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特表2023-521933タンパク質間相互作用を特徴付け、且つ遺伝子操作する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-25
(54)【発明の名称】タンパク質間相互作用を特徴付け、且つ遺伝子操作する方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20230518BHJP
   C40B 40/10 20060101ALN20230518BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230518BHJP
【FI】
G01N33/53 D
C40B40/10
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573200
(86)(22)【出願日】2021-06-01
(85)【翻訳文提出日】2023-01-30
(86)【国際出願番号】 US2021035246
(87)【国際公開番号】W WO2021247572
(87)【国際公開日】2021-12-09
(31)【優先権主張番号】63/033,176
(32)【優先日】2020-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522384318
【氏名又は名称】エー-アルファ バイオ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤンガー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】コルビー,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ロペズ,ランドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ウィッテキンド,マイケル
(57)【要約】
特異的に相互作用するいずれか2つのタンパク質間の界面での結合動態の特徴付けは、種々の生物医学的応用において一役割を果たす。本明細書に開示の方法は、2つのタンパク質結合パートナー間の界面での特異的な相互作用のハイスループット特徴付け、及び一方又は両方のタンパク質結合パートナーの機能的に有意な変異の同定を提供し得る。例えば、本明細書で開示される方法は、抗体-抗原対のエピトープ及びパラトープマッピングに有用であり得て、他の生物医学的応用の中でも新規な治療法、ワクチン、診断法の発見及び開発において有用である。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのタンパク質結合パートナー間の代償性変異を同定する方法であって、
第1野生型ポリペプチド及び第1の複数の変異ポリペプチドを含む、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーを提供すること;
第2野生型ポリペプチド及び第2の複数の変異ポリペプチドを含む、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーを提供すること;
第1タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、第2タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値を測定すること;
第1タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、第2タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとのそれぞれの前記親和性測定値に基づいて、
(i)前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチド、及び
(ii)前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチド、
を含むタンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対を同定すること;
を含み、
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対の各対の前記親和性測定値が、タンパク質結合パートナーのそれぞれの前記対間のそれぞれの親和性期待値と実質的に異なり、
タンパク質結合パートナーの所定の対の親和性期待値が、
a)前記所定の対の前記第1野生型ポリペプチドと、前記所定の対の前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドとの親和性測定値、及び
b)前記所定の対の前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドと、前記所定の対の前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値に基づいて算出される、方法。
【請求項2】
第1タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが、第1の複数の酵母細胞の1つの表面上に発現され、且つ第2タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが、第2の複数の酵母細胞の1つの表面上に発現される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと第2タンパク質結合パートナーの前記ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値が、前記第1の複数の酵母細胞と、前記第2の複数の酵母細胞との合成凝集によって測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質結合パートナーの前記第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが、抗体、scFv、Fab、又はVHH種である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
タンパク質結合パートナーの前記第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが、抗原種である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質結合パートナーの前記第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが、受容体種である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質結合パートナーの前記第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが、リガンド種である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の複数の変異ポリペプチドのそれぞれと、前記第2の複数の変異ポリペプチドのそれぞれが、ユーザー指定変異誘発によって産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対の各対の親和性測定値が、タンパク質結合パートナーの前記対の親和性期待値よりも実質的に高い、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対の各対の親和性測定値が、タンパク質結合パートナーの前記対の親和性期待値の2倍を超えて高い、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対の各対の親和性測定値が、タンパク質結合パートナーの前記対の親和性期待値より実質的に低い、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対の各対の親和性測定値が、タンパク質結合パートナーの前記対の親和性期待値の2倍超低い、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
2つのタンパク質結合パートナー間の代償性変異を同定する方法であって:
第1野生型ポリペプチド及び第1の複数の変異ポリペプチドを含む、タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーを提供すること;
第2野生型ポリペプチド及び第2の複数の変異ポリペプチドを含む、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーを提供すること;
タンパク質結合パートナーの前記第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、タンパク質結合パートナーの前記第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値を測定すること;
タンパク質結合パートナーの前記第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、タンパク質結合パートナーの前記第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値に基づいて、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に異なる、それぞれの親和性測定値を有するタンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対を同定すること;
を含む方法。
【請求項14】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対が以下の条件:
a.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
b.前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;及び
c.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
を満たす、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対が以下の条件:
a.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
b.前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;及び
c.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じであること;
を満たす、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対が以下の条件:
a.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
b.前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;及び
c.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
を満たす、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対が以下の条件:
a.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
b.前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;及び
c.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数のポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
を満たす、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
タンパク質結合パートナーの前記1つ又は複数の対が以下の条件:
a.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値、又は前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
b.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値、又は前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に高いこと;
を満たす、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドの変異が、前記抗体、scFv、Fab、又はVHH種のパラトープを定義し、及び/又は前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドの変異が、前記抗原種のエピトープを定義する、請求項5に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドの変異及び前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドの変異によって、
a.前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドが、前記第2野生型ポリペプチド及び前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドに結合し;
b.前記第2の複数の変異ポリペプチの前記1つのポリペプチドが、前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドに結合し、前記第2野生型ポリペプチドには結合しない;ような、
前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドとの間の直交結合関係が生じる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドの変異及び前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドの変異によって、
a.前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドが、前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドに結合し、前記第2野生型ポリペプチドには結合しない;及び
b.前記第2の複数の変異ポリペプチの前記1つのポリペプチドが、前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドに結合し、前記第1野生型ポリペプチドには結合しない;ような、
前記第1の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの前記1つのポリペプチドとの間の直交結合関係が生じる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2020年6月1日に出願された米国仮特許出願第63/033,176号に対する優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] エピトープマッピングは、その標的抗原上に対する抗体の結合部位の同一性、アミノ酸組成、及び高次構造を特徴付ける実験プロセスである。エピトープマッピングは、他の生物医学的応用の中でも新規な治療法、ワクチン、診断法の発見及び開発において有用であり得る。エピトープマッピングは、例えば、新規な治療抗体の知的所有権(IP)保護の保証にも有用であり得る。新規な抗体のエピトープのアミノ酸同一性及び高次構造の網羅的特徴付けは、抗体の新規性、抗体の非自明性の定義を助け、新規な抗体の開示に必要とされる書面での記述的支援を提供することを可能にする。混み合ったIPスペース、例えば、それに対する複数の薬物が既に存在する治療標的は、同じ標的に対する新規な抗体と、以前に開示されている抗体とを差別化する能力を必要とする。
【0003】
[0003] 同様に、パラトープマッピングは、その抗原に対する特性を付与する抗体の特性、例えばアミノ酸組成、電荷、及び三次元コンフォメーションの特徴付けである。エピトープマッピングとパラトープマッピングの両方による抗体-抗原相互作用の徹底的な特徴付けは、抗体と抗原との特異的な結合のメカニズム及び動態の理解に有用であり、結合界面への構造的洞察を獲得するために使用することができる。エピトープ及びパラトープマッピングの方法としては、中でもアレイに基づくオリゴペプチド走査法、部位特異的変異誘発マッピング、ハイスループットショットガン変異誘発マッピング、架橋結合(cross-linking-coupled)質量分析が挙げられる。
【0004】
[0004] より広範には、特異的に相互作用するいずれか2つのタンパク質間の界面での結合動態の特徴付けが、種々の生物医学的応用において一役割を果たす。本明細書に開示の方法は、2つのタンパク質結合パートナー間の界面での特異的な相互作用のハイスループット特徴付けを提供し得る。本発明で開示される方法では、特定の実施形態において、対費用効果が高い迅速アッセイにおいて同時に、2つのタンパク質結合パートナーの相互作用的表面を包括的に特徴付けるために、網羅的な部位飽和変異誘発とハイスループットスクリーニングの組合せを用いる。本明細書に開示される方法は、いずれか2つのタンパク質結合パートナーの特徴付けに、例えば、抗体とその抗原の同時のエピトープ及びパラトープマッピングに用いられ得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的な実施形態の概要
[0005] 例証となる実施の上記の一般的な説明、及び以下の詳細なその説明は、本開示の教示の単に例示的な態様であり、制限的なものではない。
【0006】
[0006] いくつかの実施において、本発明は、2つのタンパク質結合パートナー間の代償性変異を同定する新規な方法であって:
タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーを提供することであって、タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーが、第1野生型ポリペプチド及び第1の複数の変異ポリペプチドを含むこと;
タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーを提供することであって、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーが、第2野生型ポリペプチド及び第2の複数の変異ポリペプチドを含むこと;
タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの間の親和性測定値を測定すること;
タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの間の親和性測定値に基づいて、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの間の親和性測定値よりもかなり異なる、それぞれの親和性測定値を有するタンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対を同定すること;
を含む、方法を提供する。
【0007】
[0007] いくつかの実施において、本発明は、2つのタンパク質結合パートナー間の代償性変異を同定する新規な方法であって:
第1野生型ポリペプチド及び第1の複数の変異ポリペプチドを含む、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーを提供すること;
第2野生型ポリペプチド及び第2の複数の変異ポリペプチドを含む、2タンパク質結合パートナーのライブラリーを提供すること;
第1タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの間の親和性測定値を測定すること;及び
タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの間のそれぞれの親和性測定値に基づいて、
(i)第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチド、及び
(ii)第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドを含む、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対を同定すること;を含み、
タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対の各対の親和性測定値が、タンパク質結合パートナーのそれぞれの対間のそれぞれの親和性期待値よりもかなり異なり、
タンパク質結合パートナーの所定の対の親和性期待値が、
a)所定の対の第1野生型ポリペプチドと、所定の対の第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの間の親和性測定値、及び
b)所定の対の第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、所定の対の第2野生型ポリペプチドとの間の親和性測定値、
に基づいて計算される、方法を提供する。
【0008】
図面の簡単な説明
[0008] 本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、1つ又は複数の実施形態を示し、記述とともにこれらの実施形態を説明する。添付の図面は、必ずしも一定の縮尺で描かれているわけではない。添付のグラフ及び図面に示されている値寸法は、説明のみを目的としており、実際の値又は好ましい値又は寸法を表している場合も表していない場合もある。該当する場合、基礎となる特徴の説明を補助するために、一部又は全ての特徴が図示されていない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】[0009]AlphaSeq(商標)法のライブラリーごとのスクリーニング能力示す一連のチャートを示す。
図2A】[0010]複合体中で相互作用する2つのタンパク質結合パートナーの概略図であり、第1タンパク質結合パートナーは抗体であり得て、第2タンパク質結合パートナーは抗原であり得る。タンパク質間の界面での両方のタンパク質結合パートナーの残基が番号付けされている。
図2B】[0011]タンパク質結パートナー間の相互作用のAlphaSeqによって、ライブラリーごとの強度測定値を示す。1つのタンパク質結合パートナーで19位にて、及び他のタンパク質結合パートナーで32位にて、部位飽和変異誘発が行われた。インレー(inlay)は、2つの位置でのすべてのアミノ酸単一突然変異間での相互作用測定値を示す。
図3A】[0012]直交結合を示す2つのタンパク質結合パートナー間の相互作用を表すグラフである。
図3B】[0013]受容体特異的な結合を示す2つのタンパク質結合パートナー間の相互作用を表すグラフである。
図3C】[0014]リガンド特異的な結合を示す2つのタンパク質結合パートナー間の相互作用を表すグラフである。
図4】[0015]AlphaSeqプラットフォームを用いたライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーンのワークフローを例示する。
図5】[0016]AlphaSeqプラットフォームで測定された抗体-抗原相互作用を示すAlphaSeqタンパク質相互作用データのプロットである。
図6】[0017]8つの抗体バリアントに対して8つの抗原バリアントをスクリーニングし、64通りの相互作用が検出及び定量化されるAlphaSeq実験の結果を例示する。
図7】[0018]野生型ペムブロ(pembro)scFv(抗体)に対するPD-1部位飽和変異誘発ライブラリーのスクリーンの結果を示すヒートマップである。所定のPD-1残基と最も近いペムブロ残基との残基距離も示す。
図8】[0019]PD-1/ペムブロリズマブ界面の結晶構造内の特定の残基を強調する図である。
図9】[0020]野生型PD-1(抗原)に対するペムブロscFv部位飽和変異誘発ライブラリーのクリーンの結果を示すヒートマップである。
図10】[0021]PD-1/ペムブロリズマブscFv界面の結晶構造を表すグラフである。
図11】[0022]PD-1/ペムブロリズマブ界面の構造を示す。
図12A】[0023]変異に対して特に不耐性であることが発見されたペムブロリズマブアミノ酸残基を示すヒートマップである。
図12B】[0024]PD-1/ペムブロリズマブ界面の結晶構造を表し、変異に特に不耐性であることが発見されたアミノ酸残基を強調するモデルである。
図13】[0025]単一アッセイからAlphaSeq法により同定された代償性変異の対の表である。
図14】[0026]抗体-抗原界面の結晶構造を示すグラフと共に、PD-1及びペムブロリズマブ変異に対する親和性強度データを表す。一部のアミノ酸位置は界面にあるが、変異に対して非常に耐性である。
図15】[0027]ペムブロscFv(抗体)とPD-1(抗原)とのライブラリーごとのスクリーンにおける相対的AlphaSeqシグナルを測定することによって、代償性変異を検出するAlphaSeqプラットフォームの能力を図示するダイアグラムである。
図16】[0028]代償性変異のシグネチャーを示す変異型タンパク質結合パートナーの3対のプロットを示す。
図17】[0029]代償性変異のシグネチャーを示す変異型タンパク質結合パートナーの2対のプロットを示す。
図18】[0030]ペムブロscFv(抗体)変異とPD-1(抗原)変異のライブラリー間のライブラリーごとのスクリーンにおける相対的AlphaSeシグナルを測定することによって検出された、代償性変異の対を強調するグラフである。
図19】[0031]標的変異誘発によるエピトープマッピングの方法を示す。
図20】[0032]本明細書に開示の方法を用いた、エピトープマッピングのライブラリーごとのスクリーンを示す。
図21】[0033]抗体のライブラリーに対するPD-1バリアントのスクリーンの結果を表すヒートマップである。
図22】[0034]ライブラリーごとのスクリーンの結果を示す、強化(enrichment)/枯渇(depletion)ヒートマップである。
図23】[0035]第1タンパク質結合パートナーと第2タンパク質結合パートナーの間で代償性変異が同定される、タンパク質結合パートナーを示す概略図である。
図24A】[0036]本明細書に開示の方法を用いた、エピトープマッピングのライブラリーごとのスクリーンを示す。
図24B】[0037]単一アミノ酸残基で変異を保有する20個のPD-1バリアント及び単一アミノ酸残基で変異を保有する20個のペムブロリズマブバリアントの強度データ、又は本明細書に開示の方法によって測定された400種全部のタンパク質間相互作用を示す拡大されたインレーと共に、PD-1変異のライブラリーとペムブロリズマブ変異のライブラリーとの対での相互作用のデータを表すヒートマップである。
図24C】[0038]単一PD-1変異と単一ペムブロリズマブバリアントとの特定の対での相互作用を強調する。
図24D】[0039]野生型及び変異PD-1とペムブロリズマブとの組み合わせ間の4対での相互作用を示すグラフである。
図25】[0040]2つのタンパク質結合パートナー間の期待及び測定相互作用強度の第1プロット、並びに本明細書に開示の方法を用いて評価される抗体-抗原タンパク質結合パートナー間の期待相互作用強度に対する測定相互作用強度の第2プロットを示す。
図26】[0041]タンパク質結合パートナー間のアミノ酸残基間の距離に対する、測定相互作用強度と期待相互作用強度との比のプロットである。
図27】[0042]PD-1(抗原)とペムブロリズマブ(抗体)との界面のX線結晶構造に基づく三次元モデルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
例示的な実施形態の詳細な説明
[0043] 添付の図面に関連して以下に記載される説明は、開示された主題の様々な例示的な実施形態の説明であることを意図している。特定の特徴及び機能は、各例示的実施形態に関連して説明される。しかし、当業者には、開示された実施形態がそれらの特定の各特徴及び機能なしで実施され得ることが明らかであろう。
【0011】
[0044] 本明細書全体を通して、「一実施形態」若しくは「1つの実施形態」又は「一実施」若しくは「1つの実施」の言及は、1つの実施形態又は実施と関連して記載される特定の特徴、構造、又は特性が、開示の主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な箇所における「一実施形態(one embodiment)において」又は「実施形態(an embodiment)において」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態を指しているとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせられ得る。さらに、開示された内容の実施形態は、その修正及び変形をカバーすることが意図されている。
【0012】
[0045] 本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上別段の明示がない限り、複数の指示対象を含むことに注意しなければならない。すなわち、別段の明示的な指定がない限り、本明細書で使用される「a」、「an」、「the」などの単語は、「1つ又は複数」の意味を有する。さらに、本明細書で使用され得る「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」、「横」、「高さ」、「長さ」、「幅」、「上部」、「下部」、「内部」、「外部」、「内側」、「外側」などの用語は、参照点を説明するに過ぎず、必ずしも本開示の実施形態を特定の向き又は構成に限定するものではないことを理解されたい。さらに、「第1の」、「第2の」、「第3の」などの用語は、本明細書に開示される多数の部分、構成要素、ステップ、操作、機能、及び/又は参照点のうちの1つを特定するに過ぎず、同様に、必ずしも本開示の実施形態を特定の構成又は向きに限定するものではない。
【0013】
[0046] さらに、用語「およそ」、「約」、「近似」、「軽微な変動」、及び同様の用語は、一般に、特定の実施形態において、20%、10%、又は好ましくは5%のマージン内に特定された値を含む範囲、及びその間の任意の値を指す。
【0014】
[0047] 一実施形態に関連して説明される全ての機能は、明示的に述べられている場合、又は特徴若しくは機能が追加の実施形態と適合性でない場合を除いて、以下に説明される追加の実施形態に適用可能であることを意図している。例えば、所望の特徴又は機能が一実施形態に関連して明示的に記載されているが、代替の実施形態に関連して明示的に言及されていない場合、本発明者らは、特徴又は機能が代替的実施形態と適合性でない場合を除き、代替的実施形態に関連してその特徴又は機能を展開、利用、又は実装できることを意図していることを理解されたい。
【0015】
[0048] 本明細書に記載される技術の実践は、別段の指示がない限り、有機化学、高分子技術、分子生物学(組換え技術を含む)、細胞生物学、細胞培養、生化学、タンパク質工学及び配列決定技術の従来の技術及び説明を採用してもよく、これらは当業者の技術範囲内である。そのような従来の技術には、細菌、真菌、及び哺乳動物の細胞培養技術及びスクリーニングアッセイが含まれる。本明細書の例を参照することにより、適切な技術の具体的な実例を得ることができる。しかし、もちろん、他の同等の従来の手順も使用することができる。そのような従来の技術及び説明は、Green, et al., Eds.(1999), Genome Analysis:A Laboratory Manual Series (Vols. I-IV);Weiner, Gabriel, Stephens, Eds.(2007), Genetic Variation:A Laboratory Manual;Dieffenbach, Dveksler, Eds.(2003), PCR Primer:A Laboratory Manual;Bowtell and Sambrook (2003), DNA Microarrays:A Molecular Cloning Manual;Mount (2004), Bioinformatics:Sequence and Genome Analysis;Sambrook and Russell (2006), Condensed Protocols from Molecular Cloning:A Laboratory Manual;及びSambrook and Russell (2002), Molecular Cloning:A Laboratory Manual (all from Cold Spring Harbor Laboratory Press);Stryer, L.(1995) Biochemistry (4th Ed.) W.H.Freeman, New York N.Y.;Gait, “Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach” 1984, IRL Press, London;Nelson and Cox (2000), Lehninger, Principles of Biochemistry (3rd Ed)., W. H.Freeman Pub., New York, N.Y.;Berg et al.(2002) Biochemistry (5th Ed)., W.H.Freeman Pub., New York, N.Y.などの標準的な実験マニュアルに見出すことができ、これら全ては、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0016】
[0049] 別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書で言及される全ての刊行物は、ここに記載される発明に関連して使用され得る、デバイス、方法、及び細胞集団を記載及び開示する目的で、参照により組み込まれる。
【0017】
[0050] 本明細書で使用される「相補的ヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチド間のワトソン・クリック塩基対形成を指し、具体的には、2つの水素結合によってアデニン残基に結合されたチミン又はウラシル残基、並びに3つの水素結合によって結合されたシトシン及びグアニン残基によって相互に水素結合されたヌクレオチドを指す。一般に、核酸は、特定の第2のヌクレオチド配列に対して「パーセント相補性」又は「パーセント相同性」を有すると記載されるヌクレオチド配列を含む。例えば、ヌクレオチド配列は、特定の第2のヌクレオチド配列に対して80%、90%、又は100%の相補性を有し、これは、配列の10個中8個、10個中9個、又は10個中10個のヌクレオチドが特定の第2のヌクレオチド配列に相補的であることを示す。例えば、ヌクレオチド配列3’-TCGA-5’は、ヌクレオチド配列5’-AGCT-3’と100%相補的であり;ヌクレオチド配列3’-TCGA-5’は、ヌクレオチド配列5’-TTAGCTGG-3’の領域と100%相補的である。
【0018】
[0051] 「相同性」又は「同一性」又は「類似性」は、2つのペプチド間、又は本開示の文脈においてより頻繁には、2つの核酸分子間の、配列類似性を指す。「相同領域」又は「相同アーム」という用語は、標的ゲノムDNA配列とある程度の相同性を有するドナーDNA上の領域を指す。相同性は、比較のためにアラインされ得る各配列の位置を比較することによって決定することができる。比較された配列の位置が同じ塩基又はアミノ酸に占められている場合、分子はその位置で相同である。配列間の相同性の程度は、配列が共有する、一致する又は相同な位置の数の関数である。
【0019】
[0052] 「作動可能に連結された」とは、要素、例えば、バーコード配列、遺伝子発現カセット、コード配列、プロモーター、エンハンサー、転写因子結合部位の配置を指し、そのように記載された構成要素は、それらの通常の機能を実施するように構成されている。したがって、コード配列に作動可能に連結された制御配列は、コード配列の転写、場合によっては翻訳を行うことができる。制御配列は、コード配列の発現を指示するように機能する限り、コード配列と連続している必要はない。したがって、例えば、介在性の未翻訳であるが転写された配列は、プロモーター配列とコード配列との間に存在することができ、プロモーター配列は、依然としてコード配列に「作動可能に連結されている」とみなすことができる。実際、そのような配列は、同じ連続したDNA分子(すなわち、染色体)に存在する必要はなく、依然として、調節の変更を生じる相互作用を有し得る。
【0020】
[0053] 本明細書で使用される「選択マーカー」という用語は、人為的選択に適した形質を付与する、細胞に導入された遺伝子を指す。一般的な使用の選択マーカーは、当業者に周知である。アンピシリン/カルベニシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ゲンタマイシン、ブレオマイシン、ストレプトマイシン、ピューロマイシン、ハイグロマイシン、ブラストサイジン、及びG418などの薬物選択マーカーが使用され得る。選択マーカーはまた、栄養要求性選択可能マーカーであってもよく、ここで、選択される細胞株は、必須栄養素を合成できなくする変異を保有する。そのような株は、欠乏している必須栄養素が成長培地に供給された場合にのみ成長する。例えば、酵母変異株の必須アミノ酸栄養要求性選択は、一般的であり、当技術分野で周知である。本明細書で使用される「選択培地」は、選択マーカーについて、又は選択マーカーに対して選択する化合物又は生物学的部分が添加された細胞成長培地、又は必須栄養素が欠乏し、栄養要求性株に対して選択する培地を指す。
【0021】
[0054] 本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、細胞に送達され、及び/又は細胞内で発現される、所望の配列を含む様々な核酸のいずれかである。ベクターは典型的にはDNAで構成されるが、RNAベクターも利用できる。ベクターには、とりわけ、プラスミド、フォスミド、ファージミド、ウイルスゲノム、BAC、YAC、PAC、合成染色体などが含まれるが、これらに限定されない。
【0022】
[0055] 本明細書で使用される場合、「親和性」は、単一の生体分子とそのリガンド又は結合パートナーとの間の結合相互作用の強度である。親和性は通常、平衡解離定数Kを使用して測定及び説明される。K値が低いほど、タンパク質とその結合パートナーとの間の親和性が高くなる。親和性は、結合パートナー間の水素結合、静電相互作用、疎水性力及びファンデルワールス力によって、又は結合アゴニスト又はアンタゴニストなどの他の分子の存在によって影響を受ける可能性がある。
【0023】
[0056] いくつかの実施において、親和性は、任意の単位を用いて説明され得て、アッセイ内の特定の結合親和性、例えば2つの野生型タンパク質結合パートナー間の結合親和性、又は第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性が、任意の単位1.0に設定され、タンパク質結合パートナーの他の対に関する、例えば第1タンパク質結合パートナーの変異種と第2タンパク質結合パートナーの変異種に関する結合親和性が、その特定の結合親和性に対して比例して測定される。
【0024】
[0057] 本明細書で使用される場合、「部位飽和変異誘発」(SSM)は、タンパク質工学及び分子生物学で使用される変異誘発技術を指し、ここで、コドン又はコドンのセットは、ポリペプチド内の位置において全ての可能なアミノ酸で置換される。その代わりとして、SSMは、所定の位置のアミノ酸残基が、その位置で可能性のあるアミノ酸置換のサブセットの1つに変更されること、例えば、システインを除くすべての可能性のあるアミノ酸への置換を表し得る。SSMは、1つのコドン、いくつかのコドン、又はタンパク質内の全ての位置に対して実施され得る。その結果、ポリペプチドの1つ、いくつか、又は全てのアミノ酸位置で可能なアミノ酸の完全な相補体を表す変異タンパク質のライブラリーが得られる。
【0025】
[0058] 本明細書で使用される、「ユーザー特異的(user-directed)変異誘発」とは、当業者に既知のいずれかの技術によって、ユーザーがポリペプチドのアミノ酸配列を修飾する、いずれかのプロセスを意味する。ポリペプチドは、規定の方法で1つ又は複数のアミノ酸残基にて修飾され得て、例えばアラニン残基はアルギニン残基に変更され、又はポリペプチド配列は、ランダム化された方法で、例えば変性プライマー及びランダム化PCR増幅を使用して修飾され得る。ポリペプチドは、1つのアミノ酸残基又は多くのアミノ酸残基にてユーザー特異的変異誘発によって修飾され得る。1つ若しくは複数のアミノ酸残基の挿入及び/又は欠失を含ませるために、ユーザー特異的変異誘発によってポリペプチドが修飾され得て、或いはユーザー特異的変異誘発によってポリペプチド配列が切り詰められ得る。天然若しくは非天然アミノ酸の挿入又は置換を含ませるために、ポリペプチドがユーザー特異的変異誘発によって修飾され得る。
【0026】
[0059] 本明細書において使用される、「パラトープ」とは、抗体の、相当する抗原を特異的に認識し、結合する抗体の一部である。パラトープは、抗原-結合部位としても知られる。パラトープは、抗体ポリペプチドのおよそ15個ものアミノ酸残基を含み得て、そのおよそ5個のアミノ酸残基が通常、結合エネルギーの大部分をパラトープに与える。パラトープを含むアミノ酸は、抗体タンパク質構造のポリペプチド鎖内のアミノ酸残基の連続配列であり得るか、又は抗体タンパク質構造の三次元構造にコンフォメーション特異性を付与する不連続アミノ酸残基であり得る。本明細書で使用される、「パラトープマッピング」は、抗体タンパク質構造内のパラトープの組成を実験的に同定し、特徴付けるプロセスである。パラトープマッピングは、パラトープのアミノ酸配列、パラトープの三次元構造を定義し得て、且つ抗体とその抗原との相互作用を定義する作用メカニズムの情報を提供し得る。
【0027】
[0060] 本明細書において使用される、「エピトープ」とは、抗体によって特異的に認識され、結合される抗原の一部である。エピトープは、抗原ポリペプチドのおよそ15個ものアミノ酸残基を含み得て、そのおよそ5個のアミノ酸残基が通常、結合エネルギーの大部分をエピトープに与える。エピトープを含むアミノ酸は、抗原タンパク質のポリペプチド鎖内のアミノ酸残基の連続配列であり得るか、又は折り畳み抗原タンパク質の三次元構造にコンフォメーション特異性を付与する不連続アミノ酸残基であり得る。
【0028】
[0061] 本明細書で使用される、「エピトープマッピング」は、抗原タンパク質内のエピトープの組成を実験的に同定し、特徴付けるプロセスである。エピトープマッピングは、エピトープのアミノ酸配列、エピトープの三次元構造を定義し得て、且つ抗体とその抗原との相互作用を定義する作用メカニズムの情報を提供し得る。
【0029】
[0062] 本明細書で使用される、「受容体」とは、その天然の生理学状況において、生体系に関連するシグナルを受け取り、伝達するポリペプチド配列を含む化学構造である。受容体は、タンパク質の多種多様なクラスであり、膜貫通型受容体、細胞内受容体、細胞質受容体、核受容体等を含み得る。膜貫通型受容体は原形質膜に位置し、受容体の一部が、細胞外部からのシグナルを受け取るように細胞外に位置する。受容体は、限定されないが、リガンド依存性イオンチャンネル、Gタンパク質共役受容体、キナーゼ関連型受容体によって、又は核エンベロープを横切る受容体の移動によって伝達されるシグナルなど、多種多様なメカニズムを介してシグナルを受け取り、伝達する。受容体は通常、特異的なリガンドに結合し、リガンドはアゴニスト、部分アゴニスト、アンタゴニスト、逆アゴニスト、又は相当するその受容体のアロステリック修飾物質であり得る。
【0030】
[0063] 本明細書で使用される、「リガンド」とは、受容体への結合によってシグナルを産生する分子である。リガンド分子は、ポリペプチド、無機分子、又は有機分子であり得る。場合によっては、受容体タンパク質へのリガンド結合によって、タンパク質のコンフォメーションが変化して、細胞を横切って、又は細胞内でシグナルが産生され、伝達される。リガンドは、基質、阻害剤、活性化剤、シグナル伝達脂質、神経伝達物質、特に分子を含み得る。多くの場合には、相当するその受容体へのリガンドの結合は、高い結合親和性を有すると共に特異的である。
【0031】
[0064] 本明細書で使用される、「野生型タンパク質結合パートナー」とは、生物学的状況内で互いに特異的に相互作用する2種類のポリペプチドのうちの1つである。本明細書で使用される、「野生型タンパク質結合相互作用」とは、2つの野生型タンパク質結合パートナー間の相互作用である。野生型タンパク質結合パートナーとしては、完全長ヒトタンパク質;他の動物種の完全長タンパク質;いずれかの動物種の切断型タンパク質;いずれかの動物種のタンパク質の一部;植物タンパク質、真菌タンパク質、ウイルスタンパク質、ウイルスタンパク質、デノボ(de novo)タンパク質、又はいずれかの起源のタンパク質の切断型種が挙げられる。野生型タンパク質結合パートナーは、合成ペプチド、グリコシル化ポリペプチド、又は他の合成若しくは天然翻訳後修飾を有するポリペプチドであり得る。野生型タンパク質結合パートナーは、操作されたポリペプチド、例えば治療効果を生むために操作されている抗体の一部であり得る。本明細書で使用される、野生型タンパク質結合パートナーは、コード化ヌクレオチド配列におけるSNP又はインデルが原因の天然バリアントなど、動物のポリペプチド配列の天然に存在する変異(variation)を含み得る。
【0032】
[0065] 本明細書で使用される、「変異型タンパク質結合パートナー」とは、その未修飾種が、生物学的状況内で互いに特異的に相互作用する、2つの修飾ポリペプチドのうちの1つである。野生型タンパク質結合相互作用における一方又は両方のタンパク質結合パートナーは、変異型タンパク質結合パートナーを産生するように修飾され得る。変異型タンパク質結合パートナーは、相当するそのタンパク質結合パートナーの野生型種と相互作用し得る、又はし得ない。変異型タンパク質結合パートナーは、野生型タンパク質結合相互作用の両方のタンパク質結合パートナーが、第1変異型タンパク質結合パートナー及び第2変異型タンパク質結合パートナーを産生するように修飾されている場合に、相互作用し得る、又はし得ない。野生型タンパク質結合パートナーは、変異型タンパク質結合パートナーを産生するようにユーザー特異的変異誘発又は部位飽和変異誘発によって修飾され得る。
【0033】
[0066] いくつかの実施において、その方法は、第1タンパク質結合パートナーと、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーと、を含む。第2タンパク質結合パートナーのライブラリーは、タンパク質の複数のユーザー指定変異体又はランダムに付加された変異体と、野生型タンパク質とを含む。タンパク質の複数のユーザー指定変異体又はランダムに付加された変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又はそれ以上のアミノ酸置換を有するタンパク質のバリアントを含み得る。アミノ酸置換は、タンパク質に電荷の変化、又はタンパク質に高次構造の変化を導入するように選択され得て、野生型アミノ酸は、天然又は非天然アミノ酸で置換され得る。いくつかの実施において、アミノ酸置換は、部位飽和変異誘発(SSM)によって発生し、タンパク質結合パートナーのSSMライブラリーが作成され得る。いくつかの実施において、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーは、アラニンスキャンによって作成され得る。いくつかの実施において、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーは、エラープローンPCRなどを用いたランダム変異誘発によって、又は他の方法によって作成されて、発現タンパク質のアミノ酸配列に変異が導入され得る。第1のタンパク質結合パートナー、及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、並列化ハイスループット方法において、第1のタンパク質結合パートナーと複数のユーザー指定変異体のそれぞれとの間の相互作用について個別に親和性が測定されるように、結合親和性についてアッセイされる。野生型標的タンパク質と第1のタンパク質結合パートナーの結合親和性よりも高い又は低い第1のタンパク質結合パートナーとの結合親和性を有することが見出された第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーのメンバーが同定され、さらなる研究のために選択される。
【0034】
[0067] 第1のタンパク質結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーが結合親和性についてアッセイされるいくつかの実施において、アッセイは、ファージ提示、酵母表面提示、又は別の並列化ハイスループット方法であり得る。
【0035】
[0068] 他の実施において、方法は、第1のタンパク質結合パートナーのライブラリー及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーを含む。第1タンパク質結合パートナーのライブラリーは、タンパク質の複数のユーザー指定変異体又はランダムに付加された変異体、及び野生型タンパク質を含む。タンパク質の複数のユーザー指定変異体又はランダムに付加された変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれを超える数のアミノ酸置換を有する標的化タンパク質のバリアントを含み得る。アミノ酸置換は、タンパク質に電荷の変化、又はタンパク質に高次構造の変化を導入するように選択され得て、野生型アミノ酸は、天然又は非天然アミノ酸で置換され得る。いくつかの実施において、アミノ酸置換は、部位飽和変異誘発(SSM)によって生成し、タンパク質結合パートナーのSSMライブラリーが作成され得る。いくつかの実施において、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーは、アラニンスキャンによって作成され得る。いくつかの実施において、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーは、タンパク質の複数のユーザー指定変異体又はランダムに付加された変異体、及び野生型タンパク質を含む。タンパク質のその複数のユーザー指定変異体又はランダムに付加された変異体は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又はそれを超える数のアミノ酸置換を有する標的タンパク質のバリアントを含み得る。アミノ酸置換は、タンパク質に電荷の変化、又はタンパク質に高次構造の変化を導入するように選択され得て、野生型アミノ酸は、天然又は非天然アミノ酸で置換され得る。いくつかの実施において、アミノ酸置換は、部位飽和変異誘発(SSM)によって生成し、タンパク質結合パートナーのSSMライブラリーが作成され得る。いくつかの実施において、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーはアラニンスキャンによって作成され得る。第1のタンパク質結合パートナーのライブラリー、及び第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーは、並列化ハイスループット方法において、複数の変異型の第1のタンパク質結合パートナーのそれぞれと複数の変異型の第2のタンパク質結合パートナーのそれぞれとの間の相互作用について個別に対で親和性が測定されるように、結合親和性についてアッセイされる。第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーから選択されるメンバーと、野生型第1タンパク質結合パートナーと野生型第2タンパク質結合パートナーの結合親和性よりも高い又は低い結合親和性を有することが見出された第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーから選択されるメンバーとを含む対が同定され、さらなる研究のために選択される。
【0036】
[0069] 第1のタンパク質結合パートナーのライブラリーが、結合親和性について第2のタンパク質結合パートナーのライブラリーに対してアッセイされるいくつかの実施において、アッセイは、酵母ツーハイブリッドシステム、AlphaSeqシステム、又は別の並列化されたハイスループットのライブラリーごとのスクリーニング方法によるものであり得る。野生型タンパク質結合パートナー間の結合親和性に対する変異型タンパク質結合パートナー間の相互作用に対する結合親和性は、酵母ツーハイブリッドスクリーニング、バイオレイヤー干渉法、ELISA、定量的ELISA、表面プラズモン共鳴、FACSに基づく濃縮法(FACS-based enrichment method)、合成酵母凝集反応、AlphaSeqプラットフォーム、又はタンパク質相互作用強度の他のいずれかの測定法など、タンパク質結合親和性を定量化するいくつもの方法によって測定され得る。AlphaSeq法は、全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許出願第15/407,215号(米国特許出願公開第2017-0205421A1号)に記載されている。
【0037】
[0070] いくつかの実施において、本明細書に開示される方法によって同定されたタンパク質結合パートナーの対は、例えば、当技術分野で周知のタンパク質-タンパク質複合体を特徴付けるための他の方法の中でもとりわけ、結晶学、低温電子顕微鏡法、マイクロ電子回折、質量分析、コンピューターモデリングによって、さらに特徴付けられる。タンパク質結合パートナー又は変異タンパク質結合パートナーの対は、個別に、又は2つのパートナー間のタンパク質-タンパク質複合体との関連で、さらに特徴付けられ得る。
【0038】
[0071] いくつかの実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーは全長タンパク質である。他の実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーは切断型タンパク質である。他の実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーは融合タンパク質である。他の実施において、第1の結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーはタグ付きタンパク質である。タグ付きタンパク質には、当技術分野で公知の他のものの中でもとりわけ、エピトープタグ付き、例えば、FLAGタグ付き、HAタグ付き、Hisタグ付き、Mycタグ付きタンパク質が含まれる。いくつかの実施において、第1のタンパク質結合パートナーは全長タンパク質であり、第2のタンパク質結合パートナーは切断型タンパク質である。第1のタンパク質結合パートナー及び第2のタンパク質結合パートナーはそれぞれ、全長タンパク質、切断型タンパク質、融合タンパク質、タグ付きタンパク質、又はそれらの組み合わせのいずれかであり得る。
【0039】
[0072] いくつかの実施において、第1の結合パートナーは、抗体又は抗体ポリペプチドの切断部分である。他の実施形態において、第1の結合パートナーのライブラリーは、抗体、切断型抗体ポリペプチドのライブラリー、又は部位飽和変異誘発、アラニンスキャンによって、若しくは当技術分野でよく知られている他の方法によって作成された抗体変異体のライブラリーである。免疫グロブリンとしても知られる抗体は、固有の分子(1つ又は複数)を特異的に認識し、結合する、比較的大きなマルチユニットタンパク質構造である。大部分の抗体については、およそ50kDAの2つの重鎖ポリペプチド及びおよそ25kDAの2つの軽鎖ポリペプチドが、ジスルフィド結合によって連結されて、より大きなY形マルチユニット構造が形成される。Y形構造の先端にアミノ酸配列の可変性を表す可変領域及び超可変領域は、その標的を認識する、所定の抗体に対する特異性を付与する。
【0040】
[0073] いくつかの実施において、第1の結合パートナーは、単鎖可変断片(scFv)、短いリンカーペプチドによって連結された免疫グロブリンの重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーは、scFvのライブラリー、又は部位飽和変異誘発、アラニンスキャン、若しくは当技術分野でよく知られている他の方法によって作成されたscFv変異体のライブラリーである。
【0041】
[0074] いくつかの実施において、第1の結合パートナーは、抗原結合性断片(Fab)、抗原に結合する抗体の領域である。Fabは、1つの定常ドメインと、重鎖及び軽鎖のそれぞれの1つの可変ドメインとを含み得て、抗体のパラトープ領域を含む。いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーは、Fabのライブラリー、又は部位飽和変異誘発、アラニンスキャン、若しくは当技術分野でよく知られている他の方法によって作成されたFab変異体のライブラリーである。
【0042】
[0075] いくつかの実施において、第1の結合パートナーは、単一ドメイン抗体の一部、又はVHH、重鎖のみの抗体の抗原結合性断片であり得る。VHHは、重鎖抗体の1つの可変ドメインを含む。いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーは、VHHのライブラリー、又は部位飽和変異誘発、アラニンスキャン、若しくは当技術分野でよく知られている他の方法によって作成されたVHH変異体のライブラリーである。
【0043】
[0076] いくつかの実施において、第2結合パートナーは抗原である。他の実施において、第2結合パートナーのライブラリーは、抗原のライブラリー、又は方法の中でも、部位飽和変異誘発によって作成された抗原のライブラリーである。抗原は、抗体によって標的化される分子又は分子構造である。抗原は通常、相当する特異的な抗体によって標的化される、タンパク質、ポリペプチド、又は多糖である。抗原は、エピトープ、抗原の相当する抗体によって認識され、特異性を付与する抗原の部分を含む。
【0044】
[0077] いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーが抗体、scFv、Fab、又はFHHであり、且つ第2タンパク質結合パートナーが抗原、野生型抗体scFv、Fab、又はFHHである、タンパク質結合パートナーの対に関して、野生型抗体scFv、Fab、又はFHHが、変異抗原のライブラリーに対してスクリーニングされ、抗体と抗原との親和性に対する抗原変異体の作用が決定され得る。他の実施において、野生型抗体、scFv、Fab、又はFHHが、エピトープマッピングの目的で変異抗原のライブラリーに対してスクリーニングされ、つまりエピトープのアミノ酸配列、エピトープの三次元構造が定義され得て、エピトープと抗体との相互作用を定義する作用メカニズムに関する情報が提供され得る。
【0045】
[0078] いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーが抗体、scFv、Fab、又はFHHであり、且つ第2タンパク質結合パートナーが抗原、変異抗体のライブラリーである、タンパク質結合パートナーの対に関して、scFv、Fab、又はFHHが、野生型抗原のライブラリーに対してスクリーニングされ、抗体、scFv、Fab、又はFHHと抗原との親和性に対する抗体、scFv、Fab、又はFHH変異体の作用が決定され得る。他の実施において、変異抗体、scFv、Fab、又はFHHのライブラリーが、パラトープマッピングの目的で野生型抗原に対してスクリーニングされ、つまりパラトープのアミノ酸配列、パラトープの三次元構造が定義され得て、パラトープと抗原との相互作用を定義する作用メカニズムに関する情報が提供され得る。
【0046】
[0079] いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーが抗体、scFv、Fab、又はFHHであり、且つ第2タンパク質結合パートナーが抗原、変異抗体のライブラリーである、タンパク質結合パートナーの対に関して、scFv、Fab、又はFHHが、変異抗原のライブラリーに対してスクリーニングされ、抗体、scFv、Fab、又はFHHと抗原との親和性に対する抗体、scFv、Fab、又はFHH変異体の作用が同時に調べられ得る。他の実施において、変異抗体、scFv、Fab、又はFHHのライブラリーが、エピトープ及びパラトープマッピングの目的で変異抗原のライブラリーに対してスクリーニングされ、つまりエピトープ及びパラトープのアミノ酸配列、エピトープ及びパラトープの三次元構造が定義され得て、抗体と抗原との相互作用を定義する作用メカニズムに関する情報が提供され得る。
【0047】
[0080] 本明細書で使用される、「~と実質的に異なる」とは、互いに大きさが約5%、10%、20%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%から約500%又はそれ以上異なる、2つの定量的結合親和性の値を意味する。定量的結合親和性値は、K単位で測定されるか、又は任意の単位1.0にタンパク質結合パートナーの特定の対の結合親和性を規準化し、任意の単位1.0に基準化されたタンパク質結合パートナーのその特定の対に対して、任意の単位での複数の他のタンパク質結合パートナーの結合親和性を測定することによって、定量化され得る。
【0048】
[0081] 本明細書で使用される、「~と実質的に同じ」とは、値の約20%、15%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%から約0.1%以内にある、2つの定量的結合親和性値を意味する。定量的結合親和性値は、K単位で測定されるか、又は任意の単位1.0にタンパク質結合パートナーの特定の対の結合親和性を規準化し、任意の単位1.0に基準化されたタンパク質結合パートナーのその特定の対に対して、任意の単位での複数の他のタンパク質結合パートナーの結合親和性を測定することによって、定量化され得る。
【0049】
[0082] 本明細書で使用される、「~より実質的に高い」とは、一方の定量的結合親和性値よりも、約5%、10%、20%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、200%、300%から約500%又はそれ以上高い、もう一方の定量的結合親和性値を意味する。定量的結合親和性値は、K単位で測定されるか、又は任意の単位1.0にタンパク質結合パートナーの特定の対の結合親和性を規準化し、任意の単位1.0に基準化されたタンパク質結合パートナーのその特定の対に対して、任意の単位での複数の他のタンパク質結合パートナーの結合親和性を測定することによって、定量化され得る。
【0050】
[0083] 本明細書で使用される、「~より実質的に低い」とは、一方の定量的結合親和性値の約95%、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%から約5%又はそれ以下である、もう一方の定量的結合親和性値を意味する。定量的結合親和性値は、K単位で測定されるか、又は任意の単位1.0にタンパク質結合パートナーの特定の対の結合親和性を規準化し、任意の単位1.0に基準化されたタンパク質結合パートナーのその特定の対に対して、任意の単位での複数の他のタンパク質結合パートナーの結合親和性を測定することによって、定量化され得る。
【0051】
[0084] いくつかの実施において、本明細書に開示の方法を用いて、タンパク質結合パートナーの代償性変異が同定され得る。上述のように、並列化ハイスループット方法において、その複数の第1タンパク質結合パートナーのそれぞれと、第2タンパク質結合パートナーのそれぞれとの相互作用について親和性が測定されるように、本明細書に開示の方法を用いて、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーが第2タンパク質結合パートナーのライブラリーに対してスクリーニングされ得る。タンパク質結合パートナーの2つの個々の種間の所定の相互作用に関して、以下の親和性の関連性が同時に検出される場合が起こり得る:(a)第1タンパク質結合パートナーの変異種及び第2タンパク質結合パートナーの野生型種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも低い、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有し;(b)第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも低い、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有し;及び(c)(a)に記載の第1タンパク質結合パートナーの変異種及び(b)に記載の第2タンパク質結合パートナーの変異種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも、強い、等しい、又はほぼ等しい、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有する。上述の関係性を示すタンパク質結合パートナーの対の2つの変異は、代償性変異と呼ばれ得て、2つの変異が同時に起こった場合に、第2タンパク質結合パートナーの変異が、第1タンパク質結合パートナーの変異の、親和性を低下させる影響を代償し、その結果、図15に例証されるように、2つのタンパク質結合パートナー間の野生型親和性レベルが回復する。このシナリオは、2つの変異残基間の近接を意味し、構造決定及び/又はタンパク質操作に有用であるだろう。
【0052】
[0085] 別の実施において、タンパク質結合パートナーの個々の2つの種間の所定の相互作用に関して、以下の別の親和性の関連性が同時に検出される場合が起こり得る:(a)第1タンパク質結合パートナーの変異種及び第2タンパク質結合パートナーの野生型種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも低い、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有し;(b)第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの変異種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも強い、等しい、又はほぼ等しい、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有する;及び(c)(a)に記載の第1タンパク質結合パートナーの変異種及び(b)に記載の第2タンパク質結合パートナーの変異種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも、強い、又は有意に強い、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有する。上述の関係性を示すタンパク質結合パートナーの対の2つの変異は、代償性変異と呼ばれ得て、タンパク質結合パートナーの変異が共に、それ自体で起こる2つの代償性変異のいずれかよりも高い更なる結合親和性を付与する。このシナリオは、図16において抗原PD-1のK54I変異と、モノクローナル抗体ペムブロリズマブ(ペムブロ)の短鎖可変断片(scFv)のY101K変異との間で示される。このシナリオは、2つの変異残基間の近接を意味し、構造決定、タンパク質操作、又はIP保護の目的に有用であるだろう。
【0053】
[0086] 別の実施において、タンパク質結合パートナーの2つの個々の種間の所定の相互作用に関して、以下の別の親和性の関連性が同時に検出される場合が起こり得る:(a)第1タンパク質結合パートナーの変異種及び第2タンパク質結合パートナーの野生型種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも、強い、等しい、又はほぼ等しい結合親和性を有し:(b)第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの変異種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも低い結合親和性を有し;及び(c)(a)に記載の第1タンパク質結合パートナーの変異種及び(b)に記載の第2タンパク質結合パートナーの変異種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性と等しい、又はほぼ等しい、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有する。上述の関係性を示すタンパク質結合パートナーの対の2つの変異は、代償性変異とも呼ばれ得て、2つの変異が同時に起こった場合に、第2タンパク質結合パートナーの変異が、第1タンパク質結合パートナーの変異の、親和性を低下させる影響を代償し、その結果、2つのタンパク質結合パートナー間の野生型親和性レベルが回復する。
【0054】
[0087] 別の実施において、タンパク質結合パートナーの2つの個々の種間の所定の相互作用に関して、以下の別の親和性の関連性が同時に検出される場合が起こり得る:(a)第1タンパク質結合パートナーの変異種及び第2タンパク質結合パートナーの野生型種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも、強い、等しい、又はほぼ等しい結合親和性を有し:(b)第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの変異種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも、強い、等しい、又はほぼ等しい結合親和性を有し;及び(c)(a)に記載の第1タンパク質結合パートナーの変異種及び(b)に記載の第2タンパク質結合パートナーの変異種が、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との結合親和性よりも低い、本明細書に開示の方法によって検出される結合親和性を有する。上述の関係性を示すタンパク質結合パートナーの対の2つの変異は、タンパク質間の界面で互いの近傍にあるアミノ酸を同定するのに有用であり得て、特に2つのタンパク質結合パートナー間の結合親和性を仲介するのに有用である。
【0055】
[0088] いくつかの実施において、「期待される(expected)結合親和性」又は「期待される相互作用強度」は、変異型(mutated)のタンパク質結合パートナーの対に対して定義され、予想され得る。いくつかの実施において、期待される結合親和性は、抗体変異種と抗原変異種の対形成に対して定義され得る。本明細書で使用される、期待される結合親和性は、相当する野生型タンパク質結合パートナーへの結合に対する、各変異の確認された影響に基づく、2つの変異型タンパク質結合パートナー間で確認することが予想されるであろう、親和性として定義され得る。期待される結合親和性は、(1)野生型ごとの結合親和性を1.0に基準化し、(2)その野生型タンパク質結合パートナーとの変異型タンパク質結合種の相互作用それぞれの相対的結合親和性を計算することによって算出されて、第1の変異型タンパク質結合親和性及び第2変異型タンパク質結合親和性が得られ、(3)第1の変異型タンパク質結合親和性及び第2変異型タンパク質結合親和性を掛けることによって算出されて、2つのタンパク質結合パートナーの互いの相互作用に関して期待される結合親和性が得られる。
【0056】
[0089] 例えば、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との相互作用に関して測定される(observed)結合親和性は、任意の単位1.0に基準化され;第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの変異種との相互作用に関して測定される結合親和性は、野生型タンパク質結合相互作用の親和性に対して0.5であり;第1タンパク質結合パートナーの変異種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との相互作用に関して測定される結合親和性は、野生型タンパク質結合相互作用に対して0.5であり;第1タンパク質結合パートナーの変異種と第2タンパク質結合パートナーの変異種との相互作用に関して測定される結合親和性は0.25であると算出される。
【0057】
[0090] いくつかの実施において、「測定される結合親和性」とは、本明細書に開示の方法に従って変異型タンパク質結合パートナー間の多くの相互作用それぞれについて決定され得る。一実施において、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との相互作用の親和性測定値は、任意の単位1.0に基準化される。タンパク質結合パートナーの他の対の測定された結合親和性、例えば第1タンパク質結合パートナーの変異種と第2タンパク質結合パートナーの変異種との結合親和性が測定され、第1タンパク質結合パートナーの野生型種と第2タンパク質結合パートナーの野生型種との相互作用に割り当てられる値1.0に対して比例的に定量化される。変異型タンパク質結合パートナーの対の測定された結合親和性は、期待される結合親和性と比較されて、測定結合親和性と期待結合親和性との比が決定され得る。いくつかの実施において、且つタンパク質結合パートナーのいくつかの対に関して、測定結合親和性と期待結合親和性との比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1~約10:1、又は10:1を超え得る。いくつかの実施において、且つタンパク質結合パートナーのいくつかの対に関して、測定結合親和性と期待結合親和性との比は、約1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1~約10:1、又は10:1未満であり得る。
【0058】
[0091] 第1タンパク質結合パートナーが抗体であり、及び第2タンパク質結合パートナーが抗原であり、且つ抗体と抗原の代償性変異が本明細書に開示の方法によって同定されているタンパク質結合パートナーの対に関して、代償性変異のこれらの対に関与するアミノ酸残基は抗原/抗体界面にて空間的に近く、片側タンパク質結合に基づく方法を用いた場合に入手できない、タンパク質間界面についての固有の情報が得られる。本明細書に開示の方法によって検出されるタンパク質結合パートナー間の代償性変異の例は、構造的近接の指標である。他の構造的データの非存在下にて、代償性変異の対は、タンパク質間相互作用の計算モデルの構築において距離の制約として有用であり得る。タンパク質結合パートナーの対の代償性変異を同定することによって、タンパク質間界面での相互作用する残基の近接についての固有の情報が得られる。これらの距離の制約は、タンパク質操作及び構造決定に、又は製薬及びバイオテクノロジー産業における新規な抗体若しくは抗原に対する知的所有権保護の取り組みを知らせるのにも、有用であり得る。
【0059】
[0092] いくつかの実施において、本明細書に開示の方法を用いて、第1タンパク質結合パートナーが受容体であり、且つ第2タンパク質結合パートナーがリガンドである、タンパク質結合パートナー間の代償性変異が同定され得る。代償性変異のこれらの対に関与するアミノ酸残基は、受容体/リガンド界面で空間的に近く、片側タンパク質結合に基づく方法を用いた場合に入手できない、タンパク質間界面についての固有の情報が得られる。本明細書に開示の方法によって検出されるタンパク質結合パートナー間の代償性変異の例は、構造的近接の指標である。他の構造的データの非存在下にて、代償性変異の対は、タンパク質間相互作用の計算モデルの構築において距離の制約として有用であり得る。タンパク質結合パートナーの対の代償性変異を同定することによって、タンパク質間界面での相互作用する残基の近接についての固有の情報が得られる。これらの距離の制約は、タンパク質操作、構造決定に、又は製薬及びバイオテクノロジー産業における新規な受容体及びリガンドに対する合理的な設計努力を知らせるのにも、有用であり得る。受容体-リガンドタンパク質結合パートナーについて同定される代償性変異を用いて、生物医学的応用に、例えば細胞療法、癌治療、免疫療法に有用である受容体-リガンド相互作用間の特異的挙動がカスタム操作され得る。いくつかの実施において、代償性変異を含む受容体-リガンドタンパク質結合パートナーが、タンパク質結合パートナーの野生型種間よりも高い親和性を示す、受容体-リガンドタンパク質結合パートナー間で、代償性変異が同定され得る。
【0060】
[0093] 本明細書に開示の方法は、かかる相乗効果的相互作用の同定に、つまり2つのタンパク質結合パートナー間、例えば受容体とそのリガンドとの結合親和性を高める変異の同定に、一意的に有利である。以前から利用可能な方法、例えば従来の片側スクリーニング法を用いて、タンパク質結合パートナー間のかかる相乗効果的代償性変異を同定することは非常に難しいか、又は不可能であった。
【0061】
[0094] さらに、本明細書に開示の方法は、例えば細胞表面受容体とそのリガンドとの直交(orthogonal)タンパク質相互作用を同定し、操作するのに有用であり得て、操作された受容体、操作されたリガンドと、内因性野生型リガンド(例えば、可溶性成長因子又はサイトカイン)との相互作用が、治療的状況において目的の結果に一意的に調整可能である。例えば、図3Bによって例証されるタンパク質相互作用は、片側直交結合関係を表し、野生型受容体が結合し、変異リガンドではなく、野生型リガンドによって活性化されるのに対して、変異リガンドが結合し、野生型リガンドと変異リガンドの両方によって活性化される。本明細書に開示の方法によって、受容体とリガンドの両方の変異を同定することが可能となり、ごく少数の非常に影響のある変異が受容体及びリガンドに導入されることによって、受容体-リガンド相互作用にかかる特性が与えられるだろう。
【0062】
[0095] 図3Bによって例証される片側直交結合関係は、細胞療法、例えばCAR-T細胞療法の状況において特に有用であり得て、患者内のCAR-T細胞の数及び存在量を調節することは、治療法の有効性に重要であり得る。本明細書に開示の方法を用いて、受容体に対する代償性変異が同定され得て、本明細書に開示の方法によって同定されるカスタマイズされた細胞表面受容体関連代償性変異を発現する、CAR-T細胞の操作が可能となる。同様に、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異を発現するように、可溶性成長因子又はサイトカインが操作され得て、CAR-T細胞表面受容体及び可溶性成長因子又はサイトカインが、図3Bに示すような片側関係片側直交親和性関係を示す。細胞表面受容体及び可溶性成長因子又はサイトカインのそれぞれに、もしかすると、ごく少数の非常に影響のある代償性変異を導入することによって、CAR-T細胞表面受容体が結合し得て、操作成長因子又はサイトカインの両方、患者の生理学的環境に対して天然の野生型成長因子又はサイトカインによって活性化され得る。逆に、本明細書に開示の方法によって同定される、操作された可溶性成長因子又はサイトカイン関連代償性変異は、操作CAR-T細胞表面受容体のみに結合し、活性化し、患者の生理学に対して複数の、又は野生型の細胞表面受容体に影響を及ぼさない。本明細書に開示の方法を用いた、カスタマイズ化直交タンパク質間相互作用のこのパターンは、多数の疾患及び障害を治療するための、細胞療法、免疫療法、及び生物製剤の操作に有用であるだろう、
【0063】
[0096] 図1は、AlphaSeq法のライブラリーごとのスクリーニング能力を示す一連のチャートである。各チャートにおいて、広い親和性範囲にわたるバイオレイヤー干渉法によって測定される親和性を有する、タンパク質相互作用のサブセットが、所定の網状構造サイズにてAlphaSeq法の感度及び定量的精度を示すために、AlphaSeq強度と比較される。チャート100は、100の結合パートナーの第2ライブラリーに対する100の結合パートナーの第1ライブラリーの相互作用のスクリーニング、及び10,000通りの相互作用の測定を例示する。チャート102は、1,000個の結合パートナーの第2のライブラリーに対する1,000個の結合パートナーの第1のライブラリーの相互作用をスクリーニングし、1,000,000の相互作用を測定することを示す。チャート104は、10,000個の結合パートナーの第2のライブラリーに対する10,000個の結合パートナーの第1のライブラリーの相互作用をスクリーニングし、100,000,000の相互作用を測定することを示す。チャート106は、10,000の相互作用について、タンパク質間親和性(K)とAlphaSeq強度との相関関係を示す。チャート108は、1,000,000の相互作用について、タンパク質間親和性(K)とAlphaSeq強度との相関関係を示す。チャート110は、100,000,000の相互作用について、タンパク質間親和性(K)とAlphaSeq強度との相関関係を示す。
【0064】
[0097] 図2Aは、複合体において相互作用する2つのタンパク質結合パートナーの概略図であり、第1タンパク質結合パートナー200は抗体であり、且つ第2タンパク質結合パートナー204は抗原であり、タンパク質結合パートナー間の界面、並びに2つのタンパク質結合パートナー200及び204の部位飽和変異誘発(SSM)スクリーンが強調される。タンパク質結合パートナー200のアミノ酸残基202は、タンパク質結合パートナー204のアミノ酸残基203に対応する。タンパク質結合パートナー200のアミノ酸残基202は、利用可能な、天然又は人工の追加のアミノ酸残基のいずれかによって置換され、タンパク質結合パートナー204のアミノ酸残基203の置換の同様のライブラリーに対して相互作用についてスクリーニングされ得る。
【0065】
[0098] このようなライブラリーごとのSSMスクリーニングの結果を図2Bに示す。ヒートマップ206は、タンパク質間界面を定義する全てのアミノ酸残基でSSM変異を保有するタンパク質結合パートナー間の相互作用の、AlphaSeqによるライブラリーごとの強度測定値を示す。より濃い色はAlphaSeq強度が高いことを表し、より薄い色はAlphaSeq強度が低いことを表す。例えば、挿入図208は、アミノ酸212の置換のSSMライブラリーに対して測定された、アミノ酸210の置換のSSMライブラリーのライブラリーごとのAlphaSeq強度を強調している。そのデータがヒートマップ206によって表されるライブラリーごとのスクリーンに関して、アミノ酸残基210は、利用可能な天然アミノ酸残基(G、A、V、L、M、I、S、TC、P、N、Q、F、Y、W、K、R、H、D、E)のいずれに対しても変異されている。アミノ酸残基210に相当して、アミノ酸残基212は同様に、利用可能な天然アミノ酸残基(G、A、V、L、M、I、S、TC、P、N、Q、F、Y、W、K、R、H、D、E)のいずれに対しても変異されている。アミノ酸残基210及びアミノ酸残基212のバリアントの対での相互作用の強度データが、ヒートマップ挿入図208によって表される。例えば図2Bに含まれるヒートマップのカラー版は、米国特許商標庁(USPTO)公開特許出願情報検索システム(PAIR,以下のリンク:https://portal.uspto.gov/pair/PublicPairからアクセス可能であり、米国特許出願第63/033,176号,追加コンテンツタブ(Supplemental Content tab))を介して入手可能である。
【0066】
[0099] 図3A~3Cは、図2A~2Bに示されるデータによって検出されたタンパク質間相互作用のサブセットのグラフ表示であり、野生型及び変異タンパク質結合パートナー間の相対的親和性、及び2つのタンパク質結合パートナー間の親和性に対する単一アミノ酸置換の効果を検出する、本明細書に開示される方法の能力を示す。図3Aは、野生型タンパク質結合パートナーが高親和性で相互作用し、変異体タンパク質結合パートナーが高親和性で相互作用するが、第1又は第2のタンパク質結合パートナーのいずれかの変異体が他のタンパク質結合パートナーの野生型と相互作用しないシナリオを示す。その結果は、変異体の対であり、野生型に直交に結合する、野生型からの単一アミノ酸変化をそれぞれが有する。図3Bは、第1のタンパク質結合パートナーの野生型及び変異型の両方が、第2のタンパク質結合パートナーの野生型と相互作用するが、野生型の第1のタンパク質結合パートナーは、変異型の第2のタンパク質結合パートナーと相互作用しない、すなわち、第2のタンパク質結合パートナーの変異は、野生型の第1のタンパク質結合パートナーとの相互作用を無効にするシナリオを示す。図3Cは、第1のタンパク質結合パートナーの野生型及び変異型の両方が、第2のタンパク質結合パートナーの変異型と相互作用するが、変異型の第1のタンパク質結合パートナーは、野生型の第2のタンパク質結合パートナーと相互作用しない、すなわち、第1のタンパク質結合パートナーの変異は、野生型の第2のタンパク質結合パートナーとの相互作用を無効にするシナリオを示す。
【0067】
[0100] 図4は、AlphaSeqを使用したライブラリーごとのタンパク質間相互作用スクリーニングのワークフローを示す。タンパク質結合パートナーの第1のライブラリー400及びタンパク質結合パートナーの第2のライブラリー402は、部位飽和変異誘発によって生成され、酵母で発現される。相互作用ステップ404では、2つのライブラリー集団が混合され、タンパク質結合パートナーが結合する。相互作用したタンパク質結合パートナーを発現する細胞は、融合ステップ406で交配する。第1のライブラリーと第2のライブラリーとの間のタンパク質間相互作用は、測定ステップ408で検出され、定量化される。
【0068】
[0101] 図5は、抗体-抗原相互作用をAlphaSeqプラットフォームで測定することができることを例示する。当技術分野でよく知られている、十分に特徴付けられた抗体-抗原対は、AlphaSeqワークフローにかけられた。このシステムは、コグネート(cognate)結合パートナーを有する細胞の対を同定し、非コグネート対の中での交差反応は検出しなかった。プロット500は、huCTLA-4及びイピリムマブscFvの検出された相互作用、並びに相対的AlphaSeqシグナルを示す。プロット502は、huTNFα及びアダリムマブscFの検出された相互作用を示す。
【0069】
[0102] 図6は、8つの抗体バリアントに対して8つの抗原バリアントをスクリーニングするAlphaSeq実験の結果を例示し、64通りの相互作用が検出及び定量化された。連結ラインの太さは、接合(mating)頻度シグナルの大きさを意味する。有意なライン600は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、Mauteら(Maute RL, Gordon SR, Mayer AT, McCracken MN, Natarajan A, Ring NG, Kimura R, Tsai JM, Manglik A, Kruse AC, Gambhir SS, Weissman IL, Ring AM. Engineering high-affinity PD-1 variants for optimized immunotherapy and immuno-PET imaging. Proc Natl Acad Sci U S A. 2015 Nov 24;112(47):E6506-14. doi: 10.1073/pnas.1519623112. Epub 2015 Nov 10. PMID: 26604307; PMCID: PMC4664306.)により、以前に報告及び特徴付けられている、ヒトプログラム細胞死リガンド-1(huPD-L1)と操作プログラム細胞死タンパク質-1(PD-1)外部ドメインとの相互作用を表す。AlphaSeqプラットフォームにより検出される、この相互作用の有意性から、本明細書に開示の方法は、タンパク質結合パートナー間の相互作用を検出することができ、その相互作用は、タンパク質結合パートナーの一方又は両方の修飾により、野生型相互作用に対して強化されることが確認される。
【0070】
[0103] 図7は、野生型ペムブロscFv(抗体)に対する60のPD-1バリアント(抗原バリアント)のスクリーン結果を表すヒートマップである。60個のPD-1表面残基は、変異誘発に対して選択され、その結果得られるSSMライブラリーがAlphaSeqワークフローにかけられた。AlphaSeqシグナルをヒートマップ形式でディスプレイし、様々なパターンの暗い影付きの四角は、高い、及び低い接合頻度を示す。図の下部の棒は、残基と、抗体内のいずれかの原子との最短距離を表す。PD-1残基54及び61に相当する残基700及び702は、置換に対して特に不耐性であり、且つ既知のX線構造に基づく抗体に空間的に近い。例えば図7に含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR(アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0071】
[0104] 図8は、図7に示すデータによって同定された、PD-1/ペムブロリズマブ界面の結晶構造内の特定の残基を強調した図である。PD-1残基K54及びD61は、特に置換に対して不耐性であり、且つ抗体-抗原界面内で空間的に近い。
【0072】
[0105] 図9は、野生型PD-1(抗原)に対する33のペムブロscFvバリアント(抗体バリアント)のスクリーン結果を表すヒートマップである。ペムブロリズマブscFv内の33位置を、SSMを用いて変異誘発し、得られたライブラリーを、野生型PD-1に対してAlphaSeqワークフローにかけた。AlphaSeqシグナルをヒートマップ形式でディスプレイし、様々なパターンの暗い影付きの四角は、高い、及び低い接合頻度を示す。図の下部の棒は、残基と、抗体内のいずれかの原子との最短距離を表す。ペムブロリズマブscFv残基99は、置換に対して特に不耐性であり、且つ影付きカラム900及び影付きボックス902によって示される抗体-抗原界面内で空間的に近い。例えば図9に含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR(アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0073】
[0106] 図10は、抗体-抗原界面の特定の残基が強調される、PD-1/ペムブロリズマブscFv界面の結晶構造のグラフ図である。PD-1D61及びペムブロscFvR99は、生産的抗原-抗体複合体の形成に機能上重要であることが示されており、特定の実施形態では、AlphaSeqアッセイにおいて、どちらかの部位での置換によって、大幅に接合頻度が低減される。例えば図10に含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR(アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0074】
[0107] 図11は、先に強調された残基のD61-R99対の周囲の密な相互作用網状構造を強調する、PD-1/ペムブロリズマブ界面の構造の説明図である。PD-1及びペムブロリズマブscFvの変異不耐性の残基を示す。
【0075】
[0108] 図12A~12Bは、図9に示す同じデータセットの図示である。ペムブロリズマブscFv残基D104及びS230は、アミノ酸置換に対して特に不耐性であることが強調されている。これらの残基は、VH-VL界面にわたって互いに相互作用しており、抗体構造内のVH及びVLドメインの相対的位置決めを安定化する相互作用が形成される。変異によるこの特異的な相互作用が乱されると、AlphaSeqによって作成される接合頻度スコアの低下によって読み取れる、結合の損失が起こる。ペムブロリズマブscFv残基230でのアラニンの置換は耐性があるが、大部分の他の置換はそうではないことに注目すべきである。アラニンスキャンのみでは、この部位が変異を受けやすいと同定されておらず、部位飽和変異誘発及びAlphaSeqプラットフォームによって生成された完全変異スペクトルを用いる利点が強調されている。例えば図12Aに含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR (アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0076】
[0109] 図13は、ペムブロscFv(抗体)とPD-1(抗原)のライブラリーごとのスクリーンで測定された酵母接合効率に基づくAlphaSeq相対強度データによって同定される代償性変異の対の表である。カラム1300は、PD-1変異型タンパク質結合パートナーを述べ、カラム1302は対のペムブロscFv変異型タンパク質結合パートナーを述べ、カラム1304は、カラム1300及び1302の対の変異残基間でのオングストロームの最小距離を述べている。残基関連代償性変異の対は、抗体-抗原界面内で空間的に近い。それに関して相対強度が、以下に記載の図16~17でプロットされた、変異型タンパク質結合パートナーの対に、灰色の点で列が強調された。
【0077】
[0110] 図14は、図7のヒートマップに示される同じデータセットの図示であり、抗体-抗原界面の結晶構造のグラフ図である。これらのデータから、空間的エピトープマッピングのみでは、偽陽性シグナルが生じ得ることを示している。例えば、PD-1位置107のリジン残基は、距離ヒートマップによって明らかにされるように、抗体に空間的に近く、VLドメインにおけるE194など、抗体残基との相互作用の明確なセットを作る。しかしながら、どちらの残基も、効果なく変異され得て、そのため、空間的エピトープマッピングによって明らかにされる相互作用は、AlphaSeq変異解析によって実証されるように、それが機能上重要ではないため、偽陽性とみなされ得る。例えば図14に含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR(アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0078】
[0111] 図15は、ペムブロscFv(抗体)とPD-1(抗原)のライブラリーごとのスクリーンにおいて相対AlphaSeqシグナルを測定することによって代償性変異を検出する、AlphaSeqプラットフォームの可能性を例証するダイアグラムである。ライブラリーごとの分析は、プロットされたAlphaSeqシグナルシグネチャーを示す、相互作用の比較的稀なサブセットを同定することができる。このシグネチャーを示す代償性変異は、その変異体の少なくとも1つ、又は両方が、コグネート野生型との弱化した相互作用を有する変異対に関して野生型様接合頻度を確認することを可能にする。野生型複合体のX線構造を調べることによって、これらの代償性変異を抱える残基が、空間的に近いことが判明している。
【0079】
[0112] 図16は、関連する残基が強調された、抗体-抗原界面の結晶構造のグラフ図と共に、代償性変異のシグネチャーを示す変異型タンパク質結合パートナーの3つの対のプロットを示す。
【0080】
[0113] 図17は、関連する残基が強調された、抗体-抗原界面の結晶構造のグラフ図と共に、代償性変異のシグネチャーを示す変異型タンパク質結合パートナーの2つの対のプロットを示す。
【0081】
[0114] 図18は、ペムブロscFv(抗体)変異体とPD-1(抗原)変異体のライブラリー間のライブラリーごとのスクリーンにおいて相対的AlphaSeqシグナルを測定することによって検出された代償性変異の対を強調するグラフ図である。7つの抗体残基及び6つの抗原残基を含む、合計10通りの固有の残基間の相互作用を示し、すべての代償性対が抗原/抗体界面にて空間的に近い。これらの代償性変異によって、片側結合に基づく方法を用いた場合に、入手可能ではないタンパク質間界面についての固有の情報が得られる。
【0082】
[0115] 図19は、標的変異誘発によるエピトープマッピングの以前の方法を示す。従来から知られているエピトープマッピングの従来の方法において、標的タンパク質上の表面残基は、アラニン(アラニンスキャン)又は別のアミノ酸に対する個々の基準で一つずつ変異され、抗体による標的の結合が評価された。結合に関して特定の実施形態において、標的に対する抗体の結合を乱す変異は、重要であると推測され、エピトープを含むと推測された。各抗体-標的変異体相互作用が別々に評価されるため、又は標的変異体がバッチ処理され、1つの抗体が一度にエピトープマッピングされるため、このアプローチは遅く、高価であった。例えば、標的タンパク質1900は、アラニンスキャン変異誘発にかけられ、抗体1904に対してエピトープがマッピングされ得る。変異標的1902は、タンパク質の17位置にてアミノ酸残基の変異1906を含む。変異1906は、変異標的1902と抗体1904との結合を破壊し、標的のエピトープが17位のアミノ酸残基の近くにあることを意味する。
【0083】
[0116] 図20は、本明細書に開示の方法を用いた、エピトープマッピングのためのライブラリーごとのスクリーンを示す。いくつかの実施において、標的タンパク質2000は、タンパク質のすべてのアミノ酸位置にわたってアラニンスキャン変異誘発にかけられ得る。他の実施において、標的タンパク質2000は、完全部位飽和変異誘発にかけられ得て、タンパク質の各アミノ酸位置が、すべての利用可能なアミノ酸バリアントに変異されて、変異標的タンパク質のライブラリーが作成される。抗体、例えば抗体2002のライブラリーが提供され、本明細書に開示の方法に従って、標的タンパク質の変異誘発ライブラリーに対してスクリーニングされ、標的タンパク質ライブラリーと抗体ライブラリーとのすべての結合相互作用が評価される。抗体ライブラリーの各抗体について、結合相互作用が評価され、標的タンパク質エピトープが、野生型結合に対して結合を破壊する変異の位置から推測され得る。
【0084】
[0117] 図21は、図20に示すライブラリーごとのスクリーンによって生成されたデータのグラフ図である。このデータは、抗体(1つ又は複数)のライブラリーに対するPD-1バリアント(抗原バリアント)のスクリーンの結果を表すヒートマップとして示される。すべてのPD-1表面残基が、変異誘発に対して選択され、得られたSSMライブラリーがAlphaSeqワークフローにかけられた。AlphaSeqシグナルをヒートマップ形式でディスプレイし、様々なパターンの暗い影付きの四角は、高い、及び低い接合頻度を示す。10の抗体が、PD-1表面位置の部位飽和変異誘発ライブラリーに対してスクリーニングされた。PD-1表面位置を軸2100に沿って左から右へ示し、試験抗体及びコントロールを軸2102に沿って示した。例えば図21に含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR(アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0085】
[0118] 図22は、図21に示す抗体のうちの2つの更なる図である。強化/枯渇ヒートマップとして、図21からの抗体9及び10のデータを図22に再構成し、ライブラリーごとのスクリーンの結果を示した。ヒートマップ2204は、PD-1表面残基バリアント(抗原バリアント)のライブラリーに対するペムブロリズマブ(抗体)のスクリーンのデータを表し、ヒートマップ2206は、PD-1表面残基バリアント(抗原バリアント)のライブラリーに対するニボルマブ(抗体)のスクリーンのデータを表す。AlphaSeqシグナルをヒートマップ形式でディスプレイし、様々なパターンの暗い影付きの四角は、高い、及び低い接合頻度を示す。PD-1表面位置を軸2200に沿って左から右へ示し、各PD-1表面位置に対して個々のアミノ酸バリアントを軸2202に沿って示す。例えば図22に含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR(アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0086】
[0119] 図23は、本明細書に開示の方法の可能性のあるアウトプットを示し、代償性変異が、第1タンパク質結合パートナーと第2タンパク質結合パートナーとの間に同定される。野生型タンパク質2300及び野生型タンパク質2302は、第1及び第2タンパク質結合パートナーとして相互に作用する。本明細書に開示の方法に従った、ライブラリーごとの完全部位飽和変異誘発スクリーンでは、各変異に関して、変異タンパク質結合パートナーは、野生型相互作用と類似の方法で相互作用するが、変異タンパク質結合パートナーは野生型タンパク質結合パートナーと相互作用しないような、2308、2310、及び2312位置として第1の及び第2タンパク質結合パートナーの変異を同定した。例えば、変異型タンパク質結合パートナー2304は、変異型タンパク質結合パートナー2306と強く相互作用するが、2308、2310、及び2312位置での変異が原因で野生型タンパク質結合パートナー2302と相互作用しない。かかる直交タンパク質結合相互作用の同定及び設計は、抗体の操作、合成受容体/リガンド対の操作などの用途に、又は操作酵素足場などの合成生物学ツールに有用であり得る。
【0087】
[0120] 図24Aは、本明細書に開示の方法を用いた、エピトープマッピングのためのライブラリーごとのスクリーンを示す。PD-1(抗原)表面残基変異体の部位飽和変異誘発ライブラリーと、ペムブロリズマブ(抗体)変異体の部位飽和変異誘発ライブラリーとの間で、ライブラリーごとのスクリーンを実施した。PD-1の19アミノ酸位置が変異誘発に選択され、ペムブロリズマブの33アミノ酸位置が、変異誘発に選択された。抗原及び抗体のアミノ酸残基が、タンパク質間結合界面の付近で選択された。AlphaSeqプラットフォームを使用して、220,000通りを超える対の相互作用を含む、抗原及び抗体タンパク質結合パートナーの部位飽和変異誘発ライブラリー間のすべての対相互作用を測定した。ヒートマップ2400は、野生型PD-1と野生型ペムブロリズマブの結合親和性に対する、PD-1変異体のライブラリーと、ペムブロリズマブ変異体のライブラリーとの相互作用のAlphaSeqによる、対のライブラリーごとの強度測定値を例示し、薄い影付きは野生型結合親和性を表し、濃い影付きは、低減された結合親和性を表す。
【0088】
[0121] 図24Bは、図24Aのヒートマップ2400に示されるデータのサブセットのより詳細な図を示す。ヒートマップ挿入図2402は、位置54にて変異を有する20PD-1バリアントと、位置54にて変異を有する20ペムブロリズマブバリアントとの対での相互作用のデータ、又は本明細書に開示される方法によって測定された400通りの総タンパク質間相互作用のデータを表す。単一AlphaSeqアッセイにおいて、結合親和性データは、33の選択ペムブロリズマブ位置と、19の選択PD-1位置との対でのすべての組み合わせについて測定され、2つのタンパク質結合パートナー間の野生型結合親和性に対して評価された。
【0089】
[0122] 図24Cは、単一PD-1変異と単一ペムブロリズマブバリアントとの特定の対での相互作用を強調する。ヒートマップ2412は、野生型PD-1と野生型ペムブロリズマブの結合親和性に対する、PD-1変異体のライブラリーとペムブロリズマブ変異体のライブラリーとの相互作用のAlphaSeqによる対のライブラリーごとの強度測定値を例示し、薄い影付きは野生型結合親和性を表し、濃い影付きは、低減された結合親和性を表し、2つの特定の変異:PD-1K54F及びペムブロリズマブY33Pが強調される。四角2404は、野生型PD-1及び野生型ペムブロリズマブに関する結合親和性を表し、ヒートマップの影付けによれば白色である。四角2406は、野生型PD-1とペムブロリズマブY33Pとの結合親和性を表し、暗く影が付いており、野生型に対して有意に低減された結合親和性が示される。四角2408は、PD-1K54Fと野生型ペムブロリズマブとの結合親和性を表し、暗く影が付いており、野生型に対して有意に低減された結合親和性が示される。四角2410は、PD-1K54FとペムブロリズマブY33Pとの結合親和性を表し、影が付いた白色であり、野生型に類似の結合親和性を示す。つまり、これらの個々の変異に関して、各変異はそれ自体で、第1及び第2タンパク質結合パートナー間の結合親和性を有意に低減するが、変異が同時に存在する場合には、結合親和性は、野生型結合親和性と同様なレベルに回復される。第1タンパク質結合パートナーの変異は、第2タンパク質結合パートナーの変異によって起こる結合欠損を代償し、野生型結合親和性と同様な結合親和性を促進する。例えば図24A~24Cに含まれるヒートマップのカラー版は、USPTO PAIR(アクセス63/033,176,追加コンテンツタブ)を介して入手可能である。
【0090】
[0123] 図24Dは、図24Cのヒートマップ2412に示すデータのグラフ図である。野生型及び変異PD-1と、ペムブロリズマブとの組合せの4通りの対の相互作用を示す。グラフは、野生型PD-1と野生型ペムブロリズマブとの結合親和性が1.0に設定され、変異型タンパク質結合パートナーの対の相互作用が1.0に対して定量化されるように基準化される。図24Cに関して記述されるように、これらの変異は、PD-1K54F及びペムブロリズマブY33Pが、野生型タンパク質結合パートナー間の結合親和性と同様な結合を示すように、各変異がそれ自体で発揮する、結合親和性に対する有害な作用を代償する一意的及び意外な特性を示す。
【0091】
[0124] 図25は、2つのタンパク質結合パートナー間の期待される、及び測定された相互作用強度の第1プロット、並びに本明細書に開示の方法を用いて評価された抗体-抗原タンパク質結合パートナー間の期待される相互作用強度に対する、測定された相互作用強度の第2プロットを示す。期待相互作用強度は、野生型との変異第1タンパク質結合パートナーの相対的結合親和性に、野生型との変異第2タンパク質結合パートナーの相対的結合親和性を掛けることによって定義され得る。つまり、PD-1K54F及びペムブロリズマブY33P間の相互作用の期待相互作用強度は、PD-1K54Fと野生型ペムブロリズマブとの相対的親和性に、ペムブロリズマブY33Pと野生型PD-1の相対的親和性を掛けることによって定義され得る。プロット2500に示すように、相当するその野生型タンパク質結合パートナーと、個々の各変異との結合親和性が実質的に低減されるため、PD-1K54FとペムブロリズマブY33Pの期待相互作用強度はほぼゼロである。しかしながら、PD-1K54FとペムブロリズマブY33Pとの測定された相互作用強度は、これらの変異の予想外の代償作用のために、野生型PD-1と野生型ペムブロリズマブとの相互作用強度とほぼ同じである。プロット2502は、測定された相互作用強度に対してプロットされた期待相互作用強度を示し、代償性変異を薄い灰色で指し示し、強調する。これらの代償性変異は、測定された相互作用強度が、変異の予想外の代償作用のために期待相互作用強度を有意に超える、変異型タンパク質結合パートナーの対である。
【0092】
[0125] 図26は、タンパク質結合パートナー間のアミノ酸残基間の距離に対して測定された相互作用強度と、タンパク質結合パートナー間のアミノ酸残基間の距離に対して期待される相互作用強度との比のプロットである。測定相互作用強度が期待相互作用強度よりも有意に高い代償性変異は、薄い灰色で強調される。このプロットから、代償性変異であると同定されたアミノ酸残基の対は、タンパク質間の界面にて互いに物理的に近傍にあることが実証されている。本明細書に開示の方法によって同定されたすべての代償性変異は、既知のX線結晶構造によれば、タンパク質間界面にて7オングストローム未満離れている。
【0093】
[0126] 図27は、PD-1(抗原)とペムブロリズマブ(抗体)の界面のX線結晶構造に基づく3次元モデルである。代償性変異が同定されたアミノ酸残基は、薄い灰色で強調される。このモデルから、代償性変異であると同定されたアミノ酸残基はすべて、タンパク質間の界面にて互いに物理的に近傍にあることが実証されている。
【0094】
[0127] いくつかの実施において、本発明は、2つのタンパク質結合パートナー間の代償性変異を同定する新規な方法であって:
第1野生型ポリペプチド及び第1の複数の変異ポリペプチドを含む、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーを提供すること;
第2野生型ポリペプチド及び第2の複数の変異ポリペプチドを含む、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーを提供すること;
第1タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値を測定すること;
第1タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーとのそれぞれの親和性測定値に基づいて、
(i)第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチド、及び
(ii)第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチド、
を含むタンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対を同定すること;を含み、
タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対の各対の親和性測定値が、タンパク質結合パートナーのそれぞれの対間のそれぞれの親和性期待値と実質的に異なり、
タンパク質結合パートナーの所定の対の親和性期待値が、
a)所定の対の第1野生型ポリペプチドと、所定の対の第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値、及び
b)所定の対の第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、所定の対の第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値、
に基づいて算出される、方法を提供する。
【0095】
[0128] いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーは、第1の複数の酵母細胞の1つの表面上で発現され、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーは、第2の複数の酵母細胞の1つの表面上に発現される。
【0096】
[0129] いくつかの実施において、第1タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、第2タンパク質結合パートナーのライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値は、第1の複数の酵母細胞と第2の複数の酵母細胞との合成凝集によって測定される。
【0097】
[0130] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーは、抗体、scFv、Fab、又はVHH種である。
【0098】
[0131] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーは、抗原種である。
【0099】
[0132] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーは、受容体種である。
【0100】
[0133] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーは、リガンド種である。
【0101】
[0134] いくつかの実施において、第1の複数の変異ポリペプチドのそれぞれ、及び第2の複数の変異ポリペプチドのそれぞれが、ユーザー指定変異誘発によって産生される。
【0102】
[0135] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対の各対の親和性測定値は、タンパク質結合パートナーの対の親和性期待値よりも実質的に高い。
【0103】
[0136] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対の各対の親和性測定値は、タンパク質結合パートナーの対の親和性期待値の2倍を超えて高い。
【0104】
[0137] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対の各対の親和性測定値は、タンパク質結合パートナーの対の親和性期待値より実質的に低い。
【0105】
[0138] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対の各対の親和性測定値は、タンパク質結合パートナーの対の親和性期待値の2倍を超えて低い。
【0106】
[0139] いくつかの実施において、本発明は、2つのタンパク質結合パートナー間の代償性変異を同定する新規な方法であって:
第1野生型ポリペプチド及び第1の複数の変異ポリペプチドを含む、タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーを提供すること;
第2野生型ポリペプチド及び第2の複数の変異ポリペプチドを含む、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーを提供すること;
タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値を測定すること;
タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値に基づいて、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に異なるそれぞれの親和性測定値を有するタンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対を同定すること;
を含む方法を提供する。
【0107】
[0140] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対が以下の条件:
a.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
b.第1野生型ポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;及び
c.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
を満たす。
【0108】
[0141] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対が以下の条件:
a.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
b.第1野生型ポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;及び
c.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じであること;
を満たす。
【0109】
[0142] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対が以下の条件:
a.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
b.第1野生型ポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;及び
c.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
を満たす。
【0110】
[0143] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対が以下の条件:
a.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;
b.第1野生型ポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高いこと;及び
c.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
を満たす。
【0111】
[0144] いくつかの実施において、タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対が以下の条件:
a.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、又は第1野生型ポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1野生型ポリペプチドと第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低いこと;
b.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値、又は第1野生型ポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に高いこと;
を満たす。
【0112】
[0145] いくつかの実施において、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドの変異が抗体、scFv、Fab、又はVHH種のパラトープを定義し、及び/又は第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドの変異が抗原種のエピトープを定義する。
【0113】
[0146] いくつかの実施において、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドの変異及び第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドの変異によって、
a.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドが、第2野生型ポリペプチド及び第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドに結合し;
b.第2の複数の変異ポリペプチの1つのポリペプチドが、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドに結合し、第2野生型ポリペプチドには結合しない;ような、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの間の直交結合関係が生じる。
【0114】
[0147] いくつかの実施において、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドの変異及び第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドの変異によって、
a.第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドが、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドに結合し、第2野生型ポリペプチドには結合しない;
b.第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドが、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドに結合し、第1野生型ポリペプチドには結合しない;ような、第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの間の直交結合関係が生じる。
【0115】
[0148] いくつかの実施において、本明細書に開示の方法によって測定される親和性結合は、デジタルディスプレイデバイスに出力され得る。別の実施において、本明細書に開示の方法によって測定される、野生型及び変異型タンパク質結合パートナーの親和性結合データの数値的表示及びグラフ表示は、代償性変異として同定されている変異を有する変異型タンパク質結合パートナーの対を示す表記を用いて、ディスプレイデバイスに表され得る。
【0116】
[0149] いくつかの実施において、本明細書に開示の方法によって代償性変異として同定されている、1つ又は複数の変異を有する変異型タンパク質結合パートナーに関して、上記で詳述される直交結合親和性を有するタンパク質相互作用を操作するために、変異が用いられ得る。例えば、一部の実施において、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異が、生産宿主生物に対して異種の酵素を含む、操作された代謝経路の構築に、例えば有用な二次代謝産物の産生に使用され得て、経路成分酵素の相互作用及び力価は、代償性変異の使用によって微調整され得る。さらに、異種代謝経路成分は、そうでなければ異種代謝経路の活性を損なう、又は低減し得る、宿主生物内のタンパク質及び酵素と相互作用しないように、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異を使用して操作され得る。
【0117】
[0150] 別の実施において、受容体に対する代償性変異は、本明細書に開示される方法によって同定され得て、CAR-T細胞の操作によって、代償性変異を有するカスタマイズされた細胞表面受容体を発現することが可能となる。同様に、CAR-T細胞表面受容体及び可溶性成長因子又はサイトカインが片側直交親和性関係を示すように、可溶性成長因子又はサイトカインが操作されて、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異を発現し得る。細胞表面受容体及び可溶性成長因子又はサイトカインのそれぞれに、おそらくごく少数の非常に影響力のある代償性変異を導入することによって、CAR-T細胞表面受容体が結合し得て、操作成長因子又はサイトカインと、患者の生理学的環境に対して天然の野生型成長因子又はサイトカインとの両方によって活性化され得る。逆に、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異を有する、操作された可溶性成長因子又はサイトカインは、操作されたCAR-T細胞表面受容体にのみ結合し、活性化し、患者の生理学に対して天然の複数の若しくは野生型細胞表面受容体には影響しない。本明細書に開示の方法を用いた、カスタマイズ化直交タンパク質間相互作用のこのパターンは、多数の疾患及び障害を治療するための、細胞療法、免疫療法、及び生物製剤の操作に有用であるだろう。
【0118】
[0151] 別の実施において、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異は、抗体に基づく免疫療法の合理的な設計に有用であり得る。一実施において、抗体、scFv、Fab、又はVHH種は、その抗原に対するその親和性及び特性が調節可能及びカスタマイズ可能であるように、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異を保有するように操作され得る。別の実施において、抗体、scFv、Fab、又はVHH種が、野生型抗体、scFv、Fab、又はVHH種のエピトープと異なる新規なエピトープに特異的に結合するように、抗体、scFv、Fab、又はVHH種は、本明細書に開示の方法によって同定される代償性変異を保有するように操作され得る。
【実施例
【0119】
実施例1
[0152] AlphaSeqプラットフォーム(例えば、実施例2、及び米国特許出願公開2017-0205421A1号も参照)及び本明細書に開示の方法を用いて、例えば、癌の中でも黒色腫、肺癌、ホジキンリンパ腫の治療のための癌免疫療法で使用される、モノクローナル抗体ペムブロリズマブ(ペムブロ)、ヒト化抗体の短鎖可変断片(scFv)の変異体のライブラリーに対して、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)、T細胞及びプロB細胞上に発現される細胞表面受容体の変異体のライブラリーをスクリーニングした。ペムブロscFv変異体のライブラリーは、ポリペプチドの30位から235位のいくつかのドメインにわたる33個のアミノ酸残基の網羅的部位飽和変異誘発ライブラリーを含んだ。PD-1変異体のライブラリーは、ポリペプチドの5位から115位のいくつかのドメインにわたる60個のアミノ酸残基の網羅的部位飽和変異誘発ライブラリーを含んだ。ライブラリーごとのAlphaSeqスクリーンによって、対での手法で各PD-1変異と各ペムブロscFv変異との親和性の問い合わせが可能となった。
【0120】
[0153] 野生型ペムブロscFvに対するPD-1変異ライブラリーをスクリーニングする上記の実験、図7に示す結果によって、その位置でのアミノ酸置換の広範囲にわたる低い接合頻度によって反映される、特にアミノ酸置換の不耐性としてPD-1残基K54が同定された。PD-1及びペムブロscFv変異体のライブラリーごとのスクリーンでは、2つのタンパク質結合パートナーの代償性変異の対のサブセットが同定された。代償性変異のサブセットの結果が図16にプロットされる。例えば、野生型ペムブロscFvとのPD-1変異K54Fの親和性は、2つのタンパク質結合パートナーの野生型相互作用による野生型に対して0.05であった(n=3;標準偏差=0.03)。野生型PD-1とのペムブロscFv変異Y33Pの親和性は、2つのタンパク質結合パートナーの野生型相互作用による野生型に対して0.33であった(n=3;標準偏差=0.08)。しかしながら、ペムブロscFv変異Y33PとのPD-1変異K54Fの親和性は、2つのタンパク質結合パートナーの野生型相互作用による野生型に対して1.19であり(n=3;標準偏差=0.38)、つまりタンパク質結合パートナーのこれら2つの変異体の相互作用は野生型相互作用による野生型とほぼ同等であり、2つのタンパク質結合パートナーの代償性変異の対が示された。2つの結合パートナー間の親和性の類似のシグネチャーが、PD-1変異K54M及びペムブロscFv変異Y33Pに関して確認された。変異型タンパク質結合パートナーの第3対に関しては、野生型ペムブロscFvとのPD-1変異K54Iの親和性は、2つのタンパク質結合パートナーの野生型相互作用による野生型に対して0.40であり(n=3;標準偏差=0.22)、野生型PD-1とのペムブロscFv変異Y101Kの親和性は、2つのタンパク質結合パートナーの野生型相互作用による野生型に対して1.06であり(n=3;標準偏差=0.18)、ペムブロscFv変異Y101Kが親和性に影響しなかったことを意味する。しかしながら、ペムブロscFv変異Y101KとのPD-1変異K54Iの親和性は、2つのタンパク質結合パートナーの野生型相互作用による野生型に対して1.87であり(n=3;標準偏差=0.35)、つまり、タンパク質結合パートナーのこれら2つの変異体の相互作用は、野生型相互作用による野生型よりも有意に高い親和性を有し、2つのタンパク質結合パートナーの代償性変異の対が示された。これらの実験によって同定される代償性変異は、抗原/抗体界面に空間的に近い、抗原及び抗体のアミノ酸残基に相当する。
【0121】
実施例2
[0154] タンパク質間相互作用及びタンパク質相互作用網状構造をスクリーニング及び/又は決定するための(AlphaSeq)酵母-接合アッセイの構築
[0155] フローサイトメトリーアッセイを使用して、MATa、MATalphaと二倍体細胞とを区別することができる。天然酵母性的(sexual)凝集素は、表面提示バインダー(SAP)で置換されており、接合効率はフローサイトメトリーを用いて測定された。次世代シーケンシングを用いて、大きなライブラリーでバインダーの特定の対の接合頻度を評価することができるように、単一染色体上に両方のバインダーの遺伝子を組み合わせるために二倍体染色体転座システムが開発された。
【0122】
[0156] タンパク質と単一標的のライブラリー間の細胞外結合を分析するための、多くの細胞ベースのアッセイがあるが、無細胞アプローチのみが、単一アッセイにおける全タンパク質相互作用網状構造を特徴付けるために開発されている。これは、多くの時間を必要とし、網状構造における各タンパク質成分の精製及び標識化を要する、費用が高いライブラリー作成工程を意味している。この実施例によって、サッカロミセス・セレビジエ(S. cerevisiae)の接合にタンパク質結合を結びつけるために、酵母表面ディスプレイ及び性的凝集素を組み合わせるタンパク質相互作用のライブラリー・オン・ライブラリー特徴付けのための対の酵母表面ディスプレイ(PYSD)アッセイが実証されている。特に、この実施例から、性的凝集素が天然の凝集タンパク質をノックアウトし、代わりにMATa及びMATalpha酵母細胞の表面に相補的結合タンパク質(合成凝集タンパク質,SAP)をディスプレイすることによって高度に操作可能であることが実証されている。この実施例から、接合効率が、表面発現タンパク質の結合親和性及び発現レベルに高度に依存することが分かる。染色体転座スキームによって、タンパク質間相互作用網状構造を次世代シーケンシングで解析し、2つの操作タンパク質相互作用網状構造の解析に適用することが可能となる。
【0123】
[0157] 結合親和性と特異性の両方のタンパク質相互作用網状構造の特徴付けは、細胞機能を理解し、治療薬候補をスクリーニングし、操作タンパク質網状構造を評価するのに重要である。例えば、タンパク質「インタラクトーム」マッピングは、生体系及び疾患状態の理解を広げており、特異的なタンパク質相互作用の適切な仲介又は破壊のための治療薬候補を評価するために使用することができる。さらに、合成システムの構築は、細胞挙動を適切にコントロールするために、非常に特異的な、及び直交のタンパク質相互作用を必要とする場合が多い。任意のタンパク質相互作用網状構造の構築を可能にする操作タンパク質結合ドメインは、非常に複雑な生体系の状況において注意深く特徴付けする必要がある。
【0124】
[0158] タンパク質のライブラリーと単一タンパク質標的との結合の解析には、多くのアプローチが存在する。一部にはライブラリーの構築が容易であるため、酵母表面ディスプレイ(YSD)は広く使用されている。しかしながら、タンパク質網状構造を解析するために、すべての可能性のあるタンパク質の対間の結合をスクリーニングする必要がある。可溶性の蛍光標識された標的と共にインキュベーションした後、YSDは、細胞蛍光との結合を測定するため、このアプローチでは、標的タンパク質のライブラリーに対してのスクリーニングが可能とならない。最近開発されたアプローチでは、ワンポット(one-pot)ライブラリー・オン・ライブラリー特徴付けのためのDNAバーコード付きタンパク質が使用されているが、網状構造における各構成タンパク質の精製が必要であり、大きな網状構造の解析に莫大な時間及び費用がかかる。本開示は、単一ポット(single pot)で全タンパク質相互作用網状構造を特徴付けすることができるハイスループットアッセイと、YSDライブラリー作成の容易さとを組み合わせた新規な方法を示す。
【0125】
[0159] 対の酵母表面ディスプレイ(PYSD)プラットフォームが、1対1、多数対1、又は多数対多数のタンパク質相互作用特徴付けに使用される。1対1スクリーンに関しては、2つの同質遺伝子ディスプレイ株、1つは蛍光マーカー(例えば、mCherry)を構成的に発現するMATaであり、1つは第2蛍光マーカー(例えば、mTurquoise)を構成的に発現するMATalphaであり、それぞれが、その表面で合成接着タンパク質(SAP)を、Aga2への融合物として発現する(Aga2-myc)。次いで、接合アッセイを用いて、接合効率に対する、それらの特定のSAPをディスプレイする効果が決定され、17時間後に二倍体細胞のパーセントとして報告される。一倍体及び二倍体は、フローサイトメトリーアッセイにおいてmCherry及びmTurquoiseのその発現に基づいて区別される。各SAPの表面発現強度は、フローサイトメトリー前にFITC抱合抗myc抗体と共に混合培養物をインキュベートすることによって決定される。
【0126】
[0160] 多数対1又は多数対多数のスクリーンに関して、同質遺伝子ディスプレイヤー株の一方又は両方は、ディスプレイライブラリー、又はそれぞれが一意的なSAPを発現するディスプレイヤー細胞のライブラリーで置き換えられる。短い接合期間後に、二倍体細胞のみに対して選択するために使用される、リジン及びロイシンを欠いた培地に、細胞が移される。多数対多数のスクリーンについては、β-エストラジオール(βE)も添加され、接合二倍体においてCREリコンビナーゼ発現が誘発される。リコンビナーゼ発現の結果、lox66/lox71部位での転座が生じ、それによってSAP組込みがフランキングし、染色体IIIの1つのコピーにSAP遺伝子が近位する。lox66/71リコンビナーゼ部位の対の性質に偏りがあるために、母集団の大部分が転座二倍体からなる。転座後には、細胞溶解によって、特定の二倍体細胞からSAP対がもはや脱共役されない。多数対1及び多数対多数のスクリーンの両方について、二倍体集団のコロニーPCRを次世代シーケンシングで解析し、アッセイに含まれる、他の可能性のあるすべてのSAPと比較して、各SAPの接合頻度が決定される。
【0127】
材料及び方法:
[0161] プラスミド作成:第1の実施例(実施例A)に使用されるプラスミドを表1に示す。各構築物については、主鎖及び挿入断片をPCRで増幅し、ゲル抽出し、ギブソン(Gibson)反応を用いてプラスミドに組み込んだ。すべてのパーツ間での標準リンカーが、クローニングの効率及び一貫性を高めた。高コピー(high copy)複製起点及びアンピシリン耐性からなるすべての主鎖が、容易な直鎖化及び酵母染色体への組込みのために、Pme1制限部位でフランキングされた。すべてのプラスミドは、標的遺伝子座の染色体相同性上流及び下流の約500塩基を含有する。ノックアウト(KO)プラスミドは、上流及び下流染色体相同性を含有するが、遺伝子カセットは含有しない。各プロモーター、オープンリーディングフレーム、ターミネーター、及び染色体相同性の配列をサンガー(Sanger)シーケンシングで検証した。
【0128】
【表1】
【0129】
[0162] 酵母株の作成及び増殖条件:第2実施例(実施例B)で使用されるサッカロミセス・セレビジエ(S. cerevisiae)株を表2に示す。EBY100a及びW303αMODを最初の親株として使用した。これらの2つの親株を接合することによって、EBY100αを産生し、続いて芽胞形成し、適切な選択マーカーに対して四つ組(tetrad)でスクリーニングした。所定のプラスミドをPme1制限消化で直線化し、標準LiAc形質転換手順を行うことによって、他のすべての株を染色体組込みで作成した。所定の栄養要求性マーカーが欠乏している培地を用いて、又は真核生物の抗生物質が補充された培地を用いて、形質転換体の選択が達成された。各形質転換に続いて、診断コロニーPCRを行い、適切な遺伝子座への組込みを検証した。すべての酵母アッセイで、標準酵母培養培地を使用し、30℃で増殖させた。すべての液体培養増殖が、YPD液体培地3mL中で、275RPMで振盪させて実施される。
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
[0163] 接合アッセイ:液体培養物におけるいずれか2つの酵母株間の接合効率を評価するために、新たなYPDプレート上の同質遺伝子コロニーから、一倍体株を最初に飽和まで、又はおよそ18時間増殖させた。次いで、MATa株が密度100細胞/μLとなり、且つMATα株が密度600細胞/μLとなるように、各一倍体を新たな3mL YPD液体培養物中で合わせた。開始濃度のこの差は、接合因子に対する確認された不等増殖応答に対する調節であった。細胞はまた、その表面発現強度を個々に評価するために、新たなYPD中で別々にそれぞれ増殖された。増殖から17時間後に、接合培養物2.5μLを、分子グレードの水1mLに添加し、フローサイトメーターで読み取った。mCherry及びmTurquoiseの蛍光強度に基づいて、MATa、MATalpha、及び二倍体細胞を区別した。上述の実験では、Miltenyi MACSQUANT(登録商標)VYBを使用した。Y2チャンネル(561nm励起レーザー及び615nm発光フィルター)を用いて、mCherry発現を測定し、V1チャンネル(405nm励起レーザー及び450nm発光フィルター)を使用して、mTurquoise発現を測定した。17時間後の全細胞集団のパーセントとしての二倍体細胞集団が、接合効率の程度として使用された。水1mL中で洗浄した後、PBSF中のFITC抱合抗myc抗体と共に、個々に増殖された各細胞株10μLを15分間インキュベートすることによって、表面発現強度が測定された。次いで、細胞を再び洗浄し、水1mLに再懸濁した。次いで、フローサイトメトリーを行った。表面発現強度の決定のために、ACCURI(商標)C6サイトメーターを使用した。FL1.Aチャンネル(488nm励起レーザー及び533nm発光フィルター)を使用して、細胞へのFITC結合を測定した。FLOWJO(商標)がすべてのサイトメトリー解析に使用される。
【0133】
[0164] 1対多数のバッチ接合アッセイに関して、Aga2に融合された単一SAPを発現する組換えMATa酵母株を、Aga2に融合された異なるSAPを発現する複数の組換えMATalpha酵母株と、新たな3mL YPD培養液中で合わせる。MATa株を密度100細胞/μLで添加し、総濃度600細胞/μLに対して等しい濃度でMATalpha株を添加する。増殖から6時間後に、ハイグロマイシンを100ng/μLで添加する。最初の培養物の接種から20時間後に、細胞1mLをペレット化する。ペレットから細胞2μLを取り出し、0.2%SDSで溶解し、遠心沈殿して、すべての細胞壊死組織片を除去し、水に希釈した。次いで、次世代シーケンシングのためのオーバーハングを含有する標準プライマーと共に、PCRに鋳型として溶解産物を使用し、およそ350塩基であると予想されるPCR産物をゲルスライスから精製する。次いで、シングルリード(Single-read)次世代シーケンシングを行った。読み取りの総数に対して特定のバーコードが確認される頻度は、特定のバーコードと関連するSAPによって生じた接合の数の相対基準を提供する。
【0134】
[0165] 多数対多数の(実施例6も参照)バッチ接合アッセイについては、各接合型の複数の一倍体酵母株を、新たな3mL YPD培養物中で合わせる。組換えMATa酵母株を総密度100細胞/μLに対して等しい濃度で添加し、組換えMATalpha酵母株を総密度600細胞/μLに対して等しい濃度で添加する。増殖から6時間後に、ハイグロマイシンを100ng/μLで添加し、β-エストラジオール(βE)を200ng/μLで添加する。最初の培養物の接種から20時間後に、細胞1mLをペレット化する。ペレットから細胞2μLを取り出し、0.2%SDSで溶解し、遠心沈殿して、すべての細胞壊死組織片を除去し、水に希釈した。次いで、次世代シーケンシングのためのオーバーハングを含有する標準プライマーと共に、PCRに鋳型として溶解産物を使用し、650塩基であると予想されるPCR産物をゲルスライスから精製する。次いで、ペアードエンド次世代シーケンシングを行った。読み取りの総数に対してバーコードの特定の対が確認される頻度は、特定の2つのバーコードと関連するSAP対によって生じた接合の数の相対基準を提供する。
【0135】
結果
[0166] 必須の性的凝集素タンパク質を欠くサッカロミセス・セレビジエ(S. cerevisiae)一倍体細胞に関して、結合は、液体培養物における凝集及び接合の回復に十分である。Sag1、一次MATalpha性的凝集素タンパク質は、凝集に必須である。Sag1がノックアウトされた場合に、MATalpha細胞は、乱流(turbulent)液体培養物中で野生型MATa細胞と接合することができない。しかしながら、相補的SAPがディスプレイ対上で発現され、接合が回復される。非相補的SAPは、接合を回復することができない。
【0136】
[0167] いずれか2つのディスプレイ細胞間の接合現象の頻度は、そのSAP対間の結合親和性及び各SAPの表面発現強度に依存する。その結果から、結合親和性及び測定された接合効率は正に相関することが実証される。しかしながら、各SAPの発現レベルに対して接合効率を調節することによって相関性を改善することが可能である。
【0137】
[0168] 既知の親和性を有する7つのSAP対を接合効率について評価した(表3参照)。各対の接合効率を4回試験し、平均及び標準偏差を算出した。材料及び方法に記載のように、各一倍体ディスプレイ株の表面発現強度(SES)も測定された。表面発現強度の差に対して接合効率を調整する「接合スコア」は、平均接合効率を、両方の一倍体ディスプレイヤー株の表面発現強度の積で割ることによって計算された。
【0138】
【表4】
【0139】
[0169] バッチ接合から、単一アッセイにおける多くのタンパク質間の相対相互作用を決定することが可能となる。各SAPをバーコーディングすることによって、多数対1のスクリーンによって、シングルリード(Single-read)次世代シーケンシングを用いて、特定のSAPとSAPライブラリーとの相対接合頻度を評価することができる。CREリコンビナーゼに基づく転座スキームを用いて、同一染色体上に各接合型からのバーコードを並べることができる。この染色体転座手順を加えると、ペアードエンド次世代シーケンシングを用いて、2つのSAPライブラリー間の相対接合頻度を評価することが可能となる。このアプローチによって、任意のタンパク質相互作用トポロジーの解析が可能となる。
【0140】
[0170] より多くのSAP対を用いた、及びSAP対の測定されたすべての親和性を用いた、更なる接合アッセイを実施することによって、各SAPの表面発現強度及び接合効率を提供することができる。統計的解析を実施して、各SAPの結合親和性間の関係、表面発現強度、及び接合効率を決定することができる。その結果を用いて、これら4つの変数間の予測的関係性を決定することができ、その結果、接合効率及び表面発現強度を用いて、結合親和性が推定され、且つ接合効率の検出可能な回復の閾値が決定され得る。
【0141】
[0171] 実施例2から、単一アッセイにおけるタンパク質相互作用のライブラリー・オン・ライブラリー特徴付けを可能にする対の酵母表面ディスプレイアッセイが実証される。天然のサッカロミセス・セレビジエ(S. cerevisiae)性的凝集素タンパク質を合成接着タンパク質で置き換えることによって、接合効率とタンパク質結合強度を合わせることが可能である。次いで、このアプローチを用いて、2つの特異的なタンパク質間の結合を評価することができ、又はタンパク質のライブラリー間の相対的相互作用強度を決定することができる。
【0142】
[0172] いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ示したものであり、本開示の範囲を限定することを意図したものではない。実際に、本明細書に記載の新規な方法、装置、及びシステムは、他の多様な形態で具現化することができる。さらに、本開示の精神から逸脱することなく、本明細書に記載の方法、装置、及びシステムの形態における様々な省略、置換、及び変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び精神に含まれる形態又は修正をカバーすることを意図している。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13-1】
図13-2】
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24A
図24B
図24C
図24D
図25
図26
図27
【手続補正書】
【提出日】2023-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのタンパク質結合パートナー間の代償性変異を同定する方法であって、
第1タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーが、第1野生型ポリペプチドと、第1野生型ポリペプチドの第1の複数の変異ポリペプチドとを含む、第1の複数の一倍体酵母細胞の表面に発現される第1タンパク質結合パートナーの第1ライブラリーを提供すること;
第2タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーが、第2野生型ポリペプチドと、第2野生型ポリペプチドの第2の複数の変異ポリペプチドとを含む、第2の複数の一倍体酵母細胞の表面に発現される第2タンパク質結合パートナーの第2ライブラリーを提供すること;
前記第1及び第2タンパク質結合パートナーが相互作用する場合には、二倍体酵母細胞が生産されるように、前記一倍体酵母細胞の第1及び第2集団を培養すること;
前記第1タンパク質結合パートナーの前記第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーと、前記第2タンパク質結合パートナーの前記第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーとの親和性測定値を測定すること;及び
前記第1及び第2タンパク質結合パートナーの1つ又は複数の対が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に異なる親和性測定値を有する、各第1タンパク質結合パートナーと、各第2タンパク質結合パートナーとの親和性測定値に基づいて、前記代償性変異を同定すること
を含む方法。
【請求項2】
.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に低く;
b.前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に低い;及び
c.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高い、請求項に記載の方法。
【請求項3】
.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に高く;
b.前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に高い;及び
c.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じ、又は実質的に低い、請求項に記載の方法。
【請求項4】
.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じであり;
b.前記第1野生型ポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的に同じであり;及び
c.前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドと、前記第2の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドとの親和性測定値が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値よりも実質的に高い、又は実質的に低い、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記代償性変異が、前記第1野生型ポリペプチドと前記第2野生型ポリペプチドとの親和性測定値と実質的、かつ、方向的に異なる親和性測定値となる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の複数の変異ポリペプチドの1つのポリペプチドの変異が、抗体、scFv、Fab、又はVHH種のパラトープを定義する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2タンパク質結合パートナーの前記第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが抗原種である、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1タンパク質結合パートナーの前記第1ライブラリーの各タンパク質結合パートナーが受容体種である、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記第2タンパク質結合パートナーの前記第2ライブラリーの各タンパク質結合パートナーがリガンド種である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の複数の変異ポリペプチドのそれぞれと、前記第2の複数の変異ポリペプチドのそれぞれが、ユーザー指定変異誘発によって産生される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
3つ以上の代償性変異が同定される、請求項1に記載の方法。
【国際調査報告】