(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】換気パラメーターの独立した制御によって複数の患者を単一の人工呼吸器に接続するように構成される人工呼吸器用のスプリッターモジュール及び共有システム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
A61M16/00 340
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561433
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-02
(86)【国際出願番号】 US2021027068
(87)【国際公開番号】W WO2021211574
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(71)【出願人】
【識別番号】515158308
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンカタラマン,スワミナサン
(72)【発明者】
【氏名】ドースン,タイラー
(72)【発明者】
【氏名】ベル,シャノン
(72)【発明者】
【氏名】リー,エヴァン
(72)【発明者】
【氏名】セダーリーフ‐パヴィ,ヨルダン
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァ,ビクター
(72)【発明者】
【氏名】クリシュナダス,ジャヤクマール
(72)【発明者】
【氏名】ピムスヴィースヴィ,プラサド
(72)【発明者】
【氏名】ザルガリ,アリ
(72)【発明者】
【氏名】エドモンストン,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パウルゼン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ジョゼフ
(72)【発明者】
【氏名】インブリ‐ムーア,アナベル
(72)【発明者】
【氏名】ガードナー,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】マック,ジェローム
(57)【要約】
スプリッターモジュールは、単一の医療用人工呼吸器を複数の挿管された患者に接続するように構成される。スプリッターモジュールは、患者のうちの1人の換気パラメーターを修正しても、他の患者の換気パラメーターに過剰の影響を及ぼさないように、患者のそれぞれに関する少なくとも1つの換気パラメーターを独立して制御するように構成されている。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の医療用人工呼吸器を複数の挿管された患者に接続するように構成されるスプリッターモジュールであって、
前記スプリッターモジュールは、前記患者のうちの1人の換気パラメーターを修正しても、他の前記患者の前記換気パラメーターに過剰の影響を及ぼさないように、前記患者のそれぞれに関する少なくとも1つの換気パラメーターを独立して制御するように構成されている、前記スプリッターモジュール。
【請求項2】
前記少なくとも1つの換気パラメーターは、毎分呼吸数、最高気道内圧、呼気終末陽圧、吸気一回換気量、呼気一回換気量、呼気容量、又はそれらの組合せを含む、請求項1に記載のスプリッターモジュール。
【請求項3】
前記スプリッターモジュールは、他の前記患者の前記換気パラメーターに過剰の影響を及ぼすことなく、前記患者のうちの1人の換気パラメーターを修正するように構成される、請求項1に記載のスプリッターモジュール。
【請求項4】
前記単一の医療用人工呼吸器から受け取った吸息空気ストリームを前記患者にそれぞれ供給される個別の吸気ストリームに分割するように構成される吸気マニホールドと、
前記吸気ストリームの各流量をそれぞれ制御するように構成される圧力制御弁と、
を更に備える、請求項1に記載のスプリッターモジュール。
【請求項5】
前記圧力制御弁は、ニードル弁を含む、請求項4に記載のスプリッターモジュール。
【請求項6】
前記吸気ストリームの吸気圧力をそれぞれ検出するように構成されるゲージ圧力変換器と、
前記吸気圧力と前記患者から排出された各呼気ストリームの呼気圧力との圧力差をそれぞれ検出するように構成される差圧変換器と、
を更に備える、請求項4に記載のスプリッターモジュール。
【請求項7】
人工呼吸器共有/モニタリングシステム(VSMS)であって、
請求項4に記載のスプリッターモジュールと、
前記スプリッターモジュールに流体接続される前記単一の医療用人工呼吸器と、
前記スプリッターモジュールに流体接続され、前記吸気ストリームを各患者に供給するように構成される複数の吸気ラインと、
前記患者から排出された各呼気ストリームを受け取るように構成される複数の呼気ラインと、
前記複数の呼気ライン及び前記医療用人工呼吸器に流体接続され、前記呼気ストリームを呼息ストリームに合流させるとともに、前記呼息ストリームを前記単一の医療用人工呼吸器に供給するように構成される呼気マニホールドと、
を備える、人工呼吸器共有/モニタリングシステム。
【請求項8】
人工呼吸器共有/モニタリングシステム(VSMS)であって、
医療用人工呼吸器と、
前記医療用人工呼吸器に流体接続され、前記医療用人工呼吸器から受け取った吸息ストリームを個別の吸気ストリームに分割するように構成される吸気マニホールドを備えるスプリッターモジュールと、
前記スプリッターモジュールに流体接続され、前記吸気ストリームを各患者に供給するように構成される複数の吸気ラインと、
前記患者から排出された各呼気ストリームを受け取るように構成される複数の呼気ラインと、
前記複数の呼気ライン及び前記医療用人工呼吸器に流体接続され、前記呼気ストリームを呼息ストリームに合流させるとともに、前記呼息ストリームを前記医療用人工呼吸器に供給するように構成される呼気マニホールドと、
を備える、人工呼吸器共有/モニタリングシステム。
【請求項9】
前記複数の吸気ラインに流体接続され、前記吸気ラインから前記吸気マニホールドに空気が戻ることを防止するように構成される一方向吸気弁と、
前記複数の呼気ラインに流体接続され、前記呼気マニホールドから前記呼気ラインに空気が戻ることを防止するように構成される一方向呼気弁と、
前記複数の吸気ラインに接続され、前記吸気ストリームが前記患者に供給される前に前記吸気ストリームを濾過するように構成されるフィルターと、
を更に備える、請求項8に記載のVSMS。
【請求項10】
前記複数の吸気ラインのうちのそれぞれ1つ及び前記複数の呼気ラインのうちのそれぞれ1つに前記患者を流体接続するY字形コネクタと、
前記Y字形コネクタを前記スプリッターモジュールにそれぞれ流体接続する吸気圧力ラインと、
前記Y字形コネクタを前記スプリッターモジュールにそれぞれ流体接続する呼気圧力ラインと、
を更に備える、請求項8に記載のVSMS。
【請求項11】
前記スプリッターモジュールは、
前記複数の吸気圧力ラインにそれぞれ流体接続され、各患者に関する吸気圧力を検出するように構成されるゲージ圧力変換器と、
前記複数の呼気圧力ライン及び前記複数の吸気圧力ラインに流体接続され、前記患者の各々の前記吸気圧力と呼気圧力との圧力差を検出するように構成される差圧変換器と、
を更に備える、請求項10に記載のVSMS。
【請求項12】
前記スプリッターモジュールは、前記ゲージ圧力変換器及び前記差圧変換器から圧力データを受け取り、各患者に関する換気パラメーターを計算するように構成される中央処理装置(CPU)を更に備える、請求項11に記載のVSMS。
【請求項13】
前記換気パラメーターは、毎分呼吸数、最高気道内圧、呼気終末陽圧、吸気一回換気量、呼気一回換気量、呼気容量、又はそれらの組合せを含み、
前記CPUは、波形分析を実行して、前記換気パラメーターを生成するように構成される、請求項12に記載のVSMS。
【請求項14】
モニター及びユーザー入力ユニットを更に備え、
前記CPUは、前記換気パラメーターを前記モニターに出力するとともに、前記ユーザー入力ユニットを通じて受信したユーザー入力に基づいてアラームを設定するように構成される、請求項13に記載のVSMS。
【請求項15】
前記医療用人工呼吸器及び前記スプリッターモジュールは、同じハウジング内又は異なるハウジング内に配置される、請求項8に記載のVSMS。
【請求項16】
スプリッターモジュールを通じて単一の医療用人工呼吸器を複数の挿管された患者に接続することと、
前記スプリッターモジュールを使用して、前記患者のうちの1人の換気パラメーターを、残りの前記患者の換気パラメーターに過剰の影響を及ぼすことなく調整することと、
を含む、医療用換気方法。
【請求項17】
前記スプリッターモジュールは、
吸気圧力と吸気/呼気圧力差とを検出するように構成される圧力変換器と、
前記患者に関する吸気流量をそれぞれ制御するように構成される圧力制御弁と、
を備える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記圧力変換器を使用して各患者に流体接続されるY字形コネクタにわたる圧力差を検出することと、
前記患者のうちのそれぞれに関する少なくとも1つの換気パラメーターを表示することと、
前記患者のうちの1人に関する前記圧力制御弁の設定を、その患者に関する少なくとも1つの表示された前記換気パラメーターに基づいて、他の前記患者の前記換気パラメーターに過剰の影響を及ぼすことなく変更することと、
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
残りの前記患者の前記換気パラメーターに実質的に影響を及ぼすことなく、前記スプリッターモジュールから前記患者のうちの1人の接続を解除することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
残りの前記患者に関する前記換気パラメーターに実質的に影響を及ぼすことなく、前記スプリッターモジュールに追加の患者を接続することを更に含む、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、人工呼吸器用のスプリッター装置等の医療機器、及びそのような医療機器を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルスSARS-CoV-2は、しばしば、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴う重度の呼吸器疾患をもたらす。ARDSは、ガス交換に障害をもたらし、肺コンプライアンスを減少させることが多い。機械的な換気は、ARDSの治療の主力である。重度の呼吸器疾患を有する患者の治療のための機械的な人工呼吸器が世界的に不足している。
【発明の概要】
【0003】
種々の実施形態によれば、スプリッターモジュールは、単一の医療用人工呼吸器を複数の挿管された患者に接続するように構成され、前記スプリッターモジュールは、前記患者のうちの1人の換気パラメーターを修正しても、他の前記患者の前記換気パラメーターに過剰の影響を及ぼさないように、前記患者のそれぞれに関する少なくとも1つの換気パラメーターを独立して制御するように構成されている。
【0004】
種々の実施形態によれば、人工呼吸器共有/モニタリングシステム(VSMS)は、医療用人工呼吸器と、前記医療用人工呼吸器に流体接続され、前記医療用人工呼吸器から受け取った吸息ストリームを個別の吸気ストリームに分割するように構成される吸気マニホールドを備えるスプリッターモジュールと、前記スプリッターモジュールに流体接続され、前記吸気ストリームを各患者に供給するように構成される複数の吸気ラインと、前記患者から排出された各呼気ストリームを受け取るように構成される複数の呼気ラインと、前記複数の呼気ライン及び前記医療用人工呼吸器に流体接続され、前記呼気ストリームを呼息ストリームに合流させるとともに、前記呼息ストリームを前記医療用人工呼吸器に供給するように構成される呼気マニホールドとを備える。
【0005】
種々の実施形態によれば、スプリッターモジュールを通じて単一の医療用人工呼吸器を挿管された患者に接続することと、前記スプリッターモジュールを使用して、前記患者のうちの1人の換気パラメーターを、残りの前記患者の換気パラメーターに過剰の影響を及ぼすことなく調整することとを含む、医療用換気方法が提供される。
【0006】
本明細書に援用されるとともに、本明細書の一部をなす添付図面により、本発明の例示的な実施形態を示す。添付図面は、上述の全般的な説明及び後述の詳細な説明と併せて、本発明の特徴を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、本開示の種々の実施形態に係る、人工呼吸器共有/モニタリングシステム(VSMS)300を通る空気の流れを示す概略図である。
【
図1B】
図1Bは、本開示の種々の実施形態に係る、
図1AのVSMS300の構成要素を示す概略図である。
【
図1C】
図1Cは、本開示の種々の実施形態に係る、
図1A及び
図1BのVSMS300のスプリッターモジュール100の概略切欠き上面図である。
【
図1D】
図1Dは、本開示の種々の実施形態に係る、
図1BのVSMS300の電力アーキテクチャを示す概略図である。
【
図2】
図2は、ユーザー入力及びデータ取得から分析及び表示へのVSMSのデータフローを示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の種々の実施形態に係る、VSMSによって表示することができる換気パラメーターを示すスクリーンショットである。
【
図4A】
図4Aは、患者のインラインモニタリング中にVSMSによって生成及び表示することができる、個々の患者の圧力及び呼気一回換気量(単位はそれぞれ4℃における水柱センチメートル(「cmH
2O」)及びmL)の、秒単位における時間に対するプロットである。
【
図4B】
図4Bは、患者のインラインモニタリング中にVSMSによって生成及び表示することができる、個々の患者の圧力及び呼気一回換気量(単位はそれぞれ4℃における水柱センチメートル(「cmH
2O」)及びmL)の、秒単位における時間に対するプロットである。
【
図4C】
図4Cは、患者のインラインモニタリング中にVSMSによって生成及び表示することができる、個々の患者の圧力及び呼気一回換気量(単位はそれぞれ4℃における水柱センチメートル(「cmH
2O」)及びmL)の、秒単位における時間に対するプロットである。
【
図4D】
図4Dは、患者のインラインモニタリング中にVSMSによって生成及び表示することができる、個々の患者の圧力及び呼気一回換気量(単位はそれぞれ4℃における水柱センチメートル(「cmH
2O」)及びmL)の、秒単位における時間に対するプロットである。
【
図5A】
図5Aは、
図1A~
図1Dのスプリッターモジュール100を例示する、本開示の種々の実施形態に係るスプリッターモジュール500の外面を示す写真である。
【
図5B】
図5Bは、
図1A~
図1Dのスプリッターモジュール100を例示する、本開示の種々の実施形態に係るスプリッターモジュール500の外面を示す写真である。
【
図5C】
図5Cは、
図1A~
図1Dのスプリッターモジュール100を例示する、本開示の種々の実施形態に係るスプリッターモジュール500の外面を示す写真である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の種々の実施形態に係る、カバーが取り外された例示的なスプリッターモジュール500を示す写真である。
【
図6B】
図6Bは、本開示の種々の実施形態に係る、カバー及びミッドプレーンが取り外された例示的なスプリッターモジュール500を示す写真である。
【
図7A】
図7Aは、本開示の種々の実施形態に係る患者換気回路210の写真である。
【
図7B】
図7Bは、本開示の種々の実施形態に係る一方向弁の写真である。
【
図7C】
図7Cは、本開示の種々の実施形態に係る圧力ラインの写真である。
【
図8】
図8は、本開示の種々の実施形態に係る呼気マニホールド250の写真である。
【
図9A】
図9Aは、種々の実施形態に係る、取り付けられたスプリッターモジュールの側面図である。
【
図9B】
図9Bは、種々の実施形態に係る、取り付けられたスプリッターモジュールの斜視図である。
【
図9C】
図9Cは、種々の実施形態に係る、取り付けられたスプリッターモジュールの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
添付図面を参照して、種々の実施形態を詳細に説明する。可能な限り、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すのに使用する。特定の例及び実施態様に対する参照は、例示目的でなされ、本発明又は特許請求の範囲の範囲を制限することは意図していない。
【0009】
従来技術の人工呼吸器は、個々の患者に関しての圧力及び容量を操作することのみが可能であるように構成される。従来技術の人工呼吸器は、複数の患者のサポートを補助する単純なスプリッターの使用には対応しているが、各患者に対する独立した制御は提供しない。
【0010】
本開示の1つの実施形態によれば、医療用人工呼吸器用のスプリッター装置により、臨床医が、スプリッター装置における他の患者に影響を及ぼすことなく、各人の必要性に基づいて、異なる患者に対して人工呼吸器のパラメーター(ピーク圧力及び呼気終末陽圧、等)を制御することが可能になる。したがって、スプリッター装置は、単一の人工呼吸器で多数の患者をサポートするとともに、各患者に必要な呼吸を制御する機能を提供する。
【0011】
本開示の実施形態の人工呼吸器用のスプリッター装置は、単一の人工呼吸器を使用している2人以上の患者(例えば、呼吸管及びスプリッター装置を通じて医療用人工呼吸器に接続される複数の挿管された患者)に関する個別の圧力要件及び容量要件を、オペレーターが制御できるようにする。このスプリッター装置及び方法は、人工呼吸器が不足している場合に使用することができる。スプリッター装置は、人工呼吸器が開ループ制御又は閉ループ制御のいずれで制御されているかにかかわらず、全ての人工呼吸器モデルとともに使用することができる。
【0012】
図1Aは、本開示の種々の実施形態に係る、人工呼吸器共有/モニタリングシステム(VSMS)300を通る空気の流れを示す概略図である。
図1Bは、
図1AのVSMS300の構成要素を示す概略図である。
図1Cは、本開示の種々の実施形態に係る、
図1A及び
図1BのVSMS300のスプリッターモジュール(すなわち、スプリッター装置)100の概略切欠き上面図である。
【0013】
図1A、
図1B、及び
図1Cを参照すると、VSMS300は、人工呼吸器50及びスプリッターモジュール100を備えることができる。スプリッターモジュール100は、人工呼吸器50の吸気ポート52に接続される吸気マニホールド200を備えることができる。吸気マニホールド200は、各吸気ライン212A~212Bによって、患者1~4等の1人以上の患者に流体接続することができる。特に、吸気マニホールド200は、人工呼吸器50から受け取った吸息ストリームを、患者1~4にそれぞれ供給される吸気ストリームに分割するように構成することができる。
【0014】
患者1~4は、各呼気ライン222A~222Bによって呼気マニホールド250に接続することができる。呼気マニホールド250は、人工呼吸器50の呼気ポート54に流体接続することができる。特に、呼気マニホールド250は、患者1~4から排出された呼気ストリームを呼息ストリームへと合流させ、呼息ストリームを人工呼吸器50に供給することができる。
【0015】
したがって、VSMS300は、人工呼吸器50から出力された吸息空気ストリームを個別の患者空気ストリームに分割し、各患者空気ストリームを各患者に供給することにより、単一の人工呼吸器50を使用して複数の患者の換気を行うように構成することができる。4人の患者が示されているが、本開示は、特定の数の患者に限定されない。例えば、VSMS300は、人工呼吸器50の換気容量に応じて、1人の患者、2人、3人、4人、又は5人以上の患者の換気を行うように使用することができる。
【0016】
圧力制御弁120A~120Dは、吸気ライン212A~212Dにそれぞれ流体接続することができ、吸気ライン212A~212Dは、各連結点213A~213Dにおいて吸気マニホールド200に流体接続される。連結点213A~213Dは、T字形連結点及び/又はエルボー型連結点とすることができる。一方向吸気弁122A~122B及びフィルター130A~130Dも、各吸気ライン212A~212Dに流体接続することができる。吸気マニホールド200は、圧力逃し弁(
図1Cには図示せず)によって制御される任意選択の圧力逃し出口202を有することもできる。一方向呼気弁124A~124Dは、呼気マニホールド250に流体接続される各呼気ライン222A~222Dに流体接続することができる。
【0017】
圧力制御弁120A~120Dは、各吸気ライン212A~212Dを通る吸気ストリームの圧力及び/又は流量を制御するように構成されるニードル弁とすることができる。圧力制御弁120A~120Dは、オペレーターが、対応する患者に必要な特定の空気圧に合わせてダイヤルすることができる。フィルター130A~130Dは、例えば、患者1~4に供給される空気を濾過するように構成されるHEPAフィルターとすることができる。吸気弁122A~122Dは、患者1~4から排出された空気が吸気ライン212A~212Dに逆流することを防止するように構成される逆止弁とすることができる。呼気弁124A~124Dは、排出された空気が呼気マニホールド250から患者1~4に戻ることを防止するように構成される逆止弁とすることができる。
【0018】
VSMS300は、ゲージ圧力変換器140A~140D及び差圧変換器142A~142Dを備えることもできる。ゲージ圧力変換器140A~140Dは、吸気圧力ライン214A~214Dによって吸気ライン212A~212Dにそれぞれ流体接続することができる。差圧変換器142A~142Dは、呼気圧力ライン224A~224Dによって呼気ライン222A~222Dにそれぞれ流体接続することができる。差圧変換器142A~142Dは、差動ライン226A~226Dによって吸気圧力ライン214A~214Dにそれぞれ流体接続することができる。
【0019】
ゲージ圧力変換器140A~140Dは、各吸気ライン212A~212D内の吸気圧力等の吸気パラメーターを検出するように構成することができる。換言すれば、ゲージ圧力変換器140A~140Dは、患者1~4に供給される各吸気ストリームの吸気圧力を検出するように構成することができる。差圧変換器142A~142Dは、吸気/呼気圧力差(例えば、各吸気ライン212A~212Dにおける吸気圧力と、対応する呼気ライン222A~222Dにおける呼気圧力との圧力差)を検出するように構成することができる。換言すれば、差圧変換器142A~142Dは、患者1~4のそれぞれに関する吸気圧力と呼気圧力との圧力差を検出するように構成することができる。ここで、呼気圧力とは、患者1~4のそれぞれから排出された呼気ストリームが各呼気ライン222A~222Dに入る圧力のことである。
【0020】
図1Dを参照すると、VSMS300は、電源レセプタクル150と、AC/DCインバーター152と、検知カード154と、アナログ/デジタルコンバーター(ADC)156と、中央処理装置(CPU)158(例えば、コンピューター又は論理回路)とを備えることができる。電源レセプタクル150は、接地(GND1)に接続される接地線(G)と、電源活線(L)上のヒューズF1(例えば、500mAのヒューズ)と、AC/DCインバーター152への電力の流れを制御する、活線(L)及び中性線(N)の双方における二極単投スイッチとを備えることができる。電源レセプタクル150は、AC/DCインバーター152を外部AC電源に接続することができる。AC/DCインバーター152は、AC電力をDC電力に変換し、DC電力を検知カード154に供給する5V、30Wのインバーターを備えることができる。
【0021】
ADC156、ゲージ圧力変換器140A~140D、及び差圧変換器142A~142Dは、検知カード154上に配置し、互いに電気的に接続されるとともに、CPU158に電気的に接続することができる。ADC156は、ゲージ圧力変換器140A~140D及び142A~142Dからアナログ信号を受信し、対応するデジタル信号をCPU158に出力することができる。CPU158は、各患者の圧力プロファイル、流量、及び容量交換等の、各患者の様々な換気パラメーターを計算することができる。CPU158は、各患者の検出された換気パラメーターを表示するために、対応する映像信号をモニター160に出力することができる。その後、オペレーターは、表示された換気パラメーターに基づいて、他の患者に関する流れ設定を変更することなく、対応する患者の圧力制御弁120A~120Dを調整することができる。任意選択のヒューズF2(例えば、1アンペアのヒューズ)を、検知カード154における正電力バス上に配置することができる。
【0022】
図2は、ユーザー入力、データ取得から推定及び表示へのVSMSのデータフローを示しており、
図3は、本開示の種々の実施形態に係る、VSMS300によって出力することができる換気パラメーターを示すスクリーンショットである。
【0023】
図2を参照すると、VSMSによって個々の患者から、較正データ、吸気圧力、呼気圧力、及び圧力差等のデータを取得することができる。データは、ユーザーが入力することもできる。例えば、ユーザーは、アラーム閾値及び患者データを設定することができる。波形データ分析を実行することができ、その分析結果を表示することができる。例えば、
図3に示されているように、毎分呼吸数(BPM)、最高気道内圧(PIP)、呼気終末陽圧(PEEP)、吸気一回換気量(VTI)、呼気一回換気量(VTE)、呼気容量(VE)、それらの組合せ等を含む、臨界換気パラメーターを表示することができる。
【0024】
種々の実施形態によれば、単一の医療用人工呼吸器50により、スプリッターモジュール100を通じて人工呼吸器に接続される全ての患者の呼吸数を制御する。患者は、挿管されており、強力に鎮静され、麻痺している。スプリッターモジュールは、同じ人工呼吸器に接続された他の患者の換気パラメーターに過剰の影響を及ぼすことなく、各患者に対する圧力制御弁120A~120Dを使用して、各患者に関するPIP、PEEP、及び一回換気量の独立した制御を提供する。患者は、他の患者の換気パラメーターに過剰の影響を及ぼすことなく、適時に追加したり除いたりすることができる。本明細書において、「換気パラメーターに過剰の影響を及ぼす」とは、1つ以上の換気パラメーターを5%以上、例えば、3%以上、又は1%以上変化させることを意味することができる。
【0025】
1つの実施形態において、スプリッター装置は、簡単な患者別の調整を補助するために、スプリッター装置を通じて同じ人工呼吸器に接続される全ての患者に関するPIP、PEEP、及び一回換気量のインラインモニタリングを提供する。
図4A~
図4Dは、患者のインラインモニタリング中にVSMSによって出力することができるグラフである。
【0026】
図4Aを参照すると、VSMSに第3の患者(P3)を追加しても、VSMSに既に接続されている第1の患者(P1)及び第2の患者(P2)の換気圧力及びVTEにほとんど影響を与えない。
図4Bを参照すると、VSMSは、接続されている4人の患者(P1~P4)に安定した換気圧力及びVTEを供給することができる。
【0027】
図4Cを参照すると、VSMS300から第3の患者(P3)の接続を解除しても、VSMSに接続されている第1の患者(P1)及び第2の患者(P2)の換気圧力及びVTEにほとんど影響を与えないようにすることができる。
図4Dを参照すると、第3の患者P3に加わる圧力を意図的に妨害しても、VSMSに接続されている残りの患者の換気圧力及びVTEにほとんど影響を与えないようにすることができる。
【0028】
条件が最適値を下回ると、アラームを動作させることができる。中央処理装置(例えば、コンピューター)158は、外部ディスプレイ160によって、個々の患者の統計を示すことができる。オペレーターにより、各患者に関する±PEEP、呼気終末陽圧(cmH2O)、±PIP、最高気道内圧(cmH2O)、及び±VTΔ%[VTI/VTE×100](L)について、閾値を設定することができる。計算された値が閾値を下回る又は上回ると、可聴アラームを鳴らすことができ、及び/又は、ディスプレイ160が、どの患者の回路に注意が必要かを示す赤信号を表示することができる。アラームは、停止(silenced)又はリセットすることができる。アラームを停止した場合、ウォッチドッグタイマーが、停止したアラームを2分後に再有効化することができる。アラームがリセットされ、次の呼吸サイクルにおいて値が閾値範囲外であると、アラームを再び起動することができる。
【0029】
好ましくは、設定がスプリッターモジュール100において全ての患者の間で共有されるため、複数の患者が呼吸数及びFiO2に関して同様の設定にあるべきである。吸息圧力、一回換気量、及びPEEPは、各患者に個別に調整することができるが、可能な範囲で、より類似した人工呼吸器設定を有する患者を選択することが好ましい。
【0030】
好ましくは、患者が安定した人工呼吸器設定になるまでは、個別の人工呼吸器において機械的な換気を開始すべきである。これにより、臨床医は、理想的な吸息圧力、一回換気量、及び肺コンプライアンスを得ることが可能になる。これらの数値により、スプリッターモジュール100へのより安全な導入及び用量設定が可能になる。
【0031】
図5A~
図5Cは、
図1A~
図1Cのスプリッターモジュール100を例示する、本開示の種々の実施形態に係るスプリッターモジュール500の外面を示す写真である。
図1B、
図1C、及び
図5A~
図5Cを参照すると、スプリッターモジュール500は、モジュール吸息ポート108と、患者吸気(すなわち、吸息)ポート112と、弁120A~120Dを制御する弁制御部121と、吸気圧力ポート116と、各変換器140及び142に対する呼気圧力ポート126とを備えることができる。モジュール吸息ポート108は、スプリッターモジュール500を人工呼吸器ライン53に接続するように構成することができ、人工呼吸器ライン53は、人工呼吸器50の吸気ポート52をスプリッターモジュール500に接続する。モジュール人工呼吸器ポート108は、吸気マニホールド200に流体接続することができる。スプリッターモジュール500は、電源コードレセプタクル162と、電源スイッチ164と、ヒューズ166と、HDMI(登録商標)ポート168と、USBポート170と、通気口172と、支持体(例えば、脚部)174とを備えることもできる。
【0032】
図6Aは、本開示の種々の実施形態に係る、カバーが取り外された例示的なスプリッターモジュール500を示す写真であり、
図6Bは、本開示の種々の実施形態に係る、カバー及びミッドプレーンが取り外された例示的なスプリッターモジュール500を示す写真である。例示的なスプリッターモジュール500の部品リストが下記の表1に提供される。
【0033】
【0034】
図6A及び
図6Bに示されているように、スプリッターモジュール500は、複数の圧力逃し弁5(
図1Cにおける共通の逃し出口202に代わる)と、T字形連結点6及びエルボー型連結点3(
図1A及び
図1Cにおける連結点213A~213Dに対応する)と、人工呼吸器から流入する空気を個別のストリームに分割する、
図1A~
図1Cの吸気マニホールド200を形成する管材7とを備えることができる。管材19、バーブT字管20、及び管材21は、差圧変換器17及び圧力変換器18と組み合わせて、換気回路210(
図7Aを参照)のY字形コネクタ218にわたる差圧を読み取る(すなわち、検出する)。検出された差圧は、プロセッサ15(例えば、CPU158等のコンピューター又は論理回路)によって数値に変換され、この数値は、
図3に示されているような、各患者の圧力プロファイル、流量、及び容量交換を表示するのに使用される。その後、オペレーターは、スプリッターモジュール500に接続されている他の患者のニードル弁4に関する弁設定を変更することなく、表示された換気データに基づいて、特定の患者に対する対応のニードル弁4(すなわち、120)の設定を調整することができる。
【0035】
図7Aは、本開示の種々の実施形態に係る患者換気回路210の写真であり、
図7Bは、本開示の種々の実施形態に係る一方向弁の写真であり、
図7Cは、本開示の種々の実施形態に係る圧力ラインの写真である。
【0036】
図5A~
図5C及び
図7A~
図7Cを参照すると、患者換気回路210は、吸気ライン212(例えば、吸気ライン212A~212Dのうちの1つ)と、呼気ライン222(例えば、呼気ライン222A~222Dのうちの1つ)と、差圧ポートを有するY字形コネクタ218(すなわち、「y」の字のような形状の三方向コネクタ又は三方向分岐装置)と、吸気圧力ライン214(例えば、吸気圧力ライン214A~214Dのうちの1つ)と、呼気圧力ライン224(例えば、呼気圧力ライン224A~224Dのうちの1つ)とを備えることができる。患者換気回路210は、可変呼気PEEP弁192(17921-001)と、可変呼気PEEP弁192に流体接続されるHamilton社の近接流れセンサー194(PN 282051)とを備えることもできる。
【0037】
吸気ライン212の第1の端部は、吸気ポート112のうちの1つに接続することができ、吸気ライン212の第2の端部は、Y字形コネクタ218に接続することができる。
図8に関して後述するように、呼気ライン222の第1の端部は、Y字形コネクタ218に接続することができ、呼気ライン222の第2の端部は、呼気マニホールド250に接続することができる。
【0038】
吸気圧力ライン214の第1の端部は、Y字形コネクタ218の差圧ポートに接続することができ、吸気圧力ライン214の第2の端部は、吸気圧力ポート116のうちの1つに接続することができる。呼気圧力ライン224の第1の端部は、Y字形コネクタ218の差圧ポートに接続することができ、呼気圧力ライン224の第2の端部は、呼気圧力ポート126のうちの1つに接続することができる。
【0039】
図8は、種々の実施形態に係る呼気マニホールド250の写真である。
図8を参照すると、呼気マニホールド250は、複数の上流端部250U及び単一の下流端部250Dを有することができる。各上流端部250Uは、各呼気ライン222(例えば、222A~222D)に接続することができ、下流端部250Dは、人工呼吸器50の呼気ポート54に流体接続することができる。したがって、呼気マニホールドは、複数の患者から排出された空気を集めることができ、排出された空気を同じ呼気ポート54に供給することができるようになっている。
【0040】
図9A、
図9B、及び
図9Cは、種々の実施形態に係る、取り付けられたスプリッターモジュール500の側面図及び斜視図である。
図9A~
図9Cに示されているように、スプリッターモジュール500は、ホイール904を有する可動台座スタンド902上に取り付けることができる。ディスプレイモニター160、コンピューター906、制御パネル(ディスプレイモニター内にあることができる)、及び/又はキーボードのうちの1つ以上は、最小のフットプリントとなるようにスタンド902上に取り付けることができる。
【0041】
ニードル弁120の制御部121及びダイヤルインジケーター値が、人間工学的に基づく30度の角度で人工呼吸器のオペレーターに提示される。ニードル弁120の設定は、患者を呼吸回路に導入する(すなわち、患者に挿管する)前に患者の肺コンプライアンスに適合するように事前設定し、治療セッションの過程で定期的に各患者に対して調整することができる。患者吸気ライン(
図9Cの大きな矢印によって示されている)は、病院ベッド908の高さで配置してもよい。
【0042】
種々の実施形態によれば、スプリッターモジュール100、500は、同じ人工呼吸器50に接続されている患者間の相互作用を最小限に抑え、そのような患者を、同じ人工呼吸器に接続されている残りの患者に影響を与えることなく、追加したり、除いたり、及び/又は換気パラメーターを調整したりすることができる。各患者に対して一意の制御パラメーター及びアラームを設定することができる。
【0043】
種々の実施形態によれば、スプリッターモジュール500は、デッドスペースを最小限に抑えるように構成される統合設計を有してハウジング1内に位置することができる。この実施形態において、ニードル弁120は、圧力変換器140、142から分離される。これらの構成要素は、患者吸気ライン及び圧力変換器ラインがスプリッターモジュールから同じ方向に出て、整然とまとめることができるようにパッケージ化される。
【0044】
1つの実施形態において、スプリッターモジュールは、クロスコンタミネーションを回避するために、一方向の空気流と、適切なデッドスペースとを提供する。スプリッターモジュールは、病院内で使用される、開ループシステム及び閉ループシステムを含む全てのモデルの人工呼吸器とともに使用することができる。1つの実施形態において、スプリッターモジュールに(例えば、チューブ又は導管によって)接続される単一の人工呼吸器は、「従圧式」又は「圧力制御」プロトコルを使用して動作し、全ての患者をサポートするのに必要な最高圧力に設定される。
【0045】
いくつかの実施形態において、スプリッターモジュール100、500及び人工呼吸器50は、個別のハウジング内に配置することができるが、他の実施形態において、スプリッターモジュール及び人工呼吸器は、同じハウジング(例えば、同じボックス)内に配置することができる。
【0046】
開示の態様の上述の記載は、当業者が本発明を実施又は使用することを可能にするために提供される。これらの態様に対する種々の変更形態が、当業者には容易に明らかになるであろう。また、本明細書において定義される一般的な原則を、本発明の範囲から逸脱することなく、他の態様に適用することができる。したがって、本発明は、本明細書に示されている態様に限定されることを意図せず、本明細書に開示されている原則及び新規の特徴と一貫して最も広い範囲を与えられるものとする。
【国際調査報告】