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特表2023-521960多孔質高分子半透膜の製造方法及び多孔質高分子半透膜
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】多孔質高分子半透膜の製造方法及び多孔質高分子半透膜
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/327 20060101AFI20230519BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20230519BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20230519BHJP
   A61B 5/1473 20060101ALI20230519BHJP
   C08G 61/08 20060101ALI20230519BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
G01N27/327 353B
G01N27/416 338
G01N27/30 A
A61B5/1473
C08G61/08
C08L65/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022559329
(86)(22)【出願日】2021-09-08
(85)【翻訳文提出日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 CN2021117123
(87)【国際公開番号】W WO2022073407
(87)【国際公開日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】202011076414.4
(32)【優先日】2020-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522381007
【氏名又は名称】ドレイサム (ベイジン) メディカル テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】DREISAM (BEIJING) MEDICAL TECHNOLOGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】101, Floor 1, Building 9, District 1, No. 7, Liangshuihe 1st Street, Beijing Economic and Technological Development Area (Beijing Pilot Free Trade Zone High-end Industrial Zone Yizhuang Group), Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ペン
【テーマコード(参考)】
4C038
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL01
4C038KL09
4C038KX04
4C038KY11
4C038KY13
4J002BK001
4J002EV026
4J002EV036
4J002EV066
4J002FD146
4J002GB00
4J002GD00
4J002GQ00
4J032BA02
4J032BA07
4J032BB01
(57)【要約】
本発明は、疎水性ポリノルボルネン系高分子とチオール官能基を含有する親水性小分子架橋剤とを、両方を溶解可能な溶媒に溶解して混合し、塗布溶液を得るステップと、バイオセンサの電極の表面に塗布して乾燥させ、疎水性成分と親水性成分が相分離し、次に、成膜して架橋させた後、未反応の親水性小分子架橋剤を除去し、さらに乾燥させて、多孔質高分子半透膜を得るステップとを含む、多孔質高分子半透膜の製造方法を提供し、多孔質高分子半透膜をさらに提供する。本発明の製造方法で得られた多孔質高分子半透膜では、高分子の疎水性により多孔質高分子半透膜のバイオセンサ表面に対する付着力を良好なものとし、多孔質構造により生体物質がバイオセンサの表面に拡散することを確保し、しかも、高分子膜の厚さを明らかに変化させることなく生体物質の半透膜での拡散速度を調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性ポリノルボルネン系高分子と、チオール官能基を含有する親水性小分子架橋剤とを、両方を溶解可能な溶媒に溶解して混合し、塗布溶液を得るステップと、
バイオセンサの電極の表面に塗布して乾燥させ、この過程において疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、成膜して架橋させた後、未反応の親水性小分子架橋剤を除去し、さらに乾燥させて、多孔質高分子半透膜を得るステップと
を含む、ことを特徴とする、多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項2】
前記疎水性ポリノルボルネン系高分子の構造式が下記:
【化1】
(ここで、ZはCH、CHCH、O、S、N-R又はC=C(R)のうちの1種であり、
YはO、S、NHのうちの1種であり、
はH、直鎖状/分岐状/環状ハイドロカルビル、エステル類/エーテル類を含有する基又は
【化2】
のうちの1種であり、
、Rは直鎖状/分岐状/環状ハイドロカルビル、
【化3】
のうちの1種であり、RとRは同じであるか又は異なり、
は直鎖状/分岐状/環状ハイドロカルビルのうちの1種であり、
、RはH又はアルキルであり、RとRは同じであるか又は異なり、
n=1~10であり、R、R、RはH又はアルキルであり、R、R及びRは同じであるか又は異なる)
で示され、
前記ポリノルボルネン系高分子の分子量は10000g/mol~2000000g/molであり、
前記親水性小分子架橋剤はチオール官能基を少なくとも2個含有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項3】
前記ポリノルボルネン系高分子の分子量は200000g/mol~1000000g/molであり、
前記親水性小分子架橋剤はチオール官能基を2~4個含有する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項4】
前記チオール官能基を2個含有する小分子架橋剤の構造式は、
【化4】
のうちの1種であり、ここで、n=1~10であり、
前記チオール官能基を3個含有する小分子架橋剤の構造式は、
【化5】
であり、ここで、n=1~10、m=0~5であり、各チオール分岐の長さは同じであるか、又は異なり、
前記チオール官能基を4個含有する小分子架橋剤の構造式は、
【化6】
であり、ここで、n=1~10であり、各チオール分岐の長さは同じであるか又は異なる、
ことを特徴とする請求項3に記載の多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項5】
前記疎水性ポリノルボルネン系高分子と親水性小分子架橋剤との使用量の比は、C=C:-SHモル比で、10:1~1:20であり、
前記溶媒はテトラヒドロフラン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、水のうちの1種又はいずれか2種の混合物であり、
前記塗布溶液中、疎水性ポリノルボルネン系高分子の濃度は1質量%~25質量%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項6】
前記塗布は引上げ塗布、スピン塗布、ブレード塗布又はスプレー塗布であり、
前記塗布過程における周囲温度は15~60℃であり、
2回の前記乾燥は全て15~80℃の環境で1分~2時間行われる、
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項7】
前記塗布過程における周囲温度は25~50℃であり、
1回目の乾燥後、ガス状溶媒の環境に膜を入れて疎水性成分と親水性成分との相分離をさらに促進し、前記ガス状溶媒は疎水性ポリノルボルネン系高分子を溶解するのに使用される溶媒である、
ことを特徴とする請求項6に記載の多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項8】
前記架橋はバイオセンサの電極の表面に被覆した高分子半透膜をUV架橋又は加熱架橋することであり、
前記UV架橋では、波長は250~400nmとし、前記加熱架橋では、50~80℃で0.5~4時間反応を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の多孔質高分子半透膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法によって製造された多孔質高分子半透膜。
【請求項10】
膜厚は200nm~100μmである、
ことを特徴とする請求項9に記載の多孔質高分子半透膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオセンサの技術分野に関し、特に多孔質高分子半透膜の製造方法及び多孔質高分子半透膜に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子半透膜はバイオセンサ、特に埋め込み型バイオセンサの極めて重要な構成要素である。電気化学バイオセンサを例にとると、高分子半透膜の最も重要な機能は、外部環境からセンサの電極の表面への生体物質の拡散速度を制御することであり、これは、センサの線形応答濃度範囲が通常、環境中の生体物質の実際の濃度よりもはるかに小さいためである。小分子生体物質については、その拡散速度は主に高分子半透膜の親水性と厚さに依存している。生体物質は非親水性膜及び低親水性膜では拡散できず、高分子膜の親水性が一定レベルに達すると、生体物質の拡散速度は膜の親水性の向上に伴って速まる。親水性半透膜中の生体物質の拡散速度を低下させるために、半透膜の厚さを厚くする方法が一般的であるが、この方法は埋め込み型バイオセンサには望ましくない場合が多い。生体物質について外部環境からセンサの電極の表面までが一次元拡散系と考えると、フィックの第二法則によれば、拡散速度(外部環境と電極の表面との生体物質の濃度差)は高分子半透膜の厚さの二乗に反比例し、つまり、高分子膜の構造が変わらない場合、拡散速度を半分にするためには半透膜の厚さを4倍のレベルに増やす必要がある。これは、多くの場合、必要な厚さを得るために何度も塗布しなければならず、また、何度も塗布することは生産中の膜厚の制御に不便をもたらし、ロット間の一貫性を保証することが困難である。また、埋め込み型バイオセンサは使用中に周囲の筋肉や脂肪などの軟部組織と摩擦を生じることが多く、一方、親水性の高分子膜は疎水性のバイオセンサ表面では付着力が劣ることが多く、センサの安定性を低下させ、ひどい場合には半透膜がセンサ表面から脱落することもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、疎水性ポリノルボルネン系高分子材料とチオール官能基を含有する親水性小分子との混合溶液をバイオセンサの電極の表面に塗布して架橋させ、得た生成物の高分子疎水性により半透膜のバイオセンサ表面での付着力を良好なものとし、多孔質構造により生体物質がバイオセンサの表面に拡散することを確保し、しかも、膜厚を明らかに変化させることなく生体物質の半透膜での拡散速度を調整することができる、多孔質高分子半透膜の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の目的を達成させるために、本発明の技術的解決手段は以下のとおりである。
【0005】
多孔質高分子半透膜の製造方法であって、
疎水性ポリノルボルネン系高分子とチオール官能基を含有する親水性小分子架橋剤とを、両方を溶解可能な溶媒に溶解して混合し、塗布溶液を得るステップと、
バイオセンサの電極の表面に塗布して乾燥させ、この過程において疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、成膜して架橋させた後、未反応の親水性小分子架橋剤を除去し、さらに乾燥させて、多孔質高分子半透膜を得るステップとを含む。
【0006】
前述多孔質高分子半透膜の製造方法において、
前記疎水性ポリノルボルネン系高分子の構造式が下記:
【化1】
(式中、
ZはCH、CHCH、O、S、N-R又はC=C(R)のうちの1種であり、
YはO、S、NHのうちの1種であり、
はH、直鎖状/分岐状/環状ハイドロカルビル、エステル類/エーテル類を含有する基又は
【化2】
のうちの1種であり、
、Rは直鎖状/分岐状/環状ハイドロカルビル、
【化3】
のうちの1種であり、RとRは同じであるか又は異なり、
は直鎖状/分岐状/環状ハイドロカルビルのうちの1種であり、
、RはH又はアルキルであり、RとRは同じであるか又は異なり、
n=1~10であり、R、R、RはH又はアルキルであり、R、R及びRは同じであるか又は異なる)
で示され、
前記ポリノルボルネン系高分子の分子量は10000g/mol~2000000g/molであり、
前記親水性小分子架橋剤はチオール官能基を少なくとも2個含有する。
【0007】
前述多孔質高分子半透膜の製造方法において、
前記ポリノルボルネン系高分子の分子量は200000g/mol~1000000g/molであり、
前記親水性小分子架橋剤はチオール官能基を2~4個含有する。
【0008】
前述多孔質高分子半透膜の製造方法において、
前記チオール官能基を2個含有する小分子架橋剤の構造式は、
【化4】
のうちの1種であり、ここで、n=1~10であり、
前記チオール官能基を3個含有する小分子架橋剤の構造式は、
【化5】
であり、ここで、n=1~10、m=0~5であり、各チオール分岐の長さは同じであるか、又は異なり、
前記チオール官能基を4個含有する小分子架橋剤の構造式は、
【化6】
であり、ここで、n=1~10であり、各チオール分岐の長さは同じであるか又は異なる。
【0009】
前述多孔質高分子半透膜の製造方法において、
前記疎水性ポリノルボルネン系高分子と親水性小分子架橋剤との使用量の比は、C=C:-SHモル比で、10:1~1:20であり、前記溶媒はテトラヒドロフラン、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、水のうちの1種又はいずれか2種の混合物であり、
前記塗布溶液中、疎水性ポリノルボルネン系高分子の濃度は1質量%~25質量%である。
【0010】
前述多孔質高分子半透膜の製造方法において、
前記塗布は引上げ塗布、スピン塗布、ブレード塗布又はスプレー塗布であり、
前記塗布過程における周囲温度は15~60℃であり、
前記2回の乾燥は全て15~80℃の環境で1分~2時間行われる(乾燥温度が高いほど、多孔質構造を形成するのにかかる時間が短くなり、ただし、温度が高すぎると多孔質構造の形成が影響を受け、これは、温度が上昇すると、高分子鎖の移動性も向上し、かつ、小分子架橋剤も蒸発されることがあり、その結果として、多孔質構造の形成が影響を受ける)。
【0011】
前述多孔質高分子半透膜の製造方法において、
前記塗布過程における周囲温度は25~50℃であり、
1回目の乾燥後、ガス状溶媒の環境に膜を入れて疎水性成分と親水性成分との相分離をさらに促進し、
前記ガス状溶媒は疎水性ポリノルボルネン系高分子を溶解するのに使用される溶媒である(例えばテトラヒドロフラン、エタノール、プロパノール、ブタノールなど)。
【0012】
前述多孔質高分子半透膜の製造方法において、
前記架橋はバイオセンサの電極の表面に被覆した高分子半透膜をUV架橋又は加熱架橋することであり、
前記UV架橋では、波長は250~400nmとし、前記加熱架橋では、50~80℃で0.5~4時間反応を行う。
【0013】
以上のいずれいかの方法によって製造された多孔質高分子半透膜。
【0014】
前述多孔質高分子半透膜は、膜厚が200nm~100μm、好ましくは厚さ1~20μmである。
【発明の効果】
【0015】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0016】
本発明は、最終製品として多孔質構造が形成された多孔質高分子半透膜を提供する。多孔質高分子半透膜では、高分子の疎水性により半透膜のセンサ表面での付着力を良好なものとし、多孔質構造により生体物質がセンサ表面に拡散することを確保する。疎水性ポリノルボルネン系高分子と親水性小分子架橋剤成分の親水性の違い、両方の割合及び相分離の過程における環境のパラメータを制御することによって、多孔質構造の形成を効果的に制御し、高分子膜の厚さを明らかに変化させることなく生体物質の半透膜での拡散速度を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】原子間力顕微鏡によって分析された多孔質高分子半透膜の表面形態である。
図2】原子間力顕微鏡によって分析された非多孔質高分子半透膜の表面形態である。
図3】非多孔質構造の高分子半透膜が被覆された場合、グルコース濃度に対するバイオセンサの応答である。
図4】多孔質構造の高分子半透膜が被覆された場合、グルコース濃度に対するバイオセンサの応答である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例1:多孔質高分子半透膜の製造方法
ポリN-n-ブチルオキサノルボルネンイミド(分子量100000g/mol)とペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテート(モル比C=C:-SH=1:4)をテトラヒドロフラン/n-ブタノール(VTHF:Vn-Butanol=1:4)混合溶媒に溶解して塗布溶液(高分子ポリN-n-ブチルオキサノルボルネンイミドの濃度は10質量%)を形成し、バイオセンサを塗布溶液に浸して、30℃で引上げ法によってバイオセンサの電極の表面に高分子膜を塗布し、30℃で60分間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、高分子膜をUV波長365nm、エネルギー密度25mW・cm-2で、4分間UV架橋させた後、バイオセンサをn-ブタノールに1分間浸漬し、未反応のペンタエリスリトールテトラメルカプトアセテートを除去し、30℃で60分間乾燥させ、厚さ12μmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0019】
実施例2:多孔質高分子半透膜の製造方法
【化7】
をテトラヒドロフラン/イソプロパノール(VTHF:Viso-propanol=1:1)混合溶媒に溶解して塗布溶液
【化8】
を形成し、25℃でバイオセンサの電極の表面にブレード塗布し、30℃で30分間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、高分子膜をUV架橋波長254nm、エネルギー密度25mW・cm-2で6分間UV架橋させた後、センサをエタノールに1分間浸漬し、未反応の
【化9】
を除去し、さらに30℃で120分間乾燥させ、厚さ13μmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0020】
実施例3:多孔質高分子半透膜の製造方法
【化10】
をイソプロパノール溶媒に溶解して塗布溶液
【化11】
を形成し、20℃でバイオセンサの電極の表面にスピン塗布し、40℃で30分間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、高分子膜を80℃で1時間加熱架橋させた後、センサをエタノールに10秒浸漬し、未反応の
【化12】
を除去し、40℃で60分間乾燥させ、厚さ350nmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0021】
実施例4:多孔質高分子半透膜の製造方法
【化13】
をエタノール溶媒に溶解して塗布溶液
【化14】
を形成し、35℃でバイオセンサの電極の表面にスプレー塗布し、50℃で120分間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、高分子膜を80℃で120分間加熱架橋させた後、センサをエタノールに1分間浸漬し、未反応の
【化15】
を除去し、50℃で120分間乾燥させ、厚さ70μmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0022】
実施例5:多孔質高分子半透膜の製造方法
【化16】
とポリチオール(モル比C=C:-SH=1:5)をプロパノール溶媒に溶解して塗布溶液
【化17】
を形成し、バイオセンサを塗布溶液に浸して、35℃でバイオセンサの電極の表面に引上げ塗布を行い、20℃で1時間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、高分子膜をUV波長365nm、エネルギー密度25mW・cm-2で8分間UV架橋させた後、センサをエタノールに1分間浸漬し、未反応のポリチオールを除去し、さらに20℃で1時間乾燥させ、厚さ12μmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0023】
実施例6:多孔質高分子半透膜の製造方法
【化18】
をテトラヒドロフラン溶媒に溶解して塗布溶液
【化19】
を形成し、バイオセンサを塗布溶液に浸して、20℃でバイオセンサの電極の表面に引上げ塗布を行い、20℃で40分間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、25℃のエタノール飽和蒸気に入れて疎水性成分と親水性成分との相分離を促進し、次に、高分子膜でUV架橋波長300nm、エネルギー密度20mW・cm-2で、5分間UV架橋させた後、センサをエタノールに1分間浸漬し、未反応の
【化20】
を除去し、さらに30℃で40分間乾燥させ、厚さ13μmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0024】
実施例7:多孔質高分子半透膜の製造方法
【化21】
をイソプロパノール溶媒に溶解して塗布溶液
【化22】
を形成し、20℃でバイオセンサの電極の表面にブレード塗布し、35℃で60分間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、高分子膜を、UV架橋波長365nm、エネルギー密度100mW・cm-2で、5分間UV架橋させた後、バイオセンサをエタノールに1分間浸漬し、未反応の
【化23】
を除去し、さらに35℃で60分間乾燥させ、厚さ40μmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0025】
実施例8:多孔質高分子半透膜の製造方法
【化24】
をエタノールに溶解して塗布溶液
【化25】
を形成し、バイオセンサを塗布溶液に浸して、25℃でバイオセンサの電極の表面に引上げ塗布を行い、25℃で2時間乾燥させ、このプロセスにおいて疎水性成分と親水性成分とが相分離し、次に、高分子膜を80℃で2時間加熱架橋させた後、バイオセンサをエタノールに1分間浸漬し、未反応の
【化26】
を除去し、さらに25℃で2時間乾燥させ、厚さ8μmの多孔質高分子半透膜を得た。
【0026】
本発明の多孔質高分子半透膜の使用効果を検証するために、発明者らは比較試験を行い、比較用バイオセンサ(親水性架橋剤の使用量の割合を低下させることによって、同一のバイオセンサの表面に非多孔質構造のポリN-n-ブチルオキサノルボルネンイミドフィルムを塗布する)を製造し、上記の実施例1で得られた多孔質高分子半透膜付きバイオセンサに対して性能比較を行った。
【0027】
実験例
一、高分子半透膜の多孔質構造
Filmetrics F40スペクトル測定システムを用いて、実施例1で得られた多孔質高分子半透膜について測定した結果、厚さは約12μmである。図1は高分子膜の表面をAFMで表した結果を示し、図示した通り、濃縮された親水性小分子は微液滴を形成して疎水性高分子膜の構造中に分布し、除去されると膜には濃色のスポットとして示される孔状構造が形成された。
【0028】
Filmetrics F40スペクトル測定システムを用いて、非多孔質構造高分子膜について測定した結果、厚さは6μmである。図2は非多孔質構造の高分子膜の表面をAFMで表した結果を示す。
【0029】
二、高分子半透膜の膨潤度の比較実験の結果
1.実験内容
表面プラズモン共鳴実験によって高分子膜の水中の膨潤度を測定した。
【0030】
2.実験結果
非多孔質構造のポリN-n-プロピルオキサノルボルネンイミドは、架橋後にリン酸塩緩衝液での膨潤度が109%であり、グルコースは拡散してこの高疎水性半透膜を通過して電極の表面に到達し、電流応答を発生させるのが困難であり、一方、多孔質構造のポリN-n-ブチルオキサノルボルネンイミドフィルムは、リン酸塩溶液での膨潤度が111%であり、非多孔質構造の膜よりも僅かにしか高くなかった。
【0031】
3.結論
実験結果から分かるように、多孔質構造のポリN-n-ブチルオキサノルボルネンイミドフィルムと非多孔質構造のフィルムでは、水中の膨潤度の違いが小さく、多孔質フィルムの高分子網目構造によってポリN-n-ブチルオキサノルボルネンイミドの疎水性の特性が維持される。
【0032】
三、溶液中のグルコース濃度の変化に対するバイオセンサの応答の比較実験
1.実験材料
実施例1で得られた多孔質高分子半透膜付きバイオセンサ
実施例1と同じ反応原料を用いて得られた非多孔質構造高分子膜付きバイオセンサ(比較例)
バイオセンサは、PETを基材として、金導電性インクをインクジェット印刷することで三電極構造を形成したものであり、ここで、作用電極及び参照電極はセンサの正面にあり、作用電極の表面にグルコースオキシダーゼが付着されており、Ag/AgClは参照電極となり、センサの裏面の金導電性層は対電極となる。
【0033】
2.実験内容
グルコースのリン酸塩緩衝液にセンサを入れて、グルコース濃度の変化に対する応答を測定した。
【0034】
3.実験結果
図3に示すように、厚さ6μmの非多孔質構造高分子膜付きバイオセンサは、溶液中のグルコース濃度の変化に応答できず、一方、図4に示すように、多孔質高分子半透膜付きバイオセンサは溶液中のグルコース濃度の変化に対して素早く応答する。
【0035】
上記の膨潤度の比較実験では、多孔質高分子膜の膨潤度向上が少なく、この程度の向上はグルコースの半透膜での拡散速度を明らかに向上できない。さまざまな厚さの多孔質構造高分子半透膜及び非多孔質構造高分子半透膜製のバイオセンサのグルコース濃度の変化に対する応答の比較実験では、多孔質構造の高分子半透膜の厚さが非多孔質構造の高分子膜の2倍である場合においても、多孔質構造の高分子半透膜はグルコースの拡散能力を効果的に向上させ、バイオセンサの応答能力を確保することができる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】