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特表2023-521551パンタグラフを備えた鉄道車両及びこのパンタグラフを上昇/降下させる制御システムを備えた鉄道車両
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  • 特表-パンタグラフを備えた鉄道車両及びこのパンタグラフを上昇/降下させる制御システムを備えた鉄道車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】パンタグラフを備えた鉄道車両及びこのパンタグラフを上昇/降下させる制御システムを備えた鉄道車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 5/28 20060101AFI20230518BHJP
   B60L 50/53 20190101ALI20230518BHJP
【FI】
B60L5/28 Z
B60L50/53
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022552919
(86)(22)【出願日】2021-03-02
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2021051731
(87)【国際公開番号】W WO2021176351
(87)【国際公開日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】102020000004342
(32)【優先日】2020-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522130689
【氏名又は名称】ヒタチ レール エッセティエッセ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】サルバトーレ ザッツァーロ
(72)【発明者】
【氏名】ビットーリオ ロータ
(72)【発明者】
【氏名】ジュゼッペ グラベル
【テーマコード(参考)】
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5H105AA16
5H105BA02
5H105BB01
5H105CC12
5H105DD04
5H105DD22
5H105EE03
5H105EE13
5H105EE21
5H105GG06
5H105GG11
5H125AA05
5H125AC02
5H125AC12
5H125BE00
5H125DD01
5H125DD11
5H125EE52
5H125EE55
(57)【要約】
鉄道車両(1)は、移動装置(12)の動作下で、使用時に、電気エネルギーを引き出すための架線導体ケーブルと接触して協働することができる上昇位置と、使用時に、この架線が提供される高さよりも低い下降位置と、の間で移動可能なパンタグラフ(10)が備えられ、車両には、電池パックと、移動装置(12)を制御してパンタグラフ(10)を下降/上昇させるための制御システム(18)とが備えられており、制御システムは、車両(1)の実際の位置を示す情報を含む信号、及び/又は車両(1)の近傍に導体ケーブル(14)が存在するか否かを示す信号に応じて移動装置(12)を制御するように構成されたマイクロプロセッサ制御ユニットを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両(1)であって、
電気駆動モータ(8)と、
エネルギーを取り出すための要素(10)であって、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、電気エネルギーを引き出してこの電気エネルギーを前記電気駆動モータに供給するために、電化線の導体要素(14)と接触して協働するのに適する第1位置と、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、前記導体要素(14)が設けられている位置から離間している第2位置と、の間を移動可能である、エネルギーを取り出すための要素(10)と、
付加的電気エネルギー源(15)と、
前記第1位置と前記第2位置との間でエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる移動装置(12)と、
前記移動装置(12)を制御し、結果としてエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる制御システム(18)と、を備え、
前記制御システム(18)は、
車上に配置され、1つ以上の検出器を備える第1検出装置(20)であって、前記検出器は、カメラ、ライダー装置、レーダー装置の1つにより定められ、かつ、使用時に、空間内に存在し得る物体に関するデータを検出して提供するように、経路に沿って前記導体要素(14)が設けられる前記空間に向けられた、第1検出装置(20)と、
前記検出器によって検出及び提供されたデータに応じて前記移動装置(12)を制御するように構成されている1つ以上の制御ユニット(16)と、を備え、
前記制御システムは、前記データから開始して、前記車両1の経路に沿って前記車両1の近傍の前記導体要素(14)の有無を判定するように構成されている処理手段を備え、前記制御ユニット(16)は、前記処理手段によって判定された前記導体要素(14)の有無に応じて前記移動装置(12)を制御するように構成され、かつ、エネルギーを取り出すための前記要素(10)が前記第2位置にあるときに前記付加的電源(15)によって前記電気駆動モータ8に給電するように構成されていることを特徴とする、鉄道車両(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(16)は、前記車両が静止又は惰行しているときに、エネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させるように前記移動装置(12)を制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記検出器は、カメラ(22)により定められ、前記第1検出装置(20)は、前記空間に向けられた1つ以上の照明装置(24)を備え、前記空間において、使用時に、前記導体要素が前記経路に沿って設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1検出装置(20)は、前記カメラ(22)によって取り込まれた画像に応じて前記照明装置(24)を調整するように構成されている第1プロセッサを備えることを特徴とする、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記検出器は、3Dフレームを検出するライダー装置により定められることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項6】
前記制御ユニット(16)は、第1許可及び第2許可の存在下で、エネルギーを取り出すための前記要素の前記第1位置への移動を制御するように構成され、前記第1許可は前記車両1の実際の位置を示す情報に基づいており、前記第2許可は前記検出器によって検出及び供給されたデータに基づいていることを特徴とする、請求項1-5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記制御ユニット(16)は、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)の位置を示す信号を受信し、
前記信号に応じて前記移動装置(12)を制御することを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記処理手段は、形状マッチング技術を実装することによって前記導体要素(14)の有無を判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1-7のいずれか1項に記載の車両
【請求項9】
前記処理手段は、
カメラ画像内又はライダー装置の3Dフレーム内の直線を認識するためにハフ変換を適用すること、並びに、
前記画像又は前記3Dフレームにおいて認識される平行な直線の対を特定すること及び/又は選択すること、により前記導体要素(14)の有無を判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
前記第1検出装置は、前記車両の頭部及び尾部にそれぞれ配置され、かつ略反対方向に向けられた2つの検出器を備え、前記制御部は、前記車両の進行方向に応じて、前記2つの検出器のどちらか一方から受信した情報を処理するように構成されていることを特徴とする、請求項1-9のいずれか1項に記載の車両。
【請求項11】
前記制御システム(18)は、車上に配置され、前記経路に沿って前記車両1の実際の位置を決定し、かつ対応する情報を前記制御ユニット(16)に提供するように構成されている第2検出装置(20a)を備えることを特徴とする、請求項1-10のいずれか1項に記載の車両。
【請求項12】
前記第2検出装置(20a)は、
衛星ナビゲーター(32)と、
慣性プラットフォーム(33)と、
走行距離計(31)と、
前記衛星ナビゲーター(32)、前記慣性プラットフォーム(33)及び前記走行距離計(31)によって提供される情報を相関させ、その結果として前記車両1の実際の位置に関する全体の情報を得るように構成されている第2プロセッサと、
を備えることを特徴とする、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
鉄道車両(1)であって、
電気駆動モータ(8)と、
エネルギーを取り出すための要素(10)であって、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、電気エネルギーを引き出してこの電気エネルギーを前記電気駆動モータに供給するために、電化線の導体要素(14)と接触して協働するのに適する第1位置と、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、前記導体要素(14)が設けられている位置から離間している第2位置と、の間を移動可能である、エネルギーを取り出すための要素(10)と、
付加的電気エネルギー源(15)と、
前記第1位置と前記第2位置との間でエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる移動装置(12)と、
前記移動装置(12)を制御し、結果としてエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる制御システム(18)と、を備え、
前記制御システム(18)は、1つ以上の制御ユニット(16)であって、
経路に沿って前記車両1の実際の位置に関する情報を受信し、
前記情報に応じて前記移動装置(12)を制御する、制御ユニット(16)を備え、
前記制御ユニット(16)は、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が前記経路に沿って前記導体ケーブル(14)の有無により移動する必要がある所定位置、を示す記憶情報と、前記情報とを比較し、
前記所定位置の1つに到達した場合に前記移動装置(12)を制御し、
エネルギー(10)を取り出すための前記要素が前記第2位置にあるときに前記付加的電源(15)によって前記電気駆動モータ8に給電するよう、構成されていることを特徴とする、鉄道車両(1)。
【請求項14】
前記制御ユニット(16)は、前記車両が静止又は惰行しているときに、エネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させるように前記移動装置(12)を制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の車両。
【請求項15】
前記制御システム(18)は、車上に配置され、前記経路に沿って前記車両1の実際の位置を決定し、かつ対応する情報を前記制御ユニット(16)に提供するように構成されている第2検出装置(20a)を備え、前記第2検出装置(20a)は、
衛星ナビゲーター(32)と
慣性プラットフォーム(33)と、
走行距離計(31)と、
前記衛星ナビゲーター(32)、前記慣性プラットフォーム(33)及び前記走行距離計(31)によって提供される情報を相関させ、その結果として車両1の実際の位置に関する全体の情報を得るように構成されている第2プロセッサを備える、
ことを特徴とする、請求項13又は14のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この特許出願は、2020年3月2日に出願されたイタリア特許出願第102020000004342号からの優先権を主張するものであり、その全体の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、鉄道車両、特にパンタグラフと前記パンタグラフを上昇/降下させる制御システムとを備えた車両に関し、以下の説明では、これにより一般性を失うことなく言及する。
【背景技術】
【0003】
最近の適用では、電車は、電気エネルギーを蓄積するための内蔵電池パックと、架線電気ケーブルから電気エネルギーを引き出すためのパンタグラフとを備えることができる。電池パックの電気エネルギー及び架線電気ケーブルから引き出された電気エネルギーは、電気モータ駆動システムに給電するために、互いに代替的に使用することができる。電池パックを設けることにより、電車は、架線が存在する区間に沿って、及び、非電化区間に沿って移動することができる。特に、都市の歴史的中心部において、歴史的中心部の美的価値を損なう可能性がある、並びに/又は設置及び/若しくは給電に関してかなりの技術的複雑さをもたらし得る、架線などの架空要素の使用を避ける傾向がますます一般的になっている.
【0004】
安全上の理由から、線路に沿った行程の間、架線を欠いている区間に沿って走行するときに電車のパンタグラフを下げる必要があると考えられる。
【0005】
この目的のために、既知の解決策では、パンタグラフは、運転手からの特別な指令によって昇降される。換言すれば、現在市販されている車両では、昇降手順は手動である。
【0006】
一般的に運転手は、近似的な方法を除いて、距離及び/又は困難を伴う(気象条件にもよる)ために、架線を見ることができない。また、運転手は、必ずしも自己が走行している線を知る必要はない(すなわち、運転手は自己が操作している電車路線に沿った電化区間と非電化区間であることを知る必要はない)。そのため、パンタグラフをいつどこで昇降させるかを判断するため、既知の解決策では、運転手は、電車経路に沿って配置された適切な信号や標識に設けられた情報を解釈しなければならず、又はパンタグラフを昇降させて介入する必要がある停止地点について、運転者は、オペレーションセンターから事前に知らされなければならない。
【0007】
この、運転手に情報を提供する必要性は、明らかに解釈の誤り及び/又は通信欠陥を引き起こし得、したがって、パンタグラフが必要以上に低下した場合には、パンタグラフの移動制御時のエラーは、結果として架線及び/若しくはパンタグラフ自体を損傷する危険性、又は電池パックによって蓄積されたエネルギーを消耗させる危険性を伴う。
【0008】
パンタグラフを自動的に低下させるための例示的な装置は、架線上の障害を引き起こす外部要因を監視するための方法及び装置を開示している特許文献1に含まれており、この方法及び装置は、画像記録ユニットと評価ユニットとを採用し及び/又は備える電気鉄道車両での使用に適しており、評価ユニットは、架線周囲の望ましくない物体の存在を識別するために、以前に取得されてかつ同じ場所に記録された画像と、インスタント画像とを比較するためのもので、架線周囲は、パンタグラフを下げて損傷を回避するために、危険な状態を示すことがある。
【0009】
この文献に記載されている従来技術は、本発明の目的に適合しない。
【0010】
実際、特許文献1に記載された方法及び装置は、架線を能動的に認識することができず、架線に沿った危険/障害を識別するために、画像を比較してその画像間の差異を検索する。この比較は、架線に関するいかなる差異も検出せず、このことは、両方の画像に存在するか、又は両方の画像に存在しないかのいずれかである。換言すれば、特許文献1に記載されている装置は、架線上のいかなる検査をも実行しない。
【0011】
さらに、この従来技術の解決策は、パンタグラフが降下する区間に沿った駆動を保証するための、別の電源を備えていない。
【0012】
そのうえ、特許文献1は、パンタグラフが架線から分離されているときに安全対策を提供しない、というのは、この分離は時たまにかつ緊急状態で実行されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第19940350号
【発明の概要】
【0014】
本発明の目的は、上記課題を簡単かつ安価に解決することができる鉄道車両を提供することにある。
【0015】
本発明によれば、鉄道車両は、特許請求の範囲に規定されるように提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係る鉄道車両の好ましい第1実施形態に関する概略側面図であり、車両のパンタグラフを上昇位置と下降位置とにそれぞれ配置した2つの構成を示す図である。
図2図1の車両の制御システムに関するブロック図である。
図3図2の制御システムの動作に関するブロック図である。
図4図2と同様で、本発明に係る鉄道車両の好ましい第2実施形態の制御システムを概略的に示す図である。
図5図3と同様で、図4の制御システムの動作に関するブロック図である。
図6図3及び図5と同様で、前実施形態の変形例に関する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1において、参照番号1は、運転手を収容するのに適した運転室4を有し、かつ、運転手が車両1を運転し、車載された付属品及び装置を監視及び操作できるようにするための制御パネル5(図2に概略的に示されている)を備えた1つ以上の客車2、を備える鉄道車両(概略的に示されている)を示している。運転室4は、客車2の一端に配置されている。ここで示した具体例では、車両1は、連結された2台の客車2から構成されている。特に、車両1は、車両1の両端(すなわち、頭部及び尾部)に配置された2つの運転場所4を有しており、両走行方向に運転可能になっている。
【0018】
客車2は、軌道又はレール7に結合され、軌道7により規定される1つ以上の線路又は経路に沿って移動するために、概略的に示される電気駆動モータ8により駆動される車輪を備えた、1つ以上の運搬車6を備える。具体的には、車両1は、電車により定められる。
【0019】
車両1は、客車2のうちの1つの屋根11上に配置されたパンタグラフ10と、図2に概略的に示されている電動式移動装置12であって、参照番号14で示される架線導体ケーブル(すなわち架空給電ケーブル)に接触する上昇位置と、導体ケーブル14が配置される高さよりも低く配置された下降位置と、の間でパンタグラフ10を屋根11に対して移動するよう制御され得る電動式移動装置12とを備える。パンタグラフ10は、電気駆動モータ8に給電するために、既知の方法で導体ケーブル14から電気エネルギーを引き出す。
【0020】
この導体ケーブル14は、車両1が走行する線路の一部に沿ってのみ設けられているが、他の部分は電化されていない。線路の非電化部分における電気エネルギーの不足を補償するために、車両1は、パンタグラフ10により供給されるエネルギーの代替として、電気駆動モータ8を駆動するための付加的電気エネルギー源15を備える。この付加的電源15は、特に、電池パックを含む。電池パックと併せて、又は電池パックの代わりに、付加的電源15は、熱エンジン及び発電機、あるいは燃料電池、あるいはスーパーキャパシタによって定められるアセンブリを備える。したがって、導体ケーブル14が存在しない場所において、電気駆動モータ8は、線路全体にわたって連続的かつ均等に給電される。
【0021】
図2に概略的に示されるように、車両1は、装置12を制御する(すなわち、パンタグラフ10を昇降させる)ようにプログラムされ、かつパンタグラフ10と付加的電源15との間の給電切換を制御するようにプログラムされたマイクロプロセッサ制御ユニット16を含む、制御システム18を備える。ユニット16は、以下に示す情報に応じて、自動的に(デバイス12及び給電切換のための)制御信号を発する。
・(走行方向を考慮して)室4の前方の車両1の近傍における、車両1が走行する経路に沿った導体ケーブル14の有無。及び/又は
・この経路に沿った車両1の実際の位置。
【0022】
図1に示す実施形態では、車両1に搭載された検出システム20によって上記情報が検出される。好ましくは、検出された情報は、少なくとも導体ケーブル14の存在/不存在を示す情報である。実際には、制御システム18は、車両1に搭載され、導体ケーブル14の存在/不存在を検出及び/又は判定し、かつ対応する信号を制御ユニット16に向けて発するよう構成される、1つ以上の検出装置20を備える。
【0023】
装置20及び/又は制御システム18は、図2及び図3に概略的に示されているように、アクティブで、かつ車両1の位置とは無関係に動作する。本発明の好ましい実施形態では、図6の略図に示されるように、ユニット16は、(電気アークの点火を防止するため)車両1が静止している場合又は惰性走行している場合にのみ、すなわち牽引目的で導体ケーブル14への又は導体ケーブル14からのエネルギー伝達がない場合に、パンタグラフ10の自動上昇及び/又は自動下降を制御するようにプログラムされている。
【0024】
換言すれば、好ましくは、パンタグラフ10の移動は、危険な電気アークを回避する必要性による安全上の理由から、車両が静止している又は惰性で移動しているとき、すなわち、パンタグラフ10を介して架線からエネルギーを引き出すことなく慣性で移動しているときに、行われる。
【0025】
例えば、検出システム20が電化区間から非電化区間又はその逆への通行を判定/検出する場合、ユニット16は、駅で又は線路の停留所でパンタグラフ10の自動上昇又は自動下降を制御するようにプログラムされている。他方で、好ましくは、車両が移動している間に架線からのエネルギー引き出しを開始するために、ユニット16は、最初に惰性、すなわち慣性で走行するために付加的電源15による給電の停止を指令し、次にパンタグラフ10の上昇を指令し、その直後にパンタグラフ10による給電の起動を指令して車輪の牽引を再開する。
【0026】
同様に、車両が移動している間に架線から車両を分離するために、好ましくは、ユニット16は、最初に慣性で走行するためにパンタグラフ10による給電の停止を指令し、次にパンタグラフ10の下降を指令し、その直後に付加的電源15による給電の起動を指令して車輪の牽引を再開する。
【0027】
図1から図3を再び参照すると、検出装置20は、架線が提供されている位置又は空間に向かって、適切な制御ロジックにより、この空間を視覚的に監視し、その結果として導体ケーブル14の有無を確認することができるように、上方かつ任意には前方に(すなわち、車両1の端部を越えて)向けられた1つ以上のカメラ22を備え、以下で詳細に説明される。
【0028】
好ましくは、カメラ22は、可能な限り鮮明な画像を検出するため、車両1の外部、例えば屋根11上又は運転室4上に配置される。特に、カメラ22は、客車2の一端に配置されている。
【0029】
ここに示した特定の例では、車両1は双方向であるので、装置20は、車両1の両端にそれぞれ配置された2つのカメラ22、すなわち、一方は頭部に他方は尾部にある2つのカメラ22を含む。2つのカメラ22により取り込まれて到来する信号は、車両1の実際の進行方向に応じて互いに二者択一的に使用することができる。詳細に説明しない変形例によれば、2つのカメラ22により取り込まれて到来する信号は、例えば、導体ケーブル14の検出及び/又はユニット16への信号伝送において起こり得る誤りを検査し識別するために、互いに組み合わせて使用されることができる。
【0030】
特に、各カメラ22は固定位置に配置されている。カメラ22は、運転室4の前方で、線路/経路に沿った一定の深さの空間を監視する。監視できる最大の深さは、実質的にカメラの技術的及び構成的特徴に依存するのに対して、以下に説明する映像解析のために実際に考慮される深さは、監視及びデータ処理ソフトウェアの設定に依存するであろう。
【0031】
図2に示すように、装置20は、好ましくは、車両1が線路の電化区間にある場合に架線を照明するように、各カメラ22に対して、対応するカメラ22が向けられているのと同じ位置又は空間に向けられた各照明装置24を備える。照明装置24は、夜間の検出動作を容易にするために、人間の目に見える範囲の波長及び/又は赤外波長の光を発することができる(同様に、赤外線範囲の放射線を検出するようにカメラ22を選択することもできる)。
【0032】
装置20は、カメラ22毎に、各カメラ22により取り込まれた画像を受信して制御部16と通信する個別のDSP(デジタル信号処理部)を備える。図示しない変形例によれば、DSPが制御部16に統合される。
【0033】
DSPは、可能な限り鮮明な画像を得て、その結果これらの画像のその後の処理を容易にするために、カメラ22によって取り込まれた画像の品質に関する1つ以上の指標の関数として、各照明装置24の光強度を調整するように、適切なソフトウェア(文献に知られている)によってプログラムされる。
【0034】
さらに、好ましくは、DSPは、各カメラ22によって受信された画像を処理するために適切なソフトウェア(文献に知られている)によって構成され、この処理は、以下の2つの動作のうちの1つ以上を含む。
・ノイズ除去。
・画像の細部強化。
【0035】
この任意処理に続いて次の動作が続く。
・画像からの情報抽出。
【0036】
ノイズ除去動作の間、その後の情報抽出を容易にするために、取り込まれた画像は映像分析技術に供される。特に、これらの映像解析技術は、文献に知られているアルゴリズム、(例えば、画素のヒストグラム計算)を用いて、画像の平均輝度及びコントラストに関する情報を与える。先述したこの解析により、照明装置24を適切に調整することができる。
【0037】
続いて、最も重要な構造を保護しつつ、画像から些細な細部を除去するため、文献(例えば、ガウシアンフィルタ)において知られているローパスフィルタを用いて画像変換が適用される。
【0038】
細部強化動作の間、画像は分割される、すなわち、画像の空間領域は、曲線(輪郭)によって互いに分離された重要なサブセット(領域)に分割される。分割ステップは、シーンの絵画的表現である画像から始まる中間画像を生成することを目的とする。得られた中間画像では、シーン内の対象物の輪郭及び/又は領域が強調される。特に、画像中の架線導体ケーブル14を識別するために、2つの異なる分割技術(文献中で知られている)を使用することができる。
・エッジ検出:架線が存在する画像の領域では、架線の重要な輪郭における急激な明度の変化があり、輪郭点は「エッジ点」と呼ばれ、微分演算子を用いて検索される(この技術に用いられるアルゴリズムは文献に知られており、例えば、キャニーのアルゴリズム及びその変形、又はソーベル演算子が適用される)。
・均質領域の抽出:均質領域は、同じ領域に属する点が類似のグレーレベルを有するという事実によって識別され、点の分類は、全体的(閾値ベースの技術)又は局所的(領域増大技術)で行うことができ、背景部分(例えば、空)の識別を可能にする。
【0039】
分割の後、上述したように、基本構造が強調されている(すなわち、合成幾何学的表現が得られる)中間画像が利用可能である。
【0040】
そして、情報抽出動作は、架線の形状を推測的に知ることによって実行され、文献にも知られている形状マッチング技術を用いて、分割化された画像におけるその形状の存在を検索することが可能である。
【0041】
これらの技術は、マッチングを評価する、すなわち、取り込まれた(及び場合により処理された)画像に含まれるものと、架線を表す所与の基準又はテンプレートとの間の対応関係を評価する。テンプレートは、DSP及び/又は制御ユニット16と通信するメモリ(図示せず)に含まれる情報によって定められる。
【0042】
次に、カメラ22にて取り込まれて処理された画像をテンプレートと比較することによって、マッチングが評価される。好ましくは、この比較は、同じテンプレートの向き及び寸法を変更することによっても実行される。比較は、文献にも知られている、例えば推測的に定められるテンプレートの特徴点の一部又はサブセットによって定められるサブテンプレートに基づく、迅速な検索方法を用いて実行され、最初の比較は、カメラ22にて取り込まれて到来する画像内のサブテンプレートを検索するために実行され、次に、テンプレート全体が、サブテンプレートとの一致度の高い点でのみ検索される。
【0043】
上述の形状マッチング技術のさらなる例として、画像内の直線、例えば垂直線を認識するため、ハフ変換を適用することができ、実際に、その古典的な形式において、ハフ変換は画像の線の認識を可能にし、3次元点群の場合にも適用されるよう一般化することができ、したがってライダーによって生成/取り込まれる3Dフレームにも適用することができる。この変換を適用した後、車両の進行方向に平行移動する撮像画像に見られる線の対は、識別及び/又は選択される。
【0044】
前述の情報抽出動作の終了時に、DSP及び/又は制御ユニット16は、取り込まれた画像における架線の有無を確証している。実際には、装置20のDSP及び/又は制御ユニット16で実行されるソフトウェアは、検出された画像を分析することが可能であり、特に、検出された線及び/又は線の対を識別し、したがって、導体ケーブル14の有無を認識することを可能にする。
【0045】
好ましくは、図2に示すように、制御ユニット16は、情報を受信及び/又は提供するために制御パネル5と通信する。
【0046】
したがって、制御部16は、上述した条件が判定されると、装置12と通信してパンタグラフ10の昇降を制御し、降下時には、ユニット16は、付加的電源15により電気駆動モータ8を動作させるため、電源を切り替える。さらに、制御部16は、好ましくは、装置12の一部を構成する適切なセンサ(図示せず)から、パンタグラフ10の状態/位置に関する信号を受信する。
【0047】
したがって、制御部16は、
・例えば、装置12の前記センサから提供される信号により、パンタグラフ10の位置が下降しているか又は上昇しているかを判定する。
・導体ケーブル14の存在/不存在に基づいて装置20から情報を受信するために、架線監視を起動する。
・必要に応じて、車両1の進行方向に基づいて、デバイス20の2つのDSPによって受信された情報を識別する(例えば、進行方向に関する情報は、操作しようとする制御パネル5を制御する運転手によって、暗示的に提供され得る)。
・導体ケーブル14の存在/不存在の検出及びパンタグラフ10の実際の位置の検出に基づいて、パンタグラフ10の位置を変更又はそのまま維持し、特に、制御部16は、図3のブロック図に示す処理を実行するように構成されている。
・パンタグラフ10が下降した場合には、付加的電源15を介して電気駆動モータ8に給電する指令を送信する。
【0048】
この処理では、画像処理が経路の次の数メートルにおける架線14の不変性を示し、パンタグラフ10が既に上昇している場合には、パンタグラフ10を移動させる必要はなく、したがって、電源を切り替える必要はない。
【0049】
パンタグラフ10が上昇した状態で車両1が電化区間に沿っている際に、画像処理が経路の次の数メートルに架線が存在しないことを示す場合、制御部16は、パンタグラフ10を下降させて装置12を制御する。
【0050】
パンタグラフ10が下降したままで車両1が非電化区間にある(及び、特に、付加的電源15によって電気的駆動モータが給電されている)際に、画像処理が経路の次の数メートルにおける架線の存在を示す場合、制御ユニット16は、パンタグラフ10を上昇させるように装置12を制御し、次いで、導体ケーブル14から取り出されたエネルギーによって電気駆動モータ8に給電する。
【0051】
最後に、画像処理が架線の不在を継続的に示し、パンタグラフ10が既に下降位置にある場合には、動作は必要とされない。
【0052】
以上から、本発明の制御システム18は、経路の開始時に、これら下降/上昇動作を行う必要がある地点において、運転手に通知することなく、自律的かつ自動的に電車のパンタグラフ10を下降/上昇させることができるようになっている。
【0053】
この結果は、伝統的な電車車両形態だけでなく、自動運転能力を有する車両(ドライバレス車両)の観点からも有利である。
【0054】
有利なことに、変形例によれば、制御システム18は、パンタグラフ10の位置を変更するための動作が必要な場合に、例えば制御パネル5を介して運転手に許可要求を送信することができ、この動作は、補助運転構成において、こうした許可を受信した後にのみ、制御システム18によって実際に実行される。
【0055】
図6の変形例では、好ましくは、車両1の近傍の架線導体ケーブル14の有無に関する情報を有することに加えて、制御ユニット16は、車両の位置(例えば、後述する装置20aなど)を検出及び/又は監視するための装置と通信する。
【0056】
装置20は、車両の位置を検出/監視する装置(20a)が、車両1が静止中である、及び/又は、線路に沿ってプログラムされた停止地点である、及び/又は、動作中だがパンタグラフを移動する必要のあるプログラムされた地点にあることを制御ユニット16に通信するための警告若しくは許可信号を送信するまで、待機モードにある。この許可信号に応じて、制御ユニット16は、装置20を起動し、及び/又は装置20から到来する情報の分析を開始する。図3の処理が完了すると、制御ユニット16は、次の停止地点又はプログラムされた地点に到達するまで、車両の位置を監視する装置(20a)と再び通信する、つまり、この新しい停止地点又はプログラムされた地点まで、装置20は待機モードに戻ることができる。
【0057】
この動作ロジックは、操作の安全レベルを増加させるため、パンタグラフ10の上昇に関して二重の許可手続として考慮されるべきである。他方で、パンタグラフ10の下降の場合、好ましくは、カメラ22は、架線導体ケーブル14の監視を継続し、2つの監視システム、すなわち、車両位置決め監視システム又は架線監視システムのうちの1つ以上によって許可が得られた際に、下降処理が起動される。
【0058】
図示されていない変形例によれば、カメラ22の代わりに、又はカメラ22と組み合わせて、装置20は、レーダー(無線検出及び測距)装置、又はライダー(光検出及び測距又はレーザーイメージング検出及び測距)装置を含むことができる。
【0059】
レーダー/ライダー装置を介して取得された情報の解析及び架線の有無の検証のためのアルゴリズムも、技術文献に知られている。
【0060】
ライダー装置は、走査された物体の距離及び反射率を測定することもできるので、1つ以上のライダー装置の使用は、カメラの使用に対して特に有利である。ライダー装置による検出の場合、ライダー装置はいわゆる「フレーム」列を取り込み、ライダー装置は、水平角度及び垂直角度によって定められる一定の視野(FOV)を用いてその前方場所を走査し、その結果は、カメラのような画素の配列ではなく、3次元空間(3Dフレーム)内の点群であり、各点はライダー装置からの相対距離及び/又は反射係数の相対値によって特徴付けられる。
【0061】
任意に、いわゆる点の間引きが実行され、すなわち、獲得された点を「抜き取り」するための技術が実施され、したがって、後の処理が簡略化される。
【0062】
ライダー装置の位置及び向きが与えられ、架線が理論上配置されるべき周辺空間内の領域を推測的に知ることによって、架線が配置されるべき近似理論距離が計算され、同様に、架線を構成する材料が既知であれば、架線自体を特徴付ける理論反射係数値を定めることが可能である。
【0063】
架線とライダー装置との間の理論的距離、及び/又は架線の理論反射率に関する情報は、ライダー装置によって実際に検出された距離及び/又は反射率データと比較される。検出され、かつ理論上の一つに近い距離、及び/又は理論上の一つに近い反射率を有するこれらの点は、潜在的に架線を表すこととなる一組の点を形成する。
【0064】
現在のところ、(上述したように文献で知られている)形状マッチングアルゴリズム、例えば、ハフ変換に基づく技術は、架線が実際に存在するか否かを確認するために進行方向を向いていて、処理された3Dフレーム内の(架線導体ケーブル14に類似する)糸状物体を検索する。
【0065】
図4の実施形態によれば、本発明の制御システム18は、装置20の検出に関するソフトウェア処理に基づいて架線の有無を判定する代わりに、2種類の情報に基づいて動作する。
・サービス開始時に設定された情報を備えた線路の認識(すなわち、架線割込みが発生する停止地点及び/又は位置に関する情報、言い換えれば、線路の電化区間と当該線路の非電化区間との間に変わり目がある箇所)、この情報は、車両に搭載された特別なメモリ(図示せず)に含まれている(又は、遠隔制御ユニットによって車両1の制御ユニット16に無線モードで通信される)。
・車両1上に搭載された位置検出及び/若しくは監視装置20aによって決定される(又は、遠隔制御ユニットによって制御ユニット16に無線モードで通信され、線路に沿って配置された適切なセンサによって確立される)、車両1の実際の位置検出。
【0066】
換言すれば、パンタグラフ10が上昇/下降されるべき線路の変わり目箇所の正確な位置を推測的に知ることにより、装置20によって架線を監視することは厳密には必要でなく、車両1の実際の位置を知ることで十分である。
【0067】
装置20aは、(例えば、運搬車6上に提供される)1つ以上の走行距離計31により送信される、及び/又は衛星ナビゲーター32により送信される、及び/又は(加速度計、ジャイロスコープ等を備えた)慣性プラットフォーム33により送信される1つ以上の信号に基づいて動作する。装置20aは、前述の信号に基づいて、線路に沿って車両1の位置を定めるようにプログラムされたDSP(デジタル信号処理部)を備える。
【0068】
制御ユニット16は、装置20a及び装置12と連動し、好ましくは、制御パネル5とも連動する。
【0069】
特に、制御ユニット16は、パンタグラフ10を昇降させる必要がある次の位置(例えば、停止地点)から車両1の距離を判定するように構成されている。図5に示すように、ユニット16は、線路上で予想される電力変動の種類を示す情報(架線から電池又はその逆)と共に、この位置に到達したことを判定し、制御ユニット16は装置12を適切に制御する。したがって、制御ユニット16は、図5のブロック図を実現する役割を果たす。
【0070】
換言すれば、制御ユニット16は、線路に関して推測的に決定された情報(例えば、架線が存在する区間と架線14が存在しない区間との間の変わり目が予想される位置、及び/又はパンタグラフ10が上昇/降下される停止地点の位置)を受信し、車両1の実際の位置に関する情報を装置20aから受信し、2つの情報を比較して、その結果としてパンタグラフ10を上昇/下降させるように装置12を起動する。
【0071】
また、制御ユニット16は、動作が完了した後、確認メッセージを制御パネル5に送信する。
【0072】
図4を参照して、衛星ナビゲーター32は、一般に、車両1の位置の継続監視を保証するのに十分ではなく、その理由は、全線(例えば、トンネル通過のため)に対する衛星保証及び/又は衛星信号受信保証がない場合があるからである。したがって、装置20aはまた、慣性プラットフォーム33及び走行距離計31によって検出された情報を利用する。これら3つの検出系(衛星ナビゲーター、慣性プラットフォーム、走行距離計)によって検出された情報は、当該情報を相関させ、かつ車両1の実際の位置に関する情報に関して正確な総合結果を得るため、文献にて知られている、適切なデータ融合アルゴリズムを実装するDSPに送られる。
【0073】
図示されていない別の変形例によれば、制御ユニット16は、制御パネル5に許可要求を送信し、運転手から対応する許可を受信した後にのみ、装置12の作動を制御する。
【0074】
いつ、どこでパンタグラフ10を昇降する必要があるかを決定するために、運転者がこの決定に介入することなく、提供される制御システム18の利点は、上記から明らかである。
【0075】
特に、装置20、及び/又は装置20a及び/又は線路に関連するデータを含む基板上に配置されたメモリにより、外部から信号及び/又は情報を車両1に送信することを回避することができ、したがって、データ及び前記情報の送信における欠陥によるリスクを回避する。装置12を制御する必要があるかどうかを決定するのは制御ユニット16であることから、装置20及び/又は装置20aは、制御ユニット16にパンタグラフ10を上昇/下降させる必要性の確実な指示を提供し、運転手による決定又は解釈は不要である。さらに、装置12は、運転手による許可又は検証の必要性がなくても、制御ユニット16によって制御され得る。
【0076】
しかも、上記の解決策は、コスト及び搭載される部品数の観点から特に負担とはならない。
【0077】
最後に、上記から明らかなように、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の保護の範囲から逸脱することなく、添付の図面を参照して上記の車両1に修正及び変更を行うことができることは明らかである。
【0078】
特に、本発明の制御システム18は、電車だけでなく、架線なしの区間(例えば、都市部)に沿って移動しなければならない列車にも適用することができる。
【0079】
また、本発明は、パンタグラフの昇降だけでなく、(架空電化線の代わりに)地上に載置された電化軌道から電気エネルギーを取り出すために設けられた集電靴の移動にも適用することができ、これは導体ケーブル14と同じ技術的機能を果たす。換言すれば、パンタグラフ及び集電靴は、両方とも、エネルギーを取り出すための要素を定めており、これは、エネルギーを取り出すための要素が通電ラインの導体と接触する第1位置と、前記導体が設けられた位置から離間している第2位置との間で移動可能である(特に高さ移動が可能、つまり上げ下げできる)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-07-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
そのうえ、特許文献1は、パンタグラフが架線から分離されているときに安全対策を提供しない、というのは、この分離は時たまにかつ緊急状態で実行されるからである。
特許文献2は、請求項1の前提に対応し、車両運転手がパンタグラフを上昇することを要求する解決策を開示する。この要求の後、レーダーセンサは、車両の上方に架空線があるかどうかを確認する。この確認で肯定的な結果が得られた場合、架線と接触するまで、パンタグラフを上昇させることが可能になる。レーダーセンサによって架空線の存在が検出されない場合、パンタグラフの上昇が阻止される。
特許文献3は、鉄道網内の列車の位置を特定する方法を開示している。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
【特許文献1】ドイツ国特許公開第19940350号
【特許文献2】欧州特許出願第3115253(A2)号
【特許文献3】ドイツ国特許出願公開第102012209311(A1)号
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
本発明によれば、独立請求項1及び13に記載の鉄道車両提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0027
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0027】
図1から図3を再び参照すると、検出装置20は、架線が提供されている位置又は空間に向かって、適切な制御ロジックにより、この空間を視覚的に監視し、その結果として導体ケーブル14の有無を確認することができるように、上方かつ前方に(車両1の端部を越えて)向けられた1つ以上のカメラ22を備え、以下で詳細に説明される。
【手続補正5】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両(1)であって、
電気駆動モータ(8)と、
エネルギーを取り出すための要素(10)であって、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、電気エネルギーを引き出してこの電気エネルギーを前記電気駆動モータに供給するために、電化線の導体要素(14)と接触して協働するのに適する第1位置と、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、前記導体要素(14)が設けられている位置から離間している第2位置と、の間を移動可能である、エネルギーを取り出すための要素(10)と、
付加的電気エネルギー源(15)と、
前記第1位置と前記第2位置との間でエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる移動装置(12)と、
前記移動装置(12)を制御し、結果としてエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる制御システム(18)と、を備え、
前記制御システム(18)は、
車上に配置され、1つ以上の検出器を備える第1検出装置(20)であって、前記検出器は、カメラ、ライダー装置、レーダー装置の1つにより定められ、かつ、使用時に、空間内に存在し得る物体に関するデータを検出して提供するように、経路に沿って前記導体要素(14)が設けられる前記空間に向けられた、第1検出装置(20)と、
前記検出器によって検出及び提供されたデータに応じて前記移動装置(12)を制御するように構成されている1つ以上の制御ユニット(16)と、を備え、
前記制御システムは、前記データから開始して、前記車両1の経路に沿って前記車両1の近傍の前記導体要素(14)の有無を判定するように構成されている処理手段を備え、前記制御ユニット(16)は、前記処理手段によって判定された前記導体要素(14)の有無に応じて前記移動装置(12)を制御するように構成され、かつ、エネルギーを取り出すための前記要素(10)が前記第2位置にあるときに前記付加的電源(15)によって前記電気駆動モータ8に給電するように構成され、
前記検出器は、前記車両(1)の端部を越えて上方及び前方に向いており、
前記制御部(16)は、前記第1位置に配置されたエネルギーをピックアップするための前記要素(10)を有する経路の電化区間に前記車両(1)が沿っているときに、前記処理手段が経路の次の数メートルにおける前記導体要素(14)の不存在を示す場合、前記移動装置(12)を制御してエネルギーをピックアップするための前記要素(10)を前記第2位置に移動させるように構成されていることを特徴とする、鉄道車両(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(16)は、前記車両が静止又は惰行しているときに、エネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させるように前記移動装置(12)を制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記検出器は、カメラ(22)により定められ、前記第1検出装置(20)は、前記空間に向けられた1つ以上の照明装置(24)を備え、前記空間において、使用時に、前記導体要素が前記経路に沿って設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
前記第1検出装置(20)は、前記カメラ(22)によって取り込まれた画像に応じて前記照明装置(24)を調整するように構成されている第1プロセッサを備えることを特徴とする、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記検出器は、3Dフレームを検出するライダー装置により定められることを特徴とする、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項6】
前記制御ユニット(16)は、第1許可及び第2許可の存在下で、エネルギーを取り出すための前記要素の前記第1位置への移動を制御するように構成され、前記第1許可は前記車両1の実際の位置を示す情報に基づいており、前記第2許可は前記検出器によって検出及び供給されたデータに基づいていることを特徴とする、請求項1-5のいずれか1項に記載の車両。
【請求項7】
前記制御ユニット(16)は、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)の位置を示す信号を受信し、
前記信号に応じて前記移動装置(12)を制御することを特徴とする、請求項1-6のいずれか1項に記載の車両。
【請求項8】
前記処理手段は、形状マッチング技術を実装することによって前記導体要素(14)の有無を判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1-7のいずれか1項に記載の車両
【請求項9】
前記処理手段は、
カメラ画像内又はライダー装置の3Dフレーム内の直線を認識するためにハフ変換を適用すること、並びに、
前記画像又は前記3Dフレームにおいて認識される平行な直線の対を特定すること及び/又は選択すること、により前記導体要素(14)の有無を判定するように構成されていることを特徴とする、請求項1-8のいずれか1項に記載の車両。
【請求項10】
前記第1検出装置は、前記車両の頭部及び尾部にそれぞれ配置され、かつ略反対方向に向けられた2つの検出器を備え、前記制御部は、前記車両の進行方向に応じて、前記2つの検出器のどちらか一方から受信した情報を処理するように構成されていることを特徴とする、請求項1-9のいずれか1項に記載の車両。
【請求項11】
前記制御システム(18)は、車上に配置され、前記経路に沿って前記車両1の実際の位置を決定し、かつ対応する情報を前記制御ユニット(16)に提供するように構成されている第2検出装置(20a)を備えることを特徴とする、請求項1-10のいずれか1項に記載の車両。
【請求項12】
前記第2検出装置(20a)は、
衛星ナビゲーター(32)と、
慣性プラットフォーム(33)と、
走行距離計(31)と、
前記衛星ナビゲーター(32)、前記慣性プラットフォーム(33)及び前記走行距離計(31)によって提供される情報を相関させ、その結果として前記車両1の実際の位置に関する全体の情報を得るように構成されている第2プロセッサと、
を備えることを特徴とする、請求項11に記載の車両。
【請求項13】
鉄道車両(1)であって、
電気駆動モータ(8)と、
エネルギーを取り出すための要素(10)であって、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、電気エネルギーを引き出してこの電気エネルギーを前記電気駆動モータに供給するために、電化線の導体要素(14)と接触して協働するのに適する第1位置と、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が、使用時に、前記導体要素(14)が設けられている位置から離間している第2位置と、の間を移動可能である、エネルギーを取り出すための要素(10)と、
付加的電気エネルギー源(15)と、
前記第1位置と前記第2位置との間でエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる移動装置(12)と、
前記移動装置(12)を制御し、結果としてエネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させる制御システム(18)と、を備え、
前記制御システム(18)は、1つ以上の制御ユニット(16)であって、
経路に沿って前記車両1の実際の位置に関する情報を受信し、
前記情報に応じて前記移動装置(12)を制御する、制御ユニット(16)を備え、
前記制御ユニット(16)は、
エネルギーを取り出すための前記要素(10)が前記経路に沿って前記導体ケーブル(14)の有無により移動する必要がある所定位置、を示す記憶情報と、前記情報とを比較し、
前記所定位置の1つに到達した場合に前記移動装置(12)を制御し、
エネルギー(10)を取り出すための前記要素が前記第2位置にあるときに前記付加的電源(15)によって前記電気駆動モータ8に給電するよう、構成されていることを特徴とする、鉄道車両(1)。
【請求項14】
前記制御ユニット(16)は、前記車両が静止又は惰行しているときに、エネルギーを取り出すための前記要素(10)を移動させるように前記移動装置(12)を制御するよう構成されていることを特徴とする、請求項13に記載の車両。
【請求項15】
前記制御システム(18)は、車上に配置され、前記経路に沿って前記車両1の実際の位置を決定し、かつ対応する情報を前記制御ユニット(16)に提供するように構成されている第2検出装置(20a)を備え、前記第2検出装置(20a)は、
衛星ナビゲーター(32)と
慣性プラットフォーム(33)と、
走行距離計(31)と、
前記衛星ナビゲーター(32)、前記慣性プラットフォーム(33)及び前記走行距離計(31)によって提供される情報を相関させ、その結果として車両1の実際の位置に関する全体の情報を得るように構成されている第2プロセッサを備える、
ことを特徴とする、請求項13又は14のいずれか1項に記載の車両。
【国際調査報告】