(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】改変インターロイキン22ポリペプチド及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20230518BHJP
C07K 14/54 20060101ALI20230518BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230518BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230518BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20230518BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20230518BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20230518BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230518BHJP
C07K 14/765 20060101ALI20230518BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230518BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20230518BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230518BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230518BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230518BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20230518BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230518BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230518BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230518BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230518BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230518BHJP
A61P 17/14 20060101ALI20230518BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230518BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230518BHJP
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A61P 1/18 20060101ALI20230518BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230518BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230518BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20230518BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230518BHJP
A61K 47/66 20170101ALI20230518BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230518BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230518BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230518BHJP
【FI】
C12N15/24 ZNA
C07K14/54
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N5/071
C12P21/02 K
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/765
A61K38/20
A61P37/02
A61P19/02
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A61P3/10
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A61P29/00
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A61P37/06
A61P1/18
A61K45/00
A61K31/7088
A61K35/12
A61K47/68
A61K47/66
A61K47/60
A61P43/00 105
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562560
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-12
(86)【国際出願番号】 US2021027805
(87)【国際公開番号】W WO2021212056
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503115205
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ レランド スタンフォード ジュニア ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ケナン クリストファー ガルシア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート アンドリュー サクストン
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス テオマン ヘンネバーグ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG03
4B064AG27
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4H045AA10
4H045AA30
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4H045BA41
4H045CA42
4H045DA02
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、一般に、インターロイキン22(IL-22)によって媒介されるシグナル伝達を調節するための組成物及び方法に関する。特に本開示は、インターロイキン10受容体サブユニットβ(IL-10Rβ)に対する結合親和性が改変された新規IL-22ポリペプチドバリアントを提供する。また、そのようなIL-22ポリペプチドバリアントを産生するのに有用な組成物及び方法、並びにIL-22媒介シグナル伝達を調節するための、及び/又はIL-22によって媒介されるシグナル伝達の混乱に関連する状態の治療のための方法も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えポリペプチドであって、
配列番号1のアミノ酸配列を有するインターロイキン22(IL-22)ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、
配列番号1のX43、X49、X45、X46、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換をさらに含む、組換えポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が、配列番号1のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に追加のアミノ酸置換をさらに含む、請求項1に記載の組換えポリペプチド。
【請求項3】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を低下させる、請求項1又は2に記載の組換えポリペプチド。
【請求項4】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、前記組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を増加させる、請求項1又は2に記載の組換えポリペプチド。
【請求項5】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、配列番号1のX43、X45、X46、X48、X49、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある、請求項1~4のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項6】
配列番号1のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせをさらに含む、請求項5に記載の組換えポリペプチド。
【請求項7】
前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項8】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、アラニン置換、アルギニン置換、アスパラギン酸置換、ヒスチジン置換、グルタミン酸置換、リジン置換、セリン置換、トリプトファン置換、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項9】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、配列番号1のD43、S45、N46、Q49、Q116、R124、及びR128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある、請求項1~8のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項10】
配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換:
(a)R55A;
(b)E117A;
(c)N46A/E117A;
(d)Q116A/R124A/R128A;
(e)Q116A/R124D/R128A;
(f)D43A/Q116A/R124A/R128A;
(g)S45E/Q116A/R124A/R128A;及び
(h)Q48A/Q116A/R124A/R128A、
に対応するアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド
【請求項11】
配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及びD43H、D43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、R124Y、及びR128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項12】
組換えポリペプチドであって、
配列番号6のアミノ酸配列を有するインターロイキン22(IL-22)と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列と、
配列番号6のX43、X45、X46、X49、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換をさらに含む、組換えポリペプチド。
【請求項13】
前記アミノ酸配列が、配列番号6のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に追加のアミノ酸置換をさらに含む、請求項12に記載の組換えポリペプチド。
【請求項14】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、前記組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を低下させる、請求項12又は13に記載の組換えポリペプチド。
【請求項15】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、前記組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を増加させる、請求項12又は13に記載の組換えポリペプチド。
【請求項16】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、配列番号6のX43、X45、X46、X48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある、請求項12~15のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項17】
配列番号6のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせをさらに含む、請求項16に記載の組換えポリペプチド。
【請求項18】
前記アミノ酸配列が、配列番号6のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む、請求項12~17のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項19】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、アラニン置換、アルギニン置換、アスパラギン酸置換、ヒスチジン置換、グルタミン酸置換、リジン置換、セリン置換、トリプトファン置換、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される、請求項12~18のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項20】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、配列番号6のE43、S45、N46、Q48、R55、Q116、E117、K124、Q128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある、請求項12~19のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項21】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、配列番号6と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換:
a)R55A;
b)E117A;
c)N46A/E117A;
d)Q116A/K124A/Q128A;
e)Q116A/K124D/Q128A;
f)E43A/Q116A/K124A/Q128A;
g)S45E/Q116A/K124A/Q128A;及び
h)Q48A/Q116A/K124A/Q128A、
に対応するアミノ酸置換をさらに含む、請求項12~20のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項22】
配列番号6と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及びE43H、E43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、Q124Y、及びQ128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換を含む、請求項12~20のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項23】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらす、請求項1~22のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項24】
前記組織選択的IL-22シグナル伝達が、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する、請求項23に記載の組換えポリペプチド。
【請求項25】
前記組織選択的IL-22シグナル伝達が、肝臓におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する、請求項23又は24に記載の組換えポリペプチド。
【請求項26】
前記1つ又は複数のアミノ酸置換が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、バイアス型IL-22シグナル伝達をもたらす、請求項1~25のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項27】
前記バイアス型IL-22シグナル伝達が、STAT1媒介性の炎症促進機能の低下を含むが、STAT3媒介機能は実質的に保持する、請求項26に記載の組換えポリペプチド。
【請求項28】
前記バイアス型IL-22シグナル伝達が、1:1.5~1:10の範囲のSTAT1媒介シグナル伝達とSTAT3媒介シグナル伝達の比を含む、請求項26又は27に記載の組換えポリペプチド。
【請求項29】
前記STAT1媒介シグナル伝達及び/又はSTAT3媒介シグナル伝達が、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)からなる群から選択されるアッセイによって決定される、請求項28に記載の組換えポリペプチド。
【請求項30】
前記STAT3媒介機能が、組織保護、組織再生、細胞増殖、及び細胞生存からなる群から選択される、請求項27~29のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項31】
前記STAT1媒介性の炎症促進機能が、サイトカイン産生、ケモカイン産生、及び免疫細胞動員からなる群から選択される、請求項27~30のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項32】
前記STAT1媒介性の炎症促進機能が、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び/又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定すると、約20%~約100%低下している、請求項27~31のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか1項に記載のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む、組換え核酸分子。
【請求項34】
前記核酸配列が異種核酸配列に作動可能に連結されている、請求項33に記載の核酸分子。
【請求項35】
前記核酸分子が、発現カセット又は発現ベクターとしてさらに定義される、請求項33又は34に記載の核酸分子。
【請求項36】
以下:
a)請求項1~32のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド;及び/又は
b)請求項33~35のいずれか1項に記載の組換え核酸、
を含む、組換え細胞。
【請求項37】
前記組換え細胞が真核細胞である、請求項36に記載の組換え細胞。
【請求項38】
前記真核細胞が哺乳動物細胞である、請求項37に記載の組換え細胞。
【請求項39】
請求項36~38のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組換え細胞と培地とを含む細胞培養物。
【請求項40】
以下:
a)請求項1~32のいずれか1項に記載の1つ又は複数の組換え細胞を提供すること;及び
b)前記細胞が、前記組換え核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生するように、1つ又は複数の組換え細胞を培地中で培養すること、
を含む、ポリペプチドを産生するための方法。
【請求項41】
前記産生されたポリペプチドを単離及び/又は精製することをさらに含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記産生されたポリペプチドを構造的に修飾して半減期を延長させることをさらに含む、請求項40又は41に記載の方法。
【請求項43】
前記修飾が、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は複数の改変を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
請求項40~43のいずれか1項に記載の方法によって産生される組換えポリペプチド。
【請求項45】
以下:
a)請求項1~32及び44のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド;
b)請求項33~35のいずれか1項に記載の組換え核酸;
c)請求項36~38のいずれか1項に記載の組換え細胞;及び/又は
d)医薬的に許容し得る担体、
を含む、医薬組成物。
【請求項46】
請求項1~32及び44のいずれか1項に記載の組換えポリペプチドと、医薬的に許容し得る担体とを含む、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
請求項33~35のいずれか1項に記載の組換え核酸と、医薬的に許容し得る担体とを含む、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項48】
対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節する方法であって、以下:
a)請求項1~32及び44のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド;
b)請求項33~35のいずれか1項に記載の組換え核酸;
c)請求項36~38のいずれか1項に記載の組換え細胞;及び/又は
d)請求項45~47に記載の医薬組成物、
を含む組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項49】
状態の治療方法を必要とする対象の状態の治療方法であって、以下:
a)請求項1~32及び44のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド;
b)請求項33~35のいずれか1項に記載の組換え核酸;
c)請求項36~38のいずれか1項に記載の組換え細胞;及び/又は
d)請求項45~47に記載の医薬組成物、
を含む組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項50】
前記投与された組成物が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、対象において組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらす、請求項48又は49に記載の方法。
【請求項51】
前記組織選択的IL-22シグナル伝達が、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する、請求項50に記載の組換えポリペプチド。
【請求項52】
前記組織選択的IL-22シグナル伝達が、肝臓におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する、請求項50又は51に記載の組換えポリペプチド。
【請求項53】
前記投与された組成物が、前記1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、対象においてバイアス型IL-22シグナル伝達をもたらす、請求項48~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記バイアス型IL-22シグナル伝達が、STAT1媒介性の炎症促進機能の低下を含むが、STAT3媒介機能は実質的に保持する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記バイアス型IL-22シグナル伝達が、1:1.5~1:10の範囲のSTAT1媒介シグナル伝達とSTAT3媒介シグナル伝達の比を含む、請求項53又は54に記載の方法。
【請求項56】
前記STAT1媒介シグナル伝達及び/又はSTAT3媒介シグナル伝達が、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)からなる群から選択されるアッセイによって決定される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記STAT3媒介機能が、組織保護、組織再生、細胞増殖、及び細胞生存からなる群から選択される、請求項54~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記STAT1媒介性の炎症促進機能が、サイトカイン産生、ケモカイン産生、及び免疫細胞動員からなる群から選択される、請求項54~57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記STAT1媒介性の炎症促進機能が約20%~約100%低下する、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記STAT1媒介性の炎症促進機能が、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び/又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記投与された組成物が、対象において、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、IL-1β、及びIL-6から選択される炎症促進性遺伝子の発現を誘導する能力の低下をもたらす、請求項48~60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記投与された組成物が、対象において、Reg3β、Reg3γ、Muc1、Muc2、Muc10、BCL-2、サイクリン-D、クローディン-2、LCN2、及びβ-ディフェンシンから選択される遺伝子の発現を誘導するその能力を実質的に保持する、請求項48~61のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
前記医薬組成物の投与が対象におけるT細胞活性を阻害しない、請求項48~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記投与された組成物が上皮保護及び再生を増強する、請求項48~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記状態が免疫疾患又は慢性感染症である、請求項48~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記免疫疾患が自己免疫疾患である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記自己免疫疾患が、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、異栄養性表皮水疱症、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬性関節炎、及び糖尿病性足潰瘍からなる群から選択される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記自己免疫疾患が急性膵炎である、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記対象が哺乳動物である、請求項48~68のいずれか1項に記載の方法。
【請求項70】
前記哺乳動物がヒトである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記対象が、IL-22媒介シグナル伝達に関連する状態を有するか、又は有する疑いがある、請求項48~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記組成物が、第1の治療として個別に又は第2の治療と組み合わせて、対象に投与される、請求項48~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記第2の治療が、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、又は毒素療法からなる群から選択される、請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記第1の治療及び前記第2の治療が付随して投与される、請求項72~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
前記第1の治療が前記第2の治療と同時に投与される、請求項72~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項76】
前記第1の治療及び前記第2の治療が連続して投与される、請求項72~74のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記第1の治療が前記第2の治療の前に投与される、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記第1の治療が前記第2の治療の後に投与される、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の治療が前記第2の治療の前及び/又は後に投与される、請求項76に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の治療と前記第2の治療が順番に投与される、請求項72~79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記第1の治療と前記第2の治療が単一の製剤で一緒に投与される、請求項72~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節するための又はそれを必要とする対象における状態を治療するためのキットであって、以下:
a)請求項1~32及び44のいずれか1項に記載の組換えポリペプチド;
b)請求項33~35のいずれか1項に記載の組換え核酸;
c)請求項36~39のいずれか1項に記載の組換え細胞;及び/又は
d)請求項45~47のいずれか1項に記載の医薬組成物、
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
連邦政府が支援する研究開発に関する声明
本発明は、国立衛生研究所によって授与された契約AI51321の下で政府の支援を受けて行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月17日に出願された米国仮特許出願第63/011,922号に対する優先権の利益を主張する。上で参照した出願の開示は、任意の図面を含め、その全体が参照により明示的に本明細書に取り込まれる。
【0003】
配列表の取り込み
添付の配列表の資料は、参照により本出願に取り込まれる。078430-516001WO-Sequence Listing.txtという名前の付随する配列表テキストファイルは、2021年4月12日に作成され、31KBである。
【0004】
分野
本開示は、一般に、インターロイキン22(IL-22)によって媒介されるシグナル伝達を調節するための組成物及び方法に関する。特に、本開示は、インターロイキン10受容体サブユニットベータ(IL-10Rβ)に対する結合親和性が改変された新規IL-22ポリペプチドバリアントを提供する。そのようなIL-22ポリペプチドバリアントを産生するために有用な組成物及び方法、並びにIL-22媒介シグナル伝達を調節するための、及び/又はIL-22によって媒介されるシグナル伝達の混乱に関連する状態の治療のための方法も提供される。
【背景技術】
【0005】
背景
健康状態及び疾患の治療のための治療用タンパク質を含有するバイオ医薬品又は医薬製剤の使用は、多くの製薬会社及びバイオテクノロジー会社にとって中心的な戦略である。例えばサイトカインファミリーのいくつかのメンバーは、癌の治療に有効であることが報告されており、癌免疫療法の開発に大きな役割を果たしている。従って、サイトカインファミリーは、その投与と生体同化を改善するための多くの臨床研究と努力の焦点となっている。
【0006】
しかしながら、サイトカインを含む既存の治療アプローチの臨床的成功は限られている。これらの制限は、多くの場合、サイトカインのオフターゲット毒性と無効性によるものであり、これは主に、サイトカインが望ましい応答細胞と望ましくない応答細胞の両方に受容体を持っており、これらが、互いに相殺して望ましくない副作用につながるという事実による。近年、サイトカイン改変は有望な戦略として浮上しており、サイトカインを調整して、より望ましい活性と低毒性を備えた組換えサイトカインに到達するための様々な試みが行われている。
【0007】
特に、インターロイキン22(IL-22)は、その強力な免疫調節作用と、免疫系を抑制することなく組織を炎症関連損傷から保護するその能力とのために、免疫療法について特に臨床的関心を集めてきた。組換えIL-22の治療的投与は、現在多数の自己免疫疾患及び炎症性障害に対する第I/II相臨床試験で試験されている。これらには、潰瘍性大腸炎、クローン病、糖尿病性足潰瘍、及び急性GvHDが含まれる。IL-22は、急性膵炎のマウスモデルでも有効性を示している。しかしIL-22は、いくつかの状況では、特に肝臓、皮膚、及び消化管において炎症性メディエーターの誘導を介して炎症を促進することも示されているため、その治療的及び臨床的有用性は限定されている。
【0008】
従って、治療薬として使用するために、IL-22の特性を改善するための追加のアプローチが必要である。特に、特定の下流の機能及び作用を他のものよりも選択的に活性化でき、例えばIL-22の多くの有益な特性を保持するが既知の炎症促進副作用は無いバリアントであって、自己免疫疾患や炎症性疾患を含む様々な関連疾患の治療における抗腫瘍薬又は免疫調節薬としてのこれらのバリアントの改良された使用をもたらす、バリアントが必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
概要
本開示は、一般に免疫学の分野に関し、特に、それを必要とする対象において、インターロイキン22(IL-22)によって媒介されるシグナル伝達経路を調節するための組成物及び方法に関する。以下でより詳細に説明されるように、IL-22を介するシグナル伝達は、STAT1媒介性の炎症促進機能及び/又はSTAT3媒介性のシグナル伝達の偏った(バイアス型)アゴニスト作用(biased agonism)を介して調節することができる。より具体的には、いくつかの実施形態において本開示は、IL-22の天然のリガンド、例えばインターロイキン10受容体サブユニットベータ(IL10Rβ)に対して調節された結合親和性を有する新しいクラスのIL-22ポリペプチドバリアントを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらすIL-22部分アゴニストを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、バイアス型(biased)IL-22シグナル伝達、例えばSTAT1媒介性の炎症促進機能の低下を付与するが、STAT3媒介機能は実質的に保持するIL-22部分アゴニストを提供する。本開示はまた、そのようなIL-22ポリペプチドバリアントを産生するのに有用な組成物及び方法、対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節する方法、並びにIL-22受容体の下流のシグナル伝達の混乱に関連する状態の治療方法も提供する。
【0010】
1つの態様において、以下を含む組換えポリペプチドが本明細書に提供される:(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するインターロイキン22(IL-22)ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及びさらに(b)配列番号1のX43、X49、X45、X46、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換。
【0011】
開示された組換えポリペプチドの非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号1のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数アミノ酸置換は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を低下させる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を増加させる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、配列番号1のX43、X45、X46、X48、X49、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む。
【0012】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、アラニン置換、アルギニン置換、アスパラギン酸置換、ヒスチジン置換、グルタミン酸置換、リジン置換、セリン置換、トリプトファン置換、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、配列番号1のD43、S45、N46、Q49、Q116、R124、及びR128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/R124A/R128A;(e)Q116A/R124D/R128A;(f)D43A/Q116A/R124A/R128A;(g)S45E/Q116A/R124A/R128A;及び(h)Q48A/Q116A/R124A/R128A。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び配列番号1のD43H、D43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、R124Y、及びR128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含む。
【0014】
1つの態様において、以下を含む組換えポリペプチドが本明細書に提供される:(a)配列番号6のアミノ酸配列を有するインターロイキン22(IL-22)ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及びさらに(b)配列番号6のX43、X45、X46、X49、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換。
【0015】
いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号6のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を低下させる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を増加させる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、配列番号6のX43、X45、X46、X48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、配列番号6のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号6のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む。
【0016】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、アラニン置換、アルギニン置換、アスパラギン酸置換、ヒスチジン置換、グルタミン酸置換、リジン置換、セリン置換、トリプトファン置換、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、配列番号6のE43、S45、N46、Q48、R55、Q116、E117、K124、Q128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、配列番号6と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/K124A/Q128A;(e)Q116A/K124D/Q128A;(f)E43A/Q116A/K124A/Q128A;(g)S45E/Q116A/K124A/Q128A;及び(h)Q48A/Q116A/K124A/Q128A。
【0017】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、配列番号6と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及びE43H、E43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、Q124Y、及びQ128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含む。
【0018】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらす。いくつかの実施形態において、組織選択的IL-22シグナル伝達は、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。いくつかの実施形態において、組織選択的IL-22シグナル伝達は、肝臓におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。
【0019】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数のアミノ酸置換は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、バイアス型IL-22シグナル伝達をもたらす。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、STAT1媒介性の炎症促進機能の低下を含むが、STAT3媒介機能は実質的に保持する。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、1:1.5~1:10の範囲のSTAT1媒介シグナル伝達対STAT3媒介シグナル伝達の比を含む。いくつかの実施形態において、STAT3媒介機能は、組織保護、組織再生、細胞増殖、及び細胞生存からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、サイトカイン産生、ケモカイン産生、及び免疫細胞動員からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、約20%~約100%低下している。いくつかの実施形態において、STAT1シグナル伝達及び/又はSTAT3シグナル伝達は、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)からなる群から選択されるアッセイによって決定される。
【0020】
1つの態様において、本開示のいくつかの実施形態は、組換え核酸分子に関し、ここで核酸は、本開示のポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0021】
開示された核酸分子の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、核酸配列は、異種核酸配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施形態において、核酸分子は、発現カセット又は発現ベクターとしてさらに定義される。
【0022】
1つの態様において、本開示のいくつかの実施形態は組換え細胞に関し、ここで組換え細胞は、(a)本開示の組換えポリペプチド;及び(b)本開示の組換え核酸のうちの1つ又は複数を含む。いくつかの実施形態において、組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態において、真核細胞は哺乳動物細胞である。関連する態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本開示の少なくとも1つの組換え細胞及び培地を含む細胞培養物に関する。
【0023】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、ポリペプチドを産生するための方法に関し、ここで、この方法は、(a)本開示の1つ又は複数の組換え細胞を提供すること、及び(b)細胞が組換え核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生するように、培地中で1つ又は複数の組換え細胞を培養すること、を含む。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドを産生する方法は、産生されたポリペプチドを単離及び/又は精製することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドを産生する方法は、産生されたポリペプチドを構造的に修飾して、インビボで、例えば哺乳動物対象において、ポリペプチドの半減期を延長させ、及び/又は作用の持続時間を延長することをさらに含む。いくつかの実施形態において、修飾は、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合、アシル化、アセチル化、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は複数の改変を含む。従って、関連する態様において、本開示の方法によって産生される組換えポリペプチドも本明細書に提供される。
【0025】
1つの態様において、本開示のいくつかの実施形態は医薬組成物に関し、ここで医薬組成物は以下のうちの1つ又は複数を含む:(a)本開示の組換えポリペプチド;(b)本開示の組換え核酸;(c)本開示の組換え細胞;及び(d)医薬的に許容し得る担体。
【0026】
開示された医薬組成物の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、組成物は、本開示の組換えポリペプチドと医薬的に許容し得る担体とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、本開示の組換え核酸と医薬的に許容し得る担体とを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、本開示のポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換えウイルスベクターを含む。いくつかの実施形態において、組成物は、本開示のポリペプチドをコードする核酸と医薬的に許容し得る担体とを含む組換え細胞を含む。
【0027】
1つの態様において、本開示のいくつかの実施形態は、対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節するための方法に関し、この方法は、対象に以下のうちの1つ又は複数を含む組成物を投与することを含む:(a)本開示の組換えポリペプチド;(b)本開示の組換え核酸;(c)本開示の組換え細胞;(d)本開示の核酸を含む組換えウイルス又は非ウイルスベクター、及び(e)本開示の医薬組成物。
【0028】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、それを必要とする対象における疾患、障害、又は状態の治療のための方法に関し、ここで、この方法は、対象に以下のうちの1つ又は複数を含む組成物を投与することを含む:(a)本開示の組換えポリペプチド;(b)本開示の組換え核酸;(c)本開示の組換え細胞;(d)本開示のポリペプチドをコードする核酸を含む組換えウイルス又は非ウイルスベクター;及び(e)本開示の医薬組成物。
【0029】
対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節するための、及び/又はそれを必要とする対象における状態の治療のための、開示された方法の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。いくつかの実施形態では、投与された組成物は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、対象において組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらす。いくつかの実施形態において、組織選択的IL-22シグナル伝達は、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。いくつかの実施形態では、組織選択的IL-22シグナル伝達は、肝臓におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。
【0030】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、1つ又は複数のアミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、対象においてバイアス型IL-22シグナル伝達をもたらす。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、STAT1媒介性の炎症促進機能の低下を含むが、STAT3媒介機能は実質的に保持する。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、1:1.5~1:10の範囲のSTAT1媒介シグナル伝達とSTAT3媒介シグナル伝達の比を含む。いくつかの実施形態において、STAT3媒介機能は、組織保護、組織再生、細胞増殖、及び細胞生存からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、サイトカイン産生、ケモカイン産生、及び免疫細胞動員からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び/又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定すると、約20%~約100%低下している。
【0031】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象において、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、IL-1β、及びIL-6から選択される炎症促進性遺伝子の発現を誘導する能力の低下をもたらす。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象においてReg3β、Reg3γ、Muc1、Muc2、Muc10、BCL-2、サイクリン-D、クローディン-2(Claudin-2)、LCN2、及びβ-デフェンシンから選択される遺伝子の発現を誘導する能力を実質的に保持している。いくつかの実施形態において、医薬組成物の投与は、対象におけるT細胞活性を阻害しない。
【0032】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、上皮の保護及び再生を増強する。いくつかの実施形態において、状態は、炎症性疾患、免疫疾患、又は慢性感染症及び疾患でもある。いくつかの実施形態において、免疫疾患は自己免疫疾患である。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、異栄養性表皮水疱症、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬性関節炎、糖尿病性足潰瘍からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は急性膵炎である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、IL-22媒介シグナル伝達に関連する状態を有するか、又は有する疑いがある。
【0033】
いくつかの実施形態において、組成物は、第1の治療として個別に、又は第2の治療(例えば免疫抑制剤(immunosuppressive agent)、免疫抑制剤(immunosuppressant)、又は抗炎症剤)と組み合わせて対象に投与される。いくつかの実施形態において、第2の治療は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、手術、及び疾患改変性抗リウマチ薬(DMARD)からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は付随して施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は第2の治療と同時に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は連続して施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は第2の治療の前に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は第2の治療の後に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は第2の治療の前及び/又は後に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は交代で施される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は、単一の製剤で一緒に施される。
【0034】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節するための、又はそれを必要とする対象における状態を治療するためのキットに関し、ここでキットは、本開示の組換えポリペプチド;本開示の組換え核酸;本開示の組換え細胞;及び本開示の医薬組成物のうちの1つ又は複数を含む。
【0035】
前述の概要は、例示のみを目的としており、決して限定することを意図していない。本明細書に記載の例示的な実施形態及び特徴に加えて、本開示のさらなる態様、実施形態、目的、及び特徴は、図面、詳細な説明、及び特許請求の範囲から完全に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1A~1Eは、本開示のいくつかの非限定的な実施形態に従って、指向性進化アプローチを介して、例示的な高親和性IL-22を改変するために実施された実験の結果を概略的に要約する。
図1Aは、ヒトIL-22-IL22R1部分複合体(PDB ID:3DLQ)の構造を示し、マウスIL-22部位指向性の酵母ディスプレイライブラリーにおける無作為化のために選択された対応する残基を赤色で示す。
図1Bは、酵母ディスプレイに基づくIL-22の親和性成熟の戦略の略図を示す。MACS:磁気活性化細胞ソーティング。FACS:蛍光活性化細胞ソーティング。
図1Cは、酵母ディスプレイ野生型IL-22(WT)に結合する、ストレプトアビジン-Alexa Fluor-647(SA-647)標識IL10Rβ細胞外ドメイン(ECD)、指向性進化の選択されたラウンド、及び最終の高親和性IL-22クローン(super-22a)を示すヒストグラムを示す。これらの実験では、酵母は1μMの非標識mIL22R1(ECD)にあらかじめ結合された。
図1Dは、親和性成熟IL-22バリアントがIL10Rβへの結合の増強を示したことを示す。
図1Eは、親和性成熟IL-22バリアントが、増強されたSTAT3シグナル伝達を誘発し得ることを示す。データは、2つの独立した多重測定の平均値+/-SDである。
【0037】
【
図2-1】
図2A~2Eは、マウスIL-22/IL22R1/IL-10Rβ三元複合体の構造を示す。
図2A~2Cは、IL-22-受容体複合体の2.6Å構造の3つの図を示し、IL-22(super-22a)を黄色、IL22R1を青色、及びIL10Rβをピンク色で示している。
図2Dは、マウスIL-22-IL10Rβ複合体とヒトIFN-λ-IL10Rβ(PDB ID:5T5W)との構造的重ね合わせを示し、IFN-λと比較してIL-22に結合した場合のIL10Rβの相対配向の約40度の変化を示している。
【
図2-2】
図2Eは、IL10Rβに結合したIL-22(黄色、左パネル)及びIFN-λ(緑色、右パネル)の表面を示し、IL-22及びIFN-λの両方と重要な接触を形成するIL10Rβの3つの芳香族残基の異なる相対位置を示す。
【0038】
【
図3】
図3A~3Fは、本開示のいくつかの非限定的な実施形態による、バイアス型IL-22受容体アゴニストの構造誘導設計を示す。
図3B~3Cは、IL-22-IL10Rβ結合面の2つのクローズアップ図を示す。水素結合と塩橋は黒い破線で示されている。親和性成熟に起因するIL-22の変異残基はイタリック体で示されている。
図3Dは、IL10Rβ結合を破壊したIL-22バリアントが、STAT3とSTAT1シグナル伝達を切り離したことも示している。データは、3つの独立した多重測定の平均+/-SDであり、最大WT IL-22シグナルのパーセントとして示されている。
図3Eは、
図3Dに示されるシグモイド用量応答曲線から計算されたホスホ-STAT3及びホスホ-STAT1の標準化されたEmax値を示す。データは、3つの独立した多重測定の平均値+/-SDである。
図3Fは、バイアス型IL-22バリアントがSTAT3の活性化を誘発できたが、STAT1又はSTAT5の活性化は誘発できなかったことを示す。100nMのWT IL-22又は示されたバリアントで20分間刺激した後、HT-29細胞から調製された溶解物中の示されたタンパク質の免疫ブロット。
【0039】
【
図4】
図4A~4Iは、本開示のいくつかの非限定的な実施形態による例示的なバイアス型IL-22バリアント(22-B3)が、組織選択的シグナル伝達活性を誘発することを証明するために実施された実験からの結果を概略的に要約する。
図4Aは、インビボでの22-B3活性の特性解析のための実験計画を示す。これらの実験では、マウス(1群あたり3匹)に、PBS又は200μgの組換えWT IL-22又は22-B3を投与し、示された器官を30分後(タンパク質分析)、6時間後(RNA分析)、又は24時間後(血清分析)に単離した。
図4B~4Eは、22-B3が、組織特異的なホスホ-STAT3及びホスホ-STAT1シグナル伝達活性を誘発することを示す。示された器官からの組織溶解物を、SDS-PAGEによって分析した後、示されたタンパク質についての免疫ブロットを行った。皮膚のホスホSTAT1シグナルは、すべての試料で検出限界より低かった。
図4Fは、組織特異的な22-B3シグナル強度がIL10Rβ発現レベルと相関することを示す。示された器官は対照マウスから単離され、IL22R1とIL10Rβの相対的発現レベルがRT-qPCRによって分析された(GAPDHに対して標準化)。データは、3重測定した試料の平均+/-SEMである。
図4G~4Hは、バイアス型IL-22バリアントである22-B1、B2、及びB3が、インビトロでヒト細胞株において細胞型選択的シグナル活性を誘発することを示す。Panc-1(
図4G)又はHepG2(
図4H)細胞を、PBS又は100nMのWT IL-22又は示されたバリアントで20分間処理した。細胞溶解物をSDS-PAGEによって分析した後、示されたタンパク質について免疫ブロットを行った。Panc-1細胞中のホスホSTAT1シグナルは、すべての試料で検出限界より低かった。
図4Iは、22-B3がインビトロで肝細胞の中立的なアンタゴニストであることを示す。HepG2細胞を、10nMのWT IL-22及び示された濃度の22-B3と共に20分間インキュベートした。細胞溶解物をSDS-PAGEによって分析した後、示されたタンパク質について免疫ブロットを行った。
【0040】
【
図5】
図5A~5Eは、バイアス型IL-22バリアント22-B3が、インビボで組織保護遺伝子と炎症促進性IL-22標的遺伝子の発現を切り離すことを証明するために行った実験からの結果を概略的に要約する。
図5A~5Bは、22-B3が膵臓及び結腸において組織保護遺伝子発現を誘導することを示す。RNAを、PBS又は200μgのWT IL-22又は22-B3を6時間腹腔内注射(I.P.)して処理したマウスの膵臓及び結腸から単離した。標的遺伝子の相対的発現は、RT-qPCRによって分析された(GAPDHに対して標準化)。データは、2つの独立した生物学的多重測定の平均+/-SEMであり、それぞれ3重測定で分析された(対応のないスチューデントのt検定、
*=p<0.05、
**=p<0.01)。
図5C~5Eは、22-B3が、結腸、皮膚、及び肝臓においていくつかの炎症促進性遺伝子の発現を誘導しないことを示す。RNAを、PBS又は200μgのWT IL-22又は22-B3を6時間IP注入して処理されたマウスの肝臓と皮膚(尾)から単離した。標的遺伝子の相対的発現は、RT-qPCRによって分析された(GAPDHに対して標準化)。データは、2つの独立した生物学的多重測定についての平均+/-SEMであり、それぞれ3重測定で分析された(対応のないスチューデントのt検定、
*=p<0.05、
**=p<0.01)。
【0041】
【
図6-1】
図6A~6Dは、バイアス型IL-22バリアントである22-B3が、全身性炎症を誘発することなく急性膵炎から保護することを証明するために行った実験の結果を、概略的に要約する。
図6Aは、急性膵炎投薬計画の概略図である。
図6Bは、22-B3が急性膵炎において保護効果を保持していることを示す。マウス(1群あたり5匹)を、PBS又は50μgのWT IL-22又は22-B3のIP注射により前処理した20時間前及び2時間後に、セルレイン(50μg/kg)を1時間ごとに6回腹腔内注射して膵炎を開始させた。最後のセルレイン注射の1時間後に血清を分離し、膵臓アミラーゼとリパーゼのレベルを分析した(対応のないスチューデントのt検定、
*=p<0.05、
**=p<0.01)。
【
図6-2】
図6Cは、22-B3がインビボで肝臓急性期応答タンパク質を誘導しないことを示す。マウス(1群あたり3匹)を、PBS又は示された量のWT IL-22又は22-B3で24時間処理した。血清を分離し、SAA-1/2及びハプトグロビンのレベルをELISAで分析した(対応のないスチューデントのt検定、
*=p<0.05、
**=p<0.01)。
図6Dは、マウスの膵臓(弱いバイアス型アゴニスト作用)、結腸(強いバイアス型アゴニスト作用)、皮膚(中立的な拮抗作用)、及び肝臓(中立的な拮抗作用)において、22-B3によって示される示差的シグナル伝達活性を概略的に示す。
【0042】
【
図7】
図7Aは、IL-22選択の各ラウンドの選択戦略を示し、使用したIL10RβECDの濃度及び選別方法を示す。MACS:磁気活性化細胞ソーティング。FACS:蛍光活性化細胞ソーティング。
図7Bは、無作為化の標的とされる6つの残基、ライブラリー作成で各部位に使用されるコドン、及びsuper22a及びスーパー22bの各位置に存在するアミノ酸を示す表である。
図7Cは、WT IL-22又は示されたバリアントで20分間刺激され、パラホルムアルデヒド/メタノールによる固定及び透過処理後にフローサイトメトリーによって分析されたHT-29(ヒト、結腸直腸)中の、ホスホ-Y705-STAT3(左パネル)及びホスホ-Y701-STAT1(右パネル)の用量応答曲線を示す。データは、2つの独立した多重測定の平均値+/-SDである。
【0043】
【
図8-1】
図8A~8Bは、精製されたSuper-22a(
図8A)及びSuper-22b(
図8B)結合IL-22受容体複合体及び付随するクマシー染色SDS-PAGEゲルのサイズ排除クロマトグラフィートレースを示す。結晶化試験に使用される画分は赤で示されている。
【
図8-2】
図8Cは、結晶化に使用されるIL-22、IL10Rβ、及びIL22R1構築物に存在する突然変異を示す表である。
図8Dは、三元複合体に存在するIL22R1とIL10Rβとの間のステム接触のクローズアップ図を示す。
【0044】
【
図9】
図9Aは、WT IL-22又は示されたバリアントで20分間刺激され、パラホルムアルデヒド/メタノールによる固定及び透過処理後にフローサイトメトリーによって分析されたHT-29(ヒト、結腸直腸)細胞中の、ホスホ-Y705-STAT3(上)及びホスホ-Y701-STAT1(下)の用量応答曲線を示す。データは、2つの独立した多重測定の平均値+/-SDである。
図9Bは、いくつかのバイアス型マウスIL-22バリアント(22-B1~B5)に存在する突然変異を示す表である。
図9Cは、野生型ヒトIL-22又は示されたヒトIL-22バリアントで20分間刺激され、フローサイトメトリーによって分析されたHT-29細胞からのシグモイド用量応答曲線から計算されたホスホ-STAT3及びホスホ-STAT1の標準化されたE
max値を示す。データは、2重測定の平均値+/-SDである。
図9Dは、いくつかのバイアス型ヒトIL-22バリアント(h22-B1~B3)に存在する突然変異を示す表である。
【0045】
【
図10】
図10は、ヒトIL-22ポリペプチド(配列番号1)及びマウスIL-22ポリペプチド(配列番号6)の配列アライメントを示す。アライメントでは、整列された配列間で同一のアミノ酸又は保存されたアミノ酸置換が星印で識別される。ここで提供されるアライメント図は、プログラムCLUSTALバージョン1.2.4を使用して生成された。
【0046】
【
図11】
図11A:HT-29(ヒト結腸直腸癌)細胞を、様々な濃度の野生型又は変異型マウスIL-22で20分間処理した。メタノール/PFAを使用して、細胞を固定し透過処理をして、蛍光標識抗ホスホSTAT1(AF488)抗体又は抗ホスホSTAT3(AF647)抗体で染色し、蛍光強度をフローサイトメトリーで分析した。用量応答曲線。データをシグモイド用量応答曲線に適合させて、pSTAT1及びpSTAT3シグナル伝達のEmaxを計算できるようにした。バイアス型バリアントのEmaxは、野生型IL22のパーセントに対して標準化された。示されているデータは平均+/-SEMである。
図11B:(A)のデータを使用して得られた、各IL-22バリアントについてのホスホ-STAT3/ホスホ-STAT1 Emaxの比を示すグラフ。
図11C:野生型マウスIL-22と比較したマウスIL-22バリアント及び対応する突然変異のリスト。
図11Cは、A及びBに示されるバイアス型マウスIL-22バリアントに存在する突然変異を示す表である。
【0047】
【
図12】
図12A~12B:HT-29(ヒト結腸直腸癌;
図13A)細胞又はHepG2(ヒト肝臓;
図13B)細胞を、様々な濃度の野生型又は変異型マウスIL-22で20分間処理した。メタノール/PFAを使用して、細胞を固定し透過処理して、蛍光標識抗ホスホSTAT1(AF488)抗体又は抗ホスホSTAT3(AF647)抗体で染色し、蛍光強度をフローサイトメトリーで分析した。用量応答曲線。データをシグモイド用量応答曲線に適合させて、pSTAT1及びpSTAT3シグナル伝達のEmaxを計算できるようにした。バイアス型バリアントのEmaxは、野生型IL22のパーセントに対して標準化された。示されているデータは、3回の独立した多重測定の平均+/-SEMである。
図12C:野生型ヒトIL-22と比較したヒトIL-22バリアント及び対応する突然変異のリスト。
【0048】
【
図13】
図13Aは、HT-29細胞におけるJAK1及びTYK2のリン酸化に対する、バイアス型IL-22バリアントである22-B3の作用を示す。100nMのWT IL-22又は示されたバリアントで20分間刺激されたHT-29細胞から調製された溶解物中の示されたタンパク質の免疫ブロット。
図13B及びCは、バイアス型IL-22バリアントである22-B1、B2、及びB3によって誘導されたIL-22受容体のチロシンリン酸化の差異を示す。示されているHA-IL22Rα構築物を一時的に発現し、10nMのWT IL-22で20分間刺激したHEK-293T細胞から調製された溶解物及び抗HA免疫沈降物中の示されているタンパク質、又は示されているバリアントの免疫ブロット。
図13Dは、IL-22Rαの下流のSTAT3及びSTAT1活性化の異なるメカニズムを利用することによって、IL-22バリアントがバイアス型STATシグナル伝達を誘導する方法のモデルである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
開示の詳細な説明
本開示は一般に、特に、対象においてインターロイキン22(IL-22)によって媒介されるシグナル伝達経路を選択的に調節するための組成物及び方法に関する。以下でより詳細に説明されるように、IL-22媒介シグナル伝達は、STAT1媒介性の炎症促進機能及び/又はSTAT3媒介性のシグナル伝達のバイアス型アゴニスト作用を介して調節することができる。より具体的には、いくつかの実施形態において本開示は、IL-22の天然リガンド、例えばインターロイキン10受容体サブユニットベータ(IL10Rβ)に対する調節された結合親和性を有するIL-22ポリペプチドバリアントを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、組織選択的IL-22シグナル伝達を有するIL-22部分アゴニストを提供する。本開示のいくつかの実施形態は、バイアス型IL-22シグナル伝達を有するIL-22部分アゴニストを提供し、例えばSTAT1媒介性の炎症促進機能の低下をもたらすが、そのSTAT3媒介機能は実質的に保持する。本開示はまた、そのようなIL-22ポリペプチドバリアントを産生するのに有用な組成物及び方法、対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節する方法、並びにIL-22の下流のシグナル伝達の混乱に関連する状態の治療方法も提供する
【0050】
インターロイキン22(IL-22)は、Th22細胞、NK細胞、リンパ組織誘導因子(LTi)細胞、樹状細胞、及びTh17細胞によって産生されるサイトカインのIL-10ファミリーのメンバーである。IL-22はIL-22R1/IL-10Rβ受容体複合体に結合し、これは、上皮細胞、肝細胞、ケラチン産生細胞などの先天性細胞、及び真皮、膵臓、腸、呼吸器系を含むいくつかの器官のバリア上皮組織で発現される。IL-22は上皮細胞に作用して、炎症に応答して組織の保護と再生を促進する。IL-22は、免疫機能を抑制せずに炎症性損傷に対抗する能力により魅力的な治療標的となっているが、IL-22は状況によっては炎症促進性になることがある。
【0051】
本開示は、特に、IL-22がその同族受容体、特にIL-10Rβとどのように相互作用するかについての新しい洞察に基づく新規IL-22組成物を提供する。特に、以下に示す実験データは驚くべきことに、IL-10Rβに対するIL-22結合部位における突然変異が、組織特異的に、STAT1媒介性の炎症促進機能及び/又はSTAT3媒介性のシグナル伝達を選択的に行うことができるバイアス型アゴニストをもたらすことを明らかにした。さらに、これらのIL-22にバイアス型アゴニストは、STAT1媒介性の炎症促進機能を低下させるが、STAT3媒介性の機能は実質的に保持することができる。ある場合には、本明細書に記載の実験データは、本開示のバイアス型IL-22バリアントが、これらの適用のすべてにおいて、野生型(WT)組換えIL-22と少なくとも同程度に有効であり、皮膚や肝臓の炎症などの副作用が大幅に減少することを示す。従って、これらの分子は、自己免疫障害及び状態を治療するために使用することができる。
【0052】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語、表記法、及び他の科学用語又は専門用語は、本開示が関係する当業者によって一般的に理解される意味を有することを意図している。場合によっては、一般的に理解されている意味を持つ用語が、明確にするため及び/又は参照しやすいように本明細書で定義されており、本明細書でのそのような定義の包含は、必ずしも、当技術分野で一般的に理解されているものとの実質的な違いを表すと解釈するべきではない。本明細書に記載又は参照される技術及び方法の多くは、当業者によって充分理解されており、従来の方法論を使用して一般的に使用されている。
【0053】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明確に別の指示をしない限り、複数の参照を含む。例えば「細胞」という用語は、1つ又は複数の細胞を含み、それらの混合物を含む。「A及び/又はB」は、本明細書では、「A」、「B」、「A又はB」、及び「A及びB」のすべての選択肢を含むために使用される。
【0054】
用語「約」は、本明細書で使用される場合、その通常の意味は、およそである。およその程度が文脈から明確でない場合、「約」は、提供された値の±10%以内、又は提供された値を含むすべての場合において、最も近い有効数字に丸められたことを意味する。範囲が指定されている場合、それらには境界値が含まれる。
【0055】
本明細書で使用される「投与」及び「投与する」という用語は、特に限定されるものではないが、経口、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、筋肉内、及び局所投与、又はこれらの組み合わせを含む投与経路による、生物活性組成物又は製剤の送達を指す。この用語には、特に限定されるものではないが、医療専門家による投与及び自己投与が含まれる。
【0056】
「細胞」、「細胞培養物」、及び「細胞株」という用語は、特定の対象細胞、細胞培養物、又は細胞株だけでなく、培養中の転移又は継代の数に関係なく、そのような細胞、細胞培養物、又は細胞株の子孫若しくは潜在的な子孫も指す。すべての子孫が親細胞と完全に同一というわけではないことを理解すべきである。これは、突然変異(例えば意図的又は偶然の突然変異)又は環境の影響(例えばメチル化やその他のエピジェネティックな修飾)のいずれかにより、次の世代で特定の修飾が発生する可能性があり、従って、子孫が実際には親細胞と同一ではない可能性があるためであるが、子孫が、元の細胞、細胞培養物、又は細胞株と同じ機能を保持する限り、依然として本明細書で使用される用語の範囲内に含まれる。
【0057】
本開示の対象の組換えポリペプチドの「有効量」、「治療有効量」、又は「医薬的有効量」という用語は、一般に、組成物が存在しない場合と比較して、組成物が記載された目的を達成する(例えばそれが投与される効果を達成する、疾患を治療する、シグナル伝達経路を減少させる、又は疾患若しくは健康状態の1つ又は複数の症状を減少させる)のに十分な量を指す。「有効量」の例は、疾患の症状の治療、予防、又は軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも呼ばれる。症状の「軽減」とは、症状の重症度又は頻度の低下、又は症状の排除を意味する。「治療有効量」を含む組成物の正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技術を使用して当業者によって確認可能である(例えばLieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); 及び Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)。
【0058】
本明細書で使用される「IL-22」という用語は、天然であるか又は組換えであるかに拘わらず、野生型IL-22を意味する。従って、IL-22ポリペプチドは任意のIL-22ポリペプチドを指し、特に限定されるものではないが、組換え産生IL-22ポリペプチド、合成的産生IL-22ポリペプチド、細胞又は組織から抽出されたIL-22を含む。野生型ヒトIL-22前駆体のアミノ酸配列は、配列番号1に示され、これは、179のアミノ酸残基のタンパク質であり、N末端に33アミノ酸のシグナルペプチドを有し、これは除去されて146アミノ酸の成熟したタンパク質を生成することができる。成熟ヒトIL-22のアミノ酸配列を配列番号34に示す。野生型マウス(Mus musculus)IL-22前駆体のアミノ酸配列を配列番号6に示す。これは、179のアミノ酸残基のタンパク質であり、N末端に33アミノ酸のシグナルペプチドを有し、これは除去されて、ヒトIL-22タンパク質と約79%の配列同一性を共有する146アミノ酸の成熟したタンパク質を生成することができる。本開示の目的のために、すべてのアミノ酸の番号付けは、配列番号1(ヒトIL-22)又は配列番号6(マウスIL-22)に示されるIL-22タンパク質の前駆体ポリペプチド(又はプレタンパク質)配列に基づく。しかしながら、当業者は、組換えポリペプチド構築物を作製するために成熟タンパク質がしばしば使用されることを理解するであろう。成熟マウスIL-22のアミノ酸配列は配列番号35に提供される。
【0059】
本明細書で使用されるIL-22ポリペプチドの「バリアント」という用語は、参照IL-22ポリペプチド、例えば野生型IL-22ポリペプチドのアミノ酸配列と比較して、1つ又は複数のアミノ酸置換、欠失、及び/又は挿入が存在するポリペプチドを指す。従って用語「IL-22ポリペプチドバリアント」には、IL-22ポリペプチドの天然に存在する対立遺伝子バリアント又は代替的スプライスバリアントが含まれる。例えばポリペプチドバリアントは、親IL-22ポリペプチドのアミノ酸配列中の1つ又は複数のアミノ酸の、類似又は相同アミノ酸又は非類似アミノ酸による置換を含む。
【0060】
本明細書で使用される「作動可能に連結された」という用語は、2つ又はそれ以上の要素、例えばポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列間の物理的又は機能的連結を意味し、それらが意図した様式で作動することを可能にする。例えば目的のポリヌクレオチドと調節配列(例えばプロモーター)との間の作動可能な連結は、目的のポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的連結である。作動可能に連結された要素は、連続的又は非連続的であり得ることが理解されるべきである。ポリペプチドの文脈において「作動可能に連結された」とは、記載されたポリペプチド活性を提供するためのアミノ酸配列(例えば異なるドメイン)間の物理的連結(例えば直接的又は間接的に連結)を指す。本開示において、本開示の組換えポリペプチドの様々なドメインは、細胞内の組換えポリペプチドの適切な折り畳み、プロセシング、ターゲティング、発現、結合、及び他の機能特性を保持するために作動可能に連結され得る。本開示の組換えポリペプチドの作動可能に連結されたドメインは、連続的又は非連続的であり得る(例えばリンカーを介して互いに連結されている)。
【0061】
本明細書で使用される用語「パーセント同一性」は、2つ又はそれ以上の核酸又はタンパク質に関連して本明細書で使用される場合、BLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、以下に説明するデフォルトパラメータを使用して測定した場合、又は手動アライメント及び視覚的検査で測定した場合、同一であるか、又は同一のヌクレオチド又はアミノ酸の特定のパーセント(例えば比較ウィンドウ又は指定された領域にわたって、約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の配列同一性)を有する2つ又はそれ以上の配列又は部分配列を指す。例えばNCBIのウェブサイト、ncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照されたい。そのような配列は、「実質的に同一」であると言われる。この定義は、配列の相補体にも言及するか、又は適用することができる。この定義にはまた、欠失及び/又は付加を有する配列、並びに置換を有する配列も含まれる。配列同一性は、公開された技術及び広く利用可能なコンピュータプログラム、例えばGCSプログラムパッケージ(Devereux et al, Nucleic Acids Res. 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Atschul et al., J Mol Biol 215:403, 1990)を使用して計算することができる。配列同一性は、the Genetics Computer Group at the University of Wisconsin Biotechnology Center (1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705) のSequence Analysis Software Package などの配列解析ソフトウェアをデフォルトパラメーターで使用して測定することができる。
【0062】
本明細書で使用される「医薬的に許容し得る賦形剤」という用語は、目的の化合物を対象に投与するための、医薬的に許容し得る担体、添加剤、又は希釈剤を提供する任意の適切な物質を指す。従って「医薬的に許容し得る賦形剤」は、医薬的に許容し得る希釈剤、医薬的に許容し得る添加剤、及び医薬的に許容し得る担体と呼ばれる物質を包含することができる。本明細書で使用される「医薬的に許容し得る担体」という用語には、特に限定されるものではないが、医薬投与に適合する、生理食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、及び吸収遅延剤などが含まれる。補助的活性化合物(例えば抗生物質及び追加の治療薬)も組成物に取り込むことができる。
【0063】
本明細書で使用される「組換え」又は「改変」核酸分子という用語は、ヒトの介入によって改変された核酸分子を指す。非限定的な例として、cDNAは組換えDNA分子であり、これはインビトロのポリメラーゼ反応によって生成されたか、又はリンカーが結合されたか、又はクローニングベクターや発現ベクターなどのベクターに取り込まれた任意の核酸分子である。非限定的な例として、組換え核酸分子は、1)例えば化学的又は酵素的技術(例えば化学的核酸合成の使用により、又は核酸分子の複製、重合、エキソヌクレアーゼ消化、エンドヌクレアーゼ消化、連結、逆転写、転写、塩基改変(例えばメチル化を含む)、又は組換え(相同組換え及び部位特異的組換えを含む)を使用して、インビトロで合成又は修飾された;2)本来結合していない結合ヌクレオチド配列を含む;3)天然に存在する核酸分子配列に対して、1つ又は複数のヌクレオチドを欠くように、分子クローニング技術を使用して改変;及び/又は4)天然に存在する核酸配列に対して、1つ又は複数の配列変化又は再編成を有するように、分子クローニング技術を使用して操作されたもの、であり得る。非限定的な例として、cDNAは組換えDNA分子であり、これは、インビトロポリメラーゼ反応によって生成されたか、又はリンカーが結合されたか、又はクローニングベクターや発現ベクターなどのベクターに組み込まれた任意の核酸分子である。組換え核酸及び組換えタンパク質の別の非限定的な例は、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントである。
【0064】
本明細書で使用される「個体」又は「対象」には、ヒト(例えばヒト個体)及び非ヒト動物などの動物が含まれる。いくつかの実施形態において、「個体」又は「対象」は、医師の管理下にある患者である。従って、対象は、関心のある疾患(例えば癌)及び/又は疾患の1つ又は複数の症状を有するか、又は有するリスクがある、又は有する疑いのあるヒト患者又は個体であり得る。対象はまた、診断時又はその後に関心のある状態のリスクがあると診断された個体であり得る。「非ヒト動物」という用語は、すべての脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、非ヒト霊長類、及び他の哺乳動物、例えばヒツジ、イヌ、ウシ、ニワトリ、及び非哺乳動物、例えば両生類、爬虫類などを含む。
【0065】
「ベクター」という用語は、本明細書では、別の核酸分子を移入又は輸送することができる核酸分子又は配列を指すために使用される。移入される核酸分子は、一般にベクター核酸分子に連結、例えば挿入される。一般にベクターは、適切な制御要素と結合した場合に複製可能である。「ベクター」という用語には、クローニングベクター及び発現ベクター、並びにウイルスベクター及び組み込みベクターが含まれる。「発現ベクター」は、調節領域を含むベクターであり、従ってインビトロ及び/又はインビボでDNA配列及び断片を発現することができる。ベクターは、細胞内での自律複製を指令する配列を含んでもよく、又は宿主細胞DNAへの組み込みを可能にするのに十分な配列を含んでもよい。有用なベクターには、例えばプラスミド(例えばDNAプラスミド又はRNAプラスミド)、トランスポゾン、コスミド、細菌人工染色体、及びウイルスベクターが含まれる。有用なウイルスベクターには、例えば複製欠損レトロウイルス及びレンチウイルスが含まれる。いくつかの実施形態において、ベクターは遺伝子送達ベクターである。いくつかの実施形態において、遺伝子を細胞に移入するための遺伝子送達ビヒクルとしてベクターが使用される。
【0066】
本明細書に記載される開示の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む(comprising)」、「からなる(consisting)」、及び「から本質的になる(consisting essentially of)」を含むことが理解される。本明細書で使用される「含む」は、「含む」、「含有する」、又は「によって特徴付けられる」と同義であり、包括的又は無制限であり、追加の列挙されていない要素又は方法工程を排除しない。本明細書で使用される「からなる」は、特許請求される組成物又は方法で指定されていない要素、工程、又は成分を排除する。本明細書で使用される「から本質的になる」は、特許請求される組成物又は方法の基本的及び新規な特徴に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を排除しない。特に組成物の成分の説明又は方法の工程の説明における「含む」という用語の本明細書におけるいかなる記載も、記載された成分又は工程から本質的になる及びそれらからなる組成物及び方法を包含すると理解される。
【0067】
例えば(a)、(b)、(i)などの見出しは、単に明細書及び特許請求の範囲を読みやすくするために提示されている。明細書又は特許請求の範囲における見出しの使用は、工程又は要素がアルファベット順又は番号順、又はそれらが提示された順序で実行されることを要求するものではない。
【0068】
当業者によって理解されるように、書面による説明を提供することなどの、ありとあらゆる目的のために、本明細書に開示されるすべての範囲はまた、全ての可能な部分範囲及びその部分範囲の組み合わせを包含する。記載された範囲は、同じ範囲を少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解することを充分な記載し、可能にするものとして容易に認識できる。非限定例として、本明細書で議論される各範囲は、下3分の1、中間の3分の1、及び上3分の1などに容易に分解することができる。また、当業者には理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「未満」などの全ての表現は、列挙された数を含み、これらは、上記で議論された下位範囲に分解され得る。最後に、当業者には理解されるように、範囲には個々のメンバーが含まれる。従って例えば1~3個の物品を有する群は、1、2、又は3個の物品を有する群を指す。同様に、物品数が1~5の群とは、物品数が1、2、3、4、又は5などの物品を有する群を指す。
【0069】
いくつかの範囲は、「約」という用語が前に付いた数値で本明細書に提示される。「約」という用語は、本明細書では、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近いか又は近似の数に対する文字通りの支持を提供するために使用される。ある数字が具体的に記載された数字に近いか、又は近似の数字であるかどうかを判断する際に、近いか又は近似の未記載の数字は、それが提示される文脈において、具体的に記載された数字と実質的に同等のものを提供する数字であり得る。
【0070】
明確にするために、別個の実施形態に関連して説明される本開示のいくつかの特徴は、単一の実施形態では組み合わせて提供され得ることが理解される。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態に関連して説明されている本開示の様々な特徴は、別個に又は任意の適切な部分組合わせで提供され得る。本開示に関連する実施形態のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、あらゆる組み合わせが個々に明示的に開示されたかのように、本明細書に開示される。さらに、様々な実施形態及びその要素のすべての部分組合わせもまた、本開示によって具体的に包含され、あたかもそのような部分組合わせのすべてが個別かつ明示的に本明細書に開示されたかのように、本明細書に開示される。
【0071】
インターロイキン22(IL-22)と炎症性免疫反応
インターロイキン22(IL-22)は、サイトカインのIL-10ファミリーのメンバーであり、Th22細胞、NK細胞、リンパ組織誘導因子(LTi)細胞、樹状細胞、及びTh17細胞によって産生される。IL-22はIL-22R1/IL-10Rβ受容体複合体に結合し、この複合体は、上皮細胞、肝細胞、ケラチン産生細胞などの非造血細胞、並びに真皮、膵臓、腸、及び呼吸器系などを含むいくつかの器官のバリア上皮組織で発現される。
【0072】
IL-22は、粘膜免疫において重要な役割を果たし、細菌性病原体に付着しこれを取り除く初期の宿主防御を媒介することが報告されている。IL-22は、上皮細胞からの抗菌ペプチドと炎症促進性サイトカインの産生を促進し、腸内の結腸上皮細胞の増殖と移動を刺激する。細菌が感染すると、IL-22ノックアウトマウスは、腸上皮再生の障害、高負荷量の細菌、及び死亡率の上昇を示すことが以前に報告された。同様に、IL-22ノックアウトマウスにインフルエンザウイルスが感染すると、体重が大幅に減少し、気管及び気管支上皮細胞の再生が障害された。従って、IL-22は、微生物感染の抑制において炎症促進性の役割を果たし、並びに炎症応答における上皮再生において抗炎症性防御の役割も果たす。
【0073】
炎症性免疫応答は、生物を感染や疾患から防御するのに不可欠である。しかし、免疫細胞の過剰な活性化は、バイスタンダー組織(bystander tissue)に損傷を与えることが多く、器官の機能不全、慢性炎症、及び自己免疫疾患の一因となる。これらの影響を防止及び軽減するために、免疫系は、特に免疫調節性サイトカイン及びその他の分泌因子の産生を通じて、炎症を抑制し、異常な組織損傷を防止する多くの調節メカニズムを進化させてきた。
【0074】
1つの重要な分泌因子はサイトカインIL-22であり、これは組織の恒常性を維持する上で中心的な役割を果たす。炎症の最中に、CD4+T細胞や3型自然リンパ球(ILC3)を含む複数のタイプの免疫細胞がバリア界面でIL-22を産生し、そこで上皮細胞に作用して組織の完全性を高め、再生を促進する。IL-22は、膵臓、消化管、肝臓、及び胸腺を含む様々な組織に対してこれらの防御効果を発揮し、外因性IL-22による治療は、膵炎、炎症性腸疾患(IBD)、及び急性肝障害のマウスモデルにおいて防御的である。さらに、IL-22は、Lgr5+腸幹細胞の生存と再生能力を促進することにより、移植片対宿主病(GvHD)を介する腸の損傷から防御する。免疫機能を抑制せずに炎症性組織の損傷を予防及び回復させるIL-22の固有の能力は、自己免疫疾患の魅力的な治療目標となり、コルチコステロイドやサイトカイン拮抗薬などの現在の治療法とは一線を画している。
【0075】
これらの有益な機能にもかかわらず、IL-22はまた、いくつかの状況においても病原性である可能性があり、最も顕著なのはIBD及び乾癬の場合である。IL-22の炎症促進作用は、大部分は、皮膚、肝臓、及び消化管における好中球動員ケモカイン(例えばCXCL1)の誘導、並びに炎症性Th17細胞の活性化を促進する血清アミロイドA(SAA)-1/2などの急性期応答タンパク質の産生による。実際、外因性IL-22の投与は、マウスとヒトの両方で、急性期応答タンパク質の血清レベルの有意な上昇を誘発する。従って、局所炎症と全身炎症の両方を引き起こすIL-22のこの可能性は、その臨床的有用性に重大な制限をもたらす。
【0076】
機構的に、IL-22は、高親和性サブユニットIL22R1と低親和性サブユニットIL10Rβからなるヘテロ二量体受容体を介してシグナル伝達する。IL10Rβは遍在的に発現されるが、IL-22R1は主に上皮細胞で発現され、IL-22の標的細胞特異性を決定する。IL-22は、IL22R1に結合すると、IL22R1とIL10Rβの二量体形成を促進し、細胞内の受容体関連キナーゼJak1とTyk2を結合させ、これらは、相互にリン酸化するだけでなく、IL22R1の細胞内ドメイン(ICD)上のチロシンもリン酸化する。これらのホスホチロシンは、順にSTAT1及びSTAT3転写因子を動員し、それらのリン酸化と活性化を促進する。IL-22の下流にある組織保護及び再生遺伝子の発現はSTAT3によって媒介されるが、IL-22の炎症促進作用のいくつかはSTAT1によるものと考えられており、これが、炎症促進性インターフェロン刺激遺伝子(ISG)の発現を制御する。
【0077】
下流のシグナル伝達応答を分離する機能選択的な又は「バイアス型(biased)」アゴニストは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)について広く特性解析されており、最近の研究は、そのようなアゴニストがサイトカイン受容体についても可能であることを示唆している。ただし、これらのアプローチは広範な構造情報に依存しており、これが、現在IL-22受容体複合体について欠けているいる。これは主に、IL-22が共有する受容体サブユニットであるIL10Rβに対する親和性が非常に低いためであり、これはインビトロでの複合体の構築を妨げる。
【0078】
以下の実施例に記載されているように、指向性進化アプローチを使用して、IL10Rβに対する親和性が増強されたIL-22バリアントを改変され、IL-22/IL22R1/IL10Rβ三元複合体の結晶構造を2.6Åの分解能まで解明することが可能になった。IL-10Rβ界面を標的とするIL-22の構造誘導変異により、STAT1ではなくSTAT3を介してシグナル伝達するバイアス型IL-22バリアントが得られた。本明細書に開示される例示的なIL-22ポリペプチドバリアントである22-B3も、インビボで組織選択的シグナル伝達応答を誘発し、膵臓及び結腸ではSTAT3にバイアス型アゴニストとして作用するが、皮膚及び肝臓では中立的なアンタゴニストとして作用する。特に22-B3は、皮膚、肝臓、結腸で炎症メディエーターを誘発することなく、IL-22の組織保護機能をインビボで保持し、従ってIL-22の主要な組織保護機能と炎症促進機能を切り離している。
【0079】
サイトカインは、宿主の免疫応答を制御し、組織の恒常性を促進する上で多くの重要な役割を果たすが、治療薬としての使用を制限する可能性のある多面的効果又は逆効果もしばしば発揮する。その結果、サイトカイン及びサイトカイン受容体アンタゴニストは重要な臨床的成功を収めているが、サイトカイン受容体アゴニストについてそのような例ははるかに少ない。サイトカインIL-22は、組織や疾患の状況に応じて、有益な機能と有害な機能の両方を発揮できるサイトカインの代表的な例である。以下でより詳細に説明されるように、IL-22の組織保護機能と炎症促進機能を効果的に切り離すIL-22の機能選択的なバリアントを開発するために、構造に基づくアプローチが使用されていて、IL-22がどのように機能するかについての新しい知見が明らかになるが、改善されたサイトカインベースの治療法の開発への道も提供している。
【0080】
IL-22受容体複合体のこれまでの構造的特性解析を妨げる主な障壁は、サブユニット間、特にIL-22とIL10Rβとの間の極めて低い親和性相互作用の存在であった。ここでは、リガンド改変アプローチが使用して、三元受容体複合体に関する情報を得た。ここで提示されたIL-22受容体複合体の構造は、IL-10スーパーファミリー内の受容体共有のメカニズムに関するいくつかの知見を提供する。IL-22受容体複合体は、共有受容体サブユニットIL10Rβに結合したサイトカインの2番目に報告された構造であり、以前に解明されたIFN-λ複合体の構造と比較して、リガンド結合の異なるモードを明らかにしている(
図2)。IL-22及びIFN-λに加えて、IL10RβはまたIL-10及びIL-26受容体にも存在し、これらのサイトカインによる受容体共有の根底にあるメカニズムに関連するこれらの複合体の構造的特性解析。
【0081】
IL-22/IL10Rβ結合部位を分析することにより、IL-22とのIL10Rβ結合界面でアミノ酸置換を有する一連のヒト及びマウスIL-22バリアントの生成が可能になり、その結果、STAT3にバイアス型アゴニスト作用を有するIL22バリアントが得られた.偏った活性を有する改変サイトカイン受容体リガンドの以前の例は、受容体トポロジーの変更に依存していたが、以下に説明される実験結果は、その受容体に対する天然のサイトカインの親和性の調節が、バイアス型アゴニスト作用を生成するのに十分であることを示す。機構的に、本開示のIL22バリアントは、WT IL-22と比較してIL22R1のリン酸化を実質的に減少させ、こうしてSTAT1及びSTAT3の活性化の2つの異なるモードを利用している。STAT1はIL22R1のICD上のホスホチロシンに結合することによってIL22受容体に動員されるのに対し、STAT3はホスホチロシン結合とは無関係にIL22R1と事前に会合することができ、従って受容体リン酸化が完全に存在しない場合でも活性化され得る(
図3F)。
【0082】
バイアス型IL-22バリアントである22-B3のインビボでの特性解析は、IL10Rβ発現レベルと相関する相対シグナル強度を有し、組織選択的シグナル伝達活性を明らかにした(
図6D)。IL-22はインビトロで肝細胞の表面上のIL-22R1に依然として結合することができるため(
図4I)、これは改変された組織「標的化」の結果ではなく、機能的な組織選択性の例である。組織選択性の概念はGPCR及び核内受容体の薬理学で十分に確立されており、最も顕著な例はエストロゲン受容体アゴニスト(Riggs and Hartmann, 2003)であり、ここで示されたデータは、この概念をサイトカイン受容体シグナル伝達にも拡張している。
【0083】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、本明細書に記載の実験データは、IL10Rβに対する親和性とIL10Rβの発現レベルの組み合わせが、所定の細胞上でIL-22によって誘導されるシグナル伝達のタイプを決定することを示す。このシグナル強度は、完全なアゴニスト作用から中立的なアンタゴニズムまでの範囲のスペクトル上に存在し、中間のシグナル強度は、STAT1ではなくSTAT3のリン酸化につながるバイアス型活性をもたらす。インビボでIL-22の組織保護機能及び炎症促進機能を切り離す22-B3の能力は、その偏ったシグナル伝達活性と組織選択性の両方の組み合わせに起因すると思われる。例えば結腸でSTAT1ではなくSTAT3を活性化することにより、22-B3は、Reg3β/γやMuc1などのSTAT3依存性組織保護遺伝子の発現を誘導する能力を保持するが、炎症促進性STAT1標的遺伝子CXCL1を誘導しなくなる。ただし、SAA-1/2などの急性期応答タンパク質はSTAT3標的遺伝子であるため、これらのタンパク質の全身的な増加がないのは、肝臓中の22-B3が完全に不活性なためである。22-B3は皮膚と肝臓でSTAT3を活性化できないため、これらの組織でWT IL-22の組織保護効果を保持していないことは注目に値する。本明細書に記載の実験データは、22-B3又は同様のIL-22バリアントが、膵臓及び消化管の炎症性疾患の治療に治療的有用性を有し、皮膚及び肝臓の炎症に関連する副作用のリスクが大幅に低下していることを示す。
【0084】
以下でより詳細に説明されるように、IL-22シグナル伝達のこれらの相反する作用に対する機構的知見を得るために、酵母ディスプレイに基づく指向性進化を使用して高親和性IL-22バリアントを改変していくつかの実験を行うと、そのヘテロ二量体受容体複合体に結合したIL-22の構造的特性解析が可能になった。IL-22がその低親和性受容体サブユニットであるIL10Rβにどのように係合するかを明らかにすることにより、本明細書に記載のヘテロマーIL-22/IL22R1/IL10Rβ複合体の結晶構造が、IL-22受容体の下流のシグナル伝達経路を調節できる、IL10Rβ結合界面に1つ又は複数のアミノ酸置換を有するIL-22ポリペプチドバリアントの設計に、使用された。これらのIL-22バリアントのいくつかは、STAT1及びSTAT3活性化の2つの異なるメカニズムを利用することにより、結腸上皮細胞中で強いバイアス型アゴニスト作用を示すことがわかった。特に、これらのバリアントの例示的なバリアントである22-B3はまた、インビボの組織選択的シグナル伝達応答も誘発し、全身性炎症を誘発することなく、膵臓及び消化管における組織保護遺伝子の発現を促進した。
【0085】
開示の構成
A.組換えIL-22ポリペプチド
上で概説したように、本開示のいくつかの実施形態は、IL-22受容体の下流のSTATシグナル伝達を調節するように改変IL-22ポリペプチドバリアントであって、例えばそのSTAT3媒介機能を組織特異的的に実質的に保持しながらSTAT1媒介性の炎症促進機能を付与することができる、IL-22ポリペプチドバリアントに関する。例えば本開示のいくつかの実施形態において、IL-22ポリペプチドバリアントは、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下をもたらすが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。いくつかの他の実施形態において、本開示のIL-22ポリペプチドバリアントは、肝臓におけるIL-22シグナル伝達の低下をもたらすが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。
【0086】
1つの態様において、本開示のいくつかの実施形態は、以下を含む組換えポリペプチドに関する:(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するインターロイキン22(IL-22)ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及びさらに(b)配列番号1の配列中の1つ又は複数のアミノ酸置換。
【0087】
本明細書に開示される組換えポリペプチドの非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号1の配列と、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号1の配列と100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0088】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のX43、X49、X45、X46、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のX43、X49、X45、X46、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に、1~3、2~5、3~6、又は4~7個のアミノ酸置換をさらに含む。この態様において例示的なIL-22ポリペプチドバリアントは、配列番号1の配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のアミノ酸の置換をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のX43、X49、X45、X46、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、又は少なくとも7個のアミノ酸置換を含む。
【0089】
いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数の追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のX48からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つの追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のX55からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つの追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つの追加のアミノ酸置換をさらに含む。
【0090】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、配列番号1のX43、X45、X46、X48、X49、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む。
【0091】
本開示に従って、IL-22ポリペプチドにおけるそのような置換は、そのような置換を欠く親IL-22ポリペプチドの結合親和性と比較して、IL10Rβ及び/又はIL-22R1に対する結合親和性が改変されたIL-22バリアントをもたらす。例えば本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントは、IL-22R1及び/又はIL10Rβに対して上昇又は低下した親和性を有することができるか、又はWT IL-22の親和性と同一又は同様の、これらの受容体に対する親和性を有することができる。本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントはまた、IL-22の別の位置に保存的修飾及び置換(例えばIL-22バリアントの二次又は三次構造に最小限の影響を有するもの)を含むことができる。そのような保存的置換には、DayhoffによってThe Atlas of Protein Sequence and Structure 5 (1978)に、及び Argos によって EMBO J, 8:779-785 (1989)記載されたものが含まれる。例えば次の群のいずれかに属するアミノ酸は保存的変化を表す:群I:Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr;群II:Cys、Ser、Tyr、Thr;群III:Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;群IV:Lys、Arg、His;群V:Phe、Tyr、Trp、His;及び群VI:Asp、Glu。
【0092】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドのアミノ酸配列におけるアミノ酸置換は、アラニン置換、アルギニン置換、アスパラギン酸置換、ヒスチジン置換、グルタミン酸置換、リジン置換、セリン置換、トリプトファン置換、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される。本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドにおけるアミノ酸置換の非限定的な例が以下の表1及び2に提供される。
【表1】
【0093】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、配列番号1のD43、S45、N46、Q49、Q116、R124、及びR128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/R124A/R128A;(e)Q116A/R124D/R128A;(f)D43A/Q116A/R124A/R128A;(g)S45E/Q116A/R124A/R128A;及び(h)Q48A/Q116A/R124A/R128A。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/R124A/R128A;(e)Q116A/R124D/R128A;(f)D43A/Q116A/R124A/R128A;(g)S45E/Q116A/R124A/R128A;(h)Q48A/Q116A/R124A/R128A。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1と100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/R124A/R128A;(e)Q116A/R124D/R128A;(f)D43A/Q116A/R124A/R128A;(g)S45E/Q116A/R124A/R128A;(h)Q48A/Q116A/R124A/R128A。
【0094】
いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号1の配列と、少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び配列番号1のD43H、D43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、R124Y、及びR128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号1の配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び:配列番号1のD43H、D43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、R124Y、及びR128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のD43H、D43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、R124Y、及びR128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、又は少なくとも7個のアミノ酸置換をさらに含む。
【0095】
1つの態様において、以下を含む組換えポリペプチドが本明細書に提供される:(a)配列番号6のアミノ酸配列を有するインターロイキン22(IL-22)ポリペプチドと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列、及びさらに(b)配列番号6の配列中に1つ又は複数アミノ酸置換。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号6の配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、又は少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号6の配列と100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
【0096】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のX43、X45、X46、X49、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のX43、X45、X46、X49、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に、1~3、2~5、3~6、又は4~7個のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のX43、X45、X46、X49、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に。少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、又は少なくとも7個のアミノ酸置換をさらに含む。
【0097】
いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数の追加のアミノ酸置換をさらに含む。
【0098】
いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のX48からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つの追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のX55からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つの追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つの追加のアミノ酸置換をさらに含む、
【0099】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、配列番号6のX43、X45、X46、X48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、配列番号6のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む。
【0100】
上述のように、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントはまた、IL-22の他の位置に保存的修飾及び置換(例えばIL-22バリアントの二次又は三次構造に最小限の影響を有するもの)を含むことができる。そのような保存的置換には、Dayhoff 1978(前出)及びArgos 1989(前出)によって記載されたものが含まれる。例えば次の群の1つに属するアミノ酸は、保存的変化を表す:群I:Ala、Pro、Gly、Gln、Asn、Ser、Thr;群II:Cys、Ser、Tyr、Thr;群III:Val、Ile、Leu、Met、Ala、Phe;群IV:Lys、Arg、His;群V:Phe、Tyr、Trp、His;及び群VI:Asp、Glu。
【0101】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、アラニン置換、アルギニン置換、アスパラギン酸置換、ヒスチジン置換、グルタミン酸置換、リジン置換、セリン置換、トリプトファン置換、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から独立して選択される。
【表2】
【0102】
いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、配列番号6のE43、S45、N46、Q48、R55、Q116、E117、K124、Q128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、配列番号6と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/K124A/Q128A;(e)Q116A/K124D/Q128A;(f)E43A/Q116A/K124A/Q128A;(g)S45E/Q116A/K124A/Q128A;又は(h)Q48A/Q116A/K124A/Q128A。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号6と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、又は少なくとも98%、少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/K124A/Q128A;(e)Q116A/K124D/Q128A;(f)E43A/Q116A/K124A/Q128A;(g)S45E/Q116A/K124A/Q128A;又は(h)Q48A/Q116A/K124A/Q128A。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号6と100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/K124A/Q128A;(e)Q116A/K124D/Q128A;(f)E43A/Q116A/K124A/Q128A;(g)S45E/Q116A/K124A/Q128A;又は(h)Q48A/Q116A/K124A/Q128A。
【0103】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸は、配列番号6と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及びE43H、E43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、Q124Y、及びQ128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、配列番号1の配列と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び配列番号6のE43H、E43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、Q124Y、及びQ128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号6のE43H、E43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、Q124Y、及びQ128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、又は少なくとも7個のアミノ酸置換をさらに含む。この態様による例示的なIL-22ポリペプチドバリアントは、配列番号6の配列中に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれ以上のアミノ酸の置換を含み得る。
【0104】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドの配列におけるアミノ酸置換は、IL10Rβに対する組換えIL-22ポリペプチドの結合親和性の調節をもたらす。IL-22ポリペプチドの結合活性に関して「調節する」という用語は、IL10Rβに対するポリペプチドの結合親和性の変化を指す。調節には、ポリペプチドの増加(例えば誘導、刺激)及び減少(例えば低下、阻害)の両方、又はポリペプチドの結合親和性に影響を与えるその他が含まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドの配列におけるアミノ酸置換は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を低下させる。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組換えIL-22ポリペプチドのIL10Rβ結合親和性を増加させる。
【0105】
本明細書に記載のIL-22ポリペプチドバリアントを含む本開示の組換えポリペプチドの結合活性は、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって測定することができる。例えば本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアント及びその受容体(例えばIL-22R1及び/又はIL10Rβ)の結合活性は、スキャッチャード分析(Munsen et al. Analyt. Biochem. 107:220-239, 1980)によって決定することができる。特異的結合はまた、特に限定されるものではないが、競合ELISA、Biacore(登録商標)アッセイ及び/又はKinExA(登録商標)アッセイを含む当該技術分野で公知の技術を使用して評価することができる。標的タンパク質に優先的に結合又は特異的に結合するポリペプチドは、当技術分野でよく理解されている概念であり、そのような特異的又は優先的結合を決定する方法も当技術分野で公知である。
【0106】
目的のリガンド(例えばIL-22R1及び/又はIL10Rβ)に結合する組換えIL-22ポリペプチドを選択するために、様々なアッセイ形式を使用することができる。例えば固相ELISAイムノアッセイ、免疫沈降法、Biacore(商標)(GE Healthcare, Piscataway, NJ)、KinExA、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)、Octet(商標)(ForteBio, Inc., Menlo Park, CA)、及びウエスタンブロット分析は、受容体又はそのリガンド結合部分と特異的に反応するか、同族リガンド又は結合パートナーと特異的に結合するポリペプチドを同定するために使用され得る多くのアッセイの一部である。一般に、特異的又は選択的な結合反応は、バックグラウンドシグナル又はノイズの少なくとも2倍、より一般的にはバックグラウンドの10倍超、バックグラウンドの20倍超、さらにより一般的にはバックグラウンドの50倍超、バックグラウンドの75倍超、バックグラウンドの100倍超、より典型的にはバックグラウンドの500倍超、さらにより典型的にはバックグラウンドの1000倍超、及びさらにより典型的にはバックグラウンドの10,000倍超である。
【0107】
当業者は、結合親和性がまた、2つの分子、例えばIL-22ポリペプチドとIL10Rβ受容体の間の非共有相互作用の強度の尺度として使用され得ることを理解するであろう。場合によっては、結合親和性は、一価の相互作用(固有の活性)を記述するために使用される。2つの分子間の結合親和性は、解離定数(KD)の測定によって定量化することができる。次にKDは、例えば表面プラズモン共鳴(SPR)法(Biacore)を使用して、複合体形成及び解離の動態を測定することによって決定することができる。一価複合体の会合及び解離に対応する速度定数は、それぞれ会合速度定数ka(又はkon)及び解離速度定数kd(又はkoff)と呼ばれる。KDは、式KD=kd/kaによってka及びkdに関連付けられる。解離定数の値は、周知されている方法によって直接決定することができ、例えばCaceci et al. (Byte 9: 340-362, 1984) に示される方法により、複雑な混合物についても計算することができる。例えばKDは、Wong & Lohman (1993, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 5428- 5432) によって開示されたような二重フィルターニトロセルロースフィルター結合アッセイを使用して確立することができる。標的受容体に対する本開示のIL-22ポリペプチドバリアントの結合能力を評価するための他の標準的なアッセイは当技術分野で公知であり、例えばELISA、ウェスタンブロット、RIA、及びフローサイトメトリー分析、並びに実施例に示される他のアッセイが含まれる。IL-22ポリペプチドバリアントの結合動態及び結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)などの当技術分野で公知の標準アッセイ、例えばBiacore(商標)システム又はKinExAを使用してに評価することができる。いくつかの実施形態において、IL-22R1及び/又はIL10Rβに対する本開示のIL-22ポリペプチドバリアントの結合親和性は、固相受容体結合アッセイ(Matrosovich MN et al., Methods Mol Biol. 865:71-94, 2012)によって決定される。いくつかの実施形態において、IL-22R1及び/又はIL10Rβに対する本開示のIl-22ポリペプチドバリアントの結合親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって決定される。
【0108】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらす。以下でさらに詳細に説明するように、本開示の例示的なIL-22ポリペプチドバリアントである22-B3は、インビボで組織選択的シグナル伝達応答を誘発し、膵臓及び結腸ではSTAT3にバイアス型アゴニストとして作用するが、皮膚及び肝臓では中立的なアンタゴニストとして作用する。特に、22-B3バリアントは、皮膚、肝臓、及び結腸で炎症メディエーターを誘発することなく、IL-22の組織保護機能をインビボで保持し、従ってIL-22の主要な組織保護機能と炎症促進機能を切り離す。従って、いくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらし、これは、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下を伴うが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。いくつかの他の実施形態において、本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらし、これは、肝臓におけるIL-22シグナル伝達の低下を伴うが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。
【0109】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、例えばSTAT1及びSTAT3のリン酸化によって決定されるバイアス型IL-22シグナル伝達をもたらす。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、STAT1リン酸化の、少なくとも10%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の低下を含む。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、STAT3リン酸化の、少なくとも10%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の低下を含む。
【0110】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、1つ又は複数のSTAT1媒介性の炎症促進機能の低下をもたらす。適切に測定できるSTAT1媒介性の機能に特定の制限はない。適切なSTAT1媒介性の炎症促進機能の非限定的な例には、サイトカイン産生、ケモカイン産生、及び免疫細胞動員が含まれる。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、約20%~約100%低下している。いくつかの実施形態において、STAT1シグナル伝達は、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)からなる群から選択されるアッセイによって決定される。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、炎症促進性遺伝子の発現を誘導するポリペプチドの能力によって決定すると、1つ又は複数のSTAT1媒介性の炎症促進機能の低下をもたらす。炎症促進性遺伝子の非限定的な例には、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、IL-1β、及びIL-6が含まれる。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、アミノ酸置換を欠く参照IL-20と比較して、約20%~約100%、例えば約20%~約50%、約30%~約60%、約40%~約70%、約50%~約80%、約40%~約90%、約50%~約100%、約40%~約80%、約30%~約70%、約20%~約80%、約20%約70%~約20%~約60%、約30%~約80%、約30%~約90%、又は約30%~約100%低下している。
【0111】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、1つ又は複数のSTAT3媒介機能を実質的に保持する。適切に評価できるSTAT3介在機能に関して、特定の制限はない。適切なSTAT3媒介機能の例には、特に限定されるものではないが、組織保護、組織再生、細胞増殖、及び細胞生存が含まれる。いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、Reg3β、Reg3γ、Muc1、Muc2、Muc10、BCL-2、サイクリン-D、クローディン-2、LCN2、又はβ-ディフェンシンなどのバイオマーカーの発現を誘導するポリペプチドの能力によって決定すると、1つ又は複数のSTAT3媒介機能を実質的に保持する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示されるIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、STAT1媒介性の炎症促進機能の低下をもたらすが、STAT3媒介機能は実質的に保持する。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、STAT1媒介シグナル伝達対STAT3媒介シグナル伝達の比が、約1:1.5~約1:10、例えば約1:2~約1:5、約1:2~約1:7、約1:3~約1:8、約1:4~約1:10、約1:4~約1:9、又は約1:4~約1:8の範囲である。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、STAT1媒介シグナル伝達とSTAT3媒介シグナル伝達の比が約1.5~3.2の範囲である。いくつかの実施形態において、STAT1シグナル伝達及び/又はSTAT3シグナル伝達は、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)からなる群から選択されるアッセイによって決定される。
【0113】
B.核酸
1つの態様において、発現カセット及び発現ベクターを含む、本開示の組換えIL-22ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む様々な核酸分子が本明細書で提供され、発現ベクターは、例えば宿主細胞又はエクスビボの無細胞発現系における組換えIL-22ポリペプチドのインビボ発現を可能にする調節配列などの、異種核酸配列に作動可能に連結されたこれらの核酸分子を含む。
【0114】
「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書では交換可能に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び核酸類似体を含むDNA又はRNA分子を含む核酸分子を含む、RNA分子とDNA分子の両方を指す。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えばセンス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。核酸分子は、従来方ではないか又は修飾されたヌクレオチドを含むことができる。本明細書で使用される「ポリヌクレオチド配列」及び「核酸配列」という用語は、交換可能にポリヌクレオチド分子の配列を指す。本明細書に開示されるポリヌクレオチド配列及びポリペプチド配列は、参照によりWIPO基準ST.25(1998)、付録2、表1~6を取り込む37CFR§1.82中に、ヌクレオチド塩基及びアミノ酸の標準的な文字略語を使用して示される。
【0115】
本開示の核酸分子は、一般に約0.5Kb~約20Kb、例えば約0.5Kb~約20Kb、約1Kb~約15Kb、約2Kb~約10Kb、又は約5Kb~約25Kb、例えば約10Kb~約15Kb、約15Kb~約20Kb、約5Kb~約20Kb、約5Kb~約10Kb、又は約10Kb~約25Kbである核酸分子を含む、任意の長さの核酸分子であり得る。
【0116】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、本明細書に開示される組換えポリペプチドのアミノ酸配列と、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は少なくとも100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、以下を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む:(a)配列番号1のアミノ酸配列を有するIL-22ポリペプチドと、少なくとも70%、80%、90%、95%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及びさらに(b)配列番号1のX43、X49、X45、X46、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、配列番号1のX43、X45、X46、X48、X49、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号1と少なくとも70%、80%、90%、95%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び配列番号1のD43H、D43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、R124Y、及びR128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含むポリペプチドを、コードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号1と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含むポリペプチドを、コードするヌクレオチド配列を含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/R124A/R128A;(e)Q116A/R124D/R128A;(f)D43A/Q116A/R124A/R128A;(g)S45E/Q116A/R124A/R128A;又は(h)Q48A/Q116A/R124A/R128A。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、以下を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む:(a)配列番号6のアミノ酸配列を有するIL-22ポリペプチドと、少なくとも70%、80%、90%、95%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列;及びさらに(b)配列番号6のX43、X45、X46、X49、X116、X124、及びX128からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に1つ又は複数のアミノ酸置換。いくつかの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号6のX48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置に追加のアミノ酸置換をさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸置換は、配列番号6のX43、X45、X46、X48、X55、及びX117からなる群から選択されるアミノ酸残基に対応する位置にある。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸残基X116、X124、X128に対応する位置のアミノ酸置換の組み合わせをさらに含む。いくつかの実施形態において、アミノ酸配列は、配列番号6のアミノ酸残基X55又はX117に対応するアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号6と、少なくとも70%、80%、90%、95%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号6のE43H、E43R、S45R、S45G、Q49S、Q49G、Q116W、Q116K、Q124Y、及びQ128Kからなる群から選択されるアミノ酸残基に対応するアミノ酸置換をさらに含むポリペプチドを、コードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号6と少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び以下のアミノ酸置換に対応するアミノ酸置換をさらに含むポリペプチドを、コードするヌクレオチド配列を含む:(a)R55A;(b)E117A;(c)N46A/E117A;(d)Q116A/R124A/Q128A;(e)Q116A/K124D/Q128A;(f)E43A/Q116A/K124A/Q128A;(g)S45E/Q116A/K24A/Q128A;又は(h)Q48A/Q116A/R124A/R128A。
【0118】
本明細書に開示されるいくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号1~5及び7~14からなる群から選択されるアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、96%、97、98%、99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号2のアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号3のアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号5のアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号7~14からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。いくつかの実施形態において、本開示の核酸分子は、配列番号11のアミノ酸配列と、少なくとも90%、95%、96%、97、98%、99%、又は100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0119】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列は、発現カセット又は発現ベクターに取り込まれる。発現カセットは、一般に、コード配列と、インビボ及び/又はエクスビボで、レシピエント細胞においてコード配列の正しい転写及び/又は翻訳を指令するための十分な調節情報とを含む遺伝物質の構築物を含むことが理解される。一般に、発現カセットは、所望の宿主細胞及び/又は個体をターゲティングするために、ベクターに挿入され得る。従って、いくつかの実施形態において、本開示の発現カセットは、本明細書に開示される組換えポリペプチドのコード配列を含み、これは、プロモーターなどの発現制御要素、及び任意選択的に、コード配列の転写又は翻訳に影響を与える他の核酸配列のいずれか又は組み合わせに作動可能に連結される。
【0120】
いくつかの実施形態において、ヌクレオチド配列は発現ベクターに取り込まれる。「ベクター」という用語は、一般に、宿主細胞間の転移のために設計された組換えポリヌクレオチド構築物を指し、形質転換の目的、例えば宿主細胞内への異種DNAの導入のために使用され得ることを、当業者は理解するであろう。従って、いくつかの実施形態において、ベクターは、プラスミド、ファージ、又はコスミドなどのレプリコンであり得、挿入されたセグメントの複製をもたらすように、そこに別のDNAセグメントが挿入され得る。いくつかの実施形態において、発現ベクターは組込みベクターであり得る。
【0121】
いくつかの実施形態において、発現ベクターはウイルスベクターであり得る。当業者には理解されるように、「ウイルスベクター」という用語は、典型的には、核酸分子の移動又は細胞のゲノムへの組み込みを促進するウイルス由来の核酸要素を含む核酸分子(例えばトランスファープラスミド)を、又は核酸の移動を媒介するウイルス粒子を指すために、広く使用されている。ウイルス粒子は、典型的には、核酸に加えて様々なウイルス成分を含み、時には宿主細胞成分も含む。ウイルスベクターという用語は、核酸を細胞に移動させることができるウイルス又はウイルス粒子、又は移動された核酸自体のいずれかを指し得る。ウイルスベクターとトランスファープラスミドには、主にウイルスに由来する構造的及び/又は機能的な遺伝要素が含まれている。いくつかの実施形態においてウイルスベクターは、アデノウイルスベクター、AAVベクター、バキュロウイルスベクター、レトロウイルスベクター、又はレンチウイルスベクターである。「レトロウイルスベクター」という用語は、主にレトロウイルスに由来する、構造的及び機能的遺伝要素又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。「レンチウイルスベクター」という用語は、レトロウイルス属であるレンチウイルスに主に由来するLTRを含む、構造的及び機能的遺伝要素又はその一部を含むウイルスベクター又はプラスミドを指す。
【0122】
従って、本明細書に開示される任意の組換えポリペプチド又はIL-22ポリペプチドバリアントをコードする核酸分子の1つ又は複数を含むベクター、プラスミド、又はウイルスも本明細書に提供される。核酸分子は、例えばベクターで形質転換/形質導入された細胞においてそれらの発現を指示することができるベクター内に含まれ得る。真核細胞及び原核細胞での使用に適したベクターは、当技術分野で公知であり、市販されているか、又は当業者によって容易に調製される。
【0123】
DNAベクターは、従来の形質転換又はトランスフェクション技術を介して真核細胞に導入することができる。宿主細胞を形質転換又はトランスフェクトするための適切な方法は、Sambrook et al. (2012, 前述)及び他の標準的な分子生物学実験マニュアルに見いだすことができ、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、トランスフェクション、微量注入法、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、電気穿孔法、形質導入、スクレイプローディング、弾道導入、ヌクレオポレーション、流体力学的ショック、及び感染がある。
【0124】
本開示で使用できるウイルスベクターには、例えばバキュロウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、及びアデノ随伴ウイルスベクター、レンチウイルスベクター、ヘルペスウイルス、シミアンウイルス40(SV40)、及びウシパピローマウイルスベクターが含まれる(例えばGluzman (Ed.), Eukaryotic Viral Vectors, CSH Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. を参照されたい)。
【0125】
発現系の正確な成分は重要ではない。例えば本明細書に開示される組換えポリペプチドは、真核宿主、例えば哺乳動物細胞(例えばCOS細胞、NIH3T3細胞、又はヒーラ細胞)などにおいて産生され得る。これらの細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection)(Manassas, VA)を含む多くの供給源から入手できる。発現系を選択する際には、成分が互いに適合するように注意する必要がある。当業者は、そのような決定を下すことができる。さらに、発現系を選択する際にガイダンスが必要な場合、当業者は、P. Jones, “Vectors: Cloning Applications”, John Wiley and Sons, New York, N.Y., 2009) を参照することができる。
【0126】
提供される核酸分子は、天然に存在する配列、又は天然に存在する配列とは異なるが、遺伝子コードの縮重のために同じポリペプチド、例えば抗体をコードする配列を含み得る。これらの核酸分子は、RNA又はDNA(例えばゲノムDNA、cDNA、又は合成DNA、例えばホスホアミダイトベースの合成によって生成されるもの)、又はこれらのタイプの核酸内のヌクレオチドの組み合わせ又は修飾から構成され得る。さらに、核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えばセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれか)であり得る。
【0127】
核酸分子は、ポリペプチド(例えばIL-22ポリペプチドバリアント)をコードする配列に限定されない。コード配列(例えばIL-22ポリペプチドバリアントのコード配列)の上流又は下流に位置する非コード配列の一部又は全部を含めることもできる。分子生物学の当業者は、核酸分子を単離するための日常的な操作に精通している。それらは、例えばゲノムDNAを制限エンドヌクレアーゼで処理することによって、又はポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の実施によって生成することができる。核酸分子がリボ核酸(RNA)である場合、分子は、例えばインビトロ転写によって産生され得る。
【0128】
別の態様において、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物、及び培地が本明細書に提供される。一般に、培地は、本明細書に記載の細胞を培養するための任意の適切な培地であり得る。多種多様な上述の宿主細胞及び種を形質転換するための技術は、当技術分野で公知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。従って、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物もまた、本出願の範囲内である。細胞培養物を生成及び維持するのに適した方法及びシステムは、当技術分野で公知である。
【0129】
C.組換え細胞と細胞培養物
本開示の組換え核酸は、ヒトTリンパ球などの宿主細胞に導入して、核酸分子を含む組換え細胞を産生することができる。本開示の核酸分子の細胞への導入は、当業者に公知の方法、例えばウイルス感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子銃技術、リン酸カルシウム沈殿、直接微量注入、ナノ粒子媒介核酸送達などの方法によって達成することができる。
【0130】
従って、いくつかの実施形態において、核酸分子は、当技術分野で公知のウイルス又は非ウイルス送達ビヒクルによって送達することができる。例えば核酸分子は、宿主ゲノムに安定に取り込まれるか、エピソーム的に複製するか、又は一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞に存在することができる。従って、いくつかの実施形態において、核酸分子は、組換え宿主細胞内でエピソーム単位として維持及び複製される。いくつかの実施形態において、核酸分子は、組換え細胞のゲノムに安定して組み込まれる。安定した組み込みは、古典的なランダムゲノム組換え技術、又はより正確な技術、例えばガイドRNA指向のCRISPR/Cas9ゲノム編集、NgAgo(Natronobacterium gregoryi Argonaute)を用いるDNA誘導エンドヌクレアーゼゲノム編集、又はタレン(TALEN)ゲノム編集(transcription uctivator-like effector nucleases)などを使用して達成することができる。いくつかの実施形態において、核酸分子は、一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞に存在する。
【0131】
核酸分子は、ウイルスカプシド又は脂質ナノ粒子に封入するか、又は電気穿孔法などの当技術分野で公知のウイルス又は非ウイルス送達手段及び方法によって送達することができる。例えば細胞への核酸の導入は、ウイルス形質導入によって達成され得る。非限定的な例では、バキュロウイルス又はアデノ随伴ウイルス(AAV)を改変して、ウイルス形質導入を介して標的細胞に核酸を送達することができる。いくつかのAAV血清型が記載されており、既知の血清型はすべて、複数の多様な組織型の細胞に感染する可能性がある。AAVは、毒性の証拠なしに、インビボで広範囲の種及び組織に形質導入することができ、比較的軽度の自然免疫応答及び適応免疫応答を生成する。
【0132】
レンチウイルス由来ベクター系は、ウイルス形質導入を介する核酸送達及び遺伝子治療にも有用である。レンチウイルスベクターは、遺伝子送達媒体として次のようないくつかの魅力的な特性を提供する:(i)宿主ゲノムへの安定したベクターの組み込みによる持続的な遺伝子送達;(ii)分裂細胞と非分裂細胞の両方に感染する能力;(iii)重要な遺伝子療法及び細胞療法の標的細胞タイプを含む広範な組織親和性;(iv)ベクター形質導入後にウイルスタンパク質の発現がない;(v)ポリシストロン配列又はイントロン含有配列などの複雑な遺伝要素を送達する能力;(vi)潜在的により安全な組み込み部位プロフィール;及び(vii)ベクトルの操作と産生のための比較的簡単なシステム。
【0133】
いくつかの実施形態において、例えば宿主細胞のゲノムの一部に相同的な核酸配列を含むか、又は目的のポリペプチドの発現のための発現ベクターであり得る相同組換え用のウイルスベクター又はベクターであり得る、本願のベクター構築物を用いて、宿主細胞を改変(例えば形質導入又は形質転換又はトランスフェクト)することができる。宿主細胞は、非形質転換細胞であるか、又は少なくとも1つの核酸分子ですでにトランスフェクトされた細胞のいずれかであり得る。
【0134】
いくつかの実施形態において、組換え細胞は原核細胞又は真核細胞である。いくつかの実施形態において、細胞はインビボである。いくつかの実施形態において、細胞はエクスビボである。いくつかの実施形態において、細胞はインビトロである。いくつかの実施形態において、組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施形態において、動物細胞はヒト細胞である。いくつかの実施形態において、細胞は非ヒト霊長類細胞である。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、免疫系細胞、例えばリンパ球(例えばT細胞又はNK細胞)、又は樹状細胞である。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、B細胞、単球、ナチュラルキラー(NK)細胞、好塩基球、好酸球、好中球、樹状細胞、マクロファージ、制御性T細胞、ヘルパーT細胞(TH)、細胞傷害性T細胞(TCTL)、又は他のT細胞である。いくつかの実施形態において、免疫系細胞はTリンパ球である。いくつかの実施形態において、細胞は、対象から得られた試料に対して行われる白血球除去によって得ることができる。いくつかの実施形態において、対象はヒト患者である。適切な細胞株の非限定的な例には、Trichoplusia ni(Hi5)細胞、Expi-293F細胞、HEK-293T(ATCC CRL-3216)、HT-29(ATCC HTB-38)、Panc-1(ATCC CRL-1469)、HepG2(ATCC HB-8065)、及びEC4細胞が含まれる。
【0135】
別の態様において、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物、及び培地が本明細書に提供される。一般に培地は、本明細書に記載の細胞を培養するための任意の適切な培地であり得る。多種多様な上述の宿主細胞及び種を形質転換するための技術は、当技術分野で公知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。従って、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物もまた、本出願の範囲内である。細胞培養物を生成及び維持するのに適した方法及びシステムは、当技術分野で公知である。
【0136】
D.IL-22ポリペプチドの産生方法
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、本開示の組換えポリペプチドを産生するための様々な方法に関し、この方法は以下を含む:(a)本開示の1つ又は複数の組換え細胞を提供すること;及び(b)組換え細胞を培地中で培養して、組換え核酸分子によってコードされるポリペプチドを細胞が産生するようにすること。従って、本明細書に開示される方法によって産生される組換えポリペプチドもまた、本開示の範囲内である。
【0137】
組換えポリペプチドを産生するための開示された方法の非限定的な例示的実施形態は、以下の1つ又は複数の特徴を含み得る。いくつかの実施形態において、本方法は、産生されたポリペプチドを単離及び/又は精製することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドを産生する方法は、産生されたポリペプチドを単離及び/又は精製することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドを産生する方法は、産生されたポリペプチドの構造を修飾して半減期を延長させることをさらに含む。
【0138】
いくつかの実施形態において、修飾は、ヒトFc抗体断片への融合、アルブミンへの融合、及びPEG化からなる群から選択される1つ又は複数の改変を含む。例えば本明細書に開示される組換えポリペプチドのいずれも、組換えポリペプチド及び異種ポリペプチド(例えばIL-22でもそのバリアントでもないポリペプチド)を含む融合体又はキメラポリペプチドとして調製することができる。例示的な異種ポリペプチドは、インビボで組換えポリペプチドの循環半減期を延長させることができ、従って、本開示の組換えポリペプチドの特性をさらに増強することができる。様々な実施形態において、循環半減期を延長させる異種ポリペプチドは、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミン、又はIgG重鎖可変領域を欠く抗体のIgGサブクラスのFc領域であり得る。例示的なFc領域は、補体結合及びFc受容体結合を阻害する突然変異を含むことができるか、又はそれは溶解性であり得、例えば補体に結合し得るか、又は抗体依存性補体溶解(ADCC)などの別の機構を介して細胞を溶解することができる。
【0139】
いくつかの実施形態において、「Fc領域」は、パパインによるIgGの消化によって産生されるIgGのC末端ドメインに相同的な天然又は合成ポリペプチドであり得る。IgG Fcの分子量は約50kDaである。本開示の組換え融合ポリペプチドは、Fc領域全体、又はそれが一部である融合ポリペプチドの循環半減期を延長する能力を保持するそのより小さな部分を含むことができる。さらに、全長又は断片化されたFc領域は、野生型分子のバリアントであり得る。すなわちそれらは、ポリペプチドの機能に影響するかも又は影響しないかもしれない突然変異を含み得る。以下でさらに説明するように、天然の活性が、必ずしもすべての場合に必要又は望ましいわけではない。いくつかの実施形態において、組換え融合タンパク質(例えば本明細書に記載のIL-22部分アゴニスト又はアンタゴニスト)は、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域を含む。
【0140】
Fc領域は、「溶解性」又は「非溶解性」であり得るが、典型的には非溶解性である。非溶解性Fc領域は、典型的には、高親和性Fc受容体結合部位及びC'1q結合部位を欠いている。マウスIgG Fcの高親和性Fc受容体結合部位は、IgG Fcの235位にLeu残基を含む。従って、Fc受容体結合部位は、Leu235を変異又は欠失させることによって破壊することができる。例えばLeu235をGluで置換すると、Fc領域が高親和性Fc受容体に結合する能力が阻害される。マウスのC'1q結合部位は、IgGのGlu318、Lys320、及びLys322残基を変異又は欠失させることによって機能的に破壊することができる。例えばGlu318、Lys320、及びLys322をAla残基で置換すると、IgG1 Fcは抗体依存性補体溶解を指令できなくなる。対照的に、溶解性IgG Fc領域は、高親和性Fc受容体結合部位及びC'1q結合部位を有する。高親和性Fc受容体結合部位は、IgG Fcの235位にLeu残基を含み、C'1q結合部位は、IgG1のGlu318、Lys320、及びLys322残基を含む。溶解性IgG Fcは、これらの部位に野生型残基又は保存的アミノ酸置換を有する。溶解性IgG Fcは、抗体依存性細胞傷害又は補体指令細胞溶解(CDC)のための細胞を標的にすることができる。ヒトIgGの適切な変異も当技術分野で公知である。
【0141】
他の実施形態において、組換え融合ポリペプチドは、本開示の組換えIL-22ポリペプチド、及びFLAG配列などの抗原タグとして機能するポリペプチドを含むことができる。FLAG配列は、ビオチン化された特異性の高い抗FLAG抗体によって認識される。いくつかの実施形態において、組換え融合ポリペプチドはC末端c-mycエピトープタグをさらに含む。
【0142】
他の実施形態において、組換え融合ポリペプチドは、本開示の組換えIL-22ポリペプチドと、Aga2p凝集素サブユニットなどのIL-22ポリペプチドの発現を増強するか又は細胞局在化を指令するように機能する異種ポリペプチドとを含む。
【0143】
他の実施形態において、本開示の組換えIL-22ポリペプチド及び抗体又はその抗原結合部分を含む融合ポリペプチドを生成することができる。組換えIL-22ポリペプチドの抗体又は抗原結合成分は、標的化部分として働くことができる。例えばこれは、組換えIL-22ポリペプチドを細胞又は標的分子の特定のサブセットに局在化するために使用することができる。サイトカイン-抗体キメラポリペプチドを生成する方法は、当技術分野で公知である。
【0144】
いくつかの実施形態において、本開示の組換えIL-22ポリペプチドは1つ又は複数のポリエチレングリコール(PEG)分子で修飾して、その半減期を延長させることができる。本明細書で使用される「PEG」という用語は、ポリエチレングリコール分子を意味する。典型的な形態では、PEGは末端ヒドロキシル基を有する線状ポリマーであり、式HO-CH2CH2-(CH2CH2O)n-CH2CH2-OHを有し、ここで、nは約8~約4000である。
【0145】
一般に、「n」は離散値ではなく、平均値の周りにほぼガウス分布を有する範囲を構成する。末端水素は、アルキル基又はアルカノール基などのキャッピング基で置換されていてもよい。PEGは、少なくとも1つのヒドロキシ基を有することができ、より好ましくはこれは末端ヒドロキシ基である。このヒドロキシ基は、ペプチドと反応して共有結合を形成することができるリンカー部分に結合することができる。PEGの多数の誘導体が当技術分野に存在する。本開示の組換えIL-22ポリペプチドに共有結合したPEG分子は、約10,000、20,000、30,000、又は40,000ダルトンの平均分子量であり得る。PEG化試薬は、直鎖状又は分枝状の分子でもよく、単独又はタンデムで存在することができる。本開示のPEG化IL-22ポリペプチドは、ペプチドのC末端及び/又はN末端に結合したタンデムPEG分子を有することができる。本明細書で使用される「PEG化」という用語は、上述したように、本開示のIL-22ポリペプチドなどの分子への、1つ又は複数のPEG分子の共有結合を意味する。
【0146】
E.医薬組成物
本開示の組換えポリペプチド、核酸、組換え細胞、及び/又は細胞培養物は、医薬組成物を含む組成物に取り込むことができる。そのような組成物は、一般に、本明細書に記載の組換えポリペプチド、核酸、組換え細胞、及び/又は細胞培養物、並びに医薬的に許容し得る賦形剤、例えば担体を含む。
【0147】
従って、本開示の1つの態様は、医薬的に許容し得る担体及び以下のうちの1つ又は複数を含む医薬組成物に関する:(a)本開示の組換えポリペプチド;(b)本開示の組換え核酸;(c)本開示の組換え細胞;及び(d)医薬的に許容し得る担体。
【0148】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、癌などの疾患を治療、予防、改善するため、又は疾患の発症を軽減又は遅延させるために製剤化される。
【0149】
開示された医薬組成物の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含むことができる。いくつかの実施形態において、組成物は、本開示の組換えポリペプチドと医薬的に許容し得る担体を含む。いくつかの実施形態において、組成物は、本開示の組換え細胞と医薬的に許容し得る担体を含む。いくつかの実施形態において、組換え細胞は、本開示の組換えポリペプチドを発現する。新しい治療アプローチとしてインターロイキンを発現及び分泌するように遺伝子修飾された組換え細胞の例は、例えばSteidler L. et al., Nature Biotechnology, Vol. 21, No. 7, July 2003 及び Oh J.H et al., mSphere, Vol. 5, Issue 3, May/June 2020 に既に記載されている。
【0150】
いくつかの実施形態において、組成物は、本開示の組換え核酸と医薬的に許容し得る担体を含む。いくつかの実施形態において、組換え核酸は、ウイルスカプシド又は脂質ナノ粒子に封入される。
【0151】
注射用途に適した医薬組成物には、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌注射溶液又は分散液の即時調製用の無菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が含まれる。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動的であるべきである。これは、製造及び保管条件下で安定していなければならず、バクテリアや菌類などの微生物による汚染作用から防御して保存しなければならない。担体は、溶媒又は分散媒体でもよく、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びそれらの適切な混合物が含まれる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合は必要な粒子サイズの維持、及びドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール、及び/又は塩化ナトリウムを含めるのが一般的であろう。注射用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含めることに行われる。
【0152】
無菌注射溶液は、必要に応じて、上に列挙した成分の1つ又は組み合わせを含む適切な溶媒中に必要量の活性化合物を取り込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、活性化合物を無菌ビヒクルに取り込むことによって調製され、このビヒクルは、基本的な分散媒体と、上に列挙したものからの必要な他の成分を含む。無菌注射溶液の調製のための無菌粉末の場合、好ましい調製方法は、真空乾燥及び凍結乾燥であり、これは、有効成分の粉末に加えて、事前に無菌濾過されたその溶液からの任意の追加の所望の成分を与える。
【0153】
本開示の対象の組換えポリペプチドの全身投与は、経粘膜又は経皮手段によるものでもあり得る。経粘膜又は経皮投与の場合、透過されるバリアに適した浸透剤が製剤に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般的に知られており、例えば経粘膜投与の場合、界面活性剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻スプレー又は座薬を使用して行うことができる。経皮投与の場合、活性化合物は、当技術分野で一般に知られているように、軟膏、膏薬、ゲル、又はクリームに処方される。
【0154】
いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドは、トランスフェクション又は感染により、特に限定されるものではないが、McCaffrey et al. (Nature 418:6893, 2002), Xia et al. (Nature Biotechnol. 20: 1006-1010, 2002), 又は Putnam (Am. J. Health Syst. Pharm. 53: 151-160, 1996, erratum at Am. J. Health Syst. Pharm. 53:325, 1996)を含む当技術分野で公知の方法を使用して、投与することもできる。
【0155】
いくつかの実施形態において、本開示の対象の組換えポリペプチドは、体内からの急速な排出から組換えポリペプチドを防御する担体、例えばインプラント及びマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤を用いて調製される。生分解性、生体適合性ポリマー、例えばエチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸を使用することができる。このような製剤は、標準的な技術を使用して調製することができる。材料は、Alza Corporation 及び Nova Pharmaceuticals, Inc. から商業的に入手することもできる。リポソーム懸濁液(ウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を用いて感染細胞を標的とするリポソームを含む)も、医薬的に許容し得る担体として使用することができる。これらは、当業者に公知の方法、例えば米国特許第4,522,811号に記載されているように調製することができる。以下により詳細に記載されるように、本開示の組換えポリペプチドはまた、PEG化、アシル化、Fc融合、アルブミンなどの分子への結合などによって、延長された作用持続時間を達成するように修飾され得る。いくつかの実施形態において、組換えポリペプチドは、インビボ及び/又はエクスビボでの半減期を延長するためにさらに修飾することができる。本開示の組換えポリペプチドを修飾するのに適した既知の戦略及び方法論の非限定的な例には、(1)組換えポリペプチドがプロテアーゼと接触するのを防ぐポリエチレングリコール(「PEG」)などの高溶解性高分子による、本明細書に記載の組換えポリペプチドの化学修飾、(2)本明細書に記載の組換えポリペプチドに、例えばアルブミンなどの安定なタンパク質を共有的に連結又は結合させること、を含む。従って、いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドは、アルブミンなどの安定なタンパク質に融合することができる。例えばヒトアルブミンは、そこに融合したポリペプチドの安定性を高める最も効果的なタンパク質の1つとして知られており、そのような多くの融合タンパク質が報告されている。
【0156】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、1つ又は複数のPEG化試薬を含む。本明細書で使用される「PEG化」という用語は、ポリエチレングリコール(PEG)をタンパク質に共有結合させることによってタンパク質を修飾することを指し、「PEG化された」とはPEGが結合したタンパク質を指す。約10,000ダルトン~約40,000ダルトンまでの任意の範囲のサイズを有する一連のPEG又はPEG誘導体を、様々な化学を使用して本開示の組換えポリペプチドに結合することができる。いくつかの実施形態において、PEG又はPEG誘導体の平均分子量は、約1kD~約200kD、例えば約10kD~約150kD、約50kD~約100kD、約5kD~約100kD、約20kD~約80kD、約30kD~約70kD、約40kD~約60kD、約50kD~約100kD、約100kD~約200kD、又は約150kD~約200kDである。いくつかの実施形態において、PEG又はPEG誘導体の平均分子量は、約5kD、約10kD、約20kD、約30kD、約40kD、約50kD、約60kD、約70kD、又は約80kDである。いくつかの実施形態において、PEG又はPEG誘導体の平均分子量は、約40kDである。いくつかの実施形態において、PEG化試薬は、メトキシポリエチレングリコール-プロピオン酸スクシンイミジル(mPEG-SPA)、mPEG-酪酸スクシンイミジル(mPEG-SBA)、mPEG-コハク酸スクシンイミジル(mPEG-SS)、mPEG-炭酸スクシンイミジル(mPEG-SC)、mPEG-グルタル酸スクシンイミジル(mPEG-SG)、mPEG-N-ヒドロキシル-スクシンイミド(mPEG-NHS)、mPEG-トレシレート、及びmPEG-アルデヒドから選択される。いくつかの実施形態において、PEG化試薬はポリエチレングリコールである。例えばPEG化試薬は、本開示の組換えポリペプチドのN末端メチオニン残基に共有結合した平均分子量20,000ダルトンのポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態において、PEG化試薬は、本開示の組換えポリペプチドのN末端メチオニン残基に共有結合した、平均分子量が約5kD、約10kD、約20kD、約30kD、約40kD、約50kD、約60kD、約70kD、又は約80kDのポリエチレングリコールである。いくつかの実施形態において、PEG化試薬は、本開示の組換えポリペプチドのN末端メチオニン残基に共有結合した平均分子量が約40kDのポリエチレングリコールである。
【0157】
従って、いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドは、1つ又は複数のポリエチレングリコール部分で化学的に修飾、例えばPEG化されているか、又は同様の修飾、例えばPAS化されている.いくつかの実施形態において、PEG分子又はPAS分子は、開示された組換えポリペプチドの1つ又は複数のアミノ酸側鎖に結合される。いくつかの実施形態において、PEG化又はPAS化されたポリペプチドは、1つのみのアミノ酸上のPEG又はPAS部分を含む。他の実施形態において、PEG化又はPAS化ポリペプチドは、2つ又はそれ以上のアミノ酸上の、例えば2以上、5以上、10以上、15以上、又は20以上の異なるアミノ酸残基に結合したPEG又はPAS部分を含む。いくつかの実施形態において、PEG又はPAS鎖は、2000、2000超、5000、5,000超、10,000、10,000超、10,000超、20,000、20,000超、及び30,000Daである。PAS化ポリペプチドは、アミノ基、スルフヒドリル基、ヒドロキシル基、又はカルボキシル基を介してPEG又はPASに(例えば連結基なしで)直接結合され得る。いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドは、平均分子量が約1kD~約200kD、例えば約10kD~約150kD、約50kD~約100kD、約5kD~約100kD、約20kD~約80kD、約30kD~約70kD、約40kD~約60kD、約50kD~約100kD、約100kD~約200kD、又は約150kD~約200kDの範囲のポリエチレングリコールに共有結合される。いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドは、平均分子量が約5kD、約10kD、約20kD、約30kD、約40kD、約50kD、約60kD、約70kD、又は約80kDの平均分子量であるポリエチレングリコールに共有結合される。いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチドは、平均分子量が約40kDのポリエチレングリコールに共有結合される。
【0158】
部位特異的PEG化部位の取り込み
いくつかの実施形態において、本開示の組換えポリペプチド(例えばIL-22バリアント)は、例えば米国特許第7,045,337号;7,915,025号;Dieters, et al. (2004) Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 14(23):5743-5745;Best, M (2009) Biochemistry 48(28): 6571-6584 に記載されているように、部位特異的結合(例えばPEG化)を促進する非天然のアミノ酸側鎖を有する非天然のアミノ酸の取り込みによって修飾され得る。いくつかの実施形態において、例えば Dozier and Distefano (2015) International Journal of Molecular Science 16(10): 25831-25864 に記載されているように、本開示の組換えポリペプチド内の種々の位置にシステイン残基を取り込んで、システイン側鎖を介して部位特異的PEG化を促進することができる。
【0159】
特定の実施形態において、本開示は、本開示の部位特異的PEG化を可能にする1つ又は複数のアミノ酸(例えばシステイン又は非天然アミノ酸)の取り込みを含むIL-22バリアントポリペプチドを提供し、ここで、部位特異的PEG化部位のためのアミノ酸置換は、IL-22とIL-22受容体の成分、例えばIL-10Rβ又はIL-22R1との間の界面にはない。そのような場合、部位特異的アミノ酸修飾は、配列番号1又は配列番号6のアミノ酸残基41~58、97~115、124~131以外のIL-22アミノ酸位置で取り込まれ、これらは、本明細書に記載の結晶構造において明らかにされたIL-10Rβ結合部位を包含する。上で考察したように、本開示の目的のためのすべてのアミノ酸の番号付けは、配列番号1(ヒトIL-22)又は配列番号6(マウスIL-22)に示されるIL-22タンパク質の前駆体ポリペプチド(又はプレタンパク質)配列に基づく。いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号1又は配列番号6の1つ又は複数の以下のアミノ酸位置41~58、97~115、124~131の部位特異的結合(例えばPEG化)を可能にする部位特異的アミノ酸置換を含むIL-22バリアントポリペプチドを提供する。
【0160】
いくつかの実施形態において、IL-22結合タンパク質(例えばIL-10Rβ又はIL22R1)と相互作用するIL-22バリアントの表面へのPEGの結合により部位特異的PEG化を使用して、IL-22結合タンパク質(例えばIL-10Rβ又はIL22R1)によるIL-22の中和を調節又は除去することができる。IL-22とIL-22結合タンパク質との間の相互作用に関与するIL-22内のそのようなアミノ酸残基の例には、特に限定されるものではないが、配列番号1又は配列番号6のアミノ酸残基50~73、166~176が含まれる。
【0161】
部位特異的PEG化部位の取り込み
いくつかの実施形態において、IL-22タンパク質とIL-10Rβタンパク質との相互作用は、IL-22界面の本明細書に記載のアミノ酸位置に部位特異的PEG化を取り込むことによって調節することができる。配列番号1又は配列番号6のD43、S45、N46、Q49、Q116、R124、及びR128からなる群から選択されるアミノ酸残基(すなわち、シグナルペプチドを欠く成熟ヒトIL-22タンパク質、すなわち配列番号34又は配列番号35の配列に従って番号付けした場合、残基D10、S12、N13、Q16、Q83、R91、及びR95)に対応する1つ又は複数の位置における、部位特異的PEG化を促進する非天然アミノ酸(又はシステイン残基)の取り込みは、IL-10Rβタンパク質への調節された結合を有するIL-22バリアントポリペプチドを提供し、部分的アゴニスト活性を有するバリアントIL-22/IL-22R1/IL-10Rβ受容体複合体をもたらす。PEG分子が界面で取り込まれるような場合、IL-22バリアントポリペプチドとIL-10Rβ又はIL22R1タンパク質との結合が完全に破壊されないように、従って活性が除去されないように、PEGは、典型的には、約1kDa、あるいは約2kDa、あるいは約3kDa、あるいは約4kDa、あるいは約5kDa、あるいは約6kDa、あるいは約7kDa、あるいは約8kDa、あるいは約9kDa、あるいは約10kDaから、あるいは約12kDa、あるいは約15kDa、あるいは約20kDaの低分子量PEG種である。
【0162】
製剤
本開示のIL-22バリアントポリペプチドは、そのようなIL-22バリアントポリペプチドの治療有効量を単独で又は1つ又は複数の追加の治療薬と組み合わせて、対象に投与することにより、炎症性疾患に罹患している哺乳動物対象における炎症性疾患を治療及び/又は予防するのに有用である。さらに、本開示は、そのようなIL-22バリアントポリペプチドの治療有効量を単独で又は1つ又は複数の追加の治療薬と組み合わせて、対象に投与することにより、炎症性疾患に罹患している哺乳動物対象における炎症性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供する。
【0163】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物及び方法は、特に限定されるものではないが、クローン病(CD)、潰瘍性大腸炎(UC)、及び腸管の慢性炎症を特徴とする炎症性腸疾患(IBD)の他の形態を含む、腸管(GI)の炎症性疾患の治療に有用である。クローン病は口から肛門までの腸管の領域に影響を与える可能性があるが、潰瘍性大腸炎は通常、大腸と直腸の炎症に関連している。
【0164】
このような炎症性腸状態に対する従来の第一選択治療には、5-アミノサリチル酸が含まれ、必要に応じてコルチコステロイドと組み合わせて使用される。最近では、抗TNFアルファ抗体(例えばインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ)、及びインテグリン受容体アンタゴニスト(例えばナタリズマブ、ベドリズマブ)、及びIL23アンタゴニスト(例えばウステキヌマブ)などの治療用タンパク質が開発されている。そのようなポリペプチドは慢性炎症性疾患の治療において顕著な有効性を提供するが、そのようなポリペプチドの従来の非経口(IM、IV、又はSQ)投与は、比較的少ない比率の薬剤で全身曝露をもたらす。これらの薬剤は炎症経路の特定の破壊を提供するが、非経口投与によるそのような薬剤への全身暴露は、免疫抑制を含む重大な全身的副作用と関連しており、結核、真菌感染症、尿路感染症、及びリンパ腫を含む、重大な生命にかかわる感染症に対する感受性が上昇する。そのような重大な全身毒性により、投与される薬剤の用量が制限され、その結果、影響を受けた組織が生物学的治療薬に最適に曝露されなくなる。
【0165】
本開示のIL-22バリアントポリペプチドの選択的性質は、非経口投与された場合にそのような全身性副作用を軽減するが、場合によっては、腸管へのIL-22バリアントポリペプチドの直接投与を提供することが望ましい場合がある。
【0166】
IL-22バリアントポリペプチドの経口投与用製剤
本開示はさらに、哺乳動物対象における消化管の炎症性疾患を治療及び/又は予防する方法を提供し、この方法は、哺乳動物対象に、本開示のIL-22バリアントポリペプチドを含む組成物の治療的又は予防的に有効な量を、単独で又は1つ又は複数の追加の治療薬と組み合わせて投与することを含む。本開示はさらに、本開示のIL-22バリアントポリペプチドを含む経腸組成物を提供する。いくつかの実施形態において、経腸組成物は、IL-22バリアントポリペプチドの医薬的に許容し得る製剤を含み、このような製剤は、上部GI管でのIL-22バリアントポリペプチドの分解に抵抗し、下部GI管で崩壊し、従って小腸、大腸、直腸、及び肛門を含む下部消化管へのIL-22バリアントポリペプチドの投与を促進し、及び特に限定されるものではないが、潰瘍性大腸炎を含む下部消化管の炎症性疾患の治療を促進する。経口投与に適した例示的なポリペプチド製剤は当技術分野で公知であり、例えば Hamman, et al “Oral Delivery of Peptide Drugs” (2005). BioDrugs 19, 165-177; Blichmann, P. “Oral Delivery of Peptide Drugs for Mitigation of Crohn’s Disease”(2012) に記載されている。すべての論文。1486。Anselmo, et al “Non-invasive delivery strategies for biologics) (2019) Nat Rev Drug Discov 18, 19-40 でレビューされた。
【0167】
改変原核細胞の送達
別の実施形態において、本開示は、哺乳動物対象の消化管にIL-22バリアントを投与するための方法を提供し、この方法は、対象に、組換え操作された原核細胞を含む医薬的に許容し得る組成物を投与する工程を含み、原核細胞は、1つ又は複数の発現制御配列に作動可能に連結された本開示のIL-22バリアントをコードする核酸配列を含み、従って、IL-22バリアントは組換え原核細胞で発現され、及び組換え操作された原核細胞からの分泌又は溶菌によりIL-22バリアントは消化管に放出されるか、又は原核細胞の表面に提示される。IL-22の投与のために組換え操作された細菌細胞の例は、Lin, et al. Lactobacillus delivery of bioactive interleukin-22. Microb Cell Fact 16, 148 (2017) で公知市。いくつかの実施形態において、IL-22バリアントを発現する改変細菌細胞は、経口的に、典型的には水性懸濁液中で、又は経直腸的(例えば浣腸)に投与され得る。
【0168】
腸内フローラへの原核ウイルスの送達
1つの実施形態において、本開示は、IL-22バリアントポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え操作された原核生物ウイルス(例えばバクテリオファージ)を提供する。別の実施形態において、本開示は、哺乳動物対象の腸管の炎症性疾患を治療する方法を提供し、この方法は、対象に、IL-22バリアントポリペプチドをコードする核酸配列を含む組換え操作された原核生物ウイルス(例えばバクテリオファージ)の医薬的に許容し得る製剤の治療有効量を投与することを含み、核酸配列は、ウイルスの宿主原核細胞中で機能する1つ又は複数の発現制御配列に作動可能に連結されており、従って、原核ウイルスが原核細胞に感染すると、IL-22バリアントが宿主細胞で発現されるようになる。1つの実施形態において、バクテリオファージは、感染後に細菌細胞の溶菌経路を誘導して、IL-22バリアントの局所放出と腸粘膜へのIL-22バリアントの送達をもたらすような溶菌性ファージである。
【0169】
本明細書で使用される用語「原核ウイルス」、「バクテリオファージ」、及び「ファージ」は、細菌に感染し細菌内で複製する様々な細菌ウイルスのいずれかを説明するために、本明細書では交換可能に使用される。広範囲の細菌細胞を選択できる多種多様なバクテリオファージが同定されており、科学文献で広く特性解析されている。バクテリオファージは、感染しやすい細菌細胞において顕著な選択性を示すため、バクテリオファージは、典型的には、発現のための腸内フローラの標的細菌を考慮して選択される。多種多様な細菌細胞のいずれかに対する組換え操作されたバクテリオファージの生成のための開始材料として適切なバクテリオファージの試料は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(American Type Culture Collection) (Manassas, Va.) から入手可能である。ファージゲノムの操作は、例えばMolecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Pressから入手可能)に記載されているように当技術分野で公知の組換え核酸の標準的操作法に従って行われ、及び従来の試薬は、様々な実験室材料供給元から入手することができる。
【0170】
感染部位へのIL-22バリアントの送達は、対象の腸内フローラの原核細胞に感染できるバクテリオファージによって行われ、このバクテリオファージは、組換え技術を使用して、IL22バリアントをコードする核酸配列に作動可能に連結された標的原核細胞において活性のあるプロモーターを含む発現カセットを導入するように修飾されており、発現カセットはバクテリオファージゲノムの非必須領域に挿入されているため、組換え操作されたバクテリオファージによる標的細菌細胞のトランスフェクション後に、IL22バリアントポリペプチドが標的細菌細胞で発現される。例えば黄色ブドウ球菌(S. aureus)細胞を標的とするバクテリオファージの場合、発現カセットは黄色ブドウ球菌プロモーターを使用して、黄色ブドウ球菌特異的バクテリオファージの非必須領域に挿入されたIL22バリアントの発現を駆動するであろう。バクテリオファージゲノムの非必須領域の同定は、そのようなファージの既知のゲノム構成及びコード配列によって容易に同定される。多種多様な細菌で活性のある原核プロモーター配列は、当技術分野で周知である。プロモーター配列は、天然に存在する配列を切り出して、又は標的細菌細胞の天然に存在する原核プロモーター配列に対応する核酸配列の配列決定及び合成を通じて得ることができる。例えば Estrem, et al. (1999) Bacterial promoter architecture: Subsite structure of UP elements and interactions with the carboxy-terminal domain of the RNA polymerase alpha subunit; Genes & Development 13(16): 2134-2147 を参照されたい。
【0171】
コドン最適化
IL-22バリアントのアミノ酸配列及び対応するコード核酸配列は本明細書に提供され、核酸配列は、遺伝子コードの縮重に基づいて当業者によって生成され得る。本発明の1つの実施形態において、IL-22バリアントの哺乳動物配列は、細菌細胞標的環境での発現のために、発現のために最適化されたコドンを使用することにより最適化される。細菌細胞発現に最適な好ましいコドンを使用してIL-22バリアントをコードする合成核酸配列を構築するための技術は、バクテリオファージゲノムの天然タンパク質をコードするためのコドン使用及びそれらの相対的存在量の共通性を、当技術分野で周知されている技術により解析するコンピューターによる方法によって決定することができる。細菌環境におけるコドン最適化配列の生成には、コドン使用データベース(http://www.kazusa.or.jp/codon)を使用することができる。さらに、ある生物の配列を異なる宿主生物の最適なコドン使用に変換するためには、種々のソフトウェアツール、例えば JCat Codon Optimization Tool (www.jcat.de), Integrated DNA technologies Codon Optimization Tool (https://www.idtdna.com/CodonOpt) 又は Optimizer online codon optimization tool (http://genomes.urv.es/OPTIMIZER) を利用することができる。このような合成配列は、合成核酸分子を構築するための当技術分野で周知されている技術によって構築することができ、様々な商用販売業者から入手することができる。
【0172】
ファージベクターのPAMモチーフの削除
いくつかの実施形態において、腸内細菌叢における組換えベクターからのIL-22ポリペプチドの発現を促進するために、本発明の組換え原核ベクターを修飾して、細菌宿主細胞の防御機構を回避又は阻害することができる。細菌宿主は、ファージを不活性化する二本鎖DNA切断を導入するCas9エンドヌクレアーゼなどのバクテリオファージ感染を防ぐための防御機構を発達させてきた。Cas9エンドヌクレアーゼはゲノムを調査して、Cas9が標的DNAに結合するために不可欠なプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)部位を特定する。PAM配列はCas9機能に不可欠であるため、原核ウイルスからCas9配列を除去すると、対象の腸内細菌叢に内在するCas9エンドヌクレアーゼがIL-22バリアントをコードする侵入ファージを中和する能力が、最小限に抑えられる。
【0173】
IL-22バリアントポリペプチドを発現する改変制御性T細胞(Treg)
いくつかの実施形態において、本開示はさらに、組換え操作されたTreg細胞を提供する。Tregは発現カセットを含み、発現カセットは、シグナルペプチドを任意選択的に含む、IL22バリアントをコードする核酸配列を含み、核酸配列は、シグナルペプチドと結合している時に任意選択的に分泌された形態で、IL22バリアントをコードする核酸配列の転写及び翻訳を指令することができる、Treg細胞において機能する発現制御配列に作動可能に連結されている。本明細書で使用される「制御性T細胞」又は「Treg細胞」という用語は、特に限定されるものではないが、エフェクターT細胞(Teff)を含む他のT細胞の応答を抑制することができるタイプのCD4+T細胞を指す。Treg細胞は、CD4、IL-2受容体のα-サブユニット(CD25)、及び転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)の発現によって特性解析される(Sakaguchi, Annu Rev Immunol 22, 531-62 (2004))。改変Treg細胞及びその調製プロセスは当技術分野で周知されている。例えば Engineered Treg cells and the process for their preparation are well known in the art. See, e.g. McGovern, et al. Engineering Specificity and Function of Therapeutic Regulatory T Cells (2017). Front. Immunol. 8:1517; Scott, D. Genetic Engineering of T Cells for Immune Tolerance (2020) Molecular Therapy: Methods & Clinical Development 16:103)、及び Zhang, et al (2018) Frontiers in Immunology 12(9):235)に記載されているCAR Tregを含む。
【0174】
ウイルスベクターを介したIL-22の投与
いくつかの実施形態において、IL-22バリアントは、IL-22バリアントをコードする核酸配列を含む発現ベクターを哺乳動物対象に接触させることによって、対象に投与され得る。発現ベクターはウイルスベクターでも非ウイルスベクターでもよい。「非ウイルスベクター」という用語は、自律的に複製する染色体外環状DNA分子であって、正常なゲノムとは異なり、標的細胞におけるコード配列の発現をもたらすことができる非選択的条件下での細胞生存に必須ではない分子を指す。プラスミドは、非ウイルスベクターの例である。標的細胞のトランスフェクションを促進するために、標的細胞は、非ウイルスベクターの取り込みを促進する条件下で、非ウイルスベクターに直接曝露することができる。哺乳動物細胞による外来核酸の取り込みを促進する条件の例は、当技術分野で周知されており、特に限定されるものではないが、化学的手段(例えばLipofectamine(登録商標), Thermo-FisherScientific)、高塩分、磁場(電気穿孔法)が含まれる。
【0175】
1つの実施形態において、非ウイルスベクターは、非ウイルス送達系で提供され得る。非ウイルス送達系は典型的には、核酸カーゴを有する標的細胞の形質導入を促進するための複合体であり、核酸は、カチオン性脂質(DOTAP、DOTMA)、界面活性剤、生物学的物質(ゼラチン、キトサン)、金属(金、磁性鉄)、及び合成ポリマー(PLG、PEI、PAMAM)などの物質と複合体を形成する。非ウイルス送達系の多数の実施形態が当技術分野で周知されており、脂質ベクター系(Lee et al. (1997) Crit Rev Ther Drug Carrier Syst. 14:173-206);ポリマー被覆リポソーム(Marin et al., 米国特許第5,213,804号, 1993年5月25日発行;Woodle, et al., 米国特許第5,013,556号, 1991年5月7日発行);カチオン性リポソーム(Epand et al., 米国特許第5,283,185号、1994年2月1日発行;Jessee,J.A., 米国特許第5,578,475号、1996年11月26日発行;Rose et al., 米国特許第5,279,833号、1994年1月18日発行;Gebeyehu et al., 米国特許第5,334,761号、1994年8月2日発行)が含まれる。
【0176】
別の実施形態において、発現ベクターはウイルスベクターであってもよい。本明細書で使用する用語ウイルスベクターは、通常の意味で使用され、タンパク質合成又はエネルギー生成メカニズムを持たない偏性細胞内寄生体のいずれかを指し、一般に、外因性導入遺伝子を哺乳動物細胞に送達するために使用されるエンベロープを持つか又はエンベロープを持たない動物ウイルスのいずれかを指す。ウイルスベクターは、複製能あり(例えば実質的に野生型)、条件付き複製能あり(特定の条件下で複製するように改変)、又は複製能なし(ウイルスの欠失機能を補完できる細胞株の非存在下では、実質的に複製できない)であり得る。ウイルスベクターは、それを「選択的に複製する」ように、すなわち、特定の細胞型又は表現型の細胞状態、例えば癌性で、優先的に複製するように、特定の修飾を有することができる。本発明の実施に有用なウイルスベクター系には、例えば天然又は組換えウイルスベクター系が含まれる。本発明の実施に有用なウイルスの例には、組換えにより修飾されたエンベロープ化された又はエンベロープ化されていないDNA及びRNAウイルスが含まれる。例えばウイルスベクターは、ヒト又はウシのアデノウイルス、ワクシニアウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、アデノ随伴ウイルス、レンチウイルス(例えばヒト免疫不全ウイルス)、シンドビスウイルス、及びレトロウイルス(特に限定されるものではないが、ラウス肉腫ウイルスを含む)、及びB型肝炎ウイルスのゲノムに由来し得る。典型的には、目的の遺伝子をそのようなベクターに挿入して、典型的にはウイルスゲノム配列を用いて遺伝子構築物のパッケージングを可能にし、続いて感受性宿主細胞を感染させて目的の遺伝子を発現させる。
【0177】
追加のポリペプチド治療薬との併用療法を容易にするために、発現ベクターは、IL22バリアントポリペプチドに加えて、1つ又は複数のポリペプチドをコードし得る。本発明の実施におけるように複数のポリペプチドを発現する場合、各ポリペプチドは発現制御配列(モノシストロン性)に作動可能に連結されてもよく、又は複数のポリペプチドが単一の発現制御配列の制御下で発現されるポリシストロン性構築物によってコードされてもよい。1つの実施形態において、ターゲティング抗原をコードする発現ベクターは、任意選択的に、1つ又は複数の免疫学的モジュレーターをさらにコードすることができる。本発明の実施に有用な免疫学的モジュレーターの例には、特に限定されるものではないが、サイトカインが含まれる。発現されたサイトカインは、細胞内発現に向けられるか、又は細胞外提示又は分泌のためのシグナル配列とともに発現され得る。
【0178】
発現ベクターは、任意選択的に、「レスキュー」遺伝子をコードする核酸配列を含む発現カセットを提供することができる。「レスキュー遺伝子」は核酸配列であり、その発現は、細胞を外的要因による死滅に対して感受性にするか、又は細胞の毒性状態を引き起こし、従って細胞が死滅する。レスキュー遺伝子を提供すると、形質導入された細胞の選択的な細胞死滅が可能になる。従って、レスキュー遺伝子は、形質導入細胞の望ましくない拡散又は複製可能なベクター系の影響を防ぐために、構築物が哺乳動物対象の細胞に取り込まれる場合、追加の安全対策を提供する。1つの実施形態において、レスキュー遺伝子は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子(例えば、Woo et al., 米国特許第5,631,236号、1997年5月20日発行、及びFreeman et al., 米国特許第5,601,818号、1997年2月11日発行、を参照)であり、ここで、TK遺伝子産物を発現する細胞は、ガンシクロビルの投与による選択的死滅を受けやすい。
【0179】
開示の方法
本明細書に記載の治療用組成物、例えば組換えポリペプチド、IL-22ポリペプチドバリアント、核酸、組換え細胞、及び医薬組成物のいずれか1つを投与して、癌及び慢性感染症のような関連疾患の治療において患者を治療することができる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組換えポリペプチド、IL-22ポリペプチドバリアント、核酸、組換え細胞、及び医薬組成物は、IL-22シグナル伝達に関連する1つ又は複数の自己免疫疾患又は状態に、罹患しているか、罹患している疑いがあるか、又は状態を発症するリスクが高い可能性がある個体を、治療する方法で使用するための治療薬に取り込むことができる。例示的な自己免疫疾患又は状態には、特に限定されるものではないが、癌、免疫疾患、及び慢性感染症が含まれる。いくつかの実施形態において、個体は医師の管理下にある患者である。
【0180】
従って、1つの態様において、本開示のいくつかの実施形態は、対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節するための方法に関し、この方法は以下の1つ又は複数を含む組成物を対象に投与することを含む:(a)本開示のポリペプチド;(b)本開示の組換え核酸;(c)本開示の組換え細胞;及び(d)本開示の医薬組成物。いくつかの実施形態において、この方法は、本開示の組換えポリペプチドの治療有効量を投与することを含む。
【0181】
別の態様において、本開示のいくつかの実施形態は、それを必要とする対象における状態の治療のための方法に関し、この方法は、以下の1つ又は複数を含む組成物を対象に投与することを含む:(a)本開示のポリペプチド;(b)本開示の組換え核酸;(c)本開示の組換え細胞;(d)本開示の医薬組成物。いくつかの実施形態において、この方法は、本開示の組換えポリペプチドの治療有効量を投与することを含む。
【0182】
いくつかの実施形態において、開示された医薬組成物は、その意図された投与経路に適合するように製剤化される。本開示の組換えポリペプチドは、経口又は吸入により投与され得るが、非経口経路により投与される可能性が高い。非経口投与経路の例には、例えば静脈内、皮内、皮下、経皮(局所)、経粘膜、及び直腸投与が含まれる。非経口投与に使用される溶液又は懸濁液には、次の成分が含まれ得る:無菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又はその他の合成溶媒;抗菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば酢酸塩、クエン酸塩、又はリン酸塩、及び張性を調整するための物質、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは、酸又は塩基、例えば一塩基性及び/又は二塩基性リン酸ナトリウム、塩酸、又は水酸化ナトリウムを用いて(例えば約7.2~7.8、例えば7.5のpHに)調整することができる。非経口製剤は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、又は複数回投与バイアルに封入することができる。
【0183】
本開示のそのような対象組換えポリペプチドの投与量、毒性、及び治療効果は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的操作によって、例えばLD50(集団の50%に対する致死量)及びED50(集団の50%で治療効果のある用量)について、決定することができる。毒性作用と治療効果の用量比は治療指数であり、LD50/ED50比として表すことができる。高い治療指数を示す化合物が一般的に適している。毒性の副作用を示す化合物が使用されることがあるが、、そのような化合物を患部組織の部位に標的化する送達系を設計するように注意して、感染していない細胞への潜在的な損傷を最小限に抑え、従って副作用を軽減する必要がある。
【0184】
細胞培養アッセイ及び動物試験から得られたデータは、ヒトで使用するための用量範囲を調製する際に使用することができる。そのような化合物の用量は、好ましくは、毒性がほとんど又は全くないED50を含む循環濃度の範囲内にある。用量は、使用される投与形態及び使用される投与経路に応じて、この範囲内で変動し得る。本開示の方法で使用される任意の化合物について、治療有効用量は、最初に細胞培養アッセイから推定することができる。用量は、動物モデルにおいて、細胞培養で決定されるIC50(例えば症状の最大阻害の半分を達成する試験化合物の濃度)を含む循環血漿濃度範囲を達成するように調製され得る。このような情報を使用して、ヒトでの有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば高速液体クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0185】
本開示の対象組換えポリペプチドの治療有効量(例えば有効用量)は、選択されるポリペプチドに依存する。例えば約0.001~0.1mg/kg患者体重の範囲の単回用量を投与することができる。いくつかの実施形態において、約0.005、0.01、0.05mg/kgを投与することができる。いくつかの実施形態において、600,000IU/kgが投与される(IUは、リンパ球増殖バイオアッセイによって決定することができ、国際単位(IU)で表される)。組成物は、1日1回以~週1回以上まで(1日おきに1回を含む)投与することができる。当業者は、特に限定されるものではないが、疾患の重症度、以前の治療、一般的な健康状態及び/又は対象の年齢、及び他の存在する疾患を含む、対象を効果的に治療するのに必要な用量及びタイミングに影響を与える特定の要因を理解するであろう。さらに、本開示の対象組換えポリペプチドの治療有効量による対象の治療は、一回の治療又は一連の治療を含むことができる。いくつかの実施形態において、組成物は、8時間ごとに5日間投与、続いて2~14日間、例えば9日間の休止期間、続いて8時間ごとに5日間投与される。
【0186】
対象におけるIL-22媒介シグナル伝達を調節するための、及び/又はそれを必要とする対象における状態の治療のための、開示された方法の非限定的な例示的実施形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含み得る。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドを含む組成物と比較して、対象において組織選択的IL-22シグナル伝達を付与する。実施例でより詳細に記載されるように、本開示の例示的なIL-22ポリペプチドバリアントである22-B3は、インビボで組織選択的シグナル伝達応答を誘発し、膵臓及び結腸ではSTAT3にバイアス型アゴニストとして作用するが、皮膚及び肝臓では中立的なアンタゴニストとして作用する。特に22-B3バリアントは、皮膚、肝臓、及び結腸で、炎症メディエーターを誘発することなくIL-22の組織保護機能をインビボで保持し、こうしてIL-22の主要な組織保護機能と炎症促進機能を切り離す。従っていくつかの実施形態において、本明細書に開示される組換えIL-22ポリペプチドバリアントにおけるアミノ酸置換は、組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらし、これは、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下を伴うが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。
【0187】
従って、いくつかの実施形態において、投与された組成物は、皮膚におけるIL-22シグナル伝達の低下を伴う組織選択的IL-22シグナル伝達をもたらすが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。いくつかの実施形態において、組織選択的IL-22シグナル伝達は、肝臓におけるIL-22シグナル伝達の低下を含むが、膵臓及び/又は消化管におけるIL-22シグナル伝達は実質的に保持する。
【0188】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、例えばSTAT1及びSTAT3のリン酸化によって決定すると、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドを含む組成物と比較して、バイアス型IL-22シグナル伝達をもたらす。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、STAT1リン酸化の少なくとも10%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の低下を含む。いくつかの実施形態において、バイアス型IL-22シグナル伝達は、アミノ酸置換を欠く参照IL-22ポリペプチドと比較して、STAT3リン酸化の少なくとも10%、例えば少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、又は少なくとも90%の低下を含む。
【0189】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、1つ又は複数のSTAT1媒介性の炎症促進機能の低下をもたらす。STAT1媒介性の炎症促進機能の非限定的な例には、サイトカイン産生、ケモカイン産生、及び免疫細胞動員が含まれる。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び/又は酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定すると、約20%~約100%低下している。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、炎症促進性遺伝子の発現を誘導するポリペプチドの能力によって決定すると、1つ又は複数のSTAT1媒介性の炎症促進機能の低下をもたらす。炎症促進性遺伝子の非限定的な例には、CXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、IL-1β、及びIL-6が含まれる。いくつかの実施形態において、STAT1媒介性の炎症促進機能は、アミノ酸置換を欠く参照IL-20と比較して、約20%~約100%、例えば約20%~約50%、約30%~約60%、約40%~約70%、約50%~約80%、約40%~約90%、約50%~約100%、約40%~約80%、約30%~約70%、約20%~約80%、約20%~約70%、約20%~約60%、約30%~約80%、約30%~約90%、又は約30%~約100%低下している。
【0190】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、1つ又は複数のSTAT3媒介機能を実質的に保持する。STAT3介在機能の例には、特に限定されるものではないが、組織保護、組織再生、細胞増殖、及び細胞生存が含まれる。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、Reg3β、Reg3γ、Muc1、Muc2、Muc10、BCL-2、サイクリン-D、クローディン-2、LCN2、又はβ-ディフェンシンなどのバイオマーカーの発現を誘導するポリペプチドの能力によって決定すると、1つ又は複数のSTAT3媒介機能を実質的に保持する。
【0191】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、STAT1媒介性の炎症促進機能の低下をもたらすが、そのSTAT3媒介機能は実質的に保持する。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、約1:1.5~約1:10、例えば約1:2~約1:5、約1:2~約1:7、約1:3~約1:8、約1:4~約1:10、約1:4~約1:9、又は約1:4~約1:8の範囲のSTAT1媒介シグナル伝達対STAT3媒介シグナル伝達の比率をもたらす。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、約1.5~3.2の範囲のSTAT1媒介シグナル伝達対STAT3媒介シグナル伝達の比率をもたらす。いくつかの実施形態において、STAT1シグナル伝達及び/又はSTAT3シグナル伝達は、遺伝子発現アッセイ、ホスホフローシグナル伝達アッセイ、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)からなる群から選択されるアッセイによって決定される。
【0192】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象においてCXCL1、CXCL2、CXCL8、CXCL9、CXCL10、IL-1β、及びIL-6から選択される炎症促進性遺伝子の発現を誘導する能力の低下を付与する。いくつかの実施形態において、投与された組成物は、対象においてReg3β、Reg3γ、Muc1、Muc2、Muc10、BCL-2、サイクリン-D、クローディン-2、LCN2、及びβ-デフェンシンから選択される遺伝子の発現を誘導する能力を実質的に保持している。いくつかの実施形態において、医薬組成物の投与は、対象におけるT細胞活性を阻害しない。
【0193】
いくつかの実施形態において、投与された組成物は、上皮保護及び再生を増強する。
【0194】
いくつかの実施形態において、免疫疾患は自己免疫疾患である。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、関節リウマチ、インスリン依存性糖尿病、溶血性貧血、リウマチ熱、甲状腺炎、クローン病、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性肝炎、多発性硬化症、円形脱毛症、乾癬、白斑、異栄養性表皮水疱症、全身性エリテマトーデス、移植片対宿主病、潰瘍性大腸炎、膵炎、乾癬性関節炎、糖尿病性足潰瘍からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は急性膵炎である。いくつかの実施形態において、対象は哺乳動物である。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、IL-22媒介シグナル伝達に関連する状態を有するか、又は有する疑いがある。
【0195】
追加の治療法
上述のように、本明細書に記載の組換えポリペプチド、核酸、組換え細胞、細胞培養物、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを、例えば免疫抑制性物質、免疫抑制剤又は抗炎症剤剤などの1つ又は複数の追加の治療薬と組み合わせて投与することができる。1つ又は複数の追加の治療薬と「組み合わせた」投与には、同時(同時)投与及び任意の順序での連続投与が含まれる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の追加の治療薬、免疫抑制剤、又は抗炎症剤は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、手術、及び疾患改変性抗リウマチ薬(DMARD)からなる群から選択される。様々な種類の抗炎症剤を使用することができる。非限定的な例には、サイトカインアンタゴニスト、サイトカイン受容体アンタゴニスト、可溶性受容体、インテグリンアンタゴニスト、コルチコステロイド、キナーゼ阻害剤、S1Pアゴニスト、及びPDE4アンタゴニストが含まれる。
【0196】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の治療方法は、炎症性免疫応答を抑制する組成物、例えば抗炎症剤の投与をさらに含む。適切な抗炎症剤には、特に限定されるものではないが、TNFアンタゴニスト(例えばアダリムマブ、インフリキシマブ)、IL-23アンタゴニスト(例えばウステキヌマブ)、IL-17アンタゴニスト(例えばセクキヌマブ)、IL-1アンタゴニスト(例えばアナキンラ)、IL-6アンタゴニスト(例えばトシリズマブ)、IL-12アンタゴニスト(例えばウステキヌマブ)、IL-2アンタゴニスト(例えばダクリズマブ)、インテグリンアンタゴニスト(例えばベドリズマブ)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾン)、アミノサリチル酸塩(例えばメサラミン、バルサアジド、オルサラジン)、メトトレキサート、アザチオプリン、レフルノミド、クロロキン、カルシニューリン阻害剤(シクロスポリン、タクロリムス)、アバタセプト、リツキシマブ、JAK阻害剤(例えばトファシチニブ)、PDE4阻害剤(例えばアプレミラスト)、mTOR阻害剤(例えばシロリムス)、S1P受容体アゴニスト(例えばオザニモド)が含まれる。
【0197】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の治療方法は、Wntアゴニスト又はノッチアゴニストなどの組織再生因子を含む組成物の投与をさらに含む。
【0198】
従って、本明細書に開示される方法のいくつかの実施形態において、組成物は、第1の治療として個別に、又は第2の治療と組み合わせて対象に投与される。いくつかの実施形態において、第2の治療は、DMARD、免疫療法、ホルモン療法からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は付随して施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は、第2の治療と同時に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は、連続して施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は、第2の治療の前に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は、第2の治療の後に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療は、第2の治療の前及び/又は後に施される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は、ローテーションで施される。いくつかの実施形態において、第1の治療と第2の治療は、単一の製剤で一緒に施される。
【0199】
キット
また、本明細書に提供及び記載されるIL-22部分アゴニスト、組換え核酸、組換え細胞、又は医薬組成物、並びにそれらを作製及び使用するための説明書を含むキットも、本明細書に提供される。例えば本明細書では、いくつかの実施形態において、以下の1つ又は複数を含むキットが提供される:本開示の組換えポリペプチド、本開示のIL-22部分アゴニスト、本開示の組換え核酸、本開示の組換え細胞、又は本開示の医薬組成物、及びそれらの使用説明書。いくつかの実施形態において、本開示のキットは、提供された組換え核酸、組換え細胞、又は医薬組成物のうちの任意の1つを個体に投与するために使用される1つ又は複数の注射器(プレフィルドシリンジを含む)及び/又はカテーテル(プレフィルドシリンジを含む)、及びそれらの使用説明書をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、1つ又は複数の追加の治療薬を有することができ、治療薬は、所望の目的のために、例えば細胞の活性を調節するために、標的癌細胞を阻害するために、又はそれを必要とする個体の疾患を治療するために、他のキット成分と同時に又は連続して投与することができる。
【0200】
上述のキットのいずれも、1つ又は複数の追加の試薬をさらに含むことができ、そのような追加の試薬は以下から選択することができる:希釈緩衝液、復元溶液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照発現ベクター、陰性対照ポリペプチド、陽性対照ポリペプチド、組換えポリペプチドのインビトロ産生のための試薬。いくつかの実施形態において、キットの成分は別々の容器に入れることができる。いくつかの他の実施形態において、キットの成分は単一の容器で一緒にすることができる。例えば本開示のいくつかの実施形態において、キットは、1つの容器(例えば無菌ガラス又はプラスチックバイアル)内に、本明細書に記載の組換えIL-22ポリペプチド、組換え核酸、組換え細胞、又は医薬組成物の1つ又は複数、及び別の容器(例えば滅菌ガラス又はプラスチックバイアル)中にさらなる治療薬を含む。
【0201】
いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載の方法を実施するために、キットの成分の使用説明書をさらに含むことができる。例えばキットは、キット中の医薬組成物及び剤形に関する情報を含む添付文書を含むことができる。一般に、そのような情報は、患者及び医師が、同封の医薬組成物及び剤形を効果的かつ安全に使用するのに役立つ。例えば本開示の組み合わせに関する以下の情報を添付文書に提供することができる:薬物動態、薬力学、臨床試験、有効性パラメーター、適応症及び使用法、禁忌、警告、注意事項、有害反応、過剰投与、適切な用量及び投与方法、供給方法、適切な保管条件、参考文献、製造業者/販売業者の情報、及び知的所有権情報。
【0202】
いくつかの実施形態において、キットは、方法を実施するためにキットの成分を使用するための説明書をさらに含むことができる。方法を実施するための説明書は、一般に適切な記録媒体に記録される。例えば使用説明書は、紙やプラスチックなどの基材に印刷することができる。使用説明書は、添付文書としてキット内に、キット又はその成分の容器のラベル(例えばパッケージ又は部分パッケージに関連している)などに存在し得る。説明書は、適切なコンピューター可読記憶媒体、例えばCD-ROM、ディスク、フラッシュドライブなどに存在する電子記憶データファイルとして存在し得る。場合によっては、実際の説明書はキットに含まれていないが、リモートソースから(インターネット経由などで)説明書を取得する手段が提供され得る。この実施形態の例はウェブアドレスを含むキットであり、ここでは、説明書を見ることができ、及び/又はそこから説明書をダウンロードすることができる。説明書と同様に、説明書を取得するためのこの手段は、適切な基板に記録することができる。
【0203】
本開示で言及されたすべての刊行物及び特許出願は、あたかも個々の刊行物又は特許出願が、参照により取り込まれることが具体的かつ個別に示されているのと同程度に、参照により本明細書に取り込まれる。
【0204】
本明細書に参考文献が引用されていることは、先行技術を構成することを認めるものではない。参考文献の議論は、その著者が主張していることを述べているのであり、本出願人は、引用された文書の正確性と妥当性に異議を唱える権利を留保する。本明細書では、科学雑誌の記事、特許文書、及び教科書を含む多くの情報源が言及されているが、この参照は、これらの文書のいずれかが当技術分野における共通の一般知識の一部を構成することを認めるものではない。
【0205】
本明細書における一般的な方法の議論は、例示のみを目的とするものである。他の代替方法及び代替物は、本開示を検討すれば当業者には明らかであり、それらは本出願の精神及び範囲内に含まれるものである。
【実施例】
【0206】
本発明の実施は、特に他に明記しない限り、当業者に周知されている分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技術を使用する。このような手法は、以下の文献に詳細に説明されている:Sambrook, J., & Russell, D. W. (2012). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory、及び Sambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory (一緒に“Sambrook”と呼ぶ); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York, NY: Wiley (2014年までの増刊を含む); Bollag, D. M. et al. (1996). Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss; Huang, L. et al. (2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press; Kaplitt, M. G. et al. (1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego, CA: Academic Press; Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego, CA: Academic Press; Doyle, A. et al. (1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York, NY: Wiley; Mullis, K. B., Ferree, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher; Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; Beaucage, S. L. et al. (2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York, NY: Wiley, (2014年までの増刊を含む);及び Makrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.(これらの開示内容は参照により本明細書に取り込まれる)。
【0207】
追加の実施形態は、以下の実施例においてさらに詳細に開示されるが、これらは例示として提供され、決して本開示又は特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0208】
実施例1
一般的な実験手順
タンパク質の産生と精製
酵母結合試験及び親和性成熟のために、マウスIL22R1(16~228)及びIL10Rβ(20~220)のECDを、N末端GP64シグナルペプチド、C末端3C切断部位、続いてビオチンアクセプターペプチドタグ(BAPタグ、GLNDIFEAQKIEW、配列番号:33)、及び6xHisタグを有するpAcGP67aバキュロウイルスベクターにクローニングした。バキュロウイルス保存株は、バキュロサファイア(BaculoSapphire)DNA(Orbigen)及びpAcGP67-A DNAをスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)に同時トランスフェクションして調製した。次に、ウイルスを使用してイラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)(Hi5)細胞を感染させた。感染の48時間後にバキュロウイルス感染Hi5細胞の上清からタンパク質を精製し、Ni-NTA樹脂(Qiagen)で精製した後、Superdex200カラム(GE)でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。タンパク質をヘペス緩衝生理食塩水(HBS、20mMヘペス、pH7.4、150mM塩化ナトリウム)で維持した。IL10Rβ ECDを、C末端BAPタグでBirAリガーゼを使用して部位特異的にビオチン化し、サイズ排除クロマトグラフィーによって再精製した。
【0209】
結晶学的試験のために、親和性成熟IL-22の完全グリコシル化Super-22b及び糖変異体(glycomutant)Super-22aバージョン、並びに糖変異体バージョンIL22R1及びIL10RβECDの(
図8A)を、N末端GP64シグナルペプチドとC末端6xHisタグとを有するpAcGP67aバキュロウイルスベクターにクローニングし、発現させ、上記のように精製した後、Superdex 75カラム(GE)でサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を行った。SEC後、個々のタンパク質をモル比1:1:1.2のIL-22:IL22R1:IL10Rβで、カルボキシペプチダーゼA及びBの存在下で一晩インキュベートした後、S200カラム(GE)でSECにより精製した。
【0210】
シグナル伝達実験のために、マウスIL-22バリアントを、N末端HAシグナルペプチドとC末端6xHisタグとを含むpD649哺乳動物発現ベクターにクローニングした。Expifectamineトランスフェクション試薬(Thermo)を使用して、DNAを一時的にExpi293F細胞(Thermo Fischer Scientific)に一過性にトランスフェクトした。トランスフェクションの96時間後、細胞上清を採取し、タンパク質をNi-NTA樹脂(Qiagen)で、次にSuperdex 75カラム(GE)のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)でヘペス緩衝生理食塩水(HBS、30mMヘペス、pH7.4、150mM塩化ナトリウム)で精製した。インビボ試験では、NoEndoHC Columnキット(Proteus)を使用してエンドトキシンを除去し、エンドトキシンの除去を Pierce(商標)Chromogenic Endotoxin Quantキット(Thermo FisherScientific)を使用して確認した。
【0211】
酵母ディスプレイ、ライブラリ組立、及び親和性成熟
C末端Mycタグを含有するマウスIL-22(残基34~179)を、pCT302ベクターを使用して、Aga2へのC末端融合体としてエス・セレビッシェ(S. cerevisiae)EBY100株の表面に提示した。縮重コドン(NNK)を使用するプライマー組立PCRによって、予想されるIL10Rβ接触部位に6つのランダム化残基を含む変異型mIL-22ライブラリを作成した。酵母ライブラリーの電気穿孔、レスキュー、及び拡張を、既に記載されているように実行した(Chao et al., 2006)。最終ライブラリーは、約6.5×108個の酵母形質転換体を含有した。
【0212】
ライブラリーの選択は、既に記載されたように、いくつかの修飾を加えて行った。簡単に述べると、最初の選択(ラウンド1~4)は、磁気活性化細胞ソーティング(MACS)を使用して行った。ラウンド1及び2では、それぞれ5×109個及び1×108個の細胞を1μM mIL22R1中で予備インキュベートし、400nMビオチン化IL10Rβで予備コートした常磁性ストレプトアビジンマイクロビーズ(Miltenyi)で選択した。IL10Rβ結合クローンをMACS LSカラム(Miltenyi)を使用して単離した。ラウンド3では、1.0×108個の酵母を1μM mIL22R1で予備インキュベートし、Alexa Fluor-647に結合したストレプトアビジンで標識した500nM単量体ビオチン化IL10Rβで染色及び選択した。MACS LSカラム(Miltenyi)を抗Cy5/抗Alexa Fluor-647 マイクロビーズ(Miltenyi)と組み合わせて使用して、IL10Rβ結合クローンを単離した。ラウンド4及び5では、2色蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)を使用してライブラリー選択を実行し、細胞表面でのタンパク質発現により見かけの親和性を標準化した。酵母ライブラリーを、1μM mIL22R1、続いて100nM及び10nMのビオチン化mIL10Rβを、それぞれラウンド4及び5で用いて予備インキュベートした。細胞をPBE(PBS、pH7.4、+0.5%(w/v)BSA+2mM EDTA、pH8.0)で2回洗浄し、ストレプトアビジン-Alexa Fluor-647(mIL10Rβ結合)及び抗c-Myc-Alexa Fluor 488(mIL-22バリアント細胞表面発現)を用いて4℃で15分間、同時標識した。Alexa647+Alexa488+酵母を、SH800Sセルソーター(Sony Biotechnology)を使用して精製した。選択の最後に、各ラウンドの選択後ライブラリーを同時に拡張し、異なる濃度のビオチン化mIL10Rβとともに4℃で1時間インキュベートし、PBEで2回洗浄し、次に蛍光標識ストレプトアビジンで4℃で10分間染色して、フローサイトメトリーにより高親和性クローンの濃縮を評価した。さらに、100μLのラウンド5後のライブラリを使用して、製造元の説明書に従って、Zymoprep Yeast Plasmid Miniprep II キット(Zymo Research)を使用してライブラリDNAを抽出した。抽出したDNAをDH5α大腸菌に形質転換し、播種して個々のクローンの配列を決定した。
【0213】
相対的な結合親和性を測定するために、個々のクローンを酵母表面に提示し、1μMのmIL22R1及び漸増濃度のビオチン化mIL10Rβとともにインキュベートした。次に、細胞をストレプトアビジン-Alexa Fluor-647で15分間染色し、CytoFLEX フローサイトメーター(Beckman Coulter)で分析した。
【0214】
結晶化、データ収集、及び精製
精製後、IL-22/IL22R1/IL10Rβ複合体を10mg/mlに濃縮した。ハンギングドロップ蒸気拡散によって、0.2M酒石酸カリウムナトリウム、15%PEG3350、及び0.1Mヘペス、pH7.8を含む等量のリザーバー溶液と混合した1μlのタンパク質を用いて20℃で、完全グリコシル化「Super-22b」複合体の結晶を成長させた。続いてこれらの結晶を、1μlの糖変異体「Super-22a」複合体を含むハンギングドロップに微量接種し、等量の0.2M酒石酸ナトリウムカリウム、12.5%PEG3350、及び0.1Mヘペス、pH8.0と20℃で混合した。結晶を採取し、25%グリセロールを含む母液で凍結保護した。
【0215】
回折データは、先端放射光施設(Advanced Photon Source(APS))ビームライン231D-Bで収集された。2.6Åのデータセットは、XDSを使用して積分、及びスケーリングした(Kabsch, 2010)後、対称性に関連する反射をaimlessでマージした(Evans, 2011; Winn et al., 2011)。フェーズは、ヒトIL-22、IL-22R1(PDB ID:3DGC)及びIL10Rβ(PDB ID:3LQM)の結晶構造を検索モデルとして使用して、Phaser(Adams et al., 2010; McCoy et al., 2007)を用いる分子置換によって解決された。モデル構築は、Phenix.refine(Adams et al., 2010; Terwilliger et al., 2008)での逆空間リファインメントの反復ラウンドと、Coot(Emsley et al., 2010)での手動モデル構築を使用して実行された。すべてのデータ処理工程は、SBgrid(Morin et al., 2013)を通じて提供されたプログラムを使用して実行された。データ収集とリファインメントのための統計量を以下の表3に示す。タンパク質-タンパク質及びタンパク質-リガンドの界面は、PDBePISAを使用して解析された(Krissinel and Henrick, 2007)。すべての構造図は ChimeraXを使用して作成された(Goddard et al., 2018)。
【表3】
【0216】
細胞培養
HEK-293T(ATCC CRL-3216)、HT-29(ATCC HTB-38)、Panc-1(ATCC CRL-1469)、HepG2(ATCC HB-8065)、及びEC4(D. Felsherからの寄贈)細胞はすべて、10%v/v 胎児牛血清、ペニシリン-ストレプトマイシン、1mMピルビン酸ナトリウム、10nMヘペス、及び2mM GlutaMAX(商標)を補足したDMEM(ダルベッコー改変イーグル培地)で増殖させた。細胞は、5%CO2で37℃に維持された。Expi293F細胞を無血清Expi293発現培地(Thermo)で増殖させ、5%CO2で37℃に維持した。
【0217】
ホスホフローシグナル伝達アッセイ
HT-29細胞を96ウェルプレートに播種し、野生型又は変異型IL-22で37℃で20分間刺激した後、パラホルムアルデヒド(Electron Microscopy Sciences)で室温で10分間固定した。細胞を氷冷メタノール(Fisher)を用いて-20℃で30分間処理することにより、細胞内染色のための透過処理をした。次に細胞を、1:50希釈の所望の抗体と共に、室温で1時間、autoMACS緩衝液(Miltenyi)中でインキュベートした。刺激されていない試料のバックグラウンド蛍光を、すべての試料から差し引いた。CytoFlexフローサイトメーター装置(Beckman Coulter)を使用して、データを取得した。MFI値は、各実験内の最大WT IL-22値に標準化され、Prism 7(GraphPad)でプロットした。「シグモイド用量反応」解析を使用して、用量応答曲線を作成した。Alexa Fluor 488マウス抗Stat1(pY701)及びAlexa Fluor-647マウス抗Stat3(pY705)抗体は、BD Biosciences から購入した。
【0218】
免疫沈降とウエスタンブロット
HEK-293T細胞におけるシグナル伝達及び免疫沈降実験のために、0.6×106個の細胞を、フィブロネクチン(Millipore)でコーティングされた6ウェル培養皿に播種した。24時間後、細胞を、FuGene 6(Promega)を使用して、HAタグ付きIL22R1、野生型又はYtoF変異型体を含むpLV-EF1a-IRES-Puroベクターでトランスフェクトした。
【0219】
トランスフェクションの48時間後、細胞をIL-22(野生型又は変異型)で37℃で20分間処理した。次に、細胞を氷冷PBSで1回すすぎ、直ちにトリトン溶解緩衝液(1%トリトン、20mMヘペス、pH7.4、150mM NaCl、1錠のPhosSTOPホスファターゼ阻害剤カクテル(Roche)、及び1錠のEDTA不含プロテアーゼ阻害剤(Roche)(緩衝液10mlあたり))で溶解した。細胞溶解物を、微量遠心分離機で4℃、13,000rpmで10分間遠心分離することにより清澄化した。抗HA免疫沈降のために、磁性抗HAビーズ(Pierce)を溶解緩衝液で3回洗浄した。次に、20マイクロリットルの抗HAビーズを清澄化した細胞溶解物に添加し、4℃で2時間回転させながらインキュベートした。免疫沈降後、ビーズを溶解緩衝液で4回洗浄した。免疫沈降したタンパク質と細胞溶解物を、SDS試料緩衝液を加えて5分間煮沸することで変性させ、SDS-PAGEで分離し、イムノブロッティングで分析した。
【0220】
ウエスタンブロットベースのシグナル伝達アッセイのために、HT-29細胞(1×106細胞/ウェル)、HepG2細胞(0.6×106細胞/ウェル)、及びPanc-1細胞(0.6×106細胞/ウェル)を、6ウェル培養皿に播種した。24時間後、細胞をIL-22(野生型又は変異型)で37℃で20分間処理し、溶解物を調製し、上述したように分析した。
【0221】
インビボシグナル伝達、RT-PCR、及び血清分析
インビボのシグナル伝達実験のために、C5BL/6Jマウスに、200μLのPBS又はIL-22バリアント(200μg/マウス)を腹腔内注射で投与した。30分後、マウスを安楽死させ、膵臓、結腸、肝臓、及び尾の皮膚組織を単離し、液体窒素で急速冷凍した。組織を乳鉢と乳棒で液体窒素中で破壊し、50mgの組織を、10mLあたり1錠のPhosSTOP (Roche)と1錠のプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を補足した氷冷RIPA溶解緩衝液(Thermo)で溶解した。QiaShredderカラム(Qiagen)による遠心分離によって、溶解物をさらにホモジナイズした。特定の組織の各試料のタンパク質濃度は、Bradfordアッセイ(Bio-Rad)によって標準化された後、SDS試料緩衝液で変性され、SDS-PAGEによって分離され、免疫ブロットによって分析された。
【0222】
マウス組織における遺伝子発現分析のために、C5BL/6Jマウスに、200μLのPBS又はIL-22バリアント(200μg/マウス)を腹腔内注射で投与した。6時間後、マウスを安楽死させ、組織を上述したように処理及びホモジナイズした。製造元の説明書に従って、RNAeasy plus mini キット(Qiagen)を使用して、各組織からRNAを分離した。iScript Reverse Transcription Supermix(BioRad)によるcDNA生成のために、各試料に1μgのRNAを使用した。相対的な遺伝子発現は、比較Ct法を使用するSYBR-greenベースの定量PCR(qPCR)によって測定され、GAPDH発現に対して標準化された。すべての試料は3重測定された。以下のマウスqPCRプライマーが設計され、Integrated DNA Technologies(IDT)から注文した。
【0223】
GAPDH:5’GTG GAG TCA TAC TGG AAC ATG TAG3’ (配列番号15)、及び 5’AAT GGT GAA GGT CGG TGT G3’ (配列番号16)。
【0224】
IL22R1:5’CTC GTA TTC TCT CTG TTT GCC T3’ (配列番号17)、及び 5’CAT GAC CTG TTC TAC CGC TTA G3’ (配列番号18)。
【0225】
IL10Rβ:5’CAG GAC GGA GAC TAT GAG GAT3’ (配列番号19)、及び 5’ACA GAA CAG GAG AGT GGA GT3’ (配列番号20)。
【0226】
Reg3β:5’TGT TAC TCC ATT CCC ATC CAC3’ (配列番号21)、及び 5’CTG AGG CTT CAT TCT TGT CCT3’ (配列番号22)。
【0227】
Reg3g:5’GAT TCG TCT CCC AGT TGA TGT3’ (配列番号23)、及び 5’CTC CAT GAC CCG ACA CTG3’ (配列番号24)。
【0228】
MUC1:5’GAC TGC TAC TGC CAT TAC CTG3’ (配列番号25)、及び 5’CCT ACC ATC CTA TGA GTG AAT ACC3’ (配列番号26)。
【0229】
CXCL1: 5’GTG CCA TCA GAG CAG TCT3’ (配列番号27)、及び 5’CCA AAC CGA AGT CAT AGC CA3’ (配列番号28)。
【0230】
IL-6:5’TCC TTA GCC ACT CCT TCT GT3’ (配列番号29)、及び 5’AGC CAG AGT CCT TCA GAG A3’ (配列番号30)。
【0231】
IL-1β:5’CTC TTG TTG ATG TGC TG3’ (配列番号31), 5’GAC CTG TTC TTT GAA GTT GAC G3’ (配列番号32)。
【0232】
急性期応答タンパク質の血清分析のために、C5BL/6Jマウスに、200μLのPBS又はIL-22バリアント(マウス1匹あたり2μg又は200μg)を腹腔内注射により投与した。24時間後、心臓穿刺によって血液を得て、2000rpmで4℃で10分間遠心分離することによって血清を分離した。SAA-1/2(Invitrogen)及びハプトグロビン(R&D)のレベルを、製造元の説明書に従ってELISAによって測定した。各試料は3重測定された。
【0233】
急性膵炎モデル
100μlのセルレイン(50μg/kg)を1時間に1回、6時間注射することにより、C57BL/6マウスに急性膵炎を誘発した。対照マウスには、同じ時点で100μlのPBSを注射した。マウスは、最初のセルレイン注射の20時間前と2時間前に、PBS又は50μg/マウスのIL-22(野生型又は22-B3)を腹腔内注射して前処理した。最後のセルレイン注射の1時間後に、顎下穿刺によって採血し、2000rpmで4℃で10分間遠心分離することによって血清を分離した。膵臓リパーゼとアミラーゼの血清レベルは、スタンフォード獣医サービスセンター(Stanford Veterinary Service center)によって分析された。
【0234】
実施例2
指向性進化による高親和性IL-22の改変
この実施例は、本開示のいくつかの非限定的な実施形態に従って、指向性進化アプローチによって、例示的な高親和性IL-22を改変するために実施された実験の結果を記載する。構造試験のために三元系IL-22受容体複合体の組立を安定させるために、IL-22/IL10Rβ相互作用を親和性成熟させる酵母表面ディスプレイが使用された(Angelini et al., 2015)。マウスIL-22の6つのアミノ酸位置が無作為化のために選択された部位特異的ライブラリーが設計された。これらのアミノ酸は、IL22R1に結合したIL-22の部分複合体構造並びにインターフェロン-ガンマ(IFN)-γとの相同性の情報に基づいて、IL10Rβ結合界面に近接していると予測された(例えば
図1Aを参照)。この変異型IL-22ライブラリーは、IL22R1の非標識細胞外ドメイン(ECD)にあらかじめ結合された酵母の表面にディスプレイされ、IL10RβのECDを用いて選択された(例えば
図1Bを参照)。このプロセスは、インビトロ進化の5ラウンドにわたって繰り返され、IL10Rβ結合の漸進的な改善をもたらした(例えば
図1C及び
図7Aを参照)。
【0235】
それぞれが、Super-22a及びSuper-22bと名付けられた野生型マウスIL-22に対して5つの変異を含む2つの高親和性クローンを、最終酵母集団から選択した(例えば
図7Bを参照)。両方のクローンは、酵母の表面に提示された場合、IL10RβECDへの有意に改善された結合を示した(例えば
図1Dを参照)。
図1Dに示されるように、親和性成熟したIL-22バリアントは、IL10Rβへの結合の増強を示した。WT IL-22又は親和性成熟クローンSuper-22a及びSuper-22bをディスプレイする酵母におけるSA-647-IL10RβECDの結合力価が示されている。これらの実験では、酵母は1μMの非標識mIL22R1ECDにあらかじめ結合されていた。
【0236】
さらに、両方のクローンは培養細胞において増強された活性を示し、STAT1及びSTAT3のリン酸化によって決定すると、マウス及びヒトの上皮由来細胞株の両方で約5~10倍低下したEC
50を示した(例えば
図1E及び7Cを参照)。
図1Eに示されるように、親和性成熟したIL-22バリアントは、増強されたSTAT3シグナル伝達を誘発することができた。これらの実験では、WT IL-22又は指示されたバリアントで20分間刺激され、パラホルムアルデヒド/メタノールによる固定及び透過処理後にフローサイトメトリーによって分析された、EC4(マウス、肝臓)細胞におけるホスホ-Y705-STAT3の用量応答曲線が得られた。すなわち、これらの改変高親和性IL-22バリアントは、IL10Rβへの実質的に改善された結合を示したが、両方の受容体サブユニットを機能的に二量体化する能力は保持した。
【0237】
実施例3
ヘテロマーIL-22/IL22R1/IL10Rβ複合体の結晶構造
この実施例は、ヘテロマー受容体複合体IL-22/IL22R1/IL10Rβの結晶構造を決定するために行った実験の結果を記載しており、これは、ヘテロマー受容体複合体のサイトカイン-受容体相互作用のそれぞれを駆動する化学を解明するのに役立つ。
【0238】
WT IL-22とは対照的に、上記の実施例2に記載の両方の高親和性IL-22クローン(Super-22a及びSuper-22b)は、ゲル濾過中の共泳動によって評価されるように、IL22R1及びIL10Rβとの安定な三元複合体を形成した(
図8A及び8B)。IL22R1及びIL10Rβの糖変異体バリアントに結合した完全グリコシル化Super-22bを含む複合体は、回折の少ない結晶を生成することが観察され、これは最終的に、Super-22aの糖変異体バリアントを含む複合体の結晶化を促進するためのシード保存株として使用された(例えば
図7C参照)。これらの結晶は2.6Åの分解能で回折し、部分的なIL-22-IL22R1複合体(PDB ID:3DGC、Jones et al., 2008)及び単量体IL10Rβ(PDB ID:3LQM、Yoon et al., 2010)の既に報告された構造に由来するモデルを使用する分子置換により、構造が決定された。
【0239】
IL-22/IL22R1/IL10Rβ三元複合体の全体的な構造は、他のクラス2サイトカイン受容体複合体のものと類似しており、3つの異なる結合界面(部位1~3、
図2A~2C)からなることが観察された。部位1では、IL22R1の両方のクラス2ホモロジー領域(C2HR)ドメイン(D1及びD2)からの複数のループが、IL-22ヘリックスA及びE、並びにループL2と係合し、IL-22表面の961Å
2を埋めている。親和性の低い部位2の接触部は、IL10RβのD1とD2の両方によって形成され、これらは、D2のL5及びL6とともに、主にD1のループL2、L3、及びL4を介して、IL-22と係合する。IL10RβのL5は、IL-22ヘリックスAの底部と広範な接触部を形成し、ループL2、L3、及びL4はヘリックスCと係合する(
図2A及び2B)。最後に、部位3は、IL22R1とIL10RβのD2ドメイン間の受容体-受容体「ステム接触部」からなり、3つの水素結合接触部のみと421Å
2の埋もれた表面積とを有するより小さい界面を形成する(例えば
図8Dを参照)。
【0240】
IL22R1及びIL10Rβの両方は、他のヘテロ二量体受容体複合体との関連で、IL-10スーパーファミリーの追加のサイトカインに結合する共有受容体サブユニットである。以前はIL22R1は、IL-24及びIL20Rβとの複合体で結晶化されており、IL10Rβは、IFN-λ及びIFNλR1との複合体で結晶化されている。本明細書に示されるIL-22受容体構造は、これらの関連する複合体とのいくつかの注目すべき違いを明らかにしている。特に、IL10RβとIL-22の間で形成される部位2の接触部は、IFN-λ複合体中で観察されるものとは大幅に異なる。IFN-λ結合構造では、IL10Rβは主にIFN-λのヘリックスCのN末端に係合し、サイトカインの「前部」を留めているように見えるが、IL10RβはヘリックスCの中央部分を介してIL-22に係合している。サイトカインリガンドの重ね合わせによって2つの複合体を整列させると、異なる結合様式が容易に観察でき、複合体間のIL10RβD1ドメインの約40°の相対的回転を示している(
図2D)。これら2つの複合体におけるIL10Rβの配向の変化はまた、IL10Rβにおける3つの芳香族残基であるTyr59、Tyr82、及びTrp143の相対的位置の変化をもたらし、これが、両方の構造においてリガンドとの重要な接触部を形成する(
図2E)。
【0241】
これらの実験では、IL10Rβに対するIL-22の親和性が比較的低いにもかかわらず、この固有の部位2接触部が、IL-22表面の723Å
2を埋める広範な界面を形成することが観察された。この界面の拡大図は、IL10Rβとの相互作用を媒介するIL-22のいくつかの重要な残基を明らかにしている(
図3A及び3B)。
【0242】
特に、IL-22のヘリックスA上で、22-Arg55はRβ-Glu141と塩橋を形成し、これが同時に22-Asn54上の隣接するN結合グリカン修飾と接触する(
図3A)。さらに、ヘリックスA上の22-Tyr51は、Rβ-Lys81とRβ-Glu139の両方との水素結合、並びにRβ-Trp143との垂直パイスタッキング相互作用を含む、IL10Rβとの複数の接触を行う。さらに、ヘリックスC中の22-Glu117及び22-Lys124は、IL10RβのループL3及びL4中のRβ-Lys81、Rβ-Asp84、及びRβ-Glu109とイオン接触部を形成する(
図3A及び3B)。ヘリックスCのC末端近くで、ループL1の22-Gln48は、D2ドメイン中のRβ-Asp150と追加の水素結合を形成する。
【0243】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、上記の接触部に加えて、本明細書に記載の結晶構造は、酵母ディスプレイで選択された突然変異に由来する親和性増強の基礎を明らかにする(例えば
図7Bを参照)。特に、Super-22aにおけるS45R突然変異は、WT IL-22におけるRβ-Gln198との水素結合接触部と思われるものを、
図3Bに示される構造で観察されるRβ-Asp197との塩橋に変換することが観察された。さらに、Q96S突然変異はRβ-Tyr82と水素結合接触部を形成するが、Q116W突然変異は主にインドール窒素を介して、Rβ-Ser80の側鎖と水素結合接触部を形成している(
図3A)。特に、E43HとQ128Kの両方がIL-22内の他の残基とのみ接触しているように見え、10Rβ界面でループL1の方向を安定化させている可能性がある(
図3B)。全体として、理論に拘束されるものではないが、Super-22aの親和性を増強する変異は、新規の接触部位を作成するのではなく、主にWT IL-22とIL10Rβの間で作成された既存の極性接触部を改善しているようである。
【0244】
実施例4
バイアス型IL-22受容体アゴニストの構造誘導設計
この実施例は、上記の実施例3に記載のヘテロマーIL-22/L22R1/IL10Rβ複合体の結晶構造に基づいて、バイアス型IL-22受容体アゴニストを設計するために行った実験を記載する。
【0245】
これらの実験では、IL10Rβ結合部位を標的とするアミノ酸置換を有する一連のIL-22バリアントを設計し、結腸上皮由来HT-29細胞においてSTAT3及びSTAT1の活性化を誘導する能力について評価した。
図3Dに示すように、IL10Rβ結合を部分的に破壊したIL-22バリアントは、STAT3の活性化を誘発する能力を保持していたが、STAT1活性化の大幅な低下を誘導した。これらの実験では、WT IL-22又は示されたバリアントで20分間刺激され、パラホルムアルデヒド/メタノールによる固定と透過処理の後にフローサイトメトリーで分析されたHT-29細胞における、ホスホ-Y705-STAT3(左パネル)及びホスホ-Y701-STAT1(右パネル)の用量応答曲線が得られた。データは、3つの独立した多重測定の平均+/-SDであり、最大のWT IL-22シグナルのパーセントとして示される。
図3Eは、
図3Dに示されるシグモイド用量応答曲線から計算されたホスホ-STAT3及びホスホ-STAT1の標準化されたEmax値を示す。特に、接触残基Glu117の変異は、驚くべきことに、単独(E117A、「22-B1」)又はAsn46との組み合わせ(N46A/E117A、「22-B2」)のいずれかで、STAT3活性化のわずかな低下のみをもたらしたが、STAT1シグナル伝達のほぼ完全な無効化(
図3D~3F)をもたらした。アミノ酸置換Q116A、K124A、Q128A、及びS45Eを含む複合体バリアント(「22-B3」)は、さらに大きなレベルのバイアス型アゴニスト作用を誘発し、STAT3ではWT IL-22E
maxの100%を保持したが、STAT1ではわずかに約30%のみ保持した(
図3C~3F)。Q116A/K124D/Q128A(「22-B4」)及びQ48A/Q116A/K124A/Q128A(「22-B5」)を含む関連するIL10Rβ結合バリアントも、バイアス型アゴニスト作用をもたらしたが、STAT1とSTAT3活性化の両方の大きな全体的低下をもたらした(
図9A)。まとめるとこれらの結果は、IL10Rβ結合界面を部分的に破壊するIL-22の変異が不釣り合いにSTAT1の活性化を弱め、STAT3にバイアス型シグナル伝達をもたらすことを示す。
【0246】
IL10Rβに対するIL-22の親和性の低下がバイアス型アゴニスト作用をもたらす機構を理解するために、HAタグ付きIL22R1を一時的に発現させることによって、HEK-293T細胞におけるIL-22受容体シグナル伝達を復元した(
図13B)。
図13Bに示されるように、バイアス型IL-22バリアントは、WT IL-22と比較して、IL22R1チロシンリン酸化レベルの顕著な低下を誘発し、これはSTAT1シグナル伝達の消失と相関したが、STAT3活性化には無視できる影響しかなかったことが観察された。さらに、ICDのすべてのチロシン残基を欠くIL22R1バリアント(IL22R1-YtoF)を発現する細胞では、WT IL-22がSTAT1ではなくSTAT3の顕著な活性化を誘導し、従って野生型IL22R1に対してバイアス型アゴニストのシグナル伝達プロファイルに似ていることが観察された(
図13C)。この観察結果は、受容体のリン酸化の非存在下でも、STAT3のプールがIL22R1と事前に会合しており(
図13C)、受容体のリン酸化依存及び非依存メカニズムの両方を介して、STAT3の活性化を可能にすることを示す以前の報告と一致する(
図13D)。対照的に、STAT1の活性化には受容体のリン酸化が厳密に必要であると思われる(
図13B~D)。まとめるとこれらの結果は、部分的にIL10Rβ結合親和性に欠陥のあるIL-22バリアントが受容体のリン酸化レベルを顕著に低下させ、これは、STAT3活性化の2つの異なるモードのために、STAT1ではなくSTAT3の強力な活性化を引き起こすのに十分であるというモデルを支持している(
図13D)。
【0247】
実施例5
バイアス型IL-22バリアント22-B3は組織選択的シグナル伝達を誘発する
この実施例は、本開示のいくつかの非限定的な実施形態による例示的なバイアス型IL-22バリアント(22-B3)が、組織選択的シグナル伝達活性を誘発することを証明するために行われた実験を説明する。
【0248】
これらの実験では、インビボでIL-22受容体の下流のSTATシグナル伝達に偏りを起こす作用を評価するために、マウスに、最初にWT IL-22又は22-B3を単回高用量の注射により投与し、続いて、30分後にいくつかのIL-22応答性組織におけるSTAT3及びSTAT1応答を分析した(
図4A)。膵臓では、バイアス型IL-22バリアントである22-B3が、WT IL-22と比較してSTAT3の完全な活性化と、STAT1の強力ではあるがわずかに低下した活性化を誘導し、従ってこの組織では弱いSTAT3にバイアス型アゴニスト作用を示すことが観察された(
図4B)。しかし、結腸では、22-B3もSTAT3の完全な活性化を保持したが、STAT1の検出可能なリン酸化を誘導しなかった(
図4C)。従って、バイアス型IL-22バリアントである22-B3は、結腸において強力なバイアス型アゴニストとして機能し、上記のインビトロでHT-29細胞において得られた結果と一致する(
図3F)。注目すべきことに、WT IL-22とは異なり、バイアス型IL-22バリアントである22-B3は、STAT3のリン酸化によって評価されるように、皮膚又は肝臓において検出可能なシグナル伝達活性を誘発しなかった(例えば
図4D及び4Eを参照)。
【0249】
いかなる特定の理論にも拘束されるものではないが、22-B3における変異がIL10Rβとの相互作用を弱めるように設計されていることを考えると、IL10Rβ発現の差は、WT IL-22のそれと比較して22-B3シグナル伝達に不釣り合いに影響を与える可能性があるという仮説が立てられ、これは、組織全体のシグナル伝達の観察された差を説明している。実際、これらの4つのマウス組織におけるIL22R1及びIL10Rβ発現のRT-qPCR分析により、22-B3シグナル伝達の強度がIL10Rβ発現とよく相関し、これは膵臓で最も高く、続いて結腸、皮膚、及び肝臓の順であることが明らかになった(
図4F)。同様の細胞型特異性パターンがインビトロのヒト細胞株でも観察され、バリアント22-B1、B2、及びB3はすべて、膵臓細胞由来のPANC-1細胞でSTAT3シグナル伝達を保持していたが、肝臓由来のHepG2細胞ではSTAT3もSTAT1の活性化もを誘発しなかった(
図4G、4H、及びS4A)。特に、22-B3は、HepG2細胞においてWT IL-22によるシグナル伝達をブロックすることもできることが観察され、22-B3がこれらの細胞においてIL22R1に結合する能力を保持し、従ってアンタゴニストとして作用することが証明された(
図4I)。従って、IL-22バリアントである22-B3は、インビトロ及びインビボで組織タイプ全体で異なるシグナル伝達挙動を誘発し、組織における異なるIL10Rβ発現の差のために、膵臓では弱いバイアスのアゴニストとして、結腸では強いバイアス型アゴニストとして、皮膚と肝臓では中立的なアンタゴニストとして、挙動する。
【0250】
実施例6
22-B3はインビボでIL-22の組織保護機能と炎症促進機能を切り離す
この実施例は、バイアス型IL-22バリアントである22-B3が、組織保護と炎症促進性IL-22標的遺伝子のインビボでの発現を切り離すことを証明するために行った実験の結果を記載する。
【0251】
これらの実験は、STAT活性化の偏り及びIL-22組織特異性の改変が、インビボで標準的なIL-22標的遺伝子の発現に、どの程度影響するかという問題に対処するために設計された。これらの実験では、WT IL-22又は22-B3の単回注射の6時間後に、マウスの膵臓、結腸、皮膚、及び肝臓からRNAを単離し、RT-qPCRによる既知のIL-22標的遺伝子の相対的な発現を分析した。
【0252】
膵臓において、22-B3は、この組織においてSTAT3を介して正常にシグナル伝達する22-B3の能力(
図4B)に一致して、再生膵島由来タンパク質Reg3β及びReg3γをコードする組織保護遺伝子の顕著なアップレギュレーションを、WT IL-22と同程度まで誘導することが観察され(
図5A)、この組織においてSTAT3を介して普通にシグナル伝達する22-B3の能力に一致していた(
図4B)。結腸において22-B3はまた、Reg3β、Reg3γ、及びMucin1の発現を駆動する能力を保持していた(
図5B)。しかし、WT IL-22とは異なり、22-B3は、好中球動員ケモカインCXCL1(IBDの遺伝的マウスモデルにおけるIL-22の炎症促進作用に一部関与するSTAT1標的遺伝子)の結腸性発現を誘導しなかった(
図5C)。さらに、WT IL-22は、皮膚におけるCXCL1及び炎症促進性サイトカインIL-6の発現を上昇させたが、22-B3はこれらの遺伝子のいずれに対しても検出可能な影響を及ぼさなかった(
図5D)。同様に、WT IL-22とは異なり、22-B3は肝臓で炎症促進性遺伝子CXCL1及びIL-1βの発現を誘導しなかった(
図5E)。従って、22-B3は、膵臓及び結腸で重要な組織保護遺伝子の発現を誘導する能力を保持しているが、結腸、皮膚、及び肝臓でいくつかの炎症促進性遺伝子の発現を誘導する能力を消失している。
【0253】
遺伝子発現における22-B3誘導性変化が、疾患の場で、IL-22の保護作用を駆動するのに十分であるかどうかを試験するために、追加の実験を行い、ここで、22-B3は、急性膵炎のマウスモデルにおいてその効力が測定された。これらの実験では、セルレイン(膵臓の炎症を促進し、血中の膵臓酵素のレベルを上昇させるコレシストキニン類似体)の1時間ごとに6回の注射により急性膵炎を誘導する20時間前と2時間前に、マウスを、WT IL-22又は22-B3の2回の注射で前処理した(例えば
図6A参照)。重要なことに、22-B3は、発症直後にPBS処置対照と比較した膵臓リパーゼ及びアミラーゼの血清レベルによって測定されるように、WT IL-22と同程度まで疾患重症度を有意に緩和した(
図6B)。
【0254】
上述のように、IL-22の治療的使用に対する主要な潜在的制限は、マウス及びヒトの両方において肝急性期応答タンパク質(APP)の血清レベルを上昇させるその能力である。全身性炎症のマーカーとして機能する以外に、SAA-1/2などのAPPは、T
h17に媒介される炎症性疾患にも寄与する可能性がある。以前の報告と一致して、本明細書に提示された実験データは、健康なマウスではWT IL-22を1回注射するだけで、APPのSAA-1/2及びハプトグロビンの血清レベルを劇的に上昇させるのに十分であることを示していた(例えば
図6C参照)。しかし注目すべきことに、22-B3の投与は、高用量であっても、SAA-1/2又はハプトグロビンレベルに対して検出可能な影響を及ぼさなかった(
図6C)。まとめるとこれらのデータは、22-B3シグナル伝達が、IL-22の組織保護機能をインビボで保持するのに十分であるにもかかわらず、IL-22に関連する既知の局所及び全身の炎症誘発効果の多くをもはや誘導しないことを示す。
【0255】
実施例7
ヒト及びマウスIL-22部分アゴニストはSTAT3にバイアス型アゴニスト作用を誘発する
この実施例は、IL-10Rβ結合界面におけるIL-22のいくつかの突然変異がSTAT3にバイアス型シグナル伝達をもたらすことを証明するために行われた実験を記載する。
【0256】
図11Aに示されるように、HT-29(ヒト結腸直腸癌)細胞を、様々な濃度の野生型又は改変マウスIL-22バリアントで20分間処理した。メタノール/PFAを使用して細胞を固定し透過処理をして、蛍光標識抗ホスホSTAT1(AF488)又は抗ホスホSTAT3(AF647)抗体で染色し、蛍光強度をフローサイトメトリーで分析した。データをシグモイド用量応答曲線に適合させて、pSTAT1及びpSTAT3シグナル伝達のEmaxを計算できるようにした。バイアス型バリアントのEmaxは、野生型IL22のパーセントに対して標準化された。示されているデータは平均+/-SEMである。
図11Bは、(A)からのデータを使用して、各IL-22バリアントについてのホスホ-STAT3/ホスホ-STAT1 Emaxの比を示す。
図11Cは、野生型マウスIL-22に対するマウスIL-22バリアント及び対応する突然変異のリストである。
【0257】
実施例8
IL-22部分アゴニストによって誘発されるSTAT3シグナル伝達とSTAT1シグナル伝達の比率は、IL-22部分アゴニスト間で異なる
この実施例は、改変ヒトIL-22バリアントも、結腸直腸由来HT29細胞においてSTAT3に偏ったシグナル伝達を誘発するが、肝臓由来HepG2細胞では不活性であることを示すために実施された実験を記載する。
【0258】
図12A~12Bに示されるように、HT-29(ヒト結腸直腸癌;
図12A)又はHepG2(ヒト肝臓;
図12B)細胞を、様々な濃度の野生型又は変異型マウスIL-22で20分間処理した。メタノール/PFAを使用して細胞を固定し透過処理して、蛍光標識抗ホスホSTAT1(AF488)又は抗ホスホSTAT3(AF647)抗体で染色し、蛍光強度をフローサイトメトリーで分析した。用量応答曲線。データをシグモイド用量応答曲線に適合させて、pSTAT1及びpSTAT3シグナル伝達のEmaxを計算できるようした。バイアス型バリアントのEmaxは、野生型IL22のパーセントに対して標準化された。データは、3回の独立した多重測定の平均+/-SEMである。野生型ヒトIL-22に対する例示的なヒトIL-22バリアント及び対応する突然変異の要約を、
図12Cに提供する。
【0259】
本開示の具体的な代替物が開示されているが、様々な修飾及び組み合わせが可能であり、それらは、添付の特許請求の範囲の真の精神及び範囲内であると企図されることが理解されるべきである。従って、本明細書に提示された正確な要約及び開示を限定する意図はない。
【0260】
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