(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】パルス電界波形の操作及び使用
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561208
(86)(22)【出願日】2021-04-07
(85)【翻訳文提出日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 US2021026221
(87)【国際公開番号】W WO2021207385
(87)【国際公開日】2021-10-14
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522244964
【氏名又は名称】ガルヴァナイズ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】カステルビ,クイム
(72)【発明者】
【氏名】ニール セカンド,ロバート イー.
(72)【発明者】
【氏名】オブライエン,ティモシー ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ワードストライヒャー,ジョナサン アール.
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK37
4C160KK47
(57)【要約】
1つ又は複数の電極をそれぞれ有する1つ又は複数のエネルギー送達本体を通してパルス電界(PEF)エネルギーを組織に送達するためのデバイス、システム及び方法が提供される。PEFエネルギーは、様々な特徴を有する波形から生成される。パルス間遅延、サイクル間遅延、相間遅延、パケット間遅延、バンドル間遅延などの波形遅延は、所望の結果を得るために治療内で利用され得る。特に、これらの遅延は、特定の所望の結果を得るために具体的に操作され得る。例えば、これらの遅延の1つ、幾つか又はすべては、幾つかの例を挙げると、ガス形成、電気放電、空洞形成、筋肉収縮及び温度上昇などの任意の関連するリスクを緩和するために、PEF療法の様々な態様を制御するように操作され得る。幾つかの実施形態では、遅延は、PEFエネルギーが送達される期間を分散させ、治療送達結果に対する著しい変化及び最適化をもたらす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織に治療を提供するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、前記治療を提供するためのパルスの1つ又は複数のパケットを含み、及び1つ又は複数の二次的効果を操作するか、又は減少させるか、又は回避する1つ又は複数の遅延期間を含む波形から生成される、ジェネレータと
を含むシステム。
【請求項2】
前記1つ又は複数の二次的効果は、泡形成を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記パルスの1つ又は複数のパケット内の前記パルスのそれぞれは、0.5~20マイクロ秒の範囲内のオンタイムを有する、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記パルスの1つ又は複数のパケット内の前記パルスのそれぞれは、5マイクロ秒までの連続オンタイムを有する、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記パルスのそれぞれは、2.5パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項1~4の何れか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記遅延期間は、1マイクロ秒以上である、請求項1~5の何れか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記遅延期間は、1~250マイクロ秒の範囲内である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記遅延期間は、10~100マイクロ秒の範囲内である、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記遅延期間は、100マイクロ秒以上である、請求項6に記載のシステム。
【請求項10】
前記遅延期間は、250マイクロ秒以上である、請求項6に記載のシステム。
【請求項11】
前記遅延期間は、1000マイクロ秒以上である、請求項6に記載のシステム。
【請求項12】
前記1つ又は複数の二次的効果は、電気放電事象を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記電気放電事象は、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つからの電気アーク放電を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記パルスの1つ又は複数のパケット内の前記パルスのそれぞれは、1~50マイクロ秒の範囲内のオンタイムを有する、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項15】
前記パルスの1つ又は複数のパケット内の前記パルスのそれぞれは、20マイクロ秒までの範囲内の連続オンタイムを有する、請求項12又は13に記載のシステム。
【請求項16】
前記パルスの少なくとも1つのパケットのそれぞれは、20パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項12~15の何れか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記電気放電事象は、前記組織に対する圧力波の生成を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項18】
前記圧力波は、前記組織内に空洞を生成するのに十分なものである、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記パルスの少なくとも1つのパケットのそれぞれは、50パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記パルスの1つ又は複数のパケット内の前記パルスのそれぞれは、10~100マイクロ秒の範囲内のオンタイムを有する、請求項18又は19に記載のシステム。
【請求項21】
前記パルスの1つ又は複数のパケット内の前記パルスのそれぞれは、50マイクロ秒までの連続オンタイムを有する、請求項18又は19に記載のシステム。
【請求項22】
前記遅延期間は、1マイクロ秒以上である、請求項12~21の何れか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記遅延期間は、1~500マイクロ秒の範囲内である、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記遅延期間は、10~250マイクロ秒の範囲内である、請求項22に記載のシステム。
【請求項25】
前記1つ又は複数の二次的効果は、筋肉の収縮を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記少なくとも1つの電極は、幅を有する損傷を生じさせるように構成され、前記筋肉の収縮を減少させるか又は回避することは、前記少なくとも1つの電極が、前記幅の25%を超えて移動しない位置を維持することを引き起こす、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記遅延期間は、5ミリ秒以上である、請求項25又は26に記載のシステム。
【請求項28】
前記遅延期間は、10ミリ秒以上である、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記遅延期間は、5ミリ秒~1秒の範囲内である、請求項27に記載のシステム。
【請求項30】
前記遅延期間は、5~10ミリ秒の範囲内である、請求項27に記載のシステム。
【請求項31】
前記パルスの1つ又は複数のパケットは、少なくとも30ミリ秒のパケット遅延期間によって分離される少なくとも2つのパケットを含む、請求項25~30の何れか一項に記載のシステム。
【請求項32】
前記パケットのそれぞれは、少なくとも30ミリ秒のパケット遅延期間によって分離される、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記パルスは、二相性パルスを含み、及び前記遅延期間は、二相性パルスの正相と負相との間の相間遅延を含む、請求項1~32の何れか一項に記載のシステム。
【請求項34】
前記遅延期間は、パケット間遅延を含む、請求項1~33の何れか一項に記載のシステム。
【請求項35】
前記パケット間遅延は、30~5000ミリ秒の範囲内である、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記パケット間遅延は、30~40ミリ秒である、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記パケット間遅延は、3000~5000ミリ秒である、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記遅延期間は、パルス間遅延を含む、請求項1~37の何れか一項に記載のシステム。
【請求項39】
前記波形は、1つ又は複数のバンドルを含み、各バンドルは、2つ以上のパケットを含む、請求項1~38の何れか一項に記載のシステム。
【請求項40】
各バンドルは、3つのパケットを含み、各バンドルは、前記患者の心臓リズムのST間隔内で送達されるように間隔を空けられる、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記遅延期間は、バンドル間遅延を含む、請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記波形は、500~4,000ボルトの電圧振幅を有する、請求項1~41の何れか一項に記載のシステム。
【請求項43】
前記波形は、300~800kHzの周波数を有する、請求項1~42の何れか一項に記載のシステム。
【請求項44】
前記1つ又は複数のパケットのそれぞれは、10~200の二相性パルスを有する、請求項1~43の何れか一項に記載のシステム。
【請求項45】
前記1つ又は複数のパケットのそれぞれは、20~50の二相性パルスを有する、請求項1~44の何れか一項に記載のシステム。
【請求項46】
前記治療は、5~100のパケットを含む、請求項1~45の何れか一項に記載のシステム。
【請求項47】
前記治療は、10~60のパケットを含む、請求項1~46の何れか一項に記載のシステム。
【請求項48】
前記エネルギーが単極様式で送達されるように位置付け可能な遠隔分散電極をさらに含む、請求項1~47の何れか一項に記載のシステム。
【請求項49】
患者の組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織に治療を提供するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、前記治療を提供するためのパルスの1つ又は複数のパケットを含み、及び1つ又は複数の遅延期間であって、前記1つ又は複数の遅延期間がなければ前記エネルギーの送達によって到達されていたであろう前記組織のピーク温度を回避する1つ又は複数の遅延期間を含む波形から生成される、ジェネレータと
を含むシステム。
【請求項50】
患者の組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織に治療を提供するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、前記治療を提供するためのパルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、各パルスは、パルス長を有し、及び前記少なくとも1つのパケットの少なくとも1つは、前記パルス長の少なくとも2倍の遅延期間を有する遅延を含む、ジェネレータと
を含むシステム。
【請求項51】
前記遅延期間は、前記パルス長の少なくとも10倍である、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記少なくとも1つのパケットは、前記遅延期間の少なくとも50倍のパケット長を有する、請求項50又は51に記載のシステム。
【請求項53】
前記少なくとも1つのパケットは、前記遅延期間の少なくとも100倍のパケット長を有する、請求項52に記載のシステム。
【請求項54】
前記遅延は、パルス間遅延を含む、請求項50~53の何れか一項に記載のシステム。
【請求項55】
前記パルスは、二相性パルスであり、及び前記パルス間遅延は、サイクル間遅延である、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
患者の組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織に治療を提供するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、前記治療を提供するための二相性パルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、各二相性パルスは、250~1000マイクロ秒の範囲内の相間遅延を含む、ジェネレータと
を含むシステム。
【請求項57】
患者の組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織に治療を提供するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、前記治療を提供するためのパルスの2~60のパケットを含む波形から生成され、各パケットは、250~1000マイクロ秒の範囲内の少なくとも1つの遅延期間を含む、ジェネレータと
を含むシステム。
【請求項58】
患者の組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織に治療を提供するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、遅延期間を有するパルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、前記少なくとも1つのパケットは、前記遅延期間の少なくとも50倍のパケット長を有する、ジェネレータと
を含むシステム。
【請求項59】
患者の組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
前記少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織に治療を提供するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、パルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、各パルスは、1つ又は複数の二次的効果を減少させるか又は回避するために50パーセント以下のデューティサイクルを有する、ジェネレータと
を含むシステム。
【請求項60】
前記1つ又は複数の二次的効果は、前記組織における空洞形成を含む、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
各パルスは、20パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項59に記載のシステム。
【請求項62】
前記1つ又は複数の二次的効果は、電気放電事象を含む、請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
各パルスは、2.5パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項59に記載のシステム。
【請求項64】
前記1つ又は複数の二次的効果は、泡形成を含む、請求項63に記載のシステム。
【請求項65】
組織を治療するためのシステムであって、
前記組織の近くに位置付け可能な電極と、
前記電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記組織を治療するように、前記電極に前記エネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、前記エネルギーは、ガス形成、外部電気放電、筋肉収縮、空洞形成及び/又は温度上昇に影響を与えるように選択される、パルス間の特定の遅延期間を有する波形から生成される、ジェネレータと
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本出願は、2020年4月8日に出願された「PULSED ELECTRIC FIELD WAVEFORM MANIPULATION AND USE」という名称の米国仮特許出願第63/007,233号及び2020年9月15日に出願された「PULSED ELECTRIC FIELD WAVEFORM MANIPULATION AND USE」という名称の米国仮特許出願第63/078,784号に対する優先権及びその利益を主張するものである。上述の出願の開示は、あらゆる目的のために参照により全体として本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
[0002] 病気及び苦痛の治療のために治療用エネルギーを身体に送達するための様々なデバイス及び方法が開発されている。場合により、そのような送達は、通路の壁に沿った若しくは通路の壁の内部の病変組織を治療するか、又は通路に関連する若しくは通路を通して到達可能な病気に影響を与えるために、身体管腔、通路又は類似の解剖学的構造内の組織に対するものである。このようなデバイスは、一般的に、蛇行した管腔の解剖学的構造を横断するための可撓性の細長いシャフトと、そのようなエネルギーを身体管腔などの離れた場所又は閉鎖された場所に送達するための、可撓性の細長いシャフト上に取り付けられたエネルギー送達要素とを含む。このようなデバイスは、例えば、肺の通路又は血管系の血管を治療するために開発されている。
【0003】
[0003] 治療的処置のために、幾つかの例を挙げると、無線周波数エネルギー、マイクロ波エネルギー、高強度集束超音波(HIFU)エネルギー及びパルス電界(PEF)エネルギーを含む様々な異なるタイプのエネルギーが使用されている。PEFエネルギーは、一般的に、非常に短期間わたって高エネルギー放電を送達する。したがって、DC電源からの低電圧エネルギーは、高強度パルス電界に変換される。高強度エネルギーは、異なる電気強度(20~80kVcm-1)及び異なる時間(<1s)で標的組織に放電されるようにコンデンサに蓄えられる。
【0004】
[0004] PEFエネルギーは、非熱的となる(すなわち熱傷による細胞死を生じさせる閾値未満)方法で送達される。結果的に、細胞外基質が存在する場合、細胞外基質が保持され、標的組織は、血管及びリンパ管を含む構造的アーキテクチャを維持する。したがって、組織の完全性及び機能性を維持するために不可欠な生物学的管腔、血管、神経などの繊細な構造を保持することが可能である。これは、幾つかの利点を提供する。まず、これは、従来の方法では治療不可能であると見なされることが多い組織の治療を可能にする。繊細な構造付近の標的組織は、一般的に、繊細な構造から組織を完全に及び効果的に外科的に分離することが不可能であるため、外科手技によって切除することができない。同様に、多くの従来の非外科的療法は、療法による繊細な構造に対する損傷の可能性により、又は療法が繊細な構造の近接により効果がないと見なされるため、禁忌である。加えて、繊細な構造付近の組織を治療する能力は、繊細な構造付近に悪性の外縁部が残されないより包括的な治療も提供する。組織が治療されると、構造的アーキテクチャの残存は、免疫系の構成要素などの生物学的要素の自然流入又は治療的処置を促進するための様々な薬剤の導入も可能にする。
【0005】
[0005] しかしながら、PEFエネルギーの使用には、様々なリスクが伴う。そのようなリスクの幾つかを本明細書において以下に説明する。
【0006】
気泡形成
[0006] 一般的に、イオン溶液(塩水、血液、間質液など)中でPEFを送達することは、溶液内の化合物に影響を与える電解反応、特に(活性陰極において)水素ガス成分及び(活性陽極において)塩素ガス成分を生じさせる水分子の分離をもたらす。したがって、これらのガスは、電気化学的生成ガスと見なされる。エネルギー送達中にPEFの極性を交互にすることは、生成される項目を交互にすることにより、泡形成の度合いを低下させる。しかしながら、これのみでは、極性の各位相中の活性期間がガス形成に寄与し続けるため、ガスの発生を完全になくさない。
【0007】
[0007] 気泡形成は、臨床例において様々な影響を有し、これは、標的とされる場所及び用途によって異なる。電極間において又は遠隔の外部分散パッドと通信してPEFを送達するために、1つ又は複数の電極が組織の標的領域内に配置される組織破壊用途では、ガス形成は、超音波で明白に可視化されている。それは、治療送達の重要度の低い副作用であると機械的に見なされ、治療送達を変える交絡因子と見なされてはいない。しかしながら、ガス形成は、用途に応じて望ましいことも又は望ましくないこともある幾つかの効果に寄与する。ある考察では、ガス形成は、隣接する組織領域に圧力を加え、組織のジオメトリを歪ませ、組織のアーキテクチャを破壊するか、又は組織内の他の物質を変位させ得る。別の考察では、ガス形成は、溶解する前に血流に入り得る。循環する気体状の「泡」は、その後、動脈経路又は後続の静脈を通して移動して、下流の組織で局所貧血を引き起こす塞栓症を生じさせ、それにより下流の細胞及び組織の死、痛み及び患者にとっての他のリスクを生じさせ得る。泡は、溶解する前に体循環を通して戻り、肺塞栓症を引き起こす場合もあり、肺塞栓症は、痛み、病的状態又は患者の死を引き起こし得る。
【0008】
[0008] 誘導電気化学反応によって生成されるガスの他に、ガスは、気化によっても生成され得る。電流は、ジュール加熱により、イオン溶液の温度を上昇させる。誘導温度が相変化値を超える場合、水分の気化が生じる。気化及び電気化学的生成ガスの両方は、イオン溶液よりもはるかに低い電気伝導率を示す。したがって、高電圧高エネルギー電気パルスで治療されている組織の領域では、ガス内部に結果として生じる電界は、スパークする電気アーク又は生成されている気泡のサイズ、量、タイプ及び分布に応じたより大きい燃焼事象として示される電気絶縁破壊よりも高くなり得る。これは、PEFプロトコル及び組織のタイプが局所組織環境から簡単に除去できない大量のガスの発生をもたらす場合の特別なリスクである。泡形成によって引き起こされるこのようなスパークの生成、促進及び潜在的燃焼事象は、ジェネレータ性能に影響を与える(又はジェネレータを破壊する)高電流事象及び治療結果に影響を与えるエネルギー付与パターンの歪みをもたらし得、それにより焼損組織、過剰治療組織、過少治療組織又はこれらの効果の組み合わせを含むリスクが生じる。これらの効果のすべては、PEF療法の有効性、疾病率及び潜在的に死亡率に深刻な影響を与え得る。
【0009】
[0009] ガス形成に関する別の考察では、ガス:液体:組織の混合物の存在は、不均一に変更された電気伝導率環境をもたらす(本質的に、電流は、優先的にガスの周り又はガス中を流れ、それにより標的組織を通るその流れを変え得る)。これは、一部の領域でより高いエネルギー集中をもたらし、他の領域でエネルギー集中の欠如又は低下をもたらし得る。これは、本質的にエネルギーの送達及び付与を歪ませ、それにより潜在的に治療の有効性、疾病率及び処置の死亡率に影響を与え得る。
【0010】
[0010] 固形組織領域におけるガス形成の影響の他にもリスクが呈され、血管系又は心肺系内の血液などの流体標的内にPEF治療を送達する際に潜在的に強まる。特に懸念されることとして、心臓の左心房及び左心室で発生した気泡は、心臓によって大動脈内に直ちに放出される。これらの泡は、冠循環、頸動脈管又は他の血管に入り得る。泡が溶解して流体に戻らなければ、泡は、動脈の狭窄部分に引っかかり、それによりこれらの管を通る血流を制限又は排除し、下流の組織に局所貧血を生じさせ得る。泡形成は、冷凍アブレーション、高周波アブレーション及びPEF治療を含む様々なエネルギーモダリティによる心房細動などの症状に対する心臓治療におけるリスクとして見られている。症候性及び無症候性脳虚血事象に関する多大なリスクが存在する。加えて、泡が浮かぶか又は上昇する傾向は、仰臥位にある患者の冠動脈に泡が入る可能性を高くする。心房細動電気的隔離処置などの従来の処置中、ガス形成によって誘発され得る問題の可能性及び重症度に起因して、患者におけるこれらの事象のリスクを数値化し及び減少させるために、泡形成を減少させるか又は捕捉するための努力を含む特別な注意が臨床医及び研究者によって払われてきた。しかしながら、PEF治療によるガス形成は、依然として標準的な副作用及び患者リスクである。
【0011】
電気放電
[0011] 電極間にPEFを送達する際、用いられる総じて高い電圧は、送達デバイス、組織の固形構成要素又は組織内の流体において絶縁破壊を引き起こし得る。これは、電極の励起領域からこの媒体内に電気放電を引き起こし得る。電気放電は、マイクロスケールで生じ得、マイクロスケールでは、電気放電は、目に見えないか、又は電気放電は、目に見えるスケールで生じ得るが、一般に可視「アーク」又はスパークとして現れる。放電は、放電の強度と共に増大する圧力波及び可聴音を伴うことが多い。
【0012】
[0012] 電極からの放電は、PEF療法により影響を与える項目の量及び分布の歪みを生じさせる。それらは、放電付近の領域において、より強い治療効果(過剰治療)又はジュール加熱による焼損を生じさせる電流をフォーカスエリアに集中させ得る。これは、組織の残りの部分で誘導される電流及び後続の電界を減少させる場合もある(過少治療)。電流経路の電気絶縁破壊は、システムを流れる電流のスパイクをもたらす場合もあり、これは、PEFジェネレータによって生成されなければならない総電流を増加させ得る。このようなスパイクは、ジェネレータのPEF生成能力を上回り得るか、又はジェネレータの内部回路網に損傷を与える高電流をジェネレータ内で生じさせ得る。加えて、イオン媒体にわたる電気放電は、溶液のpH及び正常な生体分子相互作用に大きい影響を有する媒体の組成を変える反応種(主に窒素及び酸素)を生成し得る。
【0013】
[0013] 電気放電は、一般に、PEF療法において、これらの療法で使用される電圧により生じ得る。双極電極配置は、陰極及び陽極が互いに極めて近接していることにより、大きい電気アーク放電事象の影響を特に受けやすく、これは、完全放電としても知られる電極間の電気放電を発生させ得る。これは、電圧対距離比が適切に決定されなければ、完全な短絡を誘発する。電気放電の許容は、ある程度の不確定性及びリスクを処置にもたらす。それらを回避することは、送達され得る療法の強度を低下させることにより、療法の有効性を低下させ得る。
【0014】
空洞形成
[0014] 可視及び不可視の両方の電気放電の結果として、可聴の「はじけるような」音として明白な圧力波が生成される。この音は、多くのPEF療法において一般的に見られ、治療送達の副作用として認められている。しかしながら、放電及び圧力波が十分な強度のものであり、及び十分な回数繰り返された場合、この圧力波から組織内に伝達及び付与されたエネルギーは、組織のアーキテクチャ及び細胞を激しく破壊し得る。結果として生じる効果は、これらの効果の最も強い強度を経験する電極付近の領域における組織内の欠損又は空洞の度重なる生成である。
【0015】
[0015] 空洞の生成は、固形組織及び導管系内又はそれらの付近における処置送達にかなりのリスクをもたらす。結果として生じる組織の「寸断」及び破壊は、血管、神経又は胆管、尿道、尿管若しくはリンパ管などの他の導管系などの繊細な構造に損傷を与え得る。これらの寸断効果は、出血、血栓若しくは塞栓の形成又は組織機能の破壊をもたらし得る。一般に、PEF治療は、これらの繊細な構造に危害を加えない能力のため、他の療法の代わりに利用される。療法による空洞の形成は、電極から極めて近接した(0.1~5mm)組織領域に関して、ほとんどのPEF療法のこの利点を損なう。
【0016】
[0016] 他の例では、空洞形成及び生成された圧力波による破壊が望ましい場合がある。例えば、胆石又は腎臓結石の破壊又は除去は、このタイプの効果の目的となり得る。さらに、これらの効果によってもたらされる、流体で満たされた空洞は、一般に、既存の組織よりも導電性がある。したがって、PEF(又は他のエネルギーベースのモダリティ)をこの生成された組織空洞内に送達し続けることは、「仮想電極」として機能する電極の適用可能な効果を拡大するのに役立つ。さらに、導電性流体は、より均質な電気伝導率となり、電気フローのためのより均一に分布したコンジットを提供し、それにより電気伝導率が不均一なときに生じ得る組織内への電気放電の可能性が減少する。したがって、ときにPEF療法から生じる空洞形成を制御することが望ましい。
【0017】
筋肉収縮
[0017] PEF療法は、標的組織を変化させることにより、望ましい臨床効果を誘発し得るが、これは、神経、特に運動ニューロン及び骨格筋細胞における活動電位の生成ももたらし得る。運動ニューロンにおける活動電位の生成は、エネルギー送達中の筋肉収縮の発生をもたらし得る。筋肉収縮及び神経活動電位の生成は、意識のある又は半意識の患者において行われると、不快感又は痛みを伴い得る。加えて、療法を送達する電極は、移動するか又は外れ得、治療効果場所の変更のおそれがある。電極の移動は、治療の開始時の電極場所に近接していた繊細な組織に穴をあけるか又は損傷を与える場合もある。これらの要因は、複合して、PEF療法を送達する際の患者及びユーザの安全性の懸念を構成する。一般に、収縮は、DCが最も悪く、完全対称二相性が特定のパルス長にわたって最も収縮性が低い状態において、及びそれらが完全対称から完全DC(より弱いものからより強いもの)に移動するときにスペクトルにわたり非対称波形に対する強い相関を有して、特定の極性の波形が長くなるにつれてより悪化する。
【0018】
[0018] 他の例では、筋肉収縮の誘発がPEF療法の望ましい二次(又は主な)効果であり得る。例えば、それは、怪我又は臨床処置による一時的に切断された神経線維により萎縮した組織を再刺激する際に使用され得る。そのような例では、PEFは、運動ニューロンの近位又は末梢側に近接して送達され得、それにより下流の骨格筋を刺激する活動電位を誘導し、活動状態を保ち、及び萎縮を阻止すると共に、筋肉及び神経組織の再生及び回復を促進する。したがって、ときにPEF療法に起因する筋肉収縮を制御及び促進することが望ましい。
【0019】
温度上昇
[0019] 組織へのエネルギーの送達は、他の要因と併せて、エネルギーが印加される時間の長さに応じてジュール加熱をもたらす。エネルギーのパケット又はパルスが連続的に送達される場合、その個々の部分のエネルギーは、同時に付与され、それにより漸進的な温度上昇がもたらされる。これは、特に組織-電極界面及び電極から最初の数ミリメートルの距離の範囲内の領域において、非常に高い~極度の及び急速な温度上昇を有するPEF療法をもたらす。適切な緩和策が取られなければ、累積する温度上昇は、細胞外基質構造タンパク質(例えば、コラーゲン)を破壊し得る熱的効果範囲をもたらし得、それにより組織機能の破壊及び患者に対する潜在的な危険性が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
[0020] 結果として、PEFのこれらの態様を制御し、及び任意の関連するリスクを緩和するために、療法の改善が望まれる。そのような改善は、安全であり、信頼性があり、効果的であり、実施が簡単であり、及び費用効率が高いものであるべきである。これらの目的の少なくとも一部は、本発明によって満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
[0021] 本明細書に記載するのは、標的組織を治療するための装置、システム及び方法の実施形態である。同様に、本発明は、以下の番号が付された条項に関する。
【0022】
[0022] 1.患者の組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織に治療を提供するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、治療を提供するためのパルスの1つ又は複数のパケットを含み、及び1つ又は複数の二次的効果を操作するか、又は減少させるか、又は回避する1つ又は複数の遅延期間を含む波形から生成される、ジェネレータと
を含むシステム。
【0023】
[0023] 2.1つ又は複数の二次的効果は、泡形成を含む、請求項1に記載のシステム。
【0024】
[0024] 3.泡形成は、直径0.1mm以上の泡の形成を含む、請求項2に記載のシステム。
【0025】
[0025] 4.パルスの1つ又は複数のパケット内のパルスのそれぞれは、0.5~20マイクロ秒の範囲内のオンタイムを有する、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0026】
[0026] 5.パルスの1つ又は複数のパケット内のパルスのそれぞれは、5マイクロ秒までの連続オンタイムを有する、請求項1~3の何れか一項に記載のシステム。
【0027】
[0027] 6.パルスのそれぞれは、2.5パーセント以下のデューティサイクルを有する、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0028】
[0028] 7.遅延期間は、1マイクロ秒以上である、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0029】
[0029] 8.遅延期間は、1~250マイクロ秒の範囲内である、請求項7に記載のシステム。
【0030】
[0030] 9.遅延期間は、10~100マイクロ秒の範囲内である、請求項7に記載のシステム。
【0031】
[0031] 10.遅延期間は、100マイクロ秒以上である、請求項7に記載のシステム。
【0032】
[0032] 11.遅延期間は、250マイクロ秒以上である、請求項7に記載のシステム。
【0033】
[0033] 12.遅延期間は、500マイクロ秒以上である、請求項7に記載のシステム。
【0034】
[0034] 13.遅延期間は、1000マイクロ秒以上である、請求項7に記載のシステム。
【0035】
[0035] 14.少なくとも1つの電極は、組織の近くでイオン溶液内に位置付けられるように構成され、遅延期間は、100マイクロ秒~10ミリ秒の範囲内である、請求項7に記載のシステム。
【0036】
[0036] 15.遅延期間は、250マイクロ秒~1000マイクロ秒の範囲内である、請求項14に記載のシステム。
【0037】
[0037] 16.少なくとも1つの電極は、組織内に位置付けられるように構成され、遅延期間は、10マイクロ秒~1ミリ秒の範囲内である、請求項7に記載のシステム。
【0038】
[0038] 17.遅延期間は、25マイクロ秒~100マイクロ秒の範囲内である、請求項16に記載のシステム。
【0039】
[0039] 18.パルスの1つ又は複数のパケットは、100のパケットを含み、各パケットは、40の二相性パルスを含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0040】
[0040] 19.1つ又は複数の二次的効果は、電気放電事象を含む、請求項1に記載のシステム。
【0041】
[0041] 20.電気放電事象は、少なくとも1つの電極の少なくとも1つからの電気アーク放電を含む、請求項19に記載のシステム。
【0042】
[0042] 21.パルスの1つ又は複数のパケット内のパルスのそれぞれは、1~50マイクロ秒の範囲内のオンタイムを有する、請求項19又は20に記載のシステム。
【0043】
[0043] 22.パルスの1つ又は複数のパケット内のパルスのそれぞれは、20マイクロ秒までの範囲内の連続オンタイムを有する、請求項18~20の何れか一項に記載のシステム。
【0044】
[0044] 23.パルスの少なくとも1つのパケットのそれぞれは、20パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項18~22の何れか一項に記載のシステム。
【0045】
[0045] 24.電気放電事象は、組織に対する圧力波の生成を含む、請求項20に記載のシステム。
【0046】
[0046] 25.圧力波は、組織内に空洞を生成するのに十分なものである、請求項24に記載のシステム。
【0047】
[0047] 26.パルスの少なくとも1つのパケットのそれぞれは、50パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項25に記載のシステム。
【0048】
[0048] 27.パルスの1つ又は複数のパケット内のパルスのそれぞれは、10~100マイクロ秒の範囲内のオンタイムを有する、請求項25又は26に記載のシステム。
【0049】
[0049] 28.パルスの1つ又は複数のパケット内のパルスのそれぞれは、50マイクロ秒までの連続オンタイムを有する、請求項25又は26に記載のシステム。
【0050】
[0050] 29.遅延期間は、1マイクロ秒以上である、請求項18~28の何れか一項に記載のシステム。
【0051】
[0051] 30.遅延期間は、1~500マイクロ秒の範囲内である、請求項29に記載のシステム。
【0052】
[0052] 31.遅延期間は、10~250マイクロ秒の範囲内である、請求項29に記載のシステム。
【0053】
[0053] 32.遅延期間は、50マイクロ秒以上である、請求項29に記載のシステム。
【0054】
[0054] 33.遅延期間は、250マイクロ秒以上である、請求項29に記載のシステム。
【0055】
[0055] 34.遅延期間は、500マイクロ秒以上である、請求項29に記載のシステム。
【0056】
[0056] 35.遅延期間は、1000マイクロ秒以上である、請求項29に記載のシステム。
【0057】
[0057] 36.少なくとも1つの電極は、組織の近くでイオン溶液内に位置付けられるように構成され、遅延期間は、50マイクロ秒~10ミリ秒の範囲内である、請求項18~29の何れか一項に記載のシステム。
【0058】
[0058] 37.遅延期間は、250~1000マイクロ秒の範囲内である、請求項36に記載のシステム。
【0059】
[0059] 38.少なくとも1つの電極は、組織内に位置付けられるように構成され、遅延期間は、100マイクロ秒~10ミリ秒の範囲内である、請求項18~29の何れか一項に記載のシステム。
【0060】
[0060] 39.遅延期間は、250~2000マイクロ秒の範囲内である、請求項38に記載のシステム。
【0061】
[0061] 40.少なくとも1つの電極は、管腔内に位置付けられるように構成され、組織は、管腔壁内に存在し、遅延期間は、10マイクロ秒~10ミリ秒の範囲内である、請求項18~29の何れか一項に記載のシステム。
【0062】
[0062] 41.遅延期間は、50~500マイクロ秒の範囲内である、請求項40に記載のシステム。
【0063】
[0063] 42.パルスの1つ又は複数のパケットは、100のパケットを含み、各パケットは、40の二相性パルスを含む、請求項18~41の何れか一項に記載のシステム。
【0064】
[0064] 43.1つ又は複数の二次的効果は、筋肉の収縮を含む、請求項1に記載のシステム。
【0065】
[0065] 44.少なくとも1つの電極は、幅を有する損傷を生じさせるように構成され、筋肉の収縮を減少させるか又は回避することは、少なくとも1つの電極が、幅の25%を超えて移動しない位置を維持することを引き起こす、請求項43に記載のシステム。
【0066】
[0066] 45.組織は、心臓組織を含み、及び損傷は、限局性損傷を含む、請求項44に記載のシステム。
【0067】
[0067] 46.遅延期間は、5ミリ秒以上である、請求項43~45の何れか一項に記載のシステム。
【0068】
[0068] 47.遅延期間は、10ミリ秒以上である、請求項46に記載のシステム。
【0069】
[0069] 48.遅延期間は、5ミリ秒~1秒の範囲内である、請求項46に記載のシステム。
【0070】
[0070] 49.遅延期間は、5~100ミリ秒の範囲内である、請求項46に記載のシステム。
【0071】
[0071] 50.遅延期間は、5~10ミリ秒の範囲内である、請求項46に記載のシステム。
【0072】
[0072] 51.遅延期間は、10~30ミリ秒の範囲内である、請求項46に記載のシステム。
【0073】
[0073] 52.遅延期間は、1000マイクロ秒以上である、請求項46に記載のシステム。
【0074】
[0074] 53.パルスの1つ又は複数のパケットは、100のパケットを含み、各パケットは、40の二相性パルスを含む、請求項43~52の何れか一項に記載のシステム。
【0075】
[0075] 54.パルスの1つ又は複数のパケットは、少なくとも30ミリ秒のパケット遅延期間によって分離される少なくとも2つのパケットを含む、請求項43~53の何れか一項に記載のシステム。
【0076】
[0076] 55.パケットのそれぞれは、少なくとも30ミリ秒のパケット遅延期間によって分離される、請求項54に記載のシステム。
【0077】
[0077] 56.パルスは、二相性パルスを含み、及び遅延期間は、二相性パルスの正相と負相との間の相間遅延を含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0078】
[0078] 57.各二相性パルスは、相間遅延を含む、請求項56に記載のシステム。
【0079】
[0079] 58.遅延期間は、パケット間遅延を含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0080】
[0080] 59.パケット間遅延は、30~5000ミリ秒の範囲内である、請求項58に記載のシステム。
【0081】
[0081] 60.パケット間遅延は、30~40ミリ秒である、請求項59に記載のシステム。
【0082】
[0082] 61.パケット間遅延は、3000~5000ミリ秒である、請求項59に記載のシステム。
【0083】
[0083] 62.遅延期間は、パルス間遅延を含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0084】
[0084] 63.波形は、1つ又は複数のバンドルを含み、各バンドルは、2つ以上のパケットを含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0085】
[0085] 64.各バンドルは、3つのパケットを含み、各バンドルは、患者の心臓リズムのST間隔内で送達されるように間隔を空けられる、請求項63に記載のシステム。
【0086】
[0086] 65.遅延期間は、バンドル間遅延を含む、請求項63に記載のシステム。
【0087】
[0087] 66.波形は、500~4,000ボルトの電圧振幅を有する、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0088】
[0088] 67.波形は、300~800kHzの周波数を有する、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0089】
[0089] 68.1つ又は複数のパケットのそれぞれは、10~200の二相性パルスを有する、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0090】
[0090] 69.1つ又は複数のパケットのそれぞれは、20~50の二相性パルスを有する、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0091】
[0091] 70.治療は、5~100のパケットを含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0092】
[0092] 71.治療は、10~60のパケットを含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0093】
[0093] 72.エネルギーが単極様式で送達されるように位置付け可能な遠隔分散電極をさらに含む、上記請求項の何れか一項に記載のシステム。
【0094】
[0094] 73.患者の組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織に治療を提供するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、治療を提供するためのパルスの1つ又は複数のパケットを含み、及び1つ又は複数の遅延期間であって、その1つ又は複数の遅延期間がなければエネルギーの送達によって到達されていたであろう組織のピーク温度を回避する1つ又は複数の遅延期間を含む波形から生成される、ジェネレータと
を含むシステム。
【0095】
[0095] 74.ピーク温度は、泡形成を生じさせる、請求項73に記載のシステム。
【0096】
[0096] 75.ピーク温度は、摂氏100度である、請求項73又は74に記載のシステム。
【0097】
[0097] 76.ピーク温度は、電気放電を生じさせる、請求項73~75の何れか一項に記載のシステム。
【0098】
[0098] 77.遅延期間は、5ミリ秒以上である、請求項73~76の何れか一項に記載のシステム。
【0099】
[0099] 78.遅延期間は、10ミリ秒以上である、請求項77に記載のシステム。
【0100】
[00100] 79.遅延期間は、5ミリ秒~1秒の範囲内である、請求項77に記載のシステム。
【0101】
[00101] 80.遅延期間は、5ミリ秒~100ミリ秒の範囲内である、請求項77に記載のシステム。
【0102】
[00102] 81.遅延期間は、5ミリ秒~10ミリ秒の範囲内である、請求項77に記載のシステム。
【0103】
[00103] 82.遅延期間は、10~30ミリ秒の範囲内である、請求項77に記載のシステム。
【0104】
[00104] 83.波形は、1つ又は複数のバンドルを含み、各バンドルは、2つ以上のパケットを含む、請求項73~82の何れか一項に記載のシステム。
【0105】
[00105] 84.各バンドルは、3つのパケットを含み、各バンドルは、患者の心臓リズムのST間隔内で送達されるように間隔を空けられる、請求項83に記載のシステム。
【0106】
[00106] 85.パルスの1つ又は複数のパケットは、100のパケットを含み、各パケットは、40の二相性パルスを含む、請求項73~84の何れか一項に記載のシステム。
【0107】
[00107] 86.パルスは、二相性パルスを含み、及び遅延期間は、二相性パルスの正相と負相との間の相間遅延を含む、請求項73~85の何れか一項に記載のシステム。
【0108】
[00108] 87.各二相性パルスは、相間遅延を含む、請求項86に記載のシステム。
【0109】
[00109] 88.遅延期間は、パケット間遅延を含む、請求項73~85の何れか一項に記載のシステム。
【0110】
[00110] 89.パケット間遅延は、30~5000ミリ秒の範囲内である、請求項88に記載のシステム。
【0111】
[00111] 90.パケット間遅延は、30~40ミリ秒の範囲内である、請求項88に記載のシステム。
【0112】
[00112] 91.パケット間遅延は、3000~5000ミリ秒の範囲内である、請求項88に記載のシステム。
【0113】
[00113] 92.遅延期間は、パルス間遅延を含む、請求項73~85の何れか一項に記載のシステム。
【0114】
[00114] 93.波形は、1つ又は複数のバンドルを含み、各バンドルは、2つ以上のパケットを含む、請求項73~92の何れか一項に記載のシステム。
【0115】
[00115] 94.各バンドルは、3つのパケットを含み、各バンドルは、患者の心臓リズムのST間隔内で送達されるように間隔を空けられる、請求項93に記載のシステム。
【0116】
[00116] 95.遅延期間は、バンドル間遅延を含む、請求項93に記載のシステム。
【0117】
[00117] 96.波形は、500~4,000ボルトの電圧振幅を有する、請求項73~95の何れか一項に記載のシステム。
【0118】
[00118] 97.波形は、300~800kHzの周波数を有する、請求項73~96の何れか一項に記載のシステム。
【0119】
[00119] 98.1つ又は複数のパケットのそれぞれは、10~200の二相性パルスを有する、請求項73~97の何れか一項に記載のシステム。
【0120】
[00120] 99.1つ又は複数のパケットのそれぞれは、20~50の二相性パルスを有する、請求項73~97の何れか一項に記載のシステム。
【0121】
[00121] 100.治療は、5~100のパケットを含む、請求項73~99の何れか一項に記載のシステム。
【0122】
[00122] 101.治療は、10~60のパケットを含む、請求項73~99の何れか一項に記載のシステム。
【0123】
[00123] 102.エネルギーが単極様式で送達されるように位置付け可能な遠隔分散電極をさらに含む、請求項73~101の何れか一項に記載のシステム。
【0124】
[00124] 103.患者の組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織に治療を提供するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、治療を提供するためのパルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、各パルスは、パルス長を有し、及び少なくとも1つのパケットの少なくとも1つは、パルス長の少なくとも2倍の遅延期間を有する遅延を含む、ジェネレータと
を含むシステム。
【0125】
[00125] 104.遅延期間は、パルス長の少なくとも10倍である、請求項103に記載のシステム。
【0126】
[00126] 105.少なくとも1つのパケットは、遅延期間の少なくとも50倍のパケット長を有する、請求項103又は104に記載のシステム。
【0127】
[00127] 106.少なくとも1つのパケットは、遅延期間の少なくとも100倍のパケット長を有する、請求項105に記載のシステム。
【0128】
[00128] 107.遅延は、パルス間遅延を含む、請求項103~106の何れか一項に記載のシステム。
【0129】
[00129] 108.パルスは、二相性パルスであり、及びパルス間遅延は、サイクル間遅延である、請求項107に記載のシステム。
【0130】
[00130] 109.パルスは、二相性パルスであり、及び遅延は、相間遅延を含む、請求項103~106の何れか一項に記載のシステム。
【0131】
[00131] 110.遅延期間は、250~1000マイクロ秒を含む、請求項103~109の何れか一項に記載のシステム。
【0132】
[00132] 111.少なくとも1つのパケットは、少なくとも25のパルスを含む、請求項103~110の何れか一項に記載のシステム。
【0133】
[00133] 112.少なくとも1つのパケットは、少なくとも40のパルスを含む、請求項111に記載のシステム。
【0134】
[00134] 113.少なくとも1つのパケットは、少なくとも30マイクロ秒のパケット間遅延により、隣接するパケットから分離される、請求項103~112の何れか一項に記載のシステム。
【0135】
[00135] 114.少なくとも1つのパケットは、100~5000マイクロ秒のパケット間遅延により、隣接するパケットから分離される、請求項113に記載のシステム。
【0136】
[00136] 115.治療は、5~100のパケットを含む、請求項103~114の何れか一項に記載のシステム。
【0137】
[00137] 116.治療は、10~60のパケットを含む、請求項115に記載のシステム。
【0138】
[00138] 117.波形は、500~10,000ボルトの電圧振幅を有する、請求項103~116の何れか一項に記載のシステム。
【0139】
[00139] 118.各パルスは、1.66マイクロ秒のパルス長を有する、請求項103~117の何れか一項に記載のシステム。
【0140】
[00140] 119.各パルスは、2.5マイクロ秒のパルス長を有する、請求項103~117の何れか一項に記載のシステム。
【0141】
[00141] 120.各パルスは、20マイクロ秒のパルス長を有する、請求項103~117の何れか一項に記載のシステム。
【0142】
[00142] 121.エネルギーが単極様式で送達されるように位置付け可能な遠隔分散電極をさらに含む、請求項103~120の何れか一項に記載のシステム。
【0143】
[00143] 122.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの泡形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項103~121の何れか一項に記載のシステム。
【0144】
[00144] 123.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの電気放電事象を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項103~122の何れか一項に記載のシステム。
【0145】
[00145] 124.遅延期間は、組織内の空洞形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項103~123の何れか一項に記載のシステム。
【0146】
[00146] 125.遅延期間は、患者の筋肉の収縮を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項103~124の何れか一項に記載のシステム。
【0147】
[00147] 126.遅延期間は、以下のために十分な長さを有する、請求項103~125の何れか一項に記載のシステム。
【0148】
[00148] 1つ又は複数の遅延期間がなければエネルギーの送達によって到達されていたであろう組織のピーク温度を回避すること。
【0149】
[00149] 127.ピーク温度は、泡形成を生じさせる、請求項126に記載のシステム。
【0150】
[00150] 128.ピーク温度は、摂氏100度である、請求項126又は127に記載のシステム。
【0151】
[00151] 129.ピーク温度は、電気放電を生じさせる、請求項126~128の何れか一項に記載のシステム。
【0152】
[00152] 130.患者の組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織に治療を提供するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、治療を提供するための二相性パルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、各二相性パルスは、250~1000マイクロ秒の範囲内の相間遅延を含む、ジェネレータと
を含むシステム。
【0153】
[00153] 131.波形は、500~10,000ボルトの電圧振幅を有する、請求項130に記載のシステム。
【0154】
[00154] 132.各パルスは、1.66マイクロ秒のパルス長を有する、請求項130又は131に記載のシステム。
【0155】
[00155] 133.各パルスは、2.5マイクロ秒のパルス長を有する、請求項130又は131に記載のシステム。
【0156】
[00156] 134.各パルスは、20マイクロ秒のパルス長を有する、請求項130又は131に記載のシステム。
【0157】
[00157] 135.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの泡形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項130~134の何れか一項に記載のシステム。
【0158】
[00158] 136.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの電気放電事象を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項130~135の何れか一項に記載のシステム。
【0159】
[00159] 137.遅延期間は、組織内の空洞形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項130~136の何れか一項に記載のシステム。
【0160】
[00160] 138.遅延期間は、患者の筋肉の収縮を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項130~137の何れか一項に記載のシステム。
【0161】
[00161] 139.遅延期間は、以下のために十分な長さを有する、請求項130~138の何れか一項に記載のシステム。
【0162】
[00162] 1つ又は複数の遅延期間がなければエネルギーの送達によって到達されていたであろう組織のピーク温度を回避すること。
【0163】
[00163] 140.ピーク温度は、泡形成を生じさせる、請求項139に記載のシステム。
【0164】
[00164] 141.ピーク温度は、摂氏100度である、請求項139又は140に記載のシステム。
【0165】
[00165] 142.ピーク温度は、電気放電を生じさせる、請求項139~141の何れか一項に記載のシステム。
【0166】
[00166] 143.エネルギーが単極様式で送達されるように位置付け可能な遠隔分散電極をさらに含む、請求項130~142の何れか一項に記載のシステム。
【0167】
[00167] 144.患者の組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織に治療を提供するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、治療を提供するためのパルスの2~60のパケットを含む波形から生成され、各パケットは、250~1000マイクロ秒の範囲内の少なくとも1つの遅延期間を含む、ジェネレータと
を含むシステム。
【0168】
[00168] 145.波形は、500~10,000ボルトの電圧振幅を有する、請求項144に記載のシステム。
【0169】
[00169] 146.各パルスは、1.66マイクロ秒のパルス長を有する、請求項144又は145に記載のシステム。
【0170】
[00170] 147.各パルスは、2.5マイクロ秒のパルス長を有する、請求項144又は145に記載のシステム。
【0171】
[00171] 148.各パルスは、20マイクロ秒のパルス長を有する、請求項144又は145に記載のシステム。
【0172】
[00172] 149.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの泡形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項144~148の何れか一項に記載のシステム。
【0173】
[00173] 150.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの電気放電事象を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項144~149の何れか一項に記載のシステム。
【0174】
[00174] 151.遅延期間は、組織内の空洞形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項144~150の何れか一項に記載のシステム。
【0175】
[00175] 152.遅延期間は、患者の筋肉の収縮を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項144~151の何れか一項に記載のシステム。
【0176】
[00176] 153.遅延期間は、以下のために十分な長さを有する、請求項144~152の何れか一項に記載のシステム。
【0177】
[00177] 1つ又は複数の遅延期間がなければエネルギーの送達によって到達されていたであろう組織のピーク温度を回避すること。
【0178】
[00178] 154.ピーク温度は、泡形成を生じさせる、請求項153に記載のシステム。
【0179】
[00179] 155.ピーク温度は、摂氏100度である、請求項153又は154に記載のシステム。
【0180】
[00180] 156.ピーク温度は、電気放電を生じさせる、請求項153~155の何れか一項に記載のシステム。
【0181】
[00181] 157.エネルギーが単極様式で送達されるように位置付け可能な遠隔分散電極をさらに含む、請求項144~156の何れか一項に記載のシステム。
【0182】
[00182] 158.患者の組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織に治療を提供するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、遅延期間を有するパルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、少なくとも1つのパケットは、遅延期間の少なくとも50倍のパケット長を有する、ジェネレータと
を含むシステム。
【0183】
[00183] 159.少なくとも1つのパケットは、遅延期間の少なくとも100倍のパケット長を有する、請求項158に記載のシステム。
【0184】
[00184] 160.各パルスは、1.66マイクロ秒のパルス長を有する、請求項158又は159に記載のシステム。
【0185】
[00185] 161.各パルスは、2.5マイクロ秒のパルス長を有する、請求項158又は159に記載のシステム。
【0186】
[00186] 162.各パルスは、20マイクロ秒のパルス長を有する、請求項158又は159に記載のシステム。
【0187】
[00187] 163.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの泡形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項158~162の何れか一項に記載のシステム。
【0188】
[00188] 164.遅延期間は、少なくとも1つの電極の近くでの電気放電事象を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項158~163の何れか一項に記載のシステム。
【0189】
[00189] 165.遅延期間は、組織内の空洞形成を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項158~164の何れか一項に記載のシステム。
【0190】
[00190] 166.遅延期間は、患者の筋肉の収縮を減少させるか又は回避するのに十分な長さを有する、請求項158~165の何れか一項に記載のシステム。
【0191】
[00191] 167.遅延期間は、1つ又は複数の遅延期間がなければエネルギーの送達によって到達されていたであろう組織のピーク温度を回避するのに十分な長さを有する、請求項158~166の何れか一項に記載のシステム。
【0192】
[00192] 168.ピーク温度は、泡形成を生じさせる、請求項167に記載のシステム。
【0193】
[00193] 169.ピーク温度は、摂氏100度である、請求項167又は168に記載のシステム。
【0194】
[00194] 170.ピーク温度は、電気放電を生じさせる、請求項167~169の何れか一項に記載のシステム。
【0195】
[00195] 171.エネルギーが単極様式で送達されるように位置付け可能な遠隔分散電極をさらに含む、請求項167~170の何れか一項に記載のシステム。
【0196】
[00196] 172.患者の組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な少なくとも1つの電極と、
少なくとも1つの電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織に治療を提供するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、パルスの少なくとも1つのパケットを含む波形から生成され、各パルスは、1つ又は複数の二次的効果を減少させるか又は回避するために50パーセント以下のデューティサイクルを有する、ジェネレータと
を含むシステム。
【0197】
[00197] 173.1つ又は複数の二次的効果は、組織における空洞形成を含む、請求項172に記載のシステム。
【0198】
[00198] 174.各パルスは、20パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項172に記載のシステム。
【0199】
[00199] 175.1つ又は複数の二次的効果は、電気放電事象を含む、請求項174に記載のシステム。
【0200】
[00200] 176.各パルスは、2.5パーセント以下のデューティサイクルを有する、請求項172に記載のシステム。
【0201】
[00201] 177.1つ又は複数の二次的効果は、泡形成を含む、請求項176に記載のシステム。
【0202】
[00202] 178.泡形成は、直径0.1mm以上の泡の形成を含む、請求項177に記載のシステム。
【0203】
[00203] 179.組織を治療するためのシステムであって、
組織の近くに位置付け可能な電極と、
電極と電気通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが組織を治療するように、電極にエネルギーを提供する少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含み、エネルギーは、ガス形成、外部電気放電、筋肉収縮、空洞形成及び/又は温度上昇に影響を与えるように選択される、パルス間の特定の遅延期間を有する波形から生成される、ジェネレータと
を含むシステム。
【0204】
[00204] 180.パルス電界療法の少なくとも1つの二次的効果に影響を与える方法であって、
少なくとも1つの二次的効果に影響を与えるように、パルス電界波形の部分間の特定の遅延期間を選択すること
を含む方法。
【0205】
[00205] 181.少なくとも1つの二次的効果は、ガス形成を含む、請求項1に記載の方法。
【0206】
[00206] 182.少なくとも1つの二次的効果は、電気放電を含む、請求項1に記載の方法。
【0207】
[00207] 183.少なくとも1つの二次的効果は、空洞形成を含む、請求項1に記載の方法。
【0208】
[00208] 184.少なくとも1つの二次的効果は、筋肉収縮を含む、請求項1に記載の方法。
【0209】
[00209] 185.少なくとも1つの二次的効果は、温度上昇を含む、請求項1に記載の方法。
【0210】
[00210] これらの実施形態及び他の実施形態は、添付の図面に関連する以下の説明においてさらに詳細に説明される。
【0211】
参照による援用
[00211] 本明細書で述べたすべての文献、特許及び特許出願は、それぞれの個々の文献、特許又は特許出願が参照により援用されるように具体的及び個別に示された場合と同じ程度まで参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0212】
図面の簡単な説明
[00212] 添付の特許請求の範囲において、本発明の新規の特徴を詳細に記載する。本発明の特徴及び利点のよりよい理解は、本発明の原理が利用される例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって得られるであろう。
【0213】
【
図1】[00213]単相性であり、一方の極性のパルスから同じ極性の次のパルスまで測定されたパルス間遅延によって分離されたパルスを有するパルス電界波形の一実施形態を示す。
【
図2】[00214]各サイクルが、一方の極性のパルスと、それに続く反対の極性のパルスとから構成される、二相性であるパルスを有するパルス電界波形の一実施形態を示す。
【
図3】[00215]
図2のような二相性であるパルスを有するパルス電界波形の一実施形態を示すが、この実施形態では、反対の極性のパルスは、相間遅延によって分離される。
【
図4】[00216]バースト又はパケットにグループ化された例示的なパルスを示す。
【
図5】[00217]バッチ又はバンドルにグループ化された例示的なパケットを示す。
【
図6A】[00218]エネルギー送達本体が生理食塩水溶液中に沈められたときの様々な条件下での泡形成を示す超音波画像を提供する。
【
図6B】[00218]エネルギー送達本体が生理食塩水溶液中に沈められたときの様々な条件下での泡形成を示す超音波画像を提供する。
【
図6C】[00218]エネルギー送達本体が生理食塩水溶液中に沈められたときの様々な条件下での泡形成を示す超音波画像を提供する。
【
図7A】[00219]電気放電に対する異なる大きさのサイクル遅延の効果間の比較例を示す。
【
図7B】[00219]電気放電に対する異なる大きさのサイクル遅延の効果間の比較例を示す。
【
図8A】[00220]肝組織に送達された、異なるサイクル遅延以外には同一のパルス電界治療プロトコルの効果を示す。
図8Aは、かなりの組織空洞フォーマットをもたらした、およそ50nsのサイクル遅延を有する波形を使用した結果を示す。
【
図8B】[00220]肝組織に送達された、異なるサイクル遅延以外には同一のパルス電界治療プロトコルの効果を示す。
図8Bは、およそ1000μsのサイクル遅延を有する以外には同じ波形を使用した結果を示す。
【
図9】[00221]軸索鞘(軸索膜)が細胞外空間に露出する有髄軸索に沿って生じるランヴィエ絞輪を示す。
【
図10】[00222]有髄軸索領域のモデル化が電気構成要素としてモデル化されることを示す。
【
図11A】[00223]サイクル遅延がないか又はサイクル遅延が少ないパルス電界波形を示す。
【
図11B】[00223]サイクル遅延がないか又はサイクル遅延が少ないパルス電界波形に応答した運動ニューロンの帯電及び放電挙動を示す。
【
図11C】[00223]より大きいサイクル遅延を有するパルス電界波形を示す。
【
図11D】[00223]より大きいサイクル遅延を有するパルス電界波形に応答した運動ニューロンの帯電及び放電挙動を示す。
【
図12】[00224]筋肉刺激閾値に対するサイクル遅延の効果を示す。
【
図13】[00225]数値シミュレーションによって生成されたパルス電界プロトコルによる温度上昇の振幅及び分布を示す。
【
図14A】[00226]
図13に関連する最大温度上昇時の温度分布を示す。
【
図14B】[00226]
図13に関連する最大温度上昇時の温度分布を示す。
【
図15】[00227]特殊なパルス電界エネルギーの送達に使用するための例示的な治療システムの概略図を提供する。
【
図16】[00228]特にフォーカルセラピーを送達するように構成された、特殊なパルス電界エネルギーの送達に使用するために構成された治療デバイスの別の実施形態を示す。
【
図17】[00229]右心房及び左心房の切取図を示す心臓の一部分を、その内部に配置された
図16の治療デバイスと共に示す。
【
図18】[00230]
図16の治療デバイスを用いた、左下肺静脈の開口部を取り囲む組織の点毎の治療を示す。
【
図19A】[00231]治療エネルギー送達カテーテル又はデバイスの別の実施形態を示す。
【
図19B】[00231]治療エネルギー送達カテーテル又はデバイスの別の実施形態を示す。
【
図20A】[00232]治療システムの別の実施形態を示す。
【
図20B】[00232]治療システムの別の実施形態を示す。
【
図21A】[00233]エネルギー送達アルゴリズムによって規定された信号の波形の一実施形態を示す。
【
図21B】[00234]その間に相間時間を有する二相性パルスの様々な例を示す。
【
図21C】[00235]電圧が等しくない波形のさらなる例を示す。
【
図21D】[00236]パルス幅が等しくない波形のさらなる例を示す。
【
図21E】[00237]波形が単相性である、別のエネルギー送達アルゴリズムによって規定された例示的な波形を示す。
【
図21F】[00238]単相性パルスを有する波形のさらなる例を示す。
【
図21G】[00239]このような位相不平衡を有する波形のさらなる例を示す。
【
図21H】[00240]正電圧及び負電圧の両方において不平衡である波形の一例を示す。
【
図22】[00241]エネルギー送達本体を用いてエネルギーパルスを肺通路に送達することが望ましい期間を強調した、人の心臓のサンプル心電図(ECG)記録の部分を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0214】
発明の詳細な説明
[00242] ここで、図面を参照して、開示のデバイス、システム及び方法の具体的な実施形態を説明する。この詳細な説明の何れの内容も、特定の構成要素、特徴又はステップが本発明に必須であることを示唆することを意図されない。
【0215】
[00243] 患者の治療的処置のために、幾つかの例を挙げると、無線周波数(RF)エネルギー、マイクロ波(MW)エネルギー、高強度集束超音波(HIFU)エネルギー及びパルス電界(PEF)エネルギーを含む様々な異なるタイプのエネルギーが使用されている。これらのエネルギーモダリティは、ジェネレータによって提供される電子信号の波形に応じて異なる。可能な場合、それらは、電磁スペクトルに応じて分類される。電磁スペクトルは、数千キロメートル~原子核のサイズの何分の1かの波長に対応する、1ヘルツ未満~1025ヘルツを上回る範囲の周波数を有する電磁波をカバーする。この周波数範囲は、別個の帯域に分割され、各周波数帯内の電磁波は、異なる名称で呼ばれ、スペクトルの低周波(長波長)端から始まり、これらは、電波、マイクロ波、テラヘルツ波、赤外線、可視光、紫外線、X線及び高周波(短波長)端のガンマ線である。これらの帯域のそれぞれにおける電磁波は、それらがどのように生成されるか、それらが物質とどのように相互作用するか及びそれらの実際の用途などの異なる特徴を有する。
【0216】
[00244] RFエネルギーは、アナログ及び現代のデジタル無線通信システムの媒体としてよく知られる電磁スペクトルの最も低い部分である。それは、3kHz~300GHzの範囲に広がり、連続波形である。RF範囲内の周波数を有する波形は、連続波形からパルス波形に変化するように操作されたものである。したがって、エネルギーは、パルス又は短いパルスバーストで断続的に印加される。パルスRF又はパルス電界(PEF)は、エネルギーが印加される時間にわたり細胞が異なって反応するため、連続的に送達されたRFと異なる効果を細胞組織に提供する。例えば、RFアブレーションは、細胞に対する熱損傷による細胞死を引き起こすが、PEFは、非熱的(すなわち熱アブレーションを生じさせる閾値未満)効果による細胞死を生じさせる。このような細胞死は、標的組織が血管及びリンパ管を含む構造的アーキテクチャを維持するように細胞外基質を維持する。したがって、組織の完全性及び機能性を維持するために不可欠な生物学的管腔、血管、神経などの繊細な構造を保持することが可能である。
【0217】
[00245]
図1は、単相性であり、一方の極性のパルスから同じ極性の次のパルスまで測定されたパルス間遅延14によって分離されたパルス12を有するPEF波形10の一実施形態を示す。したがって、パルス間遅延14は、DCパルス遅延と見なされ得る。
図2は、それぞれ二相性である2つのパルス12を有するPEF波形10の一実施形態を示し、各サイクルは、一方の極性の位相12a及びそれに続く反対の極性の位相12bから構成される。この実施形態では、これらの2つの反対の極性の位相12a、12b間に遅延が存在しないが、サイクル(すなわち二相性パルス)間にサイクル間遅延16が存在する。サイクル間遅延は、パルスが二相性パルスであるパルス間遅延の一形態であることが理解され得る。
図3は、
図2のような二相性であるパルス12を有するPEF波形10の一実施形態を示すが、この実施形態では、反対の極性の位相12a、12bは、切替遅延又は相間遅延18によって分離される。
【0218】
[00246] 場合により、パルス12は、
図4に示されるように、バースト又はパケット20にグループ化される。ここでは、5つのパケット20が示され、各パケット20は、複数のサイクル又は二相性パルスから構成される。パケット20は、パケット間遅延22によって分離される。パケット20は、様々な異なるタイプのパルス(例えば、単相、二相など)及び同じ又は異なる極性から構成され得ることが理解され得る。例えば、幾つかの実施形態では、パケット20は、同じ極性のパルス12の列及びその後に続く1つ又は複数のパルス12に関する極性の切替から構成され、この後に1つ又は複数の追加のパルス12に関する次の極性の切替が続いても又は続かなくてもよい。
【0219】
[00247] 任意選択的に、場合により、パケット20は、
図5に示されるように、バッチ又はバンドル24にグループ化される。ここでは、2つのバンドル24が示されており、各バンドル24は、3つのパケット20から構成される。バンドル24は、バンドル間遅延26によって分離される。一般的に、バンドル間遅延26が心拍と同期するようにエネルギーが患者に印加され、バンドル間遅延26は、心拍の繊細な部分中に生じる。したがって、不整脈の誘発を回避するために、心拍の繊細な部分外でエネルギーが印加される。幾つかの実施形態では、エネルギーは、患者のECGリズムのR-T間隔中に送達される。他の実施形態では、PEFエネルギーは、ECG波形内の場所にとらわれずに送達される。特に二相性波形は、心臓の正常な電気生理学的挙動を乱すことなく、このようにして安全に送達されることが可能である。したがって、治療を迅速に処理することなどの理由のために、熱的緩和などの他の理由のために確立された異なるバンドル間遅延26を有してバンドルが使用され得る。代替的に、パケット20は、パケットをバンドルすることなく、続けて送達することができる。これらのパケットは、ECGリズムに対して同期的又は非同期的に送達され得る。
【0220】
[00248] 一般的に、治療は、次の標的エリアに移動するまでのある標的エリアへのエネルギー送達の期間と見なされる。例えば、肺の通路を治療する際、エネルギー送達デバイスは、肺通路の一部分の内表面に円周状に接触する電極を含み得る。波形からのエネルギーは、連続的に印加され得るか、又はユーザは、エネルギーの活性化/印加を開始及び停止し得る。何れにせよ、エネルギーを受け取る標的組織の部分が望ましく治療されるまで、エネルギーが電極に送達される。その後、エネルギー送達を停止し、(標的組織の第1の部分とオーバーラップした又はオーバーラップしていない)標的組織の新しい部分を治療するために、電極が肺の通路内で再配置される。次の標的エリアに移動するまでのある標的エリアへのエネルギー送達の各期間が治療と見なされる。したがって、患者は、一般的に、処置中に肺の内部で複数の治療を受ける。
【0221】
[00249] 心房細動を治療するために心臓の一部を焼灼する場合など、心臓の一部を治療する際、エネルギー送達デバイスは、心房又は肺静脈の表面に接触する丸い先端部を有する電極を含み得る。このような例では、エネルギーは、この先端部から心臓組織に送達されて、接触エリアでアブレーションを生じさせる。これは、心臓組織を通る電気伝導をブロックする円形又は線形アブレーションを生じさせるように、先端部が様々な場所に移動されながら繰り返される。繰り返しになるが、治療は、次の標的エリアに移動するまでのある標的エリアへのエネルギー送達の期間と見なされる。したがって、完全な伝導ブロックは、一般的に、複数の治療を伴い、各治療は、1つ又は複数の活性化から構成される。
【0222】
[00250] 要約すると、本明細書に記載する目的のために、治療は、一般的に、電極の1つを移動させる前に、ある電極(又は電極のセット)から別の電極(又は電極のセット)に送達される、組織の標的セクションに影響を与えるためのPEF送達の全期間を含む。同様に、活性化は、一般的に、ユーザによって開始された単一の「開始」シーケンスのためのPEF治療送達を含む。単一の治療で複数の活性化が送達され得る。活性化間の時間は、ユーザ及びPEF送達に関する二次的制約(心臓リズムとの同期、温度が基準線に戻るための時間又は第1の活性化の偶発的不完全治療送達によるなど)によって決定される。
【0223】
[00251] PEF波形は、1つ又は複数の電極をそれぞれ有する1つ又は複数のエネルギー送達本体を通して組織に送達される。最終的に、電極の物理的配置が回路を形成する。電極は、パケット、パルス列、サイクル、活性化又は2つのパルスを分離する他の期間内の任意の特定の時間に陰極若しくは陽極又はその両方として挙動し得る。電気回路を部分的又は完全に生成する電極が特に標的組織内又は標的組織の付近において同じ領域的近接で存在する場合、システムは、双極又は多極電極配置と呼ばれる。多極配置は、例えば、1つの電極が1000Vに設定され、第2の電極が500Vに設定され、第3の電極が0Vに設定され、第2の電極が第1の電極に対して負極性であるが、第3の電極に対して正極性であることが分かっている、3つ以上の極性配向が使用される場合に適用される。回路内の電極の1つ又は複数が組織の遠隔の非標的領域(例えば、分散パッド)に離れて配置される場合、この配置は、単極電極配置と呼ばれる。これらの説明は、便宜上のものであり、これらの配置の一方に関する本明細書に記載の概念の使用の説明は、電極の他の配置に適用可能であると解釈され得る。
【0224】
[00252] エネルギー送達は、デバイス102上のアクチュエータ132又はジェネレータ104に動作可能に接続されたフットスイッチを使用するなど、様々な機構によって作動され得る。このような作動は、一般的に、単一のエネルギードーズ又は活性化を提供する。エネルギードーズは、一般的に、送達されるパケットの数及びパケットの電圧によって定義される。標的組織に送達される各エネルギードーズは、標的組織において又は標的組織内で温度を熱アブレーション(特に基底膜又はより深い粘膜下細胞外タンパク質基質における間質タンパク質の熱アブレーション又は変性)の閾値未満に維持するように構成される。加えて、ドーズは、治療処置中に熱蓄積をさらに減少させるか又はなくすために、経時的に適正量が決められるか又は適度にされ得る。療法に対する危険性がある部位で細胞外タンパク質凝固として定義される熱損傷を誘発する代わりに、エネルギードーズは、繊細な組織に損傷を与えることなく、疾患の治療を誘発するレベルでエネルギーを提供する。
【0225】
[00253] 本明細書に記載する遅延(例えば、パルス間遅延14、サイクル間遅延16、相間遅延18、パケット間遅延22、バンドル間遅延26など)は、波形のタイプに応じて、パケット20、バンドル26及び/又は治療全体にわたり一貫性を有するか又は変動し得ることが理解され得る。同様に、一部の遅延は、それらがゼロであるため又はそれらが波形に無関係であるため、存在しない場合がある(例えば、バンドル24が存在しない場合、関連性がないため、バンドル間遅延26が存在しない)。パルス間遅延14は、パルス12のパケット20全体を通して一貫性を有し得るか、又はそれらは、パケット20にわたって変化し得る。例えば、第1のパルス間遅延は、50nsであり、その後に1msの第2のパルス間遅延が続き得、その後にこのシーケンスが繰り返される。変化する極性と類似したパルス12の所定のシーケンスが繰り返される(例えば、上、上、下、遅延、上、上、下...;上、上、下、下、上、遅延、下、上、上、下、下...など)、パケット20内のサブパターンが存在し得、これらのサブパターンは、パルス列と呼ばれる。各パルス列は、列と定義される同じパターンを有する。しかしながら、各列は、異なる極性、異なるパルス幅、異なる振幅並びに異なるパターンにおける異なる相間及び/又はパルス間遅延のパルスを有するなど、異なる特性を有し得る。幾つかの実施形態では、異なる列が繰り返しのシーケンスで配置される。したがって、幾つかの実施形態では、特定のパルスから後続のパルスにおいて、関連する列内遅延及び特定の列間の列間遅延の二次範囲が存在する。
【0226】
[00254] 幾つかの実施形態では、パルス間遅延14は、パケット20にわたり一貫性を有し、他の実施形態では、パルス間遅延14は、パケット20内で変動する。幾つかの実施形態では、パケットを含むパルスのデューティサイクルは、<0.01%~100%に及ぶ。幾つかの実施形態では、治療は、同一のパケット20を含み、各パケット20は、一貫性のあるパルス間遅延14又は一貫性のないパルス間遅延14を有する。他の実施形態では、治療は、少なくとも2つの異なるタイプのパケット20を含み、少なくとも2つの異なるタイプのパケット20のそれぞれは、一貫性のあるパルス間遅延14を有するが、パルス間遅延14は、少なくとも2つの異なるタイプのパケット20間で異なる。又は、他の実施形態では、少なくとも2つの異なるタイプのパケット20の少なくとも一方は、他方と異なる一貫性のないパルス間遅延14を有する。一般的に、バンドル24が存在する場合、バンドル間遅延26は、心臓リズムと同期される場合に一貫性があるが、バンドル間遅延26は、患者の心臓リズムの変化と共に又は他の治療送達プロトコル制約によって変動し得ることが理解され得る。
【0227】
[00255] 何れにせよ、遅延(例えば、パルス間遅延14、サイクル間遅延16、相間遅延18、パケット間遅延22、バンドル間遅延26など)の任意の組み合わせは、所望の結果を得るために治療内で利用され得ることが理解され得る。特に、これらの遅延は、特定の所望の結果を得るために具体的に操作され得る。例えば、これらの遅延の1つ、幾つか又はすべては、幾つかの例を挙げると、ガス形成、電気放電、空洞形成、筋肉収縮及び温度上昇などの任意の関連するリスクを緩和するためにPEF療法の様々な態様を制御するように操作され得る。幾つかの実施形態では、遅延は、(高)電圧PEFエネルギーが送達される期間を分散させ、治療送達結果に対する著しい変化及び最適化をもたらす。幾つかの実施形態では、本明細書に記載する遅延の範囲は、0s~100msである。
【0228】
[00256] 幾つかの実施形態では、遅延期間は、エネルギー送達のペースを分散させ、特定の効果がそれらの蓄積による効果を誘発する前に、特定の効果の解消及び減衰を可能にするように操作される。生体細胞及び組織の操作のためにPEFを印加する際(ここでは、電荷の蓄積及び減衰は、他の効果と異なる時間尺度である)、複数のサイクル又は列のパルスを用いるが、幾つかの例を挙げると、ガス形成、電気放電、空洞形成、筋肉収縮及び温度上昇などの様々な二次的治療効果を引き起こすことなく、治療効果を細胞に蓄積することが可能である。他の例では、これらの二次的蓄積治療効果は、治療結果を生じさせるか又は高めることが望ましい場合があり、したがって、これらの効果を促進するために、遅延が選択され、これは、繰り返しになるが、PEFに対する細胞及び組織の反応を誘発する主目的を変えない方法で行われる。二次的効果のこれらの例は、網羅的なリストではなく、操作されることが望ましい他の二次的効果も、適切な遅延を選択することによって制御され得る。
【0229】
ガス形成
[00257] 幾つかの実施形態では、遅延は、PEF療法によって生じるガス形成を妨げるように操作される。先述の通り、分子結合が壊れ、それによりガスを生成するには、十分な期間にわたってエネルギーが送達される必要がある。さらに、ガスが生成されると、時間の経過と共にガスが集まり、集合的により大きい領域にまとまり、漸進的により大きい泡を形成する。泡が大きくなるほど、泡が流体内に再吸収されるのにかかる時間が長くなる。波形に遅延を良好に導入することにより、これらのプロセスを減少させるか又は回避することが可能である。このような遅延は、任意のガス若しくは任意のかなりの量のガスを生成するには不十分であり、及び/又は生成された泡が溶解を回避できるほど大きくなることを可能にするには不十分な期間にエネルギーを提供する。送達される総エネルギーは、このような遅延の操作によって変更されず、それにより全体的な治療効果が維持される。したがって、遅延の適切な選択により、ガスの生成が回避されるか、又は泡が完全に再溶解するか若しくは他の分子を再形成することが可能となり得る。
【0230】
[00258] たとえガスが流体内に再吸収されることを完全に排除するには遅延が不十分であるとしても、遅延は、より大きい泡へのガスの有意な凝集を防止するのに十分であり得る。このような例では、より小さい泡が移動し、次のエネルギーの開始及びさらなるガス形成前に再吸収を開始している。このようにして、泡は、大きい泡にまとまらない。重要なことに、泡のサイズは、身体内でのその効果にも関係する。小さい(0.1mm未満の直径)泡は、一般的に、数秒ほどで再吸収され、一般に有意な局所貧血事象を誘発するには小さすぎる。したがって、このサイズで生成された泡は、一般的に、患者の安全に有意な脅威を与えない。逆に、より大きい泡(0.1mmを超える)は、再吸収に数分以上かかる場合があり、血管を破壊又は閉塞し得る。したがって、たとえ泡の生成を完全に排除することができなくても、生成される泡のサイズ及び量を、臨床的に問題にならず及び/又は直ちに再吸収されるサイズ及び量に抑えるのみで同様に効果的となり得る。
【0231】
[00259] 幾つかの実施形態では、7F先端部心臓アブレーション焦点電極カテーテルを使用して、単極方法で(すなわち遠隔配置されたリターン電極を使用して)血液(電解質流体)中でPEF療法を送達する際、生じるガス形成の量及びサイズの抑制は、二相性であり(1μsの持続時間)及び3000Vの電圧を有するパルス12を有する波形に1μsのサイクル遅延が存在するときに開始され始め得る。他の実施形態では、同等のエネルギー送達は、サイクル遅延が10又は20μsであるときにガス形成の有意な減少を示し始め、サイクル遅延が150μs以上のときに高エコー泡の完全な排除を有する。
【0232】
[00260]
図6A~6Cは、エネルギー送達本体108(例えば、電極)が生理食塩水溶液中に沈められたときの様々な条件下での泡形成を示す超音波画像を提供する。
図6Aは、エネルギーが送達されていない、矢印で示されるエネルギー送達本体108の基準線画像を示す。したがって、この画像は、対照群として機能する。矢印の頭で陰影アーチファクトが強調されている。
図6Bは、波形が50nsのサイクル遅延を有する、エネルギー送達本体108によるエネルギー送達を示す。これは、広範囲に及ぶ度合いの高エコー泡が生成され、スクリーン上で可視化されていることを示す。
図6Dは、波形が
図6Bと同じパラメータを有するが、波形が1msのサイクル遅延を有する、エネルギー送達本体108によるエネルギー送達を示す。図示されるように、イメージングウィンドウ内の何れの箇所にも目に見える泡が存在しない。
【0233】
[00261] したがって、幾つかの実施形態では、心臓又は血管の臨床用途などにおいて、標的組織に隣接して血液又は任意の電解質流体中でPEF療法を送達するとき、100μs~10,000μs、好ましくは100μs~1000μsの範囲内(例えば、250μs~1000μsなど)のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いてガスの生成を排除することができる。幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、100μs、150μs、200μs、250μs、300μs、400μs、500μs、600μs、700μs、800μs、900μs、1000μs、100~250μsの範囲内、250~500μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、250μsを超える範囲内、500μsを超える範囲内、1000μsを超える範囲内、1000~5,000μsの範囲内、1000~10,000μsの範囲内であることが理解され得る。幾つかの実施形態では、エネルギー送達本体108を標的組織内に配置しているときなど、PEFを固形組織に送達するとき、10μs~1000μs、好ましくは25μs~100μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いてガス形成を排除することができる。幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、10μs、20μs、25μs、30μs、40μs、50μs、60μs、70μs、80μs、90μs、100μs、10~100μsの範囲内、25~500μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、25μsを超える範囲内、50μsを超える範囲内、100μsを超える範囲内であることが理解され得る。
【0234】
電気放電
[00262] 場合により、エネルギー送達本体108から患者にエネルギーが送達されるとき、電流がエネルギー送達本体108の周囲の焦点領域に集中及び蓄積する。ある点において、累積エネルギー送達は、エネルギー送達本体108の材料又は周囲の組織若しくは流体の破壊電圧を超える。これは、エネルギー送達本体108から直近の組織、流体又は細胞に電気放電事象(例えば、アーク放電などの突然の電気の流れ)を生じさせる。しかしながら、適切な波形遅延の導入により、流体及び組織の物質における電荷蓄積の緩和が可能となる。したがって、遅延を導入することにより、エネルギー送達は、一定ではなく、その結果、エネルギー送達を再開する前の様々な時点で電荷蓄積の緩和が可能になる。十分な回数及び持続時間の遅延により、放電事象を防止することができる。放電を防止するために十分な遅延の回数及び持続時間は、治療プロトコルのエネルギー及び強度に関係し、より高い電圧は、より長い遅延を伴う。
【0235】
[00263] 電気放電事象は、特に双極電極配置を使用する場合、治療効果をもたらすために、500~5000Vの範囲内の電圧を有する波形を伴うPEF療法において非常に可能性が高い。電気放電事象は、特にエネルギーが双極電極を介して送達される場合、具体的な条件に応じてこの範囲外で生じ得ることが理解され得る。これらのパラメータ範囲に関して、50、250、500又は1000μs以上の遅延(例えば、サイクル遅延など)は、電気アーク放電も防止しながら、最も重要な治療効果の度合いを維持するのに最適となり得る。
【0236】
[00264]
図7A~7Bは、電気放電に対する異なる大きさのサイクル遅延の効果間の比較例を示す。ここでは、エネルギー送達本体108は、生理食塩水溶液中に沈められ、可視電気放電に直面するまでPEF治療を送達した。波形は、300μsのオンタイムを有するパケット20を形成する複数のパルス12から構成された。この300μsのオンタイムパケットは、可視電気放電事象に直面するまで、漸進的により高い電圧で送達された。その後、オンタイムを減少させ、電気放電が再び目に見えるまで電圧の増加を継続した。
図7Aは、非常に小さいサイクル遅延(50ns)を有する波形を示す。
図7Bは、適度のサイクル遅延(50μs)を有する波形を示す。特に、50μsのサイクル遅延テストセットは、非常に小さい約50nsのサイクル遅延と比較して、電気放電が認識される前に送達され得る電流が78%増加したことを示す。したがって、この適度なサイクル遅延は、電気放電前に電極によって送達することができるエネルギー量を著しく増加することが示された。このサイクル遅延は、治療効果の有効性の低下に直面し得る領域(細胞のサイズ及び特性に応じて、5~10msのサイクル遅延範囲で生じ始める可能性が最も高い)をはるかに下回っている。電気アーク放電に対するこのより大きい回復力は、この列でテストされたすべてのパケットオンタイムに対して存続することが実証された。
【0237】
[00265] エネルギー送達本体108の設計又はエネルギー送達本体108の物理的配置も役割を果たすことが理解され得る。エネルギー送達本体108上の明確な境界のより小さい接触エリア又は領域などのエネルギー送達本体108の設計又は配置が電流の集中を促進する場合、電気放電事象を緩和するために、より長い遅延が利用される。
【0238】
[00266] したがって、幾つかの実施形態では、心臓又は血管の臨床用途などにおいて、標的組織に隣接して血液又は任意の電解質流体中でPEF療法を送達するとき、50μs~10,000μs、好ましくは250μs~1000μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いて電気放電を排除することができる。幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、50μs、100μs、150μs、200μs、250μs、300μs、400μs、500μs、600μs、700μs、800μs、900μs、1000μs、50~250μsの範囲内、250~500μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、250μsを超える範囲内、500μsを超える範囲内、1000μsを超える範囲内、1000~5,000μsの範囲内、1000~10,000μsの範囲内であることが理解され得る。幾つかの実施形態では、エネルギー送達本体108を標的組織内に配置しているときなど、PEFを固形組織に送達するとき、100μs~10,000μs、好ましくは250μs~2000μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いて電気放電を排除することができる。幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、100μs、200μs、250μs、300μs、400μs、500μs、600μs、700μs、800μs、900μs、1000μs、1500μs、2000μs、250~500μsの範囲内、250~1000μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、1000~2000μsの範囲内、250μsを超える範囲内、500μsを超える範囲内、1000μsを超える範囲内であることが理解され得る。幾つかの実施形態では、導電性流体を有しない標的組織の管腔内にエネルギー送達本体108が配置されるときなど、PEFを管腔標的(例えば、気道)に送達するとき、10μs~10,000μs、好ましくは50μs~500μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いて電気放電を排除することができる。幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、10μs、20μs、30μs、40μs、50μs、60μs、70μs、80μs、90μs、100μs、200μs、300μs、400μs、500μs、50~100μsの範囲内、100~250μsの範囲内、250~500μsの範囲内、1000~10,000μsの範囲内、50μsを超える範囲内、250μsを超える範囲内、500μsを超える範囲内、1000μsを超える範囲内であることが理解され得る。
【0239】
空洞形成
[00267] 上述の通り、電気放電が生じたとき、可聴の「はじけるような」音として明白な圧力波が生成される。放電及び圧力波が十分な強度のものであり、及び十分な回数繰り返された場合、この圧力波から組織内に伝達及び付与されたエネルギーは、組織のアーキテクチャ及び細胞を激しく破壊し得る。結果として生じる効果は、これらの効果の最も強い強度を経験する電極付近の領域における組織内の欠損又は空洞の度重なる生成である。
【0240】
[00268] PEFパケット内などの波形の励起部分間に遅延を組み込むことにより、物理的効果が蓄積して組織の空洞を生成可能な圧力波になる前に、分子レベルでの物理的効果の解消のための時間が許容される。これは、組織内へのより分散されたエネルギーの付与をもたらし、それによりPEF療法の結果として生じる圧力波が減少又は排除される。したがって、波形へのサイクル遅延及び他の遅延の導入を用いて空洞の生成を緩和又は排除することができる。これを利用して治療効果結果の予測可能性を向上させることができ、これを使用して、血管系の完全性の破壊、瘻孔形成又は他の繊細な組織に対する損傷などの空洞形成に関連する危険性を排除することもできる。
【0241】
[00269]
図8A~8Bは、肝組織Tに送達された、異なるサイクル遅延以外には同一のPEF治療プロトコルの効果を示す。
図8Aは、かなりの組織空洞Cの形成をもたらした、およそ50nsのサイクル遅延を有する波形を使用した結果を示す。
図8Bは、およそ1000μsのサイクル遅延を有する以外には同じ波形を使用した結果を示す。したがって、同じ量のエネルギーが送達される。図示されるように、このようなより長いサイクル遅延は、肝組織Tに形成される大きい空洞を完全に排除することができる。
【0242】
[00270] 空洞排除の副次的恩恵の1つは、組織-電極界面での間隙を潜在的に排除することによる組織内へのより効率的なエネルギー付与である。これは、より大きい治療効果をもたらし得る。
【0243】
[00271] 幾つかの実施形態では、エネルギー送達本体108を標的組織内に配置しているときなど、PEFを固形組織に送達するとき、100μs~10,000μs、好ましくは250μs~2000μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いて空洞形成を排除することができる。幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、100μs、200μs、250μs、300μs、400μs、500μs、600μs、700μs、800μs、900μs、1000μs、1500μs、2000μs、250~500μsの範囲内、250~1000μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、1000~2000μsの範囲内、250μsを超える範囲内、500μsを超える範囲内、1000μsを超える範囲内であることが理解され得る。
【0244】
筋肉収縮
[00272] エネルギー送達本体108に最も近い細胞及び組織は、PEF療法において最も強く影響を受ける細胞及び組織である。遠隔の運動ニューロン及び骨格筋(及び心筋及び平滑筋)において活動電位の生成を回避又は防止しながら、これらの細胞及び組織に治療効果の度重なる生成を受けさせることが可能である。これは、二相性パルスを用いて達成され、波形内の遅延を用いてさらに達成される。これらの遠隔の運動ニューロンの帯電及び緩和特性は、それらの発生を防止するために、より長い持続時間のサイクル遅延を要することが分かった。例えば、10ms、20ms、30ms、40ms又は50msのサイクル遅延が使用され得る。
【0245】
[00273] 場合により、望ましいサイクル遅延は、少なくとも部分的に活動電位生成の数値シミュレーションによって決定される。幾つかの実施形態では、有髄軸索領域間のランヴィエ絞輪の配列に基づいたモデルが利用される。
図9を参照すると、ミエリン鞘の間隙としても知られるランヴィエ絞輪NRは、有髄軸索MAに沿って生じ、有髄軸索MAでは軸索鞘AA(軸索膜)が細胞外空間に露出する。ランヴィエ絞輪NRは、絶縁されておらず、及びイオンチャネルが非常に豊富であり、それにより、それらを、活動電位の再生に必要とされるイオン交換に関与させることが可能となる。有髄軸索MAにおける神経伝導は、活動電位が軸索MAに沿ってある絞輪NRから次の絞輪NRに「ジャンプ」したように見える様式で生じる。これは、活動電位のより速い伝導をもたらす。
【0246】
[00274]
図10を参照すると、有髄軸索MA領域は、細胞内環境のための抵抗器としてモデル化される。各絞輪NRは、細胞内環境を細胞外環境から分離する細胞のための膜から構成され、漏れ抵抗器及び電圧源と並列のコンデンサとしてモデル化される。電界に曝露されると、有髄軸索MAは、コンデンサに沿って帯電を開始する。電界が除去されると(例えば、遅延期間にわたってパルスが停止される)、有髄軸索MA上の電荷蓄積が放電を開始する。したがって、PEF療法が運動ニューロンにおいて活動電位を誘導する能力は、PEF波形の効果的なデューティサイクルに関係する。
【0247】
[00275] この概念は、
図11A~11Dで伝えられる。
図11Aは、サイクル遅延16がないか又はサイクル遅延16が少ない例示的なPEF波形10を示し、
図11Bは、運動ニューロンの帯電62及び放電64挙動の概略図を提供する。波形10の2つのパケット20は、パケット間遅延22によって分離されて示されている。パケット20が送達されているとき、運動ニューロンは、送達全体にわたり漸増的に帯電する。しばらくすると、蓄積された膜電位は、(破線66で示される)活動電位を誘導する。その後、運動ニューロンは、パケット間遅延22の開始時点で放電を開始する。これは、その後のパケット20ごとに繰り返される。
【0248】
[00276]
図11Cは、
図11Aの波形よりも大きいサイクル遅延16を有する例示的なPEF波形10を示す。
図11Dは、運動ニューロンの帯電62及び放電64挙動の概略図を提供する。波形10が送達されているとき、運動ニューロンは、送達全体にわたり漸増的に帯電するが、サイクル遅延16の開始時点で放電が始まる。したがって、より大きいサイクル遅延16の包含は、活動電位を誘導する膜電位より下(破線66より下)に蓄積された膜電位を抑制することをもたらすことが明白である。エネルギー送達の特定の活性期間中、その波形及び電界強度に関する、蓄積された軸索電荷が活動電位を誘導する閾値に達することを防止する特徴的な遅延が存在する。
【0249】
[00277] 数学モデルの特性は、運動ニューロン軸索の特性を模倣するように選択される。このモデルを利用することにより、筋肉収縮を緩和するというサイクル遅延16の恩恵は、
図12に示されるように、10msのサイクル遅延で起こり始め、1秒のサイクル遅延で横ばいになることが分かる。したがって、これは、筋肉収縮を制限するためのモデル化された有効範囲である。これらの範囲は、強度、相挙動(単相性又は二相性若しくは様々な非対称性レベルの二相性)、PEF波形の他のパラメータ(総パケットオンタイムなど)、電極配置のジオメトリ(双極、多極又は単極)及び活動電位がニューロンにおいて最終的に誘導されるか否かに関する、PEF電極に対する特定の運動ニューロンの近接に関連して変化することに留意されたい。筋細胞(骨格筋細胞、心筋細胞、平滑筋細胞)も、これらの細胞の固有の特徴及び特定の特性に基づいた異なる固有の感度であるが、収縮に対するそれらの感受性に影響を与える同様の効果及び特徴を有する。
【0250】
[00278] PEF波形の詳細に応じて、サイクル遅延16は、概ね5msから10msに至るまで及び10msを超えて増加されるにつれて、PEFによって治療される組織の総体積が減少し始め得る。しかしながら、励起電極に最も近い細胞は、依然として影響を受けたままとなり、したがって組織によって治療される。したがって、サイクル遅延16が数十ミリ秒に及び始めると、治療効果は、変動するが、筋肉収縮を減少させるか又は排除するサイクル遅延を用いて有意な治療結果を生じさせることが依然として可能である。逆に、必要に応じて短い~排除された遅延を用いて、さらなる筋肉収縮を促進することが可能である。
【0251】
[00279] 幾つかの実施形態では、エネルギー送達本体108を標的組織内に配置しているときなど、PEFを固形組織に送達するとき、5ms~100ms、好ましくは10~30msの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いて筋肉収縮を減少させるか又は排除することができる。幾つかの実施形態では、導電性流体を有しない標的組織の管腔内にエネルギー送達本体108が配置されるときなど、PEFを管腔標的(例えば、気道)に送達するとき、5ms~100ms、好ましくは10~30msの範囲内のサイクル遅延を用いて筋肉収縮を減少させるか又は排除することができる。何れにせよ、幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、5ms、10ms、25ms、30ms、40ms、50ms、60ms、70ms、80ms、90ms、100ms、5~10msの範囲内、10~20msの範囲内、20~30msの範囲内、5msを超える範囲内、10msを超える範囲内、15msを超える範囲内、30msを超える範囲内であることが理解され得る。
【0252】
温度上昇
[00280] 本明細書に記載されるように、PEF波形の活性期間間の遅延期間を導入及び操作することにより、より長い期間にわたり組織内へのエネルギー付与が分散される。これは、特に電極に非常に近い領域(組織-電極界面)において、パルス送達期間中、PEF療法に関して特徴的に起こる温度上昇スパイクの形状及び振幅に著しく影響を与える。これは、治療の安全性を向上させ、組織の副作用の可能性を減少させ、アーク放電を促進する組織又は流体のホットスポットの電位を排除することにより、スパーキング又はアーク形成を含む電気放電事象の可能性を減少させる。したがって、サイクル遅延の導入を用いて、生じるピーク温度を減衰させることによって治療結果を大幅に向上させることができる。
【0253】
[00281]
図13を参照すると、PEFプロトコルによる温度上昇の振幅及び分布の計算は、数値シミュレーションによってもたらされ得る。この例では、3つのPEFプロトコルが比較され、各PEFプロトコルは、二相性パルス12の単一のパケット20を有する波形10を含む。第1のPEFプロトコルは、サイクル遅延を含まず、第2のPEFプロトコルは、1msのサイクル遅延16を含み、第3のPEFプロトコルは、10msのサイクル遅延16を含む。
図13に示されるように、50℃を超える温度の一般的mmスケール分布は、サイクル遅延のないプロトコル及び1msのサイクル遅延を有するプロトコル間で同程度であった。しかしながら、組織-電極界面における最大温度の瞬時スパイクは、劇的に異なる。サイクル遅延のないプロトコルは、約175℃の最大温度を生成したが、1msのサイクル遅延を有するプロトコルは、約80℃のピーク温度に達し、10msのサイクル遅延を有するプロトコルは、最大温度上昇を約55℃に抑えた。最大温度上昇時の温度分布が
図14A~14Bに示され、したがって0msの遅延(
図14A)対1msの遅延(
図14B)に関するパケット内への異なる持続時間を反映している。したがって、サイクル遅延16の導入及び操作は、組織に対して生じる熱的効果に対する著しい測定可能な効果を誘発する。
【0254】
[00282] これらの値は、最大温度に直面し、その後に温度の非常に急激な低下が続く即座の組織-電極境界におけるものであることに留意されたい。パケットが完了すると、同様に温度の急激な低下がある。したがって、これらの値は、非常に高い温度を示すが、これらの値は、電極から組織内へのmmスケール距離において、かなりの度合いの熱損傷がモデル化されたPEF療法から生じることを示さない。しかしながら、緩和された温度ピークは、電極にごく近接した有害な熱損傷及びタンパク質変性の潜在的生成を大幅に減少させ、電気放電事象の発生の可能性を減少させる。これらは、これらの処置においてサイクル遅延を利用する主要な利点の2つである。
【0255】
[00283] したがって、幾つかの実施形態では、心臓又は血管の臨床用途などにおいて、標的組織に隣接して血液又は任意の電解質流体中でPEF療法を送達するとき、200μs~20,000μs、好ましくは500μs~10,000μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いてピーク温度を低下させることができる。幾つかの実施形態では、エネルギー送達本体108を標的組織内に配置しているときなど、PEFを固形組織に送達するとき、200μs~20,000μs、好ましくは500μs~10,000μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いてピーク温度を低下させることができる。何れにせよ、幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、500μs、1000μs、2000μs、3000μs、4000μs、5000μs、6000μs、7000μs、8000μs、9000μs、10,000μs、200~500μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、1000~10,000μsの範囲内、10,000~20,000μsの範囲内、200μsを超える範囲内、500μsを超える範囲内、1000μsを超える範囲内であることが理解され得る。
【0256】
[00284] 幾つかの実施形態では、導電性流体を有しない標的組織の管腔内にエネルギー送達本体108が配置されるときなど、PEFを管腔標的(例えば、気道)に送達するとき、100μs~10,000μs、好ましくは200μs~1000μsの範囲内のサイクル遅延又は他の遅延などの遅延を用いてピーク温度を低下させることができる。何れにせよ、幾つかの実施形態では、遅延は、幾つかの例を挙げると、100μs、200μs、300μs、400μs、500μs、600μs、700μs、800μs、900μs、1000μs、100~200μsの範囲内、100~500μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、500~1000μsの範囲内、1000~10,000μsの範囲内、200μsを超える範囲内、500μsを超える範囲内、1000μsを超える範囲内であることが理解され得る。
【0257】
効果を制御するための遅延範囲の比較
[00285] 全体として、ガス形成、電気放電、空洞形成、筋肉収縮及び温度上昇などの各二次的治療効果に対する特定の療法の感受性及び感度は、様々である。以下の表1は、様々な標的組織の種類に関する、これらの効果を緩和するために使用され得る遅延の潜在的な最も適用可能な範囲を要約する。特に、この表は、二次的効果を緩和させるための用途に注目するが、これらの効果を促進したい場合もあり、したがって特定の治療標的に対して異なる遅延範囲が適用可能であり得る。
【0258】
【0259】
[00286] したがって、PEF波形内の様々な遅延(特に位相遅延、サイクル遅延16及び/又はパケット間遅延20)の包含及び操作は、治療結果を劇的に向上させるための強力なツールを提供する。これは、PEF療法により、高電圧電気パルスを送達する性質により固有に生じる二次的効果に関連するリスクを排除するか又は減少させることによって達成される。これらの効果及び利点は、波形における送達されるエネルギーの範囲にかかわらずに当てはまる。
【0260】
[00287] したがって、まとめてPEF波形と呼ばれるものを含む、サイクル、列、パケット、バンドル及び/又は活性化内に含まれるPEF治療波形を含む構成要素遅延の持続時間及び/又はシーケンスを制御することにより、上記の二次的効果(例えば、ガス形成、電気放電、筋肉収縮、空洞形成及び温度上昇)を制御するための方法が提供されてきた。本明細書に記載の例及び実施形態は、サイクル遅延16に注目するが、このような情報(例えば、遅延値、遅延位置、遅延の数、遅延のタイプなどに関する例示的な範囲)は、PEF波形のいかなる遅延又は遅延の組み合わせにも適用されることが理解され得る。異なるタイプの遅延は、単独で又は組み合わせて、様々な二次的効果を緩和するためにエネルギー送達を分散させながら、特定の治療効果を可能にすることにより、同じ効果を有し得る。したがって、場合により、エネルギー送達のタイミングの操作は、同じ又は類似の結果を有する様々な方法で達成することができる。このような効果は、電極配置によって影響され得る。
【0261】
[00288] 様々なパラメータの組み合わせ及び結果効果の十分な例を提供するために表2を以下に提供する。表2は、電極形状、回路のタイプ、様々なパラメータ値及び治療効果を含む治療シナリオの様々な組み合わせを提供する。特定のシナリオを前提として、様々な二次的効果(例えば、泡形成、アーク放電、空洞形成)を回避するためのサイクル遅延16の例示的な最小値が提供される。したがって、遅延値は、治療プロトコルに関連する様々な要因に依存することが明白であるが、本明細書全体を通して記載されるように統一概念が明らかにされる。
【0262】
【0263】
[00290] 二次的効果を減少させるとき、これらの方法の使用の基礎となる主原理は、蓄積された電荷の歪みの完全な放電及び/又はパルス電界によって誘発された効果(例えば、細胞の極性化、ATP枯渇など)からの細胞及び細胞小器官の回復のために遅延が短すぎるということである。したがって、後続の1つのパルス、複数のパルス又は最初のパルス若しくはパルス列に続くパルス列に対する標的細胞及び組織の反復曝露は、細胞に対する傷害の蓄積をもたらし、これは、最終的に高分子輸送(薬品、遺伝物質など)に対する感受性を高めるか、又はその死(貪食された、プログラムされた細胞死(パータナトス、ピロトーシス、アポトーシスなど)、ネクローシスなど)をもたらす。したがって、PEF療法の有効性は、二次的効果が制御されながら、一貫した範囲又は変更された範囲で残る。
【0264】
[00291] これらの方法に関して、二次的効果は、これらの挙動の1つ又は複数の誘発の減衰又は完全な防止を行うのに十分な持続時間の遅延が選択されたときに減少させることができる。効果は、特に波形の一部分内の後続のパルスが類似の極性配置を有する場合、それらの発生を助長するために十分に少ない遅延を用いることなどにより、選択的に促進することもできる。例えば、場合により、ガス形成は、治療環境を物理的に破壊することなどの仕組みを用いて、臨床医に有利に使用され得る。これは、細胞死を促進すること、細胞活性剤に対する細胞の感受性を促進すること、点滴のための混合効率を高めること及び他の潜在的使用などの目的のために使用され得る。したがって、ときにPEF療法から生じるガスの形成を制御及び促進することが望ましい。しかしながら、便宜上、本明細書では、PEF療法の結果として生じ得る二次的(無細胞)効果を減少させるための方法が主に説明される。
【0265】
波形長さ
[00292] PEF波形において遅延を導入及び/又は操作する際、波形の様々な特性が変化し得る。例えば、PEF波形10のパケット20においてサイクル遅延16を導入するか又は増加させるとき、パケットを完了するための時間が増加する。このようなパケット持続時間又は完了時間の増加は、唯一の変更が遅延の増加であれば、パケットオンタイムを増加させないことが理解され得る。特定の数のパケット20を送達することによって治療が決定される場合、治療時間は、パケット持続時間の増加と共に増加する。同様に、パケット間遅延26が導入又は増加されると、治療が2つ以上のパケットを含む場合、治療時間も増加する。
【0266】
[00293] 場合により、遅延なしのPEF波形は、長さが100μsのパルス又はパケットで送達される。400kHzの基本周波数を有する波形を使用する場合、波形は、1秒当たり400,000サイクルを有するか、又は1サイクルは、2.5μsの長さである。したがって、このような例では、パケットは、40サイクルを含む。250μsのサイクル遅延がそのようなパケットに導入された場合(例えば、パケット内の各サイクル後)、パケット長又はパケット持続時間は、10,000μs分増加して、10,100μsの総パケット持続時間となる。以下の表3は、従来のPEF波形のパケット持続時間と比較して、様々な導入サイクル遅延(例えば、250μs、500μs、1000μs)に関する総パケット時間を示す。この表では、パケット内の各サイクル後にサイクル遅延が導入される。この挙動は、サイクル遅延の代わりに位相遅延についても同じである。
【0267】
【0268】
[00295] 幾つかの実施形態では、遅延の包含は、幾つかの例を挙げると、2,000μs、5,000μs、10,000μs、20,000μs、25,000μs、30,000μs、40,000μs、50,000μs、60,000μs、70,000μs、80,000μs、90,000μs、100,000μs、110,000μs、120,000μs、130,000μs、140,000μs、150,000μs、160,000μs、170,000μs、180,000μs、190,000μs、200,000μs、1000~2000μs、1000~3000μs、1000~4000μs、1000~5000μs、1000~10,000μs、10,000~20,000μs、10,000~30,000μs、10,000~40,000μs、10,000~50,000μs、50,000~100,000μs、50,000~150,000μs、50,000~200,000μs、10,000μs超、25,000μs超、50,000μs超、100,000μs超、200,000μs超など、およそ1000~200,000マイクロ秒の範囲にパケット持続時間を増加させ得る。
【0269】
[00296] 表3は、組み合わせの小サンプルを示すことが理解され得る。波形は、任意の長さの遅延、任意の数の遅延及び任意のタイプの遅延(すなわちサイクル遅延に限定されない)を含み得る。遅延は、一貫性を有し得る(例えば、波形全体を通して同じ長さ、同じ位置など)か、又は一貫性がなくてもよい(例えば、異なる長さの少なくとも1つ、異なる位置又は飛び越し位置にある少なくとも1つ、パケット間で異なる、バッチ間で異なるなど)。同様に、異なる基本周波数が使用され得る。さらに、波形に任意の数のパケットが存在し得、バッチなしを含む任意の数のバッチが存在し得る。いかなる場合でも、これらのタイプの遅延の導入は、上記に示したように、パケット時間を大幅に増加させる。しかしながら、このような増加は、このような増加の比較的小さい時間尺度を前提として全体的な治療時間に最小限の影響を有する。すなわち、処置中の治療時間の許容限度は、遅延の包含により、このような増加をはるかに超える。
【0270】
送達デバイス及びシステム
[00297] 一般的に、エネルギーは、特定の臨床用途のために設計されたシステム及びデバイスを用いて送達される。十分なアクセスを有して、患者の身体内の任意の標的にエネルギーを送達することができる。幾つかの実施形態では、システム及びデバイスは、全身の、特に経皮的アプローチを利用できないと以前に見なされていた場所にある標的組織への管腔内的アクセスのために設計される。管腔内的アクセスは、身体の様々な管腔内から標的組織の治療を可能にする。管腔は、身体内のチューブ状又は中空構造の内部の空間であり、幾つかの例を挙げると、通路、管、導管及び腔を含む。例示的な管腔構造は、幾つかの例を挙げると、血管、食道、胃、小腸及び大腸、結腸、膀胱、尿道、集合尿細管、子宮、膣、卵管、尿管、腎臓、尿細管、脊柱管、脊髄及び全身の他の管腔構造並びに肺、心臓及び腎臓などの器官内の構造及びそのような器官を含む構造を含む。幾つかの実施形態では、標的組織は、近くの管腔構造を介してアクセスされる。場合により、治療デバイス102は、様々な管腔構造又は管腔系の分岐を通して進められ、標的組織場所に到達する。例えば、血管を介して標的組織部位にアクセスする際、治療デバイス102は、離れて挿入され、血管系の様々な分岐を通して進められて、標的部位に到達し得る。同様に、管腔構造が鼻、口、尿道又は直腸などの自然の開口部に端を発する場合、進入は、自然の開口部を通して生じ得、その後、治療デバイス102は、管腔系の分岐を通して進められ、標的組織場所に到達する。代替的に、静脈切開又は他の方法を用いて、標的組織付近で管腔構造を入れることができる。これは、大きい系の一部でないか、又は他にアクセスが困難な管腔構造にアクセスする場合に当てはまり得る。
【0271】
[00298] 標的組織は、管腔構造自体、これらの管腔構造の近くの組織及びこれらの管腔内的アプローチ又は経皮的、腹腔鏡的若しくは切開手術的アプローチなどの他のアプローチによりアクセス可能な組織の何れかを含む。これらは、幾つかの例を挙げると、外皮系、骨格系、筋系、神経系、内分泌系、心臓血管系、リンパ系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系及び生殖器系における細胞、組織及び/又は器官を含む。例示的な細胞、組織及び/又は器官は、管腔構造自体、管腔構造の近くに位置する全身の軟組織並びに肝臓、膵臓、胆嚢、腎臓、前立腺、卵巣、リンパ節及びリンパ排液管、下層筋肉組織、骨組織、脳、目、甲状腺などを含む(ただし、これらに限定されない)管腔構造からアクセス可能な固形臓器を含む。
【0272】
[00299] 本明細書に記載するような波形操作を利用し得るシステムの例は、「GENERATOR AND A CATHETER WITH AN ELECTRODE AND A METHOD FOR TREATING A LUNG PASSAGEWAY」という名称の国際特許出願第PCT/米国特許出願公開第2017/039527号、「METHODS, APPARATUSES, AND SYSTEMS FOR THE TREATMENT OF DISORDERS」という名称の国際特許出願第PCT/米国特許出願公開第2018/067501号、「OPTIMIZATION OF ENERGY DELIVERY FOR VARIOUS APPLICATIONS」という名称の国際特許出願第PCT/米国特許出願公開第2018/067504号、「DEVICES, SYSTEMS AND METHODS FOR THE TREATMENT OF ABNORMAL TISSUE」という名称の国際特許出願第PCT/米国特許出願公開第2020/028844号及び「TREATMENT OF THE REPRODUCTIVE TRACT WITH PULSED ELECTRIC FIELDS」という名称の国際特許出願第PCT/米国特許出願公開第2020/042260号、「TREATMENT OF CARDIAC TISSUE WITH PULSED ELECTRIC FIELDS」という名称の国際特許出願第PCT/米国特許出願公開第2020/066205号を含む(これらのすべては、あらゆる目的のために参照により本明細書に援用される)、同一出願人による特許出願に記載される組織改変システム(例えば、エネルギー送達カテーテルシステム)を含む。
【0273】
[00300]
図15は、特殊なPEFエネルギーの送達に使用するための例示的な治療システム100の概略図を提供する。この実施形態では、システム100は、遠位端103及び近位端107を有するシャフト106を含む細長いデバイス102を含む。デバイス102は、シャフト106の遠位端103の近くの破線円として一般的に示されるエネルギー送達本体108を含む。エネルギー送達本体108は、単一表現の図を妨げる構造的違いを有する様々な形態を取り得るが、個々の例示的な実施形態が本明細書で説明及び図示されることが理解され得る。エネルギー送達本体108は、外部から目に見えるようにシャフト106の外面上に取り付けられ得るか、又はシャフト106の外面と一体化され得る。又は、エネルギー送達本体108は、シャフト106の中に内部収納され、シャフト106から前進するか、又はシャフト106自体を後退させることによって露出され得る。同様に、2つ以上のエネルギー送達本体108が存在し得、外的、内的又はその両方であり得る。幾つかの実施形態では、シャフト106は、押出ポリマーなどのポリマーから構成される。幾つかの実施形態では、シャフト106は、柔軟性及び/又は剛性を制御するための異なるデュロメータを有する複数の材料層から構成されることが理解され得る。幾つかの実施形態では、シャフト106は、個々のワイヤ又はワイヤ編組などの様々な要素で補強される。何れにせよ、このようなワイヤは、フラットワイヤ又は丸ワイヤであり得る。ワイヤ編組は、編組パターンを有し、幾つかの実施形態では、編組パターンは、所望の柔軟性及び/又は剛性に調整される。他の実施形態では、シャフト106を補強するワイヤ編組は、シャフトの長さに沿って柔軟性及び/又は剛性のさらなる制御を提供するための異なるデュロメータを備えた複数の材料層と有利に組み合わされ得る。
【0274】
[00301] いかなる場合でも、各エネルギー送達本体108は、PEFエネルギーの送達のための少なくとも1つの電極を含む。一般的に、エネルギー送達本体108は、単一の送達電極を含み、デバイス102の遠位端103の近くに配置されたエネルギー送達本体108と、患者の皮膚上に位置付けられたリターン電極140との間にエネルギーを供給することによって達成される単極配置で動作する。しかしながら、双極エネルギー送達及び他の配置が代替的に使用され得ることが理解されるであろう。双極エネルギー送達を使用する場合、デバイス102は、双極様式で機能するように構成された複数のエネルギー送達本体108を含み得るか、又は双極様式で機能するように構成された複数の電極を有する単一のエネルギー送達本体108を含み得る。デバイス102は、一般的に、近位端107の近くに配置されたハンドル110を含む。ハンドル110は、デバイス102を操縦するために使用され、一般的にエネルギー送達本体108を操作するためのアクチュエータ132を含む。幾つかの実施形態では、エネルギー送達本体108は、(アクセス中の)閉又は後退位置から(エネルギー送達のための)開又は露出位置に移行する(これは、アクチュエータ132によって制御される)。したがって、アクチュエータ132は、一般的に、ノブ、ボタン、レバー、スライド又は他の機構の形態を有する。幾つかの実施形態では、ハンドル110は、デバイス102を通した送達のための液体、薬剤、物質、ツール又は他のデバイスの導入のためのポート111を含むことが理解され得る。例示的な液体は、幾つかの例を挙げると、懸濁液、混合物、化学薬品、流体、化学療法薬剤、免疫療法薬剤、ミセル、リポソーム、塞栓剤、ナノ粒子、薬剤溶出粒子、遺伝子、プラスミド及びタンパク質を含む。
【0275】
[00302] デバイス102は、PEFエネルギーを生成するように構成されたジェネレータ104と電気通信する。この実施形態では、ジェネレータ104は、ユーザインタフェース150と、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152と、プロセッサ154と、データ記憶/検索ユニット156(メモリ及び/又はデータベースなど)と、送達されるエネルギーを生成し、及び蓄えるエネルギー貯蔵サブシステム158とを含む。幾つかの実施形態では、ジェネレータ104上のユーザインタフェース150を使用して、所望の治療アルゴリズム152が選択される。他の実施形態では、アルゴリズム152は、後のセクションでより詳細に説明される1つ又は複数のセンサによって取得された情報に基づいて、ジェネレータ104によって自動的に選択される。様々なエネルギー送達アルゴリズムが使用され得る。幾つかの実施形態では、エネルギーの貯蔵/送達のために1つ又は複数のコンデンサが使用されるが、他の適切なエネルギー貯蔵要素が使用され得る。加えて、1つ又は複数の通信ポートが一般的に含まれる。
【0276】
[00303]
図15に示されるように、デバイス102の遠位端103は、一般的に、内視鏡10などの送達デバイスを通して前進可能である。内視鏡10は、一般的に、遠位先端部16を有する細長い挿入管14に取り付けられた制御本体12を含む。内視鏡10は、内部にデバイス102の遠位端103が通されるポート18によってアクセス可能な内部管腔を有する。デバイス102のシャフト106は、内部管腔を通して前進可能であり、遠位先端部16から外に出る。光及びエネルギー源に接続した内視鏡コネクタ22を有する導光管20を使用して、イメージングが内視鏡10によって達成される。内視鏡の遠位先端部16は、映像、超音波、レーザスキャンなどを含む(ただし、これらに限定されない)可視化技術を装備し得る。これらの可視化技術は、それらの設計と一致した信号を収集し、有線でシャフトの長さを通して又は無線で信号を映像処理ユニットに送信する。次に、映像処理ユニットは、映像信号を処理し、出力をスクリーン上に表示する。一般的に、内視鏡10は、胃カメラ(胃、食道及び小腸(十二指腸)を含む上部消化管内視鏡検査)、結腸鏡(大腸)、気管支鏡(肺)、咽頭鏡(咽頭)、膀胱鏡(尿路)、十二指腸鏡(小腸)、小腸内視鏡(消化器系)、尿管鏡(尿管)、子宮鏡(頸部、子宮)など、それが使用されている解剖学的場所に特有のものであることが理解され得る。他の実施形態では、デバイス102は、カテーテル、シース、挿入器、針又は他の送達システムによって送達可能である。
【0277】
[00304] 管腔内的に標的組織エリアに近づくと、エネルギーは、様々な方法で標的組織に送達することができる。ある配置では、エネルギー送達本体108は、身体管腔内に位置付けられ、エネルギーは、標的組織に送達される(すなわち身体管腔に入り、管腔壁の少なくとも一部を通して管腔壁内の及び/又は管腔壁を少なくとも部分的に取り囲む標的組織に、又は管腔壁を通して管腔壁の外側及び管腔壁付近の標的組織に)。別の配置では、エネルギー送達本体108は、管腔壁を通して進められ、管腔壁外側の標的組織内又はそのような標的組織の近くに挿入される。このような配置が組み合わされることにより、少なくとも2つのエネルギー送達本体108を含み、1つが身体管腔内に位置付けられ、1つが身体管腔の壁を通して延在し得ることが理解され得る。幾つかの実施形態では、各エネルギー送達本体108は、単極様式で機能する(例えば、離れて配置されたリターン電極を利用する)。他の実施形態では、エネルギー送達本体108の少なくとも幾つかは、双極様式で機能する(例えば、リターン電極としてエネルギー送達本体108を利用する)。任意選択的に、2つのエネルギー送達本体108のそれぞれは、管腔壁の両側に位置付けられ、その間の(例えば、管腔壁内部の)組織を治療するように双極様式で機能し得る。治療全体を通して管腔自体が維持されるため、これらの送達選択肢が可能であり、管腔自体の内部、管腔自体上又は管腔自体の近くの組織の治療を可能にする。このような療法の送達は、外科的に除去するか又は従来のフォーカルセラピーを用いて治療するには近すぎる、管腔壁に浸潤したか又は少なくとも部分的に身体管腔の周りを包み込んだ腫瘍又は病変組織など、以前にはアクセス不可能であった組織へのアクセスを可能にする。熱エネルギーを用いた治療などの多くの従来のフォーカルセラピーは、熱的タンパク質凝固などによる管腔壁の構造を損傷又は破壊する。
【0278】
[00305] 内視鏡的アプローチは、単極エネルギー送達にも適している。上述の通り、単極送達は、(デバイス102の遠位端の近くの)エネルギー送達本体108から標的組織への及び患者を通した、患者の皮膚に接触して位置付けられたリターンパッド140への電流の通過を伴い、それにより電流回路が完成する。したがって、幾つかの実施形態では、デバイス102は、1つのみのエネルギー送達本体108又は電極を含む。これは、デバイス102が、より小さい身体管腔内に位置付け可能であるように薄いプロファイルを有することを可能にする。これは、エネルギー送達本体108を取り囲む組織の深い貫通も可能にする。同様に、このようなデバイスを用いて管腔壁を貫通する際、1つのみのエネルギー送達本体108の使用により、治療ごとに1回のみの貫通が必要とされる。様々なデバイス設計又は治療プロトコルによりさらなる貫通が生じ得るが、幾つかの実施形態では、単極送達設計は、処置の侵襲性を低下させ、デバイス及び治療設計を単純化し、標的組織における優れた治療ゾーンを提供することが理解され得る。
【0279】
[00306] 対照的に、双極送達は、同じエネルギー送達本体108上、異なるエネルギー送達本体108上又は他の配置による2つの電極間の標的組織を通した電流の通過を伴う。ほとんどの従来のエネルギー療法は、双極性であり、一般的に経皮的である。このような療法は、皮膚の複数の貫通を伴い、それにより不快感が増し、治癒が長引き、処置がさらに複雑になる。本明細書に記載するシステムは、双極及び経皮的配置を含む様々な形式で利用され得るが、デバイス特徴は、一般的に、全体的な侵襲性を低下させ、及びより良好な結果を提供する方法で組み合わされることが理解され得る。
【0280】
[00307]
図16は、特にフォーカルセラピーを送達するように構成された、特殊なPEFエネルギーの送達に使用するために構成された治療デバイス102の別の実施形態を示す。この実施形態では、デバイス102は、遠位端103の近くの少なくとも1つのエネルギー送達本体108と、近位端107の近くのハンドル110とを有する細長いシャフト106を含む。この実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達本体108は、円筒形状を有する「焦点電極」を含む。円筒形状は、組織に対する位置決めを行うための円形の実質的に平坦な面又は湾曲した面を有する。幾つかの実施形態では、デバイス102は、50~150cm、好ましくは100~125cm、より好ましくは110~115cmの全長を有する。同様に、幾つかの実施形態では、それは、7Frの外径(3~15Fr、好ましくは4~12Fr、より好ましくは7~8.5Fr)を有する。幾つかの実施形態では、シャフト106は、偏向可能端部121を有し、任意選択的に、偏向可能端部121は、およそ15~55mmに及ぶ直径を有する湾曲をもたらす50~105mmの長さを有する。偏向は、ハンドル110に延びるプルワイヤを含む様々な機構によって達成され得る。したがって、特に送達及び治療中に遠位端103の向きを操作するために、ハンドル110を使用してデバイス102を操作する。エネルギーは、ジェネレータ104に接続可能なケーブル13を介してデバイス102、したがって少なくとも1つのエネルギー送達本体108に提供される。
【0281】
[00308] 幾つかの実施形態では、
図16の治療デバイス102は、心臓組織を治療するために、特に心房細動などの不整脈を治療するために利用される。
図17は、右心房RA及び左心房LAの切取図を示す心臓Hの一部分を示す。最大肺静脈は、4つの主な肺静脈(右上肺静脈RSPV、右下肺静脈RIPV、左上肺静脈LSPV及び左下肺静脈LIPV)であり、各肺から2つが心臓Hの左心房LA内に排出される。幾つかの実施形態では、心房細動の治療は、肺静脈内深くに治療デバイス102を配置すること及びマッピングカテーテルの近位にある小孔まで徐々に引き抜くことを伴う。その後、マッピング及び治療が始まる。
【0282】
[00309] 幾つかの実施形態では、左下肺静脈LIPVの開口部を取り囲む組織は、
図18に示されるように、左下肺静脈LIPVの周りに円形治療ゾーンを形成するために、治療デバイス102を用いて(マッピングを用いて)点ごとに治療される。場合により、専用ナビゲーションソフトウェアを使用して、治療カテーテル120の適切な位置決めを可能にすることができる。送達電極122は、標的組織エリアの近く又は標的組織エリアに接触して位置付けられ、エネルギーが治療エリアAを形成するように送達電極122に提供される。エネルギーが局所エリアに送達されるため(焦点送達)、電気エネルギーは、より小さい表面積に集中し、管腔又は小孔の周りに円周状に延在する電極による送達よりも強い効果がもたらされる。それは、電気エネルギーが段階的な局所的アプローチで送達されることも強制し、それにより周囲組織を通る優先電流経路の潜在的効果が緩和される。これらの優先電流経路は、隣接領域を通るのではなく、そこを通る電流フローの局所的増加を誘導する電気特性を備えた領域である。このような経路は、標的管腔の円周の周りで不規則な電流分布をもたらし得、したがって、これは、電界を歪ませ、一部の領域に関して治療効果の不規則な増加を生じさせ、他の領域において治療効果の低下を生じさせ得る。これは、標的領域の円周の周りで治療効果を安定させるフォーカルセラピーを用いて緩和又は回避することができる。したがって、エネルギーを一度に特定の領域に提供することにより、円周の異なる複数の領域にわたって電気エネルギーが「強制され」、それにより治療の円周方向の規則性の度合いの向上が保証される。
図18は、円形治療ゾーンを形成するために治療デバイス102を用いた、左下肺静脈LIPVの周りの点毎のエネルギーの反復付与を示す。図示されるように、この実施形態では、各治療エリアAは、連続した治療ゾーンを形成するために、隣接した治療エリアAとオーバーラップする。各治療エリアAのサイズ及び深度は、パラメータ値、治療時間、組織特性などの様々な要因に依存し得る。治療エリアAの数は、様々な要因、特に各患者の解剖学的構造及び電気生理学の固有の条件に依存して異なり得ることが理解され得る。幾つかの実施形態では、治療エリアAの数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30以上を含む。
【0283】
[00310] 心房と静脈との間のすべての電気接続が治療されると、遠距離場心房信号のみが記録される、肺静脈内の電気的休止が存在する。ときに、電気活性のスパイクは、肺静脈内において、心房の残りの部分に対する伝導がない状態で見られ、これらは、心房心筋の残りの部分からの静脈の電気的断絶を明白に示す。
【0284】
[00311] 様々な実施形態において、治療デバイス102は、様々な特殊な特徴を含むことが理解され得る。例えば、幾つかの実施形態では、デバイス102は、アブレーション処置中、カテーテルの先端部によって患者の心臓壁に加えられる接触力の実時間測定のための機構を含む。幾つかの実施形態では、この機構は、シャフト120内に含まれ、白色光干渉計を利用する3軸光学力センサを含む。処置全体を通して加えられた力をモニタリング及び修正することにより、ユーザは、より一貫した及びより効果的な損傷を生じさせるためにデバイス102をより良好に制御することができる。
【0285】
[00312]
図16を再び参照すると、幾つかの実施形態では、デバイス102は、シャフト120に沿って、エネルギー送達本体108の近位に位置付けられた1つ又は複数のさらなる電極109(例えば、リング電極)を含む。幾つかの実施形態では、電極109の一部又はすべては、(電気生理学的マッピングのための)刺激及び記録のために使用することができ、したがってデバイス102をアブレーションのために使用する際、別個の心臓マッピングカテーテルが必要とされない。
【0286】
[00313] 幾つかの実施形態では、デバイス102は、任意選択的にエネルギー送達本体108に埋め込まれた熱電対温度センサを含む。同様に、幾つかの実施形態では、デバイス102は、灌注及び/又は吸引に使用され得る管腔を含む。幾つかの実施形態では、デバイス102は、幾つかの例を挙げると、温度、インピーダンス、抵抗、キャパシタンス、導電率、誘電率及び/又はコンダクタンスを決定するために使用することができる1つ又は複数のセンサを含む。幾つかの実施形態では、電極の1つ又は複数は、1つ又は複数のセンサとしての役割を果たす。他の実施形態では、1つ又は複数のセンサは、電極とは分離している。センサデータを使用して、療法を計画し、療法をモニタリングし、及び/又はプロセッサ154によって直接的なフィードバックを提供することができ、その後、プロセッサ154は、エネルギー送達アルゴリズム152を変更することができる。例えば、インピーダンス測定を用いて、適用されるべき初回ドーズを決定することができるだけでなく、インピーダンス測定を用いて、さらなる治療の必要があるか否かを決定することもできる。
【0287】
[00314] 幾つかの実施形態では、システム100は、温度、様々な電圧若しくはAC周波数におけるインピーダンス、治療持続時間又はエネルギー送達パルスの他のタイミングの態様、治療電力及び/又はシステムステータスなどの入力に応答して、動的に治療に応答して治療を調整し、及び/又は治療を終了させる自動化治療送達アルゴリズムを含むことが理解され得る。
【0288】
[00315] 上述の通り、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152は、患者Pへの送達のためにジェネレータ104内にプログラム可能であるか又は予めプログラムされ得る。1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152は、非熱的であり(例えば、熱アブレーションに関する閾値未満、凝固性熱損傷を誘発する閾値未満)、それにより炎症が減るか若しくは回避され、及び/又は管腔構造における間質タンパク質の変性が防止される、心臓壁に送達されるエネルギーを提供する電気信号を指定する。一般に、アルゴリズム152は、所定の深度及び/又は体積まで組織に影響を与え、及び/又は送達されるエネルギーに対する特定のタイプの細胞応答を標的とするように調整される。
【0289】
[00316]
図19Aは、治療エネルギー送達カテーテル又はデバイス102の別の実施形態を示す。この実施形態では、デバイス102は、遠位端の近くの少なくとも1つのエネルギー送達本体108と、近位端の近くのハンドル110とを有する細長いシャフト106を有する。デバイス102は、治療システム100の一部としてジェネレータ104に接続可能である。ジェネレータ104に対するデバイス102の接続は、数ある特徴の中でも、電気エネルギーをエネルギー送達本体108に提供する。この実施形態では、エネルギー送達本体108は、近位端拘束122及び遠位端拘束124によって拘束される複数のワイヤ又はリボン120を含み、電極として機能する螺旋状バスケットを形成する。代替実施形態では、ワイヤ又はリボンは、螺旋状に形成される代わりに直線である(すなわち直線状のバスケットを形成するように構成される)。さらに別の実施形態では、エネルギー送達本体108は、管からレーザ切断される。様々な他の設計が使用され得ることが理解され得る。例えば、
図19Bは、パドル形状を有するエネルギー送達本体108を示す。この実施形態では、エネルギー送達本体108は、平坦なパッド又はパドルを形成するように配置された複数のワイヤ又はリボン120から構成される。このようなエネルギー送達本体108は、シャフト106内に後退するように可撓性である。
図19Aを再び参照すると、この実施形態では、エネルギー送達本体108は、自己拡張可能であり、折り畳まれた構成で標的エリアに送達される。この折り畳まれた構成は、例えば、エネルギー送達本体108を覆ってシース126を配置することによって達成され得る。(シース126内の)器具シャフト106は、近位端拘束122で終了し、遠位端拘束124は、基本的に軸方向に拘束されず、デバイス102のシャフト106に対して自由に動く状態のままである。エネルギー送達本体108を覆ってシース126を前進させることにより、遠位端拘束124が前に移動することが可能となり、それによりエネルギー送達本体108が長くなり/折り畳まれ、及び拘束される。
【0290】
[00317] この例に示されるように、デバイス102は、近位端にハンドル110を含む。幾つかの実施形態では、ハンドル110は、ハンドル取り外しボタン130を押すことなどによって取り外し可能である。この実施形態では、ハンドル110は、エネルギー送達本体操作ノブ又はアクチュエータ132を含み、アクチュエータ132の動きは、バスケット形状電極の拡張又は後退/折りたたみを生じさせる。この例では、ハンドル110は、内視鏡又は他のタイプの可視化デバイスとの任意選択的な接続のための作業ポートスナップ134及びジェネレータ104との接続のためのケーブルプラグインポート136も含む。幾つかの例を挙げると、血管造影(任意選択的にマーカーを含む)、コンピュータ断層撮影、光干渉断層撮影、超音波及び直接映像可視化を含む様々なタイプの可視化が使用され得ることが理解され得る。
【0291】
[00318] この実施形態では、治療エネルギー送達デバイス102は、患者Pの皮膚に外部から適用される分散(リターン)電極140と共に、ジェネレータ104と接続可能である。したがって、本実施形態では、単極エネルギー送達は、デバイス102の遠位端の近くに配置されたエネルギー送達本体108とリターン電極140との間にエネルギーを供給することによって達成される。しかしながら、双極エネルギー送達及び他の配置が代替的に使用され得ることが理解されるであろう。双極エネルギー送達を使用する場合、治療エネルギー送達デバイス102は、複数のエネルギー送達本体108を含むことなど、全体的な設計が異なり得るか、又は双極様式で機能するように構成された単一のエネルギー送達本体108を含むことなど、全体的な設計が類似して見え得る。場合により、双極エネルギー送達は、単極エネルギー送達と比較してより低い電圧を使用して治療効果を達成することを可能にする。双極構成では、陽極及び陰極は、電極極において及び電極極間の両方で治療効果を提供するのに十分な近さにある。これにより、より大きく、より浅い表面積にわたって治療効果を広げることができ、したがって、単極と比較して、治療効果を達成するために必要とされる電圧を低くすることができる。同様に、このより低い電圧を使用して貫通深度を減少させることができる。
【0292】
[00319] 先述の通り、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152は、患者への送達のためにジェネレータ104内にプログラム可能であるか又は予めプログラムされ得る。1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152は、非熱的であり(例えば、熱アブレーションに関する閾値未満、凝固性熱損傷を誘発する閾値未満)、それにより炎症が減るか若しくは回避され、及び/又は管腔構造における間質タンパク質の変性が防止される、組織に送達されるエネルギーを提供する電気信号を指定する。一般に、アルゴリズム152は、所定の深度まで組織に影響を与え、及び/又は送達されるエネルギーに対する特定のタイプの細胞応答を標的とするように調整される。深度及び/又は標的設定は、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152によって規定されたエネルギー信号のパラメータ、デバイス102(特に1つ又は複数のエネルギー送達本体108)の設計及び/又は単極若しくは双極エネルギー送達の選択によって影響を受け得ることが理解され得る。一般的に、幾つかの例を挙げると、0.01cmまで、0.02cmまで、0.01~0.02cm、0.03cmまで、0.03~0.05cm、0.05cmまで、0.08cmまで、0.09cmまで、0.1cmまで、0.2cmまで、0.5cmまで、0.7cmまで、1.0cmまで、1.5cmまで、2.0cmまで、2.5cmまで、3.0cmまで、3.5cmまで、4.0cmまで、4.5cmまで又は5.0cmまでの深度である。これらの深度は、円周方向の焦点標的に関してより大きくてもよいか、又はそれらは、管腔及び実質組織を通る全周深度に関して存在し得る。
【0293】
[00320]
図20A~20Bは、治療システム100の別の実施形態を示す。ここでは、システム100は、身体管腔の少なくとも部分的に外側に位置する標的組織を治療するように構成され、治療は、身体管腔から離れたところで治療エネルギーを開始することから恩恵を受け得る。この実施形態では、システム100は、ジェネレータ104に接続可能なエネルギー送達デバイス102を含む。デバイス102、ジェネレータ104及び他の付属品の特定の態様などの上記のシステム構成要素の多くは、システム100のこの実施形態において利用されることが理解され得る。したがって、上記で提供したそのような説明は、本明細書において以下で説明されるシステム100に適用可能である。主な相違点は、エネルギー送達本体108に関するものである。
【0294】
[00321] ここでは、デバイス102は、遠位端103、近位端107及び少なくとも部分的にシャフト106を通して延びる少なくとも1つの管腔105を有するシャフト106を含む。同様に、デバイス102は、少なくとも1つのエネルギー送達本体108も含む。この実施形態では、エネルギー送達本体108は、シャフト106の管腔105内に配置されたプローブ500の形態を取る。プローブ500は、管腔105を通して前進可能であり、シャフト106の遠位端103から延在可能なプローブ先端部502を有する(
図20Aでは、詳細を示すために拡大されている)。本実施形態では、先端部502は、針に類似する、組織を貫通するように構成された尖った形状を有する。したがって、本実施形態では、プローブ先端部502は、それが身体管腔の外側の標的組織内に挿入され得るように、管腔壁W及び周囲組織を貫通するために利用される。したがって、プローブ500は、管腔内的に送達されるのに十分な可撓性を有するが、管腔壁W及び標的組織を貫通するのに十分な柱強度を有する。幾つかの実施形態では、デバイス102は、所望の配置を保証するために、プローブ先端部502が前進した距離をユーザに示すためのマークを有する。
【0295】
[00322] 幾つかの実施形態では、プローブは、シャフト106の遠位端103からおよそ0.5cm未満、0.5cm、1cm、2cm、3cm、4cm、5cm、6cm、7cm、8cm又は8cmよりも多く延在する。幾つかの実施形態では、プローブは、シャフト106の遠位端から1~3cm又は2~3cm延在する。幾つかの実施形態では、プローブは、18ゲージ、19ゲージ、20ゲージ、21ゲージ、22ゲージ、23ゲージ、24ゲージ又は25ゲージである。幾つかの実施形態では、プローブ500は、電極として機能するように導電性材料から構成される。したがって、電極は、露出したプローブのサイズを有する。例示的な材料は、ステンレス鋼、ニチノール、コバルトクロム合金、銅及び金を含む。したがって、これらの実施形態では、PEFエネルギーは、プローブ500を通してプローブ先端部502に伝達可能である。その結果、シャフト106は、絶縁材料から構成されるか又は絶縁シースによって覆われる。例示的な絶縁材料は、ポリイミド、シリコーン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリエーテルブロックアミドを含む。絶縁材料は、シャフト106又はシースの長さに沿って一貫性を有するか又は変化し得る。同様に、何れにせよ、絶縁材料は、一般的に、完全な電気絶縁を含む。しかしながら、幾つかの実施形態では、絶縁材料は、多少の漏れ電流が侵入することを可能にする。
【0296】
[00323] プローブ500に電圧が加えられると、絶縁シャフト106は、周囲組織を治療エネルギーから保護し、周囲組織に治療エネルギーを送達することができるプローブ先端部502(及びプローブ500の任意の露出部分)にエネルギーを向ける。したがって、先端部502は、送達電極として機能し、そのサイズは、露出されるプローブ500の量に基づいて選択することができる。より大きい電極は、より多くの量のプローブ500を露出させることによって形成することができ、より小さい電極は、より少なく露出させることによって形成することができる。幾つかの実施形態では、エネルギー送達中の露出先端部502(その遠位端から絶縁シャフトの遠位端まで測定される)は、0.1cm、0.2cm、0.3cm、0.4cm、0.5cm、0.6cm、0.7cm、0.8cm、0.9cm、1cm、2cm、3cm、3cm超、最大で8cm、0.1cm以下、0.3cm以下、0.5cm以下、1cm以下、0.2~0.3cm、0.1~0.5cm、0.1~1cm並びにその間のすべての範囲及び部分範囲の長さを有する。電極のサイズを変更することに加えて、先端部502は、非外傷性内視鏡送達を可能にするためにシャフト106内に格納可能であり、その後、標的組織に到達するために必要に応じて前進可能である。この実施形態では、前進及び後退は、シャフト106の近位端107に取り付けられたハンドル110上のアクチュエータ132(例えば、ノブ、ボタン、レバー、スライド又は他の機構)によって制御される。シャフト106自体は、シャフト106の遠位端103からプローブを前進させることの有無にかかわらず、標的組織に向けて前進され得ることが理解され得る。幾つかの実施形態では、シャフト106の遠位端は、管腔構造の外表面又は患者の身体の外表面からなど、組織内に最大で20cm進められる。
【0297】
[00324] ハンドル110は、特殊なエネルギープラグ510を使用してジェネレータ104に接続される。エネルギープラグ510は、ハンドル110に接続する第1の端部512及びジェネレータ104に接続する第2の端部514を有する。ハンドル110に対する第1の端部512の接続は、
図20Bにおいて詳細のために拡大される。この実施形態では、第1の端部512は、アダプタ516から延びる接続ワイヤ518を含むアダプタ516を有する。接続ワイヤ518は、ハンドル110内のプローブ500の近位端内に挿入可能である。これにより、エネルギーがジェネレータ104から接続ワイヤ518を通してプローブ500に伝達されることが可能となる。したがって、プローブ500は、その長さ全体にわたって通電されることが可能であるが、絶縁シャフト106の存在により、露出先端部502のみがエネルギーを組織に送達する。
【0298】
[00325] 本明細書に記載のデバイス、システム及び方法は、それら単独で又は他の治療と組み合わせて使用され得る。このような組み合わせ治療は、特に癌治療に適用可能となり得る。例えば、本明細書に記載のPEF治療は、様々な非外科的療法、幾つかの例を挙げると、放射線療法、化学療法、標的療法/免疫療法、フォーカルセラピー、遺伝子治療、プラスミド療法などのネオアジュバント及びアジュバント療法と組み合わせて使用され得る。例示的なフォーカルセラピーは、マイクロ波アブレーション、高周波アブレーション、凍結アブレーション、高強度集束超音波(HIFU)及び他のパルス電界アブレーション療法を含む。このような組み合わせは、応答性の向上のため及び場合により何れかの療法単独よりも大きい相乗的応答のために組織をコンディショニングし得る。加えて、本明細書に記載されるPEF治療は、療法の性質に起因する遠達効果をもたらし得る。
【0299】
エネルギーアルゴリズム
[00326] PEFエネルギーは、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152によって提供される。幾つかの実施形態では、アルゴリズム152は、エネルギーパケットの列を含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは、高電圧パルスの列を含む。このような実施形態では、アルゴリズム152は、幾つかの例を挙げると、パケット数、パケット内のパルス数及びパルスシーケンスの基本周波数から構成される、エネルギー振幅(例えば、電圧)及び印加エネルギーの持続時間などの信号のパラメータを指定する。さらなるパラメータは、二相性パルスにおける極性間の切替時間又は相間遅延、二相性サイクル間のデッドタイム又はサイクル遅延及びパケット間の休止時間又はパケット間遅延を含み得る。一部の実施形態では、パケット間に固定された休止期間があり、他の実施形態では、パケットは、心周期にゲートされ、したがって患者の心拍数と共に変動する。意図的な可変休止期間アルゴリズムが存在し得るか、又はパケット間に休止期間が適用されなくてもよい。センサ情報及び自動シャットオフ仕様に基づくフィードバックループ及び/又は同様のものが含まれ得る。
【0300】
[00327]
図21Aは、エネルギー送達アルゴリズム152によって規定された信号の波形400の一実施形態を示す。ここでは、第1のパケット402及び第2のパケット404の2つのパケットが示され、パケット402、404は、パケット間遅延又は休止期間406によって分離されている。この実施形態では、各パケット402、404は、(第1の正パルスピーク408及び第1の負パルスピーク410を含む)第1の二相性サイクル並びに(第2の正パルスピーク408’及び第2の負パルスピーク410’を含む)第2の二相性サイクルから構成される。第1及び第2の二相性パルスは、各パルス間のサイクル遅延又はデッドタイム412(すなわちポーズ)によって分離される。本実施形態では、二相性パルスは、設定電圧416が正及び負のピークに関して同じとなるように対称的である。ここで、二相性の対称波は、正電圧波の大きさ及び時間が負電圧波の大きさ及び時間にほぼ等しくなるような方形波でもある。
【0301】
A.電圧
[00328] 使用及び考慮される電圧は、方形波形の最上部にあり得るか、正弦波形若しくは鋸歯状波形のピークでもあり得るか、又は正弦波形若しくは鋸歯状波形のRMS電圧であり得る。幾つかの実施形態では、エネルギーは、単極様式で送達され、各高電圧パルス又は設定電圧416は、約500V~10,000Vであり、特に約3500V~4000V、約3500V~5000V、約3500V~6000Vであり、幾つかの例を挙げると、約250V、500V、1000V、1500V、2000V、2500V、3000V、3500V、4000V、4500V、5000V、5500V、6000Vを含む、上記範囲間のすべての値及び部分範囲を含む。組織に送達される電圧は、デバイス102の固有のインピーダンスに起因するデバイス102の長さに沿った電気的損失を考慮して又は長さに沿った損失を考慮せずに、ジェネレータ104の設定値に基づき得、すなわち、送達電圧は、ジェネレータ又は器具の先端で測定され得る。
【0302】
[00329] 設定電圧416は、エネルギーが単極様式で送達されるか又は双極様式で送達されるかに応じて異なり得ることが理解され得る。双極送達では、より小さく、より指向性の電界のために、より低い電圧が使用され得る。療法で使用するために選択される双極電圧は、電極の分離距離に依存するが、1つ又は複数の離れた分散パッド電極を使用する単極電極構成は、身体に配置されたカテーテル電極及び分散電極の正確な配置をあまり考慮せずに送達され得る。単極電極の実施形態では、一般的に、およそ10cm~100cmの有効分離距離の分散電極に到達するために身体を通して送達されるエネルギーの分散的挙動のために、より大きい電圧が使用される。逆に、双極電極構成では、およそ0.5mm~10cm(1mm~1cmを含む)の電極の比較的近い活性領域は、組織に送達される電気エネルギー濃度及び有効ドーズに対して、分離距離からより大きい影響を生じさせる。例えば、適切な組織深度(1.3mm)で所望の臨床効果を引き起こすための目標電圧対距離比が3000V/cmである場合、分離距離が1mmから1.2mmに変更されると、これは、300Vから約360Vへの治療電圧の必要な増加をもたらすであろう(20%の変化)。
【0303】
B.周波数
[00330] 時間1秒当たりの二相性サイクルの数は、信号が連続しているときの周波数であることが理解され得る。幾つかの実施形態において、望ましくない筋肉刺激、特に心筋刺激を減少させるために二相性パルスが利用される。他の実施形態では、パルス波形は、単相性であり、明確な固有周波数が存在しない。代わりに、単相性パルス長を2倍にして周波数を導出することにより、基本周波数を考慮することができる。幾つかの実施形態では、信号は、100kHz~1MHz、特に100kHz~1000kHzの範囲の周波数を有する。幾つかの実施形態では、信号は、粘膜下細胞又は平滑筋細胞などのやや深い位置にある特定の細胞を治療するか、又はそのような細胞に影響を与えるように、一般的に管腔壁を貫通する、およそ100~600kHzの範囲の周波数を有する。幾つかの実施形態において、信号は、上皮細胞又は内皮細胞などの特定の細胞をやや浅く治療するか、又はそのような細胞にやや浅く影響を与えるように、一般的に管腔壁を貫通する、およそ600kHz~1000kHz又は600kHz~1MHzの範囲内のベース周波数又は基本周波数を有する。一部の電圧では、100~250kHz以下の周波数は、望ましくない筋肉刺激を引き起こし得ることが理解され得る。したがって、幾つかの実施形態では、信号は、500kHz、550kHz、600kHz、650kHz、700kHz、750kHz、800kHzなどの400~800kHz又は500~800kHzの範囲内の周波数を有する。特に、幾つかの実施形態では、信号は、600kHzの周波数を有する。加えて、繊細なリズム期間中の望ましくない心筋刺激を減少させるか又は回避するために、心拍同期が一般的に利用される。信号アーチファクトを最小限に抑える構成要素と共に、さらに高い周波数が使用され得ることが理解され得る。
【0304】
C.電圧-周波数の平衡化
[00331] 送達される波形の周波数は、適切な治療効果を保持するために、治療電圧に対して同期して変化し得る。このような相乗的変化は、効果の低下を引き起こす電圧の低下と組み合わされた、より強い効果を引き起こす周波数の低下を含む。例えば、一部の場合、800kHzの波形周波数において単極様式で3000Vを使用して治療が送達され得、他の場合、400kHzの波形周波数において2000Vを使用して治療が送達され得る。
【0305】
[00332] 反対方向で使用される場合、治療パラメータは、それを過度に効果的にする方法で操作され得、これは、気道の治療のための、軟骨などの望ましくない組織に対する筋肉収縮の可能性又はリスク効果を増大させ得る。例えば、800kHzで2000Vを使用するなど、周波数を増加させ、及び電圧を下げると、治療は、十分な臨床治療的恩恵を有しない場合がある。反対に、電圧を3000Vに上げ、及び周波数を400kHzに減少させた場合、並んだ繊細な組織に対して望ましくない治療効果範囲が存在し得る。一部の場合、これらの望ましくない組織の過剰治療は、気道虚脱を引き起こすのに十分な気道の軟骨組織の破壊又は正常な蠕動運動の中断を引き起こすのに十分な消化管の平滑筋の破壊など、患者に疾病率又は安全性の懸念をもたらし得る。他の場合、非標的組織又は望ましくない組織の過剰治療は、良性の臨床結果をもたらし得、それらが過剰治療された場合に患者の反応又は疾病率に影響を与えない場合がある。
【0306】
D.パケット
[00333] 前述のように、アルゴリズム152は、エネルギーパケットの列を含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは、高電圧パルスの列を含む。サイクルカウント420は、各二相性パケット内のパルス数の半分である。
図21Aを参照すると、第1のパケット402は、2のサイクルカウント420(すなわち4つの二相性パルス)を有する。幾つかの実施形態では、サイクルカウント420は、1パケット当たり1~100に設定され、その間のすべての値及び部分範囲を含む。幾つかの実施形態では、サイクルカウント420は、最大で5パルス、最大で10パルス、最大で25パルス、最大で40パルス、最大で60パルス、最大で80パルス、最大で100パルス、最大で1,000パルス又は最大で2,000パルスであり、その間のすべての値及び部分範囲を含む。
【0307】
[00334] パケット持続時間は、挿入遅延などの数ある要因の中でも、サイクルカウントによって決定される。幾つかの実施形態では、パケット持続時間は、幾つかの例を挙げると、50μs、60μs、70μs、80μs、90μs、100μs、125μs、150μs、175μs、200μs、250μs、100~250μs、150~250μs、200~250μs、500~1000μsなど、およそ50~1000マイクロ秒の範囲内である。他の実施形態では、パケット持続時間は、150μs、200μs、250μs、500μs又は1000μsなど、およそ100~1000マイクロ秒の範囲内である。幾つかの実施形態では、遅延の包含は、幾つかの例を挙げると、2,000μs、5,000μs、10,000μs、20,000μs、25,000μs、30,000μs、40,000μs、50,000μs、60,000μs、70,000μs、80,000μs、90,000μs、100,000μs、110,000μs、120,000μs、130,000μs、140,000μs、150,000μs、160,000μs、170,000μs、180,000μs、190,000μs、200,000μs、1000~2000μs、1000~3000μs、1000~4000μs、1000~5000μs、1000~10,000μs、10,000~20,000μs、10,000~30,000μs、10,000~40,000μs、10,000~50,000μs、50,000~100,000μs、50,000~150,000μs、50,000~200,000μs、10,000μs超、25,000μs超、50,000μs超、100,000μs超、200,000μs超など、およそ1000~200,000マイクロ秒の範囲にパケット持続時間を増加させ得る。
【0308】
E.波形
[00335]
図21Aは、一方の方向(すなわち正又は負)のパルスの電圧及び持続時間が、反対方向のパルスの電圧及び持続時間と等しくなるような対称パルスを有する波形400の実施形態を示す。
図21Bは、別のエネルギー送達アルゴリズム152によって規定された例示的な波形400を示し、波形400は、電圧不平衡を有する。ここでは、第1のパケット402及び第2のパケット404の2つのパケットが示され、パケット402、404は、休止期間406によって分離されている。この実施形態では、各パケット402、404は、(第1の電圧V1を有する第1の正パルスピーク408及び第2の電圧V2を有する第1の負パルスピーク410を含む)第1の二相性サイクル並びに(第1の電圧V1を有する第2の正パルスピーク408’及び第2の電圧V2を有する第2の負パルスピーク410’を含む)第2の二相性サイクルから構成される。ここでは、第1の電圧V1は、第2の電圧V2よりも大きい。第1及び第2の二相性サイクルは、各パルス間のデッドタイム412によって分離される。したがって、一方の方向(すなわち正又は負)の電圧は、曲線の正の部分の下の面積が曲線の負の部分の下の面積と等しくならないように、反対方向の電圧よりも大きい。この不平衡な波形は、主な正又は負の振幅が同じ電荷細胞膜帯電電位のより長い持続時間をもたらすため、より顕著な治療効果をもたらし得る。本実施形態では、第1の正ピーク408は、第1の負ピーク410の設定電圧416’(V2)よりも大きい設定電圧416(V1)を有する。
図21Cは、電圧が等しくない波形のさらなる例を示す。ここでは、図示を縮約するために、4つの異なるタイプのパケットが1つの図に示される。第1のパケット402は、相間遅延及びデッドタイムを伴わずに、電圧が等しくないが、パルス幅が等しいパルスから構成される。したがって、第1のパケット402は、4つの二相性パルスから構成され、各二相性パルスは、第1の電圧V1を有する正ピーク408及び第2の電圧V2を有する負ピーク410を含む)。ここでは、第1の電圧V1は、第2の電圧V2よりも大きい。第2のパケット404は、(第1のパルス402の場合のように)電圧が等しくないが、対称的なパルス幅を有するパルスから構成され、相間遅延は、サイクル遅延に等しい。第3のパケット405は、(第1のパルス402の場合のように)電圧が等しくないが、対称的なパルス幅を有するパルスから構成され、サイクル遅延よりも短い相間遅延を有する。第4のパケット407は、(第1のパルス402の場合のように)電圧が等しくないが、対称的なパルス幅を有するパルスから構成され、サイクル遅延よりも大きい相間遅延を有する。幾つかの実施形態では、二相性波形の正相及び負相は、同一ではないが、平衡化されており、ここでは、一方の方向(すなわち正又は負)の電圧は、反対方向の電圧よりも大きいが、パルスの長さは、正相の曲線の下の面積が負相の曲線の下の面積と等しくなるように計算されることが理解され得る。
【0309】
[00336] 幾つかの実施形態では、不平衡は、等しくない持続時間のパルス幅を有するパルスを含む。幾つかの実施形態では、二相性波形は、波形の正の部分の曲線の下の面積が波形の負の部分の下の面積と等しくないように、一方の方向の電圧が反対方向の電圧に等しいが、一方の方向(すなわち正又は負)の持続時間が反対方向の持続時間よりも大きいような不平衡である。
【0310】
[00337]
図21Dは、パルス幅が等しくない波形のさらなる例を示す。ここでは、図示を縮約するために、4つの異なるタイプのパケットが1つの図に示される。第1のパケット402は、相間遅延及びサイクル遅延を伴わずに、電圧が等しいが、パルス幅が等しくないパルスから構成される。したがって、第1のパケット402は、4つの二相性パルスから構成され、各二相性パルスは、第1のパルス幅PW1を有する正ピーク408及び第2のパルス幅PW2を有する負ピーク410を含む)。ここでは、第1のパルス幅PW1は、第2のパルス幅PW2よりも大きい。第2のパケット404は、(第1のパルス402の場合のように)電圧が等しいが、パルス幅が等しくないパルスから構成され、相間遅延は、サイクル遅延に等しい。第3のパケット405は、(第1のパルス402の場合のように)電圧が等しいが、パルス幅が等しくないパルスから構成され、サイクル遅延よりも短い相間遅延を有する。第4のパケット407は、(第1のパルス402の場合のように)電圧が等しいが、パルス幅が等しくないパルスから構成され、サイクル遅延よりも大きい相間遅延を有する。
【0311】
[00338]
図21Eは、別のエネルギー送達アルゴリズム152によって規定された例示的な波形400を示し、ここでは、波形は、単相性であり、波形の正又は負の部分のみが存在する不平衡の特別な場合を示す。ここでは、第1のパケット402及び第2のパケット404の2つのパケットが示され、パケット402、404は、パケット間遅延又は休止期間406によって分離されている。この実施形態では、各パケット402、404は、第1の単相性パルス430及び第2の単相性パルス432から構成される。第1及び第2の単相性パルス430、432は、各サイクル間のサイクル遅延又はデッドタイム412によって分離される。この単相性波形は、同じ電荷細胞膜電位がより長い持続時間にわたって維持されるため、より望ましい治療効果をもたらし得る。しかしながら、隣接する筋肉群は、二相性波形と比較して単相性波形によってより刺激されるであろう。
【0312】
[00339]
図21Fは、単相性パルスを有する波形のさらなる例を示す。ここでは、図示を縮約するために、4つの異なるタイプのパケットが1つの図に示される。第1のパケット402は、(パルスが単相性であるため)切替時間又は相間遅延を伴わず、活性時間に等しいサイクル遅延を有する、等しい電圧及びパルス幅を有するパルスから構成される。場合により、特定のパルスの活性時間よりもサイクル遅延持続時間が存在し得る。したがって、第1のパケット402は、3つの単相性パルス430から構成され、各単相性パルス430は、正ピークを有する。デッドタイムが活性時間に等しい場合、波形は、活性時間の2倍のサイクル周期及びデッドタイムがないことを表す基本周波数と不平衡であると見なされ得る。第2のパケット404は、(第1のパケット402の場合のように)等しい電圧及びパルス幅を有する単相性パルス430から構成され、より大きいサイクル遅延を有する。第3のパケット405は、(第1のパケット402の場合のように)等しい電圧及びパルス幅並びにさらにより大きいサイクル遅延を有する単相性パルス430から構成される。第4のパケット407は、(第1のパケット402の場合のように)等しい電圧及びパルス幅を有する単相性パルス430から構成され、さらにより大きいサイクル遅延を有する。
【0313】
[00340] 幾つかの実施形態では、不平衡波形は、反対の極性で等しくない数のパルスに反転する前に、一方の極性において2つ以上のパルスを送達することによって達成される。
図21Gは、このような位相不平衡を有する波形のさらなる例を示す。ここでは、図示を縮約するために、4つの異なるタイプのパケットが1つの図に示される。第1のパケット402は、等しい電圧及びパルス幅を有する4つのサイクルから構成されるが、反対の極性パルスは、単相性パルスと混合される。したがって、第1のサイクルは、正ピーク408及び負ピーク410を含む。第2のサイクルは、単相性であり、後続の負パルス430を有しない単一の正パルスを含む。次に、これが繰り返される。第2のパケット404は、(第1のパケット402の場合のように)混合された二相性サイクル及び単相性サイクルから構成されるが、パルスは、等しくない電圧を有する。第3のパケット405は、(第1のパケット402の場合のように)混合された二相性サイクル及び単相性サイクルから構成されるが、パルスは、等しくないパルス幅を有する。第4のパケット407は、(第1のパケット402の場合のように)混合された二相性パルス及び単相性パルスから構成されるが、パルスは、等しくない電圧及び等しくないパルス幅を有する。このようにして、複数の組み合わせ及び配列が可能である。
図21Hは、正電圧及び負電圧の両方において不平衡である波形の一例を示す。ここでは、第2の正パルスピーク408’及び第2の負パルスピーク410’よりも大きい電圧を有する第1の正パルスピーク408及び第1の負パルスピーク410を有するパケットが示されている。これらの異なるサイクルは、パケット全体を通して繰り返される。
【0314】
[00341] 不等波形の有用性に関して、達成された不平衡TMP操作は、二相性相殺の影響を低減する。完全に不平衡であるような単極波形に近づく不平衡の度合いと、TMP操作の強度との相関関係が存在する。これにより、治療効果の範囲と、筋肉収縮の度合いとの比例関係がもたらされる。したがって、より不平衡な波形に近づくにつれて、完全に平衡した二相性波形から生じる治療効果よりも、二相性波形に関して、同じ電圧及び周波数(該当する場合)でより強力な治療効果が可能となる。例えば、パケット内の830ns-415ns-830ns-等のパルス長シーケンスによって引き起こされる治療効果は、元の位相の持続時間の半分であるサイクルの後半を構成するパルスを有する。これにより、サイクルの第2の位相によるTMP操作の誘導が制限されるが、逆のTMPの生成も少なくなり、それにより元の長さの後続のサイクルにおける元の極性からのより強い効果が可能となる。別の例では、波形の「正」の部分は、2500Vとすることができ、「負」の部分は、1500V(2500-1250-2500V-等)であり、これは、パルス持続時間の不平衡に関して記載したものと同等の効果をTMP分極に対して誘発するであろう。何れの場合にも、反対の極性強度の操作により、サイクル内の正パルスに関して累積的なより強いTMP操作がもたらされる。したがって、これは、二相性相殺の効果を低減し、組織に送達される総エネルギーの付与がより少ないにもかかわらず、830-830-830ns又は2500-2500-2500Vのプロトコルよりも強力な治療効果を生じさせる。このように、より少ない総エネルギーを組織に送達するが、TMP操作が治療作用機序に不可欠である場合、所望の治療効果を引き起こすことが可能である。
【0315】
[00342] さらに拡張すると、完全に不平衡な波形は、反対の極性成分を全く含まないが、依然として正相においてのみ送達されるパルスの短い部分を含み得る。この一例は、830nsの正の極性、エネルギーが送達されない830nsのポーズ、その後に続く別の830nsの正の極性などを含むパケットである。パルス長の不平衡及び電圧の不平衡の何れを考慮しようと、負パルスが存在しないことは、「負」の部分に関してこれらのパラメータの一方をゼロに設定することと均等であるため、同じアプローチが当てはまる。
【0316】
[00343] しかしながら、適切な治療送達は、二相性波形によって提供される利点、すなわち二相性相殺に起因する筋肉収縮の減少も同様に減少することを考慮する。したがって、適切な治療効果範囲は、許容できる筋肉収縮の度合いに対してバランスが取られる。例えば、理想的な電圧不平衡は、2500-1000-2500-...V、又は2500-2000-2500-...V、又は830-100-830-...ns、又は830-500-830-...nsであり得る。
【0317】
[00344] 幾つかの実施形態では、パルスは、正方形ではなく、正弦波形状であることが理解され得る。正弦波形状の利点の1つは、それが平衡化されているか又は対称的であることであり、それにより各位相の形状が等しい点である。平衡化は、望ましくない筋肉刺激を減少させるのに役立ち得る。他の実施形態では、パルスが減衰形状の波形を有することが理解され得る。
【0318】
代替送達アプローチ
[00345] 先述の通り、ほとんどの実施形態において、アクセスは、低侵襲であり、管腔内的アプローチに依存する。しかしながら、経皮的、腹腔鏡的又は切開手術的アプローチなどの他のアプローチが一部の状況で使用され得ることが理解され得る。
【0319】
[00346] 幾つかの実施形態では、経皮的にアクセスする場合、デバイス102のシャフト106は、下層組織内に皮膚層を貫通する送達デバイスに通される。幾つかの実施形態では、送達デバイスは、皮膚を通して挿入され、標的組織に向かう針を含む。次に、シャフト106が針を通して進められる。幾つかの実施形態では、プローブ先端部502は、尖った形状など、組織の貫通を促進するように成形される。したがって、シャフト106は、組織を通して組織内の所望の場所まで進められ得る。望ましく位置決めされると、エネルギーは、標的組織を治療するためにプローブ先端部502を通して送達される。プローブ先端部502がシャフト106から組織内に進められて得、及び/又は導電性要素560が組織内に進められ得、そこでエネルギーが導電性要素560から送達されることが理解され得る。
【0320】
[00347] 他の実施形態では、経皮的にアクセスする場合、デバイス102のシャフト106は、送達デバイスを使用せずに皮膚層を貫通できるように剛体である。このような実施形態では、プローブ先端部502は、一般的に、尖った形状など、組織の貫通を促進するように成形される。したがって、シャフト106自体が組織内の所望の場所まで組織内に進められる。望ましく位置決めされると、エネルギーは、標的組織を治療するためにプローブ先端部502を通して送達される。プローブ先端部502がシャフト106から組織内に進められ得、及び/又は導電性要素560が組織内に進められ得、そこでエネルギーが導電性要素560から送達されることが理解され得る。
【0321】
[00348] 腹腔鏡的アプローチでは、デバイス102のシャフト106は、小さい切開を通して挿入された腹腔鏡に通される。これらの小さい切開は、切開手術と比較して痛みの軽減、出血の減少及び回復時間の短縮をもたらす。幾つかの実施形態では、プローブ先端部502は、尖った形状など、組織の貫通を促進するように成形される。したがって、シャフト106は、組織内の所望の場所まで組織を通して進められ得る。望ましく位置決めされると、エネルギーは、標的組織を治療するためにプローブ先端部502を通して送達される。
【0322】
[00349] 切開手術的アプローチでは、デバイス102のシャフト106は、送達デバイスに通され得るか、又はデバイス102は、組織を直接貫通し得る。何れにせよ、望ましく位置決めされると、エネルギーは、標的組織を治療するためにプローブ先端部502を通して送達される。
【0323】
心拍同期
[00350] 幾つかの実施形態では、エネルギー信号は、心不整脈の誘発を防止するために患者の心周期と同期される。したがって、患者の心周期は、一般的に、心電図(ECG)を用いてモニタリングされる。
図22を参照すると、一般的なECG記録600は、心房脱分極を表すP波602、心室脱分極及び心房再分極を表すQRS群604並びに心室再分極を表すT波606の繰り返しサイクルを含む。心臓にごく近接した気道内にエネルギーを安全に送達するために、エネルギー送達と患者の心周期との同期が用いられることにより、心不整脈のリスクが低下する。高電圧エネルギーは、送達されたエネルギーが、イオン輸送を可能にする心筋細胞膜透過性を増加させ、これが心不整脈、特に心室細動を誘発し得るため、心筋内の早期活動電位を引き起こし得る。心不整脈を回避するために、電気エネルギーは、心筋の「受攻期」外の様式で気道に送達される。1つの心周期(心拍)内において、心室筋の受攻期は、ECG上でT波606全体によって示される。一般的に、心室筋の場合、受攻期は、T波606の中間相及び終末相と一致する。しかしながら、高エネルギーパルスが心室にごく近接して送達される場合、受攻期は、心拍の数ミリ秒早く生じ得る。したがって、T波全体が心室の受攻期内にあると見なされ得る。
【0324】
[00351] 心周期の残りの部分は、P波602及びQRS群604であり、これらの両方は、心房筋又は心室筋が高電圧エネルギー刺激に対して不応の期間を含む。筋肉の不応期中に高電圧エネルギーパルスが送達される場合、催不整脈電位を最小限に抑えることができる。第1の心周期のST部分608(心室脱分極と再分極との間の間隔)及びTQ間隔610(第1の心周期の終点及び第2の心周期の中点を含む間隔)は、心筋の脱分極状態(不応期)による心不整脈の誘発なしに高電圧エネルギーを送達することができる期間である。
図22は、エネルギーを安全に印加できる心周期の例示的な部分を示す影付きボックスを含む。
【0325】
[00352] 幾つかの実施形態では、心電
図170を取得するための構成要素は、ジェネレータ104の一部として一体的に形成されることが理解され得る。心臓モニターが最大で5誘導ECGを取得することに限定されている場合、追加の誘導線をシステムに組み込むことが有益であり得る。これは、心拍同期パルスを受信するために通信ポート167を使用する必要性をさらに排除するであろう。より正確に言えば、プロセッサ154は、R波を直接検出し、QRS群全体の完全性を評価するように構成することができる。
【0326】
[00353] 本明細書において、数値及び/又は範囲と併せて使用される場合の「約」及び/又は「およそ」という用語は、一般に、記載した数値及び/又は範囲に近い数値及び/又は範囲を指す。場合により、「約」及び「およそ」という用語は、記載値の±10%以内を意味し得る。例えば、場合により、「約100[単位]」は、100の±10%以内(例えば、90~110)を意味し得る。「約」及び「およそ」という用語は、同義で使用することができる。
【0327】
[00354] 本発明の好ましい実施形態を本明細書に図示及び説明したが、このような実施形態は、単なる例として提供されることが当業者に明らかであろう。当業者は、本発明から逸脱することなく、多数の変形形態、変更形態及び置換形態を想到するであろう。本明細書に記載される本発明の実施形態に対する様々な代替形態が本発明の実施において用いられ得ることを理解されたい。以下の請求項は、本発明の範囲を定義し、これらの請求項の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物は、以下の請求項によって包含されることを意図される。
【国際調査報告】