(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-24
(54)【発明の名称】キメラ抗原受容体を発現し低減した炎症性サイトカインシグナル伝達を有する遺伝子改変された免疫細胞
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20230517BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20230517BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20230517BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230517BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230517BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20230517BHJP
A61K 31/7076 20060101ALI20230517BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20230517BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20230517BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20230517BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20230517BHJP
C07H 19/19 20060101ALN20230517BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
C07K14/725
C07K16/28
C12N5/10
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17
A61K31/7076
A61K31/675
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/62 Z
C07H19/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023504152
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-11-25
(86)【国際出願番号】 US2021025906
(87)【国際公開番号】W WO2021207150
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522391822
【氏名又は名称】セレディット エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フー,ビリアング
【テーマコード(参考)】
4B065
4C057
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93Y
4B065AA94X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
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4C057CC03
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4C086AA01
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4C087AA01
4C087AA02
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4C087BB65
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4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA50
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
とりわけ、IL-2RβIB-2Kβ細胞質シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体を共発現する改変された免疫細胞を含む、免疫細胞の集団。また、インターフェロンガンマ(IFNγ)の低減された産生を有する、遺伝子操作された免疫細胞も本明細書に提供される。そのような遺伝子操作された免疫細胞は、破壊された内因性IFNγ遺伝子、破壊された内因性IFNγ受容体(IFNγR)遺伝子、又はそれらの両方を有し得る。代替的に、免疫細胞は、IFNγアンタゴニストを発現し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キメラ抗原受容体(CAR)であって、
(a)細胞外抗原結合ドメインと、
(b)4-1BB共刺激ドメインと、
(c)IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインと、
(d)CD3ζシグナル伝達ドメインと、を含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項2】
前記4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインが、KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号1)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のCAR。
【請求項3】
前記IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインが、NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV(配列番号2)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載のCAR。
【請求項4】
前記CD3ζシグナル伝達ドメインが、RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号3)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項5】
前記細胞外抗原結合ドメインに対してC末端であり、前記4-1BB共刺激ドメインに対してN末端である、膜貫通ドメインを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項6】
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD271、TNFRSF19、及びキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のアルファ、ベータ、若しくはゼータ鎖、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される細胞表面受容体に由来する、請求項5に記載のCAR。
【請求項7】
前記細胞外抗原結合ドメインの前記C末端、及び前記膜貫通ドメインの前記N末端に連結されたヒンジドメインを更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項8】
前記ヒンジドメインが、CD28、CD8、又は任意選択で、IgG1若しくはIgG4であるIgGのものである、請求項7に記載のCAR。
【請求項9】
前記CD3ζシグナル伝達ドメインのC末端に位置するSTAT3結合モチーフを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項10】
前記STAT3結合モチーフが、YX
1X
2Qに記載のアミノ配列を含み、式中、X
1及びX
2が、各々独立して、アミノ酸である、請求項9に記載のCAR。
【請求項11】
前記STAT3結合モチーフが、YRHQ(配列番号4)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項10に記載のCAR。
【請求項12】
前記CD3ζシグナル伝達ドメイン及び前記STAT3結合モチーフを含むC末端断片を含み、前記C末端断片が、RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDAYRHQALPPR(配列番号5)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項13】
前記細胞外抗原結合ドメインが、任意選択で、5T4、CD2、CD5、CD3、CD7、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD70、CD123、CD133、CD171、CEA、CS1、クローディン18.2、BCMA、BAFF-R、PSMA、PSCA、デスモグレイン(Dsg3)、HER-2、FAP、FSHR、NKG2D、GD2、EGFRVIII、メソテリン、ROR1、MAGE、MUC1、MUC16、GPC3、Lewis Y、及びVEGFRIIからなる群から選択される腫瘍関連抗原に結合する、請求項1~12のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項14】
前記細胞外抗原結合ドメインが、一本鎖抗体断片(scFv)である、請求項1~13のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項15】
前記scFvが、CD19に結合し、配列番号6、39、40、又は41に記載のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のCAR。
【請求項16】
前記scFvが、BCMAに結合し、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のCAR。
【請求項17】
前記CARのN末端に位置するシグナルペプチドを更に含む、請求項1~16のいずれか一項に記載のCAR。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のCARを発現する第1の複数の免疫細胞を含む、免疫細胞の集団。
【請求項19】
インターロイキン-6(IL-6)又はIL-6受容体(IL-6R)に特異的な抗体を発現する第2の複数の免疫細胞を更に含む、請求項18に記載の免疫細胞の集団。
【請求項20】
前記抗体が、参照抗体と同じ重鎖相補性決定ドメイン(CDR)及び同じ軽鎖CDRを含み、前記参照抗体が、(a)配列番号14、16、18、20、22、又は24に記載の重鎖可変ドメイン(V
H)アミノ酸配列、及び配列番号15、17、19、21、23、又は25に記載の軽鎖可変ドメイン(V
L)アミノ酸配列を含む、請求項19に記載の免疫細胞の集団。
【請求項21】
前記IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体が、前記参照抗体と同じV
H及び同じV
Lを含む、請求項20に記載の免疫細胞の集団。
【請求項22】
前記IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体が、scFvである、請求項19~21のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項23】
前記scFvが、配列番号8、9、26、又は27に記載のアミノ酸配列を含む、請求項22に記載の免疫細胞の集団。
【請求項24】
IL-1アンタゴニストを発現する第3の複数の免疫細胞を更に含む、請求項18~23のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項25】
前記IL-1アンタゴニストが、IL-1RAである、請求項24に記載の免疫細胞の集団。
【請求項26】
前記第1の複数の免疫細胞、前記第2の複数の免疫細胞、及び前記第3の複数の免疫細胞のうちの少なくとも2つが、共通のメンバーを含む、請求項19~25のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項27】
中の前記免疫細胞の少なくとも10%が、前記CAR、前記IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体、及び前記IL-1アンタゴニストを発現する、請求項26に記載の免疫細胞の集団。
【請求項28】
前記細胞の約50~70%が、前記CAR、前記IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体、及び前記IL-1アンタゴニストを発現する、請求項27に記載の免疫細胞の集団。
【請求項29】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、骨髄由来抑制細胞、間葉系幹細胞、それらの前駆体、又はそれらの組み合わせである、請求項18~28のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項30】
前記免疫細胞が、T細胞であり、前記T細胞の少なくとも一部が、内因性T細胞受容体、CD52、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、ベータ-2マイクログロブリン(B2M)、及び顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)のうちの1つ以上を発現しない、請求項18~29のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項31】
前記T細胞の前記一部が、IFN-γを発現しない、請求項30に記載の免疫細胞の集団。
【請求項32】
改変された免疫細胞の集団を産生する方法であって、前記方法が、
(a)免疫細胞の集団を提供することと、
(b)前記免疫細胞に、請求項1~17のいずれか一項に記載のCARをコードする第1の核酸を導入することと、を含む、方法。
【請求項33】
前記免疫細胞に、インターロイキン-6(IL-6)又はIL-6受容体(IL-6R)に特異的な抗体をコードする第2の核酸を導入することを更に含み、前記抗体が、請求項19~23のいずれか一項に記載されている、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の核酸及び前記第2の核酸が、同じベクター中に位置する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の核酸及び前記第2の核酸が、異なるベクター中に位置する、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記免疫細胞に、任意選択で、IL-1RAであるIL-1アンタゴニストをコードする第3の核酸を導入することを更に含む、請求項32~35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の核酸及び前記第3の核酸が、同じベクター中に位置する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の核酸及び前記第3の核酸が、同じベクター中に位置する、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記第1の核酸、前記第2の核酸、及び前記第3の核酸が、異なるベクター中に位置する、請求項36に記載の方法。
【請求項40】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球、樹状細胞、マクログラフ(macrograph)、B細胞、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、骨髄由来抑制細胞、間葉系幹細胞、それらの前駆体、又はそれらの組み合わせであり、任意選択で、前記免疫細胞が、ヒト免疫細胞である、請求項32~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
疾患を治療する細胞療法に基づく方法であって、それを必要とする対象に、請求項18~31のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団を投与することを含む、方法。
【請求項42】
前記対象が、ヒト患者である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患が、がん、感染性疾患、又は免疫障害である、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患が、がんであり、前記細胞療法の前に、前記ヒト患者が前記がんに対する療法を受けて腫瘍負荷を低減させる、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記療法が、化学療法、免疫療法、放射線療法、又は手術である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記細胞療法の前に、前記対象が、前記細胞療法のために前記対象を調整するために、リンパ枯渇治療を受けた、請求項41~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記リンパ枯渇治療が、前記対象に、フルダラビン及びシクロホスファミドのうちの1つ以上を投与することを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記CARが、CD19に結合し、前記対象が、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、マントル細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫を有するヒト患者である、請求項41~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記CARが、BCMAに結合し、前記対象が、多発性骨髄腫、再発性多発性骨髄腫、又は難治性多発性骨髄腫を有するヒト患者である、請求項41~47のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
第1の複数の遺伝子操作された免疫細胞を含む免疫細胞の集団であって、前記遺伝子操作された免疫細胞が、
(a)破壊された内因性インターフェロンガンマ(IFNγ)遺伝子又はIFNγ受容体(IFNγR)遺伝子を含み、かつ/又は
(b)IFNγアンタゴニストを発現する、免疫細胞の集団。
【請求項51】
前記遺伝子操作された免疫細胞が、前記破壊された内因性IFNγ又はIFNγR遺伝子を含む、請求項50に記載の免疫細胞の集団。
【請求項52】
前記破壊された内因性IFNγ又はIFNγR遺伝子が、遺伝子編集によって産生され、任意選択で、前記遺伝子編集が、CRISPR/Cas遺伝子編集システムによって媒介される、請求項51に記載の免疫細胞の集団。
【請求項53】
前記遺伝子操作された細胞が、前記IFNγアンタゴニストを発現する、請求項50~52のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項54】
前記遺伝子操作された細胞が、前記IFNγアンタゴニストを分泌する、請求項53に記載の免疫細胞の集団。
【請求項55】
前記IFNγアンタゴニストが、抗IFNγ抗体、分泌型IFNγ受容体、及び抗IFNγR抗体からなる群から選択され、任意選択で、前記抗IFNγ抗体及び/又は前記抗IFNγR抗体が、一本鎖可変断片(scFv)である、請求項50~54のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項56】
前記IFNγアンタゴニストが、抗IFNγ scFvである、請求項55に記載の免疫細胞の集団。
【請求項57】
前記抗IFNγ scFvが、(a)配列番号53のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、(b)配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号55のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、又は(c)配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項56に記載の免疫細胞の集団。
【請求項58】
前記抗IFNγ scFvが、配列番号54、57、又は60のアミノ酸配列を含む、請求項57に記載の免疫細胞の集団。
【請求項59】
前記IFNγアンタゴニストが、分泌型IFNγRである、請求項55に記載の免疫細胞の集団。
【請求項60】
キメラ抗原受容体(CAR)を更に含む、請求項50~59のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項61】
前記CARが、
(a)細胞外抗原結合ドメインと、
(b)共刺激ドメインと、
(c)細胞質シグナル伝達ドメインと、任意選択で、
(d)膜貫通ドメインとを含む、請求項60に記載の免疫細胞の集団。
【請求項62】
前記細胞外抗原結合ドメインが、一本鎖可変断片(scFv)を含む、請求項61に記載の免疫細胞の集団。
【請求項63】
前記細胞外抗原結合ドメインが、任意選択で、5T4、CD2、CD5、CD3、CD7、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD70、CD123、CD133、CD171、CEA、CS1、クローディン18.2、BCMA、BAFF-R、PSMA、PSCA、デスモグレイン(Dsg3)、HER-2、FAP、FSHR、NKG2D、GD2、EGFRVIII、メソテリン、ROR1、MAGE、MUC1、MUC16、GPC3、Lewis Y、及びVEGFRIIからなる群から選択される腫瘍関連抗原に結合する、請求項61又は62に記載の免疫細胞の集団。
【請求項64】
前記腫瘍関連抗原が、CD19であり、前記細胞外抗原結合ドメインが、CD19に結合するscFvを含む、請求項63に記載の免疫細胞の集団。
【請求項65】
前記CD19に結合するscFvが、配列番号6、39、40、又は41のアミノ酸配列を含む、請求項64に記載の免疫細胞の集団。
【請求項66】
前記腫瘍関連抗原が、B細胞成熟抗原(BCMA)であり、前記細胞外抗原結合ドメインが、BCMAに結合するscFvを含む、請求項63に記載の免疫細胞の集団。
【請求項67】
前記BCMAに結合するscFvが、配列番号7のアミノ酸を含む、請求項66に記載の免疫細胞の集団。
【請求項68】
前記共刺激ドメインが、4-1BB(CD137)、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、及びDAP12、又はそれらの任意の組み合わせに由来する共刺激ドメインである、請求項61~67のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項69】
前記細胞質シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメイン、インターロイキン2受容体ベータサブユニット(IL-2Rβ)細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせである、請求項61~68のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項70】
前記膜貫通ドメインが、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD271、TNFRSF19、及びキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のアルファ、ベータ、若しくはゼータ鎖、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される細胞表面受容体からのものである、請求項61~69のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項71】
前記CARが、(a)~(d)の機能ドメインを接続するためのヒンジ若しくはスペーサー、又はその両方の組み合わせを更に含む、請求項61~70のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項72】
前記CARが、前記細胞外抗原結合ドメインのC末端、及び前記膜貫通ドメインのN末端に連結されたヒンジドメインを含む、請求項71に記載の免疫細胞の集団。
【請求項73】
前記ヒンジドメインが、CD28、CD8、又は任意選択で、IgG1若しくはIgG4であるIgGのものである、請求項71又は72に記載の免疫細胞の集団。
【請求項74】
前記CARが、前記細胞質シグナル伝達ドメインの前記C末端に位置する、STAT3結合モチーフを更に含む、請求項61~73のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項75】
前記STAT3結合モチーフが、YX
1X
2Qに記載のアミノ酸配列を含み、式中、X
1及びX
2が、各々独立して、アミノ酸であり、任意選択で、前記STAT3結合モチーフが、YRHQ(配列番号4)に記載のアミノ酸配列を含む、請求項74に記載の免疫細胞の集団。
【請求項76】
前記IFNγアンタゴニストが、前記N末端に位置するシグナルペプチドを更に含み、任意選択で、前記シグナルペプチドが、アルブミン、CD8、成長ホルモン、IL-2、抗体軽鎖、及びGaussiaルシフェラーゼに由来するシグナルペプチドから選択される、請求項50~75のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項77】
前記免疫細胞が、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球、樹状細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、骨髄由来抑制細胞、間葉系幹細胞若しくはそれらの前駆体、又はそれらの組み合わせを含み、任意選択で、前記免疫細胞がヒト免疫細胞である、請求項50~76のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項78】
インターロイキン-6(IL-6)又はIL-6受容体(IL-6R)に特異的な抗体を発現する第2の複数の免疫細胞を更に含む、請求項50~77のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項79】
前記IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体が、scFvである、請求項78に記載の免疫細胞の集団。
【請求項80】
IL-1アンタゴニストを発現する第3の複数の免疫細胞を更に含む、請求項50~79のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団。
【請求項81】
前記IL-1アンタゴニストが、IL-1RAである、請求項80に記載の免疫細胞の集団。
【請求項82】
請求項50~81のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項83】
対象における望ましくない細胞を低減又は排除するための方法であって、前記方法が、それを必要とする対象に、治療有効量の、請求項50~81のいずれか一項に記載の免疫細胞の集団又は請求項82に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項84】
前記対象が、ヒトがん患者であり、前記遺伝子操作された免疫細胞が、腫瘍関連抗原に特異的である前記CARを発現し、任意選択で、前記腫瘍関連抗原が、5T4、CD2、CD5、CD3、CD7、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD70、CD123、CD133、CD171、CEA、CS1、クローディン18.2、BCMA、BAFF-R、PSMA、PSCA、デスモグレイン(Dsg3)、HER-2、FAP、FSHR、NKG2D、GD2、EGFRVIII、メソテリン、ROR1、MAGE、MUC1、MUC16、GPC3、Lewis Y、及びVEGFRIIからなる群から選択される、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記がんが、固形腫瘍がんである、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記がんが、乳がん、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、神経膠芽腫(GBM)、前立腺がん、卵巣がん、中皮腫、結腸がん、及び胃がんからなる群から選択される、請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記がんが、血液がんである、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記血液がんが、白血病、リンパ腫、又は多発性骨髄腫であり、任意選択で、前記白血病が、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄白血病(AML)、又は慢性骨髄性白血病(CML)であり、任意選択で、前記リンパ腫が、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫又はホジキンリンパ腫である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記CARが、CD19に結合し、前記対象が、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、マントル細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫を有するヒト患者である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記CARが、BCMAに結合し、前記対象が、多発性骨髄腫、再発性多発性骨髄腫、又は難治性多発性骨髄腫を有するヒト患者である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記細胞療法の前に、前記対象が、細胞療法のために前記対象を調整するためのリンパ枯渇治療を受けた、請求項83~90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
前記リンパ枯渇治療が、前記対象に、フルダラビン及びシクロホスファミドのうちの1つ以上を投与することを含む、請求項91に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月6日に出願された米国仮出願第63/005,684号の米国特許法第119条(e)に基づき利益を主張し、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる配列表を含有する。当該ASCIIコピーは、2021年4月5日に作成され、名称が112126-0025-70003WO00_SEQ.txtであり、サイズが59,251バイトである。
【背景技術】
【0003】
養子細胞移入療法は、自己免疫細胞又は同種免疫細胞のエクスビボ増殖及びその後の患者への注入を伴う免疫療法の一種である。免疫細胞は、悪性細胞を特異的に標的とするようにエクスビボで改変されてもよい。改変には、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するために、T細胞の操作が含まれる。CAR T細胞(CAR-T)療法などの養子細胞移入療法の有望性は、しばしば毒性(例えば、サイトカイン関連毒性)によって制限される。例えば、養子細胞移入免疫療法は、サイトカインレベルの非生理学的上昇(サイトカイン放出症候群)を引き起こし得、これは、レシピエントの死亡につながり得る(例えば、Morgan et al.,Molecular Therapy 18(4):843-851,2010を参照されたい)。更に、改変された免疫細胞は、患者ではうまく拡大しない場合がある。
【0004】
したがって、治療的有効性を維持又は増強しながら、改変された免疫細胞の増殖(proliferation)を改善し、CAR-T療法に関連する毒性を低減するためのアプローチを開発することが大変興味深い。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、共刺激シグナル伝達及び細胞質シグナル伝達ドメインと組み合わせたIL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体(CAR)の開発に少なくとも部分的に基づいている。そのようなCAR構築物を発現するCAR-T細胞、及び任意選択で内因性インターフェロンγ遺伝子のノックアウトを有するCAR-T細胞は、腫瘍標的細胞による活性化、及び/又はサイトカイン毒性の低下時に、より効果的なT細胞の増殖を示すことが予想され、それによって、CAR-T治療有効性、安全性、又はそれらの組み合わせを向上させる。
【0006】
したがって、本開示の一態様は、(a)細胞外抗原結合ドメインと、(b)4-1BB共刺激ドメインなどの共刺激ドメインと、(c)IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインと、(d)CD3ζシグナル伝達ドメインと、を含む、キメラ抗原受容体(CAR)を特徴とする。
【0007】
いくつかの実施形態では、4-1BB共刺激シグナル伝達ドメインは、KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号1)に記載のアミノ酸配列を含む。代替的又は追加的に、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインは、NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV(配列番号2)に記載のアミノ酸配列を含み得る。代替的又は追加的に、CD3ζシグナル伝達ドメインは、RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号3)に記載のアミノ酸配列を含む。
【0008】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARのうちのいずれかは、膜貫通ドメインを更に含んでもよく、膜貫通ドメインは、細胞外抗原結合ドメインに対してC末端であり、4-1BB共刺激ドメインに対してN末端である。そのような膜貫通ドメインは、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD271、TNFRSF19、及びキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のアルファ、ベータ又はゼータ鎖、又はそれらの任意の組み合わせであり得る、細胞表面受容体に由来し得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARは、ヒンジドメインを更に含んでもよく、ヒンジドメインは、細胞外抗原結合ドメインのC末端、及び膜貫通ドメインのN末端に連結されてもよい。例示的なヒンジドメインは、CD28、CD8、又は任意選択で、IgG1若しくはIgG4であるIgGのものであってもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCARは、CD3ζシグナル伝達ドメインのC末端に位置することができるSTAT3結合モチーフを更に含んでもよい。一例では、STAT3結合モチーフは、YX1X2Qに記載のアミノ酸配列を含み、式中、X1及びX2は、各々独立してアミノ酸である。例えば、STAT3結合モチーフは、YRHQ(配列番号4)に記載のアミノ酸配列を含む。一例では、本明細書に開示されるCARは、CD3ζシグナル伝達ドメイン及びSTAT3結合モチーフを含むC末端断片を含み得、C末端断片は、RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDAYRHQALPPR(配列番号5)に記載のアミノ酸配列を含む。
【0011】
本明細書に開示されるCARにおける細胞外抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原に結合し得る。例としては、5T4、CD2、CD5、CD3、CD7、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD70、CD123、CD133、CD171、CEA、CS1、クローディン18.2、BCMA、BAFF-R、PSMA、PSCA、デスモグレイン(Dsg3)、HER-2、FAP、FSHR、NKG2D、GD2、EGFRVIII、メソテリン、ROR1、MAGE、MUC1、MUC16、GPC3、Lewis Y、及びVEGFRIIが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、細胞外抗原結合ドメインは、一本鎖抗体断片(scFv)である。いくつかの例では、CARにおける細胞外抗原結合ドメインは、CD19に結合するscFv(抗CD19 scFv)である。そのような抗CD19 scFvは、配列番号6のアミノ酸配列を含み得る。代替的に、抗CD19 scFvは、配列番号39のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、抗CD19 scFvは、配列番号40のアミノ酸配列を含み得る。更に別の例では、抗CD19 scFvは、配列番号41のアミノ酸配列を含み得る。他の例では、CARにおける細胞外抗原結合ドメインは、BCMAに結合するscFv(抗BCMA scFv)である。一例では、抗BCMA scFvは、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0012】
本明細書に開示されるCARのうちのいずれかは、CARのN末端に位置するシングルペプチドを更に含んでもよい。
【0013】
別の態様では、本明細書に開示されるCARのうちのいずれかを発現する第1の複数の免疫細胞を含む免疫細胞集団が本明細書に提供される。そのような免疫細胞集団は、インターロイキン-6(IL-6)又はIL-6受容体(IL-6R)に特異的な抗体を発現する第2の複数の免疫細胞を更に含んでよい。いくつかの実施形態では、抗IL6又は抗IL6R抗体は、参照抗体と同じ重鎖相補性決定ドメイン(CDR)及び同じ軽鎖CDRを含んでもよい。参照抗体は、以下のうちの1つであり得る:
(a)配列番号14に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号15に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む、参照抗体、
(b)配列番号16に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号17に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む、参照抗体、
(c)配列番号18に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号19に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む、参照抗体、
(d)配列番号20に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号21に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む、参照抗体、
(e)配列番号22に記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号23に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む、参照抗体、及び
(f)配列番号24記載のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)と、配列番号25に記載のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)と、を含む、参照抗体。
【0014】
場合によっては、IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体は、参照抗体と同じVH及び同じVLを含む。IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体のうちのいずれかは、scFvであり得る。一例では、scFvは、配列番号8のアミノ酸配列を含み得る。別の例では、scFvは、配列番号9のアミノ酸配列を含み得る。更に別の例では、scFvは、配列番号26のアミノ酸配列を含み得る。更に別の例では、scFvは、配列番号27のアミノ酸配列を含み得る。
【0015】
本明細書に開示される免疫細胞の集団は、IL-1アンタゴニストを発現する第3の複数の免疫細胞を更に含み得る。いくつかの例では、IL-1アンタゴニストは、IL-1RAである。
【0016】
場合によっては、免疫細胞集団における第1の複数の免疫細胞、第2の複数の免疫細胞、及び第3の複数の免疫細胞のうちの少なくとも2つは、共通のメンバーを含む。例えば、中の免疫細胞の少なくとも10%は、CAR、IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体、及びIL-1アンタゴニストを発現する。別の例では、細胞の約50~70%は、CAR、IL-6又はIL-6Rに特異的な抗体、及びIL-1アンタゴニストを発現する。
【0017】
免疫細胞は、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、腫瘍浸潤リンパ球、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、骨髄由来抑制細胞、間葉系幹細胞、それらの前駆体、又はそれらの組み合わせであってもよい。場合によっては、免疫細胞はT細胞である。いくつかの例では、T細胞の少なくとも一部(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%以上)は、内因性T細胞受容体、CD52、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、ベータ-2マイクログロブリン(B2M)、及び顆粒球マクロファージ-コロニー刺激因子(GM-CSF)のうちの少なくとも1つ以上を発現しない。特定の一例では、T細胞の少なくとも一部(例えば、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%%以上)は、IFN-γを発現しない。目的のタンパク質を発現しない細胞は、タンパク質の発現が検出されないか、又は発現のバックグラウンドレベルのみが従来の方法(例えば、ELISA又はFACS)によって検出され得ることを意味する。
【0018】
更に、改変された免疫細胞の集団を産生するための方法が本明細書に提供され、本方法は、(a)免疫細胞集団(例えば、本明細書に開示されるもの)を提供することと、(b)免疫細胞に、本明細書に開示されるものなどのCARをコードする第1の核酸を導入することと、を含む。そのような方法は、(c)免疫細胞に、インターロイキン-6(IL-6)又はIL-6受容体(IL-6R)に特異的な抗体をコードする第2の核酸、例えば、本明細書に開示されるものを導入することを更に含み得る。場合によっては、第1の核酸及び第2の核酸は、同じベクター中に位置する。他の例では、第1の核酸及び第2の核酸は、異なるベクター中に位置する。
【0019】
いくつかの実施形態では、この方法は、免疫細胞に、IL-1アンタゴニスト、例えば、IL-1RAをコードする第3の核酸を導入することを更に含み得る。場合によっては、第1の核酸及び第3の核酸は、同じベクター中に位置する。他の例では、第2の核酸及び第3の核酸は、同じベクター中に位置する。代替的に、第1の核酸、第2の核酸、及び第3の核酸は、異なるベクター中に位置する。
【0020】
更に、本開示は、CAR-T細胞療法を受ける患者において、低減されたIFNγシグナル伝達を有する(例えば、IFNG遺伝子をノックアウトするか、又はIFNγアンタゴニストを発現することによって)を有する遺伝子操作された免疫細胞が、堅牢なT細胞細胞傷害性を維持し、またサイトカイン放出症候群(CRS)を大幅に低減させたという予期せぬ発見に少なくとも部分的に基づいている。ある特定の実施形態では、内因性IFNG遺伝子の低減した発現は、野生型IFNG遺伝子を有する同じタイプの免疫細胞と比較して5%~70%の範囲である。
【0021】
したがって、本開示はまた、(a)破壊された内因性インターフェロンガンマ(IFNγ)遺伝子又はIFNγ受容体(IFNγR)遺伝子を含み、かつ/又は(b)IFNγアンタゴニストを発現する、第1の複数の遺伝子操作された免疫細胞を含む免疫細胞の集団を提供する。
【0022】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、破壊された内因性IFNγ又はIFNγR遺伝子を含む。いくつかの例では、破壊された内因性IFNγ又はIFNγR遺伝子は、遺伝子編集によって産生され、例えば、遺伝子編集が、CRISPR/Cas遺伝子編集システムによって媒介される。
【0023】
いくつかの実施形態では、遺伝子操作された細胞は、IFNγアンタゴニストを発現する。例えば、遺伝子操作された細胞は、IFNγアンタゴニストを分泌する。場合によっては、IFNγアンタゴニストは、抗IFNγ抗体、分泌型IFNγ受容体、又は抗IFNγR抗体であり得る。いくつかの例では、IFNγアンタゴニストは、抗IFNγ抗体又は抗IFNγR抗体であり得る。具体的な例では、抗体は、一本鎖可変断片(scFv)である。
【0024】
いくつかの例では、IFNγアンタゴニストは、抗IFNγ scFvである。一例では、抗IFNγ scFvは、配列番号53のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。別の例では、抗IFNγ scFvは、配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号55のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。更に別の例では、抗IFNγ scFvは、配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と、配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域と、を含む。具体的な例では、抗IFNγ scFvは、配列番号54のアミノ酸配列を含む。別の具体的な例では、抗IFNγ scFvは、配列番号57のアミノ酸配列を含む。更に別の具体的な例では、抗IFNγ scFvは、配列番号60のアミノ酸配列を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される免疫細胞の集団は、(a)細胞外抗原結合ドメインと、(b)共刺激ドメイン(例えば、4-1BB又はCD28共刺激ドメイン)と、(c)細胞質シグナル伝達ドメインと、任意選択で、(d)膜貫通及び/又はヒンジドメインとを含み得る、キメラ抗原受容体(CAR)を発現し得る。いくつかの例では、細胞外抗原結合ドメインは、腫瘍関連抗原、例えば、本明細書に開示されるものに結合し得る、一本鎖可変断片(scFv)を含み得る。いくつかの例では、腫瘍関連抗原はCD19であり、細胞外抗原結合ドメインは、CD19、例えば、本明細書に開示される抗CD19 scFv抗体のうちのいずれかに結合するscFvを含む。他の例では、腫瘍関連抗原は、B細胞成熟抗原(BCMA)であり、細胞外抗原結合ドメインは、BCMA、例えば、本明細書に開示される抗BCMA scFv抗体のうちのいずれかに結合するscFvを含む。
【0026】
本明細書に開示されるCARに使用される共刺激ドメインは、4-1BB(CD137)、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、及びDAP12、又はそれらの任意の組み合わせからのものであり得る。代替的又は追加的に、細胞質シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ(CD3ζ)シグナル伝達ドメイン、インターロイキン2受容体ベータサブユニット(IL-2Rβ)細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせを含み得る。代替的又は追加的に、膜貫通ドメインは、存在する場合、T細胞受容体CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD271、TNFRSF19、及びキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のアルファ、ベータ、若しくはゼータ鎖、又はそれらの任意の組み合わせであり得る、細胞表面受容体からのものであり得る。場合によっては、CARは、(a)~(d)の機能ドメインを接続するために、ヒンジ若しくはスペーサー、又は両方の組み合わせを更に含み得る。
【0027】
代替的又は追加的に、CARは、細胞外抗原結合ドメインのC末端、及び膜貫通ドメインのN末端に連結されたヒンジドメインを含み得る。例としては、CD28、CD8、又は任意選択で、IgG1若しくはIgG4であるIgGからのヒンジドメインが挙げられる。
【0028】
場合によっては、CARは、IL-2Rβ)細胞質シグナル伝達ドメインを含む、本明細書に開示されるCARのうちのいずれかであり得る。そのようなCARは、N末端に位置するシグナルペプチドを更に含んでもよい。例としては、アルブミン、CD8、成長ホルモン、IL-2、抗体軽鎖、又はGaussiaルシフェラーゼに由来するシグナルペプチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
免疫細胞の集団は、インターロイキン-6(IL-6)若しくはIL-6受容体(IL-6R)に特異的な抗体を発現する第2の複数の免疫細胞、及び/又はIL-1アンタゴニスト、例えば、本明細書に開示されるものを発現する第3の複数の免疫細胞を更に含み得る。場合によっては、第1の複数の免疫細胞、第2の複数の免疫細胞、及び/又は第3の複数の免疫細胞は、共通のメンバーを含む。いくつかの例では、免疫細胞の集団は、減少したIFNγシグナル伝達を有し、CARを発現し、IL-6アンタゴニストを発現し、IL-1アンタゴニストを発現する遺伝子操作された細胞(例えば、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%以上)を含む。他の例では、免疫細胞の集団は、今述べたような遺伝子改変のうちの2つ以上を示す遺伝子操作された細胞を含む。
【0030】
また、本明細書に開示される遺伝子改変のうちの1つ以上を含む、例えば、CARを発現し、低減されたIFNγシグナル伝達を有し、IL-6アンタゴニストを発現し、及び/又はIL-1アンタゴニストを発現する免疫細胞集団のうちのいずれかと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物も本開示の範囲内である。
【0031】
加えて、本明細書では、対象における望ましくない細胞を低減又は排除するための方法が提供され、本方法は、治療有効量の本明細書に開示される免疫細胞の集団又は薬学的組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。いくつかの実施形態では、対象は、ヒトがん患者である。遺伝子操作された免疫細胞は、腫瘍関連抗原に特異的であるCARを発現する。例としては、5T4、CD2、CD5、CD3、CD7、CD19、CD20、CD22、CD30、CD33、CD38、CD70、CD123、CD133、CD171、CEA、CS1、クローディン18.2、BCMA、BAFF-R、PSMA、PSCA、デスモグレイン(Dsg3)、HER-2、FAP、FSHR、NKG2D、GD2、EGFRVIII、メソテリン、ROR1、MAGE、MUC1、MUC16、GPC3、Lewis Y、及びVEGFRIIが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
場合によっては、がんは固形腫瘍がんである。例としては、乳がん、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、膠芽腫(GBM)、前立腺がん、卵巣がん、中皮腫、結腸がん、及び胃がんが挙げられるが、これらに限定されない。場合によっては、がんは、血液がんである。例としては、白血病、リンパ腫、又は多発性骨髄腫が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な白血病としては、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄白血病(AML)、又は慢性骨髄性白血病(CML)が挙げられる。例示的なリンパ腫としては、マントル細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫又はホジキンリンパ腫が挙げられる。
【0033】
いくつかの例では、遺伝子操作された免疫細胞(例えば、T細胞)は、CD19に結合するCAR(例えば、本明細書に開示されるもの)を発現する。対象は、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、マントル細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫を有するヒト患者である。他の例では、遺伝子操作された免疫細胞(例えば、T細胞)は、BCMAに結合するCAR(例えば、本明細書に開示されるもの)を発現する。対象は、多発性骨髄腫、再発性多発性骨髄腫、又は難治性多発性骨髄腫を有するヒト患者である。
【0034】
本明細書に開示される方法のうちのいずれかは、細胞療法の前に、細胞療法のために対象を調製するために、対象に対してリンパ枯渇治療を実施することを含んでもよい。場合によっては、リンパ枯渇治療は、フルダラビン及びシクロホスファミドのうちの1つ以上を対象に投与することを含む。
【0035】
代替的又は追加的に、ヒト患者は、細胞療法の前に、腫瘍負荷を低減させるために、がんに対する療法を受けた。例示的な先行療法には、化学療法、免疫療法、放射線療法、又は手術が含まれる。
【0036】
場合によっては、対象は、感染性疾患、又は免疫障害を有し得る。
【0037】
本明細書にも開示される標的疾患(例えば、がん)のいずれかの治療で使用するための本明細書に開示される遺伝子操作された免疫細胞のうちのいずれか、並びに標的疾患の治療のための医薬品を製造するためのそのような遺伝子操作された免疫細胞の使用も本開示の範囲内である。
【0038】
本明細書にも開示される標的疾患の治療で使用するための本明細書に記載される免疫細胞集団、及び標的疾患の治療に使用するための医薬品を製造するためのそのような免疫細胞集団の使用も本開示の範囲内である。
【0039】
本発明の1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明に記載されている。本発明の他の特徴又は利点は、以下の図面及びいくつかの実施形態の詳細な説明、及び添付の特許請求の範囲からも明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A-1E】
図1A~1Eは、本明細書に開示される例示的なCAR構築物を発現するCAR-T細胞によって達成される抗腫瘍効率を示す図を含む。
図1Aは、T細胞注入後に示されるように異なる時点でのヒト患者における白血球(WBC)及びリンパ球の数を示すチャートである。
図1Bは、T細胞注入後に示されるように異なる時点でのヒト患者の体温(℃)を示すチャートである。
図1Cは、T細胞注入後に示されるように異なる時点でのヒト患者におけるIFNγ及びIL-6のレベルを示すチャートである。
図1Dは、T細胞注入後に示されるように異なる時点でのヒト患者におけるCRP(C反応性タンパク質)のレベルを示すチャートである。
図1Eは、T細胞注入後に示されるように異なる時点でのヒト患者におけるフェリチンのレベルを示すチャートである。
【
図2】
図2は、内因性IFN-γが、IFNγエクソン1を標的とし、CRISPRシステムを使用して異なるsgRNA候補で遺伝子編集されたT細胞におけるIFNγのレベルを要約するチャートである。IFNγのレベルは、T細胞の細胞内染色によって決定された。
【
図3】
図3は、処置された多発性骨髄腫(MM)患者における注入後のCAR+T細胞の頻度を示す。患者#1(円)に、41BB、IL-2Rβ受容体及びCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを有する抗BCMA CAR-T細胞を注入した。患者#2(四角)に、IL-2Rβ受容体共刺激シグナル伝達ドメインなしで、41BB及びCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを有する抗BCMA CAR-T細胞を注入した。
【
図4】
図4は、41BB、IL-2Rβ、及びCD3ζシグナル伝達を有する抗CD19 CAR-T細胞を注入した3人の患者、Pt#1、Pt#2、及びPt#3の末梢血中のCD19
+細胞及びCAR
+/CD3
+細胞の変化を示す。
【
図5】
図5は、急性リンパ球性白血病(ALL)並びにリンパ腫患者における抗CD19 CAR-T細胞、並びに多発性骨髄腫(MM)患者における抗BCMA CAR-T細胞のピーク頻度を示す。
【
図6A】
図6Aは、IFNγシグナル伝達の阻害に対する種々の抗IFNγ scFv抗体の効率を示す。1、Amg-LH;2、Fon-LH;3、Ema-LH;4、Amg-HL;5、Fon-HL;及び6、Ema-HL(LHは、軽鎖可変領域の重鎖可変領域への配向を意味し、HLは、重鎖可変領域の軽鎖可変領域への配向を意味する)。Amg=AMG 811(米国特許出願第US2013/0142809号);Fon=フォンツリズマブ;及びEma=エマパルマブ
【
図6B】
図6Bは、IFNγシグナル伝達を阻害するための、Amg由来scFvに対する異なるシグナルペプチドの効率を示す。1、アルブミン由来のシグナルペプチド(配列番号47);2、CD8由来のシグナルペプチド(配列番号44);3、成長ホルモン由来のシグナルペプチド(配列番号29);4、アルブミン由来の改変シグナルペプチド(配列番号48);5、IL-2由来の改変シグナルペプチド(配列番号49);6、抗体軽鎖由来のシグナルペプチド(配列番号45);及び7、GL(Gaussiaルシフェラーゼ)由来のシグナルペプチド(配列番号46)。
【
図7】
図7は、急性リンパ球性白血病(ALL)を罹患し、41BB-IL2Rβ-CD3ζシグナル伝達、CRISPR編集IFNγノックアウト(KO)、並びに共発現IL6及びIL1ブロッカーを有する抗CD19 CAR-T細胞で処置した患者の末梢血中のIFNγの変化を示す。
【
図8A】
図8Aは、難治性及び再発性多発性骨髄腫(MM)と診断され、41BB-IL2Rβ-CD3ζシグナル伝達、CRISPR編集IFNγ KO、並びに共発現IL6及びIL1ブロッカーを有する抗BCMA CAR-T細胞で処置した患者の末梢血中のIFNγの変化を示す。
【
図8B】
図8Bは、治療後の同じ患者の末梢血中のIgGレベルの経時的変化を示す。
【
図9】
図9は、難治性及び再発性リンパ腫と診断され、41BB-IL2Rβ-CD3ζシグナル伝達、並びに共発現エマパルマブに由来するIFNγ遮断scFv及びシルクマブに由来するIL6遮断scFvを有する抗CD19 CAR-T細胞で処置された患者の末梢血中のIFNγの変化を示す。
【
図10A】
図10Aは、難治性及び再発性MMと診断され、41BB-IL2Rβ-CD3ζシグナル伝達、並びに共発現エマパルマブに由来するIFNγ遮断scFv及びシルクマブに由来するIL6遮断scFvを有する抗BCMA CAR-T細胞で処置された患者#1の末梢血中のIFNγの変化を示す。
【
図10B】
図10Bは、難治性及び再発性MMと診断され、41BB-IL2Rβ-CD3ζシグナル伝達、並びに共発現エマパルマブに由来するIFNγ遮断scFv及びシルクマブに由来するIL6遮断scFvを有する抗BCMA CAR-T細胞で処置された患者#2の同じ患者の末梢血中のIFNγの変化及びIgGレベルの変化を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
養子細胞移入免疫療法は、疾患細胞を排除するために免疫細胞活性化及びサイトカイン分泌に依存する。しかしながら、CAR-Tは、患者において常に十分に拡大するとは限らない。本開示は、低下した炎症特性を有する免疫細胞の開発を介して、この制限を部分的に克服することを目的とする。本開示は、IL2Rβシグナル伝達ドメインを含むCARの開発に少なくとも部分的に基づいている。このCAR構築物は、腫瘍標的細胞による活性化の際にT細胞のより効果的な増殖を誘導することによって、優れた治療効果を達成することが予想される。
【0042】
したがって、IL2Rβシグナル伝達ドメインを含むCAR、そのようなCARを発現する改変された免疫細胞、及びその治療用途(CAR-T療法を含む)が本明細書に提供される。理論によって束縛されるものではないが、(1)IL2Rβシグナル伝達ドメインを含むCAR、(2)IL-6若しくはIL-6Rに特異的な拮抗抗体、及び/又は(3)IL-1α若しくはIL-1βに特異的なIL-1アンタゴニスト又は拮抗抗体を発現する改変された免疫細胞は、これらの細胞で処置された患者において、サイトカイン放出症候群(CRS)を著しく低下させた。これらの患者におけるCRSを予防又は抑制するために、追加の抗IL-6の投薬は必要なかった。IL2Rβシグナル伝達ドメインがCAR内に存在することで、IL2Rβシグナル伝達ドメインを有さないCARを有するCAR-T細胞と比較して、処置された患者におけるインビボでのCAR-T細胞の持続性が促進された。
【0043】
IFNγは、T細胞細胞傷害性に関与する最も必須のサイトカインのうちの1つであり、したがって、IFNγの分泌は、CAR-T療法の効力を反映する主要なパラメータである。CAR-T療法中に、IFNγは、CRS中に最も上昇したサイトカインのうちの1つである。CARTが腫瘍標的細胞を殺傷することに重要な役割を果たすため、IFNγシグナル伝達を遮断することは、CAR-T治療有効性を著しく損なうことが予想された。驚くべきことに、本開示では、例えば、内因性IFNγ遺伝子をノックアウトすることによって、又は抗IFNγ scFv(例えば、分泌型scFv)を発現することによって、IFNγの産生が低減されたCAR-T細胞は、患者で観察される低レベルのIFNγにもかかわらず、堅牢な臨床応答を達成することができることが報告されている。これらの結果は、IFNγレベルを低下させることが、堅牢かつ安全な免疫細胞療法(例えば、CAR-T療法)を達成するためのアプローチであることを示唆している。
【0044】
したがって、(1)内因性IFNγ又はIFNγRの発現が低減されるように破壊されたゲノムIFNγ遺伝子又はIFNγR遺伝子を有する、(2)IFNγアンタゴニストを発現するか、又はそれらの両方の組み合わせを有する、遺伝子操作された免疫細胞が本明細書で提供される。細胞は、腫瘍関連抗原を特異的に標的化し、それに結合するCARを更に含み得る。本明細書に記載の遺伝子操作された免疫細胞はまた、IL-6及びIL-1アンタゴニストの発現を介して、IL-6若しくはIL-1、又はIL-6及びIL-1シグナル伝達の両方をインビボで阻害することができる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「内因性」という用語は、生物体内から自然に由来することを指す。
【0046】
本開示の目的のために、「アンタゴニスト」という用語は、標的タンパク質自体、標的タンパク質の生物学的活性、又は生物学的活性の結果が、任意の有意義な程度、例えば、少なくとも20%、50%、70%、85%、90%、又はそれ以上で実質的に無効化、減少、又は中和される、全ての識別された用語、タイトル、及び機能的状態並びに特徴を包含することが明確に理解されるであろう。
【0047】
I.IL2Rβシグナル伝達ドメインを含むキメラ抗原受容体
本開示の一態様は、とりわけ、IL2Rβシグナル伝達ドメインを含む、キメラ抗原受容体を提供する。本明細書に開示されるキメラ抗原受容体(CAR)は、目的の標的抗原(例えば、腫瘍細胞抗原)に対する結合特異性を有し、そのような標的抗原への結合の際に免疫発現において免疫応答を引き起こすことができる、人工的(非自然発生の)受容体である。CARは、多くの場合、少なくとも細胞内シグナル伝達ドメインに融合された細胞外抗原結合ドメインを含む。Cartellieri et al.,J Biomed Biotechnol 2010:956304,2010。本明細書に開示されるCARは、IL2Rβシグナル伝達ドメインを含み、これは、1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン及び/又はCD3ζシグナル伝達ドメイン(CD3zとも称される)などの免疫受容体チロシン依存性活性化モチーフ(ITAM)を含む細胞質シグナル伝達ドメインなどの他の細胞内シグナル伝達ドメインと組み合わせてもよい。CARはまた、膜貫通ドメイン、ヒンジドメイン、及び/又はSTAT3結合部位を有してもよい。膜貫通ドメインは、細胞外抗原結合ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置する。ヒンジドメインは、細胞外抗原結合ドメインと膜貫通ドメインとの間、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間、及び細胞内シグナル伝達ドメインが1つ以上の共刺激シグナル伝達ドメイン及び/又は細胞質シグナル伝達ドメインの組み合わせを含む場合、細胞内シグナル伝達ドメイン内に位置し得る。
【0048】
一実施形態では、IL2Rβシグナル伝達ドメイン、ITAM含有細胞質シグナル伝達ドメイン、例えば、CD3ζシグナル伝達ドメイン、及び4-1BBからのものなどの追加の共刺激ドメインを含む細胞内ドメインを有するCARが本明細書に提供される。理論に束縛されるものではないが、IL2Rβシグナル伝達ドメインの存在は、CARを発現するCAR-T細胞のインビボでの持続性を大幅に改善した。IL2Rβシグナル伝達ドメインはまた、処置された患者においてインビボで持続可能なB細胞無形成を誘導した。
【0049】
(A)IL2Rβシグナル伝達ドメイン
IL2Rβは、インターロイキン-2受容体(IL-2R)のβ鎖である。IL-2Rβシグナル伝達ドメインは、IL-2/IL-2R相互作用によって媒介されるシグナル伝達経路を引き起こすことができるIL2Rβポリペプチド内の断片(例えば、ヒトなどの好適な種の)を指す。IL-2ポリペプチド及びそのシグナル伝達ドメインは、当該技術分野において既知である。例えば、例示的なヒトIL2Rβポリペプチドは、GENBANK登録番号NP_000869.1(その内容が、参照により本明細書に組み込まれる)に提供されている。他の種に由来するIL2Rβポリペプチドは、GENBANKなどの公に利用可能な遺伝子データベースから得ることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるCAR構築物において使用されるIL2Rβシグナル伝達ドメインは、NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV(配列番号2)のアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%以上)同一のアミノ酸配列を含む。
【0051】
2つのアミノ酸配列の「同一性パーセント」は、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-77,1993の場合のように修正された、Karlin and Altschul Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-68,1990のアルゴリズムを使用して決定される。そのようなアルゴリズムは、Altschul,et al.J.Mol.Biol.215:403-10,1990のNBLAST及びXBLASTプログラム(バージョン2.0)に組み込まれている。XBLASTプログラム、スコア=50、ワードレングス=3を用いてBLASTタンパク質検索を行い、目的のタンパク質分子と相同なアミノ酸配列を得ることができる。2つの配列間にギャップが存在する場合、Gapped BLASTを、Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402,1997に記載されるように利用することができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムの利用時には、それぞれのプログラム(例えば、XBLAST及びNBLAST)の初期設定パラメータを使用することができる。
【0052】
代替的又は追加的に、CAR構築物で使用されるIL2Rβシグナル伝達ドメインは、野生型の対応物、例えば、配列番号2のアミノ酸と比較して、1つ以上の変異(例えば、アミノ酸残基置換)を含有し得る。いくつかの例では、IL2Rβシグナル伝達ドメインは、野生型の対応物(例えば、配列番号2)と比較して、最大15個(例えば、最大12、10、8、6、5、4、3、2、又は1個)のアミノ酸残基置換を含有し得る。いくつかの例では、1つ以上のアミノ酸残基の置換は、保存的アミノ酸残基の置換である。
【0053】
本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われるタンパク質の相対的な電荷又はサイズ特性を変化させないアミノ酸置換を指す。バリアントは、そのような方法をコンパイルする参照文献、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook,et al.,eds.,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York,1989、又はCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel,et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.,New Yorkに見出されるような、当業者に既知のポリペプチド配列を改変するための方法に従って調製することができる。アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸間で行われる置換が含まれる:((a)A→G、S;(b)R→K、H;(c)N→Q、H;(d)D→E、N;(e)C→S、A;(f)Q→N;(g)E→D、Q;(h)G→A;(i)H→N、Q;(J)I→L、V;(k)L→I、V;(l)K→R、H;(m)M→L、I、Y;(n)F→Y、M、L;(o)P→A;(p)S→T;(q)T→S;(r)W→Y、F;(s)Y→W、F;及び(t)V→I、L。
【0054】
具体的な例では、本明細書に開示されるCAR構築物で使用されるIL2Rβシグナル伝達ドメインは、配列番号2のアミノ酸配列を含む(例えば、それからなる)。
【0055】
(B)細胞外抗原結合ドメイン
本明細書に開示されるCAR構築物で使用される細胞外抗原結合ドメインは、目的の抗原(例えば、がん抗原などの病理学的抗原)に特異的である。場合によっては、それは、典型的には、ペプチドリンカーによって接続された重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、一本鎖抗体断片(scFv)であり得る。scFv構築物で使用されるペプチドリンカーは、当技術分野において周知である。いくつかの実施形態では、本明細書で使用される細胞外抗原結合ドメインは、CD19又はBCMAなどの腫瘍抗原を標的とする。
【0056】
いくつかの例では、細胞外抗原結合ドメイン(例えば、scFv)は、CD19に結合する。そのような抗CD19 scFvは、配列番号6のアミノ酸配列を含み得る。代替的に、抗CD19 scFvは、配列番号6に由来するバリアント、例えば、配列番号6におけるものと同じ重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)を有するバリアントであり得る。代替的に、バリアントは、配列番号6と同じVH及びVL並びに異なるペプチドリンカーを有してもよい。他の場合では、バリアントは、配列番号6におけるものとは異なるVH→VL配向を有し得る。
【0057】
いくつかの例では、細胞外抗原結合ドメイン(例えば、scFv)は、B細胞成熟抗原(BCMA)に結合する。そのような抗BCMA scFvは、配列番号7のアミノ酸配列を含み得る。代替的に、抗BCMA scFvは、配列番号7に由来するバリアント、例えば、配列番号7におけるものと同じ重鎖及び軽鎖の相補性決定領域(CDR)を有するバリアントであり得る。代替的に、バリアントは、配列番号7と同じVH及びVL並びに異なるペプチドリンカーを有してもよい。他の場合では、バリアントは、配列番号7におけるものとは異なるVH→VL配向を有し得る。
【0058】
同じCDR又は同じVH/VLを有する2つの抗体は、2つの抗体が同じ方法によって決定されるそのCDRの同じアミノ酸配列を有することを意味する。
【0059】
(C)その他のCAR構成成分
上記に開示されるIL2Rβシグナル伝達ドメイン及び細胞外抗原結合ドメインに加えて、本明細書に開示されるCAR構築物のうちのいずれかは、1つ以上の共刺激ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメインなどのITAMを含む細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせを更に含み得る。場合によっては、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインに対してC末端に位置し得るSTAT3結合部位を更に含んでもよい。
【0060】
いくつかの例では、本明細書に開示されるCARは、例えば、ヒト4-1BBからの共刺激受容体4-1BB(別名CD137)からの共刺激ドメインを含み得る。共刺激ドメインのための非限定的な供給源としては、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、及びDAP12が挙げられる。したがって、CARは、4-1BB、OX40、CD70、CD27、CD28、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD11a/CD18)、ICOS(CD278)、DAP10、及びDAP12、又はそれらの任意の組み合わせに由来する共刺激ドメインを有し得る。一例には、4-1BBの共刺激シグナル伝達ドメインが含まれ、これはアミノ酸配列:KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号1)を含む。代替的又は追加的に、CARは、CD3ζシグナル伝達ドメインを含み得、これは、アミノ酸配列:RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDALHMQALPPR(配列番号3)を含み得る。
【0061】
いくつかの例では、本明細書に開示されるCAR構築物は、CD3ζシグナル伝達ドメインに(そのC末端に)連結されたSTAT3結合モチーフを含有する。STAT3結合モチーフは、アミノ酸配列YX1X2Qを有してよく、X1及びX2は、各々独立してアミノ酸である。特に、YX1X2Qモチーフは、YRHQ(配列番号4)であり得る。いくつかの例では、CD3ζシグナル伝達ドメイン及びSTAT3結合モチーフを含有するCAR構築物中の断片は、アミノ酸配列:
RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDAYRHQALPPR(配列番号5)を含み得る。
【0062】
加えて、本明細書に開示されるCAR構築物は、膜貫通ドメイン、ヒンジドメイン、又はそれら両方を更に含み得、これらは、細胞外抗原結合ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置し得る。CAR構築物で一般的に使用されるいかなる膜貫通ドメイン及び/又はヒンジドメインも、ここで使用することができる。いくつかの実施形態では、膜貫通ドメインは、T細胞受容体、CD28、CD3イプシロン、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154、CD271、TNFRSF19、及びキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)のアルファ、ベータ又はゼータ鎖の細胞表面受容体の膜貫通ドメインなどの好適な細胞表面受容体から得ることができる。いくつかの例では、ヒンジドメインは、CD28、CD8、又はIgG1若しくはIgG4などのIgGのものであり得る。
【0063】
具体的な例では、本明細書に開示されるCAR構築物は、細胞外抗原結合ドメイン、4-1BB共刺激ドメイン、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメイン、及びCD3ζシグナル伝達ドメインを含み得る。上記ドメインは、それぞれ、CARのN末端からC末端に向かって配置され得る。CARは、膜貫通ドメインを更に含んでもよく、これは、細胞外抗原結合ドメインに対してC末端であり得、4-1BB共刺激ドメインに対してN末端であり得る。他の例では、本明細書に開示されるCARは、ヒンジドメインを更に含んでもよく、ヒンジドメインは、細胞外抗原結合ドメインのC末端、及び膜貫通ドメインのN末端に連結されてもよい。いくつかの例では、CARは、CARのN末端にシグナルペプチドを含み得る。
【0064】
例示的なCAR構築物を構築するための、抗原結合scFv、IL2Rβシグナル伝達ドメイン、ヒンジドメイン、膜貫通ドメイン、シグナルペプチド、及びCD3ζシグナルドメインなどのCAR構成成分のアミノ酸配列を以下に提供する。更に、例示的なCAR構築物が以下に開示される。企図されるCAR構築物は、当技術分野において既知の任意の方法、例えば、分子クローニング方法を使用して作製することができる。
抗CD19 scFv:
【化1】
【化2】
【化3】
(配列番号40、WO2020/135335に開示されているような抗CD19 scFv(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)
【化4】
(配列番号41、WO2020/135335に開示されているような抗CD19 scFv(その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)
抗BCMA scFv:
【化5】
CD8ヒンジドメイン:
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACD(配列番号10)
CD8膜貫通ドメイン:
IYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号11)
CD8ヒンジドメイン及びCD8膜貫通:
TTTPAPRPPTPAPTIASQPLSLRPEACRPAAGGAVHTRGLDFACDIYIWAPLAGTCGVLLLSLVITLYC(配列番号42)
4-1BB共刺激ドメイン:
KRGRKKLLYIFKQPFMRPVQTTQEEDGCSCRFPEEEEGGCEL(配列番号1)
IL-2Rβドメイン(IL-2Rβ細胞質ドメインの切断型:
NCRNTGPWLKKVLKCNTPDPSKFFSQLSSEHGGDVQKWLSSPFPSSSFSPGGLAPEISPLEVLERDKVTQLLPLNTDAYLSLQELQGQDPTHLV(配列番号2)
CD3ζシグナルドメイン:
RVKFSRSADAPAYKQGQNQLYNELNLGRREEYDVLDKRRGRDPEMGGKPRRKNPQEGLYNELQKDKMAEAYSEIGMKGERRRGKGHDGLYQGLSTATKDTYDAYRHQALPPR(配列番号5)
CD8シグナルペプチド:
MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号44)
抗CD19 CAR:
【化6】
抗CD19 CAR:
【化7】
抗BCMA CAR:
【化8】
【0065】
II.遺伝子改変された免疫細胞
別の態様では、本開示は、任意選択で他の遺伝子編集と組み合わせて、本明細書に開示されるCAR構築物のうちのいずれかを発現する遺伝子改変された免疫細胞を提供する。そのような改変された免疫細胞は、目的の抗原(例えば、がん抗原)に特異的であるCAR構築物を含み、それによって、例えば、免疫細胞のエフェクター活性を介して標的疾患細胞を排除する。別の態様では、本開示は、抗原特異的TCRを発現する遺伝子改変された免疫細胞を提供する。TCRは、目的の抗原(例えば、がん抗原)に特異的であり、それによって、例えば、免疫細胞のエフェクター活性を介して標的疾患細胞を排除する。本明細書に開示の改変された免疫細胞はまた、本明細書に開示の1つ以上のIL-6拮抗抗体を含み得る。場合によっては、改変された免疫細胞は、1つ以上のIL-1アンタゴニスト、例えば、IL-1RA又は当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に開示されている他のものを更に含み得る。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、1つ以上のIFNγアンタゴニスト、例えば、拮抗IFNγ抗体又は当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に開示されている他のものを更に含み得る。これらのCAR、TCR、IL-6拮抗抗体、IFNγアンタゴニスト、又はIL-1アンタゴニストは、改変された細胞におけるノックイン改変であり得る。いくつかの実施形態では、改変された免疫細胞は、内因性遺伝子(例えば、GM-CSF、TCR、IFNγ、又はB2M)の1つ以上のノックアウト改変を更に含み得る。内因性IFNγ遺伝子のノックアウトが好ましい。
【0066】
(i)拮抗IL-6抗体
IL-6は、膜糖タンパク質gp130及びIL-6受容体(IL-6R)を含む複合体を通してシグナル伝達する(例えば、Hibi et al.,Cell,63(6):1149-57,1990を参照されたい)。標的細胞上のIL-6Rに結合するIL-6は、gp130ホモ二量体化及びその後のシグナル伝達を促進する。本明細書で使用される場合、IL-6Rは、IL-6Rの膜結合形態及び可溶性形態(sIL-6R)の両方を含む。IL-6に結合した場合、可溶性IL-6R(sIL-6R)は、アゴニストとして作用し、gp130の二量体化及びシグナル伝達を促進することもできる。トランスシグナル伝達(trans-signaling)は、特定の細胞型によるsIL-6R分泌が、gp130のみを発現してIL-6に応答する細胞を誘導することによって生じ得る(例えば、Tagaet al.,Annu Rev Immunol.,15:797-819,1997、及びRose-John et al.Biochem J.,300(Pt2):281-90,1994を参照されたい)。一例では、sIL-6Rは、ヒトIL-6Rの細胞外ドメインを含む(例えば、Peters et al.,J Exp Med.,183(4):1399-406,1996を参照されたい)。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される改変された免疫細胞は、IL-6又はIL-6受容体(IL-6R)に結合する抗体であり得るIL-6アンタゴニストを発現する。そのような抗体(拮抗抗体)は、免疫細胞上のIL-6/IL-6Rの結合を妨げ、それによってIL-6によって媒介される細胞シグナル伝達を抑制することができる。
【0068】
典型的な抗体分子は、通常抗原結合に関与する重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む。VH領域及びVL領域は、「フレームワーク領域」(「FR」)として知られる、より保存された領域が点在する「相補性決定領域」(「CDR」)としても知られる超可変領域へと更に細分することができる。各VH及びVLは、典型的には、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で配置された3つのCDR及び4つのFRから構成される。フレームワーク領域及びCDRの範囲は、当該技術分野において既知の方法論を使用して、例えば、当該技術分野において周知であるKabat定義、Chothia定義、AbM定義、及び/又は接触定義によって正確に特定することができる。例えば、Kabat,E.A.,et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242、Chothia et al.,(1989)Nature 342:877、Chothia,C.et al.(1987)J.Mol.Biol.196:901-917、Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948、及びAlmagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)を参照されたい。また、英国の医療研究評議会(Medical Research Council in the United Kingdom)におけるヒトゲノムマッピングプロジェクトリソース(Human Genome Mapping Project Resources)、並びにUniversity College Londonのバイオインフォマティクス及び計算生物学グループのウェブサイト(Bioinformatics and Computational Biology group website)に記載されている抗体ルールも参照されたい。
【0069】
本明細書で使用される抗体(複数形で互換的に使用される)は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する少なくとも1つの抗原認識部位を介して、標的タンパク質、例えば、IL-6又はIL-6Rに特異的に結合することができる免疫グロブリン分子である。本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、インタクト(例えば、完全長)抗体及び重鎖抗体(例えば、アルパカ重鎖IgG抗体)だけでなく、その抗原結合断片(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなど)、一本鎖(scFv)、単一ドメイン抗体(sdAb;VHH)(ナノボディとしても知られている)、その変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、キメラ抗体、ダイアボディ、線形抗体、単鎖抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、並びに抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、及び共有結合改変抗体を含む、必要な特異性の抗原認識部位を含む任意の他の改変された構成も包含する。抗体は、IgD、IgE、IgG、IgA、又はIgM(若しくはそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、抗体は、任意の特定のクラスである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには、5つの主要な分類:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分けられ得る。免疫グロブリンの種々のクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、アルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと呼ばれる。免疫グロブリンの種々の分類のサブユニット構造及び三次元構造は、周知である。
【0070】
いくつかの実施形態では、標的タンパク質又はその受容体に「結合する」本明細書に記載の抗体は、標的タンパク質又は受容体に特異的に結合し得る。標的又はエピトープに「特異的に結合する」(本明細書で互換的に使用される)抗体は、当該技術分野においてよく理解されている用語であり、かかる特異的結合を決定する方法も当該技術分野において周知である。分子は、代替の標的と比較して、より頻繁に、より迅速に、より長い持続時間で、及び/又は特定の標的抗原とより高い親和性で反応又は会合する場合、「特異的結合」を示すと言われている。抗体は、他の物質と結合するよりも、より大きい親和性、結合活性で、より容易に、及び/又はより長い持続時間で結合する場合、標的サイトカインと「特異的に結合する」。例えば、IL-6又はIL-6Rエピトープに特異的に(又は優先的に)結合する抗体は、他のIL-6エピトープ、非IL-6エピトープ、他のIL-6Rエピトープ、又は非IL-6Rエピトープに結合するよりも、より大きい親和性、結合活性で、より容易に、及び/又はより長い持続時間で、このIL-6エピトープ又はIL-6Rエピトープに結合する抗体である。また、この定義を読むことによって、例えば、第1の標的抗原に特異的に結合する抗体は、第2の標的抗原に特異的若しくは優先的に結合し得るか、又は結合しない場合があることも理解される。したがって、「特異的結合」又は「優先的結合」は、必ずしも排他的結合を必要としない(ただし、それを含むことができる)。一般に、しかし必ずしもそうではないが、結合への言及は、優先的結合を意味する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の標的タンパク質の拮抗抗体は、標的タンパク質(例えば、ヒトIL-6若しくはヒトIL-6R)又はその抗原エピトープに対して好適な結合親和性を有する。本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、見かけの会合定数又はKAを指す。KAは、解離定数(KD)の逆数である。本明細書に記載の拮抗抗体は、標的抗原又は抗原エピトープに対して少なくとも10-5、10-6、10-7、10-8、10-9、10-10M以下の結合親和性(KD)を有し得る。増加した結合親和性は、減少したKDに対応する。第2の抗原と比較して、第1の抗原に対する抗体の高い親和性結合は、第2の抗原に結合するためのKA(又はKDの数値)よりも、第1の抗原に結合するためのより高いKA(又はKDのより小さい数値)によって示され得る。そのような場合、抗体は、第2の抗原(例えば、第2のコンフォメーション又はその模倣物中の同じ第1のタンパク質、又は第2のタンパク質)と比較して、第1の抗原(例えば、第1のコンフォメーション又はその模倣物中の第1のタンパク質)に対する特異性を有する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の拮抗抗体は、前駆体形態の標的タンパク質又は別のタンパク質、例えば、標的タンパク質と同じファミリーの炎症性タンパク質への結合親和性と比較して、成熟形態の標的タンパク質へのより高い結合親和性(より高いKA又はより小さなKD)を有する。(例えば、特異性又は他の比較のための)結合親和性の差は、少なくとも1.5、2、3、4、5、10、15、20、37.5、50、70、80、91、100、500、1000、10,000、又は105倍であり得る。
【0072】
結合親和性(又は結合特異性)は、平衡透析、平衡結合、ゲル濾過、ELISA、表面プラズモン共鳴、又は分光法(例えば、蛍光アッセイを使用する)を含む、様々な方法によって決定することができる。結合親和性を評価するための例示的な条件は、HBS-P緩衝液(10mMのHEPES pH7.4、150mMのNaCl、0.005%(v/v)の界面活性剤P20)中である。これらの技術は、標的タンパク質濃度の関数として結合した結合タンパク質の濃度を測定するために使用することができる。結合した結合タンパク質([Bound])の濃度は、一般に、以下の方程式:
[Bound]=[Free]/(Kd+[Free])によって遊離標的タンパク質([Free])の濃度に関連付けられる。
【0073】
しかし、時には、例えば、ELISA又はFACS分析などの方法を使用して決定される、KAに比例する親和性の定量的測定値を得ることで十分であり、したがって、より高い親和性が、例えば、2倍高いかどうかを決定するなどの比較に使用して、親和性の定性的測定値を取得するか、又は例えば、機能アッセイ、例えば、インビトロ又はインビボアッセイにおける活性によって、親和性の推論を取得することができるために、KAの正確な決定は必ずしも必要ではない。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるIL-6拮抗抗体は、IL-6シグナル伝達に結合し、それを少なくとも50%(例えば、60%、70%、80%、90%、95%又はそれ以上)阻害することができる。本明細書に記載のIL-6拮抗抗体の阻害活性は、当該技術分野において既知の日常的な方法によって決定することができる。
【0075】
本明細書に記載の抗体は、マウス、ラット、ヒト、又は任意の他の起源(キメラ若しくはヒト化抗体を含む)であり得る。そのような抗体は、非自然発生であり、例えば、ヒトによる行為(例えば、そのような動物に所望の抗原又はその断片を免疫化すること)がなければ、動物において産生されないであろう。
【0076】
本明細書に記載の抗体のうちのいずれかは、モノクローナル又はポリクローナルのいずれかであり得る。「モノクローナル抗体」は、均質な抗体集団を指し、「ポリクローナル抗体」は、不均一な抗体集団を指す。これらの2つの用語は、抗体の供給源又はそれが作製される様式を限定しない。
【0077】
一例では、本明細書に記載の方法で使用される抗体は、ヒト化抗体である。ヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含有する、特異的キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその抗原結合断片である非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の形態を指す。ほとんどの場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基は、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基によって置き換えられる。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含み得るが、抗体の性能を更に精製及び最適化するために含まれる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの領域に対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列の領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域又はドメイン(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域又はドメインの少なくとも一部も含むであろう。抗体は、WO99/58572に記載されるように改変されたFc領域を有し得る。他の形態のヒト化抗体は、1つ以上のCDR(1、2、3、4、5、及び/又は6つ)を有し、これは元の抗体に関して変化させられ、これは、元の抗体からの1つ以上のCDRに「由来する」1つ以上のCDRとも称される。ヒト化抗体はまた、親和性成熟を伴い得る。
【0078】
例示的な抗IL-6抗体及び抗IL-6R抗体の重鎖可変ドメイン(V
H)及び軽鎖可変ドメイン(V
L)は、太字で示されるCDR(University College Londonのバイオインフォマティクス及び計算生物学グループのウェブサイトによって記載される抗体ルールに従って決定される)を伴って以下に提供される(参照抗体1~6)。
抗体1(IL-6Rに結合する):
【化9】
【化10】
抗体2(IL-6に結合する):
【化11】
【化12】
抗体3(IL-6に結合する):
【化13】
【化14】
抗体4(IL-6Rに結合する):
【化15】
【化16】
抗体5(IL-6に結合する):
【化17】
【化18】
抗体6(gp130に結合する):
【化19】
【化20】
【0079】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のIL-6拮抗抗体は、本明細書に提供される参照抗体(例えば、抗体1又は抗体2)のうちの1つと同じIL-6抗原(例えば、ヒトIL-6)若しくはIL-6R(例えば、ヒトIL-6R)内の同じエピトープに結合するか、又はIL-6若しくはIL-6R抗原への結合から参照抗体と競合する。本明細書で提供される参照抗体としては、抗体1~6が挙げられ、これらのそれぞれの構造的特徴及び結合活性が本明細書で提供される。本明細書に記載される参照抗体と同じエピトープに結合する抗体は、参照抗体と全く同じエピトープ又は実質的に重複するエピトープ(例えば、3つ未満の非重複アミノ酸残基、2つ未満の非重複アミノ酸残基、又は1つのみの非重複アミノ酸残基を含有する)に結合し得る。2つの抗体が、同族抗原への結合から互いに競合するかどうかは、当技術分野において周知である競合アッセイによって決定することができる。そのような抗体は、当業者に既知であると、例えば、実質的に類似した構造的特徴(例えば、相補性決定領域)を有するもの、及び/又は当技術分野において既知のアッセイによって特定されるものとして特定され得る。例えば、競合アッセイは、参照抗体のうちの1つを使用して実施して、候補抗体が参照抗体と同じエピトープに結合するか、又はIL-6若しくはIL-6R抗原へのその結合と競合するかを決定することができる。
【0080】
場合によっては、本明細書に開示されるIL-6拮抗抗体は、本明細書に開示される参照抗体(例えば、抗体1又は抗体2)と同じ重鎖CDR及び/又は同じ軽鎖CDRを含み得る。重鎖及び/又は軽鎖CDRは、抗原結合を担う領域/残基であり、そのような領域/残基は、当該技術分野において既知である方法によって、参照抗体(上に示す)の重鎖/軽鎖配列のアミノ酸配列から特定することができる。例えば、University College Londonのバイオインフォマティクス及び計算生物学グループのウェブサイト、Almagro,J.Mol.Recognit.17:132-143(2004)、Chothia et al.,J.Mol.Biol.227:799-817(1987)、並びに当該技術分野において既知であるか、又は本明細書に開示されている他のものに記載される抗体ルールを参照されたい。抗体におけるCDR領域の決定は、当業者の技術範囲内で十分であり、例えば、本明細書に開示される方法、例えば、Kabat法(Kabat et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,(5th ed.,1991,National Institutes of Health,Bethesda Md.))又はChothia法(Chothia et al.,1989,Nature 342:877、Al-lazikani et al(1997)J.Molec.Biol.273:927-948))である。本明細書で使用されるとき、CDRは、当該技術分野において既知である任意の方法によって定義されるCDRを指し得る。同じCDRを有する2つの抗体は、2つの抗体が同じ方法によって決定されるそのCDRの同じアミノ酸配列を有することを意味する。
【0081】
本明細書に開示される例示的な抗IL-6又は抗IL-6R抗体(例えば、抗体1又は抗体2)のうちのいずれかの機能的バリアントも本開示の範囲内である。機能的バリアントは、参照抗体と実質的に類似した結合活性及び生物活性(例えば、実質的に類似した結合親和性、結合特異性、阻害活性、又はそれらの組み合わせ)を保持しながら、参照抗体と比較して、VH及び/若しくはVL、又はHC CDRのうちの1つ以上及び/若しくはLC CDRのうちの1つ以上において1つ以上のアミノ酸残基変異を含有してよい。
【0082】
いくつかの例では、本明細書に開示されるIL-6拮抗抗体は、抗体1又は抗体2などの参照抗体のHC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3と比較して、10個以下のアミノ酸変異(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を集合的に含有するHC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3を含む。「集合的」とは、3つのHC CDRの全てにおけるアミノ酸変異の総数が、規定の範囲内であることを意味する。代替的又は追加的に、抗IL-6又は抗IL-6R抗体は、参照抗体のLC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3と比較して、10個以下のアミノ酸変異(例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を集合的に含有するLC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3を含み得る。
【0083】
いくつかの例では、本明細書に開示されるIL-6拮抗抗体は、HC CDR1、HC CDR2、及びHC CDR3を含み得、それらのうちの少なくとも1つは、抗体1又は抗体2などの参照抗体の対応物のHC CDRと比較して、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有する。具体的な例では、本抗体は、抗体1又は抗体2などの参照抗体のHC CDR3と比べて5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有するHC CDR3を含む。代替的又は追加的に、IL-6拮抗抗体は、LC CDR1、LC CDR2、及びLC CDR3を含み得、それらのうちの少なくとも1つは、参照抗体の対応物のLC CDRと比較して、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有する。具体的な例では、本抗体は、参照抗体のLC CDR3と比べて、5個以下のアミノ酸変異(例えば、4、3、2、又は1個以下のアミノ酸変異)を含有するLC CDR3を含む。
【0084】
場合によっては、アミノ酸残基変異は、保存的アミノ酸残基置換であり得る。本明細書の開示を参照されたい。
【0085】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるIL-6拮抗抗体は、抗体1又は抗体2などの参照抗体の重鎖CDRと集合的に少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、又は98%)同一である重鎖CDRを含んでもよい。代替的又は追加的に、本抗体は、参照抗体の軽鎖CDRと集合的に少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%又は98%)同一である軽鎖CDRを含んでもよい。いくつかの実施形態では、IL-6拮抗抗体は、抗体1又は抗体2などの参照抗体の重鎖可変領域と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、若しくは98%)同一である重鎖可変領域、及び/又は参照抗体の軽鎖可変領域と少なくとも80%(例えば、85%、90%、95%、若しくは98%)同一である軽鎖可変領域を含んでもよい。
【0086】
本開示はまた、本明細書に開示される参照IL-6拮抗抗体のうちのいずれかの生殖細胞系バリアントも提供する。生殖細胞系バリアントは、フレームワーク領域内で、対応する生殖細胞系列配列に対するその親抗体と比較して1つ以上の変異を含有する。生殖細胞系バリアントを作製するために、親抗体若しくはその一部の重鎖又は軽鎖可変領域配列(例えば、フレームワーク配列)は、抗体生殖細胞系列配列データベース(例えば、University College Londonのバイオインフォマティクス及び計算生物学グループのウェブサイト、vbase2ウェブサイト、又はIMGT(登録商標)、国際ImMunoGeneTics情報システム(登録商標)のウェブサイトに記載される抗体ルール)に対するクエリとして使用して、生殖細胞系列配列と親抗体との間のフレームワーク領域のうちの1つ以上において親抗体によって使用される対応する生殖細胞系配列及びアミノ酸残基変異を識別することができる。次いで、生殖細胞系列配列に基づいて1つ以上のアミノ酸置換を親抗体に導入し、生殖細胞系バリアントを生成することができる。
【0087】
いくつかの例では、本明細書に記載の拮抗抗体は、ヒト抗体又はヒト化抗体である。代替的又は追加的に、拮抗抗体は、scFvである。例示的なscFv抗体を、以下に提供する。
IL-6/IL-6R scFv 1:
DIQMTQSPSSVSASVGDRVTITCRASQGISSWLAWYQQKPGKAPKLLIYGASSLESGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFASYYCQQANSFPYTFGQGTKLEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGRSLRLSCAASRFTFDDYAMHWVRQAPGKGLEWVSGISWNSGRIGYADSVKGRFTISRDNAENSLFLQMNGLRAEDTALYYCAKGRDSFDIWGQGTMVTVSS(配列番号8)
IL-6/IL-6R scFv 2:
EIVLTQSPATLSLSPGERATLSCSASISVSYMYWYQQKPGQAPRLLIYDMSNLASGIPARFSGSGSGTDFTLTISSLEPEDFAVYYCMQWSGYPYTFGGGTKVEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSPFAMSWVRQAPGKGLEWVAKISPGGSWTYYSDTVTGRFTISRDNAKNSLYLQMNSLRAEDTAVYYCARQLWGYYALDIWGQGTTVTVSS(配列番号9)
IL-6/IL-6R scFv 3:
QIVLIQSPAIMSASPGEKVTMTCSASSSVSYMYWYQQKPGSSPRLLIYDTSNLASGVPVRFSGSGSGTSYSLTISRMEAEDAATYYCQQWSGYPYTFGGGTKLEIKGGGGSGGGGSGGGGSEVQLVESGGKLLKPGGSLKLSCAASGFTFSSFAMSWFRQSPEKRLEWVAEISSGGSYTYYPDTVTGRFTISRDNAKNTLYLEMSSLRSEDTAMYYCARGLWGYYALDYWGQGTSVTVSS(配列番号26)
IL-6/IL-6R scFv 4:
QVQLQESGPGLVRPSQTLSLTCTVSGYSITSDHAWSWVRQPPGRGLEWIGYISYSGITTYNPSLKSRVTMLRDTSKNQFSLRLSSVTAADTAVYYCARSLARTTAMDYWGQGSLVTVSSGGGGSGGRASGGGGSGGGGSDIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQDISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYYTSRLHSGVPSRFSGSGSGTDFTFTISSLQPEDIATYYCQQGNTLPYTFGQGTKVEIK(配列番号27)
【0088】
(ii)IL-1アンタゴニスト
インターロイキン-1は、当該技術分野において既知のサイトカインであり、2つのアイソフォーム、IL-1α及びIL-1βを含む。IL-1は、急性炎症のアップレギュレーション及びダウンレギュレーション、並びに他の生物学的経路において重要な役割を果たす。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される改変された免疫細胞において発現されるIL-1アンタゴニストは、インターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1RA)であり得る。IL-1RAは、免疫細胞、上皮細胞、及び脂肪細胞などの様々な種類の細胞によって分泌され得る、天然に存在するポリペプチドである。それは細胞表面のIL-1R受容体に結合し、それによってIL-1/IL-1R相互作用によって引き起こされる細胞シグナル伝達を防止する。ヒトIL-1RAは、IL1RN遺伝子によってコードされる。以下は、ヒトIL-1RAの例示的なアミノ酸配列である。
【化21】
【0090】
太字及び斜体のN末端断片は、天然IL-1RAにおけるシグナルペプチドを指す。本出願で使用するIL-1RAは、上記ヒトIL-1RAの成熟ポリペプチドに対応するアミノ酸配列を含んでよい(シグナルペプチドを除く)。
RPSGRKSSKMQAFRIWDVNQKTFYLRNNQLVAGYLQGPNVNLEEKIDVVPIEPHALFLGIHGGKMCLSCVKSGDETRLQLEAVNITDLSENRKQDKRFAFIRSDSGPTTSFESAACPGWFLCTAMEADQPVSLTNMPDEGVMVTKFYFQEDE(配列番号51)
【0091】
場合によっては、このシグナルペプチドは、異なるシグナル配列、例えば、MATGSRTSLLLAFGLLCLPWLQEGSA(配列番号29)で置き換えられ得る。得られたIL-1RAは、次の全配列を有する。
【化22】
【0092】
他のIL-1アンタゴニストとしては、抗IL-1α又は抗IL-1β抗体が挙げられる(Fredericks ZL,et al.,2004,Protein Eng Des Sel.17(1):95-106);米国特許第7,531,166号及び同第8,383,778号を参照されたい(これらの内容はそれらの全体が本明細書に組み込まれる))。
【0093】
(iii)インターフェロンガンマの改変
場合によっては、本開示は、IFNγの産生が低下した遺伝子改変された免疫細胞を提供する。そのような遺伝子改変された免疫細胞は、改変されていないそれらの野生型の対応物の細胞と比較して、IFNγを産生しないか又はより少ないIFNγを産生する。患者の培養物中又はインビボにおけるIFNγの量は、当該技術分野において既知の任意の方法によって、例えば、細胞培養培地のELISAアッセイ又はそのような改変された細胞で処置された患者の血液IFNγレベルによって決定され得る。より少ないIFNγとは、IFNγ発現を低下させるように改変されていないそれらの野生型の対応物の細胞と比較して、少なくとも10%低いことを意味する。他の実施形態では、より少ないIFNγは、IFNγ発現を低減するように改変されていない、それらの野生型の対応物の細胞と比較して、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%低いことを意味する。一実施形態では、IFNγの発現が低下した遺伝子改変された免疫細胞は、例えば、遺伝子編集によって、内因性IFNγ遺伝子をノックアウトしてもよい。いくつかの実施形態では、IFNγ発現が低下した遺伝子改変された免疫細胞は、細胞外抗原結合ドメイン、共刺激ドメイン、細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせ、及び任意選択で膜貫通ドメインを含むCARを含んでもよい。遺伝子改変された免疫細胞は、IL-6アンタゴニストを更に含み得る。IFNγの産生が低下した遺伝子改変された免疫細胞のCARは、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインを含んでよい。追加的又は代替的に、IFNγの産生が低下した遺伝子改変された免疫細胞は、IL-1アンタゴニストを含んでもよい。
【0094】
他の例では、本開示は、IFNγRの発現が低下した遺伝子改変された免疫細胞を提供する。好ましくは、IFNγR1である。そのような遺伝子改変された免疫細胞は、それらの野生型の対応物と比べて、IFNγRを発現しないか、ほとんど発現しないか、又はより少ないIFNγRを発現する。IFNγRの量は、当技術分野において既知の任意の方法によって、例えば、ELISAアッセイによって決定され得る。より少ないIFNγRとは、IFNγR発現を低下させるように改変されていないそれらの野生型の対応物の細胞と比較して、少なくとも10%低いことを意味する。一実施形態では、IFNγRの発現が低下した遺伝子改変された免疫細胞は、例えば、遺伝子編集によって、内因性IFNγR遺伝子をノックアウトしてもよい。いくつかの実施形態では、IFNγR発現が低下した遺伝子改変された免疫細胞は、細胞外抗原結合ドメイン、共刺激ドメイン、細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせ、及び任意選択で膜貫通ドメインを含むCARを含んでもよい。遺伝子改変された免疫細胞は、IL-6アンタゴニストを更に含み得る。CARは、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0095】
一態様では、インビボでインターフェロンガンマ遮断をもたらすことができる遺伝子改変された免疫細胞も本明細書で提供される。インビボでのインターフェロンガンマ遮断は、IFNγ又はIFNγR遺伝子のゲノム遺伝子編集を介して、又はIFNγアンタゴニストを発現及び分泌することによって実現される。いくつかの実施形態では、遺伝子改変された免疫細胞は、インビボでインターフェロンガンマ遮断をもたらすことができ、細胞外抗原結合ドメイン、共刺激ドメイン、細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせ、及び任意選択で膜貫通ドメインを含むCARを含んでもよい。遺伝子改変された免疫細胞は、IL-6アンタゴニストを更に含み得る。CARは、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0096】
(a)IFNγ若しくはIFNγR遺伝子ノックアウトを介したIFNγシグナル伝達の遮断
IFNγ若しくはIFNγR(例えば、R1サブユニット)遺伝子のゲノム遺伝子編集は、IFNγ若しくはIFNγR遺伝子のいずれか、又はそれらの両方をノックアウトすることを目的とする。これにより、IFNγシグナル伝達によって開始される任意のCRSが、利用可能なIFNγリガンド若しくはIFNγRが少ない場合に、インビボで制限されることが想定される。
【0097】
したがって、破壊された内因性IFNγ若しくはIFNγR遺伝子、又はそれらの両方を含む遺伝子改変された免疫細胞を本明細書で提供する。いくつかの実施形態では、内因性IFNγ若しくはIFNγR遺伝子、又はそれらの両方が破壊された遺伝子改変された免疫細胞は、細胞外抗原結合ドメイン、共刺激ドメイン、細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせ、及び任意選択で膜貫通ドメインを含むCARを含んでもよい。遺伝子改変された免疫細胞は、IL-6アンタゴニストを更に含み得る。代替的又は追加的に、遺伝子改変された免疫細胞は、IFNγアンタゴニストを更に含み得る。これらの改変された細胞におけるCARは、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインを含んでもよい。
【0098】
宿主細胞における内因性遺伝子の発現をダウンレギュレートするための当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、本明細書に記載のIFNγ若しくはIFNγRの発現レベルを低下させることができる。ヒトIFNγ及びIFNγR1のゲノム情報は、GENBANK遺伝子ID:3458及び遺伝子ID:3459にそれぞれ見出される。任意の遺伝子編集方法は、内因性対立遺伝子における標的領域を切断することができるエンドヌクレアーゼの使用を伴ってもよい。鋳型核酸の非相同末端結合は、ゲノム中の二本鎖切断を修復し、変異(例えば、挿入、欠失、及び/又はフレームシフト)を標的部位に導入し得る。
【0099】
いくつかの例では、ノックアウトイベントは、ノックインイベントと結合することができ、所望の分子(例えば、本明細書に記載のIL-1RA)をコードする外因性核酸は、遺伝子編集を介してIFNγ又はIFNγR遺伝子のゲノム遺伝子座に挿入することができ、それによって、挿入の結果としての遺伝子発現を妨害する。
【0100】
場合によっては、ノックアウト改変のうちのいずれかは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、shRNA若しくはsiRNAなどの干渉RNA)又はリボザイムを使用して、当該技術分野において既知の方法を介して達成され得る。標的サイトカイン/タンパク質に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、サイトカインの内因性遺伝子の標的領域に相補的若しくは部分的に相補的であるオリゴヌクレオチド、又はそのようなものをコードするmRNAを指す。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、従来の方法によって標的細胞に送達され得る。代替的に、レンチウイルスベクター又はその等価物などの発現ベクターを使用して、そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができる。
【0101】
代替的に、内因性IFNγ又はIFNγR遺伝子のノックアウトは、例えば、CRISPR/Cas9系を用いたCRISPR技術などの遺伝子編集方法を用いて達成することができる。IFNγ遺伝子を破壊するために、ヒトIFNγ遺伝子内のプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)配列を標的とするシングルガイドRNA(sgRNA)をCRISPR/Cas9システムとともに使用してもよい。sgRNA分子は、スキャフォールド(scaffold)tracrRNA配列に融合したカスタム設計の短いcrRNA配列の両方を含有する。IFNγ sgRNAのインビトロ転写に使用されるDNA配列が本明細書に提供される。太字の配列は、ヒトIFNγ遺伝子の第1のエクソンにおける標的PAM配列である。
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【0102】
IFNγR遺伝子を破壊するために、市販のOriGENEからのIFNγR1ヒト遺伝子ノックアウトキット(CRISPR)カタログ番号KN202761を使用してもよい。そのようなキットを使用する方法は、当該技術分野において既知である。
【0103】
(b)IFNγアンタゴニストを介したIFNγシグナル伝達の遮断
本明細書に記載の遺伝子操作された免疫細胞のいくつかの実施形態では、細胞は、IFNγアンタゴニストを含む。他の実施形態では、IFNγアンタゴニストを含む遺伝子改変された免疫細胞が、本明細書で提供される。いくつかの実施形態において、IFNγアンタゴニストを含む遺伝子組換え免疫細胞は、細胞外抗原結合ドメインを含むCAR、共刺激ドメイン、細胞質シグナル伝達ドメイン、又はそれらの組み合わせ、及び所望により膜貫通ドメインを含んでもよい。遺伝子改変された免疫細胞は、IL-6アンタゴニストを更に含み得る。代替的又は追加的に、遺伝子改変された免疫細胞は、破壊された内因性IFNγ若しくはIFNγR遺伝子、又はそれらの両方を有し得る。これらの改変された細胞におけるCARは、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインを含んでもよい。
【0104】
IFNγアンタゴニストは、三元IFNγ/IFNγR1/IFNγR2の形成を遮断する。IFNγ R1は、リガンド結合及びシグナル伝達に必要である。IFNγアンタゴニストは、拮抗性抗IFNγ抗体又はその抗原結合断片、分泌型IFNγ受容体又は受容体のリガンド結合断片、及び拮抗性抗IFNγR抗体又はその抗原結合断片であってもよく、それにより、IFNγアンタゴニストは、IFNγ/IFNγR相互作用及び下流シグナル伝達を遮断する。一実施形態では、IFNγアンタゴニストは、分泌される。拮抗性抗IFNγ抗体又はその抗原結合断片は、インビボで放出されるIFNγリガンドに結合し、したがって、IFNγリガンドは、細胞表面上に発現するその天然受容体であるIFNγR1と相互作用することができない。分泌型IFNγ受容体又はリガンド結合断片は、デコイ受容体として機能し、インビボで放出されるIFNγリガンドを捕捉し、したがって、IFNγリガンドは、細胞表面上に発現されるその天然受容体であるIFNγR1と相互作用することもできない。一実施形態では、分泌型IFNγR又はリガンド結合断片は、天然ヒトIFNγ受容体の細胞外部分である。抗IFNγR抗体又はその抗原結合断片は、細胞上に発現されるIFNγ受容体に結合し、IFNγリガンドと、2つのIFNγR1及び2つのIFNγR2サブユニットを含有する完全な受容体複合体の受容体並びに結果として生じるリガンド誘導アセンブリとの相互作用を防止する。完全受容体複合体は、IFNγシグナル伝達経路に必要である。
【0105】
一実施形態では、拮抗性抗IFNγ抗体又はその抗原結合断片は、抗IFNγ scFvなどの抗体のscFvである。ScFvは、ペプチドリンカーと連結された可変重鎖(VH)及び可変軽鎖(VL)抗体からなる。抗IFNγ scFvを構築するための抗IFNγ抗体からのVH及びVLの非限定的な例は以下の通りである:
VL:
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCKASENVDTYVSWYQQKPGKAPKLLIYGASNRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPDDFATYYCGQSYNYPFTFGQGTKVEVKR(配列番号52)
VH:
QVQLVQSGAELKKPGSSVKVSCKASGYIFTSSWINWVKQAPGQGLEWIGRIDPSDGEVHYNQDFKDKATLTVDKSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGFLPWFADWGQGTLVTVSS(配列番号53)
VL:
NFMLTQPHSVSESPGKTVTISCTRSSGSIASNYVQWYQQRPGSSPTTVIYEDNQRPSGVPDRFSGSIDSSSNSASLTISGLKTEDEADYYCQSYDGSNRWMFGGGTKLTVL(配列番号55)
VH:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDGSSGWYVPHWFDPWGQGTLVTVSS(配列番号56)
VL:
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQRSGGSSFTFGPGTKVDIK(配列番号58)
VH:
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYNFTSYWIGWVRQMPGKGLELMGIIYPGDSDTRYSPSFQGQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCGSGSYFYFDLWGRGTLVTVSS(配列番号59)
【0106】
抗IFNγ scFvの非限定的な例は、以下の通りであり、柔軟性グリシン-セリンペプチドリンカーは太字で示されている。
【化31】
【化32】
【化33】
【0107】
いくつかの実施形態では、抗IFNΓ SCFVは、配列番号53のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号52のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むか、又は配列番号56のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号55のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含むか、又は配列番号59のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域及び配列番号58のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む。更なる実施形態では、抗IFNΓ SCFVは、配列番号54、57、又は60のアミノ酸配列を含む。
【0108】
他の拮抗性抗IFNγ抗体又はその抗原結合断片は、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第9,682,142号に見出すことができる。
【0109】
可溶性IFNγR断片は、当該技術分野において既知であり、例えば、天然ヒトIFNγ受容体の細胞外部分は、米国特許第5,578,707号及び同第7,449,176号に記載されている。高親和性IFNγ受容体複合体は、I型膜タンパク質であるIFNγR1(IFNγRα)及びIFNγR2(IFNγRβ)の2つの型で構成されている。両方のタンパク質は、II型サイトカイン受容体ファミリーのメンバーであり、全体の配列同一性の約52%を共有する。IFNγR1は、IFNγ結合及び受容体の内在化に必要かつ十分であるリガンド結合サブユニットである。IFNγR2は、IFNγシグナル伝達に必要とされるが、それ自体ではIFNγとは結合しない。ヒトIFNγR1 cDNAは、17aaのシグナルペプチド、228aaの細胞外ドメイン、23aaの膜貫通ドメイン、及び221aaの細胞内ドメインを有する499個のアミノ酸(aa)残基のタンパク質をコードする。IFNγシグナル伝達に拮抗する可溶性IFNγR断片は、228aaの細胞外ドメインを含み得る。
【0110】
米国特許第4,897,264号及び同第7,449,176号に記載される拮抗性抗IFNγR抗体又はその抗原結合断片。これらの特許の内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書に記載のIFNγアンタゴニストのいくつかの実施形態では、IFNγアンタゴニストは、IFNγアンタゴニストのN末端に位置するシグナルペプチドを更に含んでもよく、任意選択で、シグナルペプチドは、アルブミン、CD8、成長ホルモン、IL-2、抗体軽鎖、及びGaussiaルシフェラーゼ、又はその改変バージョンから選択される。例えば、以下の通りである:CD8シグナルペプチド、MALPVTALLLPLALLLHAARP(配列番号44);抗体軽鎖シグナルペプチド、MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMA(配列番号45);Gaussiaルシフェラーゼシグナルペプチド、MGVKVLFALICIAVAEA(配列番号46);ヒトアルブミンシグナルペプチド、MKWVTFISLLFLFSSAYS(配列番号47);改変されたヒトアルブミンシグナルペプチド、MKWVTFISLLFLFSSSSRA(配列番号48);改変されたIL2シグナルペプチド、MRRMQLLLLIALSLALVTNS(配列番号49);成長ホルモンシグナルペプチド、MATGSRTSLLLAFGLLCLPWLQEGSA(配列番号29);及び天然IL-IRAシグナルペプチドで、MALETIC(配列番号50)。
【0112】
本明細書に開示される改変された免疫細胞は、1つ以上の炎症性タンパク質(例えば、炎症性サイトカイン若しくはその可溶性受容体、炎症性成長因子若しくは細胞傷害性分子)のノックアウト、炎症性タンパク質若しくは免疫抑制性サイトカインの1つ以上のアンタゴニストのノックイン、又はそれらの組み合わせを更に含んでもよい。
【0113】
例示的な炎症性サイトカイン又はその可溶性受容体としては、インターロイキン1アルファ(IL1α)、インターロイキン1ベータ(IL1β)、インターロイキン2(IL-2)、インターロイキン5(IL-5)、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン7(IL-7)、インターロイキン8(IL-8)、インターロイキン9(IL-9)、インターロイキン(IL-12)、インターロイキン15(IL-15)、インターロイキン17(IL-17)、インターロイキン18(IL-18)、インターロイキン21(IL-21)、インターロイキン23(IL-23)、sIL-1RI、sILー2Rα、可溶性IL-6受容体(sIL-6R)、インターフェロンα(IFNα)、インターフェロンβ(IFNβ)、マクロファージ炎症性タンパク質(例えば、MIPα及びMIPβ)、マクロファージコロニー刺激因子1(CSF1)、白血病阻害因子(LIF)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、C-X-Cモチーフケモカインリガンド10(CXCL10)、ケモカイン(C-Cモチーフ)リガンド5(CCL5)、エオタキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、単球走化性タンパク質1(MCP1)、インターフェロンガンマ誘導性モノカイン(MIG)、終末糖化産物受容体(RAGE)、C反応性タンパク質(CRP)、アンジオポイエチン-2、及びヴォン・ヴィレブランド因子(VWF)が挙げられる。
【0114】
標的炎症性タンパク質の例としては、炎症性サイトカイン又はその可溶性受容体(例えば、IL2、IL1α、IL1β、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-12、IL-15、IL-17、IL-18、IL-21、IL-23、sIL-1RI、sIL-2Rα、sIL-6R、IFNα、IFNβ、IFNγ、MIPα、MIPβ、CSF1、LIF、G-CSF、GM-CSF、CXCL10、CCL5、エオタキシン、TNF、MCP1、MIG、RAGE、CRP、アンジオポエチン-2、及びVWF)、炎症性増殖因子(例えば、TGFα、VEGF、EGF、HGF、及びFGF)、並びに細胞傷害性分子(例えば、パーフォリン、グランザイム、及びフェリチン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
(iv)改変された免疫細胞の集団
また、CARを含む改変された免疫細胞、IL-6拮抗性抗体(例えば、scFv1又はscFv2)を含む改変された免疫細胞、IL-1アンタゴニストを含む改変された免疫細胞、破壊されたIFNγ遺伝子を含む改変された免疫細胞、IFNγアンタゴニストを含む改変された免疫細胞、又は本明細書に記載されるそれらの組み合わせの1つ以上の集団が本明細書に提供される。IL-6アンタゴニスト、IFNγアンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストのうちの1つ以上は、免疫細胞のノックイン改変であり得る。
【0116】
一実施形態では、少なくとも1つの免疫細胞の集団は、CARを含む。別の実施形態では、少なくとも1つの免疫細胞の集団は、抗原特異的TCRを含む。そのようなTCRの作製方法は、米国特許第10,117,918号、及び米国特許公開第2019/0169261号に記載されており、その内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、遺伝子改変された免疫細胞は、IL-6アンタゴニスト(例えば、scFv1若しくはscFv2などの抗IL-6アンタゴニスト抗体)、IFNγアンタゴニスト(例えば、AmG811などの抗IFNγアンタゴニスト抗体)、及び/又はIL-1RAなどのIL-1アンタゴニストのノックイン改変を含んでもよい。本明細書に記載される免疫細胞は、TCR、CD52、IFNγ、B2M、及びGM-CSFのうちの1つ以上を発現しない場合がある。免疫細胞における発現の欠如は、それぞれの内因性遺伝子(複数可)の破壊(例えば、ノックアウト)に起因し得る。CD52は、UCARTを産生するための重要なマーカーである。免疫細胞における改変の組み合わせの例としては、B2Mノックアウト及びIL-1アンタゴニスト、GM-CSFノックアウト及びIL-1アンタゴニスト、CD52ノックアウト及びIL-1アンタゴニスト、TCRノックアウト及びIL-1アンタゴニスト、GM-CSFノックアウト及びIL-6アンタゴニスト、B2Mノックアウト及びIL-6アンタゴニスト、CD52ノックアウト及びIL-6アンタゴニスト、並びにTCRノックアウト及びIL-6アンタゴニストが挙げられる。
【0117】
本明細書に開示される改変された免疫細胞は、CAR、拮抗性IL-6抗体、IL-1アンタゴニスト、IFNγアンタゴニスト、又はそれらの組み合わせを発現するためのノックイン改変を含む。ノックイン改変は、宿主細胞(例えば、本明細書に記載される免疫細胞)に、本明細書に開示されるCAR、IL-6アンタゴニスト抗体、IL-1アンタゴニスト若しくはIFNγアンタゴニスト、又はそれらの組み合わせをコードする1つ以上の外因性核酸を送達することを含み得る。外因性核酸は、コードされたタンパク質(例えば、サイトカインアンタゴニスト及び/又は免疫抑制性サイトカイン)が宿主細胞で発現され得るように、好適なプロモーターに作動可能に連結している。場合によっては、CAR、IL-6拮抗性抗体、IFNγアンタゴニスト及びIL-1アンタゴニスト、又はそれらの組み合わせをコードする外因性核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。他の場合では、外因性核酸は、染色体外のままであってもよい(ゲノムに組み込まれていない)。
【0118】
1つ以上のノックイン改変を含む改変された免疫細胞は、本明細書に記載される1つ以上の標的炎症性タンパク質の免疫抑制性サイトカイン及び/又はアンタゴニストを発現するための1つ以上の外因性核酸(例えば、外因性発現カセット)を含み得る。本開示の目的のために、「アンタゴニスト」という用語は、標的タンパク質自体、標的タンパク質の生物学的活性、又は生物学的活性の結果が、任意の有意義な程度、例えば、少なくとも20%、50%、70%、85%、90%、又はそれ以上で実質的に無効化、減少、又は中和される、全ての以前に識別された用語、タイトル、及び機能的状態並びに特徴を包含することが明確に理解されるであろう。
【0119】
改変された免疫細胞の集団は、CAR、IL-6アンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストを含む免疫細胞の1つ以上の集団を含んでもよい。1つ以上の集団は、重複し得る。一例では、免疫細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%、又は前述の量のうちの2つの間の範囲は、CAR又は抗原特異的TCR、IL-6アンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストを発現する。例えば、免疫細胞の少なくとも10%は、IL-6アンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストを発現し得る。別の実施形態では、免疫細胞の約50~70%は、CAR、IL-6アンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストを発現し得る。別の例では、免疫細胞の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、又は80%、又は前述の量のうちの2つの間の範囲は、CAR又は抗原特異的TCR、IL-6アンタゴニスト、及びIFNγアンタゴニストを発現する。例えば、免疫細胞の少なくとも10%は、IL-6アンタゴニスト、及びIFNγアンタゴニストを発現し得る。別の実施形態では、免疫細胞の約50~70%は、CAR、又は抗原特異的TCR、IL-6アンタゴニスト、及びIFNγアンタゴニストを発現し得る。CAR又は抗原特異的TCRを含み、インビボでインターフェロン遮断をもたらすことができる改変された免疫細胞の集団も企図される。例えば、改変された免疫細胞は、IFNγアンタゴニストを有するか、又は破壊されたIFNγ遺伝子を有するか、又はその両方の組み合わせを有する。いくつかの実施形態では、CAR又は抗原特異的TCR、及びIFNγアンタゴニスト、又は破壊されたIFNγ遺伝子、又はその両方の組み合わせを含む免疫細胞の1つ以上の集団を含む改変された免疫細胞集団が、本明細書で提供される。
【0120】
いくつかの実施形態では、本開示は、遺伝子操作された免疫細胞(例えば、T細胞)の集団であって、免疫細胞の約5~50%が、CAR又は抗原特異的TCR(例えば、本明細書に開示される任意のCAR構築物)、及びIL-1アンタゴニストを発現し、免疫細胞の少なくとも50%(例えば、70%)が、破壊された内在性IFNγ及び/又はGM-CSF遺伝子を有する、集団を提供する。代替的又は追加的に、免疫細胞の約5~50%は、本明細書に開示されるものなどの抗IL6拮抗性抗体及び/又は抗IFNγ拮抗性抗体を発現し得る。更に追加的に、これらの遺伝子操作された免疫細胞の集団は、免疫細胞の約5~50%の細胞がIL-1アンタゴニストを発現してもよく、又は免疫細胞の約5~50%の細胞が、GM-CSFアンタゴニストを発現してもよいことを含み得る。
【0121】
本明細書に記載の免疫細胞集団は、外因性サイトカイン、キメラsynNotch受容体、キメラ免疫受容体、キメラ共刺激性受容体、キメラキラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)、及び/又は外因性T細胞受容体を発現するように更に改変され得る。これは、ノックイン及び/又はノックアウト改変の前に、後に、又は同時に行うことができる。そのような受容体は、日常的な組換え技術を使用して、クローニングされ、任意の好適な発現ベクターに組み込まれ得る。キメラ抗原受容体の設計に関する考慮事項も当該技術分野において既知である例えば、Sadelain et al.,Cancer,Discov.,3(4):388-98,2013を参照されたい。
【0122】
いくつかの実施形態では、免疫細胞は、例えば、限定されないが、幹細胞に由来し得る。幹細胞は、成体幹細胞、非ヒト胚性幹細胞、より具体的には、非ヒト幹細胞、臍帯血幹細胞、前駆細胞、骨髄幹細胞、人工多能性幹細胞、全能性幹細胞又は造血幹細胞であり得る。代表的なヒト細胞は、CD34+細胞である。本明細書に開示される免疫細胞は、T細胞、NK細胞、腫瘍浸潤リンパ球、樹状細胞、マクロファージ、B細胞、好中球、好酸球、好塩基球、肥満細胞、骨髄由来抑制細胞、間葉系幹細胞、それらの前駆体、又はそれらの組み合わせであってもよい。T細胞は、炎症性Tリンパ球、細胞傷害性Tリンパ球、制御性Tリンパ球、又はヘルパーTリンパ球からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD4+Tリンパ球及びCD8+Tリンパ球からなる群に由来し得る。
【0123】
IL-6アンタゴニスト及びIL-1アンタゴニストを含む、CAR-T細胞に対する特定のノックイン及びノックアウト遺伝子組換えは、WO2019/178259及びPCT/US2020/012329に見出すことができ、これらの各々の関連開示は、本明細書に開示される目的及び主題のために参照により組み込まれる。
【0124】
具体的には、本明細書には、(a)破壊された内因性IFNγ遺伝子若しくはIFNγR遺伝子、又は(b)IFNγアンタゴニスト、若しくはそれらの両方の組み合わせを含み、それにより、細胞がインビボでのインターフェロンガンマシグナル伝達を阻害する、遺伝子操作された免疫細胞が提供される。遺伝子操作された細胞は、IFNγシグナル遮断に加えて、CAR又は抗原特異的TCRを更に含み得る。CARは、細胞外抗原結合ドメイン、共刺激シグナル伝達、細胞質シグナル伝達ドメインであり得る細胞質ドメイン、又はそれらの組み合わせを含み得る。CARは、共刺激シグナル伝達を伴うIL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメインを含み得る。例えば、CARは、4-1BB共刺激ドメイン、IL-2Rβ細胞質シグナル伝達ドメイン、CD3ζシグナル伝達ドメイン、及び任意選択に、膜貫通ドメイン、ヒンジドメイン、並びに/又はSTAT3結合部位を含み得る。例えば、遺伝子操作された免疫細胞は、CAR、IFNγアンタゴニスト、及びIL-6アンタゴニストを含み得る。遺伝子操作された免疫細胞は、IL-1アンタゴニストを更に含み得る。代替的に、遺伝子操作された免疫細胞は、CAR、破壊された内因性IFNγ遺伝子若しくはIFNγR遺伝子、IFNγアンタゴニスト、及びIL-6アンタゴニストを含んでよい。遺伝子操作された免疫細胞は、IL-1アンタゴニストを更に含み得る。別の実施形態では、遺伝子操作された免疫細胞は、CAR、破壊された内因性IFNγ遺伝子又はIFNγR遺伝子、及びIL-6アンタゴニストを含み得る。遺伝子操作された免疫細胞は、IL-1アンタゴニストを更に含み得る。
【0125】
III.改変された免疫細胞を調製する方法
ノックイン及びノックアウト改変のうちのいずれかは、本明細書に記載の日常的な方法及び/又はアプローチによって、好適な免疫細胞に導入することができる。典型的には、そのような方法は、標的内因性炎症性タンパク質の発現をダウンレギュレートするか、目的のサイトカインアンタゴニストを発現させるか、又は目的の免疫抑制性サイトカインを発現させるかのいずれかを行うために、好適な免疫細胞内への遺伝物質の送達を伴う。
【0126】
(A)ノックイン改変
本明細書に記載の1つ以上のCAR、IL-6アンタゴニスト、IFNγアンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストのノックインを生成するために、1つ以上のCAR、IL-6アンタゴニスト、IFNγアンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストのコード配列を、好適な発現ベクター(例えば、レンチウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、PiggyBacトランスポゾンベクター、及びSleeping Beautyトランスポゾンベクターが、挙げられるが、これらに限定されない)にクローニングし、従来の組換え技術を使用して宿主免疫細胞に導入され得る。Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press。その結果、本開示の改変された免疫細胞は、少なくとも1つのCAR、IL-6アンタゴニスト、IFNγアンタゴニスト又はIL-1アンタゴニストをコードする1つ以上の外因性核酸を含み得る。場合によっては、そのような分子のコード配列は、細胞のゲノムに組み込まれる。場合によっては、そのような分子のコード配列は、細胞のゲノムには組み込まれない。
【0127】
目的のコード配列を含む外因性核酸は、更に、コード配列に作動可能に連結し得る好適なプロモーターを含み得る。本明細書で使用される場合、プロモーターは、RNAポリメラーゼが結合して(例えば、サイトカインアンタゴニストのために)コードDNAのmRNAへの転写を開始することができる核酸上のヌクレオチド配列(部位)を指し、その後、それは対応するタンパク質に翻訳される(例えば、遺伝子の発現)。プロモーターは、コード配列に対して正しい機能的位置及び方向にあり、そのコード配列の転写開始及び発現を制御する(「駆動する」)(対応するタンパク質分子を生成する)場合、コード配列に「作動可能に連結されている」とみなされる。場合によっては、本明細書に記載のプロモーターは、他の調節因子に依存しない転写を開始する、構成的であり得る。いくつかの例では、本明細書に記載のプロモーターは、転写の調節因子に依存する、誘導性であり得る。例示的なプロモーターとしては、ユビキチン、RSV、CMV、EF1α、及びPGK1が挙げられるが、これらに限定されない。一例では、本明細書に記載の1つ以上の炎症性サイトカインの1つ以上のアンタゴニストをコードする1つ以上の核酸を、1つ以上の好適なプロモーターに作動可能に連結して、従来の方法を介して免疫細胞に導入して、1つ以上のアンタゴニストの発現を駆動させることができる。
【0128】
更に、本明細書に記載の外因性核酸は、例えば、哺乳動物細胞における安定又は一過性のトランスフェクタントの選択のためのネオマイシン遺伝子などの選択可能なマーカー遺伝子、高レベルの転写のためのヒトCMVの最初期遺伝子からのエンハンサー/プロモーター配列、mRNA安定性のための転写終結及びRNAプロセシングシグナル、複製のSV40ポリオーマ起点及び適切なエピソーム複製のためのColE1、汎用性の高い複数のクローニング部位、並びにセンス及びアンチセンスRNAのインビトロ転写のためのT7及びSP6 RNAプロモーターのうちのいくつか又は全てを更に含有してもよい。導入遺伝子を含有するベクターを産生するための好適な方法は、当該技術分野において周知であり、かつ利用可能である。Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,3rd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press。
【0129】
場合によっては、1つ以上のCAR、IL-6アンタゴニスト、IFNγアンタゴニスト、又はIL-1アンタゴニストは、様々な分子が別個のポリペプチドとして発現されるように、マルチシストロン様式で、1つの発現カセット内に構築され得る。いくつかの例では、内部リボソーム侵入部位を2つのコード配列の間に挿入して、この目標を達成することができる。代替的に、自己切断ペプチドをコードするヌクレオチド配列(例えば、T2A又はP2A)を、2つのコード配列の間に挿入することができる。そのようなマルチシストロン発現カセットの例示的な設計を以下の実施例に提供する。
【0130】
(B)ノックアウト改変
宿主細胞における内因性遺伝子の発現をダウンレギュレートするための当該技術分野において既知の任意の方法を使用して、本明細書に記載の標的内因性サイトカイン/タンパク質の産生のレベルを低下させることができる。遺伝子編集方法は、内因性対立遺伝子における標的領域を切断することができるエンドヌクレアーゼの使用を伴ってもよい。鋳型核酸の非相同末端結合は、ゲノム中の二本鎖切断を修復し、変異(例えば、挿入、欠失、及び/又はフレームシフト)を標的部位に導入し得る。遺伝子編集方法は、一般に、標的核酸における二本鎖切断の生成に関与するエンドヌクレアーゼの種類に基づいて分類される。例としては、クラスター化された規則的に間隔を空けた短いパリンドロームリピート(CRISPR)/エンドヌクレアーゼ系、転写活性化因子様エフェクターベースヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、エンドヌクレアーゼ(例えば、ARCホーミングエンドヌクレアーゼ)、メガヌクレアーゼ(例えば、メガ-TAL)、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
改変メガヌクレアーゼを含む、メガヌクレアーゼを使用する種々の遺伝子編集システムが、当該技術分野に記載されており、例えば、Steentoft et al.,Glycobiology 24(8):663-80,2014、Belfort and Bonocora,Methods Mol Biol.1123:1-26,2014、Hafez and Hausner,Genome55(8):553-69,2012によるレビュー及びそれらに引用される参考文献を参照されたい。いくつかの例では、ノックアウトイベントはノックインイベントと結合することができ、本明細書に記載されるものなどの所望の分子をコードする外因性核酸は、遺伝子編集を介して目的の標的内因性遺伝子の遺伝子座に挿入することができる。
【0132】
場合によっては、内在性遺伝子のノックアウトは、CRISPR技術を使用して達成され得る。例示的な標的内因性遺伝子は、TCR、CD52、IFN-γ、B2M、及びGM-CSFのうちの1つ以上を含む。
【0133】
代替的に、ノックアウト改変うちのいずれかは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(例えば、shRNA若しくはsiRNAなどの干渉RNA)又はリボザイムを使用して、当該技術分野において既知の方法を介して達成され得る。標的サイトカイン/タンパク質に特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチドは、サイトカインの内因性遺伝子の標的領域に相補的若しくは部分的に相補的であるオリゴヌクレオチド、又はそのようなものをコードするmRNAを指す。そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドは、従来の方法によって標的細胞に送達され得る。代替的に、レンチウイルスベクター又はその等価物などの発現ベクターを使用して、そのようなアンチセンスオリゴヌクレオチドを発現することができる。
【0134】
(C)改変された免疫細胞を含む免疫細胞集団の調製
本明細書に記載の改変された免疫細胞、又はそれらの組み合わせのうちのいずれかを含む免疫細胞の集団は、宿主免疫細胞の集団に、ノックイン改変、ノックアウト改変、又はそれらの組み合わせの1つ以上を導入することによって調製され得る。ノックイン及びノックアウト改変は、任意の順序で宿主細胞に導入され得る。
【0135】
場合によっては、1つ以上の改変は、前の改変イベントの後、及び次の改変イベントの前に、改変された細胞の単離及び/又は濃縮を伴わずに、順次、宿主細胞に導入される。その場合、得られる免疫細胞集団は、異なる改変又は異なる改変の組み合わせを有する細胞を含む、不均一であり得る。そのような免疫細胞集団は、非改変免疫細胞も含み得る。免疫細胞集団で生じる各改変イベントのレベルは、宿主免疫細胞の総数に対して、そのような改変を誘導する遺伝物質の量によって制御することができる。また、上記の議論も参照されたい。
【0136】
他の場合には、改変された免疫細胞は、第2の改変イベントを実行する前に、第1の改変イベントの後に単離され、濃縮され得る。このアプローチは、細胞に導入された全てのノックイン及び/又はノックアウト改変を有する実質的に均質な免疫細胞集団の生成をもたらすであろう。
【0137】
いくつかの例では、ノックイン改変及びノックアウト改変は、宿主免疫細胞に別々に導入される。例えば、ノックアウト改変は、標的サイトカインの内因性遺伝子をノックアウトするための遺伝子編集を介して行われ、ノックイン改変は、1つ以上のサイトカインアンタゴニストを産生するための別個の外因性発現カセットを宿主免疫細胞に送達することによって行われる。場合によっては、ノックイン及びノックアウトイベントは同時に発生することができ、例えば、ノックインカセットは、ノックアウトされる標的遺伝子の遺伝子座に挿入され得る。
【0138】
IV.治療的用途
本明細書に記載の改変された免疫細胞を含む免疫細胞集団のうちのいずれかは、白血病又はリンパ腫などの標的疾患を治療するための養子免疫細胞療法(例えば、CAR-T)で使用され得る。免疫細胞、特にCARのノックイン、IL-6拮抗性抗体のノックイン、IFNγアンタゴニスト、IL-1アンタゴニスト、又はこれらの組み合わせに導入されたノックイン及びノックアウト改変により、そのような治療的用途は、治療中の患者において治療細胞の増殖を改善する、及び/又はサイトカイン毒性を低減すると同時に、同じ若しくはより良好な治療効果を達成することが期待される。
【0139】
本明細書に記載の治療方法を実施するために、本明細書に記載の改変された免疫細胞のうちのいずれかを含む有効量の免疫細胞集団を、好適な経路(例えば、静脈内注入)を介して治療を必要とする対象に投与することができる。1つ以上の免疫細胞集団を薬学的に許容される担体と混合して、投与前に薬学的組成物を形成することができ、これも本開示の範囲内である。免疫細胞は、対象に対して自己由来であってもよく、例えば、免疫細胞は、治療を必要とする対象から得られ、本明細書に記載の1つ以上のサイトカインアンタゴニストを発現させるために、CAR構築物及び/若しくは外因性TCR、又はそれらの組み合わせを発現するために、1つ以上の標的サイトカイン/タンパク質(例えば、本明細書に記載されるもの)の発現を低減させるように改変される。次いで、得られた改変された免疫細胞を、同じ対象に投与することができる。対象への自己細胞の投与は、非自己細胞の投与と比較して、免疫細胞の拒絶反応の低減をもたらし得る。代替的に、免疫細胞は、同種異系細胞であってもよく、例えば、細胞は、第1の対象から得られ、本明細書に記載されるように改変され、第1の対象とは異なるが同じ種の第2の対象に投与される。例えば、同種異系免疫細胞は、ヒトドナーに由来し、ドナーとは異なるヒトレシピエントに投与され得る。
【0140】
処置される対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ブタ、ウシ、ラット、イヌ、モルモット、ウサギ、ハムスター、ネコ、ヤギ、ヒツジ、又はサル)であり得る。対象は、がんに罹患している、感染症を有しているか、又は免疫障害を有し得る。例示的ながんとしては、血液悪性腫瘍(例えば、B細胞急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ球性白血病、及び多発性骨髄腫)が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な感染症としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、エプスタイン・バーウイルス(EBV)感染症、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染症、デングウイルス感染症、マラリア、敗血症及び大腸菌感染症が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な免疫疾患としては、関節リウマチ、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、慢性炎症性脱髄性多発性ニューロパシー、乾癬、グレイブス病、橋本甲状腺炎、重症筋無力症、及び血管炎などの自己免疫疾患が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
いくつかの例では、本明細書で開示される方法で治療される対象は、ヒトがん患者であり得る。いくつかの例では、がんは、リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病、マントル細胞リンパ腫、大細胞型B細胞リンパ腫、又は非ホジキンリンパ腫であり得る。特に、そのようながんを治療するために、免疫細胞は、CD19に結合するCARを発現し得る。いくつかの例では、がんは、多発性骨髄腫、再発性多発性骨髄腫、又は難治性多発性骨髄腫であり得る。特に、そのようながんを治療するために、免疫細胞は、BCMAに結合するCARを発現し得る。代替的に、ヒト患者は、乳がん、胃がん、神経芽腫、又は骨肉腫を有し得る。
【0142】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のCAR-T細胞は、B細胞関連がんの治療に有用である。非限定的なB細胞関連がんとしては、多発性骨髄腫、悪性形質細胞腫瘍、ホジキンリンパ腫、結節性リンパ球優性ホジキンリンパ腫、ケーラー病及び骨髄腫症、形質細胞白血病、形質細胞腫、B細胞前リンパ球性白血病、有毛細胞白血病、B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ球性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、濾胞性リンパ腫、バーキットリンパ腫、辺縁帯リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、大細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、骨髄性白血病、ヴァルデンストロームマクログロブリン血症、大細胞拡散性B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、辺縁帯リンパ腫、粘膜関連リンパ組織リンパ腫、小細胞リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、原発性縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、リンパ形質形成性リンパ腫、ヴァルデンストロームマクログロブリン血症、結節性辺縁帯B細胞リンパ腫、脾縁帯リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性浸潤リンパ腫、リンパ腫様肉芽腫症、T細胞/組織球豊富な大細胞型B細胞リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性皮膚びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(脚型)、高齢者のEBV陽性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、炎症に伴うびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、大細胞型ALK陽性リンパ腫B細胞リンパ腫、形質芽球性リンパ腫、HHV8関連多中心性キャッスルマン病に起因する大B細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫とバーキットリンパ腫との間の特徴を有する未分類B細胞リンパ腫、びまん性大B細胞リンパ腫と古典的ホジキンリンパ腫との間の中間的な特徴を有する未分類B細胞リンパ腫、及び他のB細胞関連リンパ腫が挙げられる。
【0143】
本明細書で使用される「有効量」という用語は、対象に治療効果を付与するために必要な各活性剤の、単独の量又は1つ以上の活性剤を組み合わせた量を指す。有効量は、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、体調、サイズ、性別並びに体重を含む個々の患者パラメータ、治療期間、投与経路、賦形剤の使用、他の活性薬剤(もしあれば)との共用、及び医療従事者の知識並びに専門知識内の同様の要因に応じて、当業者によって認識されるように変化する。投与される量は、治療される対象に依存し、例えば、個体の免疫系が細胞媒介性免疫応答を産生する能力が含まれる。投与される必要がある有効成分の正確なマウント(mounts)は、施術者の判断に依存する。しかしながら、好適な投与範囲は当業者によって容易に決定可能である。
【0144】
本明細書で使用される「治療する」という用語は、標的疾患、標的疾患の症状、又は標的疾患に対する素因を有する対象に、疾患、疾患の症状、又は疾患に対する素因を治し、癒し、緩和し、軽減し、変化させ、直し、改善し、改良し、又は影響を与えることを目的として、1つ以上の活性剤を含む組成物を適用又は投与することを指す。
【0145】
有効量の免疫細胞は、適切な経路、例えば、静脈内注入を介して治療を必要とするヒト患者に投与され得る。場合によっては、約1×106~約1×108個のCAR+T細胞が、ヒト患者(例えば、白血病患者、リンパ腫患者、又は多発性骨髄腫患者)に与えられてもよい。いくつかの例では、ヒト患者は、複数回用量の免疫細胞を受容することができる。例えば、患者は、2日連続で、2つの用量の免疫細胞を受けてもよい。場合によっては、第1の用量は、第2の用量と同じである。他の場合では、第1の用量は、第2の用量よりも低いか、又は逆もまた同様である。
【0146】
免疫細胞の使用を伴う本明細書に開示される治療方法のうちのいずれにおいても、対象は、細胞療法と同時にIL-2を投与され得る。より具体的には、有効量のIL-2は、細胞療法の前、その間、又はその後に、好適な経路を介して対象に与えられ得る。いくつかの実施形態では、IL-2は、免疫細胞の投与後に対象に与えられる。
【0147】
代替的又は追加的に、本明細書に開示される細胞療法によって治療される対象は、免疫細胞注入後にIL-6アンタゴニスト(細胞療法で使用される免疫細胞によって産生されるIL-6アンタゴニストを除く)を伴う治療を受けない場合がある。
【0148】
本明細書に記載される改変された免疫細胞を含む免疫細胞集団は、化学療法、手術、放射線、遺伝子療法等の他の種類のがん療法と組み合わせて利用され得る。そのような療法は、本明細書に記載の免疫療法と同時に、又は順次(任意の順番で)投与することができる。追加の治療薬と同時投与される場合、相加作用又は相乗作用により、各薬剤に対する適切な治療有効用量が低減され得る。
【0149】
治療される対象はまた、本明細書に開示される免疫細胞の注入と併せて、メチルプレドニゾロン及びデキサメタゾンなどの免疫抑制ステロイドを受けてもよい。
【0150】
いくつかの例では、対象は、本明細書に開示されるCAR-T療法の前に、腫瘍量を低減するための好適な抗がん療法(例えば、本明細書に開示されるもの)に供される。例えば、対象(例えば、ヒトがん患者)は、腫瘍負荷を実質的に低減する用量で化学療法(例えば、単一の化学療法剤又は2つ以上の化学療法剤の組み合わせを含む)に供されてもよい。場合によっては、化学療法は、対象における白血球総数を、108/L未満、例えば、107/L未満に低下させ得る。初期抗がん療法後、及び/又は本明細書に開示されるCAR-T細胞療法後の患者の腫瘍負荷は、日常的な方法を介してモニタリングされ得る。患者が、最初の抗がん療法の後に、かつ/又はCAR-T療法の後に、がん細胞の高い増殖速度を示した場合、患者は、腫瘍負荷を低減するための新しいラウンドの化学療法に供され、続いて本明細書に開示されるCAR-T療法のうちのいずれかに供されてもよい。
【0151】
本明細書に記載の改変された免疫細胞との組み合わせに有用な他の抗がん治療薬の非限定的な例としては、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PDL1、PD1、及びCTLA4阻害剤)、抗血管新生剤(例えば、TNP-470、血小板第4因子、トロンボスポンジン-1、組織性メタロプロテイナーゼ阻害因子、プロラクチン、アンジオスタチン、エンドスタチン、bFGF可溶性受容体、形質転換成長因子ベータ、インターフェロンアルファ、インターフェロンガンマ、可溶性KDR及びFLT-1受容体、及び胎盤プロリフェリン関連タンパク質)、VEGFアンタゴニスト(例えば、抗VEGF抗体、VEGFバリアント、可溶性VEGF受容体断片)、化学療法剤化合物が挙げられるが、これらに限定されない。例示的な化学療法用化合物としては、ピリミジン類似体(例えば、5-フルオロウラシル、フロクスウリジン、カペシタビン、ゲムシタビン、及びシタラビン);プリン類似体(例えば、フルダラビン);葉酸アンタゴニスト(例えば、メルカプトプリン及びチオグアニン);抗増殖剤又は抗有糸分裂剤、例えば、ビンカアルカロイド、タキサンなどの微小管破壊剤(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ノコダゾール、エポチロン及びナベルビン、並びにエピポドフィロコキシン;DNA損傷剤(例えば、アクチノマイシン、アムサクリン、アントラサイクリン、ブレオマイシン、ブスルファン、カンプトテシン、カルボプラチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シトキサン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルブシン、エピルビシン、ヘキサメチネラミンオキサリプラチン(hexamethyhnelamineoxaliplatin)、イホスファミド、メルファラン、メルクロレタミン(merchlorehtamine)、マイトマイシン、ミトキサントロン、ニトロソウレア、プリカマイシン、プロカルバジン、タキソール、タキソテール、テニポシド、トリエチレンチオホスホルアミド、並びにエトポシド)が挙げられる。
【0152】
いくつかの実施形態では、放射線又は放射線及び化学療法は、本明細書に記載の改変された免疫細胞を含む細胞集団と組み合わせて使用される。追加の有用な薬剤及び療法は、Physician’s Desk Reference,59.sup.th edition,(2005),Thomson P D R,Montvale N.J.、Gennaro et al.,Eds.Remington’s The Science and Practice of Pharmacy 20.sup.th edition(2000),Lippincott Williams and Wilkins,Baltimore Md.、Braunwald et al.,Eds.Harrison’s Principles of Internal Medicine,15.sup.th edition,(2001),McGraw Hill,NY、Berkow et al.,Eds.The Merck Manual of Diagnosis and Therapy,(1992),Merck Research Laboratories,Rahway N.Jに見出すことができる。
【0153】
V.治療的使用及び改変された免疫細胞の作製のためのキット
本開示はまた、本明細書に記載される免疫細胞集団のうちの1つ以上を含む本明細書に記載される標的疾患のうちのいずれかの使用のためのキット及び本明細書に記載される改変された免疫細胞の作製に使用するためのキットも提供する。
【0154】
本明細書に記載の治療的使用のためのキットは、医薬組成物を形成するように製剤化され得る免疫細胞集団を含む1つ以上の容器を含み得る。免疫細胞集団は、本明細書に記載の改変された免疫細胞のうちのいずれか又はそれらの組み合わせを含む。本明細書に記載のTリンパ球、NK細胞などの免疫細胞の集団は、本明細書に記載のCAR構築物及び/又は外因性TCR、及び/又は抗原特異的TCRを更に発現し得る。
【0155】
いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の方法のうちのいずれかにおける免疫細胞集団の使用のための説明書を追加的に含むことができる。含まれる説明書は、対象において意図する活性を達成するための、対象への免疫細胞集団又はそのようなものを含む薬学的組成物の投与の説明を含み得る。キットは、対象が治療を必要としているかどうかを識別することに基づいて、治療に適した対象を選択する説明を更に含み得る。いくつかの実施形態では、説明書は、免疫細胞集団又はそれを含む薬学的組成物を、治療を必要とする対象に投与することの説明を含む。
【0156】
本明細書に記載されるものなどを含む免疫細胞集団又は薬学的薬組成物の使用に関する説明書は、一般に、意図される処置のための投薬量、投薬スケジュール、及び投与経路に関する情報を含む。容器は、1回投与用、バルクパッケージ(例えば、複数回投与用パッケージ)又はサブユニット投与用であり得る。本開示のキットに提供される説明書は、典型的には、ラベル又は添付文書に書かれた説明書である。ラベル又は添付文書は、薬学的組成物が、対象における疾患又は障害の治療、発症の遅延、及び/又は緩和のために使用されることを示す。
【0157】
本明細書に提供されるキットは、好適なパッケージング内に存在する。好適なパッケージングとしては、バイアル、ボトル、瓶、柔軟なパッケージングなどが挙げられるが、これらに限定されない。吸入器、経鼻投与装置、又は注入装置などの特定の装置と組み合わせて使用するためのパッケージも企図される。キットは、無菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、静脈内溶液バッグ又は皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有するバイアルであり得る)。容器はまた、無菌アクセスポートを有し得る。薬学的組成物中の少なくとも1つの活性剤は、改変された免疫細胞又はそれらの組み合わせのうちのいずれかを含む免疫細胞(例えば、Tリンパ球又はNK細胞)の集団である。
【0158】
キットは、任意に、緩衝液及び解釈情報などの追加の成分を提供し得る。通常、キットは、容器と、容器上の又は容器に関連するラベル若しくは添付文書を含む。いくつかの実施形態において、本開示は、上述のキットの内容物を含む製造物品を提供する。
【0159】
本明細書に記載の改変された免疫細胞を作製する際に使用するためのキットもまた、本明細書に提供される。そのようなキットは、免疫細胞にノックイン及び/又はノックアウト改変を導入する際に使用するための試薬をそれぞれ含有する1つ以上の容器を含み得る。例えば、キットは、本明細書に記載されるような1つ以上のノックアウト改変を行うための遺伝子編集システムの1つ以上の構成要素を含み得る。代替的又は追加的に、キットは、本明細書にも記載されるサイトカインアンタゴニストを発現するための1つ以上の外因性核酸と、外因性核酸を宿主免疫細胞に送達するための試薬とを含み得る。そのようなキットは、宿主免疫細胞に対して所望の改変を行うための説明書を更に含み得る。
【0160】
VI.一般的な手技
本開示の実践には、別段の指示がない限り、当該技術分野の技能内である分子生物学(組換え技法を含む)、微生物学、細胞生物学、生化学、及び免疫学の従来の技法が用いられる。そのような技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,second edition(Sambrook,et al.,1989)Cold Spring Harbor Press、Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait,ed.1984)、Methods in Molecular Biology,Humana Press、Cell Biology:A Laboratory Notebook(J.E.Cellis,ed.,1989)Academic Press、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.1987)、Introduction to Cell and Tissue Culture(J.P.Mather and P.E.Roberts,1998)Plenum Press、Cell and Tissue Culture:Laboratory Procedures(A.Doyle,J.B.Griffiths,and D.G.Newell,eds.1993-8)J.Wiley and Sons、Methods in Enzymology(Academic Press,Inc.)、Handbook of Experimental Immunology(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.):Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells(J.M.Miller and M.P.Calos,eds.,1987)、Current Protocols in Molecular Biology(F.M.Ausubel,et al.eds.1987)、PCR:The Polymerase Chain Reaction,(Mullis,et al.,eds.1994)、Current Protocols in Immunology(J.E.Coligan et al.,eds.,1991)、Short Protocols in Molecular Biology(Wiley and Sons,1999)、Immunobiology(C.A.Janeway and P.Travers,1997)、Antibodies(P.Finch,1997)、Antibodies:a practice approach(D.Catty.,ed.,IRL Press,1988-1989)、Monoclonal antibodies:a practical approach(P.Shepherd and C.Dean,eds.,Oxford University Press,2000)、Using antibodies:a laboratory manual(E.Harlow and D.Lane(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1999)、The Antibodies(M.Zanetti and J.D.Capra,eds.Harwood Academic Publishers,1995)、DNA Cloning:A practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985)、Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames&S.J.Higgins eds.(1985)、Transcription and Translation(B.D.Hames&S.J.Higgins,eds.(1984、Animal Cell Culture(R.I.Freshney,ed.(1986、Immobilized Cells and Enzymes(lRL Press,(1986)、B.Perbal,A practical Guide To Molecular Cloning(1984)、F.M.Ausubelet al.(eds.);Chimeric Antigen Receptor(CAR)Immunotherapy(D.W.Lee and N.N.Shah,eds., Elservier,2019,ISBN:9780323661812)、Basics of Chimeric Antigen Receptor(CAR)Immunotherapy(M.Y.Balkhi,Academic Press,Elsevier Science,2019,ISBN:9780128197479)、Chimeric Antigen Receptor T Cells Development and Production(V.Picanco-Castro,K.C.R.Malmegrim,K.Swiech,eds.,Springer US,2020,ISBN:9781071601488)、Cell and Gene Therapies(C.Bollard,S.A.Abutalib,M.-A.Peraleseds.,Springer International,2018;ISBN:9783319543680)及びDeveloping Costimulatory Molecules for Immunotherapy of Diseases(M.A.Mir,Elsevier Science,2015,ISBN:9780128026755)などの文献に完全に説明されている。
【0161】
本開示は、本明細書の説明に記載される、又は図面に示される構成要素の詳細及び構成要素の配置に限定されない。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施されることが可能である。また、本明細書で使用される用語及び用語は、記載の目的であり、限定するものとみなされるべきではない。本明細書における「含む(including)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、「含有する(containing)」、「関与する(involving)」、及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目及びそれらの等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。本明細書及び添付の特許請求の範囲でも使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数の言及を含む。
【0162】
更に詳述することなく、当業者は、上記の説明に基づいて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の特定の実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、いかなる方法においても本開示の残りの部分を限定するものではない。本明細書で引用された全ての刊行物は、本明細書で参照される目的又は主題のために参照により組み込まれる。
【実施例】
【0163】
実施例1:CAR-T治療を使用したがんの治療
この実施例は、本明細書に記載されるCAR構築物を発現するCAR-T細胞が、重い腫瘍負荷を有する患者においてがんを治療するのに有効である一方で、CAR-T療法中に比較的低いIFN-γ産生をもたらすことも実証する。マントル細胞リンパ腫と診断されたヒト患者を、抗CD19/IL-6/IL-1 CAR-T細胞で以下のように処置した。抗CD19 CAR、IL-6アンタゴニスト、及びIL-1アンタゴニストの構造的特徴は、本明細書で提供される通りである。ヒト患者を腫瘍負荷を低下させるために化学療法で治療し、続いてフルダラビン/シクロホスファミドで前処置して内因性リンパ球を枯渇させ、患者をCAR-T細胞移植のための状態にした。その後、患者は、本明細書に開示される0.2×10
8個の(D0)抗CD19/IL-6/IL-1 CAR-T細胞(野生型GM-CSF及びTCR遺伝子を伴う)を受けた。治療中に、患者に組換えIL-2を注射した。処置後、末梢血中のD0での膨大な数のリンパ球(13.02×10
9/L)は、D19で正常レベル(0.44×10
9/L)まで減少し(
図1A)、完全な応答が達成された。処置中、患者は、低血圧、低酸素又は神経毒性を伴わない軽度の発熱(
図1B)及びグレード1のサイトカイン放出症候群(CRS)のみを経験した。処置中、患者は、IL-6の受容体に結合する拮抗性モノクローナル抗体であるトシリズマブを受けなかった。サイトカインレベルの分析は、T細胞注入後の患者における非常に低いレベルのIL-6(
図1C)及び低いレベルのピークIFNγ(
図1C)を明らかにした。
図1D及び1Eは、T細胞注入後のCRP及びフェリチンのレベルを示す。要約すると、これらの結果は、CAR-T細胞が膨大な数の腫瘍細胞を根絶している間に、IFNγ産生の比較的低いレベルを明らかにし、IFNγがCAR-T治療中に分配可能であり得、IFNγをノックアウトすることが、CAR-T治療に関連するサイトカイン毒性を最小限に抑える魅力的な方法であり得ることを示唆した。
【0164】
実施例2:IFN-γノックアウト
この例では、IFN-γノックアウトについて説明する。正常ドナーからのT細胞を刺激し、抗CD3/抗CD28ダイナビーズ(Thermo)によって活性化した。3日後、T細胞を、ヒトIFN-γ遺伝子の第1のエクソンのプロトスペーサ隣接モチーフ(PAM)配列を標的とするCas9タンパク質(thermo)及び単一ガイドRNA(sgRNA)候補のリボヌクレオタンパク質(RNP)複合体でエレクトロポレーションした。B2Mを標的とするsgRNAを対照として含めた。
【0165】
IFN-γ sgRNAのインビトロ転写に使用したDNA配列は、次の通りであった。
IFNγ sgRNAのインビトロ転写のためのDNA配列
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
【化40】
【化41】
【0166】
エレクトロポレーションの2日後、T細胞をIFN-γの細胞内染色によって分析し、結果は、sgRNA4がIFN-γ産生を低減するのに最も効果的であることを示した(
図2)。
【0167】
実施例3:インビボでのCAR-Tの持続性の改善
この実施例は、CAR-T細胞移植後の患者における細胞内IL-2Rβシグナル伝達によるCAR-Tの改善された持続性を説明する。難治性又は再発性多発性骨髄腫(MM)と診断された患者は、抗BCMA CAR-T細胞による治療を受けた。2つのタイプの抗BCMA CAR-T細胞を使用した。患者#1に、41BB、IL-2Rβ及びCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを有する抗BCMA CAR-T細胞を注入した。患者#2に、IL-2Rβ共刺激シグナル伝達ドメインなしで、41BB及びCD3ζの細胞内シグナル伝達ドメインを有する抗BCMA CAR-T細胞を注入した。ヒト患者を、フルダラビン/シクロホスファミドで前処置して内因性リンパ球を枯渇させ、患者をCAR-T細胞移植のための状態にした。結果は、CAR+T細胞の頻度が、患者#1において注入後31日目で約40%、患者#2において注入後16日目で約37%と維持されたことを示し、これは、IL2Rβシグナル伝達の添加が、患者におけるCAR+T細胞の長期持続性を改善することを示す。
図3を参照されたい。
【0168】
実施例4:インビボでの細胞ベースの療法に対する持続的な臨床応答
この実施例は、患者における41BB、IL-2Rβ、CD3ζからのドメインを含む細胞内シグナル伝達を有する抗CD19 CAR-T細胞による持続的な臨床応答を説明する。難治性及び再発急性リンパ球性白血病(ALL)と診断された患者を、41BB、IL-2Rβ及びCD3ζシグナル伝達を有する抗CD19 CAR-T細胞で処置した。処置後、3人の患者は、治療前と比較してCAR-T治療後の循環中のCD19+B細胞の非常に低い数又は検出不能によって決定される完全な応答を達成した。より重要なことに、IL-2Rβシグナル伝達を動力源とするCART細胞は、処置された患者において、CAR+T細胞の長期持続性を示し、持続可能なB細胞異形成を誘導した。
図4を参照されたい。
【0169】
実施例5:患者における41BB、IL-2Rβ、及びCD3ζの細胞内シグナル伝達によるCAR-T細胞の拡張。
この実施例は、41BB、IL-2Rβ、CD3ζを含む細胞内シグナル伝達ドメインを有するCAR-T細胞のインビボ拡張を説明する。難治性又は再発性ALL(急性リンパ芽球性白血病)、リンパ腫又はMM(多発性骨髄腫)と診断された患者は、41BB、IL-2Rβ、CD3ζの細胞内シグナル伝達を有する抗CD19又は抗BCMA CAR-T細胞による治療を受けた。ヒト患者を、フルダラビン/シクロホスファミドで処置して内因性リンパ球を枯渇させ、患者をCAR-T細胞移植のための状態にした。その後、患者は、本明細書に開示されるそれぞれのCAR-T細胞(41BB、IL-2Rβ、CD3ζシグナル伝達ドメインを有する)を受けた。
図5は、T細胞集団における抗BCMA CAR-T細胞のピーク頻度中央値が約60%であり、T細胞集団における抗CD19 CAR-T細胞のピーク頻度中央値が約10%であることを示した。この結果は、41BB、IL-2Rβ、及びCD3ζシグナル伝達の組み合わせが、患者において抗CD19及び抗BCMA CAR-T細胞の両方の有意な拡張を誘導することを示した。
【0170】
実施例6:293T細胞で発現したインターフェロンガンマ(IFNγ)拮抗性抗体が、細胞においてIFNγシグナル伝達を阻害する効果。
HEK293T細胞を、LIPOFECTAMINE 2000(Thermo Scientific)によって、IFNγを標的とする、本明細書に開示される参照抗体Amg(AMG811)、Fon(フォンツリズマブ)、及びEma(エマパルマブ)に由来する、一本鎖可変断片(scFv)抗体をコードする第3世代自己不活性化(SIN)レンチウイルス伝達ベクターでトランスフェクトした。成長ホルモン(GH)先導配列(分泌される運命にあるタンパク質の発現のための単一のペプチド配列が分泌経路を通って移動する)は、抗IFNγ scFv構築物の前に位置する。トランスフェクトされたHEK293T細胞によって発現された分泌型scFv抗体を含有するトランスフェクトされた細胞の上清を収集し、希釈し、2ng/mlのヒトIFNγの存在下で、HEK-Blue IFNγレポーター細胞(INVIVOGEN)に添加した。HEK-Blue IFNγレポーター細胞は、ヒトIFNγ刺激時に分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)を産生することが可能であるため、使用した。一晩のインキュベーション後、HEK-Blue IFNγ細胞の上清を収集し、Quant-Blue基質溶液とインキュベーションした。SEAP産生は、分光光度計を通じて、650nmの波長での変換基質Quant Blue(INVIVOGEN)の光学吸光度を測定することによって定量化した。
【0171】
様々な抗IFNγ scFv-CARの構築に使用される、Amg、Fon、及びEmaのV
L及びV
Hのアミノ酸配列は、以下の通りである(配列番号52~60):
フォンツリズマブのV
L(配列番号52):
DIQMTQSPSTLSASVGDRVTITCKASENVDTYVSWYQQKPGKAPKLLIYGASNRYTGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPDDFATYYCGQSYNYPFTFGQGTKVEVKR
フォンツリズマブのV
H(配列番号53):
QVQLVQSGAELKKPGSSVKVSCKASGYIFTSSWINWVKQAPGQGLEWIGRIDPSDGEVHYNQDFKDKATLTVDKSTNTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGFLPWFADWGQGTLVTVSS
フォンツリズマブからの抗IFNγ scFv(配列番号54)
【化42】
エマパルマブのV
L(配列番号55):
NFMLTQPHSVSESPGKTVTISCTRSSGSIASNYVQWYQQRPGSSPTTVIYEDNQRPSGVPDRFSGSIDSSSNSASLTISGLKTEDEADYYCQSYDGSNRWMFGGGTKLTVL
エマパルマブのV
H(配列番号56):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAISGSGGSTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKDGSSGWYVPHWFDPWGQGTLVTVSS
エマパルマブからの抗IFNγ scFv(配列番号57):
【化43】
【0172】
抗ヒトIFN-γAMG811のアミノ酸配列は、米国特許出願第2013/0142809号及び米国特許第7,335,743号に記載されており、その関連部分は参照により本明細書に組み込まれる。
AMG811のV
L(配列番号58):
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVSSSYLAWYQQKPGQAPRLLIYGASSRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQRSGGSSFTFGPGTKVDIK
AMG811のV
H(配列番号59):
EVQLVQSGAEVKKPGESLKISCKGSGYNFTSYWIGWVRQMPGKGLELMGIIYPGDSDTRYSPSFQGQVTISADKSISTAYLQWSSLKASDTAMYYCGSGSYFYFDLWGRGTLVTVSS
AMG811からの抗IFNγ scFv(配列番号60)
【化44】
【0173】
図6Aに示すように、scFv抗体1及び4は、レポーター細胞におけるIFNγシグナル伝達を阻害することができる。試験した6つのscFv抗体のうち、抗体Amg811(Amg)に由来するscFv抗体は、参照抗体フォンツリズマブ(Fon)及びエマパルマブ(Ema)に由来するscFv抗体と比較して、IFNγシグナル伝達を阻害することにおいてより高い効率を示した。例えば、参照Amgに由来するscFv抗体は、0.5の希釈でIFNγシグナル伝達の80%近くの阻害を示したが、参照抗体Fon及びEmaに由来するものは、同じ希釈で非常に低い阻害効率を示した。この結果は、抗体Amg由来のscFvが、レンチベクター系の自己分泌様式におけるIFNγシグナル伝達を遮断することでより効果的であることを示した。
【0174】
これらのインビトロデータ(
図6A)は、エマパルマブからの抗IFNγ scFvをコードするCARベクターが、IFNγシグナル伝達を阻害するAmg811からの抗IFNγ scFvほど有効ではないことを示した。しかしながら、エマパルマブからの抗IFNγ scFvを共発現するCARTで処置した患者の臨床データは、CART療法中に非常に低レベルのIFNγが観察されたことを示した。以下の更なる実施例、
図9及び10を参照されたい。1つの考えられる理由は、エマパルマブからの合成されたCART抗IFNγ scFvが、効率的に分泌されず、細胞内に閉じ込められていたことであろう。
【0175】
様々なタンパク質からのいくつかのシグナルペプチド配列を試験して、細胞からのIFNγ scFvの発現及び分泌に対するそれらの効果、したがって、インビボでのIFNγシグナル伝達を阻害するために利用可能な分泌型抗IFNγ scFvの有効量を探索した。Amg-LH scFvによるIFNγシグナル伝達の阻害に対するシグナルペプチドの影響を
図6Bに示す:1、アルブミンからのシグナルペプチド(配列番号47);2、CD8からのシグナルペプチド(配列番号44);3、成長ホルモンからのシグナルペプチド(配列番号29);4、アルブミンからの改変されたシグナルペプチド(配列番号48)、IL2からの改変シグナルペプチド(配列番号49);6、抗体軽鎖からのシグナルペプチド(配列番号45)、及び7、GL(Gaussiaルシフェラーゼ)(配列番号46)。結果は、CD8からのシグナルペプチドが、IFNγシグナル伝達の阻害に利用可能な分泌型抗IFNγ scFvを産生するのに最も効果的であることを明らかにした。
【0176】
実施例7:IFNγシグナル伝達の阻害は、がんに対するCAR-T療法で処置された患者における重篤なサイトカイン放出症候群(CRS)を予防する。
次に、CAR-T細胞療法を受ける患者におけるインビボでのIFNγシグナル伝達を低下させるためのいくつかのアプローチを試験した。驚くべきことに、IFNγ遺伝子ノックアウト又はIFNγアンタゴニスト発現を介して達成された比較的低いIFNγシグナル伝達では、CAR-T細胞は依然として有効であり、標的細胞に対して細胞傷害性活性をもたらした。
【0177】
A.患者を処置するために使用したCAR-T細胞における内因性IFNγの発現の低下。
IFNγノックアウト(KO)CAR-T細胞で治療された急性リンパ球性白血病(ALL)患者
難治性及び再発性ALLと診断された患者を、41BB-IL-2Rβ-CD3ζシグナル伝達、CRISPR編集されたIFNγ KO、並びにIL-6アンタゴニスト及びIL-1アンタゴニストの両方を共発現する抗CD19 CAR-T細胞で処置した。処置後、この患者は完全奏効を達成し、IFNγのピークレベルが低く(
図7)、IFNγ KOを有する抗CD19 CAR-T細胞が臨床的有効性において完全奏効を誘導することができることを示している。患者では、CART注入後14日目にB細胞異形成が認められ、骨髄検査結果から腫瘍細胞は検出されず、治療後の完全奏効が示唆された。処置中、グレード2のCRSのみが観察された。
【0178】
IFNγ KOのCAR-T細胞で処置した多発性骨髄腫(MM)患者
難治性及び再発性MMと診断された患者を、41BB-IL-2Rβ-CD3ζシグナル伝達、CRISPR編集されたIFNγ KO、並びにIL-6アンタゴニスト及びIL-1アンタゴニストの両方を共発現する抗BCMA CAR-T細胞で処置した。処置後、この患者は完全奏効を達成し、IFNγのピークレベルが中程度であり(
図8A)、抗BCMA IFNγ KOを有するCAR-T細胞が臨床的有効性において完全奏効を誘導することができることを示している。処置中、グレード1のCRS(発熱、低酸素及び低血圧)のみが観察された。他の患者と比較して、この患者は、おそらく非常に高い腫瘍負荷のために、比較的高いIFNγピークを有していた。しかしながら、発熱、低酸素及び低血圧のCRS症状は軽度であった。
図8Bにおいて、患者のIgGレベルは、処置後に非常に低レベルに低下した。経過観察中の更なる免疫固定電気泳動(immunofixation electrophoresis)は、モノクローナルタンパク質(Mタンパク質)の陰性結果を示し、完全奏効を示唆した。
【0179】
B.患者を処置するために使用したCAR-T細胞中の共発現可溶性アンタゴニスト抗IFNγ scFv。
拮抗性抗IFNγ scFvを発現するCAR-T細胞で処置したリンパ腫患者
難治性及び再発性リンパ腫と診断された患者を、41BB-IL-2Rβ-CD3ζシグナル伝達、並びに共発現エマパルマブに由来するIFNγ遮断scFv及びシルクマブに由来するIL6遮断scFvを有する抗CD19 CAR-T細胞で処置した。処置後、この患者は完全奏効を達成し、IFNγのピークの非常に低いレベルを検出し(
図9)、Ema scFvの共発現を有する抗CD19 CAR-T細胞が臨床的有効性において完全奏効を誘導することができることを示している。処置中、グレード0のCRSのみが観察された。フォローアップ中のPET-CTスキャン結果は、処置後106日目に腫瘍斑が消失したことを示した。
【0180】
拮抗性抗IFNγ scFvを発現するCAR-T細胞で処置したMM患者
難治性及び再発性MMと診断された2人の患者を、41BB-IL-2Rβ-CD3ζシグナル伝達、並びに共発現エマパルマブに由来するIFNγ遮断scFv及びシルクマブに由来するIL6遮断scFvを有する抗BCMA CAR-T細胞で処置した。処置後、患者は非常に良好な部分奏効を達成し、非常に低レベルのIFNγのピークが検出され(
図10A及び10B)、Ema scFvの共発現を有する抗BCMA CAR-T細胞が臨床有効性において非常に良好な部分奏効を誘導することができることを示した。処置中、グレード1のCRSのみが観察された。患者#1について、フォローアップ中の免疫固定電気泳動は、治療後102日目のモノクローナルタンパク質(Mタンパク質)の残存レベルのみを示した。患者#2について、IgGレベルは、処置後39日目に正常レベルまで低下した。
【表1】
【0181】
他の実施形態
本明細書に開示される特徴はいずれも、任意の組み合わせで組み合わせ得る。本明細書に開示される各特徴は、同じ、同等の、又は同様の目的に適う代替的特徴に置き換え得る。したがって、別途明記されない限り、開示される各特徴は、全般的な一連の同等の、又は同様の特徴の一例に過ぎない。
【0182】
当業者には上の記載から、本発明に不可欠な特徴を容易に確認することが可能であり、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明の様々な改変及び修正を施して、様々な使用及び条件に適合させることが可能である。したがって、他の実施形態も請求項の範囲内にある。
【0183】
等価物
いくつかの本発明の実施形態が本明細書に記載され、図示されているが、当業者には、機能を実施し、かつ/又は本明細書に記載される結果及び/又は1つ若しくは複数の利点を得るための様々な他の手段及び/又は構成が容易に想像され、このような変形及び/又は修正はそれぞれ、本明細書に記載される本発明の実施形態の範囲に内にあるとみなされる。より一般的に、本明細書に記載されるパラメータ、寸法、材料、及び配置はいずれも例示を意図するものであり、実際のパラメータ、寸法、材料、及び/又は構成は、本発明の教示を用いる具体的な1つ又は複数の用途によって決まることが当業者に容易に理解されよう。当業者には、ルーチンの実験を用いて、本明細書に記載される具体的な本発明の実施形態の均等物が多数認識される、又は確認することが可能であろう。したがって、上記の実施形態が単なる例として示されるものであり、添付の請求項及びその均等物の範囲内において、具体的に記載及び特許請求される以外の方法で、諸実施形態を実施し得ることが理解されるべきである。本開示の本発明の実施形態は、本明細書に記載される個々のそれぞれの特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法に関するものである。更に、2つ以上のこのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法が互いに相容れないものでなければ、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、及び/又は方法の任意の組み合わせが本開示の本発明の範囲内に含まれる。
【0184】
本明細書で定義及び使用される定義はいずれも、定義される用語の辞書での定義、参照により組み込まれる文献での定義、及び/又は通常の意味に対して支配的な位置にあることが理解されるべきである。
【0185】
本明細書に開示される参考文献、特許、及び特許出願はいずれも、それが引用される主題に関して参照により組み込まれ、場合によっては、文献全体がそれに包含されることもある。
【0186】
本明細書及び請求項で使用される不定冠詞「a」及び「an」は、そうでないことが示されない限り、「少なくとも1つ」を意味するものと理解されるべきである。
【0187】
本明細書及び請求項で使用される「及び/又は」という語句は、そのように等位結合される要素の「一方又は両方」、すなわち、いくつかの場合には接続的に存在し、別の場合には選言的に存在する要素を意味するものであると理解されるべきである。「及び/又は」用いて列挙される複数の要素も同じように、すなわち、「1つ以上の」要素がそのように等位結合されていると解釈されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定される要素以外にも、具体的に特定されるその要素と関係があるか、無関係であるかを問わず、任意選択で他の要素が存在してもよい。したがって、非限定的な例として、「含む」などの制限のない言葉とともに「A及び/又はB」と言う場合、それは、一実施形態ではAのみ(任意選択でB以外の要素を含む);別の実施形態ではBのみ(任意選択でA以外の要素を含む);更に別の実施形態ではAとBの両方(任意選択で他の要素を含む)などを指し得る。
【0188】
本明細書及び請求項で使用される「又は」は、上で定義される「及び/又は」と同じ意味を有するものと理解されるべきである。例えば、1つのリストのなかの項目を分ける場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的なものである、すなわち、多数の要素又は要素のリストのうち少なくとも1つの要素を含むだけでなく、2つ以上の要素、及び任意選択で、列挙されていない他の項目を含むものと解釈されるべきである。「のうちの1つのみ」若しくは「のうちのちょうど1つ」、又は請求項で使用される「よりなる」など、そうでないことが明記される用語に限り、多数の要素又は要素のリストのうちちょうど1つの要素が含まれることを指す。一般に、本明細書で使用される「or」という用語は、「いずれか」、「のうちの1つ」、「のうちの1つのみ」、又は「のうちのちょうど1つ」などの排他的用語が先行する場合、排他的選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すものとのみ解釈されるべきである。「から本質的になる」は、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用されるその通常の意味を有するものとする。
【0189】
本明細書及び請求項で1つ又は複数の要素のリストを指して使用される「少なくとも1つ」という語句は、要素のリストのなかの要素のうちの任意の1つ又は複数のものから選択される、少なくとも1つの要素を意味するが、要素のリストのなかに具体的に列挙されている少なくとも1つの要素及び全要素を必ずしも含むものではなく、要素のリストのなかの要素の任意の組み合わせを除外するものではないことが理解されるべきである。この定義はまた、任意選択で、「少なくとも1つ」という語句が指す要素のリストのなかで具体的に特定される要素以外の要素が、具体的に特定される要素と関係があるか、無関係であるかを問わず存在し得ることを認めるものである。したがって、非限定的な例として、「A及びBのうちの少なくとも1つ」(又は、「A又はBのうちの少なくとも1つ」も同様に、若しくは「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」も同様に)一実施形態では、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのAが存在し、Bは存在しないこと(及び任意選択で、B以外の要素を含む);別の実施形態では、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのBが存在し、Aは存在しないこと(及び任意選択で、A以外の要素を含む);更に別の実施形態では、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのAと、任意選択で2つ以上を含む少なくとも1つのB(及び任意選択で、他の要素を含む)などを指し得る。
【0190】
また、本明細書で特許請求され、2つ以上の段階又は行為を含む方法ではいずれも、そうでないことが明記されない限り、その方法の段階又は行為の順序は、必ずしもその方法の段階又は行為が記載されている順序に限定されないことが理解されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2022-12-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
【国際調査報告】