(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】サルコペニアを逆行させる方法、組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20230519BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230519BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230519BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20230519BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230519BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230519BHJP
A61P 5/38 20060101ALI20230519BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20230519BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230519BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20230519BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20230519BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20230519BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20230519BHJP
C07K 14/46 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P21/00
A61P19/02
A61P35/00
A61P1/16
A61P21/04
A61P43/00 111
A61P13/12
A61P3/10
A61P5/38
A61P11/00
A61P21/02
A61P25/00
A61P27/02
A61K38/16
A61K47/68
A61K38/20
A61K47/54
C07K14/46 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562619
(86)(22)【出願日】2021-04-19
(85)【翻訳文提出日】2022-12-08
(86)【国際出願番号】 US2021027942
(87)【国際公開番号】W WO2021212100
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306018457
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・コロンビア・ユニバーシティ・イン・ザ・シティ・オブ・ニューヨーク
(71)【出願人】
【識別番号】510166102
【氏名又は名称】ウィリアム マーシュ ライス ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】WILLIAM MARSH RICE UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】6100 Main Street,Houston,TX 77005, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】カーセンティ・ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】バーガー・ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ・ハン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC10
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC27
4C076CC30
4C076CC41
4C076DD63
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4C084AA01
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4C084AA17
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
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4C084BA44
4C084CA59
4C084DA18
4C084NA05
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4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA23
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4C084ZA75
4C084ZA81
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB26
4C084ZC08
4C084ZC35
4C084ZC41
4C084ZC52
4C084ZC54
4H045BA19
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
例示的方法、組成物及びその使用が、筋機能の喪失を予防、軽減及び/又は処置するように提供され得る。特に、例えば、インターロイキン-6(IL)の放出を運動中に高める薬剤の治療的有効量及び任意選択的に薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む薬学的組成物を被検体に投与することが可能となる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋機能の喪失を予防、軽減又は処置することのうちの少なくとも1つの方法であって、
インターロイキン-6(IL-6)の放出又は活性を高める薬剤の治療的有効量を含む薬学的組成物を被検体に投与するステップを備える方法。
【請求項2】
前記被検体は、サルコペニアに罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被検体は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病、加齢、(クッシング性又は医原性)副腎皮質機能亢進症、癌悪液質、COPDにおける悪液質、ICU誘導性の筋肉の量及び機能における喪失からのリハビリテーション、ベッカー型筋ジストロフィー、(ASO/GTx後の6MWTを高める補完としての)SMA、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)(包括的なカテゴリー)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、フリードライヒ運動失調症、シャルコー・トゥース・マリー病2K型、遺伝性痙性対麻痺7、封入体筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎、ウィルソン病、バース症候群、グレイシル症候群、カーンズ・セイヤー症候群、リー症候群、母性遺伝性難聴及び糖尿病(MIDD)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)、ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE)、ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)、赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経障害・運動失調・網膜色素変性症(NARP)及びピアソン症候群からなる群から選択される少なくとも1つの状態に罹患している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被検体はヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記薬剤は、人工オステオカルシンペプチドである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記薬剤は、C末端欠損を有するオステオカルシンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記薬剤は、プロテアーゼを不活性化することによって切断を排除するN末端安定化突然変異を有するオステオカルシンである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤は、オステオカルシン及び該オステオカルシンのN末端に融合されたIgFc領域を含む分子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記薬剤は、IL6-ビスホスホネート融合ペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤は、Gprc6aアゴニストである、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記薬剤は、配列番号1のアミノ酸配列又は該配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤は、配列番号2のアミノ酸配列又は該配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記薬剤は、配列番号3から配列番号11のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号3から配列番号11のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記薬剤は、配列番号12から配列番号20のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号12から配列番号20のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記薬剤は、配列番号21から配列番号29のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号21から配列番号29のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記薬剤は、配列番号30のアミノ酸配列又は該配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記薬剤は、配列番号31のアミノ酸配列又は該配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記薬剤は、さらに筋量の喪失を予防、軽減又は処置するうちの少なくとも1つについてのものである、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
被検体における筋機能の喪失を予防、軽減又は処置するうちの少なくとも1つについてインターロイキン-6(IL-6)の放出又は活性を高める薬剤の使用。
【請求項21】
前記被検体は、サルコペニアに罹患している、請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記被検体は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病、加齢、(クッシング性又は医原性)副腎皮質機能亢進症、癌悪液質、COPDにおける悪液質、ICU誘導性の筋肉の量及び機能における喪失からのリハビリテーション、ベッカー型筋ジストロフィー、(ASO/GTx後の6MWTを高める補完としての)SMA、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)(包括的なカテゴリー)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、フリードライヒ運動失調症、シャルコー・トゥース・マリー病2K型、遺伝性痙性対麻痺7、封入体筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎、ウィルソン病、バース症候群、グレイシル症候群、カーンズ・セイヤー症候群、リー症候群、母性遺伝性難聴及び糖尿病(MIDD)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)、ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE)、ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)、赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経障害・運動失調・網膜色素変性症(NARP)及びピアソン症候群からなる群から選択される少なくとも1つの状態に罹患している、請求項20に記載の使用。
【請求項23】
前記被検体はヒトである、請求項20に記載の使用。
【請求項24】
前記薬剤は、人工オステオカルシンペプチドである、請求項20から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項25】
前記薬剤は、C末端欠損を有するオステオカルシンである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
前記薬剤は、プロテアーゼを不活性化することによって切断を排除するN末端安定化突然変異を有するオステオカルシンである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
前記薬剤は、オステオカルシン及び該オステオカルシンのN末端に融合されたIgFc領域を含む分子である、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
前記薬剤は、IL6-ビスホスホネート融合ペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
前記薬剤は、Gprc6aアゴニストである、請求項20から23のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
前記薬剤は、配列番号1のアミノ酸配列又は該配列番号1の該アミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
前記薬剤は、配列番号2のアミノ酸配列又は該配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
前記薬剤は、配列番号3から配列番号11のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号3から配列番号11のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
前記薬剤は、配列番号12から配列番号20のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号12から配列番号20のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
前記薬剤は、配列番号21から配列番号29のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号21から配列番号29のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項35】
前記薬剤は、配列番号30のアミノ酸配列又は該配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
前記薬剤は、配列番号31のアミノ酸配列又は該配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項20から24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
前記薬剤はさらに、筋量の喪失を予防、軽減又は処置するうちの少なくとも1つについてのものである、請求項20から36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
前記薬学的組成物は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤をさらに含む、請求項20から37のいずれか一項に記載の使用。
【請求項39】
前記薬剤は、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む薬学的組成物に処方される、請求項20に記載の使用。
【請求項40】
(a)インターロイキン-6(IL-6)の放出又は活性を高め、かつオステオカルシンではない薬剤及び(b)オステオカルシンの組合せを含む薬学的組成物。
【請求項41】
前記被検体はサルコペニアに罹患している、請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項42】
前記被検体は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病、加齢、(クッシング性又は医原性)副腎皮質機能亢進症、癌悪液質、COPDにおける悪液質、ICU誘導性の筋肉の量及び機能における喪失からのリハビリテーション、ベッカー型筋ジストロフィー、(6MWTを高めるASO/GTx後の補完としての)SMA、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)(包括的なカテゴリー)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、フリードライヒ運動失調症、シャルコー・トゥース・マリー病2K型、遺伝性痙性対麻痺7、封入体筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎、ウィルソン病、バース症候群、グレイシル症候群、カーンズ・セイヤー症候群、リー症候群、母性遺伝性難聴及び糖尿病(MIDD)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)、ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE)、ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)、赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経障害・運動失調・網膜色素変性症(NARP)及びピアソン症候群からなる群から選択される少なくとも1つの状態に罹患している、請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項43】
前記被検体はヒトである、請求項40に記載の薬学的組成物。
【請求項44】
前記薬剤は、人工オステオカルシンペプチドである、請求項40から43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項45】
前記薬剤は、C末端欠損を有するオステオカルシンである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項46】
前記薬剤は、プロテアーゼを不活性化することによって切断を排除するN末端安定化突然変異を有するオステオカルシンである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項47】
前記薬剤は、オステオカルシン及び該オステオカルシンのN末端に融合されたIgFc領域を含む分子である、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項48】
前記薬剤は、IL6-ビスホスホネート融合ペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項49】
前記薬剤はGprc6aアゴニストである、請求項40から43のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項50】
前記薬剤は、配列番号1のアミノ酸配列又は該配列番号1の該アミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項51】
前記薬剤は、配列番号2のアミノ酸配列又は該配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項52】
前記薬剤は、配列番号3から配列番号11のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号3から配列番号11のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項53】
前記薬剤は、配列番号12から配列番号20のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号12から配列番号20のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項54】
前記薬剤は、配列番号21から配列番号29のいずれか1つのアミノ酸配列又は前記配列番号21から配列番号29のいずれか1つのアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項55】
前記薬剤は、配列番号30のアミノ酸配列又は該配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項56】
前記薬剤は、配列番号31のアミノ酸配列又は該配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約85%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなるペプチドである、請求項40から44のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項57】
前記薬剤はさらに、筋量の喪失を予防、軽減又は処置するうちの少なくとも1つについてのものである、請求項40から56のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項58】
薬学的に許容可能な担体又は賦形剤をさらに含む請求項40から57のいずれか一項に記載の薬学的組成物。
【請求項59】
前記組合せは、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤をさらに含む、請求項40に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月17日に出願された米国仮出願第63/011,956号に関するとともに優先権を主張し、その開示がその全体において参照によりここに取り込まれる。
【0002】
政府権益の記載
本発明は、National Institutes of Healthによって授与されたAR073180の下で政府支援を受けて行われた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0003】
本開示は、サルコペニアに罹患している、又は罹患するリスクがある患者における筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失を予防及び処置する方法、組成物及びその使用に向けられる。例えば、患者は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病及び/又は加齢に関連する運動能力の衰退を有し得る。
【背景技術】
【0004】
非常に希少な骨芽細胞特異的タンパク質の1つであるオステオカルシンは、ホルモンのいくつかの特徴を有する。例えば、それは、プレプロ分子として合成され、全身循環において分泌される(Hauschka他、1989年、Physiol.Review 69:990-1047、Price、1989年、Connect.Tissue Res.21:51-57(discussion 57-60))。それらの巧妙な細胞特異的発現のために、オステオカルシン遺伝子は、骨芽細胞特異的転写因子を同定し、骨生理学の分子学的基礎を定義するように集中的に研究されている(Ducy他、2000年、Science 289:1501-1504、Harada及びRodan、2003年、Nature 423:349-355)。
【0005】
オステオカルシンは、石灰化された骨基質に関連して見られる最も豊富な非コラーゲン性タンパク質であり、現在、骨代謝回転の臨床評価に関する生物学的マーカーとして用いられている。オステオカルシンは、その一次構造において3個のガンマ-カルボキシル化グルタミン酸残基を含む小さな(46~50アミノ酸残基)骨特異的タンパク質である。オステオカルシンという名称(osteo:ギリシャ語で骨、calc:ラテン語で石灰塩、in:タンパク質)は、Ca2+に結合するタンパク質の能力及び骨においてそれが豊富であることに由来する。オステオカルシンは、グルタミン酸残基がカルボキシル化されてガンマ-カルボキシグルタミン酸(Gla)残基を形成する特有な翻訳後修飾を受け、これによりオステオカルシンの別名は骨Glaタンパク質である(Hauschka他、1989年、Physiol.Review 69:990-1047)。
【0006】
成熟したヒトオステオカルシンは、5800kDaの推定分子量を有する49個のアミノ酸を含む(Poser他、1980年、J.Biol.Chem.255:8685-8691)。成熟したヒトオステオカルシンは、以下の例示的アミノ酸配列:YLYQWLGAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号32)を有する。
【0007】
オステオカルシンは、主に骨芽細胞及び象牙芽細胞(ondontoblast)によって合成され、15~20%の骨の非コラーゲン性タンパク質を含む。Poser他、1980年、J.Biol.Cham.255:8685-8691は、成熟したオステオカルシンがグルタミン酸残基のビタミンK依存性翻訳後修飾によって形成される3個のカルボキシグルタミン酸残基を含むことを示した。カルボキシル化Gla残基は、成熟したヒトオステオカルシンの17、21及び24位にある。一部のヒトオステオカルシンは、2個のGla残基しか含まないことが示されている(Poser及びPrice、1979年、J.Biol.Chem.254:431-436)。
【0008】
オステオカルシンは、ホルモンのいくつかの特徴を有する。Ducy他、1996年、Nature 382:448-452は、加齢のオステオカルシン欠乏マウスによる石灰化した骨は、野生型のものよりも2倍厚いことを示した。オステオカルシンの不在は、骨吸収を損なうことなしに骨形成の増加をもたらし、石灰化には影響しないことが示された。ヒトオステオカルシンの複数の免疫反応性形態は、血液循環(Garnero他、1994年、J.Bone Miner.Res.9:255-264)及び尿(Taylor他、1990年、J.Clin.Endocrin.Metab.70:467-472)においても発見されている。ヒトオステオカルシンの断片は、骨基質の破骨細胞分解中又は合成後の循環タンパク質の骨芽細胞による異化分解の結果として生成され得る。
【0009】
したがって、ここに記載された従来の不備な点の少なくともいくつかに対処し、及び/又はそれを少なくとも部分的に克服するニーズが存在し得る。
【発明の概要】
【0010】
そのような問題及び/又は欠点は少なくとも部分的に対処及び/又は克服されることが可能であり、筋機能の喪失を予防又は処置する方法が本開示の特定の例示的実施形態により提供され得る。そのような例示的方法は、例えば、インターロイキン-6(IL)の放出又は活性を、例えば、運動中に高める薬剤の治療的有効量及び任意選択的に、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む薬学的組成物を被検体に投与するステップを備え得る。被検体はサルコペニアに罹患し得る。被検体は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病及び加齢からなる群から選択される少なくとも1つの状態に罹患し得る。特定の例示的実施形態では、薬剤は、筋量の喪失をさらに予防又は処置し得る。
【0011】
例示的薬剤は、内因性オステオカルシンペプチド又は人工オステオカルシンペプチドであり得る。人工オステオカルシンは、C末端欠損を有するオステオカルシン、プロテアーゼを不活性化することにより切断を排除するN末端安定化突然変異を有するオステオカルシン並びに/又はオステオカルシン及びオステオカルシンのN末端に融合されたIgFc領域を含む分子となり得る。
【0012】
例示的薬剤は、IL6-ビスホスホネート融合ペプチドとなり得る。特定の例示的実施形態では、薬剤は、Gprc6aアゴニストとなり得る。
【0013】
本開示の特定の例示的実施形態によると、筋機能の喪失を予防又は処置するためにインターロイキン-6(IL)の放出又は活性を高める薬剤を利用することが可能となる。本開示の他の例示的実施形態では、筋機能の喪失を予防又は処置する医薬品の製造においてインターロイキン-6(IL)の放出又は活性を高める薬剤を用いることが可能となる。
【0014】
本開示の例示的実施形態のこれら及び他の目的、特徴及び有利な効果は、本開示の例示的実施形態の以下の詳細な説明を添付の特許請求の範囲と併せて読解されると明らかとなる。
【0015】
本開示のさらなる目的、特徴及び有利な効果は、本開示の実例的な実施形態を示す添付の図面と併せて以下の詳細な説明により明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、オステオカルシン(OCN)が運動における加齢に関連した衰退を補正することを示す例示的グラフのセットである。
【
図2】
図2は、筋肉由来のIL-6が持久力運動に対して有益となることを示す例示的グラフのセットである。
【
図3】
図3は、筋肉由来のIL-6がオステオカルシン(OCN)分泌を上方制御することによって持久力運動に対して有益となることを示す例示的グラフのセットである。
【
図4】
図4は、マウスにおいて、骨におけるIL-6のシグナル伝達が運動能力を決定することを示す例示的グラフである。
【
図5】
図5は、ヒトにおいて、骨におけるIL-6のシグナル伝達が運動能力を決定することを示す例示的グラフである。
【
図6】
図6は、肝臓におけるOCNのシグナル伝達が運動能力に対して有益となることを示す例示的グラフのセットである。
【
図7】
図7は、OCNがLiver Factor1の生成を運動中に高めることを示す例示的グラフのセットである。
【
図8】
図8は、Liver Factor1がOCNの運動能力の制御を仲介することを示す例示的グラフのセットである。
【
図9A】
図9Aは、マウスにおけるサルコペニアの例示的モデル化を示す例示的グラフである。
【
図9B】
図9Bは、マウスにおけるサルコペニアの例示的モデル化を示す例示的グラフである。
【
図10】
図10は、DEXサルコペニアにおいて、OCNが筋量に対して限界効果を有することを示す例示的グラフのセットである。
【
図11】
図11は、OCNが運動に対するDEXの有害作用を実質的又は完全に防止することを示す例示的グラフのセットである。
【
図12】
図12は、Dex誘導性サルコペニアにおいてOCNがIL-6を支持することを示す例示的グラフのセットである。
【
図13】
図13は、OCNが主に筋機能を対象とすることを示す例示的グラフのセットである。
【
図14】
図14は、OCNがDEX毒性と干渉しないことを示す例示的グラフのセットである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面の全体を通じて、特に断りのない限り、同一の符号及び文字が用いられ、図示された実施形態の同様の特徴、要素、構成要素又は部分を示す。さらに、本開示は図面を参照して詳細にここに説明されるが、これは説明的な実施形態に関連してそのように行われ、図面及び添付の特許請求の範囲に示す特定の例示的実施形態によっては限定されない。
【0018】
サルコペニアは、以下の、筋量の喪失、握力の喪失及び/又は運動能力の喪失の3つの症状のうちの2つが共存することによって特徴付けられる筋疾患である。様々な原因の複数の疾患及び状態がサルコペニアを引き起こし得る。例えば、サルコペニアは、股関節骨折後、癌、肝硬変、クッシング病、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病及び加齢において発症し得る。いずれの形態のサルコペニアも処置する承認薬は、存在していない。複数の薬物が、筋量のみを対象とするように開発されている(表1)。
【表1】
【0019】
運動能力に欠陥を有し得る一般的な疾患は、限定されることなく、例えば、サルコペニア、股関節骨折、肝硬変、(クッシング性又は医原性)副腎皮質機能亢進症、癌悪液質、COPDにおける悪液質並びにICU誘導性の筋量及び筋機能における喪失からのリハビリテーションを含む。
【0020】
運動能力に欠陥を有し得る他の疾患は、限定されることなく、例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、(ASO/GTx後の6MWTを高める補完としての)SMA、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、原発性ミトコンドリアミオパチー(PMM)(包括的なカテゴリー)、脂肪酸酸化障害(FAOD)、フリードライヒ運動失調症、シャルコー・トゥース・マリー病2K型、遺伝性痙性対麻痺7、封入体筋炎、多発性筋炎、封入体筋炎、皮膚筋炎、ウィルソン病、バース症候群、グレイシル症候群、カーンズ・セイヤー症候群、リー症候群、母性遺伝性難聴及び糖尿病(MIDD)、ミトコンドリアDNA枯渇症候群、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様エピソード(MELAS)、ミトコンドリア神経胃腸脳筋症(MNGIE)、ミトコンドリア劣性運動失調症候群(MIRAS)、赤色ぼろ線維を有するミオクローヌスてんかん(MERRF)、神経障害・運動失調・網膜色素変性症(NARP)及びピアソン症候群を含む。
【0021】
本開示の特定の例示的実施形態によると、骨由来ホルモンであるオステオカルシンが筋線維のエネルギー力学を上方制御し得ることが特定された。また、サルコペニアの臨床関連マウスモデルにおいて、オステオカルシン処置が筋機能及び/又は筋量を保護し得るか否かもさらに試験された。この疑問に対処するために、本開示の例示的実施形態では、デキサメタゾンの1ヶ月の長期的な点滴を用いて、走行能力を50%減少させ、腓腹筋量を30%減少させる医原性クッシング病に存在するサルコペニアを再現した。SARM、グレリン類似体及びミオスタチン阻害剤などのサルコペニアを処置するように開発された以前の分類の薬物は、筋量の増加には成功したが、筋機能を改善することはできなかった。一方、オステオカルシンでの処置は、デキサメタゾン処置マウスの走行能力を完全に救出した。オステオカルシンはこの疾患モデルにも存在する高血圧に対しては効果を有さなかったので、この効果は特定の臓器系に固有であった。コルチコステロイド類は自己免疫疾患の処置に最も一般的に用いられ、したがって、循環リンパ球数はデキサメタゾン処置後に50%低下した。オステオカルシンでの処置は、デキサメタゾン誘導性免疫抑制に干渉せず、悪化させることもなかった。オステオカルシンは走行能力を完全に復元したが、それは酸化性の筋肉、すなわち、運動中に最も動員される筋肉においてのみ筋量を改善した。これは、サルコペニアのこのモデルにおいて、筋機能の筋量との部分的な解離があり得ることを示唆した。これがその場合であるかどうかを特定するために、マウスを、オステオカルシン又はサルコペニアにおける筋量を増加させる後期臨床開発段階にある選択的アンドロゲン受容体修飾剤(SARM)であるVK5211のいずれかとともにデキサメタゾンで処置した。オステオカルシンとは異なり、VK5211は全ての種類の筋肉、すなわち、酸化性、解糖性及び混合性の筋肉において、筋量を正常レベルまで完全に復元したが、デキサメタゾン処置マウスにおける走行能力に対してはわずかな効果しか有さなかった。したがって、オステオカルシンは、医原性クッシング病及び筋機能が筋量とはある程度無縁の他のサルコペニア状態における筋機能を改善する潜在的な治療標的物として同定されている。
【0022】
サルコペニアの他の承認モデルにおいて、オステオカルシンの有効性が試験された。具体的には、ポンプ(69mg/日)によって28日間送達されたデキサメタゾンが、マウスにおいて用いられる。マウスの他のグループは、デキサメタゾンに加えてポンプによって送達されたオステオカルシンも与えられた。デキサメタゾンがマウスの筋量及びマウスの踏み車上を走行する能力を低下させることが観察された。デキサメタゾン及びオステオカルシンを与えられたマウスは、デキサメタゾン単独群よりも筋量を有意には失わなかった。他の化合物はデキサメタゾンマウスにおける筋量の喪失の軽減をもたらしたが、当該他の化合物は運動能力の喪失を予防しなかった。デキサメタゾン及びオステオカルシン処置マウスは、正常な運動能力を有した。
【0023】
さらに、本開示の特定の例示的実施形態によると、1歳のマウスにおいて、オステオカルシンとの同時処置によって、デキサメタゾンの筋機能に対する有害作用が存在することを示すin vivoの証拠が特定された。本開示の特定の例示的実施形態によると、既に2週間にわたってデキサメタゾンを与えられたマウスにオステオカルシンが投与された場合、筋機能に対するデキサメタゾンの有害作用を部分的に戻し得ることがさらに特定された。
【0024】
本開示の特定の例示的実施形態により、筋機能の喪失を予防又は処置する例示的方法が提供され得る。例示的方法は、インターロイキン-6(IL)の放出又は活性を、例えば運動中に高める薬剤の治療的有効量及び任意選択的に、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む薬学的組成物を、被検体に投与するステップを備え得る。被検体は、サルコペニアに罹患し得る。被検体は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病及び加齢からなる群から選択される少なくとも1つの状態に罹患し得る。
【0025】
被検体は、サルコペニアに罹患し得る。被検体は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病及び加齢からなる群から選択される少なくとも1つの状態に罹患し得る。
【0026】
本開示のいくつかの例示的実施形態では、被検体は、股関節骨折に罹患し得る。米国では、年間30万件の股関節骨折が発生する。通常、股関節骨折は、12ヶ月の高額な介護費用の回復期間を伴う。患者の50%以上は、可動性/運動能力を取り戻すことがない。
【0027】
本開示の特定の例示的実施形態によると、被検体は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに罹患し得る。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、希少疾患である。米国には約6千人の患者が存在する。他の例示的実施形態では、被検体は、クッシング病に罹患し得る。クッシング病は希少疾患である。米国では、クッシング病に罹患している約2万人の患者が存在する。
【0028】
本開示の特定の例示的実施形態において用いられるインターロイキン-6(IL-6)の放出又は活性を高める薬剤は、小分子、ペプチド、タンパク質又は核酸からなる群から選択され得る。特定の例示的実施形態では、薬剤は、オステオカルシンである。他の実施形態では、薬剤は、オステオカルシンではない。
【0029】
本開示で用いられるように、「オステオカルシン」は、限定されることなく、成熟タンパク質を含み、種々のドメインを含む全長オステオカルシン又は成熟タンパク質に由来する生物学的に活性な断片並びにここで記載されるような変異体及び人工オステオカルシンをさらに含む。ヒト全長オステオカルシンは、配列番号33のアミノ酸配列(MRALTLLALL ALAALCIAGQ AGAKPSGAES SKGAAFVSKQ EGSEVVKRPR RYLYQWLGAP VPYPDPLEPR REVCELNPDC DELADHIGFQ EAYRRFYGPV)を有する。ヒトオステオカルシンcDNAは、配列番号34のヌクレオチド配列(cgcagccacc gagacaccat gagagccctc acactcctcg ccctattggc cctggccgca ctttgcatcg ctggccaggc aggtgcgaag cccagcggtg cagagtccag caaaggtgca gcctttgtgt ccaagcagga gggcagcgag gtagtgaaga gacccaggcg ctacctgtat caatggctgg gagccccagt cccctacccg gatcccctgg agcccaggag ggaggtgtgt gagctcaatc cggactgtga cgagttggct gaccacatcg gctttcagga ggcctatcgg cgcttctacg gcccggtcta gggtgtcgct ctgctggcct ggccggcaac cccagttctg ctcctctcca ggcacccttc tttcctcttc cccttgccct tgccctgacc tcccagccct atggatgtgg ggtccccatc atcccagctg ctcccaaata aactccagaa gaggaatctg aaaaaaaaaa aaaaaaaa)を有する。
【0030】
特定の例示的実施形態では、インターロイキン-6(IL-6)の放出又は活性を高めるオステオカルシンではない薬剤は、オステオカルシン、例えば、低カルボキシル化又は非カルボキシル化ヒトオステオカルシンとの組合せで用いられる。
【0031】
本開示のさらに他の例示的実施形態では、薬剤は、IL6(インターロイキン-6)-ビスホスホネート融合ペプチドとなり得る。IL6-ビスホスホネート融合ペプチドは、骨からのOCNの放出の上流の経路を標的としてもよく、運動能力の強力な局所調節因子となり得る。IL6-ビスホスホネート融合ペプチドは、隔月の注入によって被検体に投与され、OCNの生理学的な放出をもたらし得る。骨を標的とすることによって、オフターゲット効果が排除され得る。
【0032】
本開示のさらに他の例示的実施形態によると、薬剤は、Gpr6aアゴニストとなり得る。Gprc6aは、小分子標的とするための有望な標的物である。小分子/構造誘導設計の大規模スクリーニングは、当技術分野で公知の方法を用いて行われ得る。Gpr6aアゴニストは、被検体に経口的に投与され得る。
【0033】
さらに、例示的方法は、本開示の追加的な例示的実施形態による筋機能の喪失を予防又は処置する。例示的方法は、オステオカルシンの形態の治療的有効量及び任意選択的に薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む薬学的組成物を被検体に投与するステップを備え得る。
【0034】
本開示の例示的実施形態による方法の特定の例示的ものでは、ここに列挙される例示的実施形態における疾患、障害及び/又は状態は、オステオカルシンの形態、例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン又は低カルボキシル化/非カルボキシル化ヒトオステオカルシンを含む薬学的組成物を患者に投与することによって緩和され得る。特定の例示的実施形態では、オステオカルシンは、ヒトオステオカルシンとなる。特定の例示的実施形態では、オステオカルシンは、完全非カルボキシル化ヒトオステオカルシンとなる。
【0035】
薬剤が低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンとなる本開示の特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンにおける成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応する位置のグルタミン酸の少なくとも1個が、カルボキシル化されない。特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンにおける成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応する位置のグルタミン酸の3個全てが、カルボキシル化されない。
【0036】
本開示の特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、調製物における成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応する位置の全Glu残基の約20%超がカルボキシル化されない低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの調製物となる。特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン及び成熟ヒトオステオカルシンが最大の配列相同性のために整列される場合、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、成熟ヒトオステオカルシンと少なくとも80%のアミノ酸配列同一性を共有する。特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン及び成熟ヒトオステオカルシンが最大の配列相同性のために整列された場合、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、成熟ヒトオステオカルシンと少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有する。特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、成熟ヒトオステオカルシンと1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個のアミノ酸残基が異なる。
【0037】
本開示の特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンにおける成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応する位置のグルタミン酸の少なくとも1個が、カルボキシル化されない。特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンにおける成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応する位置のグルタミン酸の3個全てが、カルボキシル化されない。
【0038】
特定の例示的実施形態では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、
(a)C末端から最後の10個のアミノ酸を欠失した成熟ヒトオステオカルシンを含む断片、
(b)N末端から最初の10個のアミノ酸を欠失した成熟ヒトオステオカルシンを含む断片、
(c)配列番号33のアミノ酸62~90を含む断片、
(d)成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸1~36を含む断片、
(e)成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸13~26を含む断片、及び/又は
(f)成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸13~46を含む断片、並びに
(g)上記の変異体
からなる群から選択されるポリペプチドとなる。
【0039】
2つのアミノ酸配列における位置が対応する場合、それは、2つのアミノ酸配列が互いに整列してそれらの間に最大の同一性を提供する場合、2つの位置が互いに整列することを意味する。この同一の対応の概念が、核酸にもあてはまる。
【0040】
例えば、2つのアミノ酸配列AGLYSTVLMGRPS及びGLVSTVLMGNにおいて、第1の配列の2~11位は、それぞれ第2の配列の1~10位に対応する。したがって、第1の配列の2位は、第2の配列の1位に対応し、第1の配列の4位は、第2の配列の3位に対応する、などとなる。なお、2つの配列における位置が同一のアミノ酸によって占有されていない場合であっても、一方の配列における位置が他方の配列における位置に対応し得る。
【0041】
本開示の特定の例示的実施形態によると、薬学的組成物は、ワルファリン、ビタミンK阻害物質及びその生物学的に活性な断片又は変異体からなる群から選択される小分子を含む。特定の例示的実施形態では、小分子はワルファリンとなる。他の特定の例示的実施形態では、薬剤は、オステオカルシンの活性又は発現を増加する小分子となる。
【0042】
本開示の特定の例示的実施形態では、薬学的組成物は、約0.5mg~約5g、約1mg~約1g、約5mg~約750mg、約10mg~約500mg、約20mg~約250mg又は約25mg~約200mgの薬剤を含む。特定の例示的実施形態では、薬学的組成物は、放出制御調製物に処方される薬剤を含む。特定の例示的実施形態では、薬学的組成物は、化学的に修飾されて人体におけるその半減期を延長する薬剤を含む。
【0043】
特定の例示的実施形態によると、本開示による薬学的組成物は、アミノ酸配列YLYQWLGAPVPYPDPLXlPRRX2VCX3LNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号38)を含む低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンポリペプチドを含み、X1、X2及びX3は、アミノ酸又はアミノ酸類似体からそれぞれ独立して選択され、ただし、X1、X2及びX3が各々グルタミン酸である場合、X1はカルボキシル化されず、若しくは50%未満のX2がカルボキシル化され及び/若しくは50%未満のX3がカルボキシル化され、又は上記オステオカルシンポリペプチドは、X1、X2及びX3以外に、1~7位で配列番号38と異なるアミノ酸配列を含み、並びに/又は上記アミノ酸配列は、1以上のアミド骨格置換を含み得る。
【0044】
本開示の特定の例示的実施形態では、配列番号38のオステオカルシンポリペプチドは、融合タンパク質となる。本開示の特定の例示的実施形態によると、配列番号38の43位のアルギニンが、タンパク質分解に対するオステオカルシンポリペプチドの感受性を低下させるアミノ酸又はアミノ酸類似体で置換される。特定の例示的実施形態では、配列番号38の44位のアルギニンはβ-ジメチルアルギニンで置換される。本開示の特定の例示的実施形態では、オステオカルシンポリペプチドは、非カルボキシル化ヒトオステオカルシンのレトロエナンチオマー(1~49)となる。
【0045】
本開示の種々の例示的実施形態は、ヒトにおける筋機能の喪失を予防、軽減及び/又は処置するための医薬品の製造に対して、インターロイキン-6(IL)の放出又は活性を高める薬剤、例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンポリペプチド又はその模倣体、変異体若しくは誘導体の使用を容易にする。
【0046】
オステオカルシン(OCN)の形態は、内因性OCNペプチド(例えば、内因性ヒトOCNペプチド)又は人工OCNペプチド(例えば、人工ヒトOCNペプチド)となり得る。内因性OCNペプチドは、毎日の皮下注入によって被検体に投与され得る。内因性OCNは、動物モデルにおいて負の副作用の記録がなく、安全である。
【0047】
人工オステオカルシンは、例えば、毎週又は隔月で皮下注入を介して被検体に投与され得る。人工オステオカルシンは、内因性OCNよりも改善された有効性を示し得る。人工オステオカルシンの例は、C末端欠損を有するオステオカルシン、プロテアーゼを不活性化することによって切断を排除するN末端安定化突然変異を有するオステオカルシン並びにオステオカルシン及びオステオカルシンのN末端に融合されたIgFc領域を含む分子を含む。
【0048】
人工ヒトオステオカルシンは、YLYQWLGAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号1)のアミノ酸配列を含み、又はそれからなるC末端ポストCPEペプチドとなり得る。人工ヒトオステオカルシンは、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。人工オステオカルシンは、YLYQWLGAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号2)のアミノ酸配列を含み、又はそれからなるC末端ジ-アルギニンペプチドとなり得る。人工ヒトオステオカルシンは、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。C末端欠損を有するオステオカルシンは、Gprc6a(OCN受容体)での能力を増加し、及び/又は運動能力における有効性を改善し得る。
【0049】
N末端安定化突然変異を有する例示的人工ヒトオステオカルシンは、OCNのN末端の位置に単一のアミノ酸置換を含み得る。突然変異はプロテアーゼを不活性化することによって切断を排除し、それにより半減期を増加し、より長い投薬間隔(例えば、1週間又はそれ以上の週間)をもたらし得る。
【0050】
N末端突然変異を有する例示的人工ヒトオステオカルシンは、YLYQWLAAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号3)、YLYQWLGAAVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号4)、YLYQWLGAPAPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号5)、YLYQWLGAPVAYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号6)、YLYQWLGAPVPAPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号7)、YLYQWLGAPVPYADPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号8)、YLYQWLGAPVPYPAPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号9)、YLYQWLGAPVPYPDALEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号10)又はYLYQWLGAPVPYPDPAEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号11)のアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。人工ヒトオステオカルシンは、配列番号3~配列番号11のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。
【0051】
N末端突然変異を有する人工ヒトオステオカルシンは、YLYQWLAAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号12)、YLYQWLGAAVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号13)、YLYQWLGAPAPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号14)、YLYQWLGAPVAYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号15)、YLYQWLGAPVPAPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号16)、YLYQWLGAPVPYADPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号17)、YLYQWLGAPVPYPAPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号18)、YLYQWLGAPVPYPDALEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号19)又はYLYQWLGAPVPYPDPAEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRR(配列番号20)のアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。例示的人工ヒトオステオカルシンは、配列番号12~配列番号20のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。
【0052】
N末端突然変異を有する例示的人工ヒトオステオカルシンは、YLYQWLAAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号21)、YLYQWLGAAVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号22)、YLYQWLGAPAPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号23)、YLYQWLGAPVAYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号24)、YLYQWLGAPVPAPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号25)、YLYQWLGAPVPYADPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号26)、YLYQWLGAPVPYPAPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号27)、YLYQWLGAPVPYPDALEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号28)又はYLYQWLGAPVPYPDPAEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAY(配列番号29)のアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。人工ヒトオステオカルシンは、配列番号21~配列番号29のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。
【0053】
例示的分子は、オステオカルシン及びオステオカルシンのN末端に融合したIgFc領域を含んでいてもよく、増加された半減期及びより長い投薬間隔(例えば、1週間又はそれ以上の週間)を有し得る。例示的分子は、ヒトオステオカルシン及びヒトオステオカルシンのN末端に融合したヒトIgFc領域を含んでいてもよく、EPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVCVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGKYLYQWLGAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPV(配列番号30)のアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。人工ヒトオステオカルシンは、配列番号30のアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。
【0054】
例示的分子は、ヒトオステオカルシン及びヒトオステオカルシンのC末端に融合したヒトIgFc領域を含んでいてもよく、YLYQWLGAPVPYPDPLEPRREVCELNPDCDELADHIGFQEAYRRFYGPVEPKSCDKTHTCPPCPAPEAAGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVCVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK(配列番号31)のアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。例示的人工ヒトオステオカルシンは、配列番号31のアミノ酸配列と少なくとも約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%又は約98%のアミノ酸配列同一性を共有するアミノ酸配列を含み、又はそれからなり得る。
【0055】
本開示の態様によると、Liver Factor1の放出又は活性を高める薬剤の治療的有効量及び任意選択的に、薬学的に許容可能な担体又は賦形剤を含む薬学的組成物を被検体に投与するステップを備える、筋機能の喪失を予防又は処置する方法が提供される。被検体は、サルコペニアに罹患し得る。サルコペニアの症状は、筋量及び/又は筋機能の進行性の喪失を含み得る。それは、加齢のほぼ普遍的な特徴であり、骨量の低下後に発生することが多い。その細胞及び分子基盤は不明である。
【0056】
被検体は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病及び加齢からなる群から選択される少なくとも1つの状態に罹患し得る。特定の例示的実施形態では、薬剤は、筋量の喪失をさらに予防又は処置し得る。
【0057】
「被検体」は、哺乳動物、好ましくはヒトであってもよいが、イヌ若しくはネコなどのコンパニオンアニマル又はウマ、ウシ、ブタ若しくはヒツジなどの家畜であってもよい。特定の例示的実施形態では、被検体は年齢が少なくとも55歳の患者となる。本開示のいくつかの例示的実施形態では、患者は、少なくとも60、65、70、75又は80歳である。本開示の特定の例示的実施形態では、患者は、55歳~80歳の間、60歳~75歳の間又は65歳~70歳の間のヒトとなる。特定の例示的実施形態では、患者は、55歳~60歳の間、65歳~70歳の間、70歳~75歳の間、75歳~80歳の間、80歳~85歳の間又は85歳~90歳の間のヒトとなる。
【0058】
本開示の方法による予防、軽減及び/又は処置を必要とする患者は、筋機能の喪失、例えば、骨格筋機能の喪失を有することが知られ又は有することが疑われる患者を含み、それを発症するリスクにある。処置を必要とするそのような患者は、例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンレベルが低いことが知られている哺乳動物であり得る。本開示の方法による処置を必要とする患者は、筋機能の喪失を処置するために、血清の低カルボキシル化/非カルボキシル化レベルを増加する治療を必要としていることが知られている患者を含む。
【0059】
本開示の特定の例示的実施形態では、本開示の方法による筋機能の喪失を予防、軽減及び/又は処置を必要とする患者は、ここに記載される治療薬剤を、筋機能の喪失を処置する以外の目的のみで投与されている患者を含まないこともある。したがって、例えば、本開示の方法による筋機能の喪失の予防、軽減及び/又は処置を必要とする患者は、骨量疾患又はメタボリックシンドローム、耐糖能障害、I型糖尿病、II型糖尿病、アテローム性動脈硬化症若しくは肥満などの代謝障害を緩和する目的のみでオステオカルシンで処置されている患者を含まない。また、耐糖能の増加、インスリン産生の増加、インスリン感受性の増加、膵臓ベータ細胞増殖の増加、アディポネクチン血清レベルの増加、酸化リン脂質の低減、アテローム硬化性プラークの退縮、炎症性タンパク質生合成の低下、血漿中コレステロールの低減、血管平滑筋細胞(VSMC)の増殖及び数の低減又は動脈プラークの厚さにおける低下を引き起こす目的のみでオステオカルシンで処置されている患者も含まない。
【0060】
本開示による方法の例示的実施形態による、又はそれを用いた筋機能の喪失の予防、軽減及び/又は処置を必要とする患者は、男性生殖障害又は認知障害を緩和する目的のみでオステオカルシンで処置されている患者も含まないこともある。
【0061】
本開示の特定の例示的実施形態によると、本開示の方法による筋機能の喪失の予防、軽減及び/又は処置を必要とする患者は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンではないオステオカルシン、例えば、完全なカルボキシル化オステオカルシンで処置されている患者も含まないこともある。
【0062】
筋線維におけるオステオカルシンのシグナル伝達が、トリカルボン酸回路へのグルコースの取込み及び利用を増加し、かつ脂肪酸の利用を促進することから、運動への適応を支持することを示す例示的データは、国際公開第2016/081728号に含まれ、その開示は参照によってここに取り込まれる。筋線維におけるオステオカルシンのシグナル伝達はまた、生理活性オステオカルシン及び筋線維に利用可能となる栄養素の生成を支持するミオカインであるインターロイキン-6の運動誘導性上方制御の主な決定要因となる。さらに、循環オステオカルシンレベルは、中年期前に急激に衰退し、若年マウスよりも老年のマウスにおいて運動中の増加が少なくなる。これは、外因性オステオカルシンが若年マウスにおける運動能力を増加し、15ヶ月齢のマウスに3ヶ月齢のマウスの運動能力を与える理由を説明するものである。したがって、運動中の筋機能を増強するのに必要となることもあり、加齢誘導性の運動能力の衰退を逆行させるように利用され得るオステオカルシン-インターロイキン-6軸が存在する。
【0063】
オステオカルシンが、トリカルボン酸(TCA)回路におけるグルコースの取込み及び利用並びにFAの利用を促進することから、筋線維におけるシグナル伝達によって運動への適応を支持することを示す例示的データは、国際公開第2016/081728号にも含まれ、その開示は参照によりここに組み込まれる。筋繊維におけるオステオカルシンのシグナル伝達は、グルコース及びFAの生成を支持するミオカインであるインターロイキン-6(IL-6)の循環レベルの運動中の増加の大部分にも関与し、骨芽細胞においてシグナル伝達して生理活性オステオカルシンの生成を支持する。一方、循環オステオカルシンレベルは、試験した全ての種において中年期前に急激に低下し、老年マウスでは運動中に若年マウスと同程度までは増加しない。オステオカルシンの機能及び循環レベルの経時的進化に従って、外因性オステオカルシンは、若年マウスの運動能力を増加し、12~15ヶ月齢のマウスに3ヶ月齢のマウスの運動能力を与える。これらの結果は、IL-6のグルコース及びFAを生成する能力とともに、運動への適応を促進し、若年マウスの運動能力を増加し、老年マウスの運動能力を正常化するように利用され得る、筋線維におけるオステオカルシンのシグナル伝達とIL-6との間のクロストークの存在を明らかにしている。
【0064】
本開示の例示的実施形態による他の例示的態様は、患者における低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのレベルの検出に基づく診断方法に向けられ、そのレベルは哺乳動物において筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失に関係する障害に関連する。
【0065】
一例示的態様では、本開示の例示的実施形態による患者における筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失を診断する方法は、(i)患者から採取した生物学的サンプルにおける低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの患者レベルを決定するステップ、(ii)低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンの患者レベル及び低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンのコントロールレベルを比較するステップ及び(iii)患者レベルがコントロールレベルより有意に低い場合、患者を筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失を有し、又はそのリスクにあると診断するステップを備え得る。そして、さらなる例示的ステップ及び/又は手順は、患者又は患者の医療提供者に診断を通知することであってもよい。
【0066】
本開示の例示的実施形態の他の例示的態様は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン対カルボキシル化オステオカルシンの比率の低下の検出に基づく診断方法に向けられる。そのような比率は、哺乳動物における筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失に関連し得る。一例示的態様では、本開示の例示的実施形態による患者における筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失に関係する障害を診断する方法は、(i)患者から採取した生物学的サンプルにおける、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン対カルボキシル化オステオカルシンの患者の比率を決定するステップ、(ii)低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン対カルボキシル化オステオカルシンの患者の比率及び低カルボキシル化/非カルボキシルオステオカルシン対カルボキシル化オステオカルシンのコントロールの比率を比較するステップ及び(iii)患者の比率がコントロールの比率よりも有意に低い場合、患者を筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失を有し、又はそのリスクにあると診断するステップを備え得る。そして、さらなる例示的ステップ及び/又は手順は、患者又は患者の医療提供者に診断を通知することとなり得る。
【0067】
例示的方法における使用のための薬学的組成物
本開示の例示的実施形態は、インターロイキン-6(IL)の放出又は活性を高める薬剤を含む、哺乳動物における筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失の予防、軽減及び/又は処置における使用のための薬学的組成物を提供する。薬剤は、小分子、ポリペプチド、タンパク質及び核酸からなる群から選択され得る。本開示の薬学的組成物は、哺乳動物における筋機能の喪失及び/又は筋量の喪失を予防、軽減又は処置するのに効果的な薬剤の量を提供する。
【0068】
本開示の特定の例示的実施形態によると、インターロイキン-6(IL)の放出又は活性を高める薬剤を含み得る薬学的組成物は、他の治療薬剤とともに投与される。いくつかの例示的実施形態では、インターロイキン-6の放出又は活性を高める薬剤及び他の治療薬剤は、同一の薬学的組成物内に存在し得る。他の例示的実施形態では、インターロイキン-6の放出又は活性を高める薬剤及び他の治療薬剤は、別個の薬学的組成物において投与され得る。
【0069】
本開示のさらなる例示的実施形態によると、インターロイキン-6の放出又は活性を高める薬剤は、薬学的組成物内に存在する唯一の活性薬学的原料となり得る。
【0070】
治療薬剤の生物学的に活性な断片又は変異体も、本開示の範囲内となる。「生物学的に活性」は、インターロイキン-6の放出又は活性を高めることが可能であることを意味する。
【0071】
「生物学的に活性」はまた、インターロイキン-6の放出又は活性を高めて哺乳動物におけるサルコペニア又は筋機能の喪失を予防、軽減又は処置する能力を保持する、オステオカルシンの断片又は変異体をいう。
【0072】
特定の例示的実施形態では、本開示の方法における使用のための組成物は、内因性又はここに記載される人工ヒトオステオカルシン断片のうちの1以上を含み得る。
【0073】
オステオカルシンの一次配列は種間で高次に保存されており、それは人体で最も豊富な10種のタンパク質の1つであり、骨のある脊椎動物の間の進化の全体を通じてその機能が保護されていることを示唆する。保存された特徴は、17、21及び24位の3個のGla残基及びCys23とCys29の間のジスルフィド架橋を含む。さらに、大部分の種は、9位にヒドロキシプロリンを含む。オステオカルシンのN末端は、分子の他の部分と比較して最も高い配列変異を示す。ヒト及びマウスのオステオカルシンが高度に保存されていることは、ヒトについての動物モデルとしてのマウスの関連性を、健康な状態及び疾患の状態の双方において明確に示し、ヒトにおける筋機能の喪失を処置するオステオカルシンの、ここに開示されたマウスモデルに由来する実験データに基づく治療的及び診断的な使用を立証する。
【0074】
本開示の例示的実施形態はまた、オステオカルシンの内因性又は人工ポリペプチド断片の使用を提供又は容易にし得る。断片は、オステオカルシンの全長の、天然に発生するアミノ酸配列(例えば、配列番号33)に由来し得る。断片はまた、成熟オステオカルシン(例えば、配列番号32)由来ともなり得る。本開示はまた、ここに記載されるオステオカルシンの変異体の断片も内包する。断片は、生物学的に活性である任意の長さのアミノ酸配列を含み得る。
【0075】
一例示的特定の断片は、成熟ヒトオステオカルシンの1~36位を含み得る断片となる。他の特定の例示的断片は、成熟ヒトオステオカルシンの20~49位を含む断片となり得る。他の例示的断片は、成熟ヒトオステオカルシンのPro13~Tyr76又はPro13~Asn26を含むように設計され得る。さらに、成熟ヒトオステオカルシンの23及び29位にシステイン残基を含むように提供され、それらの2個のシステインの間にジスルフィド結合を形成することが可能であり得る例示的断片が、有用である。
【0076】
例示的断片は、別個であり(他のアミノ酸又はポリペプチドに融合されていない)、又はより長いポリペプチド内のものとなり得る。さらに、いくつかの例示的断片は、単一のより長いポリペプチド内に含まれ得る。一実施形態では、宿主における発現のために設計された断片は、オステオカルシン断片のアミノ末端に融合された異種のプレ-及びプロ-ポリペプチド領域並びに/又は例示的断片のカルボキシル末端に融合された追加領域を有し得る。
【0077】
本開示の組成物及び方法における使用のために提供され得る本開示の例示的実施形態は、上述のオステオカルシンの変異体及び人工オステオカルシン断片である。「変異体」は、1以上のアミノ酸の置換、付加、欠失及び/又は挿入などのそれらのアミノ酸配列における修飾を含むが、依然として生物学的に活性であるオステオカルシンペプチドをいう。一部の例では、変異体の抗原性及び/又は免疫原性の特性は、変異体が由来する対応するペプチドに関して、実質的に変更されない。そのような修飾は、例えば、Adelman他、1983年、DNA 2:183によって教示されるようなオリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異生成などの標準的な突然変異生成技術を用いて、又は化学合成によって容易に導入され得る。例示的変異体及び断片は、相互に排他的な用語ではない。断片は、断片が依然として生物学的に活性であるように、1以上のアミノ酸の置換、付加、欠失及び/又は挿入を含み得るペプチドも含み得る。
【0078】
本開示の範囲内となる一例示的特定の種類の変異体は、成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応する位置のうちの1以上がグルタミン酸ではないアミノ酸によって占有された変異体である。特定の例示的実施形態では、グルタミン酸ではないアミノ酸は、アスパラギン酸でもない。そのような例示的変異体は、成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応する3つの位置のうちの少なくとも1つが、それらの位置の少なくとも1つがグルタミン酸によって占有されないことからカルボキシル化グルタミン酸とならないため、低カルボキシル化オステオカルシンのものとなり得る。
【0079】
他の例示的実施形態では、オステオカルシン変異体は、1以上のアミド骨格置換を含むアミノ酸配列を含む。
【0080】
完全に機能的な変異体は、通常、保存的な変異又は重要でない残基若しくは重要でない領域における変異のみを含む。機能的な変異体はまた、機能における変化がない、又はささいな変化をもたらす同様のアミノ酸の置換を含み得る。あるいは、そのような置換は、ある程度まで機能に正又は負に影響し得る。そのような機能的なオステオカルシン変異体の活性は、ここに記載されるものなどのアッセイを用いて決定され得る。
【0081】
例示的変異体は、天然に発生し、又は組換え手段若しくは化学合成によって作成されて低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンに有用及び新規の特徴を提供し得る。例えば、変異体オステオカルシンポリペプチドは、免疫原性の低下、血清半減期の増加、生物学的利用能の増加及び/又は効能の増加を有し得る。特定の例示的実施形態では、血清半減期は、成熟オステオカルシンの19、20、43及び44位の本来のArg残基のうちの1以上を他のアミノ酸又はアミノ酸類似体、例えばβ-ジメチルアルギニンで置換することによって増加する。そのような置換は、ここに記載されるオステオカルシンの本来のアミノ酸配列における他の変化と組み合わせられてもよい。
【0082】
本開示の薬学的組成物及び方法における使用のために提供され得る本開示の例示的実施形態は、上記のオステオカルシン及びオステオカルシン断片の誘導体でもある変異体である。誘導体化は、化合物を誘導体と呼ばれる同様の化学構造の生成物に変換する化学において用いられる技術である。一般に、化合物の特定の官能基が、誘導体化反応に関与し、化合物を異なる反応性、溶解性、沸点、融点、凝集状態、機能活性又は化学組成の誘導体に変換する。もたらされる新規の化学的性質は、誘導体化された化合物の定量化又は分離に用いられてもよいし、誘導体化された化合物を治療薬剤として最適化するように用いられてもよい。誘導体化のための公知の技術が、上述のオステオカルシン及びオステオカルシン断片に適用され得る。したがって、上記のオステオカルシン及びオステオカルシン断片の誘導体は、天然のアミノ酸とは異なるように何らかの形態で化学的に修飾されたアミノ酸を含むことになる。
【0083】
オステオカルシン模倣体も、提供される。「模倣体」は、天然に、又は非天然に発生するオステオカルシンポリペプチドと実質的に同一の構造的及び機能的特徴を有する合成化合物をいい、例えば、修飾された骨格、側鎖及び/又は塩基を有するポリペプチド-及びポリヌクレオチド-様ポリマーを含む。ペプチド模倣体は、鋳型ペプチドのものと類似する特性を有する非ペプチド薬物として製薬業界において一般的に用いられる。一般に、模倣体は、生物学的又は薬理学的な活性を有する範例のポリペプチドと構造的に類似する(すなわち、同一の形状を有する)が、1以上のポリペプチド結合が置換される。模倣体は、アミノ酸の合成非天然類似体から完全に構成され、又は部分的に天然のペプチドアミノ酸及び部分的に非天然のアミノ酸類似体のキメラ分子となり得る。模倣体はまた、そのような置換も模倣体の構造及び/又は活性を実質的に変化させない限り、任意の量の天然アミノ酸の保存的置換を組み込み得る。
【0084】
当業者によってオステオカルシンに適応され得る例として、Cho他、1993年、Science 261:1303-1305は、様々な側鎖で置換されたキラルアミノカーボネートモノマーからなる「非天然バイオポリマー」、そのようなポリマーのライブラリの合成及びモノクローナル抗体への結合親和性に対するスクリーニングを開示している。Simon他、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.89:9367-9371は、多様な側鎖を有するN置換グリシン(「ペプトイド」)からなるポリマーを開示している。Schumacher他、1996年、Science 271:1854-1857は、D-アミノ酸で合成されたタンパク質に対してLペプチドのファージライブラリをスクリーニングすることによって同定され、そして選択されたLペプチドをD-アミノ酸を用いて合成するD-ペプチドリガンドを開示している。Brody他、1999年、Mol.Diagn.4:381-8は、数百~数千のアプタマーの生成及びスクリーニングを記載している。
【0085】
本開示の例示的実施形態の範囲内の特定の種類のオステオカルシン変異体は、1以上の骨格アミドが異なる化学構造体によって置換され、又は1以上のアミノ酸がアミノ酸類似体によって置換されたオステオカルシン模倣体となり得る。特定の例示的実施形態では、オステオカルシン模倣体は、非カルボキシル化ヒトオステオカルシンのレトロエナンチオマーとなる。
【0086】
オステオカルシン並びにその断片及び変異体は、化学合成又は組換え方法によって任意選択的に生成され、ここに記載されるように、修飾されたオステオカルシン分子(すなわち、オステオカルシン断片又は変異体)として生成され得る。オステオカルシンポリペプチド及び/又はオステオカルシン変異体は、任意の従来の手段(Houghten、1985年、Proc.Natl.Acad.Sci.米国 82:5131-5135)によって生成され得る。複数のペプチドの同時合成は、米国特許第4,631,211号に記載され、また、用いられ得る。組み換えにより生成される場合、オステオカルシンは、融合タンパク質、例えば、GST-オステオカルシン融合タンパク質として生成され得る。
【0087】
本開示の例示的実施形態による方法において用いられ得る低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン分子は、他の生物由来のタンパク質、すなわち、ヒトオステオカルシンの相同分子種を含む、ヒトオステオカルシンに実質的に相同的なタンパク質を含む。特定の相同分子種の1つは、マウスオステオカルシンである。マウスオステオカルシン遺伝子1のcDNAは、配列番号35(agaacagaca agtcccacac agcagcttgg cccagaccta gcagacacca tgaggaccat ctttctgctc actctgctga ccctggctgc gctctgtctc tctgacctca cagatgccaa gcccagcggc cctgagtctg acaaagcctt catgtccaag caggagggca ataaggtagt gaacagactc cggcgctacc ttggagcctc agtccccagc ccagatcccc tggagcccac ccgggagcag tgtgagctta accctgcttg tgacgagcta tcagaccagt atggcttgaa gaccgcctac aaacgcatct atggtatcac tatttaggac ctgtgctgcc ctaaagccaa actctggcag ctcggctttg gctgctctcc gggacttgat cctccctgtc ctctctctct gccctgcaag tatggatgtc acagcagctc caaaataaag ttcagatgag gaagtgcaaa aaaaaaaaaa aaaa)であり、マウスオステオカルシン遺伝子2のcDNAは配列番号36(gaacagacaa gtcccacaca gcagcttggt gcacacctag cagacaccat gaggaccctc tctctgctca ctctgctggc cctggctgcg ctctgtctct ctgacctcac agatcccaag cccagcggcc ctgagtctga caaagccttc atgtccaagc aggagggcaa taaggtagtg aacagactcc ggcgctacct tggagcctca gtccccagcc cagatcccct ggagcccacc cgggagcagt gtgagcttaa ccctgcttgt gacgagctat cagaccagta tggcttgaag accgcctaca aacgcatcta cggtatcact atttaggacc tgtgctgccc taaagccaaa ctctggcagc tcggctttgg ctgctctccg ggacttgatc ctccctgtcc tctctctctg ccctgcaagt atggatgtca cagcagctcc aaaataaagt tcagatgagg)であり、マウスオステオカルシン遺伝子1及び遺伝子2のアミノ酸配列は配列番号37(MRTLSLLTLL ALAALCLSDL TDPKPSGPES DKAFMSKQEG NKVVNRLRRY LGASVPSPDP LEPTREQCEL NPACDELSDQ YGLKTAYKRI YGITI)である。
【0088】
ここで用いられるように、2つのタンパク質は、それらのアミノ酸配列が少なくとも70%相同的である場合、実質的に相同的であり得る。一般的に、相同性の程度は、少なくとも約75%、約80%、約85%であり、最も一般的には、少なくとも約90%、約95%、約97%、約98%又は約99%以上である。2つのアミノ酸配列又は核酸配列の間の「相同性」は、ここに開示されるアルゴリズムを用いて決定され得る。これらのアルゴリズムは、2つのアミノ酸配列又は核酸配列の間のパーセント同一性を決定するのにも用いられ得る。相同配列は、実質的に同一となるそれらの配列を含む。
【0089】
2つのアミノ酸配列又は2つの核酸配列のパーセント相同性又はパーセント同一性を決定するために、配列は最適な比較目的で整列される(例えば、最適な整列のために、第1及び第2のアミノ酸又は核酸配列の一方又は双方にギャップが導入されてもよく、比較目的で非相同配列が無視されてもよい)。好ましくは、比較目的で整列される参照配列の長さは、参照配列が比較される配列の長さの少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも60%、さらにより好ましくは少なくとも70%、80%又は90%以上である。そして、対応するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置のアミノ酸残基又はヌクレオチドが比較される。第1の配列における位置が、第2の配列において対応する位置と同じアミノ酸残基又はヌクレオチドによって占有されている場合、分子はその位置で同一である。2つの配列の間のパーセント同一性は、2つの配列の最適な整列のために導入される必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れ、配列によって共有される同一の位置の数の関数となる。
【0090】
本開示の例示的実施形態は、低い程度の同一性を有するが、オステオカルシンによって行われる同一の機能のうちの1以上を行うために十分な類似性を有するポリペプチドも内包し得る。類似性は、保存されたアミノ酸置換を考慮することによって決定される。そのような置換は、ポリペプチドにおける所与のアミノ酸を、同様の特徴の他のアミノ酸によって置換するものである。保存的な置換は、表現型的にサイレントとなりやすい。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントとなりやすいかに関するガイダンスは、Bowie他、1990年、Science 247:1306-1310に見ることができる。
【0091】
保存的な置換の例は、疎水性アミノ酸Ala、Val、Leu及びIleの間の相互置換、ヒドロキシル残基Ser及びThrの入れ換え、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基AsnとGlnの間の置換、塩基性残基Lys、His及びArgの交換、芳香族残基Phe、Trp及びTyrの間の置換、極性残基Gln及びAsnの交換並びに小さい残基Ala、Ser、Thr、Met及びGlyの交換である。
【0092】
2つのオステオカルシンポリペプチドの間の配列比較並びにパーセント同一性及びパーセント相同性の決定は、数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。例えば、Computational Molecular Biology、Lesk、A.M.ed.、Oxford University Press、ニューヨーク州、1988年、Biocomputing:Informatics and Genome Projects、Smith,D.W.ed.、Academic Press、ニューヨーク州、1993年、Computer Analysis of Sequence Data、パートl、Griffin、A.M.及びGriffin,HG.eds.、Humana Press、ニュージャージー州、1994年、Sequence Analysis in Molecular Biology、van Heinje,G.、Academic Press、1987年並びにSequence Analysis Primer,Gribskov,M.及びDevereux,J.eds.、M Stockton Press,ニューヨーク州、1991年参照。このような数学的アルゴリズムの非限定的な例は、Karlin他、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.米国、90:5873-5877に記載される。
【0093】
2つのオステオカルシンアミノ酸配列間のパーセント同一性又はパーセント相同性は、Needleman他、1970年、J.Mol.Biol.48:444-453のアルゴリズムを用いて決定され得る。
【0094】
本開示の例示的実施形態によると、実質的に相同的なオステオカルシンはまた、高度に厳しい条件、例えば、0.5MのNaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTAにおいて65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション及び68℃で0.1×SSC/0.1%のSDSでの洗浄(Ausubel他、eds.、1989年、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Green Publishing Associates株式会社及びJohn Wiley&sons株式会社、ニューヨーク州、p.2.10.3)下で、ヒトオステオカルシン核酸配列にハイブリダイゼーションし、機能的に同等の遺伝子産物をコードすることが可能な核酸配列であって、又は適度に厳しい条件、例えば、42℃で0.2×SSC/0.1%のSDSでの洗浄(Ausubel他、1989年、上記参照)などの厳しさの緩い条件下で、依然として生物学的に活性な低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンをコードする核酸配列によってコードされるポリペプチドでもあり得る。
【0095】
本開示の例示的実施形態による実質的に相同的なオステオカルシンはまた、厳しい条件、例えば、0.5MのNaHPO4、7%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mMのEDTAにおいて65℃でのフィルター結合DNAへのハイブリダイゼーション及び68℃で0.1×SSC/0.1%のSDSでの洗浄(Ausubel F.M.他、eds.、1989年、Current Protocols in Molecular Biology、Vol.I、Green Publishing Associates株式会社及びJohn Wiley&sons株式会社、ニューヨーク州、p.2.10.3)下で、ヒトオステオカルシン核酸配列に対して、少なくとも70~75%、通常は少なくとも約80~85%、最も通常には少なくとも約90~95%、97%、98%又は99%の同一性を有する配列にハイブリダイゼーションし、機能的に同等の遺伝子産物をコードすることが可能な核酸配列であって、又は適度に厳しい条件、例えば、42℃で0.2×SSC/0.1%のSDSでの洗浄(Ausubel他、1989年、上記参照)などの厳しさの緩い条件下で、依然として生物学的に活性な低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンをコードする核酸配列によってコードされるポリペプチドでもあり得る。
【0096】
ヒトオステオカルシンの生物学的に活性な断片又は変異体は、本来のヒトオステオカルシンとは異なる数のアミノ酸を含み得ることが理解されるはずである。したがって、成熟ヒトオステオカルシンの17、21及び24位に対応するアミノ酸残基の位置番号は、例示的断片又は変異体において異なり得る。当業者は、断片又は変異体のアミノ酸配列の成熟ヒトオステオカルシンのアミノ酸配列との比較により、対応するそのような位置を容易に認識することになる。
【0097】
全長オステオカルシン、成熟オステオカルシン又はオステオカルシン断片若しくは人工オステオカルシンが無関係のタンパク質又はポリペプチドに融合されている融合タンパク質に対応するペプチドも、本開示の範囲内となり、ここに開示されるオステオカルシンヌクレオチド及びアミノ酸配列に基づいて設計され得る。そのような融合タンパク質は、マーカー機能を提供する酵素、蛍光タンパク質又は発光タンパク質への融合体を含む。本開示の特定の例示的実施形態では、融合タンパク質は、体内の特定の標的細胞又は位置にオステオカルシンを標的とすることが可能なポリペプチドへの融合を含み得る。例えば、オステオカルシンポリペプチド配列は、リガンド分子に融合されてもよく、当該リガンド分子は上記リガンドに対する受容体を発現する細胞に融合タンパク質を標的とすることが可能である。特定の例示的実施形態では、オステオカルシンポリペプチド配列は、哺乳動物の脳における特定のニューロンに融合タンパク質を標的とすることを可能とするリガンドに融合され得る。
【0098】
オステオカルシンはまた、薬物スクリーニング又は組換えタンパク質の作製における使用のためのキメラタンパク質の一部として作製され得る。これらのキメラタンパク質は、オステオカルシンと実質的に相同でないアミノ酸配列を有する異種ペプチドに結合されたオステオカルシンペプチド配列を含む。異種ペプチドは、オステオカルシンのN末端若しくはC末端に融合されてもよいし、内部に配置されてもよい。一実施形態では、融合タンパクは、オステオカルシンの機能に影響しない。例えば、融合タンパク質は、オステオカルシン配列がGST配列のN又はC末端に融合されたGST-融合タンパク質となり得る。他の種類の融合タンパク質は、限定されることなく、酵素融合タンパク質、例えばベータガラクトシダーゼ融合体、酵母ツーハイブリッドGAL-4融合体、ポリHis融合体及びIg融合体を含む。そのような融合タンパク質、特にポリHis融合体は、組換えオステオカルシンの精製を容易にし得る。特定の宿主細胞(例えば、哺乳類宿主細胞)では、タンパク質の発現及び/又は分泌は、異種シグナル配列を用いることによって増加され得る。したがって、融合タンパク質は、そのN末端に異種シグナル配列を含み得る。
【0099】
当業者は、オステオカルシンとの使用のために公知の技術をどのように適用するかを理解することになる。例えば、欧州特許公開第0464533号は、免疫グロブリン定常領域(Fc領域)の種々の部分を含む融合タンパク質を記載している。Fc領域は、治療及び診断において有用であり、したがって、例えば、改善された薬力学的な特性をもたらす(例えば、欧州特許公開第0232262号参照)。創薬では、例えば、ヒトタンパク質は、アンタゴニストを同定するハイスループットスクリーニングアッセイの目的で、Fc領域と融合されている(例えば、Bennett他、1995年、J.Mol.Recog.8:52-58及びJohanson他、1995年、J.Biol.Chem.270:9459-9471参照)。したがって、本開示の種々の実施形態はまた、オステオカルシンポリペプチド及び種々のサブクラスの免疫グロブリン(例えば、IgG、IgM、IgA、IgE、IgB)の重鎖又は軽鎖の定常領域の種々の部分を含む可溶性融合タンパク質を利用する。特定の免疫グロブリンは、ヒトIgG、特に融合がヒンジ領域で起こるIgG1の重鎖の定常部分となる。一部の使用について、融合タンパク質がその意図した目的で用いられた後に、Fc領域を除去することが望ましい。特定の例示的実施形態では、Fc部分は、切断配列による簡単な態様で除去されてもよく、それはまた組み込まれ、例えば第Xa因子で切断され得る。
【0100】
キメラ又は融合タンパク質は、標準的な組換えDNA技術によって生成され得る。例えば、異なるタンパク質配列をコードするDNA断片は、従来の技術によりインフレームで相互に連結され得る。他の例示的実施形態では、融合遺伝子は、自動化DNA合成機を含む従来の技術によって合成され得る。あるいは、遺伝子断片のPCR増幅は、続けてアニーリング及び再増幅されてキメラ遺伝子配列を生成し得る2つの連続した遺伝子断片の間に相補的なオーバーハングを生じさせるアンカープライマーを用いて実行され得る(Ausubel他、1992年、Current Protocols in Molecular Biology参照)。さらに、融合部分(例えば、GSTタンパク質)をすでにコードする多数の発現ベクターが、購入可能である。オステオカルシンをコードする核酸は、融合部分がオステオカルシンにインフレームで結合されるように、そのような発現ベクターにクローニングされ得る。
【0101】
1以上の機能的部位が異なる異性体又は他の種からの他のオステオカルシン分子に由来するキメラオステオカルシンタンパク質が生成され得る。部位は、哺乳動物のゲノムにおいて発生するがまだ発見又は特徴付けされていないオステオカルシン関連タンパク質にも由来し得る。
【0102】
ポリペプチドは、通常、20個の天然に発生するアミノ酸をいう20個のアミノ酸以外のアミノ酸を含むことが多い。さらに、末端アミノ酸を含む多数のアミノ酸は、プロセッシング及び他の翻訳後修飾などの天然の処理によって、又は当技術分野で周知の化学修飾技術によって修飾され得る。
【0103】
したがって、本開示の例示的実施形態による方法において有用なオステオカルシンポリペプチドは、遺伝子コードによってコードされたものではない、置換された非天然発生のアミノ酸残基を含む誘導体も内包し、その誘導体では、置換基が含まれ、成熟ポリペプチドがポリペプチドの半減期を増加する化合物(例えば、ポリエチレングリコール)などの他の化合物と融合され、又は付加的なアミノ酸が、リーダー若しくは分泌配列又はオステオカルシンポリペプチドの精製のための配列若しくはプロ-タンパク質配列など、オステオカルシンポリペプチドに融合される。
【0104】
低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、医薬品化学において公知の方法により修飾されて、その安定性、半減期、取込み又は有効性を増加し得る。公知の修飾は、限定されることなく、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋結合、環化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセッシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質へのアミノ酸の転移RNA媒介付加及びユビキチン化を含む。
【0105】
本開示の特定の例示的実施形態では、血清半減期を増加する手段として、残基Arg43でのタンパク質分解に対する感受性を低減するようにオステオカルシンに修飾が行われ得る。そのような修飾は、例えば、レトロエナンチオ異性体、D-アミノ酸又は他のアミノ酸類似体の使用を含む。
【0106】
N末端アミノ基のアシル化は、ヒドロオロチン酸などの親水性化合物を用いて、又はメチルイソシアネート若しくはイソプロピルイソシアネートなどの適したイソシアネートとの反応によって達成されて、N末端に尿素部分を形成し得る。他の薬剤も、N末端に結合され、オステオカルシン誘導体の作用の持続時間を増加し得る。
【0107】
還元的アミノ化は、アンモニアがアルデヒド又はケトンと縮合して、続けてアミンに還元されるイミンを形成する処理である。還元的アミノ化は、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン及びその断片又は変異体をポリエチレングリコール(PEG)に接合する有用な方法である。PEGの低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン並びにその断片及び変異体への共有結合は、増加した水溶性、変更された生物学的利用能、薬物動態、免疫原性の特性及び生物学的活性を有する複合体をもたらし得る。例えば、Bentley他、1998年、J.Pharm.Sci.87:1446-1449参照。
【0108】
グリコシル化、脂質結合、硫酸化、ヒドロキシル化及びADP-リボシル化などの、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン並びにその断片及び変異体に適用され得るいくつかの特に一般的な修飾は、Proteins-Structure and Molecular Properties、第2版、T.E.Creighton、W.H.Freeman and Company、ニューヨーク州(1993)などの最も基本的なテキストに記載されている。この主題に対して、Wold,F.による、Posttranslational Covalent Modification of Proteins、B.C.Johnson,Ed.,Academic Press,ニューヨーク州、1-12(1983)、Seifter他、1990年、Meth.Enzymol.182:626-646及びRattan他、1992年、Ann.New York Acad.Sci.663:48-62などの多数の詳細なレビューが入手可能である。
【0109】
また、周知であるように、ポリペプチドは常に完全に線状ではない。例えば、ポリペプチドは、ユビキチン化の結果として分枝されてもよく、それらは、分枝の有無にかかわらず、一般に、天然のプロセッシングイベント及び天然には発生しない人間の操作によってもたらされるイベントを含む翻訳後イベントの結果として、環状であってもよい。環状、分枝状及び分枝状の環状ポリペプチドは、翻訳的ではない天然の処理によって、及び合成方法によって合成され得る。そのような非線状ポリペプチドを調製する公知の技術は、当業者によって適合されて、非線状オステオカルシンポリペプチドを生成し得る。
【0110】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖及びアミノ若しくはカルボキシル末端を含む、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン並びにその断片及び変異体におけるいずれの場所にも発生し得る。ポリペプチドにおけるアミノ基若しくはカルボキシル基又はその両方の共有結合修飾による遮断は、天然発生及び合成ポリペプチドにおいて一般的であり、本開示において用いられる低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン又はその断片及び変異体に適用され得る。例えば、大腸菌において作製されるポリペプチドのアミノ末端残基は、タンパク質分解プロセッシングの前に、ほぼ常にN-ホルミルメチオニンとなる。したがって、アミノ末端残基としてのN-ホルミルメチオニンを有する低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン並びにその断片及び変異体の使用は、本開示の範囲内となる。
【0111】
本開示の例示的実施形態の範囲内に入る種々のタンパク質修飾の簡単な説明を以下の表に記載する。
【表2】
【0112】
本開示の例示的実施形態はまた、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体のカルボキシル酸機能部を、低級アルコール、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどでエステル化することによって生成され得る、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン、人工オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体のプロドラッグの使用も内包する。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン又はエステルではないその誘導体若しくは変異体のプロドラッグの使用も、検討される。例えば、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体の、薬学的に許容可能なカーボネート、チオカーボネート、N-アシル誘導体、N-アシルオキシアルキル誘導体、第3級アミンの第4級誘導体、N-マンニッヒ塩基、シッフ塩基、アミノ酸複合体、リン酸エステル、金属塩及びスルホン酸エステルも、検討される。いくつかの例示的実施形態では、プロドラッグは、生体加水分解性部分(例えば、生体加水分解性アミド、生体加水分解性カルバメート、生体加水分解性カーボネート、生体加水分解性エステル、生体加水分解性リン酸塩又は生体加水分解性ウレイド類似体)を含む。ここに開示される低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体のプロドラッグの調製についてのガイダンスは、Design of Prodrugs、Bundgaard,A.Ed.、Elsevier、1985年、Design and Application of Prodrugs,A Textbook of Drug Design and Development、Krosgaard-Larsen及びH.Bundgaard、Ed.、1991年、第5章、113-191ページ並びにBundgaard,H.、Advanced Drug Delivery Review、1992年、8、1-38ページなどの刊行物に見ることができる。
【0113】
本開示の例示的実施形態による方法を実施するために、例えば、オステオカルシンをコードするcDNA配列を組換えで発現させることによって、内因性オステオカルシン又は人工オステオカルシン変異体を組換えで発現させることが望ましいこともある。ヒトオステオカルシンのcDNA配列及び推定アミノ酸配列は、配列番号1及び配列番号2に示される。オステオカルシンヌクレオチド配列は、当業者に公知の様々な異なる方法を用いて単離され得る。例えば、オステオカルシンを発現することが知られている組織からのRNAを用いて構築されたcDNAライブラリは、標識オステオカルシンプローブを用いてスクリーニングされ得る。あるいは、ゲノムライブラリは、オステオカルシンをコードする核酸分子を派生させるようにスクリーニングされてもよい。さらに、オステオカルシンの核酸配列は、既知のオステオカルシンのヌクレオチド配列に基づいて設計された2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって派生されてもよい。反応のための鋳型は、オステオカルシンを発現することが知られている細胞株又は組織から調製されたmRNAの逆転写によって得られるcDNAであり得る。
【0114】
オステオカルシンポリペプチド及びペプチドは化学的に合成され得るが(例えば、Creighton、1983年、Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman&Co.、ニューヨーク州参照)、オステオカルシン由来の長いポリペプチド及び全長オステオカルシン自体は、核酸を発現する当技術分野で周知の技術を用いる組換えDNA技術によって有利に生成され得る。そのような方法は、オステオカルシンヌクレオチド配列並びに適切な転写及び翻訳制御シグナルを含む発現ベクターを構築するのに用いられ得る。これらの方法は、例えば、in vitro組換えDNA技術、合成技術及びin vivo遺伝子組換えを含む。例えば、上記Ausubel他、1989年に記載された技術参照。
【0115】
様々な宿主発現ベクター系が、オステオカルシンヌクレオチド配列を発現するのに利用され得る。特定の例示的実施形態では、オステオカルシンペプチド又はポリペプチドは分泌され、培養培地から回収され得る。
【0116】
適切な発現系は、オステオカルシンタンパク質の正しい修飾、プロセッシング及び細胞内局在化が発生することを保証するように選択され得る。この目的で、細菌宿主細胞は、そのような細胞がオステオカルシンをカルボキシル化することができないので、オステオカルシンの発現に有用である。
【0117】
単離されたオステオカルシンは、それを天然に発現する細胞、例えば骨芽細胞から精製され、又は天然にオステオカルシンを発現するがオステオカルシンを過剰生成するように組換え変性された細胞から精製され、若しくは天然ではオステオカルシンを発現しないがオステオカルシンを発現するように組換え変性された細胞から精製され得る。特定の例示的実施形態では、組換え細胞は、内因性オステオカルシン遺伝子の発現を活性化するように操作されている。例えば、国際公開第99/15650号及び00/49162号は、遺伝子発現のランダム活性化(RAGE)と呼ばれる、内因性遺伝子を発現する方法を記載しており、それは内因性オステオカルシンの発現を活性化又は増加するように用いられ得る。RAGE方法論は、下流の内因性遺伝子の発現を活性化する調節配列の非相同組換えを伴う。あるいは、国際公開第94/12650号、95/31560号及び96/29411号並びに米国特許第5,733,761号及び6,270,985号は、標的配列、調節配列、エキソン及びスプライス供与体部位を含むDNA構築物の相同組換えを伴う、内因性遺伝子の発現を増加する方法を記載している。相同組換えにより、下流の内因性遺伝子が発現される。前述の特許及び特許刊行物に記載された内因性遺伝子を発現する方法は、ここに明示的に参照によってここに取り込まれる。
【0118】
治療薬剤が内因性オステオカルシン、ここに記載された人工オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体である本開示の方法の特定の例示的実施形態では、内因性オステオカルシン、ここに記載された人工オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体は、約0.5μg/kg/日~約100mg/kg/日、約1μg/kg/日~約90mg/kg/日、約5μg/kg/日~約85mg/kg/日、約10μg/kg/日~約80mg/kg/日、約20μg/kg/日~約75mg/kg/日、約50μg/kg/日~約70mg/kg/日、約150μg/kg/日~約65mg/kg/日、約250μg/kg/日~約50mg/kg/日、約500μg/kg/日~約50mg/kg/日、約1mg/kg/日~約50mg/kg/日、約5mg/kg/日~約40mg/kg/日、約10mg/kg/日~約35mg/kg/日、約15mg/kg/日~約30mg/kg/日、約5mg/kg/日~約16mg/kg/日又は約5mg/kg/日~約15mg/kg/日の投与量範囲において患者に投与される。
【0119】
治療薬剤が内因性オステオカルシン、ここに記載された人工オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体である本開示の方法の特定の例示的実施形態では、内因性オステオカルシン、ここに記載された人工オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体は、約0.5μg/kg/日~約100μg/kg/日、約1μg/kg/日~約80μg/kg/日、約3μg/kg/日~約50μg/kg/日又は約3μg/kg/日~約30μg/kg/日の投与量範囲において患者に投与される。
【0120】
治療薬剤が内因性オステオカルシン、ここに記載された人工オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体である本開示の方法の特定の例示的実施形態では、内因性オステオカルシン、ここに記載された人工オステオカルシン又はその誘導体若しくは変異体は、約0.5ng/kg/日~約100ng/kg/日、約1ng/kg/日~約80ng/kg/日、約3ng/kg/日~約50ng/kg/日又は約3ng/kg/日~約30ng/kg/日の投与量範囲において患者に投与される。
【0121】
本開示の例示的実施形態は、薬学的組成物に処方されて被検体に投与される、ここに記載されたポリペプチド、タンパク質、核酸、小分子及び他の治療薬剤の使用を内包する。治療薬剤(「活性化合物」ともいう)は、被検体、例えばヒトへの投与に適した薬学的組成物に組み込まれ得る。そのような組成物は、通常、治療薬剤及び薬学的に許容可能な担体を含む。好ましくは、そのような組成物は、ヒトに投与される場合、非発熱性である。
【0122】
ここで用いられるように、言語「薬学的に許容可能な担体」は、薬学的投与に適合可能なありとあらゆる溶媒、結合剤、希釈剤、崩壊剤、潤滑剤、分散媒体、コーティング物質、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図される。そのような媒体及び薬剤の薬学的に活性な物質に対する使用は、当技術分野において周知である。任意の従来の媒体又は薬剤が活性化合物と適合可能となる限り、そのような媒体は本開示の組成物において用いられ得る。補足的な活性化合物又は治療薬剤も、組成物に組み込まれ得る。本開示の例示的実施形態による薬学的組成物は、その意図された投与経路に適合可能となるように処方され得る。投与経路の例は、非経口、例えば、静脈内、皮内、鼻腔内、皮下、経口、吸入、経皮(局所)、経粘膜及び直腸投与を含む。
【0123】
用語「投与する」は、その最も広い意味で用いられ、本開示の組成物を被検体に導入する任意の方法を含む。これは、被検体に外因的に導入されたポリヌクレオチドの転写又は翻訳によって、in vivoでポリペプチド又はポリヌクレオチドを生成することを含む。したがって、被検体において外因性組成物から生成されたポリペプチド又は核酸は、用語「投与する」に内包される。
【0124】
非経口、皮内又は皮下適用に用いられる溶液又は懸濁物は、以下の成分、注入用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又は他の合成溶媒などの滅菌希釈剤、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗菌剤、アスコルビン酸又は重亜硫酸ナトリウムなどの抗酸化剤、エチレンジアミン4酢酸などのキレート剤、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤及び塩化ナトリウム又はデキストロースなどの張性を調整する薬剤を含み得る。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整され得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ又はガラス若しくはプラスチック製の複数回用量バイアルに封入され得る。
【0125】
注入使用に適した薬学的組成物は、滅菌水溶液(治療薬が水溶性である場合)又は滅菌注入用溶液又は分散物質の即時調製のための分散物質及び滅菌粉末を含む。静脈内投与について、適した担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor EL(登録商標)(BASF社、パーシッパニー、ニュージャージー州)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。全ての場合において、組成物は滅菌でなければならず、容易な注射針通過性が存在する程度に流動性を有する必要がある。製造及び保管の条件下で安定である必要があり、細菌及び菌類などの微生物の汚染作用から保護されている必要がある。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)及びそれらの適した混合物を含む溶媒又は分散媒体となり得る。妥当な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング物質の使用によって、分散物質の場合には必要とされる粒子サイズの維持によって、及び界面活性物質の使用によって維持され得る。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成され得る。多くの場合、組成物において、等張剤、例えば、糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注入用組成物の持続的な吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを組成物に含むことによってもたらされ得る。
【0126】
滅菌注入用溶液は、上記に列挙された原料の1つ又は組合せとともに、適切な溶媒において必要量で活性化合物を組み込むことによって調製されてもよく、必要に応じて、続けてろ過滅菌される。一般に、分散物質は、活性化合物を、基本的な分散媒体及び上記に列挙されたものからの必要な他の原料を含む滅菌ビヒクルに組み込むことによって調製される。滅菌注入用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好適な調製の方法は、以前に滅菌ろ過されたその溶液から活性原料及び任意の追加の所望の原料の粉末を得る真空乾燥及び凍結乾燥である。
【0127】
経口組成物は、一般に、不活性希釈剤又は食用担体を含む。それらはゼラチンカプセルに封入され、又は錠剤に圧縮され得る。処置される特定の状態に応じて、哺乳動物における筋機能の喪失の処置に対する本開示の薬学的組成物が、処方され、全身的又は局所的に投与され得る。処方及び投与のための技術は、「Remington:The Science and Practice of Pharmacy」(第20版、Gennaro(ed.)並びにGennaro、Lippincott、Williams及びWilkins、2000年)に見ることができる。経口投与について、薬剤は、腸溶性形態に含まれて胃を通過し、又は公知の方法によってさらにコーティング若しくは混合されて消化管の特定の領域で放出され得る。経口治療的投与の目的で、活性化合物は、賦形剤と組み込まれ、錠剤、トローチ又はカプセルの形態において用いられ得る。口腔組成物はまた、うがい薬としての使用のために流体担体を用いて調製されてもよく、流体担体における化合物は経口的に適用され、すすがれ、吐き出され、又は飲み込まれる。薬学的に適合可能な結合薬剤及び/又はアジュバント材料は、組成物の一部として含まれ得る。錠剤、丸薬、カプセル、トローチなどは、次の原料又は同様の性質の化合物のいずれか、微結晶性セルロース、トラガントガム若しくはゼラチンなどの結合剤、デンプン若しくはラクトースなどの賦形剤、アルギン酸、PRIMOGEL(登録商標)若しくはコーンスターチなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム若しくはSTEROTES(登録商標)などの潤滑剤、コロイド状二酸化ケイ素などの滑剤、スクロース若しくはサッカリンなどの甘味料又はペパーミント、サリチル酸メチル若しくはオレンジ風味などの香味料を含み得る。
【0128】
吸入による投与について、化合物は、適した推進剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器若しくはディスペンサー又はネブライザーから、エアロゾルスプレーの形態で送達され得る。
【0129】
全身投与は、経粘膜的又は経皮的手段によるものでもあり得る。経粘膜又は経皮投与について、透過されるバリアに適した浸透剤が、処方において用いられる。そのような浸透剤は、一般に、当技術分野において公知であり、例えば、経粘膜投与に対して、界面活性剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、点鼻スプレー又は坐剤の使用を通じて達成され得る。経皮投与について、活性化合物は、当技術分野で一般的に公知であるように、軟膏、膏薬、ゲル又はクリームに処方される。
【0130】
適切な場合、化合物は、(例えば、ココアバター及び他のグリセリドなどの従来の坐剤基剤を有する)坐剤又は直腸送達のための停留浣腸の形態で調製され得る。
【0131】
一実施形態では、活性化合物は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む放出制御処方などの、身体からの急速な排出に対して化合物を保護する担体とともに調製される。エチレンビニルアセテート、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性の生体適合性ポリマーが、使用され得る。このような製剤の調製の方法は、当業者に明らかとなる。材料も、Alza Corporation及びNova Pharmaceuticals株式会社から商業的に得られ得る。(例えば、モノクローナル抗体で特定の細胞を標的とするリポソームを含む)リポソーム懸濁体も、薬学的に許容可能な担体として用いられ得る。これらは、例えば、米国特許第4,522,811号に記載されているように、当業者に公知の方法により調製され得る。
【0132】
経口又は非経口組成物を、容易な投与及び均一な投与量のための単位投与形態に処方することが特に有利である。ここで用いられるように、「単位投与形態」は、処置される被検体に対する単位投与量として適した物理的に個別の単位をいい、各単位は、必要とされる薬学的担体と関連して所望の治療効果を生成するように計算された所定量の活性化合物を含む。本開示の単位投与形態についての仕様は、活性化合物の固有の特徴及び達成されるべき特定の治療効果、並びに個体の処置に対するそのような活性化合物を調合する技術に固有の制限によって決定され、かつ、それに直接的に依存する。
【0133】
ここに記載するように、薬剤は、長期間にわたってポンプによって連続的に又は日中に頻繁に投与され得る。特定の例示的実施形態では、薬剤は、約0.3~100ng/時間、好ましくは約1~75ng/時間、より好ましくは約5~50ng/時間、さらにより好ましくは約10~30ng/時間の速度で投与され得る。薬剤は、約0.1~100μg/時間、好ましくは約1~75μg/時間、より好ましくは約5~50μg/時間、さらにより好ましくは約10~30μg/時間の速度で投与されてもよい。処置に使用される抗体、タンパク質又はポリペプチドの有効投与量は特定の処置の過程にわたって増減し得ることも理解されるはずである。投与量の変更は、生物学的サンプル、好ましくは血液又は血清における活性化合物のレベルをモニタリングすることから明らかとなり得る。
【0134】
本開示の例示的実施形態では、薬剤は、所望時間にわたって所望の用量の薬剤を点滴する浸透圧ポンプを用いた皮下の長期的な自動化薬剤送達によって送達可能である。インスリンポンプは広く入手可能であり、長期間にわたってインスリンを自動的に送達するのに糖尿病患者によって使用される。そのようなインスリンポンプは、本開示の方法における使用のために薬剤を送達するように適合可能である。薬剤の送達速度は、個々の変化する要件(例えば、基礎率及びボーラス用量)に対応するように広範囲にわたって直ちに調整可能である。新たなポンプが周期的な投与態様を可能とし、すなわち、液体が、連続フロー的にではなく、少量の固定体積の周期的な別個の用量において送達される。デバイスに対する全体的な液体送達速度は、投与周期を制御及び調整することによって制御及び調整される。ポンプは、米国特許第6,560,471号、発明の名称「Analyte Monitoring Device and Methods of Use」に記載されるシステムのような連続モニタリングデバイス及び遠隔ユニットに結合され得る。このような構成では、連続血液モニタリングデバイスを制御するハンドヘルド遠隔ユニットが、血液モニタリングユニット及び本開示の方法での使用のための治療薬剤を送達する流体送達デバイスの双方と無線通信してそれを制御し得る。
【0135】
本開示の特定の例示的実施形態では、血清活性化合物レベルに対する治療薬剤の効果をモニタリングすることによって各患者に対して適切な投与量を決定するのにルーチン的実験が用いられてもよい。薬剤は、1日あたり1回又は複数回投与され得る。血清活性化合物レベルは、血清活性化合物レベルを上昇させ又は血清活性化合物レベルを長期間にわたって所望のレベルとするように、治療前及び治療中にモニタリングされて投与する治療薬剤の適量を決定してもよい。特定の例示的実施形態では、患者は、治療薬剤での処置を施す前に、彼の血清活性化合物レベルが正常レベルよりも大幅に低いか否か(約25%以下であるか否か)を判定するようにテストされる。投与の頻度は、1日あたり単回用量から1日あたり複数回用量まで変動し得る。投与の特定の経路は経口、静脈内及び腹腔内を含むが、他の形態の投与も同様に選択され得る。
【0136】
タンパク質、ポリペプチド、小分子、抗体又は核酸の「治療的有効量」は、所望の治療結果を達成する量である。例えば、治療薬剤が哺乳動物における筋機能の喪失を処置するのに投与される場合、治療的有効量は、筋消耗又は肺障害に関連する1以上の症状を緩和する一方で、同時に代謝障害、男性生殖障害又は認知障害に関連する1以上の症状を緩和する量である。
【0137】
本開示における使用のためのタンパク質、ポリペプチド、小分子又は核酸の治療的有効量は、通常は変動するものであり、通常は被検体において約1ナノグラム/ミリリットルから約10マイクログラム/ミリリットルの血清治療薬剤レベルを達成するのに充分な量、又は被検体において約1ナノグラム/ミリリットルから約7マイクログラム/ミリリットルの血清治療薬剤レベルを達成するのに充分な量であり得る。他の特定の血清治療薬剤レベルは、約0.1ナノグラム/ミリリットル~約3マイクログラム/ミリリットル、約0.5ナノグラム/ミリリットル~約1マイクログラム/ミリリットル、約1ナノグラム/ミリリットル~約750ナノグラム/ミリリットル、約5ナノグラム/ミリリットル~約500ナノグラム/ミリリットル、及び約5ナノグラム/ミリリットル~約100ナノグラム/ミリリットルを含む。
【0138】
本開示の方法において患者に投与されるものとしてここに開示される例示的治療薬剤の例示的量はルーチン的な方法を介して当業者によって決定可能であり、約1mg/kg/日~約1000mg/kg/日、約5mg/kg/日~約750mg/kg/日、約10mg/kg/日~約500mg/kg/日、約25mg/kg/日~約250mg/kg/日、約50mg/kg/日~約100mg/kg/日、又は他適切な量の範囲であり得る。
【0139】
本開示の方法において患者に投与されるものとしてここに開示される例示的治療薬剤の例示的量は、約1μg/kg/日~約1000μg/kg/日、約5μg/kg/日~約750μg/kg/日、約10μg/kg/日~約500μg/kg/日、約25μg/kg/日~約250μg/kg/日、又は約50μg/kg/日~約100μg/kg/日の範囲であってもよい。
【0140】
本開示の方法において患者に投与されるものとしてここに開示される例示的治療薬剤の例示的量は、約1ng/kg/日~約1000ng/kg/日、約5ng/kg/日~約750ng/kg/日、約10ng/kg/日~約500ng/kg/日、約25ng/kg/日~約250ng/kg/日、又は約50ng/kg/日~約100ng/kg/日の範囲であってもよい。
【0141】
熟練者であれば、これに限定されないが、被検体の状態の深刻度、以前の処置、全体的健康状態及び/又は年齢、並びに存在する他の障害又は疾患を含む特定の要因が、被検体を有効に処置するのに必要な投与量に影響し得ることを理解するはずである。
【0142】
治療的有効量のタンパク質、ポリペプチド、ヌクレオチド又は抗体による被検体の処置は、単一の処置を含み、又は好ましくは、一連の処置を含み得る。
【0143】
さらに、本開示の例示的実施形態による、被検体における筋機能の喪失を予防又は処置するための例示的方法は、薬剤がLiver Factor1の発現又は活性を増加させるLiver Factor1シグナル伝達経路を調節する薬剤を含む薬学的組成物を被検体に投与するステップを含み得る。
【0144】
運動は、進化上で保存された生存機能である。運動の系統的制御は、依然不明である。運動能力は、股関節骨折、癌、肝硬変、クッシング病、ミトコンドリア病、腎不全、糖尿病及び加齢において衰退する。
【0145】
骨由来のホルモンであるオステオカルシンは、Gprc6aを介して筋線維にシグナル伝達する。オステオカルシンレベルは、マウス及びヒトにおいて運動後に急上昇する。オステオカルシンは、栄養の取込み及び異化を促進する。オステオカルシンは、運動時にIL6の放出に必要である。オステオカルシンは、正常な運動能力に必要かつ充分である。Cell Metabolism、2016。
【0146】
本開示の特定の例示的実施形態では、薬学的組成物は、約0.5mg~約5g、約1mg~約1g、約5mg~約750mg、約10mg~約500mg、約20mg~約250mg、又は約25mg~約200mgの薬剤を含み得る。本開示の特定の例示的実施形態では、薬学的組成物は、放出制御調製物に処方される薬剤を含み得る。本開示の特定の例示的実施形態では、薬学的組成物は、人体内でのその半減期を延長するように化学的に変性される薬剤を含み得る。
【0147】
薬剤の適切な用量は通常の医師、獣医又は研究者の知識内の多数の要因に依存することが理解され得る。薬剤の用量は、例えば、被検体又は処置されているサンプルのアイデンティティ、サイズ及び状態に応じて、さらに組成物が投与される経路、及び施術者が薬剤に望む効果に応じて、変わる。またさらに、薬剤の適切な用量は、調節される発現又は活性に関して薬剤の効能に応じることが理解可能である。さらに、いずれか特定の被検体に対する具体的な用量レベルは、採用される具体的化合物の活性、被検体の年齢、体重、全体的な健康状態及び食生活、投与の時間、投与の経路、排出率、他の薬がその患者に投与されているか否か、並びに調節される発現又は活性の程度を含む多様な要因に応じることが理解される。
【0148】
本開示の方法において有用な薬学的組成物の投与の適切な経路は、経口、腸内、非経口、経粘膜、経皮、筋肉内、皮下、経皮、直腸、骨髄内、髄腔内、静脈内、心室内、心房内、大動脈内、動脈内又は腹腔内投与を含み得る。本開示の例示的実施形態による例示的方法に有用な薬学的組成物は、これに限定されないが、カテーテル、バルーン、移植可能デバイス、生分解性インプラント、プロテーゼ、グラフト、縫合糸、パッチ、シャント又はステントなどの医療デバイスによって被検体に投与可能である。ある特定の例示的実施形態では、薬剤は、標的領域への局所投与のためにステント上にコーティングされてもよい。この状況では、例えば、活性化合物の徐放調製が採用され得る。
【0149】
本開示の例示的実施形態による例示的化合物は、取込み、分配及び/又は吸収を支援するために、例えば、リポソーム、受容体標的化分子、経口、直腸、局所又はその他の製剤として、他の分子、分子構造体又は化合物の混合物に混和、カプセル化、接合又は結合されてもよい。取込み、分配及び/又は吸収を支援する製剤の調製を教示し、本開示を実施するのに有用な技術について当業者によって参考とされ得る代表的な米国特許は、限定されることなく、例えば、米国特許第5,108,921号、5,354,844号、5,416,016号、5,459,127号、5,521,291号、5,543,158号、5,547,932号、5,583,020号、5,591,721号、4,426,330号、4,534,899号、5,013,556号、5,108,921号、5,213,804号、5,227,170号、5,264,221号、5,356,633号、5,395,619号、5,416,016号、5,417,978号、5,462,854号、5,469,854号、5,512,295号、5,527,528号、5,534,259号、5,543,152号、5,556,948号、5,580,575号及び5,595,756号を含み、その各々の開示が参照によりここに取り込まれる。
【0150】
非カルボキシル化オステオカルシンは血液脳関門を通過するが、オステオカルシンの特定の誘導体、変異体又は修飾形態は通過しない場合がある。血液脳関門を通過しない形態のオステオカルシンを利用する本開示の実施形態では、物質を血液脳関門にわたって輸送するための当技術で周知の方法を活用することができる。例えば、米国特許出願公開第2013/0034590号又は米国特許出願公開第2013/0034572号に開示される方法が使用され得る。ヒトインスリン又はトランスフェリン受容体が、これらの受容体をモノクローナル抗体-修飾オステオカルシン複合体によって標的とすることによって利用され得る(例えば、Pardridge、2007年、Pharm.Res.24:1733-1744、Beduneau他、2008年、J.Control.Release 126:44-49参照)。修飾オステオカルシンを含有する界面活性剤コーティングされたポリ(ブチルシアノアクリレート)ナノ粒子が使用されてもよい(Kreuter他、2003年、Pharm.Res.20:409-416)。あるいは、修飾オステオカルシンを含有するペグ化ナノ粒子に接合されたカチオン性アルブミンなどのカチオン性担体が、修飾オステオカルシンを脳に送達するのに使用されてもよい(例えば、Lu他、2006年、Cancer Res.66:11878-11887参照)。
【0151】
本開示のさらに他の例示的態様では、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンが、薬学的に許容可能な賦形剤とともに薬学的組成物として投与される。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンについての例示的薬学的組成物は、溶液としての注射剤、又は注入用の自己硬化性若しくは自己ゲル化性ミネラルポリマーハイブリッドとしての注射剤を含む。低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンは、リン酸カルシウムの多孔質結晶性の生体模倣型生物活性組成物を用いて投与されてもよい。米国特許第5,830,682号、6,514,514号及び6,511,958号並びに米国特許出願公開第2006/0063699号、2006/0052327号、2003/199615号、2003/0158302号、2004/0157864号、2006/0292670号、2007/0099831号及び2006/0257492号が参照され、これらの全ては参照によりその全体においてここに取り込まれる。
【0152】
処置の例示的方法
本開示の例示的実施形態は、インターロイキン-6(IL)の放出又は活性を高めることを介して哺乳動物における筋機能の喪失を予防、軽減又は処置することの少なくとも1つのための例示的方法を提供する。薬剤は、小分子、ポリペプチド、タンパク質及び核酸からなる群から選択され得る。
【0153】
特定の例示的実施形態では、例示的方法は、サルコペニアの処置を必要とする患者を特定し、その後にここに開示される方法をその患者に適用することを含む。好ましくは、患者はヒトである。
【0154】
本開示の他の例示的態様では、方法は被検体における筋機能の喪失を予防、軽減又は処置することの少なくとも1つのために提供され、それを必要とする哺乳動物に、低カルボキシル化/非カルボキシル化オステオカルシンなどの、インターロイキン-6(IL)の放出及び活性を高める薬剤を、筋機能の喪失が処置されるような治療的有効量で投与することを含む。好ましくは、被検体はヒトである。
【0155】
ここに記載する例示的方法において、疾患又は障害を「処置」又は「緩和」することは疾患若しくは障害又はその症状を改善することだけでなく、疾患若しくは障害の進行を遅延させ又は疾患若しくは障害の有害な効果を寛解させることも包含することが理解されるはずである。
【0156】
本開示の例示的実施形態は、筋機能の喪失を予防、軽減又は処置することの少なくとも1つのための遺伝子治療の使用も包含する。これは、当技術で知られている種々の方法によると、オステオカルシンをコードする遺伝子又はその生物学的に活性な断片若しくは変異体をベクターに導入し、筋機能の喪失又は筋機能の喪失の進行の高いリスクに晒されている哺乳動物からの細胞にそのベクターをトランスフェクション又は感染させることによって達成可能である。細胞は、ex vivo又はin vivo法によってトランスフェクション又は感染され得る。
【0157】
当技術で知られている遺伝子治療の例示的方法は、本開示の方法における使用に適合可能である。アデノ随伴ウイルス(AAV)は、遺伝子治療のために最も有望なベクターの1つであり、本開示の方法において使用され得る。遺伝子移入及び遺伝子治療の従来の方法は、例えば、「Gene Therapy:Principles and Applications」ed.T.Blackenstein、Springer Verlag、1999年、「Gene Therapy Protocols(Methods in Molecular Medicine)」ed.P.D.Robbins、Humana Press、1997年、及び「Retro-vectors for Human Gene Therapy」ed.C.P.Hodgson、Springer Verlag、1996年、に記載されている。AAVは、ヒトに対して非病原性であり、高い頻度の組込みを有し、非分裂性細胞にも感染することができ、結果として組織培養及び全哺乳類の双方において哺乳類細胞への遺伝子の送達に有用となるため、ヒト遺伝子治療に有望なベクター系となる。例えば、Muzyczka、1992年、Curr.Top.Microbiol.Immunol.、158:97-129参照。最近の研究は、AAVが遺伝子送達のための潜在的に有用なベクターとなることを実証した。LaFace他、1998年、Virology、162:483-486、Zhou他、1993年、Exp.Hematol(NY)、21:928-933、Flotte他、1993年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:10613-10617、及びWalsh他、1994年、Blood 84:1492-1500が参照される。組換えAAVベクターは、マーカー遺伝子(Kaplitt他、1994年、Nature Genetics、8:148-154、Lebkowski他、1988年、Mol.Cell.Biol.8:3988-3996、Samulski他、1989年、J.Virol.、63:3822-3828、Shelling & Smith、1994年、Gene Therapy 1:165-169、Yoder他、1994年、Blood、82:suppl.1:347A、Zhou他、1994年、J.Exp.Med.、179:1867-1875、Hermonat & Muzyczka、1984年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、81:6466-6470、Tratschin他、1984年、Mol.Cell.Biol.、4:2072-2081、McLaughlin他、1988年、J.Virol.、62:1963-1973)及びヒト疾患に伴う遺伝子(Flotte他、1992年、Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.7:349-356、Luo他、1994年、Blood、82:suppl.1,303A、Ohi他、1990年、Gene、89:279-282、Walsh他、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:7257-7261、Wei他、1994年、Gene Therapy、1:261-268)のin vitro及びin vivo形質導入の使用に成功した。
【0158】
本開示の特定の他の例示的実施形態では、対象遺伝子(例えば、オステオカルシン)は、レトロウイルスベクターを用いて標的細胞にトランスフェクション可能である。レトロウイルスとは、レトロウイルス科に属すウイルスのことをいい、腫瘍ウイルス、泡沫ウイルス(Russell & Miller、1996年、J.Virol.70:217-222、Wu他、1999年、J.Virol.73:4498-4501)、レンチウイルス(例えば、HIV-1)(Naldini他、1996年、Science 272:263-267、Poeschla他、1996年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 93:11395-11399、Srinivasakumar他、1997年、J.Virol.71:5841-5848、Zufferey他、1997年、Nat.Biotechnol.15:871-875、Kim他、1998年、J.Virol.72:811-816)及び猫免疫不全ウイルス(Johnston他、1999年、J.Virol.73:4991-5000、Johnston & Power、1999年、Virol.73:2491-2498、Poeschla他、1998年、Nat.Med.4:354-357)を含む。これらの刊行物の開示は、本開示の方法における使用に適合され得る。多様な疾患を処置するためにレトロウイルスベクターを活用する多数の遺伝子治療法が当技術で知られており、本開示の方法における使用に適合され得る(例えば、米国特許第4,405,712号及び4,650,764号、Friedmann、1989年、Science、244:1275-1281、Mulligan、1993年、Science、260:926-932、Crystal、1995年、Science 270:404-410、並びに米国特許第6,899,871号が参照され、これらの各々はそれらの全体において参照によりここに取り込まれる)。ますます増加するこれらの方法は、現在ヒト臨床治験に適用されている(Morgan、1993年、BioPharm、6:32-35、「The Development of Human Gene Therapy」、Theodore Friedmann、Ed.、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.、1999年、ISBN 0-87969-528-5も参照され、これはそれらの全体において参照によりここに取り込まれる)。
【0159】
ここに記載される処置の例示的方法の効能は、処置されている疾患又は障害の症状のいずれかを当該方法が寛解させるか否かを判定することによってモニタリング可能である。あるいは、血清活性化合物のレベルをモニタリングすることが可能であり、そのレベルは治療に応じて増加すべきである。
【0160】
本開示の例示的実施形態が以下の実施例によってここに示されるが、限定としてみなされるべきではない。本出願の全体を通じて引用された全ての文献、係属中の特許出願及び公開された特許の内容は、参照によりここに明示的に取り込まれる。当業者であれば、本開示のこれらの例示的実施形態は、多数の異なる形態で実現され得るものであり、ここに上述した実施形態に限定されるものと解釈されるべきではないことを理解するはずである。逆に、これらの例示的実施形態は、本開示が本開示の例示的実施形態を当業者に完全に伝達するように提供されている。本開示の種々の例示的変形例及び他の例示的実施形態は、上記説明に提示された教示の利益を有する本発明が関係する当業者が想定するものである。具体的な用語が採用されるが、特に断りがない限り、それらは当技術におけるものとして使用される。
【実施例】
【0161】
[実施例1]
OCNは、運動における加齢に関連した衰退を補正(
図1参照)。筋肉由来のIL-6が、オステオカルシン(OCN)分泌を上方制御すること(
図3)による持久力運動(
図2)のために必要となる。骨中のIL-6シグナル伝達は、マウス及びヒトにおける運動能力を決定する(
図4及び5)。したがって、骨と筋肉の間のフィードフォワードループが、マウス及びヒトの運動能力を決定する。
【0162】
[実施例2]
肝臓におけるOCNシグナル伝達が、運動能力に必要となる(
図6参照)。OCNは、運動中のLiver Factor1の生成を高める(
図7参照)。Liver Factor1は、運動能力のOCN調節を媒介する(
図8参照)。
【0163】
[実施例3]
例えば、サルコペニアの臨床関連マウスモデルを特定し、筋量及び運動能力においてOCNとVK5211との効能を比較するのに使用した。
図9A及び
図9Bは、マウスにおける例示的モデル化サルコペニアの例示的グラフを示す。このデキサメタゾン(DEX)誘導性サルコペニアの例示的マウスモデルは、筋量及び筋機能の双方の喪失を示し、クッシング症候群の病理及び症状を再現し、多数の他の形態のサルコペニアと共通の分子経路を共有するモデルである。
【0164】
OCNは、DEXサルコペニアにおいては筋量に対して限界効果を有さするが(
図10参照)、運動に対するDEXの有害作用を完全に防止する(
図11参照)。OCNは、Dex誘導性サルコペニアにおいてIL-6を支持する(
図12参照)。OCNは、主に筋機能を対象とする(
図13参照)。OCNは、DEX毒性と干渉しない(
図14参照)。
【0165】
そのような例示的結果は、オステオカルシンが運動に応じて動的全身性反応を協調させることを示す。オステオカルシンは、Dex誘導性サルコペニアにおける筋機能の喪失を対象とする第1の分子である。オステオカルシンは、後期臨床候補物VK5211を上回る性能を発揮する。また、オステオカルシンには、明らかなオフターゲット効果はない。
【0166】
上記は、単に本開示の原理を示すにすぎない。記載した実施形態に対する種々の変形例及び変更例は、ここでの教示を考慮して当業者には明らかとなる。したがって、当業者は、ここに明示的に記載又は説明されなくても、本開示の原理を実現するとともに結果として本開示の主旨及び範囲内となり得る多数のシステム、構成及び手順を考案することができる。種々の異なる例示的実施形態は、当業者に理解されるように、相互に及び相互に互換可能に併用可能である。さらに、明細書、その図面及び特許請求の範囲を含む本開示において使用される特定の用語は、これに限定されないが、例えば、データ及び情報を含む特定の事例において同義的に使用され得る。相互に同義となり得るこれらの文言及び/又は他の文言はここでは同義的に使用され得るが、そのような文言が同義的に使用されないことが意図され得る場合の事例もあり得ることが理解されるべきである。また、従来技術の知識は、上記でここに参照により明示的に取り込まれていない範囲で、その全体においてここに明示的に取り込まれる。参照される全ての刊行物は、それらの全体において参照によりここに取り込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】