(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】複合ポリマーフィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20230518BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20230518BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20230518BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20230518BHJP
B05D 1/38 20060101ALI20230518BHJP
B05D 7/04 20060101ALI20230518BHJP
B05D 3/02 20060101ALI20230518BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20230518BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20230518BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20230518BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230518BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
B32B27/00 C
B32B27/26
B32B27/18 Z
B32B27/34
B05D1/38
B05D7/04
B05D3/02 Z
B05D7/24 301N
C08J7/043 A CFG
C09D201/00
C09D5/00 D
B65D81/34 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559540
(86)(22)【出願日】2021-03-24
(85)【翻訳文提出日】2022-11-14
(86)【国際出願番号】 IB2021052423
(87)【国際公開番号】W WO2021198852
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519399763
【氏名又は名称】デュポン テイジン フィルムス ユーエス リミテッド パートナーシップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】リュウ シェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン エリク ジェヴォン
【テーマコード(参考)】
3E013
4D075
4F006
4F100
4J038
【Fターム(参考)】
3E013BB06
3E013BB12
3E013BC04
3E013BD11
4D075AE03
4D075AE16
4D075AE17
4D075BB24Z
4D075BB26Z
4D075CA12
4D075CA13
4D075DA04
4D075DB53
4D075DC36
4D075EA39
4D075EA41
4D075EB13
4D075EB19
4D075EB20
4D075EB32
4D075EB38
4F006AA38
4F006AB13
4F006AB14
4F006BA01
4F006CA07
4F100AH04B
4F100AK03C
4F100AK16C
4F100AK36B
4F100AK46A
4F100AK48A
4F100AK51B
4F100AK68B
4F100AK68C
4F100AK70B
4F100AK70C
4F100AL01B
4F100AL07B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA02B
4F100EH46B
4F100EH46C
4F100EJ37A
4F100EJ38A
4F100EJ65B
4F100GB15
4F100GB16
4F100JK06
4F100JL08B
4F100JL11
4F100JL12C
4F100YY00A
4F100YY00B
4J038CG031
4J038CJ101
4J038GA06
4J038PB04
(57)【要約】
第1および第2の表面を有するポリアミド基材層と、酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含む組成物に由来し、基材層の第1の表面上に配置されたプライマーコーティング層と、を含む複合フィルム。プライマー上に、ヒートシール性コーティングが施される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の表面を有するポリアミド基材層と、酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含む組成物に由来し、基材層の第1の表面上に配置されたプライマーコーティング層と、を含む複合フィルム。
【請求項2】
第1および第2の表面を有するポリアミド基材層と、酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含む組成物に由来し、基材層の第1の表面上に配置されたプライマーコーティング層と、プライマーコーティング層上に配置されたヒートシール性ポリマーコーティング層と、を含む複合フィルム。
【請求項3】
複合フィルムを製造するための方法であって、
(i)コーティングビヒクル中に酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含むプライマーコーティング層組成物をポリアミド基材の表面上に配置する工程と、
(ii)プライマーコーティング層組成物を乾燥させる工程と、
(iii)乾燥させたプライマーコーティング層組成物を加熱して、硬化したプライマー層を形成する工程と
を含み、
(iv)第2のコーティングビヒクル中にヒートシール性ポリマー材料を含むヒートシール性ポリマーコーティング層を、硬化したプライマー層上に配置する工程と、
(v)ヒートシール性ポリマーコーティング層を乾燥させる、および/または加熱する工程と
を含んでもよい、
方法。
【請求項4】
ポリアミド基材が、一軸または二軸延伸され、好ましくは二軸延伸される、請求項1もしくは請求項2に記載の複合フィルム、または請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリアミドが、熱可塑性結晶性直鎖状脂肪族ポリアミドであり、好ましくは、ナイロン6,6、ナイロン6、ナイロン6.66、ナイロン6,10、ナイロン6,4、ならびにこれらのブレンドおよび混合物から選択される、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項6】
前記ポリアミド基材の厚さが、約5~約150μm、好ましくは約10~約100μm、好ましくは約11~約50μm、好ましくは約12~約30μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項7】
酸コポリマー樹脂が、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー、COOH基で官能化されたエチレンアクリレートコポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー、アクリル酸メチル/アクリル酸(MAAA)コポリマー、およびCOOH基で官能化されたエチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、ならびにこれらの混合物から選択される、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項8】
プライマーコーティング層が、プライマーコーティング層の総質量を基準として、60質量%~99.9質量%、好ましくは75質量%~99質量%、好ましくは92質量%~95質量%の酸コポリマー樹脂を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項9】
有機架橋剤が、メラミン架橋剤、ポリイソシアネート架橋剤、ポリカルボジイミド架橋剤、複数のオキサゾリン基を含む架橋剤、複数のアジリジン基を含む架橋剤、およびこれらの混合物から選択される、請求項1~8のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項10】
有機架橋剤が、1つ以上のメラミン架橋剤である、請求項1~9のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項11】
プライマーコーティング層が、プライマーコーティング層の総質量を基準として、0.05質量%~25質量%、好ましくは0.5質量%~20質量%、好ましくは5質量%~12質量%の有機架橋剤を含む組成物に由来する、請求項1~10のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項12】
酸触媒が、有機スルホン酸、硫酸および硝酸アンモニウムから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項13】
酸触媒が、有機スルホン酸であり、有機スルホン酸が、p-トルエンスルホン酸およびドデシルベンゼンスルホン酸から選択される、請求項12に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項14】
プライマーコーティング層が、プライマーコーティング層の総質量を基準として、0.01質量%~2質量%、好ましくは0.05質量%~1.8質量%、好ましくは0.3質量%~1.3質量%の酸触媒を含む組成物に由来する、請求項1~13のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項15】
プライマーコーティング層が、滑り補助剤、ブロッキング防止剤および/または粘着付与樹脂をさらに含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項16】
プライマーコーティング層が、コーティングビヒクルをさらに含む組成物に由来し、好ましくは、コーティングビヒクルが、有機溶媒、好ましくはトルエン、キシレンおよび/またはクロロベンゼンである、請求項1、2、4~15のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項17】
プライマーコーティング層が、0.1~1.0μmの乾燥厚さを有する、請求項1~16のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項18】
ヒートシール性ポリマーコーティング層が、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリオレフィン、エチレン-アクリル酸コポリマー、エチレン-メタクリル酸コポリマー、およびこれらの混合物から形成される、請求項2に記載の複合フィルム、もしくは請求項3に記載の方法、または請求項2もしくは請求項3に従属する場合の請求項4~17のいずれか1項に記載の複合フィルムもしくは方法。
【請求項19】
ヒートシール性ポリマーコーティング層が、9%~40%の範囲の酢酸ビニル含有量を有するEVAポリマーから形成される、請求項18に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項20】
ヒートシール性ポリマーコーティング層が、約2~約6μm、好ましくは約2~約4μmの厚さを有する、請求項2に記載の複合フィルムもしくは方法、もしくは請求項3に記載の方法、または請求項2もしくは請求項3に従属する場合の請求項4~19のいずれか1項に記載の複合フィルムもしくは方法。
【請求項21】
複合フィルムが、60μm以下、好ましくは35μm以下の総厚さを有する、請求項1~20のいずれか1項に記載の複合フィルムまたは方法。
【請求項22】
食品製品、特にオーブン料理を収容するレセプタクルと、請求項2または請求項2に従属する場合の請求項4~20のいずれか1項に記載の複合フィルムから形成された蓋とを含む密閉容器であって、特にレセプタクルが、CPETまたはポリオレフィン、好ましくはPPから作製されている、密閉容器。
【請求項23】
請求項2または請求項2に従属する場合の請求項4~21のいずれか1項に記載の複合フィルムの、オーブン料理の包装における蓋としての使用であって、前記包装が、レセプタクルをさらに含み、特に、レセプタクルが、CPETまたはポリオレフィン、好ましくはPPから作製されている、使用。
【請求項24】
食品製品を収容する密閉袋であって、請求項2または請求項2に従属する場合の請求項4~21のいずれか1項に記載の複合フィルムから形成されている、密閉袋。
【請求項25】
食品製品の包装用の袋としての、請求項2または請求項2に従属する場合の請求項4~21のいずれか1項に記載の複合フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド基材層を含む複合ポリマーフィルム、およびその製造方法に関する。フィルムは、包装用途、特に調理済みオーブン料理(ovenable meal)などの食品の包装のためのシール性フィルム、特にシール性かつ可剥性のフィルムとして使用するのに特に好適である。特に、本発明のフィルムは、調理済みオーブン料理などの食べ物を収容する容器の蓋として使用するのに好適である。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、食品包装などの包装用途では一般的であり、特に、電子レンジまたは電気オーブンで温められる調理済みオーブン料理などの即席食品の包装に使用されている。電子レンジまたは電気オーブンのいずれかで温めることができる「電子レンジ/オーブン両用(dual-ovenable)」容器も知られている。この容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)またはポリエチレン(PE)などのポリエステルで形成されてもよく、PVDCコーティングされてもよい。オーブン料理用に広く使用されている容器は、結晶性PET層の上に非晶性PET層を有する複合材料からなるAPET/CPET容器である。他の好適なタイプの容器には、箔トレイ(特にアルミ箔トレイ)、金属化トレイ、PETコーティングされた厚紙または板紙から形成されたトレイが含まれる。特に有用なのは、金属化(特にフラッシュ金属化(flash-metallised))されたPET厚紙から形成されたトレイである。
このような容器には、包装された内容物の漏れやまたは乾燥を防ぎ、保管中に昆虫、細菌、空気中の汚染物質に対する保護バリアを提供するために、容器をしっかりと密閉するだけでなく、開封時に容器から容易に剥がすことができる蓋が必要である。蓋の他の重要な要件は、包装された内容物に付着しないこと、およびオーブン内で発生する熱に耐えられることである。容器の蓋は典型的には、可撓性ポリマー基材とヒートシール性ポリマー層とを含む複合フィルムから作られ、多くの場合「蓋材」フィルムと呼ばれる。蓋材フィルムを用いた密閉容器の製造では、蓋材フィルムと容器の間にシールを形成する必要がある。このシールは、蓋を容器の上に配置し、熱と圧力を加えてシール性コーティング層を軟化または溶融させ、その層を容器の表面に付着させて蓋と容器の間に効果的なシールを形成することによって形成される。
【0003】
ポリアミドフィルムは、熱安定性、耐穿孔性、耐薬品性および耐摩耗性に優れているため、蓋材フィルム用の可撓性基材として使用されてきた。しかし、ポリアミドフィルムはヒートシールが容易ではなく、融点未満でヒートシールすることはできない。したがって、複合フィルムを使用する必要がある。ポリアミド基材に直接接着して良好なコーティング層を形成できるヒートシール性ポリマー層、特に良好なヒートシール特性を与えるために必要な接着強度および凝集強度を示すものを特定することは困難であることが判明しているため、ポリアミド基材およびヒートシール性ポリマー層からなる複合フィルムを提供することが課題となっている。例えば、ヒートシール性ポリマー層は層間剥離する傾向があり、連続剥離力は剥離中に急激に減少する傾向がある。既知の複合フィルムの別の問題は、フィルムが典型的にきれいな剥離を示さないという点で、フィルムが劣悪な剥離性特性を示す傾向があること、すなわち、蓋材フィルムを容器から剥離した後に容器の表面にヒートシール性層の残留物が見えるということである。
【0004】
シール性特性を改善するために、複合フィルムは、ポリアミド基材とヒートシール性ポリマー層との間に1つ以上の追加のポリマーフィルム中間層を備えてもよい。典型的には、ポリアミド基材は、ヒートシール性コートポリマーフィルム、例えば、コートポリエチレンテレフタレート(PET)またはコートポリプロピレン(PP)フィルムを積層される。しかし、このような複合フィルムは、厚いゲージと複数の処理工程を必要とする複雑な製造プロセスを経なければ形成することができない。このような複合フィルムの製造にかかるコストは、ポリアミド蓋材フィルムの用途が制限されることを意味する。製造効率を上げ、コストを削減するために、追加のポリマーフィルム中間層、およびそれらのポリマーフィルム中間層を適用するために必要とされる追加の処理工程を省くことが望ましいと思われる。
ポリマー基材とヒートシール性ポリマー層との間に1つ以上の追加のプライマー層を含む複合フィルムを提供することが知られている。しかしながら、そのような複合フィルムは、典型的に、ポリエステル基材に焦点を合わせている。さらに、プライマー層は、必要な接着特性を実現するために、特に明確な製剤を必要とする傾向がある。WO2016/022467(A1)には、架橋層を表面に有するポリエステルフィルム基材層を含み、架橋層上にヒートシール性ポリマー層をさらに含む、複合フィルムが記載されている。
【発明の概要】
【0005】
容器に対するポリアミドフィルムのシール性を向上させる必要性がある。したがって、本発明の目的は、容器に対するシール性が改善された複合フィルムを提供することにある。さらに、ポリアミド基材を含むヒートシール性複合フィルム内の層間の接着結合強度を向上させ、層間剥離および凝集強度不足を低減することが望ましいと思われる。
容器に対する優れたシール性および剥離性を示し、「きれいな剥離」を示すフィルムを提供することが特に必要である。本明細書で使用する場合、「きれいな剥離」という用語は、蓋材フィルムを容器から剥離した後に、ヒートシール性層の残留物が容器の表面上に全くまたは実質的に全く見えないことを意味する。消費者の観点からは、容器の内容物がシーラント材料で汚染されているような印象を与えないために、きれいな剥離が重要である。さらに、優れたシール性および剥離性を示し、かつ光学的に透明なフィルムを提供することが特に必要である。なぜなら、光学的透明性は、製品および包装商品に関して、品質、新鮮さおよび衛生の指標として認識されるからである。
【0006】
本発明の第1の態様によれば、第1および第2の表面を有するポリアミド基材層と、酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含む組成物に由来し、基材層の第1の表面上に配置されたプライマーコーティング層と、を含む複合フィルムが提供される。
ポリアミド基材層の第1の表面は、フィルムが本明細書に記載の蓋材フィルムとして使用されるときに容器に面する表面である。ポリアミド基材層の第2の表面は、最も外側にあり、容器の内部から見て外方に向く面である。
基材は、自己支持型フィルムまたはシートであり、この意味は、支持基部の不在下で独立に存在することができるフィルムまたはシートである。ポリアミド基材は流延されてもよい。しかし、ポリアミド基材は、好ましくは一軸または二軸延伸され、好ましくは二軸延伸される。
【0007】
前記ポリアミド基材層のポリアミドは、任意の好適なフィルム形成性熱可塑性ポリアミドであってよい。合成直鎖状ポリアミドが好ましい。前記ポリアミドは、結晶化可能でなければならない。好適なポリアミドには、脂肪族ポリアミドおよび脂肪族/芳香族ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドから選択されるホモポリマーまたはコポリマーが含まれる。有用なポリアミドホモポリマーには、ポリ(4-アミノ酪酸)(ナイロン4)、ポリ(6-アミノヘキサン酸)(ナイロン6、ポリ(カプロラクタム)としても知られている)、ポリ(7-アミノヘプタン酸)(ナイロン7)、ポリ(8-アミノオクタン酸)(ナイロン8)、ポリ(9-アミノノナン酸)(ナイロン9)、ポリ(10-アミノデカン酸)(ナイロン10)、ポリ(11-アミノウンデカン酸)(ナイロン11)、ポリ(12-アミノドデカン酸)(ナイロン12)、ナイロン4,6、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)(ナイロン6,6)、ポリ(ヘキサメチレンセバカミド)(ナイロン6,10)、ポリ(ヘプタメチレンピメルアミド)(ナイロン7,7)、ポリ(オクタメチレンスベラアミド)(ナイロン8,8)、ポリ(ヘキサメチレンアゼラミド)(ナイロン6,9)、ポリ(ノナメチレンアゼラミド)(ナイロン9,9)、ポリ(デカメチレンアゼラミド)(ナイロン10,9)、ポリ(テトラメチレンジアミン-co-シュウ酸)(ナイロン4,2)、n-ドデカンジアミンとヘキサメチレンジアミンのポリアミド(ナイロン6,12)、ドデカメチレンジアミンとn-ドデカンジアミンのポリアミド(ナイロン12,12)等が含まれる。有用な脂肪族ポリアミドコポリマーには、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6,6/6)、ヘキサメチレンアジパミド/カプロラクタムコポリマー(ナイロン6/6,6)、トリメチレンアジパミド/ヘキサメチレンアゼライアミド(azelaiamide)コポリマー(ナイロントリメチル6,2/6,2)、ヘキサメチレンアジパミド-ヘキサメチレンアゼライアミドカプロラクタムコポリマー(ナイロン6,6/6,9/6)等が含まれる。脂肪族/芳香族ポリアミドの例には、ポリ(テトラメチレンジアミン-co-イソフタル酸)(ナイロン4,I)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン6,I)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレン-イソフタルアミド(ナイロン6,6/6I)、ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレン-テレフタルアミド(ナイロン6,6/6T)、ポリ(2,2,2-トリメチルヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(m-キシリレンアジパミド)(MXD6)、ポリ(p-キシリレンアジパミド)、ポリ(ヘキサメチレンテレフタルアミド)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)、ポリアミド6T/6I、ポリアミド6/MXDT/I、ポリアミドMXDI等が含まれる。
【0008】
好ましいポリアミドは、直鎖状脂肪族ポリアミドであり、好ましくは、ナイロン6,6;ナイロン6;ナイロン6.66;ナイロン6,10;ナイロン6,4;ならびにこれらのブレンドおよび混合物から選択される。ナイロン6およびナイロン6,6が特に好ましく、ナイロン6,6が最も好ましい。
ポリアミドフィルムの形成は、当技術分野において周知の従来技術によって行うことができる。好都合には、基材の形成は、押出しによって行われる。一般論として、このプロセスは、溶融ポリアミドの層を高温(典型的には、ナイロン6では250~265℃の範囲の温度)で押し出し、押出し物を急冷し、急冷した押出し物を少なくとも1方向に延伸して配向させる工程を含む。配向は、配向フィルムを製造するために当該技術分野で知られている任意のプロセス、例えばチューブラーフィルムまたはフラットフィルムプロセスによって行われてよい。二軸配向は、機械的および物理的特性の満足できる組み合わせを達成するために、フィルムの平面内で2つの互いに直交する方向に延伸することによって行われる。チューブラープロセスでは、熱可塑性ポリアミドチューブを押し出し、その後急冷し、再加熱し、次いで内圧で膨張させて横方向の配向を誘発し、縦方向の配向を誘発する速度で引延伸することにより、同時二軸配向を行うことができる。適切な同時二軸配向プロセスは、EP2108673(A)およびUS2009/0117362(A1)に開示されており、これらのプロセスの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0009】
好ましいフラットフィルムプロセスでは、フィルム形成性ポリアミドが、スロットダイを通して押し出され、冷却された流延ドラム上で急速に急冷されて、ポリアミドが非晶質状態に急冷されることを確実にする。次に、ポリアミドのガラス転移温度以上の温度で、急冷された押出物を少なくとも1方向に延伸することにより配向させる。順次配向は、急冷された平坦な押出物を、まず一方向、通常は長手方向、すなわちフィルム延伸機を通るときの前進方向に延伸し、次いで横方向に延伸することによって、行われてよい。押出物の前方向延伸は、一組の回転ロール上または2対のニップロール間で好都合に行われ、次いで横方向延伸がステンター装置で行われる。
【0010】
延伸は、一般に、延伸方向または各方向において、配向フィルムの寸法がその元の寸法の2~8倍、より好ましくは2.5~5倍となるように行われる。延伸は、従来、ポリアミド組成物のTgより高い温度、好ましくはTgより少なくとも約5℃高い温度、好ましくはTgより少なくとも約15℃高い温度、好ましくは約Tg+5℃~約Tg+75℃、好ましくは約Tg+5℃~約Tg+30℃の範囲の温度で行われる。機械方向と直角方向に等しく延伸することは必要ではないが、バランスのとれた特性が望まれる場合には好ましい。
【0011】
延伸フィルムは、ポリアミドの所望の結晶化を誘発するために、ポリアミドのガラス転移温度以上、かつポリアミドの溶融温度未満の温度で寸法支持体の下でヒートセットすることにより、寸法安定化されてもよく、好ましくは寸法安定化される。実際のヒートセットの温度と時間は、フィルムの組成と所望の最終熱収縮率によって異なるが、耐引裂性などのフィルムの強靭性特性を大幅に低下させるような選択はされるべきではない。これらの制約内で、ヒートセットは、典型的に、フィルムの融点より約80℃低い温度(すなわちTM-80℃)からTMより約10℃低い温度(すなわちTM-10℃)、好ましくは少なくとも約TM-70℃、好ましくは少なくとも約TM-60℃、好ましくは少なくとも約TM-50℃、好ましくは約TM-20℃で実施される。
次いで、延伸フィルムは、ポリアミドの所望の結晶性を誘導するために、冷却される。
ポリアミド基材は、ポリマーフィルムの製造に従来から用いられる他の任意の添加剤をさらに含んでもよい。したがって、粒子状充填剤、加水分解安定剤、抗酸化剤、紫外線安定剤、架橋剤、染料、滑剤、ラジカル捕捉剤、熱安定剤、界面活性剤、光沢改良剤、プロデグラデント(prodegradent)、粘度調整剤および分散安定剤などの薬剤が適宜組み込まれてもよい。特に有用なのは、粒子状充填剤である。
【0012】
粒子状充填剤は、当技術分野で周知であるとおり、製造中の取扱いおよび巻取り性を改善し、および/または光学特性を調節することができる。粒子状充填剤は、典型的には、粒子状無機充填剤(例えば、金属またはメタロイド酸化物、例えば、アルミナ、チタニア、タルクおよびシリカ(特に沈殿または珪藻土シリカおよびシリカゲル)、焼成白土およびアルカリ金属塩、例えばカルシウムおよびバリウムの炭酸塩および硫酸塩など)である。粒子状無機充填剤は、好ましくは微細に分割され、その体積分布中央粒径(体積%と粒径を関係づけた累積分布曲線上で読み取った、全粒子の体積の50%に相当する等価球径であり、しばしば「D(v,0.5)」値と呼ばれる)は、好ましくは0.01~5μm、より好ましくは0.05~1.5μm、特に0.15~1.2μmの範囲である。好ましくは、無機充填剤粒子の少なくとも90体積%、より好ましくは少なくとも95体積%が、体積分布中央粒径±0.8μm、特に±0.5μmの範囲内である。充填剤粒子の粒径は、電子顕微鏡、クールター計数器、沈降分析、および静的または動的光散乱によって測定することができる。レーザー光回折に基づく技術が好ましい。前述した従来から用いられている添加剤は、従来の方法でポリマーに導入され得る。例えば、フィルム形成ポリマーの由来元であるモノマー反応物と混合することにより、または、タンブルもしくはドライブレンドにより、または押出機内での配合により、成分をポリマーと混合し、その後、冷却し、通常、顆粒またはチップに微粉砕することができる。また、マスターバッチ技術も用いることができる。フィルムの取扱いを改善するその他の滑り補助剤(slip-aid)またはブロッキング防止剤には、パラフィンワックス、カルナウバワックス、ケマイド、その他の長鎖脂肪族アミドが含まれる。粒子状無機充填剤および他のスリップ補助剤は、比較的少量、通常5.0質量%未満、通常2.0質量%未満、通常1.0質量%未満で存在する。
【0013】
フィルム形成性ポリアミドは、好ましくはポリアミド基材の主要成分であり、基材の総質量の少なくとも70質量%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より典型的には少なくとも98%、より典型的には少なくとも99質量%を占める。
ポリアミド基材の厚さは、好ましくは約5~約150μm、好ましくは約10~約100μm、好ましくは約11~約50μm、好ましくは約12~約30μmである。
プライマーコーティング層は、酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含む組成物に由来する。
酸コポリマー樹脂は、エチレン/アクリル酸(EAA)コポリマー;COOH基で官能化されたエチレンアクリレートコポリマー;エチレン/メタクリル酸(EMAA)コポリマー;アクリル酸メチル/アクリル酸(MAAA)コポリマー;およびCOOH基で官能化されたエチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマーの1種以上から選択されてもよい。
【0014】
適切なEAAコポリマーは、重合形態で任意の相対量のエチレンおよびアクリル酸コモノマーを含有してもよい。典型的には、コポリマーは、約1~約30質量%のアクリル酸コモノマーを含む。一実施形態では、EAAコポリマーは、エチレンおよびアクリル酸コモノマーからなる、または本質的にそれからなる。ただし、コポリマーは、1つ以上の追加のコモノマーをさらに含んでもよい。そのような追加のコモノマーには、例えば、アルキルアクリレート、好ましくは、アルキル基が、C1-10アルキル基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ヘキシル、2-エチルヘキシル、ヘプチルおよびn-オクチル、特にメチルである、アルキルアクリレートが含まれる。このような追加のコモノマーには、アルキルメタクリレート(例えば、メチルメタクリレート)も含まれる。任意の追加のコモノマーが、約1~約30質量%の量で存在してもよい。追加のコモノマーが存在する場合、アクリル酸と追加のコモノマーの合計量は、典型的には50%以下であり、典型的には30質量%以下である。他の追加のコモノマーには、アクリロニトリル;メタクリロニトリル;ハロ置換アクリロニトリル;ハロ置換メタクリロニトリル;アクリルアミド;メタクリルアミド;N-メチロールアクリルアミド;N-エタノールアクリルアミド;N-プロパノールアクリルアミド;N-メタクリルアミド;N-エタノールメタクリルアミド;N-メチルアクリルアミド;N-tert-ブチルアクリルアミド;メタクリル酸ヒドロキシエチル;アクリル酸グリシジル;メタクリル酸グリシジル;ジメチルアミノエチルメタクリレート;イタコン酸;イタコン酸無水物;イタコン酸の半エステル;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニル、クロロ酢酸(chloracetate)ビニル、安息香酸ビニル、ビニルピリジンおよび塩化ビニル;塩化ビニリデン;マレイン酸;無水マレイン酸;ならびにスチレンおよびスチレン誘導体、例えばクロロスチレン、ヒドロキシスチレンおよびアルキル基がC1-10アルキル基であるアルキル化スチレンが含まれる。本発明で使用するのに好適なEAAコポリマーは、ExxonMobil社からESCOR(商標)の商品名で入手可能なもの、および/またはMichelman社からMichem(登録商標)Primeの商品名で入手可能なもの、および/またはDow Chemical社からPrimacor(登録商標)の商品名で入手可能なものから選択されてもよい。
【0015】
COOH基で官能化された好適なエチレンアクリレートコポリマーは、エチレンおよびアクリレートコモノマーと、1分子あたり複数のCOOH部分とを含む。したがって、このコポリマーは、COOH官能化を付与するために、エチレンおよびアクリレートコモノマー以外の1つ以上のコモノマーを含む。好適な追加のコモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸である。一実施形態では、官能化エチレンアクリレートコポリマーは、エチレンコモノマー、アクリレートコモノマー、およびCOOH官能性を付与するコモノマーからなる、またはこれらから本質的になることができる。
【0016】
本発明で使用するためのCOOH基で官能化された好適なエチレンアクリレートコポリマーは、酸変性エチレンアクリレートであるBynel(登録商標)2022コポリマー(DuPont社から入手可能)である。
好適なEMAAコポリマーは、重合形態で任意の相対量のエチレンおよびメタクリル酸コモノマーを含有してもよい。典型的には、コポリマーは、約1~約30質量%のメタクリル酸コモノマーを含む。好ましくは、コポリマーは、少なくとも5質量%のメタクリル酸コモノマーを含む。好ましくは、コポリマーは、最大20質量%、好ましくは最大15質量%、好ましくは最大10質量%のメタクリル酸コモノマーを含む。一実施形態では、EMAAコポリマーは、エチレンおよびメタクリル酸コモノマーからなる、または本質的にそれからなる。ただし、EMAAコポリマーは、EAAコポリマーに関して上記で定義したように、1つ以上の追加のコモノマーをさらに含んでいてもよい。本発明で使用するための好適なEMAAコポリマーは、DuPont社から商品名Nucrel(登録商標)で入手可能なものから選択されてもよい。本発明で使用するための好適なEMAAコポリマーは、15質量%のメタクリル酸コモノマーを含むNucrel(登録商標)960コポリマー(DuPont社から入手可能)である。
【0017】
好適なMAAAコポリマーは、重合形態で任意の相対量のアクリル酸メチルおよびアクリル酸コモノマーを含有してもよい。典型的には、コポリマーは、約1~約30質量%のアクリル酸コモノマーを含む。好ましくは、コポリマーは、少なくとも5質量%のアクリル酸コモノマーを含む。好ましくは、コポリマーは、最大20質量%、好ましくは最大15質量%、好ましくは最大10質量%のアクリル酸コモノマーを含む。一実施形態では、MAAAコポリマーは、アクリル酸メチルおよびアクリル酸コモノマーからなる、または本質的にそれからなる。しかしながら、MAAAコポリマーは、EAAコポリマーに関して上記で定義したように、1つ以上の追加のコモノマーをさらに含んでいてもよい。
COOH基で官能化された好適なエチレンビニルアセテート(EVA)コポリマーは、エチレンおよび酢酸ビニルコモノマーと、1分子あたり複数のCOOH部分とを含む。したがって、このコポリマーは、COOH官能基を付与するために、エチレンおよび酢酸ビニルコモノマー以外の1つ以上のコモノマーを含む。好適な追加のコモノマーは、エチレン性不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、およびイタコン酸である。一実施形態では、官能化EVAコポリマーは、エチレンコモノマー、酢酸ビニルコモノマーおよびCOOH官能性を付与するコモノマーからなる、または本質的にそれからなることができる。官能化EVAコポリマーから除外されてもよい特定の基には、ハロゲン含有基、硫黄含有基、リン含有基、および置換または非置換のアクリルアミドまたはメタクリルアミド基、例えばN-メチロールアクリルアミドが含まれる。
【0018】
典型的には、COOH基で官能化されたEVAコポリマーは、約9質量%~約40質量%の酢酸ビニルコモノマーと約0.1質量%~約5質量%の1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸を含む。好ましくは、コポリマーは、少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも20質量%、好ましくは少なくとも25質量%の酢酸ビニルコモノマーを含む。好ましくは、コポリマーは、最大40質量%、好ましくは最大35質量%、好ましくは最大30質量%の酢酸ビニルコモノマーを含む。好ましくは、コポリマーは、少なくとも0.5質量%、好ましくは少なくとも0.7質量%、好ましくは少なくとも1.0質量%の1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸を含む。好ましくは、コポリマーは、多くとも4.0質量%、好ましくは多くとも3.0質量%の1つ以上のエチレン性不飽和カルボン酸を含む。
【0019】
本発明で使用するためのCOOH基で官能化された好適なEVAコポリマーは、商品名Elvax(登録商標)EVA酸ターポリマーでDuPont社から入手可能なもの、例えば、Elvax(登録商標)4260、Elvax(登録商標)4310、Elvax(登録商標)4320およびElvax(登録商標)4355、好ましくはElvax(登録商標)4260から選択されてよい。Elvax(登録商標)4260コポリマー(DuPont社から入手可能)は、28%の酢酸ビニル単位と、71%のエチレン単位と、約1%のメタクリル酸単位とを含む。
本発明で使用するためのCOOH基で官能化された別の好適なEVAコポリマーは、酸/アクリレート変性エチレンビニルアセテート(EVA)である、Bynel(登録商標)3101コポリマー(DuPont社から入手可能)である。
好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、少なくとも約60質量%、好ましくは少なくとも約62質量%、好ましくは少なくとも約75質量%、好ましくは少なくとも約80質量%、好ましくは少なくとも約89質量%、好ましくは少なくとも約92質量%、好ましくは少なくとも約93質量%の酸コポリマー樹脂を含む。好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準にして、約99.9質量%以下、好ましくは約99.98質量%以下、好ましくは約99質量%以下、好ましくは約98.9質量%以下、好ましくは約96質量%以下、好ましくは約95質量%以下、好ましくは約94.5質量%以下の酸性コポリマー樹脂を含む。
【0020】
好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、約60%~約99.9%、好ましくは約62%~約99.98%、好ましくは約75%~約99%、好ましくは約80~約98.9%、好ましくは約89%~約96質量%、好ましくは約92%~約95質量%、最も好ましくは約93~約94.5質量%の酸コポリマー樹脂を含む。
プライマーコーティング層の由来元となる組成物は、有機架橋剤をさらに含む。有機架橋剤は、酸コポリマー樹脂の酸官能性と反応性を有する複数の反応性基を含む。例えば、酸コポリマー樹脂がCOOH基で官能化されたEVAコポリマーである場合、有機架橋剤は、前記COOH基と反応性を有する複数の反応性基を含む。
有機架橋剤は、メラミン架橋剤、ポリイソシアネート架橋剤、ポリカルボジイミド架橋剤、複数のオキサゾリン基を含む架橋剤および複数のアジリジン基を含む架橋剤の1種以上から選択されてもよい。好ましくは、有機架橋剤は、メラミン架橋剤である。
【0021】
好適なメラミン架橋剤は、水溶性メラミン架橋剤であってもよく、水不溶性メラミン架橋剤であってもよい。好ましくは、有機架橋剤は、水不溶性メラミン架橋剤である。本発明で使用するのに好適なメラミン架橋剤は、Cytec社からCymel(登録商標)という商品名で入手できるもの、例えば、Cymel(登録商標)XW 3106およびCymel(登録商標)350から選択されてもよく、好ましくはCymel(登録商標)XW 3106である。Cymel(登録商標)XW 3106は、水不溶性であり特にアルキル化された高固形分メラミン樹脂である。Cymel(登録商標)350は、水溶性高メチル化モノマーメラミン樹脂である。
好適なポリイソシアネート架橋剤は、脂肪族ポリイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(HI)トリマーであってもよい。本発明で使用するのに適したポリイソシアネート架橋剤は、Bayer社からDesmodur(登録商標)N3300およびDesmodur(登録商標)N3600の商品名で入手できるもの、および/またはDow社からMOR-FREE(商標)C33の商品名で入手できるものから選択されてもよい。
【0022】
本発明で使用するのに適したポリカルボジイミド架橋剤は、DSM NeoResins社からSolucote XL-1およびCrosslinker XL-1の商品名で入手できるものから選択されてもよい。
複数のオキサゾリン基を含む好適な架橋剤は、オキサゾリン基を有するポリマーであってもよい。好適なポリマーは、a)下記の構造式(I)~(III)に従うオキサゾリン誘導体とb)少なくとも1つのさらなるコモノマーの付加重合によって形成されてもよい。
【化1】
[R
6、R
7、R
8およびR
9は、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、アルキル、アラルキル、フェニルまたは置換フェニルからなる群から選択されてもよく、
R
10は、重合性二重結合を含有する非環状ラジカルである]
【0023】
好適なハロゲンの例には、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素、好ましくは塩素または臭素が含まれる。好適なアルキル基の例には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、ペンチルおよびヘキシル基が含まれる。好適なアラルキル基の例には、C1-5アルキル基、例えば、ベンジル、フェネチル、ベンズヒドリルおよびナフチルメチル基を含むものが含まれる。好適な置換フェニル基の例には、クロロフェニル、ブロモフェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、メチルアミノフェニル、エチルアミノフェニル、ジメチルアミノフェニル、メチルエチルアミノフェニルおよびジエチルアミノフェニルが含まれてもよい。重合可能な二重結合を有する好適な非環状ラジカルの例には、ビニル基およびイソプロペニル基が含まれる。
したがって、好適なオキサゾリン誘導体a)の例には、2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-4-メチル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-4-メチル-2-オキサゾリンおよび2-イソプロペニル-5-エチル-2-オキサゾリンが含まれる。オキサゾリン基を有するポリマーは、オキサゾリン誘導体(a)を単独でまたは組み合わせて使用することにより調製することができる。好ましくは、オキサゾリン誘導体(a)は、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンである。
【0024】
オキサゾリン誘導体(a)と共重合可能な任意の化合物は、コモノマー(b)として使用することができる。好適なコモノマー(b)の例には、メタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチルおよびメタクリル酸2-エチルヘキシル、不飽和カルボン酸、例えば、メタクリル酸、イタコン酸およびマロン酸、不飽和ニトリル、例えばメタクリロニトリル、不飽和アミド、例えば、メタクリルアミドおよびN-メチロールメタクリルアミド、ビニルエステル、例えば、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル、ビニルエーテル、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、α-オレフィン、例えば、エテン、プロペン、ハロゲン化α、β-不飽和化合物、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニル、さらにα、β-不飽和芳香族化合物、例えば、スチレンおよびα-メチルスチレンが含まれる。列挙したコモノマー(b)は、単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。
【0025】
オキサゾリン基を含有する好適なポリマーは、例えば、オキサゾリン誘導体(a)、少なくとも1つのコモノマー(b)およびフリーラジカル開始剤、例えば過酸化ベンゾイルまたはアゾイソブチロニトリルを、好適な水混和性有機溶媒に添加し、得られた溶液を加熱することによって、調製され得る。重合が終了した後、水を添加し、有機溶媒を蒸留により完全にまたは部分的に除去して、本発明の接着剤コーティングにおいて直接使用するのに適したオキサゾリン基を含有する水性ポリマー分散液を残すことができる。あるいは、オキサゾリン誘導体(a)およびコモノマー(b)を、例えばn-ブチリチウムを用いてアニオンで重合させることも可能である。
乾燥ポリマー中のオキサゾリン基の含有量は、通常0.5~10mmol/g、好ましくは1.5~8mmol/gである。乾燥ポリマーのガラス転移温度は、0~100℃、好ましくは20~95℃の範囲にある。
本発明で使用するための複数のオキサゾリン基を含む好適な架橋剤は、日本触媒(日本)から商品名「EPOCROS(登録商標)」で入手できるもの、特に商品名「EPOCROS(登録商標)WS」、好ましくは「EPOCROS(登録商標)WS-300」で入手できるものから選択することができる。
【0026】
本発明で使用するための複数のアジリジン基を含む好適な架橋剤は、DSM NeoResins社から商品名「Crosslinker CX-100」で入手できるものから選択することができる。
好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、少なくとも約0.05質量%、好ましくは少なくとも約0.1質量%、好ましくは少なくとも約0.5質量%、好ましくは少なくとも約1質量%、好ましくは少なくとも約2質量%、好ましくは少なくとも約3質量%、好ましくは少なくとも約4質量%、好ましくは少なくとも約5質量%の有機架橋剤を含む。好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、約25質量%以下、好ましくは約23質量%以下、好ましくは約20質量%以下、好ましくは約18質量%以下、好ましくは約16質量%以下、好ましくは約15質量%以下、好ましくは約12質量%以下の有機架橋剤を含む。
好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、約0.05%~約25%、好ましくは約0.1%~約23%、好ましくは約0.5%~約20%、好ましくは約1%~約18%、好ましくは約2%~約16%、好ましくは約3%~約15%、好ましくは約4%~約12%、好ましくは約5%~約12質量%の有機架橋剤を含む。
【0027】
プライマーコーティング層の由来元である組成物は、酸触媒をさらに含む。好ましくは、酸触媒は、強酸、例えば-1.74以下のpKaを有する酸である。あるいは、酸触媒は、弱酸、例えば、-1.74を超えるpKaを有する酸であってもよい。酸触媒は、有機酸であってもよく、無機酸であってもよい。
酸触媒は、有機スルホン酸、硫酸および硝酸アンモニウムから選択することができる。
好ましくは、酸は、有機スルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA)である。本発明で使用するための好適なp-トルエンスルホン酸は、Cytec社から商品名「CYCAT(登録商標)」で入手可能なものから選択することができる。本発明で使用するための好適なドデシルベンゼンスルホン酸は、King Industries社から商品名「Nacure」で入手できるもの、例えば、Nacure 5076またはNacure 5925から選択することができる。Nacure 5076は、DDBSAをベースとする強酸触媒であり、一般にイソプロパノール中70%の活性で供給される。Nacure 5925は、アミン中和DDBSA触媒である。
【0028】
本発明の発明者らは、効果的なプライマーコーティング層を実現するために、組成物中の酸コポリマー樹脂、有機架橋剤および酸触媒の組み合わせが必要であることを見出した。特に、本発明者らは、酸コポリマー樹脂単独では、ポリアミド基材に対して十分な接着結合強度を有するプライマーコーティング層が得られないことを見出した。有機架橋剤による酸コポリマー樹脂の架橋が必要であり、さらに、有効な架橋系を実現するために、酸触媒が必要であることを本発明者らは見出した。
好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、少なくとも約0.01質量%、好ましくは少なくとも約0.03質量%、好ましくは少なくとも約0.05質量%、好ましくは少なくとも約0.075質量%、好ましくは少なくとも約0.1質量%、好ましくは少なくとも約0.2質量%、好ましくは少なくとも約0.3質量%、好ましくは少なくとも約0.4質量%、好ましくは少なくとも約0.5質量%の酸触媒を含む。好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、約2質量%以下、好ましくは約1.9質量%以下、好ましくは約1.8質量%以下、好ましくは約1.7質量%以下、好ましくは約1.6質量%以下、好ましくは約1.5質量%以下、好ましくは約1.3質量%以下の酸触媒を含む。
【0029】
好ましくは、プライマーコーティング層は、プライマーコーティング層の総質量を基準として、約0.01質量%~約2質量%、好ましくは約0.03質量%~約1.9質量%、好ましくは約0.05質量%~約1.8質量%、好ましくは約0.075質量%~約1.7質量%、好ましくは約0.1質量%~約1.6質量%、好ましくは約0.2質量%~約1.5質量%、好ましくは約0.3質量%~約1.3質量%の酸触媒を含む。
したがって、プライマーコーティング層は、好ましくは、以下の量で前述の成分を含む。
(i)層の60~99.9%、好ましくは75~95%、好ましくは92~95%の量の酸コポリマー樹脂;
(ii)層の0.05~25%、好ましくは0.5~20%、好ましくは4~12%の量の有機架橋剤;
(iii)層の0.01~2%、好ましくは0.05~1.8%、好ましくは0.1~1.6%の量の酸触媒。
上記の量は、完成プライマーコーティング層における各成分の質量を基準とした量(すなわち、プライマーコーティング層の乾燥質量)に関するものであると理解される。
【0030】
プライマーコーティング層はまた、シーラントコーティングの技術分野において従来通り、フィルムの取扱いを改善する滑り補助剤またはブロッキング防止剤を含んでいてもよい。好適な滑り補助剤またはブロッキング防止剤には、カマバワックス、ケマイドおよびシリカが含まれる。このような成分は、比較的少量、典型的には5.0質量%以下、典型的には2.0質量%以下で存在する。
プライマーコーティング層はまた、粘着付与樹脂を含んでいてもよい。粘着付与樹脂は、プライマーコーティング層の凝集強度を向上させ、および/またはポリアミド基材層に対するプライマーコーティング層の接着強度を向上させると考えられる。一般に、本明細書に開示されたプライマーコーティング層に適した粘着付与樹脂は、合成および天然ポリテルペン、炭化水素樹脂、ロジンおよびロジンエステル樹脂、ならびにこれらの組み合わせから選択される。粘着付与樹脂は、好適には、20℃~160℃、好ましくは90℃~125℃の(好ましくは、ASTM E28-18で教示される手順に従って試験された)環球軟化点を示す。粘着付与樹脂の数平均分子量は、好ましくは少なくとも200または500、好ましくは最大5000、2000、または1000である。分子量は、好ましくはポリスチレン(PS)標準を用いて、従来のGPC技術によって好適に測定される。例えば、分子量の決定は、2つのGPC Ultrastyragelカラム、103および104Å(5μm混合、300mm×19mm、Waters Millipore Corporation、Milford、MA、USA)および移動相としてのTHFを備えたHewlett-Packard 1050シリーズHPLCシステムで実施されてよい。
【0031】
好適な天然ポリテルペン粘着付与樹脂は、α-ピネン、β-ピネンおよびd-リモネンを含む天然および再生可能な供給原料をベースとするものである。
例としては、以下のものが含まれる。
1)Piccolyte(登録商標)C樹脂(C85、C105、C115、C125、C135)、Piccolyte(登録商標)F樹脂(F105、F115)、Piccolyte(登録商標)A樹脂(A25、A115、A125、A135)、Piccolyte(登録商標)S樹脂(S25、S85、S115、S125、S135)(すべてPinova社から入手可能)。
2)Sylvares(登録商標)TR樹脂(A25L、90、105、7115、7125)(すべてArizona Chemical社から入手可能)。
このような粘着付与樹脂は、典型的に、プライマーコーティング層の総質量を基準にして、層の約15~約50質量%、好ましくは約15~約40質量%、典型的には約30~約40質量%の量で存在する。
【0032】
このような粘着付与樹脂が存在する場合、酸コポリマー樹脂は、好ましくは、プライマーコーティング層の総質量を基準として、約80質量%以下、好ましくは約70質量%以下、好ましくは約65質量%以下の量で存在する。
プライマーコーティング層の由来元である組成物は、酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、酸触媒およびコーティングビヒクル(ならびに滑り補助剤、ブロッキング防止剤および/または粘着付与樹脂などの任意成分)を含んでもよい。典型的には、酸コポリマー樹脂、有機架橋剤および酸触媒は、コーティングビヒクル中に分散または溶解している。コーティングビヒクルは、任意の好適なコーティングビヒクル、特に高沸点のコーティングビヒクルであってよい。コーティングビヒクルは、好ましくは、有機溶媒、好ましくはトルエン、キシレンおよび/またはクロロベンゼンを含む、またはそれらからなる。
ポリアミド基材は、高い静電気示度を有する傾向があり、コーティングビヒクル(例えば溶剤)ベースの組成物の使用を含むコーティングプロセス中に安全上の問題を引き起こすことがある。コーティングプロセス中の静電気蓄積および放散ならびにその他の考えられる発火源を避けるために、適切な安全対策を講じる必要がある。例えば、コーティングビヒクルは、静電気放散のリスクを低減するための導電性溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を含んでもよい。
【0033】
典型的に、コーティングビヒクル中に酸コポリマー樹脂、有機架橋剤および酸触媒を分散または溶解させるために、組成物を加熱する必要がある。したがって、コーティングビヒクルは、酸コポリマー樹脂を溶解するのに必要な温度に容易に加熱され得るように選択する必要がある。
EAAを溶解するのに必要な高温の観点から、酸コポリマー樹脂は、好ましくは、COOH基で官能化されたエチレンアクリレートコポリマー;エチレンメタクリル酸(EMAA)コポリマー;メチルアクリレートアクリル酸(MAAA)コポリマー;およびCOOH基で官能化されたエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーの1種以上から選択される。そのような酸コポリマー樹脂は、典型的に、より広範囲のコーティングビヒクルと適合できるからである。好ましくは、酸コポリマー樹脂は、エチレンメタクリル酸(EMAA)コポリマー;メチルアクリレートアクリル酸(MAAA)コポリマー;およびCOOH基で官能化されたエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーの1種以上から選択される。好ましくは、酸コポリマー樹脂は、COOH基で官能化されたエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーである。
【0034】
組成物は、好ましくは、組成物を乾燥させる前に決定された組成物の総質量を基準として、約5~約30質量%、好ましくは約7~約25質量%、好ましくは約10~約20質量%の組成物の量でコーティングビヒクルを含む。
プライマーコーティング層は、好ましくは、約0.1~約1.0μmの乾燥厚さ(すなわち、完成複合フィルムにおけるプライマーコーティング層の厚さ)を有する。
本発明の複合フィルムは、好ましくは、
(i)コーティングビヒクル中に酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含むプライマーコーティング層組成物をポリアミド基材の表面上に配置する工程と、
(ii)プライマーコーティング層組成物を乾燥させる工程と、
(iii)乾燥させたプライマーコーティング層組成物を加熱して、硬化したプライマーコーティング層を形成する工程と
を含む方法によって製造される。
【0035】
プライマーコーティング層組成物は、任意の好適なコーティング技術、典型的にはロールコーティング、例えばグラビアロールコーティングおよびリバースロールコーティングを使用して、または当該技術分野において従来からの任意のスプレーコーティング技術によって、ポリアミド基材上に配置され得る。コーティングは、「オフライン」、すなわち、ポリアミド基材の製造中に用いられる延伸およびその後のヒートセットの後に実施されてよく、好ましくは実施される、または「インライン」、すなわち、実施される延伸操作の前、その最中またはその間に、コーティング工程が行われる。コーティングがインラインで行われる場合、コーティングは、好ましくは、二軸延伸操作の前方延伸と側方延伸の間で行われる(「インタードロー」コーティング)。
プライマーコーティング層組成物は、好ましくは、約0.1g/m2~約1.0g/m2、好ましくは約0.3g/m2~約0.7g/m2、典型的には約0.5g/m2以下のコート質量でポリアミド基材に適用される。
乾燥および硬化工程(工程(ii)および(iii))は、別々に順次実施してもよく、単一の熱処理に組み合わせてもよいと理解される。
【0036】
一実施形態では、プライマーコーティング組成物の乾燥および硬化は、約100℃~約250℃、好ましくは約100℃~約200℃、好ましくは約125℃~約150℃の温度で同時に実施される。
本発明の複合フィルムは、シール性フィルム、特に包装用途のシール性かつ剥離性のフィルムの製造に使用することができる。本明細書に記載の複合フィルムの利点は、フィルム(具体的にはプライマーコーティング層)が、ポリアミド基材とその後に施されるヒートシール性コーティング層の両方に対して驚くほど良好な接着性を示すことである。したがって、1つ以上の追加の積層ポリエステルまたはポリオレフィンフィルム中間層を必要とせずに、プライマーコーティング層をヒートシール性コーティング層に直接接着することが可能である。
したがって、本発明の第2の態様によれば、第1および第2の表面を有するポリアミド基材層と;酸コポリマー樹脂、有機架橋剤、および酸触媒を含む組成物に由来し、基材層の第1の表面上に配置されたプライマーコーティング層と;プライマーコーティング層上に配置されたヒートシール性ポリマーコーティング層と、を含む複合フィルムが提供される。
【0037】
本発明者らは、本明細書に記載のプライマーコーティング層を使用すると、1つ以上の積層ポリマー中間層を必要とせずに、プライマーコーティング層を介してポリアミドフィルムをヒートシール性ポリマーコーティング層に接着することが可能になることを期せずして見出した。本明細書で上記に記載された複合フィルムは、積層プロセスによってではなく、コーティングプロセスによって作製されることが理解されよう。したがって、ヒートシール性ポリマーコーティング層およびプライマーコーティング層は、ラミネーション技術ではなく、コーティング技術によって(それぞれプライマーコーティング層上およびポリアミド基材上に)配置される。有利なことに、これにより複合フィルムの厚さが減少する。ポリアミド基材とプライマーコーティング層との間に良好な接着性があり、プライマーコーティング層とヒートシール性ポリマーコーティング層との間に良好な接着性があるため、複合フィルムは良好な層間剥離耐性を示す。本発明の第2の態様の複合フィルムは、複合フィルムと容器との間に良好な接着性があるため、包装用途のシール性フィルムとして使用するのに好適である。さらに、本発明者らは、本発明の第2の態様の複合フィルムが、容器に対する優れたシール性および剥離性を示し、「きれいな剥離」を示すことを見出した。
ポリアミド基材層の第1の表面は、複合フィルムが本明細書に記載の蓋材フィルムとして使用されるときに容器に面する表面である。ポリアミド基材層の第2の表面は、最も外側にあり、容器の内部から見て外方に向く面である。したがって、ヒートシール性ポリマーコーティング層は、本明細書に記載の複合フィルムを蓋材フィルムとして使用するとき容器に面する。
【0038】
本発明は、複合フィルム(10)を示す
図1を参照して説明され、ここで、複合フィルムは、ポリアミドフィルム(2)と、プライマーコーティング層(3)と、ヒートシール性ポリマーコーティング層(4)とを含む。
プライマーコーティング層上に配置されたヒートシール性ポリマーコーティング層は、容器、特にポリオレフィンまたはポリエステル容器の表面にヒートシール結合を形成することができる。ヒートシール性コーティング層のポリマー材料は、加熱時に十分な程度軟化して粘度が低くなり、ポリマー材料が結合する表面に接着するのに十分なだけの濡れ性をもたらす。
本明細書において、「ヒートシール性」という用語は、250℃以下(好ましくは230℃以下、好ましくは150~200℃の範囲内)の温度、および約1000kPa以下(好ましくは700kPa以下、好ましくは550kPa以下、好ましくは210kPa以下)の圧力で、5秒以下(好ましくは1秒以下、好ましくは0.3秒以下)の時間にわたり、ヒートシール性フィルムを結合しようとする表面に接触させることにより、ヒートシール結合を形成する能力を指し、ここで、好ましくは、得られる結合強度は少なくとも10g/mm(好ましくは少なくとも20g/mm、好ましくは少なくとも30g/mm)である。
【0039】
ヒートシール性ポリマーコーティング層は、ポリアミド基材上のヒートシール性コーティングとして適した任意のポリマー材料から形成されてもよい。好適なヒートシール性ポリマーコーティングには、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリオレフィン、エチレン-アクリル酸コポリマーおよびエチレン-メタクリル酸コポリマーが含まれる。EVAコーティング、PVDCコーティングが特に好ましく、とりわけEVAコーティングが好ましい。
ヒートシール性コーティング層に好適なEVAポリマーには、Elvax(商標)樹脂(DuPont社)として市販されているEVAポリマーが含まれる。典型的には、EVA樹脂は、9%~40%、典型的には15%~30%の範囲の酢酸ビニル含有量を有する。
【0040】
PVDCヒートシール性コーティングは当技術分野で周知であり、ヒートシール性コーティングに適したPVDC材料は、塩化ビニリデンと他のモノマーのコポリマーである。塩化ビニリデンコポリマーは、典型的に、出発材料としての塩化ビニリデン50~99質量%と、塩化ビニリデンと共重合可能な1~50質量%の1種以上の他のモノマーとを従来の乳化重合方法を用いて重合することにより、媒体中に分散したラテックスとして得られる。塩化ビニリデンの割合が高いほど、塩化ビニリデンコポリマーの結晶融点は高くなる。共重合可能なモノマーの例には、塩化ビニル;アクリル酸エステル、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル;メタクリル酸エステル、例えば、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸グリシジル;アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル;ならびに不飽和カルボン酸、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびマレイン酸が含まれる。1種または2種以上のこのようなモノマーが使用されてもよい。塩化ビニリデン系コポリマー混合ラテックスの固形分濃度は、コーティング装置または乾燥加熱装置の仕様に応じて適宜変更されてよく、好ましくは10~70質量%の範囲、より好ましくは30~55質量%の範囲である。
ヒートシール性ポリマーコーティング層の形成は、本明細書で上記に説明したコーティングプロセスを使用して、プライマーコーティング層上にヒートシール性コーティング製剤をコーティングすることによって行われる。ヒートシール性ポリマーコーティングの成分は、典型的には、水もしくは有機溶媒またはそれらの混合物であってよいコーティングビヒクル中に分散または溶解する。コーティング製剤は、好ましくは、コーティング製剤の約5~約30、好ましくは約10~約25、好ましくは約15~約20質量%の量でコーティングビヒクルを含む。
【0041】
ヒートシール性ポリマーコーティングは、シーラントコーティングに従来から使用されている添加剤のいずれか、特にブロッキング防止剤、例えば、前述の微粒子無機充填剤および有機滑り補助剤を含んでもよく、これらは、典型的に比較的少量、典型的に5.0質量%未満、典型的に2.0質量%未満の量で存在する。ヒートシール性コーティングは、基材の濡れ性を改善するために、1つ以上の界面活性剤をさらに含んでもよい。好適な界面活性剤の例には、アニオン界面活性剤、例えば、ポリエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩およびアルキルスルホコハク酸スラット;および非イオン性界面活性剤、例えばアセチレングリコールが含まれる。ヒートシール性コーティングは、前述の粘着付与樹脂をさらに含んでもよい。
ヒートシール性ポリマー材料は、好ましくは、それが形成するコーティング層の少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、典型的には少なくとも98%を構成する。
【0042】
ヒートシール性コーティング層の厚さは、複合フィルムの総厚さの、好ましくは約45%以下、より好ましくは約40%以下、さらに好ましくは約30%以下、好ましくは少なくとも約5%、より好ましくは少なくとも約10%、好ましくは約15%~約30%である。典型的には、ヒートシール性コーティング層は、最大約25μm、より好ましくは最大約15μm、より好ましくは最大約10μm、より好ましくは最大約6μm、より好ましくは最大約5μm、より好ましくは最大約4μmの厚さを有する。典型的には、ヒートシール性コーティング層は、少なくとも約1μm、好ましくは少なくとも約1.5μm、好ましくは少なくとも約2μmの厚さを有する。より好ましくは、ヒートシール性コーティング層は、約2μmと約6μmの間、より好ましくは約2μmと約4μmの間の厚さを有する。
第2の態様の複合フィルムは、好ましくは60μm以下、より好ましくは35μm以下の総厚さを有する。
複合フィルムは、好ましくは、ポリアミド基材層、プライマーコーティング層、およびヒートシール性ポリマーコーティング層から本質的になり、好ましくは、それらからなる。
【0043】
好ましくは、本発明の複合フィルムは光学的に透明である。本明細書で使用する場合、「光学的に透明」という用語は、10%以下、好ましくは8%以下、好ましくは5%以下、好ましくは4%以下、好ましくは3%以下、好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下の百分率の可視波長域内の散乱光、および/または少なくとも80%、好ましくは少なくとも88%、より好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約92%の、可視域(400nm~700nm)における光の全視感透過率(TLT)を提供する層を指す。好ましくは、光学的に透明なフィルムは、これらの基準の両方を満たす。この実施形態では、フィルム中の任意の充填剤は、典型的に、層の質量に対して2.5%以下、好ましくは2.0%以下、好ましくは1.1%以下、好ましくは0.6%以下、好ましくは0.3%以下の少量でのみ存在し、ここで、好ましくは、充填剤はシリカである。この実施形態では、ヘイズまたは他の光学特性の許容できない減少なしに、フィルムの巻取り性(すなわち、フィルムをロールに巻き取るときにブロッキングまたは固着がないこと)が改善される。光学的に透明なフィルムは、新鮮で衛生的な印象を消費者に与えるため、蓋材フィルムとして特に有利である。
複合フィルムは、好ましくは、好ましくは少なくとも600g/インチで、400~1600、好ましくは少なくとも500の範囲の、PPまたはCPETトレイに対する本明細書で定義されるヒートシール強度を示す。好ましくは、標準的なPPまたはCPETトレイに対するフィルムのヒートシール強度は、500~1000g/インチ、好ましくは600~800g/インチの範囲にある。好ましくは、複合フィルムは、350°F(約177℃)で、そのようなヒートシール強度を示す。
【0044】
本発明の第2の態様の複合フィルムは、コンビニエンス食品または調理済み食品、例えば、電子レンジまたは電気オーブンのいずれかで温められるオーブン料理を包装するためのレセプタクルを密閉し、またはレセプタクルに蓋を提供するのに有用である。レセプタクルは、熱成形されたトレイまたはボウルなどの容器であってもよく、本明細書で上記に説明したトレイ材料で形成されてもよい。
本発明の第2の態様の複合フィルムは、包装、例えば、食品製品を保存する、および/または食品製品を調理するための袋に有用である。袋は、本明細書で上記に記載された複合フィルムから形成されてもよい。
第1の態様の説明および好ましい選択は、第2の態様にも同様に適用可能である。
第3の態様において、本発明は、食品製品、特にオーブン料理を収容するレセプタクルと、本明細書の第2の態様に記載の複合フィルムから形成された蓋とを含む密閉容器であって、特に、レセプタクルが、CPETまたはポリオレフィン、特にPPまたはPE、特にPPから作製されている、密閉容器を提供する。密閉容器は、当業者に周知の技術によって製造される。包装される食品がレセプタクルに導入されると、ヒートシール性フィルムの蓋が、従来の技術および装置を用いて、温度および/または圧力を用いて貼付される。
【0045】
第4の態様では、本発明は、本明細書の第2の態様に記載の複合フィルムの、オーブン料理の包装における蓋としての使用であって、前記包装が、レセプタクルをさらに含み、特にレセプタクルが、CPETまたはポリオレフィン、特にPPまたはPE、特にPPから作製されている、使用を提供する。
第5の態様では、本発明は、食品製品を収容する袋であって、本明細書の第2の態様に記載の複合フィルムから形成されている、袋を提供する。袋は、少なくともその1つの側面に沿ってそれ自体にヒートシールされ、食品製品が入れられる開口部を有していてもよい。包装される食品が袋の中に導入されると、袋の開口部は、従来から公知の任意の方法で密閉されてもよい。例えば、ヒートシール性複合フィルムは、従来の技術および装置を用いて温度および/または圧力を用いてそれ自体に貼付されてもよい。あるいは、袋は、複数回開閉することを可能にするクロージャーを備えてもよい。
第6の態様では、本発明は、食品製品の包装における袋としての、本明細書の第2の態様に記載された複合フィルムの使用を提供する。
【0046】
第1および第2の態様の説明および好ましい選択は、第3、第4、第5および第6の態様にも同様に適用可能である。
特性測定
複合フィルムの特性決定には、以下の試験方法を用いることができる。
(i)標準試験法ASTMD1003-13に従って、M57D球形ヘイズメーター(DiffusionSystems社)を用いて、フィルムの全厚みを通じた全輝度透過率(TLT)およびヘイズ(散乱透過可視光の%)の測定によって、光学的透明性を評価する。
(ii)フィルムの機械方向および横断方向に対して特定の方向に切断し、目視測定のために印をつけた、200mm×10mmの寸法のフィルム試料について、熱収縮率を評価する。試料の長い方の寸法(すなわち、寸法200mm)は、収縮が試験されるフィルム方向に対応する。すなわち、機械方向の収縮の評価のために、試験試料の200mmの寸法をフィルムの機械方向に沿って配向する。試験片を所定の温度150℃に加熱し(その温度で加熱したオーブンに入れることにより加熱し)、30分間保持した後、室温まで冷却し、その寸法を手動で再測定した。熱収縮率を計算し、元の長さに対する百分率で表した。
【0047】
(iii)PerkinElmer HyperDSC 8500を使用した示差走査熱量測定(DSC)により、ガラス転移温度(Tg)および結晶融点(Tm)を測定した。特に断りのない限り、以下の標準試験法に従い、ASTME1356-98に記載された方法を基準として、測定を行った。スキャンの間、乾燥窒素の雰囲気下で試料を維持した。20ml・分-1の流速およびAlパンを使用した。試料(5mg)を20℃から350℃まで20℃/分で加熱した。
ASTME1356-98に記載されているとおり、DSCスキャンで観察したガラス転移の外挿開始温度(温度(℃)に対する熱流(W/g))として、Tgの値を決定した。DSCスキャンから、転移のピーク吸熱としてTmの値を決定した。
(iv)ヒートシール強度を以下のように測定した。基材層、プライマーコーティング層およびヒートシール性ポリマーコーティング層を含むA4シートのフィルムの半分を、Sentinel社製ヒートシーラー(Packaging Industries Group社製モデル12)を用いてそれ自身(コーティング面同士)にシールした。177℃(350°F)の上部ジョーと38℃(100°F)の底部ジョーを用いて、552kPa(80psi)で0.5秒間、ヒートシーラーを作動させた。シールした試料に印をつけ、25mm幅の短冊状に切り出し、折り返し部分をスリットし、INSTRON(登録商標)モデル4464試験機で剥離強度試験を行い、ヒートシール強度を測定した。ジョーを50mm間隔でセットした。上側のジョーはシールされた試料の片方を保持し、250mm/分の速度で上昇し、下側のジョーはシールされた試料のもう片方を保持し、静止していた。2枚のフィルム片を分離するのに必要な平均力を記録した。各コート試料について、3枚の密閉試料片を測定した。
【0048】
(v)PPまたはCPET容器へのヒートシール強度を以下のように測定した。PPまたはCPET容器から平坦な部分を切り出して、容器基材試料を得る。基材層、プライマーコーティング層、およびヒートシール性ポリマーコーティング層を含むA4シートのフィルムを、Sentinelヒートシーラー(Packaging Industries Group社製モデル12)を使用して容器基材(容器基材へのヒートシール性コーティング層)にシールした。177℃(350°F)の上部ジョーと38℃(100°F)の底部ジョーを用いて、552kPa(80psi)で0.5秒間、ヒートシーラーを動作させた。シールした試料に印をつけ、25mm幅の短冊状に切り出し、折り返し部分をスリットし、INSTRON(登録商標)モデル4464試験機で剥離強度試験を行い、ヒートシール強度を測定した。ジョーを50mm間隔でセットした。上側のジョーはシールされた試料のフィルム片を保持し、250mm/分の速度で上昇し、下側のジョーはシールされた試料の容器基材片を保持し、静止していた。フィルムと容器基材を分離するのに必要な平均力を記録した。各コート試料について、3枚の密閉試料片を測定した。
【0049】
特に断らない限り、本明細書に記載されているすべての組成百分率および比率は質量基準であり、すべてのコーティング質量は乾燥コーティング質量を意味する。
本発明を以下の実施例によってさらに説明する。実施例は説明のためだけのものであり、上述したとおり本発明を限定することを意図していないと理解されよう。本発明の範囲から逸脱することなく細部の修正を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[実施例]
【0051】
表1に記した材料を使用して、複合フィルムを調製した。
【表1】
【0052】
比較例1~2;実施例3~12
二軸配向ナイロン6フィルム(Capran 1200、AdvanSix社製)を入手した。ナイロン6フィルムの厚さは12μmであった。A4サイズの基材を用意した。
上記のナイロン6フィルムの片面に、表2に示す組成を有するプライマーコーティング層をコーティングし、種々の複合フィルムを調製した。
例えば、9.45gのElvax(登録商標)4260をトルエン89.05gに60℃で溶解させ、0.05gのp-トルエンスルホン酸一水和物と0.5gのCymel XW 3106を添加して、実施例3のプライマーコーティング層を調製した。
表2に示すコーティング製剤の成分量は、完成したプライマーコーティング層における各成分の質量(すなわち、プライマーコーティング層の乾燥質量)である。トルエン中に10質量%で表2のコーティング製剤を調製した。ナイロン6フィルムの片面に、Meyer社製コーティングロッドを用いて、0.7g/m2のコート質量でオフラインにて、コーティングを実施した。このプライマーコーティング層組成物を150℃に設定した強制空気オーブンに移し、3分間乾燥硬化させた。複合フィルムを室温まで冷却した。
【0053】
次に、ヒートシール性ポリマーコーティング層を、上記のような範囲の複合フィルムの硬化したプライマー層上にコーティングした。31gのElvax(登録商標)3185、0.3gのSyloid(登録商標)620および0.5gのKemamide EZを200mLのトルエンに60℃で溶解させることによって、ヒートシール性ポリマーコーティング組成物を調製した。Meyer社製コーティングロードを使用して、コート質量6.5g/m2でオフラインにてコーティングを実施した。ヒートシール性ポリマーコーティング層組成物を、115℃に設定した強制空気オーブンに移し、2分間乾燥させた。
【0054】
最終複合フィルムを、それ自身、PP基材、およびC-PET基材にヒートシールし(350°F;滞留時間0.5秒;圧力80psi)、複合フィルムの剥離強度を、本明細書に記載したとおり試験した。結果を表2に示す。
本発明による複合フィルムは、容器基材から剥離する際に、容易かつきれいな剥離を示した。対照的に、比較例1および2のフィルムは、剥離後に基材上にコーティング残渣を残した。
【0055】
さらに、本発明例は、比較例1の複合フィルム(プライマーコーティング層に有機架橋剤および酸触媒を含まないもの)および比較例2の複合フィルム(プライマーコーティング層に酸触媒を含まないもの)と比較して、試験したすべての剥離強度にわたって優れた剥離強度を示すことがわかった。
【0056】
比較例3;実施例13
ポリアミド基材上にヒートシール性ポリマーコーティング組成物を直接配置して、比較例3の複合フィルムを調製した。したがって、比較例の複合フィルムは、プライマーコーティング層を含んでいなかった。複合フィルムのPP基材に対する剥離性およびCPET基材に対する剥離性を、それぞれ
図2Aおよび
図2Bに示すとおりに評価した。複合フィルムは、基材から手で剥がしたときにきれいな剥離を示さなかった。このことは、PPおよびCPET基材の表面に見えるヒートシール性コーティング層の斑点および残留物によってわかる。
【0057】
ポリアミド基材の第1の表面上にプライマーコーティング層を配置し、次いでプライマーコーティング層上にヒートシール性ポリマーコーティング層を配置した、実施例13の複合フィルムを得た。
図3(左から右)に示すとおり、複合フィルム自身の剥離性、CPET基材への剥離性、およびPP基材への剥離性を評価した。複合フィルムは、基材から手で剥離したとき、基材表面に斑点がなく、ヒートシール性コーティング層の残留物が見られないことからわかるように、きれいな剥離を示すことがわかった。
コーティング/コーティング剥離試験(すなわち、複合フィルムがそれ自体にヒートシールされた場合)は、ヒートシール性コーティング内の凝集破壊を示し、ヒートシール性コーティング層とプライマーコーティング層との間の有利に高い接着強度を示した。
【表2】
【国際調査報告】