(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】ウェアラブル外骨格
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562377
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021026442
(87)【国際公開番号】W WO2021211359
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518102470
【氏名又は名称】トヨタ リサーチ インスティテュート,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン デカストロ
(72)【発明者】
【氏名】スン ホ コン
(72)【発明者】
【氏名】ニコス アレチーガ ゴンザレス
(72)【発明者】
【氏名】フランク パーメンター
(72)【発明者】
【氏名】デニス パーク
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707XK06
3C707XK12
3C707XK16
3C707XK41
3C707XK88
(57)【要約】
ユーザの四肢および胴体用の動力付きロボット外骨格またはエクソスーツのためのシステムおよび方法が提供されている。エクソスーツには、スーツのさまざまな場所に組付けられたエアバッグデバイスが備わっていてよい。エクソスーツは、検知し、実時間で制御コマンドを計算し、四肢およびエアバッグを作動させて安定性を回復し(転倒防止)、転倒が発生した場合には転倒に起因する負傷を最小限に抑える(転倒保護)ことのできる搭載型計算機器を含み得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに対して動作可能に結合された少なくとも1つのロボット関節と、
前記フレームに結合され、前記フレームの運動を検知するように構成された少なくとも1つのセンサと、
前記少なくとも1つのロボット関節および前記少なくとも1つのセンサに結合されたコントローラであって、
前記フレームの前記運動から事象を検出し、
前記事象に応答して前記少なくとも1つのロボット関節を作動させる、
ように構成されたコントローラと、
を含む、ウェアラブルデバイス。
【請求項2】
前記少なくとも1つのロボット関節を作動させることは、前記フレームの前記運動に対抗するように前記少なくとも1つのロボット関節を作動させることを含む、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも1つのロボット関節を作動させることは、前記フレームを安定した位置に戻すことを含む、請求項2に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項4】
前記事象には、安定性包絡線を超える前記フレームの運動が含まれる、請求項2に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項5】
前記安定性包絡線は、モデルベース分析によって推定される、請求項4に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項6】
前記事象には転倒検出が含まれる、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つのロボット関節を作動させることは、前記フレームを保護位置に移動させることを含む、請求項6に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項8】
前記フレームに結合されたエアバッグをさらに含み、前記コントローラがさらに、前記事象の検出時に前記エアバッグを展開させるように構成されている、請求項6に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項9】
前記フレームは、ユーザが装着するように構成された外骨格を含む、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項10】
前記フレームに結合された複数のロボット関節をさらに含み、各ロボット関節が前記外骨格に対する関節に対応している、請求項9に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項11】
前記コントローラはさらに、
前記フレームの前記運動の終了から第2の事象を検出し、
前記第2の事象に応答して前記少なくとも1つのロボット関節を作動させる、
ように構成されている、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項12】
前記第2の事象に応答して前記少なくとも1つのロボット関節を作動させることは、前記フレームを回復位置へと作動させることを含む、請求項11に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項13】
前記事象の検出時点でアラートを伝送するように構成された通信デバイスをさらに含む、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項14】
前記コントローラはさらに、
前記事象を検出し、ユーザプロファイルにしたがって前記第1の事象に応答して前記少なくとも1つのロボット関節を作動させる、
ように構成されている、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項15】
前記ユーザプロファイルは、身体的素因に関連するユーザ固有情報を含む、請求項14に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項16】
前記身体的素因は、健康状態を含む、請求項15に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つのロボット関節は、肩関節、肘関節、手首関節、ウエストユニット、膝関節、踝関節および頭部/頸部ユニットのうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のウェアラブルデバイス。
【請求項18】
ユーザによる転倒に対抗する方法において、
1つ以上のユーザ選好性を含めたユーザプロファイルをロードすることと、
フレームに結合されたセンサにより運動事象を検知することと、
前記センサから得られたデータにしたがって前記運動事象を分類することと、
前記分類および前記ユーザプロファイルに基づいて前記事象に応答して前記フレームに結合されたロボット関節を作動させることと、
を含む、方法。
【請求項19】
前記運動事象を転倒防止事象として分類することであって、前記転倒防止事象が安定性包絡線を超える前記運動事象により定義されていること、
をさらに含み、
前記ロボット関節を作動させることには、前記フレームを安定位置に戻すため前記フレームの運動に対抗することが含まれている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記運動事象を転倒事象として分類することと、
前記ロボット関節を作動させて、前記フレームを保護位置まで移動させることと、
をさらに含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、開示全体が参照により明示的に組込まれている、2020年4月13日出願の「ウェアラブル外骨格」なる名称の米国特許出願第16/847,380号に対する優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、転倒時の負傷を防止するためのシステムおよび方法に関し、より詳細には、装着者の転倒を防止するかまたは潜在的負傷を削減することのできるウェアラブル外骨格に関する。
【背景技術】
【0003】
転倒による負傷は多くの場合、転倒に対して身構えるための人間の本能的運動に起因して、手および手首など、転倒する人の末端部に発生する。後ろ向きまたは前向きに転倒するとき、人は、地面の衝撃を少なくし顔面、頭部または他の身体部分への負傷を防ぎたいと考えて無意識に腕を伸ばす可能性がある。残念なことに、これらの末端部は、このような事例において重大な負傷、おそらくは転倒する人が胸部、背中または臀部で転倒した場合よりも大きい負傷さえ受けがちである。胸部、背中および臀部は、手または手首に比べて転倒の衝撃をより多く吸収することができ、負傷の可能性は低いものであり得る。
【0004】
動力付き外骨格は、本質的に高齢者の可動性を補助し、関節に対する衝撃および歪みを最小限にした状態で高齢者が物を持ち上げ、階段を上り、負傷を防止し、他の形で動き回ることを可能にするウェアラブルロボットである。これらは同様に、倉庫、工場および建設作業員のための増力装置としても有用であり得、人間に200ポンドを容易に持ち上げる能力を与えるものもある。外骨格を装着するのが高齢者であるかまたは建設作業員であるかに関わらず、安全性に対する大きな要請が存在する。
【0005】
外骨格は、人々を安全に保つための比類のない機会を提供し得る。「安全」には、転倒を防止すること、装着者の安定性を維持すること、関節への負荷を制限することなどが含まれる。この方向での多くの研究が行なわれており、その多くが性能の強化に焦点をあてたものである。
【発明の概要】
【0006】
本開示の態様は、ユーザの四肢および胴体用の動力付き外骨格またはエクソスーツ(exosuit)のためのシステムおよび方法を提供する。エクソスーツには同様に、スーツのさまざまな場所に組付けられたエアバッグデバイスが備わっていてよい。エクソスーツは、検知し、実時間で制御コマンドを計算し、四肢およびエアバッグを作動させて安定性を回復し(転倒防止)、万一転倒が発生した場合には転倒に起因する負傷を最小限に抑える(転倒保護)ことのできる搭載型計算機器を含み得る。
【0007】
一態様によると、ウェアラブルデバイスが提供されており、このウェアラブルデバイスは、フレームとこのフレームに対して動作可能に結合された少なくとも1つのロボット関節とを含み得る。少なくとも1つのセンサをこのフレームに結合することができる。センサは、フレームの運動を検知するように構成され得る。少なくとも1つのロボット関節および少なくとも1つのセンサにコントローラが結合されていてよい。コントローラは、フレームの運動から事象を検出し、事象に応答して少なくとも1つのロボット関節を作動させるように構成され得る。
【0008】
本開示の別の態様によると、ユーザによる転倒に対抗する方法が提供されている。1つ以上のユーザ選好性(preferences)を含めたユーザプロファイルをロードすることができる。フレームに結合されたセンサにより運動事象を検知することができる。センサから得られたデータにしたがって運動事象を分類することができる。分類およびユーザプロファイルに基づいて事象に応答してフレームに結合されたロボット関節を作動させることができる。
【0009】
以下の詳細な説明をより良く理解できるように、本開示の特徴および技術的利点をかなり大まかに概略説明した。本開示の付加的な特徴および利点は、以下で説明される。当業者であれば、本開示と同じ目的を実施するための他の構造を修正または設計するためのベースとして、本開示を容易に利用できるということを認識するものである。同様に、当業者であれば、このような等価の構造が、添付のクレームに明記されている本開示の教示から逸脱するものでないことをはっきりと理解するはずである。その組織および動作方法の両方に関して、本開示の特徴であると考えられている新規の特徴部は、さらなる目的および利点と共に、添付図面と関連させて考慮した場合により良く理解できるものである。しかしながら、図の各々は単に例示および説明を目的として提供されているにすぎず、本開示の限界を定義するものとして意図されていないということを明示的に理解すべきである。
【0010】
本開示の特徴部、性質および利点は、図面と併せて取上げた場合に以下に明記された詳細な説明からより明確になるものであり、図面中同様の参照番号は全体を通して相応した識別を果たすものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の一態様に係る転倒する人物のイメージ図である。
【
図2】本開示の一態様に係るエクソスーツを装着したユーザのイメージ図である。
【
図3A】本開示の一態様に係る転倒するユーザのイメージ図である。
【
図3B】本開示の一態様に係る転倒するユーザのイメージ図である。
【
図3C】本開示の一態様に係る転倒シーケンスのイメージ図である。
【
図4】本開示の一態様に係るウェアラブルエクソスーツのハードウェア実装の図である。
【
図5】本開示の一態様に係る転倒防止/保護動作の流れ図である。
【
図6】本開示の一態様に係る負傷を防止するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面に関連して以下で記述されている詳細な説明は、さまざまな構成の説明として意図されており、本明細書中に記載の概念を実践しうる唯一の構成を表現するように意図されたものではない。詳細な説明には、さまざまな概念を徹底的に理解できるようにするための具体的な詳細が含まれている。しかしながら当業者にとっては、これらの概念をこれらの具体的詳細無しで実践することができるということは明白である。いくつかの事例においては、このような概念を不明瞭にすることを避ける目的で、ブロック図の形で周知の構造および構成要素が示されている。
【0013】
本開示の態様は、装着者またはユーザを安全に保つように適応され構成されたエクソスーツを提供する。本開示との関連で「安全」なる用語には、非限定的に、転倒の防止、装着者の安定性の維持、関節への負荷の制限などが含まれ得る。この方向での多くの研究が性能の強化に焦点をあてているものの、本開示の態様には、ユーザの転倒または転倒による負傷を防止するための方法が含まれる。
【0014】
本明細書中に記載の通り、恐らくは高齢者であるユーザは、ユーザの四肢にフィットするように適応された動力付きエクソスーツを備えることができる。一態様によると、エクソスーツには、スーツのさまざまな場所に組付けられたエアバッグデバイスが備わっていてよい。エクソスーツは、本明細書中に記載の通り、検知し、実時間で制御コマンドを計算し、四肢およびエアバッグを作動させて安定性を回復し(すなわち転倒防止)、万一転倒が発生した場合には転倒に起因する負傷を最小限に抑える(すなわち転倒保護)ことのできる搭載型計算機器を含み得る。
【0015】
例えば、ユーザがつまずくかまたはぬれた床上で滑って前向きに転倒した場合、システムは脚部を作動させるかまたは質量中心を後ろ向きに調整することによってその人を自分の足の上にとどまらせようとすることができる。これが失敗した場合には、胸部上のエアバッグが展開して、前腕を転倒への軌道から外れて移動させることができる。人の四肢に作用する力の量は、その人の年令、医学的身体条件などに応じて調整される。エクソスーツは同様に小さいエアバッグを展開し、ユーザを保護し特に高齢者である場合にはユーザが支援無しで立ち上がるのを助ける場所に腕を置く能力をも有し得る。エクソスーツは同様に、ヘルスケア提供者と通信して提供者に転倒または潜在的負傷について通知する能力を有するソフトウェアおよびハードウェアを含むこともできる。
【0016】
図1は、本開示の一態様に係る転倒する人102のイメージ
図100を描いている。人102が氷の上または他の何らかの表面上で滑ってバランスをくずして前向きに転倒するとき、その人102は本能的にかつ無意識に腕と手106を伸ばして、地面105または何らかの他の表面に対する衝撃に対し身構える可能性がある。その人102は、自らの腕、手首および手106を用いて衝撃を吸収し、頭104を地面105に打ちつけるのを軽減または防止するように、本能的に行動し得る。同様にして、人102が後向きに転倒しかけたとすると、その人102は腕、手首および手106を後へ延ばして、恐らくは頭部、背中または臀部が地面105に激突するのを避けるため、身構えて地面105との衝撃を吸収することができる。
【0017】
残念なことに、特に高齢者においては、腕、手首および手は、衝撃吸収力が低く、多くの場合重傷を負う可能性が高く、転倒した人が転倒後に立ち上がる能力を妨げることが多い。本開示の態様は、理想的には第1の事例において転倒を防止することができるだけでなく、四肢、例えば腕、手首、手、頸部などを含めた装着者の体を、転倒による負傷を最小限に抑え得る位置へと連接することもできるウェアラブルエクソスーツを提供する。
【0018】
図2は、本開示の一態様に係るエクソスーツ202を装着した人102のイメージ
図200である。一態様によると、エクソスーツ202は、連接式上肢205と連接式下肢207を伴うウェアラブルスーツまたはデバイスを含み得る。連接式上肢205は、コアユニット210およびウエストユニット212に対し動作可能に結合された肩関節208、肘関節209および手首関節206を含むことができる。連接式下肢207は、コアユニット210およびウエストユニット212に対し動作可能に結合された膝関節211および踝関節213を含み得る。エクソスーツ202の関節の各々は、ユーザの対応する関節と全体的に整列するように構成され得る。各関節は、対応するユーザの関節と類似する回転および運動を可能にするため最大6つの自由度を含み得る。エクソスーツ202は同様に、コアユニット210に対して動作可能に結合された頭部/頸部ユニット204も含むことができる。
【0019】
一態様によると、エクソスーツ202は、非限定的に、当該技術分野において公知の通りのモータ、サーボ、ストラット、ブレースなどを含めた追加のロボットの構造的および動作構成要素を含むことができる。このような構造的および動作構成要素は、本明細書中で論述されているパラメータおよびアーキテクチャにしたがって物理的にエクソスーツを連接するのに役立つ。例えば、エクソスーツは、本開示中で説明されている転倒防止および保護アーキテクチャを達成するためにユーザの身体の各部分を移動、回転そして他の形で位置付けするように構成された構造的および動作構成要素を含むことができる。
【0020】
図3Aは、本開示の一態様に係る転倒する人102のイメージ
図300Aを描いている。一態様によると、例えば高齢者102が、可動性の向上、転倒防止または負傷防止を含めたその支援目的のためにエクソスーツ202を装着し得る。
図3Aに描かれているように、人102は、地面105に向かって後ろ向きに転倒し始めた。人102は、転倒の衝撃に対し自ら身構えるかまたは衝撃を和らげようとして、本能的に腕を後向きそして下向きに地面105に向かって伸ばす可能性がある。しかしながらこのような運動は、この人102の手、手首、肘または肩に対する負傷のリスクをより大きくし得る。
【0021】
一態様によると、
図3Bのイメージ図に描かれているように、エクソスーツ202は、転倒を検知し検出した時点で、負傷を最小限に抑えるように設計された位置にその人102を位置付けするように作用し得る。例えば、エクソスーツ202はコアユニット210およびウエストユニット212を作動させて、ユーザに腰を回転させ、ユーザの腰ではなくむしろ臀部が地面105に正面から激突するようにすることができる。さらに、エクソスーツ202は、ユーザの腕を上向きまたは外向きに連接させて、腕をブレースとして使用するのを防ぎ、ひいては手、手首、肘または肩に対する有害な衝撃を防止することができる。頭部/頸部ユニット204は同様に作動してユーザの頭部および頸部を起こし、地面105との衝突を防止するかまたは最小限に抑えることができる。
【0022】
エクソスーツ202が、ユーザの臀部が転倒からの衝撃の大部分を担うような形でユーザを位置付けした一方で、より繊細でかつ負傷を受けやすい身体部分は、衝撃ゾーンから離れるように移動させられている。ユーザの臀部は、骨および関節を取り囲むより多くの脂肪および筋肉組織を含み、このため、この身体部分は地面からの衝撃を受けるのにより望ましい身体部分となっている。
【0023】
一態様によると、エクソスーツには、転倒が検知された時点で展開しこれによりユーザの身体と地面105の間のクッションを提供する1つ以上のエアバッグ214を装備することができる。
図3Bの図は、ユーザの臀部上への後ろ向きの転倒、ひいては臀部と地面105の間のエアバッグ214の展開を描いているものの、エアバッグは、転倒の検知された方向およびユーザの身体の潜在的に衝撃を受ける部分に応じて選択的に展開させられるべく、エクソスーツの任意の部分内そしてユーザの身体の任意の部分の周りに配置され得る。例えば、人102が一続きの階段を転がり落ちる場合、エクソスーツは打撃を弱めるため衝撃の前に1つ以上のエアバッグを展開させることによって、転倒に起因する重大な負傷を防止することができる。一態様によると、本明細書中で説明されているように、エクソスーツは同様に、転倒の速度を低下させ頭部、脊柱、手首などに対する負傷を防止するために転倒中にユーザの腕および脚部の運動を適時に作動させることもできる。
【0024】
さらに、
図3Aおよび3Bのエクソスーツ202は、人102の上半身を制御するエクソスーツを描いているものの、当業者であれば、エクソスーツは、ユーザの脚部を含めるように拡張され得るということを認識するものである。エクソスーツのサイズおよび網羅範囲は、ユーザ、ユーザーの特定の身体的または健康上の素因または他の問題によって左右され得る。本明細書中に記載のエクソスーツ202は、ユーザの任意の数の関節、末端部または他の身体部分をカバーし制御するように、適応され、最大化または最小化され得る。
【0025】
一態様によると、エクソスーツは、転倒の予防を支援するように構成され、こうして転倒による潜在的負傷を無くすることができる。
図3Cは、時間tにわたる転倒シーケンス300Cを描いており、ここでは人102が転倒し始め、エクソスーツは潜在的転倒を検知した時点で人102が転倒に対抗し自らのバランスを取り戻すような形で身体を動かすのを支援する。
図3Cに描かれているように、時点(a)において、ユーザは、立っているか、歩いているかまたは他の形で正常に動いている可能性がある。時点(b)において、ユーザは滑るか、バランスをくずすかまたは他の形で前向きに転倒し始める可能性がある。時点(c)では、人102が転倒状態に入り、エクソスーツは転倒を是正し転倒から引き戻そうとして反応し得る。エクソスーツ202は、転倒の方向に対抗して腕、腰、頭部または他の動作可能に結合された身体部分をシフトさせることができる。時点(d)において、エクソスーツは、四肢、コアユニット、ウエストユニットおよび/または頭部/頸部ユニットを作動させることによって、人102をより直立した位置に戻している可能性がある。時点(e)においては、エクソスーツは、転倒モーションまたは初期逆転倒モーションに対抗して、時点(f)で示されているユーザのバランスおよび平衡を再度確立するべく、ユーザの身体を作動させ続けることができる。こうして、エクソスーツは、人102が転倒するのを防ぎ、ひいてはあらゆる負傷を防ぐことができる。
【0026】
図4は、本開示の態様に係る転倒防止/保護システム400のためのハードウェア実装の例を示す図である。転倒防止/保護システム400は、外骨格、エクソスーツ、ガーメント、ロボットデバイスまたは他のデバイスの一構成要素であり得る。例えば、
図4に示されているように、転倒防止/保護システム400は、ウェアラブルエクソスーツ428の一構成要素であり得る。ガーメントおよび他のデバイスを含む他のデバイスも同様に転倒防止/保護システム400の使用のために企図されていることから、本開示の態様は、転倒防止/保護システム400がエクソスーツ428の一構成要素であることに限定されない。
【0027】
転倒防止/保護システム400は、概してバス430によって代表されるバスアーキテクチャを用いて実装可能である。バス430は、転倒防止/保護システム400の具体的利用分野および全体的設計制約条件に応じて、任意の数の相互接続用バスおよびブリッジを含み得る。バス430は、プロセッサ420、通信モジュール422、ロケーションモジュール418、センサモジュール402、作動モジュール426、プラニングモジュール424およびコンピュータ可読媒体414により代表される、1つ以上のプロセッサおよび/またはハードウェアモジュールを含めたさまざまな回路を共にリンクすることができる。バス430は同様に、タイミングソース、周辺装置、電圧レギュレータおよび電力管理回路などのさまざまな他の回路をリンクすることもでき、これらは当該技術分野において周知であり、したがってこれ以上詳述しない。
【0028】
転倒防止/保護システム400は、プロセッサ420、センサモジュール402、エクソスーツ制御システムモジュール408、通信モジュール422、ロケーションモジュール418、作動モジュール426、プラニングモジュール424およびコンピュータ可読媒体414に結合された送受信機416を含むことができる。送受信機416は、アンテナ434に結合されている。送受信機416は、伝送媒体上で他のさまざまなデバイスと通信する。例えば、送受信機416は、サーバまたは遠隔デバイス、例えば監視サービスへまたはそこからの伝送を介してコマンドを送受信することができる。別の例として、送受信機416は、エクソスーツ制御システムモジュール308からサーバ(図示せず)まで、ステータス、データ、統計および他の情報を伝送し得る。
【0029】
エクソスーツ制御システムモジュール408は、コンピュータ可読媒体414に結合されたプロセッサ420を含むことができる。プロセッサ420は、本開示に係る機能性を提供するコンピュータ可読媒体414上に記憶されたソフトウェアの実行を含めて、処理を行なうことができる。ソフトウェアは、プロセッサ420により実行された時点で、転倒防止/保護システム400に、特定のデバイス、例えばエクソスーツ428またはモジュール402、408、414、416、418、420、422、424、426のいずれかについて説明されたさまざまな機能を行なわせる。コンピュータ可読媒体414は同様に、ソフトウェアを実行する時点でプロセッサ420により操作されるデータを記憶するためにも使用可能である。
【0030】
センサモジュール402は、第1のセンサ406、第2のセンサ404および第3のセンサ410などの異なるセンサを介して測定値を得るために使用されてよい。第1のセンサ406は、モーションセンサ、例えば加速度計、ジャイロスコープ、慣性測定ユニットなどであってよい。第2のセンサは、視覚センサ、例えばステレオカメラ、赤緑青(RGB)カメラ、LIDARまたはRADARを含み得る。第3のセンサ404は、心拍数モニタ、血中酸素センサなどのヘルスセンサであり得る。ヘルスセンサは、転倒後のユーザの健康情報を、送受信機416または通信モジュール422を介して外来またはヘルスケア提供者に提供するように構成されていてよい。当然のことながら、センサ404、406、410のいずれかについて、例えば熱センサ、ソーナーおよび/またはレーザなどの他のタイプのセンサも企図されることから、本開示は上述のセンサに限定されない。センサ404、406、410、406の測定値は、本明細書中に記載の機能性を実装するためにコンピュータ可読媒体414と併用して、プロセッサ420、センサモジュール402、物体追跡モジュール408、通信モジュール422、ロケーションモジュール418、作動モジュール426、プラニングモジュール424のうちの1つ以上によって処理され得る。1つの構成においては、第1のセンサ406、第2のセンサ304、および第3のセンサ406によって捕捉されたデータは、送受信機416を介して外部デバイスに伝送され得る。センサ404、406、410は、エクソスーツ428に結合されてよく、または車428と通信状態にあってもよい。
【0031】
ロケーションモジュール418は、エクソスーツ428の場所を決定するために使用可能である。例えば、ロケーションモジュール418は、エクソスーツ428の場所を決定するために全地球測位システム(GPS)を使用することができる。例えば、転倒防止/保護システム400は、外来サービスまたは他の医療提供者などの遠隔監視サービスと通信する能力を有し得る。転倒が検出またはトリガされた場合、転倒防止/保護システム400は、エクソスーツ428の場所を伝送し、該サービスが容易にユーザの場所を特定しユーザに支援を送ることができるようにし得る。
【0032】
通信モジュール422は、送受信機416を介した通信を容易にするために使用可能である。例えば、通信モジュール422は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi、ロングタームエボリューション(LTE)、3G、5Gなどの異なる無線プロトコルを介した通信能力を提供するように構成され得る。通信モジュールは同様に、医師、緊急治療室または救急オペレータなどのヘルスケア提供者とユーザの間に通信チャネルを確立するように構成されていてもよい。通信モジュールは、重度の負傷またはバイタルサインの欠如を検出した時点で、ユーザの電話、搭載型通信デバイスなどとの接続を通してヘルスケア提供者との通信を確立することができる。通信モジュール422は同様に、エクソスーツ制御システムモジュール408のモジュールではないエクソスーツ428の他の構成要素と通信するためにも使用可能である。
【0033】
作動モジュール426は、エクソスーツ428の作動を促し制御するために使用可能である。一例として、作動モジュール426は、四肢、コアユニット、ウエストユニット、頭部/頸部ユニットおよび/またはエクソスーツ428の他の可動構成要素の運動を制御することができる。別の例として、作動モジュール426は、バッテリなどのエクソスーツ428の電源と通信状態にあってよい。
【0034】
転倒防止/保護システム400は同様に、検出されたまたは潜在的な転倒に対する応答を計画し、作動モジュール426を介してエクソスーツ428の作動を制御するためのプラニングモジュール424も含むことができる。プラニングモジュール424は、作動された場合にエクソスーツ428がどのように応答し得るかを規定する命令または設定値セットを含むことができる。例えば、ユーザの運動の方向、速度、配向を詳述するセンサ404、406、410のいずれかからの信号に応じて、プラニングモジュールは、転倒を防止するかまたは転倒中にユーザを保護するための是正または予防措置により応答することができる。
【0035】
一つの構成において、プラニングモジュール424は、健康素因にしたがって定義または設定されたユーザ選好性またはプロファイルにしたがった転倒に対する予測された応答を含むかまたは提供することができる。例えば、エクソスーツ202は、転倒後または転倒中に、既存の背部負傷に起因して、脇での着地または座位への着地などの特定化されたプロファイルが、背部での着地よりも好ましいものであり得ることを仮定して、容易に立ち直ることのできる位置にユーザを位置付けることができる。同様にして、ユーザは腰が悪いかまたは以前腰を痛めたことがある場合、プラニングモジュールは、可能な限り腰への大きな衝撃を避けるために転倒中または転倒後のいずれかにおいてユーザを座位にまたは臀部上などに位置付けするように構成されたプロファイルを定義することができる。プラニングモジュール424ならびに本明細書中に記載の他のモジュールは、プロセッサ420内で実行し、コンピュータ可読媒体414内に常駐するか記憶されたソフトウェアモジュール、プロセッサ420に結合された1つ以上のハードウェアモジュールまたはそれらの何らかの組合せであり得る。
【0036】
エクソスーツ制御システムモジュール408は、センサモジュール402、送受信機416、プロセッサ420、通信モジュール422、ロケーションモジュール418、作動モジュール426、プラニングモジュール424およびコンピュータ可読媒体414と通信状態にあり得る。1つの構成において、エクソスーツ制御システムモジュール408は、センサモジュール402からセンサデータを受信することができる。センサモジュール402は、センサ404、406、410からセンサデータを受信し得る。本開示の態様によると、センサモジュール402は、データをフィルタリングしてノイズを除去し、データをエンコードし、データをデコードし、データをマージし、あるいは他の機能を果たすことができる。代替的構成において、エクソスーツ制御システムモジュール408は、センサ404、406、410から直接センサデータを受信することができる。
【0037】
図4に示されているように、エクソスーツ制御システムモジュール408は、感知されたユーザの運動を検出し、分析し、それにしたがってエクソスーツ428を動作させるために、プラニングモジュール424および作動モジュール426と通信状態であってよい。本明細書中に記載の通り、エクソスーツ制御システムモジュール408は、センサモジュール402および他からのデータを分析して、転倒、潜在的転倒、転倒前または転倒後のユーザの位置、またはユーザの健康状態を、本明細書中に記載の通りに検出することができる。
【0038】
図5は、本開示の一態様に係る、転倒保護/防止動作の流れ
図500を描いている。一態様によると、システムは、ブロック510に示されているように、高度にパーソナライズされたユーザ選好性および健康素因のセットを定義することができる。例えば、一定の健康状態、年令的制約または可動性制限を有するユーザにシステムをパーソナライズすることができる。これらの制限は、システムが潜在的転倒または実際の転倒に対しどのように応答するかを規定し得るユーザプロファイルの中に含まれる可能性がある。例えば、腰の具合が悪いかまたは腰を痛めているユーザは、転倒中にその腰を地面に激突させるのを避けるためにユーザの四肢および胴体を連接させるようにシステムに情報提供するプロファイルを含み入れることができる。同様に、公知の身体条件に起因して、ユーザの一方の腕または脚がより強い場合、システムは、その情報を頼りに、強さの欠如を補償するべくユーザの四肢を適切に連接させることができる。
【0039】
一態様によると、制御システムおよび/またはプラニングモジュールは、ブロック505に示されているように転倒防止動作を開始すべきかまたはブロック520に示された転倒保護動作を開始すべきかを決定することができる。転倒防止動作は、ユーザを直立状態に保つため、慣性加速、関節位置および任意の外力(または力の推定値)の搭載型コントローラによる検知にしたがって、ユーザの四肢を動的に調整し得る。制御システムは、ユーザを安定化するため、加えられた最大四肢力、最大四肢速度および関節限界を考慮に入れるコスト関数を最適化するように設計され得る。これには、ユーザの粗いモデルが必要とされ、スーツ自体の上で各肢に組付けられた力センサを介してスーツのアクチュエータに対する逆抵抗が考慮され得る。一態様によると、ユーザは、モデリングされていない攪乱信号として処理され得る。これには同様に、関節角度を測定するセンサ、および身体の加速度を測定するための慣性測定ユニット(IMU)が必要とされ得る。この制御は、モデル予測制御(MPC)または類似の最適制御方法を用いてオンラインで行なうことができる。
【0040】
転倒防止モジュールはさらに、安定性包絡線推定を含み得る。安定性包絡線は、ユーザの安定した状態の条件および境界を定義するモデルベース分析を含み得る。例えば安定性包絡線は、ゼロモーメントポイントの概念に基づくものであり得る。ゼロモーメントポイントは、地面と足の接点における動的反力が水平方向でいかなるモーメントも生成しない点を規定する。それは、水平方向の慣性および重力の合計がゼロに等しい点である。一態様によると、ゼロモーメントポイントは、足位置および他のパラメータに基づいて支持多角形内部の決定済み質量中心を保つために使用可能である。ゼロモーメントポイントの概念は、動的歩行を説明するために拡大可能であるが、その代償として計算コストがさらに高い方法を使用しなければならない。例えばゼロモーメントポイントを用いて安定性包絡線を測定するにあたっては、ユーザの質量、重心および重心の加速度を含め、推定すべきパラメータが存在する。パラメータのいくつかは、例えばアプリケーション内にそのような情報を入力することによってユーザが全体的または部分的に決定することのできるものである。他のパラメータは、オンラインで推定され得る。
【0041】
システムは、安定性包絡線内部にユーザを保ちこうして転倒を防止しようとしてエクソスーツの作動を駆動することができる。しかしながら、システムが安定性包絡線の境界を超える運動を検出した場合、ブロック510に示されているように、転倒検出動作を実行することができる。安定性包絡線からの逸脱を超えた転倒の検出は、ユーザの加速度、運動角度および方向を含めたセンサからの情報を所与として、モデルベース推定によって定義可能である。この決定は同様に、以上で詳述されたゼロモーメントポイントに基づくものでもあってよい。
【0042】
転倒が検出された場合、ブロック515内に示された転倒分類動作により、非限定的に顔からの転倒、脇からの転倒、背中からの転倒、頭からの転倒などを含めて、多くの予め定義された転倒部類にしたがって、発生している転倒のタイプを決定することができる。ひとたび転倒が分類されると、プラニングモジュールは、ブロック520中に示されている転倒保護動作を実行することができる。
【0043】
一態様によると、転倒保護動作中、システムはコントローラを用いて四肢を調整することができるが、安定性について最適化するよりもむしろ、制御目的は身体のさまざまな部分の衝撃強度について最適化することにあり得る。一態様によると、この目的により、各項が身体の特定の部分の衝撃力を考慮するさまざまな項の加重和であるコストを最小化することができる。例えば、スーツは、頭、手首、膝、背中、胸部、臀部および肩の衝撃時の力を最小限に抑えることを目的としてよく、ここで臀部には比較的小さい重みが付与され(したがってより多くの力がかかるのが好ましい)、頭部には比較的大きな重みが付与される(したがってより少ない力がかかるかまたは全く力がかからないことが好ましい)と思われる。転倒保護には、人間の転倒のモデルが必要となる可能性があり、MPCを用いて解決され得る。
【0044】
転倒保護動作は、転倒から発生するあらゆる負傷を最小限に抑えるように四肢の位置を定義し制御することができる。例えば、ユーザが後向きに転倒しているものと感知された場合、転倒保護動作はシステムに命令して腕および頭を前向きに位置付けすることができる。ユーザが前向きに転倒している場合、転倒保護動作は、手を前方に位置付けしユーザの胴をねじって肩で着地するようにシステムに命令することができる。さらに、一実施形態によると、1つ以上のエアバッグを展開させて負傷を防止することができる。
【0045】
本開示の一態様によると、エクソスーツデバイスによるユーザの保護方法は、電話またはコンピュータアプリケーションを介して特定の人物に微調整され得る。ユーザは、自らの年令、体重、性別、身体障害、妊娠の有無を含めた健康状態を入力することができる。ユーザが転倒しているかまたは危険にさらされている場合、エクソスーツは、スーツによりひき起こされる突然の運動および揺れまたは転倒自体による衝撃のいずれかによって身体の繊細な部分に過度の応力を加えることなくユーザを安全に保つような形で応答し得る。例えば、システムは、妊婦をその胴体よりも四肢上での着地を優先させることによって保護することができる。骨粗しょう症を患う高齢者については、スーツは、骨、特に脊柱上の応力を削減するような形での着地を優先させることができる。システムは同様に、特定の年令群の転倒により受けた負傷に関連する統計を考慮に入れることができ、その後、転倒保護コスト関数において衰弱させる可能性が最も高いものの防止を考慮し得る。
【0046】
転倒防止/保護動作を行なった後、システムは、ブロック525に示されているように、転倒後の分類を実行することができる。一態様によると、システムは、例えばうつぶせ(face-down)、横向き(side-down)、上向き(back-down)などのユーザの配向を決定することができる。このような分類は、ブロック530に示されているように、転倒からの回復動作においてユーザを支援するための努力の一環として行なわれ得る。システムは、起立位置に戻ることであるかまたはさらなる支援が来る安全な位置へと方向転換することであるかかかわらず、ユーザが転倒から回復するのを支援するための位置にユーザの四肢を位置付けることができる。
【0047】
転倒回復動作の別の態様によると、システムは、1つ以上の診断手順を実行することができる。システムは、スーツに対する衝撃をスーツ自体の状態をチェックすることによって査定し、同様に、転倒中にユーザに加えられた力を計算することによりユーザに対する考えられる損傷をも査定することができる。さらに、システムは、必要な場合ユーザに対し医者を受診するよう助言するかあるいは緊急性を認識した場合には直接電話(119)を呼び出すことができる。別の態様によると、システムはメンテナンスのためそれ自体の損傷を報告するため製造業者に連絡することができる。
【0048】
本開示の別の態様によると、エクソスーツを用いて転倒による負傷を防止する方法が提供されている。
図6は、本開示の一態様に係る転倒に対抗するための例示的方法の流れ
図600である。ブロック602中に示されているように、ユーザプロファイルがエクソスーツによってロードされる。本明細書中に記載されているように、エクソスーツはこのようなユーザプロファイルを記憶するためのメモリ、およびユーザプロファイルをロードするための処理用ハードウェアおよびソフトウェアを含み得る。ユーザプロファイルは、一態様によると、転倒事象に対抗するときにユーザを保護する上でエクソスーツが使用すべきユーザ固有情報およびパラメータを含むことができる。
【0049】
ブロック604に示されているように、エクソスーツは、エクソスーツのフレームに結合された1つ以上のセンサを通して運動事象を検知することができる。本明細書中に記載されているように、センサおよびエクソスーツプロセッサは、ユーザの正常な体位を定義する安定性包絡線およびユーザプロファイルに基づいて運動事象を検出し決定するように構成され得る。検知された運動が安定性包絡線を超える運動を標示している場合、エクソスーツは、例えばブロック606に示されているような転倒防止事象または転倒保護事象を含め、1つ以上のプロファイルにしたがって運動事象を分類することができる。システムは、運動を転倒予防事象として分類した場合、運動事象に対抗するために転倒防止運動を開始することができる。例えば、システムは、ユーザの運動が転倒の高い尤度を標示しているものの是正可能であり得ると決定した場合、運動に対抗しユーザがバランスおよび安定した位置を再度確立するのを助けるべく、エクソスーツおよびエクソスーツの1つ以上のロボット関節の運動を開始させることができる。
【0050】
システムは、運動事象を転倒保護事象として分類した場合には、ブロック610内に示されているように、転倒保護運動を開始させることができる。例えば、運動事象が安定性包絡線を超えていて転倒が確実である場合、システムは転倒保護運動を開始させることができる。本明細書に記載されているように、転倒保護運動には、エクソスーツがその1つ以上のロボット関節を作動させて、転倒中のユーザに対する負傷を最小限に抑えることのできる位置へとユーザの胴体および四肢を操作することが含まれ得る。これには、ユーザの腕を起こして手首への有害な衝撃を回避すること、ユーザの頭部を起こし身構えさせること、または本明細書中に記載のこのような他の運動が含まれ得る。
【0051】
転倒防止運動または転倒保護運動の後、ブロック612に示されているように、システムは転倒回復動作を開始させることができる。本明細書中に記載されているように、転倒回復動作には、ユーザが立ち上がるのを支援するかまたはさらなる支援を待つための位置にユーザを位置付けすることが含まれ得る。これには同様に、医療提供者または医師、病院、救急オペレータ、第一対応者などを含めた他の提供者に対して、要請および他の情報を伝送することも含まれ得る。診断および分析情報は、セーブされ、製造業者または他のサービス提供者に対して伝送され得る。
【0052】
本開示の態様は高齢者または身体障害者により装着されるべきエクソスーツを記述しているものの、本開示は、それに限定されない。例えば、本明細書中に記載のエクソスーツシステムは、歩行者の安全性のために実装され得る。通りを横断する装着者が車両または他の道路と衝突する危険にさらされているまたはすでにこれと衝突した状態にある場合、エクソスーツは、本明細書中に記載の通り、衝撃からこうむるあらゆる負傷を最小限に抑えるために応答し得る。
【0053】
建設または工場の環境における開示されたシステムの実践的応用の別の例としては、移動する部品または機械との衝突または転倒によって受ける負傷を防止するかまたは緩和するためにエクソスーツの展開可能なエアバッグまたは戦略的四肢の作動を使用することには有利な条件が存在する。
【0054】
教示に基づいて、当業者であれば、本開示の範囲が、本発明の任意の他の態様とは独立して実装されるかまたはそれと組合されて実装されるかに関わらず、本開示のあらゆる態様を網羅するように意図されている、ということを認識するはずである。例えば、記載の態様のうちの任意の数のものを使用して、装置を実装するかまたは方法を実施することが可能である。さらに本開示の範囲は、記載された本開示のさまざまな態様に加えたまたはこれらの態様以外の他の構造、機能性または構造と機能性を使用して実践されたこのような装置または方法を網羅するように意図されている。本開示のいずれかの態様は、クレームの1つ以上の要素によって具体化され得るということを理解すべきである。
【0055】
「例示的」なる用語は、本明細書において、「1つの例、事例または例証として役立つ」ことを意味するために使用されている。本明細書中で「例示的」として説明されているあらゆる態様は、必ずしも、他の態様に比べて選好されるものまたは有利なものとしてみなされるべきではない。
【0056】
本明細書中では特定の態様が説明されているものの、これらの態様の多くの変形形態および置換が、本開示の範囲内に入る。好ましい態様のいくつかのメリットおよび利点に言及されているものの、本開示の範囲は、特定のメリット、用途または目的に限定されるように意図されていない。むしろ、本開示の態様は、異なる技術、システム構成、ネットワークおよびプロトコルに対し広く応用可能となるように意図されており、そのうちのいくつかが、図中および好ましい態様についての以下の説明中に実施例として示される。詳細な説明および図面は、本開示を限定するものというよりもむしろ単に例示するものであり、本開示の範囲は、添付のクレームおよびその等価物によって定義されている。
【0057】
本明細書中で使用される「決定する」なる用語は、さまざまなアクションを包含する。例えば「決定する」は、計算する、演算する、処理する、導出する、調査する、参照する(表、データベースまたは別のデータ構造内を参照する)、確認する、などを含み得る。さらに、「決定する」には、受信する(例えば情報を受信する)、アクセスする(例えばメモリ内のデータにアクセスする)なども含まれ得る。さらに、「決定する」には、解決する、選定する、選択する、実証するなども含まれ得る。
【0058】
本明細書中で使用されている、アイテムリストの「うちの少なくとも1つ」に言及する言い回しは、単一の構成員を含め、これらのアイテムの任意の組合せを意味する。一例として、「a、bまたはcのうちの少なくとも1つ」は、a、b、c、a-b、a-c、b-cおよびa-b-cを網羅するように意図されている。
【0059】
本開示に関連して説明されているさまざまな例示的論理ブロック、モジュールおよび回路は、本開示中で論述されている機能を行なうように特別に構成されたプロセッサを用いて実装または実施され得る。プロセッサは、ニューラルネットワークプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ信号(FPGA)または他のプログラマブル論理デバイス(PLD)、離散的ゲートまたはトランジスタ論理、離散的ハードウェアコンポーネントまたは、本明細書中に記載の機能を行なうように設計されたそれらの任意の組合せであってよい。代替的には、処理システムは、本明細書中に記載のニューロンモデルおよび神経系モデルを実装するための1つ以上の神経形態学的プロセッサを含み得る。プロセッサは、本明細書中で説明されている通りに特別に構成されたマイクロプロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラまたは状態機械であってよい。プロセッサは同様に、コンピュータデバイスの組合せ、例えばDSPとマイクロプロセッサの組合せ、複数のマイクロプロセッサ、DSPコアと併せた1つ以上のマイクロプロセッサまたは、本明細書中に記載されているような他の特別な構成としても、実装可能である。
【0060】
本開示と関連して説明されている方法またはアルゴリズムのステップは、直接ソフトウェアの形で、またはプロセッサによって実行されるソフトウェアモジュールの形で、またはこれら2つの組合せの形で具体化され得る。ランダムアクセスメモリ(RAM)、読取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能プログラマブル読取り専用メモリ(EEPROM)、レジスタ、ハードディスク、取外し可能ディスク、CD-ROMまたは他の光ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置または他の磁気記憶デバイスあるいは命令またはデータ構造の形で所望のプログラムコードを搬送または記憶するために使用可能でかつコンピュータによってアクセス可能である任意の他の媒体を含めた、記憶装置または機械可読媒体の中に、ソフトウェアモジュールが常駐していてよい。ソフトウェアモジュールは、単一の命令または多くの命令を含むことができ、複数の異なるコードセグメント全体にわたって、異なるプログラムの間で、および多数の記憶媒体を横断して、分散されていてよい。プロセッサが記憶媒体から情報を読取り、記憶媒体に情報を組込むことができるように、プロセッサに対して記憶媒体を結合させることができる。変形形態において、記憶媒体はプロセッサに一体化されていてよい。
【0061】
本明細書中で開示されている方法には、説明されている方法を達成するための1つ以上のステップまたはアクションが含まれている。方法ステップおよび/またはアクションは、クレームの範囲から逸脱することなく互換可能であり得る。換言すると、ステップまたはアクションの具体的順序が規定されているのでないかぎり、具体的ステップおよび/またはアクションの順序および/または使用は、クレームの範囲から逸脱することなく修正可能である。
【0062】
説明された機能は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはそれらの任意の組合せの形で実装され得る。ハードウェアで実装される場合、例示的ハードウェア構成には、デバイス内の処理システムが含まれ得る。処理システムは、バスアーキテクチャを用いて実装され得る。バスは、処理システムの具体的利用分野および全体的な設計上の制約に応じて、任意の数の相互接続用バスおよびブリッジを含むことができる。バスは、プロセッサ、機械可読媒体およびバスインタフェースを含めたさまざまな回路を共にリンクさせることができる。バスインタフェースは、とりわけネットワークアダプタを、バスを介して処理システムに接続するために使用されてよい。ネットワークアダプタは、信号処理機能を実装するために使用可能である。いくつかの態様については、ユーザインタフェース(例えばキーパッド、ディスプレイ、マウス、ジョイスティックなど)も同様にバスに接続することができる。バスは同様に、タイミングソース、周辺機器、電圧レギュレータ、電力管理回路などのさまざまな他の回路をリンクさせることもできるが、これらは当該技術分野において周知でありしたがってこれ以上説明しない。
【0063】
プロセッサは、バスの管理、および機械可読媒体上に記憶されたソフトウェアの実行を含めた処理を担当し得る。ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語として言及されているかまたは他の形で言及されているかに関わらず、命令、データまたはそれらの任意の組合せを意味するとみなされるものとする。
【0064】
ハードウェア実装では、機械可読媒体は、プロセッサとは別個の処理システムの一部であり得る。しかしながら、当業者であれば容易に認識するように、機械可読媒体またはそのいずれかの部分は、処理システムの外部にあってよい。一例として機械可読媒体は、伝送ライン、データにより変調された搬送波、および/またはデバイスとは別個のコンピュータプロダクトを含むことができ、これらは全てバスインタフェースを通してプロセッサによりアクセス可能である。代替的にまたは付加的に、機械可読媒体またはそのいずれかの部分は、キャッシュおよび/または専門レジスタファイルの場合にそうであるように、プロセッサに内蔵されてよい。論述されたさまざまな構成要素は、ローカル構成要素のように特定のロケーションを有するものとして説明されているかもしれないが、いくつかの構成要素を分散型コンピュータシステムの一部として構成することなどのさまざまな形でこれらを構成することも可能である。
【0065】
機械可読媒体は、多くのソフトウェアを含み得る。ソフトウェアモジュールは伝送モジュールおよび受信モジュールを含むことができる。各々のソフトウェアモジュールは、単一の記憶デバイス内に常駐していても、あるいは多数の記憶デバイスを横断して分散されていてもよい。一例として、トリガ事象が発生したときハードドライブからRAM内に、ソフトウェアモジュールをロードすることができる。ソフトウェアモジュールの実行中、プロセッサは命令のいくつかをキャッシュ内にロードして、アクセス速度を増大させることができる。その後、プロセッサによる実行のため、特殊用途のレジスタファイル内に1つ以上のキャッシュラインをロードすることができる。以下でソフトウェアモジュールの機能性に言及するとき、このような機能性は、ソフトウェアモジュールからの命令を実行するときにプロセッサによって実装されるものとして理解されるものとする。さらに、本開示の態様は、プロセッサ、コンピュータ、機械またはこのような態様を実装する他のシステムの機能の改善を結果としてもたらすということを認識すべきである。
【0066】
ソフトウェアの形で実装された場合、機能は、1つ以上の命令またはコードとしてコンピュータ可読媒体上に記憶または伝送され得る。コンピュータ可読媒体には、1つの場所から別の場所へのコンピュータプログラムの転送を容易にするあらゆる記憶媒体を含めて、コンピュータ記憶媒体および通信媒体の両方が含まれる。
【0067】
さらに、本明細書中に記載の方法および技術を行なうためのモジュールおよび/または他の適切な手段を、ダウンロードすること、および/または該当する場合にはユーザ端末および/または基地局によって他の形で得ることができる、ということを認識すべきである。例えば、このようなデバイスをサーバに結合して、本明細書中に記載の方法を行なうための手段の転送を容易にすることができる。代替的には、本明細書中に記載のさまざまな方法を、記憶手段を介して得ることができ、こうしてユーザ端末および/または基地局は、記憶手段をデバイスに結合または提供した時点でさまざまな方法を得ることができる。その上、デバイスに対して本明細書中に記載の方法および技術を提供するための他のあらゆる好適な技術を利用することが可能である。
【0068】
クレームは以上で例示した厳密な構成および構成要素に限定されないということを理解すべきである。クレームの範囲から逸脱することなく上述の方法および装置の配設、動作および詳細にさまざまな修正、変更および変動を加えることが可能である。
【国際調査報告】