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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】改善されたT細胞製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230518BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230518BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230518BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
A61K35/17
A61P35/00
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562606
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 GB2021050909
(87)【国際公開番号】W WO2021209759
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】2005617.2
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517122578
【氏名又は名称】アダプティミューン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】マーディロヴィッチ,カテリーナ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BD25
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087DA32
4C087NA14
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、T細胞を製造するための改善された方法およびそこから生じる改善されたT細胞組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)T細胞の単離された集団を活性化するステップ、
(b)前記T細胞を培養するステップ、
(c)好ましくは少なくとも1種の異種T細胞受容体(TCR)もしくはキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸またはベクターを用いて前記T細胞を形質導入することにより、少なくとも1種の異種T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように前記T細胞を改変するステップ、
(d)前記改変されたT細胞にAKTの阻害剤(AKT阻害剤)を添加するステップ、
(e)前記細胞または細胞集団を拡大および/または増殖させるために、前記改変されたT細胞集団を培養するステップ、
(f)任意により、前記改変されたT細胞集団を回収および/または凍結保存するステップ
を含む、改変されたT細胞を製造する方法。
【請求項2】
前記T細胞がCD3+画分に関して富化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性化が、増殖するように前記T細胞の集団を刺激する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記活性化が、任意により取り出し可能なビーズに付着させた、抗CD3抗体もしくはその抗原結合性断片および/または抗CD28抗体もしくはその抗原結合性断片の添加による、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
改変が、活性化に先立って、または活性化と同時に行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
改変が、活性化後に、好ましくは活性化の18~26時間後に行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記AKT阻害剤が、改変後に、好ましくは改変の17~24時間後に添加される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記AKT阻害剤が、アロステリック阻害剤、競合的ATP阻害剤、AKTとリン脂質との間の相互作用の阻害剤、AKTの下流の分子のリン酸化の、好ましくはPRAS40、リボソームS6、TSC2のリン酸化の阻害剤からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アロステリック阻害剤が、ARQ092、ARQ751、BAY1125976、またはMK-2206から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記競合的ATP阻害剤が、アフレセルチブ(GSK2110183)、GSK2141795、GSK690693、イパタセルチブ(GDC-0068)、LY2780301、トリシリビン(TCN-PM;VD-0002)、AZD5363、またはCCT128930から選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記AKTとリン脂質との間の相互作用の阻害剤が、ペリフォシン(D-21266、KRX0401)である、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記AKT阻害剤が、0.10μM~10μM、好ましくは0.5μMの濃度で添加される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記AKT阻害剤の存在下で産生される前記改変されたT細胞またはT細胞の集団が、
(i)AKT阻害剤の非存在下で産生されるT細胞の集団もしくは改変されたT細胞、または
(ii)AKT阻害剤の存在下で産生されるT細胞の集団もしくは改変されたT細胞であって、前記AKT阻害剤が改変前かつ/または活性化の24時間以下後に添加される、T細胞の集団もしくは改変されたT細胞
と比較して、
(a)CD45RA+、CCR7+の両方を発現するT細胞、
(b)CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+およびIL-7Rα+であるT細胞、
(c)TSCM細胞(幹メモリーT細胞)であるT細胞、
(d)メモリー表現型、好ましくはCD8メモリー表現型を有するT細胞
のうちのいずれか1つまたは複数の増大したまたは高い相対的割合を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記AKT阻害剤の存在下で産生される前記T細胞の改変された集団が、
(i)AKT阻害剤の非存在下で産生されるT細胞の集団もしくは改変されたT細胞、または
(ii)AKT阻害剤の存在下で産生されるT細胞の集団もしくは改変されたT細胞であって、前記AKT阻害剤が形質導入前かつ/または刺激の24時間以下後に添加される、T細胞の集団もしくは改変されたT細胞
と比較して、
(a)in vivoでの持続性、好ましくはin vivoでの注入の8~14日間後にわたって測定される持続性、
(b)播種から回収までの拡大、
(c)奏効の永続性または永続的奏効率(DRR)、
(d)抗原に誘導されるインターフェロンγ産生、
(e)T細胞生存率または寿命または生存能パーセンテージ、
(f)T細胞エフェクター機能、好ましくは細胞傷害性
のうちのいずれか1つまたは複数の改善または増大したレベルを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法に従って産生される改変されたT細胞の集団。
【請求項16】
請求項15に記載の改変されたT細胞の集団、および生理的に許容される賦形剤を含む組成物。
【請求項17】
養子療法における使用のための、請求項15に記載の改変されたT細胞の集団または請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
癌および/または腫瘍の治療における使用のための、請求項15に記載の改変されたT細胞の集団または請求項16に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法に従って産生される改変されたT細胞の集団、ならびに被験体において癌および/または腫瘍を治療するかまたはその進行を遅延させるために前記T細胞を用いるための説明書を含む添付文書を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞を製造するための改善された方法およびそこから生じる改善されたT細胞組成物に関する。本発明はさらに、改善されたT細胞拡大を提供しかつ改善された持続性、メモリー機能、および抗原刺激生存を有するT細胞集団を生じるT細胞製造のための方法に関する。本発明はさらに、腫瘍および癌の治療のための養子療法を含む養子T細胞免疫療法における改善されたT細胞集団の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
養子細胞療法(ACT)は、抗腫瘍機能を媒介するための癌患者への腫瘍常在性末梢血改変免疫細胞の静脈内移入を含み得、それにより、癌、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全を含む疾患を治療する機会を提示する。ACTはまた、癌の細胞療法に対する基礎として、腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)の移入を含む場合がある。加えて、新規T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現する遺伝子改変T細胞を用いるACTは、特異的な腫瘍発現抗原を認識する改善されかつ標的化された臨床応答に対する特異的かつ強力な抗腫瘍活性を有して生成することができる、腫瘍特異的T細胞の大型プールを提供する機会を提示する。
【0003】
ACTプロセスは、典型的には、ドナーの血液が、血液のサンプルから白血球を分離する装置を通過する、ドナー被験体白血球除去のステップを含む。続いて、単離されたT細胞集団が、活性化および拡大ステップ、ならびに任意により特異的CARまたはTCR分子を導入して、臨床的に有効となるように治療用量のために必要な活性T細胞数を生じさせるための遺伝子改変を含むプロセスに供される。
【0004】
現行のT細胞製造プロセスは、多くの場合、治療用量のために十分に大きなT細胞集団を達成するために、複数ラウンドの活性化および拡大を必要とする。集団の拡大は、限定的ステップであり、かつT細胞活性化および拡大方法は、多くの場合、比較的分化した細胞のサブセットが多い細胞集団を生じ;これらの細胞は、それらの性質として、生存が限定されて短寿命であり、それゆえ、短寿命かつあまり強力でない抗腫瘍活性およびメモリー機能を提供する。そのようなT細胞集団は、消耗およびエフェクター免疫細胞機能の喪失を起こしやすく、移入されたT細胞のin vivo拡大に対する不利益を被り、かつ患者への注入後の持続性を欠損する。
【0005】
本発明は、T細胞製造および治療用T細胞の現行のプロセスの上記の制限に対処し、かつ改善された拡大、持続性および生存を有する治療用T細胞組成物の方法を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、一般的に、T細胞および/またはT細胞の集団を産生する改善された方法を提供し、それにより、該方法により作製される改善されたT細胞の集団および/またはT細胞の組成物を提供し、本発明はさらに、癌、感染性疾患、自己免疫疾患、炎症性疾患、および免疫不全を含む疾患の治療のための養子療法における改善されたT細胞の集団および/またはT細胞の組成物の使用を提供する。本発明に従う方法は、in vitroおよび/またはin vivoでの、改善されたT細胞拡大、生存期間、エフェクターおよびメモリー機能を提供する。
【0007】
本発明によれば、以下のステップ:
(a)T細胞の単離された集団を活性化するステップ、
(b)T細胞を培養するステップ、
(c)異種T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するようにT細胞を改変するステップ、
(d)改変されたT細胞にAKTの阻害剤(AKT阻害剤)を添加するステップ、
(e)細胞を拡大および/または増殖させるために、改変されたT細胞またはT細胞集団を培養するステップ、
(f)任意により、改変されたT細胞またはT細胞集団を回収および/または凍結保存するステップであって、任意により、異種TCRまたはCARが癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に結合または特異的に結合し;任意により、T細胞は、例えば、1種もしくは複数の異種T細胞受容体(TCR)および/または1種もしくは複数のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む核酸またはベクターを用いてT細胞を形質導入することにより、異種T細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を発現するように改変される、ステップ
を含む、改変されたT細胞および/または改変されたT細胞の集団を製造する方法が提供される。
【0008】
T細胞養子療法
単離されたT細胞またはT細胞の集団は、T細胞、腫瘍浸潤性細胞傷害性Tリンパ球(TIL)、またはナチュラルキラー細胞(NK細胞)であり得る。T細胞は、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、または胚性幹細胞、および多能性幹細胞(例えば、そこからリンパ系細胞が分化することができるもの)を含むその前駆体であり得る。T細胞は、胸腺において成熟し、かつ細胞媒介免疫を主に担うリンパ球であり、かつ適応免疫系にも関与することができる。本発明によれば、T細胞としては、限定するものではないが、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞(または幹様メモリーT細胞)を含む)、またはメモリーT細胞:例えば、TEM細胞およびTEMRA細胞、調節T細胞(サプレッサーT細胞としても知られる)、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連不変T細胞、またはガンマ-デルタT細胞が挙げられ得る。細胞傷害性T細胞(CTLまたはキラーT細胞)は、感染した体細胞または腫瘍細胞の死滅を誘導することが可能なTリンパ球のサブセットである。本明細書中に本発明に従って提供されるT細胞は、CD8T細胞もしくはCD4T細胞;またはCD4T細胞およびCD8T細胞であり得る。例えば、T細胞は、CD4T細胞およびCD8T細胞の混合集団であり得る。CD4T細胞は、Tヘルパー細胞(T細胞)として知られ、CD4表面糖タンパク質を発現し、適応免疫系において重要な役割を果たし、T細胞サイトカインを放出することにより他の免疫細胞の活動を助け、かつ免疫応答の抑制または調節を助ける。それらは、細胞傷害性T細胞の活性化および生育に対して必須である。CD8T細胞は、細胞傷害性T細胞(T細胞、CTL、キラーT細胞)として知られ、CD8表面糖タンパク質を発現する。CD8T細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊するために作用する。大多数のCD8T細胞は、TCRを発現し、TCRは、クラスI MHC分子により感染または損傷細胞の表面上に提示される特異的抗原を認識することができる。抗原およびMHC分子に対するTCRおよび任意によりCD8糖タンパク質の特異的結合は、感染または損傷細胞のT細胞媒介破壊をもたらす。
【0009】
T細胞の単離された集団は、ドナー被験体から単離することができる。本発明によれば、本発明の方法により産生されるT細胞は、養子細胞療法または養子免疫療法のために用いることができる。ドナー被験体およびレシピエント個体(養子細胞療法または養子免疫療法を受ける)は、同じである場合があり(すなわち、自家治療;T細胞が、改変されたT細胞を用いてその後に治療される個体から取得される)またはドナー個体とレシピエント個体とが異なる場合がある(すなわち、同種治療;T細胞が1人の個体から取得され、その後に異なる個体を治療するために用いられる)。自家とは、後に同じ被験体へと再導入される被験体由来のいずれかの材料を意味する。
【0010】
したがって、本発明の文脈における養子細胞療法または養子免疫療法とは、表面抗原、抗原ペプチドまたは標的細胞上に発現され、任意によりMHC複合体として標的細胞上に発現される抗原ペプチドに対して特異的な、遺伝的に改変されたTCRもしくはCARおよび/または共受容体(例えば、CD8)を発現するように遺伝子移入により遺伝子操作されている、単離されたT細胞またはT細胞の集団の養子移入を意味する。これは、選択される標的、例えば、それにより癌または腫瘍を治療するための、腫瘍もしくは癌特異的抗原または抗原ペプチドに応じて、広範囲の疾患を治療するために用いることができる。簡潔には、養子細胞療法は、白血球除去と称されるプロセスを用いてドナーまたは患者の白血球の一部分を取り出すステップを含む。続いて、T細胞、TILまたはNK細胞を拡大し、T細胞、TILまたはNK細胞へとTCR/CARおよび/または共受容体(例えば、CD8)を移入するために、TCR/CARポリヌクレオチドおよび/または共受容体(例えば、CD8)を含む発現ベクターと混合することができる。T細胞、TILまたはNK細胞を再度拡大し、拡大の終了時に、遺伝子操作されたT細胞またはNK細胞を洗浄し、濃縮し、かつ続いて、試験、輸送および患者が遺伝子操作細胞の注入を受ける準備が整うまでの保存のための時間を与えるために凍結することができる。
【0011】
細胞培養
改変されたT細胞は、拡大された集団を産生するために、いずれかの都合のよい手段、技術、容器、入れ物またはシステムを用いて培養することができる。好適な培養システムとしては、撹拌槽発酵器、エアリフト発酵器、ローラーボトル、培養バッグまたはディッシュ、および他のバイオリアクター、特に中空繊維バイオリアクターが挙げられる。好ましくは、そのようなシステムの使用は当技術分野で周知である。好ましくは、培養手段は、気体透過性迅速拡大培養、例えば、非接着細胞などの細胞の拡大または静止拡大のためのデバイスであるG-Rex(商標)である。およびまたは本発明の方法に従う細胞。
【0012】
細胞改変
本発明によれば、T細胞は、1種もしくは複数の異種T細胞受容体(TCR)および/または1種もしくは複数のキメラ抗原受容体(CAR)を発現するために改変され、改変は、1種もしくは複数の異種T細胞受容体(TCR)および/または1種もしくは複数のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸を含む核酸またはベクターを用いてT細胞を形質導入するステップによるものであってもよい。T細胞はまた、T細胞のゲノムへの、例えば、T細胞の前駆体、例えば、誘導された多能性幹細胞またはそれに由来するリンパ系統細胞、例えば、それに由来する成熟T細胞のゲノムへの、1種もしくは複数の異種T細胞受容体(TCR)および/または1種もしくは複数のキメラ抗原受容体(CAR)をコードする核酸の組み込みにより改変することもできる。
【0013】
本発明によれば、改変されたT細胞は、異種T細胞受容体(TCR)または異種キメラ抗原受容体(CAR)をコードする異種核酸もしくは核酸構築物または核酸もしくは構築物を含むベクターを含むように改変することができる。任意により、TCRは、親和性強化型TCR、例えば、特異的ペプチド強化型親和性受容体(SPEAR)TCRであり得る。
【0014】
本発明によれば、方法は、プロセス内のいずれかの段階またはステップでの、好ましくは、任意により、細胞濃度に対するウイルスの感染多重度(MOI)の最大半分または約半分(すなわち、細胞当たり0.5個のウイルス)、任意により0.1~0.2、0.3~0.4、0.5~0.6、0.6~0.7、0.7~0.8、0.8~0.9、0.9~1.0、1.0~1.1、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7、1.7~1.8、1.8~1.9、1.9~2.0.MOIのうちのいずれか1種のレベルでの、改変および/または形質導入を目的として、好ましくは、T細胞またはT細胞集団の改変または形質導入の時点での、ポロキサマーの包含を含み得る。
【0015】
異種TCR/CAR
本発明に従えは、改変されたT細胞は、癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に結合または特異的に結合する、少なくとも1種の異種T細胞受容体(TCR)および/または異種キメラ抗原受容体(CAR)を発現することができ、好ましくは、ペプチド抗原は、癌性状態、癌および/もしくは腫瘍に関連し、かつ/または癌細胞または組織の腫瘍により提示され、任意によりHLA/MHCにより提示される。抗原の結合に際して、改変されたT細胞またはT細胞の集団は、抗原を担持する細胞に対するT細胞エフェクター機能および/または細胞溶解作用を示すことができ、かつ/または増殖および/もしくは細胞分裂を受けることができる。特定の実施形態では、TCRを含む改変されたT細胞またはT細胞の集団は、同じ癌および/もしくは腫瘍抗原および/またはペプチド(抗原性ペプチド)を標的とするキメラ抗原受容体(CAR)を含む細胞と比較して、同等または良好な治療的効力を示す。異種TCRもしくはCARを含む活性化された改変T細胞またはT細胞の集団は、限定するものではないが、TNFα、IFNγおよびIL2を含み得る抗腫瘍サイトカインを分泌することができる。
【0016】
用語「異種」または「外因性」とは、細胞または宿主細胞などの特定の生物学的系に対して外来性であり、かつその系には天然に存在せず、人工的または組み換え的手段により系へと導入することができる、ポリペプチドまたは核酸を意味する。したがって、異種であるTCRまたはCARの発現は、それによりT細胞の免疫学的特異性を変化させることができ、それにより、それらが、癌を有する個体の癌細胞の表面上に存在する1種もしくは複数の癌および/または腫瘍抗原またはそのペプチド抗原を認識するか、またはそれに対する改善された認識を示すようになる。T細胞の改変およびそれらの引き続く拡大は、in vitroおよび/またはex vivoで行うことができる。
【0017】
本発明によれば、癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原は、癌精巣抗原、NY-ESO-1、MART-1(T細胞により認識される黒色腫抗原)、WT1(ウィルムス腫瘍1)、gp100(糖タンパク質100)、チロシナーゼ、PRAME(黒色腫において優先的に発現される抗原)、p53、HPV-E6/HPV-E7(ヒトパピローマウイルス)、HBV、TRAIL、DR4、チログロビン、TGFBIIフレームシフト抗原、LAGE-1A、KRAS、CMV(サイトメガロウイルス)、CEA(癌胎児性抗原)、AFP(α-フェトプロテイン)、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A8、およびMAGE-A9、MAGE-A10、もしくはMAGE-A12、またはそのペプチド抗原であり得る。好ましくは、腫瘍抗原は、MAGE-A4もしくはAFPまたはそのペプチド抗原である。好ましくは、癌および/もしくは腫瘍抗原ペプチドは、MAGE-A4のペプチド抗原であり、かつ/またはアミノ酸配列GVYDGREHTV、配列番号1(MAGE-A4)を含むか、あるいはα-フェトプロテイン(AFP)のペプチド抗原であり、かつ/または配列FMNKFIYEI(配列番号2)またはα-フェトプロテイン(AFP)(配列番号3)に由来する残基158~166を含む。
【0018】
本発明によれば、異種TCRまたはCARは、腫瘍もしくは癌性状態に関連する癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に結合または特異的に結合し、かつ/あるいは腫瘍もしくは癌細胞または組織により提示され、かつ/あるいは被験体、患者または疾患状態もしくは癌性状態に罹患している癌患者の腫瘍細胞および/もしくは組織および/または癌細胞および/もしくは組織に結合または特異的に結合する。被験体、患者または癌患者は、その後、本発明に従う改変されたT細胞またはその集団を用いて治療することができる。改変されたT細胞を用いる本発明に従う治療に対して好適な癌患者は、腫瘍および/もしくは癌を有する個体または被験体から腫瘍および/または癌細胞のサンプルを取得するステップ、および;発現される異種TCRまたはCARに対して結合するとして癌細胞を特定するステップを含む方法により特定することができる。
【0019】
特異性とは、異種TCRまたはCARと特異的標的癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原との間の結合性の強度を説明し、かつ解離定数、Kd、すなわち、受容体リガンド系に対する結合状態と未結合状態との比率により記載することができる。加えて、異種TCRまたはCARが結合できる異なる癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原が少ないほど、その結合特異性が大きくなる。本発明によれば、異種TCRまたはCARは、10種、9種、8種、7種、6種、5種、4種、3種、2種未満の異なる癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に結合することができる。
【0020】
本発明によれば、異種TCRまたはCARは、任意により表面プラズモン共鳴を用いて、任意により25℃、任意により6.5~6.9または7.0~7.5のpHで測定される、0.01μM~100μM、0.01μM~50μM、0.01μM~20μM、0.05μM~20μMもしくは0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1μM、0.15μM、0.2μM、0.25μM、0.3μM、0.35μM、0.4μM、0.45μM、0.5μM、0.55μM、0.6μM、0.65μM、0.7μM、0.75μM、0.8μM、0.85μM、0.9μM、0.95μM、1.0μM、1.5μM、2.0μM、2.5μM、3.0μM、3.5μM、4.0μM、4.5μM、5.0μM、5.5μM、6.0μM、6.5μM、7.0μM、7.5μM、8.0μM、8.5μM、9.0μM、9.5μM、10.0μM;または10μM~1000μM、10μM~500μM、50μM~500μMもしくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μM、150μM、200μM、250μM、300μM、350μM、400μM、450μM、500μMの解離定数を有して結合することができる。解離定数、Kまたはkoff/konは、解離速度定数koff、および結合速度定数konを実験的に測定することにより、決定することができる。TCR解離定数は、可溶性形態のTCRを用いて測定することができ、TCRは、TCRα鎖可変ドメインおよびTCRβ鎖可変ドメインを含む。
【0021】
したがって、本発明に従う使用のための異種TCRまたはCARは、任意によりペプチド提示分子、例えば、HLAとの、例えば、HLA-A02との、任意によりHLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:03、HLA-A02:04、HLA-A02:05、HLA-A02:06、HLA-A02:642またはHLA-A02:07から選択される、好ましくはHLA-A02:01またはHLA-A02:642との複合体中での、あるいは、ペプチド提示分子、例えば、HLAとの複合体中での提示を有さずに、例えば、0.01μM~100μM、例えば、50μM、100μM、200μM、500μM、好ましくは0.05μM~20.0μMの解離定数を伴って、癌および/もしくは腫瘍抗原またはMAGE-A4もしくはAFPのペプチド抗原、好ましくはGVYDGREHTV、配列番号1(MAGE-A4ペプチド)またはFMNKFIYEI(AFPペプチド)配列番号2を含むペプチドに、効率的にかつ/または高親和性を有して、結合することが可能である。例えば、異種TCRまたはCARは、内因的に発現される腫瘍細胞表面癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に対する結合特性を有し得、任意により、結合性は、ペプチド提示または抗原提示分子、例えば、主要組織適合性複合体(MHC)またはヒト白血球抗原(HLA)または主要組織適合性複合体クラス関連タンパク質(MR)1との複合体としての細胞表面抗原の提示とは独立している。
【0022】
本発明によれば、TCRまたはCAR結合性は、任意により、近縁の癌および/もしくは腫瘍抗原またはペプチド抗原配列と比較して、1種の癌および/または腫瘍抗原、例えば、MAGE-A4などのMAGEタンパク質もしくはAFP、またはそのペプチド抗原に対して特異的であり得る。近縁の癌および/もしくは腫瘍抗原またはペプチド抗原配列は、類似もしくは同一の長さを有し得、かつ/または類似の個数もしくは同一の個数のアミノ酸残基を有し得る。近縁のペプチド抗原配列は、50もしくは60もしくは70もしくは80~90%の同一性、好ましくは80~90%の同一性を共有し得、かつ/または1、2、3もしくは4個のアミノ酸残基分、異なることができる。近縁のペプチド配列は、配列GVYDGREHTV(配列番号1)またはFMNKFIYEI(配列番号2)のポリペプチド配列を含む配列に由来することができる。結合親和性は、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または放射免疫アッセイ(RIA))、または動力学(例えば、BIACORE(商標)分析)により決定することができる。結合力は、例えば、相互作用の価数を考慮した、複数部位での2つの分子相互の結合性の強度の合計である。本発明によれば、免疫応答性細胞は、異種TCRもしくはCARを欠損するかまたは別の異種TCRもしくはCARを有するT細胞と比較して、癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原、あるいは癌細胞もしくは組織の腫瘍により提示されかつ異種TCRもしくはCARにより認識される癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に対して改善された親和性および/または結合力を示すことができる。
【0023】
本発明によれば、異種TCRまたはCARは、任意により、癌性状態に関連し、かつ/または癌細胞もしくは組織の腫瘍により提示される、本明細書中で上記の通りの癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に選択的に結合することができ;任意により、癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原は、任意により、好ましくは腫瘍細胞または癌細胞もしくは組織により発現される、ペプチド提示分子、例えば、HLAとの複合体中で、あるいは、ペプチド提示分子またはHLAとの複合体中での提示を伴わずに、異種TCRまたはCARにより認識される。選択的結合性とは、異種TCRまたはCARが、別の抗原と比較して、ある癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に対して大きな親和性を有して結合することを意味する。選択的結合性は、異種TCRまたはCARとの複合体中での、あるリガンド抗原による別のリガンド抗原の置換に対する平衡定数により表される。
【0024】
本発明によれば、異種TCRまたはCAR結合性は、本明細書中に記載される通りの癌および/もしくは腫瘍抗原またはペプチド抗原に対して選択的かつ/または特異的である。本発明によれば、異種TCRまたはCARは、癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原、すなわち、癌および/または腫瘍抗原のペプチド断片(pHLA)を提示または表示する、ペプチド提示分子、例えば、HLAに、結合および/または特異的に結合および/または選択的に結合することができ、HLAは、全部がHLAクラス1であるMHCクラスI(A、B、およびC)もしくはその特異的対立遺伝子に対応するか、またはHLAはMHCクラスII(DP、DM、DO、DQ、およびDR)もしくはその特異的対立遺伝子に対応し、好ましくは、HLAはクラス1であり、好ましくは、対立遺伝子は、HLA-A2もしくはHLA-A02またはHLA-A2+もしくはHLA-A02陽性HLAであり、任意によりHLA-A02:01、HLA-A02:02、HLA-A02:03、HLA-A02:04、HLA-A02:05、HLA-A02:06、HLA-A02:642またはHLA-A02:07、好ましくはHLA-A02:01またはHLA-A02:642から選択される。あるいは、異種TCRまたはCARは、ペプチド提示分子、例えば、HLAにより提示または表示されていない、癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に結合および/または特異的に結合および/または選択的に結合することができる。
【0025】
異種TCR
好ましくは、異種TCRまたはCARは、免疫応答性細胞により天然に発現されない(すなわち、TCRまたはCARは外因性または異種である)。異種TCRは、αβTCRヘテロ二量体を含み得る。異種TCRまたはCARは、組み換えもしくは合成もしくは人工TCRまたはCAR、すなわち、天然に存在しないTCRであり得る。例えば、異種TCRは、特異的癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に対するその親和性または結合力を増大させるために遺伝子操作することができる(すなわち、親和性強化型TCRまたは特異的ペプチド強化型親和性受容体(SPEAR)TCR)。親和性強化型TCRまたは(SPEAR)TCRは、天然に存在するTCRに対して1箇所または複数の突然変異、例えば、TCRα鎖およびβ鎖の可変領域の超可変相補性決定領域(CDR)中の1箇所または複数の突然変異を含み得る。これらの突然変異は、任意により、腫瘍および/または癌細胞により発現される場合に、腫瘍抗原のペプチド断片を表示するMHCに対するTCRの親和性を増大させることができる。親和性強化型または成熟型TCRを生成する好適な方法としては、ファージまたは酵母ディスプレイを用いるTCR突然変異体のライブラリーのスクリーニングが挙げられ、当技術分野で周知である(例えば、Robbins et al J Immunol (2008) 180(9):6116;San Miguel et al (2015) Cancer Cell 28 (3) 281-283;Schmitt et al (2013) Blood 122 348-256;Jiang et al (2015) Cancer Discovery 5 901を参照されたい)。好ましい親和性強化型TCRは、MAGEファミリーの腫瘍抗原、例えば、MAGE-A4またはそのペプチド抗原、例えば、配列GVYDGREHTV、配列番号1またはα-フェトプロテイン(AFP)のペプチド抗原および/または配列FMNKFIYEI(配列番号2)もしくはα-フェトプロテイン(AFP)(配列番号3)に由来する残基158~166を含む腫瘍抗原を発現する腫瘍または癌細胞に結合することができる。
【0026】
本発明によれば、異種TCRは、配列番号4のα鎖参照アミノ酸配列またはその変異体および配列番号6のβ鎖参照アミノ酸配列またはその変異体を含み得るMAGE-A4 TCRであり得る。
【0027】
代替的な実施形態によれば、異種TCRは、配列番号16のα鎖参照アミノ酸配列またはその変異体および配列番号18のβ鎖参照アミノ酸配列またはその変異体を含み得るAFP TCRであり得る。
【0028】
変異体は、参照アミノ酸配列に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。
【0029】
TCRは、配列番号5のα鎖参照ヌクレオチド配列またはその変異体および配列番号7のβ鎖参照ヌクレオチド配列またはその変異体によりコードされ得る。
【0030】
代替的な実施形態によれば、TCRは、配列番号17のα鎖参照ヌクレオチド配列またはその変異体および配列番号19のβ鎖参照ヌクレオチド配列またはその変異体によりコードされ得る。
【0031】
変異体は、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。
【0032】
本発明によれば、TCR(MAGE-A4 TCR)は、TCRα鎖可変ドメインおよびTCRβ鎖可変ドメインを含み得、
(i)α鎖可変ドメインは、配列
VSPFSN(αCDR1)、配列番号10または配列番号4のアミノ酸48~53、
LTFSEN(αCDR2)、配列番号11または配列番号4のアミノ酸71~76、および
CVVSGGTDSWGKLQF(αCDR3)、配列番号12または配列番号4のアミノ酸111~125
を有するCDRを含み、かつ
(ii)β鎖可変ドメインは、配列
KGHDR(βCDR1)、配列番号13または配列番号6のアミノ酸46~50、
SFDVKD(βCDR2)、配列番号14または配列番号6のアミノ酸68~73、および
CATSGQGAYEEQFF(βCDR3)、配列番号15または配列番号6のアミノ酸110~123
を有するCDRを含むか;または
それらに対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性、任意によりそれらに対して100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0033】
代替的な実施形態によれば、TCR(AFP TCR)は、TCRα鎖可変ドメインおよびTCRβ鎖可変ドメインを含み得、
(i)α鎖可変ドメインは、配列
DRGSQS(αCDR1)、配列番号22または配列番号16のアミノ酸27~32、
IYSNGD(αCDR2)、配列番号23または配列番号16のアミノ酸50~55、および
AVNSDSGYALNF(αCDR3)、配列番号24または配列番号16のアミノ酸90~101
を有するCDRを含み、かつ
(ii)β鎖可変ドメインは、配列
SGDLS(βCDR1)、配列番号25または配列番号18のアミノ酸27~31、
YYNGEE(βCDR2)、配列番号26または配列番号18のアミノ酸49~54、および
ASSLGGESEQY(βCDR3)、配列番号27または配列番号18のアミノ酸92~102
を有するCDRを含むか;または
それらに対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性、任意によりそれらに対して100%の配列同一性を有する配列を含む。
【0034】
代替的な実施形態によれば、TCRは置換されていることができる:
a.配列DRGSQA、配列番号28を有するαCDR1、
b.配列AVNSDSSYALNF、配列番号29を有するαCDR2、
c.配列AVNSDSGVALNF、配列番号30を有するαCDR2、
d.配列DRGSQA、配列番号28を有するαCDR1および配列AVNSDSGVALNF、配列番号30を有するαCDR2、
e.配列AVNSQSGYALNF、配列番号31を有するαCDR2、
f.配列AVNSQSGYSLNF、配列番号32を有するαCDR2、
g.配列AVNSQSSYALNF、配列番号36を有するαCDR2、
h.配列DRGSQA、配列番号28を有するαCDR1および配列AVNSQSGYALNF、配列番号31を有するαCDR2、
i.配列AVNSQSGVALNF、配列番号32を有するαCDR2、
j.配列AVNSQNGYALNF、配列番号33を有するαCDR2、
k.配列DRGSFS、配列番号34を有するαCDR1、
l.配列DRGSYS、配列番号35を有するαCDR1、
m.配列DRGSYS、配列番号35を有するαCDR1および配列AVNSDSSYALNF、配列番号29を有するαCDR2、
n.配列DRGSYS、配列番号35を有するαCDR1および配列AVNSDSSYALNF、配列番号29を有するαCDR2、
o.配列DRGSYS、配列番号35を有するαCDR1および配列AVNSQSGYALNF、配列番号31を有するαCDR2。
【0035】
したがって、TCR(MAGE-A4 TCR)は、α鎖可変ドメインが配列番号8もしくは配列番号4のアミノ酸残基1~136の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ/あるいはβ鎖可変ドメインが配列番号9もしくは配列番号6のアミノ酸残基1~133の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0036】
あるいは、TCR(AFP TCR)は、α鎖可変ドメインが配列番号20もしくは配列番号16のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ/あるいはβ鎖可変ドメインが配列番号21もしくは配列番号18のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0037】
用語「前駆体TCR」または「親TCR」は、それぞれ配列番号4および6のMAGE-A4 TCRα鎖およびMAGE-A4 TCRβ鎖を含むTCRあるいはそれぞれ配列番号16および18のAFP TCRα鎖およびAFP TCRβ鎖を含むTCRを意味するために本明細書中で用いられる。前駆体TCRと等しいか、等価であるかもしくは前駆体TCRよりも高い親和性および/またはペプチド-HLA複合体に関する前駆体TCRと等しいか、等価であるかもしくは前駆体TCRよりも遅いoff速度を有する、前駆体TCRに対して突然変異または改変されているTCRを提供することが望ましい。本発明によれば、異種TCRは、前駆体TCRに対してα鎖可変ドメインおよび/またはβ鎖可変ドメイン中に存在する2箇所以上の突然変異を有し得、かつ「遺伝子操作型TCR」または「突然変異体TCR」と表すことができる。これらの突然変異は、MAGE-A4またはそのペプチド抗原に対する結合親和性および/または特異性および/または選択性および/または結合力を改善することができる。特定の実施形態では、α鎖可変ドメイン中に1箇所、2箇所、3箇所、4箇所、5箇所、6箇所、7箇所もしくは8箇所の突然変異、例えば、4箇所もしくは8箇所の突然変異、および/またはβ鎖可変ドメイン中に1箇所、2箇所、3箇所、4箇所もしくは5箇所の突然変異、例えば、5箇所の突然変異がある。一部の実施形態では、本発明のTCRのα鎖可変ドメインは、MAGE-A4 TCRに関して配列番号8、AFP TCRに関して配列番号20のアミノ酸残基の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。一部の実施形態では、本発明のTCRのβ鎖可変ドメインは、MAGE-A4 TCRに関して配列番号9もしくはAFP TCRに関して配列番号21のアミノ酸残基の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0038】
本発明によれば、TCRは、α鎖可変ドメインが、配列番号8もしくは配列番号4のアミノ酸残基1~136のアミノ酸配列、あるいはそのアミノ酸残基1~47、54~70、77~110および126~136がそれぞれ配列番号8のアミノ酸残基1~47、54~70、77~110および126~136の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有し、かつ/またはアミノ酸残基48~53、71~76および111~125、それぞれ、CDR1、CDR2、CDR3が配列番号8のアミノ酸残基48~53、71~76および111~125、それぞれ、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCR(MAGE-A4 TCR)を含み得る。
【0039】
本発明によれば、TCR(MAGE-A4)は、α鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~47が、(a)配列番号8のアミノ酸残基1~47の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号8の残基1~47に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(ii)アミノ酸残基48~53が、VSPFSN、CDR1、配列番号10または配列番号8のアミノ酸48~53であり、
(iii)そのアミノ酸残基54~70が、(a)配列番号25のアミノ酸残基54~70の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号8のアミノ酸残基54~70の配列に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(iv)アミノ酸残基71~76が、LTFSEN、CDR2、配列番号11または配列番号8のアミノ酸71~76であり得、
(v)そのアミノ酸残基77~110が、配列番号8のアミノ酸残基77~110の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号8のアミノ酸残基77~110の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得、
(vi)アミノ酸111~125が、CVVSGGTDSWGKLQF、CDR3、配列番号12または配列番号8のアミノ酸111~125であり得、
(vii)そのアミノ酸残基126~136が、配列番号8のアミノ酸残基126~136の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号8のアミノ酸残基126~136の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得る、
の配列のTCRを含み得る。
【0040】
本発明によれば、TCRは、β鎖可変ドメインが、配列番号9のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1~45、51~67、74~109、124~133がそれぞれ配列番号9のアミノ酸残基1~45、51~67、74~109、124~133の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し、かつアミノ酸残基46~50、68~73および110~123が配列番号9のアミノ酸残基46~50、68~73および110~123、それぞれ、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCR、またはMAGE-A4 TCRを含み得る。
【0041】
本発明によれば、TCRは、β鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~45が、(a)配列番号9のアミノ酸残基1~45の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号9の残基1~45に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(ii)アミノ酸残基46~50が、KGHDR、CDR1、配列番号13または配列番号9のアミノ酸46~50であり、
(iii)そのアミノ酸残基51~67が、(a)配列番号9のアミノ酸残基51~67の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号9のアミノ酸残基51~67の配列に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(iv)アミノ酸残基68~73が、SFDVKD、CDR2、配列番号14または配列番号9のアミノ酸68~73であり得、
(v)そのアミノ酸残基74~109が、配列番号9のアミノ酸残基74~109の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号9のアミノ酸残基74~109の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得、
(vi)アミノ酸110~123が、CATSGQGAYEEQFF、CDR3、配列番号15または配列番号9のアミノ酸110~123であり得、
(vii)そのアミノ酸残基124~133が、配列番号9のアミノ酸残基124~133の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号9のアミノ酸残基124~133の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得る、
の配列のTCRを含み得る。
【0042】
代替的には、TCRは、α鎖可変ドメインが、配列番号16のアミノ酸残基1~112のアミノ酸配列、あるいはそのアミノ酸残基1~26、33~49、56~89および102~112がそれぞれ配列番号16のアミノ酸残基1~26、33~49、56~89および102~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有し、かつ/またはアミノ酸残基27~32、50~55、90~101、それぞれ、CDR1、CDR2、CDR3が配列番号16のアミノ酸残基27~32、50~55、90~101、それぞれ、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCR、またはAFP TCRを含み得る。
【0043】
本発明によれば、TCRは、α鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~26が、(a)配列番号16のアミノ酸残基1~26の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号16の残基1~26に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(ii)アミノ酸残基27~32が、DRGSQS、αCDR1、配列番号22または配列番号16のアミノ酸27~32であり、
(iii)そのアミノ酸残基33~49が、(a)配列番号16のアミノ酸残基33~49の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号16のアミノ酸残基33~49の配列に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(iv)アミノ酸残基50~55が、IYSNGD、αCDR2、配列番号23または配列番号16のアミノ酸50~55であり得、
(v)そのアミノ酸残基56~89が、配列番号16のアミノ酸残基56~89の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号16のアミノ酸残基56~89の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得、
(vi)アミノ酸90~101が、AVNSDSGYALNF、αCDR3、配列番号24または配列番号16のアミノ酸90~101であり得、
(vii)そのアミノ酸残基102~112が、配列番号16のアミノ酸残基102~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号16のアミノ酸残基102~112の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得る、
の配列のTCRを含み得る。
【0044】
本発明によれば、TCR、またはAFP TCRは、β鎖可変ドメインが、配列番号18のアミノ酸残基1~112のアミノ酸配列、またはそのアミノ酸残基1~26、32~48、55~91、103~112がそれぞれ配列番号18のアミノ酸残基1~26、32~48、55~91、103~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し、かつアミノ酸残基27~31、49~54および92~102が配列番号18のアミノ酸残基27~31、49~54および92~102、それぞれ、βCDR1、βCDR2、βCDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0045】
本発明によれば、TCRは、β鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~26が、(a)配列番号18のアミノ酸残基1~26の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号18の残基1~26に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(ii)アミノ酸残基27~31が、SGDLS、βCDR1、配列番号25または配列番号18のアミノ酸27~31であり、
(iii)そのアミノ酸残基32~48が、(a)配列番号18のアミノ酸残基32~48の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号18のアミノ酸残基32~48の配列に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(iv)アミノ酸残基49~54が、YYNGEE、βCDR2、配列番号26または配列番号18のアミノ酸49~54であり得、
(v)そのアミノ酸残基55~91が、配列番号18のアミノ酸残基55~91の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号18のアミノ酸残基55~91の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得、
(vi)アミノ酸92~102が、ASSLGGESEQY、βCDR3、配列番号27または配列番号18のアミノ酸92~102であり得、
(vii)そのアミノ酸残基103~112が、配列番号18のアミノ酸残基103~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号18のアミノ酸残基103~112の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得る、
の配列のTCRを含み得る。
【0046】
したがって、異種TCRは、α鎖が配列番号20のアミノ酸残基を含み、かつβ鎖可変ドメインが配列番号21または配列番号42のアミノ酸残基を含む、TCRを含み得る。
【0047】
共受容体改変T細胞
本発明によれば、異種TCRもしくはCARを発現または提示する改変されたT細胞の集団は、異種共受容体をさらに発現または提示することができる。異種共受容体は、CD8共受容体であり得る。CD8共受容体は、CD8-αおよびCD8-β鎖またはCD8-αおよびCD8-α鎖を含むCD8鎖の二量体または対を含み得る。好ましくは、CD8共受容体は、CD8-αおよびCD8-α鎖を含むCD8αα共受容体である。CD8α共受容体は、配列番号37に対して少なくとも80%の同一性のアミノ酸配列、配列番号37またはその変異体を含み得る。CD8α共受容体は、ホモ二量体であり得る。
【0048】
CD8共受容体は、クラス1MHCに結合し、TCRシグナル伝達を増強する。本発明によれば、CD8共受容体は、配列番号37の参照アミノ酸配列を有し得るか、またはその変異体であり得る。変異体は、参照アミノ酸配列である配列番号37に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。CD8共受容体は、配列番号38の参照ヌクレオチド配列によりコードされることができるか、またはその変異体であり得る。変異体は、参照ヌクレオチド配列である配列番号38に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。
【0049】
本発明によれば、異種CD8共受容体は、Ig様V型ドメインにおいて、配列;
(i)VLLSNPTSG、CDR1、配列番号39、または配列番号37のアミノ酸45~53、
(ii)YLSQNKPK、CDR2、配列番号40または配列番号37のアミノ酸72~79、
(iii)LSNSIM、CDR3、配列番号41または配列番号37のアミノ酸80~117、
またはそれに対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列
を有するCDRを含む、CD8共受容体を含み得る。
【0050】
本発明によれば、異種CD8共受容体は、配列番号37のアミノ酸配列の残基22~135、またはそのアミノ酸残基22~44、54~71、80~117、124~135が配列番号37のアミノ酸残基22~44、54~71、80~117、124~135、それぞれ、CDR1、CDR2、CDR3の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し、かつアミノ酸残基45~53、72~79および118~123がそれぞれ配列番号37のアミノ酸残基45~53、72~79および118~123の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはIg様V型ドメインにおいて含む、CD8共受容体を含み得る。
【0051】
本発明によれば、CD8共受容体は、
(i)そのアミノ酸残基22~44が、(a)配列番号37のアミノ酸残基22~44の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号37の残基22~44に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(ii)アミノ酸残基45~53が、VLLSNPTSG、配列番号39、CDR1または配列番号37のアミノ酸45~53であり、
(iii)そのアミノ酸残基54~71が、(a)配列番号37のアミノ酸残基54~71の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号37のアミノ酸残基54~71の配列に対して挿入または欠失された1個、2個もしくは3個のアミノ酸残基を有し得、
(iv)アミノ酸残基72~79が、YLSQNKPK、CDR2、配列番号40または配列番号37のアミノ酸72~79であり得、
(v)そのアミノ酸残基80~117が、配列番号37のアミノ酸残基80~117の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号37のアミノ酸残基80~117の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得、
(vi)アミノ酸118~123が、LSNSIM、CDR3、配列番号41または配列番号37のアミノ酸80~117であり得、
(vii)そのアミノ酸残基124~135が、配列番号37のアミノ酸残基124~135の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号37のアミノ酸残基124~135の配列に対して1箇所、2箇所もしくは3箇所の挿入、欠失または置換を有し得る、
の配列の、またはIg様V型ドメインにおいて上記の配列の、CD8共受容体を含み得る。
【0052】
異種CD8共受容体を発現する改変されたT細胞は、異種CD8共受容体を発現しない改変されたT細胞と比較して、任意によりHLA上に提示される場合に、抗原性ペプチド、腫瘍もしくは癌抗原による刺激に対して、または刺激に際して、本明細書中に開示されるアッセイにより決定可能である通りの、改善された親和性および/または結合力および/または改善されたT細胞活性化を示すことができる。改変されたT細胞の異種CD8は、MHCと相互作用するかまたはMHCに特異的に結合することができ、MHCは、クラスIもしくはクラスII、好ましくはクラスI主要組織適合性複合体(MHC)、HLA-I分子であるか、またはMHCクラスI HLA-A/B2M二量体を伴い得、好ましくは、CD8-αは、好ましくはCD8のIgV様ドメインを介して、クラスI MHCのα部分(残基223~229)と相互作用する。したがって、異種CD8は、異種CD8を欠損するT細胞と比較して、任意により抗原提示細胞、樹状細胞および/または腫瘍もしくは癌細胞、腫瘍もしくは癌組織の表面上に、HLA pMHCIもしくはpHLAに結合するかまたはこれらにより提示されるHLAおよび/または抗原性ペプチドに対するT細胞のTCR結合性を改善する。
【0053】
したがって、異種CD8は、異種CD8を欠損する細胞と比較して、任意により抗原提示細胞、樹状細胞および/または腫瘍もしくは癌細胞、または腫瘍もしくは癌組織の表面上での、免疫応答性細胞の細胞(TCR)/ペプチド-主要組織適合性複合体クラスI(pMHCI)相互作用のoff速度(koff)、およびそれゆえ、その半減期を改善または増大させることができ、それにより、改善されたライゲーション親和性および/または結合力もまた提供することができる。異種CD8は、免疫応答性細胞表面上でのTCRの組織化を改善することができ、それによりpHLA結合性における協調性を可能にし、かつ改善された治療的結合力を提供することができる。したがって、異種CD8共受容体改変T細胞は、亜鉛依存的様式でLCK(リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ)と結合または相互作用することができ、それにより、NFAT、NF-κB、およびAP-1などの転写因子の活性化をもたらす。異種CD8改変T細胞は、異種CD8共受容体を欠損するT細胞と比較して、任意により癌細胞または組織の腫瘍により提示される場合、任意により癌および/もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド抗原に応答した、改善または増大したCD40Lの発現、サイトカイン産生、細胞傷害活性、樹状細胞成熟の誘導または樹状細胞サイトカイン産生の誘導を有し得る。
【0054】
共刺激リガンド改変T細胞
本発明によれば、改変されたT細胞または改変されたT細胞の集団は、少なくとも1種、任意により1種、2種、3種または4種の、外因性および/または組み換え共刺激リガンドをさらに含みかつ/または発現することができる。TCRと少なくとも1種の外因性共刺激リガンドとの間の相互作用は、非抗原特異的シグナルおよび細胞の活性化をもたらし得る。共刺激リガンドとしては、限定するものではないが、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、および免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーリガンドが挙げられる。TNFは、全身性炎症に関与するサイトカインであり、かつ急性期反応を刺激する。その主要な役割は、免疫細胞の調節におけるものである。TNFスーパーファミリーのメンバーは、多数の共通の特徴を共有する。TNFスーパーファミリーメンバーのうちの大多数が、短い細胞質セグメントおよび比較的長い細胞外領域を含むII型膜貫通タンパク質(細胞外C末端)として合成される。TNFスーパーファミリーメンバーとしては、限定するものではないが、神経成長因子(NGF)、CD40L(CD40L)/CDl54、CD137L/4-1BBL、TNF-α、CD134L/OX40L/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD30L/CD153、腫瘍壊死因子β(TNFP)/リンホトキシン-α(LTa)、リンホトキシン-β(TTb)、CD257/B細胞活性化因子(BAFF)/Blys/THANK/Tall-1、グルココルチコイド誘導型TNF受容体リガンド(GITRL)、およびTNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)が挙げられる。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識、結合または接着プロセスに関与する細胞表面タンパク質および可溶性タンパク質の大きな群である。これらのタンパク質は、免疫グロブリンと構造的特徴を共有し、免疫グロブリンドメイン(折り畳み)を保有する。免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドとしては、限定するものではないが、両方ともCD28に対するリガンドであるCD80およびCD86が挙げられる。特定の実施形態では、少なくとも1種の共刺激リガンドは、4-1BBL、CD275、CD80、CD86、CD70、OX40L、CD48、TNFRSF14、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明によれば、改変されたT細胞または改変されたT細胞の集団は、4-1BBLまたはCD80、好ましくは4-1BBL、代替的に4-1BBLおよびCD80であり得る少なくとも1種の外因性および/または組み換え共刺激リガンドをさらに含み得る。
【0055】
CD3+富化
本発明によれば、方法は、T細胞が、CD3+画分に関して、抗原、分化タンパク質のクラスターおよび成熟Tリンパ球上のT細胞受容体(TCR)複合体の一部分であるCD3を発現するT細胞に関して富化されるステップをさらに含み得る。富化は、T細胞の改変前に行うことができる。富化は、T細胞の活性化前に行うことができる。あるいは、かつ好ましくは、富化は、T細胞の活性化中または活性化後、好ましくはT細胞の活性化中または活性化後のいずれかかつ改変前に行われる。任意により、富化は、例えば、任意により改変前の活性化中に、任意により取り出し可能なビーズに付着させた、抗CD3抗体もしくはその抗原結合性断片および/または抗CD28抗体もしくはその抗原結合性断片に対して、含まれるT細胞に関して行われる。
【0056】
T細胞活性化
本発明の方法によれば、T細胞もしくはT細胞の集団の活性化または活性化ステップは、T細胞が増殖および/または拡大するのを刺激する。
【0057】
T細胞の単離された集団の活性化は、様々な方法により、例えば、T細胞を抗CD3抗体もしくはそのCD3結合性断片と接触させることにより、またはT細胞を抗CD28抗体もしくはそのCD28結合性断片と接触させることにより、またはT細胞をB7タンパク質(B7は、活性化された抗原提示細胞上に見出される末梢膜タンパク質のうちの1つのタイプであり、T細胞上でCD28またはCD152(CTLA-4)表面タンパク質と対になった場合に、共刺激シグナルを生じることができる)もしくはそのCD28結合性断片、例えば、そのB7-1もしくはB7-2もしくはCD28結合性断片と接触させることにより、達成することができる。活性化手段は、ビーズまたは磁性ビーズなどの固相かつ任意により取り出し可能な表面または基材、例えば、抗CD3および/または抗CD28を用いてコーティングされた磁性ビーズに付着させることができる。好ましくは、活性化は、例えば、磁性ビーズであり得、したがって細胞培養培地からの単離が可能であるビーズ、任意により取り出し可能なビーズに任意により付着させた、抗CD3抗体もしくはその抗原結合性断片および/または抗CD28抗体もしくはその抗原結合性断片の添加による。T細胞活性化は、T細胞改変と同時またはその後に、AKTi添加と同時またはその後に、T細胞改変およびAKTi添加の両方と同時またはその後に行うことができる。好ましくは、T細胞活性化は、T細胞改変に先立ち、好ましくはAKTi添加に先立ち、好ましくはT細胞改変およびAKTi添加の両方に先立つ。
【0058】
AKT阻害剤ステップ
本発明の方法によれば、T細胞改変または形質導入は、活性化に先立ってまたはそれと同時に、例えば、活性化の約0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20時間またはそれ以上前のうちのいずれか1つにおいて行うことができる。
【0059】
本発明の方法によれば、T細胞改変または形質導入は、活性化後、好ましくは活性化の18~26時間後、好ましくは活性化の12~40、13~38、14~36、15~34、16~32、17~30、18~28、18~26もしくは18~24時間後のうちのいずれかまたは活性化の約11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41もしくは42時間後のうちのいずれか1つにおいて行うことができる。
【0060】
本発明の方法によれば、AKT阻害剤をT細胞改変または形質導入後に添加することができ、好ましくは、AKT阻害剤を、改変もしくは形質導入の8~42、9~41、10~40、11~39、12~38、13~37、14~36、15~35、16~34、17~33、18~32、19~31、20~30、21~29、22~28、23~27、24~26または24~25時間後のうちのいずれか1つ、好ましくはT細胞改変もしくは形質導入の15~26、16~25、17~24、18~23、19~22、または20~21時間後のうちのいずれか1つ、好ましくは17~24時間後に、添加することができる。
【0061】
本発明の方法によれば、AKT阻害剤は、T細胞活性化後に添加することができ、好ましくは、AKT阻害剤は、T細胞活性化の35~50、36~49、37~48、38~47、39~46、40~45、41~44、42~43時間後のうちのいずれか1つ、好ましくはT細胞改変または形質導入の、35~50時間後に添加することができる。
【0062】
AKT阻害剤
本発明の方法によれば、AKT阻害剤は、アロステリック阻害剤またはアロステリックAKT阻害剤、競合的ATP阻害剤、AKTとリン脂質との間の相互作用の阻害剤、AKTの下流の分子のリン酸化の、好ましくはPRAS40、リボソームS6、またはTSC2のリン酸化の阻害剤からなる群から選択することができる。AKT阻害剤はまた、AKTのDNA-PK活性化の阻害剤、AKTのPDK-1活性化の阻害剤、AKTのmTORC2活性化の阻害剤、AKTのHSP活性化の阻害剤からなる群から選択することもできる。
【0063】
したがって、アロステリック阻害剤またはアロステリックAKT阻害剤は、
(a)ARQ092、ミランセルチブ(Miransertib)、CAS番号:1313881-70-7、式C2724、もしくは構造
【0064】
【化1】
を有する化合物
(b)ARQ751、もしくは構造
【0065】
【化2】
を有する化合物
(c)BAY1125976、(CAS番号1402608-02-9)、式C2321O、もしくは構造
【0066】
【化3】
を有する化合物、または
(d)MK-2206、(CAS番号1032350-13-2)、式C2521O、もしくは構造
【0067】
【化4】
を有する化合物
のうちのいずれか1つから選択することができる。
【0068】
したがって、競合的ATP阻害剤は、
(a)アフレセルチブ(Afuresertib)(GSK2110183)、(CAS番号:1047645-82-8)、式C1817ClFNOS・HCl、もしくは構造
【0069】
【化5】
を有する化合物
(b)ウプロセルチブ(Uprosertib)、GSK2141795、(CAS番号:1047634-65-0)、式C1816Cl、もしくは構造
【0070】
【化6】
を有する化合物
(c)GSK690693、(CAS番号:937174-76-0)、式C2127、もしくは構造
【0071】
【化7】
を有する化合物
(d)イパタセルチブ(GDC-0068)、(CAS番号:1001264-89-6)、式C2432ClN、もしくは構造
【0072】
【化8】
を有する化合物
(e)LY2780301、もしくは構造
【0073】
【化9】
を有する化合物
(f)トリシリビン(TCN-PM;VD-0002)、(CAS番号:35943-35-2)、式C1316、もしくは構造
【0074】
【化10】
を有する化合物
(g)AZD5363、(CAS1143532-39-1)、式C2125ClN、もしくは構造
【0075】
【化11】
を有する化合物、または
(g)CCT128930、(CAS885499-61-6)、式C1820ClN、もしくは構造
【0076】
【化12】
を有する化合物
のうちのいずれか1つから選択することができる。
【0077】
したがって、AKTとリン脂質との間の相互作用の阻害剤は、ペリフォシン(D-21266、KRX0401)、(CAS157716-52-4)、式C2552NOP、または構造
【0078】
【化13】
を有する化合物であり得る。
【0079】
好ましくは、AKT阻害剤は、MK-2206またはGSK690693である。
【0080】
本発明によれば、AKT阻害剤は、AKTに関するAKT阻害剤の阻害のIC50、任意によりAKT1、AKT2、もしくはAKT3の阻害のIC50よりも10~1000倍以上の濃度で、好ましくは、IC50の10、25、20、75、100、200、300、400、500、600、700、800、900または1000倍のうちのいずれか以上の濃度で、添加することができる。好ましくは、AKT阻害剤は、0.01μM~10μMまたは20μM~100μMの濃度で、好ましくは0.01、0.025、0.05、0.075、0.1、0.25、0.5、0.75、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100μM、好ましくは0.5μM以上の濃度で、添加することができる。
【0081】
プロセスのT細胞
本発明によれば、AKT阻害剤の存在下で産生される活性化および改変および/もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、
(i)AKT阻害剤の非存在下で産生されるT細胞の集団、または活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞の集団(例えば、参照T細胞またはT細胞の集団)、あるいは
(ii)AKT阻害剤の存在下で産生されるT細胞の集団または活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞の集団であって、AKT阻害剤が、改変もしくは形質導入前に、かつ/または活性化もしくは刺激の24時間以下後に、例えば、活性化もしくは刺激の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間のうちのいずれか1つ以下後に添加される、集団と比較して、
(a)CD45RA+、CCR7+の両方を発現するT細胞、
(b)CD45RO-、CCR7+、CD45RA+、CD62L+(L-セレクチン)、CD27+、CD28+およびIL-7Rα+であるT細胞、
(c)TSCM細胞(幹メモリーT細胞)であるT細胞、
(d)メモリー表現型、好ましくはCD8メモリー表現型を有するT細胞
のうちのいずれか1つまたは複数の増加したまたは高い相対的割合を有し得る。
【0082】
本発明によれば、AKT阻害剤の存在下で産生される活性化および改変および/もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、好ましくは、
(i)AKT阻害剤の非存在下で産生されるT細胞の集団、または活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞の集団(例えば、参照T細胞またはT細胞の集団)、あるいは
(ii)AKT阻害剤の存在下で産生されるT細胞の集団または活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞の集団であって、AKT阻害剤が、形質導入前に、かつ/または活性化もしくは刺激の24時間以下後に、例えば、活性化もしくは刺激の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間のうちのいずれか1つ以下後に添加される、集団と比較して、
(a)in vitroおよび/またはin vivoでの持続性、
(b)播種から回収までの拡大、
(c)奏効の永続性、
(d)抗原に誘導されるサイトカイン産生、任意によりインターフェロンγ産生
(e)T細胞生存率または寿命または生存能パーセンテージ、
(f)T細胞エフェクター機能、好ましくは細胞傷害性
のうちのいずれか1つまたは複数の改善されたレベルを有する。
【0083】
T細胞持続性
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、改善された持続性を示し、かつ、好ましくは機能的CD8+集団内で、比較的最終分化していないT細胞の増加した割合、好ましくはCD45RA+、CCR7+の両方を発現する、好ましくは二重陽性SCM細胞の増加した割合を有する。好ましくは、T細胞は、改善された持続性およびメモリー形成、生存、および/またはin vivoでのおよび/もしくはin vitroで試験される場合の抗原刺激生存を有する。
【0084】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、任意により参照T細胞またはT細胞の集団と比較して改善されている、一定期間にわたってin vivoおよび/またはin vitroで実証される改善された持続性を示す。
【0085】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、例えば、異種TCRもしくはCARを発現し、かつ/またはCD45RA+、CCR7の両方を発現するT細胞またはT細胞の割合を特定するためのフローサイトメトリーにより、任意により参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、定量化され、かつ/または遺伝子改変T細胞を特定するためのqPCRにより決定される通り、in vivo拡大の増大したレベルおよび/または二重陽性SCM細胞の増加した割合の測定により決定される場合に、改善された持続性を示す。
【0086】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、例えば、異種TCRもしくはCARのqPCRによるコピー/μgの尺度としての改善されたピーク拡大またはその中央値により、あるいは、例えば、in vivo末梢血単核細胞(PBMC)のサンプルにおける、異種TCRまたはCARに対して陽性であるCD3+細胞のピークパーセンテージ、またはその中央値の測定により決定される場合に、改善された持続性を示す。好ましくは、これらの値は、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、少なくとも10%、代替的には20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%以上まで改善される。拡大の程度および持続性の持続期間は、腫瘍原性応答に相関する。
【0087】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、任意により参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、サイトカインアッセイ、例えば、ELISAにより定量化されるかまたは本明細書中に記載される通りの、サイトカイン産生の、例えば、in vivoおよび/またはin vitroでのインターフェロンγ産生の改善されたレベルにより決定される場合に、改善された持続性を示す。
【0088】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、例えば、本明細書中に提示されるアッセイにより決定される通りに、任意により参照T細胞またはT細胞の集団と比較して改善された、in vitroおよび/もしくはin vivoでの機能的消耗を比較的被らずかつ/またはその低減を実証し、したがって、in vitroおよび/もしくはin vivoにおいてより長期の生存期間を伴って持続することおよびより長期間持続しかつより永続的な免疫応答を提供することが比較的可能であることにより決定される場合に、改善された持続性を示す。好ましくは、T細胞機能は、例えば、CD8+T細胞からのγ-インターフェロンの増大した分泌、例えば細胞計数に従って増大したT細胞増殖、例えば細胞シグナル伝達アッセイに従って増大した内部シグナル伝達、増大した抗原応答性、サイトカインおよび/またはインターフェロンの増大した分泌、増大した標的細胞殺傷、増大したT細胞活性化、増大したCD28シグナル伝達、腫瘍に浸潤するT細胞の増大した能力、樹状細胞提示抗原を認識しかつそれに結合する増大した能力により判断される場合に、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、少なくとも10%、代替的には20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%以上まで強化される。
【0089】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、任意により参照T細胞またはT細胞の集団と比較して決定される、例えば、in vitroおよび/またはin vivoでの、腫瘍浸潤、腫瘍結合性、腫瘍収縮および/または腫瘍クリアランスのアッセイまたはその程度の決定により測定される通り、改善された抗腫瘍活性の効力、およびしたがって、改善された腫瘍免疫の低減または免疫認識の回避を有することにより決定される場合に、改善された持続性を示す。好ましくは、抗腫瘍活性の効力は、例えば、腫瘍結合性アッセイ、腫瘍収縮および/または腫瘍クリアランスにより測定される場合に、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、少なくとも10%、代替的には20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%以上まで強化または改善される。
【0090】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、例えば、サイトカインおよび/もしくはインターフェロンの増大した分泌、増大したT細胞増殖、例えばin vitroアッセイによる、増大した抗原応答性、標的細胞殺傷、T細胞活性化、CD28シグナル伝達、腫瘍に浸潤するT細胞の能力、樹状細胞提示抗原を認識しかつこれに結合する能力により判断される場合に、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、例えば、少なくとも5%または10%、代替的には20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%以上まで強化された、例えば、in vitroおよび/またはin vivoでの、腫瘍または腫瘍抗原に応答して免疫応答を引き起こす能力により測定される通り、改善または強化された腫瘍免疫原性により決定される場合に、改善された持続性を示す。
【0091】
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、好ましくは参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、in vivoでの注入後、またはin vitroでの培養の開始後、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36日間、および/または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49カ月間のうちのいずれか1つまたは複数の時期、期間または時間経過にわたって、改善された持続性を示す。好ましくは、細胞は、比較される時間経過にわたって、消耗を伴わずに、機能的活性の改善されたレベルを示す。好ましくは、改善された持続性は、in vivoでの注入後、8~14日間にわたって決定される。
【0092】
T細胞拡大
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、播種および回収の時点の間でプロセスまたは培養中に測定される場合に、改善および/または増大したT細胞拡大のレベルを示す。好ましくは、AKT阻害剤の非存在下で産生されるT細胞の集団または活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞の集団(例えば、参照T細胞またはT細胞の集団)と比較して、例えば、T細胞活性化後に、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、増大したレベルのT細胞拡大、分裂または増殖が見られる。例えば、拡大、分裂もしくは増殖のアッセイまたは決定は、本発明のプロセスもしくは培養プロセスもしくはプロセス中に、またはそれに由来するサンプル中で測定される、細胞生存能および濃度ならびに増殖および拡大の速度の測定を提供する自動化細胞計数機を用いて行うことができる。好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、等価なサンプルまたは本発明のプロセスもしくは培養プロセスもしくはプロセス中に取得されるサンプルの時点から測定されるか、またはそれに由来するサンプル中で測定される場合に、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、拡大、分裂または増殖に関して改善された能力を示し、改善は、T細胞活性化を含むアッセイにおいて決定することができる。活性化は、本明細書中に上記で記載される通りに、サイトカイン、インターロイキン、抗体、ペプチドまたは抗原性ペプチドの存在下で開始することができ、例えば、活性化は、癌もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド、異種TCRにより認識される癌もしくは腫瘍抗原のペプチド断片、または細胞もしくは組織、例えば、ペプチドもしくは抗原性ペプチド、またはペプチド断片を提示する腫瘍もしくは癌細胞または組織の使用を介することができる。好ましくは、参照と比較した改善または同等な改善は、本明細書中で上記に記載される通り、期間または時間経過にわたって実証される。
【0093】
T細胞永続性
したがって、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、in vivoでの改善された永続的奏効および/または永続的奏効率を示す。好ましくは、T細胞またはT細胞の集団は、注入もしくは治療もしくは介入前のそのようなレベルと比較して、または参照T細胞もしくはT細胞の集団を用いる注入もしくは治療と比較して、好ましくは、少なくとも10%、代替的には20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、120%、150%、200%以上まで強化された、例えば、腫瘍サイズまたは腫瘍数の測定により決定される場合の、腫瘍生育もしくは腫瘍生育速度を低減するかまたは治療の停止後/in vivoでの注入後に腫瘍サイズを維持する、改善された持続的奏効を提供する。好ましくは、参照と比較した改善または同等の改善は、本明細書中で上記に記載される通り、期間または時間経過にわたって実証される。
【0094】
T細胞サイトカイン産生
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、癌もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド、あるいは癌細胞もしくは組織の腫瘍の、またはそれにより提示され;かつ異種TCRまたはCARにより認識される、癌もしくは腫瘍抗原のペプチド、抗原性ペプチド、ペプチド断片に応答した、例えば、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、改善および/または増大したレベルのサイトカイン産生を示す。サイトカインは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IFN-γ、IL-2、腫瘍壊死因子(TNF)-α、MIP-1β(CCL4)、IL-17、IL-10、IL-4、IL-5、IL-13、IL-2受容体、IL-12、またはMIG(CXCL9);好ましくはIFNγ、IL-2、TNFα、GM-CSF、またはMIP1β;好ましくは、IFNγ、IL-2、TNFα、GM-CSF、およびMIP1βであり得る。加えてまたは代替的に、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、癌もしくは腫瘍抗原またはそのペプチド、あるいは癌細胞もしくは組織の腫瘍の、またはそれにより提示され;かつ異種TCRまたはCARにより認識される癌もしくは腫瘍抗原のペプチド、抗原性ペプチド、ペプチド断片に応答した、樹状細胞における増大したレベルのサイトカイン産生の誘導を示すことができる。サイトカインは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、IFN-γ、IL-2、腫瘍壊死因子(TNF)-α、MIP-1β(CCL4)、IL-17、IL-10、IL-4、IL-5、IL-13、IL-2受容体、IL-12、またはMIG(CXCL9);好ましくはIFN-γ、IL-12、またはMIG;あるいはIFN-γ、IL-12、およびMIGであり得る。サイトカイン産生の決定のための好適なアッセイは、当技術分野で公知である。好ましくは、参照と比較した改善または同等な改善は、本明細書中で上記に記載される通り、期間または時間経過にわたって実証される。
【0095】
T細胞生存率、寿命、生存能
好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、例えば、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、in vitroおよび/またはin vivoにおいて、改善および/もしくは増大した生存率または寿命または生存能パーセンテージを示す。好ましくは、参照と比較した改善または同等な改善は、本明細書中で上記に記載される通り、期間または時間経過にわたって実証される。好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、例えば、色素に基づく増殖アッセイまたはH-チミジン取り込み増殖アッセイを用いて、in vitroまたはin vivoサンプルにおいて、抗原性刺激、例えば、異種TCRまたはCARに対して特異的な抗原に応答したT細胞増殖のレベルを測定することにより決定される場合に、改善されたT細胞生存能を示す。加えてまたは代替的に、T細胞生存能は、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または酵素結合免疫スポット(ELISpot)を用いて、抗原応答性T細胞のサイトカイン産生に関して、T細胞の抗原特異的応答のレベルを測定することにより決定することができる。これは、物理的細胞生育に関する呈色アッセイおよび生存能のあるT細胞数に関連するマーカー活性の測定と組み合わせることができる。好ましくは、活性化および改変もしくは形質導入されたT細胞またはT細胞の集団は、例えば、異種TCRもしくはCARを発現しかつ/またはCD45RA+、CCR7の両方を発現するT細胞またはT細胞の割合を特定するためのフローサイトメトリーにより定量化され、かつ/または遺伝子改変T細胞を特定するためのqPCRにより決定される通り、増大した生存率または寿命の測定により決定される場合、改善された持続性を示す。
【0096】
T細胞エフェクター機能
本発明に従うT細胞またはT細胞の集団は、例えば、参照T細胞またはT細胞の集団と比較して、改善された抗原応答またはクラスI抗原応答を示すことができる。好ましくは、参照と比較した改善または同等な改善は、本明細書中で上記に記載される通り、期間または時間経過にわたって実証される。本発明に従うT細胞またはT細胞の集団は、任意により、癌もしくは腫瘍抗原またはペプチドあるいは癌もしくは腫瘍抗原の、または癌細胞もしくは組織の腫瘍により提示され、かつT細胞または異種TCRもしくはCARにより認識または結合される癌ペプチド、抗原性ペプチド、ペプチド断片に応答した、改善または増大したCD40Lの発現、抗原提示細胞に対する親和性、および/または、サイトカイン産生、例えばT細胞認識抗原、腫瘍もしくは癌抗原を発現する細胞の細胞殺傷アッセイにより決定される通りの細胞傷害活性、樹状細胞成熟の誘導または樹状細胞サイトカイン産生の誘導を示すことができる。
【0097】
組成物および療法
本発明は、本発明の方法に従って産生されるT細胞またはT細胞の集団を提供する。
【0098】
本発明はさらに、本発明の方法に従って産生されるT細胞またはT細胞の集団、および生理的に許容される賦形剤を含む組成物を提供する。
【0099】
本発明に従うT細胞または改変されたT細胞の集団は、緩衝剤、担体、希釈剤、保存料および/または薬学的に許容される賦形剤などの他の試薬と混合することができる。投与(例えば、注入による)のために好適な医薬組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、保存料、安定化剤、静菌剤、および意図されるレシピエントの血液に対して製剤を等張にする溶質を含み得る、水性および非水性等張性パイロジェン不含滅菌注射溶液;ならびに懸濁剤および増粘剤を含み得る水性および非水性滅菌懸濁物が挙げられる。そのような製剤中での使用のための好適な等張性ビヒクルの例としては、塩化ナトリウム注、リンゲル液、または乳酸加リンゲル注が挙げられる。好適なビヒクルは、標準的な製剤学の教科書、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990に見出すことができる。一部の好ましい実施形態では、本発明に従う改変されたT細胞、またはT細胞の集団は、個体への静脈内注入のために好適な医薬組成物へと製剤化することができる。
【0100】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書中で用いる場合、合理的な損益比に見合う、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症を伴わない、被験体(例えば、ヒト)の組織との接触する使用のために好適な、正当な医学的判断の範囲内である、化合物、材料、組成物、および/または剤形に関連する。各担体、賦形剤などはまた、製剤の他の成分と適合するという意味で、「許容可能」でなければならない。
【0101】
本発明は、養子療法における使用のための、本発明の方法に従って産生されるT細胞もしくはT細胞の集団またはその組成物を提供する。したがって、改変されたT細胞またはT細胞の集団は、静脈内的に、筋内的に、皮下的に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内的に、眼窩内的に、移植により、吸入により、髄腔内的に、脳室内的に、または鼻内的にまたは静脈内注入により、投与することができる。好ましくは、改変された免疫応答性細胞は、静脈内的に、または静脈内注入により投与することができる。したがって、改変されたT細胞またはT細胞の集団は、単回用量としてまたは2回以上の用量(複数用量)として投与することができ、かつ約5億個~約10億個の細胞、約20億個の細胞、約30億個の細胞、約40億個の細胞、約50億個の細胞、約60億個の細胞、約70億個の細胞、約80億個の細胞、約90億個の細胞、約100億個の細胞、約110億個の細胞、約120億個の細胞、約130億個の細胞、約140億個の細胞、約150億個の細胞、約160億個の細胞、約170億個の細胞、約180億個の細胞、約190億個の細胞、約200億個の細胞、または約210億個の細胞のうちのいずれか1つの用量で投与することができる。
【0102】
本発明は、腫瘍および/または癌の治療における使用のための、本発明の方法に従って産生されるT細胞もしくはT細胞の集団またはその組成物を提供する。腫瘍および/または癌は、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性または進行型NSCLC、扁平上皮NSCLC、腺癌NSCLC、腺扁平上皮NSCLC、大細胞NSCLC、卵巣癌、胃癌、尿路上皮癌、食道癌、食道胃接合部癌(EGJ)、黒色腫、膀胱癌、頭頚部癌、頭頚部扁平上皮細胞癌(HNSCC)、口腔癌、中咽頭癌、下咽頭癌、咽喉癌、喉頭癌、扁桃腺癌、舌癌、軟口蓋癌、咽頭癌、滑膜肉腫、粘液円形細胞脂肪肉腫(MRCLS)から選択することができる。本発明によれば、癌は、乳癌、転移性乳癌、肝臓癌、腎細胞癌、滑膜肉腫、尿路上皮癌または腫瘍、膵臓癌、結腸直腸癌、転移性胃癌(metastatic stomach cancer)、転移性胃癌(metastatic gastric cancer)、転移性肝臓癌、転移性卵巣癌、転移性膵臓癌、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、結腸直腸癌または腺癌、肺癌または腺癌、膵臓癌または腺癌、粘液腺腫、膵管癌、血液悪性腫瘍のうちのいずれか1種から選択することができる。任意により、癌および/または腫瘍は、MAGE-A4もしくはAFPあるいはMAGE-A4の、かつ/またはアミノ酸配列GVYDGREHTV、配列番号1(MAGE-A4)を含む抗原ペプチドもしくはペプチド抗原あるいはα-フェトプロテイン(AFP)の、かつ/または配列FMNKFIYEI(配列番号2)もしくはα-フェトプロテイン(AFP)(配列番号3)由来の残基158~166を含む抗原ペプチドもしくはペプチド抗原を発現することができる。
【0103】
治療
好ましくは、治療は、本明細書中で上記に記載される通り、参照T細胞またはT細胞の集団を含む治療と比較して、
(a)無増悪生存期間、
(b)無増悪期間、
(c)奏効持続期間、
(d)全生存率、
(e)客観的奏効または客観的奏効率、
(f)全奏効または全奏効率、
(g)部分奏効または部分奏効率、
(h)完全奏効または完全奏効率;
(i)疾患安定率または疾患安定中央値
(j)無増悪生存期間中央値、
(k)無増悪期間中央値、
(l)奏効持続期間中央値、または
(m)全生存率中央値;
(n)客観的奏効中央値または客観的奏効率中央値、
(о)全奏効中央値または全奏効率中央値、
(p)部分奏効中央値または部分奏効率中央値、
(q)完全奏効中央値または完全奏効中央値、
(r)疾患安定率中央値または疾患安定中央値
を延長もしくは改善または効果的に延長もしくは効果的に改善する。
【0104】
「全生存率」とは、規定された期間にわたって生存したままである被験体を意味する。
【0105】
「客観的奏効率」(ObRR)は、任意により標的病変または腫瘍の最長径(SLD)の合計により決定され、かつ最小期間にわたる、予め規定された量の腫瘍サイズ減少を有する被験体の割合である。「全奏効率」(ORR)は、療法に対する部分奏効または完全奏効を有する被験体の割合として定義され;安定疾患は含まない。ORRは、一般的に、特定された期間にわたる完全奏効(CR)および部分奏効(PR)の合計として定義される。「無増悪生存期間」(PFS)とは、治療(または無作為化)から最初の疾患進行または死亡までの時間を意味する。「無増悪期間」(TTP)は、治療対象の癌または腫瘍以外の原因により死亡する患者をカウントしないが、それ以外はPFSと等価である。「奏効持続期間」(DoR)は、癌、腫瘍または病変が、生長または播種を伴わずに治療に対して応答し続ける時間の長さである。本発明によれば、DoR、TTPおよびPFSは、固形腫瘍における奏効評価基準(RECIST)により評価することができるか、または進行の決定因子としてのCA-125レベルにより評価することができる。
【0106】
本発明によれば、「完全奏効」(CR)は、すべての標的病変または腫瘍が、消失していると評価または測定されている場合に決定される。「部分奏効」(PR)は、例えば、対照または治療前比較物を参照した場合に、標的病変または腫瘍の最長径(SLD)の合計における少なくとも30%の減少の測定が見られる場合に決定される。「疾患進行」(PD)は、治療開始または1箇所もしくは複数の新たな病変の存在以後での、例えば、対照または治療前比較物を参照した場合に、標的病変または腫瘍の最長径(SLD)の合計における少なくとも20%の増加の測定が見られる場合に決定される。「疾患安定」(SD)は、治療開始以後の最小SLDを参照として用いて、PRに該当するための標的病変または腫瘍の最長径(SLD)の合計における十分な低減または減少が見られず、かつPDに該当するための十分な増加も見られないと決定される場合に決定される。
【0107】
本発明によれば、
(a)本発明の方法に従って産生される有効量のT細胞またはT細胞の集団、ならびに被験体において癌および/または腫瘍を治療するかまたはその進行を遅延させるためにT細胞を用いるための説明書を含む添付文書を含むキット
が提供される。
【0108】
本発明が、以下の図面および実施例を参照することによりさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
図1】AKTiの添加のための時点を示す図である。MK-2206がT細胞拡大培養に添加された時点を示す模式図、0日目+2日目添加と2日目のみでの培養間で比較を行った。0日目添加は、ビーズ添加、T細胞活性化後であるが、形質導入/拡大前に行われる。2日目添加は、形質導入後であるが拡大前に行われる。G-Rex補充において用いた培地への添加は、プロセスを中断させない。
図2】健康ドナー材料(HDM)に関するMK-2206に対する応答におけるT細胞総有核細胞(TNC)数を示す図である。HDMを、10日間にわたって10M G-Rex中で拡大させた。3つの異なる時点で添加された様々な濃度のMK-2206を用いて培養物を処理した;0日目(+D2)、2日目。総有核細胞(TNC)数を、自動細胞計数機ViCELL上で回収後10日目に取得した。
図3】MK-2206化合物添加後の10日目の回収での複数の健康ドナー拡大を示す図である。6種類の健康ドナー材料を、記載されるプロセスに従って、10M G-Rex中で10日間にわたって拡大させた。10μMから0.05μMまで漸減する濃度でMK-2206を用いて培養物を処理した。グラフAは、0日目に添加された化合物(+2日目培地添加)を詳細に示し、グラフBは2日目のみに添加された化合物を詳細に示す。回収された細胞を、ViCELLを用いて計数した。結果を、未処理対照に対する拡大における変化倍率として表示した。反復培養が拡大された場合、2回の反復の平均±SEMをデータ点に対して示した。
図4】形質導入されたCD8+区画における健康ドナーメモリー表現型分布を示す図である。健康ドナー材料を、記載されるプロセスに従って、10M G-Rex中で10日間にわたって拡大させた。X軸上に示される複数の濃度(μM)でAKTi MK-2206を用いて培養物を処理した。化合物は、0日目+2日目または2日目のみに添加した。回収された細胞を、メモリー表現型マーカー(CCR7+/-、CD45RA+/-)に関してCD3+/デキストラマー+/CD8+区画をゲーティングするフローサイトメトリーにより分析した。
図5】MK-2206の存在下で拡大されたT細胞による抗原刺激されたIFNγ分泌を示す図である。拡大されたT細胞を凍結から解凍し、2時間休ませ、続いて、抗原陽性細胞株(A375、前日に播種)と48時間共培養した。刺激されたT細胞培養物からの上清を、IFNγELISAを用いてサイトカイン放出に関して分析した。各データ点は、3回の反復の平均±SEMを示す。MK-2206は、0日目+2日目、2日目に添加した。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0110】
[実施例1]
1.1.目的
以下の研究の目的は、T細胞拡大に対する不利益を伴わずに改善されたT細胞機能をもたらすことができ、それにより、産生されるT細胞集団が、養子療法および癌の治療において改善された機能的有効性を有するであろう、培養中のT細胞を産生する新規プロセスを調べることであった。特に、最終集団においてT細胞拡大、T細胞生存能、形質導入、CD8頻度に対して最小限の負の影響を有するかまたは負の影響を有さず、かつ抗原特異的活性化に応答した改善されたサイトカイン分泌をも有する、機能的CD8+区画内の比較的分化していないT細胞集団の割合を増大させることが、プロセスに対して特に望ましかった。そのような細胞集団は、抗原に応答したエフェクター機能により判断される場合に改善された抗腫瘍活性(細胞傷害性細胞殺傷活性およびサイトカイン産生)を有し、かつ抗原刺激生存に応答した延長した生存により判断される場合に改善された持続性を示し、加えて、T細胞は、改善された持続性およびメモリー形成、生存、および抗原刺激生存を有するであろうことが予期された。プロセスは、AKT阻害剤の使用を組み込み、解糖経路の上流で作用するタンパク質キナーゼB(AKT)の小分子阻害剤であるMK-2206がここで例示される。改善されたT細胞拡大は、MK-2206が0日目でのT細胞の活性化および1日目での形質導入後2日目に添加された場合に達成され、分析は、以下に説明される通り、得られるT細胞集団の改善された機能性を示した。
【0111】
1.2.T細胞単離拡大および培養
すべての細胞を、静止拡大システム(拡張可能G-Rex(登録商標))を用いて、拡大および形質導入した。健康ドナーまたは癌患者由来の凍結保存された白血球除去出発材料を解凍し、洗浄し、CD3/CD28磁性Dynabeadsを用いて活性化し、CD3+陽性画分を、磁気的に分離した。出発白血球除去材料は、健康ドナー間で似通っていた。CD3+細胞は44~64%の範囲であり、全部が、抗CD3/CD28 Dynabeadsを用いる正の単離後に79~87%の増加した純度を有した。CD3+表現型決定は、個体間でCD8+区画において11.6~57%の範囲である一定範囲の幹細胞メモリー(SCM)マーカー(CCR7+/CD45RA+)を特定した。富化されたCD3+T細胞を、100IU/mL IL-2を添加したTexMACS+5%ヒトAB血清(HABS)を用いて10%の最終培養体積において、G-Rex(登録商標)静止細胞拡大システムデバイス中で1.5×10TNC/cm密度で総有核細胞(TNC)数に基づいて播種した。異種TCR(MAGE-A4を認識する)を発現するベクターを用いる形質導入を、MOI0.45でレンチウイルス(LV)ベクターを用いて、細胞へのCD3/CD28 Dynabeadsの添加の18~26時間後に行った。続いて、最終培養体積へと満杯まで培地を添加し、これを、TexMACS+5%HABS+500IU/mL IL-2を用いる形質導入の17~24時間後に行った。続いて、細胞を、37℃、5%COにおいてさらに8日間インキュベートした。MK-2206を、所定の間隔で培地に添加した;0日目に播種培地および2日目培地添加のために用いた培地での補充、または2日目培地添加のための培地での補充のみ。化合物の濃度は各実験に対して異なり、以下の実施例において示される通り、10μM、7.5μM、5μM、2.5μM、2μM、1.5μM、1μM、0.5μM、0.25μM、0.1μM、0.05μMであった。播種から10日間後にT細胞を回収した。ビーズを取り出した後、T細胞を、自動化細胞分析(ViCELLを用いる)により計数した。続いて、回収された細胞を、記載される通りのその後の表現型決定および機能的分析のために凍結した。プロセスの概要を、図1に示す。
【0112】
1.3 抗原刺激およびサイトカイン放出分析(IFNγ)
拡大されたT細胞の機能を、MAGE-A4発現細胞株であるA375を用いる抗原刺激後の、拡大されたT細胞によるサイトカイン放出のレベルに基づいて評価した。A375 MAGE-A4陽性標的細胞を、自動化細胞計数機を用いて計数し、ウェル当たり100μL体積で、ウェル当たり30,000個の生存有核細胞(VNC)にて96ウェルU底プレート中に播種し、1日間後、T細胞刺激を行い、37℃、5%COで一晩インキュベートした。「T細胞単独」対照として用いたウェルには、100μL R10培地(10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI培地)のみを加えた。標的細胞の一晩インキュベーション後、回収および凍結したT細胞を、水浴中、37℃で解凍し、R10培地を用いて洗浄した。細胞を、37℃、5%COで2時間、2×10VNC/mLの密度で、R10培地中で休ませた。2時間の休息後、自動化細胞計数機を用いてT細胞を計数し、培養物を、各条件に対して形質導入VNCおよび非形質導入VNCの算出された量を組み合わせて、すべてのドナーに対して35%の形質導入効率に対して正規化した。正規化されたT細胞を、前日に播種されたA375標的細胞を含有するプレートへと、100μL体積中の150,000VNC/ウェルで播種した。プレートを、48時間、37℃、5%COのインキュベーターに戻し、T細胞刺激を可能にした。48時間の刺激後、プレートを、400Gで5分間遠心分離し、上清を、新たな96ウェルプレートに移した。上清を-20℃で保存した。
【0113】
ELISAによるヒトIFNγを用いて、ELISAを行った。標準対照を、IFNγに関して10000pg/mLの最大濃度までプレートに対して調製し、1:2で連続希釈し、各アッセイに対して標準曲線を作成した。呈色読み出し値を、OD450で分析した(BMG LABTECH FLUOstar Omegaプレートリーダー)。
【0114】
[実施例2]
2.1.T細胞拡大分析
健康ドナー材料(血液のドナーサンプルから分離された白血球を含む白血球除去材料)を、10日間の持続期間にわたる上述のプロセス後に、静止拡大(G-Rexデバイス)において培養のために処理した。細胞を、0日目+2日目または2日目のみ(2日目の培地添加を伴う)で培養物にMK-2206(1.25、2.5、5.0、10μM)を添加して培養した。回収時、拡大データを提供するために、総有核細胞(TNC)計数を、自動化細胞計数機(ViCELL)を用いて行い、表現型を決定するためにフローサイトメトリーを行った。回収した培養物を凍結し、機能的評価、抗原刺激サイトカイン放出アッセイ(上記の1.3)のためにその後に解凍した。
【0115】
データ(図2)は、未処理対照と比較した場合に、比較的低い濃度のMK-2206の存在下で増大した拡大を示した。MK-2206の添加に関してすべての時点が、10μMで低減した拡大を示した。10μMを除いて、2日目のみの添加は、改善されたTNC収量をもたらした。0(+2)日目は、一貫して低収量をもたらした。
【0116】
[実施例3]
3.1.拡張された滴定および拡大分析
MK-2206の濃度を、0.05~10μMでのさらなる滴定において試験し、至適用量を完全に決定し、0(+2)日目および2日目のみの両方を、添加の至適時間を決定するために評価する。再び、拡大、表現型およびサイトカイン産生データを評価した。追加の4名のドナーを、本研究において完全滴定範囲を提供するために、10μM~0.05μMの様々な濃度で試験した。すべてのドナーを、記載されたプロセスに従って、10M G-Rexにおいて試験し、10日目に回収した。拡大データは、MK-2206の添加の時点を検討した;0+2日目および2日目のみ。
【0117】
MK-2206添加時点は、拡大に対する影響を有する。0+2日目は一貫した応答を示さなかった。1.5倍の拡大増加および0.15倍の拡大減少の限界を伴って、試験したすべての濃度にわたって、ドナー変動が見られた。ピーク拡大は、最低濃度(0.05および0.1μM)でのものであり、このとき、すべてのドナーが、未処理対照と同様またはそれよりも0.5倍良好に応答した(図3A)。2日目添加は、拡大に対して負の影響を有しなかった。ドナー変動が存在したが;しかしながら、すべての条件が、対照と同様またはより良好な応答をもたらした(≧1~2倍)。2日目添加は、0.5μMで3名のドナーに関してピーク拡大をもたらし、拡大前に、用量依存的応答で減少し始めた(0.05~0.25μM)。拡大応答は、幾分かのドナー変動を伴って、0.5μM超でプラトーに達するように見える(図3B)。全体として、2日目添加は、0+2日目のものよりも、拡大に対して明らかに良好な応答をもたらした。
【0118】
[実施例4]
3.4.T細胞表現型分析
CCR7およびCD45RA染色を用いて培養された細胞のメモリー表現型マーカーを決定するために、記載されたプロセスから10日目に回収された健康ドナー材料に対して、フローサイトメトリーを行った。
【0119】
図4のデータは、MK-2206を用いて培養された細胞が、未処理対照と比較して、0+2日目および2日目のみに添加された場合に、回収時に増大したCCR7+CD45RA+集団を示したことを示す。添加の濃度は、CCR7+CD45RA+を増加させる上での顕著な作用を有しなかった。これらの幹細胞様マーカーでの増大は、0日目出発白血球除去材料をより反映し(図4 D0)、このことは、添加が、分化を減速させることにより、この集団を維持することをおそらく示唆した。
【0120】
示される通り(図4)、MK-2206は、メモリー表現型マーカー(CCR7/CD45RA)に対する影響を有し、CD62L発現での増大もまた観察され、それにより、機能的消耗を比較的被らず、かつin vivoでのより長い生存期間を伴って持続することがより可能であり、より長く持続しかつより永続的な免疫応答をもたらす、比較的最終分化していないこれらの二重陽性SCM様細胞の集団が増加する。CCR7+集団でのこの増大は、幹細胞様およびセントラルメモリーマーカーでの増加、ならびに結果的なCCR7-CD45RA-、すなわち、より最終分化したエフェクターメモリー(EM)集団での減少を示し、この細胞部分集団は、消耗および低減したT細胞生存およびin vivoでの増殖に対する可能性を有する。EMRA集団は、一般的に、試験したすべての濃度にわたって、未処理対照と同様のままである。CCR7+集団での増大は、MK-2206を用いる細胞培養が、生存および持続に対する能力を有する「より適合した」T細胞を生じていることを表し、これは、特に養子療法および癌の治療の文脈において、T細胞集団に対する機能的利益を有する。
【0121】
SCM T細胞は、CCR7+/CD45RA+である「幹メモリー細胞」(TSCM細胞)であり、ナイーブT細胞に対する類似性を有し、これらはまた多量のCD95、IL-2Rβ、CXCR3、およびLFA-1も発現し、メモリー細胞に特徴的な多数の機能的属性を示す。SCM T細胞は、長期的応答ならびに自己再生および生存に対する高い能力を有する、比較的最終分化していないT細胞である。CM T細胞は、「セントラルメモリーT細胞」(TCM細胞)であり、CCR7+/CD45RA-を発現し、かつCD44の高発現に対する中間体をも有する。CM T細胞は、リンパ節中および末梢循環中に共通して見出されるメモリー部分集団である。EM T細胞は、「エフェクターメモリーT細胞」(TEM細胞)であり、CCR7-/CD45RA-であるが、すなわち、CCR7およびCD45RAの発現を欠損する。これらはまた、CD44の高発現に対する中間体も有する。これらのメモリーT細胞は、リンパ節ホーミング受容体を欠損し、したがって、末梢循環および組織中で見出され、これらは、即時応答エフェクター細胞であり、それらの最終分化状態に起因する機能の消耗を被る。EMRA細胞(TEMRA)は、ナイーブT細胞上で通常見出されるマーカーであるCD45RAを再発現する最終分化したエフェクターメモリー細胞(CCR7-/CD45RA+)である。
【0122】
[実施例5]
5.1.サイトカイン産生
上述のT細胞培養プロセスに由来する拡大されたT細胞を解凍し、MAGE-A4陽性細胞株であるA375の存在下で播種した。サイトカイン放出アッセイのために、標的細胞およびエフェクター細胞を、48時間にわたって共培養し、続いて、上清を回収し、ELISAによりIFNγレベルに関して分析した。非形質導入対照もまた、追加の対照基準としてアッセイに含めた。すべてのサンプルを、35%形質導入率に対して正規化した。
【0123】
抗原刺激されたT細胞により産生されるIFNγのレベルを、T細胞集団機能性を示すものとして調べた。MK-2206を、各ドナーに関して未処理対照に対して評価した。抗原刺激後のIFNγ産生での応答は、ある程度までドナー依存的であった。MK-2206濃度の増加はまた、細胞のサイトカイン産生を減少させるようであった(>5μM)。最高の増大は、MK-2206の2日目添加で見られた(図5)。
【0124】
配列
GVYDGREHTV、(配列番号1)、MAGE A4ペプチド
【0125】
FMNKFIYEI(配列番号2)α-フェトプロテイン(AFP)ペプチドまたは配列番号3由来の残基158~166
【0126】
ヒトα-フェトプロテイン配列番号3
【0127】
【化14】
【0128】
配列番号4;MAGE A4 TCRα鎖、CDRは太字下線
【0129】
【化15】
【0130】
配列番号5;MAGE A4 TCRα鎖コード配列
【0131】
【化16】
【0132】
配列番号6;(MAGE A4 TCRβ鎖)CDRは太字下線
【0133】
【化17】
【0134】
配列番号7;(MAGE A4 TCRβ鎖コード配列)
【0135】
【化18】
【0136】
配列番号8;(MAGE A4 TCRα鎖可変領域)136AA-CDRは太字下線
MKKHLTTFLVILWLYFYRGNGKNQVEQSPQSLIILEGKNCTLQCNYTVSPFSNLRWYKQDTGRGPVSLTILTFSENTKSNGRYTATLDADTKQSSLHITASQLSDSASYICVVSGGTDSWGKLQFGAGTQVVVTPD
【0137】
配列番号9;(MAGE A4 TCRβ鎖可変領域)133AA-CDRは太字下線
MASLLFFCGAFYLLGTGSMDADVTQTPRNRITKTGKRIMLECSQTKGHDRMYWYRQDPGLGLRLIYYSFDVKDINKGEISDGYSVSRQAQAKFSLSLESAIPNQTALYFCATSGQGAYEEQFFGPGTRLTVLE
【0138】
配列番号10;CDR1 MAGE A4 TCRα鎖
VSPFSN
【0139】
配列番号11;CDR2 MAGE A4 TCRα鎖
LTFSEN
【0140】
配列番号12;CDR3 MAGE A4 TCRα鎖
CVVSGGTDSWGKLQF
【0141】
配列番号13;CDR1 MAGE A4 TCRβ鎖
KGHDR
【0142】
配列番号14;CDR2 MAGE A4 TCRβ鎖
SFDVKD
【0143】
配列番号15;CDR3 MAGE A4 TCRβ鎖、
CATSGQGAYEEQFF
【0144】
親AFP TCR TRAV12-202/TRAJ4101/TRACα鎖アミノ酸細胞外配列(配列番号16)
【0145】
【化19】
【0146】
親AFP TCRα鎖DNA配列(配列番号17)
【0147】
【化20】
【0148】
親AFP TCR TRBV901/TRBD2/TRBJ2-701/TRBC2β鎖アミノ酸細胞外配列(配列番号18)
【0149】
【化21】
【0150】
親AFP TCRβ鎖DNA配列(配列番号19)
【0151】
【化22】
【0152】
変異体AFP TCR(AFP TRAV12-202/TRAJ4101/TRACα鎖アミノ酸細胞外配列(配列番号20)
【0153】
【化23】
【0154】
変異体AFP TCR TRBV901/TRBD2/TRBJ2-701/TRBC2β鎖アミノ酸細胞外配列(配列番号21)
【0155】
【化24】
【0156】
DRGSQS(αCDR1)、AFP TCR、配列番号22
【0157】
IYSNGD(αCDR2)、AFP TCR、配列番号23
【0158】
AVNSDSGYALNF(αCDR3)、AFP TCR、配列番号24
【0159】
SGDLS(βCDR1)、AFP TCR、配列番号25
【0160】
YYNGEE(βCDR2)、AFP TCR、配列番号26
【0161】
ASSLGGESEQY(βCDR3)、AFP TCR、配列番号27
【0162】
DRGSQA(αCDR1)、AFP TCR、配列番号28
【0163】
AVNSDSSYALNF(αCDR2)、AFP TCR、配列番号29
【0164】
AVNSDSGVALNF(αCDR2)、AFP TCR、配列番号30
【0165】
AVNSQSGYALNF(αCDR2)、AFP TCR、配列番号31
【0166】
AVNSQSGYSLNF(αCDR2)、AFP TCR、配列番号32
【0167】
AVNSQNGYALNF(αCDR2)、AFP TCR、配列番号33
【0168】
DRGSFS(αCDR1)、AFP TCR、配列番号34
【0169】
DRGSYS(αCDR1)、AFP TCR、配列番号35
【0170】
AVNSQSSYALNF(αCDR2)、AFP TCR、配列番号36
【0171】
【化25】
【0172】
【化26】
【0173】
VLLSNPTSG、CD8α CDR1、配列番号39
【0174】
YLSQNKPK、CD8α CDR2、配列番号40
【0175】
LSNSIM、CD8α CDR3、配列番号41

図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
2023521875000001.xml
【国際調査報告】