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特表2023-521811放射エネルギーを利用するセキュリティボディスキャナおよび関連する検出方法
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  • 特表-放射エネルギーを利用するセキュリティボディスキャナおよび関連する検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】放射エネルギーを利用するセキュリティボディスキャナおよび関連する検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/12 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
G01V3/12 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562249
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 EP2021059675
(87)【国際公開番号】W WO2021209505
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】2003724
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517131396
【氏名又は名称】マネスキ、アレッサンドロ
【氏名又は名称原語表記】MANNESCHI,Alessandro
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】マネスキ、アレッサンドロ
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA01
2G105BB14
2G105BB15
2G105BB16
2G105BB17
2G105CC01
2G105CC04
2G105EE06
2G105HH04
2G105HH06
(57)【要約】
本発明は、放射エネルギーを利用する検出器(1)を用いて対象物を検出する方法(S)であって、検査対象者を検出器(1)の第1の位置に配置するステップS1と、検査対象者が第1の位置にあるときの放射エネルギーを表す第1の信号を取得するステップS2と、検査対象者を検出器(1)の第1の位置とは異なる第2の位置に配置するステップS3と、検査対象者が第2の位置にあるときの放射エネルギーを表す第2の信号を取得するステップS4と、第1の信号および第2の信号に基づいて、検査対象者が対象物を持っている、着ている、または身に着けているかを判断するために、電子画像を生成するステップS5と、を含む方法に関する。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射エネルギーを利用する検出器(1)を用いて対象物を検出する方法(S)であって、前記検出器(1)は、2つの対向するサイドパネル(2)を含み、前記サイドパネル(2)は固定され、共に通路を画定し、
検査対象者を前記検出器(1)の前記サイドパネル(2)間の通路内の第1の位置に配置するステップS1と、
前記検査対象者が前記第1の位置にあるときの放射エネルギーを表す第1の信号を取得するステップS2と、
前記検査対象者を前記検出器(1)の前記サイドパネル(2)間の通路内の前記第1の位置とは異なる第2の位置に配置するステップS3と、
前記検査対象者が前記第2の位置にあるときの放射エネルギーを表す第2の信号を取得するステップS4と、
前記第1の信号および前記第2の信号に基づいて、前記検査対象者が対象物を持っているか否かを判断するために、電子画像を生成するステップS5と、を含み、
ステップS1およびS3のうち一方において、前記検査対象者が前記サイドパネル(2)の1つに面するように配置され、ステップS1およびS3のうち他方において、前記検査対象者が前記サイドパネル(2)に対して垂直に配置される検出方法(S)。
【請求項2】
前記第1の位置と前記第2の位置の間で、前記検査対象者は、180°とは異なる角度で回転する請求項1に記載の検出方法(S)。
【請求項3】
ステップS3の前に、前記第1の位置から前記第2の位置に移動する指示を前記検査対象者に送るステップS6を更に含む請求項1または2に記載の検出方法(S)。
【請求項4】
ステップS6において、前記指示は、可視および/または可聴である請求項3に記載の検出方法(S)。
【請求項5】
前記指示は、前記検出器(1)の中央装置(6)によって送信される請求項3または4に記載の検出方法(S)。
【請求項6】
前記指示は、前記検出器(1)の中央装置(6)によって送信され、ステップS1において、前記検査対象者が前記サイドパネル(2)の1つに面するように配置され、ステップS3において、前記検査対象者が前記サイドパネル(2)に対して垂直に配置される請求項4または5に記載の検出方法(S)。
【請求項7】
ステップS1および/またはステップS3において、前記検査対象者は、腕を身体から離して置く請求項1~6のいずれか一項に記載の検出方法(S)。
【請求項8】
前記検査対象者が持つ対象物を検出するように、中央装置(6)によって前記第1の信号および第2の信号を処理するステップ(S2.2;S4.2;S5)を更に含む請求項1~7のいずれか一項に記載の検出方法(S)。
【請求項9】
ステップS4の前に、前記第1の信号を前記中央装置(6)に送信する(S2.1)請求項8に記載の検出方法(S)。
【請求項10】
ステップS3およびS4の全部または一部の間に、前記第1の信号を処理する(S2.2)請求項9に記載の検出方法(S)。
【請求項11】
前記中央装置(6)は、前記検査対象者の単一の電子画像を生成するように、前記第1の信号と前記第2の信号とを合成する請求項8~10のいずれか一項に記載の検出方法(S)。
【請求項12】
放射エネルギーを利用する検出器(1)であって、
互いに対して固定され、共に通路を画定する2つの対向するサイドパネル(2)と、
前記サイドパネル(2)のうち少なくとも一方に収容されたマイクロ波アンテナなどの放射エネルギートランスデューサ(5)と、
請求項1~11のいずれか一項に記載の検出方法(S)を実行するように構成された中央装置(6)と、を備える検出器(1)。
【請求項13】
可視および/または可聴インジケータ(7)を更に備え、
前記中央装置(6)は、検査対象者を第1の位置から第2の位置に移動させる指示を前記可視および/または可聴インジケータ(7)に送るように構成される請求項12に記載の検出器(1)。
【請求項14】
前記可視インジケータ(7)は、
前記サイドパネル(2)の間に延在するプラットフォーム(4)に設置された1つ以上の照明(8、9)、
前記プラットフォーム(4)および/または少なくとも1つのサイドパネル(2)に1つ以上の画像を投影するように構成されたプロジェクタ、および
前記検査対象者の注意を引くための可聴メッセージを発するように構成されたラウドスピーカ(10)のうちの少なくとも1つの手段からなる請求項13に記載の検出器(1)。
【請求項15】
前記サイドパネル(2)は、それぞれ反対側のサイドパネルに対向する内面(3)を有し、前記内面は湾曲している請求項12~14のいずれか一項に記載の検出器(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護されたアクセスエリアにおいて不正な物体や物質を検出するために設計された検出器の分野に関する。
【0002】
本発明は、特に、空港で搭乗前の乗客や、スタジアムや公演会場などの公共施設に入場する個人を検査し、衣服の下に隠された禁止対象物を検出するために設計されたボディスキャナの分野に関する。このような装置により、特に組織的な触診を回避することができる。
【背景技術】
【0003】
禁止製品、特に武器や爆発物を機微な場所に持ち込もうとしたり、持ち出そうとしたりする行為を確実に管理することが必要とされている。この問題は、空港、店、学校、駅、公的機関、私的機関などの保護区域に禁止製品を持ち込もうとする行為や、企業内や保護区域での盗難など、定められた境界の外に製品を持ち出そうとする行為を含む、非常に広い範囲の状況を対象としている。
【0004】
金属物体の検出器には様々な種類が存在する。特に、金属物体検出のための連続波ウォークスルーポータルが長年にわたって提案されている。すなわち、通常70Hz~50kHzの周波数範囲の一定の振幅および周波数の波を使用するウォークスルーポータルである。これらは、少なくとも1つの送信コイルと少なくとも1つの受信コイルを備える。送信コイルは、交流電流を供給される。受信コイルは、金属物体の存在によって送信コイルから生じる磁場の乱れ、例えば磁場の振幅の減衰や、金属物体に発生する渦電流等による信号の位相の変化などを検出するように設計される。
【0005】
また、ボディスキャナを使用することも提案されている。最も古いボディスキャナはX線ボディスキャナである。新しいボディスキャナは、いわゆるミリ波(またはマイクロ波)技術を使用する。ボディスキャナの一例は、欧州特許出願公開第2202700号明細書に記載されている。
【0006】
ここ数年、保護区域に入る個人の衣服の下に隠された武器や爆発物などを検出するために、ボディスキャナが開発されている。これらのスキャナには、検査対象者の身体から反射または放射される変調された放射エネルギーを検出する技術が使用されている。このように使用される放射エネルギーとしては、X線、マイクロ波、ミリ波、赤外線、テラヘルツ波、超音波などがある。
【0007】
放射エネルギーの種類や撮像形態にかかわらず、これらのボディスキャナはすべて、人の衣服が透けて見える電子画像を作成する仕組みになっている。この画像をスクリーン上に表示し、それをオペレータが見ることで、その人が対象物を持っているか否かを判断する。この目的のため、対象物検出の訓練を受けたオペレータは、ボディスキャナによって識別された物体が、人体構造、またはライター、ハンカチ、部品などの許可物、または武器や爆発物などの対象物のいずれに該当するかを判断できなければならない。あるいは、検査対象者のプライバシーを尊重するため、システムが、画像を自動的に解析し、異常の有無を判断し、個人を表すアバター上に表示するコード命令を含むソフトウェアを有する場合もある。
【0008】
昨今、禁止物、特に武器を保護区域に不正に持ち込もうとする個人が、物品を様々な部分に分けて体中に散りばめるなど、その隠蔽に大きな想像力を発揮することが分かっている。そのため、放射エネルギーが届きにくいように対象物が隠されると、ボディスキャナを使った検査はますます複雑で時間がかかるようになる。特に、ボディスキャナによる確実な検出を保証するために、検査対象者の前面と後面の走査を密にするほど、検査対象者の側面部分の走査が減少することが考えられる。実際、これらの部分で反射されるエネルギーの強度は非常に低く、トランスデューサに対する位置により、波の大部分が送信および受信トランスデューサが配置される平面の外側で反射されてしまう。したがって、これらの反射波は電子画像の生成に関与することができない。このリスクは、検査対象者の側面部分(すなわち、前面と後面との間の距離)の表面が大きいほど、より一層大きくなる。
【0009】
このリスクを低減するために、ボディスキャナの感度を上げることが提案されている。しかしながら、感度を上げると誤報が多くなり、警備員による触診が増える。この触診は、個人の検査時間を大幅に遅延させ、検査効率を低下させるだけでなく、検査対象者にとっても煩わしいと感じられることが多い。
【0010】
また、隠れた部分の放射暴露を改善するため、これらの部分の走査に特化したトランスデューサを追加することも提案されている。しかしながら、これは、アンテナからの放射に直接さらされる検査対象者の身体の前面および背面を探査するのに必要なリソース数に比べて、システムのリソース数やコストが大幅に増加することを意味する。さらに、トランスデューサの数の増加は、検査対象者の側面部分から有意な応答を得るために、これらのトランスデューサから来る信号を処理する時間の増加を必然的に意味する。この処理は、逆に、より高い強度で送信および受信トランスデューサと同じ方向に応答する、トランスデューサに平行な身体の面(一般に前面および後面)の画像化と比べて、使用するリソースと走査時間の点で、非常に非効率的である。
【0011】
また、金属検出機とボディスキャナのように、複数種類の検出機を連続して配置することも提案されている。しかしながら、既存の金属検出機は、金属物体の有無の検出に関しては検査対象者に対する位置にかかわらず最も効率的な手段であっても、対象者上の非金属物体の位置特定を行うことはできない。非金属の対象物がボディスキャナの届きにくい箇所に隠されている場合、対象物が特定されないリスクが常に存在する。
【0012】
最後に、円筒形の壁に取り付けられた回転移動可能な検出手段を備えるウォークスルーポータルを製造することが提案されている。検出手段の回転により、検査対象者の完全な画像を得るために、対象者を周方向に走査することが可能になる。しかしながら、その円筒形のため設置面積が大きく、検査対象者の印象に残りやすいことや、走査して記録された情報を処理する時間が長くなるという問題がある。さらに、システムは、検査対象者の出入りのために2つの開口部を設けなければならないため、検査対象者の周方向の走査は完全ではない。市販のシステムでは、走査角度は最大で240度であり、入口に相当する60度以上、出口に相当する60度以上は検査されない。
【発明の概要】
【0013】
本発明の目的は、前述の欠点を克服する、目標物を検出するための、放射エネルギーを用いた検出方法および検出器を提案することである。
【0014】
特に、本発明の目的は、個人が持つ対象物を、これらの対象物が放射エネルギーによる探査がより困難な領域に位置する場合であっても、より確実に検出することができる放射エネルギーを利用した検出方法および関連する検出器を提供することであり、これにより、迅速かつ高効率で、誤警報の割合を低減しながら、その実施に必要なリソースを低減することが可能である。
【0015】
この目的のため、本発明の第1の態様によると、放射エネルギーを利用する検出器を用いて対象物を検出する方法であって、検出器は、2つの対向するサイドパネルを含み、サイドパネルは固定され、共に通路を画定し、
検査対象者を検出器のサイドパネル間の通路内の第1の位置に配置するステップS1と、
検査対象者が第1の位置にあるときの放射エネルギーを表す第1の信号を取得するステップS2と、
検査対象者を検出器のサイドパネル間の通路内の第1の位置とは異なる第2の位置に配置するステップS3と、
検査対象者が第2の位置にあるときの放射エネルギーを表す第2の信号を取得するステップS4と、
第1の信号および第2の信号に基づいて、検査対象者が対象物を持っているか否かを判断するために、電子画像を生成するステップS5と、を含む方法が提供される。
【0016】
第1の態様による検出方法の特定の好ましいが非限定的な特徴は、個別にまたは組み合わせで、以下の通りである。
【0017】
第1の位置と第2の位置の間で、検査対象者は、180°とは異なる角度で回転する。
【0018】
第1の位置と第2の位置の間で、検査対象者は、4分の1回転する。
【0019】
本方法は、ステップS3の前に、第1の位置から第2の位置に移動する指示を検査対象者に送るステップS6を更に含む。
【0020】
ステップS6において、指示は、可視および/または可聴である。
【0021】
ステップS1において、検査対象者がサイドパネルの1つに面するように配置され、ステップS3において、検査対象者がサイドパネルに対して垂直に配置される。
【0022】
ステップS1および/またはステップS3において、検査対象者は、腕を身体から離して置く。
【0023】
本方法は、検査対象者が持つ対象物を検出するように、中央装置によって第1の信号および第2の信号を処理するステップを更に含む。
【0024】
ステップS4の前に、第1の信号を中央装置に送信する。
【0025】
ステップS3およびS4の全部または一部の間に、第1の信号を処理する。
【0026】
中央装置は、検査対象者の単一の電子画像を生成するように、第1の信号と第2の信号とを合成する。
【0027】
本発明の第2の態様によると、放射エネルギーを利用する検出器であって、
互いに対して固定され、共に通路を画定する2つの対向するサイドパネルと、
サイドパネルのうち少なくとも一方に収容されたマイクロ波アンテナなどの放射エネルギートランスデューサと、
第1の態様の検出方法を実行するように構成された中央装置と、を備える検出器が提供される。
【0028】
第2の態様による検出器の特定の好ましいが非限定的な特徴は、個別にまたは組み合わせで、以下の通りである。
【0029】
本検出器は、可視および/または可聴インジケータを更に備え、中央装置は、検査対象者を第1の位置から第2の位置に移動させる指示を可視および/または可聴インジケータに送るように構成される。
【0030】
可視インジケータは、サイドパネルの間に延在するプラットフォームに設置された1つ以上の照明、プラットフォームおよび/または少なくとも1つのサイドパネルに1つ以上の画像を投影するように構成されたプロジェクタ、および検査対象者の注意を引くための可聴メッセージを発するように構成されたラウドスピーカのうちの少なくとも1つの手段からなる。
【0031】
サイドパネルは、それぞれ反対側のサイドパネルに対向する内面を有し、内面は湾曲している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の他の特徴、目的および利点は、純粋に例示的であり、非限定的な、添付の図面と併せて読まれる以下の説明から明らかになるであろう。
【0033】
図1】本発明の第1の実施形態による検出器の概略図である。この図では、検査対象者が第1の位置に配置され、放射線トランスデューサで探査される可能性の高い検査対象者の表面を概略的に示している。
図2】検査対象者が第2の位置に配置されたときの図1の検出器の概略図である。第2の位置において、放射線トランスデューサで探査される可能性の高い検査対象者の表面を概略的に示している。
図3】本発明の一実施形態による検出方法のステップを示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態による検出方法のステップを示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態による検出方法のステップを示すフローチャートであり、本発明による検出器の一例と検査対象者の位置が断面図で示されている。
【0034】
全ての図において、類似の要素には同一の参照番号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明による放射エネルギー対象物検出器1は、固定され、検査対象者が通過する通路を共に画定する2つの対向するサイドパネル2を備える。サイドパネル2は、中心面P(仮想対称面)に対して実質的に対称である。一実施形態では、サイドパネル2は、その上端が天井によって、および/または、その下端がプラットフォーム4によって、一体に接続されている。あるいは、サイドパネル2は、天井またはプラットフォーム4を介して接続されていない、別個の独立したものであってもよい。
【0036】
各サイドパネル2は、通路に面した内面3を有する。より具体的には、第1のサイドパネル2の内面3は、通路を横側で画定するように、第2のサイドパネル2の内面3と対向する。
【0037】
検出器1は、一連の放射エネルギー送信/受信トランスデューサ5と、反射され、トランスデューサ5によって測定された放射エネルギーを表す信号を受信し、そこから電子画像を得るように構成された中央装置6と、を更に備える。
【0038】
トランスデューサ5は、サイドパネル2の少なくとも1つ、好ましくは各サイドパネル2の内面3に配置される。各トランスデューサは、放射エネルギーを生成するように構成された送信器と、放射エネルギーを受信するように構成された受信器とを連続的に形成することができる。
【0039】
一実施形態では、各トランスデューサは、ミリ波(マイクロ波とも呼ばれる)、X線、テラヘルツ波などの放射エネルギーを生成するように構成されたアンテナ5からなる。
【0040】
以下において、トランスデューサ5がマイクロ波アンテナ5、すなわち、3mm~20mmの波長(すなわち、約15GHz~100GHzの周波数範囲)の波を生成するように構成されたアンテナ5からなる場合について本発明をより詳細に説明するが、これに限定されるものではない。マイクロ波は、金属および非金属物体、例えばセラミック物体の検知に適している。また、空気や、衣服に使用されるような他の材料は、この放射に対して透過性を有する。したがって、衣服の下に隠された物体の検出にマイクロ波が利用できる。対象物を検出するため、送信器であるマイクロ波アンテナ5は、マイクロ波のパルスまたは周波数掃引を発生させる。検査対象者の各部位から反射されたエネルギーは、受信器であるマイクロ波アンテナ5によって測定され、この反射エネルギーを表す信号が中央装置6に送信され、中央装置がこれを分析して、衣服が基本的に透過した検査対象者の電子画像を生成する。必要に応じて、検出器1は、反射エネルギーを表す信号を受信し、中央装置6に送信するように構成されたネットワークインタフェースを更に備えてもよい。
【0041】
中央装置6は、特に、反射され、トランスデューサ5によって測定された放射エネルギーを表す信号を処理し、電子画像を導出するためのコード命令を実行するように構成された、プロセッサ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラなどのコンピュータで構成されてもよい。
【0042】
任意で、検出器1は、存在検出手段、例えば検出器1の入口に配置された光バリアを更に備える。必要に応じて、検出器1は、検出器1の入口に配置され、存在検出手段と同期して、検査対象者が検出器1に入ることができるか否かを示すための信号機を更に備える。信号機は、例えば、緑色光/赤色光型である(図5参照)。
【0043】
対象物の検出を向上させるため、以下のステップに従って個人検査を実施する。
S1:検査対象者を検出器のサイドパネル間の通路内の第1の位置に配置する。
S2:検査対象者が第1の位置にあるときの放射エネルギーを表す第1の信号を取得する。
S3:検査対象者を検出器のサイドパネル間の通路内の第1の位置とは異なる第2の位置に配置する。
S4:検査対象者が第2の位置にあるときの放射エネルギーを表す第2の信号を取得する。
S5:第1の信号および第2の信号に基づいて、検査対象者が持っている対象物を検出するために、電子画像を生成する。
【0044】
より具体的には、ステップS1の間、検査対象者は、検出器1のサイドパネル2間の第1の位置に配置される。
【0045】
この第1の位置は従来のものでよく、例えば、検査対象者がサイドパネル2の1つに面して配置され、全体的に中央面P内にあり、脚がこの中央面Pに実質的に平行に離れている位置に対応する。腕は体に沿わせてもよく、中心面Pで広げてもよい。第1の位置は、図1に示される。
【0046】
したがって、この第1の位置において、アンテナ5は、検査対象者の前面(後面)を走査するマイクロ波を生成することができ、得られる第1の電子画像は、検査対象者の前面(後面)を表す。
【0047】
ステップS2において、第1のサイドパネル2および/または第2のサイドパネル2に収容されたマイクロ波アンテナ5の全部または一部は、通路の方向にマイクロ波のパルスまたはトレインを生成し、放射する。これらのマイクロ波は、対向する面、すなわち、検査対象者の身体、その衣服、および対象者が衣服の下に隠している可能性のある物体、ならびに対向するサイドパネル2の内面3と相互作用する。この相互作用により、マイクロ波のエネルギーが変調され、反射して、受信器として機能するアンテナ5に戻る。
【0048】
検査対象者の各部位から反射されたエネルギーは、受信器であるアンテナ5によって測定される。次に、各アンテナ5は、この反射エネルギーを表す第1の信号を中央装置6に送信し(ステップ2.1およびS4.1)、この信号を処理して検査対象者の電子画像を生成する(ステップS5)。必要に応じて、この送信はネットワークインタフェースを介して行うことができる。
【0049】
ステップS3の間、検査対象者は、第1の位置とは異なる第2の位置に配置される。一実施形態では、検査対象者は、身体の異なる面がサイドパネル2に面するように、第1の位置と第2の位置との間で自分自身で回転する。したがって、特に、2つのサイドパネル2がマイクロ波アンテナ5を収容する場合(一方のパネルのアンテナ5は対象者の前面の電子画像を生成可能であり、他方のパネルのアンテナ5は対象者の後面の電子画像を生成可能である)、第1の位置と第2の位置との間の回転角度は180°とは異なる。
【0050】
一実施形態では、検査対象者は、第1の位置と第2の位置との間の角度が約90°(20°以内で)(モジュロ180°)になるように、第1の位置から第2の位置へ切り替えるために1/4回転する。有利には、第2の位置が第1の位置に対して実質的に垂直であれば、取得ステップS2ではサイドパネル2の内面3に対して垂直であった検査対象者の側面は、取得ステップS4ではサイドパネル2に面することになる。このため、マイクロ波アンテナ5が検査対象者の側面を探査する能力が向上し、ステップS4においてこれらの側面で反射したエネルギーの強度が、ステップS2において同じ部位で反射したエネルギーと比べて、増加する。したがって、これらの部位の検出を向上させるために必要なリソース(マイクロ波アンテナ5)の数を減らすことができ、第1の信号および第2の信号の処理時間を短縮することができる。
【0051】
第2の位置における側面の探査を改善するため、対象者は、腕を、地面とほぼ平行に、肩の高さで、自分の前側または横側に上げてもよい。したがって、この第2の位置では、アンテナ5は、腕を上げた状態で、検査対象者の右側面(左側面)全体を走査することができ、得られる第2の電子画像は、検査対象者の右側面(左側面)を表す。
【0052】
ステップS4は、検査対象者の位置(第1の位置ではなく第2の位置に配置される)を除いて、基本的にステップS2と同じである。したがって、このステップの終わりに、各アンテナ5は、中央装置6による処理と電子画像の生成のため、第2の位置で検査対象者によって反射されたエネルギーを表す第2の信号を中央装置6に送信する。必要に応じて、この送信はネットワークインタフェースを介して行うことができる。
【0053】
ステップS4は、中央装置6によって自動的に開始することができる。例えば、検出器1は、検査対象者が第2の位置にあるか否かを判断するように構成され、地面またはサイドパネル2に配置された検出手段(光電バリア、存在検出手段等)を備えていてもよい。あるいは、ステップS4は、対象者が第2の位置に正しく配置されたときに、警備員によって、例えば取得ボタンを押すことで、手動で開始することもできる。
【0054】
一実施形態では、本方法は、中央装置6が、検査対象者を誘導して第1の位置および/または第2の位置に配置するように構成された1つ以上のインジケータ7に指示を送るステップS6を更に含む。これらのインジケータは、例えば、可視および/または可聴であってもよい。これにより、中央装置6は、配置ステップS1およびS3と、取得ステップS2およびS4とを連携させることができる。
【0055】
第1の実施形態において、インジケータ7は、検出器1のプラットフォーム4に配置され、中央装置6をオン/オフするための指示を受け取るように構成された1つ以上の照明からなる。
【0056】
例えば、図1および図2に示されるように、検出器1は、2組の靴マークを形成するように配置された一連の発光ダイオード(LED)7、すなわち、中央面P内の(例えばサイドパネル2の1つに面する)第1の位置における検査対象者の足の位置に対応する第1のセット8と、(例えばサイドパネル2および中央面Pに対して垂直な)第2の位置における検査対象者の足の位置に対応する第2のセット9と、を含んでいてもよい。検査対象者が検出器1に入った際、および/または、ステップS1の間、第1のセット8の靴マークを形成するLEDは、ステップS2において第1の電子画像を取得するために、検査対象者を誘導し、検出器1の第1の位置に正しく配置することを助けるために点灯される。ステップS2の後、これらのLEDは消灯する。第1のセット8の靴マークを形成するLEDが消灯してからステップS3が始まるまでの間に、ステップS3において検査対象者が第2の位置に正しく配置されることを保証するため、第2のセット9の靴マークを形成するLEDが点灯される。このように、検査対象者は、自分の足を第2のセット9の靴マークに置くために自ら回転することで、第2の位置に配置されるように促される。最後に、ステップS5の前、例えばステップS4の終わりに、第2のセット9の靴マークを形成するLEDが消灯される。
【0057】
もちろん、変形実施形態では、第1のセット8の靴マークと第2のセット9の靴マークは、検出方法を通して(例えば図5に示すように)同時に点灯したままであってもよく、検査対象者は、警備員による口頭指示やラウドスピーカによる放送によって、いずれかのセットに足を置くよう促されてもよいことが理解されるであろう。
【0058】
第2の実施形態では、検出器1のインジケータ7は、1つ以上の画像をサイドパネル2のうち1つの内面3および/またはプラットフォーム4上に投影するように構成されたプロジェクタからなる。内面3上に投影される画像は、特に、検出方法の実施中に、位置の順序だけでなく、その順序に関する情報を提供する機能を有していてもよい。プラットフォーム4上に投影される画像は、第1のセット8の靴マークと第2のセット9の靴マークに対応してもよく、プラットフォーム4上への連続した投影ステップは、第1の実施形態で説明した第1および第2のセット9xの靴マークを形成するLEDをオン/オフするステップに対応する。
【0059】
第3の実施形態では、検出器1のインジケータ7は、可聴であり、検出器1に直接固定される、または、離れた場所に配置されるラウドスピーカ10からなる。また、ラウドスピーカ10は、検査対象者の注意を喚起するための可聴メッセージを発するように構成される。例えば、検査対象者が検出器1に入った際、および/または、ステップS1の間、ラウドスピーカ10は、ステップS2において第1の電子画像を取得するために、検査対象者を誘導し、検出器1の第1の位置に正しく配置することを助ける音声メッセージを発する。ラウドスピーカ10は、検査対象者が第2の位置に正しく配置されることを保証するために、ステップS2の後、検査対象者が例えば1/4回転して第2の位置に配置されるように誘導する可聴メッセージを発する。任意で、ステップS4の後、ラウドスピーカは、対象者が検出器1から離れるように誘導する可聴メッセージを発してもよい。
【0060】
あるいは、警備員が検査対象者に口頭で指示を伝え、検査対象者が第1の位置から第2の位置へ移動するように直接依頼してもよい。
【0061】
インジケータ7の第1、第2および第3の実施形態を組み合わせることができる(ラウドスピーカ10または口頭指示と、照明8、9および/またはプロジェクタとの組み合わせ)ことが理解されるであろう。
【0062】
ステップS5において、中央装置6は、反射された放射エネルギーを表す第1の信号および第2の信号を処理し、1つ以上の電子画像を生成する。
【0063】
典型的には、中央装置6は、ステップS1およびS3において各サイドパネル2のアンテナ5によってそれぞれ生成された第1および第2の信号に基づいて(各サイドパネル2がマイクロ波アンテナ5を備える場合、交互に送信器および受信器の役割を果たす)、1つ以上の第1の電子画像および1つ以上の第2の電子画像を生成することができる。
【0064】
あるいは、以下に見るように、中央装置6は、第1および第2の信号に基づいて単一の電子画像を生成するように構成されてもよい。この単一の電子画像は、「楕円型」または「展開型」であり、(特に、各サイドパネル2がマイクロ波アンテナ5を備える場合)検査対象者の表面を360°にわたって再現することが可能である。
【0065】
検出方法の効率および速度を改善するために、一実施形態では、ステップS4の前のステップS2.1において、第1の信号が中央装置6に送信される。好ましくは、これらの第1の信号は、マイクロ波アンテナ5によって、取得されるとすぐに送信される。
【0066】
また、検出方法の総時間をさらに短縮するために、中央装置6は、第1の信号を受信するとすぐに処理する(ステップS2.2)。より具体的には、中央装置6は、第2の信号を受信する前に、第1の信号を処理する(図4参照)。このように、中央装置6は、検査対象者が第1の位置から第2の位置に移動する間、また、必要に応じて第2の信号を取得する間に、第1の信号の処理を開始する。このように、中央装置6が第2の信号を受信したとき、第1の信号の全部または一部は既に処理されており(第1の信号の処理時間およびステップS3、S4の実行時間による)、これにより、第2の信号の処理を直ちに開始することができる。したがって、第1および第2の信号の処理結果は、より高速になる。
【0067】
非限定的な例として、以下の通りである。
・第1の信号および第2の信号の取得(ステップS2)は、典型的には、0.05秒~0.5秒かかる。
・マイクロ波アンテナ5から中央装置6への第1の信号および第2の信号の送信(ステップS2.1およびS4.1)は、典型的には、0.05秒~0.5秒かかる。
・第1の信号および第2の信号の処理(ステップS2.2およびS4.2)は、2秒~4秒かかる。
【0068】
したがって、第2の信号の送信(ステップS4.1)の前および/または同時に第1の信号を送信および処理することで(ステップS2.1およびS2.2)、検出方法Sの総時間を2秒~6秒短縮することができる。そのため、検査対象者が検出器1から離れるまでに、警備員は、中央装置6による信号の処理結果を得ることができる。したがって、検査対象者を待たせる必要がない。さらに、検出器1は、検出器1によって検査された人が離れると同時に、新たな人の検査のために直ちに利用可能となる。
【0069】
したがって、本発明の検出方法Sは、検出器1の感度や検出方法Sの継続時間の増加を必要とせず、検査対象者の身体の全ての部位を確実に検査することができるため、より効果的である。
【0070】
任意で、検出器1は、中央装置6によって生成された電子画像を表示するように構成されたスクリーン11を更に備えていてもよい。スクリーン11は、検出器1、例えば検出器1の出口側のサイドパネル2の1つに取り付けられてもよく、あるいは、遠隔に配置され、中央装置と無線または有線インタフェースを介して通信してもよい。これに代わって、スクリーン11を各サイドパネル2に取り付けてもよい。
【0071】
図1および図2に示される実施形態では、検出効率、特に検出器1による検査対象者の探査能力を高めるために、パネルの内面3が湾曲し、曲率中心が内面3に対向して配置されている。より具体的には、本実施形態では、サイドパネル2の内面3の曲率は、中心面Pに垂直な面における内面3間の距離が、検出器1の入口から最大距離まで徐々に増加し、その後検出器1の出口に向かって徐々に減少するようになっている。あるいは、内面3は、断片的に平面であり、それらの部分が、入口から出口まで、拡張・縮小する通路を形成してもよい。この目的のため、内面3はそれぞれ、例えば、(検出器1内の通路の方向に関して、すなわち通路の入口から出口まで)通路が拡張するように中心面Pに対して傾斜した少なくとも1つの平坦部分と、中心面Pに対して実質的に平行な平坦部分と、通路が出口に向かって縮小するように中心面Pに対して傾斜した少なくとも1つの部分を連続的に有していてもよい。
【0072】
図から分かるように、側壁の内面3が(連続的または断片的に)湾曲していると、マイクロ波が到達しやすい検査対象者の表面が増え、検出の信頼性がさらに向上する。
【0073】
第1の実施形態では、中央装置6は、第1の信号および第2の信号に基づいて、単一の電子画像を生成する(ステップS5)。したがって、この単一の電子画像は、第1の信号および第2の信号に基づいて中央装置6が取得した全ての情報を再現する。これらの第1および第2の信号が、2つのサイドパネル2に存在するマイクロ波アンテナ5によって生成される場合、単一の電子画像は、検査対象者の全周(360°)にわたって検出器1によって識別される要素の表現であり、したがって検査対象者の前面、後面および側面から構成される。そのため、警備員は、1つの画像で、個人を検査するために必要な全ての情報を得ることができる。
【0074】
この単一の電子画像は、楕円型(3次元)でも展開型(2次元)でもよい。
【0075】
第2の実施形態では、中央装置6は、第1の信号に基づいて1つ以上の第1の電子画像(マイクロ波アンテナ5を備えるサイドパネル2毎に1つ)と、第2の信号に基づいて1つ以上の第2の電子画像(マイクロ波アンテナ5を備えるサイドパネル2毎に1つ)を生成する(ステップS5)。これらの電子画像は、画面上に順次表示してもよく、あるいは、単一の電子画像を得るために合成して、画面上に表示してもよい。
【0076】
中央装置6によって対象物が識別された場合、当該対象物を電子画像に表示し、検出器1によって(可聴および/または可視)警報を出してもよい。
【0077】
あるいは、検査対象者のプライバシーを尊重するため、システムが、画像を自動的に解析し、異常の有無を判断し、個人を表すアバター上に表示するコード命令を含むソフトウェアを有してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】