IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ティバ バイオテック エルエルシーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】効率的な核酸送達のための担体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/34 20170101AFI20230517BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230517BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230517BHJP
   A61K 47/24 20060101ALI20230517BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20230517BHJP
【FI】
A61K47/34
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K39/00 H
A61P43/00 105
A61P31/00
A61P35/00
A61P37/06
A61P37/08
A61K48/00
A61K31/713
A61K9/16
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/28
A61P43/00 171
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504149
(86)(22)【出願日】2021-04-02
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 US2021025542
(87)【国際公開番号】W WO2021207020
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/005,853
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/145,086
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522392944
【氏名又は名称】ティバ バイオテック エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】タルクダー ポウラミ
(72)【発明者】
【氏名】チャハル ジャスデイヴ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジン
(72)【発明者】
【氏名】ルピン カール
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076CC03
4C076CC06
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC31
4C076DD63
4C076DD70
4C076EE23
4C076EE24
4C084AA13
4C084MA41
4C084NA10
4C084ZB081
4C084ZB131
4C084ZB211
4C084ZB261
4C084ZB321
4C084ZC611
4C085AA03
4C085EE01
4C085EE05
4C086AA01
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA41
4C086NA10
4C086ZB08
4C086ZB13
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZC61
(57)【要約】
ポリエステル(PE)デンドリマー又はデンドロンを含む担体と、PE内に封入された治療的又は免疫原性核酸剤とを含む、核酸の対象への送達のためのナノ粒子組成物が記載されている。免疫応答と相乗的治療又は予防効果を提供するナノ粒子組成物を投与することにより、対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法が提供されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia又は式Ibで表される構造を有する核酸担体であって、
【化1】
式中、PEは、コアと、1世代以上形成する複数のモノマーポリエステル単位とを含むポリエステルデンドリマー又はデンドロンであり、Aはアミンリンカーであり、Bは疎水性単位であり、zは表面基の数である、核酸担体。
【請求項2】
PEは、式IIを有し、
[(コア)-Gn-O] II
式中、cは、コア多重度又は前記コア由来のウェッジ数であり、その値が独立して1~6の範囲にあり、Gは、デンドリマー又はデンドロンの層又は世代であり、nは世代数であり、1~10の範囲にある、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項3】
前記複数のモノマーポリエステル単位は、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸又は2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸である、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項4】
zは、式IIIを有し、
z=cb III
式中、bは、分岐点多重度又は各分岐点における分岐数であり、cは、コア多重度又は前記コア由来のウェッジ数であり、1~6の範囲にあり、nは世代数であり、1~10の範囲にある、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項5】
cは1であり、前記コアは1方向コアである、請求項2に記載の核酸担体。
【請求項6】
前記1方向コアは、カルボン酸又はその誘導体である、請求項5に記載の核酸担体。
【請求項7】
前記コアは、
【化2】
からなる群から選択され、
式中、Yは、メチル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、アジド(N3)、ハロゲン(Cl、Br若しくはI)、アセチレン(C)、ヒドロキシル(-OH)、又はチオール(-SH)、-ピラノシル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及び複素環から選択され、Aはアミンリンカーであり、Bは疎水性単位であり、mは1~20である、請求項5に記載の核酸担体。
【請求項8】
前記シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、ハロゲン基、ヒドロキシル基(-OH)及びアルキル基から選択される少なくとも1つの基で置換される、請求項7に記載の核酸。
【請求項9】
cは3であり、前記コアは3方向コアである、請求項2に記載の核酸担体。
【請求項10】
前記3方向コアは、トリメチロールプロパン、又は1,1,1-トリス(ヒドロキシフェニルエタン)であり、かつ、それぞれ
【化3】
で表される構造を有する、請求項9に記載の核酸担体。
【請求項11】
cは4であり、前記コアは4方向コアである、請求項2に記載の核酸担体。
【請求項12】
前記4方向コアは、ペンタエリスリトール、アダマンタン-1,3,5,7-テトラオール又は5,10,15,20-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-21H,23H-ポルフィン、[1,1’-ビフェニル]-3,3’,5,5’-テトラオール、2,3,6,7-テトラヒドロキシ-9,10-ジメチル-アントラセン、3.9,10-ジメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン-2,3,6,7-テトラオール、4.6,13-ジヒドロペンタセン-5,7,12,14-テトラオール、ヘキサヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b][1,4]ジオキシン-2,3,6,7-テトラオール、アントラセン-1,4,9,10-テトラオール、ピレン-1,3,6,8-テトラオール及び3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1-1’-スピロビ[インデン]-5,5’,6,6’-テトラオールからなる群から選択され、かつ、それぞれ
【化4】
【化5】
で表される構造を有する、請求項11に記載の核酸担体。
【請求項13】
Aは、N1-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(エタン-1,2-ジアミン)、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N2-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン)、N1-(2-(4-(2-アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルエタン-1,2-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルプロパン-1,3-ジアミン、3-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(メチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((4-アミノブチル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-(メチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(エチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-(エチル(3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(4-アミノブチル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4,4’-(エチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)アミノ)プロパン-1-オール、N1-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、4-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)ブタン-1,4-ジアミン、3,3’-アザンジイルビス(プロパン-1-オール)、4-((3-アミノプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-アザンジイルビス(ブタン-1-オール)及びN1,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)からなる群に由来し、かつ、それぞれ
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
で表される構造を有する、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項14】
Bは、C-C22アルキル基又はC-C22アルケニル基である、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項15】
前記C-C22アルキル基又はC-C22アルケニル基は、ハロゲン、-CN、-NO、-N、C-Cアルキル、ハロ(C-Cアルキル)、-OR、-NR、-COR、-OC(O)R、-CON(R)、-OC(O)N(R)、-NHC(O)N(R)、-NHC(NH)N(R)、C-Cシクロアルキル、C-Cシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択された1~4個の置換基で置換され、Rは、水素、C-Cアルキル、ハロ(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキル、C-Cシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択される、請求項14に記載の核酸担体。
【請求項16】
前記1~4個の置換基は、OR、-NR、-COR、-OC(O)R、-CON(R)、-OC(O)N(R)、-NHC(O)N(R)及び-NHC(NH)N(R)から選択される、請求項15に記載の核酸担体。
【請求項17】
各シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、さらにR’で置換され、R’は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO、-N、C-Cアルキル及びハロ(C-Cアルキル)からなる群から選択される、請求項16に記載の核酸担体。
【請求項18】
Bは不飽和アルキル基である、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項19】
Bは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ブト-3-エン-1-イル、オクト-7-エン-1-イル、12-トリデセニル、14-ペンタデセニル、17-オクタデセニル、オレイル、リノレイル及びアラキドニルからなる群から選択される、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項20】
Bは、脂肪酸又はその誘導体に由来する、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項21】
前記脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸及びエイコサペンタン酸からなる群から選択される、請求項20に記載の核酸担体。
【請求項22】
前記脂肪酸の誘導体は、12-ヒドロキシ-9-シス-オクタデセン酸、12-メチルテトラデカン酸、12-メチルトリデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、18-メチルノナデカン酸、19-メチルアラキドン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、フィタン酸、(±)-2-ヒドロキシオクタン酸、(±)-3-ヒドロキシデカン酸、(±)-3-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、2-ヒドロキシドデカン酸、DL-α-ヒドロキシステアリン酸、DL-β-ヒドロキシラウリン酸、DL-β-ヒドロキシミリスチン酸及びDL-β-ヒドロキシパルミチン酸からなる群から選択される、請求項21に記載の核酸担体。
【請求項23】
前記脂肪酸は、1つ以上の安定同位体を含む、請求項20に記載の核酸担体。
【請求項24】
前記安定同位体は炭素又は水素の安定同位体である、請求項23に記載の核酸担体。
【請求項25】
前記炭素の安定同位体は13Cである、請求項24に記載の核酸担体。
【請求項26】
前記水素の安定同位体はHである、請求項24に記載の核酸担体。
【請求項27】
前記安定同位体を含む前記脂肪酸は、オクタン酸-1-13C、オクタン酸-8-13C、オクタン酸-8,8,8-d3、オクタン-H15酸、デカン酸-1-13C、デカン酸-10-13C、デカン-10,10,10-d3酸、デカン-d19酸、ウンデカン酸-1-13C、ラウリン酸-12,12,12-H3、ラウリン-H23酸、ラウリン酸-1-13C、ラウリン酸-1,12-13、トリデカン-2,2-H2酸、ミリスチン酸-14-13C、ミリスチン酸-1-13C、ミリスチン酸-14,14,14-H3、ミリスチン-H27酸、パルミチン酸-1-13C、パルミチン酸-16-13C、パルミチン酸-16-13C,16,16,16-H3、パルミチン酸-H31、ステアリン酸-1-13C、ステアリン酸-18-13C、ステアリン酸-18,18,18-H3、ステアリン-H35酸、オレイン酸-1-13C、オレイン酸-H34、リノレン酸-1-13C、リノール酸-H32、アラキドン-5,6,8,9,11,12,14,15-H8酸及びエイコサン-H39酸からなる群から選択される、請求項23に記載の核酸担体。
【請求項28】
Pは、2つのアジド基を有するホモ二官能性リンカーであり、式IVで表される構造を有し、
【化10】
式中、mが1~20の範囲の数である、請求項1に記載の核酸担体。
【請求項29】
請求項1~28のいずれか1項に記載の核酸担体と、該核酸担体に封入された治療的又は免疫原性核酸剤とを含む、ナノ粒子組成物。
【請求項30】
前記治療的又は免疫原性核酸剤は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、cDNA、RNA、repRNA、siRNA、miRNA、sgRNA及びmRNAからなる群から選択される、請求項29に記載のナノ粒子組成物。
【請求項31】
前記治療的又は免疫原性核酸剤は、感染症、病原体、癌、自己免疫疾患及びアレルギー疾患からなる群より選択される1つ以上の抗原をコードする、請求項29に記載のナノ粒子組成物。
【請求項32】
前記治療的又は免疫原性核酸剤は、遺伝子の活性をサイレンシングするか、抑制するか又は改変することができるRNA又はDNAを含む、請求項29に記載のナノ粒子組成物。
【請求項33】
PEG-脂質をさらに含む、請求項29に記載のナノ粒子組成物。
【請求項34】
前記PEG-脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリ-エチレングリコール)-2000]又は1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000である、請求項33に記載のナノ粒子組成物。
【請求項35】
ナノ粒子組成物当たり前記PEG-脂質を1モル%~10モル%の範囲で含む、請求項33に記載のナノ粒子組成物。
【請求項36】
リン脂質及びコレステロール又はその誘導体をさらに含む、請求項33に記載のナノ粒子組成物。
【請求項37】
前記リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)又はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、請求項36に記載のナノ粒子組成物。
【請求項38】
ナノ粒子組成物当たり前記リン脂質を10モル%~15モル%の範囲で含む、請求項36に記載のナノ粒子組成物。
【請求項39】
ナノ粒子組成物当たり前記コレステロール又はその誘導体を50モル%~75モル%の範囲で含む、請求項36に記載のナノ粒子組成物。
【請求項40】
対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法であって、治療有効量の請求項29に記載のナノ粒子組成物を、必要とする対象に投与することを含む、方法。
【請求項41】
治療有効量の前記ナノ粒子組成物は、前記対象のkg体重当たり前記治療的又は免疫原性核酸剤を0.01mg核酸~10mg核酸の範囲で含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象は哺乳動物である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳動物は、ニワトリ、齧歯動物、イヌ、霊長類動物、ウマ、高価値の農業動物及びヒトからなる群から選択される、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年4月6日に出願した、発明の名称が「CARRIERS FOR EFFICIENT NUCLEIC ACID DELIVERY(効率的な核酸送達のための担体)」である米国特許仮出願第63/005,853号と、2021年2月3日に出願した、発明の名称が「CARRIERS FOR EFFICIENT NUCLEIC ACID DELIVERY(効率的な核酸送達のための担体)」である米国特許仮出願第63/145,086号との優先権を主張するものであり、これらの全ての内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
技術分野
本開示は、疾患及び/又は障害を治療又は予防するための、核酸の対象への効率的な送達のための担体と、担体及び核酸を含むナノ粒子組成物に関する。また、本開示は、ナノ粒子組成物の製剤化方法と、そのようなナノ粒子組成物で対象の疾患及び/又は障害を治療する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、核酸ワクチン及び核酸治療薬は、遺伝子療法用途を含む、いくつかの疾患又は病気を予防及び治療する有望なアプローチとして、登場している。しかしながら、核酸は、細胞膜を貫通することができず、血流中の酵素分解を受けやすい大きな親水性分子である。(Mendesら、2017、Molecules 22(9)、1401;Jonesら、2013、Mol.Pharmaceutics 10、4082-4098;並びにNishikawa及びHuang、2001 Hum.Gene Ther. 12、861-870)。
【0004】
したがって、提案されている核酸戦略の大部分は、理想的には、できるだけ少ない毒性で細胞に効率的に核酸を送達するために、細胞外と細胞内の異なる障壁を克服する必要がある送達ベクターに依存する(Jonesら、2013、Mol.Pharmaceutics 10、4082-4098;Gomesら、2014 MRS Bull. 39、60-70;並びにNishikawa及びHuang、2001 Hum.Gene Ther. 12、861-870)。
【0005】
成功した核酸療法に向けた障害としては、エンドヌクレアーゼによる核酸分解、細胞内在化、エンドソーム脱出、ベクターからのペイロード放出及び所望のターゲットへのアクセス、ベクターの細胞内及び細胞外への蓄積が挙げられる。(Jonesら、2013、Mol.Pharmaceutics 10、4082-4098;Nishikawa及びHuang、2001 Hum.Gene Ther. 12、861-870;Gomesら、2014 MRS Bull. 39、60-70;並びにDufesら、2005、Adv. Drug Delivery Rev. 57、2177-2202)。
【0006】
近年、脂質、ポリマー及びデンドリマーなどの非ウイルス性ベクターが大いに注目されている(Jonesら、2013、Mol.Pharmaceutics 10、4082-4098;Nishikawa及びHuang、2001 Hum.Gene Ther. 12、861-870;並びにMintzer及びSimanek、2009、Chem.Rev. 109、259-302)。これらの共通の特徴は、カチオン性又はイオン化性質である。非ウイルスベクターの中で、デンドリマーベースのベクターは、潜在的な核酸送達媒体として20年以上にわたって大きな関心を集めてきた。しかしながら、生分解性の単分子担体へのアクセスは課題のままである(Mintzer及びGrinstaff、2010、Chem.Soc.Rev. 40、173-190;Ravinaら、2010、Macromolecules 43、6953-6961;Nouriら、2012、J.Mater.Sci.Mater.Med. 23、2967-2980;Panditaら、2011、Biomacromolecules 12、472-481;Rodriguesら、2011、New J.Chem. 35、1938-1943;Santosら、2010、J.Controlled Release 144、55-64;Santosら、2009、J.Controlled Release 134、141-148;Santosら、2010、Mol.Pharmaceutics 7、763-774;並びにDuncan及びIzzo、2005、Adv.Drug Delivery Rev. 57、2215-2237)。
【0007】
理想的な核酸送達媒体は、蓄積及びその後の細胞毒性を防止するために生分解性であることが必要である(Duncan及びIzzo、2005、Adv.Drug Delivery Rev. 57、2215-2237)。生体適合性又は生体内での天然代謝物への分解性を有することが知られている構成単位を有する「バイオデンドリマー」と呼ばれるポリエステルデンドリマーが報告されている(Carnahan及びGrinstaff、2001、J.Am.Chem.Soc. 123、2905;Carnahan及びGrinstaff、2001、Macromolecules 34、7648;並びにCarnahan及びGrinstaff、2006、Macromolecules 39、609)。ポリエステルデンドリマーは、小分子送達用の媒体として確認されているが、核酸送達に適していない。他の要件の中でも、効率的な核酸送達担体とするために、デンドリマーは、核酸との複合体を形成することが必要であり、細胞への輸送を確保しつつ核酸を分解から保護するナノ粒子組成物に自己組織化することが好ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Mendesら、2017、Molecules 22(9)、1401
【非特許文献2】Jonesら、2013、Mol.Pharmaceutics 10、4082-4098
【非特許文献3】Nishikawa及びHuang、2001 Hum.Gene Ther. 12、861-870
【非特許文献4】Gomesら、2014 MRS Bull. 39、60-70
【非特許文献5】Dufesら、2005、Adv. Drug Delivery Rev. 57、2177-2202
【非特許文献6】Mintzer及びSimanek、2009、Chem. Rev. 109、259-302
【非特許文献7】Mintzer及びGrinstaff、2010、Chem.Soc.Rev. 40、173-190
【非特許文献8】Ravinaら、2010、Macromolecules 43、6953-6961
【非特許文献9】Nouriら、2012、J.Mater.Sci.Mater.Med. 23、2967-2980
【非特許文献10】Panditaら、2011、Biomacromolecules 12、472-481
【非特許文献11】Rodriguesら、2011、New J.Chem. 35、1938-1943
【非特許文献12】Santosら、2010、J.Controlled Release 144、55-64
【非特許文献13】Santosら、2009、J.Controlled Release 134、141-148
【非特許文献14】Santosら、2010、Mol.Pharmaceutics 7、763-774
【非特許文献15】Duncan及びIzzo、2005、Adv.Drug Delivery Rev. 57、2215-2237
【非特許文献16】Carnahan及びGrinstaff、2001、J.Am.Chem.Soc. 123、2905
【非特許文献17】Carnahan及びGrinstaff、2001、Macromolecules 34、7648
【非特許文献18】Carnahan及びGrinstaff、2006、Macromolecules 39、609
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、式Ia又は式Ibで表される核酸担体であって、
【化1】
式中、PEは、コアと、1世代以上形成する複数のモノマーポリエステル単位とを含むポリエステルデンドリマー又はデンドロンであり、Aは、アミンリンカーであり、Bは、疎水性単位であり、zは、表面基の数であり、Pは、2つのポリエステルデンドロンを連結するリンカーである、核酸担体に関する。
【0010】
一態様において、本発明は、本明細書に開示されるいずれかの核酸担体と、該核酸担体に封入された治療的又は免疫原性核酸剤と、共役脂質とを含むナノ粒子組成物に関する。
【0011】
一態様において、本発明は、細胞内送達及び生体内でのナノ粒子安定性を向上させるための、本明細書に開示されるいずれかの核酸担体と、該核酸担体に封入された治療的又は免疫原性核酸剤と、本明細書に開示される1つの共役脂質(例えば、PEG-脂質)と、リン脂質及びコレステロール又はその誘導体の混合物とを含むナノ粒子組成物に関する。
【0012】
一態様において、本発明は、対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法に関する。該方法は、本明細書に開示されるいずれかのナノ粒子組成物を提供することと、治療有効量の該ナノ粒子組成物を対象に投与することを伴う。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面と合わせて読むとよりよく理解されるであろう。本発明を説明するために、具体的な実施形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は、図示された正確な配置と手段に限定されないことを理解すべきである。
【0014】
図1】修飾に使用された脂肪酸側鎖(B)を有する世代1の修飾ポリエステルデンドリマーの概略図である。該図において、脂肪酸側鎖Bは、C-C28脂肪酸のいずれかから選択することができる。
図2】修飾デンドリマー(PE-ステアリン)、1,2ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000]及びmRNAを含有する、改善された自己組織化のために設計されたナノ粒子組成物の調製プロセスを示す。
図3】ナノ粒子のサイズ(d)に基づいて強度として測定されたナノ粒子組成物の分布を示す。
図4】修飾デンドリマーとRNAとの結合を示すアガロースゲルの写真を示す。ゲルを臭化エチジウム(EB)で染色し、ゲル画像をSyngene G Boxイメージングシステム(Syngene、米国)で撮影した。
図5】RNAの製剤化プロセスに使用された中性pH及びpH5.0のデンドリマーの安定性を示す。
図6A図6A~6Eは、DLS及びアガロースゲル保持アッセイにより測定されたPBSにおけるRNA-PEステアリンナノ粒子の安定性を示す。図6Aは、ナノ粒子のサイズ(d)に基づいて強度として測定された(透析直後)ナノ粒子組成物の分布を示す。
図6B図6A~6Eは、DLS及びアガロースゲル保持アッセイにより測定されたPBSにおけるRNA-PEステアリンナノ粒子の安定性を示す。図6Bは、4℃で3週間保存後にDLSにより測定されたPE-ステアリン PR8 HA mRNAの安定性を示す。
図6C図6A~6Eは、DLS及びアガロースゲル保持アッセイにより測定されたPBSにおけるRNA-PEステアリンナノ粒子の安定性を示す。図6Cは、室温(RT)で3日間保存後にDLSにより測定されたPE-ステアリン PR8 HA mRNAの安定性を示す。
図6D図6A~6Eは、DLS及びアガロースゲル保持アッセイにより測定されたPBSにおけるRNA-PEステアリンナノ粒子の安定性を示す。図6Dは、37℃で2時間保存後にDLSにより測定されたPE-ステアリン PR8 HA mRNAの安定性を示す。
図6E図6A~6Eは、DLS及びアガロースゲル保持アッセイにより測定されたPBSにおけるRNA-PEステアリンナノ粒子の安定性を示す。図6Eは、レーン1-PR8 HA mRNA、レーン2-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、4°、3週間、レーン3-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、rt、3日、レーン4-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、37℃、1時間、レーン5-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、37℃、2時間というゲル保持アッセイに基づく安定性の結果を示す。
図7A】修飾ポリエステルデンドリマーベースのナノ粒子により哺乳類細胞に送達され、発光アッセイを使用した細胞内ルシフェラーゼ活性の定量化により測定されたルシフェラーゼmRNAからの細胞培養におけるルシフェラーゼ発現を示す。図7Aは、裸のルシフェラーゼmRNA(陰性対照)と比較して、PE-リノール、PE-ステアリン及びPE-パルミチンを含有するナノ粒子により送達されたルシフェラーゼmRNAの細胞培養発現を示す。
図7B】修飾ポリエステルデンドリマーベースのナノ粒子により哺乳類細胞に送達され、発光アッセイを使用した細胞内ルシフェラーゼ活性の定量化により測定されたルシフェラーゼmRNAからの細胞培養におけるルシフェラーゼ発現を示す。図7Bは、裸のルシフェラーゼmRNAと比較して、PE-ヘプタデカン、PE-ステアリン、PE-オレイン及びPE-16-ヒドロキシパルミチンを含有するナノ粒子によって送達されたルシフェラーゼmRNAの細胞培養発現を示す。
図8】修飾ポリエステルデンドリマーベースのナノ粒子におけるPR8 HA mRNAの送達後の細胞培養におけるHA発現のウエスタンブロット分析を示す。
図9】PR8 HA mRNA含有ナノ粒子の筋肉内注射により誘導され、ヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI)によりアッセイされたHA特異的抗体を示す。
図10】ナノ粒子のサイズ(d)に基づいて強度として測定されたDNAナノ粒子組成物の分布を示す。
図11】DNA及び修飾ポリエステルデンドリマーを含有するナノ粒子のためのquantiblueアッセイを介した生体外のSEAP発現を示す。
図12】pH4.0又は5.0で修飾ポリエステルデンドロンナノ粒子に製剤化されたSEAPを発現するレプリコンRNAのSEAP比色信号を示す。
図13】ポリエステルデンドリマー及びデンドロンベースのナノ粒子におけるSARS-CoV-2スパイクレプリコンRNAの送達後の細胞培養におけるスパイク発現のウエスタンブロット分析を示す。
図14】PEデンドロン-G2-リシノール送達材料で製剤化されたレプリコンスパイクRNAを使用したワクチン接種に応答した、COVID-19スパイクタンパク質に特異的なマウスIgGのエンドポイント希釈血清の力価を示す。
図15】PEデンドロンG2-5A2-5リシノールで製剤化された7.2μgのルシフェラーゼコードレプリコンRNA又は脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化された31.4μgの同じRNAを注射したマウスを治療してから6、16及び42時間後の心臓と脾臓の相対発光量(RLU)で測定された相対ルシフェラーゼ発現を示す。
図16】ナノ粒子のサイズ(d)に基づいて強度として測定されたナノ粒子組成物の分布を示す。
図17】PEデンドロン_G2-A1-リシノールと(PEデンドロン_G2-A1-リシノール)2 PEG 200ナノ粒子に製剤化されたSEAPを発現するレプリコンRNAに対するSEAP比色信号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の説明において、特定の用語は、便宜上のためにのみ使用され、限定的ではない。
【0016】
「ナノ粒子組成物」は、修飾デンドリマーと該修飾デンドリマーに封入された核酸ペイロード分子とを含む組成物を指す。
【0017】
「置換」という用語は、親構造上の全原子の原子価が維持されているという条件で、1つの官能基又は該官能基に含まれる部分を、他の官能基又は該他の官能基に含まれる部分に変更する能力を指す。置換した基は、本明細書において、「置換」又は「置換基」と互換的に呼ばれる。任意の所与の構造中の複数の位置が特定の基から選択された複数の置換基で置換される場合、置換基は、全ての位置で同じであっても異なってもよい。
【0018】
本明細書で使用される場合、「アミンリンカー」という用語は、疎水性尾部(本明細書において、便宜上、成分「B」と記載されている)をデンドリマー又はデンドロン表面に存在する末端化学基にリンクするか又は連結する、アミン含有リンカーを指す。アミンリンカーに存在するアミンは、孤立電子対を持つ塩基性窒素原子を含有する官能基である。アミンは、形式的にアンモニアの誘導体であり、1つ以上の水素原子がアルキル基などの置換基で置換されたものである。
【0019】
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、特に指定されていない限り、1~28、好ましくは、1~20の炭素原子を含有する直鎖又は分岐鎖の炭化水素を意味する。アルキル鎖の長さは、核酸担体の疎水性と自己組織化特性を制御するために使用されてもよい。アルキルの代表的な例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル及びn-デシルが挙げられるが、これらに限定されない。「アルキル基」は、他の2つの部分間の連結基である場合、直鎖又は分岐鎖であってもよい。アルキル基の例としては、-CH2-、-CH2CH2-、-CHCHCHC(CH)及びCHCH(CHCH)CH-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「表面基」という用語は、核酸担体の表面にある末端基を意味する。本明細書の核酸担体の表面は、自己組織化特性を支援するために、疎水性尾部(本明細書において、成分「B」と記載されている)で修飾される。
【0021】
特許請求の範囲及び明細書の対応する部分で使用される「a」と「one」という単語は、特に明記されていない限り、1つ以上の参照される項目を含むものとして定義される。この用語には、上述した具体的に言及された単語、それらの派生語及び類義語が含まれる。「A、B若しくはC」又は「A、B及びC」などの2つ以上の項目のリストに続く「少なくとも1つ」という語句は、A、B又はCのうちのいずれか1つ、及びこれらの任意の組み合わせを意味する。
【0022】
一実施形態において、式Ia又はIbで表される核酸担体が提供される。
【化2】
式中、PEは、コアと、ツリー状構造を形成するために該コアの周りに階層化したモノマーポリエステル単位とを含むポリエステルデンドリマー又はデンドロンであり、ここで、各層が世代(G)と呼ばれ、Aは、アミンリンカーであり、Bは、疎水性単位であり、zは、表面基の数であり、Pは、2つのポリエステルデンドロンを連結するリンカーである。アミンリンカーは、生理学的pHでプロトン化され、帯電したアミン基を含有してもよい。
【0023】
一実施形態において、PEは、式IIを有してもよく、
[(コア)-Gn-O] 式II
式中、cは、コア多重度又はコア由来のウェッジ数であり、cの値は1~6の範囲にある。デンドロンは、本明細書においてコアとも呼ばれる、化学的にアドレス指定可能な単一の焦点から生じる超分岐ウェッジからなってもよい。したがって、1方向コアを有するデンドロンの場合、cは1に等しい。Gは、デンドリマー又はデンドロンの層又は世代であり、nは世代数であり、その値は1~10の範囲にあり、モノマーポリエステル単位は、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸又は2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸であってもよく、zは、式IIIを有し、
z=cb 式III
式中、bは、分岐点多重度又は各分岐点における分岐数であり、cは、1~6の範囲にあり、nは、世代数である。
【0024】
モノマーポリエステル単位として2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸又は2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸を含む核酸担体では、分岐点多重度又は各分岐点における分岐数bは、2である。
【0025】
コアの構造は、担体の物理化学的特性、核酸との相互作用、遺伝子導入活性を調節してもよい得られる核酸担体の表面の官能基数、アミン及び/又は電荷密度、直径及び柔軟性に影響を与えてもよい。
【0026】
一実施形態において、コアは1方向であってもよく、この場合、式IIでは、cは1である。1方向コアは、カルボン酸又はその誘導体であってもよい。
【0027】
1方向コアは、以下の足場から選択されてもよく、
【化3】
式中、Yは、メチル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、アジド(N3)、ハロゲン(Cl、Br若しくはI)、アセチレン(C)、ヒドロキシル(-OH)、又はチオール(-SH)、ピラノシル、シクロアルキル、アリール、ヘテロリル及び複素環から選択され、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及び複素環のそれぞれは、ハロゲン、ヒドロキシル(-OH)及びアルキル基で置換されてもよく、Aは、アミンリンカーであり、Bは、疎水性単位であり、mは、1~20である。
【0028】
一実施形態において、コアは3方向コアであってもよく、この場合、式IIでは、cは3である。3方向コアは、トリメチロールプロパン又は1,1,1-トリス(ヒドロキシフェニルエタン)であってもよい。参照のために、上記コアの構造は、次の足場として絵で提示される。
【化4】
【0029】
一実施形態において、コアは4方向コアであってもよく、この場合、式IIでは、cは4である。
【0030】
4方向コアは、ペンタエリスリトール、アダマンタン-1,3,5,7-テトラオール又は5,10,15,20-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-21H,23H-ポルフィン、[1,1’-ビフェニル]-3,3’,5,5’-テトラオール、2,3,6,7-テトラヒドロキシ-9,10-ジメチル-アントラセン、9,10-ジメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン-2,3,6,7-テトラオール、6,13-ジヒドロペンタセン-5,7,12,14-テトラオール、ヘキサヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b][1,4]ジオキシン-2,3,6,7-テトラオール、アントラセン-1,4,9,10-テトラオール、ピレン-1,3,6,8-テトラオール又は3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1-1’-スピロビ[インデン]-5,5’,6,6’-テトラオールであってもよいが、これらに限定されない。これらの4方向コアは、以下の足場として例示される。
【化5】
【0031】
アミンリンカーAは、孤立電子対を持つ窒素原子を1つ以上含有することにより、核酸担体分子にプロトン受容機能性を付与する部分である。したがって、アミンリンカーは、酸性条件下で遊離プロトン(H+)を受容することができる。好ましい実施形態において、窒素原子は、第2級又は第3級アミンの形で存在する。アミンリンカーは、N1-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(エタン-1,2-ジアミン)、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N2-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン)、N1-(2-(4-(2-アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルエタン-1,2-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルプロパン-1,3-ジアミン、3-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(メチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((4-アミノブチル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-(メチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(エチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-(エチル(3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(4-アミノブチル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4,4’-(エチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)アミノ)プロパン-1-オール、N1-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、4-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)ブタン-1,4-ジアミン、3,3’-アザンジイルビス(プロパン-1-オール)、4-((3-アミノプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-アザンジイルビス(ブタン-1-オール)又はN1,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)に由来してもよい。参照のために、上記アミンの構造は、次の構造として絵で提示される。
【0032】
【化6】
【化7】
【0033】
上述したように、プロトン化可能なデンドリマー/デンドロンは、約3.3~約10.4の範囲のプロトン化可能な基の酸解離定数(pKa)を有してもよい。これらの送達分子は、酸性pH条件下での核酸との製剤化中にカチオン性となる。このような条件下では、イオン相互作用により、これらの送達分子は、負に帯電した核酸と縮合される。イオン化可能なポリエステルデンドリマー/デンドロン分子の構造活性関係を分析したところ、イオン化可能な送達分子のpKaと、機能的に活性なレプリコンRNAを送達するナノ粒子の能力との間の予期しない関係が発見された。一例として、以下に示す、予測pKa値がそれぞれ6.7と7.7であるアミン1とアミン2を含有する送達分子は、mRNAを細胞に送達することができた(図12のSEAP発現から分かるように)のに対し、アミン3(予測pKa3.3)を含有するデンドリマー分子は、ペイロードを送達することができなかった。pKaの値は、ACD/パーセプターpKa予測ツールを用いて計算された。
【化8】
【0034】
疎水性単位Bは、C-C22アルキル基又はC-C22アルケニル基であってもよい。C-C22アルキル基又はC-C22アルケニル基のそれぞれは、任意に、ハロゲン、-CN、-NO、-N、C-Cアルキル、ハロ(C-Cアルキル)、-OR、-NR、-COR、-OC(O)R、-CON(R)、-OC(O)N(R)、-NHC(O)N(R)、-NHC(NH)N(R)、C-Cシクロアルキル、C-Cシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール又は複素環から選択された1~4個の置換基で置換されてもよい。各Rは、独立して、水素、C-Cアルキル、ハロ(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキル、C-Cシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール又は複素環から選択されてもよい。各シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、さらに、任意に、R’で置換されてもよく、R’は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO、-N、C-Cアルキル及びハロ(C-Cアルキル)から選択されてもよい。
【0035】
式Ia及び式Ibの疎水性単位Bは、PEデンドリマー又はデンドロンと脂肪酸又はその誘導体などの機能性試薬とを接触させることにより導入されてもよい。脂肪酸は、C-C28鎖を有する飽和脂肪酸であってもよく、不飽和脂肪酸であってもよい。脂肪酸は、アラキドン酸、オレイン酸、エイコサペンタン酸、ラウリン酸、カプリル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸又はリノレン酸であってもよいが、これらに限定されない。脂肪酸の誘導体は、12-ヒドロキシ-9-シス-オクタデセン酸、12-メチルテトラデカン酸、12-メチルトリデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、18-メチルノナデカン酸、19-メチルアラキドン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、フィタン酸、(±)-2-ヒドロキシオクタン酸、(±)-3-ヒドロキシデカン酸、(±)-3-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、2-ヒドロキシドデカン酸、DL-α-ヒドロキシステアリン酸、DL-β-ヒドロキシラウリン酸、DL-β-ヒドロキシミリスチン酸又はDL-β-ヒドロキシパルミチン酸であってもよいが、これらに限定されない。
【0036】
疎水性単位Bは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ブト-3-エン-1-イル基、オクト-7-エン-1-イル基、12-トリデセニル基、14-ペンタデセニル基、17-オクタデセニル基、オレイル基、リノレイル基、アラキドニル基又は16-ヒドロキシヘキサデシル基であってもよい。
【0037】
式Iの核酸担体の疎水性単位Bは、不飽和アルキル基であってもよい。核酸担体に不飽和アルキル基が存在することにより、担体がナノ粒子組成物に製剤化されるとき、ナノ粒子のリサイクルを防止してもよい。不飽和アルキル基は、飽和アルキル基に比べて流動性がより高くてもよく、結晶化温度が低くてもよいため、細胞膜のリン脂質二重層と相互作用し、エンドソームを破裂させるとき、核酸担体を含有するナノ粒子を融合形態へと形態的に変化させる能力を有してもよい。したがって、ナノ粒子は、制限され、注射部位のみに細胞内に残存し、他の場所へ移動しない場合がある。
【0038】
一実施形態において、核酸担体は、生体外及び生体内で送達材料を追跡するのに適した官能基を含んでもよい。核酸担体は、13C又はH(本明細書において、重水素、D又はdとも呼ばれる)などの炭素(C)又は水素(H)の安定同位体を含有する脂肪酸を有してもよい。レプリコンRNAなどの核酸とともに核酸担体をナノ粒子に製剤化する場合、ナノ粒子は、質量分析又は核磁気共鳴画像法などの技術により、投与後に生体外及び生体内で追跡されてもよい。これらの安定同位体が組織で豊富な12C及びH同位体とは異なるため、安定性同位体を含有することは、送達分子の同定に有益である場合がある。追跡は、投与後のナノ粒子の生体分布、物質クリアランス及び分子安定性の同定と、関連する問題とに有用である。同位体標識された脂肪酸は、オクタン酸-1-13C、オクタン酸-8-13C、オクタン酸-8,8,8-H3、オクタン-H15酸、デカン酸-1-13C、デカン酸-10-13C、デカン-10,10,10-H3酸、デカン-H19酸、ウンデカン酸-1-13C、ラウリン酸-12,12,12-H3、ラウリン-H23酸、ラウリン酸-1-13C、ラウリン酸-1,12-13C2、トリデカン-2,2-H2酸、ミリスチン酸-14-13C、ミリスチン酸-1-13C、ミリスチン酸-14,14,14-H3、ミリスチン-d27酸、パルミチン酸-1-13C、パルミチン酸-16-13C、パルミチン酸-16-13C,16,16,16-H3、パルミチン酸-H31、ステアリン酸-1-13C、ステアリン酸-18-13C、ステアリン酸-18,18,18-H3、ステアリン-H35酸、オレイン酸-1-13C、オレイン酸-H34、リノレン酸-1-13C、リノール酸-H32、アラキドン-5,6,8,9,11,12,14,15-H8酸又はエイコサン-H39酸であってもよいが、これらに限定されない。
【0039】
式IBのリンカー単位Pは、2つのアジド基を有するホモ二官能性リンカーであってもよい。リンカー単位Pは、二量体分子の合成に使用することができる。一実施形態において、Pは、式IVを有してもよく、
【化9】
式中、mは、1~20の範囲である。
【0040】
一実施形態において、本明細書に記載のいずれかの核酸担体を含むナノ粒子組成物が提供される。本明細書におけるナノ粒子組成物は、細胞内に薬剤を導入するのに有用であってもよい。薬剤は、核酸であってもよい。本明細書におけるナノ粒子組成物は、トランスフェクション剤として有用であってもよい。本明細書におけるナノ粒子組成物は、治療方法に有用であってもよい。
【0041】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、それぞれが異なるアミン密度又は側鎖を含む核酸担体の混合物を含んでもよい。これらの核酸担体は、一定の比率で混合されてもよい。また、3つのデンドリマーとの混合物の例としては、第1核酸担体と第2核酸担体と第3核酸担体との比率は、i:j:kであってもよい(i、j、kは、独立して1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20、又はこれらのうちのいずれか2つの間の値であってもよいから選択される)。
【0042】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、1つ以上の治療的又は免疫原性核酸剤を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、天然又は合成DNA又はRNA分子を指す。本明細書における組成物の治療的又は免疫原性核酸剤は、ナノ粒子組成物の核酸担体と複合化されてもよく、それにカプセル化されてもよい。
【0043】
一実施形態において、治療的又は免疫原性核酸剤は、RNA又はDNA分子であってもよい。「DNA」又は「DNA分子」又は「デオキシリボ核酸分子」という用語は、デオキシリボヌクレオチドのポリマーを指す。DNA分子は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA又はcDNAであってもよい。DNA分子は、抗原などの野生型又は遺伝子組換えタンパク質、ペプチド又はポリペプチドをコードしてもよい。「RNA」又は「RNA分子」又は「リボ核酸分子」という用語は、リボヌクレオチド(例えば、2個、3個、4個、5個、10個、15個、20個、25個、30個又はそれ以上のリボヌクレオチド)のポリマーを指す。RNA分子は、レプリコンRNA(repRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、miRNA、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)又は転移RNA(tRNA)であってもよい。レプリコンRNA(repRNA)は、感染性子孫ビリオンを産生できない複製可能な子孫に欠陥のあるRNAウイルスゲノムを指す。通常、repRNAとして使用するために修飾されたウイルスゲノムには、「陽性鎖」RNAウイルスが含まれる。修飾されたウイルスゲノムは、mRNAと複製のテンプレートとの両方として機能する。低分子干渉RNA(siRNA)は、RNA干渉を指示又は媒介できる約10~50ヌクレオチド(又はヌクレオチド類似体)を含むRNA(又はRNA類似体)を指す。マイクロRNA(miRNA)は、コードmRNAの安定性と翻訳のいずれか又は両方に影響を与えることにより真核生物の遺伝子発現の転写後調節に関与する小さな(20~24nt)調節的な非コードRNAを指す。メッセンジャーRNA(mRNA)は、通常、一本鎖RNAであり、1つ以上のポリペプチド鎖のアミノ酸配列を定義する。この情報は、リボソームがmRNAと結合した場合、タンパク質合成の際に翻訳される。DNA又はRNA分子は、化学的に修飾されてもよい。
【0044】
RNA分子は、モノシストロン性又はポリシストロン性mRNAであってもよい。モノシストロン性mRNAは、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする1つの配列のみを含むmRNAを指す。ポリシストロン性mRNAは、通常、2つ以上のタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードする2つ以上の配列を指す。mRNAは、抗原として作用するタンパク質、ポリペプチド又はペプチドをコードしてもよい。
【0045】
一実施形態において、DNA分子は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA又はcDNAであってもよい。RNA分子は、レプリコンRNA(repRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、miRNA、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)又は転移RNA(tRNA)であってもよい。治療的又は免疫原性核酸剤は、核酸担体に非共有結合又は共有結合されてもよい。治療的又は免疫原性核酸剤は、イオン結合を介して帯電した核酸担体に静電的に結合されてもよい。
【0046】
一実施形態において、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、抗原をコードする免疫原性又は治療的核酸剤を含んでもよい。
【0047】
本明細書で使用される場合、「カプセル化」は、完全なカプセル化、部分的なカプセル化又はその両方を伴う、核酸(例えば、メッセンジャーRNA)などの活性剤又は治療剤を提供するナノ粒子を指すことができる。好ましい実施形態において、核酸は、ナノ粒子に完全にカプセル化される。核酸治療剤の場合、完全なカプセル化は、Ribogreen(登録商標)アッセイによって決定されてもよい。Ribogreen(登録商標)は、溶液中のオリゴヌクレオチドと一本鎖DNA又はRNAを定量化するための超高感度の蛍光核酸染色である(Thermo Fisher Scientific(サーモフィッシャーサイエンティフィック)-米国から入手可能)。
【0048】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、免疫応答を引き起こす分子として定義される。免疫応答は、抗体産生、又は特定の免疫学的活性細胞の活性化、又はその両方に関してもよい。抗原は、タンパク質、ペプチド又はポリペプチドなどの高分子を含む、免疫応答を刺激できる任意の分子を指してもよい。抗原は、病原体の構造成分又は癌細胞であってもよい。抗原は、合成され、宿主で組み換えて産生されてもよいし、又は組織サンプル、細胞若しくは体液が挙げられるがこれらに限定されない生体サンプルに由来してもよい。
【0049】
抗原は、ワクチン抗原、寄生虫抗原、細菌抗原、腫瘍抗原、環境抗原、治療抗原又はアレルゲンであってもよいが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、ヌクレオチドワクチンは、抗原を送達することにより、対象の体の適応免疫応答を刺激することができるDNA又はRNAベースの予防又は治療組成物である。ワクチン接種によって誘導される免疫応答は、通常、免疫学的記憶の発達をもたらし、その後に生物が抗原又は感染剤に遭遇したときに迅速に反応する能力をもたらす。
【0050】
本明細書において、核酸の担体として「核酸担体」を用いることが好ましく、そのため、「核酸担体」という名称を付している。しかしながら、実施形態には、本明細書における核酸担体と、負又は部分的に負の電荷を含有する薬剤との組み合わせも含まれる。薬剤は、薬物、タンパク質又は脂質複合体であってもよい。
【0051】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、負又は部分的に負の電荷を含有する薬物を含有するように製剤化されてもよい。ナノ粒子は、核酸担体内のプロトン化アミン基の負の電荷と正の電荷との静電結合を介して製剤化されてもよい。負に帯電した薬物は、イオン薬であってもよい。「イオン薬」という用語は、水溶性で蒸留水の溶液においてイオン化可能な電気的非対称分子を指す。イオン薬は、リン酸塩、ホスホン酸塩又はホスフィン酸塩の官能基を含有してもよい。リン酸基を含む薬物は、癌の治療及びウイルス化学療法に使用される薬物などの、リン酸塩含有ヌクレオチド類似体であってもよい。リン酸塩含有薬物は、プリン及びピリミジンヌクレオシド類似体、アラビノシルシトシン(ara-C)、Ara-C一リン酸(ara-CMP)、アジドチミジン(AZT)、AZT一リン酸(AZTMP)、2’3’-ジデオキシシチジン(ddCD)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、テノフォビル又はアデホビルであってもよいが、これらに限定されない。
【0052】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、1つ以上のタンパク質を含んでもよい。1つ以上のタンパク質の非制限例としては、抗体又は抗体断片、インターフェロン(IFN)α若しくはインターロイキン(IL)-2などのサイトカイン、SARS-CoVスパイクタンパク質若しくはその受容体結合ドメイン(RBD)などの病原体由来の抗原、カーステンラット肉腫2ウイルス癌遺伝子ホモログ(Kirsten rat sarcoma 2 viral oncogene homolog、KRAS)の突然変異体などの癌由来の抗原、又はインスリン、第VIII因子若しくはエリスロポエチンなどの他の治療的生物製剤が挙げられる。本明細書における組成物中のタンパク質は、バルク組成物中に含まれ、及び/又はナノ粒子組成物の核酸担体と複合化されてもよく、若しくはそれにカプセル化されてもよい。
【0053】
一実施形態において、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、脂質複合体を含んでもよい。脂質複合体は、粒子の凝集を防止できる点で有用である場合がある。本明細書における組成物中に存在してもよい脂質複合体としては、PEG-脂質複合体が挙げられるが、これに限定されない。PEG-脂質の非制限例としては、DMG-PEG 2000などの脂質に結合したPEG、ホスファチジルエタノールアミンなどのリン脂質に結合したPEG(PEG-PE)、コレステロール又はその誘導体に結合したPEG及びこれらの混合物が挙げられる。ある場合において、PEGは、必要に応じて、アルキル基、アルコキシ基、アシル基又はアリール基で置換されてもよい。
【0054】
PEGは、2つの末端ヒドロキシル基を有するエチレンPEG繰り返し単位の直鎖状の水溶性ポリマーである。PEGは、分子量で分類され、例えば、PEG2000は、約2000ダルトンの平均分子量を有し、PEG5000は、約5000ダルトンの平均分子量を有する。PEGは、Avanti Polar Lipids(アバンティ・ポーラ・リピッド)から市販されている。本明細書に記載のPEG-脂質複合体のPEG部分は、約550ダルトン~約10,000ダルトンの範囲の平均分子量を含んでもよい。
【0055】
鎖の長さと飽和度の異なる様々なアシル鎖基を有するホスファチジルエタノールアミンが、脂質複合体を形成するためにPEGに結合されてもよい。ホスファチジルエタノールアミンは、市販されているか、又は従来の技術を用いて単離されるか又は合成されてもよい。ホスファチジルエタノールアミンは、炭素鎖長がC10-C20の範囲にある飽和又は不飽和の脂肪酸を含んでもよい。ホスファチジルエタノールアミンは、1価又は多価の不飽和脂肪酸と、飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸の混合物とを含んでもよい。想到されるホスファチジルエタノールアミンとしては、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
PEG-脂質は、コレステロール又はコレステロールの誘導体に結合したPEGを含んでもよい。コレステロールの誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0057】
ナノ粒子組成物に含まれるPEG-脂質のサイズ、相対量及び分布は、ナノ粒子組成物の物理的特性に影響を与えてもよい。制御可能な物理的特性は、ナノ粒子の直径、ナノ粒子の凝集する傾向、各ナノ粒子内の核酸分子の数、ナノ粒子組成物中のナノ粒子の濃度、治療的及び免疫原性核酸剤の細胞内送達の有効性及び/又は細胞によるナノ粒子の取り込みの有効性であってもよいが、これらに限定されない。
【0058】
ナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物当たりPEG-脂質を10モル%以下で含有してもよい。ナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物当たり、PEG-脂質を、約10モル%、約9モル%、約8モル%、約7モル%、約6モル%、約5モル%、約4モル%、約3モル%、約2モル%又は約1モル%で含んでもよく、上記のいずれか2つの整数の間の任意の量で含んでもよい。PEG-脂質を含むナノ粒子組成物は、PEG-脂質を欠く組成物のナノ粒子よりも直径が小さいナノ粒子を含んでもよい。ナノ粒子組成物は、PEG-脂質を欠く組成物のナノ粒子よりも、ナノ粒子の凝集する傾向が高いナノ粒子を含んでもよい。
【0059】
ナノ粒子組成物は、「両親媒性脂質」を含有してもよい。本明細書で使用される場合、「両親媒性脂質」は、非極性疎水性「尾部」と極性「頭部」を有する任意の材料を指す。極性基としては、リン酸基、カルボキシル基、スルファト基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシル基又は他の基を挙げてもよい。非極性基としては、長鎖飽和及び不飽和脂肪族炭化水素基と、1つ以上のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、ヘテロアリール基、複素環基で置換されたそのような基とを挙げてもよいが、これらに限定されない。両親媒性脂質の例としては、リン脂質、アミノ脂質及びスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。リン脂質の代表的な例としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸、パルミトイルオレイルホスファチジルコリン、リソホスファチジルコリン、リソホスファチジルエタノールアミン、ジパリミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン及びジリノレオイルホスファチジルコリンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
ナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物当たり両親媒性脂質を10モル%~15モル%の範囲の量で含有してもよい。
【0061】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、コレステロール又はコレステロールの誘導体を含んでもよい。コレステロールの誘導体の例としては、コレスタノール、5,6-エポキシコレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、24-エチルコレステロール、24-メチルコレステロール、コレン酸、3-ヒドロキシ-5-コレステン酸、パルミチン酸コレステリル、アラキドン酸コレステリル、アラキジン酸コレステリル、ミリスチン酸コレステリル、パルミトレイン酸コレステリル、リグノセリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリル、エルカ酸コレステリル、α-リノレン酸コレステロール、リノール酸コレステリル、ホモ-γ-リノレン酸コレステリル、4-ヒドロキシコレステロール、6-ヒドロキシコレステロール、7-ヒドロキシコレステロール、19-ヒドロキシコレステロール、20-ヒドロキシコレステロール、22-ヒドロキシコレステロール、24-ヒドロキシコレステロール、25-ヒドロキシコレステロール、27-ヒドロキシコレステロール、27-アルキンコレステロール、7-ケトコレステロール、7-デヒドロコレステロール、8-デヒドロコレステロール、24-デヒドロコレステロール、5α-ヒドロキシ-6-ケトコレステロール、20,22-ジヒドロキシコレステロール、7,25-ジヒドロキシコレステロール、7,27-ジヒドロキシコレステロール、7-ケト-25-ヒドロキシコレステロール、フコステロール、フィトステロール、11,14-エイコサジエン酸コレステリル、ジメチルヒドロキシエチルアミノプロパンカルバモイルコレステロールヨウ化物及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。コレステロールの誘導体は、マンノース、ガラクトースなどの糖成分を含んでもよい。コレステロールの誘導体は、糖成分及び/又はセリン、スレオニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン若しくはそれらの誘導体などのアミノ酸を含んでもよい。ナノ粒子組成物は、ナノ粒子組成物当たりコレステロール又はコレステロールの誘導体を50モル%~75モル%の範囲の量で含んでもよい。
【0062】
本明細書における医薬組成物は、従来の周知の滅菌技術により滅菌されてもよい。水溶液は、使用のためにパッケージ化されてもよいし又は凍結乾燥されてもよい。凍結乾燥製剤は、投与前に滅菌水溶液と組み合わせられてもよい。
【0063】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、薬学的に許容される担体を含んでもよい。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、対象化合物を一方の臓器若しくは身体の一部から他方の臓器若しくは身体の一部へ運搬若しくは輸送する際に関与する、医薬的に許容される材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、製造助剤(例えば、滑剤、タルク(滑石)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム若しくはステアリン酸亜鉛若しくはステアリン酸)、又は溶媒カプセル化材料を意味する。各担体は、製剤の他の成分に適合的であり、かつ、それが患者に対して傷害性でないという意味において「許容可能」である。薬学的に許容される担体となる材料としては、(1)ラクトース、グルコース、マンノース及び/若しくはスクロース等の糖類、(2)コーンスターチ及び/若しくはポテトスターチ等の澱粉、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース及び/若しくは酢酸セルロースなどのセルロース、並びにその誘導体、(4)トラガント粉、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム及び/若しくはタルク等の潤滑剤、(S)ココアバター及び/若しくは坐剤用ワックス等の賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油及び/若しくは大豆油等の油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、及び/若しくはマンニトールなどのポリオール、(12)グリセリド、エチルオレイン酸、及び/若しくはラウリン酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び/若しくは水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)パイロゲンフリー水、(17)等張食塩水及び/若しくはPEG400などの希釈剤、(18)リンゲル液、(19)エタノールなどのC2-C12アルコール、(20)脂肪酸、(21)pH緩衝液、(22)ポリペプチド及び/若しくはアミノ酸などの増量剤、(23)血清アルブミン、HDL、LDLなどの血清成分、(24)ポリソルベート(Tween 80)及び/若しくはポロキサマーなどの界面活性剤、並びに/又は、(25)充填剤、バインダー、湿潤剤、着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、防腐剤及び/又は酸化防止剤などの医薬製剤に使用される他の非毒性の適合性物質が挙げられる。本明細書において、「賦形剤」、「担体」、「薬学的に許容される担体」などという用語は交換可能に使用される。
【0064】
一実施形態は、対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法を含む。この方法は、本明細書に記載のナノ粒子組成物のいずれかを提供することを含んでもよい。この方法は、治療有効量のナノ粒子組成物を対象に投与することを含んでもよい。
【0065】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、所望の治療効果を達成するのに効果的なナノ粒子組成物の量を指す。治療効果は、少なくとも動物の細胞の一部の集団にあってもよい。治療効果は、治療に適用可能な合理的な利益/リスク比で達成されてもよい。「治療有効量」は、血清中に抗原特異的抗体が出現するのに十分な量を指してもよい。「治療有効量」は、疾患の症状を軽減するのに十分な量を指してもよい。「治療有効量」は、疾患の症状を消失させるのに十分な量を指してもよい。ウイルス感染症を治療する場合、糞便、体液又は分泌物中のウイルスの減少により疾患の症状の軽減を評価してもよい。ナノ粒子組成物は、免疫応答を生じさせるのに有効な投与量及び投与経路で投与されてもよい。
【0066】
治療有効性は、所望の結果を達成するために必要な活性剤の有効量及び投与時間に依存してもよい。ナノ粒子組成物の投与は、予防手段であってもよい。ナノ粒子組成物の投与は、感染剤に対する免疫を促進して、特に免疫系が弱い患者、高齢者又は乳幼児における免疫のゆっくりした発達に関連する合併症を最小限に抑える治療手段であってもよい。
【0067】
正確な投与量は、様々な要因に基づいて、個々の患者を考慮して医師によって選択されてもよい。投与量と投与は、十分なレベルの活性剤若しくは薬剤を提供するか、又は所望の効果を維持するために調整されてもよい。例えば、考慮される可能性のある要因としては、疾患の種類及び重症度、患者の年齢及び性別、薬物の組み合わせ並びに療法に対する個別の反応が挙げられてもよい。
【0068】
ナノ粒子組成物における活性剤の治療有効性及び毒性は、標準的な製薬手順により、例えば、生体外で培養した細胞又は実験動物において集団の50%に対する治療有効量(ED50)と集団の50%に対する致死投与量(LD50)とを決定することにより、決定されてもよい。ナノ粒子組成物は、治療指標と呼ばれる毒性と治療効果との用量比(LD50/ED50)に基づいて評価されてもよく、治療指標の大きな値が評価に使用されてもよい。細胞及び動物の研究から得られたデータは、ヒト用の投与量の定式化に使用されてもよい。
【0069】
治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定されてもよい。細胞培養で決定された、IC50(すなわち、症状の半値阻害を達成する治療薬の濃度)を含有する循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルで治療有効用量が定式化されてもよい。血漿中レベルは、例えば、高速液体クロマトグラフィーにより測定されてもよい。任意の特定の投与量の効果は、適切なバイオアッセイにより監視されてもよい。
【0070】
治療有効用量は、対象の1kg体重当たり、0.0001μg~1mgの治療的若しくは免疫原性核酸であってもよいし、又は0.00001μg~1mg(μg)単位/投与量/対象であってもよく、毎日投与されてもよい。しかしながら、1mgを超える投与量を提供してもよい。例えば、投与量は、少なくとも1ミリグラム、又は約3×1mg、又は約10×1mgの核酸単位/投与量/対象であってもよい。ナノ粒子ワクチンは、製造が容易であり、かつ、加工、設計及び保管が安価である可能性があることから、大型動物対象に対するより多くの用量が経済的に実現されてもよい。本明細書における実施例で用いた実験動物よりも数桁大きい動物対象の場合、投与量は、調整しやすく、例えば、投与量は、ヒト又は小農業動物などの動物の場合、約3×10×1μg、約3×20×1μg、又は約3×30×1μgであってもよい。しかしながら、投与量は、例えば、ゾウなどの高価値の動物園動物又は農業動物の場合、約3×40×1μgであっても、約3×50×1μgであっても、又はさらには約3×60×1μgであってもよい。予防免疫、定期的な治療又は小野生動物の治療の場合、投与量は、投与量当たり、約3×1μg未満、約1μg未満、約500ng未満、約250ng未満、約100ng未満、約50ng未満、約25ng未満、約10ng未満、約5ng未満、約1ng未満、約500pg未満、約250pg未満、約100pg未満、又は上記のいずれかの間の範囲であってもよい。治療的及び免疫原性核酸は、治療投与量ごとに使用された異なる核酸の組み合わせであってもよい。本明細書における「対象」と「個体」は、互いに交換可能に使用され、ヒト又は動物を意味する。好ましくは、動物は、霊長類動物、齧歯動物、家畜又は狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類動物としては、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びアカゲザルなどのマカクが挙げられる。齧歯動物は、マウス、ラット、モルモット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ、ハムスターから選択されてもよい。家畜又は狩猟動物は、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、飼いネコなどのネコ種、イヌなどのイヌ種、キツネ、オオカミ、ニワトリ、エミュー、ダチョウなどのトリ種、及びトラウト、ナマズ、サーモンなどの魚類から選択されてもよい。患者又は対象は、前述の患者又は上記サブセットから選択されてもよい。患者又は対象は、上記の全てから選択されてもよいが、もっぱらヒト、霊長類動物、齧歯動物などの1つ以上の群又は種から選択されてもよい。一実施形態において、患者又は対象は、霊長類動物、ヒトなどの哺乳動物であってもよい。本明細書では「患者」及び「対象」という用語は交換可能に使用される。本明細書では「患者」及び「対象」という用語は交換可能に使用される。
【0071】
好ましくは、対象は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類動物、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ又はウシであってもよいが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、疾患又は障害を有する動物モデルを表す対象であってもよい。加えて、本明細書に記載の方法は、家畜及び/又はペットの治療を目的とするものであってもよい。対象は、雄(男性)であっても雌(女性)であってもよい。
【0072】
本明細書で使用される場合、「投与する」、「投与すること」、「投与」などの用語は、対象への組成物の配置を意味する。投与は、所望の効果を達成するように、組成物を所望の部位に少なくとも部分的に局在させる方法又は経路で実行されてもよい。本明細書に記載のナノ粒子組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、気道(エアロゾル)、肺、鼻、直腸、又は局所(口腔内及び舌下を含む)投与を含む経口又は非経口経路を含むが、これらに限定されない本分野において公知の任意の適切な経路により投与されてもよい。
【0073】
例示的な投与形態としては、注射、輸液、点滴、吸入又は摂取が挙げられるが、これらに限定されない。「注射」としては、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、心室内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、脳内及び胸骨内の注射及び輸液が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、組成物は、静脈輸液又は静脈内注射により投与されてもよい。
【0074】
ナノ粒子組成物は、遺伝子標的化のための治療的又は免疫原性核酸の送達に使用されてもよい。治療的又は免疫原性核酸は、アンチセンスオリゴヌクレオチド(AON)又は二本鎖低分子干渉RNA(siRNA)であってもよい。通常、siRNAは、21~23ヌクレオチドの長さである。siRNAは、宿主細胞内で発現されたときに、標的遺伝子のmRNA転写産物に含まれる配列と相補的な配列を含んでもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドであってもよい。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的遺伝子のmRNA転写産物に含まれる配列と相補的な配列を含んでもよい。治療的又は免疫原性核酸は、特定の標的生物内の特定の標的遺伝子に対する干渉RNA(iRNA)であってもよい。iRNAは、標的ポリヌクレオチドの発現又は翻訳の配列特異的なサイレンシングを誘導することにより、遺伝子の発現をダウンレギュレートするか又は防止してもよい。iRNAは、標的遺伝子の発現を完全に阻害してもよい。iRNAは、未処置の対照の発現レベルと比較して、標的遺伝子の発現レベルを低下させてもよい。治療的又は免疫原性核酸は、マイクロRNA(miRNA)であってもよい。miRNAは、ヘアピンRNA(hpRNA)などの短いRNAであってもよい。miRNAは、内因性細胞酵素の活性により、標的細胞内の生物学的活性dsRNAに切断されてもよい。RNAは、二本鎖RNA(dsRNA)であってもよい。dsRNAは、25ヌクレオチド以上の長さであってもよいし、又はより長くてもよい。dsRNAは、標的遺伝子(複数種可)の配列と相補的な配列を含んでもよい。
【0075】
一実施形態において、治療的又は免疫原性核酸は、標的タンパク質をコードする1つ以上の遺伝子の活性又は合成を完全に又は部分的に減少させ、阻害し、妨害するか、又は調節する薬剤であってもよいし、又は該薬剤をコードしてもよい。標的遺伝子は、宿主生物のゲノムに含まれるいずれの遺伝子であってもよい。治療的又は免疫原性核酸の配列は、標的遺伝子の核酸配列に対して100%相補的でなくてもよい。
【0076】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、対象における遺伝情報の標的化された特異的変化に使用されてもよい。一実施形態は、本明細書におけるナノ粒子組成物の投与を含む、対象における遺伝情報の標的化された特異的変化を含む。本明細書で使用される場合、「変化」という用語は、対象の細胞におけるゲノムの変更を指す。変化は、標的遺伝子の配列におけるヌクレオチドの挿入又は欠失であってもよい。「挿入」は、標的遺伝子の配列に1つ以上のヌクレオチドを添加することを指す。「欠失」という用語は、標的遺伝子の配列における1つ以上のヌクレオチドの喪失又は除去を指す。変化は、標的遺伝子の配列の修正であってもよい。「修正」は、宿主生物の遺伝子型及び/又は表現型の改善によって顕在化された遺伝子のより好ましい発現をもたらし得る、例えば、挿入、欠失又は置換による標的遺伝子の配列における1つ以上のヌクレオチドの変化を指す。
【0077】
遺伝情報の変化は、ゲノム編集技術を介して達成されてもよい。本明細書で使用される場合、「ゲノム編集」は、ゲノムのヌクレオチド配列を正確又は制御された方法で改変するプロセスを指す。
【0078】
例示的なゲノム編集システムは、例えば、2018年8月30日に公開され、本明細書に完全に記載されているように参照によって組み込まれる国際公開第2018/154387号パンフレットで記載されているように、クラスター化された規則的な配置の短い回文配列リピート(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats、CRISPR)システムである。一般的に、「CRISPRシステム」は、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列、tracrメイト配列、ガイド配列、又はCRISPR遺伝子座からの他の配列及び転写産物を含む、CRISPR関連(Cas)遺伝子の発現に関与する転写産物及び他のエレメントを指す。1つ以上のtracrメイト配列は、プロセシング前のガイド配列、又はプロセシング後のcrRNAにヌクレアーゼにより操作可能に連結されていてもよい。本明細書に完全に記載されているように参照によって組み込まれるCongら、Science、15:339(6121):819-823(2013)及びJinekら、Science、337(6096):816-21(2012)で記載されているように、tracrRNAとcrRNAは、連結されてもよく、成熟したcrRNAが部分的なtracrRNAに合成ステムループを介して融合され天然のcrRNA:tracrRNA二重鎖を模倣したキメラ型crRNA-tracrRNAハイブリッドを形成してもよい。本明細書において、単一の融合crRNA-tracrRNAコンストラクトは、ガイドRNA、gRNA又はシングルガイドRNA(sgRNA)とも呼ばれる。sgRNA内で、crRNA部分は、「標的配列」と同定され、tracrRNAは、多くの場合、「足場」と呼ばれる。一実施形態において、本明細書に記載のナノ粒子組成物は、sgRNAの送達に使用されてもよい。
【0079】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、メガヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼ、TALENベースのシステム又はジンクフィンガーヌクレアーゼを含む他の例示的なゲノム編集システムを適用するために使用されてもよい。ナノ粒子組成物は、これらの遺伝子編集ツールの配列をコードする核酸(RNA及び/若しくはDNA)、並びに実際の遺伝子産物、タンパク質、又は他の分子の送達に使用されてもよい。
【0080】
一実施形態において、ナノ粒子組成物は、例えば、対象から細胞を単離し、遺伝子を編集し、編集された細胞を対象に移植することにより、生体内又は生体外で対象での遺伝子標的化に使用されてもよい。一実施形態は、本明細書におけるナノ粒子組成物を対象から単離した細胞に投与することを含む方法を含む。この方法は、遺伝子標的化を含んでもよい。この方法は、編集された細胞を対象に移植することを含んでもよい。
【0081】
一実施形態は、薬剤を細胞に導入する方法を含む。この方法は、細胞を本明細書におけるナノ粒子組成物に曝露することを含んでもよい。薬剤は、核酸であってもよい。薬剤は、上述したものであってもよい。この方法は、薬剤が核酸である場合、トランスフェクションを行う方法であってもよい。薬剤は、本明細書に記載されているように構成されたナノ粒子の溶液を、細胞が培養される液体培地と混合することにより、細胞に導入されてもよい。実施例が以下に提供される。
【0082】
以下の実施形態リストは、本発明の具体的な実施形態を含む。しかし、このリストは、限定するものではなく、代替の実施形態又は別途本明細書に記載された実施形態を排除するものではない。
【0083】
実施形態リスト
1. 式Ia又は式Ibで表される構造を有する核酸担体であって、
【化10】
式中、PEは、コアと、1世代以上形成する複数のモノマーポリエステル単位とを含むポリエステルデンドリマー又はデンドロンであり、Aは、アミンリンカーであり、Bは、疎水性単位であり、zは、表面基の数である、核酸担体。
【0084】
2. PEは、式IIを有し、
[(コア)-Gn-O] II
式中、cは、コア多重度又は上記コア由来のウェッジ数であり、その値が独立して1~6の範囲にあり、Gは、デンドリマー又はデンドロンの層又は世代であり、nは、世代数であり、1~10の範囲にある、実施形態1に記載の核酸担体。
【0085】
3. 上記複数のモノマーポリエステル単位は、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸又は2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸である、請求項1又は2に記載の核酸担体。
【0086】
4. zは、式IIIを有し、
z=cb III
式中、bは、分岐点多重度又は各分岐点における分岐数であり、cは、コア多重度又は上記コア由来のウェッジ数であり、1~6の範囲にあり、nは、世代数であり、1~10の範囲にある、実施形態1~3のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0087】
5. cは1であり、上記コアは1方向コアである、実施形態1~4のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0088】
6. 上記1方向コアは、カルボン酸又はその誘導体である、実施形態5に記載の核酸担体。
【0089】
7. 上記コアは、
【化11】
からなる群から選択され、
式中、Yは、メチル、イソプロピル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、アジド(N3)、ハロゲン(Cl、Br若しくはI)、アセチレン(C)、ヒドロキシル(-OH)、又はチオール(-SH)、-ピラノシル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及び複素環から選択され、Aは、アミンリンカーであり、Bは、疎水性単位であり、mは、1~20である、実施形態5に記載の核酸担体。
【0090】
8. 上記シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、ハロゲン基、ヒドロキシル基(-OH)及びアルキル基から選択される少なくとも1つの基で置換される、実施形態7に記載の核酸。
【0091】
9. cは3であり、上記コアは3方向コアである、実施形態1~5のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0092】
10. 上記3方向コアは、トリメチロールプロパン、又は1,1,1-トリス(ヒドロキシフェニルエタン)であり、かつ、それぞれ
【化12】
で表される構造を有する、実施形態9に記載の核酸担体。
【0093】
11. cは4であり、上記コアは4方向コアである、実施形態1~5のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0094】
12. 上記4方向コアは、ペンタエリスリトール、アダマンタン-1,3,5,7-テトラオール又は5,10,15,20-テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)-21H,23H-ポルフィン、[1,1’-ビフェニル]-3,3’,5,5’-テトラオール、2,3,6,7-テトラヒドロキシ-9,10-ジメチル-アントラセン、3.9,10-ジメチル-9,10-ジヒドロ-9,10-エタノアントラセン-2,3,6,7-テトラオール、4.6,13-ジヒドロペンタセン-5,7,12,14-テトラオール、ヘキサヒドロ-[1,4]ジオキシノ[2,3-b][1,4]ジオキシン-2,3,6,7-テトラオール、アントラセン-1,4,9,10-テトラオール、ピレン-1,3,6,8-テトラオール及び3,3,3’,3’-テトラメチル-2,2’,3,3’-テトラヒドロ-1-1’-スピロビ[インデン]-5,5’,6,6’-テトラオールからなる群から選択され、かつ、それぞれ
【化13】
【化14】
で表される構造を有する、実施形態11に記載の核酸担体。
【0095】
13. Aは、N1-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)プロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)プロパン-1,3-ジアミン、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(エタン-1,2-ジアミン)、N1,N1’-(エタン-1,2-ジイル)ビス(N2-(2-アミノエチル)エタン-1,2-ジアミン)、N1-(2-(4-(2-アミノエチル)ピペラジン-1-イル)エチル)エタン-1,2-ジアミン、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルエタン-1,2-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルプロパン-1,3-ジアミン、3-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(メチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-((3-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)-N1-メチルブタン-1,4-ジアミン、4-((4-アミノブチル)(メチル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-(メチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)プロパン-1-オール、3,3’-(エチルアザンジイル)ビス(プロパン-1-オール)、N1-(3-アミノプロピル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4-((3-アミノプロピル)(エチル)アミノ)ブタン-1-オール、4-(エチル(3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(2-アミノエチル)-N1-メチルプロパン-1,3-ジアミン、N1-(4-アミノブチル)-N1-エチルブタン-1,4-ジアミン、4,4’-(エチルアザンジイル)ビス(ブタン-1-オール)、3-((3-アミノプロピル)アミノ)プロパン-1-オール、N1-(3-アミノプロピル)ブタン-1,4-ジアミン、4-((3-ヒドロキシプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、N1-(4-アミノブチル)ブタン-1,4-ジアミン、3,3’-アザンジイルビス(プロパン-1-オール)、4-((3-アミノプロピル)アミノ)ブタン-1-オール、4,4’-アザンジイルビス(ブタン-1-オール)及びN1,N1’-(ブタン-1,4-ジイル)ビス(プロパン-1,3-ジアミン)からなる群に由来し、かつ、それぞれ
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
で表される構造を有する、実施形態1~12のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0096】
14. Bは、C-C22アルキル基又はC-C22アルケニル基である、実施形態1~12のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0097】
15. 上記C-C22アルキル基又はC-C22アルケニル基は、ハロゲン、-CN、-NO、-N、C-Cアルキル、ハロ(C-Cアルキル)、-OR、-NR、-COR、-OC(O)R、-CON(R)、-OC(O)N(R)、-NHC(O)N(R)、-NHC(NH)N(R)、C-Cシクロアルキル、C-Cシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択された1~4個の置換基で置換され、Rは、水素、C-Cアルキル、ハロ(C-Cアルキル)、C-Cシクロアルキル、C-Cシクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環からなる群から選択される、実施形態14に記載の核酸担体。
【0098】
16. 上記1~4個の置換基は、OR、-NR、-COR、-OC(O)R、-CON(R)、-OC(O)N(R)、-NHC(O)N(R)及び-NHC(NH)N(R)から選択される、請求項15に記載の核酸担体。
【0099】
17. 各シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロアリール及び複素環は、さらにR’で置換され、R’は、独立して、ハロゲン、-CN、-NO、-N、C-Cアルキル及びハロ(C-Cアルキル)からなる群から選択される、請求項15に記載の核酸担体。
【0100】
18. Bは不飽和アルキル基である、実施形態1~17のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0101】
19. Bは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ブト-3-エン-1-イル、オクト-7-エン-1-イル、12-トリデセニル、14-ペンタデセニル、17-オクタデセニル、オレイル、リノレイル及びアラキドニルからなる群から選択される、請求項1に記載の核酸担体。
【0102】
20.Bは、脂肪酸又はその誘導体に由来する、実施形態1~17のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0103】
21. 上記脂肪酸は、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸及びエイコサペンタン酸からなる群から選択される、実施形態20に記載の核酸担体。
【0104】
22. 上記脂肪酸の誘導体は、12-ヒドロキシ-9-シス-オクタデセン酸、12-メチルテトラデカン酸、12-メチルトリデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、18-メチルノナデカン酸、19-メチルアラキドン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、フィタン酸、(±)-2-ヒドロキシオクタン酸、(±)-3-ヒドロキシデカン酸、(±)-3-ヒドロキシオクタン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシオクタデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシヘキサデカン酸、2-ヒドロキシテトラデカン酸、2-ヒドロキシドデカン酸、DL-α-ヒドロキシステアリン酸、DL-β-ヒドロキシラウリン酸、DL-β-ヒドロキシミリスチン酸及びDL-β-ヒドロキシパルミチン酸からなる群から選択される、実施形態20に記載の核酸担体。
【0105】
23. 上記脂肪酸は、1つ以上の安定同位体を含む、実施形態20~22のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0106】
24. 上記安定同位体は炭素又は水素の安定同位体である、実施形態23に記載の核酸担体。
【0107】
25. 上記炭素の安定同位体は13Cである、実施形態24に記載の核酸担体。
【0108】
26. 上記水素の安定同位体はHである、請求項24に記載の核酸担体。
【0109】
27. 上記安定同位体を含む上記脂肪酸は、オクタン酸-1-13C、オクタン酸-8-13C、オクタン酸-8,8,8-d3、オクタン-H15酸、デカン酸-1-13C、デカン酸-10-13C、デカン-10,10,10-d3酸、デカン-d19酸、ウンデカン酸-1-13C、ラウリン酸-12,12,12-H3、ラウリン-H23酸、ラウリン酸-1-13C、ラウリン酸-1,12-13、トリデカン-2,2-H2酸、ミリスチン酸-14-13C、ミリスチン酸-1-13C、ミリスチン酸-14,14,14-H3、ミリスチン-H27酸、パルミチン酸-1-13C、パルミチン酸-16-13C、パルミチン酸-16-13C,16,16,16-H3、パルミチン酸-H31、ステアリン酸-1-13C、ステアリン酸-18-13C、ステアリン酸-18,18,18-H3、ステアリン-H35酸、オレイン酸-1-13C、オレイン酸-H34、リノレン酸-1-13C、リノール酸-H32、アラキドン-5,6,8,9,11,12,14,15-H8酸及びエイコサン-H39酸からなる群から選択される、実施形態23~26のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0110】
28. Pは、2つのアジド基を有するホモ二官能性リンカーであり、式IVで表される構造を有し、
【化19】
式中、mが1~20の範囲の数である、実施形態1~27のいずれか1つ以上に記載の核酸担体。
【0111】
29. 実施形態1~29のいずれか1つに記載の核酸担体と、該核酸担体に封入された治療的又は免疫原性核酸剤とを含む、ナノ粒子組成物。
【0112】
30. 上記治療的又は免疫原性核酸剤は、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、DNA、cDNA、RNA、repRNA、siRNA、miRNA、sgRNA及びmRNAからなる群から選択される、実施形態29に記載のナノ粒子組成物。
【0113】
31. 上記治療的又は免疫原性核酸剤は、感染症、病原体、癌、自己免疫疾患及びアレルギー疾患からなる群より選択される1つ以上の抗原をコードする、実施形態29又は30に記載のナノ粒子組成物。
【0114】
32. 上記治療的又は免疫原性核酸剤は、遺伝子の活性をサイレンシングするか、抑制するか又は改変することができるRNA又はDNAを含む、実施形態29又は30に記載のナノ粒子組成物。
【0115】
33. PEG-脂質をさらに含む、実施形態29~32のいずれか1つに記載のナノ粒子組成物。
【0116】
34. 上記PEG-脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリ-エチレングリコール)-2000]又は1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000である、実施形態33に記載のナノ粒子組成物。
【0117】
35. ナノ粒子組成物当たり上記PEG-脂質を1モル%~10モル%の範囲で含む、実施形態33又は34に記載のナノ粒子組成物。
【0118】
36. リン脂質及びコレステロール又はその誘導体をさらに含む、実施形態33~35のいずれか1つに記載のナノ粒子組成物。
【0119】
37. 上記リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)又はジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)である、実施形態36に記載のナノ粒子組成物。
【0120】
38. ナノ粒子組成物当たり上記リン脂質を10モル%~15モル%の範囲で含む、実施形態37に記載のナノ粒子組成物。
【0121】
39. ナノ粒子組成物当たり上記コレステロール又はその誘導体を50モル%~75モル%で含有する、実施形態36に記載のナノ粒子組成物。
【0122】
40. 対象の疾患又は病気を治療又は予防する方法であって、治療有効量の実施形態29~39のいずれか1つに記載のナノ粒子組成物を、必要とする対象に投与することを含む、方法。
【0123】
41. 治療有効量の上記ナノ粒子組成物は、上記対象の1kg体重当たり上記治療的又は免疫原性核酸剤を0.01mg核酸~10mg核酸の範囲で含む、実施形態40に記載の方法。
【0124】
42. 上記対象は哺乳動物である、実施形態41に記載の方法。
【0125】
43. 上記哺乳動物は、ニワトリ、齧歯動物、イヌ、霊長類動物、ウマ、高価値の農業動物及びヒトからなる群から選択される、実施形態42に記載の方法。
【実施例
【0126】
以下の非限定的な実施例は、特定の実施形態を例示するためのものである。実施形態全体は、以下の1つ以上の実施例から1つ以上の詳細で補足されてもよく、及び/又は実施形態の1つ以上の要素は、以下の1つ以上の実施例から1つ以上の詳細で置換されてもよい。
【0127】
実施例1. 脂肪酸で修飾された生分解性デンドリマーを含有するナノ粒子組成物
デンドリマーの表面基の特性は、それらの物理化学的特性、生物学的活性及び生体適合性を決定する。理想的な遺伝子送達媒体は、生物蓄積及びその後の細胞毒性を予防するために生分解性であるべきである。大きなデンドリマーは、パッケージ性が高いため、生分解しにくい。生分解性を維持し、細胞毒性を回避しながら、核酸と複合化し、細胞膜を横切って移動することができる低世代のデンドリマーが必要とされている。
【0128】
好ましくは、モノマー単位に存在する化学結合は、エステル結合であり、低世代ポリエステルデンドリマーの末端層は、アミド結合を介して内因性/必須脂肪酸側鎖で置換され、エステラーゼ及びアミダーゼによる血漿中の加水分解の影響を受けやすいため、生分解性を有する。脂肪酸鎖を有するこのような低世代デンドリマーは、核酸と非共有結合して、それらの動的均衡の性質を介してナノ粒子を形成することができる。
【0129】
本実施例の修飾デンドリマーは、以下のように、(1)トリメチロールプロパンコア(世代1、2)を有するビス-MPA-OH若しくは2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸デンドリマー、(2)ペンタエリスリトールコア(世代1、2)を有するビス-MPA-OHデンドリマー、(3)1,1,1-トリス(ヒドロキシフェニルエタン)コアを有するビス-MPA-OHデンドリマー、又は(4)アダマンタンコアを有するビス-MPA-OHデンドリマーからなるものであった。
【0130】
(1)トリメチロールプロパンコアを有するビス-MPA-OHデンドリマー
(世代1、2)
【化20】
【0131】
(2)ペンタエリスリトールコアを有するビス-MPA-OHデンドリマー
(世代1、2)
【化21】
【0132】
(3)1,1,1-トリス(ヒドロキシフェニルエタン)コアを有するビス-MPA-OHデンドリマー(世代1、2)
【化22】
【0133】
(4)アダマンタンコアを有するビス-MPA-OHデンドリマー
(世代1、2)
【化23】
【0134】
図1は、世代1の修飾ポリエステルデンドリマー及び修飾に使用できる脂肪酸側鎖(B)の概略図である。該図において、脂肪酸側鎖Bは、C-C28脂肪酸のいずれかから選択することができる。
【0135】
PE-リノールの合成例は、以下のとおりである。
【化24】
【0136】
【化25】
【0137】
【化26】
【0138】
【化27】
【0139】
化合物1:出発原料であるビス-MPA-OHデンドリマートリメチロールプロパンコア、世代1(300mg、0.62mmol)を乾燥DCM(6mL)に溶解し、ピリジン(0.9mL、4.96mmol)を加えた後、乾燥DCM(25mL)に溶解したp-ニトロフェニルクロロホルメート(2.1g、10mmol)を加え、反応混合物を0℃~室温(23℃)で一晩(16時間)撹拌した。翌日、TLCは、生成物の形成を示す。反応混合物を1.33MのNaHSOで希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、蒸発させた。粗反応混合物を40gシリカゲルカラムに充填した。次に、DCM/EtOAcを使用したフラッシュクロマトグラフィーにより、充填された化合物を精製した。この化合物を8%EtOAcで溶出し始め、所望の生成物を淡黄色オイル(870mg、65%)として得た。H NMR(301MHz、クロロホルム-d)δ ppm 0.93-1.02(m,3H),1.34-1.42(m,9H),1.54-1.65(m,2H),4.19-4.25(m,6H),4.42-4.56(m,12H),7.27-7.37(m,12H),8.15-8.24(m,12H)。
【0140】
化合物2:乾燥DCM(6mL)に溶解した化合物1、PNPカーボネート(450mg、0.31mmol)の溶液を乾燥DCM(6mL)に溶解した過剰のモノ-Boc-DAPMA(453mg、1.85mmol)に加えた。乾燥DCM(4mL)中のDMAP(76mg、0.62mmol)とDIPEA(0.32ml、1.86mmol)の溶液を加え、アルゴン雰囲気下で、反応混合物を23℃で一晩16時間撹拌した。TLCにより反応終了を確認した。次に、粗生成物を、移動相a(DCM)/移動相b(CHCl/MeOH/NHOHaq)を使用したフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。化合物を40%移動相b(Rf=0.1(1:1移動相a/移動相b)で溶出し始め、所望の生成物を淡黄色オイル(400mg、62%)として得た。H NMR(301MHz、クロロホルム-d)δ ppm 0.66-0.78(m,3H),0.98-1.07(m,9H),1.18-1.28(m,54H),1.38-1.52(m,24H),1.97-2.06(m,18H),2.12-2.24(m,24H),2.85-3.00(m,24H),3.17-3.25(m,12H);13C NMR(76MHz、メタノール-d)δ ppm 17.92,27.95,28.04,28.71,39.58,40.11,42.18,42.59,48.01,54.69,56.01,56.08,64.76,66.72,79.66,158.03,158.25,174.08。
【0141】
化合物5:171mgの化合物4(0.082mmol)を3mlのMeOHに溶解した後、この化合物を34当量のAcCl(0.2ml)で処理し、反応物を0~23℃で16時間撹拌した後、乾固するまで蒸発させ、2mlのDMFに溶解し、0.1mlのEtN(0.73mmol、9当量)を加えた後、2mlのDMFに溶解した365mgのリノール-NHS(本明細書に完全に記載されているように参照によって組み込まれる公開された手順:Talukderら、国際公開第2020/132196号パンフレットに従って合成した)を加えた。反応混合物を23℃で24時間撹拌した後、減圧下でGenevacで濃縮し、40分間にわたる100%CHClから75:22:3のCHCl/MeOH/NHOHaq(体積)への勾配溶出によりシリカカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーで精製した。所望の生成物を50:7:1のCHCl/MeOH/NHOHaqで溶出した。生成物を含有する画分を合わせ、勾配的な高真空下で12時間乾燥し、所望の生成物を淡黄色オイル(40mg、16%)として得て、使用するまで4℃で保存した。H NMR(300MHz、クロロホルム-d)δ ppm 0.85-0.94(m,21H),1.13-1.40(m,93H),1.44-1.51(m,2H),1.51-1.71(m,43H),1.94-2.06(m,24H),2.09-2.22(m,34H),2.34-2.44(m,24H),2.69-2.79(m,9H),3.09-3.33(m,26H),3.97-4.26(m,17H),5.22-5.46(m,22H)。
【0142】
実施例2. 式(I)の化合物
以下の化合物は、上述した手順に従って製造されてもよく、所望の生成物を提供するために必要な場合には出発材料は変更される。
【化28】
【0143】
【化29】
【0144】
【化30】
【0145】
【化31】
【0146】
【化32】
【0147】
【化33】
【0148】
【化34】
【0149】
【化35】
【0150】
【化36】
【0151】
【化37】
【0152】
【化38】
【0153】
【化39】
【0154】
【化40】
【0155】
【化41】
【0156】
【化42】
【0157】
【化43】
【0158】
【化44】
【0159】
【化45】
【0160】
【化46】
【0161】
【化47】
【0162】
実施例3. ナノ粒子製剤
図2は、改善された自己組織化のために設計したナノ粒子組成物の調製方法を示す。1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG-脂質、Avanti Polar Lipid)と組み合わせた修飾デンドリマー(PE-ステアリン)を含有する30μlのエタノール相と、90μlの超純粋、DNase/RNaseフリー及びエンドトキシンフリー蒸留水(Invitrogen(インビトロジェン))で希釈したルシフェラーゼmRNAと、滅菌した100mM(pH5.0)QBクエン酸緩衝液(Teknova(テクノバ))とを直接混合することにより、最終的なクエン酸濃度が10mMとなるようにナノ粒子を製剤化した。得られたナノ粒子では、修飾デンドリマー:PEG-脂質:RNAの質量比が6:1:2であった。Zetasizer Nano ZS(Malvern Panalytical(マルバーン・パナリティカル))を使用して粒径分布、Z平均及び誘導計数率を分析するために、製剤を1000倍希釈した。
【0163】
実施例4. 流体力学的サイズの測定
図3は、ナノ粒子のサイズ(d.nm、nm単位の直径)に基づいて強度として測定したナノ粒子組成物の分布を示す。図3を参照すると、「Z平均」は、動的光散乱(DLS)によって測定した粒子の全体の集合の強度重み付け平均流体力学的サイズである。図3を参照すると、サイズが248.4d.nmのナノ粒子の最も強い強度が観察された。
【0164】
実施例5. ゲル遅延アッセイ
アガロースゲル電気泳動を実行して、修飾デンドリマーとRNAとの結合を公知の方法(Geallら、10.1073/pnas.1209367109、本明細書に完全に記載されているように参照によって組み込まれる)に従って評価した。図4は、修飾デンドリマーとRNAとの結合を示すアガロースゲルの写真である。ゲルを臭化エチジウム(EB)で染色し、ゲル画像をSyngene G Boxイメージングシステム(Syngene(シンジーン)、米国)で撮影した。図4を参照すると、レーン1は、非製剤化ルシフェラーゼmRNAを含有し、レーン2は、PE-パルミチンデンドリマーとルシフェラーゼmRNAの製剤物を含有し、レーン3は、PE-ヘプタデカンとルシフェラーゼmRNAの製剤物を含有し、レーン4は、PE-ステアリンとルシフェラーゼmRNAの製剤物を含有し、レーン5は、PE-オレイン及びルシフェラーゼmRNAの製剤物を含有し、レーン6は、PE-リノールとルシフェラーゼmRNAの製剤物を含有した。ローディングする前に、サンプルをホルムアルデヒドローディング染料でインキュベートし、65℃で10分間変性させ、室温まで冷却した。ゲルを90Vで実行し、ゲル画像をSyngene G Boxイメージングシステム(Syngene、米国)で撮影した。RNA検出のために、ゲルを臭化エチジウムで染色した。図4を参照すると、下側バンドは、小さなサイズのフリーRNA(レーン1)に対応し、上側バンドは、該RNAをデンドリマー担体に結合して形成された大きなサイズのナノ粒子を示す。
【0165】
実施例6. 材料安定性
ポリエステルデンドリマーは、エステル結合の加水分解感受性により分解しやすいため、特有の材料クラスを構成する。しかしながら、理想的な核酸担体は、製剤pHだけでなく、保存pHにおいても安定であるべきである。したがって、デンドリマー材料の安定性を異なるpHで確認した。図5は、中性pH及びpH5でのデンドリマーのLCMSクロマトグラムを示す。室温での中性pH及びpH5の両方で単一のピーク(溶出時間13.42分)を示すクロマトグラムは、pH5でRNAを製剤化しながら、ポリエステルデンドリマー構造が無傷であることを示す。
【0166】
実施例7. 脂肪酸で修飾したポリエステルデンドリマーを含有するナノ粒子組成物のコロイド安定性
製剤化及び4℃での保存の21日後の粒径分布と2時間の透析直後に測定した粒径分布とを比較することによりナノ粒子の安定性を決定した。同じポリエステルデンドリマーは、室温だけでなく37℃でも十分に凝集することなくPBS中で良好な安定性を示した。図6A~6Eは、DLS及びアガロースゲル電気泳動により測定したPBSにおけるRNA-PEステアリンナノ粒子の安定性を示す。図6Aは、ナノ粒子のサイズ(d)に基づいて強度として測定した透析後のナノ粒子組成物の分布を示す。図6Bは、4℃で3週間保存後にDLSにより測定したPE-ステアリン PR8 HA mRNAの安定性を示す。図6Cは、室温(RT)で3日間保存後にDLSにより測定したPE-ステアリン PR8 HA mRNAの安定性を示す。図6Dは、37℃で2時間保存後にDLSにより測定したPE-ステアリン PR8 HA mRNAの安定性を示す。図6Eは、レーン1-PR8 HA mRNA、レーン2-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、4°、3週間、レーン3-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、rt、3日、レーン4-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、37℃、1時間、レーン5-PE-ステアリン PR8 HA mRNA、37℃、2時間というゲル保持アッセイに基づく安定性の結果を示す。粒径分布が同じであり、これらの保存条件下で安定性を示すことが観察された。
【0167】
実施例8. 細胞ベースのルシフェラーゼmRNAの発現分析
5’UTR、ルシフェラーゼORF、3’UTR及びポリA末端からなるルシフェラーゼcDNA発現カセットを設計した。GenScriptにより、このカセットを合成し、T7プロモーター下流のNhel/KpnlサイトでpcDNA3.1ベクターにクローニングした。誘導された発現ベクターを、生体外でのT7ベースの転写(Hongene(ホンジーン)、#ON-040)及びワクシニアウキャッピング系(Hongene、#ON-028)によりルシフェラーゼmRNAを合成するDNAテンプレートとして使用した。塩化リチウム沈殿による精製後、さらなる分析のために、ルシフェラーゼmRNAをポリエステルデンドリマーで製剤化してナノ粒子を形成した。ATCCから取得したRAW264.7(ATCC、TIB-71)及びA549(ATCC、CCL-185)細胞を、ATCCにより提案されるプロトコルに従って成長させ、維持した。新たに製剤化したナノ粒子のmRNAを哺乳動物細胞に送達してタンパク質を発現させる能力をテストするために、96ウェルプレートで成長させたRAW264.7細胞又はA549細胞の単層を50μlのPBSで1ウェル当たり50ngのルシフェラーゼmRNAナノ粒子でトランスフェクトした。37℃で1時間インキュベートした後、成長培地をウェル当たり50μl加えた。トランスフェクション後の指定された時間点で、細胞を溶解し、ルシフェラーゼワンステップグローアッセイキット(ThermoFisher(サーモフィッシャー)、#88263)を使用してルシフェラーゼ活性を測定した。図7A及び図7Bは、修飾ポリエステルデンドリマーベースのナノ粒子により哺乳類細胞に送達され、発光アッセイを使用した細胞内ルシフェラーゼ活性の定量化により測定したルシフェラーゼmRNAからの細胞培養におけるルシフェラーゼ発現を示す。図7Aは、裸のルシフェラーゼmRNAと比較して、PE-リノール、PE-ステアリン及びPE-パルミチンを含有するナノ粒子により送達されたルシフェラーゼmRNAの細胞培養発現を示す。図7Bは、裸のルシフェラーゼmRNAと比較して、PE-ヘプタデカン、PE-ステアリン、PE-オレイン及びPE-16-ヒドロキシパルミチンを含有するナノ粒子によって送達されるルシフェラーゼmRNAの細胞培養発現を示す。これらの図を参照すると、全てのRNAナノ粒子がRAW264.7細胞によって取り込まれることが可能であり、遺伝子発現につながることが観察された。
【0168】
実施例9. HA発現のウエスタンブロット分析
5’UTR及び3’UTRに挟まれ、ポリA末端が続く全長HA ORF(PR8 HA)からなるインフルエンザHA発現カセットを合成し、T7プロモーターの下流でpcDNA3.1ベクターにクローニングした。このHA発現ベクターを、生体外でのT7ベースの転写(Hongene、#ON-040)及びワクシニアウキャッピング系(Hongene、#ON-028)によりHA mRNAを合成するためのDNAテンプレートとして使用した。塩化リチウム沈殿による精製後、HA mRNAを製剤化し、デンドリマーベースのナノ粒子を形成した。ウエスタンブロット分析のために、12ウェルプレートで成長したA549細胞を1mlのPBSでウェル当たり2μgのHA mRNAナノ粒子でトランスフェクトした。37℃で1時間インキュベートした後、各ウェルに1mlの成長培地を加えた。トランスフェクション後の24時間で、製造業者のプロトコルに従って、細胞を収集し、かつRIPA緩衝液(Biovision(バイオビジョン)、#2114)で溶解した。細胞溶解物をLaemmli(レムリ)サンプル緩衝液と混合し、混合物をSDS-PAGE(10%Bis-Tris Plus Gels、ThermoFisher、#NW00100BOX)により分析し、かつPVDF転写膜(ThermoFisher、#IB24002)にエレクトロブロットした。PBS中の5%非脂肪乾燥ミルクと0.1%Tween-20で一晩ブロックした後、同じ緩衝液で希釈したインフルエンザAウイルスH1N1 HA抗体(GeneTex(ジーンテックス)、#GTX127357)で、膜を室温で1時間インキュベートした。図8は、HA発現のウエスタンブロット分析を示す。HRP(ThermoFisher、#A12172)に結合したヒツジ抗ウサギIgG(H+L)二次抗体を使用したChemi-XRSシステム(SynGene)と、化学発光検出システム(ProSignal(登録商標)Femto ECL Reagent、Prometheus #20-302)とにより、HAタンパク質(図8、矢印で示す)を可視化した。図8を参照すると、RNAナノ粒子の一部がA549細胞によって取り込まれることが可能であり、遺伝子発現につながることが観察された。
【0169】
実施例10. ヘマグルチニン阻害アッセイ(HAI)
標準的な推奨WHOプロトコル[World Health Organization(世界保健機関).(2002). WHO manual on animal influenza diagnosis and surveillance 2002.5 Rev.1.2002]に従って、ワクチン接種した動物血清に対してHAIテストを実行した。血清を、受容体破壊酵素(デンカ生研株式会社、東京、日本)で37℃で一晩処理し、56℃で30分間加熱不活性化した。RTまで冷却した後、これらの血清サンプルを、2体積のシチメンチョウ赤血球(RBC、Rockland Immunochemicals(ロックランド・イムノケミカルズ))の25%懸濁液と混合し、室温で2時間インキュベートした後、遠心分離してRBCを除去した。1:10の希釈度にあると考えられる処理した血清を連続希釈し、かつ4HA単位の不活性化インフルエンザAウイルス(PR/8/34、Virusys(ウイルシス) #IAV210)と室温で30分間インキュベートした。等体積の0.5%シチメンチョウRBCを各ウェルに加え、室温で30分間インキュベートした。HAI力価を、血球凝集を完全に阻害した血清の最高希釈度として読み取った。
【0170】
プライムワクチン接種後、PE-オレインを用いて製剤化した5μgのナノ粒子ワクチンで免疫したHA mRNA群には、HI力価で測定した体液性免疫応答が観察された(図9)。4週目に、この群の平均HI力価は40であり、同じワクチンの投与量によるブースト免疫を行った1週間後、5週目に平均192まで上昇し続けた。これは、全ての時間点でHI力価が基準線10にとどまった裸のmRNAで免疫した群とは対照的である。
【0171】
実施例11. DNAを含有するナノ粒子組成物
SEAP配列をpcDNA3プラスミドにクローニングすることによりSEAP DNAを生成した。このプラスミドは、細菌培養における維持及び増殖に必要な複製及びアンピシリン耐性遺伝子の必要な起源と、組織培養における哺乳動物細胞の発現を駆動する遺伝子クローニング部位の上流の哺乳動物CMVプロモーターと、該CMVプロモーターの下流のバクテリオファージT7転写プロモーターとを含有することにより、BspQI制限部位で終結したクローニングした遺伝子配列をコードするmRNAを生体外で転写する。In-Fusion(Clontech Laboratories(クロンテック・ラボラトリーズ))クローニングキットを用いて、市販のDNA断片からプラスミドを構築した。
【0172】
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[メトキシ(ポリエチレングリコール)-2000](PEG-脂質、Avanti Polar Lipid)と組み合わせた修飾デンドリマー(PE-リノール)を含有する20μlのエタノール相と、60μlの超純粋、DNAase/RNaseフリー及びエンドトキシンフリー蒸留水(Invitrogen)で希釈したSEAP DNAと、滅菌した100mM(pH5.0)QBクエン酸緩衝液(Teknova)とを直接混合することにより、最終的なクエン酸濃度が10mMとなり、最終的なDNA濃度が0.38mg/mLとなるようにPE-リノール-SEAP DNAナノ粒子を製剤化した。エタノールとクエン酸ストリームとを、エタノール体積:クエン酸体積=1:3の比率で混合し、ナノ粒子を製造した。得られたナノ粒子では、修飾デンドリマー:PEG-脂質:DNAの質量比が6:1:2であった。Zetasizer Nano ZS(Malvern Panalytical)を使用して粒径分布、Z平均及び誘導計数率を分析するために、製剤を1000倍希釈した。
【0173】
図10は、PE-リノール修飾デンドリマーとSEAP DNAとの混合により生成されたナノ粒子の粒径分布を示す。
【0174】
【表1】
【0175】
これらのナノ粒子が生体外でSEAPを発現する能力をテストするために、293T細胞をナノ粒子で処理した。293Tの96ウェル皿の各ウェルを、1:1のOptimem:PBSの混合物で200μLの最終体積に希釈した10μL(約0.25μg)の各製剤物で処理した。非処理ウェルは、200μLの50/50のPBS/OptiMEMであった。処理又はトランスフェクションの24時間後、各培養物から馴化された培地を収集した。QuantiBlueアッセイ(InvivoGen)を用いて培地を分析した。180μLのQuantiblue試薬をウェルからの50μLの培地と組み合わせた。製造業者のプロトコルの指示に従って、650nmで吸光度を測定することにより、40分間後に測定値を読み取った。処理なしの陰性対照のために、ナノ粒子で処理していないウェルからの50μLの培地を180μLのQuantiBlue試薬に加えた。アッセイの全てのステップにおいて、これらのサンプルを他の全てのサンプルと同じ方法で処理した。
【0176】
図11は、293T細胞の処理に使用した修飾デンドリマーによるナノ粒子製剤の生体外SEAP発現を示す。PE-ヘプタデカン、PE-オレイン及びPE-リノールで製剤化したSEAP DNAは、SEAP発現をもたらすナノ粒子を生成した。
【0177】
実施例12. 脂肪酸で修飾したポリエステルデンドロンを含有するナノ粒子組成物
末端に脂肪酸尾部を含むように修飾したPEデンドロン(例えば、PEデンドロン-G2-A1-リシノール):DSPC:コレステロール:DMG-PEG2kを1:0.5:2.4:0.035のモル比で含有するナノ粒子を、NanoAssemblr Benchtop(Precision NanoSystems Inc(プレシジョン・ナノシステムズ)、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)を用いて製剤化した。DNase/RNaseフリー及びエンドトキシンフリー蒸留水と滅菌したクエン酸緩衝液とでRNAを最終的な所望のpHに希釈した。Benchtopでの製剤化のために、総流量を、水相と有機相の3:1の比率で1分当たり12mLに維持した。エンドトキシン除去のために1.0MのNaOHで24時間洗浄し、蒸気オートクレーブで滅菌するか、又は250℃で24時間加熱することにより脱発熱原化したガラス製品を使用して、20,000分子量のカットオフ透析を使用して、滅菌したエンドトキシンフリーPBSに対してナノ粒子を透析した。透析したナノ粒子を、0.2ミクロンポリ(エーテルスルホン)フィルターで滅菌濾過し、Zetasizer NanoZSマシン(Malvern(マルバーン))で特性解析した。サイズ分布は、比較的単分散のサイズを示す多分散性指数の低い単一のピークを特徴としていた。Ribogreen(登録商標)アッセイ(本明細書に完全に記載されているように参照によって組み込まれるGeallら、10.1073/pnas.1209367109)を使用して、カプセル化効率を、PEデンドロン_G2-A1-リシノール及びSEAPレプリコンRNAを含有するナノ粒子組成物(pH5で製剤化した)については95%と測定した。
【0178】
修飾PEデンドロンの製剤をテストするために、分泌された胚性アルカリホスファターゼSEAPレポーターシステムを使用した。生体内テストのために、マウスに5μgのSEAPレプリコンRNAの量でナノ粒子を注射し、16時間後にマウスから血清を採取した。量を、SEAP検出用のInvitrogen NovaBright(商標) Phospha-Light(商標) EXP Assayキットを使用して、製造業者のプロトコルに従って定量化した。BioTek Synergy HTXマイクロプレートリーダーで測定したマウス血清サンプルのSEAPの量を、任意単位(A.U.)で報告する。エラーバーは、±S.E.Mである。図12を参照すると、RNAは、結合力が弱いことによりpH5.0製剤からより早く放出されたため、pH4.0と比較してpH5.0製剤ではSEAP量が高くなることが観察された。
【0179】
実施例13. スパイク発現のウエスタンブロット分析
実施例12に記載の方法を用いて、12ウェル皿における約80%コンフルエンシーのBHK細胞を、ポリエステルデンドロン及びデンドリマー分子で製剤化したスパイクレプリコンRNAで処理した。培地を除去し、5μgのナノ粒子で細胞を処理した。細胞を37℃で一晩インキュベートし、掻き取りにより処理後の約16時間後に収穫した。細胞ペレットを13000rpmで3分間遠心分離した後、(HALT(商標)プロテアーゼ、ホスファターゼ阻害剤カクテル及びPierce(商標) Universal Nucleaseを補った)100μLのRIPAに再懸濁した後、25μLの6X SDS Laemmli緩衝液を添加した。サンプルを10分間煮沸した後、遠心分離して微粒子を除去した。20μLの各サンプルを10ウェルのBolt Bis-Tris SDS-PAGEゲル上で電気泳動により分離した。以前にスパイク発現の検証を行った非関連実験のサンプルを陽性対照として含めた。iBlot2乾式転写システムを使用して、タンパク質をゲルからPVDF膜に転写した。転写後、TBST+10%ミルク中に1:1000の希釈度でウサギ抗スパイク抗体を添加する前に、TBST+10%ミルクで膜を30分間ブロックした。膜を室温で45分間インキュベートした後、TBSTで3回洗浄した。次に、膜をTBST+10%ミルク中に、1:2000の希釈度で、ヒツジ抗ウサギHRP抗体とともに30分間インキュベートした。膜をTBSTで3回洗浄した後、Prometheus(商標) ProSignal(商標) Dura化学発光基質で現像した。GeneSysイメージングシステムを用いて化学発光反応を可視化した。図13を参照すると、PEデンドロン_G2-A1-リシノールを使用して製剤化したRNAナノ粒子がBHK細胞によって取り込まれることが可能であり、遺伝子発現につながることが観察された。
【0180】
実施例14. COVID-19スパイク三量体直接血清ELISA
実施例12に記載の方法を用いて、PEデンドロン-G2-リシノールで製剤化した10μgのスパイクレプリコンRNAで、脚の筋肉の両側IM注射により、マウス(BALB/c)にワクチン接種した(総体積100μLのPBS)。注射後21日及び28日でマウスを出血させ、凝固したサンプルを10000RCFで1.5分間遠心分離することにより、血清を全血から単離した。該血清については、直接ELISA法により抗スパイク抗体力価をアッセイした。Nunc MaxiSorp ELISAプレートを、4℃で、組換えスパイク三量体タンパク質を含有するpH9.5の炭酸水素塩コーティング緩衝液で一晩コーティングした。PBS+1%BSAでウェルをブロックした後、1:100の希釈度から始めて血清をウェルに添加し、PBS+1%BSA中、連続1:2溶液で1:12800まで希釈した。サンプルをRTで1時間インキュベートし、PBSTで3回洗浄した後、PBS+1%BSA中に1:3000の希釈度でヤギ抗マウスIgG HRPを加え、1時間インキュベートした。プレートを再びPBSTで5回洗浄し、発色性たHRP基質3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)を使用して現像した。H2S04の添加により反応を停止し、450nmと570nmで吸光度を測定した。終点力価は、450での吸光度-570での吸光度の値≧0.08となる最も高い希釈度として指定した。3週目に、PEデンドロン_G2-A1-リシノール(図14)を使用して製剤化した10μgのナノ粒子ワクチンで免疫した群における終点希釈力価は、512~1024の間であり、4週目に2048を超える平均値まで上昇し続けた。これは、全ての時間点で力価が基準線100に残存した、免疫しなかった血清陰性群とは対照的である。
【0181】
実施例15. 心臓及び脾臓組織へのRNA送達
実験群当たり6匹のBALB/cマウスに、ルシフェラーゼレポーター遺伝子をコードするレプリコンRNAの提示されたナノ粒子製剤を静脈注射により投与した。DlinMCDMA LNP対照製剤の場合、31.4μgのRNAを注射し、PEデンドロンG2-5A2-5リシノール製剤の場合、7.2μgのRNAを注射した。注射後の6、16及び42時間に2匹のマウスを屠殺し、心臓と脾臓を取り出し、全ての時間点が揃うまで液体窒素中に保存した。単離した心臓及び脾臓におけるルシフェラーゼ遺伝子の発現を定量するために、各臓器全体を、1mlのPBS中にVWR(登録商標)Mini Bead Mill Homogenizerを用いて30秒間均質化し、未加工ホモジネートを4℃で16000 RCFで10分間遠心分離した。遠心分離後、150μLの各上清(透明化したホモジネート)サンプルを白色壁の96ウェルアッセイ用プレートに入れ、Pierce(商標) Firefly Luc One-Step Glow Assay試薬150μLを加えた。各ウェルからの相対発光量(RLU)を、BioTek Synergy HTXマイクロプレートリーダーで測定した。バックグラウンド信号値は、RNA注射を受けていない同一の遺伝子型及び週齢の対照マウスの臓器について測定したRLUとして定義した。画像化データは、静脈内注射したナノ粒子について心臓と脾臓における高いルシフェラーゼ発現を示す(図15)。
【0182】
実施例16. 式[I]bの核酸担体を含有するナノ粒子組成物
樹状直鎖ブロック共重合体は、通常、樹状セグメントで末端官能化された直鎖であるハイブリッドである。いくつかのグループは、優れた収率で得られ、線状ポリマー(P)とともに2つのMPA樹状部分(PE)を含有するハイブリッド構造の送達のための容易な合成アプローチについて報告している。これらのPEGに基づくハイブリッドは、CuAACクリック化学を介して成功裏に構築されたものである。これらの材料については、コア中に単一の相補的クリック基を含むデンドロンへの収束性結合反応に、PEG末端基含有する一級アジド中間体を使用した。これらのハイブリッドの代表的な構造を以下に示す。
【化48】
Aは、アミンリンカーであり、Bは、疎水性単位であり、PEG200は、2つのポリエステルデンドロンを連結するリンカーである。
【0183】
PEデンドロンG2 A1リシ)2 PEG 200の合成例は、以下のとおりである。
【化49】
【0184】
【化50】
【0185】
【化51】
【0186】
【化52】
【0187】
化合物6:出発原料であるPEデンドロンG2アセチレン-OH(300mg、0.62mmol)を乾燥DCM(6mL)に溶解し、ピリジン(0.9ml、4.96mmol)を加えた後、乾燥DCM(15mL)に溶解したp-ニトロフェニルクロロホルメート(2.1g、10mmol)を加え、反応混合物を0℃~23℃で16時間撹拌した。翌日TLCは、生成物の形成を示す。反応混合物を1.33MのNaHSO4で希釈し、EtOAcで抽出した。有機層を塩水で洗浄し、Rotavap中で蒸発させた。次に、DCM/EtOAcを使用したフラッシュクロマトグラフィーにより、粗製物を精製した。この化合物は45%EtOAc(R=0.9、1:9EtOAc/DCM)で溶出し始め、所望の生成物を淡黄色オイル(553mg、70%)として与えた。
【0188】
化合物7:乾燥DCM(6mL)に溶解した化合物6(438mg、0.41mmol)の溶液を乾燥DCM(6mL)に溶解した過剰のモノ-Boc-DAPMA(0.45ML、1.64mmol)に加えた。乾燥DCM(1mL)中のDMAP(100mg、0.82mmol)とDIPEA(0.29ml、1.64mmol)の溶液を加え、アルゴン雰囲気下で、反応混合物を23℃で16時間撹拌した。TLCにより反応終了を確認した。粗生成物を減圧下でRotavapで濃縮し、40分間にわたる100%CH2Cl2(移動相a)から75:22:3のCHCl/MeOH/NHOHaq(体積、移動相b)への勾配溶出によりシリカカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーで精製した。所望の生成物を45%移動相b(R=0.4、1:1移動相a/移動相b)で溶出し、所望の生成物を淡黄色オイル(404mg、66%)として得た。
H NMR(301MHz、クロロホルム-d)δ ppm 1.10-1.27(m,9H),1.33-1.43(m,36H),1.52-1.65(m,15H)2.08-2.16(m,12H),2.26-2.37(m,16H),2.51-2.54(m,1H),3.02-3.20(m,15H),3.36-3.42(m,3H),4.01-4.26(m,10H),4.66-4.70(m,2H)5.24-5.27(m,3H),5.28-5.39(m,3H)5.88-5.97(m,3H)。
【0189】
化合物8:PEG-200-アジド(MW:200、11.4mg、57μmol)を50mlのRBFに入れ、次いでTHF(0.6mL)に溶解した化合物7(MW:1490、170mg、114μmol)を、CuSO4.5H2O(3mg、11.4μmol、10モル%、MW249.69)及びアスコルビン酸ナトリウム(4.5mg、22.8μmol、20モル%、MW198.11)及び脱気したTHF:H2O(2mL、1:1)と共に加えた。反応混合物を23℃で16時間撹拌した。翌日、TLCにより反応終了を確認した。反応混合物を、40分間にわたる100%CHCl(移動相a)から75:22:3のCHCl/MeOH/NHOHaq(体積、移動相b)への勾配溶出によりシリカカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーで精製した。所望の生成物を76%移動相b(R=0.65、75:22:3のCHCl/MeOH/NHOHaq)で溶出し、所望の生成物を黄色オイル(71mg、20%)として得た。MS(ESI) C1462683046に対する計算値 [M+4H]4+ m/z 795.5、実測値794.9、[M+3H]3+ m/z 1059.96、実測値1060.2。
【0190】
化合物9:70mgの化合物8(0.022mmol)を3mlのMeOHに溶解した後、この化合物を20当量のAcCl(0.03ml、0.44mmol)で処理し、反応物を23℃で5時間撹拌した後、乾固するまで蒸発させ、2mlのDMFに溶解し、0.06mlのEt3N(0.44mmol)を加えた後、2mlのDMFに溶解した104mgのリシノール-NHS(本明細書に完全に記載されているように参照によって組み込まれる公開された手順:Talukderら、国際公開第2020/132196号パンフレットに従って合成した)を加えた。反応混合物を23℃で24時間撹拌した後、40分間にわたる100%CHCl(移動相a)から75:22:3のCHCl/MeOH/NHOHaq(体積、移動相b)への勾配溶出によりシリカカラム上でのフラッシュクロマトグラフィーで精製した。所望の生成物を55%移動相b(R=0.85、70:24:6のCHCl/MeOH/NHOHaq)で溶出し、所望の生成物を黄色オイル(60mg、43%)として得た。H NMR(301MHz、クロロホルム-d)δ ppm 0.72-1.00(m,28H)1.03-1.22(m,26H),1.22-1.46(m,148H),1.51-1.59(m,13H),1.91-2.07(m,20H),2.08-2.25(m,60H),2.30-2.46(m,33H),3.11-3.34(m,33H),3.45(s,3H),3.52-3.72(m,17H),3.87(br s,4H),3.98-4.32(m,25H),4.54(br s,3H),5.22(s,3H),5.33-5.58(m,16H),6.12-6.36(m,7H),6.86(br s,7H),7.83(s,2 H)。
【0191】
NanoAssemblr Benchtop(Precision NanoSystems Inc、バンクーバー、ブリティッシュコロンビア州、カナダ)を用いて、式Ibの核酸担体(例えば、[PEデンドロン_G2-A1-リシノール]2 PEG 200):DSPC:コレステロール:DMG-PEG2kを1:0.5:2.4:0.035のモル比で含有するナノ粒子を製剤化した。DNase/RNaseフリー及びエンドトキシンフリー蒸留水と滅菌したクエン酸緩衝液とでRNAを最終的な所望のpHに希釈した。Benchtopでの製剤化のために、総流量を、水相と有機相の3:1の比率で1分当たり12mLに維持した。エンドトキシン除去のために1.0MのNaOHで24時間洗浄し、蒸気オートクレーブで滅菌するか、又は250℃で24時間加熱することにより脱発熱原化したガラス製品を使用して、20,000分子量のカットオフ透析を使用して、滅菌したエンドトキシンフリーPBSに対してナノ粒子を透析した。透析したナノ粒子を、0.2ミクロンポリ(エーテルスルホン)フィルターで滅菌濾過し、Zetasizer NanoZSマシン(Malvern)で特性解析した。サイズ分布は、比較的単分散のサイズを示す多分散性指数の低い単一のピークを特徴としていた(図16)。
【0192】
PEデンドロンG2 A1リシ)2 PEG 200の製剤をテストするために、分泌された胚性アルカリホスファターゼSEAPレポーターシステムを使用した。生体内テストのために、マウスに2.5μgのSEAPレプリコンRNAの量でナノ粒子を注射し、1日、3日、5日、7日後にマウスから血清を採取した。量を、SEAP検出用のInvitrogen NovaBright(商標) Phospha-Light(商標) EXP Assayキットを使用して、製造業者のプロトコルに従って定量化した。BioTek Synergy HTXマイクロプレートリーダーで測定したマウス血清サンプルのSEAPの量を、任意単位(A.U.)で報告する。エラーバーは、±S.E.Mである。図17を参照すると、二量体PEデンドロンG2 A1リシ)2 PEG 200で、SEAPの量は、単量体、PEデンドロン_G2-A1-リシノールよりも高かったことが観察された。
【0193】
実施例17. ナノ粒子組成物の追跡
生体外及び生体内での送達材料の追跡を容易にするために、修飾デンドリマーは、13C又はHなどの炭素(C)又は水素(H)の安定同位体を含有するコアを有することができる。レプリコンRNAなどの核酸とともに修飾デンドリマーをナノ粒子に製剤化する場合、ナノ粒子は、質量分析又は核磁気共鳴画像法などの公知の技術により、投与後に生体外及び生体内で追跡することができる。これらの安定同位体は組織において顕著に見出される豊富な12C及びH同位体とは異なるため、安定性同位体を含有することにより、送達分子の同定が容易となる。追跡は、投与後のナノ粒子の生体分布、物質クリアランス及び分子安定性の同定と、関連する問題とに有用である可能性がある。
【0194】
参考文献
本願全体にわたって引用される参考文献は、本明細書及びそれらの参考文献において明らかなあらゆる目的のために、それぞれの参考文献が完全に記載されているように、組み込まれる。説明のために、これらの参考文献の特定の1つは、本明細書において特定の位置に引用される。特定の位置での参考文献の引用は、参考文献の教示が組み込まれている態様を示す。しかしながら、特定の位置での参考文献の引用は、引用された参考文献の教示の全てがあらゆる目的のために組み込まれる態様を限定するものではない。
【0195】
(1)(a)Jones,C.H.、Chen,C.-K,Ravikrishnan,A.、Rane,S.、及びPfeifer,B.A.(2013) Overcoming nonviral gene delivery barriers:perspective and future. Mol.Pharmaceutics 10,4082-4098.(b)Gomes,C.P.、Lopes,C.D.F.、Moreno,P.M.D.、Varela-Moreira,A.、Alonso,M.J.、及びPego,A.P.(2014) Translating chitosan to clinical delivery of nucleic acid-based drugs. MRS Bull.39,60-70.(c)Mendes,L.P.、Pan,J.、Torchilin,V.P.(2017) Dendrimers as Nanocarriers for Nucleic Acid and Drug Delivery in Cancer Therapy. Molecules 22(9)、1401.
(2)Nishikawa,M.、及びHuang,L.(2001) Nonviral vectors in the new millennium:delivery barriers in gene transfer. Hum.Gene Ther. 12、861-870.
(3)Dufes,C.、Uchegbu,L、及びSchatzlein,A.(2005) Dendrimers in gene delivery. Adv.Drug Delivery Rev. 57、2177-2202.
(4)Clare,E.T.、Anja,E.、及びMark,A.K.(2003) Progress and problems with the use of viral vectors for gene therapy. Nat.Rev.Genet. 4、346-358.
(5)Mintzer,M.A.、及びSimanek,E.E.(2009) Nonviral Vectors for Gene Delivery. Chem.Rev. 109、259-302.
(6)Mintzer,M.A.、及びGrinstaff,M.W.(2010) Biomedical applications of dendrimers:a tutorial. Chem.Soc.Rev. 40、173-190.
(7)(a) Ravina,M.、de Ia Fuente,M.、Correa,J.、Sousa-Herves,A.、Pinto,J.、Fernandez-Megia,E.、Riguera,R.、Sanchez,A.、及びAlonso,M.J.(2010) Core-shell dendriplexes with sterically induced stoichiometry for gene delivery. Macromolecules 43、6953-6961.
(b)Nouri,A.、Castro,R.、Kairys,V.、Santos,J.L.、Rodrigues,J.、Li,Y.、及びTomas,H.(2012) Insight into the role of N,N-dimethylaminoethyl methacrylate (DMAEMA) conjugation onto poly(ethylenimine):cell viability and gene transfection studies. J.Mater.Sci.Mater.Med. 23、2967-2980.
(c)Pandita,D.、Santos,J.L.、Rodrigues,J.、Pego,A.P.、Granja,P.L.、及びTomas,H.(2011) Gene delivery into mesenchymal stem cells:a biomimetic approach using RGD nanoclusters based on poly-(amidoamine) dendrimers. Biomacromolecules 12、472-481.
(d)Rodrigues,J.、Jardim,M.G.、Figueira,J.、Gouveia,M.、Tomas,H.、及びRissanen,K.(2011) Poly(alkylidenamines) dendrimers as scaffolds for the preparation of low-generation ruthenium based metallodendrimers. New J.Chem. 35、1938-1943.
(e)Santos,J.L.、Oliveira,H.、Pandita,D.、Rodrigues,J.、Pego,A.P.、Granja,P.L.、及びTomas,H.(2010) Functionalization of poly(amidoamine) dendrimers with hydrophobic chains for improved gene delivery in mesenchymal stem cells. J.Controlled Release 144、55-64.
(f)Santos,J.L.、Oramas,E.、Pego,A.P.、Granja,P.L.、及びTomas,H.(2009) Osteogenic differentiation of mesenchymal stem cells using PAMAM dendrimers as gene delivery vectors. J.Controlled Release 134、141-148.
(g)Santos,J.L.、Pandita,D.、Rodrigues,J.、Pego,A.P.、Granja,P.L.、Balian,G.、及びTomas,H.(2010) Receptor-mediated gene delivery using PAMAM dendrimers conjugated with peptides recognized by mesenchymal stem cells. Mol.Pharmaceutics 7、763-774.
(8)(a)Duncan,R.、及びIzzo,L.(2005) Dendrimer biocompatibility and toxicity. Adv.Drug Delivery Rev. 57、2215-2237.
(9)(a)Welsh,D.J.、Jones,S.P.、及びSmith,D.K.(2009) ”On-off” multivalent recognition:degradable dendrons for temporary highaffinity DNA binding. Angew.Chem.,Int.Ed. 48、4047-4051.
(b)Barnard,A.、Posocco,P.、Pricl,S.、Calderon,M.、Haag,R.、Hwang,M.E.、Shum,V.W.、Pack,D.W.、及びSmith,D.K.(2011) Degradable self assembling dendrons for gene delivery:experimental and theoretical insights into the barriers to cellular uptake. J.Am.Chem.Soc. 133、20288-20300.
(10)M.A.Carnahan、M.W.Grinstaff、J.Am.Chem.Soc. 123(2001) 2905. M.A.Carnahan、M.W.Grinstaff、Macromolecules 34(2001) 7648. M.A.Carnahan、M.W.Grinstaff、Macromolecules 39(2006) 609.
(11)O.Boussif、F.Lezoualc’h、M.A.Zanta、M.D.Mergny、D.Scherman、B.Demeneix,J.Behr、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 92(1995) 7297.
(12)LUNDBERG,A.、KULKARNI,S.、KLEIN,L、PADMANABHAN,H.K.、ARATYN,Y.S. COMPOSITIONS AND METHODS FOR GENE EDITING、国際公開第2018/154387号パンフレット.
(13)Geall AJ、Verma A、Otten GR、Shaw CA、Hekele A、Banerjee K、Cu Y、Beard CW、Brito LA、Krucker T、O’Hagan DT、Singh M、Mason PW、Valiante NM、Dormitzer PR、Barnett SW、Rappuoli R、Ulmer JB、Mandl CW. Nonviral delivery of self-amplifying RNA vaccines. Proc Natl Acad Sci U S A. 2012年9月4日;109(36):14604-9. doi:10.1073/pnas.1209367109. 2012年8月20日電子公開. PMID:22908294;PMCID:PMC3437863.
(14)World Health Organization. (2002). WHO manual on animal influenza diagnosis and surveillance2002.5 Rev.1. 2002.
(15)Poulami Talukder、Jasdave S. Chahal、Justine S. McPartlan、Omar Khan、Karl Ruping. Nanoparticle Compositions for Efficient Nucleic Acid Delivery and Methods of Making and Using the Same. PCT/US19/67402.
【0196】
したがって、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲、上記明細書によって定義され、及び/又は添付の図面に示される本発明の趣旨及び範囲内にあるすべての変更形態を含むことを意図したものであるということが理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【国際調査報告】