(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】マルチレーザ装置およびマルチレーザ装置用のハウジングキャップ
(51)【国際特許分類】
H01S 5/02208 20210101AFI20230518BHJP
H01S 5/02257 20210101ALI20230518BHJP
【FI】
H01S5/02208
H01S5/02257
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022558415
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2021060213
(87)【国際公開番号】W WO2021214040
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】102020110658.0
(32)【優先日】2020-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ローベアト ヘットラー
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ キースル
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ ガプラー
(72)【発明者】
【氏名】ライナー グラフ
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA10
5F173MC01
5F173MC30
5F173MD64
5F173ME03
5F173ME22
5F173ME33
5F173ME63
5F173ME86
(57)【要約】
本発明は、複数のレーザを備えたマルチレーザ装置、かかるマルチレーザ装置用のハウジングキャップ、およびハウジングキャップの製造方法に関する。この場合、ハウジングキャップは、上部壁と、この上部壁と一体的に形成され下縁部で終端する側壁と、電磁放射を貫通させるための開口部と、を有し、さらにこの場合、側壁は、この側壁の表面に対し垂直方向で測定された第1の厚さと、下縁部において、特に同じ方向で、測定された第2の厚さと、を有し、この第2の厚さは、第1の厚さよりも薄いかまたは等しい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレーザ装置(1)、特にRGBレーザモジュールであって、前記マルチレーザ装置(1)は、
底板(4)と、前記底板(4)上に取り付けられたハウジングキャップ(3)と、を備えたハウジング(2)と、
複数のレーザ、特に赤色スペクトル領域で放射する第1のレーザ(6)、緑色スペクトル領域で放射する第2のレーザ(7)および青色スペクトル領域で放射する第3のレーザ(8)と、
を含み、
前記ハウジングキャップ(3)は、少なくとも1つの開口部(13)を含み、前記開口部(13)は、電磁放射を貫通させるために前記開口部に配属された透明部材(14)を備えており、
前記レーザは、それぞれ前記ハウジング(2)内部で、前記底板(4)の底面(9)に対し離間されて、好ましくは台座(5)上に配置されており、
前記ハウジング(2)の前記ハウジングキャップ(3)は、上部壁(100)と、前記上部壁と一体的に形成された側壁(200)と、を含み、前記側壁(200)は、前記底板(4)上に取り付けられた下縁部(201)で終端しており、
前記側壁(200)は、前記側壁(200)の表面に対し垂直方向で測定された第1の厚さ(d1)と、前記下縁部(201)において、特に同じ方向で、測定された第2の厚さ(d2)と、を有し、前記第2の厚さ(d2)は、前記第1の厚さ(d1)よりも薄いかまたは等しい、
マルチレーザ装置(1)。
【請求項2】
前記側壁は、前記下縁部において前記ハウジングキャップの内面上に、外側に曲げられた表面(202)を有し、特に、前記側壁の厚さが前記側壁の最下部位置に向かうにつれて次第に薄くなるようにし、かつ/または、
前記側壁は、前記下縁部において外面上に突出部なく形成されているか、または突出部(203)を有し、前記突出部(203)は、好ましくは前記第1の厚さよりも薄く、特に好ましくは前記第1の厚さの半分よりも薄く、さらに好ましくは前記第1の厚さの4分の1よりも薄い、
請求項1記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項3】
前記側壁の前記下縁部は、以下のように前記底板に取り付けられており、すなわち前記側壁の前記下縁部と前記底板との間に、特に、前記側壁の前記第1の厚さまたは前記第2の厚さの方向に沿って、前記側壁の前記第1の厚さまたは前記第2の厚さよりも短い領域にわたり、接合材料(300)が取り込まれるように、前記底板に取り付けられており、かつ/または、
前記側壁の前記下縁部は、以下のように前記底板に取り付けられており、すなわち前記ハウジングキャップの内面上で外側に曲げられた前記表面(202)と前記底板との間に、接合材料(301)が取り込まれるように、特に、前記接合材料(301)が前記ハウジングキャップの内面において、前記側壁の前記下縁部と前記底板との間よりも高く前記底板から突出するように、前記底板に取り付けられており、かつ/または、
前記側壁の前記下縁部は、以下のように前記底板に取り付けられている、すなわち前記側壁の外面と前記底板との間に、例えば前記突出部(203)と前記底板との間に、接合材料(303)が取り込まれるように、特に、前記接合材料(301)が前記ハウジングキャップの外面において、前記側壁の前記下縁部と前記底板との間よりも高く前記底板から突出するように、前記底板に取り付けられている、
請求項1または2記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項4】
前記側壁は、前記下縁部においてテーパ化されており、特に上縁部から前記下縁部に向かって延在する方向に沿ってテーパ化されており、かつ/または、
前記下縁部において測定された前記側壁の前記第2の厚さは、前記側壁の前記第1の厚さよりも少なくとも5%薄く、好ましくは少なくとも10%薄く、特に好ましくは少なくとも15%薄く、さらに好ましくは少なくとも20%薄く、または前記側壁の前記第1の厚さよりも少なくとも25%薄く、または少なくとも30%薄い、
請求項1から3までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項5】
前記下縁部において測定された前記第2の厚さは、前記側壁の最下部位置における前記側壁の厚さと一致し、かつ/または、
前記側壁の表面に対し垂直方向で測定された前記側壁の前記第1の厚さは、前記上部壁に隣接する位置における前記側壁の厚さと一致し、前記上部壁と前記下縁部との間に存在する位置における、特に前記上部壁と前記下縁部との間の25~75%の領域に存在する位置における、前記側壁の厚さと一致し、かつ/または、前記側壁の平均厚さと一致する、
請求項1から4までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項6】
前記下縁部において測定された前記側壁の前記第2の厚さは、前記側壁の前記第1の厚さと同じ方向で測定されており、または前記方向から45°よりも僅かにしか、25°よりも僅かにしか、または10°よりも僅かにしか、異なっていない方向で測定されており、かつ/または、
前記下縁部において測定された前記側壁の前記第2の厚さは、前記上部壁の表面および/または前記底板の前記底面に対し実質的に平行に延在する方向で測定されており、または前記方向から45°よりも僅かにしか、25°よりも僅かにしか、または10°よりも僅かにしか、異なっていない方向で測定されている、
請求項1から5までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項7】
前記ハウジングキャップは、特に4つの平坦な側壁を備えた側方周壁として、前記上部壁と一体的に形成された側壁が形成されるように、ハット型に形成されており、かつ/または、
前記ハウジングキャップの前記少なくとも1つの開口部は、前記側壁内または1つの側壁内に配置されており、かつ/または、
好ましくは複数の開口部は、好ましくは前記レーザの個数に応じて、前記側壁内または1つの側壁内に設けられており、特に好ましくは3つの開口部が設けられている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの開口部は、特に前記複数の開口部各々は、前記上部壁から前記下縁部に向かう方向に沿って、前記方向に対し垂直に前記側壁内で延在する方向に沿った広がりよりも大きい広がりを有し、かつ/または、
前記少なくとも1つの開口部は、特に前記複数の開口部各々は、前記上部壁から前記下縁部に向かう方向に沿って主軸を有する楕円形状である、
請求項1から7までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項9】
前記ハウジングキャップは、前記少なくとも1つの開口部に配属された透明部材を含み、
前記透明部材は、前記少なくとも1つの開口部を気密に封止するために、好ましくは接合材料によって、前記少なくとも1つの開口部を含む前記側壁に取り付けられており、
前記透明部材は、好ましくは一体型部品として、前記複数の開口部各々を気密に封止する、
請求項1から8までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項10】
前記透明部材は、前記ハウジングキャップの外面上に、特に前記側壁または1つの側壁の外面上に、特に前記少なくとも1つの開口部を含む側壁の外面上に、特に接合材料によって取り付けられており、
前記透明部材は、好ましくは前記側壁の表面に対し斜めに取り付けられており、特に、前記透明部材が前記側壁の前記下縁部に向かうにつれて、前記側壁からいっそう大きい間隔を有するように、斜めに取り付けられており、
前記透明部材は、好ましくは前記下縁部において前記側壁の外面上に形成された前記突出部上に取り付けられており、特にこれによって前記側壁の表面に対し斜めに位置している、
請求項1から9までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項11】
前記ハウジングキャップの前記上部壁は、前記上部壁の表面に対し垂直方向で測定された厚さを有し、前記厚さは、前記側壁の前記第1の厚さよりも薄く、特に少なくとも10%薄く、または少なくとも20%薄く、または少なくとも30%薄く、かつ/または、
前記ハウジングキャップの前記上部壁は、前記上部壁の表面に対し垂直方向で測定された厚さを有し、前記厚さは、前記側壁の前記第2の厚さよりも薄く、特に少なくとも10%薄く、または少なくとも20%薄く、または少なくとも30%薄い、
請求項1から10までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項12】
前記上部壁および前記上部壁と一体的に形成された前記側壁は、金属を含むかまたは金属から成り、かつ/または、
前記底板は、セラミックを含むかまたはセラミックから成り、あるいは金属を含むかまたは金属から成り、かつ/または、
前記透明部材は、ガラスまたはサファイアを含み、あるいはガラスまたはサファイアから成り、かつ/または、光学的コーティングが好ましくは反射防止層を有する、
請求項1から11までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置(1)。
【請求項13】
特に請求項1から12までのいずれか1項記載の、マルチレーザ装置用のハウジングキャップであって、前記ハウジングキャップは、
上部壁と、前記上部壁と一体的に形成され下縁部で終端する側壁と、電磁放射を貫通させるための開口部と、を含み、
前記側壁は、前記側壁の表面に対し垂直方向で測定された第1の厚さと、前記下縁部において、特に同じ方向で、測定された第2の厚さと、を有し、前記第2の厚さは、前記第1の厚さよりも薄いかまたは等しい、
マルチレーザ装置用のハウジングキャップ。
【請求項14】
前記側壁は、前記下縁部において前記ハウジングキャップの内面上に、外側に曲げられた表面を有し、特に、前記側壁の厚さが前記側壁の最下部位置に向かうにつれて次第に薄くなるようにし、かつ/または、
前記側壁は、前記下縁部において外面上に突出部なく形成されているか、または突出部を有し、前記突出部は、好ましくは前記第1の厚さよりも薄く、特に好ましくは前記第1の厚さの半分よりも薄く、さらに好ましくは前記第1の厚さの4分の1よりも薄い、
請求項13記載のハウジングキャップ。
【請求項15】
前記側壁は、前記下縁部においてテーパ化されており、特に上縁部から前記下縁部に向かって延在する方向に沿ってテーパ化されており、かつ/または、
前記下縁部において測定された前記側壁の前記第2の厚さは、前記側壁の前記第1の厚さよりも少なくとも5%薄く、好ましくは少なくとも10%薄く、特に好ましくは少なくとも15%薄く、さらに好ましくは少なくとも20%薄く、または前記側壁の前記第1の厚さよりも少なくとも25%薄く、または少なくとも30%薄い、
請求項13または14記載のハウジングキャップ。
【請求項16】
前記下縁部において測定された前記第2の厚さは、前記側壁の最下部位置における前記側壁の厚さと一致し、かつ/または、
前記側壁の表面に対し垂直方向で測定された前記側壁の前記第1の厚さは、前記上部壁に隣接する位置における前記側壁の厚さと一致し、前記上部壁と前記下縁部との間に存在する位置における、特に前記上部壁と前記下縁部との間の25~75%の領域に存在する位置における、前記側壁の厚さと一致し、かつ/または、前記側壁の平均厚さと一致する、
請求項13から15までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項17】
前記下縁部において測定された前記側壁の前記第2の厚さは、前記側壁の前記第1の厚さと同じ方向で測定されており、または前記方向から45°よりも僅かにしか、25°よりも僅かにしか、または10°よりも僅かにしか、異なっていない方向で測定されており、かつ/または、
前記下縁部において測定された前記側壁の前記第2の厚さは、前記上部壁の表面に対し実質的に平行に延在する方向で測定されており、または前記方向から45°よりも僅かにしか、25°よりも僅かにしか、または10°よりも僅かにしか、異なっていない方向で測定されている、
請求項13から16までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項18】
前記ハウジングキャップは、特に4つの平坦な側壁を備えた側方周壁として、前記上部壁と一体的に形成された側壁が形成されるように、ハット型に形成されており、かつ/または、
前記ハウジングキャップの前記少なくとも1つの開口部は、前記側壁内または1つの側壁内に配置されており、かつ/または、
好ましくは複数の開口部は、前記側壁内または1つの側壁内に設けられており、好ましくは3つの開口部が設けられている、
請求項13から17までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの開口部は、特に前記複数の開口部各々は、前記上部壁から前記下縁部に向かう方向に沿って、前記方向に対し垂直に前記側壁内で延在する方向に沿った広がりよりも大きい広がりを有し、かつ/または、
前記少なくとも1つの開口部は、特に前記複数の開口部各々は、前記上部壁から前記下縁部に向かう方向に沿って主軸を有する楕円形状である、
請求項13から18までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項20】
前記ハウジングキャップは、前記少なくとも1つの開口部に配属された透明部材を含み、
前記透明部材は、前記少なくとも1つの開口部を気密に封止するために、好ましくは接合材料によって、前記少なくとも1つの開口部を含む前記側壁に取り付けられており、
前記透明部材は、好ましくは一体型部品として、前記複数の開口部各々を気密に封止する、
請求項13から19までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項21】
前記透明部材は、前記ハウジングキャップの外面上に、特に前記側壁または1つの側壁の外面上に、特に前記少なくとも1つの開口部を含む側壁の外面上に、特に接合材料によって取り付けられており、
前記透明部材は、好ましくは前記側壁の表面に対し斜めに取り付けられており、特に、前記透明部材が前記側壁の前記下縁部に向かうにつれて、前記側壁からいっそう大きい間隔を有するように、斜めに取り付けられており、
前記透明部材は、好ましくは前記下縁部において前記側壁の外面上に形成された前記突出部上に取り付けられており、特にこれによって前記側壁の表面に対し斜めに位置している、
請求項13から20までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項22】
前記ハウジングキャップの前記上部壁は、前記上部壁の表面に対し垂直方向で測定された厚さを有し、前記厚さは、前記側壁の前記第1の厚さよりも薄く、特に少なくとも10%薄く、または少なくとも20%薄く、または少なくとも30%薄く、かつ/または、
前記ハウジングキャップの前記上部壁は、前記上部壁の表面に対し垂直方向で測定された厚さを有し、前記厚さは、前記側壁の前記第2の厚さよりも薄く、特に少なくとも10%薄く、または少なくとも20%薄く、または少なくとも30%薄い、
請求項13から21までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項23】
前記上部壁および前記上部壁と一体的に形成された前記側壁は、金属を含むかまたは金属から成り、かつ/または、
前記透明部材は、ガラスまたはサファイアを含み、あるいはガラスまたはサファイアから成り、かつ/または、光学的コーティングが好ましくは反射防止層を有する、
請求項13から22までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項24】
前記上部壁および前記上部壁と一体的に形成された前記側壁は、深絞り加工プロセスによって製造されているかまたは製造可能である、
特に請求項13から23までのいずれか1項記載のハウジングキャップ。
【請求項25】
特に請求項13から24までのいずれか1項記載の、ハウジングキャップを製造する方法であって、前記方法は、
特に金属を含むかまたは金属から成る、平坦な出発材料を準備するステップと、
好ましくは、1つまたは複数の、特に丸い、開口部を前記平坦な出発材料に作り込むステップと、
上部壁と、前記上部壁と一体的に形成された側壁と、を備えたハウジングキャップが生じるように、特に、前記1つまたは複数の開口部が楕円状の開口部として、1つの側壁内に配置されているように、かつ/または、前記上部壁が前記側壁よりも薄い厚さを有するように、前記平坦な出発材料を深絞り加工するステップと、
前記側壁が、前記側壁の表面に対し垂直方向で測定された第1の厚さと、下縁部において、特に同じ方向で、測定された第2の厚さと、を有し、前記第2の厚さが前記第1の厚さよりも薄いかまたは等しくなるように、前記下縁部において前記側壁を切断するステップと、
好ましくは透明部材を、前記開口部を気密に封止するために、特に前記透明部材が前記側壁の表面に対し斜めに位置するように、好ましくは接合材料によって、前記少なくとも1つの開口部を含む前記側壁に取り付けるステップと、
を含む、
方法。
【請求項26】
請求項1から12までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置および/または請求項13から24までのいずれか1項記載のハウジングキャップを含むヘッドマウントディスプレイ、特にARメガネまたはメガネ。
【請求項27】
請求項1から12までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置および/または請求項13から24までのいずれか1項記載のハウジングキャップを含むヘッドアップディスプレイ。
【請求項28】
請求項27記載のヘッドアップディスプレイを含むオートバイ用ヘルメット。
【請求項29】
請求項1から12までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置および/または請求項13から24までのいずれか1項記載のハウジングキャップを含むプロジェクタ。
【請求項30】
請求項1から12までのいずれか1項記載のマルチレーザ装置および/または請求項13から24までのいずれか1項記載のハウジングキャップを含むモバイル機器のプロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチレーザ装置、特にRGBレーザモジュール、ならびにかかるマルチレーザ装置用のハウジングキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチレーザ装置は特に、拡張現実(AR)もしくは仮想現実(VR)を再生するための製品において、例えばARメガネまたはVRメガネにおいて、使用される。マルチレーザ装置は、ユーザの網膜上に画像を投影可能な複数のレーザを有する部品である。その際に多くの場合には3つのエッジエミッタ型レーザ(EEL)が使用され、この場合、これらのレーザのうちの1つが赤色波長領域で放射し、1つが緑色波長領域で放射し、さらに1つが青色波長領域で放射する。
【0003】
これら3つのレーザは、信頼性の高い耐久性を顧慮して、有利には気密封止されたハウジング内に、特に湿気を排除するために、封入される。とりわけ青色レーザダイオードは典型的には、所望の耐久性を実現するために、かかるハウジングを必要とする。
【0004】
AR製品またはVR製品、特にARメガネまたはVRメガネに対するユーザの要求は、従来の製品もしくはメガネとは区別できないかまたはほとんど区別できない目立たない外観、できるかぎり高い装着快適性、ならびに品質的に高価値の画像である。このため、マルチレーザ装置の小型化、軽量化および最適化がますます望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
よって、本発明の基礎を成す課題は、小型化、軽量化および/または画像の最適化を実現するマルチレーザ装置、特にRGBレーザモジュール、かかるマルチレーザ装置用のハウジングキャップ、ならびにハウジングキャップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するため本発明によれば、ハウジングと、ハウジング内部に配置された複数のレーザと、を含むマルチレーザ装置、特にRGBレーザモジュール、が提供される。
【0007】
ハウジングは、底板と、この底板に取り付けられたハウジングキャップと、を含み、ハウジングキャップは、少なくとも1つの開口部を含み、この開口部は、電磁放射を貫通させるためにこの開口部に配属された透明部材を含む。
【0008】
レーザは特に、赤色スペクトル領域で放射する第1のレーザ、緑色スペクトル領域で放射する第2のレーザ、および青色スペクトル領域で放射する第3のレーザとして形成されている。
【0009】
レーザはそれぞれハウジング内部で、底板の底面に対し離間されて、好ましくは台座上に配置されている。レーザは、好ましくはエッジエミッタ型レーザ(EEL)として形成されている。
【0010】
ハウジングのハウジングキャップは、上部壁と、この上部壁と一体的に形成された側壁と、を含み、この側壁は、底板上に取り付けられた下縁部で終端している。
【0011】
さらに側壁は、この側壁の表面に対し垂直方向で測定された第1の厚さと、下縁部において、特に同じ方向で、測定された第2の厚さと、を有し、この第2の厚さは、第1の厚さよりも薄いかまたは等しい。
【0012】
これによって有利には、いっそう小さい構造形態を実現することができ、かつ/または下縁部における側方の張り出しを省くことができ、またはこれを最小化することができる。特に、対向部材(特に底板、例えばセラミック基板)上の金属化部の幅(パッド幅)を低減することができ、このことはユニットの小型化のために役立ち、もしくはハウジング内の構造空間を増大させる。
【0013】
1つの好ましい実施形態によれば、側壁は、下縁部においてハウジングキャップの内面上に、外側に曲げられた表面を有し、特に、側壁の厚さが側壁の最下部位置に向かうにつれて次第に薄くなるように構成されている。
【0014】
側壁を、下縁部において外面上に突出部なく形成することができ、または側壁は突出部を有することができ、この突出部は、好ましくは第1の厚さよりも薄く、特に好ましくは第1の厚さの半分よりも薄く、さらに好ましくは第1の厚さの4分の1よりも薄い。
【0015】
好ましくは、側壁の下縁部は、以下のように底板に取り付けられている。すなわち側壁の下縁部と底板との間に、特に、側壁の第1の厚さまたは第2の厚さの方向に沿って、側壁の第1の厚さまたは第2の厚さよりも短い領域にわたり、接合材料(例えば半田材料)が取り込まれるように、底板に取り付けられている。
【0016】
側壁の下縁部を、以下のように底板に取り付けることができる。すなわちハウジングキャップの内面上で外側に曲げられた表面と底板との間に、接合材料(例えば半田材料)が取り込まれるように、特に、接合材料がハウジングキャップの内面において、側壁の下縁部と底板との間よりも高く底板から突出するように、底板に取り付けることができる。
【0017】
択一的にまたは付加的に、側壁の下縁部を、以下のように底板に取り付けることができる。すなわち側壁の外面と底板との間に、例えば突出部と底板との間に、接合材料が取り込まれるように、特に、接合材料がハウジングキャップの外面において、側壁の下縁部と底板との間よりも高く底板から突出するように、底板に取り付けることができる。
【0018】
側壁を、これが下縁部においてテーパ化されているように、特に上縁部から下縁部に向かって延在する方向に沿ってテーパ化されているように、形成することができる。
【0019】
好ましくは、下縁部において測定された側壁の第2の厚さを、側壁の第1の厚さよりも少なくとも5%薄くすることができ、好ましくは少なくとも10%薄く、特に好ましくは少なくとも15%薄く、さらに好ましくは少なくとも20%薄くすることができ、または側壁の第1の厚さよりも少なくとも25%薄く、または少なくとも30%薄くすることができる。
【0020】
下縁部において測定された第2の厚さを、側壁の最下部位置における側壁の厚さと一致させることができる。
【0021】
側壁の表面に対し垂直方向で測定された側壁の第1の厚さを、上部壁に隣接する位置における側壁の厚さと一致させることができ、かつ/または上部壁と下縁部との間に存在する位置における、特に上部壁と下縁部との間の25~75%の領域に存在する位置における、側壁の厚さと一致させることができ、かつ/または側壁の平均厚さと一致させることができる。
【0022】
下縁部において測定された側壁の第2の厚さは特に、側壁の第1の厚さと同じ方向で測定されており、または該方向から45°よりも僅かにしか、25°よりも僅かにしか、または10°よりも僅かにしか、異なっていない方向で測定されている。
【0023】
下縁部において測定された側壁の第2の厚さは特に、上部壁の表面および/または底板の底面に対し実質的に平行に延在する方向で測定されており、または該方向から45°よりも僅かにしか、25°よりも僅かにしか、または10°よりも僅かにしか、異なっていない方向で測定されている。
【0024】
1つの好ましい実施形態によれば、ハウジングキャップは、特に4つの平坦な側壁を備えた側方周壁として、上部壁と一体的に形成された側壁が形成されるように、ハット型に形成されている。
【0025】
ハウジングキャップの少なくとも1つの開口部は、好ましくは上記側壁内または1つの側壁内に配置されている。
【0026】
好ましくは複数の開口部が、好ましくはレーザの個数に応じて、上記側壁内または1つの側壁内に設けられており、特に好ましくは3つの開口部が設けられている。
【0027】
少なくとも1つの開口部は、特に複数の開口部各々は、好ましくは上部壁から下縁部に向かう方向に沿って、この方向に対し垂直に側壁内で延在する方向に沿った広がりよりも大きい広がりを有する。
【0028】
少なくとも1つの開口部を、特に複数の開口部各々を、特に上部壁から下縁部に向かう方向に沿って主軸を有する楕円形状とすることができる。
【0029】
ハウジングキャップは、少なくとも1つの開口部に配属された透明部材を含むことができる。この透明部材を、少なくとも1つの開口部を気密に封止するために、例えば接合材料によって、少なくとも1つの開口部を含む側壁に取り付けることができる。好ましくは、透明部材が一体型部品として複数の開口部各々を気密に封止する、というように構成することができる。
【0030】
1つの好ましい実施形態によれば、透明部材は、ハウジングキャップの外面上に、特に上記側壁または1つの側壁の外面上に、特に少なくとも1つの開口部を含む側壁の外面上に、特に接合材料(例えば半田材料、例えばガラス半田)によって取り付けられている。
【0031】
透明部材は、好ましくは側壁の表面に対し斜めに取り付けられており、特に、透明部材が側壁の下縁部に向かうにつれて、上部壁に向かうよりも側壁から大きい間隔を有するように、斜めに取り付けられている。
【0032】
これによって、放射光が透明部材のところで逆方向に1つまたは複数のレーザに戻るように反射するのを、極めて効果的に抑圧することができる。
【0033】
好ましくは透明部材を、下縁部において側壁の外面上に形成された突出部上に取り付けることができ、特にこれによって側壁の表面に対し斜めに位置させることができる。
【0034】
1つの好ましい実施形態によれば、ハウジングキャップの上部壁は、この上部壁の表面に対し垂直方向で測定された厚さを有し、この厚さは、側壁の第1の厚さよりも薄く、特に、側壁の第1の厚さよりも少なくとも10%薄く、または少なくとも20%薄く、または少なくとも30%薄い。
【0035】
これによって有利には、軽量化を達成することができ、かつ/または軽量構造を実現することができる。
【0036】
しかもハウジングキャップの上部壁は、この上部壁の表面に対し垂直方向で測定された厚さを有することができ、この厚さは、側壁の第2の厚さよりも薄く、特に、側壁の第2の厚さよりも少なくとも10%薄く、または少なくとも20%薄く、または少なくとも30%薄い。
【0037】
上部壁およびこの上部壁と一体的に形成された側壁は、金属を含むことができ、または金属から成るものとすることができる。
【0038】
底板は、セラミックを含むことができ、またはセラミックから成るものとすることができ、あるいは金属を含むことができ、または金属から成るものとすることができる。
【0039】
透明部材は、ガラスまたはサファイアを含むことができ、あるいはガラスまたはサファイアから成るものとすることができ、かつ/または光学的コーティングが特に反射防止層を有することができる。
【0040】
本発明はさらに、マルチレーザ装置用のハウジングキャップに関し、特にこれまでに説明したようなマルチレーザ装置用のハウジングキャップに関する。本発明によるハウジングキャップは特に、マルチレーザ装置に関連してこれまでに説明した特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0041】
さらに本発明は、ハウジングキャップの製造方法に関し、特にこれまでに説明したような、特にマルチレーザ装置に関連してこれまでに説明したような、ハウジングキャップの製造方法に関する。
【0042】
本発明による方法は以下のステップを含む。すなわち、特に金属を含むかまたは金属から成る、平坦な出発材料を準備するステップと、好ましくは、1つまたは複数の、特に丸い、開口部を平坦な出発材料に作り込むステップと、上部壁とこの上部壁と一体的に形成された側壁とを備えたハウジングキャップが生じるように、特に、1つまたは複数の開口部が楕円状の開口部として、1つの側壁内に配置されているように、かつ/または上部壁が側壁よりも薄い厚さを有するように、平坦な出発材料を深絞り加工するステップと、側壁が、この側壁の表面に対し垂直方向で測定された第1の厚さと、下縁部において、特に同じ方向で、測定された第2の厚さと、を有し、この第2の厚さが第1の厚さよりも薄いかまたは等しくなるように、下縁部において側壁を切断するステップと、好ましくは、透明部材を、開口部を気密に封止するために、特に透明部材が側壁の表面に対し斜めに位置するように、好ましくは接合材料によって、少なくとも1つの開口部を含む側壁に取り付けるステップと、を含む。
【0043】
最後に本発明は、これまでに説明したようなマルチレーザ装置、特にRGBレーザモジュール、を含む装置に関する。特に本発明は、以下の装置に関する。
【0044】
本発明は特に、これまでの説明によるマルチレーザ装置および/またはハウジングキャップを含むヘッドマウントディスプレイ、特にARメガネまたはメガネ、に関する。
【0045】
さらに本発明は、これまでの説明によるマルチレーザ装置および/またはハウジングキャップを含むヘッドアップディスプレイに関する。
【0046】
これに加え本発明は、これまでの説明によるヘッドアップディスプレイを含むオートバイ用ヘルメットに関する。
【0047】
しかも本発明は、これまでの説明によるマルチレーザ装置および/またはハウジングキャップを含むプロジェクタに関する。
【0048】
最後に本発明はさらに、これまでの説明によるマルチレーザ装置および/またはハウジングキャップを含むモバイル機器のプロジェクタにも関する。
【0049】
優先権を主張する独国特許出願第102020110658.0号明細書ならびに独国実用新案出願第202021102072.5号明細書は、ここで参照することにより本願に組み込まれるものとし、よって、これらが本明細書に含まれているかのように、本願の開示内容にも全面的に帰属するものとする。本明細書に組み込まれたこれらの文献の特徴は特に、一致した名称が存在する場合には、本明細書の枠内における特徴に対応するものである。
【0050】
したがって特にマルチレーザ装置は、
ハウジングキャップと底板とを備えたハウジングを含み、
ハウジングキャップに少なくとも1つの開口部が形成されており、この開口部は、電磁放射を貫通させるためにこの開口部に配属された透明部材を備え、
この場合、
可視スペクトルの特に赤色スペクトル領域で放射する第1のレーザと、
可視スペクトルの特に緑色スペクトル領域で放射する第2のレーザと、
好ましくは可視スペクトルの特に青色スペクトル領域で放射する第3のレーザと、が、
ハウジング内に配置されており、この場合、
ハウジングを通って個々のレーザまで電気導線が案内されており、
レーザの動作時に、このレーザの放射光の主要部分が透明部材を貫通して進み、
この場合、各レーザはそれぞれ、
i)好ましくは台座上に、
ii)底板の底面から離間されて配置されており、
iii)レーザはそれぞれ互いに整列させられており、この場合、
レーザ放射の主方向は、ハウジングの底板に対し実質的に平行に生じる。
【0051】
台座を使用することによって、ハウジング内にレーザを厳密に規定して配置することができ、さらにハウジングジオメトリを最適化することができ、特にその小型化を、レーザ放射の主要部分を有効光として同時に供給しながら行うことができる。レーザ光の主要部分とは、個々のレーザから透明部材の方向で放射を行うその端面を通って放射される光のうち、80%を超える割合、好ましくは85%を超える、最も好ましくは90%を超える割合のことであると解される。
【0052】
さらに台座は、そのサイズによっても規定される熱容量および比熱伝導率を有する材料を含むことができ、これによって個々のレーザを所期のようにその動作中に放熱させることができ、したがってそれらのレーザから所期のように熱を取り去ることができ、その際にその熱をハウジングの外部に放出させることができる。
【0053】
有利にはこのマルチレーザ装置の場合には、特に底板も関与させながら、個々のレーザを別個に電子制御することもでき、この場合、表示される色または強度次第では、つまり場合によっては表示される画像信号の輝度または色度次第では、すべてのレーザが同時には放射せず、しかもブランキングフェーズまたはダークフェーズ中はまったく放射がない状態となる可能性があり、この場合、ハウジング内において、個々のレーザ間の光学的相互作用がほとんど発生せず、その際に比較的強い放射であっても、つまりはレーザのうちの1つが電子的に最大レベルまで調整されても、それぞれ他のレーザのうちの1つと、特にそのレーザが例えばごく僅かな強度でしか放射していないときに、光学的相互作用には至らない。
【0054】
例えば、底板に対し垂直にビームを照射する半導体装置に対する利点として、特に僅かなスペースしか利用できない用途において、RGBレーザモジュールの組み込み性能が改善されることも挙げられる。なぜならばこの場合、支持を行うユニットとして底板を形成することができ、この底板は例えばさらに別の光学ユニットを、特にレーザから放射される光に対し調節された状態で、収容することができるからである。
【0055】
一般に本開示の枠内で、青色スペクトル領域として450nmから490nmまでの波長範囲が、緑色スペクトル領域として490nmを超えて560nmまでの波長範囲が、さらに赤色スペクトル領域として630nmから700nmまでの波長範囲が想定され、したがって本明細書で開示されているマイクロレーザ装置によって、仮想信号を表示させるために有利な色空間を提供することができる。
【0056】
択一的に、これらのレーザのうち2つ以上のレーザまたはすべてのレーザが、同じスペクトル領域で光を放射することもでき、例えばこれが有利になり得るのは、マルチレーザ装置が照明目的で使用される場合である。
【0057】
レーザ放射の主方向とは、本開示の枠内では、個々のレーザから放射されたレーザ光の光軸のことであると解され、または少なくとも、放射されたレーザ光の横方向強度分布の最大値に関連づけられた最大強度の伝播方向、つまりは横方向強度最大値の軸方向並進の方向のことであると解される。
【0058】
同義語として本開示の枠内では簡潔にするため、レーザ放射の主方向に対し主放射方向という言い回しも用いられる。
【0059】
レーザ放射の主方向がハウジングの底板に対し実質的に平行に生じる、という記載によって規定されるのは、レーザ放射のこの主方向が、底板または底面の下側表面により規定される平面から5°よりも大きく高くなっておらず、またはこの表面よりも下に5°よりも大きく傾斜していない、ということである。
【0060】
ハウジングキャップが金属を含み、または金属から成り、底板が金属を含み、または金属から成り、ハウジングキャップが底板と溶接により接合されていると、特に有利な装置が得られる。
【0061】
ここで「金属を含む」という記載によって開示しようとしているのは、例えば金属製のボディを非金属コーティングによって、例えば酸化物層またはラッカ、特に吸収性の強い艶消しラッカによって、部分的にまたは完全に覆うことができる、ということである。
【0062】
ハウジングキャップを底板に溶接または溶融によって接合することによって、マルチレーザ装置の連続動作耐性に関して格別な利点がもたらされる。その理由は、このようにしたならば、ハウジングキャップと底板との間において、例えば標準MIL-STD 883,Method 1014に適合した液密および気密の接合を提供することができるからである。
【0063】
かかるハウジングを半田付けする際に、例えばハウジングキャップを底板として好ましくは金属コーティングされたセラミック基板と半田付けする際に、ギ酸のようなフラックスが窒素雰囲気中または水素雰囲気中で用いられることが多く、それらの残留物が後でハウジング内に残り、それらはたとえ痕跡にすぎないとしてもすでに、青色スペクトル領域で放射を行う半導体レーザの半導体材料と相互作用し、この半導体材料を損傷させるおそれがある。
【0064】
このことは、本明細書で説明する実施形態の場合には当てはまらない。その理由は、この実施形態の場合には、例えば透明部材をハウジングキャップに最初に半田プロセスで取り付けることができ、その後で初めて、特にハウジングキャップの洗浄後に、底板との溶接プロセスを行うことができるからである。これによって保証することができるのは、ハウジング内の雰囲気中に含有量が5000ppm未満のH2Oしか存在しないこと、およびハウジングの気密設計によって部品の耐用年数全体にわたっても、いまのところまだ許容されているこの水の分圧を上回らないことであり、これは標準MIL883,Method 1018に適合している。
【0065】
台座が底板と一体的に形成されていれば、それによって製造技術的な利点がもたらされる。それというのもこのようにすれば、相応に成形された底板をすでに材料切削による表面加工処理またはスタンププロセスによって、低コストで供給することができるからである。
【0066】
とはいえ底板が、例えば冷間圧延された鋼であるCRS1010のような金属を含むか、またはこの金属から成り、台座が底板とは異なる材料、特に無酸素高伝導銅、OFHC,Oxygen-free high conductive Copper、から成るか、またはこの材料を含み、好ましくは台座が底板とプレス嵌め、半田付けまたは溶接されているならば、これによって、規定された有利な比熱伝導率を有する台座を提供することができ、その熱容量は、その構造寸法、その比熱容量によって、さらにその材料選定によってもたらされている。このようにすることで、個々のレーザの所期の放熱によって、効率的な温度管理が実現される。
【0067】
この場合、前述の材料の記載は単に例示的に挙げたにすぎず、その代わりに、例えばアルミニウム、鋼または特殊鋼、ならびにオーステナイト特殊鋼およびフェライト特殊鋼など、さらに別の材料であってもよいが、好ましくは、本発明を実施するにあたりそれらがステンレスのままである場合にかぎる。さらに基本的にチタンも、銅成分が多いモネル合金も使用することができるし、あるいはNiFe合金またはNiFeCo合金を含む可融合金も使用することができる。
【0068】
さらに別の有利な実施形態によれば、FACレンズ(Fast-Axis-Collimatingレンズ)が台座に、好ましくはレーザの端面から離間されて、配置されており、これによって、放射されたレーザ光の発散したビーム束のシェーディングによる強度損失を少なくして、できるかぎり効率的なビーム成形が得られるようになる。
【0069】
特に好ましくは、透明部材はガラスを含むことができ、またはガラスから成るものとすることができる。この場合、透明部材のガラスは、例えば石英ガラスまたはホウケイ酸ガラスを含むことができる。さらに透明部材が、サファイアから成るようにすることもでき、またはサファイアを特にそれぞれ結晶質材料として含むことができる。
【0070】
ただし一般的には透明部材は、レーザから放射される放射の方向で透過率を測定すると、250~2000nmの波長を有するスペクトル領域で、80%よりも高い透過率を有し、特に好ましくは90%よりも高い透過率を有する。
【0071】
本開示の趣旨においては、レーザから放射される光という言い回しと、レーザから放射される放射という言い回しとは、同じ意味で解され、同義語として用いられる。
【0072】
さらに別の実施形態によれば、透明部材をFACレンズ(Fast-Axis-Collimatingレンズ)として形成することができ、または同様に透明部材はFACレンズ(Fast-Axis-Collimatingレンズ)を、特に透明部材に取り付けられた状態で含むことができる。
【0073】
択一的に、透明部材をファイバプレートとして形成することができ、または透明部材はファイバプレートを含むことができる。
【0074】
好ましい実施形態によれば、透明部材は、ガラス半田を用いてハウジングキャップに保持されており、またはガラス半田を用いて、ハウジングキャップに配置されたフレームに保持されている。
【0075】
透明部材をハウジングキャップと接合するためにガラス半田を使用する既述の実施形態よりも小さい寸法を有するのが望ましい、さらに別の好ましい実施形態において、金属製の半田、好ましくはAuSn半田、を用いることで、透明部材をハウジングキャップに保持することができる。
【0076】
さらに別の実施形態は、ハウジングキャップに溶接された透明部材を含む。
【0077】
少なくとも、透明部材が配置されているハウジングキャップの壁が、底板に対し傾斜して形成されており、その際にハウジングキャップの壁の傾斜角が、底板の底面の法線方向に対し相対的に、35°~60°の範囲内にあり、好ましくは40°~50°、特に好ましくは43°~48°、の範囲内にあるならば、放射光が透明部材のところで逆方向に1つまたは複数のレーザに戻るように反射するのを、極めて効果的に抑圧することができる。この構造形態によって通常、透明部材の反射防止コーティングを省くことができ、その際にマルチレーザ装置に関する機能性に関して、反射光または散乱光による欠点を生じさせることがない。
【0078】
上述の傾斜角は好ましくは、戻り反射を意図的に生じさせるように選定されており、この戻り反射は、本明細書ではモニタダイオードとも称するモニタ用フォトダイオードを用いてレーザ出力を測定するために用いられる。
【0079】
ただし、RGBレーザモジュールの個々のレーザのレーザ共振器への直接的な戻り反射を抑圧するためには、例えば典型的には7°~15°のいっそう小さい角度でもすでに十分である。
【0080】
この場合に格別有利には、モニタダイオードも透明部材の下方に配置することができ、透明部材から反射して戻るレーザ光がモニタダイオードに当射し、それによってモニタダイオードに配属された個々のレーザから放射された光の強度について、センシング信号を取得することができる。このようにすれば高速で効果的なフィードバック信号を得ることができ、これによってマルチレーザ装置を正確にコントロールして制御することができる。
【0081】
この場合、下方という言い回しは、底板に対しおよびハウジングキャップに対し相対的な方向であるとして理解されたい。ハウジングキャップの方向において底板から垂直に、つまりは法線方向で出てくるのは、上に向かう方向であると解される。したがってこの点では、ある物体はこの方向において他の物体よりも上方、下方または同じ高さに位置することができる。もっと後の箇所で説明するデカルト座標系を参照するならば、上に向かう方向はこの座標の正のZ方向も表す。
【0082】
択一的にまたは付加的に、モニタダイオードをレーザの後方に、特にそれらのレーザに配属された支持体上に、配置することができ、その際に好ましくは各レーザに少なくとも1つの固有のモニタダイオードが配属されており、さらにこの支持体は、個々のモニタダイオード用の電気導線として導電性コーティングを有することができる。
【0083】
本開示の趣旨においては、透明部材に向き合った側のレーザの光出射面が前面として規定され、この光出射面を通して出てくるレーザ光の伝播方向が、「順方向」で出射している、または「順方向」で放射される、と規定される。レーザの後方に配置されたという表現によって、透明部材とは反対側に位置するレーザのさらに別の光出射面の前方にある位置が規定される。
【0084】
その際に好ましくは、モニタダイオードを、好ましくはセラミックを含む、またはセラミックから成る支持体に配置することができ、モニタダイオードが配置されている支持体の面の法線方向を、レーザのうち少なくとも1つのレーザの主放射方向に対し相対的に、傾斜した状態で形成することができ、この場合、傾斜姿勢は、主放射方向に対し相対的に3°~15°、好ましくは5°~10°、特に好ましくは6°~8°の角度範囲内にある。これによってレーザの背面から出射する光が、この光がもはやレーザのうちの1つに戻って当射せず、したがって例えば個々のレーザの共振器モードのモード結合のような不所望な光学的相互作用が発生しないように、モニタダイオードから極めて効果的に反射する。
【0085】
さらに別の好ましい実施形態によれば、少なくとも、透明部材が配置されているハウジングキャップの壁の法線方向は、レーザのうち少なくとも1つのレーザの主放射方向に対し相対的に、傾斜した状態で形成されており、その際に傾斜姿勢は、主放射方向に対し相対的に3°~15°、好ましくは5°~10°、特に好ましくは6°~8°、の角度範囲内にある。これによってレーザの前面から出射する光が、この光がもはやレーザのうちの1つに戻って当射せず、したがって例えば個々のレーザの共振器モードの結合のような不所望な光学的相互作用が発生しないように、透明部材の表面から極めて効果的に反射する。
【0086】
択一的な実施形態によれば、ハウジングキャップは複数の開口部を含むことができ、その際にそれぞれ1つの透明部材がこれらの開口部のうちそれぞれ1つの開口部に配属されており、または1つの透明部材がこれらの開口部のすべてに共通に配属されている。
【0087】
さらに別の有利な実施形態によれば、ハウジングキャップは複数の開口部を含み、その際にそれぞれ1つの透明部材が、これらの開口部のうち1つの開口部に配置されており、この開口部により、ビーム成形を行う光学素子が形成され、この光学素子は、
球面の平凸レンズまたは凹凸レンズ、球状または半球状のレンズ、非球面の平凸レンズまたは凹凸レンズ
を含む光学素子のグループから選択されている。
【0088】
これによってマルチレーザ装置を著しくコンパクトに、しかもその精密な寸法により必要に応じて光学的に予め調節された状態で、つまり光学素子の軸方向および横方向の位置から見てすでに調節された状態で、外部の光学系に組み込むことができる。この場合、必要に応じてマルチレーザ装置の底板を、さらに別の光学系の予め成形され精密に配置された切欠きに嵌め込むことができ、すでにそのポジショニングによってさらに別の光学系に対し調節された状態で収容することができる。しかも底板とさらに別の光学系との接触により、マルチレーザ装置からの熱を規定どおりに放出させることができ、マルチレーザ装置のレーザの付加的な放熱をさらに別の光学系を介して行うことができる。
【0089】
光伝導性ファイバがハウジングと、特にハウジングキャップと、好ましくはファイバコネクタを用いて、特に着脱可能に接続可能なファイバコネクタを用いて、または持続的に接続可能なファイバコネクタによって、接続されているならば、さらなる構造的な自由度がもたらされる。なぜならばこれによって、マルチレーザ装置を例えばさらに別の光学系から離間して配置することができるからであり、これについては単に例示的にもっと後の箇所で、ARメガネにより提供されるさらに別の光学系に関して、いっそう詳しく説明することにする。
【0090】
マルチレーザ装置の1つのレーザ各々に1つの光伝導性ファイバが配属されており、レーザに配属されたファイバは1つのファイバ束にまとめられており、このファイバ束内においてファイバは、それらのファイバの個々のファイバコアにより好ましくは互いに密に隣り合って配置されており、好ましくはこれらのファイバコアを取り囲む1つの共通のファイバクラッドが形成されるならば、このことをさらに、マルチレーザ装置とさらに別の光学系とから成るシステムの構造的なコンパクト化に役立たせることができる。この場合に例えば、配属された撮像装置の行方向が延在する1つの平面内に、複数の光ファイバが隣り合って配置されているならば、例えば行ごとに像を生成するさらに別の光学装置が配属されている場合に、可視スペクトルの赤色スペクトル領域で放射する第1のレーザの光成分と、可視スペクトルの緑色スペクトル領域で放射する第2のレーザの光成分と、可視スペクトルの青色スペクトル領域で放射する第3のレーザの光成分との重畳が、行方向で行われることにより、これら個々の色成分が個々の行において高速に重畳されて、色の変化が人間の目によってももはや分解されなければ、人間の目にはすでに白色の色印象を生じさせることができる。これによって、場合によっては長さが伸ばされてしまうファイバスプライスプロセスを省くことができ、この実施形態の個々のファイバを著しく短く形成することができる。
【0091】
本開示の枠内で、ファイバ、光ファイバならびに光伝導性ファイバという言い回しはそれぞれ、青色、緑色および赤色で放射するレーザの光を、それらのレーザから放射されたスペクトル領域全体で案内し、その入射端からその出射端まで僅かな損失で伝送するのに適したファイバに対して用いられる。かかるファイバは、本明細書の分野における当業者には周知であり、これ以上説明する必要はない。
【0092】
有利には、マルチレーザ装置は、レーザおよび/またはモニタダイオードに至る導線のためのガラス金属フィードスルーを含むことができる。
【0093】
モニタダイオードがそれぞれカラーフィルタを有するならば、特にそれぞれ配属されたレーザの放射波長のためにそれぞれバンドパスフィルタとして形成されたカラーフィルタを有するならば、それぞれ他のレーザの光を抑圧することができ、モニタダイオードのセンシング信号の改善された信号/妨害信号比または改善された信号/ノイズ比を得ることができる。
【0094】
ハウジングの底板が基準電位として電流を案内するように形成されているならば、これによってマルチレーザ装置の電子的な結線を簡略化することができ、ユーザのために動作上安全なハウジングを提供することができる。
【0095】
さらに別の有利な実施形態によれば、底板を光学ユニットの支持体として、特に構造的にハウジングキャップの下方に突出して形成することができる。
【0096】
散乱光を抑圧するためにハウジングキャップの内側を黒色化された状態で、特に艶消し仕上げで黒色化された状態で、形成することができ、その際に例えばブラッククロム化または亜鉛ニッケルコーティングのようなラッカまたはコーティングを付与することができ、これを特に電解コーティングとしても付与することができる。このようにすれば、レーザから放出される光のスペクトル領域において、このようにコーティングされた表面によって、この表面に当射する光の98%以上を吸収することができる。
【0097】
有利には、ハウジングは、透明部材のガラスのための保護装置を有することができ、この保護装置は特に、側方方向で透明部材よりも突出しているセクションとして形成されている。
【0098】
例えばハウジングが、特にX方向で1.0~3.5mmの高さ、および/または特にY方向で4~10mmの幅、および/または特にZ方向で4~10mmの長さのハウジング寸法を含むならば、多くの特にモバイル用途のケースのために、構造的に魅力的なマルチレーザ装置を提供することができる。
【0099】
ここで挙げた方向、特に個々のX方向、Y方向およびZ方向については、以下で詳述する説明の枠内で、特に
図1に描かれているデカルト座標系を参照しながら、さらに詳しく説明する。
【0100】
このようなモバイル用途のケースを例えば、かかるマルチレーザ装置を含むARメガネまたはメガネに関係するものとすることができ、あるいは例えばヘルメットバイザーのためのヘッドアップディスプレイに関係するものとすることもでき、例えばオートバイ用ヘルメットまたは警察用または治安部隊用のヘルメットのような保護ヘルメットのヘルメットバイザーのためのヘッドアップディスプレイ、あるいは航空電子工学の機器または装置のためのヘッドアップディスプレイ、に関係するものとすることもできる。
【0101】
プロジェクタも、本明細書で開示されているマルチレーザ装置およびその極めて僅かな寸法から、特にこのプロジェクタをモバイル機器に適用したときに、恩恵を受けることができる。
【0102】
次に本発明について、添付の図面に基づき好ましい実施形態を参照しながらさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【
図1】対比のために図示されたマルチレーザ装置を示す斜視図である。
【
図2】マルチレーザ装置用の本発明によるハウジングキャップを示す2つの斜視図である。
【
図3】対比のために図示されたマルチレーザ装置を示す断面図である。
【
図4】本発明によるマルチレーザ装置を示す断面図である。
【
図5】本発明によるさらに別のマルチレーザ装置を示す断面図である。
【
図7】本発明によるさらに別のマルチレーザ装置を示す断面図である。
【
図8】側壁の下縁部を接合材料と共に示す断面図である。
【
図9】側壁の下縁部を接合材料と共に示す断面図である。
【
図10】本発明によるさらに別のマルチレーザ装置を示す断面図である。
【
図11】本発明によるさらに別のマルチレーザ装置を示す断面図である。
【
図12】開口部を含む側壁を透明部材と共に示す断面図である。
【
図13】本発明によるさらに別のマルチレーザ装置を示す断面図である。
【
図14】マルチレーザ装置用の本発明によるさらに別のハウジングキャップを示す斜視図である。
【0104】
好ましい実施形態の以下の説明において、同じ参照符号はそれぞれ同じまたは同じように作用するユニットまたは部品を表す。このことは、組み込まれた独国特許出願第102020110658.0号明細書および組み込まれた独国実用新案出願第20202102072.5号明細書についても該当する。
【0105】
図1には対比のために、ハウジング2を備えたマルチレーザ装置1が示されており、ハウジング2はハウジングキャップ3を含み、これは底板4に液密および気密に保持されている。
【0106】
ハウジングキャップ3と底板4との間に、溶接線S(
図1には示されていない)が存在しており、これは溶接フランジを形成するハウジングキャップ3の側方の張り出しA
5の下で、実質的にハウジングキャップ3と底板4との間の接触面全体にわたり延在している。
【0107】
本開示の趣旨においては、対象物例えばマルチレーザ装置のハウジングが、Heを充填し1barの圧力差があるときに、室温で1×10-3mbar・l/sec未満の漏出速度を有するならば、この対象物が気密または同様に液密であると見なされることになる。
【0108】
ただし好ましくは、Heを充填し1barの圧力差があるときに、1×10-8mbar・l/sの漏出速度が達成される。とはいえ、達成すべき密閉度値はハウジングの内容積に左右され得るので、ここで達成される密閉度によれば、部品の耐用年数全体を通じてマルチレーザ装置のハウジング内における水の分圧が5000ppmの値を超えない、ということが保証される。
【0109】
底板4には、台座5が配置されており(
図1には示されていない)、または台座5が底板4自体によって形成される。
【0110】
好ましい実施形態によれば、ハウジング2内部には、可視スペクトルの赤色スペクトル領域で放射する第1のレーザ6(
図1には示されていない)、可視スペクトルの緑色スペクトル領域で放射する第2のレーザ7(
図1には示されていない)、ならびに可視スペクトルの青色スペクトル領域で放射する第3のレーザ8(
図1には示されていない)が配置されている。
【0111】
上述のレーザ6、7、8の各々はそれぞれ台座5上に配置されており、これらのレーザ6、7、8の各々が底板4の底面9に対し規定の間隔を有するように、この台座5上に取り付けられている。底板の底面9とは、底板の下面のことを指す。
【0112】
レーザ6、7、8の前面側の光出射面10、11、12(
図1には示されていない)の前において、ハウジングキャップ3内に開口部13が形成されており、この開口部13に透明部材14が取り付けられている。
【0113】
透明部材14は、1つの好ましい実施形態によれば、例えばガラス半田によりハウジングキャップ3に保持されている。
【0114】
択一的な実施形態によれば、透明部材14は金半田を用いることで、例えばAuSn半田によって、ハウジングキャップ3自体に保持されている。
【0115】
金半田を使用することによって、透明部材14に対してもハウジングキャップ3に対しても構造寸法について僅かな要求で、窓14をハウジングキャップ3に直接取り付けることができる。
【0116】
図2には、マルチレーザ装置1用の本発明による2つのハウジングキャップ3が示されている。ハウジングキャップ3は、それぞれ3つの別個の、特に円形の、開口部13を有しており、その際にこれらの開口部各々は、3つのレーザ6、7、8のうち1つのレーザのレーザ光のために設けられている。
【0117】
さらにハウジングキャップ3は、それぞれ1つの透明部材14を含み、この透明部材14は、接合材料、特に半田、例えばガラス半田および/または金属半田、によって、開口部13を有するハウジングキャップ3の側壁に気密に接合されている。
【0118】
光学窓が組み込まれたハウジングキャップ3を、特にRGBレーザの気密カプセル化のために用いることができる。したがってこのハウジングキャップ3を、RGBキャップと称する場合もある。
【0119】
図2の左側に示されている実施形態は、回転技術およびフライス技術を用いて製造可能な、または製造されているハウジングキャップ3(RGBキャップ)である。これは特に、納期、コストおよび/または設計柔軟性の点で有利になり得る。
【0120】
したがってハウジングキャップ3は、フライス加工された金属ハウジングを有しており、その中に同心の開口部13(エミッタ開口部)が作り込まれている。透明部材14は光学窓を成しており、サファイアまたはガラスから成るものとすることができる。さらに、透過率を高めるために反射防止コーティングを設けることができる。これにより放射損失を最小化することができる。光学窓は、半田付けプロセスによって金属ハウジングに気密に接合されている(例えばガラス半田または金属半田から成る半田)。
【0121】
図2の右側に示されている実施形態は、深絞り加工法を用いて製造可能な、または製造されているハウジングキャップ3(RGBキャップ)である。これは経済的な理由から有利になり得るものであり、しかもさらに別の製造上の利点をもたらすことができ、これについては後で詳しく説明する。
【0122】
したがってハウジングキャップ3は、深絞り加工された金属ハウジングを有しており、その中に同心の開口部13(エミッタ開口部)が作り込まれている。透明部材14は光学窓を成しており、やはりサファイアまたはガラスから成るものとすることができる。さらに、やはり透過率を高めるために反射防止コーティングを設けることができ、これによって放射損失を最小化することができる。光学窓は、半田付けプロセスによって金属ハウジングに気密に接合されている(例えばガラス半田または金属半田から成る半田)。
【0123】
ハウジングキャップ3は特に、上部壁100と、この上部壁100と一体的に形成された側壁200と、を有しており、側壁200は、この実施例ではz軸線を巡って周囲を取り囲むように形成されている。側壁200はこの実施例では、4つの平坦な側壁を備えた側方周壁として形成されている。上部壁100と側壁200との間には、丸み付けられた縁部101が存在している。好ましくは平坦な側壁の間にも、丸み付けられた縁部204を存在させることができる。丸み付けられた縁部101もしくは204を、ハウジングキャップ3の外面上の外側半径および/またはハウジングキャップ3の内面における内側半径によって表すことができる。内側半径を例えば、厚さd1と一致させることができ、または半分の厚さd1から2倍の厚さd1までの範囲内にあるようにすることができる。
【0124】
図3には対比のため、ハウジング2を備えたマルチレーザ装置1が示されており、このハウジング2は、底板4に気密に取り付けられたハウジングキャップ3を備えており、その際に底板4上に台座が配置されていて、その上に第1のレーザ6、第2のレーザ7および第3のレーザ8(
図3には示されていない)が配置されている。
【0125】
図示されているハウジングキャップ3は、側方の張り出しA5を有し、もしくは側方に突出するフランジを有する。しかしながらこの張り出しA5もしくはフランジによって、ハウジング2の構造空間および/または横方向の広がり、ならびに透明部材14もしくはエミッタ開口部13のポジションの高さが制限される可能性がある。
【0126】
図4には、ハウジングキャップ3の金属ボディが深絞り加工プロセスによって製造されているかまたは製造可能であるマルチレーザ装置1が示されている。場合によっては生じる可能性のあるフランジを切断する付加的なプロセスステップを設けることができ、これを所望の形状付与のために役立たせることができる。
【0127】
このマルチレーザ装置1のハウジングキャップ3は、対比のために
図3に示した実施形態よりも有利には小さい寸法を有し、すなわちH1<H2、L1<L2および/またはP1<P2であり、その際にいっそう小さい寸法L1<L2において、特にはっきりと有利に利点をもたらすことができる。ただしフランジの切断を、いっそう小さい寸法H1<H2もしくはP1<P2のために役立たせることもできる。
【0128】
ハウジングキャップ3は、上部壁100と、この上部壁100と一体的に形成された側壁200と、を有し、この側壁200は、底板4上に取り付けられた下縁部201で終端している。下縁部201は、接合材料300によって底板4に取り付けられている。
【0129】
側壁は、その表面に対し垂直方向で測定された第1の厚さd1と、下縁部201において、特に同じ方向で、測定された第2の厚さd2と、を有し、この第2の厚さd2は、第1の厚さd1よりも薄いかまたは等しい(このケースでは等しい)。
【0130】
既述のようにハウジングキャップ3は一般に、1つまたは複数の丸み付けられた縁部101もしくは204を有することができる(断面図には示されていない)。
【0131】
図5には、ハウジングキャップ3を備えたマルチレーザ装置1が示されており、この場合、側壁200は、ハウジングキャップ3の内面上の下縁部201において、外側に曲げられた表面202を有し、この場合、第2の厚さd2が第1の厚さd1よりも薄くなるようにし、かつ側壁の厚さが側壁の最下部位置に向かって次第に薄くなるように構成されている。
【0132】
接合材料300は、側壁の第1の厚さd1もしくは第2の厚さd2の方向に沿って、第1の厚さd1または第2の厚さd2よりも短い領域にわたって延在している。
【0133】
特に、深絞り加工プロセスによる製造プロセスであることから、キャップの脚部内面で外側に引っ張られた半径が生じる。後で利用するために(底板4との半田付けのために)特に、壁厚がキャップの脚部においてテーパ化されているという利点が生じ、これにより接合材料を、狭められた幅に沿って延在させることができる(対向部材上、例えば底板上、におけるパッド幅もしくは金属化部の幅が狭くなっている)。このことはユニットの小型化のために役立ち、もしくはハウジング2内の構造空間を増大させる。
【0134】
図6には、ハウジングキャップ3の側壁200の下縁部201が示されており、この場合、ハウジングキャップ3の内面上で外側に曲げられた表面202は、半径Rに従って曲げられている。ハウジングキャップ3はやはり下縁部201において、第1の厚さd1よりも薄い第2の厚さd2を有する。
【0135】
さらに側壁200は下縁部201において外面上に、第1の厚さd1よりも薄い、特に第1の厚さd1の5分の1よりも薄い、突出部203を有する。突出部203は、しかも第2の厚さd2よりも薄い。
【0136】
図7には、ハウジングキャップ3を備えたマルチレーザ装置1が示されており、この場合、側壁200の下縁部201は、ハウジングキャップの内面上で外側に曲げられた表面202と底板4との間に接合材料301が取り込まれるように、底板4に取り付けられている。このケースでは接合材料300および301は、1つにつながった接合材料であり、曲げられた表面202に取り付けられた接合材料301は、側壁200の下縁部201と底板4との間にある接合材料300よりも高く底板から突出している。
【0137】
特に、深絞りプロセス加工による製造プロセスであることから、キャップの脚部内面で外側に引っ張られた半径を生じさせることができるので、後で利用するために(底板との半田付けのために)、壁部内面に形成される半径により、一方ではハウジングキャップ(特に金属部材)の有効半田付け面積が拡大され、他方では接合材料(特に半田)のメニスカス角をいっそう大きく形成することができる、という利点がもたらされる。さらに接合材料の幅(パッド幅)が同じままで、いっそう多くの材料体積(特に半田体積)を被着することができる。これら3つの点によって、いっそう安定した接合(特に半田付け接合)が達成され、ひいてはいっそう耐久性のある製品が得られるようになる。
【0138】
図8には、ハウジングキャップ3の側壁200の下縁部201が示されており、この下縁部201は、第1の厚さd1よりも薄い、特に第1の厚さd1の5分の1よりも薄い、突出部203と、下縁部201に取り付けられた一体的な接合材料300、301と、を備え、この場合、曲げられた表面202に接合されている接合材料の一部分301が、いっそう高く突出している。
【0139】
図9には、ハウジングキャップ3の側壁200の下縁部201を備えたさらに別の実施形態が示されており、この場合、底板4(
図9には示されていない)と側壁との間に、側壁200の外面、例えば突出部、に被着された接合材料303が設けられている。かくして接合材料300は、ハウジングキャップ3の外面上で半田メニスカスを成すことができる。側壁200の外面に隣接する接合材料303を、側壁200の下縁部201と底板4との間に好ましくは付加的に存在する接合材料300よりも高く、底板から突出させることができる。好ましくは、側壁200の内面に隣接した接合材料301を既述のように被着させることもできる。接合材料303および場合によっては設けられる接合材料300および/または301は、好ましくは1つにつながった接合材料である。一般的には、厚さd1よりも薄い下縁部における厚さd2によって、特にテーパ化および/または丸み付けによって、有利にはいっそう狭い接合材料ウェブ(特に半田ウェブ)を達成することができる。これにより特に、(半田メニスカスの有無にかかわらず)角の尖った部品および/またはフランジ付き部品に対し、寸法に関して利点を達成することができる。
【0140】
図10には、ハウジングキャップ3を備えたマルチレーザ装置1が示されており、このハウジングキャップ3は、下縁部201においてハウジングキャップ3の内面上に、外側に曲げられた表面202を有し、第2の厚さd2が第1の厚さd1よりも薄くなるようにし、かつ側壁の厚さが側壁の最下部位置に向かって次第に薄くなるように構成されている。
【0141】
外側に曲げられた表面202はこのケースでは、ハウジングキャップ3と底板4とを継ぎ合わせるときのガイド補助として用いられる。したがって底板4を、ハウジングキャップ3内に少なくとも部分的に入れることができ、これによってユニットの高さをなおいっそう最小化することができる。この目的で底板4は、側方に曲げられた端面を有することができ、この端面を接合材料によって、ハウジングキャップ3の側壁200の曲げられた表面202に接合することができる(
図9には示されていない)。
【0142】
特に、深絞り加工プロセスによる製造プロセスであることから、キャップの脚部内面で外側に引っ張られた半径を形成することができる。このことによって、後で利用するために特に、壁部内面に形成される半径を、キャップと底板とを継ぎ合わせるときの改善されたガイド補助として使用可能である、という利点がもたらされる。このことから付加的に、パッケージ全体の長さおよび幅の削減、特にH1<H2およびL1<L2、をもたらすことができる。
【0143】
図11には、ハウジングキャップ3を備えたマルチレーザ装置1が示されており、このハウジングキャップ3は、側壁200の外面上の下縁部201に突出部203を有する。ハウジングキャップ3の外面上に、特に接合材料302により、取り付けられている透明部材14は、側壁200の表面に対しこの透明部材が斜めに位置するように、下縁部201においてこの突出部203上に取り付けられている。
【0144】
特に、深絞り加工プロセスによる製造プロセスであることから、内側半径のほか、ハウジングキャップ3もしくは金属ハウジングの外面に同様に突出部203を生じさせることができる。この突出部は特に、取り付けられた(半田付けされた)窓がこれにより僅かに傾斜させられる、という有利な作用を有する。一般にレーザ(特にEEL)の用途においては、放射されたレーザビーム400の一部分が逆方向にレーザキャビティ内に戻るように反射するのを回避するのが望ましい。透明部材14の傾斜姿勢ゆえに、反射したビーム401の一部分が、ハウジング2内部のクリティカルではない位置に偏向される。
【0145】
図12にはマルチレーザ装置1が示されており、この場合、透明部材は接合材料302(特に半田、例えばガラス半田および/または金属半田)によって、開口部13の周囲でハウジングキャップ3の側壁200に取り付けられている。
【0146】
図13にはマルチレーザ装置1が示されており、この場合、ハウジングキャップ3の上部壁100は、側壁の第1の厚さd1よりも薄い厚さd3を有する。この場合の利点は、軽量化および/または軽量な構造形式という点にある。
【0147】
それぞれ異なる壁厚を例えば、深絞り加工プロセスの前に出発材料(例えば金属ストリップの出発材料)を予めエンボス加工することによって実現することができる。
【0148】
図14には、開口部13を備えたハウジングキャップ3が示されており、この開口部13は、側壁200の上部壁100から下縁部201に向かう方向(z方向)に沿って、この方向に対し垂直に側壁内で延在する方向(y方向)に沿った広がりよりも大きい広がりを有する。具体的な実施例によれば、開口部13は楕円形に成形されている。このことは特に、楕円形のレーザビームプロフィルへの適合という利点を有し、ひいてはy方向の寸法を減らすことができる。特にEELレーザのビームプロフィルは、典型的には楕円特性を有する。さらに別の利点は、ハウジングキャップ3の機械的安定性が向上するということである。
【0149】
特にキャップの製造プロセスにおいて、開口部が作り込まれた出発材料(例えば打ち抜き加工されたストリップ)を使用すれば、続いて行われる深絞り加工プロセスによって、楕円形の開口部を形成することができる。この場合、1つの利点は、同心の開口部よりも僅かな材料だけしか除去しなくてよいので、工具の摩耗が減る、もしくは工具の耐用期間が長くなる(工具寿命、打抜き時の廃棄物が少ない)、ということでもある。しかも、予め打ち抜かれたストリップにより、プロセス上の理由で高さがいっそう低いキャップを製造することができる。
【0150】
当業者に自明のとおり、これまでに説明した特徴および/または利点を、それぞれ個別にまたは組み合わせて実現できる。
【国際調査報告】