(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】症候性ウイルス疾患の処置
(51)【国際特許分類】
A61K 31/402 20060101AFI20230518BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230518BHJP
A61P 31/14 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
A61K31/402
A61P29/00
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559738
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021058240
(87)【国際公開番号】W WO2021198223
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り ▲1▼シナクト ファーマ エーピーエスのウェブサイトに掲載されたプレスリリース(ウェブサイトの掲載日 令和2年3月31日)(掲載アドレスは発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書に掲載) ▲2▼ウェブメディア「MedWatch」によるプレスリリースの引用(ウェブサイトの掲載日 令和2年3月31日)(掲載アドレスは発明の新規性の喪失の例外の規定の適用を受けるための証明書に掲載)
(71)【出願人】
【識別番号】520486395
【氏名又は名称】シナクト ファーマ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ジョナッセン,トーマス,エンゲルブレット,ノードキルド
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC05
4C086GA14
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB33
4C086ZC41
(57)【要約】
提供されるのは、症候性COVID-19をはじめとする症候性ウイルス障害および疾患をはじめとするウイルス障害および疾患を処置する方法における使用のためのフェニルピロールアミノグアニジン誘導体を含む組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、互変異性体および立体異性体形態を含む式(I):
【化1】
(式中、nは、1であり;R1は、CF3、CCl3、F、Cl、NO2またはCNであり、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、水素である)で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物。
【請求項2】
前記化合物が、互変異性体および立体異性体形態を含む式(II):
【化2】
のもの、またはその医薬的に許容できる誘導体である、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記化合物が、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジンおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン、またはそれらの医薬的に許容できる塩からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記その医薬的に許容できる誘導体が、無機酸または有機酸の医薬的に許容できる塩などの、その医薬的に許容できる塩である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記有機酸が、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
前記有機酸が、酢酸、コハク酸、酒石酸、またはプロピオン酸である、任意の請求項4~5に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記無機酸が、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸および硝酸からなる群から選択される、請求項4に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記有機酸が、酢酸である、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記化合物が、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートからなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記化合物が、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタート(AP1189)である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記化合物が、
i)1つまたは複数のMC受容体のアゴニストであり、
ii)MC1RおよびMC3Rのアゴニストであり、そして/または
iii)MC1RおよびMC3Rのバイアスドアゴニストである、
前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記ウイルス性疾患または障害が、症候性ウイルス疾患および障害である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記ウイルス性疾患または障害が、症候性COVID-19である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記症候性COVID-19が、1つまたは複数の呼吸器症状を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記症候性COVID-19が、咳、空咳、呼吸困難、呼吸器疾病、呼吸機能不全、呼吸不全、呼吸器症候群および2019-nCoV急性呼吸器疾患(2019-nCoV ARD)からなる群から選択される1つまたは複数の呼吸器症状を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記症候性COVID-19が、軽度肺炎、肺炎、異常な所見を有する肺炎および新型コロナウイルス性肺炎(NCP)をはじめとするウイルス性肺炎を含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項17】
前記症候性COVID-19が、重度疾患である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記症候性COVID-19が、重篤疾患である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項19】
前記症候性COVID-19が、IL-6および/またはIL-1βなどの1種または複数の炎症促進性サイトカインを高レベルで呈する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記症候性COVID-19が、呼吸不全を有するCOVID-19である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記症候性COVID-19が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項22】
前記症候性COVID-19が、全身炎症性窮迫症候群(systemic inflammatory distress syndrome)(SIDS)を有するCOVID-19である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記症候性COVID-19が、機械換気を必要とする、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記症候性COVID-19が、COVID-19により誘導された肺不全である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項25】
前記COVID-19により誘導された肺不全が、正常な飽和度を維持するために供給酸素を必要とすることと定義される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項26】
前記COVID-19により誘導された肺不全が、自発呼吸での93%未満のSaPO2と定義される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項27】
前記ウイルス性疾患または障害が、ウイルスにより誘導された炎症状態など、ウイルスにより誘導された炎症など、ウイルスにより誘導された過剰炎症など、炎症性ウイルス疾患または障害である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項28】
前記ウイルス性疾患または障害が、1つまたは複数の臓器におけるウイルスにより誘導された過剰炎症などの1つまたは複数の臓器におけるウイルスにより誘導された炎症である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項29】
前記ウイルス性疾患または障害が、1つまたは複数の臓器における局所炎症状態などの局所炎症または局所炎症状態を有するウイルス疾患または障害である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項30】
前記過剰炎症が、100mg/lより大きなC反応性タンパク質(CRP)または900ng/mlのフェリチンを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項31】
前記1つまたは複数の臓器が、肺、気道、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、外分泌腺、内分泌腺、リンパ節、脳、心臓、筋肉、骨髄、皮膚、骨格、膀胱、卵管をはじめとする生殖器官、目、耳、血管系、小腸、結腸、直腸、肛門管をはじめとする消化管、および前立腺からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項32】
肺および/または気道などの呼吸器系において炎症を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項33】
1つまたは複数の呼吸器症状を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項34】
前記1つまたは複数の呼吸器症状が、咳、空咳、呼吸困難、酸素供給の損傷、呼吸器疾病、呼吸機能不全、呼吸不全、呼吸器症候群および急性呼吸器疾患(ARD)からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項35】
前記呼吸器症候群が、呼吸不全である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項36】
前記呼吸器症候群が、1型呼吸不全、2型呼吸不全、急性呼吸不全および慢性呼吸不全からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項37】
前記ウイルス性疾患または障害が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項38】
前記ウイルス疾患または障害が、重度疾患である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項39】
前記重度疾患が、呼吸困難、呼吸回数増加、血中酸素飽和度の低減および/または肺浸潤の1つまたは複数を呈する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項40】
前記ウイルス疾患または障害が、重篤疾患である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項41】
前記重篤疾患が、呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器機能不全(MOD)もしくは多臓器不全(MOF)の1つまたは複数を呈する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項42】
前記ウイルス性疾患または障害が、ウイルス性気管支炎である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項43】
前記ウイルス性疾患または障害が、ウイルス性肺炎である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項44】
前記ウイルス性肺炎が、軽度肺炎、肺炎、および異常な所見を有する肺炎からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項45】
前記ウイルス性疾患または障害が、肺不全である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項46】
前記肺不全が、正常な飽和度を維持するために供給酸素を必要とすることと定義される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項47】
前記肺不全が、自発呼吸での93%未満のSaPO
2と定義される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項48】
前記ウイルス性疾患または障害が、機械換気を必要とする、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項49】
前記機械換気として、保護的機械換気、高流量経鼻酸素(HFNO)および非侵襲的換気(NIV)が挙げられる、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項50】
前記ウイルス性疾患または障害が、全身炎症を有するウイルス性疾患または障害である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項51】
前記ウイルス性疾患または障害が、全身炎症性窮迫症候群(SIDS)である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項52】
前記ウイルス性疾患または障害が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および全身炎症性窮迫症候群(SIDS)である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項53】
前記処置が、回復までの時間を低減する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項54】
前記処置が、炎症収束を促進する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項55】
前記処置が、重度炎症の発症リスクを低減する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項56】
前記処置が、重度急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症リスクを低減する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項57】
前記処置が、正常な飽和度を維持するための供給酸素の要求を低減する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項58】
前記処置が、より集中的な肺支援の必要性を生じるリスクを低減する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項59】
前記ウイルス性疾患または障害が、IL-6および/またはIL-1βなどの1種または複数の炎症促進性サイトカインなどの1種または複数のサイトカインを高レベルで有する、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項60】
サイトカインストーム(高サイトカイン血症)を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項61】
ウイルス性高サイトカイン血症により引き起こされた多系統臓器不全を有するウイルス性疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項62】
サイトカイン放出症候群(CRS)を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項63】
腎臓の炎症および/または腎機能不全を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項64】
急性腎不全または慢性腎不全を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項65】
末期腎不全を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項66】
前記ウイルス性疾患または障害が、ウイルス性腎臓感染(腎盂腎炎)、ウイルス性尿路感染(UTI)、および/またはウイルス性腎臓炎症(腎炎)からなる群から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項67】
重度出血性膀胱炎または尿路閉塞などの膀胱感染および/または膀胱炎症(膀胱炎)を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項68】
急性肝炎および慢性肝炎などの肝臓感染および/または肝臓炎症(肝炎)、ならびに肝硬変を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項69】
膵臓感染および/または膵臓炎症(膵炎)を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項70】
小腸および/または大腸などの腸感染および/または腸炎症を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項71】
前記腸炎症が、大腸炎または腸炎である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項72】
脳感染および/または脳炎症を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項73】
前記脳炎症が、脳炎;進行性多巣性白質脳症(PML);または1つもしくは多数の場所の脳白質の炎症である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項74】
目の感染および/または目の炎症を有するウイルス疾患または障害の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項75】
前記目の炎症が、網膜炎である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項76】
ウイルスにより誘導された脾腫/脾臓萎縮の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項77】
ウイルスにより誘導されたびまん性リンパ系萎縮の処置のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項78】
前記ウイルス疾患または障害が、ウイルス感染により引き起こされる、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項79】
前記ウイルス疾患または障害が、重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2);SARS-CoV、MERS-CoV、デングウイルスおよびインフルエンザウイルス(A型、B型およびC型など)からなる群から選択されるウイルス感染により引き起こされる、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項80】
前記ウイルス疾患または障害が、デングウイルスにより引き起こされる、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項81】
前記ウイルス疾患または障害が、デング出血熱またはデングショック症候群である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項82】
前記ウイルス疾患または障害が、インフルエンザウイルスにより引き起こされる、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項83】
前記ウイルス疾患または障害が、SARS-CoV-2、SARS-CoVおよびMERS-CoVからなる群から選択されるウイルスにより引き起こされる、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項84】
免疫不全を有する対象のウイルス疾患または障害の処置における使用のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項85】
前記免疫不全を有する対象が、重症複合免疫不全症(SCID)、オーメン症候群および軟骨毛髪形成不全などのT細胞の原発性免疫不全、ならびにHIV/AIDS、癌免疫療法、リンパ球、およびグルココルチコイド療法により引き起こされるものなどのT細胞の続発性免疫不全をはじめとする、T細胞欠損を有する対象から選択される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項86】
HSCT患者(造血幹細胞移植)、SOT患者(固形臓器移植片)、高齢対象および非常に若い対象をはじめとする高リスク集団からの対象のウイルス疾患または障害の処置における使用のため、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項87】
前記組成物が、ウイルス疾患または障害の処置に用いられる1種または複数の追加的な活性医薬原料など、1種または複数の追加的な活性医薬原料を別個に、または一緒に含む、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項88】
前記1種または複数の追加的な活性医薬原料が、症候性COVID-19の処置のために用いられる活性医薬原料である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項89】
ウイルス疾患または障害の処置に用いられる1種または複数の追加的な治療へのアドオン療法である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項90】
前記ウイルス疾患または障害が、2~5LO
2/分の間の流速での経鼻酸素カテーテルなどの経鼻酸素カテーテル、および/または機械換気で処置される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項91】
前記化合物が、1日あたり1~5mg、5~10mg、10~15mg、15~20mg、20~30mg、30~60mg、60~80mg、80~100mg、100~130mg、130~160mg、160~200mg、200~240mg、240~280mg、280~320mg、320~360mg、360~400mg、400~440mg、440~500mg、500~560mg、560~620mg、620~680mg、680~740mg、740~800mg、800~860mg、860~920mg、920~980mg、980~1000mgなど、例えば500~1000mgなど、1日あたり1mg~1000mgの量で投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項92】
前記化合物が、1日1回100mg、1日1回200mg、1日1回300mg、1日1回400mg、1日1回500mg、1日1回600mg、1日1回700mg、1日1回800mg、1日1回900mg、または1日1回100mgの量で投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項93】
前記化合物が、1日1回100mgの量で投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項94】
前記化合物が、1日2回(BID)100mgまたは1日3回(TID)100mgの量で投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項95】
前記化合物が、1日2回(BID)200mgまたは1日3回(TID)200mgの量で投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項96】
前記化合物が、AP1189 100mgの1日1回の経口投与として投与される、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項97】
医薬的に安全である、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【請求項98】
ウイルス疾患または障害の処置、好転および/または緩和のための、前記請求項のいずれかに記載の使用のための組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、症候性COVID-19をはじめとするウイルス疾患および障害を処置する方法における使用のための、式(I)もしくは(II)で示される化合物、またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
歴史的に、特にウイルスによる、感染性疾患は、ヒトの罹患率および死亡率の最も重要な寄与因子の1つであった。それらは、世界中の死亡および不能の大部分を占め、特定の領域では、依然として最も重要な病気原因である。ウイルス疾患および障害の負担は、近年のコロナウイルス疾患2019(COVID-19)アウトブレイクにより例証される。
【0003】
COVID-19は、近年発見されたコロナウイルス重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)により引き起こされた感染性疾患であり、COVID-19ウイルスと称されることが多い。ウイルス性気道感染COVID-19は、2019-nCoV急性呼吸器疾患(2019-nCoV ARD)および新型コロナウイルス肺炎(NCP)とも称される。
【0004】
COVID-19ウイルスに感染したほとんどの人々が、軽度肺炎に似た軽度から中等度の呼吸器疾病に見舞われ、特別な処置を必要とせずに回復する。高齢者、ならびに心臓血管疾患、糖尿病、慢性呼吸器疾患および癌のような医学的問題を抱えた人々は、重篤な疾病を発症する可能性がより高い。共通する症状としては、発熱、倦怠および空咳が挙げられる。他の症状としては、息切れ、鈍痛および疼痛、ならびに咽頭痛が挙げられる。
【0005】
COVID-19の臨床スペクトルは、無症状または軽症形態から機械換気および集中治療室での支援を必要とする呼吸不全を特徴とする臨床状態、そして敗血症、敗血症性ショックおよび多臓器機能不全症候群に関する多臓器および全身の症状発現まで様々である。
【0006】
重度疾患は、呼吸困難、呼吸数増加、血中酸素飽和度の低減および/または肺浸潤を呈する。重篤疾患は、呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器機能不全(MOD)もしくは多臓器不全(MOF)を呈する。
【0007】
COVID-19ウイルスによる上気道および下気道の感染は、インターロイキンIL-6およびIL-1βをはじめとする炎症促進性サイトカインの結果的放出を伴う軽度または高度急性呼吸器症候群を引き起こす可能性がある。SARS-CoV-2ウイルスは、IL-6およびIL-1βの増加を引き起こし、サイトカインレベルの上昇が、COVID-19の重症度を予測するために見出される。
【0008】
当初、COVID-19の特異的ワクチン接種または処置は存在しなかった。今日までの幾つかの処置は、若干の有効性を示している。多くの場合、処置は対処療法であり、酸素療法が、重度感染患者への主要な処置的介入になる。呼吸不全に取り組む方策としては、保護的機械換気および高流量経鼻酸素(HFNO)または非侵襲的換気(NIV)が挙げられる。
【0009】
ウイルスで惹起されたARDS(急性呼吸窮迫症候群)は、毛細管の損傷および肺胞嚢への血漿漏出を特徴とし、血液空気関門を破壊して血液酸素供給を重度に損なう。これは、直接的にはウイルス損傷の結果として、そして間接的には「サイトカインストーム」 - つまりTNF、インターロイキン(IL)-1b、IL-6、IL-12およびIFNcなどのサイトカイン、ならびにIL-8、MCP-1およびIP-10などのケモカインの過剰または非制御的な産生 - を伴う肺への好中球およびマクロファージなどの免疫細胞の浸潤を惹起する免疫系の過剰活性化により起こり得る。これは、基本的にはウイルス伝播を限定する保護的応答であるが、効能よりも有害に働くことになる。その詳細の幾つかは異なり得るが、サイトカインストームが、インフルエンザA、SARS-CoV、MERS-CoVおよびSARS-CoV-2ウイルスにより引き起こされる呼吸器感染の共通する合併症である。
【0010】
メラノコルチン系は、メラニン形成、ストレス応答、炎症、免疫調整および副腎皮質ステロイド産生をはじめとする多様な生理学的機能の恒常性調節において統合的役割を担う神経ペプチドと免疫内分泌のシグナル伝達経路の組み合わせである。それは、5種のGタンパク質共役メラノコルチン受容体、つまりメラノコルチン受容体1(MC1R)~MC5R;ペプチドリガンド;下垂体前葉により分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)であるα,β,γ-メラノサイト刺激ホルモン(α,β,γ-MSH);および内因性アンタゴニストをはじめとする複数の成分からなる。メラノコルチン系の生物学的機能は、全く別の組織分泌を有し、異なるシグナルを運搬し、異なる臓器系で種々の生物活性を発揮する、5種のメラノコルチン受容体(MCR)により媒介される。
【0011】
メラノコルチン受容体上で活性を有するフェニルピロールアミノグアニジン誘導体が、WO2007/141343号に開示されている。そのような化合物の一例が、抗炎症性AP1189((E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)であり、それは最初、MC1Rに結合することが示され(WO2007/141343号)、後にカノニカルcAMP生成を誘発しない受容体MC1RおよびMC3Rでバイアスドデュアルアゴニストとして同定された。AP1189の作用機序は、直接的にマクロファージ上でのメラノコルチン受容体活性化を通して炎症の収束を促進し、それによりマクロファージの炎症促進活性を低減して、炎症細胞を浄化する特異的能力であるマクロファージエフェロサイトーシスを刺激することである(Montero-Melendez et al. 2015)。この効果は、炎症および自己免疫疾患の疾患モデルにおいて効果的であることが示されており、このアプローチの臨床的潜在性が現在、活動性関節リウマチの患者において第2相臨床試験でテストされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
概要
本発明者らは、フェニルピロールアミノグアニジン誘導体AP1189((E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)が、ビヒクルに比較して、炎症促進性サイトカインIL-1およびIL-1βのレベルを低減し、好中球蓄積を低減することを見出した。これは、AP1189および関連の化合物が症候性COVID-19の処置のための候補物質であることを示唆している。
【0013】
COVID-19肺炎の患者からの試料で、マクロファージが肺胞内の全細胞の最大80%を構成し、COVID-19感染の壊滅的影響に関連する過剰炎症に重大な役割を担うことが示された。
【0014】
そこで臨床試験データから、COVID-19により誘導された肺不全の患者がAP1189を受け、その患者のいずれも、より集中的な肺支援の必要性を生じないことが実証されたため、患者は処置3日目~9日目の間に退院した。
【0015】
AP1189および関連の化合物は、このため免疫系の不適当な過剰活性化、そしてその結果である過剰炎症をはじめとする炎症を制御し、またはくじき、同時に、一部の例では免疫系を刺激しながらも、免疫系に根底的なウイルス感染と戦わせることを完全に可能にする能力を介した、ウイルス疾患および障害の処置のための有望な候補物質である。これは、収束療法(resolution therapy)と呼ばれる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示の一態様は、呼吸不全およびARDSをはじめとする呼吸器症状を有する症候性ウイルス疾患および障害など、症候性ウイルス疾患および障害などのウイルス疾患および障害の処置における使用のための、互変異性体および立体異性体形態を含む式(I):
【化1】
(式中、nは、1であり;R1は、CF3、CCl3、F、Cl、NO2またはCNであり、R2、R3、R4、R5、R6、およびR7は、水素である)で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物を提供することである。
【0017】
本開示の一態様は、呼吸不全およびARDSをはじめとする呼吸器症状を有する症候性COVID-19など、症候性COVID-19の処置における使用のための、互変異性体および立体異性体形態を含む式(I):
【化2】
(式中、nは、1であり;R
1は、CF
3、CCl
3、F、Cl、NO
2またはCNであり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7は、水素である)で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物を提供することである。
【0018】
一実施形態において、前記化合物は、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムおよびその医薬的に許容できる塩である。
【0019】
一実施形態において、前記化合物は、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタート(AP1189)である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
被験物質A=AP1189 (E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート
【
図1】AP1189での前処置は、ビヒクルでの前処置に比較して炎症促進性サイトカインIL-1βのレベルを37%低減する。
【
図2】AP1189での前処置は、ビヒクルでの前処置に比較して炎症促進性サイトカインIL-6のレベルを59%低減する。
【
図3】AP1189での前処置は、ビヒクルでの前処置に比較して好中球蓄積を70%低減する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書の文脈において用語「医薬的に許容できる誘導体」は、患者に有害でない塩を示す医薬的に許容できる塩を包含する。そのような塩としては、医薬的に許容できる塩基または酸付加塩、ならびに医薬的に許容できる金属塩、アンモニウム塩およびアルキル化アンモニウム塩が挙げられる。医薬的に許容できる誘導体はさらに、活性化合物、または化合物の結晶形態に生物学的に代謝され得る化合物のエステルおよびプロドラッグ、または他の前駆体を包含する。一実施形態において、医薬的に許容できる誘導体は、医薬的に許容できる塩である。
【0022】
用語「酸付加塩」は、患者に有害でない塩を示す「医薬的に許容できる酸付加塩」を包含するものとする。酸付加塩としては、無機酸および有機酸の塩を包含する。適切な無機酸の代表的例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸および同様のものが挙げられる。適切な有機酸の代表的例としては、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、および同様のものが挙げられる。医薬的に許容できる無機または有機酸付加塩のさらなる例としては、参照により本明細書に組み入れられるJ. Pharm. Sci. 66, 2, (1977)に列挙された医薬的に許容できる塩が挙げられる。
【0023】
本明細書で用いられる、化合物の「治療的有効量」という用語は、所与の疾患または障害およびその合併症の臨床症状発現を治癒する、緩和する、予防する、そのリスクを低減する、または部分的に停止させるのに充分な量を指す。これを完遂するのに適当な量が、「治療有効量」として定義される。各目的の有効量は、疾患または傷害の重症度、ならびに対象の体重および全身状態に依存するであろう。適正な投与量を決定することは、値の行列を構成することおよび行例の異なるポイントをテストすることにより、日常的実験を利用して実現されてもよく、それが全て訓練された医師または獣医師の日常的技量の範囲内であることは、理解されよう。
【0024】
本明細書で用いられる用語「処置」および「処置すること」は、病気、疾患または障害を克服する目的での患者の管理およびケアを指す。この用語は、患者が罹患している所与の病気のための処置の全範囲を含むものとする。処置される患者は、好ましくは哺乳動物、詳細にはヒトである。しかしマウス、ラット、犬、猫、馬、雌牛、羊および豚などの動物の処置もまた、本発明の文脈の範囲内である。処置される患者は、様々な年齢であり得る。
【0025】
詳細な記載
クラスA Gタンパク質共役受容体(GPCR)のファミリーであるメラノコルチン(MC)受容体(MC1R-MC5R)は、その広い分布およびそれらが調節する生理学的工程の多様性ゆえ、多数の病気の魅力的治療ターゲットである。MC1Rは、白血球での発現のためにUV光で誘導された皮膚の日焼けおよび他の免疫応答を調節する。MC2Rは、副腎でのコルチゾール産生を調節するが、MC5Rは、内分泌腺での分泌において役割を担う。MC3RおよびMC4Rは、特異的な抗炎症的役割に加え、エネルギー恒常性において非重複機能を発揮するが、MC3Rの活性化は、関節炎などの関節の炎症に対して特に保護的であり、MC4Rは、脳炎症において神経保護を提供する。したがって皮膚病、心臓血管病、関節の炎症、肥満および悪液質をはじめとする数々の病的状況が、MCR薬で標的化され得る。
【0026】
末梢MC1RおよびMC3Rは、抗炎症性を誘導するために薬理学的に活性化され得る。他の保護的介在物質の様な内在性アゴニストα-メラノサイト刺激ホルモン(αMSH)は、免疫細胞により放出されて、炎症促進性シグナルを釣り合わせ、こうして過剰な組織損傷を予防する。炎症の概念の収束と一致して、MC1RおよびMC3Rを標的とする治療薬は、身体自身の保護物質を模倣することにより作用し、より軽い負担の副作用を特徴とし得る。
【0027】
コルチコトロピンまたは副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の使用は、1950年代以来リウマチ性疾患に効果的であることが示されたが、合成グルココルチコイドが利用可能になると下火になった。しかし、免疫細胞上の末梢MC受容体の活性化に関与するACTHのための代替的抗炎症性メカニズムの発見は、痛風またはRA(関節リウマチ)などの関節疾患の処置のために、ステロイドの影響を有さない新規なACTH様分子を開発することへの関心が復活した。しかし、市販されるACTH配合物以外の新規なMC薬の橋渡し的送達は、これまで実現された受容体選択性の欠如により制限される。
【0028】
Gタンパク共役受容体の創薬における革新的アプローチが、この限界の克服を支援し得る。アロステリック調節は、アロステリック部位と称される全く別の受容体タンパク質部位に結合することにより、内在性リガンドの効果を増強する(正の調節)または低減する(負の調節)分子の能力に存在する。アロステリック領域が、5種のMCRの中でより少なく保存されているほど、より高度の選択性が予測され、事実、MC4Rのアロステリック調節因子は現在、肥満の処置のために開発途中である。
【0029】
著しい治療的関心を集めている別の新興的概念は、バイアスドアゴニズムの1つである。受容体が活性立体配座および不活性立体配座という2つの特有の立体配座で存在し得るという旧式の観念は、複数の活性立体配座が存在することができ、そのそれぞれが全く別のシグナルを生成して、複数の機能的転帰を産する、という概念に取って代わった。直鎖状で静的というよりむしろ受容体の活性化が、高度に動的かつ多次元的工程として出現し、その工程では、活性立体配座の多様性が異なる分子により誘導されて、全く別の効果を導き得る。
【0030】
小分子AP1189((E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート)は、受容体MC1RおよびMC3Rでのバイアスドアゴニストとして特徴づけられており、カノニカルcAMP生成を誘導しないが、マウス初代マクロファージにおいて誘起されたプロエフェロサイト効果(proefferocytic effect)を担うシグナル伝達であるERK1/2リン酸化を引き起こす。AP1189は、マイクロファージ内でのサイトカイン放出を低減することが示されたが、メラニン形成は、メラノサイトにおいてAP1189により誘導されなかった。インビボでは、経口AP1189は、腹膜炎において抗炎症作用を誘発して収束期を加速し、実験的炎症性関節炎において関節破壊の巨視的および組織学的パラメータの有意な低減を与えた。したがってAP1189は、メラニン形成への効果の欠如と共に抗炎症特性を有する、MC1RおよびMC3Rでのバイアスドデュアルアゴニストである。
【0031】
サイトカインの無調節的放出が、呼吸器ウイルス感染における転帰不良に隠れた重大な因子の1つとして同定された。この「サイトカインストーム」は、特に肺において、過剰な炎症および免疫応答を生じ、急性呼吸窮迫(ARDS)、肺浮腫および多臓器不全に導く。この炎症状態を緩和することが、予後を改善するのに不可欠である。
【0032】
肺炎およびARDSなどの機械換気を必要とする呼吸器症状を有する患者は多くの場合、局所炎症を呈し、それは、生命を脅かす全身炎症に展開する可能性がある。これらの患者の炎症を制御して、炎症(過剰活性化炎症カスケードなど)を阻害して遮断せず、同時に免疫系が確実にその病気を克服するのに効果的であり続けることが、重要な課題である。そのような状況でのAP1189は、炎症を阻害し、同時に炎症をより急速に浄化する能力などの免疫系を刺激するため、少なくともそのような患者において違いをもたらし得る。これは、収束療法と呼ばれる。
【0033】
ウイルス疾患および障害
本開示の一態様は、症候性ウイルス疾患または障害の処置における使用のためなど、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、互変異性体および立体異性体形態を含む式(I):
【化3】
(式中、nは、1であり;R
1は、CF
3、CCl
3、F、Cl、NO
2またはCNであり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7は、水素である)で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物を提供することである。
【0034】
同じく一態様は、症候性ウイルス疾患または障害の処置のための医薬の製造のためなど、ウイルス疾患または障害の処置のための医薬の製造のための、式(I):
【化4】
で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物の使用を提供することである。
【0035】
同じく開示されるのは、式(I):
【化5】
で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物の、それを必要とする個体への投与の1つまたは複数のステップを含む、症候性ウイルス疾患または障害などのウイルス疾患または障害を処置するための方法である。
【0036】
特定の実施形態において、本開示による使用のための組成物は、互変異性体および立体異性体形態を含む式(II):
【化6】
で示される化合物、またはその医薬的に許容できる塩をはじめとするその医薬的に許容できる誘導体を含む。
【0037】
一実施形態において、前記本開示による使用のための組成物は、
i)1つまたは複数のMC受容体のアゴニストであり、
ii)MC1RおよびMC3Rのアゴニストであり、そして/または
iii)MC1RおよびMC3Rのバイアスドアゴニストである、
化合物を含む。
【0038】
同じく開示されるのは、症候性ウイルス疾患または障害などのウイルス疾患または障害の処置における使用のための、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジンおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン、またはそれらの医薬的に許容できる塩からなる群から選択される化合物を含む、本開示による使用のための組成物である。
【0039】
一実施形態において、その医薬的に許容できる誘導体は、無機酸または有機酸の医薬的に許容できる塩である。
【0040】
そのような実施形態において、本明細書で参照される有機酸は、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される。
【0041】
特有の実施形態において、前記有機酸は、酢酸、コハク酸、酒石酸、またはプロピオン酸であり、酢酸などである。
【0042】
そのような実施形態において、本明細書で参照される有機酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸および硝酸からなる群から選択される。
【0043】
同じく開示されるのは、症候性ウイルス疾患または障害などのウイルス疾患または障害の処置における使用のための、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートからなる群から選択される化合物を含む組成物である。
【0044】
一実施形態において、本開示は、症候性ウイルス疾患または障害などのウイルス疾患または障害の処置における使用のための、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムまたはそれらの医薬的に許容できる塩を含む組成物を提供する。
【0045】
特有の実施形態において、本開示は、症候性ウイルス疾患または障害などのウイルス疾患または障害の処置における使用のための、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタート(AP1189)を含む組成物を提供する。
【0046】
本開示によるウイルス疾患または障害は、ウイルス感染の任意の症状または下流の効果など、そのようなウイルス感染により引き起こされる疾患または障害である。
【0047】
一態様は、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することであり、前記ウイルス疾患または障害の処置としては、そのようなウイルス疾患または障害の処置、好転および/または緩和が挙げられる。ウイルス疾患または障害の処置、好転および/または緩和が、ウイルス疾患または障害の1つまたは複数の症状の処置、好転および/または緩和を包含することは、理解される。
【0048】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の1つまたは複数の症状の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0049】
一実施形態において、症候性ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0050】
一実施形態において、ウイルス疾患もしくは障害、または前記症候性ウイルス疾患もしくは障害の前記1つまたは複数の症状は、過剰炎症などの炎症である。
【0051】
一実施形態において、ウイルス疾患もしくは障害、または前記症候性ウイルス疾患もしくは障害の前記1つまたは複数の症状は、1つまたは複数の臓器における過剰炎症などの炎症である。1つまたは複数の臓器における炎症は、局所炎症と称されてもよい。
【0052】
一実施形態において、前記ウイルス疾患もしくは障害、または前記症候性ウイルス疾患もしくは障害は、過剰炎症などの炎症を呈する。
【0053】
一実施形態において、ウイルスで誘導された過剰炎症の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0054】
一実施形態において、ウイルスで誘導された炎症状態の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0055】
一実施形態において、過剰炎症は、100mg/lより大きなC反応性タンパク質(CRP)または900ng/mlのフェリチンを特徴とする。
【0056】
一実施形態において、前記ウイルス疾患もしくは障害、または前記症候性ウイルス疾患もしくは障害は、1つまたは複数の臓器において過剰炎症などの炎症を呈する。
【0057】
一実施形態において、1つまたは複数の臓器における過剰炎症などの炎症に関連したウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0058】
一実施形態において、前記1つまたは複数の臓器は、肺、気道、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、外分泌腺、内分泌腺、リンパ節、脳、心臓、筋肉、骨髄、皮膚、骨格、膀胱、卵管をはじめとする生殖器官、目、耳、血管系、小腸、結腸、直腸、肛門管をはじめとする消化管、および前立腺からなる群から選択される。
【0059】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害における末端臓器損傷の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0060】
一実施形態において、炎症性ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0061】
一実施形態において、局所炎症または全身炎症を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0062】
一実施形態において、局所炎症状態を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0063】
一実施形態において、肺、気道、腎臓、肝臓、膵臓、脾臓、外分泌腺、内分泌腺、リンパ節、脳、心臓、筋肉、骨髄、皮膚、骨格、膀胱、卵管をはじめとする生殖器官、目、耳、血管系、小腸、結腸、直腸、肛門管をはじめとする消化管、および前立腺からなる群から選択される1つまたは複数の臓器における局所炎症状態を有するウイルス疾患または障害(症候性ウイルス疾患または障害など)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0064】
ウイルス疾患または障害への言及および症候性ウイルス疾患または障害への言及は、本明細書において互換的に用いられ得ることに留意されたい。
【0065】
呼吸器系
一実施形態において、ウイルス性下部呼吸器感染などのウイルス性呼吸器感染であるウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0066】
一実施形態において、ウイルス性下部呼吸器感染などのウイルス性呼吸器感染の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0067】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害は、酸素供給の損傷を有するウイルス性下部呼吸器感染などの酸素供給の損傷を有するウイルス性呼吸器感染である。
【0068】
一実施形態において、肺のウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0069】
一実施形態において、ウイルス性呼吸器疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0070】
一実施形態において、肺および/または気道などの呼吸器系における炎症を含むウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0071】
一実施形態において、1つまたは複数の呼吸器症状を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0072】
一実施形態において、1つまたは複数の呼吸器症状を有するウイルス疾患または障害は、酸素供給の損傷を呈する。
【0073】
一実施形態において、前記1つまたは複数の呼吸器症状は、咳、空咳、呼吸困難、酸素供給の損傷、呼吸器疾病、呼吸機能不全、呼吸不全、呼吸器症候群および急性呼吸器疾患(ARD)からなる群から選択される。
【0074】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記ウイルス疾患または障害は、重度疾患である。重度疾患は、呼吸困難、呼吸回数増加、血中酸素飽和度の低減および/または肺浸潤を呈する。
【0075】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記ウイルス疾患または障害は、重篤疾患である。重篤疾患は、呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器機能不全(MOD)もしくは多臓器不全(MOF)を呈する。
【0076】
一実施形態において、ウイルス性疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記ウイルス性疾患または障害は、軽度肺炎、肺炎、および異常な所見を有する肺炎をはじめとするウイルス性肺炎を含む。
【0077】
一実施形態において、ウイルス性肺炎の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0078】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記ウイルス疾患または障害は、ウイルス性気管支炎を含む。
【0079】
一実施形態において、呼吸不全を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0080】
呼吸不全は、呼吸器系による不充分な気体交換から生じ、それは動脈酸素、二酸化炭素またはその両方が正常レベルで保持され得ないことを意味する。血中で運搬される酸素の降下は、低酸素症として知られ、動脈二酸化炭素の上昇は、高炭酸ガス血症と呼ばれる。呼吸不全は、高い二酸化炭素レベルが存在するかどうかに基づいて1型または2型のどちらかとして分類され、急性または慢性のどちらかであり得る。臨床試験での呼吸不全の定義は通常、呼吸数増加、異常な血中気体(低酸素症、高炭酸ガス血症、またはその両方)、および呼吸仕事量増加の証拠を包含する。呼吸不全は、脳の虚血により精神状態の変化を引き起こす。
【0081】
一実施形態において、前記呼吸不全は、1型呼吸不全である。一実施形態において、前記呼吸不全は、2型呼吸不全である。一実施形態において、前記呼吸不全は、急性である。一実施形態において、前記呼吸不全は、慢性である。
【0082】
一実施形態において、前記ウイルス疾患または障害は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)である。
【0083】
一実施形態において、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0084】
一実施形態において、ウイルス性急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0085】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、肺の広範囲の炎症の急速な発病を特徴とする呼吸不全の1つの型である。症状としては、息切れ、急速な呼吸、および青みがかった皮膚が挙げられる。生還した人々については、生活の質の低下が共通的である。根底にあるメカニズムは、微視的な肺気嚢のバリアを形成する細胞へのびまん性傷害、サーファクタント機能不全、免疫系の活性化、および身体による血栓調節の機能不全を含む。実際にARDSは、酸素および二酸化炭素を交換する肺の能力を損なう。一次処置は、根底的原因に向けた処置と共に機械換気を含む。
【0086】
急性呼吸窮迫症候群などの局所炎症状態は、全身炎症性窮迫症候群(systemic inflammatory distress syndrome)(SIDS)および敗血症の発症を有する生命を脅かす病気に発展し得る。SIDSの発症は、IL-1βおよびIL-6としての炎症促進性サイトカインの高い循環レベルに関連する。
【0087】
一実施形態において、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および全身炎症性窮迫症候群(SIDS)を有するウイルス疾患および障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0088】
一実施形態において、全身炎症性窮迫症候群(SIDS)および/または敗血症を有するウイルス疾患および障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0089】
一実施形態において、ウイルス性全身炎症性窮迫症候群(SIDS)および/またはウイルス性敗血症の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0090】
一実施形態において、機械換気を必要とするウイルス疾患および障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。一実施形態において、前記機械換気としては、保護的機械換気、高流量経鼻酸素(HFNO)および非侵襲的換気(NIV)が挙げられる。
【0091】
一実施形態において、肺不全を有するウイルス疾患および障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0092】
一実施形態において、ウイルス性肺不全などのウイルスにより誘導された肺不全の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0093】
一実施形態において、前記肺不全は、正常な飽和度を維持するために供給酸素を必要とすることと定義される。
【0094】
一実施形態において、前記肺不全は、自発呼吸での93%未満のSaPO2と定義される。
【0095】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、回復までの時間を低減する。
【0096】
一実施形態において、前記使用のための化合物は、回復までの時間を7日など、6日など、5日など、4日など、3日など、2日など、1日など、少なくとも1日など、1日またはより多くの日数、低減するなど、回復までの時間を低減する。一実施形態において、前記使用のための化合物は、1~2日、2~3日など、3~4日など、4~5日など、5~6日など、6~7日など、回復までの時間を低減する。
【0097】
一実施形態における回復までの時間を低減することは、回復までの時間の中央値を低減することである。一実施形態における回復までの時間を低減することは、完全回復までの時間を低減することである。
【0098】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、炎症の収束を促進する。
【0099】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、重度炎症の発症リスクを低減する。
【0100】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、重度の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症リスクを低減する。
【0101】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、正常な飽和度を維持するための供給酸素の要求を低減する。
【0102】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、より集中的な肺支援の必要性を生じるリスクを低減する。
【0103】
概要
一実施形態において、IL-6および/またはIL-1βなどの1種または複数の炎症促進性サイトカインなどの1種または複数のサイトカインを高レベルで有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0104】
一実施形態において、サイトカインストーム(高サイトカイン血症とも呼ばれる)を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0105】
一実施形態において、ウイルスにより誘導されたサイトカインストーム(高サイトカイン血症)などの感染性サイトカインストーム(高サイトカイン血症)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0106】
サイトカインストームは、自然免疫系が炎症促進性サイトカインの未制御で過剰な放出を引き起こす生理学的反応である。正常にはサイトカインは、感染への身体の免疫応答の一部であるが、それらの突発的な多量の放出が、多系統臓器不全および死亡を引き起こし得る。サイトカインストームは、複数の感染性および非感染性病因、特にウイルス性呼吸器感染により引き起こされ得る。
【0107】
一実施形態において、ウイルス性高サイトカイン血症により引き起こされた多系統臓器不全の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0108】
一実施形態において、サイトカイン放出症候群(CRS)を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。CRSは、感染および特定の薬物などの種々の要因により惹起され得る全身炎症反応症候群(SIRS)の形態である。
【0109】
他の臓器
一実施形態において、腎臓の炎症および/または腎機能不全を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0110】
一実施形態において、急性腎不全または慢性腎不全を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0111】
一実施形態において、末期腎不全を有するウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0112】
一実施形態において、ウイルス性腎臓感染(腎盂腎炎)、ウイルス性尿路感染(UTI)、および/またはウイルス性腎臓炎症(腎炎)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0113】
一実施形態において、ウイルス性膀胱感染および/またはウイルス性膀胱炎症(膀胱炎)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0114】
一実施形態において、ウイルス疾患または障害は、膀胱炎である。一実施形態において、ウイルス疾患または障害は、重度出血性膀胱炎である。一実施形態において、ウイルス疾患または障害は、尿路閉塞である。
【0115】
一実施形態において、急性肝炎および慢性肝炎などのウイルス性肝臓感染および/またはウイルス性肝臓炎症(肝炎)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0116】
一実施形態において、ウイルス性肝硬変の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0117】
一実施形態において、ウイルス性膵臓感染および/またはウイルス性膵臓炎症(膵炎)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0118】
一実施形態において、小腸および/または大腸などのウイルス性腸感染および/またはウイルス性腸炎症の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0119】
一実施形態において、前記ウイルス疾患または障害は、大腸炎である。一実施形態において、前記ウイルス疾患または障害は、腸炎である。
【0120】
一実施形態において、ウイルス性脳感染および/またはウイルス性脳炎症の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0121】
一実施形態において、前記ウイルス疾患または障害は、脳炎である。一実施形態において、前記ウイルス疾患または障害は、進行性多巣性白質脳症(PML)である。
【0122】
一実施形態において、前記ウイルス性脳感染および/またはウイルス性脳炎症は、多数の場所の脳白質の進行性損傷または炎症を特徴とする希少で多くの場合、致命的なウイルス疾患である進行性多巣性白質脳症である。
【0123】
一実施形態において、前記ウイルス性脳感染および/またはウイルス性脳炎症は、1つまたは多数の場所の脳白質の炎症である。
【0124】
一実施形態において、前記ウイルス性の目の感染および/またはウイルス性の目の炎症の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0125】
一実施形態において、前記ウイルス疾患または障害は、網膜炎である。
【0126】
一実施形態において、脾腫/脾臓萎縮、特にウイルスにより誘導された脾腫/脾臓萎縮の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0127】
一実施形態において、びまん性リンパ系萎縮、特にウイルスにより誘導されたびまん性リンパ系萎縮の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0128】
ウイルス感染
一態様は、ウイルス感染により引き起こされるウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することである。
【0129】
一実施形態において、COVID-19ウイルスと称されることが多い重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2);SARS-CoV、MERS-CoV、デングウイルスおよびインフルエンザウイルス(A型、B型およびC型など)からなる群から選択されるウイルス感染により引き起こされるウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0130】
一実施形態において、COVID-19ウイルスと称されることが多い重度急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2);SARS-CoV、MERS-CoV、デングウイルスおよびインフルエンザウイルス(A型、B型およびC型など)からなる群から選択されるウイルス感染により引き起こされる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)または肺炎の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0131】
一態様は、デング熱の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することである。
【0132】
デング熱は、デングウイルスにより引き起こされる蚊媒介性熱帯病である。症状としては、典型的には高熱、頭痛、嘔吐、筋肉および関節痛、ならびに特徴的皮膚発疹が挙げられる。症例のごく一部において、該疾患は、出血、低レベルの血小板および血漿漏出を生じるデング出血熱としても知られる重度デングに発展するか、または危機的低血圧が起こるデングショック症候群に発展する。
【0133】
一実施形態において、デング出血熱またはデングショック症候群の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0134】
一実施形態において、デングウイルスにより引き起こされる急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0135】
一態様は、デングウイルスにより引き起こされるウイルス性肺炎の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することである。
【0136】
一態様は、インフルエンザの処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することである。
【0137】
一態様は、インフルエンザにより引き起こされたウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することである。一態様は、インフルエンザウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することである。
【0138】
共通して「flu」として知られるインフルエンザは、インフルエンザウイルスにより引き起こされる感染性疾患である。症状は、軽度から重度の範囲内であり、共通して高熱、鼻水、咽頭痛、筋肉および関節痛、頭痛、咳、ならびに倦怠感が挙げられる。
【0139】
一態様は、インフルエンザにより引き起こされるウイルス性肺炎の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物を提供することである。
【0140】
一実施形態において、インフルエンザウイルスにより引き起こされた急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0141】
症候性COVID-19
本開示の一態様は、症候性COVID-19の処置における使用のための、互変異性体および立体異性体形態を含む式(I):
【化7】
(式中、nは、1であり;R
1は、CF
3、CCl
3、F、Cl、NO
2またはCNであり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7は、水素である)で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物を提供することである。
【0142】
同じく一態様は、症候性COVID-19の処置のための医薬の製造のための、式(I):
【化8】
で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物の使用を提供することである。
【0143】
同じく開示されるのは、式(I):
【化9】
で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物の、それを必要とする個体への投与の1つまたは複数のステップを含む、症候性COVID-19を処置するための方法である。
【0144】
特定の実施形態において、本開示による使用のための組成物は、症候性COVID-19の処置における使用のための、互変異性体および立体異性体形態を含む式(II):
【化10】
で示される化合物、またはその医薬的に許容できる誘導体を含む。
【0145】
好ましい実施形態において、前記本開示による使用のための組成物は、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタート(AP1189)を含む。
【0146】
一実施形態において、前記本開示による使用のための組成物は、
i)1つまたは複数のMC受容体のアゴニストであり、
ii)MC1RおよびMC3Rのアゴニストであり、そして/または
iii)MC1RおよびMC3Rのバイアスドアゴニストである、
化合物を含む。
【0147】
同じく開示されるのは、症候性COVID-19の処置における使用のための、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジンおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン、またはそれらの医薬的に許容できる塩からなる群から選択される化合物を含む本開示による使用のための組成物である。
【0148】
一実施形態において、その医薬的に許容できる誘導体は、無機酸または有機酸の医薬的に許容できる塩である。
【0149】
そのような実施形態において、本明細書で参照される有機酸は、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される。
【0150】
特有の実施形態において、前記有機酸は、酢酸、コハク酸、酒石酸、またはプロピオン酸であり、酢酸などである。
【0151】
そのような実施形態において、本明細書で参照される有機酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸および硝酸からなる群から選択される。
【0152】
同じく開示されるのは、症候性COVID-19の処置における使用のための、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートからなる群から選択される化合物を含む組成物である。
【0153】
一実施形態において、本開示は、症候性COVID-19の処置における使用のための、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムまたはそれらの医薬的に許容できる塩を含む組成物を提供する。
【0154】
特有の実施形態において、本開示は、症候性COVID-19の処置における使用のための、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートを含む組成物を提供する。
【0155】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む前記組成物は、COVID-19の1つまたは複数の症状を好転および/または緩和することなど、症候性COVID-19を好転および/または緩和する方法における使用のためのものである。
【0156】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記症候性COVID-19は、1つまたは複数の呼吸器症状を含む。
【0157】
一実施形態において、酸素供給が損なわれた症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0158】
一実施形態において、前記1つまたは複数の呼吸器症状は、咳、空咳、呼吸困難、酸素供給の損傷、呼吸器疾病、呼吸機能不全、呼吸不全、呼吸器症候群および2019-nCoV急性呼吸器疾患(2019-nCoV ARD)からなる群から選択される。
【0159】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記症候性COVID-19は、重度疾患である。重度疾患は、呼吸困難、呼吸回数増加、血中酸素飽和度の低減および/または肺浸潤を呈する。
【0160】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記症候性COVID-19は、重篤疾患である。重篤疾患は、呼吸不全、敗血症性ショック、および/または多臓器機能不全(MOD)もしくは多臓器不全(MOF)を呈する
【0161】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記症候性COVID-19は、軽度肺炎、肺炎、異常な所見を有する肺炎および新型コロナウイルス性肺炎(NCP)をはじめとするウイルス性肺炎を含む。
【0162】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記症候性COVID-19は、IL-6および/またはIL-1βなどの1種または複数の炎症促進性サイトカインなどの1種または複数のサイトカインを高レベルで呈する。
【0163】
一実施形態において、呼吸不全を有する症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0164】
呼吸不全は、呼吸器系による不充分な気体交換から生じ、それは動脈酸素、二酸化炭素またはその両方が正常レベルで保持され得ないことを意味する。血中で運搬される酸素の降下は、低酸素症として知られ、動脈二酸化炭素の上昇は、高炭酸ガス血症と呼ばれる。呼吸不全は、高い二酸化炭素レベルが存在するかどうかに基づいて1型または2型のどちらかとして分類され、急性または慢性のどちらかであり得る。臨床試験での呼吸不全の定義は通常、呼吸数の増加、異常な血中気体(低酸素症、高炭酸ガス血症、またはその両方)、および呼吸仕事量増加の証拠を包含する。呼吸不全は、脳の虚血により精神状態の変化を引き起こす。
【0165】
一実施形態において、前記呼吸不全は、1型呼吸不全である。一実施形態において、前記呼吸不全は、2型呼吸不全である。一実施形態において、前記呼吸不全は、急性である。一実施形態において、前記呼吸不全は、慢性である。
【0166】
一実施形態において、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有する症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0167】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、肺の広範囲の炎症の急速な発病を特徴とする呼吸不全の1つの型である。症状としては、息切れ、急速な呼吸、および青みがかった皮膚が挙げられる。生還した人々については、生活の質の低下が共通的である。根底にあるメカニズムは、微視的な肺気嚢のバリアを形成する細胞へのびまん性傷害、サーファクタント機能不全、免疫系の活性化、および身体による血栓調節の機能不全を含む。実際にARDSは、酸素および二酸化炭素を交換する肺の能力を損なう。一次処置は、根底的原因に向けた処置と共に機械換気を含む。
【0168】
急性呼吸窮迫症候群などの局所炎症状態は、全身炎症性窮迫症候群(SIDS)および敗血症の発症を伴う生命を脅かす病気を発症し得る。SIDSの発症は、IL-1βおよびIL-6としての炎症促進性サイトカインの高い循環レベルに関連する。
【0169】
一実施形態において、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)および全身炎症性窮迫症候群(SIDS)を有する症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0170】
一実施形態において、全身炎症性窮迫症候群(SIDS)および/または敗血症を有する症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0171】
一実施形態において、機械換気を必要とする症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。一実施形態において、前記機械換気としては、保護的機械換気、高流量経鼻酸素(HFNO)および非侵襲的換気(NIV)が挙げられる。
【0172】
一実施形態において、COVID-19により誘導された肺不全の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0173】
一実施形態において、前記COVID-19により誘導された肺不全は、正常な飽和度を維持するために供給酸素を必要とすることと定義される。
【0174】
一実施形態において、前記COVID-19により誘導された肺不全は、自発呼吸での93%未満のSaPO2と定義される。
【0175】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、回復までの時間を低減する。
【0176】
一実施形態において、前記使用のための化合物は、回復までの時間を7日など、6日など、5日など、4日など、3日など、2日など、1日など、少なくとも1日など、1日またはより多くの日数、低減するなど、回復までの時間を低減する。一実施形態において、前記使用のための化合物は、1~2日、2~3日など、3~4日など、4~5日など、5~6日など、6~7日など、回復までの時間を低減する。
【0177】
一実施形態における回復までの時間を低減することは、回復までの時間の中央値を低減することである。一実施形態における回復までの時間を低減することは、完全回復までの時間を低減することである。
【0178】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、炎症の収束を促進する。
【0179】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、重度炎症の発症リスクを低減する。
【0180】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、重度の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症リスクを低減する。
【0181】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、正常な飽和度を維持するための供給酸素の要求を低減する。
【0182】
一実施形態において、症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供され、前記使用のための化合物は、より集中的な肺支援の必要性を生じるリスクを低減する。
【0183】
対象
本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む本発明の組成物は、必要とする対象における、本明細書に記載されたウイルス疾患または障害の処置における使用のためのものである。
【0184】
幾つかの実施形態において、対象は、ウイルスに感染されている。
【0185】
一実施形態において、対象は、哺乳動物である。特に対象は、ヒトであってもよい。他の実施形態において、対象は、例えばネコ、イヌ、ウサギ、ウマをはじめとするペット、または畜牛もしくは家禽などの家畜、例えば雌牛、雄牛、羊、山羊、豚、鶏、もしくは七面鳥などの動物である。
【0186】
HIV陽性対象などの免疫系が弱化された対象において、ウイルス感染および症候性ウイルス障害または疾患は、潜在的に生命を脅かす多臓器疾患につながり得る。
【0187】
免疫欠損は、移植片を受けた対象に日常的に投与される免疫抑制剤の結果であり得るか、またはそれは、遺伝子病もしくはHIV感染などの病気の結果の場合がある。
【0188】
一実施形態において、免疫欠損を有する対象のウイルス疾患または障害の処置における使用のため、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0189】
一実施形態において、前記免疫欠損は、T細胞欠損である。
【0190】
一実施形態において、前記免疫欠損は、T細胞の原発性の(または遺伝性の)免疫欠損である。これらには、重症複合免疫不全症(SCID)、オーメン症候群および軟骨毛髪形成不全などの完全なT細胞不全を引き起こすものがある。
【0191】
一実施形態において、前記免疫欠損は、T細胞の続発性(または後天性)免疫欠損である。これらには、HIV/AIDS、癌免疫療法、リンパ球、およびグルココルチコイド療法により引き起こされる免疫欠損が挙げられる。
【0192】
一実施形態において、免疫欠損は、完全または部分的である。
【0193】
幾つかの実施形態において、対象は、HIV陽性である。
【0194】
幾つかの実施形態において、ハイリスク集団の対象におけるウイルス疾患または障害の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。これらには、HSCT患者(造血幹細胞移植)、SOT患者(固形臓器移植片)、高齢対象および非常に若い対象が挙げられる。
【0195】
一実施形態において、高齢対象は、65歳以上である。一実施形態において、高齢対象は、70歳以上である。
【0196】
一実施形態において、非常に若い対象は、1歳以下である。一実施形態において、非常に若い対象は、6か月齢以下である。一実施形態において、非常に若い対象は、3か月齢以下である。
【0197】
一実施形態において、免疫欠損を有する対象、HSCT患者(造血幹細胞移植)、SOT患者(固形臓器移植片)、高齢対象および非常に若い対象をはじめとする高リスク集団の対象からなる群から選択される対象の症候性COVID-19の処置における使用のための、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物が提供される。
【0198】
併用療法
一実施形態において、本明細書に開示された式(I)もしくは(II)で示される化合物、またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物は、1種または複数の追加的な活性医薬原料を別個に、または一緒に含む。
【0199】
一実施形態において、前記1種または複数の追加的な活性医薬原料は、ウイルス疾患または障害の処置に用いられる。
【0200】
一実施形態において、前記1種または複数の追加的な活性医薬原料は、症候性COVID-19の処置に用いられる。
【0201】
一実施形態において、本明細書に開示された式(I)もしくは(II)で示される化合物、またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物は、既存の治療へのアドオン療法である。
【0202】
一実施形態において、本明細書に開示された使用のための式(I)もしくは(II)で示される化合物、またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物は、ウイルス疾患または障害の処置に用いられる1種または複数の追加的な治療へのアドオン療法である。
【0203】
一実施形態において、前記アドオン療法は、経鼻酸素カテーテルおよび機械換気のうちの1つまたは複数を含む。
【0204】
一実施形態において、前記症候性COVID-19はまた、2~5LO2/分の間の流速での経鼻酸素カテーテルなどの経鼻酸素カテーテルおよび/または機械換気で処置される。
【0205】
投与経路
好ましい投与経路が処置される対象の全身状態および年齢、処置される病気の性質、体内の処置される組織の場所、ならびに選択された有効成分に依存することは、察知されよう。
【0206】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、全身投与、局所投与、経腸投与または非経口投与により投与される。そのような投与のための適正な投与剤形が、従来技術により調製されてもよい。
【0207】
全身投与
全身投与は、化合物を血流内に導入して所望の作用部位を究極的に標的化することが可能である。
【0208】
そのような投与経路は、経腸経路、経口、経直腸、経鼻、肺、口腔、舌下、経皮、大槽内、腹腔内および非経口(皮下、筋肉内、髄腔内、静脈内および皮内などの)経路などの任意の適切な経路である。
【0209】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、全身投与により投与される。
【0210】
経口投与
経口投与は通常、経腸薬物送達のためのものであり、該化合物は、腸粘膜を通して送達される。シロップ、ならびに錠剤、カプセルおよび同様のものなどの固形経口投与剤形が、共通して用いられる。
【0211】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、経口投与により投与される。
【0212】
非経口投与
非経口投与は、医薬が肝臓内での初回通過分解を回避する、経口/経腸経路でない任意の投与経路である。したがって非経口投与としては、任意の注射および輸液、例えば静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与などのボーラス注射または連続輸液が挙げられる。さらに非経口投与としては、吸入および外用薬投与が挙げられる。
【0213】
したがって該化合物は、例えば鼻、膣、目、口、生殖管、肺、消化管または直腸の中の、生物活性物質が与えられる動物の任意の粘膜、好ましくは鼻または口の粘膜を横切る外用薬として投与されてもよく、したがって非経口投与としては、口腔、舌下、経鼻、径直腸、経膣および腹腔内投与、ならびに吸入または導入による経肺および気管支内投与を挙げることもできる。同じく該化合物は、皮膚を横切る外用薬として投与されてもよい。
【0214】
非経口投与の皮下および筋肉内形態が、一般に好ましい。
【0215】
局所処置
本明細書に開示された化合物は、一実施形態において局所処置として用いられ、即ち作用部位(複数可)に直接導入される。したがって該化合物は、皮膚もしくは粘膜に直接塗布されてもよく、または該化合物は、作用部位に、例えば罹患した組織に、もしくは罹患した組織に直接つながる終動脈に、注射されてもよい。
【0216】
投与量
本開示によれば、式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、処置を必要とする個体に医薬的有効量で投与される。化合物の治療有効量は、所与の疾患およびその合併症の臨床症状発現を治癒する、予防する、そのリスクを低減する、緩和する、または部分的に停止させるのに充分な量である。特有の治療目的に効果的な量は、障害の重症度および種類、ならびに対象の体重および全身状態に依存するであろう。該化合物は、1~8回/日など、1~6回/日など、1~5回/日など、1~4回/日など、1~3回/日など、1~2回/日など、2~4回/日など、2~3回/日など、1または複数回/日、投与されてもよい。あるいは該化合物は、1日1回未満、例えば1日1回、2日ごとに1回など、例えば3日ごとに1回、4日ごとに1回など、例えば5日ごとに1回、6日ごとに1回など、例えば週に1回、投与されてもよい。
【0217】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、1日あたり1mg~1000mgの量の式(I)または(II)で示される化合物など、治療有効量で投与される。
【0218】
一実施形態において該化合物は、1日あたり1~5mg、5~10mg、10~15mg、15~20mg、20mg、20~30mg、30~60mg、60~80mg、80~100mg、100~130mg、130~160mg、160~200mg、200~240mg、240~280mg、280~320mg、320~360mg、360~400mg、400~440mg、440~500mg、500~560mg、560~620mg、620~680mg、680~740mg、740~800mg、800~860mg、860~920mg、920~980mg、980~1000mgなど、例えば500~1000mgなどの1mg~1000mgの量で投与される。
【0219】
1日あたりは、1日1回(QD)、1日2回(BID)および/もしくは1日3回(TID)をはじめとし、1つの投与量で与えられてもよく、または1日あたり複数回の投与に分割されてもよい。
【0220】
一実施形態において、該化合物は、1日1回100mg、1日1回200mg、1日1回300mg、1日1回400mg、1日1回500mg、1日1回600mg、1日1回700mg、1日1回800mg、1日1回900mg、または1日1回100mgの量で投与される。
【0221】
一実施形態において、該化合物は、1日1回100mgの量で投与される。
【0222】
一実施形態において、該化合物は、1日2回(BID)100mgまたは1日3回(TID)100mgの量で投与される。
【0223】
一実施形態において、該化合物は、1日2回(BID)200mgまたは1日3回(TID)200mgの量で投与される。
【0224】
一実施形態において、該化合物は、AP1189 100mgの1日1回の経口投与として投与される。
【0225】
別の実施形態において、該化合物は、0.01mg/kg体重~0.05mg/kg体重、0.05~0.1mg/kg体重、0.1~0.5mg/kg体重、0.5mg~1mg/kg体重、1~2mg/kg体重、2~3mg/kg体重、3~5mg/kg体重、5~10mg/kg体重、10~15mg/kg体重、15~20mg/kg体重、20~30mg/kg体重など、例えば30~40mg/kg体重などの0.01mg/kg体重~40mg/kg体重の量で投与される。
【0226】
配合物
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、医薬的に安全な組成物などの医薬組成物である。本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、任意の適切な方法で、例えば経口、舌下または非経口的に投与されてもよく、それは、そのような投与のための任意の適切な形態で、例えば溶液、懸濁物、エアロゾル、錠剤、カプセル、粉末、シロップ、インプラント、または注射用の分散物の形態で、供与されてもよい。
【0227】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、懸濁物として配合される。
【0228】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、錠剤もしくはカプセルなどの固形経口投与剤形もしくは医薬物質など、または液体経口投与剤形など、経口投与剤形として配合される。固形医薬調製物の調製のための方法は、当該技術分野で周知である。
【0229】
別の実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、注射可能な投与剤形として配合される。
【0230】
一実施形態において、本明細書に定義された式(I)または(II)で示される化合物を含む組成物は、固体医薬物質の形態で、適宜、錠剤またはカプセルとして、配合される。
【0231】
遊離塩基またはその塩としての化合物(I)または(II)は、単独で、または医薬的に許容できる担体もしくは賦形剤と併せて、単一用量または複数の用量のどちらかで投与されてもよい。医薬組成物は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 19 Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1995に開示されたものなどの従来技術に従って、医薬的に許容できる担体または希釈剤、ならびに任意の他の公知アジュバントおよび賦形剤と共に配合されてもよい。
【0232】
項目
1.症候性COVID-19の処置における使用のための、互変異性体および立体異性体形態を含む式(I):
【化11】
(式中、nは、1であり;R
1は、CF
3、CCl
3、F、Cl、NO
2またはCNであり、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、およびR
7は、水素である)で示される化合物またはその医薬的に許容できる誘導体を含む組成物。
2.該化合物が、互変異性体および立体異性体形態を含む式(II):
【化12】
のもの、またはその医薬的に許容できる誘導体である、項目1による使用のための組成物。
3.前記化合物が、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジンおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジン、またはそれらの医薬的に許容できる塩からなる群から選択される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
4.前記その医薬的に許容できる誘導体が、無機酸または有機酸の医薬的に許容できる塩である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
5.前記有機酸が、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ケイ皮酸、クエン酸、フマル酸、グリコール酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、シュウ酸、ピクリン酸、ピルビン酸、サリチル酸、コハク酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、酒石酸、アスコルビン酸、パモ酸、ビスメチレンサリチル酸、エタンジスルホン酸、グルコン酸、シトラコン酸、アスパラギン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、EDTA、グリコール酸、p-アミノ安息香酸、グルタミン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸からなる群から選択される、項目4による使用のための組成物。
6.前記有機酸が、酢酸、コハク酸、酒石酸、またはプロピオン酸である、任意の項目4~5による使用のための組成物。
7.前記無機酸が、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸、硫酸および硝酸からなる群から選択される、項目4による使用のための組成物。
8.前記有機酸が、酢酸である、項目6による使用のための組成物。
9.前記化合物が、{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートおよび(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタートからなる群から選択される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
10.前記化合物が、(E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジニウムアセタート(AP1189)である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
11.前記化合物が、
i)1つまたは複数のMC受容体のアゴニストであり、
ii)MC1RおよびMC3Rのアゴニストであり、そして/または
iii)MC1RおよびMC3Rのバイアスドアゴニストである、
前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
12.前記症候性COVID-19が、1つまたは複数の呼吸器症状を含む、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
13.前記症候性COVID-19が、咳、空咳、呼吸困難、呼吸器疾病、呼吸機能不全、呼吸不全、呼吸器症候群および2019-nCoV急性呼吸器疾患(2019-nCoV ARD)からなる群から選択される1つまたは複数の呼吸器症状を含む、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
14.前記症候性COVID-19が、軽度肺炎、肺炎、異常な所見を有する肺炎および新型コロナウイルス性肺炎(NCP)をはじめとするウイルス性肺炎を含む、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
15.前記症候性COVID-19が、重度疾患である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
16.前記症候性COVID-19が、重篤疾患である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
17.前記症候性COVID-19が、IL-6および/またはIL-1βなどの1種または複数の炎症促進性サイトカインを高レベルで呈する、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
18.前記症候性COVID-19が、呼吸不全を有するCOVID-19である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
19.前記症候性COVID-19が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を有するCOVID-19である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
20.前記症候性COVID-19が、全身炎症性窮迫症候群(SIDS)を有するCOVID-19である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
21.前記症候性COVID-19が、機械換気を必要とする、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
22.前記症候性COVID-19が、COVID-19により誘導された肺不全である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
23.前記COVID-19により誘導された肺不全が、正常な飽和度を維持するために供給酸素を必要とすることと定義される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
24.前記COVID-19により誘導された肺不全が、自発呼吸での93%未満のSaPO
2と定義される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
25.前記使用のための化合物が、回復までの時間を低減する、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
26.前記使用のための化合物が、炎症の収束を促進する、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
27.前記使用のための化合物が、重度炎症の発症リスクを低減する、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
28.前記使用のための化合物が、重度の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症リスクを低減する、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
29.前記使用のための化合物が、正常な飽和度を維持するための供給酸素の要求を低減する、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
30.前記使用のための化合物が、より集中的な肺支援の必要性を生じるリスクを低減する、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
31.症候性COVID-19の処置に用いられる1種または複数の追加的な活性医薬原料などの1種または複数の追加的な活性医薬原料を、別個に、または一緒に含む、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
32.既存の治療へのアドオン療法である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
33.前記症候性COVID-19が、2~5LO
2/分の間の流速での経鼻酸素カテーテルなどの経鼻酸素カテーテルで処置される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
34.前記化合物が、1日あたり1~5mg、5~10mg、10~15mg、15~20mg、20~30mg、30~60mg、60~80mg、80~100mg、100~130mg、130~160mg、160~200mg、200~240mg、240~280mg、280~320mg、320~360mg、360~400mg、400~440mg、440~500mg、500~560mg、560~620mg、620~680mg、680~740mg、740~800mg、800~860mg、860~920mg、920~980mg、980~1000mgなど、例えば500~1000mgなど、1日あたり1mg~1000mgの量で投与される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
35.前記化合物が、1日1回100mg、1日1回200mg、1日1回300mg、1日1回400mg、1日1回500mg、1日1回600mg、1日1回700mg、1日1回800mg、1日1回900mg、または1日1回100mgの量で投与される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
36.前記化合物が、1日1回100mgの量で投与される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
37.前記化合物が、1日2回(BID)100mgまたは1日3回(TID)100mgの量で投与される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
38.前記化合物が、1日2回(BID)200mgまたは1日3回(TID)200mgの量で投与される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
39.前記化合物が、AP1189 100mgの1日1回の経口投与として投与される、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
40.医薬的に安全である、前記項目のいずれかによる使用のための組成物。
【0233】
実施例
実施例1
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)などの他の局所炎症状態の様な急性腹膜炎は、全身炎症性窮迫症候群(SIDS)および敗血症の発症を含む生命を脅かす病気に発展する。SIDSの発症は、IL-1βおよびIL-6をはじめとする炎症促進性サイトカインの高い循環レベルに関連する。
【0234】
急性腹膜炎を、マウスにおいて滅菌PBS 0.5ml中のザイモサンA(Sigma-Aldrich)i.p.1mgの注射により誘導した。12時間後に、CO2暴露によりマウスを殺処分し、3mM EDTAを含有する氷冷PBS 4mlで腹腔を洗浄した。細胞をチュルク液(3%酢酸中の0.01%クリスタルバイオレット)で染色してNeubauer血球計算盤を用いてカウントするか、またはLy-6G/Gr1、F4/80、および対応するアイソタイプ対照(eBioscience、英国 ハットフィールド)のためにFITCコンジュゲート化mAbで染色してBD FACSCaliburプラットフォーム(BD Biosciences、英国 オックスフォード)を用いたフローサイトメトリー分析に供した。
【0235】
急速冷凍された試料の中のIL-1βおよびIL-6のレベルを、ELISA Ready-SET-Go!(eBioscience)を用いて製造業者の使用説明に従って定量した。動物試験は全て、Ethical Committee for the Use of Animals、BartsおよびThe London School of Medicineのガイドライン、ならびに英国内務省の規制(Guidance on the Operation of Animals, Scientific Procedures Act, 1986)により認可され、それらの下で実施された、雄(7~8週齢)C57BL/6J野生型(WT)マウスは、Charles River Laboratoriesから購入した。
【0236】
被験物質A=AP1189 (E)-N-トランス-{3-[1-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2-イル]-アリリデン}-アミノグアニジウムアセタート
【0237】
被験物質A 1mg/kgまたはビヒクル処置を、急性腹膜炎の誘導の30分前に腹腔に与えた。両群ともN=6。
【0238】
結果:
被験物質Aでの前処置は、炎症促進性サイトカインIL-1βおよびIL-6のレベルを、ビヒクルでの前処置に比較してそれぞれ37%、59%(ビヒクルに対してp<0.05)低減した。
【0239】
好中球蓄積は、ビヒクル処置に比較して、被験物質Aでの前処置後に70%低減した。
【0240】
実施例2
SynActは、COVID-19感染患者においてAP1189の第2相臨床試験のパート2で投与を開始した。
【0241】
SynAct PharmaAB(「SynAct」)は今日、RESOVIR共同研究の下で実施されたCOVID-19患者におけるAP1189の探索的第2相臨床試験の第2部での投与が、試験の初期オープンラベルパートの完了後に開始されたことを発表した。第2部は、ブラジル ベロホリゾンテのUniversidade Federal de Minasの臨床現場のCOVID-19患者54名(56名から修正)における無作為二重盲検プラセボ対照試験である。
【0242】
試験の初期オープンラベルパートは、正常な飽和度を維持するために供給酸素を必要とすることと定義されたCOVID-19により誘導された肺不全を有する病院に照会された患者6名で実施した。患者は女性4名および男性2名で年齢は38~59の間であり、全員が自発呼吸で93%未満のSaPO2を有し、患者6名全員が、2~5LO2/分の間の流速の経鼻酸素カテーテルで処置された。患者は、標準治療へのアドオンとしてAP1189 100mgの1日1回経口投与で処置された。
【0243】
該化合物は安全で忍容性が良好であることが見出され、患者は、いずれもより集中的な肺支援の必要性を生じなかったため、3日目~9日目の処置の間に退院した。
【0244】
安全性への疑念が同定されなかったため、試験のパート2の動員が開始された。2021年3月16日の時点で、患者16名が試験の第二部に組み入れられた。
【0245】
試験の第2部は、正常な飽和度を維持するために供給酸素を必要とすることと定義されたCOVID-19により誘導された肺不全の患者におけるアドオン療法として、プラセボに対するAP1189の2週間投与レジメンの安全性および有効性を評価するために設定される。最大54名の患者が、2:1比に無作為化して、標準治療に加えて1日1回のAB1189 100mgまたはプラセボを受ける。試験の主要な臨床目的は、呼吸器回復までの時間(即ち、大気中での酸素飽和度の正常化までの時間)の低減を示すことである。この試験のトップライン結果は、Q2 2021で予測される。
【0246】
本発明者らがCovid-19感染患者で認める重度炎症を停止させる効果的処置の必要性が上昇している。本発明者らは、AP1189が炎症収束を促進し、それにより回復までの時間を低減して重度ARDSの発症リスクを低減することが可能かどうかを検討するために、この試験の第2相を開始した。
【0247】
Covid-19肺炎の患者からの試料で、マクロファージが肺胞内の全細胞の最大80%を構成し、Covid-19感染の壊滅的影響に関連する過剰炎症に重大な役割を担うことが示された。AP1189は、マクロファージを特異的に標的化するため、本発明者らは、AP1189でのCovid-19患者の処置により提供される潜在的利益をさらに試験することに非常に期待している。
【0248】
重要なこととして、試験は、回復までの時間としての臨床的読み出しに及ぼす潜在的影響をテストすることのみならず、Covid-19感染患者における活性化炎症経路への該化合物の影響も検討することを目標とする。この作業は、患者からの試料の連続回収で開始され、ベロホリゾンテの実験室、およびRESOVIR共同研究の統合部分としてのロンドンの実験室で実施される。
【0249】
実施例3
AP1189での処置の影響を、Covid-19感染患者でテストした。
【0250】
試験集団は、酸素供給が損なわれたCOVID-19感染で入院した患者からなる。該試験は、ブラジルのベロホリゾンテの現場で実行される。
【0251】
該試験は、2部からなる:
パート1:入院したCovid-19感染患者 六(6)名におけるAP1189の1日1回経口投与の安全性および忍容性をテストするオープンラベル試験
パート2:入院したCovid-19感染患者 総数54名において2:1無作為化でのAP1189またはプラセボの1日1回経口投与をテストする無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験。該化合物が、試験安全性監視委員会により安全で良好に忍容されることが見出されたため、パート2が、パート1の安全性評価に続いて開始された。
【0252】
Covid-19感染患者でのAP1189での探索的第2相臨床試験の第二部における投与が、試験の最初のオープンラベルパートの完了に続いて開始された。
【0253】
試験は、完全な回復までの時間の中央値がプラセボ処置患者で11日であり、AP1189処置が回復までの時間の中央値を3日低減するという仮定の下、有意水準0.05および検出力80%でのプラセボ処置対照に比較した回復までの時間の低減として定義された統計学的に有意な処置効果を同定する規模とする。
【0254】
スクリーニングの成功に続いて、登録基準に適合する同意した対象が、パートAでは、任意の継続中の処置へのアドオンとしてAP1189 100mgの1日1回経口投与で処置された。パートBでは、患者は、活性薬またはプラセボのどちらかに2:1比で無作為化される。
活性薬群(36名対象):任意の継続中の処置へのアドオンとしてAP1189を用量100mgで1日1回2週間(14日)
プラセボ群(18名対象):任意の継続中の処置へのアドオンとしてプラセボを1日1回2週間(14日)。
【0255】
中止規則
試験薬に関係すると見なされる重篤な医学的事象(例えば、卒中、けいれんほか)または任意のSAE(重篤な有害作用)の発生の場合、研究者は、試験の中止を決定することができる。
【0256】
試験集団
試験集団は、COVID-19感染および酸素供給の損傷を有する入院対象からなる。
【0257】
1.1.対象選択基準
この試験は、適正な対象が登録される場合のみ、目的に適合し得る。以下の適格基準は、プロトコル処置が適正と見なされた対象を選択するために設計される。このプロトコルが、対象に適するかどうかを決定する際に、全ての関連する医学的および非医学的状態が、考慮されなければならない。
【0258】
1.2 組み入れ基準
対象の適格性は、対象が試験に組み入れられる前に研究者の試験チームの適正に資格を与えられたメンバーにより再検討され、証拠書類が提供されなければならない。以下は、試験への加入の要件である。
a.記入されたインフォームドコンセントが、任意の試験に特化された手順を開始する前に得られている
b.COVID-19感染で入院した18~85歳の男性および女性対象
c.ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるSARS-CoV-2核酸の存在により確認されたCOVID-19感染
d.大気でのSpO2≦93%により定義された酸素供給損傷の証拠
e.初回症状からの疾患期間が病院への入院前に10日未満である
f.信頼性のある避妊手段を利用した出産能力のある女性、または閉経後(月経期間が試験登録前少なくとも12か月停止している)の女性、または手術により不妊となった女性(その手順がスクリーニングの少なくとも6か月前に実施されていなければならない)
g.妊娠検査が陰性である出産能力のある女性
h.スクリーニングおよびベースラインでのテスト
【0259】
1.3.除外基準
以下の規準のいずれかに適合する対象は、この試験への参加に適格でない。
a.研究者の判断で、処置の提供にかかわらず、死が差し迫っており、回避できない
b.他の薬物臨床試験への参加(該化合物を検討するCOVID-19抗ウイルス試験への参加は、該ウイルス感染を低減することを目的とする。しかし、10mg/日を超えない用量でのレムデシビルまたはデキサメタゾンは、許容される。
c.スクリーニングの医師の見解で、患者が試験プロトコルおよび手順に従事し得ないことが示唆された任意の状態(例えば、精神医学的障害、認知症、専門的な緩和ケアを受けている患者)
d.免疫抑制剤(ミクロフェノラート(microphenolate)およびシクロホスファミドなど)で処置された対象
e.HIV感染
f.妊娠中の女性または授乳中(母乳育児)の母親
g.推定糸球体濾過量(eGFR)<30ml/分
h.重度肝機能障害(チャイルド・ピュースコアC)
i.経口グルココルチコイド処置の医療歴(例外は、Covid-19処置に関係した10mg/日を超えないデキサメタゾン処置である)
j.対象の動員
【0260】
この試験の潜在的対象は、病院内の患者の中で同定される。潜在的に適する対象は、対象が試験への参加に関心があるかどうかを確認するために、現場の研究者によってアプローチされる。関心のある対象は、同意前に、試験についての口頭および書面での情報を受ける。同意の前に、他の試験手順が実施されない。
【0261】
結果 - 試験の最初のオープンラベルパート
Covid-19により誘導された肺不全で病院に照会された患者6名が、標準治療(2~5LO2/分の間の流速での経鼻酸素カテーテル)へのアドオンとしてAP1189 100mgの1日1回経口投与を受けた。
【0262】
これらの患者において、該化合物は、安全で良好に忍容されることが見出され、患者は、いずれもより集中的な肺支援の必要性を生じなかったため、処置3日目~9日目の間に退院した。これは、呼吸器回復までの時間(即ち、大気での酸素飽和度の正常化までの時間)を低減する該化合物の潜在性を示した。
【国際調査報告】