(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】架橋性熱可塑性樹脂組成物およびそれを形成する方法、ならびに硬化した熱可塑性樹脂組成物を形成する方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/00 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
C08G73/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562999
(86)(22)【出願日】2021-04-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 IB2021020018
(87)【国際公開番号】W WO2021209825
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,ティアンレイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤオ,ハイキン
(72)【発明者】
【氏名】宮内 雅彦
【テーマコード(参考)】
4J043
【Fターム(参考)】
4J043QA08
4J043RA02
4J043SA31
4J043SB01
4J043TA03
4J043TA54
4J043TB01
4J043UA122
4J043UA132
4J043UA151
4J043UB022
4J043UB092
4J043UB122
4J043XA15
4J043XA16
4J043YB19
4J043ZA32
4J043ZA33
4J043ZA34
4J043ZB51
(57)【要約】
架橋性熱可塑性樹脂組成物は、ビス-ベンゾオキサジンモノマーと、フェノール官能基、アミン官能基、および/またはチオール官能基を有する二官能性コモノマーとの反応から形成されるポリマーを含み得、前記ポリマーは、少なくとも1つの架橋性基を含有する。架橋性熱可塑性樹脂組成物を形成する方法は、ビス-ベンゾオキサジンモノマーおよび二官能性コモノマーを反応させて、少なくとも1つの架橋性基を含有するポリマーを形成することを含み得る。硬化した熱可塑性樹脂を形成する方法は、外部刺激を加えることによって架橋性熱可塑性樹脂組成物を硬化させることを含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス-ベンゾオキサジンモノマーと、フェノール官能基、アミン官能基、および/またはチオール官能基を有する二官能性コモノマーとの間の反応から形成されるポリマーを含み、
前記ポリマーは、少なくとも1つの架橋性基を含む、架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋性基は、前記ポリマー上のエンドキャップである、請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋性基は、前記ポリマーの主鎖上にある、請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、温度140℃における溶融粘度が10000Pa・s以下である、請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
UVまたはマイクロ波硬化性官能基をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記UVまたはマイクロ波硬化性官能基は、前記架橋性基である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記UVまたはマイクロ波硬化性基は、前記架橋性基と反応する、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
含有量が25重量%以下の未反応モノマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
ビス-ベンゾオキサジンモノマーと二官能性コモノマーとを反応させて、少なくとも1つの架橋性基を含むポリマーを形成する工程を含む、架橋性熱可塑性樹脂組成物を形成する方法。
【請求項10】
前記反応工程は、溶液中でベンゾオキサジン樹脂を形成するために、1気圧下で75℃を超える沸点を有する溶媒中における溶液重合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒は、酢酸エチル、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、2-メトキシエタノール/テトラヒドロフラン(THF)の混合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液から前記ベンゾオキサジン樹脂を精製することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ビス-ベンゾオキサジンモノマーと前記二官能性コモノマーとの間のモル比は、1:1~2:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記反応工程は、前記ビス-ベンゾオキサジンモノマーとビスフェノールコモノマーとの溶融重合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記ビス-ベンゾオキサジンモノマーと前記ビスフェノールコモノマーとの間のモル比は、1:10~10:1である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂組成物を、UVまたはマイクロ波硬化性官能基を含むように改質することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法によって製造された、樹脂組成物。
【請求項18】
硬化した熱可塑性樹脂組成物を形成する方法であって:
請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物を提供する工程と;
前記架橋性熱可塑性樹脂組成物を、外部刺激を加えることによって硬化させて、前記硬化した熱可塑性樹脂を形成する工程とを含む、方法。
【請求項19】
前記外部刺激は、熱、紫外線照射、マイクロ波照射、および水分からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋性熱可塑性樹脂組成物は、UVまたはマイクロ波硬化性官能基をさらに含み、前記外部刺激は、紫外線照射またはマイクロ波照射を含む、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔背景〕
熱硬化性樹脂(「熱硬化性物質」)および熱可塑性樹脂(「熱可塑性物質」)は、異なる分類のポリマーであり、熱の存在下でのそれらの挙動に基づいて互いに区別される。具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの熱可塑性物質は、熱を加えると柔軟に、または成形可能になる(冷却すると固化する)一方、エポキシ、ベンゾオキサジンおよびビスマレイミドなどの熱硬化性物質は、硬化すると不可逆的に固まり、加熱しても溶融および再成形することができない。したがって、熱可塑性材料は、それらが流動し始める溶融温度(融点)を有する一方、硬化された熱硬化性製品は、それらの構造的な完全性を失うことなく、より高い温度に耐えることができる。
【0002】
熱硬化性物質および熱可塑性物質の両方が、航空宇宙の構造物および内装部品などに適用するための構成要素として、先進複合材料において使用されてきた。熱硬化性物質は一般に、架橋(硬化)時に達成される結合の三次元網目構造に起因して、熱可塑性物質と比較して高い弾性率および優れた耐クリープ性を有する。これによって、熱可塑性樹脂よりもそれらの低い破断点伸び値がもたらされ、また、熱硬化性物質は一般に、250℃までの範囲の温度で長期間の硬化時間も必要とする。しかしながら、多くの未硬化熱硬化性樹脂は貯蔵寿命が限られており、劣化の危険性がある(典型的な熱硬化性プリプレグの冷蔵保存では6ヶ月未満)。また、所望の硬化状態を達成するために、硬化サイクルは注意深く制御されなければならない。
【0003】
一方、熱可塑性樹脂は、架橋(硬化)を必要としないという利点を有する。熱可塑性物質の他の利点としては、室温での無期限の貯蔵寿命(UV照射の非存在下)、短い成形時間、改善された燃焼/煙/毒性(FST)性能、再成形性、強化された振動減衰および音波減衰、優れた衝撃損傷耐性(衝撃靭性)、材料形態を調整する能力(設計柔軟性)、優れた剪断および破壊強度、ならびにリサイクル性が含まれる。熱可塑性物質はまた、成形されたサブコンポーネントを融合または溶接する選択肢を提供し、これは、留め具および接着剤を排除することによって、組立品の重量および応力集中を低減することができる。しかしながら、一般に、熱可塑性樹脂は、競合する熱硬化性物質よりも著しく高い原料コストを有する。熱可塑性樹脂の成形も困難である。ほとんどの熱可塑性プリプレグは、PEEK、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)などを使用し、これらは、予め固化された乾燥シートまたはボードとして維持され、柔軟にするために350℃を超えるまで予熱されなければならない。しばしば、熱可塑性樹脂の最適なラミネート特性を得るために、複雑な温度制御ツールが必要とされる。
【0004】
〔要約〕
本要約は、詳細な説明において以下でさらに説明されるコンセプトを選抜したものを紹介するために提供される。本要約は、特許請求される主題の重要な、または本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、特許請求される主題の範囲を限定する助けとして使用されることを意図するものでもない。
【0005】
一態様において、本明細書に開示される実施形態は、ビス-ベンゾオキサジンモノマーと、フェノール官能基、アミン官能基、および/またはチオール官能基を有する二官能性コモノマーとの間の反応から形成されるポリマーを含み、当該ポリマーは、少なくとも1つの架橋性基を含む、架橋性熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0006】
別の態様において、本明細書に開示される実施形態は、ビス-ベンゾオキサジンモノマーと二官能性コモノマーとを反応させて、少なくとも1つの架橋性基を含むポリマーを形成する工程を含む、架橋性熱可塑性樹脂組成物を形成する方法に関する。
【0007】
別の態様において、本明細書に開示される実施形態は、硬化した熱可塑性樹脂組成物を形成する方法であって、架橋性熱可塑性樹脂組成物を提供する工程と、前記架橋性熱可塑性樹脂組成物を、外部刺激を加えることによって硬化させて、前記硬化した熱可塑性樹脂を形成する工程とを含む、方法に関する。
【0008】
特許請求される主題の他の態様および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0009】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、1つ以上の実施形態の架橋性熱可塑性樹脂の合成の概略図である。
【0010】
図2は、1つ以上の実施形態の架橋性熱可塑性樹脂の硬化の概略図である。
【0011】
図3は、1つ以上の実施形態の架橋性熱可塑性樹脂の精製の概略図である。
【0012】
図4は、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー改質ストラテジーの模式図である。
【0013】
図5は、本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー合成ストラテジーの模式図である。
【0014】
図6Aは、本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化性官能基を含むポリマーの模式図である。
【0015】
図6Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化した樹脂の模式図である。
【0016】
図7Aは、本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化性成分を含むポリマー組成物の模式図である。
【0017】
図7Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化した樹脂の模式図である。
【0018】
図8~9は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データを示す。
【0019】
図10は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【0020】
図11は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのGPCデータを示す。
【0021】
図12は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【0022】
図13は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのGPCデータを示す。
【0023】
図14は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についての
1HNMRデータを示す。
【0024】
図15は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのTGAの結果を示す。
【0025】
図16は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのGPCデータを示す。
【0026】
図17A~Bは、1つ以上の実施形態の例示的な架橋性熱可塑性樹脂の合成の概略図である。
【0027】
図18は、1つ以上の実施形態の例示的な架橋性熱可塑性樹脂の合成の概略図である。
【0028】
図19は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物((a)PBB(120-2-30)A、(b)PBB(150-2-5)A、(c)PBB(150-2-10)A、および(d)PBB(150-2-25)A)についてのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データを示す。
【0029】
図20は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【0030】
図21は、1つ以上の実施形態の例示的な硬化した熱可塑性樹脂組成物のDMAの結果のグラフ表示である。
【0031】
図22は、1つ以上の実施形態の熱可塑性樹脂の硬化中のモノマーとポリマーとの間の反応の模式図である。
【0032】
図23は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物(a)PDA(120-2-30)A、(b)PDA(150-2-5)A、(c)PDA(150-2-10)A、および(d)PDA(150-2-25)Aについての熱可塑性物質(NMPに部分的に溶解した粉末)のGPCの結果のグラフ表示である。
【0033】
図24は、1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【0034】
図25A~Bは、1つ以上の実施形態の例示的な硬化した熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率(
図25A)および損失正接(tan delta)(
図25B)の動的機械分析を示す。
【0035】
図26Aは、本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化したポリマー組成物の写真である。
【0036】
図26Bは、本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化したポリマー組成物の写真である。
【0037】
〔詳細な説明〕
本開示の1つ以上の実施形態は概して、熱硬化性物質または熱可塑性物質が単独では達成できない特性の組み合わせを提供し得る架橋性熱可塑性樹脂に関する。例えば、架橋性熱可塑性組成物中の架橋性基は、高温での重合によって架橋構造を形成し得る;しかしながら、このような温度未満では、架橋性熱可塑性樹脂の特性が従来の熱可塑性物質の特性を大いに反映し得る(そして、溶融/成形および再溶融/再成形することができる)。架橋後、そのような組成物は、従来の熱硬化性材料の特性(繊維に対する優れた接着性および高温耐性など)を反映する特性を有する。
【0038】
本開示の実施形態はまた、1つ以上の実施形態において、溶液重合および溶融重合を含む方法によるベンゾオキサジン熱可塑性樹脂の調製に関する。特に、本開示の1つ以上の実施形態は、形成された樹脂生成物がより良好な溶解度を有する溶媒系を使用するワンポット溶液重合に関する。重合後、樹脂の所望の特性に応じて、1つ以上の実施形態において、樹脂を精製して、未反応のモノマーおよびオリゴマーを除去してもよく、または1つ以上の他の実施形態において、未反応のモノマーおよびオリゴマーを樹脂中に残して、可塑剤として機能させてもよい。さらに、多官能基は利用可能なモノマーの複数の選択を通じて導入することもでき、これは、最終ポリマー生成物の適用を大幅に広げることができる。
【0039】
したがって、本開示の1つ以上の実施形態は、改善された加工性および/または熱安定性を有するベンゾオキサジン熱可塑性樹脂にも関する。1つ以上の実施形態において、このようなベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は、樹脂の加工性に影響を及ぼす可塑剤として機能する未反応のモノマーおよびオリゴマーを含み得る。加工性および熱安定性は、樹脂中に存在するフェノール性ヒドロキシル基の少なくともいくつかと反応するように樹脂を改質することによって改善することができる。
【0040】
さらに、本開示の1つ以上の実施形態は、モノマー単位を含むベンゾオキサジン(「BZ」)と、フェノール、アミン、および/またはチオール含有モノマー単位とを含むポリマーを含むベンゾオキサジン熱可塑性樹脂にも関する。いくつかの実施形態において、ポリマーがベンゾオキサジンモノマー単位と、フェノール、アミン、および/またはチオール含有モノマー単位とからなり得る。いくつかの実施形態において、ポリマーが開環BZ含有モノマー単位を含んでもよい。ポリマーは、BZエンドキャップでキャップされてもよく、その結果、ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂が架橋可能となる。
【0041】
BZ含有モノマー単位は式(I)で表される構造を有し得る:
【化1】
式中、R1は、水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、および官能基のうち1つ以上を表し得る。1つ以上の実施形態のBZ含有モノマー単位は、R1によって表される1つ以上の置換基を含み得る。本明細書において使用される場合、用語「炭化水素基」は、飽和または不飽和であり得る、分岐、直鎖、および/または環含有炭化水素基を指し得る。炭化水素基は、第一級、第二級、および/または第三級炭化水素であってよい。本明細書において使用される場合、用語「置換炭化水素基」は、少なくとも1つの水素原子が水素ではない基で置き換えられて安定な化合物となった炭化水素基(上記で定義される)を指し得る。そのような置換基は、限定されるものではないが、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、アルカノイル、アリールオキシ、アルカノイルオキシ、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、アリールアルキルアミノ、二置換アミン、アルカニルアミノ、アロイルアミノ、アラルカノイルアミノ、置換アルカノイルアミノ、置換アリールアミノ、置換アラルカノイルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、アリールアルキルチオ、アルキルチオノ、アリールチオノ、アリアルキルチオノ、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アリールアルキルスルホニル、スルホンアミド、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、アルコキシカルボニル、アリール、置換アリール、グアニジン、ビニル、アセチレン、アクリレート、シアネート、エポキシド、およびヘテロシクリル基、ならびにそれらの混合物から選択され得る。官能基は、限定されるものではないが、ハロ、ヒドロキシル、アルコキシ、オキソ、アミノ、アミド、チオール、アルキルチオ、スルホニル、アルキルスルホニル、スルホンアミド、置換スルホンアミド、ニトロ、シアノ、カルボキシ、カルバミル、アルコキシカルボニルビニル、アセチレン、アクリレート、シアネート、エポキシド基、およびこれらの混合物から選択され得る。
【0042】
R2は、特に限定されず、R1に関して言及した基のいずれかを表し得る。しかしながら、特定の実施形態において、R2はBZ含有部分であってもよい。R2がBZ含有部分である場合、BZ含有モノマー単位はビス-BZモノマー単位であってもよい。ビス-BZモノマー単位は式(II)で表される構造を有し得る:
【化2】
式中、R1は、式(I)に関して上述した基を表す。R1’は、R1と同じ基であっても異なる基であっていてもよい。R3は、炭化水素基または置換炭化水素基を表してもよい。特定の実施形態において、R3は、ベンゼン、ビベンジル、ジフェニルメタン、ナフタレン、アントラセン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホンエーテル、ビス(フェノキシ)ベンゼン、スチルベン、フェナントレン、フッ素およびそれらの置換変異体から選択されるがこれらに限定されない芳香族基を表し得る。1つ以上の実施形態において、R3は、約1~100,000Da、または1~10,000Da、または1~1,000Daの範囲内の分子量を有する基を表し得る。1つ以上の実施形態において、1つ以上の開環BZ含有モノマーは、式(II)に関して一緒に使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、開環BZ含有モノマー単位を含んでもよい。BZ含有モノマー単位は、式(III)で表される構造を有し得る:
【化3】
式中、R1は、式(I)に関して上述した基を表す。R1’は、R1と同じ基であっても異なる基であっていてもよい。R4は、炭化水素、エーテル、第二級アミノ、アミド、チオエーテル、スルホニル、スルホンアミド、カルボニル、カルバミル、フルオレニル、アルコキシカルボニル、およびこれらの混合物から選択され得るが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、R4は、約1~100,000Da、または1~10,000Da、または1~1,000Daの範囲の分子量を有する基を表し得る。1つ以上の実施形態において、式(III)によって表される1つ以上の開環BZ含有モノマーは、組み合わせて使用され得る。1つ以上の実施形態において、式(II)および(III)によって表される1つ以上の開環BZ含有モノマーは、組み合わせて使用され得る。
【0044】
1つ以上の実施形態において、ベンゾオキサジン熱可塑性ポリマーは、架橋性基である単一のエンドキャップまたは2つのエンドキャップのいずれかを含み得る。いくつかの実施形態において、これらの架橋性基は、BZ部分であってもよい。特定の実施形態において、BZ部分は、上述のBZ含有モノマー単位由来であってもよい。硬化すると、これらの架橋性基は複数のポリマーを架橋してもよく、熱硬化特性を提供する。いくつかの実施形態において、150~260℃の温度範囲で、またはより特定の実施形態において、250℃以下、225℃以下、または200℃以下の温度で熱硬化するBZ部分が使用される。低い硬化温度は、1つ以上の実施形態の架橋性熱可塑性樹脂が熱プレス、オーブン、オートクレーブなどを使用する熱成形によって容易に硬化した構造に変換されることを可能にし得る。架橋性熱可塑性樹脂の硬化温度および他の特性は、モノマーの選択および形成される樹脂の構造によって大きく影響される。したがって、所与のモノマーの適性は、所望の樹脂のレオロジー挙動、硬化時の架橋の程度、ならびに得られる引張特性、機械的特性、および熱的特性に依存する。以下でより詳細に説明するように、ベンゾオキサジン熱可塑性ポリマーは、UVおよび/またはマイクロ波硬化などの外部刺激によって硬化されてもよい。いくつかの実施形態において、UV硬化性および/またはマイクロ波硬化性であるものなどの硬化性基を樹脂に導入して、UV硬化および/またはマイクロ波硬化を促進させてもよい。
【0045】
1つ以上の実施形態において、本開示のベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は一般に、フェノール官能基、アミン官能基、およびチオール官能基から選択される官能基を有するモノマーなどの二官能性モノマーを含むポリマーを含み得る。
【0046】
1つ以上の特定の実施形態において、ポリマーは、フェノール含有モノマー単位を含んでもよい。1つ以上の実施形態のフェノール含有モノマー単位は、式(IV)で表される構造を有し得る:
【化4】
R5は、特に限定されず、水素原子、炭化水素基、置換炭化水素基、ヒドロキシル基、および官能基のうち1つ以上を表すことができる。1つ以上の実施形態のフェノール含有モノマー単位は、R5で表される1つ以上の置換基を含み得る。例えば、特定の実施形態において、式(IV)で表されるフェノール含有モノマーは、ベンゼンジオール(カテコール、レゾルシノール、もしくはヒドロキノン)、または置換ベンゼンジオール(2-メチルレゾルシノール、2-エチルレゾルシノール、4-メチルカテコールなど、およびこれらのアルキル基がアルコキシ基によって置換されたアルコキシル化誘導体を含む)であってもよい。
【0047】
特定の実施形態において、R5は、フェノール含有部分であってもよい。1つ以上の実施形態において、式(IV)で表される1つ以上のフェノール含有モノマーは、組み合わせて使用され得る。R5がフェノール含有部分である場合、フェノール含有モノマー単位は、ビスフェノールモノマー単位であってもよい。ビスフェノールモノマー単位は、式(V)で表される構造を有し得る:
【化5】
式中、R7は、R5に関して上述した基を表す。R7’は、R7と同じ基であっても異なる基であっていてもよい。R6は、炭化水素基または置換炭化水素基を表してもよい。1つ以上の実施形態のビスフェノールモノマーは、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、1,1’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(ビスフェノールE)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン(ビスフェノールG)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールF)、2,2’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(ビスフェノールAF)、4,4’-(1-フェニルエチリデン)ビスフェノール(ビスフェノールAP)、4,4’-シクロヘキシリデンビスフェノール(ビスフェノールZ)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)、4,4’-(9-フルオレニリデン)ジフェノール(ビスフェノールFL)、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールM)、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスフェノール(ビスフェノールP)、およびそれらの置換誘導体からなる群の1つ以上であってもよい。特定の実施形態において、ビスフェノールモノマーは、3,3’-ジメチルビスフェノールA(ビスフェノールC)、3,3’-ジアリルビスフェノールA、および2,2’-ビス(2-ヒドロキシ-5-ビフェニリル)プロパン(ビスフェノールPH)のうち1つ以上であってもよい。1つ以上の実施形態において、式(V)で表される1つ以上のビスフェノール含有モノマーは、組み合わせて使用され得る。1つ以上の実施形態において、式(IV)および(V)で表される1つ以上のフェノール含有モノマーまたはビスフェノール含有モノマーは、組み合わせて使用され得る。
【0048】
上述のように、1つ以上の実施形態において、本開示のポリマーは、アミン基を含む二官能性モノマー、または芳香族ジアミン、シリコンベースのジアミン、アルキルジアミンなどのジアミン、およびポリエーテルアミンを含み得る。本開示に記載のジアミンとしては、炭素数6~27の芳香族ジアミン化合物、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS-m)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS-p)、1,4-ジアミノベンゼン(PPD)、1,3-ジアミノベンゼン(MPD)、2,4-ジアミノトルエン(2,4-TDA)、4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MDA)、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(ODA)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル(DPE)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TB)、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-TB)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド(TSN)、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド(ASD)、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(ASN)、4,4’-ジアミノベンズアニリド(DABA)、1,n-ビス(4-アミノフェノキシ)アルカン(n=3、4または5、DAnMG)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)-2,2-ジメチルプロパン(DANPG)、1,2-ビス[2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ]エタン(DA3EG)、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン(DA5MG)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン(DA3MG)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(FDA)、5(6)-アミノ-1-(4-アミノメチル)-1,3,3-トリメチルインダン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-QまたはAPB-144)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-RまたはAPB-134またはRODA)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APBまたはAPB-133))、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル(BAPB)、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)、3,3’-ジカルボキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MBAA)、4,6-ジヒドロキシ-1,3-フェニレンジアミン(4,6-ジアミノレゾルシンとして知られる)、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノビフェニル(HAB)および3,3’,4,4’-テトラアミノビフェニル(TAB);炭素数6~24の脂肪族または脂環式ジアミン化合物、例えば、1,6-ヘキサメチレンジアミン(HMD)、1,8-オクタメチレンジアミン(OMDA)、1,9-ノナメチレンジアミン、1,12-ドデカメチレンジアミン(DMDA)、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミンおよびシクロヘキサンジアミン;ならびに、シリコーン系ジアミン化合物、例えば、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンおよびポリジメチルシロキサン(PDMS)が挙げられ得る。他の実施形態は、芳香族ジアミン(VI)または(VII)(式中、それぞれのR
3は独立してH、CH
3またはハロゲンから選択され、nは1~7の整数である)、およびヘキサメチレンジアミン(VII)などのアルキルジアミンを含む、1つ以上のフレキシブルコモノマーを使用してもよい:
【化6】
【0049】
1つ以上の実施形態において、本開示のポリマーは、チオール基を含む二官能性モノマーを含み得る。チオール含有モノマーは、一般式HS-R8-SH(式中、R8は、任意にアルキルおよび/または芳香族ペンダント基で置換されていてもよい、アルキルまたは芳香族主鎖を含む、炭化水素基または置換炭化水素基を表し得る)を有し得る。
【0050】
図1の一般反応式によって示されるように、1つ以上の実施形態のベンゾオキサジン熱可塑性樹脂で表されるポリマーは、ビス-BZ1とベンゼンジオール2との反応から生じる開環ベンゾオキサジン構造3を含んでいてもよい。
図1に示す実施形態は、溶液重合を例示するが、開環ベンゾオキサジン構造3を形成するために溶融重合法を使用してもよい。
図2に示すように、末端BZ基を有するベンゾオキサジン熱可塑性樹脂3を硬化させて、架橋構造4を得てもよい。具体的には、二官能性ベンゾオキサジンモノマーをコモノマーと比較してより大きいモル量で含むことによって、
図2に示されるように、より多数の末端ベンゾオキサジン基が生じ、続いて架橋が起こることを可能にし得る。したがって、1つ以上の実施形態において、溶液重合法において、二官能性ベンゾオキサジンモノマーと二官能性コモノマーとの間のモル比は、1:1~2:1の範囲であってもよく、例えば、1:1、1.2:1、または1.5:1のいずれかの下限から1.5:1、1.75:1、または2:1のいずれかの上限を有し、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0051】
本開示の1つ以上の実施形態に記載の架橋性熱可塑性樹脂は、1つ以上のポリマーを含み得る。1つ以上の実施形態において、2つ以上の架橋性熱可塑性樹脂は、溶融状態または溶液中で混合することによってブレンドされてもよい。1つ以上の実施形態において、2つ以上のモノマーを共に使用し、ポリマー中で共重合させてもよい。
【0052】
本開示の1つ以上の実施形態に記載の架橋性熱可塑性樹脂は、約1~1,000キロダルトン(kDa)の範囲の重量平均分子量(Mw)を有し得る。いくつかの実施形態において、架橋性熱可塑性樹脂のMwは、1、5、10、20、30、50、100、150、200、250、および300kDaのうち1つの下限、ならびに、20、30、50、100、150、200、250、500、750、および1000kDaのうち1つの上限を有する範囲であってもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0053】
本開示の1つ以上の実施形態に記載の架橋性熱可塑性樹脂は、約1~100kDaの範囲の数平均分子量(Mn)を有し得る。いくつかの実施形態において、架橋性熱可塑性樹脂のMnは、1、5、10、20、30、50、および70kDaのうち1つの下限、ならびに、20、30、50、70、および100kDaのうち1つの上限を有する範囲であってもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0054】
本開示の1つ以上の実施形態に記載の架橋性熱可塑性樹脂は、約1~5の範囲の多分散指数(Mw/Mn)を有し得る。いくつかの実施形態において、架橋性熱可塑性樹脂の多分散指数は、1、2、3、および4のうち1つの下限、ならびに、2、3、4、および5のうち1つの上限を有する範囲であってもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0055】
上述したように、架橋性熱可塑性樹脂の溶融粘度は、例えば、モノマーの選択、重合状態、および形成される樹脂の構造によって変化し得る。1つ以上の実施形態において、140℃の温度で、架橋性熱可塑性樹脂の溶融粘度は、50000Pa.s以下、20000Pa.s以下、10000Pa.s以下、5000Pa.s以下、4000Pa.s以下、3000Pa.s以下、2000Pa.s以下、または1000Pa.s以下であってもよい。いくつかの実施形態において、架橋性熱可塑性樹脂の溶融粘度は、1、50、100、250、500、750、1000、2000、3000、4000、5000、および6000Pa.sのうち1つの下限、ならびに、1000、2000、3000、4000、5000、6000、7000、8000、10000、20000、40000、または50000Pa.sのうち1つの上限を有する範囲であってもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0056】
1つ以上の実施形態において、ポリマーは、1気圧下で75℃を超える沸点を有する溶媒(または溶媒混合物)を使用する溶液重合によって得ることができる。そのような溶媒および溶媒混合物としては、酢酸エチル、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチルおよび2-メトキシエタノール/テトラヒドロフラン(THF)の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、溶媒は、室温で少なくとも20%の固形分を有する溶液を達成するためのモノマー(特に二官能性ベンゾオキサジン)の溶解度に基づいて選択され得る。有利なことに、本発明者らによって見出されるように、従来のベンゾオキサジン重合は溶媒中にモノマーを溶解するためにメタノールなどの溶媒中で起こるが、本明細書に記載される溶媒の使用は得られるポリマーのより良好な溶解度を与え得るため、より高分子量の樹脂を合成することを可能にする。さらに、溶媒は75℃より低い沸点を有する溶媒と組み合わせて使用される75℃より高い沸点を有する溶媒のブレンドであってもよく、ここで、75℃より高い沸点を有する溶媒は50~100体積%の範囲の量で使用され、75℃より低い沸点を有する溶媒は0~50体積%の範囲の量で使用されることも想定される。このような75℃より低い沸点を有する溶媒として、例えば、メタノール、エタノールなどが挙げられ得る。
【0057】
したがって、1つ以上の実施形態において、合成は、二官能性ベンゾオキサジンモノマーおよび二官能性コモノマーを、本明細書に記載されるものなどの溶媒(または溶媒のブレンド)中に添加し、混合物を、使用される反応温度に応じて、1時間~120時間の範囲であり得る反応時間にわたって、45℃から溶媒の沸点までの範囲の温度に加熱することによって起こり得る。
【0058】
さらに、得られる樹脂は溶媒に可溶性のままであり得るので、ワンポット合成はまた、(従来の多段階精製と比較して)単純化された精製を可能にし得る。具体的には、精製が望まれる場合、反応の終了後(および反応物が室温に冷却された後)、
図3に示されるように、溶液は精製溶媒と直接的に混合され、高分子量成分(ポリマー)が溶液から沈殿し、未反応のモノマーおよびオリゴマーが溶液中に残り得る。このような精製溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n-ヘキサン、シクロヘキサン、およびこれらの混合物から選択され得るが、これらに限定されない。このような沈殿に続いて、固体樹脂を濾過によって回収し、真空オーブン中などで乾燥させてもよい。したがって、1つ以上の実施形態において、精製された樹脂は、5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、または0.5重量%未満の未反応のモノマーおよびオリゴマー含有量を有し得る。
【0059】
1つ以上の実施形態において、このポリマーは、溶融重合法によって得られ得る。いくつかの実施形態において、溶融重合は、溶媒が必要とされないので、ポリマーの合成に使用されてもよく、反応時間は溶液相重合と比較して大幅に短縮され、様々なモノマー選択に適しており、インサイチュプリプレグ法に適用することができる。
【0060】
1つ以上の実施形態の溶融重合において、ランプ速度は、約0.5~5℃/分で変動し得る。いくつかの実施形態において、ランプ速度は、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0℃/分のうち1つの下限、ならびに、2.0、2.5、3.0、4.0、および5.0℃/分のうち1つの上限を有する範囲であり得、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0061】
1つ以上の実施形態の溶融重合は、約120~180℃の範囲の最終温度を有し得る。いくつかの実施形態において、溶融重合は、120、125、130、135、140、145、150、および160℃のうち1つの下限、ならびに、140、145、150、155、160、165、170、175、および180℃のうち1つの上限を有する範囲の最終温度を有し得、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0062】
1つ以上の実施形態の溶融重合は、約2~30分の範囲の最終温度保持時間を有し得る。いくつかの実施形態において、溶融重合は、2、3、4、5、6、8、10、および12分のうち1つの下限、ならびに、3、5、7、9、10、12、および15、20、30分のうち1つの上限を有する範囲の最終温度保持時間を有し得、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0063】
1つ以上の実施形態の溶融重合は、約60~180分の範囲の合計時間にわたって行われてもよい。いくつかの実施形態において、溶融重合は、60、70、80、90、100、120、140、および160分のうち1つの下限、ならびに、80、100、120、140、150、160、170、および180分のうち1つの上限を有する範囲の合計時間にわたって行われてもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0064】
1つ以上の実施形態において、溶融重合は、ベンゾオキサジンモノマーとフェノール含有モノマーとを1:10~10:1のモル比(ベンゾオキサジンモノマー対フェノール含有モノマー)で含み得る。いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジンモノマー対フェノール含有モノマーのモル比は、1:10、1:8、1:5、1:3、1:2、1:1、および2:1のうち1つの下限、ならびに、1:2、1:1、2:1、3:1、5:1、8:1、および10:1のうち1つの上限を有する範囲であってもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0065】
1つ以上の実施形態の溶融重合は、溶媒または溶融混合によってモノマーを混合する工程を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、溶融重合は、オーブン、押出機、ホットプレート、ホットプレス機、オートクレーブなどを使用して行われ得る加熱を含むが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、溶融重合は、標準大気圧、真空、およびアルゴンまたは窒素ガスなどの不活性雰囲気下で行われ得るが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、加熱による溶融重合は、空気、およびアルゴンまたは窒素などの不活性ガスの供給の下で行われ得るが、これらに限定されない。
【0066】
上述したように、溶液ベースの合成方法は、開環ベンゾオキサジン熱可塑性物質と同じ化学構造も提供し得る。合成方法は、使用されるモノマーの反応性および溶解性に基づいて選択され得る。例えば、クレゾールなどのいくつかの高反応性ビスフェノールモノマーについては、溶液法は、溶融重合法と同様の結果を達成し得るものの、3,3’-ジメチルビスフェノールAおよび3,3’-ジアリルビスフェノールAなどのモノマーについては、溶液法は、同じ分子量および最終的な機械的特性および熱特性を提供し得ない。したがって、合成経路の選択は、樹脂の所望の特性にも依存し得る。
【0067】
樹脂が溶液重合後に精製される実施形態において、精製後、本開示の精製された架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、約1~1,000キロダルトン(kDa)の範囲の重量平均分子量(Mw)および約1~100kDaの範囲の数平均分子量(Mn)を有し得る。精製された架橋性ベンゾオキサジン樹脂のMwは1、5、10、20、30、50、100、150、200、250、および300kDaのうち1つの下限、ならびに、20、30、50、100、150、200、250、500、750、および1000kDaのうち1つの上限を有し得、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。精製された架橋性ベンゾオキサジン樹脂のMnは、1、2、5、10、20、30、50、または70kDaのいずれかの下限、および、20、30、50、70、または100kDaのいずれかの上限を有し得、任意の下限を任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0068】
しかしながら、1つ以上の実施形態は、精製された樹脂生成物よりも低い溶融粘度を有する樹脂組成物を有することが望ましいことであり得る場合、合成中に形成される未反応のモノマーおよびオリゴマーの少なくとも一部の包含を維持し得る樹脂組成物に関する。溶液重合法において、合成後の溶液を溶媒蒸発によって処理して、モノマーおよびオリゴマーを含有する樹脂を得てもよい。特に、本発明者らは、未反応のモノマーおよびオリゴマーの存在が可塑剤として機能し、ポリマー鎖間に形成される水素結合を破壊し、それによって樹脂の加工性を改善し得ることを見出した。したがって、本開示の1つ以上の実施形態において、樹脂組成物は、ベンゾオキサジンポリマー、オリゴマー、および未反応のモノマーを含み得る。例えば、樹脂組成物は、30、40、50、または75重量%のうち1つの下限、および、50、60、70、80、または90重量%のうち1つの上限の範囲のポリマー含有量を有し得、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。本開示の1つ以上の実施形態に記載の樹脂組成物は、25重量%(重量%)以下の、15重量%以上の、10重量%以上の、または5重量%以上の未反応のモノマー含有量を有し得る。本開示の1つ以上の実施形態に記載の樹脂組成物は、25重量%(重量%)以下の、15重量%以上の、10重量%以上の、または5重量%以上のオリゴマー含有量を有し得る。
【0069】
本開示の1つ以上の実施形態に記載のベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は、未反応のモノマー含有量を含んでいなくてもよい。1つ以上の実施形態において、任意の未反応のモノマーを、精製方法によってポリマーから除去してもよい。精製方法は、樹脂をTHFに溶解し、次いでメタノールなどの溶媒を添加してポリマーを沈殿させることを含んでいてもよい。
【0070】
本開示の1つ以上の実施形態に記載のベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は、ベンゾオキサジンモノマー由来の単位を0~40重量%の範囲の量で含み得る。いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は、ベンゾオキサジンモノマー由来の単位を、0、0.5、1、2、5、10、20、および30重量%のうち1つの下限、ならびに、1、2、5、10、20、30、および40重量%のうち1つの上限を有する範囲の量で含み得、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0071】
本開示の1つ以上の実施形態に記載のベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は、二官能性コモノマー由来の単位を0~40重量%の範囲の量で含み得る。いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は、二官能性コモノマー由来の単位を、0、0.5、1、2、5、10、20、および30重量%のうち1つの下限、ならびに、1、2、5、10、20、30、および40重量%のうち1つの上限を有する範囲の量で含み得、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0072】
このような樹脂組成物は、1~5000Pa.sの範囲の最小溶融粘度を有し得る。例えば、樹脂組成物は、1、5、10、50、100、500、または1000Pa.sのいずれかの下限、および、1000、2000、3000、4000、または5000Pa.sのいずれかの上限を有する最小溶融粘度を有し得、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0073】
1つ以上の他の実施形態において、本開示のベンゾオキサジン樹脂の加工性および熱安定性は、樹脂中に存在するフェノール性ヒドロキシル基の少なくとも一部を改質することによっても改善され得る。そのような改質は、フェノール性ヒドロキシル基の少なくとも一部のアセチル化によるものであってもよい。例えば、1つ以上の実施例において、改質されるフェノール性ヒドロキシル基の一部は、10、20、30、40、または50パーセントのいずれかの下限で変化し、40、50、60、70、80、90、または100パーセントの範囲の上限であってもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0074】
1つ以上の実施形態において、精製された樹脂を、THF、DMF、またはNMPを含むがこれらに限定されない、極性の非プロトン性溶媒に再溶解し、アセチル化剤などの改質剤と反応させてもよい。しかしながら、他の官能基によるフェノール基の他の改質もまた、本開示の範囲内であることが想定される。そのような改質は、エーテル誘導体、アクリレート/メタクリレート誘導体、オキシラン誘導体、カルバメート誘導体、リン酸化誘導体、糖脂質誘導体、エステル誘導体、ポリエトキシレート誘導体、またはベンゾオキサジン環構造を形成するための求核置換または縮合反応によるものであり得る。アセチル化剤の例として、無水酢酸またはアシルハライドが挙げられるが、これらに限定されない。他の改質剤としては、Lochab et al., RSC Adv. 2014, 4, 21712 at 21730(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に存在するものが挙げられる。さらに、アセチル化中の末端のBZ基の早期開環を低減するために、重炭酸ナトリウムなどの中和剤を添加して、任意の放出された酸を中和し得ることが想定される。
【0075】
1つ以上の実施形態において、アセチル化されたベンゾオキサジン樹脂などの改質されたベンゾオキサジン樹脂は、1~5000Pa.sの範囲の最小溶融粘度を有し得る。例えば、樹脂組成物は、1、5、10、50、100、500、または1000Pa.sのいずれかの下限、および、1000、2000、3000、4000、または5000Pa.sのいずれかの上限を有する最低溶融粘度を有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0076】
改質後、本開示の改質されたベンゾオキサジン樹脂は、約1~1,000キロダルトン(kDa)の範囲の重量平均分子量(Mw)および約1~100kDaの範囲の数平均分子量(Mn)を有し得る。改質されたベンゾオキサジン樹脂のMwは、1、5、10、20、30、50、100、150、200、250、および300kDaのうち1つの下限、ならびに、20、30、50、100、150、200、250、500、750、および1000kDaのうち1つの上限を有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。改質されたベンゾオキサジン樹脂のMnは、1、2、5、10、20、30、50、または70kDaのいずれかの下限、および、20、30、50、70、または100kDaのいずれかの上限を有してもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0077】
いくつかの実施形態において、有機化合物の、ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂のポリマー構造中のフェノールのヒドロキシル基との化学反応によって、ペンダント基として置換基を導入してもよい。置換基を導入し得る方法としては、溶液中での反応、押出機、オーブン、ホットプレス、またはオートクレーブを用いた溶融反応が含まれ得るが、これらに限定されない。例えば、置換基を導入するために、有機化合物は、無水物、二無水物、カルボン酸ハライド、またはフェノールのヒドロキシル基と反応することができる他の官能基などを含み得るが、これらに限定されない。例えば、ポリマーのサイドペンダントとして導入される置換基としては、アセチル基、フェニル基、または他の炭化水素基などが含まれ得るが、これらに限定されない。置換には、1つ以上の有機化合物を単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。置換基の導入は、ポリマー中の全てのヒドロキシル基について完全には達成され得ない。1つ以上の実施形態において、置換基の導入は、ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂のポリマー構造中の全てのヒドロキシル基の20%以上、50%以上、または70%以上であり得る。
【0078】
ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂は、熱、紫外線照射、マイクロ波照射、水分などから選択される外部刺激によるものを含む、硬化サイクル、溶液キャスティング、ホットメルトプレスなどを含むがこれらに限定されない、様々な方法で硬化(架橋)され得る。いくつかの実施形態において、これらの外部刺激のうち1つは、ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂を硬化させるために独立して使用され得る。いくつかの実施形態において、2つ以上の刺激を同時に使用してもよい。いくつかの実施形態において、ベンゾオキサジン熱可塑性樹脂の初期部分硬化(予備硬化)中間体を意図的に作製するために、2つ以上の外部刺激を別々に使用してもよく、1つ以上の刺激を適用した後、次いで最終的な刺激の適用下で完全に硬化する。いくつかの実施形態において、硬化メカニズムの選択は、物品の種類および樹脂が使用される方法、例えば、含浸剤(複合繊維中でプリプレグを形成するためなど)、複合材、接着材、被覆など、によって決定され得る。例えば、硬化の前に、樹脂を予備硬化ガラス転移温度(Tg)よりも高いが、硬化温度よりも低く上昇させて、架橋性熱可塑性樹脂をその所望の形態に溶融加工し、次いで硬化させて樹脂を架橋し、固化させてもよい。
【0079】
1つ以上の実施形態において、架橋性熱可塑性樹脂は、外部刺激の適用下で互いに架橋する基を含み得る。1つ以上の実施形態において、フェノール含有モノマーは、1つ以上の前述の外部刺激によって架橋可能な1つ以上の基を含み得る。いくつかの実施形態において、架橋性基は、フェノールのヒドロキシル基との化学反応によって、ペンダント基として架橋性熱可塑性樹脂のポリマー構造に導入され得る。架橋性基は、溶媒を含まない反応、例えば、限定されないが、押出機、オーブン、ホットプレス、またはオートクレーブを使用する溶融反応によって導入され得る。いくつかの実施形態において、架橋性基は、熱、紫外線照射、マイクロ波照射、水分などから選択されるものなど、上述のような外部刺激によって互いに反応して架橋構造を形成することができる。いくつかの実施形態において、これらの外部刺激は、架橋性熱可塑性樹脂を硬化させるために独立して使用され得る。いくつかの実施形態において、これらの架橋性熱可塑性樹脂を硬化させるために、2つ以上の刺激を同時に使用してもよい。いくつかの実施形態において、完全に硬化する前に架橋性熱可塑性樹脂の部分的に硬化した(予備硬化した)中間体を意図的に作製するために、2つ以上の外部刺激を別々に使用してもよい。いくつかの実施形態において、これらの外部刺激を有する化合物は、架橋剤として架橋性熱可塑性樹脂と共に硬化させるために一緒に使用され得る。例えば、熱によって活性化される架橋性基は、エポキシ、ベンゾオキサジン、ニトリル、ビスマレイミド、シトラコンイミド、および他の不飽和炭化水素基、例えば、ナジックイミド、フェニルエチニル、フェニルエチニルイミドなどを含み得るが、これらに限定されない。紫外線によって活性化される架橋性基としては、アクリル、メタクリル、シンナミック、アリルアジド、および他の不飽和炭化水素基が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、これらの架橋性基は、独立して使用することができる。いくつかの実施形態において、2つ以上の架橋性基を一緒に使用することができる。また、例えば、マイクロ波放射によって活性化される架橋性基としては、エポキシおよび他の不飽和炭化水素基が挙げられ得るが、これらに限定されない。これらの架橋性基は、独立して、または一緒に使用され得る。また、水分による架橋性基としては、シアノアクリレート、イソシアネート、およびアルコキシシランが挙げられ得るが、これらに限定されない。これらの架橋性基は、硬化反応を促進するための触媒と共に使用され得る。これらの架橋性基は、無機塩、有機化合物、またはそれらの組み合わせを含み得る触媒で硬化され得る。
【0080】
1つ以上の実施形態において、熱可塑性樹脂組成物は、UVおよび/またはマイクロ波処理を介して硬化(架橋)され得る官能基(本明細書では「硬化性官能基」と称する)を含んでもよい。好適な硬化性官能基は、マイクロ波および/またはUV硬化性である官能基を含む。これらは、UVおよび/またはマイクロ波放射に曝露されると、熱可塑性樹脂中で架橋が誘発されることを意味する。マイクロ波放射の場合、硬化性官能基は、架橋を誘発するために当該放射を吸収することができる。例えば、マイクロ波硬化性である化合物については、極性官能基を含んでもよい。したがって、このような官能基は放射を吸収し、放射を熱に変換して、熱可塑性樹脂組成物の硬化を誘発することができる。UV放射の場合、光開始剤は、UV放射を吸収し、硬化性官能基を攻撃し架橋を誘発するラジカルおよび/またはイオンを生成し得る。化合物がUV硬化性であるためには、化合物は、1つ以上の光開始剤によって生成されるラジカルおよび/またはイオンによって攻撃され得、他の官能基と共有結合を形成する官能基を含んでもよい。1つ以上の実施形態において、硬化は、熱可塑性樹脂組成物中に存在する他の官能基(硬化において開環し得るベンゾオキサジン環を含むが、これらに限定されない)の反応を伴い得る。当該反応は、硬化性官能基によって、または、光開始剤によって生成されるラジカルおよび/もしくはイオンによって、生成される熱によって誘発される。
【0081】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は、マイクロ波放射を吸収することに適した極性基である。好適な極性官能基の種類の例としては、カルボン酸、アミド、アルコール、エステル、アルデヒドおよびケトンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は「UV感応性」である。これは、1つ以上の光開始剤によって生成されるラジカルおよび/またはイオンによって攻撃され得る官能基であることを意味する。このような官能基は、次いで他の官能基と共有結合(架橋)を形成し得る。UV感応性官能基の種類の例としては、アクリル基、メタクリル基、スチレン基およびビニルピロリドン基などの、活性化二重結合を有する官能基が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0083】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は熱可塑性ポリマーに結合していてもよい。これは、このような硬化性官能基を有する硬化成分による熱可塑性ポリマーの改質によって、または、このような硬化性官能基を有するモノマーを重合することによって、すなわち、ポリマーの合成によって生じ得る。このような実施形態において、硬化性官能基は、内部成分であり、すなわち、ポリマーに共有結合している。さらに、ポリマーは、マイクロ波またはUV硬化によって誘発されるまでポリマーと反応しない外部硬化成分と組み合わせることができることも想定される。
【0084】
したがって、1つ以上の他の実施形態において、硬化成分(ポリマーとの反応前)は、硬化性官能基と、熱可塑性ポリマーに結合し得るように反応性である少なくとも1つの官能基とを含む、複数の官能基を含み得る。このような実施形態において、硬化成分(ポリマーとの反応前)は原料として機能して、内部硬化性官能基を有するポリマーを形成することができる。したがって、極性および/またはUV感応性官能基に加えて、硬化成分は、熱可塑性樹脂組成物に結合する少なくとも1つの反応性官能基も含み得る。さらに、マイクロ波誘発および/またはUV誘発硬化の前にポリマーに結合する官能基に加えて、硬化成分は、マイクロ波誘発および/またはUV誘発硬化に対して反応性である少なくとも1つの追加の反応性官能基も任意に含んでもよい。すなわち、少なくとも1つの追加の反応性官能基を含む1つ以上の実施形態において、原料として機能する硬化成分(ポリマーに結合する前、または硬化性官能基がポリマー合成機構によって組み込まれる場合にはモノマーに結合する前)は、少なくとも2つの反応性基を有してもよく、その結果、ポリマーまたはモノマーとの最初の反応の際に、少なくとも1つの反応性基が硬化性官能基中に残る。さらに、硬化性官能基はこのような追加の反応性官能基の1つを含み得るが、硬化性官能基は、そのような追加の反応性官能基が追加の架橋をもたらし得るように、そのような追加の反応性官能基のうち少なくとも2つを含み得ることも想定される。
【0085】
1つ以上の実施形態において、反応性官能基は、熱可塑性ポリマーに結合し、および/または架橋を起こし得るようなものである。反応性官能基としての使用に適した官能基の種類の例としては、フェノール、アミン、チオール、エーテル、エステル、アクリレート、オキシラン、カルバメート、ホスホリレート、糖脂質、ポリエトキシレート、ベンゾオキサジン、およびそれらの誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
さらに、マイクロ波放射を吸収するか、またはUV感応性である官能基はまた、反応性官能基であってもよく、その結果、放射によって誘発されると、当該基がポリマーを架橋することも理解される。
【0087】
放射は、硬化性官能基自体、および、放射を吸収せず、熱に変換しない他の官能基を含む反応の組み合わせを誘発し得ることも想定される。
【0088】
しかしながら、上述したように、硬化成分が2つの反応性官能基を含まない(およびポリマーに結合した硬化性官能基が少なくとも1つの反応性官能基も含まない)場合、ポリマーは、反応性エンドキャップなどの他の反応性基を含むことによって、依然として架橋することができる。その反応は、マイクロ波から生成される熱によって、またはUV放射後に光開始剤によって放出されるラジカルおよび/またはイオンによって、誘発され得る。1つ以上の実施形態において、ポリマーは、硬化がマイクロ波放射によって誘発され得るベンゾオキサジンエンドキャップを含んでもよい。さらに、樹脂組成物は、反応性エンドキャップ、および、反応性官能基を含有する硬化性官能基の両方を含み得ることも企図される。
【0089】
反応性官能基の例としては、エポキシド、チオール、アミンおよびカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されない。このような反応性官能基を含み、硬化成分であり得る化合物の例としては、エピクロロヒドリン、セロキシド2021P(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-4-イル2-(7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-4-イル)アセテート)、YDF-170(ジグリシジルエーテルビスフェノールAエポキシオリゴマー)、メタクリル酸無水物、および1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’-オキシジアニリンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0090】
本開示の硬化性官能基は、様々な好適なストラテジーを用いて熱可塑性樹脂組成物に組み込むことができる。1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は熱可塑性ポリマーに共有結合していてもよく、したがって、ポリマーは内部硬化性官能基を含む。他の実施形態において、硬化性官能基は熱可塑性ポリマーに共有結合しておらず、むしろ、ポリマーと混合され、特にはマイクロ波放射によって硬化性である外部硬化成分中に存在する。このような実施形態において、ポリマーは、硬化がマイクロ波またはUV放射によって誘発されるまで、外部硬化成分とは反応せず、または外部硬化成分に結合しない。さらに、内部硬化性官能基を有するポリマーは、外部硬化成分と組み合わされ、硬化され得ることも想定される。
【0091】
上述したように、ポリマーが硬化性官能基を有する実施形態においては、熱可塑性ポリマーに共有結合し(すなわち、内部硬化性官能基)、硬化性基は熱可塑性ポリマーに直接共有結合することによって、または、モノマー混合物における使用のために硬化性官能基を含む少なくとも1つのモノマーを選択することによって導入され得、次いで重合されて、熱可塑性ポリマーを形成する。
【0092】
UV放射によって誘発される実施形態において、少なくとも1つの光開始剤も一般に存在する。光開始剤は、UV放射をラジカルおよび/またはイオンの形態で化学エネルギーに変換し得る化合物である。光開始剤の種類としては、ベンゾインエーテル、ベンジルケタール、α-ジアルコキシアセトフェノン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、α-アミノアルキルフェノン、アシルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン/アミン、チオキサントン/アミン、およびチタノセンが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0093】
ポリマーが内部硬化性官能基を含むように硬化性基をポリマーに結合させる実施形態の模式図を
図4に示す。
図4において、熱可塑性ポリマー402は、ポリマー主鎖404および任意のエンドキャップ406を含む。ポリマーは、硬化性官能基408が熱可塑性ポリマー402に共有結合するように改質され(矢印によって示される)、したがってポリマーは内部硬化性官能基を含む。
図4に示す実施形態において、硬化性官能基408は、ポリマー主鎖404に共有結合している。いくつかの実施形態において、硬化性基はエンドキャップに共有結合していてもよい。いくつかの実施形態において、硬化性基は、ポリマー主鎖およびエンドキャップに共有結合していてもよい。当業者によって理解され得るように、ポリマーに結合した内部硬化性基の量は、硬化したポリマーにおける架橋の量を調整するために、調整されてもよい。
【0094】
1つ以上の実施形態において、ベンゾオキサジン官能基を含む熱可塑性樹脂は、硬化性官能基が結合され得る熱可塑性ポリマーとして利用され得る。いくつかの実施形態において、熱可塑性ポリマーは、フェノール官能基を有する開環ベンゾオキサジンを含んでいてもよい。開環ベンゾオキサジン熱可塑性ポリマーの例を、構造(1)として示す。
【化7】
【0095】
本開示の1つ以上の実施形態によれば、構造(IX)のポリマー主鎖は、エピクロロヒドリンまたはメタクリル酸無水物などの硬化成分で改質されて、エポキシドまたはアクリル基などの内部硬化性官能基を含むポリマーを形成し得る。特に、硬化成分は、構造(IX)中のフェノール官能基と反応し得る。構造(IX)に示される開環ベンゾオキサジンがメタクリル酸無水物で改質される場合、メタクリル酸無水物は、フェノール官能基と反応して、構造(X)に示されるポリマーを形成する。
【化8】
【0096】
構造(X)に示されるポリマーは、硬化性官能基、特にUV感応性基の存在により、(光開始剤の存在下で)UV処理によって硬化され得る。示されるように、これらの内部官能基は、ポリマー主鎖に共有結合している。さらに、理解され得るように、構造(XI)に示されるポリマーと反応する硬化成分の量に応じて、樹脂の一部は、構造(XI)の繰り返し単位を構造(X)の他の繰り返し単位と共に含み得る。1つ以上の実施形態において、そのような構造は、ベンゾオキサジン基によってエンドキャップされ得る。
【0097】
構造(IX)に示される開環ベンゾオキサジンがエピクロロヒドリンで改質される場合、エピクロロヒドリンは、フェノール官能基と反応して構造(XI)に示されるポリマーを形成する。
【化9】
【0098】
構造(XI)に示されるポリマーは、極性の硬化性官能基の存在によって、マイクロ波処理によって硬化され得る。示されるように、これらの内部官能基は、ポリマー主鎖に共有結合している。さらに、理解され得るように、構造(IX)に示されるポリマーと反応する硬化成分の量に応じて、樹脂の一部は、構造(IX)の繰り返し単位を構造(XI)の他の繰り返し単位と共に含み得る。1つ以上の実施形態において、そのような構造は、ベンゾオキサジン基によってエンドキャップされ得る。
【0099】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は、モノマー混合物中で使用するための硬化性官能基を含む少なくとも1つのモノマーを選択することによって、熱可塑性樹脂組成物中に組み込まれ得、次いで重合されて、熱可塑性ポリマーを形成する。このストラテジーの模式図を
図5に示す。
図5に示す実施形態において、いくつかのモノマー504は、硬化性基508を含む。次いで、得られた混合物を重合させて(矢印で示す)、内部硬化性官能基として硬化性基508を含む熱可塑性ポリマー502を形成する。ポリマー502は、硬化性官能基である任意のエンドキャップ506を含む。
【0100】
1つ以上の実施形態において、硬化性官能基は、硬化性官能基を含む外部硬化成分を熱可塑性樹脂組成物とブレンドすることによって、熱可塑性組成物中に存在してもよい。このような実施形態において、硬化性官能基は、熱可塑性ポリマーに共有結合していないが、ポリマーと組み合わされた外部硬化成分上に存在している。代わりに、いくつかの実施形態において、外部硬化成分中の硬化性官能基は、マイクロ波放射を吸収し、ポリマーを加熱する。このような場合、硬化性基は反応性官能基も含有してもよく、マイクロ波放射によって発生する加熱によって、熱可塑性ポリマーもまた、硬化性官能基と架橋して、硬化(架橋)ポリマーを形成してもよい。1つ以上の実施形態において、硬化性基は、極性の非硬化性基によって置き換えられてもよい。このような場合、極性の非硬化性基は、マイクロ波放射を吸収し、それを熱に変換し、熱可塑性ポリマーの硬化を補助する。いくつかの実施形態において、光開始剤は、UV放射を吸収し、硬化成分上に存在する硬化性官能基を攻撃するラジカルおよび/またはイオンを生成し、当該硬化性官能基は、ポリマー中の他の官能基と共有結合する。
【0101】
内部硬化性基としてポリマーに共有結合した硬化性基を有する架橋性ベンゾオキサジン熱可塑性ポリマーの模式図を
図6Aに示す。ポリマー上の硬化性基は丸で示し、熱可塑性ポリマーは線で示す。
図6Aに示す組成物の硬化樹脂の模式図を
図6Bに示す。
【0102】
ポリマーに共有結合していない外部硬化性基を有する架橋性ベンゾオキサジン熱可塑性ポリマーの模式図を
図7Aに示す。硬化性基を含む硬化成分は丸で示し、熱可塑性ポリマーは線で示す。
図7Aに示す組成物の硬化樹脂の模式図を
図7Bに示す。
【0103】
本開示の組成物は、マイクロ波および/またはUV処理によって硬化させてもよい。当業者によって理解され得るように、マイクロ波およびUV処理のための好適な条件は、硬化される材料の特性に基づいて、および、硬化された材料の所望の特性に基づいて、選択され得る。
【0104】
本明細書に開示される組成物は、好適な時間、周波数および出力でのマイクロ波処理によって硬化させてもよい。1つ以上の実施形態において、マイクロ波処理時間は、1分~60分であってもよい。マイクロ波処理時間は、1分、5分、10分、15分および20分のうち1つの下限、ならびに、30分、45分、50分、55分および60分のうち1つの上限を有してもよい。ここで、任意の下限を、任意の数学的に矛盾しない上限と組み合わせてもよい。1つ以上の実施形態において、マイクロ波処理周波数は0.3~300GHzであってもよく、マイクロ波処理出力は100W~100kWであってもよい。
【0105】
本明細書に開示される組成物は、好適な時間、波長および出力でのUV処理によって硬化させてもよい。1つ以上の実施形態において、UV処理時間は、5秒~2時間であってもよい。UV処理時間は、5秒、10秒、30秒、60秒、90秒および5分の下限、ならびに10分、20分、30分、60分、90分および120分のうち1つの上限を有してもよい。ここで、任意の下限を、任意の数学的に矛盾しない上限と組にしてもよい。いくつかの実施形態において、UV処理波長は400nm未満である。1つ以上の実施形態において、UV処理出力は、10W~1kWであってもよい。そのような処理は、硬化性官能基によって決定される架橋構造をもたらし得る。
【0106】
本明細書に開示される組成物および方法は、UVおよびマイクロ波硬化が、組成物の加工におけるより短い硬化時間、硬化のためのより少ないエネルギー入力、およびより高い柔軟性を必要とすることができるため、樹脂の従来の熱硬化と比較して、特に有用であり得る。例えば、マイクロ波硬化は、独立した硬化後のストラテジーを可能にすることができ、UV硬化は、表面コーティングおよびUVパターニング用途における処理をより容易にすることができる。
【0107】
1つ以上の実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、熱可塑性物質、熱硬化性物質、無機塩、有機化合物などから作製される添加剤および強化剤が配合されていてもよい。配合は、粉末乾燥混合、溶融混合、または溶液中での混合によって行うことができる。添加剤および強化剤の形状としてはいずれも、粒子、プレート、繊維などを含み得るが、これらに限定されない。1つ以上の実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、繊維によって補強されていてもよい。補強は、溶液コーティング、溶融コーティング、含浸などによって行うことができる。補強繊維の形状は、繊維補強複合材を成形するためのプリプレグを作製するための、短繊維、連続繊維、混紡繊維(ヤーン)、トウ、織物、束、シート、ニットなどの単一フィラメントを含んでいてもよいが、これらに限定されない。連続繊維はさらに、一方向構成、多方向構成、不織構成、織構成、編構成、縫合構成、巻構成、および編組構成、ならびにスワールマット構造、フェルトマット構造、および細断繊維マット構造のいずれかの形をとり得る。繊維の組成は、最終的な複合構造に必要な特性を達成するために変えてもよい。例示的な繊維材料としては、ガラス、炭素、グラファイト、アラミド、石英、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ-p-フェニレン-ベンゾビスオキサゾール(PBO)、ホウ素、ポリアミド、グラファイト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、およびそれらの組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。1つ以上の添加剤、強化剤、および補強剤を、架橋性熱可塑性樹脂と共に配合してもよい。例えば、1種以上の熱可塑性樹脂を架橋性ベンゾオキサジン樹脂と共に配合することができる。このような熱可塑性樹脂としては、PEEK、PPS、PEI、PC、ポリスルホンなどが挙げられるが、これらに限定されない。別の例では、1つ以上の熱硬化性物質を架橋性熱可塑性樹脂と共に配合し、熱的に共硬化させることができる。このような熱硬化性物質としては、エポキシ、ベンゾオキサジン、ビスマレイミド、シアネートエステルなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。熱可塑性物質および熱硬化性物質は、本開示の架橋性熱可塑性樹脂と一緒に使用することができることも想定される。1つ以上の実施形態において、硬化温度を下げ、溶融粘度を制御するために、無機塩、有機化合物、およびそれらの任意の組み合わせを架橋性熱可塑性樹脂と共に使用してもよい。例えば、有機化合物は、アミノ基、イミダゾール基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、スルホニル基などの官能基を含んでいてもよいが、これらに限定されない。
【0108】
架橋性ベンゾオキサジン樹脂の形状は、粉末、フィルム、チャンク、繊維などであってもよいが、これらに限定されない。フィルム、チャンク、および繊維は、架橋性熱可塑性樹脂の粉末または溶液を用いて、キャスティングまたはプレス成形法によって熱的に作製することができる。成形品は架橋を開始する際により低温で、キャスティングまたはプレス成形法によって熱的に再成形することができる。成形品は、部分的に硬化架橋性ベンゾオキサジン樹脂を使用する場合、キャスティングまたはプレス成形法によって再成形することができる。
【0109】
1つ以上の実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂を、約120~260℃の温度範囲で熱硬化させてもよい。架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、所望の用途に基づいて、当該温度範囲の下端でより長い硬化時間に供されてもよく、当該温度範囲の上端でより短い時間に供されてもよい。いくつかの実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂の硬化温度は、120、130、140、150、160、および180℃のうち1つの下限、ならびに、160、170、180、190、200、220、240、および260℃のうち1つの上限を有する範囲であってもよく、任意の下限を、任意の上限と組にしてもよい。
【0110】
1つ以上の実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、30分~5時間の範囲内の時間、熱硬化されてもよい。いくつかの実施形態において、硬化条件は、いくつかの連続する工程を含み得る。
【0111】
1つ以上の実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、約80~120℃の範囲の硬化前のTgを有し得る。例えば、架橋性熱可塑性樹脂は、80、90、100、および110℃のいずれかの下限、ならびに、90、100、110、および120℃のいずれかの上限を有する範囲の硬化前のTgを有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0112】
1つ以上の実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、約110~250℃の範囲の硬化後のTgを有し得る。例えば、架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、110、130、150、170、および190℃のいずれかの下限、ならびに、140、160、180、および250℃のいずれかの上限を有する範囲の硬化後のTgを有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0113】
1つ以上の実施形態において、架橋性ベンゾオキサジン樹脂の硬化前のTg値と硬化後のTg値とは、20℃以上、50℃以上、または70℃以上の差を有し得る。例えば、架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、20、25、30、40、50、60、および70℃のいずれかの下限、ならびに、40、50、60、70、および90℃のいずれかの上限を有する範囲の差を有する硬化前のTg値および硬化後のTg値を有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。この差により、樹脂の硬化前に樹脂の溶融加工を行うことが可能となり得る。
【0114】
1つ以上の実施形態において、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、ASTM E1131に従って、200℃以上、250℃以上、または300℃以上、350℃以上、または400℃以上の5%分解温度Td5%を有し得る。例えば、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、200、225、250、275、300、325、350、375、400、および425℃のいずれかの下限、ならびに、300、350、375、400、425、および450℃のいずれかの上限を有する範囲のTd5%値を有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0115】
1つ以上の実施形態において、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、ASTM D1708に従って、約2.0~4.0GPaの範囲の弾性率を有し得る。例えば、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、2.0、2.2、2.5、2.7、2.9、3.0、および3.2GPaのいずれかの下限、ならびに、3.0、3.2、3.4、3.6、3.8、および4.0GPaのいずれかの上限を有する範囲の弾性率を有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0116】
1つ以上の実施形態において、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、ASTM D1708に従って、約15~100MPaの範囲の引張強度を有し得る。例えば、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、ASTM D1708に従って、15、30、40、50、60、70、および80MPaのいずれかの下限、ならびに、40、50、60、70、80、90、および100MPaのいずれかの上限を有する範囲の引張強度を有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0117】
1つ以上の実施形態において、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、ASTM D1708に従って、約1~10%の範囲の破断点伸びを有し得る。例えば、硬化した架橋性ベンゾオキサジン樹脂は、1、1.5、2.0、2.5、3.0、および4.0%のいずれかの下限、ならびに、1.5%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、5.0%、および10%のいずれかの上限を有する範囲の破断点伸びを有していてもよく、任意の下限を、任意の上限と組み合わせて使用することができる。
【0118】
コーティングまたは接着剤層の形成において、配合されたコーティングの適用は、スプレー、ローラーコーティング、ディップコーティングなどの従来の方法によって行うことができ、次いで、コーティングされた系は、焼成、または限定されないが、マイクロ波、UV、もしくはIRなどの放射によって硬化され得る。
【0119】
〔実施例〕
【0120】
以下の実施例は単なる例示であり、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0121】
〔材料〕
【0122】
P-d型ベンゾオキサジンモノマー(製品名:P-d)は、四国化学工業株式会社から入手した。2-メチルレゾルシノール(MR)、4,4’-オキシジアニリン、3,3’-ジメチルビスフェノールA(BBPA)、メタクリル酸無水物、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、ビニルピロリドン(VP)、テトラヒドロフラン(THF)、エピクロロヒドリン、水酸化ナトリウム、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン(THPE)および4,4’-オキシジアニリン(ODA)をSigma Aldrichから購入した。2-メトキシエタノール、メタノール、および無水酢酸も、Sigma AldrichおよびVWR Chemicalsから購入した。2,2’-ジアリルビスフェノールA(製品名:DABPA)は、大和化成工業(株)から入手した。
【0123】
〔方法〕
【0124】
示差走査熱量(DSC)測定は、Q2000(TA Instruments)を用いて、50mL/分のN2流中、20℃/分で行った。Tgは、ベースラインシフト(変曲点の前後の2つの接線の交点)の開始から測定した。
【0125】
Q800(TA Instruments)を用いて、空気流中で5℃/分、周波数1.0Hz、歪み0.3%で動的機械分析(DMA)測定を行った。Tgは、貯蔵弾性率曲線(変曲点の前後の2つの接線の交点)の開始から測定した。
【0126】
溶融粘度は、レオメーター(DHR-2、TA instruments)を用いて、加熱速度5℃/分、角周波数6.283rad/s(1.0Hz)、歪み0.1%で測定した。直径25mmのパラレルプレートを使用した。測定は空気中で行った。
【0127】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定は、GPCシステム(株式会社島津製作所製、PROMINENCE)を用いて行った。分子量測定のために、4つのGPCカラム(Phenomenex社製のPHENOGEL 5μm 10E4Å、PHENOGEL 5μm 10E3Å、PHENOGEL 5μm 100ÅおよびPHENOGEL 5μm 50Å)を用いて、溶離剤としてN-メチルピロリドンを流速0.6mL/分で使用した。相対分子量は、東ソー株式会社製のポリスチレン標準を用いて校正した。
【0128】
熱重量分析(TGA)は、40ml/分のN2流中、5℃/分で、TA Instruments製のQ50 TGAを用いて行った。Td5は、5%の重量減少が観察されたときの温度で測定した。
【0129】
固形分20~60重量%の樹脂をDMFに溶解して、溶液流延薄膜を作製した。DMF溶液を表面処理したガラス基材上に流延し、次いでドクターブレードで被覆した。次いで、膜を従来のオーブン中で80℃で1時間乾燥させ、次いで160℃で1時間、185℃で3時間、および218℃で1時間硬化させた。硬化後、硬化膜をガラス基材から剥離した。
【0130】
熱および圧力の影響下で液圧ホットプレスを用いて薄膜を成形した。厚さ150ミクロンのガラス繊維/テフロン(登録商標)膜を、薄膜を成形するための剥離膜として使用した。最初に、6×12インチの大きさのガラス繊維/テフロン(登録商標)膜のベース層を鋼板上に配置した。ベース層と同じ寸法を有する別個の剥離膜上で、250mm×5mmの大きさの3つのストリップを、25mm離れた距離で膜に切断し、剥離フィルムを、成形のためのフレームまたはスペーサーとして機能させ、ベース層の上に配置した。粉末樹脂を測定し、かつ、3つのストリップのそれぞれの長さに沿って均等に注いだ。次いで、鋼板を、135℃に予熱された熱プレスの底部圧盤上に配置した。樹脂の溶融後に(目視観察によって確認して)、剥離膜の3番目の最上層をフレーム上に配置し、20回の一連のバンプを通して2MPaの圧力を最初に加えた。次いで、一部を以下のように、成形サイクルの残りの間、2MPaの一定圧力で以下のように行った:1)5℃/分で160℃まで昇温し、60分間保持、2)5℃/分で185℃まで昇温し、180分間保持、3)5℃/分で218℃まで昇温し、60分間保持、4)5℃/分で室温まで冷却。冷却後、薄膜ストリップを剥離膜から注意深く分離し、次いで引張試験およびDMA測定に必要な適切な長さに切断した。
【0131】
THFへの溶解度は、約5mLのTHFに約25mgの試験材料を加えることによって、試験した。次いで、混合物を約5分間超音波処理した。
【0132】
UV硬化は、手持ち式ランプまたはUV硬化装置のいずれかを用いて行った。手持ち式UV硬化ランプはVWRから入手したものであり、波長365nm、電流0.16Amp、電圧110Vである。UV硬化装置は、Heraeus LC6B Lighthammerであり、波長200~400nmおよび出力467ワット/インチである。
【0133】
〔2-メトキシエタノール中のP-dベンゾオキサジンおよびレゾルシノールから作製された開環架橋性熱可塑性物質の合成および精製(実施例1)〕
【0134】
選択された量のP-dおよびMRを、1.5:1のモル比で2-メトキシエタノール中で混合した。混合後、混合物を70℃に95時間加熱した。反応物を室温まで冷却した後、溶液から固体は沈殿しなかった。
図8に示されたGPCの結果によれば、この反応から得られたMwは4359Da(較正済み)であり、Mnは1552Da(較正済み)であり、2-メトキシエタノールが開環架橋性ベンゾオキサジン樹脂を合成するための効果的な溶媒であることを示した。
【0135】
次に、メタノール中に溶液を直接的に滴下することによって高分子量成分を沈殿させて析出を行った。
図9に示される精製された生成物のGPCの結果は7081Da(較正済み)のMwおよび2802Da(較正済み)のMnを示し、未反応のモノマーおよびほとんどのオリゴマーの効果的な除去を示した。
【0136】
図10に示されるレオロジーデータは、精製されていない試料の最小溶融粘度が30000Pa.sである一方、精製された試料の最小溶融粘度が70Pa.sであることを示した。
【0137】
〔酢酸エチル中のP-dベンゾオキサジンおよびレゾルシノールから作製された開環架橋性熱可塑性物質の合成および精製(実施例2)〕
【0138】
選択された量のP-dおよびMRを、1.5:1のモル比で酢酸エチル中で混合した。混合後、混合物を70℃に95時間加熱した。反応物を室温まで冷却した後、溶液から固体は沈殿しなかった。
図11に示されたGPCの結果によれば、この反応から得られたMwは5376Da(較正済み)、Mnは1782Da(較正済み)であり、酢酸エチルが開環架橋性ベンゾオキサジン樹脂を合成するための効果的な溶媒であることを示した。
【0139】
〔P-dベンゾオキサジンおよびレゾルシノールから作製された精製された開環架橋性熱可塑性樹脂のアセチル化(実施例3)〕
【0140】
実施例1に従った精製された樹脂(10g)を、THF100mL中の重炭酸ナトリウム31.5gおよび無水酢酸5gと混ぜ合わせた。混合物を24時間反応させ、反応物を水中で沈殿させ、続いてメタノールで洗浄した。
【0141】
図12に示されるように、アセチル化樹脂は、アセチル化前の樹脂と比較して、異なった粘性挙動を示した。
図13に示されるGPCの結果は、アセチル化された生成物の分子量の増大によって証明されるように、アセチル化が末端BZ基の一部の開環ももたらし得ることを示している。
図14に示されるように、アセチル化された生成物は、NMR試験によって検証され、フェノールに相当する10ppm付近で非常に弱いプロトンシグナルを示した。さらに、4.5ppmおよび5.4ppmにおける末端ベンゾオキサジン官能基のメチレン由来の典型的なシグナルも弱くなり、ベンゾオキサジン官能基の少なくとも一部が開環していることを示した。
【0142】
TGAの結果(
図15)は、アセチル化された生成物が元の樹脂と比較して、147℃からアセチル化後の263℃へのT
d5の増加によって、改善された熱安定性を有することを示した。
【0143】
改善された加工性により、アセチル化された生成物を、DMAおよび引張試験のためのコーティング法によって薄膜に加工した。硬化膜試料溶液を調製するために、DMF溶液中の樹脂(25質量%)を基材上にコーティングした。被膜を乾燥させ、次のような条件に従って硬化させた:80℃で2時間、120℃で1時間、150℃で30分間、200℃で30分間、240℃で1時間、および260℃で15分間。DMAの結果によれば、硬化膜のT
gは198℃であった。硬化膜のT
d5は310℃であり、粉末(263℃)に比べて著しく増加した。アセチル化された樹脂から作製された硬化膜の特性を以下の表1にまとめ、アセチル化のための原料として使用された元の樹脂(粉末形態)の特性と比較する。
【表1】
【0144】
〔2-メトキシエタノール中でP-dベンゾオキサジンと4,4’-オキシジアニリンとから作製した開環架橋性熱可塑性物質の合成(実施例4)〕
【0145】
選択された量のP-dおよび4,4’-オキシジアニリンを1.5:1のモル比で2-メトキシエタノール中で混合した。混合後、混合物を50℃に92時間加熱した。反応物を室温まで冷却した後、溶液から固体は沈殿しなかった。72時間後および92時間後のGPCの結果を
図16に示す。
【0146】
〔PBBの合成(実施例5)〕
【0147】
1つ以上の実施形態の合成方法の一般的な図解は、
図17Aによって提供される。実施例1の合成は
図17Bに具体的に示されており、ビス-BZ(P-d)および3,3’-ジメチルビスフェノールA(BBPA)の溶融重合を含む。所定量のP-dおよびBBPAの粉末をTHF中で混合し、混合物を2時間撹拌した。撹拌後、THF溶媒をロータリーエバポレーションにより除去し、続いて真空オーブン中で一晩乾燥させた。これらの実験の目的のために、P-d/BBPAは、グループAをモル比1.2-1と規定し、グループBをモル比1-1と規定した。P-d/BBPA粉末混合物を使い捨てAlパンに入れ、パンを重合のために対流オーブンに入れた。反応条件は、昇温速度、等温温度、および時間の3つのパラメータによって制御した。等温温度および時間を変化させることによって分子量を調整した。120℃、30分間の等温条件下でオリゴマーを生成した(PBB(120-2-30)A)。150℃で5分間等温の場合、ポリマーは中程度のMW(PBB(150-2-5)A)を有していた。150℃、10分間の等温条件で、より高いMWを達成した(PBB(150-2-10)A)。等温時間をさらに25分に延長すると、部分的に架橋したポリマー(PBB(150-2-25)A)が生成した。PBB樹脂は、モノマー、オリゴマー、およびポリマーの混合物である。
【0148】
〔PPBBの合成(実施例6)〕
【0149】
GPCの結果は、PBB樹脂がモノマー、オリゴマー、およびポリマーの混合物であることを示している。さらなる精製を適用して、これらのモノマーおよびオリゴマーを除去し、純粋な熱可塑性ポリマーPPBBを得た。この精製はPBBをTHFに溶解し、続いてメタノールを添加して、ポリマーを沈殿として得ることによって行われた。ポリマーを遠心分離により回収し、次いで真空オーブン中で24時間乾燥させた。
【0150】
〔アセチル化されたPPBB(A-PPBB)の合成(実施例7)〕
【0151】
PPBB粉末(1g、5.8mmol-OH)を50mLのTHFに溶解した。上記の混合物にAcO2(29mol)およびNaHCO3(11.6mol)を加えた。THF溶液を室温で3日間撹拌した。反応完了後、混合物を濾過し、濾液を濃縮した。残渣にジクロロメタン(50mL)および水(15mL)を加え、相を分離した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、濃縮した。最終粉末を真空オーブン中で、60℃で一晩乾燥させた。
【0152】
〔PDAの合成(実施例8)〕
【0153】
P-dとジアリルビスフェノールA(DABPA)との溶融重合による実施例8の合成を
図18に示す。P-dとDABPAとを75℃の溶融状態で直接的に混合した。PBBと同じ方法を用いてPDAポリマーを合成した。反応条件を調整することにより、異なる分子量を有するPDA樹脂を得た。
【0154】
〔PPDAの合成(実施例9)〕
【0155】
PPDAは、PPBB(実施例7)と同じ方法を用いて、PDAの精製により得られた。
【0156】
〔実施例5~9の結果および考察〕
【0157】
様々なモル比:2.6-1.0、1.5-1.0、1.2-1.0、1.0-1.0、および0.6-1.0のP-d/BBPA混合物の、20℃から150℃まで1℃/分の加熱速度および150℃で10分間等温での加熱の条件下での反応から得られた溶融重合生成物を、GPCを用いて特徴付けた。加熱条件下で得られた生成物は全て、オリゴマーおよびポリマーを首尾よく生成したが、未反応のモノマーも存在した。P-dモノマーの量が増加すると共に、未反応のP-dピークの強度も増加した。1.2-1.0および1.0-1.0のモル比を有するP-d/BBPA混合物は、最も高い分子量を有するPBBを生成した。等温時間の増加と共に、ポリマー分子量がより高くなることも見出された。これは、等温時間を制御することにより、ポリマーの分子量を調整できることを示している。
図19は、異なる条件下で得られたPBBのGPCの結果の例を示す。
【0158】
GPCの結果は、重合後の生成物が未反応のモノマーおよびオリゴマーを有することを示す。さらなる精製を適用して、これらのモノマーおよびオリゴマーを除去して、純粋な熱可塑性ポリマーを得た。生成物をTHFに溶解し、次いでメタノールを添加してポリマーを沈殿させることによって、精製プロセスを行った。ポリマーを遠心分離により回収した。オーブン中で乾燥させた後、精製したポリマーPPBBはTHFに不溶性になった。PPBBの不溶性は、強い分子間水素結合に起因すると理論付けられている。PBBおよびPPBBも、
図20に示すように異なる粘度挙動を示した。PBBの粘度は48Pa.sと低く、一方でPPBBの粘度は153℃で28264Pa.sと低かった。粘度の著しい低下は、少量のモノマーおよびオリゴマーに由来する。
【0159】
PPBBは、主鎖上に豊富なヒドロキシル基を有する。アセチル基によるこれらのヒドロキシル基のさらなる改質は、改質しなければ生じる分子間水素結合をブロックして、PPBBの溶解度を改善することができる。アセチル化反応は、触媒としてNaHCO3、アセチル化試薬として無水酢酸を用いて行った。アセチル化反応後、1.9ppmの新しいピークがNMRデータ中に現れ、これは酢酸のメチレンプロトンに起因し得、アセチル化がPPBBで成功裏に起こり、A-PPBBが反応の結果として生成されたことを示した。A-PPBB粉末は、固形分が約25重量%であるとき、THFに完全に溶解した。GPCの結果は、A-PPBBがアセチル基の付加によりPPBBよりも高い分子量を有することを示す。PPBBと比較して、A-PPBBは153℃ではるかに低い200Pa.sの粘度を有し、その最低粘度は2Pa.sの値で、220℃で生じる。
【0160】
PPBBは、架橋性熱可塑性物質である。エンド末端BZ環は、主鎖上の別のBZ環またはフェノール基とさらに反応して架橋構造を形成することができる。溶液流延法により硬化したPPBB薄膜を作製した。25重量%のPPBB(150-1-5)Bを有するDMF溶液を表面処理したガラス基材上に流延した。膜を80℃で1時間、および160℃で1時間乾燥させ、次いで185℃で3時間、および218℃で1時間、後硬化させた。DMAの結果(
図21)は、硬化したPPBBのT
gが163℃であることを示している。3.31GPaの引張弾性率および31.64MPaの引張強度を含む、硬化したPPBBの引張特性を表1に示す。この膜は非常に脆く、その引張強度は大きな標準偏差を有する。破断点伸びはわずか1.2%である。熱硬化性P-dは、3.12GPaの弾性率、82.08MPaの引張強度および3.23%の破断点伸びを有する。P-dと比較して、硬化したPPBBの引張強度および破断点伸びは、著しい低下を有する。
【0161】
【0162】
硬化したPBBの引張特性を表2に列挙する。硬化したPBB(150-1-5)Bは硬化したPPBBと同様の弾性率を有するが、より高い引張強度(75%の改善)および破断点伸び(56%の改善)を有する。引張強度および破断点伸びにおけるこの改善の可能性のある理由は、未反応のBBPAが分子量を改善するための鎖延長剤として作用し、P-dがポリマーをさらに架橋するための架橋剤として作用することである(
図22)。重要なことに、精製プロセスの省略は、硬化した樹脂の機械的特性を損なわなかった。一方、精製プロセスの省略によって、複合材の適用はより実用的になった。
【0163】
DABPAおよびP-dに基づく別の配合物を、非溶媒混合法によって作製した。対になるモノマーとしてBBPAの代わりにDABPAを使用する利点は:1)P-dとの非溶媒混合、2)最終ポリマーへのアリル基の導入によってBMIとさらに架橋することができること、および3)アリル基を介してアクリレートモノマーと配合する能力によって、熱硬化からUV硬化へと硬化方法が拡張されること、を含む。DABPAは室温で液体であり、75℃でP-d粉末と直接混合した。DSCの結果から見られるように、P-d/DABPA間の重合メカニズムはP-d/BBPAと同様である。したがって、同様の溶融重合条件をP-d/DABPAに適用した。いくつかの加熱速度:1℃/分、2℃/分、および5℃/分をP-d/DABPAについて試験した。得られた生成物を、GPCおよびTHF中での溶解度試験によって特徴付けた。2℃/分では、ポリマーは最大分子量を有し、THF中に完全に溶解することが見出された。1℃/分では、モノマーは拡散および反応により長い時間を要し、ポリマーはより長い分子鎖を形成し、THF中への不溶性をもたらした。5℃/分では、増加した加熱速度は、モノマーが拡散および反応するための時間が十分でないことを意味した。短鎖を有するポリマーが形成された。等温時間および温度も、最良の反応条件を得るように調整した。2℃/分の昇温速度下で、150℃、10分間の等温で、1MDaの最高MWを生成することが見出された。
【0164】
PBBについて、熱可塑性物質の分子量は、重合条件を変えることによって調整することができることが実証されている。PDA架橋性熱可塑性物質については、等温温度および時間を変化させることによって、異なる分子量も得られた。
図23に示すように、120℃、30分間の等温条件下ではオリゴマーのみが生成した(PDA(120-2-30)A)。150℃で5分間の等温の場合、ポリマーは中程度のMWを有していた(PDA(150-2-5)A)。最高のMWは、150℃、10分間の等温条件で達成された(PDA(150-2-10)A)。等温時間をさらに25分に延長すると、架橋構造が生成し、ポリマーはNMPに部分的にのみ溶解した(PDA(150-2-25)A)。
【0165】
MWが異なるPDAのレオロジー挙動をレオメーターによって特徴付けた。
図24に示すように、PDAの粘度は、PDAのMWの増加に伴って増加する。PDA(120-2-30)Aは140℃で2Pa.sの最低粘度を有する。PDA(150-2-5)Aは150℃で22Pa.sの最低粘度を有するが、PDA(150-2-10)Aの粘度は150℃で2500Pa.sに増加する。PDA(150-2-25)Aは部分的に架橋された構造のために、全4試料中で最高粘度を有する。これらのレオロジーデータは、PDA(150-2-25)Aを除く全てのPDA樹脂がホットプレス機またはオーブンを用いて膜に成形(再成形)されるのに十分に低い溶融粘度を有することを示す。また、自立特性を有する架橋性熱可塑性PDA(150-2-10)の膜を、そのDMF溶液をガラス基材に塗布した後、オーブンで150℃未満の温度で乾燥させることによって作製した。DSCの結果は、PDA(150-2-10)は91℃のT
g、および180℃より高い温度で熱可塑性PDA(150-2-10)膜中のベンゾオキサジン基を硬化させることに由来する発熱ピークを有することを示した。
【0166】
3タイプのPDA樹脂粉末をホットプレスにより薄膜に成形(再成形)し、続いて160℃で1時間、185℃で3時間、および218℃で1時間の条件下で硬化させた。これらの硬化したPDA膜のDMA曲線および対応するデータを
図25A~Bおよび表3に示す。これらの硬化したPDA樹脂膜は、50℃で同様の貯蔵弾性率を示した。試験温度の上昇と共に、これらの膜は120℃付近で貯蔵弾性率の急激な減少を示し、ガラス状態からゴム状態への膜の形態の変換が起こることを示した。硬化したPDA(150-2-10)A膜は、最高のT
gおよびT
gより高い温度での最高の貯蔵弾性率を示した。ゴム状プラトーにおける高い弾性率は、高度な架橋ネットワークを示唆する。3つの硬化したPDA樹脂は全て、約3.1~3.2GPaの引張弾性率、約62~64MPaの引張強度、および約2.4%の破断点伸びを示した。
【0167】
【0168】
硬化したPPDA樹脂膜も、PDA樹脂と同じ成形条件を用いて、ホットプレス法によって作製した。硬化したPPDAのTgおよび引張特性を表3に示す。硬化したPDA膜と比較して、硬化したPPDA膜は145℃のより高いTgを有していた。しかしながら、引張特性は、比較して約10~20%劣っていた。
【0169】
〔PDODAの合成(実施例10)〕
【0170】
実施例4に記載と同じ方法を用いてPDODAを合成した。PDODA合成スキームを構造(XII)に示す。
【化10】
【0171】
〔PDODA-MAの合成(実施例11)〕
【0172】
PDODAおよびメタクリル酸無水物を、反応性フェノール対メタクリル酸無水物のモル比が1:5であるフラスコに添加した。混合物に、2当量の重炭酸ナトリウムおよび適切な量のTHFをさらに添加した。反応は室温で24時間行った。PDODA-MA合成スキームを構造(XIII)に示す。
【化11】
【0173】
〔実施例12:PDODA-MA、VP、およびDMPAのUV硬化〕
【0174】
PDODA-MAをVPおよびDMPAと20:65:15の重量比でブレンドし、混合物を5分間超音波処理した。得られた混合物は室温で液体であった。365nmのUV放射を、手持ち式UVランプを介して60分間、液体に適用した。
図26Aに示すように、得られた生成物は室温で固体であり、粗い表面を有していた。
【0175】
樹脂の溶解度を試験して、UV治療から生じた架橋の程度を決定した。固体はTHFに溶解せず、このことは、UV曝露による有効な架橋を示している。
【0176】
〔比較例12:VPおよびDMPAのUV硬化〕
【0177】
比較として、VP(2g)およびDMPA(350mg)を85:15の比率でブレンドして液体を形成した。次いで、
図26Bに示すように、混合物を実施例12の方法に従って硬化させ、室温で比較的平滑な表面を有する固形物を得た。この樹脂はTHF中に容易に溶解し、有意な架橋が起こらなかったことを示した。
【0178】
〔実施例13:PDODA-MAおよびDMPAのUV硬化〕
【0179】
追加のモノマーを含まないPDODA-MAのUV硬化性を、PDODA-MAとDMPAとを95:5の重量比でブレンドすることによって試験した。THFを混合物に添加し(粉末1g当たりおおよそ0.5mLのTHF)、次いでTHFをロータリーエバポレーター中、真空下、室温で蒸発させてペーストを得た。UV照射を、UV硬化機を用いてペーストに10秒間適用した。UV硬化後、試料は固体粉末であった。固体粉末はTHFに溶解せず、UV硬化工程中に有効な架橋が起きたことを示した。
【0180】
DSCを、UV硬化の前後にPDODA-MA試料に対して行い、データを表4に要約する。
【表4】
【0181】
表4に示すように、UV処理を行った樹脂の硬化温度は、UV処理を行わなかった樹脂よりも高かった。さらに、UV処理を行った樹脂のガラス転移温度は、UV処理を行わない樹脂よりも33℃高かった。これらの結果は、UV処理による樹脂の有効な架橋を示す。
【0182】
〔PDODA-EPの合成(実施例14)〕
【0183】
2gのPDODA、25mlのエピクロロヒドリン、378mgのNaOH、および4.68mlの水をフラスコに加えた。反応は50℃で24時間行った。生成物はジクロロメタンを用いて抽出し、続いてロータリーエバポレーターで溶媒を蒸発させることによって得た。PDODA-EPの構造は構造(XIV)に示され、ここで「BZ」はベンゾオキサジン部分を表す。
【化12】
【0184】
〔実施例15:PDODA-EPのマイクロ波硬化〕
【0185】
PDODA-EP樹脂を、900Wのマイクロ波中で、5、10、および15分間硬化させた。比較試料はマイクロ波硬化を経験せず、これはDSC実験による加熱中に熱硬化されたことを意味する。試料をDSCにより試験し、結果は以下の表5に見出され得る。
【0186】
〔比較例15:PDODAのマイクロ波硬化〕
【0187】
比較例として、マイクロ波硬化性エポキシド官能基を有していないPDODAおよびPD(ベンゾオキサジン)を、マイクロ波中、900Wで、5、10、および15分間硬化させた。各樹脂の試料は熱硬化され、マイクロ波硬化を経験しなかった。試料をDSCにより試験し、結果は以下の表5に見出され得る。
【表5】
【0188】
表5に示されるように、3つの材料は全て、ある程度マイクロ波硬化性である。PDODAおよびPD試料は、完全に硬化するのに10~15分以上必要とし、一方、マイクロ波硬化性基を含むPDODA-EPは、完全に硬化するのに5~10分かかる。これは、マイクロ波硬化性基を含む試料におけるより高いマイクロ波硬化効率を示す。また、ポリマー鎖にマイクロ波硬化性基を含む試料(PDODA-EP)では、PDODAの150℃未満からPDODA-EPの200℃超へと劇的にTgが向上している。マイクロ波処理されたPDODA-EPのTgが、熱処理によってのみ硬化された場合のPDODA-EPよりも10℃高いという事実によって証明されるように、マイクロ波処理は、熱硬化のみを経験した試料と比較して改善された効果を有することも見出された。
【0189】
上記では、ほんのわずかな例示的な実施形態について詳述してきたが、当業者であれば、本発明から実質的に逸脱すること無しに、例示的な実施形態における多くの変形が可能であることを、容易に理解するであろう。したがって、すべてのそのような変形は、以下の特許請求の範囲で定義される本開示の範囲内に含まれることが意図される。特許請求の範囲において、ミーンズ-プラス-ファンクション節のいずれかは、記載された機能およびそれらの構成の等価物を実行するものとして本明細書に記載される構成をカバーすることが意図される。同様に、特許請求の範囲におけるステップ-プラス-ファンクション節のいずれかは、記載された機能およびそれらの作用の等価物を実行するものとして本明細書に記載される作用をカバーすることが意図される。出願人の明示的な意図は、請求項が関連する機能と共に「のための手段」または「のための工程」という言葉を明示的に使用するものを除き、本明細書におけるいずれかの請求項のいかなる限定に対しても、35 U.S.C.§112(f)を実施しないことである。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【
図1】1つ以上の実施形態の架橋性熱可塑性樹脂の合成の概略図である。
【
図2】1つ以上の実施形態の架橋性熱可塑性樹脂の硬化の概略図である。
【
図3】1つ以上の実施形態の架橋性熱可塑性樹脂の精製の概略図である。
【
図4】本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー改質ストラテジーの模式図である。
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図5】本開示の1つ以上の実施形態に記載のポリマー合成ストラテジーの模式図である。
【
図6A】本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化性官能基を含むポリマーの模式図である。
【
図6B】本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化樹脂の模式図である。
【
図7A】本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化性成分を含むポリマー組成物の模式図である。
【
図7B】本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化樹脂の模式図である。
【
図8】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データを示す。
【
図9】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データを示す。
【
図10】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【
図11】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのGPCデータを示す。
【
図12】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【
図13】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのGPCデータを示す。
【
図14】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についての
1HNMRデータを示す。
【
図15】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのTGA結果を示す。
【
図16】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物についてのGPCデータを示す。
【
図17A】1つ以上の実施形態の例示的な架橋性熱可塑性樹脂の合成の概略図である。
【
図17B】1つ以上の実施形態の例示的な架橋性熱可塑性樹脂の合成の概略図である。
【
図18】1つ以上の実施形態の例示的な架橋性熱可塑性樹脂の合成の概略図である。
【
図19】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物((a)PBB(120-2-30)A、(b)PBB(150-2-5)A、(c)PBB(150-2-10)A、および(d)PBB(150-2-25)A)についてのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)データを示す。
【
図20】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【
図21】1つ以上の実施形態の例示的な硬化した熱可塑性樹脂組成物のDMAの結果のグラフ表示である。
【
図22】1つ以上の実施形態の熱可塑性樹脂の硬化中のモノマーとポリマーとの間の反応の模式図である。
【
図23】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物(A)PDA(120-2-30)A、(b)PDA(150-2-5)A、(c)PDA(150-2-10)A、および(d)PDA(150-2-25)Aについての熱可塑性物質(NMPに部分的に溶解した粉末)のGPCの結果のグラフ表示である。
【
図24】1つ以上の実施形態の例示的な熱可塑性樹脂組成物のレオロジー挙動を示す。
【
図25A】1つ以上の実施形態の例示的な硬化した熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率の動的機械分析を示す。
【
図25B】1つ以上の実施形態の例示的な硬化した熱可塑性樹脂組成物の損失正接(tan delta)の動的機械分析を示す。
【
図26A】本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化したポリマー組成物の写真である。
【
図26B】本開示の1つ以上の実施形態に記載の硬化したポリマー組成物の写真である。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス-ベンゾオキサジンモノマーと、フェノール官能基、アミン官能基、および/またはチオール官能基を有する二官能性コモノマーとの間の反応から形成されるポリマーを含み、
前記ポリマーは、少なくとも1つの架橋性基を含む、
架橋性熱可塑性樹脂組成物であって、
前記架橋性熱可塑性樹脂は、1~1,000キロダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、前記架橋性熱可塑性樹脂組成物は、前記組成物の総重量に基づいて30~90重量%の範囲のポリマー含有量を有する、架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記架橋性基は、前記ポリマー上のエンドキャップである、請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記架橋性基は、前記ポリマーの主鎖上にある、請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、温度140℃における溶融粘度が10000Pa・s以下である、請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
UVまたはマイクロ波硬化性官能基をさらに含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記UVまたはマイクロ波硬化性官能基は、前記架橋性基である、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記UVまたはマイクロ波硬化性
官能基は、前記架橋性基と反応する、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
含有量が25重量%以下の未反応モノマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
ビス-ベンゾオキサジンモノマーと二官能性コモノマーとを反応させて、少なくとも1つの架橋性基を含むポリマーを形成する工程を含む、
架橋性熱可塑性樹脂組成物を形成する方法であって、
前記架橋性熱可塑性樹脂は、1~1,000キロダルトンの範囲の重量平均分子量を有し、前記架橋性熱可塑性樹脂組成物は、前記組成物の総重量に基づいて30~90重量%の範囲のポリマー含有量を有する、架橋性熱可塑性樹脂組成物を形成する方法。
【請求項10】
前記反応工程は、溶液中でベンゾオキサジン樹脂を形成するために、1気圧下で75℃を超える沸点を有する溶媒中における溶液重合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒は、酢酸エチル、2-メトキシエタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、2-メトキシエタノール/テトラヒドロフラン(THF)の混合物、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記溶液から前記ベンゾオキサジン樹脂を精製することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ビス-ベンゾオキサジンモノマーと前記二官能性コモノマーとの間のモル比は、1:1~2:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記反応工程は、前記ビス-ベンゾオキサジンモノマーとビスフェノールコモノマーとの溶融重合を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記ビス-ベンゾオキサジンモノマーと前記ビスフェノールコモノマーとの間のモル比は、1:10~10:1である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記熱可塑性樹脂組成物を、UVまたはマイクロ波硬化性官能基を含むように改質することをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
請求項9に記載の方法によって製造された、樹脂組成物。
【請求項18】
硬化した熱可塑性樹脂組成物を形成する方法であって:
請求項1に記載の架橋性熱可塑性樹脂組成物を提供する工程と;
前記架橋性熱可塑性樹脂組成物を、外部刺激を加えることによって硬化させて、前記硬化した熱可塑性樹脂を形成する工程とを含む、方法。
【請求項19】
前記外部刺激は、熱、紫外線照射、マイクロ波照射、および水分からなる群から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記架橋性熱可塑性樹脂組成物は、UVまたはマイクロ波硬化性官能基をさらに含み、前記外部刺激は、紫外線照射またはマイクロ波照射を含む、請求項18に記載の方法。
【国際調査報告】