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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】過炎症性症候群の処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20230518BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61K31/167
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022559877
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(85)【翻訳文提出日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 NL2021050208
(87)【国際公開番号】W WO2021201680
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】2025253
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2025541
(32)【優先日】2020-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(31)【優先権主張番号】2027321
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522384891
【氏名又は名称】ノモレイティス・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Nomoreitis B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(74)【代理人】
【識別番号】100221534
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 志穂
(72)【発明者】
【氏名】ハサン,ジョハン
【テーマコード(参考)】
4C206
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA19
4C206GA31
4C206KA01
4C206KA11
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA48
4C206MA52
4C206MA76
4C206MA77
4C206MA83
4C206MA86
4C206NA12
4C206NA14
4C206ZB11
(57)【要約】
哺乳類の一次標的リンパ節における哺乳類P2X7Rのアンタゴニストの濃度が最大許容血漿レベルを超えるまで、哺乳類患者においてP2X7Rアンタゴニストを一次リンパ節標的化投与することによる、哺乳類患者における過炎症性症候群の処置における使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニストを開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次標的リンパ節における哺乳類P2X7受容体(P2X7R)のアンタゴニストの濃度が哺乳類の最大許容血漿レベルを超えるまで、哺乳類患者においてP2X7Rアンタゴニストを一次リンパ節標的化投与することによる、哺乳類患者における過炎症性症候群の処置における使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項2】
アンタゴニストが、標的リンパ節における濃度が該受容体のICxに対応するまで投与され、該ICxが、該哺乳類における該アンタゴニストの最大許容血漿レベルを超えるものであり、xが、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらにより好ましくは40以上および最も好ましくは約50である、請求項1に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項3】
リンパ節標的化投与が、局所および侵襲投与より選択される、請求項1または2に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項4】
投与が、経粘膜および経皮より選択される局所である、請求項3に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項5】
アンタゴニストが、親油性である、請求項4に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項6】
親油性アンタゴニストが、遊離塩基である、請求項5に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項7】
リンパ節標的化投与が、口腔における経粘膜投与を含む、請求項5または6に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項8】
投与が、バッカル、舌下、咽頭またはそれらの組合せである、請求項7に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項9】
投与が、経皮であって、クリーム剤、軟膏剤またはローション剤、パッチ剤またはプラスター剤の形態であり、および/またはマイクロニードルまたはそれらの組合せを含む、請求項4~6のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項10】
投与が、皮内、真皮下または皮下より選択される侵襲である、請求項3に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項11】
アンタゴニストが、親水性であり、特にその水溶性の医薬的に許容される塩の形態である、請求項10に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項12】
投与が、静脈内であり、アンタゴニストが、親油性であり、血中への直接放出を回避する薬物送達システムに閉じ込められる、請求項3に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項13】
P2X7R活性化が、細胞外ATPにより活性化される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項14】
投与が、即放性剤形または徐放性剤形である、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項15】
投与が、1回以上のボーラス投与を含むか、または持続投与またはそれらの組合せを含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項16】
ボーラス投与量が、受容体アンタゴニストの最大許容血漿レベルでの1ml血漿中に含まれる受容体アンタゴニストの量の少なくとも1,000倍、好ましくは少なくとも5,000倍、より好ましくは少なくとも10,000倍に相当する、請求項15に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項17】
ボーラスが、1日2~10回投与される、請求項15または16に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項18】
アンタゴニストが、少なくとも1w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%および最も好ましくは少なくとも10w/v%の受容体アンタゴニストを含む液体媒体中で投与される、請求項1~17のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項19】
リンパ節標的化投与が、持続的な皮内、真皮下または皮下注入によるものである、請求項10および15に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項20】
投与量が、1時間当たり体重1kg当たりIC10値の少なくとも10倍に対応する、請求項19に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項21】
処置が、自己免疫疾患および免疫関連疾患、例えば喘息、アレルギーおよび慢性肺疾患;処置誘発免疫関連疾患、例えば化学療法;感染症、例えばウイルスおよび細菌感染;心血管疾患および神経血管疾患;神経炎症性および神経変性疾患;てんかん障害;情動障害および精神症候群;線維症;癌関連障害;腫瘍の擬似進行;癌および新生物;外傷および心的外傷症候群;移植臓器拒絶反応を含む臓器移植後症候群からなる群より選択される、疾患の過炎症性症候群を含む、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項22】
過炎症性症候群が、呼吸困難を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項23】
呼吸困難が、ウイルス感染、細菌感染、癌腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー、化学療法に関連する、請求項22に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項24】
ウイルス感染が、コロナ、特に、SARS-CoV-2;インフルエンザ;エボラ;呼吸器合胞体ウイルス;HIVからなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる、請求項21~23のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項25】
P2X7Rアンタゴニストが、アミノアミド誘導体、特にリドカイン、ブピバカイン、ロピバカインおよびメピバカイン;P2X7Rに対する抗体、特にモノクローナル抗体、アミノエステル誘導体、特にベンゾカインおよびプロカイン;アダマンタンアミド誘導体;トリアゾール誘導体;ジアリールイミダゾリジン誘導体;ピログルタミン酸アミド誘導体;ピラゾールアセトアミド誘導体;ジヒドロジベンゾ[a,g]キノリジニウム誘導体;テトラゾール誘導体;チロシンベースの誘導体;ピラゾロジアゼピン誘導体;イミダゾール誘導体;ベンズアミド誘導体、KN62類似体および誘導体;アダマンタンカルボキサミド;アリールカルボヒドラジド;シアノグアニジン;アリールテトラゾールおよびアリールトリアゾール;PPADS四ナトリウム塩;ブリリアントブルーG(BBG);酸化ATP(o-ATP);マッサジン;スチリサジンAおよびB;P2X7R阻害剤C23、C40およびC60;[3H]A-804598([3H]2-シアノ-1-[(1S)-1-フェニルエチル]-3-キノリン-5-イルグアニジン);ビシクロヘテロアリール化合物からなる群より選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項26】
P2X7Rアンタゴニストが、リドカインを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項27】
処置が、遊離塩基形態のリドカインの局所投与を含む、請求項26に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項28】
処置が、リドカイン塩基の口腔内への投与を含む、請求項27に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項29】
リドカイン塩基が、少なくとも2.5w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%、より好ましくは少なくとも10w/v%の受容体アンタゴニストを含む液体媒体で投与される、請求項28に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項30】
処置が、水溶性塩形態のリドカイン、特にリドカイン-HClの侵襲投与を含む、請求項26に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項31】
リドカイン塩が、皮内、真皮下または皮下投与される、請求項30に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【請求項32】
リドカイン塩が、持続的な皮内、真皮下または皮下注入により投与される、請求項31に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次標的リンパ節における哺乳類P2X7受容体(P2X7R)のアンタゴニストの濃度が哺乳類の最大許容血漿レベルを超えるまで、哺乳類患者においてP2X7Rアンタゴニストを一次リンパ節標的化投与することによる、哺乳類患者における過炎症性症候群の処置における使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニストに関する。
【発明を実施するための形態】
【0002】
(背景技術)
過炎症性症候群(hyperinflammatory syndrome)または過炎症(hyperinflammation)は、医学分野で公知の現象であり、患者に致命的ではないにしても劇的な影響をもたらす極めて多くの疾患の症状である。用語「過炎症」は、次の6つの基準により定義される(Webb et al., Lancet Rheumatol 2020, 2, (12) 754-763):
(1)38.0℃を超える体温と定義される発熱;
(2)フェリチン濃度が700μg/l以上と定義されるマクロファージ活性化;
(3)好中球とリンパ球の比が10以上、またはヘモグロビン濃度が9.2g/dl以下でかつ血小板数が110×109細胞/L以下であると定義される血液機能障害;
(4)Dダイマー濃度が1.5μg/ml以上と定義される血液凝固障害;
(5)乳酸デヒドロゲナーゼ濃度が400U/L以上、またはアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ濃度が100U/L以上と定義される肝障害;
(6)インターロイキン-6濃度が15pg/ml以上、またはトリグリセリド濃度が150mg/dl以上、またはCRP濃度が15mg/dl以上と定義されるサイトカイン血症。
【0003】
呼吸困難および肺炎は、特に気道感染の結果として、過炎症と一致する一般的で数の多い症状である。過炎症が発生する主要な事象は、細胞内ATPの放出である。ヌクレオチド(ATP、ADP、UTPおよびUDP)およびヌクレオシド(アデノシン)による細胞間シグナル伝達は、プリン作動性シグナル伝達として当該技術分野で知られている。
【0004】
通常の安静状態下では、ATPの細胞外レベルはナノモル濃度(2~3nM)で極めて低いが、特定の状態下ではATP放出が1000倍超上昇し得て;このような状態は、下記の対応するセクション「過炎症を伴う疾患」に記載されている疾患で発生し得て、例えば炎症反応、機械的ストレス、界面活性剤放出、膜脱分極、低酸素症が挙げられる。
【0005】
プリン作動性シグナル伝達では、P1受容体としても知られるリガンドアデノシン、およびP2受容体として知られるヌクレオチドリガンドについて、複数の受容体が知られている。アデノシンの場合、ベースラインと最大効果の中間の効果(最大有効用量の半分、EC50)に到達するのに必要なリガンドの細胞外濃度はナノモル範囲であるのに対し、ATP、UTP、またはADPの場合、これらの濃度は0.01~10μMの範囲である。これらすべての受容体は、脱感作を受けることが知られている。受容体の脱感作は、リガンドによる活性化に応答せず、膜貫通アニオン電流がゼロになると定義される。しかしながら、P2受容体の1つであるP2X7Rは、脱感作の傾向がなく、ATPがこの受容体を活性化するEC50は、はるかに高く、すなわち1mMを超える。このようなATPレベルでは、他のすべてのP1およびP2プリン作動性受容体は、完全に脱感作される。
【0006】
重篤な感染症などの上記のような疾患によって、大量の細胞外ATPが感染細胞により放出される。これは、気道粘膜および肺に閉じ込められ得て、または複数の臓器に広がり得る。細胞外ATPは1.4mM(NO)まで蓄積することが観察されており(Zhao et al., Front Immunol 2019, 10, 2524)、その結果、P2X7Rが活発に活性化され、大量の炎症誘発性免疫応答、大量の炎症誘発性および抗炎症性サイトカインの放出、および組織細胞破壊による大きな孔形成を伴う過炎症が引き起こされる(Savio et al., Front Pharmacol 2018, 9, 52)。
【0007】
P1およびP2受容体の脱感作の結果として、生理的炎症反応が不活性化し(免疫麻痺として知られている)、患者は二次感染に罹患しやすくなる。
【0008】
制御性T細胞(Treg)は、過炎症の制御における重要な要素であり、細胞外ATPからのアデノシン生成を加速させる。P2X7Rの活性化は、Tregの抑制能力および安定性を阻害する。
【0009】
P2X7Rは、多くの慢性および急性疾患において重要な役割を果たす。これらの疾患は、1つの臓器に限定され得て(アルツハイマー病、多発性硬化症、大腸炎)、または細菌性敗血症または重篤な微生物感染症、例えばCOVID-19(下記「過炎症を伴う疾患」のセクションも参照)のように拡散的に広がり得る。
【0010】
過炎症の現在の処置は、実際には抗炎症処置である。これらの薬物は、1つ以上の炎症誘発性経路を阻害することにより、免疫応答の活性化を文字通りブロックする。これらの治療は、炎症誘発性免疫応答の生理的機能を弱体化させ、すなわち、侵入する微生物による「攻撃」を認識し(「警報段階」)、続いて、侵入者を特異的に無力化するのに適応免疫システムの活性化が必要とされるとき、防御の第一線(自然免疫系)を活性化する。患者の炎症反応を妨げるそのような薬物の例は、デキサメタゾン、バリシチニブおよびアナキンラである。
【0011】
したがって、過炎症の処置は、これまで厄介であった。ここで、本発明は、患者の炎症反応を妨げることなく、または少なくともはるかに少ない程度で、過炎症に罹患する患者を処置する方法を提供する。
【0012】
P2X7Rは、過炎症ならびに付随する呼吸困難および肺炎を処置する場合に標的とする良好な候補であり得ることが当該技術分野で示唆されている。P2X7Rアンタゴニストは、P2X7Rの活発な活性化をブロックする。細胞外空間へのATP放出の大部分にはP2X7Rが介在するため、その拮抗作用は細胞外ATP濃度の低下をもたらす。これは、過炎症および付随する免疫麻痺を抑制する可能性がある。また、P2X7Rの阻害は、T細胞受容体の刺激後にCD4+ T細胞のTregへの細胞自律的変換を促進することが記載されている(Schenk et al., Sci Signal 2011, 4 (162) ra12)。P2X7R阻害による過炎症の改善は、抗炎症性Treg集団の活性化およびクローン拡大の増加に基づくと考えられる。
【0013】
これまでに多くのP2X7Rアンタゴニストが特定されている(North and Jarvis, Mol Phar, 2013 (83) 759-769; Sluyter, Adv Exp Med Biol Prot Rev 2017 (19) 17 - 53)。効果を達成するために、これらのアンタゴニストは、想定される作用部位に血液により輸送されるために全身投与されてきた。
【0014】
例えば、CE-224,535 500(Pfizer)、AZD9056(Astra-Zeneca)、およびJNJ54175446(Johnson & Johnson)は経口投与されたが、大きな成功はなかった。麻酔リドカインは、P2X7R拮抗薬であることが報告されている(Okura et al., Anesth Analg 2015, 120 (3), 597 - 605)。更なるP2X7Rアンタゴニストは、下記「P2X7Rアンタゴニスト」セクションに記載されている。
【0015】
P2X7Rアンタゴニストは、過炎症を抑制にし、免疫系の能力を回復させて二次感染と闘い、重篤な気道感染に罹患している重症患者の臨床状態を改善できるが、これらの化合物の問題は、効果を有するために、アンタゴニストは、過炎症および好ましくは例えば呼吸困難の付随効果が効果的に打ち消される程度までP2X7Rに結合すべきであることである。このような効果は、受容体アンタゴニストが受容体を10%阻害する濃度(いわゆるIC10値)で観察されている場合がある。好ましい阻害は、50%受容体阻害、すなわちIC50値である。しかしながら、P2X7Rアンタゴニストについては、そのような濃度は該アンタゴニストの最大許容血漿レベルを超えており、すなわち、望ましくない副作用、例えば不安、めまいまたは脊髄反射の低下または悪化をもたらす。例えば、ヒトのリドカインの最大許容血漿レベルは、約4.7μg/mlであり、表1を参照されたい:
【表1】
【0016】
各P2X7Rアンタゴニストについて、当業者は、最大許容血漿レベルをどのように決定するかを知っている。
【0017】
しかしながら、P2X7Rアンタゴニストは、効果的であるためには、全身投与量が最大許容血漿レベルをはるかに超えるため、過炎症の処置に効果的に使用されていない。
【0018】
本発明は、本明細書において、一次標的リンパ節におけるP2X7Rアンタゴニストの濃度が哺乳類の最大許容血漿レベルを超えるまで、哺乳類患者においてP2X7Rアンタゴニストを一次リンパ節標的化投与することによる、哺乳類患者における過炎症性症候群の処置における使用のためのP2X7Rアンタゴニストを提供する。一次リンパ節を標的化することにより、最大許容血漿レベルを超えないようにしながら、想定されるICx値をリンパ節で得ることができる。本発明者らは、リンパ節において想定されるICx値を確立することは、過炎症の効果的な処置をもたらし、重篤な気道感染に罹患している患者の呼吸困難および過炎症の他の症状を著しく緩和することを見出した。リンパ節の標的化は、リンパ系が免疫細胞、すなわちナイーブT細胞、活性化T細胞、B細胞、樹状細胞、単球、マクロファージ、好中球、マスト細胞、好酸球、好塩基球およびその他の免疫関連細胞のトラフィッキングによって独占的に存在すると考えられていたため、想定された。P2X7Rアンタゴニストによるリンパ系の免疫細胞のP2X7Rの選択的阻害により、Tregのクローン増殖が誘導されることが見出された。その後、これらのTregは、全身および(遠位)局所の過炎症を軽減する抗炎症活性を発揮して全身に移動する。
【0019】
用語「一次リンパ節を標的化とする」は、受容体アンタゴニストの大部分が投与部位からリンパ節に直接送達され、血漿中の該受容体アンタゴニストの有効量がリンパ節より少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍または少なくとも15倍少ない、投与または送達経路を指す。特に、投与はリンパ節に優先的である。
【0020】
アンタゴニストは、標的リンパ節における濃度が該受容体のICxに対応するまで投与され、該ICxは、該哺乳類における該アンタゴニストの最大許容血漿レベルを超えるものであり、xは、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらにより好ましくは40以上および最も好ましくは約50である。IC10では10%受容体阻害が観察され、IC20では20%受容体阻害が観察されるなどである。xが高いほど、受容体阻害が大きくなり、過炎症がより効果的に処置される。受容体により強く結合する受容体アンタゴニストのIC値は、受容体により弱く結合する受容体アンタゴニストよりも低くなることは、当業者には明らかである。アンタゴニストの結合が強いほど、結合の弱いアンタゴニストと比較して、同じ効果を得るのに必要な該アンタゴニストの量は少なくなる。IC値は、好ましくは、上記のOkuraに記載されているように決定される。
【0021】
当業者は、リンパ節標的化投与に適した送達および投与経路を知っている。局所および侵襲的投与が好ましい。侵襲的投与は、病院環境外では適切でない場合がある。したがって、局所投与により受容体アンタゴニストを投与することは極めて魅力的である。局所経路として、経粘膜および経皮投与が好ましい。このような場合、親水性形態は血液中に優先的に吸収される傾向があり、これにより血中の受容体アンタゴニストの血漿レベルの望ましくない上昇が生じ、リンパ節における送達が少なくなるため、アンタゴニストは好ましくは親油性形態で投与される。この目的のために、受容体アンタゴニストは、好ましくはその遊離塩基の形態である。
【0022】
極めて魅力的な実施態様において、リンパ節標的化投与は、粘膜で覆われた体腔への経粘膜投与を含み、好ましくは、該粘膜は、迅速かつ直接的な送達を可能にするために、1つ以上のリンパ節に近い。特に、口腔は、このような投与に適する。しかしながら、経鼻および経鼻投与もまた、可能である。経鼻送達に関して、受容体アンタゴニストの吸入は、受容体アンタゴニストの血漿レベルの望ましくない上昇を引き起こし得るため、好ましくは受容体アンタゴニストを吸入しないように、または最小限にとどめるように注意しなければならない。口腔に投与する場合、投与は、好ましくはバッカル、舌下、咽頭またはそれらの組合せである。粘膜は、好ましくは、全身透過性が低く、リンパ節に近い。様々な粘膜組織の透過性は、例えば、Goyal et al., Nanomed Biotechnol 2018, 46 (sup2), 539-551 and Lesch, et al., J Dent Res 1989, 68(9), 1345-1349に記載されている。
【0023】
経口投与は非効率的な薬物送達経路であると当該技術分野で考えられてきた(Di Vergilio et al., Br J Pharmacol 2020)。しかしながら、受容体アンタゴニスト、特にリドカインの舌下およびバッカル投与は、血漿中のアンタゴニストレベルを有意に上昇させることなく極めて効果的であることが現在示されている。皮膚および粘膜の水や薬剤などの透過性は、投与部位に依存することが報告されている。例えば、トリチウム標識水の口底(舌下粘膜)、舌の外側縁、バッカル粘膜の透過定数は、それぞれヒトの皮膚の22倍、17倍および13倍である。さらに、分子を吸収する粘膜下毛細血管の能力は、皮下毛細血管よりはるかに高い。リドカイン塩酸塩は水への溶解度が高く(水に680mg/mlの溶解度)、主に粘膜下毛細血管から吸収される。対照的に、親油性の高いリドカイン塩基(水に4mg/ml、95%エタノールに760mg/ml、クロロホルムに790mg/mlの溶解度)は、好ましくは、粘膜下組織の局所的な毛細リンパ管(initial lymphatics)により吸収される(Groningsson, et al., In Analytical Profiles of Drug Substances, Florey, K., Ed. Academic Press: 1985; Vol. 14, pp 207-243)。また、口底のリンパ排液は広範であり、多数のリンパ節が関与している。
【0024】
親油性リドカイン塩基または任意の他のP2X7Rアンタゴニストの舌下およびバッカル投与が好ましい。比較的低い総用量で高濃度を使用することで、所属リンパ節におけるP2X7RのIC50を達成して、全身性過炎症を制御し、リドカインまたは任意の他のP2X7Rアンタゴニストの毒性のある血漿レベルを回避し得る。親油性リドカインの舌下およびバッカル投与は、リドカインの経口投与と異なることに留意すべきである。リドカインの経口投与は、消化管における薬物の再吸収、すなわち全身投与を目的としている。
【0025】
別の実施態様において、投与は、経皮であって、クリーム剤、軟膏剤またはローション剤、パッチ剤またはプラスター剤の形態であり、および/またはマイクロニードルまたはそれらの組合せを含む。このタイプの投与では、受容体アンタゴニストは、上記と同じ理由で好ましくは親油性である。所望によりα-テルピネオール、エタノール、脂質ベースのナノ製剤などの皮膚浸透増強剤と組み合わせた、特に親油性形態での、P2X7Rアンタゴニストの経皮投与は、便利な適用を提供し得る。
【0026】
別の実施態様において、投与は、侵襲的であり、特に、皮内、真皮下(subdermal)または皮下(subcutaneous)投与より選択される。真皮の毛細血管は血液から組織に物質を輸送できるが、組織から血液への物質の再吸収は、あったとしても極めて少ない。外見上、間質から液体および分子を吸収できる一方向弁小葉を内包する特殊な毛細リンパ管が、真皮に局在する。その後、吸収されたリンパ液は、リズミカルに収縮する筋肉層を内包するリンパ管を集めることにより、リンパネットワーク内を前方に推進される。このシステムは、多数の免疫プロセスが行われるリンパ節に液体および粒子をもたらす。リンパ節への皮内適用の吸収は、深部皮下適用後より10倍遅いと考えられ、これらのリンパ管に関連するリンパ節での濃度が高くなる。小さい粒子は、大きい粒子よりリンパ管およびリンパ節に向かってより速く移動する。ヒトの手の甲への皮内および皮下投与後のクリアランスの経路および速度は、皮下注射後に投与化合物のクリアランスの1%/分および皮内注射後に8~10%/分であった。
【0027】
更なる利点は、皮下投与されたリドカイン血漿濃度が、静脈内投与されたリドカインよりはるかに低いことである。ネコに2mg/kgのリドカインを静脈内投与すると、ほぼ直後に3.6μg/mLのピーク血漿濃度になる(Thomasy et al., Am J Vet Res 2005, 66 (7), 1162-1166)。対照的に、30mg/kg、20mg/kgおよび10mg/kgリドカインの皮下投与後に達成される平均ピーク血漿濃度は、はるかに低く、それぞれ1.69、1.07および0.77μg/mLである(Hatef et al., Aesthet Surg J 209 (2), 122-128)。適用される皮下投与量は、静脈内投与量のそれぞれ15、10および5倍である。リドカインの静脈内および皮下投与後の血漿濃度の違いは、静脈内投与とは対照的に、皮下投与されたリドカインの大部分がリンパ系に排出されることにより引き起こされる。これにより、静脈血へのリドカインの放出が遅くなる。
【0028】
皮内投与後のリンパ吸収は、深部皮下投与後よりはるかに高い。リドカインの皮内注入は、リドカインの投与経路として認められていないため、真皮のすぐ下に挿入したカテーテルを用いたリドカインの真皮下投与が提案されており、これにより、深部皮下または静脈内注入より、流出する局所リンパ節でリドカインの濃度が高くなる。
【0029】
本発明による侵襲投与について、受容体アンタゴニストは、好ましくは親水性であり、特に、その水溶性の医薬的に許容される塩、例えば塩化物塩の形態である。
【0030】
別の実施態様において、投与は、静脈内であり、アンタゴニストは、親油性であり、例えばナノサイズの薬物送達システム、リポソームまたはポリマーミセルを用いることにより、血中への直接放出を回避する薬物送達システムに閉じ込められる。P2X7Rアンタゴニストの経口投与もまた、血漿への送達が回避されるカイロミクロンなどの腸リンパ管薬物輸送のための送達システムを用いて可能である。最大許容血漿レベルを超えない低用量での静脈内投与は、あったとしても、あまり顕著な効果をもたらさない。リドカインの場合、0.6mg/kg/時間の静脈内投与を適用し得る。
【0031】
特に、P2X7R活性化は、細胞外ATPにより活性化される。しかしながら、P2X7Rはまた、膜のストレッチ、アポトーシス細胞のタンパク質、LL-37、カテリシジンおよび抗菌ペプチドによっても活性化され得る。このような受容体活性化のすべての形態は、P2X7Rアンタゴニストにより拮抗されることに留意すべきである。
【0032】
魅力的な実施態様において、投与は、即放性剤形または徐放性剤形である。
【0033】
投与は、好ましくは、1回以上のボーラス投与を含むか、または持続投与またはそれらの組合せを含む。ボーラスは、単一の錠剤、パウチ、注射、エアロゾルなどの投与、またはその後に顕著な時間間隔なしで投与される場合の任意の組合せでの複数の投与と理解されるべきである。例えば注入として、または1回以上のボーラス投与と持続投与との間の組合せとして、持続的に投与することも魅力的である。
【0034】
特定の実施態様において、ボーラス投与量は、受容体アンタゴニストの最大許容血漿レベルでの1ml血漿中に含まれる受容体アンタゴニストの量の少なくとも1,000倍、好ましくは少なくとも5,000倍、より好ましくは少なくとも10,000倍に相当する。この実施態様によれば、ボーラスは、最大許容血漿レベルで1mlの血漿中に存在する受容体アンタゴニストの量により定義されることを意味する。例えば、ヒトにおけるリドカインの最大許容血漿レベルは、4.7μg/mlである。これは、ボーラスが4.7μgの少なくとも1,000倍、すなわち4.7mgであることを意味する。
【0035】
ボーラスは、好ましくは1日2~10回投与される。
【0036】
アンタゴニストは、好ましくは、、少なくとも1w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%および最も好ましくは少なくとも10w/v%の受容体アンタゴニストを含む液体媒体中で投与される。このような高濃度の受容体アンタゴニスト、特にリドカインは、これまで当該技術分野で使用されていなかった。このような濃度は、当該技術に従って使用される場合、すなわち、血液を介した全身送達に関する場合、該アンタゴニストの最大許容血漿レベルを超える、許容できないほど高い血漿レベルを引き起こす。例えば、SARS-CoV-2による感染などによる重篤な気道感染に罹患している患者の過炎症および付随する呼吸困難を処置するため。
【0037】
侵襲的投与に関しては、リンパ節標的化投与は、好ましくは持続的な皮内、真皮下または皮下注入によるものである。特に、換気のために挿管されている、および/または昏睡状態にある患者は、そのような投与経路を必要とし得る。
【0038】
持続注入による投与について、投与量は、好ましくは1時間当たり体重1kg当たりIC10値の少なくとも10倍、より好ましくは1時間当たり体重1kg当たりIC20値の少なくとも10倍、さらにより好ましくは1時間当たり体重1kg当たりIC30値の少なくとも10倍、またさらにより好ましくは1時間当たり体重1kg当たりIC40値の少なくとも10倍、最も好ましくは1時間当たり体重1kg当たりIC50値の少なくとも10倍、1時間当たり体重1kg当たりIC10値の少なくとも10倍、1時間当たり体重1kg当たりIC10値の少なくとも10倍に相当する。より好ましくは、投与量は、1時間当たり体重1kg当たりIC50値の少なくとも15倍である。リドカインの場合、後者の値は、約1mg/kg/時間に相当する。リドカインのIC50値は、66μg/ml(0.066×15=0.99)である。
【0039】
極めて魅力的な実施態様によれば、疾患は、自己免疫疾患および免疫関連疾患、例えば喘息、アレルギーおよび慢性肺疾患;処置誘発免疫関連疾患、例えば化学療法;感染症、例えばウイルスおよび細菌感染;心血管疾患および神経血管疾患;神経炎症性および神経変性疾患;てんかん障害;情動障害および精神症候群;線維症;癌関連障害;腫瘍の擬似進行;癌および新生物;外傷および心的外傷症候群;移植臓器拒絶反応を含む臓器移植後症候群からなる群より選択される、疾患の過炎症性症候群を含む。しかしながら、処置は、P2X7R活性化が役割を果たし、疾患がP2X7Rアンタゴニストによって処置され得るあらゆる疾患を含み得る。これらの疾患は、以下の「過炎症を伴う疾患」のセクションに列記されている。
【0040】
過炎症性症候群は、好ましくは呼吸困難を含み、特に、呼吸困難は、ウイルス感染、細菌感染、癌腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー、化学療法に関連する。ウイルス感染は、コロナ、特に、SARS-CoV-2;インフルエンザ;エボラ;呼吸器合胞体ウイルス;HIVからなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる。
【0041】
P2X7Rアンタゴニストは、好ましくは、アミノアミド誘導体、特にリドカイン、ブピバカイン、ロピバカインおよびメピバカイン;P2X7Rに対する抗体、特にモノクローナル抗体、アミノエステル誘導体、特にベンゾカインおよびプロカイン;アダマンタンアミド誘導体;トリアゾール誘導体;ジアリールイミダゾリジン誘導体;ピログルタミン酸アミド誘導体;ピラゾールアセトアミド誘導体;ジヒドロジベンゾ[a,g]キノリジニウム誘導体;テトラゾール誘導体;チロシンベースの誘導体;ピラゾロジアゼピン誘導体;イミダゾール誘導体;ベンズアミド誘導体、KN62類似体および誘導体;アダマンタンカルボキサミド;アリールカルボヒドラジド;シアノグアニジン;アリールテトラゾールおよびアリールトリアゾール;PPADS四ナトリウム塩;ブリリアントブルーG(BBG);酸化ATP(o-ATP);マッサジン;スチリサジンAおよびB;P2X7R阻害剤C23、C40およびC60;[3H]A-804598([3H]2-シアノ-1-[(1S)-1-フェニルエチル]-3-キノリン-5-イルグアニジン);ビシクロヘテロアリール化合物からなる群より選択される。しかしながら、更なる適切なP2X7Rアンタゴニストは、以下のセクション「P2X7Rアンタゴニスト」に示されている。
【0042】
極めて魅力的な実施態様において、P2X7Rアンタゴニストは、リドカインを含む。リドカインは、過炎症の処置に極めて効果的であることが示されている。リドカインは、好ましくは局所投与され、好ましくは遊離塩基形態である。投与は、好ましくは口腔内である。リドカイン塩基は、好ましくは、少なくとも2.5w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%、より好ましくは少なくとも10w/v%の受容体アンタゴニストを含む液体媒体中で投与される。このような液体媒体は、例えばエタノールベースであり得る。
【0043】
別の魅力的な実施態様において、処置は、水溶性塩形態のリドカイン、特にリドカイン-HClの侵襲投与を含む。リドカイン塩は、好ましくは皮内、真皮下または皮下投与される。リドカイン塩は、好ましくは持続的な皮内、真皮下または皮下注入により投与される。
【0044】
哺乳類患者は、好ましくはヒト患者であるが、P2X7R活性化が介在する疾患に罹患しているあらゆる哺乳類であり得る。
【0045】
ここで、以下の図および実施例により本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1a~fは、真皮下リドカインで処置された重度のCOVID-19の6症例を示している。すべての患者は、COVID-19検査が陽性のCOVID-19症例である。2名の患者は人工呼吸器と体外式膜型人工肺(ECMO)で処置され、4名の患者は人工呼吸器のみで処置された。静脈内リドカインの最大用量は0.6mg/kg/時間であり、真皮下リドカインの最大用量は1mg/kg/時間である。すべての患者は病気から完全に回復した。
図1a】COVID-19誘発ARDSの63歳の男性(実施例1)が入院した。CTスキャンは、両側にスリガラス陰影を示した。併存症:COPD、40年以上にわたり1日当たり60本のタバコを吸っている。入院の約40年前、患者は気胸に罹患していた。入院後、臨床状態が悪化し、4日目に、ICU入室と人工呼吸器が必要になった。11日目に、0.6mg/kg/時間の持続静脈内リドカインを開始したが、患者の状態は、高い肺動脈圧と肺の通気の低下により悪化し続けた。19日目に、0.6mg/kg/時間の持続静脈内リドカインを1mg/kg/時間の持続真皮下リドカインに変更した。これに続いて臨床状態が改善し、20日目に、肺の通気が改善したが、肺動脈圧は高いままである。これにもかかわらず、P/F比は徐々に改善し、50日目に、ECMOウィーニングを行った。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.3~0.8%)。
図1b】COVID-19誘発ARDS(実施例2)の68歳の男性がICUに入室し、人工呼吸器が必要であった。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。併存症:喘息。入院後、患者の状態は悪化していた。5日目に、0.6mg/kg/時間の持続静脈内リドカインを開始したが、臨床状態とP/F比は悪化し続けた。11日目に、0.6mg/kg/時間の静脈内リドカインを1mg/kg/時間の持続真皮下リドカインに変更した。数日後、臨床状態とP/F比が改善した。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.1~0.6%)。
図1c】呼吸困難およびCTスキャンで両側のすりガラス陰影を伴う59歳の男性(実施例3)。併存症:真性糖尿病および痛風。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中MetHbは正常範囲内であった(0.1~0.4%)。
図1d】COVID-19による発熱、呼吸困難および咳を伴う51歳の男性(実施例4)。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。併存症:なし。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.1~0.3%)。
図1e】COVID-19による発熱、呼吸困難および咳を伴う58歳の男性(実施例5)。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。併存症:脂肪肝。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.1~0.3%)。
図1f】COVID-19による発熱、呼吸困難および咳を伴う59歳の男性(実施例6)。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。併存症:投薬による高血圧。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。MetHbは正常範囲内であった(0.1~0.3%)。
【実施例
【0047】
実施例1~6
2020年4月から2020年7月末まで、COVID-19の重症患者6名が入院し、リドカインの静脈内および真皮下持続注入を受けた。この処置は、コンパッショネート使用に基づいて開始した。リドカイン注入溶液の濃度は20mg/ml(2%)である。第1の2名の患者のリドカイン処置は、日常診療で一般的に用いられるリドカインの持続投与の投与経路である静脈内から開始した。静脈内投与の用量は0.6mg/kg/時間である。静脈内リドカインの有効性が限られているため、および免疫細胞のP2X7Rの阻害を選択的に標的とするという仮説に基づいて、両方の患者における注入を、それぞれ7および6日後に1.0mg/kg/時間の真皮下注入に変更した。他の4名の患者は、真皮下注入のみで処置された。これらの6名の患者の臨床パラメーターの時間経過を図1a~fに示す。
【0048】
患者1:実施例1
1人目の患者は63歳の男性(75kg、168cm)で、2020年3月27日に発熱および悪心を発症し、3日後に咳が出始め、呼吸困難になった。5日後、PCR COVID-19検査は陽性であり、COVID-19誘発ARDSで入院した。併存症:COPD、40年以上にわたり1日当たり60本のタバコを吸っている。約40年前、患者は気胸に罹患していた。3日目に、患者は悪化し、血液ガスが少ないために挿管され、人工呼吸器が取り付けられた。血行動態の不安定性は観察されなかった。CTスキャンは、ARDSと両立する両側のすりガラス陰影を示した。5日目に、患者はさらに呼吸が悪化したため、大学病院のICUに移された。PaO2/FiO2比が63.3mmHgと極めて低く、呼吸器疾患が進行したため、腹臥位の人工呼吸を開始した(ベルリンの定義による重篤なARDS。ARDSのベルリン定義は、重度PaO2/FiO2比が≦100mmHg、中等度PaO2/FiO2が100~≦200mmHg、軽度PaO2/FiO2が200~≦300mmHg、非ARDSがPaO2/FiO2>300mmHgを含む[361])。人工呼吸器の初期設定:APRV、Phigh 27cmH2O、Thigh 7.0s、Plow 0cmH2O、Tlow 0.32s。PaCO2は正常であった。心エコーで推定された肺動脈収縮期圧(PASP)は80mmHgであった。Krebs von Lungen 6(KL-6、肺線維症のマーカー[362])の血漿レベルは極めて高く(1299U/mL;正常値<425U/mL)、CRPも高く(40.4mg/L;正常値<10mg/L)、アルブミンは2.2g/dlであった。白血球数、血小板数、尿量は正常であった。4日目、胸部X線は改善されなかった。6日目に、PaO2/FiO2比はわずかに上昇したが、103mmHgで低いままで、胸部X線はARDSの進行を示した。ECMOは、換気戦略を使い果たしたために開始した。9日目に、PaO2/FiO2比は改善したが、約153mmHgで低いままであったが、CRPは約21.8mg/Lまで低下した。患者に筋弛緩剤を投与した。患者のARDS状態は、重度から中等度のARDSに改善した。10日目から30日目まで、フェリチンレベルは>1000ng/ml(>100μg/dl以上)であった。11日目から62日目まで、D-ダイマーは極めて高く、14日目で121.9nM/Lに達した。11日目に、血液ガスの改善は観察されず、0.6mg/kg/時間の持続静脈内リドカインで患者を処置することが決定された。16日目に、CRPは19(12日目)から12.8(16日目)および7.4(19日目)への漸進的な低下を示したが、PaO2/FiO2比は約90mmHgで低いままであり(ベルリン基準によると重度のARDS)、静脈内リドカイン注入の開始から3日後の15日目の胸部X線画像は、劇的に悪化した。リドカイン血漿濃度は、13日目に3.4μg/ml、14日目に5.4μg/mlであった。19日目に、持続静脈内リドカイン注入を、1mg/kg/時間の連続真皮下リドカイン注入に置き換えた。PaO2/FiO2比は20日目(持続真皮下リドカインへの切り替えの1日後)に変化しないままであったが、胸部X線は明らかに改善した。21日目に、リドカイン血漿濃度は2.6μg/mlであり、アルブミンは2.5g/dlであった。22日目からPaO2/FiO2比は徐々に改善し、34日目に151mmHgに達した(中程度のARDS)。22日目のKL-6は458U/Lに低下した(これは、<450U/Lの正常値をわずかに上回るだけである)。31日目に、CRPは1mg/Lで低く、リドカイン血漿濃度は1.2μg/mlであった。筋弛緩剤を中止した。アルブミンは2.3g/dlであった。33日目に、胸部X線はさらに改善し、CRPは5.5mg/Lで低いままであった。患者は覚醒しており、看護師とコミュニケーションをとることができた。38日目に、リドカイン血漿レベルは2.3であった。43日目に、PaO2/FiO2比は214mmHgに上昇した。ARDSのベルリン定義[361]によれば、患者のARDS状態は中等度から軽度に変化した。アルブミンは2.8g/dlであった。50日目に、患者はECMOから外された。51日目に、患者は気管切開を受けた。患者の臨床状態は55日目に6.3mg/Lの低いCRPで安定したため、57日目に持続真皮下リドカインを中止した。69日目に、彼は胸膜ドレナージを必要とする気胸を発症した。99日目に、人工呼吸器から離脱し、121日目に、ICUから退室した。患者はファビピラビルを14日間投与された。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.3~0.8%)。患者は187日目に退院し、家に帰り、歩くことはできたが、2L/分の追加の酸素供給が必要であった。入院から9か月後、患者は経過良好であり、仕事に復帰した。
【0049】
患者2:実施例2
2人目の患者は68歳の男性で、COVID-19誘発ARDSがあり、PCR検査が陽性で入院している。併存症:喘息。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。患者の血行動態は安定していた。2日目に、呼吸状態が悪化し、PaO2/FiO2比は118mmHg(ベルリンARDSの定義[361]による中程度のARDS)である。患者は挿管され、人工呼吸器が必要であった。人工呼吸器の初期設定:圧力制御、最大吸気圧28cmH2O、PEEP 13cmH2O、呼吸数30/分。CRPは10.6mg/L、KL-6は486U/mlであった。白血球数、血小板数、尿量は正常であった。フェリチンレベルは、ICU滞在中>1000ng/ml(100μg/dl)のままであった。アルブミンは2.9g/dlであった。次の3日間、PaO2/FiO2比は約150mmHgに改善した。PaO2/FiO2比は、5日目の152mmHgから6日目の84mmHgに低下した。CRPは22.9に上昇し、KL-6は762U/mlに上昇した。患者を腹臥位にさせ、筋弛緩剤を投与した。6ml/kg/時間の持続静脈内リドカインを開始した。アルブミンは1.8g/dlであった。7日目に、PaO2/FiO2比は128mmHgに上昇し、CRPは10.3mg/mLに低下し、リドカイン血漿濃度は2.2μg/mlであった。3日目からICU退室までDダイマー値は上昇し、14日目に75nM/Lに達した。8日目に、PaO2/FiO2比は84から125mmHgに改善したが、人工呼吸戦略を使い果たし、患者はECMOを装着された。KL-6は845U/Lに上昇し、リドカイン血漿レベルは2.9μg/mlであった。9日目に、PaO2/FiO2比は238mmHgに改善したが、10日目に、60mmHgへのPaO2/FiO2比の急激な低下が観察され、CRPは2.0mg/mlであった。患者のARDS状態は、ベルリンARDS基準による中等度から重度に変化した(Ranieri et al., Jama 2020, 307 (23), 252-2533)。リドカイン処置を、持続静脈内から持続真皮下に切り替えた(投与量:1mg/kg/時間)。14日目に、リドカインの血漿レベルは2.7μg/mlであった。KL-6は549U/lに低下した。17日目に、患者の臨床状態は改善し、PaO2/FiO2比は158mmHgに達した。患者はECMOから外された。PaO2/FiO2比はさらに改善し、21日目に291mmHgに達し、患者のARDS状態は中等度から軽度のARDSに変化した(上記Ranieri)。22日目に、人工呼吸器を中止し、患者は抜管された。患者は見当識が保たれ、混乱の兆候は検出されなかった。リドカイン処置を30日目に、ICUから退室するまで続けた。患者は8日目にトシリズマブを投与され、14日間ファビピラビルを投与された。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.1~0.6%)。入院から3か月後、患者は経過良好である。
【0050】
患者3:実施例3
3人目の患者は59歳の男性で、呼吸困難とCTスキャンでの両側のすりガラス陰影を有し、入院した。依存症:真性糖尿病および痛風。患者は直ちに挿管および人工呼吸器を必要とした。人工呼吸器の初期設定:圧力制御、最大吸気圧30cmH2O、PEEP 15cmH2O、呼吸数25/分。入院時のPaO2/FiO2比は160mmHgであり(ベルリン定義[361]による中等度ARDS)、CRPは39.3mg/Lであり、KL-6は294U/mlであった。白血球数は13.10-9/L上昇し、血小板数および尿産生は正常であった。アルブミンは2.1g/dlであった。血行動態パラメーターは安定であった。入院日に持続真皮下リドカインを1mg/kg/時間で開始した。2日目に、PaO2/FiO2比は283mmHgに改善し、患者のARDS状態は中等度から軽度のARDSに変化した。CRPは41mg/Lであり、KL-6は268U/lであり、リドカイン血漿レベルは3.7μg/mlであった。アルブミンは1.7g/dlであった。4日目に、PaO2/FiO2比は302mmHgであり、患者のARDS状態はベルリンARDS基準による軽度ARDSから非ARDSに変化した。5日目に、PaO2/FiO2比はさらに328mmHgまで改善し、CRPは16.4に低下し、患者は抜管された。患者は見当識が保たれ、混乱の兆候は検出されなかった。患者は8日目にICUから退室し、CRPは2.3mg/mlであった。アルブミンは2.5g/dlであった。患者は3日目にトシリズマブを投与され、15日間ファビピラビルを投与された。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中MetHbは正常範囲内であった(0.1~0.4%)。患者は20日目に退院した。3か月後、経過良好である。
【0051】
患者4:実施例4
4人目の患者は51歳の男性である。入院の10日前に発熱し、入院の2日前に呼吸困難および咳を発症した。入院日に、PCR COVID-19検査は陽性であった。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。併存症:なし。患者は挿管され、入院時に人工呼吸器を装着された。3日目に、肺の状態が悪化したため、大学病院に移送された。人工呼吸器の初期設定:圧力制御、最大吸気圧24cmH2O、PEEP 12cmH2O、呼吸数15/分。血行動態状態は安定であった。白血球数および血小板数は正常であった。アルブミンは2.6g/dlであった。持続真皮下リドカインをすぐに開始した。3日目にPaO2/FiO2比は214であった(ベルリン定義[361]による中等度ARDS)。KL-6は177U/Lであり、CRPは17.4mg/Lであった。5日目に、PaO2/FiO2比は382に上昇し(患者のARDS状態は軽度ARDSから非ARDSに変化した)、リドカイン血漿濃度は5.2μg/mlであった。CRPは27.3mg/Lであった。リドカイン血漿レベルは、3および4日目にそれぞれ3.4および4.2μg/mlであった。KL-6は163U/Lであった。患者は抜管された。患者は見当識が保たれ、混乱の兆候は検出されなかった。患者は8日目にICUから退室し、CRPは9.3mg/Lであった。患者は14日間ファビピラビルを投与された。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.1~0.3%)。28日目に退院した。3か月にて経過良好であり、仕事に復帰した。
【0052】
患者5:実施例5
5人目の患者は58歳の男性である。入院の9日前に、喉の痛みを発症した。翌日、発熱した。入院の2日前に咳が出始め、呼吸困難になった。入院日に、PCR COVID-19検査は陽性であった。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。併存症:脂肪肝。患者は最初一般病棟に入院した。3日目に、患者は悪化し、挿管して人工呼吸器を装着しなければならなかった。4日目に、肺の状態が悪化したため、患者は大学病院に移送された。人工呼吸器の初期設定:圧力制御、最大吸気圧27cmH2O、PEEP 12cmH2O、呼吸数25/分。PaO2/FiO2比は188であった(ベルリン定義による中等度ARDS)。血行動態パラメーターは安定しており、CRPは12.9mg/mlであった。白血球数は上昇したが(14.4.109/L)、血小板数は正常であった。KL-6は330U/Lであった。持続真皮下リドカインを1mg/kg/時間にて開始した。アルブミンは2.8g/dlであった。5日目に、PaO2/FiO2比は変化せず、CRPは10.4mg/Lであり、リドカイン血漿レベルは4μg/mlであった。6日目に、リドカイン血漿レベルは3.2μg/mlであった。KL-6は400U/Lのままであった。アルブミンは2.3g/dlであった。10日目に呼吸不全は解消されたが、PaO2/FiO2比は184のままであり、CRPは2.4mg/Lに低下し、KL-6は322U/Lであった。患者は抜管され、見当識が保たれ、混乱の兆候は検出されなかった。14日目に患者はICUから退室した。患者は7日目にトシリズマブを投与され、10日間ファビピラビルを投与された。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.1~0.3%)。20日目に患者は退院し、入院から3か月後経過良好である。
【0053】
患者6:実施例16
6人目の患者は59歳の男性で、COVID-19による発熱、呼吸困難および咳を有する。CTスキャンは、両側にすりガラス陰影を示した。併存症:投薬による高血圧。患者は一般病棟に入院した。KL-6 233U/L、白血球数および血小板数は正常であった。アルブミンは3.6g/dlであった。3日目に、呼吸機能の悪化があり、ICUへの移送および人工呼吸器が必要である。人工呼吸器の初期設定:圧力制御、最大吸気圧22cmH2O、PEEP 10cmH2O、呼吸数20/分。ICUへの入室後、1mg/kg/時間の持続真皮下リドカインを開始した。血行動態パラメーターは安定であった。CRPは6.3mg/Lであり、KL-6は263U/Lであった。4日目に、挿管および人工呼吸器を必要とする進行性の呼吸不全が発生した。PaO2/FiO2比は218mmHgであり、血行動態パラメーターは安定したままであった。CRPは6.3mg/Lであり、白血球数および血小板数は正常であった。リドカイン血漿レベルは4.6μg/mlであった。5日目に、PaO2/FiO2比はさらに164mmHgまで低下した。リドカイン血漿レベルは3.4μg/mlであった。アルブミンは3.2g/dlであった。9日目に、患者の臨床状態は改善した。人工呼吸器の設定を下げることができ、PaO2/FiO2比はウィーニング期間中207mmHgのままであり、CRPは0.7mg/Lであった。10日目に、患者は抜管され、見当識が保たれ、混乱の兆候は検出されなかった。13日目に患者はICUから退室した。4日目にトシリズマブを投与された。患者は11日間ファビピラビルを投与された。リドカインでの処置中に新たな心ECGの変化は観察されなかった。血中metHbは正常範囲内であった(0.1~0.3%)。20日目に退院し、入院から3か月後、経過良好であり、ゴルフをプレーし、仕事に復帰した。
【0054】
実施例7:COVID-19
2020年3月24日、49歳の女性が咳、呼吸困難、筋肉痛、臀部および鼠径部の痛み、震えを発症したが、発熱はなかった。COVID-19検査は実施しなかった。これは、入院を必要とする重度のCOVID-19を発症したことが証明された同僚と密接に作業した1週間後に発生した。リドカインでの処置を症状発生の4時間後に開始した。0.5mg/kg/時間のリドカインの持続真皮下(表面真皮下)注入の開始後、症状は徐々に治まり、数時間後、実質的に症状がなくなった。12時間後、リドカインを中止した。数時間後、症状は再発し、リドカインの持続皮下注入を再開した後、再び治まった。リドカイン処置は3日間続けた。
【0055】
2020年4月1日、症状が再発し、リドカイン真皮下注入を再開した。数日後、臨床状態は改善し、リドカイン処置を中止した。患者は自宅で仕事をすることができたが、疲労を経験した。4週間後、すべての症状から完全に回復した。
【0056】
2020年7月12日(1日目)、患者は震え、関節痛(膝、腰、肩)、左眼の結膜炎を含む新たな症状を発症した。職場で病気を報告した。感染はおそらく2020年7月1日に発生した。その日、オフィスでの仕事中に多くの人に会い、夕方には数名の同僚と一緒にバーに飲みに行った。社会的距離および手指消毒にもかかわらず、感染が発生した。当時、誰もフェイスマスクを着用していなかった。リドカイン(0.63mg/kg/時間)の真皮下注入で処置した。症状は数時間以内に改善した。7月15日(4日目)、リドカイン注入を数時間中止し、COVID-19検査のためにGPに行った。2020年7月21日(10日目)、COVID-19のIgA抗体検査結果は陽性であった。1週間後、注入システムおよびシリンジポンプが日常活動の重大な障害となったため、日中のリドカイン注入を中止した。
【0057】
11日目に症状は増加した:肺のチクチク感、胸の痛み、震え、呼吸困難、頻繁なあくびおよびめまい。リドカイン注入は1日24時間行われた。症状は徐々に改善した。
【0058】
12日目、胸の痛み、震え、および近位の筋肉と関節の痛みの増加が発生した。体温35.9℃、SpO2(酸素飽和度)86%、HR(心拍数)70/分、BP(血圧)110/70mmHg。気管支の呼吸音は肺の左下葉で聞こえ、右下葉でははるかに少ない程度であった。真皮下リドカイン注入(0.63mg/kg/時間)はまだ行われており、さらに二次細菌性肺炎の疑いでアモキシシリン3×500mg/日で処置した。眠りに落ち、翌日にはすべての症状が著しく改善し、注入を途切れることなく続けた。
【0059】
18日目、患者の日常活動が注入システムおよびシリンジポンプにより著しく妨げられたため、真皮下リドカイン注入を中止した。数時間後、極度の疲労、胸の痛み、右上腕の痛みを伴う臨床症状の悪化が生じた。処置を経皮リドカインクリーム剤に変更した。製剤:2.5%αテルピネオール、20%リドカイン、10%ヒマシ油、1%ポリソルベート20;0.5%カーボポールおよび56%水(リドカインクリーム剤200mg/ml)。400mgものクリーム剤を皮膚上に塗布し、テガダームの透明創傷被覆材で覆われている。しかし、1時間後も症状は改善せず、40mg/時間のリドカインの真皮下注入を開始した。1時間後、臨床的改善が顕著であった。しかし、6時間後、症状が持続したため、注入速度を63mg/時間(1mg/kg/時間)に増加させた。その後、上腕の痛みを除いて症状は消失した。
【0060】
19日目、右腕の痛みが数週間続いた。痛みは主に上腕の筋肉で感じられ、ときには肩、肘および下腕で感じられた。これは深刻な五十肩症候群につながった。
【0061】
22日目、過度のあくびおよび体温(口頭で測定)が34℃の期間。
【0062】
23日目、患者は、咳、呼吸困難、肺のチクチク感、胸の痛み、喉の痛み、頭痛、あくび、左眼の結膜炎および関節痛と共に波状の震えを発症した。リドカイン注入は、症状を許容レベルまで軽減させた。
【0063】
24日目に、患者に十分な注入がなされ、リドカイン注入を変更して、経皮リドカインクリーム剤20%400mgを2×50cm2の表面に塗布し、テガダームで覆った。クリーム剤は6時間後にほぼ完全に吸収され、そのたびに新しい用量と交換された。
【0064】
25日目、夜間にテガダーム創傷被覆材が損傷し、クリーム剤の用量の一部が失われた。胸骨の痛み、不快感を伴う右背広筋領域の痛みで目が覚めた。SpO2 98%、HR 74/分、BP 114/71、体温35.3℃。新しいクリーム剤用量を塗布し、追加の100mgクリーム剤をボーラス用量として皮膚に塗り込んだ。1時間後、臨床状態は改善した。リドカイン400mgのクリーム剤は6時間ごとに投与するように設定された。
【0065】
26日目、腹部壁に塗布したクリーム剤は、夜間に皮膚に十分に吸収されないようであった。症状は再発し、新たなリドカインクリーム剤用量を上肢に塗布すると、1時間以内に症状が軽減した。16:00にクリームは完全に吸収され、症状が再発した。新しいリドカインクリーム剤の用量が再度効果的である。
【0066】
27日目、腕および腹壁に塗布したリドカインクリーム剤の吸収は、上肢の内側よりはるかに少ない。
【0067】
32日目の07:30に、リドカインクリーム剤の吸収は80%未満であった。臨床状態は悪化し、SpO2は定期的に90%まで低下した。ベクロメタゾン鼻スプレー2×200μgを投与した。SpO2を92%超に保つには、定期的なため息および咳が必要であった。追加の100mgクリーム剤をボーラス用量として皮膚に塗り込み、これにより30分以内に症状が改善した。12:00に左膝が極めて痛くなり、新たなクリーム剤用量で再度処置し、追加の100mgのクリーム剤を再度ボーラス用量として皮膚に塗り込み、これにより症状が改善した。リドカインクリーム剤の1日総投与量は2000mgであった。
【0068】
32~33日目の夜は、右上腕の痛み以外は何の症状もなかった。1日目(2020年7月12日)以来最初の無症状の夜。
【0069】
33日目の11:10に、患者は肩甲骨間に突然の極度の痛みを経験した。呼吸困難で、過呼吸になり、顔が青ざめた。SpO2 97%、HR 66/分、BP 112/60mmHg、体温35.3℃。病院での分析は、正常な肺X線、正常なmetHbおよび正常なd-ダイマーを示した。さらに定期的な検査結果も正常であった。
【0070】
35日目、疲労および右上腕の痛みを除いて、患者に他の症状はなかった。リドカインクリーム剤は、テガダーム被覆なしで4×100mg/日まで徐々に減らした。
【0071】
46日目、03:30、86%のSpO2アラーム、HR 55/分、BP 115/70mmHg、肺のチクチク感、左結膜炎。リドカインクリーム剤を除去し、0.63mg/kg/時間リドカインの持続真皮下注入を開始した。30分以内に症状が改善した。右上腕の痛みは変わらないままであった。
【0072】
1週間後、リドカイン注入を中止した。
【0073】
61日目の04:20に、肺のチクチク感、左結膜炎、右上腕の痛みの増加を伴う新しいエピソードが発生した。リドカイン0.63mg/kg/時間の持続真皮下注入を開始し、症状は治まった。8時間後、リドカイン注入を中止した。夕食後の19時40分、患者は震えを起こし、気分が悪くなり、寝なければならなかった。温度34.1、BP 96/60mmHg、SpO2 100%、HR 86/分。0.63mg/kg/時間リドカインの持続真皮下注入を、400μgのベクロメタゾン鼻スプレーおよび経口ヒドロコルチゾンと共に再開した。症状はすぐに治まった。
【0074】
66日目に、右上腕の痛みを除いて、気分は良好であった。上腕の痛みは強度が変動し、時に肩または肘に移行する。総合診療医は、これがCOVID-19と関係があるとは確信していなかった。リドカイン注入を中止した。
【0075】
67日目、自宅から200km離れた場所にいる友人を訪ねるために同乗者として車で旅行した。
【0076】
85日目、約3週間後、変動する上腕の痛み以外の症状はなくなったが、肺のチクチク感が再発した。SpO2 96%、HR 90/分、BP 95/68mmHg、体温33.5℃。舌下リドカイン3×100mg/日を開始した。リドカインを口の中に15分間保持し、その後飲み込んだ。リドカイン溶液の吸入は避けた。リドカイン製剤:50ml中のキシロカイン5g(10%溶液、100mg/ml)、エタノール96%、ポリエチレングリコール400、バナナエッセンスおよび精製水。
【0077】
85日目から、舌下リドカイン処置の開始後、患者は、朝の服薬前および1日の終わりの舌下リドカイン服薬前にチクチク感および胸部の圧迫感を感じた。これらの症状は、舌下リドカインの投与後20分で消失した。これがほぼ毎日繰り返し生じた。
【0078】
実施例8:COVID-19
2020年12月20日、46歳の男性が鼻水、軽度の頭痛、首および右肩のこわばりと激痛、嗅覚の喪失、味覚の大幅な低下を発症した。くたびれてだるさを感じた。患者は5日前にCOVID-19患者と接触していた。症状の開始の2日後、COVID-19のPCRスワブ検査は陽性であった。次の日、症状は進行した。
【0079】
5日目に、患者は、定量用量を用いて5×60mgリドカインを投与された。薬物を舌下投与し、口の中に15分間保持した。その後、リドカイン溶液を飲み込んだ。リドカインの吸入は避けた。リドカイン製剤:50ml中のキシロカイン5g(10%溶液、100mg/ml)、エタノール96%、ポリエチレングリコール400、バナナエッセンスおよび精製水。6日目(処置開始の24時間後)に、鼻水、頭痛、首の痛み、首のこわばりが消失した。6日目に、患者はリドカイン4×60mg/日を投与され、7日目から患者をリドカイン3×60mg/日で処置した。9日目に、患者のだるさを極めて軽減し、活力が増したと感じ、家をしっかり掃除し始めた。初めて口渇感を報告した。8日目に、口渇感および軽度の疲労を除いて、すべての症状が完全に消失した。11日目に、患者は1時間の散歩をし、気分は良好であった。
【0080】
実施例9:黄色ブドウ球菌敗血症によるARDS
重度のARDSに罹患している患者を処置するための最終的な薬物(最終治療薬)としてのリドカインの適応外使用の例。43歳の女性が2019年末にハーグ地域のICUに入院した。
ドウ球菌敗血症から重度のARDSを発症した。この敗血症は、MRI画像の造影剤の静脈内投与後に発症した。患者は人工呼吸器を装着された。適切な抗生物質処置にもかかわらず、ARDSおよび敗血症はさらに悪化し、人工呼吸器下の不十分な酸素化を不安定な血行動態と共に生じ、極めて高用量のノルアドレナリンおよびバソプレシンが必要になった。ECMO(体外式膜型人工肺)に接続され、University Hospital Rotterdamに移送された。患者をECMO上に保持し、手術で肺を摘出し、抗生物質で患者を2か月間処置して、胸腔から微生物を除去することが計画された。この術式後に肺移植を行う。血行動態が不安定で酸素化が低いため、ECMO療法であっても、担当の集中治療医はP2X7Rの阻害を目的として継続的な低用量リドカインで患者を処置した。1mg/kg/時間のリドカイン持続注入の開始後1.5時間以内に、患者の状態は安定した。その後数日間、ノルアドレナリンおよびバソプレシンの投薬量を徐々に減らすことができ、数日後、定期的な換気による酸素化が回復したため、ECMOを切断した。言うまでもなく、計画されていた肺移植はキャンセルされた。1.5か月後、患者は人工呼吸器から外され、一般病棟に移された。患者はリドカインを2週間投与された。
【0081】
実施例10:リウマチ性多発筋痛症
2012年1月、59歳の男性が、当初はスタチン関連と称された進行性の筋肉痛を患っていた。ベッドで寝返りがほとんど打てなかった。患者の体力の喪失は変動したが、体重は54kgで安定していた。発熱なし。また、患者は疲労感および全身倦怠感を訴えた。家族性の皮膚および筋肉の障害はないが、喘息およびCVDがある。18か月前、患者はマダニに刺され、慢性遊走性紅斑(ECM)を伴う紅斑を発症した。ボレリア・ブルグドルフェリ(Borrelia Burgdorferi)による感染の疑いで、患者をアモキシシリンで4週間処置した。検査結果は、赤血球沈降速度が47mm/時間(2012年11月1日)および85mm/時間(2013年2月)に増加していることを示した。胸部および腹部の胸部X線およびCTスキャンは問題なかった。診断はリウマチ性多発筋痛症であった。患者を当初高用量のコルチコステロイドで処置した。この投薬は漸減し、6か月後中止した。
【0082】
2019年9月に症状が再発した。患者を当初夜間に0.5mg/kg/時間の持続真皮下リドカイン注入を8時間、週2回の頻度で処置した。最初の処置後、症状は消失した。数か月後、リドカインの真皮下注入を、1日2回の経皮5%リドカイン軟膏剤300mgに置き換えた。この治療法は効果がなかった。2020年9月10日、患者は舌下リドカイン2×60mg/日の使用を開始した。リドカインを口の中に15分間保持し、その後飲み込んだ。リドカインの吸入は避けた。リドカイン製剤:50ml中のキシロカイン5g(10%溶液、100mg/ml)、エタノール96%、ポリエチレングリコール400、バナナエッセンスおよび精製水。症状は1時間以内に消失し、(治療中)2021年1月2日の追跡調査が終了するまで再発しなかった。
【0083】
実施例11:乾癬性関節炎
60歳の女性は、腹壁まで及ぶ背中の皮膚帯状疱疹感染を示した。4年前に乾癬を発症した。昨年、進行性リウマチ性関節炎および扁平苔癬を発症した。症状は進行し、数週間前から食事を作ることができなくなった。服を着ることも脱ぐこともやっとであった。コルチコステロイドおよびメトトレキサートで処置していた。2020年7月の初めに、体幹の帯状疱疹感染で極めて痛みが発生し、患者をモルヒネで処置した。モルヒネは痛みを和らげなかったが、便秘を生じた。これが我々に紹介された時の状態である。2020年8月8日、リドカインクリーム剤10%からなる処置を我々のチームで開始した。製剤:2.5%αテルピネオール、10%リドカイン、10%ヒマシ油、1%ポリソルベート20;0.5%カーボポールおよび66%水(リドカインクリーム剤100mg/ml)。リドカインクリーム剤の投与量は2×200mg/日であり、前腕の皮膚に塗布し、テガダームの透明創傷被覆材で覆った。毎日、塗布するクリーム剤の場所を左右の前腕に交互であった。モルヒネ処置は漸減した。テガダームの被覆が皮膚に損傷を与えるため、弾性被覆材で包むラップフィルムの被覆に変更した。
【0084】
便秘は2日以内に消失し、帯状疱疹感染は急速に軽減し、14日後に幸福感が10段階で3から7.5に上昇した。家で日常活動を正常に行うことができた。4週間後、ガーデニングを簡単に行うことができ、日常活動を行う能力は正常に戻った。
【0085】
実施例12:脊椎関節症
イタリアの62歳の患者が、難治性の進行性で衰弱性の椎骨(L2-L3、L3-L4、およびL4-L5)の変性疾患を示した。重度の痛みに苦しみ、ほとんど歩くことができず、クレーンのオペレーターとしての仕事もできなくなり、趣味(レーシングバイクの修理)もできなくなった。症状は20年間進行していた。鎮痛剤は効果がなかった。
【0086】
2019年12月、患者は2×1400mg/日のリドカインパッチ剤を投与された。皮膚の炎症を防ぐために、パッチ剤を皮膚の別の場所に投与した。患者によると、症状の70%と90%は、それぞれ4日と2週間後に消失した。ほとんど痛みがなく、仕事に戻り、再び趣味を始めることができた。
【0087】
実施例13:慢性間質性膀胱炎(慢性炎症性膀胱状態)
88歳の女性で、併存症は高血圧、緑内障、腎機能障害を伴う2型糖尿病、子宮および膀胱の慢性炎症。過去2年間、特に排尿時に、膀胱の難治性の進行性の極度の痛みを訴えていた。オキシコドン(モルヒネ類似体)、パラセタモールおよび抗生物質の処置は、症状に効果がなかった。1mg/kg/時間の持続皮下リドカインでの処置は徐々に症状が軽減し、2日後ほとんど症状がなくなった。1週間後、薬物の供給に問題があったため処置を中止し、症状が再発した。リドカイン注入を再開した後、症状は再び消失した。
【0088】
実施例14:膝関節症
43歳の女性は、右膝の変形性膝関節症を罹患していた。右膝に水腫があり、極めて痛い。最大歩行距離は100mで、痛みのために歩くのをやめて座らざるを得なくなった。自宅の階段をほとんど昇ることができず、自転車に乗ることもできなかった。MRIは、右膝関節に水腫を示した。MRIで明らかになった大腿脛骨軟骨組織の腹側部分に欠損があるため、膝の摘出療法を拒否された。2020年1月25日、2×1400mg/日のリドカインパッチ剤での処置を受けた。6週間以内に右膝の水腫および痛みが改善し、歩行範囲が500mを超え、階段を昇れるようになり、8週間後には自転車に乗れるようになった。
【0089】
実施例15:多発性硬化症
46歳の患者は、2005年に再発寛解型多発性硬化症(RRMS)と診断された。2005年~2006年に、アボネックスで処置した。2020年1月、疲労を訴えた。疲労のために午前10時から14時まで休まなければならなかった。神経学的症状は、右腕の感覚異常である。1×700mg/48時間のリドカインパッチ剤で処置した。4週間後、疲労は改善し、日中の休息を省くことができるようになり、日常活動に活力が増したと感じた。
【0090】
実施例16:進行した子宮頸癌および腎機能不全
65歳の女性は、2018年7月に進行した子宮頸癌と診断された。腫瘍塊は両方の尿管を塞ぎ、両側水腎症を引き起こした。水腎症のドレナージは成功し、患者をパクリタキセルおよびベバシズマブで処置した。2018年10月、腎機能障害が発症した。2019年8月、胸部および腹部のCTスキャンは、骨盤腔内の大きな腫瘍塊、複数の傍腸骨リンパ節転移、および膵臓周囲の塊を示した。癌関連の腹水が発生した。結論は、腫瘍の増殖は進行性であるというものであった。しかし、腎機能の進行性障害のため、カルボプラチンおよびゲムシタビンによる意図された治療は延期された。
【0091】
2019年9月15日、患者は1mg/kg/時間の持続真皮下リドカイン注入を受け始めた。腎機能が改善した。6週間後、腎機能の改善により、患者はカルボプラチンおよびゲムシタビンで処置できるようになった。5か月後の2020年2月、腫瘍の増殖は安定し、化学療法処置を中止できた。その時、まだリドカイン注入を受けていた。
【0092】
実施例17:多様な癌
10名の患者:前立腺癌(2名の患者)、外分泌膵臓癌(4名の患者)、結腸癌(2名の患者)、子宮頸癌(1名の患者)、および乳癌(1名の患者)。すべての患者は、更なる癌処置の選択肢が残っておらず、すべての患者は緩和オピエートで処置されていた。モルヒネの代わりに持続皮下リドカイン1mg/kg/時間を患者に処方した。
【0093】
7名の患者では、痛み、悪心および/または極度の疲労が2時間以内に緩和され、残りの患者では48時間以内に緩和された。これは次の週にさらに改善し、数週間安定した。
【0094】
例えば、末期の転移性結腸癌の81歳の患者は、多くの痛み、不快感、悪性腹水を有していたが、3週間後には車椅子でロックバンドと演奏できるほど改善した。
【0095】
インベントリデータには障害の疾病影響プロファイル(SIP68)が適用された。処置前:SIP68:48(範囲18~68)。3日後:SIP68:33(範囲12~58)、すべての患者が改善した。7日後:SIP68:28(範囲12~56)、すべての患者が改善した。
【0096】
実施例18:筋萎縮性側索硬化症(ALS)
63歳の男性は、両方のふくらはぎの筋けいれん、左足のドロップ、および両手、肩および脚の脱力の分析のために外来診療所に紹介された。筋けいれんは、随意運動の後にほぼ独占的に発生した。記憶障害はなく、疾患の家族歴もなかった。
【0097】
身体検査では両側の棘上筋、棘下筋、母指球および小指球隆起および左ふくらはぎの萎縮。下肢の反射亢進および両側の母趾の伸展反応があった(正のバビンスキー徴候)。ふくらはぎと肩に筋線維化が見られた。MRCスケールによる筋力身体検査スコア(Medical Research Council, UK, mrc.ukri.org):上腕外転左4、右4;上腕内転左5、右5;肘屈曲左4、右4;肘伸展左5、右5;膝屈曲左4右4;膝伸展左5、右5;足伸展左1、右1;足屈曲左2、右2;残りの筋肉は影響を受けなかった。
【0098】
脊椎のイメージング(CTスキャンおよびMRIスキャン)により、運動神経路の構造的衝突は除外された。EMGは、四肢の筋肉の除神経を示した。診断はALSであった。
【0099】
患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。
【0100】
1週間後、患者は筋けいれんが徐々に消失したことに気づいた。3週間後、筋力は徐々に改善し始めた。リドカイン療法の開始の6か月後、繰り返しの筋力検査は(MRCスケールを使用)以下を示した:上腕外転左5、右5(改善);肘屈曲左4、右4(変化なし);膝屈曲左5、右5(改善);足伸展左2、右2(改善);足屈曲左3、右3(改善);残りの筋肉は影響を受けなかった。この処置により、疾患の症状が臨床的に有意に改善した。
【0101】
実施例19:アルツハイマー型認知症
72歳の男性は、ますます記憶喪失を発症していた。症状は6年前に始まり、エピソード記憶を徐々に喪失し、その後、新しい情報を思い出すことができなくなった。対照的に、古い記憶はそのまま残っているようであった。症状は、社会的機能、料理、ガーデニングおよび買い物などの日常活動に深刻な影響を与える程度にまで進行した。心血管疾患、精神疾患または神経疾患の家族歴はなかった。
【0102】
身体検査は異常を示さなかった。ミニメンタルステート検査(MMSE)テストの合計スコアは15(重度の認知障害)であった。ルーチンの血液化学および血液学は正常であった。甲状腺機能の分析、血液リウマチスクリーニングビタミンB12およびホモシステインは異常を示さなかた。尿(24時間サンプル)分析は、重金属中毒の証拠は示さなかった。ルーチンの胸部X線は正常であった。脳のMRIは問題なかった。診断はアルツハイマー病であった。
【0103】
腰椎穿刺は、β-アミロイド(Aβ42)レベルの低下を示した。
【0104】
患者は認知症老人ホームに移った。患者に舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)を投与した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。服薬コンプライアンスは、専門の看護師により確保された。
【0105】
徐々に記憶刷り込み能力が増加し、3か月後にMMSEテストの合計スコアは23であった(軽度認知障害)。この処置により、疾患の症状が臨床的に有意に改善した。
【0106】
実施例20:特発性パーキンソン病
76歳の男性は、進行性の転倒傾向(姿勢の不安定性)を患っていた。症状は、患者が診療所に紹介される8年前に始まった。また、3年後、特に腕が動いていないときの右腕の進行性の震え(安静時振戦)を発症した。右腕振戦発症の2年後、左腕の安静時振戦を発症した。
【0107】
患者をレボドパで処置し、最初は症状が明らかに改善した。6年後、症状が再発し、レボドパ投与量を増加させた後、患者はレボドパ誘発舞踏病を発症した。患者は神経弛緩薬で処置されなかった。
【0108】
繰り返される脳卒中、繰り返される頭部外傷、脳炎、注視発作、核上注視麻痺、記憶喪失自律神経症状、またはMPTP((1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン)乱用)の病歴はなかった。脳MRIは問題なかった。診断は特発性パーキンソン病であった。
【0109】
患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。
【0110】
1か月後、患者は転倒傾向が徐々に改善したと報告した。振戦はほとんど消失した。この処置により、疾患の症状が臨床的に有意に改善した。
【0111】
実施例21:てんかん発作
30歳の女性が自動車事故で救急搬送された。運転手の横に座っていた。頭痛を訴えた。病歴はきれいであった。
【0112】
身体検査では、入院時のグラスゴー昏睡スコア(GCS)は15点中15点であった。額に皮下血腫が認められた。他に異常は見られなかった。
【0113】
頭部および頸椎のCTスキャンは問題なかった。到着の1時間後、意識レベルは低下し始め、全般性てんかん発作を発症した。
【0114】
ジアゼパム10mgの反復静脈内投与による処置は効果がなく、患者は挿管され、持続的なミダゾラム注入で深く鎮静された。緊急治療室に到着の4時間後に再度CTスキャンは、左頭頂葉に出血性挫傷病変を示した。患者はICUに入院し、人工呼吸器を装着し、EEGモニタリング下でペントバルビタール昏睡に陥った。5日後、患者はペントバルビタールから離脱し、全般性てんかん発が強度を増しながら発症し始めた。診断は心的外傷てんかん発作であった。
【0115】
1mg/kg/時間の真皮下(表面皮下)リドカインHCL(20mg/ml溶液)での処置を開始し、30分以内に発作が消失した。EEGは脳のてんかん活動が消失したことを示した。8時間後、患者は意識を取り戻し、4時間後、人工呼吸器から外され、抜管された。
【0116】
翌日、GCSは15点中15点で、身体検査では神経障害は見られなかった。患者は2週間持続真皮下リドカイン処置を受けていた。この処置により、心的外傷てんかん発作が臨床的に有意に改善した。
【0117】
実施例22:多発性硬化症
56歳の女性は、10年前に原発性進行性多発性硬化症(PPMS)と診断された。診断は、脳脊髄MRIとCSF所見で確認された。
【0118】
オクレリズマブおよびデキサメサゾンでの処置は、症状を改善しなかった。
【0119】
我々に紹介されたとき、Kurtzke総合障害度スケールEDSSのスコアは7.5であった(Kurtzke (1983) Neurology. 33 (11): 1444-52)。患者は車椅子に制限されており、数歩以上歩くことができなかった。
【0120】
患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。
【0121】
その後の数週間で、臨床状態は改善した。3か月後、EDSSは7.5から5.5に改善し、約120メートルは補助なしで歩くことができたが、日常生活を十分に行うには補助が必要であった。この処置により、舌下リドカインでの処置後のEDSSスコアが臨床的に有意に改善した。
【0122】
実施例23:糖尿病性多発神経障害
真性糖尿病の72歳の女性は、糖尿病性多発神経障害と診断された。手足の対称的なうずき感と手の筋力の喪失を患っていた。投薬:中間作用型インスリン2×12U/日および3×500mg/日メトホルミン。
【0123】
身体検査は、手足の感覚異常および感覚喪失、および指の屈筋と手の伸筋の両方の筋力の喪失(MRC 4/5)を示した。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。
【0124】
数日後、手足のうずき感が完全に消失し、3か月後、手の筋力が大幅に改善した。この処置により、糖尿病性多発神経障害が臨床的に有意に改善した。
【0125】
実施例24:重症筋無力症
36歳の男性は重症筋無力症と診断された。身体活動後、腕と手の筋力低下に罹患していた。診断は、EMGおよびアセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体の陽性検査で確認された。経口抗コリンエステラーゼ薬(メスチノン)4×60mg/日で処置した。インフルエンザAウイルスに感染中、患者は腕と手の重篤な衰弱を生じ、抗コリンエステラーゼ処置はもはや効果がなかった。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。4時間以内に、腕と手の筋力低下が大幅に改善した。また、A型インフルエンザウイルス感染の症状はほぼ完全に消失した。処置を2週間継続した。この処置により、重症筋無力症の症状の悪化における筋力低下が臨床的に有意に改善した。
【0126】
実施例25:慢性閉塞性肺疾患(COPD)
67歳の女性はCOPDと診断された。診断は、スパイロメーター検査中にFEV1が72%(中程度のCOPD)とであることが判明したことにより確認された。胸部X線とルーチンの血液検査は問題なかった。患者をベクロメタゾン2×40μg/日で処置した。その後の6年間、自宅での階段の昇り降りおよびサイクリングなどの運動中に進行性の息切れに悩まされた。日常活動は、症状により深刻な影響を受けた。FEV1が60%に低下する。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。1週間以内に改善し、息切れを生じることなく階段を昇り降りし、自転車に乗れることができた。3か月後、繰り返しのスパイロメーター検査は、FEV1が84%(軽度のCOPD)に改善したことを示した。リドカイン処置はCOPD症状を緩和した。
【0127】
実施例26:バセドウ病
50歳の女性はバセドウ病と数年前に診断された。甲状腺機能亢進症は処置され、コントロール下であったが、眼の症状はまだはっきりと残っていた。1年前まで、5回のステロイド注入を受けたが、眼には短期間の改善しか示さなかった。最後の処置案は、眼窩の両側の外科的除圧を行うことであった。可能性のある副作用として複視のため、患者はまだこの手術に同意していなかった。リドカインクリーム剤を瞼に塗布する前の眼の状態は、両眼とも次のとおりであった:結膜の発赤;中等度の非液体眼窩周囲の腫れ;まぶたの紅斑がない;視神経障害または角膜露出の徴候または症状がない。キシロカイン軟膏5%の1日3回まぶたへの塗布は、結膜の発赤および眼窩周囲の腫れが著しく改善した。この処置により、疾患の症状が臨床的に有意に改善した。
【0128】
実施例27:潰瘍性大腸炎
40歳の女性は5年前に潰瘍性大腸炎と診断された。症状は、腹痛、粘液を伴う血性下痢、貧血および体重減少のエピソードであった。貧血を除いて、ルーチンの血液検査は問題なかった。CTスキャンは、結腸のいくつかの部分で約8mmの壁の肥厚を示した。大腸内視鏡検査は、紅斑、正常血管パターンの喪失、粒状性、びらん、出血および潰瘍を伴う部分的な結腸の炎症を示した。炎症を起こした腸粘膜と正常な腸粘膜の間には明確な境界がある。異形成または悪性転換の徴候は観察されなかった。組織病理は、陰窩密度の減少、粘膜の不規則な外観およびびまん性炎症を示した。肉芽腫は見られなかった。大腸炎悪化の以前のエピソードでは、患者は3×400mg/日の経口メサラミンCRによる処置によく反応した。しかし、この悪化のエピソードでは、症状はメサラミン処置に反応しなかった。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。症状は48時間で徐々に軽減し、3日後完全に消失した。舌下リドカインを2週間継続し、その後数か月間、患者は無症状のままであった。リドカインは疾患の症状を根絶した。
【0129】
実施例28:炎症性腸疾患
1.5歳の犬の肛門周囲に小さな穴ができ、穴の開口部から白い不透明な液体が滲み出た。穴のサイズは徐々に大きくなり、瘻孔は悪臭を放ち始め、下痢を発症し始めた。犬は特に排便中に痛みを感じていた。身体検査は、極めて痛みを伴い炎症を起こした肛門周囲瘻を示した。犬は肛門周囲瘻を伴う炎症性腸疾患と診断された。診断は、肛門周囲瘻を伴う炎症性腸疾患であった。獣医師は、肛門嚢を手術して取り除くことにした。手術後、疾患の進行は加速し、苦しみは著しく増大した。犬は、親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)を最大の瘻孔に塗布して処置した。1週間後、滲み出る不透明な液体分泌物および悪臭が消失した。排便時も痛みがかなり軽減された。瘻孔の内層は肉芽組織を形成し始めた。リドカインは、肛門瘻の症状および感染を緩和した。
【0130】
実施例29:行進毛虫毒素に対するアレルギー反応
33歳の男性が、誤ってオークの行進毛虫を車で轢いた。すぐに、腕、胸、顔および首にかゆみを伴う発疹を発症した。数分後、呼吸困難になった。舌下リドカイン塩基100mgで患者を処置した(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。10分以内に症状が改善し始めた。15分後、すべての呼吸器症状が消失し、1時間後、かゆみのある皮膚の発疹が劇的に改善した。処置を48時間後に中止し(4×100mg/日)、症状は再発しなかった。この処置により、行脚毛虫毒素に対するアレルギー反応が臨床的に有意に改善した。
【0131】
実施例30:リウマチ性関節炎
62歳の女性は、手首と指の両側関節のリウマチ性関節炎と診断された。激しい痛み、腫れ、関節の熱に罹患していた。日常活動を遂行する能力は著しく損なわれ、ほぼ完全に他者に依存していた。リウマチ因子(RF)および抗シトルリン化タンパク質抗体(ACPA)の血液検査は明らかに陽性であった。リウマチ性関節炎の臨床疾患活動性指数スコア(Aletaha & Smolen, Clin. Exp. Rheumatol.2005 Sep-Oct;23(5 Suppl. 39):S100-8)は合計76ポイント中52ポイントであり、高い疾患活動性を示している。診断はリウマチ性関節炎であった。
【0132】
メトトレキサートおよびトシリズマブなどの疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)による処置は症状を改善せず、患者は副作用に罹患していた。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。
【0133】
4週間後、手首と手の関節の炎症はほとんど消失した。まだこれらの関節のこわばりを訴えていた。リウマチ性関節炎の臨床疾患活動性指数スコアは、合計76点中52点から寛解を示す2点に改善した。この処置により、重度の関節リウマチにおける舌下リドカインでの処置後の臨床疾患活動性が臨床的に有意に改善した。
【0134】
実施例31:真性糖尿病患者における虚血性心筋症
糖尿病歴15年の61歳男性。8年前、三血管疾患のためにステント留置術を受け、続いて冠動脈バイパス移植(CABG)手術を受けた。過去5年間、患者は胸の痛みを繰り返し、夜間および運動中の呼吸困難が徐々に増し、極度の疲労に悩まされていた。血圧は140/90mmHgであった。虚血性心筋症と診断された。推定経胸壁心エコー心臓駆出率は31%であった。診断は虚血性心筋症であった。患者は外科的処置の対象ではなく、リドカインによる処置を希望した。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に最大15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。3週間後、患者は、胸痛のエピソードが著しく軽減され、呼吸困難が明らかに改善し、日中に活力が増したと感じたと報告した。3か月後、繰り返しの経胸壁心エコー検査は、心臓駆出率が31%から42%に改善したことを示した。この処置により、重度の虚血性心筋症患者の症状および心機能が臨床的に有意に改善した。
【0135】
実施例32:リウマチ性多発筋痛症の既往歴のある患者の急性腰痛
リウマチ性多発筋痛症の既往歴のある67歳男性は、重度の背部痛に苦しんでいた。前日、ドロップハンドルバーを備えたロードバイクで45kmの距離をサイクリングしていた。旅行のほとんどの間、強い向かい風のため、走行は大変であった。
【0136】
翌朝、重度の腰痛で目が覚めた。腰痛のため、背中をまっすぐにできなかった。極端に曲がった姿勢で慎重に歩くしかなく、階段をほとんど昇ることができなかった。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。30分後、症状の95%は消失した。患者は通常の直立姿勢に戻ることができ、歩行および階段の昇り降りに支障はなかった。
【0137】
実施例33:全身性エリテマトーデス(SLE)
SLEが確認された79歳の男性が病院に紹介された。SLEと診断されたのは患者が42歳の時であった。時間の経過とともに、心膜液貯留、腹膜炎および胸膜炎を伴う再発性SLE誘発心膜炎のために、定期的に入院した。我々に紹介される数日前に、腹膜炎の新しいエピソードが発生し始めた。腹痛、悪心および腹水による明らかな腹部膨満に罹患していた。患者は活力不足を感じていた。腹腔液の臨床検査:IL-6 11.000pg/ml(血清IL-6は28pg/ml)およびLDH 102IU/L。患者を舌下親油性リドカイン塩基4×100mg/日(定量スプレーボトルで50ml中5gのキシロカインスプレー)で処置した。患者は、リドカイン溶液を口の中に15分間保持し、その後、意図したとおりに溶液を飲み込んだ。臨床症状は6日間で消失し、2週間後に腹部膨満は完全に消失した。舌下リドカインによる処置を継続した。
【0138】
セクションA:P2X7Rアンタゴニスト
A. P2X7Rに特異的なモノクローナル抗体
B. 化学物質
a. アミド誘導体
i. KR101398264B1に記載のオキソプロリンアミド誘導体
ii. アミノアミド基:リドカイン、アルチカイン、ブピバカイン、シンコカイン(ジブカイン)、エチドカイン、レボブピバカイン、リドカイン(リグノカイン)、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン
b. アミノエステル誘導体
i. プロカイン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン(ラロカイン)、ピペロカイン、プロポキシカイン、プロパラカイン、テトラカイン(アメトカイン)
c. フェニル置換5,6-ジヒドロ-[1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジンP2X7アンタゴニスト
d. p2x7モジュレーターとしてのビシクロヘテロアリール化合物およびその使用(WO2007/109192)
C. 臨床試験で使用され、ヒトでテストされたP2X7R阻害剤
a. CE-224,535 500(ファイザー)
b. AZD9056(アストラゼネカ)
c. JNJ-54175446 (ジョンソン・エンド・ジョンソン)
a. Mehta N, et al. Bioorg Med Chem, 2014 22 (1) 54-88により公表されたP2X7R阻害剤である、P2X7Rのみに選択的でない既存のP2XR阻害剤:PPADS四ナトリウム塩、ブリリアントブルーG(BBG)、酸化ATP (o-ATP)
b. 既存の特異的2X7R阻害剤:KN-62、AZ9056、A-740003、A-438079、GSK314181A、A-804598、A-839977およびAZ-116453743
c. 親骨格ベースの分類、181個の化合物:アダマンタンアミド誘導体、トリアゾール誘導体、ジアリールイミダゾリジン誘導体、ピログルタミン酸アミド誘導体、ピラゾールアセトアミド誘導体、ジヒドロジベンゾ[a,g]キノリジニウム誘導体、テトラゾール誘導体、チロシンベースの誘導体、ピラゾロジアゼピン誘導体、イミダゾール誘導体、ベンズアミド誘導体、KN62アナログ誘導体、P2X7Rの天然アンタゴニスト
d. 天然物抽出物からの3つのP2X7R阻害剤:マッサジン、スチリサジンAおよびスチリサジンB
a. Caseley EA, et al. Biochem Pharmacol 2016 (116) 130-139により公表されたP2X7R阻害剤である、hP2X7RにおけるATP結合ポケットに対する約100,000の構造的に多様な化合物の仮想スクリーニング後の75個のトップランクの化合物:C1からC73
b. これらの化合物のうちの3つは、P2X7R活性化およびマクロポア形成(YO-PRO-1取り込み)のため膜貫通電流を効果的に阻害するように考えられた:C23、C40、およびC60。
Bin Dayel A, et al. Mol Pharmacol 2019, 96 (3) 355-363により公表されたP2X7R阻害剤である、AZ11645373、ブリリアントブルーG、KN-62、カルミダゾリウムおよび亜鉛58368839
a. North RA, et al. Physiol Rev 2002, 82, (4), 1013-67により公表されたP2X7R阻害剤である、P2X7Rのみに選択的でない既存のP2XR阻害剤:BBG、PPADS、スラミン、o-ATP
b. 既存の特異的2X7R阻害剤:A-438079、A-804598、A-740003.0、KN-62、AZ10606120、AZ11645373、GW791343およびJNJ47965567
d. Sluyter, Adv Exp Med Biol -Prot Rev 2017, (19) 17-53により公表されたP2X7R阻害剤である、P2X7Rのみに選択的でない既存のP2XR阻害剤:BBG、o-ATP、PPNDS、PPADS、MRS2159、NF279、NF449
e. 既存の特異的2X7R阻害剤:AACBA、AstraZeneca、A-438079、A-804598、A-740003.0およびKN-62
D. Carroll, et al. Purinergic signal 2009, 5, (1) 63-73により公表されたP2X7R阻害剤
57個の化合物:アダマンタンカルボキサミド、アリールカルボヒドラジド、シアノグアニジン、アリールテトラゾール/アリールトリアゾール
E. Donnelly-Roberts DL, et al., Neuropharmacology 2009, 56, (1), 223-9により公表されたP2X7R阻害剤
[3H]A-804598 ([3H]2-シアノ-1-[(1S)-1-フェニルエチル]-3-キノリン-5-イルグアニジン)
F. Ruiz-Ruiz q, et al., Front Mol Neurosci 2020, 13, 93により公表されたP2X7R阻害剤
AZ11645373、AZD-9056、A-438079、A740003、CE-224,535、GSK-1482160、JNJ-47965567、A-804598、2、JNJ-54175446、JNJ-55308942
【0139】
セクションB:過炎症を伴う疾患 - 免疫系のP2X7Rの活性化を伴う
1. 自己免疫疾患および免疫関連疾患
2. 処置誘発免疫関連疾患
3. 感染症
4. 心血管疾患および神経血管疾患
5. 神経炎症性および神経変性疾患
6. てんかん障害
7. 情動障害および精神症候群
8. 線維症
9. 癌関連障害
10. 癌および新生物
11. 外傷および心的外傷症候群
12. 移植臓器拒絶反応を含む臓器移植後症候群
【0140】
1. 自己免疫疾患および免疫関連疾患
原発性免疫不全
全身性炎症性疾患:
(1)進行癌における全身性症候群(SIRS)、(2)敗血症:a. 細菌性敗血症:シュードモナス属、スタフィロコッカス属、ストレプトコッカス属、b. ウイルス性敗血症およびARDS:インフルエンザAウイルス、SARS、MERS、COVID-19など、c. 脾臓摘出後重篤敗血症:ストレプトコッカス・ニューモニエ、ヘモフィルス・インフルエンザエ、ナイセリア・メニンギティディス、d. バベシア症:バベシア・ミクロティ(米国)、B.ダイバージェンス(ヨーロッパ)、e. 敗血症および髄膜炎を伴う髄膜炎菌血症:N.メニンギティディス、f. ロッキー山紅斑熱(RMSF):リケッチア・リケッチア、g. 電撃性紫斑病:S.ニューモニエ、H.インフルエンザエ、N.メニンギティディス、h. 紅皮症、毒素性ショック症候群:A群ストレプトコッカス、スタフィロコッカス・アウレウス、i. 壊死性筋膜炎:A群ストレプトコッカス、混合好気性/嫌気性菌叢、市中関連メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(CA-MRSA)、j. クロストリジウム性筋壊死:クロストリジウム・パーフリンジェンス、k. ガス壊疽、(3)過炎症およびサイトカインストーム、(4)ショックを含むアナフィラキシー反応、(5)全身性アレルギー反応、(6)外傷後の全身性反応(SIRS)、(7)急性術後(移植後)炎症及びSIRS。
内分泌疾患:
(1)I型およびII型糖尿病、(2)アジソン病、(3)自己免疫多内分泌症候群(APS)1型、2型および3型、(4)自己免疫性膵炎(AIP)、(5)自己免疫性甲状腺炎、(6)オード甲状腺炎、(7)バセドウ病、(8)橋本病、(9)自己免疫性卵巣炎、(10)子宮内膜症、(11)自己免疫性精巣炎、(12)シェーグレン症候群、(13)骨粗鬆症、(14)パジェット病。
結合組織疾患:
(1)混合性結合組織病、(2)未分化結合組織病、(3)有痛性脂肪症、(4)全身性エリテマトーデス(SLE)、(5)薬剤誘発狼瘡、(6)成人発症スティル病、(7)クレスト症候群、(8)腸炎関連関節炎、(9)好酸球性筋膜炎、(10)フェルティ症候群、(11)IgG4関連疾患、(12)パリー・ロンバーグ症候群、(13)パーソナージ・ターナー症候群、(14)サルコイドーシス、(15)シュニッツラー症候群、(16)未分化結合組織病(UCTD)。
眼疾患:
(1)糖尿病性網膜症、(2)自己免疫性網膜症、(3)自己免疫性ブドウ膜炎、(4)中等度ブドウ膜炎、(5)乾性および湿性加齢黄斑変性症(AMD)、(6)網膜色素変性症(RP)、(7)木質結膜炎、(8)モーレン潰瘍、(9)強膜炎、(10)交感神経性眼炎。
耳疾患:
(1)自己免疫性内耳疾患(AIED)。
肺疾患:
(1)喘息、(2)アレルギー性鼻炎、(3)慢性閉塞性肺疾患(COPD)、(4)自己免疫性内耳疾患(AIED)。
消化管疾患:
(1)薬剤誘発肝疾患、(2)自己免疫性肝炎、(3)炎症性腸症候群、(4)クローン病、(5)潰瘍性大腸炎、(6)過敏性腸症候群、(7)顕微鏡的大腸炎、(8)自己免疫性腸疾患、(9)セリアック病、(10)グルテン不耐症、(11)乳糖不耐症、(12)プラマー・ビンソン症候群、(13)アカラシア、(14)特発性腹膜炎。
筋肉、骨、皮膚の疾患:
(1)虫刺され後の皮膚免疫反応、(2)接触性皮膚炎、(3)多発性筋炎、(4)筋炎、(5)皮膚筋炎、(6)様々な原因の皮膚炎、(7)封入体筋炎、(8)線維筋痛症、(9)全身性強皮症、(10)乾癬、(11)円形脱毛症、(12)自己免疫性血管性浮腫、(13)自己免疫性プロゲステロン皮膚炎、(14)自己免疫性蕁麻疹、(15)水疱性類天疱瘡、(16)瘢痕性類天疱瘡、(17)妊娠性類天疱瘡、(18)疱疹状皮膚炎、(19)円板状エリテマトーデス、(20)後天性表皮水疱症、(21)結節性紅斑、(22)化膿性汗腺炎、(23)扁平苔癬、(24)硬化性苔癬、(25)線形IgA疾患(LAD)、(26)モルフェア、(27)尋常性天疱瘡、(28)粃糠疹:a. 白色粃糠疹、b. 粃糠疹慢性苔癬、c. バラ色粃糠疹、d. 円形粃糠疹、e. 毛孔性紅色粃糠疹、f. 癜風、g. 歴史的に頭部粃糠疹と呼ばれるふけ、h. 粃糠疹アミアンタセア、i. 急性痘瘡状苔癬状粃糠疹(PLEVA)、j. ミュシャ・ハーバーマン病、(29)白斑、(30)血管性浮腫:a. 後天性血管性浮腫、b. 遺伝性血管性浮腫、c. 抗神経性浮腫(クインケ浮腫)、(31)湿疹、(32)リウマチ性関節炎、(33)膝関節、股関節、脊椎関節などの慢性炎症、(34)慢性脊椎関節症、(35)慢性骨軟骨炎および骨関節症、(36)若年性関節炎、(37)強直性脊椎炎、(38)乾癬性関節炎、(39)回帰性リウマチ、(40)再発性多発性軟骨炎、(41)リウマチ性多発筋痛症、(42)アンチシンテターゼ症候群。
泌尿生殖器疾患:
(1)慢性間質性膀胱炎、(2)再発性膀胱炎、(3)薬剤誘発腎症、(4)糖尿病性腎症、(5)ネフローゼ症候群、(6)腎炎症候群、(7)急速進行性糸球体腎炎、(8)急性腎不全、(9)二次性腎機能障害。
【0141】
2. 処置誘発免疫関連疾患
(1)放射線誘発脳症、(2)化学療法に関連した腎障害:a. 複合腎嚢胞、b. 間質性腎炎、c. 腎乳頭壊死、d. 腎梗塞、e. 急性尿細管壊死、(3)化学療法に関連した膀胱損傷:a. 化学療法誘発膀胱炎、b. 出血性膀胱炎、(4)化学療法に関連した胃腸障害:a. 口内炎、b. 咽頭炎、c. 食道咽頭炎、d. 粘膜炎、e. 口腔および肛門の炎症または潰瘍、f. 腸壊死、g. 胃腸潰瘍、h. 腸炎、i. 膵炎、j. 急性肝炎。
【0142】
3. 感染症
ウイルス疾患:
A、B、CおよびD型肝炎(HAV、HBV、HCVおよびHDV);ヒトレトロウイルス;ヒト免疫不全ウイルス(HIV);HTLV-1;アベルソンマウス白血病ウイルス;ラウス肉腫ウイルス;ジカウイルス(ZiKV);インフルエンザAおよびBウイルス(IAVおよびIBV);コロナウイルス:MERS、SARS、SARS-CoV-2;ライノウイルス;ヒト呼吸器合胞体ウイルス;アデノウイルス;エンテロウイルス;ヒトメタニューモウイルス;単純ヘルペスまたは帯状疱疹脳炎;単純ヘルペスまたは帯状疱疹皮膚炎;ヘルペスウイルス6、7、8型;デングウイルス;ウエストナイルウイルス;エボラウイルスおよびマールブルグウイルス感染;ヘンドラウイルス;ニパウイルス;ヒトパピローマウイルス(HPV);エプスタイン-バーウイルス(EBV)、伝染性単核球症;ルベオラ:麻疹ウイルス;風疹;おたふくかぜ;天然痘;水疱瘡;黄熱病;ウイルス性心筋炎;ウイルス性出血熱;狂犬病;手足口病;オーフパラポックスウイルス;伝染性軟属腫スクラブチフス;ノロウイルス;サイトメガロウイルス(CMV);尖圭コンジローム;パルボウイルス;節足動物媒介性およびげっ歯類媒介性のウイルス感染。
細菌感染:
猫ひっかき病;野兎病;ドノバノーシス;ノカルジア症;放線菌症およびホイップル病;腸チフス;レプトスピラ症;Q熱;ブルセラ症;類鼻疽;エキノコックス(包虫症)病;慢性骨髄炎;ライム病(ボレリア・ブルグドルフェリ);マダニ媒介紅斑熱;結核;ブルーリ潰瘍:マイコバクテリウム・ウルセランス;皮膚結核:M.ツベルクローシス;ハンセン病:M.レプレ;ヘリコバクター・ピロリ;住血吸虫症;ヒストプラズマ症;エントアメーバ・ヒストリティカ;ジアルジア症;フィラリア症;内臓幼虫の遊走;炭疽:バチルス・アンシラシス;潰瘍性野兎病;フランシセラ・ツラレンシス;腺ペスト:ペスト菌;軟性下疳:ヘモフィルス・ジュクレー;一次梅毒:T.パリダム;淋菌感染症;梅毒;トレポネマトーシス;マイコプラズマ・ニューモニエ感染;クラミジア感染;C.トラコマチス感染;髄膜炎、脳炎および脳膿瘍;細菌性髄膜炎;脳膿瘍、化膿性頭蓋内感染;脳性マラリア:プラスモディウム・ファルシパルム;脊髄硬膜外膿瘍;日本脳炎;丹毒蜂巣炎;毛包炎;筋炎および筋壊死;破傷風;レジオネラ感染;感染性胃腸炎;肺炎;急性呼吸窮迫症候群(ARDS);肺膿瘍;感染性心内膜炎。
真菌感染症:真菌症
コクシジオイデス症;ヒストプラズマ症;ブラストミセス症;フェオハイフォミコーシス;ペニシリン症;スポロトリコーシス;パラコクシジオイデス症;カンジダ症;アスペルギルス症;クリプトコックス症;ムコール症(接合菌症);スケドスポリウム症;トリコスポロン症;フザリオ症;ニューモシストーシス。
原虫感染:
エントアメーバ・ヒストリティカ;マラリア:プラスモディウム・ファルシパルム;バベシア症;リーシュマニア症;シャーガス病およびアフリカトリパノソーマ症;トキソプラズマ症;トリコモナス症。
蠕虫感染症。
【0143】
4. 心血管疾患および神経血管疾患
脳:(1)皮質下梗塞および白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症(CADASIL)、(2)虚血性脳卒中、(3)動脈瘤性くも膜下出血、(4)くも膜下出血後の脳虚血、(5)脳血管けいれん:アテローム性動脈硬化;全身性動脈性高血圧;肺高血圧;深部静脈血栓症および肺塞栓症;心臓:(1)狭心症、(2)心筋虚血、(3)心筋梗塞、(4)心筋スタニング、心筋冬眠、(5)虚血後心筋機能障害、(6)虚血性心筋症、(7)心房細動を含む心房および心室性不整脈、(8)心筋梗塞後症候群、(9)心膜切開後症候群、(10)心膜炎、(11)心筋炎、(12)リウマチ熱、(13)脳損傷後の心合併症:a. ストレス心筋症、b. ブロークンハート症候群、c. くも膜下出血後の心機能障害および不整脈、d. 外傷性脳損傷後の心機能障害および不整脈。
【0144】
5. 神経炎症性および神経変性疾患
アルツハイマー病;パーキンソン病;ハンチントン病;錐体外路症状:(1)急性ジストニー反応、(2)眼球上転発作、(3)アカシジア、(4)偽性パーキンソニズム、(5)遅発性ジスキネジア、シデナム舞踏病;急性散在性脳脊髄炎(ADEM);橋本脳症;ビッカースタッフ脳炎;抗N-メチル-D-アスパラギン酸(抗NMDA)受容体脳炎;脊髄小脳失調症;ササック症候群;トロサ・ハント症候群;メニエール病;多発性硬化症;特発性炎症性脱髄疾患;横断性脊髄炎;視神経脊髄炎(デビック病);視神経炎;バロ同心性硬化症;後天性神経障害:a. 慢性続発性多発神経障害、b. 慢性炎症性脱髄性多発神経障害(CIDP)、c. 進行性炎症性神経障害、d. ギラン・バレー症候群、e. 重症疾患多発神経障害、f. 急性および慢性運動軸索神経障害;遺伝性神経障害:a. シャルコー・マリー・トゥース病1型、2型および3型、b. 遺伝性神経痛性筋萎縮症;筋強直性ジストロフィーI型およびII型;筋萎縮性側索硬化症(ALS);神経痛性筋萎縮症(パーソナージ・ターナー症候群);神経ミオトニー;重症筋無力症;下肢静止不能症候群;スティッフパーソン症候群。
【0145】
6. てんかん障害
てんかん重積を含む全般性てんかん発作(大発作);焦点てんかん発作:a. 前頭葉てんかん、b. 側頭葉てんかん、c. 良性ローランドてんかん、d. 小児期の良性後頭部てんかん;常染色体優性夜間前頭葉てんかん;小児不在てんかん;ドラベ症候群;精神薄弱の女性におけるてんかん;若年性ミオクロニーてんかん;レノックス・ガストー症候群;熱性感染症関連てんかん症候群;ウェスト症候群;太原症候群;反射てんかん;進行性ミオクロニーてんかん;ラスムッセン脳炎。
【0146】
7. 情動障害および精神症候群
統合失調症;うつ病;双極性障害;職業性燃え尽き症候群;ストレプトコッカスに関連する小児自己免疫神経精神障害(PANDAS);注意欠陥多動性障害;心的外傷後ストレス障害;線維筋痛症。
【0147】
8. 線維症
原発性線維症:
間質性肺線維症(ILD);後腹膜線維症;原発性胆汁性胆管炎(原発性胆汁性肝硬変または原発性肝硬変)。
疾患誘発線維症:
続発性肺線維症;嚢胞性線維症による続発性炎症;原発性硬化性胆管炎;間質性膀胱線維症;続発性肝硬変:a. アルコール性肝硬変、b. C型肝炎誘発肝硬変、c. ヒト免疫不全ウイルス誘発肝硬変、d. 転移性癌腫性肝硬変。
癌誘発線維症:癌により誘発される線維症形成。
腫瘍の擬似進行:処置が特に神経内分泌腫瘍における腫瘍の進行を模倣する線維症を誘発。
処置誘発線維症:
内科的、外科的または放射線処置により誘発される線維形成、すなわち、イレウスを伴うまたは伴わない開腹手術後の腹膜線維症;臓器移植後の線維症;化学療法誘発慢性消化管線維症。
【0148】
9. 腫瘍随伴症候群:
腫瘍随伴性小脳変性;ランバート・イートン筋無力症候群;腫瘍随伴性小脳変性;脳脊髄炎、辺縁系脳炎;脳幹脳炎;オプソクローヌス・ミオクローヌス運動失調症候群;抗NMDA受容体脳炎;多発性筋炎;黒色表皮腫;皮膚筋炎;レーザー・トレラー徴候;壊死性遊走性紅斑;スイート症候群;赤らんだ皮膚乳頭腫症;壊疽性膿皮症;後天性全般性多毛症。
【0149】
10. 癌および新生物
免疫関連および腫瘍性血液疾患:
再生不良性貧血;抗リン脂質症候群(APS、APLS);血栓性血小板減少性紫斑病(TTP);特発性血小板減少性紫斑病(ITP);自己免疫性溶血性貧血;自己免疫リンパ増殖症候群;自己免疫性好中球減少症;寒冷凝集素症;本態性混合型クリオグロブリン血症;エバンス症候群;悪性貧血;赤芽球癆;血小板減少症;癌性リンパ管炎;骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MPN/MPD):(1)真性多血症、(2)本態性血小板血症、(3)原発性骨髄線維症、(4)線維性骨髄線維症、(5)リンパ腫:a. 非ホジキンリンパ腫、b. 小児の非ホジキンリンパ腫(バーキットリンパ腫)、c. ホジキン病、d. 皮膚のリンパ腫、e. ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、f. 多発性骨髄腫(ケーラー病)、g. 原発性脳リンパ腫、(6)白血病:a. 急性骨髄性白血病、b. 慢性骨髄性白血病、c. 急性リンパ性白血病、d. 慢性リンパ球性白血病、(6)分類不可のMPN/MPD。
固形腫瘍:
A. 神経内分泌腫瘍(NET)
(1)下垂体:下垂体前葉のNET、(2)甲状腺:神経内分泌甲状腺腫瘍および髄様癌、(3)副甲状腺NET、(4)胸腺および縦隔カルチノイド腫瘍、(5)肺NET:a. 気管支NET、b. 肺カルチノイド腫瘍:定型カルチノイドおよび非定型カルチノイド、c. 小細胞肺癌(SCLC)、d. 肺の大細胞神経内分泌癌(LCNEC)、e. 肺外小細胞癌(ESCCまたはEPSCC)、(6)胃腸膵臓神経内分泌腫瘍(GEP-NET):a. 前腸NET(胃、近位十二指腸、胸腺、肺および気管支)、b. 膵臓NET、c. 中腸GEP-NET(十二指腸の第2部分の遠位半分から横行結腸の近位3分の2まで)、虫垂NET、e. 後腸NET、(7)肝臓および胆嚢NET、(8)副腎腫瘍および副腎髄質腫瘍、(9)、(10)褐色細胞腫、(11)末梢神経系NET:a. シュワン腫、b. 傍神経節腫、c. 神経芽腫、(12)乳房NET、(13)尿生殖路NET:a. 尿路カルチノイド腫瘍および神経内分泌癌、b. 卵巣NET、c. 子宮頸部NET、d. 前立腺NET、e. 精巣NET、(14)皮膚のメルケル細胞癌(小柱癌)、(15)遺伝性NET:a. 多発性内分泌腫瘍1型(MEN1)および2型(MEN2)、b. フォン・ヒッペル・リンダウ(VHL)病、c. 神経線維腫症1型および2型、d. シュワノマトーシス、e. 結節性硬化症、f. カーニー複合(LAMBまたはNAME症候群)。
B. 中枢神経系腫瘍
(1)脳腫瘍および脊髄腫瘍:a. 転移性脳腫瘍、b. 毛様細胞性星細胞腫、c. 神経膠腫、d. 多形性膠芽腫(GBM)、e. 乏突起膠腫、f. 上衣腫、g. 髄芽腫、h. 髄膜腫瘍、i. 髄膜腫、j. 転移性髄膜炎癌腫症。
C. 中咽頭腫瘍:
良性腫瘍:好酸球性肉芽腫、線維腫、顆粒細胞腫瘍、角化棘細胞腫、平滑筋腫、骨軟骨腫、脂肪腫、シュワン腫、神経線維腫、乳頭腫、尖圭コンジローム、疣状黄色腫、化膿性肉芽腫、横紋筋腫、歯原性腫瘍、前癌病変、白板症、紅板症、紅白板症、悪性腫瘍、扁平上皮癌、疣贅性癌、小唾液腺癌、リンパ腫。
D. 喉頭癌
副鼻腔および鼻腔癌、上咽頭癌、奇形腫、腺癌、腺様嚢胞癌、粘表皮癌、唾液腺癌、甲状腺癌:a. 乳頭甲状腺癌、b. 乳頭様の核の特徴を有する非浸潤性濾胞性甲状腺腫瘍、c. 濾胞性甲状腺癌、c. 低分化甲状腺癌、d. 未分化甲状腺癌、e. 甲状腺リンパ腫、f. 甲状腺扁平上皮癌、g. 甲状腺の肉腫、h. ヒュルトレ細胞癌。
E. 皮膚癌
基底細胞癌、扁平上皮癌、悪性黒色腫、カポジ肉腫。
F. 血管系の癌
血管肉腫、類上皮血管内皮腫、血管周囲細胞腫、リンパ管肉腫、カポジ型血管内皮腫(KHE)、小児血管腫、先天性血管腫、血管芽細胞腫、化膿性肉芽腫、房状血管腫、グロムス腫瘍。
G. 筋肉および骨の腫瘍
平滑筋腫、平滑筋肉腫、悪性度不明平滑筋腫瘍(STUMP)、転移性腫瘍、骨肉腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、線維肉腫、未分化多形肉腫、奇形腫、骨腫、骨様骨腫、骨軟骨腫、骨芽細胞腫、内軟骨腫、骨巨細胞腫、動脈瘤性骨嚢胞。
H. 乳癌
転移性腫瘍、浸潤性乳管癌、浸潤性小葉癌、管状癌、粘液性(コロイド)癌、髄質の特徴を有する癌、浸潤性乳頭癌、乳房リンパ腫、乳房肉腫。
I. 肺腫瘍
転移性腫瘍、気管支平滑筋腫、原発性肺癌:a. 小細胞肺癌(SCLC)、b. 非小細胞肺癌NSCLC)、c. 胸膜肺芽腫、d. 肺のリンパ腫、e. 肺の肉腫、f. 縦隔腫瘍、g. 胸膜腫瘍、h. 悪性中皮腫、j. 胸膜肉腫、k. 胸膜血管肉腫、l. 胸膜線維形成性小円形細胞腫瘍(胸膜DSRCT)、m. 胸膜滑膜肉腫、n. 胸膜孤立性線維性腫瘍(胸膜SFT)、o. 胸膜の平滑筋腫瘍、p. 胸膜癌、q. 胸膜粘表皮癌、r. 胸膜偽中皮腫性腺癌、s. 胸膜石灰化線維性偽腫瘍。
J. 消化管腫瘍
(1)クルーケンベルグ腫瘍(転移性腫瘍):(2)食道癌、a. 扁平上皮癌(ESCC)、b. 食道腺癌(EAC)、c. バレット食道、d. 胃癌、e. 胃腺癌、f. 印環細胞癌、g. 胃リンパ腫、h. 節外辺縁帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)、(2)カルチノイド:a. 十二指腸腺癌、b. 虫垂、c. カルチノイド、(3)腹膜偽粘液腫:a. 結腸直腸腫瘍、(4)結腸直腸ポリープ:a. 腺腫、b. 過形成、c. 若年性、d. 無茎性鋸歯状腺腫、e. 伝統的な鋸歯状腺腫、f. ポイツ・ジェガース症候群、(5)クロンカイト・カナダ症候群、(6)ポリポーシス症候群:a. 若年性MUTYH関連家族性腺腫性および鋸歯状ポリポーシス、(7)腺癌、(8)家族性腺腫性ポリポーシス、(10)遺伝性非ポリポーシス結腸直腸癌、(11)肛門腫瘍:扁平上皮癌、(12)肝癌、(13)転移性腫瘍、(14)肝細胞癌、(15)肝芽腫、(16)肝細胞腺腫、(17)海綿状血管腫、(18)限局性結節性過形成、(19)結節性再生性過形成、(20)胆嚢癌、(21)胆管癌、(22)クラツキン腫瘍、(23)胆嚢腺癌、(24)膵臓癌、(25)外分泌腫瘍:a. 腺癌、b. 膵管腺癌、(26)嚢胞性腫瘍:a. 漿液性小嚢胞性腺腫、b. 管内乳頭粘液性腫瘍、c. 粘液性嚢胞性腫瘍、d. 固形偽乳頭状腫瘍、e. 膵芽腫、(27)内分泌PanNET:a. MALTリンパ腫、b. 腹膜腫瘍、(28)転移性腹膜炎癌腫症。
K. 泌尿生殖器癌
(1)腎腫瘍:a. 転移性腫瘍、b. 腎細胞癌(RCC):b1. 明細胞RCC、b2. 乳頭RCC、b. 嫌色素性RCC、b4. 集合尿細管RCC、c. 明細胞肉腫、d. 中胚葉性腎腫、e. ウィルムス腫瘍(腎芽腫)、f. 腎腫瘍細胞腫、g. 嚢胞性腎腫、h. 血管筋脂肪腫、i. 後腎腺腫、j. 腎髄質線維腫、(2)尿管癌:a. 移行細胞癌、b. 尿管腫瘍、(3)膀胱腫瘍:a. 転移性腫瘍、b. 乳頭移行上皮癌、c. 非乳頭移行上皮癌、d. 扁平上皮癌、e. 腺癌、f. 肉腫、g. 小細胞癌、(4)卵巣腫瘍、a. 悪性卵巣癌:a1. 上皮癌、a2. 生殖細胞癌、a3. 間質癌、b. 良性:b1. 表面上皮腫瘍、b2. 間質腫瘍、b3. 胚細胞腫瘍、(5)子宮腫瘍:a. 子宮筋腫または平滑筋腫、(6)子宮頸部腫瘍:a. 子宮頸癌、a1. 扁平上皮癌、a2. 腺癌、a3. 腺扁平上皮癌、a4. 小細胞癌、a5. 神経内分泌腫瘍、a6. すりガラス細胞癌、a7. 絨毛腺癌、b. 子宮頸部上皮内腫瘍、(7)精巣腫瘍:a. 胚細胞腫瘍:a1. 精細管内胚細胞腫瘍、a2. セミノーマ、a3. 精母細胞腫瘍、a4. 胎児性癌、a5. 卵黄嚢腫瘍、b. 絨毛性腫瘍:b1. 絨毛癌、b2. 単相性絨毛癌、b3. 胎盤部栄養膜細胞性腫瘍、b4. 嚢胞性絨毛腫瘍、c. 奇形腫:c1. 類皮嚢胞、c2. 類表皮嚢胞、c3. 単皮奇形腫(カルチノイド)、c4. 原始神経外胚葉性腫瘍(PNET)、c5. 腎芽腫様腫瘍、c6. 体細胞型悪性腫瘍を伴う奇形性腫瘍、d. 性索-性腺間質腫瘍:d1. ライディッヒ細胞腫瘍、d2. セルトリ細胞腫瘍、d3. 高脂質性バリアント、d4. 硬化バリアント、d5. 大細胞石灰化バリアント、d6. ポイツ・ジェガース症候群における精細管内セルトリ細胞腫瘍、d7. 顆粒膜細胞腫瘍、d8. 大人型、d9. 若年型、d10. テコマ線維腫群、d11. テコマ、d12. 線維腫、d13. 不完全分化腫瘍、d14. 混合型腫瘍、e. 胚細胞と性索/性腺間質の混合腫瘍:e1. 性腺芽細胞腫、e2. 胚細胞-性索/性腺間質腫瘍、未分類、f. 精巣のその他の腫瘍:f1. リンパ腫:f1a. 原発性精巣びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、f1b. 精巣のマントル細胞リンパ腫、f1c. 精巣の節外辺縁帯B細胞リンパ腫、f1d. 節外性NK/T細胞リンパ腫、精巣の鼻型、f1e. 精巣の末梢性T細胞リンパ腫、f1f. 精巣のアクチビン受容体様キナーゼ-1陰性の未分化大細胞型リンパ腫、f1g. 精巣の小児型濾胞性リンパ腫、f2. カルチノイド、f3. 卵巣上皮型の腫瘍:f3a. 境界悪性腫瘍の漿液性腫瘍、f3b. 漿液性癌、f3c. 高分化類内膜腫瘍、f3d. 粘液性嚢胞腺腫、f3e. 粘液性嚢胞腺癌、f3f. ブレナー腫瘍、f4. 腎芽腫、f5. 傍神経節腫、g. 造血器腫瘍、h. 集合尿細管および網の腫瘍:h1. 腺腫、h2. 癌、i. 傍精巣構造の腫瘍:i1. 腺腫性腫瘍、i2. 悪性および良性中皮腫、i3. 精巣上体の腺癌、i4. 精巣上体の乳頭嚢胞腺腫、i5. 黒色神経外胚葉性腫瘍、i6. 線維形成性小円形細胞腫瘍、j. 精索および精巣付属器の間葉系腫瘍:j1. 脂肪腫、J2. 脂肪肉腫、j3. 横紋筋肉腫、j4. 進行性血管粘液腫、j5. 血管筋線維芽細胞腫様腫瘍(粘液腫を参照)、j6. 線維腫症、j7. 線維腫、j8. 孤立性線維性腫瘍、j9. その他、k. 精巣の二次腫瘍、(8)尿道癌:a. 移行細胞癌、b. 扁平上皮癌、c. 腺癌、d. 黒色腫、e. 前立腺腫瘍、f. 転移性前立腺腫瘍、g. 良性前立腺肥大、i. 前立腺癌、(9)陰茎腫瘍:a. 包茎、b. 陰茎癌。
L. 後腹膜腫瘍
(1)固形腫瘍:a. 転移性腫瘍、b. 線維腫、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、c. 脂肪腫、脂肪肉腫、d. 平滑筋腫、平滑筋肉腫、e. デスモイド腫瘍、e. 神経節細胞腫、神経節芽腫、f. シュワン腫、神経線維腫、g. 性腺外胚細胞腫瘍、h. リンパ腫、i. リンパ節腫脹、(2)嚢胞性腫瘍、a. 嚢胞性リンパ管腫、b. 嚢胞性奇形腫、c. 嚢胞腺腫、嚢胞腺癌、d. 嚢胞性中皮腫、e. 類表皮嚢胞、f. タルロフ嚢胞(神経周囲嚢胞)。
【0150】
11. 外傷および心的外傷症候群
(1)外傷性くも膜下出血、(2)重度の外傷性頭部損傷を含む頭部外傷、(3)外傷性脳損傷後の脳虚血、(4)多発性外傷状態、(5)外傷後てんかん発作。
【0151】
12. 肺、腎臓、心臓、肝臓など臓器移植後の炎症
(1)臓器移植後の急性免疫反応、(2)宿主による慢性臓器組織拒絶反応、(3)臓器移植後の線維症。
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図1f
【手続補正書】
【提出日】2022-12-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次標的リンパ節におけるリドカインの濃度が哺乳類の最大許容血漿レベルを超えるまで、哺乳類患者においてリドカインを一次リンパ節標的化投与することによる、哺乳類患者における疾患の過炎症性症候群の処置のための、リドカインを含む医薬であって、
該疾患が、COVID-19、敗血症、リウマチ性多発筋痛症、乾癬性関節炎、脊椎関節症、慢性間質性膀胱炎、慢性炎症性膀胱状態、膝関節症、多発性硬化症、全身炎症反応症候群(SIRS)および進行癌における腎機能不全、筋萎縮性側索硬化症、アルツハイマー病、特発性パーキンソン病、糖尿病性多発神経障害、重症筋無力症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、バセドウ病、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、行進毛虫毒素に対するアレルギー反応、リウマチ性関節炎、真性糖尿病患者における虚血性心筋症、急性腰痛、全身性エリテマトーデス(SLE)からなる群より選択され;
投与が、
リドカインの最大許容血漿レベルでの1ml血漿中に含まれるリドカイン量の少なくとも1,000倍に相当するボーラス投与量での、親油性であるリドカインの経粘膜および経皮投与、および
1時間当たり体重1kg当たり、リドカインのIC 10 値の少なくとも10倍に相当する投与量での、親水性であるリドカインの皮内および真皮下持続投与
より選択される、医薬
【請求項2】
リドカインが遊離塩基である、請求項1に記載の医薬。
【請求項3】
リンパ節標的化投与が、口腔における経粘膜投与を含む、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項4】
投与が、バッカル、舌下またはそれらの組合せである、請求項3に記載の医薬。
【請求項5】
投与が、経皮であって、クリーム剤、軟膏剤、パッチ剤またはプラスター剤またはそれらの組合せの形態である、請求項1または2に記載の医薬。
【請求項6】
リドカインが、親水性であり、特にその水溶性の医薬的に許容される塩の形態である、請求項1に記載の医薬。
【請求項7】
リドカインが、標的リンパ節における濃度が哺乳類P2X7受容体のICxに相当するまで持続的に皮内または真皮下投与され、該ICxが、哺乳類におけるリドカインの最大許容血漿レベルを超えるものであり、xが、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらにより好ましくは40以上および最も好ましくは約50である、請求項1に記載の医薬
【請求項8】
投与が、即放性剤形または徐放性剤形である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬
【請求項9】
ボーラス投与量が、リドカインの最大許容血漿レベルでの1ml血漿中に含まれるリドカインの量の少なくとも5,000倍、好ましくは少なくとも10,000倍に相当する、請求項1に記載の医薬
【請求項10】
ボーラスが、1日2~10回投与される、請求項8または9に記載の医薬
【請求項11】
リドカインが、少なくとも1w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%および最も好ましくは少なくとも10w/v%のリドカインを含む液体媒体中で投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬
【請求項12】
過炎症性症候群が、呼吸困難を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬
【請求項13】
呼吸困難が、ウイルス感染、細菌感染、癌腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー、化学療法に関連する、請求項12に記載の医薬
【請求項14】
ウイルス感染が、コロナ、特に、SARS-CoV-2;インフルエンザ;エボラ;呼吸器合胞体ウイルス;HIVからなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる、請求項13に記載の医薬
【請求項15】
処置が、遊離塩基形態のリドカインの局所投与を含む、請求項1に記載の医薬
【請求項16】
処置が、リドカイン塩基の口腔内への投与を含む、請求項1に記載の医薬
【請求項17】
リドカイン塩基が、少なくとも2.5w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%、より好ましくは少なくとも10w/v%のリドカインを含む液体媒体中で投与される、請求項15に記載の医薬
【請求項18】
処置が、水溶性塩形態のリドカイン、特にリドカイン-HClの侵襲投与を含み、侵襲投与が、持続的な皮内または真皮下注入によるものである、請求項1に記載の医薬
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
本発明は、以下の態様および実施態様を含む。
[項1] 一次標的リンパ節における哺乳類P2X7受容体(P2X7R)のアンタゴニストの濃度が哺乳類の最大許容血漿レベルを超えるまで、哺乳類患者においてP2X7Rアンタゴニストを一次リンパ節標的化投与することによる、哺乳類患者における過炎症性症候群の処置における使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項2] アンタゴニストが、標的リンパ節における濃度が該受容体のIC x に対応するまで投与され、該IC x が、該哺乳類における該アンタゴニストの最大許容血漿レベルを超えるものであり、xが、10以上、好ましくは20以上、より好ましくは30以上、さらにより好ましくは40以上および最も好ましくは約50である、項1に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項3] リンパ節標的化投与が、局所および侵襲投与より選択される、項1または2に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項4] 投与が、経粘膜および経皮より選択される局所である、項3に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項5] アンタゴニストが、親油性である、項4に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項6] 親油性アンタゴニストが、遊離塩基である、項5に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項7] リンパ節標的化投与が、口腔における経粘膜投与を含む、項5または6に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項8] 投与が、バッカル、舌下、咽頭またはそれらの組合せである、項7に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項9] 投与が、経皮であって、クリーム剤、軟膏剤またはローション剤、パッチ剤またはプラスター剤の形態であり、および/またはマイクロニードルまたはそれらの組合せを含む、項4~6のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項10] 投与が、皮内、真皮下または皮下より選択される侵襲である、項3に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項11] アンタゴニストが、親水性であり、特にその水溶性の医薬的に許容される塩の形態である、項10に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項12] 投与が、静脈内であり、アンタゴニストが、親油性であり、血中への直接放出を回避する薬物送達システムに閉じ込められる、項3に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項13] P2X7R活性化が、細胞外ATPにより活性化される、項1~12のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項14] 投与が、即放性剤形または徐放性剤形である、項1~13のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項15] 投与が、1回以上のボーラス投与を含むか、または持続投与またはそれらの組合せを含む、項1~14のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項16] ボーラス投与量が、受容体アンタゴニストの最大許容血漿レベルでの1ml血漿中に含まれる受容体アンタゴニストの量の少なくとも1,000倍、好ましくは少なくとも5,000倍、より好ましくは少なくとも10,000倍に相当する、項15に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項17] ボーラスが、1日2~10回投与される、項15または16に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項18] アンタゴニストが、少なくとも1w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%および最も好ましくは少なくとも10w/v%の受容体アンタゴニストを含む液体媒体中で投与される、項1~17のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項19] リンパ節標的化投与が、持続的な皮内、真皮下または皮下注入によるものである、項10および15に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項20] 投与量が、1時間当たり体重1kg当たりIC 10 値の少なくとも10倍に対応する、項19に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項21] 処置が、自己免疫疾患および免疫関連疾患、例えば喘息、アレルギーおよび慢性肺疾患;処置誘発免疫関連疾患、例えば化学療法;感染症、例えばウイルスおよび細菌感染;心血管疾患および神経血管疾患;神経炎症性および神経変性疾患;てんかん障害;情動障害および精神症候群;線維症;癌関連障害;腫瘍の擬似進行;癌および新生物;外傷および心的外傷症候群;移植臓器拒絶反応を含む臓器移植後症候群からなる群より選択される、疾患の過炎症性症候群を含む、項1~20のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項22] 過炎症性症候群が、呼吸困難を含む、項1~21のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項23] 呼吸困難が、ウイルス感染、細菌感染、癌腫、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、アレルギー、化学療法に関連する、項22に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項24] ウイルス感染が、コロナ、特に、SARS-CoV-2;インフルエンザ;エボラ;呼吸器合胞体ウイルス;HIVからなる群より選択されるウイルスにより引き起こされる、項21~23のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項25] P2X7Rアンタゴニストが、アミノアミド誘導体、特にリドカイン、ブピバカイン、ロピバカインおよびメピバカイン;P2X7Rに対する抗体、特にモノクローナル抗体、アミノエステル誘導体、特にベンゾカインおよびプロカイン;アダマンタンアミド誘導体;トリアゾール誘導体;ジアリールイミダゾリジン誘導体;ピログルタミン酸アミド誘導体;ピラゾールアセトアミド誘導体;ジヒドロジベンゾ[a,g]キノリジニウム誘導体;テトラゾール誘導体;チロシンベースの誘導体;ピラゾロジアゼピン誘導体;イミダゾール誘導体;ベンズアミド誘導体、KN62類似体および誘導体;アダマンタンカルボキサミド;アリールカルボヒドラジド;シアノグアニジン;アリールテトラゾールおよびアリールトリアゾール;PPADS四ナトリウム塩;ブリリアントブルーG(BBG);酸化ATP(o-ATP);マッサジン;スチリサジンAおよびB;P2X7R阻害剤C23、C40およびC60;[3H]A-804598([3H]2-シアノ-1-[(1S)-1-フェニルエチル]-3-キノリン-5-イルグアニジン);ビシクロヘテロアリール化合物からなる群より選択される、項1~24のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項26] P2X7Rアンタゴニストが、リドカインを含む、項1~25のいずれかに記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項27] 処置が、遊離塩基形態のリドカインの局所投与を含む、項26に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項28] 処置が、リドカイン塩基の口腔内への投与を含む、項27に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項29] リドカイン塩基が、少なくとも2.5w/v%、好ましくは少なくとも5w/v%、より好ましくは少なくとも10w/v%の受容体アンタゴニストを含む液体媒体で投与される、項28に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項30] 処置が、水溶性塩形態のリドカイン、特にリドカイン-HClの侵襲投与を含む、項26に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項31] リドカイン塩が、皮内、真皮下または皮下投与される、項30に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
[項32] リドカイン塩が、持続的な皮内、真皮下または皮下注入により投与される、項31に記載の使用のための哺乳類P2X7Rのアンタゴニスト。
ここで、以下の図および実施例により本発明をさらに説明する。
【国際調査報告】