(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】高信頼性用途のためのポリマーコンデンサの製造プロセス
(51)【国際特許分類】
H01G 9/00 20060101AFI20230518BHJP
H01G 9/028 20060101ALI20230518BHJP
H01G 9/15 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/028 G
H01G9/028 F
H01G9/15
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560396
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(85)【翻訳文提出日】2022-10-12
(86)【国際出願番号】 EP2021058224
(87)【国際公開番号】W WO2021198214
(87)【国際公開日】2021-10-07
(32)【優先日】2020-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】メルケル、ウドー
(57)【要約】
本発明は、コンデンサの製造方法に関し、本方法は、
a)電極材料(2)で作製された多孔質電極本体(1)を提供する工程であって、誘電体(3)が、電極材料(2)の表面を少なくとも部分的に覆う、提供する工程と、
b)導電性ポリマー、少なくとも150℃かつ275℃以下の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する少なくとも1つの高沸点溶媒、及び任意選択の分散剤を含む液体組成物を、プロセス工程a)で提供された多孔質電極本体(1)の少なくとも一部に導入し、誘電体(3)の表面を少なくとも部分的に覆う固体電解質(4)の形成のために、高沸点溶媒、及び存在する場合、分散剤の少なくとも一部を除去する工程と、
c)プロセス工程b)で得られた多孔質電極本体(1)の細孔の少なくとも一部を、少なくとも1つの含浸溶媒を含む含浸溶液(6)で充填する工程であって、少なくとも1つの含浸溶媒が、少なくとも1つのヒドロキシ基を含み、70~180g/molの範囲の分子量を有する、充填する工程と、
d)プロセス工程c)で得られた多孔質電極本体(1)を封入する工程と、を含む。
本発明はまた、この方法で製造されたコンデンサ、電解コンデンサ及び電子回路の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサの製造方法であって、
a)電極材料(2)で作製された多孔質電極本体(1)を提供する工程であって、誘電体(3)が、前記電極材料(2)の表面を少なくとも部分的に覆う、提供する工程と、
b)導電性ポリマー、少なくとも150℃かつ275℃以下の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する少なくとも1つの高沸点溶媒、及び任意選択の分散剤を含む液体組成物を、プロセス工程a)で提供された前記多孔質電極本体(1)の少なくとも一部に導入し、前記誘電体(3)の表面を少なくとも部分的に覆う固体電解質(4)の形成のために、前記高沸点溶媒、及び存在する場合、前記分散剤の少なくとも一部を除去する工程と、
c)プロセス工程b)で得られた前記多孔質電極本体(1)の細孔(5)の少なくとも一部を、少なくとも1つの含浸溶媒を含む含浸溶液(6)で充填する工程であって、前記少なくとも1つの含浸溶媒が、少なくとも1つのヒドロキシ基を含み、70~180g/molの範囲の分子量を有する、充填する工程と、
d)プロセス工程c)で得られた前記多孔質電極本体(1)を封入する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)又はその誘導体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの高沸点溶媒が、180g/mol未満の分子量を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
プロセス工程b)で、前記固体電解質(4)を形成するときに、前記高沸点溶媒の総量の少なくとも50重量%が、少なくとも部分的に除去される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記含浸溶液(6)が、1000μS/cm未満のイオン伝導率を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの含浸溶媒が、モノ、ジ、若しくはトリアルキレングリコール、モノ、ジ、若しくはトリアルキレングリコールモノエーテル、アルカンジオール、又はアルカンジオールモノエーテルである、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記アルカンジオールが、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,5-ヘプタンジオール、2,6-ヘプタンジオール、3,4-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,4-オクタンジオール、1,5-オクタンジオール、1,6-オクタンジオール、1,7-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,3-オクタンジオール、2,4-オクタンジオール、2,5-オクタンジオール、2,6-オクタンジオール、2,7-オクタンジオール、3,4-オクタンジオール、3,5-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、及び4,5-オクタンジオールからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの含浸溶媒が、205℃超の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの含浸溶媒が、15℃未満の融点を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
コンデンサであって、構成要素として、
i)電極材料(2)で作製された多孔質電極本体(1)であって、誘電体(3)が、前記電極材料(2)の表面を少なくとも部分的に覆う、多孔質電極本体と、
ii)導電性ポリマーを含む固体電解質(4)であって、前記固体電解質層が、前記誘電体(3)の表面を少なくとも部分的に覆う、固体電解質(4)と、
iii)前記多孔質電極本体(1)の開放細孔体積の少なくとも一部を充填する含浸溶液(6)であって、前記含浸溶液(6)が、1000μS/cm未満の導電率を有し、少なくとも1つの含浸溶媒を含み、前記少なくとも1つの含浸溶媒が、少なくとも1つのヒドロキシ基を含み、70~180g/molの範囲の分子量を有する、含浸溶液(6)と、
iv)前記多孔質電極本体(1)を封入するカプセルと、
を含み、
前記コンデンサが、
(α1)20℃から-55℃への温度の低下時に最大20%の静電容量の減少、及び
(α2)125℃で1000時間のコンデンサの保管後の最大20%の静電容量の減少を有する、コンデンサ。
【請求項11】
前記導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)又はその誘導体である、請求項10に記載のコンデンサ。
【請求項12】
前記少なくとも1つの含浸溶媒が、請求項6~9のいずれか一項に定義される通りである、請求項10又は11に記載のコンデンサ。
【請求項13】
前記多孔質電極本体(1)の開放細孔体積の少なくとも50体積%が、前記少なくとも1つの含浸溶媒で充填される、請求項10~12のいずれか一項に記載のコンデンサ。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか一項に記載のコンデンサ、又は請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって得られるコンデンサの電子回路における使用。
【請求項15】
請求項10~13のいずれか一項に記載のコンデンサ、又は請求項1~9のいずれか一項に記載の方法によって得られるコンデンサを備える電子回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサの製造方法、この方法で製造されたコンデンサ、このコンデンサの使用、及び電子回路に関する。
【0002】
標準的な電解コンデンサは、概して、多孔質金属電極、金属表面上に配置された酸化物層、多孔質構造に導入される一般に固体の導電性材料、銀層などの外部電極(接点)、及び他の電気接点並びにカプセルからなる。頻繁に使用される電解コンデンサの1つは、陽極電極がバルブ金属タンタルから作製されるタンタル電解コンデンサであり、その上に、五酸化タンタルの均一な誘電体層が陽極酸化によって生成されている(「形成」とも呼ばれる)。液体又は固体電解質は、コンデンサの陰極を形成する。陽極電極がバルブ金属アルミニウムから作製され、その上に均一で電気絶縁性酸化アルミニウム層が、陽極酸化によって誘電体として生成されるアルミニウムコンデンサもまた、頻繁に使用される。ここでも、液体電解質又は固体電解質が、コンデンサの陰極を形成する。アルミニウムコンデンサは、一般に、巻回型コンデンサ又はスタック型コンデンサとして具現化される。
【0003】
高い導電率を考慮して、π-共役ポリマーは、上記のコンデンサ中の固体電解質として特に好適である。π-共役ポリマーは、導電性ポリマー又は合成金属とも呼ばれる。金属と比較して、ポリマーは加工、重量、及び科学的改質による特性の選択的調整に関して利点を有するため、共役ポリマーはその商業的重要性が高まりつつある。既知のπ-共役ポリマーの例としては、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレン、及びポリ(p-フェニレン-ビニレン)が挙げられ、ポリ(3,4-エチレン-ジオキシチオフェン)(PEDOT)は、酸化形態で非常に高い導電率を有するため、技術的に使用される特に重要なポリチオフェンである。
【0004】
従来技術では、電解コンデンサ中の導電性ポリマーに基づいて固体電解質を製造するための代替的な方法が開発されている。例えば、DE-A-102005043828は、既に重合したチオフェン、例えば先行技術から既知のPEDOT/PSS分散液を含む分散液が酸化物層に塗布され、次いで、分散媒体が蒸発によって除去される、コンデンサ中の固体電解質の製造方法を記載している。しかしながら、特に高い動作電圧に対する電解コンデンサの信頼性の尺度である破壊電圧を更に増加させる必要がある。破壊電圧は、コンデンサの誘電体(酸化物層)がもはや電界強度に耐えられず、陽極と陰極との間で電気的破壊が発生し、コンデンサ内の短絡をもたらす電圧である。破壊電圧が高いほど、誘電体の品質が良好であるため、コンデンサも信頼性が高くなる。また、コンデンサの破壊電圧が高いほど、コンデンサを使用できる定格電圧が高くなる。
【0005】
破壊電圧の増加は、アルミニウムコンデンサにおいて、例えば、分散液を酸化物層に塗布する前に、ポリエチレングリコールなどのイオン伝導性物質を、固体電解質層を製造するために使用されるポリマー分散液に添加することによって、WO-A-2007/097364号、JP2008-109065、JP2008-109068、又はJP2008-109069に従って達成することができる。しかしながら、このアプローチの欠点は、コンデンサの破壊電圧を改善することができるが、この改善は、低温でのコンデンサの静電容量の望ましくない大きな低下と関連付けられ、それにより、そのようなコンデンサは自動車産業で使用不能になる。この静電容量の損失は、主に電子機器に使用される100V未満の用途電圧について最も重大である。
【0006】
ポリエチレングリコールのポリマー分散液への添加に加えて、固体電解質と液体電解質との組み合わせを提供するいわゆる「ハイブリッドコンデンサ」の状況では、静電容量の収量を増加させ、それに応じて残留電流を低減するために、酸化物層に塗布された後にγ-ブチロラクトン又はスルホランを含む溶液を固体電解質に含浸させることが、例えば、US7,497,879(B2)又はJP2009-111174から既知である。そのようなコンデンサはまた、低温での静電容量の望ましくない大きな低減を呈する。更に、US7,497,879B2又はJP2009-111174において使用される構成要素は、コンデンサの温度の上昇時に蒸発し、これは、構成要素中の通常の使用又はコンデンサの製造プロセス中に発生する可能性があり、このようなハイブリッドコンデンサの乾燥をもたらす。
【0007】
本発明は、コンデンサに関連して、特に固体電解コンデンサに関連して、特に好ましくは従来技術から既知であるアルミニウムコンデンサに関連して、従来技術から生じる欠点を克服するという目的に基づいた。
【0008】
特に、本発明は、電気産業、特に自動車産業における重要な要件に準拠するために、低温での静電容量のわずかな低減と高温での十分に高い長期安定性とを同時に有するコンデンサを製造することができるコンデンサの製造方法を提供するという目的に基づいた。
【0009】
上記の有利なコンデンサの製造方法はまた、可能な限り最も単純な方法で、特に可能な限り少ない方法工程で、これらのコンデンサの製造を可能にするという点で、更に区別されるべきである。
【0010】
上記の目的の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を少なくとも部分的に解決することへの貢献は、独立請求項によって行われる。従属請求項は、目的の少なくとも1つを少なくとも部分的に解決することに貢献する好ましい実施形態を提供する。
【0011】
本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの貢献は、コンデンサ、好ましくは電解コンデンサの製造方法の実施形態1によって行われ、本方法は、
a)電極材料で作製された多孔質電極本体を提供する工程であって、誘電体が、電極材料の表面を少なくとも部分的に覆う、提供する工程と、
b)導電性ポリマー、少なくとも150℃かつ275℃以下の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する少なくとも1つの高沸点溶媒、及び任意選択の分散剤を含む液体組成物、好ましくは分散液又は溶液の形態の液体組成物、より好ましくは分散液の形態の液体組成物を、プロセス工程a)で提供された多孔質電極本体の少なくとも一部に導入し、誘電体の表面を少なくとも部分的に覆う固体電解質の形成のために、高沸点溶媒、及び存在する場合、分散剤の少なくとも一部を除去する工程と、
c)プロセス工程b)で得られた多孔質電極本体の細孔の少なくとも一部を、少なくとも1つの含浸溶媒を含む含浸溶液で充填する工程であって、少なくとも1つの含浸溶媒が、少なくとも1つのヒドロキシ基を含み、70~180g/molの範囲の分子量を有する、充填する工程と、
d)プロセス工程c)で得られた多孔質電極本体を封入する工程と、を含む。
【0012】
プロセス工程b)で使用される液体組成物は、溶液又は分散液の形態で存在することができる。しかしながら、ここでの遷移は流体であり得る。そのため、以下、「分散される」及び「溶解される」という用語間に区別はない。同様に、「分散液」と「溶液」又は「分散剤」と「溶媒」との間に区別はない。むしろ、これらの用語は、同義に使用される。
【0013】
本発明による方法の実施形態2では、本方法は、実施形態1によって設計され、電極材料は、アルミニウムであり、誘電体は、酸化アルミニウム、好ましくはAl2O3である。
【0014】
本発明による方法の実施形態3では、本方法は、実施形態1又は2によって設計され、液体組成物、好ましくは分散液は、導電性ポリマーの粒子を含む。
【0015】
本発明による方法の実施形態4では、本方法は、実施形態1~3のいずれか1つによって設計され、導電性ポリマーは、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0016】
本発明による方法の実施形態5では、本方法は、実施形態4によって設計され、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)又はその誘導体である。
【0017】
本発明による方法の実施形態6では、本方法は、実施形態1~5のいずれか1つによって設計され、液体組成物、好ましくは分散液は、少なくとも1つのポリマーアニオンを更に含む。
【0018】
本発明による方法の実施形態7では、本方法は、実施形態6によって設計され、ポリマーアニオンが、ポリスチレンスルホン酸又はその誘導体である。
【0019】
本発明による方法の実施形態8では、本方法は、実施形態1~7のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの高沸点溶媒が、180g/mol未満、好ましくは150g/mol未満、より好ましくは120g/mol未満の分子量を有する。
【0020】
本発明による方法の実施形態9では、本方法は、実施形態1~8のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの高沸点溶媒が、250℃未満の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する。
【0021】
本発明による方法の実施形態10では、本方法は、実施形態1~9のいずれか1つによって設計され、液体組成物、好ましくは分散液が、少なくとも2つの高沸点溶媒の混合物を含む。
【0022】
本発明による方法の実施形態11では、本方法は、実施形態1~10のいずれか1つによって設計され、液体組成物、好ましくは分散液が、導電性ポリマー(好ましくは、PEDOT)と少なくとも1つの高沸点溶媒とを、1:1~1:100の範囲、好ましくは1:3~1:50の範囲、より好ましくは1:8~1:25の範囲の量で含む。
【0023】
本発明による方法の実施形態12では、本方法は、実施形態1~11のいずれか1つによって設計され、液体組成物、好ましくは分散液が、2.5~8.0の範囲、好ましくは2.5~7の範囲、より好ましくは3~6の範囲の(25℃で判定される)pH値を有する。
【0024】
本発明による方法の実施形態13では、本方法は、実施形態1~12のいずれか1つによって設計され、プロセス工程b)で、固体電解質を形成するとき、高沸点溶媒の総量の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%が、少なくとも部分的に除去される。本発明によるプロセスの特に好ましい実施形態では、固体電解質を形成するとき、高沸点溶媒は完全に除去される。
【0025】
本発明による方法の実施形態14では、本方法は、実施形態1~13のいずれか1つによって設計され、プロセス工程d)を実施する前に、プロセス工程b)で得られた多孔質電極本体の開放細孔体積の少なくとも50体積%、より好ましくは少なくとも75体積%、更により好ましくは少なくとも90体積%が、少なくとも1つの含浸溶媒で充填される。
【0026】
本発明による方法の実施形態15では、本方法は、実施形態1~14のいずれか1つによって設計され、含浸溶液は、1000μS/cm未満、好ましくは100μS/cm未満、更により好ましくは10μS/cm未満、最も好ましくは1μS/cm未満のイオン伝導率を有する。
【0027】
本発明による方法の実施形態16では、本方法は、実施形態1~15のいずれか1つによって設計され、含浸溶液は、含浸溶媒のうちの少なくとも2つの混合物を含む。
【0028】
本発明による方法の実施形態17では、本方法は、実施形態1~16のいずれか1つによって設計され、含浸溶液が、含浸溶液の総重量に基づいて、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、更により好ましくは0.01重量%未満の、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物を含む。本発明による方法の特に好ましい実施形態では、含浸溶液は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する任意の芳香族化合物を含まない。
【0029】
本発明による方法の実施形態18では、本方法は、実施形態1~17のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒が、2つのヒドロキシ基を含む化合物である、又は1つのヒドロキシ基及び1つのエーテル基、好ましくは1つのアルキルエーテル基を含む化合物である。
【0030】
本発明による方法の実施形態19では、本方法は、実施形態18によって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒は、モノ、ジ、又はトリアルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール又はジプロピレングリコール、モノ、ジ、又はトリアルキレングリコールモノエーテル、好ましくはジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノブチルエーテル、アルカンジオール又はアルカンジオールモノエーテル、最も好ましくはジエチレングリコール又はアルカンジオールである。
【0031】
本発明による方法の実施形態20では、本方法は、実施形態19によって設計され、アルカンジオールが、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,5-ヘプタンジオール、2,6-ヘプタンジオール、3,4-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,4-オクタンジオール、1,5-オクタンジオール、1,6-オクタンジオール、1,7-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,3-オクタンジオール、2,4-オクタンジオール、2,5-オクタンジオール、2,6-オクタンジオール、2,7-オクタンジオール、3,4-オクタンジオール、3,5-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、及び4,5-オクタンジオール、及び70~180g/molの範囲の分子量を有する任意の追加のアルカンジオールからなる群から選択される。更に、炭素原子に結合されている1つの水素原子が、メチル基又はエチル基などのアルキル基によって置換されている上記アルカンジオールの好適な誘導体。
【0032】
本発明による方法の実施形態21では、本方法は、実施形態1~20のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒が、205℃超、好ましくは220℃超、更により好ましくは240℃超の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する。
【0033】
本発明による方法の実施形態22では、本方法は、実施形態1~21のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒が、15℃未満、好ましくは5℃未満、更により好ましくは-5℃未満の融点を有する。
【0034】
本発明による方法の実施形態23では、本方法は、実施形態1~22のいずれか1つによって設計され、含浸溶液が、含浸溶液の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%、及び最も好ましくは少なくとも95重量%の量で少なくとも1つの含浸溶媒を含む。2つ以上の含浸溶媒の場合、これらの量は含浸溶媒の総量を表す。
【0035】
本発明による方法の実施形態24では、本方法は、実施形態1~23のいずれか1つによって設計され、液体組成物、好ましくは分散液、含浸溶液、又はその両方が、安定剤を更に含む。好ましい安定剤は、WO2012/041507A1で言及されている化合物であり、少なくとも2つのOH基と、炭素とは異なるヘテロ原子を有する1つの更なる官能基とを含有する芳香族化合物及びが特に好ましい。好適な安定剤の例は、3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸、及び3,4,5-トリヒドロキシ安息香酸エステル(没食子酸エステル)などのその誘導体、特に、好ましくはそれぞれのケースでエステルのアリール又はアルキル基に1~15個のC原子を有するアルキルエステル、アルケニルエステル、シクロアルキルエステル、シクロアルケニルエステル、アリールエステルである。特に好ましいのは、没食子酸及び糖でエステル化された没食子酸であり、これらは、しばしばタンニン又はガロタンニンと呼ばれる(Rompp Chemie、第10版(1999)、4391頁を参照)。安定剤としては、EP1798259A1の段落[0049]で言及される「ヒドロキシ基含有芳香族化合物」、EP1043720A1の段落[0025]で言及される「酸化防止剤」、WO2008/055834A1の10及び11頁で言及される「少なくとも2つのヒドロキシ基を含有するスルホ基を除く芳香族化合物」も好適である。この状況で、安定剤(複数も可)を、含浸溶液の総重量に基づいて、0.1重量%~60重量%、好ましくは1重量%~50重量%、特に好ましくは5重量%~25重量%の範囲の濃度で使用することも好ましい。分散液が安定剤を含む場合、安定剤(複数も可)を、分散液の総重量に基づいて、0.1重量%~20重量%、好ましくは0.5重量%~10重量%の範囲、特に好ましくは1重量%~5重量%の範囲の濃度で使用することが好ましい。
【0036】
本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの貢献はまた、本発明による方法によって得られるコンデンサ1の実施形態1によっても行われる。
【0037】
本発明によるコンデンサ1の実施形態2では、コンデンサは、実施形態1によって設計され、コンデンサは、
(α1)20℃から-55℃への温度の低下時に最大20%、好ましくは最大15%、より好ましくは最大10%の静電容量の減少、及び
(α2)125℃で1000時間のコンデンサの保管後の最大20%、好ましくは最大15%、より好ましくは最大10%の静電容量の減少、を有する。
【0038】
本発明によるコンデンサ1の実施形態3では、コンデンサは、実施形態1又は2によって設計され、コンデンサは、100V未満の定格電圧を有する。
【0039】
本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの貢献はまた、構成要素として以下を備えるコンデンサ2の実施形態1によっても行われる。
i)電極材料で作製された多孔質電極本体であって、誘電体が、電極材料の表面を少なくとも部分的に覆う、多孔質電極本体と、
ii)導電性ポリマーを含む固体電解質であって、固体電解質層が、前記誘電体の表面を少なくとも部分的に覆う、固体電解質と、
iii)多孔質電極本体の開放細孔体積の少なくとも一部を充填する含浸溶液であって、含浸溶液が、1000μS/cm未満、好ましくは100μS/cm未満、更により好ましくは10μS/cm未満、最も好ましくは1μS/cm未満の導電率を有し、少なくとも1つの含浸溶媒を含み、少なくとも1つの含浸溶媒が、少なくとも1つのヒドロキシ基を含み、70~180g/molの範囲の分子量を有する、含浸溶液と、
iv)多孔質電極本体を封入するカプセル。
コンデンサは、
(α1)20℃から-55℃への温度の低下時に最大20%、好ましくは最大15%、より好ましくは最大10%の静電容量の減少、及び
(α2)125℃で1000時間のコンデンサの保管後の最大20%、好ましくは最大15%、より好ましくは最大10%の静電容量の減少、を有する。
【0040】
好ましい多孔質体、電極材料、誘電体、導電性ポリマー、及びカプセルは、本発明による方法で使用されるものである。本発明によるコンデンサ2は、本発明によるコンデンサ1と同じ特性を有することも好ましい。
【0041】
本発明によるコンデンサ2の実施形態2では、コンデンサは、実施形態1によって設計され、コンデンサは、100V未満の定格電圧を有する。
【0042】
本発明によるコンデンサ2の実施形態3では、コンデンサは、実施形態1又は2によって設計され、電極材料は、アルミニウムであり、誘電体は、酸化アルミニウム、好ましくはAl2O3である。
【0043】
本発明によるコンデンサ2の実施形態4では、コンデンサは、実施形態1~3のいずれか1つによって設計され、導電性ポリマーは、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、及びそれらの少なくとも2つの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのポリマーを含む。
【0044】
本発明によるコンデンサ2の実施形態5では、コンデンサは、実施形態1~4のいずれか1つによって設計され、導電性ポリマーは、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)又はその誘導体である。
【0045】
本発明によるコンデンサ2の実施形態6では、コンデンサは、実施形態1~5のいずれか1つによって設計され、固体電解質は、少なくとも1つのポリマーアニオンを更に含む。
【0046】
本発明によるコンデンサ2の実施形態7では、コンデンサは、実施形態6によって設計され、ポリマーアニオンは、ポリスチレンスルホン酸又はその誘導体である。
【0047】
本発明によるコンデンサ2の実施形態8では、コンデンサは、実施形態1~7のいずれか1つによって設計され、含浸溶液は、含浸溶媒のうちの少なくとも2つの混合物を含む。
【0048】
本発明によるコンデンサ2の実施形態9では、コンデンサは、実施形態1~8のいずれか1つによって設計され、含浸溶液が、含浸溶液の総重量に基づいて、0.5重量%未満、好ましくは0.1重量%未満、更により好ましくは0.01重量%未満の、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する芳香族化合物を含む。本発明による方法の特に好ましい実施形態では、含浸溶液は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有する任意の芳香族化合物を含まない。
【0049】
本発明によるコンデンサ2の実施形態10では、コンデンサは、実施形態1~9のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒が、2つのヒドロキシ基を含む化合物である、又は1つのヒドロキシ基及び1つのエーテル基、好ましくは1つのアルキルエーテル基を含む化合物である。
【0050】
本発明によるコンデンサ2の実施形態11では、コンデンサは、実施形態10によって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒は、モノ、ジ、又はトリアルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール又はジプロピレングリコール、モノ、ジ、又はトリアルキレングリコールモノエーテル、好ましくはジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノブチルエーテル、アルカンジオール又はアルカンジオールモノエーテル、最も好ましくはジエチレングリコール又はアルカンジオールである。
【0051】
本発明によるコンデンサ2の実施形態12では、コンデンサは、実施形態11によって設計され、アルカンジオールが、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,5-ヘプタンジオール、2,6-ヘプタンジオール、3,4-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,4-オクタンジオール、1,5-オクタンジオール、1,6-オクタンジオール、1,7-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,3-オクタンジオール、2,4-オクタンジオール、2,5-オクタンジオール、2,6-オクタンジオール、2,7-オクタンジオール、3,4-オクタンジオール、3,5-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、及び4,5-オクタンジオール、及び70~180g/molの範囲の分子量を有する任意の追加のアルカンジオールからなる群から選択される。更に、炭素原子に結合されている1つの水素原子が、メチル基又はエチル基などのアルキル基によって置換されている上記アルカンジオールの好適な誘導体。
【0052】
本発明によるコンデンサ2の実施形態13では、コンデンサは、実施形態1~12のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒が、205℃超、好ましくは220℃超、更により好ましくは240℃超の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する。
【0053】
本発明によるコンデンサ2の実施形態14では、コンデンサは、実施形態1~13のいずれか1つによって設計され、少なくとも1つの含浸溶媒が、15℃未満、好ましくは5℃未満、更により好ましくは-5℃未満の融点を有する。
【0054】
本発明によるコンデンサ2の実施形態15では、コンデンサは、実施形態1~14のいずれか1つによって設計され、含浸溶液が、含浸溶液の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%、及び最も好ましくは少なくとも95重量%の量で少なくとも1つの含浸溶媒を含む。2つ以上の含浸溶媒の場合、これらの量は含浸溶媒の総量を表す。
【0055】
本発明によるコンデンサ2の実施形態16では、コンデンサは、実施形態1~15のいずれか1つによって設計され、多孔質電極本体の開放細孔体積の少なくとも50体積%、より好ましくは少なくとも75体積%、更により好ましくは少なくとも90体積%が、少なくとも1つの含浸溶媒で充填される。
【0056】
本発明によるコンデンサ2の実施形態17では、コンデンサは、実施形態1~16のいずれか1つによって設計され、固体電解質、含浸溶液、又はその両方が、安定剤を更に含む。好適な安定剤は、本発明による方法に関連して前述したものである。
【0057】
本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの貢献はまた、例えば、平滑コンデンサ(「フィルタコンデンサ」)又は抑制コンデンサ(「デカップリングコンデンサ」)としての、実施形態1~3のいずれか1つによるコンデンサ1、又は実施形態1~17のいずれか1つによるコンデンサ2の電子回路における使用によって行われる。電子回路は、例えば、コンピュータ(デスクトップ、ラップトップ、サーバ)に、コンピュータ周辺デバイス(例えば、PCカード)に、携帯電話、デジタルカメラ、又は消費者電子機器などの携帯電子デバイスに、CD/DVDプレーヤ及びコンピュータゲームコンソールなどの消費者電気機器に、ナビゲーションシステムに、モバイル通信用の基地局などの遠距離通信デバイスに、除細動器などの医療技術における家電機器に、再生可能エネルギーなどに基づく電源又はハイブリッド自動車などの自動車電子機器の電源に見出すことができる。
【0058】
本発明による目的のうちの少なくとも1つを解決することへの貢献はまた、実施形態1~3のいずれか1つに記載のコンデンサ1又は実施形態1~17のいずれか1つに記載のコンデンサ2を備える電子回路によって行われる。
【0059】
プロセス工程a)で提供される多孔質電極本体
本発明による方法工程a)で、電極材料で作製された多孔質電極本体が提供され、誘電体は、この電極材料の表面を少なくとも部分的に覆う。
【0060】
原則として、多孔質電極本体は、大きな表面積を有するバルブ金属粉末が圧縮及び焼結されて、多孔質電極本体を形成することで製造することができる。この状況では、好ましくはタンタルなどのバルブ金属から作製される電気接触ワイヤが従来、多孔質電極本体へと圧縮される。次いで、多孔質電極本体は、例えば、電気化学酸化によって、誘電体、すなわち酸化物層で被覆される。その代わりに、多孔質領域を有する陽極フィルムを得るために、金属フィルムをエッチングし、電気化学的酸化によって誘電体で被覆することができる。巻回型コンデンサの場合、電極本体を形成する多孔質領域を有する陽極フィルムと陰極フィルムとが、セパレータによって分離され、巻き回される。
【0061】
本発明の範囲内で、酸化物コーティングが両方向に均一に電流を流すことができない金属は、バルブ金属として理解される。陽極に電圧が印加されると、バルブ金属の酸化物層が電流の流れを遮断する一方、陰極に電圧が印加される場合、多量の電流が発生し、酸化物層を破壊する可能性がある。バルブ金属は、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、及びW、並びにこれらの金属のうちの少なくとも1つと他の元素との合金又は化合物を含む。バルブ金属の最も周知の代表例は、Al、Ta及びNbである。バルブ金属と同等の電気的特性の組み合わせは、金属導電率を有するものであり、酸化することができ、その酸化物層が上記の特性を提供する。例えば、NbOは、金属導電率を示すが、一般にはバルブ金属とみなされない。しかしながら、酸化NbOの層は、バルブ金属酸化物層の典型的な特性を呈し、その結果、NbO又はNbOの合金若しくは化合物は、バルブ金属と同等の電気的特性を有するそのような化合物の典型的な例である。タンタル、アルミニウムで作製された電極材料、ニオブ又は酸化ニオブに基づく電極材料が好ましい。アルミニウムが、電極材料として特に好ましい。
【0062】
多孔質領域を有することが多い多孔質電極本体を製造するために、バルブ金属は、例えば、粉末形態で焼結されて、ほぼ多孔質電極本体を提供することができる、又はその代わりに、多孔質構造が金属体上に刻印される。後者は、例えば、フィルムをエッチングすることによって実行することができる。
【0063】
以下、簡潔にするために、多孔質領域を有する本体は、多孔質とも称される。例えば、多孔質領域を有する電極本体は、多孔質電極本体とも称される。一方で、多孔質本体は複数のチャネルで貫通することができ、したがってスポンジ状である。このことは、タンタルがコンデンサの構築に使用される場合に当てはまることが多い。一方、細孔は表面にのみ存在することができ、表面細孔の下に配置される領域は固体状に形成することができる。これは、アルミニウムがコンデンサ構造に使用される場合、しばしば観察される。
【0064】
次いで、このように製造された多孔質電極本体は、誘電体を形成するために、電圧を印加することによって、例えば、リン酸又はアジピン酸アンモニウム水溶液などの適切な電解質中で酸化される。この形成電圧のサイズは、達成される酸化物層の厚さ、又はその後のコンデンサの動作電圧に依存する。好ましい形成電圧は、1~1000Vの範囲、特に好ましくは10~200Vの範囲、より特に好ましくは15~100Vの範囲、より好ましくは20~50Vの範囲内である。
【0065】
使用される多孔質電極本体は、好ましくは10~90%、好ましくは30~80%、特に好ましくは50~80%の有孔率と、10~10000nm、好ましくは50~5000nm、特に好ましくは100~3000nmの平均細孔直径とを有する。
【0066】
本発明による方法の特別な実施形態によれば、製造されるべき電解コンデンサは、アルミニウム巻回型コンデンサである。この場合、方法工程a)において、電極材料としての多孔質アルミニウムフィルムが陽極に形成されることによって、酸化アルミニウムコーティングが、誘電体として形成される。次いで、このようにして得られたアルミニウムフィルム(陽極フィルム)にコンタクトワイヤが設けられ巻き回されて、更なる多孔質アルミニウムフィルム(陰極フィルム)にもコンタクトワイヤが設けられることによって、これらの2つのフィルムは、例えば、セルロース上又は好ましくは合成紙に基づく1つ以上のセパレータ紙によって互いに分離される。巻回し後、このようにして得られた陽極本体は、例えば、接着テープによって固定される。セパレータ紙(複数も可)は、オーブン内で加熱することによって炭化させることができる。このアルミニウム巻回型コンデンサ用の陽極本体を製造する方法は、従来技術から十分に知られており、例えば、US7,497,879B2に記載されている。
【0067】
プロセス工程b)で使用される液体組成物
本発明による方法のプロセス工程b)では、導電性ポリマー、少なくとも150℃かつ275℃以下の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する少なくとも1つの高沸点溶媒、及び分散剤を含む液体組成物、好ましくは分散液が、プロセス工程a)で提供された多孔質電極本体の少なくとも一部に導入され、次いで、誘電体の表面を少なくとも部分的に覆う固体電解質の形成のために、高沸点溶媒及び分散剤が少なくとも部分的に除去される。
【0068】
液体組成物は、既知の方法、例えば、浸漬、液浸、流込み、滴下、注入、噴霧、拡散、塗装、又はインクジェット、スクリーン印刷、若しくはタンポ印刷などの印刷を使用して、多孔質領域に導入される。導入は、好ましくは、プロセス工程a)で提供された多孔質電極本体を液体組成物に浸漬し、それに応じてこの液体組成物を含浸させることで実行される。液体組成物への浸漬又は含浸は、好ましくは、1秒~120分の範囲、特に好ましくは10秒~60分の範囲、最も好ましくは30秒~15分の範囲の持続時間にわたって実施される。陽極本体への液体組成物の導入は、例えば、圧力、振動、超音波、又は熱を増減させることによって容易にすることができる。
【0069】
多孔質電極本体への液体組成物の導入は、直接、又は接着促進剤、例えば、有機官能性シラン又はそれらの加水分解物などのシラン、例えば、3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、又はオクチルトリエトキシシラン及び/又は1つ以上の他の機能層を用いて行うことができる。
【0070】
導入によって、液体組成物が、より少ない程度で、多孔質領域の細孔を層で覆う傾向があることが好ましく達成される。正確には、細孔の空洞の表面は、液体組成物で少なくとも部分的に被覆される。このようにして、液体組成物中に存在する粒子が、細孔の開口を覆う層を形成するだけでなく、細孔の表面の少なくとも一部、多くの場合、全領域が、液体組成物の粒子の層で覆われる。
【0071】
用語「ポリマー」は、本発明の範囲内で使用されるとき、本発明の範囲内で、全ての化合物が、2つ以上の同一又は異なる繰り返し単位を有することを含む。
【0072】
用語「導電性ポリマー」は、本明細書では、特に、酸化又は還元後の導電率を有するπ-共役ポリマーの化合物のクラスを指す。好ましくは、酸化後に少なくとも0.1S/cm程度の導電率を有するπ-共役ポリマーは、導電性ポリマーとして理解される。
【0073】
液体組成物中の導電性ポリマーは、好ましくは、任意選択的に置換されるポリチオフェン、ポリピロール、及びポリアニリンからなる群から選択される。
【0074】
特に好ましくは、導電性ポリマーは、一般式(I)、一般式(II)、又は一般式(III)、又はそれらの少なくとも2つの組み合わせからなる群から選択される繰り返し単位を有するポリチオフェンを含む。以下の可能な変形例では、分散液中の導電性ポリマーは、一般式(I)、一般式(II)、若しくは一般式(III)の繰り返し単位、又は式(I)及び(II)の繰り返し単位、又は式(I)及び(III)の繰り返し単位、又は式(II)及び(III)の繰り返し単位、又は式(I)、(II)、及び(III)の繰り返し単位を有する少なくとも1つのポリチオフェンを含む。
【0075】
【化1】
ここで、
Aは、任意選択的に置換されたC
1~C
5-アルキレン残基を示し、
Rは、直鎖又は分岐鎖の任意選択的に置換されたC
1~C
18-アルキル残基、任意選択的に置換されたC
5~C
12-シクロアルキル残基、任意選択的に置換されたC
6~C
14-アリール残基、任意選択的に置換されたC
7~C
18-アラルキル残基、任意選択的に置換されたC
1~C
4-ヒドロキシアルキル残基又はヒドロキシル残基を示し、
xは、0~8の整数を示し、
いくつかの残基RがAに結合している場合、これらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0076】
一般式(I)及び(II)は、x個の置換基Rがアルキレン残基に結合することができるように理解されるべきである。
【0077】
一般式(I)又は(II)の繰り返し単位又は一般式(I)及び(II)の繰り返し単位を有するポリチオフェン(式中、Aは、任意選択的に置換されたC2~C3-アルキレン残基を示し、xは0又は1を示す)が特に好ましい。任意選択的に置換されているポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)は、固体電解質の導電性ポリマーとして非常に特に好ましい。
【0078】
本発明の枠組み内で、接頭辞のポリは、2つ以上の同一又は異なる繰り返し単位がポリマー又はポリチオフェンに含有されることを意味すると理解される。ポリチオフェンは、一般式(I)若しくは一般式(II)若しくは一般式(III)、又は一般式(I)及び(II)、又は一般式(I)及び(III)、又は一般式(II)及び(III)、又は一般式(I)、(II)、及び(III)の計n個の繰り返し単位を含み、nは2~2000、好ましくは2~100の整数である。一般式(I)若しくは一般式(II)若しくは一般式(III)の繰り返し単位、又は一般式(I)及び(II)の繰り返し単位、又は一般式(I)及び(III)の繰り返し単位、又は一般式(II)及び(III)の繰り返し単位、又は一般式(I)、(II)、及び(III)の繰り返し単位は、1つのポリチオフェン内のそれぞれの場合において、同一であってもよく、異なっていてもよい。一般式(I)若しくは一般式(II)若しくは一般式(III)のそれぞれ同一の繰り返し単位、又は一般式(I)及び(II)のそれぞれ同一の繰り返し単位、又は一般式(I)及び(III)のそれぞれ同一の繰り返し単位、又は一般式(II)及び(III)のそれぞれ同一の繰り返し単位、又は一般式(I)、(II)、及び(III)のそれぞれ同一の繰り返し単位を有するポリチオフェンが好ましい。一般式(I)若しくは一般式(II)のそれぞれ同一の繰り返し単位、又は一般式(I)及び(II)のそれぞれ同一の繰り返し単位を有するポリチオフェンが特に好ましい。
【0079】
ポリチオフェンは、好ましくは、各末端基においてHを有する。
【0080】
本発明の範囲内で、C1~C5-アルキレン残基Aは、好ましくは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレン、又はn-ペンチレンである。C1~C18-アルキルRは、好ましくは、メチル、エチル、n-若しくはイソ-プロピル、n-、イソ-、sec-若しくはtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-デシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシル、又はn-オクタデシルなどの直鎖又は分岐のC1~C18-アルキル残基を示し、C5~C12-シクロアルキル残基Rは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、又はシクロデシルを示し、C5~C14-アリール残基Rは、例えば、フェニル又はナフチルを示し、及びC7~C18-アラルキル残基Rは、例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリル又はメシチルを示す。上記のリストは、本発明の例示的な説明の目的のために提供されており、排他的であるとみなされるべきではない。
【0081】
残基A及び/又は残基Rの任意選択の更なる置換基として、多数の有機基、例えば、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケトン、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシラン、及びアルコキシシラン基、並びにカルボキシルアミド基が本発明の範囲内で考慮される。
【0082】
上記に列挙された残基A及びR、及び/又は残基A及びRの更なる置換基は、例えば、ポリアニリン又はポリピロールの置換基として考慮される。非置換ポリアニリンが好ましい。
【0083】
本発明の範囲は、上記で提示され、かつ以下に列挙される、又は好ましい範囲で列挙される一般的な残基の定義、パラメータ、及び説明の全てを、互いに一緒に、すなわち、それぞれの範囲と好ましい範囲との間の任意の組み合わせで含む。
【0084】
固体電解質として好ましい方法で使用されるポリチオフェンは、中性又はカチオン性であり得る。好ましい実施形態では、それらはカチオン性であり、「カチオン性」は、主ポリチオフェン鎖に提供される電荷にのみ関連する。残基上の置換基に依存して、ポリチオフェンは、構造単位内に正電荷及び負電荷を担持することができ、それによって、正電荷は、主ポリチオフェン鎖上に配置され、負電荷は、任意選択的に、スルホネート基又はカルボキシレート基によって置換された残基R上にある。したがって、ポリチオフェン主鎖の正電荷は、残基R上に任意選択的に存在するアニオン性基によって部分的又は完全に補償され得る。一般に、これらの場合、ポリチオフェンは、カチオン性、中性、又は更にはアニオン性であり得る。しかしながら、本発明の範囲内では、主ポリチオフェン鎖上の正電荷が明らかに重要であるため、それらのポリチオフェンは全てカチオン性ポリチオフェンとみなされる。正確な数及び位置を正確に判定することができないため、正電荷は、式に示されていない。しかしながら、正電荷の数は、少なくとも1及び最大でnであり、nは、ポリチオフェン内の全ての繰り返し単位(同一又は異なる)の総数を示す。
【0085】
正電荷の補償のために、これが、任意選択的にスルホネート置換又はカルボキシレート置換され、したがって負に帯電した残基Rを通じて既に行われていなければ、カチオン性ポリチオフェンは対イオンとしてアニオンを必要とする。
【0086】
対イオンは、モノマー又はポリマーアニオンであり得、後者は以下、ポリアニオンとも称される。ポリマーアニオンは、フィルムの形成に寄与し、それらのサイズにより、熱的により安定した導電性フィルムをもたらすため、モノマーアニオンよりも好ましい。
【0087】
本明細書でのポリマーアニオンは、例えば、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、若しくはポリマレイン酸などのポリマーカルボン酸、又はポリスチレンスルホン酸及びポリビニルスルホン酸などのポリマースルホン酸のアニオンであり得る。これらのポリカルボン酸及びポリスルホン酸はまた、ビニルカルボン酸及びビニルスルホン酸と、アクリルエステル及びスチレンなどの他の重合可能なモノマーとのコポリマーであり得る。
【0088】
言及された粒子中のポリマーカルボン酸又はスルホン酸のアニオンは、ポリマーアニオンとして好ましい。
【0089】
ポリチオフェンの使用と共に存在するポリスチレンスルホン酸(PSS)、特に先行技術から既知である、好ましくはPEDOT/PSS錯体の形態で錯体結合されたポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)のアニオンが、ポリマーアニオンとして特に好ましい。そのような錯体は、ポリスチレンスルホン酸の存在下での水溶液中のチオフェンモノマー、好ましくは3,4-エチレンジオキシチオフェンの酸化重合を通じて得ることができる。
【0090】
ポリアニオンを提供するポリ酸の分子量は、好ましくは1000~2000000、特に好ましくは2000~500000である。ポリ酸又はそれらのアルカリ塩は、市販されており、例えば、ポリスチレンスルホン酸及びポリアクリル酸であるが、既知の方法を使用して製造することもできる(例えば、Houben Weyl、Methoden der organischen Chemie、Vol.E20 Makromolekulare Stoffe、Part 2、(1987)、[Methods of Organic Chemistry,Macromolecular Substances]、1141頁以下参照)。
【0091】
ポリマーアニオン(複数可)及び導電性ポリマーは、分散液中に、特に0.5:1~50:1、好ましくは1:1~30:1、特に好ましくは1.5:1~20:1の重量比で含有され得る。この状況での導電性ポリマーの重量は、重合中に完全な変換が起こるという仮定の下、使用されるモノマーの計量された量に対応する。
【0092】
モノマーアニオンとして、C1~C20-アルカンスルホン酸、例えばメタン-、エタン-、プロパン-、ブタン-、又は高級スルホン酸、例えば、ドデカン酸スルホン酸、脂肪族ペルフルオロスルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸、又はペルフルオロオクタンスルホン酸、脂肪族C1~C20-カルボン酸、例えば2-エチルヘキシルカルボン酸、脂肪族ペルフルオロカルボン酸、例えば、トリフルオロ酢酸若しくはペルフルオロオクタン酸、及びC1~C20-アルキル基で任意に置換された芳香族スルホン酸、例えば、ベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、又はドデシルベンゼン-スルホン酸及びシクロアルカンスルホン酸、例えばカンファースルホン酸又はテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロホスフェート、過塩素酸塩、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネート、又はヘキサクロロアンチモネートのモノマーオニオンを使用することができる。p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、又はカンファースルホン酸のアニオンが、モノマーアニオンとして好ましい。
【0093】
電荷補償のための対イオンとしてアニオンを含有するカチオン性ポリチオフェンは、専門家の世界ではポリチオフェン/(ポリ)-アニオン錯体と称されることが多い。
【0094】
固体電解質の形成に使用され得るポリチオフェンとして、好ましくは少なくとも50%の程度まで、更により好ましくは少なくとも75%の程度まで、更により好ましくは少なくとも95%の程度まで、最も好ましくは100%の程度まで、式(I)の繰り返し単位を含む自己ドープポリチオフェンも好適である。
【0095】
【化2】
式中、
X、Yは、同一であり又は異なり、O、S、N-R
1を示し、R
1は、C
1~C
18-アルキル又は水素を示し、
Zは、少なくともアニオン性置換基、好ましくはM
+がカチオンを示す-SO
3
-M
+基を有する有機残基を示す。
【0096】
式(I)の繰り返し単位の好ましい実施形態によれば、
Zは、-(CH2)m-CR2R3-(CH2)n-を示し、
ここで、
R2は、水素、-(CH2)s-O-(CR4
2)p-SO3
-M+、又は-(CH2)p-SO3
-Mを示し、
R3は、-(CH2)s-O-(CR4
2)p-SO3
-M+、又は-(CH2)p-SO3
-M+を示し、
m、nは、同一であり又は異なり、0~3の整数を示し、
R4は、水素又はC1~C10アルキル基、好ましくはメチル基を示し、
sは、0~10の整数を示し、
pは、1~18の整数を示し、
上記式中、R1、R2、R3、及びR4は、同じであっても異なっていてもよい。
【0097】
上記のパーセンテージ値は、この状況では、自己ドープ導電性ポリマー中のモノマー単位の総数における構造式(I)の単位の数値含有量を表すことを意図している。
【0098】
好適なカチオンM+は、例えばH+、Li+、Na+、K+、Rb+、Cs+、及びNH4+である。特に好適なカチオンは、Na+及びK+である。
【0099】
構造式(I)の特に好ましいモノマーでは、
X、YはOを示し、
Zは、-(CH)2)m-CR2R3-(CH2)n-を示し、
R2は、水素、-(CH2)s-O-(CH2)p-SO3
-M+、-(CH2)p-SO3
-M+、又は-(CH2)s-O-(CH2)p-CHR4-SO3
-M+を示し、
R3は、-(CH2)s-O-(CH2)p-SO3
-M+、-(CH2)p-SO3
-M+、又は-(CH2)s-O-(CH2)p-CHR4-SO3
-M+を示し、
M+は、カチオンを示し、
m、nは、同一であり又は異なり、0~3の整数を示し、
R4は、水素、メチル基又はエチル基を示し、
sは、0~10の整数を示し、
pは、1~18の整数を示す。
【0100】
構造式(I)の非常に好ましいモノマーでは、
X、YはOを示し、
Zは、-(CH2)-CR2R3-(CH2)n-を示し、
R2は水素を示し、
R3は、-(CH2)s-O-(CH2)p-SO3
-M+、-(CH2)p-SO3
-M+、-(CH2)s-O-(CH2)p-CH(CH3)-SO3
-M+、又は-(CH2)s-O-(CH2)p-CH(CH2CH3)-SO3
-M+を示し、
M+は、Na+又はK+を示し、
nは、0又は1を示し、
sは、0又は1を示し、
pは、2、3、4、又は5を示す。
【0101】
固体電解質の形成にも使用することができる自己ドープポリマーの好適な例は、WO-A-2014/048562及びUS-A-2015/0337061に開示されている。非常に特に好ましい自己ドープ導電性ポリマーの具体例としては、ポリ(4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b]-[1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]プロパン-1-スルホン酸)、ポリ(4-[(2,3-ジヒドロ-ドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]ブタン-1-スルホン酸)(PEDOT-S)、ポリ(4-[(2,3-ジヒドロチエノ[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イル)メトキシ]ブタン-2-スルホン酸)、又はそれらの混合物が挙げられる。
【0102】
好ましくは、プロセス工程b)で使用される液体組成物中の導電性ポリマーは、粒子の形態、特に好ましくは、PEDOT/PSSなどのポリチオフェン/(ポリ)-アニオン錯体の膨潤ゲル粒子の形態で存在する。粒子は、好ましくは、100S/cm超の比導電率を有する。この状況での粒子の比導電率は、分散液の乾燥時に粒子から形成される乾燥状態のフィルムの比導電率である。好ましくは、粒子が、150S/cm超、特に好ましくは250S/cm超、より特に好ましくは400S/cm超、更に特に好ましくは750S/cm超の比導電率を有する液体組成物が使用される。場合によっては、5000S/cmの最大比導電率を有する粒子も使用される。
【0103】
液体組成物中の導電性ポリマーが粒子の形態で存在する場合、粒子は、好ましくは1~100nmの範囲、好ましくは1~70nmの範囲、好ましくは1~50nmの範囲、特に好ましくは1~40nmの範囲、より特に好ましくは5~30nmの範囲の直径d50を有する。粒子の直径の判定は、本明細書に記載の方法に従って超遠心分離機測定を介して実行される。液体組成物中の導電性ポリマーの粒子が、150nm未満、特に好ましくは100nm未満、より特に好ましくは50nm未満の直径分布のd90値を有することが更に好ましい。更に、液体組成物中の導電性ポリマーの粒子は、1nm超、特に好ましくは3nm超、より特に好ましくは5nm超の直径分布のd10値を有することが好ましい。
【0104】
プロセス工程b)で使用される液体組成物は、好ましくは、WO2010/003874A2の6頁の10~29行目に記載されているような金属及び遷移金属に関する純度を含む。液体組成物中の低濃度の金属は、固体電解質の形成中及びコンデンサの後続の動作中に誘電体が損傷を受けないという主要な利点を有する。
【0105】
プロセス工程b)で使用される液体組成物は、少なくとも1つの分散剤を更に含むことができ、水、有機溶媒、又は有機溶媒と水との混合物が、分散剤として好ましい。しかしながら、導電性ポリマーが含浸溶媒中で分散性又は可溶性である場合、含浸溶媒は分散剤として作用することができる。この場合、含浸溶液は、必ずしも分散剤を含む必要はない。
【0106】
以下の溶媒を、分散剤の例として挙げることができる:メタノール、エタノール、i-プロパノール、及びブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトン及びメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルエステル及び酢酸ブチルエステルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエン及びキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタン、及びシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;ジクロロメタン及びジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル、ジメチルスルホキシド及びスルホランなどの脂肪族スルホキシド及びスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、及びジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボン酸アミド、ジエチルエーテル及びアニソールなどの脂肪族及び芳香族エーテル。更に、水又は水と上記の有機溶媒との混合物を、分散剤として使用することもできる。
【0107】
好ましい分散剤は、水又はアルコールなどの他のプロトン性溶媒、例えば、メタノール、エタノール、i-プロパノール、及びブタノール、並びに水とこれらのアルコールとの混合物である。特に好ましい分散剤は、水である。
【0108】
プロセス工程b)で使用される液体組成物は、少なくとも150℃かつ275℃以下の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する少なくとも1つの高沸点溶媒を更に含む。好ましい高沸点は、好ましくは、以下の特性のうちの少なくとも1つを満たし、より好ましくはこれらの特性の両方を満たす。
(α1)それらは、180g/mol未満、好ましくは150g/mol未満、より好ましくは120g/mol未満の分子量を有する、
(α2)それらは、250℃未満の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する。
【0109】
好ましくは、液体組成物は、高沸点溶媒として、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトンなどのラクトン基含有化合物、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン若しくはピロリドン、スルホン及びジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド、及び/又はエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,5-ヘプタンジオール、2,6-ヘプタンジオール、3,4-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,4-オクタンジオール、1,5-オクタンジオール、1,6-オクタンジオール、1,7-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,3-オクタンジオール、2,4-オクタンジオール、2,5-オクタンジオール、2,6-オクタンジオール、2,7-オクタンジオール、3,4-オクタンジオール、3,5-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、及び4,5-オクタンジオール、及び70~180g/molの範囲の分子量を有する任意の追加のアルカンジオールなどのジ又はポリアルコールを含む。炭素原子に結合した1つの水素原子が、メチル基又はエチル基などのアルキル基によって置換されている上記アルカンジオールの誘導体が更に好ましい。
【0110】
本発明による方法の特定の実施形態によれば、プロセス工程b)で使用される液体組成物は、少なくとも2つの高沸点溶媒の混合物、好ましくは上記段落で言及された高沸点溶媒のうちの少なくとも2つの混合物を含む。
【0111】
更に、プロセス工程b)で使用される液体組成物は、表面活性物質、例えば、イオン性及び非イオン性界面活性剤又は有機官能性などの接着促進剤などの更なる構成要素を含むことができる。シラン又はそれらの加水分解物、例えば、3-グリシドキシ-プロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピル-トリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、又はオクチルトリエトキシシラン、メラミン化合物、ブロックイソシアネート、官能性シランなどの架橋剤-例えば、テトエトキシシラン、アルコキシシラン加水分解物は、例えば、テトラエトキシシランに基づく。3-グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン-ポリウレタン、ポリアクリレート又はポリオレフィン分散液などのエポキシシラン。プロセス工程b)で使用される液体組成物はまた、WO2009/141209A1の12頁の16~34行に記載されているような有機溶媒に可溶である1つ以上の有機結合剤を含むことができる。液体組成物は、1~14のpH値を有することができ、1~8のpH値が好ましい。酸化アルミニウム又は酸化ニオブなどの腐食感受性誘電体の場合、誘電体、誘電体の損傷を回避するために、2.5~8、より好ましくは2.5~7、最も好ましくは3~6のpH値を有する液体組成物が好ましい。
【0112】
pH値を調整するために、WO2010/003874A2の4頁の13~32行目に記載されている塩基又は酸を、例えば、液体組成物に添加することができる。液体組成物のフィルム形成を損なわず、例えば、はんだ付け温度などの比較的高温で揮発性ではなく、これらの条件下で固体電解質内にとどまる添加物として、塩基は2-ジメチルアミノエタノール、2,2’-イミノジエタノール、又は2,2’、2’’-ニトリロトリエタノール及び酸はポリスチレンスルホン酸が好ましい。
【0113】
プロセス工程b)で使用される液体組成物の粘度は、塗布方法に依存して、0.1~1000mPa×sであり得る。(20℃のレオメータ及び100s-1の剪断速度で測定)。好ましくは、粘度は1~200mPa×s、特に好ましくは10~150mPa×s、より特に好ましくは10~100mPa×sである。
【0114】
プロセス工程b)で使用される液体組成物の固形分は、それぞれの場合、液体組成物の総重量に基づいて、好ましくは1~30重量%、特に好ましくは1~20重量%、最も特に好ましくは1~10重量%の範囲である。固形分は、分散剤を除去するには十分高いが、固体材料を分解しない温度で分散液を乾燥させることによって判定される。
【0115】
多孔質電極本体が上記の液体組成物を含浸させた後、分散剤及び分散液中に含まれる高沸点溶媒が少なくとも部分的に除去され、その結果、固体電解質が部分的又は完全に誘電体を覆うように形成される。この状況では、固体電解質による誘電体の被覆は、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%に達することが好ましく、120℃での乾燥及び湿潤条件におけるコンデンサの静電容量の測定は、DE-A-102005043828に記載されるような判定を可能にする。
【0116】
除去は好ましくは、多孔質電極本体が液体組成物から除去され、乾燥されることで実行され、乾燥は好ましくは20℃~200℃の範囲、特に好ましくは50℃~180℃の範囲、より好ましくは80℃~150℃の範囲の温度で行われる。乾燥条件(すなわち、乾燥時間、乾燥圧力、及び乾燥温度)は、好ましくは、固体電解質を形成するときに高沸点溶媒の総量の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも75重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%が除去されることを確実にする範囲に調整される。本発明によるプロセスの特に好ましい実施形態では、乾燥条件は、固体電解質を形成するときに高沸点溶媒が完全に除去されることを確実にする範囲に調整される。
【0117】
プロセス工程c)で使用される含浸溶液
本発明による方法のプロセス工程c)では、プロセス工程b)で得られた多孔質電極本体(すなわち、誘電体が固体電解質で少なくとも部分的に覆われる多孔質電極本体)の細孔の少なくとも一部が、少なくとも1つの含浸溶媒を含む含浸溶液で充填され、少なくとも1つの含浸溶媒は、少なくとも1つのヒドロキシ基を含み、70~180g/molの範囲の分子量を有する。
【0118】
含浸溶液への浸漬又は含浸溶液での含浸は、好ましくは、1秒~120分の範囲、特に好ましくは10秒~60分の範囲、最も好ましくは30秒~15分の範囲の持続時間にわたって実施される。浸漬は、好ましくは、プロセス工程b)で得られた多孔質電極本体が、含浸溶液中に少なくとも部分的に浸漬される、又は含浸溶液が多孔質電極本体に注入され、それに応じて、この含浸溶液を含浸させることで実行される。多孔質電極本体への含浸溶液の導入は、例えば、圧力、振動、超音波、又は熱を増減させることによって容易にすることができる。
【0119】
プロセス工程c)で多孔質電極本体の細孔に含浸溶液を含浸させると、プロセス工程b)で得られた多孔質電極本体の開放細孔体積の少なくとも50体積%、より好ましくは少なくとも75体積%、更により好ましくは少なくとも90体積%が、少なくとも1つの含浸溶媒で充填される程度に含浸が達成されることを確実にすることが更に好ましい。細孔からの含浸溶媒の更なる蒸発を防止するために、プロセス工程d)を実行する直前に、すなわち、多孔質電極本体を封入する前に、上記の充填量を達成することが特に好ましい。
【0120】
本発明による方法で使用される好ましい含浸溶媒は、以下の特性のうちの少なくとも1つを満たし、より好ましくはこれらの特性の両方を満たす。
(β1)それらは、205℃超、好ましくは220℃超、更により好ましくは240℃超の(1013.25hPaで判定される)沸点を有し、
(β2)それらは、15℃未満、好ましくは5℃未満、更により好ましくは-5℃未満の融点を有する。
【0121】
この文脈において、少なくとも1つの含浸溶媒は、2つのヒドロキシ基を含む化合物である、又は1つのヒドロキシ基及び1つのエーテル基、好ましくは1つのアルキルエーテル基を含む化合物であることが特に好ましい。より好ましくは、少なくとも1つの含浸溶媒は、モノ、ジ、又はトリアルキレングリコール、好ましくはジエチレングリコール又はジプロピレングリコール、モノ、ジ、又はトリアルキレングリコールモノエーテル、好ましくはジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノブチルエーテル、アルカンジオール又はアルカンジオールモノエーテル、最も好ましくはジエチレングリコール又はアルカンジオールである。
【0122】
好ましいアルカンジオールは、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,3-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,3-ヘキサンジオール、2,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、3,4-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,3-ヘプタンジオール、1,4-ヘプタンジオール、1,5-ヘプタンジオール、1,6-ヘプタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、2,3-ヘプタンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2,5-ヘプタンジオール、2,6-ヘプタンジオール、3,4-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,3-オクタンジオール、1,4-オクタンジオール、1,5-オクタンジオール、1,6-オクタンジオール、1,7-オクタンジオール、1,8-オクタンジオール、2,3-オクタンジオール、2,4-オクタンジオール、2,5-オクタンジオール、2,6-オクタンジオール、2,7-オクタンジオール、3,4-オクタンジオール、3,5-オクタンジオール、3,6-オクタンジオール、4,5-オクタンジオール、及び70~180g/molの範囲の分子量を有する任意の更なるアルカンジオールからなる群から選択される。炭素原子に結合した1つの水素原子が、メチル基又はエチル基などのアルキル基によって置換されている上記アルカンジオールの誘導体が更に好ましい。
【0123】
含浸溶液は、含浸溶媒に加えて、安定剤(前述のものなど)及び/又は更なる溶媒、特に150℃未満、好ましくは120℃未満の(1013.25hPaで判定される)沸点を有する低沸点溶媒などの更なる構成要素を含み得る。しかしながら、プロセス工程c)で使用される含浸溶液は、含浸溶液の総重量に基づいて、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも5重量%、更により好ましくは少なくとも90重量%の量で少なくとも1つの含浸溶媒を含むことが好ましい。2つ以上の含浸溶媒の場合、これらの量は含浸溶媒の総量を表す。
【0124】
プロセス工程d)で含浸溶媒及び低沸点溶媒を含む含浸溶液を提供され、低沸点溶媒は、プロセス工程d)で多孔質電極本体を封入する前に少なくとも部分的に除去され得る。この除去は、好ましくは、含浸された多孔質電極本体を溶液から取り出し、次いでそれを乾燥させる(ただし、細孔が含浸溶媒で十分に充填されたままであることを確保する)ことによって達成される。乾燥は、好ましくは、20℃~200℃の範囲、特に好ましくは50℃~175℃の範囲、より特に好ましくは75℃~150℃の範囲の温度で、及び1分~120分の範囲、特に好ましくは5分~90分の範囲、最も特に好ましくは10分~60分の範囲の持続時間で実施される。しかしながら、本発明によるプロセスの特定の好ましい実施形態によれば、含浸溶液は、低沸点溶媒を含有しない。
【0125】
プロセス工程d)での封入
上述のように含浸溶液が多孔質電極本体に導入された後、電解コンデンサは、当業者に既知である方法で仕上げることができる。タンタル電解コンデンサの場合、コンデンサ本体は、例えば、DE-A-102005043828から既知であるように、グラファイト層及び銀層で被覆することができ、US7,497,879B2の教示に対応するアルミニウム巻回型コンデンサの場合、コンデンサ本体は、アルミニウムカップ状に構築され、封止ゴムが設けられ、フランジングによって機械的に強固に閉鎖される。これに続いて、誘電体の欠陥を、「エージング」によるそれ自体既知の方法でコンデンサから除去することができる。
【0126】
封入は、好ましくは、EP0-447-165A2に開示されるもののようなエポキシ樹脂又は熱可塑性樹脂などの樹脂でコンデンサ本体を封止することによって達成される。アルミニウム電解コンデンサカプセルの場合、好ましくは、プロセス工程c)で得られた多孔質電極本体にアルミニウムカップを提供し、封止ゴムで閉鎖することによって達成される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
ここで、非限定的な図面及び実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0128】
【
図1】
図1は、本発明によるコンデンサの一部の概略断面図である。コンデンサは、多孔質電極本体1を含み、主にアルミニウムなどの多孔質電極材料2から作製される。電極材料2の表面上には、誘電体3が薄層として形成され、それにより、電極材料2及び誘電体3で作製された電極本体1を含む多孔質のままの陽極本体が形成される。誘電体3上には、任意選択で追加の層の後に、固体電解質4の層(例えば、PEDOT/PSS粒子からなる)が続き、その結果、電極材料2、誘電体3、及び固体電解質4で作製された電極本体1を含むコンデンサ本体が形成される。多孔質電極本体1の細孔5は、含浸溶媒(例えば、アルカンジオールで)で少なくとも部分的に充填され(
図1の灰色の陰影を参照)、その結果、電極材料2、誘電体3、固体電解質4、及び含浸溶媒6で作製された多孔質電極本体1を含むコンデンサが形成される。
【0129】
【
図2】
図2は、コンデンサ素子8(誘電体3及び固体電解質4で被覆され、含浸溶媒を含む多孔質電極材料2)と、多孔質陽極箔と反対側の陰極箔とに接触するリード線10とを含む、本発明によるアルミニウムコンデンサを示し、両方の箔は、両箔間の2枚のセパレータ紙と共に巻かれ、巻き終わりテープで固定されている。コンデンサ素子8は、有底円筒の形状のアルミニウムケーシング7内に保持され、ゴムパッキン9が、ケーシングの開口部に取り付けられている。
【0130】
測定方法:
等価直列抵抗(ESR)
等価直列抵抗(mΩ)を、LCRメータ(Agilent 4284A)を用いて、20℃、100kHzで判定した。各コンデンサ実験において、2コンデンサを作製し、平均ESR値を判定した。
【0131】
静電容量(CAP)
静電容量を、LCRメータ(Agilent 4284A)を用いて、20℃及び-55℃、120Hzで判定した。各コンデンサ実験において、2つのコンデンサを作製し、平均静電容量値を判定した。
【0132】
含浸溶媒のイオン伝導率
含浸溶媒のイオン伝導率を、導電率計(Knick 703又は同等の導電率計)で測定する。
【0133】
粘度
分散液の粘度を、レオメータ(ダブルギャップシリンダシステムDG43を備えたHaake Type RotoVisco 1)を用いて、100Hzの剪断速度及び20℃で判定した。
【0134】
固形分
固形分を判定するために、5gの分散液を100℃で15時間乾燥させ、固形分を差分計量によって判定した。
【0135】
pH値
pH測定:pH値をpHメータで判定する。較正後、pHの読み取り値が一定になるまでゆっくり撹拌した分散液又は溶液にpH電極を入れる。
【実施例】
【0136】
プロセス工程a)
16Vの定格電圧及び100μFの定格静電容量を有する円筒状アルミニウムコンデンサ(
図2に示す)用の多孔質電極本体を、以下の方法で作製した。
【0137】
アルミニウム箔をエッチングすることによって、アルミニウム箔の表面を粗化した。次いで、アルミニウム箔をアジピン酸アンモニウム水溶液を用いて陽極酸化させ、それによってアルミニウム箔の表面上に誘電体層を形成した。こうして、陽極箔を作製した。
【0138】
第2のアルミニウム箔をエッチングすることによって、アルミニウム箔の表面を粗化した。こうして、陰極箔を作製した。
【0139】
陽極リード線及び陰極リード線をそれぞれ陽極及び陰極箔に接続した。陽極及び陰極箔を、両方の箔間で2つのセパレータ紙と一緒に巻いた。箔の巻戻しを避けるために、巻き回した素子の外側にテープを貼った。次いで、巻き回した要素を別の陽極酸化に供して、陽極箔の切断縁上に誘電体層を形成した。
【0140】
こうして、誘電体層を有する電極本体を備える陽極本体を作製した。
【0141】
プロセス工程b)
プロセス工程a)からの多孔質電極本体を、導電性ポリマーを含む液体組成物の浴を有するチャンバ内に配置した。チャンバ内の空気圧を100hPaまで減圧した。陽極本体を300秒間、液体組成物に浸漬した。次いで、陽極本体を液体組成物から抽出し、チャンバを大気圧に通気した。その後、陽極本体を120℃で30分間、次いで150℃で30分間乾燥させた。含浸及び乾燥を更に実行した。こうして、コンデンサ本体を得た。
【0142】
プロセス工程c)
プロセス工程b)のコンデンサ本体を、含浸溶液の浴を有するチャンバ内に配置した。チャンバ内の空気圧を100hPaまで減圧した。コンデンサ本体を300秒間、含浸溶液に浸漬し、次いで、コンデンサ本体を含浸溶液から抽出し、チャンバを大気圧に通気した。こうして、含浸溶液を含浸させたコンデンサ本体を得た。
【0143】
プロセス工程d)
プロセス工程c)のコンデンサ本体を円筒形アルミニウムハウジングに配置し、ゴム封止で密封して、完成したコンデンサを得た。
【0144】
プロセス工程a)~d)によって作製された全てのコンデンサは、20℃で95~100μFの静電容量を示した。
【0145】
合成例1(導電性ポリマー分散液の合成)
868gの脱イオン水、70000g/molの平均分子量を有する330gのポリスチレンスルホン酸水溶液、及び3.8重量%の固形分を、最初に撹拌機及び内部温度計と共に2lの三つ口フラスコに投入した。反応温度を20~25℃に維持した。撹拌しながら5.1gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを添加した。溶液を30分間撹拌し、0.03gの硫酸鉄(III)及び9.5gの過硫酸ナトリウムを添加し、溶液を更に24時間撹拌した。反応の終了後、無機塩の除去のために、100mlの強酸カチオン交換体と250mlの弱塩基アニオン交換体とを添加し、溶液を更に2時間撹拌した。イオン交換体を濾別した。ポリ(3,4-エチレンジオキシ-チオフェン)/ポリ-スチレンスルホネート分散液を、700バールの圧力下で、高圧ホモジナイザを用いて10回均質化した。その後、分散液を2.5%の固形分に濃縮し、次いで1500バールの圧力下で更に3回均質化した。
【0146】
作製例1
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gのエチレングリコールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0147】
作製例2
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gのジエチレングリコールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0148】
作製例3
合成例1の45gの導電性ポリマーと2.6gの1,2-プロパンジオールとを混合し、アンモニアを使用してpHを4.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0149】
作製例4
合成例1の45gの導電性ポリマーと8gの1,3-プロパンジオールとを混合し、アンモニアを使用してpHを7.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0150】
作製例5
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gの1,5-ペンタンジオールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0151】
作製例6
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gの1,2-ペンタンジオールとを混合し、2-ジメチルアミノエタノールを使用してpHを2.5に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0152】
作製例7
合成例1の45gの導電性ポリマーと2.5gの2-メチル-2,4-ペンタンジオール及び2.5gの1,3-プロパンジオールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0153】
作製例8
合成例1の45gの導電性ポリマーと1.4gの2,4-ペンタンジオール及び1gの1,3-プロパンジオールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0154】
作製例9
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gの1,4-ペンタンジオールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0155】
作製例10
合成例1の45gの導電性ポリマーと1.5gの1,2,4-ブタントリオール及び0.1gの界面活性剤とを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0156】
作製例11
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gのグリセロールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0157】
作製例12
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gのジグリセロールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0158】
作製例13
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gのポリエチレングリコール400(PEG400)とを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0159】
作製例14
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gのポリグリセロールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0160】
作製例15
合成例1の45gの導電性ポリマーと1.5gの1,3-プロパンジオール及び0.5gのタンニン酸とを混合し、アンモニアを使用してpHを7.0に調整した。こうして、導電性ポリマー溶液を含む液体組成物を得た。
【0161】
作製例16
45gの1,2ペンタンジオールと5gの没食子酸とを混合した。こうして、含浸溶液を得た。
【0162】
作製例17
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gのジメチルスルホキシドとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0163】
作製例18
合成例1の45gの導電性ポリマーと5gの1,3-ブタンジオールとを混合し、アンモニアを使用してpHを3.0に調整した。こうして、導電性ポリマーを含む液体組成物を得た。
【0164】
実施例1
コンデンサを以下の方法で作製した。
プロセス工程a)に従って第1の陽極本体を作製した。次いで、陽極本体を、作製例1の導電性ポリマーを含む液体組成物を使用して、プロセス工程b)に従って処理した。次に、得られたコンデンサ本体に、含浸溶液としてジエチレングリコールを使用して、プロセス工程c)に従って含浸させた。最後に、コンデンサ本体をプロセス工程d)に従って封入し、コンデンサを得た。
【0165】
コンデンサの静電容量を、20℃と-55℃で測定した。-55℃での相対静電容量は、以下の式に従って計算した。
(相対静電容量-55℃)=(-55℃での静電容量)/(20℃での静電容量)
【0166】
実施例2~40
コンデンサを作製し、実施例1と同じ方法で評価したが、プロセス工程b)における導電性ポリマーを含む液体組成物及びプロセス工程c)における含浸溶液を表1に従って使用した。
【0167】
-55℃での相対静電容量を%で表1に示す。
【0168】
【0169】
実施例41~53
コンデンサを作製し、実施例1と同じ方法で評価したが、プロセス工程b)における導電性ポリマーを含む液体組成物及びプロセス工程c)における含浸溶液を表2に従って使用した。
【0170】
更に、コンデンサの静電容量は、125℃の保管温度で1000時間保管した前後に20℃で測定した。125℃で1000時間保管後の相対静電容量を、以下の式に従って計算した。
(125℃で1000時間後の相対静電容量)=(125℃で1000時間の保管後の20℃での静電容量)/(125℃で1000時間の保管前の20℃での静電容量)
【0171】
-55℃での相対静電容量及び1000時間後の125℃での相対静電容量を%で表2に示す。
【0172】
比較例1~5
コンデンサを作製し、実施例41~53と同じ方法で評価したが、プロセス工程b)における導電性ポリマーを含む液体組成物及びプロセス工程c)における含浸溶液を表2に従って使用した。
【0173】
【0174】
実施例54~58
コンデンサを作製し、実施例1と同じ方法で評価したが、プロセス工程b)における導電性を含む液体組成物及びプロセス工程c)における含浸溶液を表3に従って使用した。表3に-55℃での相対静電容量を示す。
【0175】
【0176】
比較例6~19
コンデンサを作製し、実施例1と同じ方法で評価したが、プロセス工程b)における導電性を含む液体組成物及びプロセス工程c)における含浸溶液を表4に従って使用した。表4に-55℃での相対静電容量を示す。
【0177】
【0178】
比較例20~25
コンデンサを作製し、実施例1と同じ方法で評価したが、プロセス工程b)における導電性を含む液体組成物及びプロセス工程c)における含浸溶液を表5に従って使用した。比較例20及び23の場合、プロセス工程c)は適用されなかったため、含浸溶液を使用しなかった。表5に-55℃での相対静電容量を示す。
【0179】
【0180】
参照番号一覧
1 多孔質電極本体
2 電極材料
3 誘電体
4 固体電解質
5 細孔
6 含浸溶液
7 カプセル(アルミニウムハウジング)
8 コンデンサ素子(誘電体及び固体電解質で被覆され、含浸溶媒を含む多孔質電極材料)
9 ゴムパッキン
10 リード線
【国際調査報告】