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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(54)【発明の名称】電波反射低減シート及び車両部材
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20230519BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20230519BHJP
   H01Q 1/50 20060101ALI20230519BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20230519BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALN20230519BHJP
【FI】
H05K9/00 W
B32B5/32
H01Q1/50
H01Q1/52
H01Q1/42
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022562653
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(85)【翻訳文提出日】2022-10-14
(86)【国際出願番号】 IB2021052189
(87)【国際公開番号】W WO2021209834
(87)【国際公開日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】63/011,580
(32)【優先日】2020-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】品川 正貴
(72)【発明者】
【氏名】打矢 智昭
(72)【発明者】
【氏名】菱谷 晃司
(72)【発明者】
【氏名】鳥海 尚之
(72)【発明者】
【氏名】武田 正朗
【テーマコード(参考)】
4F100
5E321
5J046
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AK04D
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4F100AK07B
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4F100BA10A
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4F100YY00C
4F100YY00D
5E321AA23
5E321BB21
5E321GG05
5J046AA02
5J046TA03
5J046UA07
(57)【要約】
第1の主面及び第2の主面を有するラミネートを備えた電波反射低減シートが開示される。ラミネートは、0.05~3.00mmの厚さ及び0.10~0.85g/cmの密度を有する第1の樹脂発泡体層と、0.05~3.00mmの厚さ及び0.20~0.90g/cmの密度を有する第2の樹脂発泡体層とを有する。第2の樹脂発泡体層の密度は、第1の樹脂発泡体層の密度よりも高い。第1の樹脂発泡体層と第2の樹脂発泡体層は、この順で第1の主面の側から配置されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面及び第2の主面を有するラミネートを備えた電波反射低減シートであって、前記ラミネートが、
0.05~3.00mmの厚さ及び0.10~0.85g/cmの密度を有する第1の樹脂発泡体層と、
0.05~3.00mmの厚さ及び0.20~0.90g/cmの密度を有する第2の樹脂発泡体層であって、前記第2の樹脂発泡体層の密度が、前記第1の樹脂発泡体層の密度よりも高い第2の樹脂発泡体層と、を備え、
前記第1の樹脂発泡体層と前記第2の樹脂発泡体層が、この順で前記第1の主面の側から配置されている、電波反射低減シート。
【請求項2】
前記ラミネートが被着体に貼り付けられ、前記電波反射低減シートの前記第2の主面を前記被着体に接するように向けた状態で、前記第1の主面の側から前記第1の主面に垂直な方向に77GHzの電波を照射し、前記電波反射低減シート及び前記被着体によって反射される電波の強度がP1であり、かつ平坦な金属面に垂直な方向に77GHzの電波を前記金属面に照射したときに、前記金属面によって反射される電波の強度がP0である場合で、前記被着体が、76GHzにおける2.5~2.9の比誘電率を有し、かつ前記第1の主面に垂直な方向における4~10mmの厚さを有するという要件を満たす一部又は全ての場合において、P1-P0が-10dB以下である、請求項1に記載の電波反射低減シート。
【請求項3】
前記ラミネートが被着体に貼り付けられたときに、前記電波反射低減シートの前記第2の主面を前記被着体に接するように向けた状態で、前記第1の主面の側から前記第1の主面に垂直な方向に80GHzの電波を照射し、前記電波反射低減シート及び前記被着体によって反射される電波の強度がP1であり、かつ平坦な金属面に垂直な方向に80GHzの電波を前記金属面に照射したときに、前記金属面によって反射される電波の強度がP0である場合で、前記被着体が、76GHzにおける2.5~2.9の比誘電率を有し、かつ前記第1の主面に垂直な方向における4~10mmの厚さを有するという要件を満たす一部又は全ての場合において、P1-P0が-8dB以下である、請求項1に記載の電波反射低減シート。
【請求項4】
前記第1の樹脂発泡体層が、76~77GHzにおける1.1~4.0の比誘電率を有し、前記第2の樹脂発泡体層が、76~77GHzにおける1.2~4.0の比誘電率を有し、前記第2の樹脂発泡体層の前記比誘電率が、前記第1の樹脂発泡体層の前記比誘電率よりも高い、請求項1に記載の電波反射低減シート。
【請求項5】
前記ラミネートが、前記第2の樹脂発泡体層の前記第2の主面の側に配置された第3の樹脂発泡体層を更に備え、前記第3の樹脂発泡体層が、0.05~3.00mmの厚さ及び0.21~0.95g/cmの密度を有し、前記第3の樹脂発泡体層の密度が、前記第2の樹脂発泡体層の密度よりも高い、請求項1に記載の電波反射低減シート。
【請求項6】
前記第3の樹脂発泡体層が、76~77GHzにおける1.2~4.0の比誘電率を有し、前記第3の樹脂発泡体層の比誘電率が、前記第2の樹脂発泡体層の比誘電率よりも高い、請求項5に記載の電波反射低減シート。
【請求項7】
前記ラミネートが、光ルミネッセント材料を含む発光層を更に備え、前記発光層が、前記第1の樹脂発泡体層と前記第2の樹脂発泡体層との間に、又は前記第1の樹脂発泡体層の前記第1の主面の側に配置されている、請求項1に記載の電波反射低減シート。
【請求項8】
前記ラミネートが、前記第2の主面の側に最外層として設けられた感圧接着剤層を更に備える、請求項1に記載の電波反射低減シート。
【請求項9】
車両部材であって、
本体部と、
前記本体部の外面に設けられた、請求項1に記載の電波反射低減シートと、を備え、前記ラミネートの前記第2の主面が、前記本体部に隣接している、車両部材。
【請求項10】
前記電波反射低減シートの側から前記電波反射低減シートの前記第1の主面に垂直な方向に前記電波反射低減シート及び前記本体部を通過する77GHzの電波の透過率が、上述した前記方向と同じ方向に前記本体部のみを通過する77GHzの電波の前記透過率と同じかそれ以上である、請求項9に記載の車両部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電波反射低減シート及び車両部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の安全性を向上させ、自動運転の実用化を更に進めるために、Eバンド周波数帯レーダ装置を自動車に装備する取り組みが進んでいる。
【発明の概要】
【0003】
自動車に取り付けられたレーダ装置は、周辺領域における4輪車及び大型商用車のみならず、歩行者及び2輪車等の小型車も検出する必要がある。しかし、人体や小型車からの反射波が微弱であるため、レーダ装置によって検出されるべきこれらの対象物の検出はノイズの影響を受けやすい。特に、レーダ装置がカバー部材の内側に設けられている場合、カバー部材による反射波の影響により、人体等を高精度で検出することが困難となる傾向にある。したがって、カバー部材の内側に設けられたレーダ装置を使用して人体等からの微弱な反射波を高精度で検出するために、カバー部材からの反射波を可能な限り抑制することが望ましい。これを実現するための効果的な措置は、特に、約60~90GHzのEバンド周波数帯の所望の領域における、反射波の効果的な低減を可能にすることである。
【0004】
本開示の一態様は、第1の主面及び第2の主面を有するラミネート(laminate)を備えた電波反射低減シートを提供する。電波反射低減シートのラミネートは、0.05~3.00mmの厚さ及び0.10~0.85g/cmの密度を有する第1の樹脂発泡体層と、0.05~3.00mmの厚さ及び0.20~0.90g/cmの密度を有する第2の樹脂発泡体層とを含む。第2の樹脂発泡体層の密度は、第1の樹脂発泡体層の密度よりも高い。第1の樹脂発泡体層と第2の樹脂発泡体層は、この順で第1の主面の側から配置されている。
【0005】
本開示の別の態様は、本体部と、本体部の外面に設けられた電波反射低減シートとを備えた車両部材であって、ラミネートの第2の主面が、本体部に隣接している、車両部材を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】電波反射低減シートの一実施形態を示す断面図である。
図2】電波反射低減シートの一実施形態を示す断面図である。
図3】電波反射低減シートの一実施形態を示す断面図である。
図4】電波反射低減シートの一実施形態を示す断面図である。
図5】電波反射低減シートの一実施形態を示す断面図である。
図6】電波反射低減シートの一実施形態を示す断面図である。
図7】電波反射低減シートを有する車両部材の一実施形態及びレーダ装置を示す断面図である。
図8】76.5GHzにおける比誘電率と1GHzにおける比誘電率との相関を示すグラフである。
図9】反射電波の強度と周波数との関係の一例を示すグラフである。
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、以下で詳細に説明する。しかし、本開示は、以下の実施形態に限定されない。なお、図面の説明では、同一又は等価の構成要素に同一の参照番号を割り当て、それらの重複する説明を省略する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、別段の指定がない限り、本明細書で使用する用語「又は」が概して「及び/又は」の意味を含むものとする。
【0009】
本明細書で使用する量、成分、特性の測定値等を表す全ての数字は、別段の指示がない限り、用語「約」によって修飾され得る。報告された有効数字の桁数を考慮して、各数値パラメータは、通常の丸めを適用することによって解釈され得る。
【0010】
本明細書では、「(メタ)アクリロイル」が、「メタクリロイル」又は「アクリロイル」のいずれかを意味する。他の類似の用語についても同様である。
【0011】
図1は、電波反射低減シートの一実施形態を示す断面図である。図1に示す電波反射低減シート101は、第1の主面S1と、その裏側の第2の主面S2とを有する、ラミネート201から構成されている。ラミネート201は、第1の樹脂発泡体層11及び第2の樹脂発泡体層12を含み、第1の樹脂発泡体層11と第2の樹脂発泡体層12は、この順で第1の主面S1の側から配置されている。
【0012】
「樹脂発泡体層」は、樹脂材料と、樹脂材料中に分散した複数の気泡とを含む、シートを意味する。気泡は、例えば、樹脂材料中の膨張した気体であってもよく、又は樹脂材料中に分散した中空粒子に内包された気体であってもよい。気泡径(気泡の最大幅)は、特に限定されないが、例えば、平均10~130μmであってもよい。気泡中の気体は、例えば、空気であってもよく、又は発泡剤等に由来する炭化水素等の低沸点化合物であってもよい。樹脂発泡体層は典型的に、樹脂材料だけの密度よりも低い密度を有する。第1の樹脂発泡体層11と第2の樹脂発泡体層12を形成する樹脂材料は、互いに同一であってもよく、又は異なってもよい。
【0013】
第1の樹脂発泡体層11は、0.05~3.00mmの厚さ及び0.10~0.85g/cmの密度を有する。第2の樹脂発泡体層12は、0.05~3.00mmの厚さ及び0.20~0.90g/cmの密度を有する。第2の樹脂発泡体層12の密度は、第1の樹脂発泡体層11の密度よりも高い。第1の樹脂発泡体層11から第2の樹脂発泡体層12の順に密度が高くなることにより、第2の主面S2と、電波反射低減シート101が接着される被着体(例えば、後述する本体部60)との間の界面における電波の反射が、電波反射低減シート101によって効果的に低減される。電波反射低減シート101は通常、レーザ装置の近傍に設置され、第1の主面S1がレーダ装置の側になるように向けられる。
【0014】
第1の樹脂発泡体層11の厚さは、0.10mm以上、0.20mm以上、0.30mm以上又は0.40mm以上であってもよく、かつ2.00mm以下、1.00mm以下又は0.90mm以下であってもよい。第1の樹脂発泡体層11の密度は、0.20g/cm以上又は0.30g/cm以上であってもよく、かつ0.80g/cm以下、0.75g/cm以下又は0.50g/cm以下であってもよい。
【0015】
第2の樹脂発泡体層12の厚さは、0.10mm以上、0.20mm以上、0.30mm以上又は0.40mm以上であってもよく、かつ2.00mm以下、1.00mm以下又は0.90mm以下であってもよい。第2の樹脂発泡体層12の密度は、0.30g/cm以上、0.40g/cm以上又は0.50g/cm以上であってもよく、かつ0.80g/cm以下であってもよい。
【0016】
第1の樹脂発泡体層11は、76~77GHzにおける1.1~4.0の比誘電率を有してもよく、第2の樹脂発泡体層12は、76~77GHzにおける1.2~4.0の比誘電率を有してもよい。第2の樹脂発泡体層12の比誘電率は、第1の樹脂発泡体層11の比誘電率よりも高くてもよい。第1の樹脂発泡体層11の76~77GHzにおける比誘電率は、1.2以上であってもよく、かつ3.0以下、2.0以下又は1.7以下であってもよい。第2の樹脂発泡体層12の76~77GHzにおける比誘電率は、1.3以上、1.4以上、1.5以上又は1.6以上であってもよく、かつ3.0以下又は2.0以下であってもよい。
【0017】
第1の樹脂発泡体層11又は第2の樹脂発泡体層12を構成する樹脂材料は、特に限定されないが、例えば、硬化性樹脂組成物の硬化物、熱可塑性樹脂又はそれらの両方を含んでもよい。「硬化性樹脂組成物」は、モノマー化合物を含み、モノマー化合物の重合によってポリマーが生成されることにより、硬化性樹脂組成物が硬化する。
【0018】
第1の樹脂発泡体層11又は第2の樹脂発泡体層12を形成するための硬化性樹脂組成物は、1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するモノマー化合物を含んでもよい。(メタ)アクリロイル基を有するモノマー化合物の硬化物は、モノマー化合物の重合によって形成されたアクリル樹脂を含んでもよい。(メタ)アクリロイル基を有するモノマー化合物の例としては、アルキル(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリル酸類、アリール(メタ)アクリレート類が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートに含まれるアルキル基の炭素原子の数は、1~14であってもよい。アルキル(メタ)アクリレート類の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘプチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を有するモノマー化合物の含有量は、硬化性樹脂組成物の質量ベースで80~100質量%であってもよい。(メタ)アクリロイル基を有するモノマー化合物の含有量が100質量%であるとき、樹脂発泡体層が、例えば、機械的発泡(窒素等の不活性ガスの流入による発泡)によって形成される。
【0019】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマー化合物を含む硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤、熱重合開始剤又はそれらの両方を更に含んでもよい。光重合開始剤は、紫外線等の活性光線によって活性化され、モノマー化合物の重合を開始させる化合物である。光重合開始剤は、市販品であってもよく、その例としては、BASF社製のDAROCURE 4265、IRGACURE 184、IRGACURE 651、IRGACURE 1173、IRGACURE 819、LUCIRIN TPO、及びLUCIRIN TPO-Lが挙げられる。光重合開始剤又は熱重合開始剤の含有量は、例えば、モノマー化合物の100質量部当たり0.01~1質量部であってもよい。
【0020】
第1の樹脂発泡体層11又は第2の樹脂発泡体層12を形成するための熱可塑性樹脂は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、AES又はABSであってもよい。
【0021】
第1の樹脂発泡体層11又は第2の樹脂発泡体層12を形成するための樹脂組成物は、気泡を発生させるための発泡剤、中空粒子、又はそれらの両方を含んでもよい。気泡を発生させる発泡剤は、熱膨張性発泡剤であってもよい。熱膨張性発泡剤は、例えば、熱可塑性樹脂を含むシェルと、シェルに内包された液状成分とを含む。熱膨張性発泡剤は、熱膨張性微小球又は熱膨張性マイクロカプセルと呼ばれる場合がある。気泡を発生させる発泡剤は、化学発泡剤であってもよい。中空粒子は、例えば、中空ガラス粒子又は中空樹脂粒子であってもよい。気泡を発生させる発泡剤及び中空粒子の含有量が多いときに、第1の樹脂発泡体層11又は第2の樹脂発泡体層12における気泡の割合が増加し、結果として、これらの樹脂発泡体層の密度が低下する。したがって、発泡剤及び中空粒子の含有量に基づいて、各樹脂発泡体層の密度を制御することができる。
【0022】
第1の樹脂発泡体層11及び第2の樹脂発泡体層12は、必要に応じて、分散剤等の他の成分を更に含んでもよい。
【0023】
第1及び第2の主面S1、S2の形状及び表面積は、反射低減が必要とされる領域の大きさによって任意に調整することができる。
【0024】
第1の樹脂発泡体層11及び第2の樹脂発泡体層12は、例えば、樹脂材料と、気泡発生発泡剤、中空粒子又はそれらの両方とを含む樹脂組成物を、押出成形等の方法によって溶融混練することと、混練物を2枚のシート状ライナーの間に挟んでシートを形成することと、を含む方法によって形成することができる。樹脂材料が硬化性樹脂組成物であるときに、シート状混練物を光照射又は加熱によって硬化させてもよい。発泡剤による気泡の形成を促進するために、シート状混練物を更に加熱してもよい。ラミネート201は、得られた樹脂発泡体層(樹脂系発泡シート)を熱圧着等の方法でラミネートすること(laminating)によって形成することができる。
【0025】
図2は、電波反射低減シートの別の実施形態を示す断面図である。図2に示す電波反射低減シート102は、第2の主面S2の側の最外層として、第2の樹脂発泡体層12に隣接して設けられた感圧接着剤層20を更に有するラミネート202から構成されていることにより、図1に示す電波反射低減シート101と異なる。
【0026】
感圧接着剤層20は、荷重を加えることによって被着体に接着するための感圧接着性(粘着性)を有する層である。言い換えれば、感圧接着剤層20は、粘着性を示すためのダルキスト条件、すなわち、荷重を1秒間加えた後の引張コンプライアンスが10-7cm/dyne以上(又は引張弾性率が10dyne/cm以下)であるという条件を満たすことができる。感圧接着剤層20により、電波反射低減シート102を様々な被着体に容易に接着することができる。樹脂発泡体層とは別に感圧接着剤層20を設けないときに、第2の主面S2を構成する樹脂発泡体層(例えば、図1の場合における第2の樹脂発泡体層12)は、感圧接着性を有してもよい。感圧接着剤層20は、感圧接着材料として一般に使用する材料から選択される材料を使用して形成することができる。感圧接着剤層20の厚さは、例えば0.01~1.00mmであってもよい。感圧接着剤層20の代わりに、熱硬化性又は光硬化性の接着剤層を設けてもよい。
【0027】
図3も、電波反射低減シートの別の実施形態を示す断面図である。図3に示す電波反射低減シート103は、第1の主面S1上に保護フィルム30が形成されていることにより、図2の電波反射低減シート102と異なる。保護フィルムは主に、ラミネート202の汚染を防止する目的で、又は第1の樹脂発泡体層11が粘着性を有するときに粘着性を低減する目的で設けられる。保護フィルム30は典型的に、実質的に気泡を含まないフィルムである。保護フィルム30を形成する材料は、特に限定されないが、室温で粘着性がなく、第1の樹脂発泡体層11との高いレベルの接着性を示す材料であればよい。例えば、保護フィルム30は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂を含むフィルムであってもよい。保護フィルム30は、シリコーン系又はフッ素系の防汚コーティング剤を含むフィルムであってもよい。保護フィルム30の厚さは、例えば0.1~50μmであってもよい。保護フィルム30は、例えば、保護フィルムを形成するための様々なコーティング材料で第1の主面S1をコーティングすることを含む方法により、形成することができる。
【0028】
図4は、電波反射低減シートの別の実施形態を示す断面図である。図4に示す電波反射低減シート104は、第2の樹脂発泡体層12の第2の主面S2の側に設けられた第3の樹脂発泡体層13を更に有するラミネート203を備えていることにより、図3の電波反射低減シート103と異なる。第3の樹脂発泡体層13は、第2の樹脂発泡体層12と感圧接着剤層20との間に配置されている。しかし、感圧接着剤層20を設けることなく、第3の樹脂発泡体層13が第2の主面S2の側の最外層となるような構成であってもよい。
【0029】
第3の樹脂発泡体層13は、0.05~3.00mmの厚さ及び0.21~0.95g/cmの密度を有してもよい。第3の樹脂発泡体層13の密度は、第2の樹脂発泡体層12の密度よりも高くてもよい。第1の樹脂発泡体層11、第2の樹脂発泡体層12、第3の樹脂発泡体層13の順で密度を高くすることも、電波の反射低減に寄与することができる。第3の樹脂発泡体層13の厚さは、0.10mm以上、0.20mm以上、0.30mm以上又は0.40mm以上であってもよく、かつ2.00mm以下、1.00mm以下又は0.90mm以下であってもよい。第3の樹脂発泡体層13の密度は、0.30g/cm以上、0.40g/cm以上、0.50g/cm以上又は0.60g/cm以上であってもよく、かつ0.90g/cm以下又は0.80g/cm以下であってもよい。
【0030】
第3の樹脂発泡体層13は、76~77GHzにおける1.2~4.0の比誘電率を有してもよい。第3の樹脂発泡体層13はまた、1.21~4.0の比誘電率を有してもよい。第3の樹脂発泡体層13の比誘電率は、第2の樹脂発泡体層12の比誘電率よりも高くてもよい。
【0031】
第3の樹脂発泡体層13を構成する材料は、第1の樹脂発泡体層11又は第2の樹脂発泡体層12を構成する材料と同じ材料から選択することができる。第3の樹脂発泡体層13を有するラミネート203は、ラミネート201を得るために使用するのと同じ方法によって得ることができる。
【0032】
図5は、電波反射低減シートの別の実施形態を示す断面図である。図5に示す電波反射低減シート105は、第1の樹脂発泡体層11と第2の樹脂発泡体層12との間に発光層40が設けられたラミネート204から構成されていることにより、図3の電波反射低減シート103と異なる。
【0033】
発光層40により、電波反射低減シート105を外側から容易に検出することができる。発光層40は、光ルミネッセント材料を含む。発光層40は、例えば、光ルミネッセント材料を含むインクで印刷することにより、形成することができる。発光層40の厚さは、反射低減の機能が十分に維持される範囲内で設定することができる。例えば、発光層40の厚さは、1μm~20μmであってもよい。
【0034】
発光層40が設けられる位置は、発光を外部から検出できる位置である限り、特に限定されない。例えば、図6に示す電波反射低減シート106のラミネート205のように、発光層40は、第1の樹脂発泡体層11の第1の主面S1の側に配置されてもよい。この場合、典型的には、図示するように、発光層40の上に保護フィルム30が更に設けられる。
【0035】
上で示した電波反射低減シートは、Eバンド周波数帯の所望の領域(例えば76GHz帯)においてレーダから放射された電波の反射を効果的に低減することができる。例えば、電波反射低減シートの第2の主面を被着体に接するように向けた状態で被着体に貼り付けた電波反射低減シートに、第1の主面の側から第1の主面に垂直な方向に電波を照射したときに、電波反射低減シート及び被着体によって反射される電波の強度がP1であり、平坦な金属面に、金属面に垂直な方向に電波を照射したときに、金属面によって反射される電波の強度がP0である。P1とP0を比較することにより、電波反射低減シートによる電波反射の低減効果を評価することができる。例えば、被着体が、76GHzにおける2.5~2.9の比誘電率及び第1の主面に垂直な方向における4mm~10mmの厚さを有するという要件を満たす一部又は全ての場合において、電波の周波数が77GHzであるときに、P1-P0は、-10dB以下であり得る。言い換えれば、P1とP0を比較するときに、それらの差は、-10dB以下であり得る。電波反射低減シートを被着体に貼り付けたときの反射波の強度を、金属面によって反射される電波の強度と比較して-10dB以下に低減することができる場合、人体等から反射される電波等の微弱な電波の検出精度を向上させることに更に効果的に寄与することができる。しかし、被着体が、76GHzにおける2.5~2.9の比誘電率及び第1の主面に垂直な方向における4~10mmの厚さを有するという要件を満たす全ての被着体において、P1-P0が-10dB以下である必要はない。同様の観点から、被着体が、76GHzにおける2.5~2.9の比誘電率及び第1の主面に垂直な方向における4~10mmの厚さを有するという要件を満たす一部又は全ての場合において、電波の周波数が80GHzであるときに、P1とP0との差は、-8dB以下又は-10dB以下であり得る。P1とP0との差の上限は特に限定されないが、電波の周波数が76GHz又は80GHzであるときに、P1-P0は、例えば-15dB以上であってもよい。被着体は、例えばポリカーボネート成形体であってもよい。
【0036】
レーダ装置の近傍に電波反射低減シートを設けることにより、レーダ装置の検出精度を向上させることができる。図7は、電波反射低減シートを有する車両部材の一実施形態及びレーダ装置を示す断面図である。図7に示す車両部材300は、レーダ装置50を覆う本体部60と、レーダ装置50の側の本体部60の外面に設けられた電波反射低減シート103とを備える。本体部60は、レーダ装置50が設置される収容チャンバ65を形成している。第2の主面S2が本体部60に隣接することにより、電波反射低減シート103は、本体部60の外面に接着され、第1の主面S1がレーダ装置50の側に配置されるように向けられている。レーダ装置50から放射された電波は、電波反射低減シート103及び本体部60を通過し、外部の検出対象物に到達する。電波反射低減シート103を設けることにより、検出対象物に到達する前に本体部60によって反射される電波の割合を効果的に低減することができる。電波反射低減シートを有する車両部材は、車外や車内に存在する人体や動物等の検出対象物を検出するレーダ装置からの電波の反射を低減するために使用することができる。
【0037】
電波反射低減シート103の側から電波反射低減シート103の第1の主面S1に垂直な方向に電波反射低減シート103及び本体部60を貫通する77GHzの電波の透過率は、上述した方向と同じ方向に本体部60のみを貫通する77GHzの電波の透過率と同じかそれ以上であってもよい。これにより、レーダ装置50は、人体や2輪車等の微弱な反射波を有する検出対象物をより高い精度で検出することができる。
【0038】
実施例
以下で、実施例を使用して本開示を更に詳細に説明する。しかし、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0039】
1.樹脂系発泡シートの製造
1-1.ポリプロピレン系発泡シート(PP)
分岐鎖ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、ウェイマックスMFX8)と、アイソタクチックポリプロピレン(エクソンモビル社製、ビスタマックス6102FL)と、熱膨張性発泡剤(クレハ社製、S2340)とを、複数のバレルから構成された同方向二軸押出機で溶融混練した。熱膨張性発泡剤(S2340)は、熱可塑性樹脂から形成されたシェルと、シェルに内包された低沸点液状炭化水素とから形成された、熱膨張性微小球であった。押出機温度を、最高で240℃に達するように設定した。混練物を、幅約35cm、厚さ約2.2mmのドロップダイにポンプを使用して注入した。形成されたポリプロピレン系発泡シートの厚さは、約1.14mmであった。ポリプロピレン系発泡シートを2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの間に挿入し、25℃の冷却ローラ間に挟んだ。得られたポリプロピレン系発泡シートの厚さを、隙間ゲージを使用して5点測定し、平均値を求めた。ポリプロピレン系発泡シートから5.0cm×5.0cmの試験片を切り出し、その質量を測定した。ポリプロピレン系発泡シートの密度を、質量及び厚さから計算した。
【0040】
1-2.ポリエチレン(PE)系発泡シート
低密度ポリエチレン(ノバテックLF128、日本ポリエチレン社製)と、熱膨張性発泡剤及びポリエチレンを含むマスターバッチ(クレハMB-S3LC、クレハ社製)とを、単軸押出機で溶融混練した。マスターバッチ(MB-S3LC、クレハ社製)は、50質量%のポリエチレン及び50質量%の熱膨張性発泡剤(S2340D、クレハ社製)を含んでいた。熱膨張性発泡剤(S2340D)は、熱可塑性樹脂から形成されたシェルと、シェルに内包された低沸点液状炭化水素とから形成された熱膨張性微小球であった。押出機温度を、最高で200℃に達するように設定した。混練によって得られたポリエチレン系発泡シートを2枚のポリエチレンテレフタレートフィルムの間に挿入し、25℃の冷却ローラ間に挟んだ。得られたポリエチレン系発泡シートの厚さを隙間ゲージを使用して5点測定し、平均値を求めた。ポリエチレン系発泡シートから5.0cm×5.0cmの試験片を切り出し、その質量を測定した。ポリエチレン系発泡シートの密度を、質量及び厚さから計算した。
【0041】
1-3.L1-1~L1-8及びL2-1~L2-4(アクリル系発泡シート)
以下の原料を用意した。
【0042】
モノマー
・ISTA:イソブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・IBOA:イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業社製)
・2EHA:2-エチルヘキシルアクリレート(日本触媒社製)
・AA:アクリル酸(東亞合成社製)
・HDDA:1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(ライトアクリレート1.6HX-A、共栄社化学社製)
【0043】
光重合開始剤
・Irgacure 651:2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニル-1-ワン(IGMレジン社製)
【0044】
分散剤
・LUCANT A5515(エチレン/プロピレン/無水マレイン酸コポリマー、三井化学社製)
【0045】
熱膨張性発泡剤
・FN100SSD(熱可塑性アクリル樹脂のシェルと、シェルに内包された低沸点炭化水素とから構成された熱膨張性マイクロカプセル、松本油脂製薬社製)
【0046】
中空ガラス粒子
・K-15(密度0.15g/cm、3M社製)
【0047】
ライナー
・セラピールMIB(E):両面シリコーン処理ポリエステルライナー(厚さ0.050mm、東レ株式会社製)
・ピューレックスA50:片面シリコーン処理ポリエステルライナー(厚さ0.050mm、帝人デュポンフィルムジャパン社製)
【0048】
アクリル系発泡シートL1-1
0.750gのLUCANT A5515、0.225gのIrgacure 651、90.0gのISTA及び60.0gのIBOAを225mLのガラス容器に入れ、回転式オービタルミキサで回転速度2000rpmで2分間混合した。得られたモノマー混合物から15分間の窒素バブリングによって酸素を除去した。その後、ガラス容器内のモノマー混合物に360nmの紫外線を1分間照射し、ポリマー成分を含む粘稠なモノマー混合物を得た。
【0049】
得られた粘稠なモノマー混合物を、厚さが目標値の90%となるように調整したコーティング機ヘッドから、2枚のライナー(ピューレックスA50及びセラピールMIB(E))間に供給した。モノマー混合物を挟んだライナーを、上下にUVランプが設けられた2つのゾーンから構成されたUVチャンバに通過させた。上流側ゾーンのUV強度は、上下ともに0.4mW/cmであった。下流側ゾーンのUV強度は、上側が4.9mW/cm、下側が5.3mW/cmであった。ライナーの移動速度は、0.3m/分であり、ライナーによって挟まれたモノマー混合物がUVチャンバを通過する時間は10分であった。ライナーによって挟まれたモノマー混合物がUVチャンバを通過する間に、モノマーの重合によってアクリル樹脂シートが形成された。
【0050】
形成されたアクリル樹脂シートをそのまま150℃のオーブンで10分間加熱することにより、熱膨張性発泡剤を発泡させ、アクリル系発泡シートを形成した。隙間ゲージを使用してアクリル系発泡シートの厚さを5点測定し、平均値を求めた。アクリル系発泡シートから5.0cm×5.0cmの試験片を切り出し、その質量を測定した。アクリル系発泡シートの密度を、質量及び厚さから計算した。このとき、アクリル樹脂の密度を1.0g/cmと仮定した。
【0051】
アクリル系発泡シートL1-2~L1-8
アクリル系発泡シートL1-2~L1-8を、熱膨張性発泡剤の量及びシートの厚さを変更した点を除いて、L1-1と同じ方法で製造した。次いで、各アクリル系発泡シートの密度を求めた。
【0052】
アクリル系発泡シートL2-1
アクリル系発泡シートL2-1として、3M社製のアクリル系発泡テープPX5005を用意した。
【0053】
アクリル系発泡シートL2-2
0.150gのIrgacure 651、306.9gの2EHA、3.05gのAA、及び96.75gのIBOAを900mLのガラス容器に入れ、ローラ型ミキサで一晩撹拌した。得られたモノマー混合物から15分間の窒素バブリングによって酸素を除去した。次に、ガラス容器内のモノマー混合物に360nmの紫外線を1分間照射し、ポリマー成分を含む粘稠なモノマー混合物を得た。次に、0.785gのIrgacure 651及び0.626gのHDDAをガラス容器に添加した。混合物をローラ型ミキサで再び一晩撹拌した。49.65gの得られた粘稠なモノマー混合物と4.41gのK-15を150mLのプラスチックカップに入れ、回転式オービタルミキサで回転速度2000rpmで2分間混合した。
【0054】
得られたモノマー混合物を使用して、アクリル系発泡シートL1-1と同じ方法でアクリル系発泡シートL2-2を製造し、その密度を求めた。
【0055】
アクリル系発泡シートL2-3及びL2-4
アクリル系発泡シートL2-2~L1-8を、熱膨張性発泡剤の量及びシートの厚さを変更した点を除いて、L2-2と同じ方法で製造した。次いで、各アクリル系発泡シートの密度を求めた。
【0056】
2.樹脂系発泡シートの比誘電率(ε)
各発泡シートの誘電率を、誘電率/誘電正接測定システム(DPS10-02、キーコム社製)を使用して自由空間法によって76~77GHzで測定した。もちろん、一部のアクリル系発泡シートの比誘電率値は、1GHzで測定した値を76~77GHzにおける比誘電率に換算することによって得られた値であった。図8は、76.5GHzにおける比誘電率と1GHzにおける比誘電率との相関を示すグラフであり、このグラフに基づいて換算値を求めた。図8における比誘電率は、ヒューレットパッカード社製のインピーダンス/物質アナライザ(4291B)及び誘電物質試験装置(16453A)を使用して測定した。同様の製品がキーサイトテクノロジー社から入手可能である。
【0057】
3.電波反射低減シートの製造
表1に示す樹脂系発泡シートの組み合わせを第1の樹脂発泡体層(L1)及び第2の樹脂発泡体層(L2)として使用し、これらの樹脂系発泡シートをラミネートし、第1の樹脂発泡体層の主面を第1の主面とし、第2の樹脂発泡体層の主面を第2の主面とする電波反射低減シートを得た。
【0058】
4.反射レベル及び透過率
平坦な金属面を有する金属板(アルミニウム板、厚さ3mm)を用意した。金属板の主面に垂直な方向に77GHz又は80GHzの電波を金属板に照射したときの反射電波の強度P0[dB]を、Sパラメータ法によって測定した。空気のみの空間における77GHz又は80GHzの電波の透過量(電波強度)T0[dB]も測定した。被着体として用意したポリカーボネート成形体(誘電率2.7/76GHz、厚さ7.2mm)の表面に、電波反射低減シートを、第2の主面が被着体に接するように向けて貼り付けた。次に、電波反射低減シートの主面に垂直な方向に77GHz又は80GHzの電波を電波反射低減シートに照射したときの反射電波の強度P1[dB]を、Sパラメータ法によって測定した。電波反射低減シート及び被着体を透過した77GHzの電波の強度T1[dB]も測定した。反射レベル及び透過率を以下の式に従って計算した。
反射レベル[dB]=P1-P0
透過率[dB]=T1-T0
Sパラメータ法による反射電波の強度の測定には、以下の条件及び測定装置を適用した。
条件:周波数掃引(75~110GHz)
構成:
・ネットワークアナライザ(アジレントテクノロジー社、PNA-X N5242A)
・スペクトラムアナライザ(キーサイトテクノロジー社、N9030A)
・高調波ミキサ(アジレントテクノロジー社、11970W)
・ホーンアンテナ(マイクロウェーブファクトリー社、MSGH10-25)
・Wバンドミリ波源モジュール(ヒューレットパッカード社、83558)
・Wバンドローカルアンプ(マイクロウェーブファクトリー社、MPA0208-34)
・RF電力アンプ(ヒューレットパッカード社、8349B-1 E8257DS12)
【0059】
図9は、被着体としてのポリカーボネート成形体に電波反射低減シートを取り付けたときの反射電波の強度と周波数との関係の一例を示すグラフである。被着体のみによる反射電波と比較して、電波反射低減シートを被着体に貼り付けることにより、76~81GHzにおける電波の反射が効果的に低減された。
【0060】
5.結果
表1は、各樹脂発泡体層の厚さ(t)、密度(d)及び比誘電率(ε)、並びに電波反射低減シートの反射レベル及び透過率を示す。各電波反射低減シートは、被着体に貼り付けたときに、金属板による反射電波の強度よりも少なくとも-10dB低い反射電波の強度を示しており、人体を検出するためにノイズを低減するのに十分な反射低減効果を示すことが確認された[0055]。
【0061】
【表1】
【0062】
発光層を有する電波反射低減シート
上述したポリプロピレン系発泡シートPPを製造するために使用したのと同じ方法でポリプロピレン系発泡シート(密度0.48g/cm、厚さ0.60mm)を製造した。得られた樹脂系発泡シートの一方の主面に、光ルミネッセント材料を含むインク(TRICK印刷塗料Red、So-ken社製)をコーティングして、発光層を形成した。上述したアクリル系発泡シートL2-1を発光層にラミネートし、第1の樹脂発泡体層/発光層/第2の樹脂発泡体層から構成された電波反射低減シートを得た。得られた電波反射低減シートに第1の樹脂発泡体層の側から紫外線を照射したときに、発光層からの発光を確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】