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特表2023-521726ウイルスベクター産生のための3次元バイオリアクター
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ウイルスベクター産生のための3次元バイオリアクター
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230518BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230518BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230518BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C12N5/10
C12M3/00 A
C12M1/00 A
C12N7/01
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561146
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021070371
(87)【国際公開番号】W WO2021207766
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/008,441
(32)【優先日】2020-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500553730
【氏名又は名称】サウスウエスト リサーチ インスティテュート
【住所又は居所原語表記】6220 CULEBRA ROAD SAN ANT ONIO,TEXAS 78238 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】リン,ジアン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA21
4B029AA23
4B029BB11
4B029BB13
4B029BB20
4B029CC02
4B029CC10
4B065AA93X
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA05
4B065BC42
(57)【要約】
本開示は、ウイルスベクター産生細胞の増殖及びウイルスベクターの最終的な採取のための3次元(3D)バイオリアクターの設計、製作及び応用に関する。バイオリアクターは、細胞の付着及び増殖のための連続的な3次元表面領域を提供する非ランダムな相互接続されたボイドから構成される。3Dバイオリアクターは、単層細胞培養を維持し、及び細胞の凝集、表現型の変化又は細胞外産生を低減又は防止するために、画定された幾何学的形状、表面コーティング及び流体力学でスケーラブルでもあるとともに、バイオリアクターの適切な表面コーティング下において、レンチウイルスベクターを提供するHEK293T細胞の培養に特に好適である。本発明は、弱毒生ウイルス若しくは不活化ウイルス又はウイルスベクターに基づく他のタイプのウイルス及びワクチンを産生することにも及び得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスベクター産生細胞の増殖の方法であって、
細胞増殖のための表面領域を有する複数のボイドを含む3次元バイオリアクターであって、前記複数のボイドは、直径Dを有し、前記ボイド間の複数の細孔開口部は、D>dであるような直径dを有し、(a)前記ボイドの90%以上は、±10.0%を超えて変動しない選択されたボイド体積(V)を有し、及び(b)前記ボイド間の前記細孔開口部の90%以上は、±10.0%を超えて変動しないdの値を有する、3次元バイオリアクターを供給すること、
前記3次元バイオリアクターにウイルスベクター産生細胞を播種すること、
前記3次元バイオリアクターに灌流媒体を流し、及びウイルスベクター細胞増殖を促進すること
を含む方法。
【請求項2】
前記3次元バイオリアクター内の前記ウイルスベクター産生細胞にトランスフェクション試薬を送達することと、ウイルスベクターを産生することとをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ウイルスベクター産生細胞は、HEK293T細胞を含み、及び前記ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ボイドは、0.4mmを超える直径(D)を有し、及び前記細孔は、0.20mmを超える直径(d)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ボイドは、0.4mm超~100.0mmの範囲の直径(D)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細孔は、0.2mm~10.0mmの範囲の直径(d)を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ボイドの95.0%以上は、±10.0%を超えて変動しないボイド体積(V)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記ボイドの99.0%~100%は、±10.0%を超えて変動しないボイド体積(V)を示す、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ボイド間の前記細孔開口部の95.0%以上は、±10.0%を超えて変動しないdの値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ボイド間の前記細孔開口部の99.0~100%以上は、±10.0%を超えて変動しないdの値を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
存在する前記ボイドの少なくとも90.0%は、1つのボイド当たり2個の細孔開口部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
存在する前記ボイドの少なくとも90.0%は、1つのボイド当たり8~12個の細孔開口部を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ボイドは、内部凹状面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ボイドは、球状ボイドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記球状ボイドは、3D円筒状空間において64.0%を超える充填効率を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記3Dバイオリアクターは、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記3Dバイオリアクターは、生体適合性である材料から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記3Dバイオリアクターは、細胞増殖中に加水分解を受けにくい材料から形成され、それにより、加水分解の量は、存在する前記材料の5.0重量%を超えない、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記バイオリアクターは、直径Φと高さHとを有し、及び比Φ:Hは、1:1超~100:1の範囲である、請求項1に記載の3Dバイオリアクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に完全に援用される、2020年4月10日に出願された米国仮特許出願第63/008,441号の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本開示は、ウイルスベクター産生細胞の増殖及びウイルスベクターの最終的な採取のための3次元(3D)バイオリアクターの設計、製作及び応用に関する。バイオリアクターは、細胞の付着及び増殖のための連続的な3次元表面領域を提供する非ランダムな細孔を通して相互接続された非ランダムなボイドから構成される。こうした3Dバイオリアクターは、単層細胞培養を維持し、及び細胞の凝集、表現型の変化又は細胞外産生を低減又は防止するために、画定された幾何学的形状、表面コーティング及び流体力学でスケーラブルでもあるとともに、バイオリアクターの適切な表面コーティング下において、レンチウイルスベクターを提供するHEK293T細胞の培養に特に好適である。本発明は、弱毒生ウイルス若しくは不活化ウイルス又はウイルスベクターに基づく他のタイプのウイルス及びワクチンを産生することにも及び得る。
【背景技術】
【0003】
細胞に対する遺伝子改変は、改変された遺伝子を、ウイルスベクターを用いて生細胞内に送達することを介して実現される。ウイルスは、非常に巧妙であり、人体に侵入してその遺伝物質を人間の細胞に加えることができる。現在、研究者は、この能力を有利に利用することを学んでいる。ウイルスは、病気を引き起こす遺伝子とは対照的に、「良い」遺伝子を人間の細胞に送達するための媒介物として使用されることが多い。ウイルスは、研究者が病原物質を取り除き、正しい遺伝物質を加えると、ベクターに改変される。CAR T細胞遺伝子治療では、研究者は、遺伝子送達ツールとして(レンチウイルスから改変された)レンチウイルスベクターを使用することが多い。最もよく知られているレンチウイルスは、AIDSを引き起こすヒト免疫不全ウイルス(HIV)である。レンチウイルスベクターは、(HIV遺伝子を無効化した後に)安全性が高く、細胞性免疫反応が低く、分裂細胞及び非分裂細胞の両方で形質導入(遺伝子改変)を受けることができるために使用されている。FDAは、癌治療におけるレンチウイルスベクターの使用を承認している。
【0004】
現在、遺伝子治療における何百もの初期臨床試験では、大量のレンチウイルスベクターが必要とされている。不都合なことに、レンチウイルスベクターは、労働及び集約的な製造プロセスの結果として非常に高価である。レンチウイルスベクターは、現在、CAR T細胞製造コストの約20%~40%を占めており、これは、比較的高いCAR T細胞治療コスト(1回の治療につき50万ドル)の一因となっている。レンチウイルスベクターは、通常、粘着性ヒトHEK293T細胞を用いて、複数のプラスミドをウイルスベクターにパッケージングして産生される。プラスミドは、染色体とは独立して複製することができる、細胞内の小さいDNA分子である。典型的な実験室でのレンチウイルスベクターの産生プロセスは、上流プロセスと下流プロセスとから構成される。上流プロセスでは、HEK293T細胞が培養皿で培養される。2つのパッケージングプラスミド、1つのエンベロープコード化プラスミド及び1つのトランスファープラスミドから構成される4つのプラスミドが細胞内に送達される。プラスミドは、生HEK293T細胞内において、標的細胞の遺伝子改変を担当するトランスファーベクターを担持するレンチウイルスベクターにパッケージングされる。HEK293T細胞から細胞培養培地内に分泌された、パッケージングされたレンチウイルスベクターが採取される。下流プロセスでは、採取されたレンチウイルスベクターが精製され、標的細胞の遺伝子改変に使用することができる最終製品に濃縮される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ウイルスベクター成分を発現させるウイルスベクター産生細胞の産生を改善する方法及びデバイスが依然として必要とされている。より具体的には、選択されたウイルスベクターの臨床応用用量要件を達成するために、改善されたバイオリアクター設計、費用対効果の高い製造技法及び改善されたバイオリアクター動作能力を提供することにより、細胞増殖、特にウイルス及びウイルスベクターを産生するために用いられることが多い、HEK293T、Vero及びMDEK等の細胞の増殖を改善する方法及びデバイスが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ウイルスベクター産生細胞の増殖のための3Dバイオリアクターであって、3D空間に繰り返し可能なパターンで充填された複数の非ランダムな相互接続されたボイドを、前記ボイド間の複数の非ランダムな細孔開口部とともに含むバイオリアクターである。本バイオリアクターは、あり得る最大の表面積対体積比を達成することを目指す一方、幾何学的形状は、単層細胞培養を維持し、高い細胞せん断応力、細胞の凝集、表現型の変化又は細胞外マトリックスの産生を低減又は防止するように設計され、ウイルスベクター産生細胞の増殖に特に好適である。
【0007】
1つの実施形態では、本発明は、ウイルスベクター産生細胞の増殖の方法であって、
細胞増殖のための表面領域を有する複数のボイドを含む3次元バイオリアクターであって、前記複数のボイドは、直径Dを有し、前記ボイド間の複数の細孔開口部は、D>dであるような直径dを有し、(a)前記ボイドの90%以上は、±10.0%を超えて変動しない選択されたボイド体積(V)を有し、及び(b)前記ボイド間の前記細孔開口部の90%以上は、±10.0%を超えて変動しないdの値を有する、3次元バイオリアクターを供給すること、
前記3次元バイオリアクターにウイルスベクター産生細胞を播種すること、
前記3次元バイオリアクターに灌流媒体を流し、及びウイルスベクター細胞増殖を促進すること
を含む方法に関する。
【0008】
別の実施形態では、本発明は、細胞増殖のための表面領域を有する複数のボイドを含む、ウイルスベクター産生細胞の増殖のための3Dバイオリアクターに関する。複数のボイドは、0.4mm超~100.0mmの直径Dを有し、ボイド間の複数の細孔開口部は、0.2mm~10.0mmの範囲の直径dを有し、D>dであり、(a)前記ボイドの90%以上は、±10.0%を超えて変動しない選択されたボイド体積(V)を有し、及び(b)ボイド間の細孔開口部の90%以上は、±10.0%を超えて変動しないdの値を有し、3Dバイオリアクターは、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から形成されることをさらに特徴とする。
【0009】
さらなる実施形態では、本発明は、ウイルスベクター産生細胞の増殖のための3Dバイオリアクターであって、
細胞増殖のための表面領域を有する第1及び第2の複数のボイドを含み、
前記第1の複数のボイドは、直径Dを有し、第1の複数のボイド間の複数の細孔開口部は、直径dを有し、D>dであり、複数のボイドの90%以上は、±10.0%を超えて変動しない許容誤差を有するボイド体積(V)を有し、
前記第2の複数のボイドは、直径Dを有し、第2の複数のボイド間の複数の細孔開口部は、直径dを有し、D>dであり、第2の複数のボイドの90%は、±10.0%を超えて変動しない許容誤差を有するボイド体積(V)を有し、及び
及びVの値は、異なり、
[V±10.0%]≠[V±10.0%]
であるように前記許容誤差変動から外れている、3Dバイオリアクターに関する。
【0010】
本発明は、ウイルスベクター細胞増殖のための表面積を有する複数のボイドを含む3Dバイオリアクターを形成する製作又は製造方法にも関する。したがって、最初に、複数のボイドについて、目標とする内部ボイド体積(V)を設計/特定し、3Dバイオリアクターについて、目標とする表面積(SA)も特定することができる。その後、これに続き、3Dバイオリアクターを、(1)Vの±10.0%以内である1つ又は複数のボイドの実際のボイド体積(V)、及び/又は(2)SAの±10.0%以内である3Dバイオリアクターの実際の表面積(SA)を有するように形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】3Dバイオリアクター固定床の断面図を示す。
図1a】隣接する球の重なりを示す、バイオリアクターの単位ネガモデルを示す。
図1b】各球が12個の同一の隣接する球に囲まれている、単位ネガモデルを示す。
図1c】相互接続されたボイドシステムを示す3Dバイオリアクター固定床の幾何学的形状を示す。
図1d】3Dバイオリアクター固定床の幾何学的形状を断面図で示す。
図1e】3Dバイオリアクターの特定された球状ボイドと、球状ボイド間の相互接続された細孔を形成するそれらの重なり領域とを2D図で示す。
図2】流体灌流のための入口及び出口を備えたハウジング内に位置決めされた3Dバイオリアクター固定床を示す。
図3】典型的な3Dバイオリアクター灌流システムを示す。
図4a】3Dバイオリアクターを通る流量プロファイルを示す。
図4b】3Dバイオリアクターを通る流量プロファイルを示す。
図4c】3Dバイオリアクターを通る流量プロファイルを示す。
図4d】3Dバイオリアクターを通る流量プロファイルを示す。
図4e】3Dバイオリアクターを通る流量のスケールを示す。
図5a】3Dバイオリアクターの表面せん断応力の分布を示す。
図5b】3Dバイオリアクターの表面せん断応力の分布を示す。
図5c】Pa単位のせん断応力のスケールを示す。
図6a】円筒状の3Dバイオリアクターにおける流れ方向に沿った圧力降下(勾配)を示す。
図6b】圧力のスケールを示す。
図7a】FDM 3D印刷によって生成された3Dバイオリアクター固定床を示す。
図7b】3Dバイオリアクター固定床をバイオリアクターチャンバとともに示す。
図7c】3Dバイオリアクターの入口及び出口を示す。
図7d】組み立てられた3Dバイオリアクターを示す。
図7e】SLA 3D印刷によって生成された3Dバイオリアクター固定床を示す。
図7f】DLP 3D印刷によって生成された3Dバイオリアクター固定床を示す。
図8】層流に近づくように3Dバイオリアクターの入口及び出口に配置された2つの流体分配器を示す。
図9】流体分配器を使用した場合の3Dバイオリアクターを通る流量プロファイルを示す。
図10a】ポリドーパミン及びフィブロネクチンコーティングを含む非医療用ABS樹脂から作製された基板上の細胞付着を示す。
図10b】ポリドーパミン及びフィブロネクチンコーティングを含む非医療用ABS樹脂から作製された基板上の細胞付着を示す。
図10c】ポリドーパミン及びフィブロネクチンコーティングを含む非医療用ABS樹脂から作製された基板上の細胞付着を示す。
図10d】ポリドーパミン及びフィブロネクチンコーティングを含む医療用ABS樹脂から作製された基板上の細胞付着を示す。
図10e】ポリドーパミン及びフィブロネクチンコーティングを含む医療用ABS樹脂から作製された基板上の細胞付着を示す。
図10f】ポリドーパミン及びフィブロネクチンコーティングを含む医療用ABS樹脂から作製された基板上の細胞付着を示す。
図11a】3Dバイオリアクター表面上の細胞付着を示す。
図11b】3Dバイオリアクター表面上の細胞付着を示す。
図11c】3Dバイオリアクター表面上の細胞付着を示す。
図12a】細胞播種後の3Dバイオリアクターの入口上の細胞付着を示す。
図12b】7日間の培養期間後の細胞分布を示す。
図12c】細胞播種後の3Dバイオリアクターの固定床上の細胞付着を示す。
図12d】7日間の培養期間後の細胞分布を示す。
図12e】細胞播種後の3Dバイオリアクターの壁上の細胞付着を示す。
図12f】7日間の培養期間後の細胞分布を示す。
図12g】細胞播種後の3Dバイオリアクターの流体分配器上の細胞付着を示す。
図12h】7日間の培養期間後の細胞分布を示す。
図13A】4日の期間にわたる3Dバイオリアクターにおける細胞数の変化を示す。
図13B】本明細書における3Dバイオリアクターを使用するヒト由来脂肪幹細胞の増殖を示す。
図13C】3Dバイオリアクターの内面で増殖している、生細胞のヒト由来脂肪幹細胞を示す緑色蛍光画像を示す。
図14】示された細胞増殖のレベルを提供するように、120個を超えるTフラスコの使用に対する、3つの異なるサイズの本明細書における3Dバイオリアクターの使用の比較を示す。
図15a】T25培養フラスコを示す。
図15b】3Dバイオリアクター足場を示す。
図15c】播種後に細胞培養培地内に配置された3Dバイオリアクターを示す。
図16】トランスフェクションの24、48及び72時間後のT25フラスコ及び3Dバイオリアクター足場上のトランスフェクトされたHEK293T細胞の緑色蛍光画像を示す。
図17】FITC蛍光画像(20倍対物レンズ)を示し、3Dバイオリアクター足場上に播種された細胞から産生されたGFPウイルスベクター(左列)を用いるHEK293T細胞の形質導入と、市販のpLenti-C-mGFPウイルスベクターを用いるHEK293T細胞の形質導入とを比較する。
図18】ウイルスベクター産生のための灌流式3Dバイオリアクターを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
好ましい実施形態の詳細な説明
本開示は、ウイルスベクター産生細胞の細胞増殖を実現する対応する動作能力を有するバイオリアクター設計に関する。本明細書においてバイオリアクターと言う場合、それは、選択された環境及び動作条件下において生物学的及び/又は生化学的プロセスを実施することができる、開示される3Dリアクターを指す。これには、(バイオリアクターの全体寸法を決定する)ボイドの幾何学的形状/サイズ、ボイド間の相互接続された細孔サイズ及び含まれるボイドの総数のうちの1つ又は複数の制御が含まれる。加えて、表面コーティング、バイオリアクター内のボイドを通る流れ特性、pH、温度、圧力、酸素、栄養分供給及び/又は廃棄物除去を選択的に制御することができる。
【0013】
本明細書における3Dバイオリアクターは、培養継代及び関連するMSC表現型変更を低減又は排除することもできる、HEK293T細胞を産生するウイルスベクター等、好ましくは比較的少ない数のドナー細胞から細胞増殖を提供するバイオリアクターである。図1には、概して、3Dバイオリアクターの好ましい固定床10を切断図で示す。この図は、好ましい充填された球形ボイド構造及び球形ボイド間のそれらの相互接続された細孔の例を示す。
【0014】
より具体的には、バイオリアクターは、連続的な相互接続された3D表面領域12を含み、これは、ウイルスベクター産生細胞が付着して単層として増殖することを可能にするとともに、表面対体積比を最大限にする内部凹状面を有する、好ましくは図示するように球形状の複数の相互接続された非ランダムボイド14をバイオリアクター内に画定する。ボイドは、何らかの画定された体積の開放空間として理解される。非ランダムであると言うことにより、ここで、所望の許容誤差の実際の繰り返しボイドサイズ及び/又は幾何学的形状をもたらす、3Dバイオリアクター内の目標とするか又は選択された数のボイドを特定し得ることが理解されるべきである。
【0015】
連続表面であると言うことにより、増殖するウイルスベクター産生細胞は、3Dバイオリアクター内で1つの表面領域の場所から別の場所に容易に移動することができ、表面は、表面におけるランダムな断絶又は0.1mm以上のランダムな間隙等のいかなるランダムな中断も含まないことが理解される。好ましくは、細胞増殖のための3Dバイオリアクター内の表面領域の50%以上が連続表面であり、より好ましくは3Dバイオリアクター内の表面領域の60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上又は99%以上が連続的である。
【0016】
加えて、バイオリアクター固定床10は、ボイド間の非ランダムな相互接続された細孔開口部16を含む。この場合にも、非ランダムであると言うことにより、ここで、所望の許容誤差の細孔直径を有する実際の数の細孔をもたらす、ボイドのための目標とするか又は選択された数の選択された細孔直径の細孔を特定し得ることが理解されるべきである。切断図で示すようなバイオリアクターは、非ランダムボイドの層を最終的に画定し(矢印「L」を参照されたい)、バイオリアクターの複数の層により、列(矢印「C」を参照されたい)内の複数のこうした非ランダムボイドの特定が可能になることも理解され得る。
【0017】
バイオリアクターは、FDM(熱溶解積層法)3D印刷技術において使用される、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリ乳酸(PLA)、ポリカプロラクトン(PCL)等、生体適合性又は生体不活性ポリマー材料から作製することができる。生体適合性又は生体不活性と言う場合、それは、培養細胞に対して無毒性の材料と理解されるべきである。さらに、3Dバイオリアクターのためのポリマー材料は、好ましくは、細胞培養中に加水分解を受けにくいポリマーから選択され、それにより、加水分解の量は、存在するポリマー材料の5.0重量%を超えず、より好ましくは2.5重量%を超えず、最も好ましくは1.0重量%を超えない。バイオリアクターは、SLA(ステレオリソグラフィ)及びDLP(デジタルライトプロセッシング)3D印刷技術において使用される生体適合性の感光性材料(例えば、Pro3Dure、Somos WaterShed XC 11122等)から作製することもできる。
【0018】
バイオリアクターを製作するために使用される材料は、水性培地中で分解性ではなく、細胞増殖中に水性培地流に耐える機械的に安定した構造を提供し得ることが好ましい。材料及び製造プロセスは、単層細胞増殖のための固体の滑らかな相互接続された表面領域をもたらし得ることが好ましい。固体表面と言うことにより、表面は、典型的には、約20ミクロン~100ミクロンの直径を有する培養ウイルスベクター産生細胞による貫通又は埋没を低減又は防止するようなものであることが理解されるべきである。好ましくは、本明細書における3Dバイオリアクターは、ある表面粗度値(Ra)を有する表面を有するバイオリアクターであり、表面粗度値は、評価長さ内で記録される平均線からの断面高さの偏差の絶対値の算術平均を指す。したがって、本明細書において、3Dバイオリアクター表面のRaは、20μm以下、より好ましくは5μm以下の値を有することが企図される。
【0019】
本明細書における3Dバイオリアクターは、好ましくは、少なくとも10又は10~95の範囲、より好ましくは45~95の範囲のショアD硬さを示す材料から形成されるものでもある。こうした点において、本明細書における3Dバイオリアクターは、ヒドロゲル型構造を利用しないものであることにも注目すべきであり、このヒドロゲル型構造は、幾分かの量の架橋を含むとともに、大量の水(例えば、10~40重量%)を吸収する親水型ポリマー構造と理解され得る。本明細書における3Dバイオリアクターは、好ましくは、細胞が容易に消化し、再構築することができる、コラーゲン、アルギナート、フィブリン及び他のポリマーを利用しないものであることにも注目すべきである。
【0020】
さらに、本明細書における3Dバイオリアクターは、好ましくは、少なくとも0.01GPaの引張弾性率を有する材料から作製されるものである。より好ましくは、引張弾性率は、0.01GPaの増分で0.01GPa~20.0GPaの範囲の値を有する。さらにより好ましくは、3Dバイオリアクターのための材料の引張弾性率は、0.01GPa~10.0GPa又は1.0GPa~10GPaの範囲である。例えば、本明細書における3Dバイオリアクターの製造に好適な先に言及したポリマー材料に関して、ポリスチレンは、約3.0GPa、ポリカーボネートは、約2.6GPa、ABSは、約2.3GPa、PLAは、約3.5GPa及びPCLは、1.2GPaの引張弾性率を示す。
【0021】
こうした好適な規則的な幾何学特性及び連続的な表面領域を有する、本明細書における3Dバイオリアクター設計は、好ましくは、例えばSolidWorks(商標)コンピュータ支援設計(CAD)プログラムによって利用可能になるコンピュータ生成設計に従い、FDM、選択的レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロセッシング(DLP)3D印刷技術等、付加製造技術によって製作される。
【0022】
好適な例として、SolidWorks(商標)を利用して、3Dバイオリアクター設計を作成するプロセスを以下に示す。バイオリアクターネガに関するコンピュータモデルが最初に作成される。より具体的には、例えば、球間に直径1.0mmの接続細孔を作成するように重なり合う、充填された直径6.0mmの球を使用して、3Dバイオリアクターネガとして説明することができるものが作成された。当然のことながら、他のあり得る寸法は、本開示に広く関連して企図される。
【0023】
球は、好ましくは、六方最密(HCP)格子として配置されて、各球が12個の隣接する球によって取り囲まれることになる、効率的に(又は隙間なく)充填された幾何学的形状をもたらす。この例示的な幾何学的形状の単位セルを図1aに示す。より具体的には、図1aには、HCP格子の単位セルがあり、ここでは、最上部の3つの球が半透明として表示されて、隣接する球間の6つの放射状の重なり合う領域を示す。細孔は、これらの重なり合う領域に形成される。好ましくは、充填を最適化するために、細孔の最大数は、12個である。最少の細孔数は、3Dバイオリアクターのボイドを通る培地灌流を可能にするために2個である。本明細書における灌流培地は、典型的には、細胞の増殖を支持するように設計された液体又はゲル等の細胞培養培地である。典型的な培養培地は、成長因子、付着因子、ホルモン、脂質及びミネラルの供給源としての、アミノ酸、ビタミン、無機塩類、グルコース及び血清の補体からなる人工又は合成培地である。灌流培地は、無血清培地、無タンパク質培地又は化学的に定義された培地等、他の合成培地でもあり得る。灌流培地は、血液、血漿、羊水等の天然培地でもあり得る。
【0024】
したがって、3Dバイオリアクターに存在するボイドの少なくとも90.0%~100%は、1つのボイド当たり少なくとも2個の細孔開口部を有する。より好ましくは、3Dバイオリアクターにおけるボイドの少なくとも90.0%~100%は、1つのボイド当たり8~12個の細孔開口部を有する。1つの特に好ましい実施形態において、3Dバイオリアクターにおけるボイドの少なくとも90.0%~100%は、存在する複数のボイド内の隣接するボイド間の1つのボイド当たり12個の細孔開口部を有し、より好ましくは隣接するボイド間に8~12個の相互接続された細孔開口部があり、1つの特に好ましい実施形態では、隣接するボイド間に12個の細孔開口部がある。
【0025】
図1bに単位のすべての球を示す。次いで、バイオリアクターの幾何学的形状は、好ましくは、ネガモデルを反転させて、図1cに示す相互接続された球状ボイドシステムを含むポジモデルを作成することによって作成される。さらに、図1dでは、断面図において、この場合にも3Dバイオリアクターを見ることができ、この断面図は、規則的な幾何学特性(上述したものと実質的に同じボイド体積の制御)を有する、切断図において14で示す相互接続されたボイドと、対応する相互接続された細孔開口部16との別の例示を提供する。
【0026】
上述した好ましい規則的な幾何学的3Dバイオリアクターにおいて、ボイド直径と、相互接続された細孔の直径との関係を特定することができる。図1eに注目されたい。この好ましい形状に関して、球状ボイド1は、実線の円によって表され、直径は、(矢印によって示す)Dである。したがって、直径「D」は、ボイド内面上の任意の2つの点間の最長距離と理解することができる。球状ボイド2は、破線の円によって表され、これも直径Dを有する(図示せず)。球状ボイド2は、球状ボイド1の12個の隣接するボイドの1つである。隣接するボイド間の重なりにより、球状ボイド間に相互接続された、この場合にも概して水平な矢印によって示す「d」の直径を有する細孔が形成される。したがって、直径「d」は、細孔開口部における任意の2つの点間の最長距離と理解することができる。ボイドの総3D球面積は、SAvoid=4×π×(D/2)である。Scapと称するAとBとの間の表面積=π×D×hであり、式中、
【数1】
である。3Dバイオリアクターにおける所与のボイドに対する有用なボイド表面は、SA=SAvoid-[12×Scap]である。
【0027】
ボイド直径Dが小さいほど、設定された3D空間(容積)内により多数のボイドを充填することができ、したがって全体的な細胞培養面がより大きくなる。しかしながら、(本明細書で考察するように、細胞増殖を阻止し、細胞の表現型の変化を引き起こす可能性がある)細胞の凝集を最小限にするか又は防止するために、この幾何学的形状に関して、細孔の最小直径d=0.2mmである。細孔の直径dは、0.2mm~10mm、より好ましくは0.2mm~2.0mmの範囲内であり得る。最も好ましくは、d≧0.5mmであり、0.5mm~2.0mmの範囲内である。
【0028】
D=0.40mm以下の場合、d=0.2mmである場合に計算されるSAは、0未満であり、これにより不可能な構造となり、したがって、この3Dバイオリアクターの幾何学的形状に関して、Dは、>0.4mmでなければならない。しかしながら、Dは、0.4mm~100.0mm、より好ましくは0.4mm~50.0mmであるとともに、0.4mm~25.0mmの範囲の値を有することができる。Dの1つの特に好ましい値は、2.0mm~10.0mmの範囲である。比較的大きいDの値を有する球状ボイドは、同じバイオリアクター体積内で可能な限り細胞培養表面積を増大させるという目的を損なう可能性がある。したがって、図1Eに示す好ましい幾何学的形状に関して、D>0.4mm(ボイドの直径)及びd>0.20mm(細孔の直径)である。0.4mm~100.0mmの範囲のボイドに対する直径Dの任意の選択された値及び0.2mm~10.0mmの範囲の細孔に対する直径dの任意の選択された値に関して、Dの値は、dの値よりも大きくなるような値(D>d)であることにも注目すべきである。
【0029】
ここで、本明細書における3Dバイオリアクターは、その非ランダム特性に関して特徴付けられ得ることが理解され得る。好ましくは、3Dバイオリアクター内のボイドのすべては、最も効率的な3D空間充填を達成し、対応する最大の連続的な表面領域を提供するように、実質的に同じ体積を有するようなものである。任意の所与の3Dバイオリアクターに存在する相互接続されたボイドの総数に関して、好ましくは、こうしたボイドの90.0%以上、又はさらにこうしたボイドの95.0%以上、又はさらにこうしたボイドの99.0%~100%は、許容誤差が±10.0%、又は±5.0%、又は±2.5%、又は±1.0%、又は±0.5%、又は±0.1%を超えて変動しないようなボイド体積(V)を有する。図1のボイドは、概して、球状として示すが、他のボイド幾何学的形状も企図されることが留意されるべきである。ボイドの直径は、細胞の凝集を最小限にするか又は回避し、及び細胞培養のための有用な最大表面領域を提供するように選択される。
【0030】
本明細書における3Dバイオリアクターの別の非ランダム特性は、直径dを有する、ボイド間の細孔開口部である(再び図1eを参照されたい)。上記と同様に、ボイド間の細孔開口部の90.0%以上、又はさらに細孔開口部の95.0%以上、又はさらに細孔開口部の99.0%~100%は、許容誤差が±10.%、又は±5.0%、又は±2.5%、又は±1.0%、又は±0.5%、又は±0.1%を超えて変動しないdの値を示す。
【0031】
したがって、ここで、細胞の増殖のための本明細書における3Dバイオリアクターは、細胞増殖のための表面領域を含み、複数のボイドは、直径D(ボイド内面上の任意の2つの点間の最長距離)を有し、前記ボイド間の複数の細孔開口部は、直径d(細孔開口部における任意の2つの点間の最長距離)を有し、D>dであることを理解することができる。加えて、ボイドの90%以上は、±10.0%を超えて変動しないボイド体積(V)を有し、細孔開口部の90%以上は、±10.0%を超えて変動しないdの値を有する。
【0032】
加えて、ウイルスベクター産生細胞の増殖のための本明細書における3Dバイオリアクターは、直径Dを有する第1の複数のボイドと、前記第1の複数のボイド間における、直径dを有する複数の細孔開口部とを含むことができ、D>dであり、第1の複数のボイドの90%以上は、±10.0%を超えて変動しない許容誤差を有するボイド体積(V)を有する。こうした3Dバイオリアクターは、直径Dを有する第2の複数のボイドと、前記第2の複数のボイド間における、直径dを有する複数の細孔開口部とを有することもでき、D>dであり、第2の複数のボイドの90%は、±10.0%を超えて変動しない許容誤差を有するボイド体積(V)を有する。V及びVの値は、異なり、それらの許容誤差変動から外れている。換言すれば、±10.0%の許容誤差を有するVの値及び±10.0%の許容誤差を有するVの値は、異なるか、又は[V±10.0%]≠[V±10.0%]である。
【0033】
したがって、ボイド内の表面の曲率半径(Rc)は、好ましくは、1/0.5(D)又は1/0.2mm=5mm-1以下である。好ましくは、Rcは、0.2mm-1~1.0mm-1の値を有することができ、これは、10.0mm~2.0mmのDの値に対応する。高い曲率(大きいRc)の表面は、細胞表現型の変化を引き起こす可能性もある典型的な単層2D培養と著しく異なる環境を提供する。
【0034】
ウイルスベクター産生細胞は、好ましくは、3Dバイオリアクターの相互接続された球状ボイド表面に播種される。こうした3D構造は、好ましくは、スケーラブルであり、比較的小さいフットプリントで比較的多数の細胞の増殖のための比較的高い表面積対体積比を提供することができる。表面積対体積比は、好ましくは、球状ボイドの直径によっても決まる。直径が小さいほど、表面積対体積比が高くなる。好ましくは、ボイドは、20μm~100μmのサイズを有する細胞の増殖のために、細胞の凝集を低減又は回避するためにも、比較的「平坦な」表面(すなわち小さい曲率半径≦1.0mm-1)を提供する。加えて、上記で示唆したように、相互接続された細孔の直径dを制御することにより、細胞の凝集も低減又は回避され、この直径は、好ましくは、少なくとも500μmであるが、上述したように200μmを超える任意のサイズである。
【0035】
したがって、バイオリアクター固定床10は、好ましくは、図2にさらに示すように、使い捨ての3Dバイオリアクターとしての役割を果たすことができる。より具体的には、バイオリアクター10は、ハウジング18内に位置決めし、次いで流体の流入及び流出を提供することができる入口及び出口コンパートメント20に配置することができる。好ましくは、バイオリアクター10、ハウジング18並びに入口及び出口コンパートメント20は、付加製造技術を使用して単一の構成要素として製作することができる。図3に示すように、ハウジング18内のバイオリアクター10並びに入口及び出口コンパートメント20は、細胞増殖のための3Dバイオリアクターシステム全体の一部となることができる。より具体的には、3Dバイオリアクターは、好ましくは、こうした細胞増殖を促進するために、3Dバイオリアクターを通してウイルスベクター産生細胞培養培地及び酸素を送達する灌流システム内に位置決めされる。2DのTフラスコにおいて使用される複数の継代細胞増殖方法は、3Dバイオリアクターが数十、数百又は数千のTフラスコと均等な細胞培養領域を有することを除いて、3Dバイオリアクターに直接に適用することもできる。多継代細胞培養に加えて、少数のドナー細胞から臨床的に妥当な数の細胞への一段増殖も企図され、したがって増殖中のMSCの表現型の変化を含む多継代問題が排除される。
【0036】
ここで、理解することができるように、本明細書における3Dバイオリアクターは、相互接続されたボイドの直径に応じて比較的大きい表面積対体積比を提供する。例として、直径5cm及び高さ15cmの円筒を画定する従来のローラーボトルは、236cmの細胞増殖表面積を提供する。同じ体積を使用して、本明細書における3Dバイオリアクターに相互接続された直径2.0mmのボイドを封入する場合、合計44,968の球状ボイドをその空間内に充填することができ、これは、ローラーボトル表面積よりもほぼ24倍大きい約5,648cmの表面積を有するマトリックスを提供することができる。加えて、ローラーボトルは、約9.4×10のみの細胞を採取することができるが、本明細書における均等な体積の3Dバイオリアクターは、2.2×10の細胞を採取するように企図される。
【0037】
ホローファイバー又はマイクロキャリアベースのバイオリアクターと比較して、本明細書における3Dバイオリアクターの少なくとも1つの独特な特徴は、断片化される表面の代わりに、大きい相互接続された連続的な表面を提供することが可能であることである。したがって、本明細書における3Dバイオリアクター内の連続的な表面は、細胞がある領域から別の領域により自由に移動することを可能にすることが企図される。したがって、細胞は、局所的に増殖すると同時に、徐々に領域外に移動して、細胞間の接触阻害及び分化を回避することができる。図3に示す灌流システムを使用して、バイオリアクターの内部に栄養分又は細胞シグナルの勾配を容易に作成して、(創傷治癒プロセスの場合のように)増殖しながら開放空間内への細胞移動を誘導し得ることが企図される。
【0038】
本明細書における3Dバイオリアクターは、比較的少数のウイルスベクター産生細胞をマトリックス表面にわたって比較的均一に播種することを可能にすることも企図される。播種細胞の数は、3Dバイオリアクターのサイズに応じて、有用なボイド表面積1平方センチメートル当たり30~3000細胞の範囲になり得ることが企図される。本明細書における3Dバイオリアクター内の3D空間内に分散される細胞は、比較的大きい細胞内2D分離を有して、直接的な細胞間接触を回避することができる。同時に、近くの細胞からのシグナルを受け取ることを可能にする、(例えば、細胞が反対方向の球状表面上に存在する場合)比較的短い3D分離距離を有することが可能である。
【0039】
ここで、3Dバイオリアクターを製作するための本明細書に示す好適な3D印刷技術と併せて、計算流体力学(CFD)を使用して、バイオリアクター内部における培地流をシミュレーションし、3Dの相互接続された表面の任意の場所における流量及びせん断応力を推定して、細胞培養環境を改善する最適化を可能にすることができる。より具体的には、CFDを採用して、本明細書におけるバイオリアクターの3Dの相互接続されたボイドを通る流れ特性をシミュレーションするとともに、(1)流速、(2)圧力降下、及び(3)壁せん断応力の分布を推定した。後者のパラメーター、すなわちせん断応力が細胞増殖に重要であることを理解することができる。せん断応力の低下により、せん断によって引き起こされる細胞分化を低減又は防止することができる。
【0040】
下記で報告するシミュレーションにおいて、17.5mmの直径、5.83mmの高さ、2mmのボイド直径及び0.5mmの細孔直径を有する(コンピュータシミュレーション速度を上昇させるために)小規模の円筒状3Dバイオリアクターを使用した。この場合、バイオリアクターの直径(Φ=17.5mm)対高さ(H=5.83mm)比は、3:1であり(図1d)、これは、バイオリアクターの入口と出口との間の栄養分及び酸素の勾配を低減させるのに好ましい比である。固定床球面に利用可能な細胞密度に基づいて、酸素及び栄養分消費率を推定し、どの程度の頻度で細胞培養培地を交換する必要があるか(すなわち体積流量)を求めた。このシミュレーションでは、38.5μm/秒の全線流量を想定した。3Dバイオリアクターへの投入として、38.5μm/秒の速度の層流を使用し、CFD結果を図4図6に示す。
【0041】
図4a、図4b、図4c及び図4dは、小規模の円筒状3Dバイオリアクター全体にわたる流速プロファイルを示す。図4eは、流量のスケールを示す。より具体的には、図4aは、バイオリアクターの側から見た流量分布を示す。流れは、流れ方向に沿って細孔を通して各球状ボイドを通過する。図における白色/灰色の領域は、流体の流れがない球状ボイド間の固体領域である。図4eの色付きの速度スケールバーと比較することにより、図4aは、流れ方向に沿った細孔における流量が200μm/秒~240μm/秒の最大流量を達成することを示す。対照的に、球面の近くの流量は、0.06μm/秒~19.0μm/秒の最小まで減少し、これは、球面上に存在する細胞への流れが原因となるせん断応力を著しく低下させることになる。
【0042】
図4bは、バイオリアクターの上部から3D構造の中心断面を通して見た速度プロファイルを示す。この場合にも、画像は、最大流量が流れ方向に沿った球状ボイドの細孔の各中心にあることを示す。この最大流量は、この場合にも、200μm/秒~240μm/秒の範囲である。球面の近くの流量は、この場合にも低く、0.06μm/秒~19.0μm/秒の値を有する。
【0043】
図4cは、放射状の相互接続された細孔を通過する流れを示す個々の球ボイドの速度プロファイルを示す。したがって、図4cは、球状ボイドの内側の流れ分布の有用な例示を提供する。高い流量は、細胞のないボイドの中心の空の空間にあり、200μm/秒~240μm/秒のレベルである。細胞は、流量が低下し、流量がこの場合にも0.06μm/秒~19.0μm/秒のレベルである凹状のボイド表面に存在する。したがって、この独特な構造は、比較的高い流れ応力に曝されることから細胞を保護することができる。これは、例えば、細胞培養培地中に懸濁し、細胞に栄養分及び酸素を送達するためにバイオリアクター中で撹拌される、凸状の球面を有する直径300μm~400μmのマイクロビーズの外面上で細胞が増殖されるマイクロキャリアベースのリアクターと比較した、本明細書に記載する3Dバイオリアクターの別の独特な利点である。こうした凸状の球面上に存在する細胞は、0.1Paまでの比較的大きいせん断応力に曝される可能性があり、これは、細胞の形態、透過性及び遺伝子発現に影響を及ぼすことが知られている。図4dは、流れ方向に沿った側部の細孔を通る流れ経路を示し、これは、本明細書における3Dバイオリアクターが比較的一定の流れパターンをもたらして、全体を通して栄養分及び酸素を提供することを示している。
【0044】
したがって、好ましい3Dバイオリアクター内部の計算された最大線流量は、流れ方向に沿った直径2.0mmのボイド間の相互接続された直径0.5mmの細孔において生じる200μm/秒~240μm/秒である。図4a~図4eに示すように、流れは、優先的には、流れに沿って中心方向であるが、球面の近くにも依然として流れ(約19.0μm/秒)があり、球面に存在する細胞への栄養分の供給を可能にする。したがって、3Dバイオリアクター構造を通した流れの対流及び拡散の両方によって栄養分を供給することができるため、細胞は、この構造を通して任意の場所に存在し、任意の場所で生育できることが企図される。
【0045】
図5a及び図5bは、上述した円筒状3Dバイオリアクター全体にわたる及び単一の球状ボイド表面における表面せん断応力の分布を示す。図5cは、Pa単位のせん断応力のスケールを示す。最高のせん断応力は、相互接続された細孔の縁部で観察された。これは、これらの場所において流量がより高いためである。しかしながら、バイオリアクター内の有用な球面領域の大部分は、3×10-4Pa未満のせん断応力を示し、これは、バイオリアクターの表面積の90%以上と理解することができる。これは、せん断によって引き起こされる分化を伴わない細胞増殖を提供する。加えて、4.0×10-3Paの最大せん断応力でも、ホローファイバーベースのバイオリアクター、ウェーブバイオリアクター及びマイクロキャリアベースのバイオリアクターにおいて培養される場合に細胞が受ける平均せん断応力よりも低いと考えられる。したがって、本明細書における3Dバイオリアクターは、既存の細胞増殖バイオリアクターと比較して、細胞増殖に対して比較的低いせん断応力環境を提供することが企図される。例えば、Large-Scale Industrialized Cell Expansion: Producing The Critical Raw Material For Biofabrication Processes, A. Kumar and B. Starly, Biofabrication 7(4):044103 (2015)を参照されたい。
【0046】
図6aは、上述した円筒状3Dバイオリアクターの底部から上部への流れ方向に沿った圧力降下を示す。図6bは、圧力の適用可能なスケールを提供する。この図は、バイオリアクターの入口と出口との間の全体的な圧力降下が1.0Pa以下であることを示す。したがって、圧力降下は、0.1Pa~最大で1.0Paの範囲で低下する可能性がある。換言すれば、バイオリアクターの入口及び出口の近くの細胞は、著しい圧力の差を受けない。圧力の低い勾配は、こうした設計がまた、バイオリアクターの入口と出口との間で栄養分/代謝産物濃度の小さい勾配(又は差)をもたらすことを示唆する。この低い勾配は、直径Φが高さHよりも大きいが、バイオリアクター総体積が同じままであるようなバイオリアクターの設計に起因する。これは、ホローファイバーバイオリアクターよりも優れている。バイオリアクターの入口と出口との間における栄養分/代謝産物の勾配を低減させるΦ>H比を有するホローファイバーバイオリアクターを製作することは、困難である。
【0047】
異なるアスペクト比(すなわちΦ:H比、Φ:バイオリアクター固定床の全体的な直径、H:バイオリアクター固定床の全体的な高さ)を有する同じ総体積の円筒状3Dバイオリアクターに関しても比較を行った。図1dを参照されたい。表1に示すように、同じ体積流量(体積流量=流れの断面積×線速度)に対して低いΦ:H比を有するバイオリアクターでは、線速度が著しく上昇する。線速度の上昇は、表面せん断応力、圧力降下とともに、入口と出口との間の栄養分/代謝産物濃度の勾配を増大させ、これは、細胞増殖に好ましくない影響を与える。したがって、開示する固定床3Dバイオリアクターは、好ましくは、あるΦ:H比構造、例えば1:1超~最大で100:1の範囲のΦ:H比に設計される。好ましくは、Φ:H比は、1:1超~最大で10:1である。
【0048】
【表1】
【0049】
図7aは、相互接続された直径6mmのボイド及び相互接続された1mmの細孔を有する、FDM3D印刷によって生成された3Dバイオリアクター固定床部分を示す。この3Dバイオリアクターは、ABSフィラメントを用いて印刷した。この特定の3Dバイオリアクターの直径(Φ)及び高さ(H)は、それぞれ4.28cm及び1.43cmである。したがって、Φ:H比は、3:1である。約134個の相互接続された開放ボイドが固定床に含まれる。細胞培養のための相互接続された連続的な球面の総面積SAは、約152cmである。入口及び出口壁並びに入口及び出口にある流体分配器22(図8)は、細胞培養のための追加の88cmの表面積を提供する。換言すれば、3Dバイオリアクター内において、約240cmの細胞付着のための有用な総表面積がある。流体分配器は、バイオリアクターを通る層流を向上させることができる。レノルズ数が2100未満又は0超~最大で2100未満の範囲内である場合、流体分配器は、任意選択的である。
【0050】
図7bは、3Dバイオリアクターの固定床が、バイオリアクターチャンバ内に結合した溶媒であったことを示す。これは、固定床とチャンバ壁との間の間隙を封止することになり、これにより、灌流細胞培養培地は、そうした隙間ではなく、相互接続された細孔を強制的に通過することになる。好ましくは、固定床及びチャンバは、製造効率を高めるために一体化部品としてともに印刷される。図7cは、バイオリアクターの入口及び出口を示す。それらは、固定床を通る層流を促進するように幾何学的に設計されている。バイオリアクターの入口は、任意選択的に組込み式回転歯車を含み、これは、一様な細胞播種のためにバイオリアクターの回転を制御するステッピングモータに結合することができる(下記を参照されたい)。図7dに統合型バイオリアクターを示し、これは、流体流を導くために1/8インチ管に接続することができる。別法として、入口及び出口を繰り返し使用するように作製することができ、その場合、内部のバイオリアクター固定床のみが使い捨てである。図7eには、SLA3D印刷によって製造された、6.0mmのボイド及び1.0mmの細孔を有する3Dバイオリアクター固定床も示す。図7fは、DLP3D印刷を使用した、直径3.0mmのボイド及び0.5mmの細孔を有する3Dバイオリアクター固定床である。
【0051】
次に、流体分配器22(図8)は、好ましくは、3Dバイオリアクターを通る流れの均一性を向上させるようなものであることが留意されるべきである。入口、出口及び流体分配器の設計は、好ましくは、(1)3Dバイオリアクターを通る流れの均一性を向上させること、(2)バイオリアクターの全体的なプライミング容積を低減させるための入口及び出口の死容積24の最小化、及び(3)バイオリアクター内の気泡捕集の防止も考慮する。図9は、流体分配器を使用することによるCFDシミュレーションに基づく、3Dバイオリアクター全体にわたる流速プロファイルを示す。流体分配器(図8)の使用は、流れの均一性を向上させた。最大流量(約30μm/秒)及び最低流量(約10μm/秒)は、互いに比較的近く、一様な層流(すなわち比較的平行な層の流体の流れ)を促進するのに役立つ。バイオリアクターのいずれの場所においても流量が比較的一様であることは、バイオリアクターの様々な場所に存在する細胞に対するせん断応力の差もより小さくすることになる。
【0052】
3Dバイオリアクターは、選択的レーザー焼結(SLS)、ステレオリソグラフィ(SLA)、デジタルライトプロセッシング(DLP)等の他の付加製造技術によって製作することができる。図7b、図7e、図7f。
【0053】
ABSを使用する3D印刷されたバイオリアクター(図7d)の場合、バイオリアクターの疎水性内面は、好ましくは、細胞付着を可能にするように修飾される。したがって、ABS表面を改善するために、プライマーコーティングとしてのポリドーパミン、それに続くフィブロネクチンコーティングを利用した。コーティング手順を最適化するために、異なる濃度の塩酸ドーパミン(Sigma #H8502)及びフィブロネクチン(Sigma #F1141)を使用したコーティングをそれぞれ医療用及び非医療用ABSの両方の基材上で評価した。10mMトリス緩衝液(25℃でpH=8.5)に溶解した0.25mg/mLのドーパミン中でのABS表面の約18時間の期間にわたるインキュベーションにより、その後のフィブロネクチンコーティングに効果的なポリドーパミン層が得られた。ポリドーパミンコーティング後、50又は100μg/mLの濃度のフィブロネクチン(ウシ血漿由来フィブロネクチン)中でのABS表面の4時間のインキュベーションにより、間葉幹細胞付着が促進された。ポリドーパミンに加えてフィブロネクチンコーティングの使用は、本明細書において開示するABSベースの3Dバイオリアクター以外のバイオリアクター、特に疎水性材料で製作されたバイオリアクターへの使用にも企図されることが留意されるべきである。ポリドーパミンプライマーコーティングは、ペプチド、コラーゲン、ラミニン、複数の細胞外基質タンパク質又は特定の細胞型により必要とされる選択された抗体等の他のコーティングと組み合わされ得ることも留意されるべきである。ポリドーパミンは、バイオリアクター表面上に堆積した後、次いでマイケル付加反応及び/又はシッフ塩基反応を介して機能的リガンドと結合することができる。したがって、リガンド分子は、アミン及びチオール官能基等の求核性官能基を含む。
【0054】
図10a、図10b及び図10cは、上述したポリドーパミンコーティング後の、20μg/mlフィブロネクチン、50μg/mlフィブロネクチン及び100μg/mlフィブロネクチンのコーティング用濃度での非医療用ABSに対する(緑色蛍光で標識化されている)細胞付着をそれぞれ示す。図10d、図10e及び図10fは、20μg/mlフィブロネクチン、50μg/mlフィブロネクチン及び100μg/mlフィブロネクチンのコーティング用濃度での医療用ABSに対する細胞付着をそれぞれ示す。これらの図は、医療用ABS及び非医療用ABSの両方がポリドーパミン/フィブロネクチンコーティング後に同様の細胞付着性能を有することを示唆している。50μg/ml又は100μg/ml濃度でのフィブロネクチンのコーティングが良好な細胞付着に好ましい。これらの図は、細胞が、3D印刷プロセス中に生成された表面テクスチャに対して整列していたことも示す。したがって、細胞増殖には、SLA又はDLP3D印刷によって生成されたバイオリアクター表面が好ましい。
【0055】
3Dバイオリアクターに対しても細胞付着を評価した。(緑色蛍光で標識化されている)細胞が3Dバイオリアクター表面上に良好に付着することを示す図11a、図11b及び図11cを参照されたい。図11aは、3Dバイオリアクター固定床を示し、図11bは、球形ボイドの表面上に播種された(緑色蛍光を指す矢印で標示されている)細胞を示し、図11cは、細胞が球形ボイド間の相互接続された細孔の近くに位置することを示す。
【0056】
上記で示唆したように(図3)、本明細書における3Dバイオリアクターは、好ましくは、灌流システムにおいて利用される。より具体的には、3Dバイオリアクター取付具を37℃のインキュベータ内に配置して、システムを体温で維持した。Cole-Parmer Masterflexポンプを使用して、酸素発生器への通過後に細胞培養培地をバイオリアクターに送達した。MCQ3チャネルガス混合器が適切な量の酸素、二酸化炭素及び窒素を混合し、酸素発生器にガス混合物供給を提供して細胞培養培地を調整した。ガス混合器により、ガス混合物は、必要に応じて約2%酸素濃度の低酸素状態をもたらすように制御することができ、これは、21%の酸素濃度よりも比較的急速な間葉幹細胞の増殖を提供することが企図される。ガス混合器は、バイオリアクター内の全細胞数の増加に従って酸素濃度を調節することもできる。加えて、灌流システムにおいて、細胞播種中の3Dバイオリアクターは、好ましくは、バイオリアクターがバイオリアクター軸を中心に回転し、それにより細胞がバイオリアクター内により均一に播種されるように、水平に位置決めし、ステッピングモータに接続することができる。
【0057】
3Dバイオリアクターの細胞播種は、以下のように一例として達成することができる。図7a~7dに示す3Dバイオリアクターの場合、バイオリアクターの全プライミング容積は、約22mLであり、これは、固定床の体積(約16mL)並びに入口及び出口の空間(約6mL)を含む。25mL中に懸濁した合計1.5×10個の間葉幹細胞をバイオリアクター内に注入した。注入は、2mL/分の注入速度を用い、シリンジポンプにより行った。培地注入直後、バイオリアクターをバイオリアクター取付具上に水平に配置して、バイオリアクターを、その軸を中心に0.15RPMの回転速度により低速で回転させた。したがって、本明細書におけるバイオリアクターは、0.5RPM~0.5RPMの範囲の回転速度で回転され得る。バイオリアクターを約6時間回転させた後、灌流を開始した。この細胞投入法を使用して、96.3%の高投入効率が測定された。
【0058】
播種後のバイオリアクター内部の細胞分布を観察するために、細胞をバイオリアクターの表面上に固定した。次いで、固定された細胞をDAPI蛍光染料(青色)で染色して、細胞核を標識した。次いで、バイオリアクターを接合して内部チャンバを開き、蛍光顕微鏡を使用して、バイオリアクター内部の種々の表面上の細胞付着及び分布を観察した。図12a、図12c、図12e及び図12gは、入口、固定床、壁及び流体分配器上の細胞分布をそれぞれ示す。すべての領域は、比較的低い細胞密度の播種細胞を示していた。画像は、細胞播種がバイオリアクター全体にわたって比較的均一に分布していたことを示している。図12b、図12d、図12f及び図12hは、7日間の増殖期間後のバイオリアクター内部の対応する表面上の細胞分布を示す。図12a及び図12bは、3Dバイオリアクター入口壁であり、図12c及び図12dは、3Dバイオリアクター内壁上であり、図12e及び12fは、3Dバイオリアクター中心ボイド球面上であり、図12g及び図12hは、3Dバイオリアクター流動誘導表面上である。
【0059】
静的な(培地灌流なしの)細胞播種期間後、3Dバイオリアクターは、好ましくは、バイオリアクター内部の気泡の捕集を防止するために、灌流中に垂直位置で配置される(バイオリアクター入口が出口より低い)。図7dに示す組み立てられたバイオリアクターを2mL/分の流量で灌流した。CFDシミュレーションによれば、38.5μm/秒の層流速度は、細胞に対する比較的高いせん断応力を発生させない。4.28cmの固定床直径又は約14.4cmの断面積を有する、図7に示すこのバイオリアクターの場合、計算される等価流量は、3.3mL/分である。体積灌流速度は、バイオリアクターの全体積及び断面積、バイオリアクター内部の球形ボイド直径及び細孔直径並びに細胞型、酸素及び栄養物消費、せん断耐性等によって決まることが留意されるべきである。したがって、細胞製造プロセスの開発により、最適化された灌流速度が決定される必要がある。
【0060】
細胞培養培地は、3Dバイオリアクターへの流入前に酸素発生器を通して循環した。ガス混合器は、74%のN、21%のO及び5%のCOを含有するガス混合物を生成し、これを、酸素発生器内に供給して細胞培養培地をリフレッシュしてから、バイオリアクター内の細胞に送達した。
【0061】
24時間毎にグルコース及びラクテートの変化を測定した。グルコース及びラクテートの変化に基づいて、バイオリアクター内部の細胞の数を推定した。図13Aは、4日の期間にわたるバイオリアクター内の細胞数の変化を示す。増殖曲線は、細胞増殖の3つの期間、すなわち緩やかな細胞増殖(第1日目)、指数関数的細胞増殖(第2日目)並びに増殖停滞(第3日目及び4日目)を示す。採取時における約8×10個の細胞が4日間の増殖後に予期される。
【0062】
次に、図13Bは、本明細書における3Dバイオリアクターを用いたヒト由来脂肪幹細胞(hADSC)の細胞増殖を示す。細胞増殖は、アラマーブルー(Alamar Blue)アッセイから推定される細胞数によって示している。図13Cは、3Dバイオリアクターの内面上で増殖する生細胞を示す緑色蛍光画像を提供する。
【0063】
細胞が80%の密集度又は約0.4×10細胞/cmで採取されると想定すると、図14に示すような10、10及び10の細胞増殖能力を有するバイオリアクターは、それぞれ250cm、2,500cm及び25,000cmの全細胞培養表面積を必要とする。バイオリアクターが直径2.0mmの球形ボイド及び12個の直径0.5mmの相互接続された細孔から構成されると想定する。各球形ボイドは、SAu=10.16mmを有する。換言すれば、10、10及び10の細胞増殖能力を有するバイオリアクターは、2,461個、24,606個及び246,063個の2.0mmの球状ボイドを必要とする。各球形ボイドが4.19mmの容積、(SolidWorks(商標)コンピュータシミュレーションによる)73.6%の合理的充填効率を有することを考慮すると、10、10及び10の細胞増殖能力を有するバイオリアクターは、それぞれ14.0cm、140.1cm及び1400.8cmの容積を必要とする。充填効率は、球形ボイドにより占有される容積(Voccupied)を、所与の直径Φ及び高さHを有する3D円筒空洞空間の全容積(Vcylinder)で除したものを指す。本明細書における3Dバイオリアクターの場合、充填効率は、好ましくは、64.0%超、より好ましくは70.0%超の値、最も好ましくは75.0%超の値を有する。バイオリアクターの直径Φ及び高さHが3:1の比を有すると想定すると、図15に示す10、10及び10の細胞増殖能力を有するバイオリアクターは、5.2cm(Φ)及び1.7cm(H)、16.4cm(Φ)及び5.5cm(H)、51.8cm(Φ)及び17.3cm(H)のΦ及びHをそれぞれ有する。バイオリアクターは、1010、1011、1012の細胞増殖能力まで拡張可能であることも期待される。
【0064】
次いで、3Dバイオリアクターからの細胞分離を評価した。2種類の試薬を細胞分離に試験した。一方は、従来のトリプシン-EDTA(0.25%)であり、他方は、新たなTrypLE Selectであった。後者は、トリプシンの優れた代替物であると期待される。約5分間の温暖(37℃)インキュベーション期間でトリプシンを使用して、3Dバイオリアクターから細胞の95%超を成功裏に分離することが可能であった。
【0065】
ウイルスベクター産生
上述したように、本明細書における3Dバイオリアクターは、付着性ウイルスベクター産生細胞の増殖及びそれに続くウイルスベクターの採取に特に好適であることが分かった。付着性ウイルスベクター産生細胞は、細胞が3Dバイオリアクター表面に付着するという特徴を指す。本明細書に記載する3Dバイオリアクターは、好ましくは、上記で示唆したように、好ましいウイルスベクター産生細胞であるHEK293T細胞が3Dバイオリアクター表面に付着して増殖することができるように、表面を親水性にするように処理される。
【0066】
好ましくは、表面処理としては、UV/オゾン処理、プラズマ処理及びフィブロネクチン、コラーゲン、ラミニン、ゼラチン等の細胞外マトリックスタンパク質によるバイオリアクター表面のコーティング等が挙げられる。3種類の異なるUV/オゾン処理条件による細胞付着に対して比較を行った。足場の入口にオゾンを投入し、出口が可燃性フード内の油浴にオゾンを放出した。オゾン発生器への空気流量は、2mL/分に設定した。オゾン処理中、バイオリアクターをUV254nmの光に曝した。UV/オゾン処理は、3分間、5分間、10分間とした。オゾン処理の長さが異なる3Dバイオリアクターに対して、HEK293T細胞付着能力を比較した。
【0067】
1.75mLの酸素平衡化細胞培養培地に懸濁した合計5×10のHEK293T細胞を、UV/オゾン処理の長さが異なる3つのバイオリアクターの各々の内部に充填した。バイオリアクターを0.15RPMで軸回転させながら、バイオリアクター内で細胞を4時間インキュベートした。4時間後、非付着細胞をバイオリアクターから流し出した。表2は、長さの異なるUV/オゾン処理下でのHEK293T細胞付着を示す。この結果は、UV/オゾン処理を10分間行ったバイオリアクターが最も細胞付着が多かったことを示す。この結果は、後述するように、入口及び出口のない3次元バイオリアクター足場上でHEK293T細胞を培養した後述する実験でも確認されている。
【0068】
【表2】
【0069】
従来のTフラスコと3Dバイオリアクター足場とのウイルスベクター産生の比較
本明細書に記載する灌流式3Dバイオリアクターを用いる実験前に、静的細胞培養条件(すなわち灌流手順のような入口又は出口がない条件)下において、本明細書における3Dバイオリアクター足場を利用して初期試験を行った。これらの条件下において、3Dバイオリアクター足場の内面におけるHEK293T細胞の付着及び増殖を画像化して、バイオリアクター内でのHEK293T細胞の増殖を確認することができる。
【0070】
ここで、表3にGFP(緑色蛍光タンパク質)レンチウイルスベクター産生の例示的なプロセスフロー図を示す。パッケージング細胞として、HEK293T細胞株(ATCC番号CRL-11268)を用いた。HEK293T細胞は、2mMのL-グルタミン及び10%の熱不活化ウシ胎児血清(FBS)を含む高グルコースDMEM培養培地で培養した。第3世代のレンチウイルスパッケージングプラスミド(Origene、カタログ番号TR30037)及びC末端GFPタグ付きレンチベクター(Origene、カタログ番号PS100065)を購入し、このレンチウイルスベクター産生の研究に使用した。このトランスフェクション混合液又は試薬を用いてHEK293T細胞をトランスフェクトすることは、GFPレンチウイルスベクターを産生することが企図される。加えて、本明細書におけるトランスフェクション試薬は、細胞内の所定の遺伝子の発現を増強又は抑制する試薬を指すことが留意されるべきである。トランスフェクトされた細胞は、GFP自体を発現すると同時に、より多くのGFPレンチウイルスベクターを産生することになる。産生されたGFPレンチウイルスベクターは、その後、形質導入を介してGFP遺伝子を他の標的細胞に送達することができる。形質導入は、標的細胞への遺伝物質の送達を指す。形質導入に成功した標的細胞は、GFPを発現し、したがって本来透明であった細胞を、現世代及び次世代において緑色の蛍光を発する細胞に変換する。この場合にGFPを発現している細胞は、その後、蛍光顕微鏡下で容易に画像化される。
【0071】
【表3】
【0072】
この研究では、ともに同じ25cmの細胞培養表面積を有するT25フラスコ及び本明細書における3Dバイオリアクター足場間でレンチウイルスベクター上流の産生効率を比較した。図15a、T25培養フラスコ、図15b、3Dバイオリアクター足場及び図15c、播種後に細胞培養培地中に配置された3Dバイオリアクター足場を参照されたい。本明細書における3Dバイオリアクター及び標準培養フラスコによって産生されたウイルスベクターの機能的有効性を比較するために、上述したようにトランスファーベクターコード化GFPを担持したレンチウイルスベクターを採用した。細胞トランスフェクション及び形質導入の有効性は、トランスフェクト又は形質導入された細胞から画像化される緑色蛍光強度によって評価した。レンチウイルスベクターの収量は、リアルタイムPCRアッセイを用いて推定した。
【0073】
1mLの細胞培養培地に懸濁した合計5×10のHEK-293T細胞を、超低付着面を有する6ウェルプレート内に配置された3Dバイオリアクターに播種した。すべての細胞が、6ウェルプレートの底面ではなく、3Dバイオリアクター上に付着することを確実にするために、超低付着面を有する6ウェルプレートを使用した。足場がガスケットの中心にはまるようにシリコンガスケットをウェル内に配置して、3Dバイオリアクターの足場から細胞培養液が漏れないようにし、播種細胞の大部分が足場に付着するようにした。一晩の細胞播種後、足場を、増殖のために超低付着面を有する新たな12ウェルプレート(図15c)に移動した。播種から18時間後、抗生物質を含む培地を、抗生物質を含まない培地と交換した。4時間後、すなわち播種から24時間後、HEK293T細胞を、GFPを含むレンチウイルスベクタープラスミドでトランスフェクトした。トランスフェクションから18時間後、トランスフェクション培地を除去し、新鮮な抗生物質を含まない培地と交換した。トランスフェクトされた細胞は、緑色蛍光を示し始めたため、蛍光顕微鏡で可視化した。
【0074】
図16は、T25フラスコ及び3Dバイオリアクター足場上のトランスフェクトされたHEK-293T細胞の、トランスフェクションから24、48、72時間後における緑色蛍光画像を示す。これらの画像は、両基材上で培養された細胞が成功裏にトランスフェクトされたことを示している。トランスフェクションから24時間後及び48時間後に細胞培養培地を回収し、Applied BiosystemsのリアルタイムPCR機器を用いて、GFPレンチウイルスベクターの収量を定量化した。表4は、Tフラスコ及び3Dバイオリアクター足場上で培養された細胞からのGFPレンチウイルスベクターの収量を比較する。その結果は、同じ表面積に同じ数の細胞を培養した場合、バイオリアクター足場上で培養された細胞からのレンチウイルスベクターが、T25フラスコ上で培養された細胞からのベクターの2倍を超える量であることを示している。バイオリアクター足場上で培養された細胞からの収量の方が高いのは、足場内部の3D空間に存在する細胞が相対的に高いトランスフェクション効率を有するためと考えられる。
【0075】
【表4】
【0076】
3Dバイオリアクター足場により産生されたウイルスベクターの機能を検証する
この実験は、3Dバイオリアクター足場上で培養されたHEK293T細胞から産生されたウイルスベクターが、市販のGFPウイルスベクターpLenti-C-mGFP(Origen、カタログ番号PS100071V)と同じ感染多重度(MOI)で他の標的細胞を形質導入し得ることを示すためのものであった。実験前に、リアルタイムPCRにより、産生されたGFPウイルスベクター及び購入されたpLenti-C-mGFPのウイルス力価(濃度)は、それぞれ5.31×10及び3.31×10TU/mlであることが分かった。
【0077】
両方のGFPベクターを使用して、GFPレンチウイルスベクターの産生に関与しなかったHEK293T細胞の新たなバッチを形質導入した。1ウェル当たり76,800個の細胞となる240,000細胞/cmの播種密度で細胞を播種するために、96ウェルプレートを用いた。HEK293T細胞の適切な付着を確実にするために、プレートを0.2%のゼラチンでコーティングした。播種した細胞を一晩インキュベートした後、20時間で2倍になる前に細胞を形質導入した。実験に使用したMOIは、それぞれ1、3、5及び10であった。形質導入効率を高めるために、1ウェル当たり0.2μlのカチオン性ポリマーポリブレンを使用した。
【0078】
結果を図17に示す。図17は、3Dバイオリアクター足場によって産生されたGFPウイルスベクターが、市販のpLenti-C-mGFPウイルスベクターと同じMOIでHEK293T細胞を形質導入し得ることを示す。この研究は、レンチウイルスベクター産生に対する本明細書における3Dバイオリアクター足場の有効性を示す。
【0079】
灌流式3次元バイオリアクターを用いるウイルスベクター産生
自動化されたウイルスベクター産生を実証するために、灌流式バイオリアクターによる細胞培養(図18)を構成した。この研究では、14.4mm×6.25mm(直径×高さ)のマトリックス寸法と、24.1cmの総内部表面積とを有する3Dバイオリアクターにおいて、HEK293T細胞を培養した。このバイオリアクターは、相互接続された細孔直径が0.5mmである、3mm径の相互接続された球形ボイドから作製されている。細胞培養培地は、バイオリアクターの入口から流入し、蠕動ポンプによって駆動されるバイオリアクターの出口から流出する。本研究で使用された3次元バイオリアクターは、内部の細胞培養構造を同じに維持しながら、比較的大きい寸法のバイオリアクターに容易にスケールアップすることができる。
【0080】
上記に基づき、ウイルスベクター産生のために灌流式バイオリアクターをセットアップした。1.75mLの細胞培養培地に懸濁した合計5×10のHEK293T細胞をバイオリアクターに充填した。その後、バイオリアクターの入口及び出口を閉じ、バイオリアクターを軸回転)させて4時間保持して、バイオリアクターの内面に細胞を播種した。播種後、バイオリアクターを灌流システムに接続し、0.5mL/分の速度で培地をバイオリアクターに灌流させた。
【0081】
播種から18時間後、バイオリアクター及びリザーバからすべての培地を空にして、抗生物質を含まない培地と交換した。4時間後、抗生物質を含まない酸素平衡化培地で2mLのトランスフェクション培地を調製した。その後、バイオリアクターに、0.5mL/分でポンプによって駆動される2mLのトランスフェクション培地を充填した。ポンプは、バイオリアクターが充填されたときに停止した。トランスフェクション培地は、バイオリアクター内部で6時間静的にインキュベートした。その後、バイオリアクター及び灌流回路からトランスフェクション培地を抜き取り、元の抗生物質を含まない培地と交換した。最初のウイルスベクター回収は、トランスフェクションから24時間後に行った。回収中、回路内のすべての培地を回収し、灌流回路は、新鮮な抗生物質を含まない培地と交換した。回収した培地を4℃下において2000×gで10分間遠心分離し、あらゆる細胞残屑をペレット化した。ウイルスベクターを含む上清液を取り、0.45μmフィルタで濾過して、細胞残骸をさらに除去した。その後、濾過したサンプルを短期保存の場合には4℃下、長期保存の場合には-80℃下に置いた。
【0082】
本明細書に開示した3Dバイオリアクターのさらなる特徴の1つは、ここで、ウイルスベクター産生細胞の増殖のための3Dバイオリアクターを、特定の幾何学的及びボイド体積要件並びに対応する利用可能な表面積要件で設計し、比較的最小限の変動でこうした目標を達成する(すなわち製作又は製造中に達成する)ことが可能であることが上記のすべてから理解されるべきである。例えば、ここで、1つ又は複数の内部ボイドが、目標とするボイド体積「V」を有するべきであり、3Dバイオリアクター自体が、細胞培養のための目標とする全体表面積「SA」を有するべきである、3Dバイオリアクターの設計要件を特定することができる。したがって、ここで、1つ又は複数の内部ボイドが、Vの±10.0%以内又はより好ましくは±5.0%以内である実際のボイド体積「V」を有する、こうした3Dバイオリアクターを形成することができる。同様に、細胞培養のための実際の表面積SAは、SAの±10.0%以内、より好ましくはSAの±5.0%以内である。さらに、目標とするボイド内の内面について、目標とする曲率半径「Rc」等、製作のための目標とする幾何学的形状を特定することもでき、その後、製作時、Rcの±5%以内のボイド内面の実際の曲率半径「Rc」を実現することができる。
【0083】
したがって、本発明は、10個から10個への細胞の増殖のために、数百個のTフラスコを使用することから、サイズの異なるわずか3個の個別の3Dバイオリアクターに減らすことができる、スケーラブルな3Dバイオリアクターを記載している。図15に示すように、10細胞から10細胞に増殖させるには、124個のT-フラスコを使用しなければならない。対照的に、サイズが大きくなる本明細書における3Dバイオリアクターを3つ使用して、このレベルの細胞増殖をより容易に実現することができる。加えて、3Dバイオリアクターは、自動閉ループ細胞増殖を容易にし、これにより細胞増殖の効率が大幅に向上し、臨床応用のために細胞を増殖させるcGMP(最新の適正製造基準)規制要件が満たされる。さらに、本明細書における3Dバイオリアクターの使用により、細胞培養培地の使用が大幅に低減する。本明細書における3Dバイオリアクターは、単層細胞培養を維持し、細胞の凝集(細胞間の接触及び/又は積層)、表現型の変化又は細胞外産生を低減又は防止するように、画定された幾何学的形状、表面コーティング及び流体力学でスケーラブルであるとともに、幹細胞、初代細胞及び他の付着性細胞又はバイオリアクターの適切な表面コーティング下の非付着性細胞の増殖に特に好適である。
図1
図1a
図1b
図1c
図1d
図1e
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図5a
図5b
図5c
図6a
図6b
図7a
図7b
図7c
図7d
図7e
図7f
図8
図9
図10a
図10b
図10c
図10d
図10e
図10f
図11a
図11b
図11c
図12a
図12b
図12c
図12d
図12e
図12f
図12g
図12h
図13A
図13B
図13C
図14
図15a
図15b
図15c
図16
図17
図18
【国際調査報告】