(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】後施工材用の表面に適用される化学反応性防水加工
(51)【国際特許分類】
C04B 41/63 20060101AFI20230518BHJP
【FI】
C04B41/63
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572633
(86)(22)【出願日】2021-05-27
(85)【翻訳文提出日】2023-01-23
(86)【国際出願番号】 US2021034449
(87)【国際公開番号】W WO2021242979
(87)【国際公開日】2021-12-02
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522459465
【氏名又は名称】ハイクリート インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローデス,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】トゥラック,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】レッドマン,ショーン
(72)【発明者】
【氏名】ワハブ,ファザル
【テーマコード(参考)】
4G028
【Fターム(参考)】
4G028CA01
4G028CB01
4G028CD02
4G028CD03
(57)【要約】
水不溶性ポリマーを含有する、コンクリートを含む後施工材が、本明細書で開示されている。水不溶性ポリマーは、脂肪酸塩のブレンドを含む第1の組成物、及びアルカリ土類金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属炭酸塩を含む第2の組成物を使用して、後施工材の表面の真下に形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する後施工材を処理する方法であって:
表面に、それぞれ1個(1)から4個(4)の酸性基を有する脂肪酸塩のブレンドを含む第1の組成物を適用するステップ、
第1の組成物の第1の部を、表面を通して移動させ、第1の組成物の第2の部が、表面に留まるステップ、
第1の組成物の第2の部の少なくとも一部を、表面から除去するステップ、
表面に、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを含む第2の組成物を適用するステップ、及び
第2の組成物の少なくとも一部を、表面を通して移動させ、表面の真下で脂肪酸塩と反応させて、1種以上の水不溶性ポリマーを形成するステップを含む、方法。
【請求項2】
第1の組成物の第2の部の少なくとも一部を、表面から除去するステップ中又はその後で、後施工材を乾燥させるステップをさらに含み、乾燥させるステップを、30℃.から130℃.の温度にて実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも1種が、以下の式(II)又は式(III):
【化1】
(式中、
Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであり、
R
1は、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基であり、
aは1から3の整数であり、
R
2は、直鎖C
1~C
10アルキレン基であり、
Mはアルカリ土類金属であり、
nは2以上の整数である)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1の組成物が、第1の組成物の合計重量に対して5から40wt.%の脂肪酸塩のブレンドを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の組成物が水性組成物である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
第1の組成物が、噴霧、ローリング、霧吹き、浸漬、注入、散布、挿入、加圧処理又はそれらの組合せにより表面に適用される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の組成物が、減粘剤及び/又は消泡剤をさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
脂肪酸塩のブレンドが、以下の式:
【化2】
(式中、
各Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであるが、但し、少なくとも1つのXがアルカリ金属であることを条件とし、
各R
1は、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル基、又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基であり、
各aは1から3の整数であり、
各R
2は、直鎖C
1~C
10アルキレン基であり、
X、R
1及びR
2が、異なる脂肪酸では異なり得る)を有する少なくとも1種の脂肪酸塩を含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
脂肪酸塩のブレンドが、式Iの1つ超の脂肪酸塩を含み、式Iの塩が、C
10からC
16のR
1の加重平均を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
第1の組成物が、後施工材の表面の真下の空隙領域に移動する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
後施工材が、コンクリート、鉄筋コンクリート、モルタル、スタッコ、木材及びそれらの組合せを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
除去するステップが、少なくとも50%の第1の組成物の第2の部を表面から除去するステップを含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第2の組成物が、第2の組成物の合計重量に対して、1から30wt.%のアルカリ土類金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属炭酸塩を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
第2の組成物が、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、重炭酸ストロンチウム又はそれらの組合せを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
第2の組成物は、シラン及び/又はシロキサンを実質的に含まない、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
1種以上の水不溶性ポリマーが、1000ダルトン超の平均分子量を有する、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
後施工材の防食機能を改善する、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
後施工材からのラドン排出を減少させる、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
少なくとも1つの表面、及び表面の真下の空隙領域を有する後施工材であって、
以下の式(II)又は式(III):
【化3】
(式中、
Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであり、
R
1は、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基であり、
aは1から3の整数であり、
R
2は、直鎖C
1~C
10アルキレン基であり、
Mはアルカリ土類金属であり、
nは2以上の整数である)を有する1種以上の水不溶性ポリマーを含み、
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも一部が、空隙領域内に位置する、後施工材。
【請求項20】
表面が、水不溶性ポリマーの合計量に対して、5%以下の水不溶性ポリマーを含む、請求項19に記載の後施工材。
【請求項21】
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも1種が、少なくとも2個の異なるR
1基を有する繰り返し単位を含有する、請求項19又は20に記載の後施工材。
【請求項22】
1%未満の吸収を示す、請求項19から21のいずれか一項に記載の後施工材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、後施工材に対して使用するための水不溶性ポリマー、及び慎重に表面に適用される2つの組成物を化学的に反応させることにより、不溶性ポリマーを形成する方法に関する。この方法は、表面の真下に水不溶性ポリマーを形成する。水不溶性ポリマーが形成されると、後施工材に防水加工が付与される。
【背景技術】
【0002】
構造の損傷及び劣化、並びに人的負傷の可能性に関して、材料における腐食及び他の構造的な欠陥にかかるコストは、甚大である。金銭的観点から、腐食にかかるコストのみで、米国で毎年3000億ドル超と見積もられている。腐食防止の、及び他の潜在的な構造的欠陥への対処の課題は、依然として建築及び保守産業が直面する難題である。
【0003】
通例、構造は、コンクリート材料でできている。従来のコンクリートは、きわめて低い引張り強さを有するため、コンクリートにかなりの負荷がかかる用途では、コンクリートを鋼棒で強化することが慣例である。そのような運用では、コンクリートは少なくとも2つの機能を有する。1つの機能は、鉄筋棒を腐食から保護することである。もう1つの目立った機能は、せん断抵抗及び圧縮応力を改善することである。一般的に、硬化させたコンクリートの、鉄筋に対する気候及び環境条件からの保護効果は、例えばセメントの量及びタイプ、水/セメント比及びコンクリートの完全性によって決まる。しかし、コンクリートは透水吸収性材料でもあるので、コンクリートは、水分及び他の物質の望ましくない浸入をきたすことが多く、これらのそれぞれは鉄筋の腐食を引き起こす恐れがある。
【0004】
実際に、コンクリートは、相互接続した細孔の膨大な網様構造を有する、多孔材料であることが広く公知である。コンクリートの細孔が水で占められ、及び周囲雰囲気の相対湿度が不飽和である場合、水分蒸気がコンクリートから排出される。多くの状況では、コンクリートからの水分蒸気の排出は、空気の湿気の一部になるだけである。しかし、とりわけ床用オーバーレイ材料を収容するコンクリートスラブを伴う一部の状況では、コンクリートからの水分蒸気の排出は、芳しくない結果、例えば床用接着剤の分解及び床材の層間剥離を引き起こす。少なくとも先述の理由のため、水分蒸気のコンクリートからの排出を減少させる、又は取り除くことが有利である。
【0005】
水分蒸気のコンクリート系からの排出を減少させる多数の方法が実際に存在する。問題となっている水分の供給源に少なくとも部分的に基づく特定の方法が頻繁に用いられる。コンクリート構造/系から生じる可能性がある遊離混合水(free mix water)又は表面雨水のケースでは、様々なシーラント系及び乾燥技術が、水分蒸気の排出速度を許容できるレベルに低下させるために使用されている。これらの方法は経済的ではなく、適用するのに大きな労働力を要する。コンクリートスラブを通して運ばれ、水分蒸気として生じる地下水のケースでは、ポリマーシートの様々な蒸気バリアが、コンクリートに接触し、そこを通って運ばれる地下水を防止するため、又は地下水がそうする程度を低下させるために使用されている。そのようなシートは、さらなるコスト/労働力を伴い、継ぎ目及び穴のため、様々なレベルの非信頼性の影響を受けやすい。
【0006】
コンクリート構造の早期劣化を解決するために試みが行われたことは、注目される。例えばJaklinの米国特許第4,869,752号は、鋼鉄構造又は鉄筋の腐食を防止する、修飾無機シリケート、例えば修飾アルカリシリケートの、コンクリート添加剤としての使用について記載している。Katootの米国特許第6,277,450号は、様々な厚さの完全に架橋されたポリマーに受容可能な金属水酸化物の活性部分に、修飾された金属表面をコーティングするコーティング方法の使用について記載している。使用されている他の方法は、建設及び建築産業で使用される金属の表面のプレコーティングを含んでいた。しかし、そのような方法は、一般的にコストがかかり、無効かつ非効率的/非実用的である。
【0007】
以前の試みは、材料において二価金属と反応させる処理にも依存していた。これは、空隙の一部を充填するのに有効であったが、一部のタイプの後施工材は、二価金属を欠く。さらに、比較的少量の二価金属では、一貫性があり信頼性が高い手段にて空隙を充填する能力が限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在までの試みにもかかわらず、効率的で信頼性が高く、コスト効率のよい手段で、多孔構造、例えばコンクリート含有構造を通した蒸気透過、例えば水分透過を低下させる、及び/又は取り除くことができる処理、材料及び方法の必要性は依然としてある。これらの、及び他の必要性は、開示されている水不溶性ポリマー及び方法により有利に満たされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は一般的に、改善した防水加工後施工材に関する。一実施形態では、それぞれ1個(1)から4個(4)の酸性基を有する脂肪酸塩のブレンドを含む第1の組成物を、表面を通して移動させるステップ、場合により後施工材を乾燥させるステップ、脂肪酸塩の少なくとも一部を、表面から除去するステップ、及び第2の組成物を、表面の真下で脂肪酸塩と反応させて、1種以上の水不溶性ポリマーを形成するステップにより、表面を有する後施工材、例えばコンクリートを処理する方法が提供される。一実施形態では、脂肪酸のブレンドは、以下の式:
【0010】
【化1】
(式中:
Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであるが、但し、少なくとも1つのXがアルカリ金属であることを条件とし、
R
1は、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル基、又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基であり、
aは1から3の整数であり、
R
2は、直鎖C
1~C
10アルキレン基である)を有する、少なくとも1種の脂肪酸塩を含有する。
【0011】
同じく表面に適用される第2の組成物は、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを含み得る。
【0012】
別の態様では、本開示は、少なくとも1つの表面、及び空隙領域を有する後施工材であって、以下の式(II)又は式(III):
【0013】
【化2】
(式中、
Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであり、
R
1は、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基であり、
aは1から3の整数であり、
R
2は、直鎖C
1~C
10アルキレン基であり、
Mはアルカリ土類金属であり、
nは2以上の整数である)を有する1種以上の水不溶性ポリマーを含み、
1種以上の水不溶性ポリマーが、空隙領域内に位置する、後施工材を提供する。
【0014】
追加の特徴、機能性及び有益な結果は、開示された溶液/系に関連し、それに関連した処理様式は、後続する詳細な記載から明らかになる。
【0015】
本開示は、図面に関して以下に詳細に記載されており、同じ数字が同じ部分を指定する:
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態による2つの組成物を後施工材の表面に適用するプロセスのフローダイヤグラムである。
【
図2A】本開示の実施形態による不溶性ポリマーを表面の真下に形成する2つの組成物が表面に適用される、後施工材の断面図である。
【
図2B】本開示の実施形態による不溶性ポリマーを表面の真下に形成する2つの組成物が表面に適用される、後施工材の断面図である。
【
図2C】本開示の実施形態による不溶性ポリマーを表面の真下に形成する2つの組成物が表面に適用される、後施工材の断面図である。
【
図2D】本開示の実施形態による不溶性ポリマーを表面の真下に形成する2つの組成物が表面に適用される、後施工材の断面図である。
【
図2E】本開示の実施形態による不溶性ポリマーを表面の真下に形成する2つの組成物が表面に適用される、後施工材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示は、部分的に後施工材及び表面に適用される化学反応性組成物により形成される1種以上の水不溶性ポリマーを対象とする。不溶性ポリマーは、その防水性を改善する後施工材内に分布する。
【0018】
一実施形態では、水不溶性ポリマーは、後施工材の表面の真下に形成され、形成は、強度の性質を低下させず、又は表面外観を変化させない。本開示の目的に関して、表面の真下にという用語は、後施工材内又は後施工材の空隙領域内を意味する。したがって、脂肪酸塩のブレンドの重合は、表面で、例えば曝露側又は視認側で発生しない。
【0019】
図1は、本開示による具体化された一プロセスを例証し、これは、
図2A~2Eにおける断面図でも示される。表面に適用される化学反応性プロセス10は、
図2Aに示されているように、表面102を有する後施工材100を得ることによるステップ12で始める。一実施形態では、後施工材100は、処理前に形成され、又は硬化させ、防水加工処理、例えばシーラント又はバリア、例として膜を有さない。表面102は、環境に曝露されていてよく、視認される外部表面であってよい。いくつかの実施形態では、後施工材100は、環境に曝露した1つ超の表面を有し得る。各表面でプロセスを必要に応じて繰り返してよい。水不溶性ポリマーにより改善され得る表面を有する後施工材の模範的な運用は、とりわけ深基礎スラブ及び壁、演壇及びプラザデッキ、屋根、駐車場及びトンネル構造を含む。
【0020】
後施工材は、特に限定されず、セメント質組成物、コンクリート、鉄筋コンクリート、アスファルト、コンクリートアスファルト、モルタル、スタッコ、木材及びそれらの組合せを含み得る。後施工材は、再生骨材を含み得る。本明細書に記載されているプロセスによる処理に好適な後施工材は、一般的に、多孔性であり、空隙領域104、例えば1つ以上の相互接続する空隙網様構造又は連続気泡構造を形成し得る細孔を有する。空隙は、後施工材におけるクラック(ヘアラインクラックを含む)、割れ目、キャピラリー、開口なども含み得る。例証の目的で、
図2A~2Eは、後施工材100において相互接続した空隙網様構造である空隙領域104の例を示す。これらの空隙は、曝露、凍結/解凍状態、摩耗及び裂け目などのため、さらなる構造的な問題を引き起こし得る水分侵入に感受性があることがある。後施工材が水分に曝露することは、構造的な欠陥を引き起こし得ると理解される。これらの空隙は、後施工材内の、又はそれに隣接した鋼部材、例えば鉄筋へと浸水する経路も生じ得る、また、腐食問題を引き起こし得る。
【0021】
本明細書で使用されている後施工材は、多孔性であると言われ、その体積の2%から50%(好ましくは3%から40%又は4%から30%)が、主に相互接続した網様構造の形態の空隙からなる。従来のコンクリートは、セメント、粗骨材、砂及び水の混合物であり、約3%から5%の空隙空間を有し得、空隙空間の体積は、骨材粒度に応じて変動し得る。
【0022】
簡潔さのため、本開示は、コンクリートベース系及び運用を主に対象とする。しかし、本開示はそれらに限定されない。模範的な後施工材の実務的な用途は、コンクリート道路デッキを有する橋であり得る。
【0023】
ステップ14では、第1の組成物が、後施工材の少なくとも1つの表面に適用される。第1の組成物は、多彩な許容できる技術を使用して適用され得る。
図2Bに示されているように、第1の組成物106は、噴霧器108により第1の表面102に適用される。噴霧器108は、低圧又は高圧噴霧器であり得る。噴霧は、第1の組成物106の後施工材100への適用の一例であることは理解されるべきであり、ブラッシング、ローリング、霧吹き、浸漬、注入、散布、挿入及び加圧処理を含み、それらの組合せを含む、すなわち第1の組成物に表面102を通して移動させ、空隙104に入れるのに十分な様々な他の技術が使用され得る。これは、第1の組成物を後施工材の空隙中に浸透させることを可能にする。一実施形態では、第1の組成物は、重複パターンで噴霧される。第1の組成物の単回の処理は、第1の組成物を表面を通して移動させるのに十分になり得るが、いくつかの実施形態では、第1の組成物は、移動を確実にするために連続する処理で適用され得る。したがって、例えば第1の組成物の1から5回の処理が使用され得る。
【0024】
表面に適用される第1の組成物の量は、脂肪酸のブレンドの濃度に応じて変動し得る。一実施形態では、およそ1リットルの第1の組成物は、1から10m2、例えば1.2から5m2の後施工表面に適用される。
【0025】
開示されている第1の組成物を表面に適用する前に、表面を清掃してよい。いくつかの実施形態では、例えば表面は、高圧洗浄して、存在するレイタンス、混入物、コーティング、ほこり及び/又は汚れのいずれかを除去できる。次いで表面は、好ましくはすすいでよく、第1の組成物の適用前に乾燥させる機会を用意してよい。しかし、乾燥を完了する必要はなく、第1の組成物は、濡れた表面に適用してよい。
【0026】
一実施形態では、第1の組成物は、各1個(1)から4個(4)の酸性基を有する脂肪酸塩のブレンドを含む。脂肪酸塩のブレンドは、水溶性であり得、一実施形態では、第1の組成物は、5から40重量%、例えば5から25重量%又は5から20重量%の脂肪酸塩のブレンドを含む水性組成物であり得る。
【0027】
第1の組成物は、以下の式:
【0028】
【化3】
を有する少なくとも1種の脂肪酸塩を含む。
【0029】
Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであるが、但し、少なくとも1つのXがアルカリ金属であることを条件とする。好適なアルカリ金属は、Li、Na、K、又はそれらの混合物を含む。例えばブレンドは、脂肪酸とLiの塩、Naの塩及び/又はKの塩を様々な比で含み得る。一実施形態では、ブレンドは、50から95wt.%ナトリウム塩、及び5から50wt.%カリウム又はリチウム塩を含み得る。
【0030】
R1は、直鎖若しくは分岐C3~C20アルキル基、好ましくはC8~C16アルキル基、又は直鎖若しくは分岐C3~C20アルケニル基、好ましくはC8~C16アルケニル基である。不飽和のアルケニル基における位置は、変動し得、α-β-不飽和基又はn-6不飽和基であり得る。脂肪酸塩のブレンドは、異なるR1基を有する脂肪酸を有し得る。一実施形態では、ブレンドにおけるR1基の平均の鎖の長さは、9個(9)以上、好ましくは12個(12)以上であり得、これにより、R1基の重量平均がC10からC16、好ましくはC12になる。式Iは、1個以上のR1基を有し得、aは1(1)から3(3)の整数である。
【0031】
一実施形態では、分岐側鎖を表すR1基は、9個(9)から16個(16)の炭素原子を含み得る。C9からC16の包括的な範囲内にある分岐側鎖が、水溶解度のため、第1の組成物に有効なことを見出した。R1基が短い、すなわち、分岐炭化水素側鎖が短い(例えばC8以下)と、コンクリートを含有する構造中に組み込まれる場合(混合/配合段階であれ又は後施工段階であれ)、そのような短い炭化水素側鎖は、透水によって非常に洗い落とされやすいため、さほど有効ではない。したがって透水は、表面を通して移動する第1の組成物の量を減少させ、ひいては水不溶性ポリマーの反応及び形成に利用できる脂肪酸塩の量を減少させる。R1基がC17を超える長い鎖では、脂肪酸塩が、相互接続する空隙中に十分浸入することを防止する水溶解度の問題を有する傾向がある。
【0032】
R2は、直鎖C1~C10アルキレン基、好ましくはC1~C4、例えばメチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンである。メチレン及びエチレンは、好適なR2基である。R2が1超である場合、R2基に沿って位置する複数のR1基又は1個のR1基のいずれかが存在し得る。いくつかの実施形態では、R2基は、ヘテロ原子、例えばN、O又はSを有し得る。
【0033】
脂肪酸は1個(1)から4個(4)の酸性基を有し得るが、二酸が一般的に好ましい。
【0034】
一実施形態では、脂肪酸塩は、オクテニルマロン酸、デセニルマロン酸、ドデセニルマロン酸、ヘキサデセニルマロン酸、オクテニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、オクテニルペンタン二酸、デセニルペンタン二酸、ドデセニルペンタン二酸、ヘキサデセニルペンタン二酸、オクテニルヘキサン二酸、デセニルヘキサン二酸、ドデセニルヘキサン二酸又はヘキサデセニルヘキサン二酸のアルカリ金属又はアンモニウム塩を含み得る。ブレンドは、これらの脂肪酸塩の1種以上を含み得る。一実施形態では、ブレンドは、5%から95%、例えば60%から90%のドデセニルマロン酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニルペンタン二酸、ドデセニルヘキサン二酸又はそれらの混合物、及び5%から95%、例えば5%から40%のオクテニルマロン酸、デセニルマロン酸、ヘキサデセニルマロン酸、オクテニルコハク酸、デセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、オクテニルペンタン二酸、デセニルペンタン二酸、ヘキサデセニルペンタン二酸、オクテニルヘキサン二酸、デセニルヘキサン二酸、ヘキサデセニルヘキサン二酸又はそれらの混合物を含み得る。
【0035】
式I-aは、R2がエチレン基であり、aが1である、第1の組成物に好適な脂肪酸塩の式を示す:
【0036】
【化4】
(式中、Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであるが、但し、少なくとも1つのXが、アルカリ金属であることを条件とし、R
1が、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル基、好ましくはC
8~C
16アルキル基、又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基、好ましくはC
8~C
16アルケニル基である)。
【0037】
式I-bは、R2がエチレンであり、aが2である、第1の組成物に好適な脂肪酸塩の式を示す:
【0038】
【化5】
(式中、Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであるが、但し、少なくとも1つのXがアルカリ金属であることを条件とし、R
1は独立して、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル基、好ましくはC
8~C
16アルキル基、又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基、好ましくはC
8~C
16アルケニル基である)。
【0039】
脂肪酸塩は、不飽和炭化水素を、無水物、詳細には無水マレイン酸との上昇温度で反応させること、続いて真空蒸留、及び脱イオン水での水和反応により合成されて二酸を形成し得、これが、アンモニア又は苛性溶液で中和されて、塩を形成し得る。好適なプロセスは、米国特許第7,407,535号及び第7,670,415号に記載されており、全体の内容物及びその開示は、参照により本明細書によって組み込まれる。
【0040】
一実施形態では、第1の組成物の少なくとも一部は、セメント配合中に様々な水-セメント比で添加され得る。セメント混合物の配合物は、当業者に周知であり、それらの詳述されている考察は、本明細書では示されない。
【0041】
いくつかの実施形態では、第1の組成物は、添加剤、例えば減粘剤及び/又は消泡剤を含み得る。減粘剤(thinning agent)は、第1の組成物の粘度を低下させて、後施工材の空隙中への浸透を促進するために使用され得る。模範的な減粘剤は、イソプロピルアルコール、エタノール、キシレン及びそれらの組合せを含む。一部の減粘剤は、カチオン、例えば第2の組成物におけるものとの反応を低下させ得る。消泡剤は、有利には、空気連行に対処するために用いられる。模範的な消泡剤は、ポリエーテル修飾ポリシロキサン、トリ-アルカン/アルケンホスフェート及びそれらの混合物を含む。ポリエーテル修飾ポリシロキサンは、BYK Chemie(Germany)によりBYK 025及びBYK 094の商標で販売されている。本開示に従って消泡剤として使用するための模範的なリン酸塩は、Akzo Nobel(Germany)からPhosflex 4(リン酸トリブチル)の商標で入手できる。これらの添加剤は一般的に、セメント配合物に添加される場合、より有用である。したがって、後施工材に適用される場合、第1の組成物における添加剤の量は、第1の組成物の合計重量に対して、0から50重量%、例えば0から30重量%又は0から10重量%であり得る。
【0042】
プロセスにおいて、十分な量の第1の組成物が後施工材に適用されたら、次のステップ16は、第1の組成物106Aを表面102から除去することである。第1の組成物、詳細には脂肪酸塩の大半が、表面102を通して移動するが、ステップ14後に表面に留まった少量が存在することがある。第2の組成物が適用される場合、これが行われて表面における水不溶性ポリマーの形成が防止される。第1の組成物106Aは、脂肪酸塩の少なくとも50%、例えば少なくとも80%又は少なくとも95%を表面から除去するいくつかの好適なプロセス、例えば払拭、清掃、ローリング、吸引及び/又は加圧処理により除去され得る。場合により、30℃.から130℃.の温度にて乾燥させて、第1の組成物106Aを表面102からさらに除去するステップ17も存在してよい。乾燥させるステップも、空隙空間においていかなる水も減少させることができる。
【0043】
第1の組成物106\Aが表面102から除去され、必要な場合は十分に乾燥されたら、次いで第2の組成物110が表面102に適用される。第1の組成物と同様に、噴霧、ブラッシング、ローリング、霧吹き、浸漬、注入、散布、挿入及び加圧処理を含み、それらの組合せを含む第2の組成物110を適用するいくつかの技術が存在してよい。
図2Dは、表面102上に注がれる第2の組成物110を示す。第2の組成物110は、表面を通して、また、このとき第1の組成物106、詳細には第1の組成物106の脂肪酸塩により占められている空隙空間中に移動する。
【0044】
一実施形態では、第2の組成物は、1から30wt.%、例えば5から15wt.%のアルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを含む水性組成物であり得る。アルカリ土類金属化合物は好ましいが、第2の組成物は、好適な二価金属塩であり得る。第2の組成物に模範的な化合物は、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、重炭酸ストロンチウム又はそれらの組合せを含み得る。一実施形態では、水不溶性ポリマーの形成を維持するために、第2の組成物は、シラン及び/又はシロキサンを実質的に含まない。
【0045】
第1の組成物と同様に、第2の組成物は、表面を通して、また、このとき第1の組成物の脂肪酸塩により占められている空隙104中に移動する。この状態は、第2の組成物におけるアルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを、脂肪酸塩と反応させるのに好適である。この重合反応は、
図2Eに示されている水不溶性ポリマー112を形成するイオン交換であり得る。本明細書で開示されているプロセスに従って、反応は、後施工材内で、及び表面の真下に発生する。一般的に使用される表面の真下は、表面の環境に曝露していない、ひいては後施工材内の空隙空間を指す。したがって、水不溶性ポリマー112は、キャピラリーの水吸収を減少させるために空隙104内に形成される。さらに、表面の下に水不溶性ポリマーを形成することにより、後施工材の表面性状についての有害作用がなくなる。後施工材の外観は、変色による影響を受けない。さらに、水不溶性ポリマーにより、長持ちする保護が得られ、これは摩擦、摩耗又は表面欠陥により摩耗しない。一実施形態では、表面は、形成される水不溶性ポリマーの合計量に対して、5%以下、例えば2%以下又は1%以下の水不溶性ポリマーを含む。
【0046】
後施工材は、いくつかのケースでは、二価金属イオン、例えばCa+2を有し得るが、第2の組成物の使用は、二価金属の量を増加させ、これにより、さらに多くのポリマー、また、一実施形態ではさらに長い鎖のポリマーの形成が引き起こされる。さらに、水不溶性ポリマーを形成する反応は、水の存在下で発生し、第2の組成物の使用では、十分な量の水が用意される。これにより、第2の組成物を、好都合な解離定数を有する化合物及び反応に好適な水量と得ることによる水不溶性ポリマーの形成を制御するプロセスが可能となる。
【0047】
一実施形態では、過剰モル量の第2の組成物を使用して、第1の組成物と反応させることができる。さらに、いかなる残留生成物、例えば非ポリマー生成物も、化学反応中及び/又はその後に後施工材から洗い落としてよい。したがって、後施工材は、低含有量の未反応アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを、例えば0.5重量%未満、又は0.25重量%未満含有する。さらに、後施工材は、1重量%以下、例えば0.5重量%以下の残留出発材料を含有する。さらなる洗浄は、残留出発材料、並びに未反応のアルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを減少させることができる。
【0048】
水不溶性ポリマーは、疎水性であり、後施工材の耐水性を改善する。一実施形態では、1種以上の水不溶性ポリマーは、以下の式(II)又は式(III):
【0049】
【0050】
本明細書で定義されているように、Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであり、R1は、直鎖又は分岐C3~C20アルキル基又はC3~C20アルケニル基であり、R2は、直鎖C1~C10アルキレン基である。Mは、アルカリ土類金属、例えばカルシウム又はマグネシウムであり、nは2以上、例えば4以上、8以上又は10以上の整数である。表面の真下及び空隙空間内の形成のため、繰り返し単位の数(n)は、水不溶性ポリマーのそれぞれで変動してよい。したがって、ポリマーの一部は、2から8繰り返し単位の短い鎖であり得る一方、他のポリマーは、8繰り返し単位を超えるより長い鎖であり得る。変動する繰り返し単位の観点において、表面の真下に形成される水不溶性ポリマーは、1000ダルトン超、例えば2000ダルトン超の平均分子量を有し得る。分子量が高いほど、耐湿性が高くなる。
【0051】
一実施形態では、M基、すなわち連結するアルカリ土類金属のモル比は、末端基X基超であり得る。例えばMのXに対するモル比は、1.1超、例えば1.5超、2超又は3超であり得る。
【0052】
水不溶性ポリマーでの異なる鎖の長さに加えて、水不溶性ポリマーの混合物が存在してよい。本明細書で用意される第1の組成物は、脂肪酸のブレンドであり、ひいては、第2の組成物と反応させた場合、異なるモノマー基を有するポリマーを形成し得る。一実施形態では、水不溶性ポリマーは、少なくとも2個の異なるR1基を有する繰り返し単位を含有する。例えばR1基は、各モノマー基では、異なる鎖の長さであり得、又は1繰り返し単位は、R1をアルキル基として含み得る一方、別のR1はアルキレン基であり得る。したがって、水不溶性ポリマーは、式(II)又は式(III)を有する異なる繰り返し単位を含み得る。
【0053】
一実施形態では、水不溶性ポリマーは、式(II)の直鎖状ポリマー及び/又は式(III)の環状ポリマーの混合物を含み得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、水不溶性ポリマーは、R1鎖を通して架橋されていることがある。
【0055】
開示されている水不溶性ポリマーを含有する後施工材は、有利なことに全体にわたる耐湿性及び改善した防水加工を送達し、これにより外膜、コーティング及びシート化処理の使用が減少する。開示されている材料、組成物及び系を用いて、コンクリートは疎水性能(例えば1%未満の吸収、0.5%未満の吸収、0.4%未満の吸収、又は0.25%未満の吸収)を獲得できる。本明細書に記載されているように、第1及び第2の組成物を用いた処理は、後施工材、例えばコンクリートを、キャピラリー及びクラックのオープン網様構造を有する空隙空間を有するものから、超低吸収特性を呈し、それにより望ましいレベルの防水加工を達成するものへと転換する。防水加工を改善することにより、水不溶性ポリマーは、金属、例えば鋼棒、例として鉄筋を含有する後施工材に防食機能も付与する。水不溶性ポリマーの別の利益は、後施工材を、肺癌の主因であるラドンガスの排出を減少させるポリマーで処理することである。コンクリート及び他の建築材料は、ウランの自然崩壊のためラドンガスを排出する。かつてコンクリートに広く使用されていたフライアッシュは、ラドン排出を減少させると宣伝されていたが、現在では発癌性であることが公知である。本明細書に記載されている水不溶性ポリマー及び方法は、建築材料からのラドン排出を減少させる代替手法を提供する。
【0056】
本開示は、以下の非限定的な実施例によりさらに理解される。
【0057】
[実施例]
[実施例1]
吸収テストは、硬化したポルトランドコンクリート筒体で行った。各筒体は、高さ約150mm及び直径約77mmであった。コンクリート筒体の見かけ(乾燥)密度は、およそ2.36g/ccであった。
【0058】
1セットのコンクリート筒体を調製して、表面の真下に水不溶性ポリマーを形成した。水不溶性ポリマーを、
図1に記載されている表面に適用されるプロセスにより形成した。水性組成物を、コンクリート筒体の表面上に噴霧した。水性組成物(第1の組成物)は、90%がドデセニルコハク酸及び10%がC
8~C
16のコハク酸のナトリウム/リチウム塩のブレンドであった。表面に適用したら、いかなる過剰分も、表面を清潔な布で払拭することにより除去し、コンクリート筒体を乾燥させた。塩化カルシウムの次の別の水性組成物(第2の組成物)を、噴霧することにより表面に適用した。
【0059】
水不溶性ポリマーにより得られる吸収における改善を実証するために、2つの異なる比較の防水加工処理をテストした。1セットのコンクリート筒体は、硬化させる前に、塩化カルシウムの第2の組成物を使用せずに、コンクリート混合物中の脂肪酸塩の混和物を使用して調製した。ドデセニルコハク酸、デセニルコハク酸のリチウム/ナトリウム塩及びドデセニルコハク酸のブレンドは、モルタルと混合し、コンクリート筒体中で硬化させた。別のセットのコンクリート筒体に、Spray-LockからのSCP 327としての市販のコロイドシリカ液を噴霧した。SCP 327のカバー率は、1リットル当たり3.9から4.9m2である。
【0060】
延長した曝露を模倣するように、水浴中への浸漬を完了することにより、コンクリート筒体のそれぞれをテストした。各筒体を6日まで浸した。各日筒体の一部を除去し、乾燥させ、秤量し、次いで30分浸漬した。表1は、浸漬前及び30分後のコンクリート筒体の重量増加に基づく吸収%を報告している。重量増加は、水の吸収に起因している。吸収は、重量増加及び補正係数を掛ける((体積)/(表面積)*12.5)ことにより計算して、コンクリート筒体におけるある差を明らかにした。各日で、4つの筒体を対照(未処理)、コロイドシリカ(SCP 327)及び脂肪酸塩のブレンドの混和物の比較の処理2つ、並び本発明に記載されている水不溶性ポリマーでテストし、吸収パーセンテージは、浸漬後に各日で報告されている。
【0061】
【0062】
本発明の処理は、優れた防水性を実証した。数日後でさえ低い吸収から、表面の真下の水不溶性ポリマーは水分浸透を防止したことが指し示される。注目すべき改善は、SCP 327を使用して処理が適用された他の表面で実証された。これらのテスト条件下で、SCP 327は、対照を上回る、限定された吸収の改善を示した。混和物の比較及び本発明の実施例1のいずれも、SCP 327表面処理をしのいだ。
【0063】
本発明の実施例では、塩化カルシウム組成物が適用されたら、筒体を査察し、染色又は変色は、浸漬前に視認できなかった。さらに、本発明の処理を用いたコンクリート筒体の見かけ密度は、比較的未変化のままであり、およそ2.36g/ccであった。
【0064】
テスト後、コンクリート筒体を二等分に切断し、切断表面において視覚による水滴のテストを行った。対照では、水滴は急速に吸収された。本発明の筒体の半分では、水滴は玉のようになり、表面を通して浸透しなかった。これを数日かけて繰り返し、同一の結果を得た。これは、コンクリート筒体内及び表面の真下に水不溶性ポリマーが形成されたことを指し示す。
【0065】
[実施例2]
実施例1と同様に、硬化したポルトランドコンクリート筒体で吸収テストを行った。各筒体は、高さ約153mm及び直径約77mmであった。コンクリート筒体の見かけの(乾燥)密度は、およそ2.30g/ccであった。
【0066】
1セットのコンクリート筒体を調製して、表面の真下に水不溶性ポリマーを形成した。水不溶性ポリマーを、
図1で記載されている表面に適用されるプロセスにより形成した。水性組成物(第1の組成物)を、コンクリート筒体の表面上に噴霧した。水性組成物は、90%がドデセニルコハク酸及び10%がC
8~C
16のコハク酸のナトリウム/リチウム塩のブレンドであった。表面に適用したら、いかなる過剰分も、表面を清潔な布で払拭することにより除去し、コンクリート筒体を乾燥させた。塩化カルシウムの次の別の水性組成物を、表面に適用した。
【0067】
上に記載されている脂肪酸塩の混和物を使用して、1セットのコンクリート筒体を調製した。未処理対照も比較のため、また吸収の観点から実施例2の改善を実証するために使用した。
【0068】
表2は、浸漬前(WO)及び水の浸漬を完了した30分後(W30)の、浸したコンクリート筒体の8日までにわたる毎日の重量増加に基づく吸収%を報告している。吸収は、重量増加及び補正因子を掛ける(V/SA*12.5)ことにより計算して、コンクリート筒体におけるある差を明らかにした。表2で報告されている結果は、4つの筒体ブロックをテストした平均である。
【0069】
【0070】
本発明の実施例2は、表面に適用されるプロセスで、浸して8日後でさえも吸収率がきわめて低いままであることを示す。混和物で軽度の改善がみられたが、本発明の実施例2では、水不溶性ポリマーは、長期間にわたる水への曝露に、より耐久性があることが指し示される。したがって、表面の真下に形成される水不溶性ポリマーは、コンクリートの耐用年数を延長する。
【0071】
本発明は詳細に記載されているが、本発明の精神及び範囲内の変更は、当業者に容易に明らかになるであろう。そのような変更も、本発明の一部と考えられる。背景技術に関連して上で論じられている先述の考察、当業界で関連性がある知識、及び参考文献の観点において、それらの開示はすべて、参照により本明細書に組み込まれ、さらなる記載は不要と考えられる。さらに、先述の考察から、本発明の態様及び様々な実施形態の一部が、全体的又は部分的に組み合わせられ得る、又は入れ替えられ得ることは理解すべきである。さらに、当業者は、先述の記載が単なる例であり、本発明を限定することは意図されていないことを認識する。最終的に、本明細書で言及されるすべての特許、公報及び出願は、参照によりその全体が組み込まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する後施工材を処理する方法であって:
表面に、それぞれ1個(1)から4個(4)の酸性基を有する脂肪酸塩のブレンドを含む第1の組成物を適用
し、
第1の組成物の第1の部を、表面を通して移動させ、第1の組成物の第2の部が、表面に留まるステップ、
第1の組成物の第2の部の少なくとも一部を、表面から除去するステップ、
表面に、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを含む第2の組成物を適用
し、
第2の組成物
の第1の部を、表面を通して移動させ、表面の真下で脂肪酸塩と反応させて、1種以上の水不溶性ポリマーを形成するステップを含む、方法。
【請求項2】
第1の組成物の第2の部の少なくとも一部を、表面から除去するステップ中又はその後で、後施工材を乾燥させるステップをさらに含み、乾燥させるステップを、30
℃から130
℃の温度にて実行する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の組成物が、第1の組成物の合計重量に対して5から40wt.%の脂肪酸塩のブレンドを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
第1の組成物が水性組成物である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
第1の組成物が、噴霧、ローリング、霧吹き、浸漬、注入、散布、挿入、加圧処理又はそれらの組合せにより表面に適用される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
第1の組成物が、減粘剤及び/又は消泡剤をさらに含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
脂肪酸塩のブレンドが、以下の式:
【化1】
(式中、
各Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであるが、但し、少なくとも1つのXがアルカリ金属であることを条件とし、
各R
1は
独立して、直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルキル基、又は直鎖若しくは分岐C
3~C
20アルケニル基であり、
各aは
独立して1から3の整数であり、
各R
2は
独立して、直鎖C
1~C
10アルキレン基であり、
X、R
1及びR
2が、異なる脂肪酸では異なり得る)を有する少なくとも1種の脂肪酸塩を含有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
脂肪酸塩のブレンドが、式Iの1つ超の脂肪酸塩を含み、式Iの塩が、C
10からC
16のR
1の加重平均を有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
第1の組成物
の第1の部が、後施工材の表面の真下の空隙領域に移動する、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
後施工材が、コンクリート、鉄筋コンクリート、モルタル、スタッコ、木材及びそれらの組合せを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
除去するステップが、少なくとも50%の第1の組成物の第2の部を表面から除去するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
第2の組成物が、第2の組成物の合計重量に対して、1から30wt.%のアルカリ土類金属ハロゲン化物
、アルカリ土類金属炭酸塩
又はそれらの組合せを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
第2の組成物が、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、重炭酸ストロンチウム又はそれらの組合せを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
第2の組成物は、シラン及び/又はシロキサンを実質的に含まない、請求項
1に記載の方法。
【請求項15】
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも1種が、以下の式(II)又は式(III):
【化2】
(式中、
各Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであり、
各R
1
は独立して、直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルキル又は直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルケニル基であり、
各aは独立して1から3の整数であり、
各R
2
は独立して、直鎖C
1
~C
10
アルキレン基であり、
各Mは独立してアルカリ土類金属であり、
nは2以上の整数である)を有し、
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも一部が、後施工材表面の真下の空隙領域内に位置する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1種以上の水不溶性ポリマーが、1000ダルトン超の平均分子量を有する、請求項
1に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0071
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0071】
本発明は詳細に記載されているが、本発明の精神及び範囲内の変更は、当業者に容易に明らかになるであろう。そのような変更も、本発明の一部と考えられる。背景技術に関連して上で論じられている先述の考察、当業界で関連性がある知識、及び参考文献の観点において、それらの開示はすべて、参照により本明細書に組み込まれ、さらなる記載は不要と考えられる。さらに、先述の考察から、本発明の態様及び様々な実施形態の一部が、全体的又は部分的に組み合わせられ得る、又は入れ替えられ得ることは理解すべきである。さらに、当業者は、先述の記載が単なる例であり、本発明を限定することは意図されていないことを認識する。最終的に、本明細書で言及されるすべての特許、公報及び出願は、参照によりその全体が組み込まれる。
(付記)
(付記1)
表面を有する後施工材を処理する方法であって:
表面に、それぞれ1個(1)から4個(4)の酸性基を有する脂肪酸塩のブレンドを含む第1の組成物を適用するステップ、
第1の組成物の第1の部を、表面を通して移動させ、第1の組成物の第2の部が、表面に留まるステップ、
第1の組成物の第2の部の少なくとも一部を、表面から除去するステップ、
表面に、アルカリ土類金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属炭酸塩又はそれらの組合せを含む第2の組成物を適用するステップ、及び
第2の組成物の少なくとも一部を、表面を通して移動させ、表面の真下で脂肪酸塩と反応させて、1種以上の水不溶性ポリマーを形成するステップを含む、方法。
(付記2)
第1の組成物の第2の部の少なくとも一部を、表面から除去するステップ中又はその後で、後施工材を乾燥させるステップをさらに含み、乾燥させるステップを、30℃.から130℃.の温度にて実行する、付記1に記載の方法。
(付記3)
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも1種が、以下の式(II)又は式(III):
【化7】
(式中、
Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであり、
R
1
は、直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルキル又は直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルケニル基であり、
aは1から3の整数であり、
R
2
は、直鎖C
1
~C
10
アルキレン基であり、
Mはアルカリ土類金属であり、
nは2以上の整数である)を有する、付記1又は2に記載の方法。
(付記4)
第1の組成物が、第1の組成物の合計重量に対して5から40wt.%の脂肪酸塩のブレンドを含む、付記1から3のいずれかに記載の方法。
(付記5)
第1の組成物が水性組成物である、付記1から4のいずれかに記載の方法。
(付記6)
第1の組成物が、噴霧、ローリング、霧吹き、浸漬、注入、散布、挿入、加圧処理又はそれらの組合せにより表面に適用される、付記1から5のいずれかに記載の方法。
(付記7)
第1の組成物が、減粘剤及び/又は消泡剤をさらに含む、付記1から6のいずれかに記載の方法。
(付記8)
脂肪酸塩のブレンドが、以下の式:
【化8】
(式中、
各Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであるが、但し、少なくとも1つのXがアルカリ金属であることを条件とし、
各R
1
は、直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルキル基、又は直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルケニル基であり、
各aは1から3の整数であり、
各R
2
は、直鎖C
1
~C
10
アルキレン基であり、
X、R
1
及びR
2
が、異なる脂肪酸では異なり得る)を有する少なくとも1種の脂肪酸塩を含有する、付記1から7のいずれかに記載の方法。
(付記9)
脂肪酸塩のブレンドが、式Iの1つ超の脂肪酸塩を含み、式Iの塩が、C
10
からC
16
のR
1
の加重平均を有する、付記8に記載の方法。
(付記10)
第1の組成物が、後施工材の表面の真下の空隙領域に移動する、付記1から9のいずれかに記載の方法。
(付記11)
後施工材が、コンクリート、鉄筋コンクリート、モルタル、スタッコ、木材及びそれらの組合せを含む、付記1から10のいずれかに記載の方法。
(付記12)
除去するステップが、少なくとも50%の第1の組成物の第2の部を表面から除去するステップを含む、付記1から11のいずれかに記載の方法。
(付記13)
第2の組成物が、第2の組成物の合計重量に対して、1から30wt.%のアルカリ土類金属ハロゲン化物又はアルカリ土類金属炭酸塩を含む、付記1から12のいずれかに記載の方法。
(付記14)
第2の組成物が、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、塩化ストロンチウム、臭化ストロンチウム、ヨウ化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、重炭酸ストロンチウム又はそれらの組合せを含む、付記1から13のいずれかに記載の方法。
(付記15)
第2の組成物は、シラン及び/又はシロキサンを実質的に含まない、付記1から14のいずれかに記載の方法。
(付記16)
1種以上の水不溶性ポリマーが、1000ダルトン超の平均分子量を有する、付記1から15のいずれかに記載の方法。
(付記17)
後施工材の防食機能を改善する、付記1から16のいずれかに記載の方法。
(付記18)
後施工材からのラドン排出を減少させる、付記1から17のいずれかに記載の方法。
(付記19)
少なくとも1つの表面、及び表面の真下の空隙領域を有する後施工材であって、
以下の式(II)又は式(III):
【化9】
(式中、
Xは独立して、アルカリ金属、水素又はアンモニウムであり、
R
1
は、直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルキル又は直鎖若しくは分岐C
3
~C
20
アルケニル基であり、
aは1から3の整数であり、
R
2
は、直鎖C
1
~C
10
アルキレン基であり、
Mはアルカリ土類金属であり、
nは2以上の整数である)を有する1種以上の水不溶性ポリマーを含み、
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも一部が、空隙領域内に位置する、後施工材。
(付記20)
表面が、水不溶性ポリマーの合計量に対して、5%以下の水不溶性ポリマーを含む、付記19に記載の後施工材。
(付記21)
1種以上の水不溶性ポリマーの少なくとも1種が、少なくとも2個の異なるR
1
基を有する繰り返し単位を含有する、付記19又は20に記載の後施工材。
(付記22)
1%未満の吸収を示す、付記19から21のいずれか一項に記載の後施工材。
【国際調査報告】