IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニューレント メディカル リミテッドの特許一覧

特表2023-521987組織を識別および特徴付けし、その標的化治療を提供するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】組織を識別および特徴付けし、その標的化治療を提供するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20230519BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022561655
(86)(22)【出願日】2021-04-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 IB2021000243
(87)【国際公開番号】W WO2021205231
(87)【国際公開日】2021-10-14
(31)【優先権主張番号】63/007,639
(32)【優先日】2020-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521254166
【氏名又は名称】ニューレント メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タウンリー, デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ラタン, スウェータ
(72)【発明者】
【氏名】マクラフリン, カタル
(72)【発明者】
【氏名】パウデル, アナップ
(72)【発明者】
【氏名】ビッグス, マヌス
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK24
4C160KK63
4C160KK70
(57)【要約】
本発明は、概して、周辺または隣接の非標的化された組織への付随的損傷を最小限にする、もしくは回避しながら、療法的治療を受けるために、具体的着目組織の検出、識別、および精密な標的化を提供するためのシステムおよび方法に関する。状態を治療するためのシステムは、複数の電極を含む、エンドエフェクタを備える、デバイスと、デバイスと動作可能に関連付けられる、コントローラとを含む。コントローラは、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質と関連付けられるデバイスからデータを受信し、標的部位における1つ以上の組織のそれぞれのタイプを識別するためのデータを処理し、さらに、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれのための誘電緩和パターンを識別するように構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
状態を治療するための方法であって、前記方法は、
複数の電極を含む、エンドエフェクタを備える、デバイスと、前記デバイスと動作可能に関連付けられる、コントローラとを提供することと、
患者と関連付けられる標的部位に前記エンドエフェクタを位置付けることと、
前記コントローラを介して、前記標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質と関連付けられる前記デバイスからデータを受信することと、
前記コントローラを介して、前記データを処理し、前記標的部位における前記1つ以上の組織のそれぞれのタイプを識別し、さらに、前記1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれのための誘電緩和パターンを識別することと、
前記コントローラを介して、識別された誘電緩和パターンに基づいて、前記エンドエフェクタの前記複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定することであって、前記アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的化された組織をアブレートし、前記標的部位における周辺または隣接の非標的化された組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある、ことと
を含む、方法。
【請求項2】
前記複数の電極のサブセットは、前記標的部位における個別の位置に、ある周波数/波形における非療法的刺激エネルギーを送達し、それによって、前記標的部位における前記1つ以上の組織の前記生体電気性質を感知するように構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生体電気性質は、複素インピーダンス、抵抗、リアクタンス、静電容量、インダクタンス、誘電率、伝導率、誘電性質、筋肉または神経発火電圧、筋肉または神経発火電流、脱分極、過分極、磁場、および誘導起電力のうちの少なくとも1つを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記誘電性質は、少なくとも、複素、実、および虚相対誘電率を備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記データの処理は、前記コントローラを介して、前記デバイスから受信された前記データを、複数の既知の組織タイプと関連付けられる電気シグネチャデータと比較することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電気シグネチャデータは、既知の組織タイプの少なくとも生体電気性質および誘電緩和パターンを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記誘電緩和パターンは、Maxwell-Wagner-Sillar(MWS)緩和パターン、イオン関係パターン、および誘電緩和パターンのうちの少なくとも1つを備える、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記比較は、前記デバイスから受信された前記データを、教師付きおよび/または教師なしの訓練された神経回路網からの電気シグネチャデータと相関させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記アブレーションエネルギーは、前記標的化された組織の緩和パターンと関連付けられる、標的周波数に調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的周波数は、前記標的化された組織が、緩和現象挙動を呈し、前記非標的化された組織が、緩和現象挙動を呈しない、周波数を備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標的周波数に調整された、前記アブレーションエネルギーの送達は、前記標的化された組織のみと関連付けられる、1つ以上の細胞の膜を貫通する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
状態は、末梢神経学的状態を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記末梢神経学的状態は、前記患者の鼻状態または非鼻状態と関連付けられる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記非鼻状態は、心房細動(AF)を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記鼻状態は、鼻副鼻腔炎を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記標的部位は、前記患者の副鼻腔内にある、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アブレーションエネルギーの送達は、前記患者の副鼻腔への複数の神経信号の途絶をもたらす、および/または前記患者の副鼻腔内の局所低酸素症、粘液産生、ならびに/もしくは粘膜充血要素をもたらす、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記標的化された組織は、蝶口蓋孔に近接する、またはその下方にある、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記アブレーションエネルギーの送達は、前記患者の口蓋骨の孔および/または微小孔における鼻粘膜を神経支配する、節後副交感神経の療法的変調をもたらす、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アブレーションエネルギーの送達は、口蓋骨の孔および微小孔を通して延在する、神経枝の多遮断点を引き起こす、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記アブレーションエネルギーの送達は、前記鼻内で粘液産生および/または粘膜充血要素と関連付けられる1つ以上の血管内で血栓形成を引き起こす、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記粘液産生および/または粘膜充血要素の結果として生じる局所低酸素症は、減少された粘膜充血をもたらし、それによって、前記患者の鼻道を通して体積流量を増加させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
状態を治療するためのシステムであって、前記システムは、
複数の電極を含む、エンドエフェクタを備える、デバイスと、
前記デバイスと動作可能に関連付けられる、コントローラと
を備え、
前記コントローラは、
前記標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質と関連付けられる前記デバイスからデータを受信することと、
前記データを処理し、前記標的部位における前記1つ以上の組織のそれぞれのタイプを識別し、さらに、前記1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれの緩和パターンを識別することと、
識別された緩和パターンに基づいて、前記エンドエフェクタの前記複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定することであって、前記アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的化された組織をアブレートし、前記標的部位における周辺または隣接の非標的化された組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある、ことと
を行うように構成される、システム。
【請求項24】
前記複数の電極のサブセットは、前記標的部位における個別の位置に、ある周波数/波形における非療法的刺激エネルギーを送達し、それによって、前記標的部位における前記1つ以上の組織の前記生体電気性質を感知するように構成される、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記生体電気性質は、複素インピーダンス、抵抗、リアクタンス、静電容量、インダクタンス、誘電率、伝導率、誘電性質、筋肉または神経発火電圧、筋肉または神経発火電流、脱分極、過分極、磁場、および誘導起電力のうちの少なくとも1つを備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項26】
前記誘電性質は、少なくとも、複素相対誘電率を備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記データの処理は、前記デバイスから受信された前記データを、複数の既知の組織タイプと関連付けられる電気シグネチャデータと比較することを含む、請求項23に記載のシステム。
【請求項28】
前記電気シグネチャデータは、既知の組織タイプの少なくとも生体電気性質および緩和パターンを備える、請求項27に記載のシステム。
【請求項29】
前記誘電緩和パターンは、Maxwell-Wagner-Sillar(MWS)緩和パターン、イオン関係パターン、および誘電緩和パターンのうちの少なくとも1つを備える、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記比較は、前記デバイスから受信された前記データを、教師付きおよび/または教師なしの訓練された神経回路網からの電気シグネチャデータと相関させることを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記アブレーションエネルギーは、前記標的化された組織の誘電緩和パターンと関連付けられる、標的周波数に調整される、請求項23に記載のシステム。
【請求項32】
前記標的周波数は、前記標的化された組織が、緩和現象挙動を呈し、前記非標的化された組織が、緩和現象挙動を呈しない、周波数を備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記標的周波数に調整された、前記アブレーションエネルギーの送達は、前記標的化された組織のみと関連付けられる、1つ以上の細胞の膜を貫通する、請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
状態は、末梢神経学的状態を備える、請求項23に記載のシステム。
【請求項35】
前記末梢神経学的状態は、前記患者の鼻状態または非鼻状態と関連付けられる、請求項34に記載のシステム。
【請求項36】
前記非鼻状態は、心房細動(AF)を備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記鼻状態は、鼻副鼻腔炎を備える、請求項35に記載のシステム。
【請求項38】
前記標的部位は、前記患者の副鼻腔内にある、請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記アブレーションエネルギーの送達は、前記患者の副鼻腔への複数の神経信号の途絶をもたらす、および/または前記患者の副鼻腔内の局所低酸素症、粘液産生、ならびに/もしくは粘膜充血要素をもたらす、請求項38に記載のシステム。
【請求項40】
前記標的化された組織は、蝶口蓋孔に近接する、またはその下方にある、請求項39に記載のシステム。
【請求項41】
前記アブレーションエネルギーの送達は、前記患者の口蓋骨の孔および/または微小孔における鼻粘膜を神経支配する、節後副交感神経の療法的変調をもたらす、請求項40に記載のシステム。
【請求項42】
前記アブレーションエネルギーの送達は、口蓋骨の孔および微小孔を通して延在する、神経枝の多遮断点を引き起こす、請求項41に記載のシステム。
【請求項43】
前記アブレーションエネルギーの送達は、前記鼻内で粘液産生および/または粘膜充血要素と関連付けられる1つ以上の血管内で血栓形成を引き起こす、請求項39に記載のシステム。
【請求項44】
前記粘液産生および/または粘膜充血要素の結果として生じる局所低酸素症は、減少された粘膜充血をもたらし、それによって、前記患者の鼻道を通して体積流量を増加させる、請求項43に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、その内容が参照することによって組み込まれる、2020年4月9日に出願された、米国仮出願第63/007,639号の利益ならびに優先権を主張する。
(発明の分野)
本発明は、概して、周辺または隣接の非標的化された組織への付随的損傷を最小限にする、もしくは回避しながら、療法的治療を受けるための具体的着目組織の検出、識別、および精密な標的化を提供するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景)
アブレーション療法等のある外科的手技が、さらなる合併症およびさらに死亡につながり得る、周辺組織への付随的損傷を回避するように、外科医に、適切なレベルで意図される標的部位(すなわち、治療を受けることが意図される組織)に精密な治療を適用することを要求する。例えば、ある手技が、非常に敏感であり得る、および/または無傷を保ち、意図されない損傷がないことが重要である、任意の近傍または下層組織に関連する、治療されるべき天然組織(すなわち、血管、神経等)と、そのような組織の場所とに起因して、増加した精度を要求する。
【0003】
例えば、多くの神経変調手技が、そのような精度を要求する。神経変調は、電気的(または時として、医薬)作用物質を標的面積に直接送達することによる、神経活動の改変または変調を指す。電気刺激の送達は、神経活動の部分的または完全不能化、もしくは他の事実上の妨害をもたらし得る。療法的神経変調は、例えば、ある状態および障害の治療のため、具体的には、疼痛緩和および/または機能の回復のために、神経線維に沿った神経連通を部分的もしくは完全に阻害する、低減させる、ならびに/もしくはブロックすることを含むことができる。神経変調を介して治療され得る、いくつかの状態および障害は、限定ではないが、いくつか例を挙げると、てんかん、片頭痛、脊髄傷害、パーキンソン病、および尿失禁を含む。神経変調はまた、限定ではないが、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、急性鼻炎、再発性鼻炎、慢性副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、再発性副鼻腔炎、ならびに薬剤耐性鼻炎および/または副鼻腔炎を、前述の状態のうちの1つ以上の組み合わせに加えて含む、鼻副鼻腔炎等の鼻と関連付けられる、ある状態を治療するために使用されることができる。
【0004】
神経変調治療手技は、概して、それと関連付けられる状態または障害の後続の治療のための脳、脊髄、もしくは末梢神経への電極の適用を伴い得る。電極は、延長ケーブルを介して、必要な電気刺激を発生させるパルス発生器および電源に結合される。電流が、発生器から神経まで通過し、疼痛信号を阻害するか、またはそれらが以前は欠如していた神経インパルスを刺激するかのいずれかを行うことができる。重要なこととして、電極は、精密に設置されなければならず、電気刺激のレベルは、骨および血管等の周辺または隣接非神経構造、ならびに非標的神経組織に付随的損傷を生成することを回避する、もしくは最小限にするように制御されなければならない。
【0005】
末梢神経刺激は、末梢神経学的状態および慢性疼痛を含む状態を治療するための一般的に使用されているアプローチである。電極の正確な設置および標的末梢神経への電気刺激のレベルを確立するために、末梢神経刺激治療は、典型的には、初期試験または試行周期を要求する。例えば、小型電気デバイス(ワイヤ様電極)が、外科的に埋め込まれ、末梢神経のうちの1つの隣に設置される。電極は、初期試験周期(試行)の間に高速電気パルスを送達し、電気パルスが所望の効果をもたらすかどうかを判定する。いったん所望の効果が(再配置および/または電気刺激レベルの調節を介して)確立されると、より恒久的な電極が、患者の身体の中に埋め込まれてもよい。故に、現在の神経変調手技、着目すべきこととして、末梢神経の神経変調の欠点は、そのような手技が、神経組織を精密に標的化することができず、それによって、周辺非神経組織(血管等)および/または他の非標的神経組織に有意な付随的損傷を引き起こす危険性を示すことである。
【0006】
精度を要求する別の例示的手技は、例えば、介入心臓電気生理学(EP)手技を含む。そのような手技では、多くの場合、外科医が、心臓内またはその近傍の標的アブレーション部位において、心臓組織の状態を判定することが必要である。いくつかのEP手技の間、外科医は、治療されるべき心臓の内部領域の中に、大静脈または動脈を通して、マッピングカテーテルを送達してもよい。マッピングカテーテルを使用して、外科医は、次いで、カテーテルによって搬送される、いくつかのマッピング要素を隣接する心臓組織と接触させて設置し、次いで、カテーテルを動作させ、感知される電気心臓信号に基づいて、心臓の内部領域の電気生理学マップを発生させることによって、心律動障害または異常の源を判定し得る。いったん心臓のマップが、発生されると、外科医は、次いで、心臓の中にアブレーションカテーテルを前進させ、組織をアブレートし、病変を形成するために、標的化心臓組織の近傍にカテーテル先端によって搬送されるアブレーション電極を位置付け、それによって、心律動障害または異常を治療し得る。いくつかの技法では、アブレーションカテーテル自体は、同一デバイスがマッピングおよびアブレーションの両方のために使用されることを可能にする、いくつかのマッピング電極を含んでもよい。
【0007】
種々の超音波ベースの撮像カテーテルおよびプローブが、介入心臓学、介入放射線学、および電気生理学等の用途で、身体組織を可視化するために開発されている。介入心臓電気生理学手技のために、例えば、直接およびリアルタイムで、心臓の解剖学的構造の可視化を可能にする、超音波撮像デバイスが、開発されている。そのような撮像ベースの製品が、標的組織のいくつかの形態の可視化を可能にするが、そのような手技は、依然として、非標的化された隣接する組織のさらなる治療のリスクを低減または排除しながら、着目組織を精密に標的化し、それに治療を印加するための能力を欠いている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(要約)
本発明は、組織のある生体電気性質が、電気療法的治療(すなわち、神経変調、アブレーション等)に先立って、所与の標的部位において、能動および受動の両方の、具体的には、組織の界面分極、誘電分散、および誘電緩和現象/挙動を把握することが、具体的着目組織(すなわち、標的組織)をより精密に標的化し、隣接または周辺非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するための能力を提供することを認識する。
【0009】
例えば、治療を受けるように意図されるある標的部位が、1つを上回るタイプの組織(すなわち、神経、筋肉、骨、血管等)から成り得る。特に、着目組織(すなわち、治療を受けるための具体的組織)が、着目しない1つ以上の組織(すなわち、治療を受けるように意図されない組織)に隣接し得る。1つのシナリオでは、外科医が、例えば、意図しない付随的損傷が、血管への損傷をもたらし、さらに合併症を引き起こし得るため、任意のそのような刺激を隣接する血管に提供することを回避しながら、電気療法的刺激を神経組織に提供することを所望し得る。そのようなシナリオでは、具体的タイプの標的組織は、概して、所望の効果を誘出するために要求される、電気刺激のレベルを決定付け得る。さらに、標的組織の具体的場所および深度を含む、標的組織の物理的性質は、非標的組織に関連して、さらに、効果的療法的治療をもたらすために必要な電気刺激のレベルに影響を及ぼす。
【0010】
本発明は、電気療法的治療に先立って、組織の生体電気性質を感知することによって、標的部位における組織を特性評価するための能力を伴うシステムおよび方法を提供し、そのような特性評価は、存在する具体的タイプの組織を識別することと、さらに、識別されたタイプの組織のための界面分極または誘電分散および緩和現象/挙動パターンを判定することとを含む。例えば、異なる組織タイプは、異なる生理学的および組織学的特性(例えば、細胞成分、タンパク質等)を含む。異なる特性の結果として、異なる組織タイプは、異なる関連付けられた生体電気性質を有し、したがって、エネルギーの印加およびそこに印加される周波数に応答して、異なる関連付けられた電気挙動を呈する。そのような電気挙動における1つの変化は、緩和現象と称される。所与の組織の緩和現象は、その中で所与の組織の細胞の膜が透過性になり、それによって、電気刺激電流が(特定の周波数において)膜を通して流動することを可能にし、それによって、組織の上に所望の効果を誘出する、特定の電気周波数において生じる。組織が、緩和現象を呈しないとき(すなわち、電気刺激電流が、緩和現象と相関しない、異なる周波数に調整されるとき)、所与の組織の細胞の膜は、具体的電気刺激電流に透過性である場合とそうではない場合があり、したがって、効果を誘出しない。本システムおよび方法はさらに、送達されるエネルギーが、非標的組織を回避しながら、着目組織を標的化するように構成される具体的周波数にある(すなわち、エネルギーは、標的組織のみの誘電緩和現象と関連付けられる、周波数レベルに調整される)ように、これらの緩和パターンの着目組織に基づいて、エネルギー出力(すなわち、電気療法的刺激の送達)を調整するために構成される。
【0011】
故に、本発明は、種々の組織タイプから成る標的部位における電気療法的刺激の印加を伴う手技の間、非標的組織に不要な付随的損傷を引き起こす問題を解決する。特に、本システムおよび方法は、治療に先立って、組織タイプを特性評価および識別し、さらに、それらの意図される標的組織のみに誘電緩和現象を呈させるように、送達されるべき具体的レベルのエネルギー(すなわち、具体的標的周波数)を識別し、したがって、非標的組織が、無傷のままであり、付随的損傷を回避しながら、治療のためのエネルギーを受容することが可能である。
【0012】
本発明の一側面は、状態を治療するためのシステムを提供する。本システムは、複数の電極を含む、エンドエフェクタを備える、デバイスと、デバイスと動作可能に関連付けられる、コントローラとを含む。コントローラは、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質と関連付けられるデバイスからデータを受信し、標的部位における1つ以上の組織のそれぞれのタイプを識別するためのデータを処理し、さらに、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれのための誘電緩和パターンを識別するように構成される。コントローラはさらに、識別された誘電緩和パターンに基づいて、エンドエフェクタの複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定するように構成される。アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的組織をアブレートし、標的部位における周辺または隣接非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある。
【0013】
生体電気性質は、限定ではないが、複素インピーダンス、抵抗、リアクタンス、静電容量、インダクタンス、複素、実、および虚誘電率、伝導率、誘電性質、筋肉または神経発火電圧、筋肉または神経発火電流、脱分極、過分極、磁場、誘導起電力、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。誘電性質は、例えば、少なくとも複素誘電率を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数の電極のサブセットが、標的部位における個別の位置に、ある周波数/波形における非療法的刺激エネルギーを送達し、それによって、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質を感知するように構成されることに留意されたい。
【0014】
データの処理は、限定ではないが、デバイスから受信されたデータを電気シグネチャならびに異なる誘電モデルを伴うデータ(例えば、Havriliak-Negami(HN)緩和)と比較し、複数の既知の組織タイプと関連付けられる、誘電パラメータを判定することを含んでもよい。例えば、コントローラは、例えば、組織データ(すなわち、標的部位における組織と関連付けられる、治療デバイスから受信されるデータ)を、データベース内に記憶される既知の組織タイプのプロファイルと比較するように構成されてもよい。各プロファイルは、概して、そこで組織が誘電緩和現象/挙動を呈する、概して、組織の誘電緩和現象/挙動および具体的周波数値を含む、既知の組織タイプの生理学的、組織学的、および生体電気性質を含む、既知の組織タイプを特性評価する、電気シグネチャデータを含んでもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、アブレーションエネルギーは、標的組織の誘電緩和パターンと関連付けられる、標的周波数に調整される。標的周波数は、そこで標的組織が、緩和現象挙動を呈し、非標的組織は、緩和現象挙動を呈しない、周波数を備える。特に、標的周波数に調整された、アブレーションエネルギーの送達は、標的組織のみと関連付けられる、1つ以上の細胞の膜を貫通する。
【0016】
いくつかの実施形態では、状態は、末梢神経学的状態を含む。末梢神経学的状態は、患者の鼻状態または非鼻状態と関連付けられてもよい。例えば、非鼻用状態は、心房細動(AF)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、鼻用状態は、鼻副鼻腔炎を含んでもよい。故に、いくつかの実施形態では、標的部位は、患者の副鼻腔内にある。アブレーションエネルギーの送達は、患者の副鼻腔への複数の神経信号の途絶をもたらす、および/または患者の副鼻腔内の局所低酸素症、粘液産生、ならびに/もしくは粘膜充血要素をもたらし得る。標的組織は、蝶口蓋孔に近接する、またはその下方にある。なおも依然として、アブレーションエネルギーの送達は、患者の口蓋骨の孔および/または微小孔における鼻粘膜を神経支配する、節後副交感神経の療法的変調をもたらし得る。特に、アブレーションエネルギーの送達は、口蓋骨の孔および微小孔を通して延在する、神経枝の多遮断点を引き起こす。なおも依然として、いくつかの実施形態では、アブレーションエネルギーの送達は、鼻内で粘液産生および/または粘膜充血要素と関連付けられる1つ以上の血管内で血栓形成を引き起こし得る。粘液産生および/または粘膜充血要素の結果として生じる局所低酸素症は、減少された粘膜充血をもたらし、それによって、患者の鼻道を通して体積流量を増加させ得る。加えて、または代替として、結果として生じる局所低酸素症は、神経変性を引き起こし得る。
【0017】
本発明の別の側面は、状態を治療するための方法を提供する。本方法は、複数の電極を含む、エンドエフェクタを備える、デバイスと、デバイスと動作可能に関連付けられる、コントローラとを提供することを含む。本方法はさらに、患者と関連付けられる標的部位にエンドエフェクタを位置付けることと、コントローラを介して、データを標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質と関連付けられるデバイスから受信することとを含む。本方法はさらに、コントローラを介して、データを処理し、標的部位における1つ以上の組織のそれぞれのタイプを識別し、さらに、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれのための誘電緩和パターンを識別することを含む。本方法はさらに、コントローラを介して、識別された誘電緩和パターンに基づいて、エンドエフェクタの複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定することを含む。アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的組織をアブレートし、標的部位における周辺または隣接非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある。
【0018】
生体電気性質は、限定ではないが、複素インピーダンス、抵抗、リアクタンス、静電容量、インダクタンス、複素、実、および虚誘電率、伝導率、誘電性質、筋肉または神経発火電圧、筋肉または神経発火電流、脱分極、過分極、磁場、誘導起電力、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。誘電性質は、例えば、少なくとも誘電係数または複素誘電率を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数の電極のサブセットが、標的部位における個別の位置に、ある周波数/波形における非療法的刺激エネルギーを送達し、それによって、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質を感知するように構成されることに留意されたい。
【0019】
データの処理は、限定ではないが、デバイスから受信されたデータを電気シグネチャと比較することと、複数の既知の組織タイプと関連付けられる、誘電パラメータを判定するための、異なる誘電モデルを伴うデータ(例えば、Havriliak-Negami(HN)緩和)の訓練とを含んでもよい。例えば、コントローラは、例えば、組織データ(すなわち、標的部位における組織と関連付けられる、治療デバイスから受信されるデータ)を、データベース内に記憶される既知の組織タイプのプロファイルと比較するように構成されてもよい。各プロファイルは、概して、そこで組織が誘電緩和現象/挙動を呈する、概して、組織の誘電緩和現象/挙動および具体的周波数値を含む、既知の組織タイプの生理学的、組織学的、および生体電気性質を含む、既知の組織タイプを特性評価する、電気シグネチャデータを含んでもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、アブレーションエネルギーは、標的組織の誘電緩和パターンと関連付けられる、標的周波数に調整される。標的周波数は、そこで標的組織が、緩和現象挙動を呈し、非標的組織は、緩和現象挙動を呈しない、周波数を備える。特に、標的周波数に調整された、アブレーションエネルギーの送達は、標的組織のみと関連付けられる、1つ以上の細胞の膜を貫通する。
【0021】
いくつかの実施形態では、状態は、末梢神経学的状態を含む。末梢神経学的状態は、患者の鼻状態または非鼻状態と関連付けられてもよい。例えば、非鼻用状態は、心房細動(AF)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、鼻用状態は、鼻副鼻腔炎を含んでもよい。故に、いくつかの実施形態では、標的部位は、患者の副鼻腔内にある。アブレーションエネルギーの送達は、患者の副鼻腔への複数の神経信号の途絶をもたらす、および/または患者の副鼻腔内の局所低酸素症、粘液産生、ならびに/もしくは粘膜充血要素をもたらし得る。標的組織は、蝶口蓋孔に近接する、またはその下方にある。なおも依然として、アブレーションエネルギーの送達は、患者の口蓋骨の孔および/または微小孔における鼻粘膜を神経支配する、節後副交感神経の療法的変調をもたらし得る。特に、アブレーションエネルギーの送達は、口蓋骨の孔および微小孔を通して延在する、神経枝の多遮断点を引き起こす。なおも依然として、いくつかの実施形態では、アブレーションエネルギーの送達は、鼻内で粘液産生および/または粘膜充血要素と関連付けられる1つ以上の血管内で血栓形成を引き起こし得る。粘液産生および/または粘膜充血要素の結果として生じる局所低酸素症は、減少された粘膜充血をもたらし、それによって、患者の鼻道を通して体積流量を増加させ得る。加えて、または代替として、結果として生じる局所低酸素症は、神経変性を引き起こし得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1Aおよび1Bは、本開示のいくつかの実施形態による、ハンドヘルドデバイスを使用して患者の状態を治療するためのシステムの概略図である。
【0023】
図2図2は、本開示と一致する、ハンドヘルドデバイスに結合されるコンソールの概略図であり、エネルギーを1つ以上の標的部位における組織に送達するためのハンドヘルドデバイスのエンドエフェクタの一実施形態をさらに図示する。
【0024】
図3図3は、本開示と一致する、療法的治療を提供するためのハンドヘルドデバイスの一実施形態の側面図である。
【0025】
図4図4は、本開示と一致する、エンドエフェクタの一実施形態の拡大斜視図である。
【0026】
図5A図5A-5Fは、本開示と一致する、マルチセグメントエンドエフェクタの種々の図である。図5Aは、第1の(近位)セグメントおよび第2の(遠位)セグメントを図示する、マルチセグメントエンドエフェクタの拡大斜視図である。
図5B図5A-5Fは、本開示と一致する、マルチセグメントエンドエフェクタの種々の図である。図5Bは、マルチセグメントエンドエフェクタの分解斜視図である。
図5C図5A-5Fは、本開示と一致する、マルチセグメントエンドエフェクタの種々の図である。図5Cは、マルチセグメントエンドエフェクタの拡大上面図である。
図5D図5A-5Fは、本開示と一致する、マルチセグメントエンドエフェクタの種々の図である。図5Dは、マルチセグメントエンドエフェクタの拡大側面図である。
図5E図5A-5Fは、本開示と一致する、マルチセグメントエンドエフェクタの種々の図である。図5Eは、マルチセグメントエンドエフェクタの第1の(近位)セグメントの拡大正面(近位に面した)図である。
図5F図5A-5Fは、本開示と一致する、マルチセグメントエンドエフェクタの種々の図である。図5Fは、マルチセグメントエンドエフェクタの第2の(遠位)セグメントの拡大正面(近位に面した)図である。
【0027】
図6図6は、エネルギー送達要素または電極要素としての役割を果たす、露出された伝導性ワイヤを図示する、支持要素の一部の部分的に断面における斜視図である。
【0028】
図7図7は、図3の線7-7に沿って得られたハンドヘルドデバイスのシャフトの一部の断面図である。
【0029】
図8A図8Aは、ハンドヘルドデバイスのハンドルの側面図である。
【0030】
図8B図8Bは、内側に封入された内部コンポーネントを図示する、ハンドルの側面図である。
【0031】
図9A図9Aは、非療法的エネルギーに応答して、標的部位における1つ以上の組織と関連付けられる1つ以上の性質を感知するための周波数/波形におけるエンドエフェクタの電極からの非療法的エネルギーの送達を図示する、ブロック図である。
【0032】
図9B図9Bは、ハンドヘルドデバイスからコントローラへのセンサデータの通信と、着目組織の精密な標的化および治療されるべきセンサデータに基づくエネルギー出力のコントローラを介した後続の調整とを図示する、ブロック図である
【0033】
図9C図9Cは、(コントローラから出力されたアブレーションパターンに基づいて)標的組織内の誘電緩和現象/挙動を誘出するための具体的周波数に調整された標的部位へのエネルギーの送達を図示する、ブロック図である。
【0034】
図10図10は、標的部位へのエネルギーの送達を図示する、ブロック図であり、具体的には、標的周波数に調整されているエネルギーの結果として、標的組織の細胞の膜を通した電流の流動(誘電緩和現象/挙動を呈する)と、非標的組織の細胞の膜の周囲の電流の流動(誘電緩和現象/挙動を呈しない)とを図示する。
【0035】
図11図11は、状態を治療するための方法の一実施形態を図示する、フロー図である。
【0036】
図12図12は、本明細書に説明される方法のうちのいくつかを実施するための、最も着目すべきこととして、組織の生体電気性質を感知することによって、標的部位における組織を特徴付けるための、例示的プローブ/電極設定の概略図であり、そのような特性評価は、存在する具体的タイプの組織を識別することと、さらに、識別されたタイプの組織のための誘電緩和現象/挙動パターンを判定することとを含む。
図12A図12Aは、標的部位における組織の後続特性評価に関する、組織の生体電気性質を感知するための3プローブ/電極システムの一実施形態の概略図であり、そのような特性評価は、存在する具体的タイプの組織を識別することと、さらに、識別されたタイプの組織のための誘電緩和現象/挙動パターンを判定することとを含む。
【0037】
図13図13Aおよび13Bは、周波数に対する損失正接値のプロット(図13A)と、周波数に対する虚電気係数のプロット(図13B)とを含む、2つの組織タイプ(脊髄および筋肉組織)の誘電性質を図示する、グラフである。
【0038】
図14-1】図14A-14Hは、図13Aおよび13Bの2つの組織タイプ(脊髄および筋肉組織)のための周波数に対する(Havriliak-Negami(HN)緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図14Aおよび14Bは、上側脊髄組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。
図14-2】図14A-14Hは、図13Aおよび13Bの2つの組織タイプ(脊髄および筋肉組織)のための周波数に対する(Havriliak-Negami(HN)緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図14Cおよび14Dは、下側脊髄組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。
図14-3】図14A-14Hは、図13Aおよび13Bの2つの組織タイプ(脊髄および筋肉組織)のための周波数に対する(Havriliak-Negami(HN)緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図14Eおよび14Fは、下側背部筋肉組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。
図14-4】図14A-14Hは、図13Aおよび13Bの2つの組織タイプ(脊髄および筋肉組織)のための周波数に対する(Havriliak-Negami(HN)緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図14Gおよび14Hは、上側背部筋肉組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。
【0039】
図15図15Aおよび15Bは、周波数に対する損失正接値のプロット(図15A)と、周波数に対する虚電気係数のプロット(図15B)とを含む、組織(鼻甲介組織)の異なる部分の誘電性質を図示する、グラフである。
【0040】
図16-1】図16A-16Fは、図15Aおよび15Bの鼻甲介組織の異なる部分のための周波数に対する(HN緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図16Aおよび16Bは、鼻甲介組織の端部のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。
図16-2】図16A-16Fは、図15Aおよび15Bの鼻甲介組織の異なる部分のための周波数に対する(HN緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図16Cおよび16Dは、鼻甲介組織の中心のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。
図16-3】図16A-16Fは、図15Aおよび15Bの鼻甲介組織の異なる部分のための周波数に対する(HN緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図16Eおよび16Fは、血管の近傍の鼻甲介組織の部分のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
(詳細な説明)
本発明は、組織のある生体電気性質が、電気療法的治療(すなわち、神経変調、アブレーション等)に先立って、所与の標的部位において、能動および受動の両方の、具体的には、組織の界面分極、誘電分散、および誘電緩和現象/挙動を把握することが、具体的着目組織(すなわち、標的組織)をより精密に標的化し、隣接または周辺非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するための能力を提供することを認識する。
【0042】
例えば、治療を受けるように意図されるある標的部位が、1つを上回るタイプの組織(すなわち、神経、筋肉、骨、血管等)から成り得る。特に、着目組織(すなわち、治療を受けるための具体的組織)が、着目しない1つ以上の組織(すなわち、治療を受けるように意図されない組織)に隣接し得る。1つのシナリオでは、外科医が、例えば、意図しない付随的損傷が、血管への損傷をもたらし、さらに合併症を引き起こし得るため、任意のそのような刺激を隣接する血管に提供することを回避しながら、電気療法的刺激を神経組織に提供することを所望し得る。そのようなシナリオでは、具体的タイプの標的組織は、概して、所望の効果を誘出するために要求される、電気刺激のレベルを決定付け得る。さらに、標的組織の具体的場所および深度を含む、標的組織の物理的性質は、非標的組織に関連して、さらに、効果的療法的治療をもたらすために必要な電気刺激のレベルに影響を及ぼす。
【0043】
神経変調は、例えば、神経に直接作用する技術である。これは、電気的または医薬作用物質を標的面積に直接送達することによる、神経活動の改変もしくは変調である。神経変調デバイスおよび治療は、種々の状態ならびに障害を治療することに極めて効果的であることが示されている。神経変調のための最もよく見られる適応症は、慢性疼痛の治療である。しかしながら、長年にわたる神経変調用途の数は、パーキンソン病のための脳深部刺激(DBS)治療、骨盤障害および失禁のための仙骨神経刺激、ならびに虚血性障害(狭心症、末梢血管疾患)のための脊髄刺激等の単なる慢性疼痛の治療以上のものを含むように増加している。
【0044】
神経変調は、末梢神経学的障害の治療において特に有用である。現在、1つの神経または多くの神経に影響を及ぼし得る、100種類超の末梢神経障害が存在している。いくつかは、糖尿病の神経問題のような他の疾患の結果である。ギラン・バレー症候群のような他のものは、ウイルス感染後に起こる。なおも他のものは、手根管症候群または胸郭出口症候群のような神経圧迫に由来する。ある場合には、複合性局所疼痛症候群および上腕神経叢傷害のように、問題は、傷害後に始まる。しかしながら、一部の人々は、末梢神経学的障害を伴って生まれる。
【0045】
末梢神経刺激は、ある複合性局所疼痛症候群、末梢神経傷害に起因する疼痛、および同等物を含む、非常に具体的な臨床適応症のために確立されている。末梢神経刺激の一般的な用途のうちのいくつかは、背部痛の治療、片頭痛の治療のための後頭神経刺激、および膀胱失禁で使用するために研究されている陰部神経刺激を含む。
【0046】
本発明は、神経変調等の電気療法的治療に先立って、組織の生体電気性質を感知することによって、標的部位における組織を特性評価するための能力を伴うシステムおよび方法を提供し、そのような特性評価は、存在する具体的タイプの組織を識別することと、さらに、識別されたタイプの組織のための誘電緩和現象/挙動パターンを判定することとを含む。例えば、異なる組織タイプは、異なる生理学的および組織学的特性(例えば、細胞成分、細胞外タンパク質等)を含む。異なる特性の結果として、異なる組織タイプは、異なる関連付けられる電気および電気化学性質を有し、したがって、エネルギーの印加およびそこに印加される周波数に応答して、異なる関連付けられる挙動を呈する。組織タイプの電気挙動(抵抗への容量またはその逆)は、緩和現象に起因して、具体的周波数において改変する。所与の組織の界面分極、誘電分散、および緩和現象は、その中で所与の組織の細胞の膜が透過性になり、それによって、電気刺激電流が(特定の周波数において)膜を通して流動することを可能にし、それによって、組織の上に所望の効果を誘出する、特定の電気周波数において生じる。
【0047】
例えば、組織タイプを通した交流(AC)エネルギー伝達は、容量または抵抗手段のいずれかを通して生じ、使用されるエネルギーの周波数に著しく依存する。例えば、組織タイプにおける具体的周波数におけるエネルギーの伝達が、比較的により高い抵抗手段を通して行なわれる場合、これらの現象は、周波数の変化に応じてゆっくりと改変し、ある周波数で、容量挙動を通した伝導は、活性になる。これらの現象は、概して、Maxwell-Wagner-Sillar(MWS)緩和と表される。同様に、電流タイプ(直流または交流)の透過性は、具体的周波数に依存し、細胞タイプ、要素構成、および形態に伴って変動する。誘電率および誘電緩和周波数は、組織が具体的周波数において刺激されるとき、高まる。誘電緩和等の具体的緩和周波数の下で、組織は、交流に著しく透過性である。しかしながら、緩和周波数の領域において、加熱効果が、優勢になる。故に、組織が、誘電緩和現象を呈しないとき(すなわち、電気刺激電流が、誘電緩和現象と相関しない、異なる周波数(すなわち、緩和周波数を下回るおよび上回る)に調整されるとき)、所与の組織の細胞の膜は、具体的電気刺激電流に透過性でなく、したがって、効果を誘出しない。本システムおよび方法はさらに、送達されるエネルギーが、非標的組織を回避しながら、着目組織を標的化するように構成される具体的周波数にある(すなわち、エネルギーは、標的組織のみの誘電緩和現象と関連付けられる、周波数レベルに調整される)ように、誘電緩和パターンの着目組織に基づいて、エネルギー出力(すなわち、電気療法的刺激の送達)を調整するために構成される。
【0048】
故に、本発明は、種々の組織タイプから成る標的部位における電気療法的刺激の印加を伴う手技の間、非標的組織に不要な付随的損傷を引き起こす問題を解決する。特に、本システムおよび方法は、治療に先立って、組織タイプを特性評価および識別し、さらに、それらの意図される標的組織のみに誘電緩和現象を呈させるように、送達されるべき具体的レベルのエネルギー(すなわち、具体的標的周波数)を識別し、したがって、非標的組織が、無傷のままであり、付随的損傷を回避しながら、治療のためのエネルギーを受容することが可能である。
【0049】
本実施形態の多くは、末梢神経系(PNS)と関連付けられる神経を療法的に変調させるためのデバイス、システム、および方法、したがって、末梢神経学的状態または障害の治療に対して説明されるが、本明細書に説明されるものに加え、他の用途、および他の実施形態も、本開示の範囲内であることに留意されたい。例えば、本開示の少なくともいくつかの実施形態は、中枢神経系と関連付けられる、障害の治療等の他の障害の治療のために有用であり得る。
【0050】
図1Aおよび1Bは、本開示のいくつかの実施形態による、ハンドヘルドデバイス102を使用して患者の状態を治療するための療法的システム100の概略図である。システム100は、概して、デバイス102と、デバイス102が接続されることになる、コンソール104とを含む。図2は、神経学的障害の治療のために、エネルギーを患者の1つ以上の標的部位における組織に送達するためのエンドエフェクタ114の例示的実施形態を図示する、ハンドヘルドデバイス102に結合されるコンソール104の概略図である。図示されるように、デバイス102は、エンドエフェクタ114と、エンドエフェクタ114と動作可能に関連付けられるシャフト116と、シャフト116と動作可能に関連付けられるハンドル118とを含む、ハンドヘルドデバイスである。エンドエフェクタ114は、圧壊可能/後退可能かつ拡張可能であって、それによって、エンドエフェクタ114が患者内の1つ以上の標的部位への送達に応じて(すなわち、圧潰または後退状態で)低侵襲性になることを可能にし、次いで、いったん標的部位に位置付けられると、拡張され得る。用語「エンドエフェクタ」および「療法的アセンブリ」は、本開示の全体を通して同義的に使用され得ることに留意されたい。
【0051】
例えば、手技を実施する外科医または他の医療専門家が、ハンドル118を利用し、シャフト116を操作し、所望の標的部位に前進させることができ、シャフト116は、関連付けられる状態または障害の後続治療のための電気療法的刺激を受けるように、組織と関連付けられる患者の一部内の治療または標的部位において管腔内で少なくともその遠位部分を位置付けるように構成される。治療されるべき組織が、神経である場合、その電気療法的刺激が、関連付けられる神経学的状態の治療をもたらすように、標的部位は、概して、末梢神経線維と関連付けられ得る。標的部位は、標的神経が位置する領域、体積、または面積であってもよく、患者の生体構造に応じて、サイズおよび形状が異なり得る。いったん位置付けられると、エンドエフェクタ114は、展開され、続いて、エネルギーを1つ以上の標的部位に送達してもよい。送達されるエネルギーは、神経組織を特定し、さらに、神経組織の1つ以上の性質を感知するための周波数における非療法的刺激エネルギーであってもよい。例えば、エンドエフェクタ114は、電極のそれぞれの個別の位置における神経組織の存在、ならびに神経組織の形態を感知するように構成される、電極の少なくともサブセットを含む、電極アレイを含んでもよく、そのようなデータは、コンソール104を介して、神経組織のタイプならびに識別された神経組織のための誘電緩和現象/挙動パターンを判定するために使用されてもよい。
【0052】
神経組織タイプおよび神経組織の誘電緩和現象/挙動パターンの識別に基づいて、エンドエフェクタ114から標的部位上に送達されるエネルギーは、神経組織を療法的に変調させ(すなわち、エネルギーは、標的組織のみの誘電緩和現象と関連付けられる、周波数レベルに調整される)、血管および/または骨等の標的部位における非標的神経組織および/または非標的解剖学的構造への損傷を最小限にする、および/または防止するために、具体的周波数にあるように、コンソール104は、標的組織の誘電緩和パターンに基づいて、エネルギー出力(すなわち、電気療法的刺激の送達)を調整するように構成される。故に、エンドエフェクタ114は、着目神経、特に、付随的損傷を最小限にする、および/または防止しながら、そのような状態または障害を治療するように、末梢神経学的状態または障害と関連付けられる神経を療法的に変調させることが可能である。
【0053】
例えば、エンドエフェクタ114は、神経組織等の着目組織を療法的に変調させるための組織(限定ではないが、筋肉、神経、血管、骨等を含む、そのような組織)の存在および/または具体的性質を感知するために使用され得る、エネルギーを標的組織に送達するように構成される、電極等の少なくとも1つのエネルギー送達要素を含んでもよい。例えば、1つ以上の電極が、エンドエフェクタ114の1つ以上の部分によって提供されてもよく、電極は、電磁神経変調エネルギー(例えば、無線周波数(RF)エネルギー)を標的部位に印加するように構成されてもよい。他の実施形態では、エンドエフェクタ114は、凍結療法的冷却、超音波エネルギー(例えば、高強度集束超音波(「HIFU」)エネルギー)、マイクロ波エネルギー(例えば、マイクロ波アンテナを介した)、直接加熱、高および/または低出力レーザエネルギー、機械的振動、ならびに/もしくは屈折力等の種々の他のモダリティを使用して、療法的神経変調を提供するように構成される、他のエネルギー送達要素を含んでもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、エンドエフェクタ114は、1つ以上の温度センサ(例えば、熱電対、サーミスタ等)、インピーダンスセンサ、および/または他のセンサ等の1つ以上のセンサ(図示せず)を含んでもよい。センサおよび/または電極は、シャフト116を通して延在する1つ以上のワイヤに接続され、センサへおよびそれから信号を伝送し、ならびに/もしくはエネルギーを電極に伝達するように構成されてもよい。
【0055】
示されるように、デバイス102は、ケーブル120等の有線接続を介してコンソール104に動作可能に結合される。しかしながら、デバイス102およびコンソール104は、無線接続を介して相互に動作可能に結合され得ることに留意されたい。コンソール104は、限定ではないが、デバイス102の制御、監視、供給、および/または別様に支持動作を含み得る、デバイス102のための種々の機能を提供するように構成される。例えば、デバイス102が、電極ベース、熱要素ベース、および/またはトランスデューサベースの治療のために構成されるとき、コンソール104は、RFエネルギー(例えば、単極、双極、または多極RFエネルギー)、パルス電気エネルギー、マイクロ波エネルギー、光学エネルギー、超音波エネルギー(例えば、管腔内に送達される超音波ならびに/もしくはHIFU)、直接熱エネルギー、放射線(例えば、赤外線、可視、および/またはガンマ放射線)、ならびに/もしくは別の好適なタイプのエネルギーを発生させるように構成される、エネルギー発生器106を含んでもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、コンソール104は、デバイス102に通信可能に結合される、コントローラ107を含んでもよい。しかしながら、本明細書に説明される実施形態では、コントローラ107は、概して、デバイス102のハンドル118によって担持され、その内側に提供されてもよい。コントローラ107は、直接、および/またはコンソール104を介して、エンドエフェクタ114によって提供される1つ以上の電極の動作を開始、終了、ならびに/もしくは調節するように構成される。例えば、コントローラ107は、自動制御アルゴリズムを実行するように、および/またはオペレータ(例えば、外科医または他の医療専門家もしくは臨床医)から制御命令を受信するように構成されることができる。例えば、コントローラ107および/またはコンソール104の他のコンポーネント(例えば、プロセッサ、メモリ等)は、コントローラ107によって実行されると、デバイス102にある機能を実施させる(例えば、具体的様式でエネルギーを印加させる、インピーダンスを検出させる、温度を検出させる、神経場所または解剖学的構造を検出させる等)、命令を搬送する、コンピュータ可読媒体を含むことができる。メモリは、揮発性および不揮発性記憶のための種々のハードウェアデバイスのうちの1つ以上を含み、読取専用および書込可能メモリの両方を含むことができる。例えば、メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、CPUレジスタ、読取専用メモリ(ROM)、およびフラッシュメモリ、ハードドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD、磁気記憶デバイス、テープドライブ、デバイスバッファ等の書込可能不揮発性メモリを備えることができる。メモリは、下部のハードウェアから切り離された伝搬信号ではなく、メモリは、したがって、非一過性である。
【0057】
コンソール104はさらに、評価/フィードバックアルゴリズム110を介して、治療手技の前、間、および/または後に、フィードバックをオペレータに提供するように構成されてもよい。例えば、評価/フィードバックアルゴリズム110は、治療部位における神経の場所、治療部位における組織の温度、および/または治療部位における神経上の療法的神経変調の効果と関連付けられる情報を提供するように構成されることができる。ある実施形態では、評価/フィードバックアルゴリズム110は、治療の有効性を確認する、および/またはシステム100の所望の性能を向上させるための特徴を含むことができる。例えば、評価/フィードバックアルゴリズム110は、コントローラ107と併せて、療法の間に治療部位における温度を監視し、温度が事前判定された最大値(例えば、RFエネルギーを印加するとき)または事前判定された最小値(例えば、凍結療法を印加するとき)に到達するときに、エネルギー送達を自動的に止めるように構成されることができる。他の実施形態では、評価/フィードバックアルゴリズム110は、コントローラ107と併せて、事前判定された最大時間、標的組織の事前判定された最大インピーダンス上昇(すなわち、基準インピーダンス測定と比較して)、標的組織の事前判定された最大インピーダンス、および/または自律機能と関連付けられるバイオマーカに関する他の閾値後に、治療を自動的に終了するように構成されることができる。システム100の動作と関連付けられる本および他の情報は、コンソール104上のディスプレイおよび/またはタブレットもしくはモニタ等のコンソール104に通信可能に結合される別個のディスプレイ(図示せず)を介して提供される、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)112を介して、オペレータに通信されることができる。GUI112は、概して、デバイス102が、プライミングされ、治療を実施する準備ができているときを示すこと、および治療が完了したときを示すことを含む、手技の間に療法のステータスをさらに提供する等の手技のための動作命令を提供してもよい。
【0058】
例えば、前述で説明されたように、エンドエフェクタ114および/またはシステム100の他の部分は、標的部位における着目組織の種々のパラメータを検出し、標的部位における生体構造(例えば、組織タイプ、組織場所、血管系、骨構造、孔、副鼻腔等)を判定し、神経ならびに/もしくは他の構造を特定し、神経マッピングを可能にするように構成されることができる。例えば、エンドエフェクタ114は、本明細書にさらに詳細に説明されるように、標的領域内の神経組織または線維の存在を示す、インピーダンス、誘電性質、温度、および/または他の性質を検出するように構成されてもよい。
【0059】
図1Aに示されるように、コンソール104はさらに、具体的には、適切なセンサ(例えば、温度センサおよび/またはインピーダンスセンサ、もしくは同等物)によって感知される、データ(すなわち、標的部位における組織の検出された電気的ならびに/もしくは熱的測定)をエンドエフェクタ114から受信し、本情報を処理し、神経の存在、神経の場所、標的部位における神経活動、および/または生理学的性質(例えば、深度)、生体電気性質、ならびに熱的性質等の神経組織の他の性質を識別するように構成される、監視システム108を含んでもよい。神経監視システム108は、ケーブル120を通して、かつシャフト116の長さを通して延在する、信号ワイヤ(例えば、銅ワイヤ)を介して、エンドエフェクタ114の電極および/または他の特徴に動作可能に結合されることができる。他の実施形態では、エンドエフェクタ114は、他の好適な通信手段を使用して、神経監視システム108に通信可能に結合されることができる。
【0060】
神経監視システム108は、療法的神経変調の前の神経場所および活動を判定し、所望の神経の位置に対応する精密な治療領域を判定することができる。神経監視システム108はさらに、治療の間に療法的神経変調の効果を判定する、および/または治療後に療法的神経変調が標的神経を所望の程度に治療したかどうかを評価するために使用されることができる。本情報は、標的部位が神経変調のために好適であるかどうか等の標的部位に近接する神経に関連する種々の判定を行なうために使用されることができる。加えて、神経監視システム108はまた、療法的神経変調の前および後の検出された神経場所および/または活動を比較し、神経活動の変化を事前判定された閾値と比較し、療法的神経変調の印加が治療部位を横断して効果的であったかどうかを査定することができる。例えば、神経監視システム108はさらに、療法的神経変調の前および後にエンドエフェクタ114によって得られるニューロンの電気活動の記録に基づいて、神経電気記録図(ENG)信号を判定することができる。神経変調後に得られるENG信号の統計的に有意義な(例えば、測定可能または顕著な)減少は、神経が十分にアブレートされたというインジケータの役割を果たすことができる。神経監視システム108の付加的特徴および機能、ならびに所与の治療のための最適な療法が投与されることを確実にするためのリアルタイムフィードバック能力を提供するための評価/フィードバックアルゴリズム110を含む、コンソール104の種々のコンポーネントの他の機能が、それぞれの内容が参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる、少なくとも米国公開第2016/0331459号および米国公開第2018/0133460号に説明される。
【0061】
デバイス102は、末梢神経の後続の神経変調および対応する末梢神経学的状態または障害の治療のために、そのような神経と関連付けられる標的部位へのアクセスを提供する。末梢神経系は、左右相称動物の神経系を構成する2つの構成要素のうちの1つであり、他方の部分は、中枢神経系(CNS)である。PNSは、脳および脊髄の外側の神経ならびに神経節から成る。PNSの主要な機能は、CNSを四肢および器官に接続し、本質的に、脳および脊髄と身体の残りの部分との間の中継としての役割を果たすことである。末梢神経系は、体性神経系および自律神経系に分けられる。体性神経系では、脳神経が、網膜とともに視神経(第2脳神経)を例外として、PNSの一部である。第2脳神経は、真の末梢神経ではないが、間脳路である。脳神経節は、CNSで生じた。しかしながら、残りの10本の脳神経軸索は、脳を越えて延在し、したがって、PNSの一部と見なされる。自律神経系は、平滑筋および腺にわたって不随意制御を及ぼす。CNSと器官との間の接続は、本体系が、2つの異なる機能的状態、すなわち、交感神経および副交感神経であることを可能にする。故に、本発明のデバイス、システム、および方法は、対応する末梢神経学的状態または障害の治療のために、末梢神経系と関連付けられる神経の検出、識別、および精密な標的化において有用である。
【0062】
末梢神経学的状態または障害は、限定ではないが、いくつか例を挙げると、慢性疼痛、運動障害、てんかん、精神障害、心臓血管障害、胃腸障害、泌尿生殖器障害を含んでもよい。例えば、慢性疼痛は、頭痛、複合性局所疼痛症候群、神経障害、末梢神経痛、虚血性疼痛、脊椎手術後疼痛症候群、および三叉神経痛を含んでもよい。運動障害は、痙縮、パーキンソン病、振戦、ジストニア、トゥレット症候群、前屈症、片側顔面けいれん、およびメージュ症候群を含んでもよい。精神障害は、鬱病、強迫性障害、薬物中毒、および食欲/摂食障害を含んでもよい。機能回復は、外傷性脳傷害、聴覚障害、および失明後のある機能の回復を含んでもよい。心臓血管障害は、狭心症、心不全、高血圧症、末梢血管障害、および脳卒中を含んでもよい。胃腸障害は、運動障害および肥満を含んでもよい。泌尿生殖器障害は、膀胱痛症候群、間質性膀胱炎、および排尿機能障害を含んでもよい。
【0063】
例えば、システム100は、限定ではないが、心房細動(AFまたはA-fib)を含む、不整脈または心調律障害等の心臓血管障害の治療のために使用されてもよい。心房細動は、脳卒中、心不全、および他の心臓関連合併症の個人の危険性を増加させ得る、不規則で、多くの場合、速い心拍数である。心房細動は、心臓組織の領域が電気信号を隣接組織に異常に伝導するときに生じ、それによって、正常な心周期を乱し、非同期調律を引き起こす。心房細動症状は、多くの場合、心臓動悸、息切れ、および衰弱を含む。心房細動の発症は、現れたり消えたりし得るが、個人は、消えず、したがって、治療を要求するであろう、心房細動を発症し得る。心房細動自体は、通常、生命を脅かすものではないが、合併症につながり得るため、時として、緊急治療を要求する、重篤な病状である。例えば、心房細動は、心不全、認知症、および脳卒中の危険性の増加と関連付けられる。
【0064】
心臓の正常な電気伝導系は、心臓の洞房結節(SA結節)によって発生されるインパルスが、心筋(心臓の筋層)に伝搬され、それを刺激することを可能にする。心筋は、刺激されるとき、収縮する。心臓の効率的な収縮を可能にし、それによって、血液が身体に圧送されることを可能にするものは、心筋の規則正しい刺激である。AFでは、心臓の右心房内の洞房結節によって発生される正常な規則的電気インパルスは、通常、肺静脈の根元に生じる、無秩序な電気インパルスによって圧倒される。これは、心拍を発生させる心室インパルスの不規則な伝導につながる。特に、AFの間に、心臓の2つの上側心腔(心房)は、心臓の2つの下側心腔(心室)と協調せずに、無秩序かつ不規則に鼓動する。
【0065】
心房細動の間に、正常な心拍のために洞結節によって生成される規則的なインパルスは、心房および肺静脈の隣接部分内で生成される高速放電によって圧倒される。これらの擾乱源は、多くの場合、肺静脈のうちの1つにおいて位置特定される自動焦点、またはリエントリ性リーディングサークルもしくは電気渦巻波(回転子)のいずれかの形態の少数の局所的源のいずれかである。これらの局所的源は、肺静脈の近傍の左心房内に、または左もしくは右心房の両方を通して種々の他の場所で見出され得る。リーディングサークルまたは回転子の確立に有利に働く、3つの基本的構成要素、すなわち、1)心筋活動電位の遅い伝導速度、2)短い不応期、および3)小さい波長が存在する。波長は、速度および不応期の積である。活動電位が、長い不応期および/または波長よりも短い伝導経路とともに、速い伝導を有する場合、AF焦点は、確立されないであろう。多重ウェーブレット理論では、波面は、渦の離脱と呼ばれるプロセスを通して、障害物に遭遇するときに、より小さい娘ウェーブレットに分解するであろうが、適切な条件下では、そのようなウェーブレットは、再形成し、中心を中心として回転し、AF焦点を形成することができる。
【0066】
システム100は、デバイス102が、AFを治療することに対応する、または別様にそれと関連付けられる神経と関連付けられる、1つ以上の標的部位へのアクセスを提供し、その治療を提供し得る、AFの治療を提供する。例えば、デバイス102は、コンソール104と併せて、心臓組織を検出し、識別し、精密に標的化し、続いて、そのような心臓組織と関連付けられる神経を療法的に変調させるために十分なレベルまたは周波数においてエネルギーを送達してもよい。そのような神経の療法的変調は、信号の起源を妨害し、AFを引き起こす、および/またはそのような信号のための伝導経路を妨害するために十分である。
【0067】
心臓の伝導系と同様に、心臓を囲繞し、AFの基質の形成において重要な役割を果たす、神経回路網が存在し、誘因が、通常、肺静脈スリーブから生じさせられるときに、AFが、生じる。本神経回路網は、正常な人々ではより高い中枢の制御下にある、肺静脈口に隣接して位置する神経節叢(GP)を含む。例えば、心臓は、自律神経によって豊富に神経を分布される。自律神経の神経節細胞は、心臓の外側(外因性)または心臓の内側(内因性)のいずれかに位置する。外因性および内因性神経系は両方とも、心機能および不整脈原性にとって重要である。迷走神経は、髄質内の種々の核から生じる軸索を含む。外因性交感神経は、上頸神経節、中頸神経節、頸胸(星状)神経節、および胸神経節を含む、傍脊椎神経節から生じる。内因性心臓神経は、大部分が心房内で見出され、限定ではないが、心房細動を含む、不整脈または心調律障害等の心房不整脈原性心臓血管障害に密接に関与する。GPが、(例えば、高齢者では)より高い中枢からの阻害の損失により、過活動的になるとき、AFが、生じ得る。
【0068】
システム100は、迷走神経刺激等のより高い中枢およびそれらの接続を刺激すること、または単にGPをアブレートすることのいずれかによって、過活動GPを制御するために使用されることができる。故に、デバイス102は、コンソール104と併せて、神経節叢(GP)を検出および識別し、さらに、血管および骨を含む、周辺または隣接非神経組織、ならびに非標的神経組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止しながら、AFの治療(すなわち、AFを引き起こす信号の起源を外科的に妨害し、そのような信号のための伝導経路を妨害すること)のためにGPを療法的に変調させる、または治療する(すなわち、アブレートする)ために十分なエネルギーレベルを判定してもよい。限定ではないが、肺静脈を含む、AFに影響を及ぼす、またはAFを引き起こすことが既知である、他の神経および/または心臓組織もしくは他の構造が、システム100によって標的化され得ること(例えば、誘因が心房基質に到達しないように防止するためのPV口の周囲の病変の生成に応じた、肺静脈隔離)に留意されたい。
【0069】
不整脈を治療することに加えて、システム100はまた、他の心臓血管関連状態、特に、腎臓を伴うものの治療のために使用されてもよい。腎臓は、CHFの進行、ならびに慢性腎不全(CRF)、末期腎疾患(ESRD)、高血圧症(病理学的に高い血圧)、および他の心腎臓疾患において有意な役割を果たす。
【0070】
腎臓の機能は、3つの広いカテゴリ、すなわち、血液を濾過し、身体の代謝によって発生される老廃物を排泄すること、塩分、水分、電解質、および酸塩基平衡を調整すること、ならびに重要器官血流を維持するためのホルモンを分泌することの下で要約されることができる。適切に機能する腎臓がないと、患者は、水分貯留、尿流の低減、および血液ならびに身体内の老廃物毒素の蓄積に苦しむであろう。腎機能の低減または腎不全(腎機能障害)から生じる、これらの状態は、心臓の作業負荷を増加させると考えられる。
【0071】
例えば、CHF患者では、腎不全は、水分蓄積および血液毒素が、うまく機能していない腎臓に起因して蓄積し、ひいては、心臓にさらなる害を引き起こすため、心臓をさらに悪化させるであろう。CHFは、心臓が損傷した状態になり、身体の器官への血流を低減させるときに生じる、状態である。血流が、十分に減少する場合、腎臓機能は、低下した状態になり、体液貯留、異常なホルモン分泌、および血管の収縮の増加をもたらす。これらの結果は、心臓の作業負荷を増加させ、腎臓および循環系を通して血液を圧送するための心臓の容量をさらに減少させる。本容量の低減は、腎臓への血流をさらに低減させる。腎臓の次第に減少する灌流が、CHFの下降スパイラルを永続させる主要な心臓以外の原因であると考えられる。さらに、これらの生理学的変化から生じる、体液過負荷および関連付けられる臨床症状は、CHFに起因する、過剰な入院、生活の質の低減、および医療システムへの圧倒的なコストの主要な原因である。
【0072】
末期腎疾患は、腎神経活動によって少なくとも部分的に制御される別の状態である。糖尿病腎症、慢性糸球体腎炎、および制御されていない高血圧症に起因するESRDを伴う患者に、劇的な増加が存在している。慢性腎不全(CRF)は、ゆっくりとESRDに進行する。CRFは、ESRDの進化において重要な周期を表す。CRFの兆候および症状は、最初に軽微であるが、2~5年の経過にわたって、進行性かつ不可逆性になる。ESRDへの進行およびESRDの合併症と闘うことに、ある程度の進歩が成し遂げられているが、既存の介入の臨床的利益は、限定されたままである。
【0073】
動脈性高血圧症は、世界中で主要な健康問題である。治療抵抗性高血圧症は、利尿剤を含む、3つの異なる降圧薬剤の最大耐性用量の併用にもかかわらず、標的血圧を達成することができないものとして定義される。治療抵抗性高血圧症は、著しい大幅な罹患率および死亡率と関連付けられる。治療抵抗性高血圧症を伴う患者は、著しく増加した心臓血管罹患率および死亡率を有し、高血圧症が適切に制御されている患者と比較して、心筋梗塞(MI)、脳卒中、および死亡の危険性の増加に直面している。
【0074】
自律神経系は、血管流体平衡および血圧を維持するために重要な身体機能の調整に関与する制御信号のための重要な経路として認識される。自律神経系は、その感覚線維を介して、圧受容器(血液の圧力および体積に応答する)および化学受容体(血液の化学組成に応答する)等の身体の生物学的センサから中枢神経系に信号の形態の情報を伝導する。これはまた、その運動線維を介して血管系の種々の神経支配された構成要素を制御する、中枢神経系からのコマンド信号を伝導する。
【0075】
臨床体験および研究から、腎交感神経活動の増加は、腎臓に供給する血管の血管収縮、腎血流の減少、身体からの水分およびナトリウムの除去の減少、ならびにレニン分泌の増加につながることが公知である。また、例えば、脱神経を介した、腎交感神経活動の低減は、これらのプロセスを逆転し得ることも公知である。
【0076】
腎交感神経系は、高血圧症の病態生理学において重要な影響を及ぼす。腎動脈の外膜は、遠心性および求心性交感神経を有する。遠心性神経を介した腎交感神経活性化は、血圧の上昇をもたらす、カスケードを開始する。遠心性交感神経流出は、糸球体血流の後続の低減を伴う血管収縮、糸球体濾過率の低下、傍糸球体細胞によるレニンの放出、およびナトリウムならびに水分の尿細管再吸収の増加につながるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の後続の活性化につながる。糸球体濾過率の減少はまた、カテコールアミンの付加的全身性交感性放出も促す。結果として、血圧は、全血液量の上昇および末梢血管抵抗の増加によって増加する。
【0077】
システム100は、腎神経変調および/または脱神経を提供することによる、高血圧症を含む、心腎臓疾患の治療のために使用されることができる。例えば、デバイス102は、腎神経機能または他の神経特徴に寄与する腎神経および他の神経線維と関連付けられる、1つ以上の標的部位に設置されてもよい。例えば、デバイス102は、コンソール104と併せて、腎神経組織を検出し、識別し、精密に標的化し、続いて、そのような腎組織と関連付けられる神経を療法的に変調させるために十分なレベルまたは周波数においてエネルギーを送達してもよい。そのような腎神経および/または腎組織の療法的変調は、血管および骨を含む、周辺または隣接非神経組織、ならびに非標的神経組織への付随的損傷を最小限にする、ならびに/もしくは防止しながら、標的神経構造を完全にブロックもしくは除神経する、および/または腎神経活動を妨害するために十分である。
【0078】
さらに、システム100は、疾患の進行を判定するために使用され得ることに留意されたい。特に、システム100は、所与の疾患、障害、または同等物と関連付けられる、1つ以上の標的部位における測定値を取得することができる。そのような測定値は、活性神経パラメータ(すなわち、ニューロン発火および活性電圧監視)に基づいてもよく、ニューロンを識別するために使用されてもよい。活性神経パラメータ(したがって、挙動)は、疾患の進行に伴って変化し、それによって、本システムがそのような変化を識別し、基礎疾患または障害の進行を判定することを可能にする。そのような能力は、システム100が、受動電気現象を監視するように構成されるという事実に少なくとも部分的に基づいて可能である(すなわち、システム100は、オーム伝導率周波数を判定し、これは、一致したままである一方、伝導率は、疾患または障害進行に基づいて、異なるであろう)。
【0079】
図3は、本開示と一致する療法的神経変調を提供するためのハンドヘルドデバイスの一実施形態の側面図である。前述で説明されたように、デバイス102は、圧潰/後退構成と拡張された展開構成との間で変換可能なエンドエフェクタ(図示せず)と、エンドエフェクタと動作可能に関連付けられるシャフト116と、シャフト116と動作可能に関連付けられるハンドル118とを含む。ハンドル118は、少なくとも、圧潰/後退構成から拡張された展開構成へのエンドエフェクタの展開のための第1の機構126と、エンドエフェクタ、特に、エンドエフェクタによって提供される電極または他のエネルギー要素によるエネルギー出力の制御のための第1の機構124と別個の第2の機構128とを含む。ハンドヘルドデバイス102はさらに、流体がシャフト116の遠位端を介して標的部位に提供され得るように、例えば、流体源とシャフト116との間の流体接続を提供し得る、補助ライン121を含んでもよい。いくつかの実施形態では、補助ライン121は、デバイス102が(シャフト116の遠位端を介した)吸引能力を含み得るように、真空源とシャフト116との間の接続を提供してもよい。
【0080】
図4は、本開示と一致するエンドエフェクタ214の一実施形態の拡大斜視図である。示されるように、エンドエフェクタ214は、概して、シャフト116の遠位部分116bに位置付けられる。エンドエフェクタ214は、示されるように、治療部位までのエンドエフェクタ214の管腔内送達を促進するための薄型送達状態と拡張状態との間で変換可能である。エンドエフェクタ214は、エンドエフェクタ214が拡張状態であるときにフレームまたはバスケット242を形成するように相互から離間される、複数の支柱240を含む。支柱240は、複数の電極244等の1つ以上のエネルギー送達要素を担持することができる。拡張状態では、支柱240は、標的部位における組織に対して電極244のうちの少なくとも2つを特定の領域内に位置付けることができる。電極244は、双極または多極RFエネルギーを標的部位に印加し、末梢神経学的状態または障害と関連付けられる神経を療法的に変調させることができる。種々の実施形態では、電極244は、所望のデューティサイクル(例えば、1秒オン/0.5秒オフ)を用いてパルスRFエネルギーを印加し、標的組織内の温度上昇を調整するように構成されることができる。
【0081】
図4に図示される実施形態では、バスケット242は、少なくとも略球形構造を形成するように相互から半径方向に離間される、8つの分岐246を含み、分岐246はそれぞれ、相互に隣接して位置付けられる2つの支柱240を含む。しかしながら、他の実施形態では、バスケット242は、8つよりも少ない分岐246(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つの分岐)もしくは8つを上回る分岐246を含むことができる。さらなる実施形態では、バスケット242の各分岐246は、単一の支柱240、2つを上回る支柱240を含む、および/または分岐あたりの支柱240の数は、変動し得る。なおもさらなる実施形態では、分岐246および支柱240は、標的部位における組織と接触して電極244を設置するための他の好適な形状を有する、バスケットまたはフレームを形成することができる。例えば、拡張状態であるとき、支柱240は、卵形、半球形、円筒構造、角錐構造、および/または他の好適な形状を形成することができる。
【0082】
エンドエフェクタ214はさらに、シャフト116の遠位部分116bから遠位に延在する、内部または内側支持部材248を含むことができる。支持部材248の遠位端部分250は、支柱240の遠位端部分を支持し、所望のバスケット形状を形成することができる。例えば、支柱240は、シャフト116の遠位部分116bから遠位に延在することができ、支柱240の遠位端部分は、支持部材248の遠位端部分250に取り付けられることができる。ある実施形態では、支持部材248は、それを通してエンドエフェクタ214の電極244および/または他の電気特徴に結合される電気コネクタ(例えば、ワイヤ)が延設され得る、内部チャネル(図示せず)を含むことができる。種々の実施形態では、内部支持部材248はまた、遠位端部分250に、および/または支持部材248の長さに沿って電極(図示せず)を担持することもできる。
【0083】
バスケット242は、圧潰/後退構成から拡張された展開構成へのエンドエフェクタ214の展開のための第1の機構126と相互作用する、デバイス102のハンドル、および/またはシャフト116の近位部分にあり、バスケット242に動作可能に結合される他の特徴のいずれかを手動で操作することによって、薄型送達状態から拡張状態(図4に示される)に変換することができる。例えば、拡張状態から送達状態にバスケット242を移行させるために、オペレータは、支持部材248を遠位に押動し、支柱240を支持部材248に向かって内向きにすることができる。導入器またはガイドシース(図示せず)が、標的部位から、またはそこへのエンドエフェクタ214の管腔内送達もしくは除去を促進するように、薄型エンドエフェクタ214にわたって位置付けられることができる。他の実施形態では、エンドエフェクタ214は、本明細書にさらに詳細に説明されるであろうように、第1の機構126等の他の好適な手段を使用して、送達状態と拡張状態との間で変換される。
【0084】
個々の支柱240は、拡張状態であるときに、支柱240がバスケット242の所望の形状に自己拡張することを可能にする、形状記憶材料(例えば、ニチノール)等の弾力性材料から作製されることができる。他の実施形態では、支柱240は、他の好適な材料から作製されることができる、および/またはエンドエフェクタ214は、バルーンを介して、もしくは支持部材248の近位移動によって機械的に拡張されることができる。バスケット242および関連付けられる支柱240は、電極244を支持し、標的部位における組織に対して電極244を位置付ける、または押圧するために十分な剛性を有することができる。加えて、拡張されたバスケット242は、標的部位に近接する周辺解剖学的構造に対して押圧することができ、個々の支柱240は、隣接する解剖学的構造の形状に少なくとも部分的に共形化し、エネルギー送達の間に治療部位においてエンドエフェクタ214を係留することができる。加えて、支柱240の拡張および共形化可能性は、標的部位における周辺組織と接触して電極244を設置することを促進することができる。
【0085】
少なくとも1つの電極244が、個々の支柱240上に配置される。図示される実施形態では、2つの電極244が、各支柱240の長さに沿って位置付けられる。他の実施形態では、個々の支柱240上の電極244の数は、1つだけ、2つを上回る、ゼロであり得る、および/または異なる支柱240上の電極244の数は、変動し得る。電極244は、白金、イリジウム、金、銀、ステンレス鋼、白金イリジウム、コバルトクロム、酸化イリジウム、ポリエチレンジオキシチオフェン(「PEDOT」)、チタン、窒化チタン、炭素、炭素ナノチューブ、白金グレイ、Fort Wayne Metals(Fort Wayne, Ind.)製の銀の芯を伴う延伸充填管類(DFT)、および/またはRFエネルギーを標的組織に送達するための他の好適な材料から作製されることができる。
【0086】
ある実施形態では、各電極444は、他の電極244から独立して動作されることができる。例えば、各電極は、個別にアクティブ化されることができ、各電極の波形、極性、および振幅は、オペレータまたは制御アルゴリズム(例えば、図1Aのコントローラ107によって実行される)によって選択されることができる。そのような独立して制御される電極244の種々の実施形態が、本明細書にさらに詳細に説明される。電極244の選択的独立制御は、エンドエフェクタ214が、RFエネルギーを高度にカスタマイズされた領域に送達すること、および複数の微小病変をさらに生成し、複数の微小病変に起因して神経信号の多点遮断を効果的に引き起こすことによって、標的神経構造を選択的に変調させることを可能にする。例えば、電極244の選択部分が、具体的領域内の神経線維を標的化するようにアクティブ化されることができる一方、他の電極244は、非アクティブのままである。ある実施形態では、例えば、電極244は、標的部位における組織に隣接するバスケット242の一部を横断してアクティブ化されてもよく、標的組織に近接しない電極244は、非アクティブのままであり、エネルギーを非標的組織に印加することを回避することができる。そのような構成は、エネルギーを標的部位の他の部分内の構造に印加することなく、標的部位の一部に沿って、神経の選択的療法的変調を促進する。
【0087】
電極244は、電極244からシャフト116を通してRF発生器まで延在するワイヤ(図示せず)を介して、RF発生器(例えば、図1Aの発生器106)に電気的に結合されることができる。電極244がそれぞれ、独立して制御されるとき、各電極244は、シャフト116を通して延在する、対応するワイヤに結合する。他の実施形態では、複数の電極244が、ともに制御されることができ、したがって、複数の電極244は、シャフト116を通して延在する同一のワイヤに電気的に結合されることができる。RF発生器および/またはそれに動作可能に結合されるコンポーネント(例えば、制御モジュール)は、電極244のアクティブ化を制御するためのカスタムアルゴリズムを含むことができる。例えば、RF発生器は、約200~300WにおけるRF電力を電極244に送達し、治療部位および/または標的神経の識別された場所に対するエンドエフェクタ214の位置に基づいて選択される事前判定されたパターンで電極244をアクティブ化しながら、そうすることができる。他の実施形態では、RF発生器は、より低いレベル(例えば、1W、2~5W、5~15W未満、15~50W、50~150W等)および/またはより高い電力レベルにおいて電力を送達する。
【0088】
エンドエフェクタ214はさらに、支柱240および/またはエンドエフェクタ214の他の部分上に配置され、標的部位における組織と関連付けられる1つ以上の性質を感知/検出するように構成される、1つ以上のセンサ252(例えば、温度センサ、インピーダンスセンサ等)を含むことができる。例えば、温度センサは、それに隣接する温度を検出するように構成される。センサ252は、シャフト116を通して延在するワイヤ(図示せず)を介して、コンソール(例えば、図1Aのコンソール104)に電気的に結合されることができる。種々の実施形態では、センサ252は、標的組織の種々の性質および/またはそれと関連付けられる治療を検出するように、電極244に近接して位置付けられることができる。本明細書にさらに詳細に説明されるであろうように、感知されたデータは、コンソール104に提供されることができ、そのようなデータは、概して、少なくとも、標的部位における組織の生体電気性質に関連する。ひいては、コンソール104は、(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)そのようなデータを処理し、標的部位における1つ以上の組織のそれぞれのタイプを識別するために判定し、さらに、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれの誘電緩和パターンを識別するように構成される。コンソールはさらに、(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)識別された誘電緩和パターンに基づいて、エンドエフェクタの複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定するように構成される。アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的組織をアブレートし、標的部位における周辺または隣接非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある。
【0089】
いくつかの実施形態では、デバイス102はさらに、感知されるデータが、標的組織上の療法的刺激の効果と関連付けられるフィードバックデータの形態である、コンソール104を提供するように構成されてもよい。例えば、フィードバックデータは、複数の電極のうちの1つ以上からの初期エネルギーの送達の間および/または後の標的組織(例えば、神経組織)に応じて、アブレーションの有効性と関連付けられてもよい。故に、ある実施形態では、コンソール104は、(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)そのようなフィードバックデータを処理し、治療を受ける標的組織のある性質(例えば、組織温度、組織インピーダンス等)が、不可逆的組織損傷に関する事前判定された閾値に到達するかどうかを判定するように構成される。コントローラ107は、少なくとも部分的にフィードバックデータに基づいて、初期レベルのエネルギーが送達された後に、1つ以上の電極に関して個別にエネルギー出力を調整することができる。例えば、いったん閾値に到達されると、療法的神経変調エネルギーの印加は、組織が無傷のままであることを可能にするように終了されることができる。ある実施形態では、エネルギー送達は、エンドエフェクタ214に動作可能に結合されるコンソール(例えば、図1Aのコンソール104)上に記憶された評価/フィードバックアルゴリズム(例えば、図1Aの評価/フィードバックアルゴリズム110)に基づいて、自動的に調整されることができる。
【0090】
図5A-5Fは、本開示と一致するエンドエフェクタ314の別の実施形態の種々の図である。概して、図示されるように、エンドエフェクタ314は、少なくとも、相互から離間される第1のセグメント322および第2のセグメント324を含む、マルチセグメントエンドエフェクタである。第1のセグメント322は、概して、シャフト116の遠位端のより近くに位置付けられ、したがって、時として、本明細書では近位セグメント322と称されることもある一方、第2のセグメント324は、概して、シャフト116の遠位端からより遠くに位置付けられ、したがって、時として、本明細書では遠位セグメント324と称されることもある。第1および第2のセグメント322ならびに324はそれぞれ、図に示されるように、薄型送達状態を含む、後退構成と拡張状態を含む、展開構成との間で変換可能である。エンドエフェクタ 314は、 概して、血管または骨等の周辺組織への付随的損傷を最小限にする、もしくは回避しながら、鼻副鼻腔炎状態の治療のために患者の鼻領域内に位置付けるように設計される。特に、エンドエフェクタ314は、鼻腔内で前進され、概して、鼻粘膜に神経を分布させる節後副交感神経線維と関連付けられる、1つ以上の標的部位に位置付けられるように構成される。ひいては、エンドエフェクタ314は、節後副交感神経を療法的に変調させるように構成される。
【0091】
しかしながら、本開示と合致するエンドエフェクタは、エンドエフェクタ314と類似する様式でマルチセグメント化され得、鼻腔の外側の患者の他の領域内に治療を提供するために使用され得、したがって、エンドエフェクタ314としての特定の設計/構成にも、意図された治療部位(例えば、鼻腔)にも限定されないことに留意されたい。むしろ、他のマルチセグメント設計も、患者の特定の領域、特に、鼻腔の生体構造に起因して、エンドエフェクタ314の設計の場合のように、複数の明確に異なるセグメントの使用が有利であるであろう領域内で使用するために検討される。
【0092】
図5Aは、第1の(近位)セグメント322および第2の(遠位)セグメント324を図示する、マルチセグメントエンドエフェクタの拡大斜視図である。図5Bは、マルチセグメントエンドエフェクタ314の分解斜視図である。図5Cは、マルチセグメントエンドエフェクタ314の拡大上面図である。図5Dは、マルチセグメントエンドエフェクタ314の拡大側面図である。図5Eは、マルチセグメントエンドエフェクタ314の第1の(近位)セグメント322の拡大正面(近位に面した)図であり、図5Fは、マルチセグメントエンドエフェクタ314の第2の(遠位)セグメント324の拡大正面(近位に面した)図である。
【0093】
図示されるように、第1のセグメント322は、少なくとも、第1の構成に配列される、概してワイヤの形態の可撓性支持要素の第1のセットを含み、第2のセグメント324は、第2の構成に配列される、同様にワイヤの形態の可撓性支持要素の第2のセットを含む。可撓性支持要素の第1および第2のセットは、伝導性および弾性性質を有する、複合ワイヤを含む。例えば、いくつかの実施形態では、複合ワイヤは、ニチノール等の形状記憶材料を含む。可撓性支持要素はさらに、望ましい電気絶縁性質ならびに望ましい低摩擦表面仕上げを可能にし得る、極めて潤滑性のコーティングを含んでもよい。第1および第2のセグメント322、324はそれぞれ、可撓性支持要素の第1および第2のセットが、展開構成であるときに、個別のセグメント上に提供される1つ以上の電極(図5Eおよび5Fの電極336参照)を、1つ以上の標的部位と接触して位置付けるように構成されるように、後退構成と拡張された展開構成との間で変換可能である。
【0094】
示されるように、拡張された展開構成であるとき、第1のセグメント322の支持要素の第1のセットは、少なくとも、それぞれ、ループ(または小葉)形状を備え、上向き方向に延在する、第1の対の支柱330a、330bと、それぞれ、ループ(または小葉)形状を備え、概して、少なくとも第1の対の支柱330a、330bに対して反対方向に、下向き方向に延在する、第2の対の支柱332a、332bとを含む。用語「上向き」および「下向き」は、相互に対する第1および第2のセグメント322、324の配向を説明するために使用されることに留意されたい。より具体的には、第1の対の支柱330a、330bは、概して、マルチセグメントエンドエフェクタ314の縦軸に対して第1の方向に外向き傾斜において延在し、相互から離間される。同様に、第2の対の支柱332a、332bは、マルチセグメントエンドエフェクタの縦軸に対して第1の方向と実質的に反対の第2の方向に外向き傾斜において延在し、相互から離間される。
【0095】
第2のセグメント324の支持要素の第2のセットは、拡張された展開構成であるとき、それぞれ、外向きに延在し、開放端円周形状を形成する、ループ形状を備える、支柱334(1)、334(2)、334(n)(約6本の支柱)の第2のセットを含む。示されるように、開放端円周形状は、概して、咲いた花に類似し、各ループ状の支柱334は、概して、花弁に類似し得る。支柱334の第2のセットは、任意の数の個々の支柱を含み得、図示されるような6本に限定されないことに留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、第2のセグメント124は、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、9本、10本、またはそれを上回る支柱334を含んでもよい。
【0096】
第1および第2のセグメント322、324、具体的には、支柱330、332、および334は、複数の電極336等の1つ以上のエネルギー送達要素を含む。任意の個々の支柱は、任意の数の電極336を含み得、示されるような1つの電極に限定されないことに留意されたい。拡張状態では、支柱330、332、および334は、鼻領域内の(例えば、SPFの下方の口蓋骨に近接する)標的部位における組織に対して任意の数の電極336を位置付けることができる。電極336は、双極または多極無線周波数(RF)エネルギーを標的部位に印加し、標的部位に近接する鼻粘膜を神経支配する節後副交感神経を療法的に変調させることができる。種々の実施形態では、電極336が、所望のデューティサイクル(例えば、1秒オン/0.5秒オフ)を用いてパルスRFエネルギーを印加し、標的組織内の温度上昇を調整するように構成されることができる。
【0097】
第1および第2のセグメント322、324、ならびに関連付けられる支柱330、332、および334は、電極336を支持し、標的部位における組織に対して電極336を位置付ける、または押圧するために十分な剛性を有することができる。加えて、拡張された第1および第2のセグメント322、324はそれぞれ、標的部位(例えば、鼻甲介、口蓋骨等)に近接する周辺解剖学的構造に対して押圧することができ、個々の支柱330、332、334は、隣接する解剖学的構造の形状に少なくとも部分的に共形化し、エンドエフェクタ314を係留することができる。加えて、支柱330、332、334の拡張および共形化可能性は、標的部位における周辺組織と接触して電極336を設置することを促進することができる。電極336は、白金、イリジウム、金、銀、ステンレス鋼、白金イリジウム、コバルトクロム、酸化イリジウム、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)、チタン、窒化チタン、炭素、炭素ナノチューブ、白金グレイ、銀の芯を伴う延伸充填管類(DFT)、および/またはRFエネルギーを標的組織に送達するための他の好適な材料から作製されることができる。図6に図示されるようないくつかの実施形態では、支柱は、伝導性ワイヤを囲繞する外側ジャケットを含んでもよく、外側ジャケットの一部は、支柱の長さに沿って選択的に欠如し、それによって、本明細書にさらに詳細に説明されるように、エネルギー送達要素(すなわち、電極)および/または感知要素として作用するように、下層の伝導性ワイヤを露出する。
【0098】
ある実施形態では、各電極336は、他の電極336から独立して動作されることができる。例えば、各電極は、個別にアクティブ化されることができ、各電極の極性および振幅は、オペレータまたは制御アルゴリズム(例えば、本明細書に前述で説明されたコントローラ107によって実行される)によって選択されることができる。電極336の選択的独立制御は、エンドエフェクタ314がRFエネルギーを高度にカスタマイズされた領域に送達することを可能にする。例えば、電極336の選択部分が、具体的領域内の神経線維を標的化するようにアクティブ化されることができる一方、他の電極336は、非アクティブのままである。ある実施形態では、例えば、電極136は、標的部位における組織に隣接する第2のセグメント324の一部を横断してアクティブ化されてもよく、標的組織に近接しない電極336は、非アクティブのままであり、エネルギーを非標的組織に印加することを回避することができる。そのような構成は、エネルギーを鼻腔の他の部分内の構造に印加することなく、1つの鼻孔内の鼻の外側壁上の神経の選択的療法的変調を促進する。
【0099】
電極336は、電極336からシャフト116を通してRF発生器まで延在するワイヤ(図示せず)を介して、RF発生器(例えば、図1Aの発生器106)に電気的に結合される。電極336がそれぞれ、独立して制御されるとき、各電極336は、シャフト116を通して延在する、対応するワイヤに結合する。他の実施形態では、複数の電極336が、ともに制御されることができ、したがって、複数の電極336は、シャフト116を通して延在する同一のワイヤに電気的に結合されることができる。前述で説明されたように、RF発生器および/またはそれに動作可能に結合されるコンポーネント(例えば、制御モジュール)は、電極336のアクティブ化を制御するためのカスタムアルゴリズムを含むことができる。例えば、RF発生器は、約460~480kHz(+または-5kHz)におけるRF電力を電極336に送達し、治療部位および/または標的組織の識別された場所に対するエンドエフェクタ314の位置に基づいて選択される事前判定されたパターンで電極336をアクティブ化しながら、そうすることができる。さらに、電極336は、少なくとも部分的にフィードバックデータに基づいて、個別にアクティブ化および制御され得ること(すなわち、制御されたレベルのエネルギー出力および送達)に留意されたい。RF発生器は、双極低出力(50ワットの最大設定を伴う10ワット)RFエネルギー送達を提供し、さらに、(最大30個のチャネルを横断して)多重化能力を提供することが可能である。
【0100】
いったん展開されると、第1および第2のセグメント322、324は、個別の場所における1つ以上の解剖学的構造の形状に共形化し、それを補完することを含み、個別の場所の形状に接触し、それに共形化する。ひいては、第1および第2のセグメント322、324は、鼻腔内に正確に位置付けられた状態になり、続いて、1つ以上の電極336を介して、RF熱エネルギーまたは非熱エネルギーの精密な集束印加を1つ以上の標的部位に送達し、それによって、関連付けられる神経組織を療法的に変調させる。より具体的には、第1および第2のセグメント322、324は、拡張構成であるときに、第1および第2のセグメント322、324の部分、したがって、それと関連付けられる1つ以上の電極336を、鼻粘膜を神経支配する節後副交感神経線維と関連付けられる鼻腔内の標的部位と接触して設置するように具体的に設計される、形状およびサイズを有する。
【0101】
例えば、第1のセグメント322の可撓性支持要素の第1のセットは、第1のセグメント322が展開構成であるときに、第1の場所における第1の解剖学的構造の形状に共形化し、それを補完し、第2のセグメント124の可撓性支持要素の第2のセットは、第2のセグメントが展開構成であるときに、第2の場所における第2の解剖学的構造の形状に共形化し、それを補完する。第1および第2の解剖学的構造は、限定ではないが、下鼻甲介、中鼻甲介、上鼻甲介、下鼻道、中鼻道、上鼻道、翼突口蓋領域、翼口蓋窩、蝶口蓋孔、副蝶口蓋孔、および蝶口蓋微小孔を含んでもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、マルチセグメントエンドエフェクタ314の第1のセグメント322は、中鼻甲介に対して前方位置において中鼻甲介の少なくとも一部の周囲に嵌合するように、展開構成で構成され、マルチセグメントエンドエフェクタの第2のセグメント324は、中鼻甲介に対して後方位置において空洞内の複数の組織場所に接触するように、展開構成で構成される。
【0103】
例えば、第1のセグメントの可撓性支持要素(すなわち、支柱330および332)の第1のセットは、第1のセグメント322が展開構成であるときに、中鼻甲介の外側付着部および後下縁の形状に共形化し、それを補完し、第2のセグメント324の可撓性支持要素(すなわち、支柱334)の第2のセットは、第2のセグメント324が展開構成であるときに、中鼻甲介の外側付着部および後下縁に対して後方位置において空洞内の複数の組織場所に接触する。故に、展開構成であるとき、第1および第2のセグメント322、324は、1つ以上の関連付けられる電極336を、中鼻甲介および中鼻甲介の背後の空洞内の複数の組織場所のいずれかに対して1つ以上の標的部位に位置付けるように構成される。ひいては、電極336は、患者の鼻腔内の神経支配経路における鼻粘膜を神経支配する、節後副交感神経を療法的に変調させるために十分なレベルにおいて、RFエネルギーを送達するように構成される。
【0104】
図5Eに図示されるように、第1のセグメント322は、両側幾何学形状を備える。特に、第1のセグメント322は、支柱330a、332aから形成される第1の側面と、支柱330b、332bから形成される第2の側面とを含む、2つの同じ側面を含む。本両側幾何学形状は、第1のセグメント322が拡張状態であるときに、2つの側面のうちの少なくとも1つが、鼻腔内の解剖学的構造に共形化し、それに適応することを可能にする。例えば、拡張状態であるとき、複数の支柱330a、332aは、解剖学的構造の複数の部分に沿った複数の場所に接触し、支柱によって提供される電極は、粘液産生および/または粘膜充血要素への神経信号を遮断する、解剖学的構造の組織に複数の微小病変を生成するために十分なレベルにおいて、エネルギーを放出するように構成される。特に、支柱330a、332aは、第1のセグメント322が展開構成であるときに、中鼻甲介の外側付着部および後下縁の形状に共形化し、それを補完し、それによって、解剖学的構造の両側が電極からエネルギーを受容することを可能にする。第1の側面構成と第2の側面構成(すなわち、右および左側)との間に本独立性を有することによって、第1のセグメント322は、真の両側デバイスである。両側幾何学形状を提供することによって、マルチセグメントエンドエフェクタ314は、構造の両側が両側幾何学形状に起因して同時に占められるため、解剖学的構造の他方の側面を治療するために反復使用構成を要求しない。結果として生じた微小病変パターンは、繰り返し可能であり得、両方のマクロ要素(深度、体積、形状パラメータ、表面積)において予測可能であり、本明細書にさらに詳細に説明されるであろうように、それぞれの低い/高い効果、ならびにマイクロ要素を確立するように制御されることができる(マクロエンベロープの範囲内の効果の閾値化が制御されることができる)。本発明のシステムはさらに、本明細書にさらに詳細に説明されるであろうように、他の細胞体に広範囲の影響を及ぶすことなく、神経的効果に対する制御を可能にする、勾配を内側に確立することができる。
【0105】
図7は、図3の線7-7に沿って得られたハンドヘルドデバイスのシャフト116の一部の断面図である。図示されるように、シャフト116は、エンドエフェクタがシャフト116内に後退されるときに、後退構成(すなわち、薄型送達状態)でエンドエフェクタを拘束する能力を有するように、さらに、エンドエフェクタを標的部位に送達するための非外傷性の薄型で耐久性のある手段を提供するように、複数のコンポーネントから構築されてもよい。シャフト116は、ハンドル118からシャフト116の遠位端まで進行する、同軸管を含む。シャフト116は、薄型アクセスを要求する面積内で療法の適正な送達を確実にする、薄型である。シャフト116は、内側管腔142を囲繞する電極ワイヤ129にわたってさらに組み立てられる、ハイポチューブ140を囲繞する外側シース138を含む。外側シース138は、生体構造とデバイス102との間の界面としての役割を果たす。外側シース138は、概して、展開および後退の間に外側シース138とハイポチューブ140との間の摩擦を最小限にするための低摩擦PTFEライナを含んでもよい。特に、外側シース138は、概して、キンク抵抗を留保し、さらに、カラムおよび/または引張強度を留保しながら、可撓性を提供するためのシャフト116の長さに沿ったカプセル化ブレイズを含んでもよい。例えば、外側シース138は、非外傷性であり、通路を通して円滑な送達を可能にする、軟質Pebax材料を含んでもよい。
【0106】
ハイポチューブ140は、ハンドル118内で開始し、エンドエフェクタの近位端まで進行する、電極ワイヤにわたって組み立てられる。ハイポチューブ140は、概して、送達の間にワイヤを保護するように作用し、よじれることなく可撓性を可能にするように可鍛性であり、それによって、追跡可能性を改良する。ハイポチューブ140は、堅性を提供し、デバイス102のトルク性を可能にし、エンドエフェクタ314の正確な設置を確実にする。ハイポチューブ140はまた、外側シース138が展開および後退または拘束の間にハイポチューブ140に対して移動するときに、少ない力を可能にする、低摩擦外部表面も提供する。シャフト116は、所与の解剖学的構造(例えば、鼻腔)を補完するように、そのような様式で事前成形されてもよい。例えば、ハイポチューブ140は、事前設定された曲線を伴う屈曲シャフト116を生成するように焼鈍されてもよい。ハイポチューブ140は、例えば、低摩擦移動のために外側シース138内のライナと界面接触する、ステンレス鋼管類を含んでもよい。
【0107】
内側管腔142は、概して、治療手技の間の流体抽出のためのチャネルを提供してもよい。例えば、内側管腔142は、シャフト116の遠位端からハイポチューブ140を通して、流体ライン(図3のライン121)を介して大気まで延在する。内側管腔142材料は、手技の間にそれに作用する外部コンポーネントの力に抵抗するように選定される。
【0108】
図8Aは、ハンドヘルド118のハンドルの側面図であり、図8Bは、内側に封入された内部コンポーネントを図示する、ハンドル118の側面図である。ハンドル118は、概して、左利きおよび右利き使用の両方のための両手利き使用を提供し、手の人体測定に共形化し、手技における使用の間にオーバーハンドグリップスタイルおよびアンダーハンドグリップスタイルのうちの少なくとも1つを可能にする、人間工学的に設計されたグリップ部分を含む。例えば、ハンドル118は、オーバーハンドグリップまたはアンダーハンドグリップスタイルのいずれかにおいてオペレータの指のうちの1つ以上を自然に受容し、オペレータのために快適な感覚を提供するように設計される、陥凹144、146、および148を含む、具体的輪郭を含んでもよい。例えば、アンダーハンドグリップでは、陥凹144は、オペレータの人差し指を自然に受容してもよく、陥凹146は、オペレータの中指を自然に受容してもよく、陥凹148は、近位突出部150に巻着するオペレータの薬指および小指(pinkieまたはpinky)を自然に受容してもよく、オペレータの親指は、第1の機構126に隣接する場所でハンドル118の上部分上に自然に静置する。オーバーハンドグリップでは、オペレータの人差し指が、第1の機構126に隣接するハンドル118の上部分上に自然に静置してもよい一方、陥凹144は、オペレータの中指を自然に受容してもよく、陥凹146は、オペレータの中指および/または薬指の一部を自然に受容してもよく、陥凹148は、オペレータの親指と人差し指との間の空間(時として、指間部(purlicue)と称されることもある)を自然に受容し、その内側に静置してもよい。
【0109】
前述で説明されたように、ハンドルは、少なくとも、圧潰/後退構成から拡張された展開構成へのエンドエフェクタの展開のための第1の機構126と、エンドエフェクタによるエネルギー出力、着目すべきこととして、1つ以上の電極からのエネルギー送達の制御のための第2の機構128とを含む、複数のユーザ動作型機構を含む。示されるように、第1および第2の機構126、128のためのユーザ入力は、手技の間に、両方のユーザ入力の同時片手動作を可能にするように、相互まで十分な距離に位置付けられる。例えば、第1の機構126のためのユーザ入力は、グリップ部分に隣接するハンドル118の上部分上に位置付けられ、第2の機構128のためのユーザ入力は、グリップ部分に隣接するハンドル118の側面部分上に位置付けられる。したがって、アンダーハンドグリップスタイルでは、オペレータの親指は、第1の機構126に隣接するハンドルの上部分上に静置し、少なくともその中指は、第2の機構128に隣接して位置付けられ、第1および第2の機構126、128はそれぞれ、アクセス可能であり、作動されることができる。オーバーハンドグリップシステムでは、オペレータの人差し指は、第1の機構126に隣接するハンドルの上部分上に静置し、少なくともその親指は、第2の機構128に隣接して位置付けられ、第1および第2の機構126、128はそれぞれ、アクセス可能であり、作動されることができる。故に、ハンドルは、種々のスタイルのグリップに適応し、外科医のためにある程度の快適性を提供し、それによって、手技の実行および全体的転帰をさらに改良する。
【0110】
図8Bを参照すると、ハンドル118内に提供される種々のコンポーネントが、図示される。示されるように、第1の機構126は、概して、ユーザ動作型コントローラからの入力に応答して、後退構成と展開構成との間のエンドエフェクタの移動を提供する、ラックアンドピニオンアセンブリを含んでもよい。ラックアンドピニオンアセンブリは、概して、ユーザ動作型コントローラから入力を受信し、入力をシャフト116およびエンドエフェクタのうちの少なくとも1つと動作可能に関連付けられるラック部材154の直線運動に変換するための歯車152のセットを含む。ラックアンドピニオンアセンブリは、ストローク長および後退ならびに展開力の平衡を保ち、それによって、エンドエフェクタの展開に対する制御を改良するために十分なギヤリング比を備える。示されるように、ラック部材154は、例えば、ハンドル118の近位端に向かった方向へのラック部材154の移動が、シャフト116の対応する移動をもたらす一方、エンドエフェクタが、静止したままであり、それによって、エンドエフェクタを露出し、エンドエフェクタが拘束された後退構成から拡張された展開構成に遷移することを可能にするように、シャフト116の一部に結合されてもよい。同様に、ハンドル118の遠位端に向かった方向へのラック部材154の移動は、シャフト116の対応する移動をもたらす一方、エンドエフェクタは、静止したままであり、それによって、シャフト116内にエンドエフェクタを封入する。他の実施形態では、ラック部材154は、ラック部材154の移動が、エンドエフェクタの対応する移動をもたらす一方、シャフト116が、静止したままであり、それによって、後退構成と展開構成との間でエンドエフェクタを遷移させるように、エンドエフェクタの一部に直接結合され得ることに留意されたい。
【0111】
第1の機構126と関連付けられるユーザ動作型コントローラは、ラックアンドピニオンレールアセンブリと動作可能に関連付けられるスライダ機構を含んでもよい。ハンドルの近位端に向かった後方方向へのスライダ機構の移動は、展開構成へのエンドエフェクタの遷移をもたらし、ハンドルの遠位端に向かった前方方向へのスライダ機構の移動は、後退構成へのエンドエフェクタの遷移をもたらす。他の実施形態では、第1の機構126と関連付けられるユーザ動作型コントローラは、ラックアンドピニオンレールアセンブリと動作可能に関連付けられる、スクロールホイール機構を含んでもよい。ハンドルの近位端に向かった後方方向へのホイールの回転は、展開構成へのエンドエフェクタの遷移をもたらし、ハンドルの遠位端に向かった前方方向へのホイールの回転は、後退構成へのエンドエフェクタの遷移をもたらす。
【0112】
図9A、9B、および9Cは、エンドエフェクタを介して、標的部位における1つ以上の組織と関連付けられるデータ、着目すべきこととして、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質を感知するプロセスと、標的部位における組織のタイプを判定し、さらに1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれの誘電緩和パターンを識別するために、(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)そのようなデータを続いて処理するプロセスと、さらに、識別された誘電緩和パターンに基づいて、エンドエフェクタの複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定するプロセスとを図示する、ブロック図である。アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的組織をアブレートし、標的部位における周辺または隣接非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある。
【0113】
図9A、9B、および9Cのブロック図が、エンドエフェクタ214の参照を含む一方、エンドエフェクタ314を含む、他のエンドエフェクタ実施形態は、神経組織の存在および神経組織深度を含む神経組織の他の性質と少なくとも関連付けられる、データを感知することに関して同様に構成されることに留意されたい。故に、以下のプロセスは、エンドエフェクタ214に限定されない。
【0114】
図9Aは、非療法的エネルギーに応答して、標的部位における組織と関連付けられる、1つ以上の性質を感知するための周波数におけるエンドエフェクタの電極244からの非療法的エネルギーの送達を図示する、ブロック図である。
【0115】
前述で説明されたように、ハンドヘルド治療デバイスは、複数の支柱を中心として配列される微小電極アレイを備える、エンドエフェクタを含む。例えば、エンドエフェクタ214は、エンドエフェクタ214が拡張状態であるときにフレームまたはバスケット242を形成するように相互から離間される、複数の支柱240を含む。支柱240は、複数の電極244等の複数のエネルギー送達要素を含む。拡張状態では、複数の支柱はそれぞれ、標的部位における解剖学的構造に共形化し、それに適応することが可能である。位置付けられたとき、支柱は、標的部位の複数の部分に沿った複数の場所に接触し、それによって、標的部位における組織に対して1つ以上の電極244を位置付けてもよい。電極の少なくともサブセットは、標的部位における個別の位置に、ある周波数/波形における非療法的刺激エネルギーを送達し、それによって、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質を感知し、さらに、そのようなデータをコンソール104に伝達するように構成される。生体電気性質に加え、データはまた、標的部位における組織の生理学的性質および熱性質のうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0116】
例えば、(1つ以上の電極244を介して)非療法的刺激エネルギーを個別の位置に送達することに応じて、1つ以上の標的部位における組織の種々の性質が、検出されることができる。本情報は、次いで、標的部位における生体構造(例えば、組織タイプ、組織場所、血管系、骨構造、孔、副鼻腔等)を判定し、神経組織等の着目組織(電気療法的刺激を受容するための標的組織)を特定し、異なるタイプの神経組織を鑑別し、標的部位において解剖学的および/または神経構造をマッピングするように、コンソール104、特に、コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110に伝送されることができる。例えば、エンドエフェクタ214は、標的領域内の神経線維および/または他の解剖学的構造の存在を示す、抵抗、複素電気インピーダンス、誘電性質、温度、ならびに/もしくは他の性質を検出するために使用されることができる。ある実施形態では、エンドエフェクタ214は、コンソール104コンポーネントとともに、組織(すなわち、負荷)の(インピーダンスではなく)抵抗を判定し、組織の特性をより正確に識別するために使用されることができる。例えば、評価/フィードバックアルゴリズム110は、(例えば、電極244を介して)負荷の実際の電力および電流を検出することによって、組織の抵抗を判定することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、システム100は、1~50Ωの範囲に関して100分の1オーム(例えば、0.01Ω)までの精度測定等の高度な正確度および非常に高度な精度で、抵抗測定を提供する。システム100によって提供される高度な抵抗検出正確度は、神経組織の発火、神経組織と他の解剖学的構造(例えば、血管)との間の差異、および異なるタイプの神経組織さえも含む、サブマイクロスケール構造の検出を可能にする。本情報は、評価/フィードバックアルゴリズム110および/またはコントローラ107によって分析され、治療部位における神経組織および他の生体構造を識別する、ならびに/もしくはマッピングされた生体構造に対するアブレーションパターンに基づいて予測される神経変調領域を示すように、(例えば、ディスプレイ112上の)高分解能空間グリッドおよび/または他のタイプのディスプレイを介してオペレータに通信されることができる。
【0118】
前述で説明されたように、ある実施形態では、各電極244は、他の電極244から独立して動作されることができる。例えば、各電極は、個別にアクティブ化されることができ、各電極の極性および振幅は、オペレータまたはコントローラ107によって実行される制御アルゴリズムによって選択されることができる。電極244の選択的独立制御は、エンドエフェクタ214が、情報(すなわち、神経組織の存在、神経組織の深度、および他の生理学的ならびに生体電気性質)を検出し、続いて、RFエネルギーを高度にカスタマイズされた領域に送達することを可能にする。例えば、電極244の選択部分が、具体的領域内の具体的神経線維を標的化するようにアクティブ化されることができる一方、他の電極244は、非アクティブのままである。加えて、電極244は、(例えば、多重化を介して)異なる時間に具体的パターンである領域を刺激する、または療法的に変調させるように、個別にアクティブ化されることができ、これは、着目ゾーンを横断する解剖学的パラメータの検出および/または調整された療法的神経変調を促進する。
【0119】
前述で説明されたように、システム100は、非標的組織および構造(例えば、血管)への悪影響を回避しながら、療法的刺激が標的組織を含む精密な領域に印加され得るように、療法に先立って、標的部位における1つ以上の組織の組織タイプを識別し、さらに、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれの誘電緩和パターンを識別することができる。例えば、システム100は、着目ゾーン内の種々の生体電気パラメータを検出し、種々の組織タイプ(例えば、異なるタイプの神経組織、神経指向性等)および/または他の組織(例えば、腺構造、血管、骨領域等)の場所ならびに形態を判定することができる。システム100はさらに、生体電位を測定するように構成される。
【0120】
そうするために、電極244のうちの1つ以上が、着目領域(例えば、治療部位)における上皮表面と接触して設置される。電気刺激(例えば、1つ以上の周波数における一定もしくはパルス電流、および/または1つ以上の周波数における交流(正弦、正方形、三角形、鋸歯状等)波もしくは直流定電流/電力/電圧源)が、治療部位もしくはその近傍の1つ以上の電極244によって組織に印加され、エンドエフェクタ214の種々の対の電極244の間の種々の異なる周波数において印加される波に基づく電圧および/または電流差が、着目領域内の異なるタイプの組織(例えば、血管、神経組織、ならびに/もしくは他のタイプの組織)を識別するために使用され得る、検出された生体電位のスペクトルプロファイルまたはマップを生成するように測定されてもよい。例えば、電流(すなわち、直流または交流)が、相互に隣接する一対の電極244に印加されることができ、他の対の隣接する電極244の間の結果として生じた電圧および/または電流が、測定される。例えば、固定された電流(すなわち、直接または交流)が、相互に隣接する一対の電極244に印加されることができ、他の対の隣接する電極244の間の結果として生じる電圧および/または電流が、測定される。逆に言えば、固定された電圧(すなわち、単相または二相)が、相互に隣接する一対の電極244に印加されることができ、他の対の隣接する電極244の間の結果として生じる電流が、測定される。電流注入電極244および測定電極244は、隣接する必要はなく、2つの電流注入電極244の間の間隔を修正することは、記録された信号の深度に影響を及ぼし得ることを理解されたい。例えば、密接に離間された電流注入電極244は、より浅い深度における組織と関連付けられる記録された信号を提供する、より遠く離間された電流注入電極244よりも組織の表面から深い組織と関連付けられる、記録された信号を提供した。異なる間隔を伴う電極対からの記録は、解剖学的構造の深度および位置特定についての付加的情報を提供するようにマージされてもよい。
【0121】
さらに、着目領域における組織の複素インピーダンスおよび/または抵抗測定が、生体電位測定によって提供される電流・電圧データから直接、検出されることができる一方、異なるレベルの周波数電流が、(例えば、エンドエフェクタ114を介して)組織に印加され、本情報は、周波数微分再構築の使用によって、神経および解剖学的構造をマッピングするために使用されることができる。特に、電流-電圧データは、異なるレベルの電流周波数が、印加されるとき、組織タイプの誘電性および伝導性性質における差異とともに、観察され得る。
【0122】
さらに、異なる周波数において刺激を印加することは、異なる層別化された層または細胞体もしくは群を標的化し、これはさらに、識別された組織タイプの具体的組織タイプおよび個別の誘電緩和現象/挙動を識別するために、使用されることができる。
【0123】
例えば、異なる組織タイプは、異なる生理学的および組織学的特性(例えば、細胞成分、細胞外タンパク質等)を含む。異なる特性の結果として、異なる組織タイプが、異なる関連付けられた生体電気性質を有し、したがって、そこに印加されるエネルギーの印加に応答して、異なる関連付けられる挙動を呈する。能動的生体電気性質は、概して、細胞の中および外へのイオンの流入および流出を含み得る一方、受動的生体電気性質が、細胞の抵抗、容量、および誘導性質を含み得ることに留意されたい。1つのそのような挙動は、誘電緩和現象と称される。組織のエネルギー伝導挙動は、組織受動電気成分が、印加される周波数に応じて活性化および不活性化するため、印加される周波数/エネルギーと異なる。これらの電気的受動成分の活性化および不活性化の本切替作用は、印加されるエネルギーおよび周波数に依存し、緩和現象として知られる。本弛緩は、イオンまたは誘電もしくは原子または電子レベル(周波数に著しく依存する)のいずれかで生じることができる。例えば、組織のイオン抵抗成分は、組織の容量または誘導成分より比較的に活性であり、誘電体において、容量成分は、抵抗成分より比較的に活性である。
【0124】
結果として、所与の組織の緩和現象は、その中で所与の組織の細胞の膜が透過性になり、それによって、電気刺激電流が(特定の周波数において)膜を通して流動することを可能にし、それによって、組織の上に所望の効果を誘出する、特定の電気周波数において生じる。組織が、誘電緩和現象を呈していない(すなわち、電気刺激電流が、誘電緩和現象に相関しない、異なる周波数に調整される)とき、所与の組織の細胞の膜は、具体的電気刺激電流に透過性でなく、したがって、効果を誘出しない。
【0125】
例えば、比較的に高い信号周波数(例えば、電気注入または刺激)において、例えば、神経組織の細胞膜は、電流の流れを妨げず、電流は、細胞膜を直接通して通過する。この場合、結果として生じた測定(例えば、インピーダンス、抵抗、静電容量、および/または誘導)は、細胞内および細胞外組織ならびに液の関数である。低い信号周波数において、膜は、電流の流れを妨げ、細胞の形状および形態、細胞密度、および/または細胞間隔等の組織の異なる決定的な特性を提供する。刺激周波数は、メガヘルツ範囲内、キロヘルツ範囲(例えば、400~500kHz、450~480kHz等)、ヘルツ範囲(例えば、0.2~0.8Hz、8~12Hz等)、および/または刺激されている組織ならびに使用されているデバイスの特性に同調している他の周波数内にあり得る。着目ゾーンからの検出された複素インピーダンスまたは抵抗レベルは、刺激周波数に基づいてある構造を可視化するように、(例えば、ディスプレイ112を介して)ユーザに表示されることができる。
【0126】
さらに、患者の身体の所与の領域またはゾーン内の解剖学的構造の固有の形態および組成が、異なる周波数に異なるように反応し、したがって、具体的周波数が、非常に具体的な構造を識別するように選択されることができる。例えば、解剖学的マッピングのための標的構造の形態または組成は、組織の細胞または他の構造が膜状である、層別化されている、および/または環状であるかどうかに依存し得る。種々の実施形態では、印加された刺激信号は、髄鞘形成のレベルおよび/または髄鞘形成の形態等の具体的神経組織に同調している、事前判定された周波数を有することができる。例えば、第2の軸索副交感神経構造は、交感神経または他の構造よりも不良に有髄であり、したがって、交感神経よりも選択された周波数に対して区別可能な応答(例えば、複素インピーダンス、抵抗等)を有するであろう。故に、異なる周波数を伴う信号を標的部位に印加することは、標的副交感神経を非標的感覚神経と区別し、したがって、療法の前もしくは後の神経マッピングおよび/または療法後の神経評価のために、極めて具体的な標的部位を提供することができる。
【0127】
いくつかの実施形態では、神経および/または解剖学的マッピングは、測定が、最初に、第1の周波数を有する注入信号への応答に基づいて、次いで、再度、第1の周波数と異なる第2の周波数を有する注入信号に基づいて、得られるように、少なくとも2つの異なる周波数を用いて着目領域におけるデータを測定し、ある解剖学的構造を識別することを含む。例えば、肥大した(すなわち、疾患状態特性)粘膜下標的が、「正常な」(すなわち、健康な)組織と比較して、異なる電気伝導率または誘電率を有する、2つの周波数が存在する。複素伝導率が、1つ以上の測定された生理学的パラメータ(例えば、複素インピーダンス、抵抗、誘電測定、双極子測定等)および/または1つ以上の自信を持って把握されている属性もしくはシグネチャの観察に基づいて、判定されてもよい。さらに、システム100はまた、標的神経構造に同調している1つ以上の事前判定された周波数において、電極244を介して神経変調エネルギーを印加し、周波数と関連付けられる選択された神経構造の高度に標的化されたアブレーションを提供することもできる。本高度に標的化された神経変調はまた、標的信号(標的神経構造に同調された周波数を有する)が非標的構造に同一の変調効果を及ぼさないであろうため、非標的部位/構造(例えば、血管)への神経変調療法の付随的効果を低減させる。
【0128】
故に、複素インピーダンスおよび抵抗等の受動生体電気性質が、1つ以上の治療パラメータを誘導するために、神経変調療法の前、間、および/または後に、システム100によって使用されることができる。例えば、治療の前、間、および/または後に、インピーダンスまたは抵抗測定が、1つ以上の電極244と隣接組織との間の接触を確認ならびに/もしくは検出するために使用されてもよい。インピーダンスまたは抵抗測定はまた、記録されたスペクトルが予期される組織タイプと一致する形状を有するかどうか、および/または連続的に収集されたスペクトルが再現可能であったかどうかを判定することによって、電極244が標的組織タイプに対して適切に設置されるかどうかを検出するために、使用されることもできる。いくつかの実施形態では、インピーダンスまたは抵抗測定は、治療ゾーン(例えば、妨害されることになる具体的神経組織)のための境界、解剖学的目印、回避するべき解剖学的構造(例えば、妨害されるべきではない血管構造または神経組織)、およびエネルギーを組織に送達することの他の側面を識別するために、使用されてもよい。
【0129】
生体電気情報が、標的部位における異なる解剖学的特徴の組織のスペクトルプロファイルまたはマップを生成するために使用されることができ、解剖学的マッピングは、好適な治療部位の選択を誘導するように、ディスプレイ112および/または他のユーザインターフェースを介して、3Dもしくは2D画像内で可視化されることができる。本神経および解剖学的マッピングは、システム100が、治療されるべきある神経学的状態または障害と関連付けられる神経線維を正確に検出し、療法的に変調させることを可能にする。加えて、解剖学的マッピングはまた、臨床医が、臨床医が療法的神経変調の間に回避することを所望し得る、ある構造(例えば、ある動脈)を識別することも可能にする。システム100によって検出される神経および解剖学的生体電気性質はまた、治療部位への療法的神経変調のリアルタイム効果を判定するように、治療の間および後に使用されることもできる。例えば、評価/フィードバックアルゴリズム110はまた、療法的神経変調の前および後に、検出された神経場所および/または活動を比較し、神経活動の変化を事前判定された閾値と比較し、療法的神経変調の印加が治療部位を横断して効果的であったかどうかを査定することもできる。
【0130】
図9Bは、ハンドヘルドデバイス102からコントローラへのセンサデータの通信と、治療されるべき着目組織の精密な標的化のためのセンサデータに基づくエネルギー出力のコントローラを介した後続の調整とを図示する、ブロック図である。示されるように、エンドエフェクタ214は、組織データ(すなわち、標的部位における組織の生体電気性質)をコンソール104に通信する。生体電気性質は、限定ではないが、複素インピーダンス、抵抗、リアクタンス、静電容量、インダクタンス、誘電率、伝導率、誘電性質、筋肉または神経発火電圧、筋肉または神経発火電流、脱分極、過分極、磁場、誘導起電力、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。誘電性質は、例えば、少なくとも複素相対誘電率を含んでもよい。
【0131】
ひいては、コンソール104は、(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)そのようなデータを処理し、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれの誘電緩和パターンを含む、標的部位における組織のタイプならびに他の性質を判定するように構成される。コンソール104(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)はさらに、識別された誘電緩和パターンに基づいて、エンドエフェクタの複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定するように構成される。アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的組織をアブレートし、標的部位における周辺または隣接非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある。より具体的には、コンソール104(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)は、送達されるエネルギーが、非標的組織を回避しながら、着目組織を標的化するように構成される具体的周波数にある(すなわち、エネルギーは、標的組織のみの誘電緩和現象と関連付けられる、周波数レベルに調整され、それによって、標的組織の細胞膜に貫通する)ように、着目組織の誘電緩和パターンに基づいて、エネルギー出力(すなわち、電気療法的刺激の送達)を調整するように構成される。
【0132】
コンソール104は(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)、概して、緩和現象の実験的モデリングにおける複素相対誘電率計算を利用するアルゴリズムに基づいて、所与の識別された組織タイプの誘電緩和パターンを判定/計算するように構成される。
【0133】
例えば、背景として、誘電材料が、印加された電場によって分極され得る、電気絶縁体である。誘電材料が、電場内に設置されるとき、それらが電気導体内にあるため、電荷が、材料を通して流動しないが、その平均平衡位置から若干のみ偏移し、誘電分極を引き起こす。誘電分極のため、正電荷が、場の方向に変位され、負電荷が、場と反対方向に偏移される(例えば、場が、正のx軸に移動する場合、負の電荷は、負のx軸に偏移するであろう)。結果として、誘電分極は、誘電体自体内の全体的場を低減させる、内部電場を作成する。誘電体が、弱く接合された分子から成る場合、それらの分子が、分極されないだけではなく、また、それらの対称性軸が場に整合するように、再配向される。
【0134】
故に、生物学的組織、最も着目すべきこととして、生物学的組織の細胞が、本質的に、誘電性質を伴うコンデンサとしてモデル化されることができる。例えば、細胞膜のリン脂質二重層は、印加される周波数に応じて、細胞膜が、電荷/電流がそれを通して流動することを可能にするように、平行板コンデンサに類似することができる。誘電体の添加は、コンデンサが、所与の潜在的差異のためにより多くの電荷を貯蔵することを可能にする。例えば、誘電体が、コンデンサの静電容量を増加させるために、荷電コンデンサの中に挿入されるとき、誘電体は、場によって分極される。誘電体からの電場は、コンデンサ板上の電荷からの電場を部分的に相殺するであろう。
【0135】
相対誘電率および誘電率の結果として生じる概念は、所与の組織の誘電緩和現象の後続計算のために、組織の複素相対誘電率をさらに判定するために使用されることができる。誘電率または相対誘電率は、以下の式によって理解される。
【数1】
【0136】
誘電率(ε)は、電荷を保持するための物質の能力であり、周波数、温度、湿度、および他の物理的パラメータの関数である。相対誘電率(ε)とも称される、誘電率(κ)は、物質対自由空間の誘電率の比率である。上記の式では、εは、材料の複素周波数依存誘電率であり、εは、真空誘電率である。εの値は、8.85418782×10-12-3kg-1である。多くの材料は、εまたはκを有する。例えば、空気のκまたはεは、1であり、水分のものは、約80であり、ガラスのものは、5~10であり、紙のものは、2~4であり、身体組織のものは、1kHzの周波数において、かつ摂氏20度(℃)の室温において、約8である。
【0137】
材料の相対誘電率を把握することによって、複素相対誘電率は、取得されてもよい。複素相対誘電率は、以下の式によって理解される。
【数2】
【0138】
式中、εは、相対誘電率または誘電率であり、ε’は、複素数誘電率の実数部であり、ε”は、複素数誘電率の虚数部であり、jは、虚定数である。相対誘電率または誘電率の実数部(ε’)は、材料の分極能力を定義する。相対誘電率または誘電率の虚数部(ε”)は、材料の損失(約mHz~Hz範囲の低周波数におけるイオン損失、kHz~MHz範囲における誘電熱損失、より高い周波数における原子損失および電子損失)およびポリマーの伝導挙動を定義する。低~中間周波数範囲において、緩和現象または挙動は、誘電材料が特定の周波数において電荷または熱損失の漏出を開始するときに生じ、誘電率の虚数部は、誘電率の実数部と比較して、より優勢になる。
【0139】
あるパラメータは、組織のインピーダンス測定値に対して、例えば、損失正接(誘電損失とも称される)を含む、所与の組織の複素相対誘電率から抽出されることができる。誘電損失は、電磁エネルギー(例えば、熱)の誘電材料の固有の消散を定量化する。損失角度δまたは対応する損失正接tanδ(すなわち、損失正接)のいずれかの観点からパラメータ化されることができる。両方とも、その実数および虚数部が、電磁場の抵抗(不可逆)成分、およびその反応(可逆)対応物である、複素数平面における位相ベクトルを指す。損失正接は、以下のように定義される。
【数3】
【0140】
式中、δは、常時、複素誘電率の角度を指し、θは、常時、インピーダンス位相角度を指し、したがって、tanθ=X/Rである。Xは、複素インピーダンスの反応部であり、Rは、インピーダンスの実数部である。損失正接tanδとインピーダンス位相角度θとの間の関係は、δ=90°-θである。故に、以下となる。
【数4】
【0141】
前述で説明されたように、コンソール104は(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)、概して、緩和現象の実験的モデリングにおける複素相対誘電率計算を利用するアルゴリズムに基づいて、所与の識別された組織タイプの誘電緩和パターンを判定/計算するように構成される。いくつかの実施形態では、所与の識別された組織の誘電緩和パターンの計算は、Havriliak-Negami緩和モデルに少なくとも部分的に基づく。Havriliak-Negami緩和は、電磁気学におけるDebye緩和モデルの実験的修正である。Debyeモデルと異なり、Havriliak-Negami(HN)緩和は、誘電分散曲線の対称性および幅広さを考慮する。本モデルは、最初に、Debye方程式に2つの指数関数的パラメータを追加することによって、いくつかのポリマーの誘電緩和を説明するために使用された。
【数5】
【0142】
式中、εおよびεは、それぞれ、高周波数および低周波数における、総誘電率を表す。iは、特性複素数数√-1であり、ωは、角度周波数(式中、ω=2πf)であり、τは、緩和時間であり、1/2πfmaxによって与えられ、fmaxは、損失係数のピーク周波数であり、αHNおよびβHNは、0≦αHN、βHN≦1である、それぞれ、損失ピークの幅および対称性を説明する、近似曲線の成形された特性である。適合パラメータは、単純にオーム伝導率に関して1になり、電気脱分極に伴って減少する。パラメータε-εは、
【0143】
ナノコンポジットの誘電強度(Δε)を示す。指数αおよびβは、αHN=0である、対応するスペクトルの対称性および幅広さを説明し、HNモデルは、Cole-Davidsonモデルに低減する。HN緩和モデルは、複素相対誘電率の実数および虚数部が、以下のように、ω(角度周波数)およびαおよびβの関数として、表されることができることを提案する。
【数6】
【0144】
上記の式に基づいて、例えば、静電容量方程式、ならびに電極の寸法を使用するデータから、ω(角度周波数)の関数として、ε’およびε”を計算する。
【0145】
いくつかの実施形態では、システム100は、識別された既知の組織タイプの複数のプロファイル402(1)-402(n)を含有する、データベース400を含み得、各プロファイルは、関連付けられる組織タイプのための電気シグネチャデータを含み得ることに留意されたい。電気シグネチャデータは、概して、そこで組織タイプが、異なる誘電/MWS/損失要因緩和および/または誘電緩和現象/挙動を呈する、組織タイプの以前に識別された生体電気性質と、以前に識別された誘電緩和パターンと、関連付けられる周波数とを含んでもよい。故に、コンソール104(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)は、エンドエフェクタ114から受信されるデータ(すなわち、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質)を処理し、標的部位における組織のそれぞれのタイプを判定し、プロファイル402のそれぞれ内に記憶される電気シグネチャデータとのデータの比較に基づいて、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれの誘電緩和パターンを識別するように構成される。データセットの間の正相関に応じて、コンソール104は、合致するプロファイルを識別し、したがって、標的組織の治療を限定するための正確なアブレーションパターンを識別するように、標的部位における1つ以上の組織タイプと、それぞれの個別の緩和および伝導率パターンとを判定するように構成される。
【0146】
概して、理解されるように、誘電分光法では、特に、低周波数において、誘電応答への大周波数依存寄与は、電荷の蓄積から生じ得る。本Maxwell-Wagner-Sillar分極は、メゾスコピックスケールで内側誘電境界層において、または巨視的スケールで外部電極サンプル界面においてのいずれかで生じる。両方の場合では、これは、(空乏層等を通して)電荷の分離につながる。電荷は、多くの場合、(原子および分子サイズに対する)膨大な距離にわたって分離され、誘電損失の寄与は、したがって、分子変動に起因して、誘電応答より大きい大きさの次数であり得る。
【0147】
Maxwell-Wagner-Sillar分極(Maxwell-Wagner効果とも称される)プロセスは、懸濁液またはコロイド、生物学的材料、位相分離されるポリマー、混合物、および結晶または液晶ポリマーのような不均質材料の調査の間、考慮される。Maxwell-Wagner効果は、これらの2つの材料における電荷担体緩和時間の差異に基づいて、2材料界面における電荷蓄積を考慮する。巨視的に、材料の基本電気性質は、2つの物理的パラメータ、すなわち、誘電率εおよび伝導率σを使用して、規定される。これらの2つのパラメータの比率は、τ=ε/σである。不均質構造を説明するための最も単純なモデルは、二重層配列であり、各層は、その誘電率ε’、ε’、およびその伝導率σ、σによって特性評価される。そのような配列のための緩和時間は、以下によって与えられる。
【数7】
【0148】
重要なこととして、材料の伝導性は、一般に、周波数依存であるため、これは、二重層複合物が、概して、個々の層が周波数独立誘電率によって特性評価される場合でも、周波数依存緩和時間を有することを示す。
【0149】
本発明のシステム100は、識別された組織の標的周波数(そこで緩和現象が生じる、周波数)を確認するために、Maxwell-Wagner-Sillar(MWS)緩和モデルを利用してもよい。前述で説明されたように、緩和現象は、異なる周波数状態下、組織の電気挙動における変化を理解する際に重要である。分子動的レベルでは、誘電分光法は、核磁気共鳴(NMR)、小角度X線散乱(SAXS)、動的機械的分析(DMA)、準弾性光散乱、および中性子散乱を含む、他の測定技法と比較して、より改良された技法であることが証明されている。共同緩和およびMaxwell-Wagner-Sillar(MWS)分極は、低周波数範囲における生物学的組織内で見出される、2つのタイプの緩和現象である。共同緩和は、バイオポリマーの主鎖の緩和に起因して生じ、概して、それらのバイオポリマーのガラス遷移緩和と称される。Maxwell-Wagner-Sillar(MWS)緩和は、概して、異なる誘電率ベースの分子を有する、材料の界面において捕捉する電荷に起因して、生物学的組織内で非常に低周波数において生じる。周波数ベースのMWSは、虚誘電率を使用して見出すことが、困難である。しかしながら、電気係数、誘電率の逆εは、異なる緩和、特に、ポリマーおよびナノコンポジットにおけるMWSおよび結晶損失を定義するために使用されることができる。数学的に、以下によって表される。
【数8】
【0150】
式中、M’およびM”は、電気係数の実数および虚数の成分であり、これは、剛性率に類似する。ε’およびε”は、生物学的組織の実および虚誘電率である。
【0151】
図9Cは、(コントローラから出力されたアブレーションパターンに基づいて)標的組織内の誘電緩和現象/挙動を誘出するための具体的周波数に調整された標的部位へのエネルギーの送達を図示する、ブロック図である。エンドエフェクタからのエネルギー出力のレベルは、周辺または隣接非標的組織または構造への損傷を最小限にする、および/または防止しながら、標的組織を療法的に変調させる(例えば、アブレートする)ために十分である、療法的エネルギーレベルにあり得る。特に、エンドエフェクタから送達されるべきエネルギーは、標的組織の具体的緩和パターンと関連付けられる、標的周波数に調整される。標的周波数は、そこで標的組織が、近傍緩和現象挙動を呈し、非標的組織が緩和現象挙動を呈しない、周波数である。特に、標的周波数に調整された、アブレーションエネルギーの送達は、非標的組織の細胞膜および標的部位における構造の周囲を通過しながら、標的組織のみと関連付けられる、1つ以上の細胞の膜を貫通する(それを通して通過する)。
【0152】
例えば、いくつかの実施形態では、治療されるべき状態は、末梢神経学的状態を含んでもよい。末梢神経学的状態は、鼻副鼻腔炎等の鼻用状態と関連付けられてもよい。故に、いくつかの実施形態では、標的部位は、患者の副鼻腔空洞(例えば、蝶口蓋孔に近接するまたは下方にある)内にあり、標的組織は、鼻副鼻腔炎と関連付けられる神経組織(すなわち、副鼻腔空洞内で粘液産生および/または粘膜充血要素を神経支配する神経組織)である。結果として、アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的組織(すなわち、神経組織)をアブレートし、標的部位における周辺または隣接非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある。より具体的には、図10に図示されるように、エネルギー出力(すなわち、電気療法的刺激の送達)は、送達されるエネルギーが、非標的組織を回避しながら、着目組織を標的化するように構成される、具体的周波数にあるように、着目組織の誘電緩和パターン(すなわち、本事例では、神経組織)に基づく(すなわち、エネルギーは、標的組織のみの誘電緩和現象と関連付けられる、周波数レベルに調整され、それによって、標的組織の細胞膜を貫通する)。
【0153】
図10は、標的部位へのエネルギーの送達を図示する、ブロック図であり、具体的には、標的周波数に調整されているエネルギーの結果として、標的組織の細胞の膜を通した電流の流動(近傍緩和現象/挙動)と、非標的組織の細胞の膜の周囲の電流の流動(近傍緩和現象/挙動を呈しない)とを図示する。
【0154】
アブレーションエネルギーの送達は、患者の副鼻腔への複数の神経信号の途絶をもたらす、および/または患者の副鼻腔内の局所低酸素症、粘液産生、ならびに/もしくは粘膜充血要素をもたらし得る。なおも依然として、アブレーションエネルギーの送達は、患者の口蓋骨の孔および/または微小孔における鼻粘膜を神経支配する、節後副交感神経の療法的変調をもたらし得る。特に、アブレーションエネルギーの送達は、口蓋骨の孔および微小孔を通して延在する、神経枝の多遮断点を引き起こす。なおも依然として、いくつかの実施形態では、アブレーションエネルギーの送達は、鼻内で粘液産生および/または粘膜充血要素と関連付けられる1つ以上の血管内で血栓形成を引き起こし得る。粘液産生および/または粘膜充血要素の結果として生じる局所低酸素症は、減少された粘膜充血をもたらし、それによって、患者の鼻道を通して体積流量を増加させ得る。
【0155】
故に、電気刺激エネルギーは、高度に標的化された様式で着目組織に印加され、(血管等の重要器官または組織を含み得る)非標的組織または構造を回避し、周辺組織構造が効果的な創傷治癒のために健康なままであることを可能にしながら、標的組織を選択的に変調させるために、所望の効果(すなわち、神経変調、アブレーション、病変形成等)を誘出することができる。
【0156】
そのように、本発明は、種々の組織タイプから成る標的部位における電気療法的刺激の印加を伴う手技の間、非標的組織に不要な付随的損傷を引き起こす問題を解決する。特に、本システムおよび方法は、治療に先立って、組織タイプを特性評価および識別し、さらに、それらの意図される標的組織のみに近傍緩和現象を呈させるように、送達されるべき具体的レベルのエネルギー(すなわち、具体的標的周波数)を識別し、したがって、非標的組織が、無傷のままであり、付随的損傷を回避しながら、治療のためのエネルギーを受容することが可能である。
【0157】
さらに、図9Cを参照して、エンドエフェクタ114は、治療の間および/または後に組織性質を感知し続け得ることに留意されたい。エンドエフェクタ214からのそのような感知されたデータはさらに、任意の所与の場所における標的組織への療法的レベルにおける刺激エネルギーの影響と関連付けられるフィードバックデータを含むことができる。例えば、フィードバックデータ(神経組織の療法的神経変調の間に感知される)は、複数の電極244のうちの1つ以上からの初期エネルギーの送達の間および/または後の標的組織のアブレーションの有効性と関連付けられ得る。故に、ある実施形態では、コンソール104は、(コントローラ107、監視システム108、および評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)そのようなフィードバックデータを処理し、治療を受ける標的組織のある性質(すなわち、組織温度、組織インピーダンス等)が、不可逆的組織損傷に関する事前判定された閾値に到達するかどうかを判定するように構成される。
【0158】
電極244は、(評価/フィードバックアルゴリズム110と併せて)コントローラ107によって独立して制御およびアクティブ化され、それによって、相互から独立してエネルギーを送達するように構成される。故に、コントローラ107は、少なくとも部分的にフィードバックデータに基づいて、初期レベルのエネルギーが送達された後に、1つ以上の電極244に関して個別にエネルギー出力を調整することができる。例えば、いったん閾値に到達されると、療法的神経刺激エネルギーの印加は、組織が無傷のままであることを可能にするように終了されることができる。他の実施形態では、閾値に到達されていない場合、コントローラは、そのような閾値に到達されるまで、所与の電極244へのエネルギー出力を維持する、低減させる、または増加させることができる。故に、任意の所与の電極244のエネルギー送達は、エンドエフェクタ214に動作可能に結合されるコンソール(例えば、図1Aのコンソール104)上に記憶された評価/フィードバックアルゴリズム(例えば、図1Aの評価/フィードバックアルゴリズム110)に基づいて、自動的に調整されることができる。例えば、電極244のうちの少なくともいくつかは、個別の場所に関して受信されるフィードバックデータに基づいて、個別の位置における神経組織をアブレートするために十分な個別の位置において送達されるべき異なるレベルのエネルギーを有してもよい。
【0159】
例えば、いくつかの実施形態では、コントローラ107は、少なくとも部分的に受信されるフィードバックデータに基づいて、初期レベルのエネルギーが送達された後に、複数の電極244のそれぞれからのエネルギー出力を調整するように構成される。フィードバックデータは、複数の電極のそれぞれからの初期エネルギーの送達の間および/または後の各位置における神経組織のアブレーションの有効性と関連付けられ得る。フィードバックデータは、個別の位置における神経組織と関連付けられる1つ以上の性質を含む。1つ以上の性質は、限定ではないが、生理学的性質、生体電気性質、および熱的性質を含んでもよい。例えば、能動および受動生体電気性質は、限定ではないが、複素インピーダンス、抵抗、リアクタンス、静電容量、インダクタンス、複素、実、および虚の誘電率、伝導率、神経発火電圧、神経発火電流、脱分極、過分極、磁場、および誘導起電力を含んでもよい。
【0160】
図11は、状態を治療するための方法500の一実施形態を図示する、フロー図である。状態は、例えば、患者の末梢神経学的状態を含んでもよい。方法500は、複数の電極を含む、エンドエフェクタを備える、デバイスと、デバイスと動作可能に関連付けられる、コントローラとを提供すること(動作510)を含む。方法500はさらに、患者と関連付けられる標的部位にエンドエフェクタを位置付けること(動作520)と、コントローラを介して、データを標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質と関連付けられるデバイスから受信すること(動作530)とを含む。
【0161】
生体電気性質は、限定ではないが、複素インピーダンス、抵抗、リアクタンス、静電容量、インダクタンス、誘電率、伝導率、誘電性質、筋肉または神経発火電圧、筋肉または神経発火電流、脱分極、過分極、磁場、誘導起電力、およびそれらの組み合わせを含んでもよい。誘電性質は、例えば、少なくとも複素相対誘電率を含んでもよい。いくつかの実施形態では、複数の電極のサブセットが、標的部位における個別の位置に、ある周波数/波形における非療法的刺激エネルギーを送達し、それによって、標的部位における1つ以上の組織の生体電気性質を感知するように構成されることに留意されたい。
【0162】
方法500はさらに、コントローラを介して、データを処理し、標的部位における1つ以上の組織のそれぞれのタイプを識別し、さらに、1つ以上の識別された組織タイプのそれぞれの誘電緩和パターンを識別すること(動作540)を含む。
【0163】
データの処理は、例えば、a)デバイスから受信されたデータを、複数の既知の組織タイプと関連付けられる電気シグネチャデータと比較することと、(b)(i)教師付きおよび/または(ii)教師なしの訓練された神経回路網を使用することとを含んでもよい。例えば、コントローラは、例えば、組織データ(すなわち、標的部位における組織と関連付けられる、治療デバイスから受信されるデータ)を、データベース内に記憶される既知の組織タイプのプロファイルと比較するように構成されてもよい。各プロファイルは、そこで組織がこれらの緩和現象/挙動を呈する、概して、組織の異なる緩和現象/挙動および具体的周波数値を含む、概して、既知の組織タイプの生理学的、組織学的、および生体電気性質を含む、既知の組織タイプを特性評価する、電気シグネチャデータを含んでもよい。
【0164】
方法500はさらに、コントローラを介して、識別された誘電緩和パターンに基づいて、エンドエフェクタの複数の電極のうちの1つ以上によって送達されるべきアブレーションパターンを判定することを含む。アブレーションパターンと関連付けられる、アブレーションエネルギーは、標的組織をアブレートし、標的部位における周辺または隣接非標的組織への付随的損傷を最小限にする、および/または防止するために十分なレベルにある(動作550)。アブレーションエネルギーは、標的組織の緩和パターンと関連付けられる、標的周波数に調整される。標的周波数は、そこで標的組織が、緩和現象挙動を呈し、非標的組織は、緩和現象挙動を呈しない、周波数を備える。特に、標的周波数に調整される、アブレーションエネルギーの送達は、標的組織のみと関連付けられる、1つ以上の細胞の細胞膜を貫通する。
【0165】
いくつかの実施形態では、状態は、末梢神経学的状態を含む。末梢神経学的状態は、患者の鼻状態または非鼻状態と関連付けられてもよい。例えば、非鼻用状態は、心房細動(AF)を含んでもよい。いくつかの実施形態では、鼻用状態は、鼻副鼻腔炎を含んでもよい。故に、いくつかの実施形態では、標的部位は、患者の副鼻腔内にある。アブレーションエネルギーの送達は、患者の副鼻腔への複数の神経信号の途絶をもたらす、および/または患者の副鼻腔内の局所低酸素症、粘液産生、ならびに/もしくは粘膜充血要素をもたらし得る。標的組織は、蝶口蓋孔に近接する、またはその下方にある。なおも依然として、アブレーションエネルギーの送達は、患者の口蓋骨の孔および/または微小孔における鼻粘膜を神経支配する、節後副交感神経の療法的変調をもたらし得る。特に、アブレーションエネルギーの送達は、口蓋骨の孔および微小孔を通して延在する、神経枝の多遮断点を引き起こす。なおも依然として、いくつかの実施形態では、アブレーションエネルギーの送達は、鼻内で粘液産生および/または粘膜充血要素と関連付けられる1つ以上の血管内で血栓形成を引き起こし得る。粘液産生および/または粘膜充血要素の結果として生じる局所低酸素症は、減少された粘膜充血をもたらし、それによって、患者の鼻道を通して体積流量を増加させ得る。
【0166】
図12は、本明細書に説明される方法のうちのいくつかを実施するための、最も着目すべきこととして、組織の生体電気性質を感知することによって、標的部位における組織を特徴付けるための、例示的プローブ/電極設定の概略図であり、そのような特性評価は、存在する具体的タイプの組織を識別することと、さらに、識別されたタイプの組織のための誘電緩和現象/挙動パターンを判定することとを含む。
【0167】
図12Aは、標的部位における組織の後続特性評価に関する、組織の生体電気性質を感知するための3プローブ/電極システムの一実施形態の概略図であり、そのような特性評価は、存在する具体的タイプの組織を識別することと、さらに、識別されたタイプの組織のための誘電緩和現象/挙動パターンを判定することとを含む。
【0168】
図12および12Aの略図は、3プローブ/電極システムを図示するが、本発明のシステムおよび方法は、本明細書に説明されるように、誘電緩和現象/挙動パターンまたは他の性質の判定の目的のために、着目組織(標的組織または非標的組織のいずれか)から生体電気データを取得するための任意の数のプローブ/電極を含み得ることに留意されたい。例えば、実験設定が、2、3、4、またはそれを上回るプローブ/電極の使用を含んでもよい。
【0169】
図12および12Aを参照して、実験設定は、3電極アセンブリ(参照電極、対電極、および活性作業電極)を含む。3プローブ/電極アセンブリを含む、そのような設定が、種々の組織タイプの誘電性質を取得するために使用され、そのようなデータが、図13、14、15、および16を参照して、本明細書にさらに詳細に説明されるであろう。
【0170】
図13Aおよび13Bは、周波数に対する損失正接値のプロット(図13A)と、周波数に対する虚電気係数のプロット(図13B)とを含む、2つの組織タイプ(脊髄および筋肉組織)の誘電性質を図示する、グラフである。図示されるように、緩和現象/挙動は、概して、筋肉組織と比較して、組織神経に関して約10kHz早く観察される。
【0171】
図14A-14Hは、図13Aおよび13Bの2つの組織タイプ(脊髄および筋肉組織)のための周波数に対する(Havriliak-Negami(HN)緩和現象モデルに基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。
【0172】
図14Aおよび14Bは、上側脊髄組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。図14Cおよび14Dは、下部脊髄組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。図14Eおよび14Fは、下側背部筋肉組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。図14Gおよび14Hは、上側背部筋肉組織のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。
【0173】
下記は、10kHz~80kHzで取得されたデータが、訓練されるとき、具体的組織タイプのために取得される、実および虚誘電率値または具体的HN緩和パラメータに対して、組織のそれぞれのための具体的データ点を提供する、表(表1)である。
【表1-1】
【表1-2】
【0174】
上側脊髄のHN緩和周波数は、実および虚誘電率値の2つの独立方程式が、10kHz~80kHzにわたって訓練されるとき、約1kHzで生じることが観察された。下部脊髄のHN緩和が、実および虚誘電率値の2つの独立方程式が、10kHz~80kHzにわたって訓練されるとき、約2.6kHzで生じることが、さらに観察された。
【0175】
脊髄の顕著な特徴は、適合パラメータαが0に近く、βは1に近いため、データが、10kHz~80kHzで訓練されるとき、伝導挙動は、オーム伝導率であることである。図15Aおよび15Bは、周波数に対する損失正接値のプロット(図15A)と、周波数に対する虚電気係数のプロット(図15B)とを含む、組織(鼻甲介組織)の異なる部分の誘電性質を図示する、グラフである。鼻甲介の異なる部分は、鼻甲介の端部と、鼻甲介の中心と、血管に隣接する鼻甲介の部分とを含む。観察されたデータから(タン・デルタおよび緩和のピークに基づいて)、鼻甲介の中心が、概して、下部脊髄に性質上類似する、神経組織の束を含むため、鼻甲介の中心のみが、神経組織の緩和挙動に続いて現れた。
【0176】
図16A-16Fは、図15Aおよび15Bの鼻甲介組織の異なる部分のための周波数に対する(HN緩和現象に基づく)複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。
【0177】
図16Aおよび16Bは、鼻甲介組織の端部のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。図16Cおよび16Dは、鼻甲介組織の中心のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する。図16Eおよび16Fは、血管の近傍の鼻甲介組織の部分のための周波数に対する複素相対誘電率の実数および虚数値のプロットを図示する、グラフである。
【0178】
下記は、10kHz~80kHzで取得されたデータが、訓練されるとき、具体的組織タイプのために取得される、実および虚誘電率値または具体的HN緩和パラメータに対して、組織のそれぞれのための具体的データ点を提供する、表(表2)である。
【表2】
【0179】
故に、本発明は、種々の組織タイプから成る標的部位における電気療法的刺激の印加を伴う手技の間、非標的組織に不要な付随的損傷を引き起こす問題を解決する。特に、本システムおよび方法は、治療に先立って、組織タイプを特性評価および識別し、さらに、それらの意図される標的組織のみに誘電緩和現象を呈させるように、送達されるべき具体的レベルのエネルギー(すなわち、具体的標的周波数)を識別し、したがって、非標的組織が、無傷のままであり、付随的損傷を回避しながら、治療のためのエネルギーを受容することが可能である。
【0180】
以下は、ひいては、例えば、解剖学的構造および機能の検出、神経識別およびマッピング、ならびに解剖学的マッピングを可能にする、限定ではないが、神経変調監視、フィードバック、およびマッピング能力を含む、本発明のシステムおよび方法の種々の能力の詳細な説明を提供する。
【0181】
(神経変調監視、フィードバック、およびマッピング能力)
前述で説明されたように、システム100は、デバイス102が接続されることになる、コンソール104を含む。コンソール104は、限定ではないが、デバイス102の制御、監視、供給、および/または別様に支持動作を含み得る、デバイス102のための種々の機能を提供するように構成される。コンソール104はさらに、エンドエフェクタ(214、314)を介した標的部位における組織または神経への送達のための選択された形態および/または大きさのエネルギーを発生させるように構成されることができ、したがって、コンソール104は、デバイス102の治療モダリティに応じて、異なる構成を有してもよい。例えば、デバイス102が、電極ベース、熱要素ベース、および/またはトランスデューサベースの治療のために構成されるとき、コンソール104は、RFエネルギー(例えば、単極、双極、または多極RFエネルギー)、パルス電気エネルギー、マイクロ波エネルギー、光学エネルギー、超音波エネルギー(例えば、管腔内に送達される超音波ならびに/もしくはHIFU)、直接熱エネルギー、放射線(例えば、赤外線、可視、および/またはガンマ放射線)、ならびに/もしくは別の好適なタイプのエネルギーを発生させるように構成される、エネルギー発生器106を含む。デバイス102が、凍結療法的治療のために構成されるとき、コンソール104は、冷媒リザーバ(図示せず)を含むことができ、デバイス102に冷媒を供給するように構成されることができる。同様に、デバイス102が、化学ベースの治療(例えば、薬物注入)のために構成されるとき、コンソール104は、化学リザーバ(図示せず)を含むことができ、デバイス102に1つ以上の化学物質を供給するように構成されることができる。
【0182】
いくつかの実施形態では、コンソール104は、デバイス102に通信可能に結合される、コントローラ107を含んでもよい。しかしながら、本明細書に説明される実施形態では、コントローラ107は、概して、デバイス102のハンドル118によって担持され、その内側に提供されてもよい。コントローラ107は、直接、および/またはコンソール104を介して、エンドエフェクタ(214、314)によって提供される1つ以上の電極の動作を開始、終了、ならびに/もしくは調節するように構成される。例えば、コントローラ107は、自動制御アルゴリズムを実行するように、および/またはオペレータ(例えば、外科医または他の医療専門家もしくは臨床医)から制御命令を受信するように構成されることができる。例えば、コントローラ107および/またはコンソール104の他のコンポーネント(例えば、プロセッサ、メモリ等)は、コントローラ107によって実行されると、デバイス102にある機能を実施させる(例えば、具体的様式でエネルギーを印加させる、インピーダンスを検出させる、温度を検出させる、神経場所または解剖学的構造を検出させる、神経マッピングを実施させる等)、命令を搬送する、コンピュータ可読媒体を含むことができる。メモリは、揮発性および不揮発性記憶のための種々のハードウェアデバイスのうちの1つ以上を含み、読取専用および書込可能メモリの両方を含むことができる。例えば、メモリは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、CPUレジスタ、読取専用メモリ(ROM)、およびフラッシュメモリ、ハードドライブ、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD、磁気記憶デバイス、テープドライブ、デバイスバッファ等の書込可能不揮発性メモリを備えることができる。メモリは、下部のハードウェアから切り離された伝搬信号ではなく、メモリは、したがって、非一過性である。
【0183】
コンソール104はさらに、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110を介して、治療手技の前、間、および/または後に、フィードバックをオペレータに提供するように構成されてもよい。例えば、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110は、治療部位における神経の場所、治療部位における他の解剖学的構造(例えば、血管)の場所、監視ならびに変調の間の治療部位における温度、および/または治療部位における神経への療法的神経変調の影響と関連付けられる情報を提供するように構成されることができる。ある実施形態では、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110は、治療の有効性を確認する、および/またはシステム100の所望の性能を向上させるための特徴を含むことができる。例えば、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110は、コントローラ107およびエンドエフェクタ(214、314)と併せて、療法の間に治療部位における神経活動および/または温度を監視し、神経活動および/または温度が事前判定された最大値(例えば、神経活動の閾値低減、RFエネルギーを印加するときの閾値最高温度、または凍結療法を提供するときの閾値最低温度)に到達するときに、エネルギー送達を自動的に止めるように構成されることができる。他の実施形態では、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110は、コントローラ107と併せて、事前判定された最大時間、(すなわち、基準インピーダンス測定と比較して)標的組織の事前判定された最大インピーダンスまたは抵抗上昇、標的組織の事前判定された最大インピーダンス、および/または自律機能と関連付けられるバイオマーカに関する他の閾値後に、治療を自動的に終了するように構成されることができる。システム100の動作と関連付けられる本および他の情報は、コンソール104上のディスプレイ112(例えば、モニタ、タッチスクリーン、ユーザインターフェース等)および/またはコンソール104に通信可能に結合される別個のディスプレイ(図示せず)を介して、オペレータに通信されることができる。
【0184】
種々の実施形態では、システム100のエンドエフェクタ(214、314)および/または他の部分は、標的部位における組織の種々の生体電気パラメータを検出するように構成されることができ、本情報は、標的部位における生体構造(例えば、組織タイプ、組織場所、血管系、骨構造、孔、副鼻腔等)を判定する、神経組織を特定する、異なるタイプの神経組織を鑑別する、標的部位において解剖学的および/または神経構造をマッピングする、ならびに/もしくは患者の生体構造に対するエンドエフェクタ(214、314)の神経変調パターンを識別するために、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110によって使用されることができる。例えば、エンドエフェクタ(214、314)は、標的領域内の神経線維および/または他の解剖学的構造の存在を示す、抵抗、複素電気インピーダンス、誘電性質、温度、ならびに/もしくは他の性質を検出するために使用されることができる。ある実施形態では、エンドエフェクタ(214、314)は、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110とともに、組織(すなわち、負荷)の(インピーダンスではなく)抵抗を判定し、組織の特性をより正確に識別するために使用されることができる。マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110は、(例えば、電極(244、336)を介して)負荷の実際の電力および電流を検出することによって、組織の抵抗を判定することができる。
【0185】
いくつかの実施形態では、システム100は、1~2,000Ωの範囲に関して100分の1オーム(例えば、0.01Ω)までの精度測定等の高度な正確度および非常に高度な精度で、抵抗測定を提供する。システム100によって提供される高度な抵抗検出正確度は、神経組織の発火、神経組織と他の解剖学的構造(例えば、血管)との間の差異、および異なるタイプの神経組織さえも含む、サブマイクロスケール構造および事象の検出を可能にする。本情報は、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズムおよび/またはコントローラ107によって分析され、マッピングされた解剖学的構造に対するアブレーションパターンに基づいて、治療部位における神経組織および他の解剖学的構造を識別する、および/または予測される神経変調領域を示すように、(例えば、ディスプレイ112上の)高分解能空間グリッドおよび/または他のタイプのディスプレイを介してオペレータに通信されることができる。
【0186】
前述で説明されたように、ある実施形態では、各電極(244、336)は、他の電極(244、336)から独立して動作されることができる。例えば、各電極は、個別にアクティブ化されることができ、各電極の極性および振幅は、オペレータまたはコントローラ107によって実行される制御アルゴリズムによって選択されることができる。電極(244、336)の選択的独立制御は、エンドエフェクタ(214、314)が、情報を検出し、RFエネルギーを高度にカスタマイズされた領域に送達することを可能にする。例えば、電極(244、336)の選択部分が、具体的領域内の具体的神経線維を標的化するようにアクティブ化されることができる一方、他の電極(244、336)は、非アクティブのままである。ある実施形態では、例えば、電極(244、336)は、標的部位における組織に隣接する支柱の一部を横断してアクティブ化されてもよく、標的組織に近接しない電極(244、336)は、非アクティブのままであり、エネルギーを非標的組織に印加することを回避し得る。加えて、電極(244、336)は、(例えば、多重化を介して)異なる時間に具体的パターンである領域を刺激する、または療法的に変調させるように、個別にアクティブ化されることができ、これは、着目ゾーンを横断する解剖学的パラメータの検出および/または調整された療法的神経変調を促進する。
【0187】
電極(244、336)は、電極(244、336)からシャフト116を通してエネルギー発生器106まで延在するワイヤ(図示せず)を介して、エネルギー発生器106に電気的に結合されることができる。電極(244、336)がそれぞれ、独立して制御されるとき、各電極(244、336)は、シャフト116を通して延在する、対応するワイヤに結合する。これは、各電極(244、336)が、刺激または神経変調のために独立してアクティブ化され、精密なアブレーションパターンを提供すること、および/またはコンソール104を介して個別に検出され、神経もしくは解剖学的検出ならびにマッピングのために各電極(244、336)に特有の情報を提供することを可能にする。他の実施形態では、複数の電極(244、336)が、ともに制御されることができ、したがって、複数の電極(244、336)は、シャフト116を通して延在する同一のワイヤに電気的に結合されることができる。エネルギー発生器16および/またはそれに動作可能に結合されるコンポーネント(例えば、制御モジュール)は、電極(244、336)のアクティブ化を制御するためのカスタムアルゴリズムを含むことができる。例えば、RF発生器は、約200~100WにおけるRF電力を電極(244、336)に送達し、治療部位および/または標的神経の識別された場所に対するエンドエフェクタ(214、314)の位置に基づいて選択される事前判定されたパターンで電極(244、336)をアクティブ化しながら、そうすることができる。他の実施形態では、エネルギー発生器106は、刺激のためのより低いレベル(例えば、1W未満、1~5W、5~15W、15~50W、50~150W等)および/またはより高い電力レベルにおいて電力を送達する。例えば、エネルギー発生器106は、電極(244、336)を介して1~3Wの刺激エネルギーパルスを送達し、組織内の具体的標的を刺激するように構成されることができる。
【0188】
前述で説明されたように、エンドエフェクタ(214、314)はさらに、支柱および/またはエンドエフェクタ(214、314)の他の部分上に配置され、シャフト116を通して延在するワイヤ(図示せず)を介してコンソール104に電気的に結合される、1つ以上の温度センサを含むことができる。種々の実施形態では、温度センサは、標的部位における組織と電極(244、336)との間の界面における温度を検出するように、電極(244、336)に近接して位置付けられることができる。他の実施形態では、温度センサは、標的部位における組織を貫通し(例えば、貫通熱電対)、組織内のある深度において温度を検出することができる。温度測定は、組織への療法的神経変調の影響に関するフィードバックをオペレータまたはシステムに提供することができる。例えば、ある実施形態では、オペレータは、治療部位における組織への損傷を防止する、低減させることを所望し得、したがって、温度センサは、組織温度が不可逆的組織損傷に関する事前判定された閾値に到達するかどうかを判定するために使用されることができる。いったん閾値に到達されると、療法的神経変調エネルギーの印加は、組織が無傷のままであることを可能にし、創傷治癒の間に有意な組織脱落を回避するように終了されることができる。ある実施形態では、エネルギー送達は、温度センサに動作可能に結合されるコンソール104上に記憶されたマッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110に基づいて、自動的に終了することができる。
【0189】
ある実施形態では、システム100は、血管等の非標的構造への悪影響を回避しながら、療法的神経変調が標的神経組織を含む精密な領域に適用され得るように、療法の前に神経組織および/または他の解剖学的構造の場所ならびに/もしくは形態を判定することができる。下記にさらに詳細に説明されるように、システム100は、着目ゾーン内の種々の生体電気パラメータを検出し、種々の神経組織(例えば、異なるタイプの神経組織、神経指向性等)および/または他の組織(例えば、腺構造、血管、骨領域等)の場所ならびに形態を判定することができる。いくつかの実施形態では、システム100は、生体電位を測定するように構成される。そうするために、電極(244、336)のうちの1つ以上が、着目領域(例えば、治療部位)における上皮表面と接触して設置される。電気刺激(例えば、1つ以上の周波数における一定もしくはパルス電流)が、治療部位もしくはその近傍の1つ以上の電極(244、336)によって組織に印加され、エンドエフェクタ(214、314)の種々の対の電極(244、336)の間の種々の異なる周波数における電圧および/または電流差が、着目領域内の異なるタイプの組織(例えば、血管、神経組織、ならびに/もしくは他のタイプの組織)を識別するために使用され得る、検出された生体電位のスペクトルプロファイルまたはマップを生成するように測定されてもよい。例えば、電流(すなわち、直流または交流)が、相互に隣接する一対の電極(244、336)に印加されることができ、他の対の隣接する電極(244、336)の間の結果として生じた電圧および/または電流が、測定される。電流注入電極(244、336)および測定電極(244、336)は、隣接する必要はなく、2つの電流注入電極(244、336)の間の間隔を修正することは、記録された信号の深度に影響を及ぼし得ることを理解されたい。例えば、密接に離間された電流注入電極(244、336)は、より浅い深度における組織と関連付けられる記録された信号を提供する、より遠く離間された電流注入電極(244、336)よりも組織の表面から深い組織と関連付けられる、記録された信号を提供した。異なる間隔を伴う電極対からの記録は、解剖学的構造の深度および位置特定についての付加的情報を提供するようにマージされてもよい。
【0190】
さらに、着目領域における組織の複素インピーダンスおよび/または抵抗測定が、生体電気測定値によって提供される電流・電圧データから直接、検出されることができる一方、異なるレベルの周波数電流が、(例えば、エンドエフェクタ(214、314)を介して)組織に印加され、本情報は、周波数微分再構築の使用によって、神経および解剖学的構造をマッピングするために使用されることができる。異なる周波数において刺激を印加することは、異なる層別化された層または細胞体もしくは群を標的化するであろう。高い信号周波数(例えば、電気注入または刺激)において、例えば、神経構造の細胞膜は、電流の流れを妨げず、電流は、細胞膜を直接通して通過する。この場合、結果として生じた測定(例えば、インピーダンス、抵抗、静電容量、および/または誘導)は、細胞内および細胞外組織ならびに液、イオン、タンパク質、および多糖類の関数である。低い信号周波数において、膜は、電流の流れを妨げ、細胞の形状および形態または細胞密度もしくは細胞間隔等の組織の異なる決定的な特性を提供する。刺激周波数は、メガヘルツ範囲内、キロヘルツ範囲(例えば、400~500kHz、450~480kHz等)、および/または刺激されている組織ならびに使用されているデバイスの特性に同調している他の周波数であり得る。着目ゾーンからの検出された複素インピーダンスまたは抵抗レベルは、刺激周波数に基づいてある構造を可視化するように、(例えば、ディスプレイ112を介して)ユーザに表示されることができる。
【0191】
さらに、患者の所与の領域またはゾーン内の解剖学的構造の固有の形態および組成が、異なる周波数に異なるように反応し、したがって、具体的周波数が、非常に具体的な構造を識別するように選択されることができる。例えば、解剖学的マッピングのための標的構造の形態または組成は、組織の細胞または他の構造が膜状である、層別化されている、および/または環状であるかどうかに依存し得る。種々の実施形態では、印加された刺激信号は、髄鞘形成のレベルおよび/または髄鞘形成の形態等の具体的神経構造に同調している、事前判定された周波数を有することができる。例えば、第2の軸索副交感神経構造は、交感神経または他の構造よりも不良に有髄であり、したがって、交感神経よりも選択された周波数に対して区別可能な応答(例えば、複素インピーダンス、抵抗等)を有するであろう。故に、異なる周波数を伴う信号を標的部位に印加することは、標的副交感神経を非標的感覚神経と区別し、したがって、療法の前もしくは後の神経マッピングおよび/または療法後の神経評価のために、極めて具体的な標的部位を提供することができる。いくつかの実施形態では、神経および/または解剖学的マッピングは、測定が、最初に、第1の周波数を有する注入信号への応答に基づいて、次いで、再度、第1の周波数と異なる第2の周波数を有する注入信号に基づいて、得られるように、少なくとも2つの異なる周波数を用いて着目領域におけるデータを測定し、ある解剖学的構造を識別することを含む。例えば、肥大した(すなわち、疾患状態特性)粘膜下標的が、「正常な」(すなわち、健康な)組織と比較して、異なる電気伝導率または誘電率を有する、2つの周波数が存在する。複素伝導率が、1つ以上の測定された生理学的パラメータ(例えば、複素インピーダンス、抵抗、誘電測定、双極子測定等)および/または1つ以上の自信を持って把握されている属性もしくはシグネチャの観察に基づいて、判定されてもよい。さらに、システム100はまた、標的神経構造に同調している1つ以上の事前判定された周波数において、電極(244、336)を介して神経変調エネルギーを印加し、周波数と関連付けられる選択された神経構造の高度に標的化されたアブレーションを提供することもできる。本高度に標的化された神経変調はまた、標的信号(標的神経構造に同調された周波数を有する)が非標的構造に同一の変調効果を及ぼさないであろうため、非標的部位/構造(例えば、血管)への神経変調療法の付随的効果を低減させる。
【0192】
故に、複素インピーダンスおよび抵抗等の生体電気性質が、1つ以上の治療パラメータを誘導するために、神経変調療法の前、間、および/または後に、システム100によって使用されることができる。例えば、治療の前、間、および/または後に、インピーダンスまたは抵抗測定が、1つ以上の電極(244、336)と隣接組織との間の接触を確認ならびに/もしくは検出するために使用されてもよい。インピーダンスまたは抵抗測定はまた、記録されたスペクトルが予期される組織タイプと一致する形状を有するかどうか、および/または連続的に収集されたスペクトルが再現可能であったかどうかを判定することによって、電極(244、336)が標的組織タイプに対して適切に設置されるかどうかを検出するために、使用されることもできる。いくつかの実施形態では、インピーダンスまたは抵抗測定は、治療ゾーン(例えば、妨害されることになる具体的神経組織)のための境界、解剖学的目印、回避するべき解剖学的構造(例えば、妨害されるべきではない血管構造または神経組織)、およびエネルギーを組織に送達することの他の側面を識別するために、使用されてもよい。
【0193】
生体電気情報が、標的部位における異なる解剖学的特徴の組織のスペクトルプロファイルまたはマップを生成するために使用されることができ、解剖学的マッピングは、好適な治療部位の選択を誘導するように、ディスプレイ112および/または他のユーザインターフェースを介して、3Dもしくは2D画像内で可視化されることができる。本神経および解剖学的マッピングは、システム100が、患者の所与のゾーンまたは領域内の多数の神経進入点における粘膜に神経を分布させる、節後副交感神経線維を正確に検出し、療法的に変調させることを可能にする。さらに、SPF、副孔、および微小孔の場所を示す、いずれの明確な解剖学的マーカも存在しないため、神経マッピングは、オペレータが、粘膜の複雑な解離がないと別様に識別不可能であろう、神経を識別し、療法的に変調させることを可能にする。加えて、解剖学的マッピングはまた、臨床医が、臨床医が療法的神経変調の間に回避することを所望し得る、ある構造(例えば、ある動脈)を識別することも可能にする。システム100によって検出される神経および解剖学的生体電気性質はまた、治療部位への療法的神経変調のリアルタイム効果を判定するように、治療の間および後に使用されることもできる。例えば、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110はまた、療法的神経変調の前および後に、検出された神経場所および/または活動を比較し、神経活動の変化を事前判定された閾値と比較し、療法的神経変調の印加が治療部位を横断して効果的であったかどうかを査定することもできる。
【0194】
種々の実施形態では、システム100はまた、具体的温度において電極(244、336)の予期される療法的変調パターンをマッピングし、ある実施形態では、標的部位の解剖学的マッピングに基づいて組織性質を考慮するように構成されることもできる。例えば、システム100は、標的部位および/または構造に応じて、45℃等温線、55℃等温線、65℃等温線、ならびに/もしくは他の温度/範囲(例えば、45℃~70℃に及ぶ、またはそれよりも高い温度)において具体的電極アブレーションパターンのアブレーションパターンをマッピングするように構成されることができる。
【0195】
システム100は、ディスプレイ112を介して、エンドエフェクタ(214、314)の電極(244、336)のそのような投影されたアブレーションパターンの3次元ビューを提供してもよい。アブレーションパターンマッピングは、各電極(244、336)が周辺組織に及ぼす影響の領域を画定してもよい。影響の領域は、定義された電極アクティブ化パターン(すなわち、任意の所与の支柱上の1つ、2つ、3つ、4つ、またはそれを上回る電極)に基づいて、療法的変調エネルギーに暴露されるであろう組織の領域に対応し得る。換言すると、アブレーションパターンマッピングは、任意の数の電極(244、336)のアブレーションパターン、電極レイアウトの任意の幾何学形状、および/または任意のアブレーションアクティブ化プロトコル(例えば、パルスアクティブ化、多極/連続アクティブ化等)を図示するために使用されることができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、アブレーションパターンは、各電極(244、336)が、個々の電極(244、336)のみを囲繞する影響の領域(すなわち、「ドット」パターン)を有するように、構成されてもよい。他の実施形態では、アブレーションパターンは、2つ以上の電極(244、336)が、ともにリンクし、2つ以上の電極(244、336)の間にピーナッツ様または直線形状を画定する、部分群化された影響の領域を形成し得るようなものであってもよい。さらなる実施形態では、アブレーションパターンは、影響の領域が複数の電極(244、336)に沿って(例えば、各支柱に沿って)延在する、より広範または隣接するパターンをもたらすことができる。なおもさらなる実施形態では、アブレーションパターンは、電極アクティブ化パターン、位相角、標的温度、パルス持続時間、デバイス構造、および/または他の治療パラメータに応じて、異なる影響の領域をもたらし得る。アブレーションパターンの3次元ビューは、臨床医が、エネルギー印加の異なる持続時間、異なる電極アクティブ化シーケンス(例えば、多重化)、異なるパルスシーケンス、異なる温度等温線、および/または他の治療パラメータに基づいて、変化する影響の領域を可視化することを可能にするように、ディスプレイ112ならびに/もしくは他のユーザインターフェースに出力されることができる。本情報は、患者の具体的生体構造のための適切なアブレーションアルゴリズムを判定するために、使用されることができる。他の実施形態では、影響の領域の3次元可視化は、解剖学的マッピングに関して生体電気性質を測定するときに、電極(244、336)がデータを検出する領域を図示するために、使用されることができる。本実施形態では、3次元可視化が、所望される面積内の所望の性質(例えば、インピーダンス、抵抗等)を判定するために使用されるべき電極アクティブ化パターンを判定するために、使用されることができる。ある実施形態では、ドット査定を使用することがより良好であり得る一方、他の実施形態では、線形またはより大きい隣接する領域から情報を検出することがより適切であり得る。
【0197】
いくつかの実施形態では、マッピングされたアブレーションパターンは、療法的に変調される、または別様に療法による影響を受けるであろう構造の種類(例えば、神経組織、血管等)を識別するように、解剖学的マッピング上に重ね合わせられる。着目ゾーン内の前もって識別された解剖学的構造に関連して、予測または計画される神経変調ゾーンのデジタル説明図を含む、画像が、外科医に提供されてもよい。例えば、説明図は、多数の神経組織を示し、予測される神経変調ゾーンに基づいて、療法的に変調されることが予期される神経組織を識別してもよい。予期される療法的に変調された神経組織は、影響を受けていない神経組織からそれらを鑑別するように影を付けられてもよい。他の実施形態では、予期される療法的に変調された神経組織は、異なる色および/または他のインジケータを使用して、影響を受けていない神経組織から鑑別されることができる。さらなる実施形態では、予期される神経変調ゾーンおよび周辺生体構造(解剖学的マッピングに基づく)は、3次元ビューで示される、および/または異なる可視化特徴(例えば、ある解剖学的構造、標的組織の生体電気性質等を識別するための色分け)を含むことができる。組み合わせられた予測されるアブレーションパターンおよび解剖学的マッピングは、臨床医が患者の具体的生体構造のための適切なアブレーションアルゴリズムを選択することを可能にするように、ディスプレイ112および/または他のユーザインターフェースに出力されることができる。
【0198】
システム100によって提供される画像は、臨床医が療法の前にアブレーションパターンを可視化し、アブレーションパターンを調節し、具体的解剖学的構造を標的化する一方、他の構造を回避し、付随的効果を防止することを可能にする。例えば、臨床医は、血管を回避するための治療パターンを選択し、それによって、療法的神経変調エネルギーへの血管の暴露を低減させることができる。これは、血管を損傷または破裂させる危険性を低減させ、したがって、即時または潜在出血を防止する。さらに、神経マッピングによって提供される選択的エネルギー印加は、創傷治癒(例えば、アブレーション後の1~3週間)の間の組織脱落等の療法的神経変調の付随的効果を低減させ、それによって、神経変調手技と関連付けられる吸引の危険性を低減させる。
【0199】
システム100はさらに、標的神経構造に同調されている具体的周波数において(電極(244、336)を介して)神経変調エネルギーを印加し、したがって、非標的構造と比べて所望の神経組織を具体的に標的化するように構成されることができる。例えば、具体的神経変調周波数は、神経マッピングの間に標的構造に対応するものとして識別される周波数に対応することができる。上記に説明されるように、解剖学的構造の固有の形態および組成は、異なる周波数に異なるように反応する。したがって、標的構造に合わせられた周波数同調神経変調エネルギーは、非標的構造に同一の変調効果を及ぼさない。より具体的には、標的特有の周波数において神経変調エネルギーを印加することは、標的神経構造内にイオン撹拌を引き起こし、標的神経組織の透過ポテンシャル差および神経膜ポテンシャルの動的変化(細胞内および細胞外液圧力の差異から生じる)につながる。これは、変性を引き起こし、可能性として、空胞変性、最終的に、標的神経構造における壊死をもたらすが、少なくともいくつかの非標的構造(例えば、血管)に機能的に影響を及ぼすことは予期されない。故に、システム100は、神経構造特有の周波数を使用し、(1)、標的神経構造上に神経変調を具体的に集束させる電極アブレーション構成(例えば、電極幾何学形状および/またはアクティブ化パターン)を計画するための標的神経組織の場所を識別すること、ならびに(2)特徴的神経周波数において神経変調エネルギーを印加し、特徴的神経周波数に応答して神経組織を選択的にアブレートすることの両方を行うことができる。例えば、システム100のエンドエフェクタ(214、314)は、副交感神経線維、交感神経線維、感覚線維、アルファ/ベータ/デルタ線維、C-線維、前述のうちの1つ以上の無酸素末端、非絶縁線維と比べた絶縁線維(線維を伴う領域)、および/または他の神経組織を選択的に刺激する、ならびに/もしくは変調させてもよい。いくつかの実施形態では、システム100はまた、解剖学的マッピングおよび/または療法的変調の間に、所与の組織タイプ内の平滑筋細胞、粘膜下腺、杯細胞、および層別化された細胞領域等の具体的細胞もしくは細胞領域を選択的に標的化してもよい。したがって、システム100は、標的神経組織に特有の極めて選択的な神経変調療法を提供し、非標的構造(例えば、血管)への神経変調療法の付随的効果を低減させる。
【0200】
本開示は、解剖学的マッピングおよび療法的神経変調の方法を提供する。本方法は、着目ゾーン(「着目ゾーン」)においてエンドエフェクタ(すなわち、エンドエフェクタ(214、314))を拡張することを含む。例えば、エンドエフェクタ(214、314)は、電極(244、336)のうちの少なくともいくつかが、着目ゾーンにおける組織と接触して設置されるように、拡張されることができる。拡張されたデバイスは、次いで、電極(244、336)および/または他のセンサを介して、生体電気測定を行い、所望の電極が着目ゾーンにおける組織と適切に接触していることを確実にすることができる。いくつかの実施形態では、例えば、システム100は、電極(244、336)の対を横断してインピーダンスおよび/または抵抗を検出し、所望の電極が組織との適切な表面接触を有すること、ならびに電極(244、336)の全てが適切に機能していることを確認する。
【0201】
本方法は、随意に、電気刺激を組織に印加し、組織の生体電気性質を検出し、組織の基準ノルムを確立することによって、継続する。例えば、本方法は、抵抗、複素インピーダンス、電流、電圧、神経発火率、神経磁場、筋肉活性化、および/または神経組織ならびに/もしくは他の解剖学的構造(例えば、腺構造、血管等)の場所および/または機能を示す他のパラメータを測定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、電極(244、336)は、1つ以上の刺激信号(例えば、パルス信号もしくは一定信号)を着目ゾーンに送信し、神経活動を刺激し、活動電位を開始する。刺激信号は、具体的標的構造の場所の識別を可能にする、具体的標的構造(例えば、具体的神経構造、腺構造、血管)に同調している周波数を有することができる。刺激信号の具体的周波数は、ホスト透過性の関数であり、したがって、一意の周波数を印加することは、組織減衰およびRFエネルギーが透過するであろう組織の中への深度を改変する。例えば、より低い周波数は、典型的には、より高い周波数よりも深く組織の中に透過する。
【0202】
エンドエフェクタ(214、314)の非刺激電極(244、336)の対が、次いで、インピーダンスまたは抵抗等の刺激に応答して生じる、組織の1つ以上の生体電気性質を検出することができる。例えば、電極(例えば、電極(244、336))のアレイが、所望の深度において、および/または所望の領域を横断して生体電気性質を検出し、着目ゾーンにおいて高レベルの空間認識を提供するように、所望のパターン(例えば、電極(244、336)を多重化する)で、ともに選択的にペアリングされることができる。ある実施形態では、電極(244、336)は、アルゴリズム(例えば、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110によって提供される)に従って、時系列様式でともにペアリングされることができる。種々の実施形態では、刺激が、2つ以上の異なる周波数において組織の中に注入されることができ、注入された周波数のそれぞれに応答した、結果として生じた生体電気応答(例えば、活動電位)が、種々の対の電極(244、336)を介して検出されることができる。例えば、解剖学的または神経マッピングアルゴリズムが、エンドエフェクタ(214、314)に、異なる対の電極(244、336)の間の具体的周波数においてパルスRFエネルギーを送達させることができ、結果として生じた生体電気応答が、所望される着目ゾーンが適切にマッピングされる(すなわち、「多重化」)まで、時系列順に記録されることができる。例えば、エンドエフェクタ(214、314)は、事前判定された時間周期(例えば、1~50ミリ秒)にわたって隣接する対の電極(244、336)を介して、第1の周波数において刺激エネルギーを送達することがき、結果として生じた生体電気活動(例えば、抵抗)は、1対以上の他の電極(244、336)(例えば、組織内の変動する深度に到達するように相互から離間される)を介して検出されることができる。エンドエフェクタ(214、314)は、次いで、第1の周波数と異なる第2の周波数において刺激エネルギーを印加することができ、結果として生じた生体電気活動は、他の電極を介して検出されることができる。これは、着目ゾーンが所望の周波数において適切にマッピングされたときに継続することができる。下記にさらに詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、基準組織生体電気性質(例えば、神経発火率)が、静的検出方法を使用して(刺激信号の注入を伴わずに)検出される。
【0203】
基準生体電気性質を検出した後、情報は、着目ゾーンにおいて解剖学的構造および/または機能をマッピングするために使用されることができる。例えば、電極(244、336)によって検出される生体電気性質は、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110を介して報知され得、解剖学的マップは、ディスプレイ112を介してユーザに出力されることができる。いくつかの実施形態では、複素インピーダンス、誘電、または抵抗測定が、副交感神経をマッピングし、随意に、過活動の病的状態時の神経組織を識別するために使用されることができる。生体電気性質はまた、血管、骨、および/または腺構造等の他の非標的構造ならびに一般的生体構造をマッピングするために使用されることもできる。解剖学的場所は、2次元マップ(例えば、相対的強度を図示する、潜在性標的構造の具体的部位を図示する)として、および/または3次元画像として、(例えば、/ディスプレイ112上で)ユーザに提供されることができる。本情報は、サブミクロンの細胞レベルで構造を鑑別し、非常に具体的な標的構造(例えば、過活動副交感神経)を識別するために使用されることができる。本方法はまた、異なる電極神経変調プロトコルに基づいて、エンドエフェクタ(214、314)のアブレーションパターンを予測し、随意に、マッピングされた生体構造上に予測される神経変調パターンを重ね合わせ、具体的神経変調プロトコルによる影響を受けるであろう解剖学的構造をユーザに示すことができる。例えば、予測される神経変調パターンが、マッピングされた生体構造に関連して表示されるとき、臨床医は、標的構造が適切にアブレートされるであろうかどうか、および非標的構造(例えば、血管)が療法的神経変調エネルギーに望ましくなく暴露されるであろうかどうかを判定することができる。したがって、本方法は、神経変調療法を計画し、非常に具体的な標的構造を特定し、非標的構造を回避し、電極神経変調プロトコルを選択するために使用されることができる。
【0204】
いったん標的構造が特定され、所望の電極神経変調プロトコルが選択されると、本方法は、療法的神経変調を標的構造に印加することによって継続する。神経変調エネルギーは、非標的血管を回避し、周辺組織構造が効果的な創傷治癒のために健康なままであることを可能にしながら、微小病変を形成し、標的構造を選択的に変調させる、高度に標的化された様式で組織に印加されることができる。いくつかの実施形態では、神経変調エネルギーは、パルス様式で印加されることができ、組織が変調パルスの合間に冷却することを可能にし、非標的組織に望ましくない影響を及ぼすことなく適切な変調を確実にする。いくつかの実施形態では、神経変調アルゴリズムは、神経変調が完了することが予測されるまで、時系列順で異なる対の電極(244、336)の間にパルスRFエネルギーを送達することができる(すなわち、「多重化」)。例えば、エンドエフェクタ(214、314)は、以下の条件のうちの少なくとも1つが満たされる、すなわち、(a)負荷抵抗が所定の最大抵抗(例えば、350Ω)に到達する、(b)電極対と関連付けられる熱電対温度が所定の最高温度(例えば、80℃)に到達する、または(c)事前判定された時間周期が経過する(例えば、10秒)まで、隣接する対の電極(244、336)を介して神経変調エネルギー(例えば、5~10W(例えば、7W、8W、9W)の電力および約50~100mAの電流を有する)を送達することができる。事前判定された条件が満たされた後、エンドエフェクタ(214、314)は、シーケンスの中の次の対の電極まで移動することができ、神経変調アルゴリズムは、個々の対の電極の負荷抵抗の全てが事前判定された閾値(例えば、100Ω)にある、またはそれを上回るときに終了することができる。種々の実施形態では、RFエネルギーは、事前判定された周波数(例えば、450~500kHz)において印加されることができ、非標的構造の機能妨害を回避しながら、具体的標的構造のイオン撹拌を開始することが予期される。
【0205】
神経変調療法の間および/または後に、本方法は、標的部位の療法後生体電気性質を検出し、随意に、マッピングすることによって継続する。これは、上記に説明されるような類似様式で実施されることができる。療法後評価は、標的構造(例えば、過活動副交感神経)が適切に変調またはアブレートされたかどうかを示すことができる。標的構造が適切に変調されない場合(すなわち、神経活動が標的構造内で依然として検出される、および/または神経活動が減少していない場合)、本方法は、療法的神経変調を標的に再び印加することによって継続することができる。標的構造が、適切にアブレートされた場合、神経変調手技は、完了されることができる。
【0206】
(解剖学的構造および機能の検出)
本技術の種々の実施形態は、標的部位における組織の生体電気、誘電、および/または他の性質を測定し、神経組織および他の解剖学的構造の存在、場所、ならびに/もしくは活動を判定し、随意に、検出された神経組織および/または他の解剖学的構造の場所をマッピングする、特徴を含むことができる。例えば、本技術は、腺構造、ならびに随意に、それらの粘液漿液性機能および/または他の機能を検出するために使用されることができる。本技術はまた、血管構造(例えば、動脈)、ならびに随意に、それらの動脈機能、体積圧力、および/または他の機能を検出するように構成されることもできる。下記に議論されるマッピング特徴は、標的部位における神経の正確な描写を提供するように、システム100および/または本明細書に開示される任意の他のデバイスのうちのいずれかの中に組み込まれることができる。
【0207】
神経および/または解剖学的検出は、(a)標的部位における神経組織および他の解剖学的構造(例えば、血管、腺等)の存在または場所を判定する、ならびに/もしくは神経活動の基準レベルを記録するための療法的神経変調エネルギーの印加の前に、(b)治療部位における神経線維上のエネルギー印加のリアルタイム効果を判定するための療法的神経変調の間に、および/または(c)標的構造(例えば、神経、腺等)への治療の有効性を確認するための療法的神経変調の後に、生じることができる。これは、(マイクロスケールまたは細胞レベルまでさえも)非常に具体的な解剖学的構造の識別を可能にし、したがって、高度に標的化された神経変調を提供する。これは、神経変調療法の有効性および効率を向上させる。加えて、解剖学的マッピングは、非標的部位への神経変調療法の付随的効果を低減させる。故に、標的神経変調は、血管の損傷または破裂(すなわち、望ましくない出血を阻止する)、および創傷治癒の間に(例えば、損傷組織が鼻壁から剥がれ落ちるときに)懸念となり得る組織への付随的損傷を阻止する。
【0208】
ある実施形態では、本明細書に開示されるシステムは、インピーダンス、抵抗、電圧、電流密度、および/または他のパラメータ(例えば、温度)等の生体電気測定を使用し、標的部位における生体構造、特に、神経、腺、および血管生体構造を判定することができる。生体電気性質は、刺激(例えば、電極(244、336)を介して送達されるRFエネルギー等の電気刺激、すなわち、「動的」検出)の伝送後に、および/または刺激の伝送を伴わずに(すなわち、「静的」検出)検出されることができる。
【0209】
動的測定は、神経活性化および/または伝搬を励起させる、ならびに/もしくはその一次または二次効果を検出するための種々の実施形態を含む。そのような動的実施形態は、神経活性化および伝搬の高まった状態を伴い、隣接する組織タイプに対する神経場所および機能識別のために本動的測定を使用する。例えば、動的検出の方法は、(1)治療デバイス(例えば、エンドエフェクタ)を介して、刺激エネルギーを治療部位に送達し、治療部位における副交感神経を励起させることと、(2)治療デバイスの測定/感知アレイ(例えば、電極(244、336)を介して、治療部位における1つ以上の生理学的パラメータ(例えば、抵抗、インピーダンス等)を測定することと、(4)測定に基づいて、治療部位における副交感神経の相対的存在および位置を識別することと、(5)アブレーションエネルギーを識別された副交感神経に送達し、検出された副交感神経をブロックすることとを含むことができる。
【0210】
静的測定は、治療部位またはその近傍の層別化もしくは細胞組成の具体的天然性質と関連付けられる種々の実施形態を含む。静的実施形態は、治療部位またはその近傍の組織タイプの固有の生物学的および電気的性質、治療部位またはその近傍の層別化もしくは細胞組成、および両方の前述の測定を治療部位に隣接する(神経変調のために標的化されない)組織タイプと対比することを対象とする。本情報は、具体的標的(例えば、副交感神経線維)および非標的(例えば、血管、感覚神経等)を位置特定するために使用されることができる。例えば、静的検出の方法は、(1)アブレーションの前に、治療デバイスの測定/感知アレイ(例えば、電極(244、336)を利用し、1つ以上の基準生理学的パラメータを判定することと、(2)測定された生理学的パラメータ(例えば、抵抗、インピーダンス等)に基づいて、着目領域内の固有の組織性質を幾何学的に識別することと、(3)治療デバイスを介して、アブレーションエネルギーを着目領域内の1つ以上の神経に送達することと、(4)アブレーションエネルギーの送達の間に、測定/感知アレイを介して、1つ以上の手技中生理学的パラメータを判定することと、(5)アブレーションエネルギーの送達後に、測定/感知アレイを介して、1つ以上の手技後生理学的パラメータを判定し、アブレーションエネルギーを受容した神経をブロックすることへのアブレーションエネルギーの送達の有効性を判定することとを含むことができる。
【0211】
生体電気性質の初期静的および/または動的検出後、解剖学的特徴の場所は、治療部位が標的神経の療法的に有効な神経変調のために種々の解剖学的構造に対して存在するべき場所を判定するために使用されることができる。本明細書に説明される生体電気的および他の生理学的性質は、電極(例えば、エンドエフェクタ(214、314)の電極(244、336))を介して検出されることができ、デバイス(例えば、エンドエフェクタ(214、314))上の電極ペアリングは、具体的ゾーンまたは領域において、および標的領域の具体的深度において生体電気データを取得するように選択されることができる。標的神経変調部位において、またはそれを囲繞して検出される具体的性質、およびこれらの性質を取得するための関連付けられる方法が、下記に説明される。下記に議論されるこれらの具体的検出およびマッピング方法は、システム100を参照して説明されるが、本方法は、解剖学的識別、解剖学的マッピング、および/または神経変調療法を提供する、他の好適なシステムならびにデバイス上で実装されることができる。
【0212】
(神経識別およびマッピング)
多くの神経変調手技では、デバイス102によって送達されるエネルギーの影響のゾーンおよび/または領域(「着目ゾーン」と称される)内に該当する神経の部分、ならびにデバイス102に対する神経組織の相対3次元位置を識別することが有益である。着目ゾーン内の神経組織の部分を特性評価すること、および/または着目ゾーン内の神経組織の相対位置を判定することは、臨床医が、(1)非標的構造(例えば、血管)と比べて標的神経組織を選択的に活性化すること、および(2)非標的神経組織(例えば、感覚神経、神経組織の部分群、ある組成または形態を有する神経組織)と比べて具体的標的神経組織(例えば、副交感神経)を部分選択することを可能にする。標的構造(例えば、副交感神経)および非標的構造(例えば、血管、感覚神経等)は、構造の一意の形態学的組成およびこれらの形態学的組成と関連付けられる生体電気性質によって定義される、具体的構造の固有のシグネチャに基づいて、識別されることができる。例えば、一意の離散周波数が、形態学的組成と関連付けられ、したがって、ある構造を識別するために使用されることができる。標的および非標的構造はまた、具体的神経構造を部分選択するように、構造の相対生体電気的活性化に基づいて識別されることもできる。さらに、標的および非標的構造は、合わせられた注入刺激への構造の異なる検出された応答によって識別されることができる。例えば、本明細書に説明されるシステムは、構造の応答の大きさ、および異なる刺激(例えば、異なる周波数において注入される刺激)に対する解剖学的構造の応答の差異を検出することができる。
【0213】
少なくとも本開示の目的のために、神経は、着目ゾーンに対するそれらの個別の配向に基づいて定義される以下の部分、すなわち、終端神経組織(例えば、終端軸索構造)、分岐神経組織(例えば、分岐軸索構造)、および進行神経組織(例えば、進行軸索構造)を含むことができる。例えば、終端神経組織は、ゾーンに進入するが、そこから退出しない。したがって、終端神経組織は、神経シグナリングおよび活性化のための終点である。分岐神経組織は、着目ゾーンに進入し、着目ゾーンから退出する神経の数を増加させる神経である。分岐神経組織は、典型的には、神経束の相対幾何学形状の縮小と関連付けられる。進行神経組織は、幾何学形状または数値に実質的に変化を伴わずに、着目ゾーンに進入し、ゾーンから退出する神経である。
【0214】
システム100は、神経の複合活動電位に結び付けられる、電圧、電流、複素インピーダンス、抵抗、誘電率、および/または伝導率を検出し、着目ゾーン内の神経の相対位置および比例を判定ならびに/もしくはマッピングするために、使用されることができる。神経断面積(「CSA」)は、軸索構造の増加に起因することが予期される。各軸索は、標準サイズである。(断面寸法が)より大きい神経は、より小さい断面寸法を有する神経よりも多数の軸索を有する。より大きい神経からの複合活動応答は、静的および動的査定の両方において、より小さい神経を上回る。これは、少なくとも部分的に、複合活動電位が軸索のそれぞれからの累積活動応答であるためである。静的分析を使用するとき、例えば、システム100は、神経のインピーダンスまたは抵抗を直接測定およびマッピングし、判定されたインピーダンスまたは抵抗に基づいて、神経の場所および/または神経の相対サイズを判定することができる。動的分析では、システム100は、刺激を着目ゾーンに印加し、刺激への神経組織の動的応答を検出するために使用されることができる。本情報を使用して、システム100は、着目ゾーン内のインピーダンスまたは抵抗を判定および/またはマッピングし、神経位置もしくは相対神経サイズに関連する情報を提供することができる。神経インピーダンスマッピングは、異なる断面深度における具体的場所において変動する複素インピーダンスレベルを示すことによって、図示されることができる。他の実施形態では、神経インピーダンスまたは抵抗は、3次元ディスプレイ内にマッピングされることができる。
【0215】
着目ゾーン内の神経の部分および/または相対位置を識別することは、治療効率および有効性を改良するためのシステム100の1つ以上の治療パラメータ(例えば、電極アブレーションパターン、電極アクティブ化計画等)の選択を知らせる、ならびに/もしくは誘導することができる。例えば、神経監視およびマッピングの間に、システム100は、少なくとも部分的に、着目ゾーンに沿って延在する神経構造の長さ、神経組織の相対サイズ、および/または活動電位の方向に基づいて、神経の指向性を識別することができる。本情報は、次いで、自動的に、または手動で、治療パラメータ(例えば、選択的電極アクティブ化、双極および/または多極アクティブ化、ならびに/もしくは電極位置付け)を調節し、具体的神経または神経の領域を標的化するために、システム100もしくは臨床医によって使用されることができる。例えば、システム100は、具体的電極(244、336)、電極の組み合わせ(例えば、非対称または対称)を選択的にアクティブ化する、および/または双極もしくは多極電極構成を調節することができる。いくつかの実施形態では、システム100は、神経部分/位置マッピングおよび/または神経比例マッピングに基づいて、波形、位相角、ならびに/もしくは他のエネルギー送達パラメータを調節または選択することができる。いくつかの実施形態では、電極(244、336)自体の構造および/または性質(例えば、材料、表面粗面化、コーティング、断面積、周辺、貫通、貫通深度、表面搭載等)が、神経部分および比例マッピングに基づいて選択されてもよい。
【0216】
種々の実施形態では、治療パラメータおよび/またはエネルギー送達パラメータが、軸上または軸近傍進行神経組織を標的化する、ならびに/もしくはエンドエフェクタ(214、314)と少なくとも略垂直である進行神経組織の活性化を回避するように、調節されることができる。軸上または軸近傍進行神経組織の大部分は、露出され、離散断面のみにおいて療法的エネルギーに暴露され得る垂直進行神経組織よりもエンドエフェクタ(214、314)によって提供される神経変調エネルギーの影響を受ける。したがって、エンドエフェクタ(214、314)は、軸上または軸近傍進行神経組織にさらなる影響を及ぼす可能性が高い。(例えば、複素インピーダンスまたは抵抗マッピングを介した)神経構造位置の識別はまた、進行神経組織が神経起源により近く、したがって、さらなる神経が療法的神経変調による影響を受け、それによって、より効率的な治療および/または治療のより高い有効性をもたらすため、分岐神経組織(典型的には、進行神経組織の下流にある)ではなく、進行神経組織への標的エネルギー送達を可能にすることもできる。同様に、神経構造位置の識別は、末端神経組織と比べて進行および分岐神経組織を標的化するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、治療パラメータは、選択的領域効果を提供するように、検出された神経位置に基づいて調節されることができる。例えば、臨床医は、非常に具体的な解剖学的構造または位置への部分的効果に影響を及ぼすことを所望する場合のみ、神経組織の下流部分を標的化することができる。
【0217】
種々の実施形態では、神経場所および/または神経の相対位置が、経時的に神経発火電圧ならびに/もしくは電流を検出することによって判定されることができる。電極(244、336)のアレイが、着目ゾーンにおける組織と接触して位置付けられることができ、電極(244、336)は、神経発火と関連付けられる電圧および/または電流を測定することができる。本情報は、随意に、過剰状態(すなわち、過剰な副交感神経緊張)時の神経の場所を識別するように(例えば、ディスプレイ112上に)マッピングされることができる。鼻炎は、本過剰状態が過粘膜産生および過粘膜分泌を促すため、少なくとも部分的に過剰発火神経の結果である。したがって、電圧および電流測定を介した神経発火率の検出が、過副交感神経機能(すなわち、病的状態時の神経)を含む着目領域の部分を特定するために使用されることができる。これは、臨床医が、単に全ての副交感神経(非病的状態の副交感神経を含む)を標的化するのではなく、神経変調療法の前に具体的神経(すなわち、過剰な副交感神経緊張を伴う神経)を特定することを可能にし、正しい組織が神経変調療法の間に治療されることを確実にする。さらに、神経発火率は、臨床医が神経発火率の変化を監視し、治療有効性の正当性を立証し得るように、神経変調療法の間または後に検出されることができる。例えば、神経変調療法後の神経発火率の減少または排除を記録することは、療法が過剰/病的な神経を療法的に治療することに効果的であったことを示すことができる。
【0218】
種々の実施形態では、システム100は、電極(244、336)のうちの1つ以上を介して刺激信号(すなわち、神経を一時的に活性化する信号)を注入し、活動電位を誘発することによって、動的活性化を使用して神経活動を検出することができ、他の対の電極(244、336)は、神経応答の生体電気性質を検出することができる。動的活性化を使用して神経組織を検出することは、ニューロンおよび関連付けられる突起の放出率を測定することによって、着目ゾーン内の活動電位の場所を検出することを伴う。正確な活動指数を発生させるために、高速のニューロンの脱分極を数値的に測定、プロファイル、マッピング、および/または撮像する能力は、ニューロンならびにそれらの突起の放出率を測定する際の因子である。活動電位は、神経線維を横断して電圧の急速増加を引き起こし、電気インパルスが、次いで、線維に沿って広がる。活動電位が生じるにつれて、神経細胞膜の伝導性が変化し、細胞が安静時であるときよりも約40倍大きくなる。活動電位または神経脱分極の間に、膜抵抗は、約80分の1に減退し、それによって、印加された電流が細胞内空間に進入することも可能にする。ニューロンの集団にわたって、細胞内空間が付加的伝導性イオンを提供するであろうため、これは、慢性副交感神経応答等の一貫したニューロンの活動の間の抵抗の正味の減少につながる。そのような急速な変化の大きさは、末梢神経束に関して2.8~3.7%であるDCの近傍の記録を用いた局所抵抗率変化を有することが推定されている。
【0219】
動的活性化を使用して神経組織を検出することは、ニューロンおよび関連付けられる突起の放出率を測定することによって、着目ゾーン内の活動電位の場所を検出することを含む。各本放出の基準は、活動電位であり、その間に、約2ミリ秒持続し、細胞膜を横断するマイクロモル数量のイオン(例えば、ナトリウムおよびカリウム)の移送に起因する、最大110mVまたはそれを上回るニューロン膜の脱分極が存在する。ニューロン膜に起因する複素インピーダンスまたは抵抗変化は、1,000~25Ωcmに該当する。刺激の導入および神経応答の後続の測定は、雑音を減衰させ、信号対雑音比を改良し、応答領域に精密に焦点を当て、神経検出、測定、およびマッピングを改良することができる。
【0220】
いくつかの実施形態では、誤差を低減させ得る、経時的な生理学的パラメータ(例えば、複素インピーダンス、抵抗、電圧)の測定の差異が、神経プロファイル、スペクトル、またはマップを生成するために使用されることができる。例えば、システム100の感度は、本プロセスが繰り返しの平均化を刺激に提供するために、改良されることができる。結果として、マッピング機能出力は、単一の周波数および/または複数の周波数ならびに/もしくは複数の振幅における参照データと試験照合データとの間の無単位比であり得る。付加的考慮は、その結果として、抵抗率、アドミティビティ、中心周波数、または細胞外・細胞内抵抗率の比等のパラメータ査定を拡張する、複数の周波数評価方法を含んでもよい。
【0221】
いくつかの実施形態では、システム100はまた、神経組織の電気活動を間接的に測定し、活動電位の活動に付随し、イオン勾配を正常に復元するように作用する、代謝回復プロセスを定量化するように構成されてもよい。これらは、細胞外空間内のイオンの蓄積に関連する。電気活動の間接的測定は、(ミリモル単位で)約1,000倍大きくあり得、したがって、測定することがより容易であり、神経マップを発生させるために使用される測定された電気性質の正確度を向上させることができる。
【0222】
システム100は、神経の外部刺激に応答して、経時的に神経発火電圧および/または電流、ならびに随意に、神経発火率を検出することによって、動的神経検出を実施することができる。例えば、電極(244、336)のアレイが、着目ゾーンにおける組織と接触して位置付けられることができ、電極(244、336)のうちの1つ以上は、神経を刺激する信号を組織の中に注入するようにアクティブ化されることができ、電極アレイの他の電極(244、336)は、刺激に応答した神経発火に起因する神経電圧および/または電流を測定することができる。本情報は、随意に、神経の場所を識別し、ある実施形態では、過剰状態(例えば、鼻炎または他の病的状態を示す)時の副交感神経を識別するように(例えば、ディスプレイ112上に)マッピングされることができる。神経活動(電圧、電流、発火率等)の動的検出は、標的神経場所を検出し、標的部位および治療パラメータを選択し、正しい組織が神経変調療法の間に治療されることを確実にするように、神経変調療法の前に実施されることができる。さらに、神経活動の動的検出は、臨床医が神経活動の変化を監視し、治療有効性の正当性を立証することを可能にするように、神経変調療法の間または後に実施されることができる。例えば、神経変調療法後の神経活動の減少または排除を記録することは、療法が過剰/病的な神経を療法的に治療することに効果的であったことを示すことができる。
【0223】
いくつかの実施形態では、刺激信号が、エンドエフェクタ(214、314)および/または別個のデバイスと関連付けられる1つ以上の貫通電極(例えば、組織を貫通する微小針)を介して、標的神経の近傍に送達されることができる。刺激信号は、平滑筋細胞または他の細胞を収縮させる、活動電位を発生させる。本収縮の場所および強度は、貫通電極を介して検出され、それによって、神経までの距離および/または刺激針電極に対する神経の場所を臨床医に示すことができる。いくつかの実施形態では、刺激電気信号は、典型的には、1~2mAまたはそれを上回る電圧と、典型的には、100~200マイクロ秒またはそれを上回るパルス幅とを有してもよい。刺激のより短いパルスは、検出された収縮のより良好な判別をもたらすが、さらなる電流を要求し得る。電極と標的神経との間の距離が大きくなるほど、より多くのエネルギーが刺激するために要求される。刺激ならびに収縮強度および/または場所の検出は、電極が神経から近い、もしくは遠い程度の識別を可能にし、したがって、神経を空間的に位置特定するために使用されることができる。いくつかの実施形態では、変動するパルス幅が、神経までの距離を測定するために使用されてもよい。針が神経により近くなるにつれて、応答を引き起こすために要求されるパルス持続時間は、次第に少なくなる。
【0224】
筋肉収縮検出を介して神経を位置特定するために、システム100は、パルス幅または振幅を変動させ、貫通電極を介して組織に送達される刺激のエネルギー(エネルギー=パルス幅×振幅)を変動させることができる。刺激エネルギーを変動させ、貫通電極および/または他のタイプのセンサを介して筋肉収縮を監視することによって、システム100は、神経までの距離を推定することができる。大量のエネルギーが、神経を刺激/筋肉を収縮させるために要求される場合、刺激/貫通電極は、神経から遠い。刺激/貫通電極が神経のより近くに移動するにつれて、筋肉収縮を誘発するために要求されるエネルギーの量は、低下するであろう。例えば、貫通電極のアレイが、着目ゾーンにおける組織内に位置付けられることができ、電極のうちの1つ以上が、筋肉収縮を誘発するまで、異なるエネルギーレベルにおいて刺激を印加するようにアクティブ化されることができる。反復プロセスを使用して、(例えば、マッピング/評価/フィードバックアルゴリズム110を介して)神経を位置特定する。
【0225】
いくつかの実施形態では、システム100は、(例えば、電極(244、336)を介して)神経刺激からの筋肉活性化を測定し、貫通電極を使用することなく、神経マッピングのための神経位置付けを判定することができる。本実施形態では、治療デバイスは、粘膜下腺を囲繞する平滑筋細胞の静脈瘤および血管供給、次いで、複合筋肉活動電位を標的化する。これは、個々の筋線維活動電位からの電圧応答を合計するために使用されることができる。最短の待ち時間は、刺激アーチファクトから応答の発生までの時間である。対応する振幅は、基準から負のピークまで測定され、ミリボルト(mV)で測定される。成人における神経の待ち時間(平均+SD)は、典型的には、約2~6ミリ秒、より典型的には、約3.4+0.8~約4.0+0.5ミリ秒に及ぶ。
【0226】
いくつかの実施形態では、システム100は、神経の外側の神経磁場を記録し、神経膜の物理的妨害を伴わずに神経の内部電流を判定することができる。理論によって拘束されるわけではないが、膜の内側の電流からの磁場への寄与は、外部電流からのものより2桁大きく、膜内の電流からの寄与は、実質的にごくわずかである。磁気複合作用場(「CAF」)の測定と連携した神経の電気刺激は、伝導変化の場所が(例えば、最小二乗方法を介して)推定され得るように、電流双極子の連続位置を生じさせることができる。磁気輪郭マップを使用する、(例えば、ディスプレイ112を介した)視覚表現は、正常または正常ではない神経特性を示し(例えば、正常は、神経に沿って伝搬する特徴的四重極パターンと同一視され得る)、したがって、疾患、過活動状態、および神経変調のための好適な標的である神経を示すことができる。
【0227】
磁場検出の間に、電極(244、336)のアレイが、着目ゾーンにおける組織と接触して位置付けられることができ、随意に、電極(244、336)のうちの1つ以上は、電気刺激を組織の中に注入するようにアクティブ化されることができる。着目ゾーン内の神経が(刺激に応答して、またはそれがない場合にのいずれかで)発火するにつれて、神経は、(例えば、電流搬送ワイヤと同様に)磁場を発生させ、したがって、変化する磁場は、神経の神経発火率を示す。神経発火によって引き起こされる、変化する磁場は、近傍のセンサワイヤ(例えば、センサ314)および/または近傍の電極(244、336)と関連付けられるワイヤによって検出される電流を誘発することができる。本電流を測定することによって、磁場強度が、判定されることができる。磁場は、随意に、神経変調療法の前に、神経の場所を検出し、標的神経(過剰な副交感神経緊張を伴う神経)を選択し、所望の神経が神経変調療法の間に治療されることを確実にするように、(例えば、ディスプレイ112上に)マッピングされることができる。さらに、磁場情報は、臨床医が神経発火率の変化を監視し、治療有効性の正当性を立証し得るように、神経変調療法の間または後に使用されることができる。
【0228】
他の実施形態では、神経磁場は、エンドエフェクタ(214、314)および/または着目ゾーンに送達される別個のデバイスの一部の中に統合され得る、ホールプローブまたは他の好適なデバイスを用いて測定される。代替として、第2のワイヤ内の電圧を測定するのではなく、変化する磁場が、ホールプローブを使用して最初のワイヤ(すなわち、神経)内で測定されることができる。ホールプローブを通して進む電流は、半導体内で偏向されるであろう。これは、測定され得る、上部分と底部分との間の電圧差を引き起こすであろう。本実施形態のいくつかの側面では、3つの直交面が、利用される。
【0229】
いくつかの実施形態では、システム100は、神経の共振周波数に同調可能であるワイヤ(すなわち、同調可能/LC回路等の周波数選択的回路)内で起電力(「EMF」)を誘発するために使用されることができる。本実施形態では、神経は、電流搬送ワイヤと見なされることができ、発火活動電位は、変化する電圧である。これは、変化する電流を引き起こし、これは、ひいては、変化する磁束(すなわち、ワイヤと垂直である磁場)を引き起こす。ファラデーの電磁誘導の法則/ファラデーの原理の下で、変化する磁束は、近傍のセンサワイヤ(例えば、エンドエフェクタ(214、314)、センサ314、および/または他の構造の中に統合される)内でEMF(変化する電圧を含む)を誘発し、変化する電圧は、システム100を介して測定されることができる。
【0230】
さらなる実施形態では、センサワイヤ(例えば、センサ314)は、インダクタであり、したがって、増加する効果のためにより多くの巻数を伴って(例えば、V2、rms=V1、rms(N2/N1))、神経(すなわち、第1のワイヤ)とセンサワイヤ(すなわち、第2のワイヤ)との間の磁気連結の増加を提供する。変化する磁場に起因して、電圧が、センサワイヤ内で誘発され、本電圧は、測定され、神経における電流変化を推定するために使用されることができる。ある材料が、EMF検出の効率を向上させるように選択されることができる。例えば、センサワイヤは、インダクタのために軟質鉄芯または他の高透磁率材料を含むことができる。
【0231】
誘発されたEMF検出の間に、センサワイヤを含む、エンドエフェクタ(214、314)および/または他のデバイスは、着目ゾーンにおける組織と接触して位置付けられることができ、随意に、電極(244、336)のうちの1つ以上は、電気刺激を組織の中に注入するようにアクティブ化されることができる。着目ゾーン内の神経が(刺激に応答して、またはそれがない場合にのいずれかで)発火するにつれて、神経は、センサワイヤ(例えば、センサ314)内に電流を誘発する磁場を(例えば、電流搬送ワイヤと同様に)発生させる。本情報は、神経場所を判定し、および/または(例えば、ディスプレイ112上に)神経をマッピングし、神経変調療法の前に、神経の場所を識別し、標的神経(過剰な副交感神経緊張を伴う神経)を選択し、所望の神経が神経変調療法の間に治療されることを確実にするために使用されることができる。EMF情報はまた、臨床医が神経発火率の変化を監視し、治療有効性の正当性を立証し得るように、神経変調療法の間または後に使用されることもできる。
【0232】
いくつかの実施形態では、システム100は、特定のタイプの神経に対応する、選択された周波数において発生される、磁場および/またはEMFを検出することができる。検出された信号の周波数、拡張すると、関連付けられる神経タイプは、外部共振回路に基づいて選択されることができる。共振は、特定の神経タイプの磁場の周波数に合致し、その神経が発火しているときに、外部回路上で生じる。このように、システム100は、特定の部分群/タイプの神経を特定するために使用されることができる。
【0233】
いくつかの実施形態では、システム100は、場所を識別する、および/または具体的神経(例えば、副交感神経、感覚神経、神経線維タイプ、神経部分群等)をマッピングするための可変コンデンサ周波数選択的回路を含むことができる。可変コンデンサ周波数選択的回路は、センサ314および/またはエンドエフェクタ(214、314)の他の特徴によって定義されることができる。神経は、それらの機能および構造に基づいて、異なる共振周波数を有する。故に、システム100が、所望される神経タイプの共振周波数に選択的に同調され得る、可変コンデンサ(C)および/または可変インダクタ(L)を伴う同調可能LC回路を含むことができる。これは、選択された神経タイプおよびその関連付けられる共振周波数のみと関連付けられる神経活動の検出を可能にする。同調は、インダクタの中および外に芯を移動させることによって達成されることができる。例えば、同調可能LC回路は、(i)芯の周囲のコイルの数を変化させること、(ii)芯の周囲のコイルの断面積を変化させること、(iii)コイルの長さを変化させること、および/または(iv)芯材料の透磁率を変化させること(例えば、空気から芯材料に変化させること)によって、インダクタを同調させることができる。そのような同調可能LC回路を含む、システムは、神経信号の活性化に関するだけではなく、活性化される神経タイプおよび神経が発火している周波数に関しても、高度な普及および分化を提供する。
【0234】
(解剖学的マッピング)
種々の実施形態では、システム100はさらに、空間的に位置特定された源(例えば、電極(244、336))からの集束エネルギー電流/電圧刺激を使用し、着目ゾーンにおける組織の伝導率の変化を引き起こし、(例えば、電極(244、336)を介して)結果として生じた生体電位および/または生体電気測定を検出する、低侵襲性の解剖学的マッピングを提供するように構成される。組織内の電流密度は、エンドエフェクタ(214、314)および/またはシステム100の他の部分を用いて測定され得る電流の変化を生成する、電極(244、336)によって印加される電圧の変化に応答して、変化する。生体電気および/または生体電位測定の結果は、相対吸収プロフィロメトリを予測もしくは推定し、着目ゾーン内の組織構造を予測もしくは推定するために、使用されることができる。より具体的には、各細胞構築物は、骨、軟組織、血管、神経、神経のタイプ、および/またはある神経組織等の組織もしくは構造のタイプを示し得る、一意の伝導率ならびに吸収プロファイルを有する。例えば、異なる周波数は、異なるタイプの組織を通して異なるように減衰する。故に、領域内の吸収電流を検出することによって、システム100は、下部構造、いくつかの事例では、サブマイクロスケールまで、極めて特殊な標的位置特定およびマッピングを可能にする細胞レベルを判定することができる。この極めて具体的な標的識別およびマッピングは、神経変調療法の有効性および効率を向上させる一方、システム100の安全プロファイルも向上させ、非標的構造への付随的効果を低減させる。
【0235】
電気および誘電組織性質(例えば、周波数の関数としての抵抗、複素インピーダンス、伝導率、および/または誘電率)を検出するために、電極(244、336)ならびに/もしくは別の電極アレイが、着目領域における組織上に設置され、内部または外部源(例えば、発生器106)が、刺激(電流/電圧)を組織に印加する。源と受信機電極(244、336)との間の組織の電気性質、ならびに個々の受信機電極(244、336)における電流および/または電圧が、測定される。これらの個々の測定は、次いで、組織の電気マップ/画像/プロファイルに変換され、着目解剖学的特徴、ある実施形態では、発火神経の場所を識別するように、ディスプレイ112上でユーザのために可視化されることができる。例えば、解剖学的マッピングは、ある生体電気性質(例えば、抵抗、インピーダンス等)の異なる強度を示す、色分けされた、またはグレースケールの3次元もしくは2次元マップとして、提供されることができる、または情報は、臨床医のために実際の解剖学的構造をマッピングするように処理されることができる。本情報はまた、生体構造に対する治療進行を監視するために神経変調療法の間に、および成功した治療の正当性を立証するために神経変調療法後に使用されることもできる。加えて、生体電気および/または生体電位測定によって提供される解剖学的マッピングは、神経変調療法に起因する非標的組織(例えば、血管)への変化を追跡し、負の付随的効果を回避するために使用されることができる。例えば、臨床医は、療法が血管および/または損傷組織を結紮し始めるときを識別し、療法を修正し、出血、有害な組織アブレーション、ならびに/もしくは他の負の付随的効果を回避することができる。
【0236】
さらに、具体的標的を識別するために使用される電流の閾値周波数が、続いて、療法的神経変調エネルギーを印加するときに使用されることができる。例えば、神経変調エネルギーは、標的神経特有であり、他の非標的(例えば、血管、非標的神経等)から鑑別される、電流の具体的閾値周波数において印加されることができる。標的特有の周波数においてアブレーションエネルギーを印加することは、標的神経組織の透過ポテンシャル差につながる、イオン攪拌を標的神経構造内に生成する、電場をもたらす。これらの透過ポテンシャル差は、標的神経組織の空胞変性、最終的に、壊死につながる、神経膜ポテンシャルの動的変化(細胞内および細胞外液圧力の差異に起因する)を引き起こす。高度に標的化された閾値神経変調エネルギーを使用し、変性を開始することは、システム100が療法的神経変調を具体的標的に送達することを可能にする一方、周辺血管および他の非標的構造は、機能的に維持される。
【0237】
いくつかの実施形態では、システム100はさらに、ニューロンの脱分極の間に抵抗変化を非侵襲的に記録し、電気インピーダンス、抵抗、生体インピーダンス、伝導率、誘電率、および/または他の生体電気測定を伴う神経活動をマッピングすることによって、組織の生体電気性質を検出するように構成されることができる。理論によって拘束されるわけではないが、神経が、脱分極するとき、細胞膜抵抗は、電流が開放イオンチャネルを通して細胞内空間の中に通過するであろうように、(例えば、約80分の1に)減少する。別様に、電流は、細胞外空間内に留まる。非侵襲性抵抗測定に関して、組織は、ニューロンの活動を刺激するために閾値の25%未満(例えば、10%)の振幅を伴って1Hzにおいて一定の電流方形波を印加すること等の100Hzの未満の電流を印加し、それによって、電流が細胞内空間の中に横断しない可能性を防止または低減させること、または2Hzにおいて刺激することによって、刺激されることができる。いずれの場合も、抵抗および/または複素インピーダンスは、電圧変化を記録することによって記録される。複素インピーダンスまたは抵抗マップもしくは面積のプロファイルが、次いで、発生されることができる。
【0238】
インピーダンス/伝導率/誘電率検出に関して、電極(244、336)および/または別の電極アレイが、着目領域における組織上に設置され、内部または外部源(例えば、発生器106)が、刺激を組織に印加し、個々の受信機電極(244、336)における電流および/または電圧が、測定される。刺激は、異なるタイプの神経を隔離するように、異なる周波数において印加されることができる。これらの個々の測定は、次いで、組織の電気マップ/画像/プロファイルに変換され、着目解剖学的特徴を識別するように、ディスプレイ112上でユーザのために可視化されることができる。神経マッピングはまた、療法のための具体的神経を選択し、神経および他の生体構造に対する治療進行を監視し、成功した治療の正当性を立証するために、神経変調療法の間に使用されることもできる。
【0239】
上記に説明される神経および/または解剖学的検出方法のいくつかの実施形態では、本手技は、手技中生理学的パラメータを基準生理学的パラメータおよび/または(同一のエネルギー送達相内の)他の前もって入手された手技中生理学的パラメータと比較することを含むことができる。そのような比較は、治療された組織において状態変化を分析するために使用されることができる。手技中生理学的パラメータはまた、例えば、治療エネルギーを送達することを停止するときを示すように、1つ以上の事前判定された閾値と比較されてもよい。本技術のいくつかの実施形態では、測定された基準、手技中、および手技後パラメータは、複素インピーダンスを含む。本技術のいくつかの実施形態では、手技後生理学的パラメータは、電場効果(イオン攪拌および/または熱的閾値)の消散を可能にし、したがって、治療の正確な査定を促進するように、事前判定された時間周期後に測定される。
【0240】
いくつかの実施形態では、上記に説明される解剖学的マッピング方法は、鼻粘膜内の軟組織の深度を鑑別するために使用されることができる。鼻甲介上の粘膜の深度が、比較的に深い一方、鼻甲介からの深度は、比較的に浅く、したがって、本技術において組織深度を識別することはまた、鼻粘膜内の位置および精密に標的化する場所も識別する。さらに、上記に説明されるように、上皮組織のマイクロスケール空間インピーダンスマッピングを提供することによって、層別化された層または細胞体の固有の一意のシグネチャが、着目領域を識別するものとして使用されることができる。例えば、異なる領域は、粘膜下腺等の具体的構造のより大きいまたは小さい集団を有するため、標的領域は、これらの構造の識別を介して識別されることができる。
【0241】
いくつかの実施形態では、システム100は、解剖学的構造を検出し、解剖学的特徴をマッピングするために使用され得る、付加的特徴を含む。例えば、システム100は、神経組織および/または他の解剖学的構造の識別のための超音波プローブを含むことができる。より高い周波数の超音波は、より高い分解能を提供するが、より少ない透過深度を提供する。故に、周波数は、神経/解剖学的位置特定のための適切な深度および分解能を達成するように変動されることができる。機能識別は、空間パルス長(「SPL」)(パルスにおけるサイクル数を乗算した波長)に依拠し得る。軸方向分解能(SPL/2)もまた、神経を特定するように判定されてもよい。
【0242】
いくつかの実施形態では、システム100はさらに、神経活動を完全に刺激するのではなく抑制する選択的パラメータを伴う刺激を放出するように構成されることができる。例えば、細胞外神経刺激のための強度・持続時間関係が選択および制御される実施形態では、細胞外電流が細胞を過分極し、刺激急上昇挙動ではなく、抑制をもたらし得る(すなわち、完全活動電位が達成されない)、状態が存在する。イオンチャネルの両方のモデル、すなわち、Hodgkin-Huxley(HH)およびRetinol神経節細胞(RGC)は、刺激を延長させるのではなく、適切に設計されたバースト細胞外刺激を用いて細胞を過分極することが可能であると示唆する。本現象は、本明細書に説明される神経検出および/または変調の実施形態のうちのいずれかの間に、神経活動を刺激するのではなく抑制するために使用され得る。
【0243】
概して、理解されるように、Hodgkin-Huxley(HH)モデルまたは伝導性ベースのモデルは、ニューロンにおける活動電位が、始動および伝搬される方法を説明する、数学的モデルである。それは、ニューロンおよび心臓細胞等の興奮細胞の電気特性に近似する、非線形微分方程式のセットであり、連続時間動的システムである。Hodgkin-Huxleyタイプモデルが、下記の概略図に図示されるように、細胞膜の生体物理的特性を表す。
【表3】
【0244】
脂質二重層は、静電容量(C)として表される。電位開口型および漏出イオンチャネルは、それぞれ、非線形(g)および線形(g)伝導性によって表される。イオンの流動を駆動する電気化学勾配は、バッテリ(E)によって表され、イオンポンプおよび交換器は、電流源(I)によって表される。
【0245】
網膜神経節細胞(RGC)は、眼の網膜の内面(神経節細胞層)の近傍に位置する、ニューロンのタイプである。2つの中間ニューロンタイプ、すなわち、双極細胞および網膜アマクリン細胞を介して、光受容体から視覚的情報を受信する。網膜アマクリン細胞、特に、狭視野細胞は、神経節細胞層内の機能的サブニットを作成し、神経節細胞が、短い距離を移動する小さい点を観察し得るようにさせるために重要である。網膜神経節細胞は、集合的に、視床、視床下部、および中頭、または中脳におけるいくつかの領域に、活動電位の形態で網膜から画像形成および非画像形成視覚的情報を伝送する。6つのタイプの網膜ニューロンは、双極細胞と、神経節細胞と、水平細胞と、網膜アマクリン細胞と、桿体と、錐体光受容体とである。
【0246】
種々の実施形態では、システム100は、本明細書に開示される解剖学的マッピング技法を適用し、治療の前、間、および/または後に標的血管系ならびに周辺生体構造を特定もしくは検出し得る。
【0247】
(参照による組み込み)
特許、特許出願、特許公開、機関誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ等の他の文書の参照および引用が、本開示の全体を通して行われている。全てのそのような文書は、あらゆる目的のために参照することによってそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0248】
(均等物)
本発明の種々の修正およびその多くのさらなる実施形態が、本明細書に示され、説明されるものに加えて、本明細書で引用される科学および特許文献の参照を含む、本文書の完全な内容から当業者に明白となるであろう。本明細書の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実践に適合され得る、重要な情報、例示、および指針を含有する。
【0249】
本明細書の全体を通した「一実施形態」または「ある実施形態」の言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通した種々の場所における語句「一実施形態では」または「ある実施形態では」の表出は、必ずしも同一の実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が、1つ以上の実施形態において任意の好適な様式で組み合わせられてもよい。
【0250】
本明細書で採用された用語および表現は、限定ではなく、説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用には、示され、説明される特徴(またはその一部)のいずれの均等物も除外する意図はなく、種々の修正が請求項の範囲内で可能性として考えられることを認識されたい。故に、請求項は、全てのそのような均等物を網羅することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図12A
図13
図14-1】
図14-2】
図14-3】
図14-4】
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
【国際調査報告】