(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】イヌ科動物抗体バリアント
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20230519BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230519BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20230519BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20230519BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230519BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230519BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230519BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230519BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230519BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230519BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20230519BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 17/04 20060101ALI20230519BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230519BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230519BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20230519BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C12P21/08
C07K16/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 D
A61K39/395 M
A61K39/395 J
A61K39/395 N
A61P37/08
A61P17/06
A61P17/00 171
A61P17/04
A61P29/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P25/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562645
(86)(22)【出願日】2021-04-16
(85)【翻訳文提出日】2022-12-14
(86)【国際出願番号】 US2021027836
(87)【国際公開番号】W WO2021212081
(87)【国際公開日】2021-10-21
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100107386
【氏名又は名称】泉谷 玲子
(72)【発明者】
【氏名】バージェロン,リサ・マリー
(72)【発明者】
【氏名】カンポス,ヘンリー・ルイス
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA04
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA43
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB36
4C085BB42
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA42
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
本発明は、概して、イヌ科動物抗体バリアント及びそれらの使用に関する。具体的には、本発明は、その半減期及び他の特徴を改善するためのイヌ科動物抗体の定常領域における変異に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型イヌ科動物(canine)IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、修飾されたIgGであって、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、修飾されたIgG。
【請求項2】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項3】
前記修飾されたIgGが、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して、増加した半減期を有する、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項4】
前記修飾されたIgGが、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する前記IgGよりも高い、FcRnに対する親和性を有する、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項5】
前記修飾されたIgGが、イヌ科動物IgG又はイヌ化(caninized)IgGである、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項6】
前記IgGが、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dである、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項7】
前記IgG定常ドメインが、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dの定常ドメインである、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項8】
前記IgG定常ドメインが、CH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項9】
前記IgG定常ドメインが、CH2及びCH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項10】
前記IgG定常ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の修飾されたIgG。
【請求項11】
請求項1に記載の修飾されたIgGと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項12】
容器内に、請求項1に記載の修飾されたIgGと、使用指示書と、を含む、キット。
【請求項13】
野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、ポリペプチドであって、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、ポリペプチド。
【請求項14】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項15】
前記ポリペプチドが、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインのポリペプチドの半減期と比較して、増加した半減期を有する、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項16】
前記ポリペプチドが、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有するIgGのポリペプチドよりも高い、FcRnに対する親和性を有する、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記ポリペプチドが、イヌ科動物IgG又はイヌ化IgGのポリペプチドである、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項18】
前記IgGが、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dである、請求項17に記載のポリペプチド。
【請求項19】
前記IgG定常ドメインが、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dの定常ドメインである、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項20】
前記IgG定常ドメインが、CH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項21】
前記IgG定常ドメインが、CH2及びCH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項22】
前記IgG定常ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項13に記載のポリペプチド。
【請求項23】
請求項13に記載のポリペプチドと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項24】
容器内に、請求項13に記載のポリペプチドと、使用指示書と、を含む、キット。
【請求項25】
野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、抗体であって、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、抗体。
【請求項26】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項25に記載の抗体。
【請求項27】
前記抗体が、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する抗体の半減期と比較して、増加した半減期を有する、請求項25に記載の抗体。
【請求項28】
前記抗体が、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する抗体よりも高い、FcRnに対する親和性を有する、請求項25に記載の抗体。
【請求項29】
前記抗体が、イヌ科動物抗体又はイヌ化抗体である、請求項25に記載の抗体。
【請求項30】
前記抗体が、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dである、請求項25に記載の抗体。
【請求項31】
前記IgG定常ドメインが、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dの定常ドメインである、請求項25に記載の抗体。
【請求項32】
前記IgG定常ドメインが、CH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項25に記載の抗体。
【請求項33】
前記IgG定常ドメインが、CH2及びCH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項25に記載の抗体。
【請求項34】
前記IgG定常ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項25に記載の抗体。
【請求項35】
請求項25に記載の抗体と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項36】
容器内に、請求項25に記載の抗体と、使用指示書と、を含む、キット。
【請求項37】
配列番号1に記載のアミノ酸配列をコードする核酸配列を含む、ベクター。
【請求項38】
請求項37に記載のベクターを含む、単離された細胞。
【請求項39】
抗体又は分子を製造する方法であって、前記方法が、請求項38に記載の細胞を提供することと、前記細胞を培養することと、を含む、方法。
【請求項40】
抗体を製造する方法であって、前記方法が、請求項25~34のいずれか一項に記載の抗体を提供することを含む、方法。
【請求項41】
イヌにおける抗体血清半減期を増加させるための方法であって、前記方法が、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む治療有効量の抗体を前記イヌに投与することを含み、前記イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、方法。
【請求項42】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記抗体が、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する抗体の前記半減期と比較して、増加した半減期を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記抗体が、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する抗体よりも高い、FcRnに対する親和性を有する、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記抗体が、イヌ科動物抗体又はイヌ化抗体である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記抗体が、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dである、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
前記IgG定常ドメインが、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dの定常ドメインである、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記IgG定常ドメインが、CH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項49】
前記IgG定常ドメインが、CH2及びCH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記IgG定常ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
薬剤に融合したイヌ科動物IgG定常ドメインを含む融合分子であって、前記イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、融合分子。
【請求項52】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項51に記載の分子。
【請求項53】
前記分子が、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する分子の半減期と比較して、増加した半減期を有する、請求項51に記載の分子。
【請求項54】
前記分子が、前記野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する分子よりも高い、FcRnに対する親和性を有する、請求項51に記載の分子。
【請求項55】
前記分子が、イヌ科動物抗体又はイヌ化抗体である、請求項51に記載の分子。
【請求項56】
前記分子が、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dを含む、請求項51に記載の分子。
【請求項57】
前記IgG定常ドメインが、IgG
A、IgG
B、IgG
C、又はIgG
Dの定常ドメインである、請求項51に記載の分子。
【請求項58】
前記IgG定常ドメインが、CH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項51に記載の分子。
【請求項59】
前記IgG定常ドメインが、CH2及びCH3ドメインを有するFc定常領域を含む、請求項51に記載の分子。
【請求項60】
前記IgG定常ドメインが、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む、請求項51に記載の分子。
【請求項61】
請求項51に記載の分子と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項62】
容器内に、請求項51に記載の分子と、使用指示書と、を含む、キット。
【請求項63】
配列番号1、65、又は66に記載のアミノ酸配列を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、修飾されたIgGであって、前記修飾されたIgGが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有するIgGの半減期と比較して、増加した半減期を有する、修飾されたIgG。
【請求項64】
前記増加した半減期が、約25日~約35日の範囲の期間の間である、請求項63に記載の修飾されたIgG。
【請求項65】
前記増加した半減期が、約30日間である、請求項63に記載の修飾されたIgG。
【請求項66】
配列番号1、65、又は66に記載のアミノ酸配列を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、修飾されたIgGであって、前記修飾されたIgGが、その治療レベルを長期間維持する、修飾されたIgG。
【請求項67】
前記修飾されたIgGが、約1か月~約7か月の範囲の期間にわたってその治療レベルを維持する、請求項66に記載の修飾されたIgG。
【請求項68】
前記修飾されたIgGが、前記IgGをイヌ科動物対象に皮下送達すると、前記期間にわたってその治療レベルを維持する、請求項66に記載の修飾されたIgG。
【請求項69】
配列番号1、65、又は66に記載のアミノ酸配列を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、抗体であって、前記抗体が、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインを有する抗体の半減期と比較して、増加した半減期を有する、抗体。
【請求項70】
前記増加した半減期が、約25日~約35日の範囲の期間の間である、請求項69に記載の抗体。
【請求項71】
前記増加した半減期が、約30日間である、請求項69に記載の抗体。
【請求項72】
配列番号1、65、又は66に記載のアミノ酸配列を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、抗体であって、前記抗体が、その治療レベルを長期間維持する、抗体。
【請求項73】
前記抗体が、約1か月~約7か月の範囲の期間にわたってその治療レベルを維持する、請求項66に記載の抗体。
【請求項74】
前記抗体が、前記抗体をイヌ科動物対象に皮下送達すると、前記期間にわたってその治療レベルを維持する、請求項66に記載の抗体。
【請求項75】
前記抗体が、抗IL31又は抗NGF抗体である、請求項25~34及び69~74のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項76】
イヌにおける抗体血清半減期を増加させるための方法であって、前記方法が、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む治療有効量の抗体を前記イヌに投与することを含み、前記イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にあり、前記抗体が、抗IL31抗体である、方法。
【請求項77】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記方法が、約25日~約35日の範囲の期間の間の前記半減期を増加させる、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
前記方法が、約30日間の前記半減期を増加させる、請求項76に記載の抗体。
【請求項80】
イヌにおける抗体の治療血清レベルを維持するための方法であって、前記方法が、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む治療有効量の抗体を前記イヌに投与することを含み、前記イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にあり、前記抗体が、抗IL31抗体である、方法。
【請求項81】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記方法が、約1か月~約7か月の範囲の期間にわたって、前記イヌにおける前記抗体の前記治療血清レベルを維持する、請求項80に記載の方法。
【請求項83】
前記方法が、前記抗体を前記イヌに皮下送達すると、前記期間にわたって、前記治療血清レベルを維持する、請求項80に記載の方法。
【請求項84】
イヌにおける抗体血清半減期を増加させるための方法であって、前記方法が、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む治療有効量の抗体を前記イヌに投与することを含み、前記イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にあり、前記抗体が、抗NGF抗体である、方法。
【請求項85】
前記置換が、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記方法が、約10日~約35日の範囲の期間の間の前記半減期を増加させる、請求項84に記載の方法。
【請求項87】
前記方法が、約30日間の前記半減期を増加させる、請求項84に記載の抗体。
【請求項88】
イヌ科動物対象におけるIL-31媒介性掻痒又はアレルギー状態を治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項75に記載の抗IL31抗体を前記対象に投与し、それによって、前記イヌ科動物対象における前記IL-31媒介性掻痒又はアレルギー状態を治療することを含む、方法。
【請求項89】
前記IL-31媒介性掻痒又はアレルギー状態が、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、及び掻痒からなる群から選択される掻痒状態である、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記IL-31媒介性掻痒又はアレルギー状態が、アレルギー状態であり、アレルギー性皮膚炎、夏季湿疹、蕁麻疹、息労(heaves)、炎症性気道疾患、再発性気道閉塞、気道過敏症、慢性閉塞性肺疾患、及び自己免疫から生じる炎症プロセスからなる群から選択される、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記抗体が、隔月、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、6か月に1回、又は7か月に1回投与される、請求項88に記載の方法。
【請求項92】
前記抗体が、4.0mg/体重kg未満の投薬量で皮下投与される、請求項88に記載の方法。
【請求項93】
イヌ科動物対象における疼痛を治療する方法であって、前記方法が、治療有効量の請求項75に記載の抗NGF抗体を前記対象に投与し、それによって、前記イヌ科動物対象における前記疼痛を治療することを含む、方法。
【請求項94】
前記疼痛が、慢性疼痛、炎症性疼痛、術後切開疼痛、神経障害性疼痛、骨折疼痛、骨粗しょう症性骨折疼痛、ヘルペス後神経痛、がん疼痛、火傷から生じる疼痛、創傷と関連する疼痛、外傷と関連する疼痛、神経障害性疼痛、筋骨格障害と関連する疼痛、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、血清反応陰性(非リウマチ)関節症、非関節リウマチ、関節周囲障害、又は末梢神経障害である、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記疼痛が、変形性関節症疼痛である、請求項93に記載の方法。
【請求項96】
前記抗体が、隔月、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、6か月に1回、又は7か月に1回投与される、請求項93に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年4月17日出願の米国仮特許出願第63/011453号の優先権及び利益を主張し、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して、イヌ科動物(canine)抗体バリアント及びそれらの使用に関する。具体的には、本発明は、半減期を改善するためのイヌ科動物抗体のFc定常領域における変異に関する。
【背景技術】
【0003】
イヌ科動物IgGモノクローナル抗体(mAb)は、獣医学における有効な治療薬として開発されている。数年前、4つのイヌ科動物IgGサブクラスが同定され、特徴評価された(Bergeron et al.,2014,Vet Immunol Immunopathol.,vol.157(1-2),pages 31-41)。しかしながら、イヌ科動物IgGの半減期の延長に関してはあまり研究されていない。
【0004】
新生児Fc受容体(FcRn)は、リサイクル機序を通じて、その断片結晶化可能(Fc)領域とのpH依存性相互作用において、IgGの半減期を延長する。具体的には、CH2及びCH3ドメインの界面に広がるFc領域は、細胞の表面上のFcRnと相互作用して、IgG恒常性を調節する。この相互作用は、IgGピノサイトーシス後の酸性相互作用に好ましく、したがって、IgGは分解から保護される。次いで、エンドサイトーシスされたIgGは、細胞表面にリサイクルされ、アルカリpHで血流中に放出され、それによって適切な機能にとって十分な血清IgGが維持される。したがって、IgGの薬物動態プロファイルは、それらのFc領域の構造的及び機能的特性に依存する。
【0005】
3つのイヌ科動物IgGサブクラスは、イヌ科動物FcRnに結合し、ヒトIgG類似体と比較されている。イヌ科動物IgGの半減期は、いかなる実験的裏付けもなく、それらがヒトIgGに近い状態で整列するかどうかを期待又は予測することができないので、十分に研究される必要がある。
【0006】
IgGの半減期の延長によって、抗体薬物の投与頻度の低減、及び/又は用量の低下を可能にすることができ、ひいては、獣医来診が低減され、患者コンプライアンスが改善され、濃度に依存する細胞傷害性/有害事象が低下する。
【0007】
したがって、半減期を改善するために、Fc定常領域における変異を同定する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、野生型イヌ科動物IgGと比較して、より高いFcRn親和性及びより高い半減期を提供する変異型イヌ科動物IgGに関する。具体的には、本出願の発明者らは、驚くべきことにかつ予想外にも、434位のアミノ酸残基アスパラギン(Asn又はN)を別のアミノ酸で置換することが、FcRnへの親和性を向上させ、それによって、IgGの半減期を増加させたことを見出した。
【0009】
一態様では、本発明は、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、修飾されたIgGであって、当該置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、修飾されたIgGを提供する。例示的な実施形態では、当該置換は、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換である。
【0010】
別の態様では、本発明は、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、ポリペプチドであって、当該置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、ポリペプチドを提供する。
【0011】
更に別の態様では、本発明は、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、抗体又は分子であって、当該置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、抗体又は分子を提供する。
【0012】
更なる態様では、本発明は、抗体又は分子を生成又は製造するための方法であって、方法が、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む抗体を有するベクター又は宿主細胞を提供することを含み、当該イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、当該置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、方法を提供する。
【0013】
別の態様では、本発明は、イヌにおける抗体血清半減期を増加させるための方法であって、方法が、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む治療有効量の抗体を当該イヌに投与することを含み、当該イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、当該置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、方法を提供する。例示的な実施形態では、抗体は、半減期を約30日間増加させる。
【0014】
別の態様では、本発明は、イヌにおける抗体の治療的血清レベルを維持するための方法であって、方法が、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む治療有効量の抗体を当該イヌに投与することを含み、当該イヌ科動物IgG定常ドメインが、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、当該置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、方法を提供する。例示的な実施形態では、抗体は、当該イヌにおける当該抗体の治療的血清レベルを約1か月~約7か月の範囲の期間にわたって維持させる。
【0015】
本発明の他の特色及び利点は、以下の詳細な説明の例及び図面から明らかになるであろう。しかしながら、本発明の趣旨及び範囲内の様々な変更及び修正が、この詳細な説明から当業者に明らかになるので、詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示しながらも、例示としてのみ与えられることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本特許又は出願ファイルには、カラーで描かれた少なくとも1つの図面が含まれている。カラーの図面を含む本特許又は特許出願公開の複写は、要望及び必要な料金の支払いに応じて、庁によって提供されるであろう。
【0017】
【
図1】IgGのドメイン構造を示す。Fc変異N434HをCH3ドメイン内で作製して、pH6でFcRnへの親和性を増加させることによってIgG半減期を増加させた。
【
図2A】N434Hを有するイヌ科動物IgGB及び野生型(WT)イヌ科動物IgGBのアミノ酸配列を示す。
【
図2B-1】野生型(WT)ヒトIgG1、WTイヌ科動物1gGA、WTイヌ科動物IgGB、WTイヌ科動物IgGC、及びWTイヌ科動物IgGDのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アミノ酸残基は、KabatにおけるEuインデックスに従って付番される。CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3アミノ酸残基は、それぞれ、赤、紫、青、及び緑である。
【
図2B-2】野生型(WT)ヒトIgG1、WTイヌ科動物1gGA、WTイヌ科動物IgGB、WTイヌ科動物IgGC、及びWTイヌ科動物IgGDのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アミノ酸残基は、KabatにおけるEuインデックスに従って付番される。CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3アミノ酸残基は、それぞれ、赤、紫、青、及び緑である。
【
図2B-3】野生型(WT)ヒトIgG1、WTイヌ科動物1gGA、WTイヌ科動物IgGB、WTイヌ科動物IgGC、及びWTイヌ科動物IgGDのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アミノ酸残基は、KabatにおけるEuインデックスに従って付番される。CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3アミノ酸残基は、それぞれ、赤、紫、青、及び緑である。
【
図2B-4】野生型(WT)ヒトIgG1、WTイヌ科動物1gGA、WTイヌ科動物IgGB、WTイヌ科動物IgGC、及びWTイヌ科動物IgGDのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アミノ酸残基は、KabatにおけるEuインデックスに従って付番される。CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3アミノ酸残基は、それぞれ、赤、紫、青、及び緑である。
【
図2B-5】野生型(WT)ヒトIgG1、WTイヌ科動物1gGA、WTイヌ科動物IgGB、WTイヌ科動物IgGC、及びWTイヌ科動物IgGDのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アミノ酸残基は、KabatにおけるEuインデックスに従って付番される。CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3アミノ酸残基は、それぞれ、赤、紫、青、及び緑である。
【
図2B-6】野生型(WT)ヒトIgG1、WTイヌ科動物1gGA、WTイヌ科動物IgGB、WTイヌ科動物IgGC、及びWTイヌ科動物IgGDのアミノ酸配列のアラインメントを示す。アミノ酸残基は、KabatにおけるEuインデックスに従って付番される。CH1、ヒンジ、CH2、及びCH3アミノ酸残基は、それぞれ、赤、紫、青、及び緑である。
【
図2C】WT IgGB 65のFcヌクレオチド配列を示す。
【
図3】56日の期間にわたって測定した、2mg/kgの単回注射後の4匹のイヌ、2匹のオス(01M、02M)及び2匹のメス(03F、04F)におけるWT mAb1 IgGの個々の血清濃度を示す。
【
図4】56日の期間にわたって測定した、2mg/kgの単回注射後の4匹のイヌ、2匹のオス(17M、18M)及び2匹のメス(19F、20F)におけるN434H mAb1 IgGの個々の血清濃度を示す。
【
図5】98日の期間にわたって測定した、2mg/kg(SC/SC/IV)の3回の注射後の8匹のイヌ、4匹のオス(H03433、H03434。H03435、H03436)及び4匹のメス(H03453、H03454、H03455、H03456)におけるWT mAb2 IgGの個々の血清濃度を示す。
【
図6】98日の期間にわたって測定した、2mg/kg(SC/SC/IV)の3回の注射後の8匹のイヌ、4匹のオス(H03433、H03434。H03435、H03436)及び4匹のメス(H03453、H03454、H03455、及びH03456)におけるN434H mAb2 IgGの個々の血清濃度を示す。
【
図7】4mg/kgの単回皮下投与後のイヌにおけるZTS-00008183の血清プロファイルを示す。色は、異なる動物識別番号を表す。
【
図8】4mg/kgの単回皮下投与後のイヌにおけるZTS-00008183の平均血清プロファイルを示す。
【
図9】時点(3~5か月)での治療による最小二乗平均のプロット。アルファレベル:84日目=0.07085、112日目=0.04575、140日目=0.04352。
【
図10】時点(3~5か月)での治療による最小二乗平均及び変化パーセントのプロット。平均における変化%=100×[平均(T01)-平均(T02)/平均(T01)]。
【
図11】全ての時点の掻痒スコアの箱ひげプロット。T01=プラセボ0mg/kg、T02=ZTS-00008183 4mg/kg。
【
図12】全ての時点の治療による算術手段の掻痒スコアプロット。誤差バーは、標準誤差を表す。
【
図13】全ての時点の治療による算術平均及び変化パーセントの掻痒スコアプロット。平均における変化%=100×[平均(T01)-平均(T0X)/平均(T01)]、X=2、3。
【0018】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、N434H変異を有する変異型イヌ科動物IgGB定常ドメインのアミノ酸配列であり、
配列番号2は、野生型イヌ科動物IgGB定常ドメインのアミノ酸配列であり、
配列番号3は、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインコドン最適化(IgGB_65_WT)の核酸配列であり、
配列番号4は、野生型イヌ科動物IgGB定常ドメインの核酸配列であり、
配列番号5は、IgGB CH1ドメイン118~215位のアミノ酸配列であり、
配列番号6は、IgGBヒンジドメイン217~230位のアミノ酸配列であり、
配列番号7は、野生型IgGB CH2ドメイン231~340位のアミノ酸配列であり、
配列番号8は、野生型IgGB CH3ドメイン341~447位のアミノ酸配列であり、
配列番号9は、IgGB CH1ドメインの核酸配列であり、
配列番号10は、IgGBヒンジドメインの核酸配列であり、
配列番号11は、野生型IgGB CH2ドメインの核酸配列であり、
配列番号12は、野生型IgGB CH3ドメインの核酸配列であり、
配列番号13は、本明細書で11E12-VH-CDR1と称される抗IL31抗体の可変重鎖CDR1であり、
配列番号14は、本明細書で34D03-VH-CDR1と称される抗IL31抗体の可変重鎖CDR1であり、
配列番号15は、本明細書で11E12-VH-CDR2と称される抗IL31抗体の可変重鎖CDR2であり、
配列番号16は、本明細書で34D03-VH-CDR2と称される抗IL31抗体の可変重鎖CDR2であり、
配列番号17は、本明細書で11E12-VH-CDR3と称される抗IL31抗体の可変重鎖CDR3であり、
配列番号18は、本明細書で34D03-VH-CDR3と称される抗IL31抗体の可変重鎖CDR3であり、
配列番号19は、本明細書で11E12-VL-CDR1と称される抗IL31抗体の可変軽鎖CDR1であり、
配列番号20は、本明細書で34D03-VL-CDR1と称される抗IL31抗体の可変軽鎖CDR1であり、
配列番号21は、本明細書で11E12-VL-CDR2と称される抗IL31抗体の可変軽鎖CDR2であり、
配列番号22は、本明細書で34D03-VL-CDR2と称される抗IL31抗体の可変軽鎖CDR2であり、
配列番号23は、本明細書で11E12-VL-CDR3と称される抗IL31抗体の可変軽鎖CDR3であり、
配列番号24は、本明細書で34D03-VL-CDR3と称される抗IL31抗体の可変軽鎖CDR3であり、
配列番号25は、本明細書でMU-11E12-VLと称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列であり、
配列番号26は、本明細書でCAN-11E12-VL-cUn-FW2と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列であり、
配列番号27は、本明細書でCAN-11E12-VL-cUn-13と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列であり、
配列番号28は、本明細書でMU-34D03-VLと称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列であり、
配列番号29は、本明細書でCAN-34D03-VL-998-1と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列であり、
配列番号30は、本明細書でMU-11E12-VHと称される抗IL31抗体の可変重鎖配列であり、
配列番号31は、本明細書でCAN-11E12-VH-415-1と称される抗IL31抗体の可変重鎖配列であり、
配列番号32は、本明細書でMU-34D03-VHと称される抗IL31抗体の可変重鎖配列であり、
配列番号33は、本明細書でCAN-34D03-VH-568-1と称される抗IL31抗体の可変重鎖配列であり、
配列番号34は、GenBank受託番号C7G0W1に対応するアミノ酸配列であり、イヌ科動物IL-31完全長タンパク質に対応し、
配列番号35は、GenBank受託番号C7G0W1に対応するヌクレオチド配列であり、イヌ科動物IL-31完全長タンパク質をコードするヌクレオチド配列に対応し、
配列番号36は、本明細書でMU-11E12-VLと称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号37は、本明細書でMU-11E12-VHと称される抗IL31抗体の可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号38は、本明細書でMU-34D03-VLと称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号39は、本明細書でMU-34D03-VHと称される抗IL31抗体の可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号40は、本明細書でHC-64と称されるイヌ科動物野生型重鎖定常領域のアミノ酸配列(GenBank受託番号AF354264)であり、
配列番号41は、本明細書でHC-64と称されるイヌ科動物野生型重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列(GenBank受託番号AF354264)であり、
配列番号42は、本明細書でHC-65と称されるイヌ科動物野生型重鎖定常領域のアミノ酸配列(GenBank受託番号AF354265)であり、
配列番号43は、本明細書でHC-65と称されるイヌ科動物野生型重鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列(GenBank受託番号AF354265)であり、
配列番号44は、本明細書でカッパと称されるイヌ科動物軽鎖定常領域のアミノ酸配列(GenBank受託番号XP_532962)であり、
配列番号45は、カッパと称されるイヌ科動物軽鎖定常領域をコードするヌクレオチド配列(GenBank受託番号XP_532962)であり、
配列番号46は、本明細書でCAN-34D03-VL-998-1と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号47は、本明細書でCAN-34D03-VH-568-1と称される抗IL31抗体の可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号48は、本明細書でCAN-11E12-VL-cUn-FW2と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号49は、本明細書でCAN-11E12-VH-415-1と称される抗IL31抗体の可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号50は、本明細書でCAN-11E12-VL-cUn-13と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号51は、本明細書でCAN-11E12_VL_cUn_1と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列であり、
配列番号52は、本明細書でCAN-11E12-VL-cUn-1と称される抗IL31抗体の可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号53は、E.coli発現のためのイヌ科動物IL-31完全長構築物のアミノ酸配列に対応し、
配列番号54は、E.coli発現のためのイヌ科動物IL-31完全長構築物に対応するヌクレオチド配列であり、
配列番号55は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変重鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号56は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変重鎖配列をコードするアミノ酸配列であり、
配列番号57は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変重鎖CDR1であり、
配列番号58は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変重鎖CDR2であり、
配列番号59は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変重鎖CDR3であり、
配列番号60は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変軽鎖配列をコードするヌクレオチド配列であり、
配列番号61は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変軽鎖配列をコードするアミノ酸配列であり、
配列番号62は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変軽鎖CDR1であり、
配列番号63は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変軽鎖CDR2であり、
配列番号64は、本明細書でZTS-841と称される抗NGF抗体の可変軽鎖CDR3であり、
配列番号65は、IgGB341~447位の変異型CH3ドメインのアミノ酸配列であり、
配列番号66は、IgGBのCH3ドメイン内の変異型領域のアミノ酸配列であり、
配列番号67は、本明細書でZTS-00008183と称される抗NGF抗体の軽鎖の核酸配列であり、
配列番号68は、本明細書でZTS-00008183と称される抗NGF抗体の軽鎖のアミノ酸配列であり、
配列番号69は、本明細書でZTS-00008183と称される抗NGF抗体の重鎖の核酸配列であり、
配列番号70は、本明細書でZTS-00008183と称される抗NGF抗体の重鎖のアミノ酸配列である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の主題は、本開示の一部を形成する以下の詳細な説明を参照することによって、より容易に理解されることができる。本発明は、本明細書で説明及び/又は示される特定の生成物、方法、条件、又はパラメータに限定されず、本明細書で使用される用語は、例としてのみ特定の実施形態を説明する目的のためのものであり、特許請求される発明を限定することを意図するものではないことを理解されたい。
【0020】
本明細書で別段の定義がない限り、本出願に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者に一般的に理解される意味を有するものとする。更に、文脈によって別段の必要がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0021】
上及び本開示を通じて用いられる場合、以下の用語及び略語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有するものと理解されるものとする。
【0022】
定義
本開示において、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、複数の指示物を含み、特定の数値への言及は、文脈が別段明らかに示さない限り、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「分子」又は「化合物」への言及は、当業者に既知のそのような分子又は化合物及びそれらの等価物などのうちの1つ以上への言及である。「複数の」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ超を意味する。値の範囲が表される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表される場合、先行する「約」を使用することによって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。
【0023】
本明細書及び特許請求の範囲において、免疫グロブリン重鎖におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)におけるEuインデックスのものである。「KabatにおけるEuインデックス」は、IgG抗体の残基付番を指し、本明細書では
図2に反映される。
【0024】
「単離された」という用語は、核酸に関して使用される場合、それが通常、その自然源では会合している少なくとも1つの混入物質である核酸から同定及び分離される核酸である。単離された核酸は、それが自然で見出されるものとは異なる形態又は設定のものである。したがって、単離された核酸分子は、自然の細胞に存在する核酸分子と区別される。単離された核酸分子は、コードされるポリペプチドを通常発現する細胞内に含有された核酸分子を含み、例えば、核酸分子は、自然の細胞のものとは異なるプラスミド又は染色体位置にある。単離された核酸は、一本鎖形態又は二本鎖形態で存在し得る。単離された核酸分子を利用してタンパク質を発現させる場合、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドは、センス鎖又はコード鎖を最小限度に含有するが、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含有する場合がある(すなわち、二本鎖であり得る)。
【0025】
核酸分子は、別の核酸分子と機能的関係に配置される場合、「作動可能に連結される」か、又は「作動可能に結合される」。例えば、プロモーター若しくはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、核酸のコード配列に作動可能に連結されるか、又はリボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、核酸のコード配列に作動可能に連結される。発現する融合タンパク質が、バリアントFc領域ポリペプチドの上流又は下流のいずれかに隣接する異種タンパク質又はその機能的断片を含むように配置されている場合、バリアントFc領域をコードする核酸分子は、異種タンパク質(すなわち、自然で存在するようにFc領域を含まないタンパク質又はその機能的断片)をコードする核酸分子に作動可能に連結され、異種タンパク質は、バリアントFc領域ポリペプチドの直近に隣接し得るか、又は任意の長さ及び組成のリンカー配列によってそれから分離され得る。同様に、ポリペプチド(本明細書で「タンパク質」と同義に使用される)分子は、別のポリペプチドと機能的関係に配置される場合、「作動可能に連結される」か、又は「作動可能に結合される」。
【0026】
本明細書で使用される場合、「機能的断片」という用語は、ポリペプチド又はタンパク質(例えば、バリアントFc領域、又はモノクローナル抗体)に関して言及する場合、完全長ポリペプチドの少なくとも1つの機能を保持するそのタンパク質の断片を指す。断片は、6つのアミノ酸のサイズ~完全長ポリペプチドのアミノ酸配列全体から1つのアミノ酸を引いたものまでのサイズの範囲であり得る。本発明のバリアントFc領域ポリペプチドの機能的断片は、本明細書で定義される少なくとも1つの「アミノ酸置換」を保持する。バリアントFc領域ポリペプチドの機能的断片は、Fc領域と関連することが当該技術分野で既知である少なくとも1つの機能(例えば、ADCC、CDC、Fc受容体結合、Clq結合、細胞表面受容体の下方制御、又は例えば、それが作動可能に結合しているポリペプチドのインビボ若しくはインビトロでの半減期を増加させ得る)を保持する。
【0027】
「精製された」又は「精製する」という用語は、試料から少なくとも1つの混入物質を実質的に除去することを指す。例えば、抗原特異的抗体は、少なくとも1つの混入物質である非免疫グロブリンタンパク質の完全な又は実質的な(少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、又はより好ましくは少なくとも96%、97%、98%、又は99%)除去によって精製され得、また同じ抗原に結合しない免疫グロブリンタンパク質の除去によっても精製され得る。非免疫グロブリンタンパク質の除去及び/又は特定の抗原に結合しない免疫グロブリンの除去は、試料中の抗原特異的免疫グロブリンのパーセントの増加を生じる。別の例では、細菌宿主細胞で発現するポリペプチド(例えば、免疫グロブリン)は、宿主細胞タンパク質の完全な又は実質的な除去によって精製され、それによって、試料中のポリペプチドのパーセントが増加する。
【0028】
ポリペプチド(例えば、Fc領域)を指す「天然」という用語は、本明細書では、ポリペプチドが、自然で一般的に存在するポリペプチドのアミノ酸配列又は自然で存在するその多型からなるアミノ酸配列を有することを示すために使用する。天然ポリペプチド(例えば、天然Fc領域)は、組換え手段によって生成され得るか、又は自然源から単離され得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「発現ベクター」という用語は、特定の宿主生物における作動可能に連結したコード配列の発現に必要な、所望のコード配列及び適切な核酸配列を含有する組換えDNA分子を指す。
【0030】
本明細書で使用される場合、「宿主細胞」という用語は、インビトロ、又はインサイチュ、又はインビボで配置されているかにかかわらず、任意の真核細胞又は原核細胞(例えば、E.coliなどの細菌細胞、CHO細胞、酵母細胞、哺乳類細胞、鳥類細胞、両生類細胞、植物細胞、魚類細胞、及び昆虫細胞)を指す。
【0031】
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を指す。「Fc領域」は、天然配列Fc領域又はバリアントFc領域であり得る。免疫グロブリン重鎖のFc領域の概して許容される境界は変動し得るが、イヌ科動物IgG重鎖Fc領域は、通常、例えば、231位のアミノ酸残基からそのカルボキシル末端までに及ぶと定義される。いくつかの実施形態では、バリアントは、Fc領域の部分のみを含み、カルボキシ末端を含んでも含まなくてもよい。免疫グロブリンのFc領域は、概して、2つの定常ドメイン、CH2及びCH3を含む。いくつかの実施形態では、定常ドメインのうちの1つ以上を有するバリアントが企図される。他の実施形態では、そのような定常ドメインを有しない(又はそのような定常ドメインの部分のみを有する)バリアントが企図される。
【0032】
イヌ科動物IgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、例えば、約231個のアミノ酸~約340個のアミノ酸まで延在する(
図2Bを参照されたい)。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合しないという点で独特である。2つのN連結した分岐状炭水化物鎖が、そのままの天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に介在する。
【0033】
イヌ科動物IgG Fc領域の「CH3ドメイン」は、概して、例えば、約341個のアミノ酸残基~約447個のアミノ酸残基まで延在するFc領域のC末端からCH2ドメインまでの残基に及ぶ(
図2Bを参照されたい)。
【0034】
「機能的Fc領域」は、天然配列Fc領域の「エフェクター機能」を有する。本発明のバリアントFc領域を含むポリペプチドの少なくとも1つのエフェクター機能は、天然Fc領域又はバリアントの親Fc領域を含むポリペプチドと比較して、向上又は減少され得る。エフェクター機能の例としては、限定されないが、Clq結合;補体依存性細胞傷害性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC);食作用;細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下方制御などが挙げられる。そのようなエフェクター機能は、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)に作動可能に連結されることを必要とし得、様々なアッセイ(例えば、Fc結合アッセイ、ADCCアッセイ、CDCアッセイ、全血試料又は分別された血液試料からの標的細胞枯渇など)を使用して評価され得る。
【0035】
「天然配列Fc領域」又は「野生型Fc領域」は、自然で一般的に見出されるFc領域のアミノ酸配列と同一であるアミノ酸配列を指す。例示的な天然配列イヌ科動物Fc領域が
図2に示されており、イヌ科動物IgGB_65Fc領域の天然配列を含んでいる。
【0036】
「バリアントFc領域」は、本明細書で定義される少なくとも1つの「アミノ酸置換」が理由で、天然配列Fc領域(又はその断片)のものとは異なるアミノ酸配列を含む。好ましい実施形態では、バリアントFc領域は、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域と比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換、好ましくは、天然配列Fc領域又は親ポリペプチドのFc領域において、1、2、3、4、又は5つのアミノ酸置換を有する。代替的な実施形態では、バリアントFc領域は、本明細書に開示の方法に従って生成され得、このバリアントFc領域は、抗体可変ドメイン又は非抗体ポリペプチド、例えば、受容体又はリガンドの結合ドメインなどの選択された異種ポリペプチドに融合され得る。
【0037】
本明細書で使用される場合、ポリペプチドの文脈における「誘導体」という用語は、アミノ酸残基置換の導入によって改変されているアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。本明細書で使用される場合、「誘導体」という用語はまた、ポリペプチドへの任意の種類の分子の共有結合によって修飾されているポリペプチドを指す。例えば、限定されないが、抗体は、例えば、グリコシル化、アセチル化、ペグ化、リン酸化、アミド化、既知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、細胞リガンド又は他のタンパク質への連結などによって修飾され得る。誘導体ポリペプチドは、限定されないが、特定の化学的切断、アセチル化、ホルミル化、ツニカマイシンの代謝合成などを含む、当業者に既知の技法を使用する化学的修飾によって生成され得る。更に、誘導体ポリペプチドは、それが由来していたポリペプチドと同様又は同一の機能を有する。本発明のバリアントFc領域を含むポリペプチドは、本明細書で定義される誘導体であり得、好ましくは、誘導体化は、Fc領域内で行われることが理解される。
【0038】
ポリペプチド(例えば、Fc領域又はモノクローナル抗体)に関して本明細書で使用される場合、「実質的にイヌ科動物起源の」は、ポリペプチドが、天然イヌ科動物アミノポリペプチドのものと少なくとも80%、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、又は更により好ましくは少なくとも95%、95%、97%、98%、若しくは99%相同であるアミノ酸配列を有することを示す。
【0039】
「Fc受容体」又は「FcR」という用語は、Fc領域(例えば、抗体のFc領域)に結合する受容体を説明するために使用される。好ましいFcRは、天然配列FcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合し、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び代替的にはスプライシングされた形態を含む、FcガンマRI、FcガンマRII、FcガンマRIIIサブクラスの受容体を含むものである。別の好ましいFcRとしては、母体IgGの胎児への移行を担う新生児受容体であるFcRnが挙げられる(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。将来同定されるものを含む他のFcRは、本明細書で「FcR」という用語によって包含される。
【0040】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性」及び「ADCC」という語句は、FcRを発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、非特異的)(例えば、ナチュラルキラー(「NK」)細胞、好中球、及びマクロファージ)が、標的細胞上に結合した抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす、細胞媒介性応答を指す。ADCCを媒介するための一次細胞であるNK細胞は、FcガンマRIIIのみを発現する一方で、単球は、FcガンマRI、FcガンマRII、及びFcガンマRIIIを発現する。
【0041】
本明細書で使用される場合、「エフェクター細胞」という語句は、1つ以上のFcRを発現し、エフェクター機能を実施する(好ましくはイヌ科動物の)白血球を指す。好ましくは、細胞は、少なくともFcガンマRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実施する。ADCCを媒介する白血球の例としては、PBMC、NK細胞、単球、細胞傷害性T細胞、及び好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、天然源(例えば、血液又はPBMC)から単離され得る。
【0042】
「改変された」FcRn結合親和性を有するバリアントポリペプチドは、pH6.0で測定すると、バリアントの親ポリペプチド又は天然Fc領域を含むポリペプチドと比較して、向上した(すなわち、増加した、より大きい、又はより高い)か、又は減少した(すなわち、低減された、減少した、又はより低い)かのいずれかのFcRn結合親和性を有するものである。FcRnへの増加した結合又は増加した結合親和性を示すバリアントポリペプチドは、親ポリペプチドよりも高い親和性でFcRnに結合する。FcRnへの減少した結合又は減少した結合親和性を示すバリアントポリペプチドは、その親ポリペプチドよりも低い親和性でFcRnに結合する。FcRnへの減少した結合を示すそのようなバリアントは、FcRnへの結合をほとんど又は全く有しない、例えば、親ポリペプチドと比較して、FcRnへの0~20%の結合を有し得る。結合アッセイにおけるバリアントポリペプチド及び親ポリペプチドの量が本質的に同じであり、他の全ての条件が同一である場合、その親ポリペプチドと比較して「向上した親和性」でFcRnに結合するバリアントポリペプチドは、親ポリペプチドよりも高い結合親和性でFcRnに結合するものである。例えば、ELISAアッセイ又は当業者が利用可能な他の方法において、FcRn結合親和性が決定される場合、例えば、向上したFcRn結合親和性を有するバリアントポリペプチドは、親ポリペプチドと比較して、FcRn結合親和性における約1.10倍~約100倍(より典型的には、約1.2倍~約50倍)の増加を示し得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸置換」は、所与のアミノ酸配列における少なくとも1つの既存のアミノ酸残基を、別の異なる「置き換え」アミノ酸残基で置き換えることを指す。置き換え残基又は複数の置き換え残基は、「自然に存在するアミノ酸残基」(すなわち、遺伝子コードによってコードされる)であり得、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、アスパラギン(Asn)、アスパラギン酸(Asp)、システイン(Cys)、グルタミン(Gln)、グルタミン酸(Glu)、グリシン(Gly)、ヒスチジン(His)、イソロイシン(Ile):ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、プロリン(Pro)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、及びバリン(Val)から選択される。1つ以上の自然に存在しないアミノ酸残基との置換もまた、本明細書のアミノ酸置換の定義に包含される。「自然に存在しないアミノ酸残基」は、上に列挙される自然に存在するアミノ酸残基以外の残基を指し、ポリペプチド鎖内の隣接アミノ酸残基に共有結合することが可能である。自然に存在しないアミノ酸残基の例としては、ノルロイシン、オルニチン、ノルバリン、ホモセリン、及びEllman et al.Meth.Enzym.202:301-336(1991)に記載のものなどの他のアミノ酸残基類似体が挙げられる。
【0044】
「アッセイシグナル」という用語は、限定されないが、比色アッセイ、蛍光強度、又は分当たりの崩壊からの吸光度測定を含む、タンパク質-タンパク質相互作用を検出する任意の方法からの出力を指す。アッセイ形式は、ELISA、facs、又は他の方法を挙げることができる。「アッセイシグナル」における変化は、細胞生存率における変化、並びに/又は動態オフレート、動態オンレート、若しくは両方における変化を反映し得る。「より高いアッセイシグナル」は、測定された出力数が別の数よりも大きいことを指す(例えば、バリアントは、親ポリペプチドと比較して、ELISAアッセイにおいてより高い(より大きい)測定数を有し得る)。「より低い」アッセイシグナルは、測定された出力数が別の数よりも小さいことを指す(例えば、バリアントは、親ポリペプチドと比較して、ELISAアッセイにおいてより低い(より小さい)測定数を有し得る)。
【0045】
「結合親和性」という用語は、各Fc受容体-Fc結合相互作用と関連する平衡解離定数(濃度の単位で表される)を指す。結合親和性は、動態オフレート(概して、時間の逆数の単位、例えば、秒-1で報告される)を動態オンレート(概して、単位時間当たりの濃度の単位、例えば、モル/秒で報告される)で除算した比に直接関係する。概して、これらのパラメータの各々が(例えば、BIACORE又はSAPIDYNE測定によって)実験的に決定されない限り、平衡解離定数における変化が、オンレート、オフレート、又は両方の差に起因するかどうかを明確に述べることは不可能である。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ヒンジ領域」という用語は、例えば、イヌ科動物IgGの216位~230位までの、イヌ科動物IgGに及ぶアミノ酸の範囲を指す。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成するシステイン残基を同じ位置に配置することによって、IgG配列と整列させることができる。
【0047】
「Clq」は、免疫グロブリンのFc領域の結合部位を含むポリペプチドである。Clqは、2つのセリンプロテアーゼであるClr及びClsと一緒になって、CDC経路の第1の構成要素である複合体Clを形成する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、「免疫グロブリン」又は「Ig」と同義に使用され、最も広い意味で使用され、所望の生物学的活性又は機能的活性を呈する限り、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を具体的に網羅する。異なる種に由来する部分を含む、一本鎖抗体、及びキメラ、イヌ科動物、又はイヌ化(caninized)の抗体、並びにキメラ又はCDRを移植された一本鎖抗体などもまた、本発明及び「抗体」という用語に包含される。これらの抗体の様々な部分は、従来の技法によって化学的に一緒に合成的に結合され得るか、又は遺伝子工学技術を使用して連続したタンパク質として調製され得る。例えば、キメラ又はイヌ化鎖をコードする核酸は、連続したタンパク質を生成するように発現し得る。例えば、米国特許第4,816,567号、米国特許第4,816,397号、WO86/01533、米国特許第5,225,539号、及び米国特許第5,585,089号、及び同第5,698,762号を参照されたい。また、霊長類化抗体に関してはNewman,R.et al.BioTechnology,10:1455-1460,1993、並びに一本鎖抗体に関してはLadner et al.,米国特許第4,946,778号及びBird,R.E.et al.,Science,242:423-426,1988を参照されたい。本明細書では、Fc領域(又はその一部分)を含む抗体の全ての形態が、「抗体」という用語内に包含されることが理解される。更に、抗体は、当該技術分野で既知の方法に従って、検出可能な標識で標識され、固相上に固定化され、及び/又は異種化合物(例えば、酵素又は毒素)とコンジュゲートされ得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「抗体断片」という用語は、そのままの抗体の一部分を指す。抗体断片の例としては、限定されないが、線状抗体;一本鎖抗体分子;Fc又はFc’ペプチド、Fab及びFab断片、並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。抗体断片は、好ましくは、ヒンジの少なくとも一部、及び任意選択的に、IgG重鎖のCH1領域を保持する。他の好ましい実施形態では、抗体断片は、CH2領域の少なくとも一部分又はCH2領域全体を含む。
【0050】
本明細書で使用される場合、「機能的断片」という用語は、モノクローナル抗体に関して使用される場合、依然として機能的活性を保持するモノクローナル抗体の一部分を指すことが意図される。機能的活性は、例えば、抗原結合活性又は特異性、受容体結合活性又は特異性、エフェクター機能活性などであり得る。モノクローナル抗体機能的断片としては、例えば、VL、VH、及びFdなどの個々の重鎖又は軽鎖、及びそれらの断片;Fv、Fab、及びFab’などの一価断片;F(ab’)2などの二価断片;一本鎖Fv(scFv);並びにFc断片が挙げられる。そのような用語は、例えば、Harlowe and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York(1989)、Molec. Biology and Biotechnology:A Comprehensive Desk Reference(Myers,R.A.(ed.),New York: VCH Publisher,Inc.)、Huston et al.,Cell Biophysics,22:189-224(1993)、Pluckthun and Skerra,Meth.Enzymol.,178:497-515(1989)、及びDay,E.D.,Advanced Immunochemistry,Second Ed.,Wiley-Liss,Inc.,New York,N.Y.(1990)に記載されている。機能的断片という用語は、例えば、モノクローナル抗体のプロテアーゼ消化又は還元によって、及び当業者に既知の組換えDNA方法によって生成される断片を含むことが意図される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「断片」という用語は、別のポリペプチドのアミノ酸配列の少なくとも5、15、20、25、40、50、70、90、100個以上の連続したアミノ酸残基のアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。好ましい実施形態では、ポリペプチドの断片は、完全長ポリペプチドの少なくとも1つの機能を保持する。
【0052】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」という用語は、一価、二価、又は多価の免疫グロブリンを含む。一価キメラ抗体は、キメラ軽鎖とのジスルフィド架橋を通じて会合しているキメラ重鎖によって形成された二量体である。二価キメラ抗体は、少なくとも1つのジスルフィド架橋を通じて会合している2つの重鎖-軽鎖二量体によって形成された四量体である。イヌ科動物で使用するための抗体のキメラ重鎖は、CH1又はCH2などのイヌ科動物重鎖定常領域の少なくとも一部分に連結される、非イヌ科動物抗体の重鎖に由来する抗原結合領域を含む。イヌ科動物で使用するための抗体のキメラ軽鎖は、イヌ科動物重鎖定常領域(CL)の少なくとも一部分に連結される、非イヌ科動物抗体の軽鎖に由来する抗原結合領域を含む。同じか又は異なる可変領域結合特異性のキメラ重鎖及び軽鎖を有する抗体、断片、又は誘導体はまた、既知の方法ステップに従って、個々のポリペプチド鎖の適切な会合によって調製され得る。このアプローチを用いて、キメラ軽鎖を発現する宿主と、キメラ重鎖を発現する宿主とを別個に培養し、免疫グロブリン鎖を別個に回収し、次いで会合させる。代替的に、宿主を同時培養し、鎖を培養培地中で自発的に会合させ、続いて組み立てられた免疫グロブリン、若しくは断片を回収してもよく、又は重鎖及び軽鎖の両方を同じ宿主細胞内で発現させてもよい。キメラ抗体を生成するための方法は、当該技術分野で周知である(例えば、米国特許第6,284,471号、同第5,807,715号、同第4,816,567号、及び同第4,816,397号を参照されたい)。
【0053】
本明細書で使用される場合、非イヌ科動物(例えば、マウス)抗体の「イヌ化」形態(すなわち、イヌ化抗体)は、非イヌ科動物免疫グロブリンに由来する配列を最小限に含有するか又は配列を全く含有しない抗体である。ほとんどの場合、イヌ化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が、所望の特異性、親和性、及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ、ヒト、又は非ヒト霊長類などの非イヌ科動物種(ドナー抗体)の超可変領域からの残基によって置き換えられたイヌ科動物免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。いくつかの事例では、イヌ科動物免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非イヌ科動物残基によって置き換えられる。更に、イヌ化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体中に見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、概して、抗体性能を更に向上するために行われる。概して、イヌ化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、超可変ループ(CDR)の全て又は実質的に全てが非イヌ科動物免疫グロブリンのものに対応し、FR残基の全て又は実質的に全てがイヌ科動物免疫グロブリン配列のものである。イヌ化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の、典型的にはイヌ科動物免疫グロブリンのものの少なくとも一部分を含み得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、「イムノアドヘシン」という用語は、異種の「アドヘシン」タンパク質(例えば、受容体、リガンド、又は酵素)の結合ドメインを免疫グロブリン定常ドメインと組み合わせる抗体様分子を示す。構造的に、イムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位(抗原結合部位)以外である(すなわち、「異種」である)、所望の結合特異性を有するアドヘシンアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合物を含む。
【0055】
本明細書で使用される場合、「リガンド結合ドメイン」という用語は、対応する天然受容体の少なくとも定性的なリガンド結合能力を保持する任意の天然受容体、又はその任意の領域若しくは誘導体を指す。ある特定の実施形態では、受容体は、免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーに相同である細胞外ドメインを有する細胞表面ポリペプチドに由来する。免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーのメンバーではないが、それにもかかわらず、この定義によって具体的に網羅される他の受容体は、サイトカインの受容体であり、特に、チロシンキナーゼ活性を有する受容体(受容体チロシンキナーゼ)、ヘマトポエチン及び神経成長因子受容体スーパーファミリーのメンバー、並びに細胞接着分子(例えば、E-、L-、及びP-セレクチン)である。
【0056】
本明細書で使用される場合、「受容体結合ドメイン」という用語は、例えば、細胞接着分子、又は対応する天然リガンドの少なくとも定性的な受容体結合能力を保持するそのような天然リガンドの任意の領域若しくは誘導体を含む、受容体の任意の天然リガンドを指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「単離された」ポリペプチドは、その自然環境の構成要素から同定及び分離、並びに/又は回収されたているリペプチドである。その自然環境の混入構成要素は、ポリペプチドの診断的又は治療的使用を妨げるであろう物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性又は非タンパク質性溶質を挙げることができる。ある特定の実施形態では、単離されたポリペプチドは、(1)ローリー方法によって決定して、ポリペプチドの95重量%超、好ましくは99重量%超まで、(2)回転カップシークエネータの使用によってN末端若しくは内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15個の残基を得るのに十分な程度まで、又は(3)クマシーブルー若しくは銀染色を使用する、還元又は非還元条件下でのSDS-pageによって均質性まで精製される。単離されたポリペプチドは、ポリペプチドの自然環境の少なくとも1つの構成要素が存在しないであろうので、組換え細胞内のインサイチュでのポリペプチドを含む。しかしながら、通常、単離されたポリペプチドは、少なくとも1つの精製ステップによって調製されるであろう。
【0058】
本明細書で使用される場合、「障害」及び「疾患」という用語は、慢性及び急性障害又は疾患(例えば、患者の特定の障害の素因となる病理学的状態)を含む、バリアントポリペプチド(本発明のバリアントFc領域を含むポリペプチド)を用いた治療から利益を得るであろう任意の状態を指すために同義的に使用される。
【0059】
本明細書で使用される場合、「受容体」という用語は、少なくとも1つのリガンドに結合することが可能なポリペプチドを指す。好ましい受容体は、細胞外リガンド結合ドメイン、及び任意選択的に、他のドメイン(例えば、膜貫通ドメイン、細胞内ドメイン、及び/又は膜アンカー)を有する細胞表面又は可溶性受容体である。本明細書に記載のアッセイで評価される受容体は、そのままの受容体、又はその断片若しくは誘導体(例えば、1つ以上の異種ポリペプチドに融合された受容体の結合ドメインを含む融合タンパク質)であり得る。更に、その結合特性について評価される受容体は、細胞内に存在し得るか、又は単離され得、任意選択的に、アッセイプレート又はいくつかの他の固相上にコーティングされ得るか、又は直接標識され、プローブとして使用され得る。
【0060】
イヌ科動物野生型IgG
イヌ科動物IgGは、当該技術分野で周知であり、例えば、Bergeron et al.,2014,Vet Immunol Immunopathol.,vol.157(1-2),pages 31-41に完全に記載されている。一実施形態では、イヌ科動物IgGは、IgGAである。別の実施形態では、イヌ科動物IgGは、IgGBである。更に別の実施形態では、イヌ科動物IgGは、IgGCである。更なる実施形態では、イヌ科動物IgGは、IgGDである。特定の実施形態では、イヌ科動物IgGは、IgGB_65である。
【0061】
IgGA、IgGB、IgGC、及びIgGDのアミノ酸配列及び核酸配列もまた、当該技術分野で周知である。
【0062】
一例では、本発明のIgGは、定常ドメイン、例えば、CH1、CH2、若しくはCH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む。別の例では、本発明の定常ドメインは、例えば、CH2若しくはCH3ドメイン、又はそれらの組み合わせを含む、Fc領域を含む。
【0063】
特定の例では、野生型定常ドメインは、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、野生型IgG定常ドメインは、配列番号2の相同体、バリアント、異性体、又は機能的断片であるが、434位にいかなる変異も有しない。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0064】
IgGコンタント(contant)ドメインはまた、重鎖及び/又は軽鎖のアミノ酸配列と実質的に同様のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。実質的に同じアミノ酸配列は、Pearson and Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444-2448(1988)に従ってFASTA検索方法によって決定して、比較したアミノ酸配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の同一性を有する配列として本明細書で定義される。
【0065】
本発明はまた、本明細書に記載のIgG又はそれらの一部分をコードする核酸分子を含む。一実施形態では、核酸は、例えば、CH1、CH2、CH3領域、又はそれらの組み合わせを含む抗体重鎖をコードし得る。別の実施形態では、核酸は、例えば、それらの任意のバリアントを含む、VH領域若しくはそれらの一部分のうちのいずれか1つ、又はVH CDRのうちのいずれか1つを含む抗体重鎖をコードし得る。本発明はまた、例えば、それらの任意のバリアントを含む、CL領域若しくはそれらの一部分のうちのいずれか1つ、VL領域若しくはそれらの一部分のうちのいずれか1つ、又はVL CDRのうちのいずれか1つを含む抗体軽鎖をコードする核酸分子を含む。ある特定の実施形態では、核酸は、重鎖及び軽鎖、又はそれらの部分の両方をコードする。
【0066】
配列番号2に記載の野生型定常ドメインのアミノ酸配列は、配列番号4に記載の核酸配列によってコードされる。
【0067】
修飾されたイヌ科動物IgG
本出願の発明者らは、驚くべきことにかつ予想外にも、434位のアミノ酸残基アスパラギン(Asn又はN)を別のアミノ酸で置換することが、FcRnへの親和性を向上させ、IgGの半減期を増加させたことを見出した。本明細書で使用される場合、434位という用語は、Kabat(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))におけるEUインデックスに従って付番された位置を指す。
【0068】
したがって、一実施形態では、本発明は、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、修飾されたIgGドメインであって、当該置換が、KabatにおけるEUインデックスに従って付番されたアミノ酸残基434にある、修飾されたIgGを提供する。434位のアスパラギンは、任意の他のアミノ酸で置換され得る。例えば、434位のアスパラギンは、ヒスチジン(すなわち、N434H)、セリン(すなわち、N434S)、アラニン(すなわち、N434A)、フェニルアラニン(すなわち、N434F)、グリシン(すなわち、N434G)、イソロイシン(すなわち、N434I)、リジン(すなわち、N434K)、ロイシン(すなわち、N434L)、メチオニン(すなわち、N434M)、グルタミン(すなわち、N434Q)、アルギニン(すなわち、N434R)、スレオニン(すなわち、N434T)、バリン(すなわち、N434V)、トリプトファン(すなわち、N434W)、チロシン(すなわち、N434Y)、システイン(すなわち、N434C)、アスパラギン酸(すなわち、N434D)、グルタミン酸(すなわち、N434E)、又はプロリン(すなわち、N434P)で置換され得る。特定の実施形態では、置換は、ヒスチジンとの置換(すなわち、N434H)である。
【0069】
特定の例では、本発明の変異型定常ドメインは、配列番号1に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、変異型IgG定常ドメインは、配列番号1の相同体、バリアント、異性体、又は機能的断片であるが、434位に変異を有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0070】
配列番号1に記載の変異型定常ドメインのアミノ酸配列は、その対応する変異型核酸配列、例えば、配列番号4に記載の核酸配列の変異形態によってコードされる。
【0071】
いくつかの実施形態では、本発明の変異型定常ドメインは、配列番号65又は66に記載のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、変異型IgG定常ドメインは、配列番号65又は66の相同体、バリアント、異性体、又は機能的断片であるが、434位に変異を有する。各可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0072】
配列番号65又は66に記載の変異型定常ドメインのアミノ酸配列は、その対応する変異型核酸配列によってコードされる。
【0073】
一態様では、本発明の修飾されたIgGは、約10日~約35日の範囲の期間の間の半減期を提供する。一実施形態では、本発明の修飾されたIgGは、約10、12、15、17、19、20、23、26、28、30、33、又は35日間の半減期を提供する。特定の実施形態では、本発明の修飾されたIgGは、30日超の半減期を提供する。
【0074】
一態様では、本発明の修飾されたIgGは、約1か月~約7か月の範囲の期間の間、治療血清レベルを維持する。一実施形態では、本発明の修飾されたIgGは、約7、14、28、56、84、112、140、168、又は210日間、治療血清レベルを維持する。特定の実施形態では、本発明の修飾されたIgGは、3か月超の間、治療血清レベルを維持する。
【0075】
本発明の抗体分子を作製するための方法
抗体分子を作製するための方法は、当該技術分野で周知であり、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる、米国特許第8,394,925号、同第8,088,376号、同第8,546,543号、同第10,336,818号、及び同第9,803,023号、並びに米国特許出願公開第2006/0067930号に完全に記載されている。当業者に既知の任意の好適な方法、プロセス、又は技法を使用することができる。本発明のバリアントFc領域を有する抗体分子は、当該技術分野で周知の方法に従って生成され得る。いくつかの実施形態では、バリアントFc領域は、受容体又はリガンドの抗体可変ドメイン又は結合ドメインなどの選択された異種ポリペプチドに融合され得る。
【0076】
分子生物学の方法及び組換え技術の出現によって、当業者は、組換え手段によって抗体及び抗体様分子を生成し、それによって抗体のポリペプチド構造に見出される特定のアミノ酸配列をコードする遺伝子配列を生成することができる。そのような抗体は、当該抗体のポリペプチド鎖をコードする遺伝子配列をクローニングするか、又は当該ポリペプチド鎖を直接合成し、合成された鎖を組み立てて、特定のエピトープ及び抗原決定基に対する親和性を有する活性四量体(H2L2)構造を形成することのいずれかによって生成され得る。これによって、異なる種及び供給源からの抗体を中和することを特徴とする配列を有する抗体の即時生成が可能になった。
【0077】
抗体の供給源、又はインビトロ若しくはインビボで、研究室サイズ若しくは市販のサイズの大細胞培養物であるトランスジェニック動物を使用して、トランスジェニック植物を使用して、又はプロセスのいずれの段階でも生体を用いない直接化学的合成によって、それらがどのように組換え構築されたか、又はどのように合成されたかにかかわらず、全ての抗体は、全体的に同様の三次元構造を有する。この構造は、多くの場合、H2L2として提供され、抗体が、一般的に、2つの軽鎖(L)アミノ酸及び2つの重鎖(H)アミノ酸を含むという事実を指す。両方の鎖は、構造的に相補的な抗原標的と相互作用することが可能な領域を有する。標的と相互作用する領域は、「可変」又は「V」領域と称され、アミノ酸配列における、異なる抗原特異性の抗体との違いを特徴とする。H又はL鎖のいずれかの可変領域は、抗原標的に特異的に結合することが可能なアミノ酸配列を含有する。
【0078】
本明細書で使用される場合、「抗原結合領域」という用語は、抗原と相互作用し、抗原に対するその特異性及び親和性を抗体に付与するアミノ酸残基を含有する、抗体分子の一部分を指す。抗体結合領域は、抗原結合残基の適切なコンフォメーションを維持するために必要な「フレームワーク」アミノ酸残基を含む。抗原結合領域を提供するH又はL鎖の可変領域内には、異なる特異性の抗体間の極端な可変性の理由である、「超可変」と称されるより小さい配列が存在する。そのような超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR領域」とも称される。これらのCDR領域は、特定の抗原決定基構造に対する抗体の基本的な特異性を担う。
【0079】
CDRは、可変領域内のアミノ酸の非連続的な範囲を表すが、種にかかわらず、可変重鎖及び軽鎖領域内のこれらの重要なアミノ酸配列が配置される位置は、可変鎖のアミノ酸配列内の同様の位置を有することが見出されている。全ての抗体の可変重鎖及び軽鎖は、各々3つのCDR領域を有し、各々が他と非連続である。全ての哺乳類種において、抗体ペプチドは、定常(すなわち、高度に保存された)領域及び可変領域を含有し、後者の中には、CDRと、重鎖又は軽鎖の可変領域内であるが、CDRの外側にある、アミノ酸配列で構成されるいわゆる「フレームワーク領域」とが存在する。
【0080】
本発明は、上述の核酸のうちの少なくとも1つを含むベクターを更に提供する。遺伝子コードは劣化するので、特定のアミノ酸をコードするために1つを超えるコドンが使用され得る。遺伝コードを使用して、1つ以上の異なるヌクレオチド配列が同定され得、これらの各々が、アミノ酸をコードすることが可能であろう。特定のオリゴヌクレオチドが実際に実際のコード配列を構成するであろう確率は、抗体又は部分を発現する真核細胞又は原核細胞における、異常な塩基対合関係、及び特定のコドンが(特定のアミノ酸をコードするために)実際に使用される頻度を考慮することによって推定することができる。そのような「コドン使用規則」は、Lathe,et al.,183 J.Molec.Biol.1-12(1985)によって開示されている。Latheの「コドン使用規則」を使用して、イヌ科動物IgG配列をコードすることが可能な理論的な「最も可能性の高い」ヌクレオチド配列を含有する、単一ヌクレオチド配列又はヌクレオチド配列のセットを同定することができる。また、本発明で使用するための抗体コード領域は、本明細書に記載の抗体及びペプチドのバリアントを生じる標準的な分子生物学的技法を使用して、既存の抗体遺伝子を改変することによっても提供され得ることが意図される。そのようなバリアントとしては、限定されないが、抗体又はペプチドのアミノ酸配列における欠失、付加、及び置換が挙げられる。
【0081】
例えば、置換の1つの部類は、保存的アミノ酸置換である。そのような置換は、イヌ科動物抗体ペプチド中の所与のアミノ酸を、同様の特徴を有する別のアミノ酸によって置換するものである。保存的置換として典型的に見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、及びlieの間の互いの置き換え;ヒドロキシル残基Ser及びThrの交換、酸性残基Asp及びGluの交換、アミド残基Asn及びGinの間の置換、塩基性残基Lys及びArgの交換、芳香族残基Phe、Tyrの間の置き換えなどである。どのアミノ酸変化が表現型的にサイレントである可能性が高いかに関するガイダンスは、Bowie et al.,247 Science 1306-10(1990)に見出される。
【0082】
バリアントイヌ科動物抗体又はペプチドは、完全に機能し得るか、又は1つ以上の活性において機能を欠き得る。完全に機能的なバリアントは、典型的には、保存的変異、又は重要ではない残基若しくは重要ではない領域における変異のみを含有する。機能的バリアントはまた、機能を変化させないか、又はわずかに変化させる同様のアミノ酸の置換も含有し得る。代替的に、そのような置換は、ある程度まで正又は負の影響を及ぼし得る。非機能的バリアントは、典型的には、1つ以上の非保存的アミノ酸置換、欠失、挿入、逆位、若しくは切断、又は重要な残基又は重要な領域における置換、挿入、逆位、若しくは欠失を含有する。
【0083】
機能に不可欠なアミノ酸は、部位指向性変異誘発又はアラニンスキャニング変異誘発などの当該技術分野で既知の方法によって同定することができる。Cunningham et al.,244 Science 1081-85(1989)。後者の手順は、分子中の全ての残基に単一のアラニン変異を導入する。次いで、生じた変異型分子を、エピトープ結合又はインビトロADCC活性などの生物学的活性について試験する。リガンド-受容体結合に重要な部位はまた、結晶学、核磁気共鳴、又は光親和性標識などの構造分析によって決定することができる。Smith et al.,224 J.Mol.Biol.899-904(1992)、de Vos et al.,255 Science 306-12(1992)。
【0084】
更に、ポリペプチドは、多くの場合、20の「天然に存在する」アミノ酸以外のアミノ酸を含有する。更に、末端アミノ酸を含む多くのアミノ酸は、プロセシング及び他の翻訳後修飾などの天然プロセスによって、又は当該技術分野で周知の化学修飾技術によって修飾され得る。既知の修飾としては、限定されないが、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質又は脂質誘導体の共有結合、ホスホチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマカルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解処理、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニル化などのタンパク質に対するアミノ酸のトランスファー-RNA媒介性付加、及びユビキチン化が挙げられる。そのような修飾は、当業者に周知であり、科学文献に詳細に記載されている。いくつかの特に一般的な修飾、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のガンマ-カルボキシル化、ヒドロキシル化、及びADPリボシル化は、例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties(2nd ed.,T.E.Creighton,W.H.Freeman&Co.,N.Y.,1993)などの最も基本的な教本に記載されている。この主題について、Wold,Posttranslational Covalent Modification of proteins,1-12(Johnson,ed.,Academic Press,N.Y.,1983)、Seifter et al.182 Meth.Enzymol.626-46(1990)、及びRattan et al.663 Ann.NY Acad.Sci.48-62(1992)などによる多くの詳細なレビューが入手可能である。
【0085】
別の態様では、本発明は、抗体誘導体を提供する。抗体の「誘導体」は、通常、タンパク質の一部ではない追加の化学的部分を含有する。タンパク質の共有結合修飾は、本発明の範囲内に含まれる。そのような修飾は、抗体の標的アミノ酸残基を、選択された側鎖又は末端残基と反応可能である有機誘導体化剤と反応させることによって、分子に導入され得る。例えば、当該技術分野で周知の二官能性薬剤を用いる誘導体化は、抗体又は断片を水不溶性支持体マトリックス又は他の巨大分子担体に架橋するのに有用である。
【0086】
誘導体はまた、標識される放射標識されたモノクローナル抗体を含む。例えば、放射性ヨウ素(251,1311)、炭素(4C)、硫黄(35S)、インジウム、トリチウム(H3)など;ビオチン又はアビジンを含むモノクローナル抗体と、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ-D-ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコアミラーゼ、カルボン酸アンヒドラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、又はグルコース6-リン酸デヒドロゲナーゼなどの酵素とのコンジュゲート;及びまたモノクローナル抗体と、生物発光剤(ルシフェラーゼなど)、化学発光剤(アクリジンエステルなど)、又は蛍光剤(フィコビルタンパク質など)とのコンジュゲートが用いられる。
【0087】
本発明の別の誘導体二官能性抗体は、2つの異なる抗原基を認識する2つの別個の抗体の部分を組み合わせることによって生成される、二重特異性抗体である。これは、架橋又は組換え技法によって達成され得る。加えて、部分を、抗体又はその一部分に添加して、(例えば、血流からのクリアランスまでの時間を延長することによってインビボでの半減期を増加させることができる。そのような技法としては、例えば、PEG部分を付加すること(ペグ化とも称される)が挙げられ、当該技術分野で周知である。米国特許出願公開第2003/0031671号を参照されたい。
【0088】
いくつかの実施形態では、主題の抗体をコードする核酸は、宿主細胞に直接導入され、細胞は、コードされた抗体の発現を誘導するのに十分な条件下でインキュベートされる。主題の核酸が細胞に導入された後、細胞は、典型的には、抗体の発現を可能にするために、通常、37℃で、時には選択下で、約1~24時間の期間の間インキュベートされる。一実施形態では、抗体は、細胞が成長している培地の上清に分泌される。従来的には、モノクローナル抗体は、マウスハイブリドーマ株において天然分子として生成されている。その技術に加えて、本発明は、抗体の組換えDNA発現を提供する。これによって、選択された宿主種における抗体の生成、並びに抗体誘導体及び融合タンパク質のスペクトルの生成が可能になる。
【0089】
本発明の少なくとも1つの抗体、部分、又はポリペプチドをコードする核酸配列は、ライゲーションのための平滑末端又は突出末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、粘着末端の適切な充填、望ましくない結合を回避するためのアルカリホスファターゼ処理、及び適切なライガーゼによるライゲーションを含む従来の技法に従って、ベクターDNAと組み換えられ得る。そのような操作のための技法は、例えば、Maniatis et al.,MOLECULAR CLONING,LAB.MANUAL,(Cold Spring Harbor Lab.Press,NY,1982 and 1989)、及びAusubel et al.1993(上記)によって開示されており、これらを使用して、抗体分子又はその抗原結合領域をコードする核酸配列を構築することができる。
【0090】
DNAなどの核酸分子は、転写及び翻訳調節情報を含有するヌクレオチド配列を含有し、そのような配列が、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結されている」場合、ポリペプチドを「発現することが可能である」と言われる。操作可能な連結は、調節DNA配列と、発現させようとするDNA配列とが、回収可能な量でペプチド又は抗体部分としての遺伝子発現を可能にするような方式で接続される連結である。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は、類似の技術において周知であるように、生物によって変動し得る。例えば、Sambrook et al.,2001(上記)、Ausubel et al.,1993(上記)を参照されたい。
【0091】
したがって、本発明は、原核細胞又は真核細胞のいずれかにおける抗体又はペプチドの発現を包含する。好適な宿主としては、インビボ若しくはインサイチュでの、又は哺乳類、昆虫、鳥類、若しくは酵母起源の宿主細胞のいずれかにおける細菌、酵母、昆虫、真菌、鳥類、及び哺乳類細胞を含む、細菌又は真核生物宿主が挙げられる。哺乳類細胞又は組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、げっ歯類、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌ、又はネコ起源のものであり得る。また、当該技術分野で既知の任意の他の好適な哺乳類細胞を使用してもよい。
【0092】
一実施形態では、本発明のヌクレオチド配列は、レシピエント宿主における自律複製が可能なプラスミド又はウイルスベクターに組み込まれるであろう。多種多様なベクターのうちのいずれかが、この目的のために用いられ得る。例えば、Ausubel et al.,1993(上記)を参照されたい。特定のプラスミド又はウイルスベクターの選択に重要な要因としては、ベクターを含有するレシピエント細胞が認識され、ベクターを含有しないレシピエント細胞から選択されることができる容易さ;特定の宿主において望ましいベクターのコピーの数;及び異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」することが可能であることが望ましいかどうか、が挙げられる。
【0093】
当該技術分野で既知の原核生物ベクターの例としては、E.coli内で複製可能なもの(例えば、pBR322、CoIE1、pSC101、pACYC184、.pi.vXなど)などのプラスミドが挙げられる。そのようなプラスミドは、例えば、Maniatis et aI.,1989(上記)、Ausubel et al,1993(上記)によって開示されている。Bacillusプラスミドとしては、pC194、pC221、pT127などが挙げられる。そのようなプラスミドは、Gryczanによる、THE MOLEC.BIO.OF THE BACILLI 307-329(Academic Press,NY,1982)に開示されている。好適なStreptomycesプラスミドとしては、p1J101(Kendall et al.,169 J.Bacteriol.4177-83(1987)、及びphLC31(Chater et al.,SIXTH INT’L SYMPOSIUM ON ACTINOMYCETALES BIO.45-54(Akademiai Kaido,Budapest,Hungary1986)などのStreptomycesバクテリオファージが挙げられる。Pseudomonasプラスミドは、John et aI.,8 Rev.Infect.Dis.693-704(1986)、lzaki,33 Jpn.J.Bacteriol.729-42(1978)、及びAusubel et aI.,1993(上記)でレビューされている。
【0094】
代替的に、cDNAをコードする抗体又はペプチドの発現に有用な遺伝子発現要素としては、限定されないが、(a)SV40初期プロモーター(Okayama et aI.,3 Mol.Cell.Biol.280(1983)、Rous肉腫ウイルスLTR(Gorman et aI.,79 Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 6777(1982)、及びMoloneyマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl et aI.,41 Cell 885(1985)などのウイルス転写プロモーター及びそのエンハンサー要素、(b)SV40後期領域に由来するもの(Okayarea et aI.,1983)などのスプライス領域及びポリアデニル化部位、並びに(c)SV40(Okayama et aI.,1983)などのポリアデニル化部位が挙げられる。
【0095】
免疫グロブリンcDNA遺伝子は、SV40初期プロモーター及びそのエンハンサー、マウス免疫グロブリンH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギS-グロビン介入配列、免疫グロブリン、及びウサギS-グロビンポリアデニル化部位、及びSV40ポリアデニル化要素を発現エレメントとして使用して、Weidle et al.,51Gene 21(1987)によって記載されるように発現され得る。cDNA部分、ゲノムDNA部分(Whittle et aI.,1 Protein Engin.499(1987))で構成されている免疫グロブリン遺伝子では、転写プロモーターは、ヒトサイトメガロウイルスであり得、プロモーターエンハンサーは、サイトメガロウイルス及びマウス/ヒト免疫グロブリンであり得、mRNAスプライシング及びポリアデニル化領域は、天然染色体免疫グロブリン配列であり得る。
【0096】
一実施形態では、げっ歯類細胞におけるcDNA遺伝子の発現では、転写プロモーターは、ウイルスLTR配列であり、転写プロモーターエンハンサーは、マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサー及びウイルスLTRエンハンサーのいずれか又は両方であり、スプライス領域は、31bp超のイントロンを含有し、ポリアデニル化及び転写終結領域は、合成される免疫グロブリン鎖に対応する天然染色体配列に由来する。他の実施形態では、他のタンパク質をコードするcDNA配列を、上に列挙された発現要素と組み合わせて、哺乳類細胞におけるタンパク質の発現を達成する。
【0097】
各融合遺伝子は、発現ベクターに組み立てられるか、又は発現ベクター内に挿入され得る。次いで、免疫グロブリン鎖遺伝子生成物を発現することが可能なレシピエント細胞は、ペプチド若しくはH若しくはL鎖コード遺伝子で単一でトランスフェクトされるか、又はH及びL鎖遺伝子と同時トランスフェクトされる。トランスフェクトされたレシピエント細胞は、組み込まれた遺伝子の発現を可能にする条件下で培養され、発現した免疫グロブリン鎖又はそのままの抗体又は断片が培養物から回収される。
【0098】
一実施形態では、ペプチド若しくはH及びL鎖、又はそれらの部分をコードする融合遺伝子は、次いで、レシピエント細胞を同時トランスフェクションするために使用される別個の発現ベクターに組み立てられる。代替的に、H鎖及びL鎖をコードする融合遺伝子は、同じ発現ベクター上に組み立てられ得る。発現ベクターのトランスフェクション及び抗体の生成のためのレシピエント細胞株は、骨髄腫細胞であり得る。骨髄腫細胞は、トランスフェクトされた免疫グロブリン遺伝子によってコードされる免疫グロブリンを合成、組み立て、分泌することができ、免疫グロブリンのグリコシル化のための機序を有する。骨髄腫細胞は、培養物中又は分泌された免疫グロブリンが、腹水から得られ得るマウスの腹腔内で増殖され得る。他の好適なレシピエント細胞としては、イヌ科動物若しくは非イヌ科動物起源のBリンパ球などのリンパ球、イヌ科動物若しくは非イヌ科動物起源のハイブリドーマ細胞、又は種間ヘテロハイブリドーマ細胞が挙げられる。
【0099】
本発明の抗体構築物又はポリペプチドを担持する発現ベクターは、形質転換、トランスフェクション、コンジュゲーション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、及びジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランなどのポリカチオンとの適用としてのそのような生化学的手段、並びに電気穿孔、直接マイクロ注入、及びマイクロプロジェクターボンバードメント(microprojectile bombardment)としてのそのような機械的手段を含む、多様な好適な手段のうちのいずれかによって、適切な宿主細胞に導入され得る。Johnston et al.,240 Science 1538(1988)。
【0100】
酵母は、免疫グロブリンH及びL鎖の生成では、細菌を上回る実質的な利点を提供し得る。酵母は、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を実行する。酵母における所望のタンパク質の生成に使用することができる強力なプロモーター配列及び高コピー数プラスミドを利用する、いくつかの組換えDNA戦略が現在存在する。酵母は、クローニングされた哺乳類遺伝子生成物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を担持するペプチド(すなわち、前ペプチド)を分泌する。Hitzman et al.,11th Int’l Conference on Yeast,Genetics&Molec.Biol.(Montpelier,France,1982)。
【0101】
酵母遺伝子発現系は、ペプチド、抗体、断片、及びそれらの領域の生成、分泌、及び安定性のレベルについて、定例通り評価することができる。グルコースを豊富に含む培地で酵母を増殖させる場合に大量に生成される解糖酵素をコードする能動発現遺伝子からのプロモーター及び終結要素を組み込んだ一連の酵母遺伝子発現系のうちのいずれかが、利用され得る。既知の解糖遺伝子はまた、非常に効率的な転写制御シグナルを提供し得る。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーター及びターミネーターシグナルが、利用され得る。酵母におけるクローニングされた免疫グロブリンcDNAの発現に最適な発現プラスミドを評価するための、いくつかのアプローチが選択され得る。Vol.II DNA Cloning,45-66,(Glover,ed.,)IRL Press,Oxford,UK 1985)を参照されたい。
【0102】
細菌株はまた、本発明によって記載される抗体分子又はペプチドの生成のための宿主として利用され得る。宿主細胞と適合する種に由来するレプリコン及び対照配列を含有するプラスミドベクターが、これらの細菌宿主と関連して使用される。ベクターは、複製部位、並びに形質転換細胞において表現型選択を提供することが可能である特定の遺伝子を担持する。細菌におけるクローニングされた免疫グロブリンcDNAによってコードされる抗体、断片、及び領域、又は抗体鎖の生成のための発現プラスミドを評価するための、いくつかのアプローチが選択され得る(Glover,1985(上記)、Ausubel,1993(上記)、Sambrook,2001(上記)、Colligan et al.,eds.Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons,NY,N.Y.(1994-2001)、Colligan et al.,eds.Current Protocols in Protein Science,John Wiley&Sons,NY,N.Y.(1997-2001)を参照されたい。
【0103】
宿主哺乳類細胞は、インビトロ又はインビボで増殖され得る。哺乳類細胞は、リーダーペプチド除去、ハンドL鎖の折り畳み及び組み立て、抗体分子のグリコシル化、並びに機能的抗体タンパク質の分泌を含む、免疫グロブリンタンパク質分子への翻訳後修飾を提供する。抗体タンパク質の生成の宿主として有用であり得る哺乳類細胞としては、上記のリンパ系起源の細胞に加えて、Vero(ATCC CRL81)又はCHO-K1(ATCC CRL61)細胞などの線維芽細胞起源の細胞が挙げられる。多くのベクター系は、哺乳類細胞におけるクローニングされたペプチドハンドL鎖遺伝子の発現に利用可能である(Glover,1985(上記)を参照されたい)。完全なH2L2抗体を得るために、異なるアプローチに従ってもよい。同じ細胞内でハンドL鎖を同時発現させて、完全な四量体H2L2抗体及び/又はペプチドへのハンドL鎖の細胞内会合及び連結を達成することが可能である。同時発現は、同じ宿主内で同じか又は異なるプラスミドのいずれかを使用することによって行うことができる。ハンドL鎖及び/又はペプチドの両方の遺伝子を同じプラスミドに配置し、次いで、これを細胞にトランスフェクトし、それによって、両方の鎖を発現する細胞を直接選択することができる。代替的に、まず、1つの鎖、例えば、L鎖をコードするプラスミドで細胞をトランスフェクトし、続いて、生じた細胞株を第2の選択可能なマーカーを含有するH鎖プラスミドでトランスフェクトすることができる。組み立てられたH2L2抗体分子のより高い生成又はトランスフェクトされた細胞株の安定性の向上などの特性を向上させた細胞株を生成するために、いずれかの経路を介してペプチド及び/又はH2L2分子を生成する細胞株を、追加の選択可能なマーカーと併せて、ペプチド、H、L、又はHプラスL鎖の追加のコピーをコードするプラスミドでトランスフェクトすることができる。
【0104】
組換え抗体の長期的な高収率の生成のために、安定した発現が、使用され得る。例えば、抗体分子を安定的に発現する細胞株が、操作され得る。ウイルス起源の複製物を含有する発現ベクターを使用するよりもむしろ、宿主細胞が、免疫グロブリン発現カセット及び選択可能なマーカーで形質転換されてもよい。外来DNAの導入に続いて、操作された細胞を濃縮培地で1~2日間増殖させてもよく、次いで選択培地に切り替える。組換えプラスミド中の選択可能なマーカーは、選択に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドを染色体に安定的に組み込み増殖して、ひいては細胞株にクローニング及び拡大することができるフォーカスを形成することを可能にする。そのような操作された細胞株は、抗体分子と直接又は間接的に相互作用する化合物/構成要素のスクリーニング及び評価において特に有用であり得る。
【0105】
本発明の抗体が生成されると、それは、免疫グロブリン分子の精製のための当該技術分野で既知の任意の方法、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインA後の特定の抗原に対する親和性、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、吸収率較差溶解度によって、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技法によって精製され得る。多くの実施形態では、抗体は、細胞から培養培地に分泌され、培養培地から採取される。
【0106】
別の態様では、本発明は、野生型イヌ科動物IgG定常ドメインと比較して少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、イヌ科動物IgG定常ドメインを含む、抗体であって、当該置換が、アミノ酸残基434にある、抗体を提供する。一実施形態では、置換は、434位でのアスパラギンのヒスチジンとの置換(N434H)である。
【0107】
置換を有する抗体は、当業者に既知の任意の好適な抗体であり得る。一例では、抗体は、抗IL31抗体である。別の例では、抗体は、抗NGF抗体である。
【0108】
本明細書に記載の置換を有しない抗IL31抗体は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第10,526,405号、同第10,421,807号、同第9,206,253号、及び同第8,790,651号に完全に記載されている。また、本明細書に記載の置換を有しない抗NGF抗体は、当該技術分野でも周知であり、例えば、米国特許第10,125,192号、同第10,093,725号、同第9,951,128号、同第9,617,334号、及び同第9,505,829号に完全に記載されている。
【0109】
一実施形態では、本発明の抗IL31抗体(すなわち、置換を有する抗体)は、IL-31媒介性掻痒又はアレルギー状態を低減、阻害、又は中和する。別の実施形態では、本発明の抗IL31抗体は、イヌにおけるIL-31活性を低減、阻害、又は中和する。
【0110】
一例では、本発明の抗IL31抗体は、配列番号44のイヌ科動物IL-31アミノ酸配列の約95~125アミノ酸残基の領域、好ましくは、配列番号44のイヌ科動物IL-31配列の約102~122アミノ酸残基の領域でIL-31に結合する。
【0111】
抗IL31抗体のVL、VH、及びCDR配列は、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第10,526,405号、同第10,421,807号、同第9,206,253号、及び同第8,790,651号に完全に記載されている。一例では、本発明の抗IL31抗体は、以下の相補的決定領域(CDR)配列の組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る:(1)11E12:配列番号13の可変重量(VH)-CDR1、配列番号15のVH-CDR2、配列番号17のVH-CDR3、配列番号19の可変軽(VL)-CDR1、配列番号21のVL-CDR2、及び配列番号23のVL-CDR3、又は(2)34D03:配列番号14のVH-CDR1、配列番号16のVH-CDR2、配列番号18のVH-CDR3、配列番号20のVL-CDR1、配列番号22のVL-CDR2、及び配列番号24のVL-CDR3。いくつかの実施形態では、本発明の抗IL31抗体は、本明細書に記載の少なくとも1つのCDRを含み得る。
【0112】
一実施形態では、本発明の抗IL31抗体は、配列番号25(MU-11E12-VL)、配列番号26(CAN-11E12-VL-cUn-FW2)、配列番号27(CAN-11E12-VL-cUn-13)、配列番号28(MU-34D03-VL)、又は配列番号29(CAN-34D03-VL-998-1)に記載のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含み得る。
【0113】
別の実施形態では、本発明の抗IL31抗体は、配列番号30(MU-11E12-VH)、配列番号31(CAN-11E12-VH-415-1)、配列番号32(MU-34D03-VH)、又は配列番号33(CAN-34D03-VH-568-1)に記載のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含み得る。
【0114】
一実施形態では、本発明の変異型抗NGF抗体(すなわち、置換を有する抗体)は、NGF媒介性疼痛又は状態を治療するために、動物におけるNGF活性を低減、阻害、若しくは中和し、かつ/又はTrk A及びp75へのNGF結合を阻害する能力を向上した。
【0115】
抗NGF抗体のVL、VH、及びCDR配列はまた、当該技術分野で周知であり、例えば、米国特許第10,125,192号、同第10,093,725号、同第9,951,128号、同第9,617,334号、及び同第9,505,829号に完全に記載されている。一例では、本発明の抗NGF抗体は、以下の相補的決定領域(CDR)配列のうちの少なくとも1つを含み得る:ZTS-841:配列番号57の可変重(VH)-CDR1、配列番号58のVH-CDR2、配列番号59のVH-CDR3、配列番号62の可変軽(VL)-CDR1、配列番号63のVL-CDR2、及び配列番号64のVL-CDR3。いくつかの実施形態では、VL-CDR2は、配列番号63のGNG残基を有する。
【0116】
一実施形態では、本発明の抗NGF抗体は、配列番号61(CAN-ZTS-841-VL)に記載のアミノ酸配列を含む可変軽鎖を含み得る。
【0117】
別の実施形態では、本発明の抗NGF抗体は、配列番号56(CAN-ZTS-841-VH)に記載のアミノ酸配列を含む可変重鎖を含み得る。
薬学的及び獣医学的用途
【0118】
本発明はまた、本発明の分子及び1つ以上の薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物を提供する。より具体的には、本発明は、薬学的に許容される担体又は希釈剤と、有効成分として本発明による抗体又はペプチドと、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0119】
「薬学的に許容される担体」は、用いられる投薬量及び濃度で曝露される細胞又は動物に対して無毒である、任意の賦形剤を含む。薬学的組成物は、1つ又は追加の治療剤を含み得る。
【0120】
「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は合理的な利益/リスク比に見合った他の問題の合併症を伴わずに、動物の組織との接触に好適な化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0121】
薬学的に許容される担体としては、溶媒、分散媒、緩衝液、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、湿潤剤、保存剤、バガー(bugger)、キレート剤、抗酸化剤、等張剤、並びに吸収遅延剤が挙げられる。
【0122】
薬学的に許容される担体としては、水;生理食塩水;リン酸緩衝生理食塩水;デキストロース;グリセロール;エタノール及びイソプロパノールなどのアルコール;リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸;アスコルビン酸;低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;並びに単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTA;ナトリウムなどの塩形成対イオン;並びに/又はTWEEN(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、及びPLURONICSなどの非イオン性界面活性剤;糖類などの等張剤、マンニトール及びソルビトールなどの多価アルコール、及び塩化ナトリウム;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0123】
本発明の薬学的組成物は、例えば、液体溶液(例えば、注射可能かつ注入可能な溶液)、分散液、又は懸濁液、リポソーム、坐剤、錠剤、丸剤、又は粉末などの液体、半固体、又は固体剤形を含む、多様な方式で製剤化され得る。いくつかの実施形態では、組成物は、注射可能な又は注入可能な溶液の形態である。組成物は、静脈内、動脈内、筋肉内、皮下、非経口、経粘膜、経口、局所、又は経皮投与に好適な形態であり得る。組成物は、即時放出、制御放出、徐放、又は遅延放出組成物として製剤化され得る。
【0124】
本発明の組成物は、個々の治療剤として、又は他の治療剤と組み合わせてのいずれかで投与され得る。それらは単独で投与することができるが、概して、選択された投与経路及び標準的な薬学的慣行に基づいて選択された薬学的担体と共に投与される。本明細書に開示の抗体の投与は、非経口注射(腹腔内、皮下、又は筋肉内注射など)を含む任意の好適な手段によって、経口的に、又は抗体の局所投与(典型的には薬学的製剤中で実行される)によって、気道表面に実行され得る。気道表面への局所投与は、鼻腔内投与(例えば、ドロッパー、綿棒、又は吸入器の使用による)によって実行され得る。気道表面への抗体の局所投与はまた、抗体をエアロゾル懸濁液として含有する薬学的製剤(固体及び液体粒子の両方を含む)の呼吸可能な粒子を作製し、次いで呼吸可能な粒子を対象に吸入させることなどによる、吸入投与によって実行され得る。薬学的製剤の呼吸可能な粒子を投与するための方法及び装置は、周知であり、任意の従来技法が用いられ得る。
【0125】
いくつかの望ましい実施形態では、抗体は、非経口注射によって投与される。非経口投与では、抗体又は分子は、薬学的に許容される非経口ビヒクルと関連する、溶液、懸濁液、エマルション、又は凍結乾燥粉末として製剤化され得る。例えば、ビヒクルは、水性担体などの許容される担体に溶解された抗体又はそのカクテルの溶液であり得、そのようなビヒクルは、水、生理食塩水、リンガー溶液、デキストロース溶液、トレハロース若しくはスクロース溶液、又は5%血清アルブミン、0.4%生理食塩水、0.3%グリシンなどである。不揮発性油などのリポソーム及び非水性ビヒクルも使用され得る。これらの溶液は、無菌であり、概して、粒子状物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技法によって滅菌され得る。組成物は、pH調整剤、及び緩衝液、毒性調整剤などの生理学的条件に近づけるために必要な薬学的に許容される補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含有し得る。これらの製剤中の抗体の濃度は、例えば、約0.5重量%未満、通常、約1重量%以上~最大で15重量%又は20重量%と広範に変動し得、選択される特定の投与モードに従って、主に流体体積、粘度などに基づいて選択されるであろう。ビヒクル又は凍結乾燥粉末は、等張性(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学的安定性(例えば、緩衝液及び防腐剤)を維持する添加剤を含有し得る。製剤は、一般的に使用される技法によって滅菌される。非経口投与可能な組成物を調製するための実際の方法は、当業者に既知であるか、又は明らかであり、例えば、REMINGTON’S PHARMA.SCI.(15th ed.,Mack Pub.Co.,Easton,Pa.,1980)により詳細に記載されている。
【0126】
本発明の抗体又は分子は、保存のために凍結乾燥され、使用前に好適な担体中で再構築され得る。この技法は、従来の免疫グロブリンに対して有効であることが示されている。任意の好適な凍結乾燥及び再構築技法が用いられ得る。凍結乾燥及び再構築が、多様な程度の抗体活性損失をもたらし得、使用レベルを調整して相殺する必要があることを、当業者は理解するであろう。本抗体又はそれらのカクテルを含有する組成物は、既存の疾患の再発の防止及び/又は治療的処置のために投与され得る。好適な薬学的担体は、当該技術分野で標準的な参照教本であるREMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCESの最新版に記載されている。治療用途において、組成物は、疾患及びその合併症を治癒するか、又は少なくとも部分的に停止若しくは緩和するのに十分な量で、疾患に既に罹患している対象に投与される。
【0127】
本明細書に記載の状態又は疾患の治療のための本発明の組成物の有効用量は、例えば、限定されないが、特定の薬剤の薬力学的特徴及びその投与モード及び経路;標的部位;動物の生理学的状態;投与される他の医薬品;治療が予防的であるか又は治療的であるか;レシピエントの年齢、健康、及び体重;症状の種類の性質及び程度並行して行われる治療の種類、治療の頻度、並びに所望の効果を含む、多くの異なる要因に応じて変動する。
【0128】
組成物の単回又は複数回の投与は、治療する獣医師によって選択される用量レベル及びパターンで実行され得る。いずれにせよ、薬学的製剤は、対象を効果的に治療するのに十分な量の本発明の抗体を提供すべきである。例示的な実施形態では、本発明の組成物は、隔月、3か月に1回、4か月に1回、5か月に1回、6か月に1回、又は7か月に1回投与される。
【0129】
治療投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために当業者に既知の定例的な方法を使用して滴定され得る。
【0130】
本発明の薬学的組成物は、「治療有効量」を含み得る。「治療有効量」は、所望の治療結果を達成するのに必要な投薬量及び期間での有効な量を指す。治療有効量の分子は、個体における疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに個体における所望の応答を分子が誘発する能力などの要因に応じて変動し得る。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が分子の任意の毒性又は有害効果を上回る量である。
【0131】
別の態様では、本発明の組成物は、例えば、イヌにおける様々な疾患及び障害の治療に使用され得る。本明細書で使用される場合、「治療する」及び「治療」という用語は、予防又は防止措置を含む治療処置を指し、対象が、疾患又は状態と関連する望ましくない生理学的変化を防止又は減速(軽減)される対象である。有益な又は所望の臨床結果としては、限定されないが、検出可能であるか検出不可能であるかに関わらず、症状の緩和、疾患又は状態の程度の減少、疾患又は状態の安定化(すなわち、疾患又は状態が悪化しない)、疾患又は状態の進行の遅延又は減速、疾患又は状態の改善又は緩和、及び疾患又は状態の寛解(部分的又は完全な)が挙げられる。治療を必要とする対象としては、既に疾患若しくは状態を有する対象、並びに疾患若しくは状態を有する傾向がある対象、又は疾患若しくは状態が防止される対象が挙げられる。
【0132】
本発明の変異型分子は、任意の好適な疾患又は障害を治療するために使用され得る。例えば、本発明の変異型抗IL31抗体を使用して、IL-31媒介性掻痒又はアレルギー状態が治療され得る。IL-31媒介性掻痒状態の例として、例えば、限定されないが、アトピー性皮膚炎、湿疹、乾癬、強皮症、及び掻痒が挙げられる。IL-31媒介性アレルギー状態の例としては、例えば、限定されないが、アレルギー性皮膚炎、夏季湿疹、蕁麻疹、息労(heaves)、炎症性気道疾患、再発性気道閉塞、気道過敏症、慢性閉塞性肺疾患、及び自己免疫から生じる炎症プロセスが挙げられる。
【0133】
本発明の変異型抗NGF抗体は、NGF媒介性疼痛又は状態の治療に使用され得る。疼痛の例としては、例えば、限定されないが、慢性疼痛、炎症性疼痛、術後切開疼痛、神経障害性疼痛、骨折疼痛、骨粗しょう症性骨折疼痛、ヘルペス後神経痛、がん疼痛、火傷から生じる疼痛、創傷と関連する疼痛、外傷と関連する疼痛、神経障害性疼痛、筋骨格障害と関連する疼痛、関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、血清反応陰性(非リウマチ)関節症、非関節リウマチ、関節周囲障害、又は末梢神経障害が挙げられる。特定の実施形態では、疼痛は、変形性関節症疼痛である。
【0134】
本明細書で引用される全ての特許及び参照文献は、それらの全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0135】
以下の実施例は、先行開示を補足し、本明細書に記載の主題のより良い理解を提供するために提供される。これらの実施例は、記載の主題を限定するものとみなされるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施形態は、例示のみを目的とし、それらの観点からの様々な修正又は変更が、当業者には明らかであり、本発明の真の範囲内に含まれ、本発明の真の範囲から逸脱することなく行われ得ることが理解される。
【実施例】
【0136】
実施例1
イヌ科動物IgG Fc変異型の構築
IgGB(65)サブクラスのイヌ科動物定常領域をコードする配列を含有するプラスミドを利用し、定常ドメインをコードするヌクレオチドと共に本明細書で調査する各mAbのVH/VL配列を上流及びフレーム内に挿入した、Bergeron et al.(Bergeron et al.,2014,Vet Immunol Immunopathol.,vol.157(1-2),pages 31-41)によって記載されているように、全てのイヌ科動物IgG(
図1)の構築を実行した。単一部位指向性変異誘発のために、AgilentのQuikChange II Mutagenesis及び関連するAgilentプライマー設計ツール(https://www.agilent.com/store/primerDesignProgram.jsp)を使用して、各プラスミドのCH3ドメインのN434位(
図2)に変異を組み込んだ。
【0137】
抗体構築物は、標準的なリポフェクタミントランスフェクションプロトコル(Invitrogen Life Technologies,Carlsbad,CA,USA)を使用してHEK293細胞に、又はExpiCHO一時的システム(ThermoFisher Scientific)キットプロトコルを使用してCHO細胞に、のいずれかで一時的に発現させた。ExpiCHO発現は、IgG軽鎖及びIgG重鎖をコードする遺伝子配列を含有するプラスミドの同時トランスフェクションでは、ThermoFisherによって概説されたプロトコルに従った。HEK293発現では、等重量の重鎖プラスミド及び軽鎖プラスミドを同時トランスフェクトした。細胞を7日間増殖させ、その後、抗体精製のために上清を収集した。Octet QKe定量化(Pall ForteBio Corp,Menlo Park,CA,USA)を介して、プロテインA又はプロテインGセンサーへの結合について抗体をスクリーニングした。プロテインAに結合した構築物を精製し、タンパク質の質についてはBergeron et al.に記載のように定量化した。
【0138】
実施例2
標的結合親和性及び力価アッセイ
Biacoreによって各mAbに対する親和性を評価し、好適な細胞に基づく力価アッセイによってIC50を決定した。Biacore T200(GE Healthcare,Pittsburgh,PA)で表面プラズモン共鳴を実施して、標的に対する各抗体の結合親和性を測定し、CM5センサーフローセル2-4で最終密度約250RU(共鳴単位)の2.5μg/mlの各標的タンパク質を、それぞれ、EDC/NHSを使用するアミンカップリングによって固定化した。
【0139】
フローセル1を内部参照として使用して、泳動用緩衝液効果を補正した。250秒の接触時間及び30μl/分の流速、15℃で、抗体結合を測定した。解離期間は300秒であった。再生緩衝液(10mMのグリシンpH1.5及び10mMのNaOH)及び20μl/分の流速で各々60秒間再生成を実施した。泳動用/希釈緩衝液(1×HBS-EP、GE Healthcare、100mMのHEPESを含む10×BR-1006-69、150mMのNaCl、30mMのEDTA、及び0.5%v/vの界面活性剤P20、pH7.4、濾過したMQ H2O中1:10)を、同じアッセイ形式で陰性対照として使用した。
【0140】
二重参照方法を使用することによるBiacore T200 Evaluationソフトウェアで、データを分析した。生じた曲線を、1:1結合モデルに適合させた。野生型とN434H変異型IgGとの間に、結合親和性又はIC50の差は観察されなかった(表1)。
【表1】
【0141】
実施例3
インビトロFcRn結合アッセイ
上で考察されたBergeron et al.に従って、イヌ科動物FcRnを単離及び調製し、変異型Fc IgGを、イヌ科動物FcRnに対してアッセイした。カニクイザル、ヒト、マウス、及びラットからの配列アラインメントから設計されたデジェネレートプライマーを使用して、イヌ科動物FcRn-αサブユニット及びβ-マイクログロブリンを増幅するために、標準的なPCRを使用した。c末端6×His+BAPタグ(AGLNDIFEAQKIEWHE)で操作したpcDNA3.1(+)ベクターへのサブクローニングを容易にするために、プライマーは、3プライムにHindIII、及び5プライム末端にBamH1を含有した。FcRn-αサブユニット及びβ-マイクログロブリンを、HEK293細胞に同時トランスフェクトし、FcRn複合体を、c末端Hisタグを介するIMAC親和性精製によって精製した。CM5センサーチップを使用するBiacore3000又はBiacoreT200(GE Healthcare,Pittsburgh,PA,USA)によって、KDのものを測定した。
【0142】
所望の表面密度に達するために、標準的なアミン固定方法を使用してセンサーの表面にFcRnを固定した。固定化泳動用緩衝液としてHBS-EPを使用し、10mMのMES、150mMのNaCl、0.005%のTween20、0.5mg/mLのBSA、pH6及びpH7.2、並びにPBS、0.005%のTween20、0.5mg/mLのBSA、pH7.4を、泳動用緩衝液及び滴定方法に使用した。Fc変異型IgGを受容体表面上に流し、Scrubber2ソフトウェア分析(BioLogic Software Pty,Ltd.,Campbell,Australia)又はT200評価ソフトウェアをして親和性を決定した(表2)。緩衝液のみを含有するブランク実験を全ての実験から減算した。フロー細胞を、50mMのTris pH8を使用して再生成した。実験は、15℃で実施した。
【0143】
mAb1及び2の434位に作製した変異は、pH6でのIgGのFcRnへの親和性に顕著な効果を有する。変異型N434Hは、pH6でのFcRn親和性に有意な増加を有する一方で、3つ全てのmAbのpH7.2での弱い親和性を維持している。434位での広範な変異誘発は、いくつかの他の変異が、pH6でのFcRnに対する親和性の増加を有することを明らかにしている。この研究は、IgGに対するFcRn親和性の増加が、VHVLドメインに依存せず、いずれのイヌ科動物IgGB(65)でもこれが普遍的であることを明らかにしている。
【表2】
【0144】
実施例4
イヌにおけるFc変異型IgG PK研究
この研究の目的は、各IgGに組み込まれたFc変異型N434Hを用いて2つの別個の異なる標的に対して上昇した、イヌにおける2つのIgGモノクローナル抗体(mAb1及びmAb2)の薬物動態を決定することであった。
【0145】
mAb1 WT及びN434H変異型IgGについては、4匹のオスビーグル犬の群に、単回2mg/kg用量で静脈内投与した。mAb2 WT及び変異型IgGについては、4匹のオス及び4匹のメスのビーグル犬の群に、28日間隔でIgGのうちの1つを2mg/kg用量で3回投与した。最初の2回の用量は皮下投与し、最後の用量は静脈内投与した。イヌ科動物血清中の「遊離」IgGを、Gyrolab xP(商標)プラットフォームで自動化した、各IgGに特異的な検証されたリガンド結合アッセイを使用してアッセイした(
図3~6)。Watson(商標)を用いるノンコンパートメントアプローチ(AUC計算の線形台形法)を使用して、薬物動態計算を実施した(表3)。mAb2 IgGについては、投与の7~28日後の時点を使用して、第1及び第2の用量について半減期を推定した。投与の7~42日後の時点を使用して、最後の用量の半減期を推定した。薬物の2回目及び3回目の注射後の濃度-時間プロファイルの重複に対するAUCの補正を含む追加の計算を、Excel(商標)で実施した。単純な統計(平均、標準偏差、変動係数)を含む、濃度-時間データ及び薬物動態データの要約を、Excel(商標)又はWatson(商標)を使用して計算した。他の統計分析は、行わなかった。
【表3】
【0146】
イヌ科動物IgGB(65)点変異N434Hは、ビーグル犬において、2つの異なるイヌ科動物IgGの半減期を増加させることが示されている。mAb1の半減期は、9.7+/-2.6日から17.1+/-5.1日に増加し、Ma2b2の半減期は、9.2+/-1.7から19.3+/-3.1に増加した。作用機序は、pH6でのイヌ科動物FcRnへの親和性を向上させることを介しており、これは、非常に異なる別個の可溶性標的に結合する3つのイヌIgGで実証されている。したがって、IgGB(65)のN434変異の半減期延長は、VHVLドメインに依存しないことが実証されている。
【0147】
実施例5
FcRn結合アッセイ
上で考察されたBergeron et al.に従って、イヌ科動物FcRnを単離及び調製し、変異型Fc IgGを、イヌ科動物FcRnに対してアッセイした。イヌ科動物FcRn-αサブユニット及びβ-マイクログロブリンを増幅するために、標準的なPCRを使用した。FcRn-αサブユニット及びβ-マイクログロブリンを、HEK293細胞に同時トランスフェクトし、FcRn複合体を、c末端Hisタグを介するIMAC親和性精製によって精製した。FcRn複合体を、BirA酵素ビオチニル化反応を通じてビオチン標識した。SAセンサーチップを使用して、Biacore T200(GE Healthcare,Pittsburgh,PA,USA)又はBiacore 8K(Cytiva,Marlborough,MA,USA)によって、KDのものを測定した。
【0148】
修飾SA捕捉方法を使用して、FcRnをセンサーの表面上に捕捉した。10mMのMES、150mMのNaCl、0.005%のTween20、0.5mg/mLのBSA、pH6を捕捉物とする、泳動泳動用緩衝液及び滴定方法を使用した。また、泳動用緩衝液及び滴定に1×HBS-P、0.5mg/mLのBSA、pH7.4を使用した。Fc変異型IgGを受容体表面上に流し、T200評価ソフトウェア又はBiacore Insight Evaluationソフトウェアを使用して親和性を決定した。緩衝液のみを含有するブランク実験を全ての実験から減算した。フロー細胞を、50mMのTris pH8又はpH9を使用して再生成した。実験は、15℃で実施した。
【0149】
それぞれの位置に作製した変異は、pH6でのIgGのFcRnへの親和性に顕著な効果を有する。イヌ科動物FcRnへの野生型(WT)及び変異型IgGの結合を、表面プラズモン共鳴(Biacore)によって測定した。
【0150】
親和性に対する顕著な効果は、異なる標的に結合する完全に異なり構造的に異なる抗体(すなわち、抗IL31抗体及び抗NGF抗体)、並びに同じ標的に結合する異なるバージョンの抗体(すなわち、異なるバージョンの抗IL31抗体及び抗NGF抗体)においても観察された(表1~4)。したがって、IgGに対するFcRn親和性の増加は、VHVLドメイン又はCDR領域に依存しない。加えて、親和性に対する顕著な効果は、わずかな変動があるが、複数のIgGサブクラスにおいて観察された。概して、結果は、IgGに対するFcRn親和性の増加が、イヌ科動物IgGサブクラスに依存しないことを示している。
【表4】
【表5】
【0151】
実施例6
イヌにおけるFc変異型IgG PK研究
研究の目的は、0日目に試験物品を投与した後、最大210日間の間に掻痒の低減を評価することによって有効性を測定した、イヌ科動物誘導性掻痒モデルにおける有効性に基づいて、4.0mg/kgのZTS-00008183の用量の有効性を決定することであった。本明細書で使用される場合、「ZTS-00008183」という用語は、その定常領域にN434H変異を有する抗IL31抗体を指す。ZTS-00008183は、本明細書に記載の34D03の可変領域(すなわち、CDRを含むVL及びVH)を有する。
【0152】
ビーグル犬(年齢約4歳)に、ZTS-00008183又はプラセボを単回SC注射によって投与した。治療を以下に要約する。
【表6】
【0153】
投薬前(-7日目)、及び薬物投与後7、14、28、56、84、112、140、168、及び210日目に、血清試料を収集した。
【0154】
具体的には、IL-31誘導性掻痒チャレンジ研究において、4mg/kgのZTS-00008183の単回皮下投与でビーグル犬(n=8匹、投与日で年齢約4歳)を治療した。投薬前(-7日目)、及び薬物投与後7、14、28、56、84、112、140、168、及び210日目に、血清試料を収集した。
【0155】
リガンド結合アッセイを使用して、試験mAbを定量化した。適格なADAアッセイ方法を用いて、抗薬物抗体(ADA)を評価した。
【0156】
BioAgilytix LabsからExcel(商標)スプレッドシートとしてバイオ分析データを受け取った。データをWatson(商標)v.7.4.1にインポートした。毒物動態及び薬物動態パラメータ(Cmax、tmax、AUC、AUCextrap、及びt1/2)は、Watson(商標)v.7.4.1を用いるノンコンパートメントアプローチを使用して計算した。投与の56~210日後の時点を使用して、群T02のZTS-00008183半減期を推定した。免疫原性を評価した。
【0157】
ZTS-00008183の血清濃度を表6に列挙する。
【表7】
【0158】
ZTS-00008183の平均薬物動態パラメータを、以下の表7に示す。
【表8】
【0159】
治療誘導性免疫原性は検出されなかった。
【0160】
ZTS-00008183の血清プロファイルを、
図7に示す。ZTS-00008183の平均血清プロファイルを、
図8に示す。
【0161】
要するに、結果は、N434H変異を有するイヌ科動物IgG定常ドメインが、約30日間の半減期を提供したことを実証している。これは、野生型の9.2~9.7日の半減期と比較して、半減期の2倍超の増加(すなわち、200%の増加)である(表2を参照されたい)。
【0162】
実施例7
Fc変異型IgGの長期的な治療効果
IL-31誘導性掻痒のイヌ科動物モデルで、4mg/kgのZTS-00008183の単回皮下用量を評価した。
【0163】
並行設計有効性研究では、ランダム化完全ブロック設計を使用する治療に24匹の健康なビーグル犬をランダム化し、4mg/体重kgのZTS-00008183又はプラセボを与えた。動物を、過去の掻痒スコアによってブロック分けして、サイズ3の8つの完全なブロックを形成した。
【表9】
【0164】
IL-31チャレンジ(2.5μg/kg)を各動物に投与して、研究-7日目に掻痒を誘導して、ベースライン掻痒スコアを確立した。研究7、28、56、84、112、140、168、及び210日目に、追加のIL-31チャレンジを投与した。
【0165】
各チャレンジ後120分の期間の間、掻痒挙動について動物を観察した。1分の時間枠にわたって観察を行い、その時間枠での全ての掻痒活動に対して、「はい」と返答した。はいの返答の累積数によって、掻痒スコアを決定した。
【0166】
この研究中に有害事象は認められず、全ての試験物品、及び対照物品、及びチャレンジ材料はプロトコルに従って投与した。
【0167】
結果は、IL-31誘導性掻痒のイヌ科動物モデルでは、4.0mg/kgのZTS-00008183の単回SC用量が、3、4、及び5か月時の対照と比較して、有意に低い最小二乗平均掻痒スコア(表9、11、及び13)を示したことを実証している(P<0.0001)。
【0168】
図9~13に示されるように、IL-31誘導性掻痒のイヌ科動物モデルにおいて、研究84、112、140、168、及び210日目の対照と比較して、ZTS-0008183(T02)は、4mg/kgで投与されると、有意に低い総掻痒スコアを示した。
【0169】
結果はまた、掻痒スコアに基づいて、ZTS-00008183が、84、112、140、168、及び210日(すなわち、約7か月)の間、治療的に有効であることを実証している。
【0170】
結果は更に、ZTS-00008183が、長期的な治療効果を有し、3、4、5、6、又は7か月毎に1回投与することができることを実証している。
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【0171】
要するに、結果は、N434H変異を有するイヌ科動物IgG定常ドメインが、約210日(すなわち、7か月)の間、治療血清レベルを維持することを実証している。これは、先の研究で報告された野生型抗IL31抗体の治療レベルの日数と比較して、数倍高い。
【0172】
本発明の好ましい実施形態を説明してきたが、本発明は正確な実施形態に限定されず、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲又は趣旨から逸脱することなく、当業者によって様々な変更及び修正が行われ得ることを理解されたい。
【配列表】
【国際調査報告】