(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】PHF7のヒストン3ユビキチン化を標的にする精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/50 20060101AFI20230518BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230518BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20230518BHJP
C12Q 1/02 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
G01N33/50 Z
C12N5/10 ZNA
G01N33/15 Z
C12Q1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022563021
(86)(22)【出願日】2021-07-15
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 KR2021009074
(87)【国際公開番号】W WO2022025490
(87)【国際公開日】2022-02-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0092968
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】513246872
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ベク ソンヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム チャンロク
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB01
2G045DA36
2G045FB02
2G045FB03
4B063QA20
4B063QQ20
4B063QR80
4B063QS32
4B063QX02
4B065AA90X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA46
(57)【要約】
本願は、PHF7のヒストン3ユビキチン化を標的にする精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法を開示する。本願に係る方法によって究明された物質は、ヒストンH3K14に対するPHF7 E3ユビキチンリガーゼ活性が抑制できて、BRDTの転写調節機能に影響を与えないながらも、BRDTの安定化を妨げることによってこれの濃度を減少させて、ヒストン除去においてこれの機能を効果的に抑制することができる。このような機構によって究明された物質を利用したPHF7の特異的な抑制は、男性避妊薬として有用に使われることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PHF7(PHD finger protein 7)及びBRDT(Bromodomain testis-specific)タンパク質を発現する真核細胞を提供する段階;
前記細胞をPHF7のヒストン3(H3)の14番目リシン残基に対するユビキチン化活性を抑制すると期待される試験物質と接触する段階;
前記接触後、前記細胞で前記H3タンパク質のユビキチン化程度を測定する段階;及び
前記測定する段階で前記試験物質と接触した細胞で、接触されなかった細胞と比較して、前記H3のユビキチン化が減少された場合、前記試験物質を精子クロマチン凝縮に必要なヒストン-プロタミン交換抑制剤として選別する段階を含む、精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法。
【請求項2】
前記細胞は、PHF7を過発現するHEK293T細胞である、請求項1に記載の精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法。
【請求項3】
前記細胞は、ヒトを除いた動物モデルとして提供されるものであり、
前記測定する段階で、前記動物モデルの精細胞でBRDTタンパク質のユビキチン化または前記BRDTタンパク質の濃度を測定することを追加で含み、
前記BRDTタンパク質ユビキチン化が、前記試験物質で処理されなかった細胞と比較して増加するか、または前記BRDTタンパク質の濃度が前記試験物質で処理されなかった細胞と比較して、減少した場合、前記試験物質を精子核凝縮に必要なヒストン-クロマチン交換抑制剤として選別する段階を含む、請求項1に記載の精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法。
【請求項4】
前記精子クロマチン凝縮抑制剤は、男性避妊剤として使われるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、PHF7のヒストン3ユビキチン化調節による精子核凝縮調節を究明した分子機構に基づいた薬物スクリーニング技術に関する分野である。
【背景技術】
【0002】
精子形成過程は、父系遺伝体の半分を有する精子を作る複雑な過程である。精原細胞から由来した二倍体精細胞(spermatid)が4つの半数体精細胞に分裂する減数分裂以後、円形精細胞は、精子成熟過程を経て精子になるが、この際細胞質除去、核凝縮、先体形成、尾部成長などを伴う。
【0003】
体細胞のクロマチンは、ヒストンで構成されている反面、精子クロマチンは、主にアルギニンが豊富なプロタミンで構成されている。精子のさらに凝縮されたクロマチンは、DNA損傷から遺伝体を保護して父系遺伝体が子孫によく伝達できるようにする。精子成熟過程の間、伸長型(elongated)精細胞のヒストンは、クロマチンから除去されて、転移タンパク質(TNP)に交換されて、最後にプロタミンに交換される(Wang et al.(2019a) Front Genet 10,962.)。このようなヒストン-プロタミン交換に問題がある精子は、核凝縮の失敗で非正常的な形態と減少した運動性を示して、結果的に受精能力に問題を引き起こす(Wang et al.,(2016).Journal of cellular biochemistry 117,1429-1438)。
【0004】
ヒストン-プロタミン交換以前に伸長型精細胞で起きるヒストンH4過アセチル化は、ヒストン除去と精子成熟過程に必要な遺伝子の転写調節に役割をする(Goudarzi et al.,2014)。多くの研究を介して、H4過アセチル化に関与された多くの種類の調節タンパク質が明らかになった。PIWIは、伸長型精細胞でH4過アセチル化に必要なH2A、H2Bのユビキチン化を促進するRNF8の細胞内位置を調節するが、H4過アセチル化にRNF8が関わっているかについてはまだ論争中である(Gou et al.,(2017) Cell 169,1090-1104.e1013.;Lu et al.(2010) Nature 466,508-512.;Sin et al.(2012).Genes Dev 26,2737-2748.)。クロマチンリモデラーであるCHD5は、H4過アセチル化と転写調節による精子頭発生に役割をする。H4過アセチル化以後、BRDTは、BD1ドメインを介して過アセチル化されたH4末端のH4K5/K8アセチル化を認知して、クロマチンリモデラーと共にヒストン除去と転写調節に関与する。BD1を介したアセチル化されたクロマチンの認知は、ブロモドメインとDNAの相互作用によって強化される。さらに、精子プロテアゾームの単位体の中の一つであるPA200は、精子成熟過程の間ヒストンのアセチル化-媒介分解に必要である(Qian et al.(2013) Cell 153,1012-1024)。
【0005】
しかし、精子成熟過程の間、ヒストン除去に対する分子機構に対する研究は充分ではなく、これに対する究明及びこれを根拠とした男性生殖系薬物開発技術が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願は、精子形成過程でヒストンH3K14に対するPHF7 E3ユビキチンリガーゼ活性調節機構に基づいた精子核凝縮抑制剤スクリーニング方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一様態で、本願は、PHF7(PHD finger protein 7)及びBRDT(Bromodomain testis-specific)タンパク質を(過)発現する真核細胞を提供する段階;前記細胞をPHF7のヒストン3(H3)の14番目リシン残基に対するユビキチン化活性を抑制すると期待される試験物質と接触する段階;前記接触後、前記細胞で前記H3タンパク質のユビキチン化程度を測定する段階;及び前記測定する段階で前記試験物質と接触した細胞で、接触されなかった細胞と比較して、前記H3のユビキチン化が増加した場合、前記試験物質を精子クロマチン凝縮に必要なヒストン-プロタミン交換抑制剤として選別する段階を含む、精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法を提供する。
【0008】
一実現例で、本願に係る方法に使われる細胞としては、PHF7を(過)発現する様々な細胞が使われることができる。一実現例で、前記細胞は、PHF7が過発現したHEK(Human Embroynic Kidney)293T細胞である。
【0009】
本願に係る方法の一実現例で、細胞は、ヒトを除いた動物モデルとして提供されるもので、前記測定する段階で、前記動物モデルの凝縮型精細胞(spermatid)でBRDTタンパク質のユビキチン化または前記BRDTタンパク質の濃度を測定するのを追加で含み、前記BRDTタンパク質ユビキチン化が前記試験物質で処理されなかった細胞と比較して増加するか、または前記BRDTタンパク質の濃度が前記試験物質で処理されなかった細胞と比較して減少した場合、前記試験物質を精子核凝縮に必要なヒストン-クロマチン交換抑制剤として選別する段階を含む。
【0010】
本願に係る方法によりスクリーニングされた精子核凝縮抑制剤の候補物質は、男性避妊薬として効果的に開発できる。
【発明の効果】
【0011】
本願で究明された機構に基づいたスクリーニング方法及びこれにより究明された物質は、ヒストンH3K14に対するPHF7 E3ユビキチンリガーゼ活性を抑制することができて、BRDTの転写調節機能に影響を与えないながらも、BRDTの安定化を妨げることによって、これの濃度を減少させてヒストン除去においてこれの機能を効果的に抑制することができて、これは精子の発生を抑制することができて、このような機構を介して究明された物質を利用したPHF7の特異的な抑制は、男性避妊剤として効果的に使われることができる。
【0012】
特に従来にBRDT、BRD2、3及び4が属するBRDファミリーの抑制剤であるチエノトリアゾロジアゼピンJQ1(CAS Number:1268524-70-4)は、マウスでBRDTを標的することで男性避妊薬として提示されたことがある。しかし、JQ1は身体全般的に発現するBRD2、3、4を抑制して副作用の危険がある。BRDTが精子形成過程初期から役割を果たす反面、本願でその機構に究明されたPHF7は、減数分裂後精細胞で優勢に発現して精子形成過程後期に作用するため、BRDTを標的にする場合より副作用が少ないことがある。またPHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性は、精子成熟過程に必要であるため、PHF7は、男性不妊検査の診断マーカーとして使われることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】Phf7
tKO雄マウスは精子発生欠陥を示すという結果である。(A)マウス精子発生過程の図式。(B)異なる年齢のマウスの精巣で相対的なPhf mRNAレベル。(C)異なる年齢のマウスの精巣でPHF7タンパク質レベル。(D)8週齢対照群とPhf7
tKOマウスの精巣細胞でPHF7タンパク質レベル。(E)野生型雌マウスと交配した対照群及びPhf7
tKO雄マウスの受精能力。(F)ヘマトキシリン-PAS染色を利用した対照群及びPhf7
tKOマウスの精巣組織分析。(G)ヘマトキシリン-エオシン染色を利用した対照群及びPhf7
tKOマウスの副睾丸組織分析。(H)対照群及びPhf7
tKOマウスの精子の位相差顕微鏡イメージ。(I)対照群及びPhf7
tKOマウス精子の運動性。(J)試験管受精アッセイ。対照群及びPhf7
tKOマウス精子の相対的受精能力。(K)対照群及びPhf7
tKOマウス精子の共焦点顕微鏡イメージ。(L)ヒストンH2A、TH2B、H3、H4抗体を利用した対照群及びPhf7
tKOマウス精子の共焦点顕微鏡イメージ。(M)対照群及びPhf7
tKOマウス精子抽出液のヒストンとプロタミンタンパク質レベル。(N)対照群及びPhf7
tKOマウス精巣切片でH3、PRM2抗体を利用した免疫染色。矢印は、H3とPRM2が共に発現する凝縮型精細胞を示す。(O)対照群及びPhf7
tKOマウス精細胞抽出液で行った免疫ブロット分析。
【
図2】PHF7はヒストンH3の14番リシンに対するE3ユビキチンリガーゼであることを究明した結果である。(A)対照群及びPhf7
tKOマウス精巣細胞抽出液で行った免疫ブロット分析。H3免疫ブロットの長時間露出データは、25kDaの下の移動したH3バンドを含む。(B)対照群及びPhf7
tKOマウス精巣細胞抽出液で行った免疫沈降分析。(C)Flag-PHF7とHismax-UbをHEK293T細胞にトランスフェクションした後の免疫ブロット分析。(D)E.coliで精製したPHF7と組換えヌクレオソームを利用したE2スクリーニングに対するin vitroユビキチン化アッセイ。ヒストンユビキチン化の相対的レベルは、各免疫ブロットの下に表示。(E)異なる反応時間で進行したヌクレオソームのin vitroユビキチン化アッセイ。H3ユビキチン化の相対的レベルは、H3免疫ブロットの下に表示。(F)Ubの有無に応じだGST-H3欠失突然変異を利用したin vitroユビキチン化アッセイ。H3ユビキチン化比率は、GST免疫ブロットの下に表記。星印(*)は、H3のポリユビキチン化を示す。(G)HEK293T細胞でHA-PHF7とH3-Flag KR突然変異をトランスフェクションした後進行したH3ユビキチン化残基に対するスクリーニング。(H)H3-Flag WTとK14R突然変異を過発現HEK293T細胞で得たヒストン抽出物を利用したin vitroユビキチン化アッセイ。
【
図3】Phf7酵素活性がないC160Aノックインマウスは、精子形成過程とH3ユビキチン化に欠陥を示すことを究明した結果である。(A)PHF7 WT、ΔPHD、ΔRING突然変異の図式。HEK293T細胞でFlag-PHF7 WT、ΔPHD、ΔRINGのE3ユビキチンリガーゼ活性比較。(B)と(C)HEK293T細胞でPHF7のPHDドメイン突然変異(B)とRINGドメイン突然変異(C)のE3ユビキチンリガーゼ活性の欠陥。(D)GST-PHF7のRINGドメイン突然変異体を利用したin vitroユビキチン化アッセイ。(E)Phf7 C160A KIマウスに対する図式。KI対立遺伝子は、BamH I(GGATTC)とAfe I(AGCGCT)の制限部位を有する。(F)野生型雌マウスと交配した対照群及びPhf7
CA/CA雄マウスの受精能力。(G)対照群及びPhf7
CA/CA雄マウス精子の運動性。(H)IVFアッセイ。対照群及びPhf7
CA/CA雄マウス精子の受精能力。(I)対照群及びPhf7
CA/CA雄マウス精子の共焦点顕微鏡イメージ。(J)対照群及びPhf7
CA/CA雄マウス精子でヒストンH2A、TH2B、H3、H4を免疫染色した共焦点顕微鏡イメージ。(K)対照群及びPhf7
CA/CA雄マウス精巣切片でH3抗体とPRM2抗体を利用した免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。矢印は、H3とPRM2が共に発現する凝縮型精細胞を示す。(L)対照群及びPhf7
CA/CA雄マウス精細胞抽出液で行った免疫ブロット分析。(M)対照群及びPhf7
CA/CA雄マウス精巣細胞抽出液で行った免疫ブロット分析。H3免疫ブロットの長時間露出データは、25kDaの下のH3ubバンドを含む。
【
図4】PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性は、H4過アセチル化以後ヒストン除去に必要であることを究明した結果である。(A及びB)単一細胞RNAシーケンシングから得た命名された細胞類型別に色で表記された二つの遺伝子型のマウスから得た精巣細胞に対するt-SNE分析(A)とすべての細胞における非常に多様な遺伝子の補正された発現レベル(B)。ヒートマップにあるすべての遺伝子と細胞は、Euclidean distanceを利用して分類された。各細胞のメタデータは、ヒートマップ上に表記された(遺伝子型、Phf7
f/f、灰色;Phf7
tKO、赤色とt-SNE分析に使われた細胞類型)。(C)対照群及びPhf7
tKOマウスの精巣細胞でTnp1/2とPrm1/2の相対的mRNAレベル。(D)対照群及びPhf7
tKOマウスの精細胞抽出物で行われたTNPs及びPRMsに対する免疫ブロット分析。(E)対照群及びPhf7
CA/CAマウスの精細胞抽出物で行われたTNPs及びPRMsに対する免疫ブロット分析。(F)対照群及びPhf7
tKOマウスの精細胞抽出物で行われたH4ac及びH4に対する免疫ブロット分析。(G)対照群及びPhf7
CA/CAマウスの精細胞抽出物で行われたH4ac及びH4に対する免疫ブロット分析。(H)各遺伝子型のマウスの精巣切片でH4ac抗体、PRM2抗体を利用して行われた免疫染色に対する共焦点顕微鏡イメージ。(I)H4過アセチル化以後ヒストン除去でPHF7の機能に対する図式モデル。
【
図5】PHF7は、初期凝縮型精細胞でBRDTのレベルを維持するのに役割をすることを究明した結果である。(AとB)Phf7
f/f及びPhf7
tKOマウス(A)、Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウス(B)の精細胞でBRDTのタンパク質レベルと相対的mRNAレベル。(CとD)Phf7
f/f及びPhf7
tKOマウス(C)、Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウス(D)の精巣切片でH4ac抗体とBRDT抗体を利用した免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。ローマ数字は、洗浄管の精子形成過程段階を示す。(E)伸長型あるいは凝縮型精細胞の核でH4ac及びBRDTが染色された比率に対する定量化。
【
図6】PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性は、BRDTの安定性を調節することを究明した結果である。(A)Phf7
Flag/+マウスの精巣切片でBRDT抗体とFlag抗体を利用した免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。ローマ数字は、洗浄管の精子形成過程段階を示す。矢印は、BRDTとFlag-PHF7が共に発現する精細胞の核を示す。(B)BETファミリーの保存されたSPOPデグロン(D)配列。(C)HEK293T細胞にFlag-BRDT(1-555アミノ酸)野生型とΔD突然変異体をトランスフェクション後、MG132処理有無に応じた免疫ブロット分析。(D)HEK293T細胞にFlag-BRDT、SPOP、PHF7の野生型とC160A突然変異体をトランスフェクション後行った免疫ブロット分析。(E)Phf7
f/f、Phf7
tKO、Phf7
+/CA、Phf7
CA/CAマウスの精細胞でSPOP、Cul3、BRD4、PTENのタンパク質レベル。(F)HEK293T細胞にFlag-BRDT、SPOP、PHF7野生型とC160A突然変異体をトランスフェクション及びMG132処理後行ったユビキチン化アッセイ。(G)トランスフェクションしたHEK293T細胞でHAあるいはPHF7抗体及びFlag抗体で免疫染色した共焦点顕微鏡イメージ。(H)BRDT、SPOP-Cul3-Rbx1、PHF7を利用したin vitroユビキチン化アッセイ。
【
図7】PHF7-媒介ヒストンユビキチン化は、BRDTのユビキチン化を弱化させることを究明した結果である。(A)HEK293T細胞で行ったBRDTとPHF7の免疫沈降実験。(B)E.coli由来GST-BRDTとH3ubあるいはH4acを含んだビオチン化されたヌクレオソームとストレプトアビジンビーズを利用したin vitroプルダウンアッセイ。プルダウンされたGST-BRDTの相対的比率は、免疫ブロットの下に表記される。(C)BRDT、SPOP-Cul3-Rbx1、修飾化されたヌクレオソームを利用したin vitroユビキチン化アッセイ。(D)初期凝縮型精細胞(ステップ12)でPHF7-媒介H3ubを介したBRDT安定性調節に対するモデル。
【
図8】欠失マウスの作製結果を示す。(A)PHF7遺伝子をターゲットする方法に対する図式。Phf7エクソン4、5、6及び7対立遺伝子(灰色ボックス)とlacZ遺伝子(紫色ボックス)、loxP(緑色矢印)、FRT(青色ボックス)、ネオマイシン選択マーカー(薄緑色ボックス)、ジフテリア毒素遺伝子(DT、空色ボックス)を含んだターゲッティングベクター。(B)Phf7
f/f及びPhf7
tKOマウスの精巣イメージと体重対比精巣の重さに対する比率。エラーバーは平均±SDを示す。(CとD)Phf7
f/f及びPhf7
tKOマウスの精巣切片でH3(緑色)、PRM1(赤色、C)、TNP2(赤色、D)、DAPI(青色)に対する免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。矢印は、PRM1やTNP2がH3と共同発現を表す精細胞を示す。
【
図9】H3K14ubに対するLC-MS/MS分析結果を示す。(A)In vitroで変形されたヒストンH3タンパク質を利用したLC-MS/MS分析。表記されたペプチド配列と変形に該当するMS/MS分析スペクトル。(B)LC-MS/MS分析で命名されたペプチド配列に対するペプチドスペクトルマッチ(PSM)の個数差。二回繰り返された実験でPHF7過発現と対照群サンプルが表記される。(C)Phf7
f/f及びPhf7
tKOマウスの精巣の間でユビキチン化されたH2A及びH2Bタンパク質に対するLC-MS/MS分析。
【
図10】Phf7
CA/CAマウスの分析結果を示す。(A)Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウス精巣切片のヘマトキシリン-PAS染色。(B)Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウスの副睾丸切片のヘマトキシリン-エオシン染色。(C)Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウス精子の位相差顕微鏡イメージ。(DとE)Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウスの精巣切片でH3(緑色)、PRM1(赤色、D)、TNP2(赤色、E)、DAPI(青色)に対する免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。矢印は、PRM1あるいはTNP2がH3と共同発現する精細胞を示す。
【
図11】単一細胞RNAシーケンシングは、PHF7-欠失マウスは野生型マウスと類似の転写体プロファイルを有することを示す。(A)グラフ基盤クラスターで色塗りされたUMAPプロット。(B)UMAPプロット上に分布したマウス細胞。赤点は、各プロットで各サンプルから由来した細胞を示す。(C)UMAPプロット上のマーカー遺伝子の補正された発現レベル。(D)細胞内UMI(Unique Molecular Identifier)の総個数の分布。
【
図12】Phf7が壊れたマウスの凝縮型精細胞には、H4アセチル化が非正常的に残っていることを示す。(A)精子形成周期で精子成熟過程の図式。アラビア数字は、精子成熟過程のステップ(1-16)を示す。円形精細胞(ステップ1-8)、伸長型精細胞(ステップ9-11)、凝縮型精細胞(ステップ12-13)、凝縮後精細胞(ステップ14-16)。(BとC)Phf7
f/f、Phf7
tKO(B)、Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CA(C)マウスの精巣切片上でH4ac(緑色)、PNA(赤色)、及びDAPI(青色)に対する染色の共焦点顕微鏡イメージ。ローマ数字は、洗浄管内で精子形成ステップ(I-XII)を示す。
【
図13】精巣切片でPRM1あるいはTNP2とH4acの共同免疫染色結果で、
図4と関連した結果である。(A)Phf7
f/f、Phf7
tKO、Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウス精巣切片上のH4ac(赤色)、PRM1(緑色)、DAPI(青色)に対する免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。(B)Phf7
f/f、Phf7
tKO、Phf7
+/CA及びPhf7
CA/CAマウス精巣切片上のH4ac(赤色)、TNP2(緑色)、DAPI(青色)に対する免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。
【
図14】Flag-PHF7ノックインマウスの作製を示す。(A)Flag-PHF7 knock-in miceに対する図式。PHF7エクソン2対立遺伝子(灰色ボックス)、3xFlag(赤色)、3xFlag(赤色)、スペーサー(橙色)、沈黙突然変異(空色)を含むノックイン(knock-in)配列。(B)Phf7
+/+(野生型)及びPhf7
Flag/+マウスの精巣細胞抽出物でFlag-PHF7のタンパク質レベル。星印(*)は、非特異的バンドを示す。(C)Phf7
Flag/+マウス精巣切片のFlag(緑色)、PNA(赤色)、DAPI(青色)に対する免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。ローマ数字は、洗浄管内で精子形成段階(I-XII)を示す。(D)Phf7
Flag/+マウス精巣切片のFlag(緑色)、DAPI(青色)に対する免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。(E)Phf7
Flag/+マウス精巣切片のFlag(緑色)、H4ac(赤色)、DAPI(青色)に対する免疫染色の共焦点顕微鏡イメージ。ローマ数字は、洗浄管内で精子形成段階(I-XII)を示す。矢印は、Flag-PHF7とH4acが共同発現する精細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願は、PHF7(PHD finger protein 7)が、精子成熟過程でヒストン除去因子であるBRDT(Bromodomain testis-specific)の安定性維持に重要であるとの発見に基づいたものである。精子形成過程は、体細胞分裂、減数分裂、及び精子成熟過程を含む精子を作る複雑な過程である。このうち精子成熟過程の間、減数分裂後精細胞(spermatid)のクロマチンからヒストンが除去されてプロタミンに代替される。このような精子形成過程でヒストン-プロタミン交換は、精子核凝縮に重要であるにも関わらず、その研究が十分ではなく、これに対する調節機構に究明が必要である。
【0015】
本願では、具体的にPHF7タンパク質が減数分裂後精細胞でヒストンH3の14番目リシン(K14)残基に対するE3ユビキチンリガーゼとして作用して、このようなPHF7によるヒストンユビキチン化は、ヒストン除去因子であるBRDTのタンパク質量を増加させることで、PHF7タンパク質がヒストン-プロタミン交換を調節するクロマチン凝縮の重要な後成遺伝学的因子との発見に基づいたものである。
【0016】
具体的に本願では、PHF7欠失マウスとE3ユビキチンリガーゼ活性が壊れたPhf7 C160A突然変異マウスを作製して、このマウスが初期凝縮型精細胞でヒストン除去因子BRDTの調節異常でヒストン-プロタミン交換の欠乏と精子成熟過程に異常を示すことを明らかにした。また、マウスの精細胞でヒストン除去因子BRDTのタンパク質量が減少して、免疫ブロット及び組織免疫染色を介して特定発生時期でBRDTの発現量の差を確認した。また、本願ではPHF7のE3ユビキチンリガーゼのヒストンユビキチン化に対する活性が、BRDTのユビキチン化を抑制させることによって、BRDTの安定化、即ち濃度増加に寄与することを究明した。
【0017】
そこで、PHF7の欠陥または発現または活性の抑制は、14番目リシン残基がユビキチン化されたヒストン3(H3K14ub)の欠乏を誘導して、続いて初期凝縮型精細胞でBRDTタンパク質量を減少させて、ヒストンがプロタミンに代替されず、残っている非正常的な精子の発生を誘導させることができる。
【0018】
そこで一様態で、本願はPHF7を標的とする精子クロマチン凝縮に必要なヒストン-プロタミン交換抑制剤として選別する段階を含む、精子クロマチン凝縮抑制剤スクリーニング方法を提供する。
【0019】
体細胞のクロマチンは、ヒストンで構成されている反面、精子クロマチンは、主にアルギニンが豊富なプロタミンで構成されている。精子のさらに凝縮されたクロマチンは、DNA損傷から遺伝体を保護して、父系遺伝体が子孫によく伝達できるようにする。精子成熟過程の間、伸長型(elongated)精細胞のヒストンは、クロマチンから除去されて、転移タンパク質(TNP)に交替されて、最後にプロタミンに交替される(Wang et al.(2019a) Front Genet 10,962.)。このようなヒストン-プロタミン交換に問題がある精子は、核凝縮の失敗で非正常的な形態と減少した運動性を見せて、結果的に受精能力に問題を招く(Wang et al.,(2016).Journal of cellular biochemistry 117,1429-1438)。
【0020】
一実現例で、前記方法は、PHF7及びBRDTを発現する真核細胞を提供する段階;前記細胞をPHF7のヒストン3(H3)の14番目リシン残基に対するユビキチン化活性を抑制すると期待される試験物質と接触または処理する段階;前記試験物質で処理された細胞でBRDTタンパク質のユビキチン化程度を測定する段階;及び前記測定する段階において前記試験物質で処理された細胞で、処理されなかった細胞と比較して、前記BRDTのユビキチン化が増加した場合、前記試験物質を男性避妊候補物質として選別する段階を含む。
【0021】
本願に係る標的であるPHF7は、ヒストンメチルリーダーとして知らされるPHDドメインを有するPHFファミリーの一員で、そのヒト及びマウスのタンパク質及び遺伝子配列は、NCBIに次のように公知されている:PHF7のヒトタンパク質配列:NP_057567.3、遺伝子配列:NC_000003.12、マウスタンパク質配列:NP_082225.1、遺伝子配列:NC_000080.6。
【0022】
従来PHF7遺伝子の瓦解は、精子生成に欠陥をもたらして、H2Aユビキチン化を減少させるとの研究結果がある(Wang et al.,2019b)。しかし、減数分裂後精細胞でPHF7がH3K14ubのE3ユビキチンリガーゼとして作用して精子生成の間ヒストン除去のためにBRDTタンパク質の安定性を維持する結果は本願で初めて究明された。
【0023】
本願で究明されたPHF7 E3ユビキチンリガーゼの基質であるH3は、ヒストンタンパク質である。ヒト及びマウスのH3タンパク質及び遺伝子配列は、NCBIに次のように公知されている:H3のヒトタンパク質配列:NP_003520.1、遺伝子配列:NC_000006.12、マウスタンパク質配列:NP_038578.2、遺伝子配列:NC_000079.6。前記アミノ酸残基の番号を付けるにあたり、通常タンパク質の最初のアミノ酸はMetであるため、本願でヒストンの残基番号はMetを除いてその次のアミノ酸を1番目にしたものである。
【0024】
一般的にヒストンタンパク質は、真核細胞でDNAをパッキングして、ヌクレオソームという構造的ユニットを作る塩基性タンパク質である。ヒストンには、H1/H5、H2A、H2B、H3、及びH4の5種類のファミリーがあり、H2A、H2B、H3及びH4は、ヌクレオソームのコアを構成して、H1/H5リンカーヒストンである。コアヒストンはダイマーで存在する。本願に係るPHF7 E3ユビキチンリガーゼは、H3の14番目リシン残基をユビキチン化させる。ユビキチンは、76個のアミノ酸からなるタンパク質で、ユビキチン化されたタンパク質のユビキチンは、タンパク質分解を促進したり他のタンパク質との相互作用を調節する形で自身や他のタンパク質の活性を調節する。
【0025】
BRDTは、初期精母細胞で初めて発現して発生時期により様々な機能を有する。精子成熟過程初期から円形精細胞で転写が抑制され始めて、精子ではすべての転写が止まると知らされている。しかし、PHF7との関連性は明らかにされていない。本願では、単一細胞RNAシーケンシングなどの実験によって、PHF7欠失がBRDT転写に影響を与えないことを究明しており、PHF7によるBRDT調節は、転写抑制以後段階に作用する、PHF7がヒストン-プロタミン交換を調節するクロマチン凝縮の重要な後成遺伝学的因子として作用することを究明した。BRDTの配列は、NCBIに次のように公知されている:ヒトタンパク質配列:NP_001717.3、遺伝子配列:NC_000001.11、マウスタンパク質配列:NP_473395.2、遺伝子配列:NC_000071.6。
【0026】
本願に係る方法で候補物質を選別するため、試験物質で処理された細胞で前記ヒストンタンパク質のユビキチン化程度を測定する段階を含む。ヒストン3のユビキチン化を測定する方法は公知されていて、例えば本願実施例に記載されたのを参照することができる(Zhang et al.Nat.Commun 8:14799(2017))。前記測定する段階で、前記試験物質で処理された細胞で、処理されなかった細胞と比較して、前記ヒストン3のユビキチン化が増加した場合、前記試験物質を精子クロマチン凝縮に要求されるヒストン-プロタミン交換抑制剤として選別する。
【0027】
一実現例で本願に係る方法に使われる細胞は、ヒトまたはマウスを含む哺乳類由来の細胞でPHF7を過発現する真核細胞、例えばPHF7を過発現する確立された細胞株HEK(Human Embryonic Kidney)293Tである。前記確立された細胞株は市中で購入することができる。確立された細胞株で特定遺伝子を過発現する方法は公示されており、例えばヒトPHF7遺伝子をコートするプラスミドを目的する細胞株に伝達移入して使うことができる。しかし、細胞株はこれに制限されず、本願に係る目的を達成できる様々な細胞が使われることができる。
【0028】
他の実現例で、本願に係る方法に使われる細胞は、動物モデル、例えばマウスの一部である。本願に係る方法でマウスが使われる。
【0029】
本願に係る方法で測定する段階で試験物質と接触した細胞で、接触されなかった細胞と比較して、前記H3のユビキチン化が増加した場合、前記試験物質を精子クロマチン凝縮に必要なヒストン-プロタミン交換抑制剤として選別する段階を含む。
【0030】
一実現例で、本願に係る方法で細胞は、ヒトを除いた動物モデルとして提供されて、この場合、本願方法の測定する段階で、前記動物、例えばワイルドクイプマウスの精巣細胞でBRDTタンパク質のユビキチン化または前記BRDTタンパク質の濃度を測定するのをヒストンユビキチン化の代わりにまたはこれに追加で含み、前記BRDTタンパク質ユビキチン化が、前記試験物質で処理されなかった細胞と比較して増加したり、または前記BRDTタンパク質の濃度が前記試験物質で処理されなかった細胞と比較して、減少した場合、前記試験物質を精子核凝縮に必要なヒストン-クロマチン交換抑制剤として選別する段階を含む。本願
図7及び実施例6等に記載された通り、BRDTのユビキチン化はこれの分解を促進して、その濃度を低くする。従って、本願に係る方法で試験物質によるユビキチン化の増加はBRDTタンパク質の濃度を減少させる。
【0031】
そこで、本願に係る方法でPHF7がヒストン3(H3)の14番目リシン残基に対するユビキチン化活性を抑制することができる候補物質は、窮極的にBRDTのユビキチン化を増加させて、これはBRDT濃度を減少につながり、結果的に精子形成過程でクロマチン凝縮の欠陥を誘導して、精子発生を抑制して男性避妊薬として効果的に使われることができる。
【0032】
本願に係る方法に使われる細胞は、このような細胞を含むオルガノイドまたはヒトを除いた動物モデルとして提供されることができる。このような動物モデルは、本願実施例または当業界に公知された方法を利用して製造されることができる。本願でオルガノイドとは、実際の臓器の微細構造を示す3次元環境のインビトロで生産されたミニ臓器である。これは自己回復及び分化能を有する細胞が3次元培養環境で作られる。オルガノイドを製造する方法は、公知(Organoid Culture handbook,Ambiso)されたものを参考にすることができる。
【0033】
本願に係る方法に使われる試験物質は、本願で究明されたPHF7ユビキチンリガーゼのH3ユビキチン化によって精子成熟過程でのクロマチン凝縮を調節する後成的因子としての機能の調節、変化、特にH3 K14のユビキチン化の抑制を持ってくると期待される物質、例えば低分子量化合物、高分子量化合物、化合物の混合物(例えば、天然抽出物または細胞または組織培養物)、または、バイオ医薬品(例えば、タンパク質、抗体、ペプチド、DNA、RNA、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNAi、アプタマー、RNAzyme及びDNAzyme)または糖及び脂質などを含むがこれに限定しない。
【0034】
本願に係る一実現例では、低分子化合物が試験物質として使われることができる。前記試験物質は、合成または天然化合物のライブラリーから得ることができて、このような化合物のライブラリーを得る方法は当業界に公知されている。合成化合物ライブラリーは、Maybridge Chemical Co.(UK)、Comgenex(USA)、Brandon Associates(USA)、Microsource(USA)及びSigma-Aldrich(USA)から購入可能で、天然化合物のライブラリーは、Pan Laboratories(USA)及びMycoSearch(USA)から購入可能である。試験物質は、当業界に公知された様々な組み合わせライブラリー方法によって得ることができて、例えば、生物学的ライブラリー、空間アドレッサブルパラレル固相または液相ライブラリー(spatially addressable parallel solid phase or solution phase libraries)、デコンボリューションが要求される合成ライブラリー方法、「1-ビーズ1-化合物」ライブラリー方法、そして親和性クロマトグラフィー選別を利用する合成ライブラリー方法によって得ることができる。分子ライブラリーの合成方法は、DeWitt et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90,6909,1993;Erb et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.91,11422,1994;Zuckermann et al.,J.Med.Chem.37,2678,1994;Cho et al.,Science 261,1303,1993;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2059,1994;Carell et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.33,2061;Gallop et al.,J.Med.Chem.37,1233,1994等に開示されている。例えば、薬物のスクリーニング目的のためには、化合物は低分子量の治療効果を有するものが使われることができる。例えば、重量が400Da、600Daまたは800Daのような約1000Da内外の化合物が使われることができる。目的により、このような化合物は、化合物ライブラリーの一部を構成することができ、ライブラリーを構成する化合物の数字も数十個から数百万個まで多様である。このような化合物ライブラリーは、ペプチド、ペプトイド及びその他環状または線状のオリゴマー性化合物、及び鋳型を基本とする低分子化合物、例えばベンゾジアゼピン、ヒダントイン、ビアリール、カーボサイクル及びポリサイクル化合物(例えば、ナフタリン、フェノチアジン、アクリジン、ステロイドなど)、カーボハイドレート及びアミノ酸誘導体、ジヒドロピリジン、ベンズヒドリル及びへテロサイクル(例えば、トリアジン、インドール、チアゾリジンなど)を含むものであってもよいが、これは単に例示でありこれに限定されない。
【0035】
また、例えばバイオロジックスがスクリーニングに使われることができる。バイオロジックスは、細胞またはバイオ分子を称するもので、バイオ分子とは、タンパク質、核酸、炭水化物、脂質または生体内及び生体外で細胞システムなどを利用して産生された物質を称する。バイオ分子を単独でまたは他のバイオ分子または細胞と組み合わせで提供されることができる。バイオ分子は、例えば、ポリヌクレオチド、ペプチド、抗体、または、その他血漿で発見されるタンパク質または生物学的有機物質を含むものである。
【0036】
一実現例で、本願に係る方法で候補物質を選別することができる増加または減少は、当業者なら本願に開示された結果及び当業者の常識を考慮して適切に選択することができ、例えばこれに制限しないが、試験物質と接触しなかった対照群と比較して試験物質の存在下で、約10%以上減少、約20%以上減少、約30%以上減少、約40%以上減少、約50%以上減少、約60%以上減少、約70%以上減少、約80%以上減少、約80%以上減少、約100%減少またはその間の範囲を含む試験物質を候補物質として選別することができるが、前記を超える範囲を除くのではない。
【0037】
以下、本発明の理解を助けるために実施例を提示する。しかし下記の実施例本発明をより簡単に理解するために提供されるだけであって本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0038】
実施例
実験材料及び方法
PHF7条件的ノックアウトマウスの作製:IMPC(International Mouse Phenotyping Consortium)でPHF7の一番目の対立遺伝子欠失(tm1a)を有する3個の胚性幹細胞(ES細胞)を得てC57BL/6胚盤胞に微細注射した。lacZ及びneomycinカセットを除去するために、異形接合F1をFLPeRマウスと交配した。子孫マウスは、Stra8-Creマウスと交配して精巣特異的PHF7欠失マウスを得た。Phf7f/f及びPhf7tKO雄マウスは8週齢以後に実験に使われた。遺伝子型プライマーは次のとおりである。
Forward 5’-ATCAGTGTGTCCAGAACTTCCATC-3’
Reverse 5’-TTATCGAGTGGAGGGACAGATGTG-3’.
【0039】
いずれの動物研究及び過程は、ソウル大学の実験動物資源管理院(IACUC,Institutional Animal Care and Use Committee)の承認を受けた。
【0040】
Phf7 C160AノックインマウスとFlag-PHF7ノックインマウスの作製:Phf7 C160A KIマウスは、以前の方法でsgRNA/Cas9をトランスフェクションしたES細胞から作製された。特に、遺伝体受精のために、EGR-G01[129S2×C57BL/6NCr-Tg(CAG/Acr-Egfp)ES細胞が利用された。sgRNAのターゲット配列は、5’-GAACATCCACCAGGGGAGTT-3である。PHF7の7番目エクソンに点突然変異(TGT→GCT,C160A)を導入するために、HDR授与プラスミド(pBluescript II SK(+)ベクター)がデザインされた。C160A対立遺伝子を有するキメラ子孫は、異形接合(Phf7+/CA)マウスを得るために野生型B6D2F1マウスと交配された。次に、Phf7+/CAマウスは、C57BL/6Jマウスと交配された。Phf7CA/CAマウスは、Phf7+/CAマウス間の交配によって得た。Phf7+/CA、Phf7CA/CAマウスは8週以後に実験に使われた。C160A対立遺伝子に対する遺伝子型プライマーは次の通りである。
Forward;5’-TCACTGAGCACCAAGCAAATAGAC-3’
Reverse;5’-TCTGAATCTTACACATACTTGAGCA-3’.
【0041】
KI対立遺伝子は、AfeI制限部位を有し(
図3E)、遺伝子型はAfeI反応によって区分される。Flag-PHF7 KIマウスは、gRNA/Cas9混合物とレファレンスDNAを卵子に注射することによって作製された。gRNA配列は、5’-AAAACAAACATCCAAGATTG-3’である。Flag-PHF7対立遺伝子に対する遺伝子型プライマーは次の通りである。
Forward 5’-GGGTGGGACGACAAGAAGAG-3’
Reverse 5’-CTTGTCATCGTCATCCTTGT-3’.
【0042】
いずれの動物研究及び過程は、ソウル大学の実験動物資源管理院(IACUC,Institutional Animal Care and Use Committee)と大阪大学微生物病研究所の動物実験委員会の承認を受けた。このKIマウスの冷凍精子(STOCK PHF7<em2(C160A)Osb>Tg(CAG/Acr-EGFP)C3-N01-FJ002Osb、RBRC#11032、CARD#2939;and C57BL/6J-PHF7<em3(FLAG/PHF7)Osb>、RBRC#11056、CARD#2963)は、RIKEN BRC(https://mus.brc.riken.jp/en/)及び熊本大学CARD(http://card.medic.kumamoto-u.ac.jp/card/english/)で利用可能な予定である。STOCK PHF7<em2(C160A)Osb>、及びC57BL/6J PHF7<em3(3xFLAG/PHF7)Osb>は、伊川正人教授(大阪大学微生物病研究所)から収得した。
【0043】
細胞培養:HEK293T細胞(ATCC)は、5%CO2を含む湿式培養器で10%FBSと抗生剤を含むDMEMメディアで培養された。この研究に使われたすべての細胞は、マイコプラズマ汚染に対して定期的に検査を受けた。
【0044】
精子運動性:副睾丸で得た精子は、TYH滴に広めた。10分培養後、精子運動性は、CASA(Computer-assisted sperm analysis)システム(CEROS II)によって分析された。
【0045】
In vitro受精アッセイ:PMSG(Pregnant mare serum gonadotropin)をB6D2F1雌マウスの腹腔に注射して、48時間後、hCG(human chorionic gonadotropin)を注射した。hCG注射後、14時間目に卵子を各卵管のラッパ管から抽出してTYH滴で培養した。副睾丸精子は2時間の間TYH滴で先行培養する。精子を卵子があるTYH滴に添加した。6時間後、卵子の周囲の卵球細胞をhyaluronidaseで5分処理することによって除去して位相差顕微鏡で前核を観察した。
【0046】
組織学:精巣組織分析は、以前の方法で行われた。副睾丸は、10%ホルマリンで4℃一夜中行われた。固定後、組織はエタノール濃度を50%から100%に上げながら脱水した。脱水された標本は、100%キシレンを経てパラフィンワックスに入れた。ヘマトキシリン-エオシン(H&E)染色のために、組織を7μm厚さに切ってパラフィンを除去して水分を補充した後、ヘマトキシリン3分、エオシン1分の間染色した。イメージはデジタル顕微鏡で得た。
【0047】
マウス精巣細胞の分離:マウス精巣組織は、DMEM-F12メディアでcollagenase A、DNase I、トリプシンで分解した。トリプシンは、FBSでブロックした細胞は70μm、40μmストレーナーで取り除いた。遠心分離後、赤血球はRBC溶解バッファーで除去した。細胞はHBSSで洗浄した。精細胞は、以前のプロトコルを変形して重力沈殿法であるSTA-PUTで分離した。コラムにDMEM-F12メディアの4%BSAを敷いて2%BSAをゆっくり積んだ後、0.5%BSAに溶かした精巣細胞をその上にローディングした。沈殿は常温で150分の間行われた。各分画は位相差顕微鏡で細胞形態を介して区分された。
【0048】
組織免疫染色:副睾丸で得た精子は、スライドの上で乾燥してPLLが処理されたカパースリップ上の精細胞は、1M DTTが含まれたPBSで30分間培養して4%PFAが含まれたPBSに10分間常温で固定する。固定されたサンプルは、10分間常温で0.1% Triton X-100が含まれたPBS(PBS-T)で透過させる。染色のために、細胞は2時間の間常温で抗体と培養して、蛍光が標識された2次抗体と1時間の間培養する。精巣切片を利用した組織免疫染色は、ブロッキングからマウンティングまで同じ方法で行われた。サンプルは共焦点顕微鏡で観察した。同じホストから得た二つの抗体を利用した二重染色のために、精巣切片は、まずBRDT抗体を4℃一夜中培養して次の順序の抗体を1時間の間常温で培養した。Alexa 488 AffiniPure Fab Fragment Donkey Anti-Rabbit IgG(H+L)、H4ac抗体、Alexa 594 Donkey Anti-Rabbit IgG(H+L)。マウンティングされたサンプルは共焦点顕微鏡で観察した。
【0049】
トランスフェクション及び細胞融解(lysis):トランスフェクションはPEIを利用した。すべての細胞は冷たいPBSで洗浄後集めてLaemmliサンプルバッファーに融解された。すべての抽出物は、SDS-PAGEで分析された。
【0050】
In vitroユビキチン化アッセイ:組換えタンパク質PHF7、UBE1、GST-H3、GST-BRDT、SPOPは、E.coliストレーンRosettaで精製した。組換えヌクレオソーム、GST-H3、ヒストン抽出物を利用したヒストンユビキチン化アッセイは、アッセイバッファー(50mM Tris-HCl[pH7.5]、5mM MgCl2、2mM ATP、and 2mM DTT)でユビキチン、UBE1、UbcH5b、UbcH5c、PHF7を利用して30℃、1時間の間行われた。Flag-Cul3とHA-Rbx1は、トランスフェクションしたHEK293T細胞でFlag-M2アガロースビーズと3xFlagペプチドを利用して精製された。GST-BRDT、His-SPOP、Flag-Cul3、HA-Rbx1、PHF7を同じバッファーで30℃、30分間培養してユビキチン、UBE1、UbcH5aを添加して30℃、1時間の間BRDTユビキチン化アッセイを行った。PHF7と組換えヌクレオソームでユビキチン化アッセイを進行後、変形されたヌクレオソームは、PHF7、ユビキチン、UbcH5b及び5cを除去するために、Amicon Ultra Centrifugal Filters 50K membraneで取り除いた。変形されたヌクレオソームを利用したBRDTユビキチン化アッセイは同じ方法で行った。
【0051】
in vivoユビキチン化アッセイ:精巣細胞は変性バッファー(50mM Tris-HCl[pH7.5]、1% SDS、70mM β-mercaptoethanol)で溶解して95℃で5分間沸かした。すべての抽出物は、脱変性バッファー(20mM Tris-HCl[pH7.5]、200mM NaCl、1mM EGTA、1mM EDTA、1% Triton X-100、タンパク質分解酵素阻害剤)で希釈した後、H3抗体を用いて4℃で一夜中免疫沈降を行った。HEK293T細胞は、Hismax-UbをトランスフェクションしてMG132を6時間処理した後、同じ方法で細胞を破砕する。免疫沈降はFlag抗体を用いて4℃で2時間行われた。
【0052】
免疫沈降:トランスフェクションしたHEK293T細胞をEBC200バッファー(50mM Tris-HCl[pH8.0]、200mM NaCl、0.5% NP-40、タンパク質分解酵素阻害剤)で破砕して遠心分離をした。上澄み液をFlag抗体と4℃で2時間の間培養した。その後、タンパク質A/Gセファロースビーズを入れて4℃で1時間の間培養した。ビーズは、EBC200バッファーで洗浄と10分間サンプルバッファーで沸かした。
【0053】
In vitroビオチン-ストレプトアビジンプルダウンアッセイ:組換えタンパク質GST-BRDTは、E.coliストレーンRosettaで精製した。組換えビオチン化ヌクレオソームは、PHF7を利用したin vitroユビキチン化アッセイに使われて、プルダウンバッファー(50mM Tris-HCl[pH7.4]、125mM KCl、5mM MgCl2,0.5mM EDTA、0.5% Triton X-100、5mM DTT)でストレプトアビジンアガロースレジンと4℃で1時間の間培養した。プルダウンバッファーでビーズについたヌクレオソームを洗浄してGST-BRDTタンパク質と4℃で2時間の間培養した。ビーズは洗浄して10分間沸かした。
【0054】
LC-MS/MS分析:ゼルにあるペプチドサンプルプレップとin vitro変形されたヒストンサンプルのLC-MS/MS分析は、以前の方法で行われた。PHF7を過発現HEK293T細胞とPhf7f/f及びPhf7tKOマウス精巣細胞のペプチドサンプルプレップと免疫親和精製は、PTMSCan Ubiquitin Remnant Motif(K-ε-GG)キットで行われた。ペプチドサンプルは、3μm Jupiter C18 particlesを利用して、in-house packed long capillaryコラム(100cm×75μm i.d.)とtrapコラム(3cm×150μm i.d)で分離した。300nl/分の流速及び60分間溶媒A(0.1%ギ酸を有する水)乃至40%の溶媒B(0.1%ギ酸を有するアセトニトリル)範囲の線形勾配をナノ液体UPLC(水)Orbitrap Fusion Lumos質量分析器(Thermo Scientific)と結合して次の媒介変数を使って作動した。前駆体スキャン範囲のm/z 300-1800、前駆体隔離ウィンドーの1.4Th、高い水準の衝突エネルギー(NCE)の30%-エネルギー衝突解離(HCD)、30秒の動的排除期間、各々全体MSまたはMS/MSスキャンに対してm/z 200で60kまたは7.5k解像度で得られたデータセットは、SwissProt Homo sapiens proteomeデータベースに基づいて10ppmの前駆体イオン質量抵抗でMS-GF+アルゴリズムかMaxQuantソフトによって探索された。前記の発見率は、タンパク質とペプチド水準で1%に設定した。ペプチドスペクトルマッチのナンバーは、各々明らかになったペプチド配列に対して集計された。関心があるペプチド配列の強度は、MaxQuant探索結果から得られるかQual Browserソフトを利用してXIC(extracted ion chromatogram)レベルの手動注釈によって決定された。
【0055】
定量RT-PCR:RNAはTrizolを利用して抽出されて、逆転写は2.5mgのRNAをM-MLV cDNA合成キットを利用して行われた。mRNA量は、SYBR TOPreal qPCR 2x PreMixとBioRad CFX384で測定した。mRNAの定量は、ddCt方法で計算されて、すべての反応は3つの同一実験群で行われた。発現は18S rRNAとHprtを利用して補正された。
【0056】
単一細胞RNAシーケンシング実験:単一細胞RNAシーケンシングライブラリーは、Chromium Single Cell 3’ Library & Gel Bead Kit v2を利用して数千個の精巣細胞をnano liter規模の滴に分離することによって作られた。各滴には逆転写によってcDNAが作られた。結果的に、バーコードシーケンスとUMI(Unique Molecular Identifier)が各cDNA分子に添加された。cDNAはプーリングされてシーケンシングライブラリーは、マニュアルのとおりプレップされた。ライブラリーは、Nextseq 550 platformとNovaseq 6000 platformでシーケンシングされた。
【0057】
単一細胞RNAシーケンシングデータ分析:シーケンシングデータは、fastqファイルを作るために、bcl2fastqを利用して多重化解除された。多重化解除後、リードはマウスレファレンス遺伝体に配列されて、特徴バーコードマトリックスはトリミングとなるcellrangerカウントを利用して作られて、デフォルトパラメーターを有するcellranger aggrで集計された。次の分析は、Seuratプログラムを利用して行われた。特徴バーコードマトリックス生成後に、3個未満の細胞で発現する遺伝子と200個以下の遺伝子発現を示す細胞を除去した。さらに、ミトコンドリア遺伝子発現の20%以上を示す細胞と2,000個以下の分子発現を示す細胞を除去した。データは、dimension reduction法によって補正された。High dimensionデータを視覚化するために、‘mean.var.plot’を有するFindVariableFeatureによって選ばれた非常に多様な遺伝子を介してPCA(principle component analysis)を行った。細胞は、FindClusterを利用して10PCと0.5 resolution parameterに区分されたクラスターに配分された。UMAPを利用して10PCに基づく細胞を挿入して細胞クラスター情報を視覚化した。
【0058】
定量化及び統計分析:免疫ブロットの定量化はImage Jソフトで行われた。統計分析は、GraphPad Prismソフトを利用してグループの差を見せるために、Mann-Whitney U-検定とStudent’s t-検定で行われた。
【0059】
実施例1.Phf7
tKO雄マウスを利用してPHF7精子形成過程に関与することを究明
精巣でPHF7の高い発現を根拠にPHF7が精子形成過程で機能を分析した。まず精子形成過程の間PHF7がいつ発現するのか調べるために、本願では他の発生時期のマウスから精巣抽出液を分析した。週齢に応じて次の発生段階が観察される;7dppに精原細胞、14dppに精母細胞、21dppに円形精細胞、28dppに伸長型精細胞、30dppに凝縮型精細胞、35dppに精子(
図1A)。21dppにPhf mRNAレベルが増加して(
図1B)、28dppにPHF7タンパク質レベルが増加するため(
図1C)、PHF7は円形と伸長型精細胞で発現することが分かった。
【0060】
精子形成過程で、PHF7の役割を調べるために、本願では精巣特異的なPHF7ノックアウト(KO)マウス(以後Phf7
tKO)を作製した(
図8A)。対照群(Phf7
f/f)マウスに比べてPhf7
tKOマウスの精巣細胞でPHF7タンパク質発現が欠失されていることを見ることができる(
図1D)。本願では、対照群マウスとPhf7
tKOマウスを野生型雌と交配して、Phf7
tKO雄は対照群雄に比べて不妊であった(
図1E)。対照群雄とPhf7
f/f雄の体重対比精巣重さに対する比率に大きい差はなかった(
図8B)。さらに、本願ではヘマトキシリン-PAS染色をした時、Phf7
tKO雄の洗浄管で明確な欠陥が観察できなかった(
図1F)。
【0061】
副睾丸でヘマトキシリン-エオシン染色による組織学的分析で対照群よりPhf7
tKOで精子数が少ないことを観察した(
図1G、1H)。Phf7
tKOマウスの精子は対照群に比べて低い運動性を示した(
図1I)。IVF実験でPhf7
tKO精子が対照群精子に比べて低い受精率を示した(
図1J)。引き続き精子の形態を観察して、Phf7
tKO精子の大部分が対照群に比べて丸くて大きい頭を有するのを見ることができた(
図1K)。これは、Phf7
tKO精子が対照群に比べて頭に少なく凝縮されたクロマチンを有することを示す。
【0062】
精子成熟過程の間、円形精細胞の核はヒストン-プロタミン交換を含むクロマチン凝縮によって凝縮が起きる。少なく凝縮された頭を有する精子は、クロマチンでヒストンとプロタミンの非正常的な比率によって現れる。従って、本願では精子でヒストンとプロタミンの量を測定した。対照群に比べてPhf7
tKO精子でより多くの量のヒストンが検出された(
図1L、1M)。さらに、Phf7
tKO精子でより多くのPRM1と、より少ないPRM2が観察された(
図1M)。次に、ヒストン-プロタミン交換が起きる精細胞を分析した。本来は、ヒストンが検出されない凝縮型精細胞でヒストンが残っているのか調べるために、精巣切片でヒストンH3とPRM1、PRM2、TNP2に共同免疫染色を行った。対照群マウスのstage VII-VIII洗浄管には、PRM1、PRM2が発現する凝縮型精細胞でH3が検出されないが、Phf7
tKOマウスではH3とPRM1、PRM2が共に発現する精細胞が観察された(
図1N及び
図8C)。対照群マウスのstage I洗浄管にある凝縮型精細胞は、H3は発現せずTNP2を発現する。しかし、Phf7
tKOマウスの一部凝縮型精細胞でH3とTNP2が共に発現した(
図8D)。精細胞分画でヒストンのタンパク質レベルを分析した時、対照群マウスの精細胞は、発生が進行されるにつれヒストンレベルが減少したが、Phf7
tKOマウスではそうでなかった(
図1O)。従って、対照群マウスの凝縮型精細胞ではヒストンが除去されるが、Phf7
tKOマウスの凝縮型精細胞にはヒストンが残っている。このデータは、Phf7
tKO雄が精子成熟過程でヒストン-プロタミン交換に欠陥があって、精子数の減少と非正常的な形態によって不妊になったことを示す。
【0063】
実施例2.PHF7はヒストンH3の14番リシンに対するE3ユビキチンリガーゼとして作用することを究明
本願では、対照群マウスに比べてPhf7
tKOマウスの精巣細胞で25kDaの下のH3バンドが減少したのを観察した(
図2A)。上に移動したバンドが、ユビキチン化されたH3であるか調べるために、精巣細胞抽出液でH3抗体で免疫沈降をした後、Ub抗体で探知した。同じ大きさで対照群精巣細胞抽出液では、ユビキチン化されたH3が検出されて、Phf7
tKO精巣細胞ではユビキチン化されたH3の量が減少した(
図2B)。
【0064】
前記H3ユビキチン化の結果を根拠に引き続きPHF7がH3のE3ユビキチンリガーゼとしての可能性を詳細に分析した。具体的に、HEK293T細胞にPHF7とユビキチンを過発現してPHF7によるH3ユビキチン化を確認した。興味深いことに、PHF7とHismax-Ubを入れた群で、28kDaのHismax-Ub-H3と22kDaの内生的H3ubを観察した(
図2C)。PHF7がH2A K119ubを誘導することが知らされているが、PHF7がある時に、H2A K119ubが増加するのを観察した。H2BとH4は、PHF7の過発現によってユビキチン化されなかった(
図2C)。組換えヌクレオソームを利用してH3のin vitroユビキチン化アッセイを行った。これのために、E2ユビキチンコンジュゲート酵素をスクリーニングしてUbcH5Bと5Cが、PHF7がH3をユビキチン化する際のE2酵素であることを明らかにした(
図2D)。同じ条件で、PHF7はH2A K119、H2B、H4をユビキチン化させたが、H2B K120ub抗体を使った際にH2B K120のユビキチン化は検出されなかった(
図2D)。そして、PHF7、E1、UbcH5B/C、Ubの添加は時間依存的にH3ユビキチン化を増加させた(
図2E)。次に、PHF7を媒介したH3ユビキチン化の残基を確認した。H3の欠失突然変異を利用したin vitroユビキチン化実験は、H3のN-末端内でユビキチン化が起きることを示している(
図2F)。In vitroユビキチン化実験で得たH3ubに対するLC-MS/MSはH3のユビキチン化残基が、K14であることを示している(
図9A)。尚、突然変異作製した時に、ただH3のK14R突然変異だけPHF7によってユビキチン化されなかった(
図2G)。H3のK14残基はin vitroユビキチン化実験でも証明された(
図2H)。尚、PHF7を過発現したHEK293T細胞抽出液でユビキチン化タンパク質に対するLC-MS/MS分析によって対照群に比べてPHF7の過発現が変形されたH3K14ペプチドを増加させるのを確認した(
図9B)。対照群とPhf7
tKOマウスの精巣細胞を利用したLC-MS/MSでH2A、H2Bユビキチン化が30%減少した(
図9C)。しかし、LC-MS/MS分析で精巣細胞のH3K14ubを検出することができなかった。これは、H3K14ubが少ない量で存在するか少ない比率の精細胞で存在したためと推定される。このデータは、PHF7がH3の14番リシンにE3ユビキチンリガーゼ活性を有することを示す。
【0065】
PHF7は、PHDドメインとRINGドメインを有する。従来の研究は、PHF7のN-末端PHDドメインがH3K4me2に特異的に結合して、PHF7のRINGドメインがE3ユビキチンリガーゼ活性に作用することを示した。PHF7のPHDドメインとRINGドメインがH3ユビキチン化に必要であるかを調べるために、各ドメインの欠失突然変異を作製して各ドメインの欠失はH3ユビキチン化を誘導できなかった(
図3A)。RINGドメインとPHDドメインの保存されたアミノ酸残基を壊したPHF7突然変異は、E3ユビキチンリガーゼ活性を失った(
図3B、3C)。PHF7のRINGドメイン突然変異は、in vitroでもH3をユビキチン化することができなかった(
図3D)。まとめると、PHF7のPHDドメインとRINGドメインがH3ユビキチン化に必要で、各ドメインが壊れるとPHF7によるH3ユビキチン化を喪失した。
【0066】
実施例3.PHF7の酵素活性がないC160Aノックイン(knock-in)マウスの作製及び分析
PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性が精子形成過程に重要であるか調べるために、PHF7の酵素活性が壊れたRINGドメイン内にC160A突然変異を有するPHF7ノックイン(knock-in,KI)マウスを(ここからPhf7
CA/CA)作製した(
図3E)。対照群(Phf7
+/CA)とPhf7
CA/CA雄を野生型雌と交配させた時、Phf7
CA/CA雄が対照群雄に比べて不妊であった(
図3F)。対照群雄は、野生型雄と似た受精能力を示すため、C160A突然変異は劣性であることが示された。Phf7
CA/CAマウスの精巣が目立つ欠陥が見られないにも関わらず、Phf7
CA/CAマウスの副睾丸で少ない数の精子が観察された(
図10A及びB)。Phf7
CA/CAマウスの精子は、対照群に比べて非正常的な形態、低い運動性、低い受精能力を示した(
図3G、3H、
図10C)。Phf7
tKOマウスの精子と類似するように、Phf7
CA/CAマウスの精子と精細胞は、精子成熟過程の間不完全なヒストン除去を示しているが(
図3J~3L)、これはPhf7
CA/CAマウスがPhf7
tKOマウスと似たような表現型であることを示す。重要なことは、対照群に比べてPhf7
CA/CAマウスの精巣細胞でH3ユビキチン化が減少した(
図3M)。まとめると、このデータは、PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性が精子成熟過程の間H3ユビキチン化に重要であることを示す。
【0067】
実施例4.PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性はH4過アセチル化以後のヒストン除去に重要であることを究明
ショウジョウバエでPHF7は、生殖細胞で下位遺伝子の転写調節に役割をすることが知らされている。マウス精子形成過程で、PHF7の欠失が遺伝体水準で転写体変化を誘導するのか調べるために、10Xゲノミクス分析法を利用して対照群とPhf7
tKOマウスの精巣細胞で転写体を分析した。単一細胞RNAシーケンシング結果は、二つの生物学的繰り返し実験で再現性が高く、精原細胞から精細胞までの知らされた細胞群集のように良好に分類された(
図4A、
図11)。細胞群集は、精子形成に関与した細胞の構成が対照群とPhf7
tKOマウスとで類似していることを示す。しかし、驚くべきことに二つのマウスの間で各群集内の有意な遺伝子発現パターンの差を発見することができなかったが(
図4B)、これはPHF7の欠陥がマウスの精子形成過程の間転写体に有意な変化を与えないことを示す。これを根拠に精子成熟過程の間クロマチン凝縮の変化を分析した。
【0068】
従って、TnpとPrmの発現をまず分析した。単一細胞RNAシーケンシング結果を代弁するように、qRT-PCR分析は、この遺伝子のmRNAレベルに大差ないことを示した(
図4C)。しかし、精細胞抽出液を利用した免疫ブロット分析は、対照群に比べてPhf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスとでTNP1/2、PRM2のタンパク質レベルが減少しているのを示す(
図4D、4E)。次に、伸長型精細胞でヒストン-プロタミン交換以前に起きる後成遺伝学的イベントであるH4過アセチル化を分析した。驚くべきことに、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスの精細胞は、対照群に比べて非常に高いレベルのH4アセチル化を示した(
図4F、4G)。PHF7の欠陥が精巣でH4アセチル化をどのように増やしたのか調べるために、精巣切片で免疫染色実験をした。マウスで精子形成周期は12段階からなり、12段階以後、次の周期の1段階となる(
図12)。減数分裂以後、精子成熟過程は、16ステップに分かれる。洗浄管基底にある精原細胞は、精子形成過程が進行しながら内側に移動するようになり12、1-8段階洗浄管に(ステップ12-16)凝縮型精細胞が存在して、9-11段階洗浄管には(ステップ9-11)伸長型精細胞が存在する。対照群精巣でH4アセチル化は9段階洗浄管のステップ9伸長型精細胞で初めて現れて、12段階洗浄管のステップ12凝縮型精細胞で減少するが、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスの精巣でH4アセチル化は正常的にはH4アセチル化が存在しない1-8段階洗浄管のステップ13-16凝縮型精細胞まで残っている(
図12B、C)。伸長型精細胞で発生するH4過アセチル化は、ヒストン除去を誘導して、これによって凝縮型精細胞ではH4アセチル化のレベルが減るようになる。より正確な検証のために、H4acを凝縮型精細胞のマーカーであるTNP2(ステップ11-14精細胞、11-2段階)、PRM1(ステップ11-16精細胞、11-8段階)、PRM2(ステップ14-16精細胞、2-8段階)と共同免疫染色を進行した。対照群で精巣切片上のH4acとPRM2は相反する発現を示しているが、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスの精巣ではすべての洗浄管でH4acが検出されてPRM2と共同染色された(
図4H)。TNP2とPRM1は、ステップ11精細胞(11段階)から発現するため、対照群ではただステップ11-12精細胞(11-12段階)だけにおいてH4acと二つのタンパク質が共同染色になった。しかし、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスでは、すべての洗浄管にH4acが発現するため、TNP2とPRM1が発現するすべての精細胞でH4acと共同染色になる(
図13A、B)。Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスの凝縮型精細胞でヒストンが残っていることを観察したため、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスの凝縮型精細胞でH4acが残っていることである。
【0069】
PHF7とH4acとの間の関係を調べるために、Flag-PHF7 KIマウスを作製した(ここからPhf7
Flag)(
図14A)。Phf7
Flag/+マウスの精巣細胞を利用した免疫ブロット分析でFlag-PHF7タンパク質の発現を確認した(
図14B)。Flag抗体で組織免疫染色をした時、11段階から2段階洗浄管で、ステップ11-12精細胞の核内でFlag-PHF7を検出した(
図14C、D)。Phf7
Flag/+マウスの精巣切片でH4acとFlagを共同免疫染色するとFlag-PHF7はH4ac誘導以後に発現してステップ11-12精細胞でH4acのように発現する(
図14E)。PHF7の発現タイミングは、PHF7の欠陥がH4過アセチル化の誘導には影響を与えないことを示す。
【0070】
まとめると、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスの凝縮型精細胞で非正常的に残っているH4アセチル化は、精子成熟過程の間ヒストン除去が不完全に起きたためであると見ることができる。このような結果は、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスでH4過アセチル化以後ヒストン除去に問題があることを示す(
図4I)。
【0071】
実施例5.PHF7の欠陥は初期凝縮型精細胞でBRDTの減少を誘発して不完全なヒストン除去につながることを究明
Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスでH4過アセチル化以後ヒストン除去がなぜ壊れたのか分子機構を調べるために、まずH4アセチル化を認知するヒストン除去因子であるBRDTのレベルを測定した。驚くべきことに、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスの精細胞でBRDTのタンパク質レベルmRNAレベルは差がなく対照群に比べて低いことを示した(
図5A、5B)。Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスでどの精子成熟時期にBRDTが減っているのか確認するために、BRDTとH4acに対して組織免疫染色を行った。BRDTは、精母細胞からマウスでは伸長型精細胞、ヒトでは精子まで検出されると知らされているが、本研究者等は、BRDTが対照群マウスでステップ12精細胞まで発現して、その発現がステップ13精細胞で減少することを確認した(
図5C、5D)。H4acは、ステップ11精細胞とステップ12精細胞の核でBRDTと共同染色されて、それらのレベルがステップ13精細胞で減少した(
図5E)。驚くべきことに、Phf7
tKOとPhf7
CA/CAマウスのステップ12精細胞でBRDTのレベルが減少して、ステップ12精細胞とステップ13精細胞の核でH4acがより多く残っているのを観察した(
図5C-5E)。ヒストンは、後期伸長型精細胞から初期凝縮型精細胞までの時期に除去されて、H4acはステップ13精細胞で検出されない。このデータは、ステップ12精細胞までのH4acとBRDTの共同発現がヒストン除去に重要で、PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性がステップ12精細胞でBRDTレベルを維持するのに必要であることを示す。従って、PHF7の欠陥がステップ12精細胞でBRDTレベル維持に失敗して、これによって不完全なヒストン除去が起きたと推定した。
【0072】
実施例6.PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性はBRDT安定性に重要であることを究明
減数分裂後、精細胞でPHF7がBRDTとの関連性を分析するために、まずPhf7
Flag/+マウスの精細胞でPHF7とBRDTの共同発現を確認した。組織免疫染色結果は、PHF7とBRDTがステップ11-12精細胞で共に発現するのを示す(
図6A)。BRD2、3、4を含むBETファミリーは、BD1とBD2との問にSPOPデグロンがあるが、Cul3-SPOP E3ユビキチンリガーゼによって安定性が調節される。重要なことに、本研究者等は同じファミリーの中の一つであるBRDTにSPOPデグロン配列があることを見出した(
図6B)。HEK293T細胞にBRDTとSPOPを過発現後に進行した免疫ブロット結果は、SPOPによるBRDT分解がMG132処理によって抑制されることを示す(
図6C)。SPOPデグロン配列がないBRDT突然変異は、SPOPによって影響されなかったが、これはCul3-SPOPがBRDTを分解させるE3ユビキチンリガーゼであることを示している。
【0073】
PHF7がBRDT安定性に影響を与えるのか調べるために、HEK293T細胞にBRDT、SPOP、PHF7を過発現した。PHF7 WTは、SPOPを媒介した分解を弱化させることによって、BRDTタンパク質量を増やした反面、PHF7 C160Aはそうでなかった(
図6D)。SPOPの知らされた基質であるBRD4とPTENは、PHF7によって増加しなかったが、PHF7がSPOPの活性に影響を与えなかったことを示す。SPOPとCul3は、精細胞で発現してPHF7突然変異精細胞でBRD4とPTENも対照群と大きい差はなかった(
図6E)。次に、ユビキチン化アッセイでPHF7 C160AでないWTだけがBRDTのユビキチン化を弱化させた(
図6F)。細胞免疫染色分析は、BRDT、SPOP、PHF7が核内で共に発現することを示した(
図6G)。in vitroユビキチン化アッセイは、PHF7自体がSPOPによって誘導されたBRDTのユビキチン化を弱化させることはなかった(
図6H)。これは、PHF7が直接的にBRDTのユビキチン化を調節しないことを示している。まとめると、このデータは、PHF7のE3ユビキチンリガーゼ活性はSPOPによるBRDTの分解を弱化させることによって、BRDT安定性を維持するのに重要であることを示す。
【0074】
PHF7がBRDTタンパク質安定性にどのように影響を与えるのか調べるために、まずPHF7とBRDTの結合を確認した。しかし、PHF7はBRDTと直接的に付かず(
図7A)、それで、PHF7を媒介したヒストンユビキチン化がBRDTの調節と関連があるか調べることにした。GST-BRDTとヒストンユビキチン化やH4acを有するヌクレオソームを利用したin vitroプルダウンアッセイは、PHF7媒介ヒストンユビキチン化がH4acを有するヌクレオソームとBRDTの結合を弱く増加させた(
図7B)。それにもかかわらず、PHF7媒介ヒストンユビキチン化とH4acを有するヌクレオソームがSPOPによって誘導されたBRDTユビキチン化を抑制して、各々一つずつあるヌクレオソームはそうでなかった(
図7C)。このデータは、PHF7媒介ヒストンユビキチン化は、H4acがある時にBRDTと相互作用して、BRDTのユビキチン化を調節することを示している。伸長型精細胞でH4過アセチル化以後、BRDTがH4acを認知してPHF7媒介ヒストンユビキチン化は、初期凝縮型精細胞でBRDTの安定化に寄与して、ヒストン除去を促進することが推定される(
図7D)。
【0075】
ショウジョウバエでPHF7は、初期生殖細胞で雄特異的な遺伝子発現を活性化させることによって、原細胞としての決定を調節すると知らされている。マウスで、従来の研究は、円形精細胞でPHF7媒介H2Aubに焦点が合わされて、以後伸長型精細胞でヒストン-プロタミン交換に必要な過程であるRNF8媒介H2Aub及びH2Bubが起きると推定した。
【0076】
本願では、H3K14ubがPHF7のさらに他の基質であり、精子成熟過程でヒストン-プロタミン交換に重要であることを明らかにした。伸長型精細胞でH4過アセチル化以後、PHF7媒介ヒストンユビキチン化がこれと組み合わせてBRDTの安定化に寄与して、即ち、PHF7が初期凝縮型精細胞でBRDTを維持する重要な役割をするようになる。PHF7の欠陥は、H3K14ubの欠乏を誘導し、続いて初期凝縮型精細胞でBRDTタンパク質量を減少させて、ヒストンが残っている非正常的な精子の発生を誘導するようになる。本発明は、ヒストンユビキチン化によりクロマチン上の豊富なBRDTヒストン-プロタミン交換のためのヒストン除去を促進するのを提示する。
【0077】
以上で、本願の例示的な実施例について詳細に説明したが、本願の権利範囲は、これに限定されず次の請求の範囲で定義している本願の基本概念を利用した当業者の様々な変形及び改良形態も本願の権利範囲に属するものである。
【0078】
本発明で使われるすべての技術用語は、別に定義されない限り、本発明の関連分野で通常の当業者が一般的に理解するもののような意味で使われる。本明細書に参考文献と記載されるすべての刊行物の内容は、本発明に取り入れる。
【国際調査報告】