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2023-521785肺線維症の治療のためのマクロファージへのmiR-21阻害剤の標的送達
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】肺線維症の治療のためのマクロファージへのmiR-21阻害剤の標的送達
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/08 20060101AFI20230518BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230518BHJP
   A61K 47/66 20170101ALI20230518BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20230518BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20230518BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20230518BHJP
【FI】
A61K45/08
A61P11/00
A61P31/14
A61P9/00
A61P9/10
A61P29/00
A61P43/00 105
A61K47/68
A61K47/66
A61K9/127
A61K9/14
A61K31/7105
A61K31/712
A61K31/7125
A61K47/54
C12N15/113 Z ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561618
(86)(22)【出願日】2021-04-09
(85)【翻訳文提出日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 EP2021059360
(87)【国際公開番号】W WO2021205032
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】20169160.7
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517068553
【氏名又は名称】テクニッシェ ウニベルシタット ミュンヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エンゲルハルト
(72)【発明者】
【氏名】ディーパク プラブー ラマヌジャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA19
4C076AA31
4C076AA95
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA17
4C084AA27
4C084MA13
4C084MA22
4C084MA24
4C084MA41
4C084MA57
4C084NA13
4C084ZA361
4C084ZA362
4C084ZA591
4C084ZA592
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB331
4C084ZB332
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA13
4C086MA24
4C086MA41
4C086MA57
4C086NA13
4C086ZA36
4C086ZA59
4C086ZB11
4C086ZB21
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む、対象の肺線維症の治療に使用するための組成物に関する。さらに、前記組成物は、肺投与によって投与されてもよい。特定の態様では、前記治療対象は肺線維症に罹患しており、さらに肺疾患又は肺障害を有し、肺疾患又は肺障害はコロナウイルス疾患であってもよい。さらに、本発明は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤を肺マクロファージに送達する部分とを含む、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺線維症の治療に使用するための組成物であって、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む、組成物。
【請求項2】
前記部分が前記miR-21阻害剤を線維芽細胞にさらに送達する、請求項1に記載の使用のための組成物。
【請求項3】
前記部分が前記miR-21阻害剤をマクロファージに選択的に送達する、又は前記部分が前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び線維芽細胞に選択的に送達する、請求項1又は2に記載の使用のための組成物。
【請求項4】
前記miR-21阻害剤が、肺マクロファージに、又は肺マクロファージ及び肺線維芽細胞に送達される、請求項1~4のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項5】
前記組成物が、肺投与によって投与される、特に、前記組成物が、エアロゾル化された組成物によって、吸入によって対象の肺に投与されるか又は肺、気管支、及び/若しくは気道への局所投与の他の手段によって前記肺に投与される。請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための組成物。
【請求項6】
肺線維症に罹患している前記対象が、肺疾患又は肺障害をさらに有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項7】
前記肺疾患又は肺障害が、線維症を引き起こすか又は線維症に関連しており、好ましくは、前記肺疾患又は肺障害が、ウイルス及び/若しくは細菌によって引き起こされるか、慢性閉塞性肺疾患であるか、又は特発性肺線維症であり、より好ましくは、前記肺疾患又は肺障害が、コロナウイルス疾患であり、さらにより好ましくは、前記肺疾患又は肺障害が、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-1によって引き起こされる、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項8】
前記肺線維症が、特に成人呼吸窮迫症候群(ARDS)に続いて、肺補助法又は人工呼吸によって引き起こされるか又は関連する、請求項1~7のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項9】
前記対象がさらに心疾患又は心障害に罹患しており、特に、前記心疾患又は心障害が、線維症を引き起こすか又は線維症に関連しており、特に、前記心疾患又は心障害が、心不全、虚血、虚血後心不全、心肥大、高血圧性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、心臓関連蓄積症、心筋症、収縮性心膜炎、冠動脈疾患、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、右心不全、心不整脈、心筋炎関連線維症、及び心臓弁膜症からなる群から選択される、請求項6に記載の使用のための組成物。
【請求項10】
前記組成物が、マクロファージの炎症誘発性極性化を防止し、炎症、筋線維芽細胞の形質転換、及び/又は線維症を防止する、請求項1~9のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項11】
前記組成物が、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の少なくとも約5日後に前記対象に投与され、及び特に、前記組成物はさらに、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の少なくとも約19日後に対象に投与される、請求項1~10のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項12】
前記組成物が、動脈内投与、好ましくは心臓内投与、好ましくは肺への投与、より好ましくは冠動脈内投与及び/又は吸入による投与によって投与される、請求項1又は11のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項13】
前記組成物が、約10mgの前記miR-21阻害剤を含むか、又は約10mg未満の前記miR-21阻害剤を含む単回用量で投与される、請求項1~12のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項14】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分が、前記マクロファージの細胞表面で濃縮を示す、請求項1~13のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項15】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分が、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)、抗体又はその機能的断片、細胞型特異的標的化部分、低分子リガンド、及び(タンパク質性)リガンド又はその機能的断片からなる群から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項16】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分が、排他的に又は主に以下の表面に見られる少なくとも1つの抗原に特異的に結合する、請求項1~14のいずれか一項に記載の使用のための組成物:
a)マクロファージ、
b)線維芽細胞及びマクロファージ、
c)肺マクロファージ、又は
d)肺線維芽細胞及び肺マクロファージ。
【請求項17】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分が、1又は複数のアンタゴニスト、1又は複数のアゴニスト、1又は複数のβアドレナリン受容体、1又は複数のGタンパク質共役受容体、及び1又は複数の受容体に結合する1又は複数のサイトカインからなる群から選択される1又は複数の細胞表面受容体に結合及び/又は相互作用する、低分子リガンド、細胞型特異的標的化部分及び/又はリガンド、好ましくは、タンパク質性リガンド又はその機能的断片である、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項18】
前記抗体又は前記機能的結合断片は、以下の表から選択される1又は複数の細胞面受容体上に含まれる少なくとも1つの抗原に特異的に結合する、及び/又は前記低分子リガンド及び/又は前記タンパク質性リガンドは、以下の表から選択される少なくとも1つの細胞表面受容体に結合及び/又は相互作用する、請求項15~17のいずれか一項に記載の使用のための組成物:
【表1-1】
【表1-2】
【請求項19】
前記miR-21阻害剤は、前記抗体又はその機能的断片に結合されている、前記細胞型特異的標的化部分に結合されている、前記低分子リガンドに結合されている、及び/又は前記リガンド若しくはその機能的断片に結合されている、請求項15~18のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項20】
前記miR-21阻害剤が、前記ナノ粒子、前記リポソーム、前記脂質ナノ粒子(LNP)、及び/又は前記メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)に含まれる、請求項15に記載の使用のための組成物。
【請求項21】
前記miR-21阻害剤が、miR-21の標的を抑制解除又は過剰発現する、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項22】
前記miR-21阻害剤が、アンチセンスmiRNA-21を含むか又はアンチセンスmiRNA-21である、請求項1~21のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項23】
前記アンチセンスmiRNAが、miR-21に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドである、請求項1~22のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項24】
前記アンチセンスmiRNA-21が、ロックド核酸であるか又は好ましくはホスホロチオエート化LNA/DNAミックスマーである、請求項1~23のいずれか一項に記載の使用のための組成物。
【請求項25】
miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤を肺マクロファージに送達する部分とを含む組成物。
【請求項26】
前記組成物がエアロゾル形態である、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
医薬に使用するための、請求項25又は26に記載の組成物。
【請求項28】
肺線維症の治療における、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項29】
肺線維症を治療するための医薬品を製造するための組成物の使用であって、前記組成物が、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む、使用。
【請求項30】
請求項25~26のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【請求項31】
前記方法が、前記miR-21阻害剤を、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分に結合することを含み、前記方法が、前記miR-21阻害剤を、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分に導入することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、前記miR-21阻害剤を、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分と結合することを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
肺線維症の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む組成物を投与すること、を含む、方法。
【請求項34】
前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分とがリンカーを介して連結され、前記リンカーが、C10-40アルキレン、C10-40アルケニレン、及びC10-40アルキニレンから選択される基Lを含むか又はからなり、前記アルキレン、前記アルケニレン、及び前記アルキニレンが、それぞれ、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-OR21、-NR2121、-NR21OR21、-COR21、-COOR21,-OCOR21、-CONR2121、-NR21COR21、-NR21COOR21、-OCONR2121、-SR21、-SOR21、-SO221、-SO2NR2121、-NR21SO221、-SO321、及び-NO2から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、さらに、前記アルキレン、前記アルケニレン、又は前記アルキニレンに含まれる1又は複数の-CH2-単位が、それぞれ、-O-、-NR21-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクロアルキレンから独立して選択される基によって所望により置換され、前記アリーレン、前記ヘテロアリーレン、前記シクロアルキレン、及び前記ヘテロシクロアルキレンが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、
各R21は、水素、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから独立して選択され、前記アルキル、前記アルケニル、及び前記アルキニルが、それぞれ、1又は複数の基RAlkで所望により置換され、さらに、前記カルボシクリル及び前記ヘテロシクリルが、それぞれ、1又は複数の基RCycで所望により置換され、
任意の2つのR21が結合して環を所望により形成し、
各RAlkは、-OH、-O(C1-5アルキル)、-O(C1-5アルキレン)-OH、-O(C1-5アルキレン)-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-S(C1-5アルキレン)-SH、-S(C1-5アルキレン)-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-OH、-N(C1-5アルキル)-OH、-NH-O(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-O(C1-5アルキル)、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-NO2、-CHO、-CO(C1-5アルキル)、-COOH、-COO(C1-5アルキル)、-O-CO(C1-5アルキル)、-CO-NH2、-CO-NH(C1-5アルキル)、-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-CO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-CO(C1-5アルキル)、-NH-COO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-COO(C1-5アルキル)、-O-CO-NH(C1-5アルキル)、-O-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-SO2-NH2、-SO2-NH(C1-5アルキル)、-SO2-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-SO2-(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-SO2-(C1-5アルキル)、-SO2-(C1-5アルキル)、-SO-(C1-5アルキル)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、前記アリール、前記ヘテロアリール、前記シクロアルキル、及び前記ヘテロシクロアルキルが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、
各RCycは、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、-OH、-O(C1-5アルキル)、-O(C1-5アルキレン)-OH、-O(C1-5アルキレン)-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-S(C1-5アルキレン)-SH、-S(C1-5アルキレン)-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-OH、-N(C1-5アルキル)-OH、-NH-O(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-O(C1-5アルキル)、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-NO2、-CHO、-CO(C1-5アルキル)、-COOH、-COO(C1-5アルキル)、-O-CO(C1-5アルキル)、-CO-NH2、-CO-NH(C1-5アルキル)、-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-CO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-CO(C1-5アルキル)、-NH-COO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-COO(C1-5アルキル)、-O-CO-NH(C1-5アルキル)、-O-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-SO2-NH2、-SO2-NH(C1-5アルキル)、-SO2-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-SO2-(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-SO2-(C1-5アルキル)、-SO2-(C1-5アルキル)、-SO-(C1-5アルキル)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、前記アリール、前記ヘテロアリール、前記シクロアルキル、及び前記ヘテロシクロアルキルが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換されている、請求項1~24、28、及び30のいずれか一項に記載の使用のための組成物、請求項25~27のいずれか一項に記載の組成物、請求項30~32のいずれか一項に記載の製造方法、又は請求項33に記載の治療方法。
【請求項35】
前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する2つ以上の部分とが、分岐リンカーを介して連結されており、前記リンカーの枝のそれぞれが、請求項34で定義された基Lであり、前記リンカーの主鎖は、請求項34で定義された1つ又は2つの基Lを含むか又はそれらからなり、好ましくは、前記主鎖は前記miR-21阻害剤に結合し、前記枝は前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分に結合する、請求項1~24、28、30、及び34のいずれか一項に記載の使用のための組成物、請求項25~27及び34のいずれか一項に記載の組成物、請求項30~32及び34のいずれか一項に記載の製造方法、又は請求項33及び34に記載の治療方法。
【請求項36】
各基Lが、C10-40アルキレンから選択され、前記アルキレンが、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-OR21、-NR2121、-NR21OR21、-COR21、-COOR21,-OCOR21、-CONR2121、-NR21COR21、-NR21COOR21、-OCONR2121、-SR21、-SOR21、-SO221、-SO2NR2121、-NR21SO221、-SO321、及び-NO2から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、さらに、前記アルキレンに含まれる1又は複数の-CH2-単位が、それぞれ独立して、-O-、-NR21-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクロアルキレンから選択される基によって置換されており、前記アリーレン、前記ヘテロアリーレン、前記シクロアルキレン、及び前記ヘテロシクロアルキレンが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換されている、請求項34~35のいずれか一項に記載の使用のための組成物、組成物、製造方法、又は治療方法。
【請求項37】
前記リンカーが、以下の化学式
【化1】

で表される(式中「*」は、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分への結合を表し、「**」は、miR-21阻害剤への結合を表す)、請求項34~36のいずれか一項に記載の使用のための組成物、組成物、製造方法、又は治療方法。
【請求項38】
前記miR-21阻害剤が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9から選択される、並びに前記miR-21阻害剤が、好ましくは、末端ホスホロチオエート基のリン原子を介してリンカーに結合している、請求項1~37のいずれか一項に記載の使用のための組成物、組成物、製造方法、又は治療方法。
【請求項39】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する1又は複数の前記部分が糖を含み、好ましくはマンノース及びN-アセチルガラクトサミンから選択される1又は複数を含むか又はそれらからなり、より好ましくはマンノース、ジマンノシルマンノース、及びN-アセチルガラクトサミンからなる、請求項1~38のいずれか一項に記載の使用のための組成物、組成物、製造方法、又は治療方法。
【請求項40】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する1又は複数の前記部分が、以下から選択される:
【化2】

前記リンカーが、各構造の右下部分のアノマー炭素に結合している、請求項1~39のいずれか一項に記載の使用のための組成物、組成物、製造方法、又は治療方法。
【請求項41】
前記組成物が、図23Bで定義される化合物の1つ若しくは両方及び/又は以下の化合物の1つ若しくは両方を含む、請求項1~40のいずれか一項に記載の使用のための組成物、組成物、製造方法、又は治療方法:
【化3】
【化4】




【化5】
【化6】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む、対象の肺線維症の治療に使用するための組成物に関する。さらに、前記組成物は、肺投与によって投与されてもよい。特定の態様では、前記治療対象は肺線維症に罹患しており、さらに肺疾患又は肺障害を有し、肺疾患又は肺障害はコロナウイルス疾患であり得る。さらに、本発明は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤を肺マクロファージに送達する部分とを含む、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
臓器線維症、例えば、肺線維症の治療に高いニーズがある。肺線維症に関しては、COVID-19のようなコロナウイルス感染などのウイルス感染の後に、肺の硬化及び線維症が続くことがよくある(Xu et al., 2020)。肺線維症は肺機能を著しく損ない、現在の治療及び治療レジメンではほとんど治療不可能である(Sgalla et al., 2018)。したがって、肺線維症に関与する代替メカニズムと分子とを標的とする新しい治療戦略にも緊急のニーズがある。
【0003】
さらに、線維症は、心疾患又は心障害などのさらなる疾患の病状においてさらに重要な役割を果たす。心筋梗塞後の急性生存率は、過去数十年で大幅に改善されたが(Bahit et al., 2018)、虚血後心不全(HF)は依然として非常に高い頻度(約50%)のままであり、入院及び死亡の最も一般的な原因の1つとなっている(Bahit et al., 2018)。心不全の現在の医学的管理は、血管拡張剤と神経液性活性化の阻害剤に大きく依存しているが、これらの治療原則の臨床的有効性は、臨床的利益のさらなる増加を達成することがますます困難になるレベルに達したことが示唆されている(Pellicori et al., 2019)。それでも、心不全の病状に関与する代替メカニズムと分子とを標的とする新しい治療戦略にも緊急のニーズがある。
【0004】
マイクロリボ核酸(miRNA又はmiR)は、タンパク質をコードするmRNAの大部分の3’非翻訳領域にあるアンチセンス相補領域に結合する、約20~22ヌクレオチド長のRNA分子である(Bartel, 2018)。これまでに検討されたほぼ全ての細胞プロセスにおける極めて重要な役割に加えて、それらは、癌、免疫疾患、及び心血管疾患を含む、増大する多数の疾病実体のリストにおける重要な調節因子である(Mendell & Olson, 2012)。
【0005】
これまでmiR-21阻害剤、特にオリゴヌクレオチドに基づく治療法の臨床開発を妨げてきた主な障害は、全身送達時にこれらの分子が細胞に入る程度が比較的低いことである。一貫して、先行技術は、2~80mg/kg体重の範囲内の比較的高用量のオリゴヌクレオチドを使用することを示唆している。そのような用量は、経済的理由及びそのような高い物質負荷で予想される副作用の両方のために、人体の規模に合わせることはできない(Li & Rana, 2014; Lu & Thum, 2019)。
【0006】
したがって、根本的な技術的課題は、肺線維症の改善された治療法を提供することである。
【0007】
技術的課題は、以下に提示され、添付の特許請求の範囲で特徴付けられる実施形態の提供によって解決される。
【0008】
特に、添付の実施例に記載されているように、驚くべきことに、miR-21の阻害が、罹患した及び/又は損傷した肺における肺のリモデリング及び/又は機能不全を軽減することが見出された。したがって、本発明は、肺疾患、肺損傷、及び/若しくは肺障害の治療並びに/又は改善におけるmiR-21阻害剤の医学的及び/若しくは薬学的使用に関する。前記肺疾患、前記肺損傷、及び/又は前記肺障害は、肺線維症である可能性があり、肺線維症の原因である可能性があり、及び/又は肺線維症を伴う可能性がある。特定の実施形態では、本発明は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む、肺線維症の治療に使用するための組成物に関する。本発明の文脈において、「組成物」という用語は、化合物も含み、前記「化合物」は、少なくとも2つの機能的部分/部位を有する単一分子であり得る、すなわち、(a)miR-21阻害剤である機能的部分/部位、及び(b)前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する機能的部分/部位であり得る。本発明の文脈において、組成物及び化合物という用語は交換可能に使用され得る。したがって、一実施形態では、前記miR-21阻害剤を含み、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分を含む組成物は、単一分子、すなわち「阻害剤」であってもよく、1又は複数のマクロファージへの「標的化部分」は、例えば共有結合、共役結合及び同種のものによって物理的に結合されてもよい。そのような化合物/分子はまた、前記「miR21阻害剤」と前記miR-21の阻害剤をマクロファージに送達する前記部分とを連結する「リンカー」構造を含んでいてもよい。対応する例示的かつ非限定的なリンカーが本明細書に提供される。また、本発明の組成物/化合物は、例えば、前記miR-21阻害剤を他の標的細胞、特に(及び一実施形態では)線維芽細胞に標的化することができる、本明細書の以下に定義される部分/部位を含む。
【0009】
したがって、特定の実施形態では、本発明はまた、組成物/化合物であって、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤を好ましくは肺マクロファージに送達する部分とを含む組成物/化合物に関する。本発明のさらなる実施形態は、組成物/化合物であって、前記組成物/化合物は、miR-21阻害剤、前記miR-21阻害剤を(肺)マクロファージに送達する部分、及び前記miR-21阻害剤を線維芽細胞、好ましくは肺線維芽細胞に送達するさらなる部分を含む。本発明の文脈において、「前記miR-21阻害剤を…に送達する」という用語は、「前記miR-21阻害剤を…に標的化する」ことも意味する。そのような「部分」の対応する非限定的な例を以下に提供し、添付の非限定的な例にも示す。したがって、本発明の文脈において、本発明の医学的手段及び方法で使用される組成物/化合物は、前記miR-21阻害剤が、前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する1又は複数の部分に結合されている組成物/化合物であることが理解される。したがって、「化合物」及び「組成物」という用語は、互換的に使用することができ、本発明の好ましい実施形態において、前記化合物/組成物は、前記miR-21阻害剤及び前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する前記部分を含むという事実に関連する。好ましい実施形態では、前記miR-21阻害剤と、前記阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する前記部分とは、結合/共有結合される。
【0010】
本明細書で詳述するように、前記miR-21阻害剤は、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分に結合され得る。例えば、限定されるが、前記miR-21阻害剤は、好ましくはマクロファージ上の(特異的な)細胞表面受容体に結合/相互作用する抗体又はその機能的断片に結合され得る。前記miR-21阻害剤はまた、本発明の文脈において、細胞型特異的標的化部分に結合され得る。また、本明細書の添付の実施例で想定及び示されるように、前記miR-21阻害剤は、前記細胞表面マーカー/受容体の「リガンド」に結合され得る。そのような細胞マーカー/受容体の非限定的な例を、本明細書の表3に提供する。そのような「リガンド」は、対応する所望の標的細胞上のそれらの対応する「受容体」と相互作用することができる低分子リガンド及び/若しくは(タンパク質性)リガンド又はその機能的断片を含み得る。そのような「リガンド受容体」相互作用の例は、本明細書で使用され例示される「マンノース」(標的マクロファージ上のMRCI1との「低分子リガンド」の例)の相互作用であり得る。タンパク質性リガンドの例は、MRC1、すなわちマクロファージ上の細胞表面受容体に対する相互作用ペプチドである、以下にも記載されるペプチドCSPGAKVRC(配列番号6)であってもよい。
【0011】
本発明者らは、驚くべきことに、本発明に関連して、miR-21が肺及び心臓組織の特定の細胞型において強く発現されるmiRNAであること、特に心疾患若しくは障害又は肺疾患若しくは障害などの病理学的条件下でそうであることを見出した。
【0012】
特に、先行技術に基づいて、本発明者らは、心筋又は肺への送達は困難であり、したがってmiRNAに基づく治療の使用を妨げていると考えた。したがって、本発明者らは、この不確実な科学的及び医学的分野において、マクロファージ及び/又は線維芽細胞、特に肺胞マクロファージ及び/又は間質マクロファージなどの心臓及び/又は肺に存在するマクロファージ及び/又は線維芽細胞に対する(anti-)miRNAに基づく医学的介入の適用可能性及び治療効果を解明した。したがって、肺胞マクロファージ及び/又は間質マクロファージのような肺組織に存在する及び/又は見出されるそのようなマクロファージは、本発明の文脈において「肺マクロファージ」である。「肺(lung)マクロファージ」という用語は、「肺(の)(pulmonary)マクロファージ」という用語も含む。実験部分で説明したように、本発明者らは、肺マクロファージの表面受容体/表面マーカーも解明した。「肺マクロファージ」に特異的なこれらの受容体/マーカーは、例えば、マンノース受容体C型1(MRC1:ENSG00000260314)、コラーゲン構造を有するマクロファージ受容体(MARCO:ENSG00000019169)、CD68抗原(CD68:ENSG00000129226)、接着Gタンパク質共役受容体E1(ADGRE1:ENSG00000174837)、C-Cモチーフケモカイン受容体2(一過性)(CCR2:ENSG00000121807)、インテグリンサブユニットαM(ITGAM:ENSG00000169896)、及びFcgr1(Fc receptor, IgG, high affinity I)(FCGR1A:ENSG00000150337)を含むが、これらに限定されない。
【0013】
肺胞マクロファージに特異的なマーカーは、シアル酸結合Ig様レクチン1(SIGLEC1:ENSG00000088827)及びコラーゲン構造を有するマクロファージ受容体(MARCO:ENSG00000019169)であり得る。間質マクロファージに特異的なマーカーは、CD163分子(CD163:ENSG00000177575)であってもよい。線維芽細胞に特異的な受容体/マーカーは、例えば、血小板由来増殖因子受容体(PDGFRA:ENSG00000134853)、転写因子21(TCF21:ENSG00000118526)、ペリオスチン(POSTN:ENSG00000133110)、及びアクチンα2(ACTA2:ENSG00000107796)を含むが、これらに限定されない。本発明の文脈において特に有用なマクロファージの表面上の受容体/マーカーも提供され、ENS形式(Ensembl Gene ID)におけるそれらの安定した識別子によって以下に識別される。表3も参照。表3はまた、マクロファージ及び/又は線維芽細胞上のさらなる受容体/マーカーを含み、これらは、本明細書で定義される「miR-21阻害剤を1又は複数のマクロファージに(所望により、1又は複数の線維芽細胞にも)送達する部分」の相互作用パートナーとして、本発明の文脈において特に有用である。上記の「マーカー」は、それぞれマクロファージ及び/又は線維芽細胞で主に発現されるマーカーに関するが、本明細書で定義される「miR-21阻害剤をマクロファージ(及び/又は線維芽細胞)に送達する部分」の最も好ましい「標的」は、これらの細胞の表面マーカー/受容体である。好ましい実施形態では、これらの表面マーカー/受容体は、上記「miR-21阻害剤を送達する部分」と相互作用すると、エンドサイトーシスを媒介する。
【0014】
したがって、前記miR-21阻害剤をマクロファージ(及び所望により線維芽細胞)に送達する前記部分/部位は、とりわけ、前記受容体/マーカーと特異的に相互作用することができるリガンド(例えば、低分子リガンド又はタンパク質性リガンド)を含み得る。さらに、本発明の文脈において、「miR-21阻害剤」が、前記受容体/マーカーと(特異的に)相互作用することができる(特異的)結合分子を介して、前記マクロファージ、好ましくは肺マクロファージに送達されることも想定される。そのような結合分子は、例えば、特異的抗体(前記受容体/マーカー上に含まれる抗原に結合する)及びその機能的断片を含み得るが、これらに限定されない。最も好ましくは、前記受容体/マーカーは、前記マクロファージ(及び/又は線維芽細胞)上の細胞表面受容体である。本明細書の以下及び添付の実施例に示すように、本発明の文脈における有用な「受容体/マーカー」は、MRC1遺伝子によってコードされ、主にマクロファージの表面に発現する膜受容体であり、マクロファージによる糖タンパク質のエンドサイトーシスを媒介する、マンノース受容体C型1であり得る。マンノース受容体C型1は、糖構造、特に(高)マンノース構造に好ましく結合することが公知である。したがって、本発明の文脈において、「miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分」は、マンノース受容体C型1と相互作用するリガンドであり得る。そのようなリガンドは、糖分子又はその誘導体、例えばマンノース(以下、分岐トリマンノース構造も含む)、ジマンノシルマンノース、又はガラクトースのアミノ糖誘導体(GalNAc:N-アセチルガラクトサミン)のような低分子であり得る。添付の実施例に記載されているように、本発明者らは、miR-21「anti-miR-21」の阻害剤を(特に吸入を介して)、マンノース構造(ここでは、例えばトリマンノース)を介して並びに「miR-21の阻害剤をマクロファージに送達する部分」としてGalNAcを介して、(肺)マクロファージに首尾よく送達することができた。
【0015】
本発明者らは驚くべきことに、例えば、特に実施例3及び実施例5に示されるように、miR-21が肺マクロファージにおいて最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを見出した。特に、miR-21は、肺胞マクロファージで発現される全miRの約20%を含むmiRの最も豊富な画分を表すことが本明細書の以下に記載されている。例えば、添付の図12Bを参照。したがって、miR-21は肺マクロファージで最も豊富なmiRである。このような高いレベルは、肺間質マクロファージでも見られ、全てのmiRNA読み取りの10%以上がmiR-21に起因する場合がある。したがって、マクロファージ、特に肺マクロファージは、本明細書で提供される医学的介入/治療の手段及び方法における標的細胞として使用される。以下にも示されるように、驚くべきことに、肺線維症様の構造的損傷を示すヒト肺組織においてmiR-21が劇的に増加することも、本発明に関連して見出された。これに関連して、例えば、miR-21は、COVID-19犠牲者の肺でアップレギュレートされたmiRNAの上位にあることがわかった。理論に拘束されることなく、本発明の文脈において、本明細書で提供される科学的証拠に基づいて、肺マクロファージのmiR-21は、例えば、特に、SARS-CoV-2/COVID-19による肺損傷による感染によって引き起こされる肺の損傷など、感染症で見られる肺損傷の病態生理学において重要な役割を果たす。この科学的証拠に基づいて、本発明は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージ、好ましくは(肺)マクロファージに送達する部分とを含む組成物に関する。本発明の好ましいが限定されない実施形態では、本明細書で提供される化合物、すなわち、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む組成物/化合物が、吸入を介して病気の肺組織に送達される。したがって、前記化合物/組成物は、医薬組成物のような吸入可能な組成物に含まれ得る。したがって、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む(医療用の)組成物は、例えば、エアロゾル形態であり得る。添付の実施例には、インビボ研究も含まれている。肺線維症のモデルでは、肺のマクロファージへのmiR-21阻害剤の標的送達(吸入による)は、肺機能障害及び肺線維症に対しても(標的対照及び不活性(ミスマッチ)anti-miR-21と比較しても)有意に有効であった。
【0016】
したがって、本発明の特定の局面において、前記miR-21阻害剤は、1又は複数の肺マクロファージに送達されるものである。すなわち、本明細書に記載の組成物/化合物に含まれる(及びmiR-21阻害剤も含む)「部分」は、前記miR-21阻害剤を1又は複数のマクロファージ、特に1又は複数の肺マクロファージに送達/標的化する。さらに特定の態様では、組成物に含まれる前記部分は、前記miR-21阻害剤を1又は複数の肺胞マクロファージ及び/又は1又は複数の間質マクロファージに送達/標的化する。本明細書の以下に提供されるように、前記組成物に含まれる前記部分は、前記miR-21阻害剤を排他的に又は主に標的細胞型に、例えば、排他的に又は主に1又は複数のマクロファージに、好ましくは排他的に又は主に1又は複数の肺マクロファージに、又は特定の態様では排他的に又は主に1又は複数の肺胞マクロファージ及び/又は1又は複数の間質性マクロファージに送達し得る。当技術分野で公知のように、生体分子の結合に関して本明細書で使用される「排他的に」は、その部分が標的分子/細胞に検出可能にのみ結合することを示すものではない。むしろ、アッセイ系に依存して、前記部分が無関係な分子へのいくらかの(弱い)結合を示し得ることが周知である。したがって、「排他的に」は、その部分が主に標的細胞型に結合すること、すなわち結合が選択的であること(選択的結合)を示す。すなわち、前記部分は、非標的細胞、例えばT細胞又は好中球、上皮細胞などよりも、標的細胞、すなわちマクロファージ及び所望により線維芽細胞に選択的かつ優先的に結合する。本発明の例示された化合物は、マクロファージを選択的に標的とすることが記載されている(例えば、T細胞、上皮細胞、好中球などではない)添付の図24(C)も参照。以下でも議論されるように、そのような選択的かつ優先的な結合は、前記標的細胞上の本明細書で定義される1又は複数の細胞表面受容体と特異的に相互作用及び/又は特異的に結合する部分を用いて達成され得る。
【0017】
マクロファージへの前記miR-21阻害剤の送達は、本明細書において最も好ましい。したがって、本明細書で提供される組成物/化合物は、肺線維症の治療に使用され得る。本明細書で提供される組成物/化合物は、肺におけるマクロファージ関連線維症の治療だけでなく、心疾患の治療にも使用することができる本発明は、miR-21が圧過負荷による心機能障害に供されたマウス(TACモデル、ヒト心疾患/障害に関連する動物モデル)の心臓組織マクロファージにおいて(心臓の他の全ての細胞型と比較して)最も高い発現を有することを記載している。添付の実施例に記載されているように、miR-21のマクロファージ特異的欠失を有するマウスは、心肥大及び機能不全から保護されることが見出された。肺線維症に罹患している対象はさらに、肺疾患又は肺障害を有する/罹患している/診断されていてもよい。これらのデータに基づいて、本発明者らは、anti-miR-21に基づく治療法(miR-21阻害剤による治療法)は、主にマクロファージにおけるmiR-21阻害を通じて、関連する重要な治療効果を発揮し得ると推測した。実施例はまた、マクロファージ中のmiR-21が、心臓以外の他の臓器、すなわち肺における線維症事象も決定し、特にCOVID-19犠牲者の肺では、miR-21は(特に肺マクロファージでも)アップレギュレートされたmiRNAの1つであるという新規かつ発明的な知見をも提供する。これらの驚くべき知見に基づいて、本発明者らは、anti-miR-21(miR-21に対する阻害剤)のマクロファージへの特異的送達が優れた抗線維症療法を提供するという当技術分野への貢献をここに提供し、このような特定の送達は、治療を受ける患者にとって利点がある、例えば、望ましくない副作用の少ない治療が実現可能であり、miR-21阻害剤をマクロファージに標的化する本発明の組成物/化合物の吸入投与を介して、肺の好ましい治療を得ることができると推測される。
【0018】
本発明の好ましい態様において、本発明の組成物/化合物は肺線維症の治療に使用され、前記組成物/化合物は、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤を肺マクロファージ及び/又は肺線維芽細胞に送達する部分との両方を含む。最も好ましい態様では、前記組成物は、肺線維症の治療に使用される組成物であって、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む。さらに好ましい態様では、前記miR-21阻害剤は、肺マクロファージ及び/又は肺線維芽細胞に送達され、より好ましくは前記miR-21阻害剤は肺マクロファージに送達される。
【0019】
本明細書で提供されるmiR21のマクロファージ標的阻害剤は、マクロファージ及び/又は線維芽細胞が疾患状態に寄与する様々な種類の肺疾患を予防又は治療するために使用され得る。このような肺疾患には、有毒物質(SMOG、タバコの煙などを含む)、薬物(ブレオマイシン、ブスルファン、アミオダロンなど)、結合組織疾患、間質性肺疾患、並びに、特に感染症(COVD-19などのSARS感染症を含む)によって引き起こされる(線維性)肺疾患が含まれますが、これらに限定されない。これに関連して、本発明は、COVID-19犠牲者の肺(死後に採取)で、miR-21がアップレギュレートされたmiRNAの上位にあることを初めて記載している。したがって、本発明は、コロナウイルス、特にSARS-CoV-2によって引き起こされる肺疾患又は障害の治療において、miR-21阻害剤を含み、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分を含む、本明細書に記載の組成物/化合物の医学的/薬学的使用にも関する。したがって、また、本明細書で提供される技術情報に基づいて、及び添付の科学的エビデンス/実験データに基づいて、本発明者らは、肺線維症を想定している。特に、ウイルス感染及び/又は細菌感染(例えば、SARS-CoV-2又は別のコロナウイルスによって引き起こされる又は誘発される)に関連するか又はそれらによって引き起こされる場合、そのような罹患した対象は、肺のmiR-21レベルが増加しているため、本明細書で提供される手段及び方法で治療することができる。上述のように、また本発明の一実施形態に関して、本発明者らは驚くべきことに、miR-21は、COVID-19犠牲者の肺でアップレギュレートされたmiRNAの上位にあることを見出した。これは、とりわけ、COVID-19感染症により及び/又はCOVID-19感染症を伴って死亡した患者から死後に採取されたヒト肺の小さなRNAomeを分析することによって示されている。例えば、実施例5及び図19を参照。
【0020】
これらの驚くべき結果は、肺、特に肺マクロファージにおけるmiR-21発現が、肺線維症の病態生理学において重要な役割を果たしていることを示している。特に、本発明の驚くべき知見に基づいて、miR-21(及び/又はマクロファージ、すなわち肺のマクロファージにおけるその発現)は、肺疾患、肺損傷、又は肺障害をさらに患う患者、特にヒトの肺線維症の病態生理学において実質的な役割を果たし、前記線維症は、前記肺疾患、肺損傷、又は肺障害の結果であることが本明細書に記載されている。また、本明細書の以下で説明するように、肺線維症の治療におけるmiR-21阻害剤の医学的及び/又は薬学的使用に関する本医学的発明は、miR-21の発現が、罹患組織及び/又は損傷組織内の内部又はその組織のマクロファージにおいて特に高いという驚くべき知見に部分的に基づいている。したがって、本発明は、特定の実施形態において、肺線維症の治療のための手段及び方法の提供に関し、前記治療は、マクロファージ、特に本発明に関連して、肺中又は肺のマクロファージにおいてmiR-21を阻害する組成物の投与を含む。さらに、本明細書にも示されているように、疾患又は損傷した肺のような疾患又は損傷した組織の線維芽細胞でmiR-21が阻害される場合も有益である。したがって、本発明は、一態様において、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む化合物及び/又は組成物の医学的及び/又は薬学的使用に関する。一態様では、医学的及び/又は薬学的使用のための前記化合物及び/又は組成物は、前記miR-21阻害剤を線維芽細胞に送達できる/送達する部分をさらに含み得る。前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分と、前記miR-21阻害剤を線維芽細胞に送達する部分とは、同じ部分であっても異なっていてもよい。したがって、本明細書で提供される肺線維症の治療のための手段及び方法のさらなる態様では、前記部分が前記miR-21阻害剤をマクロファージに選択的に送達する、又は前記部分が前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び線維芽細胞に選択的に送達する。本明細書で上述したように、「選択的送達」/「選択的標的化」は、前記部分が、非標的細胞、例えばT細胞又は好中球、上皮細胞などよりも、標的細胞、すなわちマクロファージ及び所望により線維芽細胞に選択的かつ優先的に結合することを意味する。
【0021】
本明細書の以下に示され、添付の実施例で証明されるように、本発明の手段及び方法、すなわち、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む化合物及び/又は組成物の医学的及び/又は薬学的使用は、肺線維症に罹患し、肺疾患又は肺障害をさらに有する対象の治療において特に想定される。本発明の好ましい実施形態では、前記肺疾患又は障害は、線維症を引き起こし得るか又はそれに関連し得、好ましくは、前記肺疾患又は障害は、ウイルス及び/又は細菌によって引き起こされ得る。本明細書に示されるように、本発明の手段及び方法はまた、驚くべきことに、肺疾患、肺損傷、及び/又は肺障害の医学的介入においても有用であり、治療される肺疾患、肺損傷、及び/又は肺障害が、コロナウイルス疾患などのウイルス感染によって引き起こされる。本発明の好ましい実施形態において、前記miR-21阻害剤は、肺線維症の治療において、並びに/又は、疾患又は損傷状態の基礎がウイルス又は細菌による感染である肺疾患、肺損傷、若しくは肺疾患に関連する及び/又はそれらによって引き起こされる肺線維症の治療において使用されるものである。本発明の好ましい実施形態では、(ヒト)患者における肺線維症並びに/又は肺線維症及びさらなる肺疾患、肺損傷、若しくは肺障害を患っている(ヒト)患者における肺線維症が、本明細書で提供される手段及び方法によって治療されるものである。前記(ヒト)患者における前記肺線維症はまた、前記(さらなる)肺疾患、肺損傷、若しくは肺障害によって引き起こされ得る。本明細書で提供される手段及び方法は、特に、miR-21阻害剤の医学的及び/又は薬学的使用に関する。好ましい実施形態では、前記医学的及び/又は薬学的使用は、そのような医学的介入を必要とする(ヒト患者)、すなわち、本明細書で定義される肺線維症に罹患している又は罹患しやすい(ヒト)患者へのmiR-21阻害剤の投与を含む。さらなる実施形態において、本発明は、化合物及び/又は組成物が前記患者に投与されるものであり、前記化合物及び/又は組成物は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む、前記医学的及び/又は薬学的使用に関する。本発明の文脈において、前記miR-21阻害剤はまた、前記miR-21阻害剤を線維芽細胞に送達するさらなる部分も含むことが想定される。したがって、本発明はまた、miR-21阻害剤をマクロファージのみに送達する部分も含む、miR-21阻害剤(及び/又はそれを含む化合物/組成物)の本明細書で定義される医学的及び/又は薬学的使用に関する。以下に詳述するように、本発明に関連して使用される前記化合物/組成物は、miR-21阻害剤を含み、部分はmiR-21阻害剤をマクロファージ及び線維芽細胞に選択的に送達することも想定される。
【0022】
特に添付の実施例に関連して、前記miR-21阻害剤は、肺線維症の医学的介入、特に、肺疾患、肺損傷、又は肺障害によって引き起こされるか、又はそれに関連する肺線維症の医学的介入において使用されることが想定される。前記肺疾患、肺損傷、又は肺障害は、肺の感染症、特に細菌及び/又はウイルスによって引き起こされる感染症であり得る。本明細書に記載されているように、前記ウイルスは、MERS又はSARS、例えば、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-1などのコロナウイルスであってもよい。本発明の手段及び方法で治療される他の肺疾患、肺損傷、又は肺障害は、限定されるものではないが、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、その他のコロナウイルス(例えば、CoV-229、CoV-NL63、CoV-OC43、又はCoV-HKU1)、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、又はヒトボカウイルスによる感染であってもよい。本発明のさらなる文脈において、及び添付の実施例に照らして、治療される肺疾患/損傷/障害、すなわち肺線維症は、SARS-CoV-2/COVID-19誘発性肺損傷であってもよい。さらに、本明細書に記載されているように、マクロファージを標的とするanti-miR-21(すなわち、miR-21阻害剤)は、そのような肺損傷を引き起こす感染体による感染によって誘発される肺損傷を予防又は治癒するための優れた治療原理をさらに構成し得る。本明細書で提供される実施例は、特にSARS-CoV-2感染に関するものである。さらに、本発明の手段及び方法で治療される前記肺疾患/損傷/障害は、例えば、慢性閉塞性肺疾患又は特発性肺線維症などのような別の肺疾患であってもよい。
【0023】
本明細書に記載されているように、本発明者らは、驚くべきことに、肺疾患又は障害に罹患している対象の肺でmiR-21が増加していることも見出した。以下の図13A及び図13Bを参照。miR-21阻害剤による治療は、肺線維症を軽減した。以下に示すように、マクロファージ又は線維芽細胞におけるmiR-21の阻害は、線維症を減少及び/又は予防する。したがって、マクロファージ及び/又は線維芽細胞へのmiR-21の阻害剤の送達は妥当性があるものとなる。したがって、本明細書で提供される組成物及びその使用は、例えば、ウイルス性及び/又は細菌性肺感染症などの肺疾患又は障害によって引き起こされる及び/又はそれらに関連する肺線維症の治療に使用することができる。本発明で治療される肺線維症は、肺補助法又は人工呼吸によって引き起こされるか又はそれらに関連している場合がある。感染症(細菌及び/又はウイルス)、圧力及び/又は(人工)呼吸は、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)を引き起こし、その後に肺線維症を引き起こす場合がある。よって、本明細書で提供される組成物及び組成物の使用は、肺線維症の予防又は治療に適し得る。本明細書で提供される組成物は、肺線維症の予防又は治療にも適し得る。前記組成物は、肺線維症を発症していない対象の治療に使用してもよい。例えば、本明細書で定義されるmiR-21阻害剤、本明細書で提供される組成物/化合物は、肺疾患、肺障害、肺損傷、及び/又はARDSの治療にも使用され得る。本明細書で提供される手段及び方法は、肺疾患、肺損傷、及び/又はARDSの発現前の予防に使用されることも想定される。例えば、SARS-CoV-2感染症のような「コロナウイルス感染症」も、肺線維症に関連している。これは実際に添付の実施例に記載されている。驚くべきことに、miR-21は、罹患/損傷した肺からの(肺胞/肺)マクロファージに濃縮されているだけでなく、さらに驚くべきことに、miR-21は、SARS-CoV-2に感染した個人、つまりヒトCOVID-19患者から得られた肺組織でアップレギュレートされていることが見いだされた。したがって、本明細書で定義されるmiR-21阻害剤、特に、miR-21の阻害剤と、miR-21の前記阻害剤を(肺)マクロファージに送達する部分とを含む、本明細書で定義される化合物/組成物は、とりわけ、インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス、ライノウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒトメタニューモウイルス又はヒトボカウイルス、MERS又はSARS、例えば、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-1、その他のコロナウイルス(例えば、CoV-229、CoV-NL63、CoV-OC43、又はCoV-HKU1)によって引き起こされる又は誘発される感染症の治療に使用され得る。本明細書で提供される組成物/化合物は、そのような(ウイルス)感染症に関連する肺線維性疾患の治療及び/又は予防にも使用され得る。しかし、本発明は、ウイルス感染症に関連する肺線維性疾患の治療に限定されないことに留意されたい。本明細書で論じたように、本発明の驚くべき知見に基づいて、miR-21阻害剤は、特に、罹患/損傷/感染した組織(すなわち、罹患/損傷/感染した肺)のマクロファージに、及び一実施形態では線維芽細胞にも送達する部分に連結された場合、細菌感染症に関連する肺線維症、又は慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症などの他の肺線維症の治療に医学的/薬学的に有用であることも妥当に記載されている。本明細書で提供されるmiR-21阻害剤を含む化合物及び組成物は、例えば、特に成人呼吸窮迫症候群(ARDS)に続く肺補助法/人工呼吸など、肺補助法又は人工呼吸に関する、それらによって引き起こされる又は関連する線維性イベントの医学的/薬学的介入において、特に有用であることが、本発明から明らかである。したがって、本発明はまた、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の治療における、前記miR-21阻害剤を含む、本明細書に記載される化合物/組成物の医学的/薬学的使用に関する。
【0024】
本明細書で使用される「肺(pulmonary)線維症」又は「肺(lung)線維症」という用語は、交換可能に使用することができる。
【0025】
本明細書の添付の実施例及び科学的データで驚くべきことに示されるように、心疾患の大型動物モデルにおけるmiR-21阻害剤の血管内(冠動脈内)適用も肺線維症を減少させた。以下図13Dを参照。したがって、特定の態様では、前記miR-21阻害剤を含む本発明の化合物/組成物は、心臓病に罹患している対象の肺線維症/肺線維症の治療に使用するためのものである。したがって、本発明はまた、心疾患又は障害に罹患している対象である、対象の肺線維症の治療における、本明細書で提供される組成物/化合物の医学的/薬学的使用にも関する。一実施形態では、前記心疾患又は心障害が、線維症を引き起こすか又は線維症に関連している。そのような心疾患又は障害は、前記心疾患又は心障害が、心不全、虚血、虚血後心不全、心肥大、高血圧性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、心臓関連蓄積症、心筋症、収縮性心膜炎、冠動脈疾患、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、右心不全、心不整脈、心筋炎関連線維症、及び心臓弁膜症からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0026】
上記で検討し、添付の実施例によって妥当に記載されているように、肺線維症は人工呼吸関連肺線維症でもあり得る。さらにより好ましい態様では、治療される肺線維症は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)における人工呼吸関連肺線維症及び/又は肺補助法関連肺線維症であり得る。これは、COVID-19患者のように、ウイルス感染症に罹患し、人工呼吸を必要としている対象にも特に関連がある。
【0027】
さらなるインビボ実験において、本発明者らは、線維芽細胞におけるmiR-21の特異的阻害も分析した。添付の非限定的な実施例4及び図14を参照。本発明者らは、線維芽細胞におけるmiR-21の阻害が、心臓のリモデリング及び機能不全を防止することを示した。図14を参照。添付の実施例にも示されているように、肺損傷モデルにおけるmiR-21の特異的阻害は、望ましくない肺のリモデリング及び機能不全を軽減した。例えば、添付の非限定的な実施例6及び図26を参照。したがって、本発明の組成物/化合物は、前記miR-21阻害剤と、前記阻害剤を1又は複数のマクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞に送達する部分とを含み、本明細書に記載及び記載されている通り有益な治療用途を提供する。上記のように、前記組成物に含まれる前記部分は、前記miR-21阻害剤を標的細胞型のみに、例えば、1又は複数のマクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞のみに、好ましくは1又は複数の肺マクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞のみに、又は特定の態様では、1又は複数の肺胞マクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞並びに/又は1又は複数の間質マクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞のみに送達することができる。さらに、本発明者らは、肺線維症に罹患していない対象と比較して、肺線維症に罹患している対象においてmiR-21が増加していることを見出した。図13A及び図13Bを参照。miR-21がヒト被験体(図13B)及び肺線維症に罹患している動物モデルにおいても増加することは、本明細書の以下に記載されている。
【0028】
本発明者らはまた、miR-21阻害剤、特にアンチセンス(antisense)-miR-21(例えば、添付の実施例でも使用及び採用されているLNA-anti-miR-21)を、肺線維症に罹患した動物モデルに投与した。本発明者らは驚くべきことに、miR-21阻害剤が肺線維症(又は肺の線維症)を軽減、予防、及び/又は改善することを見出した。この有益な治療効果は非常に強力であった。したがって、本明細書で提供される組成物及び治療的使用/方法は、本明細書で以下にさらに示されるように、有利で安全かつ効果的な治療を提供する。
【0029】
以下にさらに記載するように、大型動物モデルにおけるmiR-21阻害剤の投与は、マクロファージ浸潤並びに線維芽細胞増殖の減少をもたらした。したがって、本明細書で提供されるインビボデータは、前記miR-21阻害剤が線維芽細胞及びマクロファージにおけるその活性を通じて線維症を減少させることを示している。実施例1を参照。さらなるインビボ研究は、本明細書において以下に記載される。予想外に、miR-21は全てのmiRNAの中で心臓マクロファージにおいて最も強力に発現していることが示された。以下図8Bを参照。
【0030】
これらの実験結果を考慮して、本発明者らは、マクロファージにおけるmiR-21の特異的阻害が線維症における有益な治療であるかどうかをさらに分析した。実施例2を参照。マクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達されるmiR-21阻害剤の典型として、miR-21は動物疾患モデルのマクロファージ又は線維芽細胞で欠失された。上記及び下記を参照。マクロファージでのmiR-21阻害は、マクロファージでの炎症誘発性極性化を防ぎ、炎症を防ぐ。さらに、マクロファージにおけるmiR-21阻害は、線維症、特に、例えば圧力過負荷によって誘発される線維症などの心臓線維症を減少させる。さらに、マクロファージにおけるmiR-21阻害が、例えば心機能不全などの臓器の機能不全を改善することを以下に示す。マクロファージにおけるmiR-21阻害が、心疾患又は障害における心機能を改善することも示されている。さらに、インビボ動物モデルにおいて、マクロファージにおけるmiR-21阻害が、肥大関連遺伝子及び線維症関連遺伝子を減少させることを以下に示す。また、マクロファージ依存性の筋線維芽細胞の形質転換が、マクロファージにおけるmiR-21阻害によって減少することが本明細書において示される。添付の実施例に示すように、線維芽細胞は、マクロファージからの細胞間シグナル伝達の主要なレシピエントである。したがって、線維芽細胞は、マクロファージに含まれる/発現されるmiR-21によって制御される。よって、マクロファージにおけるmiR-21阻害剤は、線維芽細胞に対する傍分泌線維化促進性シグナル伝達を制御する。添付の実施例に記載されているように、マクロファージ由来の線維化促進性分泌シグナルは、病的線維症を制御するのに充分強力である。
【0031】
上記及び下記に示されるように、線維芽細胞におけるmiR-21阻害は、心臓のリモデリング及び機能障害を防止する。添付の図14を参照。
【0032】
したがって、マクロファージ又は線維芽細胞におけるmiR-21の排他的阻害は、線維症、特に肺線維症の治療において強力な医学的可能性を提供する。
【0033】
マクロファージ及び/又は線維芽細胞に含まれるmiR-21の特異的標的化/阻害は、miR-21の全身阻害と比較して有利であると考えられる。例えば、miR-21の阻害剤の特異的送達、したがってマクロファージ及び/又は線維芽細胞におけるmiR-21の特異的阻害は、筋細胞又は非筋細胞などの全ての細胞型における全体的な阻害のリスクを低減する。例えば、筋細胞における阻害は、特に急性疾患状態において有害である。したがって、添付の実施例に記載され、本明細書で説明されるように、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤を1又は複数のマクロファージに、所望によりさらに可能性のある1又は複数の線維芽細胞に送達する部分とを含む本発明の組成物/化合物を用いたマクロファージ及び/又は線維芽細胞におけるmiR-21の特異的阻害による線維症の予防及び軽減は、線維症の有利な治療をもたらす。添付の実施例に記載されているように、マクロファージへのmiR-21阻害剤の標的送達は、驚くほど高い抗線維症効果をもたらす(非標的anti-miR-21/非標的anti-miR-21阻害剤による以前に記載された効果よりも高い)。これは、本発明の予想外の知見である。実験の部分に記載されているように、マクロファージへのmiR-21阻害剤(anti-miR-21)の優先的送達/優先的標的化及び線維芽細胞からのその相対的排除は、従来技術で提供されたmiR-21の作用部位の線維芽細胞仮説に基づいて、あまり顕著な抗線維症効果をもたらさないと予想された。この「線維芽細胞仮説」は、miR-21の発現は、ブレオマイシン処理肺の肺筋線維芽細胞並びに特発性肺線維症に罹患している患者の線維芽細胞病巣で増加したと考えたLiu (2010)(J Exp Med. 207:1589-97)により提唱された。前記著者ら(Liu(2010)(上記引用文))は、ブレオマイシン投与後に腹腔内にmiR-21アンチセンスプローブを投与したところ、肺における減弱したコラーゲン沈着が観察された。しかしながら、線維症への直接的な影響は記載されておらず、前記著者らは、ブレオマイシンを投与した肺の(筋)線維芽細胞並びに特発性肺線維症に罹患している患者の線維芽細胞病巣でのmiR-21発現の増加を確認した。Liu(2010)(上記引用文)によるこれらの知見とは対照的に、本発明者らは、とりわけ、疾患組織(肺だけでなく心臓においても)のマクロファージにおけるmiR-21のさらに関連性の高い発現を記載している。特に、本発明者らは驚くべきことに、miR-21がCOVID-19犠牲者の肺でアップレギュレートされたmiRNAの上位にあることを見出した。添付の図19を参照。ブレオマイシン投与後の肺については、添付の図21を参照。前記miR-21は、予想外にも、肺マクロファージにおいて最も豊富で濃縮されたマイクロRNAでもある。添付の図12及び図20を参照。哺乳動物の肺におけるマクロファージの存在量が非常に高いため、発明者らは、肺のmiR-21の大部分が肺マクロファージに由来すると結論付けた。したがって、本発明の驚くべき知見の1つは、マクロファージで特異的にmiR-21を標的とすること(前記マクロファージに特異的に送達されるmiR-21の阻害剤を介して)は、肺損傷、例えば、SARS-CoV-2による感染症などウイルスによる感染などの感染症によって誘発される肺損傷を予防又は治療するための優れた治療原理を構成することである。添付の実施例にも記載されているように、驚くべきことに、(エアロゾル化)吸入を介したマクロファージへの特異的なmiR-21の阻害剤の送達は、肺線維症を効率的に軽減し、肺機能の低下はmiR-21のマクロファージ特異的阻害によって防止されたことがわかった。例えば、図26を参照。本発明の組成物/化合物のこの高い効率は、先行技術から予見も予想もされていなかった。添付の実施例で提供され、本明細書で検討されるように、本発明者らは、高度に発現され、この細胞型に対して比較的選択的であり、その特定の受容体に対する(特定の)リガンドの取り込みに適した肺マクロファージの表面受容体を同定した。そのようなリガンドは、低分子リガンドであってもよく、タンパク質性リガンド(又はその機能的断片)も含み得る。前記低分子リガンド、前記タンパク質性リガンド(又はその機能的断片)は、好ましくは、マクロファージの細胞表面(及び所望により線維芽細胞上)の(表面)分子と特異的に相互作用することができる。一実施形態では、そのような相互作用はまた、例えばエンドサイトーシスを介して、本発明の組成物/化合物の内在化をもたらし得る。前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分としての抗体(又はscFvなどのその機能的断片)の使用も本明細書で想定される。そのような抗体(又はその機能的断片)は、マクロファージ(及び所望により線維芽細胞)上の(表面)マーカー/受容体に特異的に結合し得る。添付の実施例では、肺及び心臓の初代細胞の単一細胞配列決定並びに選別され精製された細胞画分のディープRNAシーケンシングを実施した。これらのデータのバイオインフォマティクス分析により、上記の基準を満たすいくつかの表面分子が得られた(添付の表3を参照)。その中で、MRC1(マクロファージ受容体C型1)は、肺マクロファージで高度に特異的かつ高度に発現されることが証明された。肺マクロファージ上のマンノース受容体C型1の発現は、肺組織の免疫蛍光染色によってさらに検証された。添付の非限定的な実施例5及び図22を参照。添付の図27からも、心臓マクロファージでのマンノース受容体C型1の高発現が確認される。
【0034】
本発明者らは、MRC1を使用して、miR-21阻害剤を(ヒト)マクロファージに特異的に送達した。さらに、本発明者らは、吸入による局所送達と組み合わされたmiR-21阻害剤のマクロファージ特異的標的化が、肺線維症を予防又は治療するための優れた治療原理を構成することを認識した。以下に示すように、本発明者らは、miR-21阻害剤への化学リンカーを用いて、MRC1(ここでは、トリマンノース、GalNAc)のリガンドを結合した(添付の非限定的な実施例5及び図23を参照)。
【0035】
インビボ実験において、本発明者らは、これらの化合物の肺への送達を確認し、それらの動態を、蛍光標識とその後の蛍光細胞サイトメトリーによる検出によって追跡した。miR-21の非標識阻害剤を含む組成物と比較して、miR-21のマンノース共役阻害剤を含む組成物は、肺胞マクロファージのより高い画分割合へ送達され、マクロファージにおいてより高いレベルに達し、内皮細胞などの非マクロファージ細胞型ではより低いレベルに達した。実施例5並びに図24及び図25を参照。
【0036】
さらなるインビボ実験において、本発明者らは、miR-21のマクロファージ標的化マンノース共役阻害剤を含む組成物の効率を試験した。この目的のために、肺線維症のマウスモデルを使用した。マウスは、肺傷害誘導の4日後に吸入によりエアロゾル化された組成物を投与された。以下の実施例5及び図26に示されるように、前記組成物を投与されたマウスでは肺線維症が軽減された。したがって、この治療原理は、最も関連する機能的及び構造的パラメーターによって決定されるように、肺機能障害及び肺線維症に対しても有意に有効であった。
【0037】
本明細書及び特定の態様で提供される科学的エビデンスに従って、本発明は、本明細書で定義される組成物/化合物、すなわち、miR-21阻害剤を含み、miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分を含む組成物/化合物に関する。これらの本発明の組成物/化合物は、特に肺線維症の医学的介入において使用される。miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む組成物/化合物は、肺線維症の予防にも使用され得る。例えば、本発明の化合物/組成物は、肺の損傷につながる可能性のある障害/疾患の初期段階、例えば肺補助法又は人工呼吸を必要とする感染の初期段階及び/又は疾患の段階で使用されることが想定される。したがって、本発明はまた、医学的介入並びに例えば成人呼吸窮迫症候群(ARDS)に続く肺線維症の予防においても有用である。
【0038】
ある態様では、本発明は、組成物、及び肺線維症の治療におけるその使用に関し、前記組成物は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する部分とを含む。
【0039】
本明細書の上記及び下記で提供される定義及び説明は、線維症、特に肺線維症の治療に使用するための組成物/化合物、本明細書で提供される組成物/化合物、前記組成物/化合物の製造方法、肺線維症の治療における前記組成物/化合物の使用、及び本明細書で提供される治療方法に適用される。
【0040】
本明細書で使用する「miR」という用語は、「マイクロリボ核酸」又は「miRNA」という用語と交換可能に使用することができる。
【0041】
本明細書で使用される場合、miR-21は、miRNA-21、特に、以下の添付の図1Bに示されるmiR-21a-5p又はmiR-21-5pを指す。
【0042】
本明細書で使用される場合、「miR-21阻害剤」は、内因性miR-21に特異的に結合して阻害する分子を指す。したがって、miR-21阻害剤の標的はmiR-21であり得る。miR-21の標的はまた、miR-21の下流の標的を包含すると理解され得る。前記miR-21阻害剤は、miR-21の標的mRNA及び/又は少なくとも1つの標的mRNAのレベルを上昇させる。例えば、miR-21に少なくとも相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを介したmiR-21の阻害は、Sprouty(細胞シグナル伝達に関与する発生タンパク質)及び同種のものであるmiR-21の標的の抑制解除又は過剰発現にさえ至る。miR-21阻害剤の投与後のmiR-21阻害効果は、当技術分野で公知の様々な方法によって評価することができる。例えば、miRNAレベルは、インビトロ又はインビボで細胞又は組織において定量化/決定することができる。miRNAレベルの変化は、マイクロアレイ解析によって測定できる。miRNAレベルの変化は、TaqMan(登録商標)MicroRNA Assay(Applied Biosystems社)などのいくつかの市販のPCRアッセイのいずれかで測定できる。例えば、miR-21阻害剤の投与によるmiR-21阻害は、miRNAの標的のmRNA及び/又はタンパク質レベルを測定することによって評価される。添付の実施例で示されるように、miR-21の欠失により誘導されるmiR-21の阻害は、miR-21のレベルの約>90%の劇的な減少をもたらした。さらに、阻害剤は当技術分野において公知である。例えば、Thum(2008)(Nature 456:980-984)、Zhang(2015)(Cancer Res 75(9):1-9)、又はArdite(2012)(J Cell Biol 196(1):163-175)を参照。また、miR-21阻害剤は、さらに試行錯誤することなく特定できる。miR-21に少なくとも部分的に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドから構成されるmiR-21阻害剤の例は、本明細書で証明されている。例えば、添付の図1B(LNA-anti-miR-21オリゴヌクレオチドを示す)、添付の図23B(「anti-miR-21部分」(miR-21阻害剤)を含む本発明の2つの例示的な化合物/構築物並びに前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分、すなわちここではトリマンノース又はN-アセチルガラクトサミンを示す)、又は添付の図26A(とりわけ、「LNA-anti-miR-21リンカー-マンノース」の形式であり、添付の配列番号3にも示されるオリゴヌクレオチドを含む本発明の例示的な構築物を示す)を参照。したがって、例示される「anti-miR-21」オリゴヌクレオチドは、限定されないが、アンチセンス-miR-21 3´-tCgAaTaGtCtGaCT-5´(配列番号1)及び/又はアンチセンス-miR-21 3´-TCgAaTagTCtgAcT-5´(配列番号2)を含み、それにより本明細書ではLNA-DNAコンストラクトが示される(本明細書では「ミックスマー(mixmer)」と称される)。大文字はロックド(locked)核酸ヌクレオチド(LNA)を表し、小文字はDNA塩基を表し、全ての大文字の「C」は本明細書では5-メチル-シトシンを表す。したがって、これらの2つの配列3´-tCgAaTaGtCtGaCT-5´及び3´-TCgAaTagTCtgAcT-5´は、「ミックスマー」、すなわちLNAヌクレオチド及びDNAヌクレオチドを含むコンストラクトを構成する-配列番号3は、LNAオリゴヌクレオチドを表す有用な「anti-miR-21」も表す(したがって、例示される配列番号3は、配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチド、5’-メチル-シトシン修飾、及びホスホロチオエート骨格を有するLNAコンストラクトを表す)。さらに有用であるが非限定的な「anti-miR-21」オリゴヌクレオチドは、配列番号7~9を含む。配列番号7は、配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチド及び5’-メチル-シトシン修飾を有し、ホスホロチオエート骨格を有さないLNAコンストラクトである。配列番号8は、配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチド及びホスホロチオエート骨格を有し、5’-メチル-シトシン修飾を有さないLNAコンストラクトである。配列番号9は、配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチドを有し、任意の5’-メチル-シトシン修飾及びホスホロチオエート骨格を有さないLNAコンストラクトである。上記と同様に、本明細書で提供される配列において、大文字はLNAを指し、小文字はDNA塩基を指す。全ての大文字のCは、5-メチル-シトシンを表す。miR-21に対するアンチセンスmiRは、完全なPS(ホスホロチオエート)骨格を有し得る。配列番号1も参照。また、本明細書の以下で説明するように、特に有用なアンチセンス-miR-21分子は、配列番号1及び配列番号2で提供され、最も好ましいのは、添付の実施例に示されるように、以下の「anti-miR-21」:3´-tCgAaTaGtCtGaCT-5´(配列番号1)である。しかし、本発明は決してこれらの特定のオリゴヌクレオチドに限定されない。当業者は、さらなる「anti-miR-21」コンストラクト/オリゴヌクレオチドも本発明の文脈で使用できることを承知している。そのような「anti-miR-21」コンストラクト/オリゴヌクレオチドは、例えば、RNAコンストラクト、PNA(ペプチド核酸)及び同種のものを含み得る。また、anti-マイクロRNAオリゴヌクレオチドのモルホリノオリゴマー(ホスホロジアミデートモルホリノオリゴマー)、アンタゴマー(antagomir)/ブロックマー(blockmir)、ZEN(N,N-ジエチル-4-(4-ニトロナフタレン-1-イルアゾ)-フェニルアミン)-修飾などの、前記anti-miR-21オリゴヌクレオチドのさらなる修飾も想定される。さらに有用な修飾については、とりわけKhvorova (2017) Nature Biotech 35, 238-248のレビューにも記載されている。
【0043】
Sun(2019)(https://doi.org/10.1155/2019/6782653)において論じられているように、miR-21の阻害は、miRNAスポンジ、miRNAマスクなどの手段によっても、本明細書で詳述されるようにanti-miRNAオリゴヌクレオチド(anti-miR)によっても達成できる。anti-miRは、目的の内因性miRNAに直接結合し、miRISC複合体の破壊を通じてmiRNAによるmRNA翻訳の抑制をブロックするように設計された一本鎖合成オリゴヌクレオチドである。
【0044】
miRNAスポンジは、内因性標的からmiRNAを隔離するおとりとして機能する複数の結合部位を有する転写産物である。それらは、単一の特定のmiRNA又は共通のシード領域を共有する関連miRNAのファミリー全体を標的化にするように設計できる。
【0045】
miRNAマスクは、標的mRNAの3UTRにある早期miRNA結合部位と完全に塩基対形成する一本鎖修飾オリゴヌクレオチドである。本発明の文脈において、「miRNAスポンジ」又は「miRNAマスク」を用いてmiR-21を阻害することが想定されるが、本発明の文脈におけるmiR-21を特異的に標的とするanti-miRNAオリゴヌクレオチド(anti-miR)を使用することが好ましい。
【0046】
本明細書で使用される「miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分」又はその文法的変形は、担体、及び/又はmiR-21の阻害剤をマクロファージに送達する部分を指す。担体及び/又は部分は、マクロファージ又は標的細胞でmiR-21の阻害剤を濃縮する。本明細書で使用されるように、前記標的細胞は1又は複数のマクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞であり、好ましくは、標的細胞は1又は複数のマクロファージである。好ましい態様において、前記マクロファージ及び/又は線維芽細胞は、肺マクロファージ及び/又は肺線維芽細胞である。より好ましい態様では、前記マクロファージ及び/又は線維芽細胞は、肺胞マクロファージ及び/若しくは肺胞線維芽細胞並びに/又は間質マクロファージ及び/若しくは間質線維芽細胞である。ある態様では、担体及び/又は部分は、miR-21の阻害剤のエンドサイトーシスをもたらす。エンドサイトーシスは、miR-21阻害剤の取り込みを増加させることができる。特定の態様では、前記組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤をマクロファージ又は複数のマクロファージに送達する。前記組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤を1又は複数の線維芽細胞にさらに送達し得る。以下に示すように、線維芽細胞におけるmiR-21の欠失は、有益な効果を提供する。したがって、前記組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤を1又は複数のマクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞に送達し得る。特定の態様では、前記組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤を1又は複数のマクロファージ及び1又は複数の線維芽細胞に送達する。好ましい局面において、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する担体及び/又は部分は、前記miR-21阻害剤、すなわち本発明の化合物の両方の部位に連結される、すなわち「miR-21阻害剤」と「miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分」とが1つの分子に含まれている。前記分子はまた、「リンカー」及び/又は「マーカー」(蛍光マーカーなど)などの追加の「部分」及び/又は部位を含んでいてもよい。そのようなマーカーは、「リンカー」構造の一部であってもよい。対応する例を以下に提供し、一例を添付の図23Bの上部に示す(「リンカー」が「フルオレセインアミダイト誘導体」/FAMを含むGalNAc結合LNA-anti-miR-21-FAM)。
【0047】
特定の好ましい態様では、前記組成物に含まれる担体及び/又は部分は、関連する標的細胞、本明細書では特にマクロファージのみに前記miR-21阻害剤を送達する。したがって、特定の態様では、前記組成物に含まれる担体及び/又は部分は、前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞のみに送達する。添付の例では、miR-21はマクロファージ又は線維芽細胞で欠失された。したがって、添付の実施例は、マクロファージにおけるmiR-21の特異的な欠失/阻害を示す。よって、本明細書で使用される場合、「miR-21阻害剤をマクロファージのみに送達する」という用語は、前記阻害剤がマクロファージのみに送達されることを意味する。本明細書で使用される場合、「miR-21阻害剤を繊維芽細胞のみに送達する」という用語は、前記阻害剤が繊維芽細胞のみに送達されることを意味する。したがって、前記部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤を、マクロファージ及び/又は線維芽細胞ではない他の細胞型に送達しない。特に、本発明の組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤を筋細胞に送達しない。よって、特定の態様では、前記組成物に含まれる担体及び/又は部分は、前記miR-21阻害剤をマクロファージのみに送達し、前記部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤を筋細胞に送達しない。添付の実施例及び本明細書で説明される通り、マクロファージにおけるmiR-21阻害剤は、線維芽細胞に対する傍分泌線維化促進性シグナル伝達を制御することが記載されている。よって、特定の態様では、前記部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び線維芽細胞のみに送達する。ある態様では、前記部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び線維芽細胞に送達し、前記部分及び/又は担体は、前記miR-21阻害剤を筋細胞に送達しない。
【0048】
特定の態様では、前記miR-21阻害剤は、肺マクロファージ及び/又は肺線維芽細胞に送達される。特定の態様では、前記miR-21阻害剤は肺細胞に送達される。最も好ましい局面において、前記miR-21阻害剤は、肺マクロファージに送達される。本明細書で提供される組成物の投与は、肺又は肺標的細胞への送達を提供する。特定の態様では、前記miR-21阻害剤は、肺マクロファージ及び肺線維芽細胞に送達される。好ましい局面において、肺細胞への送達は、肺への組成物の投与によって提供される。よって、前記組成物は、肺投与によって投与されるものである。例えば、前記組成物はエアロゾル化された組成物によって対象の肺に投与されるものである。特に、前記組成物が、エアロゾル化された組成物によって、吸入により対象の肺に投与されるか又は肺、気管支、及び/若しくは気道への局所投与の他の手段によって肺に投与される。特定の実施形態において、組成物は、吸入による投与のために調製される。吸入用のそのような組成物のいくつかは、加圧パック又はネブライザー内のエアロゾルスプレーの形態で調製される。このような組成物のいくつかは、噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適切なガスを含む。加圧エアロゾルを使用する特定の実施形態では、投薬単位は、計量された量を送達するバルブで決定され得る。特定の実施形態では、吸入器(inhaler)又は注入器(insufflator)で使用するためのカプセル及びカートリッジを処方することができる。このような製剤のいくつかは、組成物とラクトース又はデンプンなどの適切な粉末基剤との粉末混合物を含む。気道及び肺の特定の部分を標的とするネブライザー装置を使用して液滴のサイズを調節するための製剤及び方法は、当業者に周知である。追加の適切な装置には、乾燥粉末吸入器又は定量吸入器が含まれる。
【0049】
本明細書で提供される組成物はまた、動脈内投与によって、好ましくは心臓内投与によって、より好ましくは冠動脈内投与によって投与することができる。以下に示すように、前記miR-21阻害剤の冠動脈内投与は肺線維症を軽減する。したがって、特定の実施形態では、対象への投与は、動脈内投与を含む。特定の実施形態において、対象への投与は、心臓内投与を含む。心臓内投与のための適切な手段には、カテーテルの使用又は開心術中の投与が含まれる。
【0050】
さらに、前記miR-21阻害剤はまた、1又は複数の心臓マクロファージに送達されていてもよい。添付の実施例に示されるように、心臓マクロファージへのmiR-21阻害剤の送達は、肺線維症を減少させた。図13Dを参照。したがって、前記miR-21阻害剤は、特定の態様において1又は複数の心臓マクロファージに送達される。さらなる特定の態様では、前記miR-21阻害剤は、1又は複数の肺マクロファージ及び/又は1又は複数の心臓マクロファージに送達される。さらなる特定の態様では、前記miR-21阻害剤は、1又は複数の肺マクロファージ及び/又は1又は複数の肺線維芽細胞へ、並びに/又は1又は複数の心臓マクロファージ及び/又は1又は複数の心臓線維芽細胞へ送達される。しかし、本発明の文脈において、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤を心臓マクロファージに送達する部分とを含む本発明のそのような化合物/組成物は、肺線維症の医学的介入だけでなく、例えば、心臓の線維症などの他の線維症事象においても使用されることも想定される。
【0051】
以下に示すように、miR-21阻害剤の心臓投与は肺線維症を減少させた。以下例えば添付の図13Dを参照。本明細書で使用される「肺(pulmonary)線維症」又は「肺(lung)線維症」という用語は、交換可能に使用することができる。したがって、特定の態様では、前記化合物は、対象の肺(pulmonary)線維症/肺(lung)線維症の治療に使用するためのものである。より具体的な態様では、肺線維症は人工呼吸関連肺線維症であり得る。さらにより好ましい態様では、肺線維症は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)における人工呼吸関連肺線維症であり得る。本明細書で提供される組成物は、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)が続き、その後線維症が続く肺損傷(例えば、感染、圧力及び/又は換気によって誘発される)の治療の使用に特に適し得る。本明細書で提供される組成物は、線維症の予防又は治療にも適し得る。したがって、本明細書で提供される組成物は、肺線維症の発症に先立つ肺損傷及び/又はARDSの治療における治療又は予防にも適し得る。
【0052】
肺線維症に罹患している対象はさらに、肺疾患又は肺障害を有する/罹患している/診断されていてもよい。肺疾患又は肺障害は、線維症、好ましくは肺線維症を引き起こすか又はそれに関連している可能性がある。好ましい態様では、前記肺疾患又は肺障害が、ウイルス及び/若しくは細菌によって引き起こされるか、炎症に関連しているか、慢性閉塞性肺疾患であるか、又は特発性肺線維症である。線維症も炎症を引き起こす場合があり、本明細書で提供される組成物は、そのような炎症の治療に使用することができる。より好ましい態様では、肺疾患又は肺障害は、ウイルス感染であり、及び/又は肺疾患又は肺障害は、ウイルス感染に基づく又は関連している。さらなる態様において、肺疾患又は肺障害は、ウイルス感染及び/又は細菌感染である。したがって、本発明に従って治療される対象は、ウイルス感染及び/又は細菌感染に関連する肺疾患/障害に罹患している可能性がある。すなわち、前記対象は、両方の種類の感染症にも罹患している可能性がある。より好ましい局面において、肺疾患又は肺障害は、ウイルス性肺炎感染症である。より好ましい態様では、肺疾患又は肺障害は、コロナウイルス疾患である。より好ましい態様では、肺疾患又は肺障害は、COVIDであり、及び/又はSARS又はMERSを引き起こしている又はそれらに関連している。より好ましい態様では、前記肺疾患又は肺障害が、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-1によって引き起こされる又は誘発される。特に好ましい態様において、肺疾患又は肺障害は、COVID-19である。本発明者らは、そのような罹患した対象はmiR-21レベルが増加しているため、例えば、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-1によって引き起こされる又は誘発されるウイルス感染及び/又は細菌感染に関連するか又はそれらによって引き起こされる肺線維症を治療することができると想定した。本発明者らは、驚くべきことに、肺疾患又は肺障害に罹患している対象の肺でmiR-21が増加していることを見出した。以下の図13A及び図13Bを参照。miR-21阻害剤による治療は、肺線維症を軽減した。以下に示すように、マクロファージ又は線維芽細胞におけるmiR-21の阻害は、線維症を減少及び/又は予防する。したがって、マクロファージ及び/又は線維芽細胞へのmiR-21の阻害剤の送達は妥当性があるものとなる。したがって、本明細書で提供される組成物及びその使用は、肺疾患又は肺障害によって引き起こされる及び/又はそれらに関連する肺線維症の治療に使用することができる。特定の態様では、本発明は、対象の肺線維症の治療における組成物の使用に関し、前記対象は、肺疾患又は肺障害に罹患しており、並びに前記組成物は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む。さらに特定の態様では、本発明は、対象の肺線維症の治療における前記組成物の使用に関し、前記対象は、肺疾患又は肺障害に罹患しており、並びに前記医薬組成物は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する部分とを含む。
【0053】
さらにより好ましい態様では、前記肺疾患又は肺障害が、SARS-CoV-2又はSARS-CoV-1によって引き起こされる又は関連している。
【0054】
特定の態様では、本発明で治療される肺線維症は、肺補助法又は人工呼吸によって引き起こされるか又はそれらに関連している。さらなる態様において、本発明において治療される肺線維症は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)に続くか、又はそれに関連している。
【0055】
さらなる態様では、本明細書で提供される組成物は、心臓線維症、肺線維症、肝線維症、腎線維症、皮膚線維症、加齢性線維症、及び/又は脾臓線維症からなる群から選択される線維症の治療に使用することができる。例えば、本明細書で提供される組成物は、肺線維症及び/又は心臓線維症の治療に使用することができる。本明細書の以下に示すように、miR-21阻害剤による心臓線維症の治療は、肺線維症をさらに減少/緩和した。ある態様では、本明細書で提供される組成物は、マクロファージ関連線維症の治療に使用することができる。
【0056】
本明細書で提供される治療はまた、線維症、好ましくは肺線維症に罹患し、肺疾患又は肺障害、心疾患又は心障害、及び肝疾患又は肝障害から選択される少なくとも1つの疾患又は障害をさらに有する対象に実施されてもよい。特に、線維症、好ましくは、肺線維症は肺疾患又は肺障害及び/又は心疾患又は心障害に関連している。特定の態様では、前記対象は、肺疾患又は肺障害を有し、さらに心疾患又は心障害、及び/又は肝疾患又は肝障害を有する。
【0057】
本明細書で使用される場合、治療される対象は、好ましくはヒト、すなわちヒト患者である。
【0058】
ある態様では、前記心疾患又は心障害は、線維症、例えば肺線維症を引き起こすか又はそれに関連している。さらなる態様では、前記心疾患又は心障害が、心不全、虚血、虚血後心不全、心肥大、高血圧性心不全、拡張期心不全、収縮期心不全、心臓関連蓄積症、心筋症、収縮性心膜炎、冠動脈疾患、急性心筋梗塞、慢性心筋梗塞、右心不全、心不整脈、心筋炎関連線維症、及び心臓弁膜症からなる群から選択される。したがって、本明細書で提供される肺線維症の治療を受ける対象は、肺線維症を引き起こすか又はそれに関連する任意のさらなる疾患又は障害/状態に罹患している可能性がある。
【0059】
特定の態様では、本明細書で提供される組成物/本発明に関連して本明細書に記載される化合物は、線維症、特に肺線維症を予防及び/又は軽減する。さらに特定の態様では、本明細書で提供される組成物/化合物は、マクロファージの炎症誘発性極性化を予防又は低減し、炎症、筋線維芽細胞の形質転換、及び/又は肺の線維症(すなわち、肺線維症)を予防する。したがって、治療される肺線維症は、マクロファージから分泌される線維芽細胞活性化因子及び/又は線維芽細胞阻害因子の調節によっても刺激され得る。
【0060】
特定の態様では、本発明に関連して本明細書に記載される組成物/化合物は、急性傷害/疾患/障害の少なくとも約5日後に対象/患者に投与される。特定の態様では、前記組成物は、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の少なくとも約5日後に対象に投与される。しかし、医学的介入を必要とする患者は、可能な限り早い時点で本発明の化合物/組成物を投与されることが想定される。さらなる特定の態様において、前記組成物は、虚血の少なくとも約5日後に対象に投与されるものである。以下に示すように、虚血(心臓)の少なくとも5日後に前記miR-21阻害剤を投与すると、虚血後の心筋における取り込み及び治療効果が予想外に増加した。miR-21阻害剤の取り込みの増加は、虚血直後にのみ予想されため、miR-21阻害剤の取り込みが増加したという知見は、虚血の5日後では予想外であった。急性傷害/疾患/障害の状況では、前記miR-21の阻害剤、特にアンチセンスmiR-21の取り込みが増加する。これは、内皮漏出及び細胞外マトリックスの溶解が原因である場合がある(理論に拘束されるものではない)。よって、驚くべきことに、前記miR-21阻害剤の投与により、急性傷害/疾患/障害(例えば、虚血又はARDS)の約5日後であっても、前記miR-21阻害剤の取り込みが増加することが本明細書に記載されている。したがって、急性傷害/疾患/障害(例えば、虚血又はARDS)の少なくとも約5日後の前記miR-21阻害剤の投与は、急性傷害/疾患/障害(例えば、虚血又はARDS)での投与と比較してより安全であり得る。そのような遅延投与は、急性環境における有害な影響を回避するためである。本明細書において、急性傷害/疾患/障害とは、傷害/疾患/障害により対象において前記miR-21阻害剤の取り込みが亢進している状況をいう。したがって、急性時は、前記miR-21阻害剤の取り込みは、対象が傷害/疾患/障害に罹患していない状態と比較して増加する。
【0061】
ある態様では、本発明の組成物/化合物は、前記対象/患者に、急性傷害/疾患/障害、特に成人呼吸窮迫症候群(ARDS)又は虚血の少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約7日、少なくとも約8日、少なくとも約9日、少なくとも約10日、少なくとも約11日、少なくとも約12日、少なくとも約13日、少なくとも約14日、少なくとも約15日、少なくとも約16日、少なくとも約17日、少なくとも約18日、又は少なくとも約19日後に投与されるものである。特に、前記組成物は、さらに成人呼吸窮迫症候群(ARDS)の少なくとも約19日後に対象に投与される。ある態様では、前記組成物は、急性傷害/疾患/障害、特に成人呼吸窮迫症候群(ARDS)又は虚血の少なくとも約19日、20日、30日、又は40日後に前記対象に投与されるものである。概して、本明細書では、驚くべきことに、遅延投与、すなわち、例えば虚血又はARDSなどの急性事象の後の投与が、有益な治療効果を提供することが実証された。したがって、急性事象後のそのような投与は、急性疾患又は障害時における投与と比較して有利である。したがって、特定の態様では、本明細書で提供される組成物/化合物は、例えば、急性心疾患若しくは心障害及び/又は急性肺疾患若しくは肺障害などの急性疾患又は障害時に投与されない。したがって、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する部分とを含む組成物/化合物は、前記肺疾患若しくは肺障害及び/又は前記心疾患若しくは心傷害の慢性期に投与されることが好ましい。したがって、一例として、本発明の化合物/組成物を必要とする患者に、前記miR-21阻害剤を含み、前記miR-21阻害剤を、例えば肺線維症などの慢性期のマクロファージに送達する部分を含む組成物/化合物を提供することが想定される。対応するシナリオは、例えば、感染体が患者においてもはや検出可能ではないが、(肺)損傷が持続する又は悪化することさえある場合に、感染(例えば、SARS-CoV-2など)によって引き起こされる肺線維症における本発明の化合物/組成物の医学的/薬学的使用である。これは、例えば、いわゆる「ロングCOVID」患者の場合に当てはまる場合がある。しかし、例えば、感染によって引き起こされる肺線維症のような肺損傷の予防においてさえも、投薬を必要とする患者に可能な限り早い時点で同じものが提供されることが想定されることに留意されたい。
【0062】
驚くべきことに、約10mgの前記miR-21阻害剤を含む単回用量での組成物の投与は、治療効果及び線維症の低下を提供し、例えば、前記miR-21阻害剤の単回投与は、miR-21及びとmiR-21によって引き起こされる負担を軽減したことが本明細書の以下にも示されている。したがって、特定の態様では、前記組成物は、約10mgの前記miR-21阻害剤を含む単回用量で投与される。さらに特定の態様では、前記組成物は、約10mg以下の前記miR-21阻害剤を含む単回用量で投与される。例えば、前記組成物は、約1mg、約2mg、約3mg、約4mg、約5mg、約6mg、約7mg、約8mg、又は約9mgのmiR-21阻害剤を含む単回用量で投与される。本発明者らは、前記組成物の肺投与は、10mg未満の前記miR-21阻害剤を必要とすることを想定している。さらなる態様において、本発明の組成物/化合物は、本発明の組成物/化合物の約1mg~約1gを含む用量で、医学的介入を必要とする患者に投与されるものである。投与される前記用量は、単回用量であり得る。投与は、例えば、吸入による/エアロゾルとしてあり得る。さらに特定の態様では、前記組成物/化合物は、本発明の組成物/化合物を約10mg~約900mg含む単回用量で投与されるものである。例えば、前記組成物/化合物は、約100mg~約800mgの前記組成物を含む単回用量で投与することができる。したがって、本発明者らは、前記組成物/化合物の肺投与は、個々の用量当たり約1mg~約1gの本発明の組成物/化合物を必要とすることを想定している。前記肺投与は、吸入を介して、例えばエアロゾルの形態で達成することができる。
【0063】
本明細書の上記及び下記に提供されるように、前記組成物は、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む。上記のように、担体及び/又は部分は、マクロファージ又は標的細胞でmiR-21の阻害剤を濃縮する。したがって、前記担体及び/又は部分は、マクロファージ又は標的細胞で前記組成物を濃縮する、例えば、前記担体及び/又は部分は、マクロファージ及び線維芽細胞で前記組成物を濃縮する。ある態様では、前記組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記組成物を1又は複数の線維芽細胞に送達し得る。さらなる特定の態様では、前記組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記組成物を1又は複数のマクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞に送達することができる。さらなる特定の態様では、前記組成物に含まれる部分及び/又は担体は、前記組成物を1又は複数のマクロファージ及び1又は複数の線維芽細胞に送達する。したがって、特定の態様は、前記miR-21阻害剤が標的細胞に送達されることである。例えば、前記miR-21阻害剤を標的に送達する担体及び/又は部分は、必ずしも標的細胞に入るわけではない。この場合好ましくは標的細胞がマクロファージ及び/又は線維芽細胞であり、又はより好ましくは標的細胞がマクロファージである。
【0064】
本明細書で使用される場合、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する「担体」、「部分」、又は「部位」は、それら「担体」、「部分」、又は「部位」が標的細胞の細胞表面での前記miR-21阻害剤の濃縮を示す限り、必ずしも限定されない。この場合好ましくは標的細胞がマクロファージ及び/又は線維芽細胞であり、又はより好ましくは標的細胞がマクロファージである。マクロファージ及び/又は線維芽細胞の標的化は、当技術分野で公知である。より好ましくは、前記「担体」又は「部分」は、標的細胞の細胞表面で前記miR-21阻害剤の濃縮を示し、前記miR-21阻害剤が標的細胞に入る。この場合好ましくは標的細胞がマクロファージ及び/又は線維芽細胞であり、又はより好ましくは標的細胞がマクロファージである。さらにより好ましくは、前記「担体」、「部分」、又は「部位」は、標的細胞の細胞表面で前記miR-21阻害剤の濃縮を示し、前記miR-21阻害剤が標的細胞に入り、前記miR-21阻害剤はmiR-21の標的を抑制又は過剰発現する。この場合好ましくは標的細胞がマクロファージ及び/又は線維芽細胞であり、又はより好ましくは標的細胞がマクロファージである。
【0065】
特定の態様では、前記部分又は担体は、ナノ粒子、リポソーム、脂質ナノ粒子(LNP)、メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)、抗体又はその機能的断片、及び低分子リガンド(添付の実施例のように、糖又は修飾された糖部分がリガンドとして使用される)並びに(タンパク質性)リガンド又はその機能的断片からなる群から選択される。(低分子)リガンドはまた、マクロファージの表面(及び所望により線維芽細胞の表面)上のマーカー/受容体と相互作用することができる化学物質及び/又は医薬品を含み得る。
【0066】
マクロファージ(及び所望により線維芽細胞)の表面上の対応する(表面)マーカー/受容体と相互作用することができる(タンパク質性)リガンド又は1又は複数のその機能的断片についても、必要により修正を加えて、同様である。例えば、そのような「タンパク質性リガンド」は、本明細書で定義される1又は複数の細胞表面受容体と特異的に相互作用及び/又は特異的に結合する抗体(又はその機能的断片)も含み得る。さらに、「リガンド」という用語は、より小さなペプチド又はペプチド構造も含む。そのような「ペプチドリガンド」の例は、Scodeller(2017)(Sci Rep 7:14655)に開示されるように、ペプチド「C-S-P-G-A-K-V-R-C」(配列番号6:CSPGAKVRC)であり得る。前記ペプチドは、MRC1、すなわちマクロファージ上の細胞表面受容体に対する相互作用ペプチドである。前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する「部分」は、マクロファージ上の関連する細胞表面受容体(及び/又は所望により線維芽細胞)と相互作用/結合できる脂質構造だけでなく、ナノボディ及び同種のものも含み得る。
【0067】
マクロファージへの阻害剤の送達は、当業者に公知である。例えば、(Juliano, 2016) Juliano RL; The delivery of therapeutic oligonucleotides. Nucleic Acids Res. 2016 Aug 19;44(14):6518-48. doi:10.1093/nar/gkw236. Epub 2016 Apr 15)。以下の非限定的な例では、miR-21阻害剤の標的細胞への送達が提供される。さらなる態様において、前記部分は、マクロファージ、線維芽細胞及びマクロファージ、肺マクロファージ、又は肺線維芽細胞及び肺マクロファージ上に見出される少なくとも1つの抗原に結合する。
【0068】
さらなる特定の態様では、前記部分は、マクロファージ、線維芽細胞及びマクロファージ、肺マクロファージ、又は肺線維芽細胞及び肺マクロファージ上のみに見出される少なくとも1つの抗原に結合する。さらなる特定態様において、前記部分は、マクロファージ、線維芽細胞及びマクロファージ、肺マクロファージ、又は肺線維芽細胞及び肺マクロファージ上のみに見出される少なくとも1つの抗原に特異的に結合する。本明細書で使用される「特異的に結合する」及び/又は「特異的に及び/又は主に結合するか相互作用する」という用語は、前記部分が、標的細胞の表面上(すなわち、ここでは特にマクロファージ上)の少なくとも1つの抗原及び/又は受容体/マーカーに対して、他のペプチド又はポリペプチドよりも強い結合親和性を有することを意味する。
【0069】
例えば、部分は、1又は複数のアンタゴニスト、1又は複数のアゴニスト、1又は複数のβアドレナリン受容体、1又は複数のGタンパク質共役受容体、及び1又は複数の受容体に結合する1又は複数のサイトカインからなる群から選択される1又は複数の細胞表面受容体に(特異的に及び/又は主に)結合する低分子リガンド又はタンパク質性リガンド若しくはその機能的断片であり得る。本明細書で検討されるように、「低分子リガンド」はまた、マクロファージ(及び/又は線維芽細胞並びにマクロファージ及び線維芽細胞)のそのような1又は複数の細胞表面受容体に(特異的に又は主に)結合するか、又は(特異的に又は主に)相互作用する化学物質又は医薬品を含み得る。前記「低分子リガンド」又は前記「タンパク質性リガンド若しくはその機能的断片」は、対応する(細胞表面)受容体の天然リガンドであり得る。本明細書に一例を示す:ここでは、1又は複数の糖又は修飾糖部分が「送達部分」として使用される(この例示の場合、例えば、トリマンノース又はN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)であり、「標的構造」はマクロファージ上のそのような糖/修飾糖部分の表面受容体である、マンノース受容体C型1である。
【0070】
表3では、例えば、マクロファージ、線維芽細胞、並びにマクロファージ及び線維芽細胞などの、示された標的細胞への送達を提供することができる例示的な表面受容体/マーカーが提供される。これらの表面受容体/マーカーはまた、「miR-21の前記阻害剤をマクロファージに、線維芽細胞及びマクロファージに、肺マクロファージ及び/又は肺線維芽細胞に、並びに肺マクロファージに送達する部分」として本発明の文脈において使用され得る、抗体(又はその機能的断片)の標的であってもよい。
【0071】
表3。精製された初代細胞画分のRNA配列決定によって特定されたヒト肺及び心臓組織のマクロファージ及び/又は線維芽細胞にmiR-21阻害剤を標的化/送達するための受容体/マーカーの例選択は、存在量、細胞型特異性、及び受容体の特性に基づく。
【0072】
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0073】
上記の表3に示される受容体又は細胞表面分子は、前記miR-21阻害剤を送達する部分の結合、又は前記miR-21阻害剤の標的化に適し得る。したがって、組成物に含まれる部分は、上記の表3に示されるように、1又は複数の受容体又は細胞表面分子に結合し得る。表3に示される受容体又は細胞表面分子は、ヒト肺又は心臓組織のマクロファージ及び/又は線維芽細胞に含まれると本明細書の以下で同定された。さらに、受容体又は細胞表面分子は、精製初代細胞画分のRNA配列決定によって同定され得る。添付の実施例に示されているように、マンノース受容体C型1(Mrc1)はマクロファージで強く発現している。これにより、MRC1は、「miR-21阻害剤をマクロファージに送達する」部分の特に望ましく好ましい標的となる。したがって、対応する部分は、MRC1/マンノース受容体リガンドに結合するリガンドである。そのようなリガンドは、マンノースのような対応する糖を含み得る。MRC1の他のリガンドは、当技術分野で公知であり、限定されないが、例えば、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)を含む。これは、添付の図22にも示されている。図22は、マンノース受容体C型1(MRC1)は、肺組織のマクロファージによって発現されることを記載している。添付の図23は、マンノース受容体1リガンドの化学構造を示し、(A)は、リガンド結合及びmiR-21阻害剤、本明細書で定義される「anti-miR-21」の非限定的であるが例示的な設計のスキームを示す。
【0074】
図23(B)は、anti-miR-21分子に結合されたマンノース受容体リガンドの例示的で非限定的な化学構造を提供する。N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)(上)又はマンノース(本明細書ではトリマンノース、図の下を参照)リガンドを、(LNA-)anti-miR-21(miR21阻害剤)の5’末端に結合させた。当技術分野で公知のように、例えば、Martinez-Pomares, L., (2012)では、マンノース及びN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)リガンドのMRC1への結合が報告されている。マンノース受容体1(Mrc1)のさらなる例示的なリガンドは、MRC1の細胞外部分に向けられた特異的抗体を含むが、これらに限定されない。
【0075】
したがって、添付の図23(A)に示されるように、本発明の文脈で使用される化合物の一般構造は、以下のような形式を有し得る:
miR-21阻害剤-(リンカー)-結合/標的化/送達部分;又は
結合/標的化/送達部分-(リンカー)-miR-21阻害剤。
マクロファージへの結合/標的化/送達部分を含む後者の非限定的な例は、図23(A)のスキームに示される前記コンストラクトであり、
- 「マクロファージを標的とする/送達する結合部分」としてのマンノース受容体C型1(MRC1)のリガンド、その後に
- (所望の)リンカー/(リンカー)、その後に
- 「miR-21阻害剤」としてのLNA-anti-miR-21である。
有用な(生物学的)リンカー構造は、当技術分野で非常に周知であり、クリックケミストリーリンカー(例えば、DBCO、テトラジン、TCO、BCN、カルボキシルリンカー(5’-COOH-C5、3’-COOH-C6)、アルデヒド/ヒドラジド、モノメトキシトリチルリンカー、ペプチドリンカー、β-グルクロニドリンカー、スペーサー修飾子(例えば、スペーサーC3、スペーサーC12など)、芳香族リンカー、二官能性リンカーなど)を含むが、これらに限定されない。当業者は、マクロファージ及び/又は線維芽細胞特異的リガンドをリンカー部分の中間を介してanti-miR-21オリゴヌクレオチドに結合するために、様々な「結合/リンカー化学手段及び方法」が利用可能であることを承知している。そのような「付着/リンカー化学手段及び方法」は、オリゴヌクレオチドの5’位への第一級アミノ基の付加を含むが、これに限定されない。このような手段及び方法の例には、オリゴヌクレオチドの5’位への第一級アミンの付加に使用される5’-アミノヘキシルリンカー及びTFA-アミノリンカーホスホロアミダイトの修飾が含まれる。それは、例えば、「ペプチドリンカー」が、本明細書の以下で論じる本発明の文脈で使用されることも想定され、ペプチドは「リンカー基」としても開示される。さらに、「切断可能なリンカー」を使用できることも想定され、当業者の知識の範囲内である。当業者は、miR-21阻害剤及び前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分を含む本明細書で定義された本発明の化合物を構築するために、そのような「切断可能なリンカー」も容易に使用できる立場にある。このような(1又は複数の)「切断可能なリンカー」は、とりわけ、Xue Y et al. Chem Soc Rev 2021 (DOI:10.1039/d0cs01061h)、Benizri (2019) Bioconjugate Chem. 2019, 30, 366-383(特にオリゴヌクレオチドの場合)、又はJonathan (2019). Chem Soc Rev 48, 4361に記載されている。
【0076】
本発明の化合物において、本明細書で例示される1又は複数の糖又は修飾糖部分、1又は複数の(タンパク質性)リガンド(又はその機能的断片)、又は1又は複数の抗体(又はその機能的断片)などの(例えば)(低分子)リガンドなどの前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する1又は複数の部分を、anti-miR-21オリゴヌクレオチドなどの前記miR-21阻害剤に、好ましくは、オリゴヌクレオチドの末端ホスホロチオエート基に、直接又はリンカー基(以下、単に「リンカー」という場合がある)を介して連結してもよい。再び、本明細書で指摘されるように、「リンカー」構造を介してマクロファージ(及び/又は所望により線維芽細胞)へのmiR-21の前記阻害剤に結合される、前記miR-21の阻害剤を送達するさらなる部分も使用することができる。
【0077】
理解されるように、前記リンカーは特に限定されず、本発明に関連する有益な効果を保持しながら、かなりの程度まで変更することができる。
【0078】
例えば、リンカー基は、直鎖状又は分枝状であり得ることが理解される。特に、リンカー基が分岐している場合、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する2つ以上の部分(例えば、糖又は修飾糖部分)がリンカー基に結合され得る。
【0079】
リンカー基は、各糖又は修飾糖部分とオリゴヌクレオチドの末端ホスホロチオエート基との間の各リンカー鎖に20個を超え100個未満の非水素原子(好ましくは60個未満の非水素原子)を含有することが好ましいが、これらに限定されない。リンカー基全体における非水素原子の数は、好ましくは20原子を超え200原子未満(好ましくは150原子未満)である。非水素原子は、好ましくは、炭素、窒素、及び酸素から選択される。リンカー中の非水素原子の15原子%以下が芳香族基の一部であることがさらに好ましい。
【0080】
より具体的には、前記リンカーが、C10-40アルキレン、C10-40アルケニレン、及びC10-40アルキニレンから選択される基Lであってもよく、前記アルキレン、前記アルケニレン、及び前記アルキニレンが、それぞれ、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-OR21、-NR2121、-NR21OR21、-COR21、-COOR21,-OCOR21、-CONR2121、-NR21COR21、-NR21COOR21、-OCONR2121、-SR21、-SOR21、-SO221、-SO2NR2121、-NR21SO221、-SO321、及び-NO2から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、及びさらに、前記アルキレン、前記アルケニレン、又は前記アルキニレンに含まれる1又は複数の-CH2-単位が、それぞれ、-O-、-NR21-、-CO-、-S-、-SO-、及び-SO2-から独立して選択される基によって所望により置換され、さらに、前記アルキレン、前記アルケニレン、又は前記アルキニレンに含まれる1又は複数の-CH2-単位が、それぞれ、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクロアルキレンから独立して選択される基によって所望により置換されることがと想定され、前記アリーレン、前記ヘテロアリーレン、前記シクロアルキレン、及び前記ヘテロシクロアルキレンが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、前記アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクロアルキレンの中で、アリーレンが好ましく、フェニレンがより好ましい。
各R21は、水素、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから独立して選択され、前記アルキル、前記アルケニル、及び前記アルキニルが、それぞれ、1又は複数の基RAlkで所望により置換され、さらに、前記カルボシクリル及び前記ヘテロシクリルが、それぞれ、1又は複数の基RCycで所望により置換される。
任意の2つのR21が結合して環を所望により形成する。
各RAlkは、-OH、-O(C1-5アルキル)、-O(C1-5アルキレン)-OH、-O(C1-5アルキレン)-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-S(C1-5アルキレン)-SH、-S(C1-5アルキレン)-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-OH、-N(C1-5アルキル)-OH、-NH-O(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-O(C1-5アルキル)、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-NO2、-CHO、-CO(C1-5アルキル)、-COOH、-COO(C1-5アルキル)、-O-CO(C1-5アルキル)、-CO-NH2、-CO-NH(C1-5アルキル)、-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-CO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-CO(C1-5アルキル)、-NH-COO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-COO(C1-5アルキル)、-O-CO-NH(C1-5アルキル)、-O-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-SO2-NH2、-SO2-NH(C1-5アルキル)、-SO2-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-SO2-(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-SO2-(C1-5アルキル)、-SO2-(C1-5アルキル)、-SO-(C1-5アルキル)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、前記アリール、前記ヘテロアリール、前記シクロアルキル、及び前記ヘテロシクロアルキルが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換される。
各RCycは、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、-OH、-O(C1-5アルキル)、-O(C1-5アルキレン)-OH、-O(C1-5アルキレン)-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-S(C1-5アルキレン)-SH、-S(C1-5アルキレン)-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-OH、-N(C1-5アルキル)-OH、-NH-O(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-O(C1-5アルキル)、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-NO2、-CHO、-CO(C1-5アルキル)、-COOH、-COO(C1-5アルキル)、-O-CO(C1-5アルキル)、-CO-NH2、-CO-NH(C1-5アルキル)、-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-CO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-CO(C1-5アルキル)、-NH-COO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-COO(C1-5アルキル)、-O-CO-NH(C1-5アルキル)、-O-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-SO2-NH2、-SO2-NH(C1-5アルキル)、-SO2-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-SO2-(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-SO2-(C1-5アルキル)、-SO2-(C1-5アルキル)、-SO-(C1-5アルキル)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、前記アリール、前記ヘテロアリール、前記シクロアルキル、及び前記ヘテロシクロアルキルが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換されている。
【0081】
基Lにおいて、C10-40アルキレン、C10-40アルケニレン、及びC10-40アルキニレンは、それぞれ、好ましくはC20-35アルキレン、C20-35アルケニレン、及びC20-35アルキニレンであり、前記アルキレン、アルケニレン、及びアルキニレンは、それぞれ、上記のように修飾されていてもよい。さらに、前記リンカーが、C10-40アルキレン及びC10-40アルケニレン、より好ましくはC20-35アルキレン又はC20-35アルケニレン、さらにより好ましくはC20-35アルキレンから選択されることがさらに好ましく、前記アルキレン及びアルケニレンは、それぞれ、上記のように修飾されていてもよい。
【0082】
分岐リンカーの場合、リンカーの分岐のそれぞれが上記で定義した基Lであり得、リンカーの主鎖が上記で定義した1つ又は2つの基Lからなり得ることが想定される。リンカーの主鎖が2つの基Lからなる場合、これらは連続して結合していることが好ましく、-(基L)-(基L)-であり、互いに独立して選択され得る。
【0083】
理解されるように、リンカーの枝におけるC10-40アルキレン、C10-40アルケニレン、及びC10-40アルキニレン(-CH2-単位の所望の置換(substitution/replacement)を含む)の鎖長は、C10-40に限定される必要はないが、C4-9アルキレン、C4-9アルケニレン、及びC4-9アルキニレン(-CH2-単位の所望の置換(substitution/replacement)を含む)についても包含し得る。
【0084】
よって、分岐リンカーの例は、以下に示すような構造を有していてもよい:
*-(基L)

*-(基L)-(基L)-(基L)-**

*-(基L)
式中、「*」は、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分の結合点を示し、「**」は、miR-21阻害剤の結合点を示す。
【0085】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分が、例えば、糖又は修飾糖部分などの低分子であり得る場合、「送達部分」が糖又は修飾糖部分である場合、前記リンカーは、そのような糖のアノマー酸素を介して前記糖又は修飾糖部分に結合していることが好ましい。
【0086】
前記「miR-2阻害剤」がオリゴヌクレオチドである場合、前記リンカーはオリゴヌクレオチドの末端ホスホロチオエート基を介してオリゴヌクレオチドに結合していることが好ましい。
【0087】
リンカーの2つの非限定的な例を以下に示す。一方は分岐しており、もう一方は分岐していない。
【0088】
第1の例では、リンカーは分岐しており、3つの糖又は修飾糖部分が(好ましくはアノマー酸素を介して)第1のアミド含有部分を介してトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのヒドロキシ基に結合しており、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンのアミノ基は、第2のアミド含有部分を介して、オリゴヌクレオチド(又はmiR-21の任意の他の阻害剤)、好ましくはオリゴヌクレオチドの末端ホスホロチオエート基に連結される。前記リンカーには、所望によりマーカー又は標識が含まれる。好ましくは、第1のアミド含有部分はそれぞれ脂肪族であり、鎖中にそれぞれ10~15個の原子を含む。より好ましくは、この分岐リンカー基は、図23Bの第1の構造に示される通りであり、N-アセチルガラクトサミン基は独立して他の糖又は修飾糖部分(又は前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する他の部分)によって置換され得、オリゴヌクレオチドは変化し得る(及びmiR-21阻害剤の例として存在する)ことが理解される。本発明に関連して、これらの糖又は修飾された糖部分は、「miR-21の阻害剤」が(本実施例及び本発明の文脈において、マクロファージ及び/又は線維芽細胞に並びにマクロファージに)送達されるものである「標的細胞」の表面上の細胞表面タンパク質/受容体/マーカーと相互作用できる(低分子)リガンドの例示的な例として単に意味されていることも理解される。
【0089】
第2の例では、リンカーは分岐しておらず、炭素、窒素、及び酸素から選択される20~40個の原子を含む。好ましくは、リンカーは、-フェニレン-NHC(=O)CH2CH2-(OCH2CH24-OCH2CH2-C(=O)NH-(CH26-基を含むか又はそれからなり、フェニレン基が、好ましくは糖のアノマー酸素とフェニレン基との間の結合により、糖又は修飾糖部分に結合しており、前記(CH26-基は、好ましくはオリゴヌクレオチドの末端ホスホロチオエート基を介して、オリゴヌクレオチドに連結している。好ましくは、このリンカー基は、図23Bの第2の構造に示される通りであり、ジ(マンノシル)マンノース基は、他の糖又は修飾糖部分(又は前記miR-21阻害剤をマクロファージ並びに/又は線維芽細胞及びマクロファージに送達する他の部分)によって置換され得、オリゴヌクレオチドは変化し得る(及びmiR-21阻害剤の例として存在する)ことが理解される。
【0090】
miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む組成物は、所望によりさらに(例えば、蛍光)マーカー又は標識を含む。このマーカーは、前記miR-21阻害剤、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分、又はリンカーに存在し得る。リンカー中のそのようなマーカー又は標識の例は、図23Bの最初の式に示されている。
【0091】
「リンカー」構造の検討において本明細書の上記で使用されるように、「炭化水素基」という用語は、炭素原子及び水素原子からなる基を指す。
【0092】
「脂環式」という用語は、環状基に関連して使用され、対応する環状基が非芳香族であることを示す。
【0093】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖状又は分枝状であり得る一価の飽和非環式(すなわち、非環状)炭化水素基を指す。したがって、「アルキル」基は、炭素-炭素二重結合又は任意の炭素-炭素三重結合を全く含まない。「C1-5アルキル」は、1~5個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。好ましい例示的なアルキル基は、メチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はイソプロピル)、又はブチル(例えば、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチル)である。別段の定義がない限り、「アルキル」という用語は、好ましくはC1-4アルキルを指し、より好ましくはメチル又はエチルを指し、さらに好ましくはメチルを指す。
【0094】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」という用語は、直鎖状又は分枝状であってもよく、1又は複数(例えば、1個又は2個)の炭素間二重結合を含むが、炭素間三重結合を全く含まない一価の不飽和非環式炭化水素基を指す。「C2-5アルケニル」という用語は、2~5個の炭素原子を有するアルケニル基を意味する。好ましい例示的なアルケニル基は、エテニル、プロペニル(例えば、プロプ-1-エン-1-イル、プロプ-1-エン-2-イル、又はプロプ-2-エン-1-イル)、ブテニル、ブタジエニル(例えば、ブタ-1,3-ジエン-1-イル又はブタ-1,3-ジエン-2-イル)、ペンテニル、又はペンタジエニル(例えば、イソプレニル)である。別段の定義がない限り、「アルケニル」という用語は、好ましくはC2-4アルケニルを指す。
【0095】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」という用語は、直鎖状又は分枝状であってもよく、1又は複数(例えば、1個又は2個)の炭素間三重結合及び所望により1又は複数の炭素間二重結合を含む一価の不飽和非環式炭化水素基を指す。「C2-5アルキニル」という用語は、2~5個の炭素原子を有するアルキニル基を意味する。好ましい例示的なアルキニル基は、エチニル、プロピニル(例えば、プロパルギル)、又はブチニルである。別段の定義がない限り、「アルキニル」という用語は、好ましくはC2-4アルキニルを指す。
【0096】
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、アルカンジイル基、すなわち、直鎖状又は分枝状であり得る二価の飽和非環式炭化水素基を指す。「C1-5アルキレン」という用語は、1~5個の炭素原子を有するアルキレン基を意味し、「C0-3アルキレン」という用語は、共有結合(所望の「C0アルキレン」に対応する)又はC1-3アルキレンが存在することを示す。アルキレン基の好ましい例は、メチレン(-CH2-)、エチレン(例えば、-CH2-CH2-又は-CH(-CH3)-)、プロピレン(例えば、-CH2-CH2-CH2-、-CH(-CH2-CH3)-、-CH2-CH(-CH3)-、又は-CH(-CH3)-CH2-)、又はブチレン(例えば、-CH2-CH2-CH2-CH2-)である。別段の定義がない限り、「アルキレン」という用語は、好ましくはC1-4アルキレン(特に直鎖C1-4アルキレンを含む)を指し、より好ましくはメチレン又はエチレンを指し、さらにより好ましくはメチレンを指す。
【0097】
本明細書で使用する「アルコキシ」という用語は、-O-アルキル基を指し、この基に含まれるアルキル部分は上記で定義した通りである。
【0098】
本明細書で使用される場合、「カルボシクリル」という用語は、単環式環並びに架橋環、スピロ環、及び/又は縮合環系(例えば、2つ又は3つの環から構成され得る)を含む炭化水素環基を指す。前記環基は、飽和、部分不飽和(すなわち、不飽和であるが芳香族ではない)又は芳香族であり得る。別段の定義がない限り、「カルボシクリル」は、好ましくは、アリール、シクロアルキル、又はシクロアルケニルを指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクリル」という用語は、単環式環並びに架橋環、スピロ環、及び/又は縮合環系(例えば、2つ又は3つの環から構成され得る)を含む環基を指す。前記環基は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1、2、3、又は4など)の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素原子であり、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化されていてもよく、1又は複数の炭素環原子は所望により酸化されてもよく(すなわち、オキソ基を形成するために)、さらに前記環基は、飽和、部分不飽和(すなわち、不飽和であるが芳香族ではない)又は芳香族であってもよい。例えば、前記環基に含まれる各ヘテロ原子含有環は、1個又は2個のO原子及び/又は1個又は2個のS原子(所望により酸化されていてもよい)及び/又は1個、2個、3個、4個のN原子(所望により酸化されていてもよい)を含有してもよいが、対応するヘテロ原子含有環中のヘテロ原子の総数は1~4であり、対応するヘテロ原子含有環中に少なくとも1個の炭素環原子(所望により酸化されていてもよい)が存在する。別段の定義がない限り、「ヘテロシクリル」は、好ましくは、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、又はヘテロシクロアルケニルを指す。
【0100】
本明細書で使用される場合、「シクリル」という用語は、本明細書で上に定義されたカルボシクリル又はヘテロシクリルを指す。
【0101】
本明細書で使用する場合、「アリール」という用語は、単環式芳香環並びに架橋環及び/又は少なくとも1つの芳香環を含む縮合環系を含む芳香族炭化水素環基を指す(例えば、2つ又は3つの縮合環で構成される環系であって、これらの縮合環の少なくとも1つは芳香族であるか2つ又は3つ環で構成される架橋環系であり、これらの架橋環の少なくとも1つは芳香族である)。「アリール」は、例えば、フェニル、ナフチル、ジアリニル(すなわち、1,2-ジヒドロナフチル)、テトラリニル(すなわち、1,2,3,4-テトラヒドロナフチル)、インダニル、インデニル(例えば、1H-インデニル)、アントラセニル、フェナントレニル、9H-フルオレニル、又はアズレニルであってもよい。別段の定義がない限り、「アリール」は、好ましくは6~14個の環原子、より好ましくは6~10個の環原子を有し、さらにより好ましくはフェニル又はナフチルを指し、最も好ましくはフェニルを指す。
【0102】
本明細書で使用する場合、「ヘテロアリール」という用語は、単環式芳香環並びに架橋環及び/又は少なくとも1つの芳香環を含む縮合環系を含む芳香族環基を指す(例えば、2つ又は3つの縮合環で構成される環系であって、これらの縮合環の少なくとも1つは芳香族であるか2つ又は3つ環で構成される架橋環系であり、これらの架橋環の少なくとも1つは芳香族である)。前記芳香族環基は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1個、2個、3個、又は4個)の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素原子であり、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化されていてもよく、さらに1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化されてもよい(すなわち、オキソ基を形成するために)。例えば、前記芳香族環基に含まれる各ヘテロ原子含有環は、1個又は2個のO原子及び/又は1個又は2個のS原子(所望により酸化されていてもよい)及び/又は1個、2個、3個、4個のN原子(所望により酸化されていてもよい)を含有してもよいが、対応するヘテロ原子含有環中のヘテロ原子の総数は1~4であり、対応するヘテロ原子含有環中に少なくとも1個の炭素環原子(所望により酸化されていてもよい)が存在する。「ヘテロアリール」は、例えば、チエニル(すなわち、チオフェニル)、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3-b]チエニル、チアントレニル、フリル(すなわち、フラニル)、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル(例えば、2H-1-ベンゾピラニル又は4H-1-ベンゾピラニル)、イソクロメニル(例えば、1H-2-ベンゾピラニル)、クロモニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、ピロリル(例えば、1H-ピロリル)、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル(例えば、ピリジニル、例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、又は4-ピリジル)、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル(例えば、3H-インドリル)、イソインドリル、インダゾリル、インドリジニル、プリニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル(例えば、[1,10]フェナントロリニル、[1,7]フェナントロリニル、又は[4,7]フェナントロリニル)、フェナジニル、チアゾリル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば、1,2,4-オキサジアゾリル、1,2,5-オキサジアゾリル(すなわち、フラザニル)、又は1,3,4-オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(例えば、1,2,4-チアジアゾリル、1,2,5-チアジアゾリル、又は1,3,4-チアジアゾリル)、フェノキサジニル、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジニル(例えば、ピラゾロ[1,5-a]ピリミジン-3-イル)、1,2-ベンゾイソオキサゾール-3-イル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアジアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンズイソキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾ[b]チオフェニル(すなわち、ベンゾチエニル)、トリアゾリル(例えば、1H-1,2,3-トリアゾリル、2H-1,2,3-トリアゾリル、1H-1,2,4-トリアゾリル、又は4H-1,2,4-トリアゾリル)、ベンゾトリアゾリル、1H-テトラゾリル、2H-テトラゾリル、トリアジニル(例えば、1,2,3-トリアジニル、1,2,4-トリアジニル、又は1,3,5-トリアジニル)、フロ[2,3-c]ピリジニル、ジヒドロフロピリジニル(例えば、2,3-ジヒドロフロ[2,3-c]ピリジニル又は1,3-ジヒドロフロ[3,4-c]ピリジニル)、イミダゾピリジニル(例えば、イミダゾ[1,2-a]ピリジニル又はイミダゾ[3,2-a]ピリジニル)、キナゾリニル、チエノピリジニル、テトラヒドロチエノピリジニル(例えば、4,5,6,7-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジニル)、ジベンゾフラニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル(例えば、1,3-ベンゾジオキサニル又は1,4-ベンゾジオキサニル)、又はクマリニルを指す場合がある。別段の定義がない限り、「ヘテロアリール」という用語は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1個、2個、3個、又は4個)の環ヘテロ原子を含む5~14員(より好ましくは5~10員)の単環式環又は縮合環系を指す。1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化され、並びに1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化され、さらにより好ましくは、「ヘテロアリール」は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1個、2個、又は3個)の環ヘテロ原子を含む5員又は6員の単環式環を指し、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化され、並びに1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化される。さらに、別段の定義がない限り、「ヘテロアリール」という用語は、特に好ましくは、ピリジニル(例えば、2-ピリジル、3-ピリジル、又は4-ピリジル)、イミダゾリル、チアゾリル、1H-テトラゾリル、2H-テトラゾリル、チエニル(すなわち、チオフェニル)、又はピリミジニルを指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は、単環式環並びに架橋環、スピロ環、及び/又は縮合環系(例えば、2個又は3個の環から構成され得る、例えば、2個又は3個の縮合環からなる縮合環系)を指す。「シクロアルキル」は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、デカリニル(すなわち、デカヒドロナフチル)、又はアダマンチルを指す場合がある。別段の定義がない限り、「シクロアルキル」は、好ましくはC3-11シクロアルキルを指し、より好ましくはC3-7シクロアルキルを指す。特に好ましい「シクロアルキル」は、環員数3~7の単環式飽和炭化水素環である。さらに、別段の定義がない限り、「シクロアルキル」という用語は、より好ましくはシクロヘキシル又はシクロプロピルを指し、さらにより好ましくはシクロヘキシルを指す。
【0104】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、単環式環並びに架橋環、スピロ環、及び/又は縮合環系(例えば、2個又は3個の環から構成され得る、例えば、2個又は3個の縮合環からなる縮合環系)を含む飽和環基を指し、前記環基は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1、2、3、又は4など)の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素原子であり、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化されていてもよく、さらに1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化されてもよい(すなわち、オキソ基を形成するために)。例えば、前記飽和環基に含まれる各ヘテロ原子含有環は、1個又は2個のO原子及び/又は1個又は2個のS原子(所望により酸化されていてもよい)及び/又は1個、2個、3個、4個のN原子(所望により酸化されていてもよい)を含有してもよいが、対応するヘテロ原子含有環中のヘテロ原子の総数は1~4であり、対応するヘテロ原子含有環中に少なくとも1個の炭素環原子(所望により酸化されていてもよい)が存在する。「ヘテロシクロアルキル」は、例えば、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、アゼパニル、ジアゼパニル(例えば、1,4-ジアゼパニル)、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、モルホリニル(例えば、モルホリン-4-イル)、チオモルホリニル(例えば、チオモルホリン-4-イル)、オキサゼパニル、オキシラニル、オキセタニル、テトラヒドロフラニル、1,3-ジオキソラニル、テトラヒドロピラニル、1,4-ジオキサニル、オキセパニル、チイラニル、チエタニル、テトラヒドロチオフェニル(すなわち、チオラニル)、1,3-ジチオラニル、チアニル、チエパニル、デカヒドロキノリニル、デカヒドロイソキノリニル、又は2-オキサ-5-アザ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-イルを指す場合がある。別段の定義がない限り、「ヘテロシクロアルキル」は、好ましくは、単環式環又は縮合環系(例えば、2個の縮合環から構成される縮合環系)である、3~11員飽和環基を指す。前記芳香族環基は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1個、2個、3個、又は4個)の環ヘテロ原子を含み、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化され、並びに1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化され、さらにより好ましくは、「ヘテロシクロアルキル」は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1個、2個、又は3個)の環ヘテロ原子を含む5~7員飽和単環式環基を指し、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化され、並びに1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化される。さらに、別段の定義がない限り、「ヘテロシクロアルキル」は、さらにより好ましくは、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ピロリジニル、又はテトラヒドロフラニルを指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「シクロアルケニル」という用語は、単環式環並びに架橋環、スピロ環、及び/又は縮合環系(例えば、2個又は3個の環から構成され得る、例えば、2個又は3個の縮合環からなる縮合環系)を含む不飽和脂環式(非芳香族)炭化水素環基を指し、前記炭化水素環基は、1又は複数(例えば、1個又は2個)の炭素間二重結合を含むが、炭素間三重結合を全く含まない。「シクロアルケニル」は、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、又はシクロヘプタジエニルを指す場合がる。別段の定義がない限り、「シクロアルケニル」は、好ましくはC3-11シクロアルケニルを指し、より好ましくはC3-7シクロアルケニルを指す。特に好ましい「シクロアルケニル」は、3~7個の環員を有し、1又は複数(例えば、1個又は2個、好ましくは1個)の炭素-炭素二重結合を含む単環式不飽和脂環式炭化水素環である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルケニル」という用語は、単環式環並びに架橋環、スピロ環、及び/又は縮合環系(例えば、2個又は3個の環から構成され得る、例えば、2個又は3個の縮合環からなる縮合環系)を含む不飽和脂環式(非芳香族)環基を指し、前記環基は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1、2、3、又は4など)の環ヘテロ原子を含み、残りの環原子は炭素原子であり、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化されていてもよく、1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化されていてもよく(すなわち、オキソ基を形成するために)、並びにさらに前記環基は、隣接する環原子間に少なくとも1つの二重結合を含み、隣接する環原子間に三重結合を含まない。例えば、前記不飽和脂環式環基に含まれる各ヘテロ原子含有環は、1個又は2個のO原子及び/又は1個又は2個のS原子(所望により酸化されていてもよい)及び/又は1個、2個、3個、4個のN原子(所望により酸化されていてもよい)を含有してもよいが、対応するヘテロ原子含有環中のヘテロ原子の総数は1~4であり、対応するヘテロ原子含有環中に少なくとも1個の炭素環原子(所望により酸化されていてもよい)が存在する。「ヘテロシクロアルケニル」は、例えば、イミダゾリニル(例えば、2-イミダゾリニル(すなわち、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル)、3-イミダゾリニル、又は4-イミダゾリニル)、テトラヒドロピリジニル(例えば、1,2,3,6-テトラヒドロピリジニル)、ジヒドロピリジニル(例えば、1,2-ジヒドロピリジニル又は2,3-ジヒドロピリジニル)、ピラニル(例えば、2H-ピラニル又は4H-ピラニル)、チオピラニル(例えば、2H-チオピラニル又は4H-チオピラニル)、ジヒドロピラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロイソインドリル、オクタヒドロキノリニル(例、1,2,3,4,4a,5,6,7-オクタヒドロキノリニル)、又はオクタヒドロイソキノリニル(例えば、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロイソキノリニル)を指す場合がある。別段の定義がない限り、「ヘテロシクロアルケニル」は、好ましくは、単環式環又は縮合環系(例えば、2個の縮合環から構成される縮合環系)である、3~11員不飽和脂環式環基を指す。前記芳香族環基は、O、S、及びNから独立して選択される1又は複数(例えば、1個、2個、3個、又は4個)の環ヘテロ原子を含み、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化され、1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化され、並びに前記環基は、隣接する環原子間に少なくとも1つの二重結合を含み、隣接する環原子間に三重結合を含まず、より好ましくは、「ヘテロシクロアルケニル」は、O、S、及びNから独立して選択される1個以上(例えば、1個、2個、又は3個)の環ヘテロ原子を含有する5~7員単環式不飽和非芳香族環基を指し、1又は複数のS環原子(存在する場合)及び/又は1又は複数のN環原子(存在する場合)は、所望により酸化され、1又は複数の炭素環原子は、所望により酸化され、並びに前記環基は、隣接する環原子間に少なくとも1つの二重結合を含み、隣接する環原子間に三重結合を含まない。
【0107】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)、又はヨード(-I)を指す。
【0108】
本明細書で使用する「ハロアルキル」という用語は、フルオロ、クロロ、ブロモ、及びヨードから独立して選択され、好ましくは全てがフッ素原子である1又は複数(好ましくは1~6個、より好ましくは1~3個)のハロゲン原子で置換されたアルキル基を指す。ハロゲン原子の最大数は、利用可能な結合部位の数によって制限され、したがって、ハロアルキル基のアルキル部分に含まれる炭素原子の数によって決定されることが理解される。「ハロアルキル」は、例えば、-CF3、-CHF2、-CH2F、-CF2-CH3、-CH2-CF3、-CH2-CHF2、-CH2-CF2-CH3、-CH2-CF2-CF3、又は-CH(CF32を指す。特に好ましい「ハロアルキル」基は、-CF3である。
【0109】
本明細書で使用される場合、用語「所望の」、「所望により」、及び「~して(も)よい(~できる)」は、示された特徴が存在してもよいが、存在しなくてもよいことを意味する。「所望の」、「所望により」、及び「~して(も)よい(~できる)」という用語が使用されるときは常に、本発明は特に両方の可能性、すなわち、対応する特徴が存在するか、あるいは対応する特徴が存在しないという可能性に関連する。例えば、「XはYで所望により置換されている」(又は「XはYで置換されていてもよい」)という表現は、XがYで置換されているか又は置換されていないことを意味する。同様に、組成物の成分が「所望」であると示される場合、本発明は、具体的には、対応する成分が存在する(組成物に含まれる)か、又は対応する成分が組成物に存在しないという両方の可能性に関する。
【0110】
本明細書では、様々な基が「所望により置換されている」と称される。概して、これらの基は、例えば、1個、2個、3個、又は4個の置換基などの1又は複数の置換基を有し得る。置換基の最大数は、置換部分で利用可能な結合部位の数によって制限されることが理解されるであろう。別段の定義がない限り、本明細書で言及される「所望により置換される」基は、好ましくは2個以下の置換基を有し、特に1個のみの置換基を有し得る。さらに、別段の定義がない限り、所望の置換基が存在しない、すなわち、対応する基が置換されていないことが好ましい。
【0111】
前記リンカー基はまた、ペプチドを含むか又はそれからなり得る。このようなペプチドは、好ましくは、1~100個のアミノ酸、例えば1~25個のアミノ酸、より好ましくは12~20個のアミノ酸、さらにより好ましくは12~16個又は15~20個のアミノ酸を含む。前記ペプチドリンカーは、1又は複数の(G3S)及び/又は(G4S)モチーフ、特に1、2、3、4、5、又は6個の(G3S)及び/又は(G4S)モチーフ、好ましくは3又は4個の(G3S)及び/又は(G4S)モチーフ、より好ましくは3個又は4個の(G4S)モチーフを含み得る。
【0112】
他の例では、前記リンカーは、12~25個のアミノ酸、好ましくは配列(G3S)3、(G3S)4、(G4S)3、又は(G4S)4を含む。別のペプチドリンカーは、GEGTSTGSGGSGGSGGADモチーフ(配列番号10を参照)からなるか又はそれを含み得る。ペプチドリンカーは、当業者に公知の任意の手段によって、そのC末端又はそのN末端のいずれかを介して前記miR-21阻害剤に連結され得る。例えば、C末端の酸は、アミノプロパノールなどのアミノアルコールと反応してアミド結合を形成し得る。アミノプロパノールのアルコール基は、前記miR-21阻害剤の末端ホスホロチオエート基の蛍光体に結合し得る。あるいは、ペプチドリンカーのN末端は、ヒドロキシプロパン酸などの(所望により保護された)ヒドロキシ基含有酸(又はその無水物、ラクトン、若しくは酸塩化物)と反応することができ、(所望によりヒドロキシ基から保護基を除去した後)ヒドロキシ基含有カルボン酸のヒドロキシ基を介して、前記miR-21阻害剤の末端ホスホロチオエート基のリンに結合する。
【0113】
さらに、ペプチドリンカーは、当業者に公知の任意の手段によって、そのC末端又はそのN末端を介して、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分に連結され得る。例えば、C末端酸は、アミノプロパノールなどのアミノアルコールと反応してアミド結合を形成することができ、アミノプロパノールのアルコール基は、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分の糖基のアノマー炭素に結合し得る。あるいは、ペプチドリンカーのN末端は、ヒドロキシプロパン酸などの(所望により保護された)ヒドロキシ基含有酸(又はその無水物、ラクトン、若しくは酸塩化物)と反応することができ、(所望によりヒドロキシ基から保護基を除去した後)ヒドロキシ基含有カルボン酸のヒドロキシ基を介して、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分の糖基のアノマー炭素に結合する。
【0114】
当業者は、ペプチドリンカーがそのC末端を介して前記miR-21阻害剤に連結される場合、そのN末端を介して前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分に連結されること(逆もまた同様)が好ましいことを理解するであろう。
【0115】
適切に保護されたペプチドは、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。これらには、固体ペプチド合成が含まれるが、これらに限定されない。適切なプロトコルは当業者に公知であり、例えば、「Solid-phase peptide synthesis:from standard procedures to the synthesis of difficult sequences」(Coin et al., Nature Protocols 2007, Vol. 2, pp. 3247-3256)において言及されている。固体ペプチド合成を使用する場合、ペプチドの側鎖に保護基を残したまま、ペプチドを固相から切断できる。この状態で、前記miR-21阻害剤及び/又は前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分への結合のための上記の操作は、最も適切に行うことができる。
【0116】
上記のように、用語「部分」又は「担体」は交換可能である。特定の態様では、この部分は、前記miR-21阻害剤に、例えば、共有結合によって結合されてもよい。担体は、特定の態様において、前記miR-21阻害剤を含み得る。例えば、担体は、前記miR-21阻害剤を含む(標的化)リポソーム、ナノ粒子、脂質ナノ粒子(LNP)、メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)などから選択され得る。本発明のある文脈において、「部分」という用語は、例えば、本発明の化合物の文脈において、「部」という用語と交換可能に使用することができ、前記化合物の「部」の1つはmiR-21を阻害することができ、別の「部」は前記miR-21阻害部を標的細胞、好ましくはマクロファージ及び/又は線維芽細胞に結合、標的化、及び/又は送達することができる。
【0117】
マクロファージ及び/又は線維芽細胞への結合/標的化/送達部分は、(特異的)受容体マクロファージ及び/又は線維芽細胞と相互作用する特異的タンパク質リガンドでもあり得る。
【0118】
マクロファージ及び/又は線維芽細胞への結合/標的化/送達部分は、マクロファージ、線維芽細胞及びマクロファージ、肺マクロファージ、又は肺線維芽細胞及び肺マクロファージ上に見られる少なくとも1つの抗原に特異的に結合する抗体又は機能的結合断片であってもよい。そのような特定の態様では、前記部分は、マクロファージ、線維芽細胞及びマクロファージ、肺マクロファージ、又は肺線維芽細胞及び肺マクロファージ上のみに見出される少なくとも1つの抗原に特異的に結合する抗体又は機能的結合断片であってもよい。本明細書で使用される場合、抗体の機能的結合断片は、抗体の抗原結合断片であってもよい。
【0119】
抗体又は機能的結合断片は、上の表に提示された抗原の少なくとも1つに(特異的に結合し)得る。少なくとも1つの抗原に(特異的に)結合することができる抗体又はその抗体断片を同定する方法は、当業者に公知である。さらに、抗体及びその断片は、上記の表3に示した抗原の1つに結合することが当業者に公知である。したがって、前記組成物は、抗体又はその結合断片に結合された前記miR-21阻害剤を含んでいてもよく、抗体又はその結合断片は、例えば、表3に示される抗原の少なくとも1つに結合することにより、前記mirR-21阻害剤をマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する。上記の抗原に結合する抗体又はその抗体断片は、先行技術で公知である。例えば、前記miR-21阻害剤を送達するための抗体は、MRC1(例えば、Abcam社カタログ番号:ab64693)、ADGRE1(例えば、BioRAD社カタログ番号:MCA 2674)、CD14(例えば、Abcam社カタログ番号:ab182032)、FCGR3A(例えば、Abcam社カタログ番号:ab89207)、及びPDGFRA(例えば、Abcam社カタログ番号:ab96569)に対する抗体からなる群から選択されてもよい。
【0120】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、本発明によれば、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体、並びに結合特異性を依然として保持しているその誘導体又は断片を含む。抗体の産生技術は当技術分野で周知であり、例えば、Harlow及びLaneによる「Antibodies, A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988 (Harlow & Lane, 1988))及び「Using Antibodies:A Laboratory Manual」(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1999 (Harlow & Lane, 1999))に記載されている。本発明による「抗体」という用語はまた、キメラ抗体、単鎖抗体、及びヒト化抗体、並びに、抗体断片、とりわけFab断片、Eph受容体からなる融合タンパク質、エフリン、又はホスファターゼ細胞外ドメイン及びFcのような抗体断片を含む。抗体断片又は誘導体は、F(ab’)2、Fv断片、scFvs、単一ドメインVH、又はVhHドメイン若しくはV-NARドメインなどのV様ドメイン、並びにミニボディ、ダイアボディ、トリボディ、テトラボディ、又は化学的に結合されたFab’マルチマーなどのマルチマー形態を含む。例えば、Harlow及びLane(1988及び1999)(Harlow & Lane, 1988, 1999)、Altshuler(2010)(Biochemistry(Moscow)75, 1584-605(Altshuler et al., 2010))、又はHolliger(2005)(Nature Biotechnology 23, 1126-36(Holliger & Hudson, 2005))を参照。様々な手順が当技術分野で公知であり、そのような抗体及び/又は断片の産生に使用することができる。よって、(抗体)誘導体は、ペプチドミメティクスによって産生することができる。さらに、単鎖抗体の産生について記載された技術を、本発明のポリペプチド及び融合タンパク質に特異的な単鎖抗体(例えば、とりわけ米国特許第4946778号明細書)を産生するように構成することができる。また、トランスジェニック動物を使用して、本発明のポリペプチド及び融合タンパク質に特異的なヒト化抗体を発現させてもよい。最も好ましくは、本明細書で使用される抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体の調製には、細胞株の連続培養によって産生される抗体を提供する任意の技術を使用することができる。そのような技術の例としては、当技術分野でさらに開発された独自のハイブリドーマ技術(Kohler & Milstein, 1975)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor & Roder, 1983)、及びヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., 1985)が挙げられる。「抗体」という用語は、ヒト化抗体にも関連する。非ヒト(例えばマウス又はウサギ)抗体の「ヒト化」形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖又はその断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合部分配列など)であり、非ヒト免疫グロブリン由来の最小限の配列を含む。多くの場合、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエントの相補性決定領域(CDR)からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRからの残基に置換されている。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク残基は、対応する非ヒト残基によって置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移入されたCDR又はフレームワーク配列にも見出されない残基を含み得る。これらの変更は、抗体の性能をさらに改善及び最適化するために行われる。概して、ヒト化抗体は、CDR領域の全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全て又は実質的に全てがヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含む。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域(Fc)の少なくとも一部を含んでいてもよい。詳細については、(Jones et al., 1986)、(Riechmann et al., 1988)、及び(Presta, 1992)を参照。抗体断片の産生のために様々な技術が開発されてきた。従来、これらの断片は、無処置抗体のタンパク質分解消化によって得られ((Morimoto et al., 1992)及び(Brennan et al., 1985)参照)。抗体断片は、組換え宿主細胞及び上記の抗体ファージライブラリーによって直接産生することもできる。Fab’-SH断片は大腸菌から直接回収でき、化学結合してF(ab’)2断片を形成できる(Carter et al., 1992)。別のアプローチによれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養から直接単離することができる。抗体断片の産生のための他の技術は、当業者には明らかであろう。他の実施形態では、最適な抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号パンフレット、米国特許第5571894号明細書、及び米国特許第5587458号明細書を参照。抗体断片は、例えば、米国特許第5641870号明細書に記載される「線形抗体」であってもよい。そのような線形抗体断片は、単一特異性又は二重特異性であってもよい:少なくとも2つの異なる抗原又はエピトープに対する結合特異性を持つ二重特異性抗体(Milstein & Cuello, 1983)。例えば、二重特異性抗体又はその断片がマクロファージ及び線維芽細胞に結合するように、二重特異性抗体又はその断片を本発明で使用することができる(例えば、抗体又はその断片の一方の結合部位がマクロファージに結合し、抗体又はその断片の他方の結合部位が線維芽細胞に結合する)。抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術も記載されており、化学結合を使用して、無処置の抗体をタンパク質分解的に切断して、F(ab’)2断片を生成する方法などがある(Brennan et al., 1985)。Fab’-SH断片は大腸菌から回収でき、化学的に結合して二重特異性抗体を形成し得る(Shalaby et al., 1992)。「ダイアボディ(二重特異性抗体)」技術は、二重特異性抗体断片を作成するための代替方法を提供する(Holliger & Hudson, 2005)。「Fab断片」は、概ね1つの軽鎖と、1つの重鎖のCH1及び可変領域とから構成される。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成し得ない。「Fc」領域は、概ね抗体のCH2ドメイン及びCH3ドメインを含む2つの重鎖断片を含む。2つの重鎖断片は、2つ以上のジスルフィド結合によって及びCH3ドメインの疎水性相互作用によって一緒に保持される。「Fab’断片」は、概して、鎖間ジスルフィド結合が、2つのFab’断片の2つの重鎖間で形成され、F(ab’)2分子を形成し得るように、1つの軽鎖と、VHドメイン及びCH1ドメイン、並びにCH1ドメイン及びCH2ドメインとの間の領域を含む1つの重鎖の一部とを含む。「F(ab’)2断片」は、概して、鎖間ジスルフィド結合が2つの重鎖間に形成されるように、2つの軽鎖と、CH1ドメイン及びCH2ドメイン間の定常領域の一部を含む2つの重鎖とを含む。したがって、F(ab’)2断片は、2つの重鎖間のジスルフィド結合によって一緒に保持された2つのFab’断片から構成される。「Fv領域」は、概して、重鎖及び軽鎖の両方からの可変領域を含むが、定常領域を欠いている。2価以上の抗体が考えられる。3つ以上の抗原結合部位と2つ以上の可変ドメインを有する多価「オクトパス」抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現によって容易に生成できる(米国特許出願公開第2002/0004586号明細書、国際公開第01/77342号パンフレット)。例えば、三重特異性抗体を調製することができる(Tutt et al., 1991)。
【0121】
前記miR-21阻害剤は、抗体又はその機能的断片(例えば、本明細書で上記に例示した抗体又はその断片)に結合することができる。抗体又はその断片への結合は、以下の図15に示されている。さらに、前記miR-21阻害剤は、細胞型特異的標的化部分に結合できる。
【0122】
上述のように、前記miR-21阻害剤はまた、「担体」、好ましくはマクロファージ及び/又は線維芽細胞に送達する「担体」に含まれていてもよい。そのような「担体」は、リポソーム、LNP、ナノ粒子及び同種のものを含み得る。したがって、さらなる態様では、前記miR-21阻害剤は、例えば、ナノ粒子に含まれていてもよい。そのようなナノ粒子は、PEG化を伴う又は伴わない脂質ナノ粒子、オリゴヌクレオチド被覆を有する金ナノ粒子、又はオリゴヌクレオチド及び標的化リガンドが組み込まれたDNAナノ構造であってもよい。さらなる様式は最先端のものであり、Juliano RL, Nucl Acids Res 2016(上記参照)に列挙されている。
【0123】
本発明はまた、特許請求の範囲の組成物の製造方法にも関する。示されるように、前記miR-21阻害剤及び前記miR-21阻害剤自体の製造方法は、当業者に公知である。例えば、アンチセンスmiR-21は、オリゴヌクレオチド合成によって提供され得る。さらなる態様では、前記組成物を製造する方法は、前記miR-21阻害剤を、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分に結合することを含む。例示的な手順は、以下の図15に示されている。例えば、前記miR-21阻害剤は、低分子、又は抗体若しくはその機能的断片に結合され得る。例えば、前記アンチセンスmiR-21又は前記miR-21阻害剤は、標的細胞に前記阻害剤を送達する部分に結合するリンカー(例えば、アミノ酸リンカー)に結合され得る。あるいは、前記アンチセンスmiR-21又は前記miR-21阻害剤は、前記阻害剤を標的細胞に送達する部分に結合され得る。このような方法としてクリックケミストリー(Click chemistry)を利用することができる。しかしながら、前記部分を、共有結合によって前記miR-21阻害剤に結合するためのさらなる方法が公知である。特定の態様では、この方法は、前記アンチセンスmiRNA-21を前記部分と結合することを含む。さらに、前記組成物を生成する方法は、前記miR-21阻害剤を、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分に導入することを含み得る。
【0124】
本明細書で使用される場合、前記miR21阻害剤は、miR-21の標的を抑制解除又は過剰発現する限り、任意の分子であってもよい。抑制解除又は過剰発現を測定する方法は、上記にも示されているように、当業者に公知である。好ましい態様では、前記miR-21阻害剤は、アンチセンスmiRNA-21を含むか、又はアンチセンスmiRNA-21である(例として配列番号1~3及び7~9を含むが、これらに限定されない)。アンチセンスmiRNA-21分子は当業者に公知である。例えば、その内容を参照により本明細書に援用されるKhvorova & Watts Nature Biotechnology 2017 (Khvorova & Watts, 2017)及びRupaimoole &Slack MicroRNA therapeutics:towards a new era for the management of cancer and other diseases (Rupaimoole & Slack, 2017)(Nature Reviews in Drug discovery 2017)を参照。さらに、アンチセンスmiRNA-21は、その内容を参照により本明細書に援用される国際公開第2009/106367(A1)号パンフレット又は欧州特許第2260101(B1)号明細書にも開示されている。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、別の配列に相補的な特定の配列、特にmiR-21に相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドとして理解されるものである。miR-21の標的はまた、miR-21の下流の標的を包含すると理解され得る。例えば、miR-21に少なくとも相補的な配列を有するオリゴヌクレオチドを介したmiR-21の阻害は、miR-21の標的(「標的」Sprouty(細胞シグナル伝達に関与する発生タンパク質)及び同種のもの)の抑制解除又は過剰発現にさえ至ることに留意することが重要である。以下の添付の実施例では、例示的なアンチセンスmiRNA-21が提供される。概して、本発明の文脈において使用されるアンチセンスmiRNAは、miR-21に相補的な配列を含むオリゴヌクレオチドであり得る。本発明の1つの特定の実施形態では、アンチセンスmiRNA-21はロックド核酸であってもよく、又は好ましくはホスホロチオエート化LNA/DNAミックスマーである。例えば、前記miR-21阻害剤は、3´-tCgAaTaGtCtGaCT-5´(配列番号1)及び/又は3´-TCgAaTagTCtgAcT-5´(配列番号2)であり得るアンチセンス-miR-21であってもよい。さらに、有用なアンチセンスmiR-21分子が、配列番号3(配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチド、5’-メチル-シトシン修飾、及びホスホロチオエート骨格を有するLNAコンストラクト)、配列番号7(配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチド及び5’-メチル-シトシン修飾を有し、ホスホロチオエート骨格を有さないLNAコンストラクト)、配列番号8(配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチド及びホスホロチオエート骨格を有し、5’-メチル-シトシン修飾を有さないLNAコンストラクト)、及び配列番号9(配列番号1及び配列番号2と同じヌクレオチド配列を含むが、全てのロックドヌクレオチドを有し、任意の5’-メチル-シトシン修飾及びホスホロチオエート骨格を有さないLNAコンストラクト)に提供されている。本明細書で提供される配列において、大文字はLNAを指し、小文字はDNA塩基を指す。全ての大文字のCは、5-メチル-シトシンを表す。miR-21に対するアンチセンスmiRは、完全なPS(ホスホロチオエート)骨格を有し得る。配列番号1も参照。特に有用なアンチセンス-miR-21分子は、配列番号1及び配列番号2で提供され、最も好ましいのは、添付の実施例に示されるように、以下の「anti-miR-21」:3´-tCgAaTaGtCtGaCT-5´(配列番号1)である。
【0125】
本明細書で論じるように、本発明は、miR-21阻害剤を含み、前記miR-21阻害剤を肺マクロファージなどのマクロファージに送達する部分を含む組成物を提供する。本明細書で上述したように、前記組成物はまた、少なくとも2つの機能的部分/部位を有する単一分子、すなわち、miR-21阻害剤である機能的部分/部位及び前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する機能的部分/部位を含み得る。さらに、本明細書で上述したように、前記「化合物」並びに本明細書に記載の組成物は、さらなる官能基部分又は部位、例えば、前記miR-21阻害剤を、例えば線維芽細胞などの他の標的細胞に標的化及び/又は送達する部分又は部位などを含むこともできる。したがって、本明細書で議論及び図示されるように、本発明に関連して、機能的特徴、すなわち、特徴(a):miR-21の阻害に関連する、及び特徴(b):所望の標的細胞への前記阻害部分/部位(「miR-21の阻害剤」)の送達に関する(この送達は、標的化リポソーム、ナノ粒子、標的脂質ナノ粒子(LNP)、標的メソポーラスシリカナノ粒子(MSN)などの本明細書で定義される「担体」であってもよい)を少なくとも有する化合物/組成物が提供される。前記標的細胞は1又は複数のマクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞であり、好ましくは、標的細胞は1又は複数のマクロファージである。好ましい態様において、前記1又は複数のマクロファージ及び/又は1又は複数の線維芽細胞は、1又は複数の肺マクロファージ及び/又は1又は複数の肺線維芽細胞である。より好ましい態様では、前記マクロファージ及び/又は線維芽細胞は、肺胞マクロファージ及び/若しくは肺胞線維芽細胞並びに/又は間質マクロファージ及び/若しくは間質線維芽細胞である。したがって、本発明は、本明細書に記載の(医学的及び/又は薬学的)使用のための組成物/化合物並びに本発明の組成物/化合物自体、本発明の組成物/化合物を製造する方法並びに本明細書に開示される治療方法を提供し、前記組成物/化合物は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む。本発明の一実施形態では、上記で説明したように、本発明の組成物は、単一分子、すなわち、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達でき、前記miR-21阻害剤をマクロファージに標的化することができる部分/部位とを含む化合物であり得る。前記miR-21阻害剤及び前記送達/標的化部分/部位は、「リンカー」(構造)を介して連結され得る。したがって、本発明はまた、miR-21阻害剤を含み、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する少なくとも1つの部分を含む組成物であって、
前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分とがリンカーを介して連結され、前記リンカーが、C10-40アルキレン、C10-40アルケニレン、及びC10-40アルキニレンから選択される基Lを含むか又はからなり、前記アルキレン、前記アルケニレン、及び前記アルキニレンが、それぞれ、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-OR21、-NR2121、-NR21OR21、-COR21、-COOR21,-OCOR21、-CONR2121、-NR21COR21、-NR21COOR21、-OCONR2121、-SR21、-SOR21、-SO221、-SO2NR2121、-NR21SO221、-SO321、及び-NO2から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、さらに、前記アルキレン、前記アルケニレン、又は前記アルキニレンに含まれる1又は複数の-CH2-単位が、それぞれ、-O-、-NR21-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクロアルキレンから独立して選択される基によって所望により置換され、前記アリーレン、前記ヘテロアリーレン、前記シクロアルキレン、及び前記ヘテロシクロアルキレンが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、
各R21は、水素、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから独立して選択され、前記アルキル、前記アルケニル、及び前記アルキニルが、それぞれ、1又は複数の基RAlkで所望により置換され、さらに、前記カルボシクリル及び前記ヘテロシクリルが、それぞれ、1又は複数の基RCycで所望により置換され、
任意の2つのR21が結合して環を所望により形成し、
各RAlkは、-OH、-O(C1-5アルキル)、-O(C1-5アルキレン)-OH、-O(C1-5アルキレン)-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-S(C1-5アルキレン)-SH、-S(C1-5アルキレン)-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-OH、-N(C1-5アルキル)-OH、-NH-O(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-O(C1-5アルキル)、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-NO2、-CHO、-CO(C1-5アルキル)、-COOH、-COO(C1-5アルキル)、-O-CO(C1-5アルキル)、-CO-NH2、-CO-NH(C1-5アルキル)、-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-CO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-CO(C1-5アルキル)、-NH-COO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-COO(C1-5アルキル)、-O-CO-NH(C1-5アルキル)、-O-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-SO2-NH2、-SO2-NH(C1-5アルキル)、-SO2-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-SO2-(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-SO2-(C1-5アルキル)、-SO2-(C1-5アルキル)、-SO-(C1-5アルキル)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、前記アリール、前記ヘテロアリール、前記シクロアルキル、及び前記ヘテロシクロアルキルが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、
各RCycは、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、-OH、-O(C1-5アルキル)、-O(C1-5アルキレン)-OH、-O(C1-5アルキレン)-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-S(C1-5アルキレン)-SH、-S(C1-5アルキレン)-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-OH、-N(C1-5アルキル)-OH、-NH-O(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-O(C1-5アルキル)、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-NO2、-CHO、-CO(C1-5アルキル)、-COOH、-COO(C1-5アルキル)、-O-CO(C1-5アルキル)、-CO-NH2、-CO-NH(C1-5アルキル)、-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-CO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-CO(C1-5アルキル)、-NH-COO(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-COO(C1-5アルキル)、-O-CO-NH(C1-5アルキル)、-O-CO-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-SO2-NH2、-SO2-NH(C1-5アルキル)、-SO2-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)、-NH-SO2-(C1-5アルキル)、-N(C1-5アルキル)-SO2-(C1-5アルキル)、-SO2-(C1-5アルキル)、-SO-(C1-5アルキル)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、及びヘテロシクロアルキルから独立して選択され、前記アリール、前記ヘテロアリール、前記シクロアルキル、及び前記ヘテロシクロアルキルが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換されている、組成物を提供する。
【0126】
本発明の組成物/化合物の一実施形態では、前記組成物/化合物は、マクロファージに対する前記miR-21阻害剤部分を2つ以上含み得る。したがって、前記組成物(化合物でもある)は、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する2つ以上の部分/部位を含む組成物が提供される。したがって、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する2つ以上の部分/部位とが、分岐リンカーを介して連結されていてもよく、前記リンカーの枝のそれぞれが、請求項34で定義された基Lであり、前記リンカーの主鎖は、請求項34で定義された1つ又は2つの基Lを含むか又はそれらからなり、好ましくは、前記主鎖は前記miR-21阻害剤に結合し、前記枝は前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分に結合する。
【0127】
各基Lが、C10-40アルキレンから選択されていてもよく、前記アルキレンが、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-O(C1-5ハロアルキル)、-CN、-OR21、-NR2121、-NR21OR21、-COR21、-COOR21,-OCOR21、-CONR2121、-NR21COR21、-NR21COOR21、-OCONR2121、-SR21、-SOR21、-SO221、-SO2NR2121、-NR21SO221、-SO321、及び-NO2から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換され、さらに、前記アルキレンに含まれる1又は複数の-CH2-単位が、それぞれ独立して、-O-、-NR21-、-CO-、-S-、-SO-、-SO2-、アリーレン、ヘテロアリーレン、シクロアルキレン、及びヘテロシクロアルキレンから選択される基によって置換されており、前記アリーレン、前記ヘテロアリーレン、前記シクロアルキレン、及び前記ヘテロシクロアルキレンが、それぞれ、C1-5アルキル、C2-5アルケニル、C2-5アルキニル、ハロゲン、C1-5ハロアルキル、-CN、-OH、-O(C1-5アルキル)、-SH、-S(C1-5アルキル)、-NH2、-NH(C1-5アルキル)、及び-N(C1-5アルキル)(C1-5アルキル)から独立して選択される1又は複数の基で所望により置換されている。
【0128】
本発明の組成物/化合物の一実施形態では、前記リンカーは、
【0129】
【化1】
【0130】
で表されてもよい(式中「*」は、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分への結合を表し、「**」は、miR-21阻害剤への結合を表す)。
【0131】
本発明の組成物/化合物において、前記miR-21阻害剤が、好ましくは、末端ホスホロチオエート基のリン原子を介してリンカーに結合していてもよい。
【0132】
前記miR-21の阻害剤をマクロファージに送達する本発明の化合物/組成物における1又は複数の部分/部位が糖を含んでいてもよく、好ましくはマンノース及びN-アセチルガラクトサミンから選択される1又は複数を含むか又はそれらからなってもよく、より好ましくはマンノース、ジマンノシルマンノース、及びN-アセチルガラクトサミンからなってもよい。添付の非限定的な実施例で例示されるように、トリマンノースも使用して、前記miR-21阻害剤をマクロファージに(マンノース受容体Cタイプ1との相互作用を介して)標的化した。
【0133】
前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する1又は複数の部分は、以下から選択されてもよい。
【0134】
【化2】
【0135】
前記リンカーは、各構造の右下部分のアノマー炭素に結合している。
【0136】
本発明の組成物は、図23Bで定義される化合物の1つ若しくは両方及び/又は以下の化合物の1つ若しくは両方を含有するか又は含んでいてもよい。
【0137】
【化3】
【0138】
本明細書に示されるように、miR-21阻害剤を含み、前記miR-21阻害剤をマクロファージ、好ましくは肺マクロファージに送達する部分を含む本発明の組成物/化合物は、医学環境において、とりわけ肺線維症の予防及び/又は治療に特に有用である。本明細書で上記及び下記に提供される本発明の組成物/化合物についての定義及び説明は、医薬品として使用されるこれらの組成物/化合物に適用され、及び/又は本明細書では、とりわけ肺線維症の治療において、線維性障害の治療方法を提供する。特定の態様では、本発明の化合物/組成物を含む対応する医薬組成物はエアロゾル形態である。薬学的組成物は、医薬及び/又は医薬品の使用のために有益に使用できる。限定するものではないが、好ましい実施形態では、肺線維症の治療において、本発明の組成物/化合物は、医学的介入を必要とする患者によって吸入されることが想定される。
【0139】
本明細書で使用される用語「治療」又はその文法的変形は、対象における疾患/病状/障害の任意の治療を範囲内とし、以下を含む:(a)疾患/病状/障害の素因となり得る対象の疾患/病状/障害を予防及び/又は改善する;(b)疾患/病状/障害を阻害する、すなわち、その発症を阻止する;又は(c)疾患/病状/障害を緩和する、すなわち、疾患/病状/障害の退行を引き起こす。例えば、本明細書で提供される組成物は、肺線維症の予防に使用できる。
【0140】
本明細書で提供される組成物は、医薬組成物と称される場合もある。前記医薬組成物は、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分とを含む。前記miR-21阻害剤及び前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分は、本明細書において例示及び説明されるように、連結/結合されてもよい。前記医薬組成物は、個々の患者の臨床状態、前記医薬組成物の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に公知の他の要因を考慮して、良好な医療行為と一致する様式で処方及び投薬できる。したがって、本明細書における目的のための医薬組成物の「有効量」は、そのような考慮事項によって決定される。特に医学的及び/又は薬学的用途について本明細書に記載される実施形態は、必要により修正を加えて、本明細書に記載される医薬組成物に適用される。
【0141】
本明細書で提供される組成物は、さらなる薬物/医薬品と組み合わせてもよい。例えば、本明細書で提供される組成物は、ウイルス及び/又は細菌感染の治療並びに抗炎症治療のための医薬組成物と組み合わせて治療において投与される。このような治療には、抗ウイルス剤(例えば、レムデシビル(Remdesivir))、βアドレナリン受容体アゴニスト(例えば、サルブタモール(Salbutamol))、及びグルココルチコイド(例えば、デキサメタソン(Dexamethason))が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
医薬組成物又は組成物は、薬学的に許容される担体を含んでいてもよい。「薬学的に許容される担体」とは、液体充填剤、希釈剤、カプセル化材料、又は任意の種類の製剤助剤である。
【0143】
本発明は、特に、肺線維症の治療におけるmiR-21阻害剤並びに前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する部分を含む、本明細書で提供される組成物/化合物の使用に関する。本発明はさらに、肺線維症を治療するための医薬品を製造するための組成物の使用に関し、前記組成物は、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分とを含む。本発明はまた、肺線維症の治療方法であって、そのような治療を必要とする対象に、前記miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージに送達する前記部分とを含む組成物/化合物を投与することを含む方法に関する。本発明に関連して、肺線維症の治療方法も提供される。前記治療方法は、そのような治療を必要とする対象、とりわけ肺線維症に罹患している又は肺線維症に罹患しやすいヒト患者に、miR-21阻害剤と、前記miR-21阻害剤をマクロファージ、好ましくは肺マクロファージに送達する部分とを含む、本明細書に記載の組成物/化合物投与することを含む。医学的及び/又は薬学的使用のために本明細書に記載される実施形態は、必要により修正を加えて、この発明の治療方法に適用される。また、本明細書で所望される肺線維症の治療方法は、線維性状態の改善及び/又は予防さえも目的としたさらなる薬物の(同時)投与を含んでいてもよいことに留意されたい。そのような薬物は、デキサメタゾンなどのグルココルチコイド、ニンテダニブ(Nintedanib)などのチロシンキナーゼ阻害剤、複数のチロシンキナーゼの受容体遮断薬、又はトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)刺激コラーゲン合成を阻害する抗線維症薬であるピルフェニドン(Pirfenidone)を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0144】
ここでもまた、特に医学的及び/又は薬学的用途について本明細書に記載される実施形態は、必要により修正を加えて、肺線維症及び/又は線維症に関連する若しくは線維症を引き起こす肺線維症の本明細書に記載された治療方法に適用される。本発明の特定の治療方法は、そのような治療を必要とする患者の治療であり、特に成人呼吸窮迫症候群(ARDS)に続いて、肺補助法又は人工呼吸によって引き起こされるか又は関連する前記肺線維症に、前記患者が罹患している。そのような患者はまた、COVD-19患者を含んでいてもよい。
【0145】
本明細書で使用される用語「含む(comprising)」及び「含む(including)」又はその文法的変形は、記載された特徴、整数、工程、又は構成要素を指定するものとして解釈されるものであるが、1又は複数の追加の特徴、整数、工程、構成要素、又はそれらの群の追加を排除するものではない。この用語は、「~からなる」及び「本質的に~からなる」という用語を包含する。したがって、「含む(comprising)」/「含む(including)」/「有する(having)」という用語は、任意のさらなる構成要素(又は同様に特徴、整数、工程及び同種のもの)が存在し得る/存在してもよいことを意味する。
【0146】
「~からなる」という用語は、さらなる構成要素(又は同様に特徴、整数、工程及び同種のもの)が存在しないことを意味する。
【0147】
「約」という用語は、好ましくは示された数値の±10%、より好ましくは示された数値の±5%、特に示された正確な数値を指す。
【0148】
本明細書で使用される用語「約」は、示された数値の±10%、特に示された数値の±5%を指す。「約」という用語が使用される場合は常に、示された正確な数値への特定の参照も含まれる。「約」という用語が、特定の核酸内のヌクレオチド数など、整数で定量化されるパラメーターに関連して使用される場合、示された数値の±10%又は±5%に対応する数値が、最も近い整数に四捨五入される。
【0149】
以下の非限定的な図及び実施例を参照して、本発明をさらに説明する。特に明記しない限り、例えば、その内容全体を参照により本明細書に援用されるSambrook, Russell“Molecular Cloning, A Laboratory Manual”, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (2001) (Sambrook & Russell, 2001))に記載されているように、組換え遺伝子技術の確立された方法を使用した。
【0150】
以下の非限定的な図及び実施例を参照して、本発明をさらに説明する。前記図を示す。
【図面の簡単な説明】
【0151】
図1A-B】図1は、ロックド(locked)核酸修飾アンチセンスmiR-21を使用したmiR-21阻害の効率。(A)虚血後の心筋におけるmiR-21の発現。SHAM:n=3、I/R傷害:n=3~6。(B)実験戦略。ブタに、左前下行枝(LAD)冠状動脈のバルーン閉塞によるカテーテル挿入を60分間で実施し、続いて33日間再灌流を行った。miR阻害剤であるロックド核酸修飾アンチセンスmiR-21(LNA-anti-miR-21)を、再灌流傷害中の5日目及び19日目にカテーテルで局所的に適用した。10mgのLNA-anti-miR-21を、左前下行枝(LAD)及び左回旋動脈(LCx)に3:2の比率で注入した。上パネル:miR-21(配列番号4)、LNA-anti-miR-21(配列番号1)、及びLNA-anti-miR-対照(配列番号5)の配列。灰色の領域はシード配列を示し、miR-21に相補的な塩基は赤で表示される。
図1C図1は、ロックド(locked)核酸修飾アンチセンスmiR-21を使用したmiR-21阻害の効率。(C)LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照の局所適用後のmiR-21発現の定量分析。HF対照:n=4、HF LNA-anti-miR-対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。データは平均値及び個々の値を示し、一元配置分散分析(B)又は二元配置分散分析(C)及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。**P<0.01。(C)LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照の局所適用後のmiR-21発現の定量分析。HF対照:n=4、HF LNA-anti-miR-対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。データは平均値及び個々の値を示し、一元配置分散分析(B)又は二元配置分散分析(C)及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。**P<0.01。
図2図2は、LNA-anti-miR-21を使用したmiR-21阻害後の、右心室、左心房、右心房、肝臓、肺、腎臓、及び脾臓におけるmiR-21発現の定量化。LNA-anti-miR-21を、再灌流傷害中の5日目及び19日目にカテーテルで局所的に適用した。心臓の他の領域 (左心房、右心房、及び右心室)及び他の臓器(腎臓、肝臓、肺、及び脾臓)でのmiR-21の発現。HF対照:n=3、HF LNA-anti-miR対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。データは平均値及び個々の値を示し、一元配置分散分析及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。*P<0.05。
図3A図3は、miR-21の阻害は、ブタの心臓をI/R誘発性心肥大及び心筋線維症から保護することを示す図である。(A)体重に対する心重量の比率(HW/BW)。
図3B-E】図3は、miR-21の阻害は、ブタの心臓をI/R誘発性心肥大及び心筋線維症から保護することを示す図である。(B)上:心臓の境界域の代表的な心筋切片における小麦胚芽凝集素染色。下:データの定量化。(C)上:シリウスレッド/ファストグリーンによる心筋試料の代表的な染色。下:データの定量化。(D)心臓の境界領域に対するビメンチン染色 (線維芽細胞マーカー)の定量分析。(E)心臓の境界領域に対するCD68染色(マクロファージマーカー)の定量分析。
図3F-G】図3は、miR-21の阻害は、ブタの心臓をI/R誘発性心肥大及び心筋線維症から保護することを示す図である。(F)毛細血管密度は、境界領域におけるCD31に対する抗体で心筋切片を染色することにより決定した。代表的な画像及び定量化。(G)コラーゲン遺伝子(Col1a1、Col1a2、及びCol3a1)、平滑筋アクチン(Acta2)、及び筋細胞肥大関連遺伝子(Nppa、Nppb、及びMyh7)のmRNAレベルの定量的評価。スケールバー:50μm(B)、500μm(C)、及び(D)。n>心臓あたり300個の中心核を有する細胞(B)。n>心臓あたり10000個の細胞(D、E、及びF)。シャム(偽)対照:n=3、HF対照:n=4、HF LNA-anti-miR対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。データは平均値及び個々の値を示し、一元配置分散分析及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。*P<0.05、**P<0.01、***P<0.001、及び****P<0.0001。
図4A図4は、LNA-anti-miR-21のカテーテルに基づく局所適用は、全体的及び局所的な心筋機能を改善することを示す図である。ブタは経皮的虚血/再灌流(60分/33日間)傷害を受け、LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照を、再灌流傷害中の5日目及び19日目にカテーテルで局所的に適用した。(A)I/R後33日目で得られた代表的な圧力-容積ループトレース。
図4B-C】図4は、LNA-anti-miR-21のカテーテルに基づく局所適用は、全体的及び局所的な心筋機能を改善することを示す図である。ブタは経皮的虚血/再灌流(60分/33日間)傷害を受け、LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照を、再灌流傷害中の5日目及び19日目にカテーテルで局所的に適用した。(B~E)PV分析によって測定された全体的な心筋機能の指標を示す。(B)左室拡張末期圧、(C)1回拍出量。
図4D-E】図4は、LNA-anti-miR-21のカテーテルに基づく局所適用は、全体的及び局所的な心筋機能を改善することを示す図である。ブタは経皮的虚血/再灌流(60分/33日間)傷害を受け、LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照を、再灌流傷害中の5日目及び19日目にカテーテルで局所的に適用した。(B~E)PV分析によって測定された全体的な心筋機能の指標を示す。(D)収縮速度、(E)左心室の弛緩速度。
図4F-G】図4は、LNA-anti-miR-21のカテーテルに基づく局所適用は、全体的及び局所的な心筋機能を改善することを示す図である。ブタは経皮的虚血/再灌流(60分/33日間)傷害を受け、LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照を、再灌流傷害中の5日目及び19日目にカテーテルで局所的に適用した。(B~E)PV分析によって測定された全体的な心筋機能の指標を示す。(F)局所心筋機能の尺度としてソノマイクロメトリーによって測定される心内膜下セグメントの短縮。分析は、虚血/再灌流傷害から33日後に、安静下又は120bpm及び140bpmでペーシングした後に行った。(G)I/R傷害前及び再灌流後33日目に蛍光透視法によって測定された駆出率。HF対照:n=4、HF LNA-anti-miR対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。データは平均値及び個々の値を示し、二元配置分散分析及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001。
図5A-B】図5は、miR-21の阻害は、I/Rによる心機能の喪失を用量依存的に防止したことを示す図である。ブタは虚血/再灌流傷害を受け、手術後5日目及び19日目に4mg又は10mgのLNA-anti-miR-21を投与された。この図は、図1Cのレベル4に示されたデータも参照して、4mgのLNA-anti-miR-21投与量と10mgの投与量とを直接比較している。(A)梗塞サイズの定量化。(B)miR-21発現の定量分析。
図5C-E】図5は、miR-21の阻害は、I/Rによる心機能の喪失を用量依存的に防止したことを示す図である。ブタは虚血/再灌流傷害を受け、手術後5日目及び19日目に4mg又は10mgのLNA-anti-miR-21を投与された。この図は、図1Cのレベル4に示されたデータも参照して、4mgのLNA-anti-miR-21投与量と10mgの投与量とを直接比較している。(C)左室拡張末期圧の解析。(D)駆出率の定量化。(E)ソノマイクロメトリーを用いた局所心筋機能の解析。HF対照:n=4、HF LNA-anti-miR-対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21(4mg):n=2、HF LNA-anti-miR-21(10mg):n=5。データは平均値及び個々の値を示し、対応なしの一元配置分散分析を使用して分析した。**P<0.01及び***P<0.001。
図6A-B】図6は、差次的発現解析により、LNA-anti-miR-21適用後のmiR-21標的の抑制解除が明らかになることを示す図である。(A)RNA配列決定のスキーム。TruSeq Stranded mRNA試料調製キットを使用して、心筋虚血組織から単離した4μgの全RNA試料からRNA配列決定ライブラリーを生成した。配列決定は、HiSeq4000(Illumina)で行い、分析は社内のGalaxyプラットフォームを使用して実施した。n=群あたり3。(B)主成分分析。主成分1(PC1、x軸)はデータの全変動の59.5%を表し、PC2(y軸)は40.5%を表す(TPM>=3、n=8432)。
図6C図6は、差次的発現解析により、LNA-anti-miR-21適用後のmiR-21標的の抑制解除が明らかになることを示す図である。(C)全ての遺伝子及びTargetScan Human(バージョン7)によって予測された、8-mer結合部位、7-mer-m8結合部位、又は7-mer-A1結合部位を含む、広く保存されたmiR-21標的の差次的発現の累積分布及び中央値変化プロット。棒グラフは、四分位範囲でのmRNA倍数変化の中央値を示す。コルモゴロフ-スミルノフ(Kolmogorov-Smirnov)検定を使用してデータを分析した。***P<0.001。
図6D図6は、差次的発現解析により、LNA-anti-miR-21適用後のmiR-21標的の抑制解除が明らかになることを示す図である。(D)HF LNA-anti-miR-対照とシャム(偽)との間(左)及びHF LNA-anti-miR-21とHF LNA-anti-miR-対照との間(右)の高度に調節解除された遺伝子(2を超える又は-2未満の対数倍変化、調整されたP値<0.05)の生物学的プロセスの遺伝子オントロジー濃縮。灰色の点線は、GO用語のP<0.05を示す。
図6E1図6は、差次的発現解析により、LNA-anti-miR-21適用後のmiR-21標的の抑制解除が明らかになることを示す図である。(E)調節解除された遺伝子とそれに関連する遺伝子オントロジー用語を示すコード図。
図6E2図6は、差次的発現解析により、LNA-anti-miR-21適用後のmiR-21標的の抑制解除が明らかになることを示す図である。(E)調節解除された遺伝子とそれに関連する遺伝子オントロジー用語を示すコード図。
図6F-G】図6は、差次的発現解析により、LNA-anti-miR-21適用後のmiR-21標的の抑制解除が明らかになることを示す図である。(F)リン酸化ERK(p-ERK)及び非リン酸化ERK(t-ERK)に対する免疫ブロットを、心筋組織ライセートに対して行った。負荷対照としてGAPDHを使用した。(G)ブタの心筋組織におけるリン酸化ERK陽性心臓線維芽細胞の割合。リン酸ERK、ビメンチン(VIM;間葉細胞マーカー)及びCD31(内皮細胞マーカー)に対する心筋切片で免疫蛍光染色を行った。核はDAPIで染色した。VIM陽性でCD31陰性の細胞を心臓線維芽細胞とみなした。スケールバー:50μm。シャム(偽)対照:n=3、HF対照:n=4、HF LNA-anti-miR-対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。データは平均値及び個々の値を示し、一元配置分散分析を使用して分析した。*P<0.05。
図7A図7は、遺伝子デコンボリューションと組み合わせた次世代RNA配列決定により、anti-miR-21で処理したブタの心筋におけるマクロファージ及び線維芽細胞の重要な役割が明らかになることを示す図である。(A)遺伝子デコンボリューションの概要。(B)細胞型全体の遺伝子の存在量、特異性、及び濃縮に基づくコンセンサスランキングのための遺伝子間の交差。
図7B図7は、遺伝子デコンボリューションと組み合わせた次世代RNA配列決定により、anti-miR-21で処理したブタの心筋におけるマクロファージ及び線維芽細胞の重要な役割が明らかになることを示す図である。(B)細胞型全体の遺伝子の存在量、特異性、及び濃縮に基づくコンセンサスランキングのための遺伝子間の交差。
図7B-C】図7は、遺伝子デコンボリューションと組み合わせた次世代RNA配列決定により、anti-miR-21で処理したブタの心筋におけるマクロファージ及び線維芽細胞の重要な役割が明らかになることを示す図である。(B)細胞型全体の遺伝子の存在量、特異性、及び濃縮に基づくコンセンサスランキングのための遺伝子間の交差。(C)マクロファージ、内皮細胞、及び線維芽細胞の特徴的なマトリックスの上位3つの濃縮された遺伝子のUMAP機能及びバイオリンプロット。
図7D図7は、遺伝子デコンボリューションと組み合わせた次世代RNA配列決定により、anti-miR-21で処理したブタの心筋におけるマクロファージ及び線維芽細胞の重要な役割が明らかになることを示す図である。(D)筋細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及びマクロファージのバルク及び単一細胞RNA発現からのブタ心筋の相対的な細胞型比率の推定。シャム対照:n=3、HF対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。データは平均値及び個々の値を示し、一元配置分散分析及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。*P<0.05及び**P<0.01。
図8A図8は、miR-21は、心臓マクロファージで最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを示す図である。(A)細胞単離のスキーム。
図8B図8は、miR-21は、心臓マクロファージで最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを示す図である。(B)異なる心筋細胞型におけるmiRNA発現プロファイル。野生型マウスの心臓から単離された心臓マクロファージ及びその他の心筋細胞タイプ(筋細胞、線維芽細胞、及び内皮細胞)におけるmiRNAの円グラフ表示。
図8C-D】図8は、miR-21は、心臓マクロファージで最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを示す図である。(C)異なる心筋細胞型におけるmiR-21a-5pの発現。(D)野生型マウスは、横方向大動脈狭窄(TAC)を受けるか、陰性対照として偽手術を受けた。圧力過負荷の6日後に野生型マウスの心臓から単離された心臓マクロファージのmiRNAの円グラフ表現。TACの6日後:n=5。
図8E図8は、miR-21は、心臓マクロファージで最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを示す図である。(E)圧力過負荷の6日後又は21日後に心臓から単離された心臓マクロファージにおけるSYBR-greenに基づく定量的リアルタイムPCRによって決定されたmiR-21-5pの相対的発現。シャム(偽):n=6、TAC後6日:n=5、TAC後21日:n=3。
図8F-G】図8は、miR-21は、心臓マクロファージで最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを示す図である。(F)miRNA(バー)及び対応する3’-UTR標的プール(黒線)の測定されたコピーは、偽手術又はTAC手術後に野生型(WT)マウスから単離された心臓マクロファージで最も発現されたmiRNAの100万あたりの総読み取り数(TPM)で示される。miR-21は赤色で示されている。Y軸は対数スケールである。n=群あたり3。(G)マクロファージ特異的miR-21欠損(miR-21 cKO)マウスは、常在マクロファージで特異的に活性なCx3cr1プロモーターによって駆動されるCreリコンビナーゼを発現するマウス系統とmiR-21-floxedマウスを交配することによって生成した。心臓マクロファージにおけるmiR-21の発現。データは平均値と個々の値を示し、一元配置分散分析(ANOVA)を使用して分析した。WT:n=3、miR-21 cKO:n=5。データは平均値と個々の値を示し、スチューデント(Student)のt検定を使用して分析した。*P<0.05、**P<0.01、及び**P<0.001。
図9A-B】図9は、miR-21のマクロファージ特異的欠失は、マウスの圧負荷による心筋リモデリングを防止することを示す図である。生後8週の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスにTAC又は偽手術を施し、4週間後に心臓を採取した。心機能は、手術前、手術後2週間、及び実験終了時(手術後4週間)に実施される心エコー検査によってモニタリングした。(A)実験戦略。(B)代表的な心筋切片のシリウスレッド/ファストグリーン染色及び細胞外マトリックスの定量化。
図9C図9は、miR-21のマクロファージ特異的欠失は、マウスの圧負荷による心筋リモデリングを防止することを示す図である。生後8週の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスにTAC又は偽手術を施し、4週間後に心臓を採取した。心機能は、手術前、手術後2週間、及び実験終了時(手術後4週間)に実施される心エコー検査によってモニタリングした。(C)小麦胚芽凝集素(WGA)で染色された代表的な心筋切片及び心筋細胞領域の定量化。
図9D-E】図9は、miR-21のマクロファージ特異的欠失は、マウスの圧負荷による心筋リモデリングを防止することを示す図である。生後8週の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスにTAC又は偽手術を施し、4週間後に心臓を採取した。心機能は、手術前、手術後2週間、及び実験終了時(手術後4週間)に実施される心エコー検査によってモニタリングした。(D)コラーゲン遺伝子(Col1a1、Col1a2)、Acta2、Myh7、及びNppaのmRNAレベルの定量的PCR評価。(E)左心室駆出率によって測定される心機能の評価。
図9F-G】図9は、miR-21のマクロファージ特異的欠失は、マウスの圧負荷による心筋リモデリングを防止することを示す図である。生後8週の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスにTAC又は偽手術を施し、4週間後に心臓を採取した。心機能は、手術前、手術後2週間、及び実験終了時(手術後4週間)に実施される心エコー検査によってモニタリングした。(F)収縮期及び拡張期にVevostrainソフトウェアを使用して測定された心臓の歪みの代表的なスペックルトレース。(G)ピーク半径方向歪み(%)、ピーク長手方向歪み(%)、及びピーク円周方向歪み(%)の定量化。スケールバーは2mm(B)及び100mm(C)を表す。WTシャム(偽):n=6、miR-21 cKOシャム(偽):n=7、WT TAC:n=10、miR-21cKO TAC:n=7。データは平均値と個々の値を示し、スチューデント(Student)のt検定(A)又は二元配置分散分析(ANOVA)のいずれか及びサイダック(Sidak)の事後検定(B~G)を使用して分析した。*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001。
図10A図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(A)TAC手術の6日後に野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスの心臓から単離された非心筋細胞の単一細胞配列決定の実験ワークフロー。バーコード化されたcDNAライブラリーは、10X Chromium Single Cell 3’-Libraryキット試薬を使用して生成し、配列決定はHiSeq4000を使用して行い、Cell Ranger及びSeuratパッケージを使用して分析した。
図10B図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(B)野生型トランスクリプトーム及びmiR-21 cKO単一細胞トランスクリプトームの分布の次元削減、及びそれらの遺伝子発現に基づく細胞のグループ化を示す、UMAP分布プロット。
図10C図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(C)マクロファージ、常在様マクロファージ、及び炎症性マクロファージのマーカー遺伝子の発現を示すバイオリンプロット。
図10D図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(D)様々なマクロファージクラスターを表す円グラフ。
図10E1図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(E)WT TAC対WTシャム(偽)及びmiR-21 cKO TAC対WT TACにおける常在様マクロファージの上位200個の調節解除された遺伝子の生物学的プロセスに関する遺伝子オントロジー(GO)濃縮分析。上位の大きな比率を占める遺伝子オントロジー用語に関連する遺伝子の関連付けを示すコードダイアグラム。
図10E2図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(E)WT TAC対WTシャム(偽)及びmiR-21 cKO TAC対WT TACにおける常在様マクロファージの上位200個の調節解除された遺伝子の生物学的プロセスに関する遺伝子オントロジー(GO)濃縮分析。上位の大きな比率を占める遺伝子オントロジー用語に関連する遺伝子の関連付けを示すコードダイアグラム。
図10F図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(F)RNA速度は、WT対照と比較して、miR-21 cKOマウスのM1様マクロファージからM2様マクロファージへのより速いシフトを示している。
図10E2図10は、単一細胞配列決定により、心臓マクロファージでmiR-21を特異的に欠失させた後、心臓に常在様マクロファージが蓄積していることが明らかになることを示す図である。(G)LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR対照での炎症誘発性遺伝子(Tnf、Il6、Nos2)の発現は、5ng/mLのリポ多糖(LPS)による刺激の有無にかかわらず、骨髄由来マクロファージを処理した。n=6。データは平均値及び個々の値を示し、二元配置分散分析(ANOVA)及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。**P<0.01、***P<0.001、及び****P<0.0001。
図11A図11は、単一細胞トランスクリプトミクスデータセットにおけるリガンド受容体ペアリングの分析により、心筋マクロファージが線維芽細胞活性化の主要なパラクリンインデューサーであることが特定されることを示す図である。(A)WTマウス及びmiR-21 cKOマウスの異なる心臓細胞画分間でパラクリン及びオートクリン相互作用が有意にアップレギュレートされたことをまとめたコード図。線の色は、同じ色の細胞集団によって広められるリガンドを示す。線の太さは、同族受容体がレシピエント細胞集団に存在するリガンドの数に比例し、数字は各集団間リンクのリガンド-受容体ペアの量を示す。リガンド又は受容体は、細胞集団の少なくとも20%で検出された場合に発現していると見なされる。最大数の相互作用は、miR-21 cKOマウスで抑制された野生型で、M1様マクロファージから活性化線維芽細胞(Postn+)に向かって生じた。
図11B-C】図11は、単一細胞トランスクリプトミクスデータセットにおけるリガンド受容体ペアリングの分析により、心筋マクロファージが線維芽細胞活性化の主要なパラクリンインデューサーであることが特定されることを示す図である。(B)M1様マクロファージから活性化線維芽細胞(Postn+)細胞へのパラクリン相互作用の詳細図。(C)RNA速度は、WT対照と比較して、miR-21 cKOマウスにおける活性化線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化の抑制を示している。
図11D-E】図11は、単一細胞トランスクリプトミクスデータセットにおけるリガンド受容体ペアリングの分析により、心筋マクロファージが線維芽細胞活性化の主要なパラクリンインデューサーであることが特定されることを示す図である。(D)様々なマクロファージクラスターを表す円グラフ。(E)成体マウス心臓線維芽細胞(AMCF)と骨髄由来マクロファージ(BMDM)との共培養の実験戦略。マクロファージを骨髄前駆細胞から分化させ、100nMのLNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照をトランスフェクトし、LPSで刺激した。新たに単離したAMCFを、LNA-anti-miR-21で処理したBMDM(PBSで洗浄後)と48時間共培養した。AMCFの単一培養は、陰性対照として機能した。免疫蛍光染色は、ビメンチン(VIM;線維芽細胞のマーカー)及びβ-平滑筋アクチン(ACTA2;筋線維芽細胞のマーカー)に対して行った。核はDAPIで染色した。線維芽細胞の活性化を、ACTA2発現によって測定した。
図11F図11は、単一細胞トランスクリプトミクスデータセットにおけるリガンド受容体ペアリングの分析により、心筋マクロファージが線維芽細胞活性化の主要なパラクリンインデューサーであることが特定されることを示す図である。(F)ACTA2陽性心臓線維芽細胞の割合。N=4~6個の独立した実験を3連で実施。データは平均値及び個々の値であり、二元配置分散分析及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。***P<0.001。
図12A図12は、miR-21は、肺マクロファージで最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを示す図である。(A)肺胞マクロファージ及び間質マクロファージの単離のためのフローサイトメトリー戦略。
図12B-C】図12は、miR-21は、肺マクロファージで最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることを示す図である。(B)全肺細胞及びマクロファージ集団の低分子(small)RNA配列決定によって決定されたマイクロRNA発現プロファイル。野生型マウスの肺から単離された全肺細胞、肺胞マクロファージ、及び間質マクロファージにおけるmiRNAの円グラフ表示。n=群あたり3匹のマウス。(C)異なる肺細胞型における定量的リアルタイムPCRによるmiR-21の発現は、マクロファージ集団におけるmiR-21の濃縮を示した。n=3。データは平均±標準誤差である。
図13A図13は、miR-21は、肺傷害後のマウス及びヒトでアップレギュレートされることを示す図である。(A)miR-21は、肺傷害後のマウスで上昇する。PBS又はブレオマイシンのいずれかを投与してから14日後にマウスから採取した肺組織におけるmiR-21の発現。PBS:n=8、Bleomycin:n=9。
図13B図13は、miR-21は、肺傷害後のマウス及びヒトでアップレギュレートされることを示す図である。(B)miR-21は、特発性肺線維症(IPF)患者の肺組織で増加している。
図13C-D】図13は、miR-21は、肺傷害後のマウス及びヒトでアップレギュレートされることを示す図である。(C~D)miR-21の阻害は、ブタの心臓をI/R誘発性肺線維症から保護する。(C)LNA-anti-miR-21を、ブタでの虚血再灌流傷害中の5日目及び19日目にカテーテルで局所的に適用した(図1も参照)。ブタの心臓に、LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR対照を局所適用した後の肺組織におけるmiR-21発現の定量分析。HF LNA-anti-miR対照:n=3、HF LNA-anti-miR-21:n=5。(D)I/R誘発性肺線維症の定量化。データは平均±標準誤差である。スチューデント(Student)のt検定を使用して分析した。*P<0.05及び**P<0.01。
図14A-B】図14は、miR-21の筋線維芽細胞特異的欠失は、マウスの圧誘発性心筋梗塞心筋リモデリングを防止することを示す図である。筋線維芽細胞特異的miR-21欠損(Postn miR-21 cKO)マウスは、miR-21 floxedマウスを、筋線維芽細胞で特に活性を有するペリオスチン(Postn)プロモーターによって駆動される誘導性mer-cre-merリコンビナーゼ(MCM)を発現するマウス系統と交配することによって生成した。8週齢の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスは、心筋梗塞(MI)又は偽手術のいずれかを受けた。心機能障害を評価するために手術の1週間後にマウスで心エコー検査を実施し、タモキシフェン(40mg/kg/日)をマウスに5日間腹腔内投与して、筋線維芽細胞で特異的にmiR-21を欠失させた。心臓を4週間後に採取した。(A)実験戦略。(B)タモキシフェンの最終注射の2日後のマウスの心臓線維芽細胞におけるmiR-21の発現。
図14C-D】図14は、miR-21の筋線維芽細胞特異的欠失は、マウスの圧誘発性心筋梗塞心筋リモデリングを防止することを示す図である。筋線維芽細胞特異的miR-21欠損(Postn miR-21 cKO)マウスは、miR-21 floxedマウスを、筋線維芽細胞で特に活性を有するペリオスチン(Postn)プロモーターによって駆動される誘導性mer-cre-merリコンビナーゼ(MCM)を発現するマウス系統と交配することによって生成した。8週齢の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスは、心筋梗塞(MI)又は偽手術のいずれかを受けた。心機能障害を評価するために手術の1週間後にマウスで心エコー検査を実施し、タモキシフェン(40mg/kg/日)をマウスに5日間腹腔内投与して、筋線維芽細胞で特異的にmiR-21を欠失させた。心臓を4週間後に採取した。(C)脛骨長に対する心重量の比率(HW/TL)。(D)脛骨長に対する肺重量の比率(LW/TL)。
図14E-F】図14は、miR-21の筋線維芽細胞特異的欠失は、マウスの圧誘発性心筋梗塞心筋リモデリングを防止することを示す図である。筋線維芽細胞特異的miR-21欠損(Postn miR-21 cKO)マウスは、miR-21 floxedマウスを、筋線維芽細胞で特に活性を有するペリオスチン(Postn)プロモーターによって駆動される誘導性mer-cre-merリコンビナーゼ(MCM)を発現するマウス系統と交配することによって生成した。8週齢の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスは、心筋梗塞(MI)又は偽手術のいずれかを受けた。心機能障害を評価するために手術の1週間後にマウスで心エコー検査を実施し、タモキシフェン(40mg/kg/日)をマウスに5日間腹腔内投与して、筋線維芽細胞で特異的にmiR-21を欠失させた。心臓を4週間後に採取した。(E)MI手術後28日目に左心室駆出率によって測定される心機能の評価。(F)MI後28日目の拡張末期容積及び収縮末期容積の定量化。
図14G図14は、miR-21の筋線維芽細胞特異的欠失は、マウスの圧誘発性心筋梗塞心筋リモデリングを防止することを示す図である。筋線維芽細胞特異的miR-21欠損(Postn miR-21 cKO)マウスは、miR-21 floxedマウスを、筋線維芽細胞で特に活性を有するペリオスチン(Postn)プロモーターによって駆動される誘導性mer-cre-merリコンビナーゼ(MCM)を発現するマウス系統と交配することによって生成した。8週齢の野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスは、心筋梗塞(MI)又は偽手術のいずれかを受けた。心機能障害を評価するために手術の1週間後にマウスで心エコー検査を実施し、タモキシフェン(40mg/kg/日)をマウスに5日間腹腔内投与して、筋線維芽細胞で特異的にmiR-21を欠失させた。心臓を4週間後に採取した。(G)ピーク半径方向歪み(%)の定量化。WTシャム(偽):n=4、Postn miR-21cKOシャム(偽):n=5、WT MI:n=7、Postn miR-21cKO MI:n=8。データは平均値及び個々の値を示し、二元配置分散分析(ANOVA)及びサイダック(Sidak)の事後検定を使用して分析した。*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001。
図15図15は、抗体結合オリゴヌクレオチド。5’-アミン修飾オリゴヌクレオチドをリガンド又は抗体(又はその抗体断片)を、標的細胞型で特異的に濃縮された受容体に結合するための例示的な方法。抗体をペプシンで消化して、より小さな抗体断片を得ることができる。
図16図16は、表1:肝機能及び腎機能の選択された生化学的パラメーターの血清学的分析。
図17図17は、表2:心血管イベント。
図18図18は、精製された初代細胞画分のRNA配列決定によって特定された、ヒト肺及び心臓組織のマクロファージ及び/又は線維芽細胞に対するanti-miR-21の標的化の受容体候補を示すヒートマップ。データは、トランスクリプトーム全体のディープRNAシーケンシングからのものであり、細胞型特異性についてフィルター処理され、クラスター化されている。赤は相対的な濃縮を示し、青は描写されている他の細胞型と比較した相対的な欠乏を示している。左下隅には、マクロファージ標的化の標的候補を表す上位候補の表面受容体が列挙されている。本発明は、本発明及びその多くの利点のより良い理解を提供する以下の実例となる非限定的な実施例によってさらに説明される。
図19図19は、miRNA-21は、COVID-19患者から採取した肺組織でアップレギュレートされていることを示す図である。(A)スキーム。ヒト肺組織を採取し、COVID-19患者及び対照被験者の左下葉の同様の領域をRNA抽出に使用した。低分子RNAライブラリーは、NEB Next Small RNAライブラリーキットを使用して生成し、試料はMiSeqシーケンサーを使用して配列決定した。(B)肺組織におけるmiRNA発現プロファイル。COVID-19患者及び対照被験者の肺組織に豊富に存在する上位10位のmiRNAの円グラフ表示。対照被検体:n=3、COVID-19患者:n=3。
図20図20は、miR-21は、マウス肺のマクロファージで濃縮されていることを示す図である。miR-21は、マウス肺の肺胞マクロファージ(AM)で濃縮されている。様々な細胞型の肺細胞型(各細胞型でn=1~3)で示差的に発現するmiRNA(log2倍変化>=1又はlog2倍変化<=-1及びP値調整値<=0.05)のヒートマップ表現:線維芽細胞(Fb)、内皮細胞(EC)、上皮細胞(EpC)、好中球(NeuT)、T細胞(T)、間質マクロファージ(IM)。
図21図21は、miR-21は、肺線維症のマウスモデルの肺組織でアップレギュレートされていることを示す図である。マイクロ噴霧器を使用してブレオマイシンをマウスの肺に投与し、7日後に肺組織を採取した。全RNAを抽出し、NEBNext Small RNAライブラリー調製キットを使用してmiRNAライブラリーを調製し、MiSeqシーケンサーで配列決定した。miRDeep2を使用して配列決定読み取りを分析し、発現差のあるmiRNAをDESeqで特定した。大幅に調節解除されたマイクロRNA(FDR<0.05)を赤色で示す。
図22A図22は、マンノース受容体C型1(MRC1)は、肺組織のマクロファージによって発現されることを示す図である。(A)肺マクロファージで濃縮されている表面受容体候補を特定するための戦略。
図22B-C】図22は、マンノース受容体C型1(MRC1)は、肺組織のマクロファージによって発現されることを示す図である。(B)肺胞マクロファージ及び間質マクロファージにおけるMrc1の相対的存在量。(C)異なる肺細胞型におけるMrc1の発現。
図22D-E】図22は、マンノース受容体C型1(MRC1)は、肺組織のマクロファージによって発現されることを示す図である。(D)ブレオマイシンの14日後にマウス肺から生成された単一細胞トランスクリプトームにおけるMrc1の発現を示す機能プロット(GSE141259;PBS:n=7;ブレオマイシン:n=4)。(E)MRC1に対する抗体を使用した5μmマウスブレオマイシン処理肺切片の代表的な免疫蛍光染色。核はSytox greenで染色した。スケールバーは200μmを表す。
図22F図22は、マンノース受容体C型1(MRC1)は、肺組織のマクロファージによって発現されることを示す図である。(F)対照及びIPF(特発性肺線維症)ヒト肺から生成された単一細胞トランスクリプトームにおけるMrc1の発現を示す機能プロット(GSE135893;対照:n=10;IPF:n=12)。
図23A-B】図23は、マンノース受容体C型1リガンドの化学構造の例。(A)配位子結合及びanti-miR-21のデザインを示すスキーム。(B)マンノース受容体リガンド結合anti-miR-21分子の例示的な化学構造。N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)(上)又はマンノース(下)リガンドをLNA-anti-miR-21(配列番号1)に結合させた。
図23B】(B)マンノース受容体リガンド結合anti-miR-21分子の例示的な化学構造。N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)(上)又はマンノース(下)リガンドをLNA-anti-miR-21(配列番号1)に結合させた。
図24A図24は、マクロファージへの標的化送達のためのリガンド結合anti-miR-21。(A)実験戦略。野生型マウスに、flexiVent(登録商標)噴霧ユニットを使用した吸入により、1.25mg/kgのマンノース、GalNAc、又は非結合LNA-anti-miR-21-FAMを投与した。PBSを投与されたマウスは、陰性対照の役割であった。2時間後、マウスを犠牲にし、気管支肺胞洗浄液(BALF)を、2mM EDTA含有氷冷PBSの連続的な滴下及び吸引によって収集した。次に、肺を採取し、酵素消化に供し、磁気マイクロビーズ結合抗CD45抗体によって免疫細胞を濃縮した。免疫細胞濃縮画分は、マクロファージ(MP)のCD45、F4/80、及びMRC1に対する抗体、又はT細胞及び好中球(N)のCD45、CD3、及びLy6Gに対する抗体で染色した。非免疫細胞画分が濃縮されたフロースルー細胞懸濁液をCD45、EPCAM、CD105、及びCD140aに対する抗体で染色して、上皮細胞(Ep)、内皮細胞(EC)、及び線維芽細胞(FB)をそれぞれ分析した。白血球を除外するために、非免疫細胞画分に抗CD45抗体を使用した。次いで、フローサイトメトリーを使用して細胞をFAMシグナル強度について評価した。
図24B図24は、マクロファージへの標的化送達のためのリガンド結合anti-miR-21。(B)BALFから単離されたFAM陽性マクロファージの割合。(C)肺の異なる細胞型におけるFAM陽性細胞の割合。非結合:PBS:n=3、0.625mg/kg:n=3、1.25mg/kg:n=3、2.5mg/kg:n=3。マンノース結合:PBS:n=3、1.25mg/kg:n=3。GalNAc結合:PBS:n=2、0.625mg/kg:n=2、1.25mg/kg:n=2、2.5mg/kg:n=2。データは平均値及び個々の値であり、二元配置分散分析及びテューキー(Tukey)の事後検定を使用して分析した。非結合LNA-anti-miR-21-FAM群及びマンノース結合LNA-anti-miR-21-FAM群の間でのみ比較を行った。*P<0.05。GalNAc:N-アセチルガラクトサミン。FAM:フルオレセインアミダイト。
図25図25は、フローサイトメトリーを使用した、BALF及び肺組織からのマクロファージによるマンノース結合LNA-anti-miR-21-FAM取り込みの評価。(A)BALF及び肺組織からのマクロファージにおけるFAMシグナルの蛍光強度の中央値。(B)マクロファージサブセットの代表的なヒストグラム。非結合:PBS:n=3、1.25mg/kg:n=3。マンノース結合:PBS:n=3、1.25mg/kg:n=3。データは平均値と個々の値であり、スチューデント(Student)のt検定を使用して分析した。*P<0.05。FAM:フルオレセインアミダイト。
図26A-B】図26は、miR-21の阻害は、ブレオマイシン誘発性肺リモデリング及び肺機能障害を軽減したことを示す図である。(A)実験戦略。マイクロ噴霧器を使用して、マウスの肺にPBS又はブレオマイシン(2U/kg)を投与した。マンノース結合マイクロリボ核酸(miR)阻害剤ロックド核酸(LNA)修飾アンチセンスmiR-21(2.5mg/kg)を、ブレオマイシン誘発性肺損傷後4日目にflexiVent(登録商標)ネブライザーを使用して吸入により適用した。anti-miR適用の10日後、flexiVent(登録商標)を使用して肺機能を評価し、形態計測分析のために肺を採取した。(下)miR-21配列(配列番号4)、LNA-anti-miR-21配列(配列番号1)、LNA-anti-miR-ミスマッチ-21配列(対照)(配列番号5)。(B)シリウスレッド/ファストグリーンを使用した肺組織の代表的な染色及びその定量化。スケールバーは100μmを表す。
図26C-F】図26は、miR-21の阻害は、ブレオマイシン誘発性肺リモデリング及び肺機能障害を軽減したことを示す図である。(C)圧力-容積ループ曲線の平均トレース。曲線後部の灰色の陰影部分は、標準誤差の平均を示す。(D~F)準静的エラスタンス(D)、準静的コンプライアンス(E)、及び吸気量(F)によって示される肺機能。マンノース結合LNA-anti-miR-ミスマッチ-21:PBS:n=3、ブレオマイシン:n=7。マンノース結合LNA-anti-miR-21:PBS:n=3、ブレオマイシン:n=6。データは平均値及び個々の値であり、二元配置分散分析及びテューキー(Tukey)の事後検定を使用して分析した。*P<0.05、**P<0.01、及び***P<0.001。
図27A-C】図27は、マンノース受容体C型1(MRC1)は、マウス心臓のマクロファージによって発現されることを示す図である。(A)心臓で濃縮されている表面受容体候補を特定するための戦略。(B)他の心筋細胞型と比較した、マクロファージにおける表面受容体の相対的な濃縮及び存在量。(C)異なる心筋細胞型におけるMrc1の発現。
図27D-E】図27は、マンノース受容体C型1(MRC1)は、マウス心臓のマクロファージによって発現されることを示す図である。(D)圧力過負荷の6日後のマウス心臓から生成された単一細胞トランスクリプトームにおけるMrc1の発現を示す機能プロット。(E)他の心筋細胞型と比較した、線維芽細胞における表面受容体の相対的な濃縮及び存在量。
【実施例
【0152】
実施例1
LNA-anti-miR-21の局所送達によるmiR-21の阻害
心不全の大型動物モデルの左心室(LV)心筋におけるmiR-21の発現を、すなわち、左前下行枝(LAD)の一過性閉塞(60分)を受けたブタにおいて決定した。パイロット実験では、安楽死の前に動物を1、7、又は28日間経過観察し、さらなる分析のために心臓を除去した(図1A)。miR-21の発現は、LV心筋(図1A)の遠隔領域及び境界領域の両方の領域で徐々にアップレギュレートされた。この発現動態及び急性虚血の心筋細胞におけるmiR-21の報告された抗アポトーシスの役割(Sayed et al., 2010)から、以下の実験デザインを採用した:ブタをI/Rに供し、瘢痕形成を可能にするために5日間未処理のままとし、その後2回(I/R後5日目及び19日目)ロックド核酸(LNA)修飾anti-miR-21(LNA-anti-miR-21)を局所的に冠状動脈に投与した(図1B)。高い特異性及び有効性でmiR-21を阻害するために、ホスホロチオエートで修飾した15ヌクレオチドのLNA/DNAミックスマー(mixmer)型デザインを選択した。10mgのLNA-anti-miR-21(ホスホロチオエートで修飾した15ヌクレオチド、LNA/DNAミックスマー)又は対照を、左前下行枝(LAD)及び左回旋動脈(LCx)に3:2の比率で、血管形成バルーンによる血管の同時閉塞を伴う、血管当たり3分間の期間にわたって注入した(図1B)。I/R傷害の33日後、LNA-anti-miR-21の冠動脈内送達により、左心室虚血心筋から調製したRNAの定量的RT-PCRによって検出されるように、miR-21が大幅に減少した(-66%)(図1C)。興味深いことに、miR-21の抑制は、心筋の遠隔領域に対して境界領域で優先的に発生するように見え、虚血組織への優先的な取り込みが示唆された。同様に、LNA-anti-miR-21を局所的に適用しても、心臓、右心室、左心房、及び右心房の他の領域のmiR-21レベルは変化しなかった(図2)。ブタでのanti-miR局所適用の以前の結果(Hinkel et al., 2013)と一致して、全身性オリゴヌクレオチド治療薬の非常に高い取り込みで知られている臓器である腎臓及び肺(図2)で、miR-21の適度ではあるが有意な減少が観察された(Stenvang et al., 2012)。腎機能及び肝機能の通常の臨床化学パラメーターの血清濃度は正常範囲内であり、腎機能及び肝機能が損なわれていないことを示している(表1)。また、LNA-anti-miR-21の適用時に、anti-miR適用前にのみ発生した不整脈又は死亡のエピソードは観察されなかった(表2)。まとめると、LNA-anti-miR-21のカテーテルベースの局所送達は、心不全の大型動物モデルのLV心筋におけるmiR-21の長期抑制に効果的であった。
【0153】
表1。肝機能及び腎機能の選択された生化学的パラメーターの血清学的分析
【表2】
(MEAN±SEM、P値:HF対照対HF LNA-anti-miR-21)
参考値:AST(GOT)(<59U/L);ALT(GPT)(<68U/L);γ-GT(<54U/L);クレアチニン(<160μmol/L);ウレア(2.5~6.7mmol/μL)。
【0154】
表2。心血管イベント
【表3】
(MEAN±SEM、P値:HF対照対HF LNA-抗miR-21)
【0155】
miR-21の阻害は、I/R誘発性の有害な心筋リモデリングを減少させる
さらに、心筋リモデリングに対するLNA-anti-miR-21の効果を決定した(図3)。I/Rの33日後、2つの異なる処置群は同様の梗塞を示した。この時点で顕著な有害な心臓リモデリングが観察され、体重に対する心重量の有意な増加、心筋細胞肥大及び心臓線維症として明らかであり、それら全てはLNA-anti-miR-21投与ブタで大幅に減少した(図3A図3C)。次に、心筋のリモデリング、すなわち線維芽細胞の増殖、炎症、及び血管新生に関連している重要な病理過程を評価した(図3D図3F)。LV心筋の免疫蛍光染色は、線維芽細胞の増殖及びマクロファージの浸潤を示し、どちらも対照処置動物と比較してLNA-anti-miR-21によって大幅に抑制された。対照的に、このモデルでは毛細血管密度の変化のエビデンスは認められず、anti-miR-21の影響も受けなかった(図3F)。QRT-PCRによる心筋の全RNAの分析により、ヒトを含む他の種の心筋リモデリングを示す遺伝子発現シグネチャが得られ、LNA-anti-miR-21群では同様に大幅に逆転した(図3G)。遠隔LV心筋の比較分析は、心筋リモデリングを特徴付けるパラメーターの最小限の変化のみを示した。
【0156】
LNA-anti-miR-21のカテーテルに基づく局所送達は、全体的及び局所的な心筋機能を改善する
心機能に対するmiR-21阻害の影響を評価するために、侵襲的血行動態測定(圧容積分析、PV分析)を、虚血前(0日目)、虚血後5日目(LNA-anti-miR-21投与前)、及び虚血後33日目(速度・収縮関係を得るために心臓ペーシングを伴う33日目)に実施した。これは、駆出率(EF)及び安静時の心筋灌流を決定する虚血前(0日目)及び虚血後(33日目)の造影剤による蛍光透視法で補完された。33日目に動物を犠牲にして組織を採取する前に、超音波結晶を境界領域(閉塞部位の10mm遠位)及び遠隔心筋に移植する際に、心臓ペーシングを使用したソノマイクロメトリーを実施した(実験戦略の概要については、図1Bのスキームを参照)。
【0157】
対照処置動物は、LVEDPの増加、LV拍出量の減少、及び明らかな心不全を示す負の速度・収縮関係を示す、全体的な心筋機能の著しい低下を示した(図4A図4E)。対照的に、LNA-anti-miR-21による処置は心機能の低下を有意に防止した(図4A図4E)。一貫して、LNA-anti-miR-21適用は、正の速度・収縮関係によって示されるように、左心室の機能予備力の大幅な増加をもたらした(図4D及び図4E)。LV容積の分析も同様に、LV収縮末期容積の大幅な減少を示したが(HF:58.5±3.4、HF LNA-anti-miR-対照:58±0.4、HF LNA-anti-miR-21:40.2±5.3)、LNA-anti-miR-21で観察されたLV拡張末期容積のわずかな減少は、統計的有意性に達しなかった(HF:112.7±3.5、HF LNA-anti-miR-対照:107.6±3、HF LNA-anti-miR-21:103±2.7)。左室機能の独立した尺度として、ソノマイクロメトリーを使用して、心内膜下セグメントの短縮を決定した(図4F)。血行動態分析と一致して、LNA-anti-miR-21は、安静時及びペーシング(140bpm)条件の両方で、LNA-anti-miR対照処置動物と比較して局所収縮性を改善した(図4F)。造影剤の注入時の蛍光透視法でも同様に、33日目にEFの顕著な低下を示したが、これはLNA-anti-miR-21群では防止された(図4G)。本発明者らの研究デザインは、MRI又はPETなどの組織灌流の定量的決定を目的としていなかったが、微小循環を含むLADの正常な灌流を示すTIMI値が3で(造影剤注入による)冠動脈血流に関して群間の違いは観察されなかった。そして、LNA-anti-miR-21の効果は、10mgではなく4mgのオリゴヌクレオチドでの処置から得られた現在のデータが示唆するように、用量依存的であるように見えた(図5)。要約すると、これらの知見は、miR-21阻害剤の局所適用が虚血性心不全後のこのモデルで心機能を大幅に改善したことを示している。
【0158】
AntimiR-21は、機能不全ブタ心筋のトランスクリプトームシグネチャを正常化する
さらに、miR-21への干渉が、この大型動物モデルにおける疾患関連遺伝子発現シグネチャに影響を与えるという結果が決定された。偽処置動物(n=各群から3)と同様にLNA-anti-miR-21又は対照で処理した左心室虚血性心筋(境界領域)から単離したpolyA濃縮RNAのTruSeq Illuminaによる配列決定を使用して、アダプターを除去してフィルタリングした後、試料あたり約1億2,660万回の読み取りが得られた(読み取りの99.9%が要件を満たした)。読み取りをブタのゲノム(Sus scrofa v11.1)にマッピングすると、1億1,200万の読み取りを正常にアラインメントさせることができた(図6A)。これは、高い信頼性でアラインメントされた全ての読み取りの95±0.4%に相当し、データセットの高いデータ品質を示している。これは、本発明者らの知る限り、成体ブタにおける心筋疾患の最初の大規模なディープシーケンシングデータセットである。
【0159】
主成分分析により、研究した3つの異なる実験群内での明確な分離と高い均一性が明らかになり、その後の分析に対するこのデータセットの有効性が強調された(図6B)。虚血は、ブタの心臓トランスクリプトームの顕著な調節解除に至るが、これはanti-miR-21処置によって部分的に元に戻った。
【0160】
これらのトランスクリプトームの変化が実際に心筋におけるmiR-21活性の調節に関連しているかどうかを評価するために、全ての遺伝子のmRNA倍数変化の分布を決定し、それらをTargetScan Human 7によって予測された保存されたmiR-21標的の分布と比較した(図6C)。miR-21の阻害は、miR-21の部位を含まないmRNAと比較して、miR-21標的の有意な抑制解除をもたらした(図6C)。
【0161】
AntimiR-21は、心筋不全における線維化促進性及び炎症性転写シグネチャを阻害する
次に、HF時に主に活性化され、miR-21に干渉することによって調節される生物学的プロセスを特定することを試みた。HFで調節解除された全てのmRNAの遺伝子オントロジー(GO)濃縮分析(対数倍変化>2又は対数倍変化<-2及びP値<0.05)は、細胞外マトリックスの組織化、細胞接着、骨芽細胞の分化、炎症応答などの組織リモデリングに関連するプロセスの濃縮を示した(図6D及び図6Eの左パネル)。miR-21への干渉は、炎症応答及び免疫応答に最も強い影響を及ぼし、ERK-MAP-キナーゼの抑制がそれに続いた(図6D及び図6Eの右パネル)。後者をさらに検証し、この転写サインがERK-MAPキナーゼのタンパク質活性の変化をもたらすかどうか決定するために、心臓組織で活性化MAPK3(pERK)のウェスタンブロッティング及び免疫蛍光染色を行った(図6F及び図6G)。AntimiR-21は、HF誘導性ERK-MAPキナーゼ活性の有意な阻害をもたらした(図6F)。リモデリングに関連するERKの活性化及びanti-miR-21によるその抑制は、主に心臓線維芽細胞で発生することがわかった(図6G)。
【0162】
ブタの遺伝子デコンボリューションアプローチは、anti-miR-21処置の影響を受ける主要な細胞型として心臓マクロファージ及び線維芽細胞を特定する。
心筋で観察される転写の変化は、細胞状態の変化に起因すると推定されるが、細胞型の比率の変動にも起因する可能性がある。後者を分析するために、ブタの遺伝子デコンボリューションアプローチを開発した。マウス心臓から選別された4つの主要な心筋細胞型(筋細胞、線維芽細胞、マクロファージ、及び内皮細胞)に由来するディープトランスクリプトームデータが含まれ、マウスscRNA-Seqデータセットに加えて使用された(Skelly et al(Skelly et al., 2018)によって報告された再処理されたデータ)(図7A)。次に、対象となる各細胞型で最も濃縮され、非常に特異的で、最も豊富な遺伝子を特定し、これらを組み合わせてscRNA-Seq及びディープRNA-Seqデータセットを作成した(図7A及び図7B)。そして、4つの細胞型全てについて、豊富で特異的で濃縮された上位のmRNAに関するオーバーラップを計算し(図7B)、これらのマーカーを使用して、デコンボリューション用のシグネチャマトリックスを構築した(図7C)。次に、この新しい遺伝子デコンボリューションアプローチを適用して、心不全時の心臓リモデリング及びanti-miR-21の効果について、偽条件下での相対的な細胞型比率を決定した(図7D)。機能低下心筋は、マクロファージ及び線維芽細胞の数の顕著な増加によって特徴付けられた。anti-miR-21による処置は、マクロファージの数及び線維芽細胞の数の増加を逆転させた。心臓組織からのRNA-Seqデータを分析するこの不偏のアプローチは、定量的な方法で細胞画分を決定することができる。これは、anti-miR-21による処理が、マクロファージ及び線維芽細胞の増加した細胞数の正常化につながったことを示している(図7D)。
【0163】
特定の臓器を標的とする別のアプローチは、anti-miR-21の適用を局所化することである。心臓カテーテル検査は、急性冠症候群を呈する全患者の大多数がこの介入を受けている臨床心臓病学の日常的な手順になっている(Bashore et al., 2012)。心臓カテーテル検査の合併症は非常に稀なイベントになっているため、その適用に向けた閾値が低くなり得る。ここでは、関連する冠状動脈を介してanti-miR-21を適用し、これにより、傷害を受けた組織が高濃度のanti-miRに優先的に曝露されるという利点が得られる。興味深いことに、本発明者らのデータは、虚血後、潜在的に内皮の漏出及び細胞外マトリックスの溶解により、心筋へのanti-miR-21の取り込みが促進されたように見えることを示しており(図1C及び図2)、傷害部位でanti-miR-21がさらに濃縮される考えを支持する。
【0164】
虚血、特に心筋梗塞の少なくとも5日後にmiR-21阻害剤を投与すると、予想外に、虚血後心筋における取り込みの増加と治療効果がもたらされた。
【0165】
虚血又は心筋梗塞の直後にのみmiR-21阻害剤の取り込みが増加すると予想したため、miR-21阻害剤の取り込みが増加したという知見は、虚血の5日後では予想外であった。したがって、驚くべきことに、虚血の5日後にanti-miR-21を投与すると、虚血の5日後に治療用anti-miRの取り込みが増加することが本明細書に記載されている。したがって、虚血の5日後のmiR-21阻害剤の投与は、急性環境での有害な影響を回避するため、anti-miRの送達に安全である。
【0166】
最初の記述に続く数年間で、miR-21のアップレギュレーションは、圧負荷、心筋梗塞、心房細動などの様々な原因に起因する心筋リモデリングの特徴として報告されている。その後、複数の研究により、それぞれの疾患モデルでmiR-21を阻害する治療効果が示された(Adam et al., 2012; Cardin et al., 2012; Thum et al., 2008)。それでも、筋細胞におけるmiR-21の過剰発現は、急性虚血中のアポトーシスから筋細胞を保護した(Sayed et al., 2010)。心筋細胞におけるmiR-21のそのような有益ではとないかと思われる役割と一致して、miR-21の網羅的な遺伝子欠失に対する中程度又は中立的な効果が観察された(Patrick et al., 2010; Ramanujam et al., 2016)(Patrick et al., 2010; Ramanujam et al., 2016)(Patrick et al., 2010; Ramanujam et al., 2016)(Patrick et al., 2010; Ramanujam et al., 2016)。しかしながら、筋細胞でのmiR-21の欠失は有害であったが、非筋細胞でのmiR21の欠失は心臓保護をもたらした(Ramanujam et al., 2016)。急性虚血環境においてanti-miR-21によって心臓マクロファージの死を促進することの潜在的な有害な結果を回避することは、本発明者らの独創的な考えであった。したがって、本発明者らは、5日目にmiR-21阻害剤を投与した。以下に示されるように、虚血後5日目にmiR-21阻害剤を投与しても、筋細胞の喪失は促進されない。心筋梗塞後に適用を遅らせるというこの戦略は、急性の有害な影響を回避し、後期の病状におけるアップレギュレートされたmiR-21の有益な効果を充分に活用する。
【0167】
このモデルでは、miR-21阻害により、治療開始から4週間後に心筋トランスクリプトームが持続的に再形成され、miR-21活性が著しく長期間にわたって抑制されることが示唆された。偏りのない遺伝子オントロジー分析により、炎症関連及びMAPキナーゼシグナル伝達がmiR-21の操作によって最も大きく影響を受けることが特定された。この分析は、anti-miR-21がマクロファージ浸潤及び線維芽細胞増殖の減少をもたらすことを示した。これらのデータは、anti-miR-21が線維芽細胞での効果だけでなく、マクロファージでの作用を通じても抗線維化活性を発揮できることを示唆している。したがって、マクロファージ及び/又は線維芽細胞を標的とするanti-miR-21分子を適用することにより、治療効果をさらに高めることができる。
【0168】
したがって、本明細書で提供される実験データは、虚血後5日目まで遅延された局所送達が、虚血後の心筋において予想外に増加した取り込み及び治療効果をもたらしたことを示している。さらに、本明細書で提供されるRNA配列決定分析は、これがanti-miR-21の主要な標的として心臓マクロファージを指す、マクロファージの蓄積を予想外に妨害することを示した。
【0169】
実施例2
マクロファージの治療標的としてのmiR-21
miR-21は心臓マクロファージで高発現し、心不全を増加させる
マウス心臓の主要な細胞画分の低分子RNAトランスクリプトーム全体のリスト(inventory)を取得するため(図8)、単離した心臓の逆行性灌流(ランゲンドルフ調整物(Langendorff preparation)から始まる細胞単離戦略、続いて磁気活性化細胞選別及び蛍光活性化細胞選別(MACS及びFACS)を使用した筋細胞、内皮細胞、線維芽細胞、及びマクロファージへの分画を使用した(図8及び図8Aのスキームを参照)。異なる心筋細胞画分(n=各群から3)の低分子RNAの配列決定により、アダプター配列を除去し、低品質(Phred Q<30)かつ小さい読み取り(12ヌクレオチド未満)をフィルタリングした後、試料あたり約100万回の読み取り(約85%の有効な読み取り)を得た。低分子RNA参照ライブラリー(miRBase 21からのmiRNAヘアピン)にマッピングされた高品質の読み取りは、少なくとも1つの細胞型の複製でゼロ以外の値を有し、全ての試料で100万あたりの平均カウントが3より大きいmiRNA についてフィルター処理した。これらの基準を使用して、確信を持ってマイクロRNAとして注釈を付した307個それぞれ特有の転写物を検出した(図8B)。異なる細胞型及び組織で得られた低分子RNAトランスクリプトームと一致して(Sood et al., 2006; Wessels et al., 2019)、同様に、個々のmiRNA分子の絶対存在量の片側分布が観察され、miRnome全体の半分を構成するmiRNAはほとんどなかった(図8B)。興味深いことに、発現スペクトルの上限にあるこれらのmiRNAのいくつかは、他の心筋細胞型と比較して非常に顕著な細胞型特異性も示した(図1C)。miR-21は、心臓マクロファージc(MP)で最も発現が高いmiRであり、この細胞型の全てのマイクロRNA分子の約4分の1を構成することがわかった(図8B)。これは、線維芽細胞を含む他の心臓細胞画分よりもはるかに高い(図8B及び図8C)。この分子が心疾患の発症にも関与しているかどうかを調べるために、横方向大動脈狭窄(TAC)によって誘発される左室圧過負荷の疾患モデルで試験した。興味深いことに、cMPでのmiR-21の発現は、圧力過負荷の開始後6日目及び21日目でさらに漸進的に増加した(図8D及び図8E)。マイクロRNAを介した効果的な標的mRNAの調節には、特定の細胞型におけるその濃度がその標的部位の濃度と一致することが必要である(すなわち、細胞内のターゲットーム全体)(Bosson et al., 2016; Brown et al., 2007)。したがって、上位40個の発現されたmiRNAの基準となる標的部位を含む全てmRNAの絶対存在量を決定し、それぞれのmiRNAの絶対コピー数に関連して設定した(図8F)。cMPターゲットームに一致するmiRNAはごくわずかであったが、miR-21はまた、偽条件及び疾患条件下の両方で、全てのマクロファージmiRNAの中で最も高いmiRNA:標的比を発揮し、cMPにおけるこのmiR-21の強力な調節効果を示唆している(図8E)。インビボでのcMPにおけるmiR-21の役割をさらに調べるために、マクロファージ(MP)特異的miR-21欠損マウス(miR-21 cKO)を、miR-21-floxedマウスを、マクロファージで特異的に活性なCx3cr1-プロモーターによって駆動されるCre-リコンビナーゼを発現するマウス系統と交配することによって生成した(Yona et al., 2013)。Cx3cr1-Cretg/0; miR-21flox/floxマウス(miR-21 cKO)は、cMPでのmiR-21レベルの大幅な低下を示し、他の心臓細胞型、骨髄細胞、及びリンパ球細胞ではmiR-21レベルが維持された(図8G)。miR-21-cKOが正常に発達することを見出し、WT同腹子対照と比較して心エコー検査によって決定されるように、それらは正常な心機能を示した。したがって、miR-21-cKOマウスは、マクロファージ、特に心臓マクロファージにおけるmiR-21の機能を研究するのに適したモデルである。
【0170】
特にMPにおけるmiR-21の遺伝子欠失は、左心室の圧過負荷後の心機能を改善する(横方向大動脈狭窄、TACによる)。
マクロファージmiR-21の病理学的心臓リモデリング及び機能不全への寄与を検討するために、WTマウス及びmiR-21 cKOマウスをTACに供し、線維症及び心肥大の程度を測定した(図9A)。心筋断面における細胞外マトリックスタンパク質の染色は、miR-21 cKO群の線維症がTAC処理WTマウスと比較して有意に防止されたことを示した(図9B)。miR-21 cKOマウスは、形態学的及び細胞レベルでTAC誘発性心肥大からも保護された(図9C)。これらの知見と一致して、肥大関連遺伝子(Acta1, Myh7, Nppa)及び線維症関連遺伝子(Col1a1, Col1a2)の発現は、WT同腹仔と比較してTAC処理miR-21 cKOマウスで有意に減少した(図9D)。
【0171】
心機能を評価するために、手術前及び偽手術又はTAC手術の14日目及び28日目に実施した心エコー検査を使用した。偽手術群のWTマウス及びmiR-21 cKOマウスは両方とも、TAC処理WTマウスでの明らかな心機能の典型的な障害とは対照的に、健康で正常であった(図9E及び図9F)。興味深いことに、TAC処理miR-21 cKOマウスは、WTマウスと比較して有意に優れた左心室駆出率(LVEF)を示した(図9E)。これは、WT同腹仔と比較したTAC処理miR-21 cKOマウスの左心室前壁の厚さなど、他の心エコー検査パラメーターにも反映されていた。さらに、二次元心エコー検査のスペックル追跡解析を使用してLV歪みを評価することにより、左心室(LV)機能の非常に高感度で正確な測定を適用した(図9)。また、この分析は、miR-21 cKOマウスの半径方向歪みのレベルが高いほど、LV機能が大幅に向上し、偽処置マウスで典型的に観察されるレベルにほぼ到達することを示した(図9G)。
【0172】
まとめると、これらの知見は、心臓のリモデリング及び機能不全におけるマクロファージmiR-21の重要な役割を示唆している。
【0173】
単一細胞配列決定解析により、マクロファージでのmiR-21の欠乏がM2極性化を支持することが明らかになった。
miR-21が心臓マクロファージでその機能を発揮するメカニズムと、このメカニズムが他の心筋細胞画分での応答をどのように決定するかをよりよく理解するために、圧力過負荷の6日後に、野生型マウス又はmiR-21 cKOマウスのいずれかから単離した非筋細胞集団を使用して、単一細胞配列決定を実施した(図10A)。単一細胞の転写プロファイルは、10X Chromiumプラットフォームを使用して得られ、品質管理に合格した8,343個の野生型細胞及び6,421個のノックアウト細胞を分析し、細胞あたり平均約2000個の中央遺伝子を検出した(細胞型全体で合計21,436個の遺伝子を検出)(図10B)。
【0174】
一緒にプールしSeuratパッケージによって分析した野生型マウス及びmiR-21 cKOマウスの両方からの細胞を含むscRNA-seqデータセットの分析は、マクロファージの2つのクラスター(2及び4)、線維芽細胞の3つのクラスター(1、3、及び6)、内皮細胞の3つのクラスター(0、5、及び12)、並びに他の心筋細胞も含めて示した。公知の遺伝子マーカーを使用して、マクロファージのサブセット分析により、この細胞型を2つの異なる細胞集団ーM2様マクロファージ及びM1様炎症誘発性マクロファージにさらに分類した(図10C)。比較配列決定分析により、WTバックグラウンドから単離されたマクロファージと比較して、マクロファージでmiR-21を欠失させると、M1様マクロファージの数が減少することが明らかになった(図10D)。
【0175】
マクロファージクラスターの遺伝子オントロジー分析により、炎症誘発性シグナル伝達に関連し、圧力過負荷後にアップレギュレートされる遺伝子は、miR-21の欠失により大幅に抑制されることが明らかになった(図10E)。これらの知見は、個々のマクロファージサブクラスターに対して個別に実施された対応する分析に対して確証され、miR-21の欠失時にM1様マクロファージにおける疾患関連の炎症誘発性経路の抑制が主に確認された。同様に、M2様マクロファージ(クラスター2)は、miR-21の欠失時に、圧力過負荷に関連する変化の顕著な逆転を示した。
【0176】
スプライシングされた読み取り対スプライシングされていない読み取りとのRNA速度分析により、cMPでのmiR-21欠損により、非常に低いレベルのIl1bを伴うMrc1発現によって示されるように、炎症誘発性Il1b発現(M1様)からM2様状態への細胞の極性化が生じることが確認された(図10F)。インビトロでより明確な設定でこれらの知見を裏付けるために、LNA-anti-miR-対照又はLNA-anti-miR-21で処理し、強力な炎症誘発性刺激であるリポ多糖(LPS)で刺激した後の培養骨髄由来マクロファージ(BMDM)における炎症誘発性シグナル伝達の程度を評価した。miR-21 cKOマウスから得られた単一細胞データと一致して、炎症誘発性関連遺伝子(Tnf、Il6、Nos2)の発現は、LNA-anti-miR-対照で処理したBMDMと比較して、LNA-anti-miR-21で処理したBMDMで有意に減少した(図10G)。
【0177】
全体として、本発明者らのデータは、miR-21が哺乳類の心臓におけるマクロファージの炎症誘発性活性化に必要な重要な分子であることを示唆している。
【0178】
単一細胞トランスクリプトミクスデータセットにおけるリガンド受容体ペアリングの分析により、心筋マクロファージが線維芽細胞活性化の主要なパラクリンインデューサーであることが特定される。
【0179】
miR-21 cKOマウスの表現型の特徴付け(図9)により、圧負荷時の心筋リモデリングに対するマクロファージmiR-21の顕著な効果が明らかになった。これには、心筋線維症の有意な予防が含まれる(図9B)。したがって、心臓マクロファージが疾患の誘発時に心臓線維芽細胞に直接シグナル伝達するかどうかを調べた。複雑な多細胞組織からの単一細胞のトランスクリプトームデータセットのバイオインフォマティクス解析における最近の進歩により、リガンド-受容体のペアリングに基づいてパラクリン細胞間コミュニケーションを体系的にマッピングすることができる(Ramilowski et al., 2015)。
【0180】
これにより、細胞型内及び細胞型間で約2500の検証済みリガンド-受容体相互作用ペアを分析し、最初に恒常性条件の細胞相互作用マップを作成した。次に、心臓の圧力過負荷への応答として発生する細胞相互作用の変化を、不偏な方法で、全ての可能性のあるリガンド・受容体相互作用ペアを組み込んで特定することを試みた(図11A)。興味深いことに、圧力過負荷の誘導時に、相互作用のほとんどの変化は、M1様マクロファージとPostn+サブタイプの活性化線維芽細胞との間で観察された(図11A)。意外なことに、TACに供したmiR-21欠損マウスをWTマウスと比較したところ、M1様MPからPostn+線維芽細胞へのパラクリン相互作用が、M1様MPに由来する全ての細胞間相互作用の中で最も有意に抑制されていることがわかった(図11Aの右パネル)。これらの変化の顕著な程度により、活性化されたMPが実際に心臓線維芽細胞の線維化促進活性化を媒介し得るという仮説を立てた。次に、これらのリガンド-受容体ペアを、このモデルにおける線維性応答の基礎であるシグナル伝達メカニズムの候補として、さらに詳細に調べ、miR-21の欠失によるその阻害を検討した(図11B)。意外なことに、活性化された線維芽細胞への受容体シグナル伝達が予測される上位のアップレギュレートされたリガンド候補が全て、記載されている線維化促進活性を示すことを見出した。圧力過負荷下のmiR-21欠損マクロファージから発せられるシグナル伝達を分析したところ、これらの線維芽細胞活性化シグナル伝達経路は全てダウンレギュレートされていることがわかった(8つのうち4つが、図11Bで適用されるレギュレーションの閾値を超えた)。さらに、圧力過負荷のmiR-21 cKOマウスで単一のシグナル伝達経路、すなわちLrp1依存性シグナル伝達が活性化されることを見出した(図11B)。タンパク質の低密度リポタンパク質受容体ファミリーのメンバーであるLrp1は、ApoEやC1qbなどの多様な抗線維症シグナルの強力なインテグレーターとして報告されている(Potere et al., 2019)。まとめると、これらのデータは、心臓マクロファージが心臓の圧力過負荷時に強力な一連の線維化促進性メディエーターを心臓線維芽細胞に送ることを示唆している。心臓マクロファージの基礎となるM1様の分泌表現型の誘導は、miR-21の機能に依存する。
【0181】
次に、心臓線維芽細胞に対するこれらのシグナルの効果の調査を試みた。この目的のために、圧力過負荷時の心臓線維芽細胞集団の動的転写応答及びその集団におけるmiR-21の関連性を評価した。単一細胞配列決定データのRNA速度分析は、活性化線維芽細胞の画分(Postnで示される)が、圧力過負荷時に筋線維芽細胞(Acta2存在量及びPostn存在量で示される)に向かって押し出されることを示した(図11C)。将来の筋線維芽細胞の表現型に向けたこの転写応答は、miR-21 cKOマウスでは大幅に消失した(図11C)。これらの動的変化とよく一致して、圧力過負荷時に筋線維芽細胞の細胞数が増加することもわかった。繰り返すと、マクロファージのmiR-2の欠失はこれらの効果を逆転させた(図11D)。そして、マクロファージのセクレトームが概ね筋線維芽細胞の分化及びそのmiR-21への依存を提供するのに充分であるという証拠を得ることが考えられた。そうするために、活性化マクロファージ及び心臓線維芽細胞の明確な共培養設定を考案した(図11E)。BMDM前駆細胞を成熟マクロファージに分化させ、LNA-anti-miR-21又はLNA-anti-miR-対照をトランスフェクトし、LPSで刺激した。次に、これら*マクロファージを9ウェル共培養スライドの中心を取り囲む8ウェルに加えて、線維芽細胞:マクロファージの比率が、インビボで心筋の細胞比率を厳密に模倣した3:1になるようにした。次に、Acta2(MetaMorph(登録商標))免疫染色の自動化ハイコンテンツ画像解析を、筋線維芽細胞形成のパラメーターとして使用した(図11F)。刺激されていない静止状態のマクロファージは、このアッセイで筋線維芽細胞の形質転換を誘発せず、miR-21の阻害はこれらの条件下では検出可能な影響を与えなかった(図11F)。LPSによる培養マクロファージの炎症誘発性極性化は、強力な筋線維芽細胞の形質転換を促進するようにそれらのセクレトームを調整した。miR-21 cKOマウスから得られたデータと一致して、LNA-anti-miR-21でマクロファージを前処理すると、マクロファージ依存性筋線維芽細胞の形質転換が大幅に減少した(図11F)。
【0182】
線維芽細胞におけるmiR-21の調節的役割は、組織線維症及び疾患におけるmiR-21の病理学的役割、したがってanti-miR-21(それぞれRG-012)の治療効果の根底にある主要なメカニズムと見なされてきた。本明細書で提供される、精製心筋細胞画分の定量的低分子RNA配列決定の実験結果は、miR-21が全ての心筋細胞型の中で最も高発現を示し、全てのマイクロRNAの中で1位にランクされる、心臓マクロファージにおける膨大な濃度のmiR-21を明らかにした。この重要な知見は、本研究の出発点であり、組織線維症及び心機能に関するcMP miR-21の寄与を記述することとなった。マクロファージmiR-21によって媒介されると本発明者らが報告する効果は深遠であり、一次免疫機能をはるかに超えている。
【0183】
したがって、実験データは、第一に、miR-21がマクロファージで非常に高濃度であり、疾患又は障害の心臓マクロファージ(MP)でさらにアップレギュレートされることを示している。これは、この細胞型で重要であることを示唆している。有病の心筋細胞あたりのmiR-21分子の数が非常に多いことも、全身投与を使用して内因性miR-21を抑制する従来の方法が効果がないとされる理由の1つである可能性がある。
【0184】
第二に、実験データは、miR-21が炎症誘発性(M1様)マクロファージ極性化の重要な調節因子であることを示している。
【0185】
第三に、本明細書で提供される実験データは、心臓マクロファージ中のmiR-21が、線維芽細胞に対する傍分泌線維化促進性シグナル伝達を制御することを示す。このマクロファージ由来の線維化促進性分泌シグナルは、病的な組織組織線維症を制御するのに充分強力である。したがって、マクロファージの標的化は、線維症の治療の改善された新しい概念を提供する。
【0186】
実施例3
低分子RNA、特にマイクロRNAの発現を調べるために、無処置のマウス肺から初代細胞画分を精製するフローサイトメトリーに基づく戦略を考案した。図12に示す確率された細胞表面マーカーを使用した細胞選別後、標準的手順に従ってRNAを調製し、Illuminaプラットフォームを使用して低分子RNA配列決定を実施した。方法論の詳細は以下の通りである。
【0187】
肺組織のフローサイトメトリー/細胞選別:初代細胞は、野生型C57BL/6Nマウスから抽出した肺から単離した。20Gカニューレを気管に挿入し、ナイロン糸を使用して結紮した。次いで、肺に1mLの氷冷2mM EDTA/PBS溶液を注入し、肺を一定に圧迫しながら5秒間インキュベートし、気管支肺胞液(BALF)を15mLファルコンチューブに採取した。このプロセスを5回繰り返した。BALF細胞の採取後、肺が完全に白くなるまで、5mLの氷冷2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)/PBS溶液を左心室に灌流することにより、血液を体内から除去した。次に、マウスから肺を摘出し、コラゲナーゼタイプII(1mg/mL)、DNaseI(0.3mg/mL)、ディスパーゼ(50U/mL)、及び塩化カルシウム(CaCl2)(0.03容量%)を含有する3mLのDMEM系消化バッファーで剪刀を使用して非常に小さな断片に切り分けた。肺を37℃のシェーカーで25分間消化した後、細胞を400gで7分間遠心分離した。次いで、細胞を赤血球溶解バッファー(155mM塩化アンモニウム(NH4Cl)を9部及び0.1mMトリス塩酸(Tris HCL、pH7.65)を1部)1mLで室温で5分間処理した後、2mLのPBSで中和した。次いで細胞をFACSバッファー(2mM EDTA、0.5%BSA含有PBS)で洗浄した。次に、初代細胞をラット抗マウスCD16/CD32(クローン2.4G2)で4℃で10分間処理した後、蛍光結合抗体と4℃で60分間インキュベートした。その後、MACSカラムを用いて白血球画分を他の細胞画分から分離した。細胞を最初にビオチン結合CD45抗体とともに4℃で30分間インキュベートし、続いてストレプトアビジンマイクロビーズとともに4℃で15分間インキュベートした。次に、フロースルー細胞及び白血球濃縮細胞の両方を、フローサイトメトリーに基づく細胞選別のために一次蛍光抗体で染色した。以下の抗体を使用した。白血球濃縮画分、抗CD45-FITC、抗CD11b-PE、抗CD24-PE/Dazzle594、抗CD11c-PECy5、Ly6G-PerCP/Cy5.5、及びF4/80-PECy7。フロースルー:抗CD45-FITC、抗CD105-PE、抗Epcam-PE/Dazzle594、及び抗PDGFRA-PECy7。両方の細胞懸濁液を、40μmナイロンセルストレーナー(Falcon社)で粉砕し、Sony SH800Sセルソーターを使用してFACS分析を行った。
【0188】
心臓組織のフローサイトメトリー/細胞選別:初代細胞は前述のように単離した(Ramanujam et al., 2016)。FACS選別のために、心臓細胞懸濁液を遠心分離(900×gで1分間)により、心筋細胞(ペレット)及び非筋細胞濃縮画分(上清)に分離した。心筋細胞は形態に基づいて選別されたが、非筋細胞画分はさらに抗体ベースのフローサイトメトリー手順に供した。非筋細胞濃縮上清を400×gで5分間遠心分離し、FACSバッファー(2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.5%BSA含有PBS)で洗浄した。次に、初代細胞をラット抗マウスCD16/CD32(クローン2.4G2)で4℃で10分間処理した後、蛍光結合抗体と4℃で60分間インキュベートした。以下の抗体を使用した:抗PDGFRα-PECy7(クローンAPA5)、抗CD105-PE(クローンMJ7/18)、及び抗CD45-FITC(クローン30-F11)。色素DRAQ7を使用して、生存率を制御した。細胞懸濁液を、40μmナイロンセルストレーナー(Falcon社、トゥックズベリー、米国)で粉砕し、Biorad S3セルソーターを使用してFACS分析を行った。
【0189】
RNA配列決定:peqGOLD RNAPure(商標)(Peqlab社)を使用して組織から全RNAを抽出した。ライブラリーは、TruSeq Stranded mRNA試料調製キット(Illumina社、カリフォルニア州サンディエゴ)を使用して、4μgのDNase処理RNAから鎖特異的に構築した。このキットには、mRNAを濃縮するためのポリアデニル化選択が含まれる。次にRNAを断片化し、2ラウンドのcDNA合成を行い、アダプターを2本鎖(ds)cDNAに連結した。全てのライブラリーは、Illumina HiSeq 2000で配列決定し、100bpのペアエンド読み取りを生成した。高品質の読み取りは、生の読み取りからアダプター配列、無効な低品質の読み取りをトリミングすることによって得られた。次に、デフォルトのパラメーターを使用して、HISAT2ソフトウェア(バージョン2.1.0)によってクリーンな読み取りをSus scrofa 11.1参照ゲノムにマッピングした。次に、StringTieソフトウェア(バージョン1.3.6)を使用して転写アセンブリーを構築した。StringTieマージソフトウェア(バージョン1.3.6)を使用して転写産物をマージし、DESeq2ソフトウェア(バージョン2.11.40.2)を使用して発現差を計算した。次に、遺伝子を、ADAPTS Rパッケージを使用して、存在量、細胞型特異性、及び受容体の特徴に基づいて選択した。
【0190】
miR-21は、肺マクロファージにおいて最も豊富で濃縮されたマイクロRNAであることが、本明細書で驚くべきことに見いだされた。本発明者らのデータは、マイクロRNA-21が肺胞マクロファージで発現する全てのマイクロRNA分子の約20%を表し、したがって、この細胞型で発現するマイクロRNA種の最上位であることを明らかにしている。同様の高い発現量が肺間質マクロファージ細胞集団で見られ、全てのmiRNA読み取りの12%がmiR-21に起因する可能性がある。miR-21の相対的な発現は、様々な肺細胞型における定量的リアルタイムPCRによってさらに検証され、マクロファージ集団におけるmiR-21の相対的な濃縮が再び示された(図12)。哺乳類の肺におけるマクロファージの非常に多い存在量を考慮すると、これらのデータは、肺のmiR-21の大部分が肺マクロファージに由来することを示唆している。
【0191】
そこでmiR-21が肺傷害後のマウス及びヒトでアップレギュレートされるかどうかについて調べた。したがって、miR-21の発現が肺疾患で変化するかどうかを試験し、確立された肺線維症のモデル、すなわち化学療法剤であるブレオマイシンの適用によって誘発される肺線維症を採用した。対照溶液(PBS)又はブレオマイシンのいずれかを投与してから14日後にマウスから採取した肺組織におけるmiR-21の発現を測定した。本発明者らは、miR-21の発現が罹患した肺において強く増加することを見出した(図13A)。
【0192】
次に、特発性肺線維症患者の生検におけるmiR-21の発現を研究した。再び、肺組織におけるmiR-21の有意な増加が見出された(図13B)。
【0193】
そして、miR-21に対する合成オリゴヌクレオチド阻害剤(LNA-anti-miR-21)によるmiR-21の阻害が、肺のmiR-21を抑制するのに充分かどうか、及びこれが肺線維症に干渉するかどうかを試験した。ここでは、冠動脈内LNA-anti-miR-21を投与され(本出願の図1を参照)、中等度の肺硬化及び肺線維症を発症したブタを研究した。肺疾患は、心筋梗塞後の心機能障害に起因する肺うっ血の周知の帰結である。LNA-anti-miR-21の冠動脈内適用は、うっ血肺でmiR-21を効果的に抑制した(図13C)。重要なことに、LNA-anti-miR-21は、心不全に関連した肺うっ血及び肺線維症のこのモデルで肺線維症を有意に予防した。
【0194】
まとめると、これらのデータは、おそらく心臓マクロファージを含むマクロファージにおいてmiR-21に影響を与えることにより、miR-21の阻害が、肺に強力な抗線維症効果を有することを示唆している。以下に記載されているように、肺マクロファージで特異的にmiR-21を阻害すると、実際に同様に強力な抗線維症効果がある。
【0195】
実施例4
活性化心臓線維芽細胞におけるmiR-21の遺伝的欠失は、心臓のリモデリング及び機能不全を防止する。
miR-21は、線維芽細胞の増殖、生存、及び筋線維芽細胞の形質転換を促進することが示されているが、今日まで、心臓線維芽細胞におけるmiR-21の活性が、心不全で観察されるような組織リモデリング及び機能不全の決定要因であることは示されていない。確立されたPostn-MCMトランスジェニックマウス系統を採用することにより、活性化線維芽細胞でのCreリコンビナーゼの特異的発現が可能になり、それによってloxP部位に隣接する遺伝子座の組換えが可能となった。注記のうち、遺伝子導入Postn-MCM系統は誘導性遺伝子導入系統である、すなわち、タモキシフェンの適用に応答してCreリコンビナーゼが発現する。次に、このマウス系統を、floxed miR-21遺伝子座を持つマウスと交配させ、活性化心臓線維芽細胞におけるmiR-21の喪失を目指した。これらのマウスを、進行性心臓リモデリング及び機能障害を誘発する心筋梗塞(MI)に供した(図14A)。
MIの4週間後、マウスを心エコー検査による心臓寸法及び機能の分析に供し、さらなる分析のために心臓と肺を採取した。活性化線維芽細胞集団におけるmiR-21の遺伝的欠失は、心筋不全におけるmiR-21の有意な減少をもたらし(図14B)、線維芽細胞のmiR-21が、心不全の全体的なmiR-21含有量に大きく寄与していることを示唆している。miR-21の線維芽細胞欠失は、心不全に関連する心筋量の増加(肥大と呼ばれる(図14C))を有意に防止し、同様に肺重量対体重の増加を防止した(図14D)。活性化心臓線維芽細胞集団におけるmiR-21の欠失のこれらの有益な効果は、同様に、左心室駆出率によって決定される心機能の有意な改善に反映された(図14E)。さらに、心エコー検査は、心臓の構造リモデリングに対する好ましい効果、すなわち心不全に関連する拡張終期容積及び収縮終期容積の増分の減少を示した(図14F)。心機能の改善は、野生型群と比較して半径方向歪みピークの有意な増加によってさらに確認された(図14G)。
【0196】
まとめると、これらのデータは、miR-21の線維芽細胞特異的阻害も組織線維症を標的とする有効な治療戦略であることを示唆している。
【0197】
実施例5
miR-21は、COVID-19患者から採取した肺組織及び肺線維症の動物モデルでアップレギュレートされている。
本発明者らは当初、COVID-19患者及び非線維症の対照被験者から採取した肺の低分子RNAトランスクリプトームプロファイルを得ようとした(図19A)。死後の肺組織は、ヒト肺のCOVID-19誘発リモデリングの好発部位である左下葉の領域から採取した。本発明者らは、miR-21が、ヒト肺の全マイクロRNA分子の約5%を構成する、対照被験者からの肺において高度に発現されるマイクロRNAであることを見出した(図19B)。興味深いことに、miR-21の発現は、COVID-19患者の肺でさらに増加し、上位10個の発現されたmiRNAの中で単一の最もアップレギュレートされたmiRNA(約2の倍率変化)であることがわかった(図19B)。
【0198】
次に、様々な肺細胞型の低分子RNA発現プロファイルを取得して、細胞型全体のmiR-21発現を評価した。新たに単離された細胞の供給源として、10週齢のマウスの肺を使用し、磁気活性化細胞選別(MACS)及び蛍光活性化細胞選別(FACS)を含む戦略を使用して、マウス肺の様々な肺細胞型におけるmiR-21発現を調べた。興味深いことに、miR-21は、肺胞マクロファージで最も発現量の高い単一のマイクロRNAであり、他の細胞型と比較してこの細胞型でも高度に濃縮されていた(図20)。まとめると、このユニークな発現パターンは、肺マクロファージにおけるmiR-21の強力な調節的役割を示唆している。
【0199】
肺線維症及び機能不全の発症に対するmiR-21の寄与を検討するために、マイクロ噴霧器を使用してブレオマイシンを単回気管内投与することにより、野生型マウスに肺傷害を与えた。flexiVent(登録商標)装置を使用して、ブレオマイシン適用の7日後に肺機能障害を確認した(データは示さず)。生理食塩水又はブレオマイシンで処理した肺から得られたマイクロRNA発現プロファイルは、ブレオマイシン投与の7日後にmiR-21が有意にアップレギュレートされることを示した(図21)。上位の発現されたmiRNAの中で、miR-21が最も強いアップレギュレーションを示した。
【0200】
マクロファージへの標的化送達のためのリガンド結合anti-miR-21
本発明者らは、マンノース受容体C型1(Mrc1)がマクロファージで強く発現し、他の細胞型と比較して濃縮されていていることを特定するスクリーニング戦略を採用した。(上記の表3を参照)。
【0201】
肺及び心臓のマクロファージ又は線維芽細胞それぞれの細胞表面受容体を同定する試みにおいて、本発明者らは、マウス由来の肺細胞型及び心臓細胞型の偏りのないトランスクリプトーム配列決定を行い、これらの分析をヒトのトランスクリプトームデータに拡張した(図22)。肺サブタイプのRNA配列決定により、全ての細胞型で18,000個を超える遺伝子が特定された。それらの中で、1000個を超える表面受容体が検出され、そのうち106個がマクロファージで濃縮されている。後者のうち、13個が非常に存在量が多く、マクロファージに特異的であることがわかった。anti-miR-21/miR-21送達阻害剤に対するこれらマクロファージ特異的表面受容体候補には、特に以下が含まれる:
【0202】
【表4】
【0203】
次に、肺胞マクロファージ及び間質マクロファージ、並びに白血球、上皮細胞、及び内皮細胞における、上位の表面受容体MRC1候補の相対存在量を比較したところ、マクロファージにおけるMRC1のはるかに強い発現を示した。対応するデータは、マクロファージを含む心臓細胞型について得られた。肺及び心臓からの線維芽細胞についても、対応するデータが得られた。
【0204】
次に、肺マクロファージでのMRCの発現は、MRC1に対する抗体を使用した免疫蛍光によるタンパク質レベルでの検出によって裏付けられた。ここでは、形態学的に肺マクロファージに似ている細胞でMRC1が明確に検出された。ブレオマイシンで処理したマウスに由来する肺組織では、マクロファージとして特定されるMRC1陽性細胞が大幅に増加した。
【0205】
次に、ブレオマイシンで治療した患者又は特発性肺線維症(IPF)に罹患している患者の肺組織及びそれぞれの対照に由来する、公的に入手可能なヒト単一細胞データセットのバイオインフォマティクス分析により、これらのデータを検証することを試みた。これらのデータセットでヒトMRC1の発現をプロットしたところ、ヒト肺マクロファージでMRC1の強力かつほぼ排他的な発現が見られた。MRC1陽性細胞の数は、ブレオマイシンで治療したヒトの肺及びIPF患者由来の組織で増加した。
【0206】
心臓マクロファージ及び線維芽細胞の表面受容体の候補を特定するために、肺について上記で説明したものと同様のアプローチを追求した。主要な心臓細胞型の配列決定を実施し、全ての細胞型で14,000個を超える遺伝子を特定した(100万あたりの総読み取り数>1)。それらの中で、マクロファージで濃縮された89の表面受容体と、線維芽細胞で濃縮され発現される86の表面受容体とをそれぞれ有する800を超える表面受容体を特定した。さらに、マクロファージでのみ豊富で特異的に発現する16の表面受容体と、線維芽細胞にのみ豊富で特異的に発現する10の表面受容体を層別化した。心臓マクロファージの選択された16の表面受容体の中で、やはりMrc1が最も豊富な単一の表面受容体候補として際立っていた。左心室の圧力過負荷に供されたマウス又は対照/シャム(偽)マウスの心臓から単離された初代細胞の単一細胞配列決定により、心臓マクロファージにおけるMRC1の高度に特異的な発現が裏付けられた。
【0207】
線維芽細胞表面受容体の同様の対応する分析により、最上位の候補分子としてScara5が得られた。
【0208】
心臓マクロファージのさらなる表面受容体分子候補には、以下が含まれる。
【0209】
【表5】
【0210】
心臓線維芽細胞のさらなる表面受容体分子候補には、以下が含まれる。
【0211】
【表6】
【0212】
マンノース受容体C型1(MRC1)に対する抗体を使用した肺組織の免疫蛍光染色を使用すると、マクロファージの形態学的特徴を示す細胞におけるマンノース受容体C型1(MRC1)の強力かつ選択的な発現が示された(図22)。
【0213】
いくつかの研究(例えば、Martinez-Pomares, L., 2012)では、マンノース及びN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)リガンドのマンノース受容体C型1(MRC1)への結合が報告されている。次に、miR-21に対するオリゴヌクレオチド(LNA-anti-miR-21)を、これらのリガンドと合成リンカー分子からなる部分と結合させた(図23)。
【0214】
特に、炭水化物リガンド結合LNAオリゴヌクレオチドの調製は、以下のように行った。
市販の炭水化物4-アミノフェニル3,6-ジ-O-(α-D-マンノピラノシル)-α-D-マンノピラノシド(Synthose社、トロント、カナダ、#AM853、24.8mg)を、4.4μLのジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)を含有する248μLのDMF中の18.1mgのAcid-PEG5-NHSエステル(Broadpharm、カリフォルニア州サンディエゴ、#BP-22220)と反応させた。薄層クロマトグラフィー(TLC)が出発炭水化物の消費を示した時点で、形成された生成物をエーテルの添加により沈殿させた。固形物を濾過によって回収し、ピリジン(500μL)に再溶解した。無水酢酸(500μL)を加えて、三糖の全ての遊離ヒドロキシル基をブロックした。溶液を蒸発乾固し、メタノール及びジクロロメタンの1:1混合物を使用してSephadex LH20カラムクロマトグラフィーにより精製した。
【0215】
【化4】
【0216】
得られた30mgの炭水化物カルボン酸を、3.7μLのジイソプロピルカルボジイミド及び303μLのDMFの存在下で、2.9mgのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)によって活性化した。溶液を周囲温度で一晩撹拌し、さらに精製することなくオリゴヌクレオチドとのコンジュゲーション反応に使用した。
【0217】
完全にホスホロチオエート化されたLNA オリゴヌクレオチドを、固相上で従来のホスホロアミダイトオリゴマー化化学を使用して合成した。オリゴヌクレオチドは、リガンド結合の反応ハンドルとして機能するアミノヘキシルリンカーを5’末端に備えていた。オリゴヌクレオチドは次のように調製した。
【0218】
オリゴヌクレオチドは、Mermade 12シンセサイザー(LGC Biosearch社、米国ミネソタ州アレクサンドリア)で構築した。合成は、87μmol/gの負荷を有する2’-デオキシ-チミジン(LGC Biosearch社から入手)で誘導体化された制御多孔性ガラス(CPG、600Å)で作製した固体担体で実施した。必要な配列を構築するために、ホスホロアミダイト並びに補助試薬をSAFC社(ハンブルグ、ドイツ)から購入した。具体的には、以下のロックド核酸(LNA)及びDNAホスホロアミダイトを使用した。
【0219】
(5’-O-ジメトキシトリチル-N6-(ベンゾイル)-(2’-O, 4’-Cメチレン)-アデノシン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、5’-O-ジメトキシトリチル-N4-(ベンゾイル)-(2’-O, 4’-Cメチレン)-5-メチルシチジン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、(5’-O-ジメトキシトリチル-N2-(ジメチルホルムアミジン)-(2’-O, 4’-Cメチレン)-グアノシン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト、及び5’-O-ジメトキシトリチル-(2’-O, 4’-Cメチレン)-5-メチルウリジン-3’-O-(2-シアノエチル-N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスホロアミダイト。5-メチルシチジンを含むDNAホスホロアミダイトは、LNAホスホロアミダイトと同じ保護基を有していた。全てのアミダイトを無水アセトニトリル(100mM)に溶解し、モレキュラーシーブ(3Å)を加えた。オリゴマーの5’末端にC6-アミノリンカーを導入するために、Chemgenes社(米国マサチューセッツ州ウィルミントン)から入手可能な、対応するアミノヘキシルN-(トリフルオロアセチルアミド)-ホスホロアミダイを使用した。TFA保護アミノリンカーは、省略されたキャッピング工程を除いて、合成サイクルの変更なしに導入した。5-エチルチオテトラゾール(ETT、アセトニトリル中500mM)を活性化剤溶液として使用した。DNAアミダイトを4分間で結合させ、他のアミダイトを6~8分間で結合させた。無水アセトニトリル/ピリジン(1:1容量/容量(v/v))中の3-((ジメチルアミノ-メチリデン)アミノ)-3H-1,2,4-ジチアゾール-3-チオン(DDTT、米国カリフォルニア州オーシャンサイドのAM Chemicals社より入手)の50mM溶液を使用して、ホスホロチオエート結合を生成した。
【0220】
固相合成の完了後、オリゴヌクレオチドを担体から切断することなく、アセトニトリル中の20%ジエチルアミンで30分間処理することにより、シアノエチル保護基を除去した。その後、乾燥した固体担体をポリプロピレンチューブに移し、55℃で少なくとも18時間濃アンモニア水(Aldrich社)で処理した。遠心分離後、上清を新しいチューブに移し、CPGをアンモニア水で洗浄した。合わせた溶液を蒸発させ、残留物をバッファーAで再構成した(下記参照)。
【0221】
粗オリゴヌクレオチドを、Waters社(エシュボルン、ドイツ)のC18 XBridge Prepカラム(5μm、19×50mm)並びにフラクションコレクター及びサンプルポンプを備えたAKTA Pure HPLCシステム(GE Helthcare社)を使用した逆相(RP)HPLC によって精製した。バッファーAは、100mMトリエチルアンモニウムアセテート(TEAAc、pH7、Biosolve社(ファルケンスワールト、オランダ)より入手)であり、バッファーBはバッファーA中に95%アセトニトリルを含有したものであった。15mL/分の流速を使用し、120カラム容量内で0~100%Bの勾配を使用した。バッファーを60℃に加熱し、カラムをカラムオーブン内で同じ温度に維持した。生成物の溶出を280nmでモニターし、2mLの画分を収集した。
【0222】
分画を含む生成物をプールし、Sephadex(登録商標)G25(GE Healthcare社)を充填したカラムを用いたサイズ排除を使用して脱塩した。
【0223】
【表7】
主要:dA、dC、dG、dT:DNAヌクレオチド
Ab、Cb、Gb、Tb:LNAヌクレオチド
s:ホスホロチオエート結合
(NH2C6):アミノヘキシルリンカー
【0224】
精製オリゴヌクレオチドを、50mM炭酸ナトリウム緩衝液(pH9.5)及びDMSOに1:1.5の比率で700OD/mLのオリゴヌクレオチド濃度で溶解した。NHS活性化炭水化物リガンドは、90分間隔で2回に分けて添加した。
【0225】
【化5】
【0226】
オリゴヌクレオチドの精製について記載したのと同じ方法を用いて、反応混合物を逆相(RP)HPLCによって精製した。画分を含む生成物を一緒にプールし、エタノールの添加により沈殿させた。遠心分離によってペレットを回収した。上清を捨て、ペレットを500mM塩化ナトリウム(NaCl)で再構成した。この溶液を、Sephadex(登録商標)G25を固定相とし、水を溶離液とするサイズ排除クロマトグラフィーを用いて脱塩した。水溶液を含む生成物は、260nmでの吸収を測定することによって定量化した。そして、溶液を凍結乾燥した。
【0227】
【表8】
【表9】
【0228】
本発明者らは次に、これらのリガンド共役オリゴヌクレオチドを含む組成物をエアロゾル化形態で吸入した際のマウス肺の細胞への送達について試験することを目的とした。この目的のために、anti-miR-21のロックド核酸(LNA)/デオキシリボ核酸ミックスマー(LNA-anti-miR-21)を、その3’末端でフルオレセインアミダイト誘導体(FAM)に結合し、その5’末端にリガンドを結合させた。この研究で使用したマンノースリガンド結合オリゴヌクレオチドの例示的な構造を図23に示す。
【0229】
次に、専用のマウス吸入装置を使用したエアロゾル化された組成物の吸入により、指示用量のマンノース又はGalNAc結合LNA-anti-miR-21-FAMを野生型マウスの肺に投与した(flexiVent(登録商標)装置、SCIREQ社、カナダ;Yang et al., 2019)(図24A)。非結合LNA-anti-miR-21を対照として使用し、PBS処理マウスの肺を陰性対照として使用した。miR-21阻害剤を含む組成物の適用の2時間後、気管支肺胞洗浄(BAL)液及び肺組織を、方法のセクションに記載されているように各動物から採取した。肺細胞型におけるLNA-anti-miR-21の取り込みは、フローサイトメトリーを使用してFAMシグナル強度を決定することによって評価した(図24A)。FAMシグナルは、BALF及び肺組織の両方から単離された細胞で検出され、LNA-anti-miR-21の濃度の増加と共に増加した(全群は図24B及び図24Cに記載)。
【0230】
次に、肺組織から単離された白血球及び非白血球の両方の画分における陽性細胞の割合を決定した。フローサイトメトリー分析は、マンノース結合LNA-anti-miR-21を含む組成物を投与すると、非結合LNA-anti-miR-21と比較して、FAM陽性マクロファージの相対画分が増加したことを示した(図24C)。次に、マクロファージ集団の蛍光強度の中央値を決定することにより、この細胞型に送達されたLNA-anti-miR-21分子の相対量を推定し、これをPBS投与肺から単離された細胞からのデータに正規化した。対照(非結合オリゴ処理群)と比較して、マンノース共役LNA-anti-miR-21処理BALF又は肺から単離されたマクロファージにおいて有意に高いFAM蛍光強度の中央値が観察された(図25A及び図25B)。
【0231】
要約すると、マンノース共役LNA-anti-miR-21を含む組成物のエアロゾル吸入は、肺マクロファージへのより高い送達をもたらした。
【0232】
実施例6
miR-21の阻害はブレオマイシン誘発性肺リモデリング及び機能不全を減少させた
肺リモデリングに対する吸入マンノース結合LNA-anti-miR-21組成物の効果を決定するために、本発明者らは、野生型マウスをブレオマイシン誘発性肺傷害に供し、次いで、肺傷害後4日目にマンノース結合LNA-anti-miR-21組成物を吸入により肺に局所投与した(図26A)。肺切片の細胞外マトリックスタンパク質の染色は、ブレオマイシンを投与したマウスで線維症が増加することを示した。しかし、マンノース結合LNA-anti-miR-21組成物の吸入は、肺線維症の有意な減少をもたらした(図26B)。
【0233】
次に、flexiVent(登録商標)人工呼吸器を使用してマウスの肺を様々な呼吸摂動に供することにより、肺機能に対するmiR-21阻害の影響を評価した。呼吸器系の固有の弾性特性(又は準静的な機械的特性)を決定するために、肺傷害後14日目にPBS処理マウス及びブレオマイシン処理マウスから圧力-容積(PV)ループを得た。肺線維症を有するブレオマイシン曝露マウスからのPVループからのデータは、下向きのシフトを示し(図26Cの灰色曲線及び黒色曲線を参照)、肺活量及びコンプライアンスの低下を示した。測定により、PVループに由来する準静的エラスタンス、準静的コンプライアンス、及び吸気容量パラメーターが、ブレオマイシン曝露マンノース結合LNA-anti-miR-ミスマッチ-21マウスで有意に減少したことが明らかになった(図26D図26F)。マンノース結合LNA-anti-miR-ミスマッチ-21処理マウスのエアロゾル吸入は、肺機能のこうした低下を防止した(図26Cの赤い曲線を参照)。
【0234】
まとめると、これらのデータは、肺線維症のマウスモデルにおける吸入による、マクロファージを標的としたマンノース結合anti-miR-21組成物の局所送達の治療効果を示している。
【0235】
特に上記の実施例5及び実施例6の方法論的詳細は以下の通りである。
実験動物及び研究デザイン:全ての動物研究は、関連するガイドライン及び担当当局の規制に従って実施され、オーバーバイエルン州政府庁(Regierung von Oberbayern)の治験審査委員会(IRB)から承認を得た(ROB-55.2-2532.Vet_02-19-82)。
【0236】
ブレオマイシンの気管内投与:生後10週のC57BL/6N野生型マウスに、50μLの滅菌PBSで希釈したブレオマイシン塩酸塩(Sigma Aldrich社、タウフキルヘン、ドイツ)を、マイクロ噴霧器を使用してマウスに2U/kg体重で投与した(BioJane社(中国)により流通されるPenn Century社の装置)。
【0237】
オリゴヌクレオチド阻害剤のエアロゾル適用:anti-miRは、完全にホスホロチオエート化されたロックド核酸(LNA)/デオキシリボ核酸ミックスマーとして合成した(FAM標識anti-miR、BaseClick社、ミュンヘン、ドイツ;Axolabs社、クルムバッハ、ドイツ)。anti-miRは、前述のように、ネブライザーユニット(Aeroneb(登録商標)-小液滴径:2.5~4μm、アイルランド)に取り付けられたflexiVent(登録商標)げっ歯類人工呼吸器FX2(SciReq社、カナダ)を使用して適用した2。各マウスに対して、ネブライザーを20μLの2.5、5、又は10mg/mLのanti-miRで満たし、ネブライザーを1分間に150回の呼吸、15mL/kg体重の一回換気量で、吸気時間:呼気時間比率を2:1として動作させた。
【0238】
肺機能分析:肺機能を、マウス用のflexiVent(登録商標)げっ歯類人工呼吸器FX2を使用して評価した。マウスを深麻酔下で気管切開し、気管に挿入した20Gの気管カニューレを4-0シルク縫合糸を使用してしっかりと固定し、漏れがなく信頼できる測定ができるようにした。次に、カニューレを人工呼吸用のflexiVent(登録商標)ユニットに接続した(毎分150回の呼吸、15mL/Kg体重の1回換気量、0.67:1 の吸気時間:呼気時間比率)。肺機能を、様々な呼吸操作(深い膨張、Prime-8、及び圧力駆動の傾斜型の圧力-容積摂動)で評価した。吸気量、準静的コンプライアンス、及び準静的エラスタンスのパラメーターは、PVループから導出した。
【0239】
成体マウス肺からの初代細胞の単離:肺を採取する前に、気管にカニューレを挿入して2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有するPBSを連続的に(約5回)注入及び吸引することにより、気管支肺胞洗浄液を採取した。肺を採取し、2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含有する氷冷PBSで洗浄した。肺の右葉を、コラゲナーゼII(Worthington社、ニュージャージー州レイクウッド)、ディスパーゼI(Gibco社)、及びDNaseI(Corning社、ベッドフォード、米国)を含有する3mLの酵素消化溶液で非常に小さな断片に切断し、その後37℃で25分間インキュベートした。500μLのウシ胎児血清を添加して肺の酵素消化を停止し、1mLシリンジを使用して上下にピペッティングすることにより、細胞懸濁液を混合した。細胞を100μmのセルストレーナーでろ過し、400g、4℃で7分間遠心分離した。次に、細胞を1mLの赤血球溶解バッファー(9部の155mmol/L塩化アンモニウム(NH4Cl)及び1部の0.1mol/Lトリス塩酸(Tris-HCl、pH7.65)で室温で約5分間処理した後、4mLのPBSで中和した。次に、細胞をFACSバッファー(2mMエチレンジアミン四酢酸(EDTA)及び0.5%ビオチン非含有ウシ血清アルブミンを含有するPBS)で洗浄し、70μmのセルストレーナーでろ過した。
【0240】
フローサイトメトリー/細胞選別:次に、細胞ペレットを抗マウスCD16/CD32で4℃で15分間処理した後、磁気マイクロビーズ結合抗CD45一次抗体と共に4℃で20分間シェーカーでインキュベートした。AutoMACS(Miltenyi Biotec社、ベルギッシュ・グラートバッハ、ドイツ)を使用して、白血球画分を他の細胞画分から分離した。
【0241】
肺からの免疫細胞濃縮画分を、CD45、F4/80、SIGLECF、及びMRC1に対する抗体で染色してマクロファージを単離するか、CD45、Ly6G、及びCD3に対する抗体で染色して好中球及びT細胞を単離した。非免疫細胞画分が濃縮された肺細胞懸濁液を通過するフローを、CD45、CD140a、CD105、及びEPCAMに対する抗体で染色して、それぞれ線維芽細胞、内皮細胞、及び上皮細胞を分析した。白血球を除外するために、非免疫細胞画分に抗CD45抗体を使用した。Sony SH800ソーターを用いて細胞を分析した。
【0242】
PBSで処理したマウスを各実験日に含めて、バックグラウンドの蛍光を正規化し、異なる日に行った複製群及び処理群間の比較を容易にした。その後、FlowJoソフトウェア(バージョン10.7.1)を使用してデータを分析し、FAM陽性細胞の数及び蛍光強度の中央値を計算した。
【0243】
マイクロRNAライブラリーの調製:次に、Trizol試薬を使用して全RNAを抽出し、製造元のプロトコルに従って、Illumina(NEB)用のNEBNext低分子RNAライブラリー調製セットを使用して、低分子RNAライブラリーを調製した。増幅されたPCR産物を、Monarch(登録商標)キットを使用して精製し、増幅長に基づく選択のために6%尿素-PAGEで実行した。miRNA(約150bp)に対応するバンドを切り出し、Lexogen社のゲル抽出モジュールキットを使用して一晩溶出した。ライブラリーを多重化及びプール化し、75bp読み取り長のペア読み取りチップを使用して、MiSeqシーケンサーでディープシーケンシングランを実行した(50サイクルのシングルラン)。
【0244】
バイオインフォマティクス:次に、シーケンサーからの生のBCL出力からFASTQファイルを生成した。低分子RNAの配列決定により、アダプター配列を除去し、低品質(Phred Q<20)かつ小さい読み取り(12ヌクレオチド未満)をフィルタリングした後、試料あたり約150万回の読み取り(約%の有効な読み取り)を得た。残りの高品質の読み取りを、ユニーク配列についてさらにフィルター処理し、各サンプルについてカウントし、低分子RNA参照ライブラリー(miRBase v22からのmiRNAヘアピン)にアラインメントし、miRDeep2 ツールを使用して100万あたりのカウントに正規化された存在量を読み取った。次に、100万あたり5カウントを超える全てのサンプルの平均検出範囲を示したマイクロRNAをフィルター処理した。DESeq2を使用して試料間の低分子RNAの発現差を試験し、「ashr」適応収縮推定量(Stephens (2017); Biostatistics 18(2):275-294)を対数倍率の変化に使用した。Rパッケージツール「pHeatmap」を使用して、試料間の低分子RNAの発現差を試験した。
【0245】
図6Aの画像はBioRenderオンラインツールを使用して生成し、化学構造はChemDraw(登録商標)(v20.0)を使用して生成した。
【0246】
組織学:気管及びカニューレに接続されたままの左肺葉を、PBS及び4%パラホルムアルデヒド(PFA)で灌流し、パラフィン包埋のために組織を4%PFAで24時間保存した。コラーゲン沈着の分析のために、左心室心筋のパラフィン切片(8μm)をシリウスレッド及びファストグリーンで染色した。心臓全体の画像は、AxioObserver.Z1(Zeiss社、イェーナ、ドイツ)電動走査ステージ顕微鏡(130 x 85; Marzhauser社、ヴェツラー、ドイツ)を使用して10倍の対物レンズで撮影し、MetaMorph(登録商標)ソフトウェア(Molecular Devices社)を使用して分析した。線維症は、各切片におけるシリウスレッドからファストグリーンまでのシグナルの比率として定量化した。
【0247】
凍結ブロック(Kryoblock)の場合、肺組織の一部(左葉)を、4%PFAでのインキュベーションの2時間後、30%スクロース/PBS溶液に4℃で一晩保持した。肺凍結切片(5μm)をメタノールで固定し(-20℃で10分間)、水道水で充分に洗浄し、アセトンで処理した(-20℃で1分間)。次に、切片をPBSで希釈した5%ヤギ血清でブロックし、MRC1に対する一次抗体(#AB64693、RRID:AB_1523910、Abcam社)で4℃で一晩染色した。次に、切片をそれぞれの二次抗体で染色した。核はSYTOX(登録商標)Green(Life Technologies社)で染色した。画像は、63倍グリセロール対物レンズ(Leica SP5)を使用した共焦点顕微鏡によって取得した。
【0248】
統計分析:データは平均値及び個別値を示す。Graphpad Prismソフトウェアパッケージ(バージョン8)を使用して、統計分析を実行した。データ分布は、正規性についてシャピロ-ウィルク(Shapiro-Wilk)検定によって評価した。分散の等質性を試験するためにバートレット(Bartlett)検定を実施し、異分散性を試験するためにスピアマン(Spearman)の順位相関検定を実施した。2つの平均値の違いは、スチューデント(Student)のt検定によって評価した。複数の平均値の違いは、二元配置分散分析(ANOVA)とそれに続くテューキー(Tukey)の事後検定によって評価した。0.05未満のP値は有意と見なした。
【0249】
本明細書で引用される全ての参考文献は、その内容全体を参照により援用される。ここまで本発明を充分に説明してきたが、当業者は、本発明の精神若しくは範囲又は任意の実施形態に影響を与えることなく、条件やパラメーター及び同種のものについて広くかつ同等の範囲内で本発明を実施できることを理解するであろう。
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図1A-B】
図1C
図2
図3A
図3B-E】
図3F-G】
図4A
図4B-C】
図4D-E】
図4F-G】
図5A-B】
図5C-E】
図6A-B】
図6C
図6D
図6E1
図6E2
図6F-G】
図7A
図7B
図7B-C】
図7D
図8A
図8B
図8C-D】
図8E
図8F-G】
図9A-B】
図9C
図9D-E】
図9F-G】
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E1
図10E2
図10F
図10G
図11A
図11B-C】
図11D-E】
図11F
図12A
図12B-C】
図13A
図13B
図13C-D】
図14A-B】
図14C-D】
図14E-F】
図14G
図15
図16
図17
図18
図19A-B】
図20
図21
図22A
図22B-C】
図22D-E】
図22F
図23A-B】
図23B
図24A
図24B-C】
図25A-B】
図26A-B】
図26C-F】
図27A-C】
図27D-E】
【配列表】
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【国際調査報告】