(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】APC標的化単位を用いたネオエピトープ免疫療法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20230518BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20230518BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230518BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230518BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230518BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20230518BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230518BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20230518BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230518BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230518BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20230518BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230518BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230518BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230518BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20230518BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230518BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230518BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20230518BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20230518BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20230518BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C12N15/12 ZNA
C12N15/85 Z
C07K19/00
C07K14/705
C07K14/47
C07K16/00
A61K48/00
A61K38/17
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
A61K9/08
A61K47/64
A61K47/65
A61K47/68
A61K47/02
A61K47/22
A61K47/34
A61K39/00 H
A61K39/39
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022561133
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 EP2021059117
(87)【国際公開番号】W WO2021204911
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2020-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521293464
【氏名又は名称】エヴァクシオン・バイオテック・アクティエセルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】レヌ,ビアギッテ
(72)【発明者】
【氏名】カルボ,マリナ バルリオ
(72)【発明者】
【氏名】セレンセン,アナス ブンゴー
(72)【発明者】
【氏名】チューエセン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】クリンゲルム,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】フリース,スティーネ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA12
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4H045BA41
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4H045FA74
(57)【要約】
本発明はがん療法、特にがん免疫療法に関する。特に、本発明は特異的な融合ポリペプチドまたは当該融合ポリペプチドをコードする核酸の投与によってがんを処置するための方法および物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)患者の腫瘍細胞(neoplastic cell)の少なくとも1つのネオエピトープのアミノ酸配列を含む少なくとも1つの抗原単位;
ii)少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位;
iii)任意選択で多量体化、例えば二量体化ユニットであって、2つ以上の抗原単位および2つ以上の抗原提示細胞(APC)標的化単位を含むように該融合ポリペプチドの多量体化をもたらす多量体化ユニット;
を含む融合ポリペプチド。
【請求項2】
APC標的化単位が、抗原提示細胞上の標的表面分子、例えばHLA、HLA-DP、CD14、CD40;またはトール様受容体、例えばトール様受容体2;リガンド、例えば可溶性CD40リガンド;CLEC9A Fv フラグメント、DEC205 Fv フラグメント、天然リガンド様ケモカイン、例えばCCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21もしくは類似物から選択される何れか1つ、またはCXCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)もしくは類似物、RANTESから選択される何れか1つ;または細菌抗原、例えばフラジェリン、またはその一部、に対する特異性を持つ抗体結合領域からなる、またはそれを含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項3】
APC標的化単位が、リガンド、例えば可溶性CD40リガンド、CLEC9Aペプチドリガンド、DEC205、FLT3L、GM-CSF、天然リガンド様ケモカイン、例えばCCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21もしくは類似物から選択される何れか1つ、またはCXCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)もしくは類似物、例えばRANTES、ケモカインリガンド3(CCL3/MIP-1a)もしくはCCL19から選択される何れか1つ;またはフラジェリンなどの細菌抗原もしくはその一部からなる、またはそれを含む、請求項1に記載の融合ポリペプチド。
【請求項4】
抗原単位がリンカー、例えばGSリンカー、例えばアミノ酸配列GSGSGSGSGS(配列番号13)を持つリンカー、またはIgGなどの免疫グロブリン分子(Ig)に由来するリンカーであって、例えば鎖間共有結合の形成を介して多量体化に寄与するリンカー、を介して標的化単位に連結される、前述の請求項の何れか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項5】
リンカーがヒンジ領域、例えばIg、例えばIgG由来ヒンジ領域であるかまたはそれを含み、および鎖間共有結合、例えばジスルフィド架橋の形成を介して多量体化に寄与する、請求項4に記載の融合ポリペプチド。
【請求項6】
リンカーがカルボキシル末端Cドメイン(CH3ドメイン)、例えばIgのカルボキシル末端Cドメイン(Cγ3ドメイン)を含み、または該Cドメイン、例えばIgG3のCH3ドメインに実質的に相同である配列を含む、請求項4または5に記載の融合ポリペプチド。
【請求項7】
ヒンジおよびCH3ドメインが、アミノ酸GlyGlyGlySerSer(配列番号13)の配列、例えば、アミノ酸GlyGlyGlySerSerの三重の配列によって連結されている、請求項6に記載の融合ポリペプチド。
【請求項8】
リンカーが、疎水性相互作用を介して、例えばCH3ドメインを介して多量体化に参加する、二量体化モチーフまたは任意のその他の多量体化ドメインを含む、請求項3~6の何れか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項9】
リンカーがIgG、例えばIgG2またはIgG3に由来するh1+h4またはh4を含むヒンジ領域を含む、請求項4~8の何れか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項10】
少なくとも1つの抗原単位が、少なくともまたは約5、例えば少なくともまたは約10、少なくともまたは約15、少なくともまたは約20、少なくともまたは約25、および少なくともまたは約30個のネオエピトープからなるかまたはそれを含む、前述の請求項の何れか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項11】
少なくとも1つのネオエピトープが、腫瘍細胞中に同定されたネオエピトープ中の平均以上、例えば上位四分の一のMHC結合安定性を示すネオエピトープを含む、前述の請求項の何れか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項12】
多量体化単位、例えば二量体化単位が、二量体、三量体、四量体、五量体またはより高次の多量体の形成を可能にする、前述の請求項の何れか1項に記載の融合ポリペプチド。
【請求項13】
請求項1~12の何れか1項において規定される融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
【請求項14】
ヌクレオチド配列がcDNA配列である、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項15】
ヌクレオチド配列が、請求項1~11の何れか1項において規定される融合ポリペプチドをコードするRNA配列である、請求項13に記載の発現ベクター。
【請求項16】
配列がさらに少なくとも1つの免疫刺激配列(ISS)を含むかまたはそれをコードする、請求項13~15の何れか1項に記載の発現ベクター。
【請求項17】
ISSが、少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)であり、ここでODNが好ましくはホスホロチオエート基を含む、請求項16に記載の発現ベクター。
【請求項18】
ISSがオリゴリボヌクレオチドであるかまたはそれを含む、請求項16に記載の発現ベクター。
【請求項19】
i)患者の腫瘍細胞の少なくとも1つのネオエピトープのアミノ酸配列を含む少なくとも1つの抗原単位をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物、およびii)少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現構築物を含む少なくとも2つの発現構築物の系。
【請求項20】
少なくとも1つの抗原単位をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物が少なくともまたは約5、例えば少なくともまたは約10、少なくともまたは約15、少なくともまたは約20、少なくともまたは約25、および少なくともまたは約30個のネオエピトープからなるかまたはそれを含む、請求項19に記載の少なくとも2つの発現構築物の系。
【請求項21】
少なくとも1つのネオエピトープをコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物が、腫瘍細胞において同定されるネオエピトープ間の平均以上、例えば上位四分の一のMHC結合安定性を示すネオエピトープを含む、請求項19または20に記載の少なくとも2つ発現構築物の系。
【請求項22】
第2の発現構築物が、抗原提示細胞上の標的表面分子、例えばHLA、HLA-DP、CD14、CD40;またはトール様受容体、例えばトール様受容体2;リガンド、例えば可溶性CD40リガンド;CLEC9A Fv フラグメント、DEC205 Fv フラグメント、天然リガンド様ケモカイン、例えばCCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21もしくは類似物から選択される何れか1つ、またはCXCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)もしくは類似物、RANTESから選択される何れか1つ;または細菌抗原、例えばフラジェリン、またはその一部、に対する特異性を持つ抗体結合領域からなるかまたはそれを含む、少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項19~21の何れか1項に記載の少なくとも2つの発現構築物の系。
【請求項23】
第2の発現構築物が、リガンド、例えば可溶性 CD40リガンド;CLEC9Aペプチドリガンド、DEC205、FLT3L、GM-CSF、天然リガンド様ケモカイン、例えばCCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21もしくは類似物から選択される何れか1つ;またはCXC ケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)もしくは類似物、例えばRANTESまたはケモカインリガンド3(CCL3/MIP-la)またはCCL19から選択される何れか1つ、または細菌抗原、例えばフラジェリン、またはその一部、からなるかまたはそれを含む少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位のコードするヌクレオチド配列を含む、請求項19~21の何れか1項に記載の少なくとも2つの発現構築物の系。
【請求項24】
少なくとも1つの抗原単位をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物が、該少なくとも1つの抗原単位の多量体化をもたらす多量体化単位、例えば二量体化単位をコードするヌクレオチド配列をさらに含む、請求項19~23の何れか1項に記載の少なくとも2つの発現構築物の系。
【請求項25】
少なくとも2つの発現構築物が、同一の発現ベクター上で発現される、例えば2つの異なるプロモーターの制御下において発現される、請求項19~24の何れか1項に記載の少なくとも2つの発現構築物の系。
【請求項26】
少なくとも2つの発現構築物が、少なくとも2つの異なるベクターによって発現される、請求項19~24の何れか1項に記載の少なくとも2つの発現構築物の系。
【請求項27】
哺乳類患者において、腫瘍、例えば悪性腫瘍を処置するための方法、または係る腫瘍に対する治療的または改善的な免疫応答を誘導する方法であって、ここで腫瘍は患者の非腫瘍性細胞が示さないエピトープ、例えばT細胞エピトープ(ネオエピトープ)を示し、ここで該方法は、請求項1~12の何れか1項において規定される融合ポリペプチド、または請求項13~18の何れか1項において規定される少なくとも1つの発現ベクター、または請求項19~26の何れか1項に記載の少なくとも2つの発現構築物の系を含む、免疫原的有効量の組成物を投与する事、およびそれによって患者の体細胞が該発現ベクター内に含まれるヌクレオチド配列を発現するようになる事を含み、該方法は任意選択で薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤を投与する事をさらに含む、方法。
【請求項28】
患者がヒトである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
免疫原的有効量の組成物が、非経口的、例えば筋肉内経路、皮内経路、経皮経路、皮下経路、静脈内経路、動脈内経路、髄腔内経路、骨髄内経路、髄腔内経路、脳室内経路、腹腔内、鼻腔内経路、膣経路、眼内経路、もしくは肺経路で投与される;または経口経路、舌下経路、頬経路、または肛門経路で投与される;または局所投与される、請求項19~28の何れか1項に記載の方法。
【請求項30】
薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤が水性緩衝液である、請求項19~29の何れか1項に記載の方法。
【請求項31】
水性緩衝液がタイロード緩衝液である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
タイロード緩衝液が、140mM NaCl、6mM KCl、3mM CaCl
2、2mM MgCl
2、10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(Hepes)、pH7.4、および10mM グルコースの組成を有する、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
タイロード緩衝液の濃度が約35%v/vである、請求項22~31の何れか1項に記載の方法。
【請求項34】
緩衝液がPBSである、請求項30に記載の方法。
【請求項35】
請求項10~15の何れか1項に定義する少なくとも1つの発現ベクターを含む免疫原的有効量の組成物を、0.1μgから25mgの発現ベクターの有効量で、例えば0.5μgから20mg、5μgから15mg、50μgから10mg、および500μgから8mg、特に、約0.0001、約0.0005、約0.001、約0.005、約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7および約8mgで投与する事を含む、請求項19~34の何れか1項に記載の方法。
【請求項36】
免疫原的有効量の組成物が、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)のブロックを含む、有効量の両親媒性ブロック共重合体、例えばKolliphor
(登録商標)P188をさらに含む、請求項19~35の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、がん療法、特にがん免疫療法に関する。特に、本発明は特異的な融合ポリペプチドまたは当該融合ポリペプチドをコードする核酸を投与する事による、がんを処置するための方法および物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
患者における悪性腫瘍の処置は、伝統的に外科手術、放射線治療、および/または非悪性細胞の死滅に比して悪性細胞を優先的に死滅させることを狙いとした投与レジメンにおける、細胞傷害性薬剤を用いた化学療法によって、悪性組織の根絶/除去することに焦点を当ててきた。
【0003】
細胞傷害性薬剤の使用に加えて、より最近のアプローチでは、従来の化学療法によって現れる全身の副作用を軽減するために、がん細胞において特異的な生物学的なマーカーを標的とすることに焦点を当てている。がん関連抗原を標的としたモノクローナル抗体療法は、多くの悪性腫瘍において、平均余命の延長に非常に効果的であることを示した。成功した薬ではあるが、がん関連抗原を標的とするモノクローナル抗体は、その性質上、周知の、および複数の患者で見られる発現産物を標的とするようにのみ開発され得る、つまり、下記を参照するように、多くのがん特異的抗原は、一人の患者からの腫瘍のみに現れるため、がん特異的抗原の大多数はこの種の治療法で取り扱うことができない。
【0004】
早くも1950年代後半に、BurnetおよびThomasによって提唱された免疫監視理論では、リンパ球が、変化した抗原決定基を示す自家細胞-がん細胞を含む-を認識および排除する事を示唆し、および今日では免疫系が高度に発現を阻害することが一般的に受け入れられている。しかし、免疫監視は100%有効ではなく、がん細胞を排除する免疫系の能力を改善する/刺激するような、がん療法を考案する事は継続的な課題である。
【0005】
1つのアプローチは、がん関連抗原に対する免疫を導入する事であり、このアプローチは有効な可能性が有るが、限られた数の抗原しか取り扱えないという、抗体療法と同様の欠点を負っている。
【0006】
全てとは言わないが、多くの腫瘍は変異を発現している。これらの変異は、新規の標的抗原(ネオ抗原)を作りだす可能性があり、臨床的に適切な時間内にネオ抗原およびその抗原決定基を同定する事が可能であれば、ネオ抗原は、特異的T細胞免疫療法において有効である可能性がある。現代技術を用いれば、細胞のゲノムを完全にシーケンスする事、および変化したまたは新たな発現産物の存在を解析する事が可能であるため、ネオ抗原に基づく個別化ワクチンの設計が可能である。しかし、満足のいく臨床結果を提供しようとする試みは、今日のところほとんど失敗している。
【0007】
1990年代初頭から詳細に研究されてきたワクチン接種の1つの様式が、核酸ワクチン接種(またはDNAワクチン接種と呼ばれる)であり、これにおいては、DNAは非ウイルス性のプラスミドの形態で哺乳類の体細胞に投与され、プラスミド内に含まれる遺伝子の発現をもたらす;DNAワクチン接種において、コードされる物質は免疫原性のポリペプチドであり、体細胞で産生された際、免疫反応を誘導することができる。このアプローチは、高価な組み換え発現システムを用いて、臨床グレードの純度でタンパク質免疫原を生産する必要を回避するため、魅力的である。しかし、投与されたDNAから、ヒトにおいて満足のいく免疫応答を引き起こすのに十分な発現量を得る事が困難であることが示されてきた。
【0008】
抗原提示細胞(APC)は効果的な適応免疫応答に不可欠であり、主要組織適合性複合体(MHC)と複合体化した抗原を自身の表面上に提示する細胞である。この細胞には、マクロファージ、B細胞および樹状細胞が含まれ、ヘルパーT細胞に外来抗原を提示する。また、ウイルスに感染した細胞またはがん細胞は細胞内部に由来する抗原を細胞障害性T細胞に提示する事ができる。結論として、抗原提示細胞を標的とする事で、優れた免疫応答を誘導する機会を得る事ができる。
【0009】
ワクチン接種したヒトにおいてネオ抗原を効果的に標的とし得る、および臨床的に顕著な免疫応答を誘導し得る抗がんワクチン、特に核酸ワクチンを提供する必要性が存在する。
【0010】
発明の目的
本発明の実施形態の目的は、優れた抗腫瘍効果を有し、知られるワクチンよりも高いT細胞応答を誘導し得るポリペプチド構築物および係るポリペプチド構築物をコードする核酸分子を提供する事である。
【0011】
本発明の実施形態のさらなる目的は、APCへと向かい、APCのがんネオエピトープの取り込み、任意にはAPCの活性化、それに続くがんに対する非常に効果的な防御免疫の提供を可能にするサイトカインカスケードを補助するように設計されたポリペプチド構築物および係るポリペプチド構築物をコードする核酸分子を提供することである。
【0012】
本発明の実施形態のさらなる目的は、ポリペプチド構築物および係るポリペプチド構築物をコードする核酸の使用方法の提供する事である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要
本発明者らは、新規且つ改良されたポリペプチド構築物および係るポリペプチド構築物をコードする核酸分子を設計し、抗原提示細胞(APC)-標的化単位を用いた次世代DNAネオエピトープ免疫療法を生み出した。
【0014】
本発明らによって、APCの標的化を、ネオエピトープワクチンの抗腫瘍活性を維持したまま、免疫治療効果を向上させるために使用してもよく、これは知られるワクチンよりも高いT細胞応答を引き出す優れた抗腫瘍効果を可能にする事が見出された。
【0015】
したがって、本発明の第1の態様は、融合ポリペプチドであって、
i)患者の腫瘍細胞(neoplastic cell)の少なくとも1つのネオエピトープのアミノ酸配列を含む少なくとも1つの抗原単位;
ii)少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位;
iii)任意には多量体化、例えば二量体化単位であって、2つ以上の抗原単位および2つ以上の抗原提示細胞(APC)標的化単位を含むように上記の融合ポリペプチドの多量体化をもたらす多量体化単位;
を含む融合ポリペプチドに関する。
【0016】
本発明の第2の態様は、本発明の融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0017】
本発明のさらなる態様は、
i)患者の腫瘍細胞の少なくとも1つのネオエピトープのアミノ酸配列を含む少なくとも1つの抗原単位をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物、および
ii)少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現構築物、を含む少なくとも2つの発現構築物の系(system)に関する。
【0018】
本発明のさらなる態様は、哺乳類患者において、悪性腫瘍(neoplasm)などの腫瘍を処置する方法、または係る腫瘍に対して治療若しくは改善する免疫応答を誘導するための方法に関し、ここで腫瘍は患者の非腫瘍性細胞が示さないT細胞エピトープ(ネオエピトープ)を示し、ここで上記の方法は、本発明の融合ポリペプチドを含む組成物を免疫原的有効量で投与する事、または本発明の融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む少なくとも1つの発現ベクターを含む組成物を免疫原的有効量で投与し、よって患者の体細胞に発現ベクター内に含まれるヌクレオチド配列を発現させる事を含み、ここで上記の方法は任意には、薬学的に許容できる担体、希釈剤若しくは賦形剤を投与する事をさらに含む。いくつかの実施形態では、患者はヒトである。いくつかの実施形態では、免疫原的有効量の組成物は、非経口的、例えば筋肉内経路、皮内経路、経皮経路、皮下経路、静脈内経路、動脈内経路、髄腔内経路(intratechalintrathecal route)、骨髄内経路、髄腔内経路(intrathecal route)、脳室内経路、腹腔内、鼻腔内経路、膣経路、眼内経路、もしくは肺経路で投与される;または経口経路、舌下経路、頬経路、または肛門経路で投与される;または局所投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、薬学的に許容できる担体、希釈剤または賦形剤は水性緩衝液である。いくつかの実施形態では、水性緩衝液はタイロード緩衝液である。いくつかの実施形態では、タイロード緩衝液は140mM NaCl、6mM KCl、3mM CaCl2、2mM MgCl2、10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(Hepes)、pH7.4、および10mM グルコースの組成を有する。いくつかの実施形態では、タイロード緩衝液の濃度は約35%v/vである。いくつかの実施形態では、水性緩衝液はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液である。
【0020】
いくつかの実施形態では、方法は、請求項10~15の何れか1項に定義する少なくとも1つの発現ベクターを含む免疫原的有効量の組成物を、0.1μgから25mgの発現ベクターの有効量で、例えば0.5μgから20mg、5μgから15mg、50μgから10mg、および500μgから8mg、特に、約0.0001、約0.0005、約0.001、約0.005、約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7および約8mgで投与する事を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、方法は、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)のブロックを含む、有効量の両親媒性ブロック共重合体、例えばKolliphor(登録商標)P188、をさらに含む免疫原的有効量の組成物を投与する事を含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1:好適な融合ポリペプチドの1つの提案される設計およびそれをコードするDNAの図。この例では、構築物はCCL3またはその他サイトカイン/ケモカインであるAPC標的化単位;ヒンジ(h1およびh4)およびIgG3由来のch3を含む二量体化単位;ならびにネオエピトープである抗原単位を含む。
【0023】
【
図2】
図2:
図1に示すようなDNAワクチンの作用機序の図。
【0024】
【
図3-1】
図3:本発明の融合ポリペプチドの設計のための異なるAPC標的化単位の図。A)は実施例1の構築物を示し、一方、B)は実施例2の構築物を示す。
【0025】
【
図4】
図4:Aldevron社製のpUMVC4のプラスミドマップ。詳細は実施例および配列番号29に記載する。
【0026】
【
図5】
図5:APC標的化の設計例として、pUMVC4 mCCL19 S16Aのプラスミドマップ。pUMVC4ベクターは、kozak配列、APC標的化単位としてマウスCCL19、ヒンジ1、ヒンジ4およびヒトIgG由来のCh3、続いて5つのネオエピトープC22、C23、C38、C25、C30をコードするインサートを含む。
【0027】
【
図6】
図6:Kolliphor
(登録商標)およびワクチンプラスミドをワクチン接種したマウスにおける腫瘍容積の減少。APC標的化ワクチンをコントロール群(未処置マウスまたは空のモックプラスミドで処置したマウス)と比較した。*:p<0.05(Kruskal-Wallis test)。詳細は実施例1を参照。
【0028】
【
図7】C22 MHC I多量体の検出を示す図。グラフは実験DNAワクチンでマウスにワクチン接種した際の、C22ペプチドに反応するマウスCD8+T細胞の頻度を示す。詳細は実施例1を参照。
【0029】
【
図8-1】
図8:Kolliphor
(登録商標)およびワクチンプラスミドでワクチン接種されたマウス由来のT細胞におけるIFN-y産生。詳細は実施例1を参照。
【0030】
【
図8-2】細胞内サイトカイン染色(刺激された脾臓細胞におけるICS)。詳細は実施例1を参照。
【0031】
【
図9】
図9:Kolliphor
(登録商標)およびワクチンプラスミドでワクチン接種したマウスにおける腫瘍容積の減少。詳細は実施例2を参照。
【0032】
【
図10】
図10:C22 MHC I多量体の検出を示す図。グラフは実験DNAワクチンでマウスにワクチン接種した際の、C22ペプチドに反応するマウスCD8+T細胞の頻度を示す。詳細は実施例2を参照。
【0033】
【
図11】
図11: Kolliphor
(登録商標)およびワクチンプラスミドでワクチン接種されたマウス由来のT細胞におけるIFN-y産生。詳細は実施例2を参照。
【0034】
【
図12】
図12:Kolliphor
(登録商標)およびワクチンプラスミドでワクチン接種したマウスにおける腫瘍容積の減少。詳細は実施例3を参照。
【0035】
【
図13】
図13:C22 MHC I多量体の検出を示す図。グラフは実験DNAワクチンでマウスにワクチン接種した際の、C22ペプチド-搭載MHCI 四量体に反応するマウスCD8+T細胞の頻度を示す。詳細は実施例3を参照。
【0036】
【
図14】
図14:Kolliphor
(登録商標)およびワクチンプラスミドでワクチン接種されたマウス由来のT細胞に置けるIFN-y産生。詳細は実施例3を参照。
【0037】
【
図15】
図15:本発明の融合タンパク質の別々の単位をコードするDNA設計の図。実施例4の構築物を示す。
【0038】
【
図16】
図16:Kolliphor
(登録商標)およびワクチンプラスミドでワクチン接種したマウスにおける腫瘍容積の減少。詳細は実施例4を参照。
【0039】
【
図17】
図17:C22 MHC I多量体の検出を示す図。グラフは実験DNAワクチンでマウスにワクチン接種した際の、C22ペプチド搭載MHC I四量体に反応するマウスCD8+T細胞の頻度を示す。詳細は実施例4を参照。
【0040】
【0041】
【
図19-1】
図19:27merのネオペプチドで再刺激した脾臓細胞からの結果。A:免疫に使用した構築物の模式図。B:脾臓細胞を再刺激した際のINFγおよびTNFα産生CD8+細胞の割合を示すグラフ。C:脾臓細胞を再刺激した際のINFγおよびTNFα産生CD4+細胞の割合を示すグラフ。
【0042】
【
図20】
図20:選択されたAPC標的化候補の設計を模式的に示したもの。
【0043】
【
図21-1】
図21:pTVG4ベースの構築物のプラスミドマップ。A:空のバックボーンベクター。B:NotIおよびBamHi制限部位およびマウスCCL19コード配列を挿入した空のバックボーンベクター。C:Bと同様のベクターであるが、NotIおよびBamHi部位の間にネオエピトープのコード領域が挿入されている。この構築物はまたmEVX-03とも称される。D:Cと同様のベクターであるが、マウスCCL19コード配列の代わりにヒトCCL19コード配列を持つ。
【0044】
【
図22】
図22:実施例5において試験されるDNAカセットの模式的な概略図。
【0045】
【
図23】
図23:実施例5において試験される構築物を用いて免疫されたマウスにおける腫瘍増殖を示すグラフ。A:試験群における腫瘍容積の曲線下面積(AUC)を示すグラフ。B:コントロール群と比較した試験群における腫瘍容積の変化を示すグラフ。アスタリスクは、Kruskal-Wallis解析におけるp値<0.05を示す。
【0046】
【
図24】
図24:実施例5からの処置群における2日目(A)および6日目(B)の、全血中のC22特異的CD8+T細胞の割合を示すグラフ。
【0047】
【
図25】
図25:実施例6における比較に使用するためのmEVX-02のプラスミドマップ。
【0048】
【
図26-1】
図26:異なる用量のプラスミドで免疫したマウスにおける腫瘍容積を比較するグラフ。A:mEVX-02を用いた免疫。B:mEVX-03を用いた免疫。C:空のプラスミド免疫と比較した曲線下面積(AUC)。
【0049】
【
図27-1】
図27:EVX-02および-03の用量漸増(dose titration)を示すグラフ。A:腫瘍の減少との比較。B:AUCとの比較。
【0050】
【
図28】
図28:EVX-02および-03による全血中のCD8+T細胞の誘導を示すグラフ。A:処置後6日目。B:処置後16日目。
【0051】
【
図29】
図29:CD8+細胞の誘導と比較した、EVX-02および-03の用量漸増を示すグラフ。A:処置後6日目。B:処置後16日目。
【発明を実施するための形態】
【0052】
発明の詳細な開示
APC標的化エレメントを含むDNAネオエピトープ免疫療法は、i)ネオエピトープのAPCによる取り込みの指向および補助、および/またはii)サイトカインカスケードが続くAPCの活性化、の何れかによって、それを持たないDNA技術と比較して優れた抗腫瘍効果を有し、且つより高いT細胞応答を引き起こし得る事が期待される。
【0053】
本発明の融合ポリペプチド構築物は、患者の非腫瘍性細胞では見られないエピトープ(ネオエピトープ)、例えばT細胞エピトープを含む。
【0054】
「ネオエピトープ」は、ネオエピトープをコードする遺伝子の欠失によって、個体における通常の体細胞由来の発現産物として存在しないが、同個体の変異した細胞(例えばがん細胞)において発現産物として存在する、抗原決定基(典型的にはMHCクラスIまたはIIに拘束されるエピトープ)である。その結果、ネオエピトープは免疫学的な観点からみて、自己起源にも関わらず真に非自己であって、およびそのためネオエピトープが発現産物を構成する個体において、ネオエピトープは腫瘍特異的抗原として特徴づけられ得る。非自己であるため、ネオエピトープは、個体において特異的な適応免疫応答を引き起こし得る可能性があり、その際、誘発される免疫応答はネオエピトープを有する抗原および細胞に対して特異的である。一方、ネオエピトープは、同じネオエピトープが他の個体で発現産物となる可能性が最小限であるため、個体に対して特異的である。よってネオエピトープは例えば腫瘍特異的抗原のエピトープとは異なるいくつかの特徴がある:後者は典型的には同じ種類の複数の癌に見られる(活性化されたがん遺伝子からの発現産物である可能性があるため)、および/または、がん細胞における関連遺伝子の過剰発現によって、わずかな量ではあるが、非悪性細胞において存在し得る。
【0055】
「ネオペプチド」は自身の配列内に本文中で定義されるネオエピトープを含むペプチド(すなわち約50アミノ酸残基までのポリアミノ酸)である。ネオペプチドは典型的には「天然」である、すなわち該ネオペプチドのアミノ酸配列全体が個体から単離され得る発現産物のフラグメントを構成するが、しかしネオペプチドはまた、「人工的」なもので有り得る、つまり、ネオペプチドは、ネオエピトープの配列および少なくとも1つが該ネオエピトープの配列と天然に関連していない1つまたは2つの付加アミノ酸配列によって構成される。後者の場合において、付加アミノ酸配列は、単にネオエピトープの担体として働くか、またはさらにネオエピトープの免疫原性を向上させ得る(例えば、抗原提示細胞によるネオペプチドの処理を促進したり、ネオペプチドの生物学的な半減期を改善したり、または溶解度を変える事によって)。
【0056】
「ネオ抗原」とはネオエピトープを含む任意の抗原である。典型的にはネオ抗原はタンパク質から構成されるが、ネオ抗原はまた、その長さによってネオエピトープまたはネオペプチドと同一で有り得る。
【0057】
「アミノ酸配列」という用語は、ペプチドおよびタンパク質の鎖中で、ペプチド結合によって連結したアミノ酸残基の順番である。配列は慣習的にN末端からC末端の方向に記載される。
【0058】
本発明の融合ポリペプチド構築物は、少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位をさらに含む。
【0059】
抗原提示細胞(APC)は、腫瘍組織適合複合体(MHC)と複合体化した抗原をその細胞表面に提示する細胞であり、この過程は抗原提示として知られる。分化した抗原提示細胞にはマクロファージ、B細胞および樹状細胞を含み、ウイルス感染細胞(またはがん細胞)がその細胞内由来の抗原を細胞障害性T細胞に提示し得るのに対して、これらは外来抗原をヘルパーT細胞に提示する。抗原提示細胞(APC)標的化単位は、APC上の異なる表面分子を特異的に標的とする事などによって、これらのAPCを特異的に標的化するために好適な任意の分子またはリガンドである。
【0060】
本発明において使用される好適な標的化単位は以下および対応するヒト配列を含む:
【表1】
【0061】
本発明において使用される好適な標的化単位は、Takashi Sato et al.Blood.2011 Mar 24;117(12):3286-3293;Cagan Gurer et al.Blood.2008 Aug 15;112(4):1231-1239;Wan-Lun Yan et al.Immunotherapy(2017)9(4),347-360 ;Gerty Schreibelt et al.BLOOD,8 MARCH 2012,VOLUME 119, NUMBER 10;およびZhongyi Yan et al.Oncotarget,Vol.7,No.26,May 2016,p.40437の内の何れか1つにおいて開示されている。
【0062】
定義
本明細書に使用される場合、「リンカー」とは、2つ以上の異なるまたは同一の直鎖状ペプチド配列またはサブユニットを多量体ポリペプチドへと組み立てるために好適な任意の化合物を示す。この用語は、ペプチド化学において有用とされる任意のリンカーを含む。多量体ポリペプチドまたは融合ポリペプチドは、直鎖状に標準的なペプチド結合で組み立てまたは連結され得るため、リンカーという用語はまた、「ペプチドスペーサー」(「スペーサー」とも呼ばれる)を含む。リンカーが本発明の融合ポリペプチドにおけるコードされるネオエピトープを分離するため、または融合ポリペプチドのネオエピトープを融合ポリペプチドの抗原提示細胞(APC)標的化単位から分離するための両方に使用され得る事が理解されるはずである。
【0063】
リンカーは「リジッド」であってよく、これはリンカーが接続する2つのアミノ酸配列が、互いに自由に動くことを実質的に許さないことを意味する。同様に「フレキシブル」なリンカーでは、リンカーを介して接続された2つの配列が互いに実質的に自由に動くことが可能である。1つ以上のネオエピトープを含むコードされた発現産物において、どちらの型のリンカーも有用である。
【0064】
本発明において使用される発現ベクターにコードされ得る、関心のあるリンカーを以下の表に示す:
【表2】
【0065】
いくつかの実施形態では、リンカーはペプチド配列である。いくつかの実施形態では、リンカーはペプチド配列ではない。いくつかの実施形態では、リンカーは分岐ペプチド配列ではない。
【0066】
いくつかの実施形態では、リンカーは、それ自身がネオエピトープ配列および/または抗原提示細胞(APC)標的化単位に由来するかまたは同一であるペプチド配列を含まない。
【0067】
いくつかの実施形態では、リンカーはIgG由来など、免疫グロブリン分子(Ig)に由来する。
【0068】
いくつかの実施形態では、リンカーは、ヒンジ領域、例えばフレキシブルなヒンジ領域、例えばIgG由来などの免疫グロブリン分子(Ig)に由来するヒンジ領域であるかまたはこれを含む。
【0069】
本発明に従って使用される代替の好適なリンカーは以下である:
【表3】
【0070】
したがって、いくつかの実施形態では、リンカーはIgMに由来するヒンジ領域を含むかまたはそれからなる、および/または配列番号51によってコードされる配列に由来する二量体化モチーフを含むかまたはそれからなる
【0071】
いくつかの実施形態では、リンカーは、三量体化ドメイン、例えばコラーゲン三量体化ドメイン、例えば配列番号52によってコードされる配列に由来する三量体化ドメインを含むかまたはそれからなる。
【0072】
いくつかの実施形態では、リンカーは、hMHD2またはdHXLに由来する二量体化を含むかまたはそれからなり、任意には、本明細書に記載のH1などのヒンジ領域をさらに含み得る。
【0073】
いくつかの実施形態では、リンカーは、四量体化ドメイン、例えばp53に由来するドメイン、例えば配列番号53にコードされる配列に由来する四量体化ドメインを含むかまたはそれからなり、任意には本明細書に記載のH1等のヒンジ領域をさらに含む。
【0074】
本発明に従って使用するために好適なリンカーはまた、以下の何れか1つにも記載されている:Ana Alvarez-Cienfuegos et al、Scientific Reports 2016、6:28643| DOI:10.1038/srep28643;Victor J.Sanchez-Arevalo Lobo et al.Int.J.Cancer:119、455-462(2006);Oliver Seifert et al.Protein Engineering、Design &Selection vol.25no.10pp.603-612、2012;およびJorg Willuda et al.THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol.276、No.17、Issue of April 27、 pp.14385-14392、2001。
【0075】
本明細書で使用される場合、「免疫原性の担体」または「薬学的に許容できる担体」は免疫原/ハプテンに対する免疫応答を増強するまたは誘発を可能にするために、免疫原またはハプテンと結合し得る分子または部分である。免疫原性の担体は、従来的には、自身の権能では免疫原性が不十分な免疫原/ハプテンに融合またはコンジュゲートし得る比較的大きな分子(例えば、破傷風トキソイド、KLH、ジフテリアトキソイドなど)であって、典型的には、免疫原性の担体は、免疫原および免疫原性の担体によって構成される結合した物質に対する強力なTヘルパーリンパ球の応答を誘発し得る、よってこれはBリンパ球および細胞傷害性リンパ球による免疫原に対しての増強した応答を供する。より最近では、大きな担体分子は、無差別(promiscuous)Tヘルパーエピトープと呼ばれる、すなわち、集団のHLAハプロタイプの大部分に認識される、およびTヘルパーリンパ球の応答を誘発する、より短いペプチドにある程度代替されている。
【0076】
「Tヘルパーリンパ球応答」は、ペプチドによって誘発される免疫応答であって、該ペプチドは抗原提示細胞におけるMHCクラスII分子(例えば、HLAクラスII分子)に結合する事ができ、該ペプチドおよび該ペプチドを提示するMHCクラスII分子の複合体を、T細胞受容体が認識する結果として、動物種においてTヘルパーリンパ球を刺激する。
【0077】
「免疫原」はその免疫系が免疫原に直面している宿主において、適応免疫応答を誘導し得る物質である。このように、免疫原はより大きな「抗原」属のサブセットであって、免疫系によって特異的に認識され得る物質(例えば、抗体によって結合される、または代わりにMHC分子に結合した抗原のフラグメントが、T細胞受容体に認識される場合がある。)であるが、必ずしも免疫を誘導できない、しかし、抗原は常に免疫を誘発し得る、つまり抗原に対しての確立した免疫記憶を有する宿主は、該抗原に対して特異的な免疫応答を起こすことになる。
【0078】
「ハプテン」とは、免疫応答を誘導および誘発できない小分子であるが、免疫原性の担体とコンジュゲートすると、該ハプテンを認識する抗体またはTCRが、免疫系とハプテン担体コンジュゲートの接触の際に誘導され得る。
【0079】
「適応免疫応答」とは抗原または免疫原との接触に対応した免疫応答であって、免疫応答は、抗原/免疫原の抗原決定基に特異的である。適応免疫応答の例は、抗原特異的抗体の生産の誘導、またはTヘルパーリンパ球または細胞傷害性リンパ球の抗原特異的な誘導/活性化である。
【0080】
「防御的、適応免疫応答」とは抗原による免疫(人工的なまたは天然の)への反応として対象内で誘導される抗原特異的免疫応答であって、該免疫応答はその後の抗原、または抗原を含む病理関連剤の挑戦から対象を防御し得る。典型的には、予防接種は1つまたはいくつかの病原に対する防御的適応免疫応答を確立することを目的とする。
【0081】
「免疫系の刺激」とは、物質または物質の組成物が一般的な、非特異的な免疫刺激作用を示すことを意味する。多くのアジュバントおよび推定アジュバント(例えば特定のサイトカイン)は免疫系を刺激する能力を共有する。免疫刺激剤を使用した結果として、免疫系の「覚醒度(alertness)」が高まる、つまり、免疫原を単独で使用した場合と比較して、同時またはその後の免疫原による免疫が、顕著により効果的な免疫応答を誘導する。
【0082】
「ポリペプチド」という用語は、本願の文脈において、2から50アミノ酸残基の短いペプチド、50から100アミノ酸残基のオリゴペプチド、および100アミノ酸残基以上のポリペプチドのいずれも意味することを意図する。さらに、該用語はまた、タンパク質、すなわち、少なくとも1つのポリペプチドを含む機能性生体分子を含むことも意図しており、機能性生体分子が、少なくとも2つのポリペプチドを含む場合には、これらは複合体を形成していても、共有結合をしていても、非共有結合をしていてもよい。また、タンパク質中のポリペプチドは、グリコシル化され得る、および/または脂質化され得る、および/または、補欠分子族を含み得る。
【0083】
「融合ポリペプチド」という用語は、本願の文脈において、意図された異なる機能を有するポリペプチドエレメントまたはアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する事を意図する。異なるポリペプチドエレメントもしくはアミノ酸配列はリンカー、これは単なる別のアミノ酸配列であり得る、を介して連結されるか、または融合ポリペプチドの異なるポリペプチドエレメントもしくはアミノ酸配列は、単に標準的なペプチド結合によって直鎖状に連結され得る。
【0084】
本発明に従って使用される発現ベクターは、典型的におよび好ましくは、プラスミドを含む、またはプラスミドから構成されるが、その他の発現ベクターを採用することもできる。本発明の組成物は、「裸の」DNA、すなわち、DNA発現ベクターであり、標的細胞への発現ベクターの導入に影響を与え得る細菌またはウイルスの一部ではない発現ベクターを細胞へ確実に送達する事を目的としている。よって、本発明の組成物および方法において有用なベクターは、環状または直鎖状、一本鎖または二本鎖であり、およびプラスミドに加えて、例えばコスミド、ミニ染色体またはエピソームでもあり得る。
【0085】
各コード(および発現可能な)領域は、同一または別々のベクター上に存在し得るが、しかし、1つ以上のコード領域は単一のベクター上に存在し得る事、およびこれらのコード領域は単一または複数のプロモーターの制御下に置かれ得る事は理解されるべきである。これは、発現ベクターが、各コードされた融合ポリペプチドについて別々のペプチド発現産物をコードし得る事、または発現ベクターが、複数のペプチド発現産物をコードし得る事を意味し、ここで、少なくともいくつかの発現産物はコードされた複数の融合ポリペプチドを示し、その融合ポリペプチドのうちの少なくともいくつかは任意にはペプチドリンカーによって分離される。
【0086】
言い換えると、いくつかの場合では1つの単一発現ベクターのみが投与および発現され、およびこの発現ベクターは複数の別々のタンパク質性発現産物をコードしてもよく、またはたった2つもしくは1つの単一発現産物をコードしてもよい、本願の文脈では、コードされた融合ポリペプチドが満足に免疫系に提示されるかどうかのみが関係しており、よってそれらが別々の発現産物中または結合した発現産物中に存在するかの選択はあまり関係していない。好ましい実施形態では、発現ベクターは、少なくともまたは約5個、例えば少なくともまたは約10、少なくともまたは約15、少なくともまたは約20、少なくともまたは約25、少なくともまたは約30個のタンパク質性発現産物を発現する。これ以上の数について考慮すると、限界値は主に、特定の悪性腫瘍から同定し得る融合ポリペプチドのネオエピトープの数によって設定される。言うまでもなく、発現ベクター中にコードされる融合ポリペプチドのネオエピトープの数は、関連する悪性組織で見つかるネオエピトープの数を超えることはできない。
【0087】
コードされたネオエピトープ発現産物を分離するためにペプチドリンカーを使用することで、融合タンパク質の発現産物内でエピトープ同士を空間的に分離することができる。これはいくつかの利点を含み得る:リンカーによって、確実に各ネオエピトープを最適化された配座で免疫系に提示し得る、また、適切なリンカーを使用することで、複数のエピトープを含む発現産物において、1つのネオエピトープのC末端と隣接する次のネオエピトープのN末端から構成される領域に生じる「接合部エピトープ(junctional epitope)」に対しての無関係な免疫応答が誘導されるという問題を最小化し得る。
【0088】
コードされたペプチドリンカーは「フレキシブル」または「リジッド」の何れかで有り得るが、上記の定義を参照して、好ましいコードされたペプチドリンカーを記載する。また、いくつかの実施形態において本発明に用いられるリンカーは切断可能で有り得る、すなわち、エンドペプチダーゼ、例えば、フーリン、カスパーゼ、カテプシンなどのエンドペプチダーゼのための認識部位を含むことが想定される
【0089】
発現ベクターにコードされるネオエピトープはそれ自体が知られた手法で同定し得る:同一個体における悪性細胞のゲノム、および健康な細胞のゲノム、または標準健康ゲノムの「ディープシーケンシング」によって、悪性細胞に固有の潜在的な免疫原性発現産物を提供する、発現DNA部分を同定し得る。該同定されたDNA配列はその後、コドン最適化(典型的にはヒト細胞による発現のために)され、および大きなキメラ構築物の一部で有る個別の発現領域のいずかとして発現ベクターに含まれ得る。
【0090】
ベクターによって発現されるネオエピトープの同定と選択を最適化するために、この目的のために利用できる任意の予測方法が実際に有効である。最先端の予測アルゴリズムの1例は、NetMHCpan-4.0(www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCpan-4.0/;Jurtz V et al.,J Immunol(2017),ji1700893;DOI:10.4049/jimmunol.1700893)である。この方法は、従来のMS由来リガンドおよびpMHC親和性データの組み合わせにおいて学習される。他の例は、NetMHCstabpan-1.0(www.cbs.dtu.dk/services/NetMHCstabpan-1.0/;Rasmussen M et al.,Accepted for J of Immunol,June 2016)である。この方法は、各ペプチドを合成する、およびin vitroでMHC分子に複合体化させるアッセイを用いたin vitropMHC安定性測定のデータセットで学習される。このアッセイにおいて細胞処理は行われず、およびpMHC安定性が測定される環境は幾分か人工的である。本方法は、一般的にはNetMHCpan-4.0よりも精度が低い。米国特許10,055,540号は従来のMSで検出されたリガンドを用いたネオエピトープの同定のための方法を記載する。同様の技術を用いたその他の特許出願は、WO2019/104203、WO2019/075112、WO2018/195357(MHCクラスII特異的)、およびWO2017 106638である。最後に、MHCflurry:(DOI:doi.org/10.1016/j.cels.2018.05.014;https://github.com/openvax/mhcflurry)は、MSで検出されたリガンドデータとpMHC親和性で学習されたNetMHCpanのようなものである。また、ペプチド-MHCクラスII相互作用予測法は、最近の出版物であるGarde C et al.,Immunogenetics,DOI:doi.org/10.1007/s00251-019-01122-zに開示される。この出版物では、MHCクラスIIから溶出した天然処理ペプチドを学習のセットの一部として使用し、およびリガンドとして確認された場合は1の、ネガティブな場合は0の結合対象値を割り当てる。
【0091】
一般的に、これらの予測システムは人工ニューラルネットワーク(ANN)を採用している:ANNは非線形の相関関係を同定し得る:非線形の相関関係の定量化は、単純な計算では計算が困難であるため、容易な仕事ではない。これは主に、非線形の相関関係が線形の相関関係よりも多くのパラメーターで記述され、およびおそらく全ての特徴をまとめて考慮した際に初めて現れるためである。よって、特徴間の依存関係を捉えるためには、全ての特徴を考慮に入れる必要がある。
【0092】
選択され、コードされたネオエピトープが効果的な免疫応答を供する可能性をさらに向上させるために、どちらも2019年9月13日に出願された欧州特許出願番号19197295.9および19197306.4に開示される技術を好ましくは使用し得る。これらの出願は、ペプチドとMHC分子間の結合の安定性が決定され得ることを可能にする、およびネオエピトープの検出および選択の一部として、ネオエピトープのMHC結合安定性を決定することを可能にする技術を開示する。簡単に言うと、安定性の決定から得られたデータは、例えばANNの学習セットに用いる、およびANNはその後、関連したMHC分子に対する予測された結合安定性にしたがって、同定されたペプチドを順位付けし得る。
【0093】
核酸ワクチンを患者に投与した際、対応する遺伝子産物(例えば、所望の抗原)が患者の体内で産生される。いくつかの実施形態では、治療的または予防的な免疫応答を誘導するために、最適化された組み換えポリヌクレオチドを含む核酸ワクチンベクターをヒトに送達し得る。
【0094】
プラスミドおよびその他のDNAベクターは、典型的には筋肉組織への遺伝子導入においてより効率的である。経口投与による粘膜表面へのDNAベクターの送達の可能性がまた報告されており、およびDNAプラスミドは、筋肉以外の組織への遺伝子の直接的な導入に用いられている。DNAワクチンは主に筋肉内注射、遺伝子銃による送達、ジェット注射(PharmaJet社のStratis(登録商標)デバイスなどのデバイスを使用)、またはエレクトロポレーション法によって動物に導入され、これらの各投与様式は本開示の方法に適用する。導入後、プラスミドは一般的に複製されることなくエピソーム性で維持される。コードされたタンパク質の発現は長時間持続し、B細胞およびT細胞の両者を刺激することが示されている。
【0095】
本明細書に開示される処置方法において投与するベクターの有効量の決定のために、医師は、ベクターの毒性、処置されるがんの進行度、および、存在する場合には、抗ベクター抗体の生産量を評価する。投与は単回または分割投与によってなされ、典型的には時間差の有る一連の投与(series of time separated administration)であり得る。本明細書に開示される方法において、時間差のある一連の免疫における免疫あたりの有効ヒト投与用量は0.1μgから500mgの間であり、0.1μgから25mgの間の発現ベクターの投与量が好ましい。すなわち、本明細書で開示された方法の実施において、ヒトにおける0.5μgから20mgの間の投与量が典型的に使用され、および投与量は通常、5μgから15mgの間、50μgから10mgの間、および500μgから8mgの間であり、および特に関心のある投与量は約0.0001、約0.0005、約0.001、約0.005、約0.01、約0.05、約0.1、約0.5、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7および約8mgである。
【0096】
有効量を用いた一連の免疫は、典型的には2回、3回、4回、5回、6回またはそれ以上の一連の投与を形成する。例えば悪性腫瘍を長時間抑制するためには、複数回(例えば6回以上)の投与が関係し得る、およびこのような状況では、ワクチンベクター内のコードされたネオエピトープの正確な選択は、悪性細胞のゲノムおよびプロテオームの変化に応じて、経時的に変更し得る。悪性細胞によって、新規のネオエピトープが生産された際、または仮にその場合、これらのネオエピトープは都合によってワクチンの標的として含めることができる。
【0097】
本明細書に開示される方法において使用されるワクチンは、1以上の発現ベクターを含む;例えば、ワクチンは、少なくとも1つの免疫原性のポリペプチドを生産するために、それぞれが哺乳類細胞においてヌクレオチドのコード領域を自律的に発現し得る複数の発現ベクターを含んでいてよい。発現ベクターはしばしば真核生物のプロモーター配列、例えば、1つ以上のコード領域と作動可能に連結した強力な真核生物のプロモーターのヌクレオチド配列を含む。本明細書の組成物および方法は任意の特定の真核生物プロモーターの使用を含んでいてよく、多種多様なものが知られている;例えば、CMVまたはRSVプロモーター。プロモーターは、宿主細胞に対して異種のもので有り得る。使用されるプロモーターは構成的プロモーターであってもよい。使用されるプロモーターは、エンハンサー領域およびイントロン領域を含むことで、発現量を向上させ得るが、これには例えばCMVプロモーターを用いる場合などがある。
【0098】
当分野で知られている数多くのプラスミドを、核酸ワクチンの生産に使用し得る。核酸ワクチンの好適な実施形態では、ベクターとしてプラスミドVR1012(Vical Inc.,San Diego Calif.)、pCMVI.UBF3/2(S.Johnston,University of Texas)、pTVG4(Johnson et al.,2006,Vaccine 24(3);293-303)、pVAX1(Thermo Fisher Scientific,上記および以下の実施例を参照)、またはpcDNA3.1(InVitrogen Corporation,Carlsbad,Calif.)を用いた構築物を採用する。
【0099】
さらに、ベクター構築物は、本発明に従って有利に免疫刺激配列(ISS)を含み得る。ワクチンベクター内にかかる配列を用いる目的はコードされたネオエピトープに対するT細胞応答、特に、Th1細胞応答を増強する事であり、この応答は、トール様受容体TLR3、TLR7-TLR8、およびTLR9のアゴニスト、および/または細胞質RNA受容体、例えば、RIG-1、MDA5およびLGP2などを含むがこれに限定されない、のアゴニストを組み込んだアジュバントによって誘発される(Desmet et al.2012.Nat.Rev.Imm.12(7),479-491)。
【0100】
ISSを採用する事の1つの可能性は、6塩基の一般的な配列NNCGNN(哺乳類DNAに比べて細菌DNAでは20倍の頻度で出現する)をもつ非メチル化CGリッチモチーフ(CpGモチーフと呼ばれる)を用いて、部分的または完全にホスホロチオエート化したバックボーンを含む小さな合成DNAオリゴ(ODN)として直接投与するか、またはCpGモチーフをDNAベクターバックボーンに組み込むことのいずれかによって刺激することで、TLR9を活性化する細菌の感染を模倣する事である。免疫刺激性CpGは、DNAバックボーンの一部であるか、またはISSに濃縮されていてもよく、CpG配列は典型的に、ネオエピトープをコードする配列の終止コドンとポリAテイルをコードする配列の間に位置する(すなわち、ISSは終止コドンとポリアデニル化シグナルの間に位置する)。しかし、CpG配列は、長いDNA分子内におけるそれらの位置とは無関係に効力を発揮するため、CpGモチーフの存在が、ワクチン抗原のコード領域を発現するというベクターの能力を妨げない限り、その位置は原理的にはワクチンベクター内の任意の場所で有り得る。
【0101】
ワクチン内に個別のODNとして存在する場合であって、ODNが免疫学的なアジュバントとして機能する場合、CpGモチーフを含むオリゴヌクレオチドは、典型的には選択された送達技術によって、DNAワクチンと共に投与/製剤化され、および典型的には配列NNCGNNまたはその逆相補的な配列を含む6塩基またはそれ以上の多塩基のDNAを構成する。この目的のために有用なODNは、例えば、InivoGen社(5 Rue Jean Rodier,F-31400,Toulouse,France)から市販されており、クラスA、B、Cの範囲のODNが販売されている。例を以下に示す:
【表4】
【0102】
これら12個のODNにおいて、大文字のヌクレオチドは、ホスホジエステルであり、小文字のヌクレオチドはホスホロチオエートであり、下線部はパリンドローム配列である。
【0103】
CpG配列が、プラスミドバックボーンに存在する(それによって「自己アジュバント」となる)場合、同一配列として、またはCpGモチーフに非同一な配列の形態で、またはステムループ構造を形成し得るパリンドローム配列の形態で、任意の数の可能なNNGCNNまたはNNCGNN配列が本発明に従って存在し得る。例えば、以下のCpGモチーフが関心の的である:AACGACおよびGTCGTT、さらにはCTCGTT、およびGCTGTT。かかるCpGをコードする配列を使用例は市販のpTVG4ワクチンベクターバックボーンから抜粋し以下の配列である:
【化1】
【0104】
もう1つの可能性は、ポリI:C(ポリイノシン酸-ポリシチジル酸)、ポリIC:U12(ウリジン置換ポリI:C)などの合成RNAオリゴとして、または合成RNAオリゴヌクレオチド(ORN)の形態で、二本鎖(ds)RNAを加えることにより、TLR3を活性化するRNAウイルス感染を模倣することであり、これらのRNA分子のワクチンへの添加は、ODNアプローチと同様に、アジュバント活性を獲得する方法である。あるいは、dsRNAはDNAベクターバックボーンにコードされることもでき、これはワクチン接種後にRNAに転写される-この場合、DNAワクチンは免疫学的アジュバントをコードしていることになる。このアプローチでは、100塩基対までの長さのヘアピンRNAをコードするDNA配列を含むことができ、ここで、配列は非特異的である。また、DNAは同時に、既知配列のODNを含み、既知配列のORNをコードし得る;よってDNAはTLR3および/またはRIG-1、MDA5、およびLGP2などの細胞質RNA受容体を活性化し得る二本鎖RNAに転写されると共に、TLR9を活性化するODNを含み得る。免疫刺激性CpGおよびdsRNAを含む/コードする、特異的DNA配列の例は、例えば、5’-GGTGCATCGA TGCAGGGGGG-3’(配列番号27)および5’-GGTGCATCGA TGCAGGGGGG TATATATATA TTGAGGACAG GTTAAGCTCC CCCCAGCTTA ACCTGTCCTT CAATATATA TATA-3’(配列番号28)である(Wu et al.2011、Vaccine 29(44):7624-30を参照)。
【0105】
ISSが、DNAワクチンベクター内に存在する場合、TLR9を活性化するCpGを用いるアプローチと、TLR3ならびに/またはRIG-1、MDA5、およびLGP2などの細胞質RNA受容体を活性化する免疫刺激性RNAをコードする配列の存在とを組み合わせることが可能、および有利である;Grossmann C et al.2009,BMC.Immunology 10:43およびDesmet et al.2012.Nat.Rev.Imm.12(7),479-491を参照。同様に、ORNおよびODNをワクチン中に別々のアジュバントとして(単独または組み合わせて)組み込むことは、DNAワクチンベクターに両方の種類のISSを組み込む事と組み合わせてよい。
【0106】
CpGモチーフの場合と同様に、免疫刺激性RNA ISSをコードするDNAは、終止コドンとポリアデニル化シグナルの間に位置することが好ましいが、しかしこれが意図したポリペプチド発現産物の産生を損なわない限り、ベクターの任意の部分に存在し得る。
【0107】
いくつかの特定の実施形態において、ISSはワクチン組成物に含まれる、および、特定の実施形態において、これは免疫学的に活性があるおよび医薬的に許容される量のポリI:Cおよび/またはポリIC:U12を組み込むことによって達成される。ポリI:Cは、一方の鎖がイノシン酸の重合体であり、もう一方の鎖がシチジル酸の重合体であるミスマッチ二本鎖RNA(dsRNA)から構成される。ポリIC:U12は、ウリジンがポリI:C鎖の中に導入されたポリI:Cのバリアントである。これら2つの物質は、その文脈では免疫学的アジュバント、すなわち、それ自身は特異的な適応免疫応答を誘発しないが、ワクチン抗原(または本願の場合、コードされた抗原)への特異的な適応免疫応答を増強する物質、として機能する。
【0108】
ポリI:CまたはポリIC:U12(例えば、Ampligen(登録商標))は、好ましくは、発現ベクターの有効量の投与あたり、0.1から20mgの間の投与用量になるように組成物中に存在する。すなわち、組成物中の存在量はこの投与あたりの用量になるように調節される。好ましくは、ポリI:CまたはポリIC:U12の投与量は、発現ベクターの有効量の投与あたり0.2から15mgの間、例えば0.3mgから12mg、0.4mgから10mg、および0.5mgから8mgの間であり、好ましくは約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9および4.0mgである。特に好ましくは、投与あたり0.5から2.0mgの範囲である。
【0109】
ある特定の実施形態では、ワクチン組成物は、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)のブロックを含む両親媒性ブロック共重合体、例えばポロキサマー、すなわち、2つの親水性のポリオキシエチレン(ポリ(エチレンオキシド))鎖に挟まれた中央の疎水性のポリオキシプロピレン(ポリ(プロピレンオキシド))鎖からなる非イオン性のトリブロック共重合体、を含み得る。1つの特定の好ましい両親媒性ブロック共重合体は、ポロキサマー188(BASF社のKolliphor(登録商標)P188)である。両親媒性ブロック共重合体の投与量は、発現ベクターの有効投与量あたり、0.2%w/vから20%w/v、例えば0.2%w/vから18%w/v、例えば0.2%w/vから16%w/v、例えば0.2%w/vから14%w/v、例えば0.2%w/vから12%w/v、例えば0.2%w/vから10%w/v、例えば0.2%w/vから8%w/v、例えば0.2%w/vから6%w/v、例えば0.2%w/vから4%w/v、例えば0.4%w/vから18%w/v、例えば0.6%w/vから18%w/v、例えば0.8%w/vから18%w/v、例えば1%w/vから18%w/v、例えば2%w/vから18%w/v、例えば1%w/vから5%w/v、例えば2%w/vから4%w/vである。特に好ましくは、1投与あたり、0.5%w/vから5%w/vである。
【0110】
したがって、本発明のワクチン組成物、例えばDNAワクチン組成物は、ポリ(エチレンオキシド)およびポリ(プロピレンオキシド)のブロックを含む、薬理学的に許容される両親媒性ブロック共重合体を含み、これは以下に詳細に記載される:
【0111】
開示される両親媒性ブロック共重合体は定義の見出しにおいてより一般的に説明されているが、しかし、好ましい両親媒性ブロック共重合体はポロキサマーまたはポロキサミンである。ポロキサマーは、その性質に関してわずかに異なるのみであるが、好ましくはポロキサマー407および188であり、特にポロキサマー188である。
【0112】
両親媒性ブロック共重合体がポロキサミンである場合、好ましい種類は式(PEO-PPO)4-EDの逐次的ポロキサミンであり、ここで、PEOはポリ(エチレンオキシド)、PPOはポリ(プロピレンオキシド)およびEDはエチレンジアミニル基である。これらの分子はPEO-PPO基が中心のエチレンジアミニル基から突き出たX字様の形状を得ている。特に好ましいポロキサミンは、それぞれ(登録商標)Tetronic(登録商標)904、704、および304で販売されているものである。これらのポロキサミンの特著は以下の通りである:Tetronic(登録商標)904の総平均分子量は6700であり、PPO単位の総平均重量は4020、およびPEOの割合は約40%である。Tetronic(登録商標)704の総平均分子量は5500であり、PPO単位の総平均重量は3300、およびPEOの割合は約40%である。Tetronic(登録商標)304総平均分子量は1650であり、PPO単位の総平均重量は990、およびPEOの割合は約40%である。
【0113】
本明細書に開示される方法において使用される場合、ワクチン組成物中の両親媒性ブロック共重合体の濃度は好ましくは2%から5%w/v、例えば約3%w/vである。
【0114】
本明細書で使用される場合、「PEO-PPO」両親媒性ブロック共重合体は、ポリ(エチレンオキシド)(「PEO」)のブロックおよびポリ(プロピレンオキシド)(「PPO」)のブロックを含むか、またはそれからなる直鎖状または分枝状の共重合体である。有用なPEO-PPO両親媒性ブロック共重合体の典型例は、PEO-PPO-PEO(「ポロキサマー」)、PPO-PEO-PPO、(PEO-PPO-)4ED(「ポロキサミン」)、および(PPO-PEO-)4ED(「逆ポロキサミン」)の一般的な構造を有し、ここで、「ED」はエチレンジアミニル基である。
【0115】
「ポロキサマー」とは、ポリ(エチレンオキシド)(「PEO」)の1つのブロックと連結したポリ(プロピレンオキシド)(「PPO」)の1つのブロックにさらにPEOの1つのブロックが連結した構成である、すなわち式EOa-POb-EOaの構造を持つ直鎖状の両親媒性ブロック共重合体であり、ここで、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシド、aは2から130の間の整数、およびbは15から67の整数である。ポロキサマーは伝統的に3桁の識別子を用いて表され、最初の2桁に100を掛けたものがPPO含有量のおおよその分子量を表し、および最後の桁に10を掛けたものがPEO含有量のおおよその割合を示す。例えば、「ポロキサマー188」は、Mw:約1800(b:約31のPPOに対応)のPPOブロック、および約80%(w/w)のPEO(a:約82に対応)を含む重合体を指す。しかし、この値はある程度変化する事が知られており、研究用グレードのLutrol(登録商標)F68および臨床用グレードのKolliphor(登録商標)P188などの市販製品は、製造元のデータシートでは両者共にポロキサマー188であるが、分子量に大きな違いがあり(7680から9510の間)、これら特定の製品について提供されたaおよびbの値は、それぞれ約79および約28であることが示されている。これはブロック共重合体の不均一な性質を反映しており、aおよびbの値は最終製剤中の平均値である事を意味する。
【0116】
「ポロキサミン」または「逐次的ポロキサミン」(Tetronic(登録商標)の商品名で市販されている)は、4本のPEO-PPOの腕が、PEO-PPO-基の遊離OH基とエチレンジアミンの1級アミン基との結合を介して、中心のエチレンジアミンに接続されたX字型のブロック共重合体であり、および「逆ポロキサミン」も同様に、4本のPPO-PEOの腕が、PPO-PEO-基の遊離OH基とエチレンジアミンの1級アミン基との間の結合を介して、中心のエチレンジアミンに接続されたX字型のブロック共重合体である。
【0117】
核酸ワクチンはまた、ネオエピトープを含む1つ以上の免疫原性ポリペプチドを含む融合産物をコードし得る。プラスミドDNAはまた、弱毒性細菌を送達システムとして使用することで送達され得、この方法は経口投与されるDNAワクチンにとって好適である。細菌は独立して複製するプラスミドで形質転換され、プラスミドは宿主細胞内で弱毒化細菌が死んだ後、宿主細胞の細胞質に放出される。
【0118】
所望の抗原をコードするDNAを含むDNAワクチンは、フラグメント単独、直鎖状プラスミド、環状プラスミド、複製可能プラスミド、エピソーム、RNAなどを含む、任意の適した形態で宿主細胞に導入され得る。好ましくは、遺伝子はプラスミドに含まれる。特定の実施形態では、プラスミドは発現ベクターである。遺伝子物質を発現し得る個別の発現ベクターは、標準的な組み換え技術を用いて生産され得る。
【0119】
投与経路には、筋肉内、鼻腔内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、眼球内および経口、加えて吸入または座薬によって局所的、経皮的に、または洗浄によって、例えば膣、直腸、尿道、頬および舌下組織などの粘膜組織への投与を含むが、これらに限定しない。言い換えると、投与経路は、筋肉内経路、皮内経路、経皮経路、皮下経路、静脈内経路、動脈内経路、髄腔内経路(the intrathecal route)、髄腔内経路(the intramedullary route)、髄腔内経路(the intrathecal route)、心室内経路、腹腔内経路、鼻腔内経路、膣内経路、眼内経路、または肺内経路などを介した任意の非経口経路の1つから選択されてよく;経口経路、舌下経路、頬経路、または肛門経路を介して投与される;または局所投与される。
【0120】
典型的な投与経路には、筋肉内、腹腔内、皮内および皮下注射が含まれる。遺伝子構築物は、従来の注射器、無針注射装置、「微粒子銃型遺伝子銃」、またはエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、もしくは超音波などのその他の物理的方法を含むが、これらに限定されない手段によって投与され得る。DNAワクチンは、細胞内でDNAが発現され、および所望の抗原が生成される限りにおいて、DNAの送達に用いられ得る任意の方法で送達され得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるDNAワクチン組成物は、カチオン性リポソーム、フルオロカーボンエマルジョン、蝸牛殻状、細管、金粒子、生分解性マイクロスフェア、またはカチオン性ポリマーなどの既知のトランスフェクション試薬を介して、またはそれらと組み合わせて送達される。蝸牛殻状送達ビヒクルはフォスファチジルセリン、コレステロール、およびカルシウムからなる安定なリン脂質カルシウム沈殿剤であり、この無毒で非炎症性のトランスフェクション試薬は消化器系に存在し得る。生分解性マイクロスフェアはトランスフェクションのためのDNAマイクロカプセルの製造に使用できるポリエステルであるポリ(ラクチド-コ-グリコリド)などの重合体を含む。脂質ベースのマイクロチューブはしばしば螺旋状に巻かれた2層の脂質からなり、それらの端が互いに結合することでパックされている。細管が用いられる場合、核酸は、動物の体内への送達および放出制御のために、その中央の中空部へ配置され得る。
【0122】
DNAワクチンは、マイクロスフェアを介して、粘膜表面へと送達され得る。生体接着性マイクロスフェアは様々な技術を用いて調製され、目、鼻腔、尿路、結腸および胃腸などに見られる任意の粘膜組織に付着するように調製され得るため、局所的および全身的なワクチンの放出制御の可能性を供する。特定の粘膜組織への生体接着性マイクロスフェアの適用は、局所的なワクチン作用にも使用し得る。いくつかの実施形態では、粘膜ワクチンの送達のための代替アプローチは、特異的タンパク質抗原の遺伝子をコードするプラスミドDNA発現ベクターを、粘膜表面に直接投与することである。
【0123】
開示されるDNAプラスミドワクチンは、用いられる投与様式に従って製剤化される。典型的には、DNAプラスミドワクチンは、注射可能な組成物であって、それらは無菌であり、および/またはパイロジェンフリーおよび/または粒子フリーである。いくつかの実施形態では、等張性剤が好ましく使用される。一般的に、等張性のための添加剤には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、およびラクトースが含まれ得る、いくつかの実施形態では、リン酸緩衝生理食塩水などの等張液が好ましい;1つの好ましい溶液はタイロード緩衝液である。いくつかの実施形態では、安定化剤にゼラチンおよびアルブミンを含む。いくつかの実施形態では、LGSまたは他のポリカチオンもしくはポリアニオンなどの、製剤が室温または周囲の温度で長時間安定である事を可能にする安定化剤が製剤に添加される。
【0124】
本明細書に開示される組成物中の第2の構成要素は、医薬的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤であって、これは好ましくは緩衝溶液の形態である。非経口ビヒクルには、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロースおよび塩化ナトリウム、ラクトリンゲル液、または不揮発性油を含む。静脈内ビヒクルとしては、水分および栄養分補給剤、リンゲルデキストロースをベースにしたものなどの電解質補給剤などを含む。防腐剤、抗菌剤には、酸化防止剤、キレート剤、不活性ガスなどを含む。好ましい保存剤には、ホルマリン、チメロサール、ネオマイシン、ポリミキシンB、およびアンフォテリシンBを含む。
【0125】
好ましい実施形態では、緩衝溶液は「タイロード緩衝液」として知られるものであり、および好ましい実施形態では、このタイロード緩衝液は140mM NaCl、6mM KCl、3mM CaCl2、2mM MgCl2、10mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(Hepes)(pH7.4)、および10mM グルコースの組成を有する。タイロード緩衝液(またはその代替)の濃度は、典型的には約35%v/vであるが、懸濁したプラスミドの水分量に依存して、この濃度は大きく変化し得る-というのも、この緩衝液は生理学的に許容されるため、組成物の水相の任意の割合を構成し得る。
【0126】
さらに、好ましい実施形態では緩衝溶液はPBSであり、好ましい実施形態ではPBSは、1ml溶液あたり、0.28mgのリン酸二水素カリウム、1.12mgのリン酸水素二ナトリウム・二水和物および9.0の塩化ナトリウムの組成を有する。
【0127】
追加的な担体物質が含まれていてもよく、これにはタンパク質、糖などを含み得る。かかる担体は、水性または非水性の溶液、懸濁液、およびエマルジョンであってよい。非水性の担体の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性の担体には、水、アルコール性/水性溶液、エマルジョンまたは懸濁液を含み、生理食塩水を含む。
【0128】
本発明の特定の実施形態
上述のように、本発明はi)患者の腫瘍細胞の少なくとも1つのネオエピトープのアミノ酸配列を含む少なくとも1つの抗原単位;ii)少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位;iii)任意選択で多量体化、例えば二量体化単位であって、2つ以上の抗原単位および2つ以上の抗原提示細胞(APC)標的化単位を含むように融合ポリペプチドの多量体化をもたらす多量体化単位;を含む融合ポリペプチドに関する。
【0129】
いくつかの実施形態では、APC標的化単位は、抗原提示細胞上の標的表面分子、例えばHLA、HLA-DP、CD14、CD40;またはトール様受容体、例えばトール様受容体2;リガンド、例えば可溶性CD40リガンド;CLEC9A Fvフラグメント、DEC205 Fvフラグメント、GM-CSF、天然リガンド様ケモカイン、例えばCCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21、または類似物から選択される何れか1つ;またはCXCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)、または類似物、RANTESから選択される何れか1つ、または細菌抗原、例えばフラジェリンまたはその一部、に対する特異性を持つ抗体結合領域からなるかまたはそれを含む。
【0130】
いくつかの実施形態では、APC標的化単位は、リガンド、例えば可溶性CD40リガンド;CLEC9Aペプチドリガンド、DEC205リガンド、FLT3L、GM-CSF、天然リガンド様ケモカイン、例えばCCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21、または類似物から選択される何れか1つ;またはCXCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)、または類似物、例えばRANTESまたはケモカインリガンド3(CCL3/MIP-la)またはCCL19、から選択される何れか1つ;または細菌抗原、例えばフラジェリンまたはその一部、からなるかまたはそれを含む。
【0131】
いくつかの実施形態では、抗原単位はリンカーを介して、例えばGSリンカー、例えばGSGSGSGSGS(配列番号13)のアミノ酸配列を持つリンカー、または免疫グロブリン分子(Ig)、例えばIgGに由来するリンカーを介して、例えば鎖間共有結合の形成を介して多量体化に寄与するリンカーを介して標的化単位に連結される。いくつかの実施形態では、リンカーはヒンジ領域、例えばIg、例えばIgG由来ヒンジ領域であるかそれを含み、鎖間共有結合、例えばジスルフィド架橋の形成を介して多量体化に貢献する。いくつかの実施形態では、リンカーはカルボキシル末端Cドメイン(CH3ドメイン)、例えばIgのカルボキシル末端Cドメイン(Cγ3ドメイン)、または実質的に上記のCドメイン、例えばIgG3のCH3ドメインに相同な配列を含む。いくつかの実施形態では、このヒンジおよびCH3ドメインはアミノ酸配列GlyGlyGlySerSer(配列番号66)、例えばアミノ酸配列GlyGlyGlySerSerの三重配列(triplicate)によって連結される。いくつかの実施形態では、このリンカーは、疎水性相互作用、例えばCH3ドメインを介して多量体化に関与する二量体化モチーフまたは任意のその他の多量体化ドメインを含む。いくつかの実施形態では、このリンカーはIgG、例えばIgG2またはIgG3に由来するh1+h4またはh4を含むヒンジ領域を含む。
【0132】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原単位は、少なくともまたは約5、例えば、少なくともまたは約10、少なくともまたは約15、少なくともまたは約20、少なくともまたは約25、および少なくともまたは約30のネオエピトープからなるかまたはそれを含む。
【0133】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのネオエピトープは、腫瘍細胞において同定されたネオエピトープ間の平均以上、例えば上位四分の一の、MHC結合安定性を示すネオエピトープを含む。
【0134】
いくつかの実施形態では、多量体化、例えば二量体化単位は、二量体、三量体、四量体、五量体またはより高次の多量体の形成を可能にする。
【0135】
本発明はさらに、本発明の融合ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクターに関する。
【0136】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列はcDNA配列である。
【0137】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列は本発明の融合ポリペプチドをコードするRNA配列である。
【0138】
いくつかの実施形態では、配列はさらに少なくとも1つの免疫刺激配列(ISS)を含むかまたはコードする。いくつかの実施形態では、ISSは少なくとも1つのCpGモチーフを含むオリゴデオキシリボヌクレオチド(ODN)であり、ここでODNは好ましくはホスホロチオエート基を含む。いくつかの実施形態では、ISSはオリゴリボヌクレオチドであるかまたはそれを含む。
【0139】
いくつかの実施形態では、配列はさらに分泌シグナルを含む。
【0140】
本発明はさらに、i)患者の腫瘍細胞の少なくとも1つのネオエピトープのアミノ酸配列を含む、少なくとも1つの抗原単位をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物、およびii)少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位をコードするヌクレオチド配列を含む第2の発現構築物を含む、少なくとも2つの発現構築物の系に関する。
【0141】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原単位をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物は、少なくともまたは約5、例えば、少なくともまたは約10、少なくともまたは約15、少なくともまたは約20、少なくともまたは約25、および少なくともまたは約30ネオエピトープからなるかまたはそれを含む。
【0142】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのネオエピトープをコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物は、腫瘍細胞において同定されるネオエピトープ間の平均以上、例えば上位四分の一のMHC結合安定性を示すネオエピトープを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、第2の発現構築物は、例えばHLA、HLA-DP、CD14、CD40;またはトール様受容体、例えばトール様受容体2;リガンド、例えば可溶性CD40リガンド;CLEC9A Fv フラグメント、DEC205 Fv フラグメント、天然リガンド様ケモカイン、例えばCC ケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21、または類似物から選択される何れか1つ;例えばCXCケモカインファミリーのケモカイン、例えばケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)もしくは類似物、RANTESから選択される何れか1つ;細菌抗原、例えばフラジェリンまたはその一部、などの抗原提示細胞上の標的表面分子に対する特異性を持つ抗体結合領域からなるかまたはそれを含む少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0144】
いくつかの実施形態では、第2の発現構築物は、リガンド、例えば可溶性CD40リガンド;CLEC9Aペプチドリガンド、DEC205、FLT3L、GM-CSF、天然リガンド様ケモカイン、例えばケモカインリガンド3、ケモカインリガンド4、ケモカインリガンド5、ケモカインリガンド19、ケモカインリガンド20、ケモカインリガンド21もしくは類似物、から選択される何れか1つである、CCケモカインファミリーのケモカイン、またはケモカイン(C-X-Cモチーフ)リガンド1(CXCL1)または類似物、例えばRANTES、ケモカインリガンド3(CCL3/MIP-1a)もしくはCCL19、などのCXCケモカインファミリーのケモカイン;またはフラジェリンなどの細菌抗原もしくはその一部、からなるかもしくはそれを含む、少なくとも1つの抗原提示細胞(APC)標的化単位をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0145】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの抗原単位をコードするヌクレオチド配列を含む第1の発現構築物はさらに、上記の少なくとも1つの抗原単位の多量体化をもたらす多量体化単位、例えば二量体化単位をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発現構築物は、同一の発現ベクター上で、例えば2つの異なるプロモーターの制御下において発現される。
【0147】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発現構築物は少なくとも2つの異なるベクターによって発現される。
【実施例】
【0148】
実施例1
ネオエピトープ送達のためのAPC標的化単位としてのケモカインの評価
本研究の目的は、本発明であるAPC標的化DNAワクチンによるネオペプチド特異的T細胞を誘導し、腫瘍増殖を低減する能力を試験する事、およびワクチン接種したマウス健康状態(wellbeing)に対するワクチンの影響を観察する事である。
【0149】
DNAワクチン接種のためのプラスミドはAldevronから入手可能な市販のpUMVC4(商標)に基づく。
【0150】
pUMVC4
(商標)は製造元の書類によると、4479kbのプラスミドベクターであって、E.coliにおける高コピー数の複製およびほとんどの哺乳類細胞におけるコードされた目的タンパク質の高レベルな一過性発現を可能にする。このベクター(
図4を参照)は以下のエレメントを含む:
1)広範囲な哺乳類細胞における高レベル発現のためのヒトサイトメガロウイルス最初期(CMV)プロモーター
2)効率的な転写終結およびmRNAのポリアデニル化のためのウサギベータ-グロブリン ポリアデニル化シグナル
3)E.coliの選別のためのカナマイシン耐性遺伝子、および
4)in vivoでの免疫応答誘導に適したものとする、アンピシリン耐性遺伝子由来の免疫刺激配列(ISS)。
【0151】
pUMVC4(商標)プラスミドの全配列を配列番号29に記載する。
【0152】
pUMVC4をバックボーンとして用い、且つS16AにおけるネオエピトープをガイドするAPC標的化単位を用いて生成した5つの発現ベクターを構築した。APC標的化単位として使用した種々のケモカインを以下の表に示す:
【表5】
【0153】
5つの S16Aネオエピトープは、マウス結腸癌株CT26およびBALB/cマウス由来の正常組織サンプルの全エキソームシーケンシング、およびがん細胞でのみ見られたペプチドを選択する事によって初めに同定された。この実験では、同定されたネオエピトープに対するマウスの免疫応答生成能力を評価した。
【0154】
pUMVC4 APC標的化 S16Aは、APC標的化単位(配列番号36~43)、ヒトIgG3ヒンジ1、ヒンジ4およびCH3ドメイン(配列番号31、32および34)ならびに、連続的に連結された5つのネオエピトープC22、C23、C25、C30、およびC38(配列番号61~65)を含むペプチドをコードするコドン最適化された(例えばマウスにおける発現のため)DNA、を含むDNAインサートをpUMVC4発現カセットにライゲーションする事で構築した(
図5を参照)。コントロールとして、APC標的化単位を含まないが、ヒトIgG3ヒンジ1、ヒンジ4およびCH3ドメイン、ならびに同じ5つのネオエピトープC22、C23、C25、C30、およびC38(配列番号61~65)をコードするインサートを含むpUMVC4プラスミドを使用した。pUMVC4 APC標的化 S16Aベクターにおいて、インサートはまた効率的な翻訳開始のためにKozakコンセンサス配列を含む。この実験において(および以下の実施例においても)使用された5つのネオエピトープのアミノ酸配列を以下の表に示す:
【表6】
【0155】
滅菌水に溶かしたプラスミドpUMVC4 mCCL3 S16A、pUMVC4 mCCL4 S16A、pUMVC4 mCCL5 S16A、pUMVC4 mCCL19 S16A、pUMVC4 mXcl1 S16A および(空の)pUMVC4をそれぞれポロキサマー188(Kolliphor(登録商標)from BASF)およびタイロード緩衝液と混合し、タイロード緩衝液中に3%w/v ポロキサマー188および0、05μg/μlプラスミドの組成物を得た。
【0156】
DNAと組み合わせて試験する両親媒性ブロック共重合体は、以下の一般式を有するKolliphor
(登録商標)P188(もしくは本開示では単にKolliphorと称する、またはLutrol
(登録商標)F68)である:
【化2】
【0157】
研究計画
マウスに、0日目にCT26腫瘍を移植し、-16日目、-9日目、-3日目、5日目、12日目に試験ワクチンで免疫した。各免疫として、左右の脛骨にそれぞれ50μlのワクチンを注射した。腫瘍の移植から7日後に、四量体アッセイにおけるC22 MHCIの試験のための血液サンプルを試験動物から採取した。
【0158】
各14匹の6つの群はそれぞれ以下のワクチン組成物を受けた:
1.pUMVC4 mCCL3 S16A 5μg +Kolliphor
2.pUMVC4 mCCL4 S16A 5μg +Kolliphor
3.pUMVC4 mCCL5 S16A 5μg +Kolliphor
4.pUMVC4 mCCL19 S16A 5μg +Kolliphor
5.pUMVC4 mXCL1 S16A 5μg +Kolliphor
6.pUMVC4 5μg +Kolliphor
7.未処置コントロール群
ナイーブマウスの8群目は5匹の動物を含む。
【0159】
四量体アッセイは、以下のように行った:
MHCクラスI分子を製造し、この分子にUV光を照射することでC22エピトープと交換される安定化ペプチドを搭載させた。このMHC I分子を蛍光標識したストレプトアビジンと結合させることで多量体化した。ネオエピトープにポジティブなCD8+T細胞を同定するために、細胞を多量体および蛍光色素を結合させた抗CD3、抗CD4および抗CD8抗体で共染色した。そしてサンプルをフローサイトメトリーで分析し、MHC:C22ポジティブなCD8+の割合を算出した。
【0160】
T細胞の活性化を測るために、以下の再刺激実験を行った:
脾臓細胞を5つのネオペプチド含有ワクチンで刺激した。脾臓細胞のサンプル中において、抗原提示細胞はネオエピトープを処理し、その後それらをT細胞へと提示することで、同種のCD4+およびCD8+T細胞の活性化がもたらされる。活性化T細胞はインターフェロンγ(IFN-γ)およびTNF-αを含む、サイトカインの合成を増加させる。IFN-γおよびTNF-α産生T細胞はELISpot解析またはフローサイトメトリー解析の何れかによって検出される。
【0161】
結果
免疫の腫瘍増殖に対する効果を
図6に示す。予防免疫によって、共重合体Kolliphorと共に5μgのpUMVC4 APC標的化 S16Aプラスミドベクターを受けたマウスにおいて50~100%の腫瘍容積の減少がもたらされた。Kolliphorと共にAPC標的化S16Aを含まない5μgのpUMVC4で処置された群と比べて、Kolliphorと共に5μgのpUMVC4 mCCL19 S16Aで処置された群において腫瘍縮小は顕著に向上した。
【0162】
腫瘍移植後7日目に全てのマウスから全血を回収し、蛍光標識したMHC I四量体で染色した。C22をコードするpUMVC4 APC標的化S16Aワクチンを用いた免疫は、高頻度でC22ネオエピトープ特異的なCD8+T細胞を誘導した(平均0.3~0.6頻度)。
図7を参照。
【0163】
S16Aプラスミドを用いたワクチン接種は、続くネオペプチドによる刺激に応答してIFNγを産生可能なT細胞を誘導し、一方で、S16Aで免疫しなかった動物由来サンプルは、該ネオペプチドによる刺激に際してサイトカインシグナルを示さなかった。
図8を参照。
【0164】
2重サイトカイン(IFNγおよびTNFα)産生CD8+およびCD4+T細胞は、ネオエピトープを有する(harbouring)全ての構築物で免疫した群において観察された。APC標的化単位を含まない融合タンパク質のバージョンを用いた免疫は、標的化のバージョンに比して低いレベルでダブルポジティブCD4+T細胞を誘導した。ネガティブコントロールサンプルでは、バックグラウンドと同等かまたは下回る低いシグナルが検出されるか、またはシグナルが検出されなかった。
図8Aを参照。
【0165】
さらに、DNAワクチンはマウスおいて十分に忍容性があった(well-tolerated);副作用の徴候は観察されず、体重変化の増加から示されるようにマウスの体重は研究を通して継続的に増加し、健康且つ影響を受けていないマウスである事が示された。
【0166】
【0167】
結論
異なるAPC標的化単位およびS16Aネオエピトープを含む、Kolliphorに送達されるpUMVC4プラスミドベクターは、CT26における抗腫瘍効果および循環するC22ネオエピトープ特異的CD8+T細胞をもたらした。5μgという低用量のDNAはコントロール群と比較して非常に顕著な腫瘍容積の減少をもたらし、有効性の高いAPC標的化DNAワクチンである事を実証した。S16Aネオペプチドの再刺激では、脾臓細胞において、APC標的化単位に依らずS16Aプラスミドベクターを受けた群間で類似のT細胞免疫原性プロファイルを示した。
【0168】
ワクチンはマウスおいて十分に忍容性があった;副作用の徴候は観察されず、マウスの体重は研究を通して継続的に増加し、健康且つ影響を受けていないマウスである事が示された。
【0169】
実施例2
ネオエピトープの送達のためのAPC標的化単位として、その他のケモカイン、サイトカイン、fvフラグメントおよびペプチドの評価。
この研究では、本発明者らは、その他のケモカインおよびサイトカイン、ならびにケモカインファミリー以外のAPC標的化分子、例えばAPC上の受容体を認識する抗体またはAPC上の表面受容体に結合する小ペプチドリガンドが、ネオペプチド特異的なT細胞を誘導し、以前の研究で見られたものと同程度まで腫瘍増殖を減少させ得るかを試験する事を意図した。さらに本発明者らはワクチン接種したマウスの健康状態に対するワクチンの影響を観察する事を意図した。
【0170】
DNAワクチン接種のためのプラスミドはAldevronから入手可能な市販のpUMVC4(商標)に基づく。
【0171】
pUMVC4をバックボーンとして用い、且つS16AにおけるネオエピトープをガイドするAPC標的化単位を用いて生成した8つの発現ベクターを構築した。APC標的化単位として使用した種々のケモカイン、Fvフラグメントおよびペプチドリガンドを以下の表に示す:
【表9】
【0172】
研究計画
マウスに、0日目にCT26腫瘍を移植し、-15日目、-8日目、-1日目、6日目、13日目に試験ワクチンで免疫した。各免疫として、左右の脛骨にそれぞれ50μlのワクチンを注射した。腫瘍の移植から-2日後および8日後に、四量体アッセイにおけるC22 MHCIの試験のための血液サンプルを試験動物から採取した。
【0173】
各13匹の9つの群はそれぞれ以下のワクチン組成物を受けた:
1.pUMVC4 mCCL19 S16A 5μg +Kolliphor
2.pUMVC4(空)5μg +Kolliphor
3.pUMVC4 抗mCLEC9 Fv S16A 5μg +Kolliphor
4.pUMVC4 mCLEC-9リガンド S16A 5μg +Kolliphor
5.pUMVC4 mCCL20 S16A 5μg +Kolliphor
6.pUMVC4 mCCL21 S16A 5μg +Kolliphor
7.pUMVC4 抗mDEC-205 Fv S16A 5μg +Kolliphor
8.pUMVC4 mFLT3L S16A 5μg +Kolliphor
9.pUMVC4 mGM-CSF S16A 5μg +Kolliphor
ナイーブマウスの10群目は5匹の動物を含む。
【0174】
実験の読み出し情報(Read-out)は腫瘍容積、循環するネオエピトープ特異的CD8+T細胞および脾臓から単離された機能的なネオエピトープ特異的T細胞の測定、である。
【0175】
結果
免疫の腫瘍増殖に対する効果を
図9に示す。予防免疫によって、共重合体Kolliphorと共に5μgのpUMVC4 APC標的化 S16Aプラスミドベクターを受けたマウスにおいて、Kolliphorと併用する5μgのpUMVC4に比して、50~100%の腫瘍サイズの減少がもたらされた。
【0176】
-2日目に全てのマウスから全血を回収し、蛍光標識したMHC I四量体で染色した。C22をコードするpUMVC4 APC標的化 S16Aワクチンを用いた免疫は、高頻度でC22ネオエピトープ特異的なCD8+T細胞を誘導した(平均0.3~0.6頻度)。
図10を参照。この効果は、ネオエピトープを含まないコントロールの空ベクター(平均0.1頻度以下)よりも際立って優れていた。
【0177】
終点(endpoint)では、全てのS16Aを含むプラスミドを用いたワクチン接種は、続くネオペプチドによる刺激に応答してIFNγを産生可能な脾臓由来のT細胞を誘導した。S16Aで免疫しなかった動物由来のサンプル(空のプラスミドおよびナイーブマウス)はネオペプチドによる刺激に際してサイトカインシグナルを示さなかった。
図11を参照。
【0178】
さらに、DNAワクチンはマウスおいて十分に忍容性があった;副作用の徴候は観察されず、体重変化の増加から示されるように、マウスの体重は研究を通して継続的に増加し、健康且つ影響を受けていないマウスである事が示された。
【0179】
【0180】
結論
異なるAPC標的化単位およびS16Aネオエピトープを含む、Kolliphorに送達されるpUMVC4プラスミドベクターは、CT26における抗腫瘍効果および循環するC22ネオエピトープ特異的CD8+T細胞をもたらした。5μgという低用量のDNAはコントロール群と比較して腫瘍容積の減少をもたらし、有効性の高いAPC標的化DNAワクチンである事を実証した。S16Aネオエピトープ再刺激は、脾臓細胞において、APC標的化単位に依らずS16Aプラスミドベクターを受けた群間で類似のT細胞免疫原性プロファイルを示した。さらに、実験中の体重変化から評価されるように、DNAワクチンはマウスにおいて十分に忍容性があった。
【0181】
実施例3
ネオエピトープの送達のためのAPC標的化技術のための種々の多量体化単位の評価
この研究では、本発明者らは、ヒトIGg3由来フラグメント以外の多量体化単位、例えばその他の免疫グロブリン(ig)、合成タンパク質(synthetic protein)またはコラーゲンフラグメントを用いたAPC標的化ネオエピトープワクチンが、ネオエピトープ特異的なT細胞を誘導し、且つ腫瘍増殖を減少させ得るかを試験する事を意図した。マウスCCL19をAPC標的化単位として使用した。さらに、本発明者らはワクチン接種したマウスの健康状態に対するワクチンの影響を観察する事を意図した。
【0182】
DNAワクチン接種のためのプラスミドはAldevronから入手可能な市販のpUMVC4(商標)に基づく。
【0183】
pUMVC4をバックボーンとして用い、且つCCL19をS16AにおけるネオエピトープをガイドするAPC標的化単位として用いて生成した5つの新たな発現ベクターを構築した。種々の構築物に用いた種々の多量体化単位を以下の表に示す:
【表12】
【0184】
新たなDNA構築物を、IgG3二量体化ドメインを持つ mCCL19 H1H4CH3 S16A構築物と比較した(配列番号59、60、および34)。
図18および20の概要を参照。
【0185】
研究計画
マウスに、0日目にCT26腫瘍を移植し、-14日目、-7日目、1日目、8日目および15日目に試験ワクチンで免疫した。各免疫として、左右の脛骨にそれぞれ50μlのワクチンを注射した。腫瘍の移植から7日後に、四量体アッセイにおけるC22 MHCIの試験のための血液サンプルを試験動物から採取した。
【0186】
各13匹の7つの群はそれぞれ以下のワクチン組成物を受けた:
1.pUMVC4(空)5μg +Kolliphor
2.pUMVC4 mCCL19 S16A 単量体 5μg +Kolliphor
3.pUMVC4 mCCL19 H1H4CH3 S16A 5μg +Kolliphor
4.pUMVC4 mCCL19 H1dHLX S16A 5μg +Kolliphor
5.pUMVC4 mCCL19 H1p53 S16A 5μg +Kolliphor
6.pUMVC4 mCCL19 hMHD2 S16A 5μg +Kolliphor
7.pUMVC4 mCCL19 mCollagenXVIII S16A 5μg +Kolliphor
ナイーブマウスの8群目は4匹の動物を含む。
【0187】
実験の読み出し情報は、初回免疫時の重さと比べての体重の変化、腫瘍容積の減少、循環するネオエピトープ特異的CD8+T細胞および脾臓から単離された機能的なネオエピトープ特異的T細胞の測定、である。
【0188】
結果
免疫の腫瘍増殖に対する効果を
図12に示す:予防免疫によって、Kolliphorと共にネオエピトープS16Aを含む5μgのプラスミドベクターpUMVC4 mCCL19 を受けた全ての群のマウスにおいて、Kolliphorと併用する5μgの空のプラスミドに比して、50~100%の腫瘍サイズの減少がもたらされた。Ig由来またはコラーゲンの多量体化単位を持つDNA設計を受けた群が最も優れていた。
【0189】
7日目に全てのマウスから全血を回収し、蛍光標識したMHC I四量体で染色した。C22をコードするpUMVC4 CCL19 S16Aワクチンは全て検出可能なレベルのC22ネオペプチド特異的CD8+T細胞を生じた(平均で0.3~5%頻度)。
図13を参照。この効果はIgGを含む設計(H1H4CH3およびhMHD2、平均で約2%頻度)において最も顕著であり、単量体および三量体(単量体およびhCollagenXVIII、平均で1%強の頻度)では中程度の応答があり、合成タンパク質の設計(H1dHLXおよびH1p53、平均で0.5%弱の頻度)および空のプラスミドコントロールよりも顕著に優れていた。
【0190】
終点では、全てのS16Aを含むプラスミドを用いたワクチン接種は、ネオペプチドによる続く刺激に応答してIFNγを産生可能な脾臓由来のT細胞を誘導した。S16Aで免疫しなかった動物由来のサンプル(空のプラスミドおよびナイーブ)はネオペプチドによる刺激に際してサイトカインシグナルを示さなかった。
図14を参照。
【0191】
さらに、DNAワクチンはマウスおいて十分に忍容性があった;副作用の徴候は観察されず、体重変化の増加から示されるように、マウスの体重は研究を通して継続的に増加し、健康且つ影響を受けていないマウスである事が示された。
【0192】
【0193】
結論
mCCL19、異なる多量体化単位およびS16Aネオエピトープを含む、Kolliphorに送達されるpUMVC4プラスミドベクターは、50~100%のCT26抗腫瘍効果をもたらした。Ig由来またはコラーゲンの多量体化単位を持つDNA設計を受けた群が最も優れていた。7日目におけるネオエピトープ特異的CD8+T細胞応答は抗腫瘍効果に相当し、および終点における機能性T細胞のレベル(IFNγ分泌によって測定)は、ネオエピトープを含むDNA設計を受けた群間で同程度であった。さらに実験中の体重変化から評価されるように、DNAワクチンはマウスにおいて十分に忍容性があった。
【0194】
実施例4
ネオエピトープの送達のためのAPC標的化技術のための、別々の単位の組合せ/解離の評価
この研究では、本発明者らは、最適に機能するためには3つのモジュール:APC標的化ドメイン、多量体化ドメインおよびネオエピトープ、の全てが融合タンパク質産物として物理的に一体に結合されている必要があるのか、またはケモカインがアジュバントとして存在するのみで十分なのか、およびネオエピトープの二量体/分泌がAPC標的化ネオエピトープワクチンの抗腫瘍効果およびT細胞応答に寄与するか試験する事を意図した。全てのDNA構築物について、ケモカインとしてマウスCCL19を使用した。
図15の概要を参照。
【0195】
DNAワクチン接種のためのプラスミドはAldevronから入手可能な市販のpUMVC4(商標)に基づく。
【0196】
pUMVC4をバックボーンとして用い、mCCL19のみ(配列番号39)、ネオエピトープS16Aのみ、または分泌シグナル(SecSig)、IgG3の二量体化ドメインH1H3CH3(配列番号59、60および34)およびS16Aネオエピトープ、の何れかを含む3つの新たな発現ベクターを生成した。
図15に示した。
【0197】
新たなDNA構築物およびその組み合わせを、融合タンパク質をコードするmCCL19 H1H4CH3 S16A構築物(以下mCCL19 S16A二量体と称する)、およびmCCL19 S16A単量体と比較した。
【0198】
研究計画
マウスに、0日目にCT26腫瘍を移植し、-14日目、-7日目、1日目、8日目および15日目に試験ワクチンで免疫した。各免疫として、左右の脛骨にそれぞれ50μlのワクチンを注射した。腫瘍の移植から9日後に、四量体アッセイにおけるC22 MHCIの試験のための血液サンプルを試験動物から採取した。
【0199】
各13匹の8つの群はそれぞれ以下のワクチン組成物を受けた:
1.pUMVC4(空)10μg+Kolliphor
2.pUMVC4 mCCL19 S16A 二量体5μg +Kolliphor
3.pUMVC4 mCCL19 S16A 単量体
4.pUMVC4 mCCL19 5μg +pUMVC4 S16A 5μg +Kolliphor
5.pUMVC4 mCCL19 5μg +pUMVC4 SecSig H1H4CH3S16A 5μg +Kolliphor
6.pUMVC4SecSig H1H4CH3 S16A 5μg +Kolliphor
7.pUMVC4 mCCL19 5μg +Kolliphor
8.pUMVC4S16A 5μg +Kolliphor
ナイーブマウスの9群目は4匹の動物を含む。
【0200】
実験の読み出し情報は、初回免疫時の重さと比べての体重の変化、腫瘍容積、循環するネオエピトープ特異的CD8+T細胞の測定である。また、IFNγおよびTNFαを産生するCD8+およびCD4+細胞の存在を評価するために再刺激実験を行った。
【0201】
結果
免疫による腫瘍増殖に対する効果を
図16に示す:予防免疫によって、mCCL19およびネオエピトープを受けた全ての群のマウスにおいて、成分が融合タンパク質としてコードされたかまたは別々のタンパク質産物としてコードされたかに関わらず、腫瘍サイズの減少がもたらされた。SecSig、H1H4CH3二量体化ドメインおよびネオエピトープを含む非標的化融合タンパク質もまた顕著な抗腫瘍効果を有し、ネオエピトープの分泌および二量体化が抗腫瘍効果を向上させる事が示された。
【0202】
9日目に全てのマウスから全血を回収し、蛍光標識したMHC I四量体で染色した。S16Aの一部であるエピトープC22を含む全てのワクチンによる免疫は検出可能なレベルのC22ネオペプチド特異的CD8+T細胞を生じた(平均で0.5~15%頻度)。
図17を参照。この効果は融合タンパク質の設計(mCCL19 S16A二量体およびmCCL19 S16A単量体、平均で約4%頻度)において最も顕著であり、また個別のmCCL19産物とSecSig、H1H4CH3二量体化ドメインおよびネオエピトープを含む非標的化融合タンパク質との組み合わせも高いT細胞レベル(平均で1.5%強の頻度)を生じ、単一成分(mCCL19およびS16A、平均で0.5%弱の頻度)および空のプラスミドコントロールの効果よりも顕著に優れていた。
【0203】
脾臓細胞を、S16Aベクターのネオエピトープ内容に相当する5つの27merのネオペプチド(C22、C23、C25、C30、C38)で再刺激した。二重サイトカイン(IFNγおよびTNFα)産生CD8+T細胞CD4+細胞は、ネオエピトープを有する構築物または構築物の組合せを用いて免疫した群において観察された。融合タンパク質の単量体バージョンを用いた免疫は、二量体バージョンと比較して同等のレベルのダブルポジティブCD8+およびCD4+T細胞を誘導した。CCL19をコードするプラスミドおよび分泌バージョンのネオエピトープをコードするプラスミドの共送達は、分泌ネオエピトープのみをコードするプラスミドの投与に比して優れていることが分かった。ネガティブコントロールサンプルでは、バックグラウンドと同等かまたは下回る低いシグナルが検出されるか、またはシグナルが検出されなかった。データは
図19A~19Cを参照。
【0204】
さらに、DNAワクチンはマウスおいて十分に忍容性があった;副作用の徴候は観察されず、体重変化の増加から示されるように、マウスの体重は研究を通して継続的に増加し、健康且つ影響を受けていないマウスである事が示された。
【0205】
【0206】
結論
mCCL19、異なる多量体化単位およびS16Aネオエピトープを含む、Kolliphorに送達されるpUMVC4プラスミドベクターは、50~100%のCT26抗腫瘍効果をもたらした。Ig由来またはコラーゲンの多量体化単位を持つDNA設計を受けた群がもっともすぐれていた。7日目のネオエピトープ特異的CD8+T細胞応答は抗腫瘍効果に相当し、および終点における機能性T細胞のレベル(IFNγ分泌によって測定)は、ネオエピトープを含むDNA設計を受けた群間で同程度であった。さらに、DNAワクチンはマウスにおいて十分に忍容性があった。
【0207】
実施例5
異なる送達プラスミドの使用
異なるベクターバックボーン(pTVG4プラスミド)においてAPC標的化構築物の有効性を試験した。さらに、追加のネオエピトープ(総計で13個)を含む事が有効性に何らかの影響を及ぼすかを試験した。最後に、ネオエピトープのコード領域の上流に制限部位を追加するなどの若干の変更が転写およびin vivoの有効性に影響を及ぼすかを試験した。
【0208】
研究計画
この実験で使用されるベクター(pTVG4、
図21Aを参照)は、pUMVC4の場合と同様に、pUMVC3に基づいて構築されている。pTVG4のバージョンでは、マウスCCL19コード化材料(配列番号39)、ならびにネオエピトープコード領域導入部位の周辺にBamHIおよびNotI制限部位を追加する変更がされている(参照:
図21Bおよび21C、ここでベクターにはS16T13エピトープをコードするインサートが示されていないが、それを含んでいる)。マウスCCL19コード配列を、ヒト対応物(コードされたタンパク質:Uniprotエントリー番号Q99731)と交換した、対応するベクターもまた作成した。
図21Dを参照。
【0209】
試験されたDNAカセットを
図22に模式的に示す。1つのpUMVC4ベース構築物を、多数のpTVG4構築物と比較した。N末端からの13のエピトープは、C22、C23、C38、C25、C30、C37、EV85、C40、C41、C29、EV22、EV105、およびAA427である(参照:配列は以下に示す)。
【0210】
CT26マウスを以下のスキーム(sheme)に従って免疫した。
群1:未処置/ビヒクル、n=13
群2:pTVG4(空)、n=13
群2:pUMVC4 mCCL19 S16A、n=13
群3:pTVG4 mCCL19 S16A、n=13
群4:pTVG4 mCCL19 S16T13、n=13
群5:pTVG4 hCCL19 S16T13、n=13
群6:pTVG4 mCCL19 バックボーン、n=13
群7:ナイーブマウス、n=5
【0211】
CT26腫瘍細胞の接種(0日目)と比べて、-13日目、-6日目、1日目、8日目および15日目に筋肉内注射(i.m)で免疫を投与した。血液を2日目と5日目に尾静脈から採取した。実験終了時(21日目)にマウスを安楽死させ、脾臓を回収し、且つ腫瘍を摘出した。
【0212】
読み取りは、1)初回免疫時からの体重変化(BW)、2)腫瘍容積(TV)、および3)循環するC22ネオエピトープ特異的T細胞。
【0213】
【0214】
図23について、pTVG4バックボーンは、腫瘍増殖への影響においてpUMVC4バックボーンと同様に(またはそれ以上に)機能し、および制限部位の追加は抗腫瘍効果にネガティブな影響を及ぼさない。抗腫瘍効果はさらなるネオエピトープの追加によってネガティブな影響を受けず、およびCT26マウス腫瘍モデルにおいては、ヒトCCL19は、標的化単位としてマウスCCL19と同程度に効率的である。
【0215】
図24について、CT26ネオエピトープC22(H-2Kd 最小結合部位(minimal binder)KFKASRASI;配列番号61)は、S16Aネオエピトープを含むpUMVC4ベクター、およびS16AまたはS16T13ネオエピトープを含むpTVG4構築物を用いて免疫されたマウスにおいて、研究2日目および6日目の尾静脈血中において観察された。
【0216】
さらに、BWデータから明らかなように、DNAワクチンはマウスにおいて十分に忍容性があった。
【0217】
結論
pTVG4バックボーンはpUMVC4と同様に機能する事が示され、および制限部位の追加は、抗腫瘍効果またはT細胞応答にネガティブな影響を及ぼさなかった。さらに、5つに代えて13個のエピトープへの追加は効果に影響しなかった。最後に、CT26マウス腫瘍モデルにおいて、標的化単位としての使用のためのヒトCCL19は、マウスCCL19と同程度に効率的であると結論付ける事ができる。
【0218】
実施例6
APC標的化単位を含むワクチン構築物と含まないワクチン構築物のそれぞれの比較
目的は、両者共にpTVG4ベクターバックボーンに基づく2つのプラスミド(mevx-03およびmevx-02;
図21Cをそれぞれ参照)の、抗原標的化単位の抗腫瘍効果およびT細胞応答誘導における効果を調べるためのマウスモデルにおける直接的な比較を行うことである。
【0219】
研究計画
両方の化合物構築物の用量漸増を行った。mEVX-03およびmEVX-02の両者のDNA調製物はハイグレードなプラスミドであり、同じ重合体P188を用いてPBS中に配合した。両者のベクターは実施例5に記載の13のネオエピトープをコードする。
【0220】
CT26腫瘍細胞の接種(0日目)に比して、-13日目、-6日目、1日目、8日目および15日目に、筋肉内注射(i.m)で免疫を投与した。血液を6日目と16日目に尾静脈から採取した。実験終了時(21日目)にマウスを安楽死させ、脾臓を回収し、且つ腫瘍を摘出した。マウスの全ての群は、13匹の動物からなる。
【0221】
【0222】
読み出しは、1)初回免疫時からの体重(BW)変化、2)腫瘍容積(TV)、および3)循環するC22ネオエピトープ特異的CD8+T細胞、である。
【0223】
結論
それぞれの構築物によって発揮される、種々の用量における腫瘍増殖に対する効果を
図26A(EVX-02)および26B(EVX-03)に示す。EVX-03で免疫した場合に明確な向上が観察された(
図26C):mEVX-02は最も高い用量において顕著な抗腫瘍応答を誘発したが、mEVX-03は試験した全ての用量において顕著な抗腫瘍応答を誘発した。
【0224】
プラスミド構築物の用量に対して評価した場合、mEVX-03はまたmEVX-02に対して明確な(顕著ではないものの)向上を示した。
図27Aおよび27Bを参照:試験した全ての用量においてEVX-03はEVX-02に比してより効率的であった。
【0225】
C22特異的CD8+T細胞の誘導に関して、これらは、異なる用量のmEVX-02およびmEVX-03で予防的に免疫したマウスの試験6日目および16日目の尾静脈血中において観察された(
図28Aおよび28B参照)。しかしながら、mEVX-03は、同じ用量においてmEVX-02よりもネオエピトープ特異的T細胞反応を誘発することにおいて強力だった(
図29Aおよび29Bを参照)。コントロールサンプル(ナイーブマウスおよび空ベクター免疫化マウス)において、四量体シグナルは検出されなかった。
【0226】
動物はDNA免疫に十分に忍容性があった。
【0227】
結論
本発明による抗原提示細胞標的化単位の存在についてのみ区別される2つの構築物による免疫の直接の比較は、APC標的化単位を含むことがプラスミドのより低い投与量の使用を可能にすることを確認する。
【0228】
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【表5-7】
【表5-8】
【表5-9】
【表5-10】
【表5-11】
【表5-12】
【配列表】
【国際調査報告】