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特表2023-521547差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/38 20060101AFI20230518BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B60R19/38 D
B62D21/15 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022552245
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2022-08-26
(86)【国際出願番号】 BR2020050061
(87)【国際公開番号】W WO2021168523
(87)【国際公開日】2021-09-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522341470
【氏名又は名称】マンスール カストロ,グスタボ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】マンスール カストロ,グスタボ
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB59
3D203CA23
3D203CA25
3D203CA42
3D203CA43
3D203DA32
3D203DB02
(57)【要約】
他の車両(VE’)または任意の障害物との衝突から生じる衝撃を低減させるための、車両(VE)の部品(20)の拡張システム(10)である。車両(VE)の部品(20)の前記拡張システム(10)は、接近/速度リーダ(30)と、少なくとも1つの密閉延伸アーム(50)と結合したガス放出カプセル(51)内に収容された少なくとも1つの電気トリガ装置(40)との結合によって構成されている。当該少なくとも1つの密閉延伸アーム(50)は、ひとたび作動すれば、前記車両(VE)の保護フェアリングの一部である1つ以上のコンポーネント(20)を変位させる役割を担う。当該1つ以上のコンポーネント(20)は、例えば、フロントバンパ(21)および/もしくはリアバンパ(21a)、ドア(P)のプレートおよび/もしくはトリムピース(22)、ルーフ(T)のプレートおよび/もしくはトリムピース、または、障害物もしくは他の車両(VE’)との衝突時に前記車両(VE)のフェアリングに対して変位可能なその他のコンポーネントである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステムであって、
当該システムは、他の車両(VE’)または任意の障害物との衝突から生じる衝撃を低減させるための車両(VE)の部品(20)の拡張システム(10)であり、
前記車両(VE)の部品(20)の前記拡張システム(10)は、接近/速度リーダ(30)と、少なくとも1つの延伸アーム(50)と結合したガス放出カプセル(51)内に収容された少なくとも1つのトリガ装置(40)との結合体を備え、
当該少なくとも1つの延伸アーム(50)は、ひとたび作動すれば、前記車両(VE)の保護フェアリングと一体となった1つ以上のコンポーネント(20)の変位を引き起こし、
当該1つ以上のコンポーネント(20)は、例えば、フロントバンパ(21)および/もしくはリアバンパ(21a)、ドア(P)のプレートおよび/もしくはトリムピース(22)、ルーフ(T)のプレートおよび/もしくはトリムピース、または、障害物もしくは他の車両(VE’)との衝突時に前記車両(VE)のフェアリングに対して変位しやすいその他のコンポーネントである、差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項2】
好ましい構成変形形態において、
拡張システム(10)は、円筒カプセル(51)により形成される複数の延伸アーム(50)を備え、
当該円筒カプセル(51)には、前記トリガ装置(40)が点火したときに作動する伸縮形状物(52)が取り付けられており、
複数の前記延伸アームは、複数の放射状補強材(53)を備える前記車両(VE)と接触状態にある端部(51a)および端部(52a)を有する、請求項1に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項3】
車両(VE’)または障害物へ突然接近したことの検知は、前記トリガ装置(40)に信号を送る、カメラ、センサ、レーザ、レーダ、超音波またはその他の装置による接近読み取り(30)によって認識され、
当該トリガ装置(40)は、具体的には、ガス発生点火器(42)に対して電気信号を発するための電子制御ユニット(41)であり、
当該ガス発生点火器(42)は、前記延伸アーム(50)の拡張またはスプリング拡張の解放のために最適な燃焼を行い、
前記トリガ装置(40)は、前記延伸アーム(50)に付属するカプセル(51)内に組み込まれている、請求項1および2に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項4】
複数の放射状補強材(53)を備える複数の前記延伸アーム(50)を延伸させるための前記車両(VE)の固定部品上に設置された1つ以上の硬いバー(70)上に、トリガ装置(40)および関連する装置が固定されている、請求項1に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項5】
第2の構成変形形態において、
カプセル(51’)は、U字形状物から構成されており、
当該U字形状物の直交末端延伸部(51b’)には、伸縮形状物(52’)が取り付けられており、
当該伸縮形状物(52’)の端部は、前記バンパ(21)における前記車両(VE)の可動部品(20)上に取り付けられており、
複数の前記延伸アーム(50’)は、複数の放射状補強材(53’)を有する、請求項1に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項6】
第3の構成変形形態において、
カプセル(51’’)は、U字形状物から構成されており、
複数の外側延伸部(51b’’)の間に、一対の管状枝部(54’’)が延びており、
前記外側延伸部(51b’’)と前記枝部(54’’)との両方は、伸縮形状物(52’’)を受け入れており、
当該伸縮形状物(52’’)の端部は、前記車両(VE)の可動部品(20)上に、図示の場合には前記バンパ(21)上に取り付けられており、
複数の放射状補強材(53’’)を備える複数の延伸アーム(50’’)が設けられている、請求項1に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項7】
第4の構成変形形態において、
拡張システム(10’’’)は、2つ以上のトリガ装置(40’’’)を備え、
当該2つ以上のトリガ装置(40’’’)は各々、可動部品(20)に対して直交して配置され互いに独立した、それ自体のカプセル(51’’’)と管状形状物(52’’’)とを有し、
当該可動部品(20)は、図示の場合、バンパ(21)であり、
複数の点火装置(40’’’)は、均等に分布しており、
複数の当該点火装置(40’’’)は各々、それ自体の伸縮形状物(52’’’)を備える、請求項1に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項8】
第5の構成変形形態において、
拡張システム(10’’’’)は、一対のそれぞれ「U」字形のトリガ装置(40’’’’)を備え、
当該一対のそれぞれ「U」字形のトリガ装置(40’’’’)は、各々、前記バンパの半分に接続され、各側には、受動的機構が含まれており、
これは、複数の放射状補強材(53’’’’)を備える複数の延伸アーム(50’’’’)の半分のみの結果としての拡張および伸縮形状物(52’’’’)の拡張のためのものであり、
複数の前記点火装置(40’’’’)は、「U」字形の中央アーム(50a’’’’)を備える別の中央点火装置(40a’’’’)と電子的に結合しており、
当該「U」字形の中央アーム(50a’’’’)は、少なくとも1つのガス放出カプセル(51’’’’)を有し、
その複数の延伸部(51b’’’’)は、それぞれの伸縮形状物(52’’’’)を受け入れており、
複数の前記延伸部(51b’’’’)の間に、一対の別個の点火装置(40b’’’’)が設置されており、
当該一対の別個の点火装置は、互いに交差した状態で取り付けられ、かつ、枢軸点(A1)に固定されており、かつ、それぞれの二次アーム(50b’’’’)を有する、請求項1に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項9】
伸縮形状物(52)ならびに関連する(52’)/(52’’)/(52’’’)および(52’’’’)は、前記円筒カプセル(51)の拡張後の復帰防止セーフティロック(60)を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項10】
好ましい構成変形形態において、
セーフティロック(60)は、複数の凹部(55)内に設けられた三角形状の複数の可動歯(60a)を備え、
当該複数の凹部(55)は、管状形状物(52)内に作られており、
各凹部(55)は、突出縁部(55a)により保持される前記歯(60a)を移動させるための一組のスプリング(61)を収容しており、
各可動歯(60a)は、拡張とは逆の方向に押しやられたとき、伸縮管状形状物(52)および前記カプセル(51)上に設けられた突出部(62)内に係合し、直ちにロックを行う、請求項8に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項11】
前記車両(VE)は、前記車両のルーフ上に配置された別個のカプセル(51)を備え、
当該カプセル(51)は、前記車両(VE)のルーフ全体を拡張させるためのパイプシステム(53)を伴い得る、請求項1および2に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【請求項12】
前記車両(VE)は、シリンダ(51)内で収縮したスプリング(ML)を使用して、車両部品を拡張させ、
当該シリンダ(51)内において、ロック(TV)が解放されるのに付随して、拡張が可能になる、請求項1および2に記載の差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔発明の技術分野〕
本発明は、差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステムに関する。より正確には、当該システムは、車両安全付属品の分野に属し、リダンダント(redundant)な接近リーダと、少なくとも1つの空気および/もしくはガスの急速膨張装置またはスプリングと、の結合によって構成される。当該少なくとも1つの空気および/もしくはガスの急速膨張装置またはスプリングによって、外部保護部品または車両フェアリングと結合する伸縮機構または同様の機構が、即時的に変位できる。当該外部保護部品または車両フェアリングは、例えば、バンパ、ドアライニングプレート、ルーフライニングプレートまたはその他の可動部品である。差し迫った衝突に際してこれらの部品のうちの少なくとも1つの部品が変位することは、車両自体が衝突する前に衝撃を吸収し、その結果、ドライバーおよびその他の乗客を保護するという主要な機能を有する。
【0002】
〔背景技術〕
過去数十年の間に、多くの国の自動車産業において、事故の際に車両の乗員乗客に対してより高い安全性を提供することを目的とした技術が開発されてきた。自動車には、道路を走る前に、試験場での試験がなされる。制御下における事故は、自動車が実際の事故に至る条件と、車体および乗員乗客に及ぼされ得る影響とを再現しようとするものである。交通事故によって、世界中で毎年、数百万人の死者が発生している。
【0003】
一般的に言えば、安全性は、主にドライバーに依存する:大多数の事故は、依然として、ヒューマンエラーに起因している。安全性に関しては、専門家により区分がつくられている。それは、能動的なもの、または、受動的なものである。能動的安全性には、いわゆる車道が含まれる。これは、林道から四車線の公道までの任意のものであり得る;それはまた、高速の追い越しを実行するためのエンジン出力を意味する。他方、受動的安全性は、事故の際に自動車が提供するものであり、例えば装甲のように乗客を保護するスズのキャビン等である。
【0004】
事故統計によれば、重大被害者との衝突の60%が、正面衝突である。これらの中で、3件のうち2件が、部分的な側面衝突である。なぜなら、ドライバーは最後の瞬間、ハンドルを横に切ることによって、衝突を本能的に回避しようとするからである。このため、自動車の製造においては、正面事故がすでに横方向に変位すると推論されている。このタイプの衝突では、正面表面上に衝撃が等しく分散しないため、ジグソーパズルのピースのように、自動車が共にフィットする。ブロー(衝撃)をより良好に分散させるために、エンジンマウントは、より大きな負荷に耐えるように作られており、その結果、クランプルが均一に保たれる。衝撃が激しすぎる場合、マウントが破損し、キャビンを貫通しないようにエンジンが解放される。
【0005】
車両の最も脆弱な部分のうちの1つは、ドアを含むサイドパネルである。ドアにおいては、外部とシートの乗員乗客との間の距離は極めて短く、25~40センチメートルしかない。自動車事故に伴う高エネルギーを考慮すると非常に短い間隔である。
【0006】
セーフティベルトの使用の強制は、ドライバーと乗客との両方にとっての安全につながる。しかしながら、車両への衝撃はいつも突然のものであるため、この手段では、脊髄損傷を生じ得る頭部の突然の揺れから起こる外傷を防ぐことができない。
【0007】
今日、大多数の車両は、「エアバッグ」として知られる安全コンポーネントを有する。「エアバッグ」は、車両キャビン内の戦略的ポイントに設置されており、それらの戦略的部品(前部、後部、右側面、左側面)内に配置されたさまざまなセンサと結合している。1つ以上のセンサがトリガされると、信号が制御ユニットに送られ、当該制御ユニットは次いで、どのセンサが衝撃を受けたのかをチェックし、その結果、最も適切なエアバッグをトリガする(始動させる)。エアバッグは、エアバッグまたは膨張可能なエアクッションからなる。乗員乗客がシートベルトを着用しない場合、エアバッグはその有効性を失う可能性がある。これは特に、エアバッグの膨張が、頭部の衝撃および鞭打ちを低減するために計算されたものであり、乗員乗客の身体を適所に保持することを意図したものではないからである。
【0008】
障害物または他の車両との衝突に起因する場合の、車両の不可欠な部品に生じる衝撃を低減するためのシステムおよび仕組みを開発することは、自動車産業の絶え間ない役目である。この深刻な衝撃を低減することを目的として、多数の研究および調査が展開されている。その最近のもののうちの1つは、車両の制動および/または減速時に働く、衝突の差し迫りを検知する複数の接近センサの設置である。
【0009】
開発中の他のモデルでは、起こり得る損傷を回避するために、または、起こり得る損傷を少なくとも最小限に抑えるために、接近センサと、通常は車両のバンパ内に設置される1つ以上の外部エアバッグとが結合されている。この安全装備は、それがいかなる安全機構も有しない外部の膨張可能なバッグに制限されている点において、本明細書で提案されるシステムとは異なるものである。バッグは、多くの状況において、衝突による力によって破裂してしまい、緩衝機能を果たせなくなる可能性がある。
【0010】
当業者には知られているように、衝突試験は、種々の側面において車両を評価することを目的としている。かつて、車体は堅牢につくられていた。堅牢な車体は、衝突の衝撃の大部分を乗員乗客に伝えて、重大な損傷を引き起こし、死亡のリスクを増大させてしまう。研究によれば、変形可能な構造であれば、衝撃の一部を吸収することができ、いわゆる吸収領域または変形領域が前部および後部に生じて、より優れた保護を達成できるであろうことが示されている。
【0011】
しかしながら、キャビンについては、堅牢であることが望ましい。つまり、その構造が完全な状態のままであるべきである。これにより、乗員乗客がいる空間にパネル、柱またはその他の要素が侵入するリスクがより小さくなる。ドアは衝突時にロックされるべきではなく、フロアは曲がるべきではない。現代的な設計の多くの自動車には、各部品における要件を満たすために、さまざまな構造部品に種々の強度の鋼が用いられている。
【0012】
周知のように、高速での正面衝突における衝撃吸収のための空間は限られている。なぜなら、最大と考えられるある程度の変形の後に、衝撃が乗員乗客に伝わるか、または、構造物がキャビンを侵すからである。
【0013】
自動車がより大きくより広ければ、車は確かにより安全なものとなる。本体と乗員乗客との間のより多くの空間、プログラムされたより大きな変形領域を衝突の際に作り出すために技術者が使用する余剰の空間があることになるからである。すなわち、重大な脊髄損傷を引き起こし得る、減速、車両の内部に伝達される衝撃、頭部の変位および鞭打ちがより軽度になる。
【0014】
本特許は、差し迫った衝突に際して、ボディシェルの始まりと乗員乗客との間の空間を増大させ、それにより、車両の変形領域を増大させる方法からなる。
【0015】
〔従来技術の分析〕
上述の事柄を例証するために、特殊なデータベースにおいて調査を行った。この調査を通じて、差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために車両部品を拡張させるシステムに言及する文献を発見した。例えば、文献US2010140903では、外部エアバッグシステムが扱われている。当該外部エアバッグシステムには、バンパカバーと、前記バンパカバーの背後に設けられたクッションと、ガス圧を発生させて前記クッションを展開させるインフレータと、が含まれてもよく、前記バンパカバーは、前記クッションの展開を通じて、前方に移動する。
【0016】
文献JP2009220645では、比較的に高いガス圧をバンパ「エアバッグ」に提供し、カメラにより撮影された歩行者の高さのサイズに従って、追加の「エアバッグ」を展開することが構想されている。前記比較的に高いガス圧モードは、前記バンパエアバッグに供給される。「高さ小」モードでは、比較的に低いガス圧が前記バンパエアバッグに供給され、前記追加のエアバッグは使用されない。
【0017】
発見された文献のほとんどは、従来技術としてのみ参照され、多くの機械的運動を用いることなく、エアバッグの膨張(充填)を提示しているのみである。そのため、記載された目的に関して先行性を提供するものではない。したがって、特許性のための法的要件を満たすものであることが保証されている。
【0018】
〔発明の目的〕
このように、本発明の目的は、より大きな衝撃吸収を提供するために、差し迫った衝突に際して車両部品を拡張させるシステムを提示することである。衝突が差し迫っていることは、車両の保護部品の線形変位を可能にするトリガ装置と共にある接近および速度リーダによって認識される。当該車両の保護部品の線形変位は、例えば、フロントバンパおよび/もしくはリアバンパの拡張、プレートもしくはドアライニング部品の拡張、または、車両フェアリングに対して移動可能なその他の部品の拡張等である。差し迫った衝突に際してこれらの部品のうちの少なくとも1つの部品が即時的に線形変位することは、衝突を実質的に緩衝し、車両を保護するのみならず、当該車両のドライバーおよび他の乗客を主に保護するという主要な機能を有する。
【0019】
本発明の目的をより良く理解するために、かかる技術を備える車両とかかる技術を備えていない他の車両との間の正面衝突を考える。記載された装置は、かかる技術を搭載していない他の車両への損傷を低減することも目的としている。減速を低減し乗員乗客の生存の可能性を増大させることに加え、この車両への衝撃により生じる変形を低減するために、偶発的な衝突に際しての「より変形可能な」構造または「より柔らかい」構造を、それが提供するからである。
【0020】
また、本特許の目的は、自動車、トラック、自動二輪車等の自動車の任意のモデルに備え付けることができるシステムであって、カメラ、センサ、レーザ、レーダ、超音波等の接近リーダにより作動する、差し迫った衝突に際してより優れた衝撃吸収のために車両部品を拡張させるシステムを提示することである。
【0021】
本特許の別の目的は、衝突の差し迫りを検知したバンパ等の部品上でトリガ装置が水平的かつ直線的に移動する、差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために車両部品を拡張させるシステムを提示することである。当該衝突の差し迫りを検知した部品は、複数の自己ロック式かつ自己固定式の延伸アームと結合したトリガ装置によって形成される革新的な装置上に取り付けられており、その結果、衝突時に複数のかかるアームが破損することが回避される。
【0022】
機構には、以下の部品が含まれる:
1)とりわけ、超音波センサ、レーザ、レーダ、カメラからなる、衝突の差し迫りを検知する機器。当該機器は、衝突が差し迫っていることを識別することと、車両のどの領域がぶつかろうとしているのかを識別することとを目的とする;
2)能動的拡張機構-当該能動的拡張機構は、本明細書に記載の伸縮ロッドに限らず、任意の種類の方法により拡張可能な伸縮ロッドからなる:a)電気信号。当該電気信号が火工カプセル化機構の爆発をもたらし、水密パイプ複合体内にガスが放出され、伸縮ロッドを拡張させるエネルギーが提供される、b)収縮スプリングによるもの。そのロックが解放されると、蓄積されたエネルギーによって伸縮ロッドの拡張が可能になる、c)モータによるもの。かかる目的のために、車両それ自体のエンジンを使用してもよい。当該能動的機構は、衝突中の衝撃の漸進的かつ連続的な吸収を促すために、変形可能な材料により作られる必要がある;
3)受動的機構または拘束機構。当該受動的機構または拘束機構は、自己ロック式の伸縮体またはロッドからなる。能動的機構により解放されたエネルギーを使用して、これが拡張する。その目的は、拡張可能な複合体に構造的耐性を与えることで、衝突中に能動的機構が破損し、またはねじれるのを防ぐことである。当該受動的機構は、衝突中の衝撃の漸進的かつ連続的な吸収を促すために、変形可能な材料により作られる必要がある。それを構成するロッドは、多数のロックをさまざまな点に備える。当該多数のロックは、一方向に、すなわちただ一つの方向に拡張可能で、かつ、(衝突中に)他の方向に押しやられたときはいつでもロックを行う。そのため、能動的機構が完全に拡張する前に(拡張が部分的であるときに)衝突が生じたとしても、そのロックが作動し、吸収性複合体に対してサポートが提供される。
【0023】
〔図面の簡単な説明〕
本発明の特徴についてより良好な理解が得られるよう本明細書を補完するために、その好ましい実用的な実施形態に従って、一式の図面が本明細書に添付されている。当該一式の図面は、本発明の実施を、限定的にではなく例示的に表すものである。
【0024】
図1および図1Aは、休止位置および駆動位置における拡張部品の例を示す、車両モデルの斜視図である。
【0025】
図2は、他の車両との衝突が差し迫っているときの、車両の側面図を示す。
【0026】
図2Aは、トリガ装置が作動した後の作動延伸アームの側面図を示すものであり、バンパの拡張が図示されている。
【0027】
図3は、他の車両との衝突が差し迫っているときの、車両の側面図を示す。
【0028】
図3Aは、第1の構成変形形態における延伸アームによるバンパの拡張を示す、車両の上面図である。
【0029】
図4および図4Aは、延伸アームの車両のバンパへの作動位置における、第2および第3の構成変形形態の上面図を表す。
【0030】
図5は、各々がそれ自体のガスカプセルを有する、4つの独立した延伸アームを有する第4の構成変形形態の上面図を示す。
【0031】
図5Aは、バンパの各半分に1つずつの、2つの独立した「U」字形の延伸機構を有する第5の構成変形形態を示し、特定の条件下においてバンパの一方の半分のみが結果として拡張する可能性が例示されている。
【0032】
図6Aは、受動的延伸アームのAA長手方向断面における拡大詳細図であり、好ましいロッキングの変形形態を示す。
【0033】
図6Bおよび図6Cは、受動的延伸アームまたは保持アームのロック歯の移動を示す、AA長手方向断面図である。
【0034】
図7は、構造的補強の詳細を拡大図において明らかにするものであり、能動的拡張機構および受動的機構が、鉄または硬質で耐性のある他の形成材料の棒上で支持されている。
【0035】
図7Aは、能動的機構および受動的機構の詳細を、拡大図において明らかにするものである。
【0036】
図8図8Bは、システムが車両のルーフに適用された例を示す図であり、車両が転覆した場合の動作が例示されている。
【0037】
図9図9Cは、システムが少なくとも1つのサイドドアに適用された例を示す図である。
【0038】
図9Dは、システムが横方向変位でドアに適用された、車両の斜視図を示す。
【0039】
図10および図10Aは、別個のカプセルをルーフ上に有するある車両と、カプセルおよびルーフ全体を拡張させるためのパイプシステムを有する他の車両とを示す、概略図である。
【0040】
図11は、シリンダ内の収縮スプリングからの結果としての拡張と、拡張を可能にするラッチの解除とを示す、説明図である。
【0041】
図11Aおよび図11Bは、先の図において例示した上述のスプリングを備える車両の上面図であり、拡張時および後退時の挙動が示されている。
【0042】
〔発明を実施するための形態〕
本発明は「差し迫った衝突に際して衝撃吸収のために自動車部品を拡張させるシステム」に関し、例示の図面が参照される。より正確には、当該システムは、他の車両(VE’)または任意の障害物との衝突から生じる衝撃を低減させるための、車両(VE)の部品(20)の拡張システム(10)である。
【0043】
本発明によれば、車両(VE)の部品(20)の拡張システム(10)は、接近/速度リーダ(30)と、火工固体化合物を含むカプセル(51)内に収容された少なくとも1つの電気トリガ装置(40)との結合体を備える。当該火工固体化合物は、当該電気トリガによって起動したときに、高圧ガスの即時放出を引き起こす。また、前記カプセル(51)は、少なくとも1つの水密延伸アーム(50)と結合している。当該少なくとも1つの水密延伸アーム(50)は、ひとたび作動すれば、障害物または他の車両(VE’)に衝突したときの車両(VE)のキャビンへの衝撃力を吸収、低減または回避するために、当該車両(VE)の保護フェアリングと一体となった1つ以上のコンポーネント(20)を変位させる役割を担う。当該1つ以上のコンポーネント(20)は、例えば、フロントバンパ(21)および/もしくはリアバンパ(21a)、ドア(P)のプレートおよび/もしくはコーティング部品(22)、ルーフ(T)のプレートおよび/もしくはコーティング部品、または、車両(VE)のフェアリングに対して変位可能なその他のコンポーネントである。
【0044】
言及した接近リーダ(30)は、車両(VE’)または障害物の急激な接近を検知したときにトリガ装置(40)、具体的には電子制御ユニット(41)に信号を送る、センサ、カメラ、レーザ、レーダ、超音波またはその他の装置であってもよい(図2および図2Aを参照)。当該電子制御ユニット(41)は次いで、ガス発生点火器(42)に電気信号を送り、当該ガス発生点火器(42)の燃焼により、延伸アーム(50)の拡張、または、スプリング拡張の解放、または、特定のモータの作動が促される。
【0045】
前記トリガ装置(40)は、延伸アーム(50)に付属するカプセル(51)に組み込まれている。
【0046】
拡張システム(または駆動機構)は、複数の前部/側部/上部/後部延伸器によって形成されている。当該複数の前部/側部/上部/後部延伸器は、他の車両または障害物との衝突の差し迫りに際しては、複合体を拡張させ、歩行者または動物との衝突の差し迫りに際しては、それを抑制するために、コンピュータ化されたカメラセンサ(車両、障害物)および熱装置の読み取りによって拡張する。
【0047】
第1の構成実施形態では、拡張システム(10)として、ガス放出のための円筒カプセル(51)によって形成される複数の水密延伸アーム(50)(図3および図3Aを参照)が想定されている。当該円筒カプセル(51)には、トリガ装置(40)が点火したときに作動する入れ子式伸縮形状物(52)が取り付けられている。これらの延伸アームは、車両(VE)との接触状態にある端部(51a)および端部(52a)を有する。
【0048】
第2の構成変形形態において、ガス放出カプセル(51’)(図4を参照)は、「U」字形の形状物から構成されている。当該「U」字形の形状物の直交末端延伸部(51b’)には、伸縮形状物(52’)が取り付けられている。当該伸縮形状物(52’)の端部は、車両(VE)の可動部品(20)、図示の場合にはバンパ(21)に取り付けられている。複数の延伸アーム(50’)は、複数の放射状補強材(53’)または受動的機構を有する。
【0049】
第3の構成変形形態(図4A)において、ガス放出カプセル(51’’)は、「U」字形の形状物から構成されている。一対の管状枝部(54’’)が、複数の外側延伸部(51b’’)の間に延びている。外側延伸部(51b’’)と枝部(54’’)との両方は、伸縮形状物(52’’)を備える。当該伸縮形状物(52’’)の端部は、車両(VE)の可動部品(20)上に、バンパ(21)上に取り付けられている。また、構造的強度を提供する複数の受動的延伸アーム(53’’)が設けらている。
【0050】
第4の構成変形形態(図5を参照)において、拡張システム(10’’’)は、2つ以上のトリガ装置(40’’’)を備える。当該2つ以上のトリガ装置(40’’’)は各々、可動部品(20)に対して直交して配置され互いに独立した、ガス放出カプセル(51’’’)と管状形状物(52’’’)とを有する。当該可動部品(20)は、図示の場合、バンパ(21)である。複数のトリガ装置(40’’’)は、等距離に分布しており、複数の当該トリガ装置(40’’’)は各々、それぞれの伸縮形状物(52’’’)を備える。
【0051】
第5の構成変形形態(図5A)において、拡張システム(10’’’’)は、一対のそれぞれ「U」字形の点火装置(40’’’’)を備える。当該一対のそれぞれ「U」字形の点火装置(40’’’’)は、各々、バンパの半分におけるガス放出カプセル(51’’’’)内に接続され、各側には、受動的機構が含まれている。その結果、バンパ(21)の一方の半分のみが結果として拡張することが可能になる。その際に、複数の受動的な延伸アーム(53’’’’)が認められる。複数の前記点火装置(40’’’’)は、「U」字形の中央アーム(50a’’’’)を備える別の中央点火装置(40a’’’’)と電子的に結合している。当該「U」字形の中央アーム(50a’’’’)は、少なくとも1つのガス放出カプセル(51’’’’)を有する。その複数の延伸部(51b’’’’)は、それぞれの伸縮形状物(52’’’’)を受け入れている。複数の延伸部(51b’’’’)の間に、一対の別個の抑制機構(53’’’’)が設置されている。当該一対の別個の抑制機構(53’’’’)は、互いに交差した状態で取り付けられ、かつ、枢軸点(A1)に固定されており、かつ、それぞれの二次アーム(50b’’’’)を有する。
【0052】
好ましくかつ非限定的な構成実施形態において、受動的抑制機構(52および53)の伸縮形状物ならびに関連する(52’)/(52’’)/(52’’’)および(52’’’’)は、円筒カプセル(51)の拡張後の復帰防止セーフティロック(60)を備える(図6図6Cを参照)。好ましい構成実施形態において、当該セーフティロック(60)は、複数の凹部(55)内に設けられた三角形状の複数の可動歯(60a)を備える。当該複数の凹部(55)は、管状形状物(52)内に作られている。各凹部(55)は、突出縁部(55a)により保持される歯(60a)を移動させるための一組のスプリング(61)を収容している。各可動歯(60a)は、拡張とは逆の方向に押しやられたとき、伸縮管状形状物(52)およびカプセル(51)に設けられた突出部(62)内に係合し、複数の点において同時に、構造体を直ちにロックする。
【0053】
複数のトリガ装置(40)および関連する装置は、受動的機構としても知られる複数の放射状補強材(53)を備える複数の延伸アーム(50)を延伸させるための車両(VE)の固定部品に設置された1つ以上の硬いバー(70)に取り付けられてもよい。前記バー(70)は、鉄、または、硬質で耐性のある構造を有するその他の材料から作られることが好ましい。
【0054】
ルーフ(T)およびサイドドア(P)(図8図9Bを参照)等の平坦な領域では、複数のトリガ装置(40)は、ベース(80)上、より正確には、細長い凹部内に設置されている。当該細長い凹部は、個別(80a)、または互いに連通する管状(80b)であってもよい。これは、カプセル(51)が引き起こす爆発が、すべての伸縮管状形状物(52)の同時かつ即時の変位を生じさせることを可能にする。
【0055】
前記車両(VE)は、車両のルーフ上に配置された別個のカプセル(51)を備えてもよい(図10を参照)。さらに、前記車両(VE)は、車両(VE)のルーフ全体を拡張させるためのパイプシステム(53)と共に、前記カプセル(51)を備えてもよい(図10a)。
【0056】
前記車両(VE)は、シリンダ(51)内部で収縮したスプリング(ML)を使用して、車両部品を拡張させてもよい。当該シリンダ(51)内において、ロック(TV)が解放されるのに付随して、その拡張が可能になる。
【0057】
本発明が実施される場合、特許請求の範囲において明確に定立された基本原理から逸脱することなく、構成および形態の特定の詳細に関して変更がなされてもよい。また、使用される用語は、限定を意図するものではないものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
図1】休止位置における拡張部品の例を示す、車両モデルの斜視図である。
図1A】駆動位置における拡張部品の例を示す、車両モデルの斜視図である。
図2】他の車両との衝突が差し迫っているときの、車両の側面図を示す。
図2A】トリガ装置が作動した後の作動延伸アームの側面図を示すものであり、バンパの拡張が図示されている。
図3】他の車両との衝突が差し迫っているときの、車両の側面図を示す。
図3A】第1の構成変形形態における延伸アームによるバンパの拡張を示す、車両の上面図である。
図4】延伸アームの車両のバンパへの作動位置における、第2の構成変形形態の上面図を表す。
図4A】延伸アームの車両のバンパへの作動位置における、第3の構成変形形態の上面図を表す。
図5】各々がそれ自体のガスカプセルを有する、4つの独立した延伸アームを有する第4の構成変形形態の上面図を示す。
図5A】バンパの各半分に1つずつの、2つの独立した「U」字形の延伸機構を有する第5の構成変形形態を示し、特定の条件下においてバンパの一方の半分のみが結果として拡張する可能性が例示されている。
図6
図6A】受動的延伸アームのAA長手方向断面における拡大詳細図であり、好ましいロッキングの変形形態を示す。
図6B】受動的延伸アームまたは保持アームのロック歯の移動を示す、AA長手方向断面図である。
図6C】受動的延伸アームまたは保持アームのロック歯の移動を示す、AA長手方向断面図である。
図7】構造的補強の詳細を拡大図において明らかにするものであり、能動的拡張機構および受動的機構が、鉄または硬質で耐性のある他の形成材料の棒上で支持されている。
図7A】能動的機構および受動的機構の詳細を、拡大図において明らかにするものである。
図8】システムが車両のルーフに適用された例を示す図であり、車両が転覆した場合の動作が例示されている。
図8A】システムが車両のルーフに適用された例を示す図であり、車両が転覆した場合の動作が例示されている。
図8B】システムが車両のルーフに適用された例を示す図であり、車両が転覆した場合の動作が例示されている。
図9】システムが少なくとも1つのサイドドアに適用された例を示す図である。
図9A】システムが少なくとも1つのサイドドアに適用された例を示す図である。
図9B】システムが少なくとも1つのサイドドアに適用された例を示す図である。
図9C】システムが少なくとも1つのサイドドアに適用された例を示す図である。
図9D】システムが横方向変位でドアに適用された、車両の斜視図を示す。
図10】別個のカプセルをルーフ上に有するある車両と、カプセルおよびルーフ全体を拡張させるためのパイプシステムを有する他の車両とを示す、概略図である。
図10A】別個のカプセルをルーフ上に有するある車両と、カプセルおよびルーフ全体を拡張させるためのパイプシステムを有する他の車両とを示す、概略図である。
図11】シリンダ内の収縮スプリングからの結果としての拡張と、拡張を可能にするラッチの解除とを示す、説明図である。
図11A】先の図において例示した上述のスプリングを備える車両の上面図であり、拡張時の挙動が示されている。
図11B】先の図において例示した上述のスプリングを備える車両の上面図であり、後退時の挙動が示されている。
図1
図1A
図2
図2A
図3
図3A
図4
図4A
図5
図5A
図6
図6A
図6B
図6C
図7
図7A
図8
図8A
図8B
図9
図9A
図9B
図9C
図9D
図10
図10A
図11
図11A
図11B
【国際調査報告】