IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエル、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】放射線画像の生成
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20230518BHJP
   A61B 5/055 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61B6/03 375
A61B6/03 360T
A61B5/055 380
A61B5/055 383
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559985
(86)(22)【出願日】2021-03-25
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2021057689
(87)【国際公開番号】W WO2021197996
(87)【国際公開日】2021-10-07
(31)【優先権主張番号】20167879.4
(32)【優先日】2020-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20204511.8
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ブルートゥース
(71)【出願人】
【識別番号】516245885
【氏名又は名称】バイエル、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】BAYER AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】ゲシネ、クノブロッホ
【テーマコード(参考)】
4C093
4C096
【Fターム(参考)】
4C093AA24
4C093CA18
4C093DA02
4C093FF07
4C093FF16
4C093FF24
4C096AA10
4C096AA11
4C096AB41
4C096AC04
4C096AC05
4C096AC07
4C096AD14
4C096AD24
4C096DB06
4C096DC18
4C096DC33
4C096DC35
(57)【要約】
本発明は、検査下の対象の検査領域の放射線画像の生成に関する。経時的に減少するコントラスト強度で検査領域内の血管を示す検査領域の測定された放射線画像に基づいて、本発明は、一定のコントラスト強度で血管を示す検査領域の人工放射線画像を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の測定された放射線画像を受信するステップであって、前記測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、前記造影剤が、前記検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、前記測定された放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、時間が増大するにつれて減少する、ステップと、
前記受信した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、前記人工放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
前記人工放射線画像を出力するステップと、
を含む、コンピュータ実施の方法。
【請求項2】
前記一連の人工放射線画像の前記計算は、以下のステップ:
前記測定された放射線画像を予測モデルに供給するステップであって、前記人工予測モデルが、経時的に低下する血管のコントラスト増強を補償するために教師あり学習プロセスにおいて参照データに基づいて訓練されている、ステップと、
前記予測モデルから一連の人工放射線画像を受信するステップであって、前記人工放射線画像が、異なる連続的な時間点における前記検査領域を示し、前記人工放射線画像内の血管が、コントラスト増強を伴って描写され、前記人工放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、時間が増大するにつれて一定のままである、ステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一連の人工放射線画像の前記計算は、以下のステップ:
前記測定された放射線画像を予測モデルに供給するステップであって、前記予測モデルが、造影剤の投与後の検査対象の検査領域を示す一連の測定された放射線画像についての一連の人工放射線画像を生成するために教師あり学習プロセスにおいて参照データに基づいて訓練されており、前記人工放射線画像が、血液プール造影剤の投与後の前記検査領域を示す、ステップと、
前記予測モデルから一連の人工放射線画像を受信するステップであって、前記人工放射線画像が、血液プール造影剤の投与後の前記検査領域を示す、ステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一連の人工放射線画像の前記計算は、以下のステップ:
前記測定された放射線画像を予測モデルに供給するステップであって、前記予測モデルが、造影剤の投与後の異なる時間点における検査領域を示す一連の測定された放射線画像についての一連の人工放射線画像を生成するために教師あり学習プロセスにおいて参照データに基づいて訓練されており、前記人工放射線画像が、コントラスト増強を伴って、および周囲組織と比較して経時的に変化しないコントラストを伴って前記検査領域内の血管を示す、ステップと、
前記予測モデルから一連の人工放射線画像を受信するステップであって、前記人工放射線画像が、コントラスト増強を伴って、および周囲組織と比較して経時的に変化しないコントラストを伴って前記検査領域内の血管を示す、ステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記一連の人工放射線画像の前記計算は、以下のステップ:
前記受信した放射線画像から血管モデルを生成するステップであって、前記血管モデルが、前記検査領域の表現であり、前記検査領域内の血管によるものであり得る構造体が、前記血管モデル内でマークされている、ステップと、
前記受信した放射線画像上への前記血管モデルの重ね合わせにより一連の人工放射線画像を生成するステップと、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
投与される前記造影剤は、細胞外造影剤または混合された細胞外/細胞内造影剤である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記測定された放射線画像は、MRI画像である、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記予測モデルは、人工ニューラルネットワークである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記参照データは、細胞外造影剤の投与後の測定された放射線画像、および血管内造影剤の投与後の測定された放射線画像、ならびに/または人工的に生成された放射線画像を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
受信ユニットと、
制御および計算ユニットと、
出力ユニットと、
を備えるコンピュータシステムであって、
前記制御および計算ユニットが、受信ユニットに一連の測定された放射線画像を受信することを促すように構成され、前記測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、前記造影剤が、前記検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、前記測定された放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、時間が増大するにつれて減少し、
前記制御および計算ユニットが、前記測定された放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するように構成され、前記人工放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、経時的に変化しないままであり、
前記制御および計算ユニットが、前記出力ユニットに人工放射線画像を出力することを促すように構成される、
コンピュータシステム。
【請求項11】
コンピュータのメモリ内へロードされ得るコンピュータプログラムを備えるコンピュータプログラム製品であって、コンピュータに、以下のステップ:
一連の測定された放射線画像を受信するステップであって、前記測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、前記造影剤が、前記検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、前記測定された放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、時間が増大するにつれて減少する、ステップと、
前記受信した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、前記人工放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
前記人工放射線画像を出力するステップと、
を実行することを促す、コンピュータプログラム製品。
【請求項12】
放射線検査法における造影剤の使用であって、前記放射線検査法は、以下のステップ:
検査対象の血管系の血管内に前記造影剤を投与するステップと、
前記検査対象の検査領域の一連の放射線画像を捕捉するステップであって、前記放射線画像が、前記造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における前記検査領域を示し、前記造影剤が、前記検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、前記放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、時間が増大するにつれて低下する、ステップと、
前記捕捉した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、前記人工放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
前記人工放射線画像を出力するステップと、
を含む、放射線検査法における造影剤の使用。
【請求項13】
放射線検査法における使用のための造影剤であって、放射線検査法は、以下のステップ:
検査対象の血管系の血管内に前記造影剤を投与するステップと、
前記検査対象の検査領域の一連の放射線画像を捕捉するステップであって、前記放射線画像が、前記造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における前記検査領域を示し、前記造影剤が、前記検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、前記放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、時間が増大するにつれて低下する、ステップと、
前記捕捉した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、前記人工放射線画像内の前記血管の前記コントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
前記人工放射線画像を出力するステップと、
を含む、放射線検査法における使用のための造影剤。
【請求項14】
造影剤および請求項11に記載の本発明によるコンピュータプログラム製品を備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象の検査領域の放射線画像の生成に関する。経時的に減少するコントラスト増強を伴って検査領域内の血管を示す検査領域のそのような測定された放射線画像に基づき、本発明は、変化しないコントラスト増強を伴って血管を示す検査領域の人工放射線画像を生成する。
【背景技術】
【0002】
放射線医学は、診断および治療目的のための撮像を取り扱う医療分野である。
【0003】
以前は、X線照射およびX線照射に対して感受性のあるフィルムが、医用撮像において主に使用されていたが、現今では、放射線医学は、コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、または超音波検査などの様々な異なる撮像法を含む。
【0004】
これらのすべての方法では、検査対象内の特定の構造体の描写または分界を促進する物質が使用され得る。上記物質は、造影剤と称される。
【0005】
コンピュータ断層撮影法においては、通常、ヨウ素含有溶液が造影剤として使用される。磁気共鳴画像法(MRI)においては、通常、超常磁性物質(例えば、酸化鉄ナノ粒子、超常磁性鉄-白金粒子(SIPP))、または常磁性物質(例えば、ガドリニウムキレート、マンガンキレート)が造影剤として使用される。
【0006】
造影剤の例は、文献において見ることができる(例えば、A. S. L. Jascinth et al.:Contrast Agents in computed tomography:A Review, Journal of Applied Dental and Medical Sciences, 2016, Vol. 2, Issue 2, 143 - 149、H. Lusic et al.:X-ray-Computed Tomography Contrast Agents, Chem. Rev. 2013, 113, 3, 1641-1666, https://www.radiology.wisc.edu/wp-content/uploads/2017/10/contrast-agents-tutorial.pdf、M. R. Nough et al.:Radiographic and magnetic resonances Contrast Agents: Essentials and tips for safe practices, World J Radiol. 2017 Sep 28; 9(9): 339-349、L. C. Abonyi et al.:Intravascular Contrast Media in Radiography: Historical Development & Review of Risk Factors for Adverse Reactions, South American Journal of Clinical Research, 2016, Vol. 3, Issue 1, 1-10; ACR Manual on Contrast Media, 2020, ISBN: 978-1-55903-012-0、A. Ignee et al.:Ultrasound contrast agents, Endosc Ultrasound. 2016 Nov-Dec; 5(6): 355-362を参照)。
【0007】
組織内でのそれらの広がりのパターンから、造影剤は、大まかに以下のカテゴリに分けられ得る:細胞外造影剤、混合された細胞外/細胞内造影剤(多くの場合、単に細胞内造影剤と称される)、および血液プール造影剤であり得る。
【0008】
細胞外MRI造影剤は、例えば、ガドリニウムキレートガドブトロール(Gadovist(登録商標))、ガドテリドール(Prohance(登録商標))、ガドテル酸(Dotarem(登録商標))、ガドペンテト酸(Magnevist(登録商標))、およびガドジアミド(Omnican(登録商標))を含む。上記ガドリニウムキレートの高親水性特性、およびそれらの低分子量は、静脈内投与後、間質腔内への迅速な拡散をもたらす。血液循環系内での特定の比較的短い循環期間の後、それらは、腎臓を介して排出される。
【0009】
混合された細胞外/細胞内造影剤は、ある程度まで組織の細胞内に取り込まれ、その後排出される。ガドキセト酸に基づく混合された細胞外/細胞内MRI造影剤は、例えば、それらが、肝臓細胞(liver cell)、肝細胞(hepatocyte)によって比例的にはっきりと取り込まれ、機能的組織(実質組織)内に蓄積し、その後それらが胆のうを介して糞便内へ排出される前に、健康な肝臓組織におけるコントラストを向上させるということによって区別される。ガドキセト酸に基づくそのような造影剤の例は、米国特許第6,039,931A号明細書に説明されており、それらは、例えば、商品名Primovist(登録商標)およびEovist(登録商標)の下、市販されている。肝細胞内へのより低い取り込みを有する更なるMRI造影剤は、ガドベン酸メグルミン(Multihance(登録商標))である。
【0010】
血管内造影剤とも称される血液プール造影剤は、細胞外造影剤と比較して血液循環系内での明らかにより長い滞留時間によって区別される。ガドホスベセットは、例えば、ガドリニウムに基づく血管内MRI造影剤である。それは、三ナトリウム塩一水和物形態(Ablavar(登録商標))として使用されてきた。それは、血清アルブミンに結合し、以て、血液循環系内での造影剤の長い滞留時間を達成する(約17時間の血液内半減期)。しかしながら、Ablavar(登録商標)は、2017年に市場から姿を消した。磁気共鳴画像法のための血液プール造影剤として認可される別の造影剤は、市販されていない。同様に、コンピュータ断層撮影のための血液プール造影剤として認可される造影剤は、市場で手に入らない。
【0011】
故に、放射線検査用の血液プール造影剤として認可される製品は、市販されていない。比較的長い取得時間/走査時間で放射線画像を生成するとき、例えば、血管系を描写するため、例えば胸部および腹部の自由呼吸下での画像取得(例えば、MRI内での自由呼吸下での肺塞栓症の診断)では、細胞外造影剤は、血管系から比較的迅速に除去され、これはコントラストが迅速に低下することを意味する。しかしながら、より長い時間期間にわたってコントラストを維持することができることが有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、この問題に対応する。本発明は、血液プール造影剤に基づいて放射線画像をシミュレートすることを可能にする手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、第1の態様において、
一連の測定された放射線画像を受信するステップであって、測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、造影剤が、検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、測定された放射線画像内の血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて減少する、ステップと、
受信した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、人工放射線画像内の血管のコントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
人工放射線画像を出力するステップと
を含む、コンピュータ実施の方法を提供する。
【0014】
本発明は、
受信ユニットと、
制御および計算ユニットと、
出力ユニットと、を備えるコンピュータシステムであって、
制御および計算ユニットが、受信ユニットに一連の測定された放射線画像を受信することを促すように構成され、測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、造影剤が、検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、測定された放射線画像内の血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて減少し、
制御および計算ユニットが、測定された放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するように構成され、人工放射線画像内の前記血管のコントラスト増強が、経時的に変化しないままであり、
制御および計算ユニットが、出力ユニットに人工放射線画像を出力することを促すように構成される、コンピュータシステムをさらに提供する。
【0015】
本発明は、コンピュータのメモリ内へロードされ得るコンピュータプログラムを備えるコンピュータプログラム製品であって、コンピュータに、以下のステップ:
一連の測定された放射線画像を受信するステップであって、測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、造影剤が、検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、測定された放射線画像内の血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて減少する、ステップと、
受信した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、人工放射線画像内の血管のコントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
人工放射線画像を出力するステップと
を実行することを促す、コンピュータプログラム製品をさらに提供する。
【0016】
本発明は、放射線検査法における造影剤の使用であって、放射線検査法は、以下のステップ:
検査対象の血管系の血管内に造影剤を投与するステップと、
検査対象の検査領域の一連の放射線画像を捕捉するステップであって、放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査領域を示し、造影剤が、検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、放射線画像内の血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて低下する、ステップと、
捕捉した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、人工放射線画像内の血管のコントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
人工放射線画像を出力するステップと
を含む、放射線検査法における造影剤の使用をさらに提供する。
【0017】
本発明は、放射線検査法における使用のための造影剤であって、放射線検査法は、以下のステップ:
検査対象の血管系の血管内に造影剤を投与するステップと、
検査対象の検査領域の一連の放射線画像を捕捉するステップであって、放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査領域を示し、造影剤が、検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、放射線画像内の血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて低下する、ステップと、
捕捉した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、人工放射線画像内の血管のコントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップと、
人工放射線画像を出力するステップと
を含む、放射線検査法における使用のための造影剤をさらに提供する。
【0018】
本発明は、造影剤および本発明に従うコンピュータプログラム製品を備えるキットをさらに提供する。
【0019】
本発明の更なる主題および本発明の好ましい実施形態は、従属請求項において、本説明において、および図面において見られる。
【0020】
本発明は、本発明の主題(方法、コンピュータシステム、コンピュータプログラム製品、使用、使用のための造影剤、キット)を区別することなく以下でより具体的に解明される。対照的に、以下の解明は、どのコンテクスト(方法、コンピュータシステム、コンピュータプログラム製品、使用、使用のための造影剤、キット)でそれらが発生するかにかかわらず、本発明のすべての主題に類似的に適用することが意図される。
【0021】
本発明は、検査対象の検査領域の一連の人工放射線画像を生成し、人工放射線画像は、血液プール造影剤が投与されなかったにもかかわらず、血液プール造影剤の投与後の検査領域を示す。言い換えると、本発明は、検査領域の一連の測定された放射線画像に基づいて、血管内造影剤の投与後の検査領域の一連の人工放射線画像をシミュレートする。言い換えると、本発明は、検査対象の検査領域を示す一連の放射線画像に基づいて、もしも血液プール造影剤が投与されていたら検査領域がどのように見えるかを示す一連の人工放射線画像を生成する。したがって、放射線技師は、放射線技師がそのような血管内造影剤を投与することなしに、検査対象に血液プール造影剤が投与されたかのように見える検査対象の検査領域の一連の放射線画像を生成することができる。
【0022】
したがって、「血管内造影剤の投与後の人工放射線画像」という用語は、「血管内造影剤の投与後に検査領域がどのように見えるか/見えることになるかを示す人工放射線画像」という用語と同義である。
【0023】
「画像」という用語は、本説明においては、検査領域の測定された放射線描写および人工的に生成された(計算された)放射線描写の両方について使用される。
【0024】
「検査対象」は、通常、生物、好ましくは哺乳動物、とりわけ好ましくはヒトである。
【0025】
検査対象の一部-検査領域-が、放射線検査の対象となる。画像ボリュームまたは視野(FOV)とも呼ばれる「検査領域」は、特に、放射線画像において撮像されるボリュームである。検査領域は、典型的には、放射線技師によって、例えば、概観画像上で画定される(ローカライザ)。当然ながら、検査領域は、代替的または追加的に、例えば選択されたプロトコルに基づいて、自動的に画定されることも可能である。検査領域は、例えば、肝臓もしくは肝臓の一部、肺もしくは肺の一部、心臓もしくは心臓の一部、大動脈もしくは大動脈の一部、腹部血管、脚/骨盤血管、食道もしくは食道の一部、胃もしくは胃の一部、小腸もしくは小腸の一部、大腸もしくは大腸の一部、腹部もしくは腹部の一部、膵臓もしくは膵臓の一部、および/または検査対象の他の部分であるか、あるいはこれを含み得る。
【0026】
放射線検査は、好ましくは、MRI検査である。したがって、検査領域を捕捉した少なくとも1つの(測定された)放射線画像は、好ましくは、MRI画像であり、少なくとも1つの人工的に生成された放射線画像も同様にMRI画像である。
【0027】
さらに好ましい実施形態において、放射線検査は、CT検査であり、したがって、検査領域を捕捉した少なくとも1つの(測定された)放射線画像は、本実施形態においては、CT画像であり、少なくとも1つの人工的に生成された放射線画像も同様にCT画像である。
【0028】
測定された放射線画像/測定により生成される放射線画像および人工的に生成された放射線画像は、検査対象を通る断面平面を示す2次元画像として提示され得る。放射線画像は、2次元画像のスタックとして提示され得、スタックの個々の画像が異なる断面平面を示す。放射線画像は、3次元画像(3D画像)として提示され得る。より単純な例証のため、本発明は、2次元放射線画像の存在に基づいて本説明内でいくつかの点において解明されるが、本発明を2次元放射線画像に制限することはいかようにも望まない。それぞれ説明されるものを2次元画像のスタックおよび3D画像に適用することが可能であることは当業者には明白である(これに関連して、例えば、M. Reisler, W. Semmler: Magnetresonanztomographie [Magnetic resonance imaging], Springer Verlag, 3rd edition, 2002, ISBN: 978-3-642-63076-7を参照)。
【0029】
通常、測定された放射線画像は、デジタル画像ファイルとして提示される。「デジタル」という用語は、放射線画像が、マシン、一般的にはコンピュータシステムによって処理され得ることを意味する。「処理」は、電子データ処理(EDP)のための既知の方法を意味すると理解される。
【0030】
デジタル画像ファイルは、様々な形式で提示され得る。例えば、デジタル画像ファイルは、ラスターグラフィックスとして符号化され得る。ラスターグラフィックスは、いわゆる画素(ピクセル)または体素(ボクセル)の格子配置からなり、各々の場合においてこれらに色またはグレー値が割り当てられる。したがって、2Dラスターグラフィックスの主な特徴は、画像サイズ(ピクセルで測定される幅および高さ、さらに略式では画像解像度と呼ばれる)および色深度である。色は、通常、デジタル画像ファイルの画素に割り当てられる。画素のために使用されるカラーコーディングは、とりわけ、色空間および色深度に関して規定される。最も単純な場合は、画素が白黒値を格納するバイナリ画像である。画像の場合、その色は、いわゆるRGB色空間(RGBは、原色の赤、緑、および青を意味する)に関して規定され、各画素は、赤色のためのサブピクセル、緑色のためのサブピクセル、および青色のためのサブピクセルの3つのサブピクセルからなる。画素の色は、サブピクセルの色値の重ね合わせ(付加的混合)により生じる。サブピクセルの色値は、例えば、256色ニュアンスに分けられ得、これは階調値と呼ばれ、通常、0~255の範囲に及ぶ。各色チャネルの色ニュアンス「0」が最も暗い。3つすべてのチャネルが階調値0を有する場合、画素は黒に見え、3つすべてのチャネルが階調値255を有する場合、対応する画素は白に見える。本発明を実行するとき、デジタル画像ファイル(放射線画像)は、特定の動作の対象となる。これに関して、動作は、主として画素、または個々の画素の階調値に影響を及ぼす。多数の見込まれるデジタル画像形式およびカラーコーディングが存在する。簡略化のため、本説明においては、現行画像は、特定の数の画素を有するグレースケールのラスターグラフィックスであると仮定され、各画素に画像のグレー値を示す階調値が割り当てられる。しかしながら、このような仮定は、いかようにも限定として理解されないものとする。どのようにして上記説明の教示が、他の画像形式で存在する、および/または色値が異なって符号化される画像ファイルに適用され得るかは、画像処理の分野における当事者には明白である。
【0031】
第1のステップにおいて、一連の測定された放射線画像が受信される。上記測定された放射線画像は、異なる画像取得シーケンスの助けを借りて生成されたT1重み付け、T2重み付け、および/または拡散重み付け描写および/または画像であり得る。
【0032】
一連の測定された放射線画像は、少なくとも2つの放射線画像を含む。
【0033】
「シーケンス」という用語は、時間的なシーケンスを意味し、すなわち、連続的な時間点における検査領域を示す複数の(少なくとも2つの)放射線画像が、測定によって生成される。各画像に時間点が割り当てられるか、または各画像に時間点が割り当てられ得る。通常、上記時間点は、画像が生成された時間点(絶対時間)である。しかしながら、放射線画像に恣意的な時間点(例えば、相対時間点)が割り当てられることも考えられる。
【0034】
当業者は、放射線画像の生成には特定の量の時間がかかることを承知している。画像には、例えば、画像取得の開始の時間点または画像取得の完了の時間点が割り当てられ得る。時間点は、ある放射線画像を別の放射線画像に関連して年代順に置くことを可能にし、放射線画像の時間点は、放射線画像に示される瞬間が別の放射線画像に示される瞬間の前に起きたかまたは後に起きたかを確立することを可能にする。好ましくは、放射線画像は、検査領域のより早期の状態を示す画像が、シーケンス内に、検査領域のより後期の状態を示す画像より前に配置されるように、年代順にシーケンス内に配置される。
【0035】
シーケンス内の2つの直接連続した画像の間のタイムスパンは、好ましくは、そのシーケンス内の直接連続した画像のすべてのペアについて同じであり、すなわち、画像は、好ましくは、一定の画像取得レートで生成されたものである。
【0036】
好ましくは、シーケンスの測定された放射線画像は、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、造影剤は、検査領域内の測定された放射線画像内の血管のコントラスト増強をもたらし、測定された放射線画像内の血管のコントラスト増強は、時間が増大するにつれて低下する。
【0037】
シーケンスは、ネイティブ放射線画像(ネイティブ画像)も含み得、そのようなネイティブ画像は、造影剤の投与なしでの検査領域を示す。
【0038】
投与される造影剤は、細胞外および/または混合した細胞外/細胞内造影剤であり得る。好ましい実施形態において、造影剤は、細胞外造影剤である。さらに好ましい実施形態において、造影剤は、混合した細胞外/細胞内造影剤である。第1のステップにおいて、検査領域の少なくとも1つの第1の放射線画像は、造影剤の投与なしに捕捉され得る(ネイティブ画像)。検査対象は、(更なるステップにおいて)造影剤を投与される。造影剤は、MRI造影剤またはCT造影剤であり得る。好ましくは、造影剤は、ガドブトロール、ガドテリドール、ガドテル酸、ガドペンテト酸、および/またはガドジアミドなどの細胞外MRI造影剤である。更なる細胞外MRI造影剤は、文献に説明されている(例えば、Yu.Dong Xiao et al.:MRI contrast agents: Classification and application(Review), International Journal of Molecular Medicine 38: 1326(2016)を参照)。
【0039】
代替的な実施形態において、造影剤は、例えば、Gd-EOB-DTPA(Primovist(登録商標))、Mn-DPDP(マンガホジピール)、Gd-BOPTA(ガドベン酸メグルミン)、および/またはGd-DTPAメソポルフィリン(ガドフィリン)など、混合した細胞外/細胞内MRI造影剤である。更なる混合した細胞外/細胞内MRI造影剤は、文献に説明されている(例えば、Yu.Dong Xiao et al.:MRI contrast agents: Classification and application(Review), International Journal of Molecular Medicine 38: 1326(2016)を参照)。
【0040】
造影剤は、好ましくは、検査対象の血管内へ、例えば、腕の静脈内へ導入される。そこから、造影剤は、血液循環系に沿って血液と一緒に移動する。
【0041】
「血液循環系」は、ヒトおよび大半の動物の身体内の血液で覆われる経路である。それは、心臓によって、および血管網(心臓血管系、血管系)によって形成される血液の流動系である。
【0042】
血管は、それらの構造およびそれらの機能に基づいて複数のタイプに分けられ得る。動脈は、高圧力下および高流速で血液を輸送する。それらが理由で、血液は、心臓から様々な組織内へと渡る。動脈から分岐するのが細動脈であり、それらは、弁を制御するという役割を果たし、血管を収縮させる(血管収縮)または血管を拡張させる(血管拡張)ことができる強力な筋肉壁を有する。それらがさらに分岐して毛細血管を形成し、これらの毛細血管は、血液と組織との間で液体、栄養、電解質、ホルモン、および他の物質の交換を実施し、低分子量の物質に対して透過性のある薄い血管壁を有する。一部の器官(肝臓、脾臓)では、毛細血管は広がり、内皮は不連続になる。つまり、洞様毛細血管について言及している。小静脈は、薄い血管壁しか有さず、それらは、毛細血管から血液を収集して、それを静脈に供給し、静脈は、末梢からの血液を心臓へ戻すように輸送する。細胞外造影剤は、検査対象、造影剤、および投与量に依存するある時間期間にわたって、血液循環系内を循環するが、それは、腎臓を介して血液循環系から連続的に除去される。
【0043】
造影剤が、検査対象の血管系内に、広がる、および/またはこれを循環する間、血管系の少なくとも1つの放射線画像またはその一部分が捕捉される。好ましくは、少なくとも1つの放射線画像は、検査領域内に位置する血管系の一部分について捕捉される。血管系またはその一部分における造影剤の広がりの異なる相(例えば、分布相、動脈相、静脈相、および/または同様のもの)を示す複数の放射線画像が捕捉され得る。複数の画像の捕捉は、血管タイプのその後の区別を可能にする。
【0044】
測定された放射線画像は、血管系またはその一部分、特に検査領域内に位置する部分を、周囲組織と比較してコントラスト増強を伴って示す。好ましくは、少なくとも1つの第1の放射線画像は、コントラスト増強を伴って動脈を示す(動脈相)一方で、少なくとも1つの第2の放射線画像は、コントラスト増強を伴って静脈を示す(静脈相)。
【0045】
測定された放射線画像は、人工放射線画像の生成のための基礎として使用される。人工放射線画像は、好ましくは、測定された放射線画像と同じ検査領域を示す。検査領域の複数の測定された放射線画像が造影剤の投与後の異なる時間点において捕捉されていた場合、その後の放射線画像は、造影剤が徐々に血管から除去されているため、特に、周囲組織と比較してますますコントラストが低下した状態で血管を示す。対照的に、人工放射線画像は、周囲組織と比較して変わらずに高いコントラストを伴って血管を示す。
【0046】
測定された放射線画像は、コンピュータシステムの助けを借りた人工放射線画像の生成のための基礎として使用される。ちょうど1つの人工放射線画像が、各々の測定された放射線画像から生成されることが考えられ、この人工放射線画像は、測定された放射線画像と同じ検査領域を示し、またこの人工放射線画像は、測定された放射線画像と同じ時間点における検査領域を示し、違いは、測定された放射線画像におけるコントラスト増強は経時的に減少するが、コントラスト増強は、人工的に生成された放射線画像においては変わらないままである(減少しない)ということである。
【0047】
これは、異なるやり方で達成され得る。
【0048】
好ましい実施形態において、予測モデルが使用される。予測モデルは、経時的に低下する血管のコントラスト増強を補償するために参照データに基づいて訓練されている。予測モデルは、細胞外または混合した細胞外/細胞内造影剤の投与後の検査対象の検査領域を示す一連の測定された放射線画像に基づいて、血液プール造影剤の投与後の検査領域を示す一連の人工放射線画像を生成するために、参照データに基づいて訓練されている。予測モデルは、造影剤の投与後の異なる時間点における検査領域内の血管を示す一連の測定された放射線画像について、コントラスト増強を伴って、および周囲組織と比較して経時的に変わらないコントラストで、検査領域内の血管を示す一連の人工放射線画像を生成するために、参照データに基づいて訓練されている。
【0049】
そのような予測モデルの訓練および検証のために使用される参照データは、通常、細胞外または混合した細胞外/細胞内造影剤の投与後の検査領域の測定された放射線画像を含む。参照データは、血液プール造影剤の投与後の検査領域の放射線画像をさらに含み得る。そのような参照データは、例えば、臨床研究において確認され得る。そのような臨床研究において使用され得る血管内造影剤は、例えば、フェルモキシトールである。フェルモキシトールは、経口療法を実行することが不可能なときに慢性腎疾患における鉄欠乏の非経口治療を認可されているコロイド鉄-炭水化物複合体である。フェルモキシトールは、静脈注射として投与される。フェルモキシトールは、商品名Rienso(登録商標)またはFerahme(登録商標)の下、静脈注射用の溶液として市販されている。鉄-炭水化物複合体は、超常磁性特性を示し、したがって、MRI検査においてコントラスト増強のために使用され得る(認可外)(例えば、L.P. Smits et al.:Evaluation of ultrasmall superparamagnetic iron-oxide(USPIO) enhanced MRI with ferumoxytol to quantify arterial wall inflammation, Atherosclerosis 2017, 263: 211-218を参照)。したがって、本発明は、細胞外または混合した細胞外/細胞内造影剤の投与後の測定された放射線画像に基づいた、血液プール造影剤の投与後の人工放射線画像の予測のための訓練データセットの生成のための血液プール造影剤として、フェルモキシトール、または静脈注射のために認可されている別の匹敵する血液プール造影剤の使用についてもさらに提供する。例えばAblavar(登録商標)が依然として市販されていた時代からの、血管内造影剤の投与後のすでに存在する放射線画像を、訓練データとして使用することも考えられる。
【0050】
しかしながら、参照データは、測定された放射線画像において経時的に減少する血管のコントラスト増強が画像処理法によって後から補償されている、人工的に生成された放射線画像も含み得る。そのような画像処理法は、当業者には知られている(例えば、M. A. Joshi: Digital Image Processing - An Algorithmic Approach, PHI Learning Private Limited, 2nd Edition 2018, ISBN: 978-93-81472-58-7を参照)。
【0051】
予測モデルは、測定された放射線画像と血液プール造影剤の投与後の放射線画像または画像処理法を用いて処理される画像との関係性を学習するために教師あり学習プロセスにおいて訓練され得る。この学習された関係性は、次いで、新規の測定された放射線画像のための人工放射線画像を計算するために使用され得、上記人工放射線画像は、細胞外造影剤または混合した細胞外/細胞内造影剤が測定された放射線画像のために投与されたにもかかわらず、検査領域が血液プール造影剤の投与後にどのように見えるかを示し、検査領域内の血管は、周囲組織と比較して経時的に変わらない強化したコントラストを示す。予測モデルは、こうして、測定された放射線画像において経時的に低下する血管のコントラスト増強を補償するように訓練される。
【0052】
予測モデルは、例えば、人工ニューラルネットワークであり得るか、またはそのようなネットワークを含み得る。
【0053】
そのような人工ニューラルネットワークは、入力ニューロン(ノード)を有する第1の層、少なくとも1つの出力ニューロン(ノード)を有する第Nの層、および第N-2の内層という、処理要素の少なくとも3つの層を含み、Nは、自然数であり、2よりも大きい。
【0054】
入力ニューロンは、測定された(デジタル)放射線画像を入力値として受信する役割を果たす。通常、デジタル放射線画像の各ピクセルまたはボクセルのために1つの入力ニューロンが存在する。追加の入力値(例えば、検査領域に関する情報、検査対象に関する情報、および/または放射線画像を生成するときに有効にされる条件に関する情報)のための追加の入力ニューロンが存在し得る。
【0055】
そのようなネットワークにおいて、出力ニューロンは、人工放射線画像を出力(提供)する役割を果たす。
【0056】
入力ニューロンと出力ニューロンとの間の層の処理要素は、既定の関連性重みを有する既定のパターンで互いに接続される。
【0057】
好ましくは、人工ニューラルネットワークは、いわゆる畳み込みニューラルネットワーク(略してCNN)である。
【0058】
畳み込みニューラルネットワークは、行列の形態にある入力データを処理することができる。これにより、行列(例えば、幅×高さ×色チャネル)として表されるデジタル放射線画像を入力データとして使用することを可能にする。対照的に、例えば、多層パーセプトロン(MLP)の形態にある、通常のニューラルネットワークは、入力としてベクトルを必要とし、すなわち、入力として放射線画像を使用することを必要とし、放射線画像のピクセルまたはボクセルは、長いチェーン内に連続してロールアウトされなければならない。その結果、通常のニューラルネットワークは、例えば、画像内の対象物の位置から独立して放射線画像内の対象物を認識することができない。画像内の異なる位置における同じ対象物は、完全に異なる入力ベクトルを有する。
【0059】
CNNは、交互に繰り返されるフィルタ(畳み込み層)およびアグリゲーション層(プーリング層)から、ならびに、最後に、「通常の」完全に接続されたニューロン(緻密/全結合層)の1つの層または複数の層から、本質的になる。
【0060】
シーケンス(複数の放射線画像の時間シーケンス)を分析するとき、空間および時間は、等価の次元として取り扱われ、また、例えば、3D畳み込みにより処理され得る。これは、例えば、Baccouche et al.(例えば、Sequential Deep Learning for Human Action Recognition; International Workshop on Human Behavior Understanding, Springer 2011, pages 29-39を参照)、およびJi et al.(3D Convolutional Neural Networks for Human Action Recognition, IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, 35(1), 221-231)による論文に示されている。さらには、時間および空間を担う異なるネットワークを訓練すること、ならびに、例えば、Karpathy et al.(例えば、Large-scale Video Classification with Convolutional Neural Networks; Proceedings of the IEEE conference on Computer Vision and Pattern Recognition, 2014, pages 1725-1732を参照)、およびSimonyan & Zisserman(Two-stream Convolutional Networks for Action Recognition in Videos; Advances in Neural Information Processing Systems, 2014, pages 568-576)による刊行物に説明されるように、最後に特徴を融合させることが可能である。
【0061】
リカレントニューラルネットワーク(RNN)は、層同士のフィードバック接続を含む人工ニューラルネットワークの仲間である。RNNは、ニューラルネットワークの異なる部分を介したパラメータデータの共通利用により時系列データのモデル化を可能にする。RNNのアーキテクチャは、サイクルを含む。RNNからの出力データの少なくとも一部分がシーケンス内の後続の入力を処理するためのフィードバックとして使用されるため、サイクルは、将来の時間点における独自の値に対する変数の現在の値の影響を表す。
【0062】
詳細は、先行技術(例えば、S. Khan et al.:A Guide to Convolutional Neural Networks for Computer Vision, Morgan & Claypool Publishers 2018, ISBN 1681730227, 9781681730226を参照)から得られ得る。
【0063】
ニューラルネットワークの訓練は、例えば、バックプロパゲーション法を用いて実行され得る。ネットワークに関するここでの狙いは、所与の出力ベクトルへの所与の入力ベクトルのマッピングの最大信頼性である。マッピング品質は、誤差関数によって説明される。目標は、誤差関数を最小限にすることである。バックプロパゲーション法の場合、人工ニューラルネットワークは、関連性重みの変更により教示される。
【0064】
訓練された状態では、処理要素同士の関連性重みは、測定された放射線画像と、血液プール造影剤の投与後の放射線画像をシミュレートする人工的に生成された放射線画像との関係性に関する情報を含む。この情報は、少なくとも1つの新規の測定された放射線画像について少なくとも1つの人工放射線画像を予測するために使用され得る。
【0065】
交差検証法は、データを訓練データセットおよび検証データセットに分けるために使用され得る。訓練データセットは、ネットワーク重みのバックプロパゲーション訓練において使用される。検証データセットは、訓練されたネットワークが未知の(新規の)放射線画像に適用され得る予測の精度をチェックするために使用される。
【0066】
しかしながら、血液プール造影剤は、訓練および検証データセットを生成するために、必ずしも投与される必要がない/投与されていない。異なる造影剤、好ましくは、細胞外造影剤が、訓練および検証データセットを生成するために使用されることも考えられる。造影剤は、たとえそれが血液プール造影剤でなくても、特定の時間にわたって検査対象の血管系内に留まる。この時間は、血管が周囲組織と比較して高いコントラストを有する検査領域を示す放射線画像の(測定ベースの)捕捉に十分であり得る。これらの捕捉画像は、次いで、経時的なコントラスト増強の減少を補償するための任意の処理の後、予測モデルを訓練および検証するために使用され得る。
【0067】
すでに示されるように、検査対象、検査領域、および/または検査条件に関する更なる情報は、予測モデルの訓練および検証のため、ならびに予測モデルを使用した予測の生成のために使用され得る。
【0068】
検査対象に関する情報の例は、性別、年齢、体重、身長、既往症、すでに摂取した薬剤の性質および持続時間および量、血圧、中心静脈圧、呼吸速度、血清アルブミン、総ビリルビン量、血糖値、鉄含量、肺活量、および同様のものである。これらは、例えば、データベースまたは電子患者ファイルから得ることができる。
【0069】
検査領域に関する情報の例は、既往歴、手術、部分切除術、肝臓移植、肝臓鉄、脂肪肝、および同様のものである。
【0070】
好ましくは、予測モデルは、異なる血管を互いに区別するように、例えば、動脈を静脈と区別するように教示される。これは、例えば、放射線技師が訓練に使用される放射線画像内でそれぞれの血管を異なってマークすることにより行われ得る。予測モデルが、造影剤の投与後の一連の放射線画像における動態に基づいて異なる血管を互いから区別することを学習することも考えられる。ボーラスの形態での投与の後、造影剤は、直ちにすべての血管内に同じ濃度で存在するわけではなく、血流と共に投与の部位から血管系内に広がる。投与の部位に応じて、最初に通過されるものは、動脈または静脈である。予測モデルは、こうして、投与された造影剤の動的挙動に基づいて、異なる血管を互いから区別することを学習し得る。
【0071】
複数の放射線画像が造影剤の投与後の異なる時間点において捕捉され、上記複数の放射線画像が組み合わされて、血管が周囲組織と比較して均一かつ高いコントラストを示す1つの画像を形成することも考えられる。
【0072】
故に、人工放射線画像はまた、造影剤の投与後の異なる時間点における検査領域を示す複数の測定された放射線画像を合算することによって生成され得る。例えば、第1の測定された放射線画像が動脈相を示す一方で、第2の測定された放射線画像が静脈相を示すことが考えられる。これらの2つの測定された放射線画像(およびおそらくは、更なる放射線画像)は、合算され得る。合算は、ピクセルごとまたはボクセルごとに行われ得る。例えば、ピクセルのグレー値が合算され得る(ペアで)。後続の正規化は、グレー値が通常範囲内(例えば、0~255)に戻ることを確実にし得る。
【0073】
検査対象が時間的に連続した放射線画像の取得中に動かなかった場合、1つの画像のピクセルまたはボクセルは、次の画像および/または前の画像のピクセルまたはボクセルに正確に対応し、対応するピクセルまたはボクセルは、異なる時間点における同じ検査領域を示す。そのような場合、人工放射線画像は、ペアごとの対応するピクセルまたはボクセルを用いて本説明に説明される数学操作を実行することによって計算され得る。検査対象が時間的に連続した放射線画像間で動いた場合、説明した計算が実行される前に運動補正が実施されなければならない。運動補正法は、先行技術に説明される(例えば、欧州特許第3118644号明細書、欧州特許第3322997号明細書、米国特許出願公開第20080317315号明細書、米国特許出願公開第20170269182号明細書、米国特許出願公開第20140062481号明細書、欧州特許第2626718号明細書を参照)。
【0074】
本発明に従って生成される人工放射線画像は、モニタに表示され得、プリンタに出力され得、および/またはデータ記憶媒体に記憶され得る。
【0075】
好ましくは、人工放射線画像は、対応する測定された放射線画像に加えて、または測定された放射線画像の代わりに、準リアルタイムで自動的に生成および出力される(好ましくは表示される)。
【0076】
血管モデルが、測定された放射線画像に基づいて生成されることも考えられる。血管モデルは、検査対象またはその一部(好ましくは検査領域)のデジタル表現であり、この表現内でマークされている血管によるものであり得る構造体、またはこの表現内にのみ存在する血管によるものであり得る構造体を伴う。好ましくは、血管モデルは、血管の空間的コースがマーク/記録されている3次元表現である。好ましくは、異なるタイプの血管(例えば、動脈および静脈)は、異なってマークされている。
【0077】
好ましい実施形態において、血管モデルは、少なくとも1つの測定されたネイティブ画像および造影剤の投与後の少なくとも1つの測定された放射線画像に基づいて生成される。少なくとも1つのネイティブ画像は、造影剤なしの検査対象の検査領域を示す。造影剤の投与後の少なくとも1つの放射線画像は、好ましくは、コントラスト増強を呈する領域内に血管の一部またはすべてを伴って、同じ領域を示す。2つの画像を比較することにより、血管によるものであり得る放射線画像内の構造体を識別することが可能である。
【0078】
血管モデルは、造影剤の投与後の測定された放射線画像からのネイティブ画像の減算によって、および後続の正規化によって生成され得る。減算は、ピクセルごとまたはボクセルごとに行われ得る。例えば、ピクセルのグレー値は、互いから減算され得る。後続の正規化は、グレー値が通常範囲(例えば、0~255)に戻ること、および負のグレー値が存在しないことを確実にする。
【0079】
異なる時間点における血管内の造影剤の広がりを示す、造影剤の投与後の複数の放射線画像が存在する場合、異なる血管タイプ(例えば、動脈および静脈)を識別することが可能である。これにより、血管モデルにおける血管タイプの区別および異なるマーキングを可能にする。そのような場合、血管モデルはまた、広がる造影剤の投与後の複数の測定された放射線画像を合算することによって、および後続の正規化によって生成され得る。合算は、好ましくは、ピクセルごとまたはボクセルごとに行われる。例えば、ピクセルのグレー値がペアで合算され得る。後続の正規化は、グレー値が通常範囲内(例えば、0~255)に戻ることを確実にする。
【0080】
好ましくは、血管によるものではない可能性のある血管モデル内の構造体は、除去され、例えば、血管が明るく表示される場合、しきい値未満のグレー値を有するすべてのピクセル(またはボクセル)は、グレー値ゼロに設定され得、対照的に、血管が暗く表示される場合、しきい値を上回るグレー値を有するすべてのピクセル(またはボクセル)は、最高グレー値(例えば、255)に設定され得る。この手順を用いて、血管から生じたものではない構造体は、(コントラストが)低減されるか、または完全に除去される。
【0081】
血管モデルはまた、他のセグメンテーション法により、測定された放射線画像から獲得され得る。セグメンテーション法は、文献において広く説明される。以下の刊行物が例として挙げられ得る:F. Conversano et al.:Hepatic Vessel Segmentation for 3D Planning of Liver Surgery, Acad Radiol 2011, 18: 461-470、S. Moccia et al.:Blood vessel segmentation algorithms - Review of methods, datasets and evaluation metrics, Computer Methods and Programs in Biomedicine 158(2018) 71-91, M. Marcan et al.:Segmentation of hepatic vessels from MRI images for planning of electroporation-based treatments in the liver, Radiol Oncol 2014; 48(3): 267-281、T. A. Hope et al.:Improvement of Gadoxetate Arterial Phase Capture With a High Spatio-Temporal Resolution Multiphase Three-Dimensional SPGR-Dixon Sequence, Journal of Magnetic Resonance Imaging 38: 938-945(2013)、国際公開第2009/135923号、米国特許第6754376B1号明細書、国際公開第2014/162273号、国際公開第2017/139110号、国際公開第2007/053676号、欧州特許出願公開第2750102A1号明細書)。
【0082】
好ましくは、血管モデルは、造影剤の投与後の少なくとも1つの測定された放射線画像および/または少なくとも1つのネイティブ放射線画像と同じデジタル(データ)形式で存在する。同じデジタル形式が存在する場合、計算は、関連ファイルを使用してより容易に実施され得、特に、血管モデルは、測定された放射線画像からより容易に生成され得る。
【0083】
血管モデルは、人工放射線画像として、直接的に使用および出力され得る。しかしながら、1つまたは複数の測定された放射線画像が、1つまたは複数の人工放射線画像を生成するために、血管モデルに重ね合わせられることも考えられる。例えば、ネイティブ画像は、ネイティブ画像内の血管を示すために重ね合わせられ得る。好ましくは、異なる血管は、互いから独立して、フェードインおよびフェードアウトされ得る。類似的に、造影剤の投与後の少なくとも1つの測定された放射線画像もまた、血管モデルに重ね合わせられ得る。造影剤の投与後の放射線画像の重ね合わせは、例えば、小焦点の肝病変が肝臓のMRI検査において識別されることになる場合に有利である(例えば、P. Bannas: Combined Gadoxetic Acid and Gadofosveset Enhanced Liver MRI: A Feasibility and Parameter Optimization Study, Magnetic Resonance in Medicine 75:318-328(2016)を参照)。MRI画像内で肝病変を血管と区別することは困難であり得る。これは、本発明に従う血液プール造影剤のシミュレーションによって改善され得る。
【0084】
血管モデルを少なくとも1つの測定された放射線画像に重ね合わせるとき、異なるタイプの血管(例えば、動脈および静脈)に対して異なる色値を選択すること(疑似カラーディスプレイ)が好ましい。例えば、人工放射線画像において、第1の色値(例えば、赤色のための色値)により動脈を、および第2の色値(例えば、青色のための色値)により静脈をマークすることが可能である。
【0085】
好ましくは、血管モデルにおいて血管を描写するピクセルまたはボクセルは、例えば(仮想)スライダを用いて、少なくとも1つの測定された放射線画像内へ連続してフェードインされ得、こうして生成される人工放射線画像内の対応するピクセルまたはボクセルは、フェードイン中の血管モデルのピクセルまたはボクセルの色値をますます前提とする。血管タイプが互いから独立して(例えば、静脈から独立して動脈が、および/または動脈から独立して静脈が)フェードインされ得ることも考えられる。血管から生じる構造体または血管タイプをオンおよびオフに切り替えるオプションもまた、それらをフェードインすることの代わりに、またはそれらをフェードインすることに加えて、考えられる。
【0086】
このやり方では、放射線技師は、放射線画像内の構造体を割り当てることができるように、測定された放射線画像内の血管または血管タイプを可視化することができる。
【0087】
本発明の更なる主題および実施形態:
実施形態1
少なくとも1つの放射線画像を受信するステップであって、少なくとも1つの放射線画像が検査対象の検査領域を示す、ステップと、
少なくとも1つの放射線画像に基づいて少なくとも1つの人工放射線画像を計算するステップであって、少なくとも1つの人工放射線画像の血管が、周囲組織と比較してコントラスト増強を伴って描写される、ステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
を含む、コンピュータ実施の方法。
【0088】
実施形態2
少なくとも1つの測定された放射線画像を受信するステップであって、少なくとも1つの測定された放射線画像が検査対象の検査領域を示す、ステップと、
少なくとも1つの測定された放射線画像を予測モデルに供給するステップであって、予測モデルが、検査対象の検査領域を示す少なくとも1つの測定された放射線画像について少なくとも1つの人工放射線画像を生成するために、教師あり学習プロセスにおいて参照データに基づいて訓練されており、少なくとも1つの人工放射線画像が、血液プール造影剤の投与後の検査領域を示す、ステップと、
予測モデルから少なくとも1つの人工放射線画像を受信するステップであって、少なくとも1つの人工放射線画像が、血液プール造影剤の投与後の検査領域を示す、ステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
をさらに含む、実施形態1に記載の方法。
【0089】
実施形態3
少なくとも1つの測定された放射線画像を受信するステップであって、少なくとも1つの測定された放射線画像が、放射線画像であるか、または造影剤の投与後の検査対象の検査領域を示す画像を含む、ステップと、
少なくとも1つの測定された放射線画像を予測モデルに供給するステップであって、予測モデルが、造影剤の投与後の検査対象の検査領域を示す少なくとも1つの測定された放射線画像について少なくとも1つの人工放射線画像を生成するために、教師あり学習プロセスにおいて参照データに基づいて訓練されており、少なくとも1つの人工放射線画像が、血液プール造影剤の投与後の検査領域を示す、ステップと、
予測モデルから少なくとも1つの人工放射線画像を受信するステップであって、少なくとも1つの人工放射線画像が、血液プール造影剤の投与後の検査領域を示す、ステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
をさらに含む、上の実施形態1または2に記載の方法。
【0090】
実施形態4
複数の測定された放射線画像を受信するステップであって、放射線画像が、造影剤の投与後の異なる時間点における検査領域を示す、ステップと、
複数の測定された放射線画像を予測モデルに供給するステップであって、予測モデルが、造影剤の投与後の異なる時間点における検査領域を示す複数の測定された放射線画像についての少なくとも1つの人工放射線画像を生成するために、教師あり学習プロセスにおいて参照データに基づいて訓練されており、少なくとも1つの人工放射線画像が、コントラスト増強を伴って、および周囲組織と比較して経時的に変化しないコントラストを伴って検査領域内の血管を示す、ステップと、
予測モデルから少なくとも1つの人工放射線画像を受信するステップであって、少なくとも1つの人工放射線画像が、コントラスト増強を伴って、および周囲組織と比較して経時的に変化しないコントラストを伴って検査領域内の血管を示す、ステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
をさらに含む、上の実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
【0091】
実施形態5
複数の測定された放射線画像を受信するステップであって、放射線画像が、造影剤の投与後の異なる時間点における検査領域を示し、検査領域内の血管が、周囲組織と比較してコントラスト増強を伴って描写され、コントラスト増強が経時的に減少する、ステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を生成するステップであって、少なくとも1つの人工放射線画像が同じ検査領域を示し、検査領域内の血管が、周囲組織と比較してコントラスト増強を伴って描写され、コントラスト増強が経時的に減少しない、ステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
をさらに含む、上の実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
【0092】
実施形態6
複数の測定された放射線画像を受信するステップであって、放射線画像が、造影剤の投与後の異なる時間点における検査領域を示す、ステップと、
受信した放射線画像を合算することによって人工放射線画像を生成するステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
をさらに含む、上の実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
【0093】
実施形態7
複数の測定された放射線画像を受信するステップであって、放射線画像が、造影剤の投与前および/または後の異なる時間点における検査領域を示す、ステップと、
受信した放射線画像から血管モデルを生成するステップであって、血管モデルが、検査領域の表現であり、検査領域内の血管によるものとされ得る構造体が、血管モデル内でマークされている、ステップと、
血管モデルへの少なくとも1つの測定された放射線画像の重ね合わせによって少なくとも1つの人工放射線画像を生成するステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
をさらに含む、上の実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
【0094】
実施形態8
検査領域のネイティブ放射線画像は、血管モデルに重ね合わせられる、上の実施形態7に記載の方法。
【0095】
実施形態9
検査領域の少なくとも1つの測定された放射線画像は、血管モデルに重ね合わせられ、少なくとも1つの測定された放射線画像は、混合した細胞外/細胞内造影剤、好ましくは、肝胆道系造影剤の投与後の検査領域を示す、上の実施形態7に記載の方法。
【0096】
実施形態10
少なくとも1つの人工放射線画像内の異なる血管は、異なってマークされる、上の実施形態1~9のいずれかに記載の方法。
【0097】
実施形態11
受信ユニットと、
制御および計算ユニットと、
出力ユニットと、を備えるコンピュータシステムであって、
制御および計算ユニットは、受信ユニットに少なくとも1つの放射線画像を受信することを促すように構成され、少なくとも1つの放射線画像は、検査対象の検査領域を示し、
制御および計算ユニットは、少なくとも1つの放射線画像に基づいて少なくとも1つの人工放射線画像を計算するように構成され、少なくとも1つの人工放射線画像の血管が、周囲組織と比較してコントラスト増強を伴って描写され、
制御および計算ユニットは、出力ユニットに少なくとも1つの人工放射線画像を出力することを促すように構成される、コンピュータシステム。
【0098】
実施形態12
制御および計算ユニットは、受信ユニットに検査対象の血管系または血管系の一部分の少なくとも1つの第1の測定された放射線画像を受信することを促すように構成され、
制御および計算ユニットは、少なくとも1つの第1の測定された放射線画像に基づいて血管系またはその一部分のモデルを生成するように構成され、
制御および計算ユニットは、受信ユニットに検査対象の検査領域の少なくとも1つの第2の測定された放射線画像を受信することを促すように構成され、
制御および計算ユニットは、少なくとも1つの第2の放射線画像への血管系またはその一部分のモデルの重ね合わせによって、少なくとも1つの第3の放射線画像を生成するように構成され、
制御および計算ユニットは、出力ユニットに少なくとも1つの第3の放射線画像を出力することを促すように構成される、実施形態11に記載のコンピュータシステム。
【0099】
実施形態13
コンピュータのメモリ内へロードされ得るコンピュータプログラムを備えるコンピュータプログラム製品であって、コンピュータに、以下のステップ:
少なくとも1つの放射線画像を受信するステップであって、少なくとも1つの放射線画像が検査対象の検査領域を示す、ステップと、
少なくとも1つの放射線画像に基づいて少なくとも1つの人工放射線画像を計算するステップであって、少なくとも1つの人工放射線画像の血管が、周囲組織と比較してコントラスト増強を伴って描写される、ステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
を実行することを促す、コンピュータプログラム製品。
【0100】
実施形態14
放射線検査法における造影剤の使用であって、放射線検査法は、以下のステップ:
検査対象の血管系の血管内に造影剤を投与するステップと、
造影剤の投与後の血管系またはその一部分の少なくとも1つの放射線画像を捕捉するステップと、
少なくとも1つの放射線画像に基づいて血管系またはその一部分のモデルを生成するステップと、
少なくとも1つの放射線画像への血管系またはその一部分のモデルの重ね合わせによって、少なくとも1つの人工放射線画像を生成するステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
を含む、造影剤の使用。
【0101】
実施形態15
放射線検査法における使用のための造影剤であって、放射線検査法は、以下のステップ:
検査対象の血管系の血管内に造影剤を投与するステップと、
造影剤の投与後の血管系またはその一部分の少なくとも1つの放射線画像を捕捉するステップと、
少なくとも1つの放射線画像に基づいて血管系またはその一部分のモデルを生成するステップと、
少なくとも1つの放射線画像への血管系またはその一部分のモデルの重ね合わせによって、少なくとも1つの人工放射線画像を生成するステップと、
少なくとも1つの人工放射線画像を出力するステップと
を含む、造影剤。
【0102】
実施形態16
造影剤および上の実施形態13に記載の本発明によるコンピュータプログラム製品を備えるキット。
【0103】
本発明は、図面に示される特徴または特徴の組み合わせに本発明を限定するいかなる意図もなしに、図面を参照して以後詳細に解明される。
【0104】
図1は、本発明によるコンピュータシステムの1つの実施形態を、概略形態で、および例として、示す。コンピュータシステム(10)は、受信ユニット(11)、制御および計算ユニット(12)、ならびに出力ユニット(13)を備える。
【0105】
“コンピュータシステム”は、プログラム可能な計算ルールを用いてデータを処理する電子データ処理システムである。そのようなシステムは、通常、多くの場合“コンピュータ”とも称される制御および計算ユニットを備え、上記ユニットは、論理動作を実行するためのプロセッサ、およびコンピュータプログラムを読み込むためのメモリ、ならびに周辺機器も備える。
【0106】
コンピュータ技術において、“周辺機器”は、コンピュータに接続され、コンピュータの制御のために、ならびに/または入力および出力デバイスとして使用されるすべてのデバイスを指す。それらの例は、モニタ(スクリーン)、プリンタ、スキャナ、マウス、キーボード、ジョイスティック、ドライブ、カメラ、マイク、スピーカなどである。内部ポートおよび拡張カードもまた、コンピュータ技術においては周辺機器と見なされる。
【0107】
現代のコンピュータシステムは、頻繁に、デスクトップPC、ポータブルPC、ラップトップ、ノートブック、ノートブックおよびタブレットPC、ならびにハンドヘルドと呼ばれるもの(例えば、スマートフォン)に分けられ、これらのシステムのすべてが、本発明を実施するために使用され得る。
【0108】
コンピュータシステムへの入力(例えば、ユーザによる制御のため)は、例えば、キーボード、マウス、マイク、接触感知ディスプレイ、および/または同様のものなど、入力手段を介して達成される。出力は、特に、モニタ(スクリーン)、プリンタ、および/またはデータ記憶媒体であり得る、出力ユニット(13)を介して達成される。
【0109】
本発明によるコンピュータシステム(10)は、測定された放射線画像を受信するように、および受信した放射線画像に基づいて人工放射線画像を生成(計算)するように構成される。
【0110】
制御および計算ユニット(12)は、受信ユニット(11)および出力ユニット(13)の制御、様々なユニット間のデータおよび信号の流れの調整、放射線画像の処理、ならびに人工放射線画像の生成の役割を果たす。複数の制御および計算ユニットが存在することが考えられる。
【0111】
受信ユニット(11)は、放射線画像を受信する役割を果たす。放射線画像は、例えば、磁気共鳴画像法システムから伝送され得るか、またはコンピュータ断層撮影システムから伝送され得るか、またはデータ記憶媒体から読み出され得る。磁気共鳴画像法システムまたはコンピュータ断層撮影システムは、本発明によるコンピュータシステムの構成要素であり得る。しかしながら、本発明によるコンピュータシステムが磁気共鳴画像法システムまたはコンピュータ断層撮影システムの構成要素であることも考えられる。放射線画像は、ネットワーク接続または直接接続を介して伝送され得る。放射線画像は、無線通信(WLAN、ブルートゥース、モバイル通信、および/または同様のもの)を介して、および/またはケーブルを介して伝送され得る。複数の受信ユニットが存在することが考えられる。データ記憶媒体もまた、本発明によるコンピュータシステムの構成要素であり得るか、または、例えばネットワークを介して、本発明によるコンピュータシステムに接続され得る。複数のデータ記憶媒体が存在することが考えられる。
【0112】
放射線画像、おそらくは更なるデータ(例えば、検査対象に関する情報、画像取得パラメータ、および/または同様のものなど)は、受信ユニットによって受信され、制御および計算ユニットへ伝送される。
【0113】
制御および計算ユニットは、受信したデータに基づいて人工放射線画像を生成するように構成される。
【0114】
出力ユニット(13)を介して、人工放射線画像は、表示され得るか(例えば、モニタ上に)、出力され得るか(例えば、プリンタにより)、またはデータ記憶媒体に記憶され得る。複数の出力ユニットが存在することが考えられる。
【0115】
図2は、例として、および概略形態において、本発明による方法(100)の1つの実施形態、または本発明によるコンピュータプログラム製品によって実行されるステップをフローチャートの形式で示す。
【0116】
ステップは、
(110)一連の測定された放射線画像を受信するステップであって、測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、造影剤が、検査領域内の血管のコントラスト増強をもたらし、測定された放射線画像内の血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて減少する、ステップ、
(120)受信した放射線画像に基づいて一連の人工放射線画像を計算するステップであって、人工放射線画像内の血管のコントラスト増強が、経時的に変化しないままである、ステップ、
(130)人工放射線画像を出力するステップ
である。
【0117】
図3は、例として、および概略形態において、本発明による方法(200)の好ましい実施形態、または本発明によるコンピュータプログラム製品によって実行されるステップをフローチャートの形式で示す。
【0118】
ステップは、
(210)一連の測定された放射線画像を受信するステップであって、測定された放射線画像が、造影剤の投与後の異なる連続的な時間点における検査対象の検査領域を示し、造影剤が、検査領域の測定された放射線画像内に血管のコントラスト増強をもたらし、測定された放射線画像内の血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて低下する、ステップ、
(220)放射線画像を人工ニューラルネットワークに供給するステップであって、人工ニューラルネットワークが、放射線画像内の経時的に低下する血管のコントラスト増強を補償するために教師あり学習プロセス内の参照データに基づいて訓練されている、ステップ、
(230)人工ニューラルネットワークから一連の計算された放射線画像を受信するステップであって、計算された放射線画像が、異なる連続的な時間点における検査領域を示し、計算された放射線画像内の血管が、コントラスト増強を伴って描写され、血管のコントラスト増強が、時間が増大するにつれて一定のままである、ステップ、
(240)計算された放射線画像を出力するステップ
である。
【0119】
図4(a)、(b)、および(c)は、例として、および概略形態において、検査対象の腕の静脈内への造影剤の静脈内投与後の肝臓の放射線画像を示す。図4(a)、図4(b)、および図4(c)において、肝臓(L)を通る同じ断面は、常に、異なる連続的な時間点において描写される。図4(a)、図4(b)、および図4(c)に入力される参照符号は、図4(a)、図4(b)、および図4(c)のすべてに当てはまり、それらは、明白性の目的のためだけに各々一度だけ入力される。
【0120】
図4(a)、図4(b)、および図4(c)において、動脈(A)および静脈(V)は、周囲組織(肝臓細胞)と比較してコントラスト増強を伴って描写される。しかしながら、コントラスト増強は、図4(a)から図4(b)を通って図4(c)へと経時的に減少する。
【0121】
図5は、概略形態において例として、予測モデル(PM)の助けを借りた、測定された放射線画像に基づいた人工放射線画像の生成を示す。図5に描写される肝臓の放射線画像(a)、(b)、および(c)は、図4(a)、図4(b)、および図4(c)に描写される肝臓の画像に対応する。上記測定された放射線画像(a)、(b)、および(c)は、予測モデル(PM)に供給される。予測モデルは、3つの測定された放射線画像(a)、(b)、および(c)から3つの人工放射線画像(a´)、(b´)、および(c´)を生成する。血管(動脈Aおよび静脈V)のコントラスト増強が、測定された放射線画像において経時的に低下する一方で、それは、人工的に生成された放射線画像においては経時的に変化しないままである。
【0122】
図6(a)、図6(b)、および図6(c)は、例として、および概略形態において、検査対象の腕の静脈内への造影剤の静脈内投与前(6(a))および後(6(b)、6(c))の肝臓の放射線画像を示す。図6(a)、図6(b)、および図6(c)において、肝臓(L)を通る同じ断面は、常に、異なる連続的な時間点において描写される。図6(a)、図6(b)、および図6(c)に入力される参照符号は、図6(a)、図6(b)、および図6(c)のすべてに当てはまり、それらは、明白性の目的のためだけに各々一度だけ入力される。
【0123】
図6(a)は、造影剤の静脈内投与前の肝臓(L)を通る断面を示す。図6(a)と図6(b)によって描写される時間点の間の時間点において、造影剤がボーラスとして静脈内投与された。これは、図6(b)において肝臓動脈(A)を介して肝臓に到達する。したがって、肝臓動脈は、信号強調を伴って描写される(動脈相)。図6(c)に描写される時間点において、造影剤は、静脈を介して肝臓に到達する(静脈相)。
【0124】
図6(a)は、故に、ネイティブ放射線画像であり、図6(b)は、造影剤の投与後の第1の放射線画像であり、図6(c)は、造影剤の投与後の第2の放射線画像である。図6(b)では、動脈が特によく見えるが、図6(c)では、静脈が特によく見える。
【0125】
図7は、例として、および概略形態において、予測モデル(PM)の助けを借りた、測定された放射線画像に基づいた人工放射線画像(AI)の生成を示す。予測モデル(PM)は、検査対象の検査領域を示す少なくとも1つの測定された放射線画像について、血管内造影剤の投与後の検査領域を示す少なくとも1つの人工放射線画像を生成するように訓練されている。本例では、図6(b)および図6(c)からの放射線画像が予測モデル(PM)に供給される。次いで、予測モデルは、自動的に人工放射線画像(AI)を生成する。それは、すべての血管(動脈A、静脈V)を、コントラスト増強を伴って、および周囲組織と比較して経時的に変化しないコントラストを伴って示す。
【0126】
図8は、例として、および概略形態において、測定された放射線画像からの血管モデルの生成を示す。図8(a)、図8(b)、および図8(c)は、図6(a)、図6(b)、および図6(c)と同一である。
【0127】
図8(a)のネイティブ放射線画像は、図8(b)の放射線画像および図8(c)の放射線画像と組み合わされて血管モデル(図8(d))を形成する。これは、例えば、第1のステップにおいて図8(a)および図8(b)の差画像を生成することによって行われ得る(図8(b)-図8(a))。そのような差画像において、動脈(A)は、特に強く目立つ一方、すべての他の構造体は、背景の中に消える。更なるステップにおいて、図8(a)および図8(c)の差画像が生成され得る(図8(c)-図8(a))。そのような差画像において、静脈(V)は、特に強く目立つ一方、すべての他の構造体は、背景の中に消える。更なるステップにおいて、生成される2つの差画像は、例えば合算によって組み合わされて、血管モデル(図8(d))を形成し得る。好ましくは、動脈および静脈は、血管モデル(図8(d))において異なってマークされる(今回の場合、静脈には横の網掛けが設けられ、動脈には縦の網掛けが設けられる)。
【0128】
図9は、例として、および概略形態において、検査対象の腕の静脈内への肝胆道系造影剤の静脈内投与後の肝臓(L)の測定された放射線画像を示す。肝胆道系造影媒体は、健康な肝臓細胞によって取り込まれる。図9に示される放射線画像は、肝臓細胞がすでに造影剤を取り込んだ肝胆道系相における肝臓の断面を示す。構造体Tが見られ、上記構造体が血管であるか腫瘍であるかは不明確である。
【0129】
図10は、例として、および概略形態において、人工放射線画像を形成するための、測定された放射線画像への血管モデルの重ね合わせを示す。
【0130】
図10(a)は、断面における肝臓(L)の測定された放射線画像を示す。図10(a)は、図9と同一である。図10(b)は、血管モデルを示す。図10(b)は、図8(d)と同一である。図10(c)は、人工放射線画像を示す。人工放射線画像の場合、血管によるものとされ得る血管モデルのそれらの構造体のピクセルは、測定された放射線画像の対応するピクセルと置き換わる。人工放射線画像において、どの構造体が健康な肝臓細胞によるものとされ得か、どの構造体が動脈(A)によるものとされ得るか、およびどの構造体が静脈(V)によるものとされ得るかは容易に見て分かる。さらには、構造体Tが血管ではないことは人工放射線画像において見て分かる。腫瘍が存在することが考えられる。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図4(c)】
図5
図6(a)】
図6(b)】
図6(c)】
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】