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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】電気外科器具、発生器及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20230518BHJP
   A61B 17/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61B 18/18 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61B18/14
A61B17/00 700
A61B18/18 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022533570
(86)(22)【出願日】2020-12-03
(85)【翻訳文提出日】2022-06-10
(86)【国際出願番号】 EP2020084490
(87)【国際公開番号】W WO2021110847
(87)【国際公開日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】1917752.6
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160JJ12
4C160JJ17
4C160JJ46
4C160JK01
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK22
(57)【要約】
様々な実施形態は、生体組織を治療するための電磁(EM)エネルギー及び超音波振動を送達するための電気外科器具を提供する。電気外科器具は、EMエネルギー及び磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気信号を伝達するように配置された器具シャフト、器具シャフトの遠位端に配置され、器具シャフトからEMエネルギーを受け取り、組織の治療のために遠位端アセンブリからEMエネルギーを送達する遠位端アセンブリ、及び器具シャフトから電気信号を受信し、組織の治療のために遠位端アセンブリの周りに超音波振動を生成するように配置された磁歪性超音波トランスデューサを含む。他の実施形態は、電気外科用発生器、及び器具及び発生器を含む電気外科用装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を治療するための電磁(EM)エネルギー及び超音波振動を送達するための電気外科器具であって、
磁歪性超音波トランスデューサを駆動するためのEMエネルギーと電気信号を伝送するように配置された器具シャフト、
前記器具シャフトの遠位端に配置され、前記器具シャフトから前記EMエネルギーを受け取り、組織の治療のために前記遠位端アセンブリから前記EMエネルギーを送達する遠位端アセンブリ、及び
前記器具シャフトから前記電気信号を受信し、組織の治療のために前記遠位端アセンブリの周りに超音波振動を生成するように配置された磁歪性超音波トランスデューサを含む、前記電気外科器具。
【請求項2】
前記器具シャフトは、内側導体、外側導体、及び前記内側導体を前記外側導体から分離する誘電体材料を有する同軸伝送線路を含み、前記同軸伝送線路は、前記EMエネルギー及び前記電気信号を伝送するように配置される、請求項1に記載の電気外科器具。
【請求項3】
前記磁歪性超音波トランスデューサは、前記同軸伝送線路から前記電気信号を受信するための第1及び第2の入力端子を有し、前記第1の入力端子は、第1の接続手段によって前記内側導体に接続され、前記第2の入力端子は、第2の接続手段によって前記外側導体に接続されている、請求項2に記載の電気外科器具。
【請求項4】
前記磁歪性超音波トランスデューサが前記遠位端アセンブリの上またはその中に取り付けられている、請求項3に記載の電気外科器具。
【請求項5】
前記遠位端アセンブリが、組織の治療のための電磁場を放射するように配置された放射先端部分であり、前記放射先端部分が、
誘電体先端と、
前記誘電体先端内に長手方向に延びる前記内側導体の遠位導電性部分と、
前記遠位導電性部分の近位部分を取り囲み、前記同軸伝送線路の前記誘電体材料を前記誘電体先端から分離する中間誘電体素子と、を備え、
前記磁歪性超音波トランスデューサは、前記中間誘電体素子の上または中に取り付けられている、請求項4に記載の電気外科器具。
【請求項6】
前記遠位端アセンブリが、
対向する内面間のギャップを開閉するために互いに対して可動な一対の顎部であって、前記対向する内面間の前記ギャップに前記EMエネルギーを放出するように配置されたエネルギー送達構造を備える、前記一対の顎部、を備え、
前記エネルギー送達構造は、前記一対の顎部の一方または両方の前記内面に取り付けられたマイクロストリップアンテナを含む、請求項4に記載の電気外科器具。
【請求項7】
前記遠位端アセンブリが、
前記生体組織を切断するための前記磁歪性超音波トランスデューサを含むブレードであって、前記一対の顎部間の前記領域を通って可動であるように前記遠位端アセンブリ内にスライド可能に配置されるブレード、をさらに備える、請求項6に記載の電気外科器具。
【請求項8】
前記磁歪性超音波トランスデューサが前記一対の顎部の1つの中または上に収容されている、請求項6に記載の電気外科器具。
【請求項9】
前記マイクロストリップアンテナが、同一平面のマイクロストリップアンテナであって、
平面誘電体基板であって、前記対向する内面間の前記ギャップで露出される上面と、前記上面から前記平面誘電体基板の反対側にある下面とを有する前記平面誘電体基板、
前記下面の接地導体層、
前記上面にあり、前記接地導体層に電気的に接続されている接地導電性ストリップ、及び
前記上面のアクティブ導電性ストリップであって、前記接地導電性ストリップから離間している、前記アクティブ導電性ストリップを含み、
前記アクティブ導電性ストリップ及び前記接地導電性ストリップは、前記一対の顎部間の前記領域内で、均一な最も近い間隔を有するように配置され、
前記磁歪性超音波トランスデューサは、前記平面誘電体基板の上面上、及び前記アクティブ導電性ストリップと前記接地導電性ストリップとの間に配置されている、前記同一平面のマイクロストリップアンテナである、請求項8に記載の電気外科器具。
【請求項10】
前記一対の顎部が、前記エネルギー送達構造が取り付けられた第1の顎部と、EMエネルギー供給を受けない第2の顎部とを含み、前記磁歪性超音波トランスデューサが前記第2の顎部の中または上に収容されている、請求項8に記載の電気外科器具。
【請求項11】
前記磁歪性超音波トランスデューサが前記器具シャフトの上または中に取り付けられている、請求項1から3のいずれかに記載の電気外科器具。
【請求項12】
前記磁歪性超音波トランスデューサが、テルフェノール-Dで作られた磁歪素子を含む、先行請求項のいずれかに記載の電気外科器具。
【請求項13】
電気外科用発生器であって、
EMエネルギーを生成するための電磁(EM)信号供給ユニット、
磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気信号を生成するための電気信号供給ユニット、
電気外科器具に接続可能に構成され、遠位端から前記EMエネルギーを送達し、前記電気信号を使用して超音波振動を生成するための出力ポート、及び
前記EMエネルギーを前記EM信号供給ユニットから前記出力ポートに伝送し、前記電気信号供給ユニットから前記出力ポートに前記電気信号を伝送するための供給構造であって、前記EMエネルギーと前記電気信号を前記出力ポートへ伝送するための共通の信号経路を有する、前記供給構造を含む、前記電気外科用発生器。
【請求項14】
前記EM信号供給ユニットが、第1の周波数を有するマイクロ波EM放射を生成するためのマイクロ波信号発生器を備え、
前記供給構造は、前記出力ポートを前記電気信号供給ユニットに接続するための電気信号チャネル、及び前記出力ポートを前記マイクロ波信号発生器に接続するためのマイクロ波チャネルを含み、前記電気信号チャネル及びマイクロ波チャネルは、前記電気信号供給ユニットとマイクロ波信号発生器から物質的に分かれた信号経路をそれぞれ備え、
前記供給構造は、前記電気信号チャネルから前記電気信号を受信するように接続された第1の入力、前記マイクロ波チャネルから前記マイクロ波EM放射を受け取るように接続された第2の入力、及び前記共通の信号経路に前記電気信号と前記マイクロ波EM放射を転送するための前記第1及び第2の入力を伝える出力を有する第1の結合回路を含む、請求項13に記載の電気外科用発生器。
【請求項15】
前記マイクロ波チャネルは、前記マイクロ波信号発生器から前記第1の結合回路へのマイクロ波EM放射の前記通過を可能にするが、前記第1の結合回路から前記マイクロ波信号発生器への前記電気信号の前記通過を防止するように配置された第1のフィルタを備える、請求項14に記載の電気外科用発生器。
【請求項16】
前記電気信号チャネルは、前記電気信号供給ユニットから前記第1の結合回路への前記電気信号の前記通過を可能にするが、前記第1の結合回路から前記電気信号供給ユニットへの前記マイクロ波EM放射の前記通過を防止するように配置された第2のフィルタを備える、請求項13または14に記載の電気外科用発生器。
【請求項17】
前記電磁信号供給ユニットは、
前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有するRF EM放射を生成するための無線周波数(RF)信号発生器を備え、
前記供給構造は、前記出力ポートを前記RF信号発生器に接続するためのRFチャネルを含み、前記RFチャネル及びマイクロ波チャネルは、前記RF信号発生器とマイクロ波信号発生器から物質的に分かれた信号経路をそれぞれ備え、
前記供給構造は、前記電気信号チャネルに接続され、前記電気信号供給ユニットから前記電気信号を受信するために接続された第1の入力と、前記RFチャネルからの前記RF EM放射を受信するために接続された第2の入力と、前記RF EM放射及び前記電気信号を前記第1の結合回路に転送するための前記第1及び第2の入力と通信する出力とを有する第2の結合回路を含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の電気外科用発生器。
【請求項18】
前記電気信号チャネルは、前記電気信号供給ユニットから前記第2の結合回路への前記電気信号の前記通過を可能にするが、前記第2の結合回路から前記電気信号供給ユニットへの前記RF EM放射の前記通過を防止するように配置された第3のフィルタを備える、請求項17に記載の電気外科用発生器。
【請求項19】
前記RFチャネルは、前記RF信号発生器から前記第2の結合回路への前記RF EM放射の前記通過を可能にするが、前記第2の結合回路から前記RF信号発生器への前記電気信号の前記通過を防止するように配置された第4のフィルタを備える、請求項17または18に記載の電気外科用発生器。
【請求項20】
前記電気信号供給ユニットは、
第1の供給信号を出力するための第1の電源、
第1の制御信号を出力するための信号源、
前記第1の制御信号を受信するための前記信号源に結合された制御入力、前記第1の供給信号を受信するための前記第1の電源に結合された供給入力、及び出力を有する第1のスイッチング回路であって、前記第1の供給信号及び前記第1の制御信号に基づく前記電気信号の少なくとも一部分を前記出力で発するよう動作可能である、前記第1のスイッチング回路、を備える、請求項13から19のいずれか一項に記載の電気外科用発生器。
【請求項21】
前記第1の電源は、その出力で前記第1の電源によって受信された交流信号を遮断するためのフィルタリング回路を備える、請求項20に記載の電気外科用発生器。
【請求項22】
前記第1のスイッチング回路は、前記第1の供給信号から、前記第1の制御信号の特性に従って、前記電気信号の前記少なくとも一部を生成するための電流源を備える、請求項20または21に記載の電気外科用発生器。
【請求項23】
前記第1のスイッチング回路は、スイッチに結合された信号調整器を含み、前記信号調整器は、前記制御信号を、前記スイッチを操作するための駆動信号に変換するように動作可能である、請求項20、21または22に記載の電気外科用発生器。
【請求項24】
前記信号源が第2の制御信号を出力するように動作可能であり、前記電気信号供給ユニットが、
第2の供給信号を出力するための第2の電源、
前記第2の制御信号を受信するための前記信号源に結合された制御入力、前記第2の供給信号を受信するための前記第2の電源に結合された供給入力、及び出力を有する第2のスイッチング回路であって、前記第2の供給信号及び前記第2の制御信号に基づく前記電気信号の第2の部分を前記出力で発するよう動作可能である、第2のスイッチング回路、及び
前記電気信号の第1の部分を受信するために前記第1のスイッチング回路の前記出力に結合され、前記電気信号の前記第2の部分を受信するために、及び前記電気信号を形成するため前記第1及び第2の部分を結合するために、前記第2のスイッチング回路の前記出力に結合される、共通の信号経路、をさらに備える、請求項20から23のいずれか一項に記載の電気外科用発生器。
【請求項25】
電気外科装置であって、
請求項1から12のいずれかに記載の電気外科器具、及び
請求項13から24のいずれかに記載の電気外科用発生器、を備え、
前記電気外科用発生器の前記出力は、前記電気外科器具の前記器具シャフトの近位端に接続可能であるように構成される、前記電気外科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を治療するための電磁(EM)エネルギー及び超音波振動を送達するための電気外科器具に関する。電気外科器具は、前記超音波振動を生成するための磁歪性超音波トランスデューサを有する。本発明はさらに、EMエネルギーを生成するための電気外科用発生器、及び前記磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気信号に関する。
【背景技術】
【0002】
電気外科器具及びその関連する発生器は、病院の手術室の至る所に行きわたり、開腹及び腹腔鏡手技で使用され、内視鏡検査スイートにおいても次第に存在するようになってきている。内視鏡手術では、電気外科用アクセサリは通常、内視鏡内側の腔部から挿入される。腹腔鏡手術に対する同等なアクセスチャネルに対して考えると、このような内腔は穴が比較的狭く、長さがより長い。
【0003】
生体組織を切断するために無線周波(RF)エネルギーを用いることが知られている。RFエネルギーを用いて切断する方法は、電流が(細胞及び細胞間電解質のイオン含有に助けられて)組織マトリックスを通ると、組織にわたる電子の流れに対するインピーダンスによって熱が発生するという原理を用いて動作する。組織マトリックスにRF電圧が印加されると、細胞内に十分な熱が発生して組織の含水を蒸発させる。このように乾燥が増加する結果、特に、組織を通る電流経路全体の中で電流密度が最も高い器具のRF放出領域(本明細書ではRFブレードと言う)に隣接して、RFブレードの切断ポールに隣接する組織はブレードとの直接接触を失う。そして印加電圧は、この空隙のほとんど全体にわたって現れ、結果として空隙はイオン化して、プラズマが形成され、体積抵抗率が組織と比べて非常に高くなる。この相違は重要である。なぜならば、RFブレードの切断ポールと組織との間の電気回路を完成させたプラズマに印加エネルギーを集中させるからである。何らかの揮発性材料がプラズマに十分ゆっくりと入ると蒸発するため、組織解離性のプラズマという認識になる。
【0004】
GB2486343に、生体組織を処置するためにRF及びマイクロ波エネルギーの両方を送出する電気外科装置に対する制御システムが開示されている。プローブに送出されたRFエネルギー及びマイクロ波エネルギーの両方のエネルギー送出プロファイルは、プローブに伝達されたRFエネルギーのサンプリングされた電圧及び電流情報と、プローブとの間で伝達されたマイクロ波エネルギーに対するサンプリングされた順方向及び反射電力情報とに基づいて設定される。
【0005】
把持された生体組織に熱エネルギーを送達することができる鉗子も知られている。例えば、鉗子の顎部の双極電極配置から無線周波(RF)エネルギーを供給することが知られている。RFエネルギーは、血管壁内の細胞外マトリックスタンパク質(例えば、コラーゲン)の熱変性によって血管を密封するために使用され得る。熱エネルギーはまた、把持された組織を焼灼し、凝固を促進できる。
【0006】
このようなデバイスは通常、低侵襲の外科用腹腔鏡ツールの最後に適用されるが、婦人科、内科、胃腸手術、耳鼻咽喉科手術といった他の臨床的処置の分野でも同様に使用できる。使用状況に応じて、これらのデバイスは、物理的な構造、サイズ、規模、複雑さが異なり得る。
【0007】
止血を達成すると同時に体組織を解剖することができる低侵襲デバイスの現在の例には、Covidienによって製造されたLigaSure血管シーリング技術、及びOlympusのThunderbeatプラットフォームが含まれる。LigaSureシステムは、圧力が加えられている間、電流が組織を密封するために供給される双極鉗子配置である。Thunderbeatプラットフォームは、超音波源を使用して生成された熱エネルギーと双極電気エネルギーを同時に送達する。
【0008】
US6,585,735は、鉗子の顎部が、それらの間に保持された組織を通して双極エネルギーを伝導するように配置されている内視鏡双極鉗子を記載している。
【0009】
EP2,233,098は、組織を密封するためのマイクロ波鉗子について説明しており、顎部の密封面には、鉗子の顎部の間に把持された組織にマイクロ波エネルギーを放射するための1つまたは複数のマイクロ波アンテナが含まれる。
【0010】
WO2015/097472は、1つ以上の非共振不平衡の損失性伝送線路構造の対が、一対の顎部の内面に配置されている電気外科用鉗子を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
最も一般的には、本発明は、生体組織を治療するための電磁(EM)エネルギー及び超音波振動を送達するための電気外科器具を提供し、超音波振動は、磁歪性超音波トランスデューサによって生成される。EMエネルギーは、無線周波数(RF)EMエネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを含み得る。電気外科器具は、組織の治療のためにEMエネルギーを生体組織に送達する遠位端アセンブリを含み得、トランスデューサは、生体組織の治療のために遠位端アセンブリの周りに超音波振動を生成し得る。
【0012】
このように、磁歪トランスデューサを使用して、追加の機械的増幅手段を必要とせずに、組織の治療のための超音波振動を生成することができる。つまり、他のタイプの超音波トランスデューサ(圧電など)と比較して、磁歪トランスデューサはより強い超音波振動を生成できるため、さらなる増幅手段や機構は必要ない場合があることを意味する。したがって、有利なことに、磁歪トランスデューサは、遠位端アセンブリを取り巻く生体組織への超音波振動の伝達を最大にするように、器具の遠位先端に向かって配置することができる。
【0013】
また、本発明は、磁歪トランスデューサを駆動して超音波振動を生成するための電気信号を供給することができる電気外科用発生器を提供する。電気外科用発生器は、治療のためのEMエネルギー(例えば、マイクロ波電磁信号及び/または無線周波電磁信号)を生成するための手段と統合された電気信号供給ユニットを備え得る。電気外科用発生器は、共通の給電ケーブルに沿って異なるタイプの信号(例えば、RF、マイクロ波、磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気信号)を送達するように構成することができる。したがって、単一の発生器を、様々な種類の治療のエネルギー源として使用することができる。これは、治療スイートに必要な機器を最小限に抑えるという点で有利な場合がある。例えば、超音波振動を使用して、生体組織を分割する(例えば、切断する、または切り裂く)ことができ、EMエネルギーを使用して、生体組織を切除及び/または凝固させることができる。
【0014】
また、磁歪性超音波トランスデューサは、電流制御デバイスであり、すなわち、トランスデューサは、発振性磁場を誘導して発振性の振動を生成するために、発振性電流信号を受信する。発振が超音波周波数である場合、超音波振動が発生する。これは、圧電効果により発振性の電圧信号を受信して発振性の振動を生成する圧電超音波トランスデューサなどの他のタイプの超音波トランスデューサとは対照的である。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、生体組織を治療するための電磁(EM)エネルギー及び超音波振動を送達するための電気外科器具が提供され、電気外科器具は、EMエネルギー及び超音波トランスデューサを駆動するための電気信号を伝達するように配置された器具シャフト、器具シャフトの遠位端に配置され、器具シャフトからEMエネルギーを受け取り、組織の治療のために遠位端アセンブリからEMエネルギーを送達する遠位端アセンブリ、及び器具シャフトから電気信号を受信し、組織の治療のために遠位端アセンブリの周りに超音波振動を生成するように配置された磁歪性超音波トランスデューサを含む。
【0016】
器具シャフトは、内側導体、外側導体、及び内側導体を外側導体から分離する誘電体材料を有する同軸伝送線路を含み得、同軸伝送線路は、EMエネルギー及び電気信号を伝達するように配置される。EMエネルギーは、RF及び/またはマイクロ波EMエネルギーを含み得る。この例では、RF及びマイクロ波エネルギーは、共通の同軸伝送線路によって器具シャフトに沿って伝えられる。また、トランスデューサは、同軸伝送線路から電気信号を受信するための第1及び第2の入力端子を含み得、第1の入力端子は第1の接続手段(例えば、導体、ワイヤ、ケーブルまたはトラック)によって内側導体に接続され、第2の入力端子は第2の接続手段(例えば、導体、ワイヤ、ケーブルまたはトラック)によって外側導体に接続されている。
【0017】
他の例では、RF及びマイクロ波エネルギーは、別個のエネルギー伝達構造に沿って輸送され得る。例えば、RFエネルギーは、並列に取り付けられたツイストワイヤペアまたは2つの絶縁ワイヤアセンブリによって伝送できるが、マイクロ波エネルギーは、適切な同軸伝送線路によって伝送される。また、超音波振動を生成するために磁歪トランスデューサを駆動するための電気信号は、同様の方法で送達することができる。つまり、電気信号がEMエネルギーで(例えば、同軸ケーブルを介して)送達されるか、または別個の伝送構造(例えば、ツイストワイヤペアまたは並列に取り付けられた2つの絶縁ワイヤアセンブリ)に沿って送達されることが可能である。いずれの場合も、トランスデューサは、適切な接続手段(例えば、1つまたは複数の導体、ワイヤ、ケーブル、またはトラック)によって電気信号を伝送する構造に結合される。
【0018】
磁歪トランスデューサは、磁歪材料から作られた磁歪素子(例えば、ソレノイドまたはロッド)の周りに巻かれた導電性材料のコイルを含む。磁歪は強磁性体の特性であり、磁場(磁場H)に応じてそれらを伸縮させる(つまり、物質的寸法が変化する)。この効果により、磁歪材料は電磁エネルギーを機械的エネルギーに変換できる。磁場が材料に適用されると、その分子双極子と磁場の境界が回転して磁場と整列する。これにより、材料が歪んで伸びる。物質的寸法のこの変化をもたらすために、発振性電気信号(例えば、電流信号)がコイルに印加されて、磁歪素子の周りに発振性磁場を誘導し、その磁歪特性のために、磁歪素子の物質的寸法における対応する発振性変化(例えば、発振性の膨張と収縮)を引き起こす。発振性電気信号(例えば、電流信号)は、磁歪素子の物質的寸法を超音波周波数で変化させるよう選択または調整して、順次磁歪トランスデューサ及びトランスデューサが(直接)接続されているか、または(間接的に)結合されている素子の周囲に、超音波振動を発生させることができる。超音波周波数は、20kHzから5MHzの範囲の周波数であると理解されている。そのため、電気信号の周波数は20kHz~5MHzである。
【0019】
実施形態では、電気信号は、変動または発振性の電流信号である。変動または発振性の電流信号は、以下の形式、つまり正弦波、正方形、台形、ランプ、指数関数のいずれかをとることができる。いずれの場合も、電気信号が磁歪トランスデューサのコイルに印加され、磁歪素子の周囲に変化する磁場を誘導する。磁歪効果により、磁歪素子は磁場の変化(及び電流の変化)に伴って物質的寸法が変化する。したがって、超音波振動を生成するために、電気信号は、超音波周波数での振動(例えば、電流の発振)を含む。実施形態では、電気信号は、その最小値と最大値の間(例えば、0Aから100Aの間)で最大100A変化する発振性電流信号である。
【0020】
実施形態では、トランスデューサは、テルフェノール-Dから作られた磁歪素子を含む。テルフェノール-Dは、他の磁歪材料(例えば、ガルフェノールやアルフェノール)と比較して、特定の応力(つまり、印加磁場の変化、または入力)に対して大きなひずみ(つまり、物質的寸法の変化、または出力)を生成するため、有利である。
【0021】
磁歪トランスデューサは、器具シャフトの上または中に取り付けることができる。例えば、トランスデューサは、器具シャフトの遠位端に向かって配置され得る。器具シャフトが同軸伝送線路を含む場合、トランスデューサは、同軸伝送線路の遠位端に、及び遠位端アセンブリが同軸伝送線路に接続する点またはその近くに配置され得る。この配置は、遠位端アセンブリが小さく複雑であり、遠位端アセンブリ内にトランスデューサを配置するための余地を見つけることが困難である場合に好ましい場合がある。
【0022】
あるいは、磁歪トランスデューサは、遠位端アセンブリの上または中に取り付けられ得る。例えば、遠位端アセンブリは、組織の治療のために電磁場を放射するように配置された放射先端部分であり得る。このタイプの電気外科器具は、非常に小規模で、例えば肺の組織を正確に切除することができる局所的なマイクロ波の場を生じる低侵襲外科技術での使用に適している可能性がある。これは、放射性の遠位先端の形状と材料を適切に選択することによって行われ得る。放射先端部分はまた、RFエネルギーを送達するように構成され得る。放射先端部分は、誘電体先端、誘電体先端の中へと長手方向に延びる内側導体の遠位導電性部分、遠位導電性部分の近位部分を取り囲み、同軸伝送線の誘電体材料を誘電体先端から分離する中間誘電体素子を含み得、それにおいてトランスデューサは中間誘電体素子の上または中に取り付けられている。
【0023】
EMエネルギー及び電気信号が同軸伝送線路によって伝達される場合、トランスデューサは、第1の端子で同軸ケーブルの内側導体に、第2の端子で同軸ケーブルの外側導体に電気的に結合され得る。例えば、小さなワイヤまたはトラックをコネクタまたはカップリングとして使用できる。さらに、トランスデューサは、中間誘電体素子の容積部の中に部分的または完全に埋め込まれ得る。追加的または代替的に、トランスデューサは、中間誘電体素子の内面または外面に配置され得る。別の実施形態では、トランスデューサは、放射先端部分の異なる部分、例えば、誘電体先端の上または中に取り付けられ得る。
【0024】
実施形態では、誘電体先端は、同軸伝送線路の誘電体材料(別名、第1の誘電体材料)とは異なる(例えば、より大きい)誘電率を有する第2の誘電体材料から形成することができる。
【0025】
したがって、実施形態では、放射先端部分は、遠位端に誘電体材料を備えた同軸系デバイスであり、全方向性放射パターンを生成して、切除または凝固の制御可能な球形ゾーンを作成する。誘電体ラジエータの形状によって、電磁放射パターンの形状、及び生成される組織の影響が決定される。デバイスの遠位端は、生体組織への効率的なマイクロ波エネルギー送達を容易にして、局所的な量の切除または凝固を達成するように設計されている。結果として生じる局所的な熱誘導された切除または凝固のゾーンは、誘電加熱または誘電伝導と熱伝導の組み合わせの結果として生じる。
【0026】
誘電体先端の効果は、マイクロ波エネルギーの波長を短縮することであり、誘電体先端の構造は、血管の寸法によって小さな形状となるように制約が課せられることに基づいて、結果として生じる切除特性のより良好なインピーダンス整合及び制御を生成するために、電磁場分析ソフトウェアを使用してモデル化される。例えば、同軸ケーブル及び放射先端部分の外径は、1.9mm以下、好ましくは1.5mm以下、さらにより好ましくは1mm未満であり得る。このサイズにより、器具を直接血管に収めたり、市販の小型スコーピングデバイス器具チャネルで操作したりできる。このサイズはまた、器具を血管の内側に挿入したり、血管内を移動させたりすることを可能にする。
【0027】
装置の可撓性を維持するために、誘電体先端の軸方向の長さは5mm以下、好ましくは2mm以下である。これにより、特に遠位端で、器具の可撓性に悪影響を与えることなく、第2の誘電体材料を比較的剛性にすることができる。先端部の長さを十分に小さくするには、誘電体の誘電率を1よりもはるかに大きく、すなわち、9または100にする必要がある場合があり、その場合、波長は、それぞれ3及び10だけ短縮される。
【0028】
マイクロ波エネルギーは、単一のスポット周波数、例えば5.8GHzであってもよく、またはスポット周波数の近辺で増減し得るスポット周波数、例えば、5.8GHz±100MHzまたは2.45GHz±50MHzであってもよい。この周波数変動は、組織負荷のマイクロ波エネルギーを調整または一致させるのに役立つ位相の変化に変換され得る。
【0029】
第2の誘電体材料の誘電率は、誘電体先端の軸方向長さが、誘電体先端内を伝搬する場合のマイクロ波エネルギーの波長の無視できない端数に対応するように、マイクロ波エネルギーの周波数に基づいて選択され得る。本明細書において、無視できない端数とは、0.05以上、好ましくは0.06以上であり得る。これにより、第2の誘電体材料が好適な波長短縮効果を確実にもたらすことができる。一実施形態では、第2の誘電体材料の誘電率は、80以上である。例えば、二酸化チタンを第2の誘電体材料として使用してもよい。PFTEまたはマイクロ波エネルギーの周波数で低損失である他の誘電体を、第1の誘電体材料に使用してもよい。
【0030】
放射先端部分は、アンテナの実効インピーダンスを組織負荷インピーダンスに一致させるため、インピーダンス変成器、例えば、4分の1波長インピーダンス変成器として、機能するように配置してもよい。換言すれば、放射先端部分の形状は、インピーダンス変成器に先行して伝送ラインを調べるときにインピーダンス不整合の影響が可視ではないように選択される。これはまた、インピーダンス整合ネットワークと見なされ得る。
【0031】
放射先端部分は、遠位導電性部分の近位部分を取り囲み、第1の誘電体材料を誘電体先端から分離する中間誘電体素子を含む。中間誘電体素子は、第2の誘電体材料とは異なる第3の誘電体材料から形成され得る。第3の誘電体材料は、第1の誘電体材料と同じあっても異なっていてもよい。中間誘電体素子の形状は、上記のインピーダンス整合機能を促進するために、例えば、電磁シミュレーションなどに基づいて選択することができる。この場合も、これはインピーダンス整合ネットワークと見なされ得る。
【0032】
器具の実施形態は、例えば、好適な電気外科用発生器へインターフェースを設けるための同軸ケーブルの近位端にあるハンドルを含み得る。また、器具シャフトは、同軸ケーブル、及び放射先端部分を伝わるようにするための閉鎖端カテーテル/シースを含み得る。
【0033】
局所化されたマイクロ波場は、例えば、放射先端部分の周りで実質的に球形であり得るか、またはそれはシャフトに沿った切除の細長い、例えば、シリンダ状であり得る。球形の場の形状の利点の1つは、回転しても不変であるため、血管内の器具または器具チャネルの方向を制御する必要がないことである。
【0034】
例えば、鋭利な先端が血管の壁またはスコーピングデバイスの器具チャネルを損傷するのを防ぐために、及び/または器具を保護するために、放射先端部分の上に、外部シースを形成してもよい。誘電体先端は、血管内での器具の操作を支援する形状を有し得る。例えば、装置の遠位端は、丸みを帯びていてもよく、例えば、ドーム状または半球形であってもよい。
【0035】
器具は、その遠位端に温度センサーをさらに含み得る。したがって、器具は、器具の遠位端の状態に関する追加のフィードバックを提供することができる。温度センサーは、同軸ケーブルの外側導体または放射先端に取り付けられた熱電対であってもよい。放射先端の周りに複数の熱電対を配置してもよい。熱電対(複数可)は、チューニングスタブまたは複数のスタブの近くに配置してもよく、スタブ(複数可)は、マイクロ波エネルギーと同じ周波数を有する信号をフィルタ除去するか、または熱電対もしくはその近位の電圧をゼロもしくはゼロ近位に強制し、熱電対の応答(mV/CまたはV/C)がマイクロ波信号の影響を受けないようにするように配置してもよい。マイクロ波エネルギーが温度センサーからの応答信号を圧倒することを回避するために、マイクロ波エネルギーがオフの場合に、すなわちパルス動作のオフ期間中に、温度測定を行ってもよい。代替的またはさらに、器具は、マイクロ波エネルギーによって引き起こされる温度センサーからの応答信号のノイズを除去するためのフィルタリング構成を含んでいてもよく、すなわち、ポストフィルタリングを使用して、測定信号からマイクロ波信号(ノイズ)を除去してもよい-半波長フィルタまたは非常に高い同相信号除去比(CMRR)、例えば100dBの高周波オペアンプを使用して、同相信号をフィルタ除去してもよい。
【0036】
フィルタリング構成は、応答信号からより高い周波数成分を除去するように配置されたローパスフィルタ及びコモンモード注入式計装増幅器を含み得る。
【0037】
上記の放射先端部分の代替として、遠位端アセンブリは、低い熱マージンで明確に定められたシール位置をもたらすことができる封鎖されたマイクロ波場を使用して生物学的血管をシールすることができる血管シーラーであり得る。さらに、血管シーラーは、血管の分割、微細組織の切断、及び/または切り裂きを支援するための補助機能を備えるために、磁歪トランスデューサを含み得る。これらの補助機能を使用すると、処置の最中に必要なデバイスの交換が少なくなり得る。血管シーラーは、あらゆるタイプの外科的処置に使用できるが、非侵襲的または低侵襲的処置に特に有用であることが予期される。例えば、デバイスは、腹腔鏡または内視鏡などの外科用スコーピングデバイスの器具チャネルを介して治療部位に導入されるように構成され得る。
【0038】
具体的には、遠位端アセンブリは、互いに対して移動可能であり、その対向する内面間のギャップを開閉する一対の顎部を含み、一対の顎部は、EMエネルギー(例えば、マイクロ波EMエネルギー)を対向する内面間のギャップに放出するように配置されたエネルギー送達構造を備え、エネルギー送達構造は、一対の顎部の一方または両方の内面に取り付けられたマイクロストリップアンテナを含む。
【0039】
エネルギー送達構造は、放出されたマイクロ波場を実質的に一対の顎部の間の領域内に封鎖するように配置することができる。したがって、一対の顎部のエネルギー送達構造は、顎部の間に把持された生物学的血管に、局所的な血管シールをもたらすように機能する。
【0040】
遠位端アセンブリは、生体組織を切断するためのトランスデューサを含むブレードを含むことができ、ブレードは、一対の顎部の間の領域を通って移動可能であるように遠位端アセンブリ内にスライド可能に配置される。このようにして、ブレードは、エネルギー送達構造によって形成された局所的な血管シールを切断し、血管を分割するように動作可能である。トランスデューサは、ブレードの近位端部分に接続することができる。
【0041】
また、ブレードの一部を形成する代わりに、磁歪トランスデューサを顎部の1つの中またはその上に収容することができる。例えば、一対の顎部は、エネルギー送達構造が取り付けられた第1の(例えば、アクティブな)顎部と、EMエネルギー(例えば、RFまたはマイクロ波EMエネルギー)の供給を受けない第2の(例えば、パッシブの)顎部とを含み得、トランスデューサは、第2の顎部の中または上に収容される。あるいは、トランスデューサは、第1の顎部の容積部の中にあるか、またはその表面上にあり得る。例えば、トランスデューサは、マイクロストリップアンテナに組み込まれ得る。具体的には、マイクロストリップアンテナは、同一平面のマイクロストリップアンテナであって、対向する内面間のギャップで露出される上面と、上面から平面誘電体基板の反対側にある下面とを有する平面誘電体基板、下面の接地導体層、上面にあり、接地導体層に電気的に接続されている接地導電性ストリップ、及び上面のアクティブ導電性ストリップであって、接地導電性ストリップから離間している、アクティブ導電性ストリップを含み、アクティブ導電性ストリップ及び接地導電性ストリップは、一対の顎部間の領域内で、均一に最も近い間隔を有するように配置される同一平面のマイクロストリップアンテナであり得、トランスデューサは、平面誘電体基板の上面上、及びアクティブ導電性ストリップと接地導電性ストリップとの間に配置されている。実施形態では、複数の磁歪トランスデューサを、アクティブ導電性ストリップと接地導電性ストリップとの間に配置することができる。このように、アクティブ及び接地導電性ストリップの間に配置された複数の小さい方のトランスデューサによってもたらされる複合超音波振動は、顎部の中または上に配置され(例えば、顎部の容積部内)た大きい方の単一のトランスデューサと、より類似する可能性がある。
【0042】
トランスデューサが顎部の1つの中または上に収容されている場合、ブレードが設けられない場合がある。あるいは、しかしながら、ブレードがさらに存在し得るが、ブレードは、超音波トランスデューサに異なるタイプの切断機構を設けることができる、例えば、ブレードは、生体組織をスライスするように適合された鋭いエッジ、例えばメス型ブレードを有する剛性要素を含み得る。
【0043】
したがって、使用中、血管シーラーは、血管の密封及び血管の分割を行うことができる。血管の密封は、通常、生体の血管壁を一緒に押しつぶすための圧力の適用と、それに続く何らかの形の熱エネルギーの適用である。熱エネルギーは、マイクロ波EMエネルギーを使用して把持された組織を誘電加熱することによって、適用される。適用された電気機械的エネルギーは、組織細胞を破壊/変性させ、血管壁で優勢なコラーゲンのアマルガムを形成し、血管壁を効果的に結合する。時間と共に、術後、細胞の回復と再成長が起こり、シールがさらに強化される。血管分割は、連続した生物学的血管を切断して2つの部分に分離するプロセスである。これは通常、血管が最初に密閉された後に実行される。血管の分割は、磁歪トランスデューサによって実行され、磁歪トランスデューサは、顎部の間のブレードの一部であるか、顎部の1つの中またはその上に収容されている場合がある。
【0044】
エネルギー送達構造は、一対の顎部の一方または両方の内面に配置されたマイクロ波ラジエータ素子を含み得る。例えば、一対の顎部は、中に取り付けられたエネルギー送達構造を有するアクティブな顎部と、マイクロ波EMエネルギー供給を受けないパッシブな顎部とを含み得る。あるいは、一対の顎部の各顎部は、それぞれのエネルギー送達構造がその中に取り付けられていてもよい。このシナリオでは、遠位端アセンブリは、同軸伝送線路から受信したマイクロ波EMエネルギーをそれぞれのエネルギー送達構造間で分割するための動力スプリッタを含むことができる。さらなる例では、エネルギー送達構造は、一対の顎部の間で分割された構成要素を有し得、その結果、一対の顎部は、組み合わせて、マイクロ波ラジエータ素子を備える。
【0045】
マイクロ波ラジエータ素子は、一対の顎部の一方または両方の内面に取り付けられた同一平面上のマイクロストリップアンテナを備え得る。一実施形態では、同一平面のマイクロストリップアンテナは、アクティブな顎部に取り付けられ得、反対側の顎部は、パッシブな顎部であり得る。ギャップでのパッシブな顎部の内面は、電気絶縁材料、例えばシリコーンゴムなどの弾性変形可能な層を含み得る。電気的に絶縁する材料の層は、顎部を越えて熱が伝播するのを防ぐための熱障壁を設けることができる。場合によっては、変形可能な層は、一対の顎部の長さに沿って実質的に一定のクランプ力をもたらすのを補助することができる。
【0046】
同一平面のマイクロストリップアンテナは、対向する内面間のギャップで露出される上面と、上面から平面誘電体基板の反対側にある下面とを有する平面誘電体基板を含み得る。誘電体基板は、適切なセラミックから作製することができる。それは、アクティブな顎部に取り付けられるか、例えば、接着または他の方法で取り付けられてもよい。接地導体層を下面に設けることができる。これは、例えば銅、銀、金などの金属化の層であり得る。誘電体基板の上面には、接地導体層に電気的に接続された接地導電性ストリップと、接地導電性ストリップから離間したアクティブ導電性ストリップとを設けることができる。同軸伝送線路の外側導体に、接地導体が電気的に接続され得る。アクティブ導電性ストリップは、同軸伝送線路の内側導体に接続することができる。アクティブ導電性ストリップ及び接地導電性ストリップは、一対の顎部の間の領域内で、均一に最も近い間隔を有するように配置され得る。アクティブ導電性ストリップと接地導電性ストリップの間の最も近い間隔は、放出されたマイクロ波場が最も強くなる領域である。したがって、顎部間の領域内に場を制限するアクティブ導電性ストリップ及び接地導電性ストリップの形状を選択することができる。
【0047】
一例では、アクティブ導電性ストリップは、細長い長手方向に延びるフィンガ電極であり得る。接地導電性ストリップは、フィンガ電極に隣接する1つまたは複数の細長い部分を含み、それにより、最も近い間隔は、一対の顎部の内面に沿った細長い長手方向に延びる部分を含む。接地導電性ストリップは、フィンガ電極の両側に隣接する場合がある。一例では、接地導電性ストリップは、フィンガ電極の両側に隣接し、その遠位端を取り囲むU字形要素であり得る。この例では、場は主にU字型要素の内側にある領域内に限定され得る。1つまたは複数の磁歪性超音波トランスデューサが同一平面のマイクロストリップアンテナに配置される場合、超音波トランスデューサは、フィンガ電極とU字形要素との間のギャップに配置され得る。
【0048】
接地導電性ストリップは、誘電体基板に形成された貫通穴を介して接地導体層に電気的に接続することができる。
【0049】
マイクロ波ラジエータ素子は、同一平面のマイクロストリップ構成に限定される必要はない。他の例では、それは、進行波のアンテナ、または蛇行性または交互に配置されたマイクロストリップの配置を含み得る。
【0050】
一対の顎部の対向する内面は、ギャップ内に生物学的組織を保持するために、テクスチャ化された部分または隆起した部分を含み得る。この特徴はまた、シーリングの界面での変性プロセスによって生成されたガスまたは蒸気を逃がすことを可能にし得る。
【0051】
一対の顎部は、同軸伝送線路の長手方向軸を横切って位置するヒンジ軸の周りで互いに対して旋回可能であり得る。一例では、一対の顎部は、器具シャフトに対して固定された静的顎部と、対向する内面間のギャップを開閉するために静的顎部に対して枢動可能に取り付けられた可動顎部とを含む。エネルギー送達構造は、静的顎部の内面に配置することができる。別の例では、両方の顎部は、例えば対称鉗子タイプの配置で、器具シャフトに対して旋回するように配置されている。一対の顎部の相対的な動きは、器具シャフトの近位端にあるハンドルから制御することができる。制御ロッドまたは制御ワイヤは、器具シャフトを通過して、ハンドル上の作動機構を一対の顎部に動作可能に結合することができる。
【0052】
別の例では、一対の顎部は、その内面を整列した、例えば平行な配向に維持するように、互いに対して移動するように配置することができる。この構成は、顎部の長さに沿って、把持した組織に均一な圧力を維持するために望ましい場合がある。そのような閉鎖機構の一例は、WO2015/097472に開示されている。
【0053】
存在する場合、ブレードは、一対の顎部の近位にある格納位置と一対の顎部の間の領域内にある伸長位置との間で長手方向にスライド可能であり得る。ブレードが組織把持構成にあるとき、すなわち少なくとも部分的に閉じているとき、ブレードが顎部の間の領域にスライドすることが望ましい。ブレードは、一対の顎、すなわち一対の顎部の各顎に形成された長手方向に延びる凹んだ溝に沿ってスライド可能であり得、その結果、一対の顎部が閉じられたときにギャップに保持された組織に接触することができる。溝は、切断ブレードのガイドレールとして機能するように配置することができ、これは、一対の顎部がそれらの遠位端に向かって湾曲する場合に特に有用であり得る。
【0054】
別の例では、ブレードは、一対の顎部の一方の中に取り付けられ、顎部の内面の下にある格納位置と、それが一対の顎部間の領域内にある伸長位置との間で、横方向にスライド可能または他の方法で移動可能であり得る。
【0055】
上記のように、ブレードは、生物組織をスライスするように適合された鋭いエッジを備えた剛性要素、例えばメスタイプのブレードなどを含み得る。このタイプのブレードは、「コールド」カットを実行するように構成されている。これは、他の切断技術に関連する付随的な熱損傷のリスクが低いため、好ましい場合がある。しかしながら、本発明は、コールドカットのブレードに限定される必要はない。他の例では、ブレードは、磁歪トランスデューサ、双極無線周波切断要素、及び加熱可能なワイヤ要素を含み得る。磁歪トランスデューサがブレードの一部ではない場合、磁歪トランスデューサは、超音波切断機能をもたらすために、血管シーラーの他の場所(例えば、顎部の1つ)に配置される。
【0056】
上記のように、血管シーラーは、その主要なマイクロ波ベースの血管シール機能、及び超音波ベースの分割機能に加えて、補助機能を有利にも設けることができる。例えば、器具シャフトは、RF EMエネルギーを伝達するように配置され得、遠位端アセンブリは、器具シャフトからRF EMエネルギーを受け取るように配置され得る。この例では、遠位端アセンブリは、生体組織を切断するためのRF EMエネルギーを送達するように配置されたディセクタ素子をさらに含み得、ディセクタ素子は、一対の顎部間の領域の外側に位置する。
【0057】
ディセクタ素子は、アクティブ電極及びリターン電極を有する双極RF構造を含み得る。アクティブ電極(切断要素)は、リターン電極よりも一桁小さくてもよい。リターン電極は、ディセクタ素子に隣接する顎部の外面に形成することができるため、乾燥した場で使用する場合、組織と直接接触する。したがって、ディセクタ素子は、例えば、治療部位へのアクセスを改善するため、または治療部位を開放するために、小規模または微細な切断に使用することができる。
【0058】
切断領域は、一対の顎部から離れて(すなわち、突き出して)静置することができる。例えば、ディセクタ素子は、組織に接触するための前縁を提示する突出体を含み得る。アクティブ電極は、例えば、RF電流密度がその領域に集中することを確実にするために、前縁に設けられ得る。
【0059】
ディセクタ素子は、一対の顎部の外面に取り付けることができる。例えば、突出体は、一対の顎部の遠位面または側面にあり得る。突出体は、適切な誘電体から形成することができ、アクティブ電極は、その上に作製された導電性部分である。リターン電極は、突出体または一対の顎部の外面上にあり得る。
【0060】
別の例では、ディセクタ素子は、長手方向の伸長部に取り付けられ得、長手方向の伸長部は、一対の顎部に対して長手方向に移動可能である。この配置は、例えば、一対の顎部の前にそれを治療部位に移動させることを可能にすることによって、使用中の解剖要素の可視性を助けることができる。
【0061】
好ましい例では、ディセクタ素子は、遠位端アセンブリの遠位端に取り付けられ得る。
マイクロ波EMエネルギーとRF EMエネルギーは、器具シャフトを通る共通の信号経路に沿って伝達される場合がある。例えば、同軸伝送線路は、マイクロ波EMエネルギーとRF EMエネルギーの両方を伝達するための共通の信号経路を備える場合がある。この配置では、遠位端アセンブリは、ディセクタ素子からのマイクロ波EMエネルギーを遮断するための誘導性フィルタと、一対の顎部上のエネルギー送達構造からのRF EMエネルギーを遮断するための容量性フィルタとを含み得る。別の構成では、RF EMエネルギー及びマイクロ波EMエネルギーは、器具シャフト内の別個の経路に沿って伝送され、誘導性フィルタ及び容量性フィルタは、器具シャフトの近位端、例えば、ハンドルに供給される。
【0062】
上記のように、遠位端アセンブリ及び器具シャフトは、外科用スコーピングデバイスの器具チャネル内に適合するように寸法決定され得る。外科用スコーピングデバイスは、腹腔鏡または内視鏡であり得る。通常は、外科用スコーピングデバイスは、侵襲的処置中に患者の体内に導入される剛性または可撓性の(例えば、操作可能な)導管である挿入管を備える。挿入管は、器具チャネルと(例えば、光を伝えて挿入管の遠位端で治療部位を照らす、及び/または治療部位の画像をキャプチャするための)光チャネルとを含み得る。器具チャネルは、侵襲的な手術用ツールを受け入れるのに適した直径を有し得る。器具チャネルの直径は、13mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは、特に可撓性挿入管の場合、5mm以下であり得る。
【0063】
上記の血管シーラーは、他の組織溶接技術にも適用できる可能性がある。例えば、エネルギー送達構造は、ステープルの代替として使用され得る。一部の腹部手術では、ステープルガンを使用して、長さが70mm以上の顎部の間、または直径20~50mmの環状顎部の配置から同時に発射される50~100個の小さなステープルを送る。この類の適用では、本明細書で説明するような複数のアンテナ構造を使用して、必要な長さをカバーすることができる。アンテナ構造は、適切な方法で同時に、連続的に、または漸進的に活性化されるように、任意の数のアレイ形態で配置することができる。
【0064】
本発明の第2の態様は、電気外科用発生器であって、EMエネルギーを生成するための電磁(EM)信号供給ユニット、磁歪性超音波トランスデューサ(例えば、超音波振動を生成するため)を駆動するための電気信号を生成するための電気信号供給ユニット、電気外科器具に接続可能に構成され、遠位端からEMエネルギーを送達し、電気信号を使用して超音波振動を生成するための出力ポート、及びEMエネルギーをEM信号供給ユニットから出力ポートに伝送し、電気信号供給ユニットから出力ポートに電気信号を伝送するための供給構造であって、EMエネルギーと電気信号を出力ポートへ伝送するための共通の信号経路を有する、供給構造を含む、電気外科用発生器を提供する。
【0065】
この配置では、同じ発生器が、例えば組織の切断、切除、止血または他の効果のために、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギー、ならびに超音波トランスデューサ(例えば、磁歪トランスデューサ)を駆動して組織において超音波振動を生成するための電気信号を供給することができる。超音波振動は、生体組織を分割、解剖、または切断するために使用できる。RF及び/またはマイクロ波エネルギーを共通の発生器に組み込むことにより、本発明は、同じ器具がRF及び/またはマイクロ波エネルギーも送達することを可能にし得る。これは、治療的処置の最中の施術者に、より多くの治療オプションを提供できる。
【0066】
上述したように、電気信号は、変動または発振性の電流信号であってよい。変動または発振性の電流信号は、以下の形式、つまりパルス状、正弦波、正方形、台形、ランプ、指数関数のいずれかをとることができる。いずれの場合も、電気信号が磁歪トランスデューサのコイルに印加され得、トランスデューサの磁歪素子の周囲に変化する磁場を誘導する。磁歪効果により、磁歪素子は磁場の変化(及び電気信号における電流の変化)に伴って物質的寸法が変化する。したがって、超音波振動を生成するために、電気信号は、超音波周波数(例えば、20kHzから5MHz)での発振(例えば、電流の発振)を含む。実施形態では、電気信号は、その最小値と最大値の間(例えば、0Aから100Aの間)で最大100A振幅が変化する発振性電流信号である。
【0067】
EM信号供給ユニットは、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの両方を別々にまたは同時に供給するように構成することができる。例えば、EM信号供給ユニットは、第1の周波数を有するマイクロ波EM放射を生成するためのマイクロ波信号発生器と、第1の周波数よりも低い第2の周波数を有するRF電磁(EM)放射を生成するための無線周波数(RF)信号発生器とを含み得る。
【0068】
供給構造は、出力ポートを電気信号供給ユニットに接続するための電気信号チャネルと、出力ポートをマイクロ波信号発生器に接続するためのマイクロ波チャネルとを含み得る。電気信号チャネル及びマイクロ波チャネルは、それぞれ、電気信号供給ユニット及びマイクロ波信号発生器からの物理的に別個の信号経路を含み得る。供給構造は、電気信号チャネルから電気信号を受信するように接続された第1の入力、マイクロ波チャネルからマイクロ波EM放射を受信するように接続された第2の入力、及び共通の信号経路に電気信号とマイクロ波EM放射を転送するための第1及び第2の入力と通信する出力を有する第1の結合回路を含むことができる。
【0069】
マイクロ波チャネルは、マイクロ波信号発生器から第1の結合回路へのマイクロ波EM放射の通過を可能にするが、第1の結合回路からマイクロ波信号発生器への電気信号の通過を防止(例えば遮断)するように配置された第1のフィルタを含み得る。実施形態では、第1のフィルタは、マイクロ波周波数エネルギーを通過させるが、電気信号のより低い周波数(超音波周波数を有する)及び存在するRF信号を遮断するように、比較的高いカットオフ周波数(例えば、約300MHz)を有するハイパスフィルタであり得る。例えば、1pFのコンデンサを使用できる。
【0070】
また、電気信号チャネルは、電気信号供給ユニットから第1の結合回路への電気信号の通過を可能にするが、第1の結合回路から電気信号供給ユニットへのマイクロ波EM放射の通過を防止(例えば遮断)するように配置された第2のフィルタを含み得る。実施形態では、第2のフィルタは、超音波周波数及び存在する任意のRF信号を有する電気信号を通過させるが、より高い周波数マイクロ波エネルギーを遮断するように、比較的高いカットオフ周波数(例えば、約300MHz)を有するローパスフィルタであり得る。例えば、1つまたは複数(例えば、3つ)のマイクロ波スタブを使用することができ、スタブは、マイクロ波エネルギーと同じ周波数を有する信号をフィルタリングするように配置される。
【0071】
供給構造は、出力ポートをRF信号発生器に接続するためのRFチャネルを含み得る。RFチャネル及びマイクロ波チャネルは、それぞれ、RF信号発生器及びマイクロ波信号発生器からの物理的に別個の信号経路を含み得る。また、RFチャネルは、電気信号チャネルと結合することができる。供給構造は、電気信号チャネルに接続され、電気信号供給ユニットから電気信号を受信するために接続された第1の入力と、RFチャネルからのRF EM放射を受信するために接続された第2の入力と、RF EM放射及び電気信号を第1の結合回路に転送するための第1及び第2の入力と通信する出力とを有する第2の結合回路を含み得る。
【0072】
電気信号チャネルは、電気信号供給ユニットから第2の結合回路への電気信号の通過を可能にするが、第2の結合回路から電気信号供給ユニットへのRF EM放射の通過を防止(例えば遮断)するように配置された第3のフィルタを含み得る。実施形態では、第3のフィルタは、超音波周波数を有する電気信号を通過させるが、RF信号を遮断するように、比較的低いカットオフ周波数(例えば、約100kHz)を有するローパスフィルタであり得る。例えば、インダクタを使用することができる。
【0073】
また、RFチャネルは、RF信号発生器から第2の結合回路へのRF EM放射の通過を可能にするが、第2の結合回路からRF信号発生器への電気信号の通過を防止(例えば遮断)するように配置された第4のフィルタを含み得る。実施形態では、第4のフィルタは、RF周波数エネルギーを通過させるが、電気信号のより低い超音波周波数を遮断するように、比較的低いカットオフ周波数(例えば、約100kHz)を有するハイパスフィルタであり得る。例えば、1μFのコンデンサを使用できる。
【0074】
電気信号供給ユニットは、第1の供給信号を出力するための第1の電源、第1の制御信号を出力するための信号源、第1の制御信号を受信するための信号源に結合された制御入力、第1の供給信号を受信するための第1の電源に結合された供給入力、及び出力を有する第1のスイッチング回路であって、第1の供給信号及び第1の制御信号に基づく電気信号の少なくとも一部を出力で発するよう動作可能である、第1のスイッチング回路、を含み得る。実施形態では、第1のスイッチング回路は、第1の供給信号から(例えば、使用して)、第1の制御信号の特性(例えば、発振、周波数、変動)に従って、電気信号(またはその一部)を生成する電流源を含む。例えば、電流源は、IGFETまたはMOSFETなどの電圧制御電流源、またはBJTなどの電流制御電流源であり得る。
【0075】
第1の電源は、DC電源であり得る。また、信号源は、第1の供給信号からの(例えば、それを使用する)電気信号の生成を制御するために使用される変化する制御またはトリガー信号を提供する。信号源は、マイクロコントローラ(Arduino(商標)マイクロコントローラなど)、コルピッツ発振器、ハートレー発振器、または555タイマーである。実施形態では、第1の制御信号は、パルス波形、正弦波形、方形波、台形波形、ランプ波形、または指数波形などの発振波形を有する。例では、第1の制御信号は、超音波周波数(例えば、20kHzから5MHz)で、LOW状態(例えば、0V)とHIGH状態(例えば、5V)との間で発振し得る。第1のスイッチング回路は、第1の供給信号から発振する電気(例えば、電流)信号を生成し、第1の制御信号の発振を有することによって、電気信号(またはその一部)を生成する。例えば、第1の制御信号がLOWのとき、第1のスイッチング回路は、電気信号供給ユニットから電気信号が出力されないようにオフ状態にある。しかしながら、第1の制御信号がHIGHであるとき、第1のスイッチング回路は、電気(例えば、電流)信号が電気単一供給ユニットから出力されるように、オン状態にある。この出力電気(例えば、電流)信号は、第1の供給信号からの第1のスイッチング回路の電流源によって生成され得る。この出力電気(例えば、電流)信号は、第1の態様の電気外科器具に送信され、生体組織を治療(例えば、分割、切断)するための器具の遠位端の周りに超音波振動を生成するためにその磁歪トランスデューサを駆動するために使用され得る。
【0076】
上記の例では、第1の制御信号は、第1の供給信号から(例えば、それを使用して)電気(例えば、電流)信号を生成するように第1のスイッチング回路を制御する。この電気信号は、第1のスイッチング回路と第1の電源の構造に応じて、正または負になる。例えば、第1の電源が順方向構成で接続されたDC電源であり、第1のスイッチング回路がPチャネルMOSFETを含む場合、出力電流信号は正の発振信号である。一方、第1の電源が逆構成で接続されたDC電源であり、第1のスイッチング回路がNチャネルMOSFETを含む場合、出力電流信号は負の発振信号である。したがって、第1の電源及び第1のスイッチング回路を備えた信号源は、完全な電気(例えば、電流)信号を生成し、これは、正の発振性電流信号または負の発振性電流信号であり得る。
【0077】
しかしながら、別の実施形態では、第2の電源信号を出力するために第2の電源を設けることができる。この場合、前と同様に、信号源は、第1の制御信号を第1のスイッチング回路に出力するように構成され得るが、今回は、第2の制御信号も出力して、第2のスイッチング回路を駆動する。第1及び第2の制御信号は、第1の制御信号が最大(例えば5V)であるとき、第2の制御信号が最小(例えば、0V)であるとき、及び第1の制御信号が最小(例えば、0V)であるとき、第2の制御信号が最大(例えば、-5V)になるように、互いに相から外れる(例えば、180度)ことがある。このようにして、信号源、第1の電源、及び第1のスイッチング回路は、電気信号(例えば、正の最大電流とゼロとの間の変動)の一部(例えば、半分、または正の半分)をもたらすことができ、信号源、第2の電源、及び第2のスイッチング回路は、電気信号(例えば、ゼロと負の最大電流との間の変動)の第2の(または残りの)部分(例えば、残りの半分、または負の半分)をもたらすことができる。したがって、より広い振幅範囲(例えば、電流の範囲)を有する複合電気(例えば、電流)信号を生成することが可能であり、順次これを使用して、より強い超音波振動を生成することができる。さらに、電気信号の2つの部分は、第1及び第2の制御信号によって別々に制御されるので、第1の部分と第2の部分との間に遅延を導入することが可能であり、これは、磁歪トランスデューサのコイルが、サイクルの間に冷却する時間があるのを確実にするのに役立ち得る。このようにして、磁歪トランスデューサの摩耗と損傷を減らすことができる。
【0078】
電気信号供給ユニットが、電気信号の第1の部分をもたらすための第1の電源及び第1のスイッチング回路と、電気信号の第2の(または残りの)部分をもたらすための第2の電源及び第2のスイッチング回路とを含み、電気信号供給ユニットは、第1及び第2の部分を組み合わせて磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気信号を形成するために、第1及び第2のスイッチング回路の両方の出力に接続される共通信号経路をさらに含むことを理解されたい。
【0079】
実施形態では、第1及び/または第2の電源は、その出力で受信された交流信号またはスパイクを遮断するためのフィルタリング回路を備える。このような交流電流またはスパイクは、発生器の他の場所で生成され得、そうでなければ、その出力で電源に入り、電源に損傷を与える可能性がある。したがって、フィルタリング回路は、このような損傷から電源を保護するように動作する。実施形態では、フィルタリング回路は、容量性回路、例えば、電源出力とゼロボルトとの間に接続された2つの並列接続されたコンデンサを含む。そのような構造の追加の利点は、電力が電源から直接ではなく容量性回路から回路の残りの部分に供給されるように、容量性回路が電源出力からの電力を蓄積することである。この容量性回路は、磁歪性超音波トランスデューサを駆動するために使用される電気(例えば電流)信号を生成するために、スイッチング回路に利用可能な電流を増加させるように機能する。
【0080】
実施形態では、第1及び/または第2のスイッチング回路は、スイッチに結合された信号調整器を含む。信号調整器は、制御信号を、スイッチを操作するための駆動信号に変換するように動作可能である。つまり、信号源からの出力の電流及び/または電圧は、超音波周波数でスイッチをアクティブにするために、スイッチ(例えばMOSFET)の固有の静電容量を充電するのに十分な大きさではない可能性がある。したがって、信号調整器は、信号源からの制御信号を増幅して、スイッチを駆動するのに適したサイズの電流及び/または電圧を有するようにする。磁歪トランスデューサを介して必要な超音波振動を生成するために周波数が信号源によって特別に設定されるため、信号調整器は制御信号の周波数を変更しないことに留意されたい。実施形態では、スイッチは、電圧制御電流源(例えば、MOSFETまたはIGFET)または電流制御電流源(例えば、BJT)などの切り替え可能な電流源である。すなわち、スイッチは、スイッチング回路の前述の電流源を含み得る。
【0081】
第1の電源は、第2の電源と同じ物理的構造を有し得るが、第1の電源は、第2の電源とは反対の(例えば、逆の)構成で接続され得ることが理解されるべきである。また、第1のスイッチング回路は、第2のスイッチング回路と同じ物理的構造を有し得るが、第1のスイッチング回路は、第2のスイッチング回路(例えば、P-チャネルの代わりにN-チャネル、またはその逆)の逆のスイッチ(例えば、MOSFET)を含み得る。
【0082】
本発明の第3の態様によれば、第1の態様による電気外科器具、及び第2の態様による電気外科用発生器を含む電気外科装置が提供され、電気外科用発生器の出力ポートは、電気外科器具の器具シャフトの近位端に接続可能であるように構成される。このようにして、発生器によって生成されたEMエネルギー(例えば、マイクロ波及び/またはRF)は、組織の治療のために遠位端アセンブリから送達されるために、器具に供給され得る。また、発生器によって生成された電気信号を器具に送って、器具の磁歪性超音波トランスデューサを駆動し、組織の治療のために遠位端アセンブリの周りに超音波振動を生成することができる。
【0083】
本明細書では、「近位」及び「遠位」という用語は、治療部位から遠い方のエネルギー伝達構造端部及び治療部位に近い方のエネルギー伝達構造端部を、それぞれ指す。したがって、使用時、近位端の方がRF及び/またはマイクロ波エネルギーを供給するための発生器に近く、一方で遠位端の方が治療部位(すなわち、患者)に近い。
【0084】
「発振する」という用語は、本明細書では、規則的な変動及び不規則な変動の両方を意味するために使用される。
【0085】
「伝導性」という用語は、本明細書では、文脈上別の意味が示される場合を除き、電気伝導性を意味するために用いる。
【0086】
以下で使用される「長手方向」という用語は、同軸伝送線路の軸に平行な、器具チャネルの長さに沿った方向を指す。「横方向」という用語は、長手方向に垂直な方向を指す。本明細書では、用語「inner(内側/内部)」は、器具チャネルの中心(例えば軸)に向かって半径方向に近い方を意味する。用語「outer(外側/外部)」は、器具チャネルの中心(軸)から半径方向に遠い方を意味する。
【0087】
「電気外科」という用語は、手術中に使用され、無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを利用する器具、装置、またはツールに関連して使用される。本明細書において、RF EMエネルギーは、10kHzから300MHzの範囲、好ましくは100kHzから5MHzの範囲、より好ましくは360から440kHzの範囲の安定した固定周波数を意味し得る。マイクロ波EMエネルギーは、300MHzから100GHzの範囲の安定した固定周波数を持つ電磁エネルギーを意味し得る。RF EMエネルギーは、エネルギーが神経刺激を引き起こすのを防ぐのに十分高い周波数を有するべきである。使用中、RF EMエネルギーの大きさとそれが適用される期間は、エネルギーが組織のブランチングまたは不必要な熱マージンまたは組織構造への損傷を引き起こすのを防ぐために選択することができる。RF EMエネルギーについての好ましいスポット周波数は、100kHz、250kHz、400kHz、500kHz、1MHz、5MHzのうちのいずれか1つ以上を含む。マイクロ波EMエネルギーについての好ましいスポット周波数は、915MHz、2.45GHz、5.8GHz、14.5GHz、及び24GHzを含む。5.8GHzが好ましい場合がある。
【0088】
本発明の実施例を、添付の図面を参照して、以下により詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0089】
図1】実施形態による、電気外科用発生器の概略図である。
図2】実施形態による、図1の電気外科用発生器の電気信号供給ユニットの概略図である。
図3】別の実施形態による、図1の電気外科用発生器の電気信号供給ユニットの概略図である。
図4】さらなる実施形態による、図1の電気外科用発生器の電気信号供給ユニットの概略図である。
図5】実施形態による、図1の電気外科用発生器の供給構造の概略図である。
図6A】Aは、実施形態による磁歪性超音波トランスデューサの概略図を示している。Bは、磁気ヒステリシスループの図である。
図6B】Aは、実施形態による磁歪性超音波トランスデューサの概略図を示している。Bは、磁気ヒステリシスループの図である。
図7】実施形態による、電気外科装置の概略図である。
図8】実施形態による、電気外科器具の概略的断面図である。
図9】別の実施形態による、開いた構成の電気外科器具の概略図である。
図10図9の電気外科器具の下側の概略的な斜視図である。
図11】閉じた構成の、図9の電気外科器具の概略的な斜視図である。
図12A】A及びBは、図9の電気外科器具で使用することができる例示的な同一平面のマイクロストリップアンテナの対向する表面を示す。
図12B】A及びBは、図9の電気外科器具で使用することができる例示的な同一平面のマイクロストリップアンテナの対向する表面を示す。
図13】実施形態による、複数の磁歪性超音波トランスデューサを含む同一平面のマイクロストリップアンテナの上面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0090】
図1は、電気外科装置400の概略図を示す。この装置は、RFチャネル、マイクロ波チャネル、及び磁歪性超音波トランスデューサを駆動して超音波振動を生成するための電気(例えば、電流)信号を伝達するための電気信号チャネルを備える。RFチャネルは、生体組織を処置する(例えば、切断するかまたは乾燥させる)のに適した電力レベルにおいてRF周波数電磁信号を発生させて制御するためのコンポーネントを含む。マイクロ波チャネルは、生体組織を処置する(例えば、凝固させるかまたは切除する)のに適した電力レベルにおいてマイクロ波周波数電磁信号を発生させて制御するためのコンポーネントを含む。電気信号チャネルは、組織の治療(例えば、切り裂き、切断、分割)に適した電力レベルで超音波振動を形成するための磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気(例えば、電流)信号を生成及び制御するためのコンポーネントを含む。
【0091】
マイクロ波チャネルは、マイクロ波周波数供給源402と、それに続いて動力スプリッタ424(例えば3dB動力スプリッタ)とを有し、これは供給源402からの信号を2つの分岐に分ける。動力スプリッタ424からの1つの分岐が、マイクロ波チャネルを形成する。マイクロ波チャネルは、制御信号V10を介して制御器406によって制御される可変減衰器404と、制御信号V11を介して制御器406によって制御される信号変調器408とを含む電力制御モジュール、及び治療に適した電力レベルにおいて器具(例えば、プローブまたは一対の顎部)420から送達させるための順方向マイクロ波EM放射線を発生させるための駆動増幅器410及び電力増幅器412を含む増幅器モジュールを有する。増幅器モジュールの後、マイクロ波チャネルは、マイクロ波信号カップリングモジュール(マイクロ波信号検出器の一部を構成する)と続く。マイクロ波信号カップリングモジュールは、サーキュレータ416であって、その第1及び第2のポート間の経路に沿ってマイクロ波EMエネルギーを供給源から器具へ送達するように接続されたサーキュレータ416と、サーキュレータ416の第1のポートにおける順方向カプラー414と、サーキュレータ416の第3のポートにおける反射カプラー418とを含む。反射カプラーを通った後、第3のポートからのマイクロ波EMエネルギーは電力ダンプロード422において吸収される。またマイクロ波信号カップリングモジュールは、順方向結合信号または反射結合信号のいずれかを検出用にヘテロダイン受信部に接続するために制御信号V12を介して制御器406によって操作されるスイッチ415を含む。
【0092】
動力スプリッタ424からの他の分岐は測定チャネルを形成する。測定チャネルはマイクロ波チャネル上の増幅ラインアップを迂回しており、したがって、器具から低電力信号を送達するように配列されている。制御信号V13を介して制御器406によって制御される一次のチャネル選択スイッチ426は、マイクロ波チャネルまたは測定チャネルのいずれかからの信号を選択して器具へ送達するように動作可能である。高バンドパスフィルタ427が、マイクロ波信号発生器を低周波RF信号及び/または超音波周波数信号(電気信号供給ユニット490によって生成される)から保護するために、一次のチャネル選択スイッチ426とプローブ420との間に接続されている。ハイパスフィルタ427は、図5を参照して以下でより詳細に説明される供給構造の一部である。
【0093】
測定チャネルは、器具から反射された電力の位相及び大きさを検出するように配列されたコンポーネントを含む。それによって、材料(例えば、器具の遠位端に存在する生体組織)についての情報が生じ得る。測定チャネルは、サーキュレータ428であって、その第1及び第2のポート間の経路に沿ってマイクロ波EMエネルギーを供給源402からプローブへ送達するように接続されたサーキュレータ428を含む。器具から返った反射信号は、サーキュレータ428の第3のポート内に送られる。サーキュレータ428は、正確な測定が容易になるように順方向信号と反射信号との間の分離をもたらすために用いられる。しかし、サーキュレータはその第1及び第3のポート間の完全な分離が得られない。すなわち順方向信号の一部が第3のポートへと通り抜けて反射信号と干渉し得る。そのため、キャリアキャンセレーション回路を用いて、(順方向カプラー430からの)順方向信号の一部を、第3のポートから(注入カプラー432を介して)出てくる信号に注入して戻してもよい。キャリアキャンセレーション回路は、注入部分が、第1のポートから第3のポートへと通り抜ける任意の信号と180°位相がずれて信号を相殺することを確実にするために、位相調整器434を含んでいる。またキャリアキャンセレーション回路は、注入部分の大きさが任意の通り抜け信号と同じになることを確実にするために信号減衰器436を含んでいる。
【0094】
順方向信号におけるいかなるドリフトも補償するために、測定チャネル上に順方向カプラー438が設けられている。順方向カプラー438の結合出力とサーキュレータ428の第3のポートからの反射信号とが、スイッチ440の対応する入力端子に接続されている。スイッチ440は、結合された順方向信号または反射信号のいずれかを検出用にヘテロダイン受信部に接続するために、制御信号V14を介して制御器406によって操作される。
【0095】
スイッチ440の出力(すなわち、測定チャネルからの出力)とスイッチ415の出力(すなわち、マイクロ波チャネルからの出力)とが、二次チャネル選択スイッチ442の対応する入力端子に接続されている。二次チャネル選択スイッチ442は、一次のチャネル選択スイッチと共に、制御信号V15を介して制御器406によって動作可能であり、測定チャネルが器具にエネルギーを供給しているときに測定チャネルの出力がヘテロダイン受信部に接続されること、及びマイクロ波チャネルが器具にエネルギーを供給しているときにマイクロ波チャネルの出力がヘテロダイン受信部に接続されることを確実にする。
【0096】
ヘテロダイン受信部は、二次チャネル選択スイッチ442が出力した信号から位相及び大きさ情報を抽出するために用いられる。このシステムではシングルヘテロダイン受信部を示しているが、信号が制御器に入る前に供給源周波数を2回ミックスダウンするダブルヘテロダイン受信部(2つの局部発振器及び混合器を含む)を、必要に応じて用いてもよい。ヘテロダイン受信部は、二次チャネル選択スイッチ442が出力した信号をミックスダウンするための局部発振器444及び混合器448を含む。局部発振器信号の周波数は、混合器448からの出力が、制御器406において受け取るのに適した中間周波数となるように選択される。バンドパスフィルタ446、450が、局部発振器444及び制御器406を高周波マイクロ波信号から保護するために設けられている。
【0097】
制御器406は、ヘテロダイン受信部の出力を受け取って、そこから、マイクロ波または測定チャネル上の順方向及び/または反射信号の位相及び大きさを示す情報を決定する(例えば、抽出する)。この情報を用いて、マイクロ波チャネルの高電力マイクロ波EM放射またはRFチャンネルの高電力RF EM放射の送達を制御することができる。ユーザは、前述したように、ユーザインターフェース452を介して制御器406と相互に作用し得る。
【0098】
図1に示すRFチャネルは、制御信号V16を介して制御器406によって制御されるゲートドライバ456に接続されたRF周波数供給源454を含む。ゲートドライバ456は、RF増幅器458(ハーフブリッジ配置である)に対する動作信号を供給する。ハーフブリッジ配置のドレイン電圧は、可変DC電源460を介して制御可能である。出力変成器462は、生成されたRF信号を、器具420に送出するためにラインに伝達する。ハイパスフィルタ464は、電気信号供給ユニット490によって生成される超音波周波数信号からRF信号発生器を保護するために、そのラインに接続されている。フィルタ464はまた、供給構造の一部を形成し、これは、図5を参照して以下に説明される。
【0099】
変流器466が、組織負荷に送出される電流を測定するためにRFチャネルに接続されている。分圧器468(出力変成器からタップされ得る)を用いて電圧を測定する。分圧器468及び変流器466からの出力信号(すなわち、電圧及び電流を示す電圧出力)は、対応するバッファ増幅器470、472及び電圧クランピングツェナーダイオード474、476、478、480によってコンディショニングされた後に、制御器406に直接接続される(図1では信号B及びCとして示す)。
【0100】
位相情報を得るために、電圧及び電流信号(B及びC)は位相比較器482(例えば、EXORゲート)にも接続される。位相比較器482の出力電圧はRC回路484によって積分されて、電圧波形と電流波形との間の位相差に比例する電圧出力(図1ではAとして示す)を形成する。この電圧出力(信号A)は制御器406に直接接続される。
【0101】
電気信号チャネルは、電気信号供給ユニット490によって部分的に設けられ、その実施形態は、図2に詳細に示されている。電気信号供給ユニット490は、1つまたは複数の制御信号(例えば、電圧信号)を生成するための信号源500を含む。実施形態では、信号源500は、マイクロコントローラ(例えば、Arduino(商標)マイクロコントローラ)、コルピッツ発振器、ハートレー発振器、または555タイマーである。信号源500は、電気信号供給ユニットの残りの部分を駆動して、磁歪性超音波トランスデューサ(例えば、器具420上)を駆動するための超音波周波数を有する電気(例えば、電流)信号を形成して、生体組織を治療するための超音波振動を生成する、低電力発振(または交流)信号(例えば、パルス、方形、正弦波、ランプ、台形、指数関数)の形で、制御信号を生成する。具体的には、信号源500は、2つの制御信号を生成し、第1の(例えば、正の)制御信号は、第1のスイッチング回路502の制御入力に与えられ、第2の(例えば、負の)制御信号は、第2のスイッチング回路504の制御入力に与えられる。第1及び第2の制御信号の例示的な概略図を図2に示す。それにおいて、第1の制御信号は正の方形波であり、第2の制御信号は、第1の制御信号と180°またはπ位相がずれている負の方形波である。以下でより詳細に説明するように、第1及び第2のスイッチング回路502及び504が電圧制御電流源を含むので、制御信号は、図2に電圧信号として示されている。しかし、例えば、第1及び第2のスイッチング回路502、504が電流制御電流源を含む場合、制御信号は、低電力電流信号を発振させ得ることを理解されたい。
【0102】
実施形態では、第1の制御信号は、0Vから5Vの間の超音波周波数で、最小電流(例えば、<1mA)で発振し、第2の制御信号は、0Vと-5Vの間で、最小電流(<1mAなど)で、超音波周波数(例えば、第1の制御信号と同じ超音波周波数)で発振する。第1のスイッチング回路502は、第1の電源506に結合された供給入力を有する。また、第2のスイッチング回路502は、第2の電源508に結合された電源入力を有する。実施形態では、第1及び第2の電源ユニットは、DC電源ユニットであり得る。第1のスイッチング回路502は、電気信号供給ユニット490の出力電気(例えば、電流)信号の第1の部分をもたらす。具体的には、第1のスイッチング回路502は、電流源(例えば、MOSFET、BJT、またはIGFET)を含み、第1の電源506から受信した第1の供給信号を使用して、第1の制御信号の発振に基づいて発振性電流信号を生成する。これは、電流+iアンペアと0アンペアの間で発振する正の方形波によって、図2に図式的に示されている(実施形態では、+iアンペアは100Aであり得る)。また、第2のスイッチング回路504は、電気信号供給ユニット490の出力電流信号の第2の部分または残りの部分をもたらす。具体的には、第2のスイッチング回路504は電流源(例えば、MOSFET、BJT、またはIGFET)を含み、第2の電源508から受信した第2の供給信号を使用して、第2の制御信号の発振に基づいて発振性電流信号を生成する。これは電流-iアンペアと0アンペアの間で発振する負の方形波によって、図2に図式的に示されている(実施形態では、-iアンペアは-100Aであり得る)。
【0103】
図2に見られるように、第1のスイッチング回路502からの出力(すなわち、電気信号の第1の部分)及び第2のスイッチング回路504からの出力(すなわち、電気信号の第2の部分)は、共通の信号経路で一緒に結合され、電気信号供給ユニット490からの結合された出力電気(例えば、電流)信号を形成する。したがって、電気信号供給ユニット490からの出力は、信号源500と同じ超音波周波数で、第1及び第2のスイッチング回路によって提供される最大電流値の間(すなわち、+iと-iの間)で変化する電気信号である。すなわち、電気信号供給ユニット490から出力される電気(例えば、電流)信号は、2つの部分、すなわち信号源500、第1の電源506、及び第1のスイッチング回路502により得られる第1の(例えば、正の)部分、及び信号源500、第2の電源508、及び第2のスイッチング回路504により得られる第2の(例えば、負の)部分から構成される複合信号である。正の部分は磁歪性超音波トランスデューサに正の磁場Hを生じさせ、そのため一方向に寸法の変化を引き起こし、一方、負の部分はトランスデューサに負の磁場Hを生じさせ、そのため第2の(例えば反対の)方向の寸法の変化を生じさせる。
【0104】
出力電気(例えば、電流)信号の第1及び第2の部分を発する2つの電源506、508及び2つのスイッチング回路502、504を有することの利点は、出力電気信号の波形を適合させて、超音波トランスデューサのパフォーマンスを向上できるということである。例えば、第1及び第2の制御信号は、トランスデューサ(例えば、そのコイル及び/またはその磁歪素子)が一方向に駆動された後及び反対方向に駆動される前に冷却するための時間を与えるために、出力電気信号の2つの部分の間に遅延を導入するように適合させることができる。次に、これにより、トランスデューサの使用可能な寿命が長くなり、及び/またはトランスデューサが破損または誤動作する可能性が低くなる可能性がある。
【0105】
実施形態では、信号源の動作は、例えば、そこから受信された専用の制御信号を介して、コントローラ406によって制御され得る。
【0106】
図1に戻ると、変成器492は、一方の側で電気信号供給ユニット490に結合され、他方の側でローパスフィルタ494に結合されている。変成器492は、器具420(及び患者)を電力供給ユニット490から隔離するように機能する。実施形態では、変成器492は、光アイソレータであり得る。また、変成器492は、いくつかの実施形態では存在しない場合がある。いずれの場合でも、ローパスフィルタ464は、信号コンバイナ496によってRFチャネルに接続され、ローパスフィルタ494は、RFチャネルで生成されたRF信号から電気信号供給ユニットを保護するように動作する。フィルタ494及び信号コンバイナ496もまた、供給構造の一部を形成し、これは、図5を参照して以下に説明される。
【0107】
マイクロ波/測定チャネルは、信号コンバイナ417に接続されている。また、信号コンバイナ417は、マイクロ波エネルギーからRFチャネル及び電気信号チャネルの両方を保護するように機能するローパスフィルタ498を介して信号コンバイナ496に接続されている。さらに、マイクロ波、RF及び電気信号は、別々にまたは同時にケーブルアセンブリ419に沿って器具420に伝達される。器具420は、マイクロ波及び/またはRFエネルギーを患者の生体組織に送達する(例えば、放射する)。また、器具420は、磁歪性超音波トランスデューサを含み、電気信号は、組織の治療のための超音波振動を生成するようにトランスデューサを駆動する。
【0108】
いくつかの実施形態では、マイクロ波及びRFチャネルのうちの1つのみが存在し得、したがって、器具は、RF及びマイクロ波エネルギーのうちの1つのみを送達し得ることが理解されるべきである。また、いくつかの実施形態では、測定チャネルが存在しない場合がある。
【0109】
図3は、電気信号供給ユニット600のより詳細な実施形態を示している。電気信号供給ユニット600は、図2の電気信号供給ユニット490に類似しており、同様の参照符号は、同様の構成要素に関連している。図3から明らかなように、電気信号供給ユニット600は、信号源500を含む。しかしながら、図3では、図2の第1のスイッチング回路502は、第1のゲートドライバ602と、電流源を含む第1のスイッチ604とから構成される。さらに、図2の第2のスイッチング回路504は、第2のゲートドライバ606と、電流源を備える第2のスイッチ608とから構成される。実施形態では、第1及び第2のスイッチ604、608は、MOSFET(すなわち、電圧制御電流源)であり、例えば、スイッチ604は、PチャネルMOSFETであり得、スイッチ608は、NチャネルMOSFETであり得る。また、ゲートドライバ602、606は、信号源500から受信した制御信号を、それぞれスイッチ604、608を駆動するための適切な信号に調整するように機能する。例えば、前述のように、第1の制御信号は、例えば、0Vから5Vの間の超音波周波数で、最小の電流(例えば、<1mA)で振動する低電力振動正信号である。また、第2の制御信号は、例えば、0Vから-5Vの間の超音波周波数(例えば、第1の制御信号と同じ超音波周波数)で、最小電流(例えば、<1mA)で発振する低電力発振負信号である。しかしながら、スイッチ604及び608(例えば、MOSFET)は、動作するためにより高い電圧及び電流を必要とし得、したがって、ゲートドライバ602及び606は、調整された信号がスイッチ604、608を駆動できるように、それらの電圧及び/または電流を増加させることによって制御信号を調整する。例えば、MOSFETの固有の容量を充電するために、より大きな信号が必要になる場合がある。実施形態では、ゲートドライバ602は、第1の制御信号を、0Vから15Vの間で1Aの電流で発振する発振信号に調整することができる。また、ゲートドライバ606は、第2の制御信号を、0Vから-15Vの間で1Aの電流で発振する発振信号に調整することができる。ゲートドライバ602、606は、信号調整器と呼ばれ得る。
【0110】
また、図3において、図2の第1の電源506は、2つの機能を実行する容量性回路C1、C2を含む。また、図2の第2の電源508は、同じ2つの機能を実行する容量性回路C3、C4を含む。まず、容量性回路(C1、C2及びC3、C4)は、交流(AC)またはスパイクがDC電源の出力に入るのを防ぐ電源デカップリングをもたらす、つまり、このようなAC電流またはスパイクをグランドに送る。これにより、このようなAC電流またはスパイクによってDC電源が損傷する可能性が低くなる。第2に、容量性回路(C1、C2及びC3、C4)は、電気信号供給ユニット600からの出力電気信号が、電源から直接ではなく、容量性回路から発せられるようにする。次に、これにより、出力電気(電流など)信号を生成するために利用できる電流が増加する。実施形態では、コンデンサC1及びC3はそれぞれ100μFの値を有することができ、一方、コンデンサC2及びC4はそれぞれ0.1μFの値を有することができる。
【0111】
図4は、電気信号供給ユニット700の代替の実施形態を示している。具体的には、電気信号供給ユニット700を図2の電気信号供給ユニット490と比較すると、ユニット700は、単一のスイッチング回路704に対して単一の制御信号を生成する信号源702を含むことが明らかである。また、スイッチング回路704は、単一の電源706から供給信号を受信する。したがって、電気信号供給ユニットによって発せられる出力電気(例えば、電流)信号は、正(例えば、0と+iの間)または負(例えば、0と-iの間)のいずれかである。これは、出力電気(例えば電流)信号が2つの部分(例えば正の部分と負の部分)から構成される複合信号である図2の配置とは対照的である。図4の配置は、製造がより簡単で安価であるが、正または負の信号を生成する傾向があるため、図2の配置と比較してより小さな振幅の範囲をもたらし得る。さらに、出力電気信号は2つの制御信号の組み合わせではないため、制御信号を使用して出力電気信号の正の部分と負の部分の間に遅延を導入することはできない。
【0112】
電気信号供給ユニットのさらなる実施形態は、図3の電気信号供給ユニットの変形として形成され得、単一のゲートドライバは、信号源500から単一の制御信号を受信し得、単一のゲートドライバは、スイッチ604及びスイッチ608の両方を駆動するためのその単一の制御信号を調整できる。このようにして、有利には、出力電気信号は、図2の配置のより広い電流の範囲(例えば、+iから-i)を有することができる。しかしながら、図4の配置と同様に、この変形は、出力電気信号の正の部分と負の部分との間に遅延を導入することができないであろう。すなわち、単一ゲートドライバからの調整された制御信号は、スイッチ608をオフに切り替えると同時に(及びその逆に)スイッチ604をオンに切り替える必要がある。
【0113】
図5は、図1の実施形態による発生器の供給構造の概略図を示す。供給構造は、マイクロ波チャネルからマイクロ波EM信号、電気信号チャネルから超音波トランスデューサを駆動するための電気信号、及びRFチャネルからのRF EM信号を入力として受け取る。供給構造は、供給ライン419を介して器具420への前方送信のために、3つの入力信号のうちの1つまたは複数を(別々にまたは同時に)出力として提供する。供給構造は、これらの異なる信号を生成するための別個であるが相互接続された機構への損傷を回避するような方法でこれらの異なる信号を一緒に結合するために、1つまたは複数の信号コンバイナ及び1つまたは複数のフィルタを含む。具体的には、供給構造は、マイクロ波チャネルと電気信号チャネルを共通の信号経路に結合する第1の信号コンバイナ417を含む。さらに、供給構造は、RFチャネルを電気信号チャネルと組み合わせるための第2の信号コンバイナ496を含む。RF EM信号及び電気信号は、マイクロ波EM信号を生成するための機構に損傷を与える可能性があり、したがって、マイクロ波チャネルに、また信号コンバイナ417の前に配置され、比較的高いカットオフ周波数を有するハイパスフィルタ427がある(例えば、約300MHz)。このハイパスフィルタ427は、マイクロ波EM周波数エネルギーを通過させるが、より低い周波数の電気信号(超音波周波数を有する)及びRF信号を遮断する。例えば、1pFのコンデンサをフィルタ427として使用することができる。
【0114】
さらに、マイクロ波EM信号は、電気信号及びRF EM信号を生成するための機構に損傷を与える可能性があり、したがって、第1及び第2の信号コンバイナ417、496の間に配置されると、比較的高いカットオフ周波数(例えば、約300MHz)ローパスフィルタ498となり、超音波周波数とRF EM信号を有する電気信号を通過させるが、より高い周波数のマイクロ波エネルギーをブロックする。例えば、1つまたは複数(例えば、3つ)のマイクロ波スタブを使用することができ、スタブは、マイクロ波エネルギーと同じ周波数を有する信号をフィルタリングするように配置される。スタブは、WO2017103209A1に開示されているとおりのものであり得る。
【0115】
さらに、RF EM信号は、電気信号を生成するための機構に損傷を与える可能性があり、したがって、電気信号チャネルに配置され、信号コンバイナ496の前に、比較的低いカットオフ周波数(例えば、約100KHz)を有するローパスフィルタ494があり、これが超音波周波数を有する電気信号を通過させるが、RF信号をブロックするようにする。例えば、インダクタを使用することができる。また、電気信号は、RF EM信号を生成するための機構に損傷を与える可能性があり、したがって、RFチャネルに配置され、信号コンバイナ496の前に、比較的低いカットオフ周波数(例えば、約100KHz)を有するローパスフィルタ464があり、これがRF周波数のエネルギーを通過させるが、電気信号のより低い超音波周波数をブロックするようにする。例えば、1μFのコンデンサをフィルタ464として使用することができる。
【0116】
したがって、供給構造は、それぞれのEMエネルギー供給ユニットからEMエネルギー(例えば、マイクロ波及び/またはRF)を伝達し、電気信号供給ユニットからの電気信号を伝達する。また、供給構造は、EMエネルギー及び電気信号を出力ポートに伝達して、器具420に前方への転送をするための共通の信号経路を含む。さらに、供給構造は、これらの別個の異なる入力信号がそれらの信号を生成するための様々な別個の異なる機構に損傷を与えないことを保証するように機能する信号コンバイナ及びフィルタの回路またはネットワークを含む。
【0117】
図6Aは、実施形態による磁歪性超音波トランスデューサを示している。トランスデューサは、磁歪材料の要素806の周りに巻き付けられたコイル状導体804がその中に配置されているハウジング802を含む。要素806は、実質的に細長いまたは棒状であり得、ソレノイドと呼ばれ得る。実施形態では、要素806は、コイルとほぼ同じ長さ、またはコイルよりわずかに長い、例えば、1cmまたは1.2cmであり得る。また、要素806は、実質的に円筒形であり得、約0.5cmまたは0.6cmの直径を有し得る。コイル状導体804は、第1の端部でトランスデューサ800の第1の端子808に接続され、第2の端部でトランスデューサ800の第2の端子810に接続されている。使用中、第1の端子808及び第2の端子810は、電気信号がトランスデューサ800に発せられてトランスデューサ800が超音波振動を生成するように、図1のケーブルアセンブリ419に接続される。具体的には、磁歪は強磁性体の特性であり、磁場(磁場H)に応じて強磁性体を膨張または収縮させる(つまり、物質的寸法を変化させる)。この効果により、磁歪材料は電磁エネルギーを機械的エネルギーに変換できる。磁場が材料に適用されると、その分子双極子と磁場の境界が回転して磁場と整列する。これにより、材料が歪んで伸びる。
【0118】
図6Bは、磁気ヒステリシスループの例を示している。強磁性体が一方向に磁化されると、飽和点(例えば図6Bの点824)に達するまで磁気ヒステリシスループが生成され、その後、磁場の強さは逆飽和点(例えば、図6Bの点826)へと逆方向に消磁する。磁場の方向が交互になると、飽和点と逆飽和点を行き来するループが形成される。このループは図6Bで見ることができる。磁場(H)は、磁化(MまたはB)またはひずみに必要な変化を生成するために必要な応力をもたらす。磁場の強さ(H)がゼロのときの強磁性体の磁化(M)は残留磁気と呼ばれる。磁化がゼロに戻ると、飽和後に消磁するのに必要な磁場の強さ(H)は保磁力と呼ばれる。820とマークされた点は、残留点と呼ばれ、駆動の場がゼロに低下したときの残りの磁化の測定値である。これは、駆動磁場がゼロに低下すると、強磁性材料がかなりの程度の磁化を保持することを示している。822とマークされた点は、保磁力点と呼ばれ得て、飽和後に磁化をゼロに駆動するために必要な逆磁場の尺度である。これは、磁化を再びゼロに駆動するために、駆動磁場を逆転させてから増加させる必要があることを示している。点824は、一方向(例えば、北極)への磁区の整列によって強磁性材料が飽和に磁化される点を示し、一方、点826は、反対方向(例えば、南極)への磁区の整列によって強磁性材料が飽和に磁化される点を示す。ヒステリシスループの幅828は、駆動の場が削除されたときに、材料が飽和フィールドの大部分または小部分を保持するかどうかを示す。幅は、磁歪材料によって異なり得る。ヒステリシスループが狭いということは、少量の散逸エネルギーが繰り返し磁化を逆転させていることを意味する。実施形態は、超音波振動の生成における磁歪材料の使用に向けられている。超音波振動の周波数が比較的高い場合、飽和点間の切り替えは比較的迅速に行われる必要がある。例えば、1秒あたり20,000~5,000,000回(つまり、20kHz~5MHz)である。したがって、目的は、ヒステリシスループをできるだけ狭くして(つまり、幅828をできるだけ低くして)、磁化の変化(または切り替え)がはるかに速い速度で発生し、エネルギー散逸とその後の加熱が小さいままであるようにすることである。
【0119】
テルフェノール-Dは、要素806を作成するための特に適切な磁歪材料として選択されている。テルフェノール-Dは、約2400ppmであり、テルフェノール-D材料の格子構造の菱面体の歪みによって発生する室温での大規模な磁化と磁歪を有しているため、使用に適した材料である。つまり、テルフェノール-Dは、他の磁歪材料と比較して、特定の応力(つまり、磁気駆動場の変化を適用する)に対して大きなひずみ(つまり、物質的寸法の変化)を生成する。例えば、ガルフェノールの磁歪は約400ppmで、アルフェノールの磁歪は約200ppmである。しかしながら、テルフェノール-Dは比較的高価な材料であるため、要素806は、2つの部分から構成され得る。第1の部分は、コイルと実質的に同じ長さであり、テルフェノール-Dから作られ、第2の部分は、第1の部分の延長部であり、鋼などのより安価な材料から作られている。
【0120】
以下は、実施形態による、コイル804及び要素806の可能な構造を決定するためのいくつかの計算例を提示する。
【0121】
磁場の強さ(H)は、以下の式(1)から求めることができることが既知である。
【0122】
【数1】
【0123】
式中、Nはコイル804上のワイヤの巻き数を表し、Iはトランスデューサ800を駆動するために使用される電気信号の電流であり、Lはコイル804の長さである(図6Aで「L」とラベル付けされている)。
【0124】
実施形態では、2000エルステッド(Oe)の磁場強度は、特定のテルフェノール-D磁歪要素806に対して2400ppmの最大ひずみを生成すると考えられ得る。1Oeが79.58A/mに相当する場合、2000Oeは159,155A/mに相当する。
【0125】
式(1)から、100Aの電流がコイル804に駆動される場合、N/L=1,592である。N/Lは、コイル804上のワイヤのターン数をコイル804の長さ(L)で割った比率である。コイルの長さが1cm(0.01m)の場合、必要なターン数は、(N=H*L)/I=(159155*0.01)/100=15.9ターン、つまり約16ターンになる。
【0126】
実施形態では、コイルは外径0.5mmの銅線でできているので、1cm以内の長さで20ターン、単層巻線が可能である。さらに、多層巻線を持つことが可能である。ただし、キャンセル効果を回避するために、反対方向の回転数を最小限に抑える必要があることに留意されたい。例えば、20ターンを設けるための二重層巻線には、最初の方向に11ターン(層1)、1回の戻りのターン(元のターンの1つをキャンセルする、つまり11ターンが10ターンに減少する)(層2)、続いて最初の方向にさらに10回転する(層3)を含み得る。このように多層巻線を使用することにより、必要なコイルの長さを短縮することが可能になり、したがって、トランスデューサ800の全体的なサイズを縮小することが可能になる。例えば、コイルの長さを0.5cm以下に減らすことができる。必要なコイルの長さを短縮し、したがってトランスデューサ800の全体的なサイズを縮小するための別の機構は、トランスデューサ800の入力端子808、810に印加される駆動電気信号の電流を増加させることである。例えば、図3の配置を考慮すると、これは、電源のサイズ(+VDD、-VDDなど)と電流源(MOSFETなど)のサイズを大きくすることで実行できる。
【0127】
図7は、超音波振動を生成するために磁歪性超音波トランスデューサを駆動するためのRFエネルギー、マイクロ波エネルギー、または電気信号を供給することができる完全な電気外科システム(または装置)100の概略図である。システム100は、RFエネルギー、マイクロ波エネルギー、及び超音波振動を生成するために磁歪性超音波トランスデューサを駆動するのに適した電気信号を制御可能に供給するための発生器102を備える。実施形態では、発生器102は、図1~5を参照して上記で説明した発生器400と同じである。
【0128】
発生器102は、インターフェースケーブル104によってインターフェースジョイント106に接続されている。必要に応じて、インターフェースジョイント106は、例えば、1つ以上の制御ワイヤまたはプッシュロッド(図示せず)の長手方向(前後)の動きを制御するために、トリガー110をスライドさせることによって動作可能な器具制御機構を収容することができる。複数の制御ワイヤがある場合、完全な制御をもたらすために、インターフェースジョイントに複数のスライド式トリガーが存在し得る。インターフェースジョイント106の機能は、発生器102、及び器具制御機構からの入力を、インターフェースジョイント106の遠位端から延伸する単一の可撓性シャフト112に結合することである。
【0129】
可撓性シャフト112は、外科用スコーピングデバイス114、例えば内視鏡、腹腔鏡、気管支鏡、胃内視鏡などの器具(作動)チャネルの全長を通して挿入可能である。
【0130】
外科用スコープデバイス114は、いくつかの入力ポートと、器具コード120がそこから延びる出力ポートとを有する本体116を備える。器具コード120は、複数の管腔を取り囲む外装を備える。複数の管腔は、本体116から器具コード120の遠位端まで様々なものを移送する。複数の管腔のうちの1つは、器具チャネルである。他の管腔は、例えば、遠位端に照明を設けるために、または遠位端から画像を収集するために、光放射を伝達するためのチャネルを含み得る。本体116は、遠位端を見るための接眼鏡122を含み得る。遠位端に照明を設けるために、光源124(例えば、LEDなど)が、照明入力ポート126によって本体116に接続され得る。
【0131】
可撓性シャフト112は、外科用スコーピングデバイス114の器具チャネルを通過し、その遠位端で(例えば、患者の体内へ)突出する形に作られた遠位アセンブリ118(図7では縮尺どおりに描かれていない)を有する。遠位端組立体は、本明細書に記載のように、マイクロ波エネルギーを生体組織に送達するための能動先端部を含む。遠位アセンブリ118は、図1の器具420に類似していてもよく、可撓性シャフト112は、図1の供給ライン419に類似していてもよい。
【0132】
以下に述べる遠位アセンブリ118の構造は、2.0mm以下、例えば1.9mm未満(より好ましくは、1.5mm未満)という最大外径になるように設計されてよく、可撓性シャフトの長さは1.2m以上にすることができる。
【0133】
本体116は、マイクロ波エネルギー、RFエネルギー、及び電気信号を発生器102から遠位アセンブリ118に伝達することができる同軸ケーブル(例えば、従来の同軸ケーブル)を含む、可撓性シャフトに接続するための電力入力ポート128を含む。あるいは、これらの信号の1つまたは複数を伝達するために異なる手段を設けることができる。例えば、マイクロ波エネルギーは同軸ケーブルによって伝達され得るが、電気信号及び/またはRFエネルギーは、ツイストケーブルペアなどによって伝達され得る。外科用スコーピングデバイスの器具チャネルに物理的に嵌め込むことができる同軸ケーブルは、以下の外径、1.19mm(0.047インチ)、1.35mm(0.053インチ)、1.40mm(0.055インチ)、1.60mm(0.063インチ)、1.78mm(0.070インチ)で利用可能である。カスタムサイズの同軸ケーブル(つまり、オーダーメイド)も使用できる。
【0134】
上記のように、器具コード120の少なくとも遠位端の位置を制御できることが望ましい。本体116は、器具コード120中を延在する1本以上の制御ワイヤ(図示せず)により、器具コード120の遠位端に機械的に結合された制御アクチュエータ130を備えてもよい。制御ワイヤは、器具チャネル内を移動することができ、またはそれ自体の専用チャネル内を移動することができる。制御アクチュエータ130は、レバーもしくは回転可能なノブ、またはその他知られている任意のカテーテル操作デバイスであってもよい。器具コード120の操作は、例えばコンピュータ断層撮影(CT)画像を組み合わせられた仮想3次元マップを使用して、ソフトウェアで支援してもよい。
【0135】
マイクロ波放射を標的部位に送達するための同軸ケーブルは、損失が少なく、断面積が小さく、可撓性であるべきである。ケーブルは、処置中の加熱を回避または低減し、アンテナから目的の放射を生成するのに十分な電力が遠位端にあるように、低損失であるべきである。
【0136】
密閉されたスコーピングデバイス、カテーテルまたは他の保護シースを使用してケーブルを本体から分離しない場合は、本体との望ましくない相互作用を避けるために、ケーブルを生物学的に不活性な材料製とするか、または生物学的に不活性な材料でコーティングすべきである。
【0137】
好ましいケーブルタイプは、誘電体シースによって軸方向に囲まれた内側導体で構成され、次に外側導体によって軸方向に囲まれた同軸ケーブルである。そのようなケーブルから製造されたアンテナの放射部分は、同軸ケーブルの外側導体の端部から突き出た内側導体と誘電体シースのセクションで構成されていてもよい。
【0138】
実施形態では、同軸ケーブルの外側導体は、その熱質量と熱容量を高めるために、可能な限り物理的に太くしてもよい。このようにして、マイクロ波エネルギーの伝達によってケーブル内で発生する熱のすべてまたは大部分を、例えば、患者の体内に漏れさせるのではなく、ケーブルの構造内に保持することができる。実施形態では、外側導体は、0.5mmの厚さであり得る。
【0139】
本発明はまた、明確に定義された放射パターンを備えたアンテナを提供することを目的とする。標的組織の放射線が最大になり、健康な組織の放射線が最小になるように、組織の特定の領域を処置するための器具を医師が選択できることが望ましい。例えば、いくつかの状況では、実質的に均一な電力吸収分布を有するほぼ球対称の放射線パターンを生成することが望ましい場合があり、その結果、組織の領域が受け取る放射線の量を、医師がより容易に制御することができる。
【0140】
医師が標的部位から情報を受け取ることができるように、器具を他の器具と一緒に操作できることも好ましい。例えば、スコーピングデバイスは、患者の体内の障害物の周りの器具の操縦を支援し得る。他の器具は、温度計またはカメラを含み得る。
【0141】
以下の説明では、特に明記しない限り、構成要素の長さは、同軸ケーブルの縦軸に平行な方向の構成要素の寸法を指す。
【0142】
図8は、本発明の実施形態である電気外科器具200の遠位端の断面図である。電気外科器具200は、図7の遠位アセンブリ118、または図1の器具420を含み得る。したがって、電気外科器具200は、組織の治療のためにマイクロ波エネルギー及び/またはRFエネルギーを生体組織に送達するために使用され得る。また、器具200は、組織の治療のために、電気(例えば、電流)信号を生体組織内の超音波振動に変換するための磁歪性超音波トランスデューサを含む。電気外科器具200は、マイクロ波エネルギーを伝達するために、その近位端で電気外科用発生器(例えば、図1の発生器400または図7の発生器102)に接続された同軸ケーブル202を備える。同軸ケーブル202は、第1の誘電体材料210によって外側導体208から分離されている内側導体206を備える。同軸ケーブル202は、マイクロ波エネルギーに対して低損失であることが好ましい。チョーク(図示せず)を同軸ケーブルに設けて、遠位端から反射されたマイクロ波エネルギーの逆伝播を抑制し、したがって装置に沿った後方加熱を制限してもよい。
【0143】
装置は、遠位端に温度センサーを含み得る。例えば、図8では、外側導体に熱電対230が取り付けられ、器具の遠位端の温度を示す信号を近位端に送り返す。
【0144】
温度モニタリングのための他の技術を使用することができる。例えば、物理的構成が温度感受性である1つ以上のマイクロメカニカル構造を、装置の遠位部分、例えば、以下に述べる外部シースの内部または上に取り付けてもよい。これらの構造を光ファイバーと接続することができ、それによって構造の動きによって引き起こされる反射信号の変化は、温度変化を示すことができる。
【0145】
同軸ケーブル202は、その遠位端で、放射先端セクション204で終端している。この実施形態では、放射先端セクション204は、外側導体208の遠位端209を超えて延在する内側導体206の遠位導電性セクション212を備える。遠位導電性セクション212は、その遠位端が、第1の誘電体材料210とは異なる第2の誘電体材料から形成された誘電体先端214によって囲まれている。誘電体先端214の長さは、遠位導電性セクション212の長さよりも短い。中間誘電体スリーブ216は、同軸ケーブル202の遠位端と誘電体先端214の近位端との間の遠位導電性セクション212を取り囲む。中間誘電体スリーブ216は、第2の誘電体材料とは異なるが第1の誘電体材料210と同じであり得る第3の誘電体材料から形成される。
【0146】
この実施形態では、同軸ケーブル202及び放射先端セクション204は、それらの最も外部の表面上に形成された外部シース218を有する。外部シース218は、生体適合性材料から形成され得る。外部シース218は、放射先端セクション204によって放射されるマイクロ波エネルギー(すなわち、放射パターン及び反射減衰量)を有意に妨害しないことが確保されるほど十分に薄い厚さを有する。実施形態では、シースはPTFE製であるが、他の材料も適切である。シースの壁の厚さは、200kV/m以上の絶縁破壊電圧に耐えるように選択される。
【0147】
誘電体先端214の目的は、放射エネルギーの形状を変えることである。第2の誘電体材料は、マイクロ波エネルギーの波長を短縮するように選択され、その結果、放射エネルギーは、より球形の放射パターンを示す。これを行うために、第2の誘電体材料は、好ましくは、大きな誘電率(比誘電率εr)を有する。第2の誘電体材料の誘電率は、好ましくは、マイクロ波エネルギーが第2の誘電体材料を通って伝播する場合にマイクロ波エネルギーの波長の無視できない部分を構成する一方で、誘電体先端214の長さを最小化できるように選択される。特に、第2の誘電体材料が剛性である場合、装置の可撓性を維持するために、誘電体先端214が可能な限り短いことが望ましい。実施形態では、誘電体先端214は、2mm以下の長さを有し得る。第2の誘電体材料の誘電率は、80より大きくてもよく、マイクロ波エネルギーの周波数で100以上であることが好ましい。第2の誘電体材料は、TiO(二酸化チタン)であってもよい。
【0148】
材料の誘電率が高くなると、材料の放射波長は短くなる。したがって、より大きな誘電率を有する誘電体先端214は、放射パターンにより大きな影響を与えるであろう。誘電率が大きいほど、誘電体先端214を小さくすることができるが、それでも放射パターンの形状に実質的な影響を与える。誘電率が大きい誘電体先端214を使用することは、アンテナを小さくすることができ、したがって器具が可撓性を維持できることを意味する。例えば、TiOの誘電率は約100である。周波数5.8GHzのマイクロ波放射の波長は、PTFE(第1及び/または第3の誘電体材料に使用される材料であり得る)の約36mmと比較して、TiOでは約6mmである。放射パターンの形状に対する顕著な効果は、およそ1mmの誘電体先端214を備えたこの配置で生成することができる。誘電体先端214は短いため、アンテナ全体の可撓性を維持する一方で、剛性のある材料から作ることができる。
【0149】
誘電体先端214は、任意の好適な遠位形状を有し得る。図8ではドーム形状であるが、これは必ずしも必須ではない。例えば、それは円筒形、円錐形などであってもよい。しかしながら、アンテナが小さなチャネル(例えば、血管内)を通過する場合にアンテナの可動性が高まるため、滑らかなドーム形状が好ましい場合がある。組織が器具に付着するのを防ぐために、パリレンCもしくはパリレンD、またはPFTEなどの非粘着性材料で誘電体先端214をコーティングしてもよい。器具全体をこのようにコーティングすることができる。
【0150】
中間誘電体スリーブ216の特性は、放射先端セクション204が、発生器の入力インピーダンスを、放射先端セクション204と接触する生体組織負荷に一致させるための4分の1波長インピーダンス変成器を形成するように好ましくは選択される(例えば、シミュレーションなどによって)。
【0151】
処置中、周囲の組織が放射エネルギーを吸収する。エネルギーが送達される組織の量は、マイクロ波エネルギーの周波数に依存する。
【0152】
図8に見られるように、放射先端部分204は、第1のコネクタ242によって(例えば、直接または遠位導電性セクション212を介して)内側導体206に結合され、第2のコネクタ244により外側導体208に結合される磁歪トランスデューサ240を含む。図8の実施形態では、トランスデューサ240は、中間誘電体スリーブ216に(例えば、部分的または完全に)包まれている。しかしながら、トランスデューサ240は、代わりに、中間誘電体スリーブ216の内面または外面に配置され得ることが理解されるべきである。さらに、トランスデューサ240は、代わりに、放射先端部分の他の場所、例えば、放射先端214の中または上に配置することができる。実施形態では、トランスデューサ240は、図6Aのトランスデューサ800と同じまたは同様の構造を有する。
【0153】
使用中、トランスデューサ240を駆動するための電気(例えば、電流)信号は、その近位端で(例えば、発生器102、または発生器400によって)同軸ケーブル202に導入され得る。図1~5を参照して上記したように、電気信号は超音波周波数で発振し得る。この電気信号を受信すると、トランスデューサ240のコイルは、磁歪素子トランスデューサ240の周りに発振性磁場を誘導し、磁歪効果により、磁歪素子が超音波周波数で急速に膨張及び収縮し、それによって超音波振動が発生する。トランスデューサ240は、放射先端部分204に結合されているので、これらの超音波振動は、放射先端部分に伝わり、次いで、器具200から周囲の生体組織に放射される。振動は機械的摩擦を生み出し、それが熱エネルギーを生成し、それによって細胞外加熱とそれに続く細胞内加熱をもたらす。このようにして、超音波振動を使用して、生体組織を治療(例えば、切断または凝固)することができる。
【0154】
次に、電気外科器具のさらなる実施形態を、図9及び図12Bを参照して説明すると、器具は、マイクロ波エネルギー、RFエネルギー、及び超音波振動を送達して血管を密封することができる電気外科血管シーラーデバイスを含む。電気外科血管シーラーは、図7の遠位アセンブリ118、または図1の器具420を含むことができる。電気外科血管シーラーは、開腹手術で使用できるが、治療部位へのアクセスが制限されている処置で特定の用途が見出せる。例えば、電気外科血管シーラーは、図7のスコーピングデバイスを参照して上記で説明したように、外科用スコーピングデバイス、すなわち腹腔鏡、内視鏡などの器具チャネル内に嵌合するように適合させることができる。
【0155】
図9は、本発明の実施形態である電気外科器具の遠位端アセンブリ300の概略的な斜視図を示す。遠位端アセンブリ300は、腹腔鏡または他の外科用スコーピングデバイスの器具チャネル内に適合するように寸法が決められた器具シャフト302に接続されている。器具シャフト302は、EM電力(例えば、マイクロ波及び/またはRF)を遠位端アセンブリに伝えるための同軸ケーブルを、以下で説明するように遠位端アセンブリの物理的操作を制御するように配置された様々な制御ワイヤまたはロッドと共に伝送する管状シースを備える。
【0156】
この例では、遠位端アセンブリ300は、一対の顎部308、310を含む。顎部308、310は、器具シャフト302の遠位端に取り付けられたカラー304に動作可能に結合されている。この例では、一対の顎部308、310は、顎部308、310の対向する内面間のギャップを開閉できるようにするために、カラー304の横方向に延びるピン306の周りで枢動する可動顎部308を備える。この例では可動顎部が1つしかないが、他の実施形態では、両方の顎部は、カラー304に対して旋回するように配置され得る。カラー304は、それらが一緒に動かされるときに顎部が横方向に整列されたままであることを確実にするように配置され得る。
【0157】
図9に示される例では、一対の顎部308、310は、その上面、すなわち可動顎部308の対応する表面に対向する表面にエネルギー送達構造312を有する静的顎部310を備える。使用中、遠位端アセンブリ308は、一対の顎部308、310間に生物学的組織(特に血管)を把持することを意図している。一対の顎部308、310は、対向する表面間の生体組織に圧力を加え、エネルギー送達構造312から組織にエネルギー(好ましくはマイクロ波電磁エネルギー)を送達するように配置されている。
【0158】
この実施形態では、エネルギー送達構造は、静的顎部310上にのみ存在する。しかしながら、他の構成では、両方の顎部に、または単一の可動顎部にのみ、エネルギー送達構造があり得る。
【0159】
この例では、エネルギー送達構造312は、ステータス顎部310の上面に製造された同一平面のマイクロストリップアンテナを含む。同一平面のマイクロストリップアンテナは、セラミックなどの非導電性誘電体材料で作られた基板320を含む。誘電体基板320は、その下側に作製された導電層を有する(図9には見えない)。その上面(すなわち、下面の反対側の表面)に、誘電体基板320は、その中央に配置された長手方向に延びるフィンガ電極314の形態の第1の導電性領域を有する。U字形の第2の導電性領域316は、フィンガ電極314をU字形の領域316から分離する露出した誘電体315のギャップを伴って、フィンガ電極314の周りの誘電体基板320の上面に配置される。複数の貫通穴318が、U字形領域316及び誘電体基板315を介して、例えば機械加工されて形成される。貫通穴318は、誘電体基板320の下側の導電層をU字形の導電性領域316と電気的に接続するために導電性材料で充填されている。フィンガ電極314は、その近位端に接触パッド317を有する。器具シャフト302によって伝送される同軸ケーブルの内側導体は、例えば、器具シャフト302から延長して接触パッド317に物理的に接触することによって、接触パッド317に電気的に結合される。フィンガ電極314は、同一平面のマイクロストリップアンテナのための活性領域を設ける。誘電体基板320の下側の導電層は、器具シャフト302によって伝送される同軸ケーブルの外側導体に電気的に接続されている。貫通穴318を介した導電性通信と併せて、U字形の導電性領域310は、同一平面のマイクロストリップアンテナ用の接地電極を形成する。
【0160】
図9に示される同一平面のマイクロストリップアンテナの構成は、一対の顎部308、310によって画定される領域内に、放出された場を制限するので、特に有利である。以下で説明するように、対向する表面のペアの外側の領域に供給されるエネルギーはごくわずかである。さらに、フィンガ電極314の遠位端の周りに延びるようにU字形の導電性領域316を配置することにより、同一平面のマイクロストリップアンテナ構造は、エネルギーがアセンブリ300の遠位の長手方向に逃げるのを防ぐことができる。
【0161】
上記の導電層は、任意の適切な導電性材料から作製することができる。導電性と生体適合性が高いため、銀と金が好まれる。銅も使用できるが、生体組織に接触する可能性のある領域に銀または金でメッキすることが好ましい。
【0162】
同一平面のマイクロストリップアンテナ構造は、例えば、薄膜堆積技術を使用して、静的顎部310とは独立して製造することができる。同一平面のマイクロストリップアンテナのこの構造により、2つの重要なパフォーマンス機能が保証される。第1に、それは、把持された血管の生体組織に適用される投射されたエネルギーが、器具の顎部が把持する中で内側に集中することを確実にする。これは、局所的なエネルギー送達効果を提供し、それにより、加えられたエネルギーが組織の所望の領域に効率的に送達される。
【0163】
さらに、薄膜導電層の使用は、導電線の熱質量が最小であることを意味する。誘電体基板320によって設けられる効果的な熱障壁と組み合わせて、これは、導線内のいずれかの残留熱が迅速に放散されることを意味する。熱障壁としても機能する同一平面のマイクロストリップアンテナの反対側の表面に層を設けることにより、効果をさらに高めることができる。図9に示される実施形態では、可動顎部308は、その内面に形成された弾性変形可能な材料322の層を有する。層322は、治療中に発生する温度に耐えることができ、生体適合性であるシリコーンゴムまたは他の適合性ポリマー材料から形成することができる。それらは、例えば、エラストマー熱可塑性ポリマーから製造することができる。この層は、両方、把持された生体組織へのエネルギーの効率的な送達を支援するだけでなく、顎部の内部に生体組織を保持することも容易にする。
【0164】
代替的または追加的に、コーティングは、同一平面のマイクロストリップアンテナ自体の表面に適用され得る。これは、例えば組織の付着を最小限にするために、導電性領域にのみ適用されるコーティングであり得る。マイクロ波エネルギーを送達するように構成された実施形態では、顎部の内面が組織と直接電気伝導性接触する必要がない場合がある。したがって、コーティングは、例えばアンテナの表面全体に塗布される、薄い高温ポリマー材料であり得る。特定の材料は、高い損失を示し、マイクロ波エネルギーに対して透明に見えるように選択することができる。
【0165】
コーティングは、顎部の形状に一致し得る。それは、プリント回路基板の保護コーティングとして使用されるものと同様のシリコーンベースの不動態化材料を含み得る。他の例には、ポリイミド、PTFE、またはFEPタイプの材料が含まれる。
【0166】
図9に示すように、層322は、その中に成形された複数の隆起を有する。したがって、生体組織と接触するためのテクスチャまたは歯のある表面を呈する。同一平面のマイクロストリップアンテナの周囲に、同様の隆起またはテクスチャの把持を設けることができる。上記のように、これらのテクスチャ加工された表面は、血管のシーリング操作中のガスの放出を助けることができる。
【0167】
同一平面のマイクロストリップアンテナは、生体血管の受け入れとシーリングに適したサイズである。例えば、同一平面のマイクロストリップアンテナは、2から5mmの幅(すなわち、同軸ケーブルの軸に対して横方向に延びる寸法)及び(デバイスの軸に沿った)15~26mmの長さを有する有効な治療領域を設けるように配置され得る。
【0168】
器具300の動作は、はさみ型ハンドル、スライダー、回転可能なダイヤル、レベル、トリガーなどの形をとることができる作動機構(例えば、図7のトリガー110)によって制御することができる。作動機構は、例えば、スコーピングデバイスの器具チャネル内で、器具シャフト302に沿って延びる1つまたは複数の制御ワイヤを介して、器具300に動作可能に結合することができる。一例では、作動機構は、器具に供給できる最大作動力を制限するように配置された力リミッタを含み得る。最大作動力を制限することは、器具300内の繊細な構成要素への損傷を防ぐのを助けることができ、組織に加えられる力が所望のパラメータ内にとどまることを確実にすることができる。制限される力は、作動機構の一部として圧縮ばねまたはラチェット機構を含み得る。いくつかの例では、例えば、作動機構に関連する最大作動力を調整するインターフェースジョイント106にダイヤルまたはスイッチを設けることによって、最大作動力を変化させることが望ましい場合がある。
【0169】
一対の顎部は、器具シャフト302の近位端に配置された関連する作動機構によって加えられる閉鎖力に関係なく、顎部が最小距離だけ分離されたままであることを保証するスタンドオフ(図示せず)を含み得る。スタンドオフは、反対側の顎部の内面にかみ合う一方または両方の顎部の物理的な突起である可能性がある。
【0170】
顎部により間に保持された組織に加えられる圧力は、顎部の内面に沿って長手方向に均一であることが望ましい。図9に示される構造の発展において、可動顎部308は、顎部308の遠位端に位置するピボット点の周りで顎部308に連節で戻ることができるその内面に係合プレートを備え得る。弾性的に変形可能な支持要素は、係合プレートの後ろの顎部308に取り付けられて、それを外側に押しやることができる。この配置では、顎部の間の領域の組織が、静的顎部の内面と可動顎部の係合プレートとの間で把持される。顎部が閉じられると、顎部に沿って加えられる圧力は、顎部のピボット動作と係合プレートの関節運動の組み合わせによって生成される。ピボット点の位置及び弾性の変形可能な支持要素の特性は、ピボットから離れる顎部に沿って機械的アドバンテージを変化させることによって生じる加えられた力の不均一性が、係合するプレートのピボット可能な関節運動から生じる協調的な不均一性によって釣り合うように選択することができる。
【0171】
図9に関して説明されたエネルギー送達構造312は、同一平面のマイクロストリップアンテナである。そのアンテナの構成は図9に示すようになり得るが、代替のマイクロ波ラジエータ構造を使用できる。例えば、静的顎部310の上面は、他のマイクロストリップベースのエネルギー供給構成、例えば、蛇行性または交互に配置されたマイクロストリップラインを備えていてもよい。別の実施形態では、エネルギー送達構造は、進行波アンテナであり得る。
【0172】
血管の密封の機能に加えて、本発明の電気外科器具はまた、血管分割器としても機能し、例えば、血管の密封された部分を切断して分離する。一実施形態では、血管シーラーは、顎部の間に保持された生体組織を切断するために、一対の顎部308、310に対してスライド可能に取り付けられるブレード326を備えてもよい。図9では、ブレード326は、図9の開いた顎部の間の領域に突き出ているように示されている。しかしながら、実際には、器具は、顎部が閉じられるまでブレード、またマイクロ波エネルギーが適用されるまで、ブレードの前方への動きを防ぐことが望ましい。
【0173】
図9に示される実施形態では、ブレード326は、例えばデバイスの軸に沿って、長手方向に移動可能である。顎部308、310の対向する表面は、ブレードが移動するときにブレードを受け入れるためのそれぞれの窪みまたはガイド溝328、324を含む。静的顎部310のガイド溝324は、それが印加された場の中心を通って移動するように、フィンガ電極314内に形成される。
【0174】
他の実施形態では、ブレードは、顎部の1つの中に取り付けられ、長手方向に対して横方向に移動するように、すなわち、対向する表面の1つから把持された組織内に延びるように配置され得る。ブレードの鋭いエッジは、血管の把持及びシール操作中に対向する表面の下にある場合がある。
【0175】
一実施形態では、ブレードの切断機能は、磁歪性超音波トランスデューサ(図9においては見えない)によって付与または強化される。トランスデューサは、図6Aのトランスデューサ800と同じ構造を有し得る。トランスデューサの位置は実施形態間で異なり得るが、一般的に言えば、トランスデューサが超音波振動を生成するとき、それらの振動がブレード326に沿って伝わり、ブレード326の切断動作を可能にするかまたは支援するように、ブレード326の近位端に向かって配置されている。実施形態では、トランスデューサは、ブレード326の近位端部分に接続されている。トランスデューサの電気駆動信号が器具シャフト302内の同軸ケーブルによって伝達される場合、トランスデューサは、同軸ケーブルの一方の導体(例えば、内側導体)に結合された第1の入力端子と、同軸ケーブルの他方の導体(外側導体など)に結合された第2の入力端子とを有する。例えば、第1及び第2のコネクタ(例えば、ワイヤ、トラック、ケーブル、及び導体)は、各端子を同軸ケーブルのそれぞれの導体に結合する場合がある。このようにして、磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気(例えば電流)信号は、同軸ケーブルによって伝達され、ブレード326の近位端でトランスデューサに送達され得る。動作中、トランスデューサは、ブレード326の切断作用を可能にするかまたは増強する超音波振動を生成することができる。特に、図1~5を参照して上記したように、電気信号は超音波周波数で発振し得る。この電気信号を受信すると、トランスデューサのコイルは、磁歪素子トランスデューサの周りに発振性磁場を誘導し、磁歪効果により、磁歪素子が超音波周波数で急速に膨張及び収縮し、それによって超音波振動が発生する。トランスデューサはブレード326に結合されているので、これらの超音波振動はブレード326に伝わり、次にブレード326を取り巻く組織に放射される。振動は機械的摩擦を生み出し、それが熱エネルギーを生成し、それによって細胞外加熱とそれに続く細胞内加熱をもたらす。このようにして、超音波振動を使用して、生体組織を治療(すなわち、切断)することができる。
【0176】
遠位端アセンブリは、血管の密封に加えて機能を実行するように構成することができる。例えば、遠位端アセンブリは、その遠位先端に取り付けられた補助的な無線周波数(RF)切断ブレードを有し得る。図9に示される例では、RFディセクタ素子330は、静的顎部310の遠位端に取り付けられている。RFディセクタ素子330は、突出体に取り付けられたアクティブ電極と、突出体の近くの静的顎部310上に製造または統合され得るリターン電極とを含む双極構造である。
【0177】
図10は、遠位端アセンブリ300の下側を示しており、これにおいて、RFディセクタ素子330はより詳細に見ることができる。RFディセクタ素子330は、微細な無血組織切断及び組織切開に使用することができる。図9及び10に示す配置では、RFディセクタ素子330は、静的顎部310の遠位端を突き出て位置する前縁を提示する この位置は、側面及び端部の両方の切開を実行することを可能にすることができる。乾式場処理シナリオ(すなわち、生理食塩水または他の導電性流体がない場合)では、リターン電極が、RFディセクタ素子330にあるアクティブ電極に近接していることが望ましい。電極領域に接触する露出組織の比率もまた、RFディセクタ素子330の前縁で最大電流密度が発生するように、電流が望ましい方法で発生することを保証するために重要である。
【0178】
RFディセクタ素子330は、図9及び10の静的顎部の遠位端に示されているが、それは、遠位端アセンブリの様々な方向または位置で、例えば、垂直、水平、角、片側、及びいずれかの顎部に取り付けることができる。
【0179】
一対の顎部は、任意の適切な形状を有することができる。例えば、顎部は、それらの長さに沿って遠位先端に向かって先細になり得るか、または任意の特定の治療シナリオに必要な場合、曲げるかまたは引っ掛けることができる。
【0180】
顎部308、310の開閉は、外科用スコーピングデバイスの外部ハンドル、すなわち器具シャフト302の近位端(例えば、インターフェースジョイント106のトリガー110)でユーザによって操作可能な作動機構によって制御され得る。作動機構は、顎部の間に捕捉される生体組織に加えられる圧力の量に基づいて、ユーザが一対の顎部の閉鎖を制御することを可能にするように配置された圧力制御装デバイスを含み得る。一例では、ユーザは、顎部の所望の(例えば、最大の)閉鎖圧力を選択することができ、作動機構は、所望の圧力に達した後、顎部が互いに向かってさらに動くのを抑制するように構成され得る。
【0181】
上記のように、いくつかの実施形態では、両方の顎部は、それらが器具シャフト内の同軸ケーブルに電気的に接続されているという意味でアクティブであり得る。一例では、一対の顎部は、単一のマイクロ波エネルギー送達デバイスの異なる要素を含む。例えば、顎部の1つは接地電極を含み得、他方はアンテナ構造のためのアクティブ電極を含み得る。別の例では、各顎部は、例えば、上記の同一平面のマイクロストリップアンテナに対応する、それ自体の独立したマイクロ波エネルギー送達構造を備え得る。
【0182】
両方の顎部がアクティブである場合、同軸伝送線路の遠位端、例えば器具シャフトの遠位端に、またはカラー304内に、マイクロ波電力分割器またはスプリッタを設けることにより、器具シャフト内の共通の同軸伝送線路からそれらに給電することができる。マイクロ波動力スプリッタは、任意の既知の方法で実装することができる。例えば、動力スプリッタは、ウィルキンソン動力スプリッタとして、2つの4分の1波長(またはその奇数倍)インピーダンス変成器として、または同軸線路の遠位端が、第1の顎部に入力されるバランスのとれていない供給を形成する半波長バラン配置として実装でき、それにおいては第2の顎部が供給部から電気波長の半分離れた点から供給される。あるいは、動力スプリッタは、片方または両方の顎部を動かすことができるように屈曲することができる柔軟な基板材料を使用して製造された半電気波長インピーダンス変成器として実装され得る。
【0183】
遠位端アセンブリがRFエネルギーを送達するための補助装置も含む構成では、器具は、補助装置のためのRFエネルギー、及び共通のエネルギー送達経路に沿って顎部から送達するためのマイクロ波エネルギーを受け取るように構成され得、それは器具シャフト内の同軸伝送線路であってよい。一例では、RFエネルギーは400kHzで供給され得、一方で、マイクロ波エネルギーは5.8GHzで供給され得る。マイクロ波エネルギーが補助装置に入るのを防ぐために、誘導性ブロッキングまたはフィルタリングコンポーネントを遠位端アセンブリ内に取り付けることができる。誘導性ブロックは、RFエネルギーが寄生効果の使用を通過できるようにするが、マイクロ波エネルギーをブロックする巻線インダクタである場合がある。あるいは、誘導ブロックは、同軸ケーブルと補助RFデバイスとの間の伝送線路に沿って半波長間隔で配置された1つまたは複数の4分の1波長のオープンスタブによって備えられてよい。RFエネルギーが顎部のマイクロ波エネルギー送達構造に入るのを防ぐために、容量性ブロックまたはフィルタ要素を、同軸ケーブルとマイクロ波エネルギー送達構造との間に取り付けることができる。容量性フィルタ容素は、マイクロ波周波数で動作する平行な板状コンデンサ、または絶縁誘電体がRFエネルギーの流れを遮断する方法で導電経路を遮断する導波管キャビティ、または結合されたマイクロストリップラインである場合がある。
【0184】
同様のブロックまたはフィルタを発生器で使用して、RFエネルギーがマイクロ波源に入るのを防ぎ、マイクロ波エネルギーがRF源に入るのを防ぐことができる。例えば、マイクロ波エネルギーがRF源に放射されるのを防ぐために、1つまたは複数のチョークを設けることができる。
【0185】
上記の例では、RF及びマイクロ波エネルギーは、共通の同軸伝送線路によって器具シャフトに沿って伝えられる。他の例では、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーの分離は、それらが器具シャフトに供給される前に発生する可能性がある。この配置では、RFエネルギーとマイクロ波エネルギーにそれぞれ別々のエネルギー伝達構造が設けられる。例えば、RFエネルギーは、並列に取り付けられたツイストワイヤペアまたは2つの絶縁ワイヤアセンブリによって伝送できるが、マイクロ波エネルギーは、適切な同軸伝送線路によって伝送される。超音波トランスデューサの動力は、同様の方法で、例えばマイクロ波EMエネルギー(及びRF EMエネルギー)を備えた同軸ケーブルで、またはツイストワイヤペアの同軸ケーブルとは別に(例えば、別々にまたはRF EMエネルギーを使用して)送達することができる。
【0186】
図11は、顎部308、310が閉じられたときの遠位端アセンブリの下側の図を示している。これは、器具を腹腔鏡の器具チャネルに導入できる構成である。
【0187】
図12A及び12Bは、本発明の実施形態においてエネルギー送達構造312として使用することができる同一平面のマイクロストリップアンテナの第1の例を、より詳細に示している。同一平面のマイクロストリップアンテナは、その下面に導電性接地層336(図12Bを参照)、またその上面に一対の導体線314、316を有する誘電体基板320を備える。接地層336及び導体線314、316は、任意の適切な技術、例えば、金属化、薄膜堆積及びパターニング(エッチング)などを使用して、基板に形成することができる。
【0188】
上で論じたように、この例の一対の導電線314、316は、その長さに沿って、及びその遠位端の周りを、U字形の導電性領域316によって囲まれるフィンガ電極314を備える。U字形の導電性領域316は、導電性材料で満たされて電気的接続をもたらす貫通穴318、338を介して、接地層336に電気的に接続されている。フィンガ電極314及びU字形の導電性領域316は、マイクロ波場が使用中に集中するギャップ315によって分離されている。接地導体336は、同軸給電線の外側導体と電気的に連通しているが、フィンガ電極314は、同軸給電線の内側導体に電気的に接続されている。
【0189】
図9から12Bの実施形態の変形例では、ブレード326またはブレード機構は、磁歪性超音波トランスデューサを含まなくてもよく、代わりに、ブレード326は、「コールド」カットをもたらし、鋼または他の硬い材料でできた鋭いメスタイプの構造を含み得る。しかしながら、切断機能は、超音波振動以外の熱的手段、例えば、無線周波(RF)単極または双極エネルギー送達構造によって、追加的または代替的に提供または強化され得る。器具シャフトに補助動力を供給するための構成、例えば、RFカッティングブレードについては、上で論じた。そのような場合、磁歪性超音波トランスデューサは、遠位先端アセンブリの他の場所に配置され得る。次に、3つの異なる実施形態について説明する。
【0190】
第1に、磁歪性超音波トランスデューサは、顎部の1つの中または上に配置することができる。トランスデューサが顎部の1つに「入っている」場合、トランスデューサは完全に顎部の容積部の内側にあり得、トランスデューサが顎部の1つに「乗っている」場合、トランスデューサは顎部の表面にあり、場合によっては部分的に顎部の容積部にある。このように、トランスデューサが超音波振動を生成すると、顎部全体が振動して、顎部の間に配置された組織の治療(例えば、分割)を支援する。顎部308がマイクロ波またはRF送達構造を含まない場合、顎部308は、その容積部内に(部分的または完全に)包まれたトランスデューサを含み得る。したがって、顎部310は、マイクロ波EMエネルギーを顎部の間に配置された組織に送達するように機能し得、顎部308は、超音波振動を、顎部の間に配置された組織に送達するように機能し得る。この実施形態では、トランスデューサは、器具シャフト302を介してトランスデューサの電気駆動信号を伝達するために、構造(例えば、同軸ケーブル、ツイストワイヤペア)に電気的に結合されていることが理解されるべきである。
【0191】
第2に、顎部の1つが切断を実行するために超音波エネルギーを送達するための磁歪性超音波トランスデューサを含む別の実施形態では、トランスデューサは、器具シャフト302に対して長手方向に伸長及び収縮することができる独立してスライド可能な部材に取り付けられ得る。これは、遠位端アセンブリ300の残りの部分とは独立して外科用スコーピングデバイスの視野に拡張することができるので、トランスデューサを使用する微細治療の視認性を改善するのを助けることができる。一実施形態では、独立してスライド可能な部材は、静止顎部310であり得、これは、カラー304から移動して、それが長手方向にスライドすることを可能にすることができる。静的顎部は、通常のヒンジ位置から近位方向に格納可能であるか、通常のヒンジ位置から遠位方向に拡張可能である可能性がある。後者のシナリオでは、トランスデューサを静的顎部に配置して、最遠位の位置に移動できるようにすることができる。前者のシナリオでは、トランスデューサは反対側の顎部に配置され得、静的顎部が引っ込められたときに良好な視認性を有する最も遠位の位置を占めるようにする。
【0192】
第3に、さらなる実施形態では、単一の顎部(例えば、顎部310)は、マイクロ波EMエネルギー及び超音波振動の両方を、顎部の間に配置された組織に送達することができる。例えば、図12A及び12Bの同一平面のマイクロ波アンテナ構造を考えると、1つまたは複数の磁歪性超音波トランスデューサは、同一平面上のマイクロ波構造内、例えば、アクティブ導電性ストリップと接地導電性ストリップとの間に配置され得る。例えば、1つまたは複数のトランスデューサは、フィンガ電極314とU字形電極316との間に配置され得る。この位置ではスペースが制限されるため、個々のトランスデューサの最大サイズは、トランスデューサがブレード326の近位端または顎部の1つの中または上に配置される前述の実施形態と比較して小さい可能性があるため、複数のトランスデューサを含める必要がある場合がある。したがって、電極314と316の間に配置された複数のより小さなトランスデューサによって生成された超音波振動の合計の大きさは、ブレード326の近位端、または顎部の1つの中または上に配置された単一のより大きなトランスデューサによって生成される超音波振動の大きさに類似し得る。さらに、電極314と316との間に配置された各トランスデューサは、誘電体基板320の上面またはその近くに配置され得て、超音波振動の発生源が治療される組織に可能な限り近くなるようにし、組織に到達する前、振動の減衰を最小化する。実施形態では、2つ、3つ、5つ、10つ、またはそれ以上のトランスデューサを、電極314と316との間に配置することができる。8つのそのようなトランスデューサ350a~hを有する実施形態が図13に示されている。図13には接続している線は見えないが、各トランスデューサは、トランスデューサの電気駆動信号を器具シャフト302(例えば、同軸ケーブル、ツイストワイヤペア)を介して伝達するための構造に電気的に結合されていることが理解されるべきである。例えば、各トランスデューサ350a~hは、接地層336に結合された(例えば、電極316を介して)第1の端子と、電極314に結合された第2の端子とを有し得る。また、各トランスデューサ350a~hは、同じまたは別個の電気駆動信号によって駆動され得る。
【0193】
図8~13に関する前述の説明において、1つまたは複数の磁歪性超音波トランスデューサが電気外科器具の遠位端アセンブリに配置されている様々な実施形態が説明されている。しかしながら、さらなる実施形態では、遠位端アセンブリは、いずれの磁歪性超音波トランスデューサを含まなくてもよく、代わりに、器具シャフト(例えば、遠位端)は、1つまたは複数の磁歪性超音波トランスデューサを含み得る。このようにして、そのトランスデューサまたは各トランスデューサは、シャフト内の構造に容易に結合することができ、それは、そのトランスデューサまたは各トランスデューサを駆動するための電気信号を伝達する。また、そのトランスデューサまたは各トランスデューサによって生成される超音波振動は、シャフトの遠位端で生成され、器具の遠位端アセンブリを通って伝わり、組織の治療のために生体組織に到達することができる。この配置の利点は、トランスデューサを収容するための適切なスペースを見つけ、シャフトとトランスデューサの間の接続を設けることがより簡単になる可能性があることである。
【0194】
前述の記載、または以下の請求項、または添付の図面中で開示され、特定の形態で、または開示する機能を実行するための手段、または開示する結果を得るための方法もしくはプロセスと言う観点から表された特徴は、多様な形態で本発明を実現するために、必要に応じて、別々に、またはこのような特徴を任意に組み合わせて利用してもよい。
【0195】
本発明を、上記の例示的な実施形態と併せて説明してきたが、本開示が与えられた場合、多くの同等の修正及び変形が当業者には明らかであろう。したがって、上で説明された本発明の例示的な実施形態は、例示的であり限定的でないと判断される。記載される実施形態への様々な変化は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに行われ得る。
【0196】
誤解を避けるために、本明細書中で提供する理論的な説明は、読者の理解を向上させる目的で提供される。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望まない。
【0197】
以下の請求項を含む本明細書の全体を通じて、文脈上異ならない限り、用語「~を有する(have)」、「~を備える(comprise)」、及び「~を含む(include)」、並びに「~を有する(having)」、「~を備える(comprises)」、「~を備える(comprising)」、及び「~を含む(including)」などの変形は、記載された整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を包含するが、他の整数もしくはステップ、または整数もしくはステップの群を除外しないことを示唆すると理解される。
【0198】
本明細書及び添付の請求項において使用される時、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確にそうでないと示さない限り、複数の指示物を包含することに留意されたい。範囲は、「約」(ある特定の値)から、及び/または「約」(別の特定の値)まで、として本明細書において表現され得る。このような範囲が表現される場合に、別の実施形態は、(ある特定の値)から及び/または(他の特定の値)までを包含する。同様に、値が近似として表現される場合に、先行詞「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されるだろう。数値に関連する用語「約」とは、任意選択であり、例えば±10%を意味する。
【0199】
用語「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」は、本明細書では、いくつかの状況の下で特定の利点を提供し得る本発明の実施形態を指して使用される。しかしながら、他の実施形態も同一の状況または異なる状況下で好ましい場合があることが認識されよう。したがって、1つまたは複数の好ましい実施形態の列挙は、他の実施形態が有用ではないことを意味または暗示するものではなく、他の実施形態を本開示の範囲または特許請求の範囲から除外することを意図するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
【手続補正書】
【提出日】2021-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体組織を治療するための電磁(EM)エネルギー及び超音波振動を送達するための電気外科器具であって、
磁歪性超音波トランスデューサを駆動するためのEMエネルギーと電気信号を伝送するように配置された器具シャフト、
前記器具シャフトの遠位端に配置され、前記器具シャフトから前記EMエネルギーを受け取り、組織の治療のために前記遠位端アセンブリから前記EMエネルギーを送達する遠位端アセンブリ、及び
前記器具シャフトから前記電気信号を受信し、組織の治療のために前記遠位端アセンブリの周りに超音波振動を生成するように配置された磁歪性超音波トランスデューサを含む、前記電気外科器具。
【請求項2】
前記器具シャフトは、内側導体、外側導体、及び前記内側導体を前記外側導体から分離する誘電体材料を有する同軸伝送線路を含み、前記同軸伝送線路は、前記EMエネルギー及び前記電気信号を伝送するように配置される、請求項1に記載の電気外科器具。
【請求項3】
前記磁歪性超音波トランスデューサは、前記同軸伝送線路から前記電気信号を受信するための第1及び第2の入力端子を有し、前記第1の入力端子は、第1の接続手段によって前記内側導体に接続され、前記第2の入力端子は、第2の接続手段によって前記外側導体に接続されている、請求項2に記載の電気外科器具。
【請求項4】
前記磁歪性超音波トランスデューサが前記遠位端アセンブリの上またはその中に取り付けられている、請求項3に記載の電気外科器具。
【請求項5】
前記遠位端アセンブリが、組織の治療のための電磁場を放射するように配置された放射先端部分であり、前記放射先端部分が、
誘電体先端と、
前記誘電体先端内に長手方向に延びる前記内側導体の遠位導電性部分と、
前記遠位導電性部分の近位部分を取り囲み、前記同軸伝送線路の前記誘電体材料を前記誘電体先端から分離する中間誘電体素子と、を備え、
前記磁歪性超音波トランスデューサは、前記中間誘電体素子の上または中に取り付けられている、請求項4に記載の電気外科器具。
【請求項6】
前記遠位端アセンブリが、
対向する内面間のギャップを開閉するために互いに対して可動な一対の顎部であって、前記対向する内面間の前記ギャップに前記EMエネルギーを放出するように配置されたエネルギー送達構造を備える、前記一対の顎部、を備え、
前記エネルギー送達構造は、前記一対の顎部の一方または両方の前記内面に取り付けられたマイクロストリップアンテナを含む、請求項4に記載の電気外科器具。
【請求項7】
前記遠位端アセンブリが、
前記生体組織を切断するための前記磁歪性超音波トランスデューサを含むブレードであって、前記一対の顎部間の前記領域を通って可動であるように前記遠位端アセンブリ内にスライド可能に配置されるブレード、をさらに備える、請求項6に記載の電気外科器具。
【請求項8】
前記磁歪性超音波トランスデューサが前記一対の顎部の1つの中または上に収容されている、請求項6に記載の電気外科器具。
【請求項9】
前記マイクロストリップアンテナが、同一平面のマイクロストリップアンテナであって、
平面誘電体基板であって、前記対向する内面間の前記ギャップで露出される上面と、前記上面から前記平面誘電体基板の反対側にある下面とを有する前記平面誘電体基板、
前記下面の接地導体層、
前記上面にあり、前記接地導体層に電気的に接続されている接地導電性ストリップ、及び
前記上面のアクティブ導電性ストリップであって、前記接地導電性ストリップから離間している、前記アクティブ導電性ストリップを含み、
前記アクティブ導電性ストリップ及び前記接地導電性ストリップは、前記一対の顎部間の前記領域内で、均一な最も近い間隔を有するように配置され、
前記磁歪性超音波トランスデューサは、前記平面誘電体基板の上面上、及び前記アクティブ導電性ストリップと前記接地導電性ストリップとの間に配置されている、前記同一平面のマイクロストリップアンテナである、請求項8に記載の電気外科器具。
【請求項10】
前記一対の顎部が、前記エネルギー送達構造が取り付けられた第1の顎部と、EMエネルギー供給を受けない第2の顎部とを含み、前記磁歪性超音波トランスデューサが前記第2の顎部の中または上に収容されている、請求項8に記載の電気外科器具。
【請求項11】
前記磁歪性超音波トランスデューサが前記器具シャフトの上または中に取り付けられている、請求項1から3のいずれかに記載の電気外科器具。
【請求項12】
前記磁歪性超音波トランスデューサが、テルフェノール-Dで作られた磁歪素子を含む、先行請求項のいずれかに記載の電気外科器具。
【請求項13】
電気外科用発生器であって、
EMエネルギーを生成するための電磁(EM)信号供給ユニット、
磁歪性超音波トランスデューサを駆動するための電気信号を生成するための電気信号供給ユニット、
電気外科器具に接続可能に構成され、遠位端から前記EMエネルギーを送達し、前記電気信号を使用して超音波振動を生成するための出力ポート、及び
前記EMエネルギーを前記EM信号供給ユニットから前記出力ポートに伝送し、前記電気信号供給ユニットから前記出力ポートに前記電気信号を伝送するための供給構造であって、前記EMエネルギーと前記電気信号を前記出力ポートへ伝送するための共通の信号経路を有する、前記供給構造を含み、
前記電気信号供給ユニットが、
第1の供給信号と第2の供給信号を出力するための第1の電源、
第1の制御信号と第2の供給信号を出力するための信号源、
前記第1の制御信号を受信するための前記信号源に結合された制御入力、前記第1の供給信号を受信するための前記第1の電源に結合された供給入力、及び出力を有する第1のスイッチング回路であって、前記第1の供給信号及び前記第1の制御信号に基づく前記電気信号の少なくとも一部分を前記出力で発するよう動作可能である、前記第1のスイッチング回路、
前記第2の制御信号を受信するための前記信号源に結合された制御入力、前記第2の供給信号を受信するための前記第2の電源に結合された供給入力、及び出力を有する第2のスイッチング回路であって、前記第2の供給信号及び前記第2の制御信号に基づく前記電気信号の第2の部分を前記出力で発するよう動作可能である、前記第2のスイッチング回路、及び
前記電気信号の第1の部分を受信するために前記第1のスイッチング回路の前記出力に結合され、前記電気信号の前記第2の部分を受信するために、及び前記電気信号を形成するため前記第1及び第2の部分を結合するために、前記第2のスイッチング回路の前記出力に結合される、共通の信号経路、を備える、前記電気外科用発生器。
【請求項14】
前記EM信号供給ユニットが、第1の周波数を有するマイクロ波EM放射を生成するためのマイクロ波信号発生器を備え、
前記供給構造は、前記出力ポートを前記電気信号供給ユニットに接続するための電気信号チャネル、及び前記出力ポートを前記マイクロ波信号発生器に接続するためのマイクロ波チャネルを含み、前記電気信号チャネル及びマイクロ波チャネルは、前記電気信号供給ユニットとマイクロ波信号発生器から物質的に分かれた信号経路をそれぞれ備え、
前記供給構造は、前記電気信号チャネルから前記電気信号を受信するように接続された第1の入力、前記マイクロ波チャネルから前記マイクロ波EM放射を受け取るように接続された第2の入力、及び前記共通の信号経路に前記電気信号と前記マイクロ波EM放射を転送するための前記第1及び第2の入力を伝える出力を有する第1の結合回路を含む、請求項13に記載の電気外科用発生器。
【請求項15】
前記マイクロ波チャネルは、前記マイクロ波信号発生器から前記第1の結合回路へのマイクロ波EM放射の前記通過を可能にするが、前記第1の結合回路から前記マイクロ波信号発生器への前記電気信号の前記通過を防止するように配置された第1のフィルタを備える、請求項14に記載の電気外科用発生器。
【請求項16】
前記電気信号チャネルは、前記電気信号供給ユニットから前記第1の結合回路への前記電気信号の前記通過を可能にするが、前記第1の結合回路から前記電気信号供給ユニットへの前記マイクロ波EM放射の前記通過を防止するように配置された第2のフィルタを備える、請求項13または14に記載の電気外科用発生器。
【請求項17】
前記電磁信号供給ユニットは、
前記第1の周波数よりも低い第2の周波数を有するRF EM放射を生成するための無線周波数(RF)信号発生器を備え、
前記供給構造は、前記出力ポートを前記RF信号発生器に接続するためのRFチャネルを含み、前記RFチャネル及びマイクロ波チャネルは、前記RF信号発生器とマイクロ波信号発生器から物質的に分かれた信号経路をそれぞれ備え、
前記供給構造は、前記電気信号チャネルに接続され、前記電気信号供給ユニットから前記電気信号を受信するために接続された第1の入力と、前記RFチャネルからの前記RF EM放射を受信するために接続された第2の入力と、前記RF EM放射及び前記電気信号を前記第1の結合回路に転送するための前記第1及び第2の入力と通信する出力とを有する第2の結合回路を含む、請求項13から16のいずれか一項に記載の電気外科用発生器。
【請求項18】
前記電気信号チャネルは、前記電気信号供給ユニットから前記第2の結合回路への前記電気信号の前記通過を可能にするが、前記第2の結合回路から前記電気信号供給ユニットへの前記RF EM放射の前記通過を防止するように配置された第3のフィルタを備える、請求項17に記載の電気外科用発生器。
【請求項19】
前記RFチャネルは、前記RF信号発生器から前記第2の結合回路への前記RF EM放射の前記通過を可能にするが、前記第2の結合回路から前記RF信号発生器への前記電気信号の前記通過を防止するように配置された第4のフィルタを備える、請求項17または18に記載の電気外科用発生器。
【請求項20】
前記第1の電源は、その出力で前記第1の電源によって受信された交流信号を遮断するためのフィルタリング回路を備える、請求項13に記載の電気外科用発生器。
【請求項21】
前記第1のスイッチング回路は、前記第1の供給信号から、前記第1の制御信号の特性に従って、前記電気信号の前記少なくとも一部を生成するための電流源を備える、請求項13から20のいずれか一項に記載の電気外科用発生器。
【請求項22】
前記第1のスイッチング回路は、スイッチに結合された信号調整器を含み、前記信号調整器は、前記制御信号を、前記スイッチを操作するための駆動信号に変換するように動作可能である、請求項13から21のいずれか一項に記載の電気外科用発生器。
【請求項23】
電気外科装置であって、
請求項1から12のいずれかに記載の電気外科器具、及び
請求項13から22のいずれかに記載の電気外科用発生器、を備え、
前記電気外科用発生器の前記出力は、前記電気外科器具の前記器具シャフトの近位端に接続可能であるように構成される、前記電気外科装置。
【国際調査報告】