(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】肺、肝臓、および腎臓の疾患、障害、または状態を処置するためのキノリン化合物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/47 20060101AFI20230519BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20230519BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230519BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230519BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230519BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230519BHJP
A61P 25/32 20060101ALI20230519BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230519BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20230519BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230519BHJP
A61P 11/08 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
A61K31/47
A61P11/14
A61P37/08
A61P11/00
A61P31/04
A61P1/16
A61P13/12
A61P25/32
A61P1/00
A61P31/12
A61P31/16
A61P31/14
A61P11/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562315
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(85)【翻訳文提出日】2022-12-09
(86)【国際出願番号】 US2021027148
(87)【国際公開番号】W WO2021211625
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507387033
【氏名又は名称】アルデイラ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ブラディー, トッド
(72)【発明者】
【氏名】ブロックマン, アダム
(72)【発明者】
【氏名】マチャサ, スティーブン ギツ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC28
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA61
4C086ZA62
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZB13
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZC39
(57)【要約】
本発明は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を処置するための、キノリン化合物またはその薬学的に許容される塩の使用に関する。一部の実施形態では、上記障害、疾患、または状態を処置する方法は、本明細書に開示されるキノリン化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性の咳、アトピー性喘息、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を、処置する方法であって、式I:
【化18】
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、式中、
R
1、R
7、およびR
8のそれぞれは独立して、H、D、ハロゲン、-NH
2、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されたC
1~6脂肪族、または
【化19】
であり、ここでR
1、R
7、およびR
8の1つは-NH
2であり、R
1、R
7、およびR
8の1つは
【化20】
であり、
R
2は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され、
R
3は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され、
R
4は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され、
R
5は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され、
R
6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり、
R
6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり、あるいはR
6aおよびR
6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3から8員シクロアルキルまたはヘテロシクリル環を形成し、そして
各Rは独立して、水素、ジュウテリウム、ならびにC
1~6脂肪族;3から8員飽和または部分不飽和単環式炭素環式環;フェニル;8から10員二環式アリール環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3から8員飽和または部分不飽和単環式複素環式環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5から6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する6から10員二環式飽和または部分不飽和複素環式環;および窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する7から10員二環式ヘテロアリール環から選択される、必要に応じて置換された基から選択される、方法。
【請求項2】
慢性の咳、アトピー性喘息、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を、処置する方法であって、式II:
【化21】
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、式中、
R
1は、H、D、またはハロゲンであり、
R
2は、H、D、またはハロゲンであり、
R
3は、H、D、またはハロゲンであり、
R
4は、H、D、またはハロゲンであり、
R
5は、H、D、またはハロゲンであり、
R
6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり、そして
R
6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族である、方法。
【請求項3】
R
6aおよびR
6bが、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたメチルまたはエチルである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
R
6aおよびR
6bがメチルである、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物が、
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
またはその薬学的に許容される塩から選択される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物が、
【化26】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物が、
【化27】
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項8】
前記処置が慢性の咳のためである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記慢性の咳が上気道咳症候群に関連する、請求項0に記載の方法。
【請求項10】
前記慢性の咳が、胃食道逆流症または咽喉頭逆流症に関連する、請求項0に記載の方法。
【請求項11】
前記慢性の咳が喘息に関連する、請求項0に記載の方法。
【請求項12】
前記慢性の咳が、非喘息性好酸球性気管支炎に関連する、請求項0に記載の方法。
【請求項13】
前記患者が、下記:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤による処置、喫煙、喘息、環境性呼吸器刺激物質への曝露、および気管支炎の1つまたは複数の病歴を有する、請求項0に記載の方法。
【請求項14】
前記処置が肺炎のためであり、前記肺炎は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関連せずまたは同時に発生しない、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記処置が、好酸球性肺炎とは異なる診断を有する肺炎のためである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記肺炎が市中肺炎である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記肺炎が院内肺炎である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項18】
前記肺炎が細菌性肺炎またはウイルス性肺炎である、請求項14または15に記載の方法。
【請求項19】
前記患者が、Streptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、S. aureus、A群streptococci、Moraxella catarrhalis、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Legionella spp、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia pneumoniae、またはC. psittaciによる細菌感染と診断される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記患者が、インフルエンザウイルス、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザ、メタニューモウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、またはアデノウイルスによるウイルス感染と診断される、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
処置される前記肺炎が大葉性肺炎である、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
処置される前記肺炎が、上、中、または下葉肺炎である、請求項14から21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
処置される前記肺炎が、巣状肺炎、肺胞性肺炎、または間質性肺炎である、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
処置される前記肺炎が、気管支肺炎である、請求項14から20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記処置が、肺敗血症または敗血症誘発型肺損傷のためである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記肺敗血症または敗血症誘発型肺損傷が、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴わない、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記処置が、アルコール性肝炎のためである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
処置される前記アルコール性肝炎が、肝硬変を伴わない、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
アルコール性肝炎の前記患者が、アルコール性肝炎に罹っていない対照群でのレベルと比較して、高レベルのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を有することが決定される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記対照群でのASTのレベルが、約8から48IU/Lであり、前記対照群でのALTのレベルが約7から55IU/Lである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記患者が、2:1よりも大きいAST:ALT比を有することが決定される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記処置が、微小変化型疾患のためである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
処置される前記微小変化型疾患が、ネフローゼ症候群に関連する、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
処置される前記微小変化型疾患が、タンパク尿と同時である、請求項32または33に記載の方法。
【請求項35】
前記処置が、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)のためである、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
処置される前記FSGSが、原発性FSGSである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
処置される前記FSGSが、続発性FSGSである、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
処置される前記FSGSが、家族性FSGSである、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
処置される前記FSGSが、ネフローゼ症候群に関連する、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
処置される前記FSGSが、腎不全またはタンパク尿と同時である、請求項35から38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
FSGSを有する前記患者が、微小変化型疾患の前病歴を有する、請求項35から40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が全身投与される、請求項1から41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が経口投与される、請求項1から42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、1日当たり約10mgから約7500mgの用量で投与される、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、1日当たり約50mgから約3600mgの用量で投与される、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記化合物またはその薬学的に許容される塩が、1日当たり約250mgから約2400mgの用量で投与される、請求項1から43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、参照によりその内容全体が本明細書に組み込まれる、2020年5月20日に出願された米国仮出願第63/027,713号;および2020年4月13日に出願された同第63/009,281号の、米国特許法第119条(e)(35 U.S.C.§119(e))の下での利益を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、キノリン化合物の使用により、肺、肝臓、および腎臓に影響を及ぼす疾患、障害、または状態を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
慢性の咳、肺炎、および肺敗血症は、臨床的に異なる呼吸器の疾患、障害、または状態である。慢性の咳は、一般に8週間よりも長く続く咳であって、細菌またはウイルス感染;慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびその他の非喘息性肺疾患;肺または食道のがん;肺炎;間質性肺疾患;および閉塞型睡眠時無呼吸などからの基本的な熱を伴う咳を除外したものと定義される。肺炎は、細菌、ウイルス、または真菌などの病原体による肺の感染である。これは、病原体による感染とは無関係の肺の急性損傷によって引き起こされる可能性のある急性呼吸窮迫症候群とは区別される。肺炎は通常、病歴、身体検査および/または臨床検査、ならびに胸部X線(CXR)からの臨床診断の組合せによって診断され、肺炎を他の気道感染から区別することができる。肺敗血症も肺に影響を及ぼすが、肺の感受性に起因して、および敗血症が病原体による肺の感染から発症する可能性があるので、敗血症から生じる可能性がある。
【0004】
アトピー性喘息は、喘息の最も一般的な形であり、子供の罹患者の70~90%および成人罹患者の約50%に影響を及ぼす。アレルゲンと呼ばれる環境タンパク質への曝露は、特徴的症状の原因になる。アレルゲンは遍在する。慎重な問診を介した個人の誘発トリガーの知識は、首尾良くなされた回避手段をもたらし得る。従来の処置が失敗した場合、最も深刻な症例において、免疫調節があると考え得る。アトピー性喘息の個人は、その気道内に常在するマスト細胞結合IgE分子を有する。原因アレルゲンの吸入は、隣接するIgE分子の架橋をもたらし、マスト細胞の活性化ならびにヒスタミンおよびトリプターゼを含むメディエーターの放出を引き起こす。これは即時型または急性期喘息反応をもたらし、15分でピークに達し、1時間以内で解消する。喘息の約50%は、炎症性細胞、特に好酸球のTh2リンパ球媒介型流入およびさらなるメディエーター放出に起因して、約6時間で後期反応も経験する。
【0005】
アルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症は、肺よりも肝臓または腎臓に影響を及ぼす。アルコール性肝炎は、アルコールの慢性乱用に起因し、肝臓の損傷を特徴とする。際立った特徴には、高ビリルビン血症、ならびに肝機能マーカーであるアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)およびアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)のレベル、が含まれる。微小変化型疾患および巣状分節性糸球体硬化症は、腎臓に影響を及ぼす疾患、障害、または状態である。微小変化型疾患および巣状分節性糸球硬化症の両方は、ネフローゼ症候群のより広範な障害の範囲内にあり、タンパク尿を特徴とする。微小変化型疾患は、巣状分節性糸球体硬化症に進行する可能性があり、後者では、巣状の分節性パターンでの腎臓の損傷および瘢痕化がなされる。
疾患、障害、または状態のそれぞれに関する処置は、それらの病因のように様々である。ステロイドおよび一部の免疫モジュレーターは、これらの障害に関連ある症状を処置しまたは緩和するのに使用される。例えば副腎皮質ステロイドは、肺炎を処置するのに使用されてきたが結果は様々である(例えば、Stern et al., Cochrane Database Syst Rev., 2017; 2017(12):CD007720参照)。プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドは、微小変化型疾患を処置するのに使用されており、疾患を持つ成人の80%超に完全な寛解をもたらすことができ、その治療の持続期間は、患者の約50%に関して4週間続き、患者の約10%から25%に関する治療は12から16週間であった(例えば、Hogan et al., J Amer Soc Nephrol., 2013; 24 (5):702-711参照)。これら特定のしかし異質の障害のスペクトラムに有効性を有する他の治療剤を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Stern et al., Cochrane Database Syst Rev., 2017; 2017(12):CD007720
【非特許文献2】Hogan et al., J Amer Soc Nephrol., 2013; 24 (5):702-711
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
本発明は、慢性の咳、アトピー性喘息、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器障害、ならびにアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器疾患を処置するための、キノリン化合物ならびにその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物の使用に関する。本発明の一態様では、化合物は、一般式I:
【化1】
またはその薬学的に許容される塩を有し、式中、各変数は本明細書で定義される通りである。
【0008】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、慢性の咳を処置するのに有用である。
【0009】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、アトピー性喘息を処置するのに有用である。
【0010】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、肺炎を処置するのに有用である。
【0011】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、肺敗血症を処置するのに有用である。
【0012】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、アルコール性肝炎を処置するのに有用である。
【0013】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、微小変化型疾患を処置するのに有用である。
【0014】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、巣状分節性糸球体硬化症を処置するのに有用である。
【0015】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、アレルギー性鼻炎を処置するのに有用である。
【0016】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)または脂肪肝疾患を処置するのに有用である。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に開示される化合物またはその薬学的に許容される塩およびそれらの組成物は、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)を処置するのに有用である。
【0018】
一部の実施形態では、上記障害、疾患、または状態を処置する方法は、本明細書に開示されるキノリン化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0019】
一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、全身投与される。
【0020】
一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、気管支アレルゲン曝露(BAC)によって誘発された軽度喘息の対象における化合物I-1の安全性および有効性を研究するための、第2相試験に関する研究デザインの概略図を示す。MCT:メタコリン曝露試験;BAC;気管支アレルゲン曝露;FeNO:呼気一酸化窒素濃度;A:化合物I-1 600mg PO bid、7(+3)日間;B:プラセボ600mg PO bid、7(+3)日間。
【0022】
【
図2】
図2は、ヒト精密カット肝臓スライス(PCLS)中のトリグレセリドレベルに対するおよびアセトアルデヒド(AA)レベルに対する化合物I-1(棒グラフ中の「ADX」)の影響を示す。レベルは、24時間、48時間、および72時間(それぞれ、左、中、および右のデータ棒)で測定した。
【0023】
【
図3】
図3は、ヒト精密カット肝臓スライス(PCLS)中のATPレベルに対するおよびLDHレベルに対する化合物I-1(棒グラフ中の「ADX」)の影響を示す。レベルは、24時間、48時間、および72時間(それぞれ、左、中、および右のデータ棒)で測定した。
【0024】
【
図4】
図4は、化合物I-1で処置したラットにおける12週コリン欠乏(定義されたアミノ酸)高脂肪飼料の結果を示す。
【0025】
【
図5】
図5は、化合物I-1を用いた12週コリン欠乏高脂肪飼料研究におけるラットに関する食物摂取変化、ベースラインからの体重増加変化、ならびにMIP、MCP、およびRANTESサイトカインのレベルを示す。
【0026】
【
図6】
図6は、化合物I-1を用いた12週コリン欠乏高脂肪飼料研究におけるラットに関するコレステロールおよびトリグリセリド臨床化学を示す。コレステロールおよびトリグリセリドは、化合物I-1で処置された群で低下する傾向にあった。Chol=コレステロール;trig=トリグリセリド;Bili=ビリルビン。
【0027】
【
図7】
図7は、化合物I-1を用いた12週コリン欠乏高脂肪飼料研究におけるラットに関する病理組織結果を示す。処置は、I-1処置群において線維症および炎症を低減させた。7w=7週用量群;11w=11週用量群。
【0028】
【
図8】
図8は、ラットNAFLDモデルにおけるNASスコアを示す。11週群(84日目)NASスコアは、I-1処置群で低かった。NASスコアリングシステムは、4つの半定量的特徴:脂肪肝(0~3)、小葉炎症(0~2)、肝細胞風船状腫大(0~2)、線維症(0~4)を含む。
【0029】
【
図9】
図9は、化合物I-1を用いたSTAM(商標)マウス研究の設計および結果を示す。STAM(商標)モデルは、ヒトNASH/HCCと同じ疾患進行を再現するモデルである。このモデルでは、2日齢のオスC57BL/6マウスに単回用量のストレプトゾトシンを与えて、インスリン分泌能を低減させる。マウスが4週齢になったら、高脂肪飼料の給餌を開始する。このモデルは、脂肪肝、NASH、線維症、および結果的に肝臓がん(HCC)に進行する遅発性2型糖尿病のバックグラウンドを有する。他のNASH-HCCモデルマウスと比較して、疾患は比較的短期間で進行し、肝臓がんが20週齢の動物で100%発症する。このモデルは、NASH研究で広く使用され、これまでSTAM(商標)モデルからのデータを使用して、40を超える論文および70の国際会議が公開されている。STAM(商標)モデルは、ヒトNASHの病理学的特徴の多くを再現することができる。例えば:細胞の風船状腫大変性、ヒトNASHの特徴的病理学的特徴;線維症の進行と共に脂質滴が減少する、バーンアウトNASH;中心静脈周囲に生じる線維症の進行;ALT(肝臓損傷マーカー)の軽度な上昇;CK-18などのNASHマーカーの増加;グルタミンシンターゼ、グリピカン-3、およびAFPなどのヒトHCCマーカーの増加が観察されている。データは、化合物I-1を用いた処置の後に肝線維症およびトリグリセリドが著しく低減したことを示す。
【0030】
【
図10】
図10は、メチルセルロース中200mg/kg QDまたはBIDの化合物I-1で処置したSTAM(商標)ラットにおける体重増加の統計的に有意な低減を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
詳細な説明
1. 本発明のある特定の態様の概略的説明
一部の態様では、本開示は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態の、処置、改善、予防、および/またはリスクの低減のための化合物、組成物、および方法を提供する。
【0032】
一部の態様では、本開示は、アレルギー性鼻炎から選択される呼吸器の疾患、障害、または状態、あるいはNAFLD、脂肪肝疾患、およびNASHから選択される臓器の疾患、障害、または状態の、処置、改善、予防、および/またはリスクの低減のための化合物、組成物、および方法を提供する。
【0033】
別の態様では、本開示は、アトピー性喘息の処置、改善、予防、および/またはリスクの低減のための化合物、組成物、および方法を提供する。
【0034】
一態様では、本発明は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を、処置する方法であって、式I:
【化2】
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、式中:
R
1、R
7、およびR
8のそれぞれは独立して、H、D、ハロゲン、-NH
2、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されたC
1~6脂肪族、または
【化3】
であり、ここでR
1、R
7、およびR
8の1つは-NH
2であり、R
1 R
7、およびR
8の1つは
【化4】
であり;
R
2は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
3は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
4は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
5は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり;
R
6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり;あるいはR
6aおよびR
6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3から8員シクロアルキルまたはヘテロシクリル環を形成し;そして
各Rは独立して、水素、ジュウテリウム、ならびにC
1~6脂肪族;3から8員飽和または部分不飽和単環式炭素環式環;フェニル;8から10員二環式アリール環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3から8員飽和または部分不飽和単環式複素環式環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5から6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する6から10員二環式飽和または部分不飽和複素環式環;および窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する7から10員二環式ヘテロアリール環から選択される、必要に応じて置換された基から選択される、方法を提供する。
【0035】
一態様では、本発明は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を、処置する方法であって、式II:
【化5】
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、式中:
R
1は、H、D、またはハロゲンであり;
R
2は、H、D、またはハロゲンであり;
R
3は、H、D、またはハロゲンであり;
R
4は、H、D、またはハロゲンであり;
R
5は、H、D、またはハロゲンであり;
R
6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり;そして
R
6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族である、方法を提供する。
2. 定義
【0036】
本発明の化合物は、概略的に上述されるものを含み、本明細書に開示されるクラス、サブクラス、および種によってさらに例示される。本明細書で使用される場合、下記の定義は、他に指示されない限り適用されるものとする。本開示の目的で、化学元素は、元素の周期表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics, 75th Edに従い特定される。さらに、有機化学の一般原理は、Organic Chemistry, Thomas Sorrell, University Science Books, Sausalito: 1999、およびMarch's Advanced Organic Chemistry, 5th Ed., Ed.:Smith, M.B.およびMarch, J., John Wiley & Sons, New York: 2001であってその内容全体が参照により本明細書に組み込まれるものに記載される。
【0037】
本明細書で使用される「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、直鎖(即ち、非分岐状)または分岐状の置換または非置換炭化水素鎖であって完全に飽和したものまたは1個もしくは複数の不飽和単位を含有するもの、あるいは単環式炭化水素または二環式炭化水素であって完全に飽和したものまたは1個もしくは複数の不飽和単位を含有するものであり、しかし芳香族ではないもの(本明細書では「炭素環」、「脂環式」、または「シクロアルキル」とも呼ぶ)であり、分子の残りの部分に単一の結合点を有するものを意味する。他に指定しない限り、脂肪族基は1~6個の脂肪族炭素原子を含有する。一部の実施形態では、脂肪族基は1~5個の脂肪族炭素原子を含有する。他の実施形態では、脂肪族基は1~4個の脂肪族炭素原子を含有する。さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~3個の脂肪族炭素原子を含有し、さらに他の実施形態では、脂肪族基は1~2個の脂肪族炭素原子を含有する。一部の実施形態では、「脂環式」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全に飽和したまたは1個もしくは複数の不飽和単位を含有するが芳香族ではなく、分子の残りの部分に単一の結合点を有する、単環式C3~C6炭化水素を指す。適切な脂肪族基には、限定するものではないが直鎖状または分岐状の置換または非置換アルキル、アルケニル、アルキニル基と、それらの混成体、例えば(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニルが含まれる。
【0038】
「低級アルキル」という用語は、C1~4直鎖または分岐状アルキル基を指す。例示的な低級アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、およびtert-ブチルである。
【0039】
「低級ハロアルキル」という用語は、1個または複数のハロゲン原子で置換されたC1~4直鎖または分岐状アルキル基を指す。
【0040】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素の1つまたは複数(窒素、硫黄、リン、またはケイ素の任意の酸化形態;任意の塩基性窒素の第四級化形態;または複素環式環の置換可能な窒素、例えばN(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルのような)、NH(ピロリジニルのような)、またはNR+(N置換ピロリジニルのような)を含む)を意味する。
【0041】
本明細書で使用される「不飽和」という用語は、1つまたは複数の不飽和単位を有する部分を意味する。
【0042】
本明細書で使用される場合、「2価のC1~8(またはC1~6)飽和または不飽和直鎖または分岐状炭化水素鎖」という用語は、本明細書で定義される直鎖または分岐状の2価のアルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン鎖を指す。
【0043】
「アルキレン」という用語は、2価のアルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、即ち-(CH2)n-であり、式中、nは正の整数であり、好ましくは1から6、1から4、1から3、1から2、または2から3である。置換アルキレン鎖は、1個または複数のメチレン水素原子が置換基で置き換えられたポリメチレン基である。適切な置換基には、置換脂肪族基に関して以下に記述されるものが含まれる。
【0044】
「アルケニレン」という用語は、2価のアルケニル基を指す。置換アルケニレン鎖は、1個または複数の水素原子が置換基で置き換えられた、少なくとも1つの二重結合を含有するポリメチレン基である。適切な置換基には、置換脂肪族基に関して以下に記述されるものが含まれる。
【0045】
「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0046】
単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」のようにより長い部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計で5から14個の環員を有する単環式または二環式環系であって、その系内の少なくとも1個の環が芳香族であり、その系内の各環が3から7個の環員を含有するものを指す。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と同義で使用されてもよい。一部の実施形態では、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」のようにより長い部分の一部として使用される「アリール」という用語は、合計で5から10個の環員を有する単環式および二環式環系であって、その系内の少なくとも1個の環が芳香族であり、その系内の各環が3から7個の環員を含有するものを指す。化合物のある特定の実施形態では、「アリール」は、1個または複数の置換基を保持し得る、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントラシルなどを含むがこれらに限定されない芳香族環系を指す。本明細書で使用されるように、「アリール」という用語の範囲内には、芳香族環が1個または複数の非芳香族環に縮合された基、例えばインダニル、フタリミジル、ナフチミジル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロナフチルなども含まれる。
【0047】
単独でまたはより大きい部分、例えば「ヘテロアラルキル」または「ヘテロアラルコキシ」の一部として使用される「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-(heteroar-)」という用語は、5から10個の環原子、好ましくは5、6、または9個の環原子を有する;環状アレイ中で共用される6、10、または14個のπ電子を有する;および炭素原子に加えて1から5個のヘテロ原子を有する基を指す。「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、または硫黄を指し、窒素または硫黄の任意の酸化形態および塩基性窒素の任意の第四級化形態を含む。ヘテロアリール基には、限定するものではないがチエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニル、およびプテリジニルが含まれる。本明細書で使用される「ヘテロアリール」および「ヘテロアラ-(heteroar-)」という用語は、複素芳香環が1個または複数のアリール、脂環式、またはヘテロシクリル環に縮合される基も含み、ラジカルまたは結合点は複素芳香族環上にある。非限定的な例には、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H-キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、およびピリド[2,3-b]-1,4-オキサジン-3(4H)-オンが含まれる。ヘテロアリール基は、単環式または二環式であってもよい。「ヘテロアリール」という用語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」、または「複素芳香族」という用語と同義で使用されてもよく、その用語のいずれも、必要に応じて置換された環を含む。「ヘテロアラルキル」という用語は、ヘテロアリールによって置換されたアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロアリール部分は独立して、必要に応じて置換される。
【0048】
本明細書で使用される場合、「複素環」、「ヘテロシクリル」、「複素環式ラジカル」、および「複素環式環」という用語は同義で使用され、飽和されたまたは部分不飽和のいずれかでありかつ炭素原子に加えて上記にて定義された1個または複数の、好ましくは1から4個のヘテロ原子を有する、安定な5から7員単環式または7から10員二環式複素環部分を指す。複素環の環原子に関連して使用されるとき、「窒素」という用語は置換窒素を含む。例として、酸素、硫黄、および窒素から選択される0から3個のヘテロ原子を有する飽和または部分不飽和環では、窒素がN(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリルのような)、NH(ピロリジニルのような)、または+NR(N置換ピロリジニルのような)であってもよい。
【0049】
複素環式環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子または炭素原子でその側基に結合することができ、環原子のいずれかを必要に応じて置換することができる。そのような飽和または部分不飽和複素環式ラジカルの例には、限定するものではないがテトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニルピロリジニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、およびキヌクリジニルが含まれる。「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環部分」、および「複素環ラジカル」という用語は、本明細書では同義で使用され、ヘテロシクリル環が1個または複数のアリール、ヘテロアリール、または脂環式環に縮合された基、例えばインドリニル、3H-インドリル、クロマニル、フェナントリジニル、またはテトラヒドロキノリニルも含み、このラジカルまたは結合点はヘテロシクリル環上にある。ヘテロシクリル基は、単環式または二環式であってもよい。「ヘテロシクリルアルキル」という用語は、ヘテロシクリルによって置換されたアルキル基を指し、アルキルおよびヘテロシクリル部分は独立して、必要に応じて置換される。
【0050】
本明細書で使用される場合、「部分不飽和」という用語は、少なくとも1つの二重または三重結合を含む環部分を指す。「部分不飽和」という用語は、本明細書で定義されるように、複数の不飽和部位を有する環を意図しているが、しかしアリールまたはヘテロアリール部分を含むことを意図していない。
【0051】
本明細書で記述されるように、本開示の化合物は、「必要に応じて置換された」部分を含有し得る。一般に「置換された」という用語は、「必要に応じて」という用語が先行してもまたはそうでなくても、指示された部分の1個または複数の水素が適切な置換基で置き換えられることを意味する。他に指示しない限り、「必要に応じて置換された」基は、基の各置換可能位置で適切な置換基を有していてもよく、任意の所与の構造における複数の位置が、指定された群から選択される複数の置換基で置換され得るとき、置換基は全ての位置で同じであっても異なっていてもいずれでもよい。本明細書の化合物に関して思い描かれる置換基の組合せは、好ましくは、安定なまたは化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすものである。本明細書で使用される「安定な」という用語は、それらの生成、検出、ならびにある特定の実施形態ではそれらの回復、精製、および本明細書に開示された目的の1つまたは複数のための使用を可能にする条件に供したときに実質的に変化しない化合物を指す。
【0052】
「必要に応じて置換された」基の置換可能な炭素原子上の適切な1価の置換基は、独立して、ハロゲン、-(CH2)0~4R〇;-(CH2)0~4OR〇;-O(CH2)0~4Ro、-O-(CH2)0~4C(O)OR〇;-(CH2)0~4CH(OR〇)2;-(CH2)0~4SR〇;R〇で置換されていてもよい-(CH2)0~4Ph;R〇で置換されていてもよい-(CH2)0~4O(CH2)0~1Ph;R〇で置換されていてもよい-CH=CHPh;R〇で置換されていてもよい-(CH2)0~4O(CH2)0~1-ピリジル;-NO2;-CN;-N3;-(CH2)0~4N(R〇)2;-(CH2)0~4N(R〇)C(O)R〇;-N(R〇)C(S)R〇;-(CH2)0~4N(R〇)C(O)NR〇
2;-N(R〇)C(S)NR〇
2;-(CH2)0~4N(R〇)C(O)OR〇;-N(R〇)N(R〇)C(O)R〇;-N(R〇)N(R〇)C(O)NR〇
2;-N(R〇)N(R〇)C(O)OR〇;-(CH2)0~4C(O)R〇;-C(S)R〇;-(CH2)0~4C(O)OR〇;-(CH2)0~4C(O)SR〇;-(CH2)0~4C(O)OSiR〇
3;-(CH2)0~4OC(O)R〇;-OC(O)(CH2)0~4SR-、SC(S)SR〇;-(CH2)0~4SC(O)R〇;-(CH2)0~4C(O)NR〇
2;-C(S)NR〇
2;-C(S)SR〇;-SC(S)SR〇、-(CH2)0~4OC(O)NR〇
2;-C(O)N(OR〇)R〇;-C(O)C(O)R〇;-C(O)CH2C(O)R〇;-C(NOR〇)R〇;-(CH2)0~4SSR〇;-(CH2)0~4S(O)2R〇;-(CH2)0~4S(O)2OR〇;-(CH2)0~4OS(O)2R〇;-S(O)2NR〇
2;-(CH2)0~4S(O)R〇;-N(R〇)S(O)2NR〇
2;-N(R〇)S(O)2R〇;-N(OR〇)R〇;-C(NH)NR〇
2;-P(O)2R〇;-P(O)R〇
2;-OP(O)R〇
2;-OP(O)(OR〇)2;SiR〇
3;-(C1~4直鎖または分岐状アルキレン)O-N(R〇)2;または-(C1~4直鎖または分岐状アルキレン)C(O)O-N(R〇)2であり、各R〇は、以下に定義されるように置換されてもよく、かつ独立して、水素、C1~6脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、-CH2-(5~6員ヘテロアリール環)、または窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和、部分不飽和、またはアリール環であり、または上記定義にも関わらず、R〇の2つの独立した出現は、それらの介在原子(複数可)と一緒になって、以下に定義されるように置換され得る窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する3~12員飽和、部分不飽和、またはアリール単環もしくは二環式環を形成する。
【0053】
R〇(またはその介在原子と一緒になって、R〇の2回の独立した出現を得ることにより形成された環)上の適切な1価の置換基は、独立して、ハロゲン、-(CH2)0~2R●、-(ハロR●)、-(CH2)0~2OH、-(CH2)0~2OR●、-(CH2)0~2CH(OR●)2;-O(ハロR●)、-CN、-N3、-(CH2)0~2C(O)R●、-(CH2)0~2C(O)OH、-(CH2)0~2C(O)OR●、-(CH2)0~2SR●、-(CH2)0~2SH、-(CH2)0~2NH2、-(CH2)0~2NHR●、-(CH2)0~2NR●
2、-NO2、-SiR●
3、-OSiR●
3、-C(O)SR●、-(C1~4直鎖または分岐状アルキレン)C(O)OR●、または-SSR●であり、各R●は非置換であり、または「ハロ」が先行する場合には1個または複数のハロゲンでのみ置換され、独立してC1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、および窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5~6員飽和、部分不飽和、またはアリール環である。R〇の飽和炭素原子上の適切な2価の置換基は、=Oおよび=Sを含む。
【0054】
「必要に応じて置換された」基の飽和炭素原子上の適切な2価の置換基には、下記が含まれる:=O、=S、=NNR*
2、=NNHC(O)R*、=NNHC(O)OR*、=NNHS(O)2R*、=NR*、=NOR*、-O(C(R*
2))2~3O-、または-S(C(R*
2))2~3S-、式中、それぞれ独立して出現するR*は、水素、以下に定義されるように置換され得るC1~6脂肪族、ならびに窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5から6員飽和、部分不飽和、またはアリール環から選択される。「必要に応じて置換された」基のビシナルな置換可能な炭素に結合される適切な2価の置換基には:-O(CR*
2)2~3O-が含まれ、式中、それぞれ独立して出現するR*は、水素、以下に定義されるように置換され得るC1~6脂肪族、ならびに窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5から6員飽和、部分不飽和、またはアリール環から選択される。
【0055】
R*の脂肪族基上の適切な置換基には、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2、または-NO2が含まれ、式中、各R●は非置換であり、または「ハロ」が先行する場合には、1個または複数のハロゲンでのみ置換され、かつ独立して、C1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5から6員飽和、部分不飽和、またはアリール環である。
【0056】
「必要に応じて置換された」基の置換可能な窒素上の適切な置換基には、-R†、-NR†
2、-C(O)R†、-C(O)OR†、-C(O)C(O)R†、-C(O)CH2C(O)R†、-S(O)2R†、-S(O)2NR†
2、-C(S)NR†
2、-C(NH)NR†
2、または-N(R†)S(O)2R†が含まれ;式中、各R†は独立して、水素、以下に定義されるように置換され得るC1~6脂肪族、非置換-OPh、または窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換5から6員飽和、部分不飽和、またはアリール環であり、または上記定義にも関わらず、2回の独立したR†の出現は、それらの介在原子(複数可)と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する非置換3から12員飽和、部分不飽和、またはアリール単環式または二環式環を形成する。
【0057】
R†の脂肪族基上の適切な置換基は、独立して、ハロゲン、-R●、-(ハロR●)、-OH、-OR●、-O(ハロR●)、-CN、-C(O)OH、-C(O)OR●、-NH2、-NHR●、-NR●
2、または-NO2であり、式中、各R●は、非置換であり、または「ハロ」が先行する場合には、1個または複数のハロゲンでのみ置換され、独立してC1~4脂肪族、-CH2Ph、-O(CH2)0~1Ph、または窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される0~4個のヘテロ原子を有する5から6員飽和、部分不飽和、またはアリール環である。
【0058】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、正しい医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー応答などがない状態でヒトおよび下等動物の組織と接触させた使用に適しており、かつ妥当なベネフィット/リスク比に相応しい塩を指す。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えばS. M. Berge et al.は、薬学的に許容される塩について、参照により本明細書に組み込まれるJ. Pharmaceutical Sciences, 1977, 66, 1-19で詳述している。本発明の化合物の薬学的に許容される塩には、適切な無機および有機酸および塩基から誘導されたものが含まれる。薬学的に許容される無毒性の酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、および過塩素酸などの無機塩と共にまたは酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸、もしくはマロン酸などの有機酸と共に、またはイオン交換などの当技術分野で使用されるその他の方法を使用して形成された、アミノ基の塩である。他の薬学的に許容される塩には、アジピン酸塩、アルギニン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホ酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、バレリン酸塩などが含まれる。
【0059】
適切な塩基から誘導される塩には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム、およびN+(C1~4アルキル)4塩が含まれる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩には、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどが含まれる。さらなる薬学的に許容される塩には、適切な場合には、無毒性アンモニウム、第四級アンモニウム、ならびにハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、スルフェート、ホスフェート、ナイトレート、低級アルキルスルホネート、およびアリールスルホネートなどの対イオンを使用して形成されたアミン陽イオンが含まれる。
【0060】
他に指示しない限り、本明細書に示される構造は、構造の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学的(または立体配座的))形態;例えば各不斉中心ごとのRおよびS配座、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE立体配座異性体も含むことを意味する。したがって、本発明の化合物の単一立体化学異性体ならびにエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学的(または立体配座的)混合物は、本発明の範囲内にある。他に指示しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性形態は、本発明の範囲内にある。
3. 実施形態の詳細な説明
【0061】
本明細書に記述される化合物は、アルデヒド捕捉活性を有するキノリン化合物であり、毒性アルデヒドの作用に関連した障害および疾患の処置における使用に関して記述されている。例えば、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれるPCT特許公開WO2006127945、WO2014116836、WO2017035077、およびWO2017035082を参照されたい。本明細書の化合物の合成は、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる、PCT公開WO2006127945、WO2017035082、およびWO2018039192;ならびに米国特許出願公開第2013/0190500号に記載されている。
【0062】
さらに、下記の特許出願の開示は、参照により本明細書に組み込まれる:2018年10月10日に出願されたWO2019/075136;および2021年3月24日に出願されたPCT/US2021/023884。これらの出願は、ある特定の疾患の処置におけるそれらの使用を含む、本明細書に記述されるキノリン化合物に関する追加の開示を提供する。
【0063】
本開示に記述されるように、ある特定のキノリン化合物は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を処置するのに有用である。一部の実施形態では、呼吸器の疾患、障害、または状態が、アトピー性喘息である。一部の態様では、本開示は、アレルギー性鼻炎から選択される呼吸器の疾患、障害、または状態、あるいはNAFLD、脂肪肝疾患、およびNASHから選択される臓器の疾患、障害、または状態の、処置、改善、予防、および/またはリスクの低減のための化合物、組成物、および方法を提供する。
【0064】
したがって一態様では、本開示は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を処置する方法であって、式I:
【化6】
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供し、式中:
R
1、R
7、およびR
8のそれぞれは独立して、H、D、ハロゲン、-NH
2、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されたC
1~6脂肪族、または
【化7】
であり、ここでR
1、R
7、およびR
8の1つは-NH
2であり、R
1、R
7、およびR
8の1つは
【化8】
であり;
R
2は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
3は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
4は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
5は、-R、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、-N(R)
2、-N(R)C(O)R、-C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)N(R)
2、-N(R)C(O)OR、-OC(O)N(R)
2、-N(R)S(O)
2R、-SO
2N(R)
2、-C(O)R、-C(O)OR、-OC(O)R、-S(O)R、および-S(O)
2Rから選択され;
R
6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり;
R
6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり;あるいはR
6aおよびR
6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3から8員シクロアルキルまたはヘテロシクリル環を形成し;そして
各Rは独立して、水素、ジュウテリウム、ならびにC
1~6脂肪族;3から8員飽和または部分不飽和単環式炭素環式環;フェニル;8から10員二環式アリール環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する3から8員飽和または部分不飽和単環式複素環式環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~4個のヘテロ原子を有する5から6員単環式ヘテロアリール環;窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する6から10員二環式飽和または部分不飽和複素環式環;ならびに窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1~5個のヘテロ原子を有する7から10員二環式ヘテロアリール環から選択される、必要に応じて置換された基から選択される。
【0065】
別の態様では、本開示は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を、処置する方法であって、式II:
【化9】
の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含み、式中:
R
1は、H、D、またはハロゲンであり;
R
2は、H、D、またはハロゲンであり;
R
3は、H、D、またはハロゲンであり;
R
4は、H、D、またはハロゲンであり;
R
5は、H、D、またはハロゲンであり;
R
6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族であり;そして
R
6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC
1~4脂肪族である、方法を提供する。
【0066】
別の態様では、本開示は、アトピー性喘息を処置し、改善し、予防し、および/またはリスクを低減させる方法であって、式IまたはIIの化合物;またはその薬学的に許容される塩の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む方法を提供する。
【0067】
下記の実施形態は、式Iに適用可能である。
【0068】
式Iの一部の実施形態では、R6aがC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウム原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0069】
式Iの一部の実施形態では、R6aがC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて値環されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたメチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R6aがメチルである。
【0070】
上記にて一般に定義されるように、R6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0071】
式Iの一部の実施形態では、R6bがC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のジュウテリウム原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bは、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0072】
式Iの一部の実施形態では、R6bがC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bが、1、2、または3個のハロゲン原子で必要に応じて置換されたメチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R6bがメチルである。
【0073】
上記にて一般に定義されるように、一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3から8員シクロアルキルまたはヘテロシクリル環を形成する。
【0074】
式Iの一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、3から8員シクロアルキルを形成する。一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、窒素、酸素、および硫黄から選択される1~2個のヘテロ原子を含有する3から8員ヘテロシクリル環を形成する。
【0075】
式Iの一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、シクロプロピル、シクロブチル、またはシクロペンチル環を形成する。一部の実施形態では、R6aおよびR6bは、それらが結合する炭素原子と一緒になって、オキシラン、オキセタン、テトラヒドロフラン、またはアジリジンを形成する。
【0076】
式Iの一部の実施形態では、R1、R7、およびR8の1つにある-NH2ならびにR1、R7、およびR8のその他にあるカルビノールが、ピリジン部分の隣接する炭素原子上にある。
【0077】
一部の実施形態では、化合物が、式I-a、I-b、またはI-c:
【化10】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中:
R
1、R
7、およびR
8のそれぞれは、存在する場合、独立してH、D、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されたC
1~6脂肪族、または
【化11】
であり、ここでR
1、R
7、およびR
8の1つが
【化12】
であり;かつ
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6a、R
6b R
7、R
8、およびRは、式Iに関して定義された通りである。
【0078】
一部の実施形態では、本方法における使用のための化合物が、式I-d、I-e、I-f、またはI-g:
【化13】
の化合物またはその薬学的に許容される塩であり、式中:
R
1およびR
7は、独立して、H、D、ハロゲン、-CN、-OR、-SR、必要に応じて置換されたC
1~6脂肪族であり;かつ
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6a、R
6b、R
7、R
8、およびRは、式Iに関して定義された通りである。
【0079】
下記の実施形態は、式IIに適用可能である。
【0080】
上記にて一般に定義されるように、R1はH、D、またはハロゲンである。
【0081】
一部の実施形態では、R1がHである。一部の実施形態では、R1がDである。一部の実施形態では、R1がハロゲンである。一部の実施形態では、R1がClである。一部の実施形態では、R1がBrである。
【0082】
上記にて一般に定義されるように、R2はH、D、またはハロゲンである。
【0083】
一部の実施形態では、R2がHである。一部の実施形態では、R2がDである。一部の実施形態では、R2がハロゲンである。一部の実施形態では、R2がClである。一部の実施形態では、R2がBrである。
【0084】
上記にて一般に定義されるように、R3はH、D、またはハロゲンである。
【0085】
一部の実施形態では、R3がHである。一部の実施形態では、R3がDである。一部の実施形態では、R3がハロゲンである。一部の実施形態では、R3がClである。一部の実施形態では、R3がBrである。
【0086】
上記にて一般に定義されるように、R4はH、D、またはハロゲンである。
【0087】
一部の実施形態では、R4がHである。一部の実施形態では、R4がDである。一部の実施形態では、R4がハロゲンである。一部の実施形態では、R4がClである。一部の実施形態では、R4がBrである。
【0088】
上記にて一般に定義されるように、R5はH、D、またはハロゲンである。
【0089】
一部の実施形態では、R5がHである。一部の実施形態では、R5がDである。一部の実施形態では、R5がハロゲンである。一部の実施形態では、R5がClである。一部の実施形態では、R5がBrである。
【0090】
上記にて一般に定義されるように、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0091】
一部の実施形態では、R6aは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aはC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6aはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6aは、メチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルである。一部の実施形態では、R6aがメチルである。
【0092】
上記にて一般に定義されるように、R6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で必要に応じて置換されたC1~4脂肪族である。
【0093】
一部の実施形態では、R6bは、1、2、または3個のジュウテリウムまたはハロゲン原子で置換されたC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bはC1~4脂肪族である。一部の実施形態では、R6bはC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bは、1、2、または3個のフッ素原子で必要に応じて置換されたC1~4アルキルである。一部の実施形態では、R6bは、メチル、エチル、n-プロピル、またはイソプロピルである。一部の実施形態では、R6bがメチルである。
【0094】
一部の実施形態では、R6aおよびR6bがメチルまたはエチルである。一部の実施形態では、R6aおよびR6bがメチルである。一部の実施形態では、R6aおよびR6bが-CD3である。
【0095】
一部の実施形態では、化合物が、式II-a:
【化14】
のものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
R
2、R
3、R
4、R
5、R
6a、およびR
6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0096】
一部の実施形態では、化合物が、式II-b:
【化15】
のものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
R
2、R
4、R
5、R
6a、およびR
6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0097】
一部の実施形態では、化合物は、式II-c、II-d、II-e、またはII-f:
【化16】
のいずれか1つのものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
R
2、R
4、R
5、R
6a、およびR
6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0098】
一部の実施形態では、化合物は、式II-g:
【化17】
のものまたはその薬学的に許容される塩であり、式中:
R
6aおよびR
6bのそれぞれは、上記にて提供されたように定義され、単独および組合せの両方で本明細書の実施形態に記述される。
【0099】
一部の実施形態では、開示される方法は、下記の表1に示されるものから選択される化合物を投与することを含む。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0100】
一部の実施形態では、本開示は、本明細書に記載される処置の方法における使用のための、上記表1に示される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0101】
一部の態様では、本開示は、アレルギー性鼻炎の処置、改善、予防、および/または低減のための方法における使用のための、本明細書に記述される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。一部の態様では、本開示は、NAFLD、脂肪肝疾患、およびNASHから選択される臓器の疾患、障害、または状態の処置、改善、予防、および/または低減のための方法における使用のための、本明細書に記述される化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。一部の実施形態では、化合物は、化合物I-1などの上記表1に示される化合物である。
【0102】
一部の実施形態では、本開示は、開示される処置の方法における使用のための、上記および本明細書に記述される任意の化合物またはその薬学的に許容される塩を提供する。本明細書で使用される場合、「処置(treatment)」、「処置する(treat)」、および「処置している(treating)」という用語は、本明細書に記述される疾患または障害あるいはそれらの1つまたは複数の症状の進行を反転させ、緩和し、発症を遅延させ、または阻害することを指す。一部の実施形態では、処置は、1つまたは複数の症状が発生した後に施用される。他の実施形態では、処置は、症状が存在しない状態で施用される。例えば処置は、症状の発症前に、感受性のある個体に施用される(例えば、症状の病歴に照らしておよび/または遺伝的もしくはその他の感受性因子に照らして)。処置は、例えばその再発を予防し、遅延させ、または重症度を低減させるため、症状が解消した後も継続する。
【0103】
一部の実施形態では、本明細書に記述される化合物は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態の、処置、予防、および/またはリスクの低減のために使用される。
【0104】
一部の実施形態では、本明細書に記述される化合物は、アトピー性喘息の処置、予防、および/またはリスクの低減のために使用される。一部の実施形態では、アトピー性(またはアレルギー性)喘息は、花粉、塵埃、動物(例えば、ネコのふけまたはイヌの毛)、またはイエダニを含む、屋内、屋外、または職業性アレルゲンなどのアレルゲンによって誘発される。一部の実施形態では、アトピー性喘息患者は、季節性アレルギー、皮膚炎、および食物アレルギーから選択される別の状態も有する。
【0105】
上述のように、一態様では、本開示は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を処置し、予防し、および/またはリスクを低減する方法であって、本明細書に記述される化合物の有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0106】
一部の実施形態では、本開示は、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を処置し、予防し、および/またはリスクを低減させるための医薬の製造における、本明細書に記述される化合物の使用を提供する。
【0107】
一部の実施形態では、化合物は、表1の例示的な化合物のいずれか1種である。
【0108】
一部の実施形態では、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を処置し、予防し、および/またはリスクを低減させることにおける使用のための化合物は、式II-gの化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【0109】
一部の実施形態では、慢性の咳、肺炎、および肺敗血症から選択される呼吸器の疾患、障害、もしくは状態、またはアルコール性肝炎、微小変化型疾患、および巣状分節性糸球体硬化症から選択される臓器の疾患、障害、または状態を処置し、予防し、および/またはリスクを低減させることにおける使用のための化合物は、化合物I-1またはI-2あるいはその薬学的に許容される塩である。
【0110】
一部の実施形態では、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、原発性FSGSである。FSGSと診断された多くの人々は、それらの状態に関して公知の原因がない。これを原発性(特発性)FSGSと呼ぶ。
【0111】
一部の実施形態では、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、続発性FSGSである。感染、薬物毒性、疾患、例えば糖尿病、または鎌状赤血球症、肥満、およびさらにその他の腎臓疾患など、いくつかの要因が続発性FSGSを引き起こす可能性がある。根底にある原因の制御または処置は、進行する腎臓損傷をしばしば停止させ、時間と共に改善された腎臓機能をもたらす可能性がある。
【0112】
一部の実施形態では、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、遺伝的(家族性とも呼ぶ)FSGSである。この稀な形のFSGSは、遺伝子変異によって引き起こされる。家族性FSGSは、どちらの親にも疾患がなく、しかし各々が次世代に渡される可能性のある異常な遺伝子の1つのコピーを保持するときにも生ずる可能性がある。
【0113】
一部の実施形態では、本開示の方法は、慢性の咳の処置を対象とする。一部の実施形態では、慢性の咳を処置しまたはリスクを低減させる方法は、本明細書に開示される化合物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。一般に慢性の咳は、8週の持続時間よりも長く続く咳と特徴付けられる(例えば、Irwin et al., Chest, 2018; 153(1):196-209; Morice, A.H., European Respiratory J., 2004; 24:481-492参照)。慢性の咳は、喘息、胃食道逆流症(GERD)、非喘息性好酸球性気管支炎(NAEB)、および上気道咳症候群であって別名、後鼻漏症候群として公知のものなど、根底にある種々の原因によって誘発されおよび/または生じる可能性がある。慢性の咳の種々の診断は、細菌またはウイルス感染;慢性閉塞性肺疾患(COPD)およびその他の非喘息性肺疾患;肺または食道のがん;肺炎;間質性肺疾患;および閉塞型睡眠時無呼吸からなど、熱を伴う咳を除外する(例えば、Perotin et al., Ther Clin Risk Manag, 2018: 14:1041-1051参照)。
【0114】
一部の実施形態では、処置のための慢性の咳は、上気道咳症候群に関連する。
【0115】
一部の実施形態では、処置のための慢性の咳は、胃食道逆流症または咽喉頭逆流症に関連する。
【0116】
一部の実施形態では、処置のための慢性の咳は、喘息に関連する。
【0117】
一部の実施形態では、処置のための慢性の咳は、非喘息性好酸球性気管支炎に関連する。
【0118】
一部の実施形態では、処置される患者は、下記の1つまたは複数の病歴を有する:アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤の処置、喫煙、喘息、環境性呼吸器刺激物質への曝露、および気管支炎。
【0119】
一部の実施形態では、本開示の方法は、肺炎の処置を対象とする。一部の実施形態では、肺炎は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に関連せずまたは同時に発生しない。
【0120】
一部の実施形態では、処置される患者には肺炎があり、肺炎は、好酸球性肺炎とは異なる診断を有する(即ち、肺炎は、好酸球性肺炎に関連しない)。
【0121】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、市中肺炎である。
【0122】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、院内肺炎(nocosomial pneumonia)である。
【0123】
一部の実施形態では、処置される肺炎は、細菌性肺炎またはウイルス性肺炎である。
【0124】
一部の実施形態では、処置される患者は、とりわけStreptococcus pneumoniae、Haemophilus influenzae、S. aureus、A群streptococci、Moraxella catarrhalis、Klebsiella pneumoniae、Pseudomonas aeruginosa、Legionella spp、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydia pneumoniae、またはC. psittaciによる細菌感染と診断される。
【0125】
一部の実施形態では、処置される患者は、インフルエンザウイルス(例えば、インフルエンザA型またはインフルエンザB型)、呼吸器多核体ウイルス(RSV)、パラインフルエンザ、メタニューモウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、ハンタウイルス、またはアデノウイルスによるウイルス感染と診断される。
【0126】
一部の実施形態では、処置される肺炎が、大葉性肺炎である。
【0127】
一部の実施形態では、処置される肺炎が、上、中、または下葉肺炎である。
【0128】
一部の実施形態では、処置される肺炎が、巣状肺炎、肺胞性肺炎、または間質性肺炎である。
【0129】
一部の実施形態では、処置される肺炎が、気管支肺炎である。
【0130】
一部の実施形態では、本開示の方法は、肺敗血症または敗血症誘発型肺損傷の処置を対象とする。一部の実施形態では、肺敗血症または敗血症誘発型肺損傷を処置しまたはリスクを低減させる方法は、本明細書に開示される化合物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。一般に、肺敗血症または敗血症誘導型肺損傷は、敗血症から生じる肺損傷を特徴とする。肺は、主に敗血症によって最もしばしば影響を受ける臓器であるが、それは肺炎がしばしば敗血症プロセスの開始点になり、播種性感染プロセスが全身炎症応答(SIRS)に関連付けられて影響を受ける最初の臓器が通常は肺であるからである。
【0131】
一部の実施形態では、処置される肺敗血症または敗血症誘発型肺損傷は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を伴わない(即ち、関連付けられない)。
【0132】
一部の実施形態では、本開示の方法は、アルコール性肝炎の処置を対象とする。一部の実施形態では、アルコール性肝炎を処置しまたはリスクを低減させる方法は、本明細書に開示される化合物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。一般に、アルコール性肝炎は、肝損傷であり、慢性アルコール中毒から生じる炎症状態に関連する。疾患に関する顕著な特徴またはマーカーは、高ビリルビン血症である。一部の実施形態では、アルコール性肝炎と肝硬変とは、前者が可逆的であるようであり、それに対して後者は肝臓に対する永続的損傷である点で、区別される。
【0133】
一部の実施形態では、アルコール性肝炎には肝硬変がない(即ち、肝硬変を伴わない)。
【0134】
一部の実施形態では、アルコール性肝炎の処置がなされた患者は、アルコール性肝炎に罹っていない対照群でのレベルと比較して、高レベルのアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)および/またはアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)を有することが決定される。
【0135】
一部の実施形態では、対照群(即ち、アルコール性肝炎がない)でのASTのレベルは、約8から48IU/Lであり、対照群でのALTのレベルは約7から55IU/Lである。
【0136】
一部の実施形態では、処置された患者は、2:1よりも大きいAST:ALT比を有する。この比は、アルコール性肝疾患の患者で特徴的である。アルコール中毒の履歴があるが肝臓の著しいアルコール性肝炎または肝硬変のない患者は、通常、1.0未満のAST/ALT比を有する。
【0137】
一部の実施形態では、本開示の方法は、リポイドネフローゼまたはニル疾患と呼ばれることもある微小変化型疾患の処置を対象とする。一部の実施形態では、微小変化型疾患を処置しまたはリスクを低減する方法は、本明細書に開示される化合物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。一般に、微小変化型疾患は、糸球体の組織病理学的病変から生ずる腎臓疾患であり、浮腫および静脈内容量減少をもたらすタンパク尿を特徴とする。微小変化型疾患は、ネフローゼ症候群の一般的な形である。
【0138】
一部の実施形態では、処置される微小変化型疾患は、ネフローゼ症候群に関連付けられる。
【0139】
一部の実施形態では、処置される微小変化型疾患は、タンパク尿、特に過剰なタンパク尿と同時である。
【0140】
微小変化型疾患は、巣状分節性糸球体硬化症にまで進行する可能性もある。したがって一部の実施形態では、本開示の方法は、巣状分節性糸球体硬化症(FGS)の処置を対象とする。一部の実施形態では、FGSを処置しまたはリスクを低減させる方法は、本明細書に開示される化合物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。一般にFGSは、進行性腎臓疾患における一般的病変と過剰なタンパク尿およびポドサイト損傷との両方を記載する。腎臓の損傷および瘢痕は、分節性パターンにおける巣状病変により特徴付けられる。FGSは、ネフローゼ症候群の一般的原因でもある。
【0141】
一部の実施形態では、処置されるFSGSが原発性FSGSである。
【0142】
一部の実施形態では、処置されるFSGSが続発性FSGSである。
【0143】
一部の実施形態では、処置されるFSGSが家族性FSGSである。常染色体優性FSGSは、反転フォルミン2(INF2)、アルファ-アクチニン-4遺伝子ACTN4をコードする遺伝子;TRPC6陽イオンチャネルタンパク質をコードする遺伝子;およびFilGAPタンパク質をコードする遺伝子ARHGAP24での突然変異に関連付けられる(例えば、Pollak, M.R., Adv Chronic Kidney Dis., 2014, 21(5): 422-425参照)。劣性型のFSGSは、ネフリンをコードする遺伝子NPHS1;およびホスホリパーゼCイプシロン1をコードする遺伝子PLCE1における突然変異に関連付けられる(例えば、上記Pollak参照)。
【0144】
一部の実施形態では、処置されるFSGSは、ネフローゼ症候群に関連付けられる。
【0145】
一部の実施形態では、処置されるFSGSは、腎不全、および/またはタンパク尿、特に過剰なタンパク尿と同時である。
【0146】
一部の実施形態では、FSGSが処置される患者は、微小変化型疾患の前病歴を有する。
【0147】
以下にさらに論じるように、本明細書に記述される化合物またはその薬学的に許容される塩は、本明細書に記述される適応症を処置するため、全身に投与することができる。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。
【0148】
一部の実施形態では、化合物がI-1またはその薬学的に許容される塩である。一部の実施形態では、化合物がI-2またはその薬学的に許容される塩である。
4. 医薬組成物、投与、および投薬量
【0149】
本発明の方法による化合物および組成物は、上記に提示される疾患を処置しまたは重症度を低減させるのに有効な、任意の量および任意の投与経路を使用して投与される。必要とされる正確な量は、対象の人種、年齢、および全体的な状態、感染の重症度、特定の年齢、その投与形態などに応じて対象ごとに変わることになる。本発明の化合物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、好ましくは単位剤形に製剤化される。本明細書で使用される「単位剤形」という表現は、患者の処置を行うのに適切な薬剤の物理的に個別の単位を指す。しかしながら、本発明の化合物または組成物の毎日の全使用量は、公正な医学的判断の範囲内で主治医により決定されることになるのが理解されよう。任意の特定の患者または生物に関する特に有効な用量レベルは、処置される障害および障害の重症度;用いられる特定の化合物の活性;用いられる特定の組成物;患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事;用いられる特定の化合物の投与時間、投与経路、および排泄率;処置の持続時間;用いられる特定の化合物と組み合わせてまたは同時に使用される薬物、および医学の分野で周知の同様の因子を含む、様々な因子に依存することになる。
【0150】
本発明の薬学的に許容される組成物は、ヒトおよびその他の動物に、処置される疾患の重症度に応じて経口的に、直腸から、非経口的に、嚢内から、膣内から、腹腔内から、局所的に(粉末、軟膏、または液滴によるように)、頬側から、口または鼻スプレーとして、または同様のもので投与することができる。ある特定の実施形態では、本発明の化合物は、経口的にまたは非経口的に、1日当たり、約0.01mg/kgから約50mg/kg、例えば約1mg/kgから約25mg/kgの対象体重の投薬レベルで、1日に1回または複数回投与されて、所望の治療効果を得る。
【0151】
経口投与用の液体剤形には、限定するものではないが薬学的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。活性化合物に加え、液体剤形は、当技術分野で一般に使用される不活性希釈剤、例えば水またはその他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、およびこれらの混合物などを含有していてもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁剤、甘味剤、着香剤、および芳香剤などのアジュバントを含むこともできる。
【0152】
注射用製剤、例えば滅菌注射用水性または油性懸濁液を、適切な分散または湿潤剤および懸濁剤を使用して、公知の技術分野に従い製剤化してもよい。滅菌注射用製剤は、無毒性の非経口的に許容される希釈剤または溶媒に加えた、例えば1,3-ブタンジオールに溶かした溶液としての、滅菌注射用溶液、懸濁液、またはエマルジョンであってもよい。用いられてもよい許容されるビヒクルおよび溶媒の中には、水、Ringer液、U.S.P.および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌固定油が、溶媒または懸濁媒体として都合良く用いられる。この目的のため、任意のブランドの固定油を、合成モノまたはジグリセリドを含めて用いることができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸は、注射剤の調製に使用される。
【0153】
注射製剤は、例えば細菌保持フィルターを通した濾過によって、または使用前に滅菌水またはその他の滅菌注射媒体に溶解しまたは分散させることができる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を組み込むことによって、滅菌することができる。
【0154】
本発明の化合物の効果を延ばすために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅くすることがしばしば望ましい。これは水溶性が不十分な結晶質または非晶質材料の液体懸濁液を使用することによって、実現され得る。次いで化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、この溶解速度は結晶サイズおよび結晶質形態に依存する可能性がある。あるいは、非経口投与される化合物形態の遅延吸収は、化合物を油ビヒクルに溶解しまたは懸濁することによって実現される。注射可能デポー形態は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に化合物のマイクロカプセル化母材を形成することによって作製される。化合物のポリマーに対する比および用いられる特定のポリマーの性質に応じて、化合物放出速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。デポー注射製剤は、化合物を、身体組織に適合性のあるリポソームまたはマイクロエマルジョンで捕捉することによっても調製される。
【0155】
直腸または膣投与のための組成物は、好ましくは、本発明の化合物と適切な非刺激性賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、または坐薬蝋であって周囲温度で固体であるが体温で液体でありしたがって直腸または膣腔内で溶融しかつ活性化合物を放出するものとを混合することによって、調製することができる坐薬である。
【0156】
経口投与用の固体剤形には、カプセル、錠剤、丸薬、粉末、および顆粒が含まれる。そのような固体剤形では、活性化合物は、少なくとも1種の不活性な薬学的に許容される賦形剤または担体、例えばクエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/またはa)充填剤または増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアなど、c)グリセロールなどの保湿剤、d)崩壊剤、例えば寒天-寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)パラフィンなどの溶液遅延剤、f)第四級アンモニア化合物などの吸収加速剤、g)例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイトクレーなどの吸収剤、およびi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物と、混合される。カプセル、錠剤、および丸薬の場合には、剤形は緩衝剤を含んでいてもよい。
【0157】
類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用する、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いられてもよい。錠剤、糖衣、カプセル、丸薬、および顆粒の固体剤形は、腸溶性コーティングおよび医薬製剤の分野で周知のその他のコーティングなどの、コーティングおよびシェルと共に調製することができる。それらは乳白剤を必要に応じて含有していてもよく、活性成分(複数可)のみをまたは優先的に、腸管のある特定の部分で、必要に応じて遅延的手法で放出する組成物のものとすることもできる。使用することができる埋込み組成物の例には、ポリマー物質および蝋が含まれる。類似のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールなどを使用する、軟質および硬質充填ゼラチンカプセルの充填剤として用いられてもよい。
【0158】
活性化合物は、上述の1種または複数の賦形剤と共にマイクロカプセル化形態にすることもできる。錠剤、糖衣、カプセル、丸薬、および顆粒の固体剤形は、腸溶性コーティング、放出制御コーティング、および医薬製剤分野で周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルと共に調製することができる。そのような固体剤形において、活性化合物は、スクロース、ラクトース、またはデンプンなどの少なくとも1種の不活性希釈剤と混合されてもよい。そのような剤形は、通常の慣行のように、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば錠剤化滑沢剤およびその他の錠剤化助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶質セルロースを含んでいてもよい。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、剤形は、緩衝剤を含んでいてもよい。それらは乳白剤を必要に応じて含有していてもよく、活性剤(複数可)のみをまたは優先的に、腸管のある特定の部分で、必要に応じて遅延的手法で放出する組成物のものとすることもできる。使用することができる埋込み組成物の例には、ポリマー物質および蝋が含まれる。
【0159】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤、またはパッチを含む。活性成分は、滅菌条件下で、薬学的に許容される担体および任意の必要な保存剤または緩衝剤と、必要に応じて混合される。眼科用製剤、点耳薬、および点眼薬が、本発明の範囲内にあることも企図される。さらに本発明は、身体への化合物の制御送達を提供する追加の利点を有する経皮パッチの使用を企図する。そのような剤形は、適正な媒体中に化合物を溶解しまたは分配することによって作製することができる。吸収増強剤は、皮膚を横断する化合物の流束を増大させるのに使用することもできる。速度は、速度制御膜を設けることによってまたは化合物をポリマー母材またはゲル中に分配することによってのいずれかで、制御することができる。
【0160】
一部の実施形態では、本発明は、開示された化合物のプロドラッグを含む、本明細書に記述される組成物を対象とする。本明細書で使用される「プロドラッグ」という用語は、化合物に代謝的手段によって(例えば、加水分解によって)in vivoで変換可能な化合物を意味する。プロドラッグの様々な一般形態は、例えば、参照によりそのそれぞれの内容全体が本明細書に組み込まれるBundgaard, (ed.), Design of Prodrugs, Elsevier (1985); Widder, et al. (ed.), Methods in Enzymology, vol. 4, Academic Press (1985); Krogsgaard-Larsen, et al., (ed). Design and Application of Prodrugs, Textbook of Drug Design and Development, Chapter 5, 113-191 (1991), Bundgaard, et al., Journal of Drug Delivery Reviews, 8:1-38(1992), Bundgaard, J. of Pharmaceutical Sciences, 77:285 et seq. (1988);およびHiguchi and Stella (eds.) Prodrugs as Novel Drug Delivery Systems, American Chemical Society (1975)で論じられるものなどが、当技術分野で公知である。
【0161】
錠剤またはカプセル(例えば、ゼラチンカプセル)の形での経口投与では、活性薬物成分を、経口の無毒性の薬学的に許容される不活性担体、例えばエタノール、グリセロール、水などと組み合わせることができる。さらに、望まれまたは必要な場合には、適切な結合剤、滑沢剤、崩壊剤、および着色剤を混合物中に組み込むこともできる。適切な結合剤には、デンプン、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、デンプンペースト、ゼラチン、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、および/またはポリビニルピロリドン、天然糖、例えばグルコースまたはベータラクトース、トウモロコシ甘味料、天然および合成ガム、例えばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、蝋、ならびに同様のものが含まれる。これらの剤形に使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、シリカ、タルカム、ステアリン酸、そのマグネシウムもしくはカルシウム塩、および/またはポリエチレングリコールなどが含まれる。崩壊剤には、限定するものではないがデンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムデンプン、寒天、アルギン酸またはそのナトリウム塩、または発泡性混合物、クロスカルメロースまたはそのナトリウム塩などが含まれる。希釈剤には、例えばラクトース、デキストロース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、および/またはグリシンが含まれる。
【0162】
錠剤は、錠剤の製造に適した無毒性の薬学的に許容される賦形剤と混合された活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、またはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;造粒および崩壊剤、例えばコーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、例えばデンプン、ゼラチン、またはアカシア、および滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクであってもよい。錠剤はコーティングされていなくてもよく、または胃腸管での崩壊および吸収を遅延させるために公知の技法によりコーティングされていてもよく、それによって長期間にわたる持続作用が提供される。
【0163】
経口製剤における、本明細書に記述される化合物の治療有効量は、1日当たり0.01mg/kgから50mg/kg患者体重まで様々であってもよく、より詳細には0.01から10mg/kgであり、これを1日当たり単回または多数回用量で投与することができる。経口投与では、薬物を、1mgから500mgの活性成分、特に1mg、5mg、10mg、20mg、50mg、100mg、250mg、および500mg含有する錠剤またはカプセルの形で、あるいは少なくとも1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%(w/w)の活性成分を含有する錠剤またはカプセルの形で送達することができる。例えばカプセルは、50mgの活性成分または5~10%(w/w)の活性成分を含有していてもよい。例えば錠剤は、100mgの活性成分または20~50%(w/w)の活性成分を含有していてもよい。例えば錠剤は、活性成分に加えて、崩壊剤または皮膚軟化剤(例えば、クロスカルメロースまたはそのナトリウム塩およびメチルセルロース)、希釈剤(例えば、微結晶質セルロース)、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム)を含有していてもよい。薬物は、1日当たり1回、2回、またはそれよりも多い回数のいずれかで、毎日投与することができる。
【0164】
吸入による投与では、化合物は、適切な推進剤、例えば二酸化炭素などの気体を含有する加圧容器またはディスペンサーあるいはネブライザーからのエアロゾルスプレーの形で送達することができる。
【0165】
経粘膜または経皮投与では、障壁に浸透させるのに適した浸透剤を製剤中に使用する。そのような浸透剤は一般に、当技術分野で公知であり、例えば経粘膜投与のために洗浄剤、胆汁酸塩、およびフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻スプレーまたは坐薬の使用を経て実現することができる。経皮投与では、活性化合物は、当技術分野で一般に公知の軟膏、膏薬、ゲル、またはクリームに製剤化される。
【0166】
本明細書に記述される化合物を含む非経口製剤は、水性等張性溶液または懸濁液に調製することができ、坐薬は、脂肪エマルジョンまたは懸濁液から有利に調製される。製剤は、滅菌されてもよく、および/またはアジュバント、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤、もしくは乳化剤、溶解促進剤、浸透圧を調節するための塩、および/または緩衝剤を含有していてもよい。さらに、その他の治療上価値ある物質を含有していてもよい。組成物は、従来の方法に従い調製され、約0.1から75%、好ましくは約1から50%の本明細書に記述される化合物を含有していてもよい。
【0167】
「非経口投与」および「非経口的に投与された」という文言は、当技術分野で理解されている用語であり、注射によるなど経腸および局所投与以外の投与形態を含み、限定するものではないが静脈内、筋肉内、胸腔内、血管内、心膜内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊椎内、および胸骨内注射および輸液が含まれる。
【0168】
皮膚への局所投与用の製剤は、例えば、薬学的に許容される担体中に第一級アミン化合物を含む軟膏、クリーム、ゲル、およびペーストを含むことができる。局所使用に向けた第一級アミン化合物の製剤は、当業者に周知のように、油性または水溶性軟膏ベースの調製物を含む。例えばこれらの製剤は、植物油、動物脂肪、および例えば石油から得られた半固体炭化水素を含んでいてもよい。使用される特定の成分は、白色軟膏、黄色軟膏、セチルエステル蝋、オレイン酸、オリーブ油、パラフィン、ワセリン、白色ワセリン、鯨蝋、デンプングリセリン、白色蝋、黄色蝋、ラノリン、無水ラノリン、およびモノステアリン酸グリセリルを含んでいてもよい。グリコールエーテルおよび誘導体、ポリエチレングリコール、ポリオキシル40 ステアレート、ならびにポリソルベートを含む、様々な水溶性軟膏ベースが使用されてもよい。
【0169】
局所投与用の製剤は、本出願で使用される化合物を、0.001~10%、0.05~10%、0.1~10%、0.2~10%、0.5~10%、1~10%、2~10%、3~10%、4~10%、5~10%、または7~10%(重量/体積)の範囲、あるいは0.001~2.0%、0.001~1.5%、または0.001~1.0%(重量/体積)の範囲、あるいは0.05~2.0%、0.05~1.5%、または0.05~1.0%(重量/体積)の範囲、あるいは0.1~5.0%、0.1~2.0%、0.1~1.5%、または0.1~1.0%(重量/体積)の範囲、あるいは0.5~5.0%、0.5~2.0%、0.5~1.5%、または0.5~1.0%(重量/体積)の範囲、あるいは1~5.0%、1~2.0%、または1~1.5%(重量/体積)の範囲の濃度で含有していてもよい。局所投与量の製剤は、本出願で使用される化合物を、0.001~2.5%、0.01~2.5%、0.05~2.0%、0.1~2.0%、0.2~2.0%、0.5~2.0%、または1~2.0%(重量/重量)の範囲、あるいは0.001~2.0%、0.001~1.5%、0.001~1.0%、または0.001~5%(重量/重量)の範囲の濃度で含有していてもよい。
【0170】
一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、全身に投与される。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、経口投与される。
【0171】
一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩の用量は、1日当たり約10mgから約10,000mgである。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩の用量は、1日当たり約10mgから約7500mgである。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩の用量は、1日当たり約50mgから約3600mgである。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩の用量は、1日当たり約250mgから約2400mgである。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩の用量は、1日当たり約600mgから約5000mgである。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩の用量は、1日当たり約1000mgから約7500mgである。
【0172】
一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、1日当たり1回、2回、3回、または4回投与される。一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩は、1日に2回投与される。
【0173】
一部の実施形態では、化合物またはその薬学的に許容される塩の用量は、約600mg BID(即ち、1日2回);1.2g BID;または2.4g BIDである。
【0174】
本出願に列挙される全ての刊行物、特許、特許出願、およびその他の文書は、個々の刊行物、特許、特許出願、またはその他の文書のそれぞれが全ての目的で参照により組み込まれるよう個々に示されるかの如く同じ程度まで、全ての目的で、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0175】
本発明の態様のそれぞれの全ての特徴は、必要な変更を加えてその他全ての態様に適用される。
【実施例】
【0176】
例示
(実施例1)
気管支アレルゲン曝露(BAC)によって誘発された軽度喘息の対象における化合物I-1の安全性および有効性を評価するための二重盲検プラセボ対照単一施設無作為化臨床試験
研究概要
【0177】
研究段階:第2相
【0178】
研究目的:主要な目的:アレルゲン誘発型軽度喘息の対象における化合物I-1の安全性を評価すること。二次的な目的:アレルゲン誘発型軽度喘息の対象におけるI-1の臨床的有効性を評価すること。
【0179】
研究エンドポイント:
【0180】
安全性エンドポイント:
・ 有害事象(AE)および深刻な有害事象(SAE)によって評価される安全性
【0181】
有効性エンドポイント:
・ BAC(気管支アレルゲン曝露)後(BAC後0~3時間の間[主要有効性エンドポイント]およびBAC後3~7時間)までの、1秒間強制呼気容量(FEV1)のベースライン(来診の範囲内)からの変化。
・ BAC後約7時間および24時間での、痰の好酸球および好中球の、絶対カウント数および示差カウントパーセンテージ。
・ BAC後のメタコリンPC20(Mch PC20)により評価された、気道過敏反応性(AHR)におけるアレルゲン誘発型シフト。
・ BAC後約7時間および24時間での、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)の、ベースラインからの変化。
【0182】
探索的エンドポイント:
・ BAC前(投与後約1時間)およびBAC後7時間でのバイオマーカー(反応性アルデヒド種[RASP]およびエンドトキシン誘発性サイトカイン放出)。
・ BAC後0~3時間および/またはBAC後3~7時間の間での、FEV1の曲線下面積(AUC)。
【0183】
研究集団:ネコまたはイエダニ(HDM)アレルゲン誘発性軽度喘息の成人対象。
【0184】
研究デザイン:BACモデルを使用した軽度ネコまたはHDM誘発型喘息における、プラセボと比較した化合物I-1の臨床上の安全性および有効性を評価するための、二重盲検交差プラセボ対照単一施設無作為化臨床試験。臨床試験は、約75日間にわたる、診療所への9回の来診(来診1、2a、2b、2c、3、4a、4b、5a、および5b)からなるものになる。この期間中、4回のさらなる来診があり、以下に記述されるように、1回の来診は安全性の研究用および3回の来診はCOVID-19検査用である。
【0185】
研究生成物および処置アーム:
【0186】
処置A:化合物I-1、600mg(2×300mgの錠剤)、毎日2回経口投与(PO bid)、最短で1週間(+3)。
【0187】
処置B:プラセボ、600mg(2×300mgの錠剤)、毎日2回経口投与(PO bid)、最短で1週間(+3)。
【0188】
処置後の期間1および2の間(来診4a、4b、5a、および5b)、午前中の投与の代わりに、600mgの処置剤を、MCTまたはBAC検査の約1時間前に投与することになる。
【0189】
投与経路:経口
【0190】
研究集団:約12名の対象が試験を確実に終了するのに十分な対象が登録されることになる。対象は、下記のシーケンスの1つに無作為化(1:1)されることになる:
1. AB(N=6)
2. BA(N=6)
【0191】
研究の実行:
【0192】
I.医学的スクリーニング-来診1
【0193】
全ての対象は、書面によるインフォームドコンセント、人口調査、医学的/外科的/社会的/投薬履歴、バイタルサイン、標準臨床研究用の試料、心電図(ECG)、ならびに身長、体重、およびBMIによる身体検査を含む、スクリーニング来診(来診1)を受ける。喘息コントロールアンケートに記入する。尿妊娠検査は、妊娠可能な女性(WOCBP)に試行する。皮膚プリック試験(SPT)は、ネコまたはHDMアレルゲンに対して陽性を示すために行なう(陰性対照と比較して、≧3mmの腫れ)。対象は、肺活量測定を受けて、ベースライン(気管支拡張前)FEV1が予測値の≧80%であることを実証する。全ての肺機能試験を、サイトの標準的手順に従い実行する(米国胸部学会/欧州胸部学会[ATS/ERS]推奨に基づく)。気管支拡張後FEV1を、400μg(4回の吸込み)のサルブタモール吸入後15±5分以内に測定し、気管支拡張後の可逆性を記録する。
【0194】
II.処置前期間(連続3日間)-来診2a、2b、および2c
【0195】
対象は、スクリーニング来診から約4週間以内の処置前期間に診療所に戻る。全ての来診において、スタッフは対象の併用薬をアップデートし、有害事象およびバイタルサインを収集する。適格性基準を見直す。
【0196】
来診2aで、喘息コントロールアンケートに記入する。肺活量測定を行って、予測値の≧80%のFEV1を確実にする。対象は、サイト標準手順に従って行われるBAC前メタコリン曝露試験(MCT)を受ける。対象は、正常生理食塩液を吸入し、ベースラインFEV1を確立した。次いで対象は、後続の2倍濃度のメタコリン(Mch)を、サイト標準手順に従って受ける;0.03mg/mL、0.06mg/mL、0.125mg/mL、0.25mg/mL、0.50mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、4mg/mL。FEV1は、噴霧化から約30および90秒後に測定される。FEV1が<20%降下した場合、対象には、次に高い濃度を与え、肺活量測定を繰り返す。Mch用量は、FEV1がベースラインから≧20%降下するまで順次投与し続ける(最大濃度4mg/mL)。そのような時、試験を終了し、対象にはサルブタモールを4回吸入させ、その後、15±5分の待機期間後にFEV1測定を行う。そのFEV1レベルがそのベースラインの10%以内にない対象には、別の用量のサルブタモールを与え、肺活量測定を15±5分後に繰り返す。次いでMch PC20を計算する。全てのMCTは、試験全体を通して±1.5時間の時間枠内でその日に同時に行う。適格性のある者に、2倍濃度のネコ/HDMアレルゲン抽出物でマルチスキンプリック感受性試験を行う。陽性対照および陰性対照にも投与する。腫れの直径を、サイト標準手順に従い測定する。
【0197】
来診2aで、MCTを終了しかつこの試験に参加する適格性が引き続きあるそれらの対象に、マルチスキンプリック感受性試験を行う。この試験は、SPTと類似の手順を用いる。しかしながらマルチスキンプリック感受性試験は、以下の表に示されるように2倍濃度のネコ/HDMアレルゲン抽出物を使用して行われる。
【表2】
【0198】
腫れの直径を、サイト標準手順に従い測定する。皮膚感受性は、陰性対照に対して直径≧3mmの腫れを生成する最低アレルゲン濃度と定義される。
【0199】
スペーサーを持つサルブタモール吸入器(救急薬)が、来診2aで家庭に持ち帰るよう対象に提供され、診療所に来診するたびに再チェックして、対象に十分な投薬がなされていることを確実にする。対象は日記(喘息アクションプランを含む)発行して、家庭にいる間はその日記にその健康または投薬使用(救急薬を含む)のあらゆる変化の日誌を付ける。対象には、翌日の早朝の来診を容易にするために研究施設に閉じ込められる選択肢を与える。
【0200】
翌日(来診2b)、対象はBACを受ける。来診2bで、対象の古い日記(喘息アクションプランを含む)を収集し、対象には新しい日記を発行して、家庭にいる間のその健康または投薬使用(救急薬を含む)のあらゆる変化の日誌を付ける。投与されるアレルゲン濃度は、来診2aで行われたMCTおよびアレルギーSPT滴定からの結果に基づき決定される。
【0201】
次いでアレルゲン刺激濃度(PC20)の濃度を、下記の対数式:Log10(アレルゲンPC20)=0.68 log10(Mch PC20×皮膚感受性)を使用して先のMch PC20および皮膚感受性から予測するが、ここで皮膚感受性は、≧3mmの腫れを生成する最低濃度である皮膚プリック試験エンドポイント希釈滴定である(この式は修正を受けてもよく、対象で推定されるアレルゲンPC20に依存する)。
【0202】
予測されるアレルゲンPC20の計算の後、対象は、換気呼吸によって希釈生理食塩液を1分間にわたり最初に吸入し、FEV1を、吸入後約30および90秒で測定する。生理食塩液希釈による2FEV1測定値の高いほうの値を、ベースライン値として使用する。次いで対象に、安全性に関するPC20の20%降下を引き起こすことが予測されるよりも低いアレルゲンの連続する3つの2倍用量を与える。対象には、サイト標準手順に従いアレルゲンを投与する。第1のアレルゲン用量の吸入後約10分で、2重のFEV1を測定する。FEV1がベースラインから<10%降下した場合、次のアレルゲン濃度を送達することができ、ベースラインから20%のFEV1低減に達するまで、引き続き2倍ステップアップ用量(それぞれ、先の濃度よりも2倍大きい)を与える。2重FEV1を、各アレルゲン用量の吸入から約10分後に測定する。アレルゲン滴定中、FEV1がアレルゲン前ベースラインから10%から20%の間に降下した場合、FEV1を吸入の20分後に繰り返す。FEV1を繰り返した後であってもFEV1が≧20%降下しない場合、アレルゲンの次の用量を与える。ベースラインから20%のFEV1の降下が最終的に実現されたら、曝露滴定を終了し、目標アレルゲン力価を記録する。
【0203】
初期喘息応答(EAR)は、アレルゲンの最終濃度の吸入後3時間以内で少なくとも1回の、最高吸入前FEV1値からのFEV1の≧20%降下と定義される。EARを評価するために、FEV1を、アレルゲン曝露後約30、60、90、120、および180分で測定する。後期喘息応答(LAR)は、アレルゲンの最終濃度の吸入後3から7時間の間で少なくとも1回の、最高吸入前FEV1値からのFEV1の≧15%の降下と定義される。LARを評価するために、FEV1を、アレルゲン曝露後3から7時間の間に1時間ごとに測定する。
【0204】
モニタリング期間の終わりに、気管支拡張剤(サルブタモール)の4回の吸入を対象に投与して、必要に応じて予備試験FEV1の90%までFEV1を回復させる。FEV1が正常レベルに戻らない場合、調査員/医療上の被指名者は対象を評価する。試験後、痰を誘発させ、収集し、処理する(BAC後約7時間)。対象には、翌日の早朝の来診を容易にするために、研究施設に閉じ込めるという選択肢を与える。
【0205】
翌日(来診2c)、痰の誘発および収集(BAC後約24時間)を行う。さらに血液試料を採取し、探索的バイオマーカー(RASPおよびエンドトキシン誘発性サイトカイン放出)に関して分析研究室に送る。これがベースライン値と見なされる。
【0206】
来診2cで、対象の古い日記を収集し、対象に新しい日記を発行して、家庭にいる間のその健康または投薬使用(救急薬を含む)のあらゆる変化の日誌を付ける。対象は喘息アクションプランも受けて、喘息症状をモニターする。対象は、約2週間後に診療所に戻るよう尋ねられる。
【0207】
注記:安全性臨床実験室試験を、適格性が継続してあることを確実にするために研究薬物の第1の用量の前3日以内に繰り返す。
【0208】
III.無作為化来診-来診3
【0209】
少なくとも2週間の休薬期間の後、適格性のある対象を、来診3のために診療所に戻して、処置期間に参加させる。診療所のスタッフは対象の同時投薬をアップデートし、AEおよびバイタルサインを収集する。適格性基準を検討する。喘息アクションプランを含む日記カードを収集し、検討し、対象に新しい日記を発行する。喘息コントロールアンケートを収集する。尿妊娠検査をWOCBPに施用する。
【0210】
対象を、連続処置ABまたは連続処置BAのいずれかに無作為化する。対象に、化合物I-1またはプラセボを、投薬のための取扱説明書と共に家庭での処置のために分配する。対象に、その第1の用量を現場で与える。
【0211】
血液試料を、投与後1時間(+5分)にPK評価のために収集する。
【0212】
心電図(ECG)を、投与後1時間(±15分)に行う。
【0213】
IV.処置期間1
【0214】
家庭では、対象に処置薬(処置薬Aまたは処置薬B)を経口的に、1日2回与え、即ちPO bid投薬を、最短で1週間(+3日)与え、処置後期間1のために診療所に戻す。対象に、毎日ほぼ同じ時間、午前および午後に用量を与える。さらに、処置期間中に電話をかけて、対象の健康および処置のコンプライアンスを追跡調査する。
【0215】
対象は家庭にいる間、日記に、その健康または投薬使用(救急薬を含む)のあらゆる変化ならびに投薬時間の日誌を付け続ける。喘息コントロールの何らかの悪化がある場合は、喘息アクションプランにも言及し続ける。
【0216】
さらに、処置期間の最終日に対象に電話をかけて、その午前中の処置の用量(600mg)が現場で翌日に投与されるよう思い起こさせる。
【0217】
V.処置後期間1(連続2日間)-来診4a&4b
【0218】
対象は、来診4aおよび4b中に薬物の定常状態濃度を維持するために、処置を停止しない。したがって対象は、そのそれぞれの処置を同じスケジュールで受け続ける。しかしながら来診4aおよび4bの当日に、対象はその午前中の処置の用量(600mg)を現場で、MCTまたはBACの約1時間前に受ける。
【0219】
スタッフは、対象の併用薬をアップデートし、AEおよびバイタルサインを収集する。喘息コントロールアンケートを収集する。適格し得基準を検討する。喘息アクションプランを含む日記カードを収集し、検討し、対象に新しい日記を発行する。血液および尿試料を、安全性臨床研究試験のために収集する(鑑別を伴うCBC、電解質[カルシウム、ナトリウム、カリウム、塩化物]、eGFR、クレアチニン、BUN、ALT、AST、ALP、総ビリルビン、アルブミン、総タンパク質、グルコース、総コレステロール、トリグリセリド、リパーゼおよびアミラーゼ、ならびに微量アルブミン尿の評価を含む尿検査)。
【0220】
来診4a時、BAC前FeNO(ベースライン)およびベースラインFEV1を行う。BAC前FeNOは、ベースラインFEV1の前に行う。投与後約1時間の血液試料を採取し、BAC前に探索的バイオマーカー(RASPおよびエンドトキシン誘発性サイトカイン放出)に関して分析研究室に送る。追加の血液試料を収集して、投与後1時間(+5分)でPK評価を行う。ECGを、投与後1時間(±15分)で行う。
【0221】
次いで対象に、処置前アレルゲン曝露来診(来診2b)で特定された目標アレルゲン力価希釈によるBACを行う。BAC後約7時間で、FeNOを測定し、次いで痰を誘導させ、収集し、処理する。7時間のFEV1測定の前にFeNOを行う。さらに、血液試料を採取し、BAC後約7時間で探索的バイオマーカー(RASPおよびエンドトキシン誘発性サイトカイン放出)に関して分析研究室に送る。対象に、翌日の早朝来診を容易にするために研究施設に閉じ込める選択肢を与える。家庭では、処置は、閉じ込めに関する対象の判断に応じて分配されおよび/または収集される。
【0222】
全ての手順が終了したら、対象に、MCTの約1時間前に、現場でその翌日午前中の用量を摂取することを思い起こさせる。
【0223】
翌日(来診4b)、対象に、BAC後MCT、FeNO、および痰検査を行う(BAC後約24時間)。FeNOは、来診4b時の任意のその他の手順の前に行われる。MCTの手順(ベースラインFEV1を含む)を、この来診で使用されるMchの最大濃度が16mg/mLまでであることを除き、来診2aで記述したように繰り返す。MCT後、痰を誘発させ、収集し、処理する(BAC後約24時間)。家庭での処置の残り全てを収集する。
【0224】
来診4b研究手順の終了後、対象に、その割り当てられたシーケンスに従う第2の処置薬と新しい家庭用日記カードを分配し、以前指示したものと同じ取扱説明書に従うように依頼する。来診4b後、対象は2週間の休薬期間を終了する。対象は、家庭にいる間、その日記に、その健康または投薬使用(救急薬を含む)のあらゆる変化のいずれに関してもおよび投薬時間に関しても日誌を付け続ける。対象は、喘息コントロールの何らかの悪化がある場合には、喘息アクションプランにも言及し続ける。
【0225】
対象には、処置開始を思い起こさせるため、そのスケジュールされた家庭での投薬の開始の約1日前に電話をかける。スタッフは、対象の併用薬および救急薬使用をアップデートし、AEを収集する。
【0226】
VII.処置期間2
【0227】
家庭では、対象は、処置薬(処置薬Bまたは処置薬A)を1日2回経口摂取し、即ちPO bid投薬を最短で1週間(+3日)受け、処置後期間2のために診療所に戻す。対象には、毎日同じ時間、午前および午後に、用量を与える。さらに、処置期間中は電話をして、対象の健康および処置のコンプライアンスに関して追跡調査する。
【0228】
対象は、家庭にいる間、その新しい日記に、その健康または投薬使用(救急薬を含む)のあらゆる変化および投薬時間について日誌を付け続ける。対象は、喘息コントロールに何らかの悪化がある場合、喘息アクションプランにも言及し続ける。
【0229】
さらに対象には、処置期間の最終日に電話をかけて、その処置の午前中の用量(600mg)が現場で翌日に投与されることを思い起こさせる。
【0230】
VIII.処置後期間2(連続2日間)-来診5a&5b
【0231】
対象を、2週間の休薬期間および1週間(+3日)の家庭での投薬が終了した後、約3週間(+3日)後に、処置後期間2のために診療所に戻す。来診5aおよび5bで、対象は、来診4aおよび4bで以前それぞれ行われたものと同じ手順に従う。来診4aおよび4bのように、来診5aおよび5bの当日に、対象は、処置薬のその午前中の用量(600mg)を、MCTまたはBACの約1時間前に現場で受ける。
【0232】
さらに来診5bで、喘息アクションプランを含む紙の日記カードおよび残りの家庭での処置薬の全てを対象から収集し、尿妊娠検査をWOCBPに施す。
【0233】
対象は、臨床試験が終わる前に、健康チェックを終了させる。
【0234】
IX.早期中止の来診(ETV)
【0235】
スタッフは、対象の併用薬をアップデートし、未使用の家庭での処置薬、有害事象、喘息コントロールアンケート、およびバイタルサインを全て収集する。紙の日記を収集し、検討する。同日、まだ行われていない場合にはWOCBPのみに尿妊娠検査を行う。
【0236】
選択基準:
1. スクリーニング来診時、18歳から65歳の間(両端を含む)の男性または妊娠していない女性。
2. 対象は、任意の研究関連活動が始まる前に、参加するためにその署名がなされかつ日付が付された書面によるインフォームドコンセント(英語で)を与えなければならず、研究手順、研究の制約、研究プロトコールに準拠しかつ必要な評価に報いようとしなければならない。
3. スクリーニング来診の少なくとも4週前に開始しかつ研究薬の最後の投薬後少なくとも30日間にわたる、少なくとも1つの高度に有効なまたは2つの有効な形の避妊の、矛盾のないかつ正しい使用を約束する、妊娠の可能性がないまたは妊娠の可能性があるいずれかの女性対象。
4. 喘息管理に関する国際指針(GINA 2020)基準による、スクリーニング来診で2年間、軽度のコントロールされた喘息を持つ、全体的に健康な対象。
5. 吸入SABA以外、随伴性喘息処置がない。
6. HDM(Dermatophagoides pteronyssinusおよび/またはDermatophagoides fariniae)またはネコ(Felis domesticus)アレルゲンに対して陽性SPT(陰性対照と比較して、≧3mmの腫れ)。
7. >6時間にわたるSABAの保留後、ベースラインFEV1≧予測された正常値の80%。
8. 診療所来診2aで、≦4mg/mLの用量の処置前MCTで、FEV1の≧20%減少を実証する。
9. 現在、非喫煙者;過去1年以内に煙草製品(即ち、紙巻き煙草、葉巻、パイプ煙草)を使用しておらず、かつ過去に年間≦10パックの使用。電子煙草またはその他の吸入ニコチン送達製品の使用、デバイス(例えば、ベイピング)を使用した大麻の喫煙および/または吸入は研究中許可されない。
10. カフェインの制限およびアブラナ科野菜およびグリルされた肉の消費に同意。併用薬(強力なCYP1A2、2B6、および3A4阻害剤)の禁止に同意。
11. ボディマス指数(BMI)が18.5~35.0kg/m2の範囲内。
12. 最初の用量から最後の用量の3カ月後まで、子供の父親にならずまたは精子を供与しないことを約束した男性対象。
13. 研究の持続期間中および研究薬の最後の用量後30日間にわたる、避妊の少なくとも2つの有効な方法の矛盾のない正しい使用を約束する、男性対象(妊娠の可能性のある女性パートナーと共に)。
14. 正常範囲内の、AST、ALT、ALP、TSH、白血球数、ヘモグロビン、グルコース、アルブミン、電解質、総タンパク質、および総ビリルビン。
15. 医療モニターと相談した調査員により決定された、許容されるリパーゼ、アミラーゼ、GGT、CPK、総コレステロール、トリグリセリド、および好酸球レベル。
16. 正常な腎機能が、eGFR>90ml/分/1.73m2であること。
17. 心拍数が50~90bpm以内(注記:bpm<50かつ≧45bpmの対象を含めるために、正常な甲状腺機能[医療履歴、身体検査、TSH]を有するべきでありかつ徐脈を伴う疾患の徴候[例えば、起立効果および眩暈]がないものである)。
【0237】
除外基準
1. 喘息以外の、臨床的に有意な心血管、腎臓、神経学的、肝臓学的、内分泌学的、胃腸、泌尿生殖器、自己免疫、血液学的、または代謝疾患の病歴および存在であって、調査員の意見では、対象にリスクが課されるかまたは研究中の結果に影響を及ぼし得るかのいずれかのもの。
2. 調査員の判断で、研究中に生じるまたは生じることが予想される、通年性アレルギー症状および/または通年性アレルゲン(例えば、カビ、イヌ)への曝露の可能性がある対象。研究中に生じるまたは生じることが予想される季節性アレルギー症状を持つ対象は、対象がアレルギーの季節から脱出するまで対象を除外しまたはスケジュールし直すべきである。
3. 調査員の判断で、投薬前1年以内の、任意の関連ある肺疾患。
4. 過去6カ月以内の喘息による、または試験への参加が不適切と調査員が考えた任意のその他の医学的状態による、最近の入院。
5. 現行の喘息投薬の一時的休薬に耐えることができないこと。
6. その他の合併呼吸器および副鼻腔疾患。
7. 前年の頻繁な喘息増悪の病歴。
8. 下記の投薬の使用:ベータ遮断薬、三環系/多環系抗うつ薬、モノアミンオキシダーゼ阻害剤を、研究の14日以内。
9. 臨床上関連あるアレルギーまたは薬物に対する過敏症の、病歴または現行のエビデンス。
10. サルブタモールMDIの任意の成分に対する公知の不耐性または過敏症、ならびにエアロゾル化β2-アドレナリン作動薬に対する不耐性。
11. 妊娠しており、授乳しており、または不適切な避妊手段を使用している、妊娠の可能性のある女性対象。
12. 研究前の過去1年間以内で、アルコール、薬物、または医薬乱用の病歴を有する対象。
13. 調査員により判断されるような、協働またはコンプライアンスに欠ける対象。
14. 深刻な精神的、心理的、または神経学的障害に罹患している対象。
15. スポンサーまたはCROの従業員である対象、および/または(主要)調査員の一等親血縁者またはパートナー。
16. スタッフにより決定されるように、ネブライザーの適正使用を実証できないこと。
17. 調査員によりそのように考えられる、身体検査、バイタルサイン、またはスクリーニングでの実験室の結果に関する任意の臨床的に有意な異常な知見。
18. 研究の30日以内での任意の調査薬の使用。
19. 過去5年以内でのネコまたはHDMのアレルゲン免疫治療による処置。
20. 鼻の解剖学的変形(鼻粘膜潰瘍、鼻ポリープ、膿性分泌物、中隔穿孔、または鼻における任意のその他の主要な異常の存在を含む)の、任意の臨床的に有意な身体的知見であって、調査員の判断で研究手順を妨げる可能性があるもの。
21. スクリーニング来診前3カ月または研究期間中に計画された、全身麻酔を必要とする任意の外科処置。
22. 化合物I-1またはその製剤成分のいずれかに対する公知の過敏症。
23. アナフィラキシーまたは血管性浮腫の病歴。
24. スクリーニング来診前の6週間以内の、生命を脅かす喘息および/または喘息の増悪の、前病歴。
25. スクリーニング来診前の2週間以内の呼吸器感染の、前病歴。
26. TdPに関するリスク因子(例えば、心不全、低カリウム血症、長QT症候群の家族病歴)の病歴。
27. 永続的収縮期BP>140mmHgまたは拡張期BP>90mmHg。
28. スクリーニング来診で、QTcF>450ms。
29. 公衆衛生上の緊急事態(例えば、COVID-19):調査員および/または被指名者の判断で、公衆衛生指針(例えば、自己隔離)に準拠しない対象、あるいは来診2a、来診4a、または来診5aの最長5日前から、陽性のCOVID-19検査結果を持つ対象。
【0238】
統計分析:
【0239】
安全性エンドポイントについて、記述的にまとめる。
【0240】
BAC後0~3時間の間の、FEV1のベースラインからの重要な有効性エンドポイントの変化は、下記の独立因子、共変量としての診察室内ベースラインFEV1、ならびにシーケンス、来診、処置、BAC後の評価時間、およびBAC後の評価時間による処置の相互作用による、反復測定の混合効果モデル(MMRM)を使用して分析されてもよい。対象は、ランダム効果として処置され得る。適切と考えられる場合には、ベースラインの喀痰中好酸球数を、MMRMにおける追加の共変量として含めてもよい。
【0241】
AUCは、下記の用語:シーケンス、来診(即ち、期間)、ランダム効果としての処置群対象と共に混合効果モデルを使用して分析されてもよい。
【0242】
その他の有効性エンドポイントは、適切な統計モデルを使用して処置同士で比較されてもよい。
【0243】
統計分析プランは、全ての統計手順を詳述し、本明細書におけるあらゆる統計的記述に優先することになる。
【0244】
安全性分析:
【0245】
研究生成物のいずれかの少なくとも1つの用量を受ける全ての研究対象は、比較安全性分析に含まれる。有害事象は、標準医薬規制用語集(MedDRA)用語バージョン22またはそれよりも上のバージョンを使用して分類され、処置群により提示される。タイプ、発症日、消散の日時、発生率、重症度、結果、とられるアクション、および研究生成物との関係の調査員の意見を列挙する要約表は、無作為化後に報告されるAEの処置群によって提示される。
【0246】
研究中に使用される併用薬は、対象による処置によって表にされる。
【0247】
試料サイズ決定:
【0248】
アレルゲン誘発性気道炎症応答における反復性分析に基づいて、12対象の試料サイズは、処置群全体にわたりベースラインFEV1からの変化における0.1の標準偏差で0.1の差を検出するのに、80%を超える検出力をもたらす。
【0249】
序論
【0250】
背景および研究の理論的根拠
【0251】
I型アレルギーは、そのほとんどが通常は無害と見なされる、植物、昆虫、動物、および真菌からのタンパク質および糖タンパク質に対する免疫グロブリンE(IgE)抗体の不適切な形成からもたらされる免疫障害である。アレルゲンによるエフェクターB細胞上でのIgE抗体の架橋は、免疫学的カスケードを活性化し、鼻炎、結膜炎、喘息、およびアナフィラキシーショックを含み得るI型アレルギーの症状の一部または全てをもたらす。
【0252】
喘息は、深刻な地球規模での健康問題であり、西洋世界で最も一般的な疾患の1つである。アレルギー性喘息は、喘息の最も一般的な形であり、喘息集団の50%超がアレルギー性喘息に罹患している。喘息は、気道の慢性炎症障害であり、様々な細胞型および細胞要素が役割を演じる。気道炎症は、4つの形の気流制限:急性気管支収縮、気道壁の腫れ、粘液分泌過多、および気道壁リモデリングをもたらす。慢性炎症は、気道の過敏反応に関連ある増大を引き起こし、呼気性喘鳴、息切れ、胸苦しさ、および咳の再発エピソードをもたらす。これらのエピソードは通常、広範な、しかし様々な気流閉塞を伴い、これはしばしば自発的にまたは処置によってのいずれかで可逆的である。
【0253】
気管支アレルゲン曝露(BAC)試験は、アレルギー性喘息の調査の「ゴールドスタンダード」として公知であり、ほぼ30年にわたり使用されてきた。安全におよび適正に行われたBACモデルは、対象の小さい試料サイズで薬物の臨床的有効性を評価するのに価値あるツールを提供する。
【0254】
この検証されたモデルは、喘息の急性のおよびより慢性的な特徴のいくつかを模倣し、それと共に調査治療の遮断効果の理解を助ける。定期的に使用されてきた典型的な手法は、それによってアレルギー性鼻炎の対象が、特定の薬剤での処置の前後で同量のアレルゲンに曝露されるものである。
【0255】
イエダニ、花粉、カビ、および動物の鱗屑などの一般的な空中アレルゲンは、アレルギー性喘息における気道炎症に対する周知の関与物質であるだけでなく、永続的な喘息および喘息増悪の公知の病原でもある。これらの誘因のいずれかへの再曝露は、マスト細胞および好塩基球に結合されたIgEへのアレルゲンの結合および架橋に起因して生じる。これらの細胞の後続の脱顆粒は、ヒスタミン、ロイコトリエン、およびプロスタグランジンを含むI型過敏症メディエーターの即時放出をもたらすことができる。代わりにこの炎症カスケードは、急性気流閉塞の直接収縮、ならびに呼気性喘鳴、咳、および呼吸困難を伴う喘息症状を誘発する。この段階は、初期喘息応答(EAR)および曝露の15から30分以内として公知であり、通常は約2~3時間で消散する。様々な補充された炎症細胞および単球のさらなる活性化ならびにサイトカインの生成を含む、3から12時間の間に生じる再発気管支収縮のエピソードは、後期喘息応答(LAR)として公知のものに引き継がれる。疾患は、より永続的になるので、炎症プロファイルは変化しかつより侵襲的になり、好中球、浮腫、および粘膜分泌過多の関与がより大きくなり、気道過敏反応が増大する。
【0256】
ここで本発明者らは、喘息を誘発させるのにBACモデルを利用する研究を提示する。このデザインでは、処置期間後の間、メタコリン曝露試験(MCT)をアレルゲン曝露後に行い(24時間の期間、切り離される)、アレルゲン誘発性気道過敏反応の上昇に関して別の有用な結果をもたらす。痰も、各MCT後に誘発され、好酸球および好中球の決定を可能にする。アレルゲン誘発性喀痰中好酸球増多症は、喘息治療の抗炎症特性の評価で有用な測定である。
【0257】
I-1などの化合物は、RASPに不可逆的に結合することによって反応性アルデヒド種(RASP)阻害剤として作用するキノリンコアを持つ小分子である。化合物I-1およびそのクラスにあるその他のものは、乾癬、炎症性腸疾患、喘息、潰瘍性大腸炎、非アルコール性脂肪性肝炎、およびRASPの高い濃度によって引き起こされまたは増悪する考えられるその他の疾患を含む、全身性免疫媒介型および炎症性疾患の処置に有用である。
【0258】
遊離RASP(例えば、マロンジアルデヒド[MDA]および4-ヒドロキシノネナール[HNE])は毒性であり、細胞生分子と反応することによって炎症および分子機能不全をもたらし、多くの免疫媒介型および炎症性疾患に関わってきた。I-1などのキノリン化合物は、Schiff塩基形成およびその後の閉環に関わる急速な2ステップ反応を介して遊離RASPに結合し、その結果、後で分解する安定で非反応性の付加物が得られる。
【0259】
免疫媒介型および炎症性疾患におけるRASP阻害の潜在的な利益は、このクラス初のRASP阻害剤であるレプロキサラプ(ADX-102)によって実証されており、これは数多くの第2相および第3相臨床試験全体にわたりドライアイ疾患およびアレルギー性結膜炎を含む眼炎症の処置に有益であることを示しており、現在、第3相臨床試験中である。
【0260】
大きいパネルのリガンド結合アッセイ、イオンチャネルアッセイ、トランスポーターアッセイ、および酵素阻害研究を含む、副次的薬理学研究は、化合物I-1による処置に起因して、オフターゲット効果の低いリスクであることを示唆する。さらにin vitro研究は、I-1が、遅延整流性カリウム流を阻害する非常に低い潜在性を有することを示してきた。臨床前試験の結果は、I-1が低リスクの遺伝子毒性を有することを実証する。I-1血漿中濃度は、少なくとも10μMに達したと予測され、炎症性疾患を持つヒトにおけるRASPの報告されたレベルを超える。データは、炎症および線維症の処置における、I-1の潜在性、および概してRASP阻害を裏付ける。遺伝子毒性研究は、I-1の変異原性または染色体異常誘発能の潜在性がないことを示してきた。
【0261】
ヒトで初めての無作為化二重盲検プラセボ対照第1相試験では、化合物I-1が、安全で耐性があることを見い出した。有害事象プロファイルは、プラセボに比べて好ましく:プラセボを受けた4(19.1%)対象と比較して、試験化合物を受けた合計6(9.4%)対象で、治験下で発現した有害事象があった。研究薬投与の中断または中止はなかった。臨床的に意味のある変化は、トランスアミナーゼ(ALTおよびAST)、アルカリホスファターゼ(ALP)、アミラーゼ、ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、ビリルビン、クレアチニンキナーゼ、およびクレアチニンを含む肝臓または腎臓の検体で観察されなかった。血清中グルコースの変化は観察されなかった。臨床的に意味のある変化は、心拍数(HR)、血圧(収縮期、拡張期、および起立性変化)、呼吸数、パルスオキシメトリー、または温度で観察されなかった。臨床的に有意な血液学的変化は観察されなかった。化合物は、QTcF延長をもたらさなかった。QTcF>500msecまたはベースラインからの変化>60msecである対象はいなかった。5対象は、ベースラインから>30msecの変化を有したが、介入または研究薬の中断もしくは中止を必要とせず、全ての対象は無症候性のままであった。これら5対象のうち3名が研究のSAD部分にあり(それぞれ1名が100mg、200mg、および700mgの用量コホートにある)、残りの2対象が研究のMAD部分にあった(それぞれ1名が150mg BIDおよび300mg BID用量コホートにある)。
【0262】
健康なボランティアに、600mgの化合物I-1 BIDを10日間にわたり、最上(最高)用量コホートで与えた。1日目に観察されたCmaxは1920ng/mL(67.4%CV)であり、1458ng/mL(46.6%CV)が10日目に観察された。0から12時間の曲線下面積(AUCtau)は、1日目に5710時*ng/mL(61.5%CV)であり、10日目に6,800時*ng/mL(37.9%CV)であった。観察された薬物の半減期は、1日目に3.98時間(22.9%CV)であり、10日目に4.56時間(12.1%CV)であった。
【0263】
これらの結果は、クリアランスの有意な増大が1日目から10日目の間で観察されなかったので、cyp自己誘導が10日間の過程で観察されなかったことを示す。薬物動態(PK)の多様性は明らかであったが、用量が増加するにつれて線形相関がCmaxおよびAUCで観察された。半減期(t1/2)は、コホートおよび日数全体にわたり一貫しており、多数日の曝露における平均値は3.07から6.20時間の間に及んだ。薬物の蓄積は、全てのコホート全体にわたってほとんどまたは全く見られなかった。
【0264】
遊離MDAレベルの低下が、化合物I-1 600mg BIDの投与の10日間にわたって健康なボランティアの血漿中に観察され、これはプラセボで処置された対象の場合よりも統計的に大きかった。600mg BIDまたはプラセボの投薬の10日目、高脂肪の食事の摂取後に、遊離脂肪酸のレベルは統計的に低下し、HDLのレベルは、プラセボ処置対象におけるよりも薬物処置対象で統計的に高く、化合物I-1の追加の抗炎症活性をおそらくは表している。
【0265】
用量選択に関する根拠
【0266】
炎症疾患における化合物I-1の臨床開発は、単回および多回漸増用量(10日)のヒトの健康なボランティアにおける安全性試験、プラセボ制御第I相試験により支持される。全体として化合物は、最大用量600mg BIDを含む探索された用量で、安全で耐性があることがわかった。
【0267】
300mg BID POの化合物I-1の第2相臨床試験に関する用量は、28日の非臨床評価および第1相臨床試験におけるヒトでの薬物曝露からの保存的限界に基づき、これはヒト炎症疾患で報告されたRASPのレベルを一般に超えるものである。
【0268】
目的およびエンドポイント
【0269】
主要目的:
【0270】
アレルゲン誘発性軽度喘息の対象における化合物I-1の安全性を評価すること。
【0271】
二次目的:
【0272】
アレルゲン誘発性軽度喘息の対象における化合物I-1の臨床有効性を評価すること。
【0273】
安全性エンドポイント:
【0274】
有害事象(AE)および深刻な有害事象(SAE)によって評価された、安全性
【0275】
有効性エンドポイント:
・ BAC後(BAC後0~3時間の間[主要有効性エンドポイント]およびBAC後3~7時間)までの、1秒間強制呼気容量(FEV1)のベースライン(来診の範囲内)からの変化。
・ BAC後約7時間および24時間での、喀痰中好酸球および好中球の、絶対カウント数および示差カウントパーセンテージ。
・ BAC後のメタコリンPC20(Mch PC20)により評価された、気道過敏反応性(AHR)におけるアレルゲン誘発型シフト。
・ BAC後約7時間および24時間での、呼気一酸化窒素濃度(FeNO)の、ベースラインからの変化。
【0276】
探索的エンドポイント:
・ BAC前(投与後約1時間)およびBAC後7時間でのバイオマーカー(RASPおよびエンドトキシン誘発性サイトカイン放出)。
・ BAC後0~3時間および/またはBAC後3~7時間の間での、FEV1の曲線下面積(AUC)。
【0277】
臨床試験デザイン
【0278】
この試験は、BACモデルを使用した軽度ネコまたはHDM誘発型喘息における、プラセボと比較した化合物I-1の臨床上の安全性および有効性を評価するための、二重盲検交差プラセボ対照単一施設無作為化臨床試験である。試験は、約75日の期間にわたる、診療所への9回の来診(来診1、2a、2b、2c、3、4a、4b、5a、および5b)からなるものになる。この期間中、4回のさらなる来診があることになり、以下に記述されるように、1回の来診は安全性の研究用および3回の来診はCOVID-19検査用である。臨床試験は下記の通り実行される:
1. 医療スクリーニング:来診1
2. 処置前期間の前、5日間以内での、COVID-19検査
3. 処置前期間(連続3日間)
a. 来診2a
b. 来診2b
c. 来診2c
4. 休薬期間(2週間)
5. 来診3から3日以内での安全性試料血液収集のためのさらなる来診
6. 無作為化来診:来診3
7. 処置期間1(1週間[+3日]にわたりなされる家庭での処置)
8. 処置後期間1の前のCOVID-19検査
9. 処置後期間1(連続2日間):
a. 来診4a
b. 来診4b
10. 休薬期間(2週間)
11. 処置期間2(1週間[+3日]にわたりなされる家庭での処置)
12. 処置後期間2の前のCOVID-19検査
13. 処置後期間2(連続2日間):
a. 来診5a
b. 来診5b
【0279】
研究の終わりは、最後の対象が臨床試験における全ての研究手順を終了した時と定義される。
【0280】
選択および除外基準を含む対象選択情報は上記にて提供される。
【0281】
研究生成物および無作為化
【0282】
下記の生成物を研究で使用する:
試験手順(処置A)
2×300mgの化合物I-1錠剤を、PO bidで最短1週間(+3日)摂取する
プラセボ(処置B)
2×300mgのプラセボ錠剤を、PO bidで最短1週間(+3日)摂取する
【0283】
服用指示:
・ 対象は、錠剤を水で飲むべきであり、錠剤を噛むべきではない。
・ 対象は、各用量を食事の少なくとも60分前に摂るべきである。
・ 1日当たり2回の用量の間に、少なくとも4時間の間隔を空けるべきである。
・ 対象は、割れた錠剤を摂取してはならない;しかしながら、欠片または掻き傷のような少量の錠剤の欠陥は許容される。
・ 過剰摂取の場合、対象は、次の用量を保留し、即座に診療所に知らせなければならない。
・ 用量を忘れた場合、対象は、次にスケジュールされた用量が4時間の時間枠内にない場合のみ、気が付いたときに用量を摂取しなければならない。次にスケジュールされた用量が4時間の時間枠内にある場合、対象は、忘れた分の用量を摂取してはならず、次の用量を、スケジュールされた時間に摂取しなければならない。
・ 各処置期間中のBIDの最短2日間が、BAC/MCTの前に必要とされる。
・ 処置後期間1および2の最中(来診4a、4b、5a、および5b)、午前中の用量に代えて、600mgの処置薬を、MCTまたはBAC試験の約1時間前に投与する。
【0284】
臨床試験を開始したら、対象には、プロトコールに記載される研究医薬(複数可)のみ摂取するよう指示する。対象が、臨床試験中に任意のその他の医薬を摂取した場合、調査員は必要な情報を記録し、重要であると判断した場合にはスポンサーに通知してもよい。
【0285】
この臨床試験の前および過程中に制限される項目を、以下の表に記載する:
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【0286】
CYP阻害剤および誘発剤である投薬の完全なリストは、medicine.iupui.edu/clinpharm/ddis/main-tableで、オンラインで入手可能である。
【0287】
上記制限表に記述されるもの以外のその他の併用薬は、調査員の医学的判断により必要とされない限り、試験実行中に許可されていない。
【0288】
上記制限のいずれかに違反した対象は、調査員の判断で臨床試験から除外されまたは外され得る。上記制限以外の個人は、スポンサーおよび/または調査員により承認されてもよい。
(実施例2)
ラットからの精密カット肝臓スライス(PCLS)を使用したアルコール性肝損傷のin vitroモデル
【0289】
アルコール中毒は、RASPの蓄積および炎症の増大を含む、肝臓損傷をもたらす。脂肪肝、アポトーシス、壊死、線維症、および肝硬変を含む、肝臓構造および機能の異常を引き起こすことが公知である。RASPの低減および/または肝臓および関連ある炎症障害の処置に関して本明細書に記述されるキノリン化合物の有用性を調査するために、本発明者らは、アルコール性肝損傷を測定するのに精密カット肝臓スライス(PCLS)を用いる公知のin vitro培養モデルを用いた。この実験のため、本発明者らは、線維症の6歳女児から提供された肝臓試料を使用した。この実験は、ラットPCLSで行われてもよい(以下に提供される手順)。モデルは、例えばKlassen, L. W. et al., Biochemical Pharmacology 76 (2008), 426-436に記載されている。このモデルでは、PCLSは、96時間にわたるインキュベーションでの乳酸デヒドロゲナーゼおよびアデノシン三リン酸(ATP)レベルにより決定されるように、優れた生存率のままである。エタノール解毒の主な酵素(アルコールデヒドロゲナーゼ、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、およびシトクロームP4502E1)は活性のままであり、PCLSはエタノールを容易に代謝しかつアセトアルデヒドを生成する。24時間以内にかつ最長96時間継続して、PCLSは脂肪肝を発症させ、レドックス状態を増大させることを実証する。これらのPCLSはアルブミンを分泌し、アルブミンの分泌はエタノール処理によって減少する。これらの障害の全ては、エタノール代謝の阻害剤である4-メチルピラゾールの添加後に逆転する。したがってこのモデル系は、ヒトおよび動物研究で既に報告されている肝臓のエタノール誘発型変化を模倣するように見え、アルコール肝疾患の研究に有用なモデルであるように見える。
【0290】
材料および方法。ヒトPCLS研究では、スライスを以下に記述するようにカットし、24、48、または72時間にわたり下記の条件でインキュベートした。培地を毎日交換した。
・ 対照培地
・ 25mM エタノール培地。
・ 対照培地+10μM化合物I-1(1.7ml中、5mg/ml I-1の溶液を7μl)
・ エタノール培地+10μM化合物I-1
【0291】
ラットPCLSに関する研究を、下記の通り行ってもよい。Klassen, L. W. et al.の手順に従って、オスWistarラットなどの適切なラットを購入し、標準的な食餌で維持する。全ての動物は、犠牲になる1時間前まで、それらの食物および/または水に自由に接することが可能である。
【0292】
ラットの精密カット肝臓スライスを、下記の通り準備する。200~300gの体重のラットに、イソフルランを使用して麻酔をかける。Olinga et al. (Olinga P. et al., J Pharmacol Toxicol Methods 1997;38(2):59-69)の基本的な方法を使用して、PCLSを調製する。簡単に言うと、腹腔をベタジンでスクラブし、進入し、肝臓を露出させる。下大静脈をクリップし、血液を1分間引き出し、肝臓を切除し、素早く酸素化V-7低温保存緩衝液(Vitron Inc.、Tucson、AZから市販)に入れる。多数の(8mm)円筒状組織コアを、手持ち式の芯加工器具を使用してカットし、組織スライサーに投入し、250mmの厚さのスライスを調製する。スライスを、45mm回転式ブレードを使用してカットし、氷冷酸素化V-7保存緩衝液中に浮かべ、37℃で30分間、95%酸素/5%CO2(carbogen)と共にD-グルコースおよびゲンタマイシンを含有する無血清Williams培地(WE)(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MOから入手可能)の存在下で予備インキュベートする。いくつかのスライスをこの時点で得、時間0(t0)スライスと指定してもよい。スライスの残りを、Vitron,Inc.(Tucson、AZ)製のチタン-スクリーンローラーに投入し、1.7mlのWE培地が入っている滅菌した20mlのガラスバイアルに挿入する。バイアルを、酸素の注入用に1mmの穴が設けられた蓋でキャップする。このアセンブリを、動的臓器培養インキュベーター(Vitron Inc.(Tucson、AZ)から入手可能)内に水平に配置し、1.5lpmの流量を使用してカルボゲンの存在下、37℃でインキュベートする。
【0293】
エタノールとのスライスのインキュベーションは、下記の通り行う。WEとの予備インキュベーションの後、スライスを、培地のみ(対照)、培地+25mMエタノール(エタノール)、必要に応じた陽性対照としての培地+25mMエタノール+0.50mM 4-メチルピラゾール(エタノール+4-MP)、培地+0.50mM 4-メチルピラゾール(対照+4-MP)、対照培地+試験化合物、またはエタノール培地+試験化合物と共にインキュベートする。4-MPの添加は、エタノール代謝の一般的阻害剤であるので、これらの研究で使用されてもよい。スライスを動的臓器培養インキュベーター内に置き、37℃で最長96時間培養し、24時間ごとに適切な培地を補充する。培地中のエタノールおよびアセトアルデヒドの濃度を決定するために、上澄みを、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーを使用して分析する。
【0294】
生存率アッセイを下記の通り行う。スライス生存率は、アデノシン三リン酸(ATP)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)レベルを測定することによって決定する。ATPアッセイでは、スライスを適切な時間に収集し、70%エタノール/2mM EDTA中に入れ、フラッシュ凍結し、アッセイまで-70℃で保存する。試料を氷上で解凍し、超音波処理し、0.1M Tris-HCl/2mM EDTAで希釈し、その後、標準ATPアッセイキットで使用する。
【0295】
LDH決定では、上澄みを収集し、-70℃で凍結する。スライスを、2%Triton(登録商標) X-100と細胞毒性決定キット(LDH)(例えば、Roche Applied Science、Penzberg、Germanyから入手可能)を使用して決定されたLDHとを含有するWEに可溶化する。試料の吸光度を490nmで測定する。スライスからの全てのタンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイキットを使用して決定される。後続の24時間の時点で細胞毒性%を計算するために、培地中のLDHを、PCLS中の全LDHで割り、100を掛ける。
【0296】
ADH/ALDH活性を下記の通り決定する。スライスを、指示される時点で収集し、PBS(pH7.4)で洗浄し、1%Triton(登録商標) X-100に溶解し、超音波処理する。ADHアッセイでは、タンパク質濃度を50~100mgに調節し、10mMエタノール、3mM NAD+、および0.5M Tris-HCl(pH7.4)の存在下、37℃でインキュベートする。NAD+からNADHへの変換は、分光光度計を使用して、340nmでの光学密度の変化によって測定される。ALDH活性は、スライスを、100mM NaPO4(pH7.4)、3mM NAD+、および10mMピラゾールを含有する1mlの緩衝液中に置くことによって決定される。反応は、プロピオンアルデヒドを最終濃度の25mM(低Km酵素)または1mM(全酵素活性)に添加することによって開始される。NAD+からNADHへの変換は、分光光度計を使用して、340nmでの光学密度の変化によって決定される。
【0297】
シトクロームP450 2E1(CYP2E1)アッセイは、下記の通り行う。ミクロソームを、修正した公知のプロトコールを使用してスライスから調製する。簡単に言うと、スライスを1.15%KCl溶液に添加し、超音波処理し、分画遠心に供して、ミクロソーム画分を得、タンパク質濃度を決定する。CYP2E1活性を、WuおよびCederbaum(Wu, D., et al., Mol Pharmacol 1996;49(5):802-7)により記述されるpニトロフェノール(PNP)(Sigma Chemical Co.、St.Louis、MO)酸化アッセイを使用して決定する。ミクロソームタンパク質を0.2mM PNP、1mM NADPH(例えば、Sigma Chemical Co.、St.Louis、MOから入手可能)に添加し、37℃で1時間インキュベートする。反応を、30%トリクロロ酢酸を使用して停止させ、遠心分離し、10N NaOHを残りの上澄みに添加する。活性は、分光光度計を使用して、546nmで吸光度を測定することによって得られる。免疫ブロット技法を使用して、ミクロソームCYP2E1発現を決定する。ミクロソームタンパク質(5mg)を10%SDSポリアクリルアミドゲルに投入し、PVDF膜上に移し、ブロットで遮断する。一次抗体、ウザギ抗CYP2E1(例えば、Chemicon、Temecula、CAから入手可能)を4℃で一晩インキュベートし、その後、IR標識された二次抗ウサギIgG抗体と共に1時間インキュベートする。ブロットを洗浄し、乾燥し、IRスキャナーを使用してスキャンする。濃度測定分析を、撮像ソフトウェアを使用して行い、データを任意の濃度測定単位/mgタンパク質で表す。
【0298】
細胞レドックス状態およびアルブミン分泌を下記の通り測定する。様々な条件下で最長96時間インキュベートした肝臓スライスからの上澄みを、アッセイキットを使用してラクテートまたはピルベートの存在に関してアッセイして、細胞レドックス状態を評価する。簡単に言うと、50ml/ウェルの各試料を、50ml/ウェルのアッセイキット試薬と共に、ラクテートまたはピルベート酵素と併せてインキュベートする。反応を30分間生じさせ、ラクテートまたはピルベートのレベルを、570nmでの吸光度により決定する。プレートをプレートリーダーを使用して分析する。上澄みは、ラットアルブミン定量ELISAキットを使用してアルブミン分泌に関してPCLSを分析するのに使用する。このアッセイは、96ウェルプレートを捕捉抗体(ヒツジ抗ラットアルブミン)でコーティングすることにより行われる。プレートをBSAで遮断し、アルブミン標準または試料を添加する。二次抗体を添加し(HRP共役ヒツジ抗ラットアルブミン)、プレートを、TMBペルオキシダーゼ基質を使用して開発する。吸光度を、プレートリーダーを使用して450nmで検出する。
【0299】
トリグリセリド分析を下記の通り行う。指示される時点で、上澄みを除去し、スライスをPBS(pH7.4)で洗浄する。スライスを、0.5%Triton(登録商標)-X100を含有するPBSに入れ、超音波処理し、300mgのタンパク質の等量を、血清トリグリセリドキットを使用してトリグリセリドに関してアッセイする。各試料中のトリグリセリドをリパーゼにより加水分解し、得られた遊離グリセロールを、分光光度計を使用して540nmでグリセロール標準に対して計算する。
【0300】
オイルレッドO染色を、下記の通り行う。オイルレッドO染色では、スライスをOCT(例えば、Sigma Chemical Co.、St.Louis、MOから入手可能)でフラッシュ凍結し、薄片にし、静かにスライド上に置く。オイルレッドOを切片と共にインキュベートし、洗浄し、脂肪分の存在または不在を、病理学者により顕微鏡での光学顕微鏡法により分析する。
【0301】
結果
【0302】
このアッセイの出力には、下記が含まれる:
・ 細胞毒性(LDHおよびATP)
・ 脂肪(トリグリセリド)
・ 代謝(アセトアルデヒド)
・ 酸化ストレス(MAA)
・ サイトカイン(IL-6、MCP-1、TNF、IL-10、IL-1ベータ)
【0303】
トリグリセリド- レベルは、I-1+エタノールPCLSで著しく低下して対照レベルに戻った。
【0304】
アセトアルデヒド- I-1で処置したスライスのレベルは、全ての時点で低下したようである。
【0305】
ATP- レベルは、24および48時間で一定のままである。しかしながら72時間で、I-1処置で増加する。
【0306】
細胞毒性- レベルは、エタノール処置で低下し、I-1処置で降下し続けた。
【0307】
アッセイは、TNF-アルファ、IL-10、およびIL-1ベータの反応性を測定するのに十分な感受性がなかった。
【0308】
全体として、データは、化合物I-1が化学保護剤として作用して、エタノール処置に応答した細胞ストレスおよび毒性を低減させることを示した。これらの結果は、アルコール性肝炎、脂肪肝、ならびに関連ある疾患および障害の処置に関し、ヒトにおける化合物I-1の研究を約束しかつ裏付ける。
(実施例3)
様々な肝臓炎症モデルでの化合物I-1
【0309】
本発明者らは、下記を含む炎症性疾患の追加の前臨床モデルにおいて化合物I-1を研究した:
【0310】
コリン欠乏高脂肪飼料ラット研究
・ 脂質プロファイル
・ 組織病理学
【0311】
STAMマウスモデル
・ 肝線維症およびトリグリセリド
・ 高脂肪飼料による体重増加
【0312】
NAFLDは、米国において毎年300万の新しい症例で診断される。NASHは、対象において確認するのが最も容易であるのでNAFLD診断に含まれる。NAFLD活性スコア(NAS)は、0~2が徴候なし、3~4が徴候なし/ボーダーライン/陽性NASHの範囲、および5~8がNASH診断とスコア付けされ;NASスコアリング系は、4つの半定量的特徴:脂肪症(0~3)、小葉炎症(0~2)、肝細胞風船状腫大(0~2)、および線維症(0~4)の複合体を含む。NAFLDに対する化合物I-1の影響を分析するために、NASを、ビヒクルまたは様々な用量の化合物I-1で処置したラットで分析した(100mg/kg、125mg/kgを、コリン欠乏高脂肪飼料で7週間(ビヒクル対100mg/kg対30/60/100mg/kg)および12週間(ビヒクル対125mg/kg対50/75/100mg/kg)飼育した動物で、上昇30/60/100mg/kgおよび50/75/100mg/kg BIDとそれぞれ比較した。血漿を1、2、3、6、8、10、および12週で収集し、サイトカインおよびALT、AST、トリグリセリド、コレステロール、およびtビリルビン(肝機能の尺度)に関して試験した。12週で肝臓を収集し、遺伝子発現研究、免疫組織化学、およびヒドロキシプロリンを収集した。7または12週間にわたり、食物摂取および体重増加はこれらの2つの比較群内で変化しなかった。12週の群では、ビヒクルと比較してMIP発現レベルに低減があり、MCPおよびランテス発現レベルは、ビヒクルで処置した動物と同様のままであった。トリグリセリドおよびコレステロールは、化合物I-1を受けた動物の7週および12週の両方の群でビヒクルよりも低い値に向かう傾向があった。収集した肝臓の組織病理学では、7週および12週の両方の化合物I-1処置動物は、低減した炎症(ヘマトキシリン・エオシン)および線維症(ピクロシリウスレッド)を有する傾向があった。7週の群におけるNASスコアは、100mg/kg化合物I-1群において、ビヒクルと比較して統計的に有意な低減を実証し、30/60/100mg/kgの上昇群は低減した。
【0313】
STAMマウスモデル(NASH/HCC)で、生まれた時の動物に低用量のSTZ(200ug)を与え、次いで3から4週でこれらの動物に高脂肪飼料を与えた。動物モデルの進行中、5週で脂肪肝が明らかになり、7週でNASHが明らかになり、9週で線維症が明らかになり、10週で結節が明らかになり、剖検が行われる。この研究で、3つの群、ビヒクル(0.5%メチルセルロース)のみ、BID(200mg/kg、ビヒクル中、BID=1日2回)、およびQID(200mg/kg、ビヒクル中、QID=1日3回)に、4週で投薬し始め、動物モデルの10週まで継続した。BIDおよびQIDの両方の群において、線維症および肝性トリグリセリドの著しい低減があった。BIDおよびQIDの両方の化合物I-1で処置された群では、ビヒクルのみの群と比較して体重増加に著しい低減があった。
【国際調査報告】