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特表2023-521665サケ類油組成物を使用する呼吸器処置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】サケ類油組成物を使用する呼吸器処置
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/60 20060101AFI20230518BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
A61K35/60
A61P11/00
A61P11/06
A61P29/00
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560235
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 US2021026193
(87)【国際公開番号】W WO2021207367
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/006,327
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/114,960
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520494219
【氏名又は名称】ホフセス バイオケア アーエスアー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】フラムローゼ, ボミ
【テーマコード(参考)】
4C087
【Fターム(参考)】
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB29
4C087CA06
4C087CA23
4C087CA24
4C087CA25
4C087MA23
4C087MA28
4C087MA35
4C087MA37
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA59
4C087ZB07
(57)【要約】
本明細書では、サケ類油組成物を使用して、ヒトにおいてある特定の炎症および/または呼吸器状態、障害および疾患を処置するための方法が、提供される。サケ類油組成物は経口投与され、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られてもよい。そのような処置に適したヒトには、ステロイド処置などの医学的および外科的介入に大きな耐性があるものが含まれる。本明細書に記載されるサケ類油組成物は、好酸球エフェクター機能を低減させることも見出された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好酸球エフェクター機能の低減を必要とするヒトにおいて好酸球エフェクター機能を低減させるための方法であって、好酸球エフェクター機能を低減させるために、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を前記ヒトに投与することを含み、前記サケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られる、方法。
【請求項2】
好酸球性炎症状態、障害または疾患の処置を必要とするヒトにおいて好酸球性炎症状態、障害または疾患を処置するための方法であって、前記好酸球性炎症状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を前記ヒトに投与することを含み、前記サケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られる、方法。
【請求項3】
前記好酸球性炎症状態、障害または疾患が、気道の慢性炎症障害である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記好酸球性炎症状態、障害または疾患が喘息である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記好酸球性炎症状態、障害または疾患が気管支喘息である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
好酸球性呼吸器状態、障害または疾患の処置を必要とするヒトにおいて好酸球性呼吸器状態、障害または疾患を処置するための方法であって、前記炎症状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を前記ヒトに投与することを含み、前記サケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られる、方法。
【請求項7】
前記好酸球性呼吸器状態、障害または疾患が、ウイルス性呼吸器疾患である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記好酸球性呼吸器状態、障害または疾患が、重症急性呼吸器症候群である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記重症急性呼吸器症候群が、コロナウイルスによって引き起こされる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒトが、前記状態、障害または疾患を処置するための医学的および外科的介入に対して大きな耐性がある、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ヒトが、ステロイド処置に対して耐性を示すかまたは耐性を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ヒトが、ステロイド処置耐性喘息を有する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
サケ類油を含む前記組成物の前記有効用量が、1日当たり4g~6gの間である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
サケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む前記組成物の前記有効用量が、1日当たり10mg~1000mgの間である、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ヒトへの前記組成物の投与が、補助呼吸を前記ヒトに提供する必要性を低減させるかまたは遅延させる、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記温和な酵素的加水分解が、1%未満のリパーゼ活性を持つ酵素を使用する、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記サケ類油が、0.5%未満の遊離脂肪酸を含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記サケ類油がマイクロコリンを含む、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記サケ類油がマイクロコリンAを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記サケ類油が、以下:
(i) カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、ヘプタデセン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、ガンマリノレン酸、コルンビン酸、ステアリドン酸、ミード酸、もしくはジホモガンマリノレン酸、またはこれらの任意の組合せ、
(ii) リグスチリド、ゲルマクレン、チモール、オイゲノール、カルバクロール、リナロール、シトロネロール、テルピネオール、ビスバロール、サンタロール、ツジョン、ピナカンホン、イタリドン、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ヘレナリン、エレカンパン、フロクマリン、カビコール、シトステロール、スチグマステロール、もしくは3-ブチリデン-4,5-ジヒドロフタリド、またはこれらの任意の組合せ、
(iii) イツリンA、ホイアミド、ヘロナミド、ラキサフィシン、アプラミド、ドラゴナミド、ガゲオテトリン、リングビアベリン、シクロジシジン、パルゲリン、プミラシジン、スルホレイドリポペプチド、フェンギシン、メバマミド、ミクロコリン、ペニシムタミド、スルホ糖脂質、ハロビル、カハラリド、もしくはタフトシン、または前述のいずれかの組合せ、
(iv) プロテクチン、または
(v) リポキシン、
あるいは(i)~(v)の任意の組合せ
をさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、経口投与されるか、吸入されるか、注射されるか、または局所投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が、シロップ、チュアブル剤、カプセルまたはソフトゲルとして投与される、前記請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を含む容器であって、前記サケ類油が、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られたものである、容器と、
好酸球性炎症状態、障害または疾患の処置を必要とするヒトにおける好酸球性炎症状態、障害または疾患の処置に向けた使用についての指示を含有するラベルと
を含む、製造物品。
【請求項24】
前記組成物が、剤形で提供される、請求項23に記載の製造物品。
【請求項25】
前記剤形が、シロップ、チュアブル剤、カプセルまたはソフトゲルである、請求項24に記載の製造物品。
【請求項26】
サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む、組成物の剤形であって、前記サケ類油が、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られるものである、剤形と、
好酸球性炎症状態、障害または疾患の処置を必要とするヒトにおける好酸球性炎症状態、障害または疾患の処置に向けた使用についての指示を含有する添付文書と
を含む、キット。
【請求項27】
前記剤形が、シロップ、チュアブル剤、カプセルまたはソフトゲルである、請求項26に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月7日に出願された米国仮出願第63/006,327号および2020年11月17日出願の同第63/114,960号に基づく優先権および利益を主張するものであり、それらの開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、一般に呼吸器処置、より詳細には、ステロイド治療に耐性を示す患者のサブグループでの、喘息などの、呼吸器の状態、疾患または障害を処置するためのサケ類(salmonid)油生成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
炎症は、免疫学的難問である。一方、炎症を伴う生理学的変化は、通常なら人類を絶滅させる外部の脅威に対する急性応答を開始させる。他方、慢性炎症では、年齢または外部ストレス要因により我々の免疫系がオーバードライブ状態に保たれ、慢性炎症は、アルツハイマーから糖尿病および気管支喘息に及ぶ多くの消耗性疾患に関与する可能性がある。
【0004】
好酸球は、全身にわたる組織に貯蔵されかつ骨髄から連続的に補充される白血球の1タイプである。好酸球は、典型的には血液中で2日間の寿命を有するが、感染およびアレルギー疾患などの炎症状態は、好酸球活性化サイトカインによってその寿命を2週間まで延ばすことになる。Park YM & Bochner BS, Allergy Asthma Immunol Res. 2010, 2:87-101を参照されたい。好酸球カウントは、人体内の好酸球の量を測定する血液試験である。高いレベルは、慣用的な全血球計算試験中に通常測定され、感染またはアレルギーを示す。
炎症状態下で好酸球活性化サイトカインにより促進される活性化エオシノフィルは、反応性酸素種、細胞毒性タンパク質、および炎症促進性サイトカインの主な供給源である。それらは、上皮、内皮および線維芽細胞などの常在組織細胞の活性化をシグナル伝達して、炎症および粘膜分泌の進行をもたらす。したがって好酸球は、気管支喘息、アトピー性皮膚炎および潰瘍性大腸炎などの疾患の強力なアクチベーターおよびモジュレーターである。Hogan SP, Int Arch Allergy Immunol. 2007, 143(Suppl 1):3-14;Simon D et al., Allergy. 2004, 59:561-570;Wedemeyer J & Vosskuhle K., Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2008, 22:537-549を参照されたい。さらに、喘息患者では、好酸球カチオン性タンパク質(ECP)および好酸球ペルオキシダーゼ(EPO)などの好酸球顆粒タンパク質のレベルは、喘息の重症度に大きく相関する。Parra A, et al., J Investig Allergol Clin Immunol. 1999; 9:27-34を参照されたい。上気道の好酸球性炎症も、慢性副鼻腔炎(CRS)対象で観察されるように、アレルギーとは関係なく生じ得る。Hutcheson PS, et al., J Rhinol Allergy. 2010, 24:405-408を参照されたい。そのような個体は、医学的および外科的介入に大きく耐性があり、かつ好酸球の拡大増殖およびエフェクター機能を標的とする治療によって即時の利益を示す可能性のある、ユニークなサブグループである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Parra Aら、J Investig Allergol Clin Immunol.(1999)9:27~34
【非特許文献2】Hutcheson PSら、J Rhinol Allergy.(2010)24:405~408
【非特許文献3】Park YM & Bochner BS, Allergy Asthma Immunol Res. 2010, 2:87-10
【非特許文献4】Hogan SP, Int Arch Allergy Immunol. 2007, 143(Suppl 1):3-14
【非特許文献5】Simon D et al., Allergy. 2004, 59:561-570
【非特許文献6】Wedemeyer J & Vosskuhle K., Best Pract Res Clin Gastroenterol. 2008, 22:537-549
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
簡単な概要
一部の態様において、本明細書では、サケ類油を使用する、喘息処置などの呼吸器処置が提供される。一部の実施形態では、喘息は気管支喘息である。ある特定の実施形態では、提供された処置は、ステロイド治療を含む医学的および外科的介入に大きな耐性がある患者のサブグループを標的とする。
【0007】
ある特定の態様では、それを必要とするヒトの炎症状態、障害または疾患を処置するための方法であって、炎症状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法が提供される。
【0008】
ある特定の態様では、それを必要とするヒトの呼吸器状態、障害または疾患を処置するための方法であって、炎症状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法が提供される。
【0009】
本明細書で提供される方法のいくつかの変形例では、処置される状態、障害または疾患は、好酸球性状態、障害または疾患である。一部の実施形態では、炎症状態、障害または疾患は、好酸球性炎症状態、障害または疾患である。一部の実施形態では、呼吸器状態、障害または疾患は、好酸球性呼吸器状態、障害または疾患である。
【0010】
ある特定の態様では、それを必要とするヒトの好酸球エフェクター機能を低減させるための方法であって、好酸球エフェクター機能を低減させるために、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法が提供される。
【0011】
前述の態様の一部の実施形態では、サケ類油は、酵素により抽出されたサケ類油である。ある特定の変形例では、サケ類油は、サケ類の魚の切れ端(off-cut)の温和な酵素的加水分解から得られる。
【0012】
本明細書で提供される方法の一部の実施形態では、組成物は経口投与される。一部の変形例では、組成物は吸入される。一部の変形例では、組成物は鼻に投与される。一部の変形例では、組成物は注射される。一部の変形例では、組成物は局所投与される。
【0013】
ある特定の態様では、本明細書に記載される少なくとも1種の生物学的活性物質を含むサケ類油組成物も提供される。ある特定の態様では、サケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物が提供される。別の態様では、本明細書に記載される様々な状態、障害または疾患を処置するための、そのような組成物の使用が提供される。
【0014】
他の態様では、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を含む容器と;そのような組成物の使用についての指示を含有するラベルとを含む、製造物品が提供される。
【0015】
さらに他の態様では、サケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物の剤形と;そのような組成物の使用についての指示を含有する添付文書とを含む、キットが提供される。
【0016】
前述の態様の一部の変形例では、剤形は、シロップ、チュアブル剤(chewable)、カプセルまたはソフトゲルである。
【0017】
本出願は、添付の図面と併せて解釈される以下の記載を参照することによって、理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1および3は、種々の前処理条件による、CCL11濃度の関数としてのPMNLの形状変化(ベースラインとして100%)を示す。
図2図2および4は、種々の前処理条件での、CCL11濃度の関数として、PMNL表面でのCB11b変化(ベースラインとして100%)を示す。
【0019】
図3図1および3は、種々の前処理条件による、CCL11濃度の関数としてのPMNLの形状変化(ベースラインとして100%)を示す。
図4図2および4は、種々の前処理条件での、CCL11濃度の関数として、PMNL表面でのCB11b変化(ベースラインとして100%)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
詳細な説明
以下の記載は、例示的な方法、パラメーターなどについて述べる。しかしながらそのような記載は、本開示の範囲を限定するものではなく、代わりに例示的な実施形態の説明を提供することを理解すべきである。
【0021】
一部の態様において、本明細書では、サケ類油組成物を経口投与することによって、それを必要とするヒトの炎症状態、障害または疾患を処置するための方法が提供される。
【0022】
サケ類油組成物、およびその生成方法
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法で投与される組成物は、サケ類油組成物である。サケ類は、Salmoniformes目の魚類の科であり、例えば、サケ、マス、イワナ(char)、フレッシュウォーターホワイトフィッシュ(freshwater whitefish)およびヒメマス(grayling)が含まれる。
【0023】
一部の態様では、サケ類油組成物は、酵素により抽出されたサケ類油を含む。一部の変形例では、酵素により抽出されたサケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られる。一部の変形例では、サケ類油組成物は、天然のものであり、未精製であり、サケ類から穏やかに遊離される。一部の変形例では、サケ類油組成物を生成するプロセスは、化学物質、溶媒、高圧または熱を使用せず、または使用することを必要としない。
【0024】
本明細書に記載される方法で使用されるサケ類油組成物は、温和な酵素的加水分解によって調製され、これは刺激の強い化学物質、分留、再エステル化、脱蝋、高圧、および/または熱を必要としない。例えば、一部の変形例では、本明細書に記載される方法で使用されるサケ類油組成物は、強酸または強塩基(例えば、3Nまたはそれよりも高い酸または塩基を含む)、分留、再エステル化、脱蝋、少なくとも30psiの圧力、または少なくとも130℃の温度の熱の使用を必要としない酵素的加水分解によって調製される。本明細書に記載される温和な酵素的加水分解の条件の使用は、強酸もしくは強塩基、分留、再エステル化、脱蝋、高圧、および/または熱の使用を含む、サケ類油を生成する技術分野でしばしば使用される技法、例えば分留または「コールドプレス」加工よりも、一般に穏やかである。本明細書に記載される温和な酵素的加水分解が使用されるとき、得られる組成物は、好酸球または好酸球機能不全に関連した状態を処置するのに驚くほど有益な、生物学的に活性な成分を有する。
【0025】
一部の実施形態では、サケ類油組成物を生成する酵素的加水分解プロセスは、3N未満、2.5N未満、2N未満、1.5N未満、1N未満、0.5N未満、0.1N未満、0.01N未満、または0.001N未満の酸を使用する。一部の実施形態では、酵素的加水分解プロセスは、任意の追加の酸を使用せずまたは使用することを必要としない。前述の一部の変形例では、酸は強酸である。前述の一部の変形例では、酸はHClもしくはHNO、またはこれらの任意の組合せである。
【0026】
一部の実施形態では、サケ類油組成物を生成するプロセスは、3N未満、2.5N未満、2N未満、1.5N未満、1N未満、0.5N未満、0.1N未満、0.01N未満、または0.001N未満の塩基を使用する。一部の実施形態では、プロセスは、任意の追加の塩基を使用せずまたは使用することを必要としない。前述の一部の変形例では、塩基は強塩基(NaOHおよび/またはKClなど)である。
【0027】
一部の実施形態では、温和な酵素的加水分解から得られるサケ類油は、3Nもしくはそれよりも高い、2.5Nもしくはそれよりも高い、2Nもしくはそれよりも高い、1.5Nもしくはそれよりも高い、1Nもしくはそれよりも高い、0.5Nもしくはそれよりも高い、0.1Nもしくはそれよりも高い、0.01Nもしくはそれよりも高い、または0.001Nもしくはそれよりも高い濃度の酸と混合されずまたは混合されることを必要としない。前述の一部の変形例では、酸は強酸(HClおよび/またはHNOなど)である。
【0028】
一部の実施形態では、温和な酵素的加水分解から得られるサケ類油は、3Nもしくはそれよりも高い、2.5Nもしくはそれよりも高い、2Nもしくはそれよりも高い、1.5Nもしくはそれよりも高い、1Nもしくはそれよりも高い、0.5Nもしくはそれよりも高い、0.1Nもしくはそれよりも高い、0.01Nもしくはそれよりも高い、または0.001Nもしくはそれよりも高い濃度の塩基と混合されずまたは混合されることを必要としない。前述の一部の変形例では、塩基は強塩基(NaOHおよび/またはKOHなど)である。
【0029】
一部の実施形態では、酵素により抽出されたサーモン油のグラム当たり、3mmol未満、2.5mmol未満、2mmol未満、1.5mmol未満、1mmol未満、0.5mmol未満、0.1mmol未満、0.01mmol未満、または0.01mmol未満の酸またはHが添加される。一部の実施形態では、酵素により抽出されたサーモン油に酸またはHは添加されずまたは添加する必要がない。
【0030】
一部の実施形態では、酵素により抽出されたサーモン油のグラム当たり、3mmol未満、2.5mmol未満、2mmol未満、1.5mmol未満、1mmol未満、0.5mmol未満、0.1mmol未満、0.01mmol未満、または0.01mmol未満、6mmol未満の塩基またはOHが添加される。一部の実施形態では、塩基またはOHは、酵素により抽出されたサーモン油に添加されずまたは添加する必要がない。
【0031】
一部の実施形態では、酸は、本明細書の方法で使用されるサケ類油を生成するのに、酵素的加水分解中またはその後に添加されずまたは添加する必要がない。一部の実施形態では、3N未満、2.5N未満、2N未満、1.5N未満、1N未満、0.5N未満、0.1N未満、0.01N未満、または0.001N未満の酸を、酵素的加水分解中またはその後に添加する。前述の一部の変形例では、酸は強酸(HClおよび/またはHNOなど)である。
【0032】
一部の実施形態では、塩基は、本明細書の方法で使用されるサケ類油を生成するのに、酵素的加水分解中またはその後に添加されずまたは添加する必要がない。一部の実施形態では、3N未満、2.5N未満、2N未満、1.5N未満、1N未満、0.5N未満、0.1N未満、0.01N未満、または0.001N未満の塩基を、酵素的加水分解中またはその後に添加する。一部の実施形態では、塩基は強塩基(NaOHおよび/またはKOHなど)である。
【0033】
一部の実施形態では、サケ類油組成物を生成するプロセスは、130℃よりも下、120℃よりも下、110℃よりも下、100℃よりも下、90℃よりも下、80℃よりも下、70℃よりも下、60℃よりも下、55℃よりも下、50℃よりも下、45℃よりも下、40℃よりも下、35℃よりも下、30℃よりも下、または25℃よりも下の温度で行われる。一部の実施形態では、酵素的加水分解中またはその後の温度は、130℃よりも下、120℃よりも下、110℃よりも下、100℃よりも下、90℃よりも下、80℃よりも下、70℃よりも下、60℃よりも下、55℃よりも下、50℃よりも下、45℃よりも下、40℃よりも下、35℃よりも下、30℃よりも下、または25℃よりも下で維持される。
【0034】
一部の実施形態では、温和な酵素的加水分解から得られるサケ類油は、150℃もしくはそれよりも高い、140℃もしくはそれよりも高い、130℃もしくはそれよりも高い、120℃もしくはそれよりも高い、110℃もしくはそれよりも高い、100℃もしくはそれよりも高い、90℃もしくはそれよりも高い、80℃もしくはそれよりも高い、70℃もしくはそれよりも高い、60℃もしくはそれよりも高い、55℃もしくはそれよりも高い、50℃もしくはそれよりも高い、45℃もしくはそれよりも高い、40℃もしくはそれよりも高い、35℃もしくはそれよりも高い、30℃もしくはそれよりも高い、または25℃もしくはそれよりも高い温度に曝露されずまたは曝露される必要がない。
【0035】
一部の実施形態では、サケ類油組成物を生成するプロセスは、2atmよりも低い、1.5atmよりも低い、1.4atmよりも低い、1.3atmよりも低い、1.2atmよりも低い、1.1atmよりも低い、または1.0atm程度の圧力で行われる。一部の実施形態では、サケ類油組成物を生成するプロセスは、30psiよりも下、25psiよりも下、20psiよりも下、15psiよりも下、または14.7psi程度の圧力で行われる。
【0036】
一部の実施形態では、酵素的加水分解中またはその後の圧力は、2atmよりも低い、1.5atmよりも低い、1.4atmよりも低い、1.3atmよりも低い、1.2atmよりも低い、1.1atmよりも低い、または1.0atm程度に維持される。一部の実施形態では、酵素的加水分解中またはその後の圧力は、30psiよりも下、25psiよりも下、20psiよりも下、15psiよりも下、または14.7psi程度に維持される。
【0037】
一部の実施形態では、酵素により抽出されたサーモン油は、2atmよりも高い、1.5atmよりも高い、1.4atmよりも高い、1.3atmよりも高い、1.2atmよりも高い、1.1atmよりも高い、または1.0atmよりも高い圧力に曝露されずまたは曝露される必要がない。一部の実施形態では、酵素により抽出されたサーモン油は、30psiよりも高い、25psiよりも高い、20psiよりも高い、15psiよりも高い、または14.7psiよりも高い圧力に曝露されずまたは曝露される必要がない。
【0038】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油は、下記のプロセスまたは条件の1つまたは複数を使用することなく生成される:(i)3Nもしくはそれよりも高い濃度の酸と混合すること;(ii)3Nもしくはそれよりも高い濃度の塩基と混合すること;(iii)分留;(iv)再エステル化;(v)脱蝋;(vi)130℃もしくはそれよりも高い温度;または(vi)2atmもしくはそれよりも高い圧力。一部の変形例では、本明細書で提供されるサケ類油は、上記列挙されたプロセスまたは条件のいずれも使用することなく生成される。
【0039】
ある特定の変形例では、サケ類油組成物を得るプロセスは、ある特定のパーセンテージ未満(例えば、1%未満または0.5%未満)の相対的リパーゼ活性を含有するプロテアーゼ酵素、屠殺からある時間未満が過ぎた(例えば、屠殺から24時間未満が過ぎた)生の切れ端材料、および/または酵素的加水分解中のタービン混合の使用を含む。このことは、少量の非脂肪酸生物活性成分の損失が最小限乃至全くない状態の、1匹まるごとの魚に見出される全ての脂質成分の定量的抽出を可能にする。
【0040】
さらに、低リパーゼ活性を持つ酵素の使用は、混合物中の遊離脂肪酸分子の量を最小限に抑え、これらの遊離脂肪酸分子は、生物学的に活性な構成成分を分解する可能性があり、および/またはそれらの酸化促進特性を持つサケ類油の貯蔵寿命を短くする。このように、低リパーゼ活性を持つ酵素、比較的新鮮な生の切れ端材料、および酵素的加水分解の期間を短くするタービン混合の使用は全て、好酸球機能に対して最大限の効果を有するサケ類油を生成するのに寄与する。
【0041】
一部の実施形態では、サケ類油組成物を生成するプロセスは、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.15%未満、0.1%未満、0.05%未満、または0.01%未満のリパーゼ活性を含有する酵素の使用を含む。一部の実施形態では、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解は、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.15%未満、0.1%未満、0.05%未満、または0.01%未満のリパーゼ活性を持つ酵素の使用を含む。
【0042】
一部の実施形態では、酵素により抽出されたサケ類油は、3%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、または0.01%未満の遊離脂肪酸を含む。一部の実施形態では、酵素により抽出されたサケ類油は、脱蝋も再エステル化も経ることなく、3%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.05%未満、または0.01%未満の遊離脂肪酸を含む。一部の実施形態では、酵素により抽出されたサケ類油は、脱蝋も再エステル化も経ることなく、0.5%未満の遊離脂肪酸を含む。
【0043】
一部の実施形態では、本明細書に記載される、酵素により抽出されたサケ類油は、サケの屠殺から1時間未満、2時間未満、3時間未満、4時間未満、5時間未満、6時間未満、7時間未満、8時間未満、9時間未満、10時間未満、11時間未満、12時間未満、24時間未満、36時間未満、48時間未満、2~6時間の間、4~8時間の間、6~10時間の間、または2~10時間の間であるサケから調製される。
【0044】
一実施形態では、サケ類油組成物は、OmeGo(登録商標)サーモン油、Cardio(登録商標)サーモン油、またはBrilliant(登録商標)サーモン油であり、そのそれぞれは、Hofseth BioCare ASAから市販されている、酵素により抽出されたサーモン油のバリエーションである。
【0045】
魚油中に見出される、トリグリセリドまたはホスホリド形態の一般的な脂肪酸は、好酸球エフェクター機能の低減に関与しないことが、予期せず観察された。むしろそれは、そのような効果を有するのは、本明細書に記載されるサケ類油組成物中に存在する、ある特定の少量の生物学的に活性な構成成分の存在である。
【0046】
ある特定の実施形態では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、少量の脂肪酸トリグリセリド成分を含む。一部の変形例では、生物学的に活性な構成成分(複数可)は、飽和酸を含む。ある特定の変形例では、生物学的に活性な構成成分(複数可)は、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、またはリグノセリン酸、またはこれらの任意の組合せを含む。
【0047】
一部の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、一価不飽和酸を含む。ある特定の変形例では、生物学的に活性な構成成分(複数可)は、ミリストレイン酸(myrstoleic acid)、ヘプタデセン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、および/またはネルボン酸を含む。
【0048】
一部の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、多価不飽和酸を含む。ある特定の変形例では、生物学的に活性な構成成分(複数可)は、ガンマリノレン酸、コルンビン酸(columbinic acid)、ステアリドン酸(stearidonic acid)、ミード酸(mead acid)、および/またはジホモガンマリノレン酸を含む。
【0049】
他の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、小型の有機分子(複数可)を含む。一部の変形例では、生物学的に活性な構成成分(複数可)は、テルペン(例えば、リグスチリド)、セスキテルペン(例えば、ゲルマクレン)、フェノール(例えば、チモール、オイゲノール、カルバクロール)、アルコール(例えば、リナロール、シトロネロール、テルピネオール)、セスキテルペンアルコール(例えば、ビスバロール、サンタロール)、ケトン(例えば、ツジョン、ピナカンホン(pinacamphone)、イタリドン(italidone))、エステル(例えば、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル)、ラクトンおよびクマリン(例えば、ヘレナリン、エレカンパン、フロクマリン)、エーテル(例えば、カビコール)、ステロイド誘導体(例えば、シトステロール、スチグマステロール)、および/またはフタリド誘導体(例えば、3-ブチリデン-4,5-ジヒドロフタリド)を含む。
【0050】
一部の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、リポペプチド(複数可)を含む。一部の変形例では、生物学的に活性な構成成分(複数可)は、直鎖状および/または環状リポペプチドを含む。ある特定の変形例では、生物学的に活性な構成成分(複数可)は、イツリンA、ホイアミド、ヘロナミド、ラキサフィシン、アプラミド(apramide)、ドラゴナミド(dragonamide)、ガゲオテトリン(gageotetrin)、リングビアベリン(lyngbyabellin)、シクロジシジン(cyclodycidin)、パルゲリン(parguerine)、プミラシジン(pumilacidin)、スルホレイドリポペプチド(sulforeido lipopeptide)、フェンギシン(fengycin)、メバマミド(mebamamide)、ミクロコリン(microcolin)、ペニシムタミド(penicimutamide)、スルホ糖脂質、ハロビル(halovir)、カハラリド(kahalalide)、および/またはタフトシン(tuftsin)を含む。
【0051】
一部の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、直鎖状リポペプチドを含む。ある特定の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、ミクロコリンAを含む。1つの変形例では、サケ類油組成物は、ミクロコリンAを、少なくとも5μg/mL、少なくとも10μg/mL、少なくとも20μg/mL、もしくは少なくとも25μg/mL、または5μg/mL~100μg/mLの間、10μg/mL~100μg/mLの間、もしくは20μg/mL~75μg/mLの間の濃度で含む。
【0052】
他の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、プロテクチン(複数可)を含む。
【0053】
さらに他の変形例では、サケ類油組成物中の生物学的に活性な構成成分(複数可)は、リポキシン(複数可)を含む。
【0054】
記載した以上の生物学的に活性な構成成分(複数可)の一部の変形例において、化合物(複数可)は、塩形態で存在していてもよい。ある特定の変形例では、化合物(複数可)は、それらの任意の組合せで存在していてもよい。
【0055】
状態、疾患または障害
一部の態様では、本明細書で提供されるサケ類油組成物は、呼吸器状態、障害または疾患を含む、炎症状態、障害または疾患を処置するのに使用されてもよい。一部の実施形態では、状態、障害または疾患は、気道の炎症である。一部の態様では、それを必要とするヒトの炎症状態、障害または疾患を処置するための方法であって、本明細書で提供されるサケ類油組成物または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法が提供される。
【0056】
一部の変形例では、「処置」または「処置する」は、臨床結果を含む有益なまたは望ましい結果を得るための手法である。有益なまたは望ましい臨床結果は、下記の1つまたは複数を含んでいてもよい:
(i) 状態、疾患または障害から生じる1つまたは複数の症状を低減させること;
(ii) 疾患の程度を減じ、および/または状態、疾患もしくは障害を安定化させること(例えば、状態、疾患または障害の悪化を遅延させること);
(iii) 状態、疾患または障害の拡がりを遅延させること;
(iv) 状態、疾患もしくは障害の再発、および/または状態、疾患もしくは障害の進行を、遅延させるまたは減速すること;
(v) 疾患状態を改善し、および/または状態、疾患もしくは障害の寛解をもたらし(部分的なものであっても完全なものであっても)、および/または状態、疾患もしくは障害を処置するのに必要な1種もしくは複数種のその他の医薬の用量を減少させること;
(vi) クオリティオブライフを上昇させること;ならびに/または
(vii) 生存を延ばすこと。
【0057】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物は、喘息、肺炎、気管支拡張症、肺気腫、結核、気胸(lung collapse)、肺線維症、線維化肺胞炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎(CRS)、および/または急性呼吸器疾患症候群を処置するのに使用されてもよい。
【0058】
一部の実施形態では、状態、疾患または障害は、慢性炎症性障害である。ある特定の実施形態では、慢性炎症性障害は、気道の慢性炎症性障害である。ある特定の変形例では、状態、疾患または障害は、炎症性肺疾患である。一部の変形例では、状態、疾患または障害は、気道の狭小化および/または腫脹を含み、それによって呼吸が困難になり、咳、喘鳴、および/または息切れを誘発する。ある特定の変形例では、状態、疾患または障害は、喘息である。ある特定の変形例では、喘息は、気管支喘息である。1つの変形例では、状態、疾患または障害は、ステロイド処置耐性喘息および気道狭窄を含む。
【0059】
他の実施形態では、状態、疾患または障害は、アレルギーまたはアレルギー性炎症である。
【0060】
他の実施形態では、状態、疾患または障害は、ウイルス性呼吸器疾患である。一部の変形例では、状態、疾患または障害は、重症急性呼吸器症候群である。ある特定の変形例では、重症急性呼吸器症候群は、コロナウイルスによって引き起こされる。
【0061】
一部の変形例では、それを必要とするヒトは、肺に欠陥がある個体である。ある特定の変形例では、肺に欠陥がある個体は、肺の肺胞に流体の蓄積を有する。この流体は、肺胞の保護膜の破壊に起因して、肺の最小血管から肺胞に漏れる可能性がある。通常はこの流体を血管内に保持する膜は、重度疾患または損傷に起因した免疫応答の混乱により、破壊され得る。流体は肺胞に進入し、肺が十分な空気で満たされるのを妨げ、これは少ない酸素が血流に到達することを意味する。これは臓器から、機能するのに必要な酸素を奪い、多臓器不全を引き起こして死に至る可能性がある。
【0062】
一実施形態では、それを必要とする、肺に欠陥があり、入院したヒトを処置するための方法であって、ヒトに補助呼吸を提供する必要を低減させるかまたは遅延させるために、本明細書で提供されるサケ類油組成物または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法が提供される。
【0063】
一部の変形例では、状態、疾患または障害の発症を「遅延させること」は、状態、疾患または障害の発症の延期、阻止、減速、妨害すること、安定化させること、および/または延ばすことを意味する。この遅延は、状態、疾患もしくは障害の病歴および/または処置されている個体に応じて、様々な時間の長さであり得る。
【0064】
前述の一部の変形例では、処置される状態、障害または疾患は、好酸球性状態、障害または疾患である。
【0065】
他の態様では、本明細書で提供されるサケ類油組成物は、好酸球エフェクター機能の低減を介して抗炎症効力を改善する。したがって、ある特定の実施形態では、それを必要とするヒトの好酸球エフェクター機能を低減させるための方法であって、好酸球エフェクター機能を低減させるために、本明細書で提供されるサケ類油組成物または本明細書で提供されるサケ類組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法が提供される。
【0066】
患者部分集団(sub-patient population)
一部の実施形態では、本明細書で提供される方法は、それを必要とするヒトを処置することを含む。ある特定の実施形態では、ヒトは、本明細書に記載される炎症状態、障害または疾患を処置するための医学的および外科的介入に対して大きな耐性がある。一実施形態では、ヒトは、ステロイド治療に対する耐性を示しまたは有する。例えば一変形例では、ヒトは、ステロイド処置耐性喘息を有する。
【0067】
前述の一部の変形例では、ヒトは小児である。ある特定の変形例では、ヒトは、18歳未満、12歳未満、10歳未満、5歳未満、2歳未満、もしくは1歳未満であり;または2歳~12歳の間である。
【0068】
製剤
一部の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、経口投与のために製剤化される。経口投与に適した形態には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、糖衣丸、ロゼンジ、液体、ゲル、シロップ、スラリー、エリキシル、懸濁物、エアロゾル、または粉末が含まれてもよい。
【0069】
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物は、シロップ、カプセル、およびソフトゲル(例えば、チュワブルグミを含む)の形態をとる。
【0070】
組成物の製剤化および投与の技法は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Publishing Co, Easton, Pa., 1990に見出すことができる。本明細書に記載される医薬組成物は、任意の従来の方法、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣丸作製、湿式粉砕(levigating)、乳化、カプセル化、封入、溶融紡糸、噴霧乾燥または凍結乾燥プロセスを使用して製造することができる。最適な医薬製剤は、投与経路および所望の投薬量に応じて当業者により決定することができる。そのような製剤は、身体状態、安定性、投与される薬剤のin vivo放出速度、およびin vivoクリアランス速度に影響を及ぼし得る。
【0071】
一部の変形例では、本明細書で提供されるサケ類油組成物または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、例えば本明細書に記載されるシロップ、カプセルおよびソフトゲル(例えば、チュワブルグミを含む)の形態で、単位投薬量としてヒトに投与される。一変形例では、「単位剤形」は、単位投薬量に適した物理的に分離した単位を指し、個々の単位は、薬学的に許容される担体中にあってもよい、所定の量の、本明細書で提供されるサケ類油組成物または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物を含有する。
【0072】
本明細書で使用される、「薬学的に許容される」とは、生物学的にまたはその他の理由で望ましくないものではない材料を意味し、例えば、材料は、著しく望ましくない生物学的効果を有することなく、また材料が含有される組成物の他の成分のいずれかと有害な手法で相互作用することなく、個体に投与される医薬組成物に組み込まれてもよい。したがって薬学的に許容される担体または賦形剤は、好ましくは、一部の実施形態において、毒物学的なおよび製造試験に必要とされる規格を満たしており、ならびに/または米国食品医薬品局により作成された不活性成分指針に含まれる。
【0073】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物、または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、吸入用に製剤化される。吸入に適した形態は、例えば、乾燥粉末、非水性液体製剤、または液体製剤(例えば、噴霧化用)を含んでいてもよい。
【0074】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物、または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、注射用に製剤化される。一部の実施形態では、注射に適した製剤は、1種もしくは複数種の水性もしくは非水性ビヒクル、1種もしくは複数種の抗菌剤、1種もしくは複数種の抗酸化剤、1種もしくは複数種の緩衝液、1種もしくは複数種の増量剤(bulking agent)、1種もしくは複数種のキレート剤、1種もしくは複数種の可溶化剤、1種もしくは複数種の界面活性剤、および/または1種もしくは複数種の張度剤(tonicity agent)を含んでいてもよい。
【0075】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物、または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、局所投与用に製剤化される。局所投与に適した形態には、例えば、溶液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ペースト、エアロゾルフォームもしくはスプレー、粉末、固体、または経皮パッチが含まれてもよい。一部の実施形態では、局所投与に適した製剤は、水、油、アルコール、プロピレングリコール、1種もしくは複数種の保存剤、1種もしくは複数種の乳化剤、1種もしくは複数種の吸収促進剤、および/または1種もしくは複数種の芳香剤を含んでいてもよい。
【0076】
一部の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物、または本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、経口投与されるか、吸入されるか、注射されるか、または局所投与される。
【0077】
投薬量
一部の実施形態では、提供される方法は、有効量の、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物を、それを必要とするヒトに投与することを含む。一部の変形例で、「有効量」は、所与の治療形態で有効であるべきである、本発明の組成物または生物学的活性物質のこのような量を意図する。ある特定の変形例では、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物の有効量は、ヒトにおける好酸球エフェクター機能を低減させ、それによって、本明細書に記載される状態、疾患もしくは障害に罹患しているヒトを処置し、またはそのような状態、疾患もしくは障害の既存の症状を軽減させるのに十分な量である。
【0078】
一部の変形例では、ヒトのための本明細書で提供されるサケ類油組成物の例示的な投薬量レベルは、1日当たり4g~10gの間、または1日当たり4g~6gの間であってもよい。
【0079】
一部の変形例では、ヒトのための本明細書で提供されるサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)の例示的な投薬量レベルは、10mg~1000mgの間であってもよい。
【0080】
最終投薬レジメンは、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物の作用、疾患状態の正体および重症度、対象の応答性、対象の年齢、状態、体重、性別、および食事、ならびに任意の感染の重症度を修正する様々な因子を考慮して、良好な医療実務に鑑み、主治医によって決定される。考慮することができる追加の因子には、投与の時間および頻度、薬物の組合せ、反応感受性、および治療に対する耐容性/応答が含まれる。本明細書で述べる製剤のいずれかに関わる処置に適切な投薬量のさらなる精緻化は、特に、開示される投薬情報およびアッセイ、ならびにヒト臨床試験で観察された薬物動態データに照らし、過度な実験なしに、当業者によって通常通り行われる。
【0081】
有効量は、1つまたは複数の用量であってもよく、即ち、単回用量または複数回用量が、所望の処置エンドポイントを達成するのに必要とされてもよい。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、1日1回、2回または3回投与される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、1日1回または2回投与される。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、1日1回投与される。
【0082】
製造物品およびキット
1種または複数種の薬学的に許容される担体、賦形剤またはその他の成分中で製剤化され得る、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物は、調製され得、適切な容器に配置され得、示された状態、疾患または障害の処置のためにラベルを付され得る。したがって、ある特定の態様では、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物の剤形を含む容器、およびそのような組成物または活性物質(複数可)の使用についての指示を含有するラベルなどの製造物品も提供される。
【0083】
一部の実施形態では、製造物品は、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物、および1種または複数種の薬学的に許容される担体、賦形剤またはその他の成分の、剤形を含む容器である。本明細書に記載される製造物品の一実施形態では、剤形は、シロップ、カプセルおよびソフトゲル(例えば、チュワブルグミを含む)である。
【0084】
ある特定の態様では、キットも提供される。例えば、一部の実施形態では、キットは、本明細書で提供されるサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物の剤形と、状態、疾患または障害の処置における組成物/活性物質(複数可)の使用についての指示を含有する添付文書とを含むことができる。キットにおける使用についての指示は、例えば喘息を含む呼吸器の炎症または気道の炎症を処置するためのものであってもよい。一変形例では、キットにおける使用についての指示は、気管支喘息を処置するためのものであってもよい。別の変形例では、キットにおける使用についての指示は、重症急性呼吸器症候群を処置するためのものであってもよい。
【0085】
製造物品およびキットのラベルおよび添付文書は、それぞれ、本明細書に記載される状態、疾患または障害のいずれかを処置するための指示を含有する。一部の実施形態では、ラベルは、呼吸器状態、障害または疾患を含む、炎症状態、障害または疾患を処置するための指示を含有する。一部の変形例では、ラベルは、気道の慢性炎症障害を処置するための指示を含有する。一変形例では、ラベルは、気管支喘息および/またはステロイド処置耐性喘息などの喘息を処置するための指示を含有する。他の実施形態では、ラベルは、重症急性呼吸器症候群(例えば、コロナウイルスにより引き起こされた重症急性呼吸器症候群を含む)などのウイルス性呼吸器疾患を処置するための指示を含有する。
【0086】
本明細書に記載される任意のサケ類油組成物またはサケ類油組成物から単離された生物学的活性物質(複数可)を含む組成物、および本明細書に記載される任意の状態、疾患または障害が、本明細書に記載される製造物品およびキットの様々な実施形態で使用され得ることを理解すべきである。
【0087】
列挙された実施形態
下記の列挙された実施形態は、本発明の一部の態様を代表する。
1. それを必要とするヒトの炎症状態、障害または疾患を処置するための方法であって、炎症状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法。
2. それを必要とするヒトの好酸球性炎症状態、障害または疾患を処置するための方法であって、好酸球性炎症状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含み、
サケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られ、および/または
サケ類油は、下記のプロセスまたは条件:
(i) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の酸と混合すること;
(ii) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の塩基と混合すること;
(iii) 分留;
(iv) 再エステル化;
(v) 脱蝋;
(vi) 130℃もしくはそれよりも高い温度;または
(vi) 2atmもしくはそれよりも高い圧力
のうちの1つまたは複数を使用することなく生成される、方法。
3. 炎症状態、障害または疾患が、気道の慢性炎症障害である、実施形態1または2の方法。
4. 炎症状態、障害または疾患が、喘息である、実施形態1または2の方法。
5. 炎症状態、障害または疾患が、気管支喘息である、実施形態1または2の方法。
6. 炎症状態、障害または疾患が、好酸球性炎症状態、障害または疾患である、実施形態1から5のいずれか1つの方法。
7. それを必要とするヒトの呼吸器状態、障害または疾患を処置するための方法であって、炎症状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を、ヒトに投与することを含む、方法。
8. それを必要とするヒトの好酸球性呼吸器状態、障害または疾患を処置するための方法であって、好酸球性呼吸器状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含み、
サケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られ、および/または
サケ類油は、下記のプロセスまたは条件:
(i) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の酸と混合すること;
(ii) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の塩基と混合すること;
(iii) 分留;
(iv) 再エステル化;
(v) 脱蝋;
(vi) 130℃もしくはそれよりも高い温度;または
(vi) 2atmもしくはそれよりも高い圧力
のうちの1つまたは複数を使用することなく生成される、方法。
9. 呼吸器状態、障害または疾患が、ウイルス性呼吸器疾患である、実施形態7または8の方法。
10. 呼吸器状態、障害または疾患が、重症急性呼吸器症候群である、実施形態7または8の方法。
11. 重症急性呼吸器症候群が、コロナウイルスによって引き起こされる、実施形態10の方法。
12. 呼吸器状態、障害または疾患が、好酸球性呼吸器状態、障害または疾患である、実施形態7から11のいずれか1つの方法。
13. それを必要とするヒトの好酸球エフェクター機能を低減させるための方法であって、好酸球エフェクター機能を低減させるために、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含む、方法。
14. それを必要とするヒトの好酸球エフェクター機能を低減させるための方法であって、好酸球性呼吸器状態、障害または疾患を処置するために、有効用量の、サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物をヒトに投与することを含み、
サケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られ、および/または
サケ類油は、下記のプロセスまたは条件:
(i) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の酸と混合すること;
(ii) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の塩基と混合すること;
(iii) 分留;
(iv) 再エステル化;
(v) 脱蝋;
(vi) 130℃もしくはそれよりも高い温度;または
(vi) 2atmもしくはそれよりも高い圧力
のうちの1つまたは複数を使用することなく生成される、方法。
15. 組成物が経口投与される、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
16. 組成物が吸入される、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
17. 組成物が鼻に投与される、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
18. 組成物が注射される、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
19. 組成物が局所投与される、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
20. ヒトが、状態、障害または疾患を処置するための医学的および外科的介入に対して大きく耐性がある、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
21. ヒトが、ステロイド処置に対して耐性を示すかまたは耐性を有する、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
22. ヒトが、ステロイド処置耐性喘息を有する、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
23. サケ類油を含む組成物の有効用量が、1日当たり4g~6gの間である、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
24. サケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物の有効用量が、1日当たり10mg~1000mgの間である、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
25. ヒトへの組成物の投与が、ヒトに補助呼吸を提供する必要性を低減させるかまたは遅延させる、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
26. サケ類油が酵素により抽出されたサケ類油である、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
27. サケ類油が、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られる、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
28. 温和な酵素的加水分解が、1%未満のリパーゼ活性を持つ酵素を使用する、実施形態27の方法。
29. サケ類油が、0.5%未満の遊離脂肪酸を含む、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
30. サケ類油がマイクロコリンを含む、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
31. 前記サケ類油がマイクロコリンAを含む、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
32. サケ類油が、以下:
(i) カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、ヘプタデセン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、ガンマリノレン酸、コルンビン酸、ステアリドン酸、ミード酸、もしくはジホモガンマリノレン酸、またはこれらの任意の組合せ;
(ii) リグスチリド、ゲルマクレン、チモール、オイゲノール、カルバクロール、リナロール、シトロネロール、テルピネオール、ビスバロール、サンタロール、ツジョン、ピナカンホン、イタリドン、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ヘレナリン、エレカンパン、フロクマリン、カビコール、シトステロール、スチグマステロール、もしくは3-ブチリデン-4,5-ジヒドロフタリド、またはこれらの任意の組合せ;
(iii) イツリンA、ホイアミド、ヘロナミド、ラキサフィシン、アプラミド、ドラゴナミド、ガゲオテトリン、リングビアベリン、シクロジシジン、パルゲリン、プミラシジン、スルホレイドリポペプチド、フェンギシン、メバマミド、ミクロコリン、ペニシムタミド、スルホ糖脂質、ハロビル、カハラリド、もしくはタフトシン、または前述のいずれかの組合せ;
(iv) プロテクチン;または
(v) リポキシン、
あるいは(i)~(v)の任意の組合せ
をさらに含む、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
33. 組成物が、シロップ、チュアブル剤、カプセルまたはソフトゲルとして投与される、前述の実施形態のいずれか1つの方法。
34. サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を含む容器;および
そのような組成物の使用についての指示を含有するラベル
を含む、製造物品。
35. サケ類油が、酵素により抽出されたサケ類油である、実施形態34の製造物品。
36. サケ類油が、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られる、実施形態34の製造物品。
37. サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物を含む容器;および
そのような組成物の使用についての指示を含有するラベル
を含む、製造物品であって、
サケ類油は、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られ、および/または
サケ類油は、下記のプロセスまたは条件:
(i) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の酸と混合すること;
(ii) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の塩基と混合すること;
(iii) 分留;
(iv) 再エステル化;
(v) 脱蝋;
(vi) 130℃もしくはそれよりも高い温度;または
(vi) 2atmもしくはそれよりも高い圧力
のうちの1つまたは複数を使用することなく生成される、製造物品。
38. ラベルが、それを必要とするヒトでの好酸球エフェクター機能の低減に向けた使用についての指示を含有する、実施形態34から37のいずれかの製造物品。
39. ラベルが、それを必要とするヒトでの好酸球性炎症状態、障害または疾患の処置に向けた使用についての指示を含有する、実施形態34から37のいずれかの製造物品。
40. 好酸球性炎症状態、障害または疾患が、気道の慢性炎症障害である、請求項39の製造物品。
41. 好酸球性炎症状態、障害または疾患が喘息である、請求項39の製造物品。
42. 好酸球性炎症状態、障害または疾患が気管支喘息である、請求項39の製造物品。
43. ラベルが、それを必要とするヒトでの好酸球性呼吸器状態、障害または疾患の処置に向けた使用についての指示を含有する、実施形態34から37のいずれかの製造物品。
44. 好酸球性呼吸器状態、障害または疾患が、ウイルス性呼吸器疾患である、実施形態43の製造物品。
45. 好酸球性呼吸器状態、障害または疾患が、重症急性呼吸器症候群である、実施形態43の製造物品。
46. 重症急性呼吸器症候群が、コロナウイルスによって引き起こされる、実施形態45の製造物品。
47. ヒトが、状態、障害または疾患を処置するための医学的および外科的介入に対して大きな耐性がある、実施形態38から46のいずれか1つの製造物品。
48. ヒトが、ステロイド処置に対して耐性を示すかまたは耐性を有する、実施形態38から46のいずれか1つの製造物品。
49. ヒトが、ステロイド処置耐性喘息を有する、実施形態38から46のいずれか1つの製造物品。
50. ラベルが、1日当たり4g~6gの間のサケ類油を含む組成物の有効用量を示す、使用についての指示を含有する、実施形態34から49のいずれか1つの製造物品。
51. ラベルが、1日当たり10mg~1000mgの間のサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物の有効用量を示す、使用についての指示を含有する、実施形態34から49のいずれか1つの製造物品。
52. ヒトへの組成物の投与が、補助呼吸をヒトに提供する必要性を低減させるかまたは遅延させる、実施形態34から51のいずれか1つの製造物品。
53. 温和な酵素的加水分解が、1%未満のリパーゼ活性を持つ酵素を使用する、実施形態34から51のいずれか1つの製造物品。
54. サケ類油が、0.5%未満の遊離脂肪酸を含む、実施形態34から53のいずれか1つの製造物品。
55. サケ類油がマイクロコリンを含む、実施形態34から54のいずれか1つの製造物品。
56. サケ類油がマイクロコリンAを含む、実施形態34から55のいずれか1つの製造物品。
57. サケ類油が、以下:
(i) カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、ヘプタデセン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、ガンマリノレン酸、コルンビン酸、ステアリドン酸、ミード酸、もしくはジホモガンマリノレン酸、またはこれらの任意の組合せ;
(ii) リグスチリド、ゲルマクレン、チモール、オイゲノール、カルバクロール、リナロール、シトロネロール、テルピネオール、ビスバロール、サンタロール、ツジョン、ピナカンホン、イタリドン、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ヘレナリン、エレカンパン、フロクマリン、カビコール、シトステロール、スチグマステロール、もしくは3-ブチリデン-4,5-ジヒドロフタリド、またはこれらの任意の組合せ;
(iii) イツリンA、ホイアミド、ヘロナミド、ラキサフィシン、アプラミド、ドラゴナミド、ガゲオテトリン、リングビアベリン、シクロジシジン、パルゲリン、プミラシジン、スルホレイドリポペプチド、フェンギシン、メバマミド、ミクロコリン、ペニシムタミド、スルホ糖脂質、ハロビル、カハラリド、もしくはタフトシン、または前述のいずれかの組合せ;
(iv) プロテクチン;または
(v) リポキシン、
あるいは(i)~(v)の任意の組合せ
を含む、実施形態34から56のいずれか1つの製造物品。
58. 組成物が、経口投与されるか、吸入されるか、注射されるか、または局所投与される、実施形態34から57のいずれか1つの製造物品。
59. 組成物が剤形で提供される、実施形態34から58のいずれか1つの製造物品。
60. 剤形が、シロップ、チュアブル剤、カプセルまたはソフトゲルである。実施形態34から59のいずれか1つの製造物品。
61. サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む、組成物の剤形と;
そのような組成物の使用についての指示を含有する添付文書と
を含む、キット。
62. サケ類油が酵素により抽出されたサケ類油である、実施形態61のキット。
63. サケ類油が、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られる、実施形態61のキット。
64. サケ類油またはサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む、組成物の剤形と;
そのような組成物の使用についての指示を含有する添付文書と
を含むキットであって、
サケ類油が、サケ類の魚の切れ端の温和な酵素的加水分解から得られ、および/または
サケ類油が、下記のプロセスまたは条件:
(i) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の酸と混合すること;
(ii) 3Nもしくはそれよりも高い濃度の塩基と混合すること;
(iii) 分留;
(iv) 再エステル化;
(v) 脱蝋;
(vi) 130℃もしくはそれよりも高い温度:または
(vi) 2atmもしくはそれよりも高い圧力
のうちの1つまたは複数を使用することなく生成される、キット。
65. ラベルが、それを必要とするヒトでの好酸球エフェクター機能を低減させることに向けた使用についての指示を含有する、実施形態61から64のいずれかのキット。
66. ラベルが、それを必要とするヒトでの好酸球性炎症状態、障害または疾患の処置に向けた使用についての指示を含有する、実施形態61から64のいずれかのキット。
67. 好酸球性炎症状態、障害または疾患が、気道の慢性炎症障害である、実施形態66のキット。
68. 好酸球性炎症状態、障害または疾患が、喘息である、実施形態66のキット。
69. 好酸球性炎症状態、障害または疾患が、気管支喘息である、実施形態66のキット。
70. ラベルが、それを必要とするヒトでの好酸球性呼吸器状態、障害または疾患の処置に向けた使用についての指示を含有する、実施形態61から64のいずれかのキット。
71. 好酸球性呼吸器状態、障害または疾患が、ウイルス性呼吸器疾患である、実施形態70のキット。
72. 好酸球性呼吸器状態、障害または疾患が、重症急性呼吸器症候群である、実施形態70のキット。
73. 重症急性呼吸器症候群が、コロナウイルスによって引き起こされる、実施形態72のキット。
74. ヒトが、状態、障害または疾患を処置するための医学的および外科的介入に対して大きく耐性がある、実施形態65から73のいずれか1つのキット。
75. ヒトが、ステロイド処置に対する耐性を示すかまたは耐性を有する、実施形態65から73のいずれか1つのキット。
76. ヒトが、ステロイド処置耐性喘息を有する、実施形態65から73のいずれか1つのキット。
77. 添付文書が、1日当たり4g~6gの間としてサケ類油を含む組成物の有効用量を示す、使用についての指示を含有する、実施形態61から76のいずれか1つのキット。
78. 添付文書が、1日当たり10mg~1000mgの間としてサケ類油から単離された少なくとも1種の生物学的活性物質を含む組成物の有効用量を示す、使用についての指示を含有する、実施形態61から77のいずれか1つのキット。
79. ヒトへの組成物の投与が、補助呼吸をヒトに提供する必要性を低減させるかまたは遅延させる、実施形態61から78のいずれか1つのキット。
80. 温和な酵素的加水分解が、1%未満のリパーゼ活性を持つ酵素を使用する、実施形態61から79のいずれか1つのキット。
81. サケ類油が、0.5%未満の遊離脂肪酸を含む、実施形態61から80のいずれか1つのキット。
82. サケ類油が、マイクロコリンを含む、実施形態61から81のいずれか1つのキット。
83. サケ類油が、マイクロコリンAを含む、実施形態61から82のいずれか1つのキット。
84. サケ類油が、以下:
(i) カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、ミリストレイン酸、ヘプタデセン酸、エライジン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、ネルボン酸、ガンマリノレン酸、コルンビン酸、ステアリドン酸、ミード酸、もしくはジホモガンマリノレン酸、またはこれらの任意の組合せ;
(ii) リグスチリド、ゲルマクレン、チモール、オイゲノール、カルバクロール、リナロール、シトロネロール、テルピネオール、ビスバロール、サンタロール、ツジョン、ピナカンホン、イタリドン、酢酸リナリル、酢酸ゲラニル、ギ酸シトロネリル、ヘレナリン、エレカンパン、フロクマリン、カビコール、シトステロール、スチグマステロール、もしくは3-ブチリデン-4,5-ジヒドロフタリド、またはこれらの任意の組合せ;
(iii) イツリンA、ホイアミド、ヘロナミド、ラキサフィシン、アプラミド、ドラゴナミド、ガゲオテトリン、リングビアベリン、シクロジシジン、パルゲリン、プミラシジン、スルホレイドリポペプチド、フェンギシン、メバマミド、ミクロコリン、ペニシムタミド、スルホ糖脂質、ハロビル、カハラリド、もしくはタフトシン、または前述のいずれかの組合せ;
(iv) プロテクチン;または
(v) リポキシン、
あるいは(i)~(v)の任意の組合せ
を含む、実施形態61から83のいずれか1つのキット。
85. 組成物が、経口投与されるか、吸入されるか、注射されるか、または局所投与される、実施形態61から84のいずれか1つのキット。
86. 組成物が、剤形で提供される、実施形態61から85のいずれか1つのキット。
87. 剤形が、シロップ、チュアブル剤、カプセルまたはソフトゲルである、実施形態61から86のいずれか1つのキット。
【実施例
【0088】
本明細書に開示される主題は、以下の実施例を参照することによってより良好に理解されるが、実施例は、本発明の例示として提供され、決して限定を提供するものではない。
【0089】
(実施例1)
酵素により抽出されたサケ類油の抗炎症効果
この実施例は、酵素により抽出されたサケ類油における好酸球エフェクター機能の低減を介した抗炎症効果を調査する。この実施例で使用される、酵素により抽出されたサケ類油は、本明細書で「SO」とも呼ばれるBrilliant Salmon Oil(Hofseth BioCare ASAから市販されている)である。この仮説を調査するために、(i)正常な多形核白血球(PMNL)の好酸球形状変化、(ii)正常なPMNLにおけるインテグリン上方制御、および(iii)アレルギー性ヒト精製末梢血好酸球でのアポトーシスアッセイを測定する、3つのin-vitroアッセイを使用した。
【0090】
形状変化アッセイ
PMNL試料を、3μg/mL ApoA-IV(陽性対照)、100μg/mL SO、および製剤ビヒクル(陰性対照)で30分間前処理し、CCL11の連続希釈物で20分間、37℃で刺激した。形状変化を、前方散乱(FSC)の増大としてフローサイトメトリーによりモニターし、ビヒクル応答のパーセントとして表した。好酸球は、そのSSC特性および自家蛍光により、好中球と区別可能であることに留意されたい。
【0091】
走化性因子CCL11を使用して好酸球をプライミングすることにより、それらの細胞骨格を再編成することで内皮を通した血管外遊出のために即座に調製した。この形態変化は、これらの細胞の前方散乱特性の増大として、フローサイトメトリーにより検出した。100μg/mLでのSOの効果を研究し、健康なドナーのPMNL試料における好酸球形状変化に対する3μg/mL ApoA-IVの公知の効果と比較した。前処理した試料を、CCL11の連続希釈物で刺激し、形状変化をフローサイトメトリーによりモニターした。以下の表1および図1に見られるように、100μg/mLのSOは、ビヒクルと比較して、好酸球形状変化の目に見える減少をもたらした。
表1. 種々の前処理条件による、様々な濃度のCCL11によって刺激されたPMNLの形状変化(ベースラインとして100%)。
【表1】
【0092】
CD11b(インテグリン)上方制御アッセイ
PMNL試料を、3μg/mL ApoA-IV(陽性対照)、100μg/mL SO、および製剤ビヒクル(陰性対照)で30分間前処理し、CCL11の連続希釈物と共に30分間、37℃でインキュベートした。試料を、抗-CD16-PE-Cy5および抗-CD11b-PE(ICRF44)抗体で染色した。好酸球は、CD16陰性細胞として同定された。CD11b上方制御を、フローサイトメトリーにより分析した。
【0093】
好酸球遊走の前提条件(precondition)は、αmβ2インテグリン(CD11b/CD18)などの接着分子の上方制御である。上記形状変化に対して観察された効果と同様に、SOおよびApoA-IVは、以下の表2および図2に示されるように、細胞表面上のCD11b分子の存在を20~30%、明らかに低減させた(2~4nM付近のCCL11濃度で最適)。
表2. 種々の前処理条件で、様々な濃度のCCL11により刺激されたPMNL表面でのCB11b変化(ベースラインとして100%)。
【表2】
【0094】
アポトーシスアッセイ
アレルギー性ヒト好酸球を、3μg/mL ApoA-IV(陽性対照)、100μg/mL SO、および製剤ビヒクル(陰性対照)の存在下、IL-5(50pM)、1%FBSおよびPenStrepを追加補充したRPMI 1640培地に入れた。アリコートを、18時間のインキュベーション後に取り出し、PBSで2回洗浄し、結合緩衝液に再懸濁した。好酸球細胞を、アネキシンV-FITCアポトーシス検出キットI、(Sigma Aldrich)を使用して染色し、フローサイトメトリーにより即座に分析した。各試料を1分間獲得し、前方散乱/側方散乱プロット上にゲートされた好酸球の総数と、生細胞(アネキシンVneg)およびアポトーシス細胞(アネキシンVpos)のパーセンテージを記録した。
【0095】
ApoA-IVおよびSOは共に、これらのアレルギー性ドナー細胞において好酸球アポトーシスを加速させた。生細胞(アネキシンVneg)のパーセンテージは、ビヒクル処理の57.6%±4.5から、3μg/mL ApoA-IVで処理した好酸球(陽性対照)で31.5±2.3%に、および100μg/mL SOで処理した好酸球で41.6±3.0%に減少した。ApoA-IVおよびSOは共に、アポトーシス細胞(アネキシンVpos)のパーセンテージも、44.1±2.9%(ビヒクル処理)から、3μg/mL ApoA-IVで60±3.8%におよび100μg/mL SOで54.4±2.5%に増加させた。
【0096】
結論
この実施例の結果は、アレルギーおよび炎症状態、特に好酸球エフェクター機能に関わるものの処置に関して、SOが潜在的な治療の見込みを有することを実証した。特に、100μg/mLでのSOは、形状変化アッセイにおいて化学誘引物質CCL11に対する好酸球応答を阻害することが観察された。さらに、100μg/mLでのSOは、インテグリン(CD11b)表面上方制御アッセイにおいて、化学誘引物質CCL11に対する好酸球応答を阻害することが観察された。最後に、SOは、アレルギー個体を供給源とする好酸球におけるアポトーシスを増強することが観察された。
【0097】
(実施例2)
酵素により抽出されたサケ類油の抗炎症有効性に対する様々な処理条件の効果
この実施例は、好酸球エフェクター機能の低減を介した、酵素により抽出されたサケ類油の抗炎症有効性に対する様々な処理条件(例えば、加熱、酸および塩基処理)の効果を比較した。この実施例で使用した酵素により抽出されたサケ類油は、本明細書で「SO」とも呼ばれるBrilliant Salmon Oil(Hofseth BioCare ASAから市販されている)である。上記実施例1に記載されたものと同じ3つのin vitroアッセイを使用して、SOに対する加工処理の効果を調査し、ならびにオキアミ油および標準18/12魚油(魚油中18%DHAおよび12%EPA含量を指す)の場合と効果を比較した。オキアミ油および標準18/12魚油は、共にCostco、USAから供給されたKirkland Signature Krill OilおよびKirkland Signature Wild Alaskan Fish Oilであった。
【0098】
形状変化アッセイ
PMNL試料を、100μg/mL SO、熱、酸および塩基で処理されたSO、オキアミ油、標準18/12魚油、および製剤ビヒクル(陰性対照)で、30分間前処理し、CCL11の連続希釈物で20分間、37℃で刺激した。形状変化を、前方散乱(FSC)の増大としてフローサイトメトリーによりモニターし、ビヒクル応答のパーセントとして表した。好酸球は、そのSSC特性および自家蛍光によって好中球と区別可能であった。
【0099】
走化性因子CCL11を使用して好酸球をプライミングすることにより、その細胞骨格の再編成による内皮を通した血管外遊出のために即座に調製した。この形態変化は、これらの細胞の前方散乱特性の増大として、フローサイトメトリーにより検出した。100μg/mLでのSOの効果を研究し、健康なドナーのPMNL試料の好酸球形状変化に関するSO、オキアミ油、および標準18/12魚油に対する様々な加工処理を比較した。前処理した試料を、CCL11の連続希釈物で刺激し、形状変化をフローサイトメトリーによりモニターした。以下の表3および図3に見られるように、熱、酸または塩基による様々な加工処理は、このアッセイのSOの有効性を有意に低減させた。さらに、オキアミ油は、ビヒクルとの変化を示さなかった。標準18/12魚油の試料は、このアッセイにおける製剤ビヒクルと比較して、ある程度の有効性(SO応答の約33%)を示した。
表3. 種々の前処理条件で、様々な濃度のCCL11により刺激されたPMNLの形状変化(ベースラインとして100%)。
【表3】
【0100】
CD11b(インテグリン)上方制御アッセイ
PMNL試料を、100μg/mL SO、熱、酸および塩基で処理されたSO、オキアミ油、標準18/12魚油、および製剤ビヒクル(陰性対照)で、30分間前処理し、CCL11の連続希釈物で30分間、37℃でインキュベートした。試料を、抗-CD16-PE-Cy5および抗-CD11b-PE(ICRF44)抗体で染色した。好酸球は、CD16陰性細胞として同定された。CD11b上方制御をフローサイトメトリーにより分析した。
【0101】
好酸球遊走の前提条件は、αmβ2インテグリン(CD11b/CD18)などの接着分子の上方制御である。上記実施例1に見られる効果と同様に、以下の表4および図4に示されるように、SOは明らかに、細胞表面上のCD11b分子の存在を、約30%低減させ(約2~4nM CCL11濃度で最適)、それに対して他の試料はいずれも製剤ビヒクルとのいかなる差も示さなかった。
表4. 種々の前処理条件で、様々な濃度のCCL11により刺激されたPMNL表面でのCB11b変化(ベースラインとして100%)。
【表4】
【0102】
アポトーシスアッセイ
アレルギー性ヒト好酸球を、100μg/mL SO、熱、酸および塩基で処理されたSO、オキアミ油、標準18/12魚油、および製剤ビヒクル(陰性対照)の存在下、IL-5(50pM)、1%FBSおよびPenStrepを追加補充したRPMI 1640培地に入れた。アリコートを、18時間のインキュベーション後に取り出し、PBSで2回洗浄し、結合緩衝液に再懸濁した。好酸球細胞を、アネキシンV-FITCアポトーシス検出キットI(Sigma Aldrich)を使用して染色し、フローサイトメトリーにより即座に分析した。各試料を1分間獲得し、前方散乱/側方散乱プロット上にゲートされた好酸球の総数と、生細胞(アネキシンVneg)およびアポトーシス細胞(アネキシンVpos)のパーセンテージを記録した。
【0103】
SOは、上記実施例1に示されるように、これらのアレルギー性ドナー細胞において好酸球アポトーシスを再び加速させた。生細胞(アネキシンVneg)のパーセンテージは、ビヒクル処理における59.3%±4.1から、100μg/mL SO処理好酸球における40.2%±3.8まで減少した。SOはまた、アポトーシス細胞(アネキシンVpos)のパーセンテージを、46.5%±2.7(ビヒクル処理)から52.6%±3.8に増加させた。他の処理はいずれも、ビヒクル処理からの、生細胞(アネキシンVneg)のパーセンテージのいかなる有意な変化も示さなかった(熱-57.0%±3.8;酸-60.9%±3.3;塩基-59.5%±2.7;オキアミ-53.2%±3.6;魚油-52.1%±4.3)。
【0104】
結論
この実施例の結果は、SOを加熱することまたはSOを弱酸もしくは塩基と接触させることが、特にこれらの好酸球エフェクター機能in vitro結果に示されるように、アレルギーおよび炎症状態の処置への潜在的な治療上の適用を低減/除去することを実証した。これらの結果は、加熱または酸もしくは塩基処理が、観察された肯定的な好酸球エフェクター機能の結果の主要な原因となるSO中に存在する活性成分を著しく分解/排除することを示す。さらに、オキアミ油はこれらの成分を含有しないようであり、標準18/12魚油は、単一形状変化アッセイにおける僅かに陽性の結果によって示されるが、Cd11b上方制御でもアポトーシスでも応答が存在しないことにより示されるように、非常に少量のこれら成分を含有する可能性がある。最後に、いかなる理論にも拘束されることを望まないが、油中に存在する脂肪酸は、(a)脂肪酸組成の変化は、加熱または酸/塩基処理後にSOで認められず、(b)魚油およびSOは、非常に類似した脂肪酸プロファイルを示しかつ共に天然トリグリセリドエステル形態にあるので、この有効性において役割を果たさないと考えられる。
【0105】
(実施例3)
酵素により抽出されたサケ類油の抗炎症効果を評価する比較in-vivo研究
この実施例は、モルモットの腹膜好酸球におけるロイコトリエンB4への走化性およびケモキネシスならびに好酸球の生存度に対する、OmeGo(登録商標)サーモン油(Hofseth BioCare ASAから市販されている、酵素により抽出されたサーモン油)の効果を、タラ肝油、フェビピプラント(陽性対照として)、およびリノール酸(陰性対照として)の効果と比較する。
【0106】
この実施例での試験品目は:
- OmeGo(登録商標)サーモン油(本明細書では「OmeGo」とも呼ばれる、Hofseth BioCare ASAから市販されている酵素により抽出されたサーモン油)
- SEACODタラ肝油(本明細書では「SEACOD」とも呼ばれる)
- フェビピプラント;および
- リノール酸
を含む。
【0107】
この実施例で使用した動物は、Cavia porcellus種(モルモット)であった。200~250gの間の体重である合計で21匹のオスのモルモットを選択した。これらの動物を、手作業で7群に無作為化し、即ちG1およびG2(OmeGoサーモン油30および300mg/kg)、G3およびG4(SEACOD 30および300mg/kg)、G5およびG6は、陽性対照(フェビピプラント 5および20mg/kg)であり、G7は、陰性対照(リノール酸300mg/kg)であり、各群は3匹の動物からなった。
【0108】
試験品目製剤の調製
OmeGoおよびSEACODをカプセルにカプセル封入した。カプセル内の油を、シリンジを使用して収集した。適切な量の試験品目を秤量し、生理食塩水に懸濁した。投与時に、試験品目製剤を磁気撹拌子上に保持して、均質性を維持した。
【0109】
概略的方法
ポリミキシンB(1mg/動物)を1週間に1回、6週にわたって腹腔内注射することによりモルモットを感作させて、軽度好酸球増加症を創出した。ポリミキシンBは、0.9%食塩溶液に溶解することによって与えられた。各動物に、1mgのポリミキシンBを含有する0.5mLの0.9%食塩水を注射した。6週目で、ポリミキシンBに加え、以下の表5に示されるように、その特定の群に属する試験品目を動物に注射した。
表5. 群および群サイズ
【表5】
注記: No.=番号、NC=陰性対照、PC-陽性対照。
【0110】
投与および腹腔内流体(intraperitoneal fluid)の収集の方法
動物を、腹腔内注射を通してポリミキシンBで処置した。ポリミキシンBと共に、試験品目も腹腔内経路を経て与えた。6週目に、イソフルランを使用して動物に麻酔をし、腹腔に食塩水50mLを注射することにより腹腔内流体を収集した。腹部を15秒間マッサージした後、流体を排出させ、遠心分離管に収集した。30~35mL程度の流体を、各動物から収集した。この流体を10分間遠心分離し(400×g、4℃)、FBS(ウシ胎仔血清)培地に再懸濁した。このステップの後、流体を10分間再度遠心分離し(400×g、4℃)、細胞ペレットを、96ウェルマイクロ走化性試験チャンバーを使用して、ロイコトリエンB4に対する好酸球の走化性およびケモキネシス応答ならびに細胞カウントに関して分析した。
【0111】
好酸球を、Fukusa et. al. (Increased numbers of hypodense eosinophils in the blood of patients with bronchial asthma. Am. Rev. Respir. Dis. 1985; 132:981-985)により報告された修正手順を使用して、90%よりも高い純度で回収した。
【0112】
投薬の頻度
動物を、ポリミキシンB食塩溶液で、毎週1回、連続5週にわたり処置し、6週目はポリミキシンBと共に試験品目を群ごとに与えた。各動物に1mgのポリミキシンBを与えた。
【0113】
血液収集
血液を、最初の投薬の前日および研究の最終日に収集した。後眼窩叢を経て約1.5mLの血液を各動物について収集し、これから血漿を分離し、さらなる抗炎症バイオマーカーアッセイのために-20℃で保存した。
【0114】
観察
ロイコトリエンB4に対する走化性およびケモキネシス活性: 走化性およびケモキネシス活性を、96ウェルマイクロチャンバーを使用するBoydenチャンバー法により測定し、×400倍率(細胞/5視野)の下、膜フィルター上でカウントされた好酸球の数として表した。ロイコトリエンB4に対するケモキネシス活性は、同じ濃度のロイコトリエンB4(0.1μM)をチャンバーの両方の区画に入れることによって検査した。好酸球の生存度は、90分間インキュベートした後のTrypanブルー色素排除試験により決定した。全ての試料を二連でアッセイした。血液も同日に収集し、血漿を分離し、後続の抗炎症バイオマーカーアッセイのために-20℃で保存した。
【0115】
死亡/病的状態: 全ての動物を、順化および研究期間の全体を通して、病的状態および死亡に関して1日少なくとも2回(朝および晩)観察した。
【0116】
毒性の臨床徴候: 臨床徴候を、全ての動物に関し、試験品目投与後および研究期間全体を通したその他全ての日に観察した。ケージ横からの観察には、皮膚および毛皮、眼および粘膜、ならびに呼吸器、循環器、自律および中枢神経系、体性運動活性(somatomotor activity)、および行動パターンの変化が含まれた(しかし、これらに限定されない)。
【0117】
体重: 動物を、無作為化中、処置の開始時、およびその後実験期間が終わるまで毎週、秤量した。
【0118】
結果の評価/統計分析: 生データを、Statistical Software Sigma Plot 14を使用して処理した。平均および標準偏差を、このソフトウェアを使用して計算し、全てのデータを表形式にまとめた。体重のような連続的なデータは全て、それらの正規性に関してチェックし、均質なデータに関しては、ANOVAを使用した。
【0119】
結果および考察
ロイコトリエンB4に対する走化性およびケモキネシス活性: データを、表6において、各群の個々の動物に関して提示する。
表6. モルモットの腹膜から得られた好酸球中のロイコトリエンB4(0.1μM)に対する走化性(A)およびケモキネシス(B)活性に関する試験品目による前処理の概要。
【表6】
【0120】
死亡/病的状態: 処置に関連した死亡/病的状態は、研究期間の全体を通して7群全ての動物のいずれにも示されなかった。
【0121】
毒性の臨床徴候: 処置に関連した臨床徴候は、群のいずれにおいても観察されなかった。
【0122】
体重および体重増加: 研究における平均体重は、研究期間の全体を通して、群のいずれにおいても統計的有意差を示さなかった(表7参照)。1日目に対する体重の変化パーセンテージも、研究期間の全体を通して群のいずれにおいても統計的有意差を示さなかった(表8参照)。
表7. 1日目に対する体重の変化パーセントの概要。
【表7】
表8. 死亡および病的状態の概要。
【表8-1】
【表8-2】
【0123】
結論
軽度好酸球増加症状態を、ポリミキシンBを使用して全ての動物で創出した。試験品目を投与した後、研究の6週目で腹腔内流体を全ての動物から首尾良く収集した。
【0124】
この実施例の結果は、CARDIO油(30mg/kg i.p.、n=3;300mg/kg i.p.、n=3)による前処理が、用量依存的に好酸球走化性およびケモキネシス活性を有意に阻害することを実証した。最大阻害(300mg)は、リノール酸陰性対照と比較したとき、走化性に関して50.7%およびケモキネシスに関して55.6%であった。SEACOD(30mg/kg i.p.、n=3;300mg/kg i.p.、n=3)およびリノール酸(100mg/kg i.p.、n=3)による前処理は、好酸球走化性およびケモキネシス活性を阻害しなかった。陽性対照フェビピプラント(5mg/kg i.p.、n=3;20mg/kg i.p.、n=3)による前処理も、用量依存的に好酸球走化性およびケモキネシス活性を有意に阻害した。最大阻害(20mg)は、対照と比較したとき、走化性に関して68.0%であり、走化性動態に関して51.7%であった。ロイコトリエンB4と共に90分間インキュベートした後の好酸球の生存率は、全ての処置群で96%よりも高かった。
【0125】
(実施例4)
イエダニ(HOM)抽出物誘発型ネズミ喘息モデルにおけるOmeGo(登録商標)サーモン油の好酸球調節特性
この実施例は、イエダニ(HDM)抽出物誘発型ネズミ喘息モデルにおけるOmeGo(登録商標)サーモン油(Hofseth BioCare ASAから市販されている、酵素により抽出されたサーモン油)の好酸球調節特性を実証する。この目的のため、それぞれ、生理食塩水(NS)をビヒクル対照として使用し、アポリポタンパク質A-IV(ApoA-IV)を陽性対照として使用した。研究では、HDM抽出物を使用するマウスにおける喘息状態の誘発、およびOmeGoサーモン油(CARDIOソフトゲル;20または60μg/動物)およびApoA-IV(5μg/動物;陽性対照として)の、マウスにおける好酸球調節に対する効果の同時評価を伴った。
【0126】
処置の過程で死亡または病的状態は観察されなかった。臨床徴候または症状は、全ての群の動物のいずれでも観察されなかった。全ての群全体にわたる動物は、研究期間全体を通して体重ならびに体重変化%のいかなる統計的変動も示さなかった。
【0127】
1日目、20匹のマウス全てに麻酔をかけ、40μLのPBS中1μgのHDMタンパク質で鼻内から感作させた。7日目から11日目に、20匹のマウス全てに、40μLのPBS中10μgのHDMタンパク質の毎日の鼻内適用によりチャレンジした。7日目から14日目まで異なる処置のために、マウスを無作為に、各群に5匹のマウスを含む4群に分けた。7日目から14日目まで、第1の群(G1)の各動物に100μLのNSを与え;第2の群(G2)の各動物には、100μLのNS中20μgのCARDIOを与え;第3の群(G3)の各動物には、100μgのNS中60μgのCARDIOを与え;第4の群(G4)の各動物には、100μLのNS中5μgのApoA-IVを与えた。
【0128】
気管支肺胞洗浄(BAL)流体および脾臓を、15日目に20匹のマウス全てから収集し、収集された試料の細胞充実度をフローサイトメトリーにより分析した。以下の表9にまとめるように、BAL流体における全細胞カウント(好酸球、肺胞マクロファージ、リンパ球、単球、および好中球)は、G1と比較して、G3(60μg CARDIO/動物;P≦0.01)およびG4(5μg APOA-IV/動物;P≦0.05)で有意に低減した。しかしながら、BAL流体中の好酸球の有意な低減は、G1と比較して、G3(60μg CARDIO/動物;P≦0.01)でのみ観察された。さらに、脾臓組織中の好酸球のパーセンテージは、G1と比較して、G3(60μg CARDIO/動物;P≦0.001)およびG4(5μg ApoA-IV/動物;P≦0.01)で有意に減少した。BAL流体および脾臓試料分析は、60μgのCARDIO/動物の処置が、マウスの気道好酸球増加症の改善を支援することを示した。
表9. 好酸球増加症分析の概要
【表9】
【0129】
結論
喘息状態を、HDM抽出物を使用して全ての動物で創出した。試験品目を投与した後、BAL流体を、研究の15日目に全ての動物から首尾良く収集した。60μgのCARDIO/動物の投与は、BAL流体および脾臓の細胞充実度の結果から反映されるように、ネズミ喘息モデルの好酸球増加症状態を低減させることができた。
【0130】
(実施例5)
酵素により抽出されたサーモン油の脱蝋および好酸球アポトーシスに対するその効果
この実施例は、好酸球エフェクター機能の低減を介して酵素により抽出されたサケ類油の抗炎症有効性に対する脱蝋の効果を比較した。100mLのガラスビーカーに、80mLのOmeGo(登録商標)サーモン油(Hofseth BioCare ASAから市販されている、酵素により抽出されたサーモン油)(本明細書では、「OmeGo」とも呼ばれる)を入れ、8℃に冷却し、4~8℃(冷蔵庫)の間で24時間保持した。蝋状固体の薄層(約10mLの体積)が、ビーカーの底に沈殿した。10mLの上部液体油をデカンテーションし、以下に記載されるように好酸球アポトーシスアッセイ用に収集した。
【0131】
アレルギー性ヒト好酸球を、製剤ビヒクル、100μg/mLのOmeGo、および100μg/mLの上記脱蝋OmeGoと一緒に、IL-5(50pM)、1%FBS、およびPenStrepが追加補充されたRPMI 1640培地に入れた。アリコートを、18時間のインキュベーション後に取り出し、PBS中で2回洗浄し、結合緩衝液に再懸濁した。好酸球細胞を、アネキシンV-FITCアポトーシス検出キットI(Sigma Aldrich)を使用して染色し、即座にフローサイトメトリーにより分析した。各試料を1分間獲得し、以下の表10にまとめるように、生細胞(アネキシンVneg)およびアポトーシス細胞(アネキシンVpos)のパーセンテージを記録した。
表10. アポトーシスアッセイの概要
【表10】
【0132】
結論
OmeGOの脱蝋は、好酸球細胞のアポトーシスの増大によって測定されるように、事実上、好酸球調節を排除する。
【0133】
他に明示しない限り、「1つの(a)」、「1つの(an)」、および同様の用語は、1つまたは複数を指す。
【0134】
一部の変形例では、「約」は、この技術分野の当業者に容易に公知のそれぞれの値に関する通常の誤差範囲を指す。本明細書での「約」値またはパラメーターへの言及は、その値またはパラメーター自体を対象とする実施形態を含む(および記載する)。例えば、「約x」は、「x」自体を含みおよび記載する。一部の実施形態では、測定値と関連付けて使用されるときまたは値、単位、定数もしくは値の範囲を修飾するのに使用されるときの「約」という用語は、±2%のばらつきを指す。
【0135】
一部の変形例では、本明細書の2つの値またはパラメーターの「間」は、それら2つの値またはパラメーター自体を含む実施形態を含む(および記載する)。例えば、「x~yの間」に言及する記載は、「x」および「y」自体の記載を含む。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】