(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】金属酸化物層の生成によりガラス基板への金属接合を増強するガラス部品の製造方法、および、金属酸化物層を含むガラスインターポーザなどのガラス部品
(51)【国際特許分類】
H01L 23/15 20060101AFI20230518BHJP
C03C 17/36 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
H01L23/14 C
C03C17/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562318
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021024608
(87)【国際公開番号】W WO2021211285
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】アディブ,カーヴェ
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,フィリップ サイモン
(72)【発明者】
【氏名】カヌンゴ,マンダキーニ
(72)【発明者】
【氏名】マズンダー,プランティック
(72)【発明者】
【氏名】ヴァディ,ラジェッシュ
【テーマコード(参考)】
4G059
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AC11
4G059AC16
4G059DA01
4G059DA02
4G059DA03
4G059DA04
4G059DA05
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4G059DA08
4G059DA09
4G059DB04
4G059EA01
4G059EA07
4G059EB05
4G059GA01
4G059GA02
4G059GA04
4G059GA14
(57)【要約】
ガラス部品を製造する方法は、(A)ガラス基板の上に触媒金属の第1層を形成する工程と、(B)ガラス基板を加熱する工程と、(C)第1金属と第2金属の合金の第2層を第1層の上に形成する工程と、(D)ガラス基板を加熱することによりガラス部品を形成する工程とを含んでおり、該ガラス部品は(i)ガラス基板、(ii)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(iii)酸化物に接合された金属領域であって、触媒と、第1金属と、第2金属とを含んでいる金属領域から構成されている。各実施形態において、該方法は、(E)金属領域上に一次金属の第3層を形成する工程と、(F)ガラス部品を加熱することにより、(i)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(ii)酸化物に接合して、触媒と、第1金属と、第2金属と、一次金属とを含んでいる新たな金属領域を備えているガラス部品を形成する工程とを更に含んでいる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス部品を製造する方法において、
ガラス基板の表面上に触媒金属の第1層を形成する工程と、
触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程と、
第1金属と第2金属の合金の第2層を第1層の上に形成する工程と、
触媒金属の第1層の上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒すことによってガラス部品を形成する工程であって、該ガラス部品は(i)ガラス基板、(ii)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(iii)第1金属の酸化物に接合された金属領域であって、元素形態の触媒金属と、元素形態の第1金属と、元素形態の第2金属とを含んでいる金属領域から構成されているようにする工程と、
ガラス部品の金属領域の上に一次金属の第3層を形成する工程と、
一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒すことにより、(i)ガラス基板、(ii)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(iii)触媒金属と、元素形態の第1金属と、元素形態の第2金属と、元素形態の一次金属とを含んでいる新たな金属領域から構成されているガラス部品を形成する工程とを含んでいる。
【請求項2】
ガラス基板はその表裏両主要面としての第1面および第2面と、第1面および第2面で開口してガラス基板を貫いて延びている貫通ビア孔を画定している側壁面とが設けられており、
第1金属の酸化物は貫通ビア孔の側壁面に共有結合しており、
新たな金属領域は貫通ビア孔を通る導電経路を形成している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
触媒金属は銀、金、コバルト、コバルト‐リン合金、ニッケルまたはニッケル‐リン合金、パラジウム、および、プラチナのうち1種類以上を含んでおり、
第2層の第1金属はタンタル、ニオブ、アルミニウム、マンガン、レニウム、ハフニウム、クロム、ジルコニウム、チタン、インジウム、タングステン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、および、亜鉛のうち1種類以上を含んでおり、
第2層の第2金属は銀、パラジウム、および、銅のうち1種類以上を含んでおり、
一次金属は銀、金、カドミウム、クロム、銅、ニッケル、鉛、プラチナ、および、スズのうち1種類以上を含んでいる、請求項1および請求項2のいずれか一方に記載の方法。
【請求項4】
合金の第1金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モルあたり600kJより大きく、
合金の第2金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モルあたり600kJより小さい、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
合金の第2層を形成する工程は溶液を使用して無電解めっきにより第1層上に第2層を生成する工程を含んでおり、該溶液には第1金属の塩が溶解しているとともに第2金属の塩が溶解している、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
ガラス部品の金属領域上に一次金属の第3層を形成する工程は、電気めっきによりガラス部品の金属領域上に一次金属の第3層を生成する工程を含んでいる、請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程は、触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を325℃ないし375℃の温度に少なくとも2分間晒すことを含んでおり、
触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を300℃ないし425℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでおり、
一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で300℃ないし400℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでいる、請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
ガラスインターポーザにおいて、
表裏両主要面としての第1面および第2面が設けられて第1面から第2面までの厚みを貫いて延びている貫通ビア孔が設けられているガラス基板であって、貫通ビア孔は側壁面が設けられて中心軸線がある、ガラス基板と、
貫通ビア孔内部の中心軸線の周囲に配備された金属領域と、
貫通ビア孔の側壁面に共有結合した第1金属の酸化物と、
を備えており、
第1金属の酸化物は側壁面と金属領域の間に配備されており、金属領域は元素形態の第1金属と元素形態の第2金属とを含んでいる、ガラスインターポーザ。
【請求項9】
第1金属はタンタル、ニオブ、アルミニウム、マンガン、レニウム、ハフニウム、クロム、ジルコニウム、チタン、インジウム、タングステン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、および、亜鉛のうち1種類以上であり、
第2金属は銀、パラジウム、および、銅のうち1種類以上である、請求項8に記載のガラスインターポーザ。
【請求項10】
第1金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モル当たり325kJより大きく、
第2金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モル当たり175kJより小さい、請求項8に記載のガラスインターポーザ。
【発明の詳細な説明】
【関連出願との相互参照】
【0001】
本願は合衆国法典第35編第119条のe(米国特許法)に基づき、2020年4月14日出願の米国特許仮出願第63/009,708号の優先権を主張するものであり、同仮出願の内容は参照することでその全体が本願明細書の一部を成すものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、金属酸化物層の生成によりガラス基板への金属接合を増強するガラス部品の製造方法、および、金属酸化物層を含むガラスインターポーザなどのガラス部品に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体パッケージ化技術は多年に亘り著しい様相で進化してきた。初期より、複雑さがいや増す半導体回路をパッケージ化する(つまり、所与のパッケージにおいて機能性と性能をより高める)取組み方は、パッケージ内で半導体チップの縦横平面寸法を大きくすることであった。実際問題として、平面で横方向に際限なく拡大することは不可能であり、というのも、最終的に電力経路設定や信号経路設定の複雑さ、電力損失の諸問題、性能の諸問題、製造歩留まりの諸問題などの点で設計が不利益を被ることになるせいである。
【0004】
上記の結果、半導体チップを高さ方向に拡大する努力がなされてきた。このような努力にはいわゆる平面・立体折衷(2.5次元)集積と立体(3次元)集積が含まれており、このような集積により、単一パッケージ内で2個以上の半導体チップを相互接続する目的でインターポーザを採用している。本明細書で使用される場合、「インターポーザ」という語は、2個以上の電子素子間の電気接続を拡張させまたは完成させる任意の構造を広義で指している。インターポーザの主な機能は、2個以上の半導体チップが密な端子間ピッチを採用して各半導体チップ自体を貫くビア孔の必要を回避できるようなやり方で相互接続をもたらすことである。この技術は、各半導体チップを通常の構成の反転型にして、チップ基板を上に向け、チップ面を下に向けることに関与している。各チップにはマイクロバンプ端子が(密なピッチで)設けられており、インターポーザの上面で対応する各端子に接続される。インターポーザの反対側の底面は好適な各端子によって、整理された倒壊構造チップ接続のシーフォー(Cоntrоlled Cоllapse Chip CоnnectiоnすなわちC4)接合部によって、(通例は有機の)パッケージ基板に接続される。インターポーザには多数の基板貫通ビア孔(「貫通ビア孔」)が設けられており、インターポーザの上面側の各半導体チップの端子からインターポーザの底面側のパッケージ基板の端子へ電気接続を行うことができるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、インターポーザのベース基板は通例はシリコンであった。金属化貫通ビア孔は、電気信号がインターポーザの表裏両面間を通過するようにインターポーザを貫通する通路を供与している。シリコン製インターポーザは半導体チップの高さ方向集積を達成するのに有望で有用な技術であるが、シリコン製インターポーザには問題があり、特に積載体の高さ全域の熱膨張係数(CTE)の不一致に関する諸問題、例えば、シリコン製インターポーザと有機パッケージ基板の間の熱膨張係数の突合せ問題がある。望ましくない熱膨張率の不一致の結果として、各半導体チップとシリコン製インターポーザとの間の相互接続の不具合、シリコン製インターポーザとパッケージ基板との間の相互接続の不具合、または、その両方が生じてしまう恐れがある。加えて、シリコン製インターポーザは比較的高価であるうえに、シリコンの半導体特性が原因で誘電損失も大きい。
【0006】
有機インターポーザ、例えば、難燃剤グレード4(FR4)も導入されてきた。しかし、有機インターポーザは、寸法安定性の点でいろいろ問題がある。
【0007】
インターポーザのベース基板としてのガラスは、シリコン製の有機インターポーザが示す諸問題の多くを解決してきた。ガラスが電気信号伝達に大いに有利な基板材料である理由は、寸法安定性に富み、熱膨張係数(CTE)が調節自在であり、高周波でも電気損失が低く、熱安定性に優れ、尚且つ、層状にパネル寸法を大きくとって成形できるからである。
【0008】
しかしながら、導電経路を設けるためにガラス基板の貫通ビア孔を金属化することはこれまでに困難であることが証明されているという点で問題がある。導電性金属の中には (特に銅は)、表裏両主要表面やビア孔の側壁面などのようなガラスにうまく接着しないものもある。理屈の縛り無しに考えてみると、導電性金属のガラスへの接合不良は、一方で金属を保持するという接合と他方でガラスを保持するという接合の、接合種類の相違の結果であると推察される。簡単に言うと、ガラスは共有結合した酸化物分子 (二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素など) の網状組織である。金属は、陽イオンの静止した原子核の格子の全域を自由に移動する電子の「海」で構成されている。ガラスの接合メカニズムは金属の接合メカニズムとは根本的に異なっているため、金属とガラスの間の接着には限度がある。この問題は、金属の接合対象となるべきガラス面を粗くすることで軽減でき、それにより金属とガラスの間の機械的連結をもたらしている。ただし、ガラスの表面を粗くするとまた別な問題が加わる恐れがあり、その取組み方を理想的とは言えなくしている。したがって、インターポーザとして使用することを意図したガラス基板の貫通ビア孔を金属化したうえで金属を一般的なガラス基板に接着するという、問題解決への新規な取組み方が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本件開示は上記問題を両方とも、表面に酸化物を容易に形成する(酸化物を多く含有するガラス基板と共有結合する)第1金属の塩とそのような酸化物をそれほど容易には形成しない(銅などのような)第2金属の塩とを含んでいる溶液中でガラス基板の表面に無電解めっきを施すことによって解決している。熱処理後、第1金属の酸化物がガラス基板の表面に共有結合しているとともに金属領域(第1金属および金属形態の第2金属を含んでいる)が第1金属の酸化物に接合しているガラス部品を形成する。次いで、電気めっきにより該ガラス部品の金属領域を覆うように第2金属(またはそれ以外の何らかの金属)のより厚い層を生成する。もう一度熱処理した後、第1金属の酸化物がガラス基板の表面に依然として共有結合しているとともに第1金属および金属形態の第2金属を含んでいる金属領域が第1金属の酸化物に接合しているガラス部品を形成する。表面で酸化物を容易に形成する第1金属は、酸化物を多く含有するガラス基板と該ガラス基板に接合するよう所望された第2金属との間の接合ブリッジとして作用する。一例として、第1金属はマンガンであり、第2金属は銅である。まず最初に、溶液ベースのプロセス(回転塗布など)によりガラス基板の表面に金属(銀など)の ナノ層を付与することで触媒として作用して第1金属および第2金属の無電解析出を行うことができる。
【0010】
本件開示の第1の実施形態によれば、ガラス部品を製造する方法は、(A)ガラス基板の表面上に触媒金属の第1層を形成する工程と、(B)触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程と、(C)第1金属と第2金属の合金の第2層を第1層の上に形成する工程と、(D)触媒金属の第1層の上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒すことによりガラス部品を形成する工程とを含んでおり、該ガラス部品は(i)ガラス基板、(ii)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(iii)第1金属の酸化物に接合した金属領域であって、元素形態の触媒金属と、元素形態の第1金属と、元素形態の第2金属とを含んでいる金属領域から構成されている。
【0011】
本件開示の第2の実施形態によれば、第1の実施形態の方法はガラス部品の金属領域上に一次金属の第3層を形成する工程を更に含んでいる。
【0012】
本件開示の第3の実施形態によれば、第1の実施形態の方法は一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境にて250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒すことにより、(i)ガラス基板、(ii)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(iii)触媒金属と、元素形態の第1金属と、元素形態の第2金属と、元素形態の一次金属とを含んでいる新たな金属領域から構成されているガラス部品を形成する工程を更に含んでいる。
【0013】
本件開示の第4の実施形態によれば、第1の実施形態から第3の実施形態のいずれか1つにおいて、触媒金属は銀、金、コバルト、コバルト‐リン合金、ニッケルまたはニッケル‐リン合金、パラジウム、および、プラチナのうち1種類以上を含んでいる。
【0014】
本件開示の第5の実施形態によれば、第1の実施形態から第4の実施形態のいずれか1つにおいて、表面上に触媒金属の第1層を形成する工程は、触媒金属のナノ粒子が液相担体中に分散している懸濁液と表面を接触させる工程と、液相担体を気化する工程とを含んでいる。
【0015】
本件開示の第6の実施形態によれば、第5の実施形態において、懸濁液と表面を接触させる工程は懸濁液を表面上に回転塗布する工程を含んでいる。
【0016】
本件開示の第7の実施形態によれば、第1の実施形態から第6の実施形態のいずれか1つにおいて、ガラス基板はその表裏両主要面としての第1面および第2面と、第1面および第2面で開口してガラス基板を貫いて延びている貫通ビア孔を画定している側壁面とが設けられており、第1金属の酸化物は貫通ビア孔の側壁面に共有結合している。
【0017】
本件開示の第8の実施形態によると、第3の実施形態において、ガラス基板はその表裏両主要面としての第1面および第2面と、第1面および第2面で開口してガラス基板を貫いて延びている貫通ビア孔を画定している側壁面とが設けられており、第1金属の酸化物は貫通ビア孔の側壁面に共有結合しており、新たな金属領域は貫通ビア孔を通る導電経路を形成している。
【0018】
本件開示の第9の実施形態によれば、第1の実施形態から第6の実施形態のいずれか1つにおいて、ガラス基板はその表裏両主要面としての第1面および第2面と、第1面と第2面のうち一方で開口してガラス基板を不十分に貫いて延びているめくらビア孔を画定している側壁面とが設けられており、第1金属の酸化物はめくらビア孔の側壁面に共有結合している。
【0019】
本件開示の第10の実施形態によれば、第1の実施形態から第9の実施形態のいずれか1つにおいて、第2層の第1金属はタンタル、ニオブ、アルミニウム、マンガン、レニウム、ハフニウム、クロム、ジルコニウム、チタン、インジウム、タングステン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、および、亜鉛のうち1種類以上を含んでおり、第2層の第2金属は銀、パラジウム、および、銅のうち1種類以上を含んでいる。
【0020】
本件開示の第11の実施形態によれば、第1の実施形態から第10の実施形態のいずれか1つにおいて、第1金属の酸化物としては第2金属は除外される。
【0021】
本件開示の第12の実施形態によれば、第1の実施形態から第10の実施形態のいずれか1つにおいて、第2層の第2金属は銅である。
【0022】
本件開示の第13の実施形態によれば、第1の実施形態から第12の実施形態のいずれか1つにおいて、第2層の第1金属はマンガンまたは亜鉛である。
【0023】
本件開示の第14の実施形態によれば、第1の実施形態から第13の実施形態のいずれか1つにおいて、合金の第1金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モルあたり600kJより大きく、合金の第2金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モルあたり600kJより小さい。
【0024】
本件開示の第15の実施形態によれば、第1の実施形態から第14の実施形態のいずれか1つにおいて、合金の第2層を形成する工程は溶液を使用して無電解めっきにより第1層上に第2層を生成する工程を含んでおり、該溶液には第1金属の塩が溶解しているとともに第2金属の塩が溶解している。
【0025】
本件開示の第16の実施形態によれば、第15の実施形態において、溶液はホルムアルデヒドを更に含んでおり、pHが11よりも高い。
【0026】
本件開示の第17の実施形態によれば、第15の実施形態において、溶液はジメチルアミンボランを更に含んでおり、pHが6ないし8である。
【0027】
本件開示の第18の実施形態によれば、第1の実施形態から第17の実施形態のいずれか1つにおいて、触媒金属の第1層の上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に晒す工程は、温度を1分あたり1℃の速度またはそれより遅い速度で上昇させることを含んでいる。
【0028】
本件開示の第19の実施形態によれば、第1の実施形態から第18の実施形態のいずれか1つにおいて、触媒金属の第1層の上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に晒す工程はガラス基板が空気の存在しているところにある状態で実施され、前記方法は、ガラス部品を375℃ないし425℃の温度に晒した後で、ガラス部品がフォーミングガスの存在しているところにある状態で225℃ないし275℃の温度に少なくとも30分間ガラス部品を晒す工程を更に含んでいる。
【0029】
本件開示の第20の実施形態によれば、第2の実施形態において、一次金属は銀、金、カドミウム、クロム、銅、ニッケル、鉛、プラチナ、および、スズのうち1種類以上を含んでいる。
【0030】
本件開示の第21の実施形態によれば、第2の実施形態において、一次金属は銅を含んでいる。
【0031】
本件開示の第22の実施形態によれば、第2の実施形態、第20の実施形態、および、第21の実施形態のいずれか1つにおいて、第3層は厚さが2μmないし5μmである。
【0032】
本件開示の第23の実施形態によれば、第2の実施形態および第20の実施形態から第22の実施形態のいずれか1つにおいて、ガラス部品の金属領域上に一次金属の第3層を形成する工程は、電気めっきによりガラス部品の金属領域上に一次金属の第3層を生成する工程を含んでいる。
【0033】
本件開示の第24の実施形態によれば、第23の実施形態において、電気めっきする工程は硫酸銅を含んでいるめっき液を利用する。
【0034】
本件開示の第25の実施形態によれば、第1の実施形態から第24の実施形態のいずれか1つにおいて、触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程は、触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を325℃ないし375℃の温度に少なくとも2分間晒すことを含んでおり、触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を300℃ないし425℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでいる。
【0035】
本件開示の第26の実施形態によれば、第3の実施形態において、触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程は、触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を325℃ないし375℃の温度に少なくとも2分間晒すことを含んでおり、触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を300℃ないし425℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでおり、一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で300℃ないし400℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでいる。
【0036】
本件開示の第27の実施形態によれば、第3の実施形態または第26の実施形態において、不活性環境は減圧環境である。
【0037】
本件開示の第28の実施形態によれば、ガラスインターポーザは、表裏両主要面としての第1面および第2面が設けられているとともに第1面から第2面までの厚みを貫いて延びている貫通ビア孔が設けられているガラス基板であって、貫通ビア孔は側壁面が設けられて中心軸線があるようなガラス基板と、貫通ビア孔内部の中心軸線の周囲に配備された金属領域と、貫通ビア孔の側壁面に共有結合した第1金属の酸化物とを備えており、第1金属の酸化物は側壁面と金属領域の間に配備されており、金属領域は元素形態の第1金属と元素形態の第2金属とを含んでいる。
【0038】
本件開示の第29の実施形態によれば、第28の態様において、第1金属はタンタル、ニオブ、アルミニウム、マンガン、レニウム、ハフニウム、クロム、ジルコニウム、チタン、インジウム、タングステン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、および、亜鉛のうち1種類以上であり、第2金属は銀、パラジウム、および、銅のうち1種類以上である。
【0039】
本件開示の第30の実施形態によれば、第28の実施形態において、第1金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モル当たり325kJより大きく、第2金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モル当たり175kJより小さい。
【0040】
本件開示の第31の実施形態によれば、第28の実施形態において、第1金属はマンガンであり、第2金属は銅である。
【0041】
本件開示の第32の実施形態によれば、第28の実施形態ないし第31の実施形態のいずれか1つにおいて、金属領域は銀を更に含んでいる。
【0042】
上記以外の各種の特徴および利点は後段以降の詳細な説明に明示されており、その一部は詳細な説明から当業者には容易に自明となり、また、後段以降の詳細な説明および添付の特許請求の範囲の各請求項に記載されているような各実施形態を実施することにより当業者には容易に認識できる。
【0043】
前段までの発明の概要と後段以降の詳細な説明の両方が具体例に過ぎず、特許請求の範囲の各請求項の本質および特性を理解するための概説または枠組みを提示しようとの意図があると解釈するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】インターポーザとして使用するためのガラス基板において、第1面から第2面までガラス基板の厚みを貫いてビア孔が延びているのを例示した斜視図。
【
図2】
図1のガラス基板であって、ビア孔は各々が第1面および第2面に直交する中心軸線を有しているうえに孔を画定している側壁面が設けられているのを例示した、
図1の線II-IIに沿って破断した立面断面図。
【
図3】インターポーザなどのガラス部品の製造方法であって、複数の金属層を形成してそれらの金属層を熱処理する多様な工程を例示したフロー図。
【
図4】
図3の方法の一工程の後の
図1のガラス基板であって、触媒金属の第1層をビア孔の側壁面上に形成しているのを例示した、
図1の線IV-IVに沿って破断した立面断面図。
【
図5】
図4と同様であるが、
図3の方法の残余の各工程の後の、第1金属と第2金属の合金の第2層を触媒金属の第1層上に形成しているのを例示した立面断面図。
【
図6】
図5と同様であるが、
図3の方法のもう1つ別な工程の後の、ガラス基板の側壁面に接合された第2層から第1金属の酸化物を形成し、更に、第1金属、第2金属、および、触媒金属を全て元素形態で含んでいる金属領域が第1金属の酸化物を覆って配備されているのを例示した立面断面図。
【
図7】
図6と同様であるが、
図3の方法の更にもう1つの工程の後の、金属領域を覆って一次金属の第3層を堆積することでビア孔の残隙を埋め、従って、ビア孔を十分に金属化しているのを例示した立面断面図。
【
図8】
図7と同様であるが、
図3の方法の更にもう1つ別の工程の後の、第1金属、第2金属、触媒金属、および、一次金属を全て元素形態で含んでいる新たな金属領域を形成するにあたり、第1金属の酸化物が側壁面と新たな金属領域との間に配備されるとともにその両者に接合しているのを例示した立面断面図。
【
図9】
図3の方法に従って作製された試料ガラス部品に対するテープ引張り試験の結果であって、テープがガラス基板の第1面から新たな金属領域をあまり引き剥がさなかったことを例示しており、従って、付着性が高レベルであったのを示している写真。
【
図10】
図3の方法に従って作製されたもう一つ別の試料ガラス部品に対するテープ引張り試験の結果であって、テープがガラス基板の第1面から新たな金属領域をあまり引き剥がさなかったことを例示しており、従って、付着性が高レベルであったのを示している写真。
【
図11】
図3の方法に従って作製された別の試料ガラス部品に対するテープ引張り試験の結果であって、テープがガラス基板の第1面から新たな金属領域をあまり引き剥がさなかったことを例示しており、従って、付着性が高レベルであったのを示している写真。
【
図12】
図3の方法に従って作製されたのではない試料ガラス部品に対するテープ引張り試験の結果であって、テープがガラス基板の第1面から多くの堆積金属を引き剥がしたことを例示しており、従って、付着性が低レベルであったのを示している写真。
【
図13】
図3の方法に従って作製されたのではないもう1つ別の試料ガラス部品に対するテープ引張り試験の結果であって、テープがガラス基板の第1面から多くの堆積金属を引き剥がしたことを例示しており、従って、付着性が低レベルであったのを示している写真。
【発明を実施するための形態】
【0045】
ここで本発明の好ましい実施形態を詳細に参照してゆくが、その各種実施例を添付の図面に示している。可能な場合は常に、図面全体で同一または類似した構成部材を指すのに同一参照番号が使われている。
【0046】
ガラス基板
ここで
図1および
図2を参照すると、ガラス基板100がインターポーザの形態で例示されている。ガラス基板100は第1面102および第2面104が設けられている。各実施形態では、第1面102および第2面104はガラス基板100の表裏両主要面であり、少なくともほぼ平行であり、概ね互いに逆方向を向いている。
【0047】
各実施形態において、ガラス基板100は、アルカリ土類アルミノホウケイ酸ガラス基板、アルカリアルミノケイ酸ガラス基板、アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板、または、溶融シリカ(高純度溶融シリカを含む)である。他の実施形態では、ガラス基板100は、無アルカリアルミノホウケイ酸ガラス基板または無アルカリアルミノケイ酸ガラス基板などのように、アルカリ成分を含まない。「無アルカリ」とは、ガラス基板100中には合目的量のアルカリ金属が皆無であり、ガラス基板100中のアルカリ金属は何であれ不純物として存在しているといったようなことを意味している。各実施形態において、ガラス基板100の組成は、次のものを(酸化物を基準にしたモル百分率で)含んでおり、すなわち、 60モル%ないし78モル%のSiO2、6モル%ないし15モル%のAl2O3を含んでいる。
【0048】
例えば、実施形態によっては、ガラス基板100は、(酸化物を基準にしたモル百分率で)次のものを含んでいる場合もあり、すなわち、64.0モル%ないし71.0モル%のSiO2、9.0モル%ないし12.0モル%のAl2O3、7.0モル%ないし12.0モル%のB2O3、1.0モル%ないし3.0モル%のMgO、6.0モル%ないし11.5モル%のCaO、0モル%ないし2.0モル%のSrO、0モル%ないし0.1モル%のBaO、および、少なくとも0.01モル%のSnO2を含んでいるが、この場合、1.00≦Σ[RO]/[Al2O3]≦1.25であり、ここでは、[Al2O3] とはAl2O3のモル百分率のことであり、Σ[RO]はMgO、CaO、SrO、および、BaO の各モル百分率の総和に等しい。そのような各実施形態においては、ガラス基板100は室温での熱膨張係数(CTE)が20×10-7/℃ないし50×10-7/℃であり、例えば、28×10-7/℃ないし34×10-7/℃であり、また例えば、31.7×10-7/℃である。「CTE」や「熱膨張係数」などといった語は、温度変化に伴って物体の寸法がどのように変化するかを指している。熱膨張係数(CTE)は一定圧力での1℃の温度変化あたりの僅かな寸法変化の測定単位であるが、この寸法とは、例えば、体積、面積、または、直線の寸法を指すこともある。
【0049】
実施形態によっては、ガラス基板100は、(酸化物を基準としたモル百分率で)次のものを含んでいるものもある。すなわち、61モル%ないし75モル%のSiO2、7モル%ないし15モル%のAl2O3、0モル%ないし12モル%のB2O3、9モル%ないし21モル%のNa2O、0モル%ないし4モル%のK2O、0モル%ないし7モル%のMgO、および、0モル%ないし3モル%のCaOを含んでいる。
【0050】
実施形態によっては、ガラス基板100は(酸化物を基準としたモル百分率で)次のものを含んでいる場合もあり、すなわち、60モル%ないし70モル%のSiO2、6モル%ないし14モル%のAl2O3、0モル%ないし15モル%のB2O3、0モル%ないし15モル%のLi2O、0モル%ないし20モル%のNa2O、0モル%ないし10モル%のK2O、0モル%ないし8モル%のMgO、0モル%ないし10モル%のCaO、0モル%ないし5モル%のZrO2、0モル%ないし1モル%のSnO2、0モル%ないし1モル%のCeO2、50ppm(50mg/L)未満のAs2O3、および、50ppm(50mg/L)未満のSb2O3を含んでいるが、この場合、12モル%≦Li2O+Na2O+K2O≦20モル%であり、また、0モル%≦MgO+CaO≦10モル%である。
【0051】
実施形態によっては、ガラス基板100は(酸化物を基準としたモル百分率で)次のものを含んでいる場合もある、すなわち、64モル%ないし68モル%のSiO2、12モル%ないし16モル%のNa2O、8モル%ないし12モル%のAl2O3、0モル%ないし3モル%のB2O3、2モル%ないし5モル%のK2O、4モル%ないし6モル%のMgO、および、0モル%ないし5モル%のCaOを含んでいるが、この場合、66モル%≦SiO2+B2O3+CaO≦69モル%であり、Na2O+K2O+B2O3+MgO+CaO+SrO>10モル%であり、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%であり、(Na2O+B2O3)-Al2O3≦2モル%であり、2モル%≦Na2O-Al2O3≦6モル%であり、また、4モル%≦(Na2O+K2O)-Al2O3≦10モル%である。
【0052】
実施形態によっては、ガラス基板100は(酸化物を基準としたモル百分率で)次のものを含んでいる場合もあり、すなわち、66モル%ないし78モル%のSiO2、4モル%ないし11モル%のAl2O3、4モル%ないし11モル%のB2O3、0モル%ないし2モル%のLi2O、4モル%ないし12モル%のNa2O、0モル%ないし2モル%のK2O、0モル%ないし2モル%のZnO、0モル%ないし5モル%のMgO、0モル%ないし2モル%のCaO、0モル%ないし5モル%のSrO、0モル%ないし2モル%のBaO、および、0モル%ないし2モル%のSnO2を含んでいる。
【0053】
実施形態によっては、ガラス基板100は、(酸化物を基準としたモル百分率で)69.49モル%のSiO2、8.45モル%のAl2O3、14.01モル%のNa2O、1.16モル%のK2O、0.185モル%のSnO2、0.507モル%のCaO、6.2モル%のMgO、0.01モル%のZrO2、および、0.008モル%のFe2O3を含んでいるものもある。
【0054】
各実施形態において、ガラス基板100は、ガラスシートを作製するのに溶融プロセスを利用するガラス製造システムによって作られるが、これらガラスシートを切断して所望の形状のガラス基板100にする。溶融プロセスでガラス基板100を既に均一な厚みを持った状態で形成し、例えば、総厚さ変動(TTV)は1.0μm未満である。従って、ガラス基板100をインターポーザとして使用する前に研磨工程やそれ以外の仕上げ工程は必要が無いことがある。この溶融プロセスによって得られたガラスシートのせいで結果的にガラス基板100の厚さ106が所望したよりも厚くなってしまいそうな場合は、ガラス基板100の厚さ106は、エッチングや研磨などの何らかの周知の手段により薄くすることができる。更にそれ以外の各実施形態においては、ガラス基板100は非溶融プロセスで作製されてから、所望の厚さ106を有するように研磨またはエッチングを施される。ガラス基板100はその作製後に、そこに存在する残留応力を減じるように焼きなまし処理に付してもよい。
【0055】
ガラス基板100の厚さ106は、図示の実施形態では、第1面102および第2面104を両起点にした広がりである。各実施形態において、厚さ106は25μmないし約1mmの範囲内であるが、厚さ106についてはこれより小さい値やこれより大きい値も想定される。例えば、本明細書に記載の各実施形態について、ガラス基板100の厚さ106は、約50μm、約100μm、約200μm、約300μm、約400μm、約500μm、約600μm、約700μm、約800μm、約900μm、約1mm、または、前記各値を含むいずれかの範囲であって、例えば、50μmないし300μmなどの範囲である。複数の実施形態において、厚さ106は50μmないし100μmの範囲である。ガラス基板100はどのような所望の形状を呈していてもよい。複数の実施形態において、ガラス基板100は円形を呈している。これらの実施形態では、ガラス基板100は直径が200mmないし300mmの範囲であってもよい。これら以外の実施形態では、ガラス基板100は正方形または矩形の形状を呈している。
【0056】
ガラス基板100には更に1つ以上のビア孔108が設けられている。各実施形態において、ガラス基板100は複数のビア孔108を有している。各実施形態において、1つ以上のビア孔108の一部または全部がガラス基板100の厚さ106を貫いて第1面102から第2面104まで延びている。このようなビア孔108を本明細書では「貫通ビア孔」と称することもある。貫通ビア孔108は第1面102および第2面104で開口している。それ以外の実施形態では、1つ以上のビア孔108の一部または全部が、第1面102まで開口してはいても厚さ106を不十分に貫通しているのみであり、厚さ106の全長に亘って第2面104に達するまで延びてはいない。このようなビア孔108を本明細書では「めくらビア孔」と称することもある。各実施形態において、ガラス基板100は、貫通ビア孔108とめくらビア孔108の両方が複数設けられている。側壁面110は、ガラス基板100の厚さ106の範囲内でビア孔108の各々を画定している。
【0057】
ビア孔108は直径に参照番号112が付してある。ビア孔108の各々の直径112は寸法が同じであるように見えて必ずしもそうである必要はなく、すなわち、各ビア孔108の直径112は同じガラス基板100内でも多様であっても構わない。各実施形態において、直径112は5ミクロン(5μm)から150ミクロン(150μm)の範囲内である。各実施形態のなかでも、図示した実施形態のような例においては、ビア孔108はくびれ114が設けられた砂時計形状を呈しており、くびれではビア孔108の直径112はガラス基板100の第1面102付近よりは狭く、第2面104付近よりも狭く、または、その両面付近より狭くなっている。砂時計形状は、以下にさらに説明する電気めっきを良好に行う助けとなる。それ以外の実施形態では、ビア孔108は概ね円筒形または概ね円錐形を呈している。
【0058】
ビア孔108は各々に中心軸線116がある。1つのビア孔108の中心軸線116は隣接するビア孔108の中心軸線116から参照番号118のピッチ(距離)だけ離れている。ピッチ118は、所望の適用例に応じてどのような値であってもよいが、例えば、約10μmないし約2000μmの間であればよいがこれに限定されず、具体的には、約10μm、約25μm、約50μm、約100μm、約250μm、約500μm、約1000μm、約2000μm、または、これ以外のいずれかの値、もしくは、前記の値のうちどれか2つの値の間の(上下両限界点を含む)範囲でもよい。例えば、ピッチ118は10μmないし100μmの範囲、25μmないし500μmの範囲、10μmないし1000μmの範囲、または250μmないし2000μmの範囲であればよい。同じガラス基板100のピッチ118は多様であっても一定であってもよい。ピッチ118は、例えば、1平方ミリメートル当たりに1個ないし20個のビア孔108が存在するように設定されていればよいが、インターポーザの設計と適用例次第ある。各実施形態おいて、ビア孔108はガラス基板100の全体に亘ってパターニング加工されている。それ以外の実施形態は、ビア孔108はどんなパターンも形成していない。
【0059】
ビア孔108は多様な成形技術のうちの1つを利用してガラス基板100内に形成される。例えば、ビア孔108は、各種の機械的穿孔加工、エッチング加工、レーザーアブレーション加工、レーザー支援加工、レーザー損傷とその後のエッチング加工、研磨材吹付け加工、研磨材含有水噴射機械加工、集中電子熱エネルギー加工、または、何であれこれら以外の好適な成形技術によって形成することができる。レーザー損傷とその後のエッチング加工では、初期にガラス基板100にレーザーを使用した損傷痕を形成することで、この損傷痕に沿ってガラス基板100を修正する。次にガラス基板100にエッチング液を付与する。ガラス基板100はエッチング液によって薄くなる。ガラス基板100のエッチング速度は損傷痕付近のほうがより速くなるので、ビア孔108がガラス基板100を貫通して開口されるように、損傷痕が優先的にエッチングされる。
【0060】
ビア孔108を金属化するなどして、ガラス基板100を金属化する方法200
ここで、
図3ないし
図6を参照すると、ガラス基板100のビア孔108は、本明細書に記載の、参照番号200の新規な方法に従って金属化される。方法200は、ガラス基板100をインターポーザとするのに加えてビア孔108を金属化する目的であると言う文脈で記載されているが、方法200がガラス基板100上に金属を配置することを主旨としてもその目的は任意であり、各面を金属化するという主旨はビア孔108の側壁面110以外の、例えば、第1面102、第2面104、ガラス基板100を貫通している別な各穿孔の面、または、これらの各種組合せの表面を対象としているものと解釈するべきである。発明の背景で言及したように、ガラス基板100の用途をインターポーザとするという文脈では、ビア孔108を金属化することで、電気信号が第1面102から第2面104まで通過するようにインターポーザを通り抜ける導電経路をもたらす。
【0061】
触媒金属の第1層120を形成する工程: 工程202においては、方法200は、ガラス基板100の表面上に触媒金属の第1層120を形成することを含んでいる(特に
図4を参照のこと)。各実施形態において、触媒金属の第1層120は、ガラス基板100の全体または概ね全体を被覆するようにしてもよい。各実施形態において、例えば図示の実施形態などでは、工程202はガラス基板100のビア孔108の側壁面110上に触媒金属の第1層120を形成する工程を含んでいる。それ以外の各実施形態では、工程202は、第1面102上または第2面104上に、もしくは、第1面102と第2面104の両面上に触媒金属の第1層120を形成する工程を含んでいる。代替例として、触媒金属の第1層120は、第1面102の一部、第2面104の一部、ビア孔108の側壁面110の一部もしくは全体、または、前記の各面の何らかの組合せでガラス基板100の一部を被覆するパターニング加工が施されてもよい。パターニング加工は、触媒金属の第1層120をガラス基板100上へ堆積している期間中に、ガラス基板100の或る領域を遮断テープまたはフォトレジストなどで選択的にマスキングすることによって実施されるとよい。
【0062】
触媒金属はそれを覆って後続の金属層を堆積するにあたり無電解析出法またはそれ以外の各種方法によって実施するのを促進するという意味で、触媒である。各実施形態において、触媒金属は銀、金、コバルト、コバルト‐リン合金、ニッケル、ニッケル‐リン合金、パラジウム、および、プラチナのうち1種類以上を含んでいる。各実施形態において、触媒金属は銀またはパラジウムであるか、或いは、そのいずれかを必須として含んでいる。各実施形態において、触媒金属の第1層120はナノ層であり、参照番号122を付したその厚さが5nmから10000nmの範囲内にあって、例えば、5nmから約100nmの範囲内にある。
【0063】
各実施形態において、触媒金属の第1層120は銀であるか、または、必須として銀を含んでおり、方法200の工程202は、ガラス基板100のビア孔108の側壁面110の上に触媒金属としての銀の第1層120を形成する工程を含んでいる。
【0064】
各実施形態において、ガラス基板100のビア孔108の側壁面110(または、ガラス基板100のどこであれ他の所望の表面)上に触媒金属の第1層120を形成する工程は、(i)ガラス基板100の側壁面110を触媒金属のナノ粒子が液相担体中に分散している懸濁液に接触させる工程と、(ii)液相担体を蒸発させる工程とを含んでいる。液相担体は水または溶剤ベースの液体であるとよい。溶剤ベースの液相担体は、単一の溶剤、複数溶剤の混合物、または、或る溶剤(単一の溶剤または複数溶剤の混合物)がそれ以外の複数の非溶剤成分を含んでいるものであってもよい。利用できる具体的な溶剤には、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、これらに類似する各種物質、または、前記のものの各種の混合物であって、例えば、2‐プロパノール(イソプロパノール、IPA、または、イソプロピルアルコールとも呼ばれる)、テトラヒドロフラン(THF)、エタノール、クロロホルム、アセトン、ブタノール、オクタノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、および、これらの各種混合物が挙げられるが、これらに限定されない。懸濁液の一例には、触媒金属のナノ粒子をシクロヘキサン中に10%W/Vないし30%W/Vの濃度で含んでいるものがある。液相担体の蒸発により、ガラス基板100のビア孔108の側壁面110上に触媒金属のナノ粒子が残留する。
【0065】
「ナノ粒子」という語は、最短軸線に沿った平均直径(または、断面寸法)が約1nmないし約10000nmである粒子・成分を指している。ナノ粒子の粒子寸法は分布特性である場合もあると解釈するべきである。更に、実施形態によっては、ナノ粒子は寸法や分布が多様であったり、或いは、寸法や分布が2種類以上であったりすることもある。従って、特定寸法は、個々の粒子寸法の分布に関連している平均粒子径のことを指していると言える。実施形態によっては、ナノ粒子は平均直径が約5nmないし約10000nm、約5nmないし約7500nm、約5nmないし約5000nm、約5nmないし約2500nm、約5nmないし約2000nm、約5nmないし約1500、約5nmないし約1250nm、約5nmないし約1000nm、約5nmないし約750nm、約5nmないし約500nm、約5nmないし約250nm、約5nmないし約200nm、約5nmないし約150nm、約5nmないし約125nm、約5nmないし約100nm、約5nmないし約75nm、約5nmないし約50nm、約5nmないし約25nm、約5nmないし約20nm、および、約5nmないし約15nmなどであり、具体例として、約5nm、10nm、20nm、25nm、50nm、75nm、100nm、125nm、150nm、175nm、200nm、250nm、300nm、400nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、1000nm、1250nm、1500nm、2000nm、2500nm、5000nm、7500nm、または、10000nmなどである。ナノ粒子の寸法は、動的光散乱技術のような多様な方法により、或いは、透過型電子顕微鏡(TEM)を利用して測定することができる。例えば、当該技術分野で理解されているように、粒子寸法の分布は数百もの多様なナノ粒子から成る試料を透過型電子顕微鏡で画像解析することにより算定されることが多い。
【0066】
ナノ粒子の形状や表面特性はどのようなものであってもよい。ナノ粒子の構造および表面形状は多様であってよく、本件開示はどのような特定の表面形状、構造、または、その両方に限定されることを意図するものではない。本明細書の各実施形態は複数のナノ粒子を扱うが、個々のナノ粒子または個々のナノ粒子群は他のナノ粒子と同じ構造または同じ表面形状であっても、異なる構造または異なる表面形状であっても、いずれでもよい。例えば、実施形態によっては、ナノ粒子は球構造、楕円構造、多面体構造、薄片構造などである場合もあれば、結晶型構造を採っていることもある。実施形態によっては、ナノ粒子表面は滑らか、粗い、規則的、不規則的、パターン化されているなどの場合もある。
【0067】
各実施形態において、金属のナノ粒子は銀のナノ粒子である。実施形態によっては、銀のナノ粒子は平均直径が10nmないし13nmであり、シクロヘキサン中に20%W/Vの濃度で分散されている(米国ニューヨーク州ロチェスタに居所をおくセリオン有限責任会社(Ceriоn, LLC)から市販されている)。
【0068】
ガラス基板100をナノ粒子の懸濁液に接触させる前に、任意でナノ粒子の懸濁液を超音波処理することで液相担体全体にナノ粒子を分散させるのを促進する。例えば、ナノ粒子の懸濁液は15分ないし45分の範囲内の期間、例えば、約30分間、超音波処理するとよい。
【0069】
上述のように、触媒金属の第1層120はナノ層であり、その厚さが5nmないし10000nmの範囲内であり、例えば、5nmないし約100nmの範囲内である。第1層120は、ナノ粒子の単分子層より薄い層、単分子層、または、複数の単分子層から構成されているとよい。各実施形態において、触媒金属の第1層120は均一ではなく、むしろ、ガラス基板100のビア孔108の側壁面110上の(または、場合によっては、第1面102上や第2面104上の)単一種類の粒子群または多種粒子の粒子塊であり、側壁面110の多数部分は剥き出しのままの状態である。
【0070】
各実施形態において、ガラス基板100の所望の表面(例えば、第1面102、第2面104、側壁面110など)を触媒金属のナノ粒子の懸濁液に接触させる工程はガラス基板100の表面に建託益を回転塗布することを含んでいる。この回転塗布は、ガラス基板100上にナノ粒子状の金属触媒の所望のナノ粒子層を形成するのに適していると思われるのであれば、どのような速度で実施されても、また、どれほどの時間に亘り実施されてもよい。例えば、ナノ粒子の懸濁液をガラス基板100上に堆積させるにあたり、1000rpmないし5000rpmの速度で(例えば、1000rpm、2000rpm、3000rpm、4000rpm、または、5000rpmなどで)、約30秒、30秒未満、または、30秒を超える時間に亘って回転させながら実施されるとよい。
【0071】
各実施形態において、ガラス基板100の所望の表面(例えば、第1面102、第2面104、側壁面110など)を触媒金属のナノ粒子の懸濁液に接触させる工程は、ガラス基板100の所望の表面をナノ粒子の懸濁液中で浸漬被膜する工程、または、ガラス基板100の表面にナノ粒子の懸濁液を吹き付け塗布する工程を含んでいる。浸漬被膜は、ガラス基板100の表面に触媒金属の第1層120を形成するのに好適であれば、どのような離脱速度(引抜き速度と呼ばれることもある)で実施されてもよく、例えば、毎分30mmないし毎分35mmで実施されるとよい。
【0072】
ガラス基板100の表面(例えば、第1面102、第2面104、側壁面110など)の上に触媒金属の第1層120を形成するための上記のような溶液ベースのプロセスは、溶液ベースではない真空蒸着などのような各種プロセスに優る改良例である。回転塗布や浸漬被膜といった上述の溶液ベースのプロセスは真空蒸着よりも安価である。これに加えて、そのような溶液ベースの各プロセスはビア孔108の側壁面110上に触媒金属の第1層120を形成することはできるが、真空蒸着では、ビア孔108のアスペクト比が大きくなるにつれて、ビア孔108の側壁面110を第1層120で完全に覆ってしまえる見込みが減る。
【0073】
触媒金属の第1層120が設けられたガラス基板100を熱処理する工程: 工程204において、方法200は、触媒金属の第1層120が設けられたガラス基板100を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程をさらに含んでいる。各実施形態において、温度は250℃ないし400℃の範囲であり、例えば、約325℃ないし約375℃であり、例えば、約350℃または丁度350℃である。各実施形態において、持続時間は2分ないし5分である。工程204は本明細書では触媒金属の堆積された第1層120が設けられたガラス基板100を「熱処理する工程」と呼ぶことができる。触媒金属の第1層120が酸化されやすい場合、工程204は不活性雰囲気(例えば、窒素ガス雰囲気)で実施することができ、そうでない場合、還元雰囲気(例えば、水素ガス雰囲気)での後続の熱処理を行うことで酸化された触媒金属を還元して元素形態に戻すことができる。触媒金属の酸化された第1層120は、後ほど方法200において金属の第2層が更に付与されることを阻止することができる(後述する)。触媒金属の第1層120が銀である各実施形態では、方法200の熱処理工程204の期間中に空気の存在下でも銀が酸化する恐れは無い。各実施形態においては、ガラス基板100は室温に晒されてから、或る昇温速度 (例えば、毎分0.5℃ないし毎分10度の範囲内の昇温速度) で温度上昇を受ける。これ以外の各実施形態では、触媒金属の第1層120が設けられたガラス基板100を、工程204の操作可能な範囲内の予め定められた温度に設定された予熱された炉内に直接置く。工程204は、触媒金属の第1層120が設けられたガラス基板100を垂直炉、管状炉、または、急速熱焼灼装置(RTA)の中に置くことにより、或いは、ホットプレート上に置くなどして実施することができる。パラジウムを第1層120の触媒金属として利用する各実施形態においては、工程204を省いてもよく、すなわち、方法200は工程204を含んでいなくてもよい。
【0074】
第1層120上に合金の第2層124を形成する工程: 工程206においては、方法200は第1層120上に第1金属と第2金属の合金の第2層124を形成する工程を更に含んでいる。第1層120が均一ではないうえに側壁面110の多数部分が剥き出し状態のままである各実施形態においては、第1金属と第2金属の合金の第2層124が第1層120および剥き出しの側壁面110上に形成される。図示の実施形態のように、第1層120が側壁面110上に形成された各実施形態では、第2層124は第1層120よりも中心軸線116に近い側に形成されるが、ビア孔108を閉鎖することはない。工程206が行われるのは熱処理工程204の後である。第2金属と比較して第1金属は、ガラス基板100の所望の表面(例えば、ビア孔108の側壁面110など)と共有結合する酸化物を生成する傾向が強い。このような酸化物の生成エンタルピーは上記傾向の一種の定量化である。各実施形態において、第1金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は、第2金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値より大きい。各実施形態において、第1金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は1モル当たり600kJより高いが、第2金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は1モル当たり600kJより低い。各実施形態において、第1金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は1モル当たり325kJより高いが、第2金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は1モル当たり175kJより低い。各実施形態において、第1金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は1モル当たり900kJより高いが、第2金属の酸化物の生成エンタルピーの絶対値は1モル当たり175kJより低い。各実施形態において、第2層124の第1金属はタンタル、ニオブ、アルミニウム、マンガン、レニウム、ハフニウム、クロム、ジルコニウム、チタン、インジウム、タングステン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、および、亜鉛のうち1種類以上を含んでおり、第2層124の第2金属は銀、パラジウム、および、銅のうち1種類以上を含んでいる。各実施形態において、第2層124の第1金属はマンガンまたは亜鉛であり、第2層124の第2金属は銅である。以下の表 1 は多様な金属の多様な酸化物ごとの生成エンタルピーを列挙したものである。
【0075】
【0076】
各実施形態において、第1金属と第2金属の合金の第2層124を第1層120上に形成する工程206は溶液を使って無電解めっきで第1層120上に第2層124を生成する工程を含んでおり、該溶液は(i)溶液中に溶解した第1金属の塩、および、(ii)溶液中に溶解した第2金属の塩を含有している。無電解めっきでは、陰イオンと第1金属の陽イオンとのイオン化合物、および、陰イオンと第2金属の陽イオンとのイオン化合物が、化学還元剤により還元されて元素形態の第1金属および第2金属に変性する。典型的な無電解めっきプロセスは、(a)第1金属の陽イオンおよび第2金属の陽イオンを含んでいるイオン化合物のめっき液、(b)還元剤、(c)pH調整剤、(d)イオン化合物を可溶化するための錯化剤、および、(e)溶液の安定性とめっき速度を制御するための特殊な添加剤に関与している。これらの溶液は、触媒金属の第1層120が触媒活性面を供与しているガラス部品の上に堆積される。この触媒活性面が触媒となってイオン化合物の各金属カチオンの還元を進めた結果として、ガラス部品の第1層120上(例えば、ビア孔108内)に元素形態の第1金属と第2金属を同時に析出し、従って、第1金属と第2金属の合金を第2層124として形成することになる。第2層124は自己触媒的であるため、元素形態の付加的な第1金属および第2金属に触媒として更に作用して第2層124上に堆積させ、従って、該層の厚さを増大させる。
【0077】
上述したように、無電解めっきプロセスは、第1金属のイオン化合物と第2金属のイオン化合物が溶剤中に溶解しためっき液を組入れて使用する。好適なイオン化合物には、例えば、第1金属および第2金属それぞれの硝酸塩、硫酸塩、塩化物、酢酸塩、および、シアン化物が挙げられる。めっき液の一例には、第1金属のイオン化合物としては硫酸マンガン一水和物があり、第2金属のイオン化合物としては硫酸銅五水和物が挙げられる。もう1つ別の具体的なめっき液には、第1金属のイオン化合物としては塩化亜鉛があり、第2金属のイオン化合物としては硫酸銅五水和物が挙げられる。通例は、これらイオン化合物は約0.001mM(0.001mоl/m3)ないし約25mM(25mоl/m3)の範囲の濃度で溶液中に存在している。各実施形態においては、第1金属のイオン化合物の濃度と第2金属のイオン化合物の濃度の比は、1:20000ないし1:1の範囲内であり、例えば、1:20ないし1:3の範囲であり、そこには約1:4または丁度1:4も含まれる。溶媒は水性であってもよいし、或いは、イオン化合物に適しているものとして何らかの有機液であってもよい。このような有機液としては、例えば、アルコール類、エーテル類、ケトン類、アルカン類などが挙げられる。
【0078】
上述のように、無電解めっきプロセスは還元剤、pH調整剤、および、錯化剤を組入れて使用する。還元剤はガラス基板100の第1層120上に存在している金属の陽イオンを還元する。還元剤の特定の具体例としては、NaBH4、KBH4、NaH2PO2、ヒドラジン、ホルマリン、ホルムアルデヒド、ジメチルアミンボラン(DMAB)、および、多糖類(例えば、グルコース)がある。pH調整剤はめっき液のpHを調整し、酸性化合物でも塩基性化合物でもよい。ホルムアルデヒドを還元剤として使用する各実施形態では、pH調整剤を利用することで溶液のpHを11以上に調整することができる。ジメチルアミンボランを還元剤として使用する各実施形態では、pH調整剤を利用して、溶液のpHをほぼ中性(pHが約7、例えば、pH6ないしpH8)になるように調整することができる。
【0079】
錯化剤は、アルカリ溶液中で水酸化物が析出するのを防ぐとともに第1金属の陽イオンと第2金属の陽イオンの濃度を制御することにより、イオン化合物の分解を防ぎ、めっき速度を調整するのに役立つ。錯化剤の特定の具体例としては、アンモニア溶液、酢酸、グアニン酸、酒石酸、各種のキレート剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、ロッシェル塩(酒石酸ナトリウムカリウム四水和物)、各種の有機アミン化合物などが挙げられる。
【0080】
各実施形態において、めっき液の温度は30℃ないし70℃の範囲内であり、例えば、約60℃である。各実施形態において、ガラス基板100は無電解めっきプロセスを20秒ないし30分の範囲内の時間に亘って受け、例えば、約20分間受ける。各実施形態において、無電解めっきに由来して形成された金属の第2層124は参照番号126で表す厚さが10nmないし100nmの範囲であり、例えば、約50nmである。金属の第2層124は、後述するように、その後に金属の第3層を付与することができるようにするのに十分な導電性を確保するのに十分な厚みを有しているべきである。
【0081】
第2層124が設けられたガラス基板100を熱処理する工程: 工程208において、方法200は触媒金属の第1層120上に第1金属と第2金属の合金の第2層124が設けられたガラス基板100を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程を更に含んでいる。各実施形態において、温度は300℃ないし450℃であるが、例えば、375℃ないし425℃などであり、例えば、約400℃または丁度400℃である。熱処理によりガラス部品128が形成される(
図6を参照のこと)が、該ガラス部品は、(i)ガラス基板100、(ii)ガラス基板100に共有結合した第1金属の酸化物130、および、(iii)第1金属の酸化物130に接合した金属領域132をから構成されている。各実施形態において、第1金属の酸化物130としては、第2金属を除外する。金属領域132は元素形態の触媒金属、元素形態の第1金属、および、元素形態の第2金属を含んでいる。工程208の熱処理の持続期間中に、第2層124に由来する第1金属は、触媒金属の第1層120から置換わって、ガラス基板100の表面に接合する酸化物130を形成する。
【0082】
各実施形態において、工程208の期間中のガラス基板100の周囲環境の温度は毎分5℃またはそれより遅い速度で、例えば、毎分1℃またはそれより遅い速度で上昇する。
【0083】
各実施形態において、熱処理工程208はガラス基板100が空気の存在する中にある状態で実施される。空気が存在していることで、ガラス基板100の側壁面110に接合している第1金属の酸化物130の形成を助けることができる。そのような実施形態では、方法200は、工程208の結果として生じたガラス部品128をフォーミングガス(H2とN2の混合物)の存在下で225℃ないし275℃の温度に少なくとも30分間(例えば、30分ないし90分)晒すという熱処理による還元工程210を更に含んでいる。還元工程210により金属領域132の導電性を回復することで、後述するように、金属領域132を覆うように金属の第3層を後続して付与することができる。
【0084】
ガラス部品128上に一次金属の第3層134を形成する工程: 工程212において、方法200はガラス部品128の金属領域132上に一次金属の第3層134を形成する工程を更に含んでいる(
図7を参照のこと)。一次金属は、その金属がガラス部品128上の厚さで優勢な金属であるという意味で「一次」なのであり、すなわち、第3層134の参照番号136で示した厚さは第1層120の厚さ122や第2層124の厚さ126のそれぞれよりも厚い。ガラス部品128がインターポーザである場合は、一次金属はビア孔108の導電機能を実行することを意図した金属であるうえに、方法200に従った金属化の後ではビア孔108内部で主要な金属となる。各実施形態において、一次金属は銅である、或いは、銅を含んでいる。各実施形態において、一次金属は銀、金、カドミウム、クロム、銅、ニッケル、鉛、プラチナ、および、スズのうちの1種類以上であるか、または、1種類以上を含有している。各実施形態において、一次金属の第3層134の厚さ136は2μm以上であり、例えば、2μmないし5μmである。
【0085】
各実施形態において、ガラス部品128の金属領域132上に一次金属の第3層134を形成する工程は、電気めっきによりガラス部品128の金属領域132上に一次金属の第3層134を生成することを含んでいる。電気めっきする工程において、ガラス部品128はめっき液中に置かれるが、該めっき液は、陰イオンと第3層134を形成する一次金属の陽イオンとを有しているイオン化合物を含んでおり、電流が印加される。その結果、ガラス部品128の金属領域132を覆うように元素形態の一次金属が第3層134として付与される。堆積されることになる一次金属の陽イオンを含んでいるイオン化合物の陰イオンには、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオンなどがある。めっき液に使用されるイオン化合物の一例が硫酸銅である。めっき液の一例には、硫酸銅(II)五水和物(CuSO4・5H2O)、ピロリン酸カリウム(K4P2O7)、および、クエン酸を蒸留水中に含んだものがある。めっき液のもう1つ別な例は、硫酸銅(II)五水和物(CuSO4・5H2O)、硫酸マンガン(II) 一水和物(MnSO4・H2O)、酒石酸ナトリウムカリウム四水和物(ロッシェル塩)、および、ホルムアルデヒドを含有している。各実施形態において、めっき液中のイオン化合物の濃度は0.001M(1mоl/m3)以上である。イオン化合物は、脱イオン水のような液体媒体中に溶解している。ガラス部品128に加えて、何であれ導電性の材料から作製された電極もめっき液中に配備される。各実施形態において、めっき液は温度が10℃ないし50℃の間であり、例えば、室温または40℃である。
【0086】
電流、電圧、または、その両方の組み合わせが電極とガラス部品128との間に印加されて、ガラス部品128に負の定電流を供与する。各実施形態において、電流密度範囲にして約0.001mA/cm2ないし約1A/cm2と電圧範囲にして約-0.001Vないし約-20Vが印加される。その結果、第3層134となる一次金属の陽イオンは、ガラス部品128の金属領域132の全面で還元されて元素形態になる。電流密度はこの還元反応の速度を制御する。従って、印加電流を増減することによって析出速度を増減することができる。しかし、高すぎる印加電流は多孔性だが空所が充填された堆積を生じることがあり、低すぎる印加電流は実用上役立たなくなるほどプロセスを長引かせてしまう事がある点に留意するべきである。一次金属の第3層134がガラス部品128に付与されて金属領域132を覆った後、電流を停止し、ガラス部品128をめっき液から取り出し、ガラス部品128を脱イオン水で洗浄することができる。この時点で任意であるが、窒素の流れをガラス部品128上に吹き流すなどしてガラス部品128を乾燥させてもよい。
【0087】
ガラス部品128をインターポーザとすることを意図した各実施形態においては、一次金属の第3層134がビア孔108の残存している空隙部を充填する。一次金属の第3層134が電気めっきにより付加されてしまえば、ガラス部品128をめっき液中に配備することで、1個以上のビア孔108の全部にめっき液を充満させる。一次金属の第3層134はガラス部品128の金属領域132上に堆積されるが、ビア孔108が密封されてしまうまでは、従って、十分に金属化されてしまうまでは継続して積上げられてゆく。ビア孔108が砂時計形状を取る各実施形態においては、初期に堆積される一次金属の導電性の第3層134に対して、狭まったくびれ部114が金属の「ブリッジ(懸け橋)」を供与する。一次金属の第3層134は、ビア孔108が充填されてしまうまでこのブリッジの両側に継続して堆積される。「ブリッジ」は、第1面102または第2面104の近傍に一次金属の第3層134が堆積されるのを防ぐことで、ビア孔108が一次金属の第3層134で充填されてしまう前にビア孔108の内部に通じる開口部が閉じてしまうのを回避するのに役立つ。ビア孔108の内部に通じる開口部をそうせず閉じてしまうとビア孔108の内部に空隙が生じてしまい、導電性を低下させる。ビア孔108が充填されて金属領域132および一次金属の第3層134で完全に金属化されている場合は、ビア孔108のおかげでガラス部品128の第1面102および第2面104に直にまたは隣接して配備された各電気構成部材の電気配線を電気接続することができるようになる。一次金属の第3層134がガラス部品128のビア孔108を充填してしまえば、電流を停止し、めっき液とガラス部品128を離隔させる。
【0088】
一次金属の第3層134が設けられたガラス部品128を熱処理する工程: 工程214において、方法200は、不活性環境(減圧環境、窒素環境、フォーミングガス環境など)で一次金属の第3層134が設けられたガラス部品128を250℃ないし600℃、例えば、300℃ないし400℃、より具体的には、325℃ないし375℃、更には、約350℃または丁度350℃などの温度に少なくとも30分間晒す工程を更に含んでいる。熱処理工程214によりガラス部品128を形成するが、該ガラス部品は、(i)ガラス基板100、(ii)ガラス基板100に共有結合した第1金属の酸化物130、ならびに、(iii)触媒金属、第1金属、第2金属、および、一次金属の全てを元素形態で含有している新たな金属領域132を備えている(
図8を参照のこと)。換言すると、熱処理工程214は、工程208で生成された金属領域132を、元素形態の一次金属を更に含有している新たな金属領域138に変性する。
【0089】
工程214の1つの目的は、工程208に由来する金属領域132と工程212で付加された一次金属の第3層134とを混合することである。325℃を下回る温度はその目的を満たしているかもしれないが、そのような温度は実用上合目的というにはむやみに長い時間を必要とする可能性がある。換言すると、工程214の持続中の325℃より低い温度の結果として上記のような混合効果を生じ得るが、時間がかかりすぎる傾向があるので商業上実用的ではない。工程214の375℃またはそれ未満の温度は大半のガラス基板100に適用できる。工程214のもう1つ別の目的は、ガラス部品128において発生した可能性のある応力を緩和することである。例えば、インターポーザとして使用するよう意図されたガラス基板100にビア孔108を形成するために採用されるレーザー加工プロセスは、ガラス基板100の内部に熱応力を生じる可能性がある。ビア孔108の金属化工程の後に形成される後続ガラス部品128の焼きなまし工程は、ガラス基板100に存在している恐れのある残留応力を緩和する。
【0090】
ガラス部品128がインターポーザである各実施形態では、ビア孔108は現時点で完全に金属化されており、ビア孔108はその側壁面110に第1金属が共有結合され、第1金属の酸化物に新たな金属領域138が共有結合されている。第1金属の酸化物130はこのように貫通ビア孔108の側壁面110と新たな金属領域138との間に配置されている。新たな金属領域138は貫通ビア孔108を通る導電経路を形成している。新たな金属領域138は貫通ビア孔108の内部で中心軸線116の周囲に配備されている。新たな金属領域138は元素形態の第1金属を含んでおり、これが第1金属の酸化物130に結合する。各実施形態において、ガラス基板100の第1面102および第2面104の各部が金属化され、このとき第1金属の酸化物130は第1面102および第2面104に共有結合した状態にあり、触媒金属、第1金属、第2金属、および、一次金属を全て元素形態で含有している新たな金属領域138は第1金属の酸化物130に接合している。新たな金属領域138は主として中心軸線116およびその近傍にある一次金属であると期待される。
【0091】
第1金属の酸化物130の形成して取込むことで、一次金属(例えば、銅)をガラス基板100により効果的に接着させている。第1金属と第2金属の合金の第2層124はこのように(i)第1金属の酸化物130の形成によりガラス基板100に後続的に付与される金属の粘着を促進する機能、および、(ii)合金の第2層124のうち第2金属は酸化物を形成しそうに無いうえに工程208に由来して生成された金属領域132が工程212における(電気めっきなどによる)一次金属の第3層134の形成に寄与するのに十分な導電性を有しているのが確実なせいで、一次金属の第3層134の付与を促進する機能を果たす。ガラス基板100の側壁面110に共有結合している第1金属の酸化物130と新たな金属領域138における触媒金属、第1金属、第2金属、および、一次金属の金属結合および混合との組み合わせにより、一次金属がガラス基板100に強固に接着する結果となる。更に、第1層120、第2層124、および、第3層134を形成する全ての工程202、工程206、工程212はどれも溶液ベースで実施されており、このことにより、ビア孔108は、高アスペクト比のビア孔であっても、経費効率の高い方法で顕著な空隙(例えば、ピンホール)も生じずに十分に金属化することができる。
【実施例】
【0092】
実施例1。方法200の工程202に従って、試料であるガラス基板100の第1面102上に触媒金属としての銀の第1層120を形成した。この実施例および後段の全ての更なる各実施例のためのガラス基板100はアルカリ土類アルミノホウケイ酸ガラス基板であった。より具体的には、銀のナノ粒子を液相担体中に分散させた。ナノ粒子は平均寸法が10nmないし13nmであった。液相担体はシクロヘキサンであった。銀のナノ粒子の濃度はシクロヘキサンの20%w/vであった。分散液を30分間超音波処理に付すことで銀のナノ粒子の凝集塊を分離するのに役立った。次いで、分散液をガラス基板100の第1面102上に1000RPMの回転速度で回転塗布した。液相担体を蒸発させることができるようにした。次いで、方法200の工程204に従って、触媒金属(銀)の第1層120が設けられたガラス基板100の試料を空気環境で350℃に2分間晒し、こうして、触媒金属が第1面102上の第1層として配備されたガラス基板100を形成した。
【0093】
次に、方法200の工程206に従って、合金の第2層124を無電解析出により触媒金属上に形成した。無電解析出に使用した浴液は後段の表2に明示されているような組成であり、第1金属としてのマンガンのイオン化合物の濃度と第2金属としての銅のイオン化合物の濃度との比は1:4であった。
【0094】
【0095】
無電解めっき浴液のpHは12.5に調整してあった。無電解めっき浴液の温度は60℃に維持してあった。銀の触媒金属が設けられているガラス基板100を浴液中に20分間浸漬した。次に、ガラス基板100を浴液から取り出し、水で濯いでから、窒素環境で乾燥させた。こうして、結果として生じた第2層124は第1金属としてのマンガンと第2金属としての銅の合金であった。
【0096】
次に、方法200の工程208に従って、合金の第2層124が設けられたガラス基板100を空気環境中で400℃の温度に30分間晒した。温度は毎分1℃の速度で400℃まで上昇させた。X線光電子分光法(XPS)を利用して、結果として生じた、金属領域132が設けられたガラス部品128の元素組成を判定した。その結果を以下の表3に示す。
【0097】
【0098】
この結果が立証しているのは、工程202ないし工程208の結果として無電解めっき浴液に由来するマンガンと銅、および、回転塗布に由来する銀を含有している金属領域132を実際に生じたことである。炭素が存在していることは無電解めっき浴液に由来していそうでもあり、或いは、大気に由来している可能性もある。
【0099】
次に、方法200の工程212に従って、一次金属(銅)の第3層134を電気めっきプロセスによって金属領域132を覆うように付与した。電気めっきプロセスは、硫酸銅が脱イオン水に溶解した非酸性めっき液を利用した。銅板を陽極に使用した。50mAの定電流を1時間流した結果、2.5μmの厚さ134の銅の第3層134が生じた。次に、ガラス部品128をめっき液から取り出して濯いだ。
【0100】
次に、方法200の工程214に従って、一次金属(銅)の第3層134が設けられたガラス部品128を減圧下で350℃の温度に30分間晒した。350℃に達するまでのランプ速度は毎分5℃に制御されていた。
【0101】
ここで
図9を参照すると、結果として生じたガラス部品128に対して、ASTM D3359‐09(テープ試験による付着性を測定するための標準試験方法)に従ってクロスハッチテープ試験を実施することで、新たな金属領域138のガラス基板100への接合力(付着性)を試験した。テープ試験については、一方向ごとに11本の切込みを入れた格子模様を新たな金属領域138の内奥にまで作った。次いで、感圧テープ140を格子模様の上から貼付けた。次に、テープ140を剥がした。それから、除去した量と種類を、ASTM文書の記述および図説と対照させた。テープ140の剥離でガラス部品128から除去したのは、新たな金属領域138の5%未満であった。ASTM規格に照らして、試験結果は4Bまたは5Bであった。これは、銅、マンガン、および、銀を含有している新たな金属領域138のガラス基板100への接合が高レベルであったことを示している。
【0102】
実施例2。方法200の工程202および工程204に従って、実施例1と同じ態様で、触媒金属としての銀の第1層120を試料であるガラス基板100の第1面102上に形成してから、後続して熱処理に付した。
【0103】
次に、方法200の工程206に従って、合金の第2層124を無電解析出により触媒金属上に形成した。無電解析出で使用した浴液は、以下の表4に明示されているような組成であった。
【0104】
【0105】
無電解めっき浴液のpHは12.5に調整してあった。無電解めっき浴液の温度は60℃に維持してあった。銀の触媒金属が設けられたガラス基板100を浴液中に20分間浸漬した。次に、ガラス基板100を浴液から取り出して水で濯ぎ、窒素環境で乾燥させた。こうして、結果として生じた第2層124は第1金属としての亜鉛と第2金属としての銅の合金であった。
【0106】
次に、方法200の工程208に従って、合金の第2層124が設けられたガラス基板100を空気環境で400℃の温度に30分間晒した。温度は毎分1℃の速度で400℃まで上昇させた。X線光電子分光法(XPS)を利用することで、熱処理工程208の後の金属領域132の元素組成を判定した。この結果を以下の表5に示す。
【0107】
【0108】
この結果が立証しているのは、工程202ないし工程208の結果として、無電解めっき浴液に由来する亜鉛と銅、および、回転塗布に由来する銀を含有している金属領域132を生じたことである。
【0109】
次に、方法200の工程212および工程214に従って、実施例1と同じ態様で、一次金属(銅)の第3層134を電気めっきプロセスによって金属領域132を覆うように付与してから熱処理に付した。
【0110】
ここで
図10を参照すると、結果として生じたガラス部品128に対し、ASTM D3359‐09に従って、クロスハッチテープ試験を実施し、結果として得られた新たな金属領域138のガラス基板100への接合力(付着性)を試験した。テープ試験については、一方向ごとに11本の切込みを入れた格子模様を新たな金属領域138の内奥にまで作った。その後、感圧テープ140を格子模様の上から貼付けた。次に、テープ140を剥がした。そこで、除去した量と種類をASTM文書の記述および図説と対照した。テープ140の剥離でガラス部品128から除去されたのは、新たな金属領域138の5%未満であった。ASTM規格に照らして、試験結果は4Bであった。これは、銅、亜鉛、および、銀を含有している新たな金属領域138のガラス基板100への付着性が高レベルであったことを示している。
【0111】
実施例3。方法200の工程202および工程204に従って、実施例1と同じ態様で、触媒金属としてのパラジウムの第1層120を試料であるガラス基板100の第1面102上に形成してから、後続して熱処理に付した。
【0112】
次に、方法200の工程206に従って、無電解析出により触媒金属の第1層120上に合金の第2層124を形成した。無電解めっき浴液の組成を以下の表6に示す。
【0113】
【0114】
無電解めっき浴液の温度は43℃に維持してあった。従って、第2層124は、第1金属としてのマンガンと第2金属としての銅の合金である。方法200の工程208に従って、毎分1℃の制御温度上昇の後に空気環境で、マンガンと銅の合金の第2層124が設けられたガラス基板100を400℃に30分間晒した。次に、方法200の工程210に従って、結果として生じたガラス部品128をフォーミングガス中で250℃の温度に30分間晒し、これにより空気環境で起きた工程208に由来して生じたあらゆる酸化銅を還元した。
【0115】
次に、方法200の工程212に従って、一次金属(銅)の第3層134を電気めっきプロセスにより金属領域132を覆うように付与した。第3層134は厚さ136が2.5μmになっている。
【0116】
次に、方法200の工程214に従って、一次金属(銅)の第3層134が設けられたガラス部品128を減圧下で350℃の温度に30分間晒した。
【0117】
ここで
図11を参照すると、結果として生じたガラス部品128に対して、ASTM D3359‐09に従ってクロスハッチテープ試験を実施し、新たな金属領域138のガラス基板100への接合力(付着性)を試験した。このテープ試験については、一方向ごとに11本の切込みを入れた格子模様を新たな金属領域138の内奥にまで作った。次いで、格子模様の上から感圧テープ140を貼付けた。その後、テープ140を剥がした。次に、除去した量と種類をASTM文書の記述および図説と対照した。テープ140の剥離でガラス部品128から除去したのは、新たな金属領域138の5%未満であった。ASTM規格に照らして、試験結果は4Bであった。これは、実施例1の無電解めっき浴液と比べて無電解めっき浴液中のマンガンの濃度が低くても、銅、マンガン、および、銀を含有している新たな金属領域138のガラス基板100への接合が高レベルであることを示している。
【0118】
比較例1。比較例1では、触媒金属(銀)の第1層120をガラス基板100の第1面102に付加してから高温に晒すことで、触媒金属膜が設けられたガラス基板100を作成した。第1金属(酸化物130を形成しやすい)と第2金属の合金の第2層124は第1層120上に堆積されていなかった。代わりに、厚さ2.5μmの銅の層を触媒金属の第1層120上に電気めっきで生成してから減圧下で或る時間に亘り高温に晒した。
【0119】
ここで
図12を参照すると、クロスハッチテープ試験をASTM D3359‐09に従って実施し、電気めっきで生成された銅および銀のガラス基板100への接合力(付着性)を試験した。テープ試験については、一方向ごとに11本の切込みを入れた格子模様を金属の層内奥にまで作った。次に、格子模様の上から感圧テープ140を貼付けた。その後、テープ140を剥がした。次に、除去した量と種類をASTM文書の記述と図説と対照した。テープ140の剥離でガラス基板100から除去したのは、電気めっきで生成された銅および回転塗布された銀の概ね全部であった。ASTM規格に照らして、試験結果は0Bであった。これは、電気めっきで生成された銅と回転塗布された銀のガラス基板100への接合が非常に低いレベルであったことを示している。これが例証しているのは、ガラス基板100の第1面102と接合している酸化物130を形成する第1金属を含んでいる合金を付与するための方法200の各工程はガラス基板100の第1面102に一次金属を接合するために重要である、という点である。
【0120】
比較例2。比較例2では、触媒金属(銀)の第1層120をガラス基板100の第1面102に付加してから高温に晒した。次に、第1金属(酸化物130を形成しやすい)と第2金属の合金の第2層124を触媒金属上に無電解析出する代わりに、銅(酸化物130を形成しにくい)のみを第1層120上に無電解析出した。次に、銀の第1層120と無電解析出された銅の層が設けられたガラス基板100を400℃に30分間晒したが、これが実施されたのは空気環境中で毎分1℃の制御ランプ速度で上記温度に到達させた後のことである。次いで、試料をフォーミングガス環境で250℃に30分間晒した。この無電解析出された銅の層を覆うように厚さ2.5μmの銅の層を電気めっきで生成した。次に、試料を減圧下で350℃に30分間晒した。
【0121】
ここで
図13を参照すると、結果として生成されたガラス部品に対して、クロスハッチテープ試験をASTM D3359‐09に従って実施し、電気めっきで生成された銅、無電解析出された銅、および、回転塗布された銀のガラス基板100への接合力(付着性)を試験した。テープ試験については、一方向ごとに11本の切込みを入れた格子模様を新たな金属領域の内奥にまで作った。次に、格子模様の上から感圧テープ140を貼付けた。その後、テープ140を剥がした。次に、除去した量と種類をASTM文書の記述および図説と対照した。テープ140の剥離でガラス基板100から除去されたのは堆積金属のほぼ100%であった。ASTM規格に照らして、試験結果は0Bであった。これは、堆積された各金属のガラス基板100への接合が非常に低いレベルであったことを示している。これが例証しているのは、ガラス基板100の第1面102に接合している酸化物130を形成している第1金属を含有している合金を付与するための方法200の工程206は一次金属(例えば、銅)は元よりそれ以外の各金属をガラス基板100の第1面102に結合するために重要である、という点である。
【0122】
特許請求の範囲の精神または範囲から逸脱することなく多様な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかである。
【0123】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0124】
実施形態1
ガラス部品を製造する方法において、
ガラス基板の表面上に触媒金属の第1層を形成する工程と、
触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程と、
第1金属と第2金属の合金の第2層を第1層の上に形成する工程と、
触媒金属の第1層の上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒すことによってガラス部品を形成する工程であって、該ガラス部品は(i)ガラス基板、(ii)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(iii)第1金属の酸化物に接合された金属領域であって、元素形態の触媒金属と、元素形態の第1金属と、元素形態の第2金属とを含んでいる金属領域から構成されているようにする工程と、
を含む方法。
【0125】
実施形態2
ガラス部品の金属領域の上に一次金属の第3層を形成する工程を更に含んでいる、実施形態1の方法。
【0126】
実施形態3
一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒すことにより、(i)ガラス基板、(ii)ガラス基板に共有結合した第1金属の酸化物、および、(iii)触媒金属と、元素形態の第1金属と、元素形態の第2金属と、元素形態の一次金属とを含んでいる新たな金属領域から構成されているガラス部品を形成する工程を更に含んでいる、実施形態2の方法。
【0127】
実施形態4
触媒金属は銀、金、コバルト、コバルト‐リン合金、ニッケルまたはニッケル‐リン合金、パラジウム、および、プラチナのうち1種類以上を含んでいる、実施形態1から実施形態3のいずれか1つの方法。
【0128】
実施形態5
表面上に触媒金属の第1層を形成する工程は、触媒金属のナノ粒子が液相担体中に分散している懸濁液と表面を接触させる工程と、
液相担体を気化する工程とを含んでいる、実施形態1から実施形態4のいずれか1つの方法。
【0129】
実施形態6
懸濁液と表面を接触させる工程は懸濁液を表面上に回転塗布する工程を含んでいる、実施形態5の方法。
【0130】
実施形態7
ガラス基板はその表裏両主要面としての第1面および第2面と、第1面および第2面で開口してガラス基板を貫いて延びている貫通ビア孔を画定している側壁面とが設けられており、第1金属の酸化物は貫通ビア孔の側壁面に共有結合している、実施形態1から実施形態6のいずれか1つの方法。
【0131】
実施形態8
ガラス基板はその表裏両主要面としての第1面および第2面と、第1面および第2面で開口してガラス基板を貫いて延びている貫通ビア孔を画定している側壁面とが設けられており、
第1金属の酸化物は貫通ビア孔の側壁面に共有結合しており、
新たな金属領域は貫通ビア孔を通る導電経路を形成している、実施形態3の方法。
【0132】
実施形態9
ガラス基板はその表裏両主要面としての第1面および第2面と、第1面と第2面のうち一方で開口してガラス基板を不十分に貫いて延びているめくらビア孔を画定している側壁面とが設けられており、
第1金属の酸化物はめくらビア孔の側壁面に共有結合している、実施形態1から実施形態6のいずれか1つの方法。
【0133】
実施形態10
第2層の第1金属はタンタル、ニオブ、アルミニウム、マンガン、レニウム、ハフニウム、クロム、ジルコニウム、チタン、インジウム、タングステン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、および、亜鉛のうち1種類以上を含んでおり、
第2層の第2金属は銀、パラジウム、および、銅のうち1種類以上を含んでいる、実施形態1から実施形態9のいずれか1つの方法。
【0134】
実施形態11
第1金属の酸化物としては第2金属は除外される、実施形態1から実施形態10のいずれか1つの方法。
【0135】
実施形態12
第2層の第2金属は銅である、実施形態1から実施形態11のいずれか1つの方法。
【0136】
実施形態13
第2層の第1金属はマンガンまたは亜鉛である、実施形態1から実施形態12のいずれか1つの方法。
【0137】
実施形態14
合金の第1金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モルあたり600kJより大きく、
合金の第2金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モルあたり600kJより小さい、実施形態1から実施形態13のいずれか1つの方法。
【0138】
実施形態15
合金の第2層を形成する工程は溶液を使用して無電解めっきにより第1層上に第2層を生成する工程を含んでおり、該溶液には第1金属の塩が溶解しているとともに第2金属の塩が溶解している、実施形態1から実施形態14のいずれか1つの方法。
【0139】
実施形態16
溶液はホルムアルデヒドを更に含んでおり、pHが11よりも高い、実施形態15の方法。
【0140】
実施形態17
溶液はジメチルアミンボランを更に含んでおり、pHが6ないし8である、実施形態15の方法。
【0141】
実施形態18
触媒金属の第1層の上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に晒す工程は、温度を1分あたり1℃の速度またはそれより遅い速度で上昇させる工程を含んでいる、実施形態1から実施形態17のいずれか1つの方法。
【0142】
実施形態19
触媒金属の第1層の上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に晒す工程はガラス基板が空気の存在しているところにある状態で実施され、
前記方法は、ガラス部品を375℃ないし425℃の温度に晒した後で、ガラス部品がフォーミングガスの存在しているところにある状態で225℃ないし275℃の温度に少なくとも30分間ガラス部品を晒す工程を更に含んでいる、実施形態1から実施形態18のいずれか1つの方法。
【0143】
実施形態20
一次金属は銀、金、カドミウム、クロム、銅、ニッケル、鉛、プラチナ、および、スズのうち1種類以上を含んでいる、実施形態2の方法。
【0144】
実施形態21
一次金属は銅を含んでいる、実施形態2の方法。
【0145】
実施形態22
第3層は厚さが2μmないし5μmである、実施形態2、実施形態20、および、実施形態21のいずれか1つの方法。
【0146】
実施形態23
ガラス部品の金属領域上に一次金属の第3層を形成する工程は、電気めっきによりガラス部品の金属領域上に一次金属の第3層を生成する工程を含んでいる、実施形態2、および、実施形態20から実施形態22のいずれか1つの方法。
【0147】
実施形態24
電気めっきする工程は硫酸銅を含んでいるめっき液を利用する、実施形態23の方法。
【0148】
実施形態25
触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程は、触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を325℃ないし375℃の温度に少なくとも2分間晒すことを含んでおり、
触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を300℃ないし425℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでいる、実施形態1から実施形態24のいずれか1つの方法。
【0149】
実施形態26
触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を150℃ないし600℃の温度に少なくとも2分間晒す工程は、触媒金属の第1層が設けられたガラス基板を325℃ないし375℃の温度に少なくとも2分間晒すことを含んでおり、
触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、触媒金属の第1層上に第1金属と第2金属の合金の第2層が設けられたガラス基板を300℃ないし425℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでおり、
一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で250℃ないし600℃の温度に少なくとも30分間晒す工程は、一次金属の第3層が設けられたガラス部品を不活性環境で300℃ないし400℃の温度に少なくとも30分間晒すことを含んでいる、実施形態3の方法。
【0150】
実施形態27
不活性環境は減圧環境である、実施形態3または実施形態26の方法。
【0151】
実施形態28
ガラスインターポーザにおいて、
表裏両主要面としての第1面および第2面が設けられているとともに第1面から第2面までの厚みを貫いて延びている貫通ビア孔が設けられているガラス基板であって、貫通ビア孔は側壁面が設けられて中心軸線がある、ガラス基板と、
貫通ビア孔内部の中心軸線の周囲に配備された金属領域と、
貫通ビア孔の側壁面に共有結合した第1金属の酸化物と、
を備えており、
第1金属の酸化物は側壁面と金属領域の間に配備されており、金属領域は元素形態の第1金属と元素形態の第2金属とを含んでいる、ガラスインターポーザ。
【0152】
実施形態29
第1金属はタンタル、ニオブ、アルミニウム、マンガン、レニウム、ハフニウム、クロム、ジルコニウム、チタン、インジウム、タングステン、マグネシウム、モリブデン、ニッケル、および、亜鉛のうち1種類以上であり、
第2金属は銀、パラジウム、および、銅のうち1種類以上である、実施形態28のガラスインターポーザ。
【0153】
実施形態30
第1金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モル当たり325kJより大きく、
第2金属の酸化物は生成エンタルピーの絶対値が1モル当たり175kJより小さい、実施形態28のガラスインターポーザ。
【0154】
実施形態31
第1金属はマンガンであり、第2金属は銅である、実施形態28のガラスインターポーザ。
【0155】
実施形態32
金属領域は銀を更に含んでいる、実施形態28から実施形態31のいずれか1つのガラスインターポーザ。
【符号の説明】
【0156】
100 ガラス基板
102 第1面
104 第2面
108 ビア孔
110 側壁面
120 第1層
124 第2層
128 ガラス部品
130 酸化物
132 金属領域
134 第3層
138 金属領域
【国際調査報告】