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特表2023-521943生体電位信号の検出のための装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】生体電位信号の検出のための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/313 20210101AFI20230519BHJP
   A61B 5/31 20210101ALI20230519BHJP
   A61B 5/308 20210101ALI20230519BHJP
【FI】
A61B5/313
A61B5/31
A61B5/308
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022552581
(86)(22)【出願日】2021-04-26
(85)【翻訳文提出日】2022-10-17
(86)【国際出願番号】 DK2021050129
(87)【国際公開番号】W WO2021219183
(87)【国際公開日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】PA202070266
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522345456
【氏名又は名称】パラジット ソリューションズ エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】フィルフィル,モハマド
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127AA03
4C127AA04
4C127AA07
4C127CC01
4C127EE08
4C127GG11
4C127GG13
(57)【要約】
被験者の皮膚上の電極(100、101、及び102)を使用してインピーダンス変化と共に生体電位信号を測定するため、及び、生体信号の短期及び長期監視のためのこうしたデバイスの精度及び有用性を増加させるためにこうしたインピーダンスを補償するため、の方法及び装置(1)。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも第1の皮膚電極(100)、第2の皮膚電極(101)、及び、人の皮膚(500)上での間を置いた配置のための基準皮膚電極(102)を使用して、前記人の前記皮膚(500)上の生体電位信号を感知するための装置(1)であって、
前記第1の電極(100)への接続のための第1の端子(103)と、
前記第2の電極(101)への接続のための第2の端子(104)と、
前記第1(103)及び前記第2(104)の端子からの前記生体電位信号を測定するように構成された第1の回路要素(110)と、
前記基準皮膚電極(102)への接続のための第3の端子(105)と、
前記第1の端子(103)に接続された第1の可変制御抵抗負荷(108)と、
前記第2の端子(104)に接続された第2の可変制御抵抗負荷(109)と、を備え、
前記第1の端子(103)に接続された第1の交流信号を発生させるための第1の信号発生器(106)と、
前記第2の端子(104)に接続された第2の交流信号を発生させるための第2の信号発生器(107)と、
前記第1の回路要素(110)の前記出力に接続され、前記第1の回路要素(110)の前記出力信号に可変制御利得(118)を印加するように構成された、第4の回路要素(113)と、
前記第1の回路要素(110)の出力信号、前記第1の交流信号の前記振幅を表す構成要素を備える信号、及び、前記第2の交流信号の前記振幅を表す構成要素を備える信号、を受け取っているコントローラ(114)と、によって特徴付けられ、
前記コントローラ(114)は、
前記第1の交流信号の前記振幅を決定するように、
前記第2の交流信号の前記振幅を決定するように、
前記第1の可変制御抵抗負荷(108)及び前記第2の可変制御抵抗負荷(109)を制御するように、
前記可変制御利得(118)を制御するように、
前記第1の可変制御抵抗負荷(108)の前記負荷を前記第1の交流信号の前記決定された振幅における変化の関数として適合させるように、
前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の前記負荷を前記第2の交流信号の前記決定された振幅における変化の関数として適合させるように、及び、
前記第1の交流信号及び前記第2の交流信号の両方の前記決定された振幅が同時に変化するとき、及び変化するときのみ、前記可変制御利得(118)を前記第1の交流信号の前記決定された振幅及び前記第2の交流信号の前記決定された振幅の関数として調整するように、
構成される、装置。
【請求項2】
前記信号は、少なくとも前記第1の交流信号の前記振幅を表す構成要素を備え、
前記信号は、前記第1の回路要素(110)の前記出力信号である前記第2の交流信号の前記振幅を表す構成要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記コントローラは、
前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の時間周波数解析を実行し、それによって、前記第1の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の一部、及び前記第2の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の一部を決定するように、
前記第1の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅を決定するように、
前記第2の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅を決定するように、
前記第1の可変制御抵抗負荷(108)を制御するように、
前記第2の可変制御抵抗負荷(109)を制御するように、
前記可変制御利得(118)を制御するように、
前記第1の可変制御抵抗負荷(108)の前記負荷を、前記第1の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅の関数として適合させるように、
前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の前記負荷を、前記第2の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅の関数として適合させるように、及び、
前記第1の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅と、前記第2の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅の両方が、同時に変化するとき、及び変化するときのみ、前記第1の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅及び前記第2の交流信号から発生する前記第1の回路要素(110)の前記出力信号の前記振幅の関数として、前記可変制御利得(118)を調整するように、
構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の信号の前記振幅を感知及び/又は増幅するために前記第1の端子(103)に接続された第2の回路要素(115)と、前記第2の信号の前記振幅を感知及び/又は増幅するために前記第2の端子(104)に接続された第3の回路要素(116)と、前記第2の回路要素(115)の前記出力信号を受け取っており、前記第3の回路要素(116)の前記出力信号を受け取っているコントローラ(114)と、を備え、
前記コントローラ(114)は、
前記第1の可変制御抵抗負荷(108)の前記負荷を、前記第2の回路要素(115)の前記出力信号の前記振幅の関数として適合させるように、
前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の前記負荷を、前記第3の回路要素(116)の前記出力信号の前記振幅の関数として適合させるように、及び、
前記第2の回路要素(115)及び前記第3の回路要素(116)の両方の前記出力信号両方の前記振幅が同時に変化するとき、及び変化するときのみ、前記可変制御利得(118)を、前記第2の回路要素(115)の前記出力信号の前記振幅及び前記第3の回路要素(116)の前記出力信号の前記振幅の関数として調整するように、
構成される、請求項1から3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記コントローラ(114)は、前記第2(115)及び前記第3(116)の回路要素の両方の前記出力信号の前記振幅が同時に減衰するとき、及び減衰するときのみ、前記可変制御利得(118)を増加させるように構成される、請求項1から4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記コントローラ(114)は、前記第2(115)及び前記第3(116)の回路要素の両方の前記出力信号の前記振幅が同時に増加するとき、及び増加するときのみ、前記可変制御利得(118)を減少させるように構成される、請求項1又は5に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記コントローラ(114)は、前記第1の可変制御抵抗負荷(108)及び前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の両方を、中央値に設定するように構成され、
更に前記コントローラ(114)は、前記装置を、前記第2の回路要素(115)の前記出力信号の前記振幅の関数として、及び、前記第3の回路要素(116)の前記出力信号の関数として、較正するように構成され、
前記コントローラ(114)は、好ましくは前記第1の交流信号に関連付けられた第1の初期較正値を記憶するように構成され、好ましくは前記第2の交流信号に関連付けられた第2の初期較正値を記憶するように構成される、請求項1から6の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項8】
前記コントローラ(114)が前記可変制御利得(118)を調整した後、前記コントローラは、前記第1及び第2の初期較正値を更新するように構成される、請求項7に記載の装置(1)。
【請求項9】
前記第1の回路要素(110)は、前記生体電位信号を増幅するために前記第1(103)及び前記第2(104)の端子に接続された計器増幅器(117)を備える、請求項1から3の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記第2の回路要素(115)は、前記第1の信号の前記振幅を増幅するために前記第1の端子(103)に接続された第1の増幅器(111)を備え、
前記第1の増幅器(111)は、好ましくは演算増幅器である、請求項1から7の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記第3の回路要素(116)は、前記第2の信号の前記振幅を増幅するために前記第2の端子(104)に接続された第2の増幅器(112)を備え、
前記第2の増幅器(112)は、好ましくは演算増幅器である、請求項1から6の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項12】
前記第4の回路要素(113)は、前記計器増幅器(117)の前記出力に接続され、可変制御利得を前記計器増幅器(117)の前記出力信号に印加するように構成された、デジタル制御増幅器(118)を備える、請求項1から6又は8の何れか一項に記載の装置(1)。
【請求項13】
前記コントローラ(114)は、前記第1の増幅器(111)の前記出力信号を受け取っており、前記第2の増幅器(112)の前記出力を受け取っており、
前記コントローラ(114)は、前記第1の増幅器(111)の前記出力の前記振幅が減少するとき、前記第1の可変制御抵抗負荷(108)の前記抵抗を増加させるように構成され、前記第1の増幅器(111)の前記出力の前記振幅が増加するとき、前記第1の可変制御抵抗負荷(108)の前記抵抗を減少させるように構成され、及び、
前記コントローラ(114)は、前記第2の増幅器(112)の前記出力の前記振幅が減少するとき、前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の前記抵抗を増加させるように構成され、前記第2の増幅器(112)の前記出力の前記振幅が増加するとき、前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の前記抵抗を減少させるように構成される、
請求項12に記載の装置(1)。
【請求項14】
前記第1(100)、前記第2(101)、及び/又は前記基準の電極(102)は、乾式表面電極である、請求項1から13に記載の装置(1)。
【請求項15】
前記第1の信号は、第1の周波数を有し、
前記第2の信号は、第2の周波数を有し、
前記第1の周波数は、好ましくは前記第2の周波数に等しく、
前記第1の信号は、好ましくは前記第2の信号と位相がずれている、請求項1から14に記載の装置(1)。
【請求項16】
人の皮膚(500)上の生体電位信号を感知するための方法であって、
第1の皮膚電極(100)、第2の皮膚電極(101)、及び基準皮膚電極(102)を前記人の前記皮膚(500)上に置くことと、
第1の交流信号を前記第1の電極(100)に印加することと、
第1の可変制御抵抗負荷(108)を前記第1の電極(100)に接続することと、
第2の可変制御抵抗負荷(109)を前記第2の電極(101)に接続することと、を含み、
前記第1の信号の振幅を測定すること、及び前記第1の可変制御抵抗負荷(108)の前記抵抗を前記第1の信号の前記振幅における変化の関数として調整すること、
第2の交流信号を前記第2の電極(101)に印加すること、
前記第2の信号の振幅を測定すること、及び前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の前記抵抗を前記第2の信号の前記振幅における変化の関数として調整すること、
前記第1(100)及び第2(101)の電極を用いて前記生体電位信号を測定すること、及び可変制御利得を前記測定された生体電位信号に印加すること、及び、
前記第1の信号の前記振幅及び前記第2の信号の前記振幅の両方が同時に変化するとき、及び変化するときのみ、前記可変制御利得(118)を、前記測定された第1の信号の前記振幅及び前記測定された第2の信号の前記振幅における変化の関数として調整すること、
によって特徴付けられる、方法。
【請求項17】
前記第1の可変制御抵抗負荷(108)及び前記第2の可変制御抵抗負荷(109)を、それぞれの可変制御抵抗負荷の最大の完全な動作範囲のおよそ半分に設定すること、前記第1の信号の前記振幅及び前記第2の信号の前記振幅を測定すること、前記第1の交流信号に関連付けられた第1の初期較正値を記憶すること、及び前記第2の交流信号に関連付けられた第2の初期較正値を記憶すること、の請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の信号は、第1の周波数を有し、
前記第2の信号は、第2の周波数を有し、
前記第1の周波数は、好ましくは前記第2の周波数に等しく、
前記第1の信号は、好ましくは前記第2の信号と位相がずれている、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記人によって生成される前記生体電位信号は、筋電図(EMG)又は脳波図(EEG)又は心電図(ECG)信号である、請求項16から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の可変制御抵抗負荷(108)の前記抵抗を調整することによって、前記第1の電極(100)上の動きアーティファクトの影響を補償すること、及び、前記第2の可変制御抵抗負荷(109)の前記抵抗を調整することによって、前記第2の電極(101)上の動きアーティファクトの影響を補償すること、を含む、請求項16から18の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記可変制御利得(118)を増加させることによって、前記人の前記皮膚上の汗の蓄積の影響を補償することを含む、請求項16から20の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医用電子デバイス及び方法に関し、より具体的には、生体信号、例えば生体電位信号を、正確且つ連続的に測定するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば生体電位信号などの生体信号の検出は、長い間、病気の進行を検出、診断、及び監視するために医療及び治療環境において使用されてきた。最も良く知られ、最も一般的に検出される生体信号は、脳波図(EEG)、心電図(ECG)、及び筋電図(EMG)生体信号である。エレクトロニクス、信号処理、人工知能、ワイヤレス技術、及びスマートウェアラブルにおける近年の技術的進歩は、生体信号の測定及び処理の統合のための数多くの機会を生み出し、ユーザが自身の状態又は病気を監視するために、より日常的に使いやすい装置にアクセスできるようにする。
【0003】
生体信号の監視のためのいくつかの手法が知られているが、皮膚の表面で検出される生体信号の監視は、アーティファクト、並びにとりわけ粉塵、埃、油、及び汗の動き又は移動などの外部要因によって生じるインピーダンス変化のために、問題のあるものであった。これらの要因の影響は、必要な電気的事象が監視できなくなるほど大きい。外部要因が原因のインピーダンス変化から生まれる問題を克服するために、多くの努力が行われてきた。
【0004】
米国出願第20170312576号は、非侵襲性表面筋電図検査(sEMG)及び慣性計測装置(IMU)からの複数のデータチャネルを分析することによって、トレーニング及び/又は治療目的のためにユーザの身体的活動を分析するための、ウェアラブルシステム及び方法を開示している。
【0005】
米国出願第20080275316号は、皮膚インピーダンスをマッチングするためのスイッチネットワークシステム、及び、皮膚/電極界面のための方法を開示している。更に、米国出願第2011/0251817号は、皮膚/電極界面内のインピーダンス変動を決定するための、方法及び装置を開示している。米国出願第2011/0060252号は、てんかん、パーキンソン病などの病気、並びに能動的(例えば、車両内で移動中)及び受動的(例えば、病院)設定における他の状態を患っている人を監視するための、装置及び方法を記述している。
【0006】
欧州出願第2294979号は、消費電力の減少と共に被験者の皮膚上のインピーダンス信号並びに生体電位信号を測定するための、方法及びデバイスを記述している。
【0007】
米国出願第20110237904号は、独立請求項のプリアンブルに従った、方法及びデバイスを記述している。
【0008】
これらの既知の装置のいずれも、動きアーティファクト及び皮膚上の汗の蓄積の両方によって生じる両方のインピーダンス変化を補償することはできないか、あるいはどちらの正確な電極が変位又はシャントするかを逸脱及び識別することもできない。
【発明の概要】
【0009】
前述の問題を克服するか又は少なくとも低減させる生体電位信号を、測定するための方法及び装置を提供することが目的である。
【0010】
前述及び他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。更なる実施例は、従属請求項、説明、及び図面から明らかである。
【0011】
第1の態様によれば、少なくとも第1の皮膚電極、第2の皮膚電極、及び、人の皮膚上での間を置いた配置のための基準皮膚電極を使用して、人の皮膚上の生体電位信号を感知するための装置が提供され、装置は、第1の電極への接続のための第1の端子と、第2の電極への接続のための第2の端子と、第1及び第2の端子からの生体電位信号を測定するように構成された第1の回路要素と、基準皮膚電極への接続のための第3の端子と、第1の端子に接続された第1の可変制御抵抗負荷と、第2の端子に接続された第2の可変制御抵抗負荷と、を備え、第1の端子に接続された第1の交流信号を発生させるための第1の信号発生器と、第2の端子に接続された第2の交流信号を発生させるための第2の信号発生器と、第1の回路要素の出力に接続され、第1の回路要素の出力信号に可変制御利得を印加するように構成された、第4の回路要素と、第1の回路要素の出力信号、第1の交流信号の振幅を表す構成要素を備える信号、第2の交流信号の振幅を表す構成要素を備える信号を受け取っているコントローラと、によって特徴付けられ、コントローラは、第1の交流信号の振幅を決定するように、第2の交流信号の振幅を決定するように、第1の可変制御抵抗負荷及び第2の可変制御抵抗負荷を制御するように、可変制御利得を制御するように、第1の可変制御抵抗負荷の負荷を第1の交流信号の決定された振幅における変化の関数として適合させるように、第2の可変制御抵抗負荷の負荷を第2の交流信号の決定された振幅における変化の関数として適合させるように、並びに、第1の交流信号及び第2の交流信号の両方の決定された振幅が同時に変化するとき、及び変化するときのみ、可変制御利得を第1の交流信号の決定された振幅及び第2の交流信号の決定された振幅の関数として調整するように、構成される。
【0012】
第1の信号に関連付けられた第1の可変制御抵抗負荷を提供することによって、及び、第2の信号に関連付けられた第2の可変制御抵抗負荷を提供することによって、及び、それぞれの信号の振幅における変化に応答してそれぞれの可変制御抵抗負荷を調整することによって、動きアーティファクトを完全に補償することが可能になり、並びに、第2及び第3の両方の回路要素の出力信号の振幅における同時変化に応答して可変制御利得を調整することによって、ユーザの皮膚上の汗のシャント効果を完全に補償することが可能になる。
【0013】
第1の態様の可能な実施例において、信号は、少なくとも第1の交流信号の振幅を表す構成要素を備え、信号は、第1の回路要素の出力信号である第2の交流信号の振幅を表す構成要素を備える。
【0014】
2つの既知であるが異なる交流信号を提供することによって、第1の交流信号の振幅と第2の交流信号の振幅とを区別することが可能になり、第1及び第2の可変抵抗負荷の個別制御を可能にする。
【0015】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第1の回路要素の出力信号の時間周波数解析を実行し、それによって、第1の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の一部及び第2の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の一部を決定するように、第1の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅を決定するように、第2の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅を決定するように、第1の可変制御抵抗負荷を制御するように、第2の可変制御抵抗負荷を制御するように、可変制御利得を制御するように、第1の可変制御抵抗負荷の負荷を第1の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅の関数として適合させるように、第2の可変制御抵抗負荷の負荷を第2の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅の関数として適合させるように、並びに、第1の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅と第2の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅の両方が、同時に変化するとき、及び変化するときのみ、第1の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅及び第2の交流信号から発生する第1の回路要素の出力信号の振幅の関数として、可変制御利得を調整するように、構成される。
【0016】
(例えば、高速フーリエ変換を実行するために)時間周波数ドメイン内で計算を実行することが可能なコントローラを有することによって、計算の結果の関数として可変抵抗負荷を個別に及び互いに独立に制御するために、第1の回路要素の出力信号の起点を分析及び区別することが可能になる。
【0017】
第1の態様の可能な実施例において、装置は更に、第1の信号の振幅を感知及び/又は増幅するために第1の端子に接続された第2の回路要素と、第2の信号の振幅を感知及び/又は増幅するために第2の端子に接続された第3の回路要素と、第2の回路要素の出力信号を受け取っており、第3の回路要素の出力信号を受け取っているコントローラと、を備え、コントローラは、第1の可変制御抵抗負荷の負荷を第2の回路要素の出力信号の振幅の関数として適合させるように、第2の可変制御抵抗負荷の負荷を第3の回路要素の出力信号の振幅の関数として適合させるように、並びに、第2の回路要素及び第3の回路要素の両方の出力信号両方の振幅が同時に変化するとき、及び変化するときのみ、可変制御利得を第2の回路要素の出力信号の振幅及び第3の回路要素の出力信号の振幅の関数として調整するように、構成される。
【0018】
第1の信号に関連付けられた第1の可変制御抵抗負荷を提供することによって、及び、第2の信号に関連付けられた第2の可変制御抵抗負荷を提供することによって、及び、それぞれの信号の振幅における変化に応答してそれぞれの可変制御抵抗負荷を調整することによって、動きアーティファクトを完全に補償することが可能になり、並びに、第2及び第3の両方の回路要素の出力信号の振幅における同時変化に応答して可変制御利得を調整することによって、ユーザの皮膚上の汗のシャント効果を完全に補償することが可能になる。
【0019】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第2及び第3の回路要素の両方の出力信号の振幅が同時に減衰するとき、及び減衰するときのみ、可変制御利得を増加させるように構成される。
【0020】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第2及び第3の回路要素の両方の出力信号の振幅が同時に増加するとき、及び増加するときのみ、可変制御利得を減少させるように構成される。
【0021】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第1の可変制御抵抗負荷及び第2の可変制御抵抗負荷の両方を中央値に設定するように構成され、更にコントローラは、装置を、第2の回路要素の出力信号の振幅の関数として、及び、第3の回路要素の出力信号の関数として、較正するように構成され、コントローラは、好ましくは第1の交流信号に関連付けられた第1の初期較正値を記憶するように構成され、好ましくは第2の交流信号に関連付けられた第2の初期較正値を記憶するように構成される。
【0022】
第1及び第2の可変抵抗負荷を中央値に設定すること、及び、第1及び第2の交流信号に関連付けられた初期較正値を記憶することによって、第2及び/又は第3の回路要素の出力信号の振幅におけるいずれかの変化を容易且つ即時に決定すること、並びにこうした変化を補償することが可能になる。
【0023】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラが可変制御利得を調整した後、コントローラは、第1及び第2の初期較正値を更新するように構成される。
【0024】
第1の態様の可能な実施例において、第1の回路要素は、生体電位信号を増幅するために第1及び第2の端子に接続された計器増幅器を備える。
【0025】
第1の態様の可能な実施例において、第2の回路要素は、第1の信号の振幅を増幅するために第1の端子に接続された第1の増幅器を備え、第1の増幅器は好ましくは演算増幅器である。
【0026】
第1の態様の可能な実施例において、第3の回路要素は、第2の信号の振幅を増幅するために第2の端子に接続された第2の増幅器を備え、第2の増幅器は好ましくは演算増幅器である。
【0027】
第1及び第2の増幅器を提供することによって、第1及び第2の電極の信号減衰を個別に測定及び補償することが可能になる。
【0028】
第1の態様の可能な実施例において、第4の回路要素は、計器増幅器の出力に接続され、可変制御利得を計器増幅器の出力信号に印加するように構成された、デジタル制御増幅器を備える。
【0029】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第1の増幅器の出力信号を受け取っており、第2の増幅器の出力を受け取っており、コントローラは、第1の増幅器の出力の振幅が減少するとき、第1の可変制御抵抗負荷の抵抗を増加させるように構成され、第1の増幅器の出力の振幅が増加するとき、第1の可変制御抵抗負荷の抵抗を減少させるように構成され、コントローラは、第2の増幅器の出力の振幅が減少するとき、第2の可変制御抵抗負荷の抵抗を増加させるように構成され、第2の増幅器の出力の振幅が増加するとき、第2の可変制御抵抗負荷の抵抗を減少させるように構成される。
【0030】
第1の態様の可能な実施例において、第1、第2、及び/又は基準の電極は、乾式表面電極である。
【0031】
第1の態様の可能な実施例において、第1の信号は第1の周波数を有し、第2の信号は第2の周波数を有し、第1の周波数は好ましくは第2の周波数に等しく、第1の信号は好ましくは第2の信号と位相がずれている。
【0032】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第2の回路要素及び第3の回路要素の両方の出力信号両方の振幅が同時に及び同じ方向に変化するとき、及び変化するときのみ、可変制御利得を、第2の回路要素の出力信号の振幅及び第3の回路要素の出力信号の振幅の関数として調整するように構成される。
【0033】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第2の回路要素、第3の回路要素、及び第4の回路要素の出力を、好ましくは第1の態様のデフォルト設定に関して、測定及び記録することによって、装置を較正するように構成される。
【0034】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第1の可変制御抵抗負荷及び第2の可変制御抵抗負荷の両方を中央値に設定するように構成され、コントローラは、装置を、第2の回路要素の出力信号の振幅の関数として、及び、第3の回路要素の出力信号の関数として、較正するように構成される。
【0035】
第1の初期使用中に装置を較正することによって、信号の強度及び品質に影響を与える環境効果を連続的に補償する間、人の生体信号の正確な測定を経時的に記録することが可能である。装置の較正は、人の生体信号についての個別の測定及び基準値を提供することの利点を更に提供し、人の生体信号測定中にこの較正値からの任意の逸脱の比較及び検出を可能にする。
【0036】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第1の可変制御抵抗負荷及び第2の可変制御抵抗負荷の両方を中央値に設定するように構成され、コントローラは、第1及び第2の端子の出力信号の振幅の関数として、装置を較正するように構成される。
【0037】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、高い実効性能を達成することが可能なマイクロプロセッサであり得る。
【0038】
強力且つ経済的なマイクロプロセッサを採用することによって、計算能力及び性能が必要な測定及び計算を実施するのに十分であるため、例えば増幅器を追加する必要なしに、いくつかの構成要素を除外することが可能になる。適切なマイクロプロセッサは、例えばARM Cortex-Mプロセッサであり得る。マイクロプロセッサ及びその性能は、装置内で使用される増幅器の必要性及び構成も決定し得る。
【0039】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、周波数ドメイン内で動作するように構成される。
【0040】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第2の回路要素及び第3の回路要素の両方の出力信号の振幅が同時に及び同じ方向に変化するとき、及び変化するときのみ、第2の可変制御抵抗負荷の負荷を第3の回路要素の出力信号の振幅の関数として適合させるように、及び、可変制御利得を、第2の回路要素の出力信号の振幅及び/又は第3の回路要素の出力信号の振幅の関数として調整するように、構成される。
【0041】
第1の態様の可能な実施例において、第2の信号発生器によって発生する第2の信号は、第1の信号発生器によって発生する第1の信号と位相がずれており、好ましくは、40から320°の間で位相がずれており、より好ましくはおよそ120°位相がずれている。
【0042】
第1の電極のための個別信号及び第2の電極のための個別信号を提供することによって、並びに、信号を個別に及び互いに関連して監視することによって、インピーダンスの変化が第1の電極に影響を与える動きアーティファクトによって生じるかどうか、又は、インピーダンスの変化が第2の電極に影響を与える動きアーティファクトによって生じるかどうか、又は、インピーダンスの変化が第1及び第2の電極の両方に影響を与える動きアーティファクトによって生じるかどうか、又は、インピーダンスの変化が、汗の蓄積のシャント効果に起因して各個別の信号の同時の同じ減少レートによって生じるかどうかを、判定することが可能になる。この洞察により、3つの変化する抵抗ΔR、ΔR、及びRを正確に測定することが可能な装置を提供すること、及び、可変制御利得及びインピーダンスバランスを必要に応じて更新することによって、動きアーティファクト及び汗の蓄積によって生じるインピーダンス変化を効果的に補償することが可能になる。ΔR及びΔRは、動きアーティファクト及び電極変位に起因して、第1の電極及び第2の電極それぞれと皮膚との間で測定される、可変抵抗であると理解される。Rは、汗の蓄積の結果として、第1及び第2の電極間の減少した表面皮膚抵抗であると理解される。
【0043】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第2及び第3の回路要素の両方の出力信号の振幅が同時に減衰するとき、及び減衰するときのみ、可変制御利得が増加するように構成される。
【0044】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第2及び第3の回路要素の両方の出力信号の振幅が同時に増加するとき、及び増加するときのみ、可変制御利得が減少するように構成される。
【0045】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第1の可変制御抵抗負荷及び第2の可変制御抵抗負荷の両方を、中央値に設定するように構成され、コントローラは、装置を、第2の回路要素の出力信号の振幅の関数として、及び第3の回路要素の出力信号の関数として、較正するように構成され、コントローラは、好ましくは第1の交流信号に関連付けられた第1の初期較正値を記憶するように構成され、コントローラは、好ましくは第2の交流信号に関連付けられた第2の初期較正値を記憶するように構成される。
【0046】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、コントローラが可変制御利得を調整した後に、第1及び第2の初期較正値を更新するように構成される。
【0047】
第1の態様の可能な実施例において、第1の回路要素は、生体電位信号を増幅するために第1及び第2の端子に接続された計器増幅器を備える。
【0048】
第1の態様の可能な実施例において、第2の回路要素は、第1の信号の振幅を増幅するために第1の端子に接続された第1の増幅器を備え、第1の増幅器は、好ましくは演算増幅器である。
【0049】
第1の態様の可能な実施例において、第3の回路要素は、第2の信号の振幅を増幅するために第2の電極に接続された第2の増幅器を備え、第2の増幅器は、好ましくは演算増幅器である。
【0050】
第1の態様の可能な実施例において、第4の回路要素は、計器増幅器の出力に接続され、可変制御利得を計器増幅器の出力信号に印加するように構成された、デジタル制御増幅器を備える。
【0051】
第1の態様の可能な実施例において、コントローラは、第1の可変制御抵抗負荷を制御するために第1の増幅器からの信号出力を受信するように構成され、第2の可変制御抵抗負荷を制御するために第2の増幅器からの信号出力を受信するように構成され、更に、コントローラは、ハードウェア手段によって、又はソフトウェアを使用することのいずれかによって、第3の増幅器を制御するように構成される。
【0052】
第2の態様によれば、人の皮膚上の生体電位信号を感知するための方法が提供され、方法は、第1の皮膚電極、第2の皮膚電極、及び基準皮膚電極を人の皮膚上に置くこと、第1の交流信号を第1の電極に印加すること、第1の可変制御抵抗負荷を第1の電極に接続すること、第2の可変制御抵抗負荷を第2の電極に接続すること、を含み、第1の信号の振幅を測定すること及び第1の可変制御抵抗負荷の抵抗を第1の信号の振幅における変化の関数として調整すること、第2の交流信号を第2の電極に印加すること、第2の信号の振幅を測定すること及び第2の可変制御抵抗負荷の抵抗を第2の信号の振幅における変化の関数として調整すること、第1及び第2の電極を用いて生体電位信号を測定すること及び可変制御利得を測定された生体電位信号に印加すること、並びに、第1の信号の振幅及び第2の信号の振幅の両方が同時に変化するとき、及び変化するときのみ、可変制御利得を測定された第1の信号の振幅及び測定された第2の信号の振幅における変化の関数として調整すること、によって特徴付けられる。
【0053】
第2の態様の可能な実施例において、第1の信号の振幅を測定すること、及び、第1の信号の振幅が第1の回路要素からのインピーダンスに合致するように減衰するとき、第1の可変制御抵抗負荷の抵抗を調整すること。
【0054】
第2の態様の可能な実施例において、第2の信号の振幅を測定すること、及び、第2の信号の振幅が第1の回路要素からのインピーダンスに合致するように減衰するとき、第2の可変制御抵抗負荷の抵抗を調整すること。
【0055】
第2の態様の可能な実施例において、第1の可変制御抵抗負荷及び第2の可変制御抵抗負荷を、それぞれの可変制御抵抗負荷の最大の完全な動作範囲のおよそ半分に設定すること、及び、第1の信号の振幅及び第2の信号の振幅を測定すること、並びに、第1の交流信号に関連付けられた第1の初期較正値を記憶すること及び第2の交流信号に関連付けられた第2の初期較正値を記憶すること。
【0056】
第2の態様の可能な実施例において、第1の信号は第1の周波数を有し、第2の信号は第2の周波数を有し、第1の周波数は好ましくは第2の周波数に等しく、第1の信号は好ましくは第2の信号と位相がずれている。
【0057】
第2の態様の可能な実施例において、人によって生成される生体電位信号は、筋電図(EMG)又は脳波図(EEG)又は心電図(ECG)信号である。
【0058】
第1又は第2の態様の可能な実施例において、人によって生成される生体電位信号は、生体電位プライマ、心電図(ECG)、皮膚電気活動(EDA)、脳波図(EEG)、胃電図(EGG)、筋電図(EMG)、眼電図(EOG)、インピーダンス心電図(ICG)の信号である。
【0059】
第2の態様の可能な実施例において、方法は、第1の可変制御抵抗負荷の抵抗を調整することによって、第1の電極上の動きアーティファクトの影響を補償すること、及び、第2の可変制御抵抗負荷の抵抗を調整することによって、第2の電極上の動きアーティファクトの影響を補償することを含む。
【0060】
第2の態様の可能な実施例において、方法は、可変制御利得を増加させることによって、人の皮膚上の汗の蓄積の影響を補償することを含む。
【0061】
第2の態様の可能な実施例において、方法は、第1の信号の振幅及び第2の信号の振幅の両方が同時に及び同じ方向に変化するとき、及び変化するときのみ、可変制御利得を、測定された第1の信号の振幅及び/又は測定された第2の信号の振幅における変化の関数として調整することを含む。
【0062】
第1に個別の信号を、及び第2の電極に個別の信号を提供することによって、並びに、信号を個別に又は互いに関連して監視することによって、インピーダンスにおける変化が、動きアーティファクト、第1の電極又は第2の電極、又は第1及び第2の電極の両方によって、又は汗の蓄積によって、生じるかどうかを判定することが可能になる。この洞察により、動きアーティファクトによって生じるインピーダンス変化を正確に補償すること、及び、汗の蓄積に起因する信号損失を正確に補償することが可能な、装置を提供することが可能になる。
【0063】
第1の信号発生器及び第2の信号発生器によって発生した第1又は第2の信号のみの個別の信号変化を検出するとき、第1又は第2の電極並びに第1又は第2の信号発生器それぞれに接続された可変制御抵抗負荷を増加又は減少させることによって、動きアーティファクト及び電極変位を補償することが可能である。基準電極に関する皮膚電極インターフェースの不一致を検出するとき、両方の信号の振幅が同時に変化し、第3の増幅器118の可変制御利得を増加させることによって、汗の蓄積を補償することが可能になる。
【0064】
第2の態様の可能な実施例において、第1の信号は第1の周波数を有し、第2の信号は第2の周波数を有し、第1の周波数は好ましくは第2の周波数に等しく、第1の信号は好ましくは第2の信号と位相がずれている。
【0065】
第2の態様の可能な実施例において、方法は、第1の可変制御抵抗負荷の抵抗を調整することによって、第1の電極上の動きアーティファクトの影響を補償すること、及び、第2の可変制御抵抗負荷の抵抗を調整することによって第2の電極上の動きアーティファクトの影響を補償することを含む。
【0066】
第2の態様の可能な実施例において、可変制御利得を増加させることによって、人の皮膚上の汗の蓄積の影響を含むこと。
【0067】
第2の態様の可能な実施例において、第1及び第2の信号発生器によって射出される信号は、信号を伝送することに先立って既知の時間差構成要素を備える、電気パルス又は方形波又は三角波であり得る。
【0068】
これら及び他の態様は、下記で説明する実施形態から明らかとなろう。
【0069】
本開示の下記の詳細な部分において、態様、実施形態、及び実施例を、図面内に示される例示の実施形態を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】一実施形態に従った装置を示す図式表現である。
図2】シミュレーションにおける経時的な動きアーティファクトによって生じるインピーダンス変化を検出及び補償する装置の、一例を示すグラフである。
図3】シミュレーションにおける経時的な皮膚上に蓄積された汗によって生じる、信号振幅減衰を検出及び補正する装置の、一例を示すグラフである。
図4】シミュレーションにおける経時的な発汗の間の、周波数の減衰を示すグラフである。
図5】シミュレーションにおける経時的な電極変位の間の、信号の減衰を示すグラフである。
図6】動きアーティファクト及び汗の蓄積及び補償を検出及び補償するための方法を示すフローチャート概要である。
図7】動きアーティファクト及び汗の検出及び補償のための装置の較正を示すフローチャートである。
図8】動きアーティファクトの検出及び補償を示す、フローチャート表現である。
図9】動きアーティファクトの検出及び補償を示す、フローチャート表現である。
図10】汗の蓄積の検出及び補償を示す、フローチャートである。
図11】シミュレーションにおいて経時的に動きアーティファクトによって生じるインピーダンス変化を検出及び補償する、装置の一例を示すグラフである。
図12】一実施形態に従った装置を示す図式表現である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
参照しながら本明細書で説明する装置及び方法は、患者の生体電位信号の短期又は長期監視を可能にする。
【0072】
図1は、装置1の電気回路図の図式表現である。被験者の皮膚500上での間を置いた配置のための第1の電極100、第2の電極101、及び基準電極102は、装置1に関連付けられる。装置1は、第1の電極100への接続のための第1の端子103、第2の電極101への接続のための第2の端子104、及び、基準電極102への接続のための第3の端子105を有する。
【0073】
第1の電極100、第2の電極101、及び/又は基準電極102は、好ましくは乾式表面電極である。
【0074】
可変制御信号発生器システム130が、第1の電極100及び第2の電極101に接続される。第1の信号発生器106が第1の交流信号を発生させるために第1の電極100に接続され、第2の信号発生器107が、好ましくは第1の信号発生器106によって発生した第1の交流信号と位相がずれている第2の交流信号を発生させるために第2の電極101に接続される。
【0075】
第1の交流信号及び第2の交流信号は、100から700の範囲内、好ましくは500Hzの周波数を伴う交流電流を利用する。500Hz又はそれ以上の周波数及び入力負荷の実施例は、測定された生体電位信号に対していずれの影響も有さないことに留意することが重要である。第1の交流信号及び第2の交流信号は、同じ周波数を有するが、互いに関して位相外れであることが可能である。第1及び第2の信号は、互いに関して40°から320°位相がずれていてよく、好ましくは、第1及び第2の信号は、互いに関して120°位相がずれている。初期には、第1の射出信号及び第2の射出信号は較正測定に対する基準信号として働き、較正値として記憶される。
【0076】
動きアーティファクトの補償のための入力インピーダンス補償負荷システム140が、第1及び第2の端子103及び104に接続される。インピーダンス補償負荷システム140は、第1の端子103に接続された第1の可変制御抵抗負荷108及び第2の端子104に接続された第2の可変制御抵抗負荷109を備え、動きアーティファクト補償によって生じるインピーダンス変化に関連して使用される。
【0077】
第1の回路要素110が、第1の端子103及び第2の端子104からの生体電位信号を測定するように構成される。第1の回路要素110は、生体電位信号を増幅するために第1の端子103及び第2の端子104に接続された、計器増幅器117を備える。
【0078】
第2の回路要素115が、第1の信号発生器106によって発生した第1の信号の振幅を感知及び/又は増幅するために、第1の端子103に接続される。第2の回路要素115は、第1の増幅器111、好ましくは第1の信号の振幅を増幅するように構成された演算増幅器を備える。
【0079】
第3の回路要素116が、第2の信号発生器107によって発生した第2の信号の振幅を感知及び/又は増幅するために、第2の端子104に接続される。第3の回路要素116は、第2の増幅器112、好ましくは第2の信号の振幅を増幅するように構成された演算増幅器を備える。
【0080】
第4の回路要素113が、第1の回路要素110の出力に接続され、第1の回路要素110の出力信号に可変制御利得を印加するように構成される。第4の回路要素113は、計器増幅器117の出力に接続された第3の増幅器118、好ましくはデジタル制御増幅器を備え、計器増幅器117の出力信号に可変制御利得を印加するように構成され、人の皮膚上の汗の蓄積の補償、並びに測定中の装置1の較正及び再較正に関して使用される。
【0081】
計器増幅器117は、未加工の非汗補償アナログ出力119を生成する。第4の回路要素113は、未加工の汗補償アナログ出力120を生成する。
【0082】
コントローラ114(例えば、マイクロプロセッサなど)が、第2の回路要素115及び第3の回路要素116の出力信号を受信する。コントローラ114は、第2及び第3の回路要素115及び116の両方の出力信号両方の振幅が、同時に及び同じ方向に変化するとき、及び変化するときのみ、第1の可変制御抵抗負荷108を第2の回路要素115の出力信号の振幅の関数として制御及び/又は適合させるように、第2の可変制御抵抗負荷109を第3の回路要素116の出力信号の振幅の関数として制御及び/又は適合させるように、並びに、可変制御利得を、第2の回路要素115の出力信号の振幅及び第3の回路要素116の出力信号の振幅の関数として、制御及び/又は調整するように、構成される。動きアーティファクトによって生じる増加した皮膚電極抵抗50、51は、それぞれ、第1又は第2の増幅器111又は112のそれぞれの出力信号における増加として、コントローラ114によって検出される。
【0083】
コントローラ114は、それぞれ、第1又は第2の増幅器111又は112の出力信号から受信した信号に応答して、可変抵抗負荷を調整する。第1又は第2の増幅器111又は112の出力信号からそれぞれ信号データを受け取っているコントローラ114は、初期に記録された較正値に第2の回路要素115及び第3の回路要素116の許容差を加えたものと比べた場合、第2の回路要素115又は第3の回路要素116からの信号が減衰するとき、第1又は第2の可変抵抗108又は109の抵抗をそれぞれ増加又は減少させるように構成される。したがって、コントローラ114は、第1の回路要素110の信号の増加又は減少の影響、並びに、第2の回路要素115及び第3の回路要素116の信号の増加又は減少の影響に、対抗するように構成される。
【0084】
コントローラ114は、第2及び第3の回路要素115及び116の両方の出力信号の振幅が、同時に、及び好ましくは同じレートで減衰するとき、及び減衰するときのみ、可変制御利得118を増加させるように構成され、コントローラ114は、比較の新規基準点を有するために、較正値を新しい較正値(装置1の再較正)に更新するように構成される。コントローラ114は、第2及び第3の回路要素115及び116の両方の出力信号の振幅が同時に増加するとき、及び増加するときのみ、可変制御利得118を減少させるように構成される。
【0085】
コントローラ114は、第1の可変制御抵抗負荷108を制御するために、第1の増幅器111から信号出力を受信するように構成され、コントローラ114は、第2の可変制御抵抗負荷109を制御するために、第2の増幅器112から信号出力を受信するように構成される。コントローラ114は、第1の信号発生器106及び第2の信号発生器107を制御するようにも構成される。コントローラ114は、ハードウェア手段によって、又はソフトウェアを使用することによって、第3の増幅器を制御するように更に構成される。
【0086】
装置1は、第1及び第2の制御信号の値を測定及び記憶し、各々は初期基準較正値として働く。コントローラ114は、第1の皮膚電極100又は第2の皮膚電極101と、基準電極102及び初期基準較正値に関する皮膚インターフェースとの不一致を決定する。
【0087】
始動時、装置1は第1及び第2の信号を測定し、これらの値を初期較正値として記憶し、基準電極102及び初期較正値に関する皮膚電極インターフェースの不一致を決定する。
【0088】
装置1は、第1の信号の振幅及び第2の信号の振幅を測定することによって、並びに、第1及び第2の信号の同時変化、例えば、第1及び第2の信号の振幅に同時に発生する許容差を加えたものの同時減少を検出することによって、第1の電極100と第2の電極101との間にシャントを発生させる、皮膚500上の汗の蓄積を決定する。測定された生体電位信号の減衰した振幅は、第3の増幅器118の利得を増加させることによって、好ましくは、初期較正値と現在の振幅値との間の振幅差の量に対応する倍数によって、補償される。ある期間にわたって蓄積された汗を追跡し、正確な測定を保証するために、初期の較正値も新しい値で再較正される。
【0089】
振幅制御信号の変動は、動きアーティファクト及び/又は電極変位に変わり、装置1は、電極変位を補償するために負荷システムを増加又は減少させる。装置1は、どの電極が変位されるかを検出し、変位された電極100、101に接続された負荷を増加させることによって、単一又は複数の電極変位を補正することもできる。
【0090】
図2及び図11図2のカラー版)は、動きアーティファクトによって生じるインピーダンス変化を検出及び補正する装置1の一例を示すグラフである。電極100及び101が皮膚表面500上に置かれるとき、初期には安定電極インターフェースが存在する。動きアーティファクトが発生すると、アクティブなユーザの動きは皮膚500と記録電極100及び/又は101との間に一時的なギャップを作り出し、結果としてEMG出力内に電圧スパイクが生じるため、電極100及び/又は101は(一時的に)変位する。経時的な電極変位は、測定の間、実際の筋肉活動事象と間違えられる場合があるため、これらを補償することが不可欠である。シミュレーションは、経時的に正確な測定のために最も効果的な周波数であることが分かっているため500Hzに設定された、2つの位相外れドライバ周波数を示す。しかしながら、ドライバ周波数は、500Hzより高い任意の適切な値が可能であることが理解される。
【0091】
発生した信号内で検出される振幅変化に起因して、動きアーティファクト及び電極変位がコントローラ114によって検出され、入力負荷不一致として登録される。コントローラ114は、動きアーティファクトを補償するように可変制御抵抗負荷108及び109を適合及び調整し、信号は、動きアーティファクトが電極変位を生じさせる前の信号に、又はその近くに復元される。動きアーティファクトが終わるとすぐに、コントローラ114は、それぞれの可変制御抵抗負荷108、109を、それらの以前の値に再調整する。
【0092】
図3は、一実施形態に従った、汗によって生じるインピーダンス変化を検出及び補正する装置1の一例を示す。汗は、典型的には、皮膚表面500上に電極100及び101を配置するおよそ7から20分内に、皮膚の表面上での蓄積を開始するが、これは個人に依存し得、人の皮膚上に電極を維持するためにスリーブなどが使用されるか否かに依存する。電極100及び101を皮膚の表面上に配置した後、第1及び第2の制御可変負荷108及び109は中央値に設定され、第1の信号発生器106は第1の電極100へと信号を射出し、第2の信号発生器107は第2の電極101へと第2の信号を射出し、第2の信号は好ましくは第1の信号と位相がずれており、初期較正値は、第2の回路要素115の出力及び第3の回路要素116の出力を測定することによって記録される。抵抗器負荷の全域が10MΩの場合、抵抗器負荷の中央域は5MΩであり得る。塩性の汗が蓄積を開始すると、第1の電極100と第2の電極101との間のシャントに起因して、第1及び第2の両方の信号について信号振幅は徐々に減少し、出力信号の強度及び生体電位信号測定値の精度が低下する。装置1は、コントローラ114を介して、利得を増加させるハードウェアによって、又は、利得を増加させるためにデジタルソフトウェア利得増幅を使用することによって、第1及び第2の両方の信号のこの信号振幅減衰を補償する。コントローラ114が、安定した正確な生体電位信号測定値を生成するために、第1及び第2の信号内の同時増加を登録する場合及び登録するとき、利得は、増加して汗の蓄積前に戻るか又は蓄積前に近付くことができる。利得の調整時、コントローラ114は、初期の較正値と新しい値との大きさの差だけ利得を増加させることによって、較正値を調整し、初期の値及び後に使用される再較正値の両方が記憶される。したがって、フィードバック時に信号利得は増加し、汗の蓄積のシャント効果は補償される。
【0093】
図4は、補償なしの汗及びそのシャント効果に起因する正規化振幅信号の減少を示し、結果としてシミュレーションにおいて損なわれた生体電位信号の測定が生じる。シミュレーションは、5Hzの生体電位信号について経時的な汗の蓄積のシャント効果を示す。第1の信号発生器106及び第2の信号発生器107によって発生する信号の正規化振幅は、経時的に徐々に減少し、検出される生体電位信号は生体電位信号がもはや検出できない地点まで徐々に減少し、信号強度は不正確な測定の地点まで大幅に減少する。この影響は、上記で概説した補償システムによって克服される。
【0094】
図5は、上記で概説した補償システムのない、経時的な電極変位及び動きアーティファクトに起因する、周波数の減衰のシミュレーションを示す。安定した電極接続は、動きアーティファクトによって妨げられ得、表面抵抗の増加、生体電位信号の減衰、及び射出信号の振幅の増加につながり、EMG測定信号における電極切断及び電圧スパイクにつながる。測定される生体電位信号は、第1に表面抵抗の増加によって、及び続く電極変位によって生じる、振幅のスパイク及び不規則性を示す。第1の信号発生器106及び第2の信号発生器107によって発生する信号は、第1の増加した表面抵抗及びその補償の欠如、並びに、完全な電極変位及び元の信号周波数の損失に起因して、不規則な増加を示す。装置1は、この問題に対する解決策を提示する。
【0095】
図6は、動きアーティファクト及び汗の蓄積を検出及び補償するための方法全体を示し、図6に概説される各ステップは図7図8図9、及び図10で詳細に示している。詳細な方法は、第1に装置1の較正を示す図7において開始されることを理解されよう。図8は、図7の較正ステップに続くものであることを理解されよう。図9は、図7及び図8の組み合わせであることを理解されよう。図10は、本明細書で概説される検出及び補償方法の最終ステップであることを理解されよう。本方法のステップの順序は、互いに交換可能であり得ることを理解されよう。
【0096】
図6は、動きアーティファクト及び汗の蓄積の検出及び補償のための方法を示すフローチャートである。第1及び第2の電極100及び101は、人の皮膚の表面上に配置され、システムは、記録された初期の較正値を用いて較正され、更新される。較正が必要でない場合、例えば、初期値が前の段階で記録された場合、装置1は、動きアーティファクト及び汗の蓄積の登録時に利得及びインピーダンスバランスを更新する。これによって、新しいフィードバックサイクルが開始され、システムは記録された較正値をチェックして、リアルタイムでそれらの記録された値と比較し、必要に応じて、動きアーティファクト及び汗の蓄積を補償するために利得及びインピーダンスバランスを再較正及び更新する。
【0097】
図7は、図1に従った装置1の較正のための方法を示すフローチャートである。第1の電極100及び第2の電極101を皮膚の表面上に配置した後、可変制御負荷108及び109は、中央値と、中央値の0.0001%から0.01%の間の差、好ましくは、中央値に対する0.005%差に設定された許容差とを加えた値に設定される。第1の信号発生器106は、第1の交流信号を第1の電極100に印加し、第2の信号発生器107は第2の交流信号を第2の電極101に印加する。第2の回路要素115及び第3の回路要素116の出力が測定され、出力値は、第2の回路要素115及び第3の回路要素116の両方についての初期較正値として記録される。
【0098】
図8は、動きアーティファクトを検出及び補償するための方法を示すフローチャートである。図7に従った初期較正の後、第1の可変制御抵抗負荷108は、中央値と、中央値の0.0001%から0.01%の間、好ましくは、中央値の0.005%に設定された許容差値とを加えた値に設定され、第2の可変制御抵抗負荷109は、中央値と、中央値の0.0001%から0.01%の間、好ましくは、中央値の0.005%に設定された許容差値とを加えた値に設定される。コントローラ114は、初期較正値に関するシステム内の変化を検出する。
【0099】
第2の回路要素115の出力及び第1の増幅器111の振幅が、第3の回路要素116の出力及び第2の増幅器112の振幅に許容差値を加えた値よりも高い場合、この事象には左動きアーティファクトとしてのフラグが立てられ、第1の可変制御抵抗負荷108は、好ましくは、第1の可変制御負荷108の入力負荷インピーダンスと合致させるために段階的に増加される。この方法は、反対の条件についてもチェックする。
【0100】
第2の回路要素115の出力及び第1の増幅器111の振幅に、許容差を加えた値が、第3の回路要素116の出力及び第2の増幅器112の振幅よりも低い場合、この事象には右動きアーティファクトとしてのフラグが立てられ、第2の可変制御負荷109は、好ましくは、第2の可変制御負荷109の入力負荷インピーダンスと合致させるために段階的に増加される。
【0101】
他に、上記の条件が偽である場合、図1に従った装置1は、図9及び図10に概説されるように次のステップに進む。
【0102】
図9は、動きアーティファクトの検出及び補償を示すフローチャートである。このフローチャートは、図8で概説した以前のステップの組み合わせであるものと理解されよう。
【0103】
第2の回路要素115の出力及び第1の増幅器111の振幅に、許容差を加えた値が、第3の回路要素116の初期較正値及び第2の増幅器112の振幅よりも低い場合、この事象にはフラグが立てられ、第1の可変制御抵抗負荷108は、好ましくは、第1の可変制御負荷108の入力負荷インピーダンスと合致させるために段階的に減少される。
【0104】
第3の回路要素116の出力及び第2の増幅器112の振幅に、許容差を加えた値が、第3の回路要素116の初期較正値及び第2の増幅器112の振幅よりも低い場合、この事象にはフラグが立てられ、第2の可変制御抵抗負荷109は、好ましくは、第2の可変制御負荷109の入力負荷インピーダンスと合致させるために段階的に減少される。
【0105】
条件が偽である場合、コントローラ114は汗の蓄積をチェックする。
【0106】
図10は、汗の蓄積の検出及び補償を示すフローチャートである。このフローチャートは、図8で概説した以前のステップからの続きであるものと理解されよう。
【0107】
第2の回路要素115の出力及び第1の増幅器111の振幅、並びに第3の回路要素116の出力及び第2の増幅器112の振幅に、許容差を加えた値が、第2の回路要素115の初期較正値及び第1の増幅器の振幅、並びに第3の回路要素116の初期較正値及び第2の増幅器112の振幅よりも低い場合、並びに/あるいは同時減少及び/又は同じレートでの減少である場合、この事象には汗の蓄積としてのフラグが立てられる。
【0108】
次いでコントローラ114は、例えば、新しく記録された値と初期較正値との間の振幅差を介して利得を増加させることによって、可変利得を調整する。更にコントローラ114は、新しく記録された値と初期較正値との間の振幅差に等しい新しい再較正値を用いて較正値を更新し、汗の蓄積と、汗の蓄積に起因する較正値及び再較正値に対する関連する変化とを追跡するために、すべての値を保存する。
【0109】
次いで方法は、フィードバックループサイクルを繰り返す。
【0110】
装置1及び方法は、汗及び動きアーティファクトによって生じる信号劣化を、同時に検出しながら、例えば、ある条件を伴う患者などの人の生体電位信号の短期又は長期監視を可能にするために、これらの影響も補償する。
【0111】
図12は、一実施形態に従った装置の図式表現である。図1及び上記の詳細と同じ装置の構成要素には、同じ番号が使用されていることを理解されよう。本実施形態に従い、装置は、(例えば、高速フーリエ変換(FFT)を実行するために)時間周波数ドメイン内でリアルタイム分析を実行するように構成された十分強力なマイクロプロセッサ114が採用されるとき、1つの増幅器117のみを備える。増幅器117とマイクロプロセッサ114との間のフィードバック接続は、増幅器117のアナログ出力がマイクロプロセッサ入力114へのフィードを発生させ、それによって(強力な)マイクロプロセッサ114は、第1の信号発生器106から生じる信号の部分と、第2の信号発生器107から生じる信号の部分とを、それぞれ区別するために、この信号上でFFTを実行するように構成されるため、増幅器111、112を省くことができる。これによって、マイクロプロセッサ114は、可変抵抗負荷108、109を個別に及び互いに独立して制御するために、第1の回路要素の出力信号の起点を分析及び区別することが可能である。
【0112】
第1の信号発生器106及び第2の信号発生器107は、増幅器117によって増幅され、マイクロプロセッサ114によって分析される信号を、第1の電極100及び第2の電極101に提供する。第1及び第2の信号は同じ周波数を有し得るが、2つの信号を容易に区別できるようにするために互いに関して位相がずれている。コントローラ114は、第1又は第2の交流信号に特有の第1の回路要素110の出力信号を検出するように構成され、次いで、第1及び第2の交流信号の振幅を決定することができる。第1及び第2の交流信号の振幅を受け取っているコントローラ114は、次いで、信号減衰を補償するために第1及び第2の可変抵抗負荷108、109を制御及び適合可能であり、第1及び第2の交流信号の決定された振幅の関数として可変制御利得118を更に調整可能であり、したがって、動きアーティファクト又は汗の蓄積によって生じる減衰効果を効果的に克服する。
【0113】
本明細書における様々な実施形態に関連して、様々な態様及び実施例を説明してきた。しかしながら、当業者であれば、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲を研究することから、請求された課題の実施において、開示された実施形態に対する他の変更が理解及び実行できよう。特許請求の範囲において、「含む(comprising)」という用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数形を除外するものではない。単一のコントローラ又はプロセッサあるいは他のユニットは、特許請求の範囲に記載のいくつかのアイテムの機能を満たし得る。特定の手段が相互に異なる従属請求項内に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが利益をもたらすために使用できないことを示すものではない。
【0114】
特許請求の範囲で用いられる参照記号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。特に示されていない限り、図面は本明細書と共に読むもの(例えば、クロスハッチング、部分の配置、比率、程度など)であることが意図され、本開示の記述全体の一部であるものと見なされる。
図1
図2
図3
図4
図5
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【国際調査報告】