は、EDTAについて説明したのと同じ範囲に渡る濃度のキレート剤の混合物であってもよい。
【0038】
ある実施形態において、ssRNAはピロリン酸アニオンの連続勾配によって、中性pHで第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相から溶出され、これはピロリン酸(pyrophosphate)濃度の漸進的連続増加を指す線形勾配(linear gradient)としても当該技術分野において公知である。密接に関連する実施形態では、ピロリン酸アニオンの濃度は増分又はステップで変化させることができ、段階的勾配として当技術分野で知られているものを作り出す。別の密接に関連する実施形態では、ピロリン酸アニオンの濃度は単一工程で変化させることができる。
【0039】
本発明のある実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩での処理が以下のいずれかを含むことができる:試料に塩を添加すること、試料の緩衝液を塩含有緩衝液に交換すること、試料の緩衝液を塩含有緩衝液に交換すること、及びssRNAの溶出を含む前記方法の工程を実施するために塩含有緩衝液を使用すること。かかる実施形態のいくつかでは、塩の種類及び/又はそれらの濃度は、前記方法の各ステップで異なり得る。
【0040】
高濃度の、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び塩化リチウムを含むがこれらに限定されない、特定の非カオトロピック塩で、RNAが沈殿することは、当業者によって認識されるであろう。RNAを沈殿させる非カオトロピック塩濃度は、試料適用及びssRNAの溶出中に避けるべきであることが理解されよう。このような塩は、固相から非ssRNA種を退かせるのに役立ち得るので、試料適用後の洗浄中に適用することが有用であり得る。しかしながら、このような場合では大概、所望であれば、カオトロピック塩を使用することが、RNA沈殿を引き起こす傾向がより少なく、試料負荷及び/又は溶出におけるそれらの使用を適格とするものであるため、好ましいであろう。
【0041】
前記
本発明のある実施形態では、キレート剤での処理は、ssRNAの溶出を含む方法のステップを実施するために、以下のいずれかを含むことができる:試料へのキレート剤の添加、試料の緩衝液を金属イオン非含有緩衝液へと交換すること、試料の緩衝液をキレート化緩衝液へと交換すること、及び、金属イオン非含有又はキレート化緩衝液を使用すること。かかる実施形態のいくつかでは、キレート剤の種類及び/又はそれらの濃度は、前記方法の各ステップで異なり得る。
【0042】
本発明のある実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩及び/又はキレート剤での処理は、以下のいずれかを含むことができる:試料への塩及びキレート剤の添加、試料の緩衝液を塩及び/又はキレート剤含有緩衝液へと交換すること、試料の緩衝液を塩及び/又はキレート剤含有緩衝液へと交換すること、並びに、ssRNAの溶出を含む前記方法のステップを実施するために塩含有緩衝液及び/又はキレート剤含有緩衝液を使用すること。かかる実施形態のいくつかでは、塩の種類、キレート剤、及びそれらのそれぞれの濃度は、前記方法の各ステップで異なり得る。
【0043】
本発明の方法は当技術分野で慣用の任意の装置を用いて実施することができ、例えば、第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相をクロマトグラフィー装置に配置することができる。クロマトグラフィー装置は、モノリス、充填粒子のカラム、充填ナノファイバーのカラム、織られたナノファイバー、膜吸着剤、又はヒドロゲルであり得る。
【0044】
本発明の方法は、分析用途又は準備(preparative)用途で実施する目的で使用することができる。これはすべてのmRNAに適用可能であるが、特に、1000を超える塩基及び潜在的に最大25,000塩基を含有するmRNAに有用である。具体的なクロマトグラフィー条件は、RNAのサイズ及び適用された試料中の混入物質分布に応じて変化し得る。任意の特定のssRNA種について最良の分析又は準備結果を達成するために具体的条件を調整することは、数十年間、クロマトグラフィーの技術の実務者に知られているのと同じ実験技能を使用する。
【0045】
この方法の後に、残留ピロリン酸(pyrophosphate)を除去するための様々な方法のいずれかを行うことができる。かかる方法としては、ピロホスファターゼ酵素で試料を処理して、ピロホスフェートを単純な有機ホスフェート化合物に分解することが挙げられよう。しかしながら、精製された又は部分的に精製された生成物に添加された試薬は、それ自体が最終製剤に存在していてはならない。したがって、ほとんどの場合では、ssRNAの純度を増加させる効果も有する後続の方法を用いて、残留ピロリン酸を除去することが好ましかろう。かかる実施形態の一つでは、本発明の方法に続いて、ssRNA調製物中の混入物質負荷を低減するための有用性を提供することが知られている他の処理方法を行うことができる。候補としては特に、疎水性相互作用クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、セルロースアフィニティークロマトグラフィー、オリゴdTリガンドを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、透析、及び透析濾過が挙げられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配におけるエチレンジアミンモノリスからのssRNAの溶出を示す。
図2】中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配におけるエチレンジアミンモノリス上のssRNAからのdsRNAの分離を示す。
図3】中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配中でのエチレンジアミンモノリス上でのssRNAからのプラスミドDNAの分離を示す。
図4】中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配中のエチレンジアミンモノリス上でのインビトロ転写混合物からのssRNAの分画を示す。
図5】周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配におけるエチレンジアミンモノリスによるdsRNAとssRNAとの分離に対する、ピロリン酸(pyrophosphate)、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩、及びpHの相乗効果を示す。
図6】ピロリン酸(pyrophosphate)勾配における、小型~大型のssRNAからの非常に大型のdsRNAの分離を示す。
図7】第一級-第二級アミン混合固相からssRNAを溶出する能力が代替的な四価アニオンには無いことを示す。
図8】ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩洗浄によるさらなるDNA除去を、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配による溶出と比較する。
【発明を実施するための形態】
【0047】
「第一級アミノ基」という用語は、2個の水素原子の各々に単一共有結合によって連結され、また、炭素原子に単一共有結合によって連結された正に荷電した窒素原子を表す。「第一級アミン」及び「第一級アミン残基」及び「第一級アミンリガンド」という用語は、「第一級アミノ基」という用語と互換的に使用され得る。
【0048】
用語「第二級アミノ基」は、1個の水素原子に単一共有結合によって連結され、また2個の炭素原子のそれぞれに単一共有結合によって連結された正に荷電した窒素原子を表す。用語「第二級アミン」及び「第二級アミン残基」及び「第二級アミンリガンド」は、用語「第二級アミノ基」と交換可能に使用され得る。
【0049】
「第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相」という用語は、第一級アミノ基と第二級アミノ基とが共有結合した固体表面を指す。第三級アミノ基及び第四級アミノ基は、好ましくは存在しないか、又は少数のアミノ基である。負に荷電した残基は存在せざるべきである。非荷電疎水性残基又は水素結合残基が存在してもよい。
【0050】
アミノ基は、リガンド炭素原子を介して固相に直接共有結合されてもよい。あるいはアミノ基は、固相に共有結合しているいわゆるスペーサーアームへの共有結合によって、固相に間接的に結合していてもよい。アミノ基はまた、ジアミノ基、トリアミノ基、テトラアミノ基などのより複雑な構造、又は繰り返しアミノ基を有するポリマーの一部であってもよい。
【0051】
「固相」という用語は、1つ若しくは複数の多孔質膜、1つ若しくは複数の繊維、1つ若しくは複数の多孔質若しくは非多孔質の粒子、モノリス固相(単一のポリマー混合物から合成されたモノリスを含む)、又は、マクロ骨格として最初に合成されたモノリスの上に合成された第二級次リガンド担持ポリマー相を有するいわゆるヒドロゲルの形態である、クロマトグラフィー固相を指し得る。クロマトグラフィーの実施を容易にするために、ハウジング内に固相材料を設けることができる。ハウジング内のクロマトグラフィー固体相は、一般にクロマトグラフィー装置と称され、クロマトグラフィーカラム、又は単にカラムと称されることが多い。
【0052】
第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を有するクロマトグラフィー固相は公知であり、市販されている。その一例は、東ソー・バイオサイエンス社が製造するトヨパールNH2-750Fという名称で販売されているものであり、ここで「NH2」とは第一級アミノ基を指す[www.separations.eu.tosohbioscience.com/solutions/process-media-products/by-mode/ion-exchange/anion-exchange/toyopearl-nh2-750f]。販売資料によれば第一級アミノ基はポリアミンの形態であり、これは、それが固相に共有結合的に固定された反復第一級アミンサブユニットを有するポリマーであることを意味する。そのようなポリマーは、典型的にはその第一級アミノ基のうち1つ以上を介して固相の表面に連結される。この結合は連結アミノ残基を第一級アミノ基から第二級アミノ基に変換し、それによって固相の表面上に第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を生成する効果を有する。
【0053】
別の例はSartoriusによってSartobind STIC PAの名称で製造されており、ここで「PA」は第一級アミンを指す[www.sartorius.com/shop/ww/en/usd/sartobind-stic(R)-pa/c/M_Sartobind_STIC_PA]。販売資料によれば第一級アミノ基はポリマー、具体的にはポリアリルアミンの形態であり、固相に共有結合された反復第一級アミノサブユニットを有することを示す。上述のように、第一級アミノポリマーの固相への共有結合は、連結アミノ残基を第一級アミノ基から第二級アミノ基に変換し、それによって固相の表面上に第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を生成する効果を有する。
【0054】
別の例は、J.T.BakerによってBakerbond PolyPEIの名称で製造されており、VWRによって販売されている[in.vwr.com/store/product/21666435/ion-exchange-chromatography-media-j-t-baker-bakerbond]。ポリエチレンイミン(PEI)を担持する固相表面は、第二級アミノ基が優先的だが依然として第一級アミノ基も含んでいる固相の例を表す。直鎖状PEIポリマーはその末端に第一級アミノ基を有するが、直鎖状ポリマーの各反復ノードに第二級アミノ基を有する。分岐PEIポリマーは、各分岐の末端に第一級アミノ基1つが存在するので、より高い割合の第一級アミノ基を有するが、各分岐の塩基には第三級アミンも存在する。
【0055】
別の例は、BIA SeparationsによってCIMmultus EDAの名称で製造されており、ここで、EDAはエチレンジアミンを指す[www.biaseparations.com/en/products/monolithic-columns/products-for-preparative-applications/111/eda-aex-activated]。EDAを有する固相表面は、第二級アミンがわずかに多くなっている第一級アミノ基と第二級アミノ基とのバランスを表している。
【0056】
クロマトグラフィー固相のすべての主要な商業的製造者は、その表面上にアミノ誘導体を有する製品(アニオン交換体を含む)を製造しており、定期的又は実験的なベースで第一級アミン含有固相を製造するために必要な知識及び資源を示している。
【0057】
クロマトグラフィー固相が、その組成を明確に表す方法で命名されない場合、所与の固相が本発明を実施するのに適切な特性を有するかどうかを決定するための分析方法を有することが有用である。この決定を行うための1つの簡単な方法は問題のクロマトグラフィー固相を50mM Tris、pH7.5などの緩衝液で平衡化し、次いで1000塩基を超える特定のサイズのssRNA又は1000塩基以上のサイズの種を含む複数のサイズの組合せからなる試料を注入することである。この性質のリファレンス物質は、Thermo Scientific及びNew England BioLabsなどの一般的な供給業者から商業的に入手可能である。試料注入及び平衡化緩衝液での簡単な洗浄で未結合の試料成分を退かせた後、0mMピロリン酸四カリウムから100mMピロリン酸四カリウムに向かう線形勾配でクロマトグラフィー装置を溶出に供する。本発明を実施するのに適したクロマトグラフィー装置は、前記ピロリン酸(pyrophosphate)勾配内でssRNAを溶出する。これについては、実施例1で説明し、図1に示す。
【0058】
「RNAサイズ」又は「RNAのサイズ」という用語は、ヌクレオチド鎖中のヌクレオチド塩基の数を指す。塩基は、一般に「b」と称される。したがって、100bという呼称は、100塩基のRNAストランドを指す。RNAサイズは、一本鎖(ssRNA)及び二本鎖(dsRNA)を指すRNAコンホメーションとは無関係である。所与のインビトロ転写混合物とは、試薬と、DNA鋳型からのmRNAの転写中に生成される生成物及び副生成物と、の混合物を指し、ssRNA及びdsRNAの両方を含有し得るが、これらは両方とも同じDNAプラスミドに由来するので、塩基の数に関して両方とも同じサイズである。
【0059】
「ピロリン酸」又は「ピロリン酸アニオン」という用語は、P-O-P結合中に2個のリン原子を含有するリンオキシアニオンを指す。ピロリン酸(pyrophosphate)は、しばしば第二級リン酸塩と称される。ピロリン酸アニオンの構造を以下に示す。ピロリン酸(pyrophosphate)の一般的な例としては、ピロリン酸四ナトリウム(Na427)及びピロリン酸四カリウム(K427)が挙げられる。
【0060】
【化1】
【0061】
「平衡化された」又は「平衡化」という用語は、特定の化学的環境を作り出すために固相及び/又は試料に対して行われた化学的コンディショニングステップを指す。固相は、通常、所望のpH及び塩組成を具体化する緩衝液にそれらを曝露することによって調整される。試料は、通常、pHの滴定によって、時には塩濃度を低下させるための希釈によって、時にはクロマトグラフィーを含む緩衝液交換技術によって、又は透析によって、又はタンジェンシャルフロー濾過膜を用いた透析濾過によって、調整される。これらの方法及び1つ又は別のものを選択するための基準はすべて、何十年もの間、当技術分野で知られている。
【0062】
用語「ロードする」又は「試料適用」は、平衡化された試料を平衡化された固相と接触させるプロセスを指す。これは、通常、クロマトグラフィー装置を用い、重力又はポンピングなどの外力によって試料を装置に通過させることによって行われる。
【0063】
用語「吸着(adsorption)」は、生物学的産物を化学的に相補的な(chemically complementary)表面に結合させるプロセスを指す。吸着は毛管現象の物理的作用を介したスポンジによる水の取り込みと同様であるが、化学的相互作用を伴わない「吸収(absorption)」とは異なる。この場合の相補性は、静電荷を包含するものと解される。RNAの表面上の負の静電荷は、その表面上の第一級アミノ基によって電気的に陽性にされた固相の表面へのその吸着を媒介する。生物学的生成物の吸着は、多くの場合、より一般的な用語「結合(binding)」によって言及される。
【0064】
用語「選択的吸着」は1種以上の他の種の吸着を防止しながら、少なくとも1種の吸着を可能にする条件を指す。本件の場合、操作条件は、ssRNAの結合を可能にしながら、dsRNAの大部分の結合を防止するように調整され得る。
【0065】
用語「脱着(desorption)」は、生物学的生成物を、それが以前に吸着されている化学的に相補的な表面から放出するプロセスを指す。本発明の方法では特定のssRNA分子を脱着するのに必要なピロリン酸の濃度が該分子のサイズに依存し、大きいサイズがより大きければより高い濃度のピロリン酸を必要とする。pHの上昇は、より低濃度のピロリン酸(pyrophosphate)で脱着を引き起こす効果を有する。ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩の含有もまた、より低濃度のピロリン酸(pyrophosphate)で脱着を引き起こす効果を有する。しかしながら、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩は、ピロリン酸(pyrophosphate)の非存在下ではssRNAを溶出することができない。
【0066】
「選択的脱着」という用語は、1つ以上の他の種が依然として吸着されたままとなる条件の変化によって、1つ以上の吸着された種が固相表面から放出される状況を指す。次いで、固相表面から異なる種のサブセットを放出するために、さらに異なる条件のセットを適用することができる。1つのそのような例では、中性又は中性に近いpHで高濃度の塩を適用することによって、ssRNAは結合したままでありながら、混入タンパク質及びdsRNAは固相から溶出され得る。これらの混入物質は、選択的に脱着されたと言われる。ssRNAはおそらくピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩の存在下で、おそらくpHの変化と同時に、ピロリン酸(pyrophosphate)との後続において選択的に脱着される。
【0067】
「洗浄(washed)」という用語は、装置内の細孔又はチャネルから非結合種を退かせる目的で、ロードされたカラムを洗浄緩衝液に曝露するプロセスを指す。用語「すすぎ(rinsed)」は、本文脈において、同じ意味を有する。最も基本的な場合、洗浄緩衝液は、平衡緩衝液と同じ組成を有する。より複雑な構成では、洗浄緩衝液は、所望の生成物を溶出するより前に、弱く結合している混入物質のサブセットが化学的に除去されるように、該サブセットを化学的に放出するという追加の役割を有し得る。あるいは1回目には平衡緩衝液と同一の条件を用いるが、2回目には溶出前の弱く結合した混入物質のサブセットの除去が可能なように、該サブセットを固相から退かせる条件を用いる、2回以上の洗浄工程があってもよい。洗浄はまた、異なる又はより制御された条件のセット下で溶出を可能にする緩衝液に移行するために使用され得る。例えば、混入物質を退かせるピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩での洗浄後、無塩洗浄を実施して、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配でssRNAを溶出する条件を設定することが望ましい場合がある。その洗浄がないと、デフォルトで高濃度のピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩で溶出が始まり、ピロリン酸(pyrophosphate)の濃度が上昇する間にピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩の濃度が下降する勾配が作り出される。
【0068】
用語「溶出」は、クロマトグラフィーの分野に関連する用語「脱着」の特別な場合を表す。これは、固相が存在する化学環境を変化させて、第一級アミノ固相と、装填及び洗浄工程後に結合したままである種との間の相互作用の解離を引き起こすプロセスを指す。dsRNA及びタンパク質が固相から除去されれば、ssRNAは、ピロリン酸(pyrophosphate)濃度を単純に増加させることによって溶出することができる
【0069】
溶出は、各工程が固相とssRNAとの間の相互作用の強度を低下させる1つ又は一連の工程で行うことができる。条件の変化はまた、連続的又は線形的な様式でなされ得、弱く結合した種が連続工程の初期に脱着される一方で、強く結合した種は連続工程の後期に溶出する。段階的形式であろうと線形形式であろうと、操作条件の変化は、一般に勾配と称され、特に溶出勾配と称される。段階的勾配は多くの場合、より便利であると考えられるが、線形勾配の方が典型的にはより良好な再現性を支持する。
【0070】
「周囲温度」という用語は一般に、「室温」又は「常温」という表現に類似していると考えられる。それは典型的には約20~22℃の範囲の温度に対応するが、約18~25℃などのより広い範囲を含んでもよい。
【0071】
用語「カオトロピック塩」は、その構成イオンの少なくとも1つが、リオトロピック及びカオトロピックイオンのHofmeister系列において高いカオトロピック順位を有する塩種を指す。リオトロピックイオンは、Hofmeister系列の一端に存在する。カオトロピックイオンは、シリーズの反対側の端部に存在する。カオトロピックイオンは、多くの場合、生体分子によって優先的に結合されると記載される。カオトロピック塩は生体分子内及び生体分子間の非共有結合性相互作用を緩和する効果を有し、時には、多成分非共有結合性混合物中のそれぞれの要素間の相互作用を不安定化し、相互作用を解離させる程度まで緩和する効果を有する。それらは、通常、溶解度を増加させる効果を有する。カオトロピック塩の例としては、とりわけグアニジニウム塩、チオシアネート、及び過塩素酸塩が挙げられる。ある場合には、グアニジンチオシアネートの場合のように、特定の塩のアニオン及びカチオンの両方が強くカオトロピックである。このような塩は、カオトロピックアニオン又はカオトロピックカチオンのみを含む塩よりもカオトロピック電位が高い。リオトロピックイオンはHofmeister系列の反対側の端に存在する。それらは、しばしば、生体分子によって優先的に排除されると記載される。リオトロピックイオンは生体分子を安定化させる効果を有し、混合物の個々の要素間の非特異的会合を促進する。強力なリオトロピックイオンは、通常、大きな生体分子の溶解度を低下させる。リオトロピック塩の例としては、とりわけ、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、及びクエン酸ナトリウムが挙げられる。ピロリン酸アニオンはリオトロピックである。Hofmeister系列における中間体を表す塩は、安定性、会合-解離、又は生体分子に対する溶解性に中程度又はほとんど影響を及ぼさない傾向がある。例としては、塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどのいわゆる中性塩が挙げられる。そのような塩が安定性、会合-解離、又は溶解性に影響を及ぼし得る程度まで、それらの影響は、主にクーロン(静電)力を介して媒介される。
【0072】
「多価金属カチオン」という用語は、金属の正に帯電したイオン形態であって、イオンの正味電荷が2以上であるものを指す。多価金属カチオンとしては、類似の又は異なる原子価を有する他の金属種の中でも特に、カルシウム、マグネシウム、及び亜鉛(これらは全て2+の正味電荷を有する)、及び3+の正味電荷を有する第二級鉄が挙げられる。これらのイオンはすべて、配位結合を介して結合する核酸に対して親和性を有する。配位結合はイオン結合よりも15~60倍強く、これは、多価金属カチオンの核酸又は他の生体分子への結合が塩の飽和濃度でも持続することを意味する。多価金属カチオンは、dsRNA配列の形成を促進し得、又は既存のdsRNA配列を安定化し得るため、RNAの精製において問題となり得る。それらはまた、複数のRNA分子の間、RNAとDNA分子の間、及びRNA、DNA、及び混入物質であるタンパク質の間における、複合体の形成を促進し得、又は既存の該複合体(会合体)を安定化し得る。
【0073】
用語「キレート剤」は、本発明の方法の文脈においては、従前存在していた多価金属カチオンとmRNAを含む核酸を含む生体分子との会合体から、金属イオンを競合的に除去することができるような、多価金属カチオンとの強い配位結合を形成する能力を有する分子を指す。
【0074】
「ヌクレアーゼ」又は「ヌクレアーゼ酵素」という用語は、核酸の鎖を切断して本質的に小さな断片、理想的には個々のヌクレオチド、ダブレット、又はトリプレットに切断する能力を有するタンパク質を指す。それらは3つの主要なクラス、すなわちDNAを溶解するDNAse酵素、RNAを溶解するRNAase酵素、及びDNAとRNAの両方を溶解する一般的なヌクレアーゼ、に分類することができる。一般的なヌクレアーゼ及びRNAseは、ssRNA産物を破壊するので、厳密に避けるべきである。DNAseは、mRNAを産生するために使用されるDNAプラスミド鋳型を破壊することによってRNA精製を単純化するためにしばしば使用される。ほとんどのDNAse酵素は、適切に機能するために多価金属カチオン補因子の使用を必要とする。多価金属カチオンは、上記のようにRNA精製を妨害しうる。
【0075】
「プロテアーゼ」又は「プロテイナーゼ」又は「タンパク質分解酵素」という用語は、他のタンパク質を切断して断片にする能力を有するタンパク質を指す。これは、タンパク質混入によって負担を被る可能性があるクロマトグラフィー工程の前にそのような混入を低減する方法として使用されることがある。トリプシンなどの多くのプロテアーゼは、適切に機能するために多価金属カチオン補因子を必要とする。多価金属カチオンは、上記のようにRNA精製を妨害しうる。タンパク質を分解する目的で一般に使用されるプロテアーゼには、多価金属カチオン補因子の非存在下でさえ良好な結果を提供するプロテイナーゼKが含まれる。
【0076】
以下の基本的な方法オプションに係る一連の一般的な非限定的な説明は、本方法がどのように実行され得るかの変形例を示し、操作変数のより詳細な議論のためのプラットフォームを提供する。これらのシナリオの各々において言及される緩衝液条件は、本方法がどのように実践され得るかの一般的な概念を提供することが意図されることが理解される。異なるサイズのssRNA種を収容し、異なる混入物質負荷を有するためには緩衝液製剤の最適化が必要とされることが理解される。
【0077】
ある実施形態では、モノリスなどのクロマトグラフィー装置の形態である、第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相を、50mM Hepes、pH7.0±0.5などの中性に近いpH値に平衡化する。dsRNA及びssRNAの混合物を含有する試料を、緩衝液交換によって50mM Hepes、pH7.0±0.5に平衡化する。次いで、クロマトグラフィー装置を、平衡化緩衝液から、50mM Hepes、100mMピロリン酸四カリウム、pH7.0±0.5の終点緩衝液に向かう線形勾配で、100装置容量にわたって溶出する。このアプローチは、異なるクロマトグラフィー媒体の適合性を確認するため、又は複数のサイズのssRNAを分離するために特に有用であり得る。それはまた、ssRNAに対するdsRNA、DNA断片、及びタンパク質の溶出挙動を明らかにするために有用である。このアプローチはまた、予備的分離の条件の開発のための出発点として使用され得る。この最初の実験からの結果は目的のssRNAを溶出するのに必要な最低ピロリン酸濃度を同定し、混入物質からのssRNAの最良の分離を支援する勾配の事前推定を提供する。
【0078】
関連する実施形態では、第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相に同じ条件でロードし、次いで、50mM Hepes、3Mグアニジン-HCl、pH7.0±0.5の溶液で洗浄して、所望のssRNA産物を溶出する前に、dsRNA、DNA、及び混入タンパク質の大部分をより効果的に排除することができる。dsRNA、DNA、及びタンパク質を除去した後、それらの除去を増強するために添加されたグアニジン-HClは、グアニジン-HClを欠く後続の洗浄によってそれ自体除去され、その結果、過剰な塩の非存在下でssRNAのピロリン酸(pyrophosphate)勾配溶出が開始される。密接に関連する実施形態において、グアニジンの濃度は、6Mに増加され得る。別の密接に関連する実施形態では、3Mのグアニジン-HClを、2Mのグアニジンチオシアネート又は12Mまでのより高濃度のグアニジンチオシアネートで置き換えてもよい。前述の実施形態との結果の比較は、カオトロピック洗浄がssRNAの純度を改善する程度を評価することを可能にする。
【0079】
上記連続処理を拡張した関連実施形態では、金属安定化複合体を解離させ、ssRNAを溶出する前に非ssRNA種の大部分を固相から退かせることを意図して、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などであるがこれらに限定されないキレート剤を2mM~100mMの濃度で、グアニジンと組み合わせてもよい。dsRNA、DNA、及びタンパク質の大部分を除去した後、それらの除去を増強するために添加されたグアニジン-EDTAは、過剰な塩を欠く後続の洗浄によってそれ自体除去され、その結果、過剰な塩の非存在下でssRNAのピロリン酸(pyrophosphate)勾配溶出が開始される。前述の2つの実施形態との結果の比較は、カオトロープ-キレート剤洗浄がssRNAの純度を改善する程度を評価することを可能にする。密接に関連する実施形態において、カオトロープは、EDTAの代わりにクエン酸塩と、又はEGTAと、又はキレート剤の組み合わせと、組み合わせることができる。
【0080】
他の関連する実施形態では、タンパク質及びdsRNAのクリアランスを最大にするために、ssRNAの溶出に先立って、種々のpH値での他の塩種又は複数塩種の組合せを用いた洗浄を評価することができる。基礎となる概念は、ssRNAの溶出を引き起こさない最高pHにおける最もカオトロピック性の高い塩の濃度という条件は、所望のssRNAの溶出に先立って望ましくない混入物質の最も大きなサブセットを除去する可能性が高い、という考えのもと、かかる条件を適用する、というものである。所望であれば、より低いカオトロープ濃度をその後の実験において評価することができる。
【0081】
いくつかの実施形態では、線状であるピロリン酸(pyrophosphate)勾配は、その勾配で溶出する種間の分離の程度を変更するために、又は特にサイズの異なるssRNA分子間の分画を改善するために、改変され得る。10装置容量のpH勾配で溶出することが、所望の程度の分離を生じない場合、その持続時間は20装置容量、又は50装置容量、若しくは100装置容量、又はそれ以上に延長され得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、所望のssRNAを溶出して他の混入物質から分離するため、ピロリン酸アニオンの増加が段階的に実施され得る。先の洗浄工程において混入物質が十分に低減されている場合、方法を単純化し、可能な限り最高の濃度及び可能な限り最低の容積で溶出されたssRNAを得るために、ssRNAを単一工程で溶出することができる。代替的には、ピロリン酸(pyrophosphate)を増加させるステップの連続において段階的溶出が行われてもよい。個々のステップは、比較的穏和であってもよく、又は特定の調製物の必要性に応じて大きくてもよい。いくつかの実施形態では、勾配が単一のステップで行われてもよい。
【0083】
ある実施形態では、dsRNAの大部分が装置を通って流れ、より高濃度のピロリン酸(pyrophosphate)によりssRNAを溶出する前にdsRNAの大部分が排除されるように、試料及びクロマトグラフィー装置は、dsRNAの大部分が結合するのを防げられるピロリン酸アニオンの濃度で平衡化される。
【0084】
クロマトグラフィーカラムに試料をロードするための条件に試料を平衡化する多くの方法は、当業者に公知である。これらの方法のいずれも、方法の真の性質を変更することなく使用することができる。これらの方法の中には、実験室規模の透析方法、タンジェンシャルフロー濾過膜による透析濾過方法、及び緩衝液交換クロマトグラフィーの方法がある。場合によっては、試料を目標pHまで滴定し、必要であれば、試料を水又は低塩若しくは非塩含有緩衝液で希釈することによって、適切な試料平衡化が達成され得る。
【0085】
mRNAを含む核酸は、多価金属カチオンに対して高い親和性を有することが知られている。それらは、主に、金属イオンと、核酸の骨格に沿った負に荷電したホスファチジン酸残基との間の配位結合によって、互いに強い会合を形成する。カルシウム及びマグネシウムは両方ともこのような相互作用に関与することが知られており、両方とも2+の電荷を有する二価の金属カチオンである。3+の電荷をもつ3価のカチオンである第二級鉄は、核酸とより積極的に相互作用する。これらのイオンのいずれか1つが核酸と相互作用する各時点で、それは、同等数の負電荷を中和する。これは、所与のmRNA分子上の負電荷が減少し、アニオン交換体とのmRNAの相互作用を弱めるという表面的な予想を作り出す。実験データは、この予想が当たらないことを示す。代わりに、多価金属カチオンの添加は典型的には非特異的架橋の形成をもたらし、これは、ssRNAに、クロマトグラフィー装置から溶出しない大きな凝集体を形成させる。
【0086】
多価カチオンは一般にmRNA調製物中に存在するので、全ての実施形態において、クロマトグラフィー装置上に装填する前に、その含量を減少させ、好ましくは多価金属カチオンを試料から完全に排除する工程を行うこと;又は装置がピロリン酸(pyrophosphate)勾配での溶出に供される前に、多価金属カチオンを除去するための工程を少なくとも行うこと、が推奨される。多価金属カチオンを事前に除去することにはさらなる理由が少なくとも2つある。第1の理由は、多価金属カチオンには鎖内dsRNA配列及び鎖間dsRNA配列の形成又は安定化を促進する傾向があり得ることである。第2の理由は、金属イオンが核酸とタンパク質との間の非特異的会合を安定化し、それらの間に安定な架橋を本質的に形成することである。配位結合はイオン結合よりも15~60倍強いので、配位錯体は、飽和レベルのNaCl及びグアニジニウム塩を含む非金属塩への曝露にも容易に耐える。このことは、本発明の方法から最高のssRNA純度及び回収率を得るために、多価金属カチオンを可能な限り抽出することを必須にする。多価金属カチオンの効果的な抽出を考慮すると、核酸-タンパク質複合体の効果的な解離は、グアニジニウム塩などの高濃度のカオトロピック塩で、及びより低い程度で、NaClなどの高濃度の非カオトロピック塩で、達成されうる。リオトロピック塩は、逆の影響を与える可能性が高い。一般的に、カオトロピック塩は、ssRNAが成分である沈殿物を含む沈殿物を形成しにくいので、好ましい。
【0087】
核酸-金属-混入物質複合体のキレート剤による解離又はキレート剤-高塩による解離が試料調製中に実施され、及び/又はキレート化洗浄又はキレート化-高塩洗浄が実施されるいくつかの実施形態では、その後、pH制御を提供するために使用される薬剤を超えて塩を用いない洗浄工程が実施され得る。
【0088】
他の実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)濃度を増加させることによって、ssRNAの溶出中にキレート剤濃度及び高塩濃度が維持され得る。他の実施形態では、高塩が維持されている間、キレート剤は排除されていてもよく又は低減された濃度で使用されてもよい。他の実施形態では、キレート剤が維持されている間、高塩は低減された濃度で使用されてもよく又は除去されていてもよい。
【0089】
本発明の特に利益のある点は、ssRNA調製物からDNAプラスミドを除去するその能力が、インビトロ転写混合物又は部分的に精製されたインビトロ転写混合物のヌクレアーゼ消化の実施を不要にすることである。このことは、ヌクレアーゼ消化では酵素を活性とするためにマグネシウムイオン(多価金属カチオン)の添加を必要とすることからして、不釣り合いに高い価値を有する。該マグネシウムイオンは所望のssRNAの、それ自体及び他の試料成分との架橋に潜在的に寄与し、実際的な結果として、所望のssRNA産物の回収を低減させる。ヌクレアーゼ消化を不要にすることにより、マグネシウムイオンの添加が不要となり、ssRNAの収率が損なわれることがなくなる。
【0090】
本発明の方法がssRNAからプラスミドDNAを分離する能力にかかわらず、望まれる程度までヌクレアーゼ消化が行われ、次いで、クロマトグラフィー装置を装填する前に、過剰のキレート剤が試料に添加されてもよい。装置は、試料適用後に過剰のキレート剤で洗浄されてもよい。このような実施形態では、5mMヌクレアーゼ酵素の存在下でのプラスミドDNAのヌクレアーゼ消化の後、10mM~50mMのEDTAを試料に添加することができる。カラムを平衡化及び洗浄するために使用される緩衝液はまた、10mM~50mMのEDTAを含み得る。かかる実施形態のいくつかでは、EDTAの濃度が1mM~100mM、5mM~75mM、又は10mM~50mM、又は20mM~25mM、又はより高い、より低い、若しくは中間の範囲であり得る。
【0091】
DNAseで消化されていないインビトロ転写混合物で始まる、ある実施形態では、EDTAを最終濃度である10mMまで添加する。必要に応じて試料pHを中和し、必要に応じて試料を濾過して固体を除去する。次いで、それを、50mM Tris、100mM NaCl、10mM EDTA、pH7.5に平衡化された第一級アミノ基及び第二級アミノ基の混合物を担持する固相にロードする。試料をロードした後、装置を50mM Tris、1.5M グアニジンチオシアネート、20mM EDTA、pH7.5にて10~20装置容量で洗浄する。次いで、カラムを50mM Tris、pH7.5で洗浄して、グアニジンチオシアネート及びEDTAを装置から洗い流し、ssRNAの溶出の準備をする。次いで、ssRNAを、50mM Tris、100mMピロリン酸、pH7.5に向かう50装置容量の線形勾配で溶出する。ある密接に関連する実施形態においては、EDTAはクエン酸塩で置き換えられる。別の密接に関連する実施形態においては、1.5Mのグアニジンチオシアネートは3.0Mのグアニジン-HClで置き換えられる。
【0092】
上記の実施形態を拡張したある実施形態では、本発明の方法によって調製されたssRNAが、最終精製で残留ピロリン酸を除去するためにオリゴdTアフィニティークロマトグラフィー装置に適用される。
【0093】
上記実施形態を拡張した別の実施形態では、本発明の方法によって調製されたssRNAが、最終精製で残留ピロリン酸を除去するために疎水性相互作用クロマトグラフィー装置に適用される。
【0094】
インビトロ転写混合物で始まる、ある実施形態では、混合物が最終濃度が2.0M~2.5Mになるように塩化リチウム(LiCl)を添加することによって沈殿させられる。上清を廃棄し、沈殿物を50mM Hepes、100mM NaCl、10mM EDTA、pH7.0で再懸濁し、必要に応じて濾過して濁りを除去する。次いで、試料を、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM EDTA、pH7.0に平衡化された第一級アミノ基及び第二級アミノ基の混合物を担持する固相にロードする。試料をロードした後、装置を50mM Hepes、3Mグアニジン-HCl、20mM EDTA、pH7.0にて10~20装置容量で洗浄する。次いで、カラムを50mM Hepes、pH7.0で洗浄して、グアニジン及びEDTAを装置から洗い流し、ssRNAの溶出の準備をする。次いで、ssRNAを、50mM Hepes、100mMピロリン酸、pH7.0に向かう50装置容量の線形勾配で溶出する。密接に関連する実施形態では、LiClの代わりにNaCl又は別の塩でmRNAが沈殿される。別の密接に関連する実施形態では、LiCl沈殿は、エタノール沈殿、例えば、約2.5%の最終割合までエタノールを添加することによって、置き換えられる。
【0095】
工業プロセスの開発者はしばしば、酵素の使用を避けることを好む。これは、酵素の使用でプロセスの費用が増加するためであり、また、製品に添加されるものは、後で除去されなければならず、そして、それが除去されたことを文書化するために試験を実施しなければならないからである。しかし、開発プログラムの初期段階での酵素の使用は企業がより早く臨床試験に参加することを可能にする便利なショートカットであり得、酵素の使用を必要としないプロセスのより進んだバージョンはその後に開発される。上記のように、インビトロ転写混合物は一般に、mRNAの産生のための鋳型として使用されるDNAプラスミドを排除するために、DNAアーゼ酵素で処理される。RNA精製では、所与のインビトロ転写混合物中のタンパク質混入物質負荷を減少させるために、タンパク質分解酵素を用いることができる。いくつかの実施形態では、インビトロ転写混合物をまずDNAseで処理してプラスミドの大部分を除去し、次いでプロテイナーゼKなどのタンパク質分解酵素で処理して、本発明の方法を実施する前にDNAse及び大量の他のタンパク質混入物質を除去することができる。他の実施形態では、本発明の方法がDNAseを使用することを不要にするので、インビトロ転写混合物はプロテイナーゼK又は別のタンパク質分解酵素のみで処理され得る。
【0096】
ある実施形態では、インビトロ転写混合物をプロテイナーゼKで処理して、本発明の方法を実施する前にタンパク質混入物質負荷を減少させる。試料を膜フィルターで濾過して粒子を除去し、次いで、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM EDTA、pH7.0に平衡化した第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を担持する固相にロードする。試料をロードした後、装置を50mM Hepes、4.0M塩化カリウム、10mM EDTA、pH7.5にて10~20装置容量で洗浄する。次いで、カラムを50mM Tris、pH7.5で洗浄して、塩化カリウム及びEDTAを装置から洗い流し、ssRNAの溶出の準備をする。次いで、ssRNAを、50mM Tris、100mMピロリン酸、pH7.5に向かう50装置容量の線形勾配で溶出する。
【0097】
ある実施形態では、インビトロ転写混合物を、1.5Mのグアニジンチオシアネート及び20mMのEDTAで処理する。必要であればpHを7.0±0.5に調整し、必要であれば試料を濾過して固体を除去する。第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を担持する固相を、50mM Hepes、100mM NaCl、10mM EDTA、pH7.0に平衡化する。試料をロードした後、装置を50mM Hepes、1.5Mグアニジンチオシアネート、20mM EDTA、pH7.0で10~20装置容量で洗浄する。次いで、カラムを50mM Hepes、pH7.0で洗浄して、グアニジンチオシアネート及びEDTAを装置から洗い流し、ssRNAの溶出の準備をする。次いで、ssRNAを、50mM Hepes、100mMピロリン酸、pH7.0に向かう50装置容量の線形勾配で溶出する。勾配は、単一ステップで、一連の複数ステップで、又は連続(線形)勾配フォーマットで実行されうる。
【0098】
ssRNAが100mMピロリン酸(pyrophosphate)中に溶出しないある実施形態では、ピロリン酸(pyrophosphate)の濃度を飽和まで増加させることができる。ピロリン酸四ナトリウムは約1.51Mで飽和する。ピロリン酸四カリウムは約5.66Mで飽和する。より穏和なアプローチが好ましい場合もある。例えば、100mMでは不十分である場合、それをさらに50mM増加させるか、又はそれをさらに100mM増加させ、必要な場合にのみそれをさらに増加させる。
【0099】
ある実施形態では、ssRNAがピロリン酸(pyrophosphate)勾配中の第一級アミノ基と第二級アミノ基との混合物を担持する固相から溶出しない場合、pHはpH8.0~pH11.0、又はpH8.5~10.5、又はpH9~pH10、又はpHのより高い、より低い、又は中間の範囲の値まで上昇させうる。溶出中にpHを増加させることの実際的な利点は、最終的に除去する必要があるピロリン酸の量を最小限にすることである。
【0100】
本発明の方法はssRNAを溶出するために高温で実施される必要はないが、そうすることを禁止するものではない。
【0101】
いくつかの実施形態では、周囲温度で方法を実施する前に、37℃、45℃、56℃、60℃、70℃、又は中間、より高い、若しくはより低い温度などの高温に、試料が平衡化されてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、本発明の方法は37℃、45℃、56℃、60℃、70℃、又は中間、より高い、若しくはより低い温度などの高温で実施され得る。このような実施形態では、ssRNAが周囲温度で溶出するよりも低いpHで溶出する。
【0103】
いくつかの実施形態では試料が高温に平衡化され、一方、方法は周囲温度又は高温のいずれかで実施されてもよい。
【0104】
ある実施形態では、ssRNAと固相の第一級アミノ基との間の水素結合と競合する糖の存在により、ピロリン酸アニオンを添加することによるdsRNAからのdsRNAの分離が増強されて、糖の非存在下よりも低いpHでssRNAを溶出させる、という結果が予想される。かかる実施形態の一つにおいて、糖は、ソルビトール、又はキシリトール、又はマンニトール、トレハロース、又はスクロース、又は別の糖、又は糖の組み合わせである。かかる実施形態のいくつかでは、糖の濃度は、0.1%~20%、又は1%~20%、又は5%~20%、又は10%~20%、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値の範囲であり得る。
【0105】
関連する実施形態では、ssRNAと固相の第一級アミノ基との間の水素結合と競合するカオトロープの存在により、ピロリン酸アニオンを添加することによるdsRNAからのdsRNAの分離が増強されて、カオトロープの非存在下よりも低いpHでssRNAを溶出させる、という結果が予想される。かかる実施形態の一つにおいて、カオトロープは尿素である。かかる実施形態のいくつかでは、尿素の濃度が0.1M~10M、又は1M~9M、又は2M~8M、又は4M~6M、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値の範囲であり得る。
【0106】
別の実施形態では、アルカリ性アミノ酸の存在により、ピロリン酸アニオンを添加することによるdsRNAからのdsRNAの分離が増強されて、アルカリ性アミノ酸の非存在下よりも低いpHでssRNAを溶出させる、という結果が予想される。かる実施形態の一つにおいて、アルカリ性アミノ酸は、ヒスチジン、又はヒスタミン、又はリジン、又はアルギニン、又は別のアルカリ性アミノ酸、又はアルカリ性アミノ酸の混合物である。かかる実施形態の一つにおいて、ヒスチジンの濃度は1mM~250mM、又は10mM~250mM、又は20mM~250mM、又は50mM~250mM、又は100mM~250mMの範囲、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値であり得る。別のかかる実施形態では、リジンの濃度は1mM~10M、又は10mM~10M、又は100mM~10M、又は1M~10M、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値であり得る。別のかかる実施形態では、アルギニンの濃度は1mM~850mM、又は10mM~850mM、又は100mM~850mM、又は425mM~850mMの範囲、又はより高い、より低い、又は中間の範囲内の値であり得る。
【0107】
ある実施形態では、本発明の方法は、オリゴdT(OdT)リガンドを使用するアフィニティークロマトグラフィーの方法と組み合わせることができる。かかる実施形態の一つでは、本発明の方法はまず、OdT親和性ステップがその最良の結果を達成する能力を妨害し得る混入物質を除去するように、また本発明の方法の後に残存するピロリン酸(pyrophosphate)を除去するように、実施される。
【0108】
ある実施形態では、本発明の方法は、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)の方法と組み合わせることができる。かかる実施形態の一つでは、RNAが保持されている間にピロリン酸(pyrophosphate)がHICカラムを通って流れることによってピロリン酸(pyrophosphate)を除去することができるように、HIC工程は本発明の方法の後に実施される。このような実施形態では、HIC固相上の疎水性リガンドはフェニル基からなり得る。別のかかる実施形態では、HIC固相上の疎水性リガンドはブチル基からなり得る。別のかかる実施形態では、HIC固相上の疎水性リガンドはヘキシル基からなり得る。他のかかる実施形態では、HIC固相上の疎水性リガンドは異なる脂肪族基若しくは芳香族基、又は脂肪族特性及び芳香族特性の両方を具現化する基からなり得る。
【0109】
ある実施形態では、本発明の方法は、逆相クロマトグラフィー(RPC)の方法と組み合わせることができる。かかる実施形態の一つでは、RNAが保持されている間にピロリン酸がRPCカラムを通って流れることによってピロリン酸(pyrophosphate)を除去することができるように、RPC工程は本発明の方法の後に実施される。
このような実施形態では、固相表面の疎水性は、固相を合成するために使用されるスチレンジビニルベンゼン(SDVB)ポリマーの本来の疎水性によって付与され得る。別のかかる実施形態では、固相表面の疎水性は、固相の表面に固定されたリガンドの疎水性によって付与され得、ここで該リガンドは脂肪族炭化水素、若しくは芳香族炭化水素、又は脂肪族特性及び芳香族特性の混合を有するリガンドを表す。
【0110】
ある実施形態では、本発明の方法は、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーの方法と組み合わせることができる。かかる実施形態の一つにおいて、ヒドロキシアパタイト工程は本発明の方法の後に実施され、その結果、ピロリン酸(pyrophosphate)をRNAよりも強くヒドロキシアパタイトに結合させ、その結果、ピロリン酸(pyrophosphate)が結合したままである間にRNAを選択的溶出によって回収しうることで、ピロリン酸(pyrophosphate)を除去することができる。そのような実施形態では、ヒドロキシアパタイトは明らかにピロリン酸アニオンをリン酸アニオンと交換するために使用され、ピロリン酸(pyrophosphate)を含有する試料はヒドロキシアパタイトにロードされ、その後、リン酸アニオンで溶出される。同じアプローチが、フッ素アパタイト及びヒドロキシアパタイトとフッ素アパタイトとのハイブリッドを含む他のアパタイト、並びにカルシウム以外の金属を含むアパタイトを使って用いられてもよい。ある実施形態では、ピロリン酸アニオンを含有するssRNAが、ssRNAの結合を防止するのに十分なリン酸塩の溶液中で、ヒドロキシアパタイト粒子に添加される。該溶液はピロリン酸(pyrophosphate)が粒子に結合することを可能にするために混合され、次いで、粒子は濾過又は沈降によって除去され、ピロリン酸(pyrophosphate)を含まないssRNAを残す。
【0111】
ある実施形態では、本発明の方法は、オリゴdTリガンドを使用するアフィニティークロマトグラフィー及びRPCと組み合わせることができる。かかる実施形態の一つでは、その後の精製ステップ2つの過程を通してピロリン酸(pyrophosphate)レベルを低下させることができるように、本発明の方法は最初に実施される。
【0112】
ある実施形態では、本発明の方法は、ピロリン酸(pyrophosphate)レベルをその後の精製工程によって低下させることができるように、他の2つの精製工程に続いてもよい。
【0113】
ある実施形態では、本発明の方法の後に、ピロリン酸(pyrophosphate)を除去するためのタンジェンシャルフロー透析濾過ステップが続いてもよい。派生的な実施形態において、透析濾過されたRNAは、残留ピロリン酸(pyrophosphate)をさらに除去するために、1つ、又は2つ、又は3つ、又はそれ以上の他の方法によって処理されてもよい。
【0114】
ある実施形態では、ピロホスフェートをリン酸に加水分解するために、本発明の方法によって調製されたRNAにピロホスファターゼ酵素が添加されてもよい。部分的に精製されたRNAへの酵素の添加は、酵素を除去するために後続の処理工程の実施を必要とすることに留意されたい。派生的な実施形態では、ピロホスファターゼ処理ssRNAは、1つ、又は2つ、又は3つ、又はそれ以上のかかる他処理方法によって処理されてもよい。
【0115】
ピロリン酸含量を測定するための分析キットは市販されている。
【0116】
ある実施形態では、本発明の方法は、試料中のssRNAの量を定量するための分析ツールとして使用することができる。このような実施形態では、酸性から中性のpHの試料を高濃度のピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩と混合して、ほとんどの非RNA種が結合できないようにすることができる。次いで、固相は、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配を増すことによって溶出に供され得る。このような実施形態では、試料を固相上にロードした後、RNAと相互作用して蛍光を生成する色素を注入し、蛍光色素-RNA複合体を溶出中に蛍光モニタに通してアッセイの感度を増幅することができる。このような実施形態では、色素はリボグリーンでありうる。
【0117】
ある実施形態において、本発明の方法は、その実施を容易にするためのキットの形態で提供され得る。キットは2つ以上の固相を含み得、そのうちの少なくとも1つは主に第1級アミノ基及び/又は第2級アミノ基を担持する正に荷電した固相であり、キットはまた本発明の方法を説明する説明書を含みうる。このような実施形態では、第2の固相はオリゴdTクロマトグラフィー装置である。別のかかる実施形態では、第2の固相は疎水性相互作用クロマトグラフィー装置である。別のかかる実施形態では、第2の固相はオリゴdTクロマトグラフィー装置であり、第3の固相は疎水性相互作用クロマトグラフィー装置である。別の実施形態では、第2の装置及び/又は第3の装置は、RNAの精製のための代替化学物質でコーティングされた固相を使用しうる。
【0118】
本発明は、以下の非限定的な実施例によってさらに説明される。
【実施例
【0119】
実施例1.
中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配におけるエチレンジアミンモノリスからのssRNAの溶出
エチレンジアミンモノリスを50mM Hepes、pH7.0で平衡化した。500塩基のサイズを有する精製ssRNAの試料を適用した。カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、次いで、50mM Hepes、100mMピロリン酸四カリウム、pH7.0に向かう線形勾配で溶出に供した。ssRNAは単一のピークに溶出した(図1)。その後、カラムを1M水酸化ナトリウムで洗浄した(図示せず)。ジエチルアミノエチルアニオン交換体及び第四級アミンアニオン交換体を用いて実験を繰り返した。両方の場合において、ssRNAの大部分はアニオン交換体に結合したままであり、1M NaOH洗浄工程中に除去された。
【0120】
実施例2.
中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配中でのエチレンジアミンモノリス上でのssRNAからのdsRNAの分離
エチレンジアミンモノリスを50mM Hepes、pH7.0で平衡化した。500塩基のサイズを有する精製ssRNA及びdsRNAサイズラダー(21b~500b)の混合物を含有する試料を適用した。カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、次いで、50mM Hepes、100mMピロリン酸四カリウム、pH7.0に向かう線形勾配で溶出に供した。すべてのdsRNA種はssRNAの前に溶出した(図2)。
【0121】
実施例3.
中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配中でのエチレンジアミンモノリス上でのssRNAからのプラスミドDNAの分離
エチレンジアミンモノリスを50mM Hepes、pH7.0で平衡化した。6000塩基対のサイズを有する精製スーパーコイル(sc)dsDNAプラスミドと精製ssRNAとの混合物を含有する試料を適用した。カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、次いで、50mM Hepes、100mMピロリン酸四カリウム、pH7.0に向かう線形勾配で溶出に供した。DNAはssRNAの前に溶出し、ssRNAから十分に分離された(図3)。
【0122】
実施例4.
中性pH及び周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配におけるエチレンジアミンモノリス上のインビトロ転写混合物からのssRNAの分画
ssRNAを含有するインビトロ転写混合物をプロテイナーゼKで処理して、混入タンパク質を減少させた。アガロース電気泳動の結果を示す図4の挿入図では、試料(元の材料をOMと標示)が3つのサイズのmRNAを含有し、ゲルの上部付近の三重線(triplet)として見える。ゲルの底部付近には小RNA断片の大集団が明らかに見える。エチレンジアミンモノリスを50mM Hepes、pH7.0で平衡化した。試料を適用した。カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、次いで、50mM Hepes、100mMピロリン酸四カリウム、pH7.0に向かう線形勾配で溶出に供した(図4)。分析的アガロース電気泳動は、ほとんどのssRNAトリプレットがE5と標示された鋭い溶出ピークにあることを示した。他の画分は主に小RNAで占められていた。この分析方法は、タンパク質を検出せず、RNA-タンパク質凝集体をRNAと区別しないことに留意されたい。
【0123】
実施例5.
周囲温度でのピロリン酸(pyrophosphate)勾配中におけるエチレンジアミンモノリスによるdsRNA及びssRNAの分離に及ぼす、ピロリン酸(pyrophosphate)、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩、及びpHの相乗効果。
図5は、4つの異なるクロマトグラフィー実行の結果を重ね合わせたものを示す。2つの試料を、2つの異なる条件のそれぞれの下で実行した。試料は、5000bのサイズを有する精製ssRNA及び20~500bのサイズ範囲を有するdsRNAラダーであった。1対のクロマトグラフィー実験(dsRNA及びssRNA)はpH8.0で行い、ここでは50mM Tris、500mM KCl、pH8.0でエチレンジアミンカラムを平衡化し、ロードし、次いで平衡化緩衝液で洗浄し、その後、50mM Tris、100mMピロリン酸四カリウム、500mM KCl、pH8.0に向かう線形勾配で溶出に供した。並行する実験はpH6.0で行い、ここではエチレンジアミンカラムを50mM MES、500mM KCl、pH6.0で平衡化し、ロードし、次いで平衡化緩衝液で洗浄し、その後、50mM MES、100mMピロリン酸四カリウム、500mM KCl、pH6.0に向かう線形勾配で溶出に供した。結果を図5に示す。どちらの場合も、dsRNAはssRNAに先立って溶出した。pH8.0の500mM NaCl中でのdsRNAとssRNAとの間の分離は、NaClの非存在下でのpH7.0で得られたものよりわずかに良好であった。また、dsRNAサイズラダーが、NaClの非存在下にてpH7.0では複数の集団に分離されるところ、50mM NaCl中にてpH8.0ではdsRNAサブセットの大部分が単一のピークで溶出し、2つの微量成分のみが後に溶出することに留意されたい。さらに、ssRNAは2つの見かけのピークに分離され、先に出た方のピークはより小さいサイズの分布を示すことに留意されたい。ssRNAからのdsRNAの分離は、NaCl中のpH6.0で有意に改善された。dsRNAは、ssRNAから遠く離れた単一ピークで溶出した。pH6.0でのssRNAプロファイルは、pH8.0での溶出プロファイルによって示唆されたよりも、ssRNA溶出内に多くの亜集団が存在したことを示唆する。これらの結果は、いくつかの重要なプロセスの影響(process ramifications)を有する。それらは、dsRNAとssRNAとの間の分離の程度を増すために、pH7又は8を超えるpHである6を推奨する。これらは、ssRNAサブセットのより良好な分離を達成するために、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配中におけるピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩の使用を推奨する。それらはさらに、ピロリン酸(pyrophosphate)溶出の前に高塩洗浄を適用して、ピロリン酸(pyrophosphate)溶出の前にタンパク質、DNA、及びdsRNA混入物質の大部分を除去することの有用性を示唆している。そのような高塩洗浄は、1M~4Mの塩化ナトリウム若しくは塩化カリウム、又は1M~4Mのグアニジン-HCl若しくはグアニジンイソチオシアネートを含み得る。
【0124】
実施例6.
ピロリン酸(pyrophosphate)勾配中における小~大ssRNAからの巨大dsRNAの分離
巨大dsRNAと小型~大型ssRNAとの間で得られた分離の程度を比較することによって、極度の最悪の場合の条件をシミュレートした。本物のインビトロ転写混合物において、dsRNA及びssRNAは、同数の塩基を含有する。塩基の数が多いほど、dsRNAはより後に溶出すると予想され、これにより、dsRNAはssRNAにより近く溶出するはずである。エチレンジアミンモノリスを50mM Hepes、pH7.0で平衡化した。1つの実験では、13.3kBのサイズを有するdsRNAを適用した。別の実験では、1700bのサイズを有するssRNAを適用した。別の実験では、200b~6kbの範囲のサイズを有する亜集団を含有するssRNAラダーを適用した。したがって、dsRNAのサイズはssRNAにおける塩基の数のわずかに2倍を超える数(13.3kb対6kb)から、より多くの塩基の15倍(13.3kb対200b)までの範囲であった。試料適用後、カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、次いで、50mM Hepes、100mMピロリン酸四カリウム、pH7.0に向かう線形勾配で溶出に供した。結果を図6に示す。すべてのssRNAサイズはほぼ同じ位置に溶出し、dsRNAピークの本体から十分に分離された。
【0125】
実施例7.
混合された第一級-第二級アミン固相からssRNAを溶出するための代替的四価アニオンの不能性
1700Bのサイズを有するssRNAを、20mM Hepes、pH7.0に平衡化したエチレンジアミン(混合第一級-第二級アミノ)固相に適用した。カラムを、平衡化した試料の適用後に洗浄し、次いで、1Mエチレンジアミン四酢酸に向かう線形勾配で溶出に供した。その後、固相を1M水酸化ナトリウム(pH13)で洗浄消毒した。図7に示すように、ssRNAは勾配中に溶出しなかった。水酸化ナトリウムのみによってカラムから除去された。これらの結果は、第一級-第二級アミン固相からssRNAを溶出するピロリン酸(pyrophosphate)の能力が、四価であることに依拠するものではないことを実証する。さもなければ、エチレンジアミン四酢酸は、ピロホスフェートと同じくらい効果的にssRNAを溶出すると予想されていたであろう。
【0126】
実施例8.
ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩洗浄によるさらなるDNA除去を、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配中における溶出と比較する
ピロリン酸(pyrophosphate)勾配におけるssRNAからのDNAの分離は価値ある形質であるが、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配に先立ってDNAを除去することは分離の程度を増加させるので、おそらくさらに価値がある。DNAプラスミドをエチレンジアミン(混合第一級-第二級アミン)固相からピロリン酸(pyrophosphate)線形勾配で溶出させる対照実験を行った。カラムを50mM Hepes、pH7.0に平衡化した。試料を注入した。試料適用後、カラムを平衡化緩衝液で洗浄し、次いで、50mM Hepes、100mMピロリン酸四カリウム、pH7.0に向かう線形勾配で溶出に供した。カラムを平衡化し、試料を適用し、カラムを対照実験と同様に洗浄する別の実験を行った。50mM Hepes、3M塩化カリウム、pH7.0の第2の洗浄液を適用し、次いで、平衡化緩衝液で第3の洗浄を行って、過剰の塩化カリウムを除去した。次いで、カラムを対照実験と同様に溶出に供した。DNAは対照実験で予想されたようにピロリン酸(pyrophosphate)勾配で溶出したが、塩洗浄によって事前に除去されていたので、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配プロファイルにはほとんど存在しなかった(図8)。他の実験では、dsRNA及びタンパク質はDNAと同じように挙動した。他の実験では、塩化カリウムをグアニジン-HClで置換した場合、同様の結果が得られた。他の実験では、1M塩化カリウムはDNA又はdsRNAのさらなる除去を完全には達成しなかった。
【0127】
実施例9
ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩及びpHの、ピロリン酸(pyrophosphate)勾配との併用
モノリスなどのクロマトグラフィー装置の形態にある、第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を担持する固相を、pH6.0±0.5で50mM MES(モルホリノエタンスルホン酸)に平衡化する。ssRNAを含有するインビトロ転写混合物の試料を6.0±0.5に滴定し、濾過して濁りを除去する。試料をクロマトグラフィー装置に適用する。試料を、50mM MES、2Mグアニジンチオシアネート、20mM EDTA、pH6.0±0.5で、10装置容量に渡って洗浄し、dsRNA、DNA、及び混入タンパク質の大部分を除去した。グアニジン及びEDTAを、平衡化緩衝液で洗浄することによって除去する。クロマトグラフィー装置を、50mM MES、100mMピロリン酸四ナトリウム、pH6.0に向かう線形勾配で溶出する。グアニジン-EDTA洗浄後に残っている微量のdsRNA、DNA、及びタンパク質は、ssRNAの前に溶出する。所望により2M塩化ナトリウムと組み合わせた、1M水酸化ナトリウムによって、カラムを洗浄し消毒する。この方法は、第一級アミン又はポリエチレンイミンクロマトグラフィー装置上で並行して実施される。
【0128】
実施例10.
ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩及びピロリン酸(pyrophosphate)の、pH勾配との併用
モノリスなどのクロマトグラフィー装置の形態にある、第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を担持する固相を、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、pH8.5で平衡化する。部分的に精製されたssRNAの試料をpH8.5に滴定し、装置に注入する。試料を注入し、装置を20mM Tris、20mM ビス-トリス-プロパン、3Mグアニジン-HCl、20mM EDTA、pH8.5で洗浄して、dsRNA、DNA、及び混入タンパク質の大部分を退かせる。装置を、グアニジン及びEDTAに対する平衡化緩衝液で洗浄する。ssRNAを、20mM Tris、20mMビス-トリス-プロパン、10mMピロリン酸四カリウム、pH10.5で終わる線形pH勾配で溶出する。グアニジン-EDTA洗浄後に残っている微量のdsRNA、DNA、及びタンパク質は、ssRNAの前に溶出する。所望により2M塩化ナトリウムと組み合わせた、1M水酸化ナトリウムによって、カラムを洗浄し消毒する。
【0129】
実施例11.
ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩の、ピロリン酸(pyrophosphate)、ピロリン酸(pyrophosphate)ではない塩及びpHの勾配との併用
クロマトグラフィー装置の形態にある、第一級アミノ基と第二級アミノ基の混合物を担持する固相を、50mM MES、pH6.0±0.5で平衡化する。ssRNAを含有するインビトロ転写混合物の試料を6.0±0.5に滴定し、濾過して濁りを除去する。試料をクロマトグラフィー装置に適用する。試料を、50mM MES、2Mグアニジンイソチオシアネート、20mM EDTA、pH6.0±0.5で、10装置容量に渡って洗浄し、dsRNA、DNA、及び混入タンパク質の大部分を除去する。グアニジン及びEDTAを、平衡化緩衝液で洗浄することによって除去する。クロマトグラフィー装置を、50mM Hepes、500mM塩化カリウム、100mMピロリン酸四カリウム、pH8.0±0.5に向かう線形勾配で溶出に供する。グアニジン-EDTA洗浄後に残っている微量のdsRNA、DNA、及びタンパク質は、ssRNAの前に溶出する。所望により2Mの塩化ナトリウムと組み合わせた、1M水酸化ナトリウムによって、カラムを洗浄し消毒する。
【0130】
参照文献
本明細書に引用される全ての参考文献は、その組み込みが本明細書の明示的な教示と矛盾しない限り、参照により本明細書に組み込まれる。
[1] M Baiersdorfer, G Boros, H Murumatsu, A Mahini, I Vlatkovic, U Sahin, K Kari-ko, A fascile method for the removal of dsRNA contaminant from in vitro-transcribed mRNA, Molecular therapy: nucleic acids, 15 (2019)
[2] S. Urayama, Y. Yoshida-Takashima, M. Yoshida, Y. Tomaru, H. Moriyama, K. Takai, T. Nunoura, A New Fractionation and Recovery Method of Viral Genomes Based on Nucleic Acid Composition and Structure Using Tandem Column Chroma-tography. Microbes Environ. 30, (2015) 199-203.
[3] R. Franklin, Purification and properties of the replicative intermediate of the RNA bacteriophage R17. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 55, (1966) 1504-1511.
[4] A Nwokeoji, AW Kung, P Kilby, D Portwood, M Dickman, Purification and char-acterization of dsRNA using ion pair reverse phase chromatography and mass spectrometry, J. Chromatography A 1484 (2017) 14-25.
[5] A Nwokeoji, M Earll, P Kilby, D. Portwood, M. Dickman, High resolution finger-printing of double-stranded RNA using ion-pair reversed phase chromatography, J. Chromatography B 1104 (2019) 212-219.
【0131】
[6] K Kariko, H Muramatsu, J Ludwig, D. Weismann, Generating the optimal mRNA for therapy: HPLC purification eliminates immune activation and improves transla-tion of nucleoside-modified, protein-encoding mRNA, Nucleic acid research, 39 (2011) el42.
[7] D. Weismann, N. Pardi, H Murumatsu, K Kariko, HPLC purification of in vitro transcribed long RNA, Methods Molecular Biology, 969 (2013) 43-54.
[8] A Romanovskaya, LP Sarin, DH Bramford, MM Poranen, High-throughput puri-fication of double-stranded R.N.A. molecules using convective interaction media monolithic anion exchange columns, J. Chromatography A, 1278 (2013) 54-60.
[9] WO 2014/144767 A1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】