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特表2023-521744感染症における血行動態を変更する為の方法及び手段
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】感染症における血行動態を変更する為の方法及び手段
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230518BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 38/07 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230518BHJP
   C07K 5/103 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P31/14
A61P31/00
A61K38/07
A61P11/00
C07K5/103
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561206
(86)(22)【出願日】2021-04-06
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 NL2021050223
(87)【国際公開番号】W WO2021206547
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/005,999
(32)【優先日】2020-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/045,737
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/085,771
(32)【優先日】2020-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522393608
【氏名又は名称】バイオテンプト ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100160738
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 由加里
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンスヴォールト,ヘルト
(72)【発明者】
【氏名】クラーセン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】レネス,ヨハン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA16
4C084BA23
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB331
4C084ZB332
4H045AA30
4H045BA13
4H045BA14
4H045BA15
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
AQGVペプチド又はその機能的類似体を、ヒト対象に投与することを含む治療方法であって、該ヒト対象が、感染症、特に呼吸器感染症、より具体的にはウイルス感染症、より特にはコロナウイルス感染症、を患っており、ここで、AQGVペプチドを投与する処置は、ヒト対象における血行力学的安定性を維持する又は改善することを含む、前記方法が提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における血管の内皮層の透過性を低下させる方法であって、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含む、前記方法。
【請求項2】
呼吸器感染症を患っているヒト対象において、肺胞と肺胞を取り囲む血管網との間のガス拡散距離を低下させる為の、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記物質が、AQGVペプチド、LQGVペプチド、又はいずれかの機能的類似体を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記感染がウイルス感染である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ウイルス感染が、特異的受容体と、肺胞細胞の少なくとも一部に存在する、より遍在する結合性パートナーとを必要とするウイルスによって引き起こされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記特異的受容体がACE-2である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記の、より遍在する結合性パートナーが、シアル酸残基を含む糖タンパク質である、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項8】
前記ウイルスがコロナウイルスである、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記コロナウイルスがCOVID-19又はその変異体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記物質が、静脈内投与され、好ましくは少なくとも75mg/kg/時間の速度で、又はより好ましくは少なくとも90mg/kg/時間の速度で、静脈内投与される、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記物質が断続的に投与される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記対象が血行動態の安定性について監視されている、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
抗ウイルス剤を前記対象に投与することを更に含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法における使用の為の医薬製剤。
【請求項15】
AQGVペプチド又はその機能的類似体と、非経口投与の為に適した添加剤とを含む、請求項14に記載の使用の為の医薬製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、感染に起因する或る効果、特に血行動態効果、を軽減する為の方法及び手段に関する。より具体的には、本発明は、脈管系の透過性に影響を及ぼすウイルス感染症の処置において使用されるペプチド調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、SARS-Cov-2と呼ばれるウイルス、すなわちCOVID-19を引き起こすコロナウイルス、によって引き起こされたパンデミックによって、世界は大きな打撃を受けている。新しいコロナウイルスは主に、肺にある小さな気嚢を流体で溢れさせ、そして詰まらせることによって、生命にとって不可欠な臓器を機能停止させるまで体の酸素供給を停止させることによって殺すようである。そのような自分の流体による窒息は、より多くのコロナウイルスが誘発することができる呼吸器疾患のモデルのようである。様々なエキゾチックな動物におけるそのようなウイルスの大量の蓄積は、既存の免疫がないことを考えると、SARS-Cov-2と同様の窒息を伴う同様のパンデミックを引き起こしうる。ウイルスに特異的なワクチン及び/又は抗ウイルス剤は典型的には、感染が人口の大部分にすでに拡がった後にのみ利用可能になるので、典型的には、ワクチン又は抗ウイルス剤が十分に特異的でないか又は開発が遅すぎるところの人獣共通感染症の発生を通じて、これらのタイプのウイルス感染がさらに増えると予想されるために、処置の為の他の手段及び方法が切実に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
それ故に、これらの感染症に共通する有害な影響と少なくとも闘うことができるようにすることが、永続的且つ継続的に必要とされている。本発明は、まさにそれを行う為の手段及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の実施態様において、本発明は、対象における血管の内皮層の透過性低下させる方法であって、感染、例えばウイルスとの感染、の結果として、透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含む上記の方法を提供する。好ましい実施態様において、本発明は、呼吸器感染症を患っているヒト対象において、肺胞と肺胞を取り囲む血管網との間のガス拡散距離を低下させる方法を提供し、肺胞内の流体の減少を可能にし、及び/又は対象の体への改善された酸素供給を可能にする。好ましい実施態様において、該物質が、AQGVペプチド、LQGVペプチド、又はいずれかの機能的類似体を含む。好ましい実施態様において、本発明は、該方法が、呼吸器ウイルスによる感染を患っているヒト対象において、肺胞と肺胞を取り囲む血管網との間のガス拡散距離を低下させる上記方法を提供する。その上、該ウイルス感染は、肺胞細胞の少なくとも一部に存在する特異的受容体及びより遍在する結合性パートナーを必要とするウイルスによって引き起こされることが好ましい。好ましい実施態様において、上記特異的受容体がACE-2であることが好ましい。他の好ましい実施態様において、該より遍在する結合性パートナーが、シアル酸残基を含む糖タンパク質であることが好ましい。該ユビキタス結合性パートナーがfMLF様アミノ酸配列と結合することが特に好ましく、例えば、該配列は、膜近位外部領域(MPER:membrane-proximal-external-region、本明細書において、融合性配列としてまた識別される)を少なくとも含む。上記ウイルスは、コロナウイルスであり、特に、図11において特定されているMPERを有するコロナウイルスであり、より特には、図12において特定されている融合遺伝子配列(fusogenic sequence)を少なくとも含むことが特に好ましい。上記MPERは、アミノ酸配列KWPWIWL(本明細書において一文字コードによって識別されるアミノ酸)を少なくとも含むことが最も好ましい。更に好ましい実施態様において、本発明は、対象における血管の内皮層の透過性を低下させる方法であって、感染、例えばウイルスによる感染、の結果として、透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含み、ここで、該コロナウイルスがCOVID-19ウイルス(SARS-COV-2)又はその変異体である、上記方法を提供する。
【0005】
本発明はまた、対象における血管の内皮層の透過性を低下させる方法であって、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を該内皮層に提供することを含み、ここで、該物質が、前記対象に静脈内投与され、好ましくは少なくとも75mg/kg/時間の速度で、又はより好ましくは少なくとも90mg/kg/時間の速度で、前記対象に静脈内投与される、上記方法を提供する。その上、前記物質が断続的に投与されることが好ましい。処置中、前記対象が血行動態の安定性について監視されていることが好ましい。本発明はまた、対象における血管の内皮層の透過性を低下させる方法であって、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含み、ここで、前記物質が前記対象に静脈内投与され、ここで、前記方法は更に、抗ウイルス剤、例えばウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの阻害剤であるレムデシビル(GS-5734)、を前記対象に投与することを含む、上記方法を提供する。本発明はまた、対象における血管の内皮層の透過性を低下させる方法であって、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含み、ここで、前記物質は前記対象に静脈内投与され、前記方法は更に、抗炎症剤、例えばデキサメタゾン、又はインターロイキン-6シグナル伝達阻害剤、例えばトシリズマブ、を前記対象に投与することを含む、上記方法を提供する。
【0006】
本発明はまた、対象における血管の内皮層の透過性を低下させる方法において使用する為の医薬製剤であって、前記方法が、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含み、ここで、前記物質が、静脈内投与され、好ましくは少なくとも75mg/kg/時間の速度で、又はより好ましくは少なくとも90mg/kg/時間の速度で、静脈内投与される、上記医薬製剤を提供する。その上、前記物質が断続的に投与されることが好ましい。処置中、前記対象が血行動態の安定性について監視されていることが好ましい。本発明はまた、対象における血管の内皮層の透過性を低下させる際に使用する為の医薬製剤であって、該方法が、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含み、ここで、前記物質は前記対象に静脈内投与され、前記方法は更に、抗ウイルス剤、例えばウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼの阻害剤であるレムデシビル(GS-5734)、を前記対象に投与することを含む、上記方法を提供する。本発明はまた、対象における血管の内皮層の透過性を低下させる際に使用する為の医薬製剤であって、該方法が、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含み、ここで、前記物質は前記対象に静脈内投与され、前記方法は更に、抗炎症剤、例えばデキサメタゾン、又はインターロイキン-6シグナル伝達阻害剤、例えばトシリズマブ、を前記対象に投与することを含む、上記方法を提供する。
【0007】
本発明はまた、AQGVペプチド、LQGVペプチド、又はいずれかの機能的類似体、及び非経口投与の為に適した添加剤を含む、本発明に従って使用する為の医薬製剤を提供する。
【0008】
ヒト対象が、感染症、特にウイルス感染症、より特にはウイルス性呼吸器感染症、を患っている場合に、血行動態の安定性に影響を与える多くの影響が見られる。
【0009】
見られる影響の1つは、血管の増加された透過性であり、血管から細胞間隙への流体の漏出をもたらし、その逆もまた同様であり、肺及び他の臓器に対して悪化した且つ外傷性の損傷を結果として生じる。血管からの漏れによって誘発されるそのような窒息損傷の典型的な兆候は、肺胞内への流体のオーバーフローによる肺における増加された細胞外流体を包含する。
【0010】
また、血栓症が見られる場合があり、特に(深部)静脈血栓症((D)VT:(deep) venous thrombosis)及び肺塞栓症(PE:pulmonary embolism)を生じる。特に呼吸器感染症において、肺胞と血液との間の距離を横切る気体、例えば酸素及び二酸化炭素、についての増やされた拡散距離並びに低酸素血症をもたらしうる。酸素及び二酸化炭素のいずれも、肺胞毛細血管膜と呼ばれる、肺内の薄い層を通過する必要がある。これは、肺内の小さな空気袋(肺胞)と肺を通過する最小の血管(肺毛細血管)との間の薄い層である。酸素がどれだけうまく吸入されて肺胞から血液内に通過することができるか(拡散)、並びに二酸化炭素がどれだけうまく毛細血管から肺胞に戻って吐き出されることができるかは、この膜の厚さ(腫れ)と、転送を行う為に利用できる表面積がどれくらいの大きさであるかに依存する。
【0011】
この問題は、基礎疾患を通じて限られた酸素利用可能性を既に患っている人々において悪化される。酸素及び二酸化炭素の移動の為に利用できる表面積が少ない場合、例えば肺気腫の場合に、又は肺若しくはその一部が、肺がん、又はPE、又は既存の心血管及び代謝の問題並びに肥満の為に切除された場合に、拡散能力が低い可能性がある。
【0012】
また、膜を厚くする原因となる肺疾患、例えば慢性肺疾患、例えば肺線維症、例えばCOPDで見られる肺線維症及びサルコイドーシスで見られる肺線維症、が存在する場合に、拡散能力は低くなりうる。本発明は、部分的な肺容量のみを有するそのような患者に特に有用である。
【0013】
急性疾患はまた、低下された拡散能力、例えば肺への損傷を伴う悪化したウイルス呼吸器感染症における低下された拡散能力、を結果として生じる可能性があり、多くの場合、肺毛細血管の透過性が増加され、毛細血管から、毛細血管から肺胞を分離する細胞外マトリックスの薄層への流体の流れを生成し、ここで、細胞間液貯留により、肺胞細胞を血管細胞から分離する細胞外マトリックス(間質)における流体の蓄積を通じて、膜が厚くなる(膨張する)。そのような肺損傷患者及び悪化した感染性気道感染症を有する患者において、ELISAによって測定されうる内皮活性化のバイオマーカーの血漿レベルは、しばしば死亡率及び罹患率を予測する。特に、アンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の濃度(Ang-2/Ang-1)は、急性肺損傷(ALI:急性肺損傷)患者における死亡率の有用な生物学的マーカーでありうる。Ang-2/Ang-1は、肺損傷で死亡した患者で有意に高いことがわかっている[p=0.01;Crit Care Med.2010 Sep;38(9):1845~1851.]。死腔フラクション(dead space fraction)によって層別化された多変量解析において、Ang-2/Ang-1は、高められた肺死腔フラクションを有する患者における調整されたオッズ比が4.3(95%のCI 1.3~13.5,p=0.01)の独立した死亡予測因子であった。(肺死腔フラクションとAng-2/Ang-1との間の相互作用については、p=0.03)。
【0014】
同様に、D-ダイマーの血漿レベルは、肺への損傷及び内皮活性化を伴う悪化したウイルス呼吸器感染症における患者の健康状態を追跡するために使用されうる。D-ダイマー、すなわち架橋されたフィブリンの溶解産物、は、凝固活性化及びフィブリン形成に応答してフィブリン溶解を示す(doi.org/10.1111/jth.12075)。D-ダイマーレベルは、典型的には、血管内皮細胞に影響を与え且つ内皮の活性化と血漿漏出とに関連付けられたところのウイルス感染に続く発熱期及び回復期において明らかである。Dダイマーアッセイは、描かれたラボ固有のタイプに応じて感度が変わる可能性があり、全てのラボが結果の様々な許容範囲を提供する同じ単位を報告しているわけではない。静脈血栓塞栓症(VTE:venous thromboembolism)を超えて高められたD-ダイマーを引き起こす可能性があるもの、例えば年齢又は妊娠、がたくさんある。D-ダイマーの半減期である8時間により、刺激イベントの後、約3日間、高められたレベルを結果として生じる。定量的D-ダイマーは、94%~98%の感度を保持するが、50%~60%の特異度しかない。これにより、スクリーニングツールとして利用することができるが、病歴及び身体検査からの臨床的証拠を必要とし、好ましくは、診断を確認したり又は患者の健康状態を追跡したりする為に断続的に繰り返される検査を必要とする。
【0015】
従って、本発明は、1つの観点において、血管の内皮層の透過性を低下させる方法であって、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含む上記の方法を提供する。
【0016】
1つの実施態様において、該方法は、呼吸器感染症を患っているヒト対象において、特に制限されて酸素の利用可能性を生じる基礎疾患を有する患者において、肺胞と肺胞を取り囲む血管網との間のガス拡散距離を減少させる(又は少なくとも、拡散距離の増加を防止する)為に役立つ。血管漏出を患っている患者における低下した血管透過性は一般的に、低下したD-ダイマーレベルに関連付けられている。本発明に従うと、1つの実施態様において、本発明に従う方法において使用されるべき物質は、血行動態に影響を与えるペプチド、特に、細胞の間のギャップ結合に影響を与えることによって血行動態に影響を与えるペプチド、を含む。そのようなペプチドは、AQGV及びその機能的類似体を包含する。機能的類似体は、(必ずしも量でなく種類において)同じ又は類似の機能を提供する物質として定義される。基本的に、脈管系の透過性を低下させる任意の物質が本発明に従って使用されうる。1つには、テトラペプチドAQGV(本明細書において、EA-230としてまた云われる)は驚くべきことに、血管透過性を良好に調節することが見出された。特に、EA-230は、患者の炎症活動がない場合でさえも、ヒトにおける血行動態の安定性を有意に改善する。透過性は、血管から漏れる流体の量を支配する。輸液療法の実施は一般的に、漏出を増加させる。第II相試験の患者の観察に基づいて、本発明者等はEA-230で処置された患者において有害な流体貯蔵(流体漏れ)の有意な減少を見つけた(p=0.03)。臨床試験を通じて、EA-230は安全であり且つ十分に耐用性であることが示された。EA-230は、プラセボ患者よりも患者の回復において有意な改善を示す。EA-230で処置された患者は、集中治療室(p=0.0232)及び病院(p=0.0015)からより早く退院できる。
【0017】
EA-230は血行動態の安定性(p=0.006)及び腎機能(p=0.003)を改善する。患者の長期回復が、EA-230により有意に改善された。血管透過性を改善することによって、EA-230は、感染に関連付けられた、肺における有害な流体の発生を低減し、低酸素血症を低減し、PEを低減し、特に、ウイルス性呼吸器感染症において、例えばインフルエンザウイルス、特にはコロナウイルス、によって引き起こされるウイルス性呼吸器感染症において、有害な全身的影響を伴う人工呼吸器の使用をまた低減する。従って、血行動態の安定性を制御する為の活性物質がAQGVペプチドを含むところの本発明に従う方法が特に提供される。本発明に従う機能的及び/又は構造的AQGV類似体は、AQLP、PLQA、LQGV、LAGV、PQVG、PQVA、PQVR、VGQL、LQPL、RQGV、LQVG、LQGA、LQGR、AQGA、QPLA、PQVP、VGQA、QVGQ、VGQGの群から選択されるテトラペプチドを含むペプチド、又は、4~12個のアミノ酸のペプチドの他の順列、特には、上記のテトラペプチドのアミノ酸から構成される4~12個のアミノ酸のペプチドの他の順列、からなる群から選択されうる。本発明は更に、該ウイルス感染が、肺胞細胞の少なくとも一部に存在する特異的受容体及びより遍在する結合性パートナーを必要とするウイルスによって引き起こされるところの方法を提供する。好ましい実施態様において、該ウイルス感染はコロナウイルスによって引き起こされ、ここで、特異的受容体はACE-2であり、特には、該コロナウイルスはSARS-Cov-2またはその変異体もしくは類似体である。本発明に従って処置されうる他のコロナウイルス感染症は、特異的受容体DPP4(例えば、MERSコロナウイルスでの)又はAPN(アミノペプチダーゼN)を保有する。また、該より遍在する結合性パートナーがシアル酸残基を含む糖タンパク質であるところの方法がまた好ましい。該遍在する結合性パートナーは、fMLF様アミノ酸と結合することが特に好ましく、例えば、ここで、該配列は、少なくとも膜近位外部領域(MPER:membrane-proximal-external-region、本明細書において、融合性配列としてまた識別される)を含む。本発明に従うそのような方法は、特に、ウイルスがコロナウイルスである場合に提供される。上記ウイルスは、コロナウイルス、特には、図11において特定されているMPERを有するコロナウイルスであり、より特には、図12において特定されている融合遺伝子配列を少なくとも含むことが特に好ましい。代替的には、該より遍在する結合パートナーは、インフルエンザウイルスによって認識されるシアル酸残基を含む糖タンパク質である。細胞における特異的且つより遍在する結合性/感染部位の組み合わせは、コロナウイルスに典型的であり、本明細書において開示されているように、血行動態におけるそれらの典型的な効果を伴う。
【0018】
更に好ましい実施態様において、AQGVペプチド又は関連物質が静脈内投与され、好ましくは少なくとも75mg/kg/時間、より好ましくは少なくとも90mg/kg/時間、の速度で静脈内投与されるところの方法が提供される。該AQGVペプチド又は関連物質を断続的に投与することは特に有用である。好ましい使用方法は、少なくとも90mg/kg/時で2~4時間投与し、次に、2~4時間の間、又は臨床診断若しくは検査診断による処置に対する患者の反応を監視する限り、30mg/kg/時まで減らし、又は診断研究、例えばポイントオブケア検査、が完了するまで物質の投与を1~2時間停止し、そして次に、少なくとも90mg/kg/時間で2~4時間で処置を再開する。上記監視は、血行動態の安定性及び/又は線維素溶解について該対象を研究することを含むことが好ましい。本発明に従うAQGVペプチドでの処置は、抗ウイルス剤を投与することを更に含みうる。本発明はまた、本発明に従う方法において使用する為の、AQGVペプチド又は関連物質(好ましくは機能的類似体)を含む医薬製剤、又は本発明に従って使用する為の、AQGVペプチド又はその機能的類似体と非経口投与の為に適した添加剤とを含む医薬製剤を提供する。
【0019】
しばしば、減少された拡散を経験しているヒト対象又は患者は、バイタルサインが監視される集中治療室(ICU:intensive care unit)に入院する場合がある。該患者が医療処置を受けて回復し、バイタルサインが許容範囲内にある場合、該患者はICUから解放され、標準的な病院のケアに入院することができる。該患者が標準治療で安定していることが示された場合には、該患者は退院して家に帰ることができる。
【0020】
引き続き、例えば該患者の状態又は感染状態が悪くなった場合には、必要に応じて患者は再入院させられることができる。ICUにおける患者の滞在期間、病院での標準治療での滞在期間、及び/又は患者の再入院に影響を与える患者の健康及び回復に対する改善は、患者に有意な利益をもたらす。従って、本明細書に開示されているペプチド化合物の使用を通じて患者の健康、特に回復速度、を改善するところの本発明に従う任意の手段及び方法は興味深い。
【0021】
AQGVペプチド(本明細書において、EA-230としてまた云われる)の安全性と耐用性、及びその免疫調節効果を評価することを目的とした臨床試験におけるテストでは、該ペプチドは安全であることが判明したが、予想外に、処置された患者を対照の対象と比較した場合に、テスト環境下で免疫調節効果は観察されなかった。免疫調節効果を観察する代わりに、本発明者等は、驚くべきことに、臨床試験において得られたデータを分析すると、以前は観察されなかった、新しく且つ非常に有利な特性がAQGVペプチドに起因する可能性があることを発見した。これらの特性は、既知の且つ観察された免疫調節効果とは明らかに無関係である。
【0022】
従って、本発明は、入院したヒト患者の臨床パラメータ、及び/又は入院から退院までの期間及び/又集中治療を短縮できるような集中治療の臨床パラメータを改善する為の、AQGVペプチド及びその類似体の使用方法に関する。1つの実施態様において、AQGVペプチド及びその類似体の使用は、ヒト対象における血行動態を修正する為の医学的処置における使用の為のものである。更なる実施態様において、血行動態を修正する為のヒト対象における使用は、該ヒト対象における望ましくない流体貯蔵の減少及び/又は血管収縮剤(vasopressive agents)の低減された使用を包含する。別の実施態様において、AQGVペプチド及びその類似体の使用は、肺機能障害を有するヒト対象における使用の為のものである。
【0023】
1つの実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体は、ヒト対象の処置方法において使用する為に提供され、ここで、該使用は、ヒト対象における血行動態を変更する為の処置を含む。血行動態は、血流の動態、すなわち人体を通じて血流を支配する物理的要因を包含する。ヒト患者における血行動態は、例えば血圧及び/又は流体バランスを測定することによって監視されることができる。血圧が、低い場合及び/又は流体バランスがヒト患者において乱れている場合、昇圧剤又は変力物質(inotropes)が使用され得、及び/又は流体が静脈内に投与されうる。変力物質及び昇圧剤は、生物学的且つ臨床的に重要な血管作動性薬(vasoactive medications)であり、該血管作動性薬は、様々な薬理学的グループに由来し並びに体内における最も基本的な受容体とシグナル伝達システムのうちの幾つかに作用する。20超のそのような薬剤が一般的に臨床において使用されているが、それらの薬理学のレビューは生理学及び薬理学の教科書以外にほとんどない。重症患者において広く使用されているにもかかわらず、病的状態におけるこれらの薬物の臨床効果の理解は不十分である。昇圧剤及び変力物質の悪影響は、作用機序に依存する。ベータ刺激を伴う薬剤の場合、不整脈は軽減したい最も一般的な副作用の1つである。
【0024】
本発明者等は、AQGVペプチド又はその機能的類似体を使用することによって、外傷(例えば、ウイルス感染)後のヒト患者における血行動態が、例えば昇圧剤の低減された使用及び/又はヒト患者における改善された流体バランスによって示されるように有意に改善されたことを見出した。従って、本明細書において記載されたAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、ヒト患者における血行動態の安定性を改善する。ヒト対象における血行動態を変更又は最適化することは、例えば該ヒト対象が、感染症、外傷及び/又は失血を患っている場合に、損傷後に重要である。従って、AQGVペプチド又はその類似体は、血行動態療法において有利に使用されることができる。血行動態療法は、目標指向の血行動態療法における患者の血行動態の最適化を含む。そのような治療法は、治療的介入、例えば患者における流体管理及び/又は昇圧剤の使用、を含むことができる。
【0025】
本明細書において、AQGV機能的類似体は、本明細書において記載されたAQGVペプチドと、必ずしも量でなく種類において、類似の効果又は機能を発揮するペプチドとして定義される。該AQGVペプチドは、4アミノ酸の長さを有する。AQGV機能的類似体は、配列同一性を有しうる、すなわち、該AQGVペプチドのうちの少なくとも一部又は全体を含みうる。好ましくは、そのようなAQGV機能的類似体は、AQGVペプチドの構造類似体である。好ましい構造類似体は、LQGVペプチドでありうる。AQGVペプチド構造類似体は、下記のアミノ酸、すなわちアラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなるペプチドから選択されうる。好ましい実施態様において、下記のオートファジー阻害アミノ酸の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも100%、が、下記のアミノ酸、すなわち、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなるAQGV構造類似体が提供される。好ましくは、AQGVペプチドの構造類似体は、4~12個のアミノ酸の範囲の長さを有する。好ましくは、そのような構造類似体は線状ペプチドである。AQGVの好適な構造類似体は、4未満、例えば3、の長さを有しうる。しかしながら、そのような長さは、そのようなペプチドのより高い用量を必要としうる。なぜならば、そのようなペプチドの半減期が短くなり、従ってあまり好ましくないからである。より長い構造類似体、例えば12残基超のより長い構造類似体、は、そのような長いペプチドの潜在的な免疫原性の為に、あまり好ましくない。本発明に従う構造的AQGV類似体は、AQLP、PLQA、LQGV、LAGV、PQVG、PQVA、PQVR、VGQL、LQPL、RQGV、LQVG、LQGA、LQGR、AQGA、QPLA、PQVP、VGQA、QVGQ、VGQGの群から選択されるテトラペプチドを含むペプチドからなる群から選択されうる。
【0026】
昇圧剤は、低血圧を高めることができる薬物のクラスである。幾つかの昇圧剤は血管収縮剤として作用し、及び昇圧剤の別のクラスはアドレナリン受容体をカテコールアミン-グルココルチコイドに感作し、別のクラスの昇圧剤は心拍出量を増加させることができる、どちらの昇圧剤が使用されても、本発明は昇圧剤の使用を減らすことを可能にする。昇圧剤の使用の減少は、昇圧剤の使用期間の短縮及び/又は昇圧剤の投与量の減少を含む。昇圧剤の例は例えば、エピネフリン、ノルアドレナリン、フェニレフリン、ドブタミン、ドーパミン、及びバソプレシンである。患者における流体管理は、例えば、流体の、経口、経腸及び/又は静脈内摂取、並びに流体排出(例えば、尿)を監視することを含み、そして引き続き、流体貯蔵が観察された場合(すなわち、流体摂取量が流体排出量を超えている場合)、流体摂取を管理することを含む。驚くべきことに、AQGVペプチド又はその類似体の使用は、流体貯蔵を減少させることができる。従って、AQGVペプチド又はその類似体は、ヒト患者における血行動態を改善する為の既知の介入に加えて使用されることができ、それによって、AQGVペプチド又はその類似体を使用しない場合と比較して、血行動態のより速い改善を結果として生じる。
【0027】
別の実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体は、肺機能障害を有するヒト対象の処置において使用する為に提供される。更なる実施態様において、該肺機能障害は急性肺損傷である。1つの実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体は、肺機能を改善する為にヒト対象の処置において使用する為に提供される。肺機能はまた、低酸素血症を測定することによって、又は肺胞動脈勾配(A-aO2、又はA-a勾配)を測定することによって評価されることができる。ヒトにおける肺機能を評価する為にA-a勾配を評価することは、標準的な臨床業務である(例えば、酸素の肺胞濃度(A)と酸素の動脈濃度(a)との差を決定することによる)。それは、低酸素血症の原因及び程度の診断において使用される。A-a勾配は、肺胞毛細血管ユニットの完全性を評価する為に役立つ。AQGVペプチドを投与されていない場合と比較した場合の肺機能における改善は、肺機能段階からより軽度の段階への進行(例えば、肺損傷を有するから肺損傷のリスクがある状態又は肺損傷のない状態に進行している患者)を含むことができる。
【0028】
どのような評価が行われるかに関係なく、AQGVペプチド又はその類似体の使用は、肺損傷を有するヒトにおける肺機能及び/又は免疫調節効果のない対象における肺機能障害を改善することができる。
【0029】
AQGVペプチドの使用は、肺機能を改善することを可能にするが、それはまた、肺機能の低下及び/又は損傷を防止することができる。従って、低酸素血症による肺損傷が防がれうる。従って、1つの実施態様において、AGQVペプチド又はその類似体の使用は、ヒト患者における肺機能を維持することを可能にする。従って、AGQVペプチド又はその類似体の使用は、ヒト患者における肺機能を保護することを可能にする。別の実施態様において、AQGVペプチド又はその類似体の使用は、ヒト患者における肺機能の低下及び/又は障害を防止することを可能にする。例えば、肺損傷がないとして、又は肺損傷を有するリスクがある(例えば、COVID-19による)として分類されることができるヒト患者は、AQGVペプチドでの処置を受けうる。それによって、そのような患者は、(より深刻な)肺機能の低下に進行する代わりに、その状態を維持しうる。従って、肺損傷を発症するリスクがあるヒト患者、例えば(誘発された)外傷、例えば感染、の故に、AQGVペプチド又はその類似体での処置治療を受けた結果として、該患者の肺機能の状態を維持しうる。
【0030】
別の実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体は、肺機能障害を有するヒト対象の処置において使用する為に提供され、ここで、該使用は、ヒト対象における血行動態を変更することを含む。肺機能の処置と血行動態の安定性の処置が今リンクされることができるようになった為に、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は有利には、肺機能を保護する為に及び/又は肺機能を改善する為に使用され、血行動態を変更することができる。そのような組み合わせの使用は例えば、改善された肺機能及び/又は維持された肺機能、並びに昇圧剤の使用における減少及び/又はヒト対象における改善された流体管理を結果としてもたらす。
【0031】
更なる実施態様において、本発明は、血管収縮剤の低減された使用を提供する。
【0032】
血管収縮剤の使用が、該血管収縮剤の使用期間を短縮することによって低減することができる。血管収縮剤の使用は、該血管収縮剤の量を低減することによって低減することができる(例えば、投与量あたりの量を低減する及び/又は投与間の時間間隔を長くする)。血管収縮剤の使用は、該血管収縮剤の量を低減すること及び該血管収縮剤の使用期間を短縮することによって低減することができる。血管抑制剤の使用を低減することによって、ヒト対象は有利には、AQGV又はその類似体を投与されていないヒト対象と比較して、より迅速に回復する。
【0033】
別の実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、ヒト対象における不利な流体貯蔵を減少させる。流体貯蔵は、ヒト対象において発生する可能性があり、その症状は、体重増加及び浮腫を含む。流体貯蔵は、低下された肺機能の低下及び/又は障害性の血行動態の結果である可能性がある。従って、AQGVの使用は、ヒト対象における肺機能及び/又は血行動態の安定性に影響を与える可能性がある為に、該AQGVの使用は流体貯蔵にも影響を与える可能性がある。流体貯蔵は、毛細血管の漏れの結果である可能性がある。従って、AQGV及びその類似体の使用は、毛細血管の漏出性(透過性)に影響を与え、血液から末梢組織及び/又は臓器への血漿の漏出を減少させる可能性がある。最も好ましくは、AQGVの使用によって浮腫が軽減され及び/又は回避されることができる。それはまた、患者に悪影響を与える故に、不利な流体貯蔵と云われうる。流体貯蔵の原因が何であれ、AAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、ヒト対象における流体貯蔵動態を改善することが、それによって体液貯留に関連付けられた症状、例えば体重増加及び浮腫、を緩和し、引き続き、利尿剤の使用を低減することができる。
【0034】
別の実施態様において、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、肺損傷を有する患者及び/又は血行動態療法を必要とする患者に限定されない。本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、肺損傷を有するリスクがあると考えられているヒト患者及び/又は血行動態療法を必要とすると予想されるヒト患者の処置を含む。そのようなヒト患者は、集中治療室に入院されるべき患者又は入院することが予想される患者を包含する。従って、AQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、外傷、例えば感染、例えば実施例において例示されている感染、に対する使用を包含する。外傷、例えば感染、に対するAQGVペプチドの使用は、感染前であってもよく、しかし、典型的には、感染中及び/又は感染後である。AQGVペプチド又はその類似体の使用は、ウイルスによる感染の間であることが好ましい場合がある。本明細書において提供されているAQGVの使用ペプチドは、長時間、すなわち2.5時間以上、の機械的人工換気を受ける患者において特に有用である。従って、更なる実施態様において、AQGVペプチド又はその類似体の使用は、2.5時間よりも長い機械的人工換気の間であり、並びにAQGVペプチド又はその類似体は、機械的人工換気の間に投与される。別の実施態様又は更なる実施態様において、本発明に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、COVID-19を有するヒト対象における使用の為である。機械的人工換気の使用期間を短縮することが、患者の回復と再入院の防止に大きく関係することは周知である。
【0035】
好ましくは、本発明に従う且つ上述されたAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、ペプチドの血流内への投与を含む。血流内への投与は、例えば静脈内投与又は動脈内投与を含むことが理解される。AQGVペプチド又はその類似体を一定に供給すること、例えばペプチド又はその類似体が生理学的に許容される溶液に含まれる注入を介してQGVペプチド又はその類似体を一定に供給すること、が好ましい。好適な生理学的に許容される溶液は、生理学的な塩溶液(例えば、0.9%のNaCl)又は注射及び/又は注入の為の任意の他の適切な溶液を含みうる。そのような生理学的溶液は、ヒト対象に更に利益をもたらしうる更なる化合物(例えば、グルコース)を含んでいてもよく、また、他の医薬的化合物(例えば、昇圧剤)を含んでいてもよい。
【0036】
好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも50mg/kg患者体重/時(mg/kg/時間)の速度で投与される。好ましくは、投与速度は少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、又は最も好ましくは少なくとも90mg/kg/時間である。好ましくは、AQGVペプチドは、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間投与される。好ましくは、AQGVペプチドの投与は、少なくとも70mg/kg/時間の速度であり、少なくとも1時間、より好ましくは少なくとも1.5時間、最も好ましくは少なくとも2時間、投与される。好ましくは、該投与は感染の間である。より好ましくは、該投与は、感染に起因する疾病の本質的に全期間の間である。典型的に、処置は、該処置を正当化する重症度のレベルが決定された後に開始するであろう。従って、該処置は典型的には、その検出から、検出可能な感染がなくなるまで又は処置の終了を可能にする十分な回復まで続きうる。
【0037】
実施例の部において示されている通り、第II相臨床試験においてEA-230についてヒトにおいてイン・ビボ(in vivo)で測定された平均動脈最大濃度(平均Cmax)は、12500~57500ng/mLの範囲で、30500ng/mLであった。見つかった平均静脈Cmaxは、19600~113000ng/mLの範囲で、68400ng/mLであった。従って、EA-230(又はAQGV)の投与に為に使用される手段及び方法が何であれ、好ましくは、10,000~60,000ng/mLの範囲の動脈Cmax及び/又は15000~120000ng/mlの範囲の静脈Cmaxを得ることを可能にする手段及び方法が企図されうる。従って、投与経路は必ずしも静脈内投与に限定されない場合がありうる。しかし、同様の静脈及び/又は動脈Cmax濃度を結果として生じる他の投与経路を含みうる。
【0038】
別の実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体は、上述された本発明に従う任意の使用の為に提供され、ここで、該ヒト対象は集中治療室に入院し、ここで、該使用は、該ヒト対象の測定されたパラメータを改善し、該ヒト対象の該パラメータは典型的に、該患者が集中治療室に滞在する必要があるかどうかを評価する為に決定される。上に示されているように、該ヒト患者が集中治療室にいるときに評価されるパラメータは、肺機能及び血行動態に関連するパラメータを含む。
【0039】
いずれにせよ、AQGVペプチド又はその類似体の使用は、そのようなパラメータを改善し、それによって集中治療室での滞在期間を短縮することである。AQGVペプチド又はその類似体の使用は、集中治療室での滞在期間を短縮するだけでなく、AQGVペプチド又はその類似体の使用の効果がまた、入院期間を短縮し、且つ再入院を減らす。
【0040】
いずれにせよ、AQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、ヒト対象における肺機能及び/又は血行動態において大きな影響を有し、それによって、例えば、誘発された外傷に苦しんでいる場合に、例えば機械的人工換気を受けている間に、ヒト対象に有利に利益をもたらす。従って、1つの実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、機械的人工換気を受けている患者に使用する為のものである。別の実施態様において、AQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、COVID-19又は同様の感染症を経験しているヒト患者又は該感染症を経験していると考えられるヒト患者において使用する為のものである。
【0041】
本発明は、別個の且つ新しいクラスの薬物:ラパマイシンの機械的標的であるmTORの栄養感知系を標的とし、及びオートファジーを阻害するペプチド及び/又はアミノ酸を含むオートファジー阻害化合物に関する。オートファジーを阻害するAQGVペプチドのホルミルペプチド関連シグナル伝達効果のテスト時に、該ペプチドは、血管透過性を調節する際にシグナル細胞骨格収縮を支配するp38/p38-MK2-HSP27及び/又はPI3K/AKT/mTOR経路を予想外に減衰させることがわかった。従って、本発明は、血管透過性を改善する為の、オートファジー阻害ペプチド(本明細書においてAQGVペプチドとまた云われる)及びその類似体(機能的等価物)の使用に関する。
【0042】
理論に拘束されるわけではないが、AQGVペプチド又はその機能的類似体の効果は、血管収縮に影響を有しうる。血管収縮は、血管の筋肉壁の収縮に起因する血管の狭窄を伴う。従って、1つの実施態様において、本発明に従うAQGVペプチド又はその機能的類似体の使用は、血管収縮の誘発を伴う。
【0043】
本発明はまた、p38 MAPKキナーゼ活性を低下させることができるペプチドを同定する方法であって、アミノ酸を含むペプチドを細胞に提供すること、ここで、該アミノ酸の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは100%、が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる;前記細胞にfMLPを提供すること;及び、前記ペプチドの非存在下及び存在下、fMLPの提供後の適切な時間間隔で、好ましくは数分のオーダーで、最も好ましくは約0.5分~約5分、例えば30~600秒、でp38 MAPKのリン酸化を検出すること;並びに、複数の結果を比較して、前記リン酸化に対する前記ペプチドの効果を決定することを含む上記の方法を提供する。オートファジー阻害AQGVペプチドをテストした後、本発明者等はプロトタイプFPRリガンドfMLPを使用してFPR発現細胞のFPR活性化を検出し、PKB及びp38 MAPKキナーゼ(図10c)のリン酸化状態に急速に誘発された有意な変化(p<0.05;60~600秒からのp38、600秒でのPKB(AKTとしてまた知られている)(図10a))を生じるが、STAT3キナーゼ、JNKキナーゼ(図10b)及びP42/p44MAPK/ERK1,2キナーゼ(図10d)において生じなかった(すなわち、検出されなかった)。
【0044】
それとともに、本発明はまた、PI3K/AKT/mTOR活性を低下させることができるペプチドを同定する方法であって、アミノ酸からなるペプチドを細胞に提供すること、ここで、該アミノ酸の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは100%、が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる;前記細胞にfMLPを提供すること;及び、前記ペプチドの非存在下及び存在下、fMLPの提供後の適切な時間間隔で、好ましくは数分のオーダーで、最も好ましくは約0.5分~約5分、例えば30~600秒、でPKB(AKT)のリン酸化を検出することを含む上記の方法を提供する。p38 MAPKに対するAQGVペプチドの効果(図10c)は、FPR刺激の30秒後に既に検出され、PKB(AKT)に対するAQGVペプチドの効果が(図10a)、300秒で、2相パターンで続く(図10a)。p38に対するAQGVペプチドの効果とPKBを介したシグナル伝達の両方が、テストされた600秒間持続し、一方、テストされた他のキナーゼは全体を通して影響を受けなかった。処置に対するこの急性且つ特異的な応答は、PI3K/AKT/mTOR経路の調節の文脈において、p38シグナル伝達におけるオートファジー阻害AQGVペプチドの特異的且つ迅速な効果を示すので、上記経路は、細胞骨格の変化を調節するタンパク質分解とタンパク質生成との間の、血管透過性に影響を与えバランスを支配している。そのような活性は、AQGVペプチドを用いてテストされたSTAT3、JNK(図10b)及びP42/p44MAPK/ERK1,2(図10d)キナーゼにおいて検出されない。AQGVペプチドは、p38 MAPKキナーゼで活性化された変化を減少させるだけでなく、PI3K/AKT/mTORで活性化された誘発された、細胞骨格再編成における変化を減少させ、内皮細胞の収縮と不利な血管透過性に影響を与えることが示されている。
【0045】
本発明はまた、PI3K/AKT/mTOR活性を低下させることができるペプチドを同定する方法であって、アミノ酸からなるペプチドを細胞に提供すること、ここで、該アミノ酸の少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは100%、が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる;前記細胞にfMLPを提供すること;及び、前記ペプチドの非存在下及び存在下、fMLPの提供後の適切な時間間隔で、好ましくは数分のオーダーで、最も好ましくは約0.5分~約5分、例えば30~600秒、でPKB(AKT)のリン酸化を検出すること;並びに、複数の結果を比較して、前記リン酸化に対する前記ペプチドの効果を決定することを含む上記の方法を提供する。同定されたAQGVペプチドは、有用であり、並びに有害な血管透過性、例えば血管漏出を伴う浮腫、有害な白血球血管外遊出及びヒト対象における低血圧によって現れるような上記の有害な血管透過性、に対処することができる。
【0046】
本発明はまた、PI3K/AKT/mTOR活性を低下させることができるペプチドを同定する方法であって、アミノ酸からなるペプチドを細胞に提供すること、ここで、該アミノ酸の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは100%、が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる;前記細胞にfMLPを提供すること;及び、前記ペプチドの非存在下及び存在下、fMLPの提供後の適切な時間間隔で、好ましくは数分のオーダーで、最も好ましくは約0.5分~約5分、例えば30~600秒、でPKB(AKT)のリン酸化を検出すること;並びに、複数の結果を比較して、前記リン酸化に対する前記ペプチドの効果を決定することを含む上記の方法を提供する。本発明はまたそれとともに、細胞骨格の再編成を減少させることができるペプチドを同定する方法であって、アミノ酸からなるペプチドを細胞に提供することを含み、該アミノ酸の少なくとも50%が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる;前記細胞にfMLPを提供すること;及び、前記ペプチドの非存在下及び存在下、fMLPの提供後の適切な時間間隔で、好ましくは数分のオーダーで、最も好ましくは約0.5分~約5分、例えば30~600秒、でPKB(AKT)のリン酸化を検出すること;並びに、複数の結果を比較して、前記リン酸化に対する前記ペプチドの効果を決定することを含む上記の方法を提供する。
【0047】
典型的には、本明細書における本発明はオートファジー阻害ペプチド群の分子作用機序(MoA:mode-of-action)を提供するので、その効果はそれらの正確な配列に必ずしも依存しない。
【0048】
代わりに、それらの構成アミノ酸は、mTORの栄養感知システム(nutrient-sensing system)に共通のハウスホールド(household)の「危険なし又は組織修復」(no-danger or tissue-repair)シグナルを提供し;オートファジーの阻害を生じ、疾病の解決を結果として生じる。これらの組織修復シグナル分子は、細胞内のタンパク質生成とタンパク質分解とのバランスを変化させ、3つのステップで疾病の解決をもたらす。
【0049】
投与されたペプチド又はそのアミノ酸フラグメントは、アミノ酸輸送、PEPT1/2輸送、一般的なエンドサイトーシス、血管細胞の場合はエラスチン受容体媒介エンドサイトーシス又は食作用によって取り込まれる。
【0050】
内在化されたペプチドは加水分解され、そして、そのアミノ酸はmTORの栄養感知システムに提示される。
【0051】
特定のアミノ酸はオートファジーを阻害し、それによりタンパク質分解を阻害し、そして、タンパク質生成の解決と薬学的効果をもたらす。
【0052】
ペプチドホルモンの分解に由来するペプチド、又はオートファジー阻害アミノ酸のグループから選択されるアミノ酸を本質的に含む新規合成ペプチドとして組み立てられたペプチドのいずれかであって、上述された特徴の1以上を満たす様々なペプチドが、我々の血管系を裏打ちする内皮細胞への影響を通じて、局所的又は全身的な過剰又は有害な血管透過性を強力に解決する為に、マウス又はラットにおける様々な動物モデルにおいて示されている。そのうちの幾つかは、ヒトの臨床試験の様々な段階において開発されているか、又は合理的に更に開発される。これらのオートファジー阻害化合物及び関連するペプチド薬の将来の臨床応用を通じて関与するオートファジー阻害メカニズムを活用することは、疾病の合理的な処置の為のエキサイティングな新規な道を提供する。しかしながら、静脈内用途の為の幾つかのオートファジー阻害ペプチド製剤は、ペプチドの溶解性の問題が経験されており、オートファジー阻害アミノ酸の利用可能性を低下させ、ペプチドの凝集と医薬的効果の損失を回避する為に、厄介な大量のペプチドの貯蔵溶液を提供する必要がある。
【0053】
前記オートファジー阻害アミノ酸を、それを必要とすると考えられる対象に最も好都合な方法で提供することが本開示の目的である。それとともに、本発明は、オートファジー阻害ペプチド、好ましくは組み換え又は合成のオートファジー阻害ペプチド、の酒石酸塩又はクエン酸塩であって、該ペプチドは、オートファジー阻害アミノ酸である、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、及びプロリン(P)の群から選択されるアミノ酸を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは100%含むアミノ酸配列を有する、上記酒石酸塩又はクエン酸塩を提供する。より好ましくは、本発明は、貯蔵溶液、好ましくは水性の貯蔵溶液であって、オートファジー阻害ペプチドの酒石酸ペプチド又はクエン酸ペプチドの、好ましくはオートファジー阻害ペプチドの組み換え又は合成の酒石酸ペプチド又はクエン酸ペプチドの、ペプチド-酒石酸塩又はペプチド-酒石酸塩、であって、該ペプチドは、オートファジー阻害アミノ酸である、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、及びプロリン(P)の群から選択されるアミノ酸を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは100%含むアミノ酸配列を有する、上記貯蔵溶液を提供する。
【0054】
本発明は、上記ペプチドの凝集を緩和する為の幾つかのオートファジー阻害ペプチドの為の好適な溶液を提供し、並びに酒石酸塩(酒石酸から、好ましくは(+)-酒石酸から)及びより好ましくはクエン酸塩(クエン酸から)を好適な対イオン、医薬品の添加剤、又は本明細書において上記で定義された中性ペプチドであるオートファジー阻害ペプチドの塩を調製する為に選択される医薬賦形剤又は陰イオンとして同定する。種々の塩が本明細書においてスクリーニングして、本発明に従う中性ペプチドの凝集に対するそれらの影響を決定し、中性ペプチドが陰イオン特異的且つ濃度依存様式における溶液から「塩析」することを実際に明らかにした。
【0055】
そのような塩の凝集点(凝集したペプチド塩が分解する傾向にある濃度以下の濃度点)水性溶液中のペプチド硫酸塩、ペプチドマレイン酸塩、ペプチドアデノシン一リン酸、及びペプチドアデノシンは、ペプチド酢酸塩凝集に関連して悪化した凝集を示すことがわかった。一方、驚くべきことに、酒石酸塩、より驚くべきことにペプチド-クエン酸塩は、ペプチド-酢酸塩と比較して、水性溶液中で(強く)低減された凝集を示した。
【0056】
本発明に従う上記オートファジー阻害ペプチド塩は、K、H及びRの群から選択される25%未満の荷電残基を含むことが好ましい。該オートファジー阻害ペプチドは、群D、K、R、H及びEの群から選択される25%未満の荷電残基を含むことがより好ましい。該オートファジー阻害ペプチド塩は、D、K、R、H及びEの群から選択される残基を含まないことが最も好ましい。上記溶液が水性液であることがさらに好ましい。最も好ましい実施態様において、該溶液が、所謂、貯蔵溶液、好ましくは水性貯蔵溶液、である。貯蔵溶液は一般的に活性物質、本明細書においては、オートファジー阻害ペプチド塩の濃縮溶液であり、これは、上記物質の実際の使用の為に幾らかの低い濃度に希釈されるであろう、いわゆる作業溶液である。
【0057】
そのような低濃度の作業溶液は例えば、輸液、例えば、重症患者、例えば病院の集中治療室又は戦場での重症患者、にしばしば見られるように、ペプチドが患者に治療を施す為の貯蔵溶液からそれに添加されるところの静脈内又は腹腔内使用の為の輸液、である。そのような条件下で、輸液内への希釈の為に活性(ペプチド)薬剤を少量(貯蔵)で利用できるようにすることが有用であり、しばしば必要条件と考えられる。所謂貯蔵溶液が一般的に提供され、且つ可溶化及び調製時間を節約し、材料を節約し、保管スペースを削減し、低濃度の溶液を使用して調製する際の精度を向上させる為に使用される。薬剤の貯蔵溶液はしばしば、例えば重病患者における差し迫った静脈内使用の為に調製され、そして次に、提供され又は保管される。しかしながら、デフォルトでペプチド濃度が高い故に、オートファジー阻害ペプチドを含む貯蔵溶液は、最終作業溶液よりも常にペプチド薬剤凝集におけるリスクが高くなる。貯蔵溶液は一般的に、問題である塩の凝集濃度よりも十分に低い濃度(例えば、40~50%)で調製され、様々な周囲条件での可能な長期保存による塩析を防止する。ペプチド凝集(塩析)のリスクは、本発明に従う貯蔵溶液を用いて本明細書において回避又は軽減する為に本発明が提供するところの現象である。そのような貯蔵溶液は一般的に、10倍から100倍以上に希釈して、適切な作業溶液を提供する。しかしながら、本発明に従うペプチド塩の作業溶液を提供することがまた本発明の目的である。特に、本発明のペプチドの適用において、比較的高い量/濃度のペプチド塩が与えなければならないので、作業溶液が塩析点から遠く離れているにもかかわらず、相対的に少量で提示されていることが前提条件である。
【0058】
様々な塩が、中性ペプチドの凝集におけるそれらの影響を決定する為にスクリーニングされ、事実、中性ペプチドが陰イオン特異的且つ濃度依存的様式で溶液から「塩析」することを明らかにした。ペプチド-硫酸塩及びペプチド-マレイン酸塩は、ペプチド-酢酸塩の凝集に関連して悪化した凝集を示すことがわかった。一方、驚くべきことに、酒石酸塩、さらに驚くべきことにペプチド-クエン酸塩は、ペプチド-酢酸塩と比較して(強く)低減された凝集を示した。
【0059】
それにより、本発明は、出現しているこの明確且つ新しいクラスの薬剤の溶解性の改善に貢献する。ここで、小さなオートファジー阻害ペプチドは、オートファジーを優先的に阻害し、並びにラパマイシンの機械的標的であるmTORの栄養感知システムを標的とするアミノ酸を含む。典型的には、ペプチドは50個以下のアミノ酸を有すると定義され、本開示の目的の為に、タンパク質は50個超のアミノ酸を有すると定義される。本明細書におけるオートファジー阻害ペプチドは、50個以下のアミノ酸の直鎖状、分枝状又は環状のストリングであって、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、プロリン(P)、イソロイシン(I)及びアルギニン(R)のオートファジー阻害アミノ酸の群から選択されるアミノ酸を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは100%、有するペプチド配列を含む上記ストリングとして定義される。
【0060】
このグループのペプチドの分子作用機序(MoA:Molecular mode-of-action)は、それらの正確な配列に依存しない。代わりに、それらの構成アミノ酸は、mTORの栄養感知システムに対して共通のハウスホールド(household)の「危険なし又は組織修復」(no-danger or tissue-repair)シグナルを提供し;オートファジーの阻害を生じ、疾病の解決を結果として生じる。
【0061】
別の実施態様において、本発明は、ペプチド、好ましくはオートファジー阻害ペプチド、好ましくは組み換え又は合成のオートファジー阻害ペプチド、の有機酸の塩、例えばマレイン酸塩、より好ましくは酢酸塩、より好ましくは酒石酸塩、最も好ましくはクエン酸塩、であって、該ペプチドは、オートファジー阻害アミノ酸である、アラニン(A)、グルタミン(Q)、ロイシン(L)、バリン(V)、グリシン(G)、及びプロリン(P)の群から選択されるアミノ酸を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは100%含むアミノ酸配列を有する、上記ペプチドを提供する。より好ましくは、本発明は、オートファジー阻害ペプチド、好ましくは組み換え又は合成のオートファジー阻害ペプチド、のペプチド-酒石酸塩又はペプチド-酒石酸塩を含む貯蔵溶液、好ましくは水性溶液、であって、オートファジー阻害アミノ酸である、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)の群から選択されるアミノ酸を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは100%含むアミノ酸配列を有する、上記オートファジー阻害ペプチドを提供する。
【0062】
凝集のリスクに注意して、これまで臨床試験において使用する為の上記で定義されたAQGVペプチドの貯蔵溶液を含むバイアルは、溶液中に(0.8モル/L)以下の活性基質を含んでいた。
【0063】
本発明に基づいて、アミノ酸配列を有するAQGV有機酸塩、特に、AQGVペプチド-マレイン酸塩、AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩又はAQGVペプチド-クエン酸塩(しかし、アデノシン又はアデノシン一リン酸のものでない)の貯蔵溶液であって、前記アミノ酸配列は、オートファジー阻害アミノ酸である、アラニン(A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、及びプロリン(P)の群から選択されるアミノ酸を少なくとも50%、より好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは100%、を含み、前記貯蔵溶液が、前記AQGVペプチド-酢酸塩、AQGVペプチド-酒石酸塩又はAQGVペプチド-クエン酸塩を少なくとも0.85モル/L、より好ましくは少なくとも0.9モル/L、より好ましくは少なくとも1モル/L、より好ましくは少なくとも1.2モル/L、より好ましくは少なくとも1.4モル/L、より好ましくは少なくとも1.6モル/L、最も好ましくは少なくとも1.8モル/L、を含む、前記貯蔵溶液が今提供される。より好ましい実施態様において、本発明は、前記AQGVペプチド酒石酸塩又は前記AQGVペプチドクエン酸塩の貯蔵溶液であって、ここで、該AQGVペプチドの濃度が、2モル/L()~2.5モル/Lである、前記貯蔵溶液を提供する。より好ましい実施態様において、本発明は、上記AQGVペプチドクエン酸塩の貯蔵溶液であって、該ペプチド-クエン酸塩の濃度が2.5モル/L~3モル/Lである、上記貯蔵溶液を提供する。より好ましい実施態様において、本発明は、本発明は、上記ペプチド-クエン酸塩の貯蔵溶液であって、該ペプチド-クエン酸塩の濃度が3モル/L~3.5モル/Lである、上記貯蔵溶液を提供する。より好ましい実施態様において、本発明は、上記ペプチド-クエン酸塩の貯蔵溶液であって、該ペプチド-クエン酸塩の濃度が3.5モル/L~4.5モル/Lである、上記貯蔵溶液を提供する。より好ましい実施態様において、本発明は、上記ペプチド-クエン酸塩の貯蔵溶液であって、該ペプチド-クエン酸塩の濃度が4.5モル/L~5.5モル/Lである、上記貯蔵溶液を提供する。より好ましい実施態様において、本発明は、上記ペプチド-クエン酸塩の貯蔵溶液であって、該ペプチド-クエン酸塩の濃度が5.5モル/L以上である、上記貯蔵溶液を提供する。上記貯蔵溶液が水性溶液であることが好ましい。
【0064】
上記貯蔵溶液は、下記のジペプチドである、AQ、QQ、LQ、GQ、PQ、VQ、AL、LL、QL、GL、PL、VL、QA、QL、QG、QP、QV、LA、LG、LP、LV、下記のトリペプチドである、AQG、QQG、LQG、GQG、PQG、VQG、ALG、LLG、QLG、GLG、PLG、VLG、QAG、QLG、QGG、QPG、QVG、LAG、LGG、LPG、LVG、若しくは下記のテトラペプチドである、AQGV、QQGV、LQGV、GQGV、PQGV、VQGV、ALGV、LLGV、QLGV、GLGV、PLGV、VLGV、QAGV、QLGV、QGGV、QPGV、QVGV、LAGV、LGGV、LPGV、LVGV、又はそれらの混合物を含むオートファジー阻害アミノ酸の水溶液であることが好ましい。
【0065】
本発明に従うペプチドは、2~40個のアミノ酸、好ましくは3~30個のアミノ酸、好ましくは4~20個のアミノ酸、の長さを有するペプチド配列を有することが好ましい。本発明に従う該ペプチドは、特に、それらの少なくとも4つがオートファジーを阻害する場合に、少なくとも6つのアミノ酸を含むペプチド配列を有することが最も好ましい。本発明に従うペプチド-酒石酸塩又はペプチド-クエン酸塩の最大長は、好ましくは最大50アミノ酸、より好ましくは最大40アミノ酸、より好ましくは最大30アミノ酸、より好ましくは最大20アミノ酸、より好ましくは最大20アミノ酸、より好ましくは最大で15個のアミノ酸、より好ましくは最大で12個のアミノ酸、最も好ましくは最大で9個のアミノ酸、を含む。
【0066】
本発明は、細胞骨格の再編成を生じるp38 MAPKキナーゼ活性を低下させる方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、該アミノ酸の少なくとも50%が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる、上記方法を提供する。
【0067】
本発明は、ホルミルペプチド受容体(FPR:formyl-peptide-receptor)介在p38 MAPKキナーゼ活性を低下させる方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、ここで、該アミノ酸の少なくとも50%が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる、上記方法を提供する。
【0068】
本発明は、PI3K/AKT/mTOR活性を低下させて細胞骨格の再編成をもたらす方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、該アミノ酸の少なくとも50%が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる、上記方法を提供する。
【0069】
本発明は、ホルミルペプチド受容体(FPR)介在PI3K/AKT/mTOR活性を低下させる方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、該アミノ酸の少なくとも50%が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる、上記方法を提供する。
【0070】
本発明は、細胞骨格の再編成を減少させる方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、該アミノ酸の少なくとも50%が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる、上記方法を提供する。
【0071】
本発明は、ホルミルペプチド受容体(FPR)介在細胞骨格の再編成を減少させる方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、該アミノ酸の少なくとも50%が、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択されるアミノ酸からなる、上記方法を提供する。
【0072】
本発明は、血管透過性を変更する方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、該アミノ酸は、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択される、上記方法を提供する。
【0073】
本発明は、組織修復を改善する方法であって、細胞、好ましくはそれらの表面に関連付けられたホルミルペプチド受容体を有する細胞、に、オートファジー阻害アミノ酸の供給源を提供することを含み、好ましくは、ここで、前記供給源は、本明細書において提供されているAQGVペプチドであり、該アミノ酸は、アラニン(一文字コードで:A)、グルタミン(Q)、グリシン(G)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、プロリン(P)、及びアルギニン(R)の群から選択される、上記方法を提供する。
【0074】
本発明は、本発明に従う方法であって、ここで、該オートファジー阻害アミノ酸を含む前記ペプチドが下記のジペプチドを含むところの本発明に従う方法を提供する:AQ、QQ、LQ、GQ、PQ、VQ、AL、LL、QL、GL、PL、VL、QA、QL、QG、QP、QV、LA、LG、LP、LV、トリペプチド AQG、QQG、LQG、GQG、PQG、VQG、ALG、LLG、QLG、GLG、PLG、VLG、QAG、Q0LG、QGG、QPG、QVG、LAG、LGG、LPG、LVG、又はテトラペプチドAQGV、QQGV、LQGV、GQGV、PQGV、VQGV、ALGV、LLGV、QLGV、GLGV、PLGV、VLGV、QAGV、QLGV、QGGV、QPGV、QVGV、LAGV、LGGV、LPGV、LVGV、又はそれらの混合物。
【0075】
別の実施態様において、本出願は、受容体のFPRファミリーのうちの一つの受容体に結合することができる膜近位外部領域(MPER:membrane proximal external region)における別個のペプチドモチーフ配列KWPWYIWL又は変異体KWPWYVWLを運ぶ為のSARS-COV-2スパイクタンパク質(図11~13を参照)を見出す。
【0076】
COVID-19は、特に血管細胞とそのスパイクタンパク質との相互作用を通じて、FPR介在の経路を活性化し、それによって血管漏出、血栓事象、及びAng1/Ang2比の調節をもたらす。上記MPER領域は、融合前の状態において固定されていないスパイクタンパク質を発現する異なるコロナウイルスベースでのワクチンを接種した後の、まばらに報告された且つ偶発的な血栓症事象にまた関与しうる。AQGV-ペプチドは、血管の完全性の破壊に関与するホルミルペプチド活性化FPR媒介経路(p38-MK2-HSP27及びPI3K-AKT-mTOR,図10を参照)を阻害する故に、対象においてモチーフKWPWYIWL又は変異体KWPWYVWLを有する少なくとも上記融合性領域の発現を生じる事象の後に、血栓形成を阻害し並びにAng1/Ang2比を調節することによって、AQGV-ペプチドは血管漏出及び血栓性事象を改善する。
【0077】
驚くべきことに、モチーフKWPWYIWL又は変異体KWPWYVWLを有する上記融合領域はまた、対象における血管漏出を誘発する際に関与するFPR結合部位も含む。それとともに、本出願はまた、代替の処置又は使用を提供する。すなわち、ウイルス由来の融合領域を含むペプチド又はタンパク質を発現しているとみなされる対象の処置方法であって、該方法は、該融合領域を認識する受容体を備えている少なくとも1つの細胞を用いた養子細胞治療を含む上記方法を提供する。前記融合領域は、ペプチドモチーフKWPWYIWLを少なくとも含むか、又はペプチドモチーフKWPWYVWLを少なくとも含むことが好ましく、ここで、該細胞は、形質転換T細胞、例えばCAR-T細胞又はTCR-T細胞、であり、好ましくは、該細胞は、上記融合領域を含むか又は重複する(好ましくはCD8+)T細胞エピトープに対して向けられている。本明細書において提供されているそのような養子細胞療法(例えば、June et al,Adoptive cellular therapy:A race to the finish line Science Translational Medicine 25 Mar 2015:Vol.7,Issue 280,pp.280ps7を参照)は、該融合領域を含むペプチド又はタンパク質を発現するとみなされる対象の処置方法における、ウイルス由来の融合領域を認識する受容体を備えられた少なくとも1つの細胞を使用し、ここで、該融合領域は、ペプチドモチーフKWPWYIWLを少なくとも含むか、又はペプチドモチーフKWPWYVWLを少なくとも含み、ここで、該細胞は、好ましくは該融合領域を含むか又は重複する(好ましくはCD8+)T細胞エピトープに対して向けられている形質転換T細胞、例えばCAR-T細胞又はTCR-T細胞、である。
【0078】
更なる実施態様
【0079】
項1.ヒト対象の処置における使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、該使用が、該ヒト対象における血行動態を変更することを含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0080】
項2.ヒト対象の処置における使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、該ヒト対象が、ウイルス感染を患っており、ここで、該使用が、該ヒト対象における血行動態を変更することを含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0081】
項3.肺機能障害を有するヒト対象の処置に使用する為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用が、ヒト対象における血行動態を変更し並びに低酸素血症を改善することを含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0082】
項4.上記の項1~3の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用が前記人対象における流体貯蔵を減少させる、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0083】
項5.上記の項1~3の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用が、血管収縮剤の低減された使用を含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0084】
項6.上記の項1~3の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用が、低減された流体の取り込みを含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0085】
項7.上記の項5の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、血管収縮剤の前記低減された使用が、血管抑制剤の使用の減少された期間を含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0086】
項8.上記の項3~6の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記対象が、呼吸器ウイルス感染を患っている、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0087】
項9.上記の項3~8の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用が、前記ヒト対象における肺機能を改善する、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0088】
項10.上記の項9の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記改善された肺機能が、血液の改善された酸素飽和度を伴う、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0089】
項11.上記の項3~10の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記ヒト対象が肺機能障害を有し、該肺機能障害がARDSである、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0090】
項12.上記の項1~11の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用は、血液から末梢組織及び/又は器官への血漿の漏出を減少させる、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0091】
項13.上記の項1~12の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用が、機械的人工換気の有害な影響に苦しんでいるヒト対象においてであり、又は機械的人工換気の有害な影響のリスクがある人間の対象においてである、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0092】
項14.上記の項1~13の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記使用が、浮腫を有するリスクのあるヒト対象においてである、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0093】
項15.上記の項2~14の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記ヒト対象が、コロナウイルス感染症を患っているか、又はコロナウイルス感染症を患っていると考えられている、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0094】
項16.上記の項15の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記感染がSARS-Cov-2感染である、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0095】
項17.上記の項1~16の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記ペプチドが血流内に投与される、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0096】
項18.上記の項17の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記ペプチドが、少なくとも70mg/kg体重/時間の速度で投与される、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0097】
項19.上記の項15の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記ペプチドが少なくとも1時間投与される、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0098】
項20.上記の項15~19の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記投与が断続的である、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0099】
項21.上記の項1~20の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、ここで、前記ヒト対象は集中治療室に入れられ、並びに前記使用は前記ヒト対象について測定されたパラメータを改善し、前記ヒト対象の前記パラメータは集中治療室に残ることを評価する為に決定される、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0100】
項22.上記の項21の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、ここで、パラメータにおける前記改善が、集中治療室での短縮された滞在期間を結果としてもたらす、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0101】
項23.上記の項1~22の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、ここで、前記使用が血管収縮を誘発する、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0102】
項24.上記の項1~22の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、ここで、前記対象は、VALI又はVILIのリスクであるとみなされる、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0103】
項25.上記の項1~23の更なる態様のうちのいずれか1つに従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、ここで、前記対象は、ウイルス由来の融合領域(fusogenic region)を含むペプチド又はタンパク質を発現するとみなされる、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0104】
項26.上記の項25の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記融合領域が、ペプチドモチーフKWPWYIWL又は変異体KWPWYVWLを少なくとも含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0105】
項27.上記の項25又は26の更なる態様に従う使用の為のAQGVペプチド又はその機能的類似体であって、前記融合領域が少なくともFPR結合部位を含む、上記のAQGVペプチド又はその機能的類似体。
【0106】
項28.AQGVペプチド又はその機能的類似体をヒト対象に投与することを含む処置の方法であって、該ヒト対象が、血行動態の安定性を維持する必要がある、前記方法。
【0107】
項29.AQGVペプチド又はその機能的類似体をヒト対象に投与することを含む処置の方法であって、該ヒト対象が、血行動態の安定性を改善する必要がある、前記方法。
【0108】
項30.AQGVペプチド又はその機能的類似体をヒト対象に投与することを含む処置の方法であって、該ヒト対象が肺機能障害を有し、ここで、AQGVペプチドを投与する処置は、前記ヒト対象における血行動態の安定性を維持すること又は改善することを含む、前記方法。
【0109】
項31.AQGVペプチド又はその機能的類似体をヒト対象に断続的に投与することを含む処置の方法であって、前記ヒト対象が肺機能障害を有し、ここで、AQGVペプチドを投与する処置が、前記ヒト対象における血行動態の安定性を維持すること又は改善することを含む、前記方法。
【0110】
項31-2.ウイルス由来の融合領域を含むペプチド又はタンパク質を発現しているとみなされる対象の処置の方法であって、前記融合部位を認識する受容体を備えた少なくとも1つの細胞を使用する養子細胞療法を含む前記方法。
【0111】
項32.更なる実施態様である項31又は31-2に記載の方法であって、前記融合領域がペプチドモチーフKWPWYIWLを少なくとも含む、前記方法。
【0112】
項33.更なる実施態様である項31又は31-2に記載の方法であって、前記融合領域がペプチドモチーフKWPWYVWLを少なくとも含む、前記方法。
【0113】
項33-2.請求項31~33のいずれか1項に記載の更なる実施態様のいずれか1項に記載の方法であって、前記細胞が、形質転換T細胞、例えばCAR-T細胞又はTCR-T細胞、である、前記方法。
【0114】
項34.請求項33に記載の実施態様に記載の方法であって、前記細胞が、前記融合領域を含むT細胞エピトープに又は前記融合領域と重複するT細胞エピトープに対して向けられる。
【0115】
項35.ウイルスに由来する融合領域を認識する受容体を備えた少なくとも1つの細胞の使用方法であって、該使用方法において、対象の処置が、前記融合領域を含むペプチド又はタンパク質を発現するとみなされる、前記使用方法。
【0116】
項36.更なる実施態様である項35に記載の使用方法であって、前記融合領域がペプチドモチーフKWPWYIWLを少なくとも含む、前記使用方法。
【0117】
項37.更なる実施態様である項35に記載の使用方法であって、前記融合領域がペプチドモチーフKWPWYVWLを少なくとも含む、前記使用方法。
【0118】
項38.更なる実施態様である項35~37のいずれか1項に記載の使用方法であって、前記細胞が、形質転換T細胞、例えばCAR-T細胞又はTCR-T細胞、である、前記使用方法。
【0119】
項39.実施態様である項38に記載の使用方法であって、前記細胞が、前記融合領域を含むT細胞エピトープに又は前記融合領域と重複するT細胞エピトープに対して向けられる、前記使用方法。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1図1は、SARS-Cov-2ウイルスでの初期感染が、ほとんどの場合、軽度な経過を又は平穏な経過さえをたどることを示す。そのステージI経過は、感染された者の80%以上において見られる。この大多数の患者は、鼻と喉の上気道感染症を経験し、空咳は通常、2~12日で治る。残りの20%未満の症例において、2つの異なる病理学的段階が発生する可能性があり、多くの場合、軽度の症例では、ウイルスに対して向けられた免疫応答が出現する故にウイルス感染が減少する頃に始まる。ステージIIはウイルス性肺炎(肺損傷を伴う肺期)であり、肺胞毛細血管膜の透過性が失われ(ステージIIA)、両方の肺のより深い気道及び肺胞にびまん性且つ多量に影響し(ステージIIB)、呼吸不全の故に酸素の取り込みが減少する。この両側性肺炎に続いて、全身倦怠感、高熱、そして最終的に臓器(腎臓、肝臓、心臓)全体の不全を伴う本格的な病気であるステージIIIが続く場合がある。
図2図2は、ステージIIにおける急性疾病は、血管透過性を増加させ、そして、肺の毛細血管から肺組織への流体の漏出を結果として生じる(図3における肺損傷をまた参照)ことを示す。このアンジオポエチン調節された透過性が、図2において描かれている。アンジオポエチン1(ANG1)は、血管周囲の壁細胞によって構成的に分泌される。細胞の間に隙間ができる場合に、ANG1が血管内腔に放出される。(ANG1)のTIE2へのリガンド結合は、チロシンキナーゼSrcの隔離を誘発し、従って、内皮細胞の表面においてVE-カドヘリンの安定な発現を確立し、隙間を埋めることができる。ANG2はバイベル・パラーデ(WBP:Weibel-Palade)小体に保存され、そして、信号をトリガーすることに応じて迅速に放出される。TIE2へのその結合は、SrcのANG1誘発された隔離を無効にし、VE-カドヘリンの内在化を結果として生じる。
図3図3は、ステージIIにおける急性疾病が、気体(酸素及び二酸化炭素)拡散能力の低下を生じる浮腫性肺組織によって特徴付けられる肺損傷を結果として生じることを示す。SARS-COV-2感染はII型細胞において始まる。肺毛細血管の透過性が、図2において示されているように、増加された血管細胞隙間形成によって増加される。このプロセスは、毛細血管から、肺胞を毛細血管から分離する細胞外マトリックスの薄層内への流体の流れを生成し、ここで、細胞間流体貯蔵はそれとともに、細胞外マトリックス内の流体の蓄積を通じて膜を厚くし(膨張させ)(拡大した浮腫性間質を生じ)、血管細胞から肺胞細胞を分離し、そして肺胞に入る。このことは典型的に、肺組織に移動した白血球の局所的な炎症活動を引き起こす。全体として、ガスの拡散が著しく阻害され、呼吸困難を引き起こす。そのようなステージIIの肺損傷患者において、ELISAによって測定されうる内皮活性化のバイオマーカーの血漿レベルは、しばしば死亡率を予測する。特に、アンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の濃度(Ang-2/Ang-1)は、急性肺損傷(ALI:acute lung injury)患者の死亡率の有用な生物学的マーカーでありうる。
図4図4は、COVID-19の様々な段階におけるAQGVペプチドの断続的な投与の図1の感染段階における概略図を示す。影付きのバーはタイムスロットを示し、ここで、AQGVペプチド又は関連物質は、好ましくは少なくとも75mg/kg/時間、より好ましくは少なくとも90mg/kg/時間、の速度で静脈内投与される。AQGVペプチド又は関連物質を断続的に投与することは特に有用である。好ましい使用は、少なくとも75mg/kg/時間、より好ましくは少なくとも90mg/kg/時間、の2~4時間の投薬であり、その後任意的に、2~4時間(影付きのバーの間)若しくは臨床診断又は検査診断による処置に対する患者の反応を監視するのにかかる限り、30mg/kg/時間に減少させ、又は診断研究が完了するまで1~2時間物質の投与を停止し、そして次に、少なくとも75mg/kg/時間、より好ましくは少なくとも90mg/kg/時間、の2~4時間で処置を再開する。疾病の段階に応じて、EA-230の治療効果は、ステージII及びステージIIIにおける低酸素症、血漿Ang2/Ang1比及びD-ダイマーの血漿レベルを測定することによって監視されうる。
図5図5は、昇圧剤の使用(左)による及び輸液療法の使用による血行動態の不安定性の処置の必要性が、EA-230ペプチドを投与された患者において、集中治療室(ICU)の最初の24 時間で、大幅に改善された。それにより、EA-230は血行動態の回復を有意に改善し、血行動態の安定性を有意に改善する(必要な輸液療法及び血圧薬の複合測定値を減らす;2方向ANOVA;p=0.006)。
図6図6は、ICU(p=0.02)と病院(p=0.001)の両方で、プラセボグループと比較して、EA-230(AQGV)で処置された患者における滞在期間が短かった。AQGVペプチドEA-230gは、ICUでの患者数を24時間で48%減少させ;そして、入院期間を20%短縮させた。
図7図7は、溶解度実験の概要を結果とともに表1に示す。
図8図8は、図7に示される結果に基づいて、スクリーニングされた中性ペプチド塩の凝集ペプチド塩が分解する傾向がある濃度より下の濃度が決定された(凝集点)。陰イオンを変更することは、AQGVの溶解特性に有意に影響すると結論付けられることができる。より高い溶解度(0.9%のNaClにおける溶解度)とそれに伴うより高い凝集点が、AQGV-クエン酸塩(AQGV-クエン酸塩)及びAQGV-酒石酸塩(AQGV-酒石酸塩)について観察され、一方、マレイン酸及びKHSO4 塩は、AQGV-Acと比較して低い溶解度を示した。アデノシン一リン酸又はアデノシンを使用しても溶解性は得られなかった。クエン酸は特殊なケースのようである。高濃度の溶液は結晶化又は凝集化しなかったが、高粘度の溶液を形成する傾向がある。
図9図9は、ホルミルペプチド受容体は、細胞及び組織の外傷後の血管透過性を媒介した。ヒトホルミルペプチド受容体(FPR:formyl peptide receptor)はN-グリコシル化されており、且つG(i)タンパク質を介して細胞を活性化する。細胞外Asn残基の部位特異的突然変異誘発は、FPRグリコシル化を妨げたが、細胞膜におけるFPR発現は妨げなかった。しかしながら、高親和性アゴニスト結合、GTPガンマS結合の動力学、活性化されたG(i)タンパク質の数、及び構成的活性に関しては、非グリコシル化FPRはネイティブFPRよりもはるかに活性が低い。外傷/細胞損傷から放出されたミトコンドリアN-ホルミルペプチド(F-MIT)は、ホルミルペプチド受容体(FPR)を活性化し、内皮細胞の細胞骨格の変化をもたらし、引き続き、内皮細胞の収縮と血管透過性、白血球の血管外遊出及び低血圧を誘発する。N-ホルミルペプチドは、ホルミルペプチド受容体(FPR)を活性化する細菌及びミトコンドリアの一般的な分子シグネチャである。ミトコンドリアのN-ホルミルペプチド(F-MIT)によるFPR活性化は、内皮細胞における細胞骨格調節タンパク質における変化を誘い出し、増加された血管漏出及び白血球の血管外漏出を伴う増加された内皮細胞の収縮性をもたらす。損傷後の組織損傷、例えば外傷、に由来するミトコンドリアN-ホルミルペプチド(F-MIT)を介したFPR活性化は、細胞及び組織の損傷又は外傷後のバリア機能障害の主な原因であり、血管への有害な影響、例えば、浮腫を伴う有害な血管透過性、血管漏出、白血球の有害な血管外遊出、及び低血圧、を結果として生じる。
図10A図10Aは、ホルミルペプチド受容体介在ペプチド効果を示す。プロトタイプFPRリガンドfMLPによるFPR発現細胞のFPR活性化は、PKB(AKTとしてまた知られている)(図10a)及びp38 MAPKキナーゼ(図10c)のリン酸化状態において迅速に誘発され且つ有意な(p<0.05;p38は60~600秒,PKBは600秒)変化を生じたが、STAT3、JNK(図10b)及びP42/p44MAPK/ERK1,2(図10d)キナーゼにおいて変化を生じなかった(又は、検出されなかった)。p38 MAPKに対するAQGVペプチド効果(図10c)は、FPR刺激の30秒後に既に検出され、PKB(AKT)に対するAQGVペプチド効果は、300秒で2相パターンで続く(図10a)。p38に対するAQGVペプチド効果及びPKB介在のシグナル伝達に対するAQGVペプチド効果の両方が、テストされた600秒ずっとの間持続し、一方、テストされた他のキナーゼは全体的に影響を受けなかった。処置に対するこの急性且つ特異的な応答は、PI3K/AKT/mTOR経路の調節の文脈において、p38シグナル伝達に対するオートファジー阻害AQGVペプチドの特異的且つ迅速な効果を示す。該経路は、血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格の変化を調節するタンパク質分解とタンパク質生成との間のバランスを支配している。AQGVペプチドは、p38 MAPKキナーゼ活性化変化を減少させること、並びに内皮細胞収縮及び血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格再編成におけるPI3K/AKT/mTOR活性化誘導変化を減少させることが示されている。AQGVペプチドは、有用であり、且つ有害な血管透過性、例えば血管漏出を伴う浮腫、有害な白血球血管外遊出及びヒト対象における低血圧によって現れるような上記の有害な血管透過性、に対処することができる。
図10B図10Bは、ホルミルペプチド受容体介在ペプチド効果を示す。プロトタイプFPRリガンドfMLPによるFPR発現細胞のFPR活性化は、PKB(AKTとしてまた知られている)(図10a)及びp38 MAPKキナーゼ(図10c)のリン酸化状態において迅速に誘発され且つ有意な(p<0.05;p38は60~600秒,PKBは600秒)変化を生じたが、STAT3、JNK(図10b)及びP42/p44MAPK/ERK1,2(図10d)キナーゼにおいて変化を生じなかった(又は、検出されなかった)。p38 MAPKに対するAQGVペプチド効果(図10c)は、FPR刺激の30秒後に既に検出され、PKB(AKT)に対するAQGVペプチド効果は、300秒で2相パターンで続く(図10a)。p38に対するAQGVペプチド効果及びPKB介在のシグナル伝達に対するAQGVペプチド効果の両方が、テストされた600秒ずっとの間持続し、一方、テストされた他のキナーゼは全体的に影響を受けなかった。処置に対するこの急性且つ特異的な応答は、PI3K/AKT/mTOR経路の調節の文脈において、p38シグナル伝達に対するオートファジー阻害AQGVペプチドの特異的且つ迅速な効果を示す。該経路は、血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格の変化を調節するタンパク質分解とタンパク質生成との間のバランスを支配している。AQGVペプチドは、p38 MAPKキナーゼ活性化変化を減少させること、並びに内皮細胞収縮及び血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格再編成におけるPI3K/AKT/mTOR活性化誘導変化を減少させることが示されている。AQGVペプチドは、有用であり、且つ有害な血管透過性、例えば血管漏出を伴う浮腫、有害な白血球血管外遊出及びヒト対象における低血圧によって現れるような上記の有害な血管透過性、に対処することができる。
図10C図10Cは、ホルミルペプチド受容体介在ペプチド効果を示す。プロトタイプFPRリガンドfMLPによるFPR発現細胞のFPR活性化は、PKB(AKTとしてまた知られている)(図10a)及びp38 MAPKキナーゼ(図10c)のリン酸化状態において迅速に誘発され且つ有意な(p<0.05;p38は60~600秒,PKBは600秒)変化を生じたが、STAT3、JNK(図10b)及びP42/p44MAPK/ERK1,2(図10d)キナーゼにおいて変化を生じなかった(又は、検出されなかった)。p38 MAPKに対するAQGVペプチド効果(図10c)は、FPR刺激の30秒後に既に検出され、PKB(AKT)に対するAQGVペプチド効果は、300秒で2相パターンで続く(図10a)。p38に対するAQGVペプチド効果及びPKB介在のシグナル伝達に対するAQGVペプチド効果の両方が、テストされた600秒ずっとの間持続し、一方、テストされた他のキナーゼは全体的に影響を受けなかった。処置に対するこの急性且つ特異的な応答は、PI3K/AKT/mTOR経路の調節の文脈において、p38シグナル伝達に対するオートファジー阻害AQGVペプチドの特異的且つ迅速な効果を示す。該経路は、血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格の変化を調節するタンパク質分解とタンパク質生成との間のバランスを支配している。AQGVペプチドは、p38 MAPKキナーゼ活性化変化を減少させること、並びに内皮細胞収縮及び血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格再編成におけるPI3K/AKT/mTOR活性化誘導変化を減少させることが示されている。AQGVペプチドは、有用であり、且つ有害な血管透過性、例えば血管漏出を伴う浮腫、有害な白血球血管外遊出及びヒト対象における低血圧によって現れるような上記の有害な血管透過性、に対処することができる。
図10D図10Dは、ホルミルペプチド受容体介在ペプチド効果を示す。プロトタイプFPRリガンドfMLPによるFPR発現細胞のFPR活性化は、PKB(AKTとしてまた知られている)(図10a)及びp38 MAPKキナーゼ(図10c)のリン酸化状態において迅速に誘発され且つ有意な(p<0.05;p38は60~600秒,PKBは600秒)変化を生じたが、STAT3、JNK(図10b)及びP42/p44MAPK/ERK1,2(図10d)キナーゼにおいて変化を生じなかった(又は、検出されなかった)。p38 MAPKに対するAQGVペプチド効果(図10c)は、FPR刺激の30秒後に既に検出され、PKB(AKT)に対するAQGVペプチド効果は、300秒で2相パターンで続く(図10a)。p38に対するAQGVペプチド効果及びPKB介在のシグナル伝達に対するAQGVペプチド効果の両方が、テストされた600秒ずっとの間持続し、一方、テストされた他のキナーゼは全体的に影響を受けなかった。処置に対するこの急性且つ特異的な応答は、PI3K/AKT/mTOR経路の調節の文脈において、p38シグナル伝達に対するオートファジー阻害AQGVペプチドの特異的且つ迅速な効果を示す。該経路は、血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格の変化を調節するタンパク質分解とタンパク質生成との間のバランスを支配している。AQGVペプチドは、p38 MAPKキナーゼ活性化変化を減少させること、並びに内皮細胞収縮及び血管透過性に影響を及ぼす細胞骨格再編成におけるPI3K/AKT/mTOR活性化誘導変化を減少させることが示されている。AQGVペプチドは、有用であり、且つ有害な血管透過性、例えば血管漏出を伴う浮腫、有害な白血球血管外遊出及びヒト対象における低血圧によって現れるような上記の有害な血管透過性、に対処することができる。
図11図11は、SARS、MERS、COVID-19において見られるように、コロナウイルス感染症におけるウイルススパイクタンパク質誘発された肺及び血管漏出を標的とするAQGVペプチドを示す。SARS-CoV-2スパイク(S)糖タンパク質は、細胞へのウイルスの侵入を促進するクラスIのウイルス融合タンパク質であり、並びに抗体の主な標的である(White et al.,Critical reviews in biochemistry and molecular biology.2008 Jan 1;43(3):189-219.)。スパイクタンパク質のC末端は、ヘプタッドリピート(HR2)、短いリンカー領域(膜近位外部領域、すなわちMPER:membrane proximal external region)、膜貫通ヘリックスドメイン(TMD:transmembrane helix domain)、及びC末端細胞質又は内部ドメイン(CTD/IC:C-terminal cytoplasmic or internal domain)を含む。標的細胞におけるACE2受容体がSタンパク質における受容体結合ドメイン(RBD:receptor binding domain)に結合した後、ヘプタッドリピート1(HR1:heptad repeat 1)及びヘプタッドリピート2(HR2:heptad repeat 2)ドメインが、6-ヘリックスバンドルの融合コア(6HB:six-helix bundle fusion core)を形成し、融合及び細胞侵入の為に融合性MPERドメインと細胞膜とを一緒にウイルスにもたらす(Walls et al.,Tectonic conformational changes of a coronavirus spike glycoprotein promote membrane fusion.Proceedings of the National Academy of Sciences.2017 Oct 17;114(42):11157-62.;Xia et al.,.Fusion mechanism of 2019-nCoV and fusion inhibitors targeting HR1 domain in spike protein.Cellular & molecular immunology.2020 Feb 11:1-3.)。MPERは、図12において識別されているように、ウイルスが細胞内に侵入する為に不可欠である。SARS-CoV-2に対するCD8+T細胞交差反応性の生成を可能にする少なくとも1つのT細胞エピトープ、及び他のコロナウイルス株(Lee et al, Front.Immunol.,05 November 2020 | https://doi.org/10.3389/fimmu.2020.579480)は、図12において特定されている融合部位と重複することに注意されたい。患者において、ウイルス特異的なCD4+及びCD8+T細胞応答が軽度の疾病に関連付けられており、COVID-19に対する防御免疫における上記融合領域の関与を示唆する。典型的には、上記融合部位、及びそれによる上記T細胞エピトープは、SARS-COV-2において強く保存されており(Guo E, Guo H (2020) CD8 T cell epitope generation toward the continually mutating SARS-CoV-2 spike protein in genetically diverse human population:Implications for disease control and prevention.PLOS ONE 15(12):e0239566)、本明細書において、ウイルスまたはワクチンベースの感染、例えばコロナウイルス又はワクチンよる上記感染、において使用されうる該融合性領域に対して向けられた養子細胞療法(ACT:adoptive cellular therapy)を開発する為に提供される。
図12図12は、短膜近位外部領域(MPER:membrane proximal external region)は、HR2と膜貫通ドメインとを接続し、並びに融合中に膜を不安定化する芳香族アミノ酸に富む融合ペプチド配列を含むことを示す(Mahajan M, Bhattacharjya S.NMR structures and localization of the potential fusion peptides and the pre-transmembrane region of SARS-CoV:Implications in membrane fusion.Biochimica et Biophysica Acta (BBA)-Biomembranes.2015 Feb 1;1848(2):721-30.;Guillen J,Kinnunen PK,Villalain J.Membrane insertion of the three main membranotropic sequences from SARS-CoV S2 糖タンパク質.Biochimica et Biophysica Acta(BBA)-Biomembranes.2008 Dec 1;1778(12):2765-74.)。この融合性領域はときどき、「膜近位外部ドメイン領域」又は「膜貫通前領域」(PTM:pre-transmembrane region)と云われうる。SARS-CoV-1由来のMPERペプチド1185-LGKYEQYIKWPWYVWLGF-1202及び1193-KWPWYVWLGFIAGLIAIV-1210は、脂質膜内にインターカレートし且つ高度に表面活性であることが示されてきている;SARS-CoV-2とMERS-CoVにおける対応する融合遺伝子配列は、1216位でのVからIへの置換を除いて同一である。
図13図13は、本明細書は、SARS-COV-2スパイクタンパク質が、FPRに結合することができるそのMPERドメイン(KWPWYIWL)中に明確な且つ保存された融合性モチーフを運ぶことを見つけたことを示す。このモチーフは、FPRへの結合が実証されている関連コロナウイルススパイクタンパク質モチーフと高度に相同である(Mills,Biochim Biophys Acta Mol Basis Dis.2006 Jul;1762(7): 693-704)。COVID-19における血管漏出は、ホルミルペプチド受容体を運ぶ肺血管細胞への、少なくとも最小限必須の融合性配列KWPWYIWL又は変異体KWPWYVWLを含むこのスパイクタンパク質の結合及び/又は融合によって、少なくとも部分的に調節され、それにより、特に、そのようなワクチンが、融合前の状態においてのみスパイクタンパク質を発現するように改変されていない場合、コロナウイルス感染又はスパイクタンパク質ワクチン、例えばChAdOx1-S、によるコロナに対するワクチン接種において血栓事象を生じうる。FPR介在経路は、血栓事象(Salamah et al.,The formyl peptide fMLF primes platelet activation and augments thrombus formation.J Thromb Haemost.2019;17:1120-1133.)において、並びに主な臨床症状として肺血管漏出を伴う急性肺損傷及び急性呼吸器疾患症候群(ALI/ARDS:acute lung injury and acute respiratory disease syndromes)(Thorax.2017;72:928~936)において活性化されることが知られている。SARS-COV-2によるCOVID-19(特に重症)感染は典型的に、肺血管漏出を伴うALI/ARDSにおけるリスクを高め、重大な死亡をもたらす。
【発明を実施するための形態】
【0121】
実施例
【0122】
オートファジー阻害ペプチド
一文字コード
本明細書におけるタンパク質又はペプチドの組成、構造及び機能の記載において、アミノ酸が言及される。本明細書において、アミノ酸残基は下記の略語を用いることによって表される。また、特に示されていない限り、ペプチド及びタンパク質のアミノ酸配列は、N末端からC末端、左末端から右末端の順で、N末端が1番目の残基として示されている。Ala:アラニン残基;Asp:アスパラギン酸残基;Glu:グルタミン酸残基;Phe:フェニルアラニン残基;Gly:グリシン残基;His:ヒスチジン残基;Ile:イソロイシン残基;Lys:リジン残基;Leu:ロイシン残基;Met:メチオニン残基;Asn:アスパラギン残基;Pro:プロリン残基;Gln:グルタミン残基;Arg:アルギニン残基;Ser:セリン残基;Thr:スレオニン残基;Val:バリン残基;Trp:トリプトファン残基;Tyr:チロシン残基;Cys:システイン残基。アミノ酸はまた、それらの慣用的な1文字コードの下記の略語によって表されうる;A=Ala;T=Thr;V=Val;C=Cys;L=Leu;Y=Tyr;I=Ile;N=Asn;P=Pro;Q=Gln;F=Phe;D=Asp;W=Trp;E=Glu;M=Met;K=Lys;G=Gly;R=Arg;S=Ser;及びH=His。
【0123】
ペプチド
ペプチドは、本明細書において、ペプチド(アミド)結合によって連結された天然の生物学的又は人工的に製造された(合成)、アミノ酸モノマーの短鎖を意味するべきである。グルタミンペプチドは、本明細書において、ペプチド(アミド)結合によって連結されたアミノ酸モノマーの天然の生物学的又は人工的に製造された(合成)短鎖を意味するべきであり、該アミノ酸モノマーのうちの1つはグルタミンである。化学的に合成されたペプチドは一般的に、遊離のN末端とC末端を有する。N末端のアセチル化とC末端のアミド化は、ペプチド全体の電荷を減少させ、それ故に、その全体的な溶解度が低下しうる。しかしながら、末端のアセチル化/アミド化は天然タンパク質のより近い模倣物を生成される為に、ペプチドの安定性がまた向上する可能性がある。これらの改変は、ペプチドの生物学的活性を増加させる可能性があり、本明細書においてまた提供される。
【0124】
ペプチド合成
本明細書において、ペプチドは、固体支持体(Ansynth BV,Roosendaal,オランダ国)又は溶液(Syncom BV,Groningen,オランダ国 and Diosynth BV,Oss,オランダ国)における古典的に知られている化学合成によって合成される。医薬的ペプチド組成物は、対イオン又は塩としてトリフルオロ酢酸塩を使用して合成されてもよく、その後トリフルオロ酢酸塩は、対イオン、例えば、マレイン酸塩(マレイン酸から)、酢酸塩(酢酸から)、酒石酸塩(酒石酸から)又はクエン酸塩(クエン酸から)、によって交換される。前臨床及び臨床ヒト研究において使用する為のAQGV(EA-230)の薬剤物質は、Organon N.V(以前は、Diosynth B.V.)、(Oss,オランダ国)によって製造されており、一方、最終製品の充填及び仕上げは、Leiden(オランダ国)にあるOctoplus Developmentによって行われた。EA-230(AQGV)の分子量は、373g/モルである。
【0125】
FPR介在の血管透過性及び低血圧
内皮細胞の活発な収縮が血管透過性を調節するという概念は、1961年に、Majnoによって最初に提案されたが(J Biochem ytol (1961) 11:571.10.1083/jcb.11.3.571)、現在、内皮収縮活性を調節する細胞内事象はまだ比較的知られていない。N-ホルミルペプチドは、ホルミルペプチド受容体(FPR)を活性化する細菌及びミトコンドリアの一般的な分子シグネチャである。ミトコンドリアのN-ホルミルペプチド(F-MIT)によるFPR活性化又は細菌のN-ホルミルペプチド(F-MLP)、例えばN-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニンによるFPR活性化は、内皮細胞中の細胞骨格調節タンパク質における変化を誘発し、それは、増加された血管漏出及び白血球の増加された血管外遊出を伴う増加された内皮細胞収縮性をもたらす。FPRの活性化は、外傷後におけるバリア機能障害の主な原因である。患者において、損傷した組織からのミトコンドリア成分が血管漏出の発生を開始する可能性があることが提案されている(Wenceslau et al.,Front Immunol.2016;7:297)。進化上の理由から、ミトコンドリアは細菌と幾つかの特徴を共有しており、ミトコンドリアの断片が循環内に放出される場合に、ホルミルペプチド受容体(FPR)を運ぶ細胞によって認識される。細菌とミトコンドリアの両方におけるホルミル-メチオニンによるタンパク質翻訳開始の故に、N-ホルミルペプチドは細菌とミトコンドリアの共通の分子シグネチャであり、且つホルミルペプチド受容体(FPR)を活性化することによって血管漏出の開始における役割を果たすことが知られている。
【0126】
様々な形態と機能の血管で構成される血管系は、血液を全ての組織に分配し、且つ生理学的な組織の恒常性を維持する。とりわけ、恒常性を維持する上でのその中心的な役割を説明する為に、血管系は、肺から組織へのガス交換の主要なキャリアとして機能するだけではなく(例えば、酸素(及びその逆、例えば二酸化炭素))、栄養素を腸から肝臓へ、肝臓から組織へと運び、そして、排泄の為に、有毒な副産物を、組織から腎臓へ、腎臓から尿への代謝をもたらす。
【0127】
様々な病態において、血管系はしばしば疾病プロセスによる影響を受け、且つ疾病プロセスに関与している。
【0128】
このことは何よりも、浮腫を伴う有害な血管透過性、有害な血管漏出、白血球の有害な血管外遊出、及び低血圧を結果として生じ、並びにまた、悪い血流の新しい不安定で且つ高透過性の血管の過剰な形成を結果として生じる可能性があり、それは更に、低酸素症と疾病の伝播を促進する。慢性的な有害な血管透過性はまた、癌の転移が促進されうる。従って、健康と疾病における血管生物学の重要な観点である血管透過性の調節についてさらに学ぶ(そして、調節することができるようになる)強い動機付けがある。
【0129】
異なる血管内及び異なる臓器内の内皮細胞は、異なる機能及び形態を有し(Aird WC. Molecular heterogeneity of tumor endothelium.Cell Tissue Res. 2009;335:271~81.)、しかし一般的には血液と組織との間の障壁を提供するのに役立つ。或る器官、例えば脳及び内分泌器官、において、内皮細胞は、器官と循環との間の連絡の為の必要性を反映する或る形態学的特徴を示す。脳において、血管系が特に強力な関門である血液脳関門(BBB:blood brain barrier)を形成し、有害な浮腫から脳実質を保護する。ホルモン産生器官、例えば内分泌膵臓、において、内皮細胞はそれらの表面に特殊な窓(specialized fenestrae)を表示する。
【0130】
これらは、原形質膜内の、横隔膜で覆われた「穴」(holes)であり、それは、ホルモンの非常に迅速なエキソサイトーシスを可能にする。ほとんどの臓器において、内皮細胞が血液と組織との間に動的バリアを形成する。休止状態において、血管系は溶質と小分子とを継続的に漏出させるが、より大きな分子と細胞の血管外遊出を制限する。多くの疾病、例えば癌を包含する該疾病、において、血管関門が崩壊し、そして、漏出が増加し且つ慢性化しうる。より大きな分子及び細胞の漏出は、浮腫、白血球の有害な血管外遊出、及び低血圧、そしてしばしば疾病の進行を結果として生じうる。
【0131】
例えば、キニン、例えばブラジキニン、が、内皮バリア機能に影響を与える一連の生理学的及び時には病理学的な血管応答に関与していることは十分に認識されている。それらの作用のほとんどは、B1及びB2と名付けられた2Gタンパク質共役受容体の活性化によって媒介される。キニン受容体の活性化は、微小血管新生の促進、血管平滑筋細胞増殖の阻害、冠血管拡張、局所的な一酸化窒素合成の増加、又は抗血栓作用の発揮を通じて、アテローム性動脈硬化のリスクの調節に重要な役割を果たしうる。ブラジキニンB1受容体(B1R:bradykinin B1 receptor)は典型的に、生理学的条件下で存在しないが、例えばCOVID-19疾病等において最近報告されたように、組織損傷、ストレス、火傷、外傷性損傷の後には非常に誘導性である。
【0132】
組織損傷によって誘発された損傷は、B1R mRNA発現に匹敵するdes-Arg9ブラジキニン(des-Arg9-BK)応答性における有意且つ時間依存性の増加を生じうる。それは、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK:mitogen activated protein kinase)ファミリーの幾つかのメンバー、すなわち細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK:extracellular signal-regulated kinase)及びp38 MAPKの活性化を誘発する。選択的阻害剤によるERK経路ではなく、p38 MAPKの遮断が、選択的B1Rアゴニストdes-Arg9-BKによって生じる上方制御された収縮反応の有意な減少を結果として生じ、並びに、B1R mRNA発現の誘導を大幅に防ぎ、組織損傷によって誘発される有害な血管透過性を高める。
【0133】
他のストレス刺激の中でも、血流障害の結果としての低酸素への曝露、又は肺胞と周囲の毛細血管との間のガス交換障害の結果としての低酸素への曝露がまた、血管の内皮細胞層における構造変化を引き起こし、並びにその透過性と白血球及び血小板との相互作用を変化させる。これらの構造変化は再び内皮細胞バリア機能障害を生じ、血管への有害な影響、例えば、浮腫を伴う有害な血管透過性、血管漏出、白血球の血管外遊出、及び低血圧、を生じ(図1をまた参照)、並びに更に、肺から血液へ、及び血液から組織へのガス交換、並びにその逆のガス交換をさらに悪化させうる。
【0134】
ストレスに応答して十分に特徴付けられた細胞骨格の複数の変化のうちの1つは、アクチン細胞骨格の再編成及びストレスファイバーの形成を伴う。Kayyali等(J Biol Chem (2002) 277(45):42596~602)は、低酸素に応答して肺微小血管内皮細胞における細胞骨格変化、及びこのプロセスに関与する潜在的メカニズムを記載する。低酸素誘発アクチン再分布は、低酸素に応答して肺内皮細胞において活性化されるMAPK p38の下流の成分によって媒介されるようにみえる。結果は、p38の基質であるキナーゼMK2が低酸素によって活性化されるようになる、その基質のうちの1つであるHSP27のリン酸化を生じることを示す。別の例として、F-アクチンの再構成はまた、火傷により誘発される内皮バリア機能障害の初期事象であり、並びにp38 MAPK/MK2経路の標的であるHSP27は、アクチン動態において重要な役割を果たす。HSP27リン酸化はアクチン分布を変化させ、従って、細胞の収縮性を変化させることが知られているため、Kayyali等は、p38-MK2-HSP27経路が、例えば低酸素症において観察されるように、アクチン再分布による血管透過性における変化を生じることを提供する。
【0135】
まとめると、これらの結果は、組織損傷がp38-MK2-HSP27経路を刺激し、アクチン細胞骨格における有意な変化をもたらすことを示す。p38 MAPK経路の阻害が、内皮細胞の収縮を有意に減少させることによって血管機能不全を改善することがまた以前に示されている(Wang et al,APMIS (2014) 122(9):832)。
【0136】
近年では別の経路がまた、PI3K/AKT/mTOR[ホスファチジルイノシトール-3'-キナーゼ(PI3K)、プロテインキナーゼB(PKB又はAKT)、及びラパマイシンの哺乳類標的(mTOR:mammalian target of rapamycin)]経路は、内皮細胞の収縮性の調節の為に不可欠であることが識別されており、並びに辻及び田村並びに小川は、事実、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)-Akt経路の阻害剤とラパマイシン複合体1の哺乳類標的(mTORC1:mammalian target of rapamycin complex 1)阻害剤が、血管内皮細胞によって支配される血管透過性の回復の為に必要な内皮細胞伸長の強力な誘発因子としての阻害剤であることを同定した(Journal of Cell Science 2016 129: 1165~1178)。そのような伸長は、内皮細胞がp38-MK2-HSP27及び/又はPI3K/AKT/mTOR信号による細胞骨格再編成の後に収縮するときに、内皮細胞の間に形成される隙間を埋める為に必要である。結果として生じる浮腫、血管漏出、白血球の有害な血管外遊出、及び低血圧のリスクを伴う血管流体の損失を説明するのは、有害な漏出及び有害な血管外遊出が生じるこれらの隙間である(再び図1を参照)。
【0137】
これらの隙間の閉鎖は一般的に、血管透過性が増加した部位で、様々な血管新生因子の比、例えばアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比、によって支配され、それによって、アンジオポエチン-2は一般的に内皮細胞のアポトーシスを誘発し(隙間形成を促進する)、並びにアンジオポエチン-1は内皮細胞の伸長と隙間閉鎖を促進することにより隙間形成に対抗する。ERK1/2経路でなくp38経路の阻害は、アンジオポエチン-2を介した内皮細胞のアポトーシスを減衰させる(Li et al,Exp Ther Med.2018 Dec;16(6):4729~4736.Published online 2018 Oct 1))。加えて、PI3K/AKT/mTOR経路は、他の血管新生因子、例えば一酸化窒素及びアンジオポエチン、の発現を調節する(Karar and Mayti, Front.Mol.Neurosci.,02 December 2011,https://doi.org/10.3389/fnmol.2011.00051)。
【0138】
従って、細胞骨格収縮のシグナル伝達するp38/p38-MK2-HSP27及び/又はPI3K/AKT/mTOR経路におけるシグナル伝達事象を阻害することは、血管透過性を低下させ、またそれにより、有害な透過性と有害な漏出を減少させ、結果として浮腫、血管漏出、悪化した白血球漏出、及び低血圧のリスクを伴う血管液の損失を生じる。そのような阻害の為の方法及び手段が、本発明の目的である。
【0139】
COVID-19における換気要件及び換気に関連付けられた肺損傷を緩和する際のEA-230の使用
COVID-19の原因となるSARS-Cov-2ウイルスによる感染はほとんどの場合、軽度な経過を又は平穏な経過さえをたどる。その経過は、感染した人々の80%超に見られる。この大多数の患者は、空咳を伴う鼻と喉の上気道感染症を経験しており、通常は2~12日で治り、その後ウイルスは体内から消失するあろう。これらの患者は、ウイルスに感染している期間の間、一般的なインフルエンザのような兆候、例えば、発熱、疲労、頭痛及び筋肉痛、を経験する場合があり又は経験しない場合がある。それらは、本発明に従うAQGV-ペプチドによる処置を必要としないかもしれない。
【0140】
残りのケースにおいて、明確な病理学的状態が発生する可能性があり(図1、2及び3)、軽度のケースでは、ウイルスに対して向けられた免疫応答が出現するため、ウイルス感染が確実に減少すると考えられる頃にしばしば始まる。最初にウイルス性肺炎が現れ、肺における血管透過性を増加し(肺期)、両方の肺のより深い気道と肺胞にびまん性且つ大量に影響を与え、酸素の取り込みの減少と呼吸不全を生じる。この両側性肺炎に続いて、全身倦怠感、高熱、最終的には臓器(腎臓、肝臓、心臓)の不全を伴う本格的な全身性疾患が迅速に続きうる。これらの症状を示し且つ呼吸困難を有する患者は典型的に、病院に入院し、集中治療室(ICU)に入り、人工呼吸器を装着され、そして、誘発された昏睡状態に置かれる必要があり、それでも最悪の場合には死亡するかもしれない。これらの患者は、AQGV-ペプチドによる処置で十分に助けられる可能性がある。
【0141】
増加された血管透過性は、呼吸不全をもたらす。
【0142】
COVID-19の即時の深刻な合併症として、肺内に流体が蓄積することによって、肺機能が大幅に低下する(図3)。この肺水腫は、ウイルス感染に対する反応として、肺内の血管の増加された透過性によって引き起こされる。肺胞を取り囲む血管網からの流体が肺内へ漏れ出し、この流体が肺組織を破壊し、そして、酸素を輸送する細胞を消去する。両方の肺において有害な流体と壊死した(死んだ)細胞がびまん性に且つ大量に増加すると、酸素が肺と血管組織を通って空気から血液に移動する距離が急激に長くなり、空気から全身の組織全体への酸素の交換が妨げられる。逆に、肺中の血液から空気へのCO2の拡散がまた妨げられる。これらの患者は通常、急性呼吸不全を発症し、激しい呼吸困難に反応し、経験する酸素不足を補おうとする。
【0143】
病院コホートにおけるCOVID-19
【0144】
上記の2つの合併症を有するCOVID-19患者の約3分の1(現在、SARS-Cov-2に感染している患者の約5~約10%)は、病院において処置される必要がある重篤な疾病を有する。一部の国において、これらの患者のほとんどが集中治療室(ICU)に入院している。他の国において、少数のグループがICUでの処置の為に選択され、並びに他の患者は集中処置無しで回復すると見なされるか又は(緩和的な処置のみで)死亡するまで放置されるかのいずれかである。パンデミックで見られる感染率の急激な上昇故に、ある時点で病院又はICUに入院した患者の数は膨大でありうる。2020年6月末の時点で、COVID-19は世界中で800万人以上確認されており、現在、確認された致死率は6%近くである。重篤なCOVID-19患者のこのコホートの効果的な処置の為の緊急な必要性がある。
【0145】
人工呼吸器関連肺損傷(VALI:Ventilator-associated-lung-injury)及び人工呼吸器誘発肺損傷(VILI:Ventilator-induced-lung-injury)
【0146】
重大なCOVID-19の現在の管理は支持的であり、且つ呼吸不全は死亡の主な原因である(Ruan et al.Intensive Care Med.2020;DOI:10.1007/s00134-020-05991-x)。ICUでは、COVID-19患者は一般的に、呼吸を楽にする為に機械的人工換気のシステムに接続されている。しかしながら、機械的人工換気それ自体が人工換気補助肺損傷(VALI;www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12559881)及びVILI(増加された浮腫と悪化した低酸素血症を伴う人工換気誘発肺損傷)を誘発しうる。VALI及びVILI(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24283226)は、COVID-19に関連付けられた多臓器不全を加速する際に明確な役割を果たすことが本明細書において認識されている。機械的人工換気を必要とする患者は、ICU内と退院後の両方で、過度に大量の医療リソースを消費する。該患者の短期的及び長期的な死亡率は高く、並びに、該患者は長期にわたって非常に重い症状の負担に苦しむ。入院生存者は、かなりの程度の機能的及び認知的制限があり、並びに再入院率が高くなる。ある者は、退院後も死亡のリスクが高い。死亡リスクが高いPMV患者の為の長期入院は、現在の費用対効果の基準を満たしていない。結果的に、人工呼吸器の必要性を最小限に抑え、それによって、VALIとVILIにおけるリスクを最小限に抑えることが、逆説的にCOVID-19中の死亡率を下げる鍵となる可能性がある。現在、VILIのVALIに対抗する為の薬理学的方法は、本明細書において提供されているAQGVペプチドと同様に、これらの問題に対処する為に利用可能でない。
【0147】
AQGVペプチドEA-230は、有害な血管流体液透過性を低下させる。
【0148】
驚くべきことに、EA-230は血管透過性を良好に調節することがわかっている。特に、EA-230は、患者の炎症活動がない場合でさえも、ヒトにおける心臓切開手術後の血行動態の安定性を有意に改善する。透過性は、血管から漏れる流体の量を支配する。輸液療法を実施すると、一般的に漏出が増加する。第II相試験の患者観察に基づいて、EA-230で処置された患者において、有害な流体貯蔵(流体過負荷による流体漏れ)の有意な減少が見られた(p=0.03)。手術を通して、EA-230は安全で且つ十分に忍容性であることが示された。手術中に投与されたEA-230は、プラセボ患者よりも手術後の患者の回復に有意な改善を示す。EA-230処置された患者は、集中治療室(p=0.0232)及び病院(p=0.0015)からより早く退院できる。EA-230は血行動態の安定性(p=0.006)及び腎機能(p=0.003)を改善する。患者の長期回復が、EA-230により有意に改善された。血管透過性を改善することによって、EA-230がCOVID-19に関連付けられた肺内の有害な流体の発生を減らす為に使用されることができ、それによって有害な全身効果を伴う人工呼吸器の使用をまた減らすことができる。
【0149】
AQGVペプチドEA-230は、COVID-19における発症におけるその効果のポイントオブケア判定を可能にする。
【0150】
その上、EA-230は、非常に短い半減期を有し、それは、処置中の患者の進行状況を判断し、そして処置の継続又は中止について迅速な決定を下す為に、ベッドサイドでの薬剤の断続的な投与とその実際の効果の決定を容易にする。EA230は非常に短い消失半減期と大量の分布を示した(LPS研究:幾何平均及び95%の信頼区間:それぞれ、0.17[0.12~0.24]時間及び2.2[1.3~3.8]L/kg)。
【0151】
呼吸不全は、COVID-19及びインフルエンザだけでなく、コロナウイルス、例えばSARS及びMERS、によって引き起こされる他の呼吸器疾患の一般的な合併症である。該現象は、2005年に「鳥インフルエンザ」としてまた知られている鳥類H5N1インフルエンザウイルスが流行した後、高い致死率が制御不能な全身性多臓器不全に関連していた場合により広く知られるようになった。今はSARSの亜種であるが、次に我々はMERSの亜種に直面しなければならない場合はどうなるか?ワクチンと抗ウイルス薬は異なるかもしれないが、呼吸不全との戦いは同じままである。AQGVペプチドはなお使用されることができる。
【0152】
AQGVペプチドEA-230の効果のまとめ
【0153】
初期の投与は、血行動態、腎機能、ICU及び病院での滞在期間におけるEA-230の新規で真に有益な効果であって改善された血行動態の安定性に関する該効果が、本発明者等が検出することをもたらした。
【0154】
手術中のEA-230による患者の処置は、血行動態療法についての必要性を有意に減少させた(輸液療法と血圧薬との併用;p=0.006)。これらの改善された血行動態に加えて、EA-230は、(糸球体濾過率に対する影響によって決定される)腎機能と、腎機能バイオマーカーであるクレアチニンの血漿レベルを有意に改善した(p=0.003)。それはまた、ICUでの回復期間が有意に短縮され、並びに入院期間が有意に短縮された。平均して、EA-230で処置された患者は、プラセボで処置された患者が約10日間必要であったのに対して、約8日間の入院治療を必要とした。また、EA-230で処置された患者は、プラセボで治療された患者よりも再入院が少なかった。
【0155】
ヒト患者におけるEA-230の効果
前向き無作為化二重盲検プラセボ対照研究が実施され、その中で、オンポンプ冠状動脈バイパス移植を受ける180人の選択的患者が登録された。患者は1:1の比で無作為に割り付けられ、そして、EA-230、90mg/kg/時、又はプラセボのいずれかを投与された。これらは、外科的処置の開始時から心肺バイパスの使用が終了するまで注入された。この初回患者試験における主な焦点は、EA-230の安全性と忍容性にあった。主要な有効性エンドポイント(endpoint)は、EA-230による炎症反応の調節であった。主要な副次エンドポイントは、腎機能に対するEA-230の効果であった。
【0156】
設計及び設定
本研究は、単一施設、前向き(prospective)、二重盲検、プラセボ対照、無作為化、単回投与の第II相研究であった。それは、冠動脈バイパス移植(CABG:coronary artery bypass grafting)を受けている患者におけるEA-230の安全性と免疫調節効果とを評価する為の適応設計を有する。180人の適格な患者が含まれ、並びに1:1の比で活性剤処置又はプラセボ処置のいずれかを受けるように無作為化された。これは初の患者安全性及び忍容性研究であり、その主要な有効性エンドポイントはEA-230の免疫調節効果を評価することであった。主要な副次有効性エンドポイントは、腎機能に対するEA-230の効果であった。この研究は、標準的なプロトコル項目:介入試験のための推奨(SPIRIT:Standard Protocol Items:Recommendations for Interventional Trial)ガイドラインの推奨事項であり、並びにclinicaltrials.govに番号NCT03145220で登録されている。
【0157】
無作為化及び層別化
患者は、非盲検の独立した研究担当者によって、活性剤処置又はプラセボ処置の為に無作為に割り付けられた。研究担当者は、このプロセスにおいて、グッド-クリニカル-プラクティス(Good-Clinical-Practice)承認のデータ管理ソフトウェア(Castor EDC,アムステルダム,オランダ国)を使用した。該Castorシステムは、悪化した出力(adverse outcomes)の為の既知のリスク因子を持つ患者の活性剤処置とプラセボ処置との間で均等な分配を確保する為に層別無作為化を適用した。下記の3つの階層が含まれていた。1)CABG手順;2)推定GFRが30以下、31~90及び90ml/分/1.73m2超の手術前の腎機能;3)EuroSCORE IIが4未満又は4以上(Nashef et al.Eur J Cardiothora Surg 2012 Apr;41(4):734-44)。
【0158】
結合性
全ての患者、主治医、並びに全ての盲検試験手順、データ収集及び/又はデータ分析に関与する医学研究チームの人員について、二重盲検条件が維持された。他の研究手順に関与していない盲検化されていない研究担当者が研究薬を調製した。活性剤処置とプラセボ処置の為の輸液システムと溶液は、外観とテクスチャーが同じであった。該研究の完了、盲検化されたデータレビューの実施及びデータベースのロックの後、治験依頼者によって非盲検化が承認された。
【0159】
研究介入
EA-230、90mg/kg/時間、又はプラセボの静脈内注入は、自動注入ポンプを使用して、最初の外科的切開の瞬間に開始された。注入速度は250mL/時間に設定され、注入が、CPBの停止まで又は4時間の連続注入後のいずれか早い方まで続けられた。
【0160】
EA-230製剤は、800~1000mOsm/kgのオスモル濃度で、300mg/mLの最終濃度で注射用に水中に溶解された1500mg/バイアルを含む滅菌5mLガラスバイアル中に詰められた。プラセボ製剤は、注射用の水で希釈された塩化ナトリウムからなり、同一の浸透圧の溶液に到達する為に29mg/mLを含有する同一の滅菌5mLガラスバイアル中に入れられた。EA-230とプラセボは、無菌条件下で、適量のEA-230又はプラセボを1000mLの生理食塩水に加えることによって、400mOsm/Kg未満の浸透圧で持続静脈内注入用に調製された。プラセボ処置バイアル及び活性剤処置バイアルは、HALIX BV(ライデン,オランダ国)によって製造された。
【0161】
有害事象(AEs:Adverse events)
全てのAEは、有害事象ガイドライン(Adverse Events guidelines)4.030の共通用語基準(Common Terminology Criteria)に従って、重症度(「軽度(mild)、中等度(moderate)、又は重度(Severe)」)及び治験薬とのそれらの認識された関係に従って、研究者によって判断された(「間違いなく(definitely)、多分(probably)、おそらく(possibly)、又は無関係/関連する可能性は低い(unrelated/unlikely to be related)」)。SAE又はSUSARは、死亡、生命を脅かす疾病、持続的及び/又は重大な障害及び/又は無能力、並びに入院及び/又は入院患者の入院の延長を包含する。
【0162】
倫理的配慮、データ品質保証及び患者、並びに一般市民の関与
本研究は、ヘルシンキ宣言の倫理原則(ICH E6(R1)、人間を対象とする医学研究法、臨床試験のガイドラインおよび欧州指令(the Medical Research Involving Human Subjects Act,guidelines of Good Clinical Practice and European Directive)(2001/20/CE))に従って実施された。インフォームドコンセントが、研究固有の手順が実行される前に得られた。データは機密かつ匿名で取り扱われ、並びにグッド-クリニカル-プラクティス(Good-Clinical-Practice)基準が適用された。本研究における患者データの取り扱いは、オランダの個人データ保護法(オランダ語:Wet Bescherming Persoonsgegevens,WBP)に準拠している。
【0163】
患者及び一般市民は、研究プロトコルの設計及び/又は実施に関与していなかった。
【0164】
研究結果は、全ての研究参加者に個別に配布された。介入の負担は、素人のメンバーを含む独立した倫理委員会CMO及びCCMOによって評価された。
【0165】
結果
臨床試験の間に得られたデータを評価すると、IL-8、IL-10、IL-1RA、IL-17、MCP-1及びICAM並びにテストされた他のサイトカインの場合に、EA-230とプラセボグループとの間で血漿レベルの有意差が観察されなかった故に、驚くべきことに、免疫調節効果は明らかに観察されなかった。これは、試験の主要なエンドポイントであるIL-6血漿レベルにまた当てはまった。
【0166】
驚くべきことに、EA-230処置グループでは、流体貯蔵を患う患者が有意に少なかった(下記の表1を参照)。様々なパラメータが更に分析され、そしてそれは、プラセボと比較して、血行動態パラメータ(例えば、昇圧剤の使用及び/又は流体バランス)及び/又は腎臓パラメータが、EA-230の使用によって有利に影響を受けることがわかった。本発明者等は、EA-230投与のタイミングが早すぎるか、又は少なくともCABG患者の過炎症状態の間は十分でなかったと結論付ける。
【0167】
しかしながら、驚くべきことに、免疫調節効果が観察されなかったにもかかわらず、AQGVペプチドで処置された患者のICU(集中治療室)の滞在期間及びまた入院期間が有意に短縮されたことがわかった。該研究中にヒト対象において監視されたパラメータの詳細な分析により、AQGVペプチドの使用が処置患者の血行動態を有利に調節したことが明らかになった/発見された。ヒト患者における腎機能に関連するパラメータが、これらの患者において免疫調節効果が観察されていないにもかかわらず、有意に改善されているか、又は維持され、そして悪化していないことが示されていることがまたわかった。腎機能及び/又は血行動態に関連するパラメータは一般的に、患者において監視され、並びにICU又は病院のいずれかにおける滞在期間を決定する。従って、AQGVの使用は、ヒト患者において監視されるパラメータを有利に改善し、それによってICU又は病院のいずれかにおける滞在期間を短縮することを可能にする。
【0168】
[表1]
表1.EASI試験における有害事象(AE)
AE、重篤な有害事象(SAE:serious adverse events)、及び予想外の重篤な有害反応の疑い(処置グループ間の差を伴うSUSARが、該表にリストされている。有意に少ない(カイ二乗 P<0.05)。有害事象は、プラセボ処置グループ(283)よりもEA-230処置グループ(217)において発見された。EA-230処置グループ(n=2)では、プラセボ処置グループ(n=11)よりも流体貯蔵を患っている患者が有意に少なく(カイ二乗 P<0.05)、p<0.05であった。
【0169】
【表1】
【0170】
[表2]
表2.患者の平均年齢、ポンプ長の四分位数Q1、Q2、Q3及びQ4で分割された患者の平均オンポンプ長、並びにテストされた全ての患者(Q1~Q4)。
【0171】
【表2】
【0172】
試験における血行動態の安定性
一般的に、昇圧剤の使用が、EA-230で処置されたグループにおいて減少した。
【0173】
患者は、処置期間に基づいて四分位数に分けられた。下記の表3において、2つの変数の記述的頻度:血管抑制の日数、及び正味の流体バランス 0~2日目(最初の72時間)が示されている。
【0174】
複数のグループが、急性腎障害(AKI:acute kidney injury)を有しない患者及びAKIを有する患者、並びに処置無しの患者(プラセボ)及びEA-230による処置を受けた患者(活性剤)に分けられた。EA-230は、AKIを有する患者とAKIを有しない患者の両方で正味の(netto)流体バランスを減少させた。EA-230は、AKIを有する患者における昇圧剤の必要性が減少させた。
【0175】
【表3】
【0176】
EA-230での処置による流体バランスの調整及び昇圧剤使用
プラセボに対するEA-230の効果が、単変量モデル及び多変量モデルにおいてテストされた(下記の表4を参照)。
【0177】
入力/独立変数:処置グループ(EA-230又はプラセボ)。出力/従属変数は下記の通りである:最初の72時間の流体バランスのエンドポイント、血管収縮スコア又は昇圧スコア(曲線下の領域)における日数。プラセボに対するEA-230の効果は、下記の2つの組み合わされた変数においてテストされた:モデルA:最初の72時間の流体バランス+血管収縮における日数、及びモデルB:最初の72時間の流体バランス+昇圧スコアAUC。両方の多変量モデルにおけるテストの結果は、EA-230を投与された患者における血行動態パラメータの有意な改善を示した。これは、モデルA(最初の72時間の流体バランス+血管収縮における日数)p=0.006、及びモデルB(最初の72時間の流体バランス+昇圧スコアAUC)p=0.008で観察された。AKIを示さなかった患者のグループにおいて、EA-230の血行動態効果がまた有意に良好であり、血行動態における改善が、腎不全とは無関係に生じる可能性があることを示す。
【0178】
[表4]
表4.EA-230による目標指向型血行動態療法
全グループについてのモデルAの為に及びRIFLE基準に適合する急性腎損傷分割のサブグループの為の分析が示されている:AKIを有しない(プラセボn=42、EA-230 n=50)、リスク(プラセボn=31、EA-230 n=34)、及び損傷(プラセボn=16、EA-230 n=6)。対応するp値がリスト化されている。
【0179】
【表4】
【0180】
まとめると、これらの結果は、なかんずく、昇圧剤の使用期間、投与される昇圧剤の量及び/又は流体バランスに影響を与えることによって評価されるように、EA-230の使用がヒト患者における血行動態を改善及び/又は維持することができることを示す。特に、EA-230は、ヒトにおける血行動態の安定性を改善する。透過性は、血管から漏れる流体の量を支配する。輸液療法を実施することは一般的に漏出を増加させる。第II相試験の患者の観察に基づいて、EA-230で処置された患者において不利な流体貯蔵(流体漏れ)の有意な減少を見つけた(p=0.03)。また、収縮性は調子を支配する。血圧薬の投与によってしばしば調整されるが、しかしながら、それは重大な有害な副作用を示しうる。第II相試験の患者観察に基づいて、本発明者等は、EA-230で最も長く処置された患者の半分において、必要な血圧薬の使用が大幅に減少することを見つけた(156分超;p=0.093)。本発明者等はまた、第II相臨床試験において、EA-230についてヒトにおけるイン・ビボで決定された平均最大濃度(平均Cmax)を決定した。平均動脈Cmaxが下記の通り見つかった:30500ng/mL(12500~57500ng/mLの範囲)。平均静脈Cmaxが下記の通り見つかった:68400ng/mL(19600~113000ng/mLの範囲)。EA-230は、腎機能に有利な効果を有する。
【0181】
急性腎障害(AKI:acute kidney injury)の様々な段階の発生率における調節に対するEA-230の効果は、RIFLE基準(RIFLE:リスク(risk)、損傷(injury)、不全(failure)、腎機能喪失(loss of kidney function)、及び末期腎疾患(end-stage kidney disease)の分類、Clin Kidney J.2013 Feb;6(1):8~14)。EA-230グループにおいて、AKIを有しない患者数が増加し、一方、RIFLE基準の傷害カテゴリーにおける患者数は減少した。その上、EA-230の使用は、GFRを有意に改善した。腎機能のバイオマーカーであるクレアチニンクリアランスは、EA-230で処置された患者において有意に改善された。腎機能が考慮された場合において、EA-230が使用された場合、腎機能が60mL/分未満の場合に、クレアチニンのクリアランスが有意に改善された。腎機能が60mL/分超の場合、差は観察されなかった。処置前の腎機能が60mL/分/1.73m2超である場合、グループの間で差は見られなかった。これらの結果は、EA-230の使用がヒト患者における腎機能を改善及び/又は維持することができることを示す。
【0182】
ICU、病院、及び再入院の滞在期間
【0183】
この研究において、患者のICUでの滞在期間と病院での滞在期間(入院治療)に対する影響が調査された。EA-230での処置は、ICUでの並びに病院での入院期間(LOS:length of stay)が有意に短縮された。EA-230グループにおいて、ICUにおけるLOSと病院におけるLOSが減少した。EA-230で処置された患者はまた、手術後90日までに再入院の数が大幅に(p=0.09)減少したことを示した(下記の表5を参照)。
【0184】
[表5]
表5.EASI研究(CABG研究)における再入院の数。処置後の期間に臨床疾患の為に再入院しなければならなかった患者の数。術後28日間、術後29~90日間及び術後90日間の合計期間で再入院率をスコア化された。再入院、が、EA-230を投与された患者(処置グループ)において減少した。
【0185】
【表5】
【0186】
その上、AQGVで処置された患者グループにおいて、AKI損傷を患う患者の数が減少し、そして、患者がAKI損傷を受けた場合に、これらの患者は、プラセボグループにおいて観察されたように、入院期間が延長されることはなく、入院期間は、AKIを有しない患者又はAKIのリスクがある患者と同様であった。
【0187】
EA-230による処置は、回復に強力な有益な効果を示す。
EA-230処置患者は、プラセボ処置患者と比較して、血行動態療法が有意に少なくなり、手術後の腎機能の回復が有意に早く、及び集中治療室(ICU)に及び病院に滞在する期間が短くなった。
【0188】
EA-230のこれらの新規な血行動態効果は、EA-230の抗炎症効果とは無関係である。要するに、EA-230処置患者の血行動態の安定性、腎機能及び回復の有意な改善は、血管透過性及び血管収縮性に対するEA-230の新規な効果に関連する。EA-230は、プラセボ患者よりも患者の回復において有意な改善を示す。EA-230処置患者は、集中治療室(p=0.0232)及び病院(p=0.0015)からより早く退院できる。EA-230は血行動態の安定性(p=0.006)及び腎機能(p=0.003)を改善する。
【0189】
主要なエンドポイントである短期的な炎症性サイトカイン(IL-6)の減少は無かったが、長期的な患者の回復はEA-230によって有意に改善された。
【0190】
血行動態の安定性の有意な改善が見られた(輸液療法の低減及び血圧薬;p=0.006)、腎機能の有意な改善(改善された糸球体濾過率は、血漿クレアチニンを減少させる;p=0.003)、回復中の不利な流体貯蔵を患う患者の有意な減少(EA-230の場合に2例、プラセボの場合に9例;p=0.03)、及び、処置後90日以内の再入院の大幅な減少(EA-230の場合に4例、プラセボの場合に10例;p=0.09)。
【0191】
血管収縮及び/又は血管拡張に関連するバイオマーカーの更なる分析
【0192】
血行動態及び肺機能において観察された影響を考慮して、血漿サンプルが、選択されバイオマーカーに関して更に分析される。対照患者及びEA-230を投与された患者の血漿サンプルが、バイオマーカーである、エンドセリン-1、VEGF、アンギオテンシンII、ANG2/ANG1比、並びにcAMP及びナトリウム利尿ペプチドに関して分析される。
【0193】
EA-230及びAQGV類似体のイン・ビトロ効果
【0194】
イン・ビトロのトランスウェルアッセイにおいて、AQGVペプチド(EA-230)及びその類似体の効果が、ヒト内皮細胞において試験される。簡単に説明すると、内皮細胞がトランスウェル培養皿中で培養され、そして該培地に、AQGVペプチド及びその類似体、又は内皮層の透過性、血管収縮及び/又は血管拡張に影響を与えることが知られている対照化合物が補充される。
【0195】
好適なヒト内皮細胞は例えば、HUVEC(Park et al.,Stem Cell Rev.2 (2):93~102,2006;Jimenez et al.,Cytotechnology 65,1-14,2012)及びHMEC-1(Ades EW,et al.J.Invest.Dermatol.99(6): 683-690,1992.)である。内皮層の透過性は、高分子の浸透を測定することによって決定される。その上、バイオマーカーのレベルがまた培地中で決定される。実験は、例えば、Cox et al.,Shock,43(4):322-6;2015に概説されているように実施される。HUVEC透過性テストにおいて、血管の内側を覆うことができる確立されたヒト内皮血管細胞(HUVEC:human endothelial vascular cells)が、複数のテスト形式で、ふるい上の細胞培養(すなわち、n=5)中で増殖され、使用されるEA-230ペプチド又はプラセボ対照の様々なテスト濃度に応じてリークスルー生成物(leak-through products)の決定を可能にし、ヒト細胞中の透過性に対するEA-230-ペプチド効果の薬理学的パラメータを、エフェクター、例えば、トロンビン、ブラジキニン、リポ多糖(LPS:lipopolysaccharide)、コロナウイルスのスパイクタンパク質、コロナウイルスの核酸、高移動度グループボックス1(HMGB1:high mobility group box 1)タンパク質、有りで又は無しで、確立し、そして、AQGV-ペプチドでそれらの効果を逆転させる。
【0196】
また、Bravo等(J Pharmacol Toxicol Methods.2018 Jan-Feb;89:47-53)は、xCELLigence RTCA MPシステムを使用したインピーダンスベースの収縮アッセイを開発した。この技術は、個々のウェル内に印刷された金の微小電極アレイを備えた特別な96ウェルEプレートを利用して、電気インピーダンスをリアルタイムで記録することによって細胞接着を監視する。インピーダンス変化(パーセンテージ 対 対照)は、細胞収縮の為の読み出しとして使用されることができる。確立されたヒト大動脈平滑筋細胞(HaSMC:human aortic smooth muscle cells)は、血管を収縮させることができ、複数のテスト形式で、金電極上の細胞培養(すなわち、n=3)で増殖され、使用されるEA-230-ペプチド又はプラセボ対照の様々なテスト濃度に応じて、エンドセリン-1で誘発された平滑筋細胞収縮の電気インピーダンス測定を可能にし、ヒト細胞における収縮性に対するEA-230効果の薬理学的パラメータを確立する。加えて、分離された動脈瘤(n=3)/対照(n=3)患者のヒト大動脈平滑筋細胞(patient human aortic smooth muscle cells)(APaSMC)は、血管を収縮させることができ、複数のテスト形式で金電極上の細胞培養で増殖され、患者 対 対照細胞のイオノマイシンで誘発された平滑筋細胞収縮の電気インピーダンス測定を可能にし、使用されるEA-230ペプチド又はプラセボ対照の様々なテスト濃度に応じて、患者細胞におけるEA-230の効果を、エフェクター、例えば、トロンビン、ブラジキニン、リポ多糖(LPS:lipopolysaccharide)、コロナウイルスのスパイクタンパク質、コロナウイルスの核酸、高移動度グループボックス1(HMGB1:high mobility group box 1)タンパク質、有りで又は無しで検出し、そして、AQGV-ペプチドでそれらの効果を逆転させる。同様の研究が、使用されるEA-230ペプチド又はプラセボ対照の様々なテスト濃度に使用され、ヒト肺オルガノイド培養におけるEA-230の効果を、エフェクター、例えば、トロンビン、ブラジキニン、リポ多糖(LPS)、コロナウイルスのスパイクタンパク質、コロナウイルスの核酸、高移動度グループボックス1(HMGB1)タンパク質、有りで又は無しで検出し、そして、AQGV-ペプチドでそれらの効果を逆転させる。同様の研究が、EA-230-ペプチドの様々なテスト濃度又は使用されるプラセボ対照に使用され、ヒトACE2受容体を備えた実験マウスにおけるEA-230の効果を、エフェクター、例えば、トロンビン、ブラジキニン、リポ多糖(LPS)、コロナウイルスのスパイクタンパク質、コロナウイルスの核酸、高移動度グループボックス1(HMGB1)タンパク質、有りで又は無しで検出し、そして、AQGV-ペプチドでそれらの効果を逆転させる。
【0197】
対象における血管の内皮層の透過性を低下させる方法において使用する為の医薬組成物の例であって、該方法は、感染の結果として透過性が増加した部位でアンジオポエチン-1に対するアンジオポエチン-2の比を低下させる物質を前記内皮層に提供することを含む。
【0198】
実施例1
AQGVLPGQ-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGVLPGQ-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0199】
実施例2
LQGVLPGQ-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVLPGQ-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0200】
実施例3
AQGLQPGQ-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0201】
実施例4
LQGLQPGQ-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQPGQ-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0202】
実施例5
AQGV-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGV-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0203】
実施例6
LQGVL-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVL-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0204】
実施例7
AQGLQ-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0205】
実施例8
LQGLQ-マレイン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQ-マレイン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0206】
実施例9
AQGVLPGQ-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGVLPGQ-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0207】
実施例10
LQGVLPGQ-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVLPGQ-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0208】
実施例11
AQGLQPGQ-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0209】
実施例12
LQGLQPGQ-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQPGQ-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0210】
実施例13
AQGV-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGV-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0211】
実施例14
LQGVL-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVL-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0212】
実施例15
AQGLQ-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0213】
実施例16
LQGLQ-酢酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQ-酢酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0214】
実施例17
AQGVLPGQ-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGVLPGQ-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0215】
実施例18
LQGVLPGQ-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVLPGQ-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0216】
実施例19
AQGLQPGQ-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0217】
実施例20
LQGLQPGQ-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQPGQ-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0218】
実施例21
AQGV-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGV-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0219】
実施例22
LQGVL-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVL-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0220】
実施例23
AQGLQ-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0221】
実施例24
LQGLQ-酒石酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQ-酒石酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0222】
実施例25
AQGVLPGQ-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGVLPGQ-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0223】
実施例26
LQGVLPGQ-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVLPGQ-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0224】
実施例27
AQGLQPGQ-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0225】
実施例28
LQGLQPGQ-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQPGQ-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0226】
実施例29
AQGV-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGV-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0227】
実施例30
LQGVL-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGVL-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0228】
実施例31
AQGLQ-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
AQGLQPGQ-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
【0229】
実施例32
LQGLQ-クエン酸塩
1Lの組成物を調製する為、下記を混合する
LQGLQ-クエン酸塩 - 1.8モル
0.9%のNaCl - 1L
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
【配列表】
2023521744000001.app
【国際調査報告】