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特表2023-521535冷却剤を受けるセルを含む冷却システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】冷却剤を受けるセルを含む冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/18 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
B65D81/18 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022549058
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(85)【翻訳文提出日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 EP2020053834
(87)【国際公開番号】W WO2021160275
(87)【国際公開日】2021-08-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522254675
【氏名又は名称】ヴェステル・エレクトロニク・サナイ・ヴェ・ティジャレット・アノニム・シルケティ
【氏名又は名称原語表記】Vestel Elektronik Sanayi ve Ticaret Anonim Sirketi
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】トプチュオール,セルダル
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA03
3E067AB26
3E067BA11A
3E067BB14A
3E067BC04A
3E067CA19
3E067GA01
(57)【要約】
本発明は、冷却剤を受け入れるために流体的に結合された多数のセル(10)を含む冷却システムに関する。冷却システム(1)は、冷却システム(1)が、多数のセルを(10)覆う可撓性カバー(14)と、可撓性カバー(14)とセル(10)との間の空隙(16)と、空隙(16)を変更するためのエアポンプ(30)と、を含むことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却剤を受け入れるために流体的に結合された多数のセル(10)を含む冷却システムであって、
冷却システム(1)は、
多数のセルを(10)覆う可撓性カバー(14)と、
可撓性カバー(14)とセル(10)との間の空隙(16)と、
空隙(16)を変更するためのエアポンプ(30)と、を含む、
冷却システム。
【請求項2】
セル(10)が、マトリクス状の構造で流体的に結合している、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
セルが、冷却剤をセル(10)に供給するためのインレット(20)を含む、
請求項1または2に記載の冷却システム。
【請求項4】
セル(10)の少なくとも1つは、体積変化許容性セル(12)である、
請求項1~3のいずれか1つに記載の冷却システム。
【請求項5】
セル(10)は2次元マトリクス状構造で流体的に結合され、体積変化許容性セル(12)はマトリクス状構造の隅に配置される、
請求項4に記載の冷却システム。
【請求項6】
少なくとも1つのセル(10)を通して冷却剤をポンプ輸送するための冷却剤ポンプ(40)を含む、
請求項1~5のいずれか1つに記載の冷却システム。
【請求項7】
冷却剤ポンプ(40)は、外部で充電可能なバッテリ(42)を含む、
請求項6に記載の冷却システム。
【請求項8】
冷却剤ポンプ(40)は、マトリクス状構造の、インレット(20)と反対側の端部に配置される、
請求項6または7に記載の冷却システム。
【請求項9】
インレット(20)はロック可能であり、ロック状態において、インレット(20)が設けられているセル(10)は、多数のセル(10)のうちの少なくとも2つを通る循環経路を閉鎖する、
請求項3~8のいずれか1つに記載の冷却システム。
【請求項10】
エアポンプ(30)は、手動のプッシュプルポンプである、
請求項1~9のいずれか1つに記載の冷却システム。
【請求項11】
可撓性カバー(14)は、銅、アルミニウムおよび/または銀を含む、
請求項1~10のいずれか1つに記載の冷却システム。
【請求項12】
冷却剤は水である、
請求項1~11のいずれか1つに記載の冷却システム。
【請求項13】
セル(10)の形状は、楕円形、特に球形である、
請求項1~12のいずれか1つに記載の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却剤を受けるためのセルを含む冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な冷蔵庫は、冷却器と冷凍庫の2つの部分を含む。冷凍セクションには、多くの異なる形状のプラスチック製製氷リザーバを設置することができる。この製氷リザーバに水を入れて冷凍庫に入れると、水が凍り、しばらくして氷ができる。この氷は、製氷リザーバから小分けにして、例えば角氷の形で取り出すことができる。この氷は、飲み物、特にソフトドリンクやアイスコーヒー、アルコールを含まないカクテルやジュースなどに、氷が置かれた液体を冷却する目的で使用することができる。また、氷は、医療目的、例えば傷や打撲傷を冷やす目的でも使用され得る。
【0003】
しかし、これらの角氷は、暖かい環境に接触すると融けてしまうという欠点がある。特に、水の凝固温度より高い温度の飲み物に氷を入れると、飲み物を冷やすと同時に、氷が融けて飲み物を薄めてしまう。また、医療用途でも同様の問題が発生し、開いた傷口を角氷の融けた水が感染させる恐れがある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、上記のような欠点を示さない冷却システムを提供することにある。
【0005】
この目的は、独立請求項による冷却システムによって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項によって示される。
【0006】
本発明によれば、冷却剤を受け入れるために流体的に結合された多数のセルを含む冷却システムが提供される。冷却システムは、多数のセルを覆う可撓性カバーを含むことを特徴とする。冷却システムは、さらに、可撓性カバーとセルとの間の空隙(air gap)と、空隙を変更するためのエアポンプと、を含む。以下では、冷却システムをシステムまたは装置とも呼ぶ。
【0007】
セルは、本体内に形成され、媒体、特に液体で満たされることができる。例えば、このようなセルは、プラスチック袋の一部であり得て、セルを形成することができる。セルによって囲まれた内部空間は、空洞とも称される。セルが形成される本体は、例えば、プラスチック製とすることができる。本体は、好ましくは、少なくとも部分的に弾性変形可能である。好ましくは、空洞は、セルが充填される前であっても存在するように予め形成されている。本システムは、少なくとも2つのセルを含み、好ましくは2つ以上のセルを含む。セルの数の上限はない。例えば、冷却システムは、10~100個のセルから構成することができ、1000個またはそれ以上のセルから構成することもできる。また、多くのセルはセル全体とも呼ばれる。
【0008】
冷却剤は、好ましくは、その凍結温度まで、またはそれ以下まで冷却される液体である。一実施形態によれば、冷却剤は水である。凍結した冷却剤が、より高い温度、特に冷却剤の凍結温度より高い温度を有する環境に持ち込まれると、冷却剤は環境から熱エネルギを受け取り、その結果、環境を冷却する。凍結した冷却剤が環境から熱エネルギを受け取ると、冷却剤は暖かくなる。凍結した冷却剤が融解温度以上になると、冷却剤が融解する。このような冷却水の相転移の際に、冷却水の比熱容量が変化する。また、相転移に伴い、冷却剤の体積変化も発生する。相転移はさらに、熱輸送の不均一性をもたらし得る。特に、1つのセル内で、冷却水の凍結相と冷却水の液相が共存することがある。この場合、凍結した冷却剤と液状の冷却剤が同時に熱輸送に関与することになる。
【0009】
セルは、例えば、冷却システムの製造工程中に冷却剤をセルに充填することによって、冷却剤を受け取ることができる。しかし、システムの製造後に冷却剤をセルに充填するための手段がシステムに備えられていてもよい。このような手段は、セルの1つに設けられた再閉鎖可能な開口部であってもよい。
【0010】
セルは流体的に結合されており、すなわち、冷却剤はあるセルから別のセルに流れることができる。これは例えば、セルが少なくとも部分的に重なり、あるセルの空洞と別のセルの空洞がジョイント体積を囲んでいる場合に実現できる。流体結合は、例えば、2つのセルの空洞をつなぐチューブや中空コネクタを使用することによっても実現することができる。一般に、すべてのセルが同じ環境条件、たとえば大気圧下に置かれ、すべてのセルが流体結合が可能なように充填されている場合、各セルの冷却水の充填レベルは、異なるセル間の冷却水の流れによって、すべてのセルが同じ量になるまで均等化される。これをコミュニケーションベッセル(連通容器)の原理という。
【0011】
一実施形態によれば、セルの形状は、楕円形、特に球形である。楕円形状のセルは、例えば流体結合の方向など、一方向に細長くすることができる。しかしながら、好ましい実施形態では、球形は非常に大きな体積対表面比を有するので、セルは球形の形状を有する。これにより、セル内の冷却剤が長時間凍結状態を維持することができる。
【0012】
本システムは、多数のセルを覆う可撓性カバーを含む。本発明による可撓性カバーとは、例えば、折れたり破れたりすることなく捻ることができ、そして例えば引張力やせん断力を用いて、折れたり破れたりすることなく少量の歪みに耐えることができるカバーを指す。カバーは、多数のセルを覆う。好ましくは、カバーは、セルが形成された本体を取り囲む。特に、カバーは、セルの全体を包み込むことができる。カバーは、例えば、ホイル、特に、可撓性のホイルとすることができる。
【0013】
カバーは、好ましくは、環境とセルを熱的に結合させ、セルと環境との間の熱およびエネルギの伝達を媒介する。環境はカバーがあるためセルに直接接触しないので、カバーは環境とセルの間の熱伝達を調節するために使用することができる。例えば、金属製のカバーは、熱輸送に非常に適している。これに対して、エアロジェルから作られるカバーは、熱輸送に非常に不向きである。したがって、カバーは熱伝導率の高い材料で作られることが好ましい。特に、カバーは金属製であることが好ましく、または例えば、金属コーティングや金属グリッドとして金属を含むことが好ましい。
【0014】
本システムは、セルとカバーとの間に空隙を含む。セルとカバーとの間の空隙は、連続した高さを有することができる。いくつかの実施形態では、空隙の高さ、すなわちセルの外側とカバーの間の距離、は様々である。例えば、空隙は、セルの中心よりも、2つのセルの接続点、又は隣接するセルを接続するチューブ若しくは中空コネクタにおいて、より大きな高さを有することができる。空隙は、エアポンプによって変更することができる。空隙の変更とは、システムの少なくとも一部で空隙の高さを変更することである。
【0015】
一実施形態では、カバーとセルの間に空気がポンプで送られるとき、カバーはセルの外側に接触しない。別の実施形態では、カバーとセルの間に空気がポンプで送られるとき、セルの最上点と最下点だけがカバーに接触する。さらに別の実施形態では、空気が送られたときに、セルの一方の側面がカバーに接触せず、セルの反対側の側面がカバーに接触しない。これらのすべての場合において、セルとカバーの間に空気が存在する場合、セルから環境へ、またはその逆方向の熱輸送は非常に弱い。特に、カバーがセルと接触していない場合、セルは空隙によって環境からほぼ熱的に隔離される。その結果、環境の冷却速度が非常に低くなってしまう。しかし、空気がシステムから排出されると、可撓性カバーがセルに直接接触し、セルを環境と熱的に結合させる。その結果、環境の冷却速度が速くなる。また、カバーが直接セルに接触している状態では、セル内の冷却剤を急速に冷却することができる。
【0016】
空隙は、エアポンプを使用することで変更することができる。例えば、エアポンプはプッシュプルポンプである。しかし、電気ポンプが自動的に空隙を調整し、セルと環境との間の熱輸送を調節するようにすることも可能である。エアポンプは、設定されたポンプ方向によって、空隙に空気を送り込んだり、空隙から空気を引き抜いたりする。
【0017】
例えば、ユーザは、冷却剤が充填された冷却システムを冷蔵庫に入れ、冷却剤を氷点下まで冷却することができる。その後、冷却システムを被冷却体に接触させることができる。冷却装置を例えば本体の表面に接触させると、空隙と冷却剤にもよるが、接触した表面の温度を10~15℃程度下げることができ、その性能を2~4時間維持することができる。
【0018】
本発明により、多くの利点を達成することができる。第一に、セルの空洞が本体に設けられているため、冷却剤を受けることができる空間は、閉じた空間である。これにより、システムの使用中に凍結した冷却剤が融けたとしても、融けた冷却剤はシステム内に収容され、漏れることはない。そのため、冷媒の垂れ流しを防ぐことができ、例えば、傷口への医療用使用時の感染を防ぐことができる。第二に、多数のセルのための可撓性カバーと、セルとカバーの間の空隙を変更するためのポンプを備えることにより、冷却剤の受ける熱量や冷却機能を現在のニーズに適合させることができる。
【0019】
一実施形態によれば、セルはマトリクス状の構造で流体的に結合している。
【0020】
以下にマトリクス構造とも呼ばれるマトリクス状の構造は、1次元または2次元の構造で、セルが互いにある有限の距離に配置されている構造である。例えば、全てのセルが隣接するセルとの距離が同じであるような単純なセルの鎖は、1次元のマトリクス状構造である。例えば、すべてのセルが隣接する最も近いセルとの距離が同じであるようなグリッドにセルを配置した場合、つまりグリッドが規則的なグリッドの場合、セルは2次元のマトリクス的な構造を構築する。特に、セルは並列にも直列にも結合させることができる。しかし、ペンローズグリッドなどの2次元の不規則なグリッドにセルを配置することも可能である。グリッド内のセルは同じ体積を持つことができるが、いくつかのセルは異なる体積を持つことが可能である。
【0021】
セルをマトリクス状の構造、好ましくは2次元のマトリクス構造で提供することにより、システムが物体を冷却することができる表面を最大化することができる。さらに、特に2次元構造では、マトリクス構造により、多数のセル間で冷却剤の交流が可能となる。
【0022】
好ましい実施形態によれば、セルは、インレットを含む。インレットは、システムのセルに冷却剤を供給するための役割を果たす。インレットを設けることにより、冷却システムのユーザは、冷却剤をシステムに供給することができ、また、必要に応じて冷却剤を交換することができる。好ましくは、システムは、インレットカバーを含む。インレットカバーは、バルブなどの内部要素として設けられてもよい。例えば、セルが冷却剤で完全に満たされ、マトリクス状構造が上下逆さまに回転させられると、インレットカバーは自動的にインレットを閉鎖することができる。別の実施形態では、インレットカバーはキャップのような外部要素にすることができる。インレットカバーは、水漏れを防ぐためにシステムをロックする。
【0023】
一実施形態によれば、セルの少なくとも1つは、体積変化許容性セルである。
【0024】
好ましくは、システムのすべてのセルが体積変化許容性セルである。体積変化許容性セルは、相転移の際に冷却剤がその体積を拡大および縮小することを許容する。例えば、可撓性プラスチックで作られたセルにより、これが達成される。この場合、相転移の際に冷却剤が膨張しても、セルに害を与えることがない。さらに、体積変化許容性セルは、システム内で最初に充填されるセルとして使用することができる。この場合、システムのインレットは体積変化許容性セルに提供される。例えば、水道の蛇口からセルを充填する場合、最初のセルの耐容量特性は、最初のセルで受ける蛇口からのより多くの水量と高い水圧に耐えるのに有利である。
【0025】
一実施形態によれば、セルは2次元マトリクス状構造で流体的に結合され、体積変化許容性セルはマトリクス状構造の隅に配置される。
【0026】
例えば、多数のセルが矩形の形状を有する場合、コラム変更許容可能セルは矩形の角に配置することができる。マトリクス状の構造物の角に体積変化許容性セルを用いることで、このセルを最初のセルとして、マトリクス全体を容易に充填することができる。
【0027】
好ましい実施形態によれば、冷却システムは、多数のセルのうちの少なくとも1つのセルを通して冷却剤をポンプ輸送するための冷却剤ポンプを含む。冷却剤ポンプは、好ましくは、少なくともシステムの全てのセルまで、さらに好ましくは、全てのセルを通して冷却剤をポンプ輸送する役割を果たす。
【0028】
例えば、冷却剤ポンプは、冷却剤の液体部分をあるセルから別のセルに圧送することができる。特に、冷却剤ポンプは、マトリクス状構造を通して冷却剤の液体部分を循環させることができる。
【0029】
セルのマトリクス状構造は、異なる環境温度にさらされる可能性がある。例えば、局所的な熱への露出は、マトリクス状構造のうち、冷却剤が凍結している一部のセルに影響を与えるかもしれない。局所的な熱への露出が行われたセルの凍結した冷却剤は、他のセルの凍結した冷却剤よりも早く融けるかもしれない。極端な場合、局所的な熱にさらされると、あるセルの冷却剤は完全に融解し、液体冷却剤はその凍結温度を超えて、局所的な熱源と同じ温度になるまで加熱される、つまり熱化する可能性がある。この場合、セル内の液体冷却剤は、熱源からそれ以上熱エネルギを受け取ることができない。そこて、液体冷却剤が他のセルと循環することで、液体冷却剤を冷却することができる。冷却された冷却剤が再び局所熱源に循環されると、さらに熱エネルギを受け取り、局所熱源を冷却することができる。したがって、冷却剤ポンプを使用することにより、局所熱源の冷却プロセスは、多数のセル、したがって多数のセルの冷却水の合計または結合された熱容量が関与する。
【0030】
冷却剤ポンプを設けることは、システムの外側セルが通常その表面の約半分がカバーに接触しているという事実の観点からも有利である。高冷却性能時には、外側セル円周の約半分を包むカバーにより、システムの外側セルが先に融ける。このように、カバーは内側のセルよりも外側のセルとの相互作用が大きくなる。したがって、システムの外周にウォーターフレーム(water frame)が発生する。冷却剤ポンプは、凍結したセル、特に内側セルに沿って液体冷却水を循環させることにより、外側セルで液体冷却水を冷却し、これらの局所的な加熱効果を補償することができる。
【0031】
一実施形態によれば、冷却剤ポンプは、外部で充電可能なバッテリを含む。好ましくは、バッテリは、ケーブルを介して充電することができる。本実施形態では、ケーブルは、システムに取り付けられている。バッテリの充電装置は、例えば、冷蔵庫に設けてもよい。例えば、冷蔵庫のメインボードにDC充電器回路を追加し、その後、冷蔵庫の冷凍室を介して冷却システムを充電するようにしてもよい。しかし、USBポートを介して、特にパワーバンクを使用して、冷却システムを充電することも可能である。
【0032】
冷却剤ポンプは、低エネルギ消費、特に0.3Wから0.9Wの間のエネルギ消費であることが好ましい。また、ポンプは低トルクで作動することができる。これにより、使用可能なバッテリ容量で長い使用時間を実現することができる。
【0033】
一実施形態によれば、冷却剤ポンプは、マトリクス状構造のインレットと反対側の端部に配置される。好ましくは、インレットが2次元のマトリクス状構造の隅に配置される場合、冷却剤ポンプは、マトリクスの反対側の隅のセルに設けられる。
【0034】
反対側のコーナーとは、直方体のマトリクス状の構造物の場合、対角線上にあるコーナーである。冷却剤ポンプをインレットと反対側のコーナーに設けることで、構造内での冷却水の確実な混合を確保することができる。
【0035】
本発明のさらなる実施形態によれば、インレットはロック可能であり、ロック状態において、インレットが設けられているセルは、多数のセルのうちの少なくとも2つを通る循環経路を閉鎖する。一例では、インレットが設けられたセルは、回転可能な管状機構を含み、ある回転状態では冷却剤がインレットを介してセル内に流れ、一方、他の回転状態では冷却剤が他のセル内にのみ流れ、インレットを介して戻ることができないようになっている。
【0036】
しかし、冷却システムは、インレットに例えばねじ止めして取り付けることができる回転可能なインレットカバーを含むこともできる。インレットカバーをさらに回転させると、インレットが既に閉じているときに、内部の回転可能なインレット機構がインレットカバーとともに回転し、隣のセルへの通路を開いて冷却水の循環を可能にすることができる。
【0037】
一実施形態によれば、エアポンプは、手動のプッシュプルポンプである。
【0038】
例えば、ユーザがより低い冷却性能を求める場合、プッシュプルポンプを使って手動で空気を送り込み、これはポンプが圧縮されていることを意味する。ポンプによって空気が空隙に供給されることで、セルとカバーの間の空隙の高さが増加し、熱伝導率が低下する。ユーザがより高い冷却性能を望む場合は、手動空気プッシュプルポンプの圧縮力を取り除き、空気の一部を冷却システムから逃がす。空隙は減少し、セルから環境への総熱伝導率を増加させる。このように、システムの冷却性能は、ユーザが手動で設定することができる。
【0039】
さらなる実施形態によれば、可撓性カバーは、銅、アルミニウムおよび/または銀を含む。
【0040】
金属は熱輸送用途に非常に適しているため、セル内の凍結した冷却剤への熱輸送や、セル内の冷却剤への熱輸送に利用することができる。カバーは、金属ホイルでもよい。かわりに、カバーは、金属コーティングを含んでもよく、または基材がプラスチックであってもよいカバーに含まれる金属グリッドを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本開示は、添付図面との関連で考慮される場合、以下の詳細な説明書を参照することによって、より容易に理解されるであろう。
【0042】
図1図1は、冷却装置の一実施形態の模式図である。
図2A図2Aは、図1の直線L1に沿った断面図である。
図2B図2Bは、図1の直線L1に沿った断面図である。
図2C図2Cは、図1の直線L1に沿った断面図である。
図2D図2Dは、図1の直線L1に沿った断面図である。
図3A図3Aは、冷却装置の別の応用の模式図である。
図3B図3Bは、冷却装置の別の応用の模式図である。
図3C図3Cは、冷却装置の別の応用の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下では、添付の図を参照して、本発明をより詳細に説明する。図において、同様の要素は同一の参照符号で示され、冗長性を避けるために、その繰り返しの説明は省略されることがある。
【0044】
これらの実施形態および項目は、複数の可能性の例を描いているに過ぎないことは、当業者にとって明らかであろう。したがって、ここに示された実施形態は、これらの特徴および構成の限定を形成するように理解されるべきではない。説明された特徴の任意の可能な組み合わせおよび構成は、本発明の範囲に従って選択され得る。
【0045】
図1は、本発明による冷却システム1の一実施形態を示す概略図である。冷却システム1は、冷却剤を受容するための流体的に結合された多数のセル10を含んでいる。冷却システム10は、多数のセル10を覆う可撓性カバー14をさらに含む。描かれた実施形態では、冷却システム1は、30個の球形のセル10を有する。セル10は、規則的なグリッドに配置されており、それは、すべてのセル10の最も近い隣への距離が、マトリクス状の構造全体にわたって一定であることを意味する。冷却システム1は、セル10に冷却剤(図示せず)を供給するためのインレット20を含む。インレット20は、描かれている実施形態ではキャップであるインレットカバー22で閉じられており、キャップはインレット20に螺合することができる。描かれた実施形態においてインレット20が設けられるセル10は、体積変化許容性セル12である。インレット20は、マトリクス状構造の一角に配置されるセル10に設けられる。冷却装置1は、エアポンプ30をさらに含む。エアポンプ30は、セル10とカバー14との間の空隙に空気を導入するために、カバー14に接続されている。最後に、描かれた実施形態における冷却システム1は、冷却剤ポンプ40を有する。冷却剤ポンプ40は、マトリクス状構造のうち、インレット20が備えられたコーナーとは反対側のコーナーにあるセル10に設けられる。冷却システム1は、冷却剤ポンプ40に電力を供給するバッテリ42を有している。図1において、冷却システム1は、バッテリ42がバッテリチャージャ44に接続された状態で示されており、このバッテリチャージャ44は、好ましくは冷却システム1の外部にあり、例えば、冷蔵庫(図示せず)に設けることができる。
【0046】
図1の図において、左上のセル10は体積変化許容性セル12であり、このセル10には、冷却剤インレットカバー22を有する冷却剤インレット20も併設されている。ユーザは、冷却剤インレットカバー20を開けて、セル10に冷却剤として水を入れることができる。例えば、ユーザは、凍結相転移の間の水の膨張がセル10に害を与えないように、セル10を約85%まで充填してもよい。その後、水インレットカバー22をインレット20にねじ込むことによって、インレット20を密閉する。この操作の間、水インレット20の垂直パイプに連結された水平パイプは、水インレットカバー22と共に回転し、隣接するセル10への第1の水平通路を開く。これにより、冷却装置1における水の循環の前提条件である、隣接する全てのセルへの水の流れが可能となる。
【0047】
セル10の充填工程後、ユーザは、冷却装置1を冷蔵庫に入れる。特に、冷却システム1は、全てのタイプの冷蔵庫で冷却することができる。例えば、ユーザは、水が凍結している間に、冷蔵庫のメインボードをバッテリチャージャ44に接続し、冷却剤ポンプ40のバッテリ42を充電することが可能である。水が氷になった後、ユーザは冷却システム1を持って、より暖かい環境に持ち込むことができ、そのとき凍った冷却剤が環境を冷却する。
【0048】
多数のセル10は、可撓性の銅-アルミニウム-銀のホイルで作られてもよい可撓性カバー14によって囲まれている。カバー14は、セル10とカバー14との間に空気を供給するための手動空気プッシュプルポンプ30に接続されており、それにより冷却システム1の熱伝導率と冷却性能とが決定される。ユーザは、手動空気プッシュプルポンプ30を使用して、空隙16の拡張程度を変更することができる。
【0049】
図2は、図1における線L1に沿った断面図である。図2Aでは、エアポンプ30を用いて空隙16の拡張を最小にした場合の可撓性カバー14の状態が示されている。可撓性カバー16は、セル10に直接接触しているため、高性能な冷却が可能である。
【0050】
図2Bでは、エアポンプ30を用いて空隙16の拡張を最大化したときの、可撓性カバー14の状態が示されている。可撓性カバー14とセル10との間には大きな空隙16が発生し、可撓性カバー14がセル10に直接熱を運ぶことができないため、セル10が環境から隔離される。
【0051】
図2Cでは、カバー14の拡張状態における冷却システム1の代替実施形態が示されている。この実施形態では、カバー14は、セル10の上部及び下部に接着している。したがって、カバー14とセル10との間の空隙16は、2つの隣接するセル10間の継ぎ目の領域においてのみ増加する。
【0052】
図2Dでは、カバー14の別の拡張状態の実施形態が示されている。この実施形態では、空隙16はセル10の一方の側でのみ増大され、カバー14はセル10の他方の側、図2Dでは下側でセル10に接触している。カバー14は、セル10の下側に付着させることができるか、またはエアポンプ30からの空気の量または送出を、セルの下側とカバー14との間のギャップに入ることを止めるようにすることができる。この実施形態は、空隙16が増加した上側はセル10の断熱性を維持したままで、カバー14がセル10に接触している側を物体の冷却に使用することができるため、有利であり得る。
【0053】
図3Aは、熱い飲料で満たされたカップのクールダウン過程における冷却システム1を示す。カップの下のセル10内の凍結した冷却剤、特に水は、隣接するセル内の凍結した冷却剤と比較して、迅速に融解する。次に、融解水は、冷却剤ポンプ40を使用してセル10を通って循環させることができ、そこで液体の水は冷却され、カップの底部から熱を運び去ることが可能である。冷却剤ポンプ40は、バッテリ42から電気エネルギを受け取る。
【0054】
図3Bは、冷却システム1の代替的な使用法を示しており、冷却システム1は、熱い飲料で満たされたカップの周りに巻き付けられる。この構成では、冷却システム1の接触面積は図3Aよりも大きく、その結果、飲料の冷却がより速く行われる。長方形の冷却装置1の両端が合う場所は、例えば磁石による固定などを用いて互いに取り付けることができる。
【0055】
図3A及び図3Bの両方において、冷却されるべき対象物、つまり環境、は非常に高温である。速い冷却が必要な場合は、エアポンプ30を使用して空気を空隙16から抜くことができる。この高性能設定において、外側カップ表面は可撓性カバー14に接触し、一方、可撓性カバー14の反対側の面はセル10に接触する。したがって、可撓性カバー14は、高温のカップからセル10内の凍結した冷却剤への熱伝達を媒介する。
【0056】
図3Cは、冷却システム1の代替的な使用法を示しており、冷却システム1は、予め冷やされたワインボトルの周りに巻かれている。ワインが予冷されているので、冷却システム1の高性能設定を使用する必要はなく、つまり、空気を空隙16に送り込むことができる。したがって、セル10と環境との間の断熱効果が増大し、セル10内の凍結した冷却剤が速やかに融解しない。このため、予冷されたボトルの温度を長時間維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 冷却システム
10 セル
12 体積変化許容性セル
14 可撓性カバー
16 空隙
20 インレット
22 インレットカバー
30 エアポンプ
40 冷却剤ポンプ
42 バッテリ
44 バッテリチャージャ
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
【国際調査報告】