IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー−コーンの特許一覧

特表2023-521597触媒、その調製方法、及び選択的水素化プロセス
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】触媒、その調製方法、及び選択的水素化プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/17 20060101AFI20230518BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20230518BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20230518BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
C07C29/17
C07C31/20 B
B01J23/755 Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559534
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 US2021023843
(87)【国際公開番号】W WO2021202188
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】63/001,652
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,スティーブン
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA05
4G169AA08
4G169BC16A
4G169BC16B
4G169BC22A
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC35A
4G169BC50A
4G169BC51A
4G169BC54A
4G169BC58A
4G169BC59A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169CB02
4G169DA03
4G169DA06
4G169FB06
4G169FB07
4G169FB32
4G169FC04
4G169FC08
4H006AA02
4H006AC11
4H006BA05
4H006BA09
4H006BA21
4H006BA81
4H006BA82
4H006BA85
4H006BC16
4H006BE20
4H006FE11
4H006FG28
4H039CA19
4H039CB10
(57)【要約】
本発明は、1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスに関する。プロセスは、有効量の触媒の存在下で、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、水素と反応させることを含み得る。触媒は、銅を含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスであって、
有効量の触媒の存在下で、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、水素と反応させることを含み、
前記触媒が、銅を含む、プロセス。
【請求項2】
前記触媒が、固定床、懸濁液、又はそれらの組み合わせの形態にある、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記触媒が、前記固定床の形態にあり、約1mm~約8mmの範囲の粒径を有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記触媒が、前記懸濁液の形態にあり、約10~約100μmの範囲の中央粒径を有する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記触媒が、Ni、Co、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第1の金属を更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1の金属が、Niである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記触媒が、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第2の金属を更に含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2の金属が、アルミニウムである、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記触媒が、骨格金属触媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
銅が、前記触媒の約1.0重量%~約12.0重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
銅が、前記触媒の約2.0重量%~約8.0重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記1,4-ブチンジオールを含む溶液が、約4.0~約11.0の範囲のpHを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記1,4-ブチンジオールを含む溶液が、約7.5~10のpHを有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロセスが、1,4-ブチンジオールを含む前記溶液が7.5以上のpHを有する際のブタノール、アセタール、及び前記1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、約0.5重量%未満の範囲の副生成物としての前記アセタールを生成する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記プロセスが、1,4-ブチンジオールを含む前記溶液が7.5以上のpHを有する際のブタノール、アセタール、及び前記1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、0.25重量%未満の範囲の副生成物としての前記アセタールを生成する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
1,4-ブタンジオールを作製するための触媒用の合金前駆体であって、前記合金前駆体の約1.0重量%~約10.0重量%の範囲の第1の金属、第2の金属、及び銅を含む、合金前駆体。
【請求項17】
銅が、前記合金前駆体の約2.0重量%~約5.0重量%の範囲である、請求項16に記載の合金前駆体。
【請求項18】
前記第1の金属が、前記合金前駆体の約30重量%~約60重量%の範囲のNiであり、前記第2の金属が、前記合金前駆体の約40重量%~約65重量%の範囲のAlである、請求項16に記載の合金前駆体。
【請求項19】
前記第1の金属が、前記合金前駆体の約40重量%~約49重量%の範囲のNiであり、前記第2の金属が、前記合金前駆体の約50重量%~約60重量%の範囲のAlである、請求項16に記載の合金前駆体。
【請求項20】
前記触媒が、プロモータとしての銅を含む骨格金属触媒である、請求項18に記載の合金前駆体から調製された触媒。
【請求項21】
銅が、前記触媒の約1.0重量%~約12.0重量%の範囲の量で存在する、請求項20に記載の触媒。
【請求項22】
銅が、前記触媒の約2.0重量%~約8.0重量%の範囲の量で存在する、請求項21に記載の触媒。
【請求項23】
触媒を調製するプロセスであって、前記プロセスが、
銅、第1の金属、及び第2の金属を溶融及び混合して、合金前駆体を形成することを含み、
前記第1の金属が、Ni、Co、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択され、前記第2の金属が、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、プロセス。
【請求項24】
前記第1の金属が、Niであり、前記第2の金属が、アルミニウムである、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
Niが、前記合金前駆体の約40重量%~約49重量%の範囲の量で存在し、アルミニウムが、前記合金前駆体の約50重量%~約60重量%の範囲の量で存在し、銅が、前記合金前駆体の約1.0重量%~約10.0重量%の範囲の量で存在する、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
前記合金前駆体をアルカリ水溶液と接触させて、前記触媒を生成することを更に含み、
前記触媒が、前記触媒の約1.0重量%~12.0重量%の範囲の量で銅を含む、請求項25に記載のプロセス。
【請求項27】
前記触媒が、骨格金属触媒である、請求項25に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒、より具体的には、1,4ブタンジオールを調製するための触媒、その調製方法、触媒を用いる選択的水素化プロセス、及び触媒を調製するための合金前駆体に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状固定床形態の骨格金属ニッケル触媒は、一般に、不飽和化合物1,4ブチンジオール(butynediol、BYD)からポリエステルを作製する際の成分であるブタンジオール(butanediol、BDO)を作製するために工業的に使用される。骨格金属ニッケル触媒の1つの形態は、ニッケル及びアルミニウムなどの少なくとも2つの金属を含有する合金から始まる、ラネープロセスによって作製される。任意選択的に、触媒の活性、選択性、又は耐久性を高めるために、他の金属又は化合物がプロモータとしてより少ない量で添加される。
【0003】
米国特許第6,262,317号は、1,4-ブチンジオールの連続触媒水素化によって1,4-ブタンジオールを調製するためのプロセスを開示している。プロセスは、不均一水素化触媒の存在下で、1,4-ブチンジオールを液体連続相中の水素と反応させることを含む。触媒は、一般に、元素周期表の遷移族I、VI、VII、及びVIIIの1つ以上の元素を含む。触媒は、好ましくは、元素周期表の主要族II、III、IV、及びVIの元素、遷移族II、III、IV、及びVの元素から選択される少なくとも1つの元素、並びに活性を増加させるプロモータとしてのランタニドを更に含む。触媒のプロモータ含有量は、一般に最大5重量%である。触媒は、沈殿、担持、又は骨格型触媒であり得る。
【0004】
中国特許第201210212109.2号は、1,4-ブチンジオールからの1,4-ブタンジオールの水素化調製のための骨格金属ニッケル-アルミニウム-X触媒の調製及び活性化方法を開示している。Xは、Mg、B、Sr、Cr、S、Ti、La、Sn、W、Mo、又はFeを表す。
【0005】
米国特許出願第62/715,926号は、1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスを開示している。プロセスは、プロモータとしてセリウムを含む触媒の存在下で、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、水素と反応させることを含む。プロセスは、ブタノール副生成物の有意な形成を低減し得る。
【0006】
本触媒は、典型的には、予測可能な制限された寿命を有する。本プロセスは、n-ブタノール、アセタール(例えば、2-(4-ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン)、及び最大仕様限界に達するまで徐々に増加する速度で他の副生成物を生成し、これは、床の触媒の有効寿命の終わりを定義する。浸出プロセスからの含水アルミナ残基などの骨格金属触媒中に存在する酸性Al種は、ブタノール及びアセタールを含む副生成物を生成する際の1つの主な原因とみなされる。骨格金属触媒は、一般に、プロモータとして少量の添加元素を含有し得、その機能は、所与の水素化プロセスの化学環境における触媒の活性、選択性、及び安定性の改善を含む。従来のMo、Cr、又はFeなどの骨格金属のためのいくつかのプロモータは、表面酸性の増加に起因するブタノール副生成物の形成を実際に増加させ得る。比較的低い温度、比較的高い圧力、及び供給pHの制御などの動作条件は、以前に最適化されており、それらの組み合わせは、依然としてブタノール及びアセタールの形成を適切に抑制することができない。ブタンジオールは、ポリエステルを作製する際の主成分である。下流での使用には、ブタンジオール上での不純物制限があるため、ブタンジオールを作製するためのプロセス中にブタンジオール中の汚染物質を低減させることにより、例えば、後でブタンジオールからの不純物の分離(例えば、蒸留)に関連するコストを大幅に低減することができる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、銅を含む触媒の存在下で、1,4-ブチンジオール溶液から1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスを提供する。プロセスは、最終1,4-ブタンジオール生成物中に望ましい低レベルの別の主要な副生成物のn-ブタノールを維持することに加えて、主な副生成物のアセタール(2-(4-ヒドロキシブト)テトラヒドロフラン)の量を有意かつ予想外に低減する。
【0008】
したがって、本発明の一例は、1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスである。プロセスは、プロモータとして銅を含む触媒の存在下で、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、水素と反応させることを含み得る。
【0009】
本発明の別の例は、1,4-ブタンジオールを作製するための触媒用の合金前駆体である。合金前駆体は、合金前駆体の約1重量%~約10重量%の範囲の第1の金属、第2の金属、及び銅を含み得る。
【0010】
本発明の別の例は、1,4-ブタンジオールを作製するための触媒である。触媒は、プロモータとして銅を含む骨格金属触媒であり得る。
【0011】
本発明の別の例は、触媒を調製するプロセスである。プロセスは、銅、第1の元素、及び第2の元素を溶融及び混合して、合金前駆体を形成し、続いてアルカリ溶液を使用して活性化して触媒を形成することを含み得る。第1の元素は、Niであり得、第2の元素は、アルミニウムであり得る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、本開示の技術的解決策の当業者によるより良好な理解を提供するために、本発明の実施形態を参照して説明される。
【0013】
本明細書において「約」によって修飾された数は、数がその10%だけ変動し得ることを意味する。本明細書において「約」によって修飾された数値範囲は、数値範囲の上限及び下限がその10%だけ変動し得ることを意味する。ブタノール、n-ブタノール、及び1-ブタノールは全て、本発明者らの目的のために同義語であり、交換可能である。
【0014】
本発明の一例は、1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスである。プロセスは、プロモータとして銅を含む有効量の触媒の存在下で、1,4-ブチンジオールを含む溶液を、水素と反応させることを含み得る。本明細書における「有効量の触媒」は、1,4-ブタンジオールに対する良好な選択性を有する、出発ブチンジオールの少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約99%の全体的な変換を達成するプロセスを指す。プロモータは、触媒の活性、選択性、又は耐久性を高めるために、ニッケル及びアルミニウムなどの他の主成分と比較して、触媒中の微量成分である。
【0015】
1,4-ブチンジオールを含む溶液は、水溶液の形態であり、不溶性又は溶解成分として、ブチンジオール合成からの成分、例えば、ビスマス、アルミニウム、又はケイ素化合物を更に含有することができる技術グレードの1,4-ブチンジオールであり得る。1,4-ブチンジオールを含む溶液のための主な溶媒は、通常、水である。1,4-ブチンジオールを含む溶液は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、又はリサイクルされた1,4-ブタンジオール生成物などの他の溶媒も含み得る。リサイクルされた1,4ブタンジオール生成物を含有する溶液は、溶媒として水のみを含有するものよりも低い1,4ブチンジオール含有量を含有し得る。溶液中の1,4-ブチンジオール含有量は、一般に、溶液の5~90重量%、好ましくは10~80重量%、特に好ましくは10~50重量%である。一実施形態では、1,4-ブチンジオールを含む溶液は、100%純粋なブチンジオールである。
【0016】
1,4-ブチンジオールを含む溶液は、約4.0~約11.0、好ましくは約7.5~約10.0の範囲のpHを有し得る。溶液pHは、ブチンジオール品質、温度、圧力などのプロセス条件に固有であり得るか、又は任意選択的に、NaOH溶液などの少量の希釈塩基で調整することによって達成され得る。
【0017】
反応に必要とされる水素は、好ましくは純粋な形態で使用される。しかし、それは、メタン及び一酸化炭素などの更なる成分も含有することができる。このプロセスのための固定床反応器に適用される水素圧力は、約15~約30MPaの範囲であり得る。固定床反応器の入口温度は、約80℃~約120℃の範囲であり得る。供給溶液の流量は、有効量の触媒と組み合わせて、当業者が選定して、選定された変換率を可能にし、それによってブチンジオールの所望の全体的な変換レベル、すなわち生成物を形成する水素との反応が達成される。次に、ブチンジオールの選定された変換率は、プロセス流が反応器入口に部分的にリサイクルされるかどうかに依存する。非リサイクルプロセス流の場合、選定された変換率は、「単一パス」で、例えば、1,4ブチンジオールの98重量%超の高い全体的な変換%をもたらす。同様に高レベルの全体的な変換はまた、例えば、反応器出口でのプロセス流の10~20%が最終生成物として取り出され、他方の80~90%が入口に戻される部分的にリサイクルされたプロセス流を使用して、可変速度で達成され得る。
【0018】
本発明によれば、使用される触媒は、C≡C三重及び二重結合を単結合に水素化することができるものである。触媒は、固定床、スラリー若しくは懸濁液、又はそれらの組み合わせの形態にあり得る。一実施形態では、触媒は、固定床の形態にあり、約1mm~約8mm、好ましくは約2mm~約5mmの範囲の粒径を有し得る。別の実施形態では、触媒は、スラリー又は懸濁液の形態にあり、約10μm~約100μm、好ましくは約20μm~約80μmの範囲の中央粒径を有し得る。
【0019】
触媒は、Ni、Co、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第1の元素を更に含み得る。一実施形態では、第1の元素は、Niである。触媒は、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第2の元素を更に含み得る。一実施形態では、第2の元素は、アルミニウムである。
【0020】
触媒は、骨格金属触媒であり得る。好適な骨格金属触媒としては、骨格金属ニッケル、骨格金属コバルト、骨格金属ニッケル/モリブデン、骨格金属ニッケル/クロム、骨格金属ニッケル/クロム/鉄又はレニウムスポンジが挙げられる。
【0021】
銅は、触媒の約1.0重量%~20.0重量%、好ましくは約1.0重量%~約12.0重量%、より好ましくは約2.0重量%~約8.0重量%の範囲の量で触媒中に存在し得る。
【0022】
反応器中の水素対ブチンジオールのモル比は、少なくとも3:1、好ましくは4:1~100:1であり得る。
【0023】
本発明のプロセスにおいて固定床反応器が使用される場合、触媒の固定床を通って流れる溶液及びガスの空間速度は、限定されない。当業者は、溶液及びガスの空間速度を調整して、ブタノール及びアセタールなどの少量の生成物で最適な収率の1,4-ブタンジオールを得ることができる。
【0024】
本発明による触媒は、1つのタイプの触媒又はいくつかのタイプの触媒の混合物のみを含み得る。いくつかのタイプの触媒の混合物は、擬均質混合物として、又は個々の反応ゾーンが各々、擬均質触媒床から構成される構造床として存在し得る。例えば、反応開始時に1つの触媒タイプを使用し、更に下流に混合物を使用するために、方法を組み合わせることも可能である。
【0025】
プロセスは、1,4-ブチンジオールを含む溶液が7.5以上のpHを有する際のアセタール、ブタノール、及び1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、約1.0重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.25重量%未満の範囲の副生成物としてのアセタールを生成し得る。
【0026】
1,4-ブタンジオールを作製するためのプロセスの一実施形態では、触媒は、骨格元素触媒である。触媒は、Ni、Co、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第1の元素と、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも第2の元素と、プロモータとしての銅と、を含む。銅は、触媒の約1.0重量%~約12.0重量%の範囲の量で存在する。1,4-ブチンジオールを含む溶液は、約4.0~約11.0のpHを有する。プロセスは、1,4-ブチンジオールを含む溶液が7.5以上のpHを有する際のアセタール、ブタノール、及び1,4-ブタンジオールの総重量に基づいて、約1.0重量%未満、好ましくは約0.5重量%未満、より好ましくは約0.25重量%未満の範囲の副生成物としてのアセタールを生成する。
【0027】
本発明の別の例は、1,4-ブタンジオールを作製するための触媒用の合金前駆体である。合金前駆体は、合金前駆体の約1.0重量%~約10.0重量%、好ましくは約2.0重量%~7.0重量%の範囲の第1の金属、第2の金属、及び銅を含み得る。
【0028】
一実施形態では、銅は、合金前駆体の約2.0重量%~約5.0重量%の範囲である。
【0029】
一実施形態では、第1の金属は、合金前駆体の約30重量%~約60重量%の範囲のNiであり、第2の金属は、合金前駆体の約40重量%~約65重量%の範囲のAlである。別の実施形態では、第1の金属は、合金前駆体の約40重量%~約49重量%の範囲のNiであり、第2の金属は、合金前駆体の約50重量%~約60重量%の範囲のAlである。
【0030】
本発明の別の例は、1,4-ブタンジオールを作製するための触媒である。触媒は、プロモータとして銅を含む骨格金属触媒を含み得る。銅は、触媒の約1.0重量%~約10.0重量%、好ましくは約2.0重量%~約8.0重量%の範囲の量で触媒中に存在し得る。約1.0重量%~約10.0重量%の銅を含む一実施形態では、骨格金属の第1の元素は、ニッケルであり、骨格金属の第2の元素は、アルミニウムである。
【0031】
本発明の別の例は、触媒を調製するプロセスである。プロセスは、銅、第1の元素、及び第2の元素を溶融及び混合して、合金前駆体を形成することを含み得る。
【0032】
第1の元素は、Ni、Co、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。第2の元素は、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択され得る。一実施形態では、第1の元素は、Niであり、第2の元素は、アルミニウムである。Niは、合金前駆体の総重量に基づいて、約30重量%~約60重量%、好ましくは約40重量%~約49重量%の範囲の量で存在し得る。アルミニウムは、合金前駆体の総重量に基づいて、約40重量%~約65重量%、好ましくは約50重量%~60重量%の範囲の量で存在し得る。銅は、合金前駆体の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10.0重量%、好ましくは約2.0重量%~約6.0重量%の範囲の量で存在し得る。
【0033】
一実施形態では、触媒を調製するプロセスは、合金前駆体をアルカリ溶液と接触させることによって、合金前駆体を活性化することを更に含む。アルカリ溶液は、1重量%~25重量%の範囲の濃度を有する水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液であり得る。一実施形態では、アルカリ溶液は、合金前駆体床を通して連続的にポンプ輸送されて、合金前駆体を活性化する。別の実施形態では、合金前駆体粒子をバッチでアルカリ溶液に添加して、合金前駆体を活性化する。一実施形態では、触媒は、骨格金属触媒である。
【0034】
一実施形態では、触媒を調製するプロセスは、銅、第1の元素、及び第2の元素を溶融及び混合して、合金前駆体を形成し、合金前駆体をアルカリ水溶液と接触させて、触媒を生成することを含む。第1の元素は、Ni、Co、Fe、及びそれらの混合物からなる群から選択され、第2の元素は、アルミニウム、モリブデン、クロム、鉄、スズ、ジルコニウム、亜鉛、チタン、バナジウム、及びそれらの混合物からなる群から選択される。銅は、触媒の総重量に基づいて、約1.0重量%~約10.0重量%の範囲の量で存在する。約1.0重量%~約12.0重量%の銅を含む一実施形態では、骨格金属の第1の元素は、ニッケルであり、骨格金属の第2の元素は、アルミニウムである。
【0035】
本発明の別の例は、本発明の一実施形態による触媒を調製するプロセスによって生成される触媒である。
【0036】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されており、網羅的であること、又は開示された実施形態に限定されることを意図するものではない。説明された実施形態の範囲及び趣旨から逸脱することなく、多くの修正及び変形が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、市場に見られる技術による実用的な用途若しくは技術的改善、又は当業者が本明細書に開示される実施形態を理解することを可能にするように選定された。
【0037】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。しかしながら、本発明の範囲は、以下の実施例に限定されない。
【実施例
【0038】
実施例1
触媒調製
3つの成分を溶融及び混合することによって、58重量%のAl、2.5重量%のCu、及び39.5重量%のNiを含有する合金前駆体を形成した。次いで、合金前駆体を粉砕し、8~12メッシュサイズの範囲又は約2mm~約3mmの範囲の直径を有する合金前駆体粒子にふるい分けした。
【0039】
合金前駆体粒子の390gの部分をビーカーに入れて、「床」を形成した。この合金前駆体粒子の床は、「浸出液」と接触させることによって触媒の一部に変換され、これは、一定速度で、合金前駆体床を通して、水性NaOH溶液の5つの部分を連続的にポンプ輸送することを含む。NaOH水溶液の各部分は、18リットルであり、5つの部分の強度は、それぞれ1%、次いで2%、3%、4%~最終5%のプロセス中に増加した。合金前駆体床を通して、NaOH水溶液の各部分を40分間送達し、一方で、浸漬した冷却コイル(内部水流を有する)を使用して、プロセスの温度を目標38℃に制御する。
【0040】
次いで、触媒を2リットルの0.25%NaOH溶液で10分間洗浄し、次いで流出物洗浄水が9のpHに達するまで45℃の水で洗浄した。
【0041】
この触媒の部分は、ICP分析による以下のアッセイ(重量%):54.6Ni、41.7Al、3.5Cu、0.2Feを有した
【0042】
触媒試験
調製した触媒を、約0.5インチの内径及び約6インチの高さを有する床寸法を有する垂直カラム反応器に装填したときに、水湿潤状態に維持した。これは、18mLの体積を有する触媒床にある。
【0043】
1,4ブタンジオールは、40%(リサイクルされた「BDO」生成物を表す)を水中に10重量%の2-ブチン-1,4ジオールと共に溶解することによって、反応物供給溶液を調製した。全体的な有機化合物含有量は、名目上50%であり、水は、50%である。新たに作製されたこの混合物のpHは、約4~約5.5で変動した。後続の触媒試験のための更なる変数として、少量の15%NaOH溶液を添加することにより、反応物供給溶液の追加の部分を調製し、次いで、約7.0~約8.5の範囲のpHに調整した。
【0044】
触媒試験では、用いた反応条件は、100℃の入口温度、ピーク温度:150℃(出口温度)、水素圧=約2500psig(16~17MPa)、及び制御可能な液体供給流量であった。0.25mL/分は、デフォルトの液体流量であり、0.10~2.5の範囲が実行可能である。流量が変化すると、次いでそれを数日間一定レベルに維持して、生成物の定常レベルを達成する。Hガスの共電流上向き流(300mL/分)及び液体は、試験プロセス全体を通して維持する。
【0045】
有機生成物の重量%で述べた生成物アッセイは、Restek Stabilwax 30×0.32×0.5カラム、90%のエタノール溶媒、内部標準としてのジグリム、及び炎イオン化検出器を使用して、GC分析によって判定した。表1及び2の各条件について報告された収率は、各8時間の連続動作後に採取された試料からの平均である。
【0046】
目的の主な副生成物のn-ブタノール(「n-butanol、BuOH」)は、様々なpH条件にわたって0.23~0.35%の範囲である。供給溶液のより高いpHを使用する場合、ブタノール収率は、より低い。第2の副生成物の2-(4-ヒドロキシブトキシ)テトラヒドロフラン、生成物と供給分子との反応及び脱水によって形成される環化アセタールを、表1及び2において「アセタール」として列記する。表1に示すように、アセタールは、異なるpHで0.17~0.38%で変動する。
【0047】
用いた反応物供給溶液のpH、pH条件での経過時間、及び2つの主要な副生成物の概要を表1に列記する。
【0048】
実施例2
触媒調製
合金が58重量%のAl、3.8重量%のCu、及び38.2重量%のNiの組成物であることを除いて、実施例1のものと同様の方法を使用した。得られた触媒組成物は、42.6%のAl、52.3%のNi、5.0%のCu、0.2%のFeであった。
【0049】
触媒試験
試験は、実施例1のものと同様に進行し、実施例1と比較してCe-Niの改善及びCu含有量の変動を示すために実施される。
【0050】
比較例(Ce-Ni)
触媒調製
用いた合金前駆体は、以下の組成:61.5%のAl、34.9%のNi、2.1%のCeを有した。活性化及び洗浄手順は、NaOH溶液の濃度がそれぞれ0.9、1.75、2.6、3.5、及び4.35%であったことを除いて、実施例1のものと同様であった。得られた触媒組成物は、51.5%のAl、45.2%のNi、3.3%のCeであった。
【0051】
触媒試験
試験条件及び方法は、実施例1に記載されているとおりである。試験結果を表2に示す。表2に要約されているように、ブタノール副生成物は、0.21~0.55%の範囲であり、アセタールは、0.40~0.65の範囲であった。
【0052】
本発明の一実施形態による触媒を用いる表1及び2に示されるように、同様又はわずかに低いレベルのブタノール副生成物を維持しながら、プロモータとしてセリウムではなく銅を使用することによって、アセタール副生成物の量を低下させる有意な改善を示す。これらの副生成物は、完全スケールの工業用途において最大許容値を有する。したがって、アセタール副生成物におけるこれらの低減は、工業用途において非常に有意であり、それによって、固定床触媒系の寿命は、多くの場合、数ヶ月単位で延長され、使用者の動作コストの低下につながる。CeOと比較したCu金属による低コスト及びより単純な使用などの他の利点もまた存在する。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
本開示の原理及び実施形態は、本明細書に記載されている。本開示の実施形態の説明は、本開示の方法及びそのコアアイデアを理解することを助けるためにのみ使用される。一方、当業者にとって、本開示は、本開示の範囲に関し、技術的スキームは、技術的特徴の特定の組み合わせに限定されず、本発明の概念から逸脱することなく技術的特徴又は技術的特徴の同等の特徴を組み合わせることによって形成される他の技術的スキームを網羅するべきである。例えば、技術的スキームは、本開示に開示されるような上で説明される特徴を同様の特徴(しかし、これらに限定されない)で置き換えることによって得られ得る。
【国際調査報告】