(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】手術シミュレーションデバイス
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20230518BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20230518BHJP
G09B 19/00 20060101ALI20230518BHJP
G09B 19/24 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
G09B19/00 Z
G09B19/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022560513
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 FR2021050633
(87)【国際公開番号】W WO2021205131
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520159363
【氏名又は名称】ヴィルチュアリサージ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ミニャン,ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】リバーサット,デビッド
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032CA03
2C032CA06
(57)【要約】
手術シミュレーションデバイス(10)は、少なくとも2つの別個の動作状態に従って作動させることができる機能的要素を備える実手術器具と、コンピューティングユニットとを備える。これは、実手術器具(12)をコンピューティングユニットに接続する電子システム(16)と、コンピューティングユニットに接続された仮想手術器具とを備える。仮想手術器具は、実手術器具(12)の機能的要素と同様の仮想機能的要素を有する。電子システム(16)を設けられた実手術器具(12)は、対応する機能的手術器具と実質的に同じ重量を有し、仮想手術器具の仮想機能的要素は、実手術器具(12)の機能的要素(26a)と同じ動作状態に従って作動され、実手術器具(12)の動作状態とリアルタイムで位置合わせされるように適合される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
- コンピューティングユニット(14)と、
- 実手術器具(12)と、
- 前記コンピューティングユニット(14)に接続された仮想手術器具(22)と、
- 電子カード(18)及び少なくとも1つのセンサ(20a、20b、21)を備える電子システム(16)であって、前記電子システム(16)は、前記実手術器具(12)を前記コンピューティングユニット(14)に接続し、少なくとも1つの特定のインターフェース部分(30)によって前記実手術器具(12)に一体化される、電子システム(16)と、
を備える手術シミュレーションデバイス(10)であって、
- 前記電子システム(16)を伴う実手術器具(12)は、対応する機能的手術器具と実質的に同じ重量を有する、
- 前記実手術器具(12)は機能的手術器具に対応し、前記機能的手術器具は外科手術の枠組みの中で操作されることを意図されており、前記機能的手術器具は少なくとも1つの機能的要素(26)を備え、前記実手術器具(12)も同じ機能的要素(26)を備え、前記少なくとも1つの機能的要素(26)は少なくとも2つの別個の動作状態に従って作動させることができ、
- 前記仮想手術器具(22)は、前記実手術器具(12)と同じ幾何学的特徴を有し、前記実手術器具(12)の機能的要素(26)と同様の仮想機能的要素(42)を有し、
- 前記仮想手術器具(22)の仮想機能的要素(42)は、前記実手術器具(12)の機能的要素(26)と同じ動作状態で作動されるように適合され、
- 仮想器具(22)の仮想機能的要素(42)の動作状態は、前記実手術器具(12)の機能的要素(26)の動作状態とリアルタイムで位置合わせされるように適合される、
ことを特徴とする、手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項2】
前記電子システム(16)の少なくとも1つのセンサ(20a、20b、21)は、実手術器具(12)の機能的要素(26)を構成することを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項3】
前記電子システム(16)の少なくとも1つのセンサ(20a、20b、21)は、実手術器具(12)の機能的要素(26)の機械的容量を測定するためのものであることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項4】
前記電子システム(16)の少なくとも1つのセンサ(20a、20b、21)は、実手術器具(12)の機能的要素(26)の元の位置に対する相対移動を測定することを意図していることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項5】
前記電子システム(16)を設けられた実手術器具(22)は、前記機能的手術器具と実質的に同一の寸法、形状、及び重心を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項6】
前記電子カード(18)、前記少なくとも1つのセンサ(20a、20b、21)、及び前記少なくとも1つの特定のインターフェース部分(30)は、前記機能的手術器具の電子コンポーネントのセットのうちの少なくとも1つの電子コンポーネントの代わりに実手術ツール(12)に一体化されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項7】
前記仮想手術器具(22)は、前記コンピューティングユニット(14)に接続されたディスプレイデバイス(24)上でオペレータによって見られるように適合されることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項8】
前記実手術器具(12)は、前記コンピューティングユニット(14)によって決定される性質及び位置を有する事前定義されたボディとの相互作用をオペレータがシミュレートできるように、触覚デバイス(H)を設けられることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項9】
前記事前定義されたボディの仮想均等物は、前記ディスプレイデバイス(24)上でオペレータによって視覚化されるように適合されることを特徴とする、請求項7及び8に記載の手術シミュレーションデバイス。
【請求項10】
前記実手術器具(12)は、音声フィードバックシステム(S)を設けられることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションのための手術シミュレーションデバイス(10)。
【請求項11】
前記実手術器具(12)は、前記コンピューティングユニット(14)が事前定義された原点に対する空間内の実手術器具(12)の位置を各時点で測位できるように、空間位置特定システム(L)を設けられることを特徴とする、先行する請求項のいずれか一項に記載の手術シミュレーションデバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器及び医療器具の分野に関する。より具体的には、本発明は、手術シミュレーションのためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医学の分野では、研修生外科医にトレーニング装置を提供することが知られている。もちろん、研修生は死体でトレーニングすることができるが、数が限られている。研修生はまた、上級外科医の監督下で生きている患者でトレーニングすることができるが、この実践は患者にリスクをもたらす。したがって、死体又は患者の利用可能性から手術学習を解放するためのシステムを提供することが不可欠である。
【0003】
例えば、EP1746558B1及びWO2019204615(A1)に例示されているように、そのようなシステムの多くの例が最新技術に既に存在する。
【0004】
文献EP1746558Bは、少なくとも2つの実器具でシミュレートされる、身体に対するユーザによる手術動作をシミュレートするためのシステムを開示している。このシステムは、長手方向のトラックと、前記トラックに沿って移動可能な複数のキャリッジとを備える。各キャリッジは、クランプ手段と、前記実器具を回転させる及び長手方向に移動させるための手段とを有する。このシステムはまた、シミュレーション特徴に関して前記実器具からのフィードバック力を受信してユーザの手に伝達するためのフィードバック手段と、実器具が前記クランプ手段に挿入されることを認識するための手段も備え、これにより、ユーザが長手方向に移動及び回転させる前記クランプ手段内に前記実器具を固定することができる。
【0005】
文献WO2019204615(A1)は、内視鏡検査デバイスと、シミュレートされた手術室環境での内視鏡検査デバイスの位置及び向きを三次元で追跡するべく三次元追跡システムと連動するように適合された追跡デバイスとを備える装置を開示している。この装置はまた、ハードコンポーネント及びソフトコンポーネントを含む患者の頭部の物理モデルを備え、内視鏡検査デバイスは、内視鏡手術の触覚フィードバックを提供するべく、物理モデルに挿入されるように構成される。
【0006】
両文献は、機械システム(手術器具及び/又はトレーニングコンソール)をセンサシステム及びディスプレイシステムと組み合わせることによる手術トレーニングデバイスを開示している。センサは、トレーニングコンソールの要素に対して、オペレータが使用する器具の位置を測位する。データがディスプレイシステムに表示され、外科研修生を支援する。しかしながら、これらのデバイスのいずれも、真の没入を可能にしない。手術室の条件は再現されず、研修生は手術室での手技のすべての感覚を体験することはできない。従来技術の開示は、手術室での動作条件を有意に近似するための、シミュレーションの仮想コンポーネントが欠如している。これらの条件を適切な様態で再現する唯一の方法は、オペレータを仮想世界に没入させながら、オペレータが手術室の実条件にできる限り準備するために、オペレータが実手術器具を操作できるようにすることである。
【0007】
例えばWO2017114834(A1)で例示されているように、外科手技中に外科医に付き添うためにバーチャルリアリティも使用される。
【0008】
文献WO2017114834(A1)は、患者に対して手術ツールを操作するように構成されたロボットを含む、手術ロボットシステムのために提供される制御ユニットを開示している。この制御ユニットは、患者から取得した生画像を、表示するためにバーチャルリアリティ(VR)デバイスに送信するように構成されたプロセッサを含む。このユニットは、VRデバイスから受信した入力データを処理し、生画像と処理した入力データに基づいて患者上の標的を決定し、手術ツールが標的に到達するための経路を決定し、決定された経路を経由して手術ツールを標的に誘導させるべくロボットに制御信号を送信する。
【0009】
しかしながら、手術中に外科医に付き添うときに、初心者を慣れさせるために手術室の条件を再現することは問題になっていない。
【0010】
従来技術の開示は、ユーザが物理世界と手術室での動作条件を再現する仮想世界とで同時に実手術器具を操作することを可能にしない。
【0011】
より具体的には、本発明は、仮想世界と実手術器具の使用とを組み合わせた手術シミュレーションデバイスを提案することによって、これらの欠点を改善することを意図している。
【発明の概要】
【0012】
これは、本発明によれば、
- コンピューティングユニットと、
- 実手術器具と、
- コンピューティングユニットに接続された仮想手術器具と、
- 電子カード及び少なくとも1つのセンサを備える電子システムであって、電子システムは、実手術器具をコンピューティングユニットに接続し、少なくとも1つの特定のインターフェース部分によって実手術器具に一体化される、電子システムと、
を備える手術シミュレーションデバイスによって達成される。
本発明は、
- 電子システムを伴う実手術器具は、対応する機能的手術器具と実質的に同じ重量を有し、
- 実手術器具は機能的手術器具に対応し、機能的手術器具は外科手術の枠組みの中で操作されることを意図されており、機能的手術器具は少なくとも1つの機能的要素を備え、実手術器具も同じ機能的要素を備え、少なくとも1つの機能的要素は少なくとも2つの別個の動作状態に従って作動させることができ、
- 仮想手術器具は、実手術器具と同じ幾何学的特徴を有し、実手術器具の機能的要素と同様の仮想機能的要素を有し、
- 仮想手術器具の仮想機能的要素は、実手術器具の機能的要素と同じ動作状態で作動されるように適合され、
- 仮想器具の仮想機能的要素の動作状態は、実手術器具の機能的要素の動作状態とリアルタイムで位置合わせされるように適合される、
ことを特徴とする。
【0013】
したがって、この解決策は上記の目的を達成する。特に、少なくとも1つのセンサを伴う器具を提供し、それらのそれぞれをオペレータが仮想視野内に有する仮想ツインにリンクすることで、トレーニングの臨場感が顕著に高まり、手術室での動作条件がほぼ同じように再現される。オペレータが実手術器具の機械的又は電子的機能を作動させると、仮想世界で同じアクションがトリガされる、すなわち、実手術器具の動作状態が、仮想世界で仮想手術器具によって即座に再現される。さらに、この手術シミュレーションデバイスは、多様な手術器具(機械式及び/又は電子式、小型及び/又は大型、剛性及び/又は可撓性)の接続を可能にする。
【0014】
本発明に係る手術シミュレーションデバイスは、以下の特徴のうちの1つ以上を、単独で、又は互いに組み合わせて備え得る:
- 電子システムの少なくとも1つのセンサは、実手術器具の機能的要素を構成し得る、
- 電子システムの少なくとも1つのセンサは、実手術器具の機能的要素の機械的容量を測定するためのものであり得る、
- 電子システムの少なくとも1つのセンサは、実手術器具の機能的要素の元の位置に対する相対移動を測定することを意図し得る、
- 電子システムを設けられた実手術器具は、機能的手術器具と実質的に同一の寸法、形状、及び重心を有し得る、
- 電子カード、少なくとも1つのセンサ、及び少なくとも1つの特定のインターフェース部分は、機能的手術器具の電子コンポーネントのセットのうちの少なくとも1つの電子コンポーネントの代わりに実手術ツールに一体化される、
- 仮想手術器具は、コンピューティングユニットに接続されたディスプレイデバイス上でオペレータによって見られるように適合され得る、
- 実手術器具は、コンピューティングユニットによって決定される性質及び位置を有する事前定義されたボディとの相互作用をオペレータがシミュレートできるように、触覚デバイスを設けられ得る、
- 事前定義されたボディの仮想均等物は、ディスプレイデバイス上でオペレータによって視覚化されるように適合される、
- 実手術器具は、音声フィードバックシステムを設けられ得る、
- 実手術器具は、コンピューティングユニットが事前定義された原点に対する空間内の実手術器具の位置を各時点で測位できるように、空間位置特定システムを設けられ得る。
【0015】
本発明のさらなる特徴及び利点は、理解のために添付図を参照する以下の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るシミュレーションデバイスの一般化された概略図である。
【
図2】本発明に係る実手術器具の第1の実施形態の斜視図である。
【
図3A】本発明に係る第1の特定のインターフェース部分の斜視図である。
【
図3B】
図2の実施形態に係る手術器具と一体化された
図3Aのインターフェース部分の斜視図である。
【
図4A】本発明に係る第2の特定のインターフェース部分の斜視図である。
【
図4B】
図2の実施形態に係る手術器具と一体化された
図4Aのインターフェース部分の斜視図である。
【
図7A】手術中の
図6A及び
図6Bの仮想手術室の仮想画面の実例であり、より具体的には、
図7Aは、仮想患者の内部ビューへのアクセスを提供する仮想手術室の仮想画面の実例である。
【
図7B】手術終了時の前図の仮想画面の実例である。
【
図8A】本発明に係る実手術器具の第2の例の斜視図である。
【
図8B】特定のインターフェース部分が開いている、前図の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本出願において、「一体化する」という用語は、セットの他の要素と調和するように、セットに属するように見えるように、何かをセットに入れるという辞書的な意味で用いられる。何かを何かに一体化するとは、それを組み込んで、全体の一部にすることを意味する。
【0018】
本出願において、「センサ」という用語は、観測された物理状態量を、例えば、電圧、水銀高さ、又は針の振れなどの使用可能な量に変換するデバイスを指す。それは、少なくともトランスデューサによって構成されることに留意されたい。
【0019】
図1に概略的に示すように、本発明に係る手術シミュレーションデバイス10は、
- オペレータが操作することを意図した実手術器具(手術器具)12と、
- コンピューティングユニット14と、
- 電子カード18及び少なくとも1つのセンサ20a、20b、21を含む電子システム16と、
- コンピューティングユニット14に接続された仮想手術器具22と、
を備える。
【0020】
実手術器具12は、外科手技において操作されることを意図される機能的手術器具に由来する。したがって、実手術器具12は、手術室環境で機能しているわけではないにもかかわらず、本発明との関連でオペレータが操作するときに機能的器具と実質的に同じ物理的感覚を再現する。
【0021】
仮想手術器具22は、ディスプレイデバイス24への投影によってオペレータに可視になる。
【0022】
この場合、オペレータは、研修生外科医であり得る。
【0023】
ディスプレイデバイス24は、例えば、バーチャルリアリティヘッドセットである。オペレータは、ヘッドセットを装着して手術シミュレーションを行う。
【0024】
実手術器具
電子システム16は、手術器具12をコンピューティングユニット14に接続する。電子システム16は、手術器具12と一体化される。電子システム16は、例えば手術室に典型的に存在するマシン(超音波スキャナ、ミリングマシン、又はベッドなど)の周りに配置されたフットスイッチ、光重合ランプ、又はミリング速度制御ユニットを含む、任意のタイプの手術器具12に一体化され得る。さらに、電子システム16は、手術器具12を取り扱うオペレータに対して、サイズ、形状、重量、及び重心においてトランスペアレントである。
【0025】
電子システム16の電子カード18は、例えば、Arduino(登録商標)、Teensy(登録商標)、MBed(登録商標)タイプのボードであり得る。この電子ボード18は、有線で又は無線で(例えば、BLE又はWIFIプロトコルに従って)コンピューティングユニット14と通信することができる。このコンピューティングユニット14は、例えば、算術論理演算ユニット及びメモリを備えるリモートコンピュータ又はマイクロコントローラであり得る。電子カード18は、例えば、充電式バッテリ(Li-Po、Ni-MH、Liイオン...)又はバッテリによって電力を供給され得る。電子カード18はまた、シミュレーションを開始する必要なく(例えば、デバイス10がオンになっていること、電子システム16がコンピューティングユニット14に適切に接続されていること、バッテリレベルが低いこと、センサ20a、20b、21が機能していることなどを示すために)多色LEDによって、手術器具12の電子システム16の状態に関するオペレータへの直接のフィードバックを可能にする。
【0026】
この電子カード18は、手術器具12に一体化されたセンサ20a、20b、21から情報をリアルタイムで取得するためにデジタル及びアナログ入力及び出力を有する。各センサ20a、20b、21は、独自の機能的情報を収集する。
図2に示すように、すべてのセンサ20a、20b、21は手術器具12と一体化される。
【0027】
本発明の場合、電子システム16は、3つのタイプのセンサ20a、20b、21、すなわち、2つのタイプのいわゆるオリジナルセンサ(一次オリジナルセンサ20aの組と、二次オリジナルセンサ20bの組)と、1つのタイプのいわゆる追加のセンサ21を備える。一次及び二次オリジナルセンサ20a、20bは、手術室で医師によって使用される市販の機能的手術器具12に存在する要素である。これらの一次及び二次オリジナルセンサ20a、20bは、工業プロセスから得られた基本電子装置から接続解除され、次いで、手術シミュレーションデバイス10の電子システム16に一体化される。
【0028】
特に、一次及び二次オリジナルセンサ20a、20bは、それぞれ、手術器具12の機能的要素26を構成する。機能的要素26は、手術器具12の適正な動作及び/又は取り扱いに必要とされる要素である。実手術器具12の各機能的要素26は、対応する機能的手術器具の機能的要素26と同一のものである。機能的要素26は、機械式又は電子式であり得る。古典的に、各機能的要素26は、少なくとも2つの別個の動作状態で作動され得る。これは以下でさらに説明する。機能的要素26はまた、一次26a又は二次26bであり得る。したがって、手術器具12は、1つ以上の一次機能的要素26a(電子式又は機械式)と、1つ以上の二次機能的要素26b(電子式又は機械式)を備え得る。一次機能的要素26aは、例えば、作動ハンドル、ボタン、レバー、又はタッチパッドの形態をとり、手術器具12を操作、作動、及び/又は制御することなどを可能にし得る。したがって、一次機能的要素26aを形成する各一次オリジナルセンサ20aは、コンピューティングユニット14が手術器具12に対するオペレータのアクションを取得することを可能にする。オペレータは、血管の凝固又は手術器具12のエフェクタの方向づけなどの手術目的の手術シミュレーション中にこのアクションを行う。次に、二次機能的要素26bを形成する各二次オリジナルセンサ20bが、手術器具12の動作状態に関するフィードバックを提供する。二次オリジナルセンサ20bは、例えば、凝固システムの準備ができていること又は手術器具12が特定の負荷レベルにあることをオペレータに示すために、例えばブザー又はLEDの形態をとり得る。
【0029】
オリジナルセンサ20a、20bとは独立して、したがって、機能的手術器具12の適正な機能/使用のために必要とされるわけではない追加のセンサ21が、前記器具12に追加される。各追加のセンサ21は、以下を測定するために使用される:
- 実手術器具12の一次機能的要素26aの機械的容量、及び/又は
- 実手術器具12の一次機能的要素26aの元の位置に対する前記実手術器具12の一次機能的要素26aの相対移動、
- 一次機能的要素26aの元の位置に対する前記一次機能的要素26aの向き、
- 周囲磁場又は内部磁場、
- 別の一次機能的要素26に対する一次機能的要素26の向き、
- 定義された基準座標系に対する空間内の手術器具12の相対位置。
【0030】
IMU(慣性計測装置)は、例えば、追加のセンサ21を形成し得る。
【0031】
電子システム16は、幅広い用途及びすべての外科専門分野で様々なカテゴリの手術器具12に追加することができる。古典的に、2つのタイプの機能的手術器具が考えられる:
- 複雑な手術器具、
- 機械式手術器具。
【0032】
複雑な機能的手術器具は、電子式及び/又は機械式とすることができる。したがって、それらは、多様な機械式及び電子式機能的要素26を有し得る。これらの機械式機能的要素26は、ボタン、トリガ、作動ハンドルP(
図2参照)、ノブ、調光器などの機械式アクチュエータの形態をとり得る。機械式機能的要素26は一次機能的要素26aである。それらは、モータによって又はオペレータの直接のアクションによって作動することができる。複雑な機能的手術器具はまた、例えばLEDなどの二次機能的要素26bなどの電子機能的要素26を有する。複雑な機能的手術器具が電子式である場合、それは通常、バッテリを設けられるか、又は電力を供給できるように手術室の外部マシンに接続される。
【0033】
システムの電力は、12V/3A電源(図示せず)によって供給される。データは、有線通信手段(USB2.0、イーサネット)又は無線通信手段(Wifi、Bluetooth、...)によって送信される。
【0034】
具体的には、各実手術器具12から行われる信号処理が、バーチャルリアリティシミュレーションでリアルタイムの効果を生み出す。したがって、各仮想手術器具22は、仮想ツインとして、その実モデルと同じように動く及び反応する。各実手術器具12は、受信した値を対応する仮想手術器具26、すなわち正しい仮想ツインに関連付けることを可能にする一意識別子を有する。したがって、各実器具12は、オンにされると、シミュレーションに接続する(TCP、UDP、シリアル)。次いで、各実器具12は、そのデータを定義された周波数でコンピューティングユニット14に送信する。
【0035】
コンピューティングユニット14と各実手術器具12との接続は、ポイント・ツー・ポイント(Unicast)又はブロードキャスト(例えばBroadcast又はMulticast)であり得るプロトコルを介して行われる。すべてのモードにおいて、シミュレーションはデータサーバとして作用する。
【0036】
【0037】
機械式機能的手術器具は、電子式機能的要素を有さず、機械式機能的要素(一次機能的要素26a)のみを有する。これらは、手術用リトラクタ、はさみ、鉗子、及び針ホルダ、又は股関節置換用のMedactaによるAMIS(登録商標)システムなどのより複雑な機械システムを含む。
【0038】
既に示したように、本発明の各実手術器具12は、機能的器具に対応し、機能的手術器具の各機能的要素26は、実手術器具12の機能的要素26に対応する。実器具12の各機能的要素26は、機能的器具の対応する機能的要素26とまったく同じように、少なくとも2つの別個の動作状態で作動され得る。実手術器具12の各機能的要素26の動作状態の総和が、実手術器具12自体の動作状態を提供する。複雑な手術器具12の場合、例えば、機能オフ状態と機能オン状態とを区別することができる。通電した機能状態自体は、休止機能状態(オペレータが器具12を使用しない)と、作動機能状態(オペレータが器具12を作動させる)に分けることができる。手術器具12に応じて、例えば、手術器具12が、
図2に示された例の手術器具12のロッドTなどの、いくつかの速度をとり得る一次機能的要素26aを有する場合に、作動のいくつかの機能状態が存在し得る。機械式手術器具12の場合(例えば鉗子又ははさみの場合)、例えば、開いた機能状態と閉じた機能状態とで区別することができる。
【0039】
図2に示される例を取り上げると、二次センサ21は、例えば、以下を測定し得る:
- 実手術器具12のシャフトTの回転、
- 作動ハンドルPの閉じ具合。
【0040】
ロッドT及び作動ハンドルPは、それぞれ、一次機能的要素26aであることに留意されたい。
【0041】
センサに関する課題は2つあり、オリジナルセンサ20a、20bについて、課題は、センサ20a、20bの本来の機能を変えることなく、元の電子システムから接続解除して電子システム16に接続することであり、追加のセンサ21について、課題は、手術ツール12の機能を乱すことなくそれらを追加することである。
【0042】
複雑な又は機械式手術器具12に加えて、電子システム16は、手術室に存在する制御ボックスに一体化され得る。これは、例えば、内視鏡カメラ用のコールドライト制御ボックス又は麻酔マシンの制御パネルであり得る。したがって、シミュレーションの外部のユーザのアクションを取り込み、オペレータの傍でそのアクションをシミュレーションで再現することができる。例えば、手術シミュレーションで内視鏡カメラを使用する場合、オペレータが手術シミュレーションを行っている間に、内視鏡カメラの光量の調節をアシスタントに頼むことが可能となる。これを行うことができるようにするために、内視鏡カメラによって送出された光量を知り、ライトブロックをシミュレーションに接続する必要がある。これと同じタイプの状況は、ツールの導入前にCO2が患者の腹壁に古典的に噴射される間のシミュレーションで見られ、実際、CO2噴射器を電子システム16に接続することで、動作に沿ったフロー管理を保証することが可能となり、オペレータは、例えば圧力レベルを定期的にチェックすることを習慣づけることができる。
【0043】
複雑な手術器具12の概念は、例えば、医師によって使用されることが増えているロボット支援プラットフォーム操作コンソールなどの特定の手術ロボットを包含する。
【0044】
図2及び
図3Bに示される例では、手術器具12のロッドTの回転は、無限回転エンコーダ28の形態の二次センサ21を介して送信される。一般的に言えば、エンコーダは、情報をコードに変換するハードウェアコンポーネント又はソフトウェアコンポーネントである。回転エンコーダは、通常、光源、軸の周りを回転する等間隔の穴付きディスク、及び光学センサを備える。光がディスクの穴の1つを通過するたびに、電気信号が送信される。各ディスクを通過する信号を収集することで、軸がどの方向にどの程度回転しているかを知ることができる。ディスクの穴が多いほど、角度はより正確となる。この場合、エンコーダシャフト281は、手術器具12のロッドTに結合される。したがって、ロッドTは、作動された(すなわち回転した)ときに、エンコーダ28のシャフトを駆動する。このシャフト281は、有孔ディスク282を駆動して、ロッドTの回転角度に関する情報を与える。
【0045】
図2及び
図4Bに示される例では、作動ハンドルPの閉じ具合が二次センサ21によって送信され、二次センサ21は、例えば、回転又は摺動可変抵抗器(ポテンショメータ)29又は力センサの形態をとり得る。一般に、3つの端子を有し、そのうちの1つの端子は可変抵抗器のブロック上を移動するスライダに接続され、他の2つの端子で終端するタイプの可変抵抗器が、ポテンショメータと呼ばれる。このシステムは、カーソルに接続された端子と他の2つの端子のうちの1つとの間で、カーソルの位置に依存する電圧と、可変抵抗ブロックが受ける電圧を収集することを可能にし、2つの端子は、可変抵抗ブロックの最大値及び最小値に対応する。この場合、線形ポテンショメータ29のスライダ291は、作動ハンドルPに結合される。したがって:
- 作動ハンドルPが作動されるとき、ポテンショメータ29のスライダ291が、可変抵抗ブロック292に沿って作動方向に変位し、この変位により、ポテンショメータ29の抵抗がその方向に変化する、
- 作動ハンドルPが解放されるとき、実手術器具12に一体化されたばねが、作動ハンドルPをその元の状態(開)に押し戻し、ポテンショメータのスライダ291が、可変抵抗ブロック292に沿って他の方向に駆動される。
【0046】
このようにして、作動ハンドルPが開閉されるときに到達し得る最小値及び最大値がわかり、外積によって、前記作動ハンドルPの開閉のパーセンテージが得られる。
【0047】
図2、
図3B、及び
図4Bから、電子カード18及びセンサ20a、20b、21は、少なくとも1つの特定のインターフェース部分30によって手術器具12に一体化されることがわかる。各特定のインターフェース部分30は、3Dプリンティングによって得られる。
【0048】
図2、
図3A、及び
図3Bに例示される例の場合、エンコーダ28と手術器具12のロッドTとの接続は、特定のインターフェース部分30によって可能となる。この特定のインターフェース部分30は、
図3Aに例示されている。
図3Aの特定のインターフェース部分30は、2つの部分、すなわち、手術器具12のロッドTに接着されることが意図される第1の部分301と、エンコーダ28のシャフトに接着されることが意図される第2の部分302とからなる。エンコーダ28のシャフトは、コーディングシステムを介してロッドTによって駆動することができる。したがって、エンコーダ28に連結された特定のインターフェース部分30の特定の寸法及び幾何学的形状により、手術器具12の操作中のロッドTの移動を妨げることなく、エンコーダ28が手術器具12のロッドTによって駆動されることを保証することが可能となる。
【0049】
図2、
図4A、及び
図4Bに例示される例の場合、手術器具12の作動ハンドルPとポテンショメータ29との結合はまた、別の特定のインターフェース部分30によって保証される。前述のように、この特定のインターフェース部分30は、2つの部分、すなわち、スリーブを形成し、ポテンショメータ29のスライダの周りに接着されることが意図される第1の部分301と、輪を形成し、ハンドルPの周りに通される第2の部分302とを備える。特定のインターフェース部分30の第1の部分301及び第2の部分302は、一方が他方に対して1つの自由度で旋回できるように互いに接続される。ポテンショメータ29は、手術器具12にしっかりと取り付けられる。第1の部分301は、ポテンショメータ29の軸にしっかりと取り付けられ、ポテンショメータ29の軸自体は、ポテンショメータの本体に対して摺動可能である。第2の部分302は、作動ハンドルPがオペレータによって操作されるときの作動ハンドルPの動きに追従し、その動きを第1の部分301に伝達し、第1の部分301は、その動きをポテンショメータ29のスライダに伝達する。次いで、その情報がコンピューティングユニット14に送信される。
【0050】
各追加のセンサ21は、機能的手術器具に関してオペレータに対してトランスペアレントな様態で手術器具12に追加される。一般に、電子システム16のすべてのセンサ20a、20b、21及び電子カード18、並びに、特定のインターフェース部分30のそれぞれを追加しても、機能的手術器具の機能的要素に対して、手術器具12の各一次及び/又は二次機能的要素26a及び/又は26bを機械的に作動させるのに必要な機械的移動又は力は顕著に変わらない。手術器具12の物理的特性(寸法、形状、及び重心など)は、電子システム16の一体化後も、工場から得られた機能的手術器具の物理的特性と実質的に同一のままである。したがって、各手術器具12に関する課題は、機能的手術器具のすべての自由度が維持されるように、オペレータに対して実質的にトランスペアレントな様態で電子システム16の測定システムを追加することである。実際、電子カード18、各センサ20a、20b、21、及び各特定のインターフェース部分30は、機能的手術器具の電子コンポーネントのセットのうちの少なくとも1つの電子コンポーネントの代わりに実手術ツール12に一体化される。
図8A、
図8Bに示される例では、特定のインターフェース部分30は、それを手術器具12の端に取り付ける(ドッキングする)ことによって、実手術ツール12の内部に一体化される。この取り付けは、手術ツール12の取り扱いパラメータを変更しないような様態で行われる。したがって、
図8A及び
図8Bに例示される例では、特定のインターフェース部分30は、実手術ツール12のモータ軸と連続して取り付けられる。電子カード18、各センサ20a、20b、21、及び特定のインターフェース部分30は、機能的手術器具の電子コンポーネントのセットのうちの少なくとも1つの電子コンポーネントの代わりに実手術ツール12に一体化されるため、これらの電子コンポーネントがあった場所に一体化されていなくても、実手術ツール12の最終的な重量は、機能的手術ツールの重量と実質的に同じに維持される。特定のインターフェース部分30、電子カード18、センサ20a、20b、21は、取り付け(ドッキング)によって実手術ツール12に一体化され、単一の技術部品を形成する。したがって、システム10の電子システム16のコンポーネントを追加することで生じる各重量変化は、機能的手術器具に最初に存在する電子コンポーネント(例えば、バッテリ)を除去することで補償される。
【0051】
実手術器具12は、音声フィードバックSを設けられ得る。この音声フィードバックは、ユーザが駐車するのを支援するために自動車分野に存在する音声フィードバックのように、実手術器具12の周りの利用可能なスペースの指示、又はさらには空間内の実手術器具12の端の位置の情報を与えることを可能にし、学習の開始時にオペレータが作業スペースの深さを知覚するのを支援することができる。この音声フィードバックSは、器具の先端と手術の標的との間の距離を示す。このタイプのフィードバックは、ユーザが作業に集中できるように、ユーザの視覚空間を過負荷にすることなく、ユーザに追加の情報が送信されることを可能にする。
【0052】
実手術器具12は、コンピューティングユニット14が事前定義された原点に対する空間内の実手術器具12の位置を任意の時点で測位できるように、空間位置特定システムLをさらに備え得る。
【0053】
実手術器具12はまた、オペレータが事前定義されたボディとの相互作用をシミュレートできるように、触覚デバイスHを備え得る。この触覚デバイスHは、以下でより詳細に説明される。実手術器具12は、触覚デバイスHに加えて、事前定義された外部信号に応答して特定の音、光、又は匂いを発することができるように、包括的感覚デバイスを設けられ得る。
【0054】
実手術器具12に追加されたすべてのシステム、すなわち、一体化された電子システム16、触覚システムH、ソナーシステムS、及び空間位置特定システムLは、オペレータに対してトランスペアレントであり、実手術器具12は、これらのすべてのシステムが一体化されても機能を失わず、実手術器具12の重心は変化しない。
【0055】
仮想手術器具
既に述べたように、本発明の各実手術器具12は、オペレータが操作することを意図しており、少なくとも2つの別個の動作状態で作動させることができる。さらに、各実手術器具12は、独自の幾何学的特徴を有する。本発明の手術シミュレーションデバイス10では、各実手術器具12に、対応する実手術器具12の幾何学的特徴と同じ幾何学的特徴を有する仮想手術器具22(
図5参照)が対応する。これは、実手術器具12の仮想ツイン22である。各仮想手術器具22は、対応する実手術器具12と同じ動作状態で作動させることができ、仮想器具22の動作状態は、対応する実手術器具12の動作状態とリアルタイムで位置合わせされる。
【0056】
図5に示される例では、仮想手術器具22は、
図2に示される焼灼器のツインである、焼灼器である。実手術器具12を操作しながら、オペレータは、コンピューティングユニット14に接続されたディスプレイデバイス24上で各仮想手術器具22を見る。各仮想手術器具22(
図6Aの場合、焼灼器と、3つのトロカールt1、t2、t3)を見ることに加えて、オペレータは、仮想手術室32全体(
図6B参照)、さらには手術シミュレーションを行う対象である仮想患者34を見ることができる。仮想手術室32及び仮想患者34は、コンピューティングユニット14に格納され、コンピューティングユニット14によってオペレータに可視となる。
【0057】
図6A~
図8Bに例示される例では、手術シミュレーションは、胸椎側弯症の矯正に関するものである。古典的な既知の方法では、この手術は最小侵襲手術であり、オペレータは、1つ以上のトロカールで患者の体内に導入されたカメラによって生成された画像のおかげで方向づけられる。この場合、これらのトロカールはまた、画面上に表示された手術対象の器官(ここでは脊椎)の画像に向けて実手術ツール12を誘導するために使用される。手術シミュレーションの場合、オペレータは、仮想手術ツール22で、手術対象の仮想器官36に動作する。
図6A~
図8Bに示される最小侵襲手術シミュレーションの特定の例の場合、オペレータは、仮想画面38上で、手術対象の仮想器官36(仮想脊椎)の画像36’を見る。この仮想画面38は仮想手術室32の一部である。
図8Aで見られるように、オペレータはまた、仮想画面38で仮想手術ツール22の画像22’を見る。したがって、手術シミュレーションは、オペレータを手術室の実条件に没入させる。
【0058】
実手術器具から実器具とリアルタイムで組み合わされたバーチャルリアリティによって生み出されるこの「没入」は、研修生(ユーザ)の聴覚、視覚、及び運動感覚の記憶のトレーニングに対する有益な効果を促進する。このトレーニングを通じて、ユーザは、第1に、シミュレートされた手技で行われるジェスチャ及びアクションを能動的に記憶する。そして第2に、受動的に、ユーザの異なる感覚間の相互作用が、実際の状況に移行可能なオートマティズムを生み出す。
【0059】
したがって、オリジナルセンサ20a、20b、又は回転の度合い、ストロークの長さ、閉じ具合、速度、バッテリ充電率、又は圧力を測定するために機能的手術器具に追加された追加のセンサ21は、それぞれ、これらと同じ量を仮想手術器具22で再現することを可能にする。各センサは電子カード18に接続され、電子カード18はコンピューティングユニット14に接続されるので、コンピューティングユニット14は、シミュレーション中に各実手術器具12の機械的動作をリアルタイムで再現することができる。
【0060】
さらに、実手術器具12は、オペレータが事前定義されたボディとの相互作用をシミュレートできるように、触覚デバイスを設けられ得る。この事前定義されたボディは、コンピューティングユニット14によって決定される仮想性質及び仮想位置を有する仮想ボディである。オペレータは、ディスプレイデバイス24を介して、事前定義されたボディの仮想均等物を仮想解剖学的オブジェクト40として視覚化する。この場合、最小侵襲手術であるため、オペレータは、手術対象の仮想器官36を取り囲む各解剖学的オブジェクト40の画像40’を見る。
図6Aでは肋骨の画像を見ることができ、
図7A、
図7Bでは肺の画像を見ることができる。
【0061】
したがって、各事前定義されたボディにより、バーチャルリアリティで仮想解剖学的オブジェクト40がシミュレートされる。既に述べたように、この仮想解剖学的オブジェクト40は、肺、肝臓、筋、骨などであり得る。手術器具12(複雑な又は機械式)に組み込まれた触覚フィードバックHは、オペレータに力のフィードバック感覚を提供することで手術シミュレーションの臨場感を最大化する。ケーブルシステム又は振動技術(例えば、偏心回転質量モータ(ERM)又は圧電モータなど)を使用して、実手術器具12(又は仮想手術器具22)でバーチャルリアリティでの仮想解剖学的オブジェクト40の触診又は衝突を感じることができる。オペレータはまた、例えば縫合糸の引っ張り力を感じることができる。実手術器具12が包括的感覚デバイスを設けられる場合、外部信号に応答して放出された音、光、及び/又は匂いが没入体験をさらに強化する。
【0062】
したがって、実手術器具12に一体化された電子システム16は、実手術器具12の状態に関する情報をその仮想ツイン22にリアルタイムで送信することを可能にする。実手術器具12と同様に、仮想手術器具22は、少なくとも1つの仮想機能的要素42を有する(
図5参照)。この仮想機能的要素42は、対応する実機能的要素26のツインである。したがって、仮想器具22の仮想機能的要素42の動作状態は、実手術器具12の各機能的要素26の動作状態とリアルタイムで位置合わせされる。没入体験のパフォーマンスを保証するために、対応する実手術器具12及び仮想手術器具22(又はそれらの対応する機能的要素26、42)の機能状態の位置合わせは、オペレータへの明らかな遅延なしに行われる。一体化された電子システム16は、実手術器具12の全機能に従って実手術器具12の機能状態の推移に追従し、実手術器具12の人間工学的及び幾何学的特徴を尊重し、実手術器具12の重量を増さないように、また、手術シミュレーション中にオペレータを妨げないように、十分に小型化することができる。
【0063】
本発明に係る手術シミュレーションデバイス10は、オペレータが実手術器具12を物理世界と仮想世界で同時に操作することを可能にすることに注目される。したがって、外科手技の手術ステップで使用される各実手術器具12は、各実手術器具12に対応する仮想手術器具22を含むバーチャルリアリティにリアルタイムで接続される。
【0064】
したがって、本発明によって開発された技術は、仮想世界と実世界との完全な一致を提供し、それがなければ、シミュレーションで得られたスキルは不十分で近似的である。
【国際調査報告】